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1947/11/27 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 外務委員会 第19号
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1947/11/27 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 外務委員会 第19号

#1
第001回国会 外務委員会 第19号
昭和二十二年十一月二十七日(木曜日)
    午前十時五十七分開議
 出席委員
   委員長代理 馬場 秀夫君
      猪俣 浩三君    高瀬  傳君
      竹内 克巳君    戸叶 里子君
      和田 敏明君    小澤專七郎君
      竹田 儀一君    中山 マサ君
     長野重右ヱ門君    植原悦二郎君
      菊池 義郎君    竹尾  弌君
      仲内 憲治君    若松 虎雄君
      多賀 安郎君
 出席政府委員
        外務事務官   大野 勝己君
        引揚援護院長官 齋藤 惣一君
 委員外の出席者
        大藏事務官   吉本 眞二君
        專門調査員   佐藤 敏人君
        專門調査員   村瀬 忠夫君十一月二十四日
 在外同胞引揚促進の請願外三件(並木芳雄君紹
 介)(第一一八三號)
 ソ連領からの引揚促進に關する請願外九十件(
 並木芳雄君紹介)(第一一八四號)
 ソ連領からの引揚促進に關する請願(並木芳雄
 君紹介)(第一二四四號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 歐洲各國の財政近情(英國を中心として)につ
 いて、政府より説明聽取の件
 一 滿洲における戰犯者救護に關する請願(原
 侑君紹介)(第六三〇號)
 二 在外同胞引揚促進竝びにその援護に關する
 請願(柏原義則君紹介)(第一一五八號)
 三 在外同胞引揚促進の請願外三件(並木芳雄
 君紹介)(第一一八三號)
 四 ソ連領からの引揚促進に關する請願外九十
 件(並木芳雄君紹介)(第一一八四號)
 五 ソ連領からの引揚促進に關する請願(並木
 芳雄君紹介)(第一二四四號)
    ―――――――――――――
    〔委員の推薦により、委員馬場秀夫君が委員長代理となつた。〕
#2
○馬場委員長代理 これより會議を開きます。
 委員長は時間の都合で多少遲れますので、私が委員長代理を務めます。
 歐洲各國の財政の近状(英國を中心として)について理財局調査課の吉本眞二君より説明を聽取いたします。
#3
○吉本説明員 調査課長が伺うはずでございましたが、よんどころない用事で参れませんので、私が代りまして説明いたします。
 ヨーロッパ各國の戰後の財政がどういうふうに變つたかということ、またどういうふうになるかということを考えてみますと、全體として國家財政の國民經濟に占める地位が非常に大きくなつておるということが一般的に申されるかと思うのであります。これは戰前から見られました傾向でございまして、いわゆる赤字財政政策というものが不況時分からとられまして、むしろ意識的に財政の大きさというものを大きくして、民間の經濟で立直りのできないところを政府の力で不況を克服していこうという政策がとられたのであります。それから戰爭に突入いたしまして、もちろん軍事費のために財政は膨脹いたしましたが、戰爭が濟みましても、今度はいわゆる完全雇用ということが叫ばれるようになりまして、戰前の赤字財政政策のあとを繼ぎまして、國家がどんどん消費をして、そして民間の消費の足りないところを補つて、このような不況を大いに締出そうという考えが擡頭して、これが今日の財政のいわば新しい原理とされておる。ついこの間までアメリカの豫算局の長官をしておりましたハロルド・スミスは一九四五年に、アメリカの財政の今後の進むべき道ということについて著書を著わしております。その中にも申しておりますが、百五十年前ならば最も統治するところの少ない政府が最良といわれた。しかし今日では最も多く奉仕する政府が最良の政府である。こういうふうに變つてきておる。そうしてグラワドストンの言葉を引用いたしまして、グラワドストンが、豫算は單なる算術の問題ではない、無數のしかたで個人の繁榮の根源、階級の關係及び國家の強弱に關係するものであるということを申したが、その言葉が今日の財改について最もよくあてはまつておる、ということを申しております。完全雇用財政論と申しますのは、イギリスのビヴアリツヂ、アメリカのウオーレスという人が戰爭の直前ごろから盛んに唱え出しまして、要するに經濟界が不況になつた場合には、政府の投資あるいは政府の消費を擴大して民間の消費や投資の足りないところを補う。そのために使う財源は赤字公債を出していく。もちろんこれを租税でやつてもやれないことはない。要するに縣民經濟全體のバランスを豫想して、消費、投資の足りないところを補う。そのためには從來のように政府が收支だけを豫算として議會の承認を求めるだけでなしに、それに伴つて國全體の、つまり政府の收支以外の國民全體の經濟のバランスを考えて、政府の豫算をその上に組んでいこう、こういう考え方でやるべきだという考え方であります。これはもちろん皆さま御承知の通りでありますが、ただしかしこの完全雇用財政論を現在にあてはめて考えてみると、どこの國も戰爭中に厖大な赤字公債を出しまして、購買力が非常に過剰になつておる。一方生産は戰爭中の減耗によつて停滯しておる。こういう状態であつて、今日ではむしろ購買力を食止めなければならない。インフレを押えなければならない。こういう状態であるのは各國いずれもそうであります。從つて今日ではむしろ完全雇用財政の逆と行かなければならない。これはイギリスでもその他の國でもみな同じであります。アメリカでさえ完全雇用財政ということは現下の問題ではない。また一方から見ると、この完全雇用財政とか、赤字財政とかいうことは先進工業國の問題であつて、後進國、農業國あるいは半工業國といつたような、まだ生産設備が十分に整つていない國においては、まず投資を強化しなければならない。