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1948/11/19 第3回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第003回国会 本会議 第16号
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1948/11/19 第3回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第003回国会 本会議 第16号

#1
第003回国会 本会議 第16号
昭和二十三年十一月十九日(金曜日)
 議事日程 第十五号
    午後一時開議
    質問
 一 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(安東義良君提出)
    ―――――――――――――
 第一 麻薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 一 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(安東義良君提出)
 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(笹森順造君提出)
 日程第一 麻薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 政府職員の給料繰り上げ支給に関する決議案(廣川弘禪君外四名提出)
    午後三時四十九分開議
#2
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 一 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(安東義良君提出)
#3
○議長(松岡駒吉君) 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問を許可いたします。安東義良君。
  〔安東義良君登壇〕
#4
○安東義良君 私は、主として國際的観点から、首相に質問をいたしたいと存じます。
 第一点は、吉田内閣に対する世界の輿論について対策を伺いたいのであります。吉田内閣の成立に際し、世界の輿論が著しく不満足を表面いたしましたことは、おそらく首相みずから驚かれたことであつたろうと思います。日本國民の多数の政治感覚と、日本をみつめる世界の感覚との間に、大きな開きがあることは、今回の政変によつて、きわめて明らかとなりました。昨日首相は、北村氏の質問に対する答弁中、いたずらに現内閣を反動呼ばわりして世界に流すようなことを愼んでもらいたいという趣旨のことを申されたようでありましたが、われわれは、野党のゆえをもつて好んで吉田内閣や民自党を反動呼ばわりするものではありません。吉田内閣を、右翼の反動内閣なりと刻印を押したものは、世界の輿論そのものであります。(拍手)
 アメリカの連合通信社の通信員ラツセル・ブラインズ氏は、吉田首相の選挙せられたそのときに、極端な保守主義者吉田茂が総理に任命せられた、と述べております。また過日来、ときどき本議会において同僚議員が指摘せられましたように、米國においては、共和党系のニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンは、社説で、日本保守勢力の指導者吉田茂が首相に選ばれたことは、米國があと押しした日本の改革が、実際にはまだまだ不十分で、旧時代の政界ボス勢力を弱めるまでに至つていないことを示すものである、民主主義の土台を日本にすえようと努力して來た米国人は吉田を喜ばない、日本民主化の米国の努力が結実すれば、吉田や保守反動勢力のその一味のごときは頭をひつ込めるであろう、しかし、すぐにそういう時代が來ると思つたら間違いである、それまでには、吉田のような人物がときどき出て來ることもあろうが、その場合には、終戦以来日本に築いた民主化の成果を破壊しようとする動きを防止するため、厳重にその者を監視する必要があろう、と警告いたしました。(拍手)
 英國においては、ロンドン・タイムスが、吉田氏は前に首相であつたとき、連合國の指令に対し、これに従うような印象を與えつつ、巧みにごまかして、これを実行しなかつた、氏の議会における現在の立場は、こういう策を弄するには弱過ぎる、吉田氏は間もなく国民に訴えて多数を獲得し、再び政権をとると言うている、氏は、旧日本を復活するために働いている勢力の最後の拠点となつている財閥、官僚、宮廷の取巻を一層弱めるような改革には、身をもつて強く反対するであろうと、申しておるのであります。
 中國においては、大公報が、現状では日本の民主化はとうてい望めない、吉田氏が極端な右翼反動であるとは言えないまでも、吉田氏の背後には、日本のフアシスト勢力が時機の至るのを待つていると述べております。
 以上のごとき世界の批評が、吉田氏や民自党に対し当を得たものであるかどうかを、ここに論じようとするわけではありませんが、主要連合各國において、吉田内閣が反動的保守内閣と解され、日本に対する連合國の警戒の眼が鋭く光つて來たことは、争い得ない事実であります。これが連合國の対日政策、ひいては講和條約の内容と時期に何らの影響がないというのでありましようか。日本は、占領軍の管理下、民主主義改革を遂行しているのであり、日本経済の自立と安定は、外國の援助なしには達成が困難であります。われわれは、すみやかに世界の信用を回復して、國際社会に復帰することを念願しておるのであります。われわれの政府が世界より白眼視せられることは、祖國再建のこの重大時期において、國民にとり、まことに不幸であります。吉田首相は、十月十九日、組閣第一声において、私が――民主自由党が一貫して主張して來たことは、明朗にして健全な民主政治の確立であると申されました。はたしてしかりとすれば、連合國の輿論の不信や警戒を惹起したのは何ゆえであるかを、掘り下げて反省する必要がありましよう。太平洋戦爭前、軍閥一派にあおられた日本の國民は、世界の大勢から遮断せられ、国際情勢に通ぜずして、夜郎自大となり、これが遂に太平洋戰争の悲劇を生んだ一大原因となつたことは、いまさら申すまでもありません。今や平和の再建期にあたり、吉田内閣の成立により…。
