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1947/10/18 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会商業委員会鉱工業委員会連合審査会 第1号
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1947/10/18 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会商業委員会鉱工業委員会連合審査会 第1号

#1
第001回国会 財政及び金融委員会商業委員会鉱工業委員会連合審査会 第1号
昭和二十二年十月十八日(土曜日)
    午前十時四十一分開議
 出席委員
   財政及び金融委員長 北村徳太郎君
   理事 島田 晋作君 理事 中崎  敏君
 理事 梅林 時雄君 理事 早稻田柳右エ門君
   理事 葉梨新五郎君 理事 吉川 久衛君
      赤松  勇君    川合 彰武君
      川島 金次君    河井 榮藏君
      佐藤觀次郎君    田中織之進君
      西村 榮一君    林  大作君
      松尾 トシ君    栗田 英男君
      後藤 悦治君    中曽根康弘君
      松田 正一君    青木 孝義君
      島村 一郎君    周東 英雄君
      苫米地英俊君    井出一太郎君
      内藤 友明君    石原  登君
   商業委員長 喜多楢治郎君
   理事 石神 啓吾君 理事 笹口  晃君
   理事 片岡伊三郎君 理事 福永 一臣君
      赤松 明勅君    林  大作君
      師岡 榮一君    山口 靜江君
      井村 徳二君    坪川 信三君
      松井 豊吉君    山本 猛夫君
      鈴木 仙八君    前田  郁君
      松崎 朝治君    小枝 一雄君
   鑛工業委員長 伊藤卯四郎君
   理事 大矢 省三君 理事 岡田 春夫君
   理事 青柳 高一君 理事 今村長太郎君
   理事 澁谷雄太郎君 理事 早川  崇君
      衞藤  速君    金野 定吉君
      村尾 薩男君    生越 三郎君
      庄  忠人君    西田 隆男君
      三好 竹勇君    平島 良一君
      深津玉一郎君    淵上房太郎君
      谷口 武雄君    高倉 定助君
 出席政府委員
        經濟安定本部財
        政金融局長   佐多 忠隆君
 委員外の出席者
        財政及び金融委
        員會專門調査員 圓地與四松君
        財政及び金融委
        員會專門調査員 氏家  武君
        鑛工業委員會專
        門調査員    谷崎  明君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 經濟集中排除法案(内閣提出)(第六八號)
    ―――――――――――――
#2
○北村委員長 これより經濟力集中排除法案について財政及び金融委員會、商業委員會竝びに鑛工業委員會との連合審査會を開きます。
 まず本案につきまして政府の説明を求めます。本日は和田國務大臣が出席せられるはずでありましたけれども、突然關係方面に呼ばれまして、相當時間が長くかかるらしいので、佐多政府委員がみえておりますから、佐多政府委員より説明を求めます。
#3
○佐多政府委員 ただいま上程されました經濟力集中排除法案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 政府は連合國の對日占領に關する基本方策に則りまして、すでに財閥等の解體に著手し、またいわゆる私的獨占禁止法を制定實施いたしまして、國民經濟の民主的で健全な發達をはかるため、その障害となる不當な行為を排除し、獨占的企業集中體の發生を防止する等の措置を講じている次第であります。しかしながらわが國經濟の現状を見ますると、民主化のための各般の措置が所期通りの效果をあげるためには、まずもつて急速にかつ徹底した手段により、いわゆる經濟力の集中を排除しなければならない必要を痛感する次第であります。すなわちが國經濟の現状においては、過去の軍國主義的ないし封建主義的經濟ともいうべき、いわゆる經濟力の集中が堆積しておりまして、まずもつてこれをできるだけ速やかに排除するのでなければ、私的獨占禁止法等による恆久的措置についても、とうてい所期の效果を期待し得ないと存ずる次第であります。換言いたしますと、目前に堆積した經濟力の集中を排除して、初めてわが國がすでにとつている、またこれからとろうとする各般の民主化のための措置が、その實效をあげることができ、眞の經濟民主化の基礎がつくられるのであります。なおこの點につきましては、かねがね連合軍總司令部よりも、右のやうな方針の下に各般の指導を受けつつあることはすでに御承知のことと存じます。
 經濟力の集中の排除は、その目的から申しまして、いたずらにわが國の産業經濟をこまかに解體、分割しようとするものではなくて、國民經濟を平和的かつ民主的に再建するための基礎をつくろうとするものでありますから、それはまた將來の民主的秩序に相應する經濟の、合理的な再編成を行うという積極的作用をもつものでなければなりません。この意味におきましても、この法律は民主的で健全な國民經濟再建の基礎をつくることをその目的とするものであります。
 もとより經濟力の集中の排除は、我國産業經濟に廣汎な變動を與へ、國民の權利に重大な影響を及ぼすものであり、また相當大なき權限を政府機關に委任しようとするものでありますから、その實行についてはきわめて愼重でなくてはなりません。そのやり方いかんによりましては經濟界は不安動搖に陷り、企業は萎微し、生産は沈滯し、金融は硬塞するというおそれがないとは言えないのであります。政府といたしましては、經濟力の集中排除について、あらゆる角度から種々檢討を重ねてきましたが、なかんずくこの法律の運用面の檢討には、最も愼重を期した次第であります。政府はあらゆる手段を盡して經濟界に悪影響を及ぼすことを防ぎ、あくまで國民經濟の合理的再編成を行うという建設的な趣旨において、この法律を運用していかねばならぬと存ずるのであります。
 次に法律案の内容につき御説明申し上げます。この法律は本文二十七條と附則一項からなつておりまして、第一條はこの法律の目的を、第二條は用語の定義を明らかにした總則的な規定となつております。第三條ないし第六條及び第十七條に經濟力の集中の指定に關する事項を規定し、第七條ないし第十二條及び第十八條に指定された經濟力の集中の排除に關する事項を規定しておりますが、これがこの法律の本質的な規定であります。第十三條ないし第十五條は利害關係人の總理大臣に對する不服の申立に關する事項を、第十九條、第二十六條及び第二十七條はこの法律と他の法令との關係、持株會社整理委員會と他の機關との關係について規定しております。そのほかに第二十一條ないし第二十五條に罰則を規定し、附則において施行期日を規定しております。以下順を追つて御説明申し上げます。
 第一にこの法律の目的でありますが、今まで説明いたしたところで明らかなやうに、平和的かつ民主的な國家を再建するための方策の一環として、できるだけ速やかに經濟力の集中を排除し、國民經濟を合理的に再編成することによつて、民主的で健全な國民經濟の再建の基礎をつくることにあります。
 第二條では、この法律における用語について、その定義を割合詳細にわたつて規定しております。第二は經濟力の集中の指定であります。指定の對象となる經濟力の集中は、第三條の各號に掲げられております通り、一、獨占的性質の企業、二、關連性のない事業を兼營する企業、三、役員の兼任、株式の保有等の方法で他の企業を支配する企業、四、カルテル、シンジケート、トラスト等の制限的もしくは獨占的な協定、契約等、五、個人または家族の富の集中で獨占的企業を支配するもの、これら五つのうちのいずれかに該當するものであつて、かつこの法律施行の日において現に存するもの、及び昭和二十年八月一日からこの法律の施行の日前において存したものであります。
 この指定を行うのは持株會社整理委員會でありまして、同委員會は第六條各號に掲げる事項その他必要な事項を考慮し、指定の具體的基準を定めてこれを公示し、この基準に從つて、昭和二十三年九月三十日までの間に指定を行うのであります。指定の期間はこの法律施行後約一箇年間とするのでありますが、指定の遷延が經濟界に與える不安を考慮し、實際にはなるべく短期間に大體の指定を終るようにしたいと思つております。要は、迅速に指定を終了して企業等の再建整備の進行に支障がないようにすることにあると思います。
 指定は文書で利害關係人に通知して行うことになつております。この場合利害關係人とは、當該會社その他の團體または個人、株主、債權者、社債權者のほかに、當該會社等の從業員も含んでおります。利害關係人が多數であり、個々の通知が事實上困難な事情もありますから、この通知は公告して行うこともできることとなつております。
 指定については、或る特定事業について指定を行わないといつた意味の適用除外の規定は別にありません。しかし、國、地方公共團體、公團、勞働組合については、指定を行わないことになつております。またこの法律は、配給統制に關する法令の適用を妨げるものでないことが規定の上に明らかにされております。
 指定された經濟力の集中を、公共の利益のために排除することが必要と認められるときは、持株會社整理委員會は、當該會社その他の團體または個人に對してその排除の措置をとらなければなりません。しかし指定されたものについて必ずしも全部が全部排除の措置がとられるとは限らないのであります。指定されたものについて詳細に檢討された結果、特に排除の措置をとる必要のないことが明らかとなれば、もちろん排除の措置をとる必要はないわけであります。この場合には指定の取消が行われるのであります。
 持株會社整理委員會は指定された經濟力の集中の排除について、この法律の目的を達するのに必要な措置をとらねばなりません。その措置に關し必要な範圍内において、第七條第二項各號に掲ぐるような權能をもつのであります。持株會社整理委員會は指定された經濟力の集中の排除について、この法律の目的を達するのに必要な措置をとらねばなりません。その措置に關し必要な範圍内において、第七條第二項各號に掲ぐるような權能をもつのであります。そのうち第五號ないし第八號が主たる權能であり、第一號ないし第四號及び第九號ないし第十一號は從たる權能で、おおむね右の主たる權能の一般的もしくは個別的前提として、その他その實效を確保する手段としてとられる權能であります。
