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1959/06/26 第32回国会 参議院 参議院会議録情報 第032回国会 本会議 第4号
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1959/06/26 第32回国会 参議院

参議院会議録情報 第032回国会 本会議 第4号

#1
第032回国会 本会議 第4号
昭和三十四年六月二十六日(金曜日)
   午前十時二十五分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四号
  昭和三十四年六月二十六日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 第二 常任委員の選任
 第三 常任委員長の選挙
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#4
○曾祢益君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日、本院において行われました総理の所信表明に関連いたしまして、この際、特にわが国最大の案件であります日米安保改定に焦点を合せて質問を試みたいと存じます。
 私は、もとより安保条約そのものに反対し、その解消を求めるとともに、アジアにおいて相対立する軍事ブロックの解消、日中米ソを中心とする四カ国集団安全保障条約を実現すべしとする、日本社会党の自主独立、積極中立の基本的立場に立つものでありますが、今や岸内閣によって安保改定が強行されようとする国家民族存亡の岐路に当りまして、私はここで、安保改定に反対する立場ばかりでなく、少くとも政府の意図する改定の内容について多くの危惧を抱くすべての良識ある国民の意見を代表するという確信のもとに、ただ単に論争に走らないで、冷静かつ具体的に、以下数点にわたって質問をいたしたいと存じます。つきましては、総理初め関係閣僚においても、誠実に、かつ国会を通じて国民に信念を吐露する心がまえをもってお答えを願いたいと存ずるのであります。
 質問の第一点は、バンデンバーグ決議とわが憲法との関係についてであります。周知のように、バンデンバーグ決議を軸としてアメリカと各国との間に結ばれた二国間または多数国間の安全保障条約には、若干の字句の違いはありまするけれども、「締約国が武力攻撃または破壊活動に対抗するために、個別的及び集団的防衛能力を維持し、発展させる」という趣旨の一カ条がございます。すなわちバンデンバーグ決議を端緒といたしまして、防衛力という観念は、国連憲章第五十一条によって認めた集団的自衛権の思想と相まちまして、根本的に変ったのであります。すなわち、一国の防衛力は、昔のように、単に自国の防衛のために保持するのではなく、安全保障条約を結ぶ他の国との協同した防衛力として持つということであります。これがバンデンバーグ決議に基く防衛力であり、防衛思想であります。今回自民党が五月上旬に公表いたしました安保改定の要綱は、まさにこの新しい防衛力の観念を受け入れてこれによって、――うたい文句でありますが、――より自主的な、より対等な日米安保体制を作ろうというものにほかなりません。ところが、この新しい観念と、従来保守党のうたい文句であった「独立国だから自衛軍を持つのだ」、「いつまでも外国軍隊に日本の国防を託するわけにはいかない」という自衛力の観念とは、全く相いれないものであります。自衛軍それ自体が憲法第九条に違反することは、言を待たないところでありますが、今回自民党は、バンデンバーグ決議を受け入れた新安保条約に踏み切ることによって、果して日本は、集団防衛のため、相互援助のため、あるいは共同防衛のために、現憲法のもとにおいて防衛能力を持つことができるかどうか、この新しい重大な憲法問題を提起されているのであります。自民党の要綱によりますれば、1また、そうしておそらく総理も外相もここに逃げ言葉を求めることと思いまするが、――こう言っております。「日米両国がそれぞれその防衛力を維持し、発展させることを約束するだけだし、しかも、憲法の範囲内でと断わっておくから何ら差しつかえないではないか」、こういう逃げ口上を用いて、この憲法上の大問題をそらそうとしておるのであります。また、総理の昨日の所信表明あるいは外務大臣の安保問題全国懇談会における演説等においても、すべてこの論法でこの重大問題を糊塗しようとしているのであります。しかし、このような欺瞞で当面を糊塗しようという態度は、断じて許されないのであります。(拍手)みずから憲法より大いに逸脱した国防力のあり方を認めておきながら、憲法の範囲内で云々という表現を用いて憲法上の難問題をそらそうという態度は、国民をたばかるもはなはだしいと言わなければなりません。しかも、さきの東京地裁における砂川判決によって、日米安保条約、行政協定それ自体がすでに憲法違反であるという問題が起っているのであります。岸内閣の重ね重ねの憲法違反をわれわれは断じて黙過することができないのであります。総理並びに外相は、当然ここに、厳粛に、この憲法問題についての明確なる所信を表明されたいのであります。
 質問の第二点は、新条約によって負う共同防衛の義務についてであります。この点に関する岸内閣の方針は当初からあいまいであります。昨年十月、第三十国会において、総理は、私の質問に対し、相互防衛条約を考えている旨を明らかにし、次いで十一月に、警職法改正のつまずきとともに、藤山構想のいわゆる基地貸与協定的な性格のものに変り、さらにその後、党内における一部意見に押されて、在日米軍の日本防衛の義務を明らかに書かせようとして、その代償として再びわが国もまた何らかの共同防衛の義務を負う方向に立ち帰ったようであります。従いまして、国民がこのような一貫性のない岸内閣の態度にはなはだ危険を感じております。かつ、このような大衆迎合をねらった形式上の自主性や形式上の双務性の主張が、かえって日本の安全を犠牲にすることに対し、強く批判していることは、当然であろうと思うのであります。しからば、日本が負うべき共同防衛の義務の内容はどうでありましょう。前に述べました自民党の要綱によれば、日本にある米軍またはその基地に武力攻撃が加えられだ場合に、わが国の共同防衛の義務が発生するだけだといいました。かつ、この場合は、日本領土内の日本の自衛権の発動でもあるから、何ら新しい義務を負うことにならないと、陳弁に努めております。しかし、これは、日米両国が運命共同体であり、また、自衛権は当然集団自衛権を含むという独断に立った詭弁にすぎません。アメリカと交戦関係にある第三国が、日本に敵対する意思がなくてしかし、その国の自衛上、日本にあるアメリカ軍または基地に行動をとるということは、理論上も実際上もあり得ることであります。かかる場合に、日本が無条件即時に共同防衛の義務を負うことを条約で約束することが、果して日本の自主性に立脚した安全保障であるかといえば、その答えは否定的であるのは当然だと思うのであります。(拍手)総理並びに外相は、国民が不必要に国際紛争に巻き込まれたくないと熱望している事実を、よもやお忘れではないと信じますが、この点を何と国民に説明されるか、明確なるお答えを求めます。
 共同防衛の義務についてのいま一つの問題点は、日本領土でありながら、まだ施政権が返っておらない沖縄などの取扱いであります。われわれは、これらの地域のすみやかなる祖国復帰を熱望するものでありまするが、同時に、現にアメリカの施政権のもとに置かれているこれら地域が、韓国、台湾などとアメリカとの相互防衛条約によって李承晩、蒋介石政権の共同防衛区域に入っている事実も、断じて見のがすわけには参りません。そこで、沖縄などを結び目として、わが国が、極東の火薬庫といわれる韓国や台湾と、形を変えた軍事同盟を結ぶことにならぬようにという、この国民の声に対して総理も外相も、一時は耳を傾けられたようであります。しかるに、前に申し述べました自民党の要綱によりますると、条約区域、すなわち、日本の受け持つところの共同防衛区域は、すべて日本の領土権のあるところとしておき、しかし、日本が沖縄などに対する自衛権を現実に行使するについては、施政権者であるアメリカと相談すると述べております。もしこの方式に従うならば、日本が現実に沖縄などに共同防衛のために派兵するかいなかは未定としても、少くとも条約上の建前からいうならば、前に述べましたような、日・韓・台軍事同盟を作ることになるわけであります。他方、新聞報道等によりますれば、藤山外相の構想では、条約本文においては、条約区域を全日本領域としておくが、付属文書において、まだ施政権がわが国にない沖縄などについては、施政権を返還するまでは事実上これに含めない。施政権が返還されたときに、自動的にこの防衛区域に含むという断わり書きをする意向のようにも認められるのであります。もしこの方式によるとするならば、自民党の要綱、すなわち党議決定に完全に違反するものではございませんか。今や、与党と内閣改造の結果、手負いシシとなった河野一郎氏一派からの反撃がさぞ強かろうと思いますが、これはしばらくおきまして、この方式は、国民や沖縄の同胞に対しまして、施政権返還があたかも近いかの幻想を与えようとする、全く鼻もちのならない不誠意なやり方であります。総理、外相は、果して以上二つのいずれを選ぶか、この際明らかにされたいのであります。
 質問の第三点は、在日米軍の海外出動の点であります。いわゆる極東の平和と安全のためにするという在日米軍の基地使用、実は米軍の海外出動については、これは、事前に日米間で協議する旨を条約に明記するというのが政府与党の方針のようであります。さらに外相は、二月十九日、国会におきまして、アメリカ側から要請があっても、日本の防衛に関係のないような方面への出動はお断わりする。そうして、少くともアメリカの完全な自由にまかせている現在の安保体制のもとよりは改善だ、という趣旨を述べておられます。しかし、ある極東の地域に対する進撃が、果して日本に対する攻撃の関連においてなされたのか、従ってその地域の防衛のためのアメリカ軍の出動を容認すべきやいなやの問題は、その第三国の意図をいかに日米が主観的に判断するかの問題でありまして、客観的な基準というものはあり得ないのであります。これは例をあげれば、昨年の金門、馬祖に対する中国側の攻撃が、果して台湾、澎湖島への進撃を意味するかどうかということについて、アメリカ国内においてすら、これは論議が尽きなかったのであります。これによっても明らかだと思うのであります。ところで、日米間に見解が違った場合に、果して日本は拒否権を堅持し得るのでありましょうか。これはむしろ、日本の主観的な希望にかかわらず、客観的な日米間の力関係が左右するであろうことは、当然と言わなければなりません。この意味で拒否権が事実上なくなるであろうという以外に、いま一つ考えなければならないのは、想定し得られるボタン押し戦争の様相からいたしまして、事前協議はおろか、アメリカ側が通告のいとますらない場合の方が普通だと見るのが正しいと思います。こう見てくると、事前協議を条約上に書いてみても、実際上はアメリカに白紙委任状を与えたも同然でございまして、現在の安保体制の下と実質的に変らないのではないか。しかも、変ってむしろ悪いと思われる点は、安保条約は御承知のように、朝鮮戦争のさなかに、しかも、独立前の日本に押しつけられたものでありますので、日本の立場は受け身でございました。今回は独立の日本が能動的に、アメリカ軍の極東に対する出動に白紙委任状を与える約束をするのでありますから、これは極東でアメリカと抗争する諸国に対するわが国の態度としては、これは不当不必要に挑発的あるいは刺激的ならしめるものであって、結局わが国の周辺の平和と安全のためには、かえってマイナスの材料となるといっても、決して過言ではないと信ずるのであります。(拍手)これらの点についての総理、外相の所信を伺いたいと存じます。
