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1948/12/04 第4回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第004回国会 本会議 第3号
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1948/12/04 第4回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第004回国会 本会議 第3号

#1
第004回国会 本会議 第3号
昭和二十三年十二月四日(土曜日)
 議事日程 第二号
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 國務大臣の演説
    午後一時四十七分開議
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 一 國務大臣の演説
#3
○議長(松岡駒吉君) 内閣総理大臣より施政の方針に関し、また泉山國務大臣より経済に関して発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣吉田茂君。
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#4
○國務大臣(吉田茂君) 私は、第四國会の初めにあたりまして、ここに施政の方針の演説をいたしますことを、欣快に存ずるものであります。
 去月十五日、私の演説において述べました通り、現内閣は、芦田内閣総辞職後首班指名を受けた少数党内閣であります。この少数党内閣は、まず國民の信を問うために、世論に從い、冒頭解散をいたすべきものと信じておるのであります。(拍手)第三國会は、芦田内閣以來公約せられました公務員法及びその関係法規の制定のために召集せられた臨時國会であります。それゆえに、その通過のため、関係方面のあつせんによりまして、先月二十八日、政府と社会党、民主党、國協党等主要政党との間に協定が成立いたしたのであります。すなわち、政府は公務員給與及びその他緊急予算を第三回國会に提出し、野党はその予算の提出後二週間を経て不信任案を通過せしめて、衆議院を解散することになつておるのであります。(拍手)その予算は、去る二十九日提出せられ、現に本第四國会において審議せられつつある緊急予算であります。從つて、私の施政方針演説も、その予算を主としていたすものと、御了承願いたいのであります。
 第一に、國家公務員法の改正に照應いたしまして、公務員の生活を保証し、その職務の能率的運営を確保するために、國民経済と國家財政の現状とをにらみ合せて、公務員に対する妥当なる給與対策を講ぜんとするものであります。
 第二は災害復旧費であります。近時各種の災害が相次ぎ、罹災地方に対しては、まことに同情にたえないのであります。これが根本対策につきましては、組閣以來腐心し、苦慮しておるのでありまするが、とりあえず本國会に提出した予算中に所要経費の一部を計上いたしまして、迅速適切な処置を講ぜんとするものであります。(拍手)
 次に、現在なお海外在留者は四十余万に上つておりまして、四たび酷寒の寒い異境において越冬を余儀なくされておる状況は、まことに憂慮にたえないところであります。今後一段と引揚促進にあらゆる努力をいたしますとともに、引揚げ同胞及び留守家族の援護厚生につきましては万全の処置をいたしたいと考えておるものであります。(拍手)
 その他予算成立後の経済状況、殊に物價騰貴等の必要に基きまして、終戰処理費、價格調整費等の増額を計上いたしております。
 他面政府は、わが党年來の主張によりまして、生産第一主義にのつとり、統制の整理簡素化、行政の整理、企業の合理化を断行いたしまするとともに、健全財政の方針を堅持いたしまして、收支の均衡をはかることを根本といたして財政計画を立て、一層健全なる予算の編成に努力いたすつもりであります。(拍手)
 なお特につけ加えたきことは、文教刷新、民主教育の徹底であります。これが國家再建の根本であることは今さら申すまでもないのでありますが、新しい理想を目ざして発足いたしました新教育制度は、現に実施の途上にあるものであります。この完成のためには、今後容易ならぬ努力を要するのであります。政府は、あとう限りの熱意をもちまして、その実質的な完成を期したいと考えております。
