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1948/11/22 第3回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第003回国会 労働委員会公聴会 第1号
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1948/11/22 第3回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第003回国会 労働委員会公聴会 第1号

#1
第003回国会 労働委員会公聴会 第1号
昭和二十三年十一月二十二日(月曜日)
    午前十時五十三分開議
 出席委員
   委員長 綱島 正興君
   理事 尾崎 末吉君 理事 川崎 秀二君
   理事 中原 健次君
      東  舜英君    倉石 忠雄君
      三浦寅之助君    亘  四郎君
      辻井民之助君    安平 鹿一君
      山花 秀雄君    秋田 大助君
      中曽根康弘君    赤松 明勅君
 出席公述人
      伊藤 正丞君    加藤 閲男君
      楠本  守君    小林  一君
      平林  剛君    星加  要君
 委員外の出席者
        議     員 上林山榮吉君
        專  門  員 濱口金一郎君
    ―――――――――――――
本日の公聽会で意見を聞いた事件
 公共企業体労働関係法案について
    ―――――――――――――
#2
○綱島委員長 これより労働委員会公聽会を開きます。
 公共企業体労働関係法案は、去る十一日本委員会に付託せられまして以來審査を重ねておりましたが、委員会が特に本日公聽会を開きまして、公共企業体労働関係法案について眞に利害関係を有する者、及び学識経驗者等より廣く意見を聞くことになりましたのは、申すまでもなく本案は公共企業体の職員となる方々にとりまして重大な関心を有し、かつ深い利害関係を持つ重要法案でありまして、本法施行によつて公共企業体に組織がえされます鉄道事業及び專賣事業につきましては、その運営のいかんは直接國民大衆の日常生活に多大の影響を及ぼすものであります。よつて本委員会といたしましては公共企業体労働関係法案の審査にあたり、國民諸君の声を聞き、廣く國民の輿論を反映せしめ、本案の審査を一層権威あらしめると同時に、遺憾なからしめんとするものであります。各位の御熱心かつ豊富な御意見を承ることができますのは、本委員会の今後の本案審査にあたりまして、多大の参考となるものと期待する次第でございます。私は本委員会を代表いたしまして、御多忙中のところ貴重なる時間をさかれまして、御出席くださいました公述人各位に対しまして、厚く御礼を申し述べますとともに、各位の忌憚なき御意見の陳述を希望する次第であります。
 さらに本日の議事順序につきまして簡單に申し上げますが、公述人の人員を勘案いたしますれば、公述人の発言時間は二十分くらいとし、発言は発言席でお願いすることにいたしまして、発言されますときは職業とお名前を述べていただきたいと思います。本日おいで願いました公述人の氏名を申し上げますが、ただいままでおいでくださいましたお方は加藤閲男さん、小林一さん、楠本守さん、平林剛さんであります。これより公述人の方の御意見を聽取することにいたします。加藤閲男君。
#3
○加藤公述人 國鉄労働組合中央執行委員長加藤でございます。ただいまから國鉄從業員の立場から、本法案に対する意見を述べさしていただきます。
 本法案はあらためて申し上げるまでもなく、七月二十二日の首相あてマ元帥の書簡に基いて、國有鉄道を公共企業体の事業とするのに伴い、公共企業体とその職員との間の労働関係を規律する制度を確立する必要ありとして、提案されたものと了解いたしております。國鉄労働組合は占領下にあるという冷嚴な事実を正しく認識いたしまするがゆえに、過日の金沢大会におきまして今後の運動方針を決定するにあたり、愼重にしてしかも自然的討論の結果、マ書簡の精神を尊重し、健全なる組合運動の発展を期する旨の決定をいたしたのであります。この前提に立ちまして、國鉄の公共企業体化についてもあえて否定的態度に出ることなく、極力その能率的運営と経営の民主化に重点を指向し、基本方針として、経営に参加する、経営の自主性を確立する、会計の自主性を確立するということを決定いたしまして、これが実現を期するよう努力を続けておるものでございます。しかしながらこの法案につきましての態度は、またおのずから異なるものがあるのでありまして、過日静岡におきまして中央委員会を開き、次のように態度を決定いたしたのであります。すなわち公共企業体從業員の労働関係については、現行労働諸法規を適用すれば足りる。從つて組合としては公共企業体労働関係法の制定に対しては反対である。かように態度を決定いたしました。この理由は、民間であろうと官廳であろうと、労働者であることには何ら差異のないところでありまして、基本的人権の主張をいたしておるのであります。しかしながらすでにCTS、LSの会談の結果、運輸大臣及び次官に対して國鉄の労働関係に関し、次の四項にわたる指示が発せられておることを承知いたしたのであります。第一は労働者側はオープンシヨツプ制のもとに組織すべきである。第二は罷業権は否定さるべきである。しかし労働條件に関する團体交渉権は認めらるべきである。第三に罷業権の否認をカバーするため調停、仲裁の特別機関を設置して労働者側の不平調整に当る。第四に、仲裁委員会の決定は経営、労働の両者を拘束する。これが指示の大要のように承知いたしたのであります。私どもはマ書簡とこの指示の関連性につきましては、いささか意見を持つ者でありますが、これについての意見を申し述べることはいたしません。そこでわれわれといたしましては、この指示の精神を考えまして、当面の具体的方針は次のごとくあるべしとの結論に達したのであります。この具体的方針は組合として確保されなければならない最低線であり、これを維持し得なくては労働組合存続の意義なしと考える者であります。すなわち一、組合組織は自主的にきめるものとする。二、経営参加を認めさせる。三、仲裁調停の手続を必要とする場合でも、罷業権及びその他の團体行動権は確保する。四、生活保障は科学的調査に基く國民的生活水準を下らないこと。五、立法にあたつては民主的方法によつて行うこと。しかしながら現実は政令二百一号によつて、まつたくわれわれの基本的権利は剥脱されておりまするので、これらの確保は容易ではないと考えております。しかしながら私どもは以下本法案の各條について修正意見を申し述べて、御審議の御参考に供したいと考える者であります。
 まず第一條でありますが、次のように修正を希望する者であります。第一條、この法律は公共企業体の職員に團結権、團体交渉権、その他團体行動を行う権利を保障し、正当な範囲内において行使することができるよう措置するとともに、公共の利益を擁護するよう紛爭を解決し、経済日本の隆盛をはかることを目的とする。この修正いたしました理由といたしまして、原案は旧官僚のよく使う、非常にむずかしい言葉が多いのでありまして、いわゆる繁文褥礼とでも申しまするか、その典型的なものであり、長文に過ぎまして、かえつて眞意の理解に苦しむような点があるのであります。なおその第一條の精神を貫くものに、特に今日までの労働運動を考えての、將來への取越苦労的なものがかなり入つておりまして、これはいささか物笑い的のものであると考えるからでございます。
 次に第四條についてであります。第四條を次のように修正していただきたいと考えております。第四條、職員は組合その他の團体(以下組合という)を自主的に組織することができる。但し使用者の利益を代表する者は組合を結成し、またはこれに加入することができない。但書の範囲は労資双方が協議してきめる。かように修正を希望する者でございます。理由は、原案は労働協約において当然問題とすれば足りることを、法文として束縛しておこうとする底意がうかがわれるのであります。これはとうてい容認しがたいものであります。
 次に第七條でございます。第七條は「公共企業体は、その定める一定数を限り」云々とございまするが、この定める一定数の字句を抹消していただきたいと思うのであります。その理由は、專從者の員数については團体交渉できめらるべきであり、法文の中にかかる字句を入れることは妥当でないと考えるからであります。
 次に第八條でございます。私ども第八條についてきわめて重大なる関心を持つものでございます。第八條は團体交渉の範囲を規定し、管理及び運営に関する事項を團体交渉から除かんとしておるのであります。当局は、管理とは公共企業体の財産の性質を変じてその原状を維持し、または財産に多少の変更を施し、あるいはこれより果実を生ぜしめるようなことをいうのである。かように説明をいたしておるのであります。これを具体的に申しますれば、財産の保存、財産の性質の本質を変じない範囲内における利用改良等をいう。こういうふうに管理という字句の説明をいたしたのでございます。運営とは公共企業体の業務の操作をいう。これは管理とは異なり、財産に何らの変更を加えず、財産の現状において財産を操作することであつて、たとえば國有鉄道にあつて日常の業務を実行するために時間表を作成し、あるいは配車を行うことがこれに当ると説明をいたしております。私どもは率直に管理権、運営権が当局にあることは認めます。しかしながらこの説明にありますようなことそれ自体が、労働條件に関係がないとは断言し得られないのであります。この意味でわれわれは管理及び運営に当り、発言権を得んとする以外に他意はないのであります。以上の見地から次のごとく修正していただきたいと存じます。公共企業体とその職員の組合との團体交渉の対象は、組合員の利害に関するもの(主として給與、労働時間その他労働條件等)とし、事業の管理運営については組合の代表を参加させる方途を講じなければならない。このことは、一昨日國有鉄道法案の公述人として御命令を受けた際にも、強く主張をしておいたのでございますが、事業の管理運営にあたつて從業員の代表の発言権を認めずして、今後事業の管理運営は民主的に行われない。かような考え方から、第八條については強く修正を希望するものでございます。
 第八條の第二項は、以上の見地から全文削除していただきたい。かように考えております。その理由といたしましては、この條項は組合の分裂を企図する以外の何ものでもないからでございます。
 次は第九條の交渉委員についてであります。労働組合法第十條によつて何ら支障のないことでありますから、次のように本文の次に但書を挿入していただきたいのであります。但し交渉委員以外のものもその委任を受けたときは交渉することができる。かように修正を希望いたします。
 その他第二十五條の調停仲裁、それらの事項につきましても一應修正意見を持つておりますが、國鉄労働組合から二名の公述人が出ておりますので、私は重複することを避けます。組合が主張いたしております管理権あるいは経営権への発言の獲得、並びに團体行動権の確保を特に認めていただきたい。そうでなければ、この公共企業体法案というものは單なる公務員法のわく外に置かれたというだけであつて、内実は公務員法のわく内にあるということと何ら異ならないということを申し上げたいのでございます。
 最後に、この法律は昭和二十四年四月一日から施行されることになつております。このことは日本國有鉄道法が同日付をもつて実施されるので、一面当然のことと考えられるかもしれません。しかしながら私ども國鉄労働組合員は、御承知の通りマ書簡に基きまして政府が発しました政令二百一号によつて、罷業権はもとより、團体交渉権をも奪われ、ただいまはまつたく有名無実の形でございます。しかもこの法律が明年四月一日から施行されることになりますと、この間の空白には労働運動が成立たないことになるのであります。よつてこの間の事情を明察せられまして、この期間に対し暫定措置をとられるよう、本法案審議にあたつて特に希望いたしまして、私の公述を終らしていただきたいと思います。
#4
○綱島委員長 何か委員の方から、今の公述に対して御質疑がありましたらどうぞ。
#5
○倉石委員 加藤さんのお話は非常に明快で私でもよくわかりますが、第八條の第二項は組合の分裂を策する以外の何ものでもないというただいまの御説明でありましたが、その趣旨をもう少し説明していただきたいと思います。
#6
○加藤公述人 第八條の第二項は「組合に加入できない者以外の職員に関する左に掲げる事項は、團体交渉の対象とし、これに関し労働協約を締結することを妨げない。」こういうことで、実は私どもの眞意は組合員以外の者の保護規定である。さように考えましたので、私どもは法文がかりにオープン・シヨップでありましても、実質的には組合といたしまして全職員を組合員にいたしたいという考え方から、この第二項については非組合員の保護規定である。かように解釈をいたしまして、このことは必要はないのではないかと考えた次第でございます。これが組合全体に適應するものであれば、このままでもよろしいかと、こういうふうに考えた次第でございます。
#7
○赤松(明)委員 加藤公述人にお伺いしておきたいのでありますが、本法令が通過すると仮定して、四月一日までの間の空白は、要するに政令二百一号によつてしばられるので、暫定処置を講じてもらいたい。こういう御意見であつたが、その暫定処置ということは、要するにこの政令を撤回しろというのか、あるいはまた何か具体的に建設的な御意見を持つていられる。かこの暫定処置の具体的なものについて承りたい。
#8
○加藤公述人 ただいまの現状は、政令二百一号で拘束されておりますが、おそらく公共企業体労働関係法が通過いたしますと同時に、公務員法もまた通過するものと考えます。從いまして、この公共企業体労働関係法のみが四月一日から実施されることになりますと、表面上は四月までは國家公務員法のわく内にしばられるものと、かように考えるわけでございます。この点が私ども不満でございまして、ただちに公務員法のわくからはずしていただきたい。その意味の暫定措置ということをお願いしたわけであります。
#9
○倉石委員 もう一点お尋ねいたしますが、先ほどあなたの属せられる組合においては、公共企業体労働関係法に対しての御希望と申しますか、五箇條ほどお述べになりました。それを私もう一ぺん繰返してみますが、違つておりましたら……。第一は、組織は自主的にしてもらわなければならない、この点はこういう趣旨でございますか。
#10
○加藤公述人 そうでございます。
#11
○倉石委員 第二は経営参加を認めろ。これはこの公共企業体に対してみなさんの方の組合が経営参加することを認めてもらいたい。こういう趣旨でございますか。
#12
○加藤公述人 そうでございます。
#13
○倉石委員 第三は、仲裁調停の機関を置くことはさしつかえないが、罷業権は存続させろ、こういう御趣旨でございますか。
