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1948/12/11 第4回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第004回国会 法務委員会 第3号
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1948/12/11 第4回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第004回国会 法務委員会 第3号

#1
第004回国会 法務委員会 第3号
昭和二十三年十二月十一日(土曜日)
    午前十一時二十分閣議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 佐藤 通吉君 理事 猪俣 浩三君
      岡井藤志郎君    佐瀬 昌三君
      花村 四郎君    樋貝 詮三君
      古島 義英君    井伊 誠一君
      池谷 信一君    石井 繁丸君
      石川金次郎君    森 三樹二君
      中村 俊夫君    安田 幹太君
 出席政府委員
         法務政務次官 鍛冶 良作君
         法務廳事務官 野木 新一君
         法務廳事務官 宮下 明義君
         法務廳事務官 齋藤 三郎君
 委員外の出席者
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
十二月十日
 司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第一九号)
 少年法を改正する法律等の一部を改正する法律
 案(内閣提出第二一号)
同 月十一日
 裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第二二号)
 三條市所在の旧武徳殿拂下に関する請願(亘四
 郎君紹介)(第三五号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 刑事補償法を改正する法律案(内閣提出第一一
 号)
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 等の法律案(内閣提出第一三号)
 檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
 等の法律案(内閣提出第一四号)
 罰金等臨時措置法案(内閣提出第一七号)
 司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第一九号)
 少年法を改正する法律等の一部を改正する法律
 案(内閣提出第二一号)
 刑事訴訟法施行法案(内閣提出第九号)(予)
 裁判所法の一部を改正する等の法律案(内閣提
 出第一〇号)(予)
    ―――――――――――――
#2
○佐藤(通)委員長代理 これより会議を開きます。
 刑事補償法を改正する法律案を議題として審査を進めます。
#3
○中村(俊)委員 ただいま上程されました刑事補償法を改正する法律案に関しまして、二、三お尋ね申し上げたいと思います。
 今回の刑事補償法の改正法律案は、現行刑事補償法に対する改正ということになつておりますけれども、新憲法にのつとるむしろ新しい立法だと見る方が正しいのだと考えておるのであります。おのずからほとんど全面的な改正になつておりますが、まずお尋ね申し上げたいのは、本改正法律案は憲法の四十條「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、國にその補償を求めることができる。」という、この基本的な條章から立案されていることは申すまでもございません。私は常に考えておるのですが、憲法の條文からただちに刑事訴訟法の條文も出て來なければ、民法の條文も出て來ない、その他の一般の法律というものは憲法の條項からただちに出て來るものではないのだと思う。憲法は國家の大道をただ示しているにすぎないのでありますからして、その精神がどこにあるかという、その精神をくんで、ここに初めて刑事訴訟法ができ、民法の改正ができ、刑事補償法の改正ができるのだという見方が憲法の正しい解釈だと考えております。從いまして憲法の四十條もこの文字そのままをとつて、このわく内で刑事補償法を定めるのではなくして、この憲法四十條は何を命じているかという精神から、刑事補償法が立法されたものだと確信しておるのであります。このたびの刑事補償法の改正につきましては、すべてこの憲法四十條の文字、つまり抑留または拘禁された後に無罪の裁判を受けた者に限つて、補償が許されるということになつておりますが、それが拘禁もされないけれども、いわゆる不拘束のまま起訴になつて、ことに政治的に大きな影響のある疑獄などで新聞に嫌疑が出ると、政治家としてはこれが致命傷となつているのです。ところがこれが不拘束のまま起訴になつて無罪となつた場合に、この刑事補償法には少しもこれに対する考慮が拂われていないという点は、新憲法第十一條の基本的人権の確立という條項に反するものでありまして、この憲法四十條の意味するところは、そういう人にでも國家が有形無形の補償をなすべきであるという精神が含まれていると解するのが進歩的な考え方ではないかと思います。憲法四十條に抑留または拘禁という文字が使われているから、その場合にのみ刑事補償法を適用するということでなく、この法の精神というものはそうではないのだ、要するに基本的人権が刑事の手続上そこなわれた場合に、ことに裁判が無罪になつた場合に救済するのだ。抑留または拘禁された場合に金銭的に賠償するということは妥当だと思いますが、社会的に名誉毀損的な損害を與えられた者に対してどうして救済する道を考えていないのか。これを考えるのが当然基本的人権であり、新憲法に沿うものだと考えるのでありますが、この点に関する政府の御意見を伺いたいと思います。
#4
