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1948/11/22 第3回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第003回国会 水産委員会公聴会 第1号
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1948/11/22 第3回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第003回国会 水産委員会公聴会 第1号

#1
第003回国会 水産委員会公聴会 第1号
昭和二十三年十一月二十二日(月曜日)
    午前十一時二十一分開議
 出席委員
   委員長 西村 久之君
   理事 冨永格五郎君 理事 藤原繁太郎君
   理事 外崎千代吉君
      石原 圓吉君    川村善八郎君
      仲内 憲治君    夏堀源三郎君
      平井 義一君    佐竹 新市君
      庄司 彦男君    大森 玉木君
      小松 勇次君    椎熊 三郎君
      三好 竹勇君    鈴木 善幸君
 出席公述人
      伊藤佐十郎君   飯島國御衞門君
      岡本 清造君    奧村又十郎君
      小野寺慶一君    鯨岡 稔雄君
      中地 勇榮君    永井 寛次君
      野村 貫一君    松田 茂久君
      宮城雄太郎君    安居 篤孝君
      渡邊 威雄君
 委員外の出席者
        專  門  員 小安 正三君
    ―――――――――――――
本日の公聽会で意見を聞いた事件
 水産業協同組合法案、水産業協同組合法の制定
 に伴う水産業團体の整理等に関する法律案及び
 漁業権等臨時措置法案について
    ―――――――――――――
#2
○西村委員長 これより水産委員会公聽会を開きます。
 本委員会が水産業協同組合法案、水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律案、及び漁業権等臨時措置法案の三法律案の審査にあたりまして、本日及び明後二十四日の両日特に公聽会を開き、利害関係者、並びに学識経驗者等の公述人各位より御意見を聞くことにいたしましたゆえんは、申すまでもなく漁業生産力の発展、漁村の民主化、漁民の経済的及び社会的地位の向上は、日本の民主化、経済の再建の重要な一環をなすものであり、漁業制度の改革と新しい協同組合組織は、その最重要部門をなすものであり、全國漁民が重大関心を持つておる問題であるのみならず、從來漁業の中心となつておりました漁業会が、種々の制約のもとにほとんどその機能を停止しておるような現状におきましては、特に緊急を要する問題でもあるからであります。かかる重要な三法案の審査にあたり、多年の経驗と研究とに基く貴重なる御意見を拜聽いたしますることは、本委員会における審査の一層の権威を加えるとともに、その遺憾なきを期し、もつて國民の代表としての使命を十分に果すために多大の参考となることと確信いたす次第でございます。私はここに委員長として本委員会を代表し公聽会に御出席くださいまして公述人各位に深甚なる謝意を表しますとともに、三法案について忌憚なき御意見の御発表をお願いいたします。
 なおこの際公述人各位に申し上げますが、衆議院規則第八十二條、第八十三條及び第八十四條によりまして、公述人の御発言の場合は委員長の許可を要すること、並びにその発言は意見を聞こうとする事件を越えてはならないことになつております。また委員は公述人に対する質疑はできるのでありますが、公述人より委員に質疑はできないことになつておりますので、念のため申し添えておく次第でうります。
 それでは会議を進めるにあたり御参考までに申し上げますが、委員会においては三十名の公述人を選定いたし、本日はそのうち次に申し上げます十五人の方々に御意見を聞くことといたします。すなわち
   伊藤佐十郎君  今井  守君
   岡本 清造君  奧村又十郎君
   小野寺慶一君  鯨岡 稔雄君
   高野 源藏君  中地 勇榮君
   永井 寛次君  野村 貫一君
   平野義太郎君  松田 茂久君
   宮城雄太郎君  安居 篤孝君
   渡邊 威雄君
の十五名にお願いするのでありますが、高野源藏君は本日は上京出席が間に合わないため明後二十四日に、また明後二十四日の公述予定者であられました飯島國右衞門君は本日に、それぞれ変更せられたい旨の申出がありましたので、この際委員各位にお諮りいたしますが、このように変更するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○西村委員長 異議がないようでありますから、そのように決定いたします。なお漁民組合組織部長四井守君及び協同組合研究所長平野義太郎君は欠席する旨の申出がありましたから、御了承お願いいたします。
 なお会議の順序を申し上げますと、まず公述人全部の方の御意見の陳述が終つたあとで委員よりの質疑に入りたいと存じます。なお時間の関係から公述人一人の御発言の時間は大体十五分くらいといたしまして、御発言は発言席でお願いをいたします。まず御発言なさるときは御職分と氏名をお述べになつていただきたいと思います。御発言の順序は五十音順によることといたします。ではまず伊藤佐十郎君より御意見の発表をお願いいたします。
#4
○伊藤公述人 岩手縣水産業会長の伊藤佐十郎でございます。三法案のうち、水産業協同組合法案から私の意見を申し上げたいと思います。
 私は水産業協同組合法案につきましては、原則的に賛成するものでありますが、内容の一部については若干の意見をもつておりますので、以下それを申し述べたいと思います。まず法律の目的の項におきまして、この考え方は漁業経営者と漁業労働者、水産加工業者と同じく労働者というように、労資を混合した形において一つの組織の中にまとめようとする考え方であります。理論的にはこれをそれぞれ対立せしめるような、あるいは別々の組織において考えることも可能でございますけれども、私どもの立場からいたしますと、この法律案の目的にうたつているような漁民という形において総合的に組織する方が事実に即しているというように私は考えるのであります。協同組合の私どもの考えております理念に基きますと、対外的にも対内的にもやはりその信用が基礎でありまして、あくまでも善意の協力が土台にならなければならません。派閥の激化というようなことは、決して協同組合の健全な発達を助長するゆえんのものではないのであります。またもう一面から考えますと、漁業者と水産加工業者とは、利害相対立するにもかかわらず、これを一つの組織の中に入れる場合も考えられているようであります。これについても論議のあるところでありますけれども、私は沿岸漁業部面における水産加工業者というのは、まず第一に漁獲物処理の一環として考うべきものであるという所見をもつております。その意味においてこの法律の目的の規定の仕方の方がよろしいというふうに考えております。もし今後漁業手形制度のようなものを総合的に運用する面から行きましても、組織的関連があるということの方が金融操作の面においてこまことにスムースに行くのではないかというような、実際上の経驗からそういう考えをもつているわけであります。ただここに一つ支障のありますことは、加工團体につきましては、商工業協同組合という制度がございまして、これによつて組織することもあるいは可能ではないかと考えられます。業者自体の利益のために、水産業協同組合法によるが是か、商工業協同組合法によるべきかということにつきましては、おのずから研究の余地があるかとも思われます。現に食品局所管の事業、水産廳所管の事業等において、材料、副原料その他の資材確保面等から、いろいろ業者の間に意見が生れておるようでございます。これは組織の問題ではなく、要するに行政のあり方の問題でありまして、おのずから問題の別個になりますが、いずれにしても全然無関心ではあり得ない問題であると思います。特に注意すべきことは、経営規模の比較的大なるものは商工業協同組合的組織の方に分離する傾向がありますので、それとの調整の問題はさらに一段の檢討を要するではないかと思います。
 次に出資制度の問題でございますが、非出資協同組合は認めない方がよいと思います。協同組合というものは、あくまでも経済的基盤の上に立つものでなければ、協同組合としての使命達成は困難である。かかる見解から、非出資組合は認むべからずという意見を持つております。なおもし非出資でできるような仕事でありますならば、あえて協同組合と銘打たずとも、協会でも何でもできるはずでございます。
 次には員外理事の問題がよく論議されております。理論的には員外理事、要するに漁民以外から團体の理事者を專任するということは邪道のごとく考えられますけれども、要は團体経営は、ある意味においてはもつぱら人の問題でございまして、その理事者に人を得るかいなかということがその組合の生死にかかわる問題でございます。あながち漁務の名人が組合経営の名人であるというわけにも参りません。將來はともかくとして、現段階におきましては、若干の員外理事採用の道を開いて行くのは当然であると考えます。
 それから漁業協同組合の事業の中をずつとながめてみますと、從來の漁業團体の場合と大した相違がないようでございますが、私どもこの際ぜひ実現してみたいと思います一つの夢がございます。それは漁業災害補償施設とでも申しましようか、用語は適当でないかもしれません、要するに漁業の投機性とか不安定性というものをできるだけ排除するのでなければ、沿岸漁業の発達というものは、基盤において、はなはだしい脆弱性があるということになります。あたかも農業災害補償制度におけるがごとく、漁業においても補償制度というものがあつてしかるべきであり、それが相互扶助的な形において協同組合組織の中に行くならば、ある程度の成果が得られるではないかと思います。この仕事は遭難救恤等の仕事もさることながら、沿岸漁場の経済そのものを盛り立てる意味において、ぜひ考えたい問題であると思うのであります。この問題は非常にむずかしい、新しい試みになりますので、無條件で認めるわけに参らないとすれば、特別許可條項にしてもさしつかえないと思いますが、いずれにしてもひとつ新しくお取上げを願いたいような感じがいたします。
 それから実際の運営面からこの事業の点についてもう一つ考えられますことは、一つの例でございますが、水産倉庫を経営いたしますと、倉荷証券その他の関係で一般の倉庫業法が適用になることになります。これは主務官廳が全然別個になります。こういう仕事は行政的にも、あるいは組織の面から見ても、あまり多岐にわたらないように、水産は水産で主体性を持つて行けるようなかつこうにできないかということをちよつと感じましたが、これはちよつと横道にそれたかもわかりません。
 その次は漁業の経営の問題でありますが、私は法案における漁業の経営の制限が強過ぎはしないかと感じております。生産組合の規定と漁業経営の制限の限定とはほとんど同一でありまして、極端に言えば何ら選ぶところがないようでございます。これは協同組合の漁業経営の場合において、生産組合とまつたく同じような要件を備えなければ経営できないというのでは、少々むりではないかと思います。これに対してはその程度の意見にいたしておきたいと思います。ただ新しい協同組合の一つの方向といたしましては、生産の協同化ということが大きい課題でございまして、あまり窮屈な制限條項を加えることによつて、生産の協同化を阻害するようなことは好ましくないということだけは言い得ると思います。
 次に総代制度について申し上げます。法案によりますと、組合員二百人以上、総代の定数は五十人以上というふうに規定されているようでございます。これは私の地方ばかりでなく、私の知る範囲において意見を徴しましたところでは、まつたく実情に即しておりません。二百人以上という制限も多過ぎますし、五十以上という定員も多きに失します。総代制度を採用して活用せしめる以上においては、端的に申し上げれば構成員は百人以上でよろしいし、総代の定員は二十名以上でけつこうだと思います。極端な例を申し上げますと、今度の法案の中には、男女別とか、世帶主としからざる者との別は規定してないようでございますから、東北地方の大家族制度をいまだに行つております沿岸部落に参りますと、一家五名くらいの男女漁業從業者のおるところは珍しくございません。そういうところでは一戸五名がかりに加入資格があつて、四十戸あると二百人になつてしまいます。四十世帶の組合が五十名の総代というようなことになるわけであります。これはまつたく矛盾であります。これは極端な例でございますが、要するに二百人に五十人というこのわくは、少し実情に即さないということを申し上げたいと思います。
 それから漁業生産組合でございます。これは從來から実行組合その他の名称のもとにしばしば行われておつたものでございまして、これに法人格を與え、行政的にも積極的な援助を與えることによつて、かなり成長発展するものと期待せられます。零細漁民のために喜ばしい制度として、私はこれに賛成するものであります。
 次には漁業協同組合連合会の規模の制限でございます。一府縣單位以上はいけないとか、三百を越えての連合体はいけないとかの規定がございます。これについては当局の御苦心のほどもほのかに伺つておりますので、あまりに極端な意見は差控えたいと思いますけれども、実際に沿岸漁業の発展のために協同組合組織を活用して、他の産業部面の水準まで急速に持ち上げて行こうとするような強力な運動展開のためには、かくのごとき制限は迷惑千万だということだけは申し上げられると思います。もし沿岸漁業部面が非常な力を持ち、あるいは集中し過ぎておるとか、独占化し過ぎておるという場合であれば別問題でありますが、あらゆる他の産業部面と比較いたしまして、きわめて立遅れの観があり、幾らかけ足で参りましても一般のレベルに達するまでに相当の困難があるという際において、漁業協同組合運動というものは相当活発に、スピーデイーにやらなければなりませんし、そうしてまた組織的にも相当廣汎にわたつての協力を必要といたします。その意味において、これでは少し制限がきつ過ぎるというふうに考えております。
 次に組合員の資格の問題でございます。漁民の原則とすることには私ども異論ございません。ただ法人なるがゆえに全然組合員に認められないという規定は少々実際に即さないのではないか、特別議決事項か何かにして、定款の定めるところによつて加入せしめる道は開いておいてよろしいじやないか、その方がこの漁村を総合的に発達せしめる上においてはアウト・サイダー的なものを置いて、あばれさせるよりもかえつていい。私はあえて統制主義でそういうことを申し上げるのではありませんが、大規模の資本漁業までこれに入れろということを申し上げません。法人必ずしも強力ならず、個人必ずしも弱小ではございませんから、そういう意味においても漁村の実体に即したように、構成員の総意に基いて特剔抉議をもつて入れるというならば、別に支障はないのではないかというようなことが考えられるのであります。以上が協同組合法案に対する私の見解でございます。
 次に水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律案について簡單に申し上げます。一々條文を指摘することを避けまして、要するに前後措置に関する法律でございますから、その前後措置に対する私どもの立場からの見解を簡單に申し上げます。
 前後措置は新團体と旧團体との間において空白の生じないようにするということが一つ、十分に注意していなければならない点でございます。それから行政指導その他の方面から申し上げますと、漁民組織の零細化はあまり好ましくないのであります。協同組合の経営にもおのずから適正なる経営規模があるはずでございまして、七人以上なら水産組合とか、二十人以上なら協同組合とかいうことをかつてにやらせるということになつたのでは、これは中途半端なものが簇生して、まつたく收拾に困るようなことができはしないかということを私どもはおそれるものであります。この臨時措置を講ずる場合におきましても、これは強制するわけには参りませんけれども、もし指導と善意の助言によつてそれを了とするならば、新團体と旧團体との地域及び構成員がほとんど一致しておる場合においては、この前後措置というものはきわめて簡單に行われます。かりに漁業権制度そのものの改革によりまして、原則的には漁業会の解散というものが数年後でなければならないといたしましても、新團体と旧團体との地域、構成員がほとんどイコールであるとすれば、旧團体は一挙にしてただちに解散してしまつても、新團体に権利義務の全部を継承することによつて、事実は一つでまかない得ることになります。その間の経費、労力、空白の防止等という問題を考えてみますと、これはよほど考えさせられる問題だというふうに、実際に團体指導等に当りました経驗からそういうことを申し上げるわけであります。これを強調し過ぎますと、旧團体の勢力温存であるとか、あるいは何とかいうそしりをまぬがれないことになりますので、あまりくどくは申し上げないことにいたしたいと思います。もちろんこれは総意に反してまでそういうことを強制すべきものではございません。それからこれはこの法律によるのではなくて、特に別の政令に基くものではございましようけれども、旧團体の善意の役職員の措置に対しては、明確なる指示を與えておく必要があるということをちよつと氣づきます。法案そのものについては簡單にその程度に申し上げておきたいと思います。
 それからもう一つの漁業権に関する臨時措置の問題につきましては、私不勉強でよく調べておりませんが、ただ條文もきわめて簡單でございますし、切りかえのために当然ああいう規定は必要だと思いますので、特に申し上ぐべき意見を持ち合せておりません。以上であります。
#5
○西村委員長 次は伊東漁業会長の飯島國右衞門君に願います。飯島君。
#6
○飯島公述人 私伊東の漁業会長の飯島でございます。私は二十四日になつておつたのを、こちらへ参りまして突然本日飛入りの形で出たわけであります。ただいい前の方からもいろいろお話がありましたが、今度の漁業法の改正、協同組合法の改正につきましては、全漁民が非常に期待を持つて待つておるわけであります。この法案の遅れたことにつきましては、実際ただいまの漁業会そのものが浮き足立つておる現状でありまして、本國会に幸いにして提出されたことにつきましては、われわれ漁民代表といたしまして、実に喜びにたえない次第であります。なおその点につきまして、細部の点も私どもにはよく檢討も行き届いてはおりませんが、二、三氣づいた点を参考までに卑見を申し上げたいと存ずるのであります。