 第四に質問いたしたいことは、米軍の核兵器の持ち込み禁止についてであります。政府は、在日米軍の装備については、日本政府と協議することを条約上明らかにするから心配は要らないと説明しております。しかし、アメリカと相談する肝心の日本政府が、岸内閣であったり、自民党内閣である限り、断じて安心はできないことは言うまでもありません。すなわち、総理みずからが、核兵器の持ち込み禁止が現状における政府の政策にすぎず、憲法の解釈としては、日本が一切の核兵器を保持できないとは思わないと言明していることや、去る三十一国会において、衆議院の社会、自民両党の間に日本の非核武装宣言決議案が協議された際に、最後になって、自民党が永久かつ無条件に非核武装を宣言することと、核兵器の持ち込みを禁止することを、ついにがえんじなかったことは、この証左であります。(拍手)従いまして在日米軍が装備については日米両国間の協議によってきめようという政府の態度は、条約上において、そのときどきの状況に応じて、米軍の核兵器の持ち込みを許すことも許さないこともあり得るようにしておこうという、最もずるい方法であって、かつ危険きわまりないものと言わなければなりません。政府は何ゆえに核兵器持ち込みの無条件禁止に踏み切らないのであるか。この点を総理、外相からはっきりとお答え願いたいのであります。
 第五に質問したい点は、条約の期間の問題であります。政府、与党の方針は、新条約の期間を十年とすることであるようでありますが、これは断じて国民が納得しないところであります。今や、世界は激しく流動しており、ことに米ソ両陣営の戦略も革命的な変化を起しております。特に、ここ三―五年間に、米ソともに大陸間弾道弾の完成と実戦化という新局面を迎えるでありましょうし、その暁には、アメリカの現在のような海外基地に対する依存度も根本的に変化が予想されると同時に、むしろここ三―五年間こそは、アメリカの前進基地が、攻撃的な意味からすると、中距離あるいは近距離核ミサイル基地化の傾向をたどり、また防衛的に見るならば、きわめて危険な地位に置かれることは、これはもはや常識であります。だとすると、新条約の期間を十年とすることは、真に日本の自主的な立場からすれば根本的に誤まりであるといっても差しつかえないと信ずるのであります。そこで、総理並びに外相にお尋ねしたいのは、自民党がほんとうに、当分の間政権の座にあるという自信をお持ちであるならば、なぜ新条約において、アメリカと韓国、アメリカと台湾の条約のように、いずれの側からも一年の予告をもって条約を終了し得るという形式を採用されないのであるか。その間の事情と政府の真意を、総理並びに外相から明確に表明されたいのであります。
 次に、私は行政協定について質問いたしたいと存じます。
 行政協定につきましては、政府、与党は、第二十四条の非常事態における協議や、第二十五条の防衛分担金を削除し、第十四条の特殊契約者の取扱いと、第十八条の損害に対する請求権の相互放棄、これらの規定について改善すること等については、おおむねメドがついたようでありまするが、第三条の米軍の施設及び区域内及び周辺における米軍の権利権限を縮小させる問題、第十一条の米軍の軍人軍属及びその家族に対する税関の検査権を強化する問題、第十二条の調達及び労務管理権について、調達は日本政府を通ずる間接調達に改め、労務管理については保安解雇をやめさせ、その他米軍をして真実に日本の労働法規を尊重せしめる点についてどういうお考えであるか。また、自民党の要綱のように、安保条約の改定と同時に行政協定の改定を行う所存でおられるかどうか。政府の所信を、それぞれ外相、蔵相、労働相から伺いたいのであります。
 以上、私は安保改定について重要と思われる点に即して政府の所信をただしたのでありますが、これらの諸点を総括しつつ、さらに一そう広範な視野に立って考えてみますると、政府の意図する安保改定は一体何のためであるかの点についてこの際あらためて深く検討することが絶対必要と信ずるのであります。さきにも述べましたように、今や世界の情勢はきわめて流動しており、ジュネーブにおける四国外相会議は、多くの東西の対立をはらみながらも、全面的な核兵器の使用を伴う世界大戦を回避して、冷戦の緩和をはかろうという、その曙光がほの見えているような感じも与えております。このような情勢のもとにおけるわが国の外交、特に安全保障は、最も慎重でなければならず、拙速は禁物であります。心ある国民は、総理や外相のように、中立主義や中立政策はわが国の平和と安全を守るゆえんでないというような、既成概念やマンネリズムとは全く反対に、日本の将来の方向は、アメリカとの軍事的提携をやめ、少くとも薄めることによって、かえって友好を永続化するとともに、大陸諸国とは、社会体制を異にしつつも平和共存をはかるという方向こそ正しいと考えているものと、私は確信いたしております。(拍手)ことさらに国民は、岸内閣のように、日本の自主性の伸張と双務性や対等の立場を売りものとして、大衆に媚びんとし、その結果、日本とアメリカとの軍事的結びつきを能動的積極的なものとし、わが国の軍事的義務を強めるとともに、大陸諸国との間の険悪な関係を一そう激化することは、根本的に誤まりだと深く憂えております。このような大局的な見地に立って、私は最後にいま一度、次の諸点について政府にお尋ねしたいと存じます。
 まず総理は、今私が述べたような見地に立ち返って、安保改定について、いたずらにこれを急ぐことなく、一たん白紙に戻し、しばらく情勢を静観するお考えはないかどうか。
 また、もし改定を強行しようというのならば、昨年の総選挙において、これは選挙の案件ではなかったのでありますし、今回の参議院選挙も、政府与党のほおかぶり主義から、安保改定の是非をめぐって参議院選挙が戦われたこは言えないので、首相は、調印前に、たとえば案文が実質上確定して、イニシアルを終えた直後に、正々堂々と衆議院を解散し、民意を問うことか、当然、民主主義のルールであると信ずるが、どう考えるか。首相並びに外相は、少くとも世論に耳を傾けて、バンデンバーグ決議に基て集団防衛力の維持発展の義務、日本の共同防衛の義務などをなくし、米軍の常時駐留の禁止ないしは海外出動の禁止、核兵器の持ち込みの絶対禁止、一カ年の予告による条約の終了などの点について、あらためて真剣に考慮される意向はお持ちでないか、伺いたいのであります。
 池田通産相は、安保改定に対して初めから批判的で、消極論者であられたにかかわらず、また、岸内閣に協力しないことを言明されたにかかわらず、今回の改組に当って、たなごころを返すごとく新主流派におさまったのでございまするが、池田氏は、その政治的信念と、ことに安保問題に対する明確なる所信を、賛成なのか反対なのか、この際、はっきりと披瀝していただきたいと存じます。(拍手)
 首相の外遊は、その具体的な目的と、その緊要性が全く不明であります。ことにイギリスにおもむく時期は、外相会議の休会明けにぶつかって、最も不適当であり、イギリスに対しては迷惑、日本の総理としては不見識と言わなければなりません。首相は、それにもかかわらず、この時期に世界の笑いものとなるようなロンドン入りをされるおつもりであるかどうか。また、イギリスでの会談においては、当然に中国問題が取り上げられると思いまするが、イギリス当局に意見を聞く場合に、まず日本としての確固たる識見と政策をお持ちでないのならば、これまた世界の物笑いの種であることをおそれるのであります。従って、ここに中国問題を含めて、イギリスにおける会談についての総理の明確な所信を伺いたいのであります。
 以上伺いまして、さらに時間がありまするので、再質問の権利を留保いたしまして、一応これで終ります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一は、ハンデンバーグ決議との関係についての御質問でございます。私どもが社会党また曾祢君と根本的に考えを違えているのは、日本の憲法は自衛権を認めており、それを裏づける最小限度の実力を持つということは憲法違反でないという考えを堅持して参っているのであります。従って、日本の自衛力を増加していく、それについては、国防会議におきまして国情と国力に応じてこれを漸増するという方針を決定して、内外にこれを明瞭にいたしております。しこうして、そのことは、私どもはあくまでも憲法違反でないという見地をとっているということを、重ねて申し上げておきます。しこうして、バンデンバーグ決議につきまして、この種の条約をアメリカがいろいろな国との間に結んでいることにつきまして、またその間についても、必ずしも字句、内容が同様でないということについても、曾祢君がすでにお認めになっておりますが、特に日本の場合においては、そういう憲法上の制約のものにおいてわれわれが防衛力を持つという見地を十分に明らかにして、そしてその内容を、このバンデンバーグ決議との間におきまして調整して、条約に規定するつもりでございますから、決して憲法の違反だというようなことは、これは全然ないと確信をいたしております。
 第二に、新安保条約において、日本の国内にアメリカに基地を許し、アメリカがそこに駐留することを認めるということにするのでありますが、その場合において、今御質問になりましたこの基地に対する、アメリカ軍に対する攻撃が、日本との関係においてどうなるかという御質問でございますが、日本にある基地を攻撃するという場合におきまして、それがいかなる目的であろうとも、日本の領空や領土を侵略せずして、そういう攻撃が加えられるということはあり得ないと思います。従って、そういう攻撃が加えられた場合において、日本が日本に対する攻撃として自衛権を発動することは、これは当然でございまして、決して御質問のような関係にならないと、こう確信しているのであります。
 第三は、沖縄、小笠原の問題でございますが、私どもこの条約におきましては、日本政府の施政権を持っている範囲内に、この条約区域を限る考えでございます。沖縄、小笠原について、われわれが施政権の返還を求めていることは、国民全体の声でありまして、これに対してわれわれが努力すべきことは当然であり、また、それはわれわれの外交の交渉で、あくまでもこれを貫く考えでございますが、安保条約の問題につきましては、今申しましたように、施政権を持っている範囲内に限るつもりでございます。従って、施政権を持たない小笠原、沖縄に対して、われわれは条約区域にすることはいたさないのであります。他日われわれの念願が達して、これが施政権を回復したという場合におきましては、当然その区域に入るのでございます。
 その次に、在日米軍の出動や核兵器の持ち込みの問題について、われわれは事前協議という考えに立っておりますむ。現在の安保条約が、そういうことについて、全然アメリカの一方的意思で、すべてのものがきまるようになっていることは御承知の通りであります。これに対して、先ほど来申し上げているように、日本はあくまでも防衛的態度だから、侵略されなければこの自衛権が発動するものではございませんが、その見地から考えまして、日本自身が何ら知らない間に非常な危険にさらされるということは、これは国民が不安に考えることでございますから、われわれはそれを事前の協議――もちろんいろいろな御議論がありましたけれども、私どもは日本国民の意思を代表して、拒否すべきところについては断然これを拒否すべきことは、これは当然であります。(拍手)
 条約の期間――十年が長いという、この条約期間の問題でございますが、条約期間の問題については、現在の安保条約が無期限であることは御承知の通りでございます。しこうして、こういう安保条約というものが、日本の安全を保障し、日本が他から攻撃を加えられない、他から侵略をされないという、この安全保障、また真に防衛的な、自衛的な条約であることは御承知の通りであります。こういう条約というものがあって、過去においてもわれわれが平和のうちにわれわれの建設復興をなし遂げてきたのでございましてやはりこういう条約につきましては、ある程度の安定感を持つことが必要でありまして、その意味からいって、私どもは十年が適当であろうと、こういうふうに考えたのであります。行政協定の内容につきましては、各国務大臣からお答えを申し上げます。最後に、この安保条約の改定を白紙に返して、急ぐ必要はないじゃないか、そうしてやっていけというお話でとざいます。われわれは、決してこれを無理やりに急ぐという態度をとっておりません。すでに、交渉につきまして、現実の交渉に入りましてからも十カ月ぐらいになります。さらに、この問題に関して、日本国民が自主的に、また日本の発言権を認めたような条約にしたいという念願につきましては、私ども数年前からアメリカにその要望を伝えており、ようやくアメリカ側も、日本の国力と国際的地位の高まつにことにかんがみて、日本の長い間の要望を受け入れてやろうということになって、交渉が今日まで来ておるわけでございまして、今日われわれがこれを白紙にいたす考えはございません。われわれは、これによって日米の協力に強化して、そうして日本の繁栄と安全をはかっていくことが、現実に即して最も必要であると私は確信をいたしております。(拍手)