○宮下政府委員 ただいま中村委員が、今度の刑事補償法の改正案は、憲法をそのまま受けて抑留、拘禁をされた後無罪の裁判を受けた者についてのみ刑事補償をする建前であるが、これははなはだ狭い解釈ではないか。抑留、拘禁されない場合でも、いやしくも無罪の裁判があつた以上その者に非常に侵害を與えておりますから、全面的に補償としたならばどうかという御意見でありますが、これは十分傾聽し考慮いたさなければならない御議論であると思うのであります。ただ現在政府が提案いたしておりますこの刑事補償法改正法律案におきましては、憲法の精神を考えまして、何がゆえに憲法が抑留、拘禁された者について補償するということを申しておるかという憲法の精神を考えまして、このような案を立てたのでありまするが、刑事手続をしてその捜査をし起訴をし、あるいは抑留、拘禁をするときにおきましては、それは適法な行為であるのであります。一定の嫌疑のもとに刑事手続を進めて参るのでありまして、その時々刻々は適法な手続であるのでありますが、その後において無罪の裁判がございますと、結果においては不当であつたということになりますので、この適法な手続に基きまするものの中で侵害の最も多い抑留、拘禁のあります場合に補償をしようというのが、憲法の考え方であろうと思うのであります。適法な行為でありますが、結果において不当であつた場合にこれを補償しておらないことは、國家、社会の公正の観念から申しまして妥当でないというところから、侵害の最も大きいものについて補償をするという考え方であると思います。お説のようにもしも無罪の裁判すべてについて補償をするという建前をとりますと、一面國家財政も考えなければなりませんし、そこまで行かなくてもいいのではないか。國家社会の公平観から侵害の最も大きいものについて補償しようという考え方で憲法を解釈いたしまして、このような改正案を提案いたした次第であります。
#5
○中村(俊)委員 それでは私は以下二、三、各條文についてお尋ねを申し上げたいと思います。第二條の第一項に配偶者という言葉がありますが、これは民法上の配偶者そのままの意義と解していいものか。ということは戰時中一時賜金とか、その他の賜金というものについて、内縁の妻も考慮されておつたのでありますが、この場合には民法上の配偶者、籍の入つている妻と解しているのかどうか。
#6
○宮下政府委員 お説の通り、本法における配偶者の意味は民法の規定する配偶者でありまして、内縁の妻等は入つておりません。ただ御注意願いたいのは、たとえば婚姻関係は夫の死亡によりまして消滅するのでありますが、この三條等におきましては、夫と死別いたしました配偶者であつた者をも含めておりますので、そのように御解釈願いたいと思います。
#7
○中村(俊)委員 なお第二條の第二項に「遺族たる身分を失つた場合」という言葉が使つてありますが、これは民法の相続の関係から申しますと、子供が女である場合に、それがとついであつても相続権がありますが、この「遺族たる身分を失つた場合」という場合には、やはりその場合を含まないと解釈すべきものだと思いますが、それでよろしゆうございますか。
#8
○宮下政府委員 お説の通り、他の者にとつぎました子供も当然遺族の範囲に入つておるのでありまして、この「遺族たる身分を失つた場合」と申しますのは、たとえば養子縁組の場合に、離縁になりまして親子関係がなくなつた場合を予想しておるのであります。
#9
○中村(俊)委員 次に第四條でありますが、第四條の冒頭に「左の場合には、裁判所の健全な裁量により、」という非常に珍しい言葉が使われているのですが、健全なる裁量というのはどういうふうに解釈したらよろしいのですか。
#10
○宮下政府委員 補償の一部または全部をしないと決定いたします場合に、当然裁判所は健全な裁量を働かせましてその決定をするわけでありまして、そのためにこのような明文を挿入いたしましたが、独断の意味ではございませんで、当然なものを規定しただけだというふうに御解釈願いたいと思います。
#11
○中村(俊)委員 次に第四條第一号ですが、「本人が、ことさらに、任意の自白をすることにより、又は他の有罪の証拠を作為することにより、」云々という言葉が使つてありますが、やはり私はこういう文章を見ると、依然としてこの立案者に現行刑事補償法の立法精神というものの残滓が残つているのじやないかという氣がして仕方がないのです。御承知の通り現行刑事補償法は昭和六年につくられ、一種の國家の恩惠という精神から立法されたように承知いたしております。ところがこのたびの改正刑事補償法は國家の恩惠ではなくして、これは当然團体生活の原理から生ずる國家の法律による義務である。憲法に規定された國家の法律上の義務から、当然補償すべき義務があるのだ。ところが現行刑事補償法は國家の恩惠的な立法だという建前になつております。從いまして現行刑事補償法には、「本人ノ故意又ハ重大ナル過失ニ因ル行為ガ起訴、勾留、公判ニ付スル処分、又ハ再審請求ノ原因ト為リタルトキハ第一條第一項ノ補償ヲ為サズ」とはつきり書いてある。これでむりやりに自由をさせられた者などはほとんど回復の道はなかつたのです。ところがいまだに第四條の第一号に、特に「ことさらに」という言葉を使つてありますけれども、「任意の自白をすることにより、又は他の有罪の証拠を作為することにより、」この文句は、特にこういう事実がはつきりすれば、もちろん補償の一部または全部をしなくてもいいのではないかと思われますが、その前段の「任意の自由をすることにより、」ということが挿入されているということは、やはりできるだけ國家の責任というものを小さくして行こうという考え方がありますので、むしろ自白という言葉を削られてしまつてさしつかえないと思う。その方が進歩的だと考えられるのであります。その点について御意見を承りたい。
#12
