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1948/11/24 第3回国会 参議院 参議院会議録情報 第003回国会 人事・労働連合委員会 第8号
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1948/11/24 第3回国会 参議院

参議院会議録情報 第003回国会 人事・労働連合委員会 第8号

#1
第003回国会 人事・労働連合委員会 第8号
昭和二十三年十一月二十四日(水曜
日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○國家公務員法の一部を改正する法律
 案(内閣送付)
  ―――――――――――――
   午後二時二十七分開会
#2
○委員長(中井光次君) それでは只今より連合会を開会いたします。総理大臣は未だ登院になつておりません。大藏大臣は衆議院の委員会に今出席中であります。法務総裁が御出席になつております。質疑がございましたら続行いたします。
#3
○原虎一君 法務総裁にお聞きしたいと思いますが、この罰則であります。第百九條に「左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」、その第一番に「第五條に規定する資格を有しない人事官の任命に同意した閣員」、第五條を見ますと、非常に人事官の資格というものが廣い範囲にある。殊に抽象的な條件が列記されておりまして、第五條の初めの方を簡單に読んでみますと、「人事委員は、人格が高潔で、民主的な統治組織と成績本位の原則による能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行章に関し、採見を有する年齢三十五年以上の者の中から両議院の同意を経で、内閣が、これを任命する。」云々とあります。それからずつと欠格條件がありますが、第五條全体を受けてこの罰則百九條が適用されますと、かなり推薦した閣員の責任というものは重い、而もそれは懲役に付せられるということが規定されておりまするが、これに対して法務総裁の所見をお伺いしたいと思います。
#4
○國務大臣(殖田俊吉君) お答えを申上げます。これはなかなかデリケートな問題を含んでおりますのでありますが、只今お話の第五條の資格はやはり人事官選考の際には当然の條件になつておるものと思います。從つてこの條件に違反した人事官の選定をいたしますならば、やはりこの第百九條の罰則が適用されるものと法律的には解しております。併しながら実際上におきましては人事官の選考に当りましては、非常な手を盡しまして十分な調査をいたした上で閣議で決定し、且つ議会へ御相談するのでありますから、万々この百九條の適用を受けるような事態は生じないものと実は考えておるのであります。若し併し何らかの、そういうことはないと思いますけれども、その法律上考えられないこともない事態が生じました場合には無論この百九條の罰則が適用されることは止むを得ないと考えております。
#5
○原虎一君 先日の公聽会にも意見が出たのでありますが、そうすると万一そういうことが起きて、閣議に決定した場合においては、閣員全体が責任を執るという形になりましようか。
#6
○國務大臣(殖田俊吉君) 御説の通りであります。
#7
○原虎一君 百九條の十四に当りまするが、「第百三條の規定に違反して営利企業の地位についた者」と、これは又一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処せられるのでありますが、百三條には「離職後二年間は、営利企業の地位で、その離職前五年間に在職していた國の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない。」とこの規定はよろしいと思いまするが、その離職後二年間は営君企業の地位にも役にもつけないと、離職して一年間なり一年半経つた者に対してこの罰則関係はどういうふうになるのでしようか。離職後二年間でありますから二年間以内は、離職した者が二年間以内についた時にはこの百三條の規定に違反して営利企業の地位についた者との関連ですが、ここをちよつと御説明願いたいと思います。
#8
○國務大臣(殖田俊吉君) こういうことでございましようか、この百三條の規定は離職後二年間こういう地位についてはいけないと、二年を経過しない場合にこういう地位につきますれば、やはり罰則の適用があると思います。ですから二年一日、二年二日経つてからならばよろしうございます。
#9
○原虎一君 退職して者に対するそういう違法の行爲というものはどこが調べて、どういう手続でやるかという問題までが考えられるのじやないか、すでに退職した者を罰するというと……。
#10
○國務大臣(殖田俊吉君) これはもうただ普通の刑罰の規定と同じでありまして、檢察廳の、つまり檢察の対象となるものと御承知下さい。
#11
○原虎一君 要するにこれはその檢察するか訴え出ない限りにおいては分らなければ放つておくという結果になる、これは監督機関というものは人事院にはないということに解釈できましようか。
#12
○國務大臣(殖田俊吉君) 只今のところ人事院にもどこにもそういう特別な機関を設けておりません。或いは御意見のごとくこういう違反行爲が多くなりましたら、そういうような問題も出て來るかも知れませんが、只今のところ考えておりません。
#13
○大山安君 本日の合同委員会は逐條審議に入つておられるのですか、つまりそういうポイントで今日進んでおるのでありますか。その点を……
#14
○委員長(中井光次君) お答えいたします。法律総裁の御出席を要求いたしましたが法律総裁もずつとおいでになるわけになりませんので、政府委員の都合で質問をお許ししておるわけです。法務総裁に対する質問が終りましたら、又元の軌道に返るつもりであります。
#15
○大山安君 分りました。
#16
○原虎一君 人事院の方から見えておりますかしら、法務廳関係だけでございますか。
#17
○國務大臣(殖田俊吉君) 法制部長が……。
#18
○原虎一君 これは先日大山委員からもたびたび言われておるのでありまするが、どうも人事院規則で規定される問題が非常に多く、而もそれは重要なものがあるのです。これは法務総裁も見えておるときでありますから、尚伺いたいのでありますが、それは第百二條によります職員の政治活動の制限であります。「職員は、政党又は政治目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行爲に関與し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行爲をしてはならない。」又「職員は、公選による公職の候補者となることができない。」となるのであります。この政治活動を禁ずるということは、言うまでもなく重大な問題であります。殊に職員組織というものを認めておりまする以上は、職員の経済的な問題は人事院において、政府の責任において改善を行うということになつております。從つて精神的な政治的な社会的な地位の問題等になつて來ますれば、職員組織が意思表示をする、こういう場合が多々あると思います。例えば善惡の問題は別といたしまして、現にこの政令が出ております現在におきましても、公務員法の改正に対して賛成する者に対しては云々という文書が、その組織の決定に基いて我々に通告されておるのであります。これを政治活動とみなさなければならんじやないかと思います。そういうことまでが禁ぜられるということになれば一切それはもう政治活動はできない。例えば勤務時間が終つて、自分の先輩或いは崇拜者が立候補する、これに対するところの推薦演説をする、或いは法に基くところの委員をする、或いは手傳いをするというようなこともできないのであるかどうか、これは非常な問題だと思います。
 そこでこれは人事院規則によつて定めるということは、今私が申上げましたのは一つの例でありまして非常に多いのであります。私共殊に労働関係から見ますれば、九十八條の関係及びこの百二條の関係だけでも、人事院規則は如何なるものを指しているのか、そうでなければやはり我々がこれから関係方面とも折衝して、どの範囲のものは許す、どの範囲のものはいかんということまで決めないと、どうもこの人事院規則を決めるときには、議会の方と何ら関係なしに決めてしまう、これでは議院の審議権というものがあまり軽視されているという感を深くせざるを得ないのであります。又先日の公聽会におきましても、例えば予備金を人事院が持つということは、憲法の予算関係における條項に反するという学説を唱えたところの学者もあつたようなときでありまして、どうもこの人事院規則というものを定める、少くとも重要な点は、御意向を伺うというのでなければならんと思うのであります。又そういう点についての法務総裁の所見をお伺いしたいと思うのであります。
