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1959/06/27 第32回国会 参議院 参議院会議録情報 第032回国会 本会議 第5号
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1959/06/27 第32回国会 参議院

参議院会議録情報 第032回国会 本会議 第5号

#1
第032回国会 本会議 第5号
昭和三十四年六月二十七日(土曜日)
   午前十時二十六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第五号
  昭和三十四年六月二十七日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 第二 常任委員の選任
 第三 常任委員長の選挙
    ━━━━━━━━━━━━━
#3
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第三日)。
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。椿繁夫君。
   〔椿繁夫君登壇、拍手〕
#5
○椿繁夫君 私は、参議院選挙後の臨時国会の開会に当り、社会党を代表して、主として国民生活と民主主義の問題について質問をいたしたいのであります。
 一昨日、首相の所信表明を聞きましたが、そのあまりにも形式的で無味乾燥であったことを、国民とともに、まことに遺憾に存ずるものであります。(拍手)岸内閣は、今次参議院の通常選挙に当り、「繁栄する経済、実現する福祉国家」をうたい文句にし、総理の所信表明においても、国民生活の向上と雇用の増大を自賛しておられました。そこで、私のお聞きしたいことは、繁栄する経済と国民生活の向上のあり方についてであります。
 今日、なるほど景気は上昇しておりますが、それは一部の限られた人たちで、国民の大多数は恵まれておりません。最近、警視庁でも、もてあましているような凶悪犯罪や一家心中の続出は、失業保険の受給期間の切れた失業者の増加その他による生活不安が原因であると、こう申しております。一方において、独占資本は目立って強化して参り、利潤も非常に増大しております反面、国民生活水準は、戦前の住宅、被服など個人資産を考慮に入れますと、ほとんど同じくらいであります。そればかりではありません。私がここで特に総理にお聞きしたいのは、テレビや消費文化の発達ではごまかし切れない国民生活の不安、人心の荒廃そのものについてであります。つまり、経済がよくなっても、人心は荒廃し、生活不安がつきまとうのは、何ゆえであるかということであります。政府が先ごろ発表した人口白書は、労働力過剰の状態について、戦後の労働力増加の大部分は、第三次部門、特に零細な商業やサービス業に吸収されている。製造工業でも、増加労働力は大企業よりも中小零細企業に片寄って収容されている。余剰人口の多くは農村人口として滞留している。このように、政府の白書みずからが、希望のない国民生活の惨状を如実に訴えているのでありますが、この雇用問題をどう解決するか。私は、それは政府のいつもの答弁のように、完全失業者はこれこれであるというような形式的な答えでは片づかない問題であると思うのであります。政府が道徳教育を押しつけても解決し得ない三悪の根源が、総理の言われる国民生活の向上と雇用の増大の中から続出しているのが実情であります。政府は、いかにしてこの問題を根本的に解決しようとしておられるのか。所信を総理に伺いたいのであります。
 さらに、政府は、長期経済計画でこれこれと説明されるでありましょう。経済を拡大することが第一だ、それには輸出競争に備えることだと申されるでしょう。ところが、政府の白書は、それを裏切る重大な事実を物語っています。すなわち、大工場の合理化、近代化が進むにつれて、白書でも、労働力吸収はみじめな中小零細企業に多く、大工場では相対的にはふえていないと申しております。最近でも、炭鉱労働者に合理化攻勢の波が押し寄せようとしており、化学産業、鉄鋼産業でも、オートメーション合理化が、今後労資間の対立を激化させて、社会不安をことさらかき立てようとしているのであります。事実は、政府の言っていることとは全く反対なのであります。輸出拡大のための合理化は、反対に失業と社会不安を新たに増大しつつあるのです。この根本的な食い違いをいかに考えておられるか。政府は、これらの合理化問題について社会不安を未然に防ぐ方法についていかに考えているかをお聞きしたいのであります。
 さらに具体的には、経済拡大まで待て、そのためには、輸出の増大、経済の体質改善、すなわち合理化だと、うそがありありと感じられるような説明ではなく、日本経済の持つ二重構造を解決するために、農業と中小企業引き上げのためにいかなる対策や計画を持っているかを聞きたいのであります。
 次に、特に約一千万人に及ぶ希望のない低所得階級層に対して、ただ単なるわずかの生活保護ではなくて、生活職業面から抜本的に引き上げる対策、零細企業向上の政策を具体的に聞きたいのであります。さらにこの際、つけ加えてお聞きいたしたいことは、本年五月下旬から六月にかけて、北関東から東北諸県にわたって、ひょうの被害が多うございました。ことに六月十五日のひょうは、鶏卵大のものが各地に降りまして、ために、茨城県のタバコ、各県における麦など、農作物の被害は三十億をこえているといわれております。群馬県の勢多郡新里小学校のごときは、一校にして六百七枚のガラスが割れたということを報告いたしております。こういう被害が続々と報告されているのにかかわりませず、政府は政変にうき身をやつして、何らこれらのことについて緊急なる対策、措置を今日までとっていない。天災融資法の発動のごときは、こういう問題に対処するために設けられているものではないかと思うのでありますが、政府の御見解を承わりたいのであります。
 中小零細企業の向上については、あるいは協同組合に組織化して、親企業と団体交渉権を持たせるとか、また、共同信用や共同施設など、いろいろ根本的なことが考えられるが、当面、安い金利で長期融資が保証されれば、経営は非常に楽になる、ところが、政府、与党の行なってきた中小企業政策金融は、ほとんど中資本家本位であって、ほんとうに零細資金の必要な層は、信用力がないからといってほうって置かれているのが実情であります。反対に、国民の零細な郵便貯金や厚生年金積立金は、合計すると一兆円をこえておりますが、この中で、使用のできる資金のほとんどが、大蔵省資金運用部を通じて、大企業、独占企業に集中されているのであります。しかも、年六分というきわめて低い利子で、一口何十億という長期低利資金が貸し出されている。さきに厚生省は、これらの国民の零細な預貯金が大蔵省に独占されているのに不満で、福利厚生にも使えと主張して問題になったが、その後一向に改善の跡を聞かないのであります。一体、結核対策はどうなっているんですか。精薄児童の問題は一体どうなっているんですか。私は新しい厚生大臣の奮起を特に望むものであります。政府は、この際、この中の数百億円以上を、国民金融公庫を初め、中小企業金融公庫、商工中金の資金ワクを拡大することに回す意思はないか。この点を大蔵大臣から明らかにせられたいと思います。経済政策は、ひっきょう、国民生活の安定、希望と幸福のためにあるのであって具体性に乏しい冷たい経済拡大論では、国民生活の荒廃と三悪の根源は拡大するのみであります。この観点から、池田通産相にも誠意ある回答を求めるものであります。
 さらにILO条約の批准について、わが党は、先ごろ政府に申し入れをいたしました。ILO条約八十七号の批准問題は、すでに今まで数々の結論や勧告が出ておるにもかかわらず、政府が全逓の役員改選を前提条件として批准を延ばしてきたものであります。今回のILO総会においては、公労法、地公労法の規定が、わが国がすでに批准しているILO条約九十八号にも抵触していることが明らかに指摘されたのであります。昨日、松野労働大臣は、衆議院で答弁をして、ジュネーブの政府代表から、条約九十八号に抵触しているという非難を受けてはいないと答弁されたようでありますが、ジュネーブの原口労働代表から昨夜連絡がございまして、理事会の議長は、河崎公使が立候補を断念してスエーデンのマシミック代表が選ばれたとのことであります。さらに、労働側グループは昨日会合を開きまして、結社の自由に関して国際的な批判を受けている限り、その国からは理事会の議長は出さないということを申し合せいたしております。この状態で政府の態度が変らない限り、日本の代表は、半永久的に、名誉あるILO理事会の議長の席につくことはできないものと思われます。わが国の国際舞台における信用を回復するためにも、小さな感情にとらわれず、八十七号条約の批准手続をとる英断を政府に私は望みたいのであります。
 さらに、いま一つは、最近労資の紛争について目立っておりますことは、会社側が暴力団を雇い入れ、あるいは偽装工場閉鎖を行なって、従業員を職場から締め出す。ここに暴力団がトラブルを起す、けが人が出る。警察はこれを黙って見ておって、何らの対策も講じない。ために争議は長期化しております。このように、保障されておりますところの団結権というものが著しく侵害をされているのであります。最も近い機会に、ここで名前を申しますから、労働大臣は真相をお調べになって明らかにしてもらいたいと思います。東京のメトロ自動車、主婦と生活社、秀工社、山葉精機、田原製作、光神社、興和工業、高山精密、第一電機、成光電器、埼玉県の冨士文化、千葉食品、私が聞いているだけでも、これだけ警察力が介入し、暴力団が入って、そうして団体交渉権、団結権等を著しく侵害しつつあることが最近特に目立っております。松野労働大臣、就任早々でまことにお気の毒でありますけれども、早急に取り調べの上、本国会に報告されることを望みたいと思います。
