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1947/10/01 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 外務委員会 第2号
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1947/10/01 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 外務委員会 第2号

#1
第001回国会 外務委員会 第2号
  付託事件
○沖繩の日本復帰に関する陳情(第十
 七号)
○賠償実施公團設立に関する陳情(第
 百四十三号)
○米國渡航に関する陳情(第百七十五
 号)
○國際的世界連邦研究の國家機関創設
 に関する請願(第百四十八号)
○沖繩の日本復帰に関する陳情(第三
 百二十三号)
○北海道附属諸島の日本復帰に関する
 陳情(第三百三十六号)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月一日(水曜日)
   午前十時三十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○國際的世界連邦研究の國家機関創設
 に関する請願(第百四十八号)
○沖繩の日本復帰に関する陳情(第十
 七号)(第三百二十三号)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(佐藤尚武君) それではこれから委員会を開催いたします。
 先ず第一に、今月の初め、たしか二日附で坂西志保女史がこの外務委員会の専門調査員に任命されました。水害のために出席されることが多少遅れたわけでありますが、本日のこの委員会に初めて出て來られることになりました。ちよつと御紹介申上げます。それから外務委員会の書記としまして阿南文也君が任命になりました。御紹介いたします。
 会議に入る前に文書の配付方について御報告申上げたいと思います。実は本委員会の前囘の会合で外務省その他において刊行されましたいろいろな研究資料、参考資料というようなものが、若し入手できたら配付することを心配して貰いたいという御希望がありましたので、早速外務省に参りまして外務次官にそのことを御依頼したのであります。その後続々印刷物が外務省から届けられて参つております。ただ紙の配給が非常に不足の模様であつて、十分の部数を差上げられないことは誠に遺憾であるということを申して來ております。その結果二十五人の委員全部に対して、或ものは配付できますが、或ものは部数が足りないというような誠に遺憾な状態に現在はあるわけであります。併しこれを急速に増刷するということはちよつとできなかつたために、現在のところでは限られた部数を差上げる、從つて全部に行き亘らない部分もできて來るというようなわけであります。その状況について坂西女史から御報告を申上げることと思います。
#3
○専門調査員(坂西志保君) 只今まで外務省から入りました資料のうち、一番多いのは三十五部、その次は二十四部、十部、七部、五部というふうなのが主でございまして、多いのはできるだけ皆様に配付いたしますが、部数の少いのは一部特別にこの報告に興味を持つていらつしやる方、又御参考になりそうな方に差上げることにいたしたいと思います。それから極く僅かなのは、阿南さんの方で整備して、いつでも皆さんが御覧になれるようにしたいと思つております。
 それから、これに次ぎまして、外國からの資料も將來入る見込がございますから、これなんかもやはり一所に整理して置きまして、皆さんがいつでも御覧になれるようにしたいと思います。もう一つアメリカあたりの議会でよくやつております新聞雑誌の切拔でございますが、これも分類いたしまして、今日出た資料は今日の午後までには、少くともどういうふうなことが外務に関しては言われてあるか、又輿論はどういうものであるかということが分かるようにいたしたいと思います。どの程度にできるか分りませんけれども、資料を先ず第一に整えていい参考資料というものを作りたいというのが私の希望でございます。
#4
○星野芳樹君 只今の資料配付について参考になりそうな方に配付するというような、何か基準のない、坂西さんの御判定によるようなことでは何となく心許ない。それぞれ正式な理事というものがありますし、それから各会派というものがありますから、各会派に一部配付になればその会派の者は廻して読むことができる。そういうようにその基準をもう少し公正にやつて頂きたい。そういう参考になりそうな、御利用ができそうな方というのは、あなたの御判定でおやりになるのですか。
#5
○専門調査員(坂西志保君) 私の判定というよりも、むしろ理事の方と事務の方と相談いたしまして、そういうふうに取計らいたいと思います。
#6
○委員長(佐藤尚武君) 今星野さんの御意見もありましたけれども、各会派別に配るということは、無論意味のあることのように思います。ただ会派の中でも、大勢の会派と少数の会派とあるので、これが極く部数が限られたというような場合にはどういうことになりますか。多数の党員を有しておられる会派にやはり一部なら一部づつ上げることにいたしますか。つまり党員の数に関係なく会派数によつて分ける、こういうことにいたしましようか。皆さん方、それでお差支えなければ、そういたします。……別に御異存もないようですから、それじやそういうことに取計らいましよう。成るべく紙の調達を研究して事務局ともいろいろ相談したのでありますが、できるだけ調達を図るようにして部数を増刷することに先ず我々としては努力しなければならん、そういうように考えております。
 それでは本日の議題に入りまして、請願及び陳情書を審議することにいたします。請願は一通でありまして、本日の公報に出ております通りに、百四十八号、國際的世界連邦研究の國家機関創設に関する請願であります。これは大隈さんに御紹介をお願いすることにいたします。その次は陳情書の第十七号でありまして、第十七号並びに第三百二十三号、これは同文でございます。沖縄の日本復帰に関する陳情であります。三番目は、陳情の第百四十三号、賠償実施公團設立に関する陳情であります。四番目が、陳情の第百七十五号、米國渡航に関する陳情であります。陳情の四番目が第三百三十六号、北海道附属諸島の日本復帰に関する陳情、これらであります。順を追つて審議を進めたいと考えます。
 先ず請願の第百四十八号に関しまして、大隈さんから御紹介をお願いしたいと思います。
#7
○大隈信幸君 只今議題となりました請願第百四十八号、國際的世界連邦研究の國家機関創設に関する請願、これにつきまして、委員長から、お前が紹介者になれというお話でございましたから、大体の内容を御説明いたしたいと思います。請願者は徳島縣那賀郡羽浦町の徳永好吉という方でございまして、公吏で、お年は五十二歳の方であります。私は別段その方を直接存じ上げておるわけではありませんが、請願の形式を調えますためには、どうしても紹介議員が要るということでございますので、委員長からの御指名でもありましたので、私が説明役に当つたわけであります。
