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1948/12/12 第4回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第004回国会 法務委員会 第4号
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1948/12/12 第4回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第004回国会 法務委員会 第4号

#1
第004回国会 法務委員会 第4号
昭和二十三年十二月十二日(日曜日)
    午後零時四十分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 佐藤 通吉君 理事 猪俣 浩三君
      岡井藤志郎君    花村 四郎君
      樋貝 詮三君    松木  宏君
      池谷 信一君    石井 繁丸君
      石川金次郎君    榊原 千代君
      安田 幹太君    酒井 俊雄君
 出席國務大臣
        國 務 大 臣 殖田 俊吉君
 出席政府委員
        法務政務次官  鍛冶 良作君
        檢 務 長 官 木内 曽益君
        法務廳事務官  野木 新一君
        法務廳事務官  岡咲 恕一君
        法務行政長官  佐藤 藤佐君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        次長      五鬼上堅磐君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
十二月十二日
 刑事訴訟法施行法案(内閣提出第九号)(参議
 院送付)
 裁判所法の一部を改正する等の法律案(内閣提
 出第一〇号)(参議院送付)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 刑事訴訟法施行法案(内閣提出第九号)(参議
 院送付)
 裁判所法の一部を改正する等の法律案(内閣提
 出第一〇号)(参議院送付)
 罰金等臨時措置法案(内閣提出第一七号)
 裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第二二号)
    ―――――――――――――
    〔筆記〕
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から提案理由の御説明をお願いいたします。殖田國務大臣。
#3
○殖田國務大臣 ただいま議題となりました裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 先に民事訴訟法及び刑事訴訟法の改正が行われました結果、裁判所の訴訟事件処理につきまして公判中心主義が徹底強化せられ、また少年法及び裁判所法等の改正によりまして、新たに家庭裁判所が設置せられることになりました関係上、裁判所の事務は、質量ともに著しく増大し、かつ繁雜化することが予想せられるのであります。この法律案は、右に伴う裁判所職員の増員に必要なる改正を行わんとするものであります。以下増員の内容について大略御説明を申し上げます。
 まず第一は、刑事訴訟法の改正に伴う職員の増員でありますが、この関係におきましては、判事三十二人、簡易裁判所判事三十人、裁判所書記たる二級の裁判所事務官六十六人、同じく三級の裁判所事務官二百七十四人、最高裁判所事務局刑事部に勤する二級の裁判所事務官一人及び同じく三級の裁判所事務官三人が増員せられることになります。
 第二は、民事訴訟法の改正に伴う職員の増員でありますが、この関係におきましては、判事二十五人、簡易裁判所判事十八人、裁判所書記たる二級の裁判所事務官三十六人、同じく三級の裁判所事務官百三十七人が増員せられることになります。
 最後に第三は、家庭裁判所の新設に伴う職員の増員でありまして、この関係におきましては、家庭裁判所が少年法に定める事務を取り扱うための判事三十三人、判事補十八人、少年保護司たる二級の裁判所事務官百六十六人、裁判所書記たる二級の裁判所事務官四十九人、同じく三級の裁判所事務官二百十五人、三級の廷吏二十五人、家庭裁判所事務局に勤務する二級の裁判所事務官四十九人、同じく三級の裁判所事務官二百十五人、最高裁判所事務局に新設せられる家庭部に勤務する一級の裁判所事務官一人、同じく二級の裁判所事務官十三人、同じく三級の裁判所事務官二十人の外、家庭裁判所新営工事のために必要な二級の技官二十六人が増員せられることになり、なお、その外に営繕関係の事務を掌るため最高裁判所事務局に三級の裁判所事務官三人、二級の技官四人及び三級の技官十二人が増員せられることになるのであります。
