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1948/11/16 第3回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第003回国会 本会議 第13号
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1948/11/16 第3回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第003回国会 本会議 第13号

#1
第003回国会 本会議 第13号
昭和二十三年十一月十六日(火曜日)
 議事日程 第十二号
    午後一時開議
 第一 政府職員の新給與に関する決議案(赤松勇君外八名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第二 災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議案(竹山祐太郎君外九名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第三 國際電氣通信條約に加入することについて承認を求めるの件
 第四 過度経済力集中排除法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 日程第一 政府職員の新給與に関する決議案(赤松勇君外八名提出)
 日程第二 災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議案(竹山祐太郎君外九名提出)
 衆議院の解散に関する緊急質問(尾崎行雄君提出)
 海外残留同胞引揚促進に関する決議案(河野金昇君外三十名提出)
    午後二時四十四分開議
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
 この際一言いたします。昨日の本会議散会に際し、二度目の今村君提出の散会動議採決にあたり、議長は諸君において御異議ないものと思いまして散会を宣告いたしましたのは遺憾に存じます。ここに諸君の御了承を請う次第であります。
 なお御報告いたします。淺沼君の議事進行の趣旨を議長より政府に申し入れましたところ、総理大臣は決議の趣旨を体し、準備のでき次第なるべくすみやかに施政方針の演説をいたしたいとのことであります。
     ――――◇―――――
 第一 政府職員の新給與に関する決議案(赤松勇君外八名提出)(委員会審査省略要求事件)
#3
○議長(松岡駒吉君) 日程第一は提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、政府職員の新給與に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。島上善五郎君。
  〔島上善五郎君登壇〕
#5
○島上善五郎君 ただいま上程になりました政府職員の新給與に関する決議案につき、私は、日本社会党、民主党、國民協同党、社会革新党、労働者農民党準備会、新自由党準備会、第一議員倶楽部並びに日本共産党を代表して、その趣旨弁明をいたしたいと存じます。
 まず最初に決議の案文を朗読いたします。
   政府職員の新船興に関する決議
  本院は國家公務員法改正の審議に当り、マツカーサー元帥の書簡にも明らかに指摘されている通り、政府は政府職員の福祉並びに利益のため、充分な保護の手段を講じなければならぬ義務を負うとの確認の上に國家公務員法改正と同時的に給與改訂をなすべきものと信ずる。よつて政府は直ちに政府職員の新給與の予算を編成し、國会に提出せられんことを要望する。
  右決議する。
  (拍手)
 政府職員、すなわち國家公務員並びに地方公務員の給與が、過ぐる六月以來三千七百九十一円べースであることは、すでに諸君御承知のところでございますが、このべース自体、当時すでにその算定基準がくずれており、一般民間労働者の賃金に比べ、あるいは物價水準にかんがみて妥当でないことが指摘されまして、私の属する日本社会党においては、この総與改善のために臨時國会を召集して予算措置を講ずべきことを主張いたしたのであります。その後七月二十二日に至り、マツカーサー元帥より時の総理大臣に書簡が発せられまして、ここに國家公務員法の改正、公務員の給與改善並びに國有鉄道、專賣等の國家企業の機構改革のために、新たに臨時國会を召集する必要が生じたのであります。
 前芦田内閣によつて召集されました今次臨時國会は、このような事情のもとに開かれたものでありまして、途中政変がありましても、この臨時國会の任務には変りはないのでございます。從いまして吉田内閣は、再開されたこの臨時國会の劈頭に国家公務員法の一部を改正する法律案を提出し、次いで國有鉄道並びに專賣等の國家企業の機構改革に関する法律案を提出したのでございますが、マツカーサー元帥の書簡によつて、これらと一体不可分の関係にあるところの、切り離すことのできない関係にあるところの政府職員の給與改善に関しましては、未だ何らの措置を講じていないのみならず、さきの臨時人事委員会の勧告に対しましても、ことさらに躊躇あるいは拒否するかのごとき態度をとつて、特に最近数日來の本会議並びに委員会における同僚議員諸君の質疑に対しましては、目下愼重に研究中である、あるいはなるべく提出したいというような、あいまいなる答弁をいたしておりまして、この緊急な問題に対する政府の誠意は毫も認めることができないのであります。しかも一方においては、公務員法の改正を数日の期間をつけて審議終了を要求するなどとは、巷間傳えられておりますように、給與改善等多額の財源を必要とする予算を編成することは、つい一箇月前まで野党であつた当時、取引高税の撤廃等、国民に耳ざわりのよいことを約束した手前、非常に困難でありますので、これをやると、ぼろが出るから、このようなことを見送つて、公務員法改正だけをやつて食い逃げ解散をするという疑いを持たれても、いたし方がないと思うのであります。(拍手)
 一体政府は、マツカーサー元帥の書簡を尊重するといつておりますが、この書簡を十分に読まれたかどうか。これを正しく理解されているかどうか。私は念のため、その一節を御披露申し上げませう。「國家の公益を擁護するために政府職員に課せられた特別の制限があるという事実は、政府に対して」――政府に対してですよ、「政府に対して常に政府職員の福祉並びに利益めために十分な保護の手段を講じなければならぬ義務を負わしめている。」さらに続けて、「この理念は、民主主義社会においては完全に理解せられ、実現せられているのであつて、それゆえにこそ、公職が威嚴と権威と永続性とを備えており、公職につき得る機会が廣く一般から好ましい特権として認められ、かつ求められているのである。」かように言つているのであります。このことは、あらためて言うまでもなく、公務員の給與その他の待遇が、少なくとも民間水準に比べて、まさつても劣つてはならないということ、常にそのことに対して政府が義務を負うということを明らかに示唆しているものでございまして、換言すれば、六月以來三千七百九十円べースで押えつけられているこの給與を、すみやかに改善せよということにほかならぬのでございます。政府がいかにうかつでありましても、このマツカーサー元帥の書簡を十分にお読みになりましたならば、この意味がわからぬはずはないのであります。
 政府は、組閣後一箇月にして、國家公務員法の改正、それから國家企業の改革に関する法律案はいち早く提出し、さらに、私たちから見ますれば、よけいなことと思わるところの公共企業体労働関係法などというものまで出したにもかかわらず、二百七十万官公吏諸君のきわめて切実な要求であるところの給與改善に対しては、先ほど申しましたように、愼重研究中と、きわめて片手落ちなやり方をいたしておるのであります。台閣の諸公は、下々の実情にあるいはうといかもしれませんけれども、しかし、今の物價で、三千七百円べースでもつて食つて満足な生活ができるかどうかは、これは常識のある者でありましたならば、わかるはずであります。私はここで……。
  〔発言する者多し〕
#6
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います
#7
○島上善五郎君(続) 私はここで、政府のおひざもとの総理廰の調査を、参考までにごらんに入れたいと存じます。総理廰の統計局の調査によりますと、CPS、すなわち消費者價格調査、九月の四・七六人家族で、全國都市九千二百十円五十一銭、六大都市一万五百八十四円三十銭となつております。また、同統計局の調査の勤労者世帶收入総額は、四・六人家族で、九月、全國二十都市が九千八百九十二円の数字を出しております。いかに政府職員が、六月以來、民間水準に比べて劣悪な状態に置かれているかということは、この数字が何よりも雄弁に示しているのであります。もはや政府職員諸君は、二百七十万の政府職員は、愼重に……。
  〔発言する者多し〕
#8
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#9
○島上善五郎君(続) 愼重に研究中などという、この政府のスローモーな態度を待つている余裕は、絶対にないのであります。(拍手)國会の外では、二百七十万の官公吏諸君並びにその家族は、迫つて來る寒さと歳末を前にして、一日千秋の思いでこの決定を待つております。もし政府が、この給與体系に対してことさらに拒否し、サボタージユするような態度をとりますならば、この二百七十万政府職員の憤激がいかなる形で爆発するやもしれないような、きわめて險惡な状態にあるのであります。(拍手)
 私はここで、一通の投書を御紹介いたします。
 突然書面で甚だ不躾ながら、私達の窮状をお訴えいたしますから、どうぞ何らかの機会にこれを國会に反映させて戴きたいと存じます。私は警視廰管下のある警察署に職を奉ずる一警察官であります。奉職以來五年、四人の家族を抱いておりますが、官より受ける俸給は手取り四千円そこそこです。今の物價で、四千円やそこらで、五人の生活が満足に出來るかどうかは、先生の御明察に待つまでもないことと存じます。同僚の中には、闇屋の上前をはねたり、料飲店の裏口をのぞいたりする者もあるらしい事をききます。しかし私は、國家公共の安ねいを守る立場にある警察官として、断じて良心に背くような事は致したくはありません。けれども私達の生活は、もはやこれ以上はどうにもならない、せつぱ詰つた状態に追いつめられております。賣るに一物なく、借金の道も全くふさがれて了いました。若しこれ以上現在のままで放置されるならば、私は制服のまま良心を殺した行いをするか、職を退いて闇屋に轉落するより外ありません。
 どうぞ先生、一日も早く私達の給與を改善して下さい。そして私達に安心して職務に專念出來るようにして下さい。切にお願い申し上げます。
   十月二十日  一警察官より
 島上先生
 もし台閣の諸公にして、責任を感ずる政治としての一片の良心だにあるならば、この團結権も團体交渉権も持たない、まじめな一警察官の血の出る叫びに対して、えりを正して傾聽すべきであろうと思うのであります。
 最近町では、吉田総理大臣のことを殿様と言つております。私も、ここ数日來、吉田総理大臣の態度を通じて、その感を深くしたのでございます。かりに吉田総理が殿様的イデオロギーの持主でありましても、政府職員は殿様に対する家來の関係でないことだけは明瞭であります。もし與うべきものを與えずに法律でもつて縛りつけ、むちを当て、そうして、これに從わなければ投獄、処断するということを平氣で行うとしましたならば、これは民主主義とはおよそ縁の遠い專制主義であり、フアツシヨ以外の何ものでもないのであります。(拍手)少くとも政府は、その管下の政府職員に対して十分に能率的に職務を遂行せしめ、公僕たる忠誠をはたさしめようとするならば、マツカーサー書簡でも言われているように、威嚴と権威と永続性を保ち得るように、すみやかに政府職員の待遇を改善すべきであると思うのであります。
 私は、ここに政府に対し、政府職員の新給與に関する予算をすみやかに編成し、少くともこの臨時國会において、その予算の通過し得るような期間をおいて急速に提出することを、強く要求するものであります。民自党の議員諸君においても、良識がある者でありますならば、心中必ず賛成しておるに違いないと思う。私は、國会の名誉と國会の責任において、この決議案が満場一致採択され、政府によつてすみやかに実行されることを重ねて要求しまして、説明にかえる次第でございます。(拍手)
#10
○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。綱島正興君。
  〔綱島正興君登壇〕
#11
○綱島正興君 私は、民主自由党を代表いたしまして、本決議案に反対の討論を試みるものであります。
 このたびの決議案の要旨は、公務員法の一部改正法案と同時的に新予算を編成して、官公吏に対する新給與を確立しろという趣旨でございます。大体今日の人事委員会においても首相より説明がございました通り、先ごろの人事委員会の新ベース発表等についてもでき得る限りの考慮を拂い、なるべくこれに近い処置をしたいという希望を持つておるという発表は、すでに済んでいるのでございます。しかながら問題はこれを同時的にしなければならぬというこの決議案には、はなはだ異議があるであります。その事情を、順を追うて私は論証いたさんとするものであります。
 わが党においては、給與の基準は一にかかつて社会一般の経済情勢の変化に遅滯なく、過不足なく準拠せられるべきものであるとなしておるのであります。このことは、実はマツカーサー書簡にも指示されておるところであります。また國家公務員法の一部改正においても、その二十八條において、法律に定めらるべき給與、勤務時間その他勤務條件に関する基礎事項は、社会一般の情勢の変化に適應するように、國会が定める手続に從い、随時変更せられるものとす、と規定せられてありまして、給與の基礎事項は、もつぱら社会一般の情勢の変化に置かれておるのであります。
 以上の規定のほかに、さらに給與條件の変化の結果、給與額の百分の五以上を増減する必要を認めたときは、内閣または國会に、適当な勧告書を人事院はしなければならぬという規定に相なつておるのであります。社会一般の情勢の変化に適應するように官公吏の給與を決定するということが基礎でございます。それでございますから、給與を増加せよという皆様のこの決議案は、実は問題になりますのは、その基礎の社会情勢がいかがであるかということが基本的事情に相なるののであります。
 ところが、この社会情勢の変化ということを基礎に置くならば、このたび國家公務員法の一部改正をなすからして、それに準じて同時的に新給與水準をきめなくてはならないという議論は、即座には出て参らないのであります。ただ問題になりますことは、なるほど、このたびの改正法案におきましては、諸種な点において――政府職員が自主的な一つの團体交渉権を奪われて参りますことや、協約権や罷業権を否定されますこと、それらの点において、なるほどさような議論も起ろうかと思われる点がないではないのであります。しかしながら、ただいまわが國が置かれておりますところの実情というものは、必ずしも手放しに給與の増額ができるという実情にありませんことは、ただいまの國民の担税能力が、もはや限界点に來ておるということであります。(拍手)もしも國民の担税能力に剰余がありますならば、もちろん公務員の生活の保障について怠慢であることは許されないのであります。問題は、國民に担税能力の余裕があるかどうかということにかかるのであります。(拍手)
 そこで、この國家公務員法の改正というものは、いかなるものであるか。さきにマツカーサー書簡に基いて、七月三十一日に二百一号の政令が出ておるのであります。この政令は、それこそ國会を通じて民主的に立法化しようという手続にすぎないのであります。もしも賃金ベースを確定いたしますならば、この公務員法を立法することによらずして、むしろ政令を設定するとき、その当時にこの議論は起こるべきはずでございます。(拍手)しかるに、そのときには、諸君においては……。
  〔「閉会中だつたじやないか」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
#12
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#13
○綱島正興君(続) 官公吏に対する政府の処置は、前内閣においては何もなされていなかつたのであります。(拍手)
 そこで、ただいま國会においてなし得ることは、いかなることであるか。われわれがなし得ることは、どういうところに財源を求め得らるるかということが主要なる問題であります。そこで、経済再建のためには、國民の担税を増額せざることが基礎條件でなければならない。赤字融資を拡大せざることが、またその基礎でなければならない。そこでわれわれは、官公吏の給與の中において、それこそある意味における統制の大幅の整理をなすこと、行政の整理をなすこと、それらのことを行うて財源を見出すにあらざれば、とうていこのままの状態において新給與を確立することは、國民経済の点から許されないのであります。
 そこで問題は、われわれのなすべきことは何であるかと言えば、國民が直面しているこの経済危機に適應する制度を確立することである。官公吏も実に國民の一部を形成するものであつて、國民生活から遊離したる官公吏の生活は成立いたさないのであります。官公吏の給與確立は、國民生活の確立と時を離れてこれを考えることはできない。その官公吏の給與が実に社会一般の情勢に準拠して決定せらるべき旨のことが、マツカーサー書簡おいても指示さるるところであります。でありますから、私どもが、このたびここに、すべてのことに先んじて、国民経済の実情を考慮するところなく、官公吏の給與をその立法の事実と同時的に決定するということは、実は政府のなすべからざることに属するのであります。政府のなすべきことは、國民経済を確立することによつて官公吏の給與水準を引上げること以外には断じてなすべからざるものであります。(拍手)
