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1947/08/02 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会 第8号
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1947/08/02 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 財政及び金融委員会 第8号

#1
第001回国会 財政及び金融委員会 第8号
昭和二十二年八月二日(土曜日)
    午前十時四十八分開議
 出席委員
   委員長 北村徳太郎君
   理事 島田 晋作君 理事 中崎  敏君
 理事 梅林 時雄君 理事 早稻田柳右エ門君
   理事 塚田十一郎君 理事 吉川 久衛君
      川合 彰武君    川島 金次君
      河井 榮藏君    佐藤觀次郎君
      西村 榮一君    松尾 トシ君
      泉山 三六君    島村 一郎君
      周東 英雄君    鈴木 正文君
      苫米地英俊君    宮幡  靖君
      石原  登君    河口 陽一君
 出席國務大臣
        大 藏 大 臣 栗栖 赳夫君
 出席政府委員
        大藏政務次官  小坂善太郎君
        大藏事務官   前尾繁三郎君
    ―――――――――――――
七月三十一日
 救國貯蓄運動に關する決議案(松田正一君外四
 十六名提出)(第五號)
 健全財政、健全金融に關する決議案(淺沼稻次
 郎君外十名提出)(第八號)
 勞働者災害補償保險特別會計法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出)(第一八號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 生命保險中央會及び損害保險中央會の保險業務
 に關する權利義務の承繼等に關する法律(内閣
 提出)(第七號)
 金融機關再建整備法の一部を改正する法律案(
 内閣提出)(第一三號)
 健全財政、健全金融に關する決議案(淺沼稻次
 郎君外十名提出)(第八號)
 勞働者災害補償保險特別會計法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出)(第一八號)
 昭和二十二年度追加豫算に關する件
    ―――――――――――――
#2
○島田委員長代理 これより會議を開きます。
 その前にちよつとお斷りいたしますが、委員長が所用のために遲れますので、その間しばらく代理を盡さしていただきます。
 なお委員長から當財金融委員會の專門調査員といたしまして氏家武氏を御推薦になりましたので、御紹介申し上げます。氏家氏は皆權もはや御承知と存じますが、前には大藏省の國民貯蓄局長、最近におきましては日本勸銀の理事をなされておりまして、ちよつと御紹介いたします。
    ―――――――――――――
#3
○島田委員長代理 一昨三十一日本委員會に付託されました勞働者災害補償保險特別會計法の一部を改正する法律案を議題にいたしまして、まず政府の説明を求めます。小坂政府委員。
    ―――――――――――――
#4
○小坂政府委員 勞働者災害補償保險特別會計法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 改正の第一點は、勞働者災害補償保險特別會計の管理大臣の變更に關する改正であります。すなわち第九十二囘帝國議會の協贊を經て制定せられました勞働者災害補償保險特別會計法は、本年七月一日から施行せられまして、同法に基いて設置せられました勞働者災害補償保險特別會計は、厚生大臣の管理に置かれておるのでありまするが、近く勞働省の設置せらるるに伴いまして、同特別會計の管理大臣を勞働大臣に變更するために、所要の改正を行わんとするものであります。
 改正の第二點は、勞働者災害扶助責任保險法に基く勞働者災害扶助責任保險事業經營に關する歳入歳出を、勞働者災害補償保險特別會計において經理することにつきまして、所要の改正を行わんとするものでありまして、勞働者災害補償保險特別會計法は七月一日から施行せられまして、それと同時に同法附則の規定によつて、從來の勞働者災害扶助責任保險特別會計法は六月三十日限り廢止せられたのであります。これは七月一日から勞働者災害補償保險法が施行せらるることを前提としてとられた措置でありましたが、御承知の通り同法は勞働基準法との關係から、その施行の期日が延期せられました關係上、勞働者災害補償保險法の附則で廢止せられることとなつておりました勞働者災害扶助責任保險法も、その廢止の時期が延期せられましたために、七月一日から同法が廢止せられるまでの期間における勞働者災害扶助責任保險事業經營に關する歳入、歳出を、便宜上勞働者災害補償保險特別會計に含めて經理することにいたさんとするものであります。
 以上の理由によりましてこの法律案を提出いたしました次第でございます。何とぞ御審議の上、速やかに御贊成あらんことをお願い申し上げます。
#5
○島田委員長代理 これより質疑にはいります。ただいま政府から説明されました法案に對する質疑はございませんか……。
 では暫時休憩いたします。
    午前十時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時七分開議
#6
○島田委員長代理 これより再開いたします。
 本委員會にかかつておりまする諸法律案に關する質疑を續行いたします、石原君。
#7
○石原(登)委員 生命保險中央會及び損害保險中央會の保險業務に關する權利義務の承繼等に關する法律案に關連いたしまして、この際二、三質疑をいたしたいと思います。現行法によりますと日本の保險業者はそれぞれ生命保險あるいは損害保險、さらにまた銀行業は兼務はできないというような規定になつておるようでありますが、こういう例を外國に見ますと、外國はすべてこういうような兼業を許しておるようであります。日本でこの兼業を許さない理由を一應承りたいと思います。
#8
○小坂政府委員 お答え申し上げます。ただいまの御質問でございますが、われわれの考えといたしましては、大體性質が異つておるという點に基礎をおいて考えておるようであります。たとえて申し上げますれば、損害保險の場合でございますと、これは商業的な性質のものであります。生命保險の方は數字に基礎をおいたものである。性質を異にする。殊に銀行業と保險業というものは、やはりこれまた別箇の性質のものである。でありますから一つの業務における損失を、他の異つた性質のものから補充するということは、穏當でないというような考え方から、これを別箇に扱つておるのであります。