 最後に申し述べたいことは、講和條約についてであります。先般第三國会における決議にある通り、講和條約なき限り、わが國の独立は確保せられないのであります。わが経済復興は期し難いのであります。講和條約促進のためにも、まず第一に、わが國において民主政治が確立せられなければならぬのであります。(拍手)
 新憲法の成立せる今日、これが運用を全からしむることは、その精神にのつとり、最も正しき憲法上の慣例をつくり上げることであります。このゆえをもつて、わが党は、新憲法のもとに行われました最初の総選挙の結果を尊重いたしまして、首班を当時の第一党たる社会党に讓り、吉田内閣は総辞職をいたしまして、(拍手)民主政治の趣旨精神の貫徹徹底を期したのであります。
    〔発言する者多し〕
#5
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
#6
○國務大臣(吉田茂君) (続)次に、主義政策を異にせる政党の連立内閣は、遂に内閣を弱体化し、敗戰後の國家再建を妨ぐるものと考えまして、当時わが民自党は入閣をがえんじなかつたのでありますが、爾後一年有余、政局は安定を欠き、政党政派の離合集散続出し、経済は萎縮し、生産は振わず、紛擾また紛擾、ために片山内閣より……
    〔発言する者多し〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
#8
○國務大臣(吉田茂君) (続)芦田内閣に及び、遂に疑獄事件のために吉田内閣の出現に至つたのであります。(拍手)
 しかるに、さきの首班選挙にあたりまして、私を首班に推せるは百八十余、白票を投ぜるは二百有余にもかかわらず、首班の指名を受けて國会内における少数党内閣たるの事実の明白なる以上、早きに及んで正しい国民の批判をまつことこそ、國民諸君の期待するところであると考えるのであります。(拍手)公党たるものは、よろしく國民の命ずる、國論の命ずるがままに総選挙に当り、正しい民主政治を確立すべきものであると考えるのであります。(拍手)
 第二には、わが國復興再建でありまするが、わが國唯一の経済資源は生産的労働力であります。正直にして勤勉、企画的にして能率的なるわが國民の労働力が、その愛國的熱情をもつてわが國再建復興に協力する事実の顕著なるに至つてこそ、外資の導入となり、資材の供給となるのであります。(拍手)すなわち、わが國経済の復興が世界の繁栄増進の一環をなすことを列國が承認するようにならなければならないのであります。
 第三に、現下の疑獄事件に至りましては、わが國未曽有の不祥事件であります。政府は、これが究明に努め、再びかかる不祥事の起らないように努力したいと思うのであります。政府としては、強力に綱紀粛正の方途を講じ、政界の浄化と官紀の粛正をはかり、政治と行政に対する國民の信頼と列國の信用を回復しなければならぬと思うのであります。(拍手)
 以上申し述べた三点の達成により、わが國は初めて講和條約を締結し、待望の國際團体復帰を許されるに至るものと信ずる次第であります。各政党は、しばらく党利党略を度外し、その主義主張に基いて互いに切磋琢磨し、わが國再建復興のために、公党として民主政治の確立、経済復興に努力せられたいものと、私は切望してやまないものであります。(拍手)
#9
○議長(松岡駒吉君) 國務大臣泉山三六君。
    〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#10
○國務大臣(泉山三六君) ただいま、吉田内閣総理大臣より、本内閣の施政の根本について述べられたのでありまするが、私は経済安定本部総務長官として、この機会に、今後における経済並びに財政施策の根本となるべきものにつきまして、いささか所信を申し述べたいと存じます。(拍手)
 終戰後すでに三年有余を経過いたして、わが國経済は、終戰当時の混乱状態から脱却いたして、緩慢ながら漸次回復の道をたどつて参りましたことは、占領軍当局の好意ある援助によることはもちろんでございまするが、また國民各位の困苦欠乏に耐え、不断の努力を傾注せられました結果でありまして、まことに御同慶にたえない次第であります。しかしながら、わが國経済の復興は、今やようやくその緒についたばかりでありまして、経済を再建し、國民生活を安定し、進んで世界経済の平和的発展に寄與することができるようになりますには、前途なおまことに遼遠であると申さねばなりません。
 すなわち、第一に鉱工業の生産状況は、終戰以來逐次回復の徴を示して参つてはおりますが、本年下期における産業用配炭の減少、この冬の渇水期における電力需給の不円滑等、当面の事情を考慮いたしますときは、必ずしも樂観を許さぬ状況にあるのであります。