#19
○國務大臣(殖田俊吉君) 只今のお話は誠に御尢もでありまして、政府におきましてもこの点を非常に苦慮いたしまして、絶対に政治活動を禁止するということは面白くない、單は選挙権の行使のみでは、あまりに狹きに失するということを考えましたので、人事院規則で以て一定の政治活動はこれは認めることとした、こういうわけでこの條文を作りましたのであります。
 そこで人事院規則でどういうことを定めるか、これはお話のごとく、議会に何ら関係なく定めることができるのでありまするが、併しながらそんな乱暴なものを作るわけにも参りませんし、よくあらかじめ各方面とも相談をいたしまして、そうして決めたいと思つているのでありますが、然らばどういう規則を作るつもりであるかいう御質問がよく出るのでございまして、只今人事院では、その規則を大急ぎで練つておりますわけであります、一両日いたしますれば人事院規則が人事院におきましてその規則の大体の腹案を申上げることができるということであります。その上で又一つ御審議を願いたいと思います。
#20
○原虎一君 御説明で分りましたですが、これは議事進行に関してでありますが、委員長は御承知のように、衆議院の方では二十七日ごろまでに上げて、二十八日ごろは参議院に廻すようにしたいという、参議院の運営委員会でそういう意見が出されておる、これらのことも、そういう今申しましたような審議に必要な條文が出てこないで、そうして急がせるということについては甚だ我々も心外なんであります。できるだけ申く審議を終つて、決定するものは決定したいのでありますが、審議の材料がないという現実について、よく運営委員会等もお打合せ願いたいと思うのであります。我々は、これは全く劃期的な法律でありますし、労働殊に勤労大衆にとつては、これが基本的になつて來ますと今までの労働権、人権というものが全く拘束されるのであります。それだけに審議期間を十分に、期間というよりか、審議の材料を十分提供されて、そうして審議を進めたいと思つておるのですが、今申しまするように、一体その人事院規則なるものの大体のアウトラインをまだ二、三日を要するというような実情について、もう少しせめて進行するように委員長から督励を願いたいと思います。これだけ希望を申上げまして私の質問は一應打切りたいと思います。
#21
○政府委員(岡部史郎君) 私からお答え申上げます。誠に仰せ御尢もでございまして、人事院規則をできるだけ早く皆様に御披露申上げるのが筋でございますが、仰せの通り、この法律で人事院規則に委ねておる箇所が非常に多るわけでございます。又その大部分は極めて技術的なものでございます。それからこの法律の建前といたしまして、人事院に関するもの及び服務に関するもの以外は、逐次法律又は人事院規則でその適用をやつて行く、こういうことになつております。それで差当り人事院に関する人事院規則、それから服務に関する人事院規則、人事院に関するものは別といたしまして、服務に関する九十六條から百六條までで、これは直ちにこの法律が公布になりますと同時に適用される條文でありますから、これらの中で、施行に必要な範囲のもの、例えば今原委員から仰せのような百二條の人事院規則或いは九十八條の人事院規則、百一條の人事院規則、こういうようなものは直ちにこの法律公布と同時に、又はこれらの人事院規則も公布せなければならん、こういう心構えで準備しております次第でございまして、ただいろいろ折衝も要する事柄でもございまするので、逐條御審議の際に、これらの方面につきまして、これらの條項に亘ります場合に間に合わせてお示しできようかと、こう存じております。その大綱につきましては、先般この労働及び政治に関する條項につきまして御説明申上げたような心構えでおるわけでございます。
#22
○原虎一君 これは先程お願い申した通り急いで頂ければいいと思いますが、序に九十八條の「法令及び上司の命令に從う義務並びに職員の團体」この職員の團体の方についてお伺いし、尚法務総裁がおられますので、関連して御答弁を願えれば幸いだと思うのでありますが、職員の團体の作れることと、その権限なのであります。「職員は、これらの組織を通じて、代表を自ら選んでこれを指名し、勤務條件に関し、及びその他社交的厚生的活動を含む適法な目的のため、人事院の定める手続に從い、当局と交渉することができる。但し、この交渉は、政府と團体協約を締結する権利を含まないものとする。」この場合の團体協約という定義であります。この條文による定義と、それからこの折衝によつて、いわゆる使用者側といいますか、政府側といいますか、と職員との間に協定ができたものはどうなるか、その協定のできたものはどういう法的根拠に立つての契約になるのかという点等について御説明を願います。
#23
○政府委員(岡部史郎君) 私からお答え申上げます。第九十八條第二項の團体協約と申しますのは、從來の成文法の上におきまして労働協約と規定しておるものと御承知願いたいと思います。この労働協約というものにつきましては、労働法上一定の内容があることは御承知の通りでございます。
 次にこの「当局と交渉することができる。」と規定してあるわけでございまして、その交渉の結果一つの協定に達した場合におきましては、その協定を当局側も團体側もこれを守り、これに從う義務があることは当然であろうと存ずるわけであります。併しながらこの交渉が当然にそういう協定を生むということには法律上必ずしもならないわけであると存じます。
#24
○原虎一君 今の御説明によりますと、協約をするという義務と権利が双方にあるということになりますれば、折衝の責任というものを双方が強く感じ、又は持つわけでありますが、これで見ますというと、「交渉することができる。」ということであつて、できない場合もこれはあつて然るべきだという解釈ができるのではないか。職員組織を認めておる以上は、やはり職員から折衝を申出た場合において折衝する義務があり、その折衝によつて纒つた協定ができたものは、今御説明のように協定の成立した條項については双方が遵守するという義務があるという規定が必要ではないかと思います。ないということは、いわゆる当局と交渉することができる、しないこともできるという両方に解するような弱いものである。折角職員組織というものを認められて、折衝の権利と言いますか、折衝の途というものを用いた以上は、これは双方が義務と権利を以てやるということを定めるべきではないか。それからできたものも違反したら、どちらかが違反した方が罰せられるということがあつて然るべきである、こう思うのであります。こういう点についての御見解、この條文から來る私の杞憂、折衝しないで……よくあります職員側から交渉を申込みましても何か都合があつてできないとか言つて遷延するために、感情が昂ぶつて横道にそれる場合がある、それを先ずお伺いしたいと思います。
#25
○政府委員(岡部史郎君) 私からお答え申上げますが、この「交渉することができる。」と申しますのは、勿論勤務條件に関してでございますから、例えは或る官廳におきまして、いわゆる行政運営に関しますことでありますとか、或いは人事権の問題に関しまして交渉したいとこう申します場合において、それを当局はこの範囲外であると言つて拒否することがあろうかと思いますが、それ以外の、ここに書いてあります通りに勤務條件に関しましては、当局も正当な理由なくしては交渉を拒否し得ないものと解釈いたす次第であります。
#26
○原虎一君 そういう解釈はまあ記録に上りますけれども、この條文から來ますところの印象は非常に消極的である。それから今部長が説明されました交渉のなし得る條件というものは、はつきりと前に規定してある。勤務條件に関して又「社交的厚生的活動を含む適法な目的のため、」こういうものについては、明らかに交渉すべき條件にはなつておる。「交渉することができる」では私は幾度も繰返しますけれども、非常に消極的であります。
 それからこういうことが次は予想されるのであります。その次に行きまして、職員組織に入らないことによつて、当局との折衝する権利がなくなるのではないというような條項があつたと思いますが……
#27
○政府委員(岡部史郎君) 二項の一番末段にあります。
#28