 次に、民主主義のルールについて警告をしたいのであります。岸内閣が、このたびの選挙で、言語に絶した白昼公然たる利益誘導、権力の示威を公然と許したばかりじゃない、あなた自身かおやりになっているのだ。特にはなはだしいことは、今なお新聞面にも毎日のように出ております買収、供応の最も忌むべき事件が、選挙のたびごとに増大し、蔓延する傾向にあります。不正な手段と方法で選挙が行われれば、それはもはや民主主義とは言えません。ルールがあって初めて勝負はきまるのであります。さすれば、そのような選挙で選ばれた国会は形式だけの国会となる。岸首相は、三悪追放はそっちのけで、しきりに議会外の大衆行動を暴力と言い、議会を守ると言うか、真に議会主義を守るのであれば、そうした金力、権力という、事実上の無形の暴力を断じて許すべきではないと思います。(拍手)直ちに根絶すべきであります。民主主義のルールを守る誠意を示して、議会を国民に心から信頼させることの方が根本であります。一人で数千万円、東京の知事で七億円などと言われているのでは、当選をしても、隠然、公然と政治家や知事の汚職が発生することは、これは当然予想されるのであります。しかも、このような金のかかる選挙では、立候補できる者は、もはや資産階級の代表か、または組織団体の代表以外にはあり得ないということになり、真に望ましい、学識豊かな、貧乏な学者などは、政治には発言できなくなるでしょう。政治の質は落ち、国家最高の主権そのものが堕落してしまう結果となることを私はおそれます。この際、与野党ともに、今こそ根本的に反省すべきときであると思います。
 そこで、わが党は、選挙中、選挙公営の拡大その他の改善策を自民党に提案をした。自民党はこれを受けて話し合いの段階に入っているが、その後一向この緊急を要する重大問題について推進した話を聞いていないが、政府責任者としてこれをいかに考えておられるが、特にお聞きしたいのであります。最も緊急な問題、つまり選挙公営の拡大についてのみを問題にしてまずこれを解決する必要があります。出納責任者が違反を犯した場合の連座制の強化をする必要もございます。現に、二回にわたって去年とその前と二回にわたって、買収、供応を責任者がしたために、いまだに夫婦連れで姿をくらましているような人が、現内閣の閣僚に入っているのであります。こういうことを改めなくて、どうして公明選挙を国民の前に言うことができますか。出納責任者が違反を犯した場合の連座制の強化、さらには、現行選挙法の定員は、昭和二十一年の人口調査が基本となっております。戦後の復興と相待ち、人口の移動があり、実情に合わぬはなはだしきものでありますから、すみやかに別表を改正して、民意が平均に公正に議会に反映できる措置を講ずべきであると思います。わが党としても、合理的な選挙制度の改正については準備をいたしておりますが、議員各人に利害関係の深い選挙法の改正は、現内閣のごとき弱体をもってしては、とうてい望みがたいと思いまするから、とりあえず以上申し述べたような諸点の改正だけでも急ぐべきだと思いますが、総理並びに自治庁長官の方針を承わりたいのであります。
 さらにいま一つは、正副議長の党籍離脱の問題についてであります。さきに院議は決しましたけれども、社会党の要請を拒否して、ついに参議院の議長、副議長を独占し、党籍離脱には応じなかった。これは、実は、自民党が、二大政党の円満な民主主義政治などということは口ほどにも考えていない、保守独裁の思想の現われであると私は思います。ここで総理に伺いたいのでありますが、三月三十日、本院の予算委員会において緑風会の森八三一君の正副議長党籍離脱の御質問に関連して、総理はこのようにお答えになっております。よもやお忘れではございますまい。「私は先ほど申し上げておるように、この議長、副議長の党籍離脱の問題につきましては、なお党内の機関に十分に諮りまして、その実現に向って今後も努力するということを申し上げておるのでございまして、今日までまだ実現いたしておりませんことは、いろいろな、参議院には参議院のお考えもあることでございますから、なおその点は十分に努力をいたして参りたい」、と答弁をしております。両党首会談の申し合せ、その結果、森君からこのような御質疑があって、総理は答弁をされたのであります。ところが先般の院議ではこういうことが踏みにじられてしまいました。そこで総理にお尋ねをしたいのでありますが、両党首会談の公約を実現できなかった。国会で総理は、お約束になった党籍離脱について、一体どういう努力をされたのでありますか。総裁であるあなたの言われることを、党員松野鶴平君、平井太郎君は、これを聞かなかったのですか。正副議長が党籍離脱をして、公正無私な議会運営をしていきたいということは、議会政治の理想であります。その理想を踏みにじられても、あなたの党は統制がきかぬのでございますか。このことを私は特にお伺いをいたしたいのでございます。
 最後に、沖縄八十万の同胞を代表して質問いたします。
 さきの参議院選挙のさなか六月十五日、米軍施政府が新らしい刑法並びに訴訟手続法典を高等弁務官布令第二十三号で公布しました。これには、日本を他国と呼び――総理よく聞いて下さいよ。この他国に対して情報その他の便宜をはかった者は、死刑または他の刑に処するとしているのであります。そのほか、かつてわれわれが米軍占領下において苦しみ呻吟しているような苦悩が、法令の中で、刑罰をもっておどかされているのであります。ちょうどそのとき外務大臣はアメリカ訪問中でございました。外電が伝えたのは、領土内の米軍基地に攻撃を加えられたときには一緒に戦う、ということは約束されたようでありますけれども、八十万の沖縄島民のこの苦悩を、祖国に復帰したいというこの熱情を、なぜあなたは代表してワシントンに迫るだけの勇気はないのか。まことに、どこの国の外務大臣であるかと言わざるを得ないのでございます。
 さらに、新内閣は前内閣とは全く異質の内閣であります。首相、蔵相、外相だけはかわっていないが、内閣を倒すべしと主張した池田氏が新内閣の大黒柱、三本足の一本であった河野一郎氏が岸内閣に協力せずと公言しております。昨日も曾祢君が指摘した通り、新安保条約は国民の意思に問うことが今となっては絶対であります。内容次第では戦争につながる民族の大問題であります。明らかに憲法に違反するものであります。こういうことは昨年の総選挙の争点とはなっておりません。いわば国民の意思はまだ聞かれておらぬのであります。しかも新閣僚の中には、池田さんを初め、条約改定に反対であった人がいるのであります。今こそ衆議院の解散を断行し、信を民意に問う時期であると思うが、首相の決意のほどを承わりたいのであります。
 以上をもって私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 最近の景気の上昇にもかかわらず、国民の大多数の生活は改善もされておらないし、向上もしていないという御意見でございますが、もちろん、最近の景気の上昇が、国民の各層に調和がとれてこれが浸透しているということは申し上げることはできないと思います。ただ最近の情勢は、御承知の通り、景気上昇の結果、三十三年度末の雇用の状況は、三十一年時代の好況時代よりも上回っている数字を示しております。また本年度の大学等の学校卒業者の就職の状況も好転いたしております。ただ、中小企業や農業等の部門で考えますというと、日本の産業構造の上からいいまして、そういう方面における施策を今後強力に行なっていく必要があることは言うを待ちません。なお、凶悪な犯罪等のあります事柄につきましては、私も椿君と憂いを同じくするものでありますが、これらについては、やはりその温床となるような社会的の環境の改善にさらに一そう努力をして参らなければならぬと思います。
 なお、農業の問題に関しましては、農業に関する基本問題の権威ある調査会を作りまして、私どもは将来、農業の所得が他の鉱工業に比較して悪くなっているこの格差をどうして縮めていくべきか、また農村における過剰の人口をどうすべきかというふうな問題に関しまして、さらに根本的な検討をして、これに対する対策を立てなければならぬと思います。
 中小企業に対して、お話のように、金融の問題はきわめて重大な問題であり、特に零細企業についてのこれらがどうしてもうまくいかないという実情も、私どももさように承知いたしております。これにはやはり中小企業、ことに零細企業の組織化や企業経営の近代化や、あるいはこれらのものの基礎を確実にする体質の改善等の施策と相待って、その金融問題も解決しなければならぬ、かように考えております。
 次に、最近起りました関東、東北方面のひょう害の問題につきましては、ごく部分的ではございますが、きわめて甚大な被害があるのに対しまして、政府としてはできるだけその実情を把握して、これに対する対策を緊急に処置するように考えております。
 それからILO条約八十七号の批准の問題につきましては、本年の二月二十日にすでに閣議の決定をいたしてこれを批准する方針をきめております。ただ、そのためには、公労法の規定の改正や、またこれに伴うところの各種の法制の整備、さらに全逓の問題につきましても、これがこういう労働問題の正常化されるということを前提として私どもは処理するということで、準備を荒々と進めております。