 以上申し述べました数字の総計を申し上げますと、判事において九十人、判事補において十八人、簡易裁判所判事において四十八人、裁判所事務官において、一級の者一人、二級の者三百八十人、三級の者千三十三人、技官において、二級の者三十人、三級の者十二人、三級の廷吏において二十五人が、それぞれ増員となる訳でありまして、右は、新法律施行のために本予算年度内においてさしあたり必要な最小限度の増員であります。
 何卒愼重御審議の上すみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
#4
○高橋委員長 本案について御質疑ございませんか。
#5
○佐藤(通)委員 裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案に対して、提案理由を今総裁からお聞きしたのでありますが、全般的に相当な定員の増加であることは否むことのできない事実であると思うのであります。これは法律の改正に基いて当然要求せられる定員であるといえば、それまでではありますけれども、國家財政の面とも多少関連を持つておりますので、でき得るならば最小限度の定員の線で食いとめるということは、私どもとしては好ましいことと考えるのであります。それでこの表に上げられておりまするところの定員が、絶対的に増加しなければならない定員であるかどうか。場所々々によりますと、ほとんど仕事がなくて、これは語弊がありますけれども、あまり仕事の量といたしましても、終日執務しなければならないほどの量もなくて、相当閑職の所もあるようでありますが、そういうところは場所々々によつて臨時の措置を講じて、兼務の方法をお考えになつて、ここにあげられた定員を幾らか少なくするという方策を、お考えになつていいと思います。総裁の御説明によりますと、最小限度の定員の増加という御趣旨のようでございますが、最小限度ということは、さらに何らかの機会に増員することも考えられるという、伏線のある言葉と考えられるのでありますが、この二つの点について、御答弁を願いたいと思います。
#6
○岡咲政府委員 ただいま佐藤委員からきわめて適切な御質疑がございましたのですが、それに対して政府委員としてお答え申し上げます。裁判所事務局の説明を承りますと、このたびの定員は最小限度の必要を満たすためのやむを得ない定員の増加だそうでございまして、その点はさよう御了承願いたいと存じます。
 なお將來の増員の必要があるかどうかというお尋ねでございまするが、少なくとも今年度におきましてはこの定員で十分でございまして、今年度内に増員する考えは最高裁判所にはないように承つております。將來の問題になりますとこれは例えば少年法の実施、あるいは家庭裁判所の新設、刑事訴訟法、民事訴訟法の改正規定の実施という問題は、いずれも画期的な改正でございまして、一應の目安をつけまして、裁判所といたしましては発足いたすわけでございますが、運用の実施と予想とが多少食い違う場合にも、これは十分あり得ることでございますので、將來は絶対に定員の増加をお願いするようなことはないということをここで確言することは困難ではないかと思います。あるいは実施の面におきまして、どうしても不自由であつて、新法の精神に徹せられないということであれば、これはやむを得ないこととして定員の増員をお願いいたさなければならないと考えます。しかし近い將來において、ただちに定員の増員をお願いするということは、少なくとも裁判官についてそういうことをお願いするということは、近い將來においてはないと考えております。なおこまかい点につきましては、裁判所の説明員にお願いいたしたいと思います。
#7
○佐藤(通)委員 大体私に対する答弁は了承しましたが、これに関連してもう一言お尋ねしてみたいと思うのであります。どこの官廳におきましても、定員と実員との開きが相当にございますように考えております。私もかつて官廳に奉職しておつた経驗もございますので、多少そういう点については疑惑を持つておるのであります。この裁判所の今回の増加定員についても、これは純然たる定員としてお考えになつておるのであるか、あるいは定員すなわち充足する実員という立場から増員されたものであるかどうかをお尋ねしたいと思います。
#8
