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1947/07/22 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 運輸及び交通委員会 第5号
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1947/07/22 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 運輸及び交通委員会 第5号

#1
第001回国会 運輸及び交通委員会 第5号
  付託事件
 海運組合法を廢止する法律案(内閣送付)(豫
 第三號)
―――――――――――――――――――――
昭和二十二年七月二十二日(火曜日)
    午後一時三十七分開議
 出席委員
   委員長 正木  清君
   理事 前田  郁君
      井谷 正吉君    島上善五郎君
      館  俊三君    成重 光眞君
      志賀健次郎君    原   彪君
      矢野 政男君    山崎 岩男君
     小笠原八十美君    田村 虎一君
      中野 武雄君    前田 正男君
 出席政府委員
        運輸政務次官  田中源三郎君
        運輸事務官   秋山  龍君
        運輸事務官   大久保武雄君
 委員外の出席者
        運輸技官    荒川 秀俊君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 海運勞働全般に關する問題及び氣象に關する説
 明聽取
    ―――――――――――――
#2
○正木委員長 これより會議を開きます。
 海運關係の勞働問題に關して大久保政府委員より御説明を聽取いたします。
#3
○大久保政府委員 私船員局長の大久保でございます。よろしくお願いいたします。船員の勞働問題をお話し申し上げます前に、海員の勞働の監督に關する國際的及び國内的な問題につきまして、あらかじめ御説明を申し上げておきたいと存じております。海員の勞働に關しましては、國際的には國際勞働總會におきましても、海上の勞働總會は陸上とは別に開催せられております。また勞働條約に關しましても、海員の海上の勞働條約は陸上とは別に國際的にもずつと編成せられております。なおまた海員の監督組織に關しましては、第九囘の國際勞働總會において一つの勸告が採擇されております。これによりますと、海上勞働は工場勞働とその性質を根本的に異にしているから、海上勞働法規を監督している機關で統括して實施した方がよろしい、こういうような勸告も採擇されておるような次第であります。かような國際的な勸點からいたしまして、欧米諸國におきましても、海員の勞働行政は海事官廰においてこれを行つておるような次第であります。現在の海運總局におきましても、海事に關する總合的な行政を所管をしているのであります。海運局は海運の運營につきまして、船舶局は造船につきまして、船員局は船員の勞働行政につきまして、港灣局は港灣の運營、建設につきまして所管をしているような次第であります。なおまたこれと同時に、海員の規律及び海上保安に關する行政を所管しているのであります。海事に關する總合的な行政を實施しておりまするその意味におきまして、海運總局における船員行政は、新しい勞働者の勞働一般及び陸上の勞働行政と竝んだ海上勞働行政官廰であるということを御了解願つておきたいと存じております。この點は同じ海運總局内におきましても、運營會の事務職員、あるいは船會社の事務職員、あるいは港灣、造船の勞働行政は、これは陸上勞働一般の所管に相なつておりますが、船員法の適用ある船員の勞働は船員局で所管をしているのであります。この點は歸するところ、船員の勞働は船舶と切り離すことができない。すなわち船員は船舶をその職場とし、その住居といたしております。この點にその本質がありますし、また國際的な慣例もそこから出發している、かように私は考えているわけであります。以上のような關係から、今囘の勞働省の設立にあたりましても、全日本海員組合を初めとしました海上勞働組合の輿論に從いまして、船員の勞働行政は海事官廰において行うという原則が依然として確立せられた次第であります。この點は勞働省設立準備會におきましても、各委員滿場一致決定せられましたような次第であります。
 以上の點を申上げまして、海員の勞働關係の諸問題の御説明を申上げたいと思つておりますが、海員の中には汽船、機帆船はもちろんのこと、漁船を含んでいるのであります。これは船員法におきまして、總トン數五トン以上の船舶又び三十トン以上の漁船につきましては、船員法を適用をいたしております。この船員法の適用ある船員に關しましては、船員局の勞働行政の對象に相なつているような次第であります。最初に申上げたいと思いますのは、船員の勞働組合の組織状況であります。現在船員數は約二十七萬三千人に相なつております。これは汽船、機帆船及び漁船を入れました數字であります。これに對しまして、前議會で通過いたしました新しい船員法の適用下にありまする船員は十六萬三千人であります。このうち現在組合に加入しておりまする船員は十一萬八千人であります。この十一萬八千人の中で、その大部分を占めておりますところの十萬一千人は、全日本海員組合に結成統合せられておる次第であります。すなわち全日本海員組合は、汽船、機帆船及び漁船の勞働者をもつて組織しましたほとんど海上における單一組合とも申してよい形態を備えおるような次第であります。
 この海員組合の從來の勞働關係の統合につきまして御説明を申し上げますと、終戰後わが國の單一組合といたしましては、まず最初に結成をせられました。昭和二十年の十月早くも海員組合はその結成にあたつたのであります。その後昭和二十一年の一月、給與關係に關する要求を提出し、引續き昭和二十一年の二月バラツク・シツプ問題というものが起つたのであります。バラツク・シツプ問題と申しますのは、當時日本の復員輸送を急速に實施する必要があるという關係から、アメリカから約二百隻のリバテイ型及びL・S・Tの貸與を受けたのであります。そこでこの船を引取りますために、急速に船員を集めまして、この船に乗船すべく訓練をいたしたのでありますが、諸般の設備がはなはだ急速でありましたために、不備であつた關係もございまして、いわゆるバラツク・シツプ問題を起しまして、この待遇の改善の端緒と相なつたのでありまするが、引續きまして昨年の八月から九月にかけましては、九月ストの一番トツプを切りまして、海員のゼネストが起つたのであります。この際の海員組合の要求は、待遇の改善と完全雇傭にありました。最も力點をおきましたのは完全雇傭の問題でありました。そこで海員ストの背後にはさらに國鐵のゼネスト宣言等がございまして、ほとんど陸海の交通勞働者の全面的ストライキに發展する可能性もあつたのであります。しかしこの昨年の九月の爭議は、約十日間にわたり罷業はございましたが船員中央勞働委員會の斡旋によりまして妥結に至つたような次第であります。給與の改善は完全に組合の要望は達成はできませんでしたが、完全雇傭の點につきましてはおおむね組合の要望が通過いたしまして、この爭議も解決をいたしたような次第であります。この爭議をめぐりまして海員組合には一つの内部的な紛爭が起つたのであります。すなわち九月ストライキを決行すべしとする中央闘爭委員會側の意見と、海員組合長を中心としたところの罷業に訴えずになお交渉の餘地ありとする意見とが對立をいたしまして、これが爭議の最終段階まで繼續いたしました、最後の調停の際には兩派が合同いたしまして、調停案を受けたのでありますけれども、この内部の紛爭は依然引續いておつたのであります。しかしながら昨年の秋、おおむねこの紛爭も解決をいたしまして、中央鬪爭委員會を解散すると同時に、中央鬪爭委員會を指導しておりました方の幹部は、ほとんど全部組合から離脱をいたしたような次第であります。この過程におきまして、海員組合は罷業の際に産別の傘下にはいる決議をいたしておつたのでありますけれども、爭議解決後、産別から脱退いたしまして、現在は總同盟にも産別にも属さない一つの海上勞働者の單一組合である――海上勞働者の大部分を結集した單一組合であるという獨特の存在を續けておるような次第であります。