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1947/08/25 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 運輸及び交通委員会 第14号
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1947/08/25 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 運輸及び交通委員会 第14号

#1
第001回国会 運輸及び交通委員会 第14号
昭和二十二年八月二十五日(月曜日)
    午後二時二十一分開議
 出席委員
   委員長 正木  清君
   理事 佐伯 宗義君 理事 前田  郁君
      井谷 正吉君    佐々木更三君
      重井 鹿治君    島上善五郎君
      館  俊三君    成重 光眞君
      志賀健次郎君    橘  直治君
      原   彪君    山崎 岩男君
     岡村利右衞門君    高橋 英吉君
      飯田 義茂君    木下  榮君
 出席國務大臣
        運 輸 大 臣 苫米地義三君
 出席政府委員
        經濟安定本部生
        産局長     野田 信夫君
        運輸政務次官  田中源三郎君
        運輸事務官   伊能繁次郎君
    ―――――――――――――
八月二十三日道路運送法案(内閣提出)
 (第四十七號)の審査を本委員會に付託された。
同月同日
 九州四國間省營連絡に關する陳情書(愛媛縣西
 宇和郡町村長會長兵頭傳兵衞外二名)(第八四
 號)
 海運業民營還元反對の陳情書(關門地區船員大
 會)(第八七號)
 日本通運株式會社の現業解體に關する陳情書(
 青森縣舊丸通復元期成同盟會委員長鈴木武)(
 第八八號)
 釧網線古樋驛上札鶴驛間新線建設促進に關する
 陳情書(北海道斜里郡小清水村長藤原教)(第
 九〇號)
 山陰線八鹿驛濱坂驛間新線建設に關する陳情書
 (兵庫縣美方郡濱坂町長仲山茂義外十名)(第
 九五號)
が本委員會に送付された。
    ―――――――――――――
本日の會義に付した事件
 國有鐵道實相報告書に關する件
    ―――――――――――――
#2
○正木委員 會義を開きます。
 前會に引續き鐵道實相報告書を議題といたします。質疑はこれを許します。佐伯宗義君。
#3
○佐伯委員 今囘運輸省が發表させれました國有鐵道の現状につきまして、容易ならざる經營状態に陥つておりますことは、ほぼうかがい知ることができたのであります。私はさらに經營の要點に入りまして、二、三お伺いしたいと存ずるのであります。その前に、大體國有鐵道の經營が眞に妥當であるのかないのか。あるいは人員が多いのか少いのかというがごとき問題は、何かこれと比較すべき對象がなければ判斷がつきにくいと存ずるのであります。殊に本報告書によりますと、各部分にそのことが明瞭に現われてないように思われる。かりに赤字が出ておりますけれども、人員の點においてもそう多いとは言つておりません。資材においても……。そう判斷をいたしますと、元來國有鐵道のよるべき妥當な準據がないということになり得ると思うのであります。ただ、この中で一つ比較されていると見られる點がありますのは、この報告書の中の四十ページにおいな外國鐵道との比較がされているのであります。この外國鐵道との比較ということのみが、現在の國有鐵道の經營が妥當であるかないかということの判斷資料になると思われるのでありますが、これを見ますと、アメリカを除く以外には、日本の現古の國有鐵道がしかく劣つているとは見えぬのであります。そこで承つてみたいと思いますのは、アメリカを除く以外の各國鐵道の般況が、やはり日本のごとき状態に陥つているのであるか、なかろうかという點であります。私がこれからお尋ねしたいと思いますのは、この實相報告書に書にてありますことを、箇條において少しく區分をして伺いたいと思いますから、一括してお尋ねしませんが、今のことを簡單にちよつとお聽かせ願いたいと思います。
#4
○伊能政府委員 佐伯さんの御質問に對しましては、戰前もしくは戰時中の初期におきましての國有鐵道の營業収益率、營業計數等につきましては、別の表でごらんが願えるのかと存じますが、大體において健全な經營状態を示しておつたと私どもは確信いたしております。ここには御指摘の點は、一營業キロ當りの人員、百萬人キロ當りの人員ということによつて比較をいたしておりますが、この當時においては日本の經營状況は他の國に比較しても決して惡くない状態であるということがはつきり申上げ得るのであります。ただ戰を終つた今日において、外國との状況がどういうようになつているかという點につきましては、はなはだ殘念でございますが、私どもなかなか資料が手に入りかねております。アメリカにつきましては、御承知のように、戰爭後運賃の値上げが業者の希望の通りに必ずしもいかなかつたという點、その他の各般の事情によりまして、營業の収益率がやや惡くはなつておりますが、赤字になつているという状態ではありません。しかしながら他の英國、フランス等の戰勝國においても、私ども明確には承知をいたしておりませんが、非常に鐵道全體の經營自體も困難になつておるやに聞き及んでおります。いわんや日本の同様の運命に遭いましたイタリー、ドイツのごとき、殊にドイツのごときは國が三分せられておりますので、その經營の状態の具體的なものについてはほとんど知ることはできませんけれども、イタリー等においては相當困難であるように聞き及んでおりまするが、不幸にいたしまして資料等が急速にとり得ない状況にあるのでございますから、最近の營業状況について、ここで明確なお答えを申し上げかねるのをはなはだ遺憾に存ずる次第でございます。
#5
○佐伯委員 私がこれを取上げましたのは、本報告書中、國有鐵道の客觀的な批判を下す上に最も妥當な對象として選んだのでありますが、今言わるる通り、これは古い統計のごとくここにも書いてありますけれども、このうち考えさせられますることに、日本はイタリーと類似しておつたように思われる。またソ連の經營ともあまり大差ないように聞いておりますが、英國、ドイツ、フランスというのは、戰前ちようど一番自動車が發展して時代に、私確かに記憶いたしておりますが、三國とも二百數十萬臺の自動車があつた時代がございます。歐洲第二次戰爭に移る前でございますが、私は感心してみておりましたのは、當時自動車が發展いたしましても、英國におきましては貨物と旅客の比率が大差がない、アメリカにおいては自動車が急激に發展いたしましてからは、非常に旅客が自動車に轉じまして、貨物の割合が非常に多いという現象を呈しておりました。フランスもドイツも幾分影響いたしておりましたが英國だけは案外貨物と旅客との比率に影響せないでおる。その當時調べまして、どうして英國のあんな小さい島國で自動車が跋扈しても、鐵道が榮えておるのだろうということを見ましたときに、英國の鐵道は延長キロというのが非常に長くて、營業キロは短かい。こういうことが發見されたのであります。私はそのときに英國の經濟というものは恐るべき底力がある。また英國の國民性の健全さということに驚歎をいたしまして、戰爭が起りましたときにこのことをよく話をしたことがあります。その延長キロのみが多いというゆえんのものは、英國に複線が多いということ以外に、工場内における施設が非常に行きわたつておる。私はかように判斷したのであります。英國がいかに自動車が發展いたしましても、英國には芋の子のつるのように鐵道と工場が結ばれておる。かように判斷いたしました。營業キロあるいは延長キロとの比較において、營業費というものは非常な違いを來してまいるのであります。私はアメリカはこの比較がよく當るが、英國においてはこの比較が當らぬ。ソ連で申しまするとほぼ比較が一致しておりますが、これはソ連と日本の能率と申しまするか、これが相匹敵しておつたように考えられます。從つてこの統計は今長官も古い統計であると仰せられましたが、私はこの統計をもつて日本の國有鐵道の現況が妥當であるという判斷にはなり得ない。かように考えられるのでありまして、もし當局におかせられてそうでないと言われることがありましたならば、後ほど御説明を求めたいと思うのであります。
 次に承りたいと思いますことは、この調書には國有鐵道の半數を占めておりまする地方鐵道との比較がありません。地方鐵道の運賃の平均竝びに人員というようなものは現在どんな數字を示しておりましよか、ちよつとお聽きいたしたいのでございます。
#6