○岡咲政府委員 このたびの定員の増加は、もとより形式上増すものではございませんので、なるべくこれだけの定員は補充を得まして、実際必要な実員として増員したいと、こういうように裁判所は考えておられるようであります。ただ判事の補充につきましては從前も非常に困難を感じておられるところでありまして、年度内に必ずこれだけの増員が全部補充し得るかという見通しになりますと、これは相当困難を伴うと考えますので、裁判所におかれましては十分努力せられまして、必ずそれを実員で埋める決心でいられるように承つております。
#9
○佐藤(通)委員 わかりました。
#10
○酒井委員 一点お尋ねをいたします。從來裁判所におきましては、私ども常に出入りをしておりまして、非常に職員が不足で、見ておつてもまことにお氣の毒な状態であるとともに、私どもが弁護の仕事に当りますにも、判事が足りなかつたりいろいろする関係上、十分迷惑に存じておつた次第であります。そこで予算の面が許すならば、こうした不便を一掃するために、相当人員をふやされることが当然だと思います。むしろこの際少しぐらいふやしましても、すぐ実務の上に不便を感じます。労働基準法はございましても、裁判官は時間を超越してやつておられるあの状態を知つたならば、遠慮すべきでないと私は思います。そうした意味から、むしろ今の質問とは反対に、実際に間に合うかどうかということと、財政方面の当局とは了解済みかどうかという二点をお尋ねいたします。
#11
○五鬼上説明員 たいへん御理解ある御質問と承りました。実際この法案に盛られておる定員の要求は、予算とにらみ合せての大藏省との折衝した結果の定員でありまして、これで決して十分とは申されませんが、現状の國家財政から考えまして、ただいまはこの点でいたしまして、他に定員の増と申しましても新しい檢察審査会、家庭裁判所というものが新たにできたということで、どうしてもこれだけの定員は必要なのではないかと思います。なお現在の実員は非常に少ないのでありますが、事務官、書記等については、現在の定員でほとんで充実しておりまして、これ以上増すことはできないのでありますが、ただ判事につきましては、判事、判事補の資格の問題その他がありまして、結局前國会において判事の待遇についていろいろ御考慮をわずらわしたのでありますが、やはり待遇問題と関連いたしまして、どうしてもただちにこれだけの実員を充実するかどうかということも、多少考えられますが、事務官につきましては、これだけの人員ではおつしやるように事務に忙殺されるだろうと思います。
#12
○酒井委員 希望として、將來司法当局は全力をあげて職員の充実をはかつていただきたいと思います。
#13
○高橋委員長 本案に対して御質疑はありませんか。
 それでは質疑もありませんようですから質疑はこれにて打ち切り、続いて討論に移りたいと存じますが御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○高橋委員長 御異議なしと認めます。
 それでは討論に移ります。
#15
○松木委員 裁判所職員が今日不足しておるということは顯著な事実であります。原案は適切な案であると思いますので、民自党を代表いたしまして原案に賛成いたします。
#16
○猪俣委員 社会党を代表いたしまして原案に賛成いたします。
#17
○安田委員 民主党といたしましては、原案の説明を承りまして至極もつともだと思いますので、賛成の意を表します。
#18
○酒井委員 國民協同党を代表いたしまして原案に賛成をいたします。なお先ほど質問のときにも申し述べましたが、これは新たに新設される部局に対する定員の増加に関するものと思いまするが、旧來の部属におきましても、非常に裁判所は手不足で、人員が足りないので、將來はその充実をはかられんことを希望いたしておきます。
#19
○高橋委員長 討論は終局いたしました。これより採決いたします。
 本案は原案のごとく決するに賛成の諸君はお起立を願います。
    〔総員起立〕
#20
○高橋委員長 起立総員、よつて本案は全会一致をもつて原案通り可決せられました。なお本案に関する委員会報告書の作成については委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○高橋委員長 御異議なしと認めてさようにとりはからいます。
    ―――――――――――――
#22
○高橋委員長 続いて刑事訴訟法施行法案を議題とし審査を進めます。
 本案について御質疑はありませんか。御質疑はないようであります。それでは御質疑も盡きたようでございますから、質疑はこの程度で打ち切り、討論に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○高橋委員長 異議なしと認めます。
 それでは討論に移ります。この際委員長の手元に安田幹太君提出の修正案が提出されております。これを朗読いたします。