全日本海員組合の前身でありますところの日本の海員の組合は、過去におきましても非常に進歩的な勞働運動を續けてまいつた歴史ある組合でございまして、かつてわが國におきまして勞働協約その他の勞働關係の諸問題が、なかなか平和的に解決されない場合におきましても、相當進んだ勞働協的を結び、あるいは數囘の罷業によつて相當確固たる勞働條件を確立いたしております。また船主と船員との間に、イギリスの例にならいまして海事協同會という勞資の協同團體を設定いたしまして、幾多の勞働關係の諸問題をテーブルの上で解決をし續けてきたつた歴史を有しております。かようなわけでありまして、海員組合の今後の動向につきましては非常に注目をせられるところだつたのであります。そこで海員組合の幹部につきましては、設立の際に選擧によらずして、海員組合の執行部が最初の發起者によつて占められておつたのであります。これに對しまして、やはり海員全體の選擧による幹部を編成すべしという意見がございまして、今年の五月二十日、全國の海員の選擧によりまして、新しい中央委員を四百五十名選びました。この中央委員によつて新しい組合長、副組合長以下の幹部が選考せられまして、先月新しい執行部が編成せられたような次第であります。今後における海員組合の動きは相當注目を要すると考えておる次第であります。現在海員組合は勞資間の諸般の協同關係につきましても奔走、斡旋をいたしておりまして、海運に關する産業復興會議を創立をいたしまして、使用者團體及び海上關係の勞働團體が合作をいたしまして、海運復興會議のリーダー・シツプをとつておるような次第でございます。
 以上簡單に海員の勞働組合關係の御説明をいたしましたが次に海上勞働關係で重要な問題は、船員の勞働委員會であります。これは勞働組合法によつて勞働委員會が設立されておりまするが、陸上における勞働委員會と竝びまして、海上における船員勞働委員會が設置せられておるのであります。すなわち船員の勞働委員會は、中央に船員中央勞働委員會、地方に船員地方勞働委員會が設置せられておりまして、地方は各海運局の所在地、全國十箇所に設置せられておる次第であります。この船員の勞働委員會は、從來中立勞働者側、使用者側、おのおの五名によつて編成せられ、地方はおのおの三名、すなわち中央が十五名、地方が九名によつて編成せられておつたのであります。ちようど現在改選期になつておりまして、新しい本年度の勞働委員會は各七名に増加をいたしまして、二十一名をもつて勞、資、中立で編成いたすように相なつて、目下委員の選考、推薦を受けておりますような次第でありまいす。そこで船員の勞働委員會は一般陸上の勞働委員會と違いまして、單なる爭議の解決という一つの裁判的な問題以外に、非常に廣汎なる船員勞働關係の諸問題を整理するような機關に相なつております。たとえば勞働基準法によりますると、陸上では勞働委員會のほかに、賃金の問題につきましては賃金委員會、それぞれ各部門にわかちまして、專門の委員會が構成せられるようになつておりますが、勞働基準法に相當する船員法によりましては、船員の勞働關係のほとんど一切の問題を、あげてこの船員勞働委員會の職權とするようにいたしておるのであります。かような次第でありまして、船員の勞働委員會の運用は、船員の勞働關係を處理します上につきまして、非常な重要な地位を占めております。現在は船員の給與審議會もこの勞働委員會の下部機構になつておりますし、船員の職業紹介法の改正等につきましても、この委員會において審議しておる、かような状況になつておる次第であります。
 次に船員の勞働基準に關しまして御説明を申し上げたいと思つております。陸上におきましては前議會におきまして勞働基準法が通過をいたしました。海上勞働につきましては、これと竝びまして前議會に新しい船員法が通過をいたしました。新しい船員法には船員の勞働關係の契約、船員の給與、船員の勞働時間、定員、食糧、衞生、就業規則、そういうような船員の勞働條件、勞働基準に關する一般的な問題が規定されております。この點は船内における海上勞働が、陸上における工場勞働と非常に違つておりまして、ほとんど同一法典に編纂することができない。同時に國際勞働總會におきましても、海上の勞働法規は一つの海上勞働法典に總合して編成すべきである、かような勸告が採擇されております。こういう關係で、新しい船員法がまつたく船員の勞働關係の一つの憲章的存在をなしておる、かように考えてもよろしかろうと考えております。そこでかような勞働法と併せまして、船員の勞働基準を定めるにつきまして、陸上と非常に違いますことは、船員の規律という問題であります。すなわち海上勞働というものは船舶の安全というこの第一義的な要請の前には、いかなるものもこれを讓歩しなければならぬという、船舶の安全というものの絶對性であります。すなわち船舶は言わば一つの海上のおける安全協同體であります。そういう船舶を一つの安全協同體と見るところに、海上勞働の特異な存在が起つてくるわけであります。船員の勞働保護法規であり、勞働基準法規であるところの船員法に、船員の規律に關いる條項が存在しておるのであります。たとえば船員の勞働爭議も、船舶の危險というものの前には、これは爭議行為をやつてはいけない。やらないという規定がございまするし、また勞働時間等につきましても、船舶の安全ということ、あるいは他の船舶を救難するということにつきましては、これを勞働時間制というものの適用をゆるめるというような、いろいろな船舶の安全優先主義というものが存在しておるのであります。同時にまた船舶は船長の絶對性――船長を中心とした海上規律というものがどうしても必要であります。工場においてももちろん工場長の指揮統制というものがございますが、船舶においては、どうしても船長の絶對的な指揮統制なくんば、船舶の安全というものははかり得ませんし、それが同時に船員の保護にもなる次第でありますから、船長の職務權限というものを規定をいたしまして、船長は海員を懲戒することすらできるというように、相なつておる次第であります。かような一つの船員法に盛られました海上の特異な勞働基準法というものは、國際的な海上勞働條約をほとんど全面的に吸收をいたしまして、そのうち勞働時間制、及び有給休暇におきましては、海上における國際勞働條約をはかるにぬきんでた規定を制定いたした次第であります。この點は非常に問題も多かつたのでありますが、さいわいにして議會の御協賛を得て、目下政令を制定する運びに至つております。この日本の海上勞働法規は、連合軍からも世界に誇るべき法規である。かように稱讃の辭を頂載いたしました。こういうような日本の海上勞働というものを、國際的な基準の前に投げだして、この世界的な勞働基準の上に、新しい日本の海上産業というものを、新しい角度から建設をしたいというのがこの新船員法のねらつておる念願でありまして、この海上勞働法規を中心としまして、海上における船員の勤労意欲をますます向上をいたしたい。かように存じておる次第であります。目下G・H・Qにお願いをいたしまして船員法の英譯を世界の各國に御送付をお願いいたしまして、日本の海運が將來國際海運として乗りだす前の、日本の海上勞働界の一つの基準というものを、國際的に受け容れてもらいたいという一つの手段を盡しておるような次第であります。そこで勞働基準の際申し上げました船員の規律に關連いたしまして、見逃がすことのできませんのは、海員の懲戒法であります。從來海員の懲戒關係につきましては、免状をもつておる船員に對しまして、海員懲戒法という法律がございます。これによつて日本の全國に海員審判所が設置せられまして、海員の免状に對しまして審判をいたしておつた次第であります。ところが海員の審判という問題を眞正面から取上げること、もちろんそれは海難という船舶の安全についてゆるがせにすべからざる問題でありますが、それと同時に一體海難は何によつて起つたか。海難があつて船舶が沈み、人命が毀傷されますと、まず非難の對象になりますものは海員であり船長であります。しかしながらこれをしさいに檢討いたしました場合に、あるいは海員以外に何らかの原因がなかつたかということが考えられる。新しい海員懲戒法を改正する海難審判法につきましては、この點につきまして海難の原因を廣汎に探究いたしまして、將來海難の豫防に資し、そうして海員を懲戒するということよりも、こうしたら海難がなくなるぞという海員に對する教育、そういう事故の豫防という方面に懲戒制度をもつていきたい。こういうのが海員懲戒法改正のねらいであります。この機會に海員懲戒法の改正、すなわち新しい海難審判法を御提案申上げたいと考えておるような次第であります。