#9
○石原(登)委員 私はかように思うのでありますが、大體講和會議も近く開かれることになると思うのであります。そうなるといきおい外國商社が日本に進出いたしまして、從つて保險業を取扱う外國の會社も、相當日本にでてくると思います。そういう場合において日本の保險の經營というものは、お互いこういう工合に別々にわかれておる關係上、その維持費とか、あるいは經營形態という關係において、相當外國にに太刀討できないものがあると思うのであります。私の調査によりまして日本の保險料は世界第一番でありまして、こういう状況において今後日本の保險業務を繼續するということは、これはもう業界自體の破壞でありまして、とうてい太刀討できないとかように考えます。しかも日本人は今日は特に對外的に、ちやうど明治初期における外國を拜むというか、そういう思想が濃厚でありまして、日本の保險會社はだめなんだ。たいへんな損害をこうむつておる。こういう際は外國の保險會社に常に有利であつて、しかも保險しやすい。こういうような實際的と、それからそういうような宣傳でこられたら、とうてい日本の業務として立ち行けないと思つておるのであります。こういう問題に對して、はたして政府はどういうような考え方、どういうような策をもつて業者を保護しようとされるのか、そのことについて一應承つておきたいと思います。
#10
○小坂政府委員 お答え申し上げます。近く外國貿易が再開されるということになりますと、今までの日本の國内だけで生存しておつた、こういつた基礎がすべて變つてくるのでありまして、直接世界的な市場の中にある日本を考えなくてはならぬ。そういう場合に外國の商社等が、今御指摘の保險事業にも進出してくるという場合は、これは當然豫想されるのでありまして、その場合の日本の保險のあり方というものに對しての御質問ごもつともと存じまするが、われわれといたしましては、ただいまのところ極力この現在の金融機關を整備する。御承知の金融機關再建整備法を著々と實行いたしまして、その不良な資産をすべて洗つて、ほんとうにきれいな一本のすつきりした形の金融機關を再建する。そういたしまして金融機關のコストというものを極力切り詰めて、コストの安い營業を成り立たしめるように指導していくという考え方でおるのであります。なお外國の商社が出てまいりまして、こちらに投資いたします際のいろいろなことも考えられるのでありますが、われわれといたしましては、極力外國商社については日本の物件を對象としない保險を考えてもらうように懇請いたしておるような次第であります。さような考えでおります。御了承を願いたいと思います。
#11
○石原(登)委員 これはひとり保險業務だけに限らず、日本のすべての事業經營は今日非常に行き詰つておるようであります。それは負擔するとこるの經常費、いわゆる經營費の面がたいへん厖大な數字に止つておるのでありますが、これは人件費その他、われわれが考えてみましても、まつたく氣の毒な状況にあると思われるのであります。こういう見地からただいま禁止されております信託業務、あるいは銀行が他の保險業務を行うということは同種の業務であります。なお會社の實情を見ましても、保險業務を行つておるようなところは、必す同一關連の資本をもつて銀行あるいは信託を經營しておるのであります。銀行が信託を經營しておるものは、また同樣の資本系統をもつて事實保險業務を經營しておる。こういうことになりまして、これを一緒にまとめることにおきましては、相當むだな費用が省けるのではないか、そのむだな費用を省けることによつて、安い保險料が當然できてくるのであります。安い保險料ということは、とりもなおさず國の文化というものに相當の影響があると私は考えられますので、これまでのいわゆる平和日本の時代の考え方を相當訂正されまして、今後はなるべく合理化した經營があらゆる面に行われなくてはいけないということを強く痛感いたします。大藏當局におかれましても、この問題はさらに御檢討いただきまして、なるたけ節約して業務が遂行できるような線に御努力願いたい、かように希望いたします。
#12
○小坂政府委員 ごもつともな御意見と存じます。保險に限らずすべてこの日本の産業が、新しい世界經濟の中に出ました際のあり方について考えてみると、これは保險に限らずあらゆるものが極力合理化した形において存在しなければ、到底その競爭力を發揮し得ないことは考えられる次第でございます。しかしながら今御指摘のすべての保險を一律にするということは、業務の性質上から申してこれは相當研究を要することではないかというようにも考えております。御指摘の點はおそらく營業費を節約するという點にあると思うのであります。これは全く同感でありますが、ただ保險業務の性質の點が違うので、いろいろな保險を一緒にすることによつて、はたして非常に合理的な經營ができるかどうか、お互いに違う性質のものだから、違つた性質のものの損失を補償していくことが、はたしていかがかという點については、われわれも檢討してみたいと思います。
#13
○宮幡委員 酒類配給公團法に對してお尋ねしたいと思います。よろしゆうございますか。
#14
○島田委員長代理 酒類配給公團法に對してはいろいろ質疑がありますし、まだ主税局長がまいつておりませんから、なるべく今まで正式にかかつているのと、それから今大臣もお見えになりましたから、大臣に對して直接御質問のある方は先にしていただきたいと思います。
#15
○宮幡委員 それでは私の質問は保留しておきます。
#16
○石原(登)委員 議事進行でちよつと發言いたしたいと思います。私ども漏れ聞くのでありますが、追加豫算の編成に當つて非常に重大な障害にぶつかつている、かようなことを聞くのでありまして、このことはひとり豫算委員會ばかりでなしに、われわれの財政金融委員會に非常な影響をもつのでありますから、私はこの眞相、あるいはこの事實があるかどうか、こういうことに對して大臣から御説明願いたいと思うのであります。
#17
○栗栖國務大臣 そういう大きな支障に今ぶつかつておらぬのでございますが、私はいろいろ機會をとらえて、今度の追加豫算が財政金融の面にどういう影響を與えるか、あるいは財政金融の面からこの追加豫算をどういうように考えたらいいか、その他の點についても、とくと皆樣の御意見を承りたいと思いまして、實はその機會を小坂次官にもお願いしているような次第であります。今ここに機會を得ましたので、今度の追加豫算その他についての、財政金融に及ぼす關係などを少し述べさせていただきたいと存じております。