 さらに、調印前に衆議院を解散して、そうして安保条約についての民意を問えという御意見でございますが、もちろん、国民の協力と理解とによってこういう大事な条約が結ばれていかなければならないことは言うを待たないのでございます。しかし、それを、そういうような時期に解散の方法によって問えという御意見につきましては、私は今日そういう考えを持っておらないことを明らかにいたしておきます。
 訪英の時期について適当でないというお話でございますが、私の訪英につきましては、イギリス側からの招待に基いて訪問するのであり、また、イギリス側の都合を十分に明らかにして、七月十一日に出て訪問するということがきまっておるのでございます。従って、私は、その時期を今日変更することは、むしろイギリス側にとって迷惑だろうと思いまして、予定通り行くつもりでおります。また、会談の内容につきましては、すでに申し上げておりますように、広くイギリスの首脳部と隔意のない話し合いをいたして、世界情勢の判断や、あるいは世界平和の増進についての見地から、各種の問題を忌憚なく話し合うつもりでございまして、アジアの問題も、あるいはその他の問題につきましても、広く話し合いをいたして参りたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(藤山愛一郎君) 条約その他につきまして総理大臣からすでに御答弁がありましたので、行政協定の問題につきまして御答弁申し上げたいと存じます。
 ただいま曾祢君の質問であります第三条の基地維持のための施設権利の問題でございますが、基地を提供しております以上、基地内におきます米軍が基地維持のための権利を持っておりますことは当然のことだと思うのでありますが、お話のように、基地外の権利につきましては、今日までの状況から申しましても、基地外におきます諸施設の問題については、日本政府と十分に協議をいたして実行いたしておりますので、できるだけ、今度の協定におきましても、現在の実施の状況等をにらみ合せまして、そういう処置をとり得るように、またはそういう実質的にとっております処置を協定の上に表わしていきたいということを、ただいま努力いたしておるわけでございます。
 また、軍人軍属の税務の関係でありますが、これは大蔵大臣とも御相談を申し上げながら、自粛をしてもらう方法その他につきまして十分な協定をいたして参りたい、こういうふうに考えております。
 労務管理の問題につきましては、御承知のように、間接調達の道を開いておりますことは必要でありますから、われわれも間接調達の道が開かれるように考えておりますが、ただ御承知のように、NATO等は二国以上の関係にございますので、全部が間接調達になっておりますけれども、やはり直接調達の道もあり得ることは必要だと思うのでありまして、間接、直接両様の調達方法がとり得れば一番適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
 以上のような点につきまして、今日、御質問になりました点については努力をいたしておる次第でございます。(拍手)
   〔曾祢益君「外務大臣は一つも安保条約に関しては答弁をしておりません。私は、私の質問の各点について、安保条約の各点について外務大臣の答弁を求めます」と述ぶ。その他発言する者多し〕
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 行政協定十一条についてのお答えは、ただいま外務大臣からお答えをいたしました通り、大蔵、外務両省において目下慎重に検討中でございます。検査免除によって生ずる犯則防止等について十分検討する考えでございます。(拍手、発言する者多し)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手)
#8
○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理大臣がお答えになりましたので、総理大臣のお答えで尽きておると思いましたけれども、御要求がありますれば、むろん申し上げたいと思います。
 バンデンバーグ決議につきましては、総理の言われました通り、バンデンバーグ決議そのものの精神というものが、御承知のように、お互いに自衛力を十分に持ちながらいく、そういう国とお互いに相互的な防衛の協定をしていこうというのが精神でございます。従って、そういう意味におきまして、この決議の精神というものを採択して参りますことは、必ずしも憲法上の違反にも何にもならないと存じます。
 それから、日本の基地貸与と在日米軍に対する攻撃の問題でございます。先ほど総理が言われました通りに私ども考えておりますが、なおその上に、今回、日本の基地を作戦基地として海外へ出動する場合には日本と事前協議もいたすことになっております。従って、事前協議をいたしまして、海外に出ていかない米軍を攻撃してくるような場合は、それは当然私は日本を攻撃することを目標にして来ておるものと見て差しつかえないのだと思うのでありまして、そういう意味におきまして、総理の言われたことと同じだと存じております。
 なお、沖縄の取扱いにつきましては、今総理が言われましたように、今回の条約地域におきましては、施政権のない所は除外して参りたいと、こう考えておりますので、総理の御答弁通りであります。
 また、海外出動の事前協議、核兵器の持ち込み等については、曾祢議員と御意見が違うかもしれませんけれども、私どもとしては、今日、無制限にこれらのものはアメリカでやることができておりますのに対して、事前協議をもって十分話し合いをし、日本が、協議でありまするから、拒否し得る立場、そうして、その拒否というものは、国民の好まざる場合には拒否をして参ることは当然のことでありまして、そういう意味において、はっきりした条約になり、改善になり得ると考えております。
 また、期間十年の問題にいたしましても、これらの条約というものは安定的な立場をとり、また、日本自身にいたしましても、自衛力増強その他相当長期にかかるわけでありますから、それらのものにかんがみまして、日本の将来の安全を保障して参りますのに、は、この程度の期間が適当であろうと、こう考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣松野頼三君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(松野頼三君) お答えいたします。
 在日米軍がその業務を特殊契約により民間業者に請け負わせることにつきましては、従来、労務者の福祉の上から見ていろいろ問題がございましたので、今回、改善の方向に交渉中でございます。
 駐留軍労務者に対する日本の労働法規の適用につきましては、御承知のごとく、現行法の第十二条、第十五条で、雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件、労働関係に関する労働者の権利は日本国の法令で定めるところによらなければならないという規定がございますが、いろいろ具体的問題につきましては、これだけでは解決できないところもございましたので、日米合同委員会等において、一そう円満な運営によって、過去の問題、今後の問題もはかるのが一番妥当であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手]
#10
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点の安保条約改定に関しまする私の意見は、この改定が日米間ことに日本の立場をよくする改定であれば大賛成でございます。しこうして、それがためには、両者の立場を十分考え、慎重に事を運ぶべきだと考えております。
 第二の、私の政治的立場につきましては、私は国家国民のために行動しておるのでございます。(拍手)
   〔曾祢益君発言の許可を求む〕
#11
○議長(松野鶴平君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#12
○曾祢益君 ただいま総理の御答弁を伺ったのでありまするが、肝心な点について何一つ御答弁になっておらない。そこで私は、まず自衛力については、憲法とこの集団的自衛力という観念を、どういうふうに、どういう表現で調整されるかを、この一点を伺いたいと思います。
 それから第二に、池田通産相に対しては、急いでおらない、ゆっくりやる、こういうことを言われましたが、しからば、その慎重論をどこまで貫くお考えであるか、この点を明確にお答え願いたい。時間がありますので、再再質問をいたします。
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手]
#13
○国務大臣(岸信介君) バンデンバーグ決議との関係でございますが、先ほどお答え申し上げましたように、日本の自衛力というものは、あくまでも日本の自衛、他からの直接間接の侵略に備えて、自衛の立場においてこれを持つことは当然でございます。また、それを増強するのも当然なその目的の範囲内であることは言うを待たないのでございます。それを私どもが国情と国力に応じて増強すると、こういうことを根本方針としてきめております。しこうして、私どもはその考えを持って、それは憲法違反でないという立場に立ってその見地をあくまで貫くように、バンデンバーグ決議というもののこの条項を入れます場合に、表現をそういうふうにするということを申し上げておるのでございまして、決して御心配のような憲法違反の問題は生じないというのが私どもの考えであります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(池田勇人君) 私は、安保条約の改定がりっぱにできることを期待しておるのでございます。運び方は所管の外務大臣にお聞きいただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手]
#15
○国務大臣(赤城宗徳君) 行政協定の問題で御質疑がありましたが、アメリカ駐留軍の労務管理の問題につきましては、現行の行政協定第三条の基地管理権と、また、十二条五項の労務者の権利はこれを尊重すると、こういう関係との間に立って、いささか問題がないわけではありません。たとえば保安解雇の問題等がありますので、その問題につきまして、日本の裁判所で不当労働行為だと、こういう判決がありました場合に、これを、解雇を無効として原職に復帰させる、この判決は日本の判決でありますので、政府といたしましては、判決通りに復職等を折衝いたしておるのでありますが、第三条の駐留軍の基地に関する管理権等から、日本の要求が十二分に通っておりません。政府といたしましても、厳重にこの点につきましては要求をいたしておるのでありますが、これを行政協定の中でどういうふうに扱うかということは、今いろいろ折衝中でありますので、また申し上げる段階に至っておりません。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(佐藤榮作君) 行政協定十一条についてのお尋ねでございましたが、先ほど外務大臣がお答えいたしました通り、大蔵、外務両省間におきまして目下慎重に研究中でございます。(拍手)