 なおまた船員の基準關係で御理解を願いたいと思いますことは、戰爭以來、日本の海員は國家に徴用されております。すべてが國家の徴用船員であります。國家が徴用しました船員を運營會をして使用せしめまして、軍事輸送に當らせておつたような次第であります。この戰時態勢は船員動員令によつてこれを規定されておりましたが、これは終戰後におきましても、復員輸送等、相當戰爭とは性格は違いますけれども、輸送の面から申しますと、全船員を動員して輸送しなければならない大きな問題が眼前に横たわつておりましたので、この船員動員令は最近に至るまで存續してまいつたのであります。しかしながら新しい憲法の制定等に關連いたしまして、船員の徴用というような、一つの強制勞働形態が現在に及んでおることは望ましくないというような見地から、この三月三十一日をもつて船員動員令を廢止をいたしまして、船員の國家に對する徴用の制度をやめまして、現在は運營會の使用する船員ということに相なつておる次第であります。
 以上船員の勞働基準につきまして申上げましたが、次に船員の失業關係及び職業安定關係につきまして御説明を申上げたいと思います。昨年九月の海員のゼネストも、當時復員輸送がおおむね終了に間近くなりまして、リバテイ、L・S・Tのアメリカへの大量返還が起り、これによつて數萬の船員が一時に失業しやしないかという不安が海員をゆるがせまして、爭議にはいつたのが一つの原因でございました。これが當時一般産業の合理化に對する完全雇傭の、勞働組合の一般的な要求と合致いたしまして、この海員の完全雇傭の聲がまず大きく浮び上つてまいつたのであります。そこで現在の船員の需給關係はどうなつておるかと申しますと、本年五月一日現在の運營會船員について例をあげて申し上げたいと思います。五月一日現在の運營會保有船員は約四萬四千人であります。それに對しまして現在保有しております船腹に對應する船員の所要見込數は三萬六百七十一名であります。そこで約一萬三千人の過剰船員が出るのであります。しかしながら新しい造船によりまして、新しく船ができますために船員を配乗しなくてはならぬ。あるいは船員を學校に收容する。あるいは新しくできることを豫想されておるところの海上保安關係の船舶に收容する、こういうような關係の所要見込數を差引きますと、過剰いたします船員は約五千三百名程度に相なります。これに對しましていろいろ船員の自然にやめていく人がございます。その自然減耗を見込みますと同時に、新しく學校から卒業する人の數を勘案いたしますと、約四千名の船員が過剰であるということに相なります。これに對して後ほど申します轉職補導をいたしますると、それが約千名でありますから、約三千人の船員が過剰であるということになりますので、今度における賠償關係の問題は含んでおりませんが、一應約一割足らずの程度の過剰船員が出る見込である。かように御判斷を願いたいと考えております。そこで船員の完全雇傭に對しましては、昨年の九月の爭議の調停案にもうたつてございまするので、その後いかなる對策を講じたかと申しますると、今後の船舶見透しといたしまして、石炭三千萬トンの生産額が上昇するものであると假定いたしまして、今後の日本の産業界の動きを勘案して船舶見透しをいたしますると、昭和二十五年ごろにおきましては、おおむね五萬人程度の船員を必要としはしないかということも想定されたのであります。そこで現在は過剰であつても、日本の經濟が豫定のごとく發展したならば、あるいはその船員は必要な船員であるかもしれない。しかも一人の高級船員が一人前になるには、十數年の歳月と多額の國費を要して養成訓練をいたしておるのであります。この船員をまつたくその關係しない産業に散らすということは、船員の職業對策といたしましても策を得たものではない。また船員の聲といたしましても、自分たちは海にあこがれ、日本の海洋にあこがれて船員になつたのだ、また海上の特殊訓練を受けておるので、他の方面に變りたくない、やはり船乗りは海に生きたいというのが海員組合及び船員の痛切な聲なのであります。そこで何とか海に關係のある方面に船員を再び收容させたいと考えた次第であります。その結果考えましたものは、戰爭中非常に大きく擴張されました學校施設が、現在生徒數が非常に減つて餘裕があるということであります。そこで約五千人の船員を學校に収容いたしまして、日本の産業としましては最初の大規模な職業教育を始めることにいたしたのであります。これはすでに本年の一月から著手をして、三年間に二萬五千人の船員を再教育いたしたいというようなねらいをもつて、多額の經費をこれに投ずる豫定をいたしております。さいわいに各方面におきまして、職業教育、職場人の再教育というものが問題にされておりまするが、海員に關しましては、その最も先端を切つて、本年の一月からこの再教育の問題を取上げたのであります。學校の施設の足りないところには、機雷で焼けて動かない船を岸壁に繋ぎまして、その船舶を學校に充てるということまでいたしまして、現在養成を續けております。この再教育問題は、一遍職場に出た人が一般の學生生徒と一緒になつて教育を受けるということについては、非常に危惧の念を抱いたのであります。同時に本人の生活問題等から考えまして非常に心配をいたしたのでありますが、現在のところ非常に成功ではなかろうかと考えておるのであります。上は船長から下は一船員に至るまで、養成をいたしておりまするが、私もこの船長、機關長あたりの講習等にも行つてまいりましたけれども、この講習を三年間で打切つてもらいたくないということが言われるのであります。これは海上勞働者は沖に出まするとどうしても一般の社會的な教養というものから遠くなりますので、自分が陸上に上つた場合の社會的な教養をどうかして高めたいというのが、海員の一般の聲であります。新しい船員法におきましても、船員が教育を受けるために下船することができるという條項を入れまして、教育ということを重視しておりますが、日本の將來の海運を再建するためには、單に船舶の改善だけではいけない。船舶は船員だけの力で動かしておるのであります。現在は戰時標準船の、はしにもぼうにもかけられない船を、彼らが脂汗を流しながら動かしておるのであります。海上勞働者に關しましてはそこには一人の資本家もおりません。一人の使用者もおりません。全部勞働者だけで日本の船を動かし、世界に優位を誇つて現在まで太平洋のまわりを動いてきていたのであります。私は今後における日本の海運の再建は、船員の再建の意思が旺盛になつてまいりましたならば、決して悲觀する必要はない。海上の勤勞大衆が必ず日本の海運を再建してくれるだらう。それにはどうしても船員の質の改善が必要である。これは現在の船員の過剰時代においてこそそのチヤンスがある。この時期をおいてはそのチヤンスは訪れない。そこで九月爭議の解決の一端を船員の再教育に向けまして、職場人の教育では最初の教育を現在實施しておるような次第であります。そこで船員の再教育と竝びまして、もう一つの問題は、船員の職業轉職補導の問題であります。これは船員を、やはり船員に關係のある漁船の方へ轉換させようというねらいをもつて、漁船竝びに船舶の沖修理――現在船舶の運航が修理關係で非常に停滞していることは御案内の通りであります。これを船員の勤勞意欲によつて、自分たちの手によつて同志の船を直そうじやないかというような關係から、船舶の沖修理に船員の轉職補導をしよう。機關部の方は沖修理の方へ、甲板の方は漁船の方へ、こういうねらいをもつて始めております。なおまた現在船員の過剰と申しましても、どつちかというと、普通船員の方は足りなくなりかかつております。餘つておるのは無線と事務部系統、司厨部の方面であります。無線部、事務部方面の若い船員は、甲板部あるいは機關部の方へ轉換させるような職業補導をも今併せて行つておるような次第であります。かような諸般の對策を實施いたしますと、船員の完全雇傭問題もおおむね九月爭議解決のラインをもつて解決できる、かように信じておるような次第であります。
