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1948/11/24 第3回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第003回国会 水産委員会公聴会 第2号
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1948/11/24 第3回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第003回国会 水産委員会公聴会 第2号

#1
第003回国会 水産委員会公聴会 第2号
昭和二十三年十一月二十四日(水曜日)
    午前十一時六分開議
 出席委員
   委員長 西村 久之君
   理事 冨永格五郎君 理事 藤原繁太郎君
      石原 圓吉君    川村善八郎君
      關内 正一君    仲内 憲治君
      平井 義一君    佐竹 新市君
      庄司 彦男君    野上 健次君
      矢後 嘉藏君    大森 玉木君
      小松 勇次君    椎熊 三郎君
      三好 竹勇君    鈴木 善幸君
 出席公述人
      淺原源八郎君    井元 米吉君
      小高 熹郎君    片柳左右吉君
      楠  慶治君    工藤 重男君
      里中 政吉君    庄司 東助君
      田浦 直藏君    高野 源藏君
      西山 兼松君    船山 信一君
      堀邊 虎猪君    宮崎 新一君
      山口 明則君    山口 治洋君
      米澤  勇君
 委員外の出席者
        專  門  員 小安 正三君
    ―――――――――――――
本日の公聽会で意見を聞いた事件
 水産業協同組合法案、水産業協同組合法の制定
 に伴う水産業團体の整理等に関する法律案及び
 漁業権等臨時措置法案について
    ―――――――――――――
#2
○西村委員長 これより水産委員会公聽会を開きます。一昨二十二日に引続き、水産業協同組合法案、水産業協同組合法の制定に伴う水産業団体の整理等に関する法律案及び漁業権等臨時措置法案について、公述人各位より御意見を聞くことにいたします。
 公述人より御意見の発表をお願いいたしまするに先だち、委員長として委員会を代表して、公述人各位に申し上げます。三法案について本日ここに御発表くださる各位の多年にわたる経驗と研究とに基く忌憚なき御意見は、必ずや大衆の声として、本委員会における審査に一層の権威を加うるとともに、その万全を期せしめ、もつて國民の代表としてのわれわれの使命達成に貴重なる参考となることを確信いたし、ここに深甚の謝意を表する次第であります。
 なおこの際念のため公述人各位に申し上げます。衆議院規則第八十二條、第八十三條及び第八十四條により、公述人の御発言の場合は、委員長の許可を要することになつております。またその御発言は、意見を聞こうとする事件を越えてはならないことになつております。なおまた委員より公述人に対する質疑はできるのでありますが、公述人より委員に対する質疑はできないことになつております。
 それでは会議を進めるにあたり、その順序を申し上げますが、前回と同樣、公述人全部の方の御意見発表が終つたあとで委員よりの質疑に入りたいと存じます。時間の関係から公述人一人の御発言時間は、本体十五分以内とし、御発言は発言席でお願いいたします。なお御発言の際は氏名及び職業をお述べになつていただきます。
 この際委員各位にお諮りいたします。公述人出町初太郎君は出席不能のため、北海道水産業会常務理事米澤勇君を代理として公述を許可せられたい旨の申出がありましたが、これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○西村委員長 御異議ないものと認めて、さよう決定いたします。なお東大教提近藤康男君は都合により欠席する旨申出がありました。御了承願います。なお長崎縣の井元米吉君、田浦直藏君の両人より公述の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○西村委員長 御異議ないと認めて、その通り決定いたします。
 なおこの際お諮りいたします。ただいま漁業会学校専務理事淺原源八郎君より公述の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○西村委員長 御異議なしと認めますから、これを追加して許可することにいたします。従いまして本日の公述人は十七名となるわけでございます。
 ただいまより氏名を朗読いたします。淺原源八郎君、井元米吉君、小高熹郎君、片柳左右吉君、楠慶治君、工藤重男君、里中政吉君、庄司東助君、高野源藏君、田浦直藏君、西山兼松君、船山信一君、堀邊虎猪君、宮崎新一君、山口明則君、山口治洋君、米澤勇君の十七名でございます。
 ではこれより公述人の御意見の発表を願いますが、発言順は五十音順によつてお願いたすことにいたします。
 まず淺原源八郎君より御意見の発表を願います。
#6
○淺原公述人 私は、漁村の指導的な建設青年、並びに將來漁業協同組合の職員として、漁村の建設経営に当つて行こうとする地方漁村の優秀な人材を養成しておりまする漁業会学校の経営を担当しております淺原でございます。
 今回國会に上程せられることに相なりました水産業協同組合法案につきましては、ただいま申しましたような立場から非常に深い関心を持つて、学生諸君とともにこれを研究し、各地方漁村の意見等を十分に承りまして、これに対する対策を考究しておるものであります。なおこの法案の立法に当られました農林当局のお考えというものもある程度、拜承いたしておる次第でございます。前日來の公述人諸君の御意見の中に、この協同組合法の内容の善惡をめぐつての上程の可否論がそれぞれの立場において鬪わされたのでありますが、私は、漁村の直面している現段階において、本協同組合法の一日もすみやかなる立法公布を切望するものであります。旧漁業協同組合法あるいは旧漁業会法に比べまして、今度のこの水産業協同組合法は、何と申しましても漁村民主化の上に新しい一つの進路を開拓するものであることは、識者のひとしく認めておるところであろうと思うのであります。漁民それ自体の関心が、この協同組合に対しまして非常に強いという面と、非常に弱いという二つの面があることをわれわれは考えます場合に、この強い面を代表する部面の意見のみを聞いて、関心の薄い面の立場というものを無視することは、俗に言われる沿岸三百万漁民の民主化を非常に遅らせる結果になると思うのであります。まず第一にこの新しい協同組合法の基本的な考え方といたしまして、われわれは協同組合というものをいかなる立場において強く主張するかということを考えてみますと、協同組合の本質を完全に発揮して、圧制と搾取のない協同社会を建設することが協同組合の使命であり、協同組合は民主國家として絶対的存在の價値のあることを深く認識せねばならぬということと、その次に、協同組合はあくまで自主的な自然発生的な漁民の欲求に基いて設立すべきものであり、さるべきものであつて、法律の決定によつて初めて設立せらるべき性質のものではないということ、しかるがゆえに、漁民本位に、漁民の欲するように、みずからがこれを構成し、これを設立し、これを方向づけて行かなければならないということも言えるわけであります。そしてまたその範囲をいかにするかということも、漁民の眞に啓蒙された民主的自覚によつて將來なさるべきであり、今回設定されようとするこの法律は、そのわくを規定し、その行動の範囲を規律するにすぎないものであるということを私どもはまず第一にこの際強く認識して、これが將來の完全活用というものをわれわれ魚民自身の自主的な能力によつて決定して行こうとする意欲をもつて、今度の協同組合法の上程の促進を期待するものなのであります。さような意味におきまして、いろいろとこの協同組合法の内容につきましては不備な点もあり、不満な点も多々あるのでありますが、この法律がただちにもつて漁民の將來の活動意欲というものを束縛するものではない、そのような大前提のもとにおいて、多少の不備不満というものはこの際國会議員各位の熱意ある修正にゆだねて、これの急速な審議御決定をお願いしたいと思うのであります。ただその際におきまして、これは現在の問題といたしましても、將來の問題といたしましても、特に御注意を喚起しておきたい。同時にこれはまたわれわれ漁民の不退轉の決出によつて、あくまでも將來の漁民自身の理想的な協同組合としてこれを発展向上せしめていくという理想として、一應私どもの考えていることを、この協同組合の内容として逐條的に触れて申し上げたいと思うのであります。これはお断り申し上げまするが、淺原一個の私的見解にすぎないのでありまして、学校に集まつておりまする各地方漁村の純眞な青年の意向をとりまとめまして、私が代弁するものであるということを御了承願いたいと思うのであります。
 今度の協同組合法の全体的な感じと申しまするか、そのようなものをあらゆる点から檢討して結論づけてみますると、これを大きくわけまして、資本家的な漁業者のためと、もう一つは漁業労働者的な一つの考えと、この二つの点から今度の協同組合法が立法化されているというけはいが濃厚なのであります。そうしまして日本漁業の構成の絶対的歴史的基盤でありますところの沿岸漁民、すなわち自立漁民のこの地区を区域とする漁業協同組合というものの性格、内容、経済組織というようなものが非常に弱化され、あるいはその考えの中に埋藏されているのではないかというようなきらいが多分に看取されるのであります。それは具体的に申しますると、まず第一に業種別組合の方向に対して、業種別組合というものを法的に裏づけまして、そうしてこれの経済的活動なり、あるいは政治的その他漁業に附属するところのあらゆる機能を十二分に発揮せしむるような措置が講ぜられておる。同時にまた生産組合というものが今まで実行組合的な申合せ的なものであつたものが、法的に裏づけられまして、そういう漁業労働者というものを基盤としたところの、組合活動が十分に行われるというような仕組みになつております。ところがこの資本家的な立場に立つているところの業種別組合と、場合によつては漁業労働者という一つの仮面に隠れて、これを資本家が操作しないとも限らないところの生産組合というものの両方から、地区を区域とするいわゆる自立漁民というものは挾撃せられまして、経済的にも、事業的にも、組織的にもまつたく浮き上つてしまつているということが考えられるのであります。これは非常に重要な考えをこの際いたさなければならないと思うことでありまして、私はここで一應この本來の自分の主張とするところの侵略性のない漁業という立場から、この業種別組合の組織には強く反対をするものであります。なぜならば、業種別組合として現在盛んにその素地を啓培し、そうして將來の勢力の増大が予猛せられまする機般底引組合にいたしましても、あるいは遠洋かつお、まぐろ組合にいたしましても、定置漁業組合にいたしましても、きんちやく漁業組合にいたしましても、これらは資本家の構成するところの最も有力なる團体でありまして、これらのものが任意な一つの申合せ的なものの域を出て、法的にその活動を助成されるという立場をとつた場合、これらのものがいかに強い発言力、影響力、支配力というものを沿岸漁民に対して、いわゆる零細な自立漁民に対して與えるかということは、これは一人私だけの懸念でなくして、現実の事実がそれを証明しておると思うのであります。一例を申し上げてみますと、ここにいろいろの業種組合の素地的な基礎ができまして、現在それがまだ法的にはでき上つておりませんか、申合せ的な一つの形の業種別の組合がたくさんできております。それらのものは非常に有力な指導者、有力な構成をもつて、盛んに明日の協同組合の前奏曲を奏でている。ところが沿岸漁業のために、この自立漁民のために、ほんとうの零細な力を結集して、そうして協同組合をつくろうとしているところのその動きというものは一体どこにあるか。ひとり中央に、その日食うや食わずのような連中が、まつたく細々とした立場において漁業組合結成促進協議会というようなものをやつているのでありますけれども、この力、この経済力、この行動力というものが非常に弱いということはいなみがたい事実であります。このことはとつてもつて地方漁村におけるところの業種別組合と沿岸漁民、自立漁民の組合等の明日の運命を占う一つのよいバロメーターであると考えます。こういう意味において、この業種別組合は協同組合という協同組合法の法律の中からはずしまして、從來のように定置漁業組合、あるいは遠洋漁業組合、船主組合というような申合せ的な組合において、その相互連絡をとる必要があるならば、そういう立場においてこれを規制しておいていただきたい。
 それから生産組合の問題でありますが、この生産組合というものが、漁業協同組合の正会員として加入しなくてもよいということになつております。このことは一應関係当局からこの問題についての御説明を承りましたときにも、非常に懸念される問題がありましたので、質問をいたしたことがあるのでありますけれども、関係当局の立法の趣旨というものは、漁業の零細な経営者、あるいは労働者というようなものの一つの力をここに集めて、そうして將來漁業の経営者という立場に引上げて行くところの、最も民主化をねらつた考え方であるということは一應了承されるのでありますけれども、現在のごとき漁村の状態におきまして、これが立法当局の期待するような動きをとつて行けるかどうかを考えてみますと、これは漁業労働者の零細な漁民の立場を擁護するという表面的なねらいとは別な、逆な行き方をいたしまして、漁業資本家のこれが走狗として惡用されるという憂いが多分にあるのであります。特にこれは協同組合の正会員でなくてもよいということが重大な問題であると思うのであります。私はむしろこの問題は漁業協同組合の事業の中に、漁業協同組合は漁業を営むことができるという、この一項を挿入いたしまして、生産組合というものに対する別段の規定を設ける必要がない、そうして漁業協同組合の内部的な操作においてその漁民の啓発された一つの自主的な能力において、この生産組合は漁業協同組合内部の問題として取扱つて行くような一つの方法に御修正をお願いしたい。かように考えているのであります。
 その次に水産加工組合というものが、これまた今度法的に裏づけされたという問題であります。このことは相当大きな問題でありまして、私は業種別組合及び生産組合と同時に、この水産加工組合というものが漁業協同組合と対立してできるということに対して絶対に反対するものであります。色産加工業者というものは、從來漁村を支配しておつたところのボス的存在でありまして、このような法律によつてかような行為を行当づけなくても、彼らはあらゆる手段を弄して漁村の純朴な漁民を、そのような経営の手腕に乏しい漁民を搾取する手段というものは、あらゆる点において考えておるのであります。そのようなものから漁民を擁護するという意味におきましても、この水産加工組合というものを協同組合と不離一体の形においてここに立法化するということは、非常なる漁民の不利益を來す問題でありまして、むしろもつとこのことを大幅に考えた場合には、漁業協同組合の中に水産加工者を包含する立場をとつた方が危險がない、かように考えております。
 次に結論といたしましては、地区を区域とするところの自立漁民の全國的な連合体が認められないで、業種別の連合体が認められるという形がこの法文の中に盛られているにかかわらず、こういうほんとうに日本漁業を構成するところの沿岸漁民が何がゆえに全國の連合体をつくることができないかという問題であります。この問題はまことにおかしな問題と考える次第でありまして、ほんとうに日本の漁業というものをどういう方向へ持つて行こうとするのかわからない。この水産業協同組合法の最初の目的にうたつてあるところの生産の増強であるとか、それからわれわれが自主的に考えておりますところの、この平和國家日本の再建途上において、水産業の持つている経済的地位というものはいかに重大であるか、これを通じて日本の再建にわれわれが協力して行かなければならないという立場にある現在におきまして、このようなことはまつたく逆な行き方であります。これはどういたしましてもまつたく侵略性のない、二千何百年という長い歴史を持つた沿岸漁民は、村を守つてどこにも一歩も出ようとせずに、日本の平和のために鬪つたところの漁民を、何がゆえに危險視いたしまして、全國の連合体をつくることがいけないかというのか、これは重大な問題であります。私は危險視という言葉を使つたのでありますが、もし危險がないならば、つくられてもいいものだと、かように考えているのであります。それをつくらせない原因がどこにあるか知りませんけれども、私は断々固として申し上げます。沿岸漁民は決して侵略性をもつた漁民ではない。
#7
○西村委員長 淺原君に御注意いたします。相当時間が経ちましたから、結論を簡單に願います。
#8
○淺原公述人 さような意味におきまして、この連合体の組織を認めるよう、せつかくの御努力をお願いしたいと思うのであります。
 以上いろいろと申し上げたわけでありますが、最後にこの協同組合法において、私どもとして最も大事であると思いますことは、第十一條第一項の第九号、第十号、第十一号の組合事業の内容であります。第九号におきましては漁民の福利厚生、第十号においては水産協同組合員の指導教育の事業、第十一号においては労働協約の締結、これは從來の協同組合法に認められたところの非常に画期的な、しかも重要な意味をもつた事業内容でありまして、私は特にこの第一項第十号の事業というものが將來漁業協同組合の運営上非常に重要な面をもつていると思う。この漁民に対する指導啓蒙が完全に行われるかどうかということによつて、あすのほんとうの水産協同組合法による民主的な組合ができるかどうかということを決定するものであると思う。從いましてこの水産協同組合法の施行にあたり、その施行細則の條項その他運営の面においても、政府、國会その他あらゆる面におきまして、この民主的な、教育的な、あらゆる面において立ち遅れております漁民の指導、教育に十全の力をいたされるよう、特別の御配慮をお願いいたしますとともに、この法案がかような漁民の眞の教育、啓蒙によりまして、漁民の眞に欲する協同組合法として常に前進していくように御鞭撻御指導を、そしてまた、この法案の不断の修正改善を最後に希望いたしまして、私の公述を終らせていただきます。
#9
○西村委員長 次は井元米吉君にお願いいたします。
#10
○井元公述人 私は長崎縣の一漁業者でありまして、現在長崎縣議会の議員であります。水産部の委員長を勤めております井元と申すものでございます。
 突然本公廳会に呼び出されまして、公述するあまり深い資料も持ち合さないのでありますが、私たちの待ちに待ちました新たな民主的な漁業協同組合法あるいは漁業生産組合法というものが、ようやく今回國会に上程さるるに至りましたことを、私たち漁民といたしまして深くうれしく感じておる次第でありますが、私ただ一つ遺憾に存ずるのは、この漁業協同組合と、あるいはまた漁業生産組合法というものは、このたびさらに新しくできます新しい漁業法と最も関連の深い、むしろこの漁業法というものが、われわれの漁業協同組合法の主体となるべきものじやないかと考える次第でありますが、このほんとうの民主的な漁業法の改正が伴わない以上は、いまこの漁業協同組合法をいろいろ論ずる資格はないと考えておるのであります。
