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1947/08/26 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 鉱工業委員会 第10号
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1947/08/26 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 鉱工業委員会 第10号

#1
第001回国会 鉱工業委員会 第10号
昭和二十二年八月二十六日(火曜日)
    午前十一時二分開議
 出席委員
   委員長 伊藤卯四郎君
   理事 大矢 省三君 理事 岡田 春夫君
  理事 生悦住貞太郎君
      今澄  勇君    松本 七郎君
      萬田 五郎君    村尾 薩男君
      庄  忠人君    西田 隆男君
      長谷川俊一君    三好 竹勇君
      淵上房太郎君    谷口 武雄君
      前田 正男君    高倉 定助君
 出席國務大臣
        商 工 大 臣 水谷長三郎君
 出席政府委員
        商工政務次官  冨吉 榮二君
 委員外の出席者
        鑛工業委員會專
        門調査員    谷崎  明君
八月二十一日
 赤澤炭鑛における亞炭採掘中止の請願(中野寅
 吉君紹介)(第二四二號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 赤澤炭鑛における亞炭採掘中止の請願(中野寅
 吉君紹介)(第二四二號)
 金属鑛業再建復興對策に關する陳情(東北鑛業
 會提出)
 石炭生産確保に關する陳情(全國石炭復興會議
 議長代理松本武雄提出)
 硫化鑛特別増産期間實施に關する件
    ―――――――――――――
#2
○伊藤委員長 これより會議を開きます。
 本日の議題は硫化鑛特別増産期間實施に關する件と請願が一件、陳情が二件であります。議事の進行上まず請願より審査をいたします
#3
○伊藤委員長 赤澤炭鑛における亞炭採掘中止の請願、中野寅吉君紹介、第二四二號を議題に供します。本請願は八月二十一日に本委員會にその審査を付託せられたものでありまして、請願文書表は第三の百三ページにその要旨が摘録せられております。まず紹介議員の説明を聽取することといたします。中野寅吉君。
#4
○今澄委員 紹介議員中野寅吉君が本席に見えませんので、私より代つて本請願の要旨を御説明申し上げます。
 本請願の要旨は、福島縣大沼郡赤澤村大字赤留字中山にある赤澤炭鑛では亞炭を採掘しているが、その上部にある民家の土藏が陷沒して、屋敷内に大龜裂を生じ、部落民は極度の不安に驅られている。ついては速やかにこの採掘を中止し、被害箇所を復舊するよう取り計らわれたいというのであります。政府當局の御意見竝びに皆様方の御審議をわずらわしたいと思います。
#5
○伊藤委員長 これにて紹介説明は終りました。續いて本請願に對する政府の御所見をお伺いいたします。
#6
○冨吉政府委員 福島縣大沼郡赤澤村大字赤留字中山が陷沒および地表龜裂を生じました箇所は、昭和十九年の四月以前に採掘をすでに中止いたしました廢鑛の跡であります。前の鑛業權者の採掘した跡でございまして、赤澤炭鑛に鑛業權が委讓されましてからは、まつたく別の計畫をもつて山の地帶に採掘箇所を實施しておるのでありまして、現在では採掘は事實上中止いたしておるのでありまして、この赤澤炭鑛の採掘中止の必要はないものかと考えられるのであります。なおしかしながら、陷沒箇所等における損害賠償等については、ただいま兩者間で示談交渉が進行中でございますので、この點御了承願いたいと思うのであります。
#7
○伊藤委員長 本請願の可否は愼重を期する意味におきまして、追つて協議の上決することといたしたいと思います。別に御異議はありませんか。
#8
○伊藤委員長 御異議なきものと認めまして以上のごとく決します。
    ―――――――――――――
#9
