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1947/11/20 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会公聴会 第2号
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1947/11/20 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会公聴会 第2号

#1
第001回国会 財政及び金融委員会公聴会 第2号
昭和二十二年十一月二十日(木曜日)
    午前十時五十分開議
 出席委員
   委員長代理理事 早稻田柳右エ門君
   理事 島田 晋作君 理事 中崎  敏君
   理事 梅林 時雄君 理事 塚田十一郎君
   理事 吉川 久衛君
      川合 彰武君    川島 金次君
      河井 榮藏君    佐藤觀次郎君
      田中織之進君    西村 榮一君
      林  大作君    松尾 トシ君
      八百板 正君    中曽根康弘君
      細川八十八君    青木 孝義君
      島村 一郎君    周東 英雄君
      苫米地英俊君   山口喜久一郎君
      井出一太郎君    内藤 友明君
      石原  登君
 出席公述人
                酒井進太郎君
                川村 準一君
                高野清八郎君
                藤間茂太郎君
                木村 岩藏君
                玉木幸之助君
                大坪 実夫君
                梶原 房子君
 委員外の出席者
        專門調査員   圓地與四松君
        專門調査員   氏家  武君
    ―――――――――――――
本日の公聽會において意見を聽いた案件
 所得税法の一部を改正する等の法律案(内閣提
 出)(第九三號)
 非戰災者特別税法案(内閣提出)(第九四號)
    ―――――――――――――
#2
○早稻田委員長代理 たいへんお待たせをいたしました。これより會議を開きます。
 本委員會は、議長より付託をされました所得税法の一部改正法律案竝びに非戰災者特別税法案について公聽會を開くのでありますが、昨日學識經驗のあらせられる方より意見を聽取いたしまして、本日は一般公述人の方々より忌憚のない御意見をお願いしたいと存じます。昨日の公聽會において、ややもするとこの法案の趣旨より逸脱した御意見等もあり、また委員の方よりも、あたかも政府當局に對する質疑のような感がないでもなかつたので、きようはそういう點なるべくこの法案から逸脱せないように公述を願い、また質疑もいただきたいと存じます。ただいまよりおいでになりました順序に從つて公述を願いたいと存じますが、公述を願いたいと存じますが、公述時間は大體十五分ということにお願いしたいと存じます。なお特別に御意見のあらせられる場合はこの限りではありませんが、多數の方の御公述を拜聽したい、こういう考え方から、恐縮でありますが、十五分の程度でお願いをできれば結構と存じます。それでは最初に酒井進太郎さんにお願いします。酒井さんは兵庫縣のお方でございまして、新聞關係を代表しての公述であります。なお公述の御趣旨は所得税竝びに非戰災特別税等に關してのお話を承ることにいたします。
#3
○酒井公述人 公聽會に出席の光榮にあずかりましてありがたく存じます。ただいま新聞代表と承りましたけれども、これは新聞社の意見ではございませんのです。實は私の意見なのでございまして、一會社員として出席さしていただきましたわけでございますので、あらかじめ御了承願います。
 私の意見といたしまして、税負擔の公平、これが根本的のことでございますが、まず所得税法の一部改正法律案について意見を述べさしていただきます。これは法案に修正を加えられまして、勤勞所得の源泉課税の基礎控除額と扶養家族の控除額を引上げていただきたいと存じます。そしてその減收額はどうするかと申しますと、いわゆる新圓階級の方よりこれを徴收される方法を講じていただきたい。インフレ對策といたしまして、新圓階級の購買力抑制の意味におきましても、もつぱら新圓階級より税源を求めていただきたいのであります。しからばその新圓階級よりどうして徴税するか、その具體的方法についてこれから述べさしていただきます。從來より新圓階級は捕捉しがたいと言われております。しかしてこれは徹底的に徴税しようとすれば、新圓の再封鎖と財産申告、必要なれば家宅捜索まで行うほかはないのであります。しかし新圓の再封鎖は、通貨に對する信用がなくなる結果が物々交換が行われ、結局はその物々交換の材料をもたない勤勞者階級が最も困るという結果になるのではないかと思います。しかしてこれを防止するには、あらゆる物資を配給制にせなければならぬので、ちようど戰爭中にやつたようにせなければなりません。しかし戰爭中と今とは大分事情が異なりましてはなはだこれはむずかしいのではないかと存じます。それでたとえこれを斷行するにいたしましても、現在の状態ではこの過渡期が困る結果が出てくるのではないかと存じます。こういう荒療治を避けまして、もつぱら新圓階級から徴收することを私自身として考えたのであります。これは私の愚見でありますが、御參考にしていただきますれば光榮に存じます。まず新舊圓切替の際の財産税以後であります。不動産を買入れ、または家屋の新築、増築をされた方を對象として課税する。また今後不動産を買入れ、または家屋の新築、増築をされた方にも課税する方法であります。しかしこの税率でありますが、これはよほど大幅にかけていただかなければ效果があがらぬのであります。しかしながら、壕舎に住んであられる方とか、ほんの堀立小屋に住んでおられる方々にまでかけるのではございません。それからまたほかにも除外例がありまして、物納された方、税金を家屋で物納した方、その家屋を現在借りておる人に拂い下げた場合、もう一つは住宅營團の解體によりまして、住宅營團に住んでおる人が買う場合、免税にする。この結果といたしまして、家屋を言い値で賣ることがむずかしくなり、家屋明渡しによる住宅難を多少緩和することもできると存じます。
 それからその次に通行税を改正しまして、二等鐵道運賃、一、二等汽船運賃に大幅に課税し、新たにタクシーに課税する。しかしこれは病人とか妊産婦を病院または産院に運ぶ場合には、醫師とか産婆の證明によりまして免税していただきたいと存じます。これは通行税とは關係ないと思いますが、これに伴いまして、自家用乘用車、しかしこれも業務上必要なものを除く、つまり新聞社とかあるいは醫者、そういうものの乘用車は對象外とする。
 それから次に個人の住宅に架設する電話の新設に課税する。これらはまた電話通話料金の變更の場合にも大幅に上げていただきたいと思います。
 ほかに、これは新圓階級だけの問題ではありませんが、増收をはかります上に效果があろうと思いますが、罰金、科料が非常に安いということであります。これらは物價が安い時にきめられた罰金でありますため、行刑上の效果が疑われる。たとえば最近大阪で青酸カリを賣つて罰金百圓というのがありました。あまり罰金が安いと、罰金さえ拂えばというような氣持から違反をあえてするような人もないとは限らないのでありますから、結局これも行刑上の目的達成、それから増收という建前から、早急に引上げていただきたいと存じます。現在でも經濟事犯に對しては相當高い罰金が課せられておるのでありますが、この程度まで上げていただいてはどうかと思います。
 それから從來の税を確實に徴收していただくのは困難でありまして、最近所得税の申告成績がよくないと承つております。これはめんどうくさいとか、税務署が知らぬものをわざわざ知らせてやつて税を拂うのはばからしい。そういうような氣持で申告しない方があるのではないかと思います。こういう方にも、税務署の方で大體見當がついておると存じますから、これも遠慮會釋なくどんどん上げていただきたいと思います。
 それからこれは一部の人だろうと思いますが、百圓札の一尺祝とか二尺祭とか、婚禮にめちやくちやな金を使う人もありますが、こういうものには税務署の方でどんどん課税していただきたい。殊に全國民耐乏のやかましい今日でありますから、この點實行していただきたい。