 大体内容を簡單に申上げますと、目的は、世界平和を希望する眞劍なる意思と大理想を世界に宣言すること。更に世界平和に貢献するために國際的世界聯邦なる構想を研究すること。右の研究結果は聯合國司令部を通じて世界に高唱すること。かくして世界連邦の実現に努力すること。これが目的でございます。
 その理由は、今次の戰爭は実に有史以來の大悲惨事であつて、全人類にとつて、勝敗を超越した未曾有の悲劇であつた。殊に原子力兵器の出現は將來人類の滅亡を招來するものであつて、人類は衷心より戰爭の絶滅を念願しておる。特に敗戰國としての我が國は、右の感を深くするものであつて、今次憲法改正において、世界に先だつて戰爭抛棄を明示せるも、右の理由に基くものである。かくて我が國としては、平和の永続と戰爭の絶滅を期する目的を以て、人種と國境を超越し、全人類的の正義と愛とを根幹とする國際的世界連邦のごとき世界平和保障機構の、一日も速やかに実現せんことを切実に希望しておるのである。故に未だ聯合國の管理下にあるけれども、國会としては、右の新構想の國際的世界連邦のごとき機構の制度の実現を促進せしむべき決議をせられたい。更に政府としては、右の世界聯邦等の組織、事業方策等を研究し、あらゆる方面より世界平和に寄與するための國家機関の設立を考慮しなければならない。更にこの今まで申上げました國際的世界聯邦の構想につきまして、徳永氏の言うことを聞きますと、世界的主権の創設、即ち國際間の絶対主権を制限して、科学を含む武力一切及びその他一部の主権を世界機関の管理下に移讓して、かくして全世界的な法の下に各國家間の関係を律することとなり大國も小國もすべて平等の権利と義務とを負い、各國各民族はおのおの利害観念を離れて、全世界、全人類の福祉を図り、更に言葉を換えて申しますと、正義と人類愛とに基く恒久的平和世界を実現すべく、法的秩序の創設を目的としておるのであります。
 その世なる具体的な事業を挙げますと、次の通りになります。一、國家粉爭の調停、仲裁、一、世界文化の交流、一、世界貿易の交流、世界市場の協定、一、世界食糧の分配交流一、植民地の共有地化、一、世界共通語の創設及び晋及、一、通貨の統一、一、度量衡の統一、一、軍事力の管理等でございます。
 尚この際、この機構の下に特に世界文化連盟なる組織を提唱いたしたい。即ち人類最高の所産であるところの文化物は世界の宝であるということを確認し、その保存と利用に最善を盡さなければならない。この文化連盟の下で次のような事業を行う必要がある。その一つ、文化保全世界協定事業。これは國宝、重要建造物、史蹟、歴史的美術品、工藝品、重要史料、社寺信仰地文化施設、名勝地天然記念物等の保存に万全を期する。その二つは、貴重なる文献、図書、史料、重要美術品の滅失防止のため、副本を作成して世界各地に分散保存する。その一つ、各國独特の文化、美術の保存及び奬励を図る。その一つ、各國相互に定期間を限つて文化物を一時交換して鑑賞研究に供し、國際親善に資する。その一つ、新文化の創造。即ち新文化の創作物の発表、新文化偉人を顯彰する等によりまして、新文化の積極的なる創造に努めること。その一つ、文化物登録事務を行う。その一つ、國際観光事業、國際交通事業、國際通信事業、國際スポーツ、万國博覧会等を計画実施する。
 更に文化連盟の分科会として、世界的な学術会、例えば世界物理学会とか、或いは世界医学会とか、世界工業学会というような学術会を設置しまして、國際的に研究成果を発表し文化の交流を行う。機関紙を発行し、各地に世界大学を開催し、研究親睦を図る。又世界婦人連盟、世界海員連盟、世界宗教連盟等の創設並びに赤十字社の吸收等を考える。
 以上がこの請願の大体の要旨でございまして、結論といたしまして、これを要しまするに、現在の國際聯合をますます発達成長せしめまして、更に全世界的な機構に拡充するために、以上申述べました國際的世界聯邦の組織に強化改組して新生命を吹きこみ、世界平和を絶対的に確保されたいのであつて我が國としては以上の問題に関し眞劍なる熱意を以て研究する國家機関を創設し、その研究させる具体案を聯合國司令部を通じて世界に高唱してその創立の促進を図り、その実現に向つてはあらゆる努力を拂うと同時に、我が國においても一歩を進めて準備を全うし、その成立に加入すべく周到なる用意の下に万全を期せられたい。
 以上甚だ簡單でございますが、請願書の内容を御紹介申上げます。
#8
○委員長(佐藤尚武君) 只今の御説明によると、徳永氏の請願の要旨は凡そ二つあるかと思うのでありまするが、これはもう一度大隈さんに私から、誤りがないかを、お尋ねしたいと思います。
 その一つは、この世界聯邦を設ける、即ち世界主権という新らしい構想の下に世界聯邦を設けるということにして、日本が率先してその構想を世界に向つて発表し、且つその実現に努力するということが一つ、それからもう一つは、それに関聯して世界聯邦がどういうものであらねばならんか、又どういう活動をしなければならんものであるかということについて、その請願書に数項目を挙げてあるようでありまするが、これらに関してもつと深く研究調査するために國家機関を設けてその衝に当らせたい、こういうのがその請願の主眼であるかと思うのでありますが、それで間違いありませんか。
#9
○大隈信幸君 委員長の仰せの通りでございます。
#10
○委員長(佐藤尚武君) それではそういう趣旨の請願であるということを御承知になりまして、委員諸君の御意見がございましたならば御発言を願いたいと思うのであります。この請願の内容についてこれは妥当な考えであるかどうかということいついての意見、並びに若し妥当であるとしたならば、この請願をいかに処理するか、或いは採択してそうして政府に取次ぐべきものかどうか、というようなことについての御意見がございましたならば、お申出を願いたいと思うのであります。
#11
○堀眞琴君 趣旨に対しましては、私は別に反対ではないのでございますが、ただ國際聯合の民間機関が將來できることになつておりまして、現在すでにその準備の機関が発足しつつあるわけでありますね。その機関と世界聯邦のためのそういう機関との関係は一体どうなるのでございましようか。二つ設けるものなんですか。それとも國際聯合の民間機関の方でもそれを研究することができるかどうかということが私は問題になるのぢやないかと思うので、まずそのことについてお聞きしたいと思うのであります。
#12
○委員長(佐藤尚武君) 堀さんのお説がございましたが、いかがなものでございましようか。
#13
○遠山丙市君 只今堀さんの御発議に関聯性があるのですありますが、今提案者としての御説明があつたのでありますが、どうでございますか、現在日本のこの立場において世界聯邦というようなことを進んで調査して差支えないものでございましようか。而してその聯邦となりますと、一つの聯邦を纏めまする國家機関というような形か何か整備して行かなければならんと思うのでありますが、そういうようなことまで今立入つてやつて差支えないかどうか、さような点も少し疑義があるのでありますが、御説明に預りたいと思うのであります。その点は提案者で十分御研究になつておると思いますが、いかがでありましようか。
#14