 貿易の状況も、輸出においては最近やや改善の跡を見るに至つたようでありますが、なお遺憾ながら不振の域を脱せず、本年上期の実績について見れば、昨年上期のそれを下まわるというまことに憂慮すべき状態であります。一方輸入は、おおむね予定通り進捗して、國民生活の安定と日本経済の復興とに寄與しているのでありますが、この結果は輸出入の著しい不均衡を來し、米國の巨額な対日援助によつて、辛うじてそのしりがカバーせられている状態であります。
 次に、インフレーシヨンの総合指標である通貨、物價及び賃金の動きを見ますと、通貨及び物價につきましては、この数箇月間、明らかにその動きは緩慢になつて参つておりますが、ひとり賃金のみは急激なる上昇を示しているのでありまして、そのため実質賃金は向上し、家計の赤字も漸次減少の傾向をたどつて來てはおりますが、生産の増加を伴わない名目賃金の追求が、はたして眞に生活安定に資するものであるかないかを、深く反省しなければならないと考えるのであります。
 次に企業の状況を見るに、労働問題の應接と赤字の処理に寧日なく、その経済性及び自主性を喪失している感が深いのでありまして、企業の実体は依然として改善されておらぬ実情であります。
 さらに國家財政面を見ましても、公務員給與の増額、災害復旧費、企業の赤字の処理等のため予算の膨脹を余儀なくせられ、すでに國会に提出いたしましたように、多額の補正予算を必要とすることに相なつたのであります。以上全般を通じて、わが國経済は、米國の援助を主たる支柱として漸次安定化の方向をたどりつつあるとはいえ、國民経済全体としては、依然大きな赤字経済を継続している現況にあるのであります。
 かかる現況を打開して、國民経済の自立を目ざし、生産の増強、輸出の増進を促進し、経済の安定及び復興をなし遂げることが、今われわれに課せられた課題でありますが、具体的の施策については、その時々の経済情勢と調和を保ちつつ、生産の増強、流通秩序の確立その他経済安定を目途とするもろもろの施策を総合的に実施する必要があると考えるのであります。
 以上の構想に基いて、本内閣として特に重点を置かんとする諸施策について、以下申し述べたいと存じます。 まず第一に、経済統制の整理簡素化について申し上げます。終戰以來、國民経済の各分野にわたつて行われた経済統制は、それぞれ重要な役割を果して参つたのではありますが、最近における物資需給状況の改善、購買力の減退等経済條件の変動にかんがみ、統制全般にわたり再検討を必要とする段階に到達していると考えるのであります。よつてこの際、不必要と考えられる統制は思い切つてこれを廃止するとともに(拍手)他方、國民経済の安定と復興とに欠くことのできない基本的な統制は、その縮小された領域を対象として、むしろ強力に行つて参る所存であります。
 そもそも生産増強の要諦は、各企業の積極的な創意と責任とにまつべきものでありまして、限られた領域における統制方策が明瞭にされるならば、すなわち明るい統制のもとに自由な活動は認められ、各企業は必ずや自己の責任において向うべきところを自覚し活発な企業活動も、これによつて初めて期待できるのであります。(拍手)同時に統制の整理は、これによつて行政の簡素化、能率化を促進することと相なるのでありまして、総合的な失業対策を行うことと相まつて、強力な行政整理を断行し、行政運営の的確敏速と、國庫財政の負担を軽減すべき基礎工作も、これによつて初めて可能となると考うるのであります。(拍手)
 次に、企業の合理化について申し述べたいと存じます。
    〔発言する者多し〕
#11
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#12
○國務大臣(泉山三六君)(続) 経済再建のためのあらゆる施策の成否を決するものは、一に生産の増加にあることは、申すまでもないのであります。しかるに、これら経済活動の任に当るべき各企業が、今日のようにその経済性と自主性を喪失している状態のもとにおいては、眞の生産の回復は期しがたいといわねばなりません。(拍手)この点にかんがみ、企業の自主性を回復し、その運営においては、あくまで経済性を基盤とし、もつて現在の不健全性を拂拭するとともに、経済道義の高揚を期することが緊要であります。加うるに、一本爲替レートの設定の時期も次第に迫りつつある今日、企業みずからの自覚と努力とによる生産技術の向上、経理の健全化とともに、労働効率の引上げ等による企業の合理化を急速に促進することこそ、わが國経済が世界経済に参加して確固たる地歩を占むる上に絶対不可欠の要件であるのであります。