 それから、民主政治を堅持するために選挙の公明を期せなければならないという御意見に対しましては、私も全然同様に考えておりまして、所信の表明の上におきましてもその点に触れたわけでございます。それについて、公営の制度あるいは連座制を強化する必要があるという御趣旨の御意見に対しましても、私は御趣旨には賛成でございます。ただ、それをどういうふうに実現するかということにつきましては、十分に検討を要する点があると考えます。別表の改正の問題、これは従来取り上げられて議論をされておることでありますが、御承知の通り、戦後の人口の移動の現状から見まして別表がそれに適合していない。しかもこの人口の変動に対処するためには、選挙区制というものに全然触れず、区域に全然触れずにこれをきめることはとうてい不可能でありまして、そういう点には、今お話にもありましたように、現実の問題としてのいろいろな困難な問題もございますから、従って、これらを、十分権威者を入れまして選挙法全体について根本的に検討したい、そして公明なる選挙を維持できるようにしたいというのが私の考えでございます。
 それから、議長、副議長の党籍離脱の問題についての御質問でございます。私は、昨年の秋の衆議院における議場の混乱を将来繰り返さないために、社会党の鈴木委員長と会いまして申し合せをして、衆議院における議長、副議長の党籍離脱の問題等を数項目にわたって話し合いをいたしたのでございます。その際に参議院の問題にも触れて、同様にこの党籍離脱の問題は参議院においてもそうあることが望ましいということについて、意見が一致したのであります。しかしながら、参議院には参議院の自主性があるから、その点はわれわれはこれを尊重するということを、その際にも明らかにいたしておるのでございます。私は、社会党の鈴木委員長とお話をしたときにも、そういう意味において、参議院においても同趣旨のことが行われることが望ましい、ただ参議院の自主性というものは、これはわれわれはお互いに尊重して考えようということを申し述べたのでございます。その後におきまして、今回の議長、副議長の選挙に当りましても、同様な趣旨でもって私は党内におきましても意見を述べてきております。しかし参議院の参議院としての考えに対しては、私はやはりこれを尊重するという趣旨に立っておるわけでございます。
 最後に、衆議院の解散をこの段階においてやれという御意見でございます。私は今日の現状において衆議院を解散すべき理由を何ら認めておりませんから、解散の意思はございません。
 小笠原、沖縄の施政権復帰の問題につきましては、これはその住民の悲願であるばかりでなく、日本国民全体の要望としまして、私は機会あるごとにこれが実現に向っては、今日までも努力をいたして参っておりますが、今後も努力するつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(菅野和太郎君) 先ほど椿議員から私に対しては特に御質問がなかったように思うのでありますが、私の仕事に関連している事項につきましては、ただいま総理大臣から詳細な御答弁がありましたのであります。私も同じ意見でありますから、さよう御了承願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(佐藤榮作君) ひょう害についてのお尋ねでございます。ひょう害のあとの救済対策でございますが、今回のひょう害は、局地的とは申せ、大へん甚大な被害をこうむられた方々に対しまして、心から御同情を申し上げておるところでございます。遺憾ながら調査がまだややおくれております。調査報告を受けました上で十分の処置をとりたい、かように考えております。
 次に、中小企業についての育成指導のお話がございました。これは申すまでもなく、組織や金融や税制など総合的に考えて処置すべき事柄だと思いますが、中小企業に対する対策は、岸内閣といたしましても、また自由民主党といたしましても、最も重点を置いた政策でございまして、平素から十分注意いたしておるつもりでございます。特に椿議員からは金融についてのお尋ねがございました。金融につきましては、その資金ワクを拡大すると同時に、金利を下げるということ、これはもう当然のことでございます。今回におきましても、いわゆる中小企業金融の専門である三公庫につきましては、昨年に比べまして貸付資金量は約四百億、三百九十三億の増加でございまして、全額としましては四千二百十八億を見積っております。もちろんこれで十分と申すわけではございません。私どもの努力もなお今後続けて参るつもりでございます。また、すでに御承知の通り、三公庫につきましては、金利は四月一日以来三厘の金利引き下げをいたしておるのでございます。ところで、中小企業あるいは零細企業については、この三公庫以外の相互銀行あるいは市中各種金庫等の金利、これを低金利に持っていくことが、今日の融資の実情から申しまして最も大事なことだと、かように考えておるのでございます。三公庫についても金利の引き下げをいたしますと同時に、今後は一そう市民金融機関であります相互銀行なりあるいは各種金庫等についての指導を十分にいたして、中小企業の育成に一そうの力をいたすつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(池田勇人君) お答えを申し上げます。
 わが国の経済は、国民各位の御努力によりまして、世界にその例を見ないほどの復興をいたしたのでございます。しかし、全体的の復興はほんとうになし遂げられましたが、その内容を見まするというと、まだ悲惨な状態にあられる方が多いのでございます。で、経済の拡大は大衆の生活をよくしていくことにあるのであります。それによって拡大し得るのであります。従いまして、私は、今後とも日本経済の拡大強化をはかる上におきましては、あるいは農村、あるいは中小企業、あるいは低所得者の収入を上げて、彼らの生活をよりよくすることが、日本経済の発展の根本であると思うのであります。所管の中小企業のうちにおきましても、いわゆる中小企業と、その下の零細企業、こういうふうに分れておりまするが、私は、中小企業全体、ことに零細企業につきまして、今後渾身の努力を払っていきたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣渡邊良夫君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(渡邊良夫君) 精薄児の問題並びに結核対策についての御激励のようでございまするが、精薄児の対策につきましては、予防的措置といたしまして新薬の研究に対する措置並びに施設の増設につきまして、一段と具体的な措置を講じつつございます。結核対策につきましては、中央社会保険医療協議会並びに日本医師会等を中心といたしまして、結論を急がせつつございます。三十四年度におきましては、この対策費といたしまして、昨年度よりその施設の整備充実等に対しまして予算的措置を講じてございます。なお、近く定員法等の問題が成立いたしまするならば、この人員の配置の適正等も十二分に考えておるような状況でございます。(拍手)
   〔国務大臣松野頼三君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(松野頼三君) お答えいたします。
 最近の雇用状況は、昨年末以来、ある程度の産業の拡大と安定に従いまして雇用指数も、三十三年の一月と三十四年の一月を比較いたしますと、失業保険の受給者及び企業整備による失業数というものは、必ずしも悪化しているという計数は出ておりません。それから生産性についてもいろいろ批判がございましたが、過去の統計を見て参りますと、生産性と雇用というのが逆行する統計はいまだに出ておりません。要するに産業の発展というものが雇用に対して大きな影響があることは事実でございますので、今後産業政策とあわせて雇用問題に解決すべきことがあるというのは、あえて政府のみならず、今回答申の出ました雇用審議会においても一番大きな課題として掲げられております。産業政策とあわせて雇用問題を議論しなければ最終的に解決はできないと、こう考えております。
 第二番目の中小企業における労使用の問題でございますが、中小企業においては最近非常に労使間の暴力的行為による争議行為が所々に頻発しております。これは根本的に考えますれば、中小企業における労働問題に対する理解が労使とも少いということが一番根本であろうと、こう考えております。御承知のごとく、労働法も、暴力問題というのを一番大きく否定していることは事実であります。と同時に、暴力団を雇うことも厳に戒めなければなりません。労働問題というのは、あくまでも国家権力が介入しないように、互いに労働問題そのものの真義を理解してやっていただくように、政府は注意いたしたいと存じます。
 第三番目のILOの問題は、すでに二月二十日、閣議決定をいたしておりまして今回の総会及び専門委員会におきましても、この決定を了として、最終的には日本政府に対する非難的事項は一つもございませんでした。どうぞ御了解いただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣石原幹市郎君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(石原幹市郎君) お答えをいたします。