 次に非戰災家屋税等の特別法案について申し上げます。これも立案の趣旨として、別に非戰災者を、持てる階級であるとみなしたわけではないだろうと思います。財源を得るための一つの方法として考えられたものであると思います。ただ戰災者にまで課税するのは、擔税力の點からこれを課税の對象外におかれて、非戰災者税という名稱がつけられたものと存じます。こういうことはないだろうとは存じますが、これに反對される方の理由として、まず内地で罹災した者は、戰災後三年も經つておるのであるから、今日はもう戰災者でもあるまい。當時相當保險金をもらつたではないか。當時政府が衣料疎開をやかましく言つておつたにかかわらず、衣料を燒いたのは怠慢ではないか、こう考えられる向きはありますまいとは存じますが、念のために一戰災者といたしまして、當時から今日に至るまでの状況を説明さしていただきます。なるほど當時衣料疎開をやかましく言われておりましたが、一方には荷物の箇數は制限されておりました。たしか一世帶一人で二行李だつたと思います。とてもそれくらいでは、完全な衣料疎開はできない。もとよりたくさんの金をかけて、人手をかければ別であります。また戰災の時期が大阪ではおもに三月と六月、ちようど冬物と合物、合物と夏物の著替時期で、完全な衣料疎開が相當困難でありました。特に重要な産業に從事する者は、職場死守がやかましかつた。また各會社とも老人、女が多く、熟練者が不足しておつて、自分の家財を疎開するために休みをとるということが、當時氣が引けてできなかつた。また當時防衞召集とかいうものがございまして、衣料疎開とか、家財の疎開ということに對して專心できなかつた。私は大阪の貨物驛の近くで戰災を受けましたが、當時貨物驛が戰災に遭つて、せつかく荷物の搬入日の指定を受けるため前の晩から徹夜で行列し、また搬入の當日早朝から終日行列して、やつと驛へ渡した荷物が盛んに燃えているのを見まして、穴を掘つて埋める方法も講じました。屋外は相當費用をかけて工事をしない限り、雨水が浸水いたしますので、私は床下に穴を掘りまして、衣類を行李に入れて、さらにその周圍を厚さ二センチの板で圍い、その上には厚さ三センチの板を載せ、土を一尺以上被せ、これではかびが生えるので、一箇月に一囘は出して日に乾し、また埋めるという方法を講じましたが、戰災後掘出してみますと、すつかりむれて、行李はぼろぼろになり、衣類は底の方の部分だけが使用に堪え、あとはちようど稀硫酸がかかつたように、少し引張ればぼろぼろ被れまして、役に立たない。蒲團もその通りで綿が出ている始末でありました。當時衣料を疎開した人でも、家具まで疎開した人は少かつたのであります。戰災に遭つたときでも、家具の持出しは堅く禁ぜられておつた。これは防火活動の邦魔になり、また延燒のおそれもあるからでありました。保險金三千圓の現金拂いは受けましたが、當時は戰爭中でありまして、ちり紙一枚、下駄一足でさへ自由に買えませんでした。しかし家具類は買えましたが、それを置く所がありません。罹災者の大部分は親戚知人宅に同居しており、いつまた戰災に遭うかわからぬときに、そういうものを買つて運び入れるということは、人情としてはできなかつた。戰爭が終つて、物資がどつと出まわりましたが、物價は暴騰し、保險金三千圓の貨幣價値は著しく下落して、戰災者用のわずかな配給品や配給外にぜひ必要なものを少し買えば、それで保險金はお終いになりまして、爾乘物價は上る一方で、勤勞者の賃金はこれに伴つては上りません。失つた物を買い調えることは容易なことではない。また勤勞者階級たる戰災者は、現在なお家族と別居して、知人と同居したり、會社の寮などで世帶を別にしている人が多いのであります。いわゆる疎開やもめ、こういう人は罹災しないで家族と一緒に住んでおられる方より生活費は高くつくのであります。こういう事情で、現在なお戰災者の大部分、特に勤勞階級は、とうてい非戰災者の生活水準には達していないのであります。從つて戰災者より非戰災者の方が、擔税力があるとは考えます。もちろん戰災者の一部の人で、被害の少かつた人、金とか人手を使つて完全に疎開して罹災し、保險金はたくさん貰つた。そういうような人は税負擔の公平を期する建前から、これを非戰災者扱いにしていただきたい。つまりこういう人は、自分の家というものが欲しいので、家を新築したり、また買入れたりしています。でありますから、現在家屋を持つておる者で、財産税以後において家屋を買入れ、または新築して、現在家屋を所有しておる戰災者は、これを非戰災者として扱う。從つて非戰災家屋税と同時に、非戰災者税も課していただきたいと思います。これがために非戰災者税という名前が不適當ならば、他の名前にかえていただいても結構であります。
 それから最後に現在の千八百圓水準では、こんな税を捻出する餘裕がない向きがあるかと思います。でありますから、この賃金水準については、檢討を加えられつつありますが、もちろん納税による支出の増加ということもにらみ合わせて檢討していただきたいと思う。反對に税を立案されるときには、特に勤勞者階級の擔税力という點に御配慮を願いたいと思う。
 結局私の意見といたしまして、修正の點でありますが、いわゆる所得税法の改正法律案では、勤勞者の源泉課税の基礎控除額と扶養家族の控除額の引上げ、非戰災者税では、戰災者であつても財産税以後において家屋を所有した人は非戰災者扱いにするという二點であります。御靜聽を感謝いたします。
#4
○塚田委員 ちよつとお尋ねいたしたいのですが、いろいろ示唆に富んだ御意見を聽かしていただき、まことにありがとうございました。財産税以後に家屋を買つた人間から税をとるという御意見であつたが、その場合、こういう問題をどうお考えになつておるか。たとえば金を借りて買つたというような者がおそらくあると思う。家をもたない人間が、家をもちたいという意欲は非常に熾烈なものでありますから、適當なものがあれば、そういうことをして、おそらく買つておる人もかなりあると思う。こういうものは何か特別に考えるということなのでありますか。その點……。
#5
○酒井公述人 借金して買われた家ならば、大體賃貸價格によつて、ほぼ見當がつくんじやないかと思います。ですから、賃貸價格によつて、しかるべくその點加減をしていただいたらどうかと思います。つまり借金をして買われる人が門構えの家を買つておられるならどうかと思います。いわゆる營團型の住宅、乙型とか、疊の敷いてある部屋が一部屋しかなくて、あとは板の間、炊事場、そういうような家に住んでおられる方は、對象外としていただいて結構だと思います。
#6
○早稻田委員長代理 次は川村準一さんにお願いいたします。川村さんは東京のお方でございまして、大光醫品株式會社の税務代理士をお務めの方でございます。ただいまから御意見を拜聽いたします。
#7
○川村公述人 私は新興所得者に對する決定的なる所得の捕捉を願いたいと思うのであります。これには現在の税務署の整備が第一であります。すなわち税務官吏の待遇改善、素質の向上をしなければなりません。これと並行しまして、國民にも租税に關する知識の普及をはからなければなりません。現在東京都内の日本橋税務署を中心としました下町の税務署におきますところの税務官吏の平均年齢二十三歳であります。專門學校卒業者本人一人の場合の初任級の手取りが九百圓少し超えた程度でありまして、十年勤續のものであつて、扶養家族數一人の場合でやつと千八百圓ベースを確保できるような状態であります。また勤務にいたしましても、すなわち事務分擔においては、個人の係りにおいて納税者五百人程度、法人係りにおいて三百五十人、これは年二囘の納税申告をとつております關係上、延べにしまして七百件になります。を受持つておるような現状であります。これを一日の整理件數にいたしますと、調査をして、起案をして、決定をやらなければなりません。これではとうてい公正なる課税というものは望めないのです。また三級官から二級官に進みますのには、原則として十五年を要するそうでありますが、現在では特別で十年で選考しておるようであります。これらも試驗制度にしまして、成績の優秀な者はどんどん抜擢して進級せしめるようになれば、税務官吏も、物質的よりも名擧というものを重んずる人もないではありませんから、やめずに永年勤續する人もないとは申されません。
 次に現在の納税申告は、その書類の作成について、專門家でなければとてもできないような煩瑣なむずかしいものであります。それでありますから、これに關しましては、しばしば税務官廳において納税者に對して定期的な講習會を開いて租税に關する知識の普及をせられたいのであります。
 次に勤勞所得税は、源泉課税である關係上、少しも問違いなく納税せねばなりません。これはほかの公債、社債の利子とか、銀行の預金の利子、普通の會社の利益の配當というようなものと同じように源泉課税でありますが、ほかの所得に比べまして、非常に不公平であります。また現在の生活水準から考察いたしましても、相當程度基礎控除を引上げてもらわなければならないのではないかと思います。私の考えでは月二千圓、千八百圓ベースと申しておりますから、最高年二萬四千圓程度に引上げてもらいたい。こういうような意見をもつております。勤勞所得に關して公課の負擔額というものは、昭和十二年度を一としますならば、本年は約七百九倍ほどに増加しておるのです。かかる現状でありますから、ぜひとも勤勞所得税の控除は、相當程度現在よりも引上げていただかなければならないと思います。
 それから次に間接國税の脱税というものは非常に多いように思います。直接國税は自分の所得ですから、これは隠蔽したいというのは人間の人情でありますが、間接國税は消費者からとるという建前で、これを脱税しますと横領罪ではないかと思います。これは税務官たちは相當脱税を見逃しておると思いますが、これを徹底的に洗いまして、相當刑の加重ということを考えていただきたいと思います。
 それから改正税法、この三月までの所得税法には所得調査員制度なるものがありまして、納税者から選擧せられたる調査員というものがありまして、これが所得税の決定に參畫して税務署と納税者との間に介在して相當兩者の間を融和しておつたようなこともあります。ところがこの制度にもよいところもあります代りに、悪いところもないとは申されません。しかるに本年四月施行されました税法では、この制度を削除しました。これは口には民主主義を唱えながら、事實は官廳の獨斷的決定權を與えたような、非民主的な法律であります。ゆえにぜひとも舊に復しまして、政府決定をしないで、民間と政府との間で決定できるような決定をしていただきたい。こう思うのであります。