#14
○加藤公述人 そういうことでございます。
#15
○倉石委員 第四は、生活保障の問題を檢討する場合には科学的な調査に基いて、それに基礎をおいてやつてくれ、こういうお話でございますか。
#16
○加藤公述人 そうでございます。
#17
○倉石委員 第五は、立法は民主的方法に基いてやつてくれ。この立法とおつしやるのは、今の公共企業体労働関係法ばかりじやなくて、どういう範囲のことをおつしやいますか。
#18
○加藤公述人 公共企業体関係法案の公述人でございますので、ここで立法にあたつてと申しましたのは、公共企業体労働関係法のみに限定したつもりでございます。本日公述人として選ばれておりますが、私どもが民主的方法と申しますのは、さらにこれを國民大衆の公聽会にしていただきたい。そしてその意向を取入れていただきたい。かような趣旨で考えているものでございます。
#19
○倉石委員 もう一点お尋ねしたいと思いますが、これは今日の公共企業体労働関係の直接の法案の問題ではないかと思いますけれども、加藤さんよく御承知のように、つい最近まであなた方の参加しておられる労働組合の執行部の多数の諸君は、何と申しますか、いわゆる俗に言えば、破壞的行動を主たる目的であるかのごとく誤解を受ける活動をおやりになつたと、皆そういうふうに批評しておるわけでありますが、そういつたような御活動がやはりあるいは公務員法の改正問題になつたり、あるいはまたこの法案のようになつて來たのだろうと私は思うのであります。現在の國鉄の執行部は、今私が申しましたような行動について、たとえばつい先だつて北海道で、御承知のように職場離脱が非常に多かつた。しかもいろいろ風評のある活動をしておいでになるが、現在の國鉄の組合活動の方法はどんな状態であるか、さしつかえない程度にひとつわれわれに御説明を願いたいと思います。
#20
○加藤公述人 お尋ねの第一点は、組合運動の行過ぎがこういう法案を出さざるを得なくなつたということを、お前認めるかどうかという御質問であるかと思います。私は全面的にそのお言葉を肯定するものではございませんけれども、一部これが組合運動の行過ぎであるかのごとく誤解を生んで、この法案が出るようになつたということは、残念ながら認めざるを得ないかと考えております。
 それから第二点は國鉄執行部云々というお言葉でございましたが、私どもは先ほども申し上げました通り、金沢大会におきまして千名に一名の代議員、すなわち六百数十名の代議員が寄りまして、マ書簡の精神を尊重し、健全なる組合運動の発展を期する。かように決定をいたしておるのでありますから、今後の組合運動につきましては少くとも國鉄労働組合は日本の労働運動の模範となり、また堅実なる建設的な組合運動を行つて行きたいという考え方をいたしておるということを、お認め願いたいと思うのでございます。一部先だつて生じました職場離脱についての御言及かと思いますが、この点は組合運動ということのらち外と、一應お考えを願いたいと申し上げたいのでございます。
#21
○綱島委員長 どうもありがとうございました。次に楠本守君。
#22
○楠本公述人 全國專賣局職員組合委員長楠本守でございます。私たち專賣局職員組合は、まず申し上げたいことは、專賣局等の公共企業体の労働関係は、今までの経驗から推して考えますと、現行の労働関係法で十分に円滑に調整ができるということであります。特別な法律を設ける必要はない。さらに進んでこれには絶対に反対です。今後私たちは公務員でないことになりますが、もともとから專賣は、実質的に少しも一般民間の企業と異るものではありません。公務員でないとすると、当然に民間企業と同じ程度の労働法で律せらるべきであるわけであります。政府はマ書簡の示唆に基いて本法案を提出したと申しておりますが、マ書簡に対しましては公社法の設定のみで十分でありまして、現行労働法程度の措置で十分であると考えるのであります。資本者側に一方的に有利な、労働者圧迫法を設けよと書簡は示唆してないものと考えます。まつたく便乘であると考える次第であります。今回発表されました政府案を見まするに、私たちはその法設定の目的が那辺にありや疑わざるを得ない。これは、マ元帥の書簡の眞意を歪曲しまして、これを口実として國鉄、專賣等公共企業体從業員の生活を保障するという美名のもとに、われわれ労働者の権利ばかりを抑圧して、低賃金と労働強化をしようとする政府の反動性と、資本独裁の野望であると断ぜざるを得ません。國鉄、專賣ばかりでなく、これがやがて電氣もガスも水道もその他のものも、特別の公共性のわくの中にはめて行こうとする前提ではないかと考えれば、考えられないこともないのであります。本法案の内容について見ますと、民主的な労働組合の自主的な決定にまかせらるべき組織の点にまで、不当な干渉を規定して、組合の分裂と官営化を企図しておる点であります。團結権を制約してオープン・シヨツプ制のみに限定していることは、考えが極端に狹いと考えます。なお役員の資格選出方法まで束縛していることは、蛇足に過ぎると思います。組合規約まで干渉していることは不必要であると考えます。なお專從職員の数ばかりか、設定の権利まで資本者側に與えていることは、まさに反動であると考える次第であります。これらのことは労働組合の活殺の権を公社に握らせることでありまして、別に提案されている日本專賣公社法とにらみ合せて、その内容を檢討してみますと、專賣公社も労働組合はかつての労務報國会と、はなはだ近い性格になるものであります。專從職員の問題でも、日本の労働組合の歴史は日浅くて、從業員の賃金も非常に低く、また組合の資金も非常に乏しいのでありますから、少くとも現状では相当数を認め、これに給料を支拂うとともに、その身分も保障するようにしなければ、自由な民主的な健全な組合の発達は望めるものではありません。一体從業員の生活保障を規定せずに、團体交渉権を禁止するようなことは、とうてい考えられないものであります。
 次に團体交渉手続でありますが、專賣は大藏から分離して公社となつても、今までのつながりで大藏官僚と異体同心の者が、公社役員の中に残つているわけであります。組合はいわゆる官僚と公社の連合軍と申しますか、総合軍と交渉するような立場におかれるのでありまして、残念ながら非常な不利に立つわけであります。大藏省は現在日本の封建的官僚のプールであると、私たち組合員は見ているわけでありまして、封建的官僚的温存から眞に民主的運営をこいねがうなれば、経営の面にも組合の代表を参加せしめるように規定すべきであります。政府案に盛られた調停、仲裁なるものの制度は、一見しますと労資に平等の立場を與えているかの外見を呈していますが実はすでに申し上げました通り実質的なごまかしがあるわけであります。このような理由から政府案の團体交渉権なるものには、全面的に反対するものであります。タバコでも塩でもその專賣発生の歴史は、同じような日清、日露などの戰爭財源の充足の目的でありまして、專賣のもつ公共性はきわめて非平和的公共性であります。現在も專賣品のもつ公共性は、大衆の犠牲と從業員の酷使によつてあがなわれたものでありまして、專賣益金増收の道は、技術を向上し、製品の品質と数量をよくすることによりまして、たやすく増進する道があるものであります。大衆タバコの値上げや、從業員の酷使に求めるべきではございません。現下の政界の混乱に乘じまして、突然こういうふうな法案を提出されましたことに対しましては、私たちも非常に迷惑しているものであります。重ねて申し上げますが、本法案のような反動的な特別法の制定には全面的に反対であること、すなわち現行の労働法規を準用することによりまして、公共企業体の労働関係は十分に調整し得るものであります。
#23
○綱島委員長 ただいまの楠本公述人に対して質疑がありましたらどうぞ……。
#24
○倉石委員 楠本さんにお伺いいたしたいのでありますが、今のお話の中に、組合規約やその行動についてまで干渉する必要はないではないか、というような趣旨のお話がありました。その次に專從職員は、日本の組合組織はまだ非常に幼稚であるから、專從職員の給料などまで組合負担にするということになると、組合の健全なる発達を阻害するおそれがあるから、当分の間專從職員を認めて、その経費も組合員の負担でないようにせよ、こういう御趣旨でありますか。
#25
○楠本公述人 さようでございます。
#26
○倉石委員 そうしますすと、私どもはあなた方の考えには、その点について理解ができないわけではないのでありますが、しかし私どもが第三者的立場に立つて考えてみましても、今日の組合組織はまだ終戰後非常に急激に発達した労働組合でありますから、アメリカ、イギリスなどの労働組合に比して非常に力が弱い。それであるから私どもはしばしば政府にも言つているのでありますが、あらゆる方途を講じて、組合が自主的に健全な運営を行い得るように育てなければいけないのではないか、こういうことを申しているわけであります。それで皆様の立場に対しては、お氣にさわるかもしれませんけれども、われわれは実際言うと今申しましたように浅い経驗しか持つておらない日本の労働組合の組合活動というものは、われわれ第三者としての國民の立場から見ると、非常に行過ぎで、大衆の同情を失うような行動が非常に多い。そこで多少組合側から見ればよけいなことのようであるかもしれませんが、組合規約とか組合行動について法文化して行くということは、現在の段階においてやむを得ないのじやないか。しかるに皆さんの方では、そういうことはもう全然干渉しないで、組合の自主的運営に任せろ。しかしながら專從從業員は認めて、その経費は経営側において負担せよというようなことに、少し論理の矛盾がありはしないかというふうに思うのであります。私どもは民間の私企業の労働運動の場合から考えましたならば、私企業に從事しておる組合が、経営者側から專從從業員の俸給を負担させるということが、そもそも間違いなのでありまして、そんなことをすれば、御用組合に近いものになつてしまう。結局私は多少むりでも專從職員は話合いの上で数がきまるのでありますから、それの負担は組合でやる。それから組合の規約においても皆さん御承知のように、英國なんかは最近の例を見ますと、だんだん労働党内閣で企業が公有になつております。國有になつた企業に対しては、ぼつぼつ自分の組合規約の中で、國家の持つておる事業に從事しておる從業員が、國家に対して罷業することは自己を否定するものだというような考え方で、組合自身の規約の中で爭議を禁止とはいつておらないけれども、ほとんど爭議をしないという状態になつて來ておる。私どもはそういうふうなあり方をこの公共企業体の労働運動などに、実は希望するわけなのであります。ですからひとつ階級的立場を離れて――これは私第三者の立場なのですから誤解のないようにしていただきたいのですが、もしわれわれが皆さんのお話と御希望を納得できるならば、政府に十分迫つて、われわれはこの原案を改正しなければならぬという意思を持つておるわけであります。アメリカなどでも皆さんよく御承知のように、公共的性格を帶びておる事業に從事しておる者は、なるほど罷業権は認められております。けれどもその罷業に入るまでの過程において、御承知のようにいろいろなあるいは冷却機関その他の機関を置いて、実質的には罷業をしないようにしておる。それは法で取締つておるというよりも、組合の自主的な活動においてそういう結果を招來しておることは、われわれ非常に羨望にたえないのであります。そういう点をひとつ階級的立場でなくて、非常に重大な時局でありますから、大事な仕事を預かつておられる皆さん方の労働組合の方で、ひとつそういうふうにしていただけないかどうかということを、懇談申し上げる次第であります。
#27
○楠本公述人 私たちは組合を結成しましてから三年有余になりますが、今まで非常に穏健な行き方をして参りました。今までストというようなことはやつたことがないのであります。それで公共上、財政上非常な御迷惑をかけたようなこともございませんでした。それだからといいまして、私たち非常に待遇がいいかと申しますと、調査したところによりますと、職階給がこの間実施されましたが、全國の官廳で專賣局が一番低いということが判明しておるような次第であります。こういう歴史からいいましても、われわれは非常に穏健な行き方をして來たということは御了承いただけると思います。なお束縛するような拘束規定を設けなくとも、私たちは、極東委員会の十六原則にもありますように、あれを非常に尊重しております。そういう自主的な立場からああいうふうな原則を尊重することによりまして、十分この目的は達成されるものと考えております。なお專從者の問題でありますが、非常に御説には賛同するものでありまして、理想としましてはまつたく同感でありますが、現在いかんせん非常に低賃金でありまして、その中から組合費を出して專從者を置いておくということは、相当組合の財政的な方面に圧迫を加えるということになりまして、自主的な組合の発達が阻害されるのじやないかという見解を持つておるわけであります。その点御了解を得たいと思います。
#28
○赤松(明)委員 公述人にお伺いしておきますが、あなたは專賣はタバコの方ですね。
#29
○楠本公述人 タバコ並びに塩。
#30
○赤松(明)委員 全部一括した労働組合ですか。
#31
○楠本公述人 さようです。
#32
○赤松(明)委員 タバコの方は本法がかりに適用されるとすれば、その從業員はどれくらいありますか。
#33
○楠本公述人 私どもの方は組合が二つにわかれておりまして、職員組合が約一万五千ございます。それから同じく專賣局労働組合、これは私どもの組合でございませんが、それが一万五千、合せて三万余というのが大体の数でございます。
#34
○赤松(明)委員 それはタバコも塩もくるめたものでございますね。
#35
○楠本公述人 さようでございます。
#36