それでなければ完全雇用と申しましても、生産能力の方が人を養うだけのものをもつておらないのでありまして、完全雇用財政と申しますけれども、將來において人口を全部完全雇用するに足るだけの投資生産設備が整わなくては、いたずらに掛聲だけに終つてしまう。こういうことが考えられるのであつて、アメリカのハンセンという人が書いておる本にも、後進國は今日ではむしろ一歩退いて、貯蓄を押さえて投資を強化しなければならぬということを申しております。この點は戰敗國として多數の生産設備を賠償で撤去され、あるいは戰爭で破壊されたという状態にあるわが國の場合においては、最も注意して考えられなければならぬことだと思います。それでなくてもイギリス、アメリカにおいても、今日の問題としては完全雇用財政、購買力復舊ということとはむしろ逆の方向をとらなければならぬということがいわれておりまして、それにはまずこれから起る赤字を排除しなければならぬ。そして現在生じておる過剰の購買力をできるだけ吸收しなければならぬというわけでありまして、消費を一段と下げて、生産投資の方に向けなければならない。そのためには、完全雇用財政というものも、財源を赤字公債でなくて、増税だけで完全雇用財政をやることも考えられる。というのは、同じ所得金額であつても、低い所得の階級の所得は、それだけ、今日の流行語で申せば、消費速度が高い。低い階級の者は得ただけの所得を公部使つてしまう傾向があり、割合に高額の所得の方が貯蓄に向う部分が多いのでありまして、今日のインフレを抑止する見地からすれば、むしろ低い所得の階級から税金を取立てて、これを國家の收入に收めるという方向をとつていかなければならぬ。またそのとつた購買力も、これを國の支出として出す場合には、生産投資的な方向に向けなければならない。民間の消費を取上げて、また一方で政府が消費するということであれば、プラス・マイナス・ゼロでありまして、政府としては取上げた購買力は生産投資の方に向けなければならぬ。そうして消費の水準を低めて、將來の生産向上に役立てる。こういう方向をとらなければならぬということが考えられるのであります。ところがこれは理窟の上から申せばまさにその通りでございますが、しかし戰後の要請として、一方には戰爭で飢え疲れた國民に對してある程度の減税あるいは社會施設を行わなければならない。つまり消費をある程度ゆるめてやらなければならないという要請がございます。また軍事費もそう急には減らせないという要請もございます。これらの要請と理窟からの要請とを織り交ぜていく方向に向けていくというのが、今日の一般の傾向と考えられるのであります。大體イギリス、アメリカなどをとつてみましても、戰後現在の財政は國民所得の割合に比して非常に殖えておる。アメリカを例にとつてみますと、戰爭中は縣民所得の六二%まで政府の財政が占めておる。四六年には三九%に減じておる。四七年、現在では二三%に減じておる。これに對して戰前はわずかに一二%、戰爭が濟んで財政が收縮しておりますものの、やはり戰爭前に比べてよほど大きなものになつておる。イギリスについてみましても、戰時中は國民所得の七四%までが政府の豫算である。それが四六年には四八%になり、今度の豫算は四〇%に減つておる。しかし戰前では二〇%であつたのであります。やはり倍ぐらいの割合に殖えておるのであります。
 次にそれではこの大きくなつた豫算は、歳出はどういうふうに使われておるかということを見てまいりますと、一番大きなものとしてまず軍事費、それから敗戰國では占領費負擔、これを軍事費と同じものと見てその割合を見てまいりますと、イギリスでは戰爭中は、歳出豫算の八六%までは軍事費でございます。それが一九四六年には四二%に減つておる。今年度では二八%まで下つております。これは戰前が二九%でございましたから、大體戰前の水準まで下つておる。アメリカは戰爭中は歳出のうちの九二%であつたが、四十六年には七四%、現在では三五%にまで下つております。これに比べて戰前はわずかに一四%でございます。
 ソ連では御承知のように資本主義國と異つておりまして、歳出に對するパーセンテージを求めると戰爭中は千二百八十億であつたが、四十六年には七百二十億に下がり、四十七年度には六百七十億にまで下つた。なおこのほかにロシヤでは科學研究費として原子力その他の研究の費用を昨年度までは五十億ルーブル、本年度は六十五億ルーブルを計上しております。國防費は戰前はわずかに二百七十億、現在では四百七十億でございます。その間に物價は大體二倍近く六、七割の騰貴をしているようでありますが、それと比較しても相當増加していることがわかります。
 なおついでに國防費と似たものでわが國でも當面問題になつている占領費一般の問題について各國の例を御説明申し上げます。オーストリーでは歳出豫算の三五%程度が占領費の負擔となつており、このために國民經濟を非常に壓迫するというので、アメリカではこれを二五%ないし二〇%にまで下げようということでソ連と交渉いたしました。アメリカの言分としては、三五%の占領費負擔の大部分がソ連に充てられているということで交渉いたしまして、ややこれが下げられた様子であります。
 またイタリアは一九四五年から四六年にかけて四千億リラ程度の負擔をいたしました。しかしこれは主としてアメリカ關係でありますが、イタリアに對する援助を千億リラ以上のものをいたしておるので、そういう點から見るとほぼその負擔も棒引にされているような次第でございます。
 ハンガリーは御承知のように大きなインフレを引起したところでありますが、現在ここでは國民所得の一二%程度が占領費の負擔になつております。日本の占領費の負擔は終戰處理費としては國民所得の大體三〇%程度で、占領費の負擔は國民所得に對して一〇%程度ではないかと思われます。
 それから軍事費以外の軍事費のいわばあと始末としての國債費の問題でありますが、戰爭中の國債發行はアメリカはイギリスよりも多かつた。イギリスの方は割合に租税で支辨した分が多かつたのですが、アメリカは國民所得の五五%程度まで國債を發行した。イギリスは四一%程度までを發行した。それからだんだん率が低下しておりますが、とにかく厖大な金額の國債を發行したことは申すまでもないのであります。從つて國債の利拂費というものがイギリスでは現在でもまだ歳出の一三%を占めております。アメリカでも歳出の一二%を占めている。戰爭中は豫算そのものが膨脹いたしましたので、占めた割合は低下いたしましたが、絶對額、もちろん殖えている。ロシヤの例を見ましても、戰前の二、三十億ルーブルのものが現在では六十一億ルーブルで、ほとんど倍近い國債費を使つております。