 まずこの漁業協同組合法を施行いたします上におきまして私の考えといたしますることは、從來の日本の沿岸漁業というものは、わかりやすく申し上げますれば、網主とか網元とかいう資本的な、商業的なものにほとんど支配されておつて、実際魚をとる者、つまり漁業從事者はその隷属下におかれた非常に遺憾な点があるのであります。殊に現在におきましても、この漁村漁民はまだ民主化がされておらないといううらみがあるのであります。その点につきまして、今回提案されておりますこの漁業協同組合法の内容は、漁村の向上を第一に目的としたものと考えるのであります。私たちはこの漁業協同組合法案にほぼ賛成の意を表するものでありますが、從來の零細なる漁民を一人前の漁業者であるということを認めていただく上においては、新漁業法の設定が最も急を要するのではないかと考える次第であります。ところがここに水産業協同組合法が制定されまして、いよいよわれわれの協同体、つまり零細漁民がほんとうに漁業者として生きて行くことは一つの光明でありますが、從來の漁業者漁民というものは、さいぜん私が申しました通り、商業資本に頼つてきた関係上、やはり現在でもある程度はこの商業資本に隷属されておる漁民であると考えるのであります。これをほんとうに日本沿岸の漁業者ということに向上しますのには、この協同組合法案をいくら文章的にこしらえましても、あるいは生産組合をこしらえましても、第一零細漁民というものには從來資本というものがなかつたのであります。そのためにやはりボス的存在の隷属下に置かれるより仕方がない。これを制定するにあたりまして、私たちが最も政府、國会に要望いたします点は、この法律案の中に零細漁民の向上をはかる上において、漁業をみずから営む資金の裏づけがないことを私は非常に遺憾に存ずるのであります。これを政府の強力な御援助のもとに、この零細なる漁民に相当な資本を当ごうて、そうして実際その漁獲する腕前を発揮せしめるには、やはり資本の裏づけがなければならないと存ずるので、この法案の中に、でき得べくんば資本の裏づけをするような條文を入れていただきたいと考えるのであります。
 次にさいぜん淺原氏の公述されました通り、この生産組合と漁業協同組合との区別がはつきりしておらない点を私は遺憾に存ずるのであります。生産組合というものがややもすれば今でも漁村に相当蟠踞しております資本的漁業者の大きな組合としてつくられるおそれがなきにしもあらずと考えますが、どうしても生産組合というものは、実際漁業に從事する、つまりとる者の生産組合でなければいけない、この点を十分御考慮に入れていただきたいと私は考えるのであります。生産組合と漁業協同組合とを混合させないような法律案がほしい思うのであります。
 次に水産加工組合でありますが、これは漁村の実態から申しましても、漁村内に水産加工業者と漁業生産業者と対立するおそれがやはりなきにしもあらずと考えるのであります。この水産加工協同組合というものは、廣範囲の地域的にならばつくつてもよいだろうと思いますが、小さい漁村にそういうものをつくりますと、自然商業資本に漁業者が頼るということになりまして、いつまでも零細漁民、沿岸漁民の地位の向上というものははかられぬのじやないかと私考える次第でありますので、この点におきましてもよく御研究の上、実態に副うような條文をつくつていただきたいと私考える次第であります。
 最後に私の要望いたします点は、どういうわけで漁業法というものがまだ國会に上程されないかということを遺憾に存ずるのであります。この新漁業法というものがはつきりしたことでなければほんとうの漁業協同組合法あるいは生産協同組合法というものの運営が十分にいかないのじやないかと思うので、これをでき得べくんば速やかに法制化していただきたい、こういう希望を持つております。
 以上を申し述べまして私の公述べ終りたいと思うのであります。
#11
○西村委員長 次は片柳左右吉君にお願いいたします。
#12
○片柳公述人 私、漁業協同組合結成促進協議会の片柳でございます。
 一昨日の公聽会におきましても、本法案に返上論があつたそうでありまするが、私はきわめて現実的な立場から、この法案の一日も速やかなる通過を願うものでございます。しかしながらこの通過を願うにいたしましても、以下述べまするところの逐條的な修正をぜひやつていただきたいと、私はかように考えておりまするために、以下逐條的に私の修正をお願いする意見を申し述べてみようと思います。
 まず第一に、今度の漁業協同組合には絶対に漁民でないところの者を入れてはならない。つまりこれからの漁業協同組合の経営につきましては、非漁民の容喙を絶対に許してはならないというような建前をとりまして、法の第三十四條に規定しておりまするところの組合員以外の理事は断然廃止していただきたい。この法案が実際に運営される面は、地方においてなされるのでありまするが、地方的な環境というものは非常の特殊な内容を持つております。そこでこの法律の規定の上で、はつきりと割切つた規定を持つておりませんと、とかくそれが地方に参りますると、非常に惡い意味の御都合主義に流れる傾向がある。そういうような意味合におきましても、この規定におきましては、はつきりと割切つた規定をやつていただきたいと私は考えております。
 次には総代会の規定でありまするが、私はこれからの漁業協同組合におきましては、代理人の議決権もありまするし、あるいはまた文書によるところの議決もなされるというふうな規定がありまするために、絶対に総代会を廃止して、総会一本で行け、しかも今後の漁業協同組合の総会におきましては、漁村の中枢的な意義を持たせるように、きわめて深い意義を持たせよるうな総会の運営にしたらよかろうと考えております。
 第三番目には、第十七條に規定してありまするところの漁業協同組合の漁業経営の條件でございまするが、これが実際から見ますると非常に現実から遊離したような考えで規定されておる。このためにもつともつと條件の緩和をしてみたらどうかというふうに考えております。たといこの漁業生産組合のような内容まで持つておらなくても、けつこう部落協同形体といたしまして漁業経営を完全にやつておるというふうな実情があるのでありまして、こういうふうな意味合におきましても、漁業協同組合の企業経営の條件の緩和はぜひともやつてほしいというふうに考えております。これと関連いたしまして、先ほども意見があつたのでありまするが、漁業生産組合は漁業協同組合の正組合員でないということは非常におかしい。このためぜひともこの水産組合は漁業協同組合の正組合員とすべきだというふうに考えております。
 それからばほども出ましたが、連合会の経営規模の制限でございます。全國的な連合会の経営ができないということは、非常に社会的にも経済的にも、協同組合としての力が発揮できない、いわば漁業協同組合運動としては致命傷に値するものだと私は考えておりますがゆえに、ぜひとも連合会の規模の制限は撤廃していただきまして、もつともつと強力な協同組合運動として育成して行かなければならぬというふうに考えております。全國的な連合会ができない場合を考えますと、購買事業とか、販賣事業というような流通面の事業は、まつたく無力化されてしまう。このために協同組合の魅力が全然なくなつてしまつて、何のために漁民が漁業協同組合を結成したかわからないようなことになるのでありまして、この点はぜひとも全國的な連合会の結成をしていただきたい。
 それからもう一つは信用事業が地方の縣漁連でできないということになつておりますが、こういうような規定がありますと、組合金融の制度が破壊されてしまつては、実際面から言いますと、新連一本で行く場合に、常時五千万円程度の貯金残高がないと、人件費すら出ないと言われておりますが、これは実際の立場から考えてみて、正しい意見でありまして、常時五千万円の貯金残高を持つておるという地方の――現在では縣水でありますが――縣水が全國に一つもないということを考えます場合に、どうしても地方の縣水が信用事業ができるようにしていただきたいと考えます。
 それからついででありますが、漁業協同組合で行われておる事業は、非常に豊富にこの法案の規定の上ではうたわれております。しかしながら現在の水産廳の施策を見て参りますと、一方では漁業協同組合の育成をうたいながら、反面におきましては、とかく協同組合の経済事業を抑制するような規則がまま出される。たとえば現在施行されております資材配給制度のごときは、徹底的に協同組合の経済事業を圧迫するような規定であります。從いましてこれから漁業協同組合運動を育成しようというような建前をとる以上は、水産廳の施策の中に、もつともつと一貫した施策がなされなければならぬというふうに考えております。
 最後に現在の水産業團体の整理に関する規定のことであります。この中に漁業会並びに地方の水産業團体の資産のことにつきまして、その処理委員会がつくられるというような規定がございますが、この規定を見ますと、何らそこに現在の漁業会あるいはまた水産業会の役員が入つてはならぬという規定はないのでありまして、こういうふうな規定で参りますと、この委員会の中に現行水産業團体の役員が入る可能性が非常に多い。これはどこまでもやはり現在の役員は除外いたしまして、全然それとは別個な立場から委員会の委員が選挙されるべきだ、しかも縣水の資産処理委員会委員の選挙については、これは漁業会の資産処理委員会の委員の互選によつて、その委員が選ばれるべきだと考えております。
 それからこれは附帶的にお願いするのでありますが、現行の水産業團体の役員が、新しい漁業協同組合の設立の行為には絶保に参加してはならぬ。それからもう一つは大体戰時中の系統水産業團体の役員は、要後相当期間この新しい協同組合の役員になることを遠慮していただくような法的措置を講じていただきたいと、私はかように考えております。
 以上がこの法案の通過をお願いするに際しまして、特に私が強くお願いする修正の希望でございます。
#13
○西村委員長 次に楠慶治君に発言をお願いいたします。
#14
○楠公述人 私は海のない地方の者を代表いたしまして、内水面に関する意見を述べることになつております。この意味合いにおきまして一昨日來また先ほどの公述人の方からもお述べになりましたが、一番漁業に関する基本問題として漁業法をまず定めていただきたい。これを定める場合におきましては、内水面の問題と海水面の問題は全然別個な法律にしていただきたいということを、まず基本的問題としてお願いをいたしたいのであります。それはなぜかと申しまするならば、御承知のように山の谷間々々から出て來て海に臨まんとするいわゆる小さな川は、だんだん大きくなりましても大したものではありません。かような小さな水面の問題と洋々たる海の問題を一緒にしてこの問題を解決し、そこに立法しようというところに非常な矛盾があり、無理があると思うのであります。その意味合いにおきまして漁業関係法規も二通りのものにしていただきたい。基本的問題としてまずかように申し上げておきたいのであります。それではどうしてそんなことを申し上げなければならないかと申しますると、海のものは非常に大きな資本家もある。それに反して川のものはきわめて小さなものである。まるで大資本の大工業と、家庭工業と申しますか、家内工業という程度に違うのではないかと思う。また同じ國を構成する上におきまして、土地と水とある。その土地の利用の面について立法されておるものは、普通漁業に関しては、いわゆる漁業法がある。蚕糸に関しては蚕糸法があり、山に関しては森林法があり、あるいは鉱山に関しては鉱業法があるというように、土地に関しては必要な立法がされ、その上にそれぞれのものができ上つておるのであります。しかるに水の関係におきましては、今申し上げましたように、どんな大きなものでも、小さなものでも一緒にして、一本の規則が制定されておるというところに大きな矛盾があるのではないかと思うのであります。でありますから漁業法の制定に際しましては、はつきりとこれを二つにわけて立法していただくことをお願いいたしたいと思うのであります。ただ今度の漁業法の中においては、わずかに一章を設けられまして、内水面漁業というようなものが設けられているそうでありますけれども、それは主としていわゆる漁業行政の事柄をきめただけで、漁業の実体には少しも触れておらないと考えるのであります。水産業協同組合の問題も、そういうことを前提といたしまして、すみやかにこれが制定されて、実施される場合においては、その不利、不弁を認んでも、私どもはもちろんこれを円満に遂行して行く覚悟は持つておりまするが、こういう大きな点に御注意願つて、家庭漁業者とも言うべきそういう小さなものの行くべき道を、正しく導くようにしていただきたいと思うのであります。かようなことを前提といたしまして、あとは御審議の都合上二、三の條項について希望しておきたいと思うのであります。
 水産業協同組合法の第十七條の問題でありますが、今申し上げましたような前提のもとに考えますと、第十七條において、漁業を営む場合、組合員のうち左の條件のすべてを備えたるものでなければ漁業を営むことができないというところに、一号から六号に至るそれぞれの條件がありますけれども、かような條件は、河箱の漁業組合としては実際問題として、その一号、二号あるいは五表、六号というふうなものは実際上具備し得ないと思うのであります。でありますから第十七條においては、河川漁業いわゆる内水面漁業については、省令なりあるいは別な方法によつて例外規定をお設けになることを認めていただきたい、こういうふうに制定していただきたいと思うのであります。
 次に第三十五條に参りまして、役員の任期の問題がございます。ここで改正案におきましては、役員の任期は一年とする、但し定款で二年以内までは定めることができると書いてありますが、かようなことはあまりに短か過ぎまして、漁業会の運営にすこぶる不便ではないかと思うのであります。殊に第四十四條に参りまして、新しい制度としまして、役員のリコール制をお認めになつておるのであります。しかし一年の役員の任期にリコール制をお認めになるということがむりではないかと思うのであります。ほんとうに仕事をやらせてみい、いいか惡いかというのは、少くとも事業計画を立て、予算を執行し、仕事をしてみて初めていいか惡いかがわかるのじやないかと思う。それを原則的に一年と定めておいて、そこに全役員の改選を要求するところの権利をお認めになることは、きわめて不適当なことじやないか。もしもリコール制をお認めになるならば、第三十五條の任期の関係をもつて長くしまして、一年やらしてみたがこの人は二年、三年やらすべきじやない、だから改選の要求をする道を與えるというふうなことになつて行かなければ首尾一貫いたさないのじやないか、かように思うのであります。
 もう一つ、事務的な事柄でありますが、第三十八條において、通常会を一回開かなければならないということを要求されております。そしてその通常会においては何々の事項を議決しなければならないというようなことを定めてありますが、別に臨時会を開くという道は書いておりません。ですからむしろ通常会というような言葉をおやめになりまして、いわゆる通常会と考うべきものには、その年度の事業計画であるとか、予算であるとか、あるいは定期の賦課金の徴收方法であるとか、最高限度の借入金の額を定めるというふうな、事業年度の開始前にあらかじめ議決すべきものを、事業年度開始前におそくも三月末日までに、あるいは四月においてこれを定めて行くというふうにおきめになることで結構じやないかと思うのであります。そうして今まで決算を主体とするいわゆる事業報告の承認、そういうものを主体として考えたその條項には、決算終了後三箇月以内にその総会を紹集して事業報告その他処理案の承認を求めるというふうなぐあいに御改正を願つたらいかがと思います。
 それから第五十二條に参りまして、総代の定数の問題であります。総代の定数は、今度は二百人を越えた場合においては五十人以上でなければならないということをここに限定的におきめになつておるのでありますが、どうもこの数は多過ぎるのじやないか、これですと二百一人であつた場合には四人に一人の総代をつくらねばならない。もちろんこれはいろいろなことをお考えくださつておきめになつたとこだろうと思いますが、これを地方の実際に適するようにするには、この定数に二十人以上でなければならないという程度に減員していただくことが必要ではないか。しかし一面において千人、二千人というふうな組合もおありになることであります。現に私の方の河川漁業ですが、二千人以上の組合も二つ三つあります。かようなところでは二十人では適当でありませんから、二百一人を越えた場合においては五十人を増すごとに一名加える、さらに千人を越えた場合においては、百人までを加えるごとに一人を加えるというふうな三段階程度にこれをおきめになつていただくことがどうかと思います。そうしていただけば実際の上において適当に運営ができて行くのじやないかと考えます。
 漁業協同組合法案に関しましては以上でありますが、この機会に今の内水面に関しますものはほかにもおありでないようでありますから、ちよつと時間をお借りして、漁業法のことについて述べさしていただきたいと思います。漁業法の改正案によりますと、先刻申し上げたように、海も川も一緒にしていただいたために……。
#15
○西村委員長 楠君に御注意申し上げます協同組合法に関連した本日の議題外の公述は他の機会にお讓り願いたいと思います。
#16
○楠公述人 それでは今の漁業法の問題には触れませんが、とにかく先刻申し上げたように、小さなものと大きなもの、また種別の磯つたものが一緒になつておりますから、今後における立法の際においては、この面を特に御考慮くださつて、別な方法によつて提案していただきたい。このことを一言終りにお願いしておきます。
#17
○西村委員長 午前の会議はこれをもつて閉じます。午後は一時より会議を続行いたします。
    午後零時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十五分開議
#18
○西村委員長 たいへんにお待たせいたしました。これより午前に引続き水産委員会公聽会を開会いたします。
 まず工藤重男君の公述を求めます。
#19
○工藤公述人 私は漁業協同組合結成促進協議会の工藤重男でございます。この水産業協同組合法案は、私の記憶に間違いなかつたならば、第二十回並びに第二十六回の対日理事会において、世界史的角度において今後のわが國漁業のあるべき姿を論議された線と、かつまたポツダム宣言によつて要求されているところの線と、はなはだしく距離のある法案だと思う。かつまた現在の漁民が要求しているところの法案は、かかる法案ではなくして、現在最も苦しんであるところの資材し資金、そういつたものを解決してくれるであろうところの協同組合法案を望んでおるのであります。しかるにこの法案はそういう方向からはおよそ距離のあるもので――距離のあるというよりもむしろ離れておりまして、條を追うてこれから指摘して参りますが、全然漁民の要求は法案とは違い、かつまた指摘される最も大きな点は、各官廳のセクシヨナリズムに陷つたところのものがあるのであります。これだけ述べて逐條に入つて行きたいと思います。