 實は今度の追加豫算は、各省の要求などを合しますと、千億圓をはるかに超えるような大きな數字でありますが、このインフレーシヨンを財政金融の面において切り拔けるということの上におきましては、私はまず中央の財政の健全化をはかる、そしてさらに地方財政の健全化をはかるということと同時に、この金融の面においても、金融の健全化をはかる、こういう三つの面が非常に必要だと考えているのであります。それを促進する裏におきましては、あるいは裏づけにおきましては、貯蓄の増強ということが非常に必要だと考えております。さらに貯蓄の増強につきましては、循環的論法になりますけれども、通貨の信用をできるだけ維持し、通貨の安定の線に向つてできるだけの施策を考えていきたい、かように考えたのであります。そうして最初に逢著した問題が今度の追加豫算の問題であります。追加豫算は、先ほど申しましたように千億を超える各省の要求があつたのでありますが、まず追加豫算といたしてはこの要求を收入の範圍に大體限定をいたしまして、赤字公債の發行とか、赤字財政を避けるという面に非常に努力をいたしておるのであります。そうして收入もしかし漫然たる收入でなしに、いわゆる税務機構の強化、いわゆる質とか量とかいうものを強化いたしまして、極力税務機構の力を發揮いたしまして、しかも平常の財政においては考えられないような税の徴收というようなこと、あるいは税種というようなことも考えたいと思つておるのであります。それで、あるいは所得税、増加所得税というものにつきましても、追求をいたしておるような次第であります。それから増加所得税につきましては、個人のみならず、いわゆる法人、會社であつて、インフレ利得を相當いたしておるものに對しても、随時追求をいたして調査をし、この増加所得その他をあげたいと思つておるのであります。それと同時に、臨時の所得に對する特別の課税をいたすか、あるいは所得税の税率引上によつてそれを行うか、あるいはそうでなしに特別の利得税ということによつてその目的を達するかということも、ただいま研究中でございます。いずれにしましても、そういうインフレ利得者に對する課税は手をゆるめないつもりでおるのであります。さらに非戰災者の家屋、あるいは非戰災者に對する課税をも考慮いたしたいと、いま研究中であります。かようにいたしまして、でき得る限り税の收入という上に力を注いでおりますと同時に、專賣のことにつきましても、專賣益金をあげるために、酒とかタバコ、さらにまた新しい甘味料に對する專賣というようなことも考慮いたしておりまして、ただいまいろいろ研究いたしておる次第でございます。大體ただいまのところ七百億を足るか足らぬかのところで、今囘の追加豫算はできあがるのじやないか、こういうように考えております。
 それと同時に特別會計の方の問題であります。これも本内閣の緊急對策にありますように、これを黒字化していく、こういうことであります。特別會計として大きい問題は、鐵道の會計、遞信の會計、それから林野に關する會計があるのであります。こういうおもな三つのものについても、極力經營の合理化――こういうものは一種の官業でありますから、經營の合理化という點に力を注ぎまして、冗費を省き、官業でありますから、ただちにこの際赤字を除くというまでには至らぬと思つておりますけれども、しかし一定の年次をおいて、一定の計畫の下に黒字化していつてこれを健全というところに取りもどしたい、こういうように私ども考えておる次第であります。そして今度の追加豫算を出します際には、そういうような特別會計のものも一緒に合わせて出しまして、皆さまの御意見を十分に聽き、十分たたいていただいて、協賛を得たいと考えておるような次第であります。
 さらに金融の面でありますが、まず國家の財政から申しましても、今日まで國家の財政がただ形式上つじつまを合わすという點に急であつたために、いろいろそれが金融の面において、やはり隱れて通貨膨脹の原因をなしておるものが多々あるのであります。たとえてみますと、政府として支拂ができない。それがために金融の面において、財政資金で賄うべきものが、産業資金で賄われておる、こういうものもあるのであります。たとえてみますと、政府の支拂をするはずだけれども、豫算に計上が遅れておるとか、あるいは豫算の關係上便宜借入金で賄われておる、こういうことは今日までいろいろ調べて見ますと、非常に大きな金額になつておるのであります。復興金融金庫というものがありますけれども、復興金融金庫の賄いも、全部が全部必ずしもほんとうの産業資金で、普通の銀行業務としてできないものを賄つていくというのでなしに、財政資金の尻を復興金融金庫が拭つておる。すなわち財政資金を産業資金で拭つておる。從つて産業資金が足らざるところのものがある。こういうような點も多多あるのであります。これも私はぜひ改めたい。ぜひこれも健全な所に、常道に取もどすことに努力いたしたい。こういうように考えておる次第であります。昨今非常に産業資金が足りないという話があるのであります。これは事實であります。これも産業資金貯蓄の増強という面において、もつともつと國民にお願いしないとできない點があると同時に、政府の財政資金で賄うべきところを産業資金で賄うために、産業資金が不足しているという點が相當あるのであります。これも、すでに私がいろいろ申しておりますように、政府の支拂の遅れておる點も合理的に調査をいたしまして、そうして拂うべきものはこれを拂つて、財政資金の尻を産業資金で拭うというようなところを是正してまいりたいと、ただいまいろいろの手續をいたしておるような次第であります。こういうような、中央の財政の尻が産業資金で拭われ、さらにそれがこの産業資金を壓するというようなことにもなつておりますので、これを是正すると同時に、また地方の財政が非常に紊亂をいたしまして、そうしてその負擔が大きくて、そうしてその尻をこれは各金融機關がまた拭つておるという點も相當あるのであります。各地方銀行、各銀行、日本銀行においてあるのであります。これも同時にその地方の財政をも健全化していきまして、そうしてそういうような財政資金と産業資金との食違いを是正いたしたいと考えておる次第であります。それと同時に、地方の現状を見ますとはなはだ寒心すべき點がございますので、そこで何とかこれを是正しなければならぬというように考えております。そうして、まあ六・三制の問題にしましても、かりに地方財政に一部を負擔させましても、それは單に漫然と負擔しておくというのでなしに、やはり、地方財政で税その他の收入によつて賄えるものは賄わしめる、さらにできないものは起債によるというような場合には、裏づけのある金、すなわち預金部その他の資金をもつてこれを裏づけを約束しまして、そうして相當長い起債をさせて、その結果ただちに地方民に急激な、そして重い負擔をかけさせないようなことも考慮したいと思うのであります。