  〔発言する者あり〕
#5
○議長(松岡駒吉君) 山本君、靜粛に願います。
#6
○安東義良君(続) 國民の感覚と世界の感覚との間に五大な断層が生じたことは、われわれの最も寒心にたえないところであります。かかる外國の批判が何に原因するとお考えになりますか。そして吉田首相は、これに対し、いかなる態度と方途をもつて善処せられんとするものでありますか、御答弁を煩わしたいのであります。
 第二は、國際情勢の変轉に対処して日本の進むべき道をどうするかの問題であります。日本国民が、ポツダム宣言の線に沿うて、國内に民主化の徹底をはかり、アメリカの援助のもとに経済の安定と樹立を目ざして祖國再建に専念しておる間に、世界の情勢は刻々と変轉し、二つの世界の抗争はいよいよ深刻化しつつあります。この情勢は、われわれ日本國民にとつて最大の関心事であります。ことに最近、中國、朝鮮、ビルマ、マレー、インドネシア等における共産勢力を増大、なかんずく中國における情勢は、東亜が再び世界大動乱の導火線となりかねまじき様相を呈しつつあるのであります。この情勢に直面して、世界平和の維持と人類の福祉に貢献せんとする平和愛好各國の努力が結実して、世界平和がすみやかに確立せられますることは、戰爭を放棄してまる裸となり、ひた向きに平和に生きんとする日本國民の、衷心より希望することであります。しかしながら、世界情勢の変轉に伴つて現実に押し寄せる有形無形の悪影響に対しては、國民として最大の関心を拂わなければなりません。
  〔発言する者あり〕
#7
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#8
○安東義良君(続) 私は、この悪影響の一つとして、日本国民の間に極右または極左の悪態が抬頭せんとする兆があることを、認めざるを得ないのであります。激動、不安定の時代には、大衆は、ややともすれば、いずれかの極端に走りやすいものであります。為政家の任務は、大衆に迎合してその風を助長するところにあるものではないと信じます。しかるに吉田首相は、昨日北村氏に対する答弁において、中道政治というのは何だかわからぬと申しておられます。われわれのいう中道政治とは、申すまでもなく極右、極左に偏せざる政治を申すものでありまして、トルーマン米國大統領やマツカーサー元帥がときどき表明せられた、いわゆるミツドル・ウエーの精神と一致するものであります。首相はおそらく、本年一月四日、トルーマン米国大統領が、國会に與えた教書において、中道政治を進む旨を述べたことを、御記憶であろうと思います。これは、トルーマン氏を大統領とする米国の基本政策というべきでありますが、首相は、それでも中道政治は何が何だかわからないとおつしやるのでありましようか。
 端的に言うならば、現在の日本は、誠意をもつて連合国の占領政治に協力するほかに、自立自存の域に達する道もなく、また独立達成の道もないのであります。われわれは、忠実にこの道を進んで祖國を再建し、すみやかに講和会議を迎え、独立國民として國際社会に仲間入りし、平和愛好國民と協力いたしたい熱願に燃えておるのであります。しかるに吉田首相は、傳えられるところによりますれば、昨日民自党の緊急役員会において、本月十五日の解散の声明は、マツカーサー元帥と自分の間に了解があつてやつたもので、総司令部の民政局当局者の意見等は考慮する必要はないというような趣旨の話をせられたそうであります。われわれは、もとより、マツカーサー元帥と…
  〔発言する者多し〕
#9
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#10
○安東義良君(続) 首相との間にいかなる了解があつたかは存じませんが、しかしながら、総司令部当局者の意見等を軽視するような心構えで、連合國の占領政策に誠意ある協力ができるかどうかを、疑わざるを得ないのであります。(拍手)この点について、首相より明瞭なる所見を伺いたいのであります。吉田首相は、國際情勢の変轉に対処して、日本の進むべき道について、明白な態度を中外に宣明し、内外の不安を一掃するところの用意があるかどうか。世界の輿論に対して、吉田内閣がとかく占領政策の実存に誠意を欠くがごとき印象を與えることは、わが國にとつて忍びがたき損害であることを思いまするがゆえに、私は、吉田首相の大胆率直なる言明を期待するものであります。
 第三は、憲政の常道に関することであります。新憲法を正しく解釈し、正しく運営することは、われわれに課せられた重要な責務であり、日本民主主義の健全な発達に重大な影響がありますとともに、連合國の日本民主化を測定する重要な目標とも相なりまするがゆえに、この際に首相の御答弁をお伺いしたいと思うのであります。