○伊藤委員長 それでは次に陳情書を審査いたします。七月二十八日に本委員會に送付せられました金屬鑛業再建復興對策に關する陳情、第二四號、陳情者東亞鑛業會と石炭生産確保に關する陳情、第四八號、陳情者全國石炭復興會議、松本武雄、以上二件の陳情書を一括議題に供します。これは陳情文書第一のページと第十七ページにその要旨が載つております。その要旨について專門調査委員をして朗讀説明をいたさせます。谷崎調査員。
#10
○谷崎專門調査員 金屬鑛業は、現在資金の枯渇、生産資材の削減、勞働條件の不利等、諸種の惡條件のもとにあつて、再開困難の實情にあるが、この危機打開のため、鑛産物價格の適正化、事業資金の確保、電力その他緊急生産資材の確保等の緊急施策を確立して、本産業の健全な囘復を圖られたい。というのが陳情の要旨であります。
#11
○伊藤委員長 これについて政府側の所見をお伺いいたすことにいたします。
#12
○冨吉政府委員 金屬鑛業は終戰後の混亂期を經まして、おおむねその自然淘汰が行われ、最近その操業度は戰時中の二割か三割程度に止つておるのでございます。本年一月以降製錬部門への石炭の増配、さらには五月一日の鑛産物價格の改訂等によりまして、生産も逐次上昇しつつあるのが現状であります。また一方鑛山における勞働運動も金屬鑛山復興會議を中心といたしまして、生産復興の方向に向いつつありますので、當局といたしましては、經濟再建の重要基礎産業たる金屬鑛業の維持振興をはかるために強力かつ畫期的な對策を樹立すべく目下準備中であります。陳情の事項に對しまする現在まで政府が行つてまいりました施策を概説いたしますならば、大體次のようなことになると思います。
 まず第一點といたしまして、鑛産物の適正價格の形成についてでございますが、鑛産物の所要の生産量を確保するために、これに要しまする資金、資材、勞務等の圓滑なる供給をはかりますることはもちろんでございます。その經營の自主性、健全性を樹立するためには、その價格を適正に決定することが不可缺の條件でありますので、この見地からいたしまして、五月一日金及び銀を除く重要鑛産物の價格を改訂されたのでございます。その後いわゆる新物價體系の一環として、さらに鑛産物の價格改訂を行うことと相なりまして、銅、鉛、亞鉛、硫黄及び硫化鑛の五鑛種については、去る十三日左の通り生産者價格が改訂せられました。すなわち銅につきましては、新しい價格では七萬七千圓、鉛につきましては三萬三千六百圓、亞鉛のうち電氣亞鉛の方は二萬五千圓、蒸溜亞鉛の方は二萬五千圓、硫黄は四千七百圓、硫化鑛は一種、二種、三種にわけまして、一種が五百四十四圓三十九錢、これは單位が四九%でございます。二種につきましては五百三十四圓二十四錢で三六%でございます。三種におきましては、八百十圓九十八錢、四三%となつております。なお殘餘の鑛産物については、目下物價廳において逐次檢討中でございますが、これが促進については、せつかく當局においても努力中でございます。
 事業資金の確保及び新圓拂出し限度の増加に關しましては、金屬鑛業は燃料竝びに輸送事情の惡化による操業度の低下と、諸物價竝びに賃金値上がりによる企業採算の惡化等によりまして、昨年來金融上重大なる危機に直面しておりますので、とりあえずこの難局を打開するために、復興金融金庫から運轉資金の融資を受けることとなりまして、昨年の十二月末から本年六月までに、總額七億六千三百萬圓の融資のわくが認められまして、おおむねわく一杯の融資を受けているのでございます。
 なお第二・四半期におきましては、硫化鑛緊急増産體制確立の要請もございまして、設備資金一億八千萬圓、運轉資金二億圓のわくが認められまして、設備資金においては硫化鑛の松尾鑛山を初めといたしまして、復金よりの融資を受けて著々設備、整備中でございます。運轉資金につきましては、七月分として七千三百萬圓の融資が決定されまして、目下各社とも借入中でございます。