 第七條第二項は持株會社整理委員會の權能の態樣について竝列的に掲げておりますが、排除の典型的な進行は、おおむね次の通りになるのであります。
 先づ持株會社整理委員會は會社その他の團體または個人に對して經濟力の集中の指定をいたします。指定された經濟力の集中が公共の利益のために排除されねばならないときは、整理委員會は、當該會社その他の團體または個人に對して排除の計畫、すなわち企業再編成計畫、あるいは財産處分計畫の提示を求めます。提示を求めて計畫の提示がなかつたとき、または計畫が著しく不適當のときは、持株會社整理委員會は、みずからこれらの計畫を作成することができます。排除の計畫を承認しまたは作成しようとするときは、その指令案を文書で利害關係人に通達します。この通達は公告してこれを行うことができます。指令案を通達した日から十五日を經過した後に、持株會社整理委員會は利害關係人に對し聽聞會を開き、この聽聞會で利害關係人の指令案に對する異議の申立や意見の具申を聽くのであります。そうして持株會社整理委員會は利害關係人の異議の申立、意見の具申に基いて指令案に必要な變更を加えて決定したときは、決定指令を利害關係人に文書で通達し、または通達にかえて公告しなくてはなりません。
 持株會社整理委員會の指令の決定に際して事實の認定が實質的な證據を基礎としていない場合、または實質的な證據を採用していない場合は、利害關係人は決定指令が通達または公告されてから六日以内に、内閣總理大臣に不服の申立ができます。内閣總理大臣は利害關係人の不服が至當であると認めるときは、事件を持株會社整理委員會に差しもどすのであります。またこの不服申立の期間及び不服申立のあつた場合は、その事件が確定するまでの間は、當該決定指令の執行は停止されます。
 次にこの法律は公正取引委員會について數個の規定を設けております。この法律が獨占禁止法とその目的、作用を異にしていることは、いままでの説明で明らかにしていると思うのであります。
 第十六條の規定中の「他の法令」の中には當然に獨占禁止法を含んでおり、また第二十七條には獨占禁止法の規定は、この法律の規定によつて變更されることがない旨の規定があります。この二つの法律はそれぞれの目的に從つて獨自に運用されるのであります。しかしながらこの法律は獨占禁止法とその目的つながりにおいて密接でありまして、その發動の對象において實際上競合する場合があります。もつともその發動の角度は相違しているのでありますが、對象において競合する場合において、その調整の必要はきまつてくるのであります。そこで持株會社整理委員會が再編成計畫の承認その他の處分の指令案を承認しようとするときは、その指令案を公正取引委員會に對してこれを通達し、公正取引委員會はその指令案について獨占禁止法の規定と違反する場合は、その旨を持株會社整理委員會に指示し、その指示に基いて持株會社整理委員會は指令案の變更をなすことができ、また公正取引委員會は、決定指令の執行を掌り、決定指令の變更の申立を受け、持株會社整理委員會は職權の一部を公正取引委員會に委任することができ、持株會社整理委員會は臨時的機關であるから、一定期間の後、この法律の職權を公正取引委員會に移すこと等の規定を設け、獨占禁止法とこの法律の調整ないし關係を明らかにするようにしているのであります。
 最後に第二十一條ないし第二十五條は罰則の規定となつております。
 次にこの法律と企業再建整備法との關係について御説明しますと、この法律の第十二條に企業再編成計畫による債權者、株主等の權利の變更に關する規定があります。しかしこの法律による企業再編成計畫は、企業を實體的な見地から再編成していくのが目的であり、またその内容であります。從つて、この再編成計畫による債權者、株主等の權利の措置等、企業の經理面の處置は、すべて企業再建整備法または金融機關再建整備法等に任せるのを適當と考えております。このため必要とする法律案は、これを本國會に提出する豫定で、目下立案中であります。
 以上によりまして提案の理由の説明を終りましたが、この法律はその立法の經緯上、法の構成、規定の表現において、從來の法律と趣きを異にしております。しかしこの法律の運用についての政府の見解は、總司令部の見解と一致しており、またこの法律の速やかなる施行が、日本の國際的信用を確保する上に、きわめて望ましいことは明らかであります。從つて政府といたしましては、この際末節に拘泥せず、できるだけ速やかにこの法律を制定實施することが、現下最大の要望たる經濟民主化を非常に推進するものであり、かつ國家大局のためであることを確信いたしておる次第であります。何とぞ御審議の上速やかに御贊威あらんことを切望いたします。
 最後にこの法律の擔當機關ともいうべき持株會社整理委員會の改組につきましては、同委員會令改正法律案として近く國會に提案、御審議を煩わすことになつておりますので、あらかじめ御含み願います。
#4
○北村委員長 ただいま政府の説明がございましたが、この法律案は内容が公共の福祉のためではございますが、企業上の權利の制限であり、産業界に與える影響も非常に重大であると思うのであります。從いまして元來ならば公廳會を開くべきであると思うのでありますけれども、關係方面等との折衝もございまして、非常に審議を急ぐ必要がございます。從つて公廳會を開く時間的の餘裕がございませんので、本日は産業界各方面を代表せられる權威者の出席を求めまして、それらの諸君から忌憚のない意見を聽くようにいたしたいと思うのであります。從つて懇談會を開きたいと存じますが御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○北村委員長 御異議がございませんから、ただちに懇談會な開くことにいたします。
     ――――◇―――――
    〔午前十一時懇談會に入る〕
    〔午後二時二十九分懇談會を終つて散會〕
     ――――◇―――――
#6
○北村委員長 ただいまから懇談會を開きます。
 本日御出席の諸君は經濟團體連合會長の石川一郎君、日本鑛業株式會社常務取締役三間安市君、大日本麥酒の專務取締役山本為三郎君、三菱化成工業株式會社常務取締役の桑田時一郎君、化學勞働組合全國協議會幹事久保田誠君、以上の方々でございます。今ここにお見えになつております三間日本鑛業常務取締役より御發言を願いたいと思います。
#7
○三間安市君 ただいま御紹介にあずかりました日本鑛業の三間でございます。私は一會社に役員ではございますが、以下金屬鑛業の關係につきまして一社の利害とか何とか、そういう問題に拘泥しないで、ごく公正な立場から、經濟力集中排除法と、われわれの經營しております金屬鑛業との關係について、われわれの見解を述べさせていただきたいと思うのであります。
 金屬鑛山業は、由來他から原料を求めまして製造加工するほかの工場生産と趣きをまつたく異にしておりまして、原材料である地下資源をみずからの手によつて探査と申しますか、探し求め、開發しなければならないとともに、その地下資源の賦存をたしかめるために長い間の期間と、莫大なる賃金、竝びに高度の技術をもつて經營しなければならないのでありまして、またその經營については相當の危險を伴うところが、他の事業と本質的に性格を異にしておる次第であります。從いましてただいま申し上げましたように、長い間の開發を終りまして、漸く本格的な操業にはいりましても、地下資源の性質上、その命數にはおのずから限界がございまして、次から次へと新しい資源の開發に邁進しなければならないのであります。そういつた鑛山事業の特殊性からみまして、經營の規模の大規模であるということは必然的に起つてくる問題である。こういうふうに考えるわけであります。もちろんわが國におきまして小規模で經營しております鑛山業というものもないことはございませんですけれども、これらはいずれも非常に鑛量にめぐまれるとか、あるいは品位がいいとか、あるいは立地條件が非常にすぐれておるという場合でありまして、概括的に申し上げますれば、鑛山業というものはその事業の特殊性からみまして、必然的に大規模でなければならないと思うのであります。日本の鑛山業を經營しております會社は、御承知の通り三井、三菱、日本鑛業、古河、日鐡鑛業とか、あるいは住友鑛業、その他主なるもので十社くらいあるわけでございますが、それらが大體日本の鑛産額の約八〇%を占めておるわけで、あとの二〇%は中小以下の鑛山業者が經營しておるわけであります。十社ばかりの大きな鑛業會社は、過去において公正かつ自由な競爭を基盤としまして、合理的な經營方法によつて現在の企業體制を自然にもたらしたものでございまして、過去において人為的な合併だとか、あるいは強制的な買收等によりまして、事業を擴大してきたような事實はほとんどないのであります。なお金屬鑛山業の生産品でありますところの金、銀、銅、鉛、亞鉛というようなものは、その性質は國際的なものでありまして、この價格は現在のごとく日本經濟が封鎖されたような經濟の情勢のもとにおいては別でありますけれども、近く國際貿易が自由になつた曉には、われわれの生産しておりまする鑛産物というものはすべて世界市場の影響を受けまして、具體的に申し上げますれば、ニユーヨークなりロンドンの相場の支配を、そのまま端的に受けるわけでございまして、わわれわ鑛山業者だけでもつて價格の形成について何らの發言權をもたない立場にあるわけでございます。從いましてわれわれの規模が大であるからといいまして、市場の獨占だとか、不正な取引、あるいは不當なる消費者の壓迫というようなことは、とうてい行い得ない立場にあるわけでございます。
 それからわれわれ金屬鑛山業は、先ほども申し上げましたように地下資源を開發するという關係上、戰時中に非常な生産増加を國家的に要請されたわけでありますけれども、地下資源である以上、人為的にそれを殖やすわけにいかないのでありまして、おおむねすでに開發された資源をもつぱら濫掘いたしまして、當時の國家の要請にこたえてきたわけでありまして、今日におきましては戰時中の濫掘あるいは設備の過度の酷使というようなことによりまして、現在では非常に資源は枯渇し、設備は老朽化しておるわけでございまして、なお戰時中に設備を擴大するとか、あるいは事業規模を擴大したというようなことはほとんどないのであります。從いましてわれわれは日本の金屬鑛山の現在の事業規模というものは決して過大なものではなくして、むしろこのままの姿において存續していくことが最も望ましいわけでありまして、これを人為的にと申しますか、むりに分割し分離するというようなことは、この事業の本質と發展の過程を無視するものでありまして、現在危機にありますところの日本の經濟を、さらに悪化せしめる原因をつくるのじやあるまいかと考えておるものであります。なお申し落しましたが、現在十社内外によつて日本の鑛産物の八〇%を生産しておるわけでございますが、これらの會社の中には、過去においても現在においても、非常に熾烈な自由競爭が行われておるわけであります。これは鑛山の分布状態をごらんを願いましてもわかりますように、全國各地に各社入り亂れて鑛山を經營しておるわけでございまして、この間に何ら獨占的なと申しますか、業者相寄つて不當なる市場の獨占というようなことは、何ら行われておられないわけでございます。