○赤松(明)委員 そこでただいま同僚の倉石君の方からも懇談的に相当意見があつたのですが、私たち実はこの專賣の方面についてはあまり知識がないから、どうも離れた分野のような考えから、お伺いすることがあるいはピントをはずれているかもしれない。しかし根本的な問題として承つておきたいのは、たとえばあなた方のタバコであるならば、今二本になつているものが職員組合と一本になり、タバコならタバコの労働組合をつくることのできない生産者、すなわち農業過程にある者――あなた方の分野は、現業あるいは非現業的立場においても中間の過程にある。現在私たちの調査によると、タバコをつくつているところのいわゆる耕作農民というものはたしか五十万ある。そしてこれをまた皆さんが中間において加工せられて、これを賣りさばくいわゆる小賣商という機関が十一万人ある。ここで建設的にものを考えてみて、本年度の賠償金というものは大体六十億円、耕作農民五十万が六十億円ばかり受取ることになる。数字にはわずかな違いがあるかもしれない。また金を拂つていないものもあるし、また皆さんの方で中間過程の加工に当る方々が耕作農民に対して等級をつけて、政府にかわつて賠償をやられておる。この等級をつけるとか、あるいは要するにその收納に行く場合におけるあなた方労働組合あるいは職員組合、こういつた方々の行動については、耕作農民五十万の側から言つてみると、相当大きな非難のある場合もある。そこであなた方に直接考えてもらいたいと思うのは、五十万耕作農民に対して皆さんが値段をつけ、皆さんが等級をつけて六十億円になるが、自由販賣が一分、配給は四分、この手数料によつて、十一万人の小賣商人というものは、大体四十億ばかりの收入があるはずである。皆さんが加工せられて、それを賣り渡す小賣人、人数的に見れば十一万人にして四十億、五十万人の耕作農民はほんとうに汗とあぶらをしぼつて、しかも六十億しか收入がない。結局等級をつけるのは皆さんの側である。ここでいわゆる耕作農民の側と、中間加工の場合にある程度の話合いであるとか、納得であるとか、これにたずさわる面の世論、こういうようなものについて幾分お考えを願わなければならぬ点もあるのだが、これを本質的に見て、ただいま倉石委員の言われたようなことを、私もまた第三者的であるけれども、私は農民代表であるから、本質的に言えばきらいなんですよ。建設的に言えばこれがだめなんだ。この條章の分野において、あなたがさつき言われておつたように、何條と何條とがいけないから、これをもう少しかえろというような部面についてたとえば皆さんの分野においても、たしかに行き過ぎの分野がある。これを建設的に、あるいは階級性を帶びてもよいが、そういうような意見がなかつたということは、私自身としても遺憾である。だから一方的な見解でなく、こういう農民の分野をも総合的にひつくるめて、國民大衆のためになる組合をつくるのだ。こういう建設的な御意見を聞きたかつた。私が申し上げることを基調として、たとえばこれを修正するとすれば、第何條とどこどことはどういうふうにこれをかえる。先ほども加藤公述人からこれは削除しろ。これはこういうふうに但書を入れたらどうかというような御意見があつたが、こういう御意見が聞きたかつた。私が申し上げておきたいのは、製塩の部面において、予算がないからということで、二、三週間前に收納の全面的停止ということが行われておる。塩を生産する資本家、これを收納してそれから先の專賣をやる政府という資本家、これは少し形が違うが、製塩業者という資本家も、それに從業する塩をつくつておる労働者も、これがなければ今度は公共事業体に加えられて、塩の分野はおそらく干上つてしまう。こういう面についての研究、あるいはこれをどうしたらいいか。そういう建設的な意見、あるいは末端の海水を汲んで塩をつくつておる労働者の立場をお考えになつて、これをどうしたらいいかというような御意見が皆さんの側にあるかどうか。これは抽象的なようだが、何か本質的な面について御意見があつたら承つておきたい。
#37
○楠本公述人 專賣行政の本質の面に入つたわけでありまして、たしかにこれは私の個人的な意見になりますが、タバコの耕作面、それから製塩労働者の面ということを考えますと、非常に圧迫されたような状態にあることは認めざるを得ないと思います。私たちの組合としましては、まだ歴史も浅うございまして、そういう方面と提携してこの專賣を民主化して行こうというような具体的な運動は、残念ながら今持つていないのでございます。今後の研究課題になつておる次第でございます。
#38
○赤松(明)委員 たしかにただいまのお言葉は率直な言葉だと思います。しかしこの面については、耕作農民の面、たとえばたしかに大藏省が封建性のプールであるということは、皆さんの言われる通りであります。ところがこの大藏で、現在耕作農民とか製塩労働者の生産したものに対して、わが子の名をつけるより簡單に値段をつける。あるいは大藏の一環として財務官吏が税金の査定をする場合、横柄であるとか。あるいは職権乱用であるということがあつたならば、これを全部大藏の機関として見られる場合がある。これは十分考慮願つて、警告のようになりますが、こういう建設的の論議の場合には、労働組合として密接な連繋をとつていただきたい。私はかように考えます。これをお含み願つて、皆さんの建設的な意見を述べていただきたい。これがかけられるとすれば、返上するわけにいかない。こういうことは私は根本的にきらいですが、今日の客観的な情勢から言つて、何條を削除しろとか、但書を入れろとか、こういうことを御留意願いたいと思います。
#39
○安平委員 楠本さんにちよつとお伺いいたしますが、專賣局に現実に働いている労働者諸君の日常の勤務上の労働條件と、一般企業の労働者の相違、たとえば一般の労働者は筋肉労働をやつてますね。それの状態、たとえばタバコを運ぶとか、あるいは巻くとか、いろいろな労働條件がありますね。そういうその日その日の具体的な労働條件と、一般民間企業の労働條件と比べてみて相違がありますか。
#40
○楠本公述人 タバコにしますと、專賣の事業の事業は原料葉の買付、これを收納と申します。それからタバコの製造、それからなお製品の配給、販賣という大体三つの点であります。
#41
○安平委員 労働條件、労働の実態です。
#42
○楠本公述人 その点につきましてはかわりないと思います。
#43
○安平委員 かわりはない。ぼくもそう思います。そのかわりがないということの中でも、特に著しく普通の労働者と違うようなところを指摘すれば、どういうところがありますか。
#44
○楠本公述人 違うようなところはありません。
#45
○綱島委員長 ちよつとここで加藤閲男さんから発言を求められておりますから、御発言を願います。
#46
○加藤公述人 先ほど私が公述申し上げました中で、誤解を生ずる向きがあるのではないかと考えまして、特に委員長に発言を求めたわけでございます。
 それは第八條の團体交渉の範囲を規定いたしました條文は、労組法において團体交渉の範囲が明らかでないのを明確にしたという理由で、この範囲が明らかにされておりまするが、主文が「管理及び運営に関する事項は、團体交渉から除かれなければならない。」こうありまして、第二項以下が入つております。この点が私ども不満でございまして、第二項を全文削除していただきたい。こういう趣旨で申し上げたのであります。先ほど倉石委員の御質問に私がお答え申し上げましたときに、若干食い違つていたのではないかと考えますので、この点交渉の範囲を法によつて制限せんとすることに不満であるという意味合いから、本文の修正をお願いし、第二項以下は團体交渉自体にまかすべきであるという見解で削除をお願いした。これを特に誤解ないようにと思いまして、申し上げた次第であります。
#47
○倉石委員 加藤さんに今の点がお尋ねしたいのですが、今第八條に「公共企業体の管理及び運営に関する事項は、團体交渉から除かれなければならない。」これは政府から「團体交渉の対象とすることができない。」と訂正して参つております。結局同じような文句です。そこで從來の官公労働組合の方方が、前の芦田内閣の時代にもお出しになつたいろいろな條件の中には、まつたくこの労働運動と何らの関係がないと、われわれ國民が判断しなければならないような事柄を條件に提出しておられたことは、加藤さんもよく御存じだと思います。たとえば物價改訂は行わないことというような、そういつた政府の政策のことまで爭議の紛爭條件に加えて來るということは、行き過ぎだろうと思う。私は政府側の考え方は知りませんけれども、この「公共企業体の管理及び運営に関する事項」という中には、たとえば今の鉄道料金の値上げはやらないというようなことを爭議の対象にして來られることを、ここで押えようという考え方であろうと思うのでありますが、これはまあ、意見は別になりますが、今私が具体的に一つの例を申しましたようなことについて、加藤さんの参加しておられる組合は、なおかつそれでもいいとお考えになるのかどうか。もう一ぺん御意見を承りたいと思います。
#48
○加藤公述人 私先ほど申し上げました通り、管理権並びに運営権が当局側にあるということは率直に認める。かように申したつもりでございます。從いまして、管理及び運営に関する事項について協議を受けたり、あるいはこれはこれに発言をして行きたい。かようなことで申し上げておるつもりでございます。今お尋ねの件は、率直に申し上げますと、かつての五千二百円要求の際つけました絶対條件六項目についての御批判かと思うのでございますが、労働組合は、法に示します通り、法の範囲内における労働組合でございます。從いましてあの際の絶対條件なるものは、あくまで主文に伴う絶対條件でございまして、たとえば物價改訂を行わないというようなことを入れましたのが、不当であるかのような御発言でございますが、物價改訂を行い、それがわれわれにはね返つて來た場合には、五千二百円では足りないのであるから、從つて物價改訂を行わないでやつてもらいたいという意味合いでございます。あるいは政治的でございますならば、中央労働委員会においても、当然調停をする場合取上げないはずでありますが、主文が経済要求であり、それに対する條件でございますので、取上げられたので、組合が労働組合法内の運動をしようという精神には、ごうもかわりはないのでございます。
#49
○安平委員 ちよつと加藤君にお尋ねしたいのでありますが、先ほどの塩の專賣の場合と同じことを聞くのですが、一般企業の労働者と比べて、國鉄の從業員だから特によいという條件がありますか。一般企業の労働條件と比べて……。
#50
○加藤公述人 御質問の趣旨がよくわかりませんのですが……。
#51
○安平委員 國鉄の從業員であるがゆえに、労働條件のどこか特にいいというところがありますか。
#52
○加藤公述人 全然そういうところはありません。
#53
○綱島委員長 平林剛さん。
#54
○平林公述人 專賣局労働組合の副委員長であります平林剛と申します。直接タバコを生産いたしておる從業員を代表いたしまして公述いたします。
 公共企業体労働関係法案が、この國会に提出されました理由とその内容を檢討いたしました者は、ひとしく法案が及ぼすところの影響が非常に重大であると知つておるのであります。この法案は、國家公務員法改正問題以上に、民間私企業の労働運動に與える拡大発展性が含まれているからだと考えます。私はもしこの法案が一部修正のごとき形をもちまして、國会を通過するようなことがありましたならば、將來の日本労働運動、ひいては日本民主化の將來にとりまして、きわめて重大な惡い影響を及ぼすであろう、その第一歩であると考えるのでございます。ことに專賣事業のようなタバコ生産企業の從業員が、いわゆる政府事業だという理由をもちまして、労働運動の制限を受けなければならないとなつたときは、労働組合運動の日本における歴史的な意義を、一時的な現象や一時的な傾向をもつて抹殺してしまうような過失になるだろうと考えます。われわれはこの法案が國家公務員法改正という、今の混乱した状態の中で、今まで全労働者が反対をして参りました労働関係法規の改正の陰に隠れたある意図を、ここにおいて足がかりとしているということを、重大な関心をもつてながめておるのでございます。私は政府がその提案理由の一にみずから述べておりますように、公共企業体の職員には國家公務員法が適用されないことになるので、公共企業体の職員は、当然労働組合法及び労働関係調整法が適用されることになる。こうありますのを、そのまま実行することが当然であり、この法案のようなものは必要がないのではないかと考えるのでございます。この理由につきましては、政府の提案理由を檢討すれば、おのずからはつきりして來ると考えるものであります。私はマッカーサー元帥の書簡が、鉄道と專賣事業につきまして、公共企業体組織を示唆し、「雇用の標準、方針並びに手続を適正に定め、且つ普通職の場合に與えられている保護に代えるに調停仲裁の制度が設けられなければならない」とありますのは、これらの企業をできるだけ國家機構から区別いたしまして、從業員の労働組合運動の自由を保護し、かつ罷業権の存在する原則を認め、その乱用について警戒措置を求めているにすぎないと解釈するのが、正しいと考えるのでございます。從つて政府が、現在の労働法規が規定するだけでは不十分だといつて、公共企業体について特別の立法を講ずる必要は認められないと考えるのでございます。むしろ紛爭議を互いに回避するためには、互いの自覚と了解の上に立ちまして、必要な制度を実現することが望ましいのではないかと考えるのであります。
 かつて政府の労働大臣は國会におきまして、労働関係法規はその運営によつてこの際改正の必要はない、と答弁いたしておりますのを記憶いたしておりますが、当時の客観的な情勢は今もそんなにかわつていないと考えるのであります。政府は第二の理由といたしまして、公共の利益を擁護するための措置といたしまして、マッカーサー元帥の書簡を引用いたしておりますが、その趣旨をただちに健全にして自由な労働組合運動の制限と解釈して、罰業権の禁止を意味すると結びつけるのは、あまりにも反動的な考え方ではないかと考えるのであります。少くともタバコ生産の肉体労働者が民間企業の労働者と差別されまして、この法案の示すような措置を必要とする國家的な理由はないと考えるのであります。專賣事業は今國家財政の四分の一をまかなうほどの財政的重要性があるのだという理由は、かえつて國民大衆にとりましては、大衆課税的な存在を意味するものだと考えます。ほんとうに國民のための民主主義國家であるならば、政府がいつまでも自分に都合のよい大衆課税的な利益をもつて、國家收入を頼るような方針は是正すべきであると信じております。すなわちこのような公共性は政府だけの解釈による公共性でありまして、これを理由とするのは手前がつてではないかと考えるのであります。專賣事業の作業環境を、單に公共企業体の性格から共通の特異性を持つとして、鉄道事業と統一的な法制的措置をとつておりますのも、また適当ではないと考えます。タバコの生産そうして販賣、また一部の塩、樟脳の生産は、他の一般商品に比べまして特に國家的な意義を持たないと同時に、その從業員は民間の肉体労働者とまつたくかわらない立場にあるのでございます。
 さらにこの法案提出の第三の理由といたしまして、從來一般組合においてはややもすれば混乱を生じ、無用な労働爭議を生ぜしめた傾向があるといたしておりますが、前述のような性格を持ちます公共企業体從業員の労働運動を規制し、制限しようとしておりますのは、自由な労働運動に対する侵害でありまして、日本民主化の阻害を生む逆効果となるものと考える者であります。日本の労働組合運動における一時的な傾向、これに対抗するためだけで本質的な解釈を誤ることは、日本の労働組合をして、かつての産報的な存在たらしめる原因になると考えるのであります。また最近の労働情勢の傾向に対しまして、これを單に労働階級の責任だけだとして、すべてを労働階級に轉嫁して、政府の政策や反動的な資本家の存在しております事実を少しも顧みない態度は、独善的ではないかと考えるのであります。