  刑事訴訟法施行法案修正案
   刑事訴訟法施行法案の一部を次のように修正する。
  第二條中「公訴の提起があつた」を「第一審における第一回の公判期日が開かれた」に改める。
  第四條中「公訴が提起されていない」を「第一審における第一回の公判期日が開かれていない」に改める。
  第八條を第十四條とし以下第十七條までを六條ずつ順次繰り下げる。
  第七條の次に次の六條を加える。
 第八條 第四條の事件で新法施行前に公訴の提起があつたものについては、時効は、新法施行の時からその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。但し、新法第二百七十一條第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたときは、この限りでない。
 2 共犯の一人に対する前項の規定による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
 3 第一項の事件で犯人が國外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達ができなかつた場合には、時効は、新法施行の時から國外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
 第九條 前條第一項の事件について、新法施行の際すでに新法第二百五十六條第六項の規定の趣旨に反する書類その他の物が裁判所に提出されているときは、裁判所は、速やかにこれをその提出者に返還しなければならない。
 2 前項の事件について、起訴状が新法第二百五十六條第二項から第四項まで及び第六項の規定の趣旨に反するときは、檢察官は、速やかにその趣旨に從つてこれを訂正しなければならない。
 3 第一項の事件については、新法第二百七十一條及び第二百七十二條中「公訴の提起があつたときは、」とあるのは「新法施行後」と、「公訴の提起があつた日から二箇月以内」とあるのは「新法施行の日から三箇月以内」と読み替えるものとする。
 第十條 第八條第一項の事件については、旧法第三百五十六條の規定は新法施行後も、なおその効力を有する。
 第十一條 第八條第一項の事件で新法施行前に告訴又は請求の取消があつたものについては、旧法第三百六十四條第五号の規定は新法施行後もなおその効力を有する。
 第十二條 第八條第一項の事件で新法施行前に公訴の取消があつたものについては、新法第三百四十條の規定は、適用しない。この場合には旧法第三百六十四條第三号の規定は、新法施行後も、なおその効力を有する。
 第十三條 新法施行前に略式命令の請求があつた事件の略式手続については、新法施行後も、なお旧法による。
 なお本修正案について提案者より提案理由の説明をお願いします。
#24
○酒井委員 ちよつと緊急動議。実はこの点につきましてなお愼重に考慮したい面がございますので、しばらく採決その他を御延期願いたいと思います。
#25
○高橋委員長 それでは暫時休憩いたします。酒井さんももう一ぺん研究していただいて再開のときにお願いいたします。
    午後一時三十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時四十二分開議
#26
○松木委員長代理 それでは休憩前に引続きまして、会議を開きます。
 刑事訴訟法施行法案を議題といたします。
 修正案について提案者より提案理由の御説明をお願いします。
#27
○安田委員 ただいま私から提案いたしました本法案に対する修正案の内容を御説明申し上げ、その理由を申し述べたいと思います。
 本修正案の内容は、先ほど御朗読に相なりましたところで明らかなように、これを要約いたしますと、新旧両法を適用する事件を何によつてわかつたかという点につきまして、政府の原案がこれを公訴の提起によつてわかとうといたしまするに対しまして、私はこれを修正して、今年中に公判期日が開かれるか否かによつて分類すべきであると考えまして、その趣旨を目的といたすものでございます。これに付随して幾多の條項の修正を目的といたしておるものでございます。政府の御提案になりました原案は、先の國会におきまして政府から御提出になりました本法案を、本國会が修正をいたしまして、その修正案を原案として採用いたしたものでありまして、私の本修正案は、また元の政府旧原案に復帰しようとすることになるのであります。先の國会におきまして、政府の旧原案を國会が修正をいたしました場合におきまして、私ども民主党におきましては、その修正の趣旨が十分に徹底を欠いておつたがために、これに同意いたしたのでございますが、その後本法案の提出を待ちまして愼重に檢討をいたしました結果、私どもといたしましては、これを旧原案に復帰せしめなければならないということを考えるに至つた次第であります。