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1948/11/27 第3回国会 参議院 参議院会議録情報 第003回国会 労働委員会 第8号
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1948/11/27 第3回国会 参議院

参議院会議録情報 第003回国会 労働委員会 第8号

#1
第003回国会 労働委員会 第8号
  公聽会
――――――――――――――――
昭和二十三年十一月二十七日(土曜
日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○公共企業体労働関係法案(内閣送
 付)
  ―――――――――――――
   午前十時四十八分開会
#2
○委員長(山田節男君) 只今から労働委員会の公聽会第二日を開会いたします。公述員の方々は御多忙中にも拘わらず、わざわざ公述のために御來会を辱しういたしまして、感謝に堪えません。本日の公聽会の問題は、今回國会に提案されました、公共企業体労働関係法案でございます。参議院規則第六十八條によりますると、公述人の公述は、問題の範囲を超えないこと、それから不穏の言動がないことと言うことになつておりますので、その旨を御了承をお願いいたします。尚時間の関係上、公述して頂く方々に対しまして、お一人に対しまして十五分間ということになつておりますので、これ亦御了承を願います。尚公述が終わりました後に、一括して労働委員会からの質疑がある筈になつておりまするから、そのことも御了承をお願いいたします。先ず最初に電氣産業労働組合中央執行副委員長渡邊達也君にお願いいたします。
#3
○公述人(渡邊達也君) 私日本電氣産業労働組合の副委員長をしております渡邊達也と申します。本日は中央執行委員長の川口孝治が出頭いたしまして意見を述べる筈でございましたが、所用があつて出られませんので、代わりまして、十四万人の電氣労働者が考えておる意見について聞いて頂きたいと思います。
 私共はこの公共企業体労働関係法案、こういう法律が設定されることに反対であります。いろいろ理由はあるわけでございますが、先ずこの法案が、現在の國営事業の再編成に伴つて、こういう問題が起つて來たというふうに考えておるわけでございますが、この公共企業体の労働関係について、特別の法律を今更設定する必要がないと考えるわけであります。このような法案がなくとも、現在すでに労働関係調査法がありまして、公共事業の労働者は、争議行為についての制限を受けておるわけであります。その制限によれば、その労働関係調整法が、この公共企業に適用されて行くというふうになれば、國有鉄道は当然私鉄その他と同じように、交通事業として労働関係調整法の公共事業に指定されることに、当然なるものだと思います。そうなつて、やはり公共事業としての争議行為の制限を受ける。煙草製造事業のごときは、現在の労調法の考え方から言つても、特別に公共企業に指定して、労働関係について特別の制限をするというような趣旨にはなつておらないのでありまして、一般の外の公團その他の從業員と同じように、一般労働者と同じように、何ら労働関係の権利制限を受けないでやつて行けるものだというふうに考えます。この法案は特別な、公共企業体について、現在の労働関係調整法が制限しておるよりも、より以上に制限をせられるかのように承つておるわけでありますが、これについては、今も先程の理由と同じように、何ら正当な理由がないというふうに考えます。現在配炭公團從業員、或いは食糧公團從業員というような、公團從業員についても、労働関係調整法は、特別な制限をしていないわけでありまして、この際に、こういうようなに法律を設定して、新たに又労働関係について制限なり、制約なりを置くということは、非常に反労働者的な法律であるというふうに考えざるを得ないわけでありまして、國会はこれを阻止して頂きたい。この法案を阻止して頂きたいというふうに私共は考えます。
 次に一般的に、この労働関係の、こういう制限がどういう結果をもたらしておるかということについて、私共身を以て体験しておるので、申上げて見たいのでありますが、現在、例えば我々電氣事業の労働者は、公共事業ということで、争議行為の制限を受けておるわけであります。本來、最初労働関係調整法ができましたときには、公共事業の突如たる罷業のごときものを禁止するんだ、制限するんだというような考え方で、我々は指定されたというふうに考えておるんでありますが、現在公共事業に加えられておるところの労働関係の制限が、争議行為の制限が、どういうような機能を果たしておるかということであります。我々公共事業の労働者は、公共事業であるが故に、当然罷業その他の争議行為に出ようということは、労働者自身が考えておらないのでありまして、我々自身が國民に訴え、大衆に訴えて、その正当性を認識されて來てからでなければ、争議行為ができないとふうに考えている、又効果がないというふうに、我々自身も考えておりますし、今まで実際そういうに動いて來ておるわけであります。例えば今回の争議におきましても、現在争議行為が行われておるわけでありますが、争議行為におきましても、これはまあ詳しくは申述べる時間がありませんけれども、無論突然の争議ではない、我々は曾て労働委員会に調停を提訴いたしまして、その調停案が出た、それが経営者側によつて受入れられないために、その問題が未解決に終つておつて、その問題を非常に長い間争議行為に出ないで、交渉によつて問題を解決しようと、非常に長い期間やつて來たわけであります。それが本年の夏頃に入りまして、どうしても数ヶ月を経ても解決しないということで、争議行為が段々起つて來たわけであります。だから、御存じでありましようけれども、前の芦田内閣のときに、政府の方が労調法にある條文を利用して、中央労働委員会に提訴したわけでありますけれども、政府は提訴しなくつても、非常に長い期間我々が争議をやつておつて、十分手を打つ期間があり、時間的にも余裕も、考えて見る余裕も十分あつたわけでありまするが、これはサボつておられた、そうして、そういう経過の下に争議行為が起つて來たときに、政府の方から、いわゆる強制調停というような申請がされたわけでありまして、そこで又我々は新たに争議行為の制限を受けるというような結果になつたわけであります。これは公共事業の突然の争議行為を、理由の如何を問わず止めさせるというような目的しか果たしていないわけであります。こうして非常にこれは悪用された形でありまして、我々の罷業権、争議権そのものを侵害されたというふうに考えざるを得ない、そうして司法官僚或いは行政官僚が、非常にこういうものを悪用する実例は非常にあるんでありまして、このために我々全國でいろいろな彈圧その他の問題を受けておるわけであります。
 このように労働者の基本的な権利の制限というものが、何ら本來の意味で日本の復興のために役割を果たすというよりも、むしろこういう一つの條文が政府や資本家によつて悪用されておる。眞実の意味で公共の福祉のためにこれが利用されていないというふうに考えるわけであります。これが現在の労働関係調整法が我々電氣事業の從業員に対して與えておる影響でありますが、このように現在の社会で労働者の基本的な権利に対してこういうような制限をいろいろ設けるということは今申上げましたような結果に終つてばかりおるわけでありまして、そういう意味から行きましても又ここで公共企業体労働関係法というような特別な法律をもう一つ作つて、尚この公共事業の労働者の基本的な権利に制約を加えるということに対して現在の実情から言つて、労調法その他が如何に施行されておるかという、その実情から言つて、労調法その他が如何に施行されおるかという、その実情から言つてやはり反対する者であります。私共はむしろこの團結権、或いは罷業権というような基本的な権利の完全な自由の下に日本の民主的な再建、日本國民の福祉のために労働を続けて行くというふうに考えるわけでありまして、こういうような基本的な権利に対する制限には、今言いましたような具体的な理由から言つて反対する者であります。以上で終わります。
#4
○委員長(山田節男君) 次に東京大学法学部教授石井照久君にお願いします。
#5
○公述人(石井照久君) 東京大学の石井であります。公共企業体労働関係法につきまして余り細かいことは申げません。一般的なことを申上げたいと思います。
 第一に感じますことは、こういう事業の労働関係をどうするかという問題の解決の方法としましてパブリック・コーポレーションといつたような公共企業体を作つて解決するという行き方、それ自体は正しくないというふうに思つております。と申しますのは、アメリカにおきましても、イギリスにおきましても、学者も言つておりますように、又実際にもそう扱われておりますように、パブリック・コーポレーションにするということ、或いはパブリック・コーポレーションになつたということは、それ自体労働者の團結権とか、團体交渉権を或るはストライキ権というものを当然に認めないということにはならないとうことは英米においても認められておるからであります。從つてパブリック・コーポレーションにして問題が解決されるというふうに考えること自体がおかしいと思うのでありまして、パブリック・コーポレーションにした場合においても、その立場において特別に考えなければ、労働関係の問題とはならないことであります。勿論この公共企業体労働関係法を見ますと、第二條は、本法において公共企業とは、云々といたしまして、鉄道と專賣が上がつております。この上げ方は必ずしもパブリック・コーポレーションに限つておるとは見えませんが、事実はそれと関連してできないという意味から言いますと、どうもパブリック・コーポレーション自体から直ぐこういう扱いをしていいといつたようなところには誤解があるんではないかとう考えがいたします。勿論こういうことを列挙いたしておりますが、将來パブリック・コーポレーションでない企業もこれに追加して上げて來ることが法律的には可能であります。そういう含みを持つておるのか、或いは公共企業体だけ上げておるのか、この点が将來に問題を残すことであろうかと思うのであります。とにかく現在では公共企業体というものを考えて、これが特殊な労働関係として定められたれものと、まあそう受取つてもいいと思うのであります。政府が全部金を出しておる企業体というふうな事柄は当然に労働関係の制限は出て來ないということは英米でも言われておりまして、結局問題はその事業の性質というものを検討すべきなんであります。パブリック・コーポレーションだからということで、一律に定めておる点が問題であります。從つて事業の性質を見ますと、鉄道と專賣といつたようなものでは可なり違うのでありまして、この労働関係の権利を制限するということになりますと、憲法等の関係から言いましても社会的な利益、公共の福祉というようなことを考えて判断しなければならないのであります。果して專賣と鉄道とが同じであるか。これはパブリック・コーポレーションという点で引つ張つて行けば同じになりますが、事業体から見て果して同じかという点は可なり疑問かと思うのであります。英米におきましては一般の私の知つている限りではこういうふうに言われておられます。