○原虎一君 これで行きますると、成る程これは組織に加入する、せんは別にして、折衝の権利という基本的なものを阻止するものではないということでありますが、それを逆に行きますと、このいわゆる人事院規則でどう決めるかが問題でありますけれども、簡單に見ますというと、個人が交替で不平を持出すということを逆に奬励するのではないか。奬励という意思はなくてもなし得るのではないか。組織を認めた以上は組織に入らないからといつてどうこうというと、これは非常に強く、組織に入らない者の権限を擁護すると強く現わしておる。併しながら、それは私は逆な結果になると思います。組織を持たなくても五十人、百人が申合せて適法なことをなすということはあり得るのでありますから、こういう点は私は一体どういうものか。現に逓信なんかにおいて行なわれた。不当に圧迫するとすれば、そういう苦肉な戰術を取らなければならん、作戰をやらなければならんということは、これは現に現われておるんです。こういう点はどうお考えになつておりますか。
#29
○委員長(中井光次君) ちよつと申上げますが、法務総裁があちらの関係でちよつと急いでおられますから、法務総裁に対する御質問がありましたならば、この答弁が終つて直ぐお願いしたいと思います。
#30
○政府委員(岡部史郎君) お答え申上げます。只今原委員の仰せの点は、全く実情に即しますと御尤もな点が多いわけでございますが、この條項に入りましたのは、職員が飽くまで職員個人としても、本來職員の有する如何なる権限をも否定されてはならないんだということの原則を規定したわけでありまして、次の第三項と結びつけてお考えになつて頂くことによつて一層御了解頂けようかと思うのでありますが、即ち職員は、そういう職員團体を結成し、又はその職員團体の下において正当な行爲をしたことによりまして、何ら不利益な取扱を受けないという、労働組合法の十一條にあるような團体行動の保護尊重の原則、これと並び合せまして個人としても、飽くまで個人の立場を認めるのだ、こういう原則的な規定でございまして、これを惡用して極端な戰術に出るというようなことを、予想したものではないのであります。語を換えて言いますならば、職員の個人としての立場を合せて尊重した規定である、こういうふうに解して頂きたいと存じます。
#31
○門屋盛一君 法務総裁にお尋ねします。大体この公務員法の審議も本格的になつて來ました今日、政府は本法案の成立を本國会中に而も極めて速かに成立さして欲しいとのことでありますけれども、本法案を成立さすための審議は、重要法案なるが故に一層愼重を期さねばならんと、こう考えております。同時に又愼重を期すると共に、速かにやらねばならん、こういうことになつておるのであります。こういうことになることが分つておりますから、本院並びに衆議院においても、本法の成立によつて官公労はすでに與えられておるところの労働三法の既得権中、数多くの制限を受けることになつておるのであります。而もこの制限事項に対しては、すでに政令によつてその制限は実施されておる。こういう状態において両院はこの公務員法の審議に当りましては、公務員の福利厚生等の施設、並びに新給與水準の予算化を政府に要求しておる。このことに関連しまして先日労働委員会において、本員の質問に対して、増田労働大臣は一般労働問題の解決について、立法的措置に重きを置くのか、根本的に労働者の安定施策に重きを置くかという本員の質問に対して、後段の安定施策の方の重きを置かねばならんという御解釈であつた。これは尤ものお考え方として、私もその労働大臣の言われることは私の意見と一致しておる。
 時間がありませんから簡單にそういう前提の要件をお話しまして、法務総裁にお考え願いたいことは、ここに重大な問題は、この公務員法に対して安定措置に対する予算化が今日までできておりません。この予算化をして速かに提出して貰いたいということは院議を以て要求しておるのである。にも拘わらず本日までこの御提出がない。このことにつきましては先程運営委員会で副総理並びに官房長官の御出席を求めて縷々申上げておるのでありますが、法務総裁としてお考え願わなければならんことは、こういう状態において安定的の処置を講ぜずに、いつその処置がとれるかという見通しも今日ついておらない。このままにおいて本法が成立されて実施されました場合に、公務員並びに一般社会に、我々の最も憂えているような不穏の、状態の起る虞れがあるかないか。これを法務総裁にお尋ねする。私の考えとしてはそういう事態も起り得ると思うのであります。そういう事態が起れば、折角この公務員法の実施によつて、能率の上る立派な公務員を作ろうとする目的に反することになる。この法務総裁の御見解をお尋ねすると共に、飽くまでも私はこの予算的処置については一大藏大臣その他のみに委せて置かずに、法務総裁のお立場からも閣議において、この予算処置を早く執られることを主張して頂きたい。これが一つ。
 第二の問題は昨日の新聞にも出ておりますように、二十二日、吉田総理大臣は記者團会見において、これらの予算処置が第三國会において具体化しない場合には、参議院の緊急集会においてやる方法もあるということを言明されておりますので、憲法第五十四條のあの但書の緊急集会ということに対して、法務総裁……つまり意見局なんかはどういう見解でおられるか、法制長官も見えておりますから……。私の解釈では、あの緊急集会に掛け得べきものは、衆議院が解散になつておるとき、又は衆議院の任期が終つて、衆議院というものがない。そのときに、突発的に起つた、予測せざる緊急問題を審議すべきものであつて、この第三國会の始まり、もう少し遡りますれば、本年七月からこの給與問題が起つておる。無論これは芦田内閣時代に処置を執るべきものであつたでしよう。併し芦田内閣がこの政令を発しましたときには、國会がないので予算的処置はとれなく、第三國会の劈頭に予算的処置をとらなければならないときに、ああいうふうになつて芦田内閣は倒れた。その後を継がれたところの吉田内閣は、やはり当然この予算的処置は、この公務員法よりも先におとりになつてもいい。こういうように私は考えております。それに吉田総理の御見解で行くと、公務員法ができて、その公務員法によつてすべての給與等を決めるのである、これは大きな考え違いである。新給與水準の決まることが遅かつたから、新給與水準に対する予算的処置は遅れるとしても、七月から困つておる者に対する生活の安定処置というものは、何ら公務員法と関係なく、政令で以てこの既得権を抑えたときに処置をとつて置かなければならんのが原則である。そのときには國会がなかつたからそういう処置がとれなかつた。それをこの第三國会の初めから問題になつておることを、第三國会にも予算を出さない。若しそれが間に合わなければ、第四國会が十二月一日から召集されるにも拘わらず、その第四國会ということを総理大臣はお忘れになつて、直ちに参議院の緊急集会に持つて行くというようなことは、暗に解散をほのめかしておる、又堂々と解散するということも言われておる。こういうことの結果、三百万の官公労と一千万以上になるところの各労働者、並びに一般國民に対して、不安定な感じを與えることに対してどういうことになるか。私は飽くまでもそういうことは、緊急集会でやろうという肚があるのはなんぼあつてもいいです。苟くも一國の総理大臣が公の記者團会見において、そういうことを発表されるということは面白くない。面白くないけれども発表された以上、これに対するところの法制長官、並びに法務総裁の方での、憲法第五十四條の緊急集会に対する解釈をはつきり伺つて置きたい。この二点だけ、時間がありませんから。
#32
○國務大臣(殖田俊吉君) 門屋委員のお話御尤もでありまして、公務員法の成立を急いでおりますと同時に、公務員の生活安定、その他の対策につきましても、やはり相並んで考究すべきことは勿論であります。從つて政府におきましては、これを予算に編成するということのために非常に努力をいたしております。ただ予算でありますために、一問題だけを取り上げまして、それだけの予算を出すということができないものでありますから、全体の予算、つまり今日からこの三月末までの全体の予算の見通しを立てなければなりませんので、大変手間取りましたのでありますが、最近に至りまして、凡その見通しをつけ得るのであります。成るべく速かに議会に提出するように、今努力をいたしております。
 仰せの通り私も直接予算の当局者ではございませんが、その点につきましては、随分憂慮いたしておりまして、相当な発言はいたしております。今後も成るべく促進しますように、折角のお話もございますので努力をいたしたいと思います。