 次にもう少し積極的な方面といたしまして、社會施設費がどの程度に出ておるかということを見ますと、イギリスでは、御承知のように、食糧、必需的な衣料その他に對しまして生計費の價格補助ということをやつておるのであります。これが本年度の豫算では四億二千萬ポンド、全體の豫算が三十億ポンドでありますから大體一割二、三分がこの生計費で占めておることになります。その他イギリスは戰後において厖大な社會保險の案を續々と實行に移しておりまして、家族手當なども國民全體に對して政府から出す家族手當をきめたり、あるいはその他いろいろな社會保險制度を整備いたしております。そのほかに義務教育の年齢を引上げております。そういつたような關係で社會施設費、教育費に對する歳出は相當大きな部分を占めております。
 アメリカにおきましても、社會保障あるいは退役軍人、出征兵士、歸還軍人の手當、その他が厖大な額に上つておつて豫算の相當大きな部分を占めております。ロシヤにおいては豫算が大體軍事費と、社會文化費と國民經濟費の三つの大きな項目にわけて歳出を分類いたしております。この社會文化費を見ますと、戰時中は六百二十九億ルーブル、それが四十六年には八百四億ルーブル、四十七年には千七百一億ルーブルとだんだんと殖えておりまして、戰前の四百三十億ルーブルに比較いたしますと、二倍半程度の増額をいたしておるわけであります。物價の騰貴を考えに入れましても、相當戰後において歳出が殖えておるのであります。
 それから國民經濟費、いわゆる生産的な方面に使われるところの費用であります。ソ連におきましては、この費用を非常に戰後増加しておる。これは申すまでもなく戰災を復舊し、生産を高めるというソ連の戰後復興の根本のねらいが國民經濟の増加にあるのでありますから、申すまでもないことであり、ソ連が一九四六年、戰後第一囘目の平時豫算を組むにあたつて、根本方針とするところを五つばかりの項目にわけて申しておるのであります。その第一は、重工業、運輸、農業、消費財の生産工業、こういう方面に對する支出を大いに擴大する。第二に、文化施設を大いに擴充する。第三に、科學研究を大いに獎勵する。第四に、勞働の生産性の向上のための施策を講ずるというようなことを掲げておるのでありまして、從つて國民經濟費というものは相當増額されておるのであります。四十六年度を例にとつてみますと、工業では二億ルーブル殖やし、農業では三十億ルーブル、運輸では九億ルーブル、商業では十億ルーブル、公益事業では十五億ルーブルを増額しております。四十七年度も同様で工業、農業といつた方面に對する支出は大いに殖やしておるのであります。そういたしまして、戰後第一囘目の五箇年計畫においては、國民全體の投資總額を、一九五〇年には國民所得全體の二七%まで高め、一九三七年には二四・五%でありましたが、これを二七%にまで高める。そして消費を抑えて生活水準をある程度抑制して投資に向けるということを強硬に行つておるわけであります。
 これに對しまして、イギリスはどうかということをみますと、イギリスの豫算は、御承知のように、多少の國營等を行いましたが、まだ現年度では二、三の部面だけでありまして、從いまして豫算の中には生産的な投資というものはそう多くない、それを拾つてみますと石炭廳に對する投資が五千萬ポンド、それから住宅、これはイギリスは戰後の住宅建設は國と地方團體で全部やる、國營、公營でやるということになつておりますが、これに對する金が二億九千萬ポンド、これは相當大きいのであります。そのほかに道路の建設などを加えましてもせいぜい四億ポンド程度であります。從いましてロシアと比較してイギリスが投資にどれだけの力を注いでおるかということを見ますには、國民經濟全體の、いわゆる國家豫算的な考えをもちまして、政府の豫算だけではなしに、國民經濟全體の豫算の收支を總合いたして見なければならぬのであります。イギリスではまだこういう國家豫算というものは正式には行われておりませんが、大體の見積りを見ますと、國民所得全體に對しまして四十六年度では投資に充てられるものは一三%、これは過去の資本の維持補修、いわゆる減價償却にあたります部分は六億ポンドでありますから、差引新規の投資というものは七億ポンドにすぎない。これが一九四六年の實績であります。先ほど申しましたソ連の二七%というのに比べますと、昨年度はわずかに一三%、ソ連の二七%というのは今後の目標でありますが、イギリスはどの程度を目標にしておるかと申しますと、四十七年度、今年度ではこれを國民所得に對して二〇%まで高める、これで戰前の大體五%増程度であります。ただしかしこれがこの間の八月の緊急對策においてさらにこの投資を減らさなければならぬ。輸入を切詰め、人力を節約するためにはどうしてもこの投資を八億ポンド程度減らさなければならぬ、この八億ポンドという中には住宅とかいうようなものもはいつておりますから、必ずしも一三%というものの中で、金額にいたしますと十三億程度出ておるようでありますが、その中で八億ポンド減るのではないのであります。やはりこれによつて相當投資は阻碍されるわけであります。歳出の方は大體この程度でありますが、次は歳入はどうかと申しますと、先ほど申しましたように、インフレ對策といたしましては小所得者から取立てて、大所得者あるいは法人に對する課税はできるだけ減税して、とつてもこれを一方において支出する場合には投資支出に向けなければならぬ、それと同時に奢侈的な消費は統制していくということが要請でありますが、現實としては先ほど申しましたように、戰後減税しなければならない、あるいは社會施設を増大しなければならない、政府の消費というものを殖やさなければならない、また大所得者を減税するということは一般の社會感情からまいりましても施行しにくいというような點からいたしまして、これが實際においては妥協に終つておるのであります。