   〔曾祢益君発言の許可を求む〕
#17
○議長(松野鶴平君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#18
○曾祢益君 ただいま再質問までいたしまして、この非常に重大な深刻な問題に対して総理以下にほんとうに率直に、また自信を持ちながら親切に御答弁願うことを要請したのでありまするが、おそらく赤城防衛庁長官の内容と態度以外は、全く無誠意であり、全く無内容であります。総理大臣のごときは、この厳粛な問題に対して、国民に対する責任を果して感じておられるかどうかすら疑わしいような無責任な答弁であります。これは私は、はなはだ遺憾とするところであります。(「見解の相違だ」と呼ぶ者あり)基本的な点についての見解の相違ももちろんありましょう。しかし、もっと広い意味に立って、私が御質問申しました、バンデンーグ決議と日本のこの憲法との関係という基本問題については、何ら答弁の形をすらなしておらない。総理の言っている点は、この点についても、われわれもとより意見を異にするのでありまするが、自衛権はある、だから自衛力は、まあ程度はあるかもしれませんが持っていいんだ、この点だけで、その自衛力というものがどういう内容であるか。――いわゆる一国、独立国のための自衛隊、名前が自衛隊であって、これは他衛隊とは書いてないんですから、自衛隊といっておったこの欺瞞から、今度は安保改定においてバンデンバーグ決議を認めることは、いかに条約の表面においてごまかしをおやりになろうとしても、これは基本的な防衛力の意義と持ち方について、全然新たな問題に当面していることは否定できないことであります。それはどういうことかというと、おわかりのくせに一つもまじめな御答弁がないのでありまするが、これは継続的かつ効果的な自助並びに相互援助というこの精神に従って、日本の防衛力は、日本のいわゆる自衛のためだけではなくて、締約国であるアメリカとの相互援助、共同防衛、集団防衛、そのための防衛力を持つ、こういう観念に立ったものがバンデンバーグ決議に基いた相互援助条約だ、(「その通り」と呼ぶ者あり)その方向に今や踏み切っている。しかもそれは、なぜそういう……あれだけよろめきながら、初め相互防衛条約といい、基地貸与協定といい、なぜそこまで来たかというと、もちろんアメリカからのあれもあったかもしれませんが、純粋に日本人として、日本側だけから、政府の行動だけから見ているならば、明らかに在日米軍が日本を守る義務が、今の安保条約にはない、それを今度義務づける、だから平等なんだ。こういう大衆迎合的な、アメリカの軍隊に日本防衛の義務をとってきたのだ、それがねらいであって、それを追求するがために、ついにこのバンデンバーグ決議の精神を受け入れて、集団的防衛力を持つ、そうしてその上に立って共同防衛の義務を持つ、こういう関係になってきたに違いないのでありまして、その意味から、もちろん共同防衛の義務を持つのがいいかどうかという政策論、憲法論がありますが、その持つ前提としてのそういったような防衛力、そういったような集団的な防衛力、外国のためをも含んだ防衛力というものを、少くとも今まで保守党の諸君は、そういう意味で憲法九条を解釈しておった形跡はないのです。これは明瞭なことです。だから、その点をどう結びつけて御説明になるか。絶対にこの点は明らかにしていただかなければならないと思のであります。
#19
○議長(松野鶴平君) 時間が参りました。
#20
○曾祢益君(続) もう終了いたします。
 それから海外出動の問題あるいは共同防衛の問題についても、いろいろありまするが、私は幾ら質問しても、ほんとうにまじめな御答弁がいただけないのではないかということを非常に憂える。そこで、もう一点、二点に限ってだけ私の意見を申し上げたい。その点はです。なぜ十年のいわゆる安定期間になるのかということの御説明が全然ないのです。なぜそういういわゆる安定的な期間が要るのです。これはアメリカと韓国、アメリカと蒋介石とのような、非常に密接な、いわばアメリカに対する隷属的な関係といっては、外国のことでありますから語弊があるかもしらぬが、非常に密接な関係の国においても、一年の予告でいつでも終了できる。一体、自民党岸内閣は、それほど、韓国か台湾ほどもアメリカとの関係において信頼がないのであるか。何のために十年という安定期間を設けなければ安保条約の改定ができないのか、この点についての御説明が全然ないのであります。
 それから、渡英の場合の会談の構想の概要すら述べておられない。中国問題についての構想すら述べておられない。私は、もうこのような不誠意な答弁では、幾ら求めても意味ないと思いますから……。
#21
○議長(松野鶴平君) 曾祢君、時間が参りました。
#22
○曾祢益君(続) 従いまして、私の質問はこれで打ち切りまして、同僚議員の本会議あるいはわれわれの委員会における質問に移したいと思います。私はこれ以上答弁を求めても無意味でありまするから求めません。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(松野鶴平君) 大谷贇雄君。
   〔大谷贇雄君登壇、拍手〕
#24
○大谷贇雄君 私は……(発言する者多し)少し静かにしてくれ。
#25
○議長(松野鶴平君) 静粛に願います。
#26
○大谷贇雄君(続) 私は自由民主党を代表いたしまして、昨日行われた総理の所信表明に対しまして、岸総理大臣並びに各関係大臣に対しまして若干の質疑を行わんとするものであります。
 まず第一に、今春来行われました相次いでの選挙にわが政府与党が連戦連勝をいたして参りましたことは、総理御発言の通り、国民諸君が、わが党の政策、その施策に対しまして全幅の信頼をかけたものでありまして、諸君とともにまことに喜びにたえぬ次第でございます。(拍手)同時に、連戦連敗されました社会党のために一掬の涙を禁じ得ないものであります。この際に当りまして、岸総理は国民の信頼にこたえるために、真に民生の安定向上、国家の隆昌に向って、強力なる施策の実現を望むものでございます。
 諸君、今やわが国内外の情勢は最も憂慮すべき段階に差しかかっておると信じます。戦火を浴びた国家が不法に占拠され分断されるほど不幸な事態はございません。われらはそれをドイツと朝鮮になまなましく見せられているのであります。幸いにしてわが国は国土を保全し得て、その憂いを持たざることは、敗れたる国家として、せめてもの喜びでありますが、しかし、この国土の内部には、まさに思想的に分断されんとする傾向をたどっておりますことは、まことに深憂にたえざるところであります。二大政党下、わが自由民主党は、国連を中心として自由主義諸国と協力し、しこうしてアジアの一員として善隣友好の道に進み、自由と独立の平和外交を展開して、世界の平和に貢献せんとしておるのに対しまして、昨日の衆議院における片山演説に見られるがごとく、また曾祢君の冒頭の所信に見られるごとく、社会党の諸君は、中立主義を唱え、反米、容共を外交の基本線としているかのごとくであります。国家の安全と公共の秩序を保障し、国民の自由と繁栄を獲得する上におきまして、今日ほどその対策の急を要するときはないと信じます。国家の理想を明確に掲げ、その大旆のもとに、政府が国民諸君の協力のもとに強力なる施策の推進をはかることを、私は切に念ずるものでございます。(「質問をやれ」と呼ぶ者あり)
 総理所信の表明のごとく、最近の国際情勢は容易に東西の緊張が解け去るとも考えられません。ことにわが国を取り巻く国際情勢を分析してみまするときに、ソ連、中共の対日政策は、容易ならざるものがございます。これらの両国は、現下最大の課題として、七カ年、五カ年計画に基いて経済建設に邁進をし、その達成に国運を賭しているのでありますが、同時に、他の国に対し、経済戦略、思想戦略をもって巧妙なる国際共産主義工作を浸透せしめておりますることは、見逃し得ざる重大なことであると存じます。昨日、片山哲氏は、日本がアメリカに犯されているというようなことを言いましたが、今や日本は国際共産勢力にねらわれているのであります。片山君は筒先を向けられていると申しましたが、筒先を向けられているのは片山君を代表といたすところの社会党であると存ずるのであります。
 諸君、片山氏、曾祢君のいわゆる中立主義とは何ぞや。自衛力なきわが日本が、もし中立主義をもりて標擁して立っていて、果して他国の侵略を受けず、国家の安全を保ち得るであろうかいなか。わが憲法の前文には、平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と平和と生存を保持しようと決定しているのでありますが、現実に諸国民の公正と信義に信頼をすることができる現状にあるかどうかということは、はなはだ疑いにたえぬところであります。片山君の夢は夢としてそれでよろしいが、それは現実ではございません。文学青年どころか、文学少女の議論でございます。諸君、ハンガリー動乱によって無事の国民は十数個師団にじゅうりんをされ、数十台の戦車に多くの人々が虐殺をされ、大空からは爆弾が降り注いだ、この事実を一体何と解釈したらいいのか。近くはチベットの動乱をごらんなさい。聞くだに戦慄を覚えざるを得ないではございませんか。ジェノサイド条約は、厳然たる国際法上の犯罪を犯した国があったらどう措置されるでありましょうか。チベットの無事の民衆は殺害をされ、しかも文明世界のおそるべき犯罪、平和の使徒たるラマ僧侶が殺戮をされたのであります。これこそジェノサイドによって決議された文明諸国の最も憎むべき犯罪ではありませんか。これを犯したものは一体だれであるか。宗教を弾圧し、宗教者を殺戮する、一体、人道上からこれが黙視されるでありましょうか。さらに、わが国土であるエトロフ、クナシリは今日どういう状態になっているか。だれが占領しているか。昨年十一月の十九日、陳毅外相は、日本が中立国家になることを支持すると声明しました。十二月二日のグロムイコ覚書には、ソ連は日本の中立を尊重することを保障する用意があると発表をされましたが、諸君、これらの国々の中立の呼びかけと、片山、曾祢君たちの金科玉条たる夢のような中立主義で、わが国の安全は果して守られるでありましょうか。
 諸君、中ソ友好条約はすでに破棄されているでありましょうか。いな、厳然として条約には、日本を仮想敵国として、三十年間の期限をもって続いているのであります。敵に塩を送らんとするこの中立論、この塩を無条件に諸君、いただいていいでありましょうか。去る三月二十日にも、日ソ協会の席上において、フェドレンコ大使は、日本の中立化を呼びかけておられます。この参議院選挙が始まる直前五月四日には、スズダレフ・ソ連公使は、日本の非核武装化と軍事的中立化を呼びかけた口上書をわが外務省に届けておるのであります。今やわが日本は、外からと足元からと、共産勢力侵略の魔の手にさらわれんとしているのであります。累卵の危機に日本は立っている。噴火山上に立つわが日本。私はこの際、総理の中立主義に対する明確厳然たる所信を伺いたいと存ずるのであります。
 次に、わが国の独立と安全を守り、世界の平和を維持しまするために、日本の処すべき道は、自由主義諸国と手を結んで、その団結をますます強くしていくことが、ゆるぎなきわが日本外交の根本であると信ずるのであります。わが国は、この外交方針の下に、国連憲章の精神にのっとって、日米安保条約を締結し、わが国の安全と極東の平和を維持して、よく今日までその使命を達して参りました。とこうして、現在までに平和のうちに国家の再建をはかり、繁栄の一途をたどってきましたことは、国民諸君とともに御同慶にたえざるところであります。しかし、この条約締結後わが国内外の情勢は急速に変化をして参りました。すなわち、日本は世界の諸国と平和条約を結び、ソ連とも平和を回復し、国連べの加盟も実現をされ、安保理事会の非常任理事国にも選出をされるというように、大いに国際的地位を高め、名実ともに国際社会の有力なメンバーとなりました。国内におきましても、産業経済の復興に伴いまして、民生は安定をし、自衛力もある程度整備され、国力は次第に充実し得たのでございます。従ってこのような内外情勢の変化と進展にかんがみまして、わが国の自主性を高め、真にわが国の独立と安全確保のために条約の改定を行わんとするのでありますが、以下申し述べる点につきまして十分の考慮をお払いを願い、所期の目的を十分に果されるよう最善の努力を望みたいのであります。