 それから只今のこの総理の言明のことでございますが、私は総理の言明のときには立会つておりませんが、新聞でも凡そそういうことを拜見しております。恐らく総理は、お話のごとくものを簡單に考えまして、予算を一生懸命やつておる。併しその間に解散になるかも知れない。解散になつたときは、緊急集会でやる外はないというようなことをまあ考えております。それが出たものであると思います。併し只今緊急集会のことを考えるときではありませんので、予算を提出いたしましてこれを成立させることに全力を盡すべきであります。從つて解散のことも私はまだ解散をする意思だということは聞いておりますけれども、具体的にいつ解散になるのやら解散をするのやら、それはまだはつきり聞いておりません。これはその場にならなければ解散などは申すべきことではない。これはただ一部の予想でありまして、今解散が行われたらどうするということにつきましては、具体的に私共考えておりません。從つて解散にならない前に、五十四條の緊急集会をどういう工合に実行するのであるかも実は考えておりません。そのときになつて考えるつもりでおるのでございます。お話のごとく予算が成立せず或いは緊急集会等の処置に及ばずして、これを通常國会でやるということになれば遅れるのは当然でありますが、併しそれにいたしましても、これは憲法の命ずるところでありますから、その條章によりまして成るべく大急ぎで実現に努力すると申上げる外は仕方がないのであります。
 それから緊急集会の問題でありますが、これは只今申上げました通りに具体的にそういう事態が生じましたならば、どういうふうにこれを実行するかにつきましては考慮しなければならん問題でありますが、只今まだ仮定の下に私は意見をかれこれ申上げることはできないと思うのであります。惡しからず御了承を願いたいと思います。
#33
○門屋盛一君 私はその仮定の下にとおつしやるけれども、苟くも一國の総理がああいうことを言われる以上、あなた方も閣僚としての又法制長官も來られておるので、こういう重大なことの解釈ははつきりして置いた方がいいということを希望いたします。
 それから又予算の問題でありますが、極あて急いでおるということはたびたび聞かされるのでありますが、公務員法は今國会中に上げるべきものであるという政府の御見解であるにも拘わらず、予算の組み難い事情は今朝も話したんですが、私たちも十分想像がつくのです。併し苟くも院議を以て予算を速かに提出せよという要求をしておる以上、私の方から御質問するまでもなく、総理や大藏大臣がここに挙げられている院議の要求によつて、こういうふうに予算のことをやつておるという詳しい状態の御説明があつて然るべきだと、そうして速かにこの法案を審議する場合には、それに必要なところのいろいろのものを具備しなければならない。この具備するうちの最も大事な予算案というものの成行きの御説明もなく、又今の御話にもありますように、総理大臣も言われておりますように、若し解散にでもなれば緊急集会によつて行きたいと、こういうことを予想されるくらいなことでは、政府においてはこの法案の大事なことを、官公労数百万の人の生活安定をも余りお考えになつておらないのじやないか。若し我々がこういうことで審議未了にでもなつた場合には、審議未了の責任を國会のみに負わせようという考えじやないか。國会はこの第三回國会の極めて劈頭において予算の要求をしておるが、この予算のことに関して何らの御説明もない。ただ法案を急げ、急げというのは私はいかんと思う。そういうことで通過したところの法案が実施された場合に、憂慮すべき事態が起る虞れがあるかないかということをお尋ねしておりますが、これに対してお答えがない、お答えがないですか。
#34
○國務大臣(殖田俊吉君) お答えいたします。予算のことでございますが、この公務員法はすでに七月以來案を練りに練つておりまして、実は相当な資料がありまして、それから考えも纏まつておつたのでございますが、予算の方は何分にもいろいろな関係が輻輳しておりまして、殊に組閣直後に着手いたしましたことでありますので、公務員法のこの法律案の内容程に実は急速に纏りませんでした。その点は御了承願いたいと思います。(「分つている」と呼ぶ者あり)
 それから又憂慮すべき事態が起りはせんか、これは実は心配いたしております。でありまするから一生懸命督励をしておるわけでありますが、ところがどうも氣は焦りますけれども、実行が実は遅れておる、甚だ申訳ないことでありますから、惡しからず御了承を実は願いたいと思うのでありますが、十分御意見があるところは尊重いたしまして、私共も閣議等で力説いたしたいと思います。
#35
○門屋盛一君 御了承というけれども、これは私が一人で了承するとか、せんとかの問題でなくて、憂慮すべき事態が起つたならばどうにもならないのですから、それで私は予算として提出できなければ、この院議が要求したところの予算処置、その他公務員の安定処置に対してはこういうことを考えているとか、いつの時期に予算をこういう方法で出すという……緊急集会に持つて行くのだというような誤解を招くような発言をなさる前に、國会に対してこういうふうにするつもりであるという、誠意のある御声明をここ両三日中にして頂きたい。本委員会に対して二十五、六日頃までに私はその声明をして貰いたい。そうでなければ本法案に対しての審議は良心的な審議はできない。なぜできないかというと、本法案が一方で成立をみたときに、法務総裁みずからも言われておる通り、憂慮すべき事態が起ると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういうことを前提にして我々國会議員としてはこの重要法案を、ただ一方的に法案のみを通すという政府の考えは不思議である。
 それから又人事院の方にお伺いするのでありますが、人事院の淺井委員長はこの席において、本法案の成立はマ書簡の半分の目的を達成するものであつて、あとの残りの半分は厚生施設、給與その他のものが皆予算化しれなければならんという言明をされておる。それだけの信念を持つておやりになつており人事院から、その後内閣に対して、予算編成に対してどれだけの督促をなさつたかということは、法務総裁がお帰りになつたあとでもよろしいから、御説明願いたい。法務総裁は重要閣議にお忙しいそうでございますが、この閣議も恐らく予算に関係があると思うから、長く止あておくことはいけないと思いますから……。
#36
○大山安君 議事進行上、又法務総裁に時間がないというような関係上質問いたしたいのですが、この法案つまり立法する場合には何か他に抱合せ、例えば今日賃金ベースの問題ということを並行して出す、出さないというような問題が起つておるのでありますが、それについて私の所見といたしましては、立法する場合と賃金ベースの問題は、別個のものであるというような考えを持つておるのであります。この場合に法務総裁といたしましてはこの法案につきましてのみならず、今日までの立法する場合に何らか、私から申しまするというと抱合せという言葉を使いますが、抱合せなければ法律は成立たないというようなことが今日までありましたか。そうして今日の場合としてもこの國家公務員法案を審議する場合に、そのよく意見に出るところの賃金ベースを抱合せなければこの國家公務員法の審議に異常を來す、というようなことがあり得るかないかということをお尋ねしたんです。そうしますればその結果において、この賃金ベースの問題も解決がつくというような考えております。(「院議で決つておる」と呼ぶ者あり)私の言い方が惡いのですが、この法案を作る場合には、つまり賃金ベースというようなものを抱合わせなければ法案を審議することができないというような意見であるか。そういうような今日まで、つまり他の何ものかの條件を附けて法案を作ることがあり得たかということを聞くわけです。それをお尋ねしたい。
#37
○國務大臣(殖田俊吉君) 政治の論といたしまして、この國家公務員法の成立に伴いまして、國家公務員の生活安定に対する措置を考えるということは当然でありまして、殊に最近賃金ベースにつきまして、新らしい勧告が出て参つております。それに対しても今鋭意考究を加えております。只今申上げまして予算の問題がそれに帰するのでございまするが、併しながら法律上から申しますれば、何も賃金ベースが決らないから、賃金ベースとこれとは相関的なものであつても、法案は法案で御審議願いまして、賃金ベースは賃金ベースで又別に申上げるときがあろうかと思います。
#38