 いわゆるこの漁民の解釈が、今度は漁業從業者並びに漁業をしておる方ということに限られた点が漁民ということになつておりまして、この漁業協同組合法案そのものの組合員の資格に対しまして、今度法人が抜けるというようなことに相なつておるのでありまするが、これは大会社を持つておる方々と違いまして、地方の漁村におきましては、やはり打つて一丸となつてその漁村の繁栄のために盡すには、やはりそういう会社も入れた方が、この漁業の発展のためによくはないかと考えるものでございます。
 次に準組合員制度でありますが、やはり一漁村あるいは半農半漁の方もありますし、かつまた漁業と同じような仕事をしておる漁村で、同じようにやはり朝晩仕事をしておる方も相当あるのであります。そういう方も今までは組合員となつておりまするが、今度の法案によりますると、これは全部抜けることに相なるわけであります。これはやはり地方の情勢によつてもいろいろ違うことでありまするが、そういう方はやはり今度准組合員として入る規定になつておるようにも聞いておりますが、無関係の方は全然入らないというような法案になりますると、地方におきましてもそこに一つの相尅摩擦が起きて、行政面におけるところの点におきまして、ちよつとその土地のあるいは町内会とか部落会とか――これは昔のことでありまするけれども、そこに相剋摩擦のようなものが起きるのではないかということも考えるわけであります。この点につきましてはもう一段と檢討を要する必要があるのじやないかと考えるわけであります。
 施設の員外利用、これはもちろん協同組合の施設として、員外利用をさせることは適切でありまして、私どもはつとめて漁民あるいはほかの第三者に対しても、員外利用をさせるような方法を講じてもらうことを念願するものであります。
 なおただいまもお話がありました総代制度が二百人以上に対して五十人ということはまつたく多過ぎるものであります。今度は今までと違い、一軒の家でも三人あるいは五人の子弟が組合員に相なるという場合も多いのであります。総会等の機会も非常に多くなつて來ますと、意見が対立すると同時に、また総会に寄るというのは、漁村では割合に手間がとれてぐあいが惡いので、少くとも総代制度によつてすべてを解決して行く方法を講じて行くことが適切じやないかと考えますが、人員が五十人以上ということに相なりますると、これもなかなか困難だと思いますので、この点についてもひとつお考えを願つて、もう少し最小限度にとめた方がよくはないかと考えるわけであります。
 次に連合会の組合でありますが、実際問題として、現在地方に水産業会がないために、漁業の運営に非常に支障を來しているのであります。各地区から陳情が出る。あるいは部落的にも各業種別の組合が非常に盛んになつて参りまして、あるいは定置組合、きんちやく組合とか、あまりにも各組合が雨後のたけのこのごとくできるということは、それは横の連絡がつかなくて非常にぐあいが惡いと考えます。やはり一貫した一つの連合会をつくつて、各業種を網羅したものによつて、大いに水産業改善のために盡していただくような制度をつくつた方がよくはないかと考えるわけであります。
 信用事業においても、御承知の通り漁村の信用事業は割合に振つておらないのでありまして、今後この信用事業については十分指導して行つたならば、將來の資金関係の、金融方面においても非常によく行くのじやないか。現在金融方面におけることが非常に問題になつておりまして、各縣とも近海漁業に対しては金融機関がほとんどないために、現在大きな会社その他は直接復金方面から借りるが、沿岸漁業に対して金融の道が開かれておらぬために、資材の購入資金が、第二・四半期の分が今もつて借りることができないというような現状にあることはまことに遺憾にきわみであります。これは水産業発展のためにも、よろしく当局としても、またここにおられる水産委員諸君におかれても、金融面において一段と御努力を願わないと、沿岸漁業の発展はとうてい不可能ではないかと考えます。その意味におきましては、やはり各金融機関を組合につくらせまして、これを糾合してどんどん金融における施策を講ずると同時に、一面また復金並びに中金方面の機関を活用させて、一日も早く、零細なる漁民に金銭の融通ができるような施策を講ずる方法をつくつていただけば、非常に都合がよくはないかと考えます。
 次に生産組合の制度でありまするが、この生産組合は現在今までの法令によりまして、漁業会においては定置漁業にいたしましてもできないという関係に相なりまして、任意組合でやつておるわけであります。今度生産組合ができまして、定置漁業権その他の漁業権を獲得しましてやることは、まことに当を得たことと存ずるわけであります。この組合員の構成におきますと、漁民ということになつております。これは各部落におきましては、現在漁民のみによつてその経営をしておらずに、今までは漁業会が権利をとつて第三者に貸し、第三者の要するに漁業料によりまして漁湾の修築とか、共同施設とか、その他にこれを利用しておる所が相当多いのじやないかと考えるわけであります。この点につきましては、その土地におきましては、とうてい生産組合をつくつても、定置漁業の経営のできないという小部落のものがたくさんあるんじやないかと思います。こういう点についてはまだ研究の余地があるんじやないかと考えます。
 なお加工組合の設番ということになつておりますが、漁村におきまして加工業者と漁民とは、打つて一丸となつて生産に当つてこそ初めて成果が上がると考えます。往々にして過去におきましても、漁民が共同施設を利用してこれをやるということは、現在農林省方面におきましてもこれを非常に慫慂しておりますが、実際においては加工業者にすべて打つてやられるようなことが往々あるわけであります。なかなか漁民が即加工をしてやるという公共施設に対するものはでき得ない。今度加工組合というものがここにまたでき得るということになりますと、現在の公定價格を維持することができなくて、加工業者に打つてやられるという憂慮すべき問題が起るのじやないかとも考えるわけであります。こういう点につきましては、やはり加工業者も協同組合の中に入れて、小さな部落あたりでは、うまくやつて行けば、加工業者が相当もうけた幅というものは、やはり漁民にかえせるというようなことがあるわけであります。私ども伊東におきましては、現在ほとんど委託加工をさせております。ところが今度こういうふうにきちんとした加工組合というものができると、どうしても賣渡しということになる。そうなると、せつかくとつて來た魚、かりはさばぼしにいたしましても、かつお節にいたしましても、煮ぼしにいたしましても、その價格によつて賣渡してしまうと、そのさやは加工組合に全部もうけられてしまつて、生産者に持つて來ないという点も考えられるわけであります。こういう点につきましても、これは非常にいいこととは存じておりますが、加工組合と漁業組合との間に、今度漁業組合の方でどしどし加工もやるということになりますと、せつかく加工組合をつくつても、加工業者が意味をなさなくなるということにもなるのですから、こういう点もやはり地区々々の情勢によつて、相当考えて行かねばならぬというふうなことも考えております。
 なお役員の問題になりますが、御承知の通り、役員は現在員外よりもやれという御意見がありまして、私まことにけつこうな意見と考えるわけであります。御承知の通り、漁民においては生産をしながらいろいろのことを研究し、なおかつ指導するということは、私が過去十数年間の経驗によりましても、なかなか困難なことと存じておりますから、員外から入れるということにつきましてはまことにけつこうなことと存ずる次第であります。
 なお多少申し上げたいこともありますが、時間の関係上私の公述はこれをもつて終りといたします。
#7
○西村委員長 次は日大の岡本清造教授にお願いいたします。
#8
○岡本公述人 御指名にあずかりました岡本でございます。実は今日この催しがあるということを昨晩聞いて、何にも準備せずに出て参つたわけであります。そういうことでありますから何をしやべるかわかりませんが、平常考えておることを申し上げて御参考に供したいと思います。
 先ほどどなたかもおつしやいましたが、われわれといたしましては、この漁村の民主化あるいは水産業の民主化を果す一つの行き方といたしまして、水産業に関連した協同組合法案が当局において考えられ、そして今回上程されるということを伺いまして、喜びにたえないのでありますが、しかし私從來から考えておることを申し上げますと、むしろおそいという感じがしておるのであります。と申しますのは、日本の全國民の中でこれを産業別に見た場合に、おそらく日本の漁業ほど民主化の遅れた、あるいは近代化の遅れた産業部門はないと言つてさしつかえないと思います。もちろん南氷養漁業みたいな、どえらい進んだ水産業もございますが、日本の沿岸漁民というものは非常に遅れておるのであります。そこで終戰後の民主化が問題になつたときに、まず國として手をつけなければならない所はどこかと言えば、その最も遅れた所が手をつけられなければならなかつた。しかるに他の産業方面において協同組合法案、その他の法案ができて、民主化が着々進みつつあるにかかわらず、水産方面にはなはだ遅れたということを悲しく思つておる次第であります。しかしおそかりし由良之助とはいえ、今回のりつぱな法案ができましたことを私は衷心からお喜び申し上げます。法案の内容につきましては私は薄々伺つておつたのでありますが、しかしこまかいことは述べません。それからただいま申し上げましたように、昨晩通知を受けただけで、どうにもこうにもならないのでありますが、この法案を生かす、あるいは法案が通過して法になつたあげくのことを申し上げまして相済みませんが、活用する場合に、当局並びに水産方面にどれだけの準備がただいまできておるかということを懸念いたしておるのであります。協同組合と申しますれば、御存じのように中小業者の白個防衞の組織だと言われねのでありますが、水産業における協同組合というような制度を、單にそれだけ切離してみて、いわゆる第三党的な考え方でこれを指導して参りますならば、ここに日本の民主化を進めるのではなくして、引止めると言いますか、そういうふうなことになるのではないかということも私はおそれておるのであります。そういうふうな意味合いにおきまして、この法案をつくりました眞の精神と申しますか民主化の精神、それを実現するようにただいまから準備し、そうしてしつかりした心構えをもつてこの法案の実際化をお願いした次第であります。その意味から申しまして、この法案の上程並びに通過と相前後して、ただちにそういう方面の連絡あるいはおせわをする、指導するという一つの機関と申しますか、制度というようなものが官、代議士の皆さん方、それからその他の水産関係の練達の士がたくさんいらつしやいますから、そういう方々で組織して、間違いのない、すなわち民主化の方向に必ずもつて行けるような協同組合を生み出すような施設と申しますか、そんなものをただいまただちにおつくり願いたい。そうして活発に活動していただきたいと考える次第であります。と申しますのは、私はこの夏茨城縣の久慈へ学生をひつぱつて参りまして、実際調査したのでございますが、実は業者あるいは漁民という方が、どうでもいいという考えを持つておられる方が非常に多かつたのであります。どうでもいいということが一番あぶないので、ドイツでもヒトラーが偉そうにするようになつたのは、この前の戰爭後の中小業者の疲弊が、どうでもいいというふうな氣持をもたすようになつた。そこへはいり込んで行つたのがあの思想でありますから、私は日本の民主化を実現するためには、そういうふうなどうでもいい階級を、どうでもよくない階級にして行かなければならないというふうに考えたのであります。
 それから先ほど伊東の飯島さんですか、おつしやいましたが、漁民という言葉が法案の中に盛られておりますが、大体この法案では規定してあるか知りませんが、ほかの方面では漁民というふうに規定してあつたように思います。しかし日本の漁村へ参りまして、私たちが調査さしていただきました結果から見ますと、その漁民というのがはなはだあいまいな観念であつて、実は漁民ではなくして、純粹に漁業労働者であることが多いのであります。あるいは純粹でなくても、漁業労働者たる性格を多分に持つておるものが多いのであつて、労働者としての経済的の地位をもつた方々は非常に少い。そこをどうこの法案による協同組合という組織化で生かして行くか。その点が非常に重大な点ではないか。もちろん漁業労働者たる漁業関係者と言いますか、そういう人たちにとつては、労働組合の制度が活用されますし、またあちらこちらに漁民組合という名のもとに実は漁業労働者團体たる性格を持つた團体が間々あるわけであります。先ほど飯島さんから言われましたように、現在では任意組合の形で、漁業者のそれぞれの漁業種類別の團体ができておるというふうなお話でございましたが、それと相並んで、今度は漁業労働者というふうな性格を持つた人々の團体ができておる。それと今度の協同組合とをどうマツチさせ、どう指導して、日本の水産業の全組織を運営して行くかということが、これまた日本の水産業民主化の実現のために非常に重要な点ではないかと考えておる次第であります。
 それからもう一つは、私は法案を読まずに参つておるので、はなはだ見当をはずれるかもしれませんが、すでに漁業生産協同組合たる性格を持つた漁業者の團体というものは、先ほども飯島さんがおつしやいましたような例でわかるように、多々あるわけであります。しかももつとプリミテイヴな協同経営の形をとつた組織がたくさんあります。最近農林省の統計調査局の方で、來年三月を期しまして漁業センサスをやりますが、そのときにも経営組織の問題をやかましく言いまして、いろいろやつたのでありますが、一番取扱いにくいのがこの協同経営なんでございます。そこで制度の上で生産協同組合というふうなものは、割に制度でありますから、がつちりいたしますが、しかし実際の漁業を見ますと、漁期は年々によりまして違うのでありますが、よく結んでは解け、解けては結ぶという、そういうふうな協同経営組織がある。ある人は李太白の詩をもちまして、年々歳々業組同じ、年々歳々人相同じからずと言つておる。しかし協同團体は人を中心にしてでき上つておる團体であつて、業を中心にしておるのではない。そういうふうでありますから、年々歳々相同じからざる人をもつて、年々歳々相同じ漁業の協同組織をつくる。それが現情でありますし、また漁業の実態がそれを要請しておるのであつて、そういうふうなものが現在あり得る。それをお考えになりまして、この生産協同組合を既存の協同組織とどうマツチさせて行くかということが、考えられなければならないことではないかと存ずるのであります。と同時に、そういうふうな旧來の協同経営組織、あるいは協同組織は、それ自身二つの性格を持つております。と申しますのは、一つは協同的であるという意味において、今度の協同組合の内容をなしております協同主義と申しますか、そういうふうな組合とマツチいたします。また民主化とマツチすることはマツチいたします。しかしその実質を見ますと、やはりその村の顏役、親分株が中心になつて、その協同経営に入つておる方々を牛耳つている。そして何も知らない漁民が、案外おとなしくついて來ておる。そういう意味で非協同的であり、非民主的であります。そこをどう民主化するか、民主的なものにして今度の民主的な協同組合に切りかえて行くかということは、これまた決して容易なことではないと思います。法律はできたわ、魂は入らぬわでは、これは何もならない。法律ができたからには、これにりつぱな魂を入れて、水産業のりつぱな民主化を実現するように努力するようお願いすると同時に、私もできればそういうふうな面に御奉公いたしたいと存じておる次第でございます。
 はなはだつまらないことを申し上げましてすみませんが、それからもう一つ、漁業権の関係がやはり漁業者團体とどうしてもある連結を持たずには解決できない。あるいは漁業協同組合の問題は、漁業権の問題とからみ合つて初めて問題になるのであつて、その点の措置ですか、ただいまいただきました案を読んでいないので、私何も申せませんが、おそらく当局におきましては、十分な措置を講じていらつしやると思いますけれども、しかし具体的なその場その場の問題というのは、決してそう容易に措置できるものでもありません。うつかりすると、惡い方向へ持つて行かれるじやないかというふうな懸念さえ、私しているのでございますが、できるだけ民主化という目標の方へ持つて行くようにお願いする次第であります。
 それからもう一つは、連合会におきましては、連合会はやはり相当幅の廣い連合会の組織をお考えになつて置いた方がいいだろう、あるいはお考えになるというよりは、そういうふうな方へ実現するように持つて行かれた方がいいじやないかというのが私の考えであります。と申しますのは、これは工業における協同組合でもそうでありますが、漁業におきましては、割合に漁業の種類が多くて、相互の共同利益というものは、あるようで案外ないのでございます。燃油とか、それから税金を引下げてもらうとか、あるいは資金の面というふうなものは、割合にどの漁業者も――北海道の漁業者も鹿兒島の漁業者も、おそらく同じ利益を協同的に考えるだろうと思います。それで漁業をやるとなると、割合に協同的なようで協同的でないのであります。そういう意味合におきましては、連合会ではそういうふうな廣い立場に立つた共同利害というふうなものが考えられなければならないとしますと、連合会の組織は相当廣い幅を持つておらなければならないというような感じをしているのであります。はなはだ不勉強でございまして、申訳ないのでございますが、御指名によりまして、私の感じております事柄を申し上げた次第であります。
#9
○西村委員長 午前の会議はこれをもつて閉じます。午後は一時二十分より会議を続行いたします。
    午後零時十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十二分開議
#10
○西村委員長 これより午前に引続きまして水産委員会公聽会を開会いたします。
 奧村又十郎君に御意見の発表を願います。
#11
○奧村公述人 福井縣日向漁業会長、日向漁業実行組合長、福井縣水産業会理事を勤めております奧村又十郎であります。漁業会の前身漁業組合長を受けまして約八年間、以後この漁業團体の中にありまして、その運営の衝に携わつておりました。その経驗と知識から、今回提案されました水産業協同組合法案に対する私の考えを一言で申し上げますならば、この法案は、あまりにも自由と民主化にとらわれ過ぎまして、今日の日本漁村の実態、漁業の実態とかけ離れ過ぎております。從つて、この法によりますると、水産業團体があまりにも弱体、無力化しまして、法案の精神であるところの漁村協同体の中心母体とするというふうなものには、とうてい発展できないと感ずるのであります。その具体的な例を申し上げたいと思います。