 次に新圓拂いの話でございますが、鑛山企業の特殊性からいたしまして、事業資金の一部新圓拂いの必要を認めまして、昨年の六月以來總事業資金の一割を限度として實施したのでございますが、諸般の事情によりまして、限度以上の必要を痛感いたしましたので、本年二月從來の一割限度とありましたのを、二割五分に引上げて實施し、今日に至つておるのでございます。硫化鑛の緊急増産等の見地からいたしまして、設備資金、運轉資金の新圓拂いにつきましては、目下各方面と折衝中でございますから、さよう御了承をお願いいたします。
 次に勞務加配米の問題でございますが、金属鑛業の勞務加配米は、現在鑛山製錬業として加配基準量二合三勺を加配しておるのでございます。これが決定量は二十一年十二月二十六日附の二十一食糧第三四二二號、食糧管理局長官勞務加配改訂實施に關する件という件名によりまして、各都府縣知事に通達濟みになつております。實施二十二年二月からで、二十一年度の加配米の基準量二合よりは三勺の増額をみたのでございますが、その後の食糧事情の逼迫化に伴いまして、おおむね遲配もしくは加配基準量の何割かが削減されておるというような實情であります。
 そこで各商工局は、管内の鑛山の受配状況の特に惡い地方におきましては、關係地方廳と折衝いたしまして、極力圓滑なる加配米の基準量確保に努力中でございます。
 硫化鑛山につきましては、四月に閣議決定を見ました硫化鑛の緊急増産に伴う措置として二合五勺(他よりは二勺の増額でございます。)の決定を見たのでございます。現在二合五勺を受配しておりますが、遲配もしくは加配基準量の確保は、これまた各縣の食糧事情に左右せられて、全般的に圓滑な配給を受けておるとは言いがたいのでございますが、硫化鑛山の加配基準量の決定通知は、五月十日の二十二食糧第一四五五號の食糧管理局長官から關係縣知事あてに通達されておるのでございます。當局といたしましては、受配状況が惡い地方では、これまた當該府縣知事あての公文をもつて極力善處方を依頼いたしますとともに、各商工局におきましても、閣議決定による加配基準量の確保に關係地方廳と十分折衝するよう督勵いたしておるのでございます。なお當局といたしましても、各鑛山の受配状況を知ることに努めまして、確實な資料によりまする事實をもつて、農林當局でも十分の配慮を得るような措置をいたしておるのでございます。
 次はコークスの需給についてでございますが、二十一年第一・四半期では需要量二萬三千四百九十五トンに對しまして、割當は四月より三千百トン、五月が二千八百八十トン、六月は三千五百トン、合計九千四百八十トンで、割當率は約四〇%でございましたけれども、第二・四半期は需要量の二萬六百トン、月平均六千八百五十トンに對しまして、割當は七月が四千七百トン、八月が四千七百トンと、それぞれ六八%に漸増いたしております。しかしながら、六千八百五十トンにはまだ及びませんので、コークス全般の事情から見て、最低四千七百トンくらいには確保したいと、目下鋭意努力中であります。
 鑛石輸送確保の件でございますが、小運送の方ではトラック輸送につきましては、鑛石輸送用のガソリン及びモビールを配給して、その確保を期しておりますが、その配給量は、現在のところ需要の約半量くらいしかございませんので、さらに増配の要望を出しておる次第でございます。また省營トラックによりますことを便利と認められますところでは、運輸省と速絡の上、その運行を圓滑にいたしておるのでございます。
 鐵道輸送におきましては、月平均二十萬トン前後の計畫を立てておりますが、現地と連絡の上、中央で毎月輸送のわくを定めまして、特に硫化鑛については、G・H・Q、鐵道輸送司令部よりもその完全輸送の指示を出しておりますし、その配給計畫に適合するよう進めておるのでございます。また特に成績の惡いところは、適時現地において關係各方面を集めまして會議を開催する等認識を深めるとともに、完全遂行を促進しておる次第でございます。
 次は海上輸で送ございますが、松尾花岡鑛山の硫化鑛は汽船によるのでございまして、月に1萬トンから二萬トンの輸送を行うのでございますが、戰時標準型の船が多いのでございまして、輸送力は非常に弱力でございますので、特に專用の船を指定いたしまして、改造を加えて運航いたしておるのでございます。今後海上輸送は汽船の増強により、さらに大量の長距離輸送を要望いたしておる次第でございます。