 法案の第一條、第二條、これさえ見てもすでにその点がうかがわれるわけであります。すなわち先ほどから公述にしばしば言われたことく、当局案によれば二系五種類の組合を考えているわけでありますが、第一番に加工業、この問題だけでも指摘できると思います。加工業の場合だと、これは水産に入れてよいかどうかということは別問題だと思うのであります。これは商工協同組合法の第一條、第二條をめぐつても指摘できると思います。商工協同組合法の第一條には、商業、工業、鉱業を営む者が商工協同組合法によつて利益を與えられる。こう言われている。しかもまた水産業團体もこれに加入できるということにな誠ております。各縣から出ている漁業者並びに地方にある民主團体が、加工業を水産協同組合に入れてはいけないと主張し続けて來たにもかかわらず、なぜ当局がこれに盛つたかということは、これは各位にぜひ聞いていただきたいのでありますが、各縣水の課長並びにおそらく各地方の大きな加工業者の切なる願いであつたであろうと思うのであります。つまり具体的に言いますと、縣水産課において予算が減るということ、水産加工業者が商工省に取られて行けばそれだけ予算が減るということから、商工省と農林省の爭いがここに二系五種類の組合となつて出て來たのだと思います。こういう官廳の爭いの具に供せられているところの法案であるということが、ただこの一点からも指摘できるのであります。
 次は最も基本的な大きな問題だけ拾つて行きたいと思います。最も大きいのは先ほど言われた生産組合だろうと思います。この生産組合は、私が冐頭に言つたことく、基本的な問題としては、やはり勤労漁民の組織のすべての漁業権を解放し、そうしてその組織に國家からの資力、資金、資材を與えるということによつて、この生産組合というようなものが協同組合と同性格であるならば、これは確かに第一條の目的に掲げる漁民の社会的経済的地位の向上をはかるものと言い得ると思うのであります。しかしこの生産組合というものは――だんだん触れて参りますが、すでに現在のわが國経済の段階が資本主義の高度的危機にあるいうこと、その圧力が漁業に影響して参りまして――高度的危機とはわれわれの言う言葉でダ他面から言えば資本主義の再編成過程にあるということです。もつとわかりやすく言えば、中小商工業類、すなわち農業、漁業といつたものを協同組合によつて組織しておいて、そして独占資本によつてこれを支配して行く。もつとわかりやすく言えば、独立小生産者を協同組合によつて幻惑させておいて、そして漁業全般を独占資本が支配して行く。そういつたねらいがこの法案に脈々として流れておるのであります。それを指摘し得るところの條項は、たとえば第八十七條の協同組合の連合会の規模においてもしかり、それから第十七條における独禁法との関係においてしかり、全然協同組合というものの原則を無視しておるという点を指摘し得ると思うのであります。なおかつ最も矛盾だと思うのは、第三十四條の員外理事、ここに出て來る公述人によつてしばしば指摘されたことく、員外理事を再びこの協同組合に入れて來るということ。新しい協同組合は純粹なる自由なる漁民の自由なる意思によつて設立され、運営され、管理されるのが前提條件であります。しかるところ、非漁民的利益を反映する員外理事を再び協同組合が入れて來るという條項、これはおよそ当局が何をねらつたか全然見当のつかない條項であります。
 次は第八十七條であります。第八十七條は協同組合の連合会において事業と金融を分離しておる。これは農業協同組合法が施行されるにあたつて、農業会においても盛んに論議された点でありますが、漁業の場合においては、私の述べる二つの点からぜひともこれは合併せしめなければいけない。一つは現在漁村においては大きな銀行、大きな信託、そういうものの漁村の預金吸收の網が至るところにめぐらされております。一例をあげますと、北海道の方がたくさんおられますが、昨年度の北海道の春にしんにおいて、にしん漁は大不漁を食つた。その場合着業資金として留萠で拓銀から一千五百万円の金を借りておつたわけですが、にしんの不漁のために着業資金が返納できない。これは中金から借りることができなくて拓銀から借りたから、どんどん催促されて、持つておるところの資材を賣り拂うというような状態が出て來ておる。これは大銀行が漁村における預金の吸収に大きな網を張つておる一つの大きな例だと思います。こういつた大銀行、大信託に対抗するのに、事業と金融を分離しては全然金融の連合会はこれに太刀打ちできないということがはつきりわかるのであります。いま一つは、金融と事業を分離しては、金融の連合会も、事業部の連合会も、漁業の場合においてはともにできないということです。例をあげますと、協同組合の本質上、当局で考えられているようなこの法案によるところの協同組合でさえも、技術部門のみを担当したのでは、それから上つて來る利益ではとうてい收支償つて行かない。從つて以上二つの点から金融と事業とは、漁業の場合にはぜひとも合併せしめなくてはいけない。こういう結論になるのであります。生産組合の方でもう少し触れて行きたいと思うのでありますが、條項を逐つて参ります。
 次は協同組合を離れまして、水産業協同組合法施行に伴う云々の法律の中の第六條第二項、財産承継の登録の点であります。これは戰後出された商工協同組合、農業協同組合と大体揆を同じくしておる。しかしながら漁業の場合においては十二分に考えなければならない点があるわけであります。なぜか。それはこの財産承継の登録の場合で言うと、現在漁業会に持つておるところの船なり、施設なり、こういつたものを建てる金というものは、現在の漁業会の人たちが出しておるわけです。ところがこれが新しい協同組合によつてできた場合に、第一次加工業者、いわゆる今度の新しい法案によつて分離されるであろうところの各組合の要素がかなりの違いがあるわけです。そういうものに財産を分離する場合に、帳簿價格、もしくは最終帳簿價格によるというような、あくまでも帳簿價格によつてわけ合うということは、これはだれが考えてもおかしい点でありまして、少くとも財産を承継するならば時價で行かなければならないと私は思うのであります。この点は若干説明が足りないかと思いますが、北海道の事例を考えたらよくわかると思います。
 最後に結論的にもう一度この法案全般を言います。私は冐頭に言つたことく、結論を先に言えば、この法案は返上論であります。先ほど來公述人から、すみやかに通してくれという声がありましたが、漁民のすみやかに通してくれという声は、この法案ではなくて、先ほど私が言つたところの、やがてできるところの協同組合は、昨民の最も熱望しておるところの金と資材、こういつたものを國家で働く漁民にくれるであろうところの協同組合を要望しておるのであります。しかもその協同組合こそ対日理事会において指摘された点であり、当局としても昭和二十一年第一回目に発表された案でもあり、二十二年の一月に発表された当局案でもあるのであります。しかるに今川上程されたところの法案は、歩一歩改惡されまして、以上私が言つたような諸点のあらゆる矛盾、あらゆる協同組合の本質を冐涜する点を掲げておるのであります。かかる法案を通過させましては、漁民としてははなはだもつて迷惑でありまして、私らは漁業会の完全なる民主的解散というものを願望して、協同組合促進運動を進めて來ておるところの立場から言えば、こういう法案はすみやかに撤回し、先ほど私が指摘したような各官廳の勢力爭いとか、現状に即さない点を修正いたしまして、民主的漁業協同組合法案を上程されんことを切望する次第であります。以上をもつて私の公述を終ります。
#20
○西村委員長 次に里中政吉君の公述を求めます。
#21
○里中公述人 私は三重縣度会郡中島村、三重縣漁業振興会副委員長の里中であります。本日公聽会にお招きを受けまして、公述の機会に與えていただきましたことに対して感謝の意を表します。時間に制限もありますので、理由はなるべく省略いたしまして、要望の骨子を簡單に公述いたしたいと思います。
 水産業協同組合法案要綱の目的を達成するためには、漁業協同組合を中心として、これを基盤としてやることが、この目的を達成する上に最こ効果的なのではないかと考えるのであります。ゆえに漁業協同組合をでき得る限り強化拡充していただきたい。現在の法案によつて見まするに、生産組合あるいは加工組合と漁業協同組合とを対立的な立場において認めております。これは漁村を分立弱体化することではないかと思うのであります。かえつてこの法案の要綱の目的に副わない結果が生れるのではないかと考えるのであります。ゆえに加工組合、生産組合は任意組合として法律の裏づけから除外することが望ましいと思うのであります。そして漁業協同組合みずから漁業の自営を許すということにしていただきたいと思うのであります。さらに漁業協同組合は特殊な事情のない限り漁村部落を單位といたしまして、地域單一組合にすべきことをこの法案に規定せられたいのであります。農業協同組合の設立によつて弱小な組合が濫立いたしましたために、農村に非常に不利益を與えているという事実から考えても、これは地域單一組合というような、許す範囲における最も大きなものに強化拡充したところの組合をつくらなければならぬと思うのであります。
 さらに漁業協同組合としての基盤となるべきものは漁業権の獲得であると思うのであります。この法案には漁業組合に漁業権の帰属がどうなるかということが何ら示してないようであります。これは早晩提案されますところの漁業法案によつて示されることと思いますが、でき得るならば漁業協同組合に漁業権を與えて、そしてこの水産業法にいろいろ盛られております経済行為を営むことができるというようなことに改正をしてもらいたいと望むものであります。
 さらに金融の面につきましては、何らこの法案に中には盛られてありませんが、今日漁村が漁業経営に非常な困難を來しております大きな理由は、漁村の金融の確立ができておらぬためであります。從來復金の方から漁業者に金融がなされたのでありますが、主としてこれは遠洋漁業方面でありまして、しかも個人であります。現在漁業会に包含されておりますところの中小漁業者は何らの金融の途が開かれておらない、ゆえに現在中小漁業というものは非常な難局に立つているという実情でありますから、新しく生れるところのこの法案には、金融の途を確立することと、しかしてこれを協同組合にも貸付するというようなことを盛つていただきたいと思うのであります。他の公述人からいろいろと公述がありましたので、重複いたしますから以上で私の公述を終りたいと思います。重ねて申し上げますならば、今申し上げましたような要望を入れられたところの修正された法案を通過されることを望むものであります。私の公述を終ります。
#22
○西村委員長 次に庄司東助君の公述を求めます。
#23
○庄司公述人 私は水産講習所で教鞭をとつております庄司であります。きようは公聽会に出席するようにとのことでございましたから、私の学問的の立場からこの法案を批判して見たいと思います。
 この法案によりますれば、もちろんその目的は漁村の民主化ということが目的であるわけですが、つまり漁村の村つくり、こういうようなものをいかにするかということに具体的な方法であろうと思うのです。從つてここで漁民及び水産加工業者云々というようなことがうたわれてありますけれども、漁民にいたしましてもその階級構成が非常に複雜であろうと思うのです。御存じのような漁船を持たないで――まあその村によつて違いますし、所によつても違いますけれども、村の構成が生産手段を持たない。いわゆる代乘り、そういつたものからだんだんピラミツト型に漁村というものが構成されている。この中でいかに漁業の協同組合を運営して行くか、こういうことが結局のところ問題であろうと思います。それで漁業会の解体の問題、つまり戰時中から漁村のボス化云々というようなことで、あるいは戰時中の資材の問題、こういう問題にからみまして漁業会の解体というものがいまだになされておらない、こういうようなことも結局は漁村の階級構成に、その経済的な地盤があるだろうと思います。結局こういう実態をいかに民主化するかの方法論になつて來るだろうと思います。先ほどもしばしば言われておりますように、一体この漁業権を切離して提出するということは、非常にこの漁業協同組合法を骨拔きにするのではなかろうか、こういうことを危惧するものであります。つまり漁業権というものがどう確保されるかによつて漁業者の生活の具体的な経済行為がなされて行くのでありますから、漁業権と切離しては絶対にいけないというようなことを申します。この形式的なものが一應上から與えられております。これは漁村の現在の社会的な、あるいは政治的な意識が非常に低い、こういうようなことから一應当局でこういうようなことを立案されただろうと思うのでありますけれども、それだからといつて漁民の声を全然無視してよいということにはならないのでありまして、現在低い政治的な、あるいは社会的なものをいかに反映させるか。その表面には出ていないけれども、暗流としてそういう漁民の声はあるに違いないのですから、これをいかに民主的に盛り上げるかということが、実は上から與えられるところのものであろうと思いますけれども、形式的にこういうことを十分審議する余裕もなく、上から與えられるということにも一つの疑問があると思うのであります。戰後の水産業は、御存じのように以前の四分の一にも操業配置が減つております。このところにもつてきまして、大資本漁業会社やいろいろな人社が、同じ漁村が働くその漁業で資本主義的な競爭をやつて行かなければならぬ。ここで漁民がいかに保護されるか。こういうような面を考えますと、資金や資材、そういうものの國家によるもう少し具体的な援助機関というようなものが、もつとこの法案でうたわれてよかつたのではなかろうかと思うのであります。協同組合に法人税をかけるというような問題は、ただでさえも税金で悩んでいる漁民をもう一ぺん税金で苦しめるという結果になるのではなかろうかと思います。先ほどもどなたかおつしやいましたように、水産加工業というものが法的に今度は確保されて行く。そうしますと、漁村でもつて生産條件の有利な上層の人たち、こういう人たちは結局都合のよいときは漁業協同組合のメンバーとして活動して行く。次に自分の利益をもつと具体的に表現する場合に、水産加工業云々、こういうようなところで働く。つまり二重人格的に働く。こういうことになりますと、せつかくの協同組合を中から撹乱するよ女な結果になるのではなかろうかと思うのであります。そしてまた連合会で信用事業と実質的な漁業を並行してやれない。こういうことになりますと、御存じのように漁業というものは、最も季節的に影響されるところの産業でありますから、信用なり資材なりそういうものが、具体的にその漁業の要求するときに迅速になされねばならぬ。こういうような要求が漁村の方から盛り上りましても、そういう信用事業と実質的な漁業というものが連合会あたりで別々になされますと、そういう事務的な連絡も不円滑に終るのではなかろうか。つまり漁村でもつて蓄積したこの資金を、直接漁業の再生産のためにもう少し具体的に投下されるような考慮が願いたい。こういうことを希望する次第であります。また漁民と申しましても、漁民というものが漁業從業者というようなもので、漠然と表現されておりますけれども、漁民の中には、純然たる漁業労働者がおる。この漁業労働者は現在のところ一般労働法も不適用、そういうもので法制的に保護されていない。しかも漁業從業員という漠然たる表現で、この水産業協同組合のもとで一應包含するとされましても、結局ちゆうぶらりんな形になりまして、具体的な保護を受けない。そうしますと、漁村において最も多数の人口を占めるところの漁業労働者の利益が、どこにおいて具体的に保護されるか、こういうようなことを思うのであります。漁業協同組合を、実は漁村の村づくりというような廣い立場から考えますと、漁村は水産にのみ関係しておるのだ、こういうような一つの定義も疑問でありまして、漁村といいましても半農半漁だとか、いろいろな樣相を持つておりますし、漁村の文化的な、あるいは経済的な安定が、單に漁業生産だけに依存するのでなく、もう少し、たとえばそれに畜産業を加味するとか、いろいろな多角的な経営方法が將來当然考えられねばならないと思う。單にこれだけのことで、廣がりのある経済活動が伸縮的にできるかどうか。こういうことをここでまた思わざるを得ないのであります。それでこの法案が出ます上には、相当時間的にも遅れておるのであります。遅れた理由は、さつき申しましたように、漁村の階級的な構成だとか、いろいろな原因で遅れた理由が当然あると思うのです。この遅れたものをただ時間的にのみ取急いでこれを一挙に通過させるとか、そういうようなことになりますと、かえつて遅れた理由を抹殺する。こういう結果になるのじやなかろうか。從つてもう一ぺんここで十分遅れた理由を生かして、十分ここで討議をされて、最初の目的にありますように、漁村の民主化、こういうようなものを具体的に――形式なものではなくて、具体的に遂行し、そうして明るい漁村と、経済的にゆたかな漁民の生活を確保しなければいけないのじやなかろうか。こういうことを結論として申し上げる次第であります。
#24
○西村委員長 次に高野源藏君の公述を求めます。
#25
○高野公述人 私は北海道の水産物製造業会の会長であり、同時に集出荷機関の社長を勤めておりまする高野であります。
 率直に申し上げまして、今度の水産業の協同組合法案の内容には、もちろん幾多批判すべき点もあります。また改正を要する点もあろうと思いますが、しかし現在の北海道といわず、あるいは長崎といわず、各方面の情勢は一日も早くこの法案の通過を願つておるのであります。すでに農村におきまする協同組合法が通過してから約二年間を経過しておる。その間日本全國におきまする漁民は、この法案の通過の遅れたことによりまして、ほとんど半身不随のような状態になつておる。先ほど來いろいろ各方面からの貴重な御意見もありまして、いろいろ法案に対する非難もありましたが、私としては、少くとも一日も早く今度の議会においてこれを通過さしていただきたいと熱烈に考えておる次第であります。今度の法案のうちに盛られました特筆すべき問題といいますならば、漁業生産組合を認めたという点が、点、第二点は会社たる法人の加入を禁じたという点、第三点は、連合会の設立にあたりまして信用連合会と事業連合会を分離した点、その他小さいところにはいろいろと從來の法案と異つた点がありますが、大体においてこの三点に帰着するのではないかと思われるのであります。漁業生産組合を認めた点についてはいろいろと御議論がありましたが、私としては漁業生産組合は的確にこれを促進してもらいたい。今日までの漁民の苦しみは、自分自身の力によつては船も買うことができない、網も立てることもできないということであつて、そういう漁民の数は相当に日本に多かつた。そしてこの状態を打開して行くために、われわれとしては漁業生産組合の円満なる発達をこいねがつておつたのであります。もちろんこの法律の内容を檢討してみますと、幾多改正してもらいたい点があります。口では一口に民主化と言いますけれどもほんとうの企業体として立つて行くところの漁業生産組合の役員をきめるのに、選挙でもつてきめる。いかに民主主義の世の中であるといいながら、そういうことで円滑なる企業、円滑なる漁業というものは絶対に達成できないと私は思います。その他資金の構成に対する確たる見通しもついておりません。しかしながら、これはおそらくやがて來たるべき國会に提案されるでありましようところの漁業法案とのにらみ合せによつて、除々に改善して参りましても、その主的は十分に達成し得るものと私は考えます。