 この法案は、農村におけるすでに実施されました農業協同組合法と、ほとんどそつくりそのままであると申してもさしつかえないように感ぜられます。しかしこの日本の漁業あるいは漁村を、農業及び農村とほとんど一緒に取扱つて行こうとするこの考え方そのものに、根本的になりがあると思うのであります。沿岸漁村は全國どこでも交通不便でありまして、文化的にも、経済的にも、政治的にも、農村と比べましてずつと遅れておるということは、これはもうくどく申し上げるまでもないことで、しかもこれは重要な問題であります。次に、農業は主として米麦の栽培を中心といたしまして、全國どこでも大体業種は同じようであります。大体自己の労力を中心といたしました零細農家で、規模は同じようなものであります。ところがこれに反して漁業は、大型の定置漁業、きんちやく網、あるいは底引トロール漁業、それから一本つり、はえなわに至るまで、業種、漁法が非常にかわつております。從つて、大きな資本家的な企業と、それに使われるところの漁業労務者、漁民と申しますか、そういうふうな階級的な対立があります。またその間に利害相反するものが多い。從つて昔から漁村には協同團結の精神が農村と比べて少かつたのであります。從つて、皆さん御存じの通り、日本における水産團体は、歴代政府の非常な助成、育成にもかかわりませず今日の状態でありまして、農業團体と比べて非常に遅れておるということ、これまた御存じの通りであります。そういうふうな事情にありますにもかかわらず、農業協同組合をつくるような考えでこの法案をおつくりになつたということは、これはたいへんな間違いであると思うのであります。しかも農業協同組合よりは今回の水産業團体法はもつと惡い要素を持つております。これを申し上げてみたいと思います。
 農業協同組合法実施にあたりましては、御存じのように、農地調整法或は自作農特別措置法などによりまして、從來の農村における地主なるものがほとんどなくなりまして、自作農が創設されました。この自作農が今度の農業協同組合創設の大きな基盤となつておるのでありまして、農業協同組合結成が促進されて來ておるのであります。ところか漁業はまた反対であります。つまり今回の漁業協同組合から漁業権が切離されておるのであります。農業における土地と漁業における漁業権は同じ性質があると思います。漁業会あるいは漁業協同組合は、この漁業権とともに発達して來たと申してもさしつかえないと思います。この漁業権を切離してしまう。そういうようなことで、漁業権から切離されて、資金も資材も、あるいは知識もない漁民のみの場合をつくつて、はたしてこれが健全な発達をして行くかどうか。おそらくこの一事をもつておわかりになろうと思う。非常に弱体になるということはくどく申し上げるまでもないと思います。いま一つ問題があります。すなわち業種別組合をつくるということが今度の法案に出ております。これも農業と比較するとよくわかる。農業協同組合においては、地区を自由にするということになりましても、農業は土地に定着しておりますから、必然的に地区別の組合になるはずであります。漁業は農業の土地に対するほど水面に定着しておりませんから、地区的でなく、業種別の組合がおそらく今度は盛んになろうと思います。そこで、大型定置あるいはきんちやく、底引、そういつたものは、廣い地区で業種別の團体をつくるということになつてきます。それが、資本的な強力な漁業が、そういう大きな組織をつくつて地区的に從來の組合を組織するということは、もうそういう大きな資本から離れた、一本つりあるいははえなわなどの零細漁民の組合になつて行く傾向が、おそらくはなはだしかろうと思います。そこに大きな経営規模の業種別組合、弱体な部落的の零細な漁民の組合と二つにわかれる。あるいは相剋摩擦を起し、混乱を起すものと思うのであります。これも水産團体の弱体化を來す、ゆえんであろうと思います。
 なおもう一つ申し上げます。法案には特に今回は組合員たる資格を漁民に限つております。これが重大な問題であります。漁民に限つたということは、漁村における資本家的な、あるいはボス的な勢力を排除する意味でございましようが、はたして漁民だけで健全な発達ができるかどうか、漁民は夜でも晝でも海さえなぎれば年中海に参ります。ほとんど新聞もろくに読まぬ。経済的にもうとい。從つて漁民だけでありましては経済行為等において、陸上の事務その他において、商人と比べてはなはだ能力が薄い。事実上今日までの漁業團体が、必ずしも漁民のみによつて運営されておらない。そこで今回の規定によりますると、委員外の理事を認めておるのであります。これだけでも幾分かこの漁民の事情にうといということを助けはいたしますけれども、ややもすればこの委員外の理事さえも排除するという空氣を私は聞いておりますが、これはたいへんな誤りであろうと思うのであります。事実漁村にあつて、また漁業協同組合を指導する者において、漁民の頭の程度を考えますならば、もし漁民のみに限つて、漁民のみにこの團体を任しましたならば、おそらく法案に規定してあるように、漁業生産組合というような大規模な経営を漁民のみの力ではたして自然発生的にできて行くかどうか、漁村の実情を御存じの方ならば、こういうことをお考えになるはずはなかろうと思うのであります。結局において漁民のみと限るならば、おそらく漁業資本家との競爭に打ち負かされて、組合が弱体に相なりまして、結局漁村の民主化ということが、かえつて角をためて牛を殺すという事態に立ち至ることを痛感するものであります。
 いま一つ、今回の法案におきましては、漁業協同組合のほかに水産加工業組合という規定をつくつております。これは漁村において漁業と水産加工とを二つに分離させることであつて、これは大きなあやまちであると思います。第二次加工以上の高等な加工であればわかるけれども、ただとつて來た魚を塩藏し、あるいは塩干をするという第一加工と申しますか、ただ單に漁獲物の処理の程度でありますれば、これは漁業とみなして漁業組合一本にすべきだと思います。何がためにこれを二本にしたか、先日來の当局の御答弁を伺つておりますると、いや漁業協同組合でも加工はできるのだ、さしつかえはないという御答弁でありますが、これは逃げ言葉であります。なぜかならば、陸上において魚の加工に携わる者は、この規定によりますと漁民でない。漁民でない者は協同組合に入れない。從つてそれらの人々の意見は協同組合に反映されない。そうすれば陸上で加工に從事しておる者は別に水産加工業組合というものをつくる。加工業組合というものは漁業組合に入れないとはつきり二つに区分してあります。今日までの漁村の実情では、漁業協同組合内で、生産者もあるいは加工業者も打つて一丸として経営をやつておる。從つて漁獲物の処理は組合員内の加工業者に委託し、また加工の利益は組合員に還元され、今後漁村の発展は魚獲物生産だけでなしに、それを有利に加工する、商品化するということによつて、漁村の発展が望まれると思うのであります。その有機的な問題を、第一次加工さえ、これをはつきり生産と魚獲物処理、つまり加工を二つにわけて、二つの組合に別に切り離さなければならぬという考えは、どういうわけで起つたか。おそらくこれは当局が元の漁業会時代の製造業会というものを、何かの意味で残したいというお氣持でおつくりになつたのかもしれないが、はなはだこれは実態を知らないやり方であろうと思います。從つて漁業協同組合法においては、第一次加工は漁業協同組合に入れていただきたい、こういうふうに思うのであります。この点もこの法案のままで行きますならば、おそらく今後の漁業協同組合を弱体化する大きな原因になろうと思います。
 以上申し上げましたように、民主化にとらわれまして、非常にこの團体を弱体化いたす。おそらくこのままで行きますならば、この法を実施しますならば、今日までようやくまとまりかかつた沿岸の漁村の團体を、またぞろ元も子もなくしてしまうのじやないか、こう思います。しかし一方においてわれわれは日本民主化という大きな命題に沿わなければならぬ義務がありまするからして、必ずしもこれに私は反対はできない。そこでこの法を実施されるとするならば、この際に國会並びに政府に対して、特にお願いを申し上げて私の陳述を終りたいと思うのであります。この法が実施されるとするならば、よほど漁民の中に自発的な協同團結の精神がなかつたら、組合が生れて來ぬと思います。從つてこの法案の趣旨、精神を全國漁民の一人々々に至るまで徹底せしむるように、政府の方で予算的にもいろいろな努力をしていただきたい。もちろんこれは漁民の責任にもなりまするけれども、当局においてもこの法の精神を傳えていただきたい。漁民というものは非常に無関心なものであります。その点大いに努力を願いたい。また民主化を阻害せぬ程度において、團体の結成、発展に対してできるだけの保護助成を努めていただきたい、これが第一点であります。
 第二点におきまして、漁民のみの協同組合、漁民のみの生産組合を非常に強調しておりまするが、漁民のみの経済的な力でありましては、おそらく大規模な漁業はできない。まず金が漁民のみの出資では足りません。これはもうおわかりになろうと思います。しかしこれは普通銀行ではとうてい金融ができません。今日の非常な資材高であつては、もし金融の道がないとするならば、これは法文に書きましても何にもなりません。從つてこの法の精神を生かす上においては、ぜひとも何とか生産組合、協同組合に対する金融の道をとつていただきたいと思います。現在において、日本定置漁業組合に対して復金の融資一億円のわくをつくりながら、第二・四半期のわくが、今に至つて事実上一文も融資されておらないというような実情でありますならば、かかる法案をおつくりになつても、魂の入らぬことになろうと思うのであります。
 第三点といたしまして、農業協同組合と同樣な画一的なやり方ではだめであります。特に漁民という字句の解釈について、実際上において手心を加えていただきたい。漁民はただ單に海に行く者だけに限らずに、陸上における加工に從事する者、陸上において資材その他の準備作業に從事する者、少くともこれくらいは漁民としての定義の中に入れていただきたい。それから漁業協同組合の中に加工組合を包含していただきたい。これを希望いたすものであります。終り。
#12
○西村委員長 次に小野寺慶一君に御意見の開陳を願います。
#13
○小野寺公述人 私は宮城縣の零細漁民を代表しております。そうして私はみずから零細なる漁業を営んでおるものであります。小野寺慶一と申します。初頭はなはだ氣の毒なことを申しますようで申訳ありませんが、われわれがこの公聽会に参りまして、だれに公述をするのであるかということに現在迷つております。それはなぜなれば、水産委員が二十五名もありながら、たつた二人や三人しか定刻に見えられないということでは、われわれはだれに向つて陳述していいか。本問題につきましては、はなはだ議会人に対する不満の意を表せざるを得ないのであります。われわれは何らの知識なく、経驗なく、零細漁民の氣持を氣持として、水産委員長の電報によつてはせ参じました。一言でも眞に会議士諸公のお耳に達することができればと思つて参つたのに、あにはからんや、天に向つてつばをするがごとき話をしなければならないということを、実になげかざるを得ないのであります。おしかりを受けましても、あえて私はこの点は何とも思いません。このことを申し上げます。
 私はこの漁業協同組合法案を一読いたしまして、政府当局の御苦心と勇敢さにひたすら頭を下げまして、敬意を表し上げるものであります。まず大要はこの趣旨に対しまして賛成を申し上げます。しかしながらここに大きな問題が伏藏しておりますので、この点はあるいは法の研究未完了のため、法文の解釈のうちに含まつておることは知らずに申し上ぐるかもしれません。もし幸いにしてそういうことがあればけつこうであると思うのであります。まず漁業協同組合の成功するかしないかが、漁業権とにらみ合せからみ合つて、初めて成功、不成行ができるじやないかと考えておるのであります。申し上げることは協同組合法のことから逸脱したことになるやもしりませんが、何せ漁業権の取得態勢が漁業協同組合の成否にかかわつてある。かように申し上げたい。それはただ單に漁業権は漁業協同組合に與える。その漁業協同組合のつくり方が、発表されました漁業法案のその字句のうちに、地元地区組合、これは非常に漁業権とにらみ合せる場合において考えなければならないところの字句であると思うのであります。いわゆる地元地区というのは、社会的経済的などという明文をもつてつづられておりますが、この漁業権は、その地先單一のものであるなれば非常に事がやすやすと運ぶものである。かように考えますが、瀬戸内地区あるいは宮城縣の氣仙沼湾の地区のごとき、なべの中の水を周囲の町村が交錯し合つて、入り合つて、とり合つております場合を考えますと、非常に將來の成果に暗憺たる思いがいたすのであります。この点を十分と政府当局がお考えになつて、最善の御注意を未然にお拂いにならなければ、せつかくの漁業協同組合の行き先に暗礁があるものではなかろうかと思うのであります。爾來漁業協同組合が組合的に漁業権を取得するかしないかという問題で非常に考えを深くさせられます。とにかく根つけ漁業権は別といたしまして、区画漁業、定置漁業等を漁業協同組合から切離して個人的に與えるということになりますと、組合の運営は非常に弱体化して行くということを考えさせられます。
 次にかりに組合が各自の組合員によつて自主的に運営して行くのだということになりますと、この経済界の輻湊した面におきまして、收拾のつかない面が出て参るおそれがあります。区画漁業においては、特にみずからやつておる業者に與えるということが最も考えなければならぬものである、こういうことを考えておるのであります。これは当然協同組合法の第十一條の事業種類の中に、この漁業権の取得に関係を及ぼす事業運営が規定されておりますから、この漁業権の取得関係をここで申すことが、必ずしも協同組合の審議に違背し、横道になつたと論ぜられることはなかろうということを確信しております。
 これはこの点として、次に第三十四條の役員の規定でございます。ここの中に四分の三は漁民でなければならないと規定されております。四分の三の漁民ということは、四分の一の非漁民ということを暗に明示しておるものであると思う。これは前の公述人にはなはだ相済みませんけれども、漁民みずからの手によつてやるのに、そんなばかな扱いをしないでもいいのではないかと私は考えております。あくまでもばかな漁民を、法の上においてまでもばか扱いにするという、そんなたわけたことはないのではないかと考えます。なるほど漁業の資金を運用するのに、政府の方々はうそが上手で、復金だの何だの言つて金を貸すふりはしておりますけれども、いまだに金を貸さない。特に零細漁民には一向お考えが願われない今日の実情からいたしますれば、ばかな漁民の頭を百集めても、ゼロを百集めてもゼロ、イーコール・ゼロということになります。そこで偉い人を頼んで來る。力のある者を頼んで來る。これはいわゆる現在介在するところのボスを放逐するというねらい、いわゆる民主化ということのねらいは、さような一つの大きな陰の力を排除するところの運動であらねばならない。だからそういう場合金を貸す人を漁民といたしまして、その人に頭をつかまれるというような考え方は、この際遺憾ながら私は反対せざるを得ないのであります。どうぞこの目的達成には、政府の定めました復金の活用でも、あらゆる金融面におきましても、もう少し腹を大きく持つていただきまして、急速に実現化さえすれば、あえて再びボスの御降臨を願わなくても、われわれ漁民で自主的に運営ができるものと確信するのであります。ただし漁業調整員についての数字につきましでは別でございます。
 それから漁業協同組合の役員の問題、これは第三十五條で、設立当初は一箇年だ、それから普通も一箇年だ。組合規約で二箇年まではいかぬだろうというようなことを話しておられますが、私の考えてみまする場合において、新しい法律を眞に研究し、眞にこれを自分のものにしようとして打立つ場合において、たつた一年で書き方も法文も知らないうちにぽかんとまたかわるなどという考え方は、どういうところからできておるかということを疑問に思うのであります。まず後日発表されるであろう漁業法のうちに、二箇年間の暫定期間がある、かようにうたつておるとするならば、その最少限度の二箇年間は眞にあぶらの乘りかかつた、その第一年度の任期の者によつてやるべきではなかろうかと思うのであります。農地調整法のような業種別の仕事をやるのとは事が違いまして、複雜多岐にわたり、常識で判断のできない漁業の措置を講ずるのに、しかも法は二箇年の暫定期間があるのに、かわつてもいいから二人でやれということは、実際問題としてこれは不合理きわまる期間である。どうしてもこれは当初年度は二箇年、通常は四箇年ということを希望いたすのであります。
 それから第五十二條の総代の定数が五十人ということは、これは三十人でもいいと思います。なるほど町村代議員は優秀な者ばかりの集まりだから十八人あるいは二十二人でいいが、漁民はばかの集まりだから五十人もなければならぬということもまたやむを得ませんが、これから御教育をいただいて勉強いたしまして、三十人くらいが適当ではなかろうかということも考えておるのであります。
 もう一つは出資方法でございます。出資は私の常に考えておりますところの問題でありますが、これは法文の上には定額出資を求めております。いわゆる一定の株式組織のような形でございますが、私はこれを何とか法的に逓増累加の式と、かように称しております。つまり一定額を出し合つたならば、その後は利用度に應じてパーセントを定めておいて、常に累加逓増して行く、殖えて行くということでなければならないと思う。その意味は、多く利用する人は利用しない人の出資金を利用いたしまして事業を経営し、恩惠に浴している。だから当然そのことによつて得た利潤のうち、取扱いの中から何パーセントに相当するものを一定額の中に常に累加、逓増して行くべきである。かように考えているのであります。これの出資証券その他のことにつきましても、はなはだ幼稚ではあるが、一應の考えを持つております。
 次に連合会のあり方でありますが、連合会は地方にあつては二つにしたい、かように考えております。いわゆる私の言いますところの連合会は、経済界区というような名前をつけております。つまりそこに一つの貨物の集散地、いわゆる町がある。その周辺に数箇町村がたむろしている。その数箇町村の経済はその町を通じて営まれているのでありまして、その区域一帶を経済界区と私は名づけているのであります。この経済界区が相連合して、自分の目で、自分の口で、自分の手で強力なる経済の行為を行うことができ得る。これは当然法にも明示されてあります。それの上に、縣一丸となつた連合会が欲しいものだ。しかしこの縣の連合会は絶対経済行為をなさしめないという建前を考えているのであります。仕事は中央と地元との中間にあつて、もつぱら連絡機関であり、指導機関である。そうして資金あるいはその他の金融の面を担当いたしますいわゆる金融機関、こういう性格を持つたものだけで結構だ。これ以上の経済行為をやればはなはだ迷惑千万なことばかりあるのでありまして、將來もあえてこの縣の一丸となつた力の連合会を経済問題には必要としないのであります。もしそれと反対であるならば、協同組合によつて恩惠を受けるどころか、事業の摩擦と負担の加重によつて、協同組合がありがた迷惑になるきらいがあるのであります。