 イギリス、アメリカ、ソ連、いずれを見ましても戰時における小所得に對する課税を戰後においてある程度減税いたしております。またイギリスにおいても、アメリカにおいても、高額所得者に對する戰時中の重税は戰後もこれを繼續しております。アメリカでは、御承知のように、共和黨が減税をねらいましたけれども、大統領の言によりましてそのまま繼續されておるというわけであります。イギリスにおいても所得税の税率は戰時中からまつたく減つておらない、そのままの重税が課せられておるのであります。また一歩進んだ高額所得に對して戰時中よりももつと高い税率を課そうという試みもスエーデンの方ではとられておるのでありまして、これは國内の政情に鑑みまして、いわゆる高額所得に對する社會感情というものを受け入れたものと考えられるのであります。一方において間接税の方は、これはインフレの抑制の見地からいたしますればまことに結構な話であります。それが一般の社會感情と合いさえするならば、これは經濟的に申しましてもインフレ抑止という點から申しますと申し分ないものなのであります。イギリスでは御承知のようにタバコの税金を引上げ、また奢侈的な消費に對する物品税は相當引上げております。また最近の追加豫算では賭博税というものを設けまして、ドツグ・レースというのですか、それに對する一〇%の税を新設することになつておるのであります。そうして購買力の吸收に努めておるのであります。イギリスにおきましては少額所得者に對しましては前に申しました戰後の減税の要請にこたえまして、勤勞所得の控除の限度を引上げる。あるいは扶養家族の控除の限度を引上げる。控除の額も引上げるといつたようなことを行つておるのでありますが、大所得者に對する所得税率は、大體そのままで、現在の率は、普通税と申しますと、一律に所得の大小にかかわらずかかる税金でありますが、これが一ポンドについて十シリングの戰時中の率に對して、一ポンドについて九シリングというほとんど半分近くのものをおしなべてあらゆる所得からとつております。そのほかに附加税というものがありましてこれは累進的になつておりますが、日本の所得税の累進的な部分だけが別の税金になつております。これが最高が附加税と合わせると一ポンド、すなわち二十シリングのうち十九シリング四ペンスという、ほとんど九〇%というものが税金にとられております。これは最高の率であります。これが戰時中から行われておりまして、現在もそのまま行われております。また會社に對する税金も今年の四月に増税いたしまして、さらに今年の十一月、先ほどの追加豫算でこれを増税しておるのであります。これについては民間の投資を阻害するといつて、反對黨では相當非難をしておるのでありますが、それは間接税と申しますか、間接税は先ほど申しましたように、タバコ税の増税、アルコール税の増税、物品税の引上げといつたようなことを行つております。今度の緊急對策ではおそらく財産税を課するのじやなかろうかということがいわれておつたようでありますが、これはまだ議題に上つておりません。先ほど申しましたスエーデンの非常に急進的な大所得者への重課ということの内容を見ておりますと、高額所得に對する財産税も引上げる。會社に對する税金も増額する。そのほかに新しく財産税というものを新設する。會社に對する資本税というものを課する。個人の財産税というものは、一時限りのものでありませんで、毎年取立てる經常的の財産税で、その率を見ますと、最低のものは七%でありますが、最高のものは五〇%ということになつております。相當重い税金が課せられる。これと同時に低い所得に對しましては輕減をいたします。また賣上税を廢止する。社公施設を増大するといつたような策をとつておるのであります。
 こういうような状態で國民の消費というものは一體どうなつておるかということを見てまいりますと、イギリスを例にとつてみますと、國民所得は戰前よりも殖えております。これはイギリスの物價騰貴を六、七割程度とみましてそれだけ勘定に入れましても、つまり戰前の價格で比較いたしましても、昨年の國民所得は殖えておる。また國防費が減少いたしましただけ國民の消費というものも若干殖えておる。イギリスが困つておるといわれておりますけれども、數字の上では國民の消費は戰前よりもむしろ多少高くなつておるということが現われております。しかし、その消費の總額は殖えておるのでありますが、その内容を見てまいりますと、殖えておるものは、書籍、雜誌、あるいは旅行費であるとか、娯樂費であるとか、通信費であるとか、タバコ、アルコールに使う消費であるとか、こんなところが相當に殖えておるのでありまして、食糧とか、あるいは衣料とかあるいはいろいろな家庭用具、そういうものは減つておるのであります。つまり統制のために、使いたい方面に使えなくて、ほかの方面において消費しておるというわけでありまして、イギリスとしては、物價騰貴を考慮に入れましても、戰前に比べて高い消費水準を見せておるわけでありまして、御承知のように、タバコなども三、四割方消費が戰前よりも殖えております。しかしながら、今年の八月の危機對策によりまして、タバコの輸入も止まる、アメリカ映畫の輸入も止まる、ガソリンの輸入も削減され、その他食糧にいたしましても相當輸入が制限されまして、ぜいたく的な輸入はほとんど禁止されたというわけでありまして、今後イギリスの國民生活、國民の消費水準というものは、やはり質的に申しますならば、戰前のはるか下に落ちていくであろうということが見られるのであります。緊急對策の結果、イギリスの國民の攝取カロリーは、これまでは二千八百七十カロリーでありましたが、二千七百カロリー程度に止めるというわけで、アメリカから食糧を買うことを差控えました結果、それだけ攝取カロリー水準が下ることになるわけであります。また所得税の内容を見てまいりましても、勤勞所得の割合が相當殖えております。税金が高給所得に對しては高いのでありますが、納税前の税込みで見ますとどちらも殖えておりますが、税金を差引いたあとの高で見ますと、勤勞所得は、戰前は全體の所得の三九%まで來ておりましたが、これが現在は四四%まで來ております。財産所得の方は戰前は全體の三七%でありましたが、現在は三三%に落ちております。その他高給所得の方は大體戰前と率において變りはない。勤勞所得は相當殖えておる。こういうことは民生安定からは好ましくないのでありますが、こういう事實になつておるということであります。