 さきに、本年三月芦田内閣の成立した際、及び去る十月芦田内閣の総辞職した際、國内の輿論の多くは、次期政権は野党の第一党の首領へという機械的運営がわが國憲政の常道であるかのごとき主張に終始したのでありました。この主張は、現在のイギリスのごとく二大政党が対峙して、それ以外に政権の受渡しが行われ得ない國においては、もとより当然な行き方でありましよう。しかしながら、小党の分立しておりまする國々において、かかる運営がすこぶる不合理な結果を來すことは明らかであります。旧憲法のもとに行われた憲政常道論は、現実に即しないものであります。ことに新憲法は、首班の選挙について機械的運営を排し、國民の代表者たる國会議員の意思を尊重して、多数決制度を採用しておるのでありまするから、新憲法のもとにおいて、旧憲法下の憲法常道論を振りまわすがごときは、明らかに当を得ないのであります。
 本年二月、芦田首相の選挙に際し、國内では憲政常道論が盛んに唱えられ、政権たらいまわしとか、政権やみ取引とかの非難が行われたのでありましたが、これに関連して、総司令部民政局のソープ代将が、二月二十四日、内外記者團との会談において次のごとく述べたことは、首相も御記憶になつておることと存じます。もし新憲法を基礎に議論しておるのであれば、今回の國会の措置は徹頭徹尾民主主義的であり、現行憲法の当該條項に完全にかなつておるということを、ここに断言しておきたい、新憲法の第六十七條には、「内閣総理大臣は、國会議員の中から國会の議決で、これを指名する。」と述べておる。もちろん憲法には、この党派とか、あの党派とか、特定の党派の首領が選挙されねばならないと言つてはいない、みずから憲法の番人と称するものが、かつてな解釈を下し、いわゆる憲法の常道と称して、國会議員自身が選んだのでない、特定の候補にむりに投票させようとするのは、新憲法に照せば、まつたく非愛國的、非日本的と称して過言ではあるまい、今回の選挙にあたつて、日本の時計を逆にもどす好機が到來したと見てとつた人々が提唱した解決方法は、政権を單に自動的に反対党に渡すというのであるが、かかるやり方は、戰前の政友会、民政党が常套手段とした政治的取引を思わせるだけで、日本軍の降服後、すでに日本國民の間に根を生じ始めた前途多望な民主的過程の健全な発達を思わせるような解決方法ではない、と喝破したのであります。
 吉田首相は、十月九日、民自党大会の演説において、今回政府が面目、威信を内外に失するの醜状を呈したのは遺憾のきわみであるが、かかる結果を生じたのは、芦田内閣成立の当初よりむりを重ね、政権のたらいまわしというがごどき國民の納得し得ざる言動をあえてしたためであるとの趣旨を述べられたと傳えられておるのでありまするが、その中の政権たらいまわしというような國民の納得し得ざる言動とは、一体何をさすのでありますか。新憲法の定める首班選挙の手続に基いて正当に行われた選挙が納得できないというのでありますか、それとも総司令部の代弁者たるソープ代将の解釈には反対であるというのでありますか、この点を明白に承りたいのであります。
 第四は、吉田首相は、少数党が政府に立つことが、民主主義政治の理念に照して、はたして望ましいと考えておられるかどうかという点であります。吉田首相は、衆議院において百八十五票の支持を得て当選せられ、そのかたわらに白票を投じたものが二百十三名の多きに達しました。私は、この選挙が適法に行われた以上、吉田首班内閣の成立に不合法の点があるというのではないのでありますが、新憲法の精神は、わが國の民主主義政治が、國会の多数を占める内閣によつて政治せられることを根本原則としておることは、疑いを入れないのであります。しかも、憲法実施後わずかに二箇年にして、今日少数党が政府に立つこととなつた一大原因が、いわゆる憲政常道論、すなわち政府辞職の場合に、野党が機械的に政権を握るとの民自党イデオロギーに出発するものであることは、明白であります。
 しからば、この不合理を救う道はないかといえば、確かにあるのであります。その方法は、首班選挙に先だつて、首班たるべき候補者が、國会多数を代表する内閣の組織に努力することであります。現に、フランスやイタリーのごとき小党分立の國におきましては、組閣の任に当る者の最大の苦心が、常に國会に多数を占めるに足る内閣をつくるごとにあるのは、外政に明るい吉田首相の特に御承知の通りであります。しかるに、今回の組閣にあたつて、吉田首相は、みずからが少数派であることを自覚しながら、一度も議会多数の支持を受けるための努力を拂われなかつたのみならず、かえつて故意にこれを排撃せられ、單独内閣の組織に驀進せられたのであります。その結果でき上がつた内閣は、きわめて弱体であり、内外の輿論は、またしても短命内閣なりとの烙印を押しております。
 われわれは、吉田内閣の短命なことを必ずしも遺憾とするものではありませんが、しかし、現在わが國の当面する難関に処して緊急に処置すべき案件は、ひとり公務員法の改正のみにとどまりません。新内閣が短命であるとの予想のもとに、國内においては人心の安定を妨げ、諸外國に向つては日本政府の威信を軽からしめたのは、國家全般の利益の上から、これを遺憾とするものであります。吉田首相は、組閣当初より、少数党内閣なるがゆえをもつて、すみやかに解散して信を國民に問い、多数を獲得して政局を安定せんと期しておられるようでありまするが、はたして総選挙の結果、その予期せられるような政局の安定が、首相の独善的かつ排他的態度から生れるかどうか。もし、その結果が生れないならば、首相の政治的責任がきわめて重大であることは別として、その際の國民の受ける災いは深刻でありましよう。
 今日経済の危機は、いまだ解消してはおりません。政治の空白が生む経済不安の増大の可能性について、首相は、党利党略を離れ、眞剣に考えて後、解散論を振りまわしておられるかどうか、疑いなきを得ないのであります。かような点から見て、私は、はたして吉田首相が口にせられる健全な民主政治が、民主主義の理念に合致しているものであるかどうかに、疑念を抱くのでありまして、私は、吉田首相に対し、そもそも少数党が政府に立つことが、新憲法下の民主政治の理念に沿うものと考えられるかどうかを、お尋ねいたす次第であります。――総理はおいでになつておりませんか。