私どもは一度國会が修正しました案を、行きがかり上維持しなければならないということも考えなければならないのでありますが、私どもは面子にこだわることなく、改むべきものはこれを改めなければならない。ことにそれが人民の利益に重大な利益を持つ場合におきまして、國会の面子のゆえにこれを行わないということは間違つたことであると考えて、かような修正案をあえて提出をいたした次第でございます。御承知のように旧刑事訴訟法におきましては、司法警察官、檢察官の尋問調書が証拠として採用せられ、これらの書類が起訴状とともに裁判所に送られ、裁判所はこれをあらかじめ審査いたしまして公判に臨む制度になつております。この旧制度が今日まで被告人に対していかなる不利益を及ぼしたかということは、私が改めて申すまでもなく十分に國民周知の事実でございまして、これが新刑事訴訟法によつて改められまして、司法警察官、檢察官の威力を用いた調書が証拠として採用されるためには、嚴重な條件が付せられ、裁判所はかような書類をあらかじめ閲覽して予断を懐いてはならないことにしましたことは、まことに進歩的な制度でありまして、私どもはこの法案が施行せられることによりまして、被告人の利益はまことに重く保護せられるものであるとして喜んでおる次第であります。從つてこの法案を一日も早く、一人でも多くの人に適用して、その恩惠に浴さしめなければならないと考える次第であります。
 ところで原案のごとく、新法の適用する事件の範囲を、今年中に起訴せられた者に及ぼさしめないということにいたしますならば、私の修正案のように今年中に公判期日が開かれたものだけはやむを得ないが、今年中に起訴せられたものであつても、公判の開かれない者には、新法を適用するということにいたしますのとの二つの差では、新法の利益に浴することのできる被告人は一万五千人、あるいはそれ以上に達するのであろうと私は考えるのであります。かように一万五千人以上に上る多数の被告が新法の恩惠に浴するか、あるいは浴しないかということは、私ども國会議員としてまことに重大な事柄として、愼重に考えなければならないことでありまして、新法制度の趣旨に從いますならば、あらゆる犠牲を拂つても、これらの人々にできるだけ新法の恩惠を與えなければならぬと考える次第であります。政府の修正案に対しても御意見は、修正案を採用いたしますと、新法の適用を受ける事件があまりに多くなる。人員と費用とがとうてい伴わないと、かような御説明でありましたが、この人員、費用の点につきましては、先ほど可決いたしました法案によりまして、もはや十分となつたと考える次第でございます。また新法を適用する事件が急激に増加しては、混乱が生じてまことに手数が煩雜になつて困るという御意見でございました。私はこの一万五千件の事件につきまして、檢察廳が一般裁判所に提出しました記録をとりもどして、起訴状を書き直すという手間は、きわめてわずかなものであろうと考える次第であります。またその他準備ができないということを申して、政府の方々はこの修正案に同意できないと申されておりますが、これはまことに遺憾にたえない次第であると思います。新刑事訴訟法が來年の一月一日から施行せられなければならないということは、早くからわかつておつたところであります。それを今日に至つて準備ができないと申されることは、私どもとしてまことに受け取れません事柄でありまして、準備ができないということは、むしろ今日まで準備を怠つておつたのであると考えざるを得ないのであります。すなわち裁判所、檢察廳におきましては、保守的氣分が強くて、古くから手がけた裁判制度を一日でも長く温存したいという氣持が働いて、でき得るならばこの新法の適用を延したいという保守的な氣分が、故意に新法の適用をサボタージユしたとしか私には考えられないのであります。いやしくも人民の権利の保護ということを強調いたします國会議員といたしましては、かような保守的サボを排斥いたしまして、この際できるだけ、廣く新法を適用するという、本修正案に賛成をしていただくべきであろうと考えるのであります。かような意味におきまして、私は社会党の進歩的な考えを持たれた方々が、この私の修正案に対して、賛成の意見を特にお持ちになるべきではなかろうかということを私は考える次第であります。またさらに政府原案のごとく、新法と旧法との適用を公訴提起の時期によつてわかつといたしますと、運用上にもきわめて不都合な事件が起ると私は考えるのであります。