 選挙公営の拡充は、公明選挙推進のために確かに有効な手段の一つと考えておりまして、相当拡大していい面もあると思っておりますが、ただし、候補者等が行います自由な運動との限界をどこに置くかとか、いろいろ問題もありますので、今後検討をいたしていきたいと思います。
 連座制の強化も同感でございますが、連座の範囲あるいは裁判手続の問題、ことに検察官による付帯訴訟の手続を採用するかどうか、いろいろ立法技術的な問題があるようでございまして昨日も申し上げましたように、地方からもいろいろ意見を徴しておりますし、さらに各方面の意見を徴しまして、今後検討を加えていってみたいと思っております。
 別表改正につきましても、現行選挙区制のもとにおいて、最近の人口に比例して定員を再配分するといたしましても、多数の選挙区について分割、併合あるいは境界の修正等を行わなければならないのであります。これは政治的にも技術的にも非常に困難を伴う問題でございますので、先ほど総理も言われましたように、政府といたしましても、さらに各方面の意見を徴しまして慎重なる検討を加えていきたいと考えておるところであります。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(藤山愛一郎君) 沖縄の方方の幸福のためには、われわれも同感をいたして、そうして気持を体して活動をしなければならぬことは当然でありまして、外交ルートを通じてやるべきことは率直に申していきたいと思っております。かつて土地問題に対して協力して参りましたああいう行き方によりまして、今後いろいろな問題が起りました場合でも、当然私としては努力をして参るつもりでございます。(拍手)
   〔椿繁夫君発言の許可を求む〕
#14
○議長(松野鶴平君) 椿繁夫君。
   〔椿繁夫君登壇、拍手〕
#15
○椿繁夫君 御答弁をいただきましたが、総理のお答え、特に正副議長の党籍離脱の問題に関する総理のお答えは不満足であります。承知できません。私がお伺いしているのは、両党首会談による申し合せが四項目にわたって行われ、それに関連して本院の予算委員会で質問があったのに対し、その後、総理は、参議院においてもこれを実現するように努力いたしますということをお答えになっているのであります。それで、どのような努力をなされたのか、勧告はしたけれども聞かなかったのかどうなのか、総裁と党員との関係についてお伺いをいたしているのであります。ところが総理は、その後どういう勧告をなさったのか知りませんが、国会が済んで選挙になると、今度は逆に、参議院の常任委員長は与党で独占したいというふうな、まるきり逆のことを勝手放題に放言しておられるのであります。それが今度の臨時国会におけるわが参議院の混乱の大きな原因となっていることを一つお考えの上、さらに御答弁を賜わりたいと思うのであります。
 なお、外務大臣は、沖縄の問題について、この前の土地問題のときにやったように、いろいろの手段を尽してということなんでありますが、沖縄の島民は、日本を祖国だと思っているのです。そうしてすみやかなる復帰を望んでいるのです。しかるに、五月十三日、このような無謀な刑法並びに訴訟法典が出されたのであります。これに対して、一体あなたは、アメリカであんなことを言われる前に、もっと八十万島民の真意を代表して交渉をされたのかどうか。われわれが受諾いたしましたポツダム宣言は、新しい領土を要求しないということを約束しておるのであります。国際連合憲章もその通り。アメリカは明らかに連合憲章を無視し、われわれが無条件受諾をしたポツダム宣言の趣旨をじゅうりんしている。それに対してあなたは一体どういう交渉を今日までなされたのか。今後国際連合にでも提訴をしてこの問題の解決をはかるだけの熱意はないものか。こういう具体的な対策を明らかにされることを私は重ねて要求いたします。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(岸信介君) 重ねてお答えを申し上げます。
 先ほどもお答えを申し上げましたように、私は、鈴木委員長との話し合いのように、これを実現するように努力して参ってきたのでございます。今回の議長選挙につきましても、同様な趣旨をもって、私は参議院側にこれを要望いたして参ったのでございます。言うまでもなく、今お話がありましたが、参議院における委員長を与党で全部持つことがいいという議論につきましては、私自身は、従来ともこの議場における議事というものが、内容的に激しい論議が――それは意見の違うものが十分な論議を尽すことは、これは当然であり、またそうしなければならない。ただ委員会等の運営その他、開会、閉会等の運営の問題で混乱していくということは望ましくない、ということをかねて考えておりますがゆえに、そうすれば与党が責任を持って委員長を持つことがいいんじゃないかという考えは、衆議院及び参議院を通じて従来私が持っておる考えであります。しかしながら、これにつきましても、やはり参議院の自主性というものは尊重すべきものであると私は考えております。私の意見は意見として、そういう意味において、こういう参議院の構成の問題に関しましては、やはり参議院の自主性というものを尊重しなければならぬ。私の意見は意見として、党内におきましても十分それを主張し、それを考慮するように要望して努力して参った次第であります。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(藤山愛一郎君) 沖縄の問題につきましては、根本的には施政権の返還ということが必要だろうと思います。従いまして、この問題は困難な問題ではありますけれども、施政権の返還という問題につきましては、常時われわれもアメリカ側と話し合いをしていくということは必要なことは当然でございまして、機会あるごとに、われわれとしてはその点をアメリカ側にも要請をいたしておるわけであります。また施政権の範囲内において取り行われております諸般の施策につきましては、島民の利益その他に対しまして、われわれとしてはできるだけ協力していくことは当然でありまして、われわれとして、問題の起ります際には、それらの問題につきまして十分努力して参りたい。従って刑法の問題その他におきましても、島民の御希望その他島民の意思に対して、われわれは理解と同情を持って見て参らなければならぬと、こう思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(松野鶴平君) 前田久吉君。
   〔前田久吉君登壇、拍手〕
#19
○前田久吉君 私は緑風会を代表して、岸内閣総理大臣並びに関係大臣に数点の質疑を行いたいと存じます。
 まず、現在交渉が行われている日米安保条約の改定について、岸首相は今回の所信演説で交渉の基本方針を明らかにされましたが、一刻も早く正しい改定が行われることを国民の多数の者が強く希望してきたところであり、これが近く成文化される運びとなるということは、まことに欣快の至りであると思うのであります。(拍手)すなわち、現行の条約内容や表現には、わが国の自主性が希薄であるし、また著しく片務的でありました。さらに、在日米軍がわが国に駐留していながら防衛義務が確定しておらず、軍の使用権も米国の一方的決定とされていたのでありますが、それが今回の改定で、伝えられるところによりますと、米軍の日本防衛は義務づけられ、在日米軍の配備や装備も日本との協議事項となったほか、武力行使については国連精神に反する目的に使わぬという点を明文化している点など、明らかに現行の条約より一歩前進したと認めるのにやぶさかでありません。
 しかし、去る二十五日の衆議院で、社会党を代表する片山哲君の質問と、これに対する岸首相の答弁を聞いていて、自民、社会の両政党の間には、抜き差しならぬみぞがあり、二つの異なった考え方は対立して、両党ともそのみぞを埋め合おうという意欲がなく、また質疑や応答に問題を解決していこうという真剣な努力も払われていないといった感を深くしたのであります。一これは、安保条約を改定しようとする重大段階において、国家のためにまことに遺憾であると言わなくてはなりません。今後これをいかに説得していこうとするのか。ひとり社会党の方々ばかりが反対なのではなく、国民の一部にも安保条約改定に強く反対する運動が起っており、また、日米協力による安全保障は必要であると認める人々の中にも、なおその運営に多少の疑問を持っている者も多数あると存じます。従って、政府当局としては、この際、安保条約を断固改定するに至った決意の経緯を国民に熟知徹底させるとともに、改定後の運営に当っての基本方針をも明らかにして、国民に真意を正しく理解させる努力がなされることが何よりも必要であると思うのであります。岸首相は、所信演説の中で、「機会あるごとにその方針と交渉のいきさつを国民の前に明らかにしてきた」と申されていますが、この程度の努力では、反対のための反対運動をする勢いを打ち消して、国民に正しい理解を徹底させるわけにはいきません。もしここで政府の強い説得力が発揮できないと、国内は容易ならぬ混乱に陥るおそれさえあると思われるのでありますから、この際、政府当局は、安保条約の改定を正しく理解させる努力を、大々的に、しかもあらゆる角度から行うべきであるとともに、社会党の反対、共産分子の反対に対しては、政府がその間のみぞを積極的に埋めていく決意が必要であると思うのであります。岸首相の安保条約改定を国民に正しく理解させるための計画について具体的なお考えをお持ちでしたらお聞かせ願いたい。