パブリック・コーポレーションだからと言つて團結権、團体交渉権、争議権は当然否定されない。ただパブリック・コーポレーションは多く公共企業に関する。たがら極端に大規模の争議権は制限しなければならない。併しそのことは私企業である公共企業について大規模の争議を制限しなければならないのと同じだというふうに見ております。要するに問題はパブリック・コーポレーションであるかないかで決まることでない。企業の公共的性格ということで決まると説いているのであります。この点は先程申上げましたようにパブリック・コーポレーションにすること、企業体をどうするということと、その労働関係をどうするかということを一緒に扱つているように見える制度には根本的に疑問を感ずるわけであります。そこで企業の性質は争議権を制限するかという問題になりますと、二つの面が考えられるのでありまして、普通の企業に対して置けば……パブリック・コーポレーションにしろ普通の企業にしろ、争議をしていいか悪いかということを考えますときに、企業者と労働者の関係という面が一つと、対社会的効果という面が一つ考えられるのであります。企業者との間でいいかどうかという点は、企業体にしている以上は、これは資本主義の社会では放任しなければならないのでありますが、社会的影響という点から言つて争議の制限と言うことが出て來ると思うのであります。そうしますと、その場合には考えられますことは公共企業など非常に重要なものでは、或る場合には争議を制限するということも、著しく國民全体の利益が害されると思うときは、制限するということは論理的に出て來ると思うのであります。併しそのときにその問題はその争議を止めるということでありまして、言い換えれば争議権自体は否定し得ない。或る非常な場合に争議権を止めるということを講ずればいい。そのことと禁止することは違うのであります。止めるという措置をとるだけで、そういう争議をしても当然違法にならないのであります。即ち処罰されたり、労働組合法の十二條の損害賠償の請求とか雇用には出られない。ただ止めるということが出て來るのであります。それに対して全然禁止するということになると本法にような制度になるわけであります。アメリカなどにおきましても、極端に大規模の企業におきまはいは、社会的の影響の大きいものは止める。大統領などか止めるという措置をとつているのであります。個別的に判断し、企業の性格と争議の規模と状態というものから判断して個別的に措置をとるということが普通でありまして、その場合には争議権自体はなくなつていない。從つて争議な違法でないという扱いをしているのに対しまして、本法は当然争議権を奪つてしまつているということに非常に開きがあるし、問題があると思うのであります。勿論鉄道などにつきましては、どうしてこれをこういうふうにするかという意味を考えて見ますと、身分、要するに官吏ではないというふうにいたしました。公共企業体では官吏に似ていると言うような事柄は出て來ないのでありまして、アメリカでは御存じのようにパブリック・コーポレーションの労働者の賃金は、大体公務員と同じに扱われておりまして、人事委員会というものと密接な連絡を持つて賃金体系ができております。これに対してイギリスにおきましては、全くこれをパブリック・コーポレーションの理事者に委ねておるのであります。ところで公共企業体を見ますと、やはりこの点は労働協約の対象としておりますから、アメリカ的な扱いとは違うように見える、アメリカはこれを官吏の俸給体系と同じようにすることの理由としまして、だから政府機関の一部局であるというふうに説明しておるのでありますが、これに対してイギリスは違つた態度を取つている、どうも事業……この本法を見ますと、イギリスのような扱いのようにも見えるのでありますが、それだけに官吏的な身分的な接近というものはアメリカにおけるよりもないと言わなければならない。而もそれが制限される、労働権、争議権が制限されるというとろこにどうしても事業の性質を考え來なれけばならないのでありますが、恐らく鉄道の場合におきましては、争議が当然に全國的ストになるから、又非常な独占体であるというような点から扱われたのかも知れないと思いまして、その点について確かに考うべき理由がございますが、それじや專賣はどうなるかと考えて参りますと專賣にもいろいろあるのであります。塩の專賣とかそういつたものは國民生活に非常な影響がございますが、果たして酒とかいろいろなものについてはどうかという点は事業の性質から考えると、相当吟味を要するというふうに考えるのであります。要するに、私としましては簡單に申上げますと、こういう事業をどういう経営で官僚経営ならないように國有から外してやるかという問題と、その場合の労働関係をどういうふうにするかということは、別個の問題でパブリック・コーポレーションにしたから当然に労働関係の在り方が決まつておると考えるところに過ちがある、結局その事業の性格吟味によつて問題を解決すべきであるということを、一般的のことを申上げて終わりにしたいと思います。
#6
○委員長(山田節男君) 次は日本経営者連盟専務理事、前田一君にお願いいたします。
#7
○公述人(前田一君) 私が日経連専務理事の前田一でございます。最初に私申上げたいと思いますことは、この公務員法の改正、又これが補完的な性格を持つておりまするので、公共企業体の労働関係法案、この問題を一体公聽会に付するということについて私はちよつと分からない感じがするのであります。大体この一連の法案が出ることになりました経緯は御承知の通りにマ書簡に起因しておるわけでございます。若しこの法案を公聽会に掛けましても、結局今日までの経緯から申すと、輿論の動向というものは大体においてもうはつきり分つております。労働者側は反対であるが経営者側は賛成である。それで第三者といたしましても現実の段階をよく見ていらつしやる方は賛成をなさるし、そうじやなくて全く理論的な立場から考える方は或いは反対されるかも知れない。まあこういうふうに大体賛否の分野というものは画然と想像がつくのであります。で若しこの公聽会におきまして、この法案に対して万一ノーという答えが大多数を占めて現れた場合にどうなるか、一体國会は輿論の名においてこの法案はノーであるということを以てマ書簡に対抗されるというお考えであるか、私共が今年の夏中労委におきまして全官公の問題が提訴になりましたときに、全官房長官の苫米地さんは調停委員会に見えましてこのマ書簡は名前は書簡であるが実際は命令であるということをはつきり言明されたのです。占領下における我が國が最高司令官からの命令をうけましてそうしてこの法案を作るということになつておりまするときに、公聽会を以てその賛否と申しますか、輿論の動向を察知しようとなさるならば、これはまさにこの企ては失敗であると私は思うのであります。一体この公務員法の改正であるとか、或いはこれと関連して今回のこの公共企業体労働関係法案、なぜこういう法案が出るようになつたかということの眞相を私共は十分に反省して見る必要があると思うのであります。御承知の通りに、新憲法はいろいろの権利を私共に與えて呉れました。基本的人権を初めとして労働権、團結権、生存権といろいろの権利を與えて呉れたのです。人々は非常にこれに対して狂喜乱舞或いは感謝の心でありましたが、暫時この感謝の氣持、或いは随喜の氣持というものは驕漫、誇りの氣持に変貌いたしまして、ややともすると権利の濫用に陥るところの弊が多々見受けられるに至つたのでございます。一体新憲法が與えて呉れました権利と自由は、公共福祉のために使用することが十二條において明示されておるのでありまするが、この点が忘れられまして、殊に労働関係の面におきましては、その争議、その他の場合においていわゆる労働運動の行き過ぎになるところの現象が多々見受けられるに至つたことは否定し難い事実であろうと思うのであります。若し我が國の労働運動がああまで行き過ぎをしなかつたかならば、恐らくマ書簡は出されなかつたであろうと思います。マ書簡が出たということは、労働運動の行き過ぎ、当これによつて公共の福祉が侵害されるというところに憂慮せられた結果あの書簡が出たものと解すべきと思うのであります。春秋の筆法を以て申しますならば、マ書簡を出したのはマ元帥ではなくして一部の矯激なる労働運動であるということが云えると思うのであります。この趣旨を考えますときに、この法案によりまして苟くも國民の公僕である官公並びにそれに関連する業務に從事しておるところの人々がその弊風を慎まれて、そうして法案に示されておるがごとき行動に出られるならば、これは結果としては日本再建のために役立つことであるし、非常に経済の興隆に寄與することになるということは申すまでもないと信ずるのでございます。この意味において私は本法案が完全に國会において成立されることを衷心希望する者でありまして、この法案に対しては満腔の賛意を表したいのでございます。ただ附加えて一、二簡單に申上げて置きたいことは、この法案は早々の際に作られまして、まだ不備の点が可なりあると思います。只今問題になりました適用範囲の問題、これなどもただ鉄道と專賣のみでなくして、もう少し範囲を拡張して、電氣、ガス、水道或いは私鉄、こういうようなものにもこの法案の趣旨が適用されるような別の方途を講ぜられるということが、むしろ私は必要だと思います。一体國鉄を制限して私鉄を制限しない、國鉄と私鉄に、公共の福祉という面から見て何程の相違があるか、甚だ片手落ちの考え方であると思うのであります。更に又公務員法に盛られておりまするような政治活動の制限、政治資金の運用問題、或いは職場規律の確立、こういうような点についての條文も公共企業体法にはよろしく準用されるべきことであろうと思うのであります。
 そのほか細かいことを申しますといろいろございますが、大体氣付いた点を申しますと、法案それ自体にもこういう欠陥がありと思うのでありまするが、全体として私は原案そのものでも尚結構でありますということを以て私の賛成意見を公述したわけでございます。
#8
○委員長(山田節男君) 次に全日本石炭産業労働組合副委員長天野竹雄君にお願いいたします。
#9