 第二点の会社たる法人の加入を禁止したという点、これは考え方によりますると、会社は相当の資本を持ち、相当の人材を持つておるから協同組合法によつて擁護する必要なしとの御見解と存じますが、現在津々浦々の漁村におきまするところの会社組織になつておるその内容は、必ずしもこの法律によつて拒否するに足るだけの資力と人物を擁しておるかどうか。最近金融情勢の逼迫にあたりまして、個人の企業体では何としても金融の道はつきませんので、これを打開する一つの方法として会社による企業体を組織しておる、やむを得ざる結果として、こういう法人を組織しておるという実体を見のがしては、私は日本漁村の民主化はとうてい期待できないと思います。この点につきましても、当局はもちろんのこと、法案の審議に当られるところの議員各位におかれましても、將來の宿題として十分なる御研究をお願いしたいと思うのであります。
 連合会の設立にあたりまして、信用を扱う信連と事業連とを区別いたしました点は、農業方面においてはもつと細分化されておりますが、漁業の場合にはそれではとうてい事業が完遂ができないという点から二つに分離化したものと思います。從つて農村よりは幾分緩和されております。しかし現在の日本の各方面におきまする状態を考えまして、はたして事業連合会と信用連合会とを並立することが可能であるかどうか、事業連合会の方はどうにかこうにかこれは間に合つて行くと考えますが、これから分離されましたところの信用連合会というものは、はたして存立の可能性があるか、今日のところ遺憾ながら私はその見通しがつきません。おそらく信用連合会というものは成り立たないのではないかというふうに考えます。私はかつて北海道の水産会にも関係したことがありますが、おそらく日本で一番大きい地方連合会としては、北海道の北水であろうと思いますが、この北水の場合を考えたときにおいてさえ、なおかつ信用連合会と分離して存続の可能性ありとは考えられません。この点はどうぞ十分に御研究いただきまして、もしこのたびの法案に盛ることができませんならば、適当の機会に修正をお願い申し上げたいと思うのであります。
 最後に今朝來この法案の中に加工業の團体を認めたことは、いかにも漁村の民主化を阻害するかのごときいろいろなお説がありましたが、もちろんこれは貴重な資料として私どもも耳を傾け、將來ともに研究の材料とするのであります。しかしながら私の考えといたしましては、むしろ現在の法案さえ手ぬるしと考えます。現在の法律案によりますると、加工業者にして漁業協同組合に加入せんとするものはこれを認める條項になつております。しかし認めるけれども利用については十分に利用させない。役員の選挙に対しましても投票権もなければ発言権もない。これでどうして日本の製造加工業者を擁護することができますか。一説には加工業者は地方のボス的存在であり、搾取機関であるという非難を受けております。あるいはそういう点も一部あるかもしれぬのでありますが、しかしながら少くとも漁村に関するすべての問題は漁民の手でなければいけない、漁業協同組合にあらずんば漁村に関するすべての問題を扱つてはいけないというかたくな偏見が、もし日本の漁民の一部にありましたならば、これは重大なる誤りであります。戰爭前の状態を考えますると、加工業者は工業組合あるいは商業組合として事業の運営をいたしておつたのであります。しかもこの商工業組合法によつて運営されました製造加工業者というものは、漁村においてはまつたく漁業協同組合とは対立的な鬪爭的な氣分を持つて対しておつた。こういうことでは日本の漁村の明朗化を期することができないというので、途中からいろいろ檢討されました結果、水産業團体法によつてこれらの問題を解決し、相ともに助け合つて日本の漁業の振興に資しなければならぬというので、今日のような歴史をたどつて現在の姿になつておるのであります。少くとも漁撈に放出されますところの資金、生産加工業に放出されますところの資金、資材、品物の集出荷に放出されますところの資金、これにはおのずから限度があり区別がある。漁村人が自分が営もうとする漁撈に対する一切のものを、何でもかんでも自分がやるのだ、船も自分の手でつくるし、資材も自分の手でつくるのだ、とつた魚は自分の手で賣りさばき、加工も自分の手でやるのだ、ないしは協同組合の中にすべてを包含するのだという大それた考えをもつて進みますならば、日本の漁村は一鮮にして崩壞すると私は断言します。少くとも漁民はあらゆる知能をしぼり、あらゆる金融を願いまして、一生懸命になつて魚をとることに專念してもらいたいと思います。とられましたものは適当の機関によつてあるいは集荷され配給されましよう、またそれを高度に加工することによつて輸出することもできるでありましようし、あるいは台所の問題も簡單に解決されて参ります。最近北海道の方に参りますアメリカの人々の話を聞きますと、日本ほど製造加工というものに幼稚な國はないということを言つております。もちろん研究も足らぬのでありましよう。しかしながら今日までこれを助成するだけの機関が日本に欠けておつたということは、一目瞭然であります。この問題を解決することが、ほんとうに日本の漁村の民主化をはかり、漁業者をして安心して自分の職業に從事せしめるゆえんであろうと私は考えております。この意味におきまして、さらに進んで私申し上げたいことは、少くともこの法案に盛られましたところの加工協同組合連合会に関する限りは、もちろんこれは暫定的でもよろしいのでありますが、事業連合会と金融連合会とは、同じ主体のもとに、同じ機関のもとに実行できるように何とか特別の御配慮を願いたいと思うのであります。
 最後に、事務的の問題になりますが、これはぜひひとつお願いいたしたい問題であります。それは水産業協同組合法の制定に伴いまして、水産業團体の整理に関する法律案、この中の第十二條に、この法律を施行する場合におきまして、総会を開かなければならないことになつておりますが、この総会を開くにあたりまして、会員の五分の二以上が、自分から出席しなければ、この会議は成立しないというような條項があります。この條項によりますと、少くとも北海道、長崎縣――その他の縣も多少類似の点はあろうと思いますが、この二つの製造業会だけは、特別の手続をしなければ永久に総会は不成立に終ると思います。現在北海道の製造加工業者は約二千名おる。この條項によつて総会を招集することになりますと、八百人の人間を札幌なり、小樽、函館に招集しなければならぬという現状にあります。そういうことはとうてい不可能な問題でありますので、これは何らか特別の手段、方法によりまして、あるいは農林大臣の緩和規定をどこかに設けてもらつて、そういう方法によりまして、この問題の打開をお願いしたいと思います。これは單なる事務的な問題ではありますが、もしあくまでもこの法案によつて実行されることになりますと、おそらく北海道と長崎は、永久に最後まで総会ができないということになりますので、とくとこの点は御了解を願います。はなはだ簡單でありますが、以上をもちまして私の公述を終ります。
#26
○西村委員長 次に田浦直藏君の公述を求めます。
#27
○田浦公述人 私は長崎縣で水産業を営んでおります。そうして漁業者の代表として縣議会に出まして、水産委員をいたしております田浦と申します。私ども多年の希望でありました水産業協同組合法案が、本議会に提案される運びになりまして、業者の声をあまねく聞く会を催されましたことにつきまして、非常に感謝の意を表するものであります。
 私もただいま北海道の方からお話がありましたように、この法案の内容をしさいに檢討いたしますると、いろいろ修正その他意見もあるのでありますが、何と申しましても、現在の漁業会の制度におきまする漁村の運営というものは、非常に行き詰まつておるのでありまして、一日も早く民主的な法案が成立いたしまして漁民の漁村を運営する方途を明らかにしていただきたい。こういう声は私ども長橋縣下におきましても満ち満ちておるのであります。この意味からいたしまして、ここに多少の意見がありましても、一日も早く法案が成立いたしますことを、私は切に関係の皆樣にお願い申し上げたい、かように存ずるのであります。ただこの法案が、私ども拜見いたしましたところによりますと、大体民主化されたものでありますけれども、いわゆる漁村民というものは、御承知のようにまだ非常に封建的思想の拔け切らない関係上、この民主化された法案の運営にあたりまして、いささか危惧の念を持つのでありまするがゆえに、政府当局並びに地方廳におきましては、十分その指導に万遺憾なきを期せられたい。かようなことを特に切望する次第であります。私はこの内容につきまして、もしこの議会にこれが修正意見として取上げられることができますならば、まことに幸いでありますけれども、前申し上げましたように、この法案の成立を私どもの業者は一日も早く望んでいるのでありますから、このままで成立するといたしましても、將來残された問題として、ここに一、二点希望を申し上げてみたいと思うのであります。
 今いろいろ御意見がありましたが、この水産組合は一つの生きた組合として設けられることには異存がないのでありますが、私ども長崎縣の実情からながめましたときに、この水産加工組合というものは、漁業協同組合と分離することはいかがなものであろうか、かようなことを考えているのであります。他の縣の実情は詳しく存じませんが、長崎縣はほとんど漁業者自身が漁をいたしまして、その家族なり、あるいは手のすいた者が加工業を営んでいるというのが実体であります。大きいカン詰業者、輸出品というようなものはしばらく別といたしまして、漁村を形ずくつております加工業というものは、いわゆる漁業者自身がやつている。これは一つの家庭の副業としても非常に望ましいことでありまして、私はできますならば、この加工組合は、町村地区においてはお認めにならないような法案を希望するのであります。あるいは郡、縣等を單位といたしました連合会は、場合によつては必要があるのではないか。かようなことを考えているのであります。
 それから連合会の問題でありまするが、連合会はこの案によりますれば三山を越えることはできない、あるいは地区も自由になつておりまして、二組合以上の單位があれば、どんな連合会でもできるように規定されているようでありますが、私は連合会の持つ使命から考えまして、でき得ますならば、地区を少くとも一縣一地区くらいに制限していただき、この連合会の事業も、わが長崎縣で現在やつております農業会の実際からこれを檢討いたしてみましても、購買事業、販賣事業、利用事業、指導事業というように、四つくらいに連合会を分離して、そしてそのおのおのの分野においてこれを経営して行くというようなことにいたしましたならば、從來の経驗から見ましても非常に都合よく行くのではないかということを考えるのであります。特にこの法案の内容に指導的方面に非常に欠けた点があるのではないか、漁村は御承知のように漁民の経蒙運動をやらなければ、いかにここにりつぱな法案ができましても、運営上非常に難点があるのではないかと考えますので、特にこの連合会においては、その所属いたします組合並びに組合員の指導に当分重点を置かなければならいのではないかと考えるのであります。そういたしましてこれらの各連合会が持ちますところの事業と十分横の連絡をとりまして、指導方面に要します経費のごときものは、その他の利益を得るところの連合会の事業部門から、相当優先的にその経費をとる。そうして漁村民の啓蒙運動を十分ならしめるという動向に向わなければ、ほんとうの漁村の民主化というものは望まれないのではないかということを考えておるのであります。とにかくいずれにいたしましても、私どもが望んでおります本法案を一日もすみやかに成立さしていただきたい。ただ私どもが長崎縣の現在の実態からながめましたときに、連合会というものをこの法案のように自由に設立することができるといたしましたならば、現在長崎縣にいわしあぐり網業者によつて設立された一種の申合せの連合会みたようなものがありますがその一つの業種によつた連合会というものが、その業者が受ける利益は非常に多いかもしれませんけれども、漁業者の状態からながめましたときは、非常にそこに弊害があるのであります。つまり現在のように資金難あるいは資材難の時に、このあぐり網組合というものが一つの勢力を得て相当働きかけまして、縣に配給されます資材あるいは資金という面に活発に動いている。そのために他の零細な漁業者は非常に困つている。いわゆる一種の庄迫を受けておるというような実例もあるのであります。私はこの協同組合の本旨から考えまして、連合会は少くとも縣單位にして、縣下全体の水産業者の共同の利益をもたらす機関としての設立の意義を持たせたい。かように考えておるのであります。私、今製品の方の集荷組合にも関係いたしておるのでありますが、集荷組合の実態からながめてみましても、やはり水産業者の團体というものは、経済行為をやる場合において、縣内においてたくさん濫立するということは、他の第三者に対抗いたします場合に非常に力が弱くなるということを痛感いたしておりますので、特に連合法の組織体については、こうした希望を持つております。
 その他細目にわたりましては、專門家各位の御檢討の結果、ここに成案を得られておることと思いますから、とにかくいずれにいたしましても、一日も早くこれを法文化しまして、そうして実施いにしましたあかつきにおいて、いろいろ支障のあります点は、その都度改正をお願いするということにお願いいたしまして、簡單でありますが、私の公述を終りたいと思います。
#28
○西村委員長 次は西山兼松君の公述をお願いいたします。
#29
○西山公述人 私は北海道の漁業青年同盟、現在北海道の地区内の漁業会長をやつておる者であります。また北海道の協同組合の設立促進協議会の発起人代表をやつております。私の考えておりますことは、前に申し上げました人々によつてその大方が盡されておりますので、ごく簡單に私の意見を申し上げて御参考に供したいと思います。
 まず第一番に協同組合法の制定にあたりまして、私たち漁民として考えることは、この協同組合法は單に現在の沿岸漁業を現在のように低位な原始産業のレベルに置いて、それを前提とする零細漁民の生活保護法的な考え方であつてはならない。われわれがややもするとそういうふうな考え方に惰するということは、從來の封建資本によつて不当に漁業が庄制を受け、搾取され、そのために今日のような低位な原始産業として放置され、漁民がこのようなレベルの低い生活に追いやられたのであつて、もし今日そういう不当な搾取資本から解放された場合には、漁業が近代的安定産業たり得るのでありまして、從いまして漁民の、他の階層と同じような向上した生活が得られるのであります。從つてこの法によつて、われわれは單に一利己的なところの、温室的なところの恩惠を受けようというふうな、そういうけちな考えは持つていないつもりであります。大体第一番に、この協同組合法によるところのいろいろな組合、特に加工協同組合におかせられましては、われわれの先輩であり、かつては水産業を御指導いただきました高野さんからるる御説明がありまして、私も原則的には同感であります。しかしながら加工者というものは、北海道の実態から見る場合、長崎縣の方が仰せられましたように、業主の一貫作業としてなされる場合は特に加工協同組合というものを設ける必要もない。加工業というものは、大体において業主の搾取の上にその基盤を持つているのが從來の姿である。第一次加工のように業主の一貫作業としてやる場合は、これはむろんそうではないが、大体加工原料をなるべく安く手に入れ、加工業者が利益追求を目的としておる限りいなめない事実なのでありまして、從つて從來のそのような封建的な、あるいは資本主義的な経済組織がこの無血革命によりまして是正されるとしたならば、われわれは相互理解によるところの組合組織をつくるべきである。從つて加工協同組合は、あくまでも商工法に基くところのりつぱな分野として、漁業者との間の相互理解によるところのそういう組合がつくられるのがほんとうではないか、かように考えるのであります。從いまして加工協同組合は直接の漁業生産の助長を目的とするこの漁業協同組合法からは当然除外していただきたいと考えるのであります。またこの水産協同組合につきましては、從來漁業会等におきましても実行組合という申合せ組合がございましたが、今度の水産協同組合は、立案者においてはどういう御趣旨がありましたかは詳細知ることができませんが、われわれが前に実行組合を水産協同組合と独立させたゆえんのものは、低位な生産力を組合員の共同資本によつてまず第一番に生産力を増大せしめ、それによつてこの組合の経済的自立を促進するというのが目的である、かように考えるのであります。そういたしますと、この生産組合における組合員の最高出資額の限度が非常に低い。現在の漁村の実態におきましては、一人の出資額の最高限度をこのように制限しては、生産組合の所期の目的を達成することに大きな支障が來されるのではないか。むろん出資の無制限によつて、その出資高によるところの組合支配力を否認されたかとも存ぜられますけれども、あくまでもその持株に対する配当が制限され、そうして爾余の事業の利益がどこまでもその從事員の從事の程度、あるいは利用の程度によつて配当される制約がある限り、そういうボス的な支配力を温存することができないのではないか、かように考えるのであります。
 また協同組合の総代の定数につきましては、全國の漁村の実体は私不勉強にして知悉することができないのでありますが、北海道のようにある程度廣い地域をもつてその設立地区とするところにおきましては、組合員の業態が多種多樣でありますので、せつかく総代会を招集する等のことがありましても、各人の都合が一致しないところに不成立の場合が非常に多い。その結果、総代の人数を多くすることは、大衆討議によつてボス役員の不正を防止するという点にあると思いますが、結果においては総代会の不成立によつてやむを得ず少数役員によるところの寡頭政治が行われる結果になるのではないか。このことは大体三十名以上にしておかれまして、定款等によつて実体に即した組合員自身の認定によつてこの数を定められるようにお願いしたい、かように考えるのであります。
 また次に連合会の所属組合数の制限におきましては、これも北海道を前提として申し上げるのでありますが、この三百という制限は、独禁法につながるものと存ずるのでありますけれども、独禁法は地方連合会をその対象とするものではないと考えるのであります。北海道はこの制限をもつてしては、あるいは漁民の望むところの連合会をつくることができないような結果になるのではないかとおそれる節があるのであります。
 なお地方連合会の事業におきまして、信用事業を分離することの矛盾につきましては、前の方々によつて盡されておりますが、私もそれを強く指摘したいのであります。この協同組合法の欠陷とするところは、漁民が今この協同組合法によつて強く要望されておるところの漁民の生活の向上、日本の漁業生産の飛躍的増進、このために絶対必要なところの漁業資材、あるいは漁業の金融の道が何がゆえにとざされておるか。それは漁業という一つの産業が、非常に危險が多く、不安定である。從つて融資してもその償還が危險であるところに胚胎しているのであります。しかるに連合会が、この信用事業を他の業務と同時に経営しないとしたならば、漁業会の信用程度というものが非常に低くなるのでありまして、漁業者が望むところの金融はとうてい望み得ないのであります。もし政府が復興金庫のような國家資金をもつて、この不当に低位に置かれたところの水産業を飛躍的に発展せしめるために、特別の措置をもつてこの漁業振興の助成のための指導的金融を計画された場合はいざ知らず、現在の事業分量等に應じたところの担保力によつて金融するとしたならば、とうてい漁民が望むところの融通が得られないのでありまして、これは漁民の相互保証によるところの制度によつて初めてその幾割かが望み得られるのであります。この段階におきまして、地方連合会が信用事業を営み得ないということは、まさにこの協同組合法のせつかくの理想も、この一字でもつてくつがえされてしまうことをおそれるものであります。