 次に、安保条約の運営についてでありますが、岸首相の言われる通り、まずわが国の自主性が堅持され、他国との紛争に不当に巻き込まれぬ点が強調される要があるとともに、一方では、このために極東の平和維持力が減殺されぬという考慮が払われなければならないことは当然であります。しかし、従来の戦争は、しばしば自衛の名において勃発した事例も多いので、従って自衛権の発動には最も慎重な考慮が払われる確約が必要であると思うのであります。たとえば、他国が侵略してきた際の自衛権の発動は当然なさるべきでありますが、侵略の危険が予想されるときの判断がいかにしてなされるのか。また、その判断によって果して自衛権はどのようにして発動されるのか。この点がいまだ明確にされておりません。この点はどういう見解を持っておられるのでありましょうか。また、このたびの改定で、協議という形でわが国の発言権が認められる模様ですが、この協議の運営に当って政府はいかなる基本的態度を持っておられるか。従来、協議という形式は、力関係で一方的に押し切られるおそれもあるわけで、ことに戦争に参加するか参加せぬかという緊迫した空気の中では、ともすると相手方の一方的意見に左右される危険なしとはしないのであります。従ってこの際、岸首相のこれに対する基本態度が明確にされることが望ましいわけであります。私は、わが国がどんなときにおいても国連の平和憲章だけは絶対に順守するといった基本的態度が岸首相から明示されたならば、国民の一部にひそむ不安も大いに薄らぐのではないかと思うのであります。これに対する岸首相の答弁を願うとともに、安保条約に関する私の以上の質問に対して、藤山外務大臣の御所見も、この際、許せる範囲内でお聞かせを願いたいと思うのであります。
 次に、岸首相は七月中旬から、欧州、中南米諸国に長途の旅をされ、各国の政治経済の実情を把握されてくると言わておりますが、私は、前国会、すなわち第三十一通常国会の冒頭、西欧諸国における為替の自由化と、これに伴う貿易の自由化が実施されることによって国際競争が一段と激化していくと予想される点を指摘し、わが国のごとく輸出振興を第一要件とする国にあっては、この新事態に対応する措置を至急に講ずる要のあることを強調したのであります。しかるに、政府のその後の処置を見ていると、金融の正常化にしろ、貿易、為替の政策にしろ、産業政策にしろ、何ら進捗を見ていないのであります。政府は、答弁においてその必要性を認めておりながら、このような熱意のなさでは、わが国経済の将来に多大の不要と危惧を抱かざるを得ないのであります。一方、これに反して西欧諸国は、昨年来通貨の交換性回復を実施してから、さらに貿易の自由化へと急速度の進展ぶりを示しているのであります。わが国のかかる立ちおくれを岸首相並びに池田通産大臣はいかにお考えであるか。このまま放任していたならば、岸首相が常に強調されている、経済の安定と国民生活の向上、雇用の増大などということも、実現は危ぶまれると思うのであります。従って、私はこの際、特にこの点を再び指摘して、今回、岸首相の御旅行がこの問題の解決にプラスとなり、あわせてわが国の抜本的対策がすみやかに樹立されることを念願する次第であります。
 また、これに関連して、岸首相はしばしば長期経済十カ年計画の構想や、月給二倍論を漏らしておられますが、貿易政策もいまだに確立し得ない現政府が十カ年構想を立てるということは、どういうものかと思うのであります。まことに最近は、長期計画の樹立が世界の流行でありますので、わが国でもこの流行に追随して、過去におきましても、五カ年計画、長期、短期の見通しを立ててきました。しかし、これらの見通しは常に大きく狂いが出て、年度経過の途中で修正するような見込み違いを繰り返してきたのであります。これは、わが国の経済力がたくましくて、常に年度計画を凌駕してしまったわけでありますが、このようなずさんな計画が、かえって伸びようとするわが国の経済力を押える方向に走り、常に成長と停滞との動揺を繰り返してきたことが顧みられなければなりません。これは、従来のように単なる数字の水増し計画ではだめだという証左であって、今度長期計画を立てるというならば、まず第一に、わが国の産業構造をどういう姿に持っていくかを具体的に決定して、それを実現するための総合政策が明示されねばならぬと思うのであります。今回の新内閣には、有力にしてエキスパートである通産大臣を迎えたのでありまするから、在来のおざなり計画はやめて、以上、私が述べたような抜本的な政策を国民に明示していただきたい。これに基く十カ年計画というものを見せてもらいたい。かように考えるものでありますが、これについては、岸首相並びに池田通産大臣から御所見を伺いたいと存じます。
 次に、岸首相の外遊は、中南米諸国にも足を伸ばされるとのことでありますが、これらの地域は、わが国の過剰人口のはけ口として、今後大いに注目されてよいと存ずるのであります。毎年百万人以上の自然増加に対して、国土は狭小であり、すでに現実面で農村の二、三男対策が刻下の急務となっている点を考え合わせるとき、今回の岸首相の外遊が移民問題の解決にも大なる寄与をされることを期待したいのであります。しかし従来の移民は単に過剰人口の処理という観点からのみ取り上げられて、移民というよりも、むしろ棄民ともいえる無責任のものであったのでありますが、今後の移民に対しては、さようなことは絶対にあってはならぬのであります。すなわち、まず移民する国の諸事情をよく調査するとともに、その国の経済発展に寄与する杉民団を結成し、さらに現地に赴いても自活し得るよう、医師や各種の技術者を加えて、永住し得るための綿密な計画性がなくてはならぬと思うのであります。岸首相が、これらの諸点に留意されて、中南米諸国を視察されるとともに、各国の政府機関との交渉に当っては、わが国の移民計画などを用意していって、成果を期する程度の心用意がほしいのでありますが、果して岸首相はこのような御準備を整えておられるでしょうか、お尋ねをいたします。最後に、国民がひとしく待望していたオリンピックが一九六四年には東京で開催されることが決定したことは、まことに喜ばしいことであります。政府は、この朗報がわが国に届くや、直ちに三カ年計画で、開催地である東京都を初め、全国の観光地帯の道路、上下水道、駐車場、ホテルなどの建設、整備を行うことを閣議で決定したことは、時宜に適した措置であったと思うのでありますが、これを機会に、わが国の道路や上下水道並びにホテルなと、観光施設に最も不可欠なものは、世界的にりっぱなものとする決意を持ってもらいたいのであります。わが国のごとく、世界に比類のない山紫水明の景観を有するのみか、古代の建造物や美術品を数多く温存し、東洋的な特殊の雰囲気と、美味を誇る食物を多く持つ国が、世界の観光客によって得る外貨収入は、年々わずかに七千万ドル前後というのは、あまりにも少な過ぎると思うのであります。世界の交通機関は、ジェット機などの出現以来スピード・アップされた結果、地球は小さくなった観があり、世界の観光国として名高いフランスやスイスに比肩する観光国となることは、さしてむずかしいことではないと思うのであります。今回オリンピックがわが国に開かれるのを契機に、諸施設を完備して、世界の観光客をわが国になじませるのには最もよい機会であります。オリンピック開催国となった各国では、それから引き続き観光収入が激増しているのでありまするから、わが国も観光という外貨獲得の増大を期する要があるわけで、政府は、この際オリンピックに来遊する世界からの観光客を受け入れる体制に本腰を入れるとともに、観光日本の優秀性と、大量誘致の計画を立て、大いにPRする要があると思うのでありますが、これにつき、運輸大臣から観光対策を、建設大臣からオリンピック建設対策を伺いたいと存じすす。
 以上をもって私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(岸信介君) 安保条約の改定につきまして国民の十分な理解と支援を得なければならぬということにつきましては、前田君の御質問の通りでございます。今日まで、安保条約改定の問題につきましては、御承知のように、相当長い経緯を経ております。この安保条約制定当時の事情と違い、日本の発言権が全然認められず、アメリカの一方的にすべての問題が処理され、特に占領下から続いてこの安保体制に入りましたために、いわゆる進駐軍と駐留軍との性格等につきましても、きわめて不明瞭な点があること等につきまして、これを自主的な立場から、また日本の発言権を十分認め、また真に日本の安全保障に役立つようにしなければいかぬという願望は、長い間、国民が抱いておったことであり、私どもがしばしばアメリカにこれを要望してきたところであります。私が一昨年アイゼンハワー大統領と会ったときにおきましてもその問題が出たのでありますが、日本の現状からいって、まだ改定にすぐ着手することは早いと思われる、従って、運営の面において日本側の要望を入れた運営をしようというので、両国政府の間に共同委員会を作って、一年間運営に当って参りました。そうして、日本の国民感情並びに日本の実力等につきましても、十分にアメリカ側の理解を求めて、そうしてアメリカが初めてそれでは安保改定に踏み出そうという機運ができたわけでございます。そうして、この改定の基本方針につきましては、所信表明におきまして、その概要を私は明らかにいたしております。また、過去におきましても、第三十一回の国会におきましても、もっぱらこの問題についての質疑がかわされております。ただ、外交交渉の途中でございますので、全貌をことごとく詳細に明らかにするということの不可能であることは言うを待たないのでございますが、従来の条約締結あるいは外交交渉の例に比較いたしますと、安保条約の改定の問題は、先ほども申しましたように、国民に十分に理解していただいて、そうして協力をいただかなければならない問題でございますから、政府としても、従来の交渉とは異なって、できるだけこれについては努力して、国会においてもできるだけ明らかにするようにいたして参っておるのでございます。ただ、これがまだ不十分である、さらに国民の中に十分理解のいくように政府としても努力しなければならぬということにつきましては、前田君の御質問の通りでありますから、さらに私どもあらゆる方法を講じて国民の理解と支持を得るように、今後も努力をいたして参りたいと思います。