○公述人(天野竹雄君) 全日本石炭産業労働組合の天野であります。只今いろいろ公共企業体の労働関係法案につきまして御説明がありましたのですが、さつき前田さんの御説にもありましたようにこれは今問題になつております國家公務員法との問題に非常に関係があるのだというふうに我々も理解しております。その理解の仕方が、私共石炭産業に従事する労働者といたしましてこの問題の本法案がここに上程されましたのは、この前の争議のときに國鉄の関係諸君に対して國家公務員法は適用しない、こういうような建前から労働者の基本的な権利を個々の企業別に、産業別に、これを改悪して行く。具体的に申しますならば、労働法の改悪をこういう面でやつて行く。こういう関係からこの公共企業体の労働関係法案が上程されておる。私共はこういうふうに理解しておるわけであります。御承知のようにさつき電産の渡邊さんがおつしやいましたように、我々労働者というものは争議を好んでやつておるのではないのでありまして、現在の労働三立法の範囲内においてそれぞれの労資対等の立場において手続を経て交渉し、その中において或る極点に達した場合に利害が一致しない場合のみにおいて争議権の発動をやつておるわけであります。今回の法案を見ますと、実際問題といたしまして、第一條には紛争の処理機関が設けられ、第四條には職員の團結権の否認とその分裂策がちやんと考えられておるし、第八條にいたしましても、公共企業体自身を民主化するという建前でなくして、天降り的に一部の官僚諸公によつてこれが左右されるような危險性もはつきり出ているのであります。例えば第九條の交渉委員の機能につきましても、これを政令によつてやりる。これが現在のような不逞内閣、反動内閣とによつてやられるならば、その結論というものは、我々にどういう結果を及ぼすかということははつきりしておるのであります。第十三條の予算上の問題、資金について政府がこれを拘束するというようなことが、現実の非常に物價の不安定な、インフレ時代におきまして、公共企業体に從事する從業員の生活にどのような影響を及ぼすかということも考えられるのであります。第十七條におきましても、争議行為の禁止ということばはつきり謳われております。全体としてこの問題は現在賃金の安定のための三原則の問題とも非常に関連があるのだと我々は理解しておるのでありますか、アメリカにおける公共企業体の問題が出ましたときには、御承知のようにこれはニュー・ディール政策を実行するために、官僚と政府の支配から脱して民間企業の有能な経営方式をこれに取入れるためになされたというふうに我々は承知しておる訳でありますが、今回のこの公共企業体の労働関係法は、明らかに労働者に対する弾圧のため日本においてこれが上程されておるところに、この法案の特色があると思うのであります。石炭産業の労働者においても、さつきこの公共企業体法の適用の範囲は問題になつたようでありまするが、当然この問題が今回の國会において通過することがあるならば、新しくこの適用範囲が拡大されて電氣産業と言わず、私鉄といわず石炭といわず、全産業労働者の大半がこの法令の適用を受けまして、憲法の規定されおりますところの私共労働者の基本的な人権は全く保護を受けない。蹂躙されてしまうという結果を招來するであろうことを私共は倶れておるわけでありまする(「その通り」と呼ぶ者あり)然るが故に、私共石炭産業の労働者は單にこの問題についていろいろ反対のための反対をやるのでなくて、私共の観点から申しますならば、日本の民主化の方向が、この法案によつて阻害されているだけでなくて、この法案の持ついろいろな政治的な意味、こういう観点から考えますならば、單に経営者を喜ばせるというような甘い考えでなくて、今出ておるところのファッシズムの傾向をますます助長し、ポツダム宣言にはつきり規定されいてるところの日本の民主化という目的は泥土に蹂躙されるような結果になるのではないか。かかる意味において、石炭産業の労働者はその石炭産業の企業の持つ特殊性からだけでなくて、非常に大きな関心と、これに対する重要な決意をここに持つておるわけであります。以上を以ちましてこの公共企業体関係の労働法案というものに対して全面的に反対する。こういうものを上程する必要なしと言うことをここに見解を述べまして、私の講演に代えたいと思います。
#10
○委員長(山田節男君) 次に有機合成工業株式会社監査役、元名古屋專賣局長新敏雄君にお願いいたします。
#11
○公述人(新敏雄君) 私は新敏雄でございます。実は昨日御通知を受けましたので、まだこの法をこなし切つていない点があると思いますので、御承知願います。この法案を拝見いたしますと、第三條に、「この法律に定めのないものについては、労働組合法の定めるところによる。」というような規定がございますので、恐らく労働組合法とか労働基準法の適用があるのだろうと思います。從つてその方は余り問題がないのじやないかと思いますが、まあ拝見しておつて問題となるのは第四章の争議行為というところじやないかと思います。争議行為の罷業権の問題でございますが、第二章で團結権を認め、その裏付として第三章で団体交渉権を認められておるわけなんでございますが、この團結権と團体交渉権、これらの権利のいわばその更に裏付となるとも言われる罷業権を認めなければ、團結險とか交渉権というものは力の弱い存在となつて(「その通り」と呼ぶ者あり)浮いてします結果になる虞れみあるかと思いますから、理論的に見ればどうかと思われる節もあるような氣がいたします。実際私は実は経営者側の方の立場に立つたこともあるのでございますけれども、これは実は経営者側の方から見れば樂かもしれないと思うのでありますが、併し一方又この法律をよく拝見いたしまして、更に我が國の現状ということに鑑みまして、殊に日本鉄道、專賣事業というものが独占の企業である。独占企業であるというところから考え及びましたときに、まあ事が起これば一番迷惑するのは國民でないか。そういう点と、又例を煙草に取りますと、現在殆どストックなしでやつておる現行の煙草の生産量の問題、その煙草の僅かな生産量の下におきまして、見方もありますが、必需品化した煙草を切らすということの及ぼす國民の迷惑、又現在の煙草專賣の収入、これは将来は分かりませんが、現在の煙草專賣収入の國家財政に及ぼす影響ということを思い考え合わせますときに、政府が困るというよりも、むしろ廻り廻つて究極は國民が困る。その財政収入をどうしようか。税金にかかるか、何にかかるか分かりませんが、究極は國民が困る。こういう結論に到達するので、この点を考え合わせて、現状においてはという前提の下に、この十七條を認めるのも止むを得ないじやないかというような考えがいたします。
 それからいろいろ紛争その他苦情を処理する既定があるようでありますが、苦情処理共同調整会議という文があるようでありますが、これで以て程度の軽いものは救われると一應思われますし、第十九條でいけないものは二十條の調停に、調停でいけないものは第六章の仲裁にという工合に、これらの順序を経て大体公平な判断が下さるべきということになるのではないかと思うのでありますが、例えば調停やら、仲裁やらでもうまく行かないというような場合、トラブルが起こつたときに、こんなことは具体的にどうだとは今から私は予想できないが、多分そういう場合はないのだろうとは思いますが、そんな場合の若しあり得るとするならば、多少の不安が感じられるのですが、大体論といたしましては私としては、この第一條の趣旨に則るように慎重に御審議の上に御規定を作つて頂、その法律ができました後は万全の運営をしてやつて頂きたいということを國民の一員として希望いたして置きたい次第でございます。從つて私の結論としては今の國家の現状としてはこの法を作るも作るも止むなし、賛成だということを結論として申上げます。
 それから序ででありますから申上げますがこの法案を昨日読みまして感じましたことは、非常に読みにくいのであります。もつとなだらなかな、よく國民に読み易い法文に、更に文をよくお練りになりまして、又内容についてもいろいろと御改正になる点もあるとは思いますが、もつとなだらかな又読み易い法規をお作りになつたら如何と、これは老婆心でありますが、申上げて置きまして私の職務を盡したいと思います。
#12
○委員長(山田節男君) 次に北海道全官公連絡会議長笹川重雄君にお願いいたします。
#13
○公述人(笹川重雄君) 私は北海道全官公労組の笹川重雄でございます。参議院におきまして先日本日と二日間に亘りまして公共企業体の労働関係法案の公聽会をお催し下さりまして、最も関係の多い我々の意見を述べさして頂く機会を得ましたことを先ずお礼申上げたいと思うのであります。與えられました時間の範囲内で果たして我々の眞意を十分に議員各位に反映することができるかどうを懸念いたしておりますが、掻い摘んで申上げたいと思います。先ず最初に私は結論を申上げたいと思います。結論といたしまして、私共はこの法案の成立には全く反対いたす次第でありまして、この法案が可決せられんことを願つて止まないのであります。この法案提出に際しまして政府は大体四つの理由を挙げておるようでありますので、私はこの四つ挙げた政府の理由について意見を述べて見たいと思います。
 先ず第一番の理由といたしまして政府はマ書簡によつて鉄道事業及び專賣事業の公共企業体への組織替えの示唆によつたものである。種々研究の結果、日本國有鉄道法案、日本專賣公社法案が提出された。尚マ書簡による職員の責任の遂行を怠ることによつて公共企業体の業務運営に支障を起こすことのないような公共の利益を擁護する方法が立てられなければならない。こういう見解を取られて、更にこのためには労働組合法及び労働関係調整法の規定では不十分と考え、これに対処するところの必要な措置を講ずるためにこの法案を提出した。大体第一にこのような理由を揚げておるのであります。この理由によりまして、第一番目にマ書簡のいわゆる示唆によるという点が明らかにされております。私共はこのマ書簡の精神は十分に酌み取りまして、そのマ書簡の精神に相反することのないようにという途は考えておる次第でございますが、政府の提案いたしましたこの第一の理由の中に、恰かも官公廳職員がその責任の遂行を怠つておるかのごとく言つておるのであります。更に労働組合法及び労働関係調整法の規定では不十分であるからして、別途な法律を以て当たらなければならないと考えておる、この考え方についてであります。恐らくこういう考えを持たれたことは、昨年の二・一闘争並びに本年の三月のこの闘争等を恐らく考えておらるることと考えるのであります。私共は昨年の二・一闘争におきましても、本年の三月闘争におきましても、未だ嘗て法に牴触するところの行為を取つたことは、ただの一回もないのであります。法の精神に從いまして、法を十分に理解いたしまして、その手続において誤りがなかつたのであります。労働関係調整法は、私共は全力を挙げて反対をいたしました、かかる法律を設けられることは労働組合の弾圧の何者でもないという見解を持つて反対いたしたのでありますが、併し一旦法律として規定をされたからには私共は法治國民といたしまいて、法に從うところの精神を以ちまして、この労働関係調整法に從いまして、今日まで争議をやつて参つたのであります。であるからして、政府のいうように、我々は職務を怠つたことは毛頭ないのであります。更に政府は不十分と考えておる、不十分と考えて別な法律を制定しようとしておる。この考え方は我々は納得できないのであります。若し不十分であるならば、労働組合法並びに労働関係調整法等、関係法律を補足し訂正して行けば、私はそれで事足りるのではないかという考えを持つのであります。更に私共は過去におけるところ争議におきましては、法律の精神は勿論、又労働委員会の調停についても我々は敬意を拂い、労働委員会のこの調停の席上においても、十分敬意を拂つて、その調停の精神を守つておることは皆様も御承知の通りのことだと思うのであります。組合側は法律の精神を守り、労働委員会の精神を十分に活かして誠意を以て履行した。ところが一方政府においてはどうであるかと申しますならば、法律の精神に相反し、更に労働委員会のこの精神をさえ踏みにじたところの事例が数限りないのであります。でむしろその点から考えるならば、政府自体が反省をし、政府自体が目覚めまして、改めることによつてこの問題は解決できるとさえ我々は考えておる次第であります。(その通りと呼ぶ者あり)