 それと同時に金融全體といたしましては、各種の企業というものも、國家の財政と同じように再建整備の線に沿うて、經營を合理化していかなければならぬと思うのであります。これがやはり進まない點が多々あるのであります。この際は商工當局、その他産業關係省當局とも連絡をとりまして、企業再建整備の線に沿うて極力合理化していく、それと同時に資金の面においても必要なものは、そういうものの線が進むに應じて出していきたいと考えるのであります。赤字金融は極力抑止いたしたいと思いますけれども、再建整備の點において必要やむを得ない資金は、これはやはり考えていきたい、こういうように思う次第であります。赤字金融を抑止して健全金融を確立するという點は、大本としてもちろん極力やつていきたいと思いますけれども、物價の改訂とか、あるいは再建整備の途上ぜひ必要な事業であつて、しかも資金がどうしても要る。その資金は普通の金融業としては出せないというような場合も豫想されるのであります。これは大きな面から見まして、例外的にその金融は取上げて疏通をはかりたい、こういうように考えるのであります。もう一度申しますと、私は赤字金融のごとき不健全なるものは極力避けたいと思います。企業再建整備とかあるいは産業のためにぜひ必要なものは、これは例外的に疏通をはかつて遺憾なからしめるようにいたしたい、こういうように考えておる次第であります。かようにしていろいろ考えてみますと、健全財政、地方の財政の健全化、金融の健全化という點を名實ともに進めていつて、そうして他方において企業再建整備を進め、生産の増強あるいは傾斜生産に向つて重點的に力を入れまして、そうして生産の面と同時に金融、財政の面においても整備をいたしまして、このインフレーシヨンの波からそれを抑え、さらに進んではこれを救い上げ、新しい日本の經濟を再建する方向に向いたいと考えておる次第であります。
 なお平價切下げその他についてのいろいろ流説も出ておるのであります。現在通貨の事實上の價値が下つておるということは、これは間違いない事實であります。しかし事實上の價値は、通貨量と物の量との關におきまして上下するのはこれは常であります。しかし切下げというがごとき法律上の手續を經てする――事實上の價値が下つておりますから、今直ちに平價をそれに沿うて切り下げるというようなことはもうとう考えておりません。通貨改策としても通貨の安定、通貨の信用を維持するという線に向つては、財政、地方財政、金融その他の健全化、生産の増強、こういうような點と相まつて進んでいきたい、こう思つておる次第であります。なお國内的情勢のみならず、國際的情勢をも取込んで通貨の安定というようなことも考えてみたいと思つておる次第であります。
 大體そういうような線に沿うて、またそういうような基礎の上に立つて追加豫算を今立つておるのでありまして、それが非常に重大な支障にぶつつかつておるというようなことはございません。ただいろいろな方面との折衝も要しますので、時間がいま少しかかる、こういう状態でございます。簡單でございますが、お答えいたします。
#18
○西村(榮)委員 ただいま大藏大臣の御説明を承りまして、大略大藏當局の追加豫算の編成の方針、竝びに將來の健全財政のとり方については大體贊意を表するのであります。ただここに二三明らかならざる點を明らかにして、現内閣の進むべき道を明示してもらいたいと思うことは、大藏大臣の氣づかれたごとく、從來までの單に收支のつじつまを合わすという健全財政に對しては、ここに一大反省をしなければならぬ段階に來ておるのでありますが、同時にここに考えなければならないことは、その同じ健全財政のとり方においても、財戰國の混亂經濟と、戰勝國あるいは平和時における通常の國家の健全財政とは、おのずと別にして考えなければならないと思います。そこで現在一番惱んでおるものは一體何かと言えば、これは大藏大臣もお氣ずきになつておるのでありますが、産業資金の枯渇です。申し上げるまでもなく今の千五百億圓前後の通貨の發行高、竝びに現在の一千六百億前後の公債の保有量の面からは、私はインフレーシヨンは大して懸念すべきものではないと思う。ただ問題が、インフレーシヨンの將來の一大轉換をなすものは、縮小再生産過程の急速なる進展ではないか。そうすると現在において非常な産業資金が枯渇しておる。いかにしてこの生産縮小の過程をどの線で食い止めて上昇線にもつていくかということが、私はインフレーシヨンを解決するキー・ポイントと思う。そこでこれに對する國家の豫算は、相當積極的な對策をとられても差支えないのではないか。先ほど私は一千四百億圓の現在の通貨の發行力においては、この通貨の面から見て、インフレイシヨンというものは懸念すべきものでないということを申し上げたのでありますが、戰前におけるところの通貨の發行力を中心として考えて見て、昭和九年から十一年の物價の基準量、すなわち主として米を考えてみて、現在の米の時價から考えてみますると、私は大體發行能力は物價の面から言つて一兆三千億圓くらいという厖大な數字になるのではないかと思う。但し生産ががた落ちしておるから、その四分の一の生産力と見て、大體三千億から四千億というものは、現在の國民所得竝びに生産その他から見ても、通貨の量から見れば大して懸念すべきではない。それから公債の保有量からいきましても、第一次歐州大戰においては主要國家の公債の保有量は、その國民所得の一八〇%から二二〇%、今度の世界大戰爭後におきましてもイギリス、フランス、その他の主要國家の豫算の状態から見ても、同じく大體百六、七十%から二二〇%の率を保つておるのであります。そうすると昨年の大藏當局の豫算の編成のときに、わが國の昭二十二年度の國民所得は、四千億ないし四千五百億と押えられた、これから見ると現在の公債の保有量はそんなに懸念すべきでない。以上の見地に立つて、最も懸念しなければならぬことは、産業の縮小の過程をどこで食い止めるかということである。その意味において國家財政竝びに通貨というふうな面から見て、相當な犠牲を拂つてもこれは何ら懸念すべき事態が出てこない。そこで私は率直に言うが、將來健全財政ということに對して、大藏大臣は再檢討を要する段階があるということを今言明されたのですが、それを竿頭一歩を進めて、しからば産業復興に對して資金の追加、信用を加える、資金を放出するということについて、どういうふうな御方針があるか。それに對する具體的なものはなくとも、どうして理解をさせるか、その點を承りたい。もちろんそれには現在のような、外國貿易と立ち行かないような企業とを整備しなければならない。申し上げるまでもなく、現在の下痢的な症状に對する産業界の健全化をはからなければ、なんぼ榮養を與えてもこれは危機を延ばすだけでありまして、意味をなさない。責任ある政府の言明としては、今言明はできないかもしれないが、左手においては企業の整備を斷行するとともに、右手においては民間あるいは政治的な、戰勝國家のクレジツトという問題とにらみ合わせて見て、將來の日本の産業復興資金というものに對し、相當積極的にインフレーシヨンを食い止めるために、對策を講ずるということの考え方があるか。まずこの一點をお伺いいたしたいと思います。