 大體歳入の税金の方はこの程度にいたしまして、今度は歳入の國債の方であります。アメリカやイギリスは豫算が黒字になつておりますから、大體財政は安定しておるのでありますが、その他の國では大體ヨーロツパ諸國は赤字が續けられておる。この赤字の代表といたしましてフランス、イタリーといつたようなところの状況はどうであるかということを申し上げたいと思います。フランスも議會に出す豫算は大體このごろは三箇月分ずつを出して、緊急豫算ということでやつておるのでありますが、議會に出しておる豫算は大體均衡した豫算が出されております。しかしながら實際は物價の騰貴が追つてまいりまして、あとからあとから追加豫算を出すということでありまして、まだ十分均衡というところまでいつておらない。またイタリーは初めから赤字でありまして、現在の赤字は、一九四六年から七年にかけての赤字が四萬五千億リラくらいの赤字になつております。フランスでは、昨年の暮れに財政状況について白書のようなものを出しましたが、これについて、その内容を見てまいりますと、歳出でも、人件費が全體の一七%程度であつたのが、現在では二五%程度までなつております。軍事費が戰前は三八%程度であつたが、現在は四六%程度になつております。その他、社會施設費等が相當増額しているというわけで、歳出の方も殖えておりますが、これに對して歳入の方が非常に思わしくない。どうも負擔の均衡がとれていない。勤勞所得に對しては税金が相當上つておるが、商工業、農業というような方の負擔は非常に輕くなつておる。戰前勤勞所得税の收入は全所得税の收入の一〇%程度でありましたが、現在では七三%程度になつておる。農、工、商業といつたような方面は現在では三二%になつております。これはフランスの税制が悪いのであつて、申告課税の分は全體の八割程度でありますが、この檢査ができていない。また、見込課税、政府の決定します分につきましても、その評價が現在のインフレと調和を合わしていない。こういつたような關係で、やみ利得のものがとれていない。これを何とか改めなければならぬ。また一方において行政制度の改革ということも必要である。いろいろ補助金を整理する。あるいは特別會計、營團、地方財政といつたようなものの赤字をなくする方法も講じなければならぬ。そうしてこれを清算して、大體一九四七年の暮までには税制。財政の改革の基礎案を出すということを言つております。ただ現在までに行いました税制改革の一端といたしましては、昨年の暮に一九四六年の商工業、農業方面の所得の査定はもう一度やり直して、そうして實額を捕捉するようにやり直す。それが去年の決定の二倍、三倍になつても構わない。農業所得などについては三倍まで決定が殖えても、三倍以内ならば異議の申立ては認めない。また一方において商工業、農業及び重要輸出業に對する所得税の納税は、その納税者に對して氏名を公表するというようなことを改革を行いまして、鋭意税源の捕捉に努めておるようであります。
 この九月二十三日に出ましたマーシヤルプランに基くパリー會議の報告を見ますと、フランスは、マーシヤル案に基くアメリカの援助が得られるならば、歳出豫算は、生産投資、あるいは軍事費、そういつたものを一切含めまして全部税金で賄う均衡豫算を確立するということを、本年末までに實行すると明言しておりますから、だんだんとそういつたような方面の整理が整つて、アメリカからの借款に伴つてフランスの豫算が均衡するのも間もなく實現することであろうと思われるのであります。フランスといたしましては、戰後の輸出に備えますためには、民間の産業の設備というものを相當近代化して、大いに生産投資を行わなければならぬ。また、昨年度からいわれましたいわゆるモネプラン、復興四箇年計畫におきましては、四年間に三兆フランの投資を行うということになつておりますこれは國民所得の大體二三%から二五%まで占めるものであります。これがはたしてフランスにやれるかどうか、ロシヤのようなきつい統制を行わずに、自發的にこの程度の投資が行われるかどうかということは事實において疑問をもつて見られておるのであります。
 次はイタリーでありますが、イタリーは四十六年から四十七年にかけての豫算が先ほど申し上げましたように四千億リラ、あるいは五、六千億リラという赤字になるのではないかと見られております。ずつと終戰以來、一九四三年以來赤字を續けてきておるのであります。國債の發行高を見ますると、一昨年末で四千億リラでありまして、戰爭が濟んでから九千億リラのうちで五千億リラというのが戰爭後の發行であります。最近の歳出は歳入の三倍になつております。毎月五百億リラずつの赤字が出でおる。歳出はどういうふうに使われておるかというと、占領費の負擔、復興費の支出が相當多い、こういう状態でありまして、今年の四月に財産税をあげました。それから復興公債を二千億リラというようなことをやつておりまするが、なかなか赤字が埋まらない、この間九月二十三日でありました、同じくマーシヤル・ブランによりますところの委員會の報告を見ますとイタリーは一九四八年度には大體豫算は均衡がとれるとこういうことを申しております。國の内外における借金で賄うところの經濟安定のための特別支出だけは、そういう内外の公債が發行できる限り公債でやつていく、それ以外は大體平常收入で支出をカバーしていくつもりだ、こういうことを言つておりますから、フランスよりはやはりある程度遲れておるわけであります。
 その他先ほどスウエーデンのことを申し上げましたが、これはスウエーデンとかノルウエー、あるいはスイスといつたような國は大體財政は安定しているようでありますが、ベルギー、これは一番程度がヨーロツパではよろしいのでありますが、これも現在ではまだ赤字で、近くこれも安定すると思つております。その他オランダ、これなどもインドネシヤ紛争のために相當豫算が赤字を續けて、まだ安定の見込みに達しないようであります。
 それからインフレの激しいハンガリー、これは皆さん大體御承知のことだと思いますが、一九四五年ごろからインフレが始まりまして、十一月にはその年の七月の物價の十八倍、十二月にはその三百五十倍、このころからインフレが激しくなりまして、ついに昨年の六、七月には未曾有の危機を招來して崩壞してしまつたのであります。これに對しまして昨年の八月安定計畫が立てられました。どういうわけでインフレが起つたかということは大體賠償とか、占領費の負擔というものでどんどん新規生産物が取立てられる。これはアメリカの方ではその半分以上はロシヤに行つておるといつております。ロシヤの方ではいやインフレの原因は賠償だとか負擔ではなくて、戰時中にドイツのナチスがハンガリーからどんどん運び出したのが原因だということがいわれております。八月には安定計畫を立てまして、その後今年の七月までの豫算を申しますると、まず豫算は歳入の方から申しますと、歳入は國民所得の二三%、これだけを歳入に押えております。國民所得は安定した通貨、つまり戰前の通貨で半分程度、百十五億リラになつておる。その二三%つまり二十六億リラだけを歳入としてとつておる。これによつて歳出を組む、歳出は二十九リラ、そうして占領費の負擔及び賠償費の支出、これを豫算總額の四二%をとりまして十二億リラをとつております。