 第一に、戦いに敗れ、無条件降伏をして、占領下にあったわが日本は、独立達成のために二十六年九月サンフランシスコ条約を結び、同時に安保条約を締結したのでありまするが、当時のわが国は、自国の安全独立を守る有効な手段を持っていなかったのであります。従ってこの条約を自由対等のものに改めんとすることは、国民多年の民族的熱望でございました。この盛り上った民族の要望にこたえるためにも、政府は確固不抜の信念と態度をもってこれに当っていただきたい。しこうして国民に十分の納得のいく改定を行なっていただきたいということであります。
 次には、今回の改定内容は、国連憲章との関係を明らかにしまするとともに、現行にはありませんアメリカの日本防衛義務を明らかにし、わが国の負うべき義務を憲法の範囲内にとどめんとするものであります。従って、改定による新しい条約では、日本の領土を日米両国で共同防衛をするようにせんとするものであって、あくまで純然たる防衛的性格であり、戦前のような軍事的攻守同盟ではない。また日本は憲法の範囲内で義務を果すのだから、海外派兵というようなことは起り得ないのである。同時に、改正に当りましては、在日米軍の使用、配置、装備等について、前もって協議をすることになっているから、わが国の知らぬ間に戦争にまき込まれるといった危険は全然心配はないのであります。(「ある、ある」と呼ぶ者あり)しかるに、ある、あるというように、社会党の諸君は共産党と一緒になって、この改定内容を曲解している。(「曲解じゃない」と呼ぶ者あり)戦争に巻き込むとか米国に隷属させるとか言っているが、こんな議論は国民を欺瞞するもはなはだしいのであります。この際、政府は、これら容共勢力の言動が誤まりであることを国民にしっかり知らせますために、正しい改定の内容を全国民に十分知悉せしめる必要があると思うのだが、総理はいかにしてこれを理解せしめる御方針であるかどうかを伺いたい。
 さらに、社会党の諸君は、中ソ両国の中立化呼びかけにこたえて条約破棄を唱えるということは、これは日本を弱体化するのですよ。それに基き知らず知らずのうちに国民が共産化していくのであります。われらが絶対にとらざるところであり、さらに社会党の諸君は、無防備の中立だとか、あるいは日本とアメリカと中国とソ連、日米中ソによる不可侵条約を唱える。―――――これは口頭禅にすぎないのであります。歴史の事実を無視し、現下の国際情勢に眼をおおわんとする、実現不可能な観念遊戯、全くの欺瞞に過ぎません。総理はこの際、安保条約改定の必要のきわめて緊要でありますることを国民に強く理解をせしめますとともに、日米離間の論議に対して厳然たる所信をさらに御表明願いたいと思うのであります。(「無理しなくてもいいぞ」と呼ぶ者あり)まだ時間はどっさりある。こうなったら聞きなさい。
 次に日中問題についてお尋ねをいたします。前段来申しまするように、わが国は国連中心主義を外交の原則としている建前から、まだ国連夫加入の中共を承認することはしてないるである。しかし、両国の長い歴史的伝統また地理的環境から、両国民の交流は昨春まで活発に行われた。ことに、貿易、文化の面におきましては、政府もその増進拡大を切望して、それが実現に一生懸命になってやっておられたのであります。そうしてわが国は、ココム、チンコムにおける対中共禁輸制限の大幅緩和に対して成功したじゃないか。中共貿易の合理的発展をはかり、一昨年のごときは、イギリスと歩調を一つにして禁輸の思い切った緩和をやった。その結果、昭和二十八年には輸出入合計わずかに四百五十万ドルだったのが、一昨年は一億五千万ドルと大きく伸びてきた。その趨勢は三十三年度に入っても衰えなかったのでありますが、従来、政治と経済は別個である、政治体制が違っても友好的な貿易関係を結ぶことができる。こういうことを周恩来は言っておった。中共はそう言っておった。それが、にわかに態度を変え、日本政府に中国敵視の態度があると誤解をした。そういうことを口実にして、突如貿易中断の措置に出てきたのであります。すなわち、去年の五月のあの第四次協定をめぐってこちらの方は協力的態度を示した。ところが、これを一方的に向うからばっさりと停止をした。これはまことに不可解千万、残念千万、遺憾千万である。わが国は、しばしば内外に声明をしたように、中共を敵視したようなことは一ぺんもない。二つの中国を作る陰謀をたくらんだ。そんなことはありません。わが国は、両国の関係につきましては、歴史的な経過、国際情勢の変化を見つつ、現実に即した処置をとるべきである。こういう一貫した態度を今日までとってきたのであります。しかるに、先般中共を訪問した淺沼ミッションは、共同コミュニケにおいて、あたかも、わが日本の自主独立の立場を説明することをやめてしまった。そうして、ただ中共側の言うままに、うのみにして、あまつさえ、米帝国主義は日中両国の共同の敵だと声明、日本の世論はびっくりしてしまった。まことにひんしゅくを買ったのであります。それだから、今度の選挙で国民の公正なる審判を受けて、わが自由民主党が圧倒的の多数をとったのは、ここに原因があるのであります。わが国の中共貿易は、さっきの数字を見ましても、わが国貿易総額の二・五%にすぎません。私たちは中共貿易を念願するものでありまするけれども、自由主義諸国との友好を捨ててまで、あんまり多くの期待をかけ得ない。ことに私たちは、そういうことに依存をいたすことは断じてできません。しかし、両国の立場、ことに政治体制の異なることを相互に今までのように尊重をして、そうして中共貿易の促進をはかるべきものだと思います。この意味におきまして、中共の方がわが国の公正な態度を十分に理解をするまでは、これはやはり私は静観的態度をとらざるを得ぬのではないかと思うのであります。中共は、国民政府と結んでおる日華条約をやめちまってそうして中共を承認する方針でなければ貿易を開かぬ、これはまことに理不尽というものです。この中共の態度、それに社会党さんはあとからくっついていって、追従をして、わが国の立場を捨てている。大多数の国民の要望を無視している。そうして中共に嘆願してわずかばかりのウルシとあの甘グリを配慮物資というのです。―――――しかも総評とともに国民を惑わす道具にしているというようなことは、まことに遺憾千万であります。こういうような社会党の態度は、共産諸国に隷属をしたというような感じを与えるひもつき外交の現われにほかなりません。ウルシにかぶれてしまって、自主性を失ったのではないかと判断されるのであります。(「お粗末」と呼ぶ者あり)われわれは、中共問題を現実に即して一歩々々解決し、国際間における日本の立場及び日本と世界各国との関係ともにらみ合せ、着実に解決していくことが正しいと信じます。
#27
○議長(松野鶴平君) 大谷君、用語に御注意下さい。
#28
○大谷贇雄君(統) 総理は、今後の中共問題についていかに考え、また、いかに打開していかれるか、この際その見通しを国民の前に明確にいたすべきものであると存じます。御所見を伺いたいと思います。
 それから、きのう総理が所信の表明演説におきまして、長期経済計画を樹立する方針を明らかにされたのであります。私も、現在の経済五カ年計画が、わが国の経済力をいささか過小評価していると感ずるものでありまして、現在の経済情勢や今後の国際経済の動向から考えまするときに、総理の提唱されまするように、わが国経済の規模は十カ年の間に二倍に拡大することは決して困難ではないと確信をするものであります。ただ私は、このような長期的な計画の策定とあわせまして当面のわが国経済の動向を着実に安定成長の方に導くことがきわめて肝要なことと信ずるのであります。
 最近のわが国の経済の実情は、総理も言われておりまする通り、まことに順調な発展を遂げております。これは昨年の今ごろの実情と比べてみまするというと隔世の感を抱くものでございます。しかし、過去の経験に徴して見ましても、わが国においては、景気が上向いてきますると急に景気がよくなる。(発言する者多し、笑声)それがやがては景気の過熱を招き、反動的に、国際収支の悪化、従って経済の引き締めを余儀なくするというような循環現象を繰り返してきたのであります。神武景気で大へん好況であったのが、国際収支が急激に悪化しまするまでは、数量景気というので、景気の行き過ぎに対する警告を怠ったのでありますが、そのために、やがて深刻な引き締め政策に急転をいたしましたことは、お互い記憶に新たなところであります。現下の好況も、もしこれを自然の推移にまかせておきますると、再び景気の行き過ぎを来たさぬとも限らぬと思うのでございます。最近世上では、金融の自主的調整論や準備預金制度の活用論などが活発に行われておりますが、当面、金融のあり方をどうするかということが最も重大な問題だと思うのであります。(「ほんとうにわかっているのか」と呼ぶ者あり)過去の経験に徴しましても、金融の自制の足らなかったことが景気の行き過ぎを誘発したとさえ言われるのであります。これに対する適切な措置を誤まりますると、再び前のような轍を踏むおそれがないともいえません。この際、私は、現下の内外の経済情勢をどう見るか、また政府はどのような態度で経済の安定成長を確保するお考えであるかを、総理並びに関係大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。
 それから選挙制度に関する総理の御所信について伺いたいのであります。先ほど来、だんだん申しましたように、知事選挙、地方選挙、参議院選挙と、中央、地方を通じて各種の選挙が行われましたが、これら一連の選挙を通じまして、選挙制度に対するいろいろの疑問と批判が起って参りました。この疑問と批判は、どの選挙にもなかなか金がかかるとか、あるいは法定費用の制限が有名無実だとか、あるいは選挙法規そのものが、いわゆる形式犯の規定が複雑過ぎて、違反することが常識になっているというようなこと、従って選挙法規が守られておらぬ、乱れた選挙を行うとかというようなことが、最大の原因であります。あるいはまた、参議院全国区制に対するところの問題もあげられるに及びましてこの際、選挙法を根本的に再検討をする必要があるのではないか、こういう機運が高まって参ったのであります。総理も昨日の演説の中でこの再検討を約束をしておられますが、選挙直後のこの機会をとらえまして、選挙法の抜本的改正に着手して、すみやかに改正を実現するよう強く要望するものであります。参議院の全国区制、これは衆議院とは相当に違った性格を持つべきものでありまして、ある種の特質を持つべきであるとして、その選出方法については全国区という制度が設けられたのでありますが、過去数回の経験から見まして、わが国の国情に適しているかどうか、こういう疑いも生じて参りました。すなわち、候補者が選挙民と隔たり過ぎて親しみがない、あるいは利益代表者が入り過ぎて対立抗争が激化するというような批判が出て参ったのであります。こういうような問題につきまして、さきに選挙制度調査会におきましてもたびたび検討を加え、まだ最終的な結論には至っておりませんが、すでにブロック制、あるいは府県単位の大選挙区制、あるいは職能代表制、あるいはまた直接選挙と比例代表の混合、間接選挙、複数連記など、いろいろな提案が行われております。わが国の憲法では推薦方式がとられておりませんから、改正にはいろいろな難点が多く、問題も複雑になっておりますが、全国区制廃止の意見がなかなかあるということは間違いがございません。総理は、この全国区制度についてどう考えておいでになるか、また全国区制は廃止した方がよいとお考えであるか、伺いたいのであります。
 また、全国区制と関連しまして、衆議院の小選挙区制度の実現、また人口増加の変動に応じた都道府県別定員の調整なども問題になっております。現在の選挙が政策中心の政党間の選挙でなくて、個人的色彩が強いために、違法手段に訴えることになりやすいので、これを政党間の政策中心の選挙とするために小選挙区制が望ましいと思うのでありますが、総理は、小選挙区制を実現するおつもりであるかどうか、この際お伺いをいたしたいと思います。