○木下源吾君 法務総裁にこの際ちよつとお伺いして置きたいのですが、勤労者の基本的な人権を憲法は保障しているのであります。團体の交渉権等を保障しているのでございますが、今度の公務員法では、これを取つてしまうわけです。でいろいろ御説明を聞いておるというと、同時にやはり憲法では、公務員は公の奉仕者であるということが、つまり裏付けになつておるようですが、この場合憲法の基本的人権というものは飽くまでも保障して、そうして公務員たる義務に対して背いた場合に、これを禁止するとか或いは制止するとかいうような條項を盛つたならばどんなものかと、そう考えられるのです。これは今度の公務員法の九十八條で殆んど憲法の人権というものをこの法律で縛つてしまつて置いて、そうしてその公務員の本質であるところのいろいろな職務の遂行を、よりたやすくやらせようと、こういうようなことに見えるのですが、これは逆ではないかと私考えるのです。憲法にある権利を保障して、そうして公務員のやることが公益に反するとか或いは全体への奉仕者ではないというような行爲の場合に、それを禁止するとか或いは抑制するとかいうことを規定して行く方が正しくはないかと私は考えますが、あなたはどんなふうにお考えになるか、憲法との関係で御説明を願いたいと思います。
#39
○國務大臣(殖田俊吉君) 御尤もな御議論でございますが、この法案はつまり公共の福祉を保護すると、公共の福祉という点に重きを置きまして、從つてその公共の福祉に奉仕する公務員が非常に制限を受ける、こういうことになつております。人権尊置は尤もでございます。でございますから、成るべく尊重するのでありますが、國家、公共ということを非常に重大に考えまして、公共の國家のためには、やむを得ずこれを制限する。つまり公務員として公共に奉仕するということは、その制限を受けても尚且つ公共のために奉仕させると、こういう趣旨からでありまして、どつちに重きをおくかという点からお考を願う外ないのでありまして、そこに無論衝突点がございますが、いずれに重きをおくかということのために、公務員一般が民衆に対するよりも、より大きい制限を蒙らなければならんということに考えたのでございます。
#40
○木下源吾君 公共の福祉の副うような行動をしておる公務員に対しては、つまり九十八條のような規定は要らんと考えますが、法務総裁はどういうようにお考えになるんですか。(「懲戒権があるじやないですか」と呼ぶ者あり)
#41
○國務大臣(殖田俊吉君) つまり懲戒権もございますし、それからしていろんな方面から制限することもできまするけれども、この法案は、公務員とは公共の福祉に奉仕する者であるから、從つてこういう制限を蒙むるのであるということを正面から謳つて参りました。從つて一々の場合に、具体的の場合に、公共の福祉の背くかどうか、この立て方もございましよう。ございましようが、公務員の性格をはつきりさせることができませんから、予めこういうことはできないものである、これが國家公務員である、こういうような立て方をして、こういう法案ができたのでございます。
#42
○木下源吾君 私の今の質問には当つておらんです。憲法で公務員は公共の福祉のため、奉仕者としての性格を規定されております。この公務員がそうであるならば、この九十八條は要らんのじやないか。私はこう御質問しておるわけです。あなたはどうお考えになるか。
#43
○國務大臣(殖田俊吉君) やはり九十八條のごとき詳細な規定があつた方がいい、その方が公務員を保護するゆえんですし、尚又公共の福祉を確保するゆえんである。こう考えてその九十八條ができておるのであります。
#44
○木下源吾君 少くともこの法律ができれば恒久的なものであります。恒久的な義務を一方で憲法において負わされておる、これが対立するものができてしまいはしないかと私は思うのです。憲法の保障するものは、飽くまでも保障しておいて、そうして憲法で公務員に負わされておるところの義務というものがあり、若し間違つた場合において、これをいろいろ禁止するとか抑制するとかいうようにしてこそ、初めて憲法に副うところの法律の体裁をなすんじやないか、かように考えるのですが、飽くまでも法務総裁はそれとは違うお考えであるというならば、私はもう質問をする必要はありませんが、一つ良心的に、冷靜にお考えになつて、この点を御答弁を願いたいと思うのです。
#45
○國務大臣(殖田俊吉君) その問題は、つまり國家公務員というものの性格を如何にお考えになるかということで決つて参る問題ではないかと思います。つまり一般の民衆に與えておりまする人権を、國家公務員になぜ制限をしなければならんかということは、國家公務員の性格から來るのであります。國家公務員の性格を、つまり公共性の方から強く考えますというと、どうもこれは止むを得ざる結果であろうと考えます。そこの調和が非常にむずかしいのでありまして、この法律は全体を調和したつもりでできておるのであります。これは甚だお叱りがあるかも知れませんが、そのつもりでできておる法案でありまして、その点につきましては、いつまでかかりましても議論することは、何と申しますか、調和を得がたいかと思いますが、御了承願います。
#46
○木下源吾君 公務員の性格ということを勝手に議論したり、判断したりしておるのではないのであります。憲法で公務員の性格は明瞭に決つておるのであります。私は議論をしておるのじやありません。ただこれが議論をしておるとおつしやれば間違いが起きるのです。憲法というものに、ちやんと具体的に公務員というものの性格が決つておつて、そうして人たるの権利も憲法は保障しておる、勤労者の権利も亦憲法で保障しておるのであります。このような具体的な事実を並べてみて、この九十八條のような規定というものを予め作つて、そうして性格そのものを初めから歪めるというような考え方が法の精神であるのかどうかということを、法務総裁でありますが故にあなたにお尋ねしておるのであります。
#47
○國務大臣(殖田俊吉君) 國家公務員の性格を歪めておるとは思いません。國家公務員の性格を正確に、具体的に、よく分るように書いたのがこの公務員法であると、こう考えております。
#48
○羽仁五郎君 法務総裁並びに法務廳法制長官佐藤君にお尋ねをしますが、先程來しばしば言われておることですが、基本的人権ということとそれから公共の福祉ということとは同じレベルのものであるかどうか、それを伺いたいと思います。
#49
○國務大臣(殖田俊吉君) 私は同じレベルのものと考えております。
#50
○政府委員(佐藤達夫君) 総裁がお答えした通りに存じますが、要するに公共の福祉というものは、公共に属する一人々々の人のやはり基本的人権が寄り集つて、公共の福祉というものが出ておるというふうに考えておりますからして、今総裁のお答えになつたと全く同じように考えております。
#51
○羽仁五郎君 去る二十日、本委員会の席上において私は同じ質問を臨時人事委員長淺井清君にしたのですが、淺井君は明瞭に、基本的人権と公共の福祉とは同じレベルのものだとは考えられません、基本的人権は一段高いレベルにあるものだとお答えになりましたが、政府内部のこういうような意見の不一致はどうされますか。
#52
○國務大臣(殖田俊吉君) 私は淺井委員長のお話を伺つておりませんけれども、恐らく私のお答えしたことと実質的には違わないのではないかと私は考えております。具体的の場合で、もつと具体的な御議論を伺いますと、そこらの調和ができるのではないかと思います。私は今抽象的に只今申上げただけのお答えをするより仕方がありません。よく又淺井君にも聽きまして、その淺井君の意見を聽いて見ましようと思いますが、ここでは今私がお答え申上げたより外にありません。
#53
○羽仁五郎君 抽象的な問題ではありません。理論的にはつきりした問題です。これは法務総裁には少し御無理かも知れませんが、佐藤君のような專門家ははつきり考えて頂きたいのです。基本的人権は言うまでもなく最高のレベルのものです。公共の福祉はそれよりもレベルの下つたものです。從つて正確に理論的に言うならば、公共の福祉によつて制限することのできるのは基本的人権そのものではない。基本的人権の行使を公共の福祉によつて制限されるということがあり得るに止まる。これは理論上の定説です。從つて若しそうでないならば、憲法において基本的人権というものそのものは何ものによつても蹂み躙らるべきものではないという規定は無意味になつてしまう。ですから、その点はどうかはつきり考えておいて頂きたい。先日來政府は度毎に公共の福祉によつて基本的人権が制限されるということを言われていますが、これは理論上の根拠がない。從つてそういうことをしばしば言つておられる結果がどういう間違いを惹きき起すかということは、基本的人権を飽くまで尊重するという國民の民主主義的な信念というものに動搖を與えるのです。基本的人権というものはいつでも制限されるものである。この公共の福祉というものと、基本的人権というものとは、同じレベルでないという臨時人事委員長淺井君の答弁が正しいのです。理論的に正しいのです。今お答えになつているような曖昧な考え方というものは拂拭して頂きたいと思います。
