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1948/11/18 第3回国会 参議院 参議院会議録情報 第003回国会 法務委員会 第6号
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1948/11/18 第3回国会 参議院

参議院会議録情報 第003回国会 法務委員会 第6号

#1
第003回国会 法務委員会 第6号
昭和二十三年十一月十八日(木曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○刑事訴訟法施行法案(内閣送付)
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣送付)
○訟訴費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣送付)
○下級裁判所の設立及び管轄区域に関
 する法律案(内閣送付)
○罹災都市借地借家臨時処理法第二十
 五條の二の災害及び同條の規定を適
 用する地区を定める法律案(内閣送
 付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 のための議員派遣要求に関する件
  ―――――――――――――
   午前十時五十二分開会
#2
○委員長(伊藤修君) これより法務委員会を開会いたします。
#3
○星野芳樹君 開会に先き立つて政府委員に一言申しますが、本日は十時の法務委員会の開会で、委員一同が十時から揃つているに拘わらず、政府委員が実に五十分近くの遅延をされております。民主主義の根本要義は先ず時間の厳守から始まると思います。今後かかることのないように嚴重に注意をいたします。
#4
○政府委員(岡咲恕一君) 只今のお言葉誠に恐縮に存じます、今後は格別に注意いたしますので、何とぞ本日のところはお許しを願います。
#5
○委員長(伊藤修君) では本日は当委員会に予備審査のため付託されましたところの刑事訴訟法施行法案を議題にいたします。先ず本案に対する政府委員の提案理由、並びに内容の概略の説明をお願いいたします。
#6
○政府委員(野木新一君) 只今上程に相成りました刑事訴訟法施行法案の提案理由について御説明申上げます。この法律案は、明年一月一日から施行になりまする新刑事訴訟法の施行に関し必要な経過的措置等を定めたものであります。
 第一條は定義規定であり、第二條から第十九條までは刑事訴訟法に属する事項の経過的措置について規定し、第二十條は私訴の廃止に伴う選挙関係法律の手当について規定し、第二十一條は刑事訴訟費用法の一部改正について規定し、第二十二條は訴訟費用等臨時措置法の一部改正について規定し第二十三條は二つの関係法令の廃止について規定しているのでありまするが、何れも新刑事訴訟法の施行に関連するものであります。
 先ず刑事訴訟法に属する事項の経過的措置でありまするが、大原則といたしましては、すべて事件は新刑法施行前に第一審における第一回公判期日が開かれているか否かを区別の標準といたしまして、新法施行前に第一審における第一回の公判期日が開かれた事件につきましては、新法施行後も尚旧法及び應急措置法によることとし、新法施行の際まだ第一審における第一回の公判期日が開かれていない事件につきましては、原則として新法を適用することにいたしたのであります。第二條が前者に関する原則規定であり、第四條が後者に関する原則規定であります。而して第三條は旧法主義に対する例外を規定し、第五條から第十五條までは新法主義に対する例外乃至補正について規定しているのであります。第十六條及び第十七條は確定訴訟記録閲覧の手数料等について規定し、第十八條は新法施行の際係属中の私訴は通常の民事訴訟手続によつて完結すべき旨を規定し、第十九條は最高裁判所の規則で必要がある場合には補充的経過規定を設けることができる旨を規定しているのであります。
 次に御留意を願いたいのは、第二十一條の刑事訴訟費用法の一部改正でありまするが、この改正によりまして、國選弁護人に給すべき日当、旅費及び宿泊料は鑑定人に給すべきものに準ずる額とし、これを刑事訴訟費用の中に加えることにした次第であります。
 以上で簡單ながら提案理由の説明を終えることにいたしまするが、何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
#7
○大野幸一君 只今本法刑事訴訟法施行法の中に刑事訴訟法の実体の一部を改正するような規定がありましたように説明になりましたが、刑事訴訟法施行法、これは重大なことであつて、余りに今の説明は不十分であると思いますから、いま少し明細なる各條に亘つての御説明が願いたい。例えば第二條における「新法施行前に第一審における第一回の公判期日が開かれた事件については、新法施行後も、なお旧法及び應急措置法による。」こういうことになつておりますが、今裁判所がいろいろ事件が澁滞しておりまして山積しておる。そこで裁判所の措置によつて第一回の公判期日が開かれるかどうかということによつて、その裁判所の期日指定によつて、新法の適用を受けるか、旧法の適用を受けるかということになりますと、これは一に裁判所の責任にあると同時に國民は裁判所の公判期日の規定だけでその受ける利益が違つて來るということになる。こういうようなことに対して、もつと提案者の方でどういう理由でこういうことをしたか、こういうことについてもつと詳細な説明を願いたいと思います。一体今のような刑事訴訟法の説明では全く不十分である。全面的にもう少し詳細に親切、懇切に説明願いたい、こう思います。
#8
○委員長(伊藤修君) では政府委員、逐條について大体の御説明を願いたいと思います。
#9
○政府委員(野木新一君) それでは今の御質問に対するお答を兼ねて逐條毎に概略の御説明を加えて行きたいと存じます。
 先ず総括的に申しまして、第一審における第一回の公判期日が開かれたかどうかによつて事件の処理を区別することにした理由でございますが、この点は訴訟法の経過規定を考えます上におきまして最も重要な点でありまして、いろいろ議論を重ねたところであります。先ず考え方といたしましては公訴提起の有無による、即ち公訴提起の事件については大体從前の手続によつて行く、又公訴提起のないものにつきましては新らしい手続によつて行くという考え方が一つと、それからこの案にとりましたような、第一審における第一回の公判期日が開かれているかいないかによつて取扱いを異にする、この二つの考えが大体立案のときに議論に上りまして、今までの経過法の編み方から申しますと、寧ろ最初に申上げました方のが通常のやり方であると存ぜられるわけでありますが、いろいろ議論を重ねまして、成るべく廣く新法によらした方がよいではないかという議論が非常に強くて、その中には例えば今第一審のことを重に申しましたが、控訴審におきましても、この公判が開かれているかいないかによつて開かれていないものについては新法の控訴審の規定を適用して行つたらどうかという議論までも非常に強く唱えられたことがありまして、結局いろいろ議論しておる中に両方が歩み寄つて、第一回公判期日が開かれたかどうかということで、事件を区分けして行こうということになつた次第であります。実際問題としてどこに一番大きく影響して來るかと申しますと、只今御指摘になりましたように、裁判所が第一回公判期日を指定して、その日に公判廷を開くか否かによつて、裁判所の処分のようなものによりまして、新法によるか、旧法によるか、事件が分れる。こういうことになる嫌いがありますが、これは又公訴提起のときを標準としても、檢事の起訴か否かによつて新法旧法が分れるということになりまして、或いは見方によつては、五十歩百歩ではないかという議論にもなると存ぜられるわけでありまして、ただこの組立てのように第一回公判期日の開かれたか否かによつて、区別いたしまして、第一回公判期日が開かれたものにつきましては、旧法によるとしますと、結局起訴から第一回公判期日が開かれる日数だけの範囲、新法の実施が実質的に延期になるか早くなるかという点が一つ問題であります。それから第二の実際問題といたしましては、第一回公判期日が開かれた前後によつて区別いたしますと、本法の九條に出て来るような相当ややこしい問題が起るという点が、手続上煩雑になる嫌いがあるわけであります。併しながら新法が出た以上成るべく廣く新法のよい精神によらした方がよいのじやないかというところがこの考えの根本的の考え方になつておるわけであります。区分けにつきましては、只今申上げた程度にしまして、以下逐條について御説明を申上げる度に、それに触れて行くことにいたします。