○委員長(佐藤尚武君) 堀委員からは、目下國際聯合の問題について、日本國内でも或る團体ができつつある模様である、然るに請願者の言うごとき世界聯邦の創設のための國家機関を作るということは果してどうであろうか、疑義がある、こういうお話であります。又遠山委員の方では日本の現状において、世界聯邦というような問題を持ち出すということが果して妥当かどうかという、これに亦疑義があります。こういうようなお話でありますが、それについての御意見は……。
#15
○伊東隆治君 只今の遠山委員の意見私も同様の感じを持つのであります。今日の状況においてこういう問題を、例えば内閣の進言するというような取扱いにまで進めるというようなことは妥当ではないように思うのであります。その点が一つと、それからもう一つは、この趣旨は誠に結構でありますが、こういう機関に加入するために國家機関を設けるということでありますけれども、これは國家機関と申しますと、やはり一つの國家の中の大きな機関でありますが、これには外務省という立派な機関があるのでありまして、この國家機関がこういうことはやるべきであり、又今後ともやるであろうと思うのでありまして、この種の民間團体を拵えて研究するとか、研究所を設けるというのなら、これは又理由もあるのでありますけれども、この点に関しましてもどうかと思うような次第で、その二つの点からしまして、本件は誠に結構な請願だとは思うのでありますが、まだその時期並びに方法が適当ではないように考えます。
#16
○伊達源一郎君 只今いろいろな御意見を伺いましたが、私もそういうように考えるのでありまして、大体今日本はまだ國際的活動をなし得ざる状況にあるのであります。國際聯合に加入することすらできるかできないか、できるでしようが、まだ問題である。この立場において、御趣旨は非常にいいけれども、具体的の活動はでき得ざる状態にもあると思うのです。研究機関ならいいが、活動機関はどうかと思うのであります。從つて先程お話があつたように、この請願を政府に取次ぐなんという状態にまだ進んでいない立場に日本はあると私は思います。
#17
○遠山丙市君 大体今提案者に対しまして、いろいろ我々の氣持を申上げたのでありますが、どうでございますか、政府委員においては一体こういうものを採り上げた場合において、進んで実行ができるような見通しになつておりますかどうか、少しその方の外交方面の関係等もお漏らし願つて置きますれば、審議をして行く上に大変参考になるかと思います。
#18
○委員長(佐藤尚武君) つまりそうしますと、遠山さんの御質問の要点は、こういう問題の研究調査のために、國家機関を設けるということについて、果してそれが政府として可能であるかどうかということについて政府委員から見通しをお聞きしたいということでありますか。
#19
○遠山丙市君 さようであります。
#20
○政府委員(與謝野秀君) 実は本請願と同じ趣旨の請願が、新憲法施行前のこの春の議会でありますが、同じ趣旨の請願がありました。その際に政府委員として私はこういうことを御参考までに申述べて置いたのであります。それは日本といたしましては、世界平和に協力するという心構えは持つておりまするが、目下未だにポツダム宣言の條項を受諾し、これを履行中でありまして、言葉はおかしいのですが、世界平和に消極的に協力しておる時代であつて、それがまだその義務履行の終らない中に、世界平和に対してこういう案がある、思想としては非常に参考とすべきものも多々含んでおる案でございますが、それを言うべき地位にはないように外務当局としては思う。
 次にその國家機関としては、やはりこういう機関を設けるということが、すでに日本政府がこういう外交方針を一つ定めたという既成事実を作る重大な問題なのである。まだ新らしい國家機関を設けるというところまでに……國家機関としては当時においては外務省というものがあつた、それで研究すれば十分な問題で、まだ新らしい機関を創設するような時期とは思わないということを参考までに申上げたのであります。
 新らしい國会におきましては外務委員会があるので、つまり國家機関として特に別個のものを作つて、世界聯邦というものを研究される必要があるかどうかということを、外務当局としては非常に疑問に思う次第でございます。又世界に向つて呼び掛けるところの可否については、今年の春以來状況は少しも変つておらないのであります。
#21
○星野芳樹君 第一の点については外務委員の申された通りであると思います。要するに、世界國家機構の思想を、民間の声としてできるだけ反映して行くということは常に行わなければならんことで、政府として今行うことを進言すべきでないと思う。
 それから第二の國家機構として研究機関を作る、これは趣旨、目的は結構ですけれども、こういうものを國家機構として作るというと、とかくこれは官僚的な組織となつて、形式的な研究によつて、無駄にインテリゲンチヤが御飯を食べるというような結果になる。むしろこういうものは、澎湃たる民間の声ができて來て、そのとき纒まつて來て國家機構としての研究機関もできて來る、その民間の、又半官半民みたいにして、一党一派のものを國家が補助するとなると、これも又無駄な飯を食べるものができる。もう少し一般的に、こういう國際思想を民間に活溌にさせるという施策ですね、これは外務委員会の仕事には過ぎますけれども、例えば用紙の増配ですけれども、こういうようなことを強力にしますと、出版界というものは非常に活溌になる、そうすると、こういう思想は自然に地に埋れて醗酵しつつありますから、自然に起つて來る、その曉に作つて行くベきであるのじやないかと思うので、現在のところは時期尚早だと考えております。
#22
○堀眞琴君 私が先程申上げましたのは、実は民間團体として、こういう機関が設けられることは望ましいと思うのですが、國際聯合の機関ができますと、当然世界平和の問題を少しでも研究するということになるだろうと思つて……。そうしますと、二つの研究機関が同じ問題を研究するということになると非常に無駄でもあるし、むしろどつちかにそれを統一する必要がある、そういうことになれば、結局國際聯合の機関の方が、世界平和の問題を国際聯合の問題として同時に研究する。当然國際聯合は國際聯合の機構や何かとして研究するのではなくして、それを通しての世界平和の実現ということを課題として研究するわけですから、私はその方にこの世界平和の研究を促進させるような工合に持つて行く方がいい。勿論民間人の中から、世界平和をもつと積極的に促進せねばならんというような意味合から團体ができることは、これは差支えないと思いますが、私としては今のところそういう工合に考えるのが至当ではないかというふうに思つて居ります。
#23
○委員長(佐藤尚武君) 外にどなたか御意見ありますか。
#24
○田中耕太郎君 この請願の趣旨は、私も学設的に一つの國際政治哲学としては非常に共鳴するものが多いのであります。併しさつき政府委員が言われたような、日本の現在の國際的の立場においていきなり國際政治理想を、而も國家の設けた機関によつて研究して行くということは、すでに星野さんも言われましたような、学術的又思想的の問題を國家の手によつてやるということはいろいろな弊害があるので、私自身の考えでは、國家原則として学術的の研究にタツチすべきではないそういう建前が正しいものと思つております。