 瀬戸内海地方の輸送の大部分は機帆船によるのでございますが四萬トンから五萬トンの鑛石と若干の製錬資材とを運んでおるのでございます。これには特に燃料の確保に努めまして、硫化鑛の百パーセントを上まわる實績をはじめとして、平均九〇%程度の實績を現在あげている状況でございます。さよう御了承をお願いいたします。
    ―――――――――――――
#13
○伊藤委員長 次は石炭生産確保に關する陳情書を專門調査員をして朗讀いたさせます。
#14
○谷崎專門調査員 全國石炭復興會議は、政府の危局打開の合理的なる施策については積極的に政府を支持し協力するものであるが、政府の本年度石炭三千萬トン生産確保については、官僚統制を排し、石炭復興會議を中心とする自主的運營方式の確立を要望する。これが陳情の趣旨でございます。
#15
○冨吉政府委員 全國石炭復興會議におかれましては、去る六月七日聲明書を發せられまして、本年度石炭三千萬トンの生産を確保するため政府の強力なる諸施策を要望されるとともに、この施策の實施については、積極的に推進をはかり、全面的に政府を支援する意向を表明されたのでありまして、政府といたしましても、この眞摯な御熱意に對しましては、深く感謝いたしますとともに、御要望の諸點については、專心これが解決に努力してまいつた次第でございます。
 すなわち炭鑛勞務者の生活を安定し、食糧を確保し、勞務者の作業用竝びに生活必需物資を確保することにつきましては、政府としましては、最優先的に考慮し、主食等も今日の食糧事情のもとにおいて、本人六合、家族三合の八割を米麥で配給して、遲缺配をほとんどみていない状況でございます。本食糧年度においては、一應不安はないことになつておるのでございます。住宅その他の福利施設の建設も、マッカーサー司令部の格別の援助によりまして、おおむね順調なる建設を見つつあるのであります。その他の諸物資につきましても、副食品、衣料品、石けん等もとより十分とは申しかねますが、現在のわが國の經濟力によりまして供給し得る最大限の數量を優先配給しておる次第でございます。
 また合理的な炭價の前ぎめの問題は、すでに七月六日より實施しました新買取價格によりまして一應解決したものと言えますし、資金の點につきましても、炭價の改訂を機會に、七月中に總額十三億圓に上る赤字竝びに運轉資金の融資を行いまして、目下準備中の炭代一旬分の繰上拂が實施されますと、大體において炭鑛の手持資金は十分であると言い得る状況と相なると思うのであります。
 最後に資材の點につきましては、本年一月以降いわゆる傾斜生産の名のもとに、鋼材をはじめ重要資材を優先的に炭鑛に振向け、以來本年度上期におきましても、この方針を踏襲してまいつたのでありまして、現物化も概して順調にまいつておりますが、セメント鑄鐡管、杭枠レール等絶對量の不足するものにつきましては、進駐軍との競合を緩和いたしまして、あるいは輸入を懇請する等、各種の方策を講じて、もつて今後とも必要資材の確保に萬全を期したいと考えておる次第でございます。
 これを要するに、政府といたしましては、敗戰下日本の國力の許す限度において、炭鑛には最重點的な施策を強行して、もつて本年度出炭三千萬トンの達成に對する炭鑛現場の熱意にこたえてまいつたのでありますが、幸いに第二・四半期にはいつて、石炭復興會議の主唱による石炭増産運動の高調に連れ、出炭はおおむねの地域におきまして、概して順調な推移をたどつておりますことは、まことに御同慶にたえないところであります。以上政府の所信を申し述べる次第でございます。
#16
○伊藤委員長 金属鑛業再建復興對策に關する陳情は、單なる東北金属鑛業會だけの陳情書でありますが、その内容は全國的に共通の問題でありますので、本委員會がこの種の問題を取扱う以上、全國各地方鑛業會の總意を徴し、陳情書の趣旨内容を總合調整するはもちろん、資材金融等國政運用上大なる影響を及ぼすものにつきましては、全國的にとりまとめ、大體のわくを考量する必要があろうと思います。つきましては、本陳情書の取扱いは後日においてなお協議することといてしたいと存じます。なお石炭生産確保に關する陳情の取扱いも後日協議いたすことといたしたいと存じますが、別に御異議はございませんか。
