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1948/11/18 第3回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第003回国会 本会議 第15号
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1948/11/18 第3回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第003回国会 本会議 第15号

#1
第003回国会 本会議 第15号
昭和二十三年十一月十八日(木曜日)
 議事日程 第十四号
    午後一時開議
    質問
 一 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(北村徳太郎君提出)
 二 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(稻村順三君提出)
 三 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(安東義良君提出)
    ―――――――――――――
 第一 自由討議
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 一 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(北村徳太郎君提出)
 二 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(稻村順三君提出)
    午後三時五十分開議
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 一 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(北村徳太郎君提出)
#3
○議長(松岡駒吉君) 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問を許可いたします。北村徳太郎君。
  〔北村徳太郎君登壇〕
#4
○北村徳太郎君 吉田内閣の総合的な基本政策というものがはつきりいたしませんと、個々の問題を論議いたしましても、そのことはむだになることが多い。また事実、個々の問題のみを論議いたしますことは困難である。從いまして私どもは、総合的な施策というものをきわめて早い機会において総理が率直に述べられることか必要であるということを力説いたしておるゆえんであります。このことは、單に國会といたしまして、國会冒頭に首相が施政方針の演説をもしやらないならば、國会としての未曽有の惡例というような意味ばかりではございません。(拍手)これなくしては國会の運営を円滑に進めることができない。もし議案にして急ぐものがあるならば、あればあるほど、なおさらその施政に関する一般の方針というものを明らかにせらるべきである。從つて吉田首相は、この明白にして当然の責任をすみやかに履行せらるべきであると思うのであります。(拍手)
 昨日、同僚議員たる米窪君の質問において、すでに十分に各般の問題が取上げられましたので、私はきわめて簡單に質問を続けたいと思うのでありまするが、ただ、現下わが國の政治の現実の問題といたしましては、これは申すまでもなく各般の客観的な條件のもとに置かれておる。すなわちわれわれは、敗戰という運命的な條件のもとにあり、また占領下にあるという外的な條件があり、また領土その他資源地帶を失つたという経済的な、自然的な條件のもとに置かれておる。かような各般のわくをはめられておる。すなわち、共通分母・公分母のきまつたもとに置かれておるのでありまして、從つて、かような條件下にありましては、これは現実なる政治の問題としては、空理空論は別といたしまして、現実なる政治の実行性の問題といたしましては、当然ここに実行のできる可能性というものは、おのずから、これらのわくの中において決定せられなければならぬ必然性を持つておるということだけは、認めなければならぬと思うのであります。吉田首相は、このわれわれが現に置かれておる各般の條件を十分に認識されておるかどうか。これを認識されておるならば、政治の條件、なかんず経済政策のごときは、このわく内において取上げられなければならぬのでありますから、具体的なる問題としては、おのずから、このわくの中において中道政治が生れて來なければならい必然性を持つておる。(拍手)この中道からはみ出したところの両極端に極右と極左がある。吉田首相は、この中道政治を認められるのかどうか。
 從來の説によると、吉田首相は、二大政党主義のチヤンピオンである。吉田首相はかつて、日本には民主自由党と共産党があればいいのだというような話をされた。民主自由党はしばらくおいて、共産党が極左の政治勢力であるということは世界の常識である。そうすると民主自由党は、これに対應する反対の右翼勢力であるということを自認せられたことになる。(拍手)これはすなわち、吉田首相みずから自分たちは右翼勢力たることを認められておるかどうかということをお尋ねをいたしたいのであります。吉田首相の……。
  〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
#5
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に。
#6
○北村徳太郎君(続) まずお聞きなさい。吉田首相の―――靜かにお聞きなさい。昨日の……。
#7
○議長(松岡駒吉君) 山本君、靜粛に願います。
#8
○北村徳太郎君(続) 昨日の米窪君の演説に対して、吉田総理は、米窪君から質問をされていない事項――何も米窪君から御質問がなかつたにもかかわらず、白票の問題まで取上げられた。私は、これは実にどうも年がいのないことだと思う。実に暴言だと思う。何ゆえにわれわれが白票を投じなければならなかつたかという点を明らかにいたしまして、吉田氏の極右性というものを説明したい。(拍手)
 今日のわれわれは、今までの生活と違つて、新たに國際的な視野に立つて、すなわち國際性を回復しなければならぬ。その場合に、吉田氏を信任することは、今の段階において、私どもは國を思うがゆえに、さようなことはできない。從つて、吉田氏に対して投票しなかつたということは、私どもの議員としての当然の責務である。(拍手)從つて、吉田氏が二百何票の白票を投ぜられたことに対して、みずから省みて、その徳至らざるを恥ずべきである。(拍手)しかるに何事であるか。白票を論議してけんかを賣るような態度は、お愼みになるべきではないかと思うのであります。
 ここで私は、なお特に一言を加えておきたい。英國では、陛下の反対党という言葉がある。私どもはみずから自己反省を深め、自己陶冶を深めつつ、光栄ある國民の反対党として立つものであります。從つてわれわれは、ただすべきはただす、しかし、一面において協力すべきことは協力するにやぶさかでない、かような立場をとつている。しかも、今日の場合において、中道政治以外に、日本においては政治の形態はあり得ない。從つて、いかなる政党にしても、一たび朝に立てば、おのずから一定のわくがはまるのであるから、その政治実行の分野は決定せられるべきはずである。たとい反対党でも協力しなければならぬ問題は非常に多い。これは、いま日本の置かれている客観的情勢がそうせしめるのである。從つて、民自党においても、在野時代に鳴物入りで宣傳をされた政策がもし朝に立つて、それが非であることをさとられるならば、これはすみやかに具体的な政策を発表せらるべきである。われわれは決して協力することを惜しむものじやない。むしろ今日は、公分母、すなわちわくを認めるならば、さきに申しますように、反対党といえども今日は協力しなければならぬ場合が多いのである。その点において、できることと、できないこととを、まず現政府ははつきりされたい。在野党時代に、いろいろ鳴り物入りの宣傳をしているが、このことはできないのだ、これはできるのだと、できることと、できないこととを、まず明らかにせられる必要がある。私は、現下日本の財政が困難であることは知つている。泉山大藏大臣の立場にも御同情申している。吉田茂翁が、老躯をひつさげてこの難局に対処せられるということに対しても、敬意を表するものである。決して反対せんがための反対はしない。けれども、できることと、できないこととを、なぜ明らかにしないか。できるがごとく、できないがごとく、いつまでも國民を惑わしている。いつまでも國民を惑わせるということは罪惡だ。一日もすみやかに、できることと、できないこととを明らかにして、できないことはできないと、素直に、謙虚な氣持ちでこれを明らかになさることが吉田内閣の責任だ、かように思うのであります。(拍手)
 それについて、今まで、ずいぶんたくさんの手形を発行されておる。どこまで支拂いを実行するか、國民はこれを期待しているのである。吉田首相は、この際これを明らかにされたいのである。デモクラシーというのは話合いの政治だといわれている。お互いに腹を割つた話合いの政治である。それを何ぞや。話合うことさえしない。謙虚な氣持で話合いをしようではないか、まずあなたの考えをここで披瀝しなさい、こういう國会の要求に対して、これにさえ應じない。昨日の態度は何事であるか。(拍手)かようなことでは、吉田首相が健全なる民主主義を口に唱えられても、その國会における行動は、これを破壊するに十分であるといわなければならぬのであります。(拍手)