 で、尚國際聯合なり、或いはユネスコとういう制度も現在確立しておるわけであります。これはやはりそういう意図を以て漸進的にやつておるわけでありますし、又國際聯邦というようなことになりますると、國家主権との問題が非常にやかましいことになりまして、これは一朝一夕に、又或る國民の努力で以て、或いは國民の一部の者の努力で以て到底できることじやないと思うのであります。
 で、やはり政治的の問題は漸進的にやらなければならない。而もそれも國内の輿論、本当の民衆の声で以て促進して行かなければならないものです。尚請願の処理についての形式的の方面から考えなければならないと思うのでありまして、凡そ請願は今までの議会では総花的に趣旨が結構ならいいというようなわけで、恐らくは從來の議会で以てかような請願が審議せられましたとしたならば、趣旨は結構だからといつてあつさり通過したのではないかと思われるのであります。
 併し新國会におきましては、請願の処理と雖も極めて愼重でなければならない。実現性が相当にあるものでなければ、それをないものを無暗に國会で以て通すということになれば國会の権威にも関するということになりますから、さような近い將來における実現性が本案については欠如しておるといつてもいい。
 さような趣旨からも私自身この請願を採択せられないことを希望する者であります。
#25
○委員長(佐藤尚武君) この請願問題につきましては、すでに多くの方々、七名の方々からそれぞれ意見の御発表がありまして、大体本案に関する委員会としての意見は或いは出盡したのではないかと思うのであります。その外に御意見ございませんか。
#26
○星野芳樹君 この請願についはてもう何も言うことはございませんが、この機会に、今非常に文化の活動が下つており、而もこの外國の知識に対する國民間の熱望というようなものは相当なもので、リーダーズ・ダイジエストが列をなして買手があるというような状態であるので、つまり出版活動が不十分だということが日本の文化の向上、更に外交知識の普及ということに非常な困難であるという実状を見て、この機会に政府に対して外務委員会から、特にこの出版用紙の生産を重点的にして貰うとか、更に特に外國の知識の普及に関しては配給を重点的にする。こういうようなことを進言できたらして頂きたいと思う者です。
#27
○委員長(佐藤尚武君) 今の星野委員の御発言は、この問題に間接に関係があるとは思いまするけれども先ず請願の要旨を先に決定いたしまして、それから後で、今の用紙の問題について研究したいと思います。今までの御発言を大体伺つて見まするというと、皆さんもこの請願の趣旨には御賛成でこれはいいことであるという点では一致しておると思うのであります。どなたもその点については御異議がなかつたように伺つております。ただこの問題に関しては、國際聯合関係の機関が、今民間の團体として設けられんといておる際であるし、そういう機関ができるとすれば、これに任して研究させる、若しくは適当の手段を講じさせるということの方が適当ではなかろうか、こういう御意見があり、又星野委員のごときは、こういう問題は國家機関として研究調査すべきものでなく、民間からそういう声が澎湃として起つて來るのを待つて、初めて適当な手段を講ずべきである、そういう御意見もありました。又政府委員の説明でも、ポツダム宣言を受諾して、これが実施に今日本政府としては大童になつておる際であるのに、趣旨はよしんば非常によくても、そういう請願の趣旨をはつきり國家機関として、或いは政府として採り上げて、そうして率先これを世界に表明し、若しくは公然と研究するというふうになれば、即ちまだ外交上の独立性を持つていない日本として、明らかに一定の外交政策を採るということになるので、それはまだそういうことを考うべき時期に到達していないという意見のごとく見えます。又委員諸君の中でも、伊達氏のごとき、田中委員もそうであつたと思いますが、同様の意見を述べられた方々もある、こういうようなわけであります。つまり時期がまだ到達していないということであつて、又こういう運動をするとすれば、それは民間からそういう声が起るべきであつて、政府がすべきものでない、こういう御意見も力強く述べられたわけであります。田中委員は、こういう問題に関して学界あたりでこれは当然研究すべき問題である、而して学界の研究に対しては、國家というものが干渉すべきではない、こういう御意見もあつたのであります。而してこういう種類の請願の取扱いについては、國会としては愼重な態度を要するのであつて、趣旨さへよければ簡單に本会議に移し、或いは又政府に移牒するというような從來のやり方は考うべきであつて、よしんば趣旨がよくても、種種の障害があつて今直ちに実行に移すことができない、或いはもつと十分の時間を與えて、そうして民間の輿論の起つて來るのを待つべきであるというようなことであれば、採択を見合わして、そうして外務委員会としてこの請願の趣旨についてはこれを認めておるのでありますから、そういう意味で適当の方策を採るということではどうであろうか、その方がよからう、こういうように私は拜聽したのであります。就きましては、今私が要言しましたような趣旨で、この請願を取扱うことにして差支えございませんか。というのはこの請願の趣旨は認めるけれども今申し述べたような、要約したような理由によつて、この際採択は見合わせる。但しこの趣旨の請願の主眼とするところに対しては、これは外務委員会としても、或いは外務委員会に属する個個の委員諸君においても勿論賛成のことでありましようから、機会がある毎に、或いはこれを民間團体に説明し、推獎し、若しくは民間の輿論の啓発という方面に、外務委員会の諸君が個々に機会を捉えて努力されるというようなことが、私は当然なことと思いまするが、併し請願そのものに対してはこの際採択を見合わせる。こういうことにいたしまして御異議ございませんか。
#28
○田中耕太郎君 請願の趣旨に私、共鳴するというようなふうに申しましたのは、世界が段々そういう理想に向つて進んで行かなければならないという極めて漠然たる意味でありまして、例えば世界聯邦を採るか、或いは聯合の形で行くかということは、非常にこれは根本的な政治問題であります。又それこそ学界で以て大いに研究されなければならない、又現実の國際政治、世界歴史の動向というようなものまで研究されなければならないのでありまして、それでそこまでこの委員会がタツチしない方がいいのじやないか、趣旨というものも極めて漠然たる意味であります。つまり世異平和に対する熱意或いは又現在の國際聯合というものでも、研究して見ればいろいろまだ不徹底なところもあるかも知れないというような、そういう意味においてでありまして、本案そのものを、主なるものを全部承認して、趣旨は結構だけれども、実現はなかなかむずかしいし現段階において國家として実現に努力するものであるという趣旨ではないのであります。で、この委員会としましては、趣旨に賛成だというのも、極めて漠然たる意味に解するならば、今の委員長の御提案に対しまして賛成いたします。
#29