 さらに運営の点に関して防衛についての協議の問題についての御質問がございました。言うまでもなく、この安保条約を作って、そして日本の安全を、日本の自衛隊だけの力ではなかなか確保できないから、アメリカの力もこれに入れて、共同して日本の安全を保障しようというのがその趣旨であり、さらにその考え方は、国連憲章、われわれが外交方針の基本に置いております国連尊重の考え、すなわち国連憲章の精神に一切準拠するのであることは言うを待ちません。私どもは、一日も早く、国連において、国連憲章が期待しているような有効な国際的な安全保障の機構が国連内にできることを念願をいたしておりますが、まだ現実はその状況でないから、その門におけるギャップを補う意味において、日米の安保条約によって日本の安全を保障するというのでありますが、精神はあくまでも国連憲章にのっとるものであり、また日本の安全保障条約があくまでも防衛的なものであって、決して侵略的な攻撃的なものでないことは、本来の憲法の趣旨から申しましても明瞭であり、また国連憲章の精神をわれわれが順守するという建前から申しましても明瞭なことでございます。さらに、現在におきましても、防衛のために出動するというような場合におきましては、両国の間に、日米の間に協議をすることに行政協定でなっております。今度はそれを条約にとり入れるつもりでありますが、この協議は、そういう事態の起ったときに突然協議するのではございませんで、事前から、政治経済、いろいろな変化等につきましても十分な協議を行いまして、そうしてこれに処すべき事態についてわれわれは処していく。また防衛出動については、日本の自衛隊法や憲法の規定によるところの手続をとるべきものであることは、これは当然でございます。
 さらに、今回の私のヨーロッパ訪問並びに中南米訪問についての御質問でございましたが、欧州における共同市場の問題、さらに貿易、為替自由化の問題等に対処しまして、日本の貿易をどういうふうに進めていくかという問題に関しましては、われわれも理想として自由化の方向に進んでいかなければならぬと考えております。ただ、従来からやってきている、また、それに応じたいろんな経済事情や、あるいは貿易事情というものが、数年の間、戦後とってきている政策に順応するような状態ができておりますから、急激に自由化をやるということについても、私は、経済の問題はそういう激変は避くべきものである。ただ理想は、やはり貿易自由化の方向に向って日本の諸制度もこれを改善していくべき必要があると思っております。
 中南米訪問に関しまして、移民の問題、これも私は、日本移民の中南米諸国におけるところの活動状況を親しく見て、将来日本から行く移民というものの形態あるいはその内容等につきまして今、前田君の御指摘のあったような諸点を十分に実地について視察もし、考慮をいたして将来の日本のあの方面に対する移民なり、あるいは経済協力なり、その他の経済的発展につきまして十分に一つ意を用いて参りたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(藤山愛一郎君) 大体総理が答弁されたのでありますけれども、若干補足しておきたいと思います。
 ただいま安保条約の運営の問題についていろいろ御心配があったかと思います。また、運営の問題がどうなっていくかということを予想しているかというお話でもあったと思います。むろん条約上、今回は協議事項等もございまして、それらの協議の運営等につきましては、それらの協議機関を作って参らなければならぬと思います。
 どういう種類の協議機関を作っていくかは、条約がもう少し最終的に進みましたときから話し合いをしていく場面になろうかと思っておりますが、しかし、今度の協議というものは、ただいま総理の言われました通り、相当政治情勢の判断から始まりまして、実際的な防衛上の装備その他の話し合いにも至るわけでありまして、かなりいろいろな広範な協議をいたさなければならぬと思いますので、専門的な協議機関なり、あるいは広範な政治的な話し合いをする機関ができて参ると思います。これらの協議の場合に、ただいま力関係というお話がございました。協議でありますから、むろんわれわれノーという場合もあり、また、アメリカがノーと言われた場合に、それを実行することのできないことも当然だと思っております。ただ、力関係というお話がございましたけれども、私は、これは単に政府の力とか何とかいうことでなしに、国民的願望というものが大きく力として現われてくるのだと思うのでありまして、そういう国民的願望というものは、決して小さな力ではないと考えておりますので、その力というものは、お話のように弱いとは判断しなくともいいのではないかと考えております。
 なお、自衛の場合の問題でありますが、今申し上げましたように、いろいろな状況を協議し、そうしてこれらの場合、また、日本自体が自衛権をどういうふうにしてその際行使するかということは、これは非常な重要な問題だと思います。むろん国民的関心の沸く問題でもあるわけでありまして、政府としても、そういう場合には、いかなる時代のいかなる政府としても、慎重にこれに対処されることになろうかと思います。そうして、その結果としては、憲法の手続に従って行動をすることになろうかと思うのでありましてみだりに簡単に自衛権の発動ということは行われようとは、実際的には思わないのでございます。
 これらの改定に当りまして、もっと宣伝をしたらどうか、国民に理解を深めるように努力しないかというお話でございまして、私ども、まことにごもっともな御意見だと思うのであります。今回の改正は、われわれとしては、決して改悪でなくて、改善であるということを確信いたしておりますので、これらの点について、交渉の進行とあわせて、内容等についても、発表し得る時期にはできるだけ内容も国民の方々に知らせて、そうしてこの条約が百満に批准の状態に持っていけるように努力して参りたいと、こう考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 世界貿易の自由化は、昨年来の欧州共同市場あるいは欧州各国の通貨の交換性回復を契機といたしまして、各国とも大きく踏み出して参ったのでございます。わが国といたしましても、こういう情勢にかんがみまして、先般来、大蔵省、通産省その他関係各省が集まりまして、この自由化の線にいかに沿っていくかということにつきまして検討を加えておるのでございます。こまかい問題からすでに踏み出しまして指定通貨の拡大とか、あるいは貿易外支払いの簡素化あるいは商社の本支店勘定の交換計算の設置とか、いろいろな点もやっておりますし、また、貿易自由化の関係上、いわゆる外貨予算につきまして、いわゆる自動承認制の品目の拡大、二十九品目拡大いたしましてまた、自動承認制の全体の金額に占むる割合も、今回は前回の二九%を三三%に引き上げる等、着々自由化に向って進んでおるのであります。しかし、何と申しましても、この日本経済の自由化ということは、昭和二十四年の為替相場の設定以来、国内的にはほとんど自由化されておりまするが、国際的には、為替管理、いわゆる外貨支払いの関係で、いかんせん、ただいま申し上げましたように、ほんとうに自由化されていない。従って、国内的に自由化されたと申しましても、国際経済的には、日本の経済の実悪はまだまだ自由化されていないのであります。理想といたしましては、これは私は、できるだけ早い機会になし遂げなければならぬと考えております。しかし、何と申しましても、ヨーロッパ諸国におきましても、まだまだ為替管理をしている国が多いのでございまして、しかもまた、今の貿易の状況は、各国協定貿易、バーター制も相当行われておりますので、理想は自由化でございまするが、外国との関係から申しまして、なかなか直ちに自由化ということは困難でございます。また、昨日も申し上げましたごとく、戦後において、為替管理のもとにマッチするように、経済機構が相当でき上っておるのであります。これを一時に改めるということは、また非常な刺激を与えますので、私は、日本の経済がだんだん拡大強化せられて、そうして自由化にしても統制してもほとんど関係のないという見通しがつくまでは、慎重に研究いたしたいと考えておるのであります。