 そこで、われわれが主張するところは、國民経済の確立をしなければならない。労働委員会もまた、國民生活の確立を離れての存在は無意味であります。こういう意味で、私どもは、特に同時的に給與の増額を決定せんとすることの決議案には反対するものであります。(拍手)決して私どもは官公吏の給與の増額そのものに反対ではありません、おのずから順を追うて、時を得て、妥当なる線にこれを決定することを適当となすがゆえに、この順序を立ち越えたる決議案には反対する次第であります。(拍手)
#14
○議長(松岡駒吉君) 高橋禎一君。
  〔高橋禎一君登壇〕
#15
○高橋禎一君 私は、民主党を代表し、ただいま上程されております政府職員の新給與に関する決議案に全幅的な賛意を表明し、若干の説明を加えまして、もつてその理由をつまびらかにいたさんとするものであります。(拍手)
 このたびの國家公務員法改正は、ひとり日本國政府職員の活殺、公務遂行の根幹に関する重大問題であるというばかりでなく、日本の労働対策の展開に、また日本全勤労者の将來の動向に至大なる関係を持ち、ひいては日本全産業の盛衰に影響を及ぼし、窮極は日本再建の成否にかかり、いわば再建途上にある日本國の運命を託する一大課題でございます。それゆえに、國会における國家公務員法改正案の審議につきましては、政府職員はもとより、全勤労者、全産業人、いな、全國民があげて、その成行きに対し愼劍なる注目を拂つておるのでございます。のみならず、世界各國が少からず関心を寄せておる実情にあるのでありまして、これはまことに当然というべきであります。
 しかるに、私が最も不可解に感じますことは、吉田総理初め政府当路者の態度であります。政府は、この画期的な重大國策に直面しながら、総理の施政方針演説もいたしておらない、國会から強き要望があるにかかわらず、あえてこれをいたさず、それのみならず、かえつて括然として恥なきの態度でございます。また政府は、國家公務員法改正とは一体不可分の関係にある政府職員の新給與の問題につきまして、これまた何ら誠意ある積極的の態度を示しておりません。やるのかやらないのか、できるのかできないのか、あいまい模糊、案に無責任なる怪物的態度であります。私は、政府のかかる態度からして、はたして政府が事の重大性を認識せるやいなや、また、そのこれをなす能力ありやいなや、さらにまた、國家公務員法改正の事業を完遂せんとするの誠意と熱情とを持てるやいなや、疑いなきを得ないのでございます。(拍手)民主政治の高揚とその明朗化を唱えられた吉田内閣のために、私は、はなはだこれを惜しむものであります。政府はよろしくこの際反省自覚し翻然として從來の無能力者的な態度、欺瞞的な、怪物的な態度を改め、責任ある政府として民主政治の大道に立ち帰られんことを強く要望いたします。
 國家公務員法改正案の根本思想なるものは、いわゆるマツカーサー書簡の示唆する理念に渕源し、その流れをくみ、その内容を一にいたしておるのであります。そこに一貫いたしております思想は、要するに、政府職員の民主的選択により、日本官僚制度多年の積弊を一掃し、政府職員の福祉と利益を十全的に保護することについては、政府みずからが責任を持ち、両者の間に闘爭手段の介入なくして、生存は確保され、公職は威嚴と権威と永続性を具有いたしまして、政府職員をして安んじて民主的に能率的に國民全体のために奉任せしめんとすることを内容といたしておることは、御承知の通りであります。今、日本公務員制度は、この思想のもとに確立されんとしております。
 しかしてこの思想は、全体的に把握されなければなりません。一体的、不可分的のものであります。その一部分を取上げてこれを法制化し政策化することは許されざるものであります。また、その一部を放擲し、無視し、これを軽視することも、この全体の理念を抹殺するものであります。それはあたかも、車輪の一部を切除して、その残余の部分を見て車輪と言い得ざるごとく、またそれが車輪の用を弁じ得ざるにひとしきものであります。しかるに、政府の今日までの態度は、國家公務員法改正と一体不可分にして、しかもその最も重要なる給與の問題を解決しておらないのみならず、それに対しいまだ信頼するに足る何ら積極的態度が明らかにされておらないのであります。
 臨時人事委員会は、新給與基準につき、さきにすでに勧告をなしておる。それに対し、政府は、本國会に、今日なお調査と言い、研究ととなえ、荏苒日を徒過しておる、無責任きわまる態度であります。これは、マツカーサー書簡の趣旨を裏切り、連合國の占領政策に逆行する態度であるとの疑いを抱かしむるおそれありといわなければなりません。問う、政府は弁明の辞ありや。
 政府は、本議場において、ややもすれば國家公務員法の運用の妙を論ぜられますけれども、今立法の当初において、すでに運用の妙を欠き、運用の円滑ならざることを暴露しておるではございませんか。政府はこの際、すみやかに新給與に関する追加予算案を國会に提出すべきである。國会は、もはやこれ以上政府の態度を黙視するに忍びない。本決議案の生れるゆえんも、そこにあるのであります。私は、かかる自明の理が現政府によつて蹂躪さるるために、この決議案まで上程されなければならぬところに、日本民主政治の危機を感ずるものでありまして、暗澹たる日本の前途を思い、心中ひそかに憂慮いたしておる次第でございます。
 吉田総理は、組閣早々、官界綱紀の粛正を國民の前に高然として呼号されました。もとより、その言やよし、私は、日本現在の官場における網紀紊乱のありさまを見まして、ために公務澁滯、不正不公、純良なる者がこれに苦しみ、これを慨嘆しておりますところの、心ある國民の心情を察しまして、吉田総理の言葉には同感であります。しかし、官界綱紀の粛正は、欺瞞や圧迫をもつてしては、断じてその解決は不可能であります。要は、まず官紀紊乱のよつて來る原因を探究することが先決問題でございます。原因だに明らかになれば、漸次賢明なる除去の手段を講ずれば、抜本塞源的な解決の成果をあげ得らるるものであることは、申すまでもございません。
 しかして、今日の網紀頽廃の原因がどこにあるかと申しますと、それは政府職員多数の生活上の不安であります。現下日本の経済の実情より見て、政府職員の経済生活は、節操を奪わんとする誘惑の魔手と闘うに、あまりにも貧弱なのでございます。政府は、政府職員をして不正への処女性を失わしめざるよう、その福祉とその利益を保護しなければなりません。ここに官紀粛正の要点があるのでありまして、吉田内閣にして眞に官紀粛正の意図がありまするならば、政府職員の給與問題について……。
  〔発言する者多し〕
#16
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#17
○高橋禎一君(続) 眞劍でなければなりません。國家公務員法改正にあたり、一方正しき主張の道を封じ、他方給與の点に深き配慮を講ぜずして……。
#18
○議長(松岡駒吉君) 高橋君に申し上げますが、時間はあと一分でありますから、結論を急いでください。
#19
○高橋禎一君(続) ただ單に官紀の粛正を唱えることは、むしろ人を地下に追いやることになりまして、かえつて効果は逆となるでありましよう。この点から考察いたしまして、政府は新給與の問題の解決に迫られておるわけであります。すみやかに追加予算を國会に提出しなければなりません。
 私は、以上の諸点より考えまして、本決議案はまことに当を得ておると信ずるものでありまして、私は今ここに声高らかに双手をあげて本決議案に賛成することを唱うるものであります。(拍手)
#20
○議長(松岡駒吉君) 平川篤雄君。
  〔平川篤雄君登壇〕
#21
○平川篤雄君 私は、國民協同党を代表いたしまして、本決議案に賛成を表するものであります。
 そもそも給與の改訂と申しますことは、今日すでに遅きに失しておるのでありまして、それと同時に、これが解決のいかんによりましては、目下審議中の國家公務員法の改正をして空文に終らしめるばかりでなく、今後の労働問題に重大な影響を及ぼすと考えられる問題であります。法の改正と給與の改訂が関連があるかないかというようなことは、今日すでに問題ではないのであります。思うに政府職員の待遇の問題は、実にわが國労働問題の焦点でありまして、結果によりましては、日本経済の復興をその途上において挫折せしめることもはかりがたいのであります。
 ここにおいて、われわれは、本國会最大の眼目でありますところの公務員法の改正にあたつては、関係方面の勧告に基くからやるのであるというがごとき消極的な態度や、ないしは法によつて公務員並びに職員組合の権利並びに活動を規制するというがごとぎ安易な態度をもつて臨んではならないと考えます。この際、過去一切の施策を檢討いたしまして、政府、國会ともに反省すべき点は率直に反省して、眞に合理的な給與を定め、政府職員諸君の信頼と安心の上に立つて公務員の國民に対する責任と良識ある活動を要求すべきであると考えます。(拍手)しかるに政府は、今日に至りますまで何ら対策の一端をも表明することなく、かつ人事委員会と大蔵当局との両案には、はなはだしい懸隔がありまして、政府の言を借りれば、今もつて愼重考慮中とのことであります。かかる逼迫した際におきまして、あまりにも愼重な態度をとられることは、一方では改正案の審議上重大な支障であるばかりでなく、政府職員諸君の不安と危惧を日々に増大せしめ、嚴寒歳末の時期を控えまして、一部政治的煽動者に乗ぜられる間隙を與えることにもなるのであります。
 わが國民協同党は、諸般の國際的國内的情勢にかんがみまして、本問題においては、特にこれを政爭の具に供することはもとより、供せられる余裕を與えることも嚴に愼まなければならないと考えておるのであります。この信念より、すでに政変の直後にあたりまして声明を発したのであります。すなわち、いかなる内閣ができましようとも、公務員法の改正と給與の改正、災害対策の予算化と政界の粛正、この四党は絶対に解決して、しかる後に解散を断行すべしというのでありました。これらの問題は、國として一日の遷延も許せないものでありまして、これらに関しては、わが党は超党的協力を惜しむものではないという意思の表明をしたものでございまして、いささかも政爭の具に供せんとするものではないのであります。
 今や異常の経済的危機に臨み、一日の遺巡は実に悔いを千載に残さんことをはかりがたいのである。(拍手)かかる際の政治とは、まさに救國再建の意思と行動そのものでなければならないと考えます。もしそれ、政府が少数党内閣であるという理由をもつて、かかる難問題を避けるというならば、それは首班指名の直後に潔く桂冠すべきであつたのであります。(拍手)
 また、総理大臣並びに各與党側の人たちの言葉によりますと、芦田内閣の引継ぎであるという理由をもつて、單に公務員法改正のみを分離して行おうと考えておるのでありますが、それならば、一体三千七百円ベースをもつて、この嚴寒年末の期間に政治的の空日が数箇月でき、その間一体公務員の生活をいかに保障せられようと考えておられるのでありますか。われわれは、さように考えたくないのでありますが、かような形式論を振りまわされる限りにおきましては、あるいは公務員の餓死によつて困難なる行政整理を断行せられようとする氣持があるのではないかと疑わざるを得ないのであります。すでに決意して公務員法改正に乗り出されるからには、あくまで有終の美をなすべきであります。政府にして誠意と合理的方策をわれわれの前に示されます限り、わが党はもとより、多数の協力を期待することも、必ずしも困難ではないのであります。政府は、山積する困難の前に、猜疑いたしたり躊躇することなく、ないしは毀誉褒貶を顧慮することなく、ひたすらに救國再建の決意をもつて、すみやかに給與改訂を含む追加予算案の上程をはかられんことを切望いたしまして、本案に賛成するものであります。(拍手)
#22
○議長(松岡駒吉君) 館俊三君。
  〔総理大臣はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
#23
○議長(松岡駒吉君) 館俊三君の発言は取消しまして、叶凸君。
  〔叶凸君登壇〕
#24
○叶凸君 政府職員の新給與に関する問題につきましては、吉田内閣総理大臣も、本國会が始まりましてから、耳にたこができるほどお聞きになつておるはずでありまするので、御出席を待たずに発言を続けたいと存ずる次第であります。(拍手)
 わが社会革新党が本決議案に賛成し、多分の好意をもつて現政府本決議案の誠意ある実行を求めるのは、まつたく現下の國情を憂うからであります。御承知のごとく、國民大衆に課せられております税金は、すべていかなる種類の税金も悪税にまで――いわゆる量より質に轉化すると申しまするか、いかなる税をも悪税に化せしめるほどの、非常なるところの負担を負わしておるのであります。現在の國会におきまして、吉田首相が、昨日の発言におきましても明瞭にいたしましたるごくと、現在の政局にたいしまするあらゆる政府の善処方のその前提が國家公務員法の改正にあるということが言明され、そのあとで國会はただちに解散するというところの意味のことを申しておれるようでありまするが、しかしながら、われわれ日本の従來の政府のやりましたる悪い癖は、國民大衆に対しましては、あらゆる法律によりまして求むること苛酷にして、しかも大衆の生活を中心にいたしまするところのあらゆる施策に欠けることが、あまりにも多かつたことであります。しかしながら敗戰後、わが日本におきましても、あらゆる民主化の線におきまして、こういう方法が改められつつあると、われわれは考えておるわけでありまするが、今度の國家公務員法の改正につきましても、できますれば、憲政の常道をもつてその内閣の使命とするとだびたび発表をせられておりまするところの吉田総理におかれましても、その内容の裏づけとして緊急にその財源を求め、これに関係いたしまするところの職員の新給與の予算を編成されまして、本國会に至急に提出を願いたいと存ずるのであります。
 もとより官公吏の方々が、國民大衆の公僕として一般國民大衆に與えまするところの思想的なる影響は強いわけでありまして、昔のことわざにもありまするがごとく、恒産がなければ恒心がないと言われておるわけでございまして、惡税は革命の母であるということが言われておりまするが、日本の財政を考えてみすると、まことにこの格言をわれわれは痛切に味わつてみなければならぬ危険なる階段にあると信ずるのであります。こういう意味におきまして、前政府でありますところの芦田内閣が、かりに現存をいたしておりましても、この物價改訂に伴いますところの新財源の捻出、予算の編成ということにつきましては、多分の苦労があつたかと存ずる次第であります。
 しかも、敗戰下におきまするあらゆる経済界、政界、官界の特殊の事情によりまして、われわれは不幸なる政治史の一ページを加えたわけでありますが、過ぎ去つたものは、これをしばらくおくといたしまして、賢明なるところの多数党の野党諸君の公明正大なる態度によりまして、また自由党諸君が、その主義主張を曲げることなく、堂々たるところの一つの施策を持ち、しかも予算を示されまして、本國会の有終の美をなすということは、わが日本の國会に課せられましたるところの最大の責務であろうと存ずる次第であります。こういう意味におきまして、わが社会革新党は、マツカーサー書簡において示されるまでもなく、われわれ独自の見解によりまして、われわれの自発的意図によりまして、この苦難なる予算の編成に成功し、そうして國家公務員法につきましても、われわれが大衆とともに納得の行くような審議を続けたいと存ずる次第であります。こういう意味におきまして、吉田首相におきましても、誠心誠意この予算の編成に当られまして、早急にこの予算が、もしも編成難でございますならば、その箇所を天下に明示されて、われわれ國会に納得の行くように御説明あつてこそしかるべきであると存ずる次第であります。
 こういう意味におきまして、わが社会革新党は、好感ある態度をもつて、吉田首相に対しまして、すみやかに予算編成をなされんことを切望いたしまして、簡單でございましが、本会議案の賛成の言葉にかえる次第であります。(拍手)
#25
○議長(松岡駒吉君) 館俊三君。
  〔館俊三君登壇〕
#26
○館俊三君 まず第一に私が皆さんたちに聞いてもらいたいと思いますことは、全日本の労働者階級が何がゆえにこの公務員法が議会を通過することを阻止してくれろと言つておるかということである。これをよく聞いてもらいたい。(発言する者あり)しやべるな。靜かに聞いてもらわなければいけない。この公務員法が通過する事柄と、七千三百円のベースを要求することが、非常に関連性があるからである。
 政府は、國会の初頭に七千三百円ベースその他の賃金ベースを出さずして、國家公務員法を先に上程したという意図を、私は労働者の感覚をもつて、こういうふうに解釈をしたのである。公務員法がこの國会を通過したならば、労働者は自主的にみずからを守るところの生活権を剥奪されることになるのである。爭議権を停止され、團結権が危うくされ、しかも第百二條が決定した場合には、政治に参與する権能をもとられようとしておるりであり。そういう場合になつて、われわれ労働者が、自分の生活を何によつて自主的に解決することができるか。憲法において團結権が認められ、罷業権が認められておつたからこそ終戰以來今日まで、われわれはそれを正しく行使することによつて生活を維持して参つた。いまだかつて、私が議員になつてからのことについてお話するのでありますけれども、労働者が賃金を要求し、生活の改善を要求して立ち上つた後でなければ、日本の現在までの國会は、日本の現在までの内閣は、いつだつて、先手を打つてわれわれの生活改善を考えてくれたことがあるか。(拍手)かつてないじやないか。それをよく聞いてもらいたい。
