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1962/05/30 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 外務委員会 第20号
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1962/05/30 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 外務委員会 第20号

#1
第043回国会 外務委員会 第20号
昭和三十八年五月三十日(木曜日)
   午前十時二十四分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
 五月十七日
  辞任      補欠選任
   千葉  信君  加藤シヅエ君
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   理事
           井上 清一君
           草葉 隆圓君
           長谷川 仁君
           森 元治郎君
   委員
           青柳 秀夫君
          大野木秀次郎君
           杉原 荒太君
           山本 利壽君
           岡田 宗司君
           羽生 三七君
           佐藤 尚武君
  政府委員
   外務政務次官  飯塚 定輔君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       結城司郎次君
  説明員
   外務省条約局外
   務参事官    須之部量三君
   外務省移住局企
   画課長     中根 正巳君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○海外移住事業団法案(内閣送付、予
 備審査)
○日本国とアメリカ合衆国との間の領
 事条約の締結について承認を求める
 の件(内閣提出)
  ―――――――――――――
  〔理事井上清一君委員長席に着く〕
#2
○理事(井上清一君) ただいまより外務委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告申し上げます。去る五月十七日付をもちまして、委員千葉信君が辞任され、その補欠として加藤シヅエ君が委員に選任されました。
  ―――――――――――――
#3
○理事(井上清一君) 本日は、まず海外移住事業団法案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。飯塚外務政務次官。
#4
○政府委員(飯塚定輔君) ただいま議題となりました海外移住事業団法案につきまして、その提案の理由を御説明いたします。
 政府は従来から海外移住の重要性にかんがみ、戦後昭和二十七年に海外移住が再開されて以来、ボリビア、パラグァイ、ブラジル、アルゼンチンの諸国との間に移住協定を締結するなど、本邦人の海外移住の道を広げることに努めるとともに、諸種の総合的な施策を行ない、移住者の援助、指導その他海外移住の振興、助成に努めて参りました結果、昨年末までに政府から渡航費貸付を受けて渡航した移住者はブラジルに約四万四千人、パラグァイに六千人、ボリビアに一千五百人等合計約五万四千人に達しました。
 この間においてわが国の経済は大幅に成長し、都市はもちろん、農村においても労働力の不足を来たし、他方移住者を受け入れる諸国においては、農業開発のみならず工業化の進捗に伴い技術資本を伴う移住者の多様化が要望されるに至っております。
 他方移住実務機関といたしまして、従来国の補助金による移住者の助成、指導、援助を行なら財団法人日本海外協会連合会及び移住者に対する融資等の業務を行なう日本海外移住振興株式会社が中心となり、国内地方におきましては、各都道府県にある地方海外協会が地方公共団体と協力して移住実務を行なって参りました。これら実務に当たる機関は、従来の組織の形では十分に機能を発揮できないきらいがあるのみならず、海外における実務の面で競合ないし重複という弊害を伴っていたことも看過し得ない事実であります。言うまでもなく、移住事業の成否は実務機関の充実強化に待つこときわめて大であり、特に海外移住に情熱を持ち、移住推進に経験を有する要員の強化に待つこと大であります。