#19
○栗栖國務大臣 お答えいたします。産業金融につきましては、私もほとんど三十年近い經驗をもつておるのであります。今のお尋ねに對しては、ちようどいい機會でありますので、ここに私の抱いております方針を申し上げてみたいと思うのであります。
 大體現在の再建整備の途上にある事業が、どういう状態かということをまず申し上げないといかぬのであります。私も興業銀行時代には、百以上の再建整備會社の特別管理委員をいたしておつたのであります。つぶさに工場を見、つぶさに資金の落ちぐあいも見ておるのであります。そうしてみますと、非常に整備の進んだ、そして轉換をもいたしておる事業もあるのでありますが、多くの事業は、再建整備をいたしますのについて、經理面においては相當の進みを見せておりますけれども、事業自體の再建整備というものは、進みを見せておらぬのであります。そうしてたとえてみますと、業種轉換をいたすにしても、いかなる事業に轉換すべきかという、當時國家的の一つの大きな縮小されたる産業計畫というものができておりません。そこで何をしていいかということがわからぬために、ただその日暮しの仕事、雜種の製品をつくつておるようなものがあるのであります。さらにまた未動資産として大きな工場を抱えております。その中の稼働するものはごく一部である。こういうために、いくら働いても赤字で、なかなか黒字にならぬ。こういうようなものもあるのであります。それからさらに賠償その他の點がはつきりしないために、この未稼働の工場を抱えてどうにもならぬというものがあるのであります。これは今度の政府といたしましては、企業再建整備の將來の在り方というものも大體考えまして、そうしてその線に沿うて再建整備の指導を政府がするまた民間でもその線に沿うて、受けて、立つていただきたいと思うのであります。そうして單に經理面の整備でなしに、企業自體の整備というものを大いに促進せねば、この際どうにもならぬと考えるのであります。官業につきましても、經營の合理化その他によつて即應いたします。それと同時に、この難關を切り拔けるためには、民間企業の再建整備のためにも、ひとつ思い切つてやつていただきたいというように考えるのであります。それに對する金融でありますが、ただ一時そういうものを抱えておつて、經費その他が足らぬからというので、漫然と赤字金融を要求されておるような點が多々あつたのであります。これを私は改めてもらいたいと考えるのであります。そうしてもしその再建整備のためにぜひ必要な資金、企業面の再建整備が進むと、それに從つて必要な金融面の資金が必要ということになりますならば、これは申すに及ばず、何とかして資金の疏通をはかりまして、御不自由をいたさないように考えたいと思うのであります。そうしてその金融の面にあたりまして、普通の銀行業務として金融し得ざるものにつきましては、極力復興金融金庫によりまして融通をいたしたいと考えるのであります。それから普通の金融業務として取扱われるものにつきましては、各種の金融機關を動員いたしましてそれをいたしたいと考えるのであります。各種の金融機關も、産業面において再建整備に本力がはいつて進むならば、やはり貯蓄の増強にも邁進をして、そうしてその金融の疏通に遺憾なからしめるということに協力をしてもらいたいと私は考えるのであります。そういうふうにしまして産業の面の整理、經理面の整理を大いに促進する。そうして必要なる資金は、そういう面に沿うては出す。こういうふうに考えておる次第であります。簡單でございますが、お答えいたします。
#20
○西村(榮)委員 クレジツトの問題その他についてお尋ねしたいのですが、これは時機を見てやりたいと思います。次に、せつかく大臣がお見えになりましたからお尋ねしておきたいことは、貿易再開とともに、いつかは國際的に日本の經濟が進出していかなければならぬのですが、いろいろその點においては考慮すべき點がありはしないか。ただ一點私があなたにお伺いしておきたいことは、將來日本民族の最低生活を保障して、輸出の原動力になつて、日本の經濟を支えていく日本の民族資本の問題をどう取扱つていかれるか。率直に言いましよう。今東洋紡その他の日本の一流會社の株は進駐軍の煙草一個に値してない。とんとんである。そこて現在の為替勘定とインフレーシヨンの問題からいつて、そういうような現實とにらみ合わせてみて、一體日本の民族資本を、この敗戰國の中において三年なり五年なり後に日本が起ち上つて――もちろんアメリカの指導のもとに日本の産業は徐々に囘復していかなければならぬのでありますが、そういうような將來を考えてみるときに、現在のこの異常なる日本一流の、將來の日本經濟を支える一流會社の株が煙草一個に値しないというような状態をその後自然の状態に任せておくと、日本の民族資本の移動が將來起る。これによつて日本政府は苦境に立つと思うのでありますが、そういうような面から見て、昨年の議會で通過しました四百五十五億圓の解體財閥、その他の持株會社の整理とこれとにらみ合わせて見て、可能な限りにおいてこれらの將來の、僕も言いにくいが、日本の民族資本がこの嵐の中にどう護られて、三年なり五年後に健全なる状態に建て直るか。それに對して何らかの對策を講ぜられておるか。可能な限り、差支えない限り御説明を願えれば、今日の日本國民は大體安心すると思う。
#21
○栗栖國務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問とまつたく同じ趣意のものを、昨年の十二月に貴族院で私は石橋前大藏大臣に質問いたしたのであります。私はこの點につきましても非常な關心をもつておるものであります。私は今囘の企業再建整備、もつと言いますならば補償打切りによる一連の政策を實行いたしますとまた財閥解體獨占禁止、そういうような方面の一連の政策を實行いたしますと、從來の資本層というものはまつたく覆滅いたしてしまうと申しても差支えないのであります。しからばこの日本の産業を再建するためには資本はぜひ必要であるが、いかなる方面にその資本を求めるかということは、當然考えなければならぬ問題であります。私はそこで昨年の十二月にも、當時の大藏大臣に對して、新資本層形成に關する政府の意圖いかん、こういうことを質問いたしておるのであります。私は今囘はからずも大藏大臣の重任を擔いましたけれども、この點については非常に關心をもつておるのでありまして、ただいまの現状を申しますと、今お話のごとく、まず特株委員會における特株の處理いかん。それから、さらに閉鎖機關の持株の處理いかん。