 第四の理由といたしまして、從業員の生活安定を保障するために、完全な團体交渉と、適正迅速な調停と仲裁の制度を、確立する必要があるとしておりますのは、ますます解しがたいと存ずるのであります。われわれは今までの体驗から、労働者の生活の安定をはかることについての政府のこうした約束は、信用することができないようになつておりますし、このような御都合的な理由をもちまして、公共企業体の從業員に対して労働運動の自由を奪おうとしておるのは、現実を無視したものではないかと考えるのであります。政府は、あるいは人は、よくアメリカにおける例を引用いたしますが、かの地においては、絶えば要求し続けて行かなければならないような生活状態である日本の労働者とは違いまして、ある程度の生活の安定が與えられておるのだということは、今日の常識であろうと考えるのであります。
 以上の理由によりまして、私はこの公共企業体労働関係法案は、マツカーサー元帥の書簡の趣旨とは反対の性格と傾向とを持つものだと、言わざるを得ないのでございます。タバコや塩製造を主体といたします肉体労働者の労働環境を無視したこの法案が、やがて公共の福祉という言葉に名をかりまして、電氣やガス、私鉄、炭鉱、これらの労働組合に発展するであろうとみなが考えている理由も、ここにあると考えるのであります。そしてこの傾向は、よく叫ばれておりますフアシズムの再現だというような理由も、私はきつとここにあるのではないかと考えるのであります。
 この法案の性格は、同時にこの國会に提出されております日本專賣公社法案と比較いたしますときに、さらに明確になるのであります。公共企業体労働関係法におきましては、その内容を見ますと、かくのごとく労働関係法規に対する今まで考えられておりました改正構想を、この中にすべて織り込んでいるにもかかわらず、一方の日本專賣公社法案の中には、企業の民主化とは看板だけで、現行の專賣局機構をそのまま移行して、非能率的な、そうして封建的だと言われております大藏官僚の支配権を、温存しようとする傾向にあるのでございます。結論として私は次のことを要望いたしたいのであります。
 第一に、公共企業体の從業員に対しましては、國家公務員法の適用を除外するとともに、労働三法の適用を公社法案の中において確認することであります。
 第二に、この公共企業体労働関係法に盛られております改正各條項は、労働組合法もしくは労働関係調整法の問題として、考慮さるべき性質のものであると考えます。この中にもし反動的な企図や便乗的な行為が含まれてあるとしたならば、この際自重すべきであると考えるのであります。
 第三は、客観的な情勢によりましてこの法案を必要とする場合においても、專賣事業のような肉体労働者を含む企業におきましては、罷業権の存在することを認めていただきまして、調停仲裁等の措置につきましては、公共企業体と労働組合との間におきまして、自由な立場から労働協約の締結の際に、選択さるべきであるということであります。從つて私の持ちます唯一の修正案は、第二條から日本專賣公社を除くということでございます。以上でございます。
#55
○綱島委員長 御質問がありましたら……。
#56
○赤松(明)委員 平林君に承つておきたいのは、結論として日本專賣公社を本法案から除く。そうしてその公述の中に、共通の特異性の名のもとに鉄道と專賣業とを同一にして、本法案の中に含めることはよろしくないというふうな御意見がありました。そこでこれが除かれたとした場合に、現実にすでに施行せられているところの政令は、本法が生きた折においてのみ――修正あるいは改正はその限りにあらずですが、この政令はこのままであなた方の分野にのみ生きて残つているというようなことになるとするならば、これはもう少し重大な結果になるんじやないかと私は思うのです。そこでこれを除いたとすれば、その政令を撤回さす方法がないとするならば、專賣公社あるいはこの專賣公社の從業員、こういつたものに対する單独立法をもつてして、あなた方のいわゆる自主性を生かし得るものでも、つくらなければならぬということになるのであるか。この点について平林君はどう考えているか。
#57
○平林公述人 この政令の問題につきましては、これは國会において、今までの労働者、あるいは一般的な常識となつている観念から、すみやかにのかしてもらうような方法が講ぜられなければならぬと思う。それについての具体的な措置はどうすればよいかということは、私は知りません。しかし國会が当然の措置としてきめてくれるものと信じております。
#58
○赤松(明)委員 そうすると、労働三法は現在のままでよい。政令もいけない。要するに公共企業体労働関係法から日本專賣公社を、いわゆる第二條をここから削る。これはわかりますが、もう一つ公述の中の封建性といわれる大藏官僚の、その封建性を温存することになりはしないか。これはこまかなことになりますけれども、そうすると現在の労働三法をもつてしても、皆さんを制約しているところの今日の大藏官僚の封建性というのは、現在も認めておるのかおらないのか。その点を承りたい。
#59
○平林公述人 ただいまの御質問につきまして、大藏省の官僚が非常に封建的である。それに対して今のわれわれの労働組合が、どういう措置をとつておるかということの御質問だろうと思いますが……。
#60
○赤松(明)委員 そういう意味であります。
#61
○平林公述人 このことにつきまして私どもの組合は結成以來、一昨年のわれわれの大会ないしは中央委員会におきましても、專賣局民主化の運動を展開いたしまして、同時に專賣局の中にある身分制度を撤廃しなければいけない。こういう要望を続けて参りました。そしてこの問題につきましては、われわれは現在の專賣局の官僚の考えておりますような組合に対する考え方や、それからいろいろの労働行政に関する考え方について絶えず反対いたし、同時に專賣局の中にある身分的な考え方を撤廃しなければならないと主張して來た。この問題につきましてわれわれはかつて当局と爭つたことがあるのでありますが、中央労働委員会におきましても、この問題についてはそういう残滓があることを認めまして、これに関するいろいろな協定をし、お互いが協力をしてなくすような措置を講ぜよという調停をしてくださつたのでありますが、これに基いて交渉を始めようといたしましたときに、政令が出て参りました。從つてわれわれは、われわれのような肉体労働者が一時的にもせよこうした政令に縛られるのは、現実を無視したものであるといたしましたが、やむを得ずその範囲におきましての交渉を展開しておるために、実現しなかつたのであります。このことをわれわれといたしましては、日本專賣公社法案の中におきまして、十分に織り込んでいただきたいと考えておるのであります。たとえばわれわれは專賣局の事業を発展するためには、現在の段階においては工場システムをとつて、製造と行政とを分離いたしまして、物と権力とを引き離して増産の能率をはかる。こうしたことについてもいまの日本專賣公社法案を成立する際に、これらの法律を制定する際において、最も関係の深い直接携つている人たちの意図は含まれておらない。こうした自分たちの考え方を現状のままにしておこうという考え方を、私たちは封建性だと言います。私たちも今も專賣公社法案の中において、これを実現しようとして努力いたしておるわけであります。
#62
○赤松(明)委員 もう一つ伺います。私は平林君の最初からの一貫した、きわめて明快なる御意見にも似合わないと思うのは、これは少し意見のようになるけれども、少くとも冒頭におけるあなたの御意見は、國家公務員法よりも日本の一般労働組合運動に対する彈圧を第一歩として、こういつたいわゆる公務員法に関係のない者にまでこれが及ぶことが、非常によくないのだという御意見があつた。そこでまず労働戰線全体の面から見て、本法はもう仕方がなかろうが、しかし專賣法だけはこの分野から除いてもらえば足りるのだ。あなたはきよう公述人として專賣局の肉体労働者を代表しているのだからいいが、しかしこれも一つの封建性と言われはしないか。少くとも自分の分野だけというふうな意見が、はたしていいのかどうか。私たちとしては本質的に言つて、國鉄なら國鉄と言うけれども、私鉄と全然同じ性質のものでありながら、現在あるその現象のもとにおいてこれが適用せられんとしているのであるから、これはいずれにも関連があるものとして、結局日本の労働運動の基点において、こういう面も十分なる連携を保つてもらつて、要するに建設的なものを生み出すということに、努力してもらわなければならないのであつて、これも一つの封建性の一端ではないかというふうに考える。こういう点について十分なる御檢討を願いたいものと私は考えております。
#63
○綱島委員長 速記を止めてください。
#64
○綱島委員長 速記を始めてください。
#65
○秋田委員 ちよつとお尋ねしたいのですが、大変明快な論議を展開されてよくわかりましたけれども、お言葉が抽象的であつたので、私が誤解しているかもしれませんが、ちよつと矛盾していないかと感ぜられる点もあるのでお尋ねしておきます。それはこの法案の第十七條の罷業権等の禁止をされている規定に対して否定された。それはわかります。しかしその際あなたはマ書簡を引用されて、鉄道や塩及びタバコの專賣事業に関する限りは云々というところで、普通職の場合に與えられている保護にかわる調停仲裁の制度が、設けられなければならないというこの條項を、御引用なさつたように私は記憶しておりますが、結局これを認められているのではないかという印象を、私與えられたのであります。それでこういう事業に関して特別の公共企業体が組織されなければならない。こう言つておいて、しかしそれらの職員は普通職ではないので、それから除外しなければいけない。かつ普通職の場合に與えられている保護にかわるに、調停、仲裁の制度が設けられなければならない。こういう前後の関係から申して、どうしてもこれは特別の調停なり仲裁の制度が、設けられなければならないということを、示唆しているものと思う。從つてこれは前後の関係から見ると、やはり労働関係調整法に言つておるような調停とは、また別な保護その他の見地からの調停なり仲裁がなければならない。こういう意味合いのものであろうと思う。それであとでは、あなたは第二條から日本專賣公社を除けということをおつしやつたことにより、またその中間においての、この中に調停仲裁の制度があつて、これが日本の全労働界の民主化に悪い。こういうようなお言葉もあつたと思います。この初めのマ書簡を引用されたあなたの御意思とこのあとに、何だか矛盾があるのではないかというような印象を與えられたのですが、いかがでございますか。
#66
○平林公述人 具体的によくわからないのですが……。
#67
○秋田委員 もう一ぺん申し上げますが、ただいまのマ書簡を引用された部分に、普通職の場合に與えられておる保護にかわるに、調停仲裁の制度が設けられなければならないという條項があつた。まさに十七條の罷業権を禁止したものに対して、あなたは否定的な態度をとられた。そのときにこの條項を引用されておつたように私記憶する。私はその前段においては認めます。私相当了承できる。その罷業権を禁止したということはどうもおもしろくない。しかしマ書簡に忠実である限り、それに否定的な態度はあなたはおとりにならなかつた。そうするとここにやはり調停仲裁の制度が、設けられなければならぬと書いてあるのですから、それを認められなければならぬ。この前後から言つて調停仲裁ということは、労働関係調整法に言われておるものとは、また別個のものを明示されておるように私にはどうも考えられる。そうでなければあらためて書く必要はない。まさにそれに相当するものをこの法案に持つておると思う。あなたはそれをも最後において否定された。ここは何だか私の誤解かもしれませんが、少し矛盾しておりはしないかと感ぜられましたので、あなたの御意見を伺つたわけです。
#68
○平林公述人 最初マツカーサー元帥の書簡を引用いたして申しましたのは、こういう調停仲裁の制度を法律化することではないというふうに私は解釈するのが、ほんとうではないかと考えたのであります。從つてこうしたものは労働者にいたしましても、あるいは資本家にいたしましても、お互いにそういう状態があつてむだな紛爭が生じないということは理想であります。これは同時にお互いの義務であると考えるのであります。從つてそれらの義務は労働協約の際お互いが了解し合つて、取上げて行くべきであるという考えを申したのであります。
#69
○秋田委員 それではつけ加えて私の意見を御参考までに申し上げておきます。マ書簡に特に普通職の場合に與えられておる保護にかわるに、調停仲裁の制度が設けられなければならないと明示された意思は、やはり全体を読みますと法制化すべしという意図に私には解される。從つてこれを引用されたところが、やはり同様な趣旨でお読み取りになつて、そうして後段においてこれを否定されたような御発言があつたことは、私は矛盾と感じたのでありますが、前提が私どもと違うので、その点は了解をいたしましたが、やはり調停仲裁制度が設けられなければならないというのは、どうしても法制化をしなければならぬというふうに、私には感ぜられるという私の意見だけを申し上げておきます。
#70
○平林公述人 そのことにつきまして私は專賣事業、特にタバコを生産しておるわれわれのような肉体労働者の公共性について公述いたしました。この現実によつて私のような意見になつて來るのであります。われわれはこの現実を無視したものであつてはならないと考えるのであります。時の勢いをもつて、ある場合においては必要な措置を必要とする場合もあるかもしれませんが、現実を無視したものはやがていつか破綻が來るだろう。こういう考えを持つておるのであります。
#71
○綱島委員長 そのほかにはございませんか。
#72
○安平委員 ちよつとお尋ねしますが、現在まで專賣局関係の爭議、紛議、待遇改善、そういうものが起つた場合に、労働者側が特に労働組合法もしくは労働関係調整法を無視して、爭議行為なり何なりをやつたというような例はありませんか。
#73
○平林公述人 專賣局労働組合は現在総同盟傘下の組合であります。私どもの組合の参加数は三十五あります。この三十五のうちいまだかつて法を無視した爭議、その他非合法的な紛爭を起した例はまつたくありません。同時に全國組合におきましても、今までわれわれが置かれております立場から、全官公廳といろいろ関係がありましたが、單独にわれわれが爭議状態に入つたのは、專賣局における封建的な制度を打破しなければいけないとして、專賣局民主化の問題について爭議を開始したときであります。このときにおきましても、われわれは労働委員会に提訴をいたしまして、十分論議いたした後に、そうした問題について爭つたのでありまして、この間においてはわれわれは盡せるだけの誠意と努力をもつて、しかも爭議を行つたのであります。われわれのこの態度に比べまして、個々のこまかい例でありますが、かえつて私は大藏專賣局においては、こうした労働法規や労働関係調整法に盛られている精神を、ふみにじつておる実例を知つておるのであります。たとえば個人的な解雇の問題にいたしましても、專賣局の一地方局のとつております態度は、労働関係調整法の四十條の違反や、労働組合法の十一條違反であるというようなことを、行つておる状態であります。私たちの今の質問にお答えいたしますには、われわれはそうしたことを一切行つて來なかつた組合であることを、自負してよいと考えておるのであります。