 そこで先ほど申しました今後における船員の需給見込みからする三千人の過剰船員をどうするかという問題につきましては、もちろんただいま申しましたこれらの施設を擴充することも一案でございますが、また新しい船員の失業保険によりまして、船員の離職後の職場を安定さしたいと考えておるわけであります。そこで船員の保險問題に關しましては、船員の保險は一般勞働者の保險と違いまして、一つの會計にまとめて保險されておるのであります。一例を申し上げますれば、船員疾病保險も、船員の養老年金も、船員法における災害補償の裏打ちをするところの船員の勞働者災害補償保險法も、一つの船員保險という保險會計に保險されておるのであります。そこで海員の、自分たちの同志は自分たち職場にある者が救いたいという聲は昨年の九月爭議以來の聲であります。そこで新しい船員の失業保險は、船員保險法の改正によりまして、この保險會計に取入れて實施をいたしたい。かように考えておる次第であります。今議會には船員法の裏打ちをするところの船員の勞働災害保險の改正、それから新しい船員の失業保險を盛りこみまして、船員保險法の改正案としまして、本議會に御提案をいたしたいと考えておるような次第であります。この點は船員保險行政が運輸大臣に移管されますのと關連いたしまして、運輸省から提案することに相なるだろうと考えておる次第であります。
 そこで最後に船員勞働關係としまして、船員の教育關係を申し上げますが、完全雇傭の條件といたしまして、五千人の再教育をいたしておりますことは、ただいま申し上げました通りであります。このほかに船員の養成所、商船學校、高等商船學校及び商船大學に相當する海務學院というような學校施設によりまして、船員の養成、訓練、教育をいたしております。この數はおおむね四千名足らずでございますが、この養成をいたしております。これは現在文部省の學校教育から離れて、船員に關しましては、特殊の教育及び職業教育等の關係もございまして、海事官廰において商船教育をやつておるということが一つの特色であろうかと考えております。新しい問題といたしましては、この船員の教育に伴いまして、船員の勞働者教育を擴充したいと思つておる點であります。健全なる勞働組合運動、健全なる勞働協約というものを船員全體に周知いたさせまして、日本の海上勞働というものをますます發展せしめますために、新しく海上の勞働者教育を開設いたしたいと考えております。これは近く實施に運びたいと考えておるような次第であります。以上はなはだ簡單ではございましたが、船員行政の監督組織の問題、及び組合の動向の問題、及び勞働委員會の問題、勞働基準の問題、職業安定及び失業問題、それから船員の教育問題を御説明をいたしました。
 なお一點申し落しましたが、船員の職業紹介であります、職業紹介に關しましては國際條約の上におきましても、船員の職業紹介に關する條約は陸上の職業紹介に關する條約とは別にできております。これを受けまして現在船員の職業紹介法というのがございます、これは戰爭中大分かたわになつておりまして、また條約等から見ましても不備な點がございました。今度この船員の職業紹介法に新しく職業補導の問題を盛りこみまして、船員の職業安定に關する全般的な諸問題を取入れまして、全國的改正をいたしたいと思つております。これまたいずれ議會に提案の運びとなると考えますので、その際よろしくお願いいたしたいと考えます。これをもつて説明を終ります。
#4
○正木委員長 これより海運關係の勞働問題に關して、運海局長秋山政府委員の説明を聽取いたします。
#5
○秋山政府委員 私、海運局長の秋山であります。どうぞよろしく。ただいま船員局長より船員に關する勞働問題につきまして御説明を申し上げましたが、私は船舶運營會の從業員組合につきまして若干御説明申し上げてみたいと思います。
 この船舶運營會の從業員問題を御説明いたしまする前に、若干船舶運營會從業員のよつて立つところの基礎と申しましようか、船舶運營會というものの性質につきまして、若干御説明申し上げました方がよろしいかと存ずるのであります。船舶運營會は、御承知の通りたくさんの船會社の船を、戰時中國家が統一運營をするという便宜のために、民有の船を國で使用いたしまして、その使用した船を國家の代行機關として運營をする組織として、總動員法に基きまして昭和十七年四月に設立いたしたのでございます。その當時はいわゆる定期傭船主義といいますか、船員の仕事あるいは船を修繕維持する仕事は全部もとの會社の方に殘つておりまして、その船腹を雇い上げまして、それによつて海上の輸送事業を經營するというような形になつておつたのであります。戰爭がだんだん進行いたすにつれまして、昭和十九年の六月であつたと思いますが、船員關係の仕事、あるいは修繕の仕事全部を船舶運營會で直接取扱う、こういうことにいたしました。各船會社は貸家業といいますか、そういう状態になつておるのでございます。かくいたしておりまして終戰になつたのでございますが、終戰後これをどうするかということにつきましても、いろいろ研究いたしておりまするうちに、米軍が進駐してまいりまして、船は米軍の特別な管理のもとに入れられたのであります。それから總動員法が廢止せられまして、船舶運營會の根據法規であります戰時海運管理會も當然効力を失うことになるわけでありますが、それを六箇月毎にポツダム宣言受諾に伴う緊急勅令に基きまして、その存在の効力を延長してまいつております。ただいまのところ九月まで一應戰時海運管理令の効力がある。從つて船舶運營會はそれまで置く。こういうような形になつておるわけでございます。從いまして船舶運營會の從業員といたしまして最も不安な問題は、この機關がいずれにしても臨時的なものでありまして、何らかの形の恒久的なものに落ちつかなければならない。從つて、就業上の不安をもつておるということが船舶運營會從業員組合の根本的な一つの問題となるのでございます。
 それから第二には給與の問題でありまして、給與はガヴアメント・エンプロイヤーと言われております關係上、政府職員に準じなければならない。ところが彼らは大體において元船會社に勤めておつたものでありまして、船會社から船舶運營會に移つた人たちでございます。その昔の給與というものは、政府職員の給與とは違つた體系と違つた高さ、レベルをもつておつたわけでございます。これが政府職員とみなされた場合に、どういうような調和をするであろうか。これがまた一つの問題であります。この二つが船舶運營會從業員組合のもつております根本の問題になつておるわけでございます。船舶運營會の現在の從業員はどのくらいあるかと申しますと、職員が三千二百七十八名、雇員が一千八名、合計四千二百八十六名ございます。これが二十一年の二月五日に地區別の勞働組合を結成いたしました。二十一年四月十九日に全國的單一組合になりました。二十二年の五月十日に現在の船舶運營會勞働組合というものに改稱いたして今日にいたつたのであります。もちろんこの勞働組合は海員組合とは異なりまして、一般の勞働法制の中に包含さるべきものでございます。その爭議調停機關は中央勞働委員會でございます。また勞働組合としての監督は現在は厚生省で、これが近く勞働省に移る。こういう事柄でございます。船舶運營會と申すものは政府の代行機關でございまして、その經營におきまして收入をもつて支出を賄い得ません。國家から多額の補助金を出しまして經營いたしております關係上、私どもの方として、彼らの勞働條件につきまして、常に問題が起るという意味におきまして重大なる關心を寄せ、またこれに對するいろいろな世話をしておる、こういうような立場に立つておるのであります。船舶運營會從業員組合の船舶運營會幹部に對します爭議は、今年の一月全官公廰のゼネスト宣言と同じ時期に起りまして、待遇の是正と海運の民主化、これは海運の國營化あるいは社會化といつておりますが、そういうことをめざしまして、失業を防止するために海運を社會化あるいは國營化的な方向にもつていつてもらいたい。こういうような二本の要求を掲げまして、爭議行為があつたのでございます。給與の方につきましては、政府職員との關連上、政府職員の給與を、いわゆる千二百圓ベースと申しておるあれに改訂いたします線に沿いまして、解決をいたしたのでございますが、海運の社會化という問題につきましては、これがもし國營化というような問題でありますと、勞働爭議で取扱うのにはいかがと思われる疑問もありまして、中央勞働委員會の裁定によりまして、その問題は取扱わない。しかし海運は民主化さるべきものであるという點は、中央勞働委員も同感でありました。