今日の檢察の実状におきましては、小さな枝葉末節の事件を捕えて先ず起訴いたしまして、その事件について勾留いたしまして、その勾留期間を利用して他の犯罪を捜査をして、これを追起訴するというのは、御承知のごとく檢察の慣習でありまして、かような事柄が多数行われております。かような事件につきましては、枝葉末節における頭の事件だけは今年中に起訴せられ、主たる事件は來年に至つて追起訴せられ、從つてこの二つの事件が一つは旧法によつて、一つは新法によつて裁判をせられるというような結果が出て参ります。もし二つの事件を同一の裁判手続で併合して審理いたしますれば、被告人に対しましては併合罪の規定で一つの刑が言いわたされるのでありますが、これが併合ができないと、新法、旧法の刑事訴訟法に分離して裁判を受ける結果、二つの刑が言いわたされるという結果になります。これは被告にとつて非常に不利益な次第となるのであります。さらに同一の事件について、同じような関係にある被告が多数ある事件についてみますと、最初に捜査に着手せられ、最初に起訴せられた人は新刑訴の恩惠に浴することができない。後で起訴せられた被告が、新刑訴によつて裁判を受けるという不公平な結果が生じます。さらにその不公平な結果は裁判の上で表われて、旧刑訴によつて裁判を受けた人は有罪となり、新刑訴によつて裁判を受けた人は、新刑事訴訟法の嚴密な証拠に関する制限の規定によつて、無罪の裁判を受けるというような事態も生ずるのではなかろうかと考える次第であります。かような技術的な不都合という面から見ましても、私はこの法案に対しましては、私の主張するような修正案でなければならないと、かように考える次第であります。
 何とぞ諸君の御賛成を願いたいと思います。
 以上民主党を代表いたしまして、修正案の提案理由を御説明いたしました。
#28
○松木委員長代理 別段御質疑ございませんければ討論に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○松木委員長代理 御異議はないと認めまして、原案及び安田君の修正案を一括して討論に付します。
#30
○岡井委員 民主自由党を代表いたしまして政府原案に賛成し、修正案に反対いたします。安田君御所存のような欠点もございましようが、政府当局の御苦心の点も考えまして、要は旧法といえども無罪を有罪にするためのものではありません。新法もいたずらに有罪なる者を免れしめる法律ではないと思います。ただ刑事裁判におきましては、人権擁護こそ願わしいものでありまして、これを一度誤れば、麗々しい判決も三文の價値もないのであります。これは從來の司法部がはなはだ認識薄きところであつたように思います。この点深く御了解くださいまして、要は運用を全たからしめるようにお願い申したいのでございます。
#31
○猪俣委員 私も安田修正案には反対いたします。その理由は、われわれは理想を追求しながら現実を省みて、新しい刑事訴訟法を決定したのでありまするから、これは現行法よりもよりいいものであるといたしまして賛成いたしたものでありまするから、その実行の一日も早からんことをこいねごうことは安田氏に讓るものではないのであります。しかしながら、この現実を凝視せずして、ただ理想を追いますと、この現実が理想を反撃いたしまして、理想がくずれるということは、われわれの生活体驗から明らかなことであります。この刑事訴訟法はいいものではありますけれども、一月一日からの実施につきましては、偽らざるところ、裁判所においても檢察当局においても、初めから御自信がなかつたということは言い得ると思います。われわれもいわゆる当事者訴訟主義をとつておりまして、名目のみ美しくして実が伴わないことになりましてはいけませんので、弁護士の実務についている人々の意見を徴しましたが、やはり実施につきましては一應の疑念を持つているのであります。そこでかような現実の認識から出発いたしまして、この施行法につきましてはわれわれは論議をしたのでありまして、四月一日まで延ばしてもらいたいという意向があつたのでありまするが、その筋との折衝によりまして不可能であるということに相なり、ようやくにして公訴の提起という線でこれを食い止めたというのが現実でありまして、実はこの施行法につきましては、公判期日をもつてするか、訴訟の提起をもつてするかということが中心課題でありまして、熱心なる討論がこの委員会で継続せられ、なおその筋にも熱心に働きかけまして、いろいろな事情を勘考いたしまして、最後に公訴の提起をもつてするということに結着したのであります。今これが改めて安田委員によつて提出せられましたが、安田委員は委員会開会中かような御意見はなかつた。民主党を代表されまして、中村俊夫君もわれわれの意見に同調せられ、これを決定したのであります。