○委員長(佐藤尚武君) 田中委員から今御注意がありました。私が今申し述べましたところ、即ちこの請願の趣旨はどなたも御異論がなかろうということを申しましたのも、正に今田中委員の言われたような漠然たる意味で申上げたのであります。と申しまするのは、この世界の平和維持については、何とかしなければならん問題であるということは、これは誰しも大戰終了後考えさせられるところでありまして、それには超國家的な、いわゆる世界的な主権を持つた世界聯邦を作るか、或いは又現在存しておる世界各國を聯合したもので、世界平和を維持して行こうかというような点について誰しも考えさせられるところであります。而して現在問題になつており、実行に移されておるのは、世界各國の聯合の方で行つておるわけであります。國際聯合即ちそれでありまするが、併し田中委員の今言われました通りに、そのいずれによつてこの世界の平和を維持すべきかという問題は、これは非常に困難な、又深く研究を要する問題であり、且つ又人文が漸次進歩して、そうして本当にその必要を認めるところまで行かなければ、私自身も実際にそれを実現するということは、困難な問題であろうと思うのであります。併しながらいずれの道にしましても、從來通りのことでは、世界の平和は保たれない、今後は世界的に何とかしなければならんという考えを持つということは、これは自然なことでありまして、そういう意味で凡そこの請願の趣旨の方向に向つておるという考えから、請願の趣旨には異議がない、こう申したのであります。正に田中委員が今注意をされた点は至当の御意見と思われます。そういう意味において、私の先程の説明を御了解下さるようにお願いするのであります。
 然らばこの請願に関する限り、只今申上げたようなことで、この際は採択をしない、但しこの請願者は、誠に請願の趣旨から見ましても、又私には度々所信を書いて來てくれる人でありまするが、誠にこの東京から、政治の中心から遠ざかつておる地方の在住者であるに拘わらず、こういう問題について構想を繞らし、世界平和のために心配をしていられるその点については大いに敬服させられるのでありまして、又一昨日でありましたか、偶然私はこの参議院の廊下で、御本人にお会いする機会がありました。これは何か水害の問題で、徳島の人でありまするが、水害の問題で陳情團と一緒に出て來たということであつて、偶然私は廊下でお会いしたのでありますが、いかにも実直そうな人物でありました。つきましては、この委員会において比較的長い時間を割いて、そうしてこの問題を檢討し、且つ多くの委員諸君から重要な御発言があつたということを、請願者御自身に通報するということは、私は將來のために極めて望ましいことではないかと思うのであります。つきましては、速記録ができましたならば、私からこの請願者に対して一部送付したいと思うのであります。御異議がなければそういうふうに取計らいたいと思います。
#30
○委員長(佐藤尚武君) それでは次の問題に移ります。陳情書第十七号及び第三百二十三号、沖繩の日本復帰に関する陳情でありまするが、これも又問題の重要性に鑑みまして、岡田委員に御紹介お願いすることにいたします。
#31
○岡田宗司君 在京沖繩縣人有志伊江朝助君外六十三名より、沖繩の日本復帰に関する陳情が出ておりまして、これは昭和二十二年六月十六日受付となつております。
 この沖繩の日本復帰方陳情の趣旨は、昭和二十年六月以來、沖繩が米軍占領治下に入り、その下において沖繩の人々は生活をしておるが、沖繩縣民は今日本への復帰を希望し、戰前同様日本の一地方としての自治態勢を整え、全國民と渾然一体となつて、平和日本建設に参加したいと渇望しておる。こういう見地からいたしまして、平和会議に際しまして、沖繩の帰属問題が解決されるのでありましようから、その際に沖繩縣民の希望としては、是非ともこれを日本に復帰せしめるように、又議会におきましても、御努力願いたい、こういう趣旨でございます。
 これは沖繩縣民の方々として、御尤もな御意見と思うのでございますが、先に内閣の成立の際に当りまして、芦田外相がこの問題についてお触れになりましたことが、相当大きな反響を呼んだのでございます。そういうような見地からいたしまして、本問題も又議会に陳情されて参つておりますが國会といたしましては、本問題に関する取扱いは極めて愼重でなければならんと存ずる次第でございます。甚だ簡單でございますけれども、陳情を御紹介申上げます。
#32
○委員長(佐藤尚武君) 只今岡田委員から御紹介がありましたが、この陳情の中で、マツカーサー元帥にも直接陳情書を提出した。そうして幸いにこれが受領されたということがあります。ついては参考のために、マツカーサー元帥に宛てた陳情書も御披露申上げた方がいいかと思うのであります。
  沖繩ノ日本復帰ニツキ請願
 ダグラス・マツカーサー陸軍大將閣下
  閣下、日本本土ニ居住スル沖繩縣人ノ指導者ニ依リ連署サレタル陳情書ヲ、閣下ノ御同情アル御考慮ヲ煩ハスヘク呈出致シ候
 沖繩ハ昨年夏アメリカ軍ノ占領ト共ニ直チニ軍政下ニ統治サレ、アメリカ軍政府ハ各地ニ病院並ニ治療所ヲ設置、傷病者ニ施薬、全住民ニ対シテハ食糧衣類ヲ給與、更ニ家屋建築材料ヲモ配給シ、各住民ハ一部ヲ除キ殆ンド全部居村ニ復帰シ、復興住宅ノ建築ト農耕ニ從事シ、今ヤ戰爭ノ恐怖ヲ忘レ、平和ノ民トシテ各種ノ平和産業ヲ復興セシムヘク相協力シツツ有之、全住民ハアメリカ軍政府ニ対シ感謝致居候。然レドモ、アメリカヘノ感謝ハ感謝トシ、全住民ハ依然日本ノ統治ヲ慕ヒ、日本ヘノ復帰ヲ熱望致居候。ソノ血ハ水ヨリモ濃ク、沖繩人モ日本人ナルガ故ニ候。敗戰日本ガ如何ニ成リ行クトモ、沖繩人ハ同胞タル全日本人ト運命ヲ共ニシ、全日本國民ト共ニアラユル困苦ヲ甘受シタシトノ意氣込ニ候。殴米ノ一部ニテハ、日本人ハ沖繩ヲ貧乏ナ從弟ト見下シ、沖繩人ヲ厚遇シ居ラズト観察スル向モ有之模様ニ候得共、コレハ全ク誤解ニシテ、教育モ行政モ日本各府縣同様何等差別待遇ナク、明治政府治下ニ入リテ軈テ七十年、沖繩ハ日本ノ一地方トシテ存続発達シ來レルモノニテ、今後モ戰前同様日本ノ一地方トシテ存立シ度シト言フガ全沖繩人ノ希望ニ候。更ニ欧米ノ一部ニ於テハ沖繩モ満洲台湾同様支那ニ還付スヘシト論議スル者モ有之模様ニ候得共、以テノ外ノ論議ニ候。成ニ程沖繩ガ流球王國タリシ時、支那トノ関係ハ、明治初年ニ至ル迄実二五百有余年ニ及ビ、沖繩人ノ主要食糧タル甘藷唯一ノ産業タル糖業ノ如キモ支那ヨリ傳來セルモノニテ、沖繩ノ支那ニ負フ処絶大ニシテ、沖繩人ハ支那ヲ恩トシ永ク交誼ヲ持続セントセル時代アリシハ事実ニ候。然レ共支那政府ガ直接沖繩ノ政治ニ干與セル事ナク、四五十年二一度支那皇帝ノ使者が琉球國王ノ王冠ヲ授與スヘク渡來セルノミニシテ、土地狭少ノ資源薄キ沖繩ガ、支那ヲ頼リトセルハ支那ノ文物ノミニテ、貿易ニ依リ沖繩ノ経済ヲ豊富ニセントノ意向ニテ支那ト親シミタル迄ニテ、支那沖繩関係ハ全ク経済貿易上ノミニ候。今ヨリ三百年前、日本薩摩藩ノ直接統治ニ帰シテヨリ日支両属ノ姿トナリシモ、薩摩ノ統治以前数百年、早クモ沖繩ニハ日本人渡來シ、沖繩歴史ニ現レタル最初ノ沖繩國王主舜天ハ、沖繩ニ渡來セル日本人源爲朝ノ子ニシテ、沖繩ヘノ佛教渡來モ日本僧ニ依ル等、日本沖繩ハ古昔ヨリ島傳ヒニ往來頻繁ナリシモ、朝鮮支那海ニ跳梁セル海賊同然ノ倭寇ノ現ハレニ依リ、沖繩船モ難ヲ避ケテ日本航行ヲ中止、方向ヲ換ヘテ支那及南洋ニ航シ、ニ暫ク日本沖繩ノ往來中絶ノ姿ト相成シモ、元來日本沖繩ハ同人種ニシテ、言語風俗習慣モ同一ナレバ、薩摩入リニ依リ再ヒ旧交ヲ温メ得タル次第ニシテ、豐臣秀吉ガ朝鮮討伐ノ際、沖繩ヲモ日本列藩同様ニ取扱ヒ、薩摩ヲ介シ沖繩ニ出兵ヲ促セル点ヨリ見ルモ、当時ノ人ガ沖繩ヲ同胞視セルヲ窺知シ得ヘク、三百年ノ沖繩ノ歴史家ニシテ政治家タル羽地朝秀氏ハ、言語系統ノ同一ナル点ヨリ日本沖繩ノ祖先ハ同一ナリト喝破シ、爾來沖繩人ハ是ヲ信奉シテ動搖セス、今日尚ホ是レヲ確信致居候。