 それから失業問題につきましては、これは船舶運營會の地位に鑑みて、きわめて氣の毒であるから、組織の變更等が起る場合には、よく事前に連絡して、幹部、組合あるいは政府も協力して、そういうことのないようにできるだけ注意をして誠心誠意努力を拂うように、こういうような勸告がありまして、そういう線に沿つた調停書をつくりまして裁決をいたしております。船舶運營會從業員組合というものは、ざつとこういうような動きと經過とをとつている次第でございます。そのほかに海運會社の從業員が組織しておりますところの、全海運と言つたと思いますが、各船舶會社の從業員の組合の連合體も結成されております。この方は直接今まで問題の起つたことはございません。ただ彼らの運動の方針といたしましては、海運の民營還元ということを主題といたしまして運動をしているようでございます。そういつたように各勞働團體、あるいは各界がおのおのばらばらの方向で動きましては、海運の再興がむずかしいのでありまして、何とかしてこれが一本の方向にまとまらないかということをいろいろわれわれとしては熱心に希望いたしておつたのでございますが、先ほど船員局長よりお話申し上げたような海運復興會議というようなものが、全海事關係の勞働者及び經營者の代表によりまして結成されまして、海運復興に關する問題が取扱われている、こういう状態に相なつておりまして、この點まことに喜ばしいことと存じておる次第でございます。まことに簡單でございますが、これをもちまして御説明を終ります。
#6
○正木委員長 皆さんにお諮りします。船員局長竝びに海運局長から陸と海との海運關係に對する勞働問題の説明を聽取したのでありまするが、實は中央氣象臺の調査部長の荒川君が見えておりまして、氣象關係の説明をすることになつております。それでここで船員局長竝びに海運局長に對する質問がなければ、續いて中央氣象臺の調査部長の荒川君から、氣象に關する説明を聽取したいと思いますが、いかがですか。
#7
○井谷委員 先ほどの船員局長のお話で二つほどお伺いしたい。今の船員の再教育をやると言われて、學校が餘つているというお話も承つたのですが、それはどういう方面の學校ですか。もう一つは、無線の技術者が餘つている、これを甲板の方へまわそうということでありましたが、ああした特殊な技術を得ている人を何かほかの方面でお使いになる途はないものであろうかということをちよつとお伺いしてみたい。
#8
○大久保政府委員 學校が餘りました原因は、戰爭中非常に大擴張をいたしまして、終戰後船員を一擧に減らしましたので、各學校につきましては、養成所、商船學校、それから海事專門學院、高等商船に至るまで、いずれの學校も若干ずつ廳舎の餘裕はある。ただ海技專門學院だけは、これは終戰後再教育をいたしております。また高等商船學校は戰災によつて校舎が焼けまして、非常に不自由でございます。この點は先ほど申しましたように、船を岸壁に繋ぎまして、これをもつて學校に充てる、こういうような工作をして再教育をやつております。それから甲板部、機關部の方へまわしまする船員は、お話のように無線の關係はこれはできるだけ技術を温存したい。かように考えております。できれば事務關係に若い船員を充てる。こう考えております。ただ無線の關係も、戰爭中の急速養成者は非常に程度が悪うございまして、よほど訓練しなければ使えないという關係がございますので、ごく最近無線關係の再教育も始めたばかりであります。しかし無線關係は非常に過剰でありますから、將來なかなか乗船の機會もなかろうという關係で、他の部の方へ轉換の希望があれば、それは拒まない、大體こういう豫定でおります。
#9
○正木委員長 それではこれより中央氣象臺調査部長荒川君より、氣象竝びに燈臺の現況に關して説明を聽取いたします。荒川君。
#10
○荒川説明員 中央氣象臺は運輸省に属しておりますが、中央氣象臺の事業のあらまし及び豫算その他を御説明するために、お手もとに差上げましたようなプリントをつくつてまいりました。この順序で簡單に御説明いたしたいと思います。
 第一番目の事業運營の方針というのは、ずつとお話しいたしましてから、最後にまとめてお話しいたしたいと思います。
 二番目の氣象業務の運營に關する問題でありますが、終戰になりましてから、氣象臺は連合軍から、特別支障のない限りは今まで通り事業を續けていけという指令を受けました。
 その次に、三番目に氣象官署の組織につきましてここに官制の一覧表をつくつてまいりました。大體どれくらいの大きさをもつておるかと言いますと、一級の技官、もとの勅任官級の者が六人ございます。大體本官の者、もとの判任官以上の者が二千名近くございます。技術員、雇員までを入れますと、大體日本全國で六千名からの技術者がおるわけであります。從つてそれだけの大世蔕を抱えておりますから、今お話がありましたような職員組合も、全官公の職員組合の一部分として全國氣象職員組合というようなものができております。プリントの中にどんなふうな系統になつてこの氣象官署ができておるかという一覧表がつけてございますが、全國の氣象事業を統覽いたしまするところは中央氣象臺でございます。その氣象臺の直轄の東京の部門に總務、豫報、觀測、調査及び氣象研究所という五つの部門がございます。そのほかに氣象技術者を養成する特別の學校として中央氣象臺附属氣象技術官養成所というのが柏にございます。これだけが中央の部門でありますが、その下に各管區の氣象臺という中間的存在がございます。これは大阪を初めとしまして全國九つの部門に管區氣象臺というものがありまして、たとえば大阪でありますと、近畿地方における測候所を大阪の管區氣象臺が監督、統轄しているわけでございます。そのほかに全國に四つの海洋氣象臺がございます。また特別なものとしましては高層氣象臺あるいは地磁氣觀測所というようなものがございます。その次の第四番目に各測候所のある位置が全部一覽をして書いてあります。北海道の札幌管區にはこれだけのものがある、仙臺の東北管區にはこれだけのものがあるということが書いてございます。
 それから第五番目の項目に要員職員というのを書いてあります。これは先ほど御説明いたしましたように、六千七百名の氣象技術員が全國にございまして、この内譯をここに書いてあるわけであります。そのための給與の實體はどのくらいであるかというと、本官の者は平均の俸給が大體六百五十八圓、そのほかにもちろん家族手當やいろいろな増給があります。それから嘱託以下の平均俸給は三百八十三圓、これだけでありますが、これは全官廳の平均に比べましていくらか待遇はよろしいのであります。
 その次に最近一年間くらいの間に職員がどういうふうに動いたか、やめる人がどのくらいで、新規採用はどのくらいあるかということが書いてございます。
 その次に幹部の職員の官職、氏名、學歴及び學位の調べが一覽表としてここに載つてございます。それぞれ中央氣象及び各管區氣象臺においては、技術官廳でございますから、相當な技術的あるいは學問的な教養をもち、あるいは研究を續けている人がたくさんいるわけでございます。
 その次に氣象技術者の養成をするために特別の氣象の學校をつくつております。それを中央氣象臺附屬氣象技術官養成所と言つておりますが、そこでは氣象技術者となるためのいろいろな學門的教養を三年間だけ授業を行つております。今そこに在籍しております定員は六百五十名でございます。この六百五十名というのは人數は非常に多いように思われますが、二年及び三年は、戰時中氣象技術者が非常に要望されたものですから、大擴張をしたときのなごりでございまして、本年以降は常態に復しまして、二、三十名ないし五十名くらいの定員にすることになつております。
 次に第六の項目の豫算でございます。豫算がどのようになつておるかということを、ここに實態が書いてございますが、豫算の内容は一億三千七百万圓ほどでございまして、かなりな額でございます。それでも私たちといたしますと、いろいろな、こうしていただきたいというようなことがございますが、それはまた追つてあとでお話したいと思います。
 それから第七項目でいろいろな業務をやつておる内容をここに書いてございますが、これはこの通りやつていては非常にめんどうでありますから、ざつと御説明いたしたいと思います。氣象事業――すなわち天氣豫報その他のことをやりますには、第一番目にその基礎となる事實を、材料を集めなければなりません。全國に測候所を置きまして、そこで觀測をやります。その觀測は地上においていろいろの觀測をいたしますと同時に、空高い所、空高く一萬メートル、一萬五千メートルくらいまでの雲のようす、温度のようす、濕度のようす、いろいろな資料を觀測して求めます。それからまたそういう資料の一つとしまして、氣象臺におきましては相當の大きな地震に關する業務がありますが、この地震觀測もこれは二六時中、一年中、夜間も休みなく續けておるわけであります。この氣象觀測は二十四時間觀測といいまして、午前零時、午前一時、午前二時、午前三時というように、きまつた時刻に二十四囘、二六時中觀測を徹夜で續けます。これはなかなか骨の折れる仕事でございます。しかし若い氣象技術者は全部學問のため、あるいは技術のため、あるいはこの事業のため、國のためと思つて努めておる次第でございます。