 先ず第一條でありますが、これは御覧の通り施行法に出て來ます法律について、簡単な略称を決めるいわば定義的規定でございます。
 第二條でございますが、これがいわゆる第四條と照應いたしまして、一つの原則的規定になつておるわけでございます。新法施行前に第一審における第一回の公判期日が開かれた事件につきましては、新法施行後も尚旧法及び應急措置法即ち從前の例によつて行く、そういうことになつておるわけであります。ここに第一審における第一回の公判期日とありますから、すでに控訴審、上告審の継続しておる事件につきまして、すでに当然第一審における第一回公判が開かれておる事件でありますから、これは当然從前の規定によつて処理されて行くことになります。次に第一回の公判期日が開かれた事件と申しますのは、今度の裁判所法の一部改正法案の第十一條第一項に、「第一審の第一回の公判が開かれた刑事事件の訴訟について」云々という言葉炉あります。この第一回の公判が開かれたというのと全く同義でありまして、期日の指定があつただけでは駄目でありまして、現実に第一回公判期日が開かれたそういう事件のことを考えておるのであります。次に事件についてはというこの事件でございますが、これは、一應公判の対象になる本案の事件を基準として考えておるわけであります。而して事件についてという「ついて」という点につきまして、本案の事件が第一回の公判期日に開かれておれば、それに関した附随事件についても、全部旧法で行くというようにここでは考えておるわけであります。尚「第一審における第一回の公判の期日が開かれた事件については、」ということにおきまして、その事件について苟くも第一回の公判期日が開かれた以上は、先程申上げた通りその事件の控訴、上告は固より、差戻しになつた後、或いはその事件が一旦終つて、更に再審、非常上告になつた場合におきましても全部從前の規定で行く、そういうふうな考えの下に立案しております。後の再審、非常上告事件については、やや読みにくいじやないかという御議論も出ておるのでありますが、それは第三條の規定と対照して考えて頂ければ、第三條から裏からそういうことを言い表わしておつて、そういう解釈論がはつきり出て來ると存ずる次第であります。
 次に第三條の規定でありますが、第三條はいわば第二條の例外規定のような形になつておるわけであります。即ち第一審における第一回の公判期日が新法施行前開かれておる事件、これを簡單に第二條の事件と申しますと、この第二條の事件につきましては、全部從前の規定によることになるわけでありますから、その確定記録などにつきましても、新法の五十三條の「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。」云々、あの條文は適用ないことになるわけであります。從つて若し第三條の規定がありませんと、第二條の事件については確定訴訟記録の公開ということは出て來ないわけでありますが、それでは新法第五十三條の趣旨が非常に没却されることになりますので、第二條のような原則として旧法及び應急措置法による、從前の規定によるという事件につきましても、確定訴訟記録の公開についてだけは、新法に一應よらせようというのが、第三條の本文の規定でございます。併しながら今までの確定記録というものは、非常に厖大な量に上り、而もそれが直ぐ閲覧などに供するような状態に必ずしも準備されておりませんので、但書を置きまして、新法施行前に終結した被告事件の訴訟記録につきましては、その保存状態、閲覧のための設備その他の事情によつて、これを閲覧させることが著しく困難なときは、新法施行後六ケ月間に限り、その閲覽を許さないことができる、こういう但書を置いて、その間の調整を図つたわけであります。この但書は新法施行前に終結した被告事件の訴訟記録でありまするから、新法施行後終結する被告事件の訴訟記録については、この但書は適用ないわけであります。新法施行後終結する訴訟事件については、第二條の事件と、それから初めから全然新法によつた事件とあるわけでありますが、ここでは第二條の旧法による事件の中で、而も新法施行前に終結した被告事件の訴訟記録は但書を被つて來るわけであります。逆に申しますと、第二條の事件の中でも新法施行後逐次終結するものにつきましては、この第三條の本文が適用になるわけであります。而して第二條の事件でない事件、即ち新法施行の際に第一審における第一回の公判期日がまだ開かれていない事件、即ち第四條の、新法による事件につきましては、勿論第三條の規定と関係なく、裸のままで新法の五十三條が適用されるようになつて來るわけであります。そういう事件につきましても、五十三條の一項但書で「訴訟記録の保存又は裁判所若しくは檢察廳の事務に支障のあるときは、この限りでない。」ということで、この但書の規定によつて、場合によつては閲覽の許されない場合もあり得る、そういうことになるわけであります。尚この際確定訴訟記録の保存関係でございますが、これはこの法律によりまして、新法の五十三條の末項にありまして、「訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。」ということになつておりまして、訴訟記録の保管の最終的のことは、別に法律でこれを定めることになつているわけでありますが、実は最高裁判所側、法務廳並びに検察廳側で多少まだ意見の纏まらない点もありますので、この保管に関する確定的の保管者に関する法律は次の國会までに準備したい、差当つてそれまでは現在のままで一應進んで行くことになるものと思われる次第であります。現在のままといいますと、現在は檢察廳側で一應確定記録は保管しておりますので、その法律ができますまで、暫く檢察廳測で保管の責任を一應とつて行く、そういう形になるわけであります。
 次に第四條でございますが、第四條は第二條に対される原則規定でありまして、「新法施行の際まだ第一審における第一回の公判期日が開かれていない事件については、新法を適用する。」という新法主義の原則を掲げているのであります。これは現在の刑事訴訟法の経過規定の第六百十六條にある書き方と略々同じ書き方になつているわけであります。新法施行の際起訴になつていても、まだ第一回の公判期日が開かれていない事件、又は起訴になつていない捜査中の事件、そういうものはすべて新法を適用する、併し新法施行前に從前の規定によつて訴訟行爲がなされ、すでに或る効力を生じているものは、その効力は妨げない、そうして第二項で、そういう効力の新法への結付きを規定しているわけであります。第五條以下にこの第四條の新法主義に対する一種の例外乃至補正的の規定がずつと置かれているわけであります。