○苫米地國務大臣 さつきの御質問のことについてちよつと私からお答えいたします。お説のように日本では私鐵との比較はできますが、相當の規模をもつておるものとの比較ができないのでありまして、それでこの國鐵自體をそのまま洗いざらいここに書いたわけであります。その比較の正鵠を得るような對象がないという點については、これは御説の通りであります。ただそこで戰爭前と戰爭後との變遷につきましては、各國おのおの似寄つた傾向があるのではないかと思いまして、最近の特にイギリス方面を調べてみておりますが、なかなか情報がはいらぬのであります。そこではつきりわかりませんけれども、第一次歐洲大戰のときのドイツ自體の戰前と戰後の推移を調査いたしてみましたところが、一九一三年、すなわち戰爭當時の人員と、一九一九年、戰爭終つてあとの人員の推移を見ますと、やはり倍以上になつております。これはいろいろ事情が錯綜しておりますが、大體日本の戰時によつて起つた變化と似通つて條件で、倍以上になつておる統計を發見したのであります。そのときちようどドイツは九時間勞働から八時間勞働に切りかえた前後でありますから、やはりその點も今の國營と同じような環境にあつたものと思います。そこでここへ現わしました各國の比較も、やはりドイツと日本はよく似ております。ドイツのやはり八時間勞働になつておつた場合と、日本ではまだ八時間勞働になつておらない場合との比較ですが、その比較においても大體同じである。こういう數字が出ております。それから日本の現在の人間の數から申しますれば倍以上になつておりますが、運ぶ人トン・キロ、すなわち荷物の方から申しますれば多くなつておらない。各國の平時の状態とあまり變らない。こういう數字になつておりますが、これは必ずしもこれと正比例して人間が殖えるわけじやありませんが、ただ大づかみの比較を御參考にここに列記したまででございますから、そういう點御了承願いたいと思います。あとのことについては政府委員から御説明いたさせます。
#7
○伊能政府委員 國内の私鐵關係との比較につきましては、私ただいま表をもつておりませぬので、取寄せますが、近畿日本でありますとか、南海でありますとか、東京急行でありますとか、代表的な大きな會社につきましては、ここに掲げました一キロ當りの人員は國有鐵道と現在人員に比しまして、必ずしも少くはなつておらないようでございます。但しこれは現業の内容があるいは含まれておらないところもございますし、あるいは含まれておるところもございますので、明確な表につきましては後刻取寄せまして御説明を申し上げたいと存じておりまするが、それらの會社につきましても、御承知のように運賃値上げ自體がいかになるかということで、收支の採算が非常に困難を極めるということは、國鐵と同様でございますけれども、今囘最低二十五割増、最大三十五割増というような運賃値上げをいたしました結果、どうやら何とかやつていけるという状態が實情ではなかつうかと考えておるのであります。
 今資料が手許にまいりましたから試みに比較をいたしてみますと、東武鐵道のごときは二十一年度の上期におきまして百萬人トン・キロ當りの從事員は五・九人になつております。一營業キロ當りの從事員は一二名、東京急行のごときは一營業キロ當りの從事員は三六・三名、百萬人トン・キロ當りの從事員の數は九・四人、近畿日本が一營業キロ當りの從事員が三〇・七名、百萬人トン・キロ當りの從事員が五・六人、國有鐵道におきましては、ただいまこれでごらんを願いましたように、二十年度の下期におきまして一營業キロに當り二六・四人、百萬人トン・キロ當り五・九人、かような状況に相なつておるような次第でございます。
#8
○佐伯委員 今の問題は今後お話を聽こうとする參考資料に承りまして、地方鐵道全體の平均を國有鐵道と對照してみたいと思います。それはすなわち平均人トン・キロ當りの平均運賃は國有鐵道が高いのか安いのかということを地方鐵道と對照してどうか、また人員の配置が多いのか少いのか、こういう二點でありますので、この點について後ほど御説明願いたいと思います。
 次に承りたいと思いますことは、本年度豫算中におきまして、建設竝びに改良というがごとき特別費用三百九十萬圓というのはこの豫算の中にはいつておるのでありましようか。もしそれが掲げられておるといたしますれば、建設費と改良費はどれくらいの總額になつておるか。それから判斷資料といたしましては、この豫算が平常の状態にあるときの豫算であるか、また最近非常に、戰爭のために疲弊いたしましたものの、これに復興費が含まれておるであらうか、こういうことが營業費の中におきまして多少詳しく知らなければならぬことでありますが、時間もございませんので、ほんとうの要點で結構なのでありまして、要するにこのたびの國有鐵道が百二十數億萬圓の缺損が出ておる。營業費の中で特別な經費と目せられますのは、進駐軍の關係とかあるいは二、二書いてございますが、そういうものを除きまして、平常状態におけるところの營業費以外に、戰時中の特別な經費、それは建設ないし改良にまわつておつたか。その點はいかがですか。
#9
○伊能政府委員 お手もとに差上げました國有鐵道現状に掲げました經營收支の豫算表におきましては、全部事業費でございまして、建設改良の内容は含まれておりません。從つてまたただいまのお言葉により特別な復舊というような項目もすべて改良費の方面の含まれておりまして、當面の事業費としては最小限度のものが盛りこまれております、かような關係に相なつております。建設改良の勘定につきましては、建設は非常にわずかな金額でございまして、建設改良全體として先般通常議會において御協贊をいただきました内容が五十三億餘圓でございます。今囘の近く提出いたします追加豫算の案として約五十億圓あまり、四十九億數千萬圓、合計いたしまして約百二億のものが建設改良資本勘定として御審議を願う豫定に相なつておるような次第でございます。從つて今囘の百十九億の赤字ということは、純粹の經營費の事業費の上における赤字であるというように御承知おきを願いたいのであります。
#10
○佐伯委員 そこでこれから伺いたいと思いますのは、營業の内容もわかりましたが、かく考えてみますと、國有鐵道の再建には二つの方法があるように存ぜられます。一つは經營の合理化、その大きな問題としては餘剩人員があるかないかという問題と、いま一つは運賃の値上げの餘地ありや否や、かような二つの問題が結論づけられ得るのであろうかと思うのであります。そこで承つてみたいと思いますのは、この調書を見ますと、餘剩人員がほとんどないということは三十八ページをごらん願えばわかると思います。三十六ページと三十八ページの中にあります業務量と人員との關係というところに説明に、結局現在の國鐵は人員においても多過ぎるということは言えないということが明示してありますのみならず、比較統計においてもそういうように書いてございます。それから四十三ページの中に勞働条件の改善と人員の増加ということがありますが、この中においても現在の人員は増加する理由こそあるが、減ずる理由は明らかにない、かように考えられるのであります。從つて最後の末尾において結びというところに至つては、われらは經營の合理化を強力に推進するという點において、人員は今後特殊の職以外は採用しない、あるいは極力人員の節減をはかつていくという希望を述べてあるのであります。私はこの調書を見ますと、勞働協約の締結ということが鐵道省においてすでに成立いたしておりますし、この調書の上からしましても人員を節減するということは不可なりと斷ぜざるを得ない。もしはたして人員の整理餘剰ありといたしますならば、勞働協約の改訂から行つてゆかなければならぬということになるがごとく考えられるのであります。そこでこの問題は非常に重大問題でありますから、參考にお聽きしておきたいと思います。この調書の中のすべてにおいて、いろいろの經營の合理化で説明し得るようにも書いてありますが、大局的から見ますと、増加する人員に比較して、節約する人員はとてもそれに及ばぬ、かように思うことがたくさんあります。これは國鐵再建に對する大きな基本問題として御研究おき願いたい、かように思います。さてもう一つ人員の餘剰であるかないかという問題は經營が妥當であり、はたして能率化しておるかいないかということになるのであります。國鐵のこの調書の中には一面非常に能率が低下しておるというように書いてあるところもたくさんありますが、またいろいろな角度から見まして、能率が低下しておらぬという方面も幾多の現象をあげておるのであります。これに對しましては能率がいかに低下しておるかということを見るには、三十六ページと三十八ページをお開きを願いたい。この三十六ページの業務量と人員との關係の一と二というところにおきまして――數字というものは爭われんものであつて、非常に明らかに能率が低下してしまつたのであるということを、完全に證明しておるという事實をここに示してみたいと思うのであります。それは業務量と人員との關係の一において昭和十一年度から昭和二十一年度までの現在員の變遷を見ると、次の通りである。こういうように人員が五十七萬三千人にまで膨張いたしましたが、その指數というものはやはり同一に増加しておるのであります。この間は御承知の通りあまり營業キロが太つたわけではありません。車輛が増發したわけでもなくて、半數に減つておる。ただ乗る人、利用者が太つた。こういう現象でありますが、全體の營業キロが増加をいたさず、それから車輛の増發も行わずして、人員が太つたということのみで――人員と申しまするのは使用者でありまするが、それの率と同じように從業員が増加しておる。というのは、第二とありまする次の從業員の數と業務量との關係はどうなつているかというところに、明らかに書いてありまするが、一萬列車キロ當りの人員がどんどんと増加いたしております。