#17
○伊藤委員長 御異議ないようでありますから、そのようにいたしておきます。
#18
○伊藤委員長 次に硫化鑛特別増産期間設置に關する件を議題に供します。本件は本委員會の化學肥料工業に關する國政調査に關しまして、化學工業小委員會におきまする調査の結果として取上げられたものでありまして、すでに諸君のお手もとに印刷として配付してありまする化學工業小委員會の報告書もありまするが、その具體的な内容は、私より説明を申し上げることといてします。
 本委員會化學工業小委員會においては、第一著手として化學肥料の問題を取上げ、先般これに關する國政調査を行つた。その結果、化學肥料増産の隘路は、硫化鑛の生産不振にあること竝びに將來の對策とほ別個に當面の硫化鑛増産緊急措置として、この際全國的特別増産期間を實施すベきであるとの結論を得た。
 政府の計畫によれば、本年度硫酸需要量は硫安、過燐酸を初め纎維關係等全消費部門の合計三百四十八萬トンであるが、石炭、鐡鋼セメント等の需要關係から見て、硫酸工場の生産計畫量は二百十八萬トンとなる。しかるに硫酸の唯一原料たる硫化鑛の供給が百十萬トンにすぎないため、これに制約せられて百八十六萬トン、すなわち需要量の五三%となる。かつては世界第一の硫化鑛生産國といわれ、年間生産二百萬トン内外を堅持して、國内需要を充足するはもちろん、一部を海外に輸出したわが國であり、今日においても埋藏確定鑛量一億數千萬トンを擁していながら、硫化鑛生産不振のため、農業國策遂行上致命的打撃をこうむるはもちろん、連合國に哀訴嘆願してようやく輸入を許可せられた燐鑛石の處置にも窮するとは、あまりにも面目ない次第である。
 ここに於て政府は去る四月十一日の閣議において、硫化鑛緊急増産對策を決議し、これが實施のため、經濟安定本部内に硫化鑛對策委員會を設置し、さらに最近に至り、商工省内に硫化鑛増産推進本部を新設するなど、種々善後策を苦慮せるようであるが、實績は必ずしも樂觀を許さないものがある。すなわち第一・四半期の生産實績は十八萬八千トン、七月の推定七萬三千トン、結局本年度の總額は精々八十五萬トンと豫想するのほかなく、來年度の生産計畫百七十五萬トンもまだ八〇%以上の成果は期待しがたい實情である。この原因については、もとより種種算うべきものがある。第一に、戰時中の事はしばらくおくとしても、敗戰直後食糧危機の絶叫せられた當時、逸早く硫化鑛増産對策を講ずべきであつたにもかかわらず、その措置を怠つたため、全産額の過半を負擔する松尾、柵原兩鑛山の露天堀り、機械化等の増産計畫が、今日に至るも未だ具體化せず、從つてこれら兩鑛山に對する急激な増産が期待せられないことである。第二に、その他の鑛山においては、おおむね銅鑛の副産物であり、從つて主體である銅鑛業とその盛衰をともにすべき運命にあるが、この方面は今日なお沈滯の域を脱するに至らないため、これまた急速には増産を期待しがたい。その他生産地と消費地とが地理的に偏倚しており、配鑛の圓滑をはかるためには長距離輸送によらなければならないが、その設備が未だ完成していないひと等々、幾多の隘路に妨げられているのがその實相である。しからば、増産の餘地が全くないかというと、われらは決して失望しないのである。われらの觀測によれば、各鑛山の生産能力は必ずしも最高度に發揮せられておらず、生産意欲の高揚、輸送の合理化等々、なお打つべき幾多の餘地があるように思われる。從つて、直接生産に從事する者はもちろん、關係各方面の總力を結集し、しかも、時節柄、他の方面へ刺激を極力緩和する等の見地から、この際一定期間を限つて全國的硫化鑛特別増産期間を實施すれば、當面の増産目的の達成はもちろん、之を契機として、從來よりも一層緊張しかつ合理化された増産態勢を整備確立することも可能となり、なお、この種の徹底的増産對策を強行することによつて、現に生産を阻害しつつあるあらゆる隘路を的確に把握し、今後に備へることもできると思う次第である。
 次に、實施要領竝びに實施に關する必須條件を列擧する。
一、硫化鑛の重要性竝びにその増産緊急性の徹底。