○宮下政府委員 ただいまのお説のごとく、今回の刑事補償法改正法律案におきましては、補償の本質をただ單なる國家の恩惠、あるいは恩惠的慰藉だというような狭い考えはとつておらないのであります。御議論のように公平の観念から、適法な手続によるものではありまするが、大きな損害を與えておりまするので、國家といたしましてはなし得る限りその損害を補填するという法律関係として、刑事補償の本質を考えておるところはまつたくお説と同様であります。ただいま第四條の第一号につきまして「任意の自白をすることにより」という部分を除いたらどうだという御意見でございまするが、私どもといたしましては、現行刑事補償法の第四條の「故意又ハ重大ナル過失ニ因ル行為」という運用が、ただいま御指摘のありましたように、もしも本人が自白をしておる場合においては、すべてこれに当るという運用になりまして、補償が事実上非常に阻まれておりましたので、これは憲法の趣旨に反するのではないかというところから、むしろこの條章をやめようという考えになつたのでありまするが、しかしながらこの一号にございまするように、もしも殺人の眞犯人でありまする親分に代りまして、子分がことさらにある意図を持ち直して虚偽の自白をいたしましたり、あるいは他の仲間の子分等に、もしも捜査官から調べられたならば、あの男が眞犯人であるというふうに言つてくれという申残しをいたしまして、虚偽の有罪の証拠を作為するというような行為をいたしまして、檢事をして起訴をさせたり、あるいは抑留、拘禁をさせたり、あるいはその結果ついに有罪の判決を受けるに至らしめたというような場合までも、なおかつ補償をしなければならぬかということを考えますると、これはやらなくてもいいのではないかというところから、この第一号の範囲において、相対的に補償成立條件を規定したわけであります。從つてこの第一号はことさらに起訴、未決の抑留、もしくは拘禁または有罪の言渡しを受けるに至つたものと、お読み願いたいのであります。決して從來のような運用を考えておるのではございません。
#13
○中村(俊)委員 それでは特にはつきりいたしておきたいと思いますが、ただいまの御説明によつて大体立法趣旨は了解いたしました。しかしながらここに明確にいたしておきたいと思いますのは、立法の趣旨が今お説の通りであるとすれば、任意の自白をするということを裁判所がいわゆる健全なる裁量によつてこれをことさらに知るのでなくして、証拠上あるいは疎明書類上、何か任意の自白ということがことさらになされたことが明かになつた場合にのみ第四條が適用されると解するのが妥当だと思いますが、その点に対する明確な御答弁をお願いいたします。
#14
○宮下政府委員 お説の通りであると思つております。任意の自白に他の目的なんかがプラスされて、起訴、未決の抑留、または拘禁等の結果に至つたということが立証された場合に、この第四條第一号が働くものと思つております。
#15
○中村(俊)委員 それからなおこの「ことさらに」という言葉は、後段の「他の有罪の証拠を作為すること」これもことさらであるというふうに了解してよろしゆうございますか。
#16
○宮下政府委員 さようでございます。
#17
○中村(俊)委員 それから次の第五條の第二項の「うべきであつた利益の喪失」ということは、具体的にはどういうことを予定されているかをお尋ねいたします。
#18
○宮下政府委員 「うべきであつた利益の喪失」のすぐ前に規定してございまする「本人が受けた財産上の損失」という言葉は、現実の財産上の損失を考えております、「うべきであつた利益の喪失」というのは、たとえば拘禁を受けたがために、もし拘禁を受けなかつたならばこのような利益があつたであろう、それが得られなかつたという場合を予想しておるのであります。
#19
○中村(俊)委員 私はこれは被害者にとつては非常に利益な條文であると思うのでありますが「うべきであつた利益の喪失」というのは、民法の損害賠償の言葉と同じでありますが、非常にあいまいな言葉だと思うのでありまして、もちろんこれはいわゆる裁判所が適当に判断をするのでありましようけれども、この「うべきであつた利益の喪失」ということは、今ああいう抽象的な説明でありましたが、たとえば商賣人が拘禁されている間、拘禁されなければ一日これくらいの利益は上つていたのだが、自分が一箇月なり二箇月なり拘禁されたがゆえに、その間莫大な損害をしたという場合、これは相当具体的な数字が出て來ると思います。その場合に「うべきであつた利益の喪失」であつたと考えていいのかどうか。
#20
○宮下政府委員 御指摘のような場合も「うべきであつた利益の喪失」の一例になろうかと思つております。
#21
○中村(俊)委員 それからその次の第三項でありますが、これは「死刑の執行を受けた者の遺族に対する補償においては、一万円以内で裁判所の相当と認める金額の附加的補償をしなければならない。」こういう規定になつておりますが、これはもちろん死刑を受けた人が基本的な拘束を受けた期間の國家補償以外に、別に一万円以内で裁判所の相当と認める金額の附加を補償しなければならないという意味だと思いますが、この一万円という金額ははなはだつり合いがとれない金額ではないかと思われるのです。御承知の通り死刑という刑罰は極刑でありますが、この極刑を科せられた者があるいは上告により、その他の法律上の権限によつて無罪となる。これはたいへんなことなんですが、それに対して附加補償の一万円以内ということは、現在の経済情勢からいつてほとんど問題にならないのですが、これはどういう趣旨から一万円以内でこういう附加補償をするという規定になつたのかを伺いたいのです。
#22
○宮下政府委員 第五條第三項の附加補償は、ただいま中村委員が御指摘なさいましたように、本來の抑留、拘禁による補償、あるいは拘置による補償は、もちろん請求によりましてその遺族に支拂うのでありまするが、それ以外にその附加的補償をするという意味でございます。そうしてこの一万円という金額が抑留または拘禁による補償の一日二百円ないし四百円という金額に対比いたしますると、額が少いのではないかという御意見でございますが、あるいはそのような感がなきにしもでありますが、ほとんどこのような場合は実際にはないのではないか、またそれならば、この金額を幾らにするかと申しましても、なかなか妥当な金額をきめるということもむずかしい点でございまして、要するにある意味の慰藉料的なものとしての附加的補償だということを考えたわけでございまして、計算的な根拠によつて一万円という額を出したのではございません。
#23
○中村(俊)委員 この点はお互いに議論しておつても仕方ありません。民法においては御承知の通りに、損害賠償に対しては相当の金額が当然許されておるのに、これは稀少な場合だから、めつたになかろうと思いますが、一万円にしたという御説明はわれわれ納得が行かないのです。從つて最高額をきめておられるのに、一万円はなんとしても今日の貨幣價値の低いときにあまりにも少い金額ではないか。しかも死刑の執行が誤つてなされた場合であるから、この場合は最高額を上げてもさしつかえないと思います。こんな事件は一年に一つあるかどうかと思われるものですから、かりに五十万円以下とされても國家の財政には心配ないと思います。從つて標準がないからといわれますが、保護の立場からいえば、この立法の精神が憲法四十條の立場から來ているのですから、しかも稀有な場合であるから、十分な補償をしてやるのが当然ではないか。その建前から裁判所の裁量にまかせればいいのだから、一万円という額を最高にきめるということは、私は非常な不妥当性があるのではないかと思うのです。この点についてもう一度意見を伺いたいと思います。