そして反對に百萬人トン・キロ當りの人員というのが、今大臣の言われたように、増加いたしておらない。これはどういう現象かと申しますと、能率が反對に低下していくという現状を、はつきり物語つておるのであります。元來鐵道におきましては、多少の人員が増加いたしましても、總體にはあまり影響せぬのでありますが、それが人員の増加するたびごとに、そのの比率の營業費が多少増加していく。こういうことが能率が少しも向上せぬ證明であることは、明らかな事實と私は思うのであります。それでこの鐵道の統計は、車輛の效率がどうなつているかということを、比較對照していただくことになりますと、このたびの消息が非常に明らかになると思うのであります。つまり非常に車を酷使しておるという現象が、明らかになつておるだろうと思います。結局は能率の低下しておることは、まずこの調書を見ましても明らかなことでありますが、いなむことのでき得ない現象と思われるのであります。能率が非常に落ちておるのじやないかということの判斷が、また最後におけるところの國鐵再建に、非常に大きな役割をいたしますので、私はこれだけのことを論じたのであります。これはその人の判斷でありましようけれども、この調書によりますと、諸外國の比較竝びにいろいろの觀點から、能率がそう減じてもおらぬと見られる點もあります。あるいは能率が減じておると見られる點もあります。その能率の問題が結局國有鐵道再建の要となりまするがために、私はその點は幾多の證明から能率は減少しておると信ぜられますので、その點の質問が次の質問と加えて何か縁がありますれば、御答辯をしていただきたいと思います。
 次に運賃の値上げの餘地ありや否や。こういう問題について私は承つてみたいと思います。この六十九ページをひとつごらん願いますれば、鐵道當局におかれては、百二十三億の缺損は結局物價と運賃との開きに結論づけられる。つまり物價と運賃との不均衡、赤字の原因となるものは、一にかかつて運賃の値上げが物價の価上りに及ばない。こういうように書いてあるのであります。そこでこの問題は、當然それはそう言い得るのでありまするが、運賃と物價と申しますものが、その當時の比率で行き、その當時の一定の物價と一定の運賃を出發點として、同一水準に向上していくというのが、本來の性質でありますれば、それはまさに鐵道當局の言われるやうに言えます。現に今運賃をもう一遍倍に増額すれば、現在の赤字が抹消されるじやないか。こういう答えが出るのでありますが、元來この運賃は物價との問題におきまして、決してそういう性質をもつておらぬ。かように考えられます。そこで現在の運賃が五割ないし七割値上げをしなければ、國有鐵道の赤字を抹消することはできない。かように思われます。そこで鐵道がこの前値上げをなされましたときには、四倍半くらいの値上げをしなかつたらば、運賃と物價の位置、いわゆる鐵道財政の均衡がとれなかつたと考えられますが、當時なぜ四倍半の値上げをなさらなかつたかということと、それから現在五割ないし七割を値上げして、鐵道財政の均衡を保つことが可能なりや否やということについて、お聽きしたいと思うのであります。ただ參考に申し上げておきたにのは、お答えを承らなくても、おそらくこれは不可能とおつしやるのじやないかと考えられる點があります。それはなぜかと申しまするに、當時四倍半に運賃を値上げをすることになれば、現在の物價と賃金というものが、決して今囘定められたる水準を保つことはできぬのである。こういうことが言えます。また今囘この上に鐵道運賃を五割値上げをするということでありますれば、少くとも今の物價と賃金とは、そのまま鐵道運賃値上げをまつて停止の状態をとつておるや否や。こういう政治的な問題のために、運賃の値上げをしなかつた。こういうことをお答いになると今私は想像しておるのでありますが、その點は幾多の矛盾が起つてまいりますので、一應私の推測でありますが、運賃の値上げをなし得なかつた。また運賃値上げのために物價と賃金との均衡線を保てるまでに達し得るや否や、こういうことについて伺いたいと思います。
#11
○苫米地國務大臣 お答えいたします。ただいまの人員の妥當性のことにつきましての點は、これは平時状態に還れば私はたしかに多いと思います。現在の國情及び國鐵の環境において、これが多いか少いかということに對しては、十分檢討する餘地があると思うのであります。早い話が特別の用務のために、もう明らかに營業に關係のない人員が三萬數千あるわけであります。それからまた戰災の復舊ということは、やはり臨時の仕事でありまして、この方に相當の人員が要るわけであります。それから戰後における混亂した道徳の頽廢その他秩序の混亂のために、鐵道自體がある程度の治安をはからなければならぬような、臨時の人員がございます。それからまた資材、保線等の不十分なために、平等では考えられないほど、特別に餘計な保修人員が要るのであります。そういう一連の、平時状態を逸脱しておるために必要な人間を差引きますれば、相當ここに合理的な人員が現われるのではないかと思うのです。それからもう一つには能率の低下ということを言われましたが、それはまさにその通りで、ここに表がございますが、從業員の大部分は若い方々で、まだ熟練が不十分であるという人によつて運營されておりますから、これは鐵道自體の科學性と技術性とか十分に向上されなければ、ただちに平等の状態の人員に還らないと私は思います。それでありますから今のこの環境において、今の人數が妥當なりや否やということは、これは十分檢討してみなければならない。しかしながら明らかにある地帯は職員が過剩であつて、ある地帯は職員が少いということは、これは申されます。そこでこの人員の適正妥當な配置については、實は鐵道復興會議のようなものをつくりまして、その一つの専門委員會において特にこの點を研究していただきたい、こう實は考えておる次第であります。それからこの人員のために經理の面に非常に影響する、それは國鐵の赤字の大きな原因ではないかということに對しましては、これも批判の一つでございますが、そこの收支計算について新しい物價の基準から申しますれば、これは物件費が約六割、それから人件費が三割六分というようなことで從来の率よりもむしろ人件費が安くなつておる。また各國の過去の例から申しましても、物件費と人件費は接近しておるので、こういうふうに出すと、いかにも待遇が非常に惡いような感じをもつのであります。しかし私どもはそういうふうにそれを見ないで、從業員の待遇についてはほかの振合いがございますから、むろんこれはほかよりかも惡くするということは絶對に考えられませんが、しかしこの數字から見まして、どうすればどこに一體改良のこつがあるか、こういうふうに考えますと、私は物件費だと思います。物件費を合理的に節約する方法が多分に残つておるのではないか、こういうことを私は考えまして、現在の經營合理化の面に對しまして、物件費がいかに節約合理化させるかという點を實は十分に檢討してみたい、こういうふうに今思つております。私から申し上げることで不十分な點は、局長から説明いたせます。
#12
○佐伯委員 論議をするのではないのでありますが、今の大臣の御説明に私はあまり滿足を得られない點があるのであります。物件費の節約をなさるということでありますが、その基礎といたされて、先ほど私が御質問申し上げた要點に觸れておらぬように思いますのは、物件費が高くつくということは、私の申し上げた物價という問題に關係してくるのであります。從つて今大臣が言われた物件費を節約するということは、物を節約するということにはなり得ない、價格を節約するということになるのであります。おそらく鐵道囘復において枕木その他の資材を節約するということは絶對不可能であると思います。そうしてみますと、私のねらわんと欲する要點は價格を安くするのである、こういうこと以外に大臣の答辯は聽きとれない。そこで私はその前提として先ほど御質問したのは、こういう質問ならば、こうお答えになるのではないかと前提したのでありますが、大體におきまして物件費の高騰率というものは六十五倍、運賃は二十三倍、こういう見地に立つて、そうしてなお運賃の引上げの餘地がありや、これが一番重大な問題になるのであります。ところでこの運賃と物價というものははたして妥當なものであるかないか、これが一番大きな問題であります。これはどうしてさようなことを申し上げるかと言いますと、運賃と申しますのは賃金をもとにしておるのでありますが、賃金は他人に支拂う對價であります。自分のものは安いのである、人のものは高いのであるという人間の主觀的な觀察に陥る點から見ましても、要するに最後に申し上げた今日の赤字は一にかかつて運賃の値上率と物價の値上率との間に差が生じたのである。こう説明して鐵道當局が輕々に、のうのうと百年を待ちましても、この赤字の克服はなし得ない。と申しますことは鐵道運賃の値上げをいたしましても、物價が現状のままで待つておるや否やということを先ほど質問したのであります。私は物資を節約なさるということはその反對現象として運賃を値上げすることがなし得るや否や、かようなことになると思います。