 私はかつて、こういうことを言つた。國会が、内閣が、いまだ声なき声を聞いてくれたことがないと言つたが、政治の要諦は、まず民衆が叫ぶ先に、民衆が押しかける先にその声なき声を聞きわけて、先手を打つて、着々としてそれをやつてくれるのがあたりまえじやないか。(「なぜそれを片山内閣に言わなかつたか」と呼ぶ者あり)何を言つているか。つまらないやじを飛ばす場合じやないのだ。――つまらないやじを飛ばす場合じやないのだ。今、この緊急なる事態に臨んでおつて……。
  〔「失言失言」と呼び、その他発言する者多し〕
#27
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#28
○館俊三君(続) 今公務員法を完全に通す場合においては、われわれ労働組合は、自主的な立場を捨てさせられて、人事院あるいは内閣の官僚のための奴隷に轉化しなければならない。しかも今日の窮迫した生活條件は、インフレの向上とともに、ますます急傾斜に下降するのである。家庭において生活が窮迫し、困難性を加えたときに、立ち上つてこれを訴えようとしたときに、すでに公務員法が改正され、手足がもがれてしまつたときに、訴えるところの場所がなくなるのである。そういうときも、われわれ労働者は公務員法によつて罰せられることを恐れて、じつとしておらなければならないような窮状に陷ることを絶対に避けたいために、労働者全員がこぞつてこの公務員法を通すべからずと言つておるのである。
 かつて政令二百一号が公布せられた時分に、政府は、この政令二百一号によつて五千三百円労働攻勢を徹底的に彈圧することができると思つておつた。しかるに、この政令二百一号が憲法違反であるとか、そういうことは労働者にはまず抜きとして、政令二百一号によつて五千三百円のベースを獲得する闘爭ができないということは、われわれの生活をそこで自主的に切り開くことができないことになるから、この二百一号の大彈圧に対して反対して立ち上つたのは職場離脱者である。(「煽動したのか」と呼ぶ者あり)煽動という言葉――しかし煽動された人間もあつたかもしれないが 政令二百一号のことによつて飛び出した若い鉄道職員、若い全逓の人たちは何を考えておつたか。彼らは、憲法違反であるかどうかということは、あるいはりくつではわからなかつたかもしれない。しかしながら、給料が不足であり、北海道で石炭がない、生活が続かない、軍手が來ない、そういうことについては、この若き職員たちは身にしみて困窮を感じておつたのである。それが欝積されて、政令二百一号の違反者となつて、函館、旭川、札幌において今公判にあがつておる。未決勾留所にも入つておる。
 私は、この善悪について言うよりも、昭和電工疑獄事件について未決勾留されておるところのあの姿と、若い青年職員たちが全体の立場を守るために未決勾留になつておる立場と、これをここに比較して諸君の前に提供するのだ。それは、かく申す私自身においても、四百六十六人の國会議員の一人たる私自身においても、共同の責任を感ずるのである。(拍手)われわれは國会に席を占めておりながら、かつて一度でも、労働攻勢に先んじて彼らの生活を改善し、彼らのために施策を講じたことはなかつた。その私自身にも重大なる良心的な責任を感じないわけには行かない。今ここに、なぜ片山内閣がやらなかつたか、なぜ芦田がやらなかつたか、なぜ吉田がやらなかつたかとふうふうに、その構成員の一人一人であるところの全体が責任を持つて、労働者にあやまらなければならないのではないか。(拍手)
 そういう意味において、公務員法を先に提出して、われわれの権利であるところの爭議権や團結権を奪い取り、さらに公共企業体労働法案によつてこれを國鉄の職員に当てはめ、さらにこれを專賣局の職員に当てはめ、さらにそれを演繹して石炭企業、電氣企業、そういうものにあてはめるという企図をもつて、それが成功したならば、労働行政がうまく行つて靜かになるだろうという氣持で、現内閣がもしいるといたしましたならば、大きな見込み違いであるということを考えなければならない。そういう大彈圧をくだされましても、われわれの生活が今日のごとく三千七百九十一円である間は――これは、この間人事院が六千三百七円の提案をしたときに、こういうことを新聞で発表している。
#29
○議長(松岡駒吉君) 館君、もう一分であります。
#30
○館俊三君(続) 六千三百七円は、元り三千七百円に比べて二倍である、倍額になつたが、今の給與水準にようやく達したと言つている。今日三千七百九十一円というのは、一般労働者水準の半額の値段で食わせていることである。(「金のなる木を持つて來い」と呼ぶ者あり)金のなる木の相談がしたかつたら、わが党に來て、わが党の政策を聞け。つまらない横やりを入れるな……。
#31
○議長(松岡駒吉君) 館君、本論に入つてください。
#32
○館俊三君(続) しかるに、今もつて政府は予算を立てることなくして、給與の予算をここに提出していないということは、ざつくばらんに言つて、この内閣は予算を編成する能力がないということである。予算を編成する能力があつたならば、たつた今出して來てもらいたい。泉山大蔵大臣は毎日もたもたしているけれども、明確な大蔵省の予算の方針をかつて説明したことがないではないか。私は労働者全体のために言いたいことは、現内閣のはつきりした予算の性格だけでも今日知らせてもらいたいということである。
 以上で私は、この賛成演説に終止符を打つものでありますが、私は労働者農民党準備会を代表してこれに賛成をするのである。しかしながら、これは單に労働者農民党準備会の代表であるばかりでなく、全労働者の代表として、ここに賛成するものである。(拍手)
#33
○議長(松岡駒吉君) 野坂參三君
  〔野坂參三君登壇〕
#34
○野坂參三君 私は、共産党を代表いたしまして、この決議案に賛成の意見を、ごく簡單に申し上げたいと思います。
 昨日この議場に出されました施政演説についての総理に対する要望のあの決議案及び今日まず第一に出されましたこの新給與に関する決議案、続いて出されるところの災害対策に対する決議案、この三つの決議案を見ましたときに、私は、これは当然やるべきでない決議案が出される、言いかえれば、吉田内閣の反動性がこういう決議案を出さざるを得ないようにしておる。もし吉田内閣が、常識的な普通の議会の運営方法をとられるならば、このような問題は当然起らなかつた。今問題になつておりますこの新給與の問題と国家公務員法の問題とは、当然一つのものである。
 先ほど島上君が申されましたが、マツカーサー元帥のあの書簡が、今われわれの全問題の基礎になつております。その書簡の一節を島上君が引用されましたが、私は吉田総理に、もう一つ書簡の一番最初を見ていただきたいと思います。一番冒頭に、こう書いてあります。官公吏を報酬、健康、安全、厚生、休養等々に関する科学的管理のもとにおかなければならぬ、こういう意味が書いてあります。一言で言えば、官公吏の生活を安定さしておいて――これが前提であつて、それから公務員法のいろいらな問題が出てくる、こういうふうに私どもは解釈すべきである。(「何を言つておる」と呼ぶ者あり)はつきり書いてあるから、しかたがない。つまり、官公吏の爭議権を奪うとか、あるいは團体交渉権を奪うその前に、官公吏の生活をもう少し樂にしてください、こういうふうに、われわれはこの書簡をとるべきではないか。少くとも日本の全労働者はこれを要求しておる。それをやらないで、政府は逆にやつておる。つまり、労働者に食を與えないで、首を締めるようななわを與えておる。今何百人の労働者が監獄につかまつておる。だから、私たちはまず第一に、これは人間的な血と涙があるならば、こういうふうな決議案を出される前に、これは当然出すべきです。
 第七に私の申し上げたいことは、今政府は五千三百円のベースを出して來ております。しかしながら、これを戰前の生活基準にずつと引比べてみますと、三千七百円は、昭和九年、十年、十一年の三箇年の平均給與に比較してみると、わじかに十二円にしかすぎない。それから最近報道されております六千三百七円にしても、わずかに十四円にすぎない。私はこれ以上申し上げません。
 もう一つ、仙台の郵便局でこういう事件が起つておる。貯金保険集金係の佐藤善藏という人、これは四十六歳ですが、四千円の給與をもつて六人の家族を養わなければならぬ。栄養失調のために、結局彼は、十月十六日に首をくくつて死んでしまつた。これは、仙台郵便局課長会議でも、この死は生活苦の自殺であるということを認めておる。これは決してただ一人の問題ではありません。全國を調べれば、たくさん類似の例があるのです。現に東京の官公吏諸君は、定期券を買うことができないために、電車賃がないために、一里、二厘の道を毎日歩いて通つて來ておる。これが今日吉田内閣のもとに働いておる官公吏諸君の生活状態です。官公吏の生活を上げようということに少しも頭を向けないで、ただ彼らの手をしばり、足をしばり、首をしばろうとすることだたけを考えておる。官公吏はすなわち日本國民全体の生活條件改善のために努力しておる。その先頭に立つておるのが官公吏諸君です。
 私は、この意味におきまして、この決議案に全的に賛成するとともに、この決議案は、私はただちにこの本会議を通過すると思います。そうすれば、明日政府としては適当な予算を提出されんことを希望します。
#35
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決をいたします。本案に賛成の諸君起立を求めます。
  〔発言する者多く、議場騒然〕
#36
○議長(松岡駒吉君) 中野君、私語を禁じます。
 繰返します。これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#37
○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
 この際大蔵大臣より発言を求められております。これを許します。大蔵大臣泉山三六君。
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#38
○國務大臣(泉山三六君) ただいまの御決議の御趣旨は、とくと了承いたしました。政府といたしましても、國家公務員諸君の生活の現状にかんがみ、こういう給與の改善は刻下の急務と考えておりますので、十分ただいまの院議を算重いたして、でき得る限りすみやかにこれに関連する予算案を提出する方針のもとに、鋭意各般の準備を急ぎつつあるのであります。
 右、御了承願います。
     ――――◇―――――
 第二 災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議案(竹山祐太郎君外九名提出)(委員会審査省略要求事件)
#39
○議長(松岡駒吉君) 日程第二は提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程第二、災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を求めます。井出一太郎君。
  〔井出一太郎君登壇〕
#41
○井出一太郎君 私は、野党各会派全部を代表いたしまして、ただいまま議題に供されました災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議案について、提案の理由を説明いたしたいと思うのであります。
 最初に案文を朗読いたします。
   災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議
  各地に頻発せる災害の対策に関し、その緊急性に鑑み、政府は速かにこれが補正予算を計上し、本國会に提出せられんことを要望する。
  右決議する。
以上の通りでございます。
 わが國の氣候並びに風土を考えてみまするときに、東亜のモンスーン地蔕に位し、夏季は南方洋上に発生する低氣圧が台風となつて來襲し、また多季間は大陸に起つた高氣圧の影響によつて裏日本一帶に多量の降雪をもたらすのが常でございます。さらに地質学上から申しましても、比較的新しいといわれる日本列島が太平洋の波によつて侵蝕を受けまして、加うるに火山活動の旺盛なる地殻構造のために年々地震が頻発するような状態に相なつているのでございます。わが國の歴史は、ある意味において天災地変の歴史であつたとも称し得べく、終戰後に例を求めましても、昨年のカスリーン台風といい、あるいは本年のアイオン台風といい、その被害はまことに甚大なるものがあるのであります。震災の面につきましても、昨年は南海の大震災を惹起し、本年はまた北陸の大災害を起しておるのであります。敗れたるこの国土、民族の上に、天は何と残酷なる試練を課そうとするのでありましようか。
 ここにおいて、われわれは、災害が單なる偶然率の上に発生するという認識にとどまつているべきではなくして、常時において、これが発生を必然不可避の事象として取上げねばならぬのであります。いわんや、長い戰争の期間を通じまして、各種の施設がまつたく補修されることなく、また投下資本は喪失せられましたままに顧みられず、軽度の災害に対しても全然抵抗力を欠いて、みすみす手をこまねいて大被害の現出を許している状態であります。前年度におきましても、また前々年度におきましても、それぞれ災害予算は計上されて來たのでありますが、きわめてその場限りの膏藥張りにすぎず、しかもインフレの高進に災いされまして、計画は完全に遂行されずに危險脆弱極まりない現状に置かれているのでございます。工事半ばにして、再度の災害のために、せつかくの努力が水泡に帰するがごとき例は、至るところ枚挙にいとまないのであります。これでは、計画においては、どろぼうを見てなわをなうにひとしく、施工においては、さいの河原に石を積むの愚を犯しておるのであります。
 本年の被害総額を集計いたしました数字を檢案するとき、建設省の分において五百十七億といい、農林省分において三百十八億という数字が報告せられておるのであります。さらに運輸省、商工省の関係を考えますと、その数字は、けだし莫大な額に上るのであります。なおまた、二十二年度、二十一年度、はなはだしきは二十年度の予定が未完成の部分も、かなり現在あるような状態であります。もとより資材の関係もあり、また地方財政とのにらみ合わせもありましようけれども、かかる國土の荒廃は一刻も早く回復しなければ、民生の安定はとうてい期し得られないのであります。
 なおまた、この際災害に関連してつけ加えたい問題は、農業災害補償法に基く災害保險金が支拂われようとしていない点であります。すなわち、同法第十二條によりますると、その共済掛金の一半は、消費者負担と相なるべきものであります。政府は、去る十一月一日決定の新米價において、さような措置を講ずることを怠つておるのであります。これをほおかむりして過すということは明らかに法律違反を犯すことであり、この機会に、嚴重に政府に対して警告をいたしておく次第であります。
 われわれは、國家財政の窮迫を知らざるものではありません。しかしながら、打続く災害の結果、國土の荒廃はその極に達し、國敗れてわずかに残つた山河までも、今や山河荒れて國危うき状態に立ち至つております。災害地の民衆は、一刻もすみやかに相当額の國家予算が計上せられて、これを原動力として復興に挺身すべく、再建の意欲に燃え立つております。さらに時期的に見ましても、今や農閑の時期に向い、失業救済等にも絶好のチヤンスであります。政府は、この第三臨時國会において、あらゆる困難を排除せられまして、これが対策を予算化し、單なるお座なりの数字ではなくして、抜本塞源的な効率的予算を計上し、これをすみやかに上程せられるよう、本決議案を提出するゆえんであります。もしそれ災害対策を等閑に付して、いたずらに國会の解散を急ぐがごときことありとするならば、國民は議会政治に対して失望と憤激とを禁じ得ないでありましよう。願わくは、全員一致をもつて本決議案の通過するよう希望いたすものであります。(拍手)
#42
○議長(松岡駒吉君) 石田博英君。
  〔石田博英君登壇〕
#43
○石田博英君 私は、民主自由党を代表いたしまして、ただいま提出せられましたる決議案に賛成の意を表するものであります。
 本年夏、北海道、東北、関東各地を初め全國を襲いましたところのアイオン台風の被害並びにその他の災害の実況につきましては、ただいま提案者からるる説明がありましたので重複を省きます。けれども、この際災害復旧の費用は、單に被害地の状況を救済するという、復元的な、消費的な支出の性質にとどまるのではなくて、來年度の生産の確保、特に食糧生産に重大なる影響を持つものでありまするがゆえに、ぜひともこの際抜本的な支出の計上を要求いたすものであります。
 ただ、この際特に一言いたしておかなければなりませんことは、昨年の七月、八月、九月、東北、関東各地を襲つたところの台風の被害地と、本年のアイオン台風によつて受けた被害地とが、まつたく同一地域であり、特に岩手縣一ノ関市の実例に考えてみまするならば、昨年度の被害に対して、当時の片山内閣、芦田内閣が、無知無能、何らの手段を講じなかつたために、この被害をさらに大きくしたものであると断定し得るのであります。
 もちろんアイオン台風は、これは悲しむべき天災であります。天災に人力をもつて、政治力をもつて、これをいかんともしがたいことは当然でありますけれども、その災害を最小限度にとどめるのが政治の責任であると私どもは考えるのであります。昨年、数百億に上る災害に対して、わずか二十一億の追加予算を計上したにとどまり、その後、本院におきましては水害地対策委員会を設置し、鋭意政府を鞭撻要求したにもかかわらず、全然何らの誠意ある措置ができなかつたところのその責任が、今日不測の被害を増大せしめたのであると私どもは断定するのであります。(拍手)從つて、当時の與党三派の諸君が、今日この決議案を出すということを考えて見ますならば、まことに━━━━━━態度であると私どもは考えるのであります。(拍手)
    〔「━━━━━━とは何だ」と呼び、その他発言する者多し〕
#44
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に……。
#45