 更に第二の理由といたしましては、政府は公共企業体の性格からいたしまして、共通の特異性を持つものである日本國有鉄道と日本專賣公社とは別個に法制的な措置を講ずることは適当でないのであるからして、これを統一する意味において、今度の法案を出したということを言つておるのであります。ここに私は非常に矛盾を感ずるのであります。勿論國有鉄道と專賣事業というものは事業の性質から言つて、全く異なるのであります。こういうものを別々にして取締るということは勿論いけない。これを政府は認めております。が併し公共企業であるからして一緒のものにして法律を設けなければならないと言つておる。元来日本人の悪い癖といたしまして、とかく法律であるとか、規制既定を細かく制定いたしまして、無暗矢鱈にそれに從わせようという悪い癖があるのでありまして、その結果は自縄自縛に陥つておる例が非常に多いのであります。で公共企業体というような性質で一緒にしようとするならば、すべての事業というものは一緒にして現在の労働三法で十分でないかということを私は考えるのであります。殊更にそういうものを設けることは、屋上屋を重ねるばかりでなくして殊に今度のようなこういう実に彈圧的な性格を持つたものと解せられるところの法案を制定されると言うことは、どうしても我々は納得することはできないのであります。更にこれについて申上げたいことは、同じく公共の事業であるといたしますこの煙草と鉄道の事業の性質から鑑みまして、鉄道の事業は單に國営事業ばかりでなくして私鉄もあるのであります。若し國営のこの鉄道のみが公共事業であるとするならば、この民間経営の鉄道はどのような見方をするのであるかということを申上げたいのであります。同じく鉄道從業員であつて、改札口において切符を切るのも、保線の業務に携わるのも、鉄道通信に携わるのも民間の鉄道におきましても、國営の鉄道におきましても、何ら変わりがない筈であります。であるの一方は民営の鉄道については、いわゆる労働三法においてやつておいて、ひとり國営なるか故にこういう特別立法を設けなければならないということについては、私は非常な矛盾を感ずるのであります。更に煙草の專賣事業につきましては、これは國家が経営しておるから公共の福祉というような、いな、國家が経営しておるから公共事業に相関係するというふうな解釈を取られたものと考えるのであります。でこれにつてい私は申上げたいことは、煙草事業そのものは、我々の見解を以てするならば、これは大衆課税であります。我々の本当の國民大衆からして収奪するところの資本主義的な機構であると、我々は言いたいのであります。こういう煙草そのものの性質から行きましても、これらはむしろ一般的なこの三法によつてやる方が妥当だと考えるのであります。何故ならば、一例を挙げて見まするならば、煙草の女工さんが、煙草を算えていわゆる箱詰をする際に、一般製菓会社においてキャラメルを製造するところの会社の女工さんが、キャラメルを箱に詰めるところのこの作業と一体どのような差があるのか。これは殆んど労働条件においても同じであるというふうな見方をさえ我々は感ずるのであります。でこのキャラメルを製造するところの、キャラメルを箱につめるところの女工さん方は、一般の労働組合法によつて取締られる。ところが同じような條件にあるところのこの專賣事業に携わるところの女工さんのみがこういう特別立法によつて取締られる。ここにも我々は矛盾を感ずるのであります。更にこのような專賣事業に携わるものを特別立法によつて取締られるとするならば、この煙草の葉を製造するところの農民諸君もやはりこういう公共企業体とみなさなければならないと思うのであります。煙草を箱に詰める女工さん、製造するところの職人さん諸君は、公共企業体として取締られてて、煙草の葉を生産するところの農民は関係がない。そういう観点からするならば、非常に矛盾を生ずるのであります。更にむしろ私はそういう農民の関係を考えて見まするならば、現在の米作農家、或いは麦を作るところの農家、こういう農民諸君こそ、本当の公共的事業でないかと私は考えるのであります。そういう人たちには何ら、勿論農民には労働組合法がありませんが、そういう考えからいたしましても、こういうところにこの特別立法をするところの矛盾を考えるのであります。
 第三番目の理由といたしまして、政府は團体交渉権の行使方法に対して、從來一般組合において、ややもすれば混乱を生じ、無用の労働紛争議を生ぜしめておる傾向があるということを言つております。これは非常に問題になつておるのであります。今までの公述人もこういう点を申し上げられておつたようでありますが、この一般組合において、ややもすれば混乱を生ずる、或いは無用の労働紛争議を生ぜしめる傾向があると言つておられます。一体どのような事態が起きたか、例を述べられていないのであります。果たして我々官公廳の職員が行き過ぎをやつておつたかどうか。或いは無用の紛争議を生じておつたかどうかということは、過去の事実が雄弁に物語るのであります。最初において私が第一の理由に申上げましたがごとく、我々官公廳労組は、法律を十分に尊重いたしまして、それに從つてやつておつたのであります。政府こそ怠慢であり、政府こそ誠意を欠いておつたのであります。その一例を申上げますならば、本年の三月の官公廳争議におけるところの終結条件の、いわゆる四條件というものがあります。いわゆる犠牲者を出さないということと、それから給料は不拂いをしないということ、すでに起きたところの犠牲者については善処をする。首切りはやらない。この四條件が條件といたしまして、時の官房長官苫米地三、或いは西尾國務大臣、加藤労働大臣と組合側との間にできたのであります。この内の一例を取つて申上げますならば、給料不拂問題も、労働争議をやつた場合は給料は貰えないというのは当然でありまして、我々、殊に全逓の場合におきましては、組合員から一人百円ずつの資金を調達して積立てたのであります。だが併しあの争議の政治的な解決方法としてこの問題が出まして、時の加藤労働大臣並びに西尾國務大臣等は、給料不拂いについては、非常に困難であるけれども努力をすると言つて、この争議を解決したのであります。ところがこれについてどのような処置を取つたか。一遍だに誠意を示さないで、給料は差引かれておるのであります。そうして後になつて言うことは、あのときにああいうことを言わなかつたならば諸君が納得しないであろうというような、実に誠意のない不遜の態度を取つておるのであります。誠意のない態度と行動は組合に非ずして、むしろ政府がやつておつたのであります。こういうようなことからいたしましても、我々は納得することができないのであります。更に無用な紛争議を生ぜしむる傾向があるというようなことを言つておられますが、政府はいわゆる御用組合、或いは自分の意のままになるところの組合であるならば、これは正しい組合というふうに考えておるのであろうかという点が思われるのであります。正しい権利を飽くまでも主張するところに、組合の本当の組合らしさがあると言うことを我々は理解して頂きたいのであります。時間が参りましたが、もう一つ理由が残つておりますのでお許しを願いたいと思います。
 四番目の理由といたしまして、公共企業体の職員には、國家公務員に認められた地位に関する特別の保障がない。完全なる團体交渉と、適正迅速な調停、嚴正なる仲裁との制度を確立することによつて、職員の生活の安全を保障する必要があるということを四番目の理由に言つておるのであります。いわゆるこれに見ましても、政府は從來官公廳職員に対して、いわゆる生活的の保証をしておらなかつたということを私は率直に裏付しておるということを言い得ると思うのであります。更に完全なるとろこの、團体交渉とは、一体如何なる團体交渉であるか、政府はどんな交渉を以て完全なる團体交渉と言つておるのであるか、我々には理解ができないのであります。恐らく権利に盲從し、いわゆる馴合的に、交渉に應ずるところのものを以て完全なる團体交渉というふうに解釈しておるのではないかとさえ我々は考えるのであります。組合の交渉は飽くまでも理論的であります。如何なる組合におきましても、理論的に交渉をいたしておるのであります。理論的に納得しない者は、飽くまでも徹底的に追及するという行き方は、正しい行き方だと思うのであります。更に適正迅速なるところの調停、或いは嚴正なる仲裁と言うことを言つておるのであります。然らば現在あるところの、この中央労働委員会、或いは地方労働委員会は、適正迅速なるところの調停をやつておらないのか、或いは嚴正なる仲裁をやつておらないのかということを私は反問いたしたいのであります。これは労働委員会に対する私は重大なるところの侮辱だとさえ感じておるのであります。労働委員会は、政府みずから設けたのであります。組合は、過去の争議におきまして、この労働委員会を尊重いたしまして、その労働委員会の権威を信頼いたしまして、今日までやつて参つたのは、天下周知の事実の通りでございます。然るに昨年以來本年に掛けまして、この中央、地方に起きましたところのいろいろな紛争について、政府は労働委員会の、この権威を非常に冒涜したとさえ思われ向きが多々あります。まして地方におけるところの、この労働委員課の権威ある調停事項については一顧だに與えなかつたのが、政府のやり方であるのであります。こういう意味からいたしまして、私は、今までの政府が、労働委員会に対して、どのような見解を持つておつたかを非常に疑わざるを得ないのであります。若し政府において、現在あるところの労働委員会の権威を尊重するならば、この現在或る労働委員会の活用こそが望ましいものであると考えるのであります。にも拘わらずこういうものを否認いたしまして、別個なところの仲裁機関や調停機関を設けようとするところに、我々は非常な不満を感ずるのであります。まだいろいろ申上げたいことは沢山ありますが、時間の関係で申上げることができないのは非常に残念でありますが、要するにこの法案は國家公務員方の改悪と同様な悪法であるというふうに我々は考えておるのであります。労働組合運動の健全なる発達を阻害するものであると共に、こうしたことが許されるならば、公共の福祉に名を藉りまして、重要なるところの民間産業の労働組合を次々とこういうふうに圧迫し、そうして彈圧するとにろの前提となるものではないかということを、我々は非常に倶れておるのであります。日本の民主化を図り、日本の経済、産業の復興を図るためには、こうした彈圧的な悪報を排除いたしまして、現在ある法規を十分に活かし、足うざるところは補い、若しこのマ書簡の御精神に牴触するところがあるならば、それを改めて、この一本建てのものを以てすべての労働組合運動に対処する方が好ましいものであるという我々は考えを持つておりますために、こういう悪報的なものは全面的に反対であることを申上げまして、どうか議員各位におかれましては、この法案について否決せられるよう御努力を願いまして、私の公述を終わる次第であります。御静聽を感謝いたします。
#14
○委員長(山田節男君) 次に全國專賣局労働組合書記長佐藤新次郎君にお願いいたします。
#15