それからさらに金融機關その他の持株の處理いかん。こういうふうな既存の株の處理と同時に、新たに企業再建整備の結果増資を必要とする企業も多數あるのであります。あるいはいわゆる第二會社も設立するの必要のあるものも多數あるのであります。そういうような増資株、あるいは第二會社の新株の募集、その他に遺漏なからしめるためには、どうしても國民貯蓄ということで、國民に廣く訴えなければならぬと思うのであります。從來の日本の會社設立の内情を詮索いたしてみますと、國策的會社であるならば政府が一部株を持つ。そうでない會社であるならば、いわゆる財閥とか地方の事業家などが株を持つ。そうしてその一部をいわゆる公募しておるにすぎないのであります。今囘の財閥解體あるいは獨占禁止の線に沿いますと、そういうようなイージー・ゴーイングはまつたく許すべきことではありません。どうしても廣く國民に呼びかけ、そうして資本の民主的募集ということをいたさないといかぬと私は思うのであります。私が新資本家層の形成というのはこの意味であります。そういうことをしますには、まず第一に機構の充實ということが必要でありますので、先日もそういう意味において、證券業に携わる人の責任を再確認してもらい、その責任のもとにただいますでに問題になつております新株の募集、その他についても大いに奮鬪してもらいたいという意味で、取引所關係のところのお集まりに出たような次第であります。今囘いろいろと證券機構ということにつきましても檢討をし、この方針もはつきりし、機構をも強化して、そうしてこの線に沿うて新しい資本家層の形成、すなわち資本の民主的募集、廣く國民に訴えて募集する、こういうことを實現いたしたいと考えております。なおそういうような意味におきまして、近く第二四半期の資金計畫をも立てますけれども、その中におきまして貯蓄増強といえば、郵便貯金とか、銀行預金とか、金錢信託とか、こういう面だけでなしに、増資株、あるいは新株、その他の必要もあると思いまして、そういう面における資金のわくをもつくり、少くともその線に沿うて證券業者の奮起と責任のもとに、この増資あるいは新株の募集を完了してもらいたい、こういうような意味でこの計畫も立てておる次第でございます。なおクレジツトの問題でございますが、これも民間におります時に私もいろいろ研究しましたし、いろいろな團體にも加入をいたしておりました。これは新資本家層を形成するという面におきまして、どうしても一時輸血が必要である、あるいは長い間でも輸血が必要だというようなところにおきましては、そういう面において將來日本が再建整備にまつしぐらに進むと同時に、またそういう點の導入をも懇請してみたいと考えておるのであります。それからただイージー・ゴーイングに陷つて、今の新株募集とか、從來の株の處分というようなことをなおざりにしまして、日本の株が民族全體の經濟から見て、好ましからざる方面に流れるというようなことは、これは嚴に愼まなければならぬと考える次第であります。
#22
○島田委員長代理 西村君、實は時間がありまして、また大藏大臣は次の機會もございますし、ほかに前からの通告者もございますから……。
#23
○西村(榮)委員 もう一點だけ……。大藏大臣が見えたので十分お尋ねしたいと思いますが、時間の關係上次の機會に讓ります。
 最後に今お話になつた貯蓄奬励の問題、これに關連して、私も若干その方の仕事をやらされておるので今大藏大臣の方針を承りましたが、まず私は結論を言いましよう。今非常に金利を上げるとかいうようなうわさがあるのですが、金利をお上げになるのか、あるいは從來の低金利政策というものを維持していくのであるか、時間の關係上私の意見を申しましよう。私は預金吸收の面からいけば、金利を上げる方が吸收にいいんじやないか、こう思うのであります。しかしその金利の上げ方は、現在の預金者の心理を滿足せしめるという程度に上げていくにはたいへんなことであつて、そこまで上げるといわゆるインフレーシヨンに附隨して金利を上げていくということになれば將來の日本の産業は立つていかない。そこで日本が今日まで産業を育成して來た原動力は低賃金と低金利であり、後進國としてはかなり金利が安い。ここに日本の産業がかなり有利な立場にある。そこでいろいろな面から言つて金利を上げない方がいい。同時に預金者の心理をとらえていつて、同時に銀行の經理面を考えてみると、どうしてもこれは金利を上げなければならぬ。その惱みを一體どこで片づけるか。そこで私は金利を上げないで、預金者は金利よりもインフレーシヨンの方針と自分の預金額面による財産とが、どうくつついていくかというところに重大な懸念がある。同時に銀行の業務としては現在のインフレーシヨンによる事業の高からいつて、預金金利と貸出金利がこのままではやつていけない。そこでこのやつていけない銀行をどう健全化するか。同時に一面においては日本産業の將來を考えてみると、低金利を維持していきたい。この問題を大藏當局はどうお考えになるか。
#24
○栗栖國務大臣 簡單にお答えいたします。まず金利の問題でございますが、戰時中に行われましたいわゆる低金利政策というものは、終戰後の今日の情勢には合致いたさぬと認めたのであります。しかしながら昨年來の市中金利の情勢を見ますと非常にでこぼこがあると同時に、非常に高く金利が上のぼつておるというような現状もありますので、この際金利は必要程度引上げなければならぬと同時に、あまり高くはね上げるようなことは抑えないと、産業その他の面に、ことに再建整備の途上にある産業の面などに影響が大きい。また國債の金利などの點から見ましても財政負擔が多くなる、こういう點がございますので、先般まず國債の金利を四分五厘ベースに大體おいたのであります。今までは三分五厘の國債で三分六厘七、八毛のところの利囘りでありましたが、それを四分五厘ベースにおいたのであります。それによりまして大體他の金利、地方債とか、あるいは日銀の貸出、市中銀行の金利、社債等を竝べてみたのであります。それはすでに發表いたしました通りであります。ただこの金利を推持するにつきましては、金融機關の面においても再建整備の途上にあるのでありますから、極力經營を合理化すると同時に、再建整備を促進してもらいまして、そうして經營を合理化し、冗費を省いて資金コストを引下げる、この線に適應するようにしていただきたい、こういうように考える次第であります。
#25
○西村(榮)委員 銀行の經理面は……。
#26
○栗栖國務大臣 銀行の經理面は今併せて申しましたが、銀行は再建整備の途上にありますので、たくさんの貸金をいたしまして、その中には切捨てられるものも相當ある。あるいは切捨てられなくても、元利金の支拂いが特契會社といふ關係その他によつて、ないものも相當あるのであります。また國債その他の有價證券を戰時中よりもつているという點において、相當收入減になつておりまして、經營を合理化し、事業再建整備というものに沿うて、金融機關の再建整催も促進し、合理的基礎に經營を立たせて、産業と相マツチする金融機關というものにして、そうしてこの經營面を健全化し、黒字化していかなければならない、かように考える次第であります。