 先日この議場で、民主自由党の本間俊一君は、いまさら施政方針演説をしなくても、民主自由党の政策というものは、すでに発表されて明らかなのだ、民主自由党の單独内閣であるから、民主自由党の政策、すなわちこれが吉田内閣の政策である、というような意味のことをお話になりましたが、これは私は少々おかしいと思う。おかしいけれども、百歩を譲つて本間君の言われることを承つておいてもいい。また昨日、吉田首相からも、これを裏書きするかのごとき言葉もございました。これもその通りに一應承つておくといたしましても、われわれは、國会において、すでに院議をもつて施政方針一般の演説をせられるようにと決議をしておるのに、去る十六日、日比谷においては政策発表の演説会をしておる。各閣僚の名前がずらりと並んでおる。國会外においては政策を発表する勇氣はあるけれども、國会において堂々と政策を発表する勇氣が今なおないというのは、どういうわけであるか。(拍手)何ゆえに國会否認のような態度をとるのであるか。かようなことでは話合いの政治ができない。話合いをして、この難局にどうせ当るのであるから、お互いに協力するところは協力しよう、こういうのに、話合いをしない。これは私は、まことに残念に思うのであります。
 かりに、本間君の言い分をそのままにいたしまして、芦田内閣が総辞職後に御発表になりました十九項目の緊急政策というものが出ておる。これを拝見いたしまして、すなわち本間君の言い分に從つて、これをもつて吉田内閣の政策であると仮定いたします。これは、いずれもけつこうなことである。私どもは不同意じやないが、残念ながら、それらの政策を一貫するところの最も重要なる財政政策が一つもない。これは実に人間にして首がないようなものである。(拍手)手足だけは書いてある。胴体もあるようであるけれども、首がない。これでは、どうしてこれらの政策を実行するのか、とんとわからないのでありまして、これに対する財政政策をすみやかに示されなければならない。ことにこれに関しては、予算措置がなければ、実行の道がないのである。しかるに、これもやるぞ、あれもやるぞと並べてあるけれども、これを具体的に実行すべき予算措置が一つもついてない。これが、私のさきに申すできることと、できないこととがあるのであるから、できないことはできませんと率直になぜお言いにならぬか、その点を云うのであります。
 ことに、これらのことを、かりに何らかの方法で――私は大部分不可能だと思うけれども、実行なさるとすれば、それから來るインフレーシヨンの高進をどうするか。われわれは、今日まで國民大衆とともに、いわゆる耐乏生活をして、もつぱらインフレーシヨン收束の道をたどつて來た。これがために困難なる道をたどり、いばらの道を切り開いて、もつぱらインフレーシヨン收束に努力を続けて來たつもりである。しかるに、この十九項目はインフレ対策を欠いておる。インフレに対してどうするのだ、現下日本において最大の課題であるところのインフレをいかにして收束するのか、インフレ対策というものが一つもない。これでは、いかにいろいろなものを並べて見ても、何にもならない。この点について、私は、インフレ対策を持たないということが実に遺憾千万といわなければならない。
 吉田首相にお尋ねをいたしたいことは……。
  〔発言する者多し〕
#9
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#10
○北村徳太郎君(続) 吉田首相は、勤労者の生産意欲を大いに刺激して、國民全体が生産に対して非常な意欲をかり立てるのである、そういうことによつて日本再建の道をはかるのであるという意味のことをお述べになつておる。これはその通りである。だれでも、それはその通りに違いないと思う。しかしながら、またそのことによつて國民の道義を高める、道義心の高揚をはかるということを主張されておるのであります。しかし実際問題として、インフレーシヨンに対する対策をもたない今の現われただけの政策では、インフレは高進せざるを得ないのであります。もしインフレが高進するといたしますと、勤労意欲をいかに刺激したといつても、勤労者は、インフレの進行によつて実質賃金が刻々切り下げられる結果になり、賃上げ鬪爭をやらざるを得ない、物價は安定しないかようなことから、生産資本は商業資本に轉化せざるを得ない。かようなことになつて、やみは横行せざるを得ない、國内の経済秩序が再び混乱に陷るおそれが多分にあるのであります。(拍手)かような状態をそのままにして、ただ單に國民の道義を高揚するというような一片のお説教で國民道義が高まるかどうか。國民道義を高めるには、さらにより緊切なる経済的、社会的條件があるのであります。この重要なる経済的、社会的な條件を無視して、單に一片のお説教で國民道義を高めよう、あるいは勤労者の生産意欲を高めようということは、これはまことにむりである。これについて吉田首相は、はたしていうところの國民道徳の高揚、あるいは勤労者の生産意欲の高揚とは何を意味するのであるか、具体的にどういうことであるか、この点を十分に伺つておきたいと思うのであります。
 なお、もう一つここではつきりしておきたい。私が、できることと、できないことと、はつきりさせることが必要であるというのは、この点であります。民主自由党におかれましては、百三十六名の議員の連署をもつて――この中には、むろん吉田茂氏も入つておりますが、百三十六名の議員の連署をもつて、すみやかに國会を召集すべしという憲法の規定に基く正式なる文書を、前の内閣に御提出に相なりました。これは周知の通りであります。そして、その目的は二つの項目からなつておる。國家公務員の審議を急がねばならぬ。これ民主自由党において、すみやかに提案すべき準備がある。一つは、取引高税を即時撤廃する法案を審議しなければならぬ。しかも、これについては財政措置はできておる。かわり財源については準備があるので、國会が召集せられるならば、國会冒頭において提案する。この二大法案を審議するために、すみやかに國会を召集すべしと、憲法の規定に從つて要求しておる。(拍手)しかるに、今もつてさような法案が御提案に相なつておらぬ。私は、このことを、いたずらに責めようとするのではない。できないことと、できることとあるのであるから、あれは、ああ言つたけれども、できないならできないと、素直に言われたらよい。(拍手)取引高税を即時撤廃する、財源は用意があると言われたこの点について、私は泉山大藏大臣から責任ある答弁を聞きたい。
 なお次に、同じようなことについて伺いたいのでありますが、民主自由党は、多年にわたつて米麦の供出後の自由販賣を主張されておる。これは年來の主張である。しかも、民主自由党單独内閣ができたのであるから、これを実行するには、今こそ最もよい機会である。公党の面目にかけて、ただちに実行せらるべきである。しかも周東農林大臣は、民主自由党の政務調査会長であつたと記憶します。この政務調査会長が政務調査会として、芦田内閣が倒れて後に御発表になつたその政策の中にも、これは明示されている。しかるに、最近新聞の傳えるところによると、米麦の自由販賣はやらないのだ。これは何のことかわからない。この点明らかにされたい。(拍手)政治はどこまでも、良心的責任において行わなければならない。米麦の自由販賣をやるのかやらないのか、この点を、私ははつきりと言つていただきたい。もし不幸にして、新聞の傳えるごとく、やらないということが事実であるならば、年來あれほど主張して來たことを、ほごのごとくにしてる。私は、政党の政策というものは、これは意思的な裏づけがあり、熱意があり、誠意があり、政党の面目にかけて実行を公に約束した手形であると思う。これをほごにしたのは、どういうわけであるか、その意味を十分説明していただきたいと思うのであります。
 なおまた、もう一度元へもどつて泉山君にお尋ねしたいのでありますが、それは賃金安定策であります。賃金安定策は、どういう具体的な方策をお持ちになつておるか。これは安本長官として伺うのでありまするが、直接的な安定策であるか、あるいは間接的な安定策であるか、この点について、安本においての現在の賃金政策はいかなるものであるかということを、十分納得の行くまで御説明を願いたい。それからまた、経済十原則は動かすべからざるものだと思う。はたして、さようにお考えになつておるか、泉山君にお尋ねしたい。経済十原則は変更されないと私は信じている。現下の至上命令だと思つている。もしそうだとすると、経済十原則に基いて、少くとも財政金融政策に関する限りは、芦田内閣の財政金融政策と少しもかわらない御方針であると思うが、さように心得てよいかどうか、その点をはつきり伺つておきたい。(拍手)
 大屋商工大臣は、生産第一主義を唱えております。生産第一主義とインフレーシヨンの関係でありますが、これを私ははつきり伺つておきたい。生産第一主義と言つて見ても、現在の日本の状態、経済の実情、資材その他の状況から考えて、これは一体何を意味するのか、このこととインフレーシヨンとの関係について、具体的なるお考えを十分に伺つておきたいと思うのであります。
 なおまた、これは泉山大藏大臣の話でありますが、就任早々に、金融の緩和をはかるということを声明せられた。それが非常に好評を博しまして、金融の緩和については一般から歓迎を受けた。これはたいへんけつこうだということでありましたが、その翌日、一万田日本銀行総裁は、金融は緩和しないと声明をした。大藏大臣と日本銀行総裁と、今日と明日とまつたく違つた声明をしている。これについて、もう一度大藏大臣から、現下の金融事情に対処すべき方策は何であるか伺いたい。私は、現下インフレ対策を基本として考えます場合には、一万田君のお考えの方に加担いたしたい。ただ大藏大臣として、緩和するのだ、こう言い、日本銀行総裁は緩和しないのだ、こう言う。この点について、はつきりした見解を伺つておきたいのであります。