 政府といたしましては、このような実務機関の充実の必要を痛感するとともに、海外移住に関する考え方を抜本的に再検討すべきではないかとの世論にこたえるため、海外移住審議会に海外移住及び海外移住行政に対する基本的考え方について意見を求めました。同審議会は、八カ月にわたる慎重な審議の結果・昨年十二月五日政府に答申を提出いたしました。この答申の趣旨は、海外移住は従来のように単なる労働力の移動と見らるべきではなく、海外における創造的活動の場を国民に与え、相手国の開発に協力し、わが国の国際的地位と日本国民の国際的声価を高めることを目的とすべきであるとし、このために海外移住に関する公的な実務機関が競合して、これに国の資金が分散し、行政機構の多元性と相待って事務の渋滞、国費のむだ、資金効率の低下を招くような弊害を除くため、行政機構の面では移住行政の一元化をはかるとともに、公的実務機関に関しては日本海外協会連合会の業務と日本海外移住振興株式会社の業務とを統合し、新たに単一の公的実務機関として事業団を設け、国の行政機関よりその実務的、技術的部門をできる限りこれに移譲し、国内、地方の事務をも含む内外一元の体制を確立し、移住実務の合理化を断行すべきであると述べております。
 政府といたしましては、右の答申を慎重に検討いたしました結果、答申の趣旨に沿って移住事業の発展をはかるため、海外移住機構の抜本的刷新を行なうことを適当と認め、新たに海外移住事業団を設置し、行政機関は基本方針を定めてこれを指示するにとどめ、地方、中央、海外のそれぞれの事業の部門にわたって一貫性があり、能率的でかつ責任の所在をはっきりさせた自主的運営の体制を整えることとし、ここに海外移住事業団法案を提案いたした次第であります。
 次に法律案の内容につきまして、その概略を御説明いたします。
 第一章におきましては、海外移住事業団の目的、法人格、資本金等について規定いたしておりますが、事業団の資本金につきましては、事業団を公的海外移住実務機関とする関係上全額政府出資とし、当初資本金は、設立に際して政府から出資される八億円と事業団に承継される日本海外移住振興株式会社に対する政府の出資額との合計額とし、政府は必要があると認めるときは、事業団に追加して出資することができるものとしております。
 第二章におきましては、事業団に役員として理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内並びに非常勤の理事四人以内を置くこと、その他役員の任免並びに職員に関する事項を定めております。
 第三章におきましては、事業団の業務の運営に関する重要事項を審議する委員十五人以内で組織される運営審議会について規定しております。
 第四章におきましては、事業団の業務として、海外移住に関する調査、知識の普及、あっせん、移住者の訓練及び講習、渡航費の貸付及び支度金等の支給、移住者の渡航に関する援助及び指導、海外における移住者に対する指導及び定着のために必要な福祉施設の整備、その他の援助、移住地の取得、造成管理、譲渡、必要な資金の貸付、借入資金の債務保証その他の援助、これらの付帯業務、その他事業団の目的を達成するために必要な業務として外務大臣の認可を受けた業務を行なうこと、並びに外務大臣が事業団の業務の基本方針を定めて事業団に指示すること等を規定いたしております。
 第五章におきましては、事業団の事業年度、区分経理、事業計画等の認可、財務諸表、借入金及び債券、交付金の交付、余裕金の運用等について規定いたしております。
 第六章におきましては、事業団は外務大臣の監督を受けることその他外務大臣の監督権限について規定いたしております。また本事業団の業務の運営につきましては、関係各省と協力のため、大蔵大臣その他の関係大臣との協議を規定しております。
 第七章は雑則、第八章は罰則の規定で承ります。
 なお、附則におきましては、事業団の設立手続、財団法人日本海外協会連合会及び日本海外移住振興株式会社からの引き継ぎ税法上の特例措置等について必要な規定を定めております。
 以上が、この法律案の提案の理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
#5
○理事(井上清一君) 以上で提案理由の説明は終了いたしましたので、次に補足説明をお願いいたします。中根課長。
#6
○説明員(中根正巳君) ただいま提案理由の説明がございました海外移住事業団法案の提案理由につきまして、補足の説明をさせていただきます。