○石田博英君 さらに、当時民主党の大藏大臣であつた、あすこにいる北村君は、追加予算を絶対に計上しないということを言明し、しかも、與党の諸君もこれに賛成せられたのである。今日この決議案に賛成し得るものは、当時の野党であつたわが党のみであると私は考えるのであつて、われわれは、この意味において本決議案に賛成の意を表する者であります。(拍手)
  〔「━━━━━━とは何だ」「議長、懲罰懲罰」「速記録を見てからでいいじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
#46
○議長(松岡駒吉君) ただいま石田君の発言中不穏当な言葉は相済まぬとの旨、取消しの申出がありました。
  〔「議長、懲罰だ」「議長、進行進行」と呼び、その他発言する者多し〕
#47
○議長(松岡駒吉君) 椎熊三郎君より、議員石田博英君を懲罰委員に付すべしとの動議を提出せられましたが、ただいまは討論中でありますから、この動議はなるべくすみやかに議題に供したいと存じます。
  〔「異議あり、異議あり」「多数横暴」と呼び、その他発言する者多し〕
#48
○議長(松岡駒吉君) 討論を継続いたします。佐々木更三君。
  〔佐々木更三君登壇〕
#49
○佐々木更三君 ただいま議題になりました災害対策に関する補正予算の本國会提出に関する決議案に対し、私は日本社会党を代表して満腔の賛意を表するもりであります。
 本決議案は当然のことではありまするけれども、本國会の奇跡ともいうべき民主自由党までが賛成したということは、いかにこの補正予算提出が緊急中の緊急であるかということを証拠立てるものでございまするから、吉田総理大臣は、これ以上頑迷なる態度をとらずに、すみやかに補正予算を本國会に提出する義務があるものと私は信ずるものであります。
  〔発言する者多し〕
#50
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#51
○佐々木更三君(続) 不幸にしてわが國は、近年頻々として災害に見舞われ、ことに本年、アイオン台風によつて全國的に言語に絶する被害を受けたことは悲しむべきことであつて、しかも東北においてははなはだしく、岩手、宮城の被害は、その廣さと深さにおいて空前であり、一瞬にして家を流され、耕地を奪われ、肉親を失い、岩手縣一ノ関、宮城縣栗駒、これらの町村ほ、ほとんど原形をとどめないまでに形容が変化して、その惨状は、眞に目をおおわしむるものがあるのであります、かかる三年連続した被害に、農民はみずから立ち上る力を持たず、すみやかなる政府の復旧対策を渇望しておるのに、政府の冷淡にして無責任、漫々的対策は、農民はほとんど希望を失つて、漸次離農の傾向さえ生ずる憂慮すべき現象を呈し始めておるのであります。從つて政府は、一日も早くこれが徹底的対策を樹立し、農民大衆に明るい見通しと確信を持たせる施策をなすことは、政府の一大責任でなければなりません。(拍手)
 今日嚴冬を迎える農民大衆は、吉田内閣が当然、臨時國会劈頭、災害復旧予算を提出するであろうと希望したのに対し、今日なお言を左右にして、故意にこれが提出をなさざる冷酷無残なる態度に対しては、全國農民大衆の間に、吉田内閣不信と呪詛の声が充満しておることに、政府はなお耳をおおい続けようとするのであろうか。しかも吉田内閣は、民主約、立憲的議会法則を蹂躪して、当然なすべき施政方針の演説もあえてこれをせず、一つ覚えのように、ただ何ものにも先だつて國家公務員法の審議のみをわれわれ議会に強要し、腕を組んだまま、ほおかむりをして臨時國会を押し通ろうとすることは、いわゆる吉田総理の言葉をもつてすれば、許すべからざる不逞のやからの態度にひとしいものであつて、われわれは、全國民とともに、これを断固排撃しなければならないのであります。
 吉田総理、國家公務員法審議の必要は、施政方針演説と災害対策等の補正予算を議会と國民の前に明らかにしなくともよろしいという理由にはならないことを知らねばならないのであります。この吉田内閣の態度は、明らかに公務員法がマ元帥の勧告に基くという名分を不当に惡用し、國内的、國際的雰囲氣の陰に隠れて、政府の災害予算編成の無能力を糊塗しようとする、卑怯なる態度といわなければなりません。もしそうでないとするならば、政府はすみやかに本國会に補正予算を勇敢に提出すべきであります。
 この災害予算は、半年前からのものであつて、当時調査が完了されたときには、議会が閉会中であつたので、從つて前内閣から現内閣にわたつて、一時のつなぎとして約六十億円、政府補償のもとに……。
#52
○議長(松岡駒吉君) 佐々木君、時間がありませんから急いでください。
#53
○佐々木更三君(続) 地方銀行をして各府縣に融資せしめたが、これは当然災害費が予算化されたときにおいては、補助金のうちからこれを返済せしめなければならないものであつて、從つて政府が予算を提出する見通しがないために、地方銀行は政府の認めた金額の貸出しを澁り出し、あまつさえ返済を要求するものすも現われて、今や災害復旧は遅々として進まないばかりでなく……。
  〔発言する者多し〕
#54
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#55
○佐々木更三君(続) 中止の運命にある有様で、この責任は、明らかに政府の無能と非立憲的暴慢なる態度にあると私は信ずるものであります。從つて政府は、民自党さえ賛成したこの災害復旧の補正予算を、明日にも即刻この國会に提出せられんことを要求いたしまして、私はこの決議案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
#56
○議長(松岡駒吉君) 高橋清治郎君。
  〔高橋清治郎君登壇〕
#57
○高橋清治郎君 私は、ただいま議題となつておりますこの決議案に、民主党を代表して賛意を表するものであります。その前に、わが國会において党派的感情にとらわれてお互いに爭つておるとき、いかに災害地の農民が悩んでおるかということを、一言皆さんに、その実情を訴えたいと思うのであります。
 わが東北地方におけるところの災害地の農民は、打続くところの災害のために、再び立つあたわざるような状態にあるのであります。そのために、父祖傳來の農業を廃業いたしまして、続々と他に轉出するような哀れな農家が、今現出しつつあるのであります。ある農家におきましては、その課された税を拂うことさえできずして、かわいい一人娘を賣つて、その納税をしたという、悲惨なる話もあるのであります。皆さん、私のこの一人の言葉の裏には、そういつた悲惨なるところの災害罹災民がたくさん泣いておる、それを、この私の声を通して、今皆さんに言つておるのであります。皆さん方は、この声を愼重に聞くだけの雅量がなければ、眞に國家を思うところの方々ではないと私は思うのであります。(拍手)
 前弁士の方々が、いろいろその理由を述べましたから、私は簡單に述べますが、吉田内閣が組織せられて以來一箇月、公務員法案を先決問題として、名をこの問題にかりて、最も重大なるところのこの災害予算を予算化されないということは、眞に民を思い、國の再建を思うかを疑はざるを得ない。私は、公務員法案とこの給與問題と同一に、むしろより以上にこの災害対策の予算を重大に考えておるものであります。今早く予算を出しまして、今のうちに、次期水害期までに、緊急にこの点の應急手当をしなかつたならば、今日百万円で済むところのもので、來年は五百億、千億という莫大なる損害になるのであります。すみやかに吉田内閣はこの補正予算を出しまして、すみやかに解決して、この罹災民を救われんことを、私は切望してやまないのであります。どうか皆さん方は満場一致でこの案に御賛成あらんことを切望して、私の賛成討論を終りといたします。(拍手)
#58
○議長(松岡駒吉君) 外崎千代吉君。
  〔外崎千代吉君登壇〕
#59
○外崎千代吉君 私は、社会革新党を代表いたしまして、本案に賛成の演説をいたします。
 各党の代表の方々から熱心なる御演説をお伺いいたしまして、同感でありますが、ただ政府が昨日の災害委員会に提出したるところの書面を見れば、昭和二十三年度は、三、四月ごろから東北、北陸地方に融雪による水害と、六、七、八月と連続して局地的な豪雨の襲來があり、また七月には北陸地方の震災の突発あり、さらに九月にはアイオン台風の襲來があるなど、被害地方は香川縣を除く四十五都道府縣に及ぶということになつたのです。その被害の額は四百五十億円と推定されるということの記録が提出されております。
 そこで、自分も青森縣といたしまして、昨年の水害には非常に苦しみまして、同時に岩手縣その他各縣を見ましても、この災害のために苦しんでおるところ罹災者らは、まつたく目をおおうほどの惨状であるのであります。住むに家もなければ、耕すに田畑も失い、そしてすべての生活を奪われながら、一体どこにこれを訴えて行つたならば、その救済ができるのであろうか。ここまで國民の弱い心情を察するときに、われわれは党利党略の爭いに日を費しておる時代ではないと考えておるのであります。(拍手)
 見らるる通り傍聽席は、これは傍聽しておるのではない、國民の監視であるということまで考えなければならぬのであります。いたずらに日を費やして、そして議員のりつぱな方々たちは、錚々たる紳士の風格をもつて怒号罵声、そしてこの議場をかけまわる有様を見て、一体國民は、眞実にこの問題に対してやつておるのかいないのかと考えるであろう。
 なかんずく、昨年度のこの災害状況を見れば、百三億五千万円というような多額に上つておつたのであります。しかるに昨年、これに対して政府は幾ら出しておつたかと言いますれば、わずかに三十七億四千万円より出していないのであります。前内閣みずから起草したところの百三億五千万円という多額の被害に対して、わずかに三十七億四千万円を出し、六十六億一千万円という残額を残している事実を見て、いかに政治家は口はりつぱであるけれども、行いは伴わざるものであるかということを言われても、何とも申すことはできないのであります。
 しかもそのうちに、私はつい昨日も、一昨日も、その前も、全官公労働組合の職員、あるいは教職員組合、または全國労働組合の代表者たちのその陳情を聞くたびごとに、あの人たちは何を言うであろうか。わずか五千三百円ベース、六千三百円ベースに対して、政府は金がないと言う、しかるに現在、昭和電工を初めとして多くの疑獄事件に数百億の金を費しているではないかと言われるのであります。(拍手)私らは、反対党であろうが、味方であろうが、問うところではない。少くとも片山内閣は、政策に行き詰まり内閣の不統一によつてその内閣は倒れ、また芦田内閣に至つては、世界中にもないほどの、少くとも昭和電工事件において現職の大臣を收容されるの醜態を演じた。かくのごとくして内閣が倒れた以上は、みずから自分は恥をもつて次の推薦に堂々と臨んで、次の内閣の推薦をなし、しこうして國民にすべてを頼むの氣概なくして、政党と言わるるであろうか。
 今日、この解散という声を聞くにあたつて、與野党ともに騒いでいるが、何の騒ぐ余地があるであろうか。われわれが考えるにおいて、私らは何も今日解散をいなむものではない。やるならば、喜んで迎えるであろう。しかし、この吉田内閣が成立に及んで、今日まで何を一番先に言うておつたであろうか。少くとも綱紀粛正を叫び、政界、官界の粛正を叫ぶとともに、國民の利害を一番念頭に置いておるということを言うておるではないか。しからば、國家公務員法案、新給與ベース、災害復旧、行政整理、また多年野党時代に唱えておつたところの、惡税であるべき取引高税撤廃、供出後における自由販賣、海外引揚げの促進、戰爭犠牲者たちが苦しんでいる今日、これをまず何をおいてもやつて、しかる後に解散するのでなければ、これまた党利党略と言われても一言もないものであると、われわれは考えておる。(拍手)
 しかも、何人によつてもこれは唱えられておるところであるけれども……。
#60
○議長(松岡駒吉君) 外崎君、時間が参りました。結論を急いでください。
#61
○外崎千代吉君(続) 内閣以來、施政方針を申し述べずして、國民の前に議会を開いて便々とすることは、吉田内閣みずから、また恥じなければならぬ状態であると、われわれは考えておる。この内閣によつてでも、おそらく國家公務員法改正案と同時に新給與ベースを定め、しかして災害復旧に関する問題はすべてを片づけた後に、今や待つておるところの海外引揚者の親兄弟のもとにこれらの同胞を迎えて返すことを一番先に行い、もし不信任であると彼みずから信じたならば、内閣を投げ出すか、しからざれば堂々とやるだけのことをやつて解散するのならば、われわれ喜んでこれまた迎えるものであると考えておるのであります。
 なお水害問題に関しましては、緊急やむを得ざる本年度の予算だけでも百二十九億円いるということを政府みずから言つておる以上は、これらは当然計上をなし、一日も早く災害を防止し、しかして増産方面に励んでもらいたいということをお願いしまして、自分のあいさつにかえる次第であります。
#62
○議長(松岡駒吉君) 石野久男君。
  〔石野久男君登壇〕
#63
○石野久男君 私は、労働者農民党準備会を代表いたしまして、ただいま上程されました案に対しまして賛成の意を表したいと存じます。
 昨年のカスリーン台風から本年度のアイオン台風、これらのものを含めて、まつたく被害は、雨に風に、あるいは農村におけるところの病虫害に、甚大にしてまた廣範囲にわたつておるのでありまして、ことに再度の災害を受けました東北の諸君は、冬が再び訪れて來ておるのに、いまだに疊もなければ家もないという状態のもとに苦しんでおるのでございます。今日日本の再建の問題は、実にこの災害対策の問題を取上げることなくしては、おそらくその所期の目的を達成し得ないであろうと、われわれは考えておるのであります。
 しかもまた、この災害の度合は実に大きなものがありまして、約二千億の巨額に達するのでありましよう。それに対しまして、今日まで政府がとつた施策というものは、まことに微々たるものであるのでございます。芦田内閣のもとにおいて、アイオン台風の後におけるその施策が、わずかに二十一億そこそこで過されたときに、今や官界、財界あるいは政界をまつたくどろ沼にまで押し詰めておりまする、いわゆる昭和電工問題を中心とするあの復金の融資の問題がある。このようにして、一方には、非常に悲惨な民衆のあるところには少額にしか渡らず、しかも他方においては、多くの知名の士を疑獄のこんとんのさ中に落し込んでおるというこの事実にかんがみましても、私どもは、最も関心を持つて、この災害対策の問題を考えなければならぬと存じております。
 私どもは、全官公廳の諸君が七千三百円というベースを要求し、先ほども決議案が、ほとんど多数をもつてここを通過したのでございますが、またこの問題と関連しまして、農山村におけるいわゆる天災によつて苦しめられている諸君に対して、國会の全員の心からなる施策が積極的に吉田内閣のもとにおいて迅速にとられなければならないということは、あえてここで言う必要がないと存じております。(拍手)
 建設省がただいま予定しておりまする災害費の総額が約四百五十億、それを三百五十億に押し縮め、またそれを百二十九億に押し縮めたそのうちで、年度内に約五十一億程度のものを予算化しようと考えておるのだという政府の答弁を聞いております。また二十三年度内にはその他の七十七億というものをも予算化するのだということを聞いたのであります。けれども、これはあくまでも聞くだけでありまして、その本心がいずれにありやということを疑わなければならない。それは、政府がこの國会において施政方針演説をなす積極的な意識がなく、またあらゆる問題に対しても予算化の積極性がないということからも、私たちは、はつきり知ることができるのでございます。(拍手)
 私どもは、このような、ただ口頭はたる態度をもつて、今日飢えに泣いている、あるいは寒さにふるえている民衆を放りぱなしにしておくことはできない。しかもまた、年々歳々にわたるところの河川の氾濫は、再び甚大な災害を來年度に予想されるかもしれないのでありまして、かかることから、私たちは、一刻も早くこの問題が吉田内閣のもとにおいて予算化され、そして全面的に再び襲い來るでありましようところの來年度の雨期に対して、あるいは風水害の時に対しまして、今日ただいまからその施策を実行に移されんことを切に要望するものであり、しかもまた、その意味において、ただいま上程されました決議案に対しまして、党をあげてこれに賛成の意を表するものであります。(拍手)
#64
○議長(松岡駒吉君) 中野寅吉君。
  〔中野寅吉君登壇〕
#65
○中野寅吉君 私は、今議題となりました決議案に対し、新自由党を代表して、賛成の演説を簡單に申し上げます。
 旧憲法の第四十四條は、新憲法の第五十四條第二項に該当するのであります。それには、緊急の必要に應ずるときは、國会のうち衆議院が解散されても参議院というものが残つてありますから、そこで参議院の緊急召集を行いまして、その必要な予算その他を決するものであると規定してあります。これは老人の中野寅吉よりも、皆さんが御承知の通りであります。そこで吉田内閣は、まず解散をして、そうして最も緊急の必要あるこの災害復旧予算は、参議院を召集してきめてもいいではないかということを唱えられている。これは大いなる間違いであると、私は微力ながら思うものであります。
 緊急と申し上げるのは、今わが同僚の井出君、石野君、佐々木更三君、高橋君、外崎君から申し述べた通り、東北の水害地の復興工事は、火のつくような緊急な状態になつているのです。ことに東北のごときは、今日は旧十月十六日ですから、今四日たてば恵比須講、恵比須講からはどんどん雪が降ります。そのときになつて復旧予算をきめて、そうして堤防をつくつても、道路をつくつても、橋をかけても、おそい。來年は一層増産をして、そうして日本の復興をはかろうとする吉田内閣が、このやり方が後手にまわるということは、まことに残念に思うのであります。