 次に非戰災者特別税は、大衆課税である。この法案には反對だという人がないでもありませんが、しかしながら、戰災者と非戰災者との間における戰爭における犠牲、すなわち精神的にも物質的にも、兩者における懸隔がはなはだしいのでありますから、これを是正する意味においても、課税は當然だと思います。法案は非戰災者家屋税と、非戰災者税とのおのおの家屋賃貸價格の税率は百分の三百となつておりますが、それでありますけれども、現に私は丹波でありまするが、丹波でこの間役場で調べましたところによりますと。私の家は約六十八坪でございます。藏もついております。それが賃貸價格が八十圓であります、私が納付しまする税額は四百八十圓です。今日の四百八十圓というものは、わずか一ぱいの酒にも足りません。それでありますから、もう少しこの税率を引上げて、百分の五百ぐらいにしていただきたいと思うのであります。都會では別に丸ビルだとか大きなビルデイングは、少し考慮して、實際に納税ができるような方法を講ぜられていただきたい。こう思うのであります。私の公述はこれで終りたいと思います。
#8
○早稻田委員長代理 御苦勞様でした。何か川村さんにお尋ねがありますか。ちよつと川村さんこちらでお控えくださいますように。
#9
○井出委員 お伺いしたいのは、あなたのお職掌であられる税務代理士ですね。この機能を十分にもつと擴充するなりして、税捕捉の目的を達しまして、課税を公平にしたいということですね。これが現在はたしてその役割をどの程度に擔われているか、そういつた御見解をこの際伺いたいと思います。
#10
○川村公述人 税務調査委員會の制度は、知人とか、あるいは自分の勢力範圍のある方は、大體税務署の提案しましたる金額に對して相當交渉しまして引下げをやつておりましたが、それで少々税務署が無理しまして、前年よりも引上げておりましても、中にはいつておりまして、間々こういうことになつている、仕方がない異議の申立をしなさるなと申しますと、納税者は仕方がないわというので税務署に異議を申し立てずに濟んだような場合もあるのであります。ところが今囘調査制度を廢しまして、申告納税制度をとりましたら、申告納税者はまだ未經驗者でありますので、申告というものはどれだけやつたらよいものであろうかというようなことは、なかなかむづかしいのであります。法人の場合でも、三枚も四枚もむづかしい書類を作成して出さなければならぬ。素人はできません。それでは結局法人の場合は別としまして、個人の場合は、從來から申告はやつておりましたが、申告是認というものは、一件もないじやないかと思います。そうしますと、とても税收入が政府が思つたよりも少いのであります。そうすると、ことしの分は來年の一月か二月ごろに是正しますでしようが、そうすると、政府決定は税務署の思つた通りですが、その間に納税者と税務署の間に相當開きがある。從來の申告をしましたのと、税務署が決定通知を出しました間に相當開きがあつた。申告是認をほとんどしてない、そういう現状からしまして、調査員がおりませんと、間々何でも税務署に異議を申してるというようにして、税務署はなお煩雜すると思います。調査員は去年よりも二割ほど上りましたけれども、實はこうだから辛抱しなければいけませんぞと言つてなだめたものが相當あるのではないかと思うのです。
#11
○井出委員 私は調査員よりは代理士の職能、あるいは活躍の餘地、そういうふうな問題を伺いたいのでございます。
#12
○川村公述人 それは税務代理士は、大體今度改正をするとか何とか申しておりますが、現在では素質があまりよくないではないかと思います。これを決定的にやはり相當改革せねばならぬと思います。脱税をさせたり何かするというようなことがあるのじやないかと思います。結局素質の向上です。これも税務官吏と一緒に税務代理士の素質の向上をはからなければならぬ。罰則規定を設けてもいい。そうして納税者と税務署の間にはいつて、公正迅速なる納税をさすようにしなければならぬと、私らは思つております。それで税務代理士を選考するときに、相當優秀な人物を許可しなければならぬと思うのです。現在の代理士も相當整理する必要があるのじやないかと思つております。
#13
○佐藤(觀)委員 間接税の脱税の大體の額ですね。それからこれを豫防する方法、どういう方法をとつたらいいという方法が特に何かございますか。
#14
○川村公述人 間接税の脱税というものは、過去の統計をとつたことがないのでわかりませんが、私は市場にまわつているサツカリンとかズルチンに對しても、相當あるのじやないかと思います。税務署のいわゆるサツカリンの税收入の所を見ましても、はつきり覺えておりませんが、去年、今年あたり市場に出まわつているものは相當のものです。これはほとんど使うのはアイスキヤンデイー屋で、それから飲食店とか料理屋とか、いろいろな所に使う。これを調べれば相當あるのじやないかと思います。どこで買つたという經路を調べるのです。大體配給になつておらぬのではないかと思います。それでそれを上げるのには、現場を調べればわかる。どこでつくつているかを調べる。ああいうものは化學工場でなくてもわれわれ素人でもできる。それから料理屋でも現在停止になつておりますが、相當裏でやつているのじやないかと思います。これはほとんど脱税しております。税務署の者が行つても、私の方ではやつていないと言えばそれでしまいで、上げるわけにはいかない。だからこれは相當やつていると思います。具體的の事實は、私は警察官でないから知りませんが、風聞するところによると、そういうふうに見受けます。
#15
○塚田委員 ちよつとお尋ねいたしたいと思います。先ほど賃貸價格の基準をおあげになつた川村さんのお宅は…。
#16
○川村公述人 京都府何鹿郡綾部町でございます。
#17
○塚田委員 六十八坪の倉つきとおつしやいましたが、倉つきでございますか。
#18
○川村公述人 さようでございます。
#19
○早稻田委員長代理 次は高野清八郎さんにお願いいたします。高野さんは東京都のお方でございまして、新使命社の社長さんであります。
#20
○高野公述人 私は大多數國民の悲鳴を申し上げまして、皆さんの御賢慮を煩わしたいと思うのであります。時間がありませんので、結論から先に申し上げまするが、今囘のこの増税案は、これは國民の負擔力を無視した無謀の計畫でありまして、これを實行するということは不可能であります。豫算實行難に陷りまするのみならず、これを強いて強行しますならば、大なるインフレが起りまして、日本の國は結局壞滅に歸することは當然であります。よつてこれはぜひとも阻止しなければならぬと同時に、日本はもうこういう政治をしておつては、國民も生きていかれない。國家も壞滅するのでありますから、今日を機會に百八十度の囘轉をして、英、米、拂における財政方針のごとくに、この厖大なる財政を大削減いたしまして、私の計畫によりますると、歳出を約百分の一に減らす。税金も十分の一に減らす。そういたしまして、健全なる國家と國民の幸福を確立するという、眞に立憲政治の本旨に從つて進まなければならぬということを確信するものであります。
 しからばその國民の負擔力を無視する無謀の税制であるということは、何からそういう議論が出るかと申しますると、このたびの税制に出ました六百三十億というものは、本年度の初めの本豫算に出ましたところの六百九十億に加えますると、千三百三十二億という厖大なものになることは、皆さん御承知の通りであります。一體そんな税金というものが、今まで例があつたか。それはむろん前代未聞の大増税でありますから、類例の何もない驚くべきことであります。昨年に比べてしからばどれだけの増税になるかと申しますと、昨年のあの天下をあげて驚倒したところの、暴慢をきわめた石橋財政のやつた二百六十億という租税收入の約六倍であります。一年間に税金が六倍するというようなことがどうして國民が負擔できますか。この一點だけでもこの財政というものは、まつたく國民の負擔力を無視した無謀の財政であることは明白であります。それから一昨年の租税收入の百七億圓に比べますならば、この本年度の税金というものは十三倍になるのである。一年か二年の間に税金が十三倍にも殖えるというようなそんな暴政がどこにありますか。國民はどうしてそれに耐えられますか。あらゆる生産工業の統計を見ましても、また一般の國民の生活状態から見ましても、一年間に六倍の利益があるとか、二年間に十三倍の利益があるというようなものはどこにもありません。してみれば、このたびの増税案というものは、まつたく國民の負擔力を無視した無謀きわまる暴悪假借なきところの國民虐殺政治であるということを斷言しなければなりません。これが無謀財政であるということの第一點であります。