 以上、その他のことにつきましては、皆さんすでに十分にお示しになつたのでありまして、私申し上げたいことは、大体この加工協同組合を協同組合法から除くこと、水産協同組合の一組合員の最高出資額の限度をもつと適正に御勘案願いたい、総代の定数を三十名以上にしていただきたい、連合会の所属の数を地方連合会に限つてこれを制限しないこと、地方連合会には絶対に信用事業も設置していただきたい、これを委員の各位に切にお願いしまして、私の公述を終る次第であります。
#30
○西村委員長 次に船山信一君の公述を求めます。
#31
○船山公述人 私は宮城縣水産業会の職員をしているものであります。本日申し上げますことは、もちろん私一個の見解でありますが、ただそれだけではなく、私の縣でも宮城縣漁業協同組合促進協議会というものをつくつておりますが、そこでまとまつた議決にはなつておりませんが、新しい協同組合に対する要望として述べられた意見、これは大分前のことでありますので、この法案が公表されないうちのことです。それから縣と水産業会が共同主催で、水産主任官会議の際に水産部長その他が出席されて、法案の要綱を承知して來られて、それを一般の漁民に公聽会を開いたわけですが、その際の意見、こういつたようなものを織りまぜて申し上げたいと思います。
 水産業協同組合法は漁業法の改正と同時でなければほんとうのものが出ない。これはもちろんその通りでありまして、私たちもこの同時上程を望んでおつたわけですが、いろいろな事情から漁業法の方がなかなかその運びに至らない。そういうような情勢下におきましては、せめてこの協同組合法案だけでも至急上程し、成立さしていただきたい、こういうのが私の方のほとんどあらゆる漁村の要望であります。現在事業者團体法というものが施行されて、いろいろ任意組合でやつていることも困難であり、それにまた資産の処分制限令というようなものも出ている。そういうような状況下におきまして、新しい協同組合法案が出ないということは、單に水産業團体の経営を困難にしているだけでなく、漁民にも非常な不利益と混乱とを與えております。現在比較的零細な漁民の組織としましては、法的なものが水産業團体以外に何もない状態でありますが、こういう状態におきましては、水産業協同組合法の急速なる制定を要望しております。
 次に内容的に入りますが、まず第一にこの組合の種類であります。漁業協同組合とその連合会及び水産加工業協同組合とその連合会、この二本建には賛成で、原案に賛成であります。加工業協同組合と漁業協同組合とにはいろいろ意見があるようでありますが、漁業者と加工業者は利益が違う。それで加工業者は漁業協同組合へは入れない方がよいという考えであります。但し加工業者も水産業の一環でありますし、漁業者と密接な連関がある。それから加工業者といいましても、大きい加工業者ももちろんありますが、先ほどもお話がありましたように、漁業者で加工業者を兼ねておる、あるいは純然たる加工業者でありましても、非常に資力の小さい、規模の小さいものが大多数ではないかと思います。それで水産加工協同組合は商工協同組合にのつとればよいという考えもあるのでありますが、しかし同じ法律のもとでやつて行くということが望ましいと思います。そういう意味合いにおきまして、同じ法律のもとでありながら、しかし組織上は混乱することなく別建でやつて行く、そうして加工協同組合に入らないものは、一つの漁村に数が少い小さいものがおるわけですが、そういう方は漁業協同組合に准組合員として入れて行く、この点に関する限り、原案が一番よいと考えます。
 それから一つ生産組合のことですが、生産の協同化ということは、これは漁業といわず、あらゆる協同組合の最も発達した段階でありまして、農業協同組合などもこの生産協同組合という方向に大きく前進しておると思います。そういう点から漁業協同組合も生産組合の方向に行くべきであると思いますが、しかし私から申し上げるまでもなく、漁業の経営の規模が大きいのと小さいのとの違いが非常に段階がある。漁業の種類も違う。そういう観点から、漁業協同組合をそのまま生産組合のようなものにするということは非常なむりがあると思います。そういう点から、生産組合と一般の漁業協同組合とを一應分離したというこの原案に一應賛成いたします。しかしこの原案によりますと、生産組合と協同組合とは何らの連関もない。そういうところに、先ほどから問題になりました、生産組合が名前はりつぱであるが実は一部の資力ある者に陰にまわつて牛耳られる。そういうようなおそれもありまた協同組合を無力化するおそれもあるわけであります。從いましてそういう混乱を防ぐために、生産組合はある特定の漁業協同組合の下部機構ではありませんですが、漁業協同組合の組合員に限るというような、そういう案が中水かどこかから前にも出たと思いますが、そういうふうにしていただくのが一番よいのではないかと思います。生産組合は特に生産に限定されておりますから、販賣とか購買とかいう面が、ともすれば協同組合及びその連合会以外の純然たる商業資本の手がそこに伸びて來るおそれが十分にあると思います。そうなつては生産組合の性格というものは全然なくなつてしまいますから、協同組合としての性格を守るために、ある漁業協同組合の組合員の中でつくれば、その協同組合と生産組合の間におきまして相互契約というものを有効に結べるのではないかと思います。生産組合を協同組合員に限るということには組合の加入脱退の自由と矛盾するというふうに考えられるかもしれませんが、しかし協同組合に加入するかどうかがすでに自由なわけですから、その自由を前提とした上で生産組合の組合員を協同組合に限るということは、決してその自由を束縛することにはならないと思います。
 それから業種別の組合ですが、これも本來は協同組合の理想から言いますれば、業種別を認めないという考え方も出てくるわけですが、先ほども申し上げましたように、漁業の非常にたくさんあり、そうして経営の規模も大資本から非常に小さいものまである、こういうものをただ漠然と全部集めて來ても、その地域組合は活発に動かない、名前は地域組合でも一部の大きな船主だけの支配下に置かれて、特に小さい規模の人などは組合の恩惠にあずかれない、そういうような状態がありますので、こういう点から考えても業種別組合を認めて、それぞれ自分の目的に應じた活動を敏活にやれる、こういうことが必要かと思います。希望としましては、一つの市町村にたくさんの業種別組合が出ることは望ましいことではありませんが、しかしこれは漁業の運営を効果的にやつて行く上においてはかえつて必要なことと思われます。原案ではこの業種別組合は市町村を越えた地域でなければできないことになつておりますが、しかし大きい町村におきましては、町村の内部で業種別の組合をつくつた方が運営がうまく行くという所もありますので、この市町村を越えた区域に限るという制限は撤廃していただきたいと思います。二つの市町村にわたるものでなければならないとしましても、実際問題としては、甲の村と乙の村のそれぞれ二つの團体あるいは派閥があるというような場合、お互いは結びついて両方とも二町村以上という形をとるということは不可能でありますから、これはかえつて混乱させるゆえんだと思います。
 それから漁業協同組合のことについて申し上げます。原案では組合員を個人に限定しておるのでありますが、これについて先ほど御異論もあつたようですが、私としてはあくまでも協同組合の性格を守つて行くために個人に限定する原案を賛成いたします。先ほどから私が論じておりますように、今度その協同組合を必要とするものが一体どういう層であるかということをはつきりしておく必要があるかと存じます。從來漁業者という名のもとに、大資本家あるいは会社から労働者のようなものまで全部を含んでおつたわけでありますが、こういうあいまいな形ではかえつて漁業の発展が行われないかと思います。協同組合は比較的大きな資本家はそれをまたずに自力でやつて行く。また純然たる漁業労働者にも協同組合の恩惠はない。どこまでも協同組合は中小の独立の業種を中心として守つて行くべきであります。必ずしも全漁民、資本家あるいは労働者という純然たる性格のものを含む必要はない。ほんとうにそれを必要とする人だけが集まつてやつて行つて、そしてそれに國としても援助を與える。そういう方策で進むべきであると思います。
 それから協同組合の事業でありますが、これも先ほど來しばしば問題になりましたように、漁業協同組合がみずから漁業を営むための非常に嚴重な條件が原案でもつて付せられておりますが、これは大幅に緩和していただきたいと思います。これは漁業権制度の改革と引離すことができないわけでありますから、將來特に定置漁業権の帰属がどのようにきめられるか、それによつて違つて來るわけでありますが、傳えられておりますところの、漁業権は直接の生産者に與えるという方式は、何か農業の場合の不在地主をなくするという意味で非常に民主的だとは言われておりますが、しかし現実におきましては、協同組合から定置漁業を引離すことは――その協同組合は先ほども申し上げましたように、中小の漁民の組織でなければならないと思いますので、それから引離してかえつて一部の資本をたくさん持つておる人の手に移るということがありますので、はたしてそれが民主化であるかどうかはいろいろ疑問のあるところだろうと思いますが、その際もし協同組合というものがもつと原案よりも緩和した條件のもとで漁業を自営できるならば、その漁業権を一部の資本家にとられることもなく、また協同組合が單に賃貸料だけをとつてやつて行くという性格からも脱して、協同組合が眞実の経営者として漁業権をもつて行く道が開かれると思うのであります。もちろんこの漁業の自営については、生産組合をつくればできるわけでありますが、しかしこの生産組合も現実においては大きいものができないと思います。それから小さいものでしたら一部の親方及びそのまわりの人だけになつていくと思いますので、どうしても協同組合が漁業を自営する條件をもつとゆるやかにして、漁業協同組合そのものが生産組合の方向へ進めるという道を開いておくべきであると考えます。
#32
○西村委員長 船山君に御注意申し上げます。相当時間が経つておりますから、そのおつもりで簡單に願います。
#33
○船山公述人(続) 総代会はなくともよいという御意見もありましたが、しかし総代会をなくすれば、事実問題として大きい組合は総会を開けず、理事者の專断という結果になりますので、なるべく総代の人数は運用にさしつかえない限り多くして、総代会でもつてやつていくべきと思います。原案の五十名は少し多過ぎるかと思いますが、三十名以上という先ほどの御意見なら無理のないところであります。
 それから員外役員を廃止しろ、そういう御意見もありましたが、しかし現在の業者は自分の個人の経営と、漁業協同組合の経営というものを混同するおそれがございます。実際に組合の役員としての立場で組合を運用するということがむずかしいような條件下にあるのが現実でありますので、員外の役員も置けるというそういう原案に賛成するものであります。
 生産組合について一言申し上げますが、生産組合が出資の口数などが一人の者が多く持てないように押えられている。また從業員が持つように押えられておりますが、これは生産組合として当然のことでありますが、しかしこうなれば生産組合が金融の背景がなくてやつて行けない。そういう点から金融の特別の措置を法的に講じてもらうことが生産組合を守つていく上において必ず必要なことと思います。
 最後に連合会のことですが、先ほど皆さんの申されたように、金融事業を連合会から分離しないこと、これを希望するわけであります。事業を分離するというのは預金の安全というもつぱら金融業者の立場からの、あるいは國家の金融政策の立場からのものでありましようけれども、しかし漁民のためには、事業をやる連合会も、金融をやる連合会も、分離してはどちらも成立つて行かない。ぜひこれは一本でやつて行く必要があろうと思います。それから連合会の規模の制限、これも撤廃していただきたいと思います。これはおそらく経済力集中排除ということに関連する問題ではありましようが、しかし協同組合は先ほど申し上げましたように、どこまでも中小の弱小のものの結合でありまして、全國的な連関を持つけれども、決して独占に陷るということはないと思います。ことに原案のように三百以下と押えられるならば、地方別の連合会はできるでしようが、しかしこれは全國的な連合会━━どこまでも中央に向つて漁民の利益を主張し、またその政治力を高めるという意味で、地方にプロックができてもこれは大した意味がない。どこまでも中央にある全國的なものでなければならないと思います。かつ大きい業種別組合は三百以下でも連合会はつくれますからさしつかえはないと思いますが、一番中央に対して発言力がなく、その力を自分では主張できないところの零細な漁民の組織であるべき地域協同組合の連合体は、どうしても全國的なものが望ましいと思います。それはもし販賣、購買というような事業面では困難なようでありましたならば、いわゆる漁民の利益を主張し、またその政治力を高めるというような、そういう働きができるところの組織が法的にぜひ望ましいものと思います。私の公述はこれで終ります。
#34
○西村委員長 この際午前に遅刻されました小高熹郎君の公述を求めます。
#35
○小高公述人 私は日本揚繰漁業協会の会長、館山漁業会長であります。原則といたしましてこの法案が早く通過してもらいたい、なぜならば私ども当業者といたしまして、非常に宙ぶらりんになつておると迷惑する。そういう点を前提として申し上げたいと思います。
 第十一條の事業についてでございますが、まことに盛たくさんな事業が行われ、これはまことに欣快にたえないのでありますが、この事業を活発に行わしむる制度でありながら、別な考え方からこれを見ますとき、水産廳等で発令しております配給統制規則、これがどこまでも続いて参りますと、せつかくの骨子が、機能が発揮し得ないのではなかろうか、どうせ生れたものならば保護育成して行きたい。かような観点から今後配給規則等によるところの法令を出す場合に、本法の基礎をよく了として、一方においてはこれを育成し、一方においては押えつけるというようなことのないようなことが望ましいのであります。
 次の第三十四條第七項の員外理事の件についてはしばしば御意見が出ましたが、私はどこまでも員外理事の必要なし、どこまでも組合員だけで役員はつくつて行つてよろしい。なぜかならば、今までの漁業会経営の弊を見ますと、それは員外からはいつて來ました組合員外の有力者が漁業会を牛耳つてしまいまして、最近相当組合員中有力な者が出て参りましたが、これがややもすると押えつけられてしまう。眞の民主化を叫ぶならば、これらについてこの項を訂正していただきたいということを申し上げたいのであります。
 なお金融の面から考えまして、全國連合会がどうしていけないのだ。今農業における救済と並び考えまするとき、あまりにも水産の面が惠まれておらない。先般のアイオン台風によつて、この地区が洪水でかくのごとく稻が押し流され泥だらけになつて、これだけの被害があつたのだという現実を指摘し、また旱害によつてこれだけの面積の稻が焦げたのだというように、ただちに漁業においては説明ができないのでありまして、ただいま長崎縣から三重、靜岡等まではやや豊漁でございまして、長崎縣等のいわしは相当大量であるやに聞いておりますが、神奈川縣から東北一帶に大不漁でございます。こういうことを思い、何とかして考慮しなくてはいかぬと言つて、その海を見せてもこれは紺碧万里の太平洋であり、また東京湾で本年五百万貫のいわしを採捕して都民に供給せんとしたが、結果は百万貫にも達していない。見てもらえばそれは波靜かなる東京湾ではないか、こういうことを考えますとき、そこに一方においては非常に漁に惠まれておるが、一方においては非常な苦境に立ち至つておる。これを救う面として何があるかというならばそれは実に即効藥としての金融ではあるまいか。その金融が引締められておる。こういうことを考えますとき全國連合会がなぜ惡いのだ、ピラミツトの底辺が一つ一つが眞に民主化されていないならば、それは小さい山であつてもいけません、しかし底辺ことごとくが本法の精神にのつとりまして眞に民主化されておるならば、全國というピラミツト型ができても決してさしつかえはなかろう。ここに一方においては豊漁であり、貯蓄できるだけの資材等の余裕はございませんでしようが、一方においてはやや余裕があり、一方においては息をし切れないほどのすでに鼻の頭まで借金をしてしまつておる。こういう点はやがてこの傾斜が逆にならないとはたれが保証し得よう。こういうことを考えますとき金融の相互扶助的な関係においても、全國言合会をつくつて、これに購買、販賣事業を行わしめ、同時に信用事業と金融事業を併設することによつて、漁民同士の救済と言うか、融通と言うか、暗默裡にはかられるのではあるまいか。かようなことと、もう一つは金融すでに行き詰つてこのままではとにかく船も賣らなければ行けない、父祖傳來の営業権も賣らなければいかぬという際に、やはり全國的な一つの有力なる政治力をもつたこの團体によつて、金融の方途をはかつて救済せしめる。切つて血の出る痛さというものは、同業者においてよくわかることでありまして、そういう点から考えますとき、どうせつくる法案ならばもう一歩飛躍できないものか、かような氣がいたしまして、この点特に委員の方々の御考慮を願いたいのであります。
 いろいろ申し上げたいこともございますが、あまり重複いたしますので避けまして、最後に総括的なこの法案に対する意見としては、修正箇所は委員会においてすみやかに修正していただいて、今議会を通過せしむること、そしてもし時間がなくて今議会の修正ができないようなことがあつたとしたならば、次の議会の漁業法を上程する際に修正することを附帶決議として通過していただきたいことを懇願いたすのであります。
 簡單でありますが、以上をもつて公述を終ります。
#36
○西村委員長 次に堀邊虎猪君の公述を求めます。
#37
○堀邊公述人 私は高知縣の堀邊であります。私ども遠方の関係で、この法案を手に入れましたのが非常に遅かつたので、十分に檢討し盡しておらぬことを非常に残念に思つておるのであります。