 以上のことは、時間もありませんので、断片的な、皆樣のお話と触れないだろうと思う点のみを申し上げました。結論は、なにせ待ちに待つた漁業協同組合法案が今議会に上程されておりますので、根本的なゆすふり方をして、根本からこれをどうこういたしましたならば、またいつのことかわからない。この漁業法案が今議会を議過しなかつたならば、漁民はおそらく協同組合を全部返上申し上げて、根本的な自由漁業になつて行かざるを得なくなるのではないかと思うのであります。それは私どもの欲するところではありませんので、この議会におきましては以上申し上げました條文の要点のみ、数字的な要点のみなをまずもつて補正せられて通過せられ、かつ後日漁業法案の檢討の場合、これとにらみ合せまして、協同組合法案の根本的討議御決定をみたいものである。かように存ずるものであります。
 もう一つは漁業権の緊急措置法の問題でございます。これはたつた一言だけでございます。これは農地調整法の施行によつて、土地を何月何日―昭和二十年十一月二十三日現在で貸借しておつたその姿によつて農地調整法を施行するというようなあり方と同樣に今度の漁業法が通過するであろうという見地から、現在漁業を行つておるところの賃貸関係は着々と破壊され、しめ出しを食つておるようなことは、廣く聞き受けられておるのであります。少くともこの問題は終戰当時にさかのぼるか、あるいは一箇年ないし一箇年半にさかのぼつて、その姿によつて取扱うのであるというようなことにうたつていただかなければ、ボスなり利権屋のために零細な漁民はしめ出しを食う姿になる。現にそのうき目を見つつあり、漁業の施設の撤回を責められつつあるのであります。この点政府御当局並びに議会人各位に対しまして、眼光紙背にお撤しくださいまして、零細漁民のため一段と御施策を煩わしたいと思うのであります。
 たいへん冐頭に乱暴なことを申し上げまして恐縮に存じます。しかしながら日本の一番北のはずれから参りましたので、何か記念になるようなことを申し上げてみたいと思つただけにすぎませんから、惡しからず御了承願いたいと思います。以上で終ります。
#14
○西村委員長 次に鯨岡稔雄君に御意見の発表を願います。
#15
○鯨岡公述人 私は現在漁業経営者團体連盟に職を奉じておる鯨岡稔雄と申します。
 この水産協同組合法案について、私がずつと一覧したところによりますと、十七、九点非常に今度の法案の特色が出ております。たとえば組合の種類を漁民のものと加工業者のものにしたとか、あるいは独占禁止法との関係、それから漁民の定義が根本的にかわつた、それから組合の事業としては、從來にないところの團体協約の締結とか、あるいは教育、情報事業を非常に強化したとか、それから倉荷証券を発行する、それから組合と組合との間に專用利用契約、あるいは員外理事制度、役員の改選情求権というリコール制とか、それから從來にないところの設立発起人からすぐ創立総会に移らずに、その前に設立準備会というような制度を設けたこと、行政廳の自由裁量が非常に制限を受けたということ、それから非常に画期的な制度としましては、生産の協同化というような意味で漁業生産組合というものを創設する、それから連合会の規模の制限、あるいは出資の問題としては現物の出資等々、十六、七の非常に新しいもの、あるいは改正された事項がございますが、この中で時間の関係もありますから、二、三基間的な問題について修正意見を述べてさしていただきたいと思います。と言うのは、この水産業協同組合法案がどうして水産業協同組合といういうなものにもつて行くか。これは水産業團体法をそのまま踏襲するというのは、先ほどの公述の中にもありましたように、製造業会というものがあつたために、從來の組合を二本建にする。從來の水産業團体法では縣の水産業会あるいは中央水産業会の方へこれが包括されますが、これは最後まで組合から連合会まで一貫して分立されておる。大体私の考えといたしましては、この水産加工業者というものはこの協同組合の中から除けばよかつたのではないか。かように考えております。というのはこの加工業者と漁業者とは、漁村においても、また市場においてもそうですが、いわば賣手と買手というふうに経済的に対立する関係にあります。こういつた、しかもこの漁民の生産するところの商品というものは、鮮度が重要で、商品としては不利な商品を取扱つています。また冷藏施設なりあるいは一貫した加工をするということも、漁民の経済力にしては難事であるから、これを協同組合の加工事業所してやつて行かなければならぬと思います。ところが利害の対立する加工業者と漁民を一つの協同組合のとに、いわば同床異夢的に盛込まなければならなかつたということについては多大の疑念があるわけです。しかもこの加工業者というのは、商人の資本として、またある場合には高利貸資本として漁民を経済的に圧迫するわけです。こういつたようなものを、加工する原料が魚であるからといつたような理由をもつて、この一つの法案の中に盛り込まなければならなかつたということはおかしいのじやないかと思います。しかもたとえばこれを農業の方に例をあげますと、パン屋が、その加工原料が小麦であるからといつて、農業協同組合に入るということもおかしいと思うのです。しかしこういつた加工業者も、個人をほかの巨大な資本と比べた場合、これらも協同の組合をもつて独占資本と抗爭して行かなくてはならぬという意味において、國家としてはあたたかい手を差延べて、経済的、社会的な地位を保護しなくてはならぬということについてはわかりますが、加工原料が魚であるからといつてこの中に入れることは、しかもこの中小加工業者に対しては、商工協同組合法というものがすでにできておりまして、この商工協同組合法による協同組織によつて、かれらの経済的な地位が十分に保護されるような建前になつていますから、あえてこの利害の対立するものを一つの法律の中に盛り込むということについては、異議を申したいと思います。この点は非常に根本の問題になるのですが、この点を第一点として申し述べたいと思います。
 次は漁民の定義、あるいは組合の資格になりますが、今度の漁民の定義は、從來のいわゆる漁業者というものに法人が加入しない。いわゆる漁業を営む個人または漁業を営む者のために水産動植物の採捕、または養殖に当るといつたような、漁業の個人の経営者とその下に働く從業員といつたものが、漁民の定義になつたのであります。從つて組合員の資格はこの漁民にして住所をその地区に持ち、三十日から九十日の間でもつて定款に定めるものであるというふうにしてありますが、この組合員の資格を個人だけに限つたということは、協同組合が普通の営利法人ことに株式会社のような資本の組織であるものと異りまして、人の組織であるというような協同組合の本質論から、おそらくそういつた法人というものに組合の資格を認めなかつたと思うのですが、しかし現在は法人経営になつておりましても、これはいわゆる経営組織の変更した動機としては、ことに終戰後の経営を不能に落すような不当なる税金や、その苛酷な税金の重圧を何とか除かれて、いわゆる正当な税金を拂いたいというような意味で、法人に組織を変更したものが多いのでございます。しかもこの法人になつたのは、決してその経営の規模が大きくなつてそうなつたのではなくて、從前と同じ家族労働あるいは親戚の者が集まつてやつているような小さな規模のものでも、合名会社なり、合資会社なり、あるいは有限会社というようなものになつたのであります。個人とその法人というふうにして、個人は弱いものだということは、これは原則論としてはたしかに言い得ると思います。この資本主義の社会において、大規模な経営をする者は法人経営であるという原則論はわかりますが、しかし法人の場合でも株式会社もありますし、それから最も人的要素の濃いところの合名会社であるとか、あるいは合資、有限会社とかいつたようなものについては、單に経営者が法人であるから力が強い。片方は個人は力が弱いというような形式的な考えじやなくて、いわゆる実質的な基準をもつて組合の資格を決定したらどうか、その基準というのは、具体的に申し上げますと、たとえば人的要素の濃い、今述べましたような合名会社とか、合資あるいは有限会社にして、その使用するところの漁具、漁船、こういつたような生産手段の規模によつて、たとえばそれを二十トンの漁船を二艘とか、あるいは常時使用するところの從業員が三十人なら三十人、またはその資本金が本万なら本万というような、実質的な基準をもつて、人的要素の濃い法人については組合の資格を制限すべきでなかつたのではないか、かように思うのであります。もしもこれはどうしても正組合員として入れられないとすれば、あるいは準組合員、あるいは伊藤公述人の方から話があつたように、特剔抉議事項にしてこれを中に入れてやるというようにして、実質的にこの経済的な弱者を保護してやるというような取扱いをすべきじやなかつたか、これが第二点であります。
 第三点は今度の協同組合は第十八條の第一項には地区の漁業協同組合、第二項には業種協同組合とあります。先ほどから公述人がいろいろ申しますが、私はこの協同組合は非常に事業一家的なものでもつて、みんなが集まるのは漁村の醇風美俗だ。こういつたようなごまかし方はやめて、はつきりしたそれぞれの所属するところの立場、そういつたものから、やはり漁村の内部においてはそういう問題もあるし、外の大きな独占資本に対しては、業種組合をつくる経営規模のものでも、やはり協同の組合でもつてそういつたものに当らなくちやいかぬ。要するに漁業が産業的に見て非常に下積み産業だ、これを引上げる、近代化するというような意味でも、その経済力の非常に差等のあるものを、一つの村の中に一つの協同組織をつくつて、これを事業一家だというようなごまかしはやめて、やはりそれぞれの経済力に即應するところの組織をつくるべきだと思います。そういう意味でこの業種組合を本法に盛つたということは、漁業の近代化、あるいはその漁業に從事するところの漁業從事者の経済的、社会的地位を引上げるというような意味で、非常に私は進歩的な点があるのじやないかと思います。しかしこの協同組合は二つになつていますが、先ほどの業種組合の地区というものが、市町村あるいは特別区、行政区の区域を越えるという、これでは非常に地区の制限がゆるいと思う。いま少し地区の制限は廣めていただきたいと思いまう。そうしてその業種組合の人が、業種組合をつくる場合には一應第十八條ではこういうふうに分れておりますが、設立のところの第六十一條にいきますと、出席した漁民の過半数でそれを結成しますから、たとえばここに定置漁業の業者が二十五人おりまして、定置業者の協同組合をつくりたいという場合に、その定置漁業に從事する者がみなそこの設立準備会に入つて來た場合には、從業員を除いたところの業種組合というものはできないように第六十一條にはなつているのです。そうしますと、せつかく第十八條の第一項、第二項でもつて地区の協同組合と、業種協同組合をわけた意味が設立のところで、要するに不徹底になつているのであります。この点は第二項の「特定の種類の漁業を営む者又はこれに從事する者に限ることができる。」というのを「又は」以下を削除して、特定の種類の漁業を営む者に限ることができる。とはつきりしていただきたいのであります。第十八條の第二項は、業種組合は要するに漁業経営者の組合だというふうに、いかにも業種組合をつくると、階級的な対立があるというけれども、この協同組合は要するに漁民の社会的な地位を向上させるという意味だつたら、ごまかし的に一つの協同組合の中に入れて、実際その地区の協同組合でも利用分野から言えば圧倒的に片方が占めて、ただ形式上の一人一票というようなそういつたデモクラシーでは何にもならぬと思います。それよりその経営者は経営者として、外の大きな資本に当るためには、彼らは一緒になつて強固なものをつくらなくてはいかぬ。またそれに從事する者は一人一票だというようなごま化しでなく、自分らの立場から、これは自分らの正当なる労働の対價を要求させるべきだ。今までは一つの協同組合の中に入れて外の力に押された、そういつた負担を全部労働者の方に轉稼しておつた。これではいけない。経営者は経営者として強いものをつくつて外の資本に当らして、その経営者に対して労働者は正当なる対價をとるというような意味で、業種別の労働組合を今の設立のところでその趣旨が徹底できないというような、法文上の欠点は是正していただきたいと思います。これが第三点です。
 第四点は、しからば今の漁業経営者の方としては、そういつたような強いところの協同組合をつくる。労働者の方は生産組合をつくらせる。しかしこの法案では、資材も、税金の問題も、あるいは金融の問題についても、別に裏打ちが全然されてない。しかもこういつたような嚴格なことになれば、むしろその生産手段を持つた者は、この協同組合に船をチヤーターして、そうして組合の安いコストでもつてそのチヤーター料を非常にたくさんとるというように、濫用されるような危險をはらんでおるのであります。そういつた意味でこの生産組合については、業種組合に、センチメンタル的にいろいろなことをしないで、はつきりわけて、そうしてそのかわり、彼らには彼らとしての合理的な、近代的な経営をさせるような、一つの生産組合というものについての物的な裏打ちをしてやるように、生産組合は持つて行くべきじやないかと思います。
 それから連合会の規模ですが、これは独占禁止法、あるいは過度経済力集中排除法、事業者團体法等々によつて、相当資本の横暴を抑制しておる。しかし協同組合そのものが独占化するのではないかというような意味で、この連合会の規模を地区で制限し、あるいは全國的なものは数で制限するというように持つて来ておりますが、これは根本的に誤つた考えではないかと思います。大体協同組合の本質を蹂躪するような考え方です。なるほど戰時中、中央水産業会がピラミツドの頂点に立つて漁民の收奪をしたということはいなめない事実だと思います。しかしあれは國家の水産政策を浸透し、遂行させるためにやつたものでありますが、この連合会というものはそうではなくて、自分らがより強いところの資本の力に当るためには、一つでもよけいに皆が集まつて、全國的な規模でもつて当らなくてはできない。そういう意味で中央集権化とか、あるいは独占化とかいうようなことは当らないことだと思います。しかもこの協同組合も、個々の企業がだんだん独占化して、たとえばそれがトラストあるいはカルテルにならないにしても、企業そのものがそういつた過程を経て現在独占化したところの企業になつている場合には、それと闘うためには、どうしても全國的な連合組織をつくらなければ全然問題にならないのであります。これを三百とかあるいは縣で制限するということになると、協同組合そのものがほんとうに漁民ならば漁民の経済的な、社会的な立場を上げるかどうかということについて、多大なる疑念を抱くものであります。しかもこの連合会の規模制限については、その事業の種類とかいうものについて全社檢討を加えていないように法文には出ているのであります。第十一條の十号においては、教育事業をやらなければならぬ。教育情報事業をやつて漁民の自覚を高めなければいかぬとしてあり、その意味で第五十五條においては、そのために繰越金の制度として、剩余金の二十分の一を繰越すことになつております。しからば、よしその独占の問題を讓つたとしても、こういつた教育情報事業については、そういう繰越金制度を認めながら、どうしてこの連合会の規模を制限したかということを言いたいのであります。
 次は信用事業でございます。この信用事業は、連合会がただの三百でもつて仕事ができるかどうかということは、経済の常識人としては、答えがはつきり出て來ると思うのであります。こういう意味において、少くともこれで行くとすれば、私は九十九歩讓つて、この第八十九條の第二項として但書を入れてもらつて、但し第十一條の第一号、第二号並びに第十号の事業を行うものはこの限りにあらず、というくらいのところまでやつていただかなければ、全然問題にならぬと思うのであります。連合会の規模制限に対するところの修正意見は以上であります。
 まだたくさんありますが、時間も経過しておりますから、ここらでごかんべんをしていただきます。
#16
○西村委員長 次は中地勇榮君の御意見を伺いたいと思います。
#17
○中地公述人 私は全國の漁村同盟の委員長の中地でございます。從つて私の申し上げることは漁村同盟の立場から申し上げるようになります。
 全國漁村同盟は、終戰後漁村民主化のために、非常につらい運動をいたして参つたのであります。すなわち中央水産業会を頂点といたしまする水産業團体法に基く系統團体を否定する立場をとつたがために、旧組織にある人々の非常なる誤解を招いたのであります。しかしわれわれの運動が漁民の自主的な組織たる、新生の協同組合の結成にあるということを一般が認識するに及んで、われわれの運動が一段と進んで今日に至つたのであります。われわれは協同組合法が――現在は水産業協同組合法になつておりますが、それが一日も早くでき上ることを望み、友誼團体とともに漁民協同組合結成促進協議会というようなものも組織いたしまして、今日まで努力いたして参つたのであります。私はこの水産業協同組合法案に対する意見として、法案全体にわたつて申し上げるはずでありまするけれども、われわれ陣営の間の協議により、時間の関係も考慮いたしまして、きわめて簡單に私の担当する部分を申し上げたいと思うのであります。
 すなわち第十七條の漁業協同組合の自営條件、いわゆる経営條件と、第三章規定の漁業生産組合、並びに法案にただちに関係はありませんが、直接関係はなくてもいわゆる資金の問題について申し上げることにいたします。第十八條の組合員の資格において、特に一項の地区組合において、組合員は漁民でなくてはならないということを規定しておきながら、第十七條の経営條件の二において、「組合員の過半数が組合の営む漁業又はこれに附帶する事業に從事すること。」となつており、その他五、六の條件にしても、また四の條件にいたしましても、協同組合が自営をするためには、非常に窮屈な條件で、実際問題といたしましては該当するものがほとんどないのではないかと思うのであります。それで漁業協同組合に漁業自営を認めずとする立場をとつて立案されたのか。それともそれを奬励しようとするのか。根本の方針がわかりませんので、むしろこれを明確にいたしまして、漁業協同組合では自営を認めない、一切漁業生産組合が漁業経営をやる。しかしこの場合生産組合は協同組合の正会員とするということにしなければならぬと思うのであります。生産組合を協同組合の正会員とするのでなければ協同組合が成立たないような所がずいぶん起つて來ると思うのであります。はたして生産組合が立案者のねらつておられるように、隆々たる発展を遂げるかどうかは別としても、とにかく規定の上では非常にちぐはぐなように考えるのであります。