 地震の話が出ましたが、最近地震の豫知ができないかということが大きな問題になつております。おそらく今度の來るべき議會におきまして、地震豫知のために約四、五百萬圓の追加豫算が計上されてくると仄聞しておりまするが、要すれば民生安定のために地震豫知の何かの手がかりができまいかというので、今盛んに學問的な探求を續けておるところでございます。それにつきましても一氣象臺だけの獨善的な立場に終つてもいけないと思いまして、その方の研究者、地震研究所、あるいは地理調査所、水路部、あるいは全國の大學、そういうものと協同いたしまして、連絡委員會をつくりまして、全國の衆知を結集いたしまして、地震の豫知ということをぜひとも解決してみたいという心組でおります。せんだつて、實はアメリカのカリフオルニアから地震の學者が參りまして――グーデンベルグ氏、これはもとドイツにおりました學者でありますが、その學者が參りましたときに、地震の豫知ということは、今の學問からはまだ遠い、非常にむずかしい問題である。しかし地震學においては日本は世界一流の、あるいは世界の第一線に立つており、そしてほかの文明國では地震のための被害というものはあまりないのですが、日本は非常に被害が大きいのでありますから、切實な問題として取上げるならば、日本で解決できるじやないかというようなこと、あるいはもつと強力に研究するのには、やはり衆知を集めるのもよかろうというようなアドバイスをして行つた次第であります。もちろんこれは各國に特徴がございまして、地震學はどこが進んでおるかと言われても困るのですが、破壞的な地震に對すること、あるいは地震のなまの材料を扱うというような面におきましては、日本は材料に非常に富んでおるのでありまして、世界の第一線にあると思いますから、アメリカあたりからそれほど指示を仰がなくてもやつていけると思つておる次第であります。
 それから山岳氣象觀測はどんなふうにやつておるか、これはたとえば富士山の山の上、あるいは阿寒、羊蹄、佐幌等、全國約二十三箇所に山岳の氣象觀測所がございます。たとえば富士山の山の上で夏の間だけ觀測するならば何でもないのですが、富士山の山の上でも眞冬も欠測なく、ずつと觀測を續けていくのでありますから、その點非常に難儀がございます。富士山では冬の間には最低の温度は零下約四十度に達する、最大風速度、秒速七十メートルに及ぶ、飛行機の早さみたようになります。そのくらいのことになるのでありますから、非常に難儀でございます。そこに行きます觀測者は崇高な犠牲的精神、學門に對する情熱をもつておる次第でございます。ときどき遭難のために犠牲者も若干出るような始末でございます。
 それからそのほかに觀測といたしまして、海の觀測がございます。これは海岸での觀測のほかに、實際に船に乗つてその中で觀測をするわけでありまして、今まで氣象臺では千百八十何トンという凌風丸を初めとして、夕帆丸、朝潮丸というような觀測船を持つております。そういう觀測船をもつて海洋氣象の觀測をして、それをたとえば東北の凶冷とか、あるいは海上氣象の速報とか、いろいろなものに使つておる次第でございます。それからこういうような觀測をいたしますと、その觀測した事實を集めまして、時を移さず、たとえば中央氣象臺なり、あるいは大阪の氣象臺なり、そういふ所に速報いたします。これは思いのほか早いのでありまして、その速度の早さが嚴重に規定されています。たとえば午前六時に觀測して得たものを六時十五分までには東京の中央氣象臺に、日本全國の百五十箇所の氣象臺から知らせる。五十分以内にはいらなかつたら處罰――處罰というほどではありませんが相當きついのであります。そのためにおよそおもな測候所あるいは觀測所に對しましては、中央氣象臺から直通の電報線が引いてあるわけであります。それでこれが非常に通數が多いのでございまして、一日四囘の天氣圖あるいは天氣豫報を出そうと思うには、とにかく測候所から四囘だけは必ずその電報をよこさなければならぬ。そのほかいろいろな觀測資料を集めるために、實は専用機の往復が非常に輻輳している次第であります。こういう觀測が十分あるいは十五分以内に氣象臺に集まりますると、すぐにそれを天氣圖というものに書きこみます。そのために全國の天氣の状態が手にとるようにわかることになる。現在の状態がわかる。あるいは今までそういうふうに資料を集めてきているのですから、過去から現在までの天氣の状態がわかる。現在の天氣の状態が手にとるごとくわかつており、それから以前からの天氣の推移がずつとわかつておるのでありますが、その過去から現在にわたる天氣の推移を見まして、要すればこれから先どんなふうに天氣が變るかということを天氣豫報として出す次第であります。その天氣豫報も、ただきようは晴、きようは雨というばかりでなく、最近では長期豫報、ここ一週間ぐらいの天氣豫報をする、大體の天氣の推移がこう、あるいはここ一箇月、あるいはこの夏の天氣はどうというような長期の豫想をいたしまして、産業のために、あるいはそのほかの民生のために參考としておる次第であります。ただこの長期豫報となりまして、これから先三箇月間の見込みというような長いことになりますと、どうしても豫報に對する信頼度が薄くなり、それほど信頼できなくなりますので、この點は何とかしてもつと信頼のできの天氣豫報を出したいものというために、いろいろ研究を重ねておる次第でございます。この長期豫報という問題は、現在においても――戰時中は特にそうでございましたが、今世界各文明國における重大な問題になつております。平和時でございますれれば、農業に對する協力、その他いろいろなことに對して長期豫報ということは非常に望まれております。そのために各國では爭つてこの長期豫報の研究をしている次第でありますが、未だこうすれば確かによろしいという確信のある理論はできておりません。しかしその信頼度はだんだんと高まつている次第でございます。
 そのほかに火災豫報を出しております。濕度が乾いていて風が強いというようなときには、火災の危險があるというので火災の警報を出す。實はこの火災警報というものは日本全國でやつているのでありますが、われわれの手落ちもありましたが、豫算は一文も國からはもらつていない次第であります。それから漁業氣象をやつております。海上の保安のために漁業氣象通報をやつておりますが、これは漁夫のためには非常に參考になつております。そのほか水産氣象報というものも最近ラジオで發表するようになりました。それから電力氣象通報と申しまして、夏、雷が多くなりますと、雷のために高壓線がやられますので、その高壓線を守る目的のために、電力會社に對するサービスとしてこの電力氣象通報をやつております。それから雷雨豫報というようなものもやつております。これは電力氣象通報と離れられないものでありますが、そういうものもございます。それから鐵道氣象通報をやつております。これは大雨があるというようなときに線路沿いの山崩れがあるというようなことの警報を出すのであります。これで天氣豫報の部門を終ります。
 第三に測器でございます。氣象を觀測いたしますのにはいろいろの測器が要るわけでございます。そのために昔からいろいろの器械がありますが、最近におきましてはなるべく高度の器械を使つて、氣象觀測をやつてゆこうという方向にむいております。