 今まで前内閣が怠つていたから、おれも怠るべえというのは、これは間違つておりましよう。それは、人がどろぼうしたから、おれもどろぼうしようというのと同じじやないか。(発言する者あり)莊子に、莊周、家貧にして食に窮す、ゆえにゆいて粟を監河侯に借らんとす、監河侯いわく、よし、われまさに近日邑金を得んとす、君に三百金を貸さん、そこで莊周憤然として色をなし、(発言する者あり)まじめに聞け。――周いわく、昨日中道にして呼ぶ者あり、周顧みるに、ふなが來て、周が尋ねると、答えていわく、われはこれ(発言する者多し)――ふなだ、ふなだと、ふなが水かれて死に瀕す、助けて川に放せと助けを呼んだ、よし、お前そんなに水がなくなつて困つておるんなら、おれが帰りに西江の用事を終り、お前を川に放してやるから待つていろと言つた。ところが、その監河侯が帰らぬ前に、ふなが死んでいたのと同じことだ。吉田内閣が解散をして國民に信を問うて、しかして後に災害復興をするから待つてろと言つたら、國民はこのふなと同じ運命になるのじやないか。(拍手)その意味において、何よりも早くこの災害復旧をしなくちやならない。解散することは党利党略である。災害復旧は國民のためである。これなくして増産を期せられるか。
 これをもつて演説を終ります。(拍手)
#66
○議長(松岡駒吉君) 加藤吉太夫君。
  〔加藤吉太夫君登壇〕
#67
○加藤吉太夫君 私は、日本農民党より、災害地対策補正予算に関する決議案に対しまして賛成の討論をいたしたいと思います。今年中に巻き起りました、全國各地の、震災を初めといたしまして風害、水害、旱害、雪害等、ここに数うるにいとまないほどであります。これに対しまして、被害復旧額が、農林省関係におきまして三百億、建設院関係におきまして五百億、合計八百億を越えんとする厖大な災害でございます。これは、國民としてまことに莫大な損害であるとともに、罹災者に対しまして、私は、このインフレ下におきまして復旧のなかなか困難あることを思いまして、同情をささげるものでございます。
 この厖大なる災害に対しまして、政府は、建設院所管において二十三年度において計上されたる災害予算を昭和二十二年度の災害復旧費に全部繰入れましても四割しか復旧できないという微々たる災害予算であります。また農林関係におきまして、二・四半期において五億五千万円、三・四半期におきまして十一億七千万円を予定されておる。それすら削減されんと予想されておるのでございます。また農林関係の融資面におきまして、営農資金として八億円、中金から五億円、目下計画中が十三億円、合計二十七億、これはちようど、昭和電工に融資した二十七億と一致するのでございます。(拍手)
 また資材面におきまして、七千トンを要望しておるのにもかかわらず、その七分の一、一千トンが、ただプランとして載せられたにすぎない実情であります。
 私は、これに対しまして、災害地における民情の一端をここに述べたいのでございます。災害地における町村長は、泣いて陳情を繰返しておるのでございます。農民の道義に照して、借りた金は利息をつけて必ず返すから、復旧に一時的に貸してくださいという、可憐な陳情を重ねておるのでございます。また学校のつぶれた小学校の生徒は、軍政部から借り受けた天幕のもとで、寒風すさぶ中で教育を受けつつ、復旧を望んでおる次第であります。特に北陸震災において、福井縣の農民に対し、全壊した二万戸に融資してくれたうちの一億五千万円が、これは短期融資であるからという名目のもとに、貸してから三箇月しかたたないのに、はや返さねばいけないというので、供出代から差落されつつある現状であります。全壊家屋の農家は、井戸を一本修繕するのにも三万円を要するのであります。一万、二万の金の融資を受けて、これに供出代金の三万円を足して合計五万円で作業場兼帶の雨露をしのぐ住宅を再建したいというのに、事欠く次第であります。
 私はここで強く政府に訴えたいのは、國家の金融財政面におきまして、石炭関係に百五十億に上る赤字融資をいたしております。これは、なしてもなさぬでもよい金だそうであります。また、昭和電工の二十七億円の、腐敗しきつた融資面と、これを対照するときに、私は、うたた政府の冷淡かつ熱意のない災害対策に失望を感じ、忿懣を感ずるものであります。(拍手)
 私は最後に、膏藥張りでなく、恒久性のあるところの、最少限でよろしいから百億円だけ、追加補正すべき災害補正予算をすみやかに今議会に提出されんことを望んでやまないものであります。
 なお、吉田総理に申し上げたいのですが、食い逃げ解散のみに重点を置かずに、國民の期待してやまないところの災害補正予算をすみやかに提出いたすことが國民の信をつなぐゆえんであることを強ぐ忠告して、私の賛成演説を終ります。(拍手)
#68
○議長(松岡駒吉君) 木村榮君。
  〔木村榮君登壇〕
#69
○木村榮君 共産党を代表いたしまして、きわめて簡單に賛成の意を申し述べます。
 建設省の河川局の調査したものを見ますと、全國で三千三百の河川のうち、一日の雨量七十ミリの場合には、全國で二万一千五百八十八箇所で決壞が起る。万一、二百ミリの雨量があつた場合においては、七万一千百四十五箇所が危険だ、こういう報告が出ております。ことほどさように、日本の災害、風水害といつたようなものは、根本的なところに大きな原因があるのであつて、ただ單に、にわかに吉田内閣に予算を組めといつたことのみを問題にしておつたのでは、なかなか解決できないことだと思う。そこで本年度の損害でも、政府発表では四百五十億となつておりますが、ほんとうは一千億以上であろうということがわかる次第でございます。その証拠には、たとえば河川改修の五箇年計画の例をとつてみますと、本年だけの不足でも百二十八億円、また利根川本流の建設院時代の直轄工事でも、最低の見積り額に対して、やつてみた結果四〇%しかできなかつたということが報告になつております。こういつた状況であります。
 また、農林省の昭和二十一年の計画を見ますと、全國で二百七十一万町歩の造林計画を持つておりますが、実際の造林計画に比例いたしまして、伐採の方はどうかといいますと、とても比較にならないほど大きな伐採が行われておる。しかも伐採の状況を見ますと、國有林、官有林は比較的少くて、民間林といつたものがおもに伐採になつておる。これは、戰爭中の濫伐と、また戰後のインフレ状況と関係いたしまして、非常に危険な、無計画的な伐採が行われたということがわかるわけなのであります。
 そこで、こういつたことを考えてみますと、今までの対策は、根本的な國土開発といつたふうな計画ではなくて、ただ当面小手先細工の、いわば土建業者や高級官僚が、自分のなわ張りで、金もうけといつたふうなことをおもに計画した工事が多かつたということがわかると思う。こういつた関係で、われわれは、もつと根本的な対策をこの際立てなければならないということを、強く主張するわけであります。
 ところが、十月十日の民自党の大会においては、法律第百七十一号の撤廃が決定になつておりますが、これは、われわれの見るところでは、この法律撤廃によつて土建業者にもうけさすような工事を頻繁にやろうといつたことが計画されておるのではないかと想像するのであります。こういうことでは、根本的な国家の復旧、いわゆる災害防止といつたことはできなくて、ただ單に独占資本家やその他の者が、金もうけ、あるいはなわ張りの爭いをするにすぎない。かように考えます。そこで、この際國家は、根本的なこの日本の復旧計画をあわせ考えて、ほんとうに合理的な、実際に適用されるような改革案を至急立てられまして、特に法律第百七十一号の撤廃を決定された民自党はおいては相当な計画があることと思いますから、その点、よくわれわれが納得の行くような根本的な計画案を早く発表され、その計画案にのつとつた予算を立てられなかつたならば、百七十一号の撤廃を決定された意味は、まことにわけがわからない、こういうことを強く主張いたしまして、私の賛成演説にかえる次第であります。
#70
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#71
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
 この際大藏大臣及び建設大臣より発言を求められております。順次これを許します。大藏大臣泉山三六君。
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#72
○國務大臣(泉山三六君) ただいま御決議の御趣旨は、よく了承いたしました。災害復旧の問題は、國民あげての関心事でございます。特にその施行については、地域によりましては時期的関係もございますので、政府といたしましては、時を移さず應急対策といたしまして、既定予算の繰りかえ支出、または預金部並びに民間金融機関の動員等、すでに相当額の資金放出に努めて参つたのでありますが、もとより以上のごとき措置をもつて満足するものではございません。政府はすみやかに災害復旧に対する追加予算を提出いたすべく、目下鋭意準備を急ぎつつある次第であります。
 右、御了承願います。
#73
○議長(松岡駒吉君) 建設大臣益谷秀次君。
  〔國務大臣益谷秀次君登壇〕
#74
○國務大臣(益谷秀次君) 昨年の豪雨、台風による災害復旧のいまだ半ばにも達せざるとき、本年はまた、春の雪解け出水による災害発生以來、各地に記録的豪雨の襲來がありまして、七月にはまた北陸地方に震災が突発いたし、九月にはアイオン台風の襲來があつたのであります。このために、全國四十六都道府縣の廣範囲にわたつて、昨年の大災害以上の災害が発生いたしたのであります。ために、御承知のごとく多数の人命を失い、家屋、田畑を流失いたし、交通運輸の機能を破壊いたしまして、民生の安定を脅かし……。
  〔「被害の経過報告を聞いているのじやない」と呼ぶ者あり〕
#75
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#76
○國務大臣(益谷秀次君)(続) 産業の復興を阻害することがまことに甚大でありますることは、眞に遺憾のきわみと存ずる次第であります。政府は、この災害に対し、公共事業費の支出及び事業資金の貸出等によつて緊急措置を講じて参つたのであります。しかしながら、緊急措置は應急措置であります。一日も災害の復旧をゆるがせにすることはできません。政府におきましては、一日もすみやかに災害を復旧いたして、國民の熱烈なる要望にこたえたいと存ずるのであります。目下、國家財政を勘案いたし、災害復旧に適切なる費用を予算化するために、懸命の努力をいたしております。
 ただいま全会一致をもつて御決議になりました決議案、まことに緊急適切なものと存じます。政府は、この決議の趣旨をどこまでも体して、すみやかに御通旨を実現するように努力いたしたいと存ずるのであります。(拍手)
     ――――◇―――――
 衆議院の解散に関する緊急質問(尾崎行雄君提出)
#77
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、尾崎行雄君提出、衆議院の解散に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
#78
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#79
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 衆議院の解散に関する緊急質問を許可いたします。尾崎行雄君。(拍手)
  〔尾崎行雄君登壇〕
#80
○尾崎行雄君 総理大臣にお尋ねいたしたく考えて登壇しましたが、私の立場を御了解の上、お聞きを願いたい。私は、どの党派の味方でもなし、またどの党派の敵でもないのであります。在朝党も在野党も、私の眼中にはない。ただ國家があるだけでございますから、國家のためによいことをする人はみな味方、それに反して、國家に有害であると私が信ずる仕事をするものは、みな敵なのでありまするから、どうぞ、そのつもりでお聞きを願いたい。從つて、あるいは内閣に氣に入らぬことも申しましよう。同時にまた、社会党や民主党に氣に入らぬことを言うに違いございませんが、それは党派を憎み、かつ愛するためではなく、ただ國を生き返らせるために必要と考える結果からでありまするから、言うことは聞違つておるかもしれませんが、その精神は國家あるのみという点で、お聞きを願いたいのであります。(拍手)
 ところで、今私が一番知りたいのは、解散ということが、政府党にも、あるいは在野党にも、また世間一般にも言われておるようでありまするが、全体だれが解散をするのであるか、現在の日本國において、解散権を持つておるものがどこにあるのか、ということが承りたいのである。
 元の憲法でありますと、天皇陛下が主権を握つておいでになるのでありますから、天皇陛下はむろん解散権を持つておる。從つて、それにお仕えする内閣も、天皇陛下のお許しをさえ得れば解散ができるのでありまするが、今日は、主権はすでに天皇陛下のお手を離れて、人民に移つておることは申すまでもない。しかして、人民の代表機関としては國会であるが、國会中のさらに尊きものは、憲法にも明記してある通り衆議院である。そうすると、これを解散する権能を持つておるものは、日本中にはないわけである。ただ残念なことは、いま日本は独立権を失つて、アメリカの占領下にありますから、もし、アメリカが、今の議会を不都合と考えて解散するという政策をとつたならば、これは占領中は、アメリカはむろん解散をすることができましよう。そのほかに、どこをながめても、日本の人民の代表機関たる、すなわち主権の代表機関たる衆議院を解散し得る権能は、日本國内どこにもないはずと私は考えておりまするが、総理大臣も解散ということを言われるようであるが、その権能はどこにあるのかということを承りたい。(拍手)
 また憲法の中には、解散という言葉はところどころに見えておりまするけれども、だれが解散権を持つておるかということは、私が見えない目をもつて探す範囲においては、どこにもありません。解散権の説明がなければならぬが、解散権の所有者のことは書いてない。それで解散という言葉だけは使つておる。ふしぎな書き方であります。すでに解散という言葉を使う以上は、解散権の所有者を明記しなければならぬが、憲法上どこにもないように見えます。これを承りたい。
 世の中の人の中には、憲法第七條の三号か何かに衆議院の解散という言葉があるのを見て、第七條の三号か何かで解散権があると見ておるようでありまするが、これは驚くべき考えで、第七條は申すまでもなく、政治には一切関係のない事柄を十箇條並べただけであります。日本國の憲法で、天皇陛下と國民との間を規定した一番大切なものは、私は第四條と見ておりまするが、第四條に、天皇陛下は、憲法その他に書いてあるところによつて、國事に関する行為を行う、それが第一項で、その次には、國政に関する権能なし、すなわち、政治には一切関係することは相ならぬぞと書いてある。(拍手)從つて、第七條に並べておる十箇條というのは、この第四條から出た國事に関する行為で、國政に関係なきことばかりを、ずつと並べておるのである。その中に衆議院解散という言葉があることは、実にふしぎ千万でありまするが、よく読んでみると、これは解散ではない。だれかが解散ときめたならば、それを公布するという意味よりほかにとりようはございません。これをもし、ほんとうの解散権と見るならば、わが憲法は、民主政治の根本を破る、破壊するところの憲法であつて、第四條に書いてあることは、ほごであります。すなわち、憲法の根本が破れる。從つて、民主政治などということは、根底から破壊せらるることになります。これは子供が読んでもわかるはずであります。
 あなた方は、私よりよくご承知でありましようが、第七條には何と書いてありますか。内閣の助言と承認を得て、天皇陛下はずつと第十項に至るまでの事柄を行う義務がある。助言というのは、あたりまえの言葉で言えば指図という意味であり、承認ということは、許す、許可ということだ。内閣の指図と許可さえ得れば、天皇陛下は十箇條の事柄をしなければならぬ。これに対して、いやおうを仰せられることはできないように書いてあります。これが全体ふしぎな書き方でありまするが、ほんとうの民主政治になりますると、そういうわけかと思います。
 私どもは、君主政治のもとに成長して、天皇陛下をば非常に尊ぶ癖がついておりますから、こんな書き方を見ると、ただただ驚くのほかはございませんので、元の内閣よりも、もつと低い内閣であります。日本の元の内閣は、総理大臣以下一人残らず、天皇陛下のお許しを得なければ任免黜陟はできない。今度の憲法によると、臣民が天皇陛下にかわつて主権を持つ。その主権者が選んだ、比較的たつとい衆議院が指名する。参議院も指名するようでありまするが、両方が衝突したときには、むろん衆議院の決定に從うのであるから、実際は衆議院の指名である。衆議院が総理大臣を指名しますると、あとの各大臣は、総理大臣がかつて任免することができるように書いてあります。同じ内閣といえども、先の内閣と比べると、ほとんど比べものにならないほど、何と言いまするか、儀礼的には下等なものであります。つまり言えば、元は天皇陛下の御名による。一人残らず天皇陛下のお許しを得なければならぬ。今度はそうではなく、今まで奴隷同犠に扱われておつた臣民が選んだ衆議院が指名したものである。しかもそれは、総理大臣一人である。あとの各大臣は、総理大臣がかつてに任免することができるのでありますから、名は同じであるけれども、その実質に至りては、よほど低いものであるということは、どなたにもおわかりになるわけである。