 次にこの第三章の規定の漁業生産組合でありますが、これは立案者の純粹な氣持から、すなわち從來のボス排撃のねらいはよくわかるのでありまするが、漁業生産組合に政府が特別融資の道を講じて行くというようなふうに、はつきりきまつておるのであるならば別問題でありますが、第八十二條規定の第二項、第三項のごとき條件で、はたしてこの生産組合が実現できるかどかということを考えるのであります。その土地の資本も動員して、自己資金もある程度用意するという必要からいつても、この辺のネツクをよほど緩和しなければならぬと思うのであります。第二項は一人当りの口数は平均口数の二倍を超えてはならないということになつておりますが、たとえば二十人の者が資本金本万円の生産組合―例としてははなはだまずいかもしれませんが――つくるような場合に、有力な者、すなわち二倍まで持てる者が五人とすれば大体二項、三項の條件に適合するようになるのでありますけれども、実際問題として有力な者を五人加え込むということも困難でありましようし、また残余の五十万円を、金の点で非常に無力な十五人が引受けるということもかなり困難かと実際問題として考えられるのであります。この二項の二倍を超えない規定を三倍にするとか、第三項の過半数を三分の一にするというふうにしなければ、実情からいつて成り立たないというようなことが考えられるのであります。しかしきゆうくつなネツクをこのままにしておいても、漁業経営の資金は政府が十分考えるということであれば、これはなるべく純粹な形にしておくのがよいと思うのであります。しかしこれにしても形式的な出資というわけには参りますまいから、ネツク緩和はこの際親切なやり方かと思うのであります。
 次に資金の問題でありまするが、この問題も全國漁村同盟としては非常に重常な問題としてあらゆる機会に叫んで参つたのであります。今回の法案ができても、資金の裏づけがなければまつたく無意味であるとさえ断じて参つたのであります。ことに生産組合のごときものはまつたく佛つくつて魂入れずというそしりを免れないと考えるのであります。この沿岸漁業の金融問題については、議会、政府、あるいはまた金融関係の諸機関においてもきわめて冷淡である。それは数字がよくこれを証明しておる。中金の残高において十二億内外、復金の場合にも大ざつぱな数字で三十億として、沿岸関係がその一割に満たないという情ない状態である。これは沿岸漁業の比重というものを十分に認識しない結果でありましようが、もちろんこれは沿岸漁業の方でも、一般に対して認識を進める努力をしなかつたという罪もあると思うのであります。この点はもちろん今後の漁村の政治力の結集というような組織化の問題に大いに関係のあることであります。水産金庫だとかあるいは漁業手形というような問題について、くどくどしくここで申し上げることはいたしませんが、たとえば中金の場合でも、中金の機構の中に水産を重要視しておるというものがない。機構の中にと申しますのは、水産を一体どこでやつておるかというふうに、いまだ水産の重要性を機構的に証明しておらないということを、はなはだ私どもは不満に思つておるのであります。私は少くとも農林中央金庫の中に水産金融部とか、水産融資部とかいうものを設けて、水産の独自性を発揮するように措置していただきたいと思うのであります。今後水産の面に國家資金的な金のわくを置くにいたしましても、しばらくは中金がそういう事務といいますか、何と申しますか、それをやることになると思うのでありますが、それに備えて、中金内部でもほんとうに漁民の立場、水産の立場に立つて主張するような、水産部のようなものを設けたらどうか、たとえば今回の特融四十億の場合でも、それがどうなつておるかということは、はなはだ心もとない氣持になるのであります。この法案の進行と同時に、金融の問題については、御列席の議員諸公においては十分に対策を講じていただきたい、かように思うのであります。
 最後に、役員の問題が先ほどたびたび出ておつたようでありますが、役員の問題で員外の理事を置くことの可否の問題もありますが、それについては員外の理事を置くとか、参事を置くというようなことがいいかどうかということについては、それぞれの議論もありましよう。そのこともありますが、私が役員の問題について申し上げたいのは、水産團体法が廃止されて、今度の水産業協同組合法ができましても、單なる看板の塗りかえになるかどうかということは、役員の問題にあると私は思うのであります。この点は御列席の方々に非常に重大なる関心があると思われるのであります。往々にして私どもは聞くのでありますが、とにかく漁村ではおれがいなければだめだ、おれがいなくちやだれがやるんだという、非常に自信の強い方々が現在の役員の諸公にはおられるわけです。そうして今までの公述の中にもありますように、員外理事というものを置かなかつたならば、一体やつて行けはしないじやないかというような表現の中にも、その辺のことがうかがわれると私は思うのであります。漁民の眞の自覚的な組織をつくることを考えるならば、現在の役員諸公は十分その御反省を願つていただかなくちやならぬということと、それから單なる看板の塗りかえではないという印象を、強く漁民一般に與えるためにも、すなわち漁村の眞の民主化を促進するためにも、十分この点を反省していただかなくちやならぬのじやないかと思うのであります。從つてこれを議会なり政府なりにおいて、その点について何らか法的な措置ができるかどうか――というのではなくして、そういうことを十分にお考えになつて、法的な措置をしたらいいではないか、かように私は申し上げて、われわれの陣営の、私の担当しておる事柄をきわめて簡單に申し上げて、私の公述を終りたいと思います。
#18
○西村委員長 次に永井寛治君に御意見の御発表をお願いいたします。
#19
○永井公述人 岡山縣水産業会長をやつております永井であります。多年漁業者が待望しました漁業協同組合法案ができましたこと、まことに御同慶にたえません。私は昭和八年の法の改正、第一回の漁業協同組合ができました当時から水産業会の切りかえなどの仕事をやりました関係上、それらの知識に基きまして今回の協同組合法案に対して二、三意見を述べてみたいと存じます。
 第一番は、漁業協同組合の自営の問題であります。先ほどから二、三公述されたようでありますが、本來生産組合の仕事と、協同組合が漁業を自営でやるということは、おのずから目的が違うのではないかと考えます。從つてこれを同一視して、協同組合も漁業をやる場合には生産組合とまつたく同じ條件を備えなければならないというのは、漁業協同組合の自営の目的を考え違いをしていらつしやるんじやないかというように考えるのであります。從つて私は漁業協同組合が自営するときにも、役員の制限はしないこと。生産組合と同じように役員に制限を加えられておりますが、これは本來の協同組合の役員の組織のままの姿でやれるというようにしていただきたいと思うのであります。それから出資の方法も現物出資を生産組合は認めておりますが、協同組合本來の出資の形でそのまま漁業が自営できる。なお第十七條の一項から六項にわたりまして、いろいろ制限を加えておりますが、このうち一と三だけを残しまして、あとは削除していただくというようにしたならば、漁業協同組合の漁業自営というものが円滑に行くと考えます。これは私全國的には存じませんが、瀬戸内海における漁業の実態を見まして、協同組合が漁業を自営する場合には、どうしても生産組合のような営利を目的としてやらないで、漁業部落とか、あるいは町村の円満を期するために、また漁業生産をあげるためにやるんじやないかというように考えまして、協同組合の漁業の自営について、そういうような意見を持つております。
 次に漁業協同組合の総代制の件であります。これも先ほど御意見が出たようでありますが、私も全然同感でありまして、二百人以上の組合員を持つておる組合で五十人以上総代を定めなくてはならないという規則になつております。本來協同組合は、こういうような決議権としましては、総会で万事やるのが理想であります。またいわゆる民主的でありますが、漁村の実情はそう行かないので、ここに総代制というものを認めたように考えます。認めた以上はそれが実際に即するような法律にしていただかなくては、せつかくつくつていただいたものが役に立たないというところから、先般本縣におきましても、漁業者相寄つてこれをぜひ修正していただこうという陳情請願をその筋にもすでにしております。從つて二百人以上というところを百人以上、それから総代の数は五十人以上でなければいけないというのを、二十名以上に直していただく。こうしますと、総代制が店きて來まして、集るときにもすぐ集まれるというように考えるのであります。
 第三番目には、員外利用であります。協同組合あるいは連合会にも適用されますが、員外利用におきましては、少くとも連合会においては、次の制限をとつていただきたいのであります。第八十七條の三項の「但し、一事業年度において」以上の但書をとつていただきたい。事業分量の総額が組合員と員外の者と同等でなければいけない。あるいは員外の者が同等以上でなければいけないというような規則になつておりますが、單個の組合と違いまして、連合会となりますと、いろいろ経済的に活動しなければならないような部面ができて参ります。從つて事情やむを得ず員外利用の分量が会員のものよりも多くなつたというような結果が出て來るのではないか。特に岡山縣のような消費縣におきまして、鮮魚の扱い、いわゆる鮮魚の共同販賣の部面なんかにおきましては、ただいまの統制規則においては責任貫数を持たされている。また取扱いが会員のものが非常に少いと、会の收支も償わないというような事情は、將來配給統制規則がある限り、またたとい縣單位の連合会ができてこういうような事業をやりましても、今私どもがやつておると同じような扱いになるのではないかと考えます。その場合にこういうようなものがありますと、新しくできた連合会が経済的に非常に困るというような点も見られるのであります。協同組合と違いまして、連合会は活動分野が経済的に多いのだから、こういうような連合会に限つては事業分量の制限を撤廃していただきたいというように考えます。
 それから第四番目は連合会の事業であります。これは先ほども公述がありましたが、一般の経済事業と信用事業が切り離されております。切り離されたところの、経済事業の方の団体は別としましても、信用事業の連合会というものは全然成立たないのであります。おそらく三百万円あるいは五百万円ぐらいの貯金を扱うところの連合会をつくりましても、こういうようなものの経済はとてもとれない。從つてこの原案のままだとすると、信用事業をやる連合会の設立はほとんど不可能であります。そうなつたならば、たとい上に農林中央金庫があろうが、將來水産金庫ができようが、さらに漁村の信用事業の発展はできなくなるというようなことになることは明白だと存じます。從つて農村関係のこういうような團体と違いまして、特に漁村の信用事業ということは非常にむずかしいのでありますから、これは経済事業をやる連合会と合せて信用事業もやれるというように直していただかないと、將來の信用事業あるいは漁民の貯蓄心の指導とか、あるいは貯金の指導ということが全然できないというふうに考えます。
 それから第六番目にはやはり連合会の問題でありますが、今回の連合会の設立上第八十九條に連合会の制限がしてあります。これは前回の協同組合ができました当時から考えまして、また將來の社会情勢というものを考えまして、絶対に全國單位の連合会が必要であるということを痛感するのであります。昭和八年にようやく法が改正されまして、漁業者が経済的にやや救われて來た。私どもその当時非常に喜びまして、漁村の経済的な安定ということもやや見込みが立つたのでありますが、残念なるかな、すでにもう支那事変が始まり、大東亞戰爭などになりまして、これらの團体が再び水産業團体法によりまして、漁村の手から取上げられてしまつたというような実情であります。私は將來どうしても漁村の安定をはかるには、これを再び漁業者の手に返してやらなくてはいけないというように考えております。そこで今度の法案に対しましては、下の方は非常に民主的になつておりまして、むしろまだ時期が早い、行き過ぎだと思うような感じもするのであります。先ほどもお話がありましたが、何か漁村の基礎というものがぐらぐらしかけているというような心配があるのであります。協同組合が弱体化しやしないかというような心配があります上に、また上の團体がないということは、まことに漁村にとつて痛手であります。最近の資材問題、あるいは魚價の問題、こういうものが思うように解決できないということも、全國的に漁村というものがばらばらにされておるためではないか、これを元通り力強いものにしてやるためには、絶対に全國的の連合会が必要なのであります。私は今具体的にここで意見は述べませんが、どうか全國的に連合会が結成できるように何か法案を直していただきたいと考えるのであります。
 最後に第三十四條の委員外理事の件でありますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、なかなか決定しかねると思いますが、私はこの原案が非常に妥当なところに行つていやしないかという意見を持つております。漁業者というものは、程度の問題は別としましても沖へ出なければならない、漁をやらなければならないというために、將來協同組合をほんとうに発展さすには專任の理事がいるのであります。ところが理事というものが專任になつた以上、すでに漁業から手が離れて漁業組合の仕事を專任にやらなければ、協同組合というものはだめなのであります。きのうは沖へ行つてきた。仕事ができなかつた。今日は一日やつて、あしたまた沖へ行くというような片手間な理事では、とうてい協同組合の仕事は処理できないだろうと思います。そこでこの法律を見ますと、四分の一の範囲で必要なものは委員外の理事を入れることができるし、また四分の一はどうしても委員外のものを入れなければならないというような規則ではないので、四分の四全部漁業者の方でやれるところはやれるのであります。これは結局漁業者の自覚にまつよりほかなくて、やれるところはもちろん全部でけつこうでありますが、日本中を見ますと、全部が全部四分の四まで漁業者の理事でやつて行けるという所はないのではないか。そうしますと、そういう穴を救うために、法律上四分の一は認めてもよいというような規則は非常に穏当でけつこうじやないか、特に連合会ができました場合に、この規則そのままが連合会へも適用されるとすれば、なおさら四分の一くらいのものは員外の者を認めた方が穏当であるというように考えます。終ります。
#20
○西村委員長 次に野村貫一君発言を願います。
#21
○野村公述人 私漁業協同組合結成促進中央協議会の委員長をしております野村貫一でございます。水産業協同組合法案につきましては、國会におかれましてぜひとも修正していただきたいと考えられる重要な問題がたくさんあるのでございます。しかし私は今日は漁民の團体と漁場利用上の利権との関係につきまして意見を述べさしていただきたいと思います。
 まず私のお願いの結論を先に申し上げますれば、漁業権その他漁場利用上のあらゆる利権に対しまして、漁民の団体であるところの漁業協同組合がその主体制をもつますように、漁業協同組合の性格ないし機能を強化していただきたいということでございます。その理由を簡單に説明いたします。申すまでもなく日本再建の重要國策の一環として、水産に関する諸般の制度の革新を断行するにあたりましては、その基本的な地ならし工作として、何はともあれ水産業の第一次の生産地盤であるところの漁場、この漁場の利用に関するあらゆる利権を漁民に開放しなければならないことは申すまでもないことであります。働く漁民に漁業権を開放せよ、働く漁民に漁場を與えよ。この声は全國の津々浦々に起つておるのでございます。全國漁民の大衆が要望しておることは衆知の事実であるのでございます。そうしてこの要望は國内の識者によつても賛意を表せられておる要求なのでございます。しかしながらわが國の沿岸ないし近海におきまする漁場利用の状態は、実に復雜錯綜をきわめております。これは世界各國に類例のない特徴のある事実でございます。このようなわが國の漁業の特異性から見ましても、また漁場利用に関する利権そのものの性質から考えましても、働く漁民の一人々々にこの利権をわけて持たせるということは不可能なことでございます。だからといつて農地制度の眞似をして漁場を基盤目のように地割して、これを一人々々の漁民にわけてもたせるということは、これまたわが國の漁業の特質から見まして全然意味をなさないことでございます。このように考えてみますると、少くともわが國におきましては、漁場の利用上の利権または漁場を漁民に開放するということを実現するためには、これらの利権ないし漁場に対する主体性を一人々々の漁民ではなく、全部の漁民がつくつておるところの團体に確保させるという方法をとるよりほかに方法はないのでございます。その上わが國の漁場制度並びにその制度の運用につきまして歴史的に考察するならば、今申し上げたように考え方が正当づけられる実証は幾つも発見されるのでございます。中でも現在ある漁業会のような漁民團体、もちろん現在の漁業会はその内容に好ましからぬ点がたくさんあるのデありますけれども、とにもかくにも多数の漁民を擁しておるこの漁業会のような漁民團体が、現在漁業権の六割三分以上を享有しておる。これも漁業会が統制團体になつたためにすぐにできあがつた事実ではないのであります。漁業法が明治三十四年に発布されて以來、漸を追うてこういうような結果になつたのであります。この歴史的な事実を見ただけでも、わが國の漁業の基本的な正しい方向というものをうかがい知ることができると私は思うのであります。詳しい説明は今日省略いたしますが、とにかく漁場利用上のすべての利権に対する主体性を漁民の團体に與えるということをしないで、漁業の民主化だの、あるいは生産の増強だの、漁民の生活安定向上だのと言つても、およそ意味をなさないことだと私は思うのであります。特に國策の非常に重要な問題であるところの経済民主化ということは、私の考えるところでは、結局そのねらいは自由公正なる競爭ということ、これをねらつておると思うのでございます。そのねらいには結局生産の増強、國民の生活安定局向上ということになるのでございますが、しかしその点から見ましても、漁場利用の利権を漁民の團体に與えるという方法による結済の分散を行わずして、公正なる競爭はとうてい望むことはできない。望むことができないのみならず、現在ですらわが國の近海あるいは沿岸の漁場は戰場化しております。骨肉相食む修羅場化しておるのでございます。これをとにもかくにも、及ばずながらも今までの制度で少しずつ治めておつた。これを今のような團体の内容にしておいて開放したならば、公正競爭どころかとんでもない修羅場を演ずるようになりはしないかと私は非常に心配しておるのでございます。こうした意味におきまして、くどいようではございますけれども、この今回の漁業協同組合というものが、漁場に関するすべての利権に対して主体制を持つように、どうしても國会において修正していただきたいのでございます。これは野村貫一個人の意見ではございません。廣く全國を行脚して聞きましても、また中央におけるいろいろな方の御意見を聞きましても、これは確かに漁民大衆のほんとうの声でございます。要望でございます。どうぞ國会議員のお方々におかれましては、この漁民大衆の要望に沿うように、適当な御修正を願いたいと思う次第でございます。