 以上申し上げましたように、鑛山業は本質的に大規模經營たらざるを得ないわけでありまして、形の上におきまして大規模なるがゆえに、ただちにこれを分割するということは、日本の鑛山業の弱體化を來し、生産は低下し、能率も低下し、失業者を殖すというような結果になるのではないかというふうに考えておるのであります。從いましてもしこれをどうしても行うという場合には、金屬鑛業に關する限り、連合國が日本の經濟に對して許すと稱せられる一九三〇年から三四年までの水準を、はるかに下まわるような結果になるのではないかと考えておるわけであります。
 以上はなはだとりとめのないことを申し上げましたが、經濟力集中排除の問題に關連いたしまして、われわれ金屬鑛山に職をもつておりますものの立場から、一言われわれの見解を申し述べさせていだいた次第であります。御清聽を感謝いたします。
#8
○北村委員長 いかがですか。今の三間君に對してもし御質疑があれば願います。
#9
○伊藤(卯)委員 ちよつとお伺いしますが、金屬鑛山が分割されることによつて、經營が成り立たないというお話でありますが、分割されることによつて、現在生産されてある率と、分割された後における減産状態、そういうものについての何か率の數字がありましたら、お示し願いたいと思います。
#10
○三間安市君 ただいま御質問いただきました數字的な材料は、ただいま手もとにもつておりませんが、先ほど申し上げましたように鑛山業というものは、本質的に大規牧經營ということが必要であるわけでございまして、もしこれを分割する場合には、開發過程にありますところの鑛山が、經營を繼續することが困難になるというわけでありまして、開發の過程にありながらも相當の生産量を維持しておる山が、休止するということになりますれば、それから生産されておるものは必然的に生産がなくなり、日本の生産統計からそれだけのものがなくなるということは言い得ると思います。ただ數字的にここで御明示申し上げ得ないことを殘念に思います。
#11
○赤松(明)委員 三間さんの御見解の最初にありました三井、三菱系統、あるいは住友系統、その他金屬鑛山十ばかりものは、八〇%の態率をもつておる。その十のうちで金屬との非關連性のもの、たとえば井華鑛業、いわゆる住友系統から分割された井華鑛業が、船舶事業を營んでおる。同時に百貨店を營んでおる。あるいは農林部門というようなものがある。こういつたふうな金屬と直接關係のない非關連事業を行つておるものは、この十ばかりの有數な金屬鑛山のうちでどの程度あるか。ただ金屬のみであるか。この十大金屬鑛山で非關連性の事業をもつておるものがどれだけあるか、要すれば具體的に金屬鑛山と關連のないものを經營しておるものが、十社においてどの程度あるか、その會社の状態によつて違うだろうけれども、おわかりになつておるだけ聽きたい。
 それから二番目は、金屬鑛山であつて、採掘のみをやつておるものと、精錬業を一貫的にやつておるものとはどれだけあるか、伺いたいと思います。
#12
○三間安市君 第一の御質問に對しましては、手もとに資料がございませんが、先ほど申し上げました約十社ばかりの中には、ただいま御指摘のありました金屬鑛業と全然關係のない事業を兼營しておる向きが、まさしくあるわけでございまして、今お話にありましたように井華鑛業においては百貨店あるいは電池の製造、たとえば三井鑛山においては砥石の製造、あるいは三菱鑛業においては特殊鋼の加工、そういう仕事をなすつていらつしやる。あるいは古河鑛業においては削岩機をつくつておる例があるわけであります。その他にも多少あるかと思いますが、正確には存じません。
 第二の方は、先ほど申し上げました十社ばかりのものは、日鐵鑛業を除きまして、ほとんど全部鑛山の採掘部門と精錬業を一貫して經營しております。
#13
○赤松(明)委員 この法の精神より言つて、金屬鑛業と全然關連をもつていないものに對しての問題について私が知りたいと思うことは、十分に聽くことができなかつたけれども、日鐵を除くその他はすべて採掘と稱して精錬をやつておる。これは非關連事業とは言えない。ところでかりに採掘と精錬とを切り離す場合、採掘の側と精錬の側と、いずれに大きな利害を及ぼすか。もしこれが分割されんとするならば、私の調査した中では、精錬業というものはほとんど成り立たないということを調査しておるのだが、これについて專門的な意見を聽きたい。
#14
○三間安市君 日本の非鐵金屬鑛業の會社の現況から申し上げますと、採掘部門と精錬部門とは、一體不可分の關係にあるということが言えると思います。と申し上げますのは、鑛山と一口に申し上げましても、鑛山から出てくる鑛石の成分、品位その他については、千差萬別いろいろあるわけでありますが、たとえばAという會社が採掘しておる鑛山には、そのA會社の採掘しておる鑛山の鑛石を最も有利にというか、有效に精錬するような技術をもつて、精錬の事業を經營しておるわけでありまして、他の精錬所では囘收できないような硫化金屬、微量ではありますが、硫化金屬を自分の精錬所であれば囘收ができるというような關係で、採掘と精錬との間には、技術的に相當密接な一體の關係があるようにわれわれは考えております。
#15
○赤松(明)委員 大體ただいまの意見は、採掘と精錬は斷じて不關連のものにもあらず、また專門的にいつて分離し得ないものだという意見と承りまして間違いありませんか。
#16
○三間安市君 そうです。
#17
○赤松(明)委員 そこでもしこの法文の上から受ける常識的な運用をやるとして、完全に分離せられる場合において、現在雇傭しておるところの從業員を整理しなければならないというようなことが起りはしないかと思いますが、これについての見透しは、大體においてパーセンテージでは、現在のところから細分化される結果どのくらい整理しなければならないか、いわゆる失業者を出さなければならないか、こういう點も御研究になつておると思いますが、これを一點承りたいと思います。
#18
○三間安市君 ただいまの御質問に對しましては、私不幸にして資料をもつておりません。御了承願います。
#19
○赤松(明)委員 これに關連して政府側委員に少し聽いてみたいことがありますが、差支えありませんか。
#20
○北村委員長 よろしゆうございます。
#21
○赤松(明)委員 これは政府委員にお伺いしますが、私が調査しつつある間に、直接鑛山側その他の大財閥でG・H・Qにお伺いにいく場合がある。ところで今までのポツダム宣言受諾以降の財閥の解體というものは、確かにポツダム宣言の趣旨に則つて、占領政策として政令なるものを發せられることによつて、直接の取締りを受けてきて財閥の解體が行われた。ところが獨占禁止法以下少くとも許された範圍内において、今後この法律を運用するものは日本の政府でなければならない。もしこの獨占禁止法あるいはこれに關連するところの一連の經濟法律この法律の運用によつて、集中排除法、いわゆる指定をし、あるいは計畫をし、あるいはそれを完了する。この場合においてなおかつあの財閥解體と同じような壓力をもつて、この法律の上をいくような指令を發するものであるかどうか。これに對する政府の意見はどうであるか伺います。
#22
○佐多政府委員 經濟力次中排除法が直接にポツダム宣言に基く政令で制定されるものではなくて、法律で制定されることになつておる。形式的には一應法律で制定されるとはいうものの、その背景には先ほど説明したように、極東委員會の對日占領政策に關する基本原則があつて、それを背景として成立つておるので、實際の運用においてはほとんど政令によるものと變らない運用のされ方をするだろうと考えております。
#23
○伊藤(卯)委員 先ほど私がお尋ねした分割されることによつて減少されるという數字、それから分割されることによつて金屬鑛山が成り立たないという具體的な、重要な資料を關係者の方から御提出願えるよう、委員長からお話願つて私の方に配布していただきたい。
#24
○北村委員長 了承しました。三間さんに私より希望申し上げますが、あなたのお話になつた金屬鑛業の特殊性に鑑みて、一貫性をやらねばならぬ仕事がある。これをもし細分化するにおいては、これこれの害を蒙むるといつたようなこと、從つてそういうことからくる失業關係、勞働者の整理というようなことはどういうふうになるかということも、何かそういうふうなデーターがいただければ併せてお出しを願いたいと思います。
#25
○三間安市君 至急に資料を調製いたしまして、鑛工業委員會の方に提出いたします。
#26
○林(大)委員 先ほど三間さんの御説明によりますと、鑛山が分割されると、新鑛の開發などはほとんどできなくなるというお話でございましたが、分割される方向にあることははつきりしているのでありますから、この際お尋ねいたしたいことは、今の資本主義的なやり方では、新鑛の開發などは見捨ててしまう以外に方法がないということであるか、それとも何らかの方法でおやりになるおつもりであるか、ないしは新鑛開發に關する新しい國家的な開發方法によらなければならないものであるか、その見透しについて伺いたいと思います。
#27
○三間安市君 ただいまの御質問に對してお答え申し上げます。先ほど私の説明が不十分でありましたから、あるいはおわかりにくかつたかと存じますが、鑛山業の特殊性といたしまして、具體的に例を申し上げますれば、今長い間の開發過程を經まして、ようやく收益時代にはいつた鑛山からの收益の一部を流して、次の新しい資源の開發をするということが、今われわれのもつている行き方でございますが、これは分割の方法いかんによりまして、今せつかく手がけている開發が自然にやれなくなるというわけでございます。從いまして新鑛開發は別の觀點からやつていくような方法を考えなければならないのじやないか。つまりわれわれの現在やつているような方法ができなくなれば、これに代つて何らか有效な方法によつてやつていかなければ、新鑛開發は望めないのじやないかということであります。
#28
○林(大)委員 それならば將來新鑛開發の公團であるとか、營團であるとかいうようなものを國家において考えなければならぬ。ないしは官廳でやらなければならない。いずれの形におきましても、いわゆる社會化された事業としてならば許されると思うんですがそれをやらなければならぬ。そういうところまでいく必要性がもしあるといたしますれば、それではどういうふうに、この大きな鑛山の關連した鑛山が細分化されるかということについては、すでに政府の方と當業者の鑛山側と、今までいろいろお話があつたことと思いますが、こういう問題は將來總動員法的な傾向をもつているこの法律を適用する場合に、一方的にやられないためには、ますますもつてこういう機會ないしは運用委員會などにおいて、十分鑛山の專門家の方々、細分化される方の方々とわれわれとの間にも、また政府の方の意見も入れて議論を畫しておく方が、將來細分化される場合の一つの防塞になるだろうと私は思うのであります。それについての取扱方について、政府委員竝びに當業者の御意見を承つておきたいと思うのであります。