そうしますと二十九億リラから十二億リラ引きまして十七億リラ、これがほんとうの豫算であります。これは戰前の豫算が二十五億リラであつたところから見ますと、御承知のように、ハンガリーの安定計畫は物價を戰前の三倍にし、賃金を戰前の二分の一にしております。その間六倍の差を開いて、これでもつて生産を再開していこうというねらいであつたのであります。物價が三倍になつたから、戰前の二十五億リラは現在の七十五億リラに相當するわけでありますが、それをこの十七億リラに押えた、從いましてのき並みに非常な削減を行いまして、教育文化費程度だけが大體戰前と多少似かよつた金額で、あとはのき並みに削減したのであります。復興の支出は一割程度に止められておる。復興を第二義として、まず通貨の安定を第一義とする、こういうことでありまして、今後の復興のための支出は、毎年國民所得をだんだんに殖やしていつて、一九五〇年には二百億リラ、つまり戰前と同じところまでもつていく、その國民所得がだんだん殖えていくだけの一割だけを毎年復興のための投資に使う、こういうふうに復興を抑制して安定をまず第一にはかろうという考えでやつております。その後の様子を見ますと、今年の四月ごろでありましたが情報がありまして、大體うまくいつておる。物價もそう大して上らず、賃金がいくらか上げられた程度でありまして、大體うまくいつておるということであります。
 そのほかの國といたしましてはドイツでありますが、ドイツはよくわかりません。アメリカの占領地域だけの様子が今年九月ごろアメリカの無電ではいりましたわずかばかりの情報でありますが、それにいたしましても通貨の流通高が現在どれだけあるかというようなことも全然わからないのであります。終戰當時の状態は大體戰前の通貨の流通高の十倍程度であつたということは言えます。それでは物價はどういうふうになつておるかと申しますと、物價は嚴重な統制で戰前、戰時中と變りないことになつております。賃金もほとんど變りないことになつております。從いまして生活水準は配給さえあればほとんど變りないと言えるのでありますが、ただ税金が非常に高くなつた。ドイツは御承知のようにまだ中央政府がございませんが、各州の政府で占領費の負擔をしておる、ほとんど全部黒字に近い負擔をしておる、從いまして税金も上つております。税金の上つただけは生計費も非常に苦しいわであります。それと統制のために物も入手が困難で、従いましていわるゆバーター取引、物交とか、やみ取引というものが相當横行しておつて、農産物はほとんど二割近くまでも占領地に流れておるというような状況であります。その他詳しいことはほとんどわかりません。前の第一次大戰後のドイツが典型的なインフレーシヨンの國として今日よく知られておるところでありますが、その後の状況を見ますと、ドイツの財政は戰後ずつと赤字財政を續けておりまして、ほとんど増税とか均衡豫算ということについては留意が拂われておらない。一九一九年から一九二三年の安定するに至りますまでの赤字の額は、舊マルクにいたしまして百八十七億マルクという赤字になつておりまして、ほとんど流動公債で、大藏省證券でやつておる。税金は二、三年増税が行われましたけれども、どんどん發展いたしますインフレに押し流されまして、ほとんど歳入というものはゼロに近い状態になつてしまつたのであります。最もはなはだしい一九二三年、爆發いたしました十月の状態におきましては、國の歳入のわずか〇・八%だけが税金で賄われる。殘りの三九・二%までは赤字、こういう状態にあります。それではこの赤字財政は一體何から起つたかということを見ますと、賠償支出は一體どのくらいかというと、これは戰後一九二〇年から始まつたのでありますが、二〇年から二三年暮に至りまするまでの賠償というものは、六十五億マルク赤字全體が百八十七億マルク、これがこの四年間の赤字、大體赤字の三分の一がやはり賠償に充てられたというわけであります。御承知のシドニーという人の、ドイツのインフレーションに關しての著書がありますが、シドニーはイタリーの政府を代表いたしまして、ドイツの賠償問題に關して行つた人でありますが、これはやはりこの立場からドイツのインフレは賠償がその原因だということを非難しております。わずか赤字三分の一程度のものしか實際に負擔しておらない。ドイツのインフレの原因は賠償ではない。もしドイツが賠償を全然負擔しなかつたとしてもこういうような赤字を續けておればインフレが起る。もし赤字を續けないでいくとすれば、戰爭中に發行した國債利拂というものは非常な大きな額に上つたに違いない。そのためにドイツは借金をしていかなければならなかつた、もしそれを税金で取立てるということをやつておつて、健全財政を戰後とつておつたならばこんなインフレは起こらずに濟んだ、それは賠償を負擔しても結局同じことだ、こういうような論調をもちまして賠償がインフレの原因ではないということを盛んに申しております。ともかくこの一九二三年に、御承知のように、これが安定いたしまして、その後賠償の負擔というものは非常に減つておりまして、翌一九二四年は賠償負擔が全然ゼロ、その次が二億九千萬金マルク、五億五千萬金マルク、八億九千萬金マルクというので、安定までの二十八億とか十八億とかいつたような大きな負擔は經減された。從つて一九二四年は黒字の財政をとつておる。黒字の實績を示しております。その後多少の赤字がありますが、微々たるもので、財政は均衡を得ておる。安定直前まではずつと赤字を續けておつたのでありますが、安定と同時にこれが黒字に急轉しております。
 こういうふうな點から見てまいりまして、先ほどのハンガリーの例も、ドイツの第一次大戰後財政の安定、黒字を實現するためにはどうしても外部の援助というものがやはり大きな役割をしておるように思われるのであります。財政の赤字というものがはたして完全雇用の點から申しまして、肯定できるかどうかということは別問題といたしまして、またどの程度までの赤字がいいかというような議論は別といたしまして、今日ではどうしてもインフレを阻止するためには黒字の豫算を組まなければならぬ、均衡豫算を組まなければならぬわけであります。殊に後進國、戰敗國といたしましては、黒字の豫算を組まなければならぬのでありまして、一方におきまして生活水準を切り下げて――將來のより高い生活水準のために現在の生活水準を、消費水準を、將來に備えて抑制するという方法をとつてまいらなければならぬのであります。このための前提であるところの豫算の均衡ということにつきましては、外部からの資金なり外貨なりの援助というものが相當大きなものを占めておるということが見られるのであります。この間行われました九月二十三日のパリー會議におけるマーシヤル案におきましても、アメリカから足らないところを援助してもらう、黒字豫算ということはもちろんでありますが、そのほかに各國の安定を助ける手段として、全體として三十億という程度のものを借款としてアメリカから貸してもらいたい、そうすれば安定は非常に促進するであろう、その後においてブレトン・ウツズに從つて各國の通貨のドル建を再開させていくということができるであろうということを申しておりますが、この點大いに考えるべき問題であろうと思うのであります。