 それから第四に調査研究でございますが、先ほど申しましたように、氣象臺は二六時中夜も寝ずに觀測をするということ、あるいは夜も寝ずに天氣豫報を出しているということにおきましては、一種の現業官廳でございます。しかしながらまだまだ天氣豫報の精度を増す。あるいはその精度を推し進めることにつきましては、非常に學問的の面が多いのでございます。しかも前に申しましたように長期豫報がまだうまいぐあいに行つていない。地震の豫知もまだうまくできていない。そういう長期豫報を可能にするようなこと、あるいは地震の豫知を可能にするためには、どうしても研究をもつと進める必要がある。そういう意味でわれわれは非常に重い部門としてこの研究をもつている次第であります。それで最近におきましては、中央氣象臺の中に氣象研究所という一部門を設けまして、これは豫算で二百三十萬圓ほどいただいております。これは今年になつてやつと二百三十萬圓いただいたのでありまして、今までは三十萬圓の經費しかございません。今年二百三十萬圓もらつたのも、實は二百萬圓はおもに、營繕費でございます。あとの研究費は三十萬圓という實に寥々たるものでございます。この點われわれの努力が足りなかつたこととは申せ、非常に殘念と思つている次第であります。その研究にはどういうものをやつているかということをここにざつと書いてありますが、そのほかに六千人からの人が思い思いに、自分の趣味の上から、役所の時間外に研究をしているものが少くない状況でございます。それから終戰後できました一つの部門としまして、産業氣象の研究がございます。いわば北海道の美瑛というような寒い所において、何か農業を改善するための研究をやつている。北海道のような寒い所で農業はどういうふうに進めたらいいかという産業氣象の研究、あるいは長野縣の霧ケ峰というふうな高冷地において、農業はどういうふうにやればいいかというような、各地の特性に應じました、一般の人が手をつけないようなところの産業氣象の研究を進めております。
 それから、その次に氣象臺でいろいろな研究をしました結果を發表する報告類の一覽をそこに掲げておきました。あるいは、その次に氣象臺のなしたおもな研究の、いろいろな題目の一覽表を掲げております。この一覽表をごらんになつてもわかりますように、單に中央氣象臺の中だけでございましても、帝國學士院賞をもらつている人が今五人ほどございます。博士の稱號をもつている人が三十人くらいいるでしよう。そういうわけでございます。そのほか、特殊の施設といたしましては、高層氣象臺とか、あるいは海洋氣象臺とか、地磁氣の觀測所とか、あるいは世界各地の無線を受けるための大和田の出張所、いろいろなものがございます。
 ここで海洋氣象でございますが、二十五、六年前から神戸に海洋氣象臺というものができております。その後、海洋氣象の研究が非常に重要であるというので、政府にその方の研究をもつと進めたいといつて申出ておりましたけれども、最近になりまして凾館と長崎と舞鶴に海洋氣象臺ができることになりまして、全國で都合四箇所の海洋氣象臺ができることになりました。長崎及び舞鶴の海洋氣象臺は約百萬圓の經費をいただきまして、本年設立するようになりました。百萬圓と申しましてもこれは非常に少い額でありまして、長崎あたりでは雨漏りの修繕ができないというような悲惨な状態にある次第でございます。そうして海洋氣象臺という名もつておりますがかんじんの手足になる觀測船がない状態であります。やはり豫算の少いと申すことのつででございますが、産業氣象研究所は全國で約九箇所でございますが、それに議會の協賛を經ていただいたお金が約五十萬圓なのであります。それで非常に運營に困難しておる次第でございます。
 その次に離島觀測の施設、先ほど申した通り、中央氣象臺におきましては離島に觀測所をもつております。たとえば南西諸島の屋久島、奄美大島の名瀬、南大東島、宮古島、石垣島等に日本の測候所があるわけであります。そういう所の觀測はほかの國にはあまり大したこととありませんが、日本としては死活問題でございます。これから夏、秋になつて日本に押し寄せてくる臺風、あらしは、琉球列島あるいは南洋諸島方面から參るのでありまして、向うに日本の測候所をもつておるということは非常に強みでございますので、一般大衆にとつても死活の問題でございます。そのほか豆南諸島におきまして、大島あるいは新島、三宅島、八丈島というような測候所をもつておる現在日本の南の突端はどこかと申しますと、無人島の島島ですが、そこに測候所を經營したい、現在そこに行つて觀測しておりますが、この冬この島島で十人足らずの人間で越年しようかどうかということが今われわれ幹部の間で問題になつておる次第であります。お醫者さんもいないので困難しております。
 それからこの一番おしまいの繪のあるところを開いていただきまして、圖表の第一番目をちよいとごらん願います。これは中央氣象臺に向つて、たとえば十分以内、遲くとも十五分以内には日本全國の百五十箇所の觀測所から資料を送りこむ、その送りこむ仕組が書いてあるわけであります。逆に中央氣象臺でそういう資料を集めましたらば、それを時を移さず今度は反對に未端に知らせてやる仕組も書いてございます。このほか知らせてやる方面にはラジオもあり、あるいは氣象無線もあり、いろいろなことをして全國の一般民衆に向つて、時を移さずまとめた結果は知らせておる次第でございます。この第二番目の圖表をごらんになつていただきたいと思います。この第二番目の圖表におきまして點のあります所は、今現に中央氣象臺で受信しておる無線局でございます。氣象というものは非常に國際的なものでございまして、日本の國の材料だけを集めたのでは、天氣豫報ができないのです。日本の國の材料だけではせいぜい半日か一日先くらいの天氣豫報しかできません。それで世界全國、少くとも北半球全體くらいの氣象の現在の状況を知りたい。そのためにたとえばロシヤの分ならばモスコー、あるいはアメリカの分ならばワシントンというような、各地におけるその氣象の放送を受信する地點を示してあるのです。日本では先ほど申しましたように、百五十箇所以上の觀測をしたものを中央氣象臺で集めて、その集めたものをラジオで日本全國に知らせると同時に、中央氣象臺からは一般の無線通報として世界各國に放送しておるのです。國際的な事業であります。すなわち日本の材料を、アメリカでも、ロシヤでも、ドイツでも、イギリスでも使えるように、中央氣象臺から無線通報を毎日三囘ないし四囘出しておる。そういうように日本で出しておりますが、支那でも、ロシヤでもやつておる。濠州でもやつておる。アメリカでもやつておる。そういう放送をやつておるのを日本で聽くわけです。そうしてワシントンの放送したものを聽けばアメリカのもの全體がわかる。あるいはモスコーの分をとるとシベリア、ロシヤの方面の全體がわかるというわけで、少くとも一日一囘は北半球全體にわたる天氣状況を一目にわかるような圖をつくつておる次第でございます。新聞なんかでは世界の情報が字になつて現われてきますけれども、おそらくそれと劣らぬ早さで世界の天氣状況は毎日々々この中央氣象臺でわかつておるわけであります。それをまたもとにいたしまして、あす、あさつてやなあさつてというような天氣を判斷しておる次第でございます。その次にたくさんの圖は、中央氣象臺と地方の測候所とがどういうふうに有線電報のつながりをもつているか、專用線がどういうふうにひつぱつてあるかということを圖示したものでございます。
 これで大體のお話をしたわけでございますが、どこの官廳でもそうでありましようが、現在は測候所の經營は非常に困難な状態になつておるのです。私らは運輸省所管でありまして、議會の協賛を經ました一億三千萬圓の豫算で、これだけの全國二百箇所の測候所を賄つていくわけでありますが、議會の協賛を經ました豫算の配當を各測候所の全國の末端まで公に示しまして、これだけしか豫算がないということをみんなに示し、そうして耐乏の生活を送つておるわけでありますけれども、測候所の維持というものは相當に困難になつております。たとえば電報を出すのにも電報料がないというような始末になつておりまして、かなり困難なことになつております。
 それから組合でございます。先ほどから組合の話がたくさん出ましたが、われわれのところは六千何百人かの氣象職員をもつております。この氣象職員がやはり組合をつくりまして、官廳の民主化ということをスローガンに取上げて問題にしておるわけであります。私二、三日前に電車の中で組合の幹部職員と會つて話をしましたが、その組合の委員長が言うことには、この氣象職員の組合は六千人おるのでありますから、鐵道や逓信と比ぶれば問題にならないほど少いのでありますが、全官公廳の中では六千人というのは非常に多いそうで、二番目とか言つております。非常に職員數は多い。しかしながらその純粹さにおいてはどこの職員組合に對しても後れはとらないのであろうということを言つておられます。その點また考えの置きどころによつて異なるところでありましようが、とにかく職員組合の多くの組合員が純粹さにおいてはひけをとらないということは、どこから出てきているかというと、やはり氣象關係の職員になつた者は、およそ好きではいつて來た者が多いからではないかと思います。氣象をやつてみたいというようなつもりではいつてきた者が多い。あるいはそうでなくてはいつてきた人でも、まわりの雰囲気に壓されてそういう氣持になつてしまうという點で、一つの雪圍氣をつくつておるのでないかと思つておる次第でございます。