#74
○綱島委員長 よろしゆうございますか。――御苦労さまでした。
 それでは午前中はこれで休憩いたしまして、正午後一時半から始めますから、定刻にどうぞお集りを願います。
    午後零時二十七分休憩
        ―――――◇◇――――
    午後二時十二分休憩
#75
○綱島委員長 休憩前に引続いて会議を始めます。
 これから公述人の公述を続行いたします。星加要さん。
#76
○星加公述人 國鉄労働組合中央執行委員、書記長をいたしております星加でございます。
 マツカーサー元帥の書簡の趣旨によつて、公共企業体が國鉄に適用されることになりまして、ここに公共企業体関係の労働関係調整法について、意見を述べさせていただくことになりましたが、公共企業体法そのものの中に問題がたくさん含まれておると考える。從つて公共企業体法の中に、どのようにほんとうに公共企業体に組織を変更する必要があるかというその本質をつかんで、公共企業体法というものが立案され、國会で法律化されるかということが、おそらくわが國の運命を左右して行くものであろうと考える次第であります。そこで英國の公團組織、あるいは米國におきますところのTVA法というものを見ます場合に、その本旨がやはり民主的な運営を主眼として、人民に奉仕をするという本筋が、非常に強く出て來ておるように思われる。そのことが英國の労働組合運動が、やはり漸進的社会主義の実現に向わしめ、かつ米國におけるところのTVA実施後の成果というものが、原子爆彈を製造するまでに至る産業の発達を來したという点は、われわれが眞にこれを学ばなければならない点であり、わが國の國有事業のあり方を檢討するにしても、その非能率性というものをここに克服しまして、國民のためになる企業、新しい企業形態というものを打立てねばならない。この熱意を國民として持たねばならない。從つて現在までの惰性あるいは官僚としての勢力の温存、あるいは体面というようなことから考え、あるいは一般会計依存というようなはなはだしい依存的な考えを一擲しまして、ここに公共企業体にするからには、公共企業体であるだけのものにつくりたいと考えている次第でありますが、公共企業体法案そのものは、英、米のものと比較しまして十分なものではないと考えられる。從つてこれがますます本筋のものとして改良され、完成されるためには、労働組合の協力がぜひとも必要であると思います。從つて労働組合の協力という点になりますと、これは意味の上におけるところの協力ではなしに、こういう点がいかぬということを、協同組合がやはり鬪爭的に発言する、あるいはその余地を残しているところに、間違いが正しい方向にむりからでも進むという契機を残しており、もしこの力ある労働組合の鬪爭的な協力をあえて押えるとするならば、欠点というものは決して除外されないように思うのであります。この観点から労働組合関係法の方からもよほど大乗的な立場、國家的な立場に立つて批判しなかつたならば、それぞれの立場において、組合の都合のいいところのみを主張するようであつては、國家のためになる公共企業体関係の労働組合関係法もできねば、公共企業体法案もできない。公共企業体もできないということになつて、わが國の産業の進展なり復興なりに、損失を與えるものと考える次第であります。
 午前中は加藤委員長の方から、全般の点について公述したようでありますから、私はその残余の部分についての見解を、各條文にわたつて申し上げてみたいと考えます。すなわち十一條関係でありますが、この十一條はわれわれが前に持ちましたものと、今ここにある法案とでは、よほど相違しておるようであります。しかしながらこの十一條の本筋とするところは、組合の代表者が自主的に、組合によつて交渉委員を選出することができるような形態でありますけれども、その後において大臣指名というような手続が盛んに書かれておりますので、公共企業体の交渉委員の選出方法について、不明瞭なものが含まれておるように思う。從つて特例の場合をもう少し簡潔に表明し、あくまでも公共企業体の組合側からの代表者というものは、その組合の自主的な性格において出て行くのであるということを、明記するようにしてもらいたいと思う。なお公共企業体の労働組合法案は、オープン・シヨツプ制をとつておるようでありますから、組合員または他の職員ということにいたしまして、他の職員というものに非常なウエートを考えておるようでありますが、これはやはり民主化の線というものが労働組合というものを認めて、わが國の民主化を完成して行こうという本旨に照らして行くならば、組合というものを肯定する限り、その存在を許す限り、それに参加しない職員というものを、法文の上において同等な重さで、並列的にこれを考えるということは、組合が許され、また組合運動というものが國家社会の公益を代表するものとして認められておる今日において、かくのごとき体裁をとるということは、私は時代錯誤であろうと考える。
 次に十七條の方へ参りますと、十七條では「同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為」ということの禁止が出ておるわけであります。このことは團体交渉権というものを今日想定しておりますが、團体交渉権というものの裏づけには、罷業権があるということが本旨になつております。從つて憲法から労働組合法に至るまでの各條文におきまして、罷業権という言葉が正式に使われておる文章はありません。從つて團体交渉権があるということは、これと並行して團体交渉権には罷業権が付随しておるという観念になつておる。しかるに公共企業体法においては、これは團体交渉権と罷業権というものを分離して考えておるところに、現行の憲法その他とおよそ用語の内容が違つており、または團体交渉権に対する今までの観念に、よほどの相違を來すようにも思われる。しかしいずれが眞実であろうかという点を考えます場合に対等の立場に立つて交渉をするという点に、團体交渉の團体交渉たるゆえんがあるのであります。もしそうでなければ、対等の立場に立つての交渉がなされない。これでは労働組合というものを認めて、わが國の民主化を推進しようとした本旨にもとることになろうと私は考えます。從つて團体交渉権が罷業権によつて裏づけをされたものである。その使用方法が権利の乱用に陷らないように愼まるべきである。またその企業の特異性によりまして、すなわち基礎産業であれば基礎産業であるほど、その制限ということについては、おのずから社会的利益のために制限を受けるものであろうと思うが、根本の面において十七條に規定するがごとく、罷業権を全面的に抹殺し去るということは、この本旨にもとると私は考えるので、この十七條については削除すべきであるという見解を持つております。
 次に十七條の2に、「公共企業体は、作業所閉鎖をしてはならない。」ということが書かれております。今日この公共企業体というものが、國有鉄道においてこの形態がとられておる。また塩またはしようのうというような專賣事業に、これが適用されるという観点からいたしますならば、おのずから私企業の企業体が、公共企業体になるというようなことは、はなはだ縁遠い話でありまして、「公共企業体は、作業所閉鎖をしてはならない。」というようなことがここに書かれておるということは、これはあまり牽強附令というか、画一的な考えであろうと思う。國有鉄道が作業所を閉鎖するということが、現実において考えられるかどうか。また專賣局がこれを全國的に閉鎖をするというような点から考えますと、これははなはだ現実的でない、観念的な論法である。かつこれが公共企業体関係の労働組合に対して罷業権を認めない。それに反対をする根本的な理由になつているとすれば、かくのごとき空論が実際の労働組合運動の使命を制するところの、團体交渉権の團体交渉権たるゆえんを、抹殺する根拠になつているという点は、公共企業体の労働関係法の中に、許しておいてはならない一大欠陷であると私は考える。從いましてこの二項の「作業所閉鎖をしてはならない。」というようなことも、不必要な條項であると考える次第であります。從つてわれわれは次の十八條の罰則その他に関しましても、反対をいたさなければならない。從つて團体交渉権を認める以上、爭議権というものを認めるのであつて、それが正しい爭議行為である場合には、これが國民的な輿論にも支持され、また公共企業体の正しいあり方を示すためにもぜひ必要でありますから、これらの條文の削除を主張いたすものであります。
 次に参りまして、調停仲裁の項は、これはしばらくほかの方に讓ります。
 次の問題は公共企業体の労働組合として、その團体交渉をするにあたつて、交渉の目的が労働條件に限られておるという点でありまして、これは第一條にもとることになりますが、この点も労働組合運動が、公共企業体そのものあるいはこれらの法案を、順次進化せしめて行く余地を残すために必要である。また公團組織あるいはTVAの本質等から見まして、労働組合側がやはり経営そのものにも参加し、これに納得をするのでなかつたならば、結論として正鵠を得た結論が出ない。またその決定されるものが労働組合側に納得をされて、ここに納得をした線での協定が成立する。労資関係を平和的に処理したいというのが本旨であるとしますと、この点を伏せて置いて、お前たちにはそういうことは無用であるというような態度をとるということが、はなはだ問題であろうと思われる。
 次に條文の第何号に該当しておるか、ちよつとただいま探し当てかねますが、公共企業体の労働関係法の中で、もしこれを労働組合側と協定をしても、それが國会の承認を得ない以上無効であるという條項がありますが、これは公共企業体の労働関係法としてこれを考えます場合に、はなはだ本旨にもとると考える次第であります。公共企業体法をつくります主たる目的は、公共企業体というものの政治からの独立であり、次には会計面の独立であり、次には官僚からの独立である。この三つの独立が公共企業体に與えられることによつて、眞に國民のための、あるいは全人民のための運営が可能であるとされており、現在の資本主義の点を修正し得るものであると言われておるところであります。また國鉄労働組合の今日までの運動の経験にかんがみましても、調停案その他によつて――今から三年ほど前になりますが、省電爭議が起りました場合に、この際の中央労働委員の初めての調停案の中にも、國鉄の会計が特別会計であると言つてはおりながら、一般会計に從属した特別会計であるために、今從業員に対してこういう手を打たねばならないということが考えられても、予算的措置を講じなかつたならば、從業員の待遇を合理的に改善することができないという拘束があるために、適当な手が打たれないということは、不必要に労資間の関係に摩擦を生ぜしめておるという点を指摘し、國鉄の特別会計を純然たる特別会計にせよという忠告が、中央労働委員会の調停案につけられておつた次第であります。從いまして、國鉄が現業の特異性を持つておるというような点も十分に叫ばれており、その点もこの前の二千九百二十円ベースを決定された際には、國鉄の現業の特異性を認めまして、三千二百円という金額をベースとして定めたのでありますが、これでもなお國鉄の重労働関係その他を含んでおります特異性が、カバーされにくいような現実にあり、なおこれが公共企業体として出発いたします際には、この会計面上の独立性ということが、非常に重要な項目となつて來ますので、それが満足されないというようなことでは、公共企業体の運営が、今までの公務員関係の運営と何ら異なるところがないように、思われる次第であります。從いまして、労資間で賃金その他労働條件に関する交渉がまとまつた際には、國会の承認を得るまでそれが有効にならないということではなしに、ただちに効力を発生するものである。そして國会に事後報告をする義務があるという程度の文章を、労働関係法の方へ入れ、そして公共企業体法、すなわち日本國有鉄道法の中へも、その條文を修正して入れていただきたいと思う。
 私が申しました点は、要約いたしますると、十七條以下十八條まで、この二條に含まれているところの爭議行為の禁止という点は、團体交渉権を認める以上、これを言うことは、團体交渉権に関する観念なりその必要性についての誤りであり、もしくは労資関係の平和維持、産業の平和を維持するにあまりにも汲々としているというか、近視眼的であつて、その本質をわきまえない。本質を解決せずして、法文のみをもつて押えて行こうとする、時代の進運なり考え方というものに逆行をした考えであるようにも思う。労資関係の平和維持その他に関する必要性は、これを認めないものでない。また公共企業体が有するところの、社会に及ぼす基礎性の大なる点をも考えまして、爭議権その他に関する一切の行使にあたつての調整方法というものは、別途に考慮を拂わるべきものであるとうい点が一点。次の一点は、財政上の、会計上の完全な独立というものがなされておつて、労資間において納得して協定された賃金その他労働に関する協定が、即日効力を発するものでなかつたならば、これが予算あるいは議会の関係をもつて常に延引されるということは、労資関係を満足な状態に置くものではない。不要な摩擦を來すものである。各識者によつて認識されていることが、いつまでたつても実現されないようでは、その進歩が望まれないという点であります。從いまして條文の中に追加いたしますものとしては、國有鉄道法案の方の條文を直すとともに、労働関係法の方へも、協定に達したものはこれがただちに実施をされるという点を明示して、それらのものが権威あるものとして、実を結ぶようにしたいという考えであります。これが大体私のこの法案に関する意見であります。
#77
○綱島委員長 委員中より、どなたか御質問がありましたら……。――御質問ありませんか。尾崎君。
#78
○尾崎(末)委員 星加さんにお伺いをいたしたいのであります。今までの、特に昨年の暮ごろ以來、今日までの労働爭議のあり方について、私が考えていることでありますが、そのことについておさしつかえない程度のお答えを、お願いしたいと思います。
 それは前に特に感じたことでありますが、賃金値上げの要求を初めなさつたときに、但し鉄道運賃の値上げはやつてはいけない。こういうことを強く主張されたことを、記憶しておるのであります。この賃金の値上げは要求をするが、運賃の値上げをやつてはいけないというこのやり方、最近電産爭議にしても、電氣をとめるということをやつておる。それから北海道あたりに先ごろ起りました職場放棄。この電燈をちよいちよい消してみて、國民に非常にきゆうくつな思いをさせたり、あるいは職場放棄をやつたりするこのやり方と、一方運賃の値上げをしてはいけないというこのやり方との間には、非常な矛盾があるように感ぜられます。こういうところに、あなた方の組合運動として、あるいは罷業権の行使として、何か一貫した考えがあるのかないのか。そういう点を簡單にお答え願います。