 なお、最近石炭の爭議が起つている。今日ほど大きな爭議は、今まで起つていない。これは何を意味するかわかりませんが、これから來る石炭の減産は、一体どうするか。われわれは、日本において動力経済の貧困ということが、日本経済のまことに致命的な大きな欠陷であるということを知るがゆえに、あえて多くの反対もありましたけれども、石炭國管案を成立させたのであります。しかも、今や三原則というものが唱えられておる。これでは、企業は窒息せざるを得ない。重要なる石炭産業が窒息せざるを得ないような状態になつておる。私は企業の整理をしなければならないことは認める。企業整理はしなければなりません。これは当然である。当然であるが、企業整理は企業整理のために合目的的にやるべきであつて、金融の面から窒息さしてはならない。それから來るところの摩擦、抵抗、社会的混乱、減産、経済全体の退歩、これに対しては、一体どういうお考えを持つておられるか。これは大屋商工大臣より十分伺つておきたい。企業整理に反対じやありません。今日そのことはやらねばならぬが、今のような情勢で押し進むならば、生産その他の上に重大なる暗影を投じておる。この点について、十分に満足する方針を伺つておきたいと思う。
 先般、世界の視聽を聳動いたしました東京裁判の判決がありまして、断罪が決定いたしまた。私どもは、この厳粛なる断罪を見まして、えりを正して、もう一度戰爭を顧みて、自分たちの立場を反省をいたしたのであります。
  〔発言する者多し〕
#11
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#12
○北村徳太郎君(続) 過去の日本の一切の行動に対するわれわれ自身の責任を、もう一度深く反省せしめられたのでございます。今や、かような巖粛な問題に対してさえも、きわめて安易な、乱暴な言葉をもつてむくいる者さえあるくらい、実に敗戰の事実を忘れて、安易な生活態度が慢性化しようとしておる。
 かようなときにあたりまして考えなければならぬことは、今や早くも日本に、戰爭について深く反省する一面とともに、鎖國的な、封建的な、戰爭を勃発せしめたときのような偏見、あるいは対立、独断、独善あるいは狭量というようなものが國内に起りつつあるこの事実であります。すなわち、かような独断、独善が、新しいヒロイズムとなつて日本に再現しつつある。これは、まことに戰慄すべきことである。かように私どもは思うのであります。
 今國民としてのわれわれの願いは、何としても講和会議にわれわれの情勢を導くことである。世界の信望を取返すことである。世界市民権を再獲得することである。(拍手)このために、われわれは、敗戰の悩みの中から立ち上つて、反省すべきを深く反省し、過去において犯したと同じような鎖國的な、独断的な、あるいは独善に陷つてはならない。國内に今や再現しようとしておるヒロイズムを排斥しなければならぬ。デモクラシ一は、單なる政治運営の手段ではありません。これは人間の自覚の一形態である。しかるに、依然として偏見がある。依然として狭量がある。依然として独断がある。排他的な氣持がある。すなわち、この最も新しいヒロイズム、これはフアシズムへの道である。
 この最も顕著なる現われとして、私は國会的における吉田氏の行動を見て、残念でしようがない。これを英雄視するような國内の一部勢力がある。かかる無批判な動きが日本を誤らせるのだ。かようにして、吉田氏がいかに健全な民主主義を唱えても、彼みずから健全なる民主主義を破壊するのである、かようにいわなければならぬのであります。(拍手)私どもは重ねて申します。デモクラシーがよい社会をつくるのではない。高くゆたかなる批判精神、ゆたかなる教養が、よい社会をつくるのである。かような意味において、思想上の変質や、思想上の軽信や、あるいは独断等に陷らぬように、われわれは、この点において、もつと重大なる反省をしなければならぬ。この意味において私は、吉田氏が、せつかくこの國民道義の高揚というようなことを口にせられるのであり、健全なる民主主義と言われるのであるから、もう少し深くお考えになつて、はつきりした、十分なる声明を聞きたいと思うのであります。
 政党は人氣稼業ではございません。政策というものは、実行の意思のあるもの、誠実な熱意のあるものでなければならぬ。はたして実行の意思ありやいなや、十九項目の政策は、はたして意思の裏づけがあり、実行の誠意ありやいなや、この点において、私は吉田氏に、その実行の誠意があるかないか、その点を明らかにいたしたいのであります。もし実行ができぬならば、できぬということを言つていただきたい。もしこれが、実行できないのだけれども、ただ政党の人氣のために、かような看板を掲げるというのであるならば、これは政党政治の危機である。もし、しかりとするならば、國民はもはや政党を信用しないであろう。そうなれば、公党ではなく徒党にすぎないということになると思うのでありまして、私は吉田氏から、はつきりした答弁を求めたいと思うのであります。
#13
○議長(松岡駒吉君) ただいまの北村君の発言中不穏当の言辞がありましたならば速記録を調査の上、議長において適当なる処置を講ずることにいたします。
  〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#14
○國務大臣(吉田茂君) 北村君の御質問に対して、お答えをいたします。
 私が施政演説をしないということに対して、さらにまた御質問がありましたが、これはしばしば私がここにおいて申し上げますように、この議会は芦田内閣によつて召集せられた。公務員法をまず第一に議することがこの議会の使命であり、また政府といたしましても、これをすみやかに通過せしむる責任があり、義務があるのであつて、ことに民主党におかれては、発案せられた内閣の與党であるから、政治的にも、また道徳的にも、われわれの政府に御協力あつてしかるべきものと私は考えるのであります。(拍手)また政府は……。
  〔発言する者多し〕
#15
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#16
○國務大臣(吉田茂君)(続) 公務員法が通過いたしましたならば、いつでも施政方針演説をいたす用意はあるということは、しばしば繰返しておるのであります。でありまするから、どうか諸君におかれては、ことに民主党の諸君におかれては、どうぞ公務員法その他の関係法規がすみやかに國会を通過いたしまするように、政府に御協力せられんことを特に懇請いたします。
 また、ただいまいろいろな御質問がございましたが、これはいずれ、私が施政方針演説をいたすときにお答えをいたします。しかしながら、ここに私が申すことはいわゆる中道政治について何と考えるかというような御質問でありましたが、実は私は、中道政治が何ものであるかということが了解できないのであります。(拍手)ただ私がここに申すことは、諸君に御反省――ことに民主党の諸君に御反省を願いたいと思うのは、今日は日本の経済危機であります。重大なるときであります。いたずらに政府を攻撃せられて、あるいは反動であるとか、あるいは保守であるとか言われて、そうして外國に日本政府の悪名を流さるることをもつて、もし務めとせられるならば、これは私は議会政治を茶毒するのであると考えるのであります。この重大なる時期において、政府も與党も野党も協力して経済復興に御協力あるべきときであると考えるのであります。
 また、インフレーシヨン問題についてお話がありましたが、インフレーシヨンの克服のまず第一歩は、日本の生産を高めることであります。生産を高めるためには、公務員法のごとき法律を決定して、しかる後に初めて日本の労働問題が軌道に上るものと考えるのであります。ゆえに、わが政府は、理由はとにかくとして、現在の政治上、経済上労働問題の現状から考えてみまして、一日もすみやかに公務員法その他の関係法規を制定していただきたいものだと思つて、再び懇請いたします。(拍手)
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#17
○國務大臣(泉山三六君) 北村さんの御質問にお答えいたします。大藏大臣として、また安本長官として、質問が区々にわたつておりましたので、私はこれに対して一括御答弁を申し上げたいと思うのであります。
 まず、インフレ收束の構想いかん。かようのことでございましたが、インフレ收束の要諦は、ひつきよう生産の増強と通貨信用の維持確立にあるのであります。これがためには、さきに前内閣当時におきまして発表せられましたる経済安定十原則の線、これを貫くことは、わが内閣といたしましても、その方針であることは、先般声明いたした通りでございます。(拍手)しかしながら、その具体的の施策の展開に至つては、そのときどきの経済状態と調和を保ちながら総合的に実施する必要のあることを、深く認識いたしておるのであります。
 次に、金融緩和対策についての御発言でございましたが、私は就任の当初におきまして、その第一声において金融緩和政策を唱えた、さような事実はないのであります。その結果といたしまして、日銀総裁との間に意見の扞格を來したやの北村君のお話は、事実と相違いたしております。私は、單に当時におきまして、わが財政並びに金融につきましては、幅のある財政と彈力に富む金融、かようの方針を示したのでありまして、もとより健全財政、健全金融を堅持することは申すまでもないのであります。しかしながら、お示しの金融の問題につきましては、何分にも当今におきましての金詰まりの実情を深く認識いたしまするがゆえに、これが実際の政策につきましては、その半面において金融の引締めがあまりに度を過すにおきましては、かえつて生産を萎縮させる結果と相なりまするので、かくてはインフレ克服の目的は、むしろその結果におきまして反対の結果となりまするので、私は、金融の健全性を保持しながら生産の増強、経済の復興に活路を與えるように、善処いたしたいと存ずるのであります。