○公述人(佐藤新太郎君) 私は全國專賣局労働組合の佐藤でございます。本日は委員長は葛生礎八が参るわけでございましたが、病氣のため止むを得ず私が代つて公述いたします。專賣局労働組合三万の從業員を代表した意見といたしまして該法案に対しまして、全面的に反対の意見を持つておる者であります。その理由といたしまして、先ずこの法案自体を批判するならば、國家公務員法改正問題以上に、重要な政治性が含まれておるということであります。この法案を足掛かりとして、民間企業の労働運動に対しまして與える拡大発展性があるというふうに断定せざるを得ないのであります。
 次にこの法案が通過することによりまして、憲法において保証されております自由なる日本の労働運動、延いては日本民主化の将來に取つて、極めて重大な悪い影響をもたらすであろう、この第一歩であることを私たちは認めざるを得ないのであります。殊に專賣煙草企業のような事業体におきまして、我々の從業員が、政府企業であるというそれだけの理由を以ちまして、労働組合運動の制限を受けると、こういうことになるならば、労働組合運動の日本における歴史的な意義が一時的な現象や動向によりまして、抹殺されてしまうような結果になるようなことを憂うるのであります。具体的に申上げますならば、日本の官僚機構で一番封建色が強いと言われております大藏官吏の支配下にあります專賣局の機構は、專賣法規という法律と、煙草という物との両手によりまして、物と権力を両手に掌握したところの機構の中におきまして、官廳民主化のために労働組合の存在というものは誠に重大な意義を持つておるものであります。先程の公述人が專賣の煙草にはストック品が少ないというようなことを言われておりまするが、私從業員の一員といたしまして、大衆煙草であります「きんし」「みのり」のストックは常時持つております。けれども高級煙草でありまする「ピース」「光」その他の高級煙草を作るが故に大衆煙草であります配給品のストックが僅かに少ないということは言われますが、これは政策面において如何ようにも操作できる問題でございます。日本の労働運動におきまして、一時的な現象によるだけで、本質的な解釈を誤るとするならば、日本の労働組合は曾ての戰時中における産報的な存在たらしめる原因となると考えるわけでございます。又最近の労働情勢の傾向に対しまして、これを單に労働階級の責任であるというふうな考え方につきましては、これは私たちは納得できないのでありまして、資本家と労働者とあります民間企業とことなりまして、我々は政府の從業員でございます。從いましてその責任を我々労働者に轉嫁するという考え方はその前提としてありまする反動的な資本家の存在を十分に考えなければならないのであると断定せざるを得ないわけでございます。
 次に專賣事業の作業環境でありますが、この労働環境を分析いたしまするならば、單に公共企業体であるいわゆるパブリック・コーポレーションであるというところの企業形態の立場からのみこれを画一的に法制化しようというところに、私たちは理論的に納得できないものを持つておる者でございます。というのは、煙草を製造する製造過程とあものは、最もニコチンの猛烈なる塵埃の中におきまして、而も刻み系統と、巻煙草系統との二つの系統があります。こういう特殊な作業環境内いあつて、而も現在の官聽給與の中では一番劣悪な給與を以て我々は補償として受けておりますが、そういう劣悪な労働條件の中にある我々專賣從業員が肉体的に機械と取組んで、而もその作業は流れ作業でございます。かような肉体労働者、而もその製品を販賣する販賣員と、一方又一部の塩、樟脳を製造するというこの企業が、この一般商品に比較いたしまして、特に國家的な意義を持たないということを私たちは考えておるのでございます。從つてそのことは、その從業員は民間の肉体労働者と本質的に聊かも異なつていないのでございます。若し煙草生産の肉体労働者が民間企業の労働者と差別されるとするならば、これは先程から申上げております國家財政の面の関係だけでございます。現在煙草収益は國家財政の四分の一を賄つておりまするが、この財政的な重要性があるとの理由は、ただ政府がいわゆる資本主義的な施策によりまするところの大衆課税的な政策によりまして、ただ單に國家財源の面に重大な関連性を持つておるだけでございます。日本の政府が慎に國民のための民主主義的な、完全なる國家であるとするならば、政府がいつまでも自分に都合のよい、大衆課税的な利益を以て、國家収益に頼るというような方針は是正すべきであると考えるわけでございます。このような公共性は政府だけの手前勝手な理由でありまして、私たち労働者といたしましては、労働環境の上から絶対に承服できない理由の一つでございます。煙草、塩、樟脳を主体とした我々肉体労働者の労働環境を無視いたしましたこの法案は、やがて公共の福祉に名を藉りまして、電氣或いは私鉄、ガス、炭鉱等の労働組合運動にまでその政治性が発展するという、第一に申揚げました理由もここにあるのでございます。そうしてこの傾向は最近漸次叫ばれておりまするフアッシズムの抬頭あるとも断ぜざるを得ないのであります。一面この法案を檢討いたしますと、この法案の性格と同時に、この第三國会に提案されておりまする日本專賣公社法案との関連性から私は申述べたいと思います。日本專賣公社法案と比較をいたしますると、大藏省の中に專賣企業審議会というものがございまして、大体の構想が練られていたのでありまするが、この該法案の内容を檢討した際に得られるものは、專賣局という名称を日本專賣公社という名称に看板を塗替えただけのものでありまして、その機構たるや、從來の封建的な色彩の強い大藏官僚閥の温床として聊かも変化のない機構なのでございます。かように企業体のそのものはマ書簡の趣旨を無視いたしまして、看板の塗替えだけでその場を糊塗いたしまして、而もその從業員には我々が基本的に保証されておりまする自由な組合運動を制約するというこの該法案に対しましては、我々は納得のでき得ないものでございます。
 結論といたしまして、我々が肉体労働者の立場からいたしまして、聊かも民間企業の労働者と異なつていないということからいたしますならば、現在制定されております一般法、いわゆる労働三法に適用されるべきでありまして、このことによつて我々は若しこの三法にいろいろな不備な点があるとするならば、この三法を改正することにその眼目があると考えざるを得ないのであります。從つて國家公務員法改正の、この混乱した政局に便乗いたしまして、公共企業体労働関係法なるものの制定をしようとする反動的な意図に対しまして、私は全面的に反対をいたす者であります。
#16
○委員長(山田節男君) 次に運輸省鉄道技術研究所員村木啓介君にお願いいたします。
#17
○公述人(村木啓介君) 鉄道技術研究所の村木啓介でございます。私は主といたしまして國鉄問題を中心にいたしまして、本案に対してその反対意見を申上げたいと思います。
 最初にこの立法上の考え方につきまして三つの反対論を申上げまして、若し時間がございましてら、考え方の違う重要な條文につきまして、若干簡單に批判をいたしまして、各位の御審議の参考にしたいと思います。尚本法案は、日本國有鉄道法案とこれは重要な、いわば表裏一体をなす関係がございますので、共にこれは論議すべきものだと思います。で、暴頭に一つ申上げて置きたいことは、法的に申上げまして、本法案が妥当であるとかどうとかいうことは、すでに言う必要のない問題でありまして、極めてこれは酷い、新憲法さえも無視いたしました乱暴なものだ、從つてこれを法的に云々言う必要がもうすでにない問題だと、かように私は考えるのでございます。
 第一の反対理由といたしまして、本法案は私たち國鉄労働者の基本的な人権を奪い去りまして、官僚独善の昔に復帰させるもの以外には何らの利益のないものだと、かように私は考える次第であります。で、今まで私共國鉄労働者を擁護いたしておりました法律は、新憲法、労働組合法、労働基準法、私共は反対はいたしておりますが、一應労調法を以て私共の権利は今まで保護されておつたわけであります。然るにこの公共企業体労働関係法案が若し可決されるといたしますれば、私共今や、拠るべき、保護さるべき法律を持たないようになると、考える次第であります。と申しまするのは、今までの労働組合法を拜見いたしますと、労働組合法は專ら私共の権利を、私共の基本的権利を擁護するためにできておつたように理解しておりますが、この公共企業体労働関係法を見ますと、そうでなしに專らこの公共企業の擁護に重点があるように思われるのであります。このことはそれぞれの法律の第一條の目的を見ればこれははつきりいたしておるのでございます。この法案をずつと見ますと、タフト・ハートレー法に非常によくに似通つておると思うのでありますが、そのタフト・ハートレー法が昨年の六月にトルーマンの拒否権に遭いました事情、その間の事情をよく突き合わせて見ますと、ここに非常に似通つた問題が私は見出されると思うのであります。で、このトルーマン大統領のタフト・ハートレー法を拒否いたしましたときの演説の全文を見ますと、先ず初めにこういうことを書いておられます。こういうことを言つておられます。我が民主社会の十大原則に合致し得ざるものがある。そしてこの條項はより多くの罷業の原因となるであろう、且つ本案は産業平和に対しても又経済の安定と進歩に対しても何ら寄與するところがないであろう。それは危險な全体主義的な統制經濟へ一歩近寄るものとなろう。そうして、本法案は将來長く我が國に禍根を残し、不安の趣旨を包含するものである。このような前置きをされまして、法による協和は不可能だ、協和は法律の力では得られない、我々は相互の尊敬と信任を法律の命令によつて釀成し得るものでなければならない。かように論じられまして、九つの欠点を突いておられます。この九つの欠陥のすべてが、この公共企業体労関係法に全く一致しておるのであります。この中で二つ、三つ拾つて見ますと、先ず本法案は実際的にはストライキを一應頻繁ならしめるであろうということを言つておられます。その次に本法案は、雇用主を煩雑にし、多くの面倒な支障をもたらすであろう、このように言つております。次に本法案は、労働者が現在の法律の下で享有する保護を剥奪するものである。それから本法案は、非常に厄介なそして事実上実行不可能な個條を含んでおる、このようなことをずつと挙げられておるのでありますが、この指摘された欠陥はこの公共企業体労働関係法案をずつと見て参りますと、全くすべとこのことが指摘されるのであります。何故に今回の大統領選挙におきましてトルーマン氏がかようなことになつたかということを私は十分考え合わせて見ましても、この公共企業体労働関係法案の狙つておるところのもの、これを十分各位におまれましては御理解頂きまして、この法案のねらいがどこにあるかという点を取上げて頂きまして、本法案を撤回して頂きたい、かように先ず考える者でございます。