#24
○宮下政府委員 民法の損害賠償の場合には、ホフマン式計算によりましてその額を算出することも十分に考慮したのでありますが、この刑事補償は先ほども申し上げましたように、不法行為による損害賠償とは考えておりませんので、適法な行為がその結果においては不当であつた。その損害を國家としてできる限り補填しようというのでありまするから、あるいは死刑によりましてその遺族が大きな損害を受ける場合もございましようし、あるいは少い損害である場合もございましようし、その大体平均ぐらい、また國家財政等ともにらみ合せまして、附加的補償はこの程度の金額でよいのではないかというところで、一万円といたしたのであります。
#25
○中村(俊)委員 次に七條でございますが、この補償を受けるべき者が補償の請求を裁判所にいたしている途中で死亡した場合の手続をお伺いしたいのです。
#26
○宮下政府委員 現行刑事補償法第六條第三項におきましては、一たん裁判所に対して補償の請求をいたしました後に、その請求人が死亡し、または遺族たる身分を失つた場合には、その請求は次順位者からされたものとみなすということになつておつたのでありますが、第七條においてはその建前を改めまして、前の請求は効力がなくなりまして、請求を棄却し、あらためて次順位者から六十日以内に請求をしてもらうということに改めたのであります。何がゆえにこのようにしたかと申しますると、改正案におきましては、補償を受けるべき遺族の範囲、順序等につきまして、民法の規定を準用しておりまする関係上、多くの場合同順位の遺族が数人ある場合が多いのであります。この場合にもしも旧法のように、その請求は次順位者からされたものとみなすということにいたしますると、請求人が多数になりまして、必要的な共同訴訟のような形をとりまして非常に複雜になりますので、その点を考慮いたしまして、あらためて次順位者から六十日以内に請求をしてもらう。そういたしますると、その数人の遺族のうち一人がやりますると、第八條でその請求は全員のため全部についてなされたものとみなされまして、裁判所といたしましては、その一人の請求人を相手に手続を進めますれば簡便になりますので、このような建前でいたしたのであります。
#27
○中村(俊)委員 その点なのですが、手続上の問題ですからどうでもいいような問題ですが、ただいま御指摘になつたように、必要的な共同訴訟のような意味になつております。そういたしますと、かりに子供が二人と配偶者とで三人あつた場合、長男が補償請求をしておる場合に、長男が死ねば次男が受継するとか細君が受継するということは許されないのですね。この法律の建前からいうと……、
#28
○宮下政府委員 ただいま御指摘のように、子供二人と配偶者と三人が同順位者に立つておりまして、長男が請求をしておりまして、その長男が死亡した場合におきましては、七條の第二項は働きません。七條の第二項におきましては、他に配偶者以外の同順位の遺族がない場合に、次順位者が六十日以内にあらためて請求をするというのでありますから、ただいま御指摘のような場合においては、そのまま手続を進めて、裁判所としては補償の決定をするわけであります。
#29
○中村(俊)委員 私が冒頭に伺つた手続というのは、そこなのです。今私が伺つたように、同順位者が三人あつて、必要的共同訴訟ではないから單独にやる。その請求人が死んだときには、当事者がいないから受継の手続を何とかしなければならないのでありますが、私はその場合の手続を伺つておる。この第七條第二項は「他に配偶者以外の同順位者の遺族がないときは」とはつきりとありますが、今言つたような場合の手続を伺つているのです。
#30
○宮下政府委員 第八條で「補償を受けるべき同順位の遺族が数人ある場合に」その一人が補償を請求いたしますと、全員のためにその全部について請求がなされたものということになりますので、その一人が欠けましても、すでに補償請求は裁判所に係属しておりますので、そのまま手続を進めます。それでなおこの改正案におきましては、現行刑事補償法のうちの手続的な規定をある部分削つてございますが、これは当然に裁判所の規則で補充することを予定いたしておるのでございます。
#31
○中村(俊)委員 今の説明はわからないのですが、死んでしまつているのに手続を進行するというのは、どういう意味ですか。
#32
○宮下政府委員 民事訴訟法の四十八條によりますと、選定された当事者のうち、死亡その他の理由によつてその資格を喪失した者があるときは、他の当事者において総員のために訴訟行為をなすことを得という規定がございますが、この趣旨によつて、ただいまの御指摘のような場合におきましては、当然他の者が訴訟行為をなし得るものと考えております。
#33
○中村(俊)委員 だから私のお尋ねするのは、その場合にはその請求が執行されないし、死んだ場合には弟なり配偶者が手続上、これはどう申しますか、受継というか参加するといいますか、その具体的な手続をどうするかということを伺つているのです。そういうことに遭遇した場合に、次の同順位の人はどういう手続でこれを続けて行くかということを伺つているのです。
#34
○宮下政府委員 この補償請求の手続は裁判所が職権で手続を進めるのでございまして、第十一條にございますように、補償の請求につきましては檢察官及び請求人の意見を裁判所が聞くということになつております。そうしてまた必要がございますれば、その決定をするについて職権で事実の取調べをいたしまして、補償決定あるいは補償の請求を棄却する決定をいたすのでありますから、裁判所の方で必要がある場合には、他の生存同順位者の意見を聞くということになろうかと思つております。
#35
○中村(俊)委員 その点はこの程度にしておきましよう。