 第五條の御説明に入りますと、新法二百八十九條によりますと、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。」こういう趣旨のいわゆる必要的弁護の規定になつているわけであります。長期三年を超えるということになりますと、窃盗それから大半のいわゆる統制配給とか、そういうような経済犯罪もこれになりますので、一時にこのまま適用いたしましては、多少混乱を招きはしないかという心配もありますので、この第五條の経過規定を置きまして、こういうような必要的弁護に当る事件につきましても、條件を二つ附けまして、その第一條件としましては被告人から事前に書面で弁護人を必要としない旨申出があつたとき、第二條件といたしまして簡易裁判所においては、という條件、それに新法施行の日から一年間という新期的制限を掲げまして、こういう時間的制限の下においては必要的弁護でなくする、そういう趣旨であります。從つて簡易裁判所におきまして窃盗などが審理される場合におきまして、新法の眞正面の規定から行きますと、全部弁護人を要することになりますが、この一年間だけは経過的に第五條の條件の下におきまして弁護人がなくても開廷できる、そういうことにいたして、経過を円滑ならしめた次第であります。
 次に第六條の規定でございますが、第六條の規定は新法施行前から進行を始めた法定の期間、こういうものにつきましては、新法施行後も尚從前の旧法及び應急措置法による、そういうことにしたわけであります。いわゆる法定の期間と申しますと、法律で一定の期間を定めたものでありまして、旧法及び應急措置法の下におきましても沢山あるわけでありますが、併し段々考えて來て見ますと、この六條で実際に問題となりますのは、第一審の第一回公判期日が開かれない前の事件であつて、而もその期間が進行を始めておる、期間が旧法から新法へとまたがつておるのが問題になるわけでありまするから、実際問題としてはここで問題になるのは、一例を挙げて申しますと、勾引状を執行して來て留置して置く期間、これが旧法では四十八時間であつたわけでありますが、新法では二十四時間になりました。それから逮捕によつて留置して置ける期間、これが從前の場合には四十八時間、二十四時間であるわけでありますが、新法におきましては逮捕のときから四十八時間若しくは二十四時間、通じて七十二時間を超えてはならない、こういうことになりました。尤も應急措置法も大体これと同じでありますが、具体的にはこれはどつちによつても大体同じになるわけであります。それから公訴の時効期間、これが新法におきまして賭博罪とそれから拘留科料の刑に当る事件につきまして時効の期間が延びましたのでありますが、これも旧法と違う点であります。こういう点はいずれも今挙げましたような例によりますと、新法の方が逮捕については時間が短くなつておる、時効につきましては期間が長くなつておるわけでありまして、或るときには被告人側に利益に或るものは不利益に働くわけでありますが、いずれにせよこういうものは形式的なものでありますから、尚從前の規定に拠つて行こうというのが第六條の規定であります。尚重ねて申上げますが第六條は旧法から新法に移り替りの際に、すでに進行を始めておる期間でありますが、その以後進行を始めておる期間は問題がなくなるわけであります。從つて第六條におきましては公訴一審の第一回公判期日の開かれない事件についての問題でありますが、上訴期間とかについて、ここでは全然問題になつて來る余地がないわけであります。
 次に第七條でありますが、「第四條の事件について、新法施行前に旧法により過料に処すべき行爲をした者の処罰については、新法施行後も、なお旧法による。」とあるわけであります。ここで問題になりますのは大体証人、鑑定人、通事、翻訳人などが召喚を受けながら、正当な理由がなくて出頭しない場合、これは旧法におきまして百九十條で過料五十円、これらの者が正当な理由なくて宣誓又は証言を拒んだ場合、これは旧法二百十條過料百円、三番目に証人が虚僞の宣誓をした場合は旧法二百十條で過料百円であります。この中で新法に残つておりますのは初めの二つでありまして、正当な理由がなく出頭しない場合、正当な理由がなくて宣誓又は証言を拒んだ者は、これが大体旧法と同じように新法にも過料の制度が残つておるわけであります。新法の百六十條でありますが、金額が五千円になつておるわけであります。三番目の証人が虚僞の宣誓をした場合は、これは新法では廃止になつております。この三つがここで問題になるわけであります。これが新法が施行前に、旧法時代にすでにこういう行爲があつた者につきましては、その処罰につきましては旧法の規定によるということにしたわけであります。尚こういう者につきましては、こういう者と申しますのは、正当な理由がなくて出頭しない者、或いは正当な理由がなく宣誓、証言を拒否した場合、こういう者につきましては、新法におきましては刑罰の規定が新たに加えられるわけであります。この刑罰の規定は勿論刑罰不遡及の大原則によりまして、新法施行後、そういう事由が発生する場合だけ刑罰を処せられるわけでありまして、この点にはここには直接関係がないわけであります。
 次に第八條の関係でございますが、第八條以下暫くが第四條の事件で、その次の新法施行前公訴の提起があつた者については、こういう條件が加わつて來るわけであります。第五、第六、七條では第四條の事件についてだけでありまして、「公訴の提起があつたものについては、」という條件がなかつたわけでありますが、第八條以下暫くは「公訴の提起があつたものについては、」という條件が加わつて來るわけであります。これは要するに新法が施行の際先ず第一審の新法の施行の際にすでに起訴になつておる事件であつて、而も尚第一審における公判の期日が開かれない、こういうものが差当つて問題になつて来るわけであります。第八條は時効の関係であります。新法施行前に公訴の提起があつた事件につきましては、例えばその公訴の提起があつたときに、旧法の規定によつて一應時効が中断した形になるわけでありますが、又新法を押進めて行きますと遡及されて行く方から申しますと、公訴のあつた時から時効が停止するという形になるわけであります。いずれにせよそういう形になりますと、停止させることにしますと、被告人の不利益にもなりますし、第八條の規定におきましてはそういう公訴の提起というところまで考えないで、新法施行の時からその新法に乗り移らせよう、そういう考で公訴の時効が新法の施行の時からその進行を停止して、管轄違、又は公訴棄却の裁判が確定した時から進行を始める、要するに起訴の時というのは新法の時ということに読み換えたような形にして、その時から新法の施行については乗り移らせて行こうというのが第八條の一項、二項の考え方であります。三項も同じ趣旨であります。全部公訴提起というのは新法施行の時と置き換えて考えて行こうというのが第八條の趣旨であります。
 次に第九條でありますが、これも前條第一項の事件についてということでありまして、第四條の事件で新法施行の時に公訴の提起があつた事件、こういう関係についてであります。そういう事件につきましては即ちいわゆる旧法の適用によつて起訴になつておるという事件であります。それは現在と同じように起訴状に捜査記録が全部附けて一件記録となつて裁判所に提出されておるわけであります。そうしてそれに写された証拠物なども全部裁判所に出て來ておるわけであります。これを第四條の原則の適用との関係上どういうように調整しようかというのが九條の規定でありまして、ここが実際問題として一番問題になる点であります。この案の考え方といたしましては、先ず第九條の一項によりまして旧法時代に起訴になつて、まだ第一回公判の開かれていない事件につきましては、その起訴状に附いて來ておる、例えば檢察官の聽取書とか、檢察官から提出したいろいろな証拠物件そういうものは速かにこれを提出者、原則として実際の場合は多くは、檢察官ということになるわけでありますが、その提出者に返還しなければならないということに、先ず第一になるわけであります。ここで新法の起訴状一本主義というのが形の上で調子が合わされて來るわけであります。第二項におきまして旧法時代の起訴状でありますから、それは新法の二百五十六條の規定に従つて附けられていないわけでありますから、これを全部二百五十六條の規定に従つて訴因や罰條を明示してやる。そういう全部二百五十六條の二項から四項までの形式、こういう形式に訂正することになるわけであります。一番ここで問題になりますのは、先ず旧法時代の起訴状でありますと、罰條などは書いてありませんので、罰條はどうしても書き入れなければならん。