 それから次に続けてお尋ねをしたいと思いますのは、これは法務総裁が新聞紙上にそういう談話を発表されたかと思うのですが、公聽会その他において、國家公務員法改正に対する反対論が非常に多いが、これはこういうものには顧慮しないということを言われておるようですが、そういう事実がありますか。
#54
○國務大臣(殖田俊吉君) 私はそういう記憶は全くございません。新聞記者に聞かれたこともございません。何かのお間違いかと思います。
#55
○羽仁五郎君 それではお尋いたしますが、公聽会では衆議院においても、参議院においても、それぞれその方面の信頼すべき識見を持つた方々の意見を聞いたのですが、これは法務廳においては、十分御研究でございましようか。
#56
○國務大臣(殖田俊吉君) 公聽会の意見等につきましては、まだ十分研究しておるとは申し兼ねます。実はその資料を集めまして、研究はしておりまするけれども、大いに研究しておるとも、研究がもう完結したとも申し兼ねるのであります。
#57
○羽仁五郎君 それでは特に注意を喚起しておきますが、大体現在公平な立場にあると考えられる人達の考え方が一致して國家公務員法の改正に根本的に反対しておられます。それを十分研究して頂きたいのですが、その中でもやはり可なり理論上の定説だと考えざるを得ないのは、公務員法の改正案が、憲法において明瞭に政令についてさえ法律の施行に限るという制限を加えておるのに、この改正法案によれば、人事院の規則というものが、政令よりももつと大きい、即ち法律を施行する上の必要を超えて、さまざまの廣汎な権威を與えられているということは、單に形式上の憲法違反という問題でなくて、國会が民主主義的な最高の立法の機関であるという根本を危うくするという意見が認められますが、これについてどうお考えになりますか。
#58
○政府委員(佐藤達夫君) 羽仁さんに乏しい知識を以てお答えするのは如何かと思いますが、御承知のように、憲法は憲法及び法律を実施するために政令を制定することを挙げておりますが、勿論それは委任政令というものを否認している趣旨ではないと確信じておるわけであります。從つて最近第一國会、第二國会等において成立いたしました法律におきましても、幾多の事項について政令の御委任の規定がなされておる。これらはいずれも私は有効であると考えております。又すでに法律におきましては、政令のみならず省令というようなものにすら委任をされている例が新憲法施行後の法律において多々あるわけでありまして、これも決して私は間違つたものではないと思います。又公正取引委員会の規則でありますとか、そういつた委員会のルールに法律で御委任になつている例があります。これも唯一の立法機関である國会が法律を以て適当と認められる委任をなさるということは、憲法で毫も禁止しておらないというふうに只今まで考えておりましたし、只今現にさように考えておる次第であります。
#59
○羽仁五郎君 その形式論でなく、できるだけ規則或いは政令に重要な問題、これも比較的の問題ではなくして、人権の制限などという重大問題に関するものを委任するということは、國会が國民を守る最高のものであるという趣旨に副うものであるか、それとも背くものではないという点をお尋ねしたいのであります。
#60
○政府委員(佐藤達夫君) よく分りました。委任の制度というものは本筋ではないということは仰せの通りであります。國民の権利を縛り、或いは業務づけるという場合は、成るべく法律を以てしなければならんということは当然のことであります。但しその一本槍で参りますことは、結局行政の運用を阻害するなり、その他の弱点を伴うことによつて、却つて國民のためにならないという場合もこれはあることもお考え願えると思うのであります。その間の調和を要するに委任立法というもので從來解決されて來てやるわけであります。國会において御立法の際にその両方の点をお考え合せ願つて、適当な委任を定めて頂くということに相成るであろうと考えるのであります。
#61
○羽仁五郎君 最後にもう一つ伺いたいのは、公務員の基本的人権についてでありますが、さつき木下委任からの御質問に対しても、明快な理解を政府側は我々に與えられないのです。公務員は公務員たる前に人間であり國民であります。これは言うまでもないことです。從つて公務員が國民として持つておるところの基本的人種というものが高いレベルにあるのであつて、公務員としてなされなければならない制限はそれよりも低いレベルにあるということは、お認めになるだろうと思うのであります。從つて公務員が公務員たるの任務に副わない行爲があつたときには、公務員たるの資格を失うということがあり得るだけであつて、その人の國民或いは人間としての資格にこれが及ぶべきものではないということをお認めになると思うのであります。でありますから、現にタフト・ハートレー法などの場合にも、これは官吏がその職を失う、或いは身分を失う、いわゆるユースフルでないと政府は認めることはできるのですが、併しこれに向つて刑罰を加えるということはできないということは、タフト・ハートレー法の場合でも、はつきりしておることなんです。然るにこの改正法案では、その官吏たるの特権を失わしむるだけではなく、人たるの権限をも侵そうとしておられます。これは正しくありません。從つてこれらの條項を撤回される御意思はないか、それを伺いたい。
#62
○國務大臣(殖田俊吉君) これらの條項を撤回する意思はございません。
#63
○木下源吾君 人事院の法制その他については、民主的にできておるとまあ言われるであろうと存じますので我々はそう思うておりません。人事委員会は権限を非常に今度強化されるわけであります。その権限の強化される相手はすべてこれは勤労者です。勤労者に対するいろいろな権限を強化するわけであります。そうして一方政府に対してはその独立の権限も地位を何らの力がない。ただいろいろなことを勧告するという程度で、何ら力がない。ここで考えられることは、人事院というものは一体何の力があるか。私どもはそう考えざるを得ないのであります。勤労者を締めつけるためには非常に都合のいいように、どういうことでも決めておやりになることはできるけれども、勤労者のいろいろな要請、要望等は、すべて政府からこれを取らなければならない、與えられなければならない。これに対して人事院は何らの権限がないという今回の公務員法、これについては一体どういうようにお考えになりますか。人事院というものがそういう性格であつていいものかどうかということを一つお伺いしたい。
#64
○國務大臣(殖田俊吉君) 人事院がこの法規にありまする権限だけでも非常に強過ぎるのではないか、政府の中に政府ができるのではないかという議論もある程でありまして、却つて私どもは人事院の権限が余り強いという御非難を蒙るかしらんと思うくらいであるのであります。併しながら從來の人事行政の弊風を刷新するというためには、このくらいの立派な権限を持つ人事院でなければ、その効能があるまいというので、この人事院ができておるのであります、成程お話のごとく人事院が勧告をしても政府がこれを容れないときには、人事院がまるで無力ではないか、從つて折角の勤労者の保護機関としての役目が果せないではないか、これも御尤もな御質問でありますが、併しながら人事院というものは又政府に独立いたしまして人事院規則を作ることもできるし、いろいろな問題をみずから考えまして政府に勧告する権限を持つております。それで人事院が合理的なる、誠に万民に納得するような勧告をいたした場合、この勧告は公表されるでありましよう。その場合に政府が單に自分の都合だけで以てその勧告を斥ける、或いは実行しないということは到底できないと思う。やはり独立した人事院の考えなり勧告なりというものは、政府は十分に尊重いなければならんと思う。從つて人事院の独立性も亦そこで大いは効果を発揮することができる。それは幾ら法律に規則を以て定めましても、到底細かく一々の場合規定ができません。結局は公務員法の定める人事院制度を、そこへ人事官として出て参ります人々が、何と申しまするか、これを最も合理的に最も有意義に運用して行く、又政府も立派な政府であるならば、その人事院の独立の行動に対して十分の敬意を拂つて、そうしてこれと協同して行く。政府と人事院とがお互に高い目的のために協同するということがなければ、如何なる法規を作りましても到底これは円滑に行われないのであります。私はこの公務員法の規定しまする人事院を以てしまして必ずやそういう成績が挙げ得る、こう考えております。若し又予期の成績を挙げ得ないようなことがありましたならば、それはその際に適当な考慮を拂いまして、法律の改正を願う、何らそれより外に仕方がありません。然るに今日の場合考えております人事院は立派な成績を挙げ得るであろうと期待しておるのであります。これは結局運用に俟つ外はないと思つております。又政府の方針と申しますか、政府の公共に対する誠意と申しましようか、政府の責任において考うることである、こう考えております。