 それから第十五條でありますが「補償の決定があつた後、これによつて補償を受けるべき者がその拂渡を受けないで死亡し、又は遺族たる身分を失つた場合において、他にその決定によつて補償を受けるべき配偶者以外の者がないときは、その決定は、順次次順位で補償を受けるべき者に対してしたものとみなす」という規定になつておりますが、第八條は「補償の請求は、全員のためその全部につきされたものとみなす。」ということになつておりますので「補償の決定があつた後、これによつて補償を受けるべき者がその拂渡を受けないで死亡し、」という意味は、補償の決定があれば、たとえ一人の請求であつても、第八條によつて同順位の者に全部渡るのですか。もしもその補償の請求を三人の者が同時にやつておる。そうすると決定がある。ところがそのうちの一人が死ぬという場合には、民法の相続上の規定を適用すればいいのではないかと思われるのですが、その点についてお尋ねいたします。
#36
○宮下政府委員 たとえば同順位者が三人ございまして、そのうちの一人が補償の請求をいたしますると、第八條によつて全員のために全部について請求があつたものとみなされまして、裁判所としてはその一人の請求人に対して全額の補償決定をいたすということで、その同順位者三人の内部の分配は、内部でやつていただくという建前になつておるのであります。從つて十五條におきましても、補償決定がありまして、同順位者のうち一人が死にましても、他の二人がその決定によつて補償の拂渡を受けて、二人で分配するということになりますので、その点はさしつかえございませんが、その決定の効力を次順位者にまで及ぼそうといたしますには、どうしても十五條の規定が必要になつて來るのであります。
#37
○中村(俊)委員 ただいまの御説明によると、内部で分配されると言われますが、これは第三條の第四項の民法の法定相続人の規定が適用されるのですから、内部でわけるというわけには行かぬのじやないですか。
#38
○宮下政府委員 当然民法九百條に準じて内部でわけるわけであります。
#39
○中村(俊)委員 そこでその場合に、かりに一番上の兄が死んだという場合には、当然民法の相続の規定が適用されればいいのではないのですか。
#40
○宮下政府委員 この刑事補償法の請求権は、民法上の財産権とは考えておりません。一身專属権と考えておりまして、本來ならば抑留、拘禁またはその刑の執行を受けた本人に補償をするわけでありまするが、これを少し廣めまして、本人の身近におりまする遺族に、別個に補償請求権を本人が死んだ場合に認めようという建前をとつておりまして、相続の理論はこれには入れておらないのであります。從つて第十五條におきましても、御指摘のような場合に、相続によつてその死んだ長男の子供等がその権利を取得するという考え方をとりませんで、その場合には同順位者の他の者が受ける割合がふえるのだという考え方をとつております。
#41
○中村(俊)委員 最後にお尋ねいたしますが、第二十條でございますが「無罪の裁判の主文及び要旨並びに補償をした旨を官報又は新聞紙に掲載しなければならない。」という規定になつておりますが、これに新聞紙ということが加わつておることはまことにけつこうと思いますが、しかしこれは何新聞に掲載するのであるか、これはおそらく申立てによるのでありましようが、その申立ては新聞を選択して、一新聞一回という意味なのかどうか、もちろん人によつて違いましようけれども、有名人であると無名人であるとにかかわらず、名誉回復のために官報または新聞紙に掲載するのでありますから、結局日本における一流の新聞三つ、これはどう規定されるかわかりませんが、もう一つそれとともにその人の地元の新聞に掲載することが当然と思います。漠然と新聞紙に掲載されると書いてありますが、この趣旨はどういうふうに了解すればいいかをお伺いいたします。
#42
○宮下政府委員 第二十條におきましては、現行刑事補償法第十九條を廣めまして、新聞紙を附加したのでありますが、この新聞紙が何新聞であるか、また回数が何回かというようなお尋ねでありますが、この二十條の考え方といたしましては、裁判所が適当と認める新聞紙に一回掲載すればいいのだというふうに考えております。從つて裁判所が全國的にその事実を公知した方がいいと考える場合には、全國的な新聞に掲載いたすでありましようし、あるいは地方的に知らした方がよろしいと考えた場合には、地方新聞に掲載することもあろうかと考えております。
#43
○中村(俊)委員 今のお答えによると、一新聞一回という趣旨だと了解してよろしゆうございますか。
#44
○宮下政府委員 さようでございます。
#45
○中村(俊)委員 これも議論になるのですが、それでははたしてこの法の精神が徹底されるかどうか、私は疑問だと思うのであります。われわれ日本人の常識として毎日、朝日を日本一流の新聞だと思つておりますが、その被害者が地方の人であるならば、地方の新聞に載せなければ名誉の回復は完全に行われたとは思われないのです。從いましてそういうきゆうくつな解釈でなしに、立法の趣旨はそうではないのであつて、いかにすればその傷つけられた名誉が回復できるかという趣旨だと了解するのが正しいのじやないか、これが立法の精神じやないか、ここまで來て一新聞一回というような不親切な解釈を國家がすべきではないと思います。これは非常に重大なことです。私らが逐條にわたつてお尋ねするのも、今後一般人が法文の解釈をするについての重大な資料としてお尋ねしておるのですから、そういうようなきゆうくつなことであれば、これに対して修正するということにならざるを得ないと思います。
#46
○宮下政府委員 重ねてお尋ねがございまして、また御意見もございまして、前の私のお答があまりにもぶつきら棒であつたことをおわび申し上げますが、一新聞一回は最小限度でありまして、もし裁判所が適当と認める場合には、あるいは二回、三回と掲載することもあろうかと考えております。
#47
○中村(俊)委員 もう一度私手続の問題が氣になりますからお伺いいたしますが、一人だけが補償請求をしておる場合に、それが死んでしまつた場合に、どういう手続をすればいいのですか。その具体的な方法を知りたいのです。これは重大な問題ですから……。
#48
○宮下政府委員 数人の同順位者があります場合に、請求人が死亡した場合におきましては、他の者は裁判所に対して申し立てをしてもいいと思いますが、しかしながらこの手続は職権で手続を進めてまいりますが、裁判所で必要がありますれば、他の同順位者を呼び出しまして、その意見を聞いて手続をする、決定をするということになりまするから、民事訴訟のように必ずしも当事者主義ではございませんので、御心配の点はないと考えております。