今突如として民主党に反対があるからということでこの提案をされたということは、私どもとしては時機遅しの感あるのみならず、実際問題としてもむりがある。これをむりに通しましても、ただ形のみ美しくして実がそれに伴わないということで、かえつて人権保護に欠くるところが起るのじやないかという、われわれの老婆心もあるのであります。こいねがわくば安田委員もこの点を了とせられ、社会党は進歩的政党であるからして、これに率先賛成せられることを求められましたが、進歩的政党はまた決して現実を忘れる政党ではなく、大地に足を踏みしめて進むべき政党であるという意味におきまして、実際その衝に当られる弁護士及び裁判所、檢察廳のざつくばらんなる実状をお聞きした上で、最後のわれわれの線としてここまでとどまつたのであります。この意味におきまして、私は原案に賛成いたしまして、安田修正案には反対であります。
#32
○安田委員 私は民主党を代表いたしまして本修正案に賛成し原案に反対の意見を持つものでございます。ただいま現実と理想とが違う、現実の状態は修正案のようなことでは不都合を生ずると御主張になりましたが、私も実務に関係を持つ者といたしまして十分に考えました結果、この修正案はやろうとすればできる案だと考えて提出をいたしたのでありまして、ただ單に現実を無視して理想のみをもつて提出し、あるいは私の理想を宣傳せんがために提出した修正案ではないのでございます。要するに実行しようと思えば私は実行可能であると、かように考えて提出をいたした次第であります。弁護士のほとんど全部がこの修正案ではやつて行けないという御意見であるという反対理由でございますが、私も多数の弁護士の人々が、新法の施行が一日もおそからんことを希望いたしておりますことは承知いたしておりますが、これは私は今日の弁護士としてまことに不都合な考え方であると思います。すなわち新刑事訴訟法によりますれば、弁護士の活動の範囲が非常に多いので負担が重くなります。從つて安易を貧る弁護士として、一日でも新法の適用のおそいことを希望いたす風潮が充満いたしておりますが、私はかような弁護士の考え方には賛成ができないのであります。弁護士が新法に基いて、許された防禦権を全面的に活用する時期が、一日も早く來たらんことを念願するような弁護士であつて欲しいと、私は考える次第であります。かような意味におきまして、私は修正案に賛成をいたし、原案に反対をいたすものであります。
#33
○酒井委員 私は國民協同党を代表いたしまして、政府原案に賛成をし修正案に反対をいたします。ただいま民主党の代表者から、現在の弁護士が怠慢で職務権限の範囲が拡張せられ、それが煩わしいからというようなことを言われたが、私はこれは大いに当らないものと思います。在野法曹におきましては、新刑事訴訟法の運用を大いに期待し、自分たちの職務権限の範囲を拡張されたことについて、むしろ大なる喜びを持つておるものと思います。しかしこれは修正案の賛否の論拠ではありませんが、私の意見を申し述べた次第であります。さて政府原案に賛成いたしまするが、ただ運用につきましては、將來この局に当る者は大いに留意しなければならないものであると思うものでございます。現行刑事訴訟法の運用に当りましても、法規の表面からすれば、人権も擁護されておりますから、りつぱな運用をするならば、なおなお優秀の成績を上げることができるものと思います。一例を申しまするならば、勾留の問題にいたしましても、條文の規定から見て勾留の理由のない者を勾留し、保釈の願いを出しましても、何ら証拠を隠滅し、逃亡するおそれがないというような、勾留の理由のない者に保釈も許さないというように、運用を誤る点に、大いに法の精神を失う部面があると思います。人権擁護の立場を十分盛り上げた新刑事訴訟法の運用に当りましては、かかる運用の実を十分発揮しなければならないという希望を述べて、原案に賛成いたします。
#34
○松木委員長代理 討論は終局いたしました。それでは安田君提出の修正案及び原案について採決をいたします。
 まず安田君提出の修正案について採決をいたします。安田君修正案のごとく修正するに賛成の諸君の御起立をお願いします。
    〔起立起立〕
#35
○松木委員長代理 起立少数、よつて安田君提出の修正案は否決されました。
 次に原案について採決いたします。
 本案を原案の通り決するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#36
○松木委員長代理 起立総員、よつて本案は全会一致をもつて政府原案の通り可決せられました。
 なお本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○松木委員長代理 御異議なしと認めましてさようとりはからいます。