つまりここで鐵道財政の均衡を保つようになさるためには、どうしても百二十三億の運賃の値上げ、すなわち現在五割の價上げをするということは、物價がはたしと持つておるか、もし待つていないといたしますれば、現在の運賃と物價は最初出發のときは同一でありましたが、そこに開きを生じてきたのは、開きを生すべき理由がある。今になつて鐵道經營者が、この物價の値上率が多いことを對象として運賃の値上げをあてになさつても、私は経營上將來絶對に赤字の克服にはならぬと考えるがために、その要點を伺うのでありまして、現にこのたび五割ないし七割の運賃の値上げをなさつたならば、賃金と物價とはそのままの状態において待つておらない。必ずや同一歩調をもつて高騰していくであろう。さう考えますれば、いずれの日になつてそれに追いつくことができるのであろうか、いずれの日になつてその合致點が發見されるのであろうか。かく考えますと現在の物價に對する現在の運賃はむしろ適性ではないか、このことをまずきめる必要があるのではないか。國有鐵道の赤字の克服に對しては、この問題がどうであるかないかということを非常に大きな問題としてわれわれはきめていかなければならない。御承知の通り今囘の運賃値上げはこれは相當痛手です。なるほど物價も高くなつておりますが、物價が高くなつたのに運賃の値上げが低いと言つても運賃が安いという聲は聞かないであります。また現實の情勢として、そういう性質の問題が現在の國有鐵道にも現われておると思うのであります。そういたしますと、物價と賃金とは決して均衡を保つておらぬ。かように考えますならば、運賃の値上げは即物價と賃金の値上げとなりまして、決して赤字克服の材料とならぬ。かように考えますと、今度は反對に經費を節減しなければならぬことになつてくるが、その經費の節減は今苫米地さんのおつしやつたのは人件費でない、物件費であるとこう言われるが、もし物件費であるとおつしやるならば、私は現在の行き詰つておる鐵道において、物件費の節約の餘地というものはしかくあるとは考えられません。かように私は思われます。結局私の言つたのは、人員の多いことに結論づけられるかと思うのです。ところで餘剩人員が多いということを聽くと、何となく社會的に惡い感じを與えるということのために、この點に觸れることを好まないのでありますが、この餘剩人員の問題は、結局は能力を高めるということになるのでありまして、能率の低い勞働は結局高い物價を生ずる。こういう一つの原理がかような結果になつてまいるのだ、私にはかように信ぜられるのであります。なぜ物價が運賃の値上げの二倍ないし三倍を保つておるかと申しますれば、今まで一箇の製品をつくりましたときにある一つの物價であつたものが、能率が低下して一箇の物價をつくるのに三人を要しますれば、それは三分の一の價値に低下することは當然であります。私はこの鐵道白書を拝見いたしまして、統計上明らかに物價と運賃とは正當であるという判斷をつけております。それはどういうことか申しますかというと、能率が低下していつたと同一の率で、物價と運賃との開きがきつと數字上合つておるのであります。二倍半ほど運賃と物價との間に開きを生じておるということは、結局能率が低下したために、物價と運賃との開きが同比率をもつて保つておる。例を申し上げますと、今まで一升の米を一人で食つておつたものを、三人で食うならば、これは三合三勺しか當らない。これと同じような原理になつてまいるのじやないか。かように考えられますので、私はそういう理論を別にいたしまして、結果から申して、現在の國有鐵道は絶對的な運賃政策においてこれよりもなお運賃を引上げてこの赤字を克服することができるか否やということと、その場合においては物價と賃金がまつておらぬ、こういう現象でありますならば、どこまでの値上げによつて、はたして物價と賃金に追いつくか。こういうことに對する答辯は不可能である。かように考えますというと、結局は運賃の値上げをもつて赤字の克服はなし得ないという結論に到達いたしまして、反對に經費の節減ということ以外にない。かようになつてまいるのでありますが、あまり長くなりますので、大體以上私の申し上げた運賃の値上げをなし得るや否や。そうしてその運賃の値上げをなし得る場合に、物價と賃金は停止しておるか否や。運賃の担上げにおいて赤字を克服することを得るや否や。この調書には今そのことにふれておりません。反對にこの調書には、いかにも運賃が低いので、今にも運賃の値上げをすれば赤字を克服し得るごとく書いておりますから、この要點をお伺いしたいと思います。
#13
○苫米地國務大臣 私は物の節約ができないとおつしやる佐伯さんの御説には、必ずしも賛成はできないのであります。たとえば一番大きい石炭、これはずいぶん今不經濟的な利用をやつております。確かに量的に節約できます。その他資材の面につきましても、ある程度の合理的な使用によつて節約が可能だと思います。そういう一連の經營合理化をもちまして、そしてあらゆる經營面の改善をいたすということを考えるのでありますが、その一番大きな項目は何かと言いますと、私は物件費であると思う。そこでこの物件費にわれわれも目をつけて、もつとこれを合理的に利用すれば、なお改善の餘地があるというのが私のねらいである。それがゆえに人件費の方は全然考えないかというと、そういう意味じやありません。先ほど申したように臨時的な條件あるいは環境が減りますればおのずからこれは整理が伴う。しかし勞働協約等もございますし、そういう點に對しては突如としてこの環境が變化するのではなく、徐々に變化するのでありまして、自然減員においては相當のデータがございますから、そういうものとにらみ合わしてやつても、この環境の變化と應じてやれるだろうというふうに考えておりますが、何をおいても經營合理化によつてできるだけの經理面を改善して、しかる上に運賃ははたして上げなければならぬだろうか、あるいはこのままでいいかという問題がそこに數字的にでてくるだろうと思うのであります。そういうことを實は申したつもりであります。それから今運賃の値上げの際に四倍半もやつたらどうかというような話でありまして、これはごもつともなのです。もともと運輸省の運賃改訂の意思は、前の内閣時代にほかの物價がそれほど急激に移動しないという前提のもとに赤字克服の案が立つた。それが三倍であつたのであります。ところがこの内閣になりまして、全面的に新物價體系をつくらなければならぬというようなことから、これは運輸省だけでは他の物價の關係がわかりませんから、運賃の計算ができない。そこでこれを物價體系の一連として安本に依頼したわけです。ところでわれわれはむろんただ預けつ放しではない、それにむろん参畫するのでありまするが、最初の安本の計畫から申しますれば、物價を四十八倍くらい高くすればおよそバランスがとれる。その四十八倍になつた際に運賃は三倍半という計畫があつた。それでもその結果國鐵は四十億ほどの赤字が出る。そういう計算でありました。しかし四十億くらいの赤字ならば、經營合理化によつて相當これは赤字克服の途があるだろうというので最初かかつたのであります。ところがだんだん物價の調整をやつていきますと、四十八倍が結局六十倍ないし六十五倍ということをになつて、あの物價安定帶ができたのでありまして、その安定帶ができる一つの大きな要素として運賃だけは三倍半に置きざりを食つたわけであります。そこでこの物價には今の運賃が基礎要件になつておりまして、その物價を今度使いますから運賃の方がさらに赤字が増加した。こういうことになるのであります。これはできるだけ國鐵内部の經營合理化によつて、あらゆる努力を拂いまして、しかる上に數字をそこへもち出して、これは運賃の値上げによつて解決しなければならぬか、あるいは一般社會の物價政策あるいは生活安定の上から運賃はこのままでおきべきかというようなことは、これは皆さんの御意見と御審議にまちたいと思つておるのであります。それでは今の運賃がほんとうに物價に對して高いか安いかというような點でありますが、物價に何ほどの運賃を見込むのが妥當かということは必ずしもこれは言えないのです。外國の例をもつてこれを推測するか、あるいは戰前の物價に織りこまれた運賃の割合と今日とを對照して言うのか、どちらか對照しないというと、それ自身では合理的な理由にならないので、そこで私どもは外國の最近の實例がわかりませんから、これを過去の、昭和十一年度の物價に含む運賃の割合と、今日この新物價に含んだ三倍半値上げのこの割合とを對照いたしますれば、それは戰前よりもはるかに安くなつておる。厚木つまり材木だけは同じでありまするが、その他の物は大體三分の一くらいになつております。それでありますから、物價に含む運賃が昭和十一年が妥當だというふうに見るならば、まだ値を上げる餘地がある。こうも考えられます。しかしその値を上げることは物價に影響しますから、これは重大問題です。こういう點をいかにすべきかということは、これからの御審議をまつてきめたいと私は思つておるわけであります。どうぞさように御了承願います。
#14