 なお、取引高税の撤廃についてのお尋ねがございましたが、現内閣は、できることと、できないこととを、はりきりせよ、かようのことでございました。これは、たびたび申し上げました通り、もとよりはつきりいたしておるのであります。おそらく北村君は、前藏相として、取引高税の撤廃は、なるほど苦しいお立場かとお察し申し上げるのであります。しかしながら、今日の取引高税が惡税である、かようのことは、ひとりわが民自党のみならず、社会党の諸君もまたしかり、民主党においてまたしかりではありませんか。(拍手)子の財政窮迫の今日において、これが財源の調達は、まことに容易ならざるものがあるのであります。しかしながら、もとより政治力の結集によつては、いわゆるできないこともできるのでありまして、(拍手)そこに私のいう幅のある財政が行われるのであります。
 次に、賃金安定政策についてでありますが、賃金安定政策は、その直接の方策によるものか、あるいは間接の方策によるものか、かようのお尋ねでありまするが、それは時宜に適した方策によつて、あんばい実施いたしたいと思うのであります。
 質問は多々ございましたが、以上をもちまして全部お答えしたようでございます。以上をもつて御了承願います。
  〔國務大臣周東英雄君登壇〕
#18
○國務大臣(周東英雄君) 北村さんにお答えをいたします。
 供出後の米麦の自由販賣ということについては、これは民自党の政策であります。從つて、新内閣におきましても、この政策を放棄しておることはございません。ただ、これが実施にあたりましては、その時期と方法について十分検討する必要があるのであります。ことに、今日の事態といたしまして、食糧政策上、一般供出後、超過供出につきまして協力を求めておる最中でありまするので、これらに対して混乱を起すことは避けなければなりません。從つて、その時期、方法につきましては愼重に考慮を要する必要があります。ことに食糧政策としては、單に供出あるいは分配というような――分配の点だけが問題でなく、増産政策ということが食糧政策の根本であります。從つて、農家の増産意欲向上のためにも、割当分量の供出後に対して、これが自由な処置を認めることが適当であると考えます。ことに、その時期を考慮いたしたいと存じます。
 北村さんは、よそ事のように、いろいろとお話がありましたが、この点に対しましては、本年一月二十四日でありましたか、民主党を代表せられたる苫米地さんは、この席上から、同様な趣旨において、増産意欲向上をはかることこそ食糧政策の根本である、從つて、一定の割当分量の供出後においては、これに対して制限を設けず、ただ一手買入れその他の弊害を除くべく処置をとつて自由の処置を認めることが正しいのではないか、という主張があつたことを思いまして、非常に敬意を表しておるのであります。從つて、わが党の新内閣におきまして、具体的な政策を策定し、時期が決定いたしました場合におきましては、少くとも民主党においては、わが政策に協力していただけるものと、期待しておつた次第であります。(拍手)
  〔國務大臣大屋晋三君登壇)
#19
○國務大臣(大屋晋三君) 北村君の御質問に対しまして、お答えをいたします。
 生産第一主議とインフレーシヨンの関係いかんという御質問のようでありましたが、御承知の通り、あらゆる経済、または財政の政策、あるいは財政、行政の根本の目標といたしまするところは、いうまでもなく私は、インフレーシヨンのストツプ、インフレーシヨンの收束であると考えるのであります。しかして、このインフレ―シヨンの收束をめぐりましては、すでに幾多の議論がございまするが、私は、かように信じております。すなわち、インフレーシヨンを收束いたしまする最も重要なキー・ポイントは、一にも生産、二にも生産の増強であろうかと考えるのであります。(拍手)もちろんこれに対しまして、ある一部の論者は通貨の処置ということに相当の重心を置いておる見方もあるのでありますが、少くとも、わが國の現在の段階におきましては、この処置は、生産に次いで私は二次的に考えるべきものであると信じておるのであります。(拍手)しからば、生産の増強と何人も言うのでありまするが、これはいかなる方式でやつたらいいか。
 北村君は、ただいま現在資材原料の枯渇しておるこの際に、あるいは金融の逼迫その他悪條件の占領下において、いかなる方策があるかというようなお含みのお尋ねであつたと思うのであります。これに対しては、またいろいろの方法がございまするが、私は簡單に、ごく率直に考えまして、この生産増強の第一の重大なる点は、いうまでもなく人間が生産の増強に当るのでございまするがゆえに、この人々が、ほんとうに自分たちが生産を増強せなければならぬというぐあいに、眞にさように覚悟するということが、根本の問題であろうかと考えるのであります。(拍手)。しかるに諸君、現在の経済の情勢におきましては、すべての國民が、いわゆる物價の上昇並びに通貨というようなことに非常に不安を持つておびえておるのであります。かるがゆえに、私は、これらの点を除去する政策を考えるのが当然だと思うのでありまするが、前内閣、前々内閣の諸君のごとき、統制一点張りの方式では、私は断じて不可であると考えておるのであります。(拍手)
 さて、この生産の第二の方法といたしましては、ただいま北村君の御指摘にもございました通り、いかにも資材が不足しております。また生産を営みますところの場所というか、いわゆる道具、生産工場が腐朽いたし、あるいは機械が摩滅いたしております。このときにあたりまして、私は、これらを増進いたしまするためには、どうしてもここに、ちんぷな方式でなしに――諸君御承知の通り、日本は三千六百万トンの目標達成に汲々としておりますのに、驚くなかれアメリカにおきましては、日本と同じ四十八万人の労働者を使いまして、年間六億トンの石炭生産ができております。これはすなわち、あらゆる生産設備の機械化、あるいは科学化というよな方式をここに用いて、そうしてこれを動かしまする大本は……。
  〔発言する者多く議場騒然〕
#20
○議長(松岡駒吉君) 靜粛願います。
#21
○國務大臣(大屋晋三君)(続) 労働不安の除去であります。かような点におきまして、私はかような方式によりまして生産の増強をはかるということであります。また、通貨の処理の問題に対しましては、日本の現在の段階におきましては、これは尚早であると考えているのであります。かような方式を採用いたしまして、結局経済の合理化、賃金の安定化、健全財政の設定並びに為替の決定をいたしまして、そうして輸出を振興いたします。かような方式をもちまして、私は日本の経済を收拾いたしたいと考えております。
 さらに、次の北村君の御質問は、石炭の増産をいかにするかという御質問でありましたが、私は、本日も午前中におきまして、赤坂離宮において、全國の成績優良なる炭鉱、個人並びに團体を表彰して参つたのでありまするが、目下從業者と、経営者ともに涙ぐましい努力をいたしているのであるが、私がたいへん遺憾に思うのは、民主党並びに社会党の諸君が、石炭の経営方式におきまして誤れる方式を採用いたしたがために、(拍手)――これさえなかりせば、もう少し能率が上つたのではないかと思うのであります。しかし、私も商工大臣といたしまして、せつかく増産に奔命いたしている次第であります。さよう御了承願いたいと思います。
  〔北村徳太郎君登壇〕
#22
○北村徳太郎君 吉田首相の御答弁は、内容はともかくといたしまして、私に対する本日の御答弁は、私はきわめて誠意をもつて答弁せられたものと認めます。
 泉山君の御答弁に至つては、私の頭が悪いせいかもしれませんが、熱心に伺いましたけれども、どうも何のことであつたかわからない。これは私は、他日委員会その他において十分に檢討いたしたい。今夜の御答弁は何のことか、私のお尋ねしたことと違つて、顧みて他を言うような御答弁であつた。ことに、取引高税のごとき即時撤廃するため、國会劈頭に法案を出したらどうかという問いに対して、それにお答えになつていない。
 農林大臣においてもまた同様でありまして、顧みて他を言つている。だから私は、率直に、できないことはできないと、なぜおつしやらぬかということを言つているのであります。その点、非常に残念であります。
 大屋君の御答弁に至つては、なかなか大演説をなさつたけれども、これは的をはずれている。私は石炭生産の方式を尋ねてはいない。これは、純粹な、資本主義的な、資本家的な立場においてお答えになつておるけれども、今日アメリカにおいての情勢、また日本においての内外の情勢等から考えて、そういう資本家的な、一方的な見解だけで日本の商工行政がうまく行くかどうかということに非常に不安を持つものであるということだけを申し上げておきます。(拍手)
     ――――◇―――――
 二 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(稻村順三君提出)○議長(松岡駒吉君) 稻村順三君。
    〔稻村順三君登壇〕
#23
○稻村順三君 吉田総理大臣は、施政方針の演説が済むまで待てというような意味の答弁を、前々からいたしております。しかしながらへ皆さんもすでにお手元に受取つたように政府の提出法案は、單に公務員法だけでなく、多くの法案が出ておるのであります。この法案が吉田総理大臣の施政方針と無関係であるというならば、何のために内閣があるかと言いたいのであります。(拍手)私らといたしましては、吉田総理に対しまして幾多の質問すべき條項があるのでありますけれども、他の同僚諸君の質問と重複することを避けまして、特に経済問題、その中でも賃金と物價及び農業問題に関しまして御質問をしたいと思つております。
 先ほど、統制の問題がしばしば論議の的になりましたが、しかし、先ほどの大屋商工大臣答弁の中に、われわれは前内閣のような統制第一主義ではなくして自由経済で行くのがほんとうだというようなお話をしておりました。しかし、私の知つておる限りにおきましては、終戰後の内閣の中で、第一次吉田内閣ほど、たくさんな経済統制に関する法規を決定した内閣はないのであります。(拍手)これは法規を調べてみると実に明らかなのであります。しかもなお、自由党あるいはその傳統を継ぐところの民主自由党におきましては、どうも統制という言葉がきらいでありまして、そうして統制の大幅縮減ということを今日重要政策の一つとしております。私もまた、今日の統制が、戰爭中にできたものであり、國民の怨嗟の的となり、また批判の焦点であつたことを、否認するものではありません。すなわも戰爭中における統制は、これは独占資本と軍閥に奉仕するための統制であつたと私は思うのでありますが、今日の統制には、その延長たる性格が相当盛られております。從いまして、今日の帝國主義時代の延長の性格というものを清算することが一日も早からんことを、私は当然望んでおるのであります。