#79
○星加公述人 國鉄が運賃値上げに反対をしておるという点はどうかという点ですが、これは、原則といたしまして、運賃の値上げということは、物價に惡影響を及ぼしましてインフレを増長するもとになろう。またこれが宣傳せられます場合、もしくは運賃値上げを行いますチヤンスが、やはり國鉄從業員の賃金要求があつたその直後に、代償的にこれを行うということにいたしますと、いかにも人件費がかさむために、運賃の増額になるのであるというような点で、組合側に惡宣傳をせられる面が多かつたのであります。國鉄の運賃値上げの必要性というものは、そういうものではなしに、石炭の値上りその他が厖大な数字になりましたので、これが予算面に現われました赤字としましては、平素は十四億程度のものであります。それを何とかして克服したいと思つておる矢先に、石炭代の値上りでまず五十億くらいになり、それがまた物價改訂で運賃値上げをやりましたときに、あれは三倍半の値上げをしたと思いますが、第一回の運賃値上げをやりましたとき、これは民主党の苫米地さんが運輸大臣になりましたその直後の値上げです。運賃値上げをした結果何ぼ赤字が出るかというと、やはり約百四十億から百七十億くらいの赤字になります。そういう赤字は、決してその当時國鉄が賃金値上げを要求しておつたものではなかつた。それによるものではなかつた。けれどもそういうような運賃値上げをして、なお赤字が厖大になつて來る。これは物價改訂のためにそういうふうになるのであるから、運賃値上げをしてかつ百七十億なり百五十億なりの赤字が出るということなら、運賃値上げをしてもらつては困る。それでその赤字について、今後國会なり國民なりから文句を言われないというのであれば、これはよろしかろう。しかしそうは行くまい。どうせその次には経営の合理化をしなければならないので、首というようなことを考えてもらつては困りますよ。今は飛行機とか軍艦をつくるとかいう仕事は縮小をしなければいかぬが、とにかくこれから輸送の増強をしなければならないというときにあたつて、赤字が出ておる。それで企業の整理をやるということに引込まれたのでは承知ができませんから、要は國鉄労働組合が運賃値上げに反対をするということは、まずやつても、それが根本的に國鉄の財政を建直すところの運賃値上げでなしに、物價改訂に引きずられて、赤字を増大せしむるような運賃値上げであるから反対をする。そこで一應適正運賃ということを、組合の本筋としては考えておるわけである。そうして他の諸物價とバランスのとれた運賃にしなければならない。それならば國民もこれを納得するところのものである。國鉄の財政というものも堅実化して行くということを言うわけであります。從つて、その場のがれのごく平易なやり方をやつて、國鉄にも國民にも惡影響を及ぼすようなことをしてくれるな。そういうことをやつておるから、私たちとしては運賃値上げに反対するということを、言うておるわけであります。
 次に、労働組合とどういう関係があるかということが、最後の御質問になつておりますが、運賃値上げに反対をするというこの声が、ほかの労働組合は一向縁のないことであるということは申し上げておきます。それで電産の停電ストという問題がありますが、これは私よろしくないと思う。停電爭議を頻繁に行うということにつきましては私は賛成をしません。けれども、こういうことをやらなくてよいかということになると、やはりやらなくてはならないように私は思う。それで、これは賛成するものでないけれども、やはりやらざるを得ぬというかつこうになつております。これはどうかといいますと、今回電産爭議の問題が起りましたが、一應電産の調停案について考慮をめぐらしてもらいたいと思う。調停案はたしか七千六百円くらいな調停案であつたと思う。そうすると、政府は、今月の二日であつたと思いますが、経済閣僚懇談会を開いて、調停案はこれを尊重するということをきめた。それは御存じであろうと思う。それからしばらくたちますと、大屋商相の方から、調停案はうのみにすることはできぬということを言うて來た。そうして、私が今月の五、六日ころ政府の官房次長に会いましたときに、電産の調停案は出たけれども、これを実行できるかできぬかわからぬようになつておるということで、一向熱意がなかつたということです。その後、こういうふうな停電ストがいかぬいかぬということを言われておりながらも、やはり強行されている。そうすると、現在はどういう結論になつて來たかというと、それでは電産のストライキをやめろ。電産の調停案は尊重するのだということを言明しておるわけであります。それは昨日か今日の新聞に載つておつたかと思います。從つて、調停案が出た。そうしたら、初めは尊重すると言つておつたけれども、それから、うのみはできぬ。それから、どうもそういうものに相手になれぬというような態度にだんだんとかわつて行つて、それがまた爭議やなにかをやつて、せつぱ詰まつて來ると、また尊重する。そうして早くそういうことをやめようということになつて、賃金問題が解決の曙光を見るような傾向を持つておること、そういうような現実からしますと、それならなぜもつと最初から、調停案が出た。これを尊重する。しからば財源はこうする。そうしてとにかくこれを不満足であるけれども、君の方の要求とはよほどの開きがあるが、これは國家の経済情勢なり予算なりを考えるときにはこれしか出せない、何とかこの程度でがまんしてくれと言わなかつたか。これでは少し権力の乱用のごとく見えて、社会公益の面から見ますと、不穏当のように思われることすらも、あえてなすというようなことが起りつつあるのではないか。われわれといえども、電産の組合員といえども、あまり違つた考えは持つておるまい。それらの中には批判も起り得る実情でありますから、組合運動がますます経驗を得て行く上において、堅実なものになろうと考えるけれども、その芽をつむようなことをしてはならぬ。今までの電産の爭議なら電産の爭議というものの経過を、一應深く檢討されるならば、電産に望むところも多かろう。爭議戰術に対して批判なり非難なりを浴びせる点もよかろうと思うけれども、それ以上にやはり考えなければならない問題が、私はあるように考えております。
#80
○尾崎(末)委員 大体伺いましたが、もう一歩掘り下げて伺いたいと思います。さつきお述べになつた團体交渉権というものの裏づけは罷業権だ。こうおつしやつたことは一應わかるのです。ところがここからスタートとしてのさつきの私の質問だつたわけでありますが、たとえば鉄道運賃の値上げの問題でありますが、鉄道運賃を値上げすると、物價が一層高くなつて、だんだん困つて來るから反対だ。こういうことだけではどうも考え方の根拠が半端じやないか。こう私ども考えるのであります。運賃の値上げはもとより私ども民自党としましては、芦田内閣のときの値上げのときにも二倍まではいいが、二倍以上の値上げはいかぬということを、われわれの立場から論議したのでありますから、從つて運賃値上げには賛成ではないのであります。一例をとつただけであります。こうした場合に運賃の値上げをすると、インフレが助長されて困るのだ。こういう考え方だけでは、考え方が半端じやないか。こう私は考えておるわけであります。なぜかと申しますならば、運賃値上げをするということは、いけないことではあるが、同時に罷業をやるということになりますれば、罷業をやつたことによつて直接國民に迷惑がかかる。もちろん罷業をやることによつて、間接に國民に迷惑をかけることは多々あろうと思うのでありますが、これは別といたしまして、直接國民に迷惑をかけるということは、國民を犠牲にすることによつて、自分たちの主張を通そう。こういうことが明確に出て來るわけでありますから、こういう点を考えておるのでなければ、さつき申しますように半端なように思われる。私どもはこういうふうに深く考えておるのであります。でありますから、鉄道爭議にしましても、あるいは電産その他の爭議にしましても、結局直接國民を犠牲にしない、間接にはやむを得ないことが出て参りますが、直接國民を犠牲にしないという考え方が、さつきお述べになつたような、英米等におきましては非常に労働組合が民主化されて來て、國民の福利を増進するための公僕として行くのだ。こういう行き方になつておる。こういうところまで考えて参りますと、やはり日本における労働組合の行き方も、國民に直接迷惑のかからない方法を、最大の力を盡してやつて行くのだ。ここに半分ほどの考え方を置いて行かないと、正しい労働組合の発展は困難ではないか。こう考えますので、そういう点につきましては、組合としましてはどういう考えを持つておられますか。簡單でけつこうでありますが……。
#81
○星加公述人 運賃値上げにわれわれが反対をした。そうしてストライキをやつたというような表現がありましたのですが、これは本旨は違うと思います。表現だけのことであろうと思うが、われわれとしてはストライキをやつておらぬ。運賃値上げということになりましても、われわれはとにかくまず議会でおやりになることと、労働組合でやることとのわけ目をつけておりますので、反対という意見は申し上げるけれども、これをもつて汽車をとめたというようなことはいたしておりません。
 次にストライキをやりますと――電産その他がストライキをやつておる。電氣をとめて直接國民を困らせておるという点でありますが、そういうことはよいかということになりますと、これは組合側としては、ぜひとも避けねばならない点であります。從つてわれわれが最も苦心さんたんいたしますところは、そういうことをやらずに要求を貫徹いたしたい。交渉に重きを置いて合理的な結論を得たいというか、そのために全力を盡しておるわけでありますが、それで成果が得られるようになる必要がある。これは相手があることでありますので、その成果が得られない労働組合としては――ほかの労働組合でもそうであろうと思うが、まして私どもが担当しております國鉄労働組合は、この点に十分なる努力を拂つて、それがまことに悩みの種になつておる。そうして組合運動を進めておりますが、しかしやはり相手のある関係上、今回の問題について考えてみましても、給與ベースの決定というようなものを放つておいて、國会が解散になるというようなことになりますと、これはわれわれがいかに合理的に話合いをつけようとしても、往々にしてちよつと話合いがつかない事態に追い込まれる。この点われわれとしては、むろん國民に直接迷惑のかからないような方法を考えるけれども、場合によつてはやむを得ずそういう手段をとらねばならないというような事態も、できるというわけであります。もしそういう点ができるということについては、賢明なる代議士諸君によく事態を批判し、原因を考えてもらつて、いずれの側にそれを導くような欠陥があつたかというところで、個々の問題として批判し、対処するようにお願いしたい。概念的に申しますと、私どもとしては、直接國民に迷惑のかからないようにという点を眼目として、團体交渉権その他についても運用を考えたい。こういうことであります。
#82
○尾崎(末)委員 今の運賃値上げに反対をして、爭議をなさつたというのではなくして、あのころ運賃値上げの強い要求をやつておられて、要求が通らなければ爭議をやるのだという態勢に入つておつたのを、あなた方の御努力によつて、あの当時はストライキをしないで済んだ。こういうことはよく存じております。ただ考え方を申し上げたわけでありますから、その点誤解のないように願いたい。
 それから今おつしやつたように、なるべく直接國民に迷惑がかからないようにということから、すでに御承知のことでありますから、申さなくてもいいかと思いますが、スエーデンで考えておるような人権の基本的平等というような考え方から割出しての爭議行為、これはたとえば爭議をやるぞという通告をする場合には、相手を相当脅威せしめることでありますから、相手を脅威せしめると同じ程度に、みずからの組合も脅威を感じなければならぬ。こういう強い自己批判を持つておるがために、向うの労働組合は非常によく行つておるものだと承知しておりますので、いわゆる人権の基本的平等というような立場から考えても、やはり組合がなすことの影響が、どういうふうに直接組合なり相手方なりにおいての問題を、解決するかということだけでなくして、大局から総合して考えてみて、國民全体にどういう影響が及ぼされているか。こういうことを考えながら行くことが必要であろう。こういういわゆるスエーデンの労働組合などで考えておるような点を、相当お取入れになつておるかどうか。これで質問を終りたいと思いますが、その点を簡單にひとつ……。
#83
○星加公述人 むろんわれわれもその点を考えております。ただ一言認識を願いたいということは、勉強なり学問なりの理論によつて、労働組合というものは動かされるものではない。そのときの情勢によりまして生れて出て來るものであります。從つて理論も学び、理想に近い運営をしたいのですが、実際に行われる組合運動というものは、そのときの情勢によつて必然的に生れてくるという形であります。これが労働組合のほんとうの姿である。理論とか外國の例というものは、とつてもつて大いに労働組合の勉強であり、あるいは進歩のかてではある。けれども現在のあり方がそのまま手本にして從えるかと言いますと、ほんとうのものはそのときの情勢において生れて來る姿であるという点で、ひとつ御了解を願いたいと思います。
#84
○上林山榮吉君 委員外の発言を許していただけますか。
#85
○綱島委員長 よろしゆうございます。
#86
○上林山榮吉君 ただいまの公述人に簡單に伺いたいのですが、第一点は、組合運動のあり方は、鬪爭的協力を主眼にしなければならない。こういうお言葉を使われたのでありますが、その性格をもつと掘り下げて具体的に言えば、一体どういうことであるか。御承知のようにサチアグラツハの運動に見られる無抵抗の抵抗主義による生産の低下、こういつた氣持を含んでの鬪爭的協力であるか。言いかえますと、鬪爭が主であるのか、あるいは協力が主であるのかという点について伺いたいのであります。
 第二点は、公共企業体は純然たる特別会計になるべきものであるという一つの理想を示されたわけであります。われわれも合理的経営による独立採算制というものを、目標にしてやつて行かなければならぬという点は、一致しておると思うわけでありますけれども、現実はどういうふうにやれば純然たる独立会計になり得て、諸君の要求しておる公共への福祉も十分にでき、かつまた最低生活の保障もみずからを養う。こういうことができる。労働組合側からの具体的計算と言うか建策と言うか、そういうものは現実にどういうふうに考えておるか。われわれは國会側として一つの意見を持つておるが、そういう面についてもう少し具体的に掘り下げての御意見はないかどうか。この点を承つておきたい。
#87