 大体午前中からいろいろ公述者の御意見を拜聽いたしましたが、私は帰するところの法案をこの議会で審議して通過させてもらうか、これと相関連を持つところの漁業法と一緒に出してもらうかというところが、議論の焦点であつたように承知するのであります。私の考えといたしましては、この法案のみでは理想でない。漁業法と関連を持つものであるから、一緒に出さなければならぬという考え方と、この法案をしさいに檢討したときに、まだ眞の漁村の民主化、漁業経営の民主化でないという意見が、すなわちこの法案がこれだけ單独で出してもいけないということに結論づけられておると私は考えておるのであります。なるほどこの考えはきわめて理想的な考えでありり、非常に高邁な考えであるのでありまして、一應首肯せられるのであります。しかしながらわれわれ漁村において、ほんとうに現在の水産團体を扱つておる者、また漁業の経営の実態を把握しておる者は、そういう悠長な考え方を持つておられないというところまゐ相なつて参つておるということが、現実の漁村の姿であり、水産の姿であるのであります。またひとりこれを、われわれの言つておる從來の系統團体のみの考え方をもつてすることがいけない。こういうことを私は考える。すなわち機船底引網にいたしましても、巻網にいたしましても、かつお、まぐろにいたしましても、また定置にいたしましても、この水産團体法が現存しておるということと、事業者團体法の拘束を受けておるということにおきまして、現在の漁村、現在の水産業は私は空白時代であり、混乱時代でふると申し上げて、この漁村を認識し、水産業の現状を再認識してもらいたいと思うのであります。農村におきましては、すでに全農以下の系統團体が消滅しないうちに農業の民主化が唱えられて、農業協同組合法が通過し、今や各府縣の連合会までくつわを並べて民主化の発足をしておるのであります。しかるにわれわれ漁村の面、水産の面におきましては、われわれ沿岸漁業の唯一の中央機関であつた水産業会はすでに閉鎖機関となり、地方の水産業会は今や立ち枯れの状態である。立ち枯れの状態とは、すなわち今まで持つたあらゆる事業をそのままにくぎづけをせられて、そうして手も足も出ない状態である。これがこのままに推移するならば、次の連合会を設立する時代までには、現在の水産業会は非常な赤字を出して、につちもさつちも、手も足もてない事態に立ち至るのであります。私はこの戰時中の遺物であるところの水産業團体法を早く解消さすこと、また事業者団体法の拘束を受けておる各種の業種別團体を発達さす上におきましても、一日もすみやかにこの法案を審議していただきまして、この法案を通過させていただきまして、そうしてそのあとでしさいに檢討いたしまして、改正を願いますならば、まことに仕合せである。われわれ現在の漁村、現在の水産業は、一日も早くこの法案をそのままでもよろしい。そのままでもよろしいが、委員諸君の力において修正をすることができるならば、各公述君の意見を参酌いたしまして修正することは、まことにけつこうであります。修正をするところの余地がないとするならば、このままでもよろしい。この法案をここまで持つて來る当局の苦心は、実に並々ならぬものがあると思いまして、私は満腔の敬意を拂つておるものであります。現在のこの空白時代、混乱時代を解消するには、この法案が成立するにあらざれば解消しない。ここに結論づけまして、私はすみやかに委員の皆さんにおきましては、この法案を審議し、法律化されんことを切に望むのであります。議論は相当出ておりますので、重複のおそれがありますから、私はあまり詳細のことを申し上げることを遠慮したいと思いますが、幸いに委員会において修正の余地と時間がありますなれば、地方的な問題であるけれども、私はこの公聽会の趣旨が廣く地方の意見をお聞き取りになつてくださるのにいい機会であるということを考えまして、二、三申し上げてみたいと思つておるのであります。
 その第一点は、業種別の組合を認めておるということにつきましては、いろいろ疑問もあつたのであります。すなわちこの法案の第七條でありますが、これを見ましたときに、高知縣であるとか、靜岡縣であるとか、宮崎縣であるとか、神奈川縣であるとかいうような、定置漁業が発達しており、その規模が大きな縣においては、この規則の第七條によります定置の場合は從業者が常時五十人以上、これはきわめて小さい協同組織を認めておると思うのでありますが、これらの定置漁業の発達しておる縣においては、少くとも八十人、九十人の從業員が常時作業しておるのであります。ことに高知縣においては、これらの定置漁業は部落経営でありまして、部落が一丸になつて大式組合なるものを組織して、それがその組合員の中から一戸一名、かような制度で從來出ておることが慣習になつておりますので、相当数人数を使役しておるのであります。この五十人という制限を、七十人か八十人のところまだ持つて行つていただきたいというのが、過般の高知縣の定置漁業総会における組合員の総意であります。そういうようなことにならなければならぬというのは、次の生産協同組合の場合において、高知縣の生産協同組合が設立された場合には、高知縣の業種別協同組合は成立しないというきらいがここにあるのであります。また私はこの法案の内容について十分檢討しておりませんから、あるいは間違いかもわかりませんが、各位においてはこの点を特に御研究を煩わし、われわれ生産漁民の意見に沿うような法律にしていただきたい。
 それから漁業協同組合の組合員の資格、この点については三十日から九十日とありますが、この三十日いたとか、九十日いたとかいうような認定を何人がするかということが問題になつて、これはきわめて事務的な問題でありますから、大したことではありませんけれども、研究の結果そういうことが出て來るのであります。またしばしば問題になつております総会の問題でありますが、二百人以上に五十名以上と、こうありますれば、むしろ総会一本で行くべきではないかと考えられるが総会一本で行くときにおいては、漁業という特殊な仕事の関係上、総会が成立しないというきらいがあるのであります。民主主義から言いますならば、総意を集めるということにあるが、漁村、漁業の実体はそう行かないのでありますから、前段しばしば公述者が申し上げましたところを御参酌を願いたいと思います。
 それから生産協同組合であるとか、業種別協同組合の場合に、協同組合と労働組合と混同するの感がこの法制では十分に認められるのであります。この点につきまして私はまだ十分に研究をいたしておりませんけれども、労働組合とこの漁業協同組合とをはつきり仕わけのできるように、それがこの漁業操業に影響を及ぼさぬようなことを、特に御考慮を願つてやまぬのであります。
 その次には單位の府縣連合会から信用事業を別立てにしたということには、非常にこれは意見があるのでありまして、農村の場合もそうでありますけれども、漁村の金融状況、資金状況からいいまして、これは一本建にすべきではないか、農村におきましては七つか八つの連合会ができておるのでありますが、それができたために農村の協同体が弱体化しておるという現実があるのであります。漁業におきましては、縣は信用事業も他の事業も一本でよいのではないか、こういうのが漁民の声であります。その辺をよろしく御研究を願いまして、漁民の意に沿うようなとりはからいが願えればまことに仕合せに存じます。
 いろいろ意見も申し上げたいのでありますが、重複いたしますが、要は一日も早くこの法案を成立さしてもらうということが、われわれ全漁民、全水産業者の輿論でありまして、さようおとりはからいを願いまして私の公述を終ります。
#38
○西村委員長 宮崎新一君の公述を求めます。
    〔委員長退席、冨永委員長代理着席〕
#39
○宮崎公述人 私は全國漁村同盟の書記長宮崎新一であります。これから水産業協同組合法案についての、私の意見を申し上げます。
 漁民は民主的な協同組合法が制定されることを非常に待望いたしておるのであります。しかしながら私どもの知るところでは、全國の三百万漁民の中で、はたして現在上程されております水産業協同組合法の内容を知つておるものが何人あるかということであります。水産委員会が一昨日と本日この法案についての公聽会を開かれましたことについて、私どもはたいへん感謝をいたしておるのでありますが、もしさらに私の希望を申し上げますならば、このような全國の漁民にとつて非常に大きな影響を與える法案は、全國の漁民の一人々々が事前にその内容を十分檢討して、意見を述べる機会を持たしていただきたいと思います。今までのように、漁民のだれもが何にも知らないうちに法律がひとりでできて、そしてこういう法律ができたから、さあお前たちこうやれということでは、まつたく戰爭中に、漁民のだれもが何にも知らないうちの法律がひとりでできて、そして、こういう法律ができたから、さあお前たちこうやれということでは、まつたく戰爭中と同じてある。しかもほんとうに漁民の意思を反映した法律はできないと思います。賢明な水産委員の皆樣方によりまして公聽会が持たれて、愼重に審議が行われておるのでありますが、何とぞ一部に言われておりますように、何でもかでもとにかく通せ、あとで修正すればよいではないかというような、拙速主義はおとりにならないようにお願いしたいと思います。十分國会の権威にかけて御審議をお願いしたいのであります。全國の漁民たちは、先般も私西村委員長に同道してお目にかかりまして、このように何でもかんでも通してくれということはわれわれは希望していない。むしろばに延びても、十分檢討をする機会がほしいということを申しておるのであります。最初にこのことを申し上げておきたいと思います。
 さてただいま上程されておりまする水産業協同組合法でありますが、私ども漁民がこの法案に期待し、この法案によつて私どもの希望を貫きたいと思う二つのことがあります。それはまず法案の第一條がうたつてありまするように、漁民の経済的社会的地位を向上するということが第一点であります。第二点は漁村の民主化であります。この二つのことを私どもはこの水産業協同組合法案に期待いたしておるのであります。しからば今日上程されておりまする水産業協同組合法案は、そういう本來の性格を十分貫き得ているかどうか、この点について私どもの意見を申し上げたいと思います。
 まずその第一点でありますところの、漁民の経済的社会的地位を向上するという点でありますが、こういう漁民の要求を眞に貫くためには、今日の漁村、漁民の状態からいたしますならば、少くとも私は次のことが絶対に必要であろうと思う。その第一は、今日の漁業経営や、また漁民の生活を破壞しつつあるところの苛酷な税金の引下げ、あるいは撤廃。第二は漁民に必要なる資材を豊富かつ低廉に供給するということであります。その第三は必要な資金を十分に確保してやること、第四には経営の合理化をはかつて経営規模をもう少し大きくしてやること。最後に漁民の組織を確立して團結権の力をもたせること。少くともこの五点が今度の水産業協同組合法で貫いておらなければ、私は漁民の経済的社会的地位を向上するということはうそだと思う。この点を私は一つ一つ檢討してみたい。
 第一に、最も必要な税金の引下でありますが、漁民が水産業協同組合法によつてはたしてどれだけ税金を引下げられておるか、本法案の第八條がわずかに税金の問題に触れておりますけれでも、これはほとんど取るに足りません。元來このような組合は昔から免税をされております。先の産業組合法にいたしましてもそうでありまして、弱小者の地位を擁護し、その向上をはかるためには、このような組合を結成する大きな意義がなければならない。それは何といつても、こういう組合には税金を課さないということが第一であります。現在水産業團体にも法人税がかかつておりまするが、これは特別法人税であつて、戰爭中に必要に應じて特別に、大体はこういう組合に税金をかけないのだけれども、戰爭だから特別にかけるという特別法人税であります。今日の状態からいたしまするならば、この特別法人税は廃止して、法人税は一切水産業協同組合からは免除するというこが当然であります。ここに初めて漁御がこの水産業協同組合、漁業協同組合に集まつて行くよりどころができてくるのであります。
 それから第二、第三の資金や資材の点が、はたしてこの水産業協同組合法によつて確保されているかということを檢討してみたい。この法案で第十一條から第十六條にわたつて、漁業協同組合の事業がたくさん書かれておる。それではこういうたくさんの事業によつて、はたして組合員である漁民はほんとうに資材の確保ができるか、組合員でない者と比較して、組合員がどれだけたくさんの利益を受けるか、こういうことを考えてみたいのであります。漁業協同組合が信用事業を行うのは、これは個々では金がないから、みんなで集めて、これを使いながら今日の困難を切抜けようというのが、私は信用事業を行う意味であると思いますが、もともと貧乏な漁民が、いくら集まつてみても金はたくさん集まらない。結局集つた資金は一部の有力者が、適当にこれを自分のために使うというようなことになりがちなのであります。農業や漁業は原始産業で、從來から日本の発展のためにまつたくふみ台にされて來た産業なのであります。この産業をほんとうに一般の産業並に、漁民の社会的な経済的な地位を引上げるためには、どうしても外部からの資金的なバツクがなければいけない。これがために漁師はみすみす高利な仕込資金を借りる、あるいは商業資本のために搾取される。そうしてそれとの腐れ縁がいつまでたつても切れない。いくら漁業協同組合ができても、今日の状態では、決して私はその関係は切れて行かないと思うのであります。私は漁業協同組合に対しましては、資金や資材を最優先的に國家がバツクして供給してやる。そうしてこの漁業協同組合が発展をし、その漁業協同組合によつて、漁民の社会的経済的な地位が高められて行くということをやらなければ、漁業協同組合に入つても入らなくても同じやないか。こういうことではなかなか漁業協同組合の眞の発展はできないと思われるのであります。各種の販賣事業や購買事業、たくさんの事業を行いましても、このことによつてほんとうの利益がなければ、漁民はこれに入つてもしようがないのである。それにはどうするかというと、たとえば漁業協同組合には資材をひとつ一番最初によけいにやろうではないか。中金の資金もあるいは復金の資金も、まず第一に貸しつける。こういう條件がこの漁業協同組合法によつて備わつておれば、默つていても漁師は入つて來る。そういう條件がなければ、普通の経済事業と同じでありますから、個人でも組合でもできる。こういうことになります。
 次に第四の問題であります。社会的、経済的な漁民の地位を引上げるために、私は経営の協同化を通じて、さらに漁民の今日の経営を合理化して規模も大きなして行く。こういうことが非常に大事であると思うのでありますが、この法案ははたしてそういう面を取上げているかどうか。この法案では第七十八條以下の漁業生産組合、これについて道が開かれてあります。それから第十七條の漁業協同組合の漁業経営、この二つの点で道が開かれておるのであります。この法案を見ますと、漁業生産組合では生産組合内部の民主化というか、あるいはたとえば株主の持ち方なり、その他の点で相当進んでおると思います。また漁業協同組合の自営の点についても、そういう点については相当配慮は拂われておる。しかし実際漁業生産組合をつくつてやりたい。またそれをやらさなければいかぬという人たちは、私どもから見ると零細な漁民、あるいは漁業労働者、そういう人たちが一緒になつて自分たちも経営者になろう。自分たちの経営を大きくして外部の大きな企業的な資本家に対抗して行こう。あるいは商業資本にも対抗して行こう。こういうのが私は漁業生産組合をつくる大きな希望であろうと思う。
    〔冨永委が長代理退席、委員長着席〕
ところがそのような労働者にいたしましても、あるいは零細な経営者にいたしましても、一番必要な資金がない。資材がない。これではいくら人間だけ集まつてみても、この法律では非常にりつぱなことがうたわれておりますけれども、実際にはできない。こういうことを私は心配するのであります。この生産組合をもしこのまま法律で行きますならば、おそらく今日漁村に古く残つておりますところの親方漁師あるいは網元、そういう私どもの好ましくない人たちが、自分の経営の民主化の偽裝のために水産協同組合をつくつて行くという危險を包藏している。その危險を取除くためには、零細な漁民や労働者や、そういう人たちが集まつてできる、ほんとうの生産組合を盛り上げるための資金と資材の國家的なバツクをどうしても必要とする。これは私、法案にぜひ盛つてもらわなければこの生産組合は逆作用を起すということを申し上げたいのであります。
 次に第五の漁民の組織を確立して漁民の力を團結させるということ。これは今日全國の漁民が持つております力というものはたつた一つしかない。自分で出せる力というものは、ただ自分たちが手をつないで團結をして、その力でもつて要求を通すというその一つの力が初めて漁民の力である。それ以外のことは資金にしても、資材にしても一切のことは國家の絶大なるバツクがなければできないのであります。この法律にも第一條に「協同組織の発達を促進し」と書いてある。お前たちは力が弱いから一緒になつた力をもつてやつて行けということを書いておるのであります。この團結の力、これを漁民から取除いたら、漁民には何も力がないが、この法案によりますと、先ほどからたびたび申されておりますように、全國の連合体が持ち得ないようになつている。これは私は何かの間違いでないかと思う。たつた一つ漁民が出せる力、それは全國の漁民がみな團結をして、そして有無相通じ、相助け合つて自分たちの生活を高めて行く。これだけはだれから何と言われぬでも、自分の力でできる。それができないというような規定がこの法文の第八十九條の連合会の規模の制限の中にございますけれども、これは私は間違いだろうと思う。これは原案作成者の間違いだろうと思いますから、本委員会におかれましては、十分この間違いを訂正されんことをお願いしたい。全國組織を持てるというふうに御訂正をお願いしたいのであります。
 次に水産業協同組合法が貫かなければならないところの本來の使命の第二の点、漁村の民主化の点についてこの法案をながめてみたいと思います。これにも私はいろいろ條件があると思いますが、何よりも漁村の民主化の第一は、今日の漁民が憲法で保障されておりますところの、平等の権利をどうして持つて行くか。漁民が平等である第一の條件は、何としてもこの漁民にとつて一番大切な漁業権をみんな共通に持つことである。ある者は漁業権を持つている。ある者は持たない。そういうようなことでは言いたいことも言えない。皆が平等に漁業権を持つて、それを共同に使用して行く、こういう状態で初めて私は漁民がほんとうに平等な権利を持ち得ると思います。それには一人々々にこの漁業権を切り分けするわけには行きませんから、漁業協同組合というこの漁民の組織に漁業権を與える。そうしてみんなでもつて共同漁場を持つて行く。おれは持つ、お前は持たぬという差別をなくする。これが漁村民主化の第一歩である。ところがこの点につきましても、この水産業協同組合法については一言も触れていない。漁業法ができないから触れられないとおつしやるかもしれませんけれども、少くともそういう氣持があるならば、この協同組合法案の中に、その項目が一項なければならぬ。それがまつたくないということは、私はこの水産業協同組合法では、漁村の民主化はちつとも促進しないということを断ぜざるを得ないのであります。
 それから次に漁村の民主化を進めるときの第二の問題は、非漁民的な力を漁村の中から排除して行く。現在の漁業会を見てみますと、実際は漁民でもない宿屋のおやじであるとか、あるいは寺の坊主であるとかいうようなものが、昔漁業をやつておつたとか、あるいは漁業権を持つておつたとかというようなことで、漁業会の中にはいり込んで、これが実際にひまのない漁民の目をぬすんで漁業会を牛耳つている。これが非常に多い。こういう非漁民的な勢力はどうしても追い出して、漁民だけで漁村の漁業のことをやつて行くという状態にしなくてはならぬと思うのでありますが、それにはこの法案の第十八條でうたつてありまするが、員外理事というものは絶対にこの際排除しなければいかぬ。漁村の民主化をやろうというこの法案が、員外理事を認めるということは、私はまつたく自己撞着だろうと思う。こういう点につきましても、十分当委員会の賢明なる皆さんの御配慮をお願いしたいと思うのであります。