 從來企業がその自主性と経済性とを喪失して参りました原因は、もとより多々あるのでありまするが、政府の統制と、また政府の保護のもとに甘んじて参りましたということも、また企業が非常に非合理的に相なつた原因の一つと考えるのであります。今後政府といたしましては、企業の正常なる採算性の確保を期するとともに、健全なる資本の蓄積その他経営基盤の強化等に資する施策を行う考えでありますが、他面、賃金安定に関するいわゆる三原則の線に沿つて、赤字融資、價格差補給金の交付による企業赤字の負担等、企業の経済性及び自主性と相矛盾するがごとき措置は、これをとらざることを基本方針といたすものであります。(拍手)
 次に、貿易の振興について申し上げます。國民経済の復興と自立のためには、まず一定物資の輸入が要請せられ、從つて、これに見合う輸出の振興こそ経済復興と経済自立の第一歩であるのでありますが、最近の輸出貿易の実績を見まするとき、まことに寒心すべき状態にあることは、すでに申し述べた通りであります。貿易不振の原因は、あるいは國内的に、あるいは國際的にすこぶる複雜多岐でありまして、これが打開は実に容易ならざるものがあるとは存じますが、政府におきましては、すみやかに有効適切なる根本的措置を講ずるとともに、関係方面の理解ある援助を要請すべきものについては、すみやかにこれを懇請して、貿易不振の打開策を講ずる所存であります。
 次に、食糧問題について申し上げます。すでに十月より労務加配の対象の拡大と配給量の増加を、また十一月よりは一般主食配給基準の増量を実現することができたのであります。しかしながら、この増配の実現をもつて、ただちに今後の食糧事情に樂観を許すことはできないのであります。すなわち、このことは、連合軍の援助による食糧の大量輸入と農民諸君の理解ある供出の完遂とがあつて初めて確保できるのでありまして、これにつきましては、政府も食糧増産対策に一層の努力をいたす所存であります。何とぞ農民諸君におかれましても、割当てられたる供出の完遂はもとより、さらに進んでは超過供出にも特段の努力を傾注いたされんことを、切望してやまぬのであります。なお政府においても、供出完了後の米の自由販買について、その時期と方法につき、せつかく考慮中であります。
    〔発言する者多し〕
#13
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#14
○國務大臣(泉山三六君)(続) なお本問題に関連して、農地制度の改革について一言いたしたいと存じます。昨年以來実施中の農地の買收、賣渡しは、関係官民の努力によりまして、今年一ぱいをもつて所期の目的を達成できることと相なりましたが、いわゆる第三次農地制度の改革というがごときことは、政府といたしまして、これを行う意思はないのであります。今後の農村対策といたしましては、既開墾地の土地改良、開墾地の選択、治山治水等土地の総合的利用を確保して、農業生産の増強に努めるとともに、せつかく創設した自作農の安定を期するため、農業経営の合理化をはかり、かつ負担を軽減し、農業協同組合を育成して農村の経済力を培養するよう、各般の施策を具体化して参りたい所存であります。なお、この際附言しておきたいことは、生鮮食料品の統制の撤廃及び大衆料飲店の再開等についても、食糧需給の推移とも見合い、その時期、方法を研究いたしておるのであります。
 次に、労働問題について申し述べます。政府といたしましては、労働組合運動の健全なる発達をば衷心よりこいねがうものであります。そのためには、ますます労働組合の完全なる民主化をはかるとともに、その自主性及び責任制を確立し、労資ともに秩序と規律を重んじ、労資関係の正常化せらるるように努力を拂うこともちろんでありますが、不幸にして起ります労働爭議に対しましては、その早期かつ平和的な解決をはかるよう努力を重ねる所存であります。政府といたしましても、勤労者の生産意欲を高揚し、労働生産性の向上をはかりますことが、生産増強、経済再建の推進力となることを確信するものでありまして、勤労者の生活安定、特に実質賃金の確保をはかりますため一段と努力を惜しまないものでございます。