 最近、海外移住者が減少しておるということが注目されておりますが、この原因といたしましては、国内の経済が好況のために労働力が不足しておるとか、あるいはドミニカ問題の影響であるとかいうことも考えられますが、さらに、たとえばブラジルにおきましては、最近インフレが進んでいるために収入の実績があまりよくないというようなことも考えられますし、またさらに移住事務の実施機構が不備であるということ、あるいは国民に海外移住に関する知識が十分に行き渡っていないというようなことも考えられるわけでございます。一昨年総理府で、海外移住に関して国民の間にどの程度海外移住に関心を持っておるかということにつきまして世論調査を行ないました結果は一・四%ぐらいの人々が海外移住に対して関心を持っておるというような結果が出ておりまして、これはつまり百四十万くらいの人たちは海外移住のことを考えている、少なくとも潜在的に海外移住を希望して、いる人たちであると考えられるわけでございます。そうして国内状況の影響から見まして、この数がたとえ半分ぐらいに減っておると仮定いたしましても、七十万人ぐらい潜在的な希望者があると考えられるわけでございます。そこで海外移住に関する知識というものをもっと国民の間に普及されれば、こういう潜在的な移住希望者というものが顕在的な移住者として現われてくることが考えられるわけでございます。
 昨年のドミニカ問題をきっかけといたしまして、この移住問題について世間の関心が深まり、移住問題に対して根本的に再検討すべきではないか。その機構の整備について再検討すべきではないかという世論もございまして、政府といたしましては昨年の四月に、内閣の諮問機関である海外移住審議会に対しまして、海外移住及び移住行政についての基本的な考え方について諮問をいたしたわけでございます。この審議会は東畑精一博士を会長とし、国会も参衆両院の代表が出ておられまして、さらに学識経験者の合計二十五名からなる審議会でございますが、八回にわたる総会を開き、さらに小委員会を六回開催いたしまして、昨年の十二月五日に政府に対して答申が出されたわけでございます。この答申では、海外移住というもののまず理念を規定しておりますが、移住というものは、従来のように単なる労働力の移動ということではなくて、国民が持っている潜在的な能力をフロンティアにおいて開発する、それによって、同時に未開発国である移住先国の開発に対する協力ともなる、それによって日本人の国際的な声価を高める結果にもなる、こういうような考え方で移住は進めるべきであるということでございます。そして、そのためには移住者の円滑な現地における定着ということを政策の目標とすべきである。さらに、日本の移住者は外国へ行った場合には、ほかのヨーロッパの移住者の場合と異なって、人種的にも違っているために少数民族である。そのために発展の障害になるような要因があれば、それを取り除くというような保護の措置もとらなければいけない。国民の間に海外移住に対する正しい知識、認識を広めるということ、さらに移住者に対する指導、援助――これは移住者が出て行く場合に、出やすいようにする。さらに、移住地に行ってからも円滑な定着に必要な措置をとる。こういうことが施策の内容であるべきであり、この実施機構、実施体制といたしましては、行政機関、それから実務機関、公的な実務機関、それと民間機構、こういうものの補完的な機能を活用すべきであるとしておりますが、特に行政機構が直接に行なっている移住実務に関するものは、できるだけ公的な実務機関に移して、実務機関をして実務はやらせるべきだ、それがよいのであるということを指摘しております。そして、行政機関は事務を簡素化して、もっと高度な、政策の決定あるいは国際的な規模における移住の実施というようなことに行政の重点を置くべきではないかということでございます。公的実務機構の整備の必要を指摘しておりますが、現在、国家の資金による実務機関というものが重複しており、あるいは競合しておる。そのために、行政機関が多元的であるのと相待って事務が渋滞しており、また資金的に効率が悪いとか、方針が不統一になるというようなことが、そういうような結果が生じておりますので、この際、公的な実務機関は一つの単一なものにまとめて、実務機構の合理化を実施すべきであるということを指摘しております。そこで、との今回の海外移住事業団法案は、この審議会の答申の趣旨にのっとりまして、海外移住の実務機構を合理化して、実務機構の整備を行ないたいというのが目的でございます。答申におきましては、現在政府の資金で実務を行なっている海外協会連合会と、それから日本海外移住振興株式会社、この二つの機関の業務を統合して、単一の公的実務機関にすべきであるという結論でございます。