 しかしながら、私がここに総理大臣に対して質問いたしたいことは、総理大臣はこの統制を大幅縮減するという民主自由党の党首でありますから、総理大臣に対して、経済統制をどう考えて大幅縮減しようとしておるかをお尋ねしたいのであります。それは吉田総理大臣が、私が先ほど申し上げました通りに、経済統制というものが帝國主義的であつたからといつてこれに反対するのか、または先ほど大屋商工大臣の言われたように、統制一般に対して、これは大幅にただ縮減したらいい、統制がきらいだという意味合いにおきまして統制を大幅縮減しようと考えておるのか、このどちらであるかをお伺いしたいのであります。もしも前者であるとするならば、すなわち帝國主義的であるから統制は撤廃したい、こういうような意味合いであるとするならば、われわれといたしましては、きわめてこれを奇怪に感ずる次第であります。
 なぜかといえば、吉田首相は、かつて日本が帝國主義時代に、その政府の外交的技術官として、海外で他國の帝國主義者と植民地分割に関して協議する任務を持つておつた人間なのであります。その人が、太平洋戰爭に反対したからといつて四十日間憲兵隊にひつぱられた。ただそれだけでもつて、今日におきまして、帝國主義に反対であるということには、私は受け取れないのであります。なぜかと申しますると、吉田総理大臣が大使を勤めておつた当時に、わが國の帝國主義に反対したからといつて辞任問題を引起したということを、私は一度も聞いたことがないのであります。從つて、吉田総理が帝國主義戰爭に反対だということではなくして、実に帝國主義者の間におけるところの意見の相違が吉田氏をかくあらしめたものであると、私はかように考えております。帝國主義者の頭というものは、そんなに一朝一夕に切りかえられるものではない、かように私は考えております。現にあなたは、自由主義を基調として民主主義的性格の内閣をつくるのだと言いながら、組閣にあたつて、戰爭中に官僚であり、そしてまたいわゆる官僚統制に從事した、そればかりではなくして民間に天くだり的にくだつた、当時の最も帝國主義的な統制機関であるところのいわゆる統制会社の重役を、今日わざわざ選んで閣僚のいすにすえておるではありませんか。(拍手)また、その当時におきまして官僚統制の責任者であつたところの高級官吏、局長その他を自党に引入れて、重要なポストを與えておるのであります。これらのことを考えてみますと、決して帝國主義なるがゆえにというので、この統制に反対するのではない、また吉田総理大臣が、その頭の中から帝國主義的な性格を拂拭してしまつたとは、私はどうしても考えることができないのであります。そればかりではない。昨日、今日における吉田総理の答弁を聞いておりますと、その性格といたしましては、実に長い習慣からだと申しましようか、私は、これは帝國主義的、貴族主義的の権化だと言うも、あえて過言でないと存ずるのであります。(拍手)
  〔発言する者多し〕
#24
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#25
○稻村順三君(続) 吉岡総理が統制に反対だという理由は、大体が統制は原則的にきらいだということに解釈するよりほかはないのであります。
  〔発言する者多し〕
#26
○議長(松岡駒吉君) 菊地君、靜粛に願います。
#27
○稻村順三君(続) しかしながら、私をして言わしめるならば、それならそれで論理が一貫しておらないのであります。なぜ論理が一貫しておらないかと申しますと、吉田総理が率いておるところの民主自由党、この民主自由党の政綱の中に、賃金の安定という言葉があります。賃金の安定とは、すなわちわれわれが常識を持つて考えますれば、これは賃金の統制であります。実に賃金とは、労働力という商品の價格であります。この労働力の價格を統制して、他の商品はこれを統制しないというようなことは、論理が一貫しておらないと思うのでありまして、論理が一貫しているというふうに思つている人がいるならば、まさに精神錯覚症の自由経済論であると、私はかように断定して差支えないと思うのであります。
 なお、統制を大幅に縮減すると申しておりますが、この大幅縮減がまたいろいろなからくりを含んでいるということを、われわれは見逃すことができないのあります。なぜかと申しますと、民主自由党の政策の中に経済條件の変動によつて不必要となつた統制をやめる反面、主食、基礎生産財に対する統制は強化するということが書いてあります。これは主食を除きますと、基礎生産資材は、いわば主として肥料、鉄、石炭、電氣の類であります。かようなものは一つ残さず全部大企業の掌握するところとなつております。ことに、食糧を除くところの消費財はどうかと申しますと、今日大体において、中小企業家がこの生産に当つてをるのであります。
 しからば、われわれが今日中小企業の状態を考えてみますと、單にこれは資材が不足であるとか資金が不足であるとかいうようなことによつて片づけられないものがある。すなわち、最近最も國内市場の大きいところの農民あるいは労働者の收入が減ずることによりまして、食糧以外の物に対する購買力はきわめて減退した。このために、部分的にはすでに生産過剰の現象すら起きておるのであります。かような場合に、もしも無統制に統制を大幅に縮減したとするならば、この中小企業というものの中に倒産が続々と出ることは明らかであります。(拍手)そうして、この大企業が生産するところの生産財の生産は統制を強化する、しかし中小企業というようなものが主にしているところの消費財は統制を撤廃するということになると、大産業は、公團という組織を通じて全部國家で買い上げて、ここには生産過剰というものは起りません。そこで私は、この来るべき経済の混乱にあたりまして、大産業を保護し、中小工業を犠牲にするということが、この大幅縮減の中に盛り込まれているということを、断言してさしつかえないのであります。(拍手)
 その証拠を、私は一つあげることがてきます。なぜかと申しますならば、諸君たちは生鮮食料品の價格の撤廃を叫んで来たのでありますが、さて今日、その統制はいかもに緩和されたが、その結果、この蔬菜類がマル公價格を割つて、蔬菜生産に從事している農民が続々と倒産のうき目に会つておるという事実を、諸君たちはこれを否認することができるか。(「それがよくなるんだよ」と呼ぶ者あり)それがよいことになるというあなた方の答弁がありましたが、この答弁によつて、あなた方自身の本質が明らかに現われておるのであります。小さなるものは犠牲にして、大きなものを助けるというあなた方の本質が、ここに明らかに出ておると思うのであります。
 かように考えますと、吉田首相の意味するところの自由主義というものは、一外紙が言つておるように、勤労大衆にとりましては飢餓の自由であり、中小商工業者に対しては倒産の自由であり、大企業家にとりましては、自分たちの利潤確保のための自由である、ブローカーにとつては、やみと投機の自由であると、私は言いたいのであります。
 といつて、私は今日の統制を必ずしも礼讃するものではありません。統制経済が、ややともすると社会主義と混同されておるような今日におきまして、私たちは社会主義者だという名前をもつて、必ずしも統制を一から十まで支持するものではありません。しかしながら、われわれ社会主義者が統制経済者だといわれたところの理由は、戰爭中における社会主義者のある者が、自分自身の裏切りを合理化するために、当時の統制経済というものを社会主義と言つたことによりて、皆が誤解しておるのであります。その責任は、社会主義全般にはないのであります。以上の統制経済に関するところの総理大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
 次に、大藏大臣に対して質問したいと思うのであります。私は、大藏大臣が、新進なお大藏大臣の職に登られたということは、相当の能力を持つておるものとして期待しておるのでありますが、しかも大藏大臣が、大藏省の職員に対して、本因坊と賭碁の大家との例をあげまして、奇想天外の手を打つということをおつしやつたそうであります。その奇想天外の石というのはどうかといえば、それは建設公債ということある。しかしながら、建設公債ということになれば、それはこれまでの大藏大臣はだれでも考えたことでありまして、これは奇想天外どころの騒ぎではない、これは凡想地上に氾濫するたぐいのものであります。從いまして、これが経済十大原則というものと、どうなつておるかということにつきましては、これはさきに北村氏がすでに質問したところでありますので、私はこれに触れません。但し、私がこれから質問しようとすることは、賃金と物價の関係であります。これは非常に重要なる問題でありますので、何も私は奇想天外な答弁を要求いたしません。きわめて平凡に、しかしながら科学的な、禪問答でないような御答弁を願いたい、かように考えております。
 これまで、企業家も政治家も、口を開けば賃金と物價の惡循環ということを言つて來たのであります。現にわれわれが、ここで議論を聞いておりますと、幾たびか、そういうことが繰返されております。もちろん、各種の企業を全部見ますと、この中には惡循環の見本のようなものもあるのであります。だが、先ほど申しました通り、部分的には、すでに大衆購買力は減退して、生産過剰の現象が見られます。極度に不足し、しかも生理的に最小限度に必要な商品を除くと、配給があつても買えないというような大衆の多いわが國の現状においては、すでにかような現象というようなものにのみ――いわゆる賃金と物價の惡循環というようなことにばかりにだわつておるわけには行かぬ段階に來ているのではないかと考えられるのであります。これが質問の第一であります。