 それでは最後に、本年はどういうつもりでやつておるかということを初めの一枚に書いてありますが、本年度氣象事業運營の方針をここに書いてあります。これは氣象關係のおもな者が全部集まりまして決めた方針でございます。
 第一番目には申すまでもないことでありますが、民生に對する寄與を第一番目にしよう。すなわち食糧増産への協力産業の開發というようなことを第一番目にしよう、そのためには天氣豫報をもつと信頼度の高いものに、あるいは精度の高いものにし、長期豫報をもつと進め、それから農業氣象あるいは漁業氣象などを、なるべく多くの人に利用してもらうように普及したいという考えでおります。それから第二に北海道のような寒い所、あるいは長野縣のような高冷地、あるいは北陸のような積雪地方、あるいは乾燥地蔕、そういう所で何か農業と氣象との關係を研究をして、その成果に基いて農事指導ができないものであろうかというような研究をやりたい。それから第三番目に海洋氣象臺の整備擴充をはかつて、そうしていろいろな海象、氣象、海況及びいろいろな生物の總合的は研究をやつて、漁獲を増産し、漁撈能率を向上し、あるいは未利用水産物のいろいろな利用をしてみたい。あるいは製鹽法の改良――鹽は天日に乾かしてつくるものもあるので、相當氣象的な影響もあります。そういうようなものにも何とか協力したいものであるというように考えております。
 第二番目には交通の保安をやりたい。あるいは内外船舶に對する氣象放送によつて交通の保全をする。漁船に對してラジオ、電信その他の方法で氣象通報をやる。鐵道に對する氣象通報を擴充する。
 第三番目に災害の防止をする。災害の防止をもつと強力にする。その一つとして農作物に對する冷害對策北海道あるは東北地方の冷害が恐ろしいのですが、その對策、これは氣象災害でございます。それから天氣豫報の精度を向上して、あらしとか大雪とか、崩雪とか落雷とか凍上とかそういうようなものに被害の輕減あるいは防止をしたい。あるいは本年から急に始まつたのでありますが、火災警報を出して火災の被害の輕減を期したい。これは先ほど申したように豫算にはないのでありますが、全國で實施しております。
 四番目に地震豫知の研究を強力に進める。それは全國の知識者を動員してその解決に當りたい。かなりな程度に地震を豫知できそうであるというような端緒が今いくつかまとまつておるのです。架空のものではございません。地面の中にはごく微弱ながら電流が通つておる。これをはかる。あるいは磁力の變化をはかる。あるいは土地の中の地震の波の傳播する速度の變化をはかる。いろいろいたしますとある程度できるのではないかというようなきつかけがある。それを何とかして近い將來で解決したいものだ。この豫算が四百五十萬圓ほど今度の議會に上程されると聞いております。第五番目に津浪豫報を早く傳達をして、被害を輕減したいものであると考えております。
 以上述べましたのは事業面のことでありますけれども、そのほかに地球物理學的な研究をする。そうして研究の結果を今言つたように事業の方面に應用して民生に寄與したいというので、研究を強力に進めよう。そのためには今まで申し上げましたように、研究費としましては中央氣象臺及び全國の氣象關係の三十萬圓の豫算があるのでありますが、その三十萬圓ではとうていできないのでありますから、各所から捻出いたしまして研究費にまわしておる次第であります。そうしてその研究費をもつて氣象研究所の整備擴充をはかる。氣象研究をより強力にしてもらう、と同時に現場の職員に、現場に六千人からの技術者があるのでありますが、その一人々々に、業務の餘暇に研究をしてもらつて相當な研究成果をあげてもらうように話してございます。この現場におる現業員の研究というものもかなりばかにならないものでありまして、相當な成績をあげておる現に研究所というようなものができましたのはここ一、二年のことでございまして、その前までは全部われわれが氣象の觀測をやり、あるいは天氣豫報をやりながら、その片手間で研究しておるという次第でありまして、研究の好きな人間が、現場にいながら現場の材料を使つて研究をする、それがまたばかにならない大きな成果をあげるということもお話をしておきたいと思うのであります。
 最後に、中央氣象臺長がここへ參るはずでございましたが、中央氣象臺長はただいま九州地方に、先ほど申しました長崎の海洋氣象臺というようなものができまして、そこの開所式に參列かたがた九州地方に査察にまわつておりますので、留守ですから、私が參つて御説明したような次第でございます。それから繰り返し申しますが、研究は今はなはだ微弱な組織でございますけれども、研究という方面も十分にできるように、われわれ氣象臺の職員といたしまして皆様に御後援をいただきたいと思つております。
#11
○正木委員長 皆さんにおはかりいたしますが、別段中央氣象臺の荒川君に對する質問の通告はございません。
#12
○小笠原委員 僕はちよつとお尋ねいたしたいが…。
#13
○正木委員長 それからあらかじめ御了承願いたいことは、燈臺關係は荒川君から御説明があると思つておりましたが、全然別で、きよう見えておられませんから、適當な機會にまた聽くことにします。では荒川君に對する質疑を許します。小笠原君。
#14
○小笠原委員 ただいまの御説明のうちちよつとお尋ねし、なお私の方からも委員として注文を申し上げたいと思います。大部豫算について非常にお困りのような御説明があつたのですが、氣象臺の問題は重大な使命をもつており、しかもこの問題に對してはわれわれは知識はないから、御説明を聞いて初めてその重大な點もよくわかるのでありますけれども、豫算の點で不足だとか、あるいは二百萬であるとか、今度は地震の豫知研究のためには四百五十萬圓でやるのだという説明では、われわれは迷いを生ずる。これをやるためにあなた方がどれほど要求されて、それを省内でどれだけ削減され、大藏省でどれだけに査定されたかということが知りたいただこれだけしかやられないという説明ではわれわれはわからぬのであります。あなた方はその與えられた豫算の範圍内において使命を果されるというような言い分でありますが、それではわれわれの使命は果されない。それでは大きな過ちを來す。しかも御説明の中には、大分苦しくて何かわれわれに同情でも、求めるような御言葉がありましたが、われわれの聽かんと欲するところは、どの政府委員でも同じことであります。かりに天氣豫報なら天氣豫報で、あなた方の使命の非常に困難なることや、お手柄を聽くのも一つの方法でありましようが、さらに一歩進んで、なぜ天氣豫報がむやみに食い違いを生じたかというような點を聽きたいのであります。そういう意味で説明していただかないと、われわれ素人の考え方ではなかなか解決しにくいし、われわれは政治解決の重大な使命をもつておるのでありますから、特に豫算面におきましては、あなた方の要求される限度というものは、こういう角度からこういう研究をしたいと思つてやつたが、それがどこに欠陷があつたかということをおつしやつていただきたい。また勞働問題に對しても、何か民主化するということを申されましたが、その民主化という意味を取入れた關係の御説明を願いたいということを、要望申し上げておきたいと思います。
#15
○正木委員長 委員長からも荒川君に申し上げておきますが、この氣象關係は、われわれまつたくの門外漢でも重大なことはよくわかる。あなた方が技術者として、また學究者としてこういうことをやらなければ、民生安定の上にも、日本再建の上にもいけないのだという御自信があるのであれば、ひとつ當委員會に主務官廳を通じて遠慮なく資料を提供してもらいたいと思つております。
 他に御發言はございませんか。なければ本日はこの程度で散會したいと思います。次囘の日程は公報をもつて御通知いたします。
   午後三時四十五分散會
ソース: 国立国会図書館
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