#65
○木下源吾君 只今の御答弁によると、私の先程御質問した内容の要点については、人事院規則でこれを定めることができるという御答弁のようでありますが、人事院規則でいわゆる具体的に言うならば、今回のような給與ベースなどを人事院が決めた場合に、政府はこれに從わなければならないというようなことをも人事院規則で決め得るかどうか、恐らくそんなことはできまいと思う。これは私が御答弁申上げるまでもなくそれはできまいと思う。
 そうしましてももう一つは、あなたの御答弁の中に、権威ある人事院が決めたことであるから、政府はこれを守らなければならん、守るであろうという御答弁でありますが、この点については六千三百七円を人事院では発表しておりますが、政府は只今あなたのおつしやつたような御趣旨で、人事院を尊重して受け入れるお考えであるかどうかをお聞きすれば、私はもう質問はないと思います。
#66
○國務大臣(殖田俊吉君) その点につきましては、人事院の六千三百七円ベースというものを成るべく尊重して、人事院の要求に副いたいと、こう考えて努力をいたしております。併しながら財政上の関係からいたしまして直ちに六千三百七円が実行できるかどうか、今非常にみんなで心配をしておるところでありまして、私はここで六千三百七円が直ちに実行できるということを申上げ兼ねるのであります。併しこの目標に向つて非常な努力をしておるということだけ申上げてよかろうと思います。
#67
○木下源吾君 そうおつしやるというと、二回御答弁が食い違つてくるのでありますが、私の最初のお聞きしたのは、人事院が勤労者だけにはいろいろな力を加えるが、政府に対しては何もしないじやないかということに対しての御答弁は、人事院というものの権威を政府は認めて、それに從うべきであるとこういう御趣旨の御答弁であつた。それで現実の六千三百七円ベースを人事院が出しておるから、これをお認めになるのかどうかということについては、それはどうもあやふやで、こういうことであるならば人事委員会を権威あるものとして政府は認めない。でありますから、私は人事委員会は片手落ちではないか。そういうことで一体公務員を能率的に而も民主的に運営して行く力が一体どこにあるかということになると思うのであります。こういうような矛盾を持つておられたことし幾ら私はお聞きしてもしようがないんですが、唯一点最後にお伺いして置きたいのは、一体この人事委員会は公務員を能率的にそうして民主的に、ということをスローガンにしておりますが、人事院それ自体が民主的であるかどうか、その運営が民主的に行くのであるかどうか、これを保障するところの公務員法の中に規定は何もないと思うのであります。ですから何らかの運営に対する民主的の運営委員会というようなものを作るのかどうか、そういうことは一つもない。人事院みづからが高いところに上つて公務員だけは民主的に能率的にと言つて見たところが、それは古い日本であるならば文句なしに通用することであろうけれども、新しい日本に私はそんなことは通用できないと思つているのですが、こういう点に対してあなたはどういうふうにお考えになつておるのですか。
#68
○國務大臣(殖田俊吉君) 人事院をどういうふうに作るか、いろいろお考えもございましようと思いますが、この法案では人事官というものの地位を独立のものにいたしまして、そうして政府とは余程独立した権限を與えるということにいたしておりますが、同時にこの人事官というものを選択しますその人事官の資格或いは條件と申しますかについて、細かいいろいろな規定をいたしております。先程原委員のお話にありました通りでありますが、これによりましてこの人事院が公務院行政を十分立派にやつて行けるという程の人を、こういう條件によつて選んだならば得られるだろう、こういうことを考えておりまして、そうして政府は責任を持つて人を選びまして、そうして議会に諮つてこれを任命するのであります。政府の選択のし方が惡い場合に先程申しましたように罰則がしてありまして、閣議に参加した者には懲役にも行かなければならないというような制限まで置いておるのであります。余程立派な人選ができる。その人選ができてその人達は無論民主的な人でありまして、そうして最も知性の高い、又人格の高い人を取りそういう人に運用してもらう。であるから所期の目的を達するであろう。若し併しその人がたまたま途中で人格が変るかも知れませんし(笑声)、又間違つて選ぶかも知れません。そうして非違がありましたならば、このために懲戒権を持つておりますから、それで人事官が四年の任期というか安定した任期を與えましてそうして自由に働かせるが、併しいけないときは懲戒をするようなこういう実は間接的な方法でありまするけれども、選抜とそれからその監督については相当に用意しておるつもりであります。從つて多分この法律に予期するほどの立派な成績を挙げるだろう、これはこの法律が今予定しておるところであります。若しこれが運用がうまく参りませんときは、それは又そのとき別に考えなければなりませんが、多分うまく行くだろう、こういう考であります。でお話のごとくこの外に委員会等を設けましても、亦同じような議論は出て來るのであります。先ず今のところこの制度が一番いいだろう、こういう考え方であります。
#69
○羽仁五郎君 さつき私の質問に対して法務総裁は、公務員の公務員たるの資格を規定するばかりでなく、公務員の人たるの人権をも侵すような、そういう結果を來すような條項を撤回する御意思はないというお答えだつたのですが、これは民主自由党のために甚だ惜しむこととでもありますが、併しそれよりも我々として考えなければならないことは、やはり國会の権威に関することで、國会議員として本委員会において十分考えて頂きたいと思います。大体、法務総裁又は法制長官もそれぞれ先日來のこの両院における委員会の討議、又その公聽会などの意見を虚心坦懷に御覽になれば、この公務員の改正に基本的な無理があるということをお感じになりはしないかと思うのです。それでその基本的な無理というものがお感じになれたら、どうか一つ率直にこの政府の側としてのその基本的な無理を敢て強行しないという方向に向つて頂きたいと思うのです。これは國会と政府とはそれぞれ職務を異にしますが、民主主義というものの権威を高めて行くという点では一つかと思いますので、その点をお願いしたいのですが、その点について特に法務総裁、法制長官に聽いて頂きたいことは、こういう点があると思うのです。それはまあ非常にむつかしい議論でありますけれども、これは歴史上の経驗に顧みても、亦現在の問題を前に置いても、この点は一つはつきりさせて置く必要があるのではないかと思います。それは現在の國会なり、現在の日本の政府なりというものは、占領政策によつてできておるものである。それで占領政策によつて國会或いは日本の政府が負うておる唯一の任務は、つまり民主主義の建設ということにあるので、そういう意味で言えば、つまりいわゆる平時法の制定ですね、平時法の制定より外の任務を持つてはならない。若しこれが侵されると、今我々が作つている法律の中にいわゆる非常時的な色彩が加わつて行きますと、これは將來の日本に対して恐るべき影響を與えることになるのであります。でありますから基本的人権を制限するというようなことは、これは平時法的な場合でないのです。どうしても基本的人権が何らかの形で制限されるというのは非常時的な措置なんです。そういうようなことは我々が國会を通す法律の上には絶対に避けて、そうした措置は直接占領政策によつて最高司令官の命令によつてなされるところにのみ從うべきであり、國会はそうしたことをなすことを許されないのです。占領政策の民主主義の目的が成功して行く上に、我々被占領國民として、占領軍最高司令部に対する我が國会のただ一つの節操ではないか。若しこの節操を失うと、或いは我々が過去において経驗したような、いわゆる翼賛議会というようなものになつて、そうして國会みずからがこの民主主義の根本原則を危くして行くというようなことにもなる場合がないとは言えないのであります。この点をどうか法務総裁も、法制長官も良心的にお考え下さつて、この基本的人権というものを制限するということは、やるべきことでなく、我々民主主義を建設する政府なり、或いは國会としてやるべきことではない。で、これが制限されなければならないというようなことは、ただ非常の場合とか、或いはその他戰時的な場合というものに起つて來るが、日本は、憲法において、戰争を永久に放棄しているのですから、戰争を永久に放棄しているような憲法の條項が危くされるような立法をやつてはならないのです。この点を十分考えて頂きたい。でありますから、この今問題になつております、國家公務員法の改正というものも、突き詰めれば、要するに、全官公労働組合の争議権というものの問題なんです。これは、さつきも申上げたように、この争議の行爲を制限することは、或いは場合によつてはそういうことがあるかも知れませんのですが、争議権そのものを制限するということは、民主主義の根本原則からできないのです。これは、争議権は否認することはできないので、その争議権の行使を場合によつては制限されるということがあるとしても、争議権そのものを制限することはできない。こういうことをやると、我々が現在國会が主たる任務として持つている民主主義の立法を一歩々々築いて行くということが、そうでなくなつて、その中に民主主義でないものが加わつて來る。こういう点を一つ是非考えて頂きたい。これは今日最高司令官が東京における國際法廷の判決に対して発表されたものの放送を聞いても、我々が、どうか再びこの戰爭犯罪というものに導かれないためには、基本的人権を飽くまで守るということを現政府も努力して頂きたいと思うからです。(「それが質問か」と呼ぶ者あり)
