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1947/09/29 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 外務委員会 第10号
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1947/09/29 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 外務委員会 第10号

#1
第001回国会 外務委員会 第10号
昭和二十二年九月二十九日(月曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 安東 義良君
   理事 加藤シヅエ君 理事 栗山長次郎君
   理事 堀江 實藏君
      高瀬  傳君    竹内 克巳君
      戸叶 里子君    馬場 秀夫君
      小澤專七郎君    中山 マサ君
      竹尾  弌君    佐々木盛雄君
      仲内 憲治君    若松 虎雄君
      多賀 安郎君    綱島 正興君
 出席國務大臣
        外 務 大 臣 芦田  均君
 出席政府委員
        外務事務官   磯野 勇三君
 委員外の出席者
        外務事務官   萩原  徹君
        專門調査員   佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
九月二十七日
 在外同胞引揚促進に關する陳情書、外三件(宇
 品引揚援護局女子職員村上宣子外百二十八名)
 (第三一七號)
 在外勤勞資産の補償等に關する陳情書(香川縣
 海外引揚同胞連合會長東條正平)(第三一八號)
 在外勤勞資産即時補償に關する陳情書(青森縣
 引揚同胞連盟理事長須藤全治)(第三三六號)
 在外未復員者歸還促進に關する陳情書外四點(
 千葉縣復員引揚促進家族連盟會長柴田欣一郎外
 八千四百八十三名)(第三四一號)
を本委員會に送付された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 在外資産の問題につき外務大臣より説明聽取
    ―――――――――――――
#2
○安東委員長 ただいまより會議を開きます。
 本日は在外資産の問題に關して政府當局の御説明を伺うわけでありまするが、これに先立ちまして緊急質問をいたしたいと思います。さいわいに外務大臣がここに御列席でありますから、外務大臣にお伺いをしたいのでありますが、最近終戰連絡中央事務局の内閣移管問題なるものが新聞にぼつぼつ現われて、いろいろと論議せられておりますが、はたしてこれは事實であるかどうかこの問題は輕々に決定すべき問題ではないと私は考えまするので、この點につきまして外務大臣の御説明をお伺いしたいと思います。
#3
○芦田國務大臣 安東君の御質問に對してお答えいたします。數日來新聞紙上においても、終戰連絡事務局の機構を中央官廳のいずれの部分において管掌することが適當であるかどうか。また現状の外務省の一外局のごとき形において外務大臣が兼ねることが適當であるかどうかという問題が論じられておるというふうに傳えられております。その問題が政府部内においてただいま研究されつつあるということは事實でありまして、その結論に到達していないというのが今日までの實情であります。御承知のごとく、占領軍が上陸して間もなく、日本政府に對する一つの指令が發せられて、日本國政府と連合軍總司令部との間に事務連絡及びこれらの事務の總合的の任務にあたるべき機關を速急につくれという意味の命令が出たのであります。それに基いてできたのが現在の終戰連絡中央事務局及び地方における連絡事務局であります。終戰以来だんだん年次を經るに従つて、連合軍總司令部と政府の各行政部門との間の事務がだんだん圓滑に、かつ直接に行われる部分もできてきたのでありまして、問題によつては專門の技術知識を有する各省の人々と連合軍總司令部の部局の人々とが直接に交渉することが便宜であり、また敏速であるような場合も起こるのはきわめて當然のことでありまして、そういう意味において、さいわいに終戰連絡事務局が當初取扱つておつた事務の一部分は、政府各省とG・H・Qとの間に直接論議され、これに對して終戰連絡中央事務局はこれらの事務の總合統一の役目を擔つてきたというのが最近における状況であります。むろんこれらの連絡事務は占領軍の治下における日本政府の一つの臨機の處置でありましで、平和條約が締結され、わが國が正規の外交關係を囘復するときにおいては、すべての外國諸機關と日本政府との關係は一に外務省の本来の事務として取扱われることになることは申すまでもないのであります。從つて終戰連絡事務局は、平和條約が實際に効力を発生すると同時に、影を潜めるべき運命にあることは皆さんの御承知の通りであります。しかしながら今日の事態においても、すでにその事務が政府各省の事務に跨つておるのであるから、これを外務省の個有の事務として見ることのできない部門も相當の數量に上がつておるのでありますが、同時にまた機構は人間が動かすのである。最高司令部と日本政府との間に種々の事務の取扱いに當るべき人間は、從来から渉外事務に經験をもつている人間が、これに當るにあらずんば、能率的に運用することができないということも當然のことであります。そういう關係上さいわいにして外務省は、今日あまり在外公館の事務に忙殺されるような事態ではありませんから、最も便宜であり、かつ能率的であるという關係から、その構成員の大部分は外務省に經験をもつた者が、終戰連絡事務局において仕事をしておるということになつておるのであります。しかしながら次第に講和條約の時期も近づきつつあるのでありますから、外務省としてもこれに備えて、新たに準備のために人員を要する事態になつており、また一面連絡事務が廣く政府各省にわたつておるという事態に鑑みて、これを總理廳に一部移管するということも考える必要があるということで、目下他の行政機構全般の改革と一括して、終戰連絡事務局の機構をどういうふうにすべきか。機構を改める際に、その人的構成をどうするかということが、當然に檢討されるのでありまして、ただいまこれらの問題については終戰連絡事務局、外務省及び總理廳においてせつかく研究中であります。ただいまの段階におきましては、まだ政府案の決定を見ておりませんから、詳細に説明いたしますることは困難でありますが、遠からず何らかの成案に達することと考えております。そういう案が一應内定いたしましたならば、公然と議會に提案する前に、外務委員會の御意向についても、承知いたしたいと考えておりますから、何らかの形において御意見を伺う機會があることと思います。以上簡単に申し上げました。