 最後に、午前中この会におきま島て石原議員から御注意がありましたが、今私の申し上げたことは非常に抽象論でございますので、お急ぎならば、具体的にとにかく少くとも今後の漁業協同組合の目的に関する何かの條項を設けてくださいまして、その目的の中の最も大切なところは、漁場利用利権の主体になるということであるということを明記するようにして、大きな釘を一本ぶつつりと差し込んでもらいたいと思うのでございます。
#22
○西村委員長 次に宮城雄太郎君。
#23
○宮城公述人 私水産事情調査所の常任理事をやつております宮城でございます。
 戰後全國の漁民は新しい漁民の組案を要求して参りました。この要求はまことに熾烈なものがございます。しかし漁民各位が熱烈に要求するからといつて、その内容がどんなものでもよいから、早く漁村に組織を打立てるものを、そういう法律をつくれということではないのであります。漁民は漁民が納得し、その自主性の上に立つて新しい漁村の再建できる法律こそ望んでいるのであります。その意味合から考えてこの法案を見ます場合に、この法案は漁村の基本法であります漁業法の上程と同時に上程さるべき筋合のものであります。この漁村の経済組織が、過去長きにわたりまして封建的な基盤の上に築かれ、その経済組織を土壤として組立てられてまいりました既存の各種團体を批判し、その批判の上に打立てられるものでありますがゆえに、今回上程になつております水産業協同組合法案は、一つの漁村の民主化を促進する法律案でなければならない。そうした性格からこの法案を見ました場合に、残念ながら各種の欠陷を持つております。この欠陷があるということは、漁民各位が熱烈に要求するから、かかる欠陷があるものでもよろしいということにはならないのであります。かかる立場から考えまして、私はむしろかかる法案は上程を打とめて、至急に拔本的大改正をやつて今國会に上程すべきであると信ずるのであります。なぜ私はそのようなことを申すかと言いますと、現実の問題として漁民はそのように急いでおります。また今國会の会期も長期間の審議を許さない。かかる現状から見ると、とにもかくにもこの法案を通そうではないかということに相なると思うのであります。それでは根本がぼやけますので、本公述人はその根本について申し上げるのであります。
 まず第一番に、この漁民組織は、日本の終戰後の至上命令である日本民主革命の遂行のための法律案でなければならない、漁村の封建性を拂拭するための、自主的漁民組織の規律でなければならない。この自主的漁民組織の規律をつくるということは、先ほど申しましたように、過去の漁民組織の批判の上に打立てられなければならぬ。この過去の漁民組織の批判をいたしますものは、漁業を規制いたしまする現行漁業法の批判でもあるのであります。この現行漁業法が、今漁民によつて何を改革の目途として要求されているかと申しますと、先ほどの公述人も述べられましたように、現在の漁業権を働く漁民に再分割せよというのが、これが最も熾烈な要求であります。この要求を骨子として、おそらくは新漁業法案は作成されるものと信じておりますが、そのような基本法を出さないで、そして漁民組織の土壤であるべきそういう法案をたな上げしたままこの協同組合法案を出すのでありますから、その影響するところは、漁業者の協同組織の上にいろいろな影響を持ち、またその影響を持つということが、この法案の中にわれわれの納得しかねる各種の條件を持ち込んでおるのであります。これを例証的に申しますと、まず第一番に、この法案を通読して感ずることはたびたび申し上げますように、働く勤労漁民の組織を忠実に生かすというよりも、過去の統制團体的性格を持ちました水産業系統團体の性格を継承し、温存せんとする性格が濃厚であるということであります。この点を逐條的に申し上げて見たいと存じます。
 この法案は、第一條において目的を明確にいたしております。「この法律は、漁民及び水産加工業者の協同組織の発達を促進し、もつてその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図り、國民経済の発展を期することを目的とする。」かかる目的は勤労する者の経済的、社会的基盤の改革なしには絶対に期待できない、このことは言葉をかえて申しますなれば、日本國内にくまなく行き辺つております封建的基盤を一度耕し直して、その上に新しき種をまきつけ、その種が健康に強大に成長すること、これがすなわち協同組織による経済力の発展であり、生産力の高進なのであります。そのように考えて参りまして、この法案を見たときに、まだ第一番に疑問になります点は、この法案が第一に骨子にいたしており、一番特色のあるものは、これは漁業生産組合の事項であります。また漁業協同組合が過去においてなし得なかつた漁業の自営を、協同組合においても認めさせようとする行為であります、ところが第一番に疑問になります点は、本法案の第十一條におきまして組合の行います事業を十二箇條にわたつて指摘いたしております。この眞正面の事業の項目の中には、漁業を経営するという項目は一項も入つておりません。もつとも十七條に至りまして初めて、漁業を営むことができる規定に相なつておりますので、これは同じ法律の中だから、どちらへ置いたからといつて優劣はないという御意見も出ると思いますが、少くとも漁業の今後のあり方が、協同を目的として、零細漁民の健全かつ強大なる成長を願わんとするならば、第一番にこの問題がここに明記されてしかるべきであります。條件の整つたものならばこれをつくらしてよろしいというふうな付随的な形でなくて、もつと第一番に、基本的にこの考えに立つていただきたい。このことをなぜ申し上げますかというと、この法案の第七條におきましては、かつお、まぐろ以下、現在資本家的形態のとりやすい、いなそのように移行しつつあります漁業を、独占禁止法との関係において、その経営規模を規定いたしておりますが、ところが私たちの調査いたします項目に出て來る現実は、多くのこのような業種團体、すなわち私的独占の傾向の強い團体において、協同組合の設立が非常に熱心に研究され、そのような機運の中にございます。奧村君でございましたかが指摘しておりましたが、これからの漁村がこのような企業家的形態を持つ組合と、零細漁民の組合と二つに分裂して、そこに摩擦が起るであろうということを申しておりましかだ、私はむしろ摩擦ではなくて、このような経営規模を持つ業種の團体が、それぞれ協同組合の設立をいたしますならば、あとに残ります零細漁民の経済力というものは、容易に伸び得ないのではないかと思うのであります。またこの十一條に眞正面から漁業の目営、漁業の経営ということを認めていないのは、むしろ第七條のこのような経営者團体の経済的進展を、一つの伏線として、むしろ第一次的な目標からずらしたのではないかとさえ考えることができるのであります。
 続いて生産組合でありますが、これは先ほど申しました協同組合の生産事業、漁業の自営との関連において私は申し上げるのでありますが、本法律案におきましては、生産組合は協同組合の準会員の取扱いをいたしております。しかしこれは正確に協同組合の正会員として規定すべきであります。生産組合がすべて漁村の生産活動を営む、そうしてそれらのものが漁村の計画的な経済の上に立つて伸びて行くためには、どういたしましても村全体の経済を計画いたしまする協同組合の規制のもとにあることが正しいのであります。協同組合は、各種の生産組合をつなぎ合せ、これを促進いたしまして、村全体の労力の配分、あるいは生産手段のそれぞれの生産組合への配分等によつて、合理的な漁村の生産体系を整えて行かなければならない基本の團体でございますから、この基本の團体の統制と申しますか、規律と申しますか、かかるものが生産組合に十分に及ぶことが必要でありますし、また生産組合はこの規律に服することが最も合理的であると考えられるのであります。その意味におきまして準会員でなくして、正組合員たるの性格を持つべきかと思うのであります。あるいは生産組合の組合員は、協同組合の組合員でもあるのだから、そのように嚴重に言う必要はないという御意見も出るかと思いますが、一應すべてのものを規律づけます法律の建前上は、しかく嚴重に考えて、そのように直すのが妥当かと思うのであります。
 さらに協同組合連合会の金融業務の点について申し上げたいのであります。第八十七條におきましては、一及び二項に「会員の事業に必要な資金の貸付」「会員の貯金の受入」ということを規定いたしまして、ここだけを読んでおりますと、連合会が金融業務を行う。金融業務を定うということは單に預貯蓄の受入れをうるということではない。漁村が今後伸びて行くための協同生産体制を裏づけする資金的事業を行うのでありますから、非常にこれは重要なものであつて、ここにこそ漁村の今後の経済の分岐点がかかつているのではないかと、われわれは重要視しているのであります。ところがあとになりましてから、信用業務は單営の連合会でなければいけないという規定になつております。すなわち同條の四項によりまして「第一項第一号又は第二号の事業を定う連合会は、同項の規定にかかわらず、これらの事業に附随する事業のほか」というふうに、ちやんとなつておりまして、單営でなければいけない。ところが先ほど永井公述人からもお話がありましたように、現実に漁村の預貯蓄を受入れる信用業務が、縣だけ切り離しまして独立さして、はたして成立つか成立たないかという問題であります。この点は農村の関係とはまつたく違うのであります。現状におきましては、山形縣のごときに至りますと、現行の漁業会の数はわずかに七会というふうなところもございます。この七会が独立いたしました金融機関を持つて、はたして運営できるかどうか、これは現実的に考えればそうなんです。一番大きいとされております北海道においてすら百三十数会にすぎないのであります。これらの点を考えてみますと、金融業務を独立させるということは單なる観念の上の問題である。あるいはいろいろな他の法律とのからみ合い、そういう点も考慮されるのかとも思いますが、いずれにいたしましても水産業の團体が金融業務を行いますということは、独占金融資本が、その融資力をもつて市町村あるいは國の経済を左右するというのとは全然違うのであります。これはともかく漁民が生産をあげ、そこで得ました剩余が蓄積されて、これが再び漁民の生産に投じられて、この漁業の生産が拡大されて行く。こういうたらいまわしの関係にあるのでありますから、よほどこれは強力な育成政策を考えなければならない。それがためにはどういたしましても、この連合会の信用業務というものは、他の流通部面の事業と同樣に、一つの連合会の中のわく内において行わすのが妥当である。これが水産業の現実に即したものと私は考えるのであります。
 それから理事の定数のこと、これは盛んに問題になつておりますが、これも私の基本的な観念によりますれば、漁民みずからが自己の團体を規制して行くという精神を生かすならば、当然理事は漁民の中から選ぶべきだ。漁民の中には、漁民の自主的組織を運営する力を欠くから、他から理事を選んで來るということは、何でもないことのようでありますが、実はそのような漁村の行き方こそ、漁村の全経済がボス的な組織によつて壟断されて來た基盤の一つなのであります。またこの法は、そのような事務的処理あるいは経済的な業務の運営等に、漁民の現段階においての手腕並びに見解が不足するものがあるのではないかという考えがあつたればこそ、後段の参事制度がつくられていることと思います。よぶんのことを言うようでありますが、社長は多少社会的な事情にうとくても、支配人がしつかりしております会社なり商店で、りつぱにやつておるところはたくさんございます。この法案に盛られております参事制度とは、すなわち支配人の制度なのであつて、ここにこそ重点を置いて考えるならば、漁民の組織をみずから規制するに他力本願の意識を持ち込む必要がなぜあるであろうかという点を、私は非常に疑問に思つております。すべからく理事は漁民たるべし、漁民をしてみずからその事業を運営させ、その処理に当らせることによつて漁民みずからが教育されて行く観念こそ正しい見解かと思います。
 さらに総代会がいろいろ問題になつておりますので、これについても一言申し上げておきたい。現在この法案によりますると、会員数二百人について五十人ということになつております。私は実に今までの公述人諸君とは対蹠的な見解を持つております。二百は少な過ぎる。現行の漁業会制度でございましたならば、これはむりいたしまして、御承知の戰時中にその立地的な條件が一つあろうと二つあろうとかまわない。行政事務一つだからといつてむりやりに一つにしてしまう。選挙などでぶつかることでありますが、同じ漁業会の中で次の演説会場に行くのに、峠を越すのに半日かかつたというような所が一つの区になつております。それであるから、総代会に重要性を持たすこと、これこそ眞の実体だ。こうおつしやるかもしれない。ところがこれからできる漁業協同組合は、そのような立地條件、経済條件とを無視した決定がなされましたのでは、このような協同組合がいかにりつぱなものであつても育ちつこない。それはどうしても会員の数が二百あるという点は、そろばんをして見ますと、これからは長男も次男も三男坊も、一家の中に平均三人くらいは組合員になると仮定いたしますならば、現在の漁業会の会員数は七十人であります。七十人の組合員に五十人を総代に選ぶにひとしい形になります。これは極端でございますが、今日三分の一にいたしたとしてもよろしい。どちらにいたしましてもそのような状態から考えますと、七十人の現在の会員が二百人になつたからといつて、総代会をつくる必要があるかないか、私はこれはもつと大幅に会員数を拡大しなければならないと考えております。なぜそのように総代会の二百人に五十人がいけないということを私が申したかと申しますと、五十人の方は問題にいたしておりません。二百人の方だけを問題にいたしておるのでありますから、いささか今までの公述人とは違うのであります。と申しますことは、この総代会の規定の中において、はつきりと総会にかわる性格を総代会に持ち込ましておるということであります。たとえば各会社などにおいて最も大切なことは、その事業の運営を規律いたすべき予算及びその運営上から出ました結果たる決算の問題をこの総代会でするりとやつてしまう。私は各地から招かれて漁村へ行つて各位の御意見を伺つておりますと、たいてい若い方々は漁業会の会長諸君とは違つた意見を持つております。会長諸君は私に対してこう言う。私どもの組合は百二十人だが、今度は、二百人以上になると思うから、どうしても総代会にしたい、総代会になると、もめもなくてスムーズでいい。それはそれに違いない。何しろ対立する関係の上に立つ。こういう一般各種意見の違うものが出て來るのは当然である。そうした異なつた意見を十分に討議したれの上で、自分の團体の方向を決定づけるという煩瑣な点を避けるために、少数の人間がその支配権を掌握するのが最も有利であり、便利であり、スムーズである。私はかかる見解のゆえに総代会を二百人以上の徳ころに認めさせるというようなことは、過去の少数支配をそのまま温存させる欠点があるからいけないと強調したい。数については申し上げません。実情に合してもう少し、ともかくかえなければならぬ。
#24
○西村委員長 時間がありませんので、簡單にお願いいたします。
#25
○宮城公述人 時間がないそうでありますから、簡單に申し上げることにいたしますが、大体今四つ五つの例をあげて見てもわかるように、とにかく実情に即しておりません。漁民は、急ぐからといつて実情に即さないものを欲しておりません。とにかく実情に即して漁民それ自身が次の段階において十二分に自己の経済力を伸ばすだけのものをつくつてくれ。かような点から行きますと、私は今回のような漁業協同組合法案に全幅の賛意を表することはできない。本來からいえば、このような漁民それ自身みずからを規制する法律をおつくりになる場合に、單刀直入に第一上程することそれ自体がおかしい。なぜもつと漁民の意見を聞かなかつたかということを申し上げたい。しかしかようなことを今申したところで始まりませんので、結論的に申し上げますが、とにかくこの法案は各種の欠点を持つておる。その第一の基本的な欠陷は農村の民主化が農地制度の改革と併立して農業協同組合法案の上程、あるいはこれの実現を見たがゆえに、そこにとかくの非難はあるにしても、農地革命が農村の経済的革命と軌を一にして進行しておるということは私は漁村の中においても観念的に出せばいいということを考えるだけでなしに、実情に即してかような基本的な立場をとつて行きたい。その基本的な立場に立てば、その答えはおのずから一つであります。経済力の少い漁民を今後成長させ、その役割を規律することこそ、その法案の眞のねらいでありますから、そのためにはこの法案は、零細漁民の健全なる成長発達の行政組織が常に裏づけされるように、法文的に直されなければならぬ。もう一回申します。漁民は急いでおります。急いでおりますが、曲つたもの、氣に入らぬものを欲しがつておるのではない。そこで氣に入るようなものにするためには、もう一回下げ渡して、やり直して本國会にかけるべきであるということの原則論を主張してやみません。
#26
○西村委員長 次に松田茂久君にお願いいたします。御承知の通り時間が大分たちましたから、要点を簡單にお述べ願います。
#27
○松田公述人 私、全國水産労働組合協議会の事務局次長をやつております松田であります。これから私の意見を申し上げたいと思います。
 今度の國会は公務員法と五千三百円という奴隷的な資金状態をきめて逃げ込んで行こうという議会であります。その中に水産協同組合法案が出されておる。全日本の漁民と漁業労働者並びに中小漁業者は、この成行きに非常に関心を持つているわけであります。関心を持つているということは、このまま通つてくれればいいということでは決してないのであります。いろいろこれに対しては考えを持つているということであります。まず農業においては農業革命がすでに行われ、まがりなりにも農民には土地を與えられた、農業協同組合法もできた。しかし漁業は戰爭が終つて三年にもなるのに、まだ何ら手が打たれていない、今ようやく一つの手が打たれようとしている。これがはたして自分たちの生活にどう影響するのだろうか、これが漁民の関心であります。つまり現在漁民はどんな生活をしているか。戰爭でさんざん痛めつけられた漁民は、今はまつたく納得の行かない税金がどんどんと天くだりにかかつて來る。さらに魚は買いたたかれる。それから資材もない、リンクもない。こういうような、まつたく漁民は生活をやつて行けないような状態である。そこで漁業協同組合法がはたしてこのように漁民の要求をどけだけまで酒平てくれるか、これが漁民が持つている関心と思うのであります。そこで以下私ははたしてこの協同組合法が漁民のためになるかどうかということを申し上げたい。