 さて、最近、経済安定本部総裁の官房企画部調査課という、泉山大藏大臣が兼任しておられる機関から発表されました物價と賃金の推移という調査書があるのであります。これによりますと、本年の六―八月の消費実効価格は、公定價格改訂の影響を受けまして、二十二年初めの三・二倍になつております。これに対し、名目賃金は五倍程度になつておりますけれども、しかしながら、これが実質賃金ということになりますと、ぐんと減りまして、〇・七倍にしか上つておらない。これは何がゆえかというと、生産が三倍以上にふえたからであります。これから見ますと、賃金と物價との関係は、賃金よりも物価の方が急速に上がつているという事実が、はつきりと出ているのであります。なおダイヤモンドという雑誌によりますと、何でも單位生産物價格の中の賃金が二割以下であれば採算がとれるということを、ちやんと書いてあるのであります。しかしながら、今日実質賃金と実効價格、さらに生産量という三つの條件を照し合せますと、むしろわれわれから考えますと、賃金が比較的安くなつております。從つて、今日賃金に関する限りにおきましては、多少賃金が上がりましても、物價改定という必要は毛頭ないという事実が、政府の機関から発表されているのであります。政府機関の調査の結論がそうだとすれば、特殊的部門を除けば、概して賃金と物價との惡循環の段階というようなものは、ここに見出すことができないのでありますが、その点に関する感想を大藏大臣からお伺いしたいのであります。
 それから、私が泉山大藏大臣にお尋ねしたいことの第三の問題は、農業並びに小企業の所得に関する問題であります。御承知のように、わが國の農業企業は過小農経営であり、自分の労力を消費いたして、その代償に農産物を販賣した價格で生活しているというのであります。すなわち、生産費しか得ていないのであります。賃金とは労働力の價格であります。労働力の價格を構成するところの商品の價格なのであります。從つて、生計費しか得ておらないということは、すなわち農業所得が勤労所得でありまして、決して企業所得ではないということを意味していると思うのであります。これは、自分自身が経営している小工業、町工場などにおいても同じことが言えると思うのであります。独立経営であり、自己の責任で資材資金を投じて経営しているのだから、これはすなわち企業であるというように、近代的企業と同じような解釈をするとすれば、それは形式的な解釈でありまして、これは実質的な解釈にはなつておらないと思うのであります。從いまして、われわれは、当然かような小企業の所得というものは勤労所得と解すべきである。しかも勤労所得とするならば、基礎控除のほかにさらに二割五分を控除し、これに課税しなければならないと考えるのであるが、この点に関する泉山大藏大臣の御所見を伺いたいのであります。
 また、特に農民に苦労させて、國民食糧の確保に協力させようとしていろいろな施策をしておりますが、そのうちに、農民に最も大きな苦労をかけているものは、早場米の供出であります。この早場米の供出奨励金に対して、奨励金であるにもかかわらず、これに税金をかけるような措置をとつてきたのでありまして、この点、われわれ農民の代表といたしまして絶対反対を表明しているのでありますが、この点に関する大藏大臣の御意見を伺いたいのであります。
 さらに、同じような意味合いにおきまして、今度の超過供出の問題であります。これは、今日の食糧事情から申しまして、とにかく需給計画の中に超過供出部分が見積られているのであります。從つて、これはどうしても達成しなければならない問題であるにもかかわらず、この税金の問題がはつきりしないために、超過供出が十分に進行しておらぬ。かような場合に、食糧問題を安定するためにも、この課税問題を急遽きめる必要がある。われわれの主張から申しますならば、この超過供出分に対しては課税すべからずというふうに考えているのであるが、(拍手)この点に関するところの大藏大臣の所見をお伺いしたいのであります。
 なお私は、大藏大臣に最後に御注文しておきたいことがある。それは、大藏大臣の答弁を聞いておりますと、まことに禪問答で、どこをつかんでよいかわからない。わたしは、大藏大臣が戰爭中に三井合名の総務部長をなさつておつて、そうして池田成彬の意を受けてフアツシヨ團体に資金をばらまく係であつたということを聞いております。それだから、われわれに対する答弁も、おそらくフアツシヨ團体に対すると同じような氣持で、これを籠絡するような気持でなさつているのではないか、かように考えられるのでありまして、かような答弁は、まつぴらお断りする、かように言いたいのであります。
 さらに私は、周東農林大臣に御質問したいのであります。私は、周東農林大臣とは、ずつと昔と申しますか、昭和十五、六年ごろから、しばしば会つているのであります。周東農林大臣は、当時農林省の総務局長をやつておられました。そうして、農林省内の花形役者であつたことを知つております。当時、石黒大臣や井野次官とともに、厳寒のあの内原に一万七千の農村青年を集めまして、そうして食糧増産推進隊というものを組織しておられたのであります。その当時総務局長として、この組織の実際上の事務をとつておられたのでありますが……。
  〔発言する者多し〕
#28
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#29
○稻村順三君(続) その推進隊というものが、当時加藤完治の満州開拓義勇軍の指導者のもとに訓練されておつたのを、われわれは知つておるのであります。もちろん、この報國隊の訓練の目的は、技術的訓練などというのは申訳で、内容は、みそぎと、いやさかと、軍隊教練でありました。かような人が、今日自由党から代議士にもなりましたし、またそれが農林大臣となつているのであります。今日この思想を持つているものだとは私は考えておりません。しかしながら、今日この思想を持つておらないとするならば、私は、いつ、こういうふうに右から左への思想のけじめがついたのか、それをお伺いしたい。
 私が、なぜかようなことをここに出すかと申しますならば、今日、ポヅダム宣言以來というものは、わが國の民主主義政治の建設にあたりましては、ほんとうに大衆の中に根をおろし、大衆の意向を代表したものが政治の衝に当らなければならぬ。しかるに、ややもすると昔の官僚が、自身のしたこと、自分の過去の一切の行動というものを何ら清算せずして、政治に黙つてほおかむりで参加するというようなことがあるものとするならば、われわれは断じてこれを許すことができないのであります。(拍手)でありますから、私は周東農林大臣に、その当時の思想をまだ持つておるか、持つていなければ、いつ清算したかを、明らかにしていただきたいのであります。これが周東農林大臣に対するところの第一の質問であります。
 私が、かような質問をいたしますと、周東さんは、それは当時、自分は一官吏として、上司の命令でやつたのだといつて、お答えになるかもしれません。しかし私は、あなた方が今、監獄に入つた総理だと申しましたが、私は実をいうと総理大臣よりもはるかにたくさん戰爭中に二年間の日にちを監獄に送つて來た人聞であります。從いまして私は、その当時帝國農会の機関紙の編集者といたしまして、しばしば周東さんとお目にかかつたのでありますが、その当時の周東さんは、農林省内の人間ならだれでも知つております、神がかり局長として、その名をはせておつたほど積極的な方であつたのであります。從つて私は、周東さんが、いつ自分自身の思想をお改めなさつたかを、ここで明らかに聞きたいのであります。
 さらに私は、この問題が農地改革の問題と密接に関係があるから尋ねるのであります。御承知のように農地改革は、第一次、第二次改革をなされました。第一次吉田内閣のときに、マツカーサー元帥の農民解放に関する覚書というものによりまして、これを基準になされたのであります。しかも、その趣旨としては、最も日本民主化のがんであるところの地主制度を清算するがために出されたところの覚書だある、かように解釈しておるのであります。すなわち、日本の非民主的な経済的基盤というものは、それは地主制度の上にあるというので、この地主制度から農民を解放しようというのが、実にこのマツカーサー元帥の農民解放に関する覚書の精神であると、私はかように解釈しておるのであります。ところが、その解釈に立ちますと、農地改革というものが第一次、第二次となされましたが、しかも、その第一次、第二次の農地改革におきまして、十分農民解放の役割を果してはおらないことが、その実施の途上において明らかになつたのであります。一町歩の地主保有地を中心といたしまして、根本的な改革をもう一度しなければならないということが明らかになつたのでありまして、そのために、わが党はいち早く第三次農地改革の必要を強調しているのであります。
 しかも、この第三次改革というようなものを、なぜしなければならないかと申しますならば、農地開放のみによつて農村は救われるものではない。すなわち、これを出発点といたしまして、近代民主主義の経済的基盤であるところの、すなわち農村において、生産様式を近代化した農業を建設しなければならない、こういうところに、この農地改革の根本的な方向を求めなければならない、かように考えているのであります。私は、かような建前からいたしまして、農地改革と並行して農業協同組合法が実施されるに至つたのも実に意味あることであろう、かように考えているのであります。さらに申しますならば、一方においては農地改革、一方においては農業協同組合、この農業協同組合も、單に過去の産業組合のごとく、金融あるいは流通の場面における協同化ばかりではない。これが進んでは生産をも協同化するところに、初めて私は農地開放の意味が十分に徹底するに至るものである、かように考えているのであります。