#11
○議長(松岡駒吉君) 総理は病気のために欠席しております。
#12
○安東義良君(続) しからば、総理に対する質問の要旨をここに残しておきますから、総理が御出席のときに明快な御答弁をお願いいたします。
#13
○議長(松岡駒吉君) 安東君の発言中不穏当な点がありますれば、速記録を調査の上、議長において適当に処理いたします。
 この際諸君に申し上げます。傍聴席に
 総司令部民政局顧問、連邦政府職員同盟会長
     ルーター・スチユアード君
 民政局公務員制度課長
       ブレーン・フーバー君
が見えられております。御紹介いたします。
  〔拍手〕
  〔國務大臣林讓治君登壇〕
#14
○國務大臣(林讓治君) 総理大臣は事故のために出席をいたしませんので、かわりましてお答えをいたしたいと存じます。
 先ほど、世界の輿論対策についての、吉田内閣に対するところの御不満のようなお話があつたのでありまするけれども、その御不満に対するところの御批判は、外國におけるところの輿論は、もちろんいいものもあれば惡いものもあると考えまして、私は何らこの点についてお答えを申し上げるの必要はないものと考えます。
 それから、順序が違うかもわかりませんが、少数党が政府に立つての云々の問題でありまするが、もちろん少数党が内閣をとりまするということは、いい問題とは考えません。しかしながら、芦田内閣がまことに残念な事情に基いて辞職をせられましたあとであつて、そして、この議場においてどういう状況であつたかと申しまするならば、かつての芦田内閣の與党の各位というものは、ことごとく白票を投ぜられたのであります。従つてわれわれは、ついに少数をもつて内閣を組織するに至つたのでありまして、それがために、わが吉田内閣というものは、少数をもつてしては、とうていすべての議案を、議了することはできないという見地より、ただちに解散をいたしたいという覚悟をもつて今日に臨んでおるわけであります。(拍手)しかしながら、今日の場合は、特に議会において通過せしめざるを得ないところの……
  〔発言する者多し〕
#15
○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
#16
○國務大臣(林讓治君)(続) 法案がありまするがために、今日この議会において、その案件の通過の私どもは一日も早からんことを念願いたしておるわけであります。(拍手)
 それから、一部新聞紙上などによつてのデマにつきましては、私はここに御返答申し上げるだけの必要はないものと考えまして、以上をもつてお答えといたします。
     ――――◇―――――
 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問(笹森順造君提出)
#17
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、笹森順造君提出、吉田内閣の施政一般に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
#18
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 吉田内閣の施政一般に関する緊急質問を許可いたします。笹森順造君。
  〔笹森順造君登壇〕
#20
○笹森順造君 吉田総理大臣の施政一般に関する緊急質問を、國民協同党を代表していたしまして、首相並びに関係閣僚からお答えをいただきたいと思うのであります。この次第に関しましては、数日來すでにこの議場において、同僚議員諸君から、まことに傾聽すべき、また熱心なる御発言があつたのでありまするが、今日なお吉田総理大臣が、施政一般の方針に関する御発言のないのは、まことに残念な次第であります。(拍手)從つて、やむを得ず私はもう一度ここに立つて発言をしなければならないことになりました点、すこぶる残念に思う次第であります。
 國民協同党は、御承知の通りに、最初からその態度を明確にしておるのであります。私どもは、吉田内閣を支持しておりまするところの與党とは反対の立場に立つておりますものの、現下日本の置かれておりまする特殊な実情にかんがみまして、緊急に処置しなければならない諸問題に関しましては、この内閣が提出いたしまするところの問題に関しましても、私どもは寛大なる態度をもつて協力するにやぶさかならざることを、公党としてすでに明らかにしておることは、皆様の御承知の通りであります。しかるに、この問題について、なおさら今日取上げなければならないという態度に対しまして、首相の責任を問い、反省を求めなければならぬのであります。
 この國会が緊急に開かれておりますのは、國家公務員法改正と一連の関係ありますところの法案の審議議決にありますことは、申し上げるまでもありません。ところが、せんだつて來首相の言われますのには、この國会は芦田内閣の時代において召集したところの國会であるがゆえに、その後に政変によつてかわつたところの内閣の施政の方針は後にすべきであつて、この公務員法は先議せらるべきであるということを言つておるのであります。つきましては、この点に関して、どうしても私は、吉田総理の責任観念を、政治家として確めておく必要を感ずるのであります。