 この海外協会連合会は、昭和二十九年閣議決定によって、移住の実務を内外を通じて行なうことになっておりまして、国内的には啓蒙宣伝、募集、選考、教養訓練、それから送り出しの援助、渡航費の貸付、それから定着あっせん、調査研究、移住者に対する支度費の補助金の交付、移住指導者の養成その他の仕事をやっておりますが、要するに、移住者の指導、援助という面を政府の補助金によって行なっている団体でございます。そして、国内的には各府県にございます地方海外協会と協力して事務を行なっております。
 それから移住振興会社は、昭和三十年に特別法によって、日本海外移住振興株式会社法によって設立された株式会社でございまして、現在では資本金は三十三億、これは一般会計及び産業投資特別会計からの出資でございます。ただこの中には、民間からの出資といたしまして、七千五百万円という民間出資が入っております。移住振興会社の目的は、移住者に対する融資が主たる目的でございましたが、最近におきましては、海外において移住地の購入、造成、分譲というような仕事も行なっております。
 ところで、特に移住の実務に関する公的な機関がこのように二つございまして、それぞれ独立して運営されているわけでございますが、そのために、先ほども申しましたように、事務が渋滞する、方針の不統一が起こってくるというようなことがございまして、特にこれは海外の現地におきましては、二つの機関があり、海協連は移住者に対する指導、援助を行ない、同時に会社のほらも、金融を行なうに際して、あるいは移住地を分譲して移住者を入植させる際に、やはりある程度の指導、援助というものを行なっている。そのために、二つの機関から指導、援助というものがなされるために、競合するという場合が起こり得るわけでございます。そこで、こういう弊害を避けるために、これは海外の移住地を視察される先生方もごらんになった方々が多いと思うのでございますが、現地に行って見て、この二つの機関がそれぞればらばらに施策をしていることがいかに不合理であるかということが多くの人によって指摘されているわけでございます。そこで、この二つの機関を統合して、海外移住事業団というものを設立する予定でございます。特にこの海外協会連合会は、昭和二十九年に閣議決定によって移住実務を行なうことになった際に、なるべく早くこれを法制化をすべきであるということが閣議決定の中にうたわれているわけでございますが、これは従来まで実施されていないわけでございます。それから、この海外移住事業団の設置の目的の一つは、責任の明確化ということにあるわけでございます。ただいま申しましたように、二つの機関がばらばらに実務を行なっているために、その結果起こった不合理あるいは弊害、移住者がそのために迷惑をこうむっている。しかし、その責任はだれにあるのだということがはっきりしないという点がございます。これは一本の機関にまとめて、事務を統一し、責任がはっきりするような機構が必要であると考えるわけであります。ざらに、現在は相当移住実務の面にまで行政機構がタッチしておりますが、移住事業というものは、行政機関が直接行なうのは必ずしも適当ではなくて、これは実務機関に移住事務の専門家を養成して、海外移住に情熱を持ってこれに一生を捧げるというような人たちにやらせることが、移住者のためにも必要であると考えるわけでございます。そこで、この事業団構想におきましては、政府あるいは行政機関が行なっている実務、特に実務的なもの、技術的な面というものは、できるだけ事業団に移して、事業団が責任を持ってこれを実施するという体制を作ろうとするものでありまして、そうすることによって、現在、行政機構、特に権限争いで行政機構が多元化している、お互いになわ張り争いをやるというようなことも、実務を実施機関に移すことによりまして、実施機関が責任を持って自主的にやる、そのために行政機関があまりくちばしをいれる余裕も少なくなるという点から申しましても、なわ張り争いの余地も少なくなるわけでございます。それから、この実務機関には政府の実務をできるだけ移譲するとともに、自主的にやらせるということを考えておるわけでございます。責任を持たせるためには自主的にやらせる。さらに事業団として、実務機関として移住に情熱を持ち、それに専念できる人たちを養成するためには、自主的な機構を作って責任を持ってこれを行なわしめるということが必要であると考えておるわけでございます。
 以上、御説明いたしましたような考え方から、この実務機構の合理化をいたしたいというのが、この海外移住事業団法の考え方でございます。