 第二は、さらに少しく冷靜に近來の國民生活の状況を顧みてみなければならない。すなわち日本國の近年の財政的傾向をみる必要があるのであります。われわれは最近どういう生活をしておつたか。昭和六年軍國主義の政治が始まりましてから、二十年の敗戰滅亡に至るまでの十五年間に、われわれは非常に不當過大な重税を課せられまして、十五年間に財政は二十倍に殖えたのであります。その間に租税收入もまた昭和六年の七億圓から二十年の百七億圓はちようど十五倍強にあたるのであります。十五年の間に十五倍の重税を負擔せしめられて、そこで戰爭は敗戰滅亡でも何でもよい、とにかく終つた。ほつと一息して、これから陸海軍もなくなつたのでありますから、國費の大なる節約をして、今まで戰時中苦しめられ抜いた青息吐息の四苦八苫せしめられた重税を、いくらかでも減じてもらうことは、全國民の熱望であつたのであります。しかるにどうか。その重大なる國民生活の危機に際しまして、實にその翌年は、その敗戰滅亡の年の百七億圓に二倍半するところの二百六十億という驚くべき重税を課したのであります。それからその翌年の本年は、さらにそれに六倍するところの千三百億という重税を課そうというのであります。こういうことが一體正氣のさたかどうか。本氣になつて國の政治を考える人のすることか。われわれはかくのごとき無謀の財政に對しては、斷じてこれは許すべからざる罪悪なりと言わざるを得ないのであります。大體昨年の一月の幣原内閣のときの澁澤藏相は、日本の基本財政は百二十億にしていかなければならぬということを發表して、議會でいろいろ質問がありますると、その主張を裏づけるために、財政五箇年計畫というものまで發表したのであります。そうしてその中には官吏を八割五分減らすということもあつたのであります。われわれはこれを非常に不滿とした。しかしながら、今から考えまするならば、終戰時二百八十億の歳出を、百二十億に減らすということは、よほど時代感覺のある良心のひらめきのある政治であつたのであります。しかるにそれが石橋財政になりますと、一躍してその約四倍の一千何十億という厖大な歳出になつたのであります。そうして税金も今繰返しまする通りに二倍半に殖えた。そういうようなことをしまして、あらゆる官業の手數料を引上げ、政府の公定價格を引上げ、この厖大なる財政そのものがすでに大なるインフレの根源であるにかかわらず、政府は進んであらゆる物價引上げを挑發したのであります。かくのごとき非人道の悪政というものは、およそ世界の人類の歴史上未だかつて見ざるところの大悪政であります。しこうして物價廳というところでは、物價がどんどん上るのをある程度に食い止めなければならぬという御意見でありまして、昭和九年の物價を限度として、物價を六十倍に引上げて、それで止めるのだ、こういうことをおつしやる。昭和九年度の日本の租税收入は八億四千三百萬圓でありまして、それを本年の一千三百億に比べますと、ちようど百五十倍に殖えておる。税金が百五十倍に殖えておるのに、物價を六十倍にどうして止めることができますか。こういう小學校の生徒でもわかるような單純明白な簡單な計算が、あの衆智を集めたという物價廳のお役人にわからぬことはない。何という無謀なことをなさるのでしようか。こんなことをして、どうして日本國民は生きていくことができますか。新聞の論説が、すべて物價が五十倍になつて、兌換券の發行高その他が五十倍になると、ドイツが崩壞した大インフレがくる、だからドイツの經驗に鑑みても、日本は非常な決心をしなければならぬという政府に警戒を與える論説は、各新聞がほとんど筆をそろえて書いたのであります。しかるに日本の經濟案定本部というところでは、役人の優秀な人物を集めておる知識の殿堂だと言つて誇ります。おのれがそういう知識の自慢をすると、輿論の趨向というものを理解するという能力がなくなり、それから世態人情というものを早速理解するという良心もなくなるのであります。ひとりおのれのみが慢心してしまう。自分らが一番偉いと思うから、そこでこういう輿論を無視し、世態人情を無視した無謀の計畫をしたのであります。できもしない計畫ではないか。百五十倍も税金を殖やして、そうして物價を六十倍に止めるということがどうしてできるか。ここにおいてか經濟安定本部というものは、實は經濟攪亂本部である。國民虐殺政治の本部である。私は實に今日の官僚の政治の狂態を嘆かざるを得ないのである。
 そこで、もうだんだん時間がなくなりましたから、簡單に結論の方に向つていきますが、片山首相は英國勞働黨の弟をもつて任じ、英國の政治のまねをするということを新聞に語られたのでありまするが、ほんとうにそうならば、あの形を見て實を見ざるところの料理屋の營業停止などはしない方がよろしい。もう日本はこうなればここでシユウマン・プランを實現するのほかはない。それは飲食店に九十倍の税金を課しておる。英國が料理屋を禁止したのは、英國における高級料理の材料というものは、大部分外國から輸入するのである。正貨の支拂に四苦八苦しておる英國は、やむを得ずこれを禁止したのであります。日本にはそんな心配は少しもない。だから日本はそういうことをする必要はない。むしろ日本では酒が一升一萬圓しようと、たまごが一つ百圓しようと、そんなことはお構いなしに紙幣を紙くずのごとく振りまく階級がおるのです。そういう關係から、今度あたりも、一つもそういう税金はないのでありますが、そういうものから税金をとるためにも、やはりシユウマン・プランをやつて、そういうものから九十倍の税金をとつたならば、おそらく數百億の税收入をあげることができると思う。こんな物品税、あらゆる消費税に二十倍、三十倍という恐ろしい税金をかけて生活を壓迫するよりも、その方がはるかに易々として税收を上げることができるのである。その他いくらでも税をとる方法はありまするけれども、今税をとるなどという時期では大體ないのである。税を廢止しなければならぬ、税を減じなければならぬときである。英米は戰後にどういうことをやつたかと言いますと、戰後の財政の最大の眼目、最大の原則は、國費をもとの通りに引下げるということであるイギリスは、片山首相もしその新聞をお續みになるならば、これはわからぬことはないはずだ。イギリスは終戰のときに六十億六千三百ポンドの歳出でありましたのを、その翌年は……。(「戰爭に負けたのだよ」と呼ぶ者あり)負けても陸海軍はなくなつたのだから……。向うはたくさんの軍隊をもつて世界各地を支配しておる。それから比べれば日本の方はもつと國費を減じ得る。その翌年は五十四億ポンドに減らし、その翌年は三十八億ポンドに減らし、今實行しておりますところの明年度豫算は、三十一億八千萬ポンドに引下げておるのであります。アメリカは終戰時一千億ドルの歳出が、翌年は六百億ドルに減らし、その翌年は四百億ドルに減らし、今實行しておりまするところの明年度豫算では三百三十億ドルに減らしておるのであります。そのほかにイギリスは戰爭の濟んだその翌年は三億三千萬ボンドという大減税をしたのであります。アメリカは戰爭の濟んだ翌年ただちに百億ドルという戰時公債の償還を始めておるのであります。また三百萬の官吏を二百三十萬に減じまして、こういうような良心ある整理節約をどんどんと斷行しまして國費を減じ、國民の負擔を輕減するということが英米先進國の政治の實情であります。外國のまねをすればいい。何もおかしいことはない。よその國がこうやつておるのに、日本は戰爭の濟んだすぐ翌年豫算が四倍になる、それから税の收入でも本年は十三倍だ、そういう考えのない亂暴な政治というものは、世界のいずれにありますか。こういうことをして日本國民が生きていかれると思いますか。
#21
○早稻田委員長代理 高野さん、結論へどうぞはいつてください。
#22
○高野公述人 もう時間がないのですね。
#23
○早稻田委員長代理 時間がもうすでに超過しました。
#24
○高野公述人 これは私の論旨の要點であります。よつてこういうような實行不能のペーパー・プランをまじめになつて議するより、こんなものを政府に返上してしまつて、日本は百八十度の囘轉をして、英米佛の實例にならい、財政を根本的に大整理節約するにあらずんば、日本の壞滅を防ぐことは不可能なりと私は斷言するのであります。切に皆さんの御努力をお願いいたします。
#25
○早稻田委員長代理 御苦勞さんでした。高野さんにお尋ねがございますか。
    〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕
#26
○早稻田委員長代理 それではどうもありがとうございました。次は藤岡茂太郎さんにお願いいたします。藤岡さんは東京都の東京ビルヂング協會の囑託をなさつております。主として非戰災家屋税に對する反對意見を開陳されます。なるべく簡潔に要點だけをお願いいたします。
#27
○藤間公述人 私は商人でありまして、こういう公述ははなはだ不得手でありますが、一言にして言いますならば、擔税力がないということなんです。それは大體三つにわけて申し上げますと、本税の對象となつている建物、農村はほとんど自分の建物でありますが、都市の大部分の住宅貸家、それから貸間、事務所用の貸ビルを目的としているビルデイング、そういうものが從來は何だか公益施設の感じをもつて見ておつたように思われる。それから出てきている賃貸業でありますから、こういう特別課税をするだけの餘力がないということ、もう一つは、今度の課税は、何だか建物の價格が相當上つておるから税金を課してもよいじやないかというような、それが擔税力であるというような考えから、こういう税が出てきたのじやないか。けれども、これを擔税力にはならないということ。いま一つは、今度は技術の問題になりますが、課税の基準を賃貸價格におく。これに相當矛盾がある。この三つであります。