#29
○佐多政府委員 お答え申し上げます。政府といたしましてはこの法律が通過したのちにおいて、今おつしやいましたような具體的な分割の方策としましては、持株會社整理委員會等について業者の方々とも十分折衝してきめまして、さつき申しましたような、日本經濟の合理化に審議するような方法で分割もするというふうな處置をとりたいと考えております。
#30
○青木(孝)委員 先ほどから業者側の代表として御説明になつたところをお伺いしましたが、從來いわば大財閣の傘下にありました約八〇%の金屬を主とした鑛山、そういうものについて、今囘の經濟方集中排除法案の法律をきめるにあたりまして、政府においては何かこの特珠な地下資源を對象とするこの經營規模について、適正規模といつたようなものを一應お考えになつて、その想定の上にこの分割を行う、あるいは分割するというようなお考えでありましようか。何もそういう點についてはお考えがなくて、ただ適當に處理するというようなお考えのものでありましようか。その點をひとつ政府の方の御答辯を願いたいと思います。
#31
○佐多政府委員 お答え申し上げます。金屬鑛業につきましては、御承知の通り非常に複雜多岐でございますので、金屬鑛山全體として適正規模をいくらというふうに一律にきめまして、それを基準にしてどうするということは考えておりませんで、各企業別にいろいろ事情を精査いたしまして、その上で適當な分割をするというように處置したいと考えております。
#32
○青木(孝)委員 さらにその點についてお伺いしたいのでありますが、元來カルテルとか、トラストというものはその一國の國民經濟の大いさの如何というようなことに關連をもつておるものだと存じます。從つてそういう觀點からいたしますると、一體敗戰後の日本の企業形態というものは、鑛山といつたような特殊の種類について、どんな程度の規模でいいかというようなことについても、相當お考えになるべきものではないかと存じまするし、またこれが世界的な事情でもつて價格が決定されるというような、價格統制の問題を考えますときに、日本のような國の地下資源というようなものについては、あらかじめ企業形態として日本經濟の立つていく上に適當であるというような標準がなければならぬように思うのでありまするが、從來そういうことについては自由放任的にお任せになつた。しかし戰爭中に極端に亂暴にされた、いろいろにされたけれども、しかし戰後において、先ほども合理化していくというお言葉もありましたので、その合理化するというような意味であれば、他に害のない程度の一定の規模というようなものの標準が成り立つべきはずだというふうに、私ども素人としては考えるのでありまして、その點についてはいかがでありましようか。
#33
○佐多政府委員 お答えいたします。そういう意味での適正規模なるものが理論的には一應考えられますし、將來は適正規模をさらに檢討して決定しなければならないと思いますが、ただいま早急にこの法律を實施してまいります上においての適正規模というようなものは、別に具體的に考えておらないわけでございます。
#34
○青木(孝)委員 それでは關連的にもう一つお尋ねいたしますが、この經濟力集中排除法案を適用するにあたりまして、どんな方法で大要その處置をとられるお考えであるか、もし御構想がおありになるならば、大まかで結構でありますが御説明を願いたいと思います。
#35
○佐多政府委員 その分割の基準につきまして、大體の構想があつたらというお話でございますが、それにつきましてはこの法律にうたつてありますように、さらに具體的な基準を持株整理委員會がもちまして、それを公示するということになつておりますので、その分割の具體的な基準をつくる場合に、政府としてはどういう構想をもつておるかということになると思うのでございますが、それについては今いろいろ折衝中でございますので、近い中にその基準について、大體政府の考えておる構想を文書でお示ししまして、それによつて詳しく御説明した方がいいと思いますので、若干時日をおかし願いたいと思います。
#36
○青木(孝)委員 それではわれわれがこの法案を審議するにあたりまして、これは速やかに審議してもらいたいという政府の要求でありますが、その前に大體それらの點もお示し下さるのでありましようか。それとも先きにわれわれがこれを審議してしまつて、そういうものの御説明は後になるのでございましようか。
#37
○佐多政府委員 それはこの次の審議のときか、その次ぐらいにお示しして、この審議と併行してその部分も御審議を願いたいというふうに考えております。
#38
○三間安市君 ちよつと發言させていただきます。今適正規模の問題でございますので、御參考までにちよつと申し上げたいと思いますが、金屬鑛山業をやつておる約十社の鑛産物の日本の全産額に對する割合が約八〇%こういうことを申しましたのでありまして、それだけでお考え願うと、非常に大きな企業體のようにお考えになるかもしれませんが。例をアメリカとの比較をとりますと、日本の鑛産額と申しますのは、アメリカの全國産額の約三%乃至四%にしか過ぎないわけであります。それだけの小さなものを今十社で八〇%出す、こういう關係にあるわけであります。その點ちよつと御參考までに……。
#39
○北村委員長 ちよつと三間君にお伺いしたいのでありますが、約十社の金屬鑛業をおやりになつて、カルテル的なというか、企業連合的な何か團體があつたのじやないですか。
#40
○三間安市君 かつてはそういうように世間で思われるような團體がありましたけれども、實質的にはそういつた機能を果したものはほとんどありません。
#41
○北村委員長 大日本麥酒の山本專務取締役がおいでになつておるのですが、この邊であとの質疑はまたあとで伺うとして、山本氏にお話を伺うことにいたします。大日本麥酒專務取締役、山本為三郎君。
#42
○山本為三郎君 私は昨日御命令を受けまして、皆樣の御質問に答えるというつもりで、何ら用意をしておりません。資料ももつておりませんので、皆樣に御滿足なるお答えができないことを遺憾に存じます。ただ私は永年この仕事に從事しておりますので、概念的な問題だけは、不十分ながらお答えができると思いますから、できるだけ質問に對してお答えしたいと存じます。ただ私はビール事業の性格を一應御了解願うために申し上げたいと思います。
 御承知の通りこれが明治時代に外國から移つてきたというようなことから、比較的科學的に、しかも機械を利用した産業でありまして、あるいはドイツその他の國におけるような家庭工業的な形態をもつておりません。日本のビールはきわめて大産業という形態をもつております。それが今日日本のビールが比較的有力に海外において發展し得た大きな理由だと思います。ただこの發展過程の間におきまして、あるいは日本の需要に適せない生産力をもつた時代がありまして、あるいは不正な競爭と言いますか、無暴なる競爭をあえてして、その全生産力を發揮して生産原價を安くして競爭しようとした、いわゆる昭和の初めの時代もありまして、今日に至つたわけであります。今度の日支事變が起りまして以後は、われわれの仕事は代表的な平和産業として、また主要食糧を使用いたします關係で極度の壓迫制限を受けまして、原料資材の面における壓迫と同時に、主務官廳はわれわれの仕事に、あるいは經理面において、あるいは生産の面において、あるいは價格はもちろんでありますが、配給の面に至るまで、全的に極度の監督をされたのであります。戰爭の間に四つのビール會社が二つになつたという出來事があります。これは軍の御要請によりまして、ビール工場は軍の食糧物資を貯えるのに最も都合のいいビールの冷藏庫を持つているから、提供しろという御強要を受けまして、實はそういうことには大してお間には合わぬのでありますが、そういう御懇請がありましたので、二つのビール工場を提供いたしました。それが一つが一會社を成しておりましたために、一會社がそれでなくなつてしまつた。もう一つは門司の港にあります櫻ビール會社は、一工場をもつて一會社を成しておりましたが、御覧の通り場所柄がきわめて危檢なところでありまして、空中よりの襲撃の目標となりやすい。かかる會社一つを持つておつて、それを爆撃されれば、この會社は全部なくなつてしまう、つぶれてしまうから、何とかこれを救つてもらいたいということでありましたので、同業者としてそれを捨てておくこともできませんので、一つの會社にこれを合併しまして、その危機を助けたのであります。こういうことで二つのビール會社がなくなりましたために、漸くあと殘るものが二つとなつたというようなことであります。そうでこのたびの集中排除および獨占禁止法によつて、われわれの産業がどういう形態にすればよいのかということで昨年の二月以來關係各方面の御意向を大いに求めたのでありますが、お前の産業は極度の監督下にあることを見て驚いておる。こういう産業がこれほど拘束を受けておるということを見て驚いておる。大體そのままでおつていいじやないか、こういう御指示を受けたのでありますが、二つの會社が少し較差が多過ぎる。それで昨年の夏以來、われわれの二つの會社が三つになるというここと御相談申し上げておるわけであります。あちらではこれ以上にわけろ。わけるのならばもう少しわけなければならぬということを、いろいろ御研究を願つておるのであります。御承知の通りわれわれの商品というものは比較的安い價格であるのにかかわらず、輸送に費用をたくさんとられます。御承知の通り皆さまがお口になさいますビールは、皆さんのお口には百圓にもなつているかもしれませんが、ビール會社はあれを二十圓の公定價格、ただいま二十三圓でありますが、これをビール會社では二十圓のときには一圓八十九錢で小賣屋の店先まで運んでおるのであります。これに税金を加えて一圓八十九錢が二十圓になつておる。生産者はあれにびんをつけまして、あの口金はこのごろ四十五錢くらいいたします。それをつけてこの間まで一圓八十九錢で小賣屋さんの店先まで運んでおるという實態でありまして、この運賃というものが大きいフアクターになります。そこでわれわれの會社はでき得るだけ交錯輸送することを避けなければならないというような建前から、なるべく日本の一地點に工場がありまして、全國に物を配給することの不利であることを悟つたのが今日の形態になつたのでありますが、そういうことでわれわれの産業を分離するのには三つよりない。