    ―――――――――――――
#4
○安東委員長 それでは在外資産問題に關連いたしまして、政府當局の御説明をしていただきたいのでありまするが、本問題につきましては、國際的立場上、きわめて微妙な問題もありますし、また同時に國際法上から見ても、はつきり研究しておくべき點もあるようであります。なおまたこれに關連いたしましては、本議會におきましても、幾多の陳情があるのであります。殊に在外資産の補償に關し、あるいはまた救濟資金の返済に關して、あるいはまた滿鐵社員在外資産處理に關して、あるいはまた在外勤勞資産の補償等に關して、幾多の陳情が出ておるわけであります。要するに在外私有財産に對する補償の問題も、政府としては考慮いたさなければならない立場にあると思いまするので、本問題につきましても御説明を願いますと同時に、今後の政府の御方針についても伺いたいと思うのであります。
#5
○芦田國務大臣 お答えいたします。本日御報告すべき點は大體四、五點にわたつておるのでありますが、最初に在外資産の現状について簡單に御説明をいたします。在外資産がどういう状態になつており、またどのくらいの數量に達しておるかということは、今後の平和條約に臨む用意としまして、また國内における産業再建の問題としても、ないしは關係會社、個人の私有財産としての立場から見ても、きわめて重要な問題でありますから、昨年外務省と大藏省と兩省協議の上、在外財産調査會をつくりまして、もつぱら在外資産の現状を調査する任務に當つておるのであります。官吏以外にも民間の經驗知識ある方々の協力を願つて、今日まで引續き仕事を續けております。ところがこれを調査する資料が必ずしも正確なものを握ることができません。國有財産については大藏省の國有財産管理部等に、ある程度の資材は殘つておりましよう。また海外より引揚げた官吏、軍人等の持ち歸つた資材もあります。その他引揚民の申告によりあるいは資材の提供によつて知り得た事實もあります。大體今日のところでは必ずしも完全ではありませんけれども、一應の中間的な材料はまとまつておるのでありまして、國有財産、個人財産、企業財産等に分類して、ほぼその金額等をも推定し得る状態になつておるのであります。しかしながらただいま委員長からもお話がありましたことく、この問題は今後の賠償問題、あるいは海外資産の損失に對する補償問題等に深い關係をもつ結果、やはり各方面の意向を十分にくみとつて發表する必要がありますが、ただいまのところでは、今申し上げたような事情によつて、これを發表することを差控えなければならない立場にあることを、御了承願いたいと思うのであります。國有財産の方は樺太、朝鮮、臺彎、いずれも直接中央政府の行政下にあつたのでありますから、その所有財産、鐵道、港湾、郵便、電信、森林等を初めとして、比較的正確にこれを知ることができるのでありますが、しかしこれを平和條約以後においてどう取扱うかという問題になると、私有財産とは違つてきわめて簡單に解決のできる部門であります。ただ私有財産については長い國際法上の沿革等もあり、また近年の戰時中における慣例、取扱い例等がありまして、國有財産ほどに簡單に解決がつかない問題であります。むろん私有財産が戰争中にどう取扱われたかというような問題は、いろいろ沿革もありますが、それは皆さんも御承知のことで、繰返して大學の講義のようなことを申し上げる必要はありませんが、一九世紀の中葉以來國際法の發達、人權尊重思想の伸張等によつて、私有財産尊重という方針が漸次確立されてきて、その結晶となつたものが二十世紀初頭のヘーグにおける平和會議の決定であります。 國際法が最も確かな基礎の上に確立された時代であると考え得るのであります。その直後に開かれた日露戰争は、御存じの通り、わが國に關する限り、極力國際法の精神を尊重して、歴史上まれに見る國際法に準據せる戰闘行為が行われたと私どもは固く信じておるのであります。ところが大正三年以後の歐州戰争勃發するとともに、敵味方双方から行われた戰闘行為の中には、必ずしもそれまでに確立された國際法の原則が、その通りに遵守されたとは考え得ないものが出てきたのであります。私有財産については一言で申せば、敵産はこれを管理するという原則のもとに、取扱いが行われたのでありまして、その跡始末としてヴェルサイユ條約の中には、かなり詳細な敵産處分の條項ができておるのであります。ところが今後の戰争においては、第一次世界大戰の當時よりも、もつと強く國際法の原則が動搖したと思います。そうして敵産を管理するという程度をさらに踏み越えて、ずいぶん自由勝手にこれを處分してしまつたような例も見受けられるのであります。現にわが國においても、原則としては敵産を管理するといつておりましたが、事實上の取扱いとしては、敵産を全部自由に處分して賣拂うといつたようなことをしてきたのであります。その實例は皆さんがすでに十分御承知の通りであります。従つて今後のわが同胞の所有にかかる海外における私有財産が、いかなる方向で處分されるかという問題についても、まだ今日的確なる見透しをつけることは困難でありますが、大體において連合國側の處分は、まずイタリアと連合諸國との條約によるのか、あるいはそれ以上立入つた規定になるのかという、具體的に申せば二つの場合を考慮するほかないと思うのでありますが、イタリアはバドリオ政權の樹立によつて、あのときから連合國の一翼として起ち上がつた關係上、比較的私有財産についても寛大な處分を受けることができたのではないかと思うのです。具體的に申しますと、イタリア人が私有財産として所有しておつたものは、その土地が他國に歸屬する場合といえども、一應財産を清算して本國にもちる歸ることができるというふうに規定されておるのであります。