    ―――――――――――――
#38
○松木委員長代理 次に裁判所法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
 本案につきましては参議院において若干修正を加えられております。これについて政府より説明願います。
    ―――――――――――――
#39
○岡咲政府委員 参議院におきまして裁判所法の一部を改正する等の法律案政府提案の原案に対する修正案が提出せられ、これが可決せられました。その内容について概要を御説明申し上げます。
 修正の個所は二つございます。第一点は裁判所図書館に関する修正でございまして、政府原案におきましては、最高裁判所に設置せられる図書館なるものが、法文の上で國立國会図書館の支部であるという性格を明らかにしてありませんので、これを法文上に明らかにする趣旨の修正でございます。
 第二点は滿洲國在職官吏のある特定の者につきまして、その年数を通算する趣旨の判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する等の修正でございますが、原案によりますと、「裁判所構成法による司法官試補たる資格を有し、滿洲國の学習法官、高等官試補又は前條に掲げる滿洲國の各職の在職年数が通算して三年以上になる者については、その三年に達したときに裁判所構成法による判事又は檢事たる資格を得たものとみなし。」という趣旨がありますが、この三年が長きに失するということで、これを二年に修正するというのでございます。これは内地におきまする司法官試補あるいは修習生の在職年数と対比いたしまして、三年は長きに失するので、これを二年に改められたいという趣旨で修正になつたわけであります。簡單でございますがこれをもつて修正文の説明を終ります。
#40
○松木委員長代理 本案について何か御質疑なり御意見ございませんか。
 それでは別に御質疑もないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたします。
#41
○榊原(千)委員 本案については、討論を省略しただちに採決せられんことを望みます。
#42
○松木委員長代理 ただいまの榊原君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#43
○松木委員長代理 御異議なしと認めます。
 それでは裁判所法の一部を改正する等の法律案について採決をいたします。
 本案は参議院送付のごとく決するに賛成の諸君の起立を願います。
    〔総員起立〕
#44
○松木委員長代理 起立総員、よつて本案は全会一致参議院送付のごとく決しました。
 なお本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○松木委員長代理 御異議なしと認めましてさようとりはからいます。
    ―――――――――――――
#46
○松木委員長代理 次に罰金等臨時措置法案を議題に供します。
 本案について御質問ありませんか。御質問がなければ質疑を終局いたしまして討論に移りたいと思います。
#47
○榊原(千)委員 討論は省略いたしましてただちに採決に入られんことを希望いたします。
#48
○松木委員長代理 ただいまの榊原君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○松木委員長代理 御異議なしと認めます。よつて討論は省略してただちに採決に入ります。
 罰金等臨時措置法案は政府の原案の通りに決するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#50
○松木委員長代理 起立総員、よつて本案は全会一致原案の通り決しました。
 なお委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○松木委員長代理 御異議なしと認めさようにとりはからいます。
 それでは暫時休憩いたします。
    午後六時二十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後十時三十分開議
#52
○高橋委員長 休憩前に引続きまして再開いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後十時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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