 まず第一、現在一番困つているのは税金の問題であります。税金はまつたく天くだり的で殺人的であります。まず漁業者には住民税、家屋税、法人税、これらの税金のかかるのはもちろんでありますが、漁業をやつているというためにかかる税金は漁業権税、船舶税、それから特別漁業税、そのほかに船税、また水産製品に対しては取引高税、物品税という税金がかつているのであります。さらに前の議会できめたので今全國の漁民を苦しめているのは第二事業税であります。この第二事業税のごときは、東京都のあの零細な漁民に、税額だけでも最低が十二万円、最高が三十七万円というべらぼうな税金がかかつているのであります。これらの税金收奪。さらに漁業労働者はどういう状態かといいますと、漁業労働者は歩合資金で、現物の魚を配給してもらつている。お前らはそれをやみで賣つているだろう、だから一方においては勤労所得税、一方においてはいわゆる営業税、この二重課税に苦しんでいるのです。はたしてこの漁業労働者に対して今度の漁業協同組合法はこれらを保護しているだろうかというと、決してそうではない。まず新協同組合法案は逆に協同組合には法人税をかける。その他、他の商業機関一般の営業と何らかわりがない。さらに見のがしてはならない重要な点が一つある。それは生産協同組合であります。この生産協同組合は、さきほどからの公述人も言われているように、非常に從來の網主、船主がこの中にたくさん入つて來る。從つてこの新協同組合法をつくり、ここで法人税の陰に隱れたこれら從來の個人漁業者が、巧妙な合法的な大口の脱税をしようとする抜け穴が講ぜられているということであります。
 第二の点について申し上げます。現在漁民がのどから手の出るほど求めているものは何であるか。それは資金と資材であります。つまり着業資金、元手がない、それから資材を買おうにも買いようがない、このことであります。ところがこの協同組合法案によつて行われる経済事業によつて、はたしてこれらの漁民の困つていることが実現されるようになつているか。いや決してなつていない。それは漁業会の現在の資産を今度協同組合が買う。買うにしても金が要る。この資金の裏づけさえなされていないのであります。まず勤労階級からあらゆる形で税金をしぼり上げたのは、復金を通じて國家機関の権力をもつてこれを大資本にまわし、そうしてこれが政界、官界の腐敗堕落を招いたということは昭電でも明らかでありますが、水産金融においても同樣のことが現在まで行われているのであります。たとえば昭和二十二年度復金から融点された二十八億の金が一体どこに行つているか。
#28
○西村委員長 松田君に御注意いたしますが、漁業金融法案でないのでありまして、第八十三條に明記してあります通り、午前にもはつきり宣言申し上げました通り、議題外の事柄をお述べになりますれば、やむを得ず禁止をいたさなければならぬことになりますから、議題に関する問題についてお述べを願いたいと思います。
#29
○松田公述人 それで私は意見を続けさせていただきます。このようにして漁民にはほとんど金融の措置が講ぜられていない。ここでせつかくあてになるのは今度の協同組合であります。ところがこれについても何らほとんど措置を講じていないのであります。前の芦田内閣のときに、栗栖安本長官も、北村大藏大臣も、沿岸漁業の改革については國家資金を貸し出さないということにをやはりはつきり言明しているのであります。このよううして新協同組合法案は資関の裏づけもなく、空手形で出発せよと言われているのであります。それで漁業会の財産を受継ぐ場合に、財産を受継ぐことができない。こういうことになつて、結果はどうなるかというと、漁業会の財産は、金を貸していた銀行なり、また商業機関に行くという結果に終る。さらに先ほどの公述人の宮城氏が言われたように、金融事業を連合会にさせないことになつている。さらに新しきできるだろうところの金融業法によつては、協同組合金融はこれを切り離そうとする努力さえある。こういう結果はどうなるかと言えば、漁民の自己識金の拡充にならない。せつかく自己資金が集つたものも漁業の再生産に投ぜられないという結果になつてしまう。そこでこれはどういうことかと言うと、金融事業を一本にするということは、結局においては税金を取立てる機関になることと、これに対して金融資本家が漁村の完全な支配にあらゆる可能な道を開いているという結果にしかならない。
 さらに漁船の建造の問題であります。漁民は漁船をたくさんほしがつている。ところが昭和二十二年第一次漁船計画においては、三十三万トンの漁船計画が発表された。その漁船計画のあらゆる鉄鋼、資材、それはほとんど全部捕浮を初め、トロール底引、かつお、まぐろの大資本漁業にまわされており、漁民にはほとんどまわされていない。リンク制にしてもほとんどそうであります。現在リンクのものはほとんど空切手である。しかも漁民に対してはほとんどがいわゆる統制撤廃の名のもとに、リンク加配米、さらにリンク物資すらガ渡されていないという状態であります。このようにして協同組合は経済事業を行うことになつておりますが、資金、資材もない、ルートもない協同組合によつてはたして漁民のこれらの資金資材、加配米の要求、そういうものに対して何ら要求が満たされる措置が講ぜられていないと思うのであります。
 第四点は、漁業労働者の点に触れたいと思うのであります。今なお漁業労働者は封建的な歩合賃金、または封建的な身分に縛られた生活をやつているのであります。歩合賃金であるというところから二重課税をされる。またこれに対して労働法規の保護すらサボられている。こういう状態であります。労働組合をつくる自由すら圧迫している。いわゆる漁業者に対してこうした劣惡な條件で働かしておきながら、今度の漁業協同組合でどういうふうに扱つているか。漁業労働者に対しては、漁業從事者というあいまいな表現をしている。そうして新しくできる協同組合並びに生産協同組合に漁業從事者という名前で個々ばらばらに加入させて、労働組合や漁民組合を解体させて、お前たちはりつぱな協同経営者の一人であるといつて、依然として劣惡な歩合賃金制を維持しようとするねらいが明らかであります。本法案のねらいは、漁業労働者のこれらの不分理に対して最低生活保障要求を踏みつぶし、さらに一人前の漁民になれるような幻想を振りまき、漁村における階級の爭い、いざこざを押しつぶし、そうして依然として漁村におけるボス的な支配、さらには金融資本の支配を可能にしようとする道を開こうとしているということでございます。
 第五の点は、戰時を通じて漁民を窮乏のどん底に陷れたのは、これは漁業会の組織、さらにこれを巣くつていたところのボスの支配であります。そこでこうしたものをやめて、さらに民主化させるためにやらなければならぬことは、まず漁民みずからの手で協同組合をつくることであります。第二には、先ほどからも言われたように忘れてはならない点は、漁業権の解放の問題であります。ところがこの漁業権の解放がどういうふうに漁業協同組合になされようとしておるか。これは前芦田内閣のときにも、今度の議会に漁業法を出そうという話が出たときに、栗栖安本長官は、これにはいわゆる抵当権保護の規定がないから反対であると閣議で言明されて、これが出なかつたのであります。抵当権の保護がないということはどういうことであるかというと、つまり漁業権を対象に金を貸していた金融機関が困るから、これをかえるような漁業法はだめだということであります。
#30
○西村委員長 松田君に御注意いたします。正式にそういうふうな問題ははつきりしないのであります。ここでそういう御意見をお述べになることは迷惑でございます。
#31
○松田公述人 そこで漁業協同組合に対してどういう漁業権が與えられるかと言えば、專用漁業権の中から、浮魚漁業であるべきはずのものをはずし、根つき、磯つきの漁業を漁業協同組合に與えようとしておる。これではまるで家庭菜園を與えるようなものでありまして、專用漁業権の根つき、磯つきを漁業協同組合に與え、それによつてお前たちは何をしろというような漁業法の改正は、漁民にとつては漁業の解放ではなくして、漁業権の略奪というより以外にないのであります。それで根つき、磯つきの漁業だけで漁業協同組合をつくるということは、簡單に言えば、お勤人で家庭菜園を持つている連中が集まつて農業協同組合をつくれというのと、まつたく同じだということであります。
 以上五つの点について私は言いましたが、まつかく今度の漁業協同組合法案といい、漁業法の改正の意図といい、一貫しておるものは、やはり漁業労働者並びに漁民をますます苦しめ、中小漁業者を経営の困難に陷れ、あらゆる点において漁業資本家にのみ有利なように改正させようとしておる。ここで私は前口述人の宮城氏と同意見、この漁業協同組合法案を即時撤回、さらに民主的に協同組合法案を上程すること、さらに第三には漁業権の制度の改革、この條件を同時に並行して審議していただきたい。そのことであります。
 最後に、もう一つこの二号議案について申し上げます。つまり、水産團体を解体するにあたつて、どういうふうに整理するかということであります。この点は何遍も注意を受けておりますから、あまりやかましく言うとさらに注意を受けそうですから、要点だけ申し上げます。漁業会が今までどういうことをやつて來たか、そうしてこの漁業をやめなければならぬということは、言うまでもないと思うのであります。そこで私はこの点について基本的な五つの点を要求したいと思うのであります。
 第一に、昭和二十年八月以降の漁業会の財産の一切の移動はこれを無効としていただきたい。第二には、漁民に対して漁業会の資産内容の徹底的な調査の権限を與えてもらいたい。第三には、資産処理にあたつて資産処理委員会には金融機関またはその代理人を入れないようにしてもらいたい。第四には、漁業会の資産の一切を自主的に組織する漁民に管理するようにしてもらいたい。第五に、戰爭中漁業会の役員を勤めた者は、新漁業協同組合の役員に就任することを禁止するという事項を、はつきりうたつてもらいたい。それから地方水産業会並に中央水産業会の役員をしたものは、これを公職から追放してもらいたい。この五つのことが行われない限り、漁村は再び封建的な支配に任され、われわれ日本の漁業の民主化は行われないということを、申し上げたいと思うのであります。
 最後にもう一つ、私はこの公聽会に対して私の感想を申し上げたいと思うのです。私はいろいろな意見を申し上げました。そうして先ほどから小野寺氏の意見がありましたように、この公聽会に私は何を言いに來たか、何のために來たのかわからない。せつかく言おうとすると、発言を禁止される。こういうような状態で、今度の漁業協同組合法をむりをして通そうとすることに、不満であるということを申し上げたい。しかも出ていらつしやる議員は何名であるか、この点をはつきりと國民の前にお知らせしたい、こういうように考えるのであります。
 以上をもつて私の公述を終りますが、不十分な公述しかさせられなかつたということを、委員長である西村さんに申し上げたいと思います。
#32
○西村委員長 ただいま松田君から小言を伺いましたが、私は衆議院規則の第八十三條の公述人に対する規定を準用いたしまして、御制しを申し上げているのであります。その規定に從いまして御公述をなさらなければならぬ筋合であります。
 次に安居篤孝君の御発言を許します。
#33
○安居公述人 私は富山縣漁民組合連合会会長の安居篤孝でございます。本法案につきまして午前以來いくたの名論卓説が出ました。非常に参考になつた次第であります。私はこの法案に対しまして撤回を願いたいと思います。
 すでに委員会に付託されまして、委員各位の手元に來ている次第でございますが、あえて拙速をたつとび必要はない。よろしく愼重審議していただいてこの画期的な大法典をつくり上げるためには、数百年、いな数千年以來漁民なるものは搾取されておつたところの事柄を、ここに解放せんとする限りにおいては、かりそめには便宜主義でやつてもらつては困る。いろいろの点から見まして、論者が幾人もおいでになりましたが、漁民という言葉においてまことに不明確な点がある。この法案を檢討するとしても、一体わが國の漁民なるものがどういうものであるかということをまずもつて檢討する必要がある。このごろ民主化と言う。ねこもしやくしも民主化を言つている。しかしながらデモクラタイズということは、はたしてどういう内容を持つているかということを深く檢討をして、こうすべし、ああすべしというふうに行わんとする者は少い。多弁いたしますと時間の関係がありますから、かけ足で参りますが、この漁民というものに対して民主化ということを言われているのは、一分何のために民主化という言葉が出たか、これから檢討する必要がある。民主化でないものがあるゆえに、民主化という声が叫ばれた。しからば漁民層におきましてどういうものが民主化されねばならぬ立場にあるか、どういうものが民主化を受ける立場であるか、こう区分けして考えなければならぬ。そこで私は常に持論として言う。この漁業法にしろ、労働組合法にしろこれを改正する場合においては、確千としてその区別を立ててかからなければならぬ。私は言う。特にこの民主化ということを叫ぶのは、最もその非民主化的であるところの漁業民は定置漁業である。これは代表的なものである。そこで定置漁業というものについて、特に解説を試みようとするものであります。
 定置漁業を見ますと、いわゆる民主化されねばならぬ立場にあるものと、それから民主化をもつて惠沢を受ける側と――この受ける方は私は名づけて自由漁民、それから民主化されなければならぬ立場にあるものは、これを称して封建的漁民、この二つがあるのである。農林当局がこの法案を作成さるるにあたりまして、はたして日本全國にわたつてこの定置漁業に関係しているところの部面、その場合にいわゆる封建漁民の側と自由漁民の側とがあるということを檢討されたかいなや、私はそうでないと思う。この法案を一瞥すると、この法案は現在の漁業会というものの系統に属しておる方の人々の意見を多分に入れておる。民主化される基盤である方の者の意見を聞いて法案をつくつても、それは民主化になるものではない。それは羊頭をかかげて狗肉を賣るという結果になるのである。どういうわけでここにいわゆる封建漁民なるものがおるか、それを民説明を申し上げます。わが富山縣は定置漁業におきまして、ことに私の村の沖合にある松ケ崎という漁場は、全國においても有名な漁場であります。昨年あたりもやむ取引で、隠してはおりますが、実際においては六千万円からの漁獲高をあげておる。わずか十月から翌年の三月末ごろまでの期間である。そういうものがどうしてできておるか。それは親代々から讓られ、徳川徳代から來た船元、網元という権利を基礎として、明治三十四年貴族院の村田氏が初めてお粗末ながら漁業法というものをつくつて、これがそのときに法律に認められたものである。後に四十三年にさらに法律らしいものに改正された。それが今日まで來ておる漁業法であるが、そういうふうに法的に認められてはおりますが、もともと親代々傳わつた財産である。そうしてその船元、網元を擁護しておる漁民なるものが、昔ならいわゆる譜代の臣である。徳川幕政時代における臣家関係、主從関係のようなもので、二十人、三十人分の網を一度は持つておつた。それが今度みんな合同して、氷見から石川縣の五厘の間の漁業を独占しておるのである。それに隸從して漁民なるものはいわゆる親方関係、主從関係であるために、万事万端盲從である。もしさからえば船に乘せられない。押しつけられておる。また乘せていただける限りにおいては非常に都合がいい。生活には樂である。その封建制のはなはだしい一例としていろいろのことがありますが、たとえば私が網元であると仮定する。私の家に出入りする者が二十人と仮定する。私の方の持分としては十人だけ合同の網に漁夫を派遣する権利があるとする。しかし私の家に出入りする人間がたくさんあつて網がない。そういう場合にどういう方法をとるかというと、十人分というのは毎日々々行くところのものである。そこでまずこれを四つにわける。毎日行く者は七分五厘、三日働いて一日休む、一日働いて次の日休む、三日休んで一日行く者、こういうふうにわける。そうすると毎日行くような地位を與えられる者はおべつかを言つて、旦那樣にぺこぺこする。また昔からの関係から言つてそれをいいようにする。たつた三日休んで一日行く者はしつぽの方です。その家に何か催しをすると、やはりその序列に並ぶ。御主人の御機嫌のいい者は上の方に坐り、逆鱗に触れた者はしつぽの方に坐る。はなはだしいのは出されてしまう。これは一例にすぎませんが、ただに漁業ばかりではない。さらにこれは地方の政治の面にも及んでおる。村会議員の選挙になると、おい、お前の家はこれに入れなければ網をやめさせる、お前の家の嫁は何の某から來ておる、そこに行つて投票を取つてこい。娘の行つておる先の方に投票を入れてくれなければ船に乘せない、そこでそれはたいへんだというので入れる。山の方は炭俵は買つてやらぬぞ、なわは買つてやらぬぞ、受入れのもうそう竹は買つてやらぬぞとおどかされる。そういう状態なんです。まだまだ言えばある。だからほんとうにたたきつぶさなければならぬ。つくるよりもまずこれをこわすことが必要なのである。そうでおるがゆえに、この封建漁民すなわち網元、船元というその主人を入れたところの漁民の一團をまずもつて破壞しなければならぬと私は思う。破壞は建築の始まりである。こういうものをさせておいて何の建築があるか。これからひとつやつてしまえ。この法案を見ると空轉である。からまわりである。今福井の方、岡山の方が、漁業の会長としてどういうことを言われたか。民主化し過ぎる、こういう意見である。ロー・イズ・ジヤステイス、法は正義です。法というものは正義である。民主化を叫ぶ場合には、民主化が正義である。正義を唱えるに過ぎるということがでこにあるか。やり過ぎるということはないはずだ。正義は始まりが目的であつて、終りもその通り目的であるはずだ。かるがゆえにやり過ぎるわけはない。やり過ぎない。かえつてこの法案では温存してある。またつくつた当初において集めた意見なるものは、これは打破されなければならぬ。その打破されなければならぬところの漁業会系統の意見を集めてつくつた法案である。このごろ流行の民主化という言葉があるだけに、何かその方にカモフラージして行こう、こういう考えなのである。だから言葉だけりつぱだ。しかしながら内容を見ればまつたくなつていない。かるがゆえに結論は、こんなものはやめてもらいたい。しこうしてここに新たにつくつてもらいたい。どういうふうにつくつてもらいたいか。それはわれわれ自由漁民の側に、水産廳から各縣に命令を出してもらいたい。そうして各末端行政区域における自由漁民層をもつて結成しておるところの組合から代表者を出す。そうしてその組合の代表者から一年なり、二年なり中央において意見を聞いて法案をつくり直してもらいたい。そうでなければほんとうに民主化された法案というものはできるものではない。正義は失われ、ただ民主化という声ばかりであつて、内容たるや、議会に便乘してごまかして行こうというに過ぎない。私は昨夜通知を受けまして一睡もせず、急行でここに來た。すでに老齢六十二歳であつて、漁民のために叫んでおるということも、あまりに日本という國は実際情ない状態になつておるからである。まだ目ざめない。中央といわず、地方といわず、もう少し眞劍にやつてもらわなければならぬと思つて、実はかけつけて來た次第であります。よけいなことは言う必要はない。條章の末節などは言う必要はない。根本的にだめなんだ。そうしてまたこの法案と漁業法なるものは、いわゆる密接不可分の関係にある。よろしく出すならば少しも急ぐことはない。だれかが言つたことに、漁民が急いでおるとか、漁民が待つているとか、それは待つておりません。急いでもまずいものではだめだ。漁民はここが関ケ原と見ておる。ゆつくり構えて、数百年あるいは千年以上も搾取された原始産業のその本をわれわれの手に返してもらいたい。かれらはとるのではない。返してもらいたい。余計な理論的なことを申し上げると長くなりますから申し上げませんが、私の理論としては、漁民と農民と区別することは間違いだと思う。沿岸に來て海のさち、山のさち、この二つのさちをねらつてしかるべき場所だと思つてそこに定住した。これはみな遊牧の民である。陸においては耕やし、海においてはいさりし、そして根をはやしておる。天賦の資源はそこの住民が享受すべきだ、それが原則なんだ。して見れば沿岸の住民というものはわれわれのところにおいては実際そうだ。午前は百姓、午後からは漁師、午前は農民であつて午後からは漁民ということになる。だからまぎれやすいので沿岸住民という言葉をもつて、沿岸住民である限りひとしく陸のさちも海のさちも享受する権利を天が與えているのである。私のオリジナルはそこに置いており、私はそこから出発しておる。だからこれは解放すべきものである。それに先んじて封建的な人為的につくられたこの機構をまず打破せよ、これだけであります。委員諸君、諸君の手元に來ている法案にして、私の考えているところにいささかたりとも劣るところがあるならば、よろしく十分愼重審議して、こいねがわくは本案は撤回して、当局はさらにさらに深く檢討して、完全なるものをつくられることを希望して私の発言を終ることにいたします。