それはすなわち北海道、東北を一區といたしまする一つの區と、東京を中心としますものと、大阪を中心とし、中國、九州を中心とする、その四つの地域をつくりまして、ここに競爭を――フエーア・コンベテイシヨンをやらすということには、その地域に三つの工場を必要とする。それを日本中つなげば三つの會社になる。こういう建前でわれわれは三つの會社の設置を願つております。關係方面のその後の意向はわかりませんが、大體われわれの意見に從つていただけるのではないか。また從つていただきたいということを今希つております。これ以上を分離されました場合には、昭和の初め、大正の終りころにありました北海道ビールが名古屋に出る。九州のビールが北海道に行くというような交錯輸送をして、血の出るような競爭をして、それがいきおい需要者の方々に御迷惑をかけるということになるので、むだな競爭をしないということにしたいと考えております。ビール事業はきわめて不手際な事業家が寄つておるとみえまして、自分の仕事に關連のない仕事は一つももつておりません。あるいは自分の方に使いますびんをつくつておる、王冠をつくつておる、箱をつくる。いろいろの資材を自分の工場内でやつておりますとかいうようなことで、ないしはわれわれのビールの醗酵をさせます酵母の一部をとりまして、エビネスのようなものをつくつておる。自分のビールを市場でいわゆる一つのモデルとして、ごく小さいビヤホールをもつておるというようなことで、自分の仕事に關連のないものがありませんので、こういうものもどういうことで御處置願えるかわかりませんが、比較的連關性のあるものばかりだと考えております。なおわれわれの仕事は醗酵の仕事でありますために醗酵關係でいろいろの仕事を他にももつておりますが、これはもう自然切るべき性質のものだと思つて、現在各所で處理をいたしておりますが、主として會社の仕事には關連性がないものはないと考えております。
 なおもう一つ附け加えて、今漏れましたが、われわれの製品は全國各地どこに參りましても同じ價格であるということは御承知の通りであります。いわゆる價格はその到著地、デスチネイツヨンの値段で賣つております。その關係から言つても、各地の地域的な分割はなかなか困難であるということと、商標の使用が日本地域的にわけることの不都合を感じておりますので、そういうことをただいまG・H・Qに願い出ております。もしもそういうようなことができないという場合に、たとえば二つ以上に會社がわかるという場合には、あるいは地方的に獨占になるという心配もありますし、それはこれによれば大阪にある朝日ビールが東京に流れてきたり、東京にありますエビスビールが九州に行つたりするといつようなことがありますので、この事情を今つぶさに資料を具えて提出しております。現状はかような通りでありますが、そのほかに御質問がありますればお答え申し上げます。
#43
○北村委員長 御質疑がありますれば、どうぞ御遠慮なく御質疑を願います。
#44
○葉梨委員 そうするとただいまの御説明によりますと、ビール事業に關する限りは地域的獨占という形體をとらなければならぬというような業者の御意向にように伺いますが、そういうことになる必要があるという御意見でありますか。それからまた價格の變更はない。價格は協定された價格によつて維持していくことがよろしい、こういう御意見なのでありますか、その二點を伺いたいと思います。
#45
○山本為三郎君 ただいまの私の説明が行き届かなかつたのでありますが、地域獨占にはならないで、全國的な地域でいわゆる横に切れるわけです。いわゆるキリンビールは各地で工場をもつております。大日本ビールが各地で重複しておつた點を二つにわかちましたから、大日本ビールは二つにわかれますので、地域獨占にはなりませんが、これをただいま申しましたような切り方にいたしますと、地域獨占になるということがある。こういうことであります。それから第二の御質問の價格の問題でありますが、市場で言われる協定價格でありますが、これは公定價格、全部マル公でありまして、マル公以外には一本も賣つておりません。あるいはいかなる産業といえどもビールほど公定價格を勵行しておるものはないと思つております。
#46
○北村委員長 ただいまの御意見に對して御質疑があればどうぞ御質疑を願います。――なければ一應この程度で午前は打切りまして、午後續いて開會いたします。
 それでは午前中はこの程度にいたして、午後は時間勵行で一時から始めたいと思います。
    午後十一時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十八分開議
#47
○北村委員長 それでは午前中に引續き懇談會を開きます。
 化學勞働組合全國協議會の幹事である久保田誠君が御出席になつておりますから、これより久保田君の御意見を伺うことにいたします。
#48
○久保田誠君 化學勞働組合全國協議會の幹事をいたしております久保田と申します。きようここにまいりまして一言發言さしていただく機會を得ましたことは、ありがたく存じますけれども、私は單なる一化學勞働組合という立場ではなく全勞働者、全勤勞者の立場から一言申し上げてみたいと存じます。と申しますのは、日本再建のために熱意をもつておる産業資本家の各位も、ただいまから私が申し上げる點については、御異論がないではないかと考える次第であります。
 まず申さなければならないのはこの經濟力集中排除法が經濟の民主化を目標としている點については、異論はありませんけれども、その内容をみますと、企業の細分化は生産力を低下させることが必至である、この點で私たちは反對であります。日本の生産力が過去數十年間にせつかく現在の水準まで達した。それも敗戰によつて非常に大きな打撃を受けた。このせつかく發展してきた生産力を細分化によつてこま切れにして低下させるということは、日本の産業を數十年前の段階まで引きもどすという點で絶對反對しなければならない、この考えております。經濟の民主化には贊成する。しかし經濟の民主化ということは決して企業を細分化することではなくて、ここまで發展してまいりました生産力を、だれが支配し、だれのために役立てていくか、こういう點が問題である。從つてこの獨占資本家の支配から全人民の支配に移すということによつて經濟力は民主化される。こう考えております。
 次に企業を細分化し、生産力を低下させることは、日本の獨立のための物質的な基礎をなくするという點で反對であります。先ほど政府委員の方からの説明の中に、この集中排除法を實施することによつて日本の國際的信用を高めるというふうなお言葉がありましたけれども、これは私たちの立場からしますと、まつたく反對であります。一日も早く日本の經濟を再建してこそ國際的な信用を高めることができる、こういう確信をもつております。この意味で日本の獨立、日本の再建を一日も早くするという意味でも、企業の細分には反對いたします。
 第三に、これは勞働者に非常に大きな打撃を與えることは申すまでもありませんが、先ほどから申しますように、日本の經濟が弱體化するということは、單に勞働者だけでなくて中小商工業者、一般市民、農民の生活までも脅かすものだ、こう考えまして、全人民の問題である。全人民の生活を脅かすという點で反對いたします。かつここで考えてみなければならないのは、こうした共同不安、社會不安の蔭に隱れて、せつかく追放された戰犯資本家連中が、そのすきをねらつて暗躍するという危險もないではない。このように考えております。
 第四番目に、先ほどの説明でも明らかでありますように、この法の内容を一見いたしますと、非常に大事な點を持株會社整理委員會の權限に委ねている。經濟民主化のために制定するという法律の中に、その民主化の基準が明示されておらず、一切を持株會社整理委員會に委ねている。しかもその持株會社整理委員會はきわめて非民主的な構成になつている。一口に申せば金融資本家の意思のみ非常にたくさん反映するようになつており、われわれ勞働者の發言權がほとんどないばかりでなく、日本の再建に熱意をもつている産業資本家の發言權さえも不十分だ、こういつた點を指摘しなければなりません。なおこの點につきましては、先ほど赤松議員の質問に對する政府委員の答辯の中に、きわめて曖昧な點がある。法律であるからには、これを施行し運營する場合については、政府は責任をとるかという質問に對して、きわめて曖昧な答辯があつた。このような政府の態度では、とうてい經濟の民主化などということは望めないと考えております。
 第五に、化學工業の面から參つたという點で、北學工業の特殊性について一言申します。化學工業は他の工業に比べましてかなり特殊性がある。その第一の特殊性は、製品がきわめて多角的であり、多樣性をもつているということであります。從つて一見しますと、まつたく違つた分野にあるかのようにみえる製品なども、ほんとうに切り離すことのできない關連性をもつている。その製品が次の製品を原料にして、あるいは副産物から他の製品をつくる。そいつた關連性が非常に密接であつて、非常に大きな經營でいろいろなものをつくつているから分割も可能じやないかというふうにみえる場合であつても、中にはいつてみれば決してそんなものじやない。一體となつてこそ初めて生産性を高め、現在の生産を維持していくことができるということであります。
 第二の特徴と申しますと、酸、アルカリその他を使つている關係上、機械や設備が非常に腐蝕しやすい、補修の週期がきわめて短い、しかもこの補修には非常に大きな資本竝びに資材を要する。從つて大經營でなければこれを週期的に圓滑に補修を繰返していくことができない。從つてこういう點からも化學産業というものは必然的に大規模經營になつておる。從つて一見規模が大きいからというて、これを細分化するということはまつたく危險だということであります。その他こまかい點もありますけれども、これはさいわい一緒にまいつております專門の者がおりますから、御質問がございましたら、こういつた點につきまして御説明申し上げたいと存じます。
 それで最後に結論として申しますと、私たち勞働者の立場からは、經濟民主化そのものには贊成するけれども、生産力を低下する企業の細分化には反對である。從つて經濟の民主化の方向は、産業の所有を社會化し、運營を全人民の手でやつていく、この方向へもつていくべきだ、このことを結論いたします。
 どうも荒つぽいことを申しましたけれども、これをもつて御説明といたします。
#49
○北村委員長 それでは暫時休憩いたします。
    午後一時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十分開議
#50
○北村委員長 では引續き懇談會を開きます。ただいま石川一郎氏がまだおみえになつておりませんが、その代理という意味でなしに、幸いおいでになつております三菱化成工業株式會社常務取締役桑田時一郎氏に、その立場から本法案に對しての意見、感想等を伺いたいと思います。