それから公訴事実の書き方につきましてもいろいろと纏綿する事情なども縷々書いてあるのがありますが、そういうものは簡潔な訴因という形に一應書き変える、そういうことになるわけであります。それから第九條第三項の関係でありますが、旧法時代に起訴になつた事件につきましては、起訴状の送達ということは旧法時代にはなかつたわけであります。ところが新法におきましては、起訴状はすべて送達しろということになりましたので、その関係の調整を第三項で規定しておるわけであります。即ち只今申上げましたように、旧法時代に起訴になつて、まだ第一回の公判期日の開かれていない事件につきましては、捜査記録を返し、起訴状を訂正し、そうして訂正した起訴状は第三項の規定によつて、新法施行の日から三ケ月以内にこれを被告に送達しなければならない、即ちこの法律が明年一月一日から施行になりますと、一月一日から三ケ月以内にとにかく訂正した起訴状の謄本を被告に送達すると、そういう関係になつて來るわけであります。先程からしばしば問題になりました第一回の公判期日の開始によつて事件の処理を決めるという点が、裁判所なり、檢察廳なりの実務に対する影響面としてはこの第九條の規定が一番大きいわけであります。
 次に第十條でございますが、これも第八條第一項の事件でありまして、即ち新法施行前に公訴の提起があり、而もまだ新法施行の際に第一回公判期日が開かれていない事件、これにつきましては旧法第三百五十六條の規定は、尚その効力を有するといたしましたわけでありますが、旧法の三百五十六條の規定と申しますのは、「地方裁判所ハ其ノ管内ニ在ル区裁判所」これは簡易裁判所と読み替えられておるわけでありますが、「簡易裁判所ノ管轄二属スル事件ニ付管轄違ノ言渡ヲ爲スコトヲ得ス」こういう規定であるわけであります。新法にはこの規定が省かれておるわけであります。従いまして旧法時代に起訴になつた事件についてだけ、尚この三百五十六條の規定がないと、この管轄違ということになることになりますので、この十條の規定によりまして、そういう事件についてだけ三百五十六條の規定を尚存置して、管轄違の言渡をしないで、地方裁判所でそのまま審理判決をすることができるようにしようというのがこの第十條の規定であります。
 次に第十一條の規定でありますが、「新法施行前に告訴又は請求の取消があつたものについては、旧法三百六十四條第五号の規定は、新法施行後も、なおその効力を有する。」というのでありまして、旧法三百六十四條第五号と申しますのは、「告訴又ハ請求ヲ待チテ受理スヘキ事件ニ付告訴又ハ請求ノ取消アリタルトキ」は「判決ヲ以テ公訴ヲ棄却スベシ」と、こういう規定であります。ところが新法におきましては告訴又は請求は公訴提起があつた後にはこれを取消すことができないという形になつたのと照應いたしまして三百六十四條第五号のような規定はなくなつてしまいましたので、旧法時代のこの第十一條に掲げるような事件、例えば新法施行前に、旧法時代に告訴の取消があつた。公訴提起に告訴の取消があつた。併しながら判決は新法施行後するという場合、第十一條に規定がないと判決のしようがなくなるという関係になりますので、この三百六十四條第五号の規定を置きまして、そういうものについては公訴棄却をしろと、そういうことにいたしておるわけであります。
 それから第十二條。この新法三百四十條と申しますのは、「公訴の取消による公訴棄却の決定が確定したときは、公訴の取消後犯罪事実につきあらたに重要な証拠を発見した場合に限り、同一事件について更に公訴を提起することができる。」という規定でありまして、これは旧法になかつた新らしい規定であります。旧法時代ならば、こういう新法の三百四十條のような規定がありませんので、旧法時代に公訴の取消になつたものにつきましては、同一、事件について更に公訴を提起することができなかつたわけであります。そういうような被告人側の利益を尚そのまま保持させてやろうというのが第十二條の趣旨であります。ただ「この場合には、」という後段の方でございますが、この後段の規定は旧法三百六十四條第三号、それは「公訴ノ取消ニ因リ公訴棄却ノ決定アリタル事件ニ付更ニ公訴ヲ提起シタルトキ」、こういう場合には「判決ヲ以テ公訴ヲ棄却スベシ」という規定でありますが、この規定も新法には落ちておりまするので、今言つたように旧法時代に公訴を取消した事件について更に公訴、旧法時代公訴の取消があつて公訴棄却の決定があつた、そういう事件につきまして何か間違つて又公訴をして来たという場合に新法に三百六十四條第三号に相当する規定がありませんので、その処理に困りますので、そういう関係におきまして三百六十四條第三号の規定を活かして置いて、その処理、結末を付けようというのが第十二條の後段の規定の趣旨であります。
 第十三條これは「新法施行前に略式命令の請求があつた事件の略式手続については、新法施行後も、なお旧法による。」といたしたわけであります。これは新法によりますと略式命令につきましては、旧法時代はいろいろ金額の制限とか、被告人の同意とか、いろいろな点が違つて來ておりますが、これも経過的には新法施行前に略式命令の請求があつた事件については、略式命令の略式手続、これは正式裁判となつた場合は別でありますが、その略式手続についてだけは尚旧法の略式手続によつて処理しようというのが第十三條の趣旨であります。
 それから十四條、これはいわゆる二百五十五條の強制処分の規定でありますが、旧法時代に二百五十五條の規定によつて裁判官に強制処分を命じ、そうしてその強制処分の請求によつて裁判官が鑑定を命じた、併しながらまだその鑑定が旧法時代に全部でき上つてなかつた、新法時代まで持越されるという場合に或いはどうなるか、この旧法二百五十五條に相当するような規定が新法にありませんので、その結末を図るためにこの十四條の規定をおいたわけでありまして、そういうような旧法時代に二百五十五條の規定による、檢事の強制処分の請求により裁判官の命じた鑑定は依然として二百五十五條の規定によつて完結する、そういう趣、旨を現わしたのが十四條の規定であります。
 それから第十五條でありますが、いわゆる人権蹂躙事件に関連する事柄でありますが、新刑事訴訟法におきまして、いわゆる人権蹂躙事件につきましては、檢事の起訴処分に不満のあるものはその起訴の通知を受けた日から七日以内に裁判所にその公訴を提起しない処分をした檢察官を経由してその事件の公判に付する処分を求めることができる、というのが二百六十二條以下の一連の規定であります。
 第二百六十二條第一項におきますると「刑法第百九十三條乃至第百九十六條の罪について告訴又は告発をした者は、檢察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その檢察官所属の檢察廳の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。」これは新らしい制度であります。旧法時代になかつた制度であります。こういうようなこの請求はこの二百六十條によつて公訴を提起しない処分をしたとそういう通知を受け取つた日から七日以内に請求書を出すという規定になつておるわけであります。それで七日というのはいかにも新法移り替わりのときに慌しい関係にありますので、この十五條の規定におきまして、この新法施行前に公訴を提起しない処分をしてしまつた、そういう事件につきましては、この新法の二百六十二條の制度を働かせて行こうという一つを入れまして、その働かせるにつきましては、二項の七日では短いから「新法施行の日から一箇月以内に、」と読み替えて適用して行こうとそういう考えであります。即ちこの二百六十二條の二の人権蹂躙問題に関する檢察官の不正処分について裁判所の、審判に付することを請求する手続というのは好ましい手続であるので、一應既往の手続についても恩典に浴せしめようという趣旨であります。從つてこの一ケ月來年の一月中であるならば、例えば一年前に不起訴処分になつたものにつきましても、この二百六十條以降の規定が適用になつて來るということになるわけであります。結局時効の完成があればその実益がなくなるわけでありますが、時効の完成がない限りは一月以内ならば二百六十二條以下の制度に乗つて來るとそういう関係になつておるわけであります。