○佐伯委員 私は今の大臣の御答辯でなお多少不滿とする點があります。第一に物資を節約し得る餘地がある。これはいずれの時代におきましても節約し得ることは、人知の發達とともに、研究が進むにつれまして起る自然現象でありまして、今の節約という言葉はそういう低い考え方ではないのである。なるほど石炭におきましても、非常に石炭のカロリーが惡い。いろいろな點で大きながんがあるようでありますけれども、しかしさような現象は結局どうかと申しますと、今の石炭のカロリーの高いものを使うということは、炭山の能率をあげろということになる。この點は非常に要點でございまするがために、私の言うのは皆さんに合點がいかぬかもしれぬが、私どもとしては非常に國家再建のために重要なことと思つて申し上げておるのであります。私の申し上げるのは今苫米地さんの言うように、直接限前の國有鐵道の物資を節約したいということをたどりたどつていきまするならば、炭山の能率を高めろ、石炭のカロリーの高いのを望むのは結局炭山從業員の能率を高めろ、こういう結論に到著いたしのす。物價なるもの、經濟なるものは結局勞働なるものに歸結する。かように考えられるのであります。このことは先ほど申し上げた人員の整理ということではなくして、勞働の能率を高める。かようにお聽き願いたいのであります。從つて今苫米地さんが國有鐵道の物資を節約したいとおつしやることは、どういうことにまわりまわつてまいりまするかというと、炭山の從業員の能率を高めろ、こういうことに歸結すると同時に、それは他にあらずして、國有鐵道自體職員の能率を高めろ、こういうことに私は結論づけられると思うのであります。これはすべての産業状態において、一般全部が御承知の通り、賃金と申しまするものはわが國企業形態が内部的に支拂うところの代償でありまするが、その企業形態が必要とする物資というのは、これは他に働くところの賃金の對價にほかならぬのであります。結局國有鐵道が石炭のカロリーを高めたかつたならば、國有鐵道自體の職員の能率を高めることによつて、炭山の能率が高まる。かように全國民、全産業が、勞働問題を解決していくという意味において、すべて物價と賃金との惡循環を打ち絶つことができるのである。結局物價々々ということは、他人の賃金が物價になつて現われておるのでありまするから、他人の能率を高めろかように言う。これは自分の能率を高めろ、自己の會社の職員の能率を高めろ、自己の會社の職員の賃金を正しくしろ、しからば物價は正しくなる。かように結論づけらるるとは私は信じておるのであります。それで先ほど申しましたように、結局現在の物價というものは他人の賃金である。他人の賃金と自分の賃金というのは今の運賃であります。これはいわゆる昭和十一年には同一の水準であつたが、それがどんどんと差額を生じてきた。他人の賃金が高い、物價が高い、自分の賃金は安い。かように考えるのはそもそも間違つている。なぜかならば、物價というものは自分の賃金、いわゆる職員の勞働能率そのものが低くなつたならば、他人の物價というものにおいて現われてまいるのであります。これは私は經濟原理として、眞理として疑わぬのでありまして、その鐵道勞働能率の低下が結局物價と運賃との差を生じたのである。かように申し上げたいし思うのであります。しかしこのことはありまにむずかしいことになりますので論議を中止いたしたいと思いますが、さらにつけ加うておつしやいまして今回の赤字克服のことを、それに對する私の質問は、この上に運賃の値上げをするということは――物價が現在の状況で停止しておるかおらぬかということは、これは爭うべからざる經濟の厳然たる事實なのであります。待つたと言わぬのである。彼らは自然に經濟の法則に從つて、上るものは上つていくのである。
 もう一つは、物價と賃金とはどうして保てばよろしいかという御説制ありましたが、これは自然の法則に應じてきまつていく。運賃にも一つの飽和點というものがある。運賃をあまり高くいたしますれば、自然に數が減じてまいります。總収入というものには一定の限度がある。鐵道經營をなさる方ならば、ほぼわかつておるはずでありまして、少くとも運賃をいくらでも上げたならば、その割合に増収するものではないのであります。一定の限度をいうものがあります。ところでその限度というものは何をもつて明らかになるかと申しますると、現在私が全國の地方鐵道の經營ぶりを見ますると――先ほど私が全國地方鐵道の賃金値上げはいくら平均にてなつているかと伺つたのは、その参考にしたいと思つたのでありまして、もし國有鐵道より一割か二割くらい多いというような運賃の値上げであるといたしますれば、そうして陳方鐵道はどうにか赤字を出さないで經營されるという事實が現われるといたしますならば、國有鐵道がこの上の運賃を値上げなさるということは、地方鐵道全部に値上げをしろということになつてまいる。これを明らかにしたいと私は思いましたので實はお伺いしたが、その参考資料は十分に載つておらなかつた。私がひよつと感じたところによりますると、日本の地方鐵道全部で國有鐵道の半分くらいになつていると思いますが、今度の運賃値上げは地方鐵道、國有鐵道を平均いたしますると、そうたくさん違わぬのじやないか。高くても一割かせいぜい一割五分くらいになるのじやないか。そうしてこれはどうにか經營が成り立つのじやないか、こういうような考えをもたるるのでありますがために、またどうしても運賃の問題は國有鐵道におかせられて再建の方途を立てらるる際に非常に重要に問題でありますがたるに、ただいま數次にわたつてお伺いしたので、この上の御答辯を必要といたしません。
 しからば次に伺いたいと思いますことは、このたび政府において經營の安定政策を確立せられ、國有鐵道はその一環でありまするし、政府事業である。ところでもし健全財政を確立すり上において、赤字が公共のために生ずるものであるならば、政府は補給金を支給することになる。この點につきましてはすでに船舶の一部におきましても、あるいは肥料、製鐵、石炭その他國家的重要なものに對しては、補給金が百二十億とか計上せられておるのであります。それ以上に重要なりとせらるるところの國有鐵道の百數十億の赤字をどうして政府が補給せられないのか。これはただ單に政府が補給するせぬという問題じやないのであつて、その本質はまたきわめて重大なる問題になる。なぜかと申しまするに、政府の經濟安定政策、健全財政の根本を破壊するものとなりと私は斷せざるを得ない。この點は簡單ながら一應御答辯を承つて、さらに第二に御質問申し上げたいと思います。
#15
○苫米地國務大臣 先刻の能率の問題でちよつとお答え申し上げたいと思います。これは能率が十分に回復しておるとは私どもも申しません。確かにこの表にありますように若い熟練していない人がたくさんおります。同時にまた戰後にある喜ばしからざる思想等によりまして、能率が落ちておつたということは事實であろうと思います。ただ鐵道に場合におきましては勞働の生産性、勞働の生産能率は戰前に比較しますと六六%で、これはほかの鑛工業に比較しますれば相當の勞働生産力をもつております。むろん十分ではないと思いますけれども、比較的高い率になつておると思います。これではなお十分でないことわわれわれも認めまするから、從業員の養成、訓練その他のことによりまして、できるだけ能率の向上に努めたいと思うのであります。地方鐵道に對する比較の問題につきましては、長官から御説明申し上げます。
#16
○伊能政府委員 さいぜん詳細な資料が手もとにございませんので、お答えを後刻に延引をお願ひいたしましたが、前に申し上げましたように國有鐵道におきましては、今回の運賃値上げは二五〇%の値上げでございましたが、地方鐵道におきましては二五〇%から三五〇%までの範囲内で引上げましたわけでございまして、これが平均どの程度に相戒つておるかという資料については、目下蒐集中でございますので、作成次第お目にかけたいと存ずるのであります。
#17
○佐伯委員 政府はこのたび經濟安定政策、價格安定圏というものを定められたのであります。この健全財政の建前からいたしまして、公共性をもつておる事業に對しては、國言が補給地を支給してあくまでも財政の健全化をはかり。こういうことになつておるにもかかわらず、國有鐵道がしかも多額な赤字をそのまま計上せられるということは、一方は政府の計畫であり、一方は政府の事業である。このことは本質的に、單純に数字のみの問題でなくして、政府の經濟安定政策の根本を破壊する性格をもつておると多分に思われる點がある。從つてこの安定政策に對して、國有鐵道ひとりのみが赤字を堂堂と國民にさらけ出すことは、政府の政策と相反するものでないか否やをお伺い申し上げたい。かように申し上げた次第でありますが、もう一度この點をおつしやつていただきたいのであります。
#18
○苫米地國務大臣 赤字處理の問題でありますが、先刻來申し上げるように、その前提といたしまして、國鐵の合理的な經營によりまして、どういう程度までその赤字が克服されるかということを十分に檢討いたしまして、しかも短期間でなしに、現在五箇年間を通じていろいろな點について改善くふうを凝らしておりまするが、さような一つの資料でもできますればこれを皆さんの前に出して御批判を願い、御審議を願いたいと思うのでありますけれども、その場合に起る赤字がいくらに落ちつきますか、今不明でございますが、としかし赤字が全部消えるということにはならぬと思います。その際に赤字解消を運賃の是正によつていたしますか、あるいは國民全體の負擔によつてやりまするか、もしくわ他の方法を考えまするか、そういう點はすべての調査ができましたならば、その資料をもつて實は御相談申し上げたいと考えておるわけでございます。今仰せのように非常にたくさんな赤字をこの乏しい財政に盛りこんで行きますれば、必ずインフレーシヨンの方にも影響を及ぼします。健全財政がこれによつて破壊されるというような心配もございます。さればと言つてこれを運賃に乗りかえることは物價體系が全面的に變つてくるということもございますので、非常に愼重にやらなければならぬと思つております。今私からはすぐ國家の補給金でやるとか、あるいは運賃を上げるとかいう結論的なことを申すのは差控えたいと思うので、その點惡しからず御了承願いたいと思います。