 次に、経済計画の問題でございまするが、私はもともと、これはもちろん戦後でございましたから、計画経済ということはあまり好かなかったのでございます。ああいう状態において計画を立てたって、これは砂上の楼閣になりやすいというので、ずっと以前は、七、八年前は、経済計画を立てることは自分は反対だ。しかし政治家としては、一つの、自分の腹にはある程度の計画を持っていかなければならぬことは当然です。しかし、最近におきましては、共産国はもちろんのこと、あるいはイギリス等におきましても、大蔵大臣は、イギリスは二十五年で所得を二倍にする、昨年、一昨年は二・六%の上昇率だから、二十五年たったらイギリスの国民所得は二倍になる、こういうことを言って、やはり立てておるようであります。これは世界的の流行でございますから、私はあえて反対いたしません。しかし、日本で今まで立てましたこの経済計画というものは、昭和二十九年に立てましたあの五カ年計画というものは、もう二年目に五カ年計画をこえてしまった。従って、今新しい五カ年計画を立ててやっております。しかし、新しい五カ年計画でも、この前の国会で説明いたしましたところによりますると、昭和三十四年度は六・五%の上昇だ。国民所得は五・一%だ。しこうして当初の五カ年計画に対しまして、三十四年度末は計画よりもちょっと下るという説明でございました。しかし、数九月あとの今の状態では、私の見るところでは、六・五%の生産の増強ではございません、八%を上回る状況だと私は今見ておるのであります。そういたしますると、もう二、三カ月、三、四カ月の間に、昭和三十四年度末の状況におきましては、あの前国会で説明した分を上回るということになるのであります。何がゆえにこうなるかということを私は考えてみますると、今までの計算は、主として国内の物の状況、物の生産状況、こういうことでいっておりましたが、もっと外国の事情をきわめなければいけますまい。しかもまた、今までの計画ということは、金融の面での考慮が非常に少かった。たとえば輸出が相当ふえて、国内がいわゆる金があり余るということになりますと、そこに設備投資がふえてくる。こういう国際収支の問題と、また国内の金融の問題が、いかに生産を刺激し、あるいは生産を押えるかということが、私は不備であったかと思うのであります。で、前田先生のおっしゃるように、今後日本の経済を拡大し、しかもこれを計画的にやる。いかなる産業組織をもっていかなる方法でやっていくかということにつきましては、総理の言われるあの経済計画を十分検討いたしまして今度はあまり大差の起らないよう、しかも国民が安心できるような、納得のできるような経済計画を作るべく精進いたしたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣楢橋渡君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(楢橋渡君) お答えいたします。
 一九六四年のオリンピック大会には、多数の観光外客が来訪をすることが予想されますが、これらの外客は、同時にわが国の観光客であるわけでありますから、この際十分に外客の受け入れ体制を確立いたしまして、りっぱな接客をいたしたいと思うのであります。その機会を利用して日本の文化経済を知らしめて、日本の持つ魅力を十分に発揮せしめたいと思うのであります。受け入れ体制の整備中最も問題になりますのは、私の関係の省といたしましては、ホテル及び交通機関の整備でありましてホテルにつきましては、来訪外客がどのくらい乗るかという推定にも関係がありますが、現在でも非常にホテルが不足いたしておりまして、現在のホテルの状況を見ますると、京浜地区で外人の泊り得るようなホテルは八千ベッドぐらいでありまして現在開発銀行で融資を受けて建設中のホテルの収容力が約二千人、建設計画中のものが二千でありまして、合計一万二千の収容力しか持たないのでありますが、オリンピックに来る外客は約三万人であろうと推定されておりますから、どうしてもホテルを急速に建設する必要がある。そのためには、どうしても低利な長期の資金をもって、やはり年に六分五厘、二十五年ぐらいのもので、資金の大量投入をいたしまして、一方に不動産取得税の免除、あるいは一定期間における固定資産税の免除等の措置をとる必要があると考えるのであります。また、日本式の宿屋を作り直しまして水洗便所その他を直しまして外人を入れるということも、また一つの方法であります。あるいはアパートを建設しましてそれに一応収容いたしまして後日これを転用するというようなことも考えるべきであろうと思うのであります。また、交通施設の問題でありますけれども、これはジェット機が間もなく来るようになっておりますので、港湾あるいは空港の整備等もまた十分にやらなければならない。ことに国内においての汽車、外客を誘致する優良な車両、あるいは自動車収容等の施設を整備しておくことが必要でありまして、たとえば前田議員の言われました自動車のターミナルのごときも十分に整備をなし、バスその他によって十分外客を歓待するような措置をとりたいと思っております。この機会にわが国の文化、経済を大いに外人に見せ、将来の外貨獲得の飛躍的な一段階といたしたいと思うのでありますから、できればガイドも大量養成いたしまして、出入国管理局等の簡易化をいたしまして有効適切な方法をいたしたいと思うのであります。つきましては、やはり関係各省との間にも、総合的有機的な統一的機関を作りまして、その実現に努力いたしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣村上勇君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。
 オリンピック開催の昭和三十九年度には、道路につきましては、東京都内の自動車交通の円滑をはかるために首都高速自動車道路の枢要部分は完成をみると思います。また、都内の街路及び主要観光道路につきましても、道路整備五カ年計画等によりまして、その整備促進をはかる所存でございます。下水道につきましては、その整備が特におくれております現状にかんがみまして、早急にその普及をはかるために、目下鋭意これが考究をいたしている次第でございます。一方、駐車場につきましても、これは競技施設の付帯としても十分完璧を期さなければならんと思いますので、一段の努力をいたす所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○議長(松野鶴平君) 野坂參三君。
   〔野坂參三君登壇、拍手〕
#26
○野坂參三君 私は、日本共産党を代表して、岸総理と藤山外務大臣に、日米安保条約の改定問題についてだけ質問したいと思います。
 本論に入る前に、新しい事態が起りましたので、このことについて一言、総理と外相にお聞きしたいのは、きょうの読売新聞を見ますと、そこには安保条約の草案なるものができ上ったと報じて、新聞に条文までも発表しております。この真偽いかんにかかわらず、これは非常に重大問題です。これによって国民の不安と疑惑はますます高まらざるを得ないと思います。政府は口をきわめて外交の秘密を言っておられますが、事態はここまで発展しているのであります。国会の軽視もはなはだしいと思います。直ちに私は、政府が交渉の経過と現状を国会に報告し、十分に審議することを強く要求します。これについての総理及び外相の責任ある答弁を願いたいと思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 さて、本論に入ります。総理は、一昨日の所信表明の中で、安保改定の問題について国民多数がその解決を望んできた、こう申されております。しかし、国民の望んでいる解決なるものは、今政府が行おうとしているような改定では断じてありません。御存じのように、吉田内閣は、屈辱的なサンフランシスコ条約を結んで、沖縄、小笠原をアメリカに引き渡し、安保条約によって、日本国内にアメリカの軍事基地と軍隊の駐留を許してきました。その上に、行政協定、MSA協定、その他の協定によって軍事、外交、経済、文化、国民生活等は、あらゆる面でアメリカに縛られ、しぼられ、わが国の主権は公然と侵害されてきたのであります。この事実を何人も否定することはできません。ところが、今度の藤山外相の改定交渉では、沖縄や小笠原にしても、本土の基地や駐兵権にしても、現状のままに残されております。しかも、最も直接に国民の生活と権利を制約している行政協定の重要点については、ほとんど手がつけられておりません。さらに、日本の生産物から人的資源に至るまでアメリカに提供することを約束したMSA協定は、全く交渉の外に置かれております。これでは国民にとって何の解決にもなりません。これでは改定の名による改悪以外の何ものでもないといって差しつかえありません。ですから、与党の中にも有力な反対意見が出ているのは皆さん御存じの通りであります。それにもかかわらず、総理と外相は、外務省や防衛庁の官僚を動かして、国民はもちろん、われわれ国会議員にも、与党の幹部や閣僚の多くにさえ正式に報告も相談もしないで、ひたすら改定交渉を急いでいるのであります。もしそうでないとすれば、皆さんにお聞きします。果して皆さん、どれだけ詳細に、具体的にこの交渉を知らされておりますか。自由民主党の諸君、なぜそんなに急ぐ必要があるのか。その理由を私は明確にここで岸総理と藤山外相にお聞きしたいのであります。