○星加公述人 鬪爭的協力ということを私が申し上げた。これははなはだ新しい言葉のようですけれども、実は協力という言葉をすなおに申し上げるべきである。けれどもここでそれを申し上げますと、協力するということを言つたら、こういうことをしてくれ、はいよろしい。こういうふうにしなければいかぬ、はいよろしいと言うのが、協力であるというふうにお考えになる方が多いであろうと考えたのである。そこで協力は協力であるけれども、少し苦い協力ということです、良藥ではあるけれども、良藥は口に苦しといつて、甘い方の良藥もなきにしもあらずだけれども、大体良藥は苦いもので、苦い方の良藥という意味で鬪爭約協力と言つたのである。けれどもその鬪爭的という言葉は、ストライキというものを意味しておるものではない。ストライキではなしに、やはり対等の立場に立つて、そういうふうにしないかするか、りくつに合つた方に動かして行くだけの強さを持つているところの協力であります。もしりくつに合わぬでも、お前らは無力な人間であるから、とにかく使われている人間はひつぱられて來い。最後はそうなつてしまうのだというのなら、一應御意見として申し上げるけれども、聞かねばいたし方がないというようなことではない。それよりももう少し強く、双方話合いによつてりくつに合つた方に行こうではないか、という意味合いの協力を申し上げる。こうでなかつたならば、やはり亭主のすきな赤えぼしということになつて、ものはよい方向へ轉換して進むというのではない。そういうことを申し上げたので、鬪爭的協力ということは今までの観念における協力ではなしに、またそうかといつて、ストライキばかりによつての協力であるというような、羊頭狗肉をかかげる協力ではない。要は眞実の意味において理路正しい方向に、双方対等の立場でものを持つて行こうとする協力である。このように御了解願います。
 次の御質問は、私がこれにうまくお答えができるようであるならば、私もこういうところへは立つまいと思う。おそらく私も内閣総理大臣以上のものになれておると思うのですが、実際にこれならすべての者が納得するであろうという具体策が私にあろうはずはありませんで、それでは何もなしで君はそういうことを言うかと言われますと、それはわれのわれの立場として一應の考えは持つているけれども、われわれだけがそれを決定して見ましたところで、そのように問題は進み得るものではない。これは政府、あるいは資本家側、あるいは國会、もしくは労働者側というようなものが忌憚なき意見を発表し、資料を檢討して、そこに結論というものが見出されなければ、これは問題の解明が抽象論に終ると思う。過般経済復興会議というものがあつて、これが日本の経済を復興さすに役立つであろうという希望も持たれておつたようですが、これすらもやはり抽象論に流れたために、または具体的にそこに出た結論を活かして、國政の上に使つて行くというようなことがなかつたために、経済復興会議が出発して、これが國家経済復興のための施策を定めて、賃金も安定し、経済も復興しようということをやつてみても、その結論が実際に運営され、実行されないという点では、効力を現わさなかつた。で、私といたしましても、ただいまの第二の質問につきましては、おそらく私がここでこうということを申し上げても、あなたには御納得が行くまいし、またそれは抽象論になり終ると思う。ひとつ檢討をともにやつてみようじやないかという点であります。
#88
○綱島委員長 伊藤正丞さん。
#89
○伊藤公述人 私は日本自治体労働組合総連合の伊藤正丞であります。私の立場を最初に言つておきたいと思うのであります。
 私は全官公二百六十万のうち約八十万を占めますところの縣廳、市役所、町村役場の職員の立場を代表しておるものであります。これをいわゆる地方公務員と称しておりますが、このものの中には非常に多数の現業職員が含まれております。私の所属しておりますところの名古屋市の例を一例として申し上げますならば、名古屋市におきます職員は約一万二千おります。そのうちの五千二百が交通從業員であります。そのほか土木が八百、水道が七百、病院が約一千、作業、つまり東京ではおわい屋さんと言つておる、あれが四百、試驗所指導員、これは鍛冶工、施盤工等であります。これが約二百、それから学校の小使さんが四百、合計八千七百ほど現業の職員がおります。これは総数の約七二・五%に当り、かような多数な現業の者がおりますので、これらの者は総体といたしまして、非常に今度の公企業労働関係法案に対しまして関心を持つておるのであります。この点におきまして私は申し述べたいと思います。特にこれらのうちの多数は戰前から労働組合をつくりまして、平和に労働運動をやつておつたものが多数入つております。今回の公企業関係法案に対しまして、私どもは全般的にかような特殊法案を設ける必要がないという意見を持つておるのであります。それは要するに現在の労働三法規におきまして、これらの問題はすべて解決がつくのではないか、かように考えているのであります。私の体驗をもつていたしましても、二・一スト以來一方的に組合側だけの責任について、あらゆる問題を処しようとしておりますが、これは非常なる間違いではないかと思うのであります。たとえて申しますならば、今回吉田さんが首相になられましたが、以前首相をやつてみえたときにおきましても、非常に労働者というものを下に見て、これは不逞のやからであるというような観点をもつてお相手をしてみえた。かようなことではあらゆる交渉は満足なる妥結点には至らないのであります。これはよろしく対等の立場におきまして、國家的見地から國家の運営をいかにうまくするかということをお考えになつて、交渉を持たなかつたならば、決して満足なる妥結点は求められないのであります。その後における芦田さんなどにおいても、われわれが会見を申し込みましても、一度も会つていただけないというような状況であります。今回もまた吉田さんがなられたのでありますが、このような戰時中の官僚、それ以前の大臣は偉いというような考え――これは偉いには違いはないでしようが、われわれと非常に懸隔のあるものだというお考えをもつて処していたならば、決して満足なるものはできない。かような考えを捨てて、ほんとうの対等の立場に立つて、われわれと円満なる交渉を持ちましたならば、現在の労働三法をもつて十分なる成果が得られると考えるのであります。この意味におきまして、私は現在の公共企業の特別労働法を設ける必要はないという意見であります。
 特に私どもが考えておりますのは、現在の世界各國の情勢を見ますに、この労働法規が苛酷になつている國ほど非常にフアツシヨ的であり、戰爭への道が開けているように考えるのであります。最も民主的にできておりますところの、團結権あるいは爭議権をも容認しておりますような第二次戰爭以後の英國あるいはフランス、イタリア等におきましては、こういう危險性が非常に少い。しかるにこれが順次團結権を奪い、あるいは罷業権を奪い、これらのすべてを奪つているものは、何ものかと申しますならば、戰時中におけるナチスあるいは戰時中における日本、かような國がかようなもののすべてを奪つているのであります。現在の日本におきましては團結権は認めております。但し爭議権には相当の制約が加えられております。ここにおきまして今後の運営は、十分になされるものだと考えるのであります。特に内部におきます條文そのものにつきましては、われわれはこまかく檢討してはおりませんが、大体においてわれわれの基本点といたしましては、公共企業体從業員の労働関係につきましては、現行の諸法規を適用すること、基本的態度といたしまして、組合としては公共企業体労働組合関係法の制定に対しては反対をいたします。具体的方針といたしましては、組合組織は自主的にきめるもの、経営参加を認めさせ、なお生活の問題に対しましては、給與は職務を遂行するに必要なるものでなければならない。立法にあたりましては、すべて民主的の方法によつて行わなくてはならない。かような基本点に立つているのであります。
 なおこの條文の中にあります第七條の專從職員の問題につきまして、一應申し述べたいと思います。これはわれわれ全面的に反対をしているのでありますから、内部の條文に対しましてかれこれ申し上げる筋合いはありませんが、かような精神に対して申し上げるのであります。この專從職員の後段におきまして、一切の給與を支給してはならないという條項が入つておりまするが、これはわれわれといたしまして、労働組合が完成されましたあかつきにおきましては、当然一切の補助を受ける筋合いでありませんが、現在におきましては、われわれの給與ははなはだ低いものであります。皆さんも御承知のように、戰前の價格にいたしますならば、現在のわれわれの俸給は十七円何がしというような低賃金であります。かように十分なる給與がもらえず、かつまた外國におきまする八十年ないし百年を経過いたしました、非常に発達した自主的につくられている労働組合と、戰後わずか三年しか保護を受けていない労働組合、これをただちに一人前の労働組合とみなしてかような処置をすることは、労働組合に対する重大なる彈圧と考えねばならぬのであります。よろしくこの点はいま少し労働組合の発展を見、徐々にこの問題を解決すべきであります。なおこの問題は労働組合並びに使用者の團体協約に基きまして解決をつけるべきだ。かように考えております。この問題はすでに労働協約におきまして、各組合ともそれぞれ自主的にやつているのに、法律をもつてこれを奪うというようなことはなすべきでない。かように考えているのであります。
 以上申し上げましたように、私どもといたしましては、基本的にかかる独立法をもちまして、かような公企業体のものにすることには、全面的に反対であります。特にこの業態について申し上げますならば、二條において國有鉄道、日本專賣公社というようなものがあげてあるのでありまするが、さいぜん先輩の方からも御意見がありましたように、この專賣のタバコを製造する方法、これは何ら一般私企業とかわるところがないのであります。かようなタバコを製造するがごときことを、公社というようなことにいたしますならば、酒をつくるのも公社にせねばなりません。その他あらゆるものを公社というようなものにせねばならぬのであります。ただ單に税金を多額にとるというようなことに眩惑されまして、かような公社にするということでありますれば、これは非常な誤りではないかと考えるのであります。税金をとるのならばよろしく他の方法、他の考え方においてやるべきであり、それらの製造に從事している者を、こういう特別な法令によつて縛るというようなことは、非常な惡法と考えるのであります。同様に國有鉄道におきましても、一例を申しますならば、國有鉄道の中にバスがあります。バスはこれは何ら民間の路線とかわつたものではありません。たとえて申しますならば、一方に民間バスが並行路線を走つていて、片方のバスはストライキもやり何でもやれるのにもかかわらず、國有鉄道なるがゆえに、これが禁止されているというようなことになりますならば、その間において非常な不公平があると考えるのであります。と申しましても、私は何もストライキを奬励する意味のものではありません。当初にも申し上げましたように、双方が誠意をもつて交渉をいたしますならば、かかる爭議などは決して起らないという点に立つているのであります。先般も公務員法の公述におきまして、末弘さんが、労働関係の問題を法規により、あるいは罰則によつて取締るというようなことは、最も愼むべきであるということを申しておつたのでありますが、まつたく私も同感であります。
 以上申し上げましたことにおいて、ほぼ御推察できたことと思いまするが、私どもといたしましては、かかる法案には根本的に反対をいたすものでありますから、どうか議員諸公におかれましては、かかる法案の撤回を決定いたしていただきたいのであります。
#90
○綱島委員長 御質問ありませんか。倉石君。
#91
○倉石委員 ちよつと伊藤さんにお尋ねいたしますが、自治労連の組合の意思決定をなさる場合に、どういう段階を経ておやりになりますか。それをお伺いいたします。
#92
○伊藤公述人 私どもの意思決定は、大会の決定によつてなされるわけであります。なおこまかい点におきましては、中央委員会あるいは執行委員会において、それを実施することになつております。
#93
○倉石委員 もう一つお尋ねいたします。今のあなたのお話は、いろいろごもつともなことがたくさんあると思いますが、なるほど御説のように、労働運動を非常にきびしく取締つておる國は、またおつた國は、非常にフアシヨ的である。また過去においてもフアシヨ的であつた。これはわれわれも同感であります。今、イギリス、アメリカの例を伊藤さんはおとりになりましたけれども、御承知のように全体主義的なロシヤみたいな國は、労働組合に團結権みたいなものはあるようでありますけれども、ほとんどストライキというものはあり得ない。こういうようなまつたくフアシヨ的な國も存在するのでありまして、われわれはこういうやり方ははなはだおもしろくないと思つている一人でありますけれども、伊藤さんのお考えを承りますと、公共企業体労働関係法というようなものを單行法できめないで、労働三法でいいじやないかというお話でありまして、ほかの公述の方もそういうことをおつしやつておつたようであります。今ここに例にありますタバコのことは、いろいろ論議があるようでありますけれども、國有鉄道なんというものは、伊藤さんの御承知のように、今例に引かれましたイギリスでも、またアメリカでも、組合自体がほかの労働組合よりも、自分自体の規約において、爭議行為に入る前に非常に多くの過程を経るような段階を設けていることは、御承知の通りであります。そこでわれわれ一番心配しますことは、何と申しますか、公共の福祉に非常に甚大な影響をもつて來る企業は、やはり特別な扱いをする方が國民大衆の利益じやないか、ということも考えられるわけであります。まあこういう公共企業体労働関係法という單行法がいるいらないは、これからわれわれの審議によつてきまることでありますけれども、そういう点について、單に私企業に対する考え方での労働三法そのままでいいというお考えを、やはり持つておられるかどうか。公共の福祉に影響あるものに対しても、それでいいと言われるのかどうか。
#94
○伊藤公述人 私といたしましては、全然この労働三法でけつこうだと思つております。なぜならば労働三法の労調法におきましては、こういうような公共のものに対しては、爭議権においても相当な制限が加えられておる。それからまたこういうようなぐあいに、公企業体、公共の福祉というようなことを言われますが、程度の差こそあれ、すべての企業は公共に重大なる関係のないものは一つもありません。特に現在行われておりますところの新聞、あるいは電産あるいは石炭のごとく、かようなものが一々國民に対して重大なる影響のあることは、皆さんはよくおわかりのことだと思います。かようにいたしますならば、推し進めていずれの点において、公企業と私企業とをわけるかというような問題になります。またさような問題は、アメリカにおきますところの各公務員の携わつておる仕事、あるいはそれらの組合におきましても、自主的にそれらの爭議をやらないというような規定をつくつております。これはいずれにいたしましても民主的の行動をとる。日本を民主化させる上におきましては、当然組合内部の問題として解決をつけるべきであつて、これを法律で縛るというようなことは愼むべきではないか。かように考えます。