#19
○佐伯委員 今の點は私滿足することができぬと思います。どうも私は要點に觸れぬように考えられるのでありまして、五箇年計畫という將來のことではなく、二十二年度の豫算がすでに危險である。毎日々々缺損を生じていくのであつて、その缺損は日本銀行の紙幣となつて發行させられつつあり、それがインフレーシヨンに役立つておる。のみならず今囘の安定政策なるものは計畫的になされておる。全日本の産業面におけるある一定の赤字を克服いて、黒字に轉進せしめるという一つの計畫經濟のもとに組立てられ、そうしてもし赤字が出るものがあるならば、それは政府の補給金をもつてこれを補填していく。こうしてこそのみこのたびの計畫經濟というものは立ち得る、私はこう信ずる。その點において、最初からわかつておらない赤字ならば、これは問題外でありますが、最初からわかつておる赤字でありますから、このたびの政府の經濟安定政策においては、國家事業がいかくはつきりと赤字がわかつておるならば、當然これは政府において補給するかどうかということをはつきりきめるか、しからずんば運賃の値上げをするか、これが當然とるべき手段である。かように私は考えられるのであります。しからずんば經濟安定本部の安定政策というものはこの一角から崩れるのみならず、そういう答辯でありますと――國有鐵道全體だけがひとり日本の國の交通事業を負擔しておるのではない。日本の國民性と申しますものは國家經營というものを非常に高い價値に見ますけれども、民營事業も大きな役割をもつておる。この民營事業はこのたびの政府の安定政策においては、赤字を克服して能率を高め、黒字に轉進し、日本の再建に資せんと欲する大動脈、根幹になつている。しかるに國有鐵道の赤字を當然としておるならば、經濟というものは、ここにも書いてあるが、有機的な一貫性をもつておるのであつて、この有機的な動脈が濁つておるならば、全産業の團體なるものはとうてい健全化することはできない。國有鐵道も國家經濟の一環として存する限りにおいては、同一歩調をとるものであつて、國有なりという美名のもとに、特別な經營を行うということは、今囘の經濟安定政策の根本を誤るものである。私はかように申し上げたいのでありまして、この點におきましてしばしば承つてみましたけれども、これ以上の御答辯を要求することは困難かと考えますので、いずれまた折を見て伺いたいと思います。
 次に先ほど運輸大臣がおつしやいましたが、これもちやつとかなめのことでありますので、申上げておきたい。これも研究した結果でありますが、國有鐵道の勞働能率というものは一般的工業よりも高い、水準から申しますと一般工業よりもまだ能率は高いというようにおつしやる。いかにもそういう結果が來ているようでありますが、これはおそらく國有鐵道だけでなく、地方鐵道においても、一般産業に比較いたしまして、鐵道事業の能率というものは非常に低いと思うのであります。これがどうして起つてきたか。こういうことを御研究になつただろうか。これからが非常に大切なことでありまして、これはこういう結果にほかならない。鐵道從業員が一般工業の從業員よりも非常に優れているからだということではなくて、仕事の性質がそういう結果を生むにプラスしているのだということをもつてお答えしたい。鐵道事業なるものはきわめて正確に機械化している。從つてこの能率というものは機械とともにある一定の水準を保ちつつ進んでいる。これは私が自分で幾多の經驗からお答えすることができるのでありまして、そうであるためにこういう結果が參るのであります。おそらく今大臣の言われた通り、一般工業よりも二分の一ないし三分の一というものは能率は高い。ところが反對に鐵道事業の方が約三分の一の能率をこの上に高めましたならば、一般工業方面は三十の二能率が高まるという原理を私は申上げることができると思う。一例をあげるならば、國有鐵道の能率を三分の一高めたならば、直接間接の石炭鑛業が三分の二高まる。こういうことを言い得ると私は信ずるからして、この意味においては國有鐵道の能率化ということは、わが國産業の再建の上において非常に重要な役割をなしているということを私は信じて疑わぬのであります。これもひとつの御參考にいておいていただきたい。
 その次に伺つてみたいと思いますのは、私が今まで述べたことは經營をどうするかということですが、國有鐵道の再建は、結局は資材を獲得しなければ、とうてい現状を維持できないということは輿論の一致するところであります。そこで資材を獲得するということは、赤字という現象をもつてはたして資材を獲得し得る本質的基盤を有するや否や、これは非常に大きな問題と私は思います。一般産業でありますれば、赤字となつておれば、事業が消滅するのは當然である。何としても赤字を克服しなければ、鐵道再建の手段を獲得できないということを經營者本來の建前として臨まなければならぬ。いわんや、今貿易によるところの話が出ました。貿易再開により足らない資材を貿易によつて得るという、かような言葉を承つたが、これも私ははなはだ當を得ない説ではなかろうかと考えられるのでありまして、貿易なるものは結局鐵道の勞働能率を高めて黒字に轉じたものによつてのみ得られる權利である。赤字において事業を維持するというがごときことは不可能と私は考えるのである。しかしながら、ただ問題は、永遠に赤字ではないのである、五箇年計畫を立てるのである、こういうようにおそらく鐵道當局はおつしやると思いますけれども、このことは今囘鐵道當局が五箇年計畫を立てられてから拜見するといたしまして、要點を御質問したいと御いますが、この考え方をもたれるというと非常な間違いを生ずると私は思います。先ほどちよつと念を押したのでありますが、平常の事業状態の營業成績と申しまするのは、いかなる場合においても、その一點のときにおいて收支バランスがとれなくちやならぬ。これは經濟の原理である。三年後、五年後やるというものではありません。いかなる場合においても經濟が自立していきますときには、平常の營業状態という場合においては、そのときからただちに收支が合うべきである。五箇年計畫を立てて、五箇年後においてバランスが合うというがごときことは、それは決して經濟の本筋とは言われないと思うのでありますから、鐵道當局におかれまして、そういう案をお立てになるのでありまするというと、私どもは容易に御信用申し上げることはでき得ない。いわんやわが國の經濟と申しまするものは、五箇年後のことは豫測しがたいものがあります。なおかつ國有鐵道は國家經營になつておりまするが、この國家經營にも、非常に大きな變化を生じてまいりまして、從來國營は國家の權力を指導力とし、經營の原動力とした。この國有鐵道の大企業を統一いたしまする力の源泉、五十萬の勞働者を指揮していく力の源泉としてそもそも官僚は何をもつていたかと申しますれば、とりも直さず國家の權力を背景としていたのである。これは申すまでもないのであります。國家の權力は何から生じたかと申しもすれば、軍國國家といたしまして背後には厖大なる軍備を有した。また警察力をまつた官僚なるものはこの厖大なる企業を組織し、五十萬の從業員を國家全體に奉仕せしめた。しかるに民主主義の國家と申しまするのは、全然この權力を背景とすることはできない。權力を背景とすることができ得ざるもの、一個の大臣や、一個の次官や、一個の局長が、何を背景とし、何を經營の指導力とし、五十萬の勞働者を指揮する力の源泉として、國家再建に任ずることができるか。かように私は考えておりまするが、いたずらに五箇年計畫をただお立てになるということでなしに、よほどの深さをもつて、經營の根本問題をも御研究になつて御立案願いたい。なお民主主義の國家というものは、從來われわれには經驗がないのでありまして、この封建的な温床に育つて今日までまいつて現在の鐵道職員が、その權力が崩壊せられてしまつた現在、この職員に對して新して民主主義の力を與え、その組織を次官や局長に考えろといつてもとうてい考えることはできない。これは最も政治の要締でありますがために、政黨から出た大臣がそのことをお考えになつて、舊來の古い過ぎ去つた國家の封建なる經營の原動力を、新しい民主主義の經營の原動力にかえられて、これを示されずんば、わが國國有鐵道の再建というものは、決してなし得ないものなりと私には信じられます。この點はいずれ次に再建政策を立てられるときにお伺いしたいと思います。