#34
○西村委員長 次に渡邊威雄君の発言を許します。
#35
○渡邊公述人 私は漁村文化協会の理事長をしております渡邊威雄であります。本來は、政府案に対してわれわれの意見を述べるのではなくして、委員会案に対して意見を述べたいという希望をもつておつたのであります。かかる意味から、今後はこの水産委員会がその本來の性質にかんがみ、この委員会の主体性の確立と立法権の確立を十分はかつていただきたいと思うのであります。時間もありませんので端的に各論的に申し上げたいと思います。
 その一は、水産業協同組合法中央三節管理規定、第三十四條第七項の削除であります。その理由は、水産業協同組合法の導案の精神は、その目的に明示されているごとく、漁民ないし水産加工業者の協同組織の発達を促進し、もつてその経済的、社会的地位の向上と生産力の増進とをはかり、國民経済の発展を期するにある、こう掲げてあるのでありまして、その協同組合である水産業協同組合は、漁民のために漁民の組織を漁民みずからがつくるものであり、他のいかなる外部の力によつても漁民の自由なる意思を抑圧し得るものではなく、自主的にみずからの経済的社会的地位を高める漁民の民主的なる組織でなければなりません。それゆえに本法案においては漁民を定義して、「漁業を営む個人又は漁業を営む者のために水産動植物の採捕若しくは養殖に從事する個人」となつており、またその組合員の資格條件は第十八條に、「組合の地区内に住所を有し、且つ、漁業を営み又はこれに從事する日数が一年を通じて三十日から九十日までの間で定款で定める日数をこえる漁民」と規定されているのであります。このことは組合の自主性と組合員の純粹性を保持せんとする精神にほかならないと思うのであります。しかるに組合法第三節の管理規定の第三十四條第七項には「組合の理事の定数の少くとも四分の三は、組合員(准組合員を除く。)でなければならない。但し、設立当時の理事の定数の少くとも四分の三は、設立の同意を申し出た漁民でなければならい。」とあり、明らかにその四分の一は漁民以外からこれを最め、あるいは組合員外より選任できることになつているのであります。すなわち第三十四條第七項の反面は、その設立においては漁民外の一般人が四分の一だけ役員となることができ、設立後は組合員外の一般人より四分の一の役員を求めることができるようになつているのであります。このことは、さきに申し上げました組合の自主性と組合員の純粹性を保持せんとする精神に反するものでありまして、本法は立法そのものにおいて矛盾を示すものであると考えるのであります。この規定を設けた理由としましては、漁民の経営上の才能並びに経驗の有無を考慮した結果と思われまするが、もしそうであるとするならば、第四十六條の参事及び会計主任の規定をもつて事足るのでありまして、かかる理由の限りにおきましては、第三十四條第七項はこれを削除すべきものであると考えるのであります。もしこの規定がある場合、四分の一の役員により、むしろ経営的能力ないし経驗のない漁民であるとするならば、漁民外、組合員外の少数役員の力により左右される杞憂なしとしないのであります。役員の定員数は五人以上となつておりますが、漁民ないし組合員外の役員数は、五人の場合は一人、七人の場合は一人ないし二人、九人の場合は二人、十一人の場合は二人ないし三人となるわけであります。その数はわずかなものでありますが、この場合の僅少なこの数字は、いわゆる数の魔術でありまして、少ければ少いほど、就任する役員の影響力はすこぶる大きいものであることは、今日までの幾多の事例をもつて立証し得るのであります。かりにこの少数の漁民ないし組合員外の役員が理事長に就任された場合のことを考えたらいかがでありましようか。その影響力は想像にあまりあるものがあり、本法の立法精神である組合の自主性や純粹性は実質的に喪失するものであります。一人の影響力がいかに大なるものであるかは過去の事例によつても明らかなことでありまして、かつ多くはボス的存在の人が就任しやすいことの公算が大きいのであります。ことに漁民の民主化の速度の遅さと、漁民の自主性とを勘案するならば、その自主性と純粹性の保持のためには、本規定は削除することが眞に漁民のためであると考えるのであります。よつて私は第三十四條第七項を削除すべきであると考えるのであります。
 第二点は、組合法中、第三節第五十二條第一項の修正であります。その理由は、前述のごとく、組合の自主性と組合員の自由の意思を尊重する建前において、可能な限り決議機関としての総会に重点を置くべきであつて、総代会は特例とすべきである。総代会は本來代議制度でありまして、民主政治の一手段であるが、原則的には多数の者が多数の意思によつて決議し実行するものでなければならないと思うのであります。昔は國土も狹く人口も少かつた関係から、一切の協議は全員が一定の場所に集つて協議しましたが、漸次國土も廣がり、人員も増加してくると、全員が一定の場所に集つて協議することが不可能になつてきたので、代議制度が生れてきたのであります。もし集会の場所とその便宜さえ可能であるならば、今日においても常に全員が集まつて協議することが、個人の自由意思を直接表明し得るものであると思うのであります。かかる由理から考えまするならば、本法における総代制も本來は原則的に規定さるべきものではなく、特例でなければならぬ、こう考えるのであります。しかるに本法においては、組合員の総数が二百人を越える場合は総代会を設けることができることになつており、本法の漁民の定義ないし組合員の資格條件に照し合せて、できれば現行團体法に基いて漁業会の会員数に比し、新協同組合法におきましては世帶員も組合員となります結果、その組合員の数はどんなに少く見ても二倍ないし三倍に増加することが推定されるのであります。この水産業協同組合法におきましては、そのほとんどが総代会を設けられることになると思うのであります。從來の総代会を見まするに、そのほとんどがいわゆる勤務漁民大衆を支配するボス的存在の者が総代であり、漁業会の運営は勤労漁民大衆の意思が反映しない会の運営から漁民の関心は漸次離れざるを得なかつたのであります。かくのごとき状態から考えますと、漁業協同組合は常に五十人程度の総代の組合になる可能性が強く、はつきり申しますならば、五十人程度の役員組合にすぎなくなつて來ると思うのであります。特に私は総代制を原則的に否定する理由は、総会が勤労漁民大衆の自由の意思を表明する唯一の機会であり、教育と啓蒙、訓練の場と考えまするがゆえに、かかる機会を與えざる限り、漁民は自己を啓蒙し、教育し、訓練する機会もなく、從つて漁民の社会的地位の向上は期し得ないのであります。從來の総会並びに総代会の運営を見まするに、今私がここで喋々するまでもなく、議長ないしは少数の幹部によつて運営され、支配されて來て、一般の漁民大衆は初めから終りまで発言する機会がなかつたというのが今日までの状況であつたのであります。この意味におきまして可能な限り総代制は排止すべきである。先ほどの公述人の方から、今の漁村の実情がかくかくであるから総代制を設けなければならぬ。こういうお話がありましたが、今日の実情が決して正しい姿ではなく、明日の正しい姿を生み出すためには、この漁民の自由の意思を表明し得る機会を絶対に與えなければならない。そのためには多少の困難、障害がありましても、総代制は原則的に廃止すべきであるというのが私の主張であります。從いまして総代制はできるだけ組合員数の総数を引上げなければならぬ、よつて私は第五十二條第一項は、二百人を三百人として、漁民ないし組合員に自由の意思をできるだけ表明する機会を多く與えることを主張するものであります。
 第三点は、第八十九條に対する希望でございます。本條は連合会の規模を制限するものでありますが、同じ協同組合法で、農業協同組合法、あるいは商工協同組合法においては何ら規模の制限がないのに、ひとり水産業協同組合法のみこの制限があるのはまことに不当である。連合会の規模は漁民の自由な意思によつて決定さるべきであつて、法律でもつてあらかじめこれを規定することは妥当でない。協同組合は、経済的、社会的に弱小者が協同して資本に対立する組織であり、この限りにおいては、漁民の組織に法律をもつて制約を加えることは、弱小階級に対する権力の抑圧制度であると言つても、あえて過言でないのであります。特に漁民の民度が低く、かつ一般社会に比して漁村は保守性が強く、民主化の速度の低調さを考えるならば、中央機関としての指導、啓蒙、教育の連絡機関は、民主主義の徹底を期する上からも、ぜひ必要であります。すなわち経済行為をなさざる地方連絡機関の設立は、独禁法、集排法に抵触せざる限り規模の制限は緩和すべきであり、また修正の余地があると思うのであります。
 以上三点について私は修正の意見を持つものでありまするが、本法案全般に対する結論としましては、漁民の経済的、社会的地位と、その向上を一日も早く実現せんがためには、各所に修正すべき点がありまするが、この修正箇所をすみやかに修正して、次の國会に上程されるであろう漁業改革法の場合に修正することを附帶決議して、今次國会において審議し、可決決定されんことを切に要望する一人であります。
 簡單でありますが、以上で私の公述を終ります。
#36
○西村委員長 以上をもちまして本日の公述人全部の御意見の発表が終りました。公述人に対し、何か委員より質問がありますれば、この際お許しいたします。
#37
○外崎委員 先ほどからの公述人の方々の熱心なる御意見は、非常に参考になる点が多く、われわれまことに感謝いたしておる次第であります。ただ惜しむらくは――これは委員長にもお願いしておきたいが、今日のこの公聽会はなぜやつたかという趣旨をまだはつきりしていない方が二、三あるように見受けられました。なぜかというと、先ほどから何かこの公聽会に來て、代議士を向うにまわして反対でもすればいいというような、演説会にでも來たような氣分でやつている人がある。何も自分たちの手でできるものなら、やつてさしつかえないものであるが、いわゆる先ほどから言う民主的立場から、その最も関係の深い方々の意見を十分参考にして、政府とともによい法案をつくつて行きたいというのが、すなわち今日の公聽会の趣旨であつた。しかるにそれさえわからずに、いたずらに演説口調をもつて代議士を攻撃することをもつて足れりとするということは、委員長が公述人に対して十分趣旨を徹底していないという遺憾の点があります。
 もう一つは議員の出席数が少いということを言われました。なるほど少いでありましよう。しかし國会議員は一つだけの委員でありません。私自身を申しても、きようは災害の委員会でさまざまな問題がありまして、大臣まで読んでおる。それにも増して重大な問題であり、また皆さんの御意見を拜聽したいというので、その委員会を捨てておる。そのほかに自分の別な会合が二、三ありますが、これも捨て、本会議のベルが鳴つても、これを捨ててまで聞いておるのであります。なかんずく私は速記に対して大きな期待を持つている。あとから速記を読んで参考にしようと思つてわれわれは愼重な氣持をもつて聞いているけれども、今言うごとく公聽会の趣旨をはつきり体得していない人方によつて迷惑をこうむることがある。委員長は今後もあることであるから、公述人に対してその趣旨を十分徹底してもらいたい。非常に眞劍な漁民の声を聞こうと思つてきようの公聽会を開いてもらつたのでありまして、この点感謝とともに委員長に一言申し上げておきます。
#38
○西村委員長 この際外崎君にお答え申し上げます。委員長としてはできるだけの手を盡したのでございます。会期が短いのでありまして、その間に公聽会を開くことを各委員からも申出がありましてきめたのであります。從いまして手続といたしましては、ラジオ、官報等で告示すると同時に、新聞にも廣告いたしまして、そうして公聽人の御出席方を要請するとともに、公述人の方々から一定の書式をもつて委員長の方に回答を得るのが本体でありますけれども、その手続等に日時がございませんので、実は手違い等を生じましたことをここで弁明申し上げておきます。從いまして公述人の方々におかれましても、公述の趣旨が徹底しなかつたものと私は了承して、委員会に御迷惑であろうとは存じましたけれども、ある程度発言の範囲を逸したことにつきましては、なるたけこれを制止せずして、お許ししておつた次第であります。惡しからず御了承置きを願います。
#39
○川村委員 本日の公聽会におきまして各公述者からの活発な御意見を伺いまして、まことにその意義のあることを痛感したのであります。私もほんとうの漁業者としての立場から本委員会に出ておるのでありますが、皆さんの公述されたことを統合しますと、私の意思とぴつたり來るのであります。またこの法案が今日まで提案されなかつたことは、当局にも相当の責任はあるけれども、また内部的に相当の苦労があつたことも、われわれよくわかるのであります。また本案の内容を見ますると、どなたかも申されましたように、われわれ漁民の意に副わないものばかりで、実はそれはこの審議に当る人でなければよくその心持がわからないと思いますが、撤回してもらいたいという点などもないでもないのであります。またこの提案に際しましては、なぜ漁業法と並行して提案できなかつたということも……。
#40
○西村委員長 川村君に御注意申し上げます。委員としての御意見をお述べになることはお差控え願えます。公述人の公述に対する御質問があればお述べを願います。
#41
○川村委員 わかりました。いろいろこうした点を檢討いたしますときに、当然疑義のあることは事実であります。公述者に私がよくお伺いしなければならぬことは、皆さんが漁業権は漁民の手にもどせ、こうした意見が徹底しておるようでありますが、働く漁民と言われた方と、漁民の手にもどせと言われた方と二通りあるのであります。それで宮城さんにお伺いしますが、働く漁民にもどせという「働く漁民」の解釈とどう解釈したらいいですか。
#42
○宮城公述人 お答えいたします。私たち「働く漁民」とは本協同組合法案にも規定しておりますように、すなわち漁業に從事する者、漁業を経営する者、そういう感じでございまして、かなり廣く私は考えております。その種類は申しますが、経営規模一覽がございますが、大体あれを除外するものとお考えになつたらいいではないかと私は思います。
#43
○川村委員 そうしますと宮城さんのおつしやるのは、羽織漁師にやるなということでしよう。
#44
○宮城公述人 先ほど申しましたように、漁業を経営する者と漁業に從事する者と申しておりますから、羽織を着ておるか着ていないかということは客観的判断でございますから……。
#45
○川村委員 もう一つ松田さんにお伺いしたいのです。聞漏らしの点があるようですが、昭和二十年の八月以前の財産というように聞いたんですが、以後か以前かわからないのですけれども、それを無効にせよというように私は聞いたように記憶しております。この点どういう御意見か、もう少し徹底的にお話を願いたいと思います。
#46
○松田公述人 お答え申し上げます。昭和二十二年9月十八日だと思いますが、農林省令によりまして、水産業團体の財産の移動停止が出ておるのであります。私の申しましたのは、昭和二十年の終戰時から以後の漁業会の財産の移動は一切あげて移動を無効にせよということです。不正があれば、これを無効としてこういうことをやつて行けてということであります。
#47
○川村委員 それから現在の漁業会の役員は、今度の協同組合に参加してはいけないという意味のお話もあつたようであります。たとえば役員中にりつぱな人があつても全然入れるなという御意思かどうか、これも松田さんにお伺いいたします。
#48
○松田公述人 私の申しましたのは、戰時中漁業会の役員であつた方の、その村における協同組合の役員の就任の禁止であります。もちろんその中にはいい方もおありでしようが、これは漁民の皆さんの総意によつて決定して行けばいい、こういうように私考えております。
#49
○川村委員 これも松田さんでございますが、中央水産業会の役員を追放せいというのは、これは漁業会から追放せいというのですか、中央水産漁業会のような連合会から追放せいというのですか。
#50
○松田公述人 私の申し上げました意味は、縣水並びに中水に戰時中役員をなすつていらつしやつた方は、これを就任禁止をしろということであります。
#51
○川村委員 わかりました。
#52
○西村委員長 では本日の公聽会を散会するに先だちまして、委員長より委員会を代表して、長時間御熱心に御意見を発表くださいました公述人各位に対しまして、厚く感謝の意を表します。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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