 國家公務員法の改正に関しますことは、すでに前の内閣からいろいろと取扱われておつたことは、よく私ども承知しておるところの一人であります。ところで、この問題は、だれかの内閣の時代にこれが審議議了せられなければならない問題である。この責任が今吉田内閣に課せられているのであります。この責任の衝にありますところ吉田内閣が、この問題を施政の方針外に拉し去らんとするところの心事は、一体いずれにあるのか、私どもは、これをすこぶる疑問とするのであります。国家公務員法の改正は、吉田首相の施政方針の中に入つて來ないものであるという、責任をのがるるところの態度であろうか。そうであつたとするならば、それは施政の方針の演説の中に入つて來なくてもよろしいでありましよう。しかしながら、責任政治を明らかにし、常に意思強固なりといわれておりますところの吉田首相にして、この態度あるというのは、はなはだ解しかねるところのものであると思うのであります。(拍手)從つてこの点を、責任政治家としてあるならば、明らかにせられたい。そうして施政の方針の演説の中に、一連の関係をもつてこれを明白にする必要があると思うのであります。(拍手)
 何ゆえかと申し上げまするならば、それは事こまかく申し上ぐるまでもなく、この國家公務員法の改正が、單なる條文の文句の改正だけで済むものではないことは、與党の皆様方もよく御承知の通りであります。すなわちこれは、給與基準を改正する問題が裏づけとならなければならない。この問題は、すでにここでしばしば論議せられまして、あるいはその額に対して多寡の論があり、あるいは、いつからこれを適用すべきかということに関しても、いろいろ意見があるようであります。從いまして、この新給與基準の定をすることなしに、これが通るはずはない。そうでありまするならば、これは、当然予算化せられて來なければならぬのであります。今日予算化せられるならば、むろん歳入歳出に関するところの明確なる首相の態度がなければならない。方針がなければならない。おそらくは、多年主張しておられまするところの民主自由党の政策が、ここに現われて來るでありましよう。これを判然と私どもは知るのでなければ、この審議を進めることができないということは、明々白々の事実であります。從つて、これを政策の一般の中に盛られないというところに、責任回避の、まことに解しかねる点があることを、指摘しなければならないのであります。この点に関する明確なる御説明をお願い申し上げたいのであります。しかして、その財源をどこに一体求むるのか、支出の面ばかりでなくて、この収入を、大藏大臣は一体どこに求めておるのか、はつきりするのでなければ、せつかく御審議を進めようとすることに対して政府の御期待に沿うような進捗を見ることはできない結果になることを懸念いたすものであります。
 次に、國民協同党として申し上げなければならないことは、すでにこの議場において、わが党の議員の井出君から、各党各派を代表して説明の上、災害対策に関するところの決議がなされておるのであります。このことに関しまして、特に私どもは、この臨時議会において緊急必要なるものを感ずるのであります、從つて、明年度の増に関しまして必要なる関係において、農林大臣の所見を伺いたい。特に明年度の増産のことを勘案して、このことを、どう一体お取扱いなさるのであろうか。特に農業災害保險法に関係いたしますところの保險金の支拂い、これも農民が非常なる関心を持つて今見ておることでありますから、その点についても、この國会におけるところの追加予算においてこれを予算化するだけの用意があるかどうか、この点に関しまして、ただいまの責任をはつきりと表わしていただきたいと思うのであります。
 この二つの点を特に私は強調、指摘を申し上げたのでありますが、すなわち新給與基準の問題と、災害対策の緊急なる問題に関しまして、これを現在の内閣の責任において、いかなる予算化をするかということについて、このことを明確にしていただきたい。いろいろ研究せられましても、難関がおありであることはお察し申し上げます。しかしながら、この新給與の設定に関しましても、單に一時を糊塗するがごとき暫定予算においてこの問題を解決すべきものとは絶対に考えられない。この内閣の責任において、われらの納得するところの基本的なるものをここに明らかにして、これを追加予算に出すべきものと思うのであるが、それだけのことを大藏大臣がするだけの熱意と、実際の事の進捗があるかどうかを、明らかにしていただきたいのであります。
 さらにまた、この臨時國会に臨んでおりまするところの吉由内閣は、不祥なる疑獄事件に端を発して起りましたるところの政局の轉換によりますることは、申し上ぐるまでもない。かるがゆえに、この臨時國会において、この問題が、わが國の政治の、また官界の浄化のために、ぜひとも究明、糾彈、徹底的にこれがなされなければならぬのであります。このことがなされずして、日本政治の再建は決してないのであります。從いまして、この種々様々、奇々怪々なる疑獄事件に関係いたしまして、吉田総理の率いる民主自由党を含んだ政策の面において、このことが徹底的に明確にされなければならない。
 これがためには、なお若干の時日がかかるでありましよう。國会がその職掌において取扱うべきところの問題もありましようし、檢察当局において取扱うところの問題もございましよう。この点に関しまして、法務総裁は、嚴正にして徹底的なる方法によるということを言明せられておりますることは、まことに私も同意するところであります。しからば、現在まで、單にその覚悟を述ぶるのではなくて、すでに世の中に表わされておりましたこの疑獄事件の中で、法務総裁が國会において発表し得るところの、何の事件を、どういうぐあいに、どこまで進めて調査し、また処断をしつつあるか、このことを、この席において明確にせられたいのであります。かくすることによつて、おそらくは新しい時代を築き上げるための新しい議員の顔ぶれがここに出てくるであろうことを思うのであります。