しかしこの條約はどちらかというと、連合國相互間の條約であります。連合國と敵國とのいわゆる平和條約ではないのでありますから、かような取扱いが將來行われ得れば、われわれとしてはきわめて正しい行き方と思いますけれども、はたしてわが國の場合に、かような條約が適用されるかどうかという見透しはまだつき得ないのであります。國有財産については、おそらく賠償の對象として處分せられることかと思います。私有財産についても、あるいはまたこれと同様の取扱いを受ける部面も起つてくるのではないかと考えられるのであります。そうしますとこれらの在外資産を失つた關係者が、將來わが國の政府よりどういうふうな取扱いを受かるか。むろん正義、公平の觀點から言えば、海外において戰争の犠牲となつて失つた私有財産については、政府がこれをある程度補償することが正しい行き方であると思います。從つてヴェルサイユ條約をごらんになつても、連合國の處分したる私有財産については、ドイツ、オーストリー等の敗戰國政府において、その國の國民に適當の補償を與えるという原則が立つておつたのであります。わが國との講和條約においても、あるいはさような規定が挿入される場合も想像し得るのであります。從つて問題はこれらの條約の規定に基いて、日本政府が損害の補償を行うか行わぬかという問題は、原則としては行うべきものであると私は信じます。
 その次に起る問題は、わが國の現状において、厖大なる金額に上る在外資産の補償を、はたして國庫が支拂い得るか得ないかという問題が起るのであります。たとえば軍需補償打切りという問題をごらんになつてもわかる通り、軍需補償であるからといつて、これを支拂わないという事實はないと思います。しかし事實拂えないから軍需補償を打切つた。それと同じ問題にぶつかるのでありまして、在外資産を失つた個人に對して補償するという原則は立てるにしても、はたしてこれを補償し得るかどうかという問題が次に殘されておるのでありまして、その點については、わが國財政の状態等にも十分の檢討を加えた上でなければ、必ずしもこれを完全に支拂うという保障は今日與えることができないのではないかというふうに私は考えております。
 大體一應の説明をいたしましたが、詳しい點につきましては、外務省の局課長がここに出席いたしておりますから、なお御質問によつてお答えすることができると思います。簡單に私からこれだけのことを説明いたしておきます。
#6
○安東委員長 御質問はございませんか。
#7
○佐々木(盛)委員 この際講和會議に關連する二、三の點につきまして、外務大臣に御質問を申し上げたいと思います。
 第一は、講和會議開催の時期の問題でありますが、もとより平和條約というものは、祖國の興亡の運命を決定するものにして、われわれ八千萬國民の最大關心事であります。國民はひとしくこの裁きの到來を凝視しているわけでありますが、新聞報道などによりますと、すでに豫備會議の開催の運びとなつておる。順調に進めば來春の四、五月ごろには、講和會議が行われるのではないかというような豫想などもあるようであります。外務大臣は一體これに對していかようなる觀測をお持ちになつておるか。講和會議への態勢を整備するためにも、大體の見透しが必要ではなかろうかと考えます。もし外務大臣にしてその觀測がこの際各種の事情のために不可能であるというならば、外交擔當の責任者である外相の手もとに集まつた外國電報であるとか、その他の情報などについて、この際可能なる限り御紹介を願いたいと思います。まずこれが第一點であります。
#8
○芦田國務大臣 講和會議に對するわれわれ國民の多大なる關心について、ただいま佐々木君がお話になりました點はまつたく同感であります。でき得ることならば、なるべく早期に講和會議開催の時期を知りたいと念じておるのでありますが、御承知の通りそれらの時期、場所等については、一に連合國側の決定にまつほかはないのであります。われわれが一日も早く講和會議開催に至らんことを熱望しておることは、おそらく連合國側の諸國においても、十分了解はされておることと思います。しかしながら私の方からいつ講和會議が始まるかというごとき的確な時期を申し上げることは、すこぶる困難な事情にあります。むろんすでに御承知の通り、アメリカ國内において、また連合軍の總司令官においても、できるだけ早期に日本との平和を結ぶべきであるという意向が發表されております。濠州イギリス本國等においても、この上講和會議の開催にいたずらに日を送るべきでないという説も現われておるのでありまして、態勢は早期に講和會議を開くということに動いておると思いますが、しかしながらなおこれを開くまでの手續について、連合諸國との間に調整を要する問題も起つておるかに看取せられるのでありますから、私の口から今日いつ講和會議が開かれるのであろうかという問題についての見透しを發表することは差控えるべきである、かように心得ておるわけであります。
#9
○佐々木(盛)委員 會議開催の時期に關しまして、私はあえて外務大臣の見解でなく、あるいはその他の情報あるいは外國電報などがあれば御紹介を願いたいということを言つたのでありますが、これにはいろいろな事情もありましようから了承いたします。
 次に講和會議に臨むいわゆる講和態勢の問題についてお聽きしたいのであります。もとより第一次大戰後のべルサイユ條約の締結にあたりましても、連合國側の條約案に對してドイツがこれに代わる厖大なる意見書を出し、條約案はウィルソンの十四箇條の終戰條約とは相異なつておるというようなわけで反駁をいたしましたにもかかわらず、連合國側はこれはドイツの今日の事態を解しないものであるというわけで一蹴されました。そして連合國側はドイツに對して五日以内に回答を要求する、しからずんば停戰協定が無効であろうというような強行態度を表明した結果、ドイツにおいてはついに内閣の瓦解を見て、後繼内閣が連合國案を全面的に受理し、ベルサイユ條約というものは涙のうちに調印が行われたことは、歴史の示すところであります。また第二次大戰において、イタリアの場合におきましては、今日の日本の場合とは非常に異なつておりまして、戰争の後半においては、少なくともイタリアは連合陣營に参加し、對獨戰争を行つたという特殊なる理由もあつたのでありますが、これも二月二十日イタリアが、舊樞軸五箇國との講和條約の調印に際して、イタリア代表の行つた聲明におきましても、イタリア政府は講和條約の作成に、何らの役割を與えられなかつた。