 次に第十六條でありますが、この第十六條と第十七條とは今までの申上げた関係のとちよつと角度が違う規定になつております。第十六條の方は新法第四十六條によりまして、「被告人その他訴訟関係人は、自己の費用で、裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求することができる。」こういう規定になつておるわけでありますが、この手数料等につきましては、旧法時代におきましても新法四十六條に相当する規定があつたわけでありますが、その手数料はずつと古いお手許に差上げてあります参考條文の中に載つており、尚この法律の終まいの方の第二十三條の「裁判言渡の謄本等を求むる者費用上納額(明治十四年司法省布達甲第七号)は、廃止する。」と、これでありますが、この規定によりまして、「裁判言渡ノ謄本又ハ其ノ拔書を求ムル者ハ其ノ用紙一枚金三銭ノ費用ヲ上納スル儀ト可心得事」この條文によつて一枚三銭ということになつておつたのでありますが、この三銭では如何にもその後の物償の値上り、その他これに類似の民事の処理の諾費用などに比較いたしまして、如何にも低過ぎますので、この施行法におきまして、当分の間その謄本又は抄本の用紙一枚につき五円とする。こういうことにいたしたのであります。それで第二條の事件につきましては、全部旧法が適用になつて來るわけでありまして、従つて旧法五十三條、これは新法の十六條と同じ規定でありますが、その規定によつて調書の謄本などを請求することができるわけであります。その場合も又同じように用紙一枚について五円とすることにいたしたわけであります。今度の民事関係の訴訟費用は、臨時措置法の改正によりまして、民事関係の処理の講費用につきましては半枚三円五十銭ということになつておりまして、明治三十三年頃ですかにおきましては、民事の処理の費用額は半枚二銭五厘であつたのであります。それに比べますと百四十倍くらいになつておるわけであります。この刑事の方の調書の謄本又は抄本の請求する費用につきましても大体民事の只今申上げました処理の諸費用などの値上りも参酌いたしまして、丁度よい金額の五円ということで一應切つたわけであります。
 次に第十七條の規定でありますが、これは先程申上げましたように確定訴訟記録の閲覽を請求する場合の手数料であります。この関係につきましては、第五十三條におきまして訴訟記録閲覽の手数料については、別に法律でこれを定めるということになります。この閲覽の手数料についてはこれを別に法律で定めるというこの法律の一種の暫定的規定という形で、当分の間、一回につき十円にするという規定を定めたのであります。これも戸籍その他の書類の閲覽料とか何とかというようなものも比較対照いたしまして、取敢えず「一件につき一回十円」そういうふうに定めた次第であります。
 第十八條は、これも亦今まで御説明したのとちよつと変つて來まして、いわゆる附帶私訴の処理に関する規定であります。即ち新法施行の際、公訴に附帶して私訴が提起されておつてそれが裁判所に係属しておる。そういう事件をどう処理するか、新法におきましては附帶私訴という制度を廃止いたしましたので、現に係属しておる附帶私訴はどうするかという問題も起るわけでありますが、これはこの規定によつて民事訴訟法を適用するということにいたしまして、原則として通常の民事訴訟手続によつてこれを完結する。そういうことに相成るわけであります。從つて刑事部で審理しておるものは民事部ヘこれで移される。そうして普通の民事部の民事裁判によつて完結される。そういう形になるわけであります。
 次に第十九條でありますが、これは何分新法は旧法と非常に変りまして、経過規定なども永年の中にはいろいろと細かい点で問題の点が生じ、一律に決めた方がよい場合も生じ得るのではないか。そういう場合を予想いたしまして、第十九條でこの法律に決めたもの以外には新法施行の際現に裁判所に係属している事件の処理に関し必要な事項は、裁判所の規則の定めるところによる、こういうことにいたしたわけであります。現在差当つて是非定めなければならないというものは、余り考えられないわけであります。強いて考えれば、第十八條などには、民事訴訟法に移す場合の手続をどうするかというような非常に細かいことも考えられますが、これは必ずしもルールを規定しなくても、実際の処理としてできるのではないかと思つておるわけであります。次にこの第十九條までが、いわゆる本來の刑事訴訟法、今までの刑事訴訟法に属した事項についての一應の経過規定などに関連するものであります。
 二十條以下が他の法律の関係のものであります。御承知のように、この衆議院議員選挙法や、それを準用し、或いはその例によつた参議院議員選挙法、地方自治法、政治資金規正法等などにおきまして、当然無効の訴訟などにつきまして、刑事訴訟法中の私訴に関する規定を準用しておるわけであります。これは私訴の規定を準用し、又はその私訴の規定によつておるわけでありますが、これはいわゆる民事訴訟法上の私訴と多少性質を異にいたしまして、今直ちにこれを廃止するということは非常に問題でありますのみならず、而も刑訴の私訴の規定を廃止しつ放なしにして置いて……、これは規定について何か手当をして置かなければ、差障りも生じますので、そういう規定に、こういう法律の適用につきましては、旧法中私訴に関する規定は新法施行後も尚その効力を有する。一應こうして活かして置きまして、これらは選挙関係の法律を將來改正する際に、そこで十分考えて行こうというのがこの第二十條の建前であります。
 第二十一條、これは刑事訴訟費用法の一部改正に関するものでありますが、ここでは新刑事訴訟法と旧刑事訴訟法とで用語の差異ができましたので、その用語を合せたということが一つと、それからその外に実績のものといたしましては第七條であります「刑事訴訟法第三十八條ノ規定ニ依リ弁護人ニ給スヘキ日当、旅費及宿泊料ニ付テハ第三條乃至前條ノ規定ヲ準用ス但シ弁護人カ期日ニ出頭シ又ハ取調若ハ処分ニ立会ヒタル場合二限ル」こういたしました。この「刑事訴訟法第三十八條ノ規定ニ依リ」と言いますのは、いわゆる國選弁護人は、旅費、日当及び宿泊料を請求することができる、こういう規定になつて居るのであります。この國選弁護人に給すべき日当、旅費及宿泊料、こういうものについては、第三條乃至前條の規定を準用するということになりまして、この実績を申上げますと、関係人に給する旅費、日当及び宿泊料はその規定を準用しておるわけであります。從つて尚言葉を簡單に申上げますと、國選弁護人には関係人と同樣な旅費、日当及び宿泊料を給する、そういうことになるわけであります。「但シ弁護人が期日ニ出頭シ又ハ取調若ハ処分ニ立会ヒタル場合ニ限ル」ということにいたしまして、例えば弁護人が公判期日に出頭したとか、或いは証拠調に立会つたとか、そういう場合に限つてこの旅費、日当、宿泊料などを給する、從いまして弁護人が刑務所におる被告に面会に行くというような場合の旅費、日当、宿泊料などは差当つて第七條の條項は問題にならないわけであります。そういう場合には旅費、日当、宿泊料を給しない。こういう関係になつております。但し第二項がありまして、「同法第三十八條ノ規定ニヨリ弁護人ニ給スベキ報酬ノ額ハ裁判所ノ相当ト認ムル所ニ依ル」となつておりまして、只今申上げました刑務所におる被告人に面会に行つた費用或いは記録の謄写に要した費用、そういうものはこの「報酬ノ額」の方で一つ裁判所が全般的に見て弁護人の努力、それに要した費用などを参酌して、これで調整してやれというのがこの第七條の規定の立て方になつております。それはこうしないと、例えば弁護人の中にはこの規定を濫用して、必要もないのに方々に出張したり何かして、その旅費、日当などを請求して負担するというようなことがあつては差当つて困るという問題もありまして、現在の立前としては一應これで行つたらよかろうということになつてこの法案ができたわけであります。それから今一つこの点に関連しまして問題になるのは、弁護人に給した旅費、日当、宿泊料などはこの刑事訴訴費用法の他の條文の関係においてこれが訴訟費用になる、そうして被告人が有罪の言渡を受けた場合には、刑事訴訟法の規定によりまして、第百八十一條に、刑の言渡をなした時には、被告人にその訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならないという規定がありまして、一應被告人の負担になる立前になつております。それがここで注意する第二点であります。注意すべき第三点といたしましては、折角國選弁護人を國家でつけてやるならば、その費用を被告人に負担させるというのは、矛盾しないかという理論になりますが、その理論の解決策といたしまして、新法五百條により「訴訟費用の負担を命ぜられた者は、貧困のため、これを完納することができないときは、訴訟費用の負担を命ずる裁判を言い渡した裁判所に、訴訟費用の全部又は一部について、その裁判の執行の免除の申立をすることができる。