 次に最も大事なことは、この水産業協同組合法が漁村の民主化を進めるために、まず何よりも古いものを洗い流してしまう。新しい種はほんとうによく耕された田圃の上にまかれなければならない。雜草が残つておれば、雜草というものは必ず新しい種を踏み越えて栄えて來る。この雜草はどうしてもとつてしまわなければならぬ。だから水産業協同組合法をほんとうに漁村の民主化に役立たせるために、古いいろいろな関係というものを、この際徹底的に漁村から洗い流してしまう。それには少くとも戰爭中にこの漁業團体で役員をしておりました皆樣は、今度の水産業協同組合の中では、ある一定期間は絶対に役員になつてはいけないということを法的に措置していただきたい。その中には相当りつぱな人もおありかと思いますけれども、少くとも新しいものができるときには、古いものはすつかり洗い流す。そういうことを十分やつていただきたいのであります。
 私は二つの観点からこの水産業協同組合法案をながめましたけれども、ただいま申し上げましたように、私が水産業協同組合法に期待しておりまするところの、漁民の社会的な経済的地位を高めるという点、それから漁村の民主化を促進するという点について、非常に多く足らないものがこの法案にあることを私は非常に残念に思うのでありまして、冐頭にも申し上げましたように、どうか全國の漁民の意見を十分聞く機会を與えられて、愼重に審議せられて、もしこのような欠陷の多いものなら、私どもは通していただかなくてもけつこうだということを最後に申し上げて、私の公述を終りたいと思います。
#40
○西村委員長 次に山口明則君の公述を求めます。
#41
○山口(明)公述人 私は全國加工水産團体連盟理事長崎縣水産物製造業会理事山口明則であります。
 このたびわれわれが久しく願つておりましたところの水産業協同組合法案が本國会に上程せられましたことは、関係者にとりまして、まことに欣快であり、立案当局の御苦心のほども推察にかたくないのであります。ことに本法案におきまして水産加工業協同組合の制度が実現せられますることは、全國の加工水産業界の総意によりまして謝意を表するものであります。水産業と申しますれば漁業、水産物と言えば鮮魚、という観念が非常に強くありまして、水産加工品や水産加工業者は、漁業の從属的存在であり、あるいはまた漁村のボス的、または搾取的な存在であるかくごとくみなされておりましたことは、まことに遺憾至極であります。全國の総漁獲高の六割ないし七割は加工を施されまして、優秀なる水産加工品として漁獲物に貯藏性、保存性を與えまして、全國の農山村の僻陬の地域に至りますまで、漏れなく供給するに至らしめまするものは、ひとり水産加工業者の至上使命であり、責任の重大性を痛感しておるものであります。このように漁業と水産加工業とは車の両輪のごとく密接不可分の関係にありまして、おのおのその円満なる発展は、漁業のためにも、水産加工業のためにも、切望してやまないものであります。今回本案が國会に上程せられるにあたりまして、水産常任委員会におかれましては、二日間にわたりまするところの公聽会をお開きくださいまして、廣く関係者の意見を述ぶる機会を與えてくださいましたことに対しまして敬意を表する次第であります。
 水産業協同組合法案の立法精神に対しては、全面的に賛意を表するものでありますが、その具体的な條項に対しましては、水産業者、特に加工水産業者並びにその團体の立場より見まして、業態の実情に即せない点、あるいは加工水産業の発展に影響を及ぼすかのごとき点が二、三あるかに思惟せられまする関係上、本案に対しまする修正方を要請いたしたいと存ずるのであります。北海道の高野公述人から幾多貴重な御意見が出まして、私といたしましてもまつたく同感でございますが、業界の実情より考えました場合、あるいは独禁法やその他の関係がありまして、そのすみやかなる実現は困難かもわかりませんけれども、協同組合のその立法の趣旨等より考えまして、何とぞ次に述べます二、三の修正点につきまして、特段のおはからいをいただきたいと考える次第であります。
 その第一は、法案第七條第一項第一号ないし第二号におきまして、漁業協同組合員並びに水産加工業協同組合員に対する、経営規模に関する制限はこれを撤廃せられたい点であるます。
 その第二は、法案第十條におきまして、組合員の資格を個人に限定することなく、業を営む者とせられたい点であります。
 御承知の通り終戰後の漁業並びに水産加工業界は、インフレとこれに伴うところの推定による高額課税にたえ得ず、群小業者が相より相助けまして、法人組織による株式会社、あるいは合資、有限等の諸企業体をつくりまして、経営内容を法的に明確に表わし、課税の適正を求め、辛うじて経営を維持している実情であります。それがためこれら群小法人は、実質的にはそれ自体が一つの協同組織体であるのであります。ことに水産加工業は自由企業でありまして、法人必ずしも強大ではないのであります。個人必ずしも弱小ではないのであります。むしろ個人でも経営を維持して参つておりますものは、強大なものが残存している場合もあり得るのであります。そういう点からいたしまして、地区内におきまして業を営んでおりますところの、個人、法人、大小の区別なく、全員の総意を結集して組合を推進して、初めて協同組合の精神に合致するものであると信ずるものであります。漁村におきまして、あるいは加工業界におきまして、個々別々の、いろいろなそういう別個の同じ業態が残りますことは、漁業者並びに加工業者の福祉の増進に対して、はなはだ支障を生ずる場合が多いと信ずるものであります。個人あるいは小規模なものといたしましても、反対的な協力者は必ずしもその協同組合創設の趣旨に合致しない場合もあり得るのであります。
 その第三点は、法案第十八條第三項中に「水産加工業協同組合に加入していない水産加工業者であつて組合の地区内に住所を有するもの」こうありますが、この点はこれを削除せられたい点であります。最初に申し述べましたように、漁業の発展の歴史から見ましても、漁村における漁業者と加工業者とは車の両輪のごとく、相助け合つて來ているのでありまして、漁業あつて加工があり、加工がありまして初めて漁獲物の價値の増進もなし得るのであります。漁業者は漁業協同組合によりまして、加工業者は加工業協同組合によりまして、組合は組合とし、相互に協力することが協同組合創設の趣旨であると信ずるものであります。今もし漁村におけるところの加工業者を、漁業協同組合に准組合員として加入せしめまして、漁獲物の委託加工を行わせ、加工業者の創意とくふうによつて生じますところの正当なる利潤さえも、これを漁業者に還元せしむるごとき意図ありとしますならば、加工品の品質の低下というものは火を見るより明らかでありますのみならず、水産加工業者は完全な漁業者の從属的存在と化しまして、非民主的結果をももたらし、せつかくの水産加工業協同組合の制度創設の趣旨に反するばかりでなく、水産加工業界におけるところの本法の施行に、無用の混乱を招くおそれが多分にありますので、その正常な発展に御留意を願いたく存ずるのであります。
 その第四は、法案第八十九條における、連合会に対する地区並びに所属組合数に対する制限はこれを撤廃せられたい点であります。協同組合における連合体はその立法精神を体しまして、その所期の目的に邁進する組織体でありまする以上、すでに過去における独占的諸團体などは選を異にいたしておるのであります。しかも民主化せられましたところの今日におきましては、全國地区にわたるところの総連合体の出現を見たとしましても、それが業界に対して独占的威力を振うべき前提條件も基盤も存しないことは明瞭であります。むしろ他の各産業に比しまして、最も遅れた位置にあるところの水産業に対しましては、進んで廣域的大連合会の結成こそ奬励すべきであると信ずるものであります。
 その第五は、法案第九十三條の第二項末尾の「組合員が利用する事業の分量の総額の五分の一をこえてはならない。」とありますのを、組合員が利用する事業の分量の総額を越えてはならないと修正せられたい点であります。員外漁業によりまして、当該漁業のこうむりますところの弊害はまつたく考えられないのでありまして、当該組合の施設の有する範囲内におきまして、員外利用は当該協同組合の活動を促進強化するものでありまして、員外利用を五分の一程度に制限しますことは、全加工水産業界の振興を阻止するおそれ少しとしないのであります。水産加工業協同組合の健全な育成のためには、法案第十一條第三項、漁業協同組合員の員外利用の場合と同樣に、修正を切望するものであります。
 その第六といたしましては、水産加工業生産組合の制度に関する法案を、本法案中に追加せられたい点であります。本法案におきましては、水産加工業に対しましては、漁業の場合に見ますような生産組合の制度が認められていないのであります。零細加工業者の協同経営を締め出すがごとき感がありますことは、まことに遺憾しごくに存ずるのであります。零細加工業者の存立の上からも、また一面水産加工業の経営並びに企業の合理化の点からいたしましても、ぜひ水産加工の生産組合の制度を本法案に追加修正方を切望いたす次第であります。
 以上六つの点につきまして不備ながら私の申し述べました趣旨を御賢察賜わりまして、本法案の御審議に格別の御高配を相煩わしたく、加工水産業界並びに團体等の意向に基きましてお願いいたす次第であります。なお本法案に対しまする私の申し述べました以上の六つの修正意見の成立を前提といたしまして賛成するものであります。これをもちまして私の公述を終ります。
#42
○西村委員長 次に山口治洋君の公述を求めます。
#43
○山口(治)公述人 私は千葉縣のいわしあぐり網組合の副会長であります。先ほど來先輩各位から非常に專門的の公述があつたために、私は一漁民として、漁民がいかにこの水産業協同組合法を待つておつたかという実例を二、三申し上げて公述にいたしたいと思います。
 私ども漁業者は非常に今まで惠まれない。同じ農林省の管轄下にありながら、片方の農業会及び農業協同組合は、二年も前にできてりつぱに民主化しつつあるのであります。しかるに私ども漁民は、いまだ私どもの進むべき道しるべさえできておらないのであります。從いまして漁民はこの法案の一日もすみやかに通過されんことを待望しております。ただ私どもは、この法案の提出にあたりまして、どうして農林省が漁業法も一緒に提出してくださらなかつたか、このことを非常に遺憾に思うものであります。私ども漁民は、たいていの漁業会が第一の経済の資源を漁業権から得ておつたのであります。この法案が通りまして、私どもが協同組合をつくりましても、その組合のとるべき道、すなわち將來どうして行くかということに迷うような感があるのではないかと、一般の漁民が非常に不安に思つております。これは事実であります。從いまして私どもは、この法案を通過するにありましては、ぜひ至急に漁業法を制定していただきたい。こうお願いするものであります。
 次に水産業協同組合法でありますが、本問題を大略して檢討してみますと、資本と労働の両面からできておる法案ではないか、そう考えるものであります。この法案をこの通りにやつて行きますと、どうしても零細漁業の自力漁業者は非常に惠まれない。ただ一つここに考えさせられるのは、この業種別組合を認めたかわりに生産組合が認めてある。この生産組合の指導をよほど強力にやつてくれなければ、この自力の零細漁業者は救われないということは事実なのであります。この生産業組合は七名以上をもつてできるということになりますと、零細漁業者がこの團体を利用するの非常によくなつてくるのであります。しかしここでよほど注意しなければならないことは、この團体に資本家が入るということと、商人が入るということ、商人が入るということが一番危險性を持つのであります。その一例をあげますと、七名以上の零細なる漁業者が一生産團体をつくつても、資産には限りがあるのであります。從いまして、一つの事業を起すのには、どうしても強力なる資本家もしくは金融業者の援助を得なければならぬ。その援助がある以上は、その金のつながりで、一生懸命自分がとつて來た魚を、自由にその資本家に左右されて、かえつてうき目を見るのじやないか、こう憂うるものであります。從いまして、この生産團体の組合員は、すべからく組合員のみで組織をするようにしていただきたいと考えるのであります。そうしなければかえつて漁民を救わんとして漁民をどん底に陷れるという危險をここに感ずるのであります。
 それから次は加工團体であります。先ほど來加工團体については非常に皆さんから議論がありましたが、この加工團体は郡單位以上くらいの連合会的につくらなければ水産業協同組合と必ず対立する。私の生れは千葉縣の大原でありますが、私どもの方で、今まで加工組合も漁業組合に入つて非常にうまくその組合を運営して行つた例があるのであります。たまたまこれを忌避して組合員として加入させなかつたというときには、あまりおもしろくない例がありますが、お互いに手を取合つて包容して行けば必ずうまく行くのであります。從つて、これをあまりにも狹い地区にまで適用されることになると、將來そこに相反撥して來る傾きがあるのではないか。この点はぜひ賢明なる委員の皆さんに御考慮を願いたい。
 次に、私は、先ほど來皆樣方の希望のありました通り、員外の役員ということは絶対にのけてもらわなければならない。他から入つた役員というものは、申し上げるのもどうかと思いますが、官吏の古手か、あるいは何か押しつけむこをもらうような傾きがあるのであります。のみならず、地方におきましては、一つのボス的人物がその中に入つて來まして、かえつて組合を惡く指導するというような例もたまたま見受けられます。この問題はぜひ御考慮を願いたいと思います。
 その次に、第四十九條でありますが、この第四十九條の総会の出席定員であります。出席の定員が定めてないで、出席者の過半数をもつて決議するということになりますと、ここに非常な問題が起きるので、もしこの法案をこのまま通すのであつたならば、將來定款に必ずこの定数を挿入していただかなければ、ここに必ず疑義が起き、またボス的という非常におもしろくない非民主的な総会が成立するのではないかと憂えるものであります。以上私はかいつまんで申し上げましたが、現在の漁民は本案の成立を喜びますが、漁業法の未提案ということを非常に不満に思い、落胆しているものでありますから、ぜひこの問題を考慮に入れられて、一日も早く皆樣方のお力をもつて、私どもが安心するようにこの法案の御提出及び御審議を願いたいと思います。
 以上をもちまして私の公述を終ります。
#44
○西村委員長 最後に米澤勇君の公述を求めます。
#45
○米澤公述人 私北海道水産業会の常務理事米澤勇であります。
 私どもの待望しておりました水産業協同組合法案が今回國会に上程されまして、その審議の途上これが公聽会を開かれまして、私参画のできましたことをまことに喜びとするものでありますが、私どもが本案にまず期待いたしますものが何であるかと申しますと、まず第一にこの法律によつてわれわれ漁民の経済的、社会的地位の向上が保障されること、またこれによつて漁村の民主化が促進されること等であります。今この法案をながめますと、たとえば協同組合を構成いたします組合員はここに漁業権を平等に持つわけですが、それも單なる今回縮小されますところの根つけ漁業権その他の漁業権しか保有することができない、この点において漁業組合自体がこの法律によつて最も漁業者の生きるための必要要件でありますところの漁業権を持つことができないということは、必ずしも私はこれによつて経済的地位が保障されるものではないと思うのであります。また私どもがこの漁業協同組合法について案じますのは、まず第一に農村における農村の画期的な農地制度の改革は農業協同組合法案と並行して行われたのでありますが、この漁業協同組合法に先行すべきはずの漁業制度の改革があとまわしになるということは、何としても跛行的な連関関係であり、このことを私どもはまことに遺憾に思う。しかし現下の情勢とかいろいろの條件等を考えますと、私どもはまずこの矛盾というものを克服して、この至らざるところをわれわれの自覚によつて漁村の民主化に先行して改訂する、かような考になつて行かざるを得ないことを遺憾とするものであります。かような條件のもとにこの水産業協同組合法を審議するのでありますから、まことにむりな條件でありますけれども、現下の漁村の実情からながめますときに、この困難である窮迫時代をこのまま看過することがはたして妥当かどうか、かようなことを考えますと、ともかくこの水産業協同組合の成立に対しては各委員の甚大なるところの努力をお願いしたいと思うのであります。しかしながら私どもはただこれを急ぐのあまり、いたずらに無修正のままこれを呑吐せられることを望むものではないのでありまして、技術的に許すことができますならば、これについてはある程度の修正をも御考慮いただきたいと思うのであります。この公聽会においては漁民の言わんとするとこをは言い盡されたようでありまして、いずれも眞摯なる叫びであります。私も続いて二、三のことろ申し上げて御審議の参考に資したいと存じます。
 第一に感を深うするとこをは、協同組合の漁業権の所有の点であります。漁業協同組合は同時に漁業権を平等に保有することができるというこの一点、かくすることこそ眞に漁民が漁業協同組合を通じ、この法律を通じて経済的地位が向上保障せられるということにもなるのでありますし、また同時に税金の軽減であるとか、あるいは資材、資金の融通であるとかいう点がありましても、私どもは特殊な條件のもとに置かれる特定の人格を有するものになり下るというのではありません。漁民が漁業権を有するのは当然の権利であります。もちろん現在の漁業権を平等に保有するという点については一考を要することであろうと思うのであります。