#27
○塚田委員 時間が經過いたしましてたいへん恐縮でございますが、實は私も永い間當委員會に大臣の御出席を希望しておつた一人であります。追加豫算の問題については、まだ委員會としては正式に何もお話を受けておらなかつたので、ただ大藏當局が追加豫算について非常な苦心をされておるということだけを、紙上その他で承知しておつた。その追加豫算の問題について實は私は、現在大藏當局――というよりむしろ現内閣のお考えになつておる追加豫算が、財政法第二十九條の規定に違反する節があるのじやないかということに、非常に疑念をもつておるのであります。もちろん追加豫算の内容というものは、詳細に承知いたさないのでありますから、あるいはその實質においてはそれに違反しないようなものであるのかもしれませんが、しかし私どもがただ外部から想像いたしております範圍では、どうも實質においてこの規定に違反するものが若干あるのじやないかというような疑念をもつております。御承知のように財政法第二十九條は、追加豫算というものは前の豫算が作成後に生じた事由で、しかも必要避けることのできない經費についてだけ、計上し得るということになつておるはずなのであります。現在大藏當局がお考えになつておる、最近七百億程度に御査定になつたと傳えられておる、あの豫算の全部の内容が、はたして豫算作成後に生じた事由のみに基くものであるかどうか。御承知のように私どもは昭和二十二年度の一般會計豫算というものは、前内閣がこれを議會に諮られましたときに、これは追加豫算なしの豫算であるということを原則としておるということを、強く表明せられたことを記憶しておる。その建前からいたしましても、また第二十九條の建前からいたしましても、現在の追加豫算が、どのような關係になつておるかということについて、大臣の御意見を承りたいと存じます。
#28
○栗栖國務大臣 私は規定にほ觸れないと確信をいたしております。それは一般の千百四十五億の豫算は、前内閣當時におきましては、これだけで追加豫算をしないというようなお考えであつたかと存じておりますけれども、その後における經濟事情の急變化は、ついにこの新しい要求を生みまして、そうしてその事由に基いて追加豫算を立てようといたしておるわけであります。それから當時アン・ノン・フアクターといいますか、知れざる要素が多分にあつたのでありますが、それがだんだんわかつてまいりましたので、それで追加豫算をしようということでございます。たとえて申しますならば、賠償物の撤去費のごときも、今囘の追加豫算においては相當はつきりしてまいりましたから、これを計上する必要があると考えるがごときものであります。どうかさよう御了承を願います。
#29
○塚田委員 それでは一點お尋ねをいたしたいのでありますが、私どもの承知いたしております範圍で、實は今囘出ております文部省のあの追加豫算というものは、最もこの規定に牴觸するのではないかという疑念をもつておる一人であります。もちろん文部省の今度の追加豫算そのものに對して、贊成する反對するという問題とは、全然別個の形式の問題としてお聽取りを願いたいのでありますが、私どもが聞いております範圍では、文部省のあの六・三制に關する豫算というものは前内閣においてただ人件費だけを承認してもらえばいい、そのときに前内閣においても、六・三制の豫算というものは、人件費約五億の背後に、二百數十億の實體をもつておるところの豫算であるから、これはあとにめんどうな問題を殘すというので、問題があつたようでありますが、一應そういうような文部當局の意向によつて、あの一般會計における六・三制の豫算というものができたというように承知しております。それに對して今度要求になり、そうして大藏當局が一應御査定になつているあのものが、この豫算作成後に生じた、もしくはその當時アン・ノン・フアクターであつたものとして今度お認めになるということに、御斷言ができるかどうかということを、お伺いしたいと思います。
#30
○栗栖國務大臣 六・三制の實施についてどういう方法、どういう範圍において、追加豫算のうちに織り込むかということは、未だ確定をいたさぬ點が多々あるのでございまして、關係筋その他にもいろいろ折衝いたしました。ここではつきり申し上げるわけにいきませんけれども、また前内閣の當時において、いろいろいきさつのあつたことも存じておりますけれども、私どもといたしましては、六・三制の必要と、その範圍において必要なる資金を盛ろう。それでなければ地方財政、地方の現状として、救う能わざる事實というものを、はつきり新たにいたしましたので、その點に應じて豫算は盛りたい。こういうように考える次第でございます。
#31
○塚田委員 御答辯の趣旨が若干食い違つておるように思いますけれども、委員長から注意もありますので、問題を進めてまいります。そこで私どもとしては、こういうような形式の問題は、實はここでくどくど申し上げておることを、自分らとしても非常に遺憾に思うのでありますが、ただ今非常に案じておりますのは、このような財政法第二十九條の趣旨をもつて現在の大藏當局がお考えになつておる豫算で、一應今二十二會計年度における豫算が全部計上せられた。再び本年度内に追加豫算が出て、またこの第二十九條の趣旨に違反するようなものが、來るべき臨時もしくは通常議會において提出されるようなことになることを、非常に懸念するのであります。そういうことになると國民は、どうせ必要が出てくれば、また新しい税金をとられる。どれだけをとられるかということの見透しは全然つかない。第二十九條が置かれた趣旨は、全然守られないということになる可能性が、多分にあるかと思います。それだけの御決意をもつて現在の追加豫算というものをお考えになつておるかどうか。その點に關しての大臣の御決意を承りたいと思います。
#32
○栗栖國務大臣 今囘の追加豫算は本ぎまりになりませんので、なおいろいろ折衝すべき箇所が多いのでございます。そこでただいまの私どもの心境をここで述べさしていただいて、答辯といたしたいと思うのであります。私どもは今囘政府の危機突破策を忠實に實行いたし、財政金融の面におきましては、そういう面の施策を具體的に忠實に進めまして、そうして再び追加豫算を盛るというようなことは極力避けたいと考えている次第でございます。簡單でございますが、今のところはそこまでしか申すわけにまいりませんので、御了承を願いたいと思います。
#33
○塚田委員 私の質疑は終りました。
    ―――――――――――――
#34