 しかしながら、最近産業界の一部に見られますように、勤労者はいたずらに名目賃金の追求に走り、これに対し企業は、政府補給金、赤字融資等の不健全な給源によつてこれにこたえ、あるいは製品價格の引上げを要求するごとき、労資一体の企業努力を忘れて安易な道に流れるようなことがあれば、インフレと賃金の悪循環を断つことができません。遂には勤労者の実質賃金確保の要求にも相沿わぬ結果となることをおそれるのであります。先般賃金問題に関連して明らかにせられましたいわゆる三原則も、まつたくこの趣旨に基くものにほかなりません。今や主食の増配その他労務加配の増加等により、さらにまた実効價格の停滞によつて、実質賃金の向上、も家計安定の増加の機会にありますので、この際特に賃金バランスの維持、賃金の安定化に全勤労者諸君の理解ある御協力を要請いたしたいと存じます。(拍手)
 次に、物價対策について申し述べます。昨年來の物價趨勢は、一般物價指数、また実効價格指数を見ましても、明らかに騰勢にはありますが、その進行は比較的緩慢であります。また、この物價騰勢の緩慢化と相並んで、家計の安定度は最近やや増加いたしたようには見えまするが、國民経済の赤字は決して解消しているわけでないのであります。その赤字は、財政か企業か家計かのいずれかに、あるいはまたこの三者に負担せしめるほかはない現状であります。しかるに、三者のいずれも、すでに負担限度の極限に近くなつていることを考えますとき、財政負担と物價及び賃金の調和ある相関関係と平衡関係とを確立し、かつ、あとう限りこれを堅持して動かないことが、経済の安定化のために特に望ましいところであります。從來の例に微しますと、均衡ある生産の見通しを十分に反映し得ない性急な公定價格の引上げのごときは、企業採算の不均衡と賃金の跛行的上昇を招來しまして、この面から物價と賃金の悪循環を誘発するおそれがあるのでありまして、これらの事情を考えますると、用意なくして全面的價格改訂を企てるがごときことは、この際絶対に避けたい所存でございます。(拍手)
 最後に、さきに提出いたしました補正予算に関連して、財政金融の方策について申し述べたいと存じます。一 まず、補正予算の提出を必要とするに至りました基本的事情について申しますならば、その第一は一般賃金水準の上昇に伴う國家公務員の給與ベースの切りかえの問題であります。御承知のように、現在官公吏諸君の給與ベースは、本年七月の補正物價体系に織り込まれた民間工業平均賃金に均衡をとつたものでありまするが、その後の推移に顧みまするに、公務員給與三千七百九十一円ペースのすえ置に対しまして民間賃金は相当上昇し、一方生計費もまた相当膨脹いたしておるのでございます。なお、今回の國家公務員法の改正に伴い、官公吏は特殊の地位を與えられたのでありまして、この際官公吏の待遇を改善することが、ぜひとも必要と相なつたのであります。
 補正予算提出の基本的事情の第二は、最近における災害の続出と、これが復旧対策の問題であります。戰時中及び戰後を通ずる國土の荒廃は、まことに憂慮すべきものがありまして、特に本年度におきましては、さきに北陸の震災があり、さらにアイオン台風を初めとして各地の風水害が相次いで起りまして、これを放置するにおきましては、民生の安定、経済の再建の上に重大な支障となることを痛感せられるのでございます。
 以上二点の要請を根幹とし、これに終戰処理費、價格調整費等必要やむを得ざる諸経費を計上いたし、ここに補正予算を編成することと相なつたのでありますが、その編成方針につきましては、財政の健全性を貫くことこそインフレーシヨンを收束し、経済を常道に立て直すためのかぎであり、かつ外國の援助を期待し得る前提であることを確信いたしまして、あくまで健全財政の方針を堅待することといたした次第でございます。
 すなわち第一に、一般会計及び特別会計を通じ嚴に收支の均衡を保持することとし、第二には、鉄道運賃、通信料金の改訂その他、一般物價に影響を及ぼし、インプレーシヨンを促進するような歳入に財源を求めることを避け、また第三には、財政資金全体の規模が、國民負担の現状から見て苛酷にわたらない範囲に納まるように、極力これを圧縮することとしたのであります。
 以上の原則に從いまして編成しましたのが今回の補正予算案でありまして、さきに申し上げました主要費目以外にわたりましても、既定経費の不足あるいは新規事項の追加等相当多額の歳出の要請が存したのでありますが、これらは極力圧縮いたしまして、一般会計総額において、歳出、歳入とも五百八十六億余万円と決定いたしたのであります。
 今後の財政の面からするインフレーシヨンの進行を阻止するため、実質的な收支の均衡をはかり、経済の安定復興と生産の増強とを第一目標として、財政と國民経済との調和的発展に深く留意しつつ、全体的見地に立つた幅のある健全財政の運営を実現いたしたい所存であります。なお、財政収支の時期的調整、國家財政と地方財政との間の財源及び負担の適切なる配分等につきましても、一連の問題として特段の配慮をいたしたい考えであります。