 前項の申立は訴訟費用の負担を命ずる裁判が確定した後十日以内にこれをしなければならない。」こういう規定を置きまして、その間の調整を図つておるわけであります。なぜこういう出方にいたしたかというと、これはむしろ新刑事訴訟法の立案のときの問題になりますが、丁度新慣例でして來ましたので、一言その立前に触れますと、新刑事訴訟法の立前におきましては三十六條で、「被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、裁告人のため弁護人を附しなければならない。」という立前になつておりますので、実際問題としては、貧困の場合が一番問題になると思いますが、弁護人を附するか附さないかを決めるには、貧困であるかどうかを確めなければならないわけでありますが、事前にそれを確めるということになりますと、勢い國選弁護人を附けることが少くなりはせんか、とにかく一應附けて置きます。後で執行段階になつてよく調べてみて、貧困であるならばその執行を免除する。裁判所の裁判でそれを免除するということにした方がより一層スムースに國選弁護人を附けることになるのではないかという考えから、只今申上げたような組立になつておるわけであります。尚この旅費、日当、宿泊料などは、今度の國会に出ております別の訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案で、額については大分高くなつて來ておることを申添えておきます。
 それから第二十二條でありますが、これは全く整理的のものでありまして、特に申上げるまでのことはございません。
 それから第二十三條でありますが、この後段の方は、先程御説明申上げましたように、本案の第十六條の規定ができた以上は不必要でありますので、廃止するわけであります。それから第二十三條の前段の方の規定は、これは御手許に差上げました資料の中に載せてありますように、大分古いものでありまして、明治十四年司法省布達甲第五号というのは、「新法実施後ハ司法警察事務上時宜ニ依リ巡査ヲシテ警部ノ代理ヲ爲サシムル儀モ可有之候条此旨布達候事」これがありまして、新憲法施行後も尚活きておるという解釈の下におきまして実際が動いて來ておるわけでありますが、この新刑事訴訟法になりますと、この第百八十九條によりまして、「警察官及び警察吏員は、それぞれ、他の法律又は國家公安委員会、都道府縣公安委員会、市町村公安委員会若しくは特別区公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。」こういう規定ができまして、誰を司法警察人とし、誰を司法警察吏員とするかというようなこと、殊にこの明治十四年司法省布達第五号に相当するようなことは、むしろこの公安委員会などの定めるところによるべきものである。それが新憲法の精神でありますので、それとの関係上只今申上げました明治十四年司法省布達甲第五号は、これを廃止する。こういうことにいたした次第であります。  附則につきましては、別段御説明することもございませんから以上を以て簡單に逐條的の御説明を終ることにいたします。委員長のお許しを頂きまして速記を止めて頂きとう存じます。
 附則につきましては、別段御説明することもございませんから以上を以て簡單に逐條的の御説明を終ることにいたします。委員長のお許しを頂きまして速記を止めて頂きとう存じます。

#10
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#11
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。それでは本案に対するところの質疑は後日に譲ることにいたしまして、本案はこの程度にして置きます。
 次にやはり本委員会に予備審査のため付託せられましたところの裁判所法の一部を改正する等の法律案を議題に供します。本案について政府委員に先ず提案理由の御説明を願います。
#12
○政府委員(岡咲恕一君) 只今上程になりました裁判所法の一部を改正する等の法律案の提案理由を御説明申上げます。
 先ず第一條について御説明申上げます。本條は裁判所法を改正する規定でありますが、本條による裁判所法の改正の要点は次の三点であります。即ちその第一点は最高裁判所の小法廷で裁判することのできる事項の範囲を拡げまして、大法廷の負担の軽減を図つた点であります。現行の裁判所法第十條第一号によれば、当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断することは、專ら大法廷のなすべきところに属しておりまして、小法廷のなし得なかつたところでありますが、このような憲法問題に関する事件でありましても、すでに一度大法廷が憲法違反ではないとの判断を下しております以上、同樣の判断を大法廷において繰返して行う必要はないものと認められますのみならず、かかる事件が最高裁判所に山積いたしております現状におきまして、一々大法廷を開く繁を避け、小法廷をしてすでに定まりました大法廷の判例に從つて裁判をなさしめても差支ないものと考えられるのであります。又かようにして大法廷の負担をして軽からしめることは、大法廷をして、ますますその本來の任務を効果的に遂行せしむる所以であろうと思われます。この故にこの度裁判所法第十條第一号を改正いたしまして、小法廷が裁判することのできる事件の範囲を拡張いたした次第であります。次に改正の第二点は、この度現行の家事審判所と少年審判所を統合して家庭裁判所という新らしい裁判所を創設することにいたしましたので、裁判所法第三編中に新たな一章を設けて、第三十一條の二乃至五の規定を置き、家庭裁判所の組織及び権限を規定いたした点であります。即ち第三十一條の二におきましては、家庭裁判所は判事及び判事補を以てこれを構成すべきものとし、第三十一條の三におきまして、家庭裁判所の行う裁判権及びその他の権限を規定し、又第三十一條の四におきまして、これらの裁判官は家事審判法第四條の規定によつて、除斥、忌避の裁到を行う場合等を除いて、原則として單独で裁判を行うこととし、第三十一條の五におきましては、第三編第二章地方裁判所の章下における判事補の職権の制限、裁判官の職務の代行、司法行政事務、事務局及び支部、出張所等に関する規定を準用いたしておるのであります。両裁判所法の他の章下の條文で家庭裁判所の創設に伴い、当然に訂正を要することとなりました規定の改正をいたしました。即ち裁判所法第二條、第十九條、第二十八條、第三十三條、第四十一條第二項、第四十二條第一項、第四十四條第一項、第五十條、第五十九條、第六十條第一項、第六十四條、第六十五條及び第八十條の改正がこれに該当いたします。又家庭裁判所には少年保護司という新らしい裁判所職員を置くことといたし、これに関して第六十條の二という新らしい條文を置きました。