 次に、こうした恒久的な選挙制度の改革とは別に、当面すみやかに実現をしなければならぬ選挙運動を中心とした選挙法改正の問題があります。今度の選挙には、文書戦の違反や、禁止されている連呼行為や気勢を張る行為の違反は、汗牛充棟ただならざる状況であったと思われる。これはいわゆる形式犯の規定があまりに複雑であって、厳格に失するため、形式犯の違反は選挙界の常識となって、法の尊厳は著しく侵害されている。法治国家として許しがたい状態にまで立ち至っております。このほど自治庁では、これら選挙運動を中心とした問題点を取り出して本格的検討に入ったということでありますが、問題点として取り上げられた連呼行為や文書取締りの緩和、あるいはテレビ利用の強化、法定選挙費用の合理化、政党の政治活動に対する制限緩和、重複立候補やあるいは売名立候補をするようなものの制限などは、いずれもこれは早急に改正しなければならぬと考えられます。ことに立会演説会や個人演説会の数をふやし、また文書の制限を緩和する。これらを選挙運動の中心とすることによって、候補者のトラック乗車の禁止も可能となるのであります。現在、選挙運動の大部分はトラックに乗っての街頭演説であります。候補者は、たすきをかけて、そうしてあの悪い道を走って、上下に振動させられながら選挙区をくまなく回らざるを得ません、あの選挙風景は、諸君よく御承知であります。あれは一体、人間の乗る車じゃない、貨物四輪車、貨物が乗るもの、それだから、貨物ならば無感覚だから何ともないが、人間の方は感覚がある。たまりません。そこで、長谷川峻君が、ああいうものに乗ってやったために、参議院の選挙でも衆議院の選挙のあとでも、死亡をした人が相当あると発表した。私はこの際、こういうようなやり方はすみやかに廃止すべきであると思うが、どうお考えでありますか。
 これを要するに、現行選挙法は法律として特異な発達を遂げたために、文書などの形式犯の規制が強化をされて、罰則があまりにも多くなっております。こういうような法制は、選挙取締りにおいて不公平を招きやすく、選挙違反は交通事故と同じだというような法律軽視の思想を生んで参ることになりました。私はこの際、形式犯の規制は緩和するとともに、選挙法を個人本位から政党本位に切りかえることを基本方針として、候補者が守られる選挙法に改正すべきものであると思いますが、総理並びに自治庁長官の御所見を伺いたいと存じます。
   〔小林孝平君発言の許可を求む]
#29
○議長(松野鶴平君) 小林君。
   〔小林孝平君登壇、拍手〕
#30
○小林孝平君 私は、ただいまの大谷贇雄君の発言に関しまして、議事進行の発言をいたしたいと存じます。ただいま皆様お聞きの通り、大谷贇雄君の発言に関しまして、参議院の議場は、いまだかつて見ざる異常なる雰囲気に包まれたのでございます。かくのごとき事態になることは、この演説前に多くの人が危惧いたしたところであります。はなはだ残念ながら、この危惧が現実となって現われたのでございます。われわれは、国会における言論は自由でなければならないというかたい信念に立ちまして、かねて、いかなる言論も自由に活発に国会において行われるべきであると主張いたしました。この根本方針に立って国会の運営を行なって参ったのでございまするけれども、今日の大谷贇雄君のこの発言のごときは、参議院の品位を失墜させ、権威を失わせたものといわなければならないのであります。私はこの際、この発言に関しまして、参議院議長は適切なる措置をとられんことを要望いたす次第でございます。(拍手)
#31
○議長(松野鶴平君) 議長といたしましては、速記録を調査の上、不穏当の用語は適当に処置いたします。
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 第一は、いわゆる中立政策に対して総理の所信いかんという御質問でございました。総理としての所信表明のうちにも明らかにいたしておりますように、現在の国際情勢を見ますというと、いわゆる東西両勢力に分れて共産主義国の一群と自由主義国の一群とが相対している状況でございまして、その緊張が緩和されることをわれわれは望んでおりますけれども、両者の主張は対立しておるというのが現状でございます。しこうしてわれわれは、政治の理想として、われわれはあくまでも自由主義、民主主義を堅持して、それによって日本の繁栄と国民全体の平和的生活を確保していくというのが、私どもの政治理念でございます。この意味からいって共産主義の考え方を私どもはとらないのでございます。こういう国際情勢裏にありまして、われわれが今日まで、そういう考えを持った同じような理想を持っている国々と緊密な関係を持って協力してそして国の繁栄と世界の平和に寄与するという方針が、今日まで堅持されてきております。私は、この考え方は決して間違っているのではないのでありまして、現実にわれわれ国民の大多数がこれを望んでおることであり、また、それが日本の進むべき道であると確信をいたしております。この意味において、今日唱えられている中立政策、これはいろいろな内容を持っておりますが、少くとも従来よりも自由主義国との関係を疎にしていくという考え方が中心であるということは言うを待たないのでありまして、これは、あるいはその極端なものは容共的であり、あるいは共産主義的な考え方もあると思いますが、そうでなくても、少くともわれわれが従来とってきた自由主義国との関係を、従来より疎遠にしようということをねらっている考えであることは、これは言うを待たないのでありまして、そういうことは、日本の繁栄と日本の安全と日本の平和の上からいって望ましくない、こういう考えで私は中立政策を絶対にとらないものでございます。(拍手)
 安保条約の改定について、十分に国民が納得するように、内容的においても納得するように、また、これを国民が十分理解するようにPRしろという御意見に対しましては、私も全然同感でございまして、従来も、あるいは国会においてできるだけ内容等も明らかにしてき、また一般の世論も聞いていくという態度であり、また、外務大臣も全国各地において有識者に、その内容、その必要等を唱えて説明しているのもそのゆえであります。ただ外交交渉でありますために、これを詳細に、交渉中に一切を明らかにするということのできないことは言うを待たないのであります。従って私は、方針や国民の重大な関心事となっているような大きな事項につきましては、従来も相当に国民の世論を聞くように努めてきておりますが、今後正そう努力して、国民の理解と協力を求めるようにやって参りたい、かように考えております。
 日中貿易の関係につきましては、従来私がしばしば申し上げております通り、今日の状況から申しまして中共政府を承認し、これとの間に政治関係を樹立するということは、日本の立場及び国際情勢から、まだそういうことができない。そこでわれわれは、従来のように政治と経済とを分けて通商関係を増進していくことが両国のためであり、また、そういう積み重ねをしていくことが、友好関係を深めていく上から望ましいという、従来考えておりますごの方針を、私どもは現在も堅持しておるのであります。
 次に、経済の問題についての御質問でありましたが、言うまでもなく経済の問題は、変動をなるべく避けて安定成長を考えていかなければならない。ことに日本の人口問題の上から申しますというと、雇用の問題が重大であり、完全雇用を目標とした経済の拡大を、われわれは計画的に、安定した基礎に、達していくということが必要であります。
 最後の選挙法の問題については、いろいろな御意見もありましたけれども、私は、これらの問題については慎重に各方面の有識者の意見を聞いて扱うべきものであり、また、この制度の上においても研究すべき問題があります。あるいは運営の問題におきましても、あると思いますが、そういう意味において慎重に検討したいと思います。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手]
#33
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまの大谷委員の中立主義、安保条約、日中問題等については、すでに総理が詳細答弁されております。私は全く総理と同じ考え方を持っておりますので、御了承願いたいと思います。
 なお、安保条約のPR活動等につきましては、当事者として、できるだけ国民の理解を深めて参りますように努力して参りたいと存じております。(拍手)
  [国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(佐藤榮作君) 経済成長の点についてのお尋ねでございました。ただいま総理からお答えいたしましたように、政府は一貫してわが国経済の安定成長をはかることを、政策の基本にいたしております。三十二年に想定いたしました経済五カ年計画、これもこの観点に立って樹立いたしたものでありまして年率六・五%の成長率を期待しておりますが、今日までのところ、おおむねその線を確保いたしており、順調に成長発展していると、かように考えております。雇用の増大と国民福祉の増大をはかるためには、経済成長の度合いは高ければ高いほど望ましいのでありますが、御指摘にもありましたように、あまりに性急に経済成長を推し進めていきますと、いろいろり弊害等も生ずる危険がございますので十分これらについては留意いたしまして、かような点についての万全の対策を立てまして、安定的成長をこの上ともはかっていく考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣石原幹市郎君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(石原幹市郎君) 最近行われました各種の選挙の結果にかんがみまして、さしあたり大別して次の三つを中心に検討を進めていきたいと思っております。先ほど御例示になりましたような問題は大体含まれておると思うのでありますが、一つは選挙運動に関する制限規定の合理化の問題であります。次は政党の政治活動の規正についての合理化の問題、さらに泡沫候補、重複立候補の防止の問題、これらを中心に検討を進めていってみたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(松野鶴平君) 大竹平八郎君。
   〔大竹平八郎君登壇、拍手〕
#37
○大竹平八郎君 第三次岸内閣成立によりまして、昨日総理の所信表明がありましたが、この際、私は無所属クラブを代表いたしまして、総理を初め関係閣僚に対し、主として経済問題を中心に、その他若干の質問をいたしたいと存ずる次第であります。
 第三次岸内閣は、その特徴といたしまして、経済関係閣僚の強化と官僚出身閣僚増加ということにあるようであります。それだけに、経済政策に関し詳しい方針が示されると思ったのでありましたが、表明せられました所信はその期待を全く裏切るものであります。
 まず最初にお尋ねいたしたいのは、岸内閣はいかなる方針によって完全雇用の達成を期するかという点であります。先般、人口審議会から発表せられました人口白書によりますと、総人口の増加は鈍ってきましたが、過去における高き出生率のために生産年令の人口は当分激増する傾向にあります。従って、職業につくことを要する労働人口は、昭和三十五年から四十年の期間におきまして、毎年平均百万人をこえる増加になり、年率二・二%で、戦前のまさに二倍になっておるのであります。この労働人口の増加はそれだけ生産力を増すことになり、同時に消費力も増すことになって、経済拡大論者にとりましてはきわめて歓迎すべき現象であります。しかし、もしこれを生産力化することができず、失業させるとするならば、著しき生活不安と社会不安を起すことを銘記すべきであると思うのであります。