 またいろいろ論議せられておるうちに総代の数の点等にも言及されておるのでありますが、これは私どもはかように考えたい。二百名以上の組合の場合、五十名の総代がなければならないということは常識的に考えてどうであるか、いわゆる代議制の妙諦はそのすべての意思を集約することにあるのではないか。たとえば会議を開きましても、五十人が五十人いずれも意見が大幅に違い、いずれも発言し、いずれもその意見を徴するというようなことは、実際会議を行つても行えるものではない。代議制度の妙はその意見を集約するのにあるのでありますから、これは何人以上には五十人でなければならないということでなく、協同組合の組合員の員数に比例して妥当な、会議を支障なく運営するように、円滑ならしめるような数が適当ではないかと考えられるのであります。また、生産組合についていろいろの御意見もありまするが、漁業権付與については、今度の漁業法では、もし漁業権を付與する希望の者が多数の場合、生産組合がこれに優先するという條件があるということでありますと、いろいろ生産組合については、何かと経済的な特権を付與すべしというような意見もあるようでありましたが、場合によつてはむしろ生産組合が一部の從來の資本家につながる縁故によつて、情実によつて、そういう周囲の者どもと同樣のために、これを惡用せられるおそれがあるのではないかという点も懸念せられますので、これらに対する一つの防止の方法等も考えることが必要でないかと思うのであります。いろいろ御意見が多種多樣でありました。員外理事の問題等のごときは、協同組合の成長の度合いにおいてその組織のいかんによつて、漁民みずからの自覚によつて決定されるべきものでありますので、むしろ場合によつてはかような制度を設けておくことも必要ではないかと思うのであります。連合会を設けることはよろしい。しかし私の懸音する点は、この法律をつくつて、その法律がわれわれを経済的に、社会的に庇護し、保障するものでありましても、それが空文であつてはならないはずであります。実際問題といたしまして、はたしてこの協同組合連合会が信用事業と経済事業を分離して、信用事業だけの連合会が成立つかということであります。私は北海道の水産業会の、しかもこの方面のことを担当しております。しかしもし現在の北海道における連合会ができたといたしましても、おそらくこれは成立つことはないでありましよう。かようなことになりますと、そういう法律は社会情勢、経済情勢に先行してつくることはいいのでありますけれども、全然これが当てはまらないものをつくるということでありましたらどうでありましよう。これは他にいろいろな事情もございましようが、やはり現在の場合、経済事業に信用事業を附帶せしめる以外に協同組合の行き方はないのであります。連合会の数の制限、これらについても実際現在の北海道でありましたら、三百以上になるでしよう。これは実際の問題であります。でありますからこの数の制限等は、私はあえて設ける必要はないと思うのであります。
 水産加工業の協同組合については、いろいろ議論がありました。しかしこの点については私どもが漁業についてある程度加工をすることは、漁獲物の処理の方法であつて、これはおそらく漁獲の部類に属することであり、またこれと異なつたものを第二次、第三次の加工をする場合、これは截然と工業化をするのであるから、工業の部面に分類されるのではないかと思うのであります。この公聽会において少数の、すなわち加工業を本案に包含すべしという御意見に徴してみても、その中にはやはりその性格が商業的性格、工業的性格であつて、漁業と分類すべきものであるということのように聞えるのであります。あるいはアメリカから日本の水産加工の幼稚なることを指摘されたことも、これは日本の工業科学の幼稚を指摘されたのであつて、漁業そのものではないのでありましよう。また從來まで円滑に着漁についての融資その他について協調できたという点、これはすべからく融資その他については商業的性格を含まれたものであつて、あくまでもこれは分類さるべきものであろうと思うのであります。しかもこの法案の中には水産加工業者にして水産加工業協同組合に加入しないものは漁業協同組合に加入してよろしいというのであります。でありますと、これは漁村において今後これらの対立と混乱を招來する以外何ら有意義ではないのでありまして、こういう点も十分に考慮すべきものではないかと思うのであります。本案については公聽会においていろいろ各階層から、また各観点より論議せられたのでありますが、私はこの間においてあるいは意見が重複し、あるいはこれを敷衍する等でありましたが、しかしその意見が各共通するものを持ち、熾烈であるだけに、さらにそれを強調したのでありまして、その点は本委員会において何とぞおくみとりを願いたいと思うのであります。
 また私どものお願いしたいことは、公聽会そのものが最近各地で各般にわたつて行われましても、これがたまたま形式的に流れて、まつたく公聽会は、公聽会を開くことが目的であつて、その公聽会のすべてが取上げられるという例が少いのであります。この委員會の開催にあたりまして、委員長より御懇切なる趣旨の御開陳がありました。私どもは今この法案がいかなる状態に置かれてあるか。今期國会をよほどの努力でなければおそらく通過するかしないかというその帰趨を見定めることも困難ではないかと思うのであります。しかも公聽会においては相当の修正意見も出ておりますので、技術的にもなかなか困難であるとは存じますが、われわれの意見をどうか高閣に束ねることなく、この意見をよく取捨選択いたしまして、本案をある程度すみやかに修正し、眞に漁民の民主化のためにこの法案が一日も早く成立されるよう御努力を願いまして、私の公述は終りといたしたいと思います。
#46
○西村委員長 以上で本日の公述人全部の方の御意見の発表は終りました。
 この際委員より公述人に対し質疑がございますればこれをお許しいたします。
#47
○鈴木(善)委員 宮城縣の船山氏にお尋ねしたいと思うのであります。船山氏の御意見の中に、漁業協同組合の自営の條件を緩和してほしいという御意見があつたのであります。私といたしましても漁業生産組合並びに漁業協同組合が、生産協同組合として、眞に沿岸漁業の民主的な振興発展の上に寄與することを念願するものでありまして、このねらいは同樣であります。ただその條件の緩和を具体的にどういうぐあいに考えておられるか、御参考までにお聞きしたいと思います。
#48
○船山公述人 お答えいたします。一つは第十七條の第五号の組合の仕事に從事する組合員の有する出資口数の半ば以上という、この点も具体的にどこまで引下げるという意見は今持つておりませんが、この点を私は三分の一くらいまで緩和していただきたいと思います。これは私の方で漁業会自営――そういう形で一番模範的自営をやつているところがあるのですが、そこは現実に調べました結果、この條件に当てはめてみますと、從業員の株数は五分の一しかない。これはその倍くらいは、それよりも引上げることは可能でありますが、しかし生産組合となるには多くの組合員を切捨てなければいけない。漁業協同組合の自営とすれば從業員の有する株の率が大分下まわる、そういうような状態でありまして、もしこれがこのまま施行され、また漁業法が傳えられるように改正されれば、せつかく十年ほど漁業経営としてなり立つて來たのが、資本会社という形に改組するか、あるいはどこかの漁業資本家の支配になるか、そういうような状態になるので、この点をお願いしたわけであります。それから出資額だけではなしに構成員も過半数を包含するということは小さい協同組合ならできますが、大きい協同組合でしたら全然その自営はできない、そういう結果になろうと思います。この人数も具体的に過半数を三分の一にするか、そういうことは今はつきり自信を持つて申し上げかねますが、要するに組合の人数と從業員の有する出資口数を過半数よりもさらに引下げていただければ、漁業協同組合の自営ということが可能である、そういうようなことがほかにもたくさん例があるのではないかと思います。
#49
○鈴木(善)委員 御意見はわかりましたが、ただ組合員の営む漁業に從事する者、こういう人たちの数を制限いたしませんと、いわゆる漁業協同組合が、組合員に協同で漁業を営ましめるというねらいから、この事業は組合で経営すれば相当收益があるから、從事する組合員は少くとも、他から多数の漁民を雇い入れて來てそうして組合の自営でこれを行うという、いわゆる株式会社的な非協同組合的な方向へ曲つて行くおそれがありはせぬか、そういう観点からいたしまして漁業協同組合の漁業自営は、組合員の多数の者がその組合の営む漁業に從事するという場合を建前として、あくまで組合員が出資者でもあれば從業員でもあるという、眞の協同生産の建前で行くべきではないか、こういう考え方を持つのでありますが、一面御趣旨のように、なるたけそういう制限を撤廃して、協同組合が活発にあらゆる漁業を自営できるようにという御趣旨は了承できるわけであります。
 次にもう一点お伺いしたいのでありますが、先ほどの公述の中で、業種別組合のことについてお触れになつておりましたが、この業種別組合の性格を、協同組合の本質から見てどうお考えになるかという点であります。協同組合の本質は、私の見解をもつていたしますならば、特定の性格……。
#50
○西村委員長 鈴木君、御注意いたします。委員としての御意見の発表はお控え願います。
#51
○鈴木(善)委員 業種別協同組合の本質から見て適当であるかどうかという点をお伺いしたい。
#52
○船山公述人 さきの問題に一つつけ加えますが、組合が自営する場合ほかから從業員を雇つて來る、これは非常に反対です。この第十七條の六号はこれ以上引上げられても私は一向さしつかえないと思うのです。ただ繰返しますが、定置漁業で私の方は多くて五十人ですが、――自営をやつておる所、あるいは非常に模範的な漁場を持つておるものは五十人くらいですが、そうすると百人以上の組合員があれば自営できないと思うのです。現実にそこの部落合るいは島その他には、二百人ないし三百人組合員がおるものです。このことを申し上げました。
 それから業種別の組合は協同組合としていかなるものを考えておるかという御質問ですが、私もできれば業種別がなるべく出ないで、地域で一本にまとまるということを――協同組合は同時に地域組合であるという観念を持つものでありますが、しかし先ほどもちよつと申し上げましたように、非常に漁業の種類の多い漁村があり、從つて非常に規模の小さい漁業から大きい漁業までいろいろな業種があつて、人口一万もあるというような所ですと、それぞれの利害が一致しないで、一緒にしておくためにかえつて紛爭が起き、小さい方の漁民の意思は無視される結果がありますので、むしろその小さい方を独立させて、それに外部から上部の連合体なり、あるいは官廳の方からも、明確にその援助の目的を定めてやることが望ましいのじやないか。そうでなくてただ漁業協同組合として一本でやれば、それが大きい人たちの方へ、たとえば資材などもみな行つてしまつて、小さい漁民は無視される結果がありますので、業種別に小さい漁業者の立場からもつくり得る余地を開いておくことが至当ではないかという考えであります。決してそれを進めるわけではありませんが、そういう余地を開いておいていただきたいという意味であります。
#53
○鈴木(善)委員 市町村または特別区の地域を越えた業種別協同組合をつくることの可否についての御意見を伺いたいと思います。
#54
○船山公述人 これも原則論といたしましては、一つの町村の中にいろいろな業種別ができるということは望ましくない。業種別というのは数箇町村にわたる比較的大きい業種にだけ限つてすべきである、そういう考えを一般的には持つているわけなのでありますが、先ほどの意見とも関連しますが、町村と言いましても、非常に小さい所もあるのですけれども、非常に大きいところもある、人口も一万、部落も十近くにわかれて、片方から片方まで五里もある部落もある、あるいは島々がある。そういうところでは、その町村の中だけでも部落別につくると同時に、業種別につくらなければいけないというような関係もありますので、これも望ましいところではないのですが、ただそういう道を開いておいていただきたい。法律はそういう途を全部塞ぐのじやなしにその途を開いていただきたい、そういう意味で修正意見を申し上げたのです。
#55
○川村委員 先ほどあなたの公述の中に、生産組合を單独の組合としてつくらせないで、漁業協同組合の内部機構にして事業をやらせるというような御意見があつたようですが、そうしますと結局協同組合の内部に置して、協同組合の経営をやめろというのか、さもなかつたら漁業は双方で経営してもよいというのですか。ちよつとお伺いいたします。
#56
○船山公述人 これは第十七條の漁業協同組合の自営の條件が、今申し上げました條件よりもさらにゆるくなるという場合でしたならば問題はありませんが、現在の非常に嚴密な條件の下において生産組合というものをつくる場合に、その生産組合を漁業会の機構として中に置くという考えではないのですが、ただ漁業協同組合員と限つてつくれば、直接生産組合が資材の購入とか漁獲物の分配とかいうとき、すぐ外部の商人資本の下に置かれるというよりも、その協同組合を通してやるということになる、協同組合もまたそのために強くなり得、生産組合も生産協同組合としての資格を維持して行けるのではないか、そういう考えで申し上げたのであります。
#57
○川村委員 淺原さんにお伺いしたいのですが、先ほどあなたの公述の中に、資本漁業家と沿岸漁業家の見解について明らかにされておらないのでありますが、あなたは数回にわたつて資本漁業家と沿岸漁業家云々と申されておりますが、その資本漁業家というのは会社を指して言つておるのか、また個人においても、今日の漁業は相当の資本を要しなければ漁業はでき得ないという実情にあるのですが、その資本漁業家と沿岸漁業家の資本的の見解かあるいは組織的の見解か、これを明らかにされたい、かように考えますから御答弁願います。
#58
○淺原公述人 私は資本的という言葉を使つたのでありますが、沿岸漁民というものは、農業で申しますと自作農的な立場をとつている漁村の中堅漁民という解釈であります。それからまた資本家的漁業者と申しますのは、具体的に申すと大きな定置だとかあるいは機船底引だとかいうような、経営規模が資本家的な立場をとつている、こういう意味で申し上げたのであります。
#59
○川村委員 大きな定置と言いましても、これはその地方によつて大分違うのでありましようが、北海道のごときは七千以上も漁業権があつて定置漁業が定われているときにおいて、いわゆる現在の協同組合の漁業権の保有からいつて、根つき漁業というものに制限されている以上は、沿岸漁業の浮魚といいましようか、これらの魚を漁獲するには、北海道は定置漁業が主たるものであります。これらを資本漁業家と見られた場合におきまして、あなたと私の見解が相当違いますので、大きいというのはどの程度の資本でありますか、組織でありますか、これを伺いたいのであります。
#60
○淺原公述人 私はこれを純然たる資本という立場から考えているのではないのであります。その漁村を構成している比重の問題を言つておるのです。つまりあらゆる面において、経済力においても、また政治力その他一切の組織力においても、非常に強い力を持つている、そういう資本家的立場を持つている漁業者の組織というものが業種別に構成されて行くということは、今度の場合に非常に有利にできている。こういうことは逆に沿岸漁民のそういう立場をとつている者に対して圧迫を加える結果になる、これを資本家的な一つの立場において分離するというような形式をとらずに、漁村の協同組合という内部の中にこれを包含して、協同組合という地域を区域とするところの協同組合の内部においてこれを包含して、そして協同組合の理念に基いてこれが総合調整されて行くような方法をとつて行くようにしたい、こういう考えを申し上げたのであります。
#61
○石原委員 宮崎さんにお尋ねしたいのであります。全國的な組織が必要である、それは漁民のいわゆる團体の力を発揮する上において必要である、こういうことを申されたのでありますが、私も同感であります。それについて、この全國的な組織というのは、漁業協同組合も、生産組合も、加工組合も、それぞれ全部打つて一丸としたものであるか、また経済行為も、指導も、信用事業もすべて包括した組織をいうのであるか、この点内容について、あらましを拜聽したいのであります。
#62
○宮崎公述人 私が全國組織を漁民が持たなくちやならぬというのは、たとえば物を買うにいたしまして、漁師というものは早速その物がほしいわけでありますが、賣る方になりますと、必ずしも今賣らなくとも生活には困らない、うんと困るまで待たしておいて高く賣ろうということが往々に行われるし、また賣る場合におきましても、ちようど加工業者と漁師の関係を見ればよくわかるのでありますが、円滑に運ばない。その関係はお互いに加工の施設も持たないし、あるいは資材についての生産の設備も持つていない、こういう点にあろうかと思うのでありまして、そういう力を持つのには、どうしても大きな経済單位に漁民の組織がだんだんなつておるわけであります。むろん経済行為も、信用事業も指導事業も、一切を含めた漁民の全國的な組織がなければ、個々ばらばらの組織ではどうしても弱くなる、こういうふうに考えております。
 それから加工業その他の点については、私はまだ考えておりませんが、漁業協同組合につきましては、少くとも総合的な全國的な連合体がほしい、そうでなければ漁民の力がつかない、こう考えております。
#63
○石原(圓)委員 もう一つお尋ねしたいのであります。漁業権を漁業協同組合に與えよということを強く申されたのでありますが、この漁業権の問題は今回は法案は出ていないのでありますが、われわれは一時も早くこの法案を提出すべく政府に要求をしつつあるのでありまして、この際漁業権を全部漁業協同組合に與えよというのであるか、その中のたとえば沿岸漁業に属するものであるとか、種々区別があると思いますが、それに対する大体の御構想を承りたいと思います。
#64
○宮崎公述人 私個人の考えを申し上げますと、漁業権を漁民の團体、いわゆる漁業協同組合に持たせろというのは、個々の漁業権ではなくて、一定の漁場を漁業権として考えたいのであります。そうしてこの一定の漁場というのは、沿岸何里ということまではまだ具体的には考えておりませんが、一定の漁場を漁民の團体にやりまして―新しい漁業法によりますと、仄聞しまするに、個々の経営者にやるということになつております。また現在の漁業会が不在地主的な存在になつておるから、けしからぬということも申しておりますが、私は漁民の團体に與えるということは、必ずしも不在地主的な存在になるのではないかと思います。もし自分が経営しなければ、その他の経営できる人にこれを貸してもけつこうだと思います。その場合に漁場の所有権を持つておりますれば、経営者に対して発言権が非常に増大する。新らしい漁業法のように、経営者が來て、そこで漁業権も持つてやるということになると、どんなことをそこでやられても、漁民は指をくわえて見ていなければならぬ。ところがこの所有権を沿岸漁民が持つておりますれば、賃貸料をとらなくても私はけつこうだと思います。この漁場については、自分が経営しようと、あるいはその他の人に経営させようと、その経営條件なり、あるいはその村の漁民の生活條件、あるいは労働條件なりについて、大きな発言権を私は得られると思います。そういう意味からどうしても漁業権は漁民の團体が一括して持つ必要がある。こういうことを私は考えております。
#65
○石原(圓)委員 もう一つ聽きたいのは、山口明則君も大連合会を組織せよという御主張があつたのであります。これはやはり宮崎君と同樣の内容を持つものか、違つておれば違つておる点を答弁願いたいのであります。
#66
○山口(明)公述人 私の意見といたしましては、漁業と加工とは―相克摩擦するものではございませんけれども、業態自体の性質上、加工は加工だけの中央あるいは全國的な連合会をもつて進む、漁業は漁業だけの連合会をもつて進む、なおその上に必要がございますけば、加工と漁業との協議会というものを設けて、その連絡あるいは調整をはかつて行きたい、こういうように考えるのでございます。
#67
○西村委員長 これをもつて二十二日及び本日の両日にわたる水産委員会公聽会を終るにあたり、委員長として委員会を代表いたしまして、長時間にわたつて御熱心に、しかも御活発に御意見を開陳せられました公述人各位に対し、深甚の謝意を表します。
 ではこれをもつて散会いたします。
    午後五時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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