#51
○桑田時一郎君 私は三菱化成の桑田と申します。今日石川會長が化學工業全般につきまして、お話されるはずでありますが、まだ御出席になつておりませんので、私一業者でありますが、化學工業全般の立場から、本問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
 今囘の經濟力集中排除法案に對しましては、平和的にまた民主的に、日本の經濟を再建するという意味におきまして、全面的に贊成であります。ただしこれを適用する際におきまして、巷間言われるごとく、極度の細分化せられるということに對しましては、その趣旨におきまして反對であります。
 私は主として化學工業につきまして申し上げますから、御了承願いたいと思います。化學工業なるものは非常にその事業の性質上、關連性をもつた有機的な企業であります。從つて一つの企業を始めましても、次から次へと、いわゆるいもずる式に生産が發展してまいります。また、かくしなければその企業は成立しないのであります。これを外國の例にみましても、その一國を代表するがごとき大化學工業會社は、みな非常にいわゆる大規模になつております。たとえばアメリカで言うならば、デユポンとかあるいはモンサン、またイギリスで言うならばI・〇・IそれからドイツではE・G・フランスならクールマンといつたように、非常な大きな總合經營のものと經營されております。ただ單に形の上で規模の大きいということをもつて、經濟力の過度の集中だとみなすことは、これは場合によつては當を得ないと思うのであります。ごく卑近な例をもつて言いますならば、ここに一つのデパートがある。その店で何でもあらゆる品物が一應整えられておる。ところが一つのもの、たとえばネクタイだとか、帽子だとか、そういつたものを專業にやつております專業者と比べまして、競爭ができていくか、いけないかということを見ます場合に、決してこれは壓迫すべき獨占ではないのであります。デパートにはデパートの特色があり、專業者には專業者の特色がありまして、ネクタイのごときものにつきましては、デパートではいらいらなものを簡單に得られるという特色があるが、なかなかみながみな人の氣に入らない。特にある一つの優秀なデザインをもつたものを選ぼうという場合においては、專業者に行つて求めなければ得られないという、それぞれの特色をもつて、デパートも專業者も存立しております。ゆえにデパートが專業者を壓迫しており、また經濟力において競爭不可能であるという性質のごときものでは、全然ないのであります。同じことが化學工業についても言えます。非常に種類が多く、非常に規模が大きいということがありましても、それぞれの專業につきましては、決して競爭は不可能ではないのであります。たとえばここに一つの染料會社がある。これは大きな範圍に經營されております。ところが一種の染料につきましては、それぞれの專業者に比べまして決して競爭不可能でない。むしろ逆に脅威されておるという場合が多々あるのであります。たとえば最も染料に簡單な硫化プラツクという、硫化の黒色というのがありますが、それのごときは、それ專門の會社におきましては、いわゆるたる一つ、人間はふんどし一本というような、簡單な調子で製造を始めております。ところがあらゆるその他の染料と關連してつくつております場合には、その製造の中間物、またそれからの製品というものをつくつていかなければならないために、非常に形の上には大きな装置、設備をもつて進んでおりますけれども、必ずしもそれが他の專業者を壓迫しておるものではない。むしろ逆に壓迫される状態にあるのであります。原料中間物の自由に手にはいるという自由競爭時代になりますと、むしろそういう大きなからをかぶつておる會社の方が、大きな壓迫を受けつつある状況であります。なおその次に、關連性があるがゆえに、これを單に規模がどうであるという意味において分割することは、はなはだ不合理であるのであります。いやしくも化學工業に經驗のあられる方は、一つの工場、一つの立地、またはこれがおかれておりましても、そういうものを寸斷するということが、いかに意味のないことであるかということは、すぐおわかりになろうかと思います。工場内はパイプをもつて繼ぎ合わしておつて、どの一つを切り離しても、別々に獨立していくことができない状態にあるのであります。これをただ規模が大きいということによつて、經濟力の過度の集中だということは當を得ないのであります。まず日本の状況から申しますならば、私は大體工員數からいくと一萬くらいのところが、經濟的な單位じやないかと考えております。しからばそれ以上大きくなつた場合はどうするかということの疑問が起りますが、一つの立地におきまして總合化學工業が發達いたしましても、その地理的條件また勞務の管理條件、あるいは原料その他の入手條件ということによりまして、必ずある規模に自然的に制限されてくるのであります。それでそれ以上に大きくなろうとしても、實際經濟上成り立ち得ないのであります。むしろこれを他の立地にわけてもつていく方が經濟上有利であるという結論に達しますために、放つておきましても、いわゆる自由競爭にしましても、決して過度の厖大ということは起り得ないのであります。現在おちついている規模から申しましても、日本の最も大きな化學工業會社といわれる三井とか三菱、住友といつたような化學工業會社におきましても、一立地においてはせいぜいやはり一萬程度であります。さらに五千というような數字になつておりますが、まず自然に放置いたしましてもその邊に自然におちつくのであります。そういう面から申しまして、單に一つの場所において發達した規模が、過度に大きく發達しておるということは言えないのであります。その他一つの立地における化學工業といたしまして、不關連作業ということを言われます。たとえば製品の中のAとBと比べまして、これに何の關係があるかということを言われます、これは前申しましたように、化學工業の相關性ということによつて、次から出るものを次から拾つていく。こういうふうにこまかく、あらゆるものを拾つていくためには、作業の相關性、企業の相關性というものが起りまして、多角經營していくということは當然の成り行きであります。これあるがゆえに化學工業が成立し得ると申しても過言ではなかろうと思います。要するにあの程度の分化は、たとえば全然關係のない作業の成立あるいは戰時中における吸收合併、こういつた資本の危險性を避けるために經營された多角經營は、これを斷ち切ることは將來の民主的發達の上において、まことに結構だと思いますが、それ以上に同じ種類のもの、これをさらに細分化するということは全然意味のないことであり、もしこれを斷行するならば、日本の企業、工業、また經濟なるものが衰微すべき筋合いのものであると思いまして、この運用いかんということは、最も大切なものではなかろうかと考える次第であります。簡單でありますがこれで……。
#52
○北村委員長 ただいま經濟團體連合會の石川會長がお見えになりましたので、今の桑田さんに對する質疑があるかもしれませんが、まず先に石川さんのお話を伺いたいと思います。
#53
○石川一郎君 私石川でございます。
 經濟力集中排除の問題が起りましたときに、どういうふうな行き方をするかわからぬために、非常に心配しておりましたところ、途中でうわさでございますけれども、たとえば二十の工場がある。それを一工場一社主義にするというような話を伺つたものですから、これはたいへんだというふうに考えたのでございますけれども、だんだんその後に模樣を伺つておりますれば、現在の法律に出ておるようなことくらいのブリンシプルならば私どもは結構である。ただあとの運營その他が非常に重大な影響を及ぼすから、これに氣をつけていただけばいいのではないかというふうに考えております。もちろんこれは經濟界の全體の意見をとりまとめてまいつたのでございませんので、私の卑見を申し上げるのでありますが、そういうふうに考えております。大體現在非常に大きい資本を擁しておるもの、もちろん拂込みの資本は八億、九億、十億が大きいのでありますけれども、そのほかに借入金その他で、何十億というものを借り入れまして産業を動かしております工場がかなりあるのであります。そういう工場はあまりに大き過ぎる。一體平時から私はそういうふうな考えをもつておつたのですが、やはり日本のようなところでは、企業の規模というものは、ある程度で制約をされるのではないか。私ら今から四、五年前まではいろいろな會社に關係がございましたが、自分でやつておりましてとても手がまわらぬ。徹底的に自分の思うように、理想的にこれを動かしていこうとするには手がまわりかねるというようなことを痛感したことがあるのでございます。そういうふうな意味におきまして、非常に大きな工場をどつさりもつていらつしやつて、これを完全に動かしていく、特に現在のような非常に資材も少い、勞働功勢も強い、また電氣もときどき止まるというような場合におきまして、どういうふうにやつていつたならば、一番日本の經濟力を上げるにいいかということを適切に判斷して、適切に手を打たなければならぬのでありまして、あまり大きな工場をもつておるということは、とても背負い切れないだろうと感じております。それでわれわれはある程度の大きな企業は細分化すべきものなりというふうに考えておりますので、大體このブリンシプルにおいては私どもは贊成をしておる次第であります。
 なおこの問題をこまかく考えてまいりますと、いろいろの點がございますからその要點を申し上げます。今までの經營というものは一體どういうふうになつておつたかということを考えますと、大きな規模の會社というものは、そのうちに大體財閥關係の非常に財力の後光が光つておつたのでありまして、その後光のもとに仕事をしていたということがございますし、その上に官僚なり、あるいは戰時中におきましては軍人というものが、それを手とり足とり非常に親切に、すべての物資の配給その他――物資の配給に人が足りないといえばすぐに人をまわしてくれるとか、技術者が足りないといえばすぐ技術者をくれるとかいうように強制的にまいりました。それで運營ができておつたのでありますが、敗戰後その壓力が全部とれてしまつたという場合に、はたして相當りつぱな方であつても、今までのような大きな仕事が完全に遂行できるか、しかも現在のような非常に不便な世の中でできるかということを考えますと、どうもそれは不可能ではないか。これは私が微力で仕事を經營しておつた時分に考えておつたためかも存じませんけれども、大體そういうふうに考えておる次第でございます。それにいろいろ模樣を伺つておりますと、たとえばいくつも工場がございまして、そうしてその一つの工場が非常に成績がいい、他の工場が成績が悪いという場合におきましても、自分の方が怠けても、別に會社の經營に影響することが少いのではないかという考え方を、とかく經營者もあるいは從業員もいたすものでごまいまして、親がかり、あるいは兄弟がいいから自分たちは少し樂していいという考え方もないではないというふうに思われますので、やはりそういう點を自覺せしらるということがいいのではないか。自分の方は非常に仕事の能率があがつておらぬ、あるいは經營が非常にうまくいつていないのだということ、あるいは經濟が苦しいのだということを自覺させるためにも、わけるのが必要ではないか。實は先般も炭鑛業者がいらつしやいまして、ある炭鑛は非常にうまくいつておる、ある炭鑛は悪い。ところが悪いのを直そうという氣が起らぬで困るというお話がございました。そういう點から考えてまいりましても、これはある程度にわけて、そうしてお互いに自立させた方がいいのではないかというふうに考えております。