 サレバ、新日本ヲ建設セル明治政府ノ慫慂ニ依リ、琉球最後ノ藩主尚泰カ欣然全沖繩ヲ挙ケテ明治政府ノ傘下ニ参加、旧琉球王國ヲ解体セルハ宛ラ父母ノ家ニ帰宅セルト同然、極メテ自然ノ道程ヲ辿リタルモノト言ヒ得ク、何等日本ノ強要或ハ武力ニ屈シタルモノニ非ラズ、日本ノ台湾占領有朝鮮併合トハ大イニ趣ヲ異ニスルヲ御諒承相成度、沖繩ハ明治政府治下ニ入リテ、教育普及、産業勃興、日本本土同ノ航路モ定期船ニ依リ至便トナリ、更ニ政府行政上ノ権限モ日本内地各府縣ト全ク平等同一ニシテ、些カノ差異モ無之、嚴然タル日本内地ノ一地方ニ候。
 右ノ事情ニ候へハ、現在全沖繩人ガ日本ヘノ復帰ヲ希求スルハ人間至情ノ発露ニシテ、敢ヘテ他意ナキ点、幸ヒニ御諒解相成度、地理上ノ位置ヨリスルモ、沖繩ハ日本トノ交易ニ依リ経済生活ヲ保持シ得ヘク、沖繩人ハ永久ニ日本人トシテ生活シテコソ幸福タリ得ル点ヲ充分御諒解相成、沖繩人ノ願望ヲ是非々々許容サレ度、世界平和樹立ニ指導役ノ貴國ハ、人類全体ノ安寧ト幸福増進ヲメザシテ活躍サル、今日ナリ、太平洋ニ位置スル最爾タル一島嶼ノ沖繩民ナリトテ軽視サレズ、我等ノ意志ヲ十分御汲取リ下サレ度、日本トノ媾和会議開催期近ツキツツアル機会ニ臨ミ、右請願致ス次第ニ候
#33
○委員長(佐藤尚武君) 請願の趣旨は、先程岡田委員から御紹介頂きましたので、委員諸君は御了解になつておることと存じます。この請願の趣旨に関しましては、先程も岡田委員から御説明がありました通りに、極めて機微な問題に属しておるのであります。これも又ポツダム宣言受諾から生ずる結果でありまするが、ついてはこの取扱い振りをいかにいたしますか、それについてお諮りしたいと思います。
#34
○細川嘉六君 取扱いをどうすべきかを決められる前に、この請願書は六十何名とありましたが、この人たちは單なる個人が集まつておるのですか。それらの人は、例えば村長だとか、町長だとか、團体を代表しておるのですか。その辺が分らないのですが、全島民というか、全島民を率いる程の團体の人たちでありましようか。
#35
○岡田宗司君 本請願書にも、在京沖繩縣人有志となつております。東京在住の沖繩縣の方々だと思います。
#36
○細川嘉六君 そうすると、有志が島民を代表したという形ですね。
#37
○委員長(佐藤尚武君) その問題につきましては、実は伊江氏外数名の方々が参議院に見えられまして、私に面会を求められたので会つたのであります。その説明によりますというと、自分たちは在京の沖繩出身者である。その有志の者が集まつてこの請願書を提出するのであるということでありました。そこで私は、現在の沖繩とは交通が杜絶しておると心得られるので、沖繩縣人全体としての意向はどういう方法で以てあなた方は承知しておられるのであろうかということをお尋ねしたのであります。その答えには、現に沖繩から日本内地へ帰還しておる人たちが可なりある。その方法は、交通が杜絶しておるから、普通の意味の交通によることは現在ではできないのである。ただ小さないわゆるジヤンク船みたいなものに乗つて沖繩からこつちに帰つて來るという人たちが度々あるのであります。その人たちと自分たちは直ぐ連絡をとつて島内の民心を承知することができておるのである、そういうような説明でありました。
#38
○島清君 ちよつと速記を止めて頂きたい。
#39
○委員長(佐藤尚武君) 速記を止めて。
#40
○委員長(佐藤尚武君) 速記を始めて。
#41
○星野芳樹君 只今島委員の御説明で、沖繩島民の氣持というものははつきり分りましたが、岡田委員が仰せられた通り非常な愼重を要する件であります。この際この陳情書、先程読まれたマツカーサー元帥宛の陳情書を見ますと、歴史的交渉が甚だ複雑なのであります。本当は日本民族と沖繩の大部分が一体だということを証明できる材料がもつとあるのではないかと思います。
 それからもう一つ非常に機微な状態であるに拘わらず、この中に支那という文句が大分あるのです。これは中國が最も嫌う言葉なのです。こういう文句を不用意に使う、こういうような氣持でこういうものを取上げるときには、非常に諸外國、特に中國人との間に惡い反響を起すと思う。陳情趣旨は我々満腔の賛意を表するのですが、そういうふうに、從來の何といいますか、誤つた國際観念に基く点をすつかり拂拭して、その立場から陳情するという愼重なものでなければならんし、從つて國会としても、趣旨がよいというだけでうかうかと採択するのは、又非常な問題を起しはしないか、こう考えるものであります。
#42
○細川嘉六君 私も議会で、外務大臣に対して外交上の点に触れたのですが、それは日本の置かれた微妙な状態、國際間の状態から見て愼しむべきことだといつたので、何も批評したわけじやないのですが、この請願を扱うに当つて私の質問したわけは、全島民の本当の意思である、又その運動が具体的に力のあるものだということでなければ、裏付けがなければ困る問題であるので、その裏付けはどうかと聞いたのであります。今一、二の人が言つたことで、それはそうだと断定するわけにも行かない。これは愼重に沖繩全体の情勢を研究した上で、更に又考えるべきではないかと思うのです。それで質問したわけです。
#43
○遠山丙市君 いろいろ御意見を承つたのでありますが、これは私は採択すべきものであると考えております。いろいろ先程の陳情書ともよく似ておる点もあるのでありますけれども、今細川君が言われましたような疑点はありますけれども、現在正式に沖繩との間の渡來関係が杜絶をしております今日において、沖繩縣の人々を全部代表した意向を取るということは、私は困難なことであると思う。これはできない相談であろうと思うのです。それで或る程度向うの事情が分つたといたしますれば、こういうような氣持が陳情書に現われておるということを取次ぐということは、私は差支えないと考えておるのでありますが、この意味において私は島君の陳情書採択ということについては賛成をするのであります。
#44
○伊東隆治君 これは請願でなくて陳情でございますが、陳情の取扱い振りはどういうふうな慣例になつておりましようか。政府に進言するとかいうふうなことも固よりやつていいことと思うのです。もつとまだ他に取扱い振りが……慣例として私まだ存じませんが、これの処置振りについても伺つて、それから意見を述べたいと思います。これは採択してあるものでしようかどうでしようか。
#45
○委員長(佐藤尚武君) 簡單に御説明すれば、請願と陳情なるものの間には嚴格なる区別はないようであります。ただ請願という名称の附くものに対しては比較的に鄭重な扱いをするということになつておつた。その一つの現われとしては、例えば本日もこの第一の請願に対して大隈委員に紹介者となつて、頂いたようなわけで、請願には紹介者を附けるということになつております。それならば陳情の方は紹介者を附けないかといえば、それはそうと限らないので、重要な趣旨の陳情に対しては、請願と同じ取扱いをする、こういう事務当局の説明でありました。これが今までのやり方であります。私もこの陳情と請願なるものの間に、法律的にどういう区別があるかということについては、恐らくそれはないのであろうと思うのでありまするが、併し陳情書の中でも重要な意味を持つておるものであれば、やはりこれは請願と区別することなく、取扱うべきものであろうと心得て、実は本件については、岡田委員に紹介をお願したようなわけであります。從つてこの委員会としては、陳情書の性質によつて請願と同じ取扱いをして差支えないものと心得ております。