しかるに吉田内閣は、その成立にあたりまして、読賣新聞によりますと、ただちに農地改革に関して、かような決定をしたと言われております。第一が、認定買收は今年の十二月で打切る、当然買收は來年の六月に打切る、それから知事の認可さえあれば、今後の地主保有地並びに自作地面積の制限を撤廃する、かようなことを言つておるのであります。ここに問題があるのであります。かようなことが、もし許されるならば、知事が勝手に認可するならば、土地の兼併がまた行われます。また新地主が発生します。今七十五円くらいの小作料では、だれも土地の買手がないということを言うかもしれません。しかしながら、今日土地を買つた者と買われた者の間に、買つた者が経営者の名目者になり、賣つた者が雇用者の形式をとるならば、これによつて実質的には、また現物小作料をとるところの地主制度が復活するのであります。
 かようなことを考えてみますと、かような主張は、恐らく農林当局を代表するところの周東氏の意見というものが相当通つているものだと考えるのであります。周東氏が改められることは、私にとつて望ましいことなのでありますけれども、しかしながら、ここにこの地主制度の復活ということを結びつけますというと、地主制度と軍國主義とは、これは切つても切れない有機的な関係にあるのであります。從がいまして私は、周東氏がこれを主張したといたしますならば、これはことによると、周東氏がまだ――明らかではないのではないかという疑いを持つのであります。農地改革を特に妨げようというような積極的な意思はないにいたしましても、ときどきこれが齒どめをしようということが、しばしば行われている事実を、私は見のがすことはできないのであります。
 今日の農地改革というものは、これは農地委員会によつて運営されておるのでありますが、その農地委員会の費用が非常に欠乏しておりまして、このために農地改革が遅々として進まないというような事実を、たくさん見せつけられておるのであります。それにもかかわらず、最近この農地委員会のわずかな費用さえ、十一月以降は削られたという話を聞くのでありますが、これまた私は、地主的な、軍國主義的な、農村に対する攻勢であると断じてさしつかえないと思うが、この点に関する農林大臣の御所見を伺いたいのであります。
 次に農林大臣にお尋ねしたいことは、農産物價格に関してであります。芦田内閣は、米價を三千六百円ときめたのでありますが、私たち農民團体、すなわち日本農民組合、全國農民組合、農業復興会議の、このすべての農民團体は、これとは違うところの四千二百円の價格を要求いたしまして、まだ芦田内閣のこの決定に対しては了承を與えておらなかつたのであります。政府が、今日において農産物價格を決定するにあたりまして、今日の生産樣式を近代化して、そうして積極的に生産コストを下げるということに努力するならば、私たちは、あえて米價四千二百円を主張するものではないのであります。しかしながら、今日のごとく、災害復旧はほとんどほうりつぱなしにされておる。工場生産はなされない。土地改良は遅々として進まない。肥料、農機具の配給は円滑を欠いておるというように、かように生産コスト引下げに関する施策が何ら積極性を帶びないものとするならば、これは当然に、私たちは、米價の値上げというようなものを考えなければならないと思うのでありますが、この点に関するところの農林大臣の御意見を伺いたいのであります。
 こういう場合において、私はもう一つ聞きたいことがあるのであります。それは消費者價格と生産者價格との間に大きな差異があることであります。この差異は米穀特別会計の中に入れられまして、これの中から、行政費であるところの一石当り百十五円、それから今度は公團の費用がまかなわれておるのであります。石炭でも、鉄でも、重要物資は、價格差補給金というものが政府から出されている。しかも、この價格差補給金が出されているばかりでなく、行政費もまた政府が特別に負担していると考えるのであります。しかるに、農産物だけ何ゆえ行政費も負担しなければならないか、價格差補給金ももらわないで、何ゆえこういうところに全部投げ込まなければならぬかということにつきましては、農民をあまりにも甘く見た考え方ではないかということにつきまして、農林大臣の意見を伺いたいのであります。
 さらに、農産物價格と関連いたしまして、最近におきましては、公團の手数料が非常に高いというような、こういううわさを盛んに聞いております。公團の前身であつたところの営團の疑獄事件というものが起つておりますが、これらはどうかというと、かような手数料が非常に大きい、そのために生ずるところのいろいろな暗い関係というものが生れまして、ここから疑獄事件が発展したのだと思うのであります。從つて私は、この疑獄事件に関しては嚴重なるところの処置が必要だと思うのでありますが、法務総裁は、この営團疑獄に関しまして、いかなる方針をもつてお臨みになるつもりか、その所見をお伺いしたいのであります。
 なお私は、供出後の自由販賣に関しても、いろいろ御意見を伺いたいと思つておつたのでありますが、ほかの人人が質問しましたので、この点は質問をやめることにいたしますけれども、ただ私が最後にお伺いしたいことは、吉田総理が今日――私は何も個人を中傷するために泉山大藏大臣、あるいはまた周東農林大臣に聞いたのではありません。今後の農政というものを、民主主義の原則に從つて明朗なものとするためには、過去の一切の、かような思想の残滓を持つてはならぬということであります。かような立場に立つてやる以上におきましては、この過去におけるところの、かような経歴を一切拂拭して――今からでも遅くない、一切を拂拭して、自分が過去を誤つておつた、これから改心いたしますといつて、新しく踏み出すべきことをこの議場において声明するならば、あえて私は、それをとがめようとするものではないのであります。この点に関するところの、はつきりした御答弁を願いたい、かように考える次第であります。(拍手)
#30
○議長(松岡駒吉君) ただいまの発言中不穏当な言葉がありましたならば、速記録を調べた上、適当に議長において処置いたします。内閣総理大臣吉田茂君。
  〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#31
○國務大臣(吉田茂君) 統制問題について、一應お答えをいたします。私はなるべくすみやかに統制は全面的に撤廃いたして、自由経済に移行するようにいたしたいと考えるのであります。しかしながら、現在のごとく資源の枯渇いたしている日本の現状においては、その統制のやむを得ざるものもあるので、不必要な統制は漸次これを廃止したい、撤廃いたしたい、こういう考えを持つております。
 その他私の一身に関する弁明は差控えたいと思います。
  〔発言する者多し〕
#32
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  〔國務大臣周東英雄君登壇〕
#33
○國務大臣(周東英雄君) 稻村君の御質問に対してお答え申し上げます。
 第一に、農地改革の遂行途上において、再び地主階級の復活等についてのことを考えているのではないかというのが、御質問の第一点でありましたが、今日農地改革というものは大体予定の通り進行いたしまして、すでに政府の手元に買上げ、あるいは收納いたしておりまする土地が百八十万町歩近くありまするし、これを賣り渡しておりまするものにつきましても、約百五十七万町歩ありまして、大体小作農家に対して土地を持たせて健全なる自作自営農家をつくるという目的を持つておる農地改革は、一應完成の途上に來ておると見られるのであります。從つて、今後の問題といたしましては、それらの爾後の手続、賣買に関する経理上の問題等について、これをすみやかに完成するということが、残されたる今の段階における処置であります。これは大体年末ころには完成するという運びになつておりまするが、ただいまの御質問について、以後農地改革を打切るとか何とかいうことについて、法律上ただいまのところ考えてはおりません。また從つて、自作農特別措置法等に関する措置を打切るために再び地主階級が復活するのではないかというような御質問がありましたが、ただいまのところ、そういうことは考えておりませんのでありまして、当時保有になつておりまする自作農に対しまして、小作地の保有限度の制限とか、あるいは小作地を含む農地所有面積の規制等は、將來におきましてもこれを継続されるはずでありまするから、お話のような、旧來のような意味の地主の復活ということは、あり得ないと考えます。從いまして、ただ農地改革の一應の完遂後において、この農地改革の眞目的であるところの健全なる、かつ平和的な農村建設のために、農地改革後の農地政策というものをどう持つて行くかということに対しては、これは十分研究しなければならぬ点があると思います。ことに、稻村君も御指摘のように、一たび農地改革が実行されましても、これはどこまでも過小農の自作自営農家ができるのであります。從つて、この農家をして農業経営を安定せしめ、かつ日本の將來の農業というものを、どういうふうに持つて行くかということは、大きな問題であります。これらの点につきまして、その一つの手段として、農業協同組合等を、農家の経営、あるいは生産その他にあたつての中心母体として、これを活躍せしめることによつて一つの目的を達成することについては、われわれも賛成であります。