 その次に第二番目の理由といたしましては、國鉄の経営民主化と能率化は決して本法案のようなものではこれはできない、できないばかりでなしいますます昔のような独占資本家と官僚との癒着による甚だしい非民主的な官僚的な國鉄にますますなるであろうということが推論されるからであります。このことは元來日本國有鉄道法案と公共企業体労働関係法案が今回第三國会に提案されました提案理由といたしまして、政府はマ書簡に基づくものだということをおつしやつておりますが、私はマ書簡の本当のねらいというものはこの法案の中に決して盛られておらないと考えるのであります。マ書簡の言つておられます眞意というものは、私は公共企業体というものは、國有企業の能率増進と民主化的要素の導入を図るものだ、このように私は解釈いたしておりますが、元來公共企業体なるものは國有事業に政治的、行政的、財政的な自主性を與えると同時に、人事の自主性を與えまして、これを運用することによつて可能だ、このように考えておりますが、現在見ますところの日本國有鉄道法案の中にはこれらのものが少しも見出されておらないのであります。おらないばかりか、むしろ行政的或いは政治的理由に名を藉りまして、官僚勢力の温存強化ということに專ら終始しておる面が非常に強く出ておるのであります。これは恐らく公務員法の公布以來非常に官僚が特権を振り廻しまして、或いは政党政治さえも圧迫しておるかのように見える傾向が非常にありまして、非常に有害なものを沢山含んでおると思います。
 それからこの公共企業体労働関係法案の中には沢山いろいろ私共に取つて或いは経営自体に取つて非常に不利な禁止をいたしておりますが、その中で一番重要なことは経営参加の否定ということであろうと私は思います。今や経営参加の否定をいたしまして、企業の民主化ができるかできないか、このようなことはすでに常識的なことでございまして、経営参加の否定をいたしまして、官僚がどういうことを現在企んでおられるか、この点は私も最も注目しなければならないじやないかというように考えられるのでございます。
 それからこの法案の中には、争議権の禁止、オープン・ショップ制の採用、経営参加の否定、專從者の諸給與の支拂停止、苦情処理機関の設置、仲裁委員会への強制裁定力の付與など、從來労働関係法に見られなかつたような制限的な性格を示しておりますが、このようなものは大体日本國有鉄道法案を同時に見ますれば、当然肯けることでありまして、日本國有鉄道法案の中に盛られておりまする趣旨を十分に運用しようとするならば、このようなことをやらなければできないことだというふうに解釈いたすものでございます。
 それから第三番目に申上げたいことは、先程多くの公述人の方がすでにおつしやつておりましたことでございますが、この法案が通過することによりまして、将來あらゆる公共企業体にこのことが適用されまして、これが一つの突破口をなす可能性を持つであろうことでございます。これはすでに日経連の前田さんがはつきりおつしやつておりましたように、これは前田さん御自身の御意見ではなしに、すべての資本家の方の私は本当の肚だろうというような理解する者でございますが、非常に危險な面を私は持つておると思います。從つてこの公共企業体労働関係法というものは現在國鉄と專賣のみしか適用されておりませんが、元來、國鉄は何故公共企業体のこういつて適用を受けなくてはならないか、又私鉄その他が受けなくともいいかという理由に、しばしば國民の信託財産であるとかいうようなことが一つの理由に挙げられております。それ以外には余り理由がないようでありますが、とにかくこの法案がすべての公共企業の彈圧の突破口になるであろうこということを私は強く感じますので、その点で第三番目の反対理由とする次第でございます。
 それから簡單にちよつと各條につきまして意見を申上げますと、第一條はこれははつきり労働組合法の精神と反対立法である労働者を守る法律ではなしに企業を守る法理であると言うことがはつきり理解されます。それから第四條の職員の團結権についてオープン・ショップが謳われておりますが、これはオープン・ショップ自身は、組合の分裂と御用組合の助長、それ以外には何物もなく、鉄道企業の性格から当然適正單位の組合が必要でありましようし、このオープン・ショップの組合を作ることによつてどれだけ事業運営について支障が起こるであろうかと言うことは、トルーマンのさつき言つておりましたことをもつてしても、これははつきり言えることでだと私は思います。それから第八条の経営参加を否定、このことは申すまでもないことでありますし、それからその次の條文では、三十日以内の期間を定めて雇傭される者の組合に対とは一体どうするのか、いわゆる臨時人夫、直傭人夫についてはどういうふうにするのか、その点がはつきりされておりません。それから多くの條文につていのことでありまするが、專ら政令で決めるというようなことを沢山謳つておりますことは、これはいけないことだと思います。それから第十一條につきましては、これは自主的な労働組合の結成、自主的な行動はできないようなそれから十六條につきましては、これは日本國有鉄道が財政的に自主化を実施していないことをみずから物語つている規定以外の何物でもないと思います。それから十七条におきましては、これは公益優先に名を藉りまして、労働者を不当彈圧するもの以外の何物でもなく、これは解釈の仕方にわりましては如何ようにも解釈されて、これこそフアッシズムへの復帰の第一歩であろうと、かように考えます。それから第五章第六章につきましては、すでに労調法で十分この点を盡しておりるものでれりまして、これに更に輪を掛けて圧迫するような内容が沢山盛られておるわけでありまするが、このようなものも必要を認めない次第でございます。
 時間が余りないようでございますから、各條につきましての批判はこのくらいにいたしまして、要するに特別立法でこの公共企業体労働関係法などを作らなくても、日本國有鉄道法案を運用する上にどうしても何か特殊な労働法を作らなければならんというならば、從來の関係三法を大体基準にいたしまして、その足らないところだけを補足的に設ければいい、このような新憲法さえも、労働組合法さえも全部否定するような法律を作ることは、私は非常にいけないことだ、從つてこれが今後の國鉄の運営について非常に大きな障碍になるであろう、私共は先程申上げましたような、トルーマンの否定権の趣旨を十分この際考えて見る必要があろう、かように考える次第でございます。大変時間が超過いたしまして恐縮でありました。
#18
○委員長(山田節男君) 次に総同盟中央執行委員關口喜代志君にお願いいたします。
#19
○公述人(關口喜代志君) 私は総同盟の中央執行委員關口でございます。先ず結論から申上げますならば、私共日本労働組合総同盟は、この公共企業体労働関係法に対するところの反対の声明書をすでに発表いたしまして、御承知の方もあろうかと考えております。我々総同盟百二十万は、この悪報と称され、又我々労働組合を彈圧せんとする意図を持つておりますところの公共企業体労働関係法に対しては、態勢を整え、全組織を挙げ、あらゆる機会を捉えて反対の闘争を展開しなくてはならないということを中央執行委員会において決定しておる次第でございます。大体マッカーサー元帥の書簡の趣旨によつて政府が公共企業体労働関係法なるものを制定いたしまして今次國会に上程する段取りになつておるのでございますけれども、マ書簡の示唆したところのその趣旨という者は、公共の利益を擁護するために調停或いは仲裁、そういう制度を活用しなくてはならないということが言われておるのでございます。國鉄或いは專賣の從業員が組織するところのこれら労働組合は、勿論労働関係の三法によつて先ず調停或いは仲裁その他を施行するのが当然ではなかろうかと考えております。何とならば、今公述人の方々が申述べられた通りに、敢て公共企業体労働関係法は、特殊の立法を以て國鉄、專賣というこれら從業員を拘束し、或いは特殊な取扱いをしなくてはならないというような理論的な根拠が我々には到底掴み得ないのでございます。先ず政府がこのマッカーサー元帥の書簡の示唆によつて行なつたところの公共企業体労働関係法、これは明らかに我々の考えから申上げますならば、書簡の趣旨に便乗したところの、そうして政府の独善的なるところの労働組合の彈圧の政策であるということを先ず我々は考えておるのでございます。先ずこの関係法案の反動性と申しますか、そういうところを指摘いたしますならば、労働組合を組織するところの労働者、それの我々労働組合從業員が加入するか、或いは脱退するか、或いは結成するか否かというようなことに対するところの法律化を以て規定するというような考え方、これはある反面から申上げますならば非常に民主的な規定であるかのごとく考えられるのでございますが、我々は國家公務員法の改悪に対するところの反対の声明、或いは反対の條項を以て現在闘つておりますように、こういう労働組合の組合員が加入或いは脱退、組織云々というようなショップ制の問題に対しましては、その組合を組織するところの從業員が自主的に決めるべきではなかろうか、かように考えておるのでございます。この裏を我々が考えますならば、労働組合のオープン・ショップ制を採らなくてはならないという規定は、明らかに現在の混沌たるところの社会情勢におきまして、労働組合をどうにかして二つに分裂させる、それによつて政府の思う壺に公共企業体といて発足するところの專賣局、或いは國鉄というような組合を牛耳らなくてはならないというような意図を含んでおるのではないかと考えられる点が多分にあるのでございます。
 次に役員の規定でございますけれども、労働組合を組織する我々労働者が、小さい力よりも多くの人たちを以つて組織するところの小産別、大産別、全産別というような大きな労働者の集まりを以て日本の民主化を促進しなくてはならないというような考えに立ちまして現在進んでおるのでございますけれども、これら組織の問題に対しましてもこの法案では介入しておるのでございます。この項は先ず労働組合の役員に対するところの委任権の剥奪が明らかに盛られておるからでございます。更に役員の任期でございますが、選任されるところの役員の資格というものは満一カ年以上でなくてはならないというような、先程の公述人もございましたように、軍國主義華やかりし頃の産報、産業報告会というような形であつて、決して憲法によつて保障されたところの自主的な労働組合としての活動であるとは考えられないのでございます。飽くまでも我々はあらゆるところから干渉されることなく、自主的に労働組合を組織し、そうして自主的に運営するのが本当の労働組合の民主的な運営の在り方であり、労働組合の組織の在り方ではなかろうかと考えておるからでごでいます。次に最も重要とされておる罷業権の問題と絡み合せまして團体交渉権の問題でございます。これは労働組合を組織するする労働者の最も大きな権利とし、そうして三大権利とされておるところの團結権と團体交渉権、罷業権、この三大権利があつて初めて労働組合としての眞の意義があると考えるわけでございます。この三大権利の中の一方において罷業権を禁止いたしまして、更に團体交渉の面に入りましては賃金の問題、労働時間の問題、その他労働條件に関する問題のみの團体交渉が許されるのである。その他の人事、或いは業務、事業管理、その他の運営については一切團体交渉には應じられないというがごとく規定してございますけれども、これ國鉄、專賣を含むところの全官公廳が現在闘つており、且つ又過去においても闘つて來たように政府の独善的な、そして又一方的な、行政的な首切り、こういうことをも敢て実現しなくてはならないというような裏付を含んでおるのではないかと思われるのでございます。労働組合が眞に民主的であり、そして政府の独善的な且つ又封建的な官僚機構の中にあるところの、專賣、或いは國鉄の從業員諸君が経営に参加いたしまして、腐敗し切つたところのこの官僚機構を打破してこそ初めて我々日本民主化を達成する上において非常に大きな意義を持つ労働組合の價値がここに存するのではなかろうかと考えておるのでございます。更にこの裏に含んでいるところの團体交渉の範囲というものはその裏面を衝くならば、非常に影暗い、後暗いところを示しておるのでございます。何とならば先程の公述人が申上げました通りに、物と権力とをいつまでも握つておつて、労働組合が眞に民主的な日本を再建するために立ち上がろうとする、この下から盛り上るところ民主的な勢力というものを抑え付けるためにはやはり物と権力とを握つて置かなくてはならないというような考え方を持つておるものと私たちは考えておるのでございます。