 それで今度の法律がきまりまして、そうして持株整理委員會である基準を示される、こういうことになつておりますが、實はその基準が非常に心配でございまして、たとえば何億とか何千萬とあう會社がわけられるならばいいけれども、もつと小さな――これはうわさでありますからわかりませんが、五百萬以下の會社もわけるというようなことをちよつと聞いたものですから、これはたいへんだと考えたのでありまして、そういう基準がわからないために非常に心配いたしたのであります。しかし今囘の分割問題は將來の日本の生産性を阻害しないように、またその會社の經濟力を非常に弱小化しないというような建前におきましてわけられるという話でございますので、この點については要するにこの法律を運用する運營いかんにかかる、この點をお互いに監視しあるいは協力して、適當な方向にもつていかなければならぬ、こういうふうに考える次第でございます。今度はそういうふうなことになりまして、分割されました場合に、一體どういうふうな影響があるかということを考えてみたのでありますが、一番困りますのは、各企業におきまして、それが相當大きな企業であり、經濟力も大きければ、研究調査ということに相當の費用がわけられるのであります。ところが分割されてしまつて小さい企業になつてしまいますと、そういう金を一體どうして出し得るかということが、非常に心配の種になつております。これを共同研究所をつくるとかいうようなことをいたしましても、中には、成績の上つておるところもございます。大體戰時中はずいぶん上つておりましたが、最近においては上つていないところが多いのでありまして、やはり共同研究所のごときものはうまくいかないのではないか、どうしたらいいか、こういう問題について相當の考慮を拂つていかなければならぬのではないか。あるいはまだ調査機關においても相當大きな調査機關をもつてやつていらしやるところもありますが、そういう費用が出せるか出せないかというような點につきまして、何とか出せるような仕組をつくらなければならぬ。これは今學界においてもお集まりになりまして、どうしたらいいかというようなことを研究中でございますが、これはどうかしてあとで――日本の産業は非常に遲れておりまして、少くとも戰時中の進歩は遲れておりますし、戰前におきましても、すでに化學工業のごときは十年、十五年、あるいは三年ぐらいのものもございますけれども、大體遲れておつた。しかもこの戰時中の約十年間に非常に遲れましたから、その遲れを取返す必要があるので、この點については相當の考慮をしなければいかぬのではないかというふうに考えております。
 それからもう一つの問題は、これは企業再建整備法とも關係がありますが、これは一番大きな問題だつたと私は考えておるのであります。たとえば今まであつた一つの會社を企業再建整備法によりましてわけるのでございますが、それに今度の集中排除法によつてまたわけ方を併せて考えるわけでありますが、企業再建整備法におきまして新しくできる第二會社の資本金というものは、固定資産プラス固定的の流動資産をこめたものをもつて、自己資本で賄えというプリンシプルに大體なつておりますが、そういたしますとたとえばここに一億の會社があつて、それに戰時中は増資も許されませんで大體借入金をやつておりますし戰爭後物價も上りまして、相當借入金が多いのであります。その資本金の内容についても借入金に屬しておる。資本金プラス借入金の内容を調べてみますと、固定資産プラス固定するような、常時もつていなければならないようなストツクとか何とかいう固定的の流動資産であります。この金も合わせますと、現在の資本金よりも三倍、四倍というような數字になるのであります。そうすると今一億の資本金の會社がございまして、それにさらに三億をプラスして、四億の新しい數會社にこれをわけるということになりますと、結局の一億の資本が四億に殖えるのみならず、今までの銘柄と違つた株券が相當出てくるのであります。要するに一億のものが三億殖えれば四億の株券になつてくる。しかも今までの株主がもとの株主に優先的にわけて、その次にもしもとの株主が引受け得ない場合においては、勞働者にわける。なおそれが引受け得ないときには地方の住民にわける。なおそれが引受け得ないときには一般にわける。こういう一般論になつておりますが、この株が非常に多く出てきはしないか。しもか今持株整理委員會がもつておる財閥の株なり、あるいはまた今度獨占禁止法で會社の株はもてなくなつた相當數量の株、この株の處分というようなことを考えますと、これは計算をしたわけではありませんけれども、五、六百億の金の新しい名柄の株券が出てくるこりになるのではないかと思います。そうしますと今までの株主なり何なりが、これをもつていく力がとてもないと存じますので、相當の大きな手を打たなければ、この株は非常にぼろを出す。そこでただいま申し上げたように、資本金プラス固定的流動資産をもつては、自己資本でやるというプリンシプルは崩れます。さようなことがございますので、この株の處分をどうするかということが大きな問題でありまして、この處分の方法いかんによつては、今までの資本の蓄積もできなければ、いわゆる修正資本主義でさえもうまく遂行できないようなことになるのではないか、これが一番大きな問題であろうと存じます。そこで一方そういうふうになりますので、もし株券が發行できない場合におきましては、社債でもつてこれを賄うことになつておるのでございますが、今までの商法の規定によりますと、社債は拂込金額だけが許されるのであります。もちろん電力その他は倍くらいまでは許されておりますけれども、大體拂込資本を限度とするのが原則でございます。そうするといくらも社債ができないことになり、銀行が借しておる金が固定してしまいます。その銀行がある會社に借しておる金が株券に變るとか、あるいは社債券に變れば相當處分ができますが、それが株券になり社債に變らなければ、銀行の貸金はそのまま固定されてしまう。そこで今でも産業資金も足りないという状況でありますが、その點で非常な壓迫關係ができる。それはもちろん集中排除法のみから起つてくる問題ではございません。企業再建整備法からも起つてきますが、その問題が非常に大きな問題になりはせぬか。それに對していろいろ大藏省の方々とも何とか手を打たなければならぬと御相談しておるのでありますが、まだ解決すべき案がないのであります。そういう點が大きな問題だと存じます。
 そのほかにあまり小さくわけられますと、御承知の通りにその企業、財界の變動、經濟界の變動に對するいわゆる乘り切つてまいります凌波性が少くなつてくる。特に最近のように、たとえば九州地方におきましては、先般も伺えばわれわれ想像もつかなかつた九段制限という電氣の制限をやいております。そうしますとその工場がもし一社一工場になりますと、ある程度休まなければならぬことになります。これがいくつもの工場がありまして、あるつながりをもつておりますれば、片一方の工場が動くから、關東の方は電力ができて火力で動くというバランスがとれますが、あまり細かく地方的にわけますと、今言つたような電氣の問題、あるいは原料の輸送の問題、あるいはこれはまれでございますけれども、先般來ございましたような風水害の場合において、ある會社のみが非常の苦しい經濟状態に陷る。これを何とかアジヤストするようなことをやらなければならぬ。それにはやはり單に地區別にわけてしまうということでなしに、ある程度その會社の將來のスタビリテイというようなことを考えて、わけていかなければいがぬのではないかということを考えております。なお原料その他を考えましても、ある地方から出る原料を工場に運ぶというようなことがあります。あるいはいくつも山があつて、そこから原料を運ぶこともありますが、一つの鑛山が金がなくなつた場合に、そこから出てくる品物を使つておる工場はストツプしなければならぬというようなことがあります。これは要するに先ほど申し上げた運用の點、つまりどういふうにわけていくかという運用の問題だと存じますので、そういう點について相當考慮を拂つていかなければならぬのではないかと考えております。なお多少工場數が多ければ、たとえばモートルにしても、先般もある炭鑛に火事が起つてモートルが燒けたのですが、そのときにすぐ自分の他の鑛區にあるモートルを運んできて直すといつたようなこともできるわけでありますが、これがあまり小さく獨立すると、人のものをもらつてこなければならぬようなことになりますので、そういう點についても考えなければならぬだろうと思います。なお最近インフレの結果、資本金の割合に賣上代金が大きくなつて、何倍ということになつております。たとえば戰前あるいは戰時中、年に千五百萬圓くらいの賣上高の工場が、今日では二億、三億という大きなものになつておる。固定資本はあまり變らないで運轉資金が非常に多くなる。そういうような會社があまり企業が小さくなると、莫大な運轉資金を得ることが容易にできるかどうか。こういうふうな問題もあるのであります。先般も二十何工場かもつておられるある相當な會社の社長がお見えになつて、お前のところは分割される、分割されれば幾つもの會社になるから、だれが社長になるかわからない、そして擔保ルートも少くなるから、貸すわけにはいかないというふうにしぼられまして、それからまたいろいろして金を融通していただいたようなこともあります。そんなことが起つてきますので、こういう點も重要かと存じます。特に定期的な修繕を必要とする工業、たとえば硫酸工業のごときは、たいてい三年に一度は、ほとんど一四半期、三月くらい休んで大修繕をしなければならぬというようなことがあります。そういう場合に一工場であればただちに金融的にまいつてしまうというようなことがございますので、要するにこれも分け方いかんということで、そういう點をこの集中排除法を適用され、持株委員會等において、よくお考えになつてやつていただきい。なおそういう點をよく考慮するために、今持株整理委員會では、排除法によつて分割される企業のみならず、日本全體の工場の分布状況とか、キヤバンテイを調べて、なおその中の一つの企業として、その會社の實態をよく身體檢査して、そうして適切な手術を加えるというお考えのようでございますから、またこれは相當の手術でございますから、たとえば賃金の例で申せば、盲腸炎を切るときには下しをかけて、すつかり拂つて掃除して、それから切ることが安全である。