今この條約に餘儀なくわれわれは從わねばならぬ。今日こそはイタリアにとつて悲しむべき日である。自分が調印したこの條約は眞の條約ではなくして、イタリアに一方的に出された條件を規定したものであるという悲壮なる聲明を行つておりますごとく、その條約というものは、まさに連合國側によつて一方的に課せられたものであることは明白であります。そこで第一次大戰後のベルサイユ條約の締結の場合を考え、今また第二次大戰後のイタリア初め舊樞軸五箇國との講和條約の場合を考え合わせましたときに、今囘ポツダム宣言受諾によつて無條件降伏いたしました日本と連合國との講和條件というものは、いかに深刻なものであるか、かつまたいかに一方的に課せられるものであるかということは申すまでもありません。そこでわれわれは祖國再建というものが可能なりや否や、あるいは國家興亡の運命というものは、先ほども申しましたように、まさに今囘の講和會議によつて決定されるものである。この意味において國民は一人残らず來るべき講和會議に對し、ひたすら一段と凝視の目をもつて見張つておるのでありますが、もとよりわが日本側全權代表が、連合國側と對等の立場によつて日本の立場を主張し得ないことは、先刻申し上げました通りであります。しかしこれに臨むべき政治態勢というものは、講和條約のもつ國家民族死活の重大性に鑑みましても、あるいはまた連合國に對する國際的な儀禮の觀點から見ましても、遺憾なきものでなければならぬと思うのであります。しからば一體現片山内閣は、はたしていかなる政治態勢をもつてこれに臨まんとするものであるか。片山首相は去る十三日の新聞記者會談におきまして、講和會議には現内閣をもつて當る。しかしこの會議に臨むところの全權の代表團には、擧國態勢の意味から、各黨の總裁を網羅することを希望するというふうな旨を述べられたと傳えられますが、芦田外務大臣は、これらの點に關していかなる講和態勢を求めんとするか。端的に申して内閣は現状のまた押し切らんとするのか、あるいは全權代表としてはいかなる構成を考えておられるか。この點は先ほどから反復して申しますように、國民が非常に注目しておるところであり、重大關心事でもありますので、われわれはあえて國民代表たる立場におきまして、外相の眞劍にして、かつ可能なる限り詳細なる御所見を求めたいと思うのであります。
#10
○芦田國務大臣 ただいま佐々木君より、來るべき講和會議において、わが國の希望ないし要求に類するものがはたして表示せられる機會があるかどうかという點についていろいろ御意見の發表がありました。私どもも佐々木君と同じような見地から、この點については多大の關心をもつておる一人であります。しかしながらベルサイユ會議及び今囘の第二次世界大戰後に行われたる諸國との會議の状況より見て、この點についてはあまり多くの期待をおくことのできないような状況におかれておるのではないかというふうに感ぜざるを得ないのであります。その際に、現内閣はどういう態勢をもつて講和會議に望まんとするかというお尋ねでありました。この點についても内閣は常に考慮を拂つておるのでありまして、いやしくも日本國民がこの占領治下において非常な困難な事情のもとに講和會議に臨むのであるから、できるならばいわゆる擧國一致的な政權を樹立して講和會議に臨むことが望ましいことである、そういう點においても片山内閣成立の直前、社會黨、民主黨、自由黨、國民共同黨を含めての代表者の會議を開いて、能う限り擧國的政權の樹立に努力することを申し合わせたことは周知の事実であります。不幸にして自由黨側において、この社會黨首班の形のもとにおいて内閣に参加することに異議が生じ、ある意味においてはやむを得ずして三派連立の内閣に落著いたというのが偽らざる當時の事態であつたと思うのであります。從つて今からでも遲くはありません。もし自由黨の黨員諸君が、現在の日本が立つておるこの事態を十分に再検討され、擧國一致的な政權のもとに、協力して講和會議に臨もうというお氣持ちであれば、われわれはいつでも喜んで自由黨の諸君と手をとつて講和會議に望むことを躊躇するものではありません。講和全權をだれにするかといつたような具體的の問題については、今日まで政府において何にも決定に達していないのでありまして、片山總理が話された趣意はその心の中にわだかまつておる片山君の考え方を、あるいはその理想を述べられたのであつて、必ずしも黨の黨首が出ていくとか、自由黨の黨首も一緒に全權の中に加えるとかいうふうな具體的のお話ではなかつたと私は思う。要するに、歸するところは國民が最も信頼する代表、あの人ならばもうこれ以上の人は望み得ないのだというような聲望もあり、また天下認めて練達堪能の士である、そうして同時に國民多數の意伺を代表するごとき地位にある人を選ぶということが、講和全權の使命を選ぶ一つの基準になるのであります。しかしそれは單なる抽象的の基準でありまして、具體的にしからばどういう人を講和會議に全權として臨席してもらうかという點については政府において何らまだ決定に達していないのであります。
#11
○佐々木(盛)委員 大臣の今のお答えに關連して、もう少しお尋ねいたします。講和會議に列席をいたしまして、日本が正義の主張が困難であるということは大臣のおつしやる通りでありますが、私たちをして言わしめますならば、外交というものは私たちはすでに始まつておるのではないかと思います。條約案というものを俎上に乗せまして、樽俎折衝するというような過去の講和條約の形式が許されないことはもとよりであります。しかしながら平和條約の出發點が、日本をして永久に平和國家たらしめんとすることと、かつ眞の民主主義國家たらしめんとするところにあります以上、講和條約の起草に臨む連合國側の態度が、日本の國民動向や政治的動向等の國内情勢と無關係であろうはずがないのであります。從つて講和外交というようなものがもしかりにあるとすれば、その講和外交は終戰と同時にすでにスタートを切つたものであり、連合國の豫備會議がまさに開かれんとすることが傳えられます今日の段階こそは、まさに私は形なき講和外交を遺憾なく發揮すべき時期であると考えるのであります。