○島田委員長代理 これより本委員會に付託されました健全財政、健全金融に關する決議案を議題といたします。まず提案者の説明を求めます。提案者北村徳太郎君。
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#35
○北村委員 まず初めに決議案文を朗讀いたしたいと思います。
 健全財政、健全金融に關する決議案
わが國經濟の現状は實に空前の危機に直面しており、事態をこのままに放置するときは遂に恐るべき結果を招くことをわれわれは深く憂慮するものである。
 政府はさきに經濟緊急對策中に健全財政、健全金融の堅持に關する方針を掲げているが、最近における價格の改定は財政面において厖大なる歳出の増加を生ぜんとしている。しかして賃金及び物價の安定のためには若干の財政負擔もやむを得ないが、こがれため財政收支の均衡に破綻をきたし、通貨の累増を生ずるにおいては、經濟の再建はおろか滔々たるインフレーシヨンの怒濤は遂にわが國經濟を崩壞せしめ、國民生活を絶望の淵に押し流してしまうであらう。
 講和條約締結を目前に控えて、今こそ經濟の安定再建のための最後の機會であり、健全財政、健全金融を堅持し得ると否とがその成否の鍵をなすものである。ここにおいてわれわれは政府に對して極力歳出を節減し、歳入増加の方途を講じ、一般會計はもとより各種企業會計においても、地方財政においても、斷乎として健全財政主義を貫徹するとともに、金融面においてもその健全性を確保し、財政の赤字を金融面に轉ずるようなことのないことを堅く期するものである。
 しかしてわが國經濟の安定を囘復する實質的基礎はもとより生産の振興にあるが生産の未だ興らない現状においてはこの乏しき生産に合せて、國家も企業も國民もその消費をきりつめていく以外に途はないのである。かくてわれわれは政府に對して健全財政健全金融の堅持を要望するとともに、他方國民に對してもわが國經濟の實状に深く思いをいたし、耐乏忍苦の精神をもつてこの危局を突破せられんことを要望する。
 右決議する。
 以上が決議案文でございます。これはただいま讀み上げました決議案文自身が、この案の内容を大體説明していると思うのでありますが、先般發奏になりました經濟實相報告書、これにはいろいろ非難の點がありましようと思いますけれども、大體これがうたつているように、ただいま生産は停滯しておりますし、食糧ははなはだしく不安である。物價はますます高騰いたしまして、家計は赤字、企業は赤字、國家の財政また赤字というような現状であり、地方財政に至つても財源を失いまして、それぞれ地方は非常な窮乏に陷つているというような状態でございます。從いましてかような現状において、結局健全財政主義というものを貫こうといたしますことは、もとより當然でございますけれども理論的には一般國民經濟が健康を囘復いたしましたときに、實はほんとうに財政の健全化というものが當然にくるのであるという理論は一廳承認できますけれども、現段階において財政支出からくるインフレーシヨンを、極力そこで抑止しなければならない。もちろん生産配給、あるいは賃金、企業、勞働、貿易、各全般にわたる總合的な施策というものが必要であり、その總合施策の一環として、特に重要なる財政面の健全化ということを考えなければならぬ現段階において、たとえば單に收支のバランスを合わしただけで健全財政とはいえぬのじやないか、というような議論もございましようけれども、それだけでも今の段階においてはどうしても財政の支出の面を抑えて、そうして收支の均衡のとれた財政というもの堅持していくということが、現下最もインフレーシヨンの根本的な一つの對策として、これは重要であるという點から、こういうような健全財政、また健全金融の決議をこの委員會においてすることにいたしまして、しかる後、これを議會の決議として表明をしたい。こういうことが本案を提出したいという趣旨でございます。
 それで先ほどたまたま大臣の問答の中にもございましたけれども、いままでは財政の均衡化をはかるために、財政がむしろ産業の中に割込んで産業を壓迫した。たとえば復金等の資金が缺乏したという理由をもつて、新聞の傳えるところでは、復興債券を割當てて金融機關にこれをもたせるということによつて、吸收した資金が、本來は國家財政資金で出すべきものを、かようにして金融機關から吸收して、それがある意味において産業の面にある負擔を與えるというような結果になつておるという點等も、これは相當考慮しなければならぬ點でありまして、いろいろな面から健全財政主義、あるいは健全金融主義を堅持しなければならぬということはもちろんであります。同時にこれはまた、先ほども特に西村君よりの御質問の要旨の中にありましたように、現在産業資金を適時適度に供給するということをやることでなければ、いまの縮小再生産の過程においては問題が非常に多い。從つて健全金融主義を堅持するためには、どこまでも平凡な道でありますけれども、資金の蓄積を求め、貯蓄を吸收し、そういう面において新しい資金を獲得形成していかなければならぬというような面において、この問題は、健全財政はまた健全金融と一貫のものである、さように見地から、この際ややもすれば非常にこの財政支出が膨脹する傾向のあるときに、われわれは財政及び金融委員會として、かような重大な時期に、かような重大な問題を決議をして、そうしてこれを國會の決議にまでもつていきたい、こういうような考え方で本案を提出した次第であります。
#36
○中崎委員 ただいま提案になつております點につきましては多少檢討を要する點もあると思いますので、今日は時間も囘つておるようでございますので、この程度にして、次にあらためて協議されたらどうかと思います。
#37
○島田委員長代理 ただいまの中崎君の動議に對しまして御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#38
○塚田委員 中崎委員の提案に贊成でありますが、ただ本決議案については、本委員會に代表者を出しておらぬ共産黨に反對があるということを聞いておるのであります。もしできれば委員長において共産黨から反對の趣旨を書面か何かでもつてとつていただいて、審議の際の同參考にすることができればたいへん結構であります。いま一つ、大分本委員會に付議されて、かなりの日數を經て、いまだなお審議がはかばかしくいつていない法案があるように存じておりますが、こういうような法案もなるべく早く片づけてしまいたいと考えております。委員長においてそのようにお取扱い願いたいと思います。
#39
○島田委員長代理 本日はこれをもつて散會いたします。
   午後零時二十二分散會
ソース: 国立国会図書館
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