#7
○岡田宗司君 ただいま補足説明をお伺いしたのですけれども、先ほど次官のほらから提案理由の説明があった。これはちゃんと文書として配付されております。他の法案を提出ざれる場合には、大体説明書というものが付されておるのです。たとえば日本国と南アフリカ共和国との間の小包郵便約定の説明書というのが外務省、郵政省から出されております。こういうようなきわめて事務的な、そうしてまあ私どもにとってさほど重要なものでないものについても、かような説明書をちゃんと付しておるのです。これには、そういう説明書もなければ何もない。今、口頭で説明されておる。なかなか聞きづらい説明でございました、率直に申しまして。ですから、やはりこういう重要なものにはちゃんと説明書を付していただきたい。それがやはり審議を進める上にも役に立つのです。
 それから次に、こういうような重要な法律案については、やはり資料をちゃんと用意をしていただきたいと思います。
 そこで私は資料の要求をいたします。まず第一に、審議会の答申ですね、これをひとつぜひお願いしたい。それから第二に、戦後の日本の移民の状況、これは農業移民、工業技術移民その他の移民についてお願いしたい。それから第三には、日本の工業が進出しておりますね、それと一体工業等の移民の関係はどうなっておるか。それから、日本人の移民に関して各国との間に協定が取り結ばれておるならば、その協定。さらに、ヨーロッパ等、移民を送り出しておる国が戦後どれくらい移民を送っておるかということ。それから、ヨーロッパその他の移民送出国の援助、指導等の方針、機構、政府の資金援助等、そういうものがおわかりになっておるはずだと思う。それについての資料。それから、日本の海外移民が日本に送金をしておりますが、その送金の状況等。それから、日本海外協会連合会、それから海外移住振興株式会社の今までの業績。特に海外移住振興株式会社が資金の貸付をやっておりますが、その資金の貸付がどういうふうに行なわれておるか。それからまた、回収はどうなっておるか。それの効果はどういうふうに現われておるかというような点ですね。もし失敗したものがあるならば、率直にその点についての意見も付して資料として提出していただきたい。
#8
○理事(井上清一君) ただいま岡田委員から御発言がございまして、資料の御要求がございました。まことにごもっともであります。私どものほうからも、よく外務省当局のほらへ資料を提出するについて申し入れておきたいと思います。
#9
○草葉隆圓君 もう一つそれに加え、今後の移民の、その国と話し合いのついておるとかあるいは特に希望の持てる国とかいう資料。
#10
○理事(井上清一君) 草葉委員からも、今あわせて御要望がございましたので、同時に外務省のほらに要求をいたしておきます。
  ―――――――――――――
#11
○理事(井上清一君) 次に、去る五月十四日に提案理由を聴取いたしました、日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、補足説明を聴取いたします。
#12
○森元治郎君 これもやはり補足説明が、やり方によってはかたかなをひらがなに直したような補足説明になるんだな。だから、今岡田委員から事業団についても話があったように、説明をくだくだひらがな、かたかなくらいの補足説明なら聞かないで、資料をちょうだいして審議したほうがいいのだがね。
#13
○理事(井上清一君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#14
○理事(井上清一君) 速記を始めて。須之部参事官。
#15
○説明員(須之部量三君) 日米の領事条約について若干補足説明を申し上げます。
 まず、この領事条約を締結する必要性でございますが、これは簡単に申し上げますと、従来、外交官の特権と領事官の特権、ないし外交官の職務内容と領事官の職務内容をよく比較対照されるわけでございますが、外交官の場合には、その職務内容及び特権の範囲とも、いわば国際慣行といたしまして、ほぼ明確にきまっておりまして、各国によってやり方が違うというような問題点はないわけでございますが、領事の場合には、その職務の内容あるいは特権の範囲というものにつきまして、国際慣行といたしましてまだ確立したものが必ずしもない。そのために、その具体的な内容は当事国間で双務主義に基づいて与え合うか、あるいは二国間の条約を作って認め合うということになっておったわけでございます。