 それからもう一つは、先の、もつとたつとい、一人一人選任せられた内閣ですらも、かつてに衆議院を解散するなどということはできない。内閣全部が解散したいと考えても、天皇陛下のお許しがなければできない。現に、そういうことは明治年間にあつたと思います。ところが、今度の憲法によりますると、内閣が決定さえすれば、天皇陛下は、どんなに惡い決定でも、いやおうなしに、第七條に書いてある等のことは行わなければならぬことになつております。実に恐れ多いことで、どうして帝國臣民にこんな文字が使えたかと思います。ありていに申しますると、天皇陛下は、ただ内閣のさしず通りに、いろいろなことをするだけで、内閣のさしずには、一切そむくこと相ならぬという意味であります。まあ、恐ろしい書き方であります。ほんとうの民主主義というものは、そういうものではありましようけれども、私のごとく君主政治になれた者、私のみならず、先祖代々二千年の間君主政治になれた者がこれを思うと、ただ驚くほかはございません。あの天皇陛下は内閣の小使同様である、内閣がさしずすることには、一切そむくこと相ならぬ、さしず通りに行わなければならぬという意味よりほかに解しようはないと私は思いまするが、総理大臣も、やはりさように解釈なさるかいなやを、はつきり承つておきたい。
 それのみならず、國事に関する事柄と、國政敷に対して権能なしという第四條を見ますると、第七條に書いたものは、國政には一切関係ないはずのものであります。また、一々調べてみれば、衆議院解散という言葉のほかは、一つも國政に関係したものはございません。しかるに、衆議院解散という言葉がある。ゆえに私は、これは解散そのものではない。解散の公布である。布告することである。内閣がかつてにつくつた政令、あるいは衆議院その他で決議した法律ですらも、天皇陛下は、第七條第一項によつて公布するというお役目を持つている。全体政令のごとき、あんな下等な令を天皇陛下の御名で公布する必要はないと思いまするけれども、実に書き方の不都合が、今度の憲法にはいくらでもあるのであります。
 これも私は、むりとは申しません。神武建國以來、御同様、先祖代々夢にも見たことのないほどの大敗北に至つて、國家が無條件降伏をした以上は、帝國軍民たるものは、みなほとんど喪心状態、頭がすつかりくずれてしまうということは、私は人類当然のことと思います。ゆえに、もうほとんど人間の脳髄がなくなつてしまつたような際に、唐突の際に書いた憲法でありまするから、こんな不都合な書き方をしたということがあつても、私はしいてとがめません。むりではない。二千年間夢にも見なかつたこの國難に遭遇して、発狂人同様になるのは、むしろ人間味が多少ある結果と見て、私はとがめない。決してむりではないと、内心やはり、さすがに古來天皇陛下をたつとんで來た人民の子孫であるというふうに感じます。諸君はどうごらんになるか、これを承りたいが、ことに総理大臣に承りたい。あれは、どうしても政治に関係することとは見られない。ことに憲法にこんな書き方をしたといことは驚くべきことであります。
 今日は、欠点はあえて言う必要はございません。解散という大問題だけを承ればよいのであるが、いささか、すべての書き方が間違つておるということの一、二の例をあげれば、第七條の第二項には憲法改正とあるが、これも私は驚いた。憲法改正ということが、天皇のお仕事の第一に書いてある。驚くべきことであつて、そんなことが書かるべきはずはないのみならず、書いたところで、できるはずのものではございません。憲法の改正という大事件、それらをよく見ると、憲法改正ではない。法律や政令と一緒にできた憲法を公布するという、一番しまいの公布という宇にかかるために書いておる。それらは、なぜ憲法改正と書かないで、改正憲法、改訂した憲法、改訂憲法と書かないのであるか。憲法改正と書けば、憲法を改正することになる。改訂憲法とすれば、ほかの機関で改訂した憲法を公布するということに読めますけれども、憲法改正の公布、そんな公布ができるかできないかを総理大臣に承りたい。私はできないと思います。天皇陛下に憲法を改正する権能があろうはずはない。権能のないものを公布するということにはならないのである。こんな子供にでもわかるものを、あたりまえに書き得ないという連中が、あの憲法をつくつたのである。それは喪心状態で、むりはない。
 私の感じを申しますと、憲法でも法律でも、文字などどう書いたところが、それは役に立たないものである。文字の末に拘泥して、とやかく言うのは、それは弁護士か何か、ただ法律だけを知つて、正しい道理を知らない者は、それでよろしいが、眞に天地間の正しき道理を知る者は、文学の末よりか、その精神骨髄に重きを置かなければならぬというものであります。正しい道理を知らない者に、ろくな憲法の書けるはずはない。また書いたところが、文字の末に拘泥するようなことでは、眞の立憲國にはならないと思つておりました。からだが老衰して弱いから、憲法会議に一切出ませんでした。これは私の欠点で、まことに申訳ないけれども、よく書いたところが、だめである。前の憲法などは、ずいぶん文字上からいえば、今日見る新憲法からは、比べものにならないほどよく整つた憲法であります。それも、その運用が惡かつたために、日本は現在憲法上の手続きによつて亡國状態に陷つて、今日占領下におります。決して憲法にそむいてやつたのではない。憲法の文字通りに働いて、逐に戰爭に敗北し、無條件降参をいたして、今日独立権を失つて、占領下におるに至つたのである。
 こういう実例を見る以上は、新憲法に、文字などに幾らよく書いたところが、実行が惡ければ何の役にも立たぬということが、私の根本観念である。病氣がよくても、私は欠席がちであつたかもしれませんが、このことは、將來憲法を運用する上において、御同様によく考えなければならぬが、ことに総理大臣たる者は、この点においては特に力を用いなければならぬ。これに対しては、どういうお考えがあるか、文字に重きを置くか。運用に重きを置くか。文字などに拘泥すれば、もう憲法は大半無効になります。運用でなければならぬ。
 この証拠は、世界中のまず一番よい立憲國は、多分イギリスでございましようが、イギリスには、文字に書いた憲法はない、みな運用だけで憲法ができておるのである。それが一番いいのである。文字などには、ずいぶんイタリアでもドイツでも、幾らもりつぱに書いてありまするけれども、あの通り運用ができないで、ドイツもイタリアも、ほとんど暴政――全体主義などと言つておりまするけれども、これは秦の始皇帝や北條や何かがやつたところの暴力主義で、立憲国ではないのであります。あんないい憲法ができておつてすらも、運用その道を誤れば、秦の始皇や北條や足利時代と同じ状態に陷つて、ムソリーニやヒトラーの支配を受けるというようになるのであります。日本もその通り。運用を愼まなければならぬ。総理大臣たる者は、ここに最も重きを置かなければならぬと思うが、この点において、やはり世間の法律学者か何かのように、文字に拘泥して運用に軽きを置くやいなやということも、はつきりお答え願いたい。運用に重きを置くならば、第七條にあるところの衆議院の解散などということは、もう公布のことであつて、ほんとうの解散には寸毫の関係もないものと、今日はつきりお答え願わなければならぬ。
 まだどうも、世の中に解散論を唱える人は、第七條によるような人が大分あるようでありますが、私は驚いております。あたりまえな頭をもつて第七條を読めば、これが衆議院の解散であるなどということは、絶対に理解はできないはずであります。(拍手)しかるに、世間全体がこれをそう思うように、眞の解散と理解するように見えましたから、私は老衰の結果発狂したと感じたのである。どうも生きがいのないからだであるから、いつ死んでもさしつかえないけれども、氣違いになつて死んでは実に残念だと思いますると、夜も寝られません。三晩ばかり寝ずに考えたけれども、どうしても私の発狂ではない。第七條の読み方は私が正しということを今日も思つておる。そうすると、世の中がみな――あの七條をもつて解散ができると思う人が、世間に、日本中大部分のようであるが、みな発狂したと見るよりほかに見方はありません。(拍手)私一人が発狂したのではない。全國大多数の者が発狂したと見なければならぬ。そんなことは、私はりくつはそう見えても、どうもそう思えぬのであります。世の中には私などよりも学問の多い人、天性のいい人が幾らでもある。それがみな発狂してしまうということは、人間世界にあり得べからざることであるが、各博士の議論や何かを見ても、どうしても発狂しなければ、あんな議論はできないはずと私には論断できるのである。これをどうぞ公平にお考え願いたい。むろん、ほんとうに学問をした者は、憲法第七條は衆議院の解散ではない。衆議院解散の公布である。政令と同じく官報のかわりに公布するだけのことであるということに理解する者も少しはある。しかし、全部そう理解しなければならぬはずのものである。
 すでに第七條が解散の根拠とならなければ、総理大臣などは、解散などという言葉が使えるはずはないが、その次の第六十九條を、たしか根拠とすることでありましよう。これもよく読んで伺いたいのである。第六十九條というのは、元來からいうと、私は、わが憲法にあんな箇條を設けたということを國辱と考えております。あんなことは、小学校の子供にでも教えるべきことで、一通り成長した人間には、あんなことは、言つて聞かせると、みなわかるはずのものである。何と書いてある。衆議院で不信任をしたとき、あるいは政府が出した信任案が否決せられたときには、解散がされない限り総辞職しなければならぬ。――わかり切つておるじやありませんか。ここに解散という言葉が聞違つておる。解散のしてのない解散――だれが解散権を持つておるかということをどこにも書かないで解散という言葉を使うということは、まあ驚き入つたる書き方でありまするが、それにしても辞職しなければならぬ。――何ということであります。主権がすでに人民に移つて、その人民の代表機関の衆議院が選挙して指名した総理のつくつた内閣、それが不信任に出会つたときには言う必要はない、辞職するよりほかに、あたりまえならば道はありません、氣違いでなければ……。何か方法がありますか。主人から雇われた人間が、主人の氣に入らぬという、貴様が惡いといつたときに、おいとまを請うよりほかに、あなた方どこか行くべき道がありますか。どこにもありません。
 一軒の家であると國であるとで大層違うということで、御了解に苦しむ人があるかもしれないが、会社にたとえてごらんなさい。会社の主人は、多分株主でありましよう。株主が選んで重役であるとか、重役が選んで社長であるとか頭取とかいうものをきめると、表向きは頭取か社長が一番上のものでありますが、重役から選ばれた社長や頭取は、氣に入らぬときは重役を放逐することができますか。ずいぶん会社などにも、わからぬ人間が――賄賂をつかつたり、とつたりする会社も大層あるくらいだから、わからぬ人間が幾らもありましようけれども、まさか重役会議で選んだ頭取や社長が、自分が氣に入らぬからといつて、重役を全部放逐して、株主に向つて重役を選び直せなどという規定のある会社は、おそらくは世界中になかろうと思う。日本にもなかろう。これをあると言うならば、どうぞお示しを願いたい。今の衆議院と内閣との関係は、ここの重役と社長との関係であります。かりに内閣を大層たつといものと見たところが、重役が選んできめた社長や頭取と同じものである。その重役が氣に入らないから不信任といつたときには、社長なり頭取なりは、辞職するよりほかに、人間社会には行くべき道はないはずである。内閣もそれと同じことである。どうも人間社会、普通どこでも行われることが、今の日本人にはわからぬようであります。
 解散論などを唱える者――もつとも、失礼ながら解散論は、内閣の人が唱えるのみならず。民間の人も唱えるようである。社会党の人も唱える。民主党の人も唱える。新聞記者などは、ほとんど全部唱える。驚き入つたる社会であります。(拍手)しかし、これは勝手に唱えてもよろしい。けれども、実権を握ろうとして現在その局に当つておる政府の者が、即時解散とか何とか言うに至つては、これは驚かざるを得ない。どういう場合に唱えても驚くのであります。その局に当るほどの責任者が、解散できようはずがないではありませんか。ただ旧憲法に慣れて、天皇陛下の主権のもとに政局を担つた官僚育ちの人間が、この習慣が骨髄に徹して、今でも忘れずに唱えるのは、あえてとがめませんけれども、その人が、すでに官僚社会を脱して政党の首領となつた以上は、そんなことは、おくびにも出せるはずはないのであります。ところが、現在出しておるようである。この根拠を承りたい。
 あの第六十九條などというものを根拠にして解散を唱えるなどということは、驚くべきことである。あれは根拠になりません。あんなつまらぬことを憲法に掲げたということが、実は後世の笑いものであります。現在でも、世界の少しわかる者は、みな笑つておるだろうと思います。あんなばかげた條というものはありません。あれは無規すべき條であります。衆議院から選ばれた者が、不信任の決議を受けて辞職しなければならぬということは、ばか、氣違いには言うて聞かせる必要はあるが、普通の常識のある者には、だれにも言うて聞かせる必要はございません。みな知つております。現に会社でも、重役が選んだ社長は、重役の信任を失えば必ず退くであろう。あのわけのわからぬ下等の会社ですることが、日本帝國の国家でできないなどということは、國家はどうも、会社などよりか、よほど下等なものと見るよりほかに、見方はないのであります。こんなことについても、われわれにわかるように、どうぞ御説明を願いたい。(拍手)
 民間でも、第六十九條でやはり解散ができると思つておる人が大分あるようであるが、政府も、第六十九條で解散することが都合がいいと考えている人もあるようである。これも実におかしいのです。あれでむりに解散するとしますと、どうなります。結果を考えてごらんなさい。ただ政府と議会との関係を――第七條で解散ができないとすれば、第六十九條で解散するときには、議会から不信任案を出すか、あるいは政府が信任案を出して、それが否決されたときでなければ、第六十九條は適用はできますまい。そうすると、政府が望んで解散しようとするときには、多分信任案を出すでありましよう。民間の方では、無益に解散を求むることは、道理にも合わぬのみならず、実際に不利益であるから、不信任案を出さぬでしよう。また出す必要はない。少数の政府に向つて不信任案を出す必要はない。自分の氣に入らぬ議案を否決すれば、もう政府は動くことはできませんから、不信任案などという必要は少しもない。政府が大切とする議案のうち、國のために惡いというものがあると考えたら、否決してしまえば、政府はもうどうすることもできません。それで辞職するよりほかに、しかたがありません。だから、在野党の頭が狂わざる以上は、あの條によつて不信任案は決して出しません。出す必要はないのであります。そんなばかなことをする必要はない。氣に入らぬ政府の大切な議案を否決さえすれば、もう政府は辞職するよりほかにないのですから……。
 そうすると、あれを利用しようとすれば、政府の方では小知惠を使つて、解散したいために、信任をせよという議案を出しましよう。このときになると、在野党は少し困るかもしれません。(笑声)いやな政府を信任するということは迷惑なことです。さりとて不信任と、その信任案を否決すれば、あの條によつて解散する。解散すべき理由のないのに解散するということは、國家のためにも、自分たちにも惡いことであるから、これを避けるべき方法を施すのが國民たるの義務であります。どうしたら避けられるか。信任案を出したらば、ただ政府全体としては信任をするという投票をして一向さしつかえない。自分たちが多数で野に下つているときには、それでは良心がとがめますけれども、現在片山内閣も芦田内閣も辞職して去つたのである。ほかに野には、どうしても内閣をつくる資格のある者がないのであります。自分たちがつくることができないという以上は、敵であろうが何であろうが、これにつくらせるよりほかに、國を愛する――國ということが眼中にある以上は、それにつくらせるほかは、しかたかございません。
 世界に、内閣のなくてよろしいという國は、いにしえも今もない。しかして、在野の両大政治家である片山君、芦田君などは、ともに責任を負うて退いて、他にたれも代り手がない。吉田君は、幸いにして老躯をいとわず、責任をとつてつくつてくれている。その点は、國家のためにはまことに――党の事情からいえば残念かもしれぬが、國家のためには、ありがたいことであります。たれもつくり手がなかつたならば実に困る。私は、吉田君とはあまり縁故もない。一度お目にかかつたくらいで、知りません。また主義方針も違うかもしれませんけれども、あのときに内閣をつくつてくれたということだけは感謝しております。芦田片山両君は、できないといつて退いた。ほかにつくり手はない。國家には内閣が絶対必要である。そのときに、少数であつて、政治はきわめて困難、ことに無條件降伏の非常にむずかしいときにあたつて、万難を排してその責任をとつたということは、私は感謝しております。しかも少数党である。すぐいじめられるということも覚悟の上で立つたということは、まことに犠牲的精神に私は感じております。(笑声)そのくらいでありますから、芦田派の人も、片山派の人も、自分たちがつくれぬ以上は、政府が信任投票を求めたときには、しかたがない、信任するという投票を入れるのが、あたりまえであります。それを入れなければ、内閣がいらないということである。
 内閣がいらないと明言する人は、あたりまえの言葉で言えば、非國民ということになります。國民ではない。國家を無視する者でなければ、内閣はいらないという投票はできないはずのものであります。だから、政府が今の場合において信任案を出したならば、吉田内閣を信任せずとも、自分がつくれぬ以上は、必ず信任の投票を入れます。だから、社会党も民主党も、政府が出したら信任投票をお入れになるべきはずのものと信じております。それを入れたならば、第六十九條で解散はできますまい。信任案が否決されれば、あの惡い、間違つた條項によつて、むりに解散はできましよう。文字の上からは……。精神から言つたならば、できるはずのものではありませんけれども、道理も精神もわからぬ内閣ならば解散できましよう。しかしながら、在野党が、自分がつくれぬ以上はしかたがない。敵にしかるべくやらせるほかは、しかたがない。いやでも、國家のためにはそうしなければならないというならば、信任投票を入れるのです。これを良心やましいと思う人は、まだ良心の使い方を知らない人である。当然である。