#46
○岡田宗司君 本件の内容はいずれ講和会議の際に具体的に解決せらるべきものでありまして、尚講和会議の近付くにつれまして、いろいろ具体的な問題が各方面において論議されるようになり、又政府においても、それについての研究等がなされると思うのであります。当然この問題につきましては、そういう見地からいたしまして、こういう陳情が又各方面からも起つて來ることと思われるのであります。國会といたしましては、かような陳情がありました場合に、この陳情が、当然そういう具体的な問題が起つた場合に、尚具体的に考えることといたしまして、現在においては本陳情は、かような陳情があつたということを政府の方に傳達するという点で止めて置いたらどうか、こう考えるものであります。
#47
○堀眞琴君 今岡田君も話されたのでありますが、この沖繩の処理問題はこちら側の意向もありましようけれども大体講和会議の席上で決められる問題だと思いますので、こつち側としては、沖繩の人民の意向が全般的にそうだということになれば、それを講和会議の席上で発表することもできましようけれども、私も岡田委員の意見に賛成で、一應こういう沖繩縣人の有志から陳情があつたということを政府に傳えるくらいの程度で、それ以上政府を動かしてどうのこうのということは、將來の講和会議に対しても却つて反作用を起すのじやないかというような、そういう政治的考慮も必要ではないか、こういう工合に考えております。
#48
○星野芳樹君 私も堀委員と同感であります。更にですね。この機会にこういう種類の國際的に非常に機微を要する陳情に対して、その用語等非常に愼重であることを請願者に傳えて頂きたいのです。更に私長らく中國におりまして、支那という文字を使われることを中國人は非常に嫌つておる。これがあると何でも感情的になる。そういう因縁があるので、こういう点は特に注意されるよう諸君にも御注意を喚起する次第であります。
 それから歴史的交渉ですね。もつとやつたらもつと根拠が出て來やしないかと思うので、この点も御注意願います。
#49
○遠山丙市君 ちよつと速記を止めて貰いたいのですが……。
#50
○委員長(佐藤尚武君) 速記を止めて。
   午前十一時五十三分速記中止
   ―――――・―――――
   午後零時二十一分速記開始
#51
○委員会(佐藤尚武君) それでは速記を始めて頂きます。先程から島委員から沖繩の事情について種々御説明があつたわけであります。その他各委員からそれぞれ重要な発言がありました。これらの意見を参酌しまして、この陳情書の取扱い振りに関して委員会として決定をしたいと思うのでありまするが、國民的感情の問題からいえば、勿論陳情の趣旨に対しては十分の同情を表せざるを得ないのでありますが、日本はポツダム宣言を受諾し、且つこれが忠実なる実行を誓約しており、且つ又現にこれを実行しつつある今日でありますから、すべて領土の問題はこの宣言によつて拘束せられるものであります。この関係からして本陳情書の趣旨も又ポツダム宣言によつて処理せらるべきものと考えられるのであります。ただ沖繩縣人のうち在京有志から提出されたこの陳情書は、こういう陳情が参議院に対して提出されたということ自体は一つの事実であるので、この事実に関して外務委員会としては、先程述ベたポツダム宣言によつて処理せらるべきものであるという以外には、陳情書の内容について今意見を発表することは差控えるべきものであると考えられるので、この見地から陳情書そのものに対しては、意見を附することなく、これを採択し、且つ政府に取次ぐことに決定したいと思います。この趣旨で取計らうことに御異議はございますまいか。ちよつと速記を止めて。
#52
○委員長(佐藤尚武君) 速記を始めて。
#53
○佐佐弘雄君 異議ございません、賛成でございます。併しながら、さつき伊東さんからのお話もありまして、私は伊東さんの御意見に賛成なんであります。つまり盗んだ島でないから、日本國家としては、國会としても來るべき講和会議において当然日本の領土たるべきものであるという主張をすべきである、こう思います。併しそういうことをここで決定するわけではありませんが、そういう氣持でその陳情書の内容について同感の意といいますか、そういう同情の氣持というか、そういう氣持を附けて送付したいという少数意見があるということを記録に残して置いて頂きたいと思います。つまりそれを附けて差出して下さいということをお願いするのじやなくて、大体今の委員長のお言葉のように決まつたが、そういう同感の意を以て採択したという少数意見があつたということを速記録に留めておいて頂きたいと思います。
#54
○星野芳樹君 私はもつと堂々たる陳情書を出して欲しいと思います。そういうのが出て初めて今のように採択して、政府に傳えるというのが非常にいいと思います。これを希望するのであります。
#55
○委員長(佐藤尚武君) 私の考えでは、現在この陳情書の処理を研究しておるのであつて、もつと、御説の通り堂々たる陳情書を出すことにこの委員会として骨折るべきものであるかどうかということは、それは別個の問題として取扱いたいと思うのであります。そこまで委員会として乗り出すべきものであるかどうかということについては、私自身大きな疑問を持ちますけれども、とにかく現在問題となつておりまするのは、今議題として取上げておるこの陳情書を、いかに取扱うかということについてお話合いを願いたいと思うのであります。私は今申述ベましたような決定の方法は、先程來からこの委員会で述べられた各般の意見を綜合して述べたつもりであります。それに対して御異議がありまするならば、お申出を願いたいと思います。適当な修正を加えたいと思います。
#56
○伊東隆治君 只今の佐佐さんの御意見実に慮り深い御意見で、そういう意見があつたということを少数意見として速記に残すことに賛成でありますが、私の希望は、希望と申しますが、この案の処理振りとしては、こういうのがいいじやないかと思うのであります。少くとも一行半ぐらいの謳い文句をつけたのでなければ、さつき田中委員もおつしやつたように採択した後についての簡單な文句がないと、ちよつと物足らんように感じますので、例えば我々が希望するというよりも、沖繩の出身者の熱望として、何かいい適当な文句をお考え下すつて、一行半ぐらいの何かそれに同情の字句を謳うということは、採択の方法としては形としてもいいじやないかと思うのであります。
#57
○高良とみ君 只今の伊東委員の御説に附け加えまして、歴史上の事実としての沖繩民族が日本民族であり、又民國に属しておつたものでないということ、それらのことを簡單に附け加えて、その科学的事実に立つて、我々はこの請願の趣旨に同情するということを附加えて、そうして採択して行くということが、丁度皆様の御意見を綜合したものになりはしないかと考えるのであります。只今の動議に賛成であります。
#58