 第一の問題の公益施設のような感じをもつて見ておつたのじやないかということは、衣食住ということはわれわれの生活に最も重大な問題でありますが、最も大事なことは食うことです。甲野甲平が乙野乙太郎の店から米を始終買つておつた。けれども甲野甲平が左前になつて米代が拂いにくくなつて、乙野乙太郎の店へ行つて、おれの家は君のところから始終米をとつておつた。ほかからはとつていない。そのお得意の關係上、ちよつと米代を拂えぬけれども、米を届けてくれぬかと言う人はない。しかるに住宅にはこれがある。甲野甲平から乙野乙太郎が家を借りる。そして何らかの關係で家賃が拂えなくなる。二箇月、三箇月、四箇月、乙野乙太郎はこれじやたまらない。自分はただ貸しておくのでは困るから明渡してもらいたい。けれどもそれを借りたものが夫婦生活であるならば、三間の家を借りるとその二間だけは明渡してくれるが、一間はどうしても明けられない。一間はどうしても利用できない。いろいろなことで明渡しをやりました結果、三箇月、四箇月、五箇月、六箇月分の引越料をやれということが裁判の常例なんです。こういう見方で家屋というものを見てきているために、その賃料というものは非常に安くて、修繕、維持費、それに資本利子をみた程度の賃料で今まできている。これはすでに課税された財産税の納め方によつてもはつきりしていると思う。でありますから、かりに貸家を二軒ももつておれば、一軒を物納にするとか、一軒を處分して税金を納めるということになりますが、次はビルの特殊性になりますが、ビルのようなものになりますと、その分割ができない。一階だけを人手に渡すというようなこともできなければ、それを物納するということもできない。そのために延納手續をして、そのまま思案投首でいるというのが現状です。そこにもつてきて今度の非戰災家屋税を課せられると、どうにもならなくなる。その後經濟状態がどういうふうに變つているかと言うと、その金融の不圓滑やら收入の不均衡で、税を拂うだけの餘裕ができるほどに經濟状態は變つていない。そのことが一つ。もう一つは、家屋は相當高くなつているから税金は拂えるだろうということであります。これはなるほど今日世評を聞きますと、百圓ぐらいで建てた建物が坪三百圓で賣れる。あるいはすぐ空くなら一萬圓で賣れるというようなことがありますが、それも處分をして初めてその餘裕ができるのであつて、處分をせなければその餘裕はない。ビルでもその通りです。それでありますから、かりに百圓で建てたものが今日一萬圓で賣れるということならば、再評價をして、その一萬圓に統制の家賃料率を掛けて家賃をとらすならば餘裕が出てくる。しかしながらそれを許さぬので、十三年八月四日からずつと停止しておつて、ようやく本年の九月になつて、一般貸家は二倍半まで上げてよい、貸事務所のようなものは二倍まで上げてよいということになつた。かりに建築費が百圓であつたものが、二倍半上げるというなら、二百五十圓の建築費まで認める。ビルは坪五百圓の建築費であつたならば、それを千圓の建築費まで認めるということになる。それでありますから、現在の家屋税は、十六年に改正された賃貸價格を基準としてきめられているのでしようが、それが約七倍になつて、この家屋税だけを拂うことをどうするかということで思案投首のような状態である。だからこれらにもつていつて、こういう臨時の課税をされたのでは、どうにもならない。もう一つ、この賃貸價格を基準として今度課税されるようでありますが、この賃貸價格というものに非常に矛盾があるのであります。これはここに例をもつてきましたのは、行政訴訟なんかをやりまして、多少合理化されたものの例をもつてきたのでありますが、今度の課税標準になる賃貸價格、十六年改正當時のものでありますが、これは十三社ほどの平均をもつてきましたが、賃貸價格が坪當り八圓七十二錢に査定された。その時分の實賃料は何ぼであるかと言うと八圓十五錢、すでに五十七錢その基準が上まわつている。もう一つ、今度はビルの特異性になりますが、ビルの賃料というものは、その純賃料の中にビルの共益費というものがある。それは廊下、便所、これは天下の公道と共同便所と同じようなものである。それからエレベーターの使用、これは都電や省線と同じようなもので、無料で運んでいる。こういう交通機關、こういうものは家賃として一應とりますけれども、それはすぐ拂い出すべきものであつて、これがその時分どのくらいあるかと言うと、大體において三分の一ぐらい共益費というものがある。そうすると五圓十五錢の實賃料をもらつておつて、その中で二圓七十二錢というものが差引かれますから、その上まわつているものと兩方合併しますと、三圓三十錢ほど、實際の家賃としてもらうのでないものを査定されておるというようなことになるのでありますから、この基準に課税されると、相當な空の税金を拂わなければいかぬということになる。こういう點を考えますと、今度の戰災家屋税を課せられましてもどうにもならないで、そうすればこれを出すにはどうするかということになるので、仕事を壞わしてとるということになるのであります。それだからこの課税は反對だ。なお政府としても、税金が要るのでありますから、拂えないということだけでも困るのでありましよう。餘分なことにわたらぬようにしてくれということでありましたけれども、簡單なことですから申し上げておきたいと思いますが、ビルというものの特異性が、住居でないということと、もう一つには都市を立體化するということ、不燃燒建物である。そうして會社法人等の業務の簡素化をし、從つて生産増強にも寄與するということをお考えくださつて、一般貸家などとビルというものを切離していただいて、一つの營業體にしていただく。從つて多少保護の法律もできましようが、そうして永久的税の財源となる營業税をかけられることは、これは皆甘んじて受けることと思いますから、これは餘分なことになりますけれども、このことを皆さんのお力によつて一般貸家と切離して、ビルだけは特異性を認めていただいて、そういう税の財源にするというようなことに、今後もつていつてもらえば、われわれも幸福だと考える次第であります。私のはそれだけであります。
#28
○川合委員 藤岡さんにお伺いしますが、仰せの通りに、いろいろな家賃統制令とか、そういうようなために、賃室料または家賃というものが、非常に制約されておるということは、われわれも了承いたしますが、これはしかし實際上の面においては、ほとんど無視されているのが現状ではないかと思います。われわれが六坪、七坪の事務所を一つ借りるにつきましても、權利が一萬圓とかいうような實情である。あるいはまた實際において坪あたりとうてい二十圓や三十圓の室料では、われわれが借りることはできないという、われわれは現實から歸納してみたときにおいて、お説はむしろ法理論にとらわれた見解であつて、實際とはかけ離れておるというふうに思われるのでありますが、そういうように昭和十六年度、九・一八の統制令だけが依然として守られておるかどうか。私は貸室料、貸間料においても、その統制は遺憾ながら無視されておるということを認めざるを得ない。あるいはまた一般の學生たちの貸室にしましても、貸間にしましても、現實は米を五升ないし八升もつて行かなければならぬ。もちろん米の籍を移して、別に米を五升ないし八升もつて行つて、なおかつ千圓とか千五百圓の賄料が徴收されるということを、われわれは自分の身近かに痛感しておるのであります。そういうことからしまして、私はビルデイングの貸室の權利あるいは貸付料の面において、今御説のことは、實際とかけ離れておるというように體驗しておるのであります。しかし藤岡さんのお話だと、そういうことが守られるというお話でありますが、一見それが現實と少し遊離したふうに思われるのでありますが、はたしてそれが守られておるというのが實情でありますか。もう一囘確認する意味においてお尋ねいたしたいと思います。
#29
○藤間公述人 お答えします。それは守られていない部面もあると思います。しかしそれは公然のものでありませんから、何らかの機會があれば、それは相當の罰則を受けることになつておると思います。その面におきまして、われわれ正冨にそのものを考える場合、それは計算に入れられない。殊に今度の權利金というものは、財産税に絡んで相當殖えたようであります。分割して物納するとか何とかいうことはできない。かえつて延納のいつまでもおいておくことができないということで無理がいつて、そういうことをしたために、今後賃借權がどうなるかということでいろいろ問題が起りまして、私らのところに相談に來ておるのもありますが、それは當然に取立てるべきものでありませんから、將來の問題として殘されるものでありますから、そういうものは計算として入れられないと思う。
#30
○川合委員 わかりました。
#31
○早稻田委員長代理 次は木村岩藏さんにお願いいたします。木村さんは山口縣の方でございまして、現在公務員をお勤めの方であります。
#32
○木村公述人 私は一戰災者として、しかも戰災者のうちの家主の戰災者という立場で申し上げます。私初め一族、友人、なお先輩等の經驗から――元來私は廣島でやられたのでありますが、廣島に一族がみな家屋をもつていたものですから、そういつたような立場から、この法案を見て感じましたことを申し上げます。この要綱にお示しになつてあるように、犠牲の不均衡を是正するという御趣旨、これが徹底されるならば、この法案は贊成で、この趣旨が徹底されないならば反對だ、というわけであります。犠牲の不均衡を是正するというのは、當然戰爭の被害を負擔するということになると思いますが、それにはどうすればよいかと言いますと、私の考えでは、根本はみんなが燒けたとまず考えなければならぬ。
    〔早稻田委員長代理退席、吉川委員長代理著席〕