この意味においてわれわれ國民一般も、いわゆる國民外交擔當の責任者として、われわれの日常の言動においても細心の注意を拂い、あるいは講和條約を少しでも日本に有利に導くための周致な國民的用意と心構えが必要であることを、われわれな痛感しておるのであります。そういう意味において政治體制というものももとより遺憾なきを期さなければならぬと思う、しかしながら現片山内閣は、社會黨、民主黨、國民共同黨の三黨連立の内閣でありまして、なるほど芦田外務大臣がただいまおつしやるごとく、形の上だけにおきましては一應擧國的な強力な姿に見えますが、その政治力の實體がいかに弱體空虚なものであるかということは、組閣以來今日までの現實の實績において國民のひとしく痛感することはもはやおおいがたい事實であります。現實の事實がかくのごとくでありますし、またこれを理論的に見ましても、主義政策のまつたく相反する政黨の寄り合い世帯でもつて強力な政治力を期待し得ないことはこれまた明白であります。從つて國際的にはもとよりのことでありますが、國内的に見ましても、今囘の講和條約というものが國家の休威、民族の運命を決定する重大性に鑑みましても、強力にしてかつただいま外務大臣のおつしやるごとく擧國的地位ある政治方を發揮する必要があるのでありますが、これがためには片山内閣は講和會議に際してその信頼を國民の總意に聽くことが時宜を得たものであり、望ましいことではなかろうかと考えるのでありますが、芦田外務大臣は外交的立場よりこの點をどういうふうにお考えになりますか、一應お聽きしたいと思います。
#12
○芦田國務大臣 いろいろ佐々木君より御意見の表示がありました。至極同感な點も多々ありますが、あまり長いことお答えする必要もない、問題はきわめて簡單であると思いますから、結論を申し上げて説明にかえたいと思いますが、講和條約に臨むにあたつて、政府は國民の絶對的多數の支持を受けた擧國的内閣であることが望ましいということは、佐々木君も私も全然同意見であります。ただこれを現實の問題としてどうすればそうなるかということに歸著すると同時に、政府が強いとか弱いとかいうことは、一體どういうことを指すのか、私は政府が強いということは、國民の最も多くの支持を得ておるという意味だと思う。國民の支持を離れて強い政府ができたならば、これはファツショ政治が專制政治であります。われわれにとつては迷惑千萬であります。從つて國會が政治の中樞となつた今日、國會が國民の支持を受け、その國會が支持をしておる政府、これがいわゆる強い政府というべきだと私は考えておるのでありまして、そういう意味において國會の最も多數の政派が集つて内閣をつくるということが、現實の問題としては最も早く強力政府をつくり得る途であると考えておるのでありますが、この内閣はお互いに相反する政黨の寄合いであるからというお話でありましたが、この點は私は必ずしも佐々木君とは同意見でありません。この内閣が成立する當時、いわゆる四黨協定という時局突破のための最小限度必要であり、かつ最も適切なるべき政策を協定して、その政策を實行するために内閣ができた。お互いに相反する。たとえば資本主義を認めるか認めないかといつたような問題は、その政策協定の圏外においてある。その問題を解決しなくて、さしあたりの危局を乗り切るのには、これだけの政策でもつてのりきれるという合意のもとに、政策協定ができ、それを忠實に實行しておりますから、その範囲においてわれわれの三黨が完全なる協力をなし得る餘地は十分にある、何らこの政策の實行において妨げとなる分子はない。さように考えておるのであります。
 またその次に、講和會議に臨むには一應國民の總意を聽いて臨むのが適當ではないかというお話であります。國民の總意を聽くとは、要するに解散をして新しく選擧に臨むことだと思う。この議會は去る四月の總選擧によつて國民の意向を代表して、ここに成立した議會であります。爾來約半歳はたして國民の總意が著しく選擧當時と變つたか。覆つたとすればどういう事實をもつてこれを言ふか。さしあたりの材料は補缺選擧くらいなものしか現實的にはとらえ得ないと思う。衆議院には補缺選擧がありません。わずかに参議院において少數の補缺選擧が行われたにすぎないのでありますから、あの補缺選擧の成績がはたして國民の總意を示すに足る十分な證據であるかどうかは、私は斷言するまでの勇氣はありませんが、これも一つの材料になることは疑いない。その結果をみると、國民の總意が四月以來今日までに著しく變つたとはどうも考えられない。もしわれわれ國會において、五月の總選挙に現われたる國民の意向が著しく覆つた從つてある種の政策については、新たに國民の意向を知る必要が生じたというときには、無論議會を解散して、國民の總意を反映せる議會をつくらなければならぬことは當然のことでありますが今日ただいまの段階において、四月に表示されたる國民の意向と、現在國民の抱いておる政策に對する意見とが、さほど著しく變つたとは私は認めることができない、かように考えておりますから、いやしくも國民の總意を代表しておる議會である限り、その議會の絶對多數が支持する内閣である限り、これが政權に立つて内外の政治を實行していくということは、まさしくわが國憲法の精神に副つたものである、かように私は考えております。
#13
○佐々木(盛)委員 外務大臣の、國民の總意がその後著しく情勢の變化をしていないじやないか、という反駁でございましたが、私はこれとは反對の見解をもつております。四月の選擧當時と今日との、國民の政府に對する、あるいは政治に對する考え方というものが、著しく相違しておる點は多にありますが、大臣はこれから閣議にいらつしやるという話でありますので、ただその點には私は同意しないという點だけを申し上げておきます。そして現内閣が國民の支持ある強力なものとして、講和會議に臨むということは、まことにその言たるや實に頼もしいと思うわけであるますが、これまたわれわれの承服し得ないところであります。しかしこれまた時間が長くなりますので省略いたします。
 次に最後に一言だけ外務大臣にお聽きして、私の質問を終わりたいと思うのであります。それはいささか蒸返しのようでありますが、いわゆる外務大臣の失言問題という名前において傳えられた新聞報道に關してであります。外務大臣は先般千島、沖縄の歸屬問題につきまして、これがポツダム宣言に反するというふうな立場から、千島、沖縄の日本國への歸屬を希望されたという新聞電報が出ておつたわけであります。この問題が世界の世論をにぎわしまして、喧々囂々、その結果というものが日本にとつて有利であつたか、不利であつたかということは、外交を擔當しておられます外相みずからが、身をもつて味わられたことと思います。