○堀眞琴君 今の高良さんの歴史の問題ですね。民族的の関係の問題、これは非常に重要な問題だと思うのです。併しこれを客観的に見まして、日本人の立場からは日本人として解決しようということが歴史的見解として出て來る。これは明治以前の話ですよ。明治以後でなく明治以前については、中國側から見れば中國側の解釈が成立つのではないかと思う。私はその民族の血の繋がりというおのを歴史的に見ることは勿論必要だが、そういうことはやはつぱり第二義的な問題で、現実の経済関係とか、そういつたようなものが、実は重要な問題になるのじやないかという工合に考えます。そういう意味からいつて、この歴史的の点は、これは客観的に非常に詳しく考証するということになりますと問題ですから、その点は却つてあつさりした方がいいのではないかという工合に考えます。
#59
○島清君 只今の高良さんのお説に対しまして、堀さんの反対の御意見がありましたが、中國の方から見た沖繩民族を漢民族であるという歴史は嘗てございません。ただ歴史的に册封を受けていたので、宗主権は中國にあつたのだという主張はあるようであります。併し册封を受けておつたから宗主権が向うにあつたのではないということも又歴史家の証明するところであります。ですから、中國も民族的な問題と政治的な問題とは別個に眺めておるようでありまするし、又イギリスの歴史家でありまするところのチエムバーレン氏なんかも、沖繩人は日本人であるということを立証しておるようでございます。その点御了解願いたいと思います。
#60
○遠山丙市君 どうでございましよう。さつき岡田君の説明でも、陳情書の内容に今高良さんが心配せられるようなことが書いてあると思いますが、これを同情的に見まして、一言触れて御採択を願つて置けば、私はそれで盡きるのであろうかと思うのでありますが、いかがなものでありましようか。
#61
○細川嘉六君 同情的の文句を入れるにしても、事実がはつきりしないと。同情の根拠が当然弱くなる。繰り返して言うようですが、問題は日本帰属についてどれ程の熱望が全島民にあるかということがはつきりしないものだから、同情ということを安賣りにして……附けるのはよろしいけれども、若し今ここで言われるような事柄と事実が反対であつた場合にどうなりますか。だからここは事実に即して、我々が確信以て同情されるというところで、同情という文句を出すのが穏当だと思います。そうでなければ他の人に同情を強いるということになりはしないか。確信なしに同情をつける……。
#62
○委員長(佐藤尚武君) 速記を止めて。
#63
○委員長(佐藤尚武君) 速記を始めて。
#64
○伊東隆治君 皆の氣持は大体一致しておると思いますが、只今事務の人からの、政府に申達する請願又は陳情の形式の書類を見てみますと、この請願又は陳情はこうこういう趣旨であつて参議院は願意の大体は妥当なるものなりと思う。よつて内閣は鋭意これが実現に努力せられたい。茲に國会法第八十一條により別册を送付する。こういう文句に一律にしてやるらしいのでありますが、そうでしたならば、さつきの一行か一行半の文句というのは、この中で適宜削つて例えば、よつて内閣は鋭意これが実現に努力せられたいというようなところは削つて、妥当なるものと思うという言葉がちやんと刷物にしてありとしますれば、これをくつ附けてやれば、事は頗る同情という文句の所も差支ないというような氣がいたしますが、いかがなものですか。
#65
○堀眞琴君 私はさつき委員長が概括して述べられた結論で結論だと思います。それに少数意見があるから、それを附け加えて貰いたいという佐佐君の意見、これは別に差支えないと思います。
#66
○細川嘉六君 私も委員長のこの問題に対してさつき述べられたところで穏当だと思います。更にさつき私も話を加えたかつたが、民族の問題になりますと、これはそう簡單にこちらの感情で押して行くわけに行かない。民族の歴史的の傳統についても、歴史的の沿革、これはさつき堀君も言われたが、これは十分はつきりさした上でないと片付かない。それから運動の実体もここに二三の方の言われる程度だから、これだけそのまま取上げて行くというわけにも行かない。それで委員長のあの意見でよかろうと思う。若し少数意見があるならば、これを記録に載せられるのもよかろうと思います。
#67
○佐佐弘雄君 私のは、少数意見を委員長が内閣に送付されるときに添えて下さいと申上げたのではないので、そういう同感の意を表する意見が速記録に記録されることをお願いする。それを添えて頂くという意味ではない。委員長が先程おつしやいました意味で十分であります。
#68
○委員長(佐藤尚武君) 先程伊東委員から、この請願を内閣に送付する場合の書式についてお話があつたのでありますが、この書式は請願の趣旨若しくは陳情の種類によつては、個々の場合に変つても差支えないものであるし、又変える必要のある場合があると私は思うので、必ずしも、この印刷に付してある書式の通りにやらなければならんということもなさそうに考えます。のみならず、この書式によりますれば、願意の大体は妥当なるものと思うということで、つまり委員会としての意見がここに加わつていることになります。それでは私の先程申した趣旨とは違うのであつて、私は陳情の筋そのものに対しては、この委員会として、ポツダム宣言受諾の建前から意見を附さないで取次ぎたいと思うのでありまするからして、自然この印刷の形式には、よれないと思うのであります。つきましては、これは非常に重要な問題でありまするから、報告を本会議に上せる場合の説明振りと申しますか、その大体を起草しまして、もう一度この委員会にお諮りをいたして決めて頂くということにしたらば、一番公正であり、且つ又手落がないかと思います。若し御異議がなければその通りにして、それではこの問題は懸案といたしまして、次回にもう一度お諮りをいたすということにいたしたいと思います。
#69
○委員長(佐藤尚武君) 大変今日は時間もかかりましたので、先に進むことは中止しなければならんと思いますからして、この程度で本日の委員会は終了したいと思います。
   午後零時四十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     佐藤 尚武君
   理事
           岡田 宗司君
           伊東 隆治君
           西園寺公一君
   委員
           島   清君
           堀  眞琴君
           團  伊能君
           遠山 丙市君
           徳川 頼貞君
           淺井 一郎君
           大隈 信幸君
           高良 とみ君
           佐佐 弘雄君
           伊達源一郎君
           田中耕太郎君
           野田 俊作君
           東浦 庄治君
           細川 嘉六君
           星野 芳樹君
  政府委員
   外務事務官
   (総務局勤務) 與謝野 秀君
   外務事務官
   (終戰連絡中央
   事務局賠償部
   長)      島津 久大君
  説明員
   外務事務官
   (條約局長)  萩原  徹君
   専門調査員   坂西 志保君
ソース: 国立国会図書館
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