 その次に交渉委員でございますが、交渉委員を政令によつて規定しなくてはならないというような、こんな馬鹿げた、そして政府が自分たちの思うように労働組合を牛耳り、労働組合を動かし、労働組合というものは政府の、且つ又封建的な官僚の人たちの奴隷の集まりであるというような考え方を持つておるがごときこの法案に対しては、私は到底納得できない点があるのであります。更に各方面、或いは各公述人から申上げられてお分かりのことと考えられますけれども、労働組合が一番大きな問題として、そうして且つ又一番重要視しております問題は同盟罷業の問題でございます。よく世間で言つておりますように労働組合の一番大きな、そして傳家の宝刀とも言うべき罷業権を奪い取られてしまつたならば、労働組合の價値というもの、或いは労働組合の即座意する意義というものが葬り去られてしますといつても過言ではないと私は思うのでございます。これは傳家の宝刀と我々が言う通りに正に傳家の宝刀でございまして、やたらに我々がこういうものを抜き廻して政府と喧嘩をするというような考え方は到底持つておりません。又過去においても持つた覚えがないのでございます。我々にこれらの罷業権を與えて、それを如何に有効に活用するかということを先ず政府自体がみずから反省しなくてはならないのではないか、この最後の武器とも称されるところの罷業権を労働組合がより有効に、より民主的に活用することによつて專賣或いは國鉄の生産、その他の問題が非常に発展し、政府が考えておりますような日本民主化の唯一の手助けとなる機関となるからであると私は考えておるからでございます。この罷業権を剥奪するのみならず罷業を敢手しようとするような意図を持つておる者を……或いはその他のいろいろ細かい点を謳つておりますけれども、政治的の行使、あおつてはならないというような條文の謳い方でございますけれども、これらの問題は我々が若い時分、そして東條軍閥政府において行つて來たあの当時の治安維持法、或いは治安警察法というものと全く同一のものでありまして、我々の一切の行動をも禁止しなくてはならないというような意図を含んでおるのでございます。こういうものに対しては、我々総同盟といたしましては声明書を発表した通り、全面的に反対の意向を表明するものでございます。ただ國鉄、專賣の、特に專賣局労働組合を公共の名によつて抑圧し、罷業権を剥奪するというような考え方は一應の考え方から申上げますならば、納得でき得る点があると思われる方もおると考えますけれども、これは全く理論的に話がなつていないのではないか。その理由といたしましては先程の公述人が申上げました通りに、現在の政府が作つておりますところの「ピース」とか「光」とか、その他高級煙草というものは一般労働者大衆、國民大衆に吸わせるための煙草の生産でなくて大衆課税といたしまして、如何に労働階級から、國民大衆から搾り取ろうかというような一つの政治的な政策の下に製造しておる煙草でございます。眞に我々が國民を愛し、公共の福祉であると考えますならば、このような政策的な、そうして政治性を帯びた高級煙草を廃止いたしまして、誰にでも買えるような、そして安いところの煙草を製造してこそ、初めて公共の企業体といての名前がそこにはつきりするのではなかろうかと考えておるからであります。又國鉄、專賣の労働関係を私が申上げるまでもなく一般の民間の産業の方々と全く同様に油にまみれ、或いはニコチンの塵埃の中において働くところの專賣、國鉄の從業員が、電氣、ガス、その他私鉄、炭鉱の方々と、どこが異なつたところがあるかということを先ず指摘したいのであります。これは明らかに政府が企図しておりますところの、專賣、國何時を足掛かりとしまして、その他の重要産業と目されるところの石炭、電産、その他國管國有に移行されるべきところのこれら企業に対しまして彈圧する意図を持つた非常に重要なところの、そして又危險性を帯びたところの法案であると私は考えておるからでございます。我々は総同盟百二十万全組織を挙げて、この法案に対して反対を唱えると同時に、若しこの法案が通過いたしましたとしても、彼のアメリカのタフト・ハートレー法の反対の運動と同様に我々はあらゆる機会を取上げまして、この問題に対しては撤回方を要請し、或いは撤回方の運動を展開する覚悟を持つておる者でございます。
#20
○委員長(山田節男君) 最後に私鉄の総連中央執行委員長藤田藤太郎君にお願いいたします。
#21
○公述人(藤田藤太郎君) 私は私鉄総連の藤田でございます。基本的な我々の態度、考え方について申述べたいと思います。我々この度政府が出しました公共企業体労働関係法については我々は反対であるということを先ず結論から申上げたいと思います。例えばこういう國鉄、專賣の二つを適用するのだとはつきりこの法には掲げておりまするが、我々といたしましてはなぜこういうものを作らねばならないかということを第一番に疑問とするのであります。我々労働者といたしまして労働の三法であります、これに保障された権利に基いて労働組合の運動を続けて來たのであります。敢てこの公務員法から外された國鉄、專賣の労働組合に、敢て法律を作ろうとするなれば私は労働三法の中からそのような條文をここに列ねたらいいとこう考えておる次第であります。大きく見ましてこの法律なるものが、ただ労働者を彈圧するという以外には何物もないと私は考えておる次第であります。権利を剥奪し、そして労働者に対する保護を行わないというようなことで実際我々は憲法によつて保障されたる人権はどこに立つのであろうかということを私は考えるのであります。アメリカにおきまして、あのタフト・ハートレー法につてい反対されたトルーマン大統領が当選されて、この法を先に公述人が申されたようにこの法を見まするならば、タフト・ハートレー法の精神をそのまま持つて來たような法であると私は考えるのであります。例えばせいては資本家擁護、資本主義擁護のためにその自分の現在の力を利用して政治的便宜のためにこの法を作ろうとしているそのものに対して我々は反対せざるを得んのであります。こういうことを政府が飽くまでするのならば恐らくや社会的信頼を失うであろうということを私ははつきり申上げたいのであります。例えばこういう法律を施行するならば、日本の官僚機構の、封建的な官僚機構の民主化のために如何に組合というものが努力しても寄與することができないのではないかと思うのであります。この組合の組織の力によつて日本の民主化を如何に促進し、如何に重要なる役割を果たしたかということを私は言いたいのであります。こういう芽生えつつある芽を今切るなれば恐らくや日本の民主化は逆行して行くのじやないか、封建的なる過去のような軍閥当時のような時代を現出するのじやないかという点から考えすならば、非常に私共といたしまして遺憾とするところであります。この法律が例えばこの公共企業体という形において國鉄並びに專賣において適用すると申しておりますけれども、これを足掛かりにいたしまして、私鉄、石炭、電氣、ガスという工合に拡張される危險性が非常に大きいと断ぜざるを得ないのであります。我々は私鉄労働者ばかりでなしに、公共事業と目されておる労働者に関しましては、この法律に対しては重要なる関心を持つと共に、絶対にこの法制定には反対するものであります。
 次に内容の問題でございますが、第一條から結末まで、一貫して、私が先程申上げた通りでございますが、特にこの罷業権の禁止であります。例えば我々の生活というもの、又権利というものが剥奪され、そうして闘う武器が取られたとしたなればどうなるでありましようか。恐らくやあらゆる権利を剥奪して、手足をもいだ一つの塊りに過ぎない人間になつてしますのであります。こういうことで、日本の民主的な再建、日本の独立というものが願えるでありまいようか。我々はこの我々が願う民主的な日本の再建というものを逆コースを迫る政策であり、單に資本家並びに特権者を擁護するのみの法律であり、我々労働者といたしましては、これに対しては断固として反対せざるを得んことを申上げまして、私の話を終わりたいと思います。
#22
○委員長(山田節男君) これで午前中の公述を終わることにいたしまして、只今の公述人の方々の述べられたことに対しまして、委員の御質疑があれば質疑をいたすことにいたします。
#23
○水橋藤作君 元名古屋專賣局長の新さんにお伺いしたい。先程のお話の中に、國家の現状からしてこの法案が止むを得ないということを申されたのであります。又具体的にはストライキ等によつて、國民が大いに迷惑しておるということも仰せになつたのであります。で非常に悪い方面ばかり仰せになつたのですが、併しこの組合運動が日本の民主化について、又日本の産業発展その他につきまして、相当の役割を果しておるということを御存じかどうか。若し分かつておられたらその点をお話願いたい。それから國家の現状からして止むを得ない、その現状を具体的にもう少しお話願いたい。先ず私をして言わしめるならば、指摘なされたのはストライキ等を指しておつしやつたことと考えます。併し先程北海道の笹川さんが、指摘されたように、組合運動は私が言うまでもなく合法的に、而も相当自重いたしましてやつたことでありながらも、一方から命令が出た場合は直ちにそれを中止しておるのであります。又ストライキをやるにしても止むに止まれずやつたのだということも我々は主張したいのであります。何故ならばと申しますというと、ストライキをやらなくてもいいような態勢を取るのが妥当でないか、何故に誰がこうさしたかという言葉もありまするが、先ず現在は三千七百円ペースでありまするが、恐らくあなたが三千七百円で一ヶ月御生活になられるかどうか。煙草「光」を一日に二つ吸えば三千円かかるのであります。電車に乗り、下駄を履き、風呂に入り、床屋に行つて而も三度の御飯を食べて、それでやつて行けるでしようか。その点なのです。科学的調査の結果、人事院としては、現在は六千三百円を出しております。これは相当信頼すべく、我々がある程度まで考えられる。それにも拘わらず現在は三千七百円で黙々と働いておる。もうすでにストライキが起つていいのだとかように考えておる。これはすでに政府の施策が悪いのだと私は断定したい。
#24
○委員長(山田節男君) 水橋委員簡單に、時間がございませんから……。
#25
○水橋藤作君 いや、今私の言うことに対して一々説明を聞きたい。まあその点につきましあなたの御見解をお聞きしたい。
#26