 先ほど申しましたように、今日財政は國民經濟に非常に大きな地位を占めております。今後もこれが續くと思うのでありますが、それがどういうふうな状態でインフレに作用し、デフレに作用するかということを見ていきますためには、ただ單に赤字があるとかないとか、その額が大きいとか小さいとかいうことではなしに、その歳出がどういうふうに使われておるか、生産に使われるか、投資に使われるか、また消費に使われるか、消費に使われるにしてもどういうふうな消費に使われるかということを、國民經濟全體の關連において分析していくことは、今後大いに考慮しなければならぬ點でありまして、アメリカなどでも大いにやつておられるのでありますが、日本といたしましても今後大いにやつていかなければならぬと思います。現在におきましては理論的な財政と國民經濟とのつながりということにつきましては、いろいろな外部的な條件が多いのであります。外部的な未決定な部分――賠償の決定がどうなるか、あるいは國内の統制がまだほとんど存續しておる、為替レートもきまつておらないということがありまして、未決定な部分が非常に多い。また對外的に見ましても、いわるゆ貿易憲章というものをかりにおきまして、世界的にどういうふうなところまで生産、貿易の均衡をもつていこうとするか、そのわくが固まり切れないでおるという點もございます。しかし貿易につきましてはヨーロツパの場合もそうでありますが、イギリスの輸出が非常に軟貨地域に偏しておつて、貿易が偏つておるということが言われておりますが、仔細にその内容を見てみますと、貿易というものはやはり自然條件に支配されておることが非常に強いのでありまして、その偏差と申しますか、その偏りはきわめてわずかなパーセンテージにすぎないのであります。わが國の貿易もただいまのところは講和會議も開かれないし、また東亜諸國の對日感情的なものから見まして、やはり自然的條件というものが相當物をいう。すべての外的條件がおちついたところで、初めて豫算と財政と經濟とのつながりというものの分析が、十分に行われると思うのでありますが、何とかそういうようなものにしたいと思つております。はなはだ簡單でございますが、これで御説明を終ります。
#4
○馬場委員長代理 何か御質問ありませんか。――質問がありませんから請願の審査にはいります。
    ―――――――――――――
#5
○馬場委員長代理 日程第一、滿洲における戰犯者救護に關する請願、文書表第六三〇號、紹介議員原侑君。これは再三日程に掲げておりますが、その都度紹介議員がお見えになりませんので、本日はこの請願について審査を進めたいと存じます。まず請願の趣旨を專門調査員に朗讀いたさせます。
#6
○佐藤專門調査員 本請願の要旨は、滿洲における戰犯者は、その罪状明確を缺き、多くは責任的地位にいなかつた者である、それ等の人が内亂治らぬ滿洲で設備不十分、食事情粗悪な獄内にその刑期を終るまで留まることは死刑に處せられたと同様で、多數の人は今年の冬期さえ越し得ない状態である。ついては滿洲における戰犯者に對して、内地服役、再審査の上微罪者の釋放、食料・衣類・藥品等の差入れその他救濟援護をされたいというのであります。
#7
○馬場委員長代理 ただいまの請願に對する政府側の意見を承りたいと存じます。
#8
○大野(勝己)政府委員 滿洲における戰犯者の救濟援護に關しましてのただいまの請願に關連いたしまして、全般的にこの際中國の日本人戰犯處理状況につきまして、概要を申し上げることが適當であると存じますので、ごく簡單に申し上げたいと思います。
 中國關係の戰犯は、國民政府令の戰爭犯罪審犯條例というものに基きまして、裁判及び處罰をせられることになつておるのでありまして、これは主として滿洲事變以後終戰に至る間における不法の侵略戰爭に關與し、または中國人に危害、暴行、壓迫等を加えたものがその對象となつておる次第であります。その犯罪規定と適用期間がきわめて廣く規定されておるのでありまして、上官の命令によりまして、または國策のために職務として行われたような場合に對しましても、また政治的行為でありましても、さらに部下の行為であつても處罰されることになつておるのであります。はなはだ廣く解釋せられるように規定せられておる次第であります。從いましてこの戰犯條例に根據をおきまするならば、罪状はきわめて確かに根據があり得ると言えるようなことになつておりまするし、また責任の地位にいなかつたものでも處罰されることがあり得る次第であります。もちろん日本の敗戰によりましてポツダム宣言を受諾いたしております以上、嚴重なる戰爭裁判を受けるということは、これはやむを得ないところでありまして、殊に中國に關しましては、多年にわたりまして各種の損害を與えておる次第でありますので、戰爭裁判に關連いたしましてただいまのところ日本といたしまして、かれこれ申すべき筋がないという立場にある次第であります。むしろ全般的に見ますと、戰犯問題につきましては、中國は大體寛大な措置をとつておるということが言えるほどであると私どもは考えておるのであります。その意味におきまして政府といたしましては、わが國の過去において犯しました涜罪ということを、一身に背負つてその衝に當つておるという人も實はあろうかと思われますので、その意味においては人道上許される限りの範圍におきまして救濟援護の策を講じたいと存じまして、關係方面等に對しましては、從來からもいろいろ連絡をとつておるような次第であります。最近の歸還者の報告を總合いたしますと、中國の現地における戰犯者に對する裁判ないしは拘留所における状況は、概して満足すべきものがあると判斷せられるのであります。これらのものに對しまして必要な差入品を送るとか、その他の必需品を送るという點についても、許される限度において何とかいたしたいと存じまして、目下種々手續を進めておるような状況でございます。以上は中國に關する全般の状況の概要でありますが、その他詳細なる活動等につきましては外務省の關係員の方より御報告せしめることにいたしたいと存じます。