 今や技術革新、オートメーションの勢いが各方面に浸透いたしまして生産の増加に当り、人力に期待することがますます少くなってきているのであります。しかも、そうしなければ生産性を向上させることができず、国際競争力から脱落をしなければならない。この矛盾をいかにして解決しようとするのか。生産する力と消費する力と、二つの力を持っている労働力人口をいたずらに遊休人といたして放置することなく、経済機構の中にフルに動員して完全雇用を実現し、もって経済の拡大をはかることが望ましいと思いますが、この点につきまして岸総理の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
 次に、農家の二、三男対策についてであります。日本の過剰人口は俗に農村に停滞しているとまで言われるほど農村人口は多いのであります。農家も最近積極的に過剰人口を排除しようと努めており、そのために人口の都市増加が激しくなっていることは御承知の通りであります。しかし都市においてもそれほど就職がなく、農家の二、三男は、いかにして将来の生活設計を立てるかについて心配をいたしております。福田農林大臣は、過剰人口を他産業に吸収させることが先決問題だと言っております。そして、それは流通部門でなく、なるべく第二次産業すなわち工業部門に吸収すべきだと言っております。われわれも、現在流通部門すなわち第三次産業が、わが国ではいかにも膨張しすぎているのではないかということを心配しているものであります。現実を見ると、先ほども述べたように、第二次産業では合理化や技術革新が盛んで、人口吸収力は著しく減退し、労働力の多くは第三次産業たる商業やサービス業に吸収せられているのであります。果して岸内閣は第三次産業から第二次産業へというような政策が実現できるかどうか、まことに私は疑わしいものと信ずるのであります。稲田農相によれば、農家の過剰人口を解消することによって農家の経済規模も拡大するというのでありますが、そうなれば当然農業人口は減少するのであります。単に二、三男のみならず積極的に農家人口を減らしていくとすれば、他産業特に第二次産業の人口吸収力はかなり大きくならなければならない。それをいかに実現するか、この点、福田農林大臣並びに池田通産大臣にお尋ねをいたしたいのであります。
 次は首都圏の整備についてでございます。増加いたしまする労働力人口の大部分は御承知の通り大都市に集中をいたしております。ことにそれは東京都及びその周辺に集まっている現状であります。これはわが国の経済が商工業化することの当然の帰結でありますけれども、東京都の膨張はあまりに急激で、都市計画も緑地計画も間に合わす、膨張したあとを追いかけて種種の計画が尻ぬぐいをしている格好であります。従って政治と計画の失敗の歴史と言ってもあえて過言ではないのであります。そうして上水道の欠乏と下水の過剰に悩んでおります。われわれは前国会において水質汚濁を防止するための二法案を成立いたしましたが、その当時これによって隅田川の水が私どもは浄化されるだろうとは思っておりません。ところが東京都は東京湾を埋め立てて海にさらに拡張しようとする計画がございます。国土が海面にまで伸びていくことはけっこうなことではありますが、それが依然として汚ない東京都の延長であることは好ましくないのであります。ことに、一九六四年には東京では待望のオリンピックが開催されることは、すでに御承知の通りであります。この国際的行事に、東京都が、日本の都市や町村が恥を世界にさらすことであっては全くならないのであります。産業の発展に伴って都市の生活環境を整備することはきわめて重要でございます。その具体的対策があるかどうか。この点について建設大臣と通産大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。
 次に貿易問題についてでございます。増加して参りまする労働人口に職を与え、生活程度を高めていくことが、現在のわが国に課せられた経済政策の最重要の課題であります。その際わが国のごとく資源の少い国にとりましては、貿易の役割は実に大きいものと言わねばならないのであります。資源の大きさは、あるいはまたその小ささは科学技術の進歩によって変化するもので、科学技術が進歩をいたしますならば、今まで資源と思われなかったものが新らしく重要な資源になることもあるのであります。その意味で科学技術の振興はきわめて大切ではありますが、現状では貿易なしに日本経済の拡大を考えるということはできないのであります。その貿易の世界的傾向といたしまして、現在自由化という問題が叫ばれております。皆様御承知の通り、輸出輸入をできるだけ自由にし、為替管理や輸入制限などを撤廃していくことは、経済の必要とするように物資の動きを活発にすることであり、世界全体としての経済的福利を増進することになると思うのでありますが、わが国のように各種の貿易管理が行われている国にとって、貿易の自由化はすこぶる大きな影響を各方面に及ぼすことを考えなければならないのであります。その一つは、輸出競争の激化ということであります。わが国の産業の中には競争力の弱いものが多く、ことに、最近発展しつつある重工業、化学工業には、従来からいたしまして、陸海軍を初めとして国の助成によって現在の地位を築き上げたものが少くないのであります。自由な国際競争にさらされた場合、その地位を保持し得なくなる危険というものが存在いたしておるのであります。世界的技術革新の波に対処して、よく自由化にたえ得るような体質改善を急速に実現するだけの用意があるかどうか、この点も池田さんにお伺いをいたしたいのであります。
 また、外貨割当のごときは、もともと外貨の不足していた時代に、この外貨をいかに有効に利用するかという点に目標があったのであります。自由化の線に沿うて、漸次これをAA制の拡大の方面に進ませるとともに、製造業者割当から漸次これを商社割当に変更していくべきが当然であると思うのでありますが、これに対するお考えもお聞きいたしたいのであります。
 また、輸出においては、単に外国との競争が激化するのみでなく、国内業者の競争が激しくなり、そうしてメーカー、商社とも、日本人同士で血みどろの競争を続け、互いに品質を下げ、価格を安くし、その結果、せっかく拡大した海外市場から締め出されようとしている実例があまりに多いのであります。政府はこれに対処するために、さきに輸出入取引法、輸出検査法を作って過当競争の弊害防止と品質向上に努めましたが、効果は必ずしも期待ほどではなかったことは、御承知の通りであります。そのために、前国会では、経機械の輸出について前例のないほどきびしい統制立法をあえてしたほどでございます。政府は、これに対し、やはり今後も各種の統制立法を実施していく方針であるか。ことに、前国会で審議未了になりました輸出入取引法の改正案を次の国会にお出しになる計画であるかどうか、これも伺いたいのであります。
 次に、エネルギー対策についてであります。わが国の商工業化について、エネルギー資源の重要なことは申し上げるまでもございません。わが国は明治の初めには石炭はむしろ輸出国でありました。その後、水力電気だけは豊富だといわれた時代もあったのであります。しかし、現在のように、日本が商工業立国をなす時代に入っては、石炭も水力電気も高過ぎるという時代に相なってきております。電力については、水力を主とする時代から、さらに新鋭火力を中心とする時代へ移っております。いわゆる火主水従へと重点が移行しているのであります。石炭について申しまするならば、重油との競合が問題になってからすでに久しいのであります。従来、政府は、国内産業の保護、外貨節約、あるいは労務対策等の見地から、重油ボイラーの規制あるいは石油輸入の抑制等の措置をとり、いわゆる炭主油従政策、すなわち石炭優遇策をとってきたのであります。これに対し、産業界には、御承知の通り、経済採算の観点から、政府の方針に批判的の者がかなりあることは、御承知の通りであります。もし石炭と石油を自由に競争させるということになりますれば、最近の世界的傾向からいたしまして、石炭は完全に斜陽産業と化するおそれがあるのであります。特にわが国の石炭業界は、自然条件には恵まれておりません。しかし、石炭鉱業がわが国経済に占める重要性を考えまするときに、これを放置することは許されないのであります。現在不況産業と称せられるもので、石炭産業ほど深刻なものはないのであります。経済審議会のエネルギー部会とか、民間の総合エネルギー対策懇談会等で対策が講じられております。しかし、石炭鉱業については、事の重要性にかんがみまして、政府は、この際、エネルギー対策について官民合同の一大審議会を設置いたしまして、生産者、消費者あるいは学識経験者をもって原子力時代にふさわしい総合エネルギー対策を考慮すべきであると思うのであります。ことに、その中で石炭がいかなる地位を占むべきかにつきましては、労働者、経営者の意見をも十分に徴して可能性のある政策を樹立実行すべきであると思うのでありますが、通産大臣の御所見をこの際承わっておきたいと思います。
 次に中小企業の問題についてであります。完全雇用を期するために中小企業に課せられた使命はすこぶる重大なことは申し上げるまでもないのであります。大企業の人口吸収力が伸びず、農業の拡大余力がないといたしまするならば、勢い中小企業において収容するのほかはないのであります。現在の状態はまさにそのように動いているし、また、政府の経済計画もそれを予想いたしております。そのために、中小企業には、潜在失業ともいうべき、低い所得に甘んじている者が多数従事することになっております。過当競争もいたずらに激化をいたしております。日本経済は、中小企業の活躍すべき分野が多くあり、また、新しい中小企業の分野も常に開けてきているのであります。中小企業が合理化され、大企業との格差を縮小し、従業員の福利が増進するようになることを、私どもは心から切望するものであります。中小企業については、ただすべき点があまりに多いのでありまするが、ここでは、ただ一点、組織化対策につきましてお尋ねをいたしたいのであります。それは、先年成立をいたしました中小企業団体の組織に関する法律におきまして、商工組合の設立を認めながら、その組合の設立が遅々として進まないということであります。それは、設立の要件として、業界が不況にあることが前提要件になっておりますが、法案審議の際にも問題になったように、組合の設立そのものは簡単に認めてもよいのではないか。組合が設立をせられて、実際に調整事業を行うときには、厳格に審査してその可否を決定すればよいので、組合を設立するだけでは、他の関係業界や消費者に影響することは少いのであります。そうして、組合を設立することによって業界の意思も疎通し、業界の改善について相互に考える場所が与えられるのであります。中小企業は元来規模の小さいものであるから、それが団結することによって初めて他に対等に行動するところの力を持つことができるのであります。経済の民主化の線に沿うことにもまたなるのであります。政府は、団体法を改正いたしまして、組合結成だけは容易にする考えはないか、意見を伺いたいのであります、
 次は独禁法の問題についてでございます。中小企業は、組合を作らなければ対等に話し合うことができませんが、大企業は単独でも市場を支配することができるのであります。しかるに、今日はカルテルの横行している時代である。独禁法があって、不況カルテル、合理化カルテルのほかは禁止されているはずでありますが、実際には各種のカルテルが存在をいたしております。不況のカルテルとして発生をいたした鉄鋼公販制度が現在の鉄鋼価格の回復した際にも存続いたし、公販価格を二千円も四千円も引き上げ、独占的性格を如実に発揮いたしていることは、関係業者のひとしく認めているところでございます。カルテルには、必ずしも悪い面ばかりでなく、むろんよい点もございます。たとえば、過剰投資をやめて資金効率を高めたり、あるいは価格の暴騰暴落を押えるという効果はあるのでございまするが、しかしながら、カルテルが独占価格の上にあぐらをかいて、合理化を怠り、消費者や関係業者を苦しめているというに至っては、われわれは見のがすことができないのでございます。政府はも今後独禁法を果して再び提出するの意思ありやいなやを、岸総理大臣に特にお伺いをいたしたいのであります。