そうすると初めはからだも弱くなつておるし、一時經濟状態も悪くなるかもしれませんが、今度一遍切つてしまつておくと、あとはもうどんな運動をしてもいいようなからだになる。それと同じような考え方でやつていただければいいのではないか。實は先般來外國の相當の方が見えておりまして、日本に對する投資について大分お考えになつて、いろいろ相談を受けておるのでありますが、そういう場合にあまり小さくなると、投資その他見返えるのに非常に不便じやないかという點は、ちようど日本の銀行家たちも、あまり小さく分割されては貸しにくくなるということでありますから、當然ではないかと思いますが、結局そういうことを考慮に入れて、いかにして日本産業の再建をするかということを頭においてやつていただけば、差支えないのではないかと思います。それからまた現在では非常に原料等が足りません。たとえば脂油工業のごときは、大體多いときには油脂を年に四十萬トンくらいずつ使つております。現在割當は二十五萬トンくらいのものがあれば、先進國の三分の一くらいの油が使える程度でありますけれども、その油さえ現在ではわずかでありまして、工業用の方で大體二十萬トン前後使えるのがノルマルな状態であります。今のような先進國の何分の一の油を使うという状態なのでありますが、それの十分の一しかはいつていない、油の原料がないという状態であります。そういうわけですから、現在は各工場が遊んでおる。ほとんど十分の一の作業というくらいに遊んでおります。ですからそれが一會社になつておれば、ある工場は二割を働かし、ある工場は全然休ませるいうようなことができるのでありますが、そういう状態で今休んでおるものが多い。そういうような工業、また銑鐡の足りないために鋼材をつくる工場もそうであります。また板ガラスの工場などもやはりソーダがないためにいくつかの工場が休んでおる。工場が大きいと大きいからわける。こういうことになりますと、潰れてしまうような工場が起つてまいりますので、そういうこともよく考慮して、それが立ち上るときにはわかるけれども、それまでは當分わけなくてもいいとかいう措置を講じていただく必要があるのではないかと思うのであります。
 それからなお今度は一つの企業がいくつも工場をもつておる。その一つの工場が非常に大きいという場合であります。價格形體について今桑田さんからお話がありましたが、相當そういうものはあるのであります。ところがこれは一つの工場でもともと關連性があり、從横に原料が製品になり、その製品がまた他の原料になることもあるし、さらに分化していろいろ復雜な縦横の連絡がある工場が多いのですが、そういう六階建ての工場が、一階と二階と切られるということになれば、いくら大きい工場でも困るし、そういう工場ではたいでい動力、燃料關係、運輸、ボイラー、あるいは容器等、共通の場合が多いのであります。そういうものはできるだけわけないようにしていただかぬと困る。ところが一方に獨占禁止法でそういう大きな工場が一方に殘り、他の方の工場が非常に小さくなり、その格差がでてまいります。その格差を出さぬ方法を何とかしなければどうも困るとことがありはせぬか。ただいま私が申し上げた大きな工場が、他の小さな工場でもできるような製品をどんどんつくつている。つくり得るという場合であります。その大きな工場が原料關係あるいは熱源關係、あるいは技術關係で非常に優秀な地位に立つて、弱小工場がぶつ潰されてしまう。こういう結果を起すといわゆる集中排除の目的に合わないようになつてくる。これは三、三の方に申し上げておるのですが、その場合には他の小さな工場で同じ製品をつくり、工業のキヤパレテイを抑えていつたらいいじやないか。お前の方はやればほかのものはぶつ潰されるのだから、そういう一つの工場を縦横に切られたら作業に困るから、その工場を動せば一萬トンできるが、それを五千トンにして、あとの五千トンは十會社なら十會社でつくらせる。その五千トンしかつくつちやいかぬという制限をおいていつたならば、これは縦横に切られるよりはよほどいいのじやないかというような案をもつて、三、三の方にはお話申し上げております。
 それからいまひとつ今度の法律でできます指定期間の問題ですが、あれは一年間となつておりますので、いつ自分の方に指定がくるかわからぬという不安があるので、非常に心配なさつていらつしやる方もあるようですが、これはいろいろ安本でもお話なすつたでしよう。われわれも直接いろいろお話したのでございますが、どうしてもいかぬということですからこれはやむを得ぬと存じます。そうなつた以上は仕方がないから、企業者の方も空襲を受けたときと同じ考えで、いつくるかわからぬ。來たときは來たときという考え方でいくよりは仕様がないと考えております。
 かようにしてある程度の企業の分割は、かえつて日本再建を早める――實はこれはかなり前でございますが、じようだん話に、炭鑛などをやつている社長さんたちあたりに、それは各地方に炭鑛をもつていらつしやるのですが、石炭がなければ困るといつておるときに、社長さんが東京でいろいろ仕事をしておるより、むしろ坑内におはいりになつたらどうかということを申し上げたのであります。そういうことがまず勞働力をあげていくのにいいのじやないかと考えますので、そんなことを考えておるのですが、ただこれがわかれました場合にどうなるかが心配になる。今まで一會社をやつてきた人は、六年なり、八年なり、重工業あたりは二十年にもなるので、はたしてそれをしよつていく經營者ができるかが問題であります。工場長とか取締とかは、相當知識經驗をもつて、その工場についての知識經驗は十分おもちだと存じますが、金の問題、あるいは他の産業がどうなつているから自分の方はこういうように動くだろうという見透しをつけるとか、そういう知識經驗の少い方が、これからどうしても社長とか常務とかいうものにお坐りになることになるだろうと存じます。これは最初はやむを得ない傾向でございますが、何とかそういうことを早くわからせるという機關が必要ではないか。それでは排除の問題、獨占禁止法の問題その他から、民間の組合等は全部大體閉鎖機關にもつていかれることになつております。今まではそういうところで、東京に本部なんかできまして、政府と連絡し、あるいはG・H・Qと連絡して、こういうように動いておるからこういうようになさいということを、組合から各首腦者に傳える團體もあり、またA會社の社長が組合でこういう噂がたつておるからB會社も氣をつけなさいということができなくなる、そういう情報の交換ができなくなるし、情勢の變動をのみこませることが非常に困難だと存じますので、そういうものに對する準備も整えていかなくちやならないじやないかと考えております。近い中に安本を通じで將來の民間團體のあり方について、こういうあり方ならばよろしい。情報の交換、技術の連絡をする民間團體もよろしいということになると思いますが、今までの協議會、懇話會、いろいろございます。そういうものが閉鎖機關になりましたが、早くそれに乘り移りまして、そういうことを地方にいらつしやる方々、あるいは東京にいらつしやらなくても、そういうような御經驗のない方々にお教えし、お導きするような機關が必要だと思います。實は私先般來北陸方面をまわつてきたのでありますが、やはりああいうところをまわつて社長さんにお眼にかかると、ただいまは激動期ですが、その激流の流れを御存じない方が多い。ちよつと二時間ぐらい話しても得るところがたいへんあるから、また來てくれというようなことでありました。そういうことを早く知らせて經營をうまくやつていくことが必要ではないかということが一つであります。
 それからいまひとつ心配いたしておりますのは、すべての物資の配給とかその他を、今度は官廳でやることになり、いわゆる官僚統制ということになるのでありますが、今相當の會社がまだわかれておりませんが、そういう場合においても一抜官、一事務官が物資をわける權限をもつておりますために、いろいろ弊害が起つております。今まで經理會社が七、八千あるそうでありますが、一つの會社が二つになるものもあれば、あるいは十になるものもありましよう。そうして何千何萬という數になる。これが立派なお役人が割當統制もやつてくれるならば結構でありますけれども、そういう場合がないとすれば大きな弊害が起る。これを何とかして防ぐ方法を考えておかないと、日本の再建は非常に不合理な情實によつてやるようなことになつては、たいへんだということを心配しております。そういうてだても、民間としても、政府としても考えなければいけないのではないかと考えております。
 それからこれは大きな會社でもございますが、大體小さな會社は、先般來新物價體系になる前は非常に各社マイナスでありましたために、たいへん苦しかつた。ところでどちらが一部分の製品をやみに流しておるかというと、もちろん大きな會社でもいろいろな例がございますけれども、小さな會社が苦しまぎれにやるのが多かつたのでございます。そういうことになるとよほど流通秩序の確立をうまくやりませんと、やみ物價が横行することになりはせぬかと心配しております。こういうことに對する相當の手を打つておかなければならないのではないかと考えます。先般も、今は第一線にはおられませんけれども、元は相當な地位におられた方にお目にかかつたのですが、今度の集中排除法は日本再建の救いの神であるというお話がありました。そればかりではありませんけれども、一部の眞理があるのではないかと考えますので、これを遂行するときのいろいろのものの考え方なり示唆なりについて、十分遺漏ないような方式をとつていただくことと、これができ上つた後に將來いろいろ起り得べき弊害なり弱點に對して、これを補う方法を講じていただく、こういうことをやつてまいれば適當にいくのではないかと考えております。ただわれわれとしては、一つの工場が大き過ぎるということによつて理不盡に切られるようなことのないように、しかしながら先ほど申し上げた通り、要するに生産力を一時は減退してもあとはよくなるし、日本の再建を早くするためにやるのだ、こういうプリンシプルが明らかになつておるのでありますから、適當な方法、たとえばいろいろ意見を聽くとか、公聽會を開くとか、困る事情を訴えられれば何とか方法を講じてやるとかして、これを適切に運用して、ある程度において分割し、そうなつたときの跡始末をどういうふうにするかということを考えていつたらよいと思います。
#54
○北村委員長 今本會議が開かれておりますので、今日はこの程度で散會したいと思います。
    午後二時二十九分散會
ソース: 国立国会図書館
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