 次に米價の問題であります。米價の問題につきましては、御指摘のように、生産者の供出米價の問題につきましては、今日お話の通り、でき得る限りコストを引下げるために、農業生産必需品、あるいは農家の生活の必需物資をでき得る限り公定價格等によつて的確に配給するということが、当然裏づけされねばならぬのであります。これらのものが安く配給されるということになりますれば、おのずから米價が安くなり得るわけでありまするが、これらの問題ができませんならば、お話のように、米價についても相当考慮を拂わなければならぬと私も考えます。この点は同感であります。從つて、今日決定された米價は、御指摘のように前内閣時代にできましたのでありますが、これに対して、この米價によつて農家が経営を続けて行くことができるようにするために、肥料その他の生産必需品、その他の生活物資について的確に配給できるように現在処置しつつありますから、御安心を願いたいと思います。もし今後において必需物資等の値上り等がありました場合において、それをパリテイーとして、もし將來米價の変更が起こるというような場合におきましては、これは再びさかのぼつて追加拂いということになると考えます。
 次にお尋ねの米の販賣價格の問題であります。これはあまり高過ぎはしないか、生産者の供出價格との間に相当開きがあるということの御指摘でありますが、この点につきましては、私も就任早々――前内閣時代から決定されたもので一度きまりましたが、内容につきましては、お話のように相当檢討の余地があると考えております。ことに、一般消費者に対する米價に食糧需給特別会計に属する一般行政費等がすべて織り込まれておるということについては、もう少し研究の余地があるのではないか、さらにまた、たとい食糧公團等の経費が事務費等として入れられる場合も、その食糧公團等における事務費、人件費等に対して、合理的な支出にこれを縮減することができれば、それだけ消費者價格が減額できるのではないか、これらの点につきましては、御指摘の点もありますので、今後の問題としては十分檢討を加えてみたいと考えております。
 最後に、農村政策に対して、農民に対する感じの問題でありますが、私は、今日の場合におきまして、地主とか小作人とかいうような片寄つた考えでもつて政策はいたさないつもりであります。どこまでも日本の農村における農民の実情に即しまして、その農民の生活を向上し、國家全体のために食糧生産に從事する農家のために適切なる施策を講じたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#34
○國務大臣(泉山三六君) 稻村さんのお尋ねにお答え申し上げます。
 第一に賃金と物價との関係、これにつきまして平凡にして科学的の答弁を求める、かようなことでございました。いろいろ科学的な御高説を承つたのでありますが、賃金と物價との間には、きわめて緊密なる関係がございまして、少くとも賃金が物價の構成要素でございます限りにおきまして、必ずや物價には影響のあるもの、ことに名目賃金に至つては、その影響するところ決して軽からざるものがあると思いますがゆえに、今日の段階におきましては、名目賃金の引上げは特に愼重に考慮いたしたい、かように思うのでございます。
 御質問の第二点は、農業所得は勤労所得ではないか、かようなことであつたのでございます。農業所得は、農業経営による独立企業の所得、すなわち企業所得でございまして、給與所得、すなわち勤労所得ではないと考えておるのでございます。給與所得は、独立企業主でない被用者が、継続的労務関係に基いて、その労務の報酬として使用主から支給されるものであるのであります。農業所得中には勤労に基く部分がきわめて大きいことは事実でございますが、しかしながら、独立企業の所得であるという見地から、企業所得として取扱われておる次第でございます。
 第三のお尋ねは、早場米の供出、超過供出米、この両者につきまして課税を免除するようにしてはいかがであるか、かようなことであつたと思うのであります。この早場米及び超過供出米に対しましての免税の問題は、つとに片山内閣以來の問題であつたかと思うのであります。今日まで、これが実現をしたことは、いまだ聞いておらないのであります。われわれも、とにかくその線に沿うて努力を続けておるのでありますが、しかしながら、われわれは、ともかく今日、この段階におきまして、これと同一の効果を目標といたしまして、早場米につきましては、早期供出のために收穫高が少い上に、余分の経費を必要といたします。また超過供出につきましては、一般の場合に比較して、より多くの経費を要する点を考えまして、これらの必要経費を、これを課税上の必要経費として採択いたしました。かようなことで、課税上実情に即してその軽減を行い、もつて供出意欲を阻害するような結果にならないように、十分効果的な措置をいたしたいと存じておる次第であります。(「そんなことじやない、現実の問題だよ」と呼ぶ者あり)これは現実の問題としてお答え申し上げるのであります。
 以上三点につきまして、平凡に、かつ明確にお答え申し上げます。
  〔國務大臣殖田俊吉君登壇〕
#35
○國務大臣(殖田俊吉君) お答えいたします。ただいま稻村議員の御質問にありました、食糧営團等における疑獄に対して、お前はどういう態度をもつて臨むかという問題でございますが、私は、犯罪の事実があれば、いかなる犯罪でありましても、徹底的にこれに粛正を加える決心であることを、ここで申し上げます。
  〔稻村順三君登壇〕
#36
○稻村順三君 今総理大臣の答弁を伺いますと、だんだんやつて行くというような、現実問題を離れておつたのでありますが、私は、だんだんやつて行くとか、今やつて行くというのではない。統制に関してこれを撤廃する、あるいは縮減するというところの根本理念についてお伺いしたのであります。この点に関して、われわれが注意しなければならないことは、今日單にだんだんに撤廃して行くというようなことがあるとするならば、すなわち農民あるいは中小企業者は、單に撤廃するというだけでは済まされない。現実において、中小工業者あるいは農民たちは、今日の統制撤廃というものが無秩序になされるならば、自分たちが倒産のうき目にあうからというので、非常な不安を持つているという事実を、私たちは指摘したいのであります。そうして、單に無秩序な統制撤廃というものが、今日の考え方をもつてすれば、大企業のみを保護するというような、へんぱなものになりはしないかという質問なのであります。(拍手)この点に関して何の答弁もなかつたのであります。
 ことに私は、泉山大藏大臣の答弁を聞いておりますと、相もかわらず禪問答のような答弁でありまして、大体が超過供出の問題は目下進行しております。今日政府では、超過供出というものをぜひやらなければならないといつて、非常な馬力をかけているのであります。しかも今年の産米をもつて、二十四年の食糧需給計画の中には、実に超過供出というものを見込んで立てているのであります。從つて、この問題が早く解決しなかつたならば、超過供出どころではない。供出せずして、税金を恐れて、そうして米が横流れするというような問題も起らぬとも限らぬのでありまして、われわれは研究中だのと言わずに、一日も早く具体的な方策を立てなければならぬ。それを私は質問しているのであります。私たちは、かように考えてみますと、農民もまたこの暮を控えております。この暮を控えまして、超過供出というようなえさにつられまして、自分自身の物を全部持つて行く。そのために、累進課税といつて、二万、三万もよけいな税金をとられるということになれば、この暮を一体農民が越せると思つておるか。この点に関して冷淡なところの民主自由党の人々は――実はこれは冷淡になつておりますが、これが農民の政党だといつて傳統的に自認するその姿を裏切つておるものであると私は信ずるのであります。
 さらに、農林大臣に対して私は質問して返答を得られなかつた問題がある。これは今後の農政の分野において……。
  〔発言する者多し〕
#37
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#38
○稻村順三君(続) 特にわれわれが注意しなければならぬ問題、先ほど言つたように、ポツダム宣言は帝國主義というものを否認したのであります。從つて、その時代において積極的な仕事をした者があるならば、この仕事は惡かつた、今後こういうことはしませんといつて、ここにはつきりと天下に宣明するところの意思があるかないかを私は問うたのでありますが、この点に対して答弁がなければやむを得ませんから、機会を見て私はなお質問したいと思つております。
  〔「答弁するな」と呼び、その他発言する者多し〕
#39
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#40
○國務大臣(泉山三六君) ただいまの稻村さんの再質問にお答えいたします。何となれば、そのお言葉の中には、多少聞捨てに相ならぬことがあつたのであります。私は先ほど、これは今日の現実の問題であることを申し上げたのであります。しかして、私の先ほどの答弁は、この免税の形は、これは今日の段階において、この線以外の線においてこれと同じ効果を持つ方法、効果的な措置を考慮しつつあることを申し上げたのでありまして、全國農民の皆樣のために、私は強くこのことを宣言いたしまして、今日このときにおきまして、かような措置を講ずることを言明いたしたいと思うのであります。(拍手)
#41
○議長(松岡駒吉君) 農林大臣からは答弁がないそうであります。
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#42
○今村忠助君 残余の日程はこれを延期し、明十九日定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#43
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十四分散会
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ソース: 国立国会図書館
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