 またその次の失言問題として傳えられましたことは、ソ連におけるところの未歸還者引揚問題でありまして、外務大臣が大體月十七萬の引揚げの話合いができたので、年内には大體これが完了するであろうという意味のことをおつしやつたと、外國の電報も傳えておりますし、本議會の引揚げの特別委員會の席上などにおきましても、その趣旨のことをお話になつたと聞いております。私も先般來地方をまわつてみましたが、この未歸還者の引揚促進の問題に關しましては、非常に重大なる關心をもつて、實に涙ぐましいまでのいろいろな現象を呈しておるのでありまして、この問題に關しまして芦田外務大臣がおつしやつたことが、引揚促進にはたしてこれまた有利であつたか、不利であつたかということにつきましても、いまさら申すまでもないと思います。
 次にもう一つ棉花クレジつト六千伍百萬ドルの問題でありますが、すでにこの棉花クレジつト六千伍百萬ドルを日本に提供してもらうことができるようになつたという意味のことをおつしやつたことが外國に傳えられ、當のアメリカにおきましては、政府當局の意向といたしまして、さようなことは何らアメリカ政府の未だ關知するところでないというような、打消しの意味の電報もわれわれは新聞で読んだわけであります。
 こういうふうにちよつと考えましてもすでに三つくらいの、私は失言とは申しません、いわゆる失言の問題ということで問題になつておりまする點についてでありますが、これらに關しましては先般來本院におきまして、議員の諸君から外務大臣にその眞相を追究いたしたのでありますが、外務大臣はこの問題に關して、これは新聞記者の誤報であるという立場から、たくみにその責任を囘避しておられるじやなかろうかと考えるのであります。しからばもしこれが新聞記者の誤報であるとするならば、事は日本にとつてきわめて重大なる問題でありますので、外務大臣はよろしく該記者あるいは通信社に對して、事實の眞相を傳えて訂正を要求すべきではなかろうかと考えます。外務大臣はそういうことに對して何らかの措置をとられたかどうか。あるならばご披露を願いたい。また今までのこれらのいわゆる失言問題に對する外務大臣の答辯というものは、端的に申してきわめて不親切であると私は考えます。できまするなれば、もう少し納得のいく御説明を願いたいと思います。そこでいずれにいたしましても、たとえこれが誤報でありましようと何でありましようと、とにかく重大なる責任問題ではなかろうかと私は考えます。從つて外務大臣がこのいわゆる失言問題に對して、何らかの責任を感じておられるかどうか。責任を感じておられるならば、その責任はいかなる形においてこれをとらんとするのであるか。それらの點につきまして、外務大臣の率直なる意見の開陳を求めます。
#14
○芦田國務大臣 ただいま佐々木君よりいろいろ私の責任事件についての御意見の表示がありました。御親切なるいろいろな御注意に對しては、私は感謝をしております。
 一番初めの千島、樺太でしたかの問題は、當時の新聞でもお讀みになつたと思いますが、アメリカの新聞の中にも、U・Pのごときは、私の言つた眞意をそつくりそのまま書いておると思うのであります。これは取消しの必要はむろんなく、それと同時に出てきておつた一部分の人に誤報が傳えられて、私が沖縄、千島の問題に言及したという點については、すぐ一日おいてその間違いであることを發表しております。その發表は外國にも電報が出ております。自分の眞意でないことを傳えられたという點については一點の疑いを入れないと思う。
 それからソ連の問題について十七萬いくらという數字の問題、それから綿花クレジつトの問題、これは先般本會議において、私から當時の事情を比較的詳細に述べております。これは速記録にも出ております。今日當時本會議において私が事情を説明した以上にお答えすることは何もありません。責任を感じておるかとおつしやれば、多少でもそういう誤解を與えたことは責任を感じております。そういうことが起らないことを切に私は心がけておるのでありますが、むろんあなた方にそういう誤解を與えたということの責任は、私は感じております。
#15
○安東委員長 在外資産問題に關する御質問がありましたら、御續行願いたいと思います。
#16
○若松委員 先ほど外務大臣が、在外資産、殊に個人の財産に關しては、ヘーグ條約の沿革をお話になりました。第一次歐州大戰以來またそれをぶつ壊したようなことがあつて、いろいろな沿革があるから、そんなものを見ていろいろな點を考慮したいというようなお話がありましたが、實はそれに關連いたしまして、降伏後における米國の初期の對日方針の聲明と言うものが出ております。その中の第四部の二の「賠償竝に返還」そのAの項に「賠償」と書いて、(1)として「日本の保持する領域外にある日本資産を關係連合國當局の決定に從つて引渡すこと」これはもとより賠償の面でありますが、さらに同じ部の四という項に「在外日本資産」とあつて「日本の在外資産及降伏條件によつて日本から分離させられた地域にある日本の資産は全部乃至一部、皇室竝に政府の所有に属する資産も含めて占領軍當局に明示され、且連合國當局の決定による處分に委ねられる」というような文句がありますが、これはもとより米國の對日管理方針を示されたのでありまして、どのくらいの權威があるものか私は存じませんが、少なくとも大統領の署名を得、各關係官廳の同意を得てなされたものでありますから、相當に權威があるものと思うのでありますが、この條項がはたして今日本にどういうふうに適用されておるか。またこういうことが日本の國有財産竝びに私有財産の處分に、私は大きな指示を與えるものと思うのでありますが、現在までにこの條項が日本にどういうように現れておりますか。政府委員の御答辯を伺いたいのであります。
#17
○磯野政府委員 簡単に御囘答申し上げます。日本の在外財産は政府の所有であると、皇室の所有であると、個人のものであるとを問わず、包括的に昭和二十年九月二十二日の指令によりまして、凍結状態におかれてあります。それを今後いかなるふうに報告するとかいうような段取りには、まだ到達いたしておりません。從つて今後これがいかなる形によつて處分せられるかというようなことも、まだ文書をもつてしては何らの指示も、日本政府としては受けておらない状態であります。