#95
○倉石委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、先ほど労働立法のことについて言及されましたときに、立法方法は民主的方法をもつてやるべきだというお話でありましたが、立法を民主的方法でなせという具体的な方法について、何かお考えがありますか。
#96
○伊藤公述人 本法は非常に短日月に出されまして、本日こういうような公聽会というようなものも、設けていただいたわけでありまするが、この点に対しても決して一般の者がこの法律を知つているわけではありません。よろしくやはり大衆にこれを訴え、これを廣くやりまして、こういうような法律というものはつくつていただきたいと思うのであります。この法律を知つているのは、ごく一部の人間しか知らないと思います。そういうような点におきまして、もつと廣く大勢の意見を聞く。――公述人というものも選んでいただいたのは、まことにけつこうであると思いますが、もつともつと廣くこの問題をやつていただきたい。かように考えております。
#97
○倉石委員 これは質問じやありませんが、伊藤さんは八十万の自治労連の代表者でございますから、念のために申し上げておくのでありますが、さつき労働運動に対して政府のものが、理解がないというふうなお話がございまして、私どももそれは総理大臣もできるだけ――芦田内閣だろうが吉田内閣だろうが、皆さんの代表者にお会いになることは必要であります。しかしそれは事情があるでありましようが、せんだつて人事委員会で、ただいまあなたのお話になりました吉田総理大臣が、この前の内閣の時分に労働者に向つて不逞のやからだということをおつしやつた。さような考えであるからだめだというようなことを、今おつしやつたのでありますけれども、それについて先般の人事委員会において、われわれ同僚委員の中からその点について質問をいたしました。ところが総理は勤労大衆に向つてそういうことを言つたというのじやないのだ。その勤労大衆の中の一部の過激分子が、特に騷擾を事とするようなものがあるといたしましたならば、そういうものは今日の経済再建の上から考えて見て、不逞の考えだ。こういうことを言つたんだというお話がありましたから、われわれは議員の一人として、ただいまの自治労連の代表者である伊藤さんに、誤解のないようにしておきたいと思います。
#98
○伊藤公述人 私ども政府交渉にずつと当つておりまして、大臣の忙しいこともよく存じております。だけれどもやはり下部の局長とか、そういうような官僚におまかせにならず、直接――それはお忙しいことはよくわかる。わかるから直接わずかな時間でもさいて、ほんとうの心を割つてお話になれば、こんな今度の公務員法の改惡などしなくとも、もつともつと私は話ができると思います。石橋さんあたりでも私ども直接お話をいたしまして、あの当時は解決がついております。そういうようなことで吉田さんあたりも、もつともつと民主的に、労働組合の者どもはわからぬやつだというようなお考えを持たずにやつたならば、私どもはこんな法律を出さなくてもけつこうやつて行ける。かように考えております。
#99
○綱島委員長 どうもありがとうございました。
 次に小林一さん、お願いをいたします。
#100
○小林公述人 國鉄労働組合の中央執行委員の小林でございます。本日は公述人といたしまして、皆様方御多忙の中を私たちの意見を聞いていただくということにつきまして、非常に光栄に存ずる次第でございます。特に今回の公共企業体法案につきましては、われわれ関係の組合といたしまして、重大な関心を持つておるわけでございますから、皆様方もぜひ組合側並びに各界の代表者の意見を十分取入れられまして、行動されるようにお願いしたいと思うわけでございます。
 まず順序といたしまして、公務員の関係から若干述べて行きたいと思いますが、しばしば公務員というものが何か特別の範疇のものであつて、勤労者ではない、労働者ではないというような観念が非常に強いわけでございまして、この点につきまして若干私は申し述べたいと思うのでございます。本來われわれは各種の任命の形におきまして、雇傭関係をつくつておるわけでございまするが、これも決してわれわれの意思に反して任命される、雇傭されるということはございません。またわれわれがやめたいというときには、この関係を断つこともできるのでございまして、こういう点から行けば一般の私企業の場合におけるところの雇傭関係と、ほぼ同一な関係にありまして、むしろ公法上の契約関係というような立場をとるのが至当であろう。こう考える次第であります。從つてわれわれは契約以外のことにつきましても、十分な活動の範囲を保障されておるということを、考えて行かなければならないと思うのであります。その点はただいま現在の憲法の二十八條におきまして、勤労者の團結権、團体行動権というものを保障しておりまするけれども、個人的な契約、これに対する優位性を認めておるというのが、基本的人権の保障の眞意でございまして、このような個人的契約にまさるところの保障を、一般の雇傭契約によつて抹殺するという立場は、本來顛倒しておるというような考え方に、われわれは立つております。從つて現在の労働三立法におきまして保障されておる立法は、決して一般的な立法ではなくて、憲法の二十七條、あるいは二十八條の勤労者の基本的権利を、具体的に表示したところの付属法でございまして、憲法とは絶対に離れきれない法律であるということを、御認識願いたいわけでございます。從つてこれを單なる立法によつてセーブするという考え方は、根本的な誤りを示しておるということを、まず指摘しておきたいと思うのでございます。
 次に公務員の仕事が國家の統治権の作用を営むので、何か一般的な勤労者とは違つておるということを、しばしば指摘されるわけでございますが、これも重大な誤りでございまして、近代の民主國家におきましては、私企業にまかせられるような廣汎な事業経営も、また都廳の便所のくみとり人といつたような廣汎な人員を擁しまして、いろいろと公務員の立場をとつておるわけでございまして、これを一律に單なる公務員というような名称によつて、特別な範疇に制約することは間違いであるということを、私は指摘したいと思うわけでございます。この点につきましてはかの戰時中におきましても、東條首相は一億総動員あるいは一億一心というような言葉によつて、事実上全國民を公務員であるかのごとき認定を行いまして、あのフアシヨ的な戰爭を行つたという事実がこれを示しております。勤労者の人権を單なる形式的な公務員、あるいは公共企業という考え方によつてセーブする考え方は、われわれ納得できないというのが主張でございます。また現実論といたしまして、われわれの給與というものはきわめて低く決定されております。すなわち二千九百二十円ベースの改訂当時、政府は何と言つたか。私企業においてはすでに二千九百二十円が、三千八百円にも四千円にもなつておる。だから物價改訂をせなければならぬのだというのが、提案の趣旨だとわれわれは聞いております。当時われわれ官吏は二千九百二十円をびた一文も越えて給與を受けておらない。また現実におきましても三千七百九十一円によつて縛られまして、民間におきましては六千円あるいは七千円、あるいはそれ以上の給與を支給されておるという現実にもかかわらず、われわれはいまだ三千七百九十一円を、びた一文越えて支拂いを受けておらないという歴史的な事実をお考えになれば、いかに國家公務員というものが低賃金にあえいで來たかということがわかるわけでございます。これを單に感覚的に考えまして、給與を上げれば爭議をやらないでいいのではないかというような單純論が、國家公務員法あるいは公共企業体の法案の骨子になつておるようでございまするが、これは歴史に逆行するところのものでございます。かような理想論が現実に行われるならば、労働組合などというものの発生はなかつたはずでございまして、これは資本主義の社会におきましては、当然このような一つの勤労者の團結権を保障することによつて、團体行動権を保障することによつてのみチエツクされ、バランスされて來たという事実を、皆様方は十分御認識願いたいと思うわけでございます。單なる理論的な公務員という立場からは、問題は少しも解決されないということを指摘したいと思います。この点につきましては特に民自党の方方が、六十九條のいわゆる解散権問題等を主張しております。私は個人的に民自党のあの意見に賛成しておるわけでございまするが、あの六十九條の問題あるいは七條のいわゆる天皇の告示の問題でございまするが、理論的に申し上げるならば、國会で不信任を送つたところの内閣が國会を解散するということは、憲法上條文から言つても成立たない。理論的にただ形式論理を展開するならば、國会が唯一の機関であるという立場をとるならば、かような暴論は成立たないわけでございますが、ここに民主主義社会のチエツク・アンド・バランスの方法が見出されておるわけでございまして、これはアメリカにおきましても拒否権の発動というようなことで、実質的な民主政治が確立されておるわけでございます。こういう観点に立つて労働組合の團体行動権が観察されなければならない、考えられなければならないということを、まず指摘したいと思うわけでございます。なおこの実例といたしましては、アメリカの例を申し上げるわけでございまするが、マ書簡においてもいろいろと引用されたような字句もございます。また別の紙上におきましては、ルーズベルトは政府の被傭者といえども、当然労働時間とか、安全あるいは労働條件についてこれの是正を欲し、また公正な処理機関を求め、あるいは交渉するということは当然である。そしてそのためにも團結を保持し行動することは、当然であるということを指摘しているのでございます。現在のマ書簡に示された公務員は國民の使用者であるから、特殊なそういう行動権をセーブしなければならないという考え方は、きわめてこれまた皮相的でございまして、われわれの爭議行為は決して経済を破壊し、政治を破壊するためにとるものではなくて、過渡的な一つのわれわれの團体の圧力として利用するものであつて、決して目的ではないということを指摘しておきたいと思うわけであります。この考え方はアメリカにおきましても、いわゆる團体交渉というものは行政機関を通ずるのではなくて、立法府に向つて働きかけるという理論も一つ成立ちますが、現実におきましては、この方法はあまり尊重されておらないということを、はつきり指摘したいと思うわけであります。その例といたしましては、一九四三年ないし四年におきまして、米國の都市被傭者のいろいろな関係を雜誌等で拜見いたしますと、やはり行政官吏が当事者としての責任を與えられておりまして、実質的に團体交渉を行い、また労働契約を締結しているというのが現状でございまして、これは事実でございますからたれも否定することができないと思います。そのゆえに問題は單に理論的に解明されるのではなくて、現実的な問題として取上げられなければならないということを、まず指摘したいと思うわけであります。このような観点に立ちまして、われわれは今回の改革案を考えるわけでありますが、まず例示されておりますTVAあるいはイギリスの石炭、あるいは運輸、あるいは公團の場合の例を考えてみましても、特にイギリスにおきましては最終的な爭議権の否認を行つていない。團体交渉を認め、あるいは協力機関という程度になりますけれども、経営の参加というものを十分に認めているというような立場をとつていると思うのでございます。またTVAにおきましても團体交渉を認めまして、あるいは各業務関係その他にわたりましても、十分な協力機関を持つているという実情でございます。これが今回の國家公共企業体労働関係法の眞意が全然抹殺されて、法文化されているということにつきましては、私たち全面的に賛成できないわけでございます。特に爭議権の否認の問題につきましては、現在のところタフト・ハートレー法の三百五條によりまして、政府の職員並びに政府全額出資の公團は、爭議行為ができないということになつておりますが、これはもはや現在の段階においては、アメリカの民主主義において否定されているということをまず前提に置いて、お考え願いたいと思うのでございます。このアメリカ民主主義においてさえ否定されている事実を、われわれ日本國が肯定するという事実があつたならば、もはや日本民主主義の評價が、世界においていかになされるかということを十分に御認識になつて、本案の審議に当られていただきたいと考えるわけでございます。
 次に調停仲裁の手続でございますが、これもきわめて独善的でございまして、仲裁制度におきましても、強制仲裁という立場をとりまして、爭議権の否認とさらに調停仲裁の形を整えておりまして、このようなことでは実質的にわれわれの團体交渉権の成果が、当然発揮できないということを指摘したいと思います。タフト・ハートレー法前のマグナー法あるいはTVA法案におきましても、決して爭議権の最終的な否認は行つておりません。またアメリカにおけるところのわれわれと同職業であるアメリカ鉄道におきましても、冷却期間あるいは相当の期間を、一時爭議権の発動というものを中止するということにはなつておりまするけれども、最終的な爭議権を從來は奪つておらなかつたという現実を、皆様方にも十分御認識していただきたいと思います。こういう観点から、われわれは調停仲裁につきましては、特に仲裁につきましては、適当な予告期間あるいは冷却期間を設置することによつて、爭議権の最終的な確保をぜひはかつていただきたい。こういうのがわれわれの考え方でございます。それから特に罰則につきましては、先ほどるる申し上げた通り、憲法の附属法規であるところの労働関係法を特に否認いたしまして、個人的な契約の違反と言いますか、そのようなものに対して罰則を適用し、体刑を適用するというようなことになつておりますけれども、この点はわれわれは先ほど申し上げた人権の基本的な考え方から、本末を顛倒しておるという立場をとつておりますので、ぜひ削除をお願いしたいと思うわけでございます。また当局の不公正労働に対しましても、いわゆる不当なる行政権の濫用という立場から、当然処断されなければならないということを申し上げたいと思うのでございます。
 最後に経営の参加につきましては十分に配慮されまして、労働者の意思を十分に反映したところの産業復興に当らなければならない。そういう観点から、これらの條文が本案に挿入されなければならないということを申し上げて、私の簡單な公述を終りたいと思います。
#101
○綱島委員長 御質問がありましたらお願いします。
 御質問もないようですから、本日はこの程度で散会いたしたいと思います。次会の公聽会は、先会において決定いたしました通り、明後二十四日の午前十時より開会いたします。
    午後三時五十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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