 いずれにいたしましても、この問題は議会の品位のためになされなければならない。ところが、あるいは予算の問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても、吉田内閣は非常なる御勉強をなされておるかにも思いますけれども、なかなか難解に打当りまして、容易にそのことが進んでおらぬようにもお察し申し上げるのであります。從いまして、もしも今日なお施政方針を明確にするだけの確信に行つておらないとしたならば、どうしたらよろしいか、このことについて、私は一つの考えを申し上げまして、首相のお考えを伺いたいのであります。
 拝見しますところ、この二、三日來、議場の空氣は必要以上に險惡になつておるのを見るのであります。これは当然吉田首相の責任であることは言うまでもない。從いまして、首相たるものは、その責任の衝にありまする態度においてわれら全体の議員にもつと協力を求むるような態度がなければならないのであります。これは責任をとる者の当然の務めであります。しかるところ、先日來のあの態度は何であるか。ぜひとも御反省が願いたいのであります。この意味において、吉田総理大臣は、野党の代表者の方々と穏やかなる会談をするような機会を、適当なる方法において持つて、この議会を運用するだけのお考えはないだろうか、それをお勧め申し上げたいのであります。その考えがあるかないかによつて、またわれわれの態度も、おのずからそこに新しいものを見出すでありましよう。
 最後にまた申し上げたいのであります。先ほど林君も申されましたが、吉田総理大臣は、この少数與党を持つておりますところの内閣の常道は早期解散をするにありと言つておるのであります。この点に関しまして、一言なきを得ない。いかなる内閣と申しましても、成立をした以上は、長い間の主張によつて公表いたしましたるところの政策を盛つた施政方針の演説がまず明らかにせられて、これに努力するのが、これこそ内閣の常道である。ところが、施政方針の演説もせず、またその努力をもせずして、そうして解散をし、あるいはまた退陣をするというようなことは、決して常道とは考えられない。当然なすべきことをなし、発表すべきものを発表し、努力すべきものを努力して、その後において信を國会に問い、しかして信任を得ざる場合において國会を解散するなり退陣するのが、これが常道である。この常道をとらずして常道と言わんとする、これすなわち詭弁と言わなければならない。この意味において、責任を明らかにすることが必要である。
 結論を申し上げますならば、この臨時國会において必要といたしておりまする諸財政問題に関しましても、一時も糊塗するような彌縫策ではなくて、ほんとうに納得の行くような根底のある追加予算を組むべきであるが、はたしてそれだけのことをする力が吉田内閣にあるのかないのか、これをはつきり知りたい。またあるならば、こういうことをするのだという責任を明らかにせられたい。その上で、われらも、なさしむべきものはこの内閣になさしめ、なさしむべからざるものはこの内閣になさしめないという態度をきめなければならないと思うのであります。
 以上申し上げまして、総理大臣並びに関係閣僚から、明快なる御答弁を伺いたいと思うものであります。(拍手)
  〔國務大臣林讓治君登壇〕
#21
○国務大臣(林讓治君) ただいま國家公務員法案などの審議にあたつて吉田内閣の施政方針についてのお話があつたのでありますが、この点につきましては、いまさら私が申し上げるまでもなく、幾たびか総理がその信念を披瀝いたしておりますので、その点について御了承をお願いいたしたいと考えます。
 なお、ここ数日來の議場を見た上において、首相はいたずらに野党を刺激するがごとき状態にあるということのお話でありますが、その点につきましては、これは與党、野党いずれもその実情を考えまして、私ども遺憾に思う点もあるのでありまするけれども、これは今日の実情からかんがみまして、両方とも、よんどころないところではなかろうかと思うのであります。そこで、今日首相として協調的な態度をとつて、適当な方法で野党の代表者を集めて懇談をするというような考えはないかというお話でありまするが、ただいまのところでは、私どもは、そういう考えを抱いておりません。しかしながら、今後におきまして、何らかその道が開き得られるようなことがあるものといたしましたならば、決して私ども、そういう点を拒むべきにあらずして、またそのときには、そのとき大いに考えるべきところの問題であろうと考えます。
 その他の点につきましては、関係大臣より御説明を願うことにいたします。(拍手)
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#22
○国務大臣(泉山三六君) 笹森議員の私に対しまするお尋ねは、おおむね三点かと思うのであります。第一には、國家公務員に対する新給與についての予算は、これを公務員法の改正と同時に提出すべきではないか、第二に、右予算の財源はこれを何に求むるものであるか、第三に、さらに追加予算のうちには、災害復旧費並びに農業災害保險に関する経費を予算化すべきではないか、かようの点であつたかと思うのであります。
 まず第一点につきましては、國家公務員法の改正案は、先般のマ書簡に示されましたところを法律化せんとするものでございまして、新らしい國家公務員のあり方を示すものであるのであります。給與ベースの問題は、公務員の生活を確保し、その職務の遂行を全からしむるがために、どの程度の給與を、いかなる方式をもつて支給すべきかの問題でございまして、公務員法改正案の提出に先だつて処理せねばならぬというものではないのであります。ただ、現在の公務員の給與が、最近の一般の給與に比較いたしまして、あまりに低きに失するものとも思われまするので、あとう限りすみやかにこれを是正することは、きわめて必要であると考えまするがゆえにわれわれは、これを緊急やむを得ざる事案、かように了解いたしまして、本國会にこれを提出いたすべく、鋭意準備を急ぎつつある次第であります。