#49
○佐藤(通)委員長代理 刑事補償法案に関して別に他に御質疑ございませんか。それでは次会に質疑していただくことにいたします。
    ―――――――――――――
#50
○佐藤(通)委員長代理 次に罰金等臨時措置法案、司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正する法律案、少年法を改正する法律等の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。政府より提案理由の説明を願います。
    ―――――――――――――
#51
○鍛冶政府委員 ただいま上程になりました罰金等臨時措置法案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 終戰以來の経済事情の変動、特に貨幣價値の低落は著しいものがあり、これに伴いまして裁判所の言い渡す罰金または科料の額もおのずから高めらるべきは自然の道理でありますが、御承知のごとく、一般的に罰金の最低額及び科料の最高額を定めた刑法総則の規定は改められておらず、また最近制定にかかる刑罰法規は別といたしまして、刑法その他古く制定せられた刑罰法規においては、その各本條に定められる罰金の多額が今日の物價より見て不自然に低いために、これらの法令の罪に対しましては、適切な罰金刑を言い渡すことが困難な実情にあるのでありまして、この点を是正し、法定の罰金、科料の額を適当な程度に引き上げることがこの法律案の目的とするところなのであります。
 ところでかような目的を達成するのには、各刑罰法規自体を改正して行く方法と、これとは別個の法律で一時その特例を設ける方法と二途考えられるわけでありますが、経済事情のいまだ十分に安定しない今日、ただちにこれらの法令、ことに基本法たる刑法などを改正することは、まだその時期でないと考えられますので、さしあたり後者の方法により、暫定的特例という形でこの法律を立案いたしたのであります。
 次にこの法律案の内容の要点を申し述べますと、まず第一に、現在罰金は二十円以上、科料は二十円未満となつておりますのを引き上げまして、その五十倍たる千円以上、千円未満ということにいたしました。物價だけの比較からすれば、この倍率でもなお少いように見えますけれども、罰金の性質上今回はこの程度の引上げで相当だろうと考えたのであります。次に各刑罰法規に定められた罰金の多額の引上げでありまして、これは本來すべての法令につきこれを行うことが望ましいのでありますが、短時日の間に立案しなければならなかつた関係上、とりあえず今回はその必要性の最も強いと思われる刑法及び外二法律についてだけその多額を五十倍に引き上げることとし、他の法規については次の機会に讓ることといたしました。ただこれらの法規中「五百円以下の罰金」「百円以下」というような規定だけは、この法律による新しい罰金体系と直接矛盾いたしますので、その限度においてこれを修正いたしてあります。なお條例の罰則につきましては、その性質上右の修正をこの法律で行うことなく、それぞれの條例自体にゆだねることとし、その手続のため六箇月の猶予期間を置くことにいたしました。このほか罰金額の引上げに伴いまして、執行猶予及び略式命令をなしうる限度、勾留、逮捕の制限に関する金額等をある程度高め、なおいわゆる未決勾留日数法定通算の折算額の引上げをも行つているのであります。
 以上この法律案についてその大要を申し述べたのにとどまるのでありまして、なお詳細につきましては御質問によりお答えいたしたいと存じます。なにとぞ愼重御審議の程を希望いたす次第であります。
 次にただいま上程に相なりました司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 皇宮護衞官は、警察法第十五條の規定に基く國家公安委員会規則第二号皇宮警察局設置規程により、皇宮警察局に置かれた職員でありまして、皇居、御所、離宮、御用邸、陵墓、皇室用財産及び國家公安委員会の指定する場所の警備並びに行幸啓の護衞に関する事務をつかさどるものでありますが、その職務の性質上、皇居、御所、離宮、御用邸、行在所もしくは御泊所における犯罪、陵墓もしくは皇室用財産に関する罪または行幸啓の際における天皇、皇后、皇太后及び皇太子の生命、身体または財産に対する罪につきまして、これに司法警察権を與え、この種の犯罪の搜査をさせることが適当と認められるのであります。しかし他面において皇宮護衞官は、現在総員数九百三十名でありまして、この種の犯罪の搜査をすべてみずから行うことは困難であり、当然他の司法警察職員もこの種の犯罪を搜査する必要があるのであります。そのために皇宮護衞官とその他の司法警察職員とは、その職務の執行につきまして互いに協力する必要がある次第であります。しかして皇宮護衞官と司法警察職員に指定いたしますことは、その職務の性質から見まして、なるべく早い方が適当と認められますので、とりあえず本案のごとく應急措置法の一法を改正することといたしたいのであります。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ愼重御審議の上すみやかに可決せられんことを望みます。
 次にただいま上程になりました少年法を改正する法律等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 すでに御承知の通り、少年法を改正する法律は第二國会を通過し、本年七月十五日法律第百六十八号をもつて公布され、明年一月一日から施行されることとなつているのでありますが、この改正少年法の規定によると、家庭裁判所は少年に対する保護処分の一種として、地方少年保護委員会の観察に付する処分をすることに相なつております。この処分がありました場合には、地方少年保護委員会はその処分の執行機関として観察の実行に当る趣旨であります。