 なお參考までに申し上げたいと思いますのは、鐵道經營は物價、賃金、資材、あらゆる部面にわたつておりますけれども、結局は勞働問題に歸結する、實際この勞働の能力を向合せしめなければならぬ。勞働の時間を延長する。勞働の立憲化をはかる。結局は何もかも私の見ましたところによりますと、民主的な勞働問題の基本を確立すること以外には私はないと思うのであります。企業組織の中核も、勞働の立憲的な方策を講ぜられて、しかしてそれを企業の原動力とするというまでに新しい方法を生み出してまいらなかつたならば、この厖大なるところの企業は決して維持できない。言うまでもなく民主主義の國家と申しますのは、國民個人個人の自覺力、民度にほかならぬのであります。わが國の民度というものは遺憾ながら非常に低い、わが國の民度は決して誇りとするものでなく、ほんとうに個人々々の自覺をもつて企業を經營するといたしますならば、かかる高度の文化施設というものが決して維持できぬのは、これは世界各國の例である。のみならず文化の發達過程において當然そういう經過を踏んでおる。わが國のかかる高度の文化というものは今日非常に低いところまで低下するところの運命をもつておるのでありますから、これをせき止めるということにつきましては、ここに新しい勞働の立憲化を主體として、民主的な企業の組織を考案せられなかつたならば、私は五十數萬を擁する國有鐵道、しかも全國にわたつた廣汎なるこの大企業が――近時いろいろ言われる通り、中小工業というようなものこそ日本國民に適するが、日本國民の民度というものはさような大企業、さような高度の文化を維持する力がないと言われても、私はやむを得ぬと思つておりますから、この點は私が申し上げるまでもなくすでに御研究になつておることと存じますが、この次の事業再建に對して御參考に供したいと思うのであります。大分時間も經ちましたので、私一人の委員會でもありませんので、この邊で終ります。どうも長い間いろいろなことを伺わせていただきまして、非常にありがたく存じます。
#20
○苫米地國務大臣 いろいろ佐伯委員からお話を承りまして、參考になりましてありがとうございました。ただ赤字をもつておる國鐵は資材を得ることは困難ではないかというお話がございました。普通の企業形態から申しますれば當然のように思いますが、國有鐵道であり、國家の計畫の中にはいつておりまする現状におきましては、安定本部その他の計畫とにらみ合わして、必要なものは得られると思うのであります。
 それから企業の民主化運營につきましては、これは御説のように十分われわれもその心組でまいりたいと思いますし、それがゆえに國鐵のありのままの姿を皆様に申し上げ、そうして今後われわれが資料をできる限りを集めまして皆様の前にこれを提供し、國民とともに國鐵の前途に對する方針を決定したい。こう考えておるのでございます。今お話の中に、一のポイントをつかまえても收支合うようでなければ常態ではない、こういうお話、ごもつともであります。しかし殘念ながら終戰後の日本の状態は國自身も赤字だし、何もかにも赤字の場合でありますから、これをほんとうに建て直すためには短期の計畫ではならない、それゆえに安本でも今五箇年計畫を立つております。そういう基本的な政策とにらみ合わせまして、そうして國鐵の計畫もこれと調子を合わしていくことが必要だと思いまして、それこれを調整しました曉におきましては、それらの材料を國民の代表であられる皆様の前に提供いたしまして、その問題を國民とともに解決していきたい、こう考えております。どうぞ御了承願います。
#21
○正木委員長 委員長は四時から委員長會議がありますので、理事の前田郁君に代つていただきますから御了承願いたいと思います。館俊三君。
    〔委員長退席、前田委員長代理著席〕
#22
○館委員 大分時間が經ちましたので、希望というか、所見というか、述べておきたいと思いますが、この國鐵の小さなわく内で考えます場合においては、國鐵再建ということが第一眼目として取上げらるべき現状であると私し思つております。單に赤字のみを考えていくべきものではないと私は思う。しかし國全體の形から考えまして、赤字ということは問題にしなければなりませんが、國鐵のわく内においてのみならば、國鐵で最も緊急を要するものは、赤字に頭を使うということよりも、將來のためにこの國鐵をどうして迅速に再建するかということが問題ではないかと私は考えるのであります。
 そこでこの石炭問題でありますが、今まで補給金をもらつておつた。これが今度補給金がもらえなくなつてしまう。その石炭の豫額は平年度であれば約百億圓の豫算が要ることになつております。百億圓と言いますと、ちようど今追加豫算であるか、あるいは赤字として計算しておるか、豫算のところに書いてあります百二十億という額に相當するのであります。結局はこの石炭代が拂いきれないので、百二十億という追加豫算を提出しなければならぬことになる。そこでこの石炭の補給金というものは、國鐵のみがその生産額の一〇%だけを使つておつたということでありますが、この石炭の増産のために特別に石炭を値上げいたしまして、この表で見れば大體百三十倍ぐらいに石炭の値段が上つておる。それを全部國鐵の特別會計が背負いこんだというところに非常に私おもしろくないところがあると思うのであります。石炭というものの増産をはからなければならないし、そういう意味において、石炭價というものをうんと上げなければならぬという國全體の犠牲として國鐵が赤字を出した、その赤字を支拂つていかなければならぬかどうかということは、國鐵財源の上で、私は非常にいやな氣持がするのであります。不合理なところがあるような氣持がする。國鐵というものがこの赤字を出さないで十分經營していくということは理想的でありましようが、しかし國營事業は營利事業ではないのであります。だから多少の赤字ができても、たとえば北海道の鐵道を延ばす場合でも、今この線を延ばしても別に材木が出るわけではない、あるいは人口も稀薄なところであるという場合であつても、國家百年の大計のためには、そういうことを無視して交通の便をはからなければならぬというのが國鐵經營の主眼とするところでなければならぬ。そういうぐあいにそろばんを合わして仕事をしておるような國鐵であるならば、それは民間企業と變りはないのでありまして、そういう意味において多少の赤字が出ることは、決して心配すべきことではないと私は思うのであります。それよりも多少赤字をこしらえても、國鐵の改良建設のために努力をしなければならないと私は考えておるので、この點に一般會計、國費というものとのつじつまが考えられてくるのでありますけれども、そこを克服しても、この國鐵というものは再建すべき價値があるし、それが國鐵經營というものの本旨であろうと私は考える。それがこの石炭の値上り百億圓というものを全部背負いこんでしまつておるということは、國のための國鐵が自分のわく内の當利でそれをやつていくという矛盾を負擔しておると私は考えるのであります。よろしくこれは百億圓というものの補給金――石炭代の値上りがどういうことになつておりますか、この差額なり何なりの二十一年度に比べての補給金というものが、しかるべくあつていいのではないかと考えるのであります。そうしない限りはいつまで經つても國鐵の再建はできない。私は赤字を防ぐための補給金ということには考えないので、これは國鐵再建のための補給金として考えてもらうべき必要がある。豫算はそう考えてしかるべきものでないかと私は考えるのであります。
 それから過剰人員ということがちよいちよい出て來ます。この中でよく言われることですが、五十七萬の人間から三萬人という厖大な人數の整理をすることは容易でないということから考えて、三萬人の軍隊輸送に使つておつた人員の豫算というものを、國鐵が負擔すべきものであるかどうかということを考えてもらいたいと私は思うのであります。
 それからまた敗戰後、國鐵の交通事情が非常に惡化して、警察をもつて取締らなければならないという状態に陥つてきた。これをもし一歩手を離してしまつたならば、車内も停車場内も非常な無秩序になつてしまう。非常なことになつてしまうのであります。鐵道はこの方面に人員を相當使つておるのでありますが、こういうことを鐵道職員をしてやらせるというのは、私は眞向から反對なのであります。鐵道は前から親切をモツトーとしてほんとうに營利事業として、現場の者はお客さんに接しなければならぬときに、その一部の從業員をしてうの目たかの目で、違反者がないか、あるいはおかしなことをするやつがないかという警察的な仕事をさせるということは、明朗月間、あるいは明朗週間というものの陰にいやな感じを與えるのでありまして、これらの仕事は鐵道から削つてしまつて、少くともこれは警察行政の方へ委ねるべき人員ではないかと思う。便宜的に鐵道職員でなければ、鐵道の犯罪がつかみ得られないということであるならば、これは特別にそういう人を使うことはよろしいが、この豫算の人員の中から削るべきものでないかと私は思うのであります。この表をよくごらんになつた皆さんたちはおわかりでありましようが、敗戰後外國から歸つてきた鐵道職員が非常に多いのであります。これが二十何萬も殖えておるということに鑑み、この中で鐵道に籍を置いたまま軍隊の輸送關係で連れられていつた人間、軍人としていつた人間、あるいは在籍のまま北支なり南支なりの鐵道の建設、あるいは輸送のために行つておつた人間が歸つてきた場合には、これを鐵道の元の籍に移してやることは一向差支えないと思いますけれども、そのうち完全に鐵道と縁を切つて、滿洲鐵道なり、あるいは北支鐵道なりに行つておつて、全然鐵道省と關係なかつた人――もちろん外地では鐵道の仕事はしておつたのですけれども、一旦きれいに手を切つた人。