で、わが国の例をとりましても、戦前には独立の領事条約といたしましては、ドイツ、ベルギー、才ランダあたりと明治年間に作った領事協定があったのでございますが、これらはいずれも現在は失効しております。その他通商航海条約の中に一項を置きまして、簡単に、相互に領事を置く、あるいは領事の特権は双務主義になるべく有利に与え合うというような規定があった例もあるわけでございます。しかし、戦後になりまして、国家間の交通と申しますか、世界の社会的な距離が非常に小さくなりまして、それぞれの国民が相互に行きかい合う、またそれぞれの国内法もかなり技術的な面も多くなって、どうしても二国間で、問題の多い国同士の間では、領事の職務ないし特権について二国間の取りきめを明確に行なうという必要性が漸次考えられてきたわけでございます。で、今度は、このたび御審議いただきます米国との領事条約は、わが国としては戦後初めてのものでございますが、一方米国のほらは、現在でも約二十数カ国とこの種の領事条約をすでに持っておるわけでございます。で、イギリス等の例をとりましても同様でございます。わが国としましても、このたびアメリカとの間に領事条約ができたわけでございますが、なおイギリスとの間に目下交渉中でございます。それから、ブラジルとの間にもすでに草案を提議いたしまして、先方の意見を待っているというような状況でございます。で、この条約を締結する具体的な実益はたとえばどんなところにあるかという点になって参りますと、まず日本が外国に現在持っております領事館、総領事館の数でございますが、現在総領事館は二十六、それから領事館が七、計三十三館外国にあるわけでございますが、このらち米国にありますのが総領事館七館、それから領事館が二館、計九館が米国にあるわけでございます。そのほか、日本の領事館が比較的多くありますのが英国――植民地を含むわけでございますが――英国、それからブラジル等になるわけでございます。それから、一方米国のほらは日本にどういう領事館を持っておるかというわけでございますが、現在、総領事館といたしましては横浜と神戸に二つございます。そのほか、大使館の領事部という形で領事をやるところがございます。それから領事館としましては三館――福岡、名古屋、札幌というところに三館持っておるわけでございまして、結局総領事館二館、領事館三館、計五館日本に持っておるわけでございます。で、この条約ができましたために、たとえばということでその実益の例示を申しますと、領事がどこまで仕事ができるかという点では、たとえばアメリカにおきまして日本の国民が逮捕、監禁されたというような場合には、その要請があれば、すぐ日本の領事館に報告されるということとか、あるいは訴訟書類の送達を領事館を通じて相手国の人に送達できるようになるというようなことが、たとえばということで今度明らかにされた点でございます。それから、特権の明確化というほうをとってみましても、たとえばニューヨークにあります日本の総領事の公邸がニューヨークの州税をかけられまして、日本側ではこれを払わぬ、向こうは払えというようなことで、実は長らく懸案になっておったのでありますが、日本との間に今回の条約ができることによりまして、今後は課税されないというような点がはっきりしたわけでございます。で、この条約を結ぶにあたりましては、もちろん他国の先例もとったわけでございますが、ことに、ほかの国の先例としてとりましたのは、アメリカがアイルランドと結んだ一九五〇年の条約、あるいはイギリスがスペインと結びました一九六一年の条約、あるいはフランスとイタリアが結んだ一九五五年の条約等、いろいろなパターンを参考にしつつ作り上げたものでございます。
 で、次にこの条約の構成でございますが、お手元に条約案があるかと存じますが、八部から構成されておるわけでございまして、その第一部が「適用及び定義」、一条、二条が第一部で、適用地域及び定義。第二部が三条から六条でございますが、「任命及び管轄区域」、つまり領事館をどういうところに設置できるか、あるいは領事を任命した場合、委任状をどら提出し、あるいはそれに対して認可状をどら発給するか、あるいは認可状はいつ取り消せるか。任命の際、あるいは委任状等を提出しない他の館員につきまして、その任命の通告をどういうふうに相手国に対して行なうかというような点が書いてあるわけでございます。それから、第三部が「法律上の権利及び免除」ということで、法律上の特権関係を書いてあるわけでございますが、具体的には領事の事務所のための土地建物の取得とか、あるいは国家標識、国旗の掲揚の問題、文書の不可侵の問題、事務所の不可侵の問題、通信の自由、裁判管轄権の免除というようなことが規定されてあるわけでございますが、いわゆる外交特権と比較いたします場合に、この文書の不可侵、事務所の不可侵、裁判管轄権の免除される範囲等がかなりしぼられているというところに、領事の特権としての特徴があるわけでございます。