 現行少年法においては、少年審判所が保護処分の決定とその執行を行うのでありますが、改正少年法においては、新憲法の趣旨にかんがみ、この決定と執行とを分離し、保護処分は家庭裁判所において決定し、その執行は裁判所以外の機関すなわち地方少年保護委員会において行うこととなつたのであります。改正少年法では、地方少年保護委員会という機関が他の法律によつて設置されるという予想のもとに、前述の趣旨の規定が設けられたのでありまするが、この地方少年保護委員会を設置する法律案は、諸般の事情によりいまだ國会に提出する運びに至つていないのであります。このように地方少年保護委員会が設置されていない状態のもとで改正少年法が施行されますためには、地方少年保護委員会の行う職権を行う機権を行う機関が必要なのであります。このような機関としては、從來の少年審判所をこれに充てることが最も適当であると思料されまするので、ただいま上程されました法律案においては、その第一條において、地方少年保護委員会が成立するまでの間、その代行機関としての権能のみを有せしめ、少年審判所を存置しまするとともに、從來の法律の規定のうち少年の仮出獄、仮退院及び観察に関する規定、仮出獄中または仮退院中の者及び観察中の者の監督に関する規定は、心要な限度において、なおその効力を有せしむることといたしたのであります。この應急措置によりまして、改正少年法の施行に支障なきを期することといたしたのであります。
 次に改正少年法と同時に第二國会を通過し、法律第百六十九号をもつて公布されました少年院法も改正少年法と同様に明年一月一日から施行されるのでありますが、この法律においては、少年院の收容者の処置に関連して、地方少年保護委員会及び地方成人保護委員会が予定されているのであります。しかるにこの二つの機関については、前に申し上げましたように、それを設置する法律案がいまだ提出の運びに至つておりませんので、この状態のもとで少年院法の施行に支障なきを期しまするため、ただいま上程された法律案の第二條において、これらの委員会の行う職権を暫定的に法務総裁が行うこととしたのであります。
 以上が改正の要旨であります。何とど愼重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望いたします。
#52
○佐藤(通)委員長代理 午前中の審議は以上で終りでありまして、午後一時半まで休憩いたします。
    午後零時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時十分開議
#53
○佐藤(通)委員長代理 それでは休憩前に引続きまして、司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正する法律案、少年法を改正する法律等の一部を改正する法律案、右二案を一括議題といたしまして審査を進めます。両案について御質疑はございませんか。
#54
○猪俣委員 司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。
 これは先般この法律が出まして、こういう特別な司法警察職員についての指定が行われるようになつたばかりでありまするが、またこういう皇宮護衞官についての法律案の改正ということがきびすを接して出て來たのであります。なぜ前会に一緒にこれをおやりにならなかつたのか。皇宮護衞官だけ特別にやらなければならなかつた事情があつたのか、はなはだ不ぞろいな感がある。同じことを何べんも次々に出すということは体裁もよくないと思います。どういうわけでこの案に皇宮護衞官を一緒に指定しなかつたのか、そこをお聞きしたいと思います。
#55
○野木政府委員 ただいまの御意見のように、先般御審議願つたばかりであるのに、またこのような第三條を追加することになりました点は、確かに不手際の感があるわけでありますが、実はこの皇宮護衞官を司法警察職員に指定することは、この司法警察職員等の指定に関する本格的法律案に盛つたところ、その本格的法律案の審議中にこの点が問題の一つとなつたわけでありますが、その後その問題が急速に解決いたしまして、いろいろな事情から、早速これを立案して國会の御審議を仰ぐような事情になつて來たわけであります。ちよつと速記やめてください。
#56
○佐藤(通)委員長代理 速記を始めてください。
#57
○猪俣委員 少年法を改正する法律等の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。これは少年審判所というように書きかえるというところがあるのでありますが、今度の少年法は審判という意味がほとんどないのであつて、審判という名前はなるべく残さぬ方がいいのじやないかと思うのであります。あるいは少年審判所と読みかえるというふうになつているのでありますが、これはあちら側のサゼッションにも、少年保護所というような名前になつておるというのでありますが、そういう名前を使つたらどうかと思います。どうして少年審判所という名前を使わなければならないのか、この点について伺います。
#58
○齋藤(三)政府委員 少年法が改正されまして、実施が一月一日からというので、それをどういうふうに支障なくやるかということについて、一番よいのは犯罪者予防更生法というものができておりますが、諸般の事情でそれが提出できないということが大体きまつたのが、非常に切迫した時期にきまりましたので、代行機関として何らかの機関を置きませんと、家庭裁判所が少年法四條によりまして、観察の処分をされましても、執行機関がない。少年院法の関係から、在院の少年たちが矯正されまして退院のできるようになりましても、退院の決定機関がないというので、何らかの代行機関を考えなければならないという事態に、きわめて最近追い込まれました。それに一番近いものとしては、從來その機能の一部としてさような機関を持つておりました少年審判所が、実質的に見ますと一番適当であるということで、これを読みかえたのであります。言葉の意味は、審判所というのは当らないと思いますが、審判所を改正する法律案をつくるいとまがありませんので、当分の間、犯罪者予防更生法ができるまで、少年審判所と読みかえておきたいと存じます。これは英訳いたしましても別に語弊はないのであります。かような事情で日本語といたしましては、いささかかつこうがおかしいのでございますが、やむを得ずさような次第になつたのであります。
#59
○佐藤(通)委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。