 イギリスあたりでも、多数党がやむを得ず辞職するときには、必ず反対党の首領を奏請して、これに内閣をつくらせたらよかろうと言つて、責任をとつて退きます。内閣は一日も欠くべからざるものであるから、あたりまえの人間の住んでおる所では、みな同様である。信任案が出たならば、かつてに、いやでも信任の投票を入れなさい。それなら、解散はできないではないか。そうしたら、第七條でもできない。第六十九條でもできない。だれが考えても、どうするでありましようか。今解散といつても、何をして解散するか。それをはつきり私のごとく頭の狂つた人間にもわかるようにお答え願いたい。
 それから、さらに一歩進めば――なるたけ簡單にお話いたしたいと思いまするが、実はこの問題は、解散ということは新憲法の根底を破壊する、同時に民主主義を根こそぎほごにする問題でありますから、どうぞ時間が少しおそくなつても、お忍びを願いたい。
 解散ということが、一たび内閣でかつてにできるということになりますれば、もう民主主義などというものは根本から破れます。新憲法はほごになります。役人がかつてに解散する。これも立憲政治になれて、選挙の何たるかを知つておる國ならば、ほごにはなりませんが、残念ながら、わが國民は、まだ立憲政治の教育が足りません。從つて、投票の入れ方も知りません。
 投票の入れ方は、私が言うのは失礼でございまするけれども、実際知らないと感じておるから、諸君の口を経て選挙民に教えていただきたいのは、なぜ投票を入れるか。政権を握つた者は、文化の低いところにおいては、どこでも全國人民を奴隷のごとく考えて、その人のからだと財産をかつてに使つて、政府がわがままをするのが、古今東西、世界中の習慣であります。それでは、からだと財産を持つておる者が困るから、政府にわがままをさせないために、投票をもつて総代を選ぶ。議員というのは、御同様のからだと財産を保護する番人であります。ゆえに、この理由がわかつたところでは、イギリスあたりでは、同じ人間でも、在野のときに、りつぱに議員に選ばれた者が、内閣の大臣になりますると、生命財産の保護人が、今度は人民の生命財産をどれだけかむりに使いたいという方の政府側、すなわち保護される方の反対の側に立ちまするから、道理に基いて、イギリスでは、そういう人は、ただちに議員を辞して、選挙民に向つて、監督せられる方の身分となつた、すなわち大臣となつたが、やはりお前たちは自分を信用して、お前たちのからだと財産の番人に使つてくれるかということを問うのであります。そうすると、そのときには、必ず投票が減ります。私の知つた範囲においては、そのときに落選した大臣もあります。
 日本は、まだまつたく投票の入れ方を知らない。むりはございません。まつたく、その方の教育はされぬのですから、從つて大臣にでもなりますると、選挙民は喜んで投票をふやします。イギリスでは必ず減る。現に私も、大臣のときに選挙に臨んだことがありますが、大層ふえました。私の選挙区は、明治二十三年以來、ほんとうのことを学んだ。書物で学び、イギリスにおいて実見した通りのことを手本として、ほんとうの選挙民になることをずつと教えて、今日では三代目になつております。それでも、まだわかりません。であるから、日本全國の選挙民が、投票の入れ方のわからぬなどということは、私は怪しまぬ。私の教え方も惡いのでありましようけれども、三代教えてもわかりません。現に、この間の戰爭中には、むちやくちやに、東條その他世の者が、全國民のからだと財産を取上げて、この敗北すべき戰爭に連れ込んで、私はそれに、ずつと終始反対しておつたのであります。そうすると、この前の、敗戰前の総選挙においては、私はほとんど落選いたしそうになりまして、しりから二番目で、ようやく当選した。そのくらいわからぬ人間であります。三代教えても、そうでありますから、教えない全國の選挙民は、まるきりだめであります。だから、これに対して解散などしたところが、投票の入れ方を知らないものであるから、何の効能もないことは、はつきり、わかつております。
 その証拠は、諸君に対してお話するのは、はなはだ失礼でありますけれども、國家のため爭うべからざる事実でありますから、私はあえてお話をいたす。どうぞ、忍んでお聞きを願いたい。敗戰後、前古未曽有の國難を招いた。これは選挙民が招いたのであります。近衛以下東條に至るまで罪人となりて、今裁判を受けた者、あんな者に投票を入れなければ、こんなばかげた世の中はできないのであります。それはみな、選挙民があれらを助けて投票を入れた。私を落選せしめんとするまで反対して彼らを助けたから、この敗北を招き、この降参を招いた。この事実を認めて教えなければならぬ。その結果がまた現われております。
 敗北後、二回総選挙があつたようです。一回ごとに惡くなります。はなはだ失礼でありますが、私は五十何年間議会におつて、今日現在ほど下等な議員のおることはなかつたと思います。(拍手)はなはだ失礼な申分でありますけれども、事実はそうである。また、この議会ほど、たくさん議員から罪人を出したこともないのである。むりはございません。從來の男ばかりの選挙民ですらも、大体投票の入れ方を知らない。全國選挙民の三分の二は知らないのである。いわんや、最近の総選挙においては――その前からでありますか、女に選挙権を與え、まつたく無教育な――中には、りつばな御婦人もありますけれども、大体からいえば、男よりかなお政治の教育は欠けておる。しかも、みな選挙権を與えて、にわかに選挙民を倍にしたのであるから、投票の入れ方がわからぬということは、むりでも何でもない、あたりまえのことであります。その結果が実際に現われて、選挙ごとに議員の品位は低下いたします。これも事実に現われております。
 六十年近くの間に、私どもの若い時分には、ずいぶん乱暴な人間が多かつたけれども、まだ、議会で乱暴をして除名せられた議員は、一人もなかつたようであります。そんなものが続々出て來る。これから総選挙をすればするほど惡くなります。どれだけ惡くなるか、私はわかりません。ただ今日では、どうか惡くならぬようにしたいというために、ここに老躯をひつさげて、にくまれ口をたたいておるのであります。(拍手)どうぞ、それだけは御承知を願いたい。解散ということは、議員を惡くするためにはなりますけれども、よくするためには一切なりません。
 それから、これが第四か第五番目の質問でありますが、解散をするには目的がなければならぬ。選挙民が投票によつてきめることのできる目的がなければならぬ。現在政府におつて解散を唱える人は、解散の目的は何であるか。あるいは自分の党派をふやすというようなことを考えておる人があるが、これが聞違つておる。現に立憲政治の眞意をわきまえたときには、政府におつて解散すれば、その数は必ず減ります。人民の生命と財産を使う方の仲間ですから、むりに使われてはいやというのが人間の心情であるから、政府に立つて解散すれば、必ず減る。日本人はわからぬから、まだ封建時代の野蛮思想が支配しておりますから、自分の命と財産をむだに使われる方に、ありがたがつて投票をいたします。それは人民が惡いのであつて、政府は何が目的であるか。何か國家的目的がなければならぬ。もし目的があるならば、解散を唱える前に、こういう仕事をするということを、第一番にわかりやすく説明しなければならない。
 それは好んですべきものを、いやいやながらやつているようであります。そうすると目的はないのである。しいて私は批判すれば、自分の党派がふえることが目的ではないかと思います。それは下等な選挙人を相手にして、政府にいる間に解散すれば、必ずふえます。私は、それを予言して誤らぬと思います。そうすれば、内閣をつくつたものが、何か口実を設けて解散する。野に下らぬ前に、政府にいる間に解散すれば、必ず幾ばくかふえる。辞職をするにしても、仲間をふやしてから辞職した方が得であるというくらいの下等な考えで、退職する前に解散する。新たに就職する者も、そういうふうに解散する。解散に次ぐに解散をもつてする。そのたびごとに、議員の程度はだんだん低下する。
 これは政治上のことでありますが、解散を一度すれば、全國でどれくらいむだな金を使うかわかりません。世間の人に聞くと、およそ選挙に百万円はるだろうと言う。そうすると、千人候補者が立ちますと、百万、千万、一億、十億―十億くらいは、選挙入費だけで金がむだにいりましよう。それから、およそそれに近いだけは、今度は選挙人の方からも損をします。一日どうしても家業を休むだろうと思います。その間には、遠方から來た者は、途中で飲み食いもしましようし、くつも破れるし、着物も惡くなる。一回の選挙に、全國の選挙人が道で消費するものは、たいへんな金であります。その間は生産は休む。消費はふえる。その上に候補者が十億円くらい使う。これは、たいてい腐敗、買收、飲み食い等の賄賂的性質を持つたものが多い。あるいは、それでなくても、少くとも風俗を悪くする方の側に使われます。そうすると、何らの目的もない総選挙に、風俗壊乱、人民を悪くするために、候補者の方だけで十億という金を使い、全國選挙人は一日家業を休んで、生産を休んで、消費をふやす、これらは、経済上、職業上どれだけ害をなすか、私にはわかりません。その道のあなた方がお考えになつたら、すぐわかりましようが、一回の総選挙というものには、必ず何十億というものが悪い方にばかり使われる。從つて、生産は減ります。さなきだに食糧も足らないで、アメリカあたりから食糧などをもらつて食つているという世の中は、実に残念なことであります。
 そういう不都合なことをして、なお政府が、何らか今度は、選挙の腐敗せぬように役人に取締らせるなどと言つている。それができるか、できないか、考えてごらんなさい。それができれば、こんな無條件降伏などはいたしません。これまでは、大分役人に取締らせる方法、選挙國営などということを言つて、多少そのまねをやつたことはありませんが、私の経験によれば、役人には絶対取締ることはできない。取締ることができないのみならず、惡事を働くことは驚くべきものであります。戰争中の選挙などでも、演説会場も出版も縣廳で取締る。それから蓄音器なども取締る。それがために、正しいことを私には言わせなかつたのであります。はなはだしきに至つては、イタリアにヒントを育ては心得違いをしておる。現に天皇の陛下の皇子は、軍閥あたりがうじ虫のごとく言つておるイギリスに留学遊ばされたではないかと言つたら、そういうようなことを、みな縣廳の者が取締つておる。驚くべきもので、これらの役人に選挙を正しくするなどということは、絶対にできません。そんな証拠は、私は大分持つておりますから、御入用ならば、いつでもお目にかけます。
 縣廳の役人などというものは――裁判官までもだめである。現に選挙中に、私を選挙のじやまになるというので、不敬罪というような、ばかな名義をつけて牢に入れました。裁判官までもだめである。こんな者に選挙を粛正させるとか何とかいう考えがあるならば、非常な間違いであるということを、総理は一應お考えを願いたい。聞けば総理自身も、この役人どものために、憲兵隊かなんかにひつぱられたということを聞いておりますから、総理も、役人がどのくらいのものであるかということは、実驗上多少御存じであろうと思います。
 それから、最も大切な解散の目的であります。何が目的であるか。自分の党をふやすなどということは、これは党利党益あるを知つて、國家あることを忘れた人の言うことである。解散は党利党益のためにするものではない。國家的必要がなければならぬ。その必要は、前の選挙のときに夢にも思わなかつた恐ろしい大事件、國家の安危盛衰に関係するほどの大事件が突然起つた。そのときには総選挙をしなければならぬということはできます。從つて、その選挙人から選ばれた御同様は、どうしていいかわかりませんから、そのときには、もう一度選挙人の意向を聞こうという考えは、良心ある議員なら当然起るわけであります。そういうときには解散の必要はないのである。御同様が総辞職をすればいいのである。総辞職すれば総選挙が行われます。解散などという不正なことをする必要はない。総辞職をすればいい。
 けれども、そんな問題は起りません。ことに日本の議員は、たつた四年の任期であるから、四年のうちに何度も選挙をし直さなければならぬという問題は、今まで私が五十何年の経験によれば、一度も起つたことはございません。今後も起る氣づかいはございません。ただ一つ起るかと思うのは――これは当分できますまいが、私の唱える世界連邦というものが、欧米人などにも理解ができて、これができるときに、國というものを廃しなければなりません。世界連合が発達して、いよいよ世界連邦をつくろうということがまとまつたときには、日本は、日本國という國を廃して世界連邦中の一州になるかならぬかという問題が起る。これが起ると、どうしても御同様は、総辞職するか、みずから解散をするかして、選挙人の意見を聞かなければなりません。そんなことは絶対に起る氣づかいはないと思います。
 また、その解散の目的というものは、白か黒か、たつた二つより投票の入れ方がないというものでなければならない。目的が幾つもあつては、投票の入れ方はできません。幾つもあれば、幾つにもわかれてしまう。そうすると、解散前と同じく小党分立、内閣すらできぬという状態になります。だから、どうしても右か左か、白か黒かという問題である。日本という國名を廃して、世界中の國に入るか入らぬか。これならば、どつちかへ投票を入れます。今内閣などが唱えておるような、問題を三つも四つも出して、どうして投票の入れ方があるか。投票は一票よりない。白か黒かしか入れ方がない。幾つも投票がなくて問題がある。それならば、投票は四分五裂する。その結果は、前選挙と同じく幾つにもわかれましよう。やはり日本では、四つか五つの團体にわかれましよう。それは私党である。政党と言つておりますけれども、どこから見ても、あれは政党ではありません、みな私党である。國家よりか自分の党に重きを置く團体であります。だから、私党がまた四つも五つもできる。どうするのであるか。内閣はやはり、お互いに讓り合うよりほかにできない。讓り合えば、主義方針などというものは、ほとんどうそになります。前に三党連合内閣ができた実例をごらんなさい。三党寄つて内閣をつくりますと、主義方針をもし三つもつておるならば、三つのうち二つ讓らなければ内閣はできません。二つ讓れば、三党合して一つの内閣ができる。讓り合つて六つの主義方針を捨てなければ内閣はできません。現に片山内閣でも芦田内閣でも、主義を捨てて何も行わなかつたということは事実に現われておるから、あなた方も覚えておるに違いない。絶対できません。だから、政党内閣などというものは、まつたくうそである。それを、世間のわからぬ者が寄つてたかつて、内閣は第一党につくらせるのが憲政の常道だなどと、ばかけたことを言う。そんな常道が、世界どこにあるか。一党でも二党でも、一番國のためになる者につくらせることが、國を愛する者の道である。過半数であるならば、それで内閣をつくらせなければならぬ。一党であろうが二党であろうが、過半数を得なければ自分の主義を行うことができない。そういうときには、一番いい人を選んで、みな助け合い讓り合つて國家のために働くのが人間たるの道である。
 それゆえに、私は前から、今日日本が生き死にの境に立つておるときには、もう党派というものは、しばらくの間みな解いて、挙國一致となつて、お互いに讓り合い助け合わなければならぬと勧告した。それをしなければ日本が生き返ることはむずかしい。そのときには、どういうわけか、一人も反対しなかつた。私は、これほど諸君が理解力があるとは思わなかつたと、大層喜んでおつた。ところが、あとから見ると、総起立はしたけれども、一つも行われなかつた。驚くべき諸君である。立つただけである。何のために立つたかわかりません。その結果が現われて何もできない。
 敗北三年、何をしましたか。公務員法じやとか何とか、どうしても將來廃さなければならぬものをこしらえた。あんな法律をつくることは屈辱であります。あんなものは民主主義の弊害であります。欧米くらいの文化程度でも、まだほんとうの民主主義は行われません。しかして労働者が、頭数が比較的多い。それで、一回の選挙にあの労働者の関心を失うと、何百万票という損失がありますから、大統領にも総理大臣にもなれぬ。あなた方も賛成した人があるでしようから、これを笑つておるのは実に遺憾であります。無礼でありますけれども、眞理である以上は、しかたがない。
 どうしても、やがては同盟罷業などというものは厳禁しなければならぬはずのものである。ことに、共産主義とか社会主義の人は、ほんとうを言うと、これを禁止する方の先頭に立たなければならぬはずのものである。社会主義とか共産主義とかいうのは、なるたけ大勢の人に幸福を與えて同じようにすることが結局の到着点である。ところが、労働者は多数であるけれども、一般公衆から比べれば少数である。今、その比較的少数の労働者十万人が百万人を團結させていばりますと、鉄道の運行もとめる。電報の配達もとめる。それがために迷惑するものは労働者の何倍あるか、そろばんをはじいて見ればすぐわかる。少数の利益のために多数に損害を與えるという、これほどの罪惡はないのであります。ほんとうに考えれば、だれにもわかりましよう。
 それを、マルクスあたりが小りくつを言つて、労働者は多数である、資本家は少い、多数の利益のために少数の資本家をいじめるなどという、つまらぬりくつを言うと、そんなりくつに感心して騒いでいる者が世界中に幾らかある。日本には、ことに多い、そろばんをはじいてごらんなさい。なるほど資本家と労働者を比べると、多くの場合においては労働者が多い。しかし、資本家が何か仕事をしてもうけるというのには、資本家と関係のない公衆に利益を與えるからもうかる。公衆に損害を與えてもうけるという仕事は、世界どこを見てもどろぼうか、すりよりほかにありません。このくらいのことはわかると思います。だから、労働者が自分の待遇をよくするために同盟罷業をするということは、表向きは資本家が敵でありますけれども、事実は、資本家の仕事によつて利益を得ている全体の公衆を敵にすることになる。すなわち、少数の労働者が大多数の公衆に迷惑を與えることである。現に鉄道が罷業をすると、どれだけ迷惑をしますか。罷業をする鉄道從業員は、たかが知れている。これによつて物を運んで利益を得る者は從業員の何十倍とあるが、これが皆迷惑をこうむつている。