 第ニ点につきましては、新給與ベースに即應すべき予算は、御承知の通り相当の大額でもございますので、その財政上におきまするところの重圧の程度にもかんがみ、なお今日健全財政の見地におきましても、総合的に均衡ある予算、かようの意味合いから、かれこれ勘案いたして、もつてその結論を急いでおる次第であります。
 第三点の災害復旧費につきまして、なおまた農業災害保險関係の経費につきましては、お示しの通り、いずれも緊急なるものとして、われわれは熱意をもつて本追加予算に計上すべく、これまた鋭意準備を進めている次第であります。
 以上をもつて私のお答えといたします。(拍手)
  〔國務大臣周東英雄君登壇〕
#23
○國務大臣(周東英雄君) 笹森君の御質問にお答えいたします。食糧増産確保のために、被害耕地その他農業生産手段の復旧に関する予算をすみやかに出すようにということでございます。ただいま、食糧増産確保のために、ぜひとも緊急必要な復旧費について、相当額を大藏省当局に要求いたし、折衝中であります。近くでき上り次第提案を見ることと思います。(拍手)
  〔政府委員田中角榮君登壇〕
#24
○政府委員(田中角榮君) 笹森さんの御質問に対しまして、法務総裁から御答弁申し上げるのでありますが、あいにく外出中でありますので、私から御答弁申し上げることをお許しいただきたいと思います。
 ただいまの御質問の要旨は十分了解いたしたのでありますが、何分にも、現在その捜査の途次でありまして、事件別に御報告申し上げる段階に至つておらないのであります。しかも、これが中間における発表は、事件糾明のため祕密が保持できなくなるのみでなく、その社会的に及ぼす影響も甚大であります。現在の段階においては、愼重にこれを処理し、かつ事件解明に完璧を期するために、これが御報告できないことを、お許しいただきたいのであります。現内閣が綱紀粛正の看板を掲げております通り、暗い事件は急遽これを解決し、一日も早く明朗なる政界、官界、財界の建設に邁進いたしたい考えであります。なお、檢察陣は嚴正公平、常に純正なる立場において事件解決に努力いたしておるのでありますから、御安心をお願いいたしたいのであります。
 以上御報告申し上げまして、笹森さんに御了解を得たいのであります。(拍手)
     ――――◇―――――
 第一 麻薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#25
○議長(松岡駒吉君) 日程第一、麻薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員長佐々木盛雄君。
  〔佐々木盛雄君登壇〕
#26
○佐々木盛雄君 ただいま議題となりました麻薬取締法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を、きわめて簡単に申し上げます。
 麻薬に関する犯罪捜査の専門的な機関として、麻薬統制主事に対しその権限を與える根拠といたしましては、現在までのところ、旧刑事訴訟法及びこれに基ずく勅令第五百二十八号第七條が設けられていたのでありますが、第二國会におきまして新刑事訴訟法が成立し、明年一月一日より施行されることとなりましたので、これに伴い、麻薬統制主事の捜査権限につきましても、新刑事訴訟法と対應して新たに規定を設けようとするのが、本改正法律提案の理由であります。次に、本法律案の内容のおもなる点を申し上げますれば、第一に、麻薬統制主事のうち捜査権限を有する者に対し、特に麻薬取締員という職名を明示し、捜査権限のない麻薬統制主事との関係を明確にいたしたのであります。第二は、麻薬取締員を、刑事訴訟法に定める司法監察員とし、捜査に関し、厚生大臣の指揮監督下において独自の捜査権限を持たしめるとともに、検察員に対する関係は、警察官吏、労働基準監督官と同一のものとする建前を採用し、その運営に遺憾なきを期した次第であります。第三は、定員を從來の二百名から二百五十名に増加するとともに、小型武器の携帶を認めて、取締りの完全を期することといたしたのであります。
 本法案は、十一月十五日、本委員会に付託せられ、十六日、政府の提案理由説明の後、ただちに審議に入り、麻薬取締員の権限区域、小型武器携帶の條件並びに操作訓練等に関し、政府との間に活発なる質疑應答があり、次いで十八日、本委員会におきまして、討論を省略して採決に入りましたところ、全員一致、原案通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
#27
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 政府職員の給料繰り上げ支給に関する決議案(廣川弘禪君外四名提出)
    (委員会審査省略要求事件)
#29
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、廣川弘禪君外四名提出、政府職員の給與繰り上げ支給に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際上程し、その審議を進められんことを望みます
#30
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。政府職員の給與繰り上げ支給に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。境一雄君。