 歳入確保の点につきましては、租税収入、專賣益金等の確実な増収をはかるため、適切な措置を強力に推進して参りたいと考えております。現行税制のもとにおける國民の租税負担は相当に重く、國民経済の現状からいたしまして、この負担に耐えますることは容易ならぬ努力が必要と思われるのでありますが、幸いに國民各位が國家財政の窮状をよく認識せられ、租税完納のためにさらに一段の御協力賜わらんことを、切に希望いたす次第であります。(拍手)
 なお取引高税の撤廃につきましては、補正予算中に織り込む運びに至らなかつたことを遺憾とするものでありますが……。
    〔発言する者多し〕
#15
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
#16
○國務大臣(泉山三六君)(続) これを廃止するという根本方針にはかわりないのでありまして、これが実施の時期並びにかわり財源について、引続き研究を進めておる次第であります。
 次に金融政策につきましては、健全金融を建前として、いわゆる赤字融資は一切これを行わない方針で進むものであります。しかしながら、現在各方面において悩まされつつある金融梗塞の実情は十分これを認識し、金融に一層の彈力性を賦與したいものと、くふういたしておるのであります。インフレーシヨンの抑制方策として、金融引締めの方法が即効的に有効であることは明らかでありますが、それが度を過しまして、生産を萎縮し、企業意欲を減退せしめるようなことがございましては、終局的にインフレーシヨン克服の目的を達することができないことも、これまたきわめて明瞭であります。この間の事情をよく勘案して、金融の健全性を保持しながら、しかも生産の増強、経済の復興に活路を與えるように、善処いたしたいと考えておるのであります。(拍手)特に中小企業及び農漁村金融の円滑化については格別の措置を講じたいと存じております。しかして、このような金融政策が通貨の増発を招來せしめないためには、手形制度の活用等信用取引を発達助長せしめるとともに、貯蓄の増強に一段のくふうと努力を必要といたすことは、申すまでもありません。從つて、その見地からも、通貨に対して何らかの措置をとるというがごときことは、政府として、まつたく考えておらないところであります。(拍手)
 なお、從來とかくの批判の対象となつておりました復金融資の問題についても、復金本來の使命を達成するに必要なものに限定するとともに、融資の責任を明確にするため、必要な仕組等について成案を急ぎつつある現状であります。
 以上、私は本内閣として当面実施すべき重要政策に触れて参つたのでありますが、政府といたしましては、さらに五箇年後における日本経済の自立を目標として、困難なる現勢において見通し得る限りの経済條件と経済情勢を織り込みつつ、いわゆる経済復興五箇年計画の立案を急ぎつつあるのであります。しかしながら、これを再建の目標として生産の飛躍的増強と國民生活水準の向上を期するとともに、國際收支の均衡を確保して、現在アメリカの援助にささえられているわが國民経済を眞に更生自立せしめるためには、現在のわが國の置かれておりまする内外情勢から見ましても、まことに異常の努力を要するものと申さねばなりません。(拍手)幸いに全國民諸君の理解ある御支援によつて政府の諸施策が所期の実効をあげ得ますよう十分御協力くだされんことを切望してやまぬ次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○今村忠助君 この際暫時休憩せられんことを望みます。
#18
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。
 暫時休憩いたします。
    午後二時三十三分休憩
    ―――――――――――――
    午後六時十時開議
#20
○議長(松岡駒吉君) 休憩前に引続き会議を開きます。
    ―――――――――――――
#21
○今村忠助君 國務大臣の演説に対する質疑は延期し、明後六日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#22
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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