 こういうことは、ヨーロツパにおいては、わかつております。わかつた一端として、これを制限するために、民主主義の本家であるところのアメリカでも、間違いを正すためにタフト・ハートレー法などというものをつくつた。ところが今度の大統領は、これを廃止するという約束をした。フランスでは、罷業を退治するために軍隊を出して、大分銃殺しました。結局はそうなる。軍隊を出さなければならぬことになる。罪惡であります。そろばんではじいて見れは、すぐわかります。自分たちの利益を得るとか、何人迷惑するとかいうことは、もうすぐわかります。それがわからぬ日本人は、まだいいことだと思つている。
 罷業の権利、そんな、どろぼうをする権利などというものが世界にあろうはずがない。給料を返して、仕事を突然休んでも、道徳上においては惡事である。いわんや、給料を取りながら仕事を休む。こつそり休めば窃盗であり、公に休めば強盗である。このくらいのことは、わかりそうなものである。それがわからない。それがために、実に氣の毒なことは、地方を歩いて見ますと、よい青年が、今あの仲間に入つて罷業の先頭を切つている。これは、どちらかというと、半わかりであるけれども、多少頭がよくて、わかつている。それ以下の人間にはわかりませんから、ただ昔通りの奴隷生活をしております。罷業をするやつは半わかり、マルクスばりの間違つたりくつの片足を聞いて感心をしておる連中が罷業仲間に入つている。勇氣のないやつ、軽薄なやつは、免職するとか何とか、しかられるとやめます。ところが、勇氣もあり、粘着力もあり、一番いい青年は免職されて、何でも聞かない者は、罪人嫌疑で牢に入つておる。それは長野縣や北海道にたくさんある。実に氣の毒だ。これが労働者の中では一番いい人間で、知識的にもよく、勇氣もあり、思想も高い、そういうような人が、みんな罪人になる。これは國家が惡い。あんな法律をつくつた御同様が悪いのであります。実に申訳ない。
 まだ、よほどありますけれども、まずこれで、その片足だけは申し述べましたから、できるならば、総理大臣のこれに対するはつきりしたお答えを願いたい。
 それと、選挙の結果をごらんなさい。私は予言して置きます。少しはふえましよう。人民が民主主義を理解しておるならば、減るべきはずだのに、日本人は、まだ理解せぬ者がある。ただ役人はありがたいという官尊民卑の奴隷根性が強いから、少しは殖えましよう。何十人殖えるかしれませんが、ただ一党で過半数になるまでには、多分なるまいと思う。それでは役に立たぬでしよう。少し殖えても少数、殖えなくても少数、二票やそこら殖えても、政治のできないという点においては同じことであるから、これに対してどういうお答えがあるのか承りたい。
 まだいろいろあります。ことにお考えを願いたいのは、中華民國との比較です。中國が非常な窮境に陷つて、内輪げんかをしている。共産党で満足に國ができるかというと、また内輪もめをしたり何かしている。顧みて日本を見ると、私は中國より、なお現在の日本は見苦しく感じます。中國が内輪げんかをしておりますけれども、中國は独立國でやつておる。日本は占領下のもとに、中國人と同じように、幾つも党をつくつて内輪げんかをしておる。占領下においても、中國人と同じことを、こちらは議論でけんかをしている。國ということを眼中に置かない。日本の現在は、けんかなどのできる現在ではありません。それが政権の爭いをしている。驚くことである。せめては独立でもした後ならば、政権の爭いくらいは、慰みに、愛國心の少い人はしてもいいが、占領下において、党利党略のためにけんかをしているというに至つては、ほんとうに中國より惡い行動であります。中國は独立國でやつておる。日本は占領地のあわれなありさまにおつて兄弟げんかをしている。これらのことについても、総理大臣はどうお答えになつているか。これは正式の質問ではありませんけれども、國家の指導者として、総理大臣として、國民を指導するだけの言葉がなければならぬはずだと思うから、ことのついでに、お聞きしたいと思う。
 まだお尋ねしたいことは大分ありますけれども、時間がないそうでありますから、私は今日は、これでおいとまをいたします。どうぞ、ほんとうにお考えを願いたい。私は決してだれの味方でもなく、だれの敵でもない。吉田君を攻撃するために聞いているのではない。ただ日本のために、日本の立憲政治を生かしたいために聞いておる。今解散などすれば、もう立憲政治は根本からくずれる。どういうふうにしてくずれるかということも、ほぼわかつている。それは、内閣に解散権を與えますと――吉田君は、そういうことはしますまいけれども、他日罪惡の素質ある人が総理大臣になり、金もとり、暴力も振う、解散に次ぐに解散をもつてすれば、北條、足利の天下をつくることはすぐできる。憲法の明文という間違つた解釈をもつてして、憲法の明文を踏んで北條、足利になることはできる。それになれるように、全国民はもちろん、新聞記者なども、今日聞いている。実に恐ろしい。そんな人が出るかもしれない。
 今アメリカ軍が引揚げれば、日本は元亀、大正の世になる。今日は、まだ三人、五人組の強盗が働いておりますが、アメリカ軍が引揚げれば、十人組、百人組、千人組、万人組、十万人組の強盗ができます。必ずできます。見ていてごらんなさい。この間も現に大阪の朝鮮人が團結して兵庫と大阪であばれると、もう兵庫縣廳も大阪府廳も降参してしまつて、朝鮮人の言うなりになつたことは、あなた方の方がよく御承知だ。司令部の兵隊が行つてようやく取押えた。おつてすらこの通り。引揚げれば、もうすぐ五万、十万の強盗ができる。それができたら、どうするか。この議事堂を乗取り、警視廳を乗取り、強盗が定着して号令をしたら、あなたはどうなさる。秀吉が家康に降参し、蜂須賀小六に降参したように、皆平身低頭して、どうぞ私もお仲間入りさせてくださいということになるだろうと思う。実に残念だ。それが遠いことではない。アメリカ軍がいつ引揚げるかしらぬが、引揚げれば、すぐできる。おつてすらの強盗だ。必ず來る。朝鮮人が少し團結してやつても兵庫縣廳や大阪府廳はもう降参してしまう。
 これらのことも、どうぞ自分のためであり、同胞全体のためであるから、私のごとき不評判な人間の言うこととせず、道理上冷静に考えていただきたい。私は、國が少しでもよくなり、一日も早く生き返ることができれば、もう自分一身としては何も求めることはありません。名誉もいらぬ。財産もいらぬ。地位はむろんいらぬ。與えられても、その地位を守ることはできません。衆議院議員すらできないからと、私は二回目の総選挙のときに強く言つて、絶対に出ぬと言つたのであります。ただ選挙区の人が、三代の交わりがあるからと、むりに私を選挙して、嘆願して來るから、いやいやながら受けたのであります。ただ國のためにという何もなりたいことはないのであるから、どうぞあなた方も、尾崎の言うことと聞かずに、ただ道理と数理だけを努めてお聞きあらんことを願います。(拍手)
#81
○議長(松岡駒吉君) 内閣総理大臣吉田茂君。
  〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#82
○國務大臣(吉田茂君) ただいま尾崎行雄翁から種々御意見を承つて、まことに意義深く拝聽いたしました。事柄は、はなはだ重大でありまするから、御意見の点は、政府において、とくと研究をいたすつもりであります。これをもつて一應のお答えといたします。
     ――――◇―――――
 海外残留同胞引揚促進に関する決議案(河野金昇君外三十名提出)(委員会審査省略要求事件)
#83
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、河野金昇君外三十名提出、海外残留同胞引、場促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際上程し、その審議を進められんことを望みます。
#84
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#85
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 海外残留同胞引揚促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。松尾トシ君。
    〔松尾トシ君登壇〕
#86
○松尾トシ君 私は、ただいま議題となりました海外残留同胞引揚促進に関する決議案の趣旨を、ごく簡單に弁明いたします。
  まず、全文を朗読いたします。
   海外残留同胞引揚促進に関する決議
  終戦以來今日まで六百余万人の引揚が実施されたことは連合國の好意によるもので、われらの厚く感謝するところである。
  しかし今なお四度の冬を外地に過しつつある同胞は五十余万を算える。その引揚の速かなる完了は留守家族はもとより全国民の熱望である。
  連合國の積極的努力によつて、この冬期間においてもこれらの残留同胞の送還を継続されるよう要望してやまない。
  政府は本決議に基き直ちに万全の方策を講ずべきである。
  ここに衆議院は総意を以つて右決議する。
 皆様方の御記憶にも残つておりまするように、海外同胞の帰還につきましては、一昨昭和二十一年六月二十八日以來数回にわたりまして、この衆議院において決議せられ、その都度、帰還の促進が、國民の声として内外に向つて強く叫ばれて参りましたのであります。連合軍総司令部におきましても、その都度いろいろと熱心なる御努力を傾けられ、國民の要望にこたえられておりますことは、私ども、ひとしく感謝しているところであります。
 しかしながら、最近の発表によりますれば、在外残留者はなお五十万を越えるといわれ、嚴寒の地に四度目の冬を迎えておられるのであります。最近のように寒さの身にしみるころは、私どもは、胸の詰まる思いをするのであります。この痛烈なる心境は、家族のものならずも、まつたく私どもが、右のような事情によつて胸をつかれるのであります。この残留の方々を待たれるところの家族の心境も、またしかりであります。戦後の國家復興の重要なる問題はたくさんありますが、ひとつすみやかにこの残留者を帰國させて、國民一同が一体となつて國家復興に邁進することができるよう、私はよくこれを考えるのであります。
 そこで私どもは、当面の急務といたしましてお願いしたいことは、この冬の期間いろいろと――なお混乱しているいろいろの問題もありますでしようが、これを一つ取上げていただいて、國民の要望にこたえていただきたいと思うのであります。帰還促進をいたしますには、輸送が第一だと聞かされておりますので、政府は、この冬季に向つて、輸送について重点的にお考えになられなければならないお仕事がたくさんございますでしようが、引揚げ促進にも一役買つていただきたい、私は、かように願うものであります。
 残留同胞の急速帰還の実現を期しまして万全の努力を誓い、政府に対し全幅の努力、盡力を要求いたしまして、ここに本決議案の趣旨を弁明する次第であります。(拍手)
#87
○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。中山マサ君。
  〔中山マサ君登壇〕
#88
○中山マサ君 本日、海外残留同胞引揚促進の決議案が上程されましたが、私は民自党を代表いたしまして、心からなる賛意を表するものでございます。終戦後四年を経過いたしました今日、まだかかる決議案を私どもが上程せねばならぬほど、この引揚げが遅々として進まないのは、実に慚愧にたえない次第でございます。世間に傳えららておりまするところの、あの冷たい戰爭のうわさに脅かされながら、父や夫や子供の帰りを、ほとんど絶望にも近い氣持で待ちわびる人々の涙の物語を聞くたびに、私ども議会人の政治力の足らざるを憂えなければならないと、私は思つております。鉄のカーテンのかなたに残る同胞を、あるいは死に至らしめるかもしれないあの酷寒から、またその他の外地に散らばるところの同胞も、ともに故郷に一日も早く帰されるよう、この決議案をもつて強力なる申入れをされんことを私は切に切望いたしまして、これに賛成の意を表するものでございます。(拍手)
#89
○議長(松岡駒吉君) 最上英子君。
  〔最上英子君登壇〕
#90
○最上英子君 ただいま上程に相なりました引揚促進に関する決議案に対しまして、民主党を代表いたし、賛意を表するものでございます。
 終戰以來四度目の冬を迎えました。その間、連合國の御好意によりまして、六百十余万の方々が御帰還になりました。しかし、なお残留同胞の数は五十余万人を数えております。長引くために、いろいろと條件が――その惨状は想像以上のものがございます。私たち女性といたしましては、当選以來、これら戰争の犠牲となつた方々と留守家族のことは、一日としても忘れたことはございません。かの地における零下四十度以上の生活を思いますとき、胸のふさがるような思いでございます。ことに留守の家族の方々は、幼い子供を連れ、生活苦にやつれて、生活保護法によつて暮らしておられることを思いますときに、私たち女性の代表としては、見るに忍びないものがあるのでございます。私たちは、これら犠牲者同胞の皆様に対し、せめて一日も早くこの目的の貫徹されんことを願うものであります。政府におきましては、万全を期して努力をしておられるのでありましようが、以上述べましたような実情でございますから、全國女性の強い要望であるということを、ここに特に申し上げまして、私の賛成の趣旨といたします。
#91
○議長(松岡駒吉君) 大石ヨシエ君。
  〔大石ヨシエ君登壇〕
#92
○大石ヨシエ君 私は、國民協調党及び社会革新党、新自由党、労働者農民党、日本農民党、日本共産党、第一議員倶樂部、無所属を代表いたしまして、ただいま上程になりました海外同胞引揚促進決議案に対し賛成の意を表するものであります。(拍手)
 顧みるに、各地に残留する六百六十万に上る海外同胞は、敗戰という現実に逢着して、極度の不安と動揺に見舞われて、あすの生命をも知らざる現状に置かれたのであります。しかも、内地にあるその家族の多くは、文通の道さえとざされて、すでに四年の歳月を数えるに至りました。幸いに、連合軍最高司令部の絶大なる好意に満ちたはからいによりまして、今日までに約五百万の同胞が、なつかしき祖國の土を踏み、富岳を仰ぎ見て、生きる喜びをしみじみとかみしめることができ得たのであります。
 私どもは、このため幾たびかこの壇上において感謝の決議案を可決いたしたのでありますが、同時にまた幾たび引揚げ促進の決議案を上程いたしたことか。連合軍最高司令部の並々ならぬ御好意にもかかわらず、今なおシベリア、樺太等に、折柄刻々と迫り來る酷寒の冬を控えて、四十四万六千七百名に上るいとしい同胞が、日々案ずることは、なつかしい故郷の空や、父母妻子の安否を夢見つつ、一日千秋の思いをもつて郷土の天地に接するの日を待ちあぐんでいることを思いますとき、(拍手)涙なくして語ることができましようか。
 私どもは、その家族とともにこの事実を憂え、かつその帰還の早からんことを待ちに待つているのであります。しかも私は、残留者の大多数が一家の生計の中心となつているという現実の前に一層その感を強くし、生計の支柱を欠いて敗戰四年を迎え、生活はいよいよ困窮をきわめて、今か今かと帰らぬ父、夫、子供を待ちわびている留守家族の感情はますます深刻となり、哀れさは、まつたく耐え得ないものとなつているのであります。気候風土をまつたく異にしている酷寒の地に今なおある約四十五万の在留同胞の近況を思い、これを思うとき、私どもは、あらゆる犠牲をもいとわず、この引揚促進に万策を盡さなければなりません。(拍手)ゆえに、本決議案に賛意を表するものであります。(拍手)
#93
○議長(松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#94
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
 この際外務政務次官より発言を求められております。これを許します。外務政務次官近藤鶴代君。
  〔政府委員近藤鶴代君登壇〕
#95
○政府委員(近藤鶴代君) ただいま御決議になりました趣につきましては、政府といたしましても了承いたした次第でございます。
 海外同胞の引揚げに関しましては、今日まで連合軍司令部のまことに御好意ある御努力によりまして、きわめて順調に進捗して参つたのでございまして、この点は、皆様方とともに深く感謝にたえないところでございます。しかしながら、ここに四たびの冬を迎えまして、今なお現地に残つておりまする同胞の苦しみを思い、かつまた家庭に未帰還の人たちを待つていらつしやいますところの皆様方の御心中を思いますとき、私どもといたしましても、まことに胸の痛む思いがするのでございます。
 政府といたしましては、今日までも十分なる努力をこれにささげて参りましたことは、皆様方も御承知のことと存じますが、なお今日以後におきましても、できる限りの力を盡しまして、この冬季におきましての引揚げも続行いたされますよう、かつまた、できるだけ早く引揚げの完了の日の喜びを皆様方と一緒に迎えたいということのために、全力を盡して参りたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#96
○今村忠助君 残余の日程はこれを延期し、明十七日定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会せらんことを望みます。
#97
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#98
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。本日はこれにて散会いたします。
    午後七時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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