 思うに、安保改定の真のねらいは、ソ連、中国を敵としたアメリカの原水爆侵略体制に公然と日本が参加し、日本自身を核武装し、日本が原爆被害国から加害国になろうとするものにほかなりません。しかも、安保改定の影響は軍事面においてだけではありません。藤山外相の言っているように、政治、経済における日米協力関係の強化を条文化して、アメリカ帝国主義の諸政策に日本を今まで以上にしっかりと縛りつけようとしているのであります。そのために国民生活が今よりももっとひどく圧迫されることは必至であります。岸総理は、昨年以来、軍国主義教育の復活をねらう勤評を強行し、さらに警職法、選挙制度の改悪などを公言しておりますが、安保改定によってさらに一そう民主主義が破壊され、反動体制が強化されることは、きわめて明らかであります。また岸総理は、安保条約があるために日本の平和が守られたと申しておられます。しかし、果してそうであろうか。事実は全く反対であります。アメリカ軍は日本の基地を足がかりにして、常に極東の平和と安全を脅かしているではありませんか。朝鮮戦争や台湾海峡の紛争などはその生きた実例であります。あの当時、もしこれらの戦火がさらに拡大しておったならば、日本は必然的に戦争の渦中に引き込まれていたに違いありません。このことは国民がひとしく痛感しているところです。この点から見ても、安保条約が平和を守ったのではなくて、反対に、この条約の存在こそが実は日本の平和と安全を脅かしてきたのであります。それでは、だれが平和を今日まで守ってきたか、それはほかでもありません。日本国民の平和のための力強い戦いであり、世界の平和勢力のたゆみない努力であります。今こそ日本政府は、安保改定の交渉を即時打ち切り、安保条約、行政協定、MSA協定の破棄の方針を明らかにし、その方向にアメリカとの交渉を進めるべきであります。これを国民の多数は求めております。これについて総理と外相の責任ある答弁を求めます。
 次に、わが党は、安保条約を破棄し、次のような中立政策をとることを強く要求するものであります。すなわち、日本から一切の外国の軍事基地を取り払うこと、駐留軍を撤退させ、いかなる国との軍事同盟にも参加しないこと、アメリカを含むすべての国との自主平等の友好関係を打ち立てること、こうして日本の独立、平和、民主主義を保証し、さらに、アジアと世界の平和に積極的に貢献する政策をとることであります。岸総理と藤山外相は、中立政策は非現実的であると主張しておられます。しかし、わが党の主張する中立政策こそ、日本の安全保障にとっても、日本の独立と発展にとっても最も現実的な政策なのであります。
 第一に、国際情勢がそれを保証しております。そこで、まず総理にお聞きしたいことは、総理は、どこの国が日本を侵略しようとしていると考えておられるのか。昨日この議場で、自民党の代表と称せられる大谷贇雄君が言ったように、ソ連や中国が日本を侵略しようとしていると総理は考えておられるのか。もしそうでないとすれば、どこの国に向けて日米が共同して戦おうとしているのであるか、この点を明確にお聞きしたい。現に、ソ連、中国は、日本の中立を保障し、アメリカ、ソ連、中国、日本による集団安全保障条約の締結、さらに国連による保証を提案しております。また、日本が中立政策をとれば中ソ同盟の対日条項を解消することをも約束しているのであります。その上、アジアの国々を初め、すべての国が、日本の平和、中立の政策を強く望んでおります。これに反対しているのは、ただアメリカの支配者と日本の売国勢力だけであります。藤山外相は、日本の中立化について、ソ連、中国と話し合い、またアメリカを説得する方向に外交を切りかえる意思があるかどうか、これをお聞きしたい。
 第二に、中立政策こそ、わが国民の多数が終戦以来一貫して要望してきたものであります。一昨日、日本全国にわたって安保条約改定防止のために四百万の大衆が立ち上りました。この国民の戦いは今後ますます拡大しようとしております。このような国民の力が中立政策を現実的にしているのであります。総理は、この国民の意思と力を信頼し、これに依拠して中立政策をとる決意があるかどうか、これもお聞きしたい。
 第三に、中立政策を現実的にする根拠は日本国憲法であります。岸総理は、片山哲君に対して、戦後、わが国が平和を保ち得たのは平和憲法があったからではないと断言しております。これは、総理大臣として許せない憲法冒涜の発言であります。今日まで、日本が公然と軍隊を作り、また戦争ができなかったのは、ほかならぬ憲法第九条が存在し、これを守る国民の戦いがあったからであります。このことは何人も否定することのできない事実であります。それにもかかわらず、総理は、憲法がわが国の平和と中立を守る現実的な力であることをあくまで否定されるのであるか。明確な答弁を願います。同時に、憲法を冒涜するような発言をこの壇上において取り消されんことを私は要求します。
 以上のことから明らかなことは、中立政策は非現実的であるとか、日本の利益にならないとかいうことは、現状を維持するための単に口実にすぎません。日本の平和、独立、民主主義をかち取るために、安保条約を破棄し、新しい中立政策をとることは、共産党、社会党だけの主張ではありません。これは国民多数の要求であります。そうしてまた、今日では、与党である自民党内の先見の明のある諸君もこれに共鳴されていると、私は確信しております。今からでもおそくはありません。岸総理と藤山外相の真剣な再反省を求めて、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(岸信介君) 共産党の諸君と私どもとの世界観の全然違っていることが、今の質問演説できわめて明瞭であると思います。私どもは、現在世界が二つに対立しているこの緊張をできるだけ緩和する方向に努力することは当然でございますが、われわれは、やはり政治の理想として民主主義、自由主義を基本と考えております。これによって日本の繁栄と平和を守ることが国民の真の念願である。この意味において、今日までアメリカと協力してきたことが日本の繁栄に資しており、またそれを続けていくことを国民の多数は心から望んでいると信じております。(拍手)決してこの際、共産党の主張されるような、この自由主義国との関係を疎遠にしてそうして容共的な中立政策をとることは、決して日本の安全と日本の繁栄に資するものではないというのが私どもの考え方であります。
 私は決して、お話がありましたが、憲法を冒涜したつもりではございません。世界の現状を冷静に判断するならば、一つの理想主義や単なる理念でもってわれわれの平和が守れるというような、なまやさしい世の中ではなくして、われわれが他から侵されないという保障がつくことによって平和と安全が守られるというのが、現在の国際の実情である。こういう意味において、単なる憲法だけでわれわれの平和が守られてきたのだと考えることは非常に間違いであるということを申したのであります。こういう意味におきまして私は、安保条約の改定の必要を感じ、共産党の主張されているような、これを廃棄するとか、あるいはMSA協定等を廃棄するというような考えは毛頭持っておりません。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(藤山愛一郎君) 今回の安保条約の改定に当りましては、相当論議が尽されてきていると思います。私は、二年前外務大臣に就任いたしまして、その後、衆参両院の外務委員会に出ましたときに、現行安保条約の締結について、また、これらの改善をする方法について、野党の方々からも質問を受け、また、なぜ期限等をつけることを交渉しないかというお話もあったわけでありまして昨年の秋の臨時国会以来今日まで、議会内において安保条約改定の問題等につきましては相当論議がかわされておるのでありまして、私としては、今回の安保条約改定くらい相当公けに議論をされ、そうしてかなり透明の中でやっているものはないと信じております。ただ、これらの交渉が最終的に進められて参ります場合には、両国間の最後の段階においては、必ずしも、一字一句条約文を提出することは、今日までの条約上の締結の過程における慣例でもございませんし、また、日本だけが一方的にそれらのものを発表するというわけにも参らぬこと当然でございます。従って、いよいよ最終的にだんだん話し合いが煮詰まって参りますれば、若干、外交上においてはそうした公開をいたし得ない場合もあり得ることは、御了承いただかなければならぬと思うのでございます。そういう意味において私どもはできるだけ論議を尽し、問題点をあげ、また内容等につきましても国民全体の意向を聞きながら今日までやってきておるのでありまして、むろん、新聞紙上等にいろいろ出ることがあろうと思いますが、しかしながら、これそのものが、われわれが、ただいま申し上げましたように、発表をいたしておるものでもございませんし、長い間の論議を通じて、議会等の質疑応答を聞いておられますれば、われわれの考え方等も相当わかっておりますから、それらのことを推測して新聞紙上等にある程度の記事を書くことは私はでき得るのではないかと思います。それほどに、ある意味から申せば、今回の条約改定が進んでおるとも申し得られるのではないかと、こう思っております。
 さらに、藤山は中立政策をとる意思がないのか、今の方針を変える意思がないのかということでありますが、私は、その点につきましては、現在の政策を変える意思は毛頭持っておりません。それらの説明につきましては、総理がすでに申されたことと同じでありますので、省略さしていただきます。(拍手)
#29
○副議長(平井太郎君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十八分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
ソース: 国立国会図書館
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