#18
○若松委員 そういたしますと、結局この文句にありますような「占領軍當局に明示され」云々ということは、まだ向こうでは言つてまいつておらないのでございますか。それともすでに命令は來ておりますけれども、向うで出されないというのでありますか。
#19
○磯野政府委員 これはおそらく今後發展の方向を示したものではないかと思われまするが、今日までのところは、具體的に明示せよというところまでまいつておりません。ただ包括的に凍結せられておるのが實情でございます。今後のことにつきましてははつきりしたことはまだわかつてはおりません。
#20
○竹内委員 先ほど外務大臣のお話によりまして、原則としてこの私有財産が賠償のうちにはいらなければならぬというお話のあつたことを記憶しておりますが、このお話によりまして私たちは非常にうれしく思うと同時に、先ほど大臣には軍需補償の打切りと私有財産とが扱い方が同じであるというようなお話もちよつとあつたように記憶いたしまするが、軍需補償の打切りと海外同胞の私有財産とは、いささか性質を異にしておるのであります。原則として私有財産を何とかしなければならぬという話が合つたのでありまするから、これは全部とは申しませんが、將來何らかに形において國家が認めるという希望だけでも、この際與えてやつていただきたいということを私個人として希望いたします。
 また委員長の大臣への御質問に關連して、これも私の希望を申し述べるのでありまするが、連絡局というものは政府がつくつた局のうちでは一番いい成績を現在あげておるのではないか。なるべくこの連絡局はこのまま仕事をしていく方がスムースにいくのではないか。と同時に、連絡局というものは將來あるいは形をかえたにいたしましても、當分まだまだここ二、三十年は、日本は管理下あるいは信託的統治下におかれのでありまするから、それとの連絡局という方面に形が與えらるべきものであると思いますから、これはなるべくこのままにしておきたい。おくほうがより有利なのではないか。一體現在の日本のやり方を見ますると、どうも機構いじりがあまりに激しくなり、この連絡局をあるいは内閣直屬のものにするとかいうようなことになると、また機構いじりであります。そこに新しい人が來るというようなことで非常な不便なことが生じはしないかと思うのであります。
 なおこれに關連してこれも希望でございまするが、政府において今これを内閣にするかどうかというような機構いじりの研究があり、草案が立案されておるということでありまするが、政府がそういう立案をいたしまする場合に、これをどうして運營すべきかという方面におきまして、これは政府の提案をまつまでもなく、委員會みずからがこの際政府はどういう案をもつておるかというふうに、こちらから積極的に働きかけて、立案すべきものじやないかと考えております。これも委員長から政府にこの意味のことを御通知を願いたい。
 また講和會議と人材ということについて先ほどからお話がありましたが、外務省の人材というものは現在ではかなり散らばつておりまして、殊に前内閣においては、外務省の人材を非常に追い落としてしまいました。これは私一個の言ではございません。現に外務省においでになる方もこのことについては非常に同感の念をもつておいでになるのではないかということを考えました。現内閣におきまして芦田人事はかなりその方面において努力をされ、やや見るべきものがありまするが、講和會議の差迫つた今日においては、そういう散らばつた有為の人材、あるいは有為でありながら地方へやられておるという人材を、この際中央へお集めになつて、講和會議の準備をなさるならば、別に終戰連絡局を内閣へ移して、その人材を講和會議に與からすというような必要は私はないのじやないかと考えております。これも私一個人の意見であります。
 最後にこれも委員長への注文でありますが、この前の委員會において、私は外務省への希望を申し述べておつたのでありますが、ああいうような希望はどうぞ今後なるべく速やかに、そういう調査をしていただけるようにお傳え願いたい。
#21
○安東委員長 ただいまの竹内委員の御提言につきまして、一、二私の所感を申し述べておきたいと思いますが、ただいま終戰連絡中央事務局の問題に關連して、いたずらな機構いじりはやるべきでないという御意見、私はまつたく同感であります。かかるがゆえにいやしくも特にわれわれから案を具申しなくとも、現在新聞に傳えられておるような方向に、内閣が輕々についていくということについて、私は實は本日實際にどういう状態にあるのかということを外務大臣にお伺いした次第であります。從つてただいまのように、今さしあたつて委員會として具體案を實施してどうしようというようなことは避けた方がよかろう。むしろ先ほど外務大臣が言われたように、一應の成案を得たならばこちらにも諮るということでありますから、その時期を待つてわれわれの信ずるところを具申すべきであろう。そういうふうに御了解を願います。
 それから先日の竹内委員の支那問題に關する意見は、事きわめて微妙な點もありまして、速記録ができるのを待つておりましたので實は控えておつたのであります。速記録ができましたならば、その速記録を政府側に提出することにおいて、眞重なる返答を求めたいと思つておつたからであります。それも御了承願いたい。
#22
○若松委員 もう一遍日本人の在外資産についてお伺いしたいのでありますが、G・H・Qからいろいろ舊敵國に對する連合國側の財産調べなんか非常にやかましい。數多い指令を頂戴しておることは承知しておりまするが、同じような意味で日本の在外資産もやはり待遇を受けていいのじやないかと思いますが、そういう點を御主張なさる御意思があるのか、あるいはまたそういう準備をしておられるのか。連合國人の財産についてはずいぶん詳しい指令が出て、またその維持、管理等についても、日本の經費で大分やらされておることを私は現場で見てきております。もちろんこちらは敗戦國でありますし、向こうには連絡機關もないでしようが、行くいくは平和會議までにはこういうふうな準備もなさることだろうと思いますから、政府は今どういうふうな態度をとつておられますか、その邊承知いたしたいのですが、なるたけ詳しく、とつておられる手續きがありましたら、お示し願いたい。