戰爭が早くすんだからあれだけですんだが、もし本土決戰が實施されたならば、今殘つているところは――京都だつてみな燒かれたのだ。こう思つてこの案をつくつていかなくちやいかぬと思います。税額とかその他のことについては、いろいろこまかくなりますが、要するに戰災保險の五萬圓だけのものをもらつた。だから私考えますのに、みな燒けたと考えるならば、現在燒け殘つている人も五萬圓以上のものはみな吐き出したら、ほんとうに犠牲の不均衡が是正されるのじやないか。まして廣島では八月何日でしたか、あれ以後現金支拂を受けたものは、その五萬圓の中から差引かれて四萬五千圓だけもらつているわけであります。二百七十萬圓の保險をもらつておつても、わずか四萬五百圓で封鎖にされてしまつたのであります。そういう状況でありますから、私らの立場からこの案を見ますと、犠牲の不均衡を是正することにならぬじやないかという感じをもつのであります。五萬圓以下のものであつたら、家賃がどうあろうが、それは何にもかける必要はないと思います。その五萬圓というのは、御調査の時刻、すなわち終戰時のときを標準として考えればいいと思います。終戰後物價の變動のために、ある者はもうけ、ある物は損したということはたれもが、同じことでありまして、その人の運命で、ほかのことについては、とやかく言う必要はないと思います。それから擔税力の問題でも、いろいろ問題がありましようけれども、處分して賣らなければ困るのだ。家主は自分が小さい家へはいればいいのだ。そうすることによつて、初めて犠牲の不均衡の是正ということができるのじやないかと思います。
 次に對象について申しますと、家屋は今申しましたのでわかりますが、森林もこれは入るべきだと思います。というのは、森林も本土決戰をやれば當然燒き拂われるべき性質のものであります。早く戰爭が濟んだから燒けずに濟んだだけでありますから、これも家屋に準じてとられるべきものだと思います。船舶についても本土決戰を徹底するならば、とことんまでやる以上燒かれるにきまつているのでから、これを家屋と同様に、五萬圓以上はみな特別税としてとらるべきものだと思います。ただ土地だけは燒けもしませんし、またあとになつても經濟的に歸つてくるからいいと思いますので、これは別の問題として、住宅地をたくさんもつことができぬような法案をおつくりになり、たとえば農地法の改革といつたぐあいに、土地を兼併するということは、別な方面で防がれればいいことと思います。要するに非戰災者としての税金の中には、土地は入れる必要はないと思います。
 それから納税義務者について言いますと、この案によりますと、國その他の法人がみなはいつて、公法人には課税しないことになつておりますが、私は國だけは課税されなくてもいい。その代りほかの都道代縣一切みなこれはかかるべきものだと思うのでう。そうでなければ、ほんとうの犠牲の均衡はできないと思います。論理を徹底するならば、そこまでいかなくてはいかぬと思います。
 大體そういうようなものであります。大變おそまつであり、このままでは反對でありますが、今申しましたような趣旨に改めていただければ、根本的には犠牲の不均衡を是正するというのでありますから、大贊成であります。終ります。
#33
○吉川委員長代理 木村さんに御質問ありませんか――ありがとうございました。
 皆さんにお諮りいたしますが、先ほど木村さんをもつて午後中打切ると申し上げましたが、あと三名殘つております。午後わざわざ開きますよりは、ここで續行いたしたいと思いますが、いかがでございましようか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○吉川委員長代理 それではそのようにいたしましよう。次に玉木幸之助さん、玉木さんは市川の方で、教員をしておられます。どうぞ。
#35
○玉木公述人 玉木でございます。時間もございませんし、また先ほどから、たびたび御注意のあります本旨を逸脱いたしますようなおそれがございますので、あまり興奮しないようにいたします。それもどうも税金をとられる方で、自分だけの狹い視野から申し上げるようになりますので、大變自分勝手のように思いますけれども、やはりひしひしと迫るものは、やはり自分の身に迫つてくるもので、人間としてどうも痛切に感ずするものですから、そういう意味で、自分だけの勝手なお話をお許し願いたいと思います。ただその中からちよつとくみとつていただけますことがございましたら、よろしくお取上げを願いたいと思います。
 非戰災税のことでお願いや不滿などを書いて差上げました。それは第一に、今春財産税もとられました。われわれほんとうの中産階級の下つぱの方で、せいぜい十萬圓から二十萬圓程度のところでもつて財産税にひつかかつたわけですが、それをようやくにして拂い終えて、大きなものはこれで終つた。戰爭のためわれわれの生活が疲れたところへもつてきて、やつと拂い終つた。これで一應拂い終つたのでほつとした。こういうところまでこぎつけたのに、またぞろ今年の夏ごろから、このような非戰災税という字が現われまして、當時まつ先に社説にとり上げて、政府はその反省をしろ、改めるにはばかることなかれというようなことを書いてあつたのが、たしか朝日新聞であつたと思います。そのほかの新聞はつい目も通さなかつたかもしれませんが、この問題を書いてなかつたように思います。朝日がこの問題を早く取上げておつたように思います。朝日の論説に書いてあつたように、やはり第二の財産税の性質を帶びておつて、拂つたばかりにまたぞろ同じような――役場の帳面をのぞいて、自分の賃貸價格を調べてきたばかりなのに、またぞろ賃貸價格に何倍かの税金をかけられて、それに對する税金をとられるというようなことで、また憂欝な生活が歸つてきたわけであります。自由黨が財産税を創設して、また社會黨内閣が同じような――同じようなではない、家屋の賃貸面において同じようなものを考えた、こういうことが言われるのでありますが、私は政治のことはよくわかりませんが、政治がつまり社會黨なら社會黨が考えたものならば、われわれ國民の代表としての黨がわれわれの政治を考えてくれるということになるのですが、そうではなくて、何かしら大藏省の官僚が急に財源に困つて、ふつと一時的に思い付いたような氣がしてならないのでありまして、われわれの代表である社會黨が考えてくれる、その首班であるところの片山さんが考えてくれたものと思えば、なおわれわれもいくらかがまんしなければならぬが、われわれは社會黨に投票したのですから……。そうではなくて、大藏省の官僚が思いついて考えて、それにあれが引ずられているように思う。こういう感じがする。それからとにかく二年數箇月も經つてしまつた。その間にわれわれが自分の本居が燒けなかつたということに對して税を拂わなければならぬということに、何か非常にギヤツプがある。近かつたならばともかく、去年あたりだつたらともかく、二年何箇月經つてしまつて、また元にさかのぼつてくるということは、その間非常にわれわれが金をもうけておる階級だつたらとにかく、そうでなくて、われわれはそれより一路轉落の階級に落ちてきたわけなんです。われわれやみ商賣か何かやつておるならばともかく、そうでないならば、どんどん落ちてくる。こういうことになつてきまして、實際家をもつておるということが、擔税能力にならぬというお話が出たようですが、それと同じように、その家を賣り飛ばしてしまわなければ、今度の新しい税金が拂い得ない。こういうようなところまで來ておるのであります。さつきどなたでしたか、賃貸價格が六十何圓というようなお話がありますけれども、私ども市川におりますけれども、市川などは賃貸價格はそんな安いことはないのでありまして、ちよつとしたところでも三百圓や四百圓、五百圓くらいの賃貸價格は、役場の帳面についておるのであります。それに六倍からをかけますと、非常に大きなものになりまして、かりに五百圓の賃貸價格ですと六倍三千圓、その三千圓という現金は、もうほとんど財産税などにも封鎖預金を使いはたしてしまつて、もちろん自由預金もありません。だからそれは調達することはできない。從つてわれわれが擔保にして金を借りるとか、あるいはそれを賣り拂つてやつたならば、小さい家にはいつたらいいじやないかというお説もありましたけれども、なかなかそれも見つからないのでありまして、個人的なことを申し上げてたいへん恐縮ですが、私も家族九人おりますけれども、現在の家を引拂つて九人の家族がはいるだけの家を見つけることは、ほとんど不可能です。そのほか、自分の本據は辛うじて逃れましたけれども、そのほかの意味において、われわれ多少もつておりました家も東京で少しは燒かれ、あるいは強制疎開などでとられたところもありますが、五萬圓以上は昨秋突然補償打切りが出ましてカツトされてしまつた。それ以外に殘つたのが特殊預金から第一封鎖に取替えてもらえたのですけれども、それはほとんど今までのうちに財産税とかそのほかちよつちよつとした生活の費用などで引出せる範圍においてすでになくなつておるということで、こういう意味で、家をもつておるということが必ずしも擔税能力にはならない。それは家を賣つて金に換えてもつておれば擔税能力になりますけれども、現在自分がどうしてもその家に住んでいなければならないというときには、擔税能力にはならない。もう金がない。これまでにわれわれはいろいろな各目で取立てられてきて、もうほとんどわれわれの生活が疲れてしまつておる。こういうことになつております。