次に改正の第三点といたしましては第二回國会による刑事訴訟法の改正によりまして、刑事訴訟におきましては控訴及び抗告の審理が極めて重大となりましたので、從來地方裁判所に提起されておりました簡易裁判所の刑事の第一審の判決に対する控訴及び簡易裁判所の刑事に関する決定、命令に対する抗告を直接高等裁判所に提起すべきものといたしました。これが今回第十六條及び第二十四條に規定された高等裁判所及び地方裁判所の管轄を改正いたしました理由であります。以上三点が第一條による裁判所法改正の重要点でありますが、この外にも尚次の諸点につき裁判所法の改正をいたしました。即ち最高裁判所事務局の事務の輻輳に伴い、最高裁判所事務局の機構を拡充する必要がありますので、第十三條の規定を定め、最高裁判所事務局の名称を最高裁判所事務総局と称することにいたし、又最高裁判所に図書館を設けることにいたしまして、これに関して新たに第十四條の二、第五十六條の二及び第六十條の二等の規定を置き、図書館、図書館長及び裁判所司書官等に関する事項を規定いたしました。次に從來最高裁判所長官にのみ附されておりました秘書官を最高裁判所の各判事及び各高等裁判所長官にも附することといたし、これに関して最高裁判所長官秘書官に関する第五十四條の規定を改正いたしますと共に、高等裁判所長官秘書官について第五十六條の二という新らしい規定を設けました。更に第六十三條第一項の改正は、現在傭員である廷吏のうち、若干の者は廷史の優遇上三級の職員といたす必要がありますので、法律で定める員数に限り三級とすることができることにいたすための改正であり、最後に第六十四条の規定は、裁判官以外の裁判所の職員の任免及び叙級に関する規定でありますが、この度裁判官以外の裁判所の職員の任免及び叙級を内閣と関係なく最高裁判所以下各高等裁判所並びに各地方裁判所がこれを行うことに改めました。これは司法行政の独立を保証することが司法権の独立を確保する所以であり又今國会に提出いたしました公務員法改正の主旨にも副う所以かと考えた次第であります。
 続いて第二條について御説明申上げます。第二條は、裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律第三條及び第十四條の改正に関する規定であります。同法第三條によれば、各高等裁判所は、その管轄区域内の地方裁判所及び簡易裁判所の裁判官の免官及び懲戒に関する件について裁判権を有するのでありますが、今回これを改正いたしまして、各高等裁判所は、その管轄区域内の家庭裁判所の裁判官の免官及び懲戒についても裁判権を有するものといたしました。又同法第十四條によれば、同條第一項に掲げた裁判所職員のうち三級の者については、懲戒による減俸並びに懲戒による職責は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所及び各地方裁判所がこれを行うことになつておりますが、今回これを改正いたしまして、家庭裁判所にも右に述べました裁判所職員についての懲戒を行い得ることにいたしますと共に、裁判所法第六十四條の改正によりまして、裁判官以外の裁判所職員の任免及び叙級は、内閣と関係なく最高裁判所の定めるところにより、最高裁判所以下各高等裁判所、各地方裁判所及び各家庭裁判所がこれを行うことになりましたのに軌を一にいたしまして、懲戒による免官につきましても内閣に関係なく、裁判所職員懲戒委員会の議決により、最高裁判所以下各高等裁判所、各地方裁判所及び各家庭裁判所がこれを行うことといたし、又裁判所法の改正によりまして、最高裁判所長官の外にも最高裁判所各判事及び各高等裁判所長官にそれぞれ秘書官を附することになりましたので、本條について必要の改正を施した次第であります。
 第三條は判事補の職権の特例等に関する法律の改正でありますが、同法第一條の改正は家庭裁判所が新たに設けられましたことに基くものであり、第二條の二の規定を新たに設けましたのは、この法律の第二條で、判事又は検事たる資格を有する満洲國の推事又は検察官の在職年数を判事、判事補又は検察官の在職年数とみなしているのでありますが、この度この法規の適用範囲を拡げ、判事又は檢事の資格は有しなかつた者でも司法官試補たる資格を有し、三年以上満洲國の一定の官職にあつた者は、その三年後の在職年数は、これを判事、判事補又は檢察官の在職年数とみなすことといたしました。
 第四條は裁判所職員の定員に関する法律の改正でありますが、同法第四條を改正いたしましたのは、裁判所法第六十三條の改正によりまして廷吏のうち若干名を三級となし得ることとなりますので、從來三級の裁判所事務官のうち同数の定員を本條から削りますと共に、新たに第六條を設けまして三級の廷吏の定員を規定した次第であります。
 第五條の検察廳法第二條の改正は、新たに家庭裁判所が設けられたこと対應するものであり、同法第十九條及び三十八條の改正は少年審判所が消滅することに基くものであります。
 第六條は法務廳設置法におきまして、将來少年裁判所として発足することを予定されておりました少年審判所が家庭裁判所に統合されるごとにたりましたので、法務廳設置法第十條及び第十五條中の「少年裁判所」を「家庭裁判所」と改めるための改正規定であります。
 第七條は刑事訴訟法第四百六十三條を改正する規定でありますが、簡易裁判所が略式裁判を不相当と認める場合に事件の地方裁判所に移送することに関する規定である同條の但書を削除いたしましたのは、新刑事訴訟法立案当時は裁判所法第三十三條の簡易裁判所の管轄の規定を改めまして、簡易裁判所は刑事に関しては、選択刑として罰金の定められている罪については略式裁判しかなし得ず、略式裁判を不相当と認めるときは、これを地方裁判所に移送することになつていたのでありますが、今度裁判所法第三十三條の規定の改正は前述いたしました程度に止めることにいたしましたのでこの刑事訴訟法第四百六十三條但書の規程は不必要となりました。これが同條を改正いたしました理由であります。
 第八條は家事審判法の改正に関する規定であります。今回同法中の「家事審判所」を「家庭裁判所」に改めますと共に、從來地方裁判所の支部でありました家事審判所が家庭裁判所に統合されましたので、家事審判所を地方裁判所の支部といたしております同法第三條を改め、又家庭裁判所の組織及び権限に関する規定が裁判所法の中に取入れられることになりましたので、從來これらの事項について規定いたしておりました家事審判法第三條の規定を改正いたしました次第であります。尚同法第十條及び第二十二條によれば、家事審判所が地方裁判所の支部であります関係上、家事審判所の参與員及び調停委員は地方裁判所が毎年選任することになつておりましたが、今度これを改正いたしまして、家庭裁判所が参與員及び調停委員を選任することにいたしました。