    ―――――――――――――
  政府職員の給與繰り上げ支給に関する決議案
   政府職員の給與繰り上げ支給に関する決議
 政府は、官公廳職員の十一月分俸給の支拂を五日間繰り上げ、十一月二十日に支給すべし。
 右決議する。
    ―――――――――――――
  〔境一雄君登壇〕
#32
○境一雄君 私は、全会派の共同提案になります政府職員の給與繰り上げに関する決議案について、その理由を説明いたしたいと考えます。
 まず、決議文を朗読いたします。
  政府は、官公廳職員の十一月分俸給の支拂を五日間繰り上げ、十一月二十日に支給すべし。
  右決議する。
 その理由は、ただいま実施せられております賃金ベースは、御承知のように三千七百九十一円であります。これは本年七月に決定いたしたものであります。この間、日本のインフレーションは御承知のように進行いたしまして、決定しましたときは通貨二千五百億、今日ですでに三千億になんなんといたしておるのであります。この通貨の膨張は、従つて貨幣価値を低落させました。かような状態と、もう一つは、公定価格が六十五倍から、今回の改訂のために一一〇・五倍になりました。一方において通貨の価値は低落し、一方において公定価格が高くなつた結果は、全国の二百七十万の政府職員及びその多数の家族は、とうてい生活し得ない。マツカーサー元帥の書簡によつて示されたところの公務員としての権威も、その永続性も、保つどころではない、最低生活をすら守ることができないというのが、今日の現状であります。
 しかも、かくのごときに立ち至つた原因は、たくさんあるでしよう。まず第一に考えられることは、常に資本家諸君は、帳簿上の赤字を消すために物の値上げを計画いたします。そして、これが法律によつて決定されます。当然労働者の側からは、物が値上りいたしますとそこで賃上げの要求をいたします。御承知のように、労働賃金を上げようといたしますと、資本家の諸君と交渉いたします。従つて、その間時間がかかります。労賃が上げられたときには、第一次の公定価格はすでにきまつておりまして、それが赤字を出しまして、第二次の公定価格の引上げが計画されます。すなわち、常に労賃がきめられるのと、第二次の公定価格の引上げられるのとが、くつついて行く結果、必ず労働賃金が上げられるから物価が上るのだと、いわゆる物価と賃金の悪循環が叫ばれて、労働組合側は、いつでも不利な立場に説明せられるのであります。かような時間的なずれは、当然労働者の生活を窮迫せしめてしまうのであります。
 また他の理由は、今日多くの俸給、賃金はあと拂いであります。一箇月働いた後に金を支給せられるのであります。しかし、これらの人々は、自分たちの労働を再生産するために、日々の生活費でその日その日を食つていかなければなりません。しかるに、それらの金というものは、あとから渡されるから、貨幣価値の低落したままで渡されます。ここにまた一つずれが出て参ります。あるいは賃金ベースがきめられても、公定価格の方は、法律によつてただちに実施に移されますが、賃金ベースの方は、内部の操作が遅れて、切りかえがなかなか進んで行きません。二千九百円ベースが完全に三千七百円ベースに移るまでには、相当な時間がかかります。こういうずれ、いろいろなずれのために、もらつている俸給は、とうてい自己の生活及び家族の生活をささえることができないのであります。
 かような状況で、今や全國二百七十万の官公廳の諸君、その家族は、窮迫のどん底にあつて、しかもこの人々は、懸命にその任務を遂行しているのであります。(拍手)われわれ以上に、あるいはわれわれにまさるとも劣らないだけの生産復興の意欲をもつて闘つているのであります。にもかかわらず、これらの人々が、今日不当な扱いを受けている。われわれは、かような状況において、彼らに要求だけをして、彼らの義務の遂行だけを求めて、ほうつておくならば、ほんとうに日本の再建はできないと思う。(拍手)
 この意味において、今日衆議院の全会派の諸君が軌を一にして、俸給を一括して早期支拂いのことを考えられ、これについて賛意を表せられたことに対しましては、私は、諸君のその賢明なる考えに深く敬意を表するものであります。(拍手、発言する者あり)民自党のものがやじつているが、日本の官吏は今日窮迫のどん底におるのに、そういうでたらめな態度こそ日本を誤る。私は、諸君の熱意に対して心から敬意を表し、どうか、全会一致これを可決せられんことを切に希望いたしまして、私の説明を終ります。(拍手)
#33
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
 この際大藏大臣より発言を求められております。これを許します。大藏大出泉山三六君。
  〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#35
○國務大臣(泉山三六君) ただいまの御決議の御趣旨は、よく了承いたしました。政府職員の俸給繰上げ支給の問題は、政府といたしましても、かねて十分の理解と同情とをもちまして、その実現につき鋭意努力を重ね來つたのでございますが、なおいまだ所期の成果を收め得なかつたことは、まことに遺憾とするところであります。しかしながら、ただいまの院議の御趣旨は、十分これを尊重いたしまして、なお一層の努力を積み重ねたいと存じます。右、御了承を願います。
#36
○議長(松岡駒吉君) 明二十日は定刻より本会議を開きます。本日はこれにて、散会いたします。
    午後五時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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