 それから家主と借家人との關係におきましても、非戰災家屋の面と非戰災者との面に二つにわけられますと、三倍と三倍ですから、それをもし半々ずつ負擔するといたしまして、片方の家主の方はちやんと臺帳面に止められてありますから、はつきりしておりますけれども、借りておつた人たちは、その後越していつたとか、あるいは賣拂われて、それから無理に追出されていつてしまつて、そこにいないというふうになつております場合、その借家人の人たちが、また轉々とどこかへいつてしまつたとしたら、これはどうして技術上の面からいつて追求していくのか、これがちよつと考えたところで、どうしてもわからぬのでありますが、そうすると、その半分の税金をどこからとつていくのか。またその半分の税金を、借りていた人の方がそれだけの能力がなかつた場合に、どうして税務署が追かけていつてそれをむりに取上げることができるかということも、われわれまた非常に疑問としておるのであります。そういうような意味で、直接自分の身に財政上の困難が迫つておるものですから、多少とも自分の意見はそれをプロテクトするという意味で申し上げたきらいがありますけれども、よい機會だと思いまして意見を書いて差上げ、またここで自分の考えを申し述べた次第であります。
#36
○川合委員 ただいまの玉木さんのお話の非戰災者税は、昭和二十二年七月一日が課税時期ですから、七月一日以後に轉々とされておれば別でしようけれども、その點は多少お間違いがあるといけませんから申し上げておきます。
#37
○吉川委員長代理 そのほかに御質問ございませんか。――ありがとうございました。
 次に大坪實夫さんにお願いします。大坪實夫さんは、東京にお住いの會社員です。
#38
○大坪公述人 私は今までどの政黨政派にもまだ屬しておりません。私は一介の會社員として勤勞所得税を納めておる者の立場から、勤勞所得税というものについて、御參考までに一言申し上げておきたいと思います。
 私はまず税は勤勞に課すべきものでないと思つております。それはもうここに言うまでもなく、すでに勤勞者は勤勞をもつて税に代るものを支拂つておる。これにさらに税の對象となる何ものがあるか。税を拂い得る對象として、その貯水池として、最も手近かにあるものは、すでに言い古されておるいわゆるやみ屋、新圓階級である。これは正しく言えば、今現に市ケ谷に裁かれている戰爭利得者と同じく、敗戰利得者である。敗戰の混亂によつて、國民の犠牲によつて、たとえば、ある工廠にあつた、あるいは兵器廠にあつた、あるいは何か軍の兵站をあずかつていた、そんな所にあつたものを、公定で取り、あるいはただで取り、今現にいろいろの事件がある。そんなようなものに何の税金もかけず、何倍という金で賣拂つて、そうして何億というようなものを各人がもつておるというのは、すでに言ひ古された事柄であり、ああまたやみ屋かというのでありますが、これは、世論政治というのは、民主議會において最も尊重されなければならないし、そこに最も議員諸公の勘考すべきところがあるのじやないかと思うのであります。
 次に、この勤勞所得税が減免されたということを、はたして勤勞階級はどう思つておるかということを申し上げます。僕は從業員組合員であり、すなわち勞働組合員でありますが、これを當局のうたつておるごとく減免だと勤勞者は思つておるかどうか。實際は思つていない。その論據としては、まず、これはもうすでに勤勞者によつてボイコツトを食つている千八百圓ベースに基礎をおいたものであるから、まさに砂上の樓閣である。そうして、税負擔の減額を見ましても、絶對數においてはいくらか減つたかしれないけれども、相對的には、昨年の五倍に相當する。増税にしても、その基礎を五倍というような、何かインフレとか、あるいは國民の所得とかいうような、一應の理論づけはあるだろう。そういうものからしたら結局五倍に相當する。勤勞控除にしても二割が二割五分になつた程度である。さらに扶養家族の控除の引上にしても、月二十圓が四十圓になつただけである。四十圓で何ができるか。これは生活的に考えればナンセンスである。こういうふうなもので、勤勞者いわゆる左翼ばかりで言えば人民大衆は、決してこれを減税とも思つていない。なぜならば、これは、われわれがインフレに惱み、そうして食えないからといつて、あらゆる職場で賃金値上の要求がある。これは容共、反共を問はず、いかなる職場においても賃金値上の要求が行われておる。ところが、それは經營者側との交渉において、いつもデツト・ロツクである。そうして經營者側の言譯は、これがあるから上げられないとか、これがあるから上げても何も意味がないとかいうようなことであり、これを除くことなくして、スムースな賃金の値上というようなものは成立たない。それとともに、これはインフレと賃金値上のシーソー・ゲームになつているということを考えなければならない。そうして、勤勞者というものは、どんな生活をしておるかというようなことを、喋々と申し上げる必要もないけれども、勤勞者は、たけのこ生活よりさらに一歩進んで、絶望的な封建主義的な賭博に耽つておる。それがもう樂しみ程度の小額なものでなく、數千圓を賭けた冒險的なことをやつておる。平和な生活、秩序ある生活というものに失望している。私も今月四百五十二圓の勤勞所得税を納めています。一方どこにその財源を求めるか。私はここに具體的に申し上げようとは思わない。時間もないし、資料もそうそろつていない。一方厖大な紙幣が産業資本、さらには商業資本にも、――これは大内教授も言われたと思いますが、――なつていない。ブローカーの手から手に空まわりをしている。ブローカーを裏づけしている物資さえも、きよう日はほとんどないと言われている。これは現に警視廳で、どこどこのブローカーで、いろいろそういうことがされているというようなリストがつくられているそうです。警視廳に絶對の信頼がないし、今までの警察の機構から言えば、どんなことがされているかということは、われわれは即斷はできない。さらにまた世耕事件におけるあの厖大な金が、産業資本にも商業資本にもならず、あるいは淨財にもならず、獻金あるいは運動費というようなもので何百萬、千萬を超ゆるものがやみからやみに取引されたということは、いかに租税の對象というものがどこにあるかということを知らなければならないと思います。たとえば二、三日前に現實にあつたのですけれども、私が四百五十二圓所得税を納めている。しかるに私の友人は神田で出版屋をしている。一つの出版をするに十五連しか配給がない。しかし一冊の本を一萬出すにしても三百連の紙が要る。それはやみ紙で賄つている。紙代だけでも六十萬圓かかつている。一冊の本を出すのにおよそ百萬圓に近いものがかかつている。しかるにおれは君より税が少いというような事實がある。東京におればまるで無税だ。田舎にその人は戰時中金をもつて行つて、田畑を買い、あるいは家を建てたりして、その方の税は莫大なものであつた。東京はこんな丸燒けとなつている。そしてさらに租税の囘避は脱税であり、抵抗は、たとえばきのうの東京朝日にあつたように、津山の税務署員が全部辭表を提出している。あるいは抵抗というのは、いわゆる勞働者大會にでもいらつしやれば、勤勞所得税の撤廢というプラカードが立てられている。さらに本日の讀賣における千葉縣の佐原の税務署員の半ば公然たる收賄。ああいうふうな腐敗堕落、これはただ單なるそういうような現象的なもの、派生的なものから見るよりも、これは國家の權威、機構の崩壞を國民の前にまざまざと見せているようなものである。木村參議院議員が提唱したような脱税防止ということも、もちろん緊急缺くべからざるものであつて、脱税がどんなに莫大なものであり、どんなに半ば公然と行われているか。東京都内に何ほどかはいつている粕取、あるいは手巻タバコ、その他さつきもおつしやつたようなズルチン、サツカリン、いろいろなものがあるでしようけれども、ぼくは酒がすきだから、粕取なんか莫大なものが警視廳の政令違反に抵抗して賣られている。そんなものは、すべて無税だそうです。燒酎というようなものは、税がなかつたら、いくらインフレの時代でも十圓見當でしよう。大したものじやないだろう。およそあれはすべて税だろうというようなわけで、もちろん脱税の防止も緊急缺くべからざるものであると思います。しからば、どうしたらいいか。私の意見としては、いわゆる源泉課税、給與課税、いわゆる勤勞課税というものの徹廢である。しかして、これを所得税なら所得税一本にして、そして税制の根本的改革をなくして、これはあり得ない。原子力時代にふさわしい、それにもつと裏づけられる科學的な體系をもつたスムースなものに切りかえてもらいたい。そのためには、もちろん機構と關連して徴税技術も考えていかなければいけないと思う。私の社には二千何百人の從業員がおるのであるが、その社の經理の人の言つた意見を簡單に申し上げる。いわゆる勤勞所得税は二重の手間をとる、あれは廢止した方がよい、税務署にも二重の手間をかける、もし存續するなら、勤勞控除は大幅に引上げていただいて、月收五千圓ぐらいは無税になるようにしてもらいたい。私の社の生計實態調査によれば、五人家族で六千圓という平均が出ています。こういう事實からこういうふうに言つています。私のただ單なる理論的なことを言うと、木村參議院議員の圓の再封鎖というようなことは、政策協定もあるし、ある學者、これは高橋正雄氏だつたか、國際的な關係、そんなことも言つたけれども、私はこの際日本の健全な財政の建直しこそが、日本の國際的な信用を増す唯一の途である、そのためには、革命的な決斷が必要である。そのために議會に大きな期待をかけているものである。そのためには、圓の再封鎖、それに伴う平價切下げの含み、そうして退退藏物資、もちろんこれは紙幣も含まれている。退藏物資の活用、さらにこれとともに財産税、利得税というようなものの間髪を入れざる徴收、こういうような三位一體の斷行こそ、國を救うものだと思います。
#39
○吉川委員長代理 大坪さんに御質問ございませんか。――ありがとうございました。それでは梶原房子さんにお願いいたします。梶原房子さんは山梨縣の教員をしていられます。