その人たちの面倒も時節柄見なければならないということもよくわかるのでありますけれども、これは一般海外の在住者が引揚げて來たその引揚者と同一の立場にある人でありまして、これをもなおかつ鐵道の豫算内で賄わなければならないということはうなずけないのであります。私考えますのに、この鐵道の部内の人員の面は、鐵道の經費をもつて組立てなければならないが、特別に豫算の中に入れて賄う必要のないもの、すなわち國費一般の中で、あるいは警察行政の中で、あるいはまた特別な三萬人の例の問題のごとき面は、截然と區別すべきではないかと思うのであります。この點が非常にすつきりといつておりません。もちろん敗戰後の海外からの歸還者、その他いろいろこういう事情のある者に對しては負擔すべきものであるというその趣旨には大贊成でありますけれども、豫算の面における切り盛りとしては、その點を御研究願いたいと思つております。さつき佐伯君から質問があつたように、この追加豫算の百二十七億、それに石炭補給金を加えました現在の事業費は、單に改良費のみに當てられておるということでありますが、これは現在の鐵道の頽廢状態において、現状を維持するに足るだけのものであるかどあかという疑問をまだもつておるのです。それのたしになるような追加豫算がもう少しなければなるまいかと思いのであります。百億圓というと大したことでありますけれども、國鐵のみが石炭の増産まで引受ける。しかもそれは運賃の値上げによつて國鐵の石炭を一般大衆が賄うというところに、國鐵が背負いこんだ一般會計以外のものに不純物があるような氣がいたしますので、この點に思いをいたしていただきたいと私は考えるのであります。昭和何年かに四億九十萬圓、五億しか收入がなかつたときに、この時分だつてやはり收支は償つておつたのです。收支は償つておつたけれども、しかし建設改良費のために一億七、八千萬圓ぐらいづつは公債を發行しておつた。そういう收支の償つておつた時分でもそういうものを發行しなければ、建設改良ができなかつたのは事實なんです。まして今日のようなときにおいて、單に運賃收入のみによつて建設改良をやろう、赤字によらずして建設改良を維持していこうということはとうてい不可能でありまして、もつと積極的に何か豫算の中にしかるベきものを按配してやつていただきたいとは私は考るのであります。時間がないようですから、ほかのことは打切つてこれだけ伺います。
#23
○苫米地國務大臣 ただいまお話のうち、二、三私からお答えいたします。赤字補填の問題でありますが、石炭の補給金をもらつておつたのだから、同じようにしたらどうかという御説であります。大體この運賃の是正は、國鐵の獨立採算制ということを最初もくろんだのであります。その獨立採算制を維持するために、運賃の値上げが考慮されたのでありますが、その後先刻申し上げたような物價體系の一環として取上げたために、とうとうはじき出されまして、結局獨立採算制がどこかへ行つてしまつたということですが、最初の趣旨は實はそうなんです。そこでもし足りなかつたならば、それを國家の一般會計から助成したらどうかという御説なんですが、これは一應ごもつともであります。石炭補給金として前にもらつたのでありますから、赤字が國鐵の方で出ても、そういう意味からいつて運賃の補給をしても差支えない。こう思うのでありますが、これはあまりに額が多過すぎるので、そこで國家財政の方から申しましても非常に難點があると思うのであります。しかしこれは國有國營の事業であり、すべての物價の基準であり、國民生活の基盤である限り、どうしたらよいかということを愼重に考えなければならぬと實は思うのでありまして、補給金の問題はそういう事情であります。
 それからさつきも申しましたような戰爭終了後の特殊環境におけるいろいろな費用、今御指摘になりましたような用務のために三萬三千人ほどいる。これもまず無用な、平時の經濟からいえばまつたくよけいなことでございます。その他特別な踏切番とか、あるいはポーターとか、いろいろなことがあります。これまたどうもやむを得ない現在の事情であります。
 それから警察の問題でございますが、これはごもつともであります。でき得べくんば一般の警察官の力借りていきたいと思うのでありますが、一般警察官の人員は制限されておる。そこでその方の力を借りるということは實はできない。鐵道自體の經費でやることならば許すということで、そこに途を求めてやつておりますので、これもやはり敗戰後の特殊な事情から起つておるということに御了察願いたいと思うのであります。
 それから建設改良の面でございますが、これもごもつともでございます。國家に必要なる改良及び修繕等はできる限りやりたいと思いますが、これは一般の收支經理の關係でなく、資産勘定になりますから、たとえば電力の開發のごとき、あるいは新線電化の問題等につきまして、豫定の費用は別個の支出においてもらつてやつていくつもりでございます。どうぞさように御承知を願います。
#24
○前田(郁)委員長代理 次に重井鹿治君に質疑を許します。
#25
○重井委員 時間が参りましたので簡單に所見を申し述べたいと思います。常任委員の諸君竝びに政府委員の方によりまして愼重に質問討議が行われまして、その結果は、要は經營の合理化、資材の確保という二つに結論が到達したようであります。資材の確保につきましては、鐵道事業の重要性を考えますときに、當局の熱心な態度をもつてしますればおそらく確保されるであろうということができると思います。なお經營の合理化もこの二日間にわたるところの討議におきまして相當得るところがあつたであろうと私は考えます。ただ經營の合理化、産業合理化の場合に、往々にしてそれに從事するところの從業員の勞働に對する問題が犠牲に供せられる場合が多いのであります。この點につきまして、もちろん鐵道從業員諸君の場合も多く反省しなければならないものがあり、また教育をしなければならないものもあります。しかしながら單に從業員の勞働の犠牲によつてのみ鐵道の最建ができるものでないと同時に、この産業の民主化、特に鐵道の民主化ということは、社會主義化まで發展した心構えによつて經營の合理化運動に努力していただきたい、こういうことをお願いいたすものでございます。それと同時に私ども特に強調したいことは、この委員會の討議というものは、新憲法發布前における議會の委員會における討議とは、その權威において格段の差があると思います。昨年までの議會におきましては、あるいは委員會における委員の質問に對して、政府當局の方は政治的な、技術的な答辯によつて能足れりとされた時代があつたかもしれぬと思うのであります。しかしながらこのたびのこの國會は私が申し上げるまでもなく、國家の最高權威であると同時に、國會内におけるところの常任委員會は、立法機關における最高權威である。こういう立場から二日間にわたつて討議されましたこの經濟白書に對する質疑討論をおくまで尊重されまして、この重要なる運輸交通の事業に善處されんことをお願いするものであります。特に私どもあちらこちらの委員會に顔を出すのでありますが、私は運輸省の伊能長官のまことに眞摯なる答辯、その態度には實に感激しておるものであります。官僚に對するいろいろな批判がある場合に、伊能氏の終始一貫したまことに眞摯なる態度に私は強く感激したのであります。どうぞその意味におきまして、鐵道の民主化、鐵道の再建のために積極的な御努力あらんことを特に當局にお願いいたしまして、私の意見とする次第であります。
#26
○苫米地國務大臣 ただいま重井委員の御發言に對しましては厚くお禮を申し上げます。申し上げるまでもなく御指摘の問題の中心點は資材の問題――いかにして現在の輸送能力を維持するかという點はもとより、これからの建設改良につきましても、要するに資材の點が一番重點でございます。この點に對しましては、いずれあらためて皆様の力強い御協力、また御審議をいただきたいと存じております。なお國鐵從事員に對する御激勵のお言葉はありがたく拜聽いたしました。私も先般國鐵の白書を公表いたしまして、省内のこれに從事しておられます職員一同にわざわざ寄つていただきまして、詳細に國鐵の重大時期に當面していること、これは各從事員はことごとく承知はいたしておりますが、重ねて認識を新たにして、國家國民の信頼とその要請にこたえるべく、しかも現在祖國の最建は國鐵の復興からという一つの大きな目標をもつて、また國鐵の復興は從事員の手にあるのでありますから、その點に對しまして、從事員の特に御注意を喚起いたし、われわれ國家國民から信託をされておりますこの一大企業に對して、公共の福祉のためにどうか盡力してもらいたいということを私から懇請した次第でございまして、この上ともわれわれは全力を盡してこの復興に努力したいと思うのでありますが何とぞ御努力をお願いしたいと思います。
#27
○前田(郁)委員長代理 他に質疑はございませんか――それでは今日はこの程度にいたしまして、次會は二十八日の午前十時より質疑を續行いたしたいと思います。
 本日はこれにて散會いたします。
   午後四時十九分散會
ソース: 国立国会図書館
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