 第九條は家事審判所が家庭裁判所に変ります関係上、民法その他の法律中「家系審判所」を「家庭裁判所」に改めた規定であります。終りに附則について御説明申上げます。第十條におきまして、本法中新たに設けました規定のうち、裁判所図書館に関する裁判所法第十四條の二、第五十六條の二、及び第六十條の二の規定、一定の満洲國の官吏の在職を判事補又は檢察官の在職とみなす判事補の職権の特例等に関する法律第二條の規定及び廷吏の定員を定めました裁判所職員の定員に関する法律第六條の規定並びに最高裁判所の小法廷の取扱う事件の範囲を拡げた裁判所法第十條の改正規定、裁判所廷吏の若干を三級となし得るものとした同法第六十三條第一項の改正規定及び三級の裁判所事務官の定員を改めました裁判所職員の定員に関する規定の施行期日は、これを本法公布の日と定め、その他の規定の施行期日を昭和二十四年一月一日といたしましたのは前者の規定はこれを即刻施行する必要があるのでありますが、その他の規定は主として新刑事訴訟法の改正、及び家庭裁判所の発足に伴い必要な改正規定でありますので改正刑事訴訟法の施行期日であり、且つ又家庭裁判所の発足いたします昭和二十四年一月一日を以て、その施行期日を定めた次第であります。第十一條は裁判所法第十一條、第二十四條及び第三十三條の改正により高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所の刑事事件の管轄が変更されましたのに関連いたしまして昭和二十三年十二月三十一日当時これ等の裁判所に係属いたしております刑事事件の取扱についての経過的規定を、第十二條は少年審判所が家庭裁判所に統合され、從つて少年審判官という官名が消滅いたしましたのに伴い裁判官の任命資格に関する経過規定を、第十三條は同じく少年審判所が、家庭裁判所に統合されるのに伴い昭和二十三年十二月三十一日当時少年審判所に係属中の事件を引継ぎ取扱うべき管轄家庭裁判所を定めるべき経過的規定を、第十四條乃至第十八條は家事審判所が家庭裁判所に切替えられますに際して家事審判所に係属している事件の措置等に関する経過的規定を、又第十九條は本年一月一日改正民法施行に際して経過的に家事審判所をして行わしめた事項を今度家事審判所が家庭裁判所に切替えられるに当つて、これを家庭裁判所に行わしめるべきことにいたしました経過的規定を、それぞれ定めたものであります。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重御審議の上速かに御可決あらんことを御願いいたします。
#13
○委員長(伊藤修君) 法案に対する質疑は、後日にこれを譲るに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○委員長(伊藤修君) それではさよう決定いたします。次に少し時間が遅うございまするが、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案及び訴訟費等臨時措置法の一部を改正する法律案、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二及び同條の規定を適用することを定める法律案、以上三案を一括して前回に引続き質疑を継続したいと存じます。
#15
○深川タマヱ君 訴訟費用の質問でございますけれども、民事及び刑事の訴訟費用、並びに執達吏の費用が、インフレの時局下におきまして漸増の傾向にございますことは、至極当然のことでございますけれども、一方これを負担する者の立場から考えますと、経済力の制限のために折角與えられた権利を放棄にいたしまして泣寝入に終る人が、次第に多くなることも考えなければなりませんので、これは民主主義の立前からは遺憾のことであると存じますが、これについて私、考えますことは、個別経済には多くの特徴もあると思いますけれども、社会連帯、及び相互扶助という精神に非常に欠ける所があるようでありますから、将來はたとえ資本主義を主張する人と雖も、国民が共同で利用いたします機関の経費は、できるだけ國民各自の経済力に應じた租税により賄つておきまして、その機関を利用する必要の生じた國民は、いつでも、誰でも無料で、自由にその機関を利用できるようにすることが、これが民主々義の立前に合致することのように存じます。でこの訴訟費用もできるだけ個人が負担されないで、国家の租税によつて賄うようにいたしたいと存じますが、それについて政府の御所見を伺いたいんであります。序でに申添えておきますことは、訴訟費用というものは学校とか病院とか鉄道のようなものと大分性質を異にいたしまして、民事と雖も只今までは負けた人が負担いたしますし、差押の方は差押えられた方が負担いたします。刑事と雖も大部分は國家費用ですけれども、一部分は違反行爲をした人の負担だといたしますと、大体において正しくなつた者の負担であつたものを、将來は一般國民が負担するというこという考を持つ國民も多いと存じますけれども私はその民事で負けた人と雖も、やはり原告の要求を果たしてやれば済むことであり、差押えられた方でも差押えられる物件を提供すれば済むことである。違反行爲をした人も刑の量定に感じて受刑すれば済むことであつて、それに関連した期間の費用を負担するということはこれは必ずしも当を得ないのであつて、そういうことは國家の経費で先程言うように租税で賄うことがいいように存じますが、如何でございましようか。
#16
○政府委員(岡咲恕一君) 潜越でございますが、私から代つて御答弁申上げたいと存じます。
 深川委員の御意見は誠に御尤もな点が多々ありますので、私も深く同感いたすのでございますが、現在の立前から申しますと、國家のいろいろな施設を利用する。その利用の費用というものを國庫が全部負担いたしますということは國家財政から見てとても負担に堪えられないという点が一点でございますし、又深川委員自ら御説明になりましたように、その費用について、原因を與えたもの、或いは少くともその費用について責任あるものというものが公共に代つてその費用を負担するというのは、どうも現在の立前上止むを得ないのではないかと考えます。将來もつと國の組織或いはいろいろな活動がもつと社会的に組立てられて参りますと、或いは仰せのように公共事業に関する費用というものは全部国庫が負担いたします。ただ單独の異例の場合例外についてのみ個人が負担するということになると思いますが、現在の状況におきましては、只今申しましたような次第で、直ちに全部を租税によつて、國民全般の負担にこれを切り替えるということは行き過ぎではないかと考えております。
#17
○深川タマヱ君 それでよろしうございます。
#18
○委員長(伊藤修君) 他に御質問ございませんか。ではこの程度で爾余の質疑は後日に譲ることにいたします。
 次に檢察及び裁判の運営等に関する調査会についてお諮りいたしたいと存じますが、同調査会で先きに採上げる事件を御決定願いました。それに附加いたしまして、その際一言触れてはおきましたが、本庄事件及び浦和地方裁判所で行われたところの殺人事件でありますが、事件の内容は生活苦のため一家心中を計り、子供三人に対し殺鼠剤を與えたが未遂の結果、絞首殺をなして後母は自殺を計つたが未遂に終つた事件であります。浦和地方裁判所牛山判事、大澤判事、勝俣判事の方々であります。檢察官は柴崎檢事の係であります。本件に対しましては執行猶予の判決が與えられ確定したかに聞き及ぶのでありますが、同事件に対するところの殺人事犯に対して裁判所の考え方が、いわゆる小兒及び少年の生命というものを尊重しないかのごとき観念を與え恰も新憲法の基本人権を尊重しないというような考え方が一般司法官の頭にあるのではないか、こういう点について調査をいたしたいと考えますが、以上二件を調査の対象といたすごとに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長(伊藤修君) ではこの事件を採上げることに決定いたします。
 それから尚暴力團及び陪審法の調査のために宮城委員を長崎に派遣することを御諮りいたしたいと存じますが、尚派遣の期日及び日数等は委員長に御一任を願いまして決定することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○委員長(伊藤修君) ではさよう決定いたします。
 では本日はこれを以つて散会いたします。
   午後零時四十一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           大野 幸一君
           鈴木 安孝君
           深川タマヱ君
           松村眞一郎君
           星野 芳樹君
  政府委員
   檢 務 長 官 木内 曾益君
   法務廳事務官
   (檢務局総務課
   長)      野木 新一君
   法務廳事務官
   (調査意見第一
   局長)     岡咲 恕一君
ソース: 国立国会図書館
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