#9
○和田委員 本請願提出者は本會議では活躍しておれるが、誠意がないし、それに戰犯問題というものは、今、日本としては渉外關係としてとり上げるような時代にも立至つていないと思いますので、今の説明で十分肯けると思いますから、これ以上とり進める必要はないと思います。
#10
○馬場委員長代理 本請願は去る十三日採決いたしました第九〇七號の北鮮に殘留中の邦人釋放に關する請願と大體似通つておりますので、採決いたしたいと存じます。
#11
○和田委員 北鮮はソ連の治下であり、中國の場合とは性質が大分違うと思いますし、趣旨もこの請願書を讀んだだけではわからぬし、紹介議員も來ないので、そういうものを採擇する必要はないと思います。
#12
○菊池(義)委員 別に不都合を生じることもあり得ないと思うので、採擇したらどうですか。
#13
○馬場委員長代理 それでは本請願に對する採擇はしばらく延期いたしたいと思います。
    ―――――――――――――
#14
○馬場委員長代理 日程第二、在外同胞引揚促進竝びにその援護に關する請願、文書表一一五八號、紹介議員石原義則君、これも專門調査員より朗讀いたさせます。
#15
○佐藤專門調査員 本請願の要旨は、海外引揚者は現在社會からまことに冷遇されている、ついては國會竝びに政府はこれが實相を究めて、引揚者更生のために次の事項に關して速やかに適切な施策を講ぜられたいというのである。(一)引揚の促進 (二)在外資産の補償 (三)外地同胞救濟資金の返濟 (四)生業資金の貸出促進 (五)歸農者の就農援助(六)住宅問題の解決。
#16
○馬場委員長代理 政府側の意見を承りたいと存じます。
#17
○齋藤(惣)政府委員 ただいまの請願のうちの促進のことでありますが、これはすでにそれぞれ方法が講ぜられているように存じますので、お答えを申し上げる必要はないと存じます。
 歸りましてから後の援護のことであります。これは引揚援護院に關しまする限りは、應急援護でございまして、引揚者が各引揚港につきまして、その郷里に歸りますことを主としてやつているのであります。その中にありますただ一つの項目であります生業資金のことでございますが、これはあるいはほかの機會にもすでにお答えを申し上げたことがありまして、重なつているかとは存じますが、ごく簡單にそこのことについてお答え申し上げたいと存じます。來年の九月末現在におきましてすでに引揚げられた方々に對しまする生業資金といたしましては、九月末現在で十一億五千二百六十一萬六千五百圓の經費をこのために用いているわけであります。これは第一次、第二次の計畫兩方を合わせまして十六億六千六百六十餘萬圓でありますが、第一次の十億はすでに貸付け完了し、第二次分の六億六千六百六十餘萬圓は全額國庫資金でありまして、そのうち第一囘と第二囘と合わせて三億五千萬圓は放出濟みでございますので、殘りの三億一千六百六十餘萬圓のうち一億五千萬圓は十一月中に各都道府縣に補助する見込みであります。さらに殘餘の一億六千六百六十餘萬圓は十二月中に同じく補助の手續きを終わりたいという豫定で事務的な手續きを進めております。これらのことを申し上げますのは、引揚げられた方に對しましての更生のためのお手傳いをしているわけであります。そのほかに外地において救濟をいたした費用に醵金をしたからそれを返してくれ、あるいはまた外地の資産についてのなんか施策をしてくれということはたびたび聞くことでありますが、これは大藏當局においてもいろいろ研究されておることでありますけれども、未だにその問題につきましてはお答えする時期に達しておりませんことははなはだ遺憾でありますが、今日の事情やむを得ないことだと思うのであります。第三次の計畫を今いたしておりまして、生産資金をさらにできますれば來年度の豫算に計上いたしまして、そうして引揚げられた方々が仕事を始められまして、更生せられることのお手傳いをいたしたいと思つておるのであります。その第三次の計畫につきましては、これはおそらく二月の初めころにその計畫が發表できるかと思うのであります。ただいまその折衝をいたしておるということだけを申し上げるほか方法はございません。生業資金ということだけはぜひ何とかいたしまして、お歸りになりました方々の更生復興のために十分な助けとなるように願つておる次第であります。はなはだ簡單でありますが、そのうちの主管のものだけをお答え申し上げます。
#18
○馬場委員長代理 質問ありませんか。――この請願は在外資産の問題に觸れておりますので、本日は審査をいたす程度に止めておきたいと存じます。
    ―――――――――――――
#19
○馬場委員長代理 日程第三、在外同胞引揚促進の請願外三件、並木芳雄君紹介、第一一八三號を議題といたします。
#20
○佐藤專門調査員 本請願の要旨は第九五一號と同じでありまして、九五一號は本委員會でさきに採擇されたものであります。
#21
○馬場委員長代理 本請願は去る二十四日、本委員會において採擇いたしました第九五一號と同一趣旨の請願でありますから、採擇の上内閣に送付いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○馬場委員長代理 それではさよう決めました。
    ―――――――――――――
#23
○馬場委員長代理 次に日程第四及び第五の兩請願は内容が同一でありまするから、一括して審査いたします。四、ソ連領からの引揚促進に關する請願外九十件、並木芳雄君紹介、第一一八四號、五、ソ連領からの引揚促進に關する請願、並木芳雄君紹介、第一二四四號を議題といたします。
#24
○佐藤專門調査員 これは二つとも第二三三號と同じでありまして、すでに採擇になつております。
#25
○馬場委員長代理 ただいまの兩請願は去る九月十八日、本委員會において採擇いたしました第二三三號と同一趣旨の請願でありまするから、やはり採擇の上内閣に送付いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○馬場委員長代理 さよう決しました。
 本日はこれをもつて散會いたします。
   午後零時十七分散會
ソース: 国立国会図書館
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