○公述人(新敏雄君) 私のお答えがピントが合つておるかどうか分かりませんが、簡單に申上げましよう。先程ストック云々と言うことを申上げましたのは、私が專賣に関係しておつたことは古いことですが、それで実は私共のおりましたときは自由販賣で、それが大体八百億本ぐらいです。
#27
○水橋藤作君 ストックを聞いたのではなく、ストライキのことを聞いたのです。
#28
○公述人(新敏雄君) それに及びまして、まあ八百億のことは話しましたけれども、ストライキの点でございますね。実は何と申しましようか、今はストックを食つて行かなければどんどん……私共のときには、現に昨年の葉、一昨年の葉というものをやつておりました。今はそれを今年の葉と言うような段々出しておるわけなんです。で例えば現状では、と私は申上げました筈でございますが、例えば二ヶ月なり三ヶ月なり機能が止まつたときはどうなるかというような心配、それからストライキがあつた、とは申上げておらなかつたのです。若しもそういうような事態が発生したような場合には、と申上げた筈でございまするが、その場合に一体どうしたらいいだろう今の現状では、将來は分かりません。将來どんどん煙草の生産もでき、それから葉煙草の方もどんどん生産できるようになれば、これは問題にならんと思います。從つて私としては、理論的にはどうかと思うということを申上げたわけです。ただ現状だけを顧みるときは、と申上げた筈でございすまから……。
 それから今の財政収入の点、これは搾取という言葉も出ましたけれどもまあとにかく一千百何億というのを受けて、純益九百億前後というものを出しますには、それの代り財源として何を持つて來ようか。実は私は工夫がつかないのでありまして、その点、結局主として財政の現状、これは鉄道に私は触れませんでしたのは、公共の福祉というのは鉄道の方のものになる。それから國家の経済云々と第二項にあつたようですが、その國の経済というものを考えて、若しそういうようなことがあつた場合には、今の現状では、日本としてはどうしていいかわからん。從つて今のところ、当分それをうまくやつて行くようなものが、若しもこれが相当完全なものであつたならば、この運営によつて円満に、國というものがやつて行けるのじやないでしようか。私としては代り財源その他の点について自信がございますれば申上げたい筈でございますけれども、今の現状として、私の考えております國の現状としては、どうしても止むを得ないのじやないだろうか。ですからこの法律には或いは不備な点もあるのじやないかと思いますが、まあ考えなくちやならん点があると思いますが、今の國の現状としては、まあこれでという氣持、まあ何と言いましようか、学術的な氣持でないのです、間違つておるかも分かりませんが、ほんの私常識的な氣持で以て考えたつもりでございます。まあ大体その点です。
#29
○原虎一君 東京大学の石井さんにお聞きしたいと思いますが、成るべく質問する点は私の見解を申上げてお聞きすることは避けなければならんと思いますが、御説明、御意見の発表の中で、多少そういう点を含まないと分からん点があるので伺います。一番最初にお聞きいたしたい点は、立法というものが、申上げるまでもなく社会環境によつて、そこに生まれて來るということは考えなければならんと思いますが、從つて先生の、本法案が出て参りました原因等に対する御意見を拜聽できれば幸いだと思うのでございます。
#30
○公述人(石井照久君) 只今の点、私実は、簡單に、一般的に申上げましたから、その点が或いは補充を要すると思いますが、本法案の出ました社会的な環境としましては、やはり先程もお話がありましたように、労働組合が確かに若干の何と言いますか、本当の意味の民主主義というものの精神、例えば自己の義務と責任というものを非常に重んじまして、その中におのずから立派な地位を得るといつたような点において遺憾がなかつたかというと、これも意見になりますが、私は率直に申上げて、多分その点は必ずしも十分でなかつたというふうに思います。從つて、そういう点に鑑みまして、こういつたような制度立法が出て來るという基因は、或いはみずからの中にも立派にあるということは認めているのです。併しそのことから、当然法律で以てそれを制限するということが、或いは禁止してしまうということが正しい行き方かという点になると又問題の余地があるというふうに思うのであります。例えば、この法律が労働関係の当事者から、十分に納得せられて來ないものでありますと、法律というものの力はやはり限られておりますから、限られたもので抑え付けて見ても、本当の満足的な解決が得られるかどうか、能率が下がるとか何とか、外の形において却つた悪い結果が出るという点を懸念するのであります。本当の理想を申しますと、もう少し様子を見たい。失敗しながらも、おのずからこの日本の経済の実体を考えまして、労働組合自信が自立的に、もう少し自覚した……と申しますと、今御出席の方々から叱られるかも知れませんが、私自身から見ましても、もう少しもつと正しい動きの中に、日本の本当の再建という形のものが動いて行くようになり、それが段々芽生えつつあるのではないかと思います。過去のいろいろな動きというものが、労働組合の歴史が非常に浅い日本としては、誤まつたことも一つの訓練の過程であります。この訓練の過程を見て、改むべきは改めて行かなければならないと思います。直ちに駄目だと價値評價するとしうことに、若干の疑問を持ちます。むしろもう少し見たい。そうして必要止むを得ない場合は、先程私から申上げたように、公共福祉という点から、或る場合には制限をしなければならないかも知れない。從つてそれは或る特定の争議を止めるといつたような事柄が考えられるのじやないか、こう思つております。併しその上に、全面的にそういう意見をある種類のものから奪つて行くのがよいかどうか、法律で以てそれを奪いましても納得ができないということでは、本当に実を結ぶことがずきるかどうか多大の疑問を持ちますので、先程申上げた次第であります。
#31
○原虎一君 もう一点お伺いできれば、幸いと思いますが、お説の公共企業体に対する制限、労働権の制限と言いますか、罷業権の制限、これは事業の性質によると協調せられましたが、今御説明の中においても、要するに公共の福祉のために基本的人権を極度に抑制することが果たして正しいのであるかどうかというところに問題があると思います。御説明のこの法律の方で憲法の十三條とそれから二十八條と記憶しておりますが、二十八條のいわゆる團結権と團体交渉権、これは保障するということに第二十八條はなつております。十三條は例の「公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」という公共の福祉との関係でありますが、この法律上から來る意見が実は議院の委員会等におきましても基本的人権は優先するという、簡單に申上げると、公共の福祉のためには相当大幅に制限されるのも止むを得ない、こういう意見が相当に交わされておる事実から考えまして、先生の御意見を伺えれば幸いと思います。
#32
○公述人(石井照久君) 只今非常にむずかしい御質問を受けましたが、御話のように今の点については学会においても意見が分かれております。我々東京大学の仲間におきましても意見が分かれております。從つて申上げます点は私自身の考えを申上げるので、率直に申上げるわけでありますが、それに関連して一般の見解ということに触れて申上げたいと思います。
 労働関係の法規には公共の福祉で制限できると書いておりません。ところが十三條、十二條にいろいろ規定がございます。そこで或る立場は團結権とか、團体交渉権には公共の福祉という制限がないのだという議論をする立場もございます。併しこれらは恐らく余り有力でないと思うのであります。普通の立場は書いてあつてもなくても同じだ、要するにあの十三條の規定が一般的にかぶつて來て、公共の福祉である以上はすべて制限できるのだ、從つて團結権も何でも書いてなくてもすべて公共の福祉が來るのだという議論がありまして、この議論が割合に有力であり、又常識的であるかも知れないと思うのであります。併し私自身はそういう立場を取つておりません。書いてあるなということ自体に変わりはないということについとは第二の立場に近いのでありますが、私はあの憲法の保障しておる基本的人権の中に種類があると思う。それは生存権、生活権といつたような或いは人格権といつたような、或いは人間が社会に生きていく上におきまして本質的に奪えないような権利、これは如何なる場合においても奪えないと思うのであります。併しそれと違いまして、生活権とかいうものを実現するための手段として認められておるところの基本的な権利、これは第三次的な権利でありまして、全体社会の生活権という立場からは制限できると思つております。結論をはつきり申上げますと、財産権というものは我々の生活権を支える柱である、併しこれは手段だと思う。ですからこれは全体の生活権のために制限できる。併し同時に團体交渉権、團結権も我々の労働者としての生活権を支える柱であり、手段であるから、これも全体の生活権のために制限できるのだというふうに私は考えております。
#33
○委員長(山田節男君) 外に御質問ございませんか。
 それでは以上を以ちまして公聽会を終わるわけでございます。二日間に亘りまして大変長い間有難うございました。尚公述人の方々にはお寒い折柄御多忙中お出で下さいまして、いろいろと有益な御意見を拜聽いたしまして、本日は本会議その他の常任委員会等がございまして、労働委員の全部がこちらに出席されておりませんけれども、速記は早々印刷いたしまして「この公共企業体労働関係法案」の審査のために貴重な参考といたしたいと存じます。大変有難うございました。
 尚労働委員の方にお傳え申上げますが、明日は日曜ですが、十時から労働委員会を開くことになつております。どうぞお願いいたします。
 それではこれで散会いたします。有難うございました。
   午後一時十一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     山田 節男君
   理事
           平野善治郎君
           早川 愼一君
   委員
           原  虎一君
           村尾 重雄君
           波田野林一君
           田村 文吉君
           水橋 藤作君
           竹下 豐次君
  公述人
   電産労組中央執
   行副委員長   渡邊 達也君
   東大法学部教授 石井 照久君
   日本経営者連盟
   專務理事    前田  一君
   全日本石炭産業
   労組副委員長  天野 竹雄君
   有機合成工業監
   査役      新  敏雄君
   北海道全官公労
  連絡協議会議長  笹川 重雄君
   全專労組書記長 佐藤新太郎君
   運輸省鉄道技術
   研究所員    村木 啓介君
   総同盟中央執行
   委員      關口喜代志君
   私鉄総連中央執
   行委員長    藤田藤太郎君
ソース: 国立国会図書館
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