#23
○萩原説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。日本の資産で外國にあるものにつきましては、先ほど若松委員のお讀み上げになりましたアメリカの對日處置方針は、結局そういうものを將來處分することがあるから、日本政府から報告さして一應處分に委ねらるべしというのでありますが、ヘルド・フォア・ディス・ポジションというので、とにかく預かつておくというので、それを實際にどうするかということはこれはおそらく平和条約において決定せらるべき問題だろうと思います。それに關連しまして、この對日處置方針のほかに、最近極東委員會で決定されましたポスト・サレンダー・ベイシツク・ポリシー・フォア・ジヤパンというものにはこの在外資産に關しましては、以上に述べた賠償に關する条項は各政府が在外資産問題に關して有する憲見にプレジュディスを及ぼすものではないというだけのことが書いてありまして、これまた在外資産の問題についてはつきり何もきまつておらぬというように思われるのであります。そうして日本側にG・H・Qからいろいろまいつております指令のうち在外資産に關するものは、要するに在外にある資産をこちらからいろいろ取寄せたりこちらで處分したり、そういうことをしちやいかぬというので、一つつながりを切つたような關係になつておりまして、從つて外にあるものは連合國それぞれの所在國がどういうふうに處分しておるのか、實情も實ははつきりいたしませんが、かりにそういう今とつておる處分が、將來條約においてどういうふうにリアライズされるかというようなことも、まだはつきりいたさないわけであります。それで先ほどもだれか申されましたように、こういう私有財産というものは原則として尊重せらるべきであるというのが國際法の根本の原則でございましようが、その後の實際の慣例におきましては、必ずしもその通りに實行されておらない。その結果平和條約においてどういうふうに規定されるであろうかということは、實はわれわれには非常に推測することが困難なのでありまして、先ほど皆様からもお話がございましたように、その結果個人にとつては非常に氣の毒な結果が起きてまいりますので、そういうようなことについてもいろいろ心配いたしまして、對策を考えておる次第でありまして、かりにイタリアの平和條約のような例をとりますれば、イタリアの資産で連合國の領域内にあるものはその財産の所在する國、つまりかりにイタリア政府もしくはイタリア人の財産がイギリスにあるといたしますが、イギリスの政府がそのイタリア政府もしくはイタリア人の財産を自由に抑留し、處分し、清算して差支えない。そうしてその清算した財産をもつてイギリス政府もしくはイギリス人が反對にイタリア人に對してもつているクレームの支拂いに充てる、そうしてもしそのクレームに充ててなおあまつた分は返還する。そうしてそのクレームに充てるために清算したり賣却したりしてしまつたものがイタリアの個人の財産である場合には、イタリア政府はそれに賠償しなければならぬという種類の規定を設けておるのでありまして、結局ある意味では個人財産を實際はとつてしまうわけでありますが、それは向こうにあるものをそれはイギリスならイギリスがイタリアからとらなければならないものがたくさんある。それをイタリアからとつていくよりも、イギリスにあるものからとつて、そうしてとつた物に對する補償はイタリア政府にさせることによつて、一應私有財産は尊重されるという原則をとりながら、實際の支拂いを便宜にするというような意味にも解される規定でございますが、かりにこういうような條項が日本に適用される場合にもいろいろ複雑な問題が起きてまいります。それが單に一つの個人の身のまわり財産のほかに、企業財産であつたり、工業所有財産であつたり、いろいろ複雜な問題が生じます。イタリア問題におきましてはかなり詳細な規定がございますが、こういう問題についてはいろいろ問題があるので檢討いたし、またそのために個人にとつて非常に不幸な事態が起きないようにしなければならないと思つておる次第であります。
 それからもう一つ敗戰國内にあります戰勝國の財産につきましては、これは原則として原状囘復をさせるという主義と、それから敗戰國が戰勝國から不當にもつてきた物は返還させるという主義を、今度イタリア條約等においてとつておりまして、殊に奪略物の返還に關しては、連合國が戰争中に一つの重要な宣言をいたしておりまして、その宣言を適用するという見地に立つて實行しておるものと思われますので、これを先ほど申しました主義が、はたして成立つものかどうかにつきましてはいろいろ問題もございましよう。その主義が必ず成立つべきものであるという結論もちよつと出しかねるように思われますが、それは別個の問題としてそれぞれ善處さるべき問題であろうと考えます。
#24
○若松委員 私は今外務大臣が、殊に私有財産に對する補償の問題等のごときはまだきまらないことですから、これはいろいろの宣傳等もあるということから、いろいろこまかい質問をしたのでありますが、最後にお答えになつた中にありましたように、日本國内にある連合國の財産に處分について、G・H・Qからいろいろこまかい指令がまいつておりますから、今反對に日本側から在外資産の調べ等は報告をとつてやつても、とても滿足にはいかぬでしようが、少なくとも向こうの要求したようなカテゴリーで、それに對する向こうのとつてきた處置ぐらいのことはこちらについても一應要求し得るような立場ではないかと思いましたので、その方の準備をしておるかどうかということを、私どもは考えたのであります。
#25
○安東委員長 ほかに御質問はございませんか。
――本日は大藏省當局にも出席してもらうように話しておきましたが、まだおいでになりません。從つてこれに關連する質問は遺憾ながらやめますが、委員會としては大藏當局に對して注意を喚起しておきます。
 それではこれをもつて散會いたします。
    午前十一時五十七分散會
ソース: 国立国会図書館
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