#70
○山田節男君 私は、法務総裁及び法制局長官にちよつと聞きたいのですが、公務員法案のこの第百九條と百十條の罰則規定ですが、これは先程來法務総裁から御説明があり、人事院をして非常に独立性を付するというこの意味は分るのでありますが、この第百九條、第百十條の罰則というものは、大体公務員の方の立場から言えば、若し官廳の從業員がこの禁止に違反したということになれば、その最高の罰は、懲戒として免職と、それから民法上の賠償、こういうことが多少できると思うのですが、ところがこの百九條、百十條は、三年以下の懲役、又は一万円以下の罰金に処せられる。その第一項によると「人格が高潔で、民主的な統治組織と成積本暁の原則による能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し、識見を有」している。そいういつたものを若し任命し得なかつた場合には、その任命に同意した閣僚が又三年以下の懲役、或いは一万円以下の罰金に処せられると、そういうのがありますが、これは私は、法務総裁、或いは法制長官として、他の法律の罰則規定とのバランスから見て、これは如何に見ても、私おかしいのですが、たとえ関係の方からこういう何があつて、こうせいということがあつても、これはどうでしよう、法務総裁、法制長官が、他の法律の罰則と比較して、如何にしても、今度の人事院の独立権を持たすといつても、余りに酷じやないかと思いますが、これは一般法律の罰則規定と比較して、バランスを失つていないかという点です。
#71
○國務大臣(殖田俊吉君) 誠に御尢もな御説であります。こういう立法は、今まで例が殆んどないのであります。今のような御疑問が出るのが当然だろうかと実は思います。但し先程申上げましたように、実際の場合においては、これが適用されるようなことは恐らくないと、こう考えられるのであります。併し立法としては、これは嚴として残つております。でございますが、こちらの点につきましては、多少御評判を仰いでも結構と実は考えております。こういう法案ができましたことについては、いろいろ経緯もございますが、この辺は詳しく申上げません。ただつまり人事官の人選その他を最も完全なものにしようと、その目的のために、こういう今まで例のないような罰則も加えようと、こういう趣旨からしまして、決して特別な、なんと申しますか、他に目的を持つていわるけではないのでありまして、その法規の完全な履行ができるように、若しかの場合のこれは用意に、こういう罰則を置いたものとお考えを願いたい。
#72
○山田節男君 今の法務総裁の御答弁、勿論その間の事情がよく分るのでありますが、若し他の法律、今後出て來る法律に、こういつたような、非常な異例が、殊に民主的な新憲法下における法治國家として、こういつたような非常に酷に失するような懲罰規定を設けるということが、これは前例になるのではないか、前例になるということを我々としては、実は恐れている。それで実は、今お尋ねしたように、他の法律の罰則がこれを模範にしたり、こういう例があつたというようなことで、こういうものを設けると、非常に我々としては将來不安であります。從つてこういうものに対しては、そのできたいきさつは我々は非常に推察できるのでありますが、これは法務廳として、こういつたようなものは、極めて異例である、こういうような御所見であるかどうかということを念のために伺います。
#73
○國務大臣(殖田俊吉君) お話の通りであります。極めて異例にしたいと考えております。
#74
○羽仁五郎君 例外を作るということが非常に危險なことなのです。つまりアウスナーメゲゼッツを作れば、憲法全体がアウスナーメゲゼッツの影響の下に立つに至るということは、ワイマール憲法が如何にして覆されたか、歴史上すでに繰返されたことであります。先日も申上げたように、民主主義の根本に労働組合の團結権というものがなければならないということは、これは定説です。これについては、例外的に、公務員の團結権というものにひびを入れるということをおやりになれば、やはり全体にひびが入るのです。そうすれば、民主主義の建設が危くなつて行く。例外的なことをやるということが最も危險なのです。そういう意味で、この憲法に牴触しないからとか、或いは憲法はこれを禁止していないからということでなく、憲法が主張しようとするところを積極的に伸ばして行くというところに、現在の日本の政府なり國会の任務があるのであります。今山田委員から言われたことも、單にこれは内閣の閣僚だけの問題でない、公務員全体の問題です。上の上には、恐らく例外的で、適用されないかも知れないが、下の方は、例外どころか、もうすでに適用されておる。それには白紙逮捕状というような憲法違反行爲まで頻々として侵されている。そういう意味で、こういうものが撤回せられるということを是非研究して頂きたいと思います。
#75
○國務大臣(殖田俊吉君) 羽仁議員の民主張御尢もでありまして、私共よく尊重いたしまして考えて参りますつもりであります。
#76
○委員長(中井光次君) 本日はもうこの程度で如何でございますか。
   〔「異議なし」と呼び者あり〕
#77
○委員長(中井光次君) 実は大藏大臣は遂に今日もお見えになりませんでした。併し前後八回本会は開いておりまして、未だお見えにならないのは甚だ遺憾でございますので、政府委員はすべて明日は午前十時から開きますから、これには是非御出席になるようにお傳えを願いたいと思います。それから審議の方法でありまするが、段々期日も迫つて参りましたが、今逐條進行中であります。同時に明日は大方これは済むかと存じまするが、修正の御意見のある方々はその修正の箇所、それから理由等を簡單にお認めになつて、そうして皆樣方とか諮りをする都合のいいような御準備をお願い申上げたいと存じます。明日は午前十時より開会いたします。本日はこれで散会いたします。
   午後四時十二分散会
 出席者は左の通り。
  人事委員
   委員長     中井 光次君
   理事
           木下 源吾君
           宇都宮 登君
   委員
           赤松 常子君
           北村 一男君
           小林 英三君
           佐々木鹿藏君
           大山  安君
           寺尾  博君
           羽仁 五郎君
           岩男 仁藏君
  労働委員
   委員長     山田 節男君
   理事
           平野善治郎君
           早川 愼一君
   委員
           原  虎一君
           村尾 重雄君
           田口政五郎君
           門屋 盛一君
           田村 文吉君
           波田野林一君
           水橋 藤作君
  國務大臣
   國 務 大 臣 殖田 俊吉君
  政府委員
   臨時人事委員  山下 興家君
   総理廳事務官
   (臨時人事委員
   会事務局長)  佐藤 朝生君
   総理廳事務官
   (臨時人事委員
   会事務局法制部
   長一級)    岡部 史郎君
   法 制 長 官 佐藤 達夫君
   労働政務次官  竹下 豐次君
ソース: 国立国会図書館
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