 さらに最後に、私は佐藤大蔵大臣に伺っておきたいのでございますが、先年池田大蔵大臣が就任をせられましたときに、一千億円減税、一千億円施策と称してきわめて大胆な積極政策を唱え、神武景気に拍車をかけたことは、御承知の通りでございます。国会が終ると、直ちにそれが手直しを要することになり、金融を引き締め、輸入を大幅に削減する等のことがございました。池田通産大臣は、就任と同時にいろいろ抱負を述べておられました。また、池田さんの実力から見まして私はその抱負が実現すると思うのでありますが、あなたは今回も依然として慎重論を唱え、急速なる拡大はむろんこれを警戒するとのことでございます。両実力者必ずしも私は対立をしているとは申し上げませんが、われわれの受け取り方は、若干の相違があることは事実であるのでございまして、この際、特にこの点に関しまして大蔵大臣の所見を明らかにしていただきまして、私の質問を終りたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一は、雇用問題に関して、いわゆる完全雇用を達成するのに対する方策をどう考えているかという御質問でありました。先ほども一言この問題に触れたのでありますが、日本のこの労働人口のふえることから考えましてわれわれが完全雇用を達成するためには、経済全体の安定的な拡大成長を考えていかなければならぬことは言うを待たぬと思うのであります。一面において、最近の科学技術の発達やあるいはまたオートメーションが一般的な生産事業に取り入れられるというようなことから、いろいろな変化が出てきております。しかも、日本のこの生産人口と申しますか、労働人口の増加は、ここ数年の間に相当御指摘のように多数に上るのでございます。これらを考えて経済全体について従来われわれが長期計画を持っておりますが、こういう事態を十分取り入れてそして日本の経済を安定的に完全雇用に向っての必要な拡大をどうしてやっていくかということが、われわれに課されている課題であると思います。日本の経済の上から見まして輸出振興ということが特に重大であることも、御指摘の通りでございます。しかも、この問題に関しても、あるいは御指摘にありました貿易自由化等の新しい国際情勢等もにらみ合わせていかなければなりません。さらに、こういう経済の拡大の計画は、それを裏づけるところの財政計画や、あるいは日本の海外に対する経済協力等も含めた、国際収支の計画等も総合的に立てる必要があると思います。こういう各般のことを取り入れた総合的な経済の安定的成長、それはわれわれが現在持っている五年計画を上回るところのものを策定することが可能であり、また必要であるという見地に立ってわれわれは長期計画を立て、目標として完全雇用を達成していきたい、かように考えております。
 次に、私に対して特に独禁法の改正を提案する意思があるかどうかという御質問でございました。独禁法の改正につきましては、これは御指摘のように、いろいろの経済的影響があるのであります。一面において、それがいわゆる独占価格によって国民生活に脅威を与えるという悪い面があると同時に、一面、経済界の安定的な状態を作り上げる上からいって、その効能もあることは御承知の通りであります。これらをどういう程度にしたらいいかということにつきましては、財界はもちろんのことこの独禁法に対する見識を持っておられる有識者を集めまして、政府としては検討して一応の案を得てその成案に基いて立案し、過般国会に提案をいたしたのであります。その際に、あるいはこの改正が農業方面に及ぼす影響であるとか、あるいは中小企業方面に及ぼす影響とか、いろいろと論議もされ、また議論が起っておることは御承知の通りであります。私はこれらの関係を十分に検討し、調整した上におきまして、やはり日本の経済の先ほど申しておるような安定的成長を考えていく場合におきましては、現行独禁法に対してある種の修正を加えることが適当である、こういうふうな考えのもとに、さらに従来の案を、その後におけるところの変化や各方面の意見等を十分に考えて調整した上において、成案を得たならばこの国会に提案して御審議を求めるつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。
 経済が安定して発展をいたしますことが経済政策の中核をなすべきものである、さようなことから、政府といたしまして長期経済計画を策定することをきめておることは、御承知の通りであります。ただ、その間におきまして問題になりますのは、各産業部門の間におきます経済発展のための所得の増加に不均衡があってはならぬという問題であります。かような見地から申しますると、第一次産業であるところの農家、農業所得がどうもおくれがちな傾向があります。私はこの経済発展計画の過程におきまして農家の所得においてこれがおくれがあってはならぬということを考えながら、その対策をこの計画に織り込み、これを実現するということが、今後の農政の基本問題である、かように考えている次第でございます。それがためには、農家の生産性の向上にさらにさらに努力をする、こういうことは、もちろん中核の問題として必要でございまするが、しかしこの問題は、農業政策自体だけの拡大では解決できないと思うのです。最も問題となるのは、御指摘の二、三男の問題である、この二、三男の問題の解決ということは、ただいま総理からもお話がありましたように、日本経済を今後大いに発展させるというこのワクの中においてのみ解決されるのだというふうに考える次第でございまして、私は農林大臣ではありまするが、さような見地から、さらに日本の長期経済計画の策定推進には大いに参与いたしまして私の仕事を実現いたしていきたい、かように考えている次第であります、(拍手)
   〔国務大臣村上勇君登壇、拍手]
#40
○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。
 大都市、特に東京におきましては、人口の過度集中により、種々の弊害が生じつつありますことは、御指摘の通りであります。このような情勢に対処するためには、既成市街地の整備を促進するとともに、人口の集中を抑制する措置を講じなければならないと思います。そこで、去る三十一国会におきまして成立をみました首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律、これによりまして、大規模な工場あるいは大学等の新設を制限する一方、衛星都市を育成して、ここに人口及び産業を吸収定着せしめまして、必要な施策を講じつつあるのでございます。たまたま御質疑の通り、昭和三十九年にはオリンピックの東京大会が決定せられましたので、政府といたしましては、首都圏整備に関する既定計画とにらみ合せながら、この大会の競技施設を初め、付帯施設、さらに関係公共諸施設として、首都高速度道路、一般街路、駐車場、公園等の整備健進についても具体案を緊急に策定すべく、目下準備中でございます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(池田勇人君) 各般の問題につきまして最も適切な御質問を受けました。私は就任早々でございまするが、根本的な考え方についてまずお答えいたし、また委員会等で詳細にお答えさしていただきたいと思います。
 お話の人口問題、ことに農村あるいは中小企業の二男、三男の方々に職を持ってもらう、この問題でございまするが、私はやはり日本経済の持っていき方につきましては、戦後われわれが歩んできたこの施策を十分参考にしていかなければならないと思います。それには、やはり根本が、いわゆる国民生活の安定向上と完全雇用に向って邁進する。われわれは前からこういう考えで参りました。国民の協力を得まして、生産が増強し、生活も向上し、そうして大した失業問題も起らなかったのでございます。元はやはり生産の増強にあると思います。ことに第二次産業の生産の増強でございます。で、資源を外国から輸入いたしまする関係上、当然、輸出を考えなければなりませんが、ふえゆく生産物を合理的に使っていく経済基盤の強化、あるいは生活水準の引き上げ等に合理的にこれを使用していくということも、生産増強に最も必要なことであるのであります。輸出あるいは合理的消費、そうしてまた将来に向って海外投資、こういうことを私はやっていかなければならないと思います。従って、大都市の問題もございまするが、第二次産業を合理的に全国に配分し、そうして農村の二男、三男あるいは地方の中小企業の方々に職を与えるようにしなきゃいかぬ、こういう考えでいっておるのであります、
 なお、最近の貿易の自由化に伴いましてまた、ことに欧州のああいう状態から見ましてわれわれはこの自由化問題につきましては相当考慮しなければなりません。もちろん理想は自由貿易、そうして為替の自由でございます。しかし、戦後十数年間いわゆる為替の統制にマッチして日本の産業構造ができ上っている部面が多いのであります。だから今の既成の産業構造の改正と自由化とをうまく調節していかなければならない。これには相当の覚悟と準備を要することであると考えているのであります。しかし、あくまで貿易の自由化、為替の自由化はわれわれの理想とするところであります。
 なお、輸出入取引法あるいは独占禁止法の問題につきましては、ただいま総理がお答えになりましたように、経済の実情から見て必要性は認めまするが、それにまた走り過ぎて摩擦を起すことも避けなければなりません。私はこの点につきまして今後十分調査いたしましてそうしてでき得れば、みんなにいいような改正をいたしたいと考えておるのであります。
 なお、エネルギーの問題でございまするが、御承知の通り、石炭は今最も不況産業といわれております。いろいろ問題がございます。生産面におきまして相当労使考えなければならぬ問題が多々あり、また、政府の施策といたしましても、石炭鉱業の各面における重要性につきまして相当考慮しなきゃならぬと、今努力しておるのでありまするが、何分にも石炭は産業の発達に伴いまして競争資材が多くなって参りました。また、本年は特に豊水のため数百万トンの石炭が要らなくなったという関係で、その不況の度を加えておるのでございまするが、石炭鉱業の重要性から、今後十分この問題につきまして考えていかなければならないと思います。なお、エネルギーの問題につきましては、総合機関は経済企画庁の方で設けられまして、いろいろ研究を進めておられるような状況でございます。
 中小企業対策につきましては、お話のごとく、金融の問題、組織化の問題あるいは体質改善に対する指導の問題等々がございます。昨年、団体法が制定せられまして、商工組合もスタートいたしましたが、御承知のような経済状況でございます。まだ十分徹底していない点がございますので、今直ちに団体法を改正しようとは思いませんが、商工組合というものは中小企業の発展に非常に必要な制度でございます。様子を見まして、これが普及をはかるようにいたしたいと考えているのであります。(拍手)
  [国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(佐藤榮作君) 経済発展の理想は、経済の安定成長をそこなわない範囲で、できる限りその成長をはかっていくというところにあると、かように考えております。在来からもその考えでございますが、今後もこの考えを貫いて参るつもりでございます。(拍手)
#43
○議長(松野鶴平君) 質疑は、なおございますが、これを次会に譲り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 次会は明日午前十時より開会いたします。
 議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十八分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
ソース: 国立国会図書館
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