それから、部に「財政上の特権」という章がございまして、ここで免税関係の規定を規定しておるわけでございますが、これは領事の事務所にある不動産に対する免税、あるいは公用の自動車、公用の動産、それから領事が外国で受け入れるところの手数料収入等に対する免税、それから領事館の所得税等の直接税の免税、あるいは関税の免除というようなことを第四部に規定してあるわけでございます。それから、第五部に「領事職務一般」ということで、第十五条から十七条までに規定があるわけでございますが、そのおもな内容は、国民の保護、つまり、日本の場合であれば、米国において日本の領事が日本の国民に対して与える保護、その態様、それから身分法上の取り扱い。つまり婚姻とか出生等の届出の受理等でございますが、身分法上の取り扱い。それから訴訟法上の取り扱い――先ほどの訴訟書類の送達等を含むわけでございますが、訴訟法上の取り扱い。それから、その他査証、旅券、証明等の事務のやり方について規定がしてあるわけでございますが、この五部はいわば例示的でございまして、国内法に抵触せず、かつ国際慣行上領事事務と認められることは、これ以外のことでもできるという規定になっているわけでございます。それから、第六部といたしまして、「遺産及び財産の移転」という一章が設けられておりますが、これは要しまするに、たとえば米国において日本人の旅行者が急に死亡した場合、その残した遺産をどう保管するかというような点が規定してあるわけでございます。それから、第七部といたしまして「海運」という章がございます。元来領事には本国の海運関係ないし船舶関係の法の実施に当たり得る建前になっておるわけでございますが、その点を明確にしたものでございまして、特に領事が、たとえば日本の場合をとりますれば、日本の領事が米国におきまして日本船舶の書類の点検ができる、あるいは船長と船員との紛争の解決をあっせんすることができる、あるいは、船舶内部の犯罪がありましても、重大なものを除いては、本国の裁判権、つまり日本の裁判権の処分にまかす、あるいは難波の際の援助をどうするかというような規定が書いてあるわけでございまして、具体的には日本の船舶法、船員法等の適用について領事が米国においてどの範囲の仕事ができるかということをきめたものでございます。それから第八部、最後に「最終規定」というのがあるわけでございまして、ここに名誉領事についての規定がございまして、名誉領事につきましては、日本は現在外国に三十名いわゆる名誉領事を出しているわけでございますが、うち米国に二名――ボストンとフィラデルフィアでございますが、いずれも米国人を名誉領事にしているわけであります。一方米国は日本に名誉領事は持っておりません。ただ名誉領事はこのとおり相手国の人間でございますので、この特権は実は大幅に制限されておりまして、先ほども申しました法律上ないし財政上の特権等は、もっぱら日本から派遣されます領事に適用があることになっております。この条約は批准によりまして発効いたしまして、五年間有効、その後は六カ月間の廃棄通告をもって終了せしめ得るという規定になっているわけでございまして、なおこの条約には議定書が附属しておりまして、沖繩の適用除外、あるいは先ほど船舶のことを申し上げましたが、その船舶という中には、裸傭船の場合も含む。つまり日本船以外の船でも、日本側で裸傭船されている場合は、いわゆる日本船舶に含むというようなことが由青いてあるわけでございます。
 この条約の交渉にあたりましては、関係の国内官庁が非常に多いわけでございまして、たとえば免税の問題につきましては大蔵省ないし自治省、それから法律上の免除等につきましては法務省、警察庁、それから船舶問題については運輸省等、非常に広い範囲の国内官庁が関係されたわけでございますが、それぞれの御意見も十分取り入れつつ交渉して、今般妥結に至ったというものでございします。
 以上簡単でございますが、補足説明を申し上げました。
#16
○理事(井上清一君) 以上で説明は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時十二分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
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