 それでは御質疑はないようでございますから、質疑はこの程度で打ち切りまして、討論に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。
#60
○佐藤(通)委員長代理 御異議なしと認めます。それでは討論に移ります。民主自由党の方から一つ……。
#61
○佐瀬委員 原案に賛成いたします。特に申し上げることもありませんが、運用については特に御注意願いたいと思います。
#62
○佐藤(通)委員長代理 それでは社会党の方にお願いいたします。
#63
○猪俣委員 原案賛成であります。
#64
○佐藤(通)委員長代理 討論は終局いたしました。これより両案につきまして採決をいたします。
 両案は原案のごとく決するに御異議はありませんか。
#65
○佐藤(通)委員長代理 御異議なしと認めます。よつて両案は全会一致をもつて、原案通り可決いたされました。
 なお本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
#66
○佐藤(通)委員長代理 御異議なしと認め、さようとりはからうことにいたします。
    ―――――――――――――
#67
○佐藤(通)委員長代理 続いて罰金等臨時措置法案に対する質疑を行います。
#68
○猪俣委員 罰金を五十倍に引上げるということでありますが、これを五十倍となされたことにつきましては、何か根拠があるのですか、その辺をお聞きしたいと思います。
#69
○野木政府委員 罰金の額を経済事情に伴つて何とかしなければならぬということは、おもに刑法その他古い法律に関連して問題が起つて來たわけでありますが、はたして何倍くらいが適当であるかということにつきましては、いろいろ議論がありまして、ある者は二十倍、三十倍、あるいは五十倍、あるいは百倍近くにしてもいいじやないかという議論がありましたが、結局五十倍にいたしましたのは、刑法制定当時と、今日の物價の事情や國民所得の関係、その他生計費等、いろいろの事情をしんしやくいたしまして、一應五十倍といたしたわけであります。物價その他から考えますと、五十倍ばかりでなく、もつと上げなければならぬように考えますが、一度にそうたくさん上げるのはいかがかと思われるので、まあ大体五十倍見当が一番妥当ではないかということに落ちついたわけであります。
#70
○猪俣委員 今の政府委員の御説明を聞きますと、どうもはつきりした根拠があるわけでもないと思うのであります。これはほかの税金等と違いまして刑罰なのでありますから、これを引上げるということについては、刑罰として引上げるという観点から審議いたさなければならぬと思います。一般の公定價格を引上げるような意味で、物價とのスライドという意味で罰金を引上げるという安易な考え方ではいけないと思います。刑罰でありまするから、ただ漠然と、物價が上つているからまず五十倍くらいというようなことで、しかも会期も切迫しております今日、突如としてこれを提案されて議決されようということは、はなはだ議員といたしましても、その職責を十分盡せないようなうらみもあるのであります。ただ刑法等におきましての金額が時代の一般経済事情とバランスを失つておることは事実でありますが、これをどの程度にするかということにつきましては、今少しく合理的な、科学的な根拠が欲しかつたと思うのであります。ただし私どももしいてこれに反対するだけの氣持もありませんが、これをどうしても当局が急いで議決して欲しいという御希望ならば、しいて反対はいたしませんが、もう少し合理的な御説明が受けられるだけの材料が欲しいと思つておりますけれども、ただいまのところ漠然たる根拠のような御説明でありますので、その点いささか遺憾であるということを申し上げておきます。しいて反対はいたしません。私の質疑はこれで終ります。
#71
○樋貝委員 この施行は二月一日になつておりますが、どういうわけですか。
#72
○野木政府委員 この法律はいわば実態規定に属するものでありまして、國民の権利にも重大な関係がありますので、一定の予告期間を與えた方がいいじやないかという意味で、一箇月の予告期間を與える意味で、二月一日といたしました。
#73
○樋貝委員 今は十二月に入つたばかりですが、二月一日ということでは長過ぎやしませんか。また附則の二項以下で現在のものは処理できるから、そうすれば今日の物價に比較すると五十倍は安過ぎるのじやないですか。
#74
○野木政府委員 実はこの法案は第三回國会に出したいつもりで、ほとんど準備ができておつたのでありましたが、そのとき大体昭和二十四年一月一日から施行するというようにしておつたのであります。第三回國会に間に合わず、第四回國会になりましたので、やはり先ほど申し上げたような理由で、國民に周知徹底させてから施行する方が適当だろうというので、一箇月ずらしたという関係であります。やはり刑罰規定であり、しかもいろいろの罰則に関連を持つものでありますので、この程度の予告期間を置いた方が國民のためによいのではないかと存ずる次第であります。
#75
○佐藤(通)委員長代理 政府にお聞きしますが、この法案に対しては、あらためてさらに逐條的な説明をなさる御意向があるのですか。
#76
○野木政府委員 御審議を多少でも円滑にできればと思いまして、一應逐條の説明をしたいと心がけておりましたが、これは委員会の御意向によつて決したいと思います。
#77
○佐藤(通)委員長代理 お諮りいたしますが、ただいま政府から御答弁もありましたが、これに対して本法に対する逐條の説明は、委員会の意向もあるから省略したいという申出がありましたが、それでよろしゆうございますか。
#78
○佐藤(通)委員長代理 それではそういうふうにとりはからいます。
 それでは罰金等臨時措置法案に対する質疑はまだ多々あるかと思いますが、きようは時間の都合もありまするので、質疑は次会の委員会において続行することといたしまして、本日はこれにて散会をいたしたいと思いますが、御異議はありませんか。
#79
○佐藤(通)委員長代理 それではこれにて散会いたします。
    午後二時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
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