#40
○梶原公述人 今般の税制改正案に對しまして、自分の信じています點を述べさせていただきまして御指導を仰ぎたいと思います。すでに先述の方々から、いろいろと具體的な方策などがございましたので、その點は全部省かしていただきまして、女としての考えを少し加えさせていただきたいと思います。
 税制改正の原因が、最近の經濟情勢に應じまして、課税負擔の均衡をはかることにあります。方針としては、この原因を基調といたしまして、所得税法の改正案と、非戰災者等特別税法案の二本建を掲げております。私どもはどこまでもこの方針を中心として檢討すべきだと存じます。まず方針そのものに對しましては、まことに現今の情勞から推しまして、財政需要の増大、財政の強化等の點より、やむを得ないものがあると存じます。そこでその要領については、實際問題として大いに考えなければなりません。まず所得税について見ますと、税率の引上とか、給與所得の計算等々とか、幾箇條かありますけれども、私の考えますのには、いまさらに所得税そのものについて云々して、これがいかなる國家財政に資するかを言う必要はないと存じます。課税の必要性というものはほんとうに明らかでございます。ただその方法いかんに問題はあると思います。まず第一に課税の基準となるべき所得金額の内容について一考を要します。これは個々の申告に基いて査定されるのでありますが、從來よりやや机上調査が多く、現在においてはさらに拍車をかけて、事實と申告との間に相當の開きを生ずる場合が多いのではないでしようか。ちよつとこれは我田引水的になりますけれども、これがいわゆる俸給生活者と、生産的な仕事をなす者との比を見ますると、このインフレの世の中に、一番正確な期日に正しい所得税を納めている者はだれでしようか。二千四百カロリーを要求し、最強生活保障を叫ぶたびごとに、千八百圓ベースで抑えつけられる一般官公吏のごとき、特に下級の人々は少い俸給の中から所得税を引かれ、手取金はまつたく僅少なものとなつてしまいます。文句も言う餘地もなく、數字から數字で手ぎわよく納税させられています。そして家計簿の一ページに相當な影響を及ぼすというわけです。すなわち給料にやみはなく、明るい取引がされ、生活に甚大な結果をもたらします。女性として一家の經濟を掌るものは、まつたく神經が疲れてしまつて、どんな目標のもとにやりくりをするかは、今では一家の死活の鍵ともなつています。所得税だといつて、とうてい計算外におく餘裕はないのであります。親子の情愛には階級層の別はありません。せめて子供だけは世間並の春著をと願うとき、身を切られる思いであります。さて他の申告者はどうでしようか。納税期日にも、納税額にも餘裕があります。人情の常といたしまして、收入豫想高には遠慮を加えがちなものでしよう。やみという範圍も擴大されやすい立場にあります。さらに新圓階級のオーソリテイーであるやみ屋には、いかなる所得税を課せられているでしようか。考えれば考えるほど矛盾を生じます。こう申しましても、この課税基準の査定について、十分に困難性が伴うことは認めております。ただここにもう少し實生活に徹した親切味のある課税であつてほしいと望みます。給與所得に對するいくつかの改正も、氣分の轉換の程度で、實際には大した結果も生じないと存じます。私の日々接しております十七歳前後の女生徒約二百名についての意見を聽いてみました。この子供たちは、貯金支局に勤勞女性として働きながら、時間を惠まれて現行青年學校に學んでいるのであります。彼女たちは、毎月やはり俸給を手にして生計の一端を支えております。種々討論的な意見を述べる中からまとめてみますと、所得税額が多すぎる、ずいぶん不平均な課税である。私たちよりもつともつとブルジヨアややみ屋からとればいいのにといつた單純なものでしたが、とにかく社會のあらゆる階級層をもう少し平均的に取扱い、貧しい弱い者にまだまだ負擔が多く、何もかも一線をもつて畫し、その上に机上プランを立てることの不平を唱えております。忠實な實際調査を要望し、もう少し肯定し得る方法を望んでおりました。煩雜にはなりますが、俸給者でも、自分が相當の財産、たとえば土地とか田畑、家屋等を有するものもあるし、單に俸給のみによるものもあります。この點は調査事項に記入するようになつてはいるものの、はたしてすべてがこの事實を考慮して行われておるかどうかということになります。今囘の一部改正は、はなはだ特殊な色が濃くなつています。七萬圓以下の税率へも反省を加えていただきたいと存じます。最下層の者への認識を、一段と要望いたします。この世の中に、やみをするにも度胸と資金がなく、また天性その資質に惠まれず、まじめに働いてしかも食えない者は何と皮肉なことでしよう。この主人公に附隨する家族はますます悲慘の極みであります。社會の悲劇も悪も、こんなところに相當原因があるのではないでしようか。所得税のみにこれは關したわけではないのですが、すべての基準の定め方に疑問をもち、また研究されるべき餘地に多分にあることを思います。正しいあり方が知りたいのであります。
 續いて非戰災者特別税も、併せて考え進めてみますと、同様な點に結論を生ずるのであります。この特別税は犠牲の不均衡是正のためと目的されますが、惜しむらくは終戰直後に實施すべき税であつて、今日ではやや時機を失したという感があります。財産税に重複するおそれもある上に、戰災地は大都市に集中され、一種の人頭税として大衆課税たるを免れませんので、インフレのやみ利得者に對して一指も觸れぬ今日において、非難も多いとは存じます。しかし私は昨年四月末華北山西より祖國仙崎の港へ引揚げてきた者でございますけれども、以後一年半ばかり目に映り、身に心に刻みつけられた祖國の現状は、まつたく絶望的なものでありました。リユツク一つ、しかもその中には二歳になる子供のおむつだけという貧しいものをもつて歸つてきますと、その留守宅は戰災で何もかも灰燼に歸していました。さいわいにただちに職を得て生計の方針を得ましたものの、さて日常生活は昨日に變る今日の姿でございます。羨望と嫉妬は、底意なくとも自然に非戰災者家屋及び人へと集中されました。たけのこ生活には、外地に殘した財産、内地で燒かれた財産が未練でありました。しかしこれも容れられぬ泣言であります。今囘の特別税は、ただこうした點からのみ課税を是とするわけではありません。さきに申しましたように、非難されるべき點を多々有していますが、一囘限りの課税はよいと思います。これは確かに犠牲の均分化となり、精神的に影響する點が多いのであります。ただ實施要鋼のいくつかをたどるのに、何となく根底のない弱さを見出すのはなぜでしようか。何かしら御機嫌をとりながら課しているの感があります。相當周到な課税方法ですが、この調査方法について、所得税と同じく、どこまで眞實に近い線を表わし得るかが問題であります。何か事をなさんとするときに、從來はただちに臨時増員をなしたり、大がかりな經濟上の事項を構えますが、私ども素人考えで、もつと人材の活用と、方法の合理化によつて、現機構をもつて、實態調査ができ得るのではないでしようか。國民の良心的な申告を望み、調査の親切と努力が伴つて、初めて明朗な納税となるのではないでしようか。ここに政府はどこまでも國民に眞相を明らかにして、國民自體のレベルを向上し、強大なる協力を求めなくてはならないと考えます。生徒たちはこの課税に對して答えますのに、政府はずるい、自分たちが出さずに私たちからばかりとる、もつとこんな税より他のインフレの波に乘る者に對しての考えはないのか、大衆を苦しめることのみを考えるといつたものや、時機を失し、今は非戰災者も困つているのだ、配給物は何もなく、そんなに考えるほど犠牲は僅少でなかつたとか、反對に何はともあれ家屋を建てること、物品を購入することからしても、戰災者は犠牲が大であつた、特別税は當然であるという意見でした。やはり贊否は、非戰災者は否を唱えるものが大半を占めていました。これは自然の結果でありましよう。無理のない課税、當然な課税を大衆は望むわけです。財政需要の緊急性に鑑みまして、苦しまぎれに立てた法案でなく、どこまでも、精神的にも經濟的にも、不均衡の是正ということを建前にして分に應じた特別税であることに贊成いたします。この法案のほかに、いろいろな税法が改正されていますが、こまかい點は別としまして、大衆税と目されるものには一考を要します。それは國民の文化生活、經濟生活に直接に響くものであります。例へば物品税のごときも、配給機構の整備と相まつて歩調をそろへていただきたく存じます。すべて財政、金融だから大藏省、商品は商工關係でといつたように分業されますが、さらにこれを統括されるところが欲しいと思います。分割されたものが統合されて、これが良心的に人情味をもつて行われるところに、相當の成績を納め得るのではないでしようか。税制改正案は、いわゆる財政緊迫に押されて間に合わせ的なものでなく、かなり強力な根底のもとに計畫され、實施せられることを望んでやみません。以上意見を述べさせていただきました。
#41
○吉川委員長代理 梶原さんに御質問はございませんか。――ありがとうございました。
 公聽會は終りました。公述人各位は、大層お忙しいところを御出席くださいまして、適切な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。
 本日はこれにて會を閉じます。
    午後零時三十九分散會
ソース: 国立国会図書館
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