 硫酸以外に用途がないため、食糧生産の重大要素たる硫化鑛の重要性が、輸送その他の關係方面はもちろん、直接生産從事者たちにおいても、十分徹底していない憾がある故、ラヂオ、新聞等の講演、報道、ポスター貼布等により、これが普及徹底をはかること。
二、資金、資材の充足。
 運轉資金はもちろん設備資金等のため、みだりに束縛されぬよう、價格の改訂、資金の融通等について、適切な處置をとること、たとえば、硫化鑛の賣却代未拂が二千七百萬圓、すなわち一ヶ月の運轉資金八百萬圓の三ヶ月分に上り、金融上重大なる負擔となつているなどは、この機會において當然解決せらるべきである。
 また、住宅關係その他一般營業用竝びに企業用資材についても、速やかに整備すべきこともちろんである。
三、勞力特に熟練坑内夫の充足。
 本件は比較的餘裕ある銅山方面よりの融通によつて解決すべきである。
四、勞務者用物資の特配。
 硫化鑛がかく重要であるならば、單なる掛声だけでなく、實質的に物心兩方面から從業員を優遇すべきであり、同一坑内作業である關係からいつても、炭鑛夫と同率は待遇せらるべきではないか、地上作業の肥料關係者に準ずる程度に止めるとは政府當局の認識を疑わざるえないと彼等が常に異口同音に唱えるところである。
 これらの實状に鑑み、少くとも期間中は加配米を増量するとともに、中央より直配とすること、ひの他一般報奨物資の特配あるいは慰問隊の派遣、ラヂオによる「硫化鑛の夕」の定期的開催等、すべての炭鑛夫と同率に扱うこと、なお酸性坑内水に惱まされる點から、衣料は半毛製とすること等の點につき特に留意すること。
 本項實施に關しては、銅鑛の副産物たる鑛山側において、技術的に多少問題があるかもしらぬが、この點はたとへば、硫化鑛の生産額を標準として配給する等適宜處置することができる。
五、輸送力の強化
 輸送難のため、山元貯鑛が激増し、生産意欲の減退はもちろん、操業上の支障あるいは自然發火等の事故を生ずるがごときことなきを期すベきである。
六、主催者、趣旨の徹底、關係方面の總力を合理的に結集する便宜等の見地から、主催者は復興會議その他民間團體ではなく、鑛山局みずからこれにあたるべきである。
七、實施期間あらかじめ萬全の準備を整える必要があることはもちろんだが、松尾、柵原兩鑛山においては、すでにそれぞれ自主的増産期間實施のため準備が大いに進んでおること、多期に入ると降雪等の制約を受けて效果が減殺せられる心配があること、松尾はすでに八月より實施しているが、柵原は九月一日より實施期に入ること、速やかに效果をあげるために緊急實施の要あること等を考慮して、九月より三箇月間を實施期間とすることが適当である。
 以上が硫化鑛特別増産期間實施の必要性と、その具體的な實施條件であります。これにつきまして、政府の明確なる所信と責任ある答辯を求めます。
#19
○水谷國務大臣 ただいま委員長より御發言がありました通り、硫化鑛特別増産期間實施につきましては、化學肥料の増産に對しまして、硫化鑛の増産が何よりも必要缺くべからざるものでありまして、これが緊急増産對策といたしまして、この際全國的に時期を限りまして硫化鑛特別増産期間を設定實施いたしますことは、まことに當を得た方策であると考えておるわけでございます。すなわち増産期間の設定實施は、硫化鑛の重要性を普及徹底せしめまして、はたまた直接生産に從事する方々の生産意欲を高揚させる上からも、必要なことであると信じておる次第でごでいます。しかしながら、ただ掛聲だけで増産はできぬのでございまして、食糧を初め生活諸物質の配給の裏づけであり、また輸送が圓滑に行われることによりまして、初めて可能なのでございます。輸送につきましては、關係方面ともよく連絡の上、解決をはかるようにいたしたいのでありますが、食糧につきましては、主要鑛山に對しまして、主食の中央直配を閣議にかけて決定するようにいたしたいと考えておる次第でございます。これが決定と相まちまして、硫化鑛の増産期間を實施いたしたいと考えておる次第でございます。また主催者といたしましては、政府みずからこれにあたることは天降り的でありまして、當を得たことと考えておりません。勞資協調によりまして、業者みずからのうちに盛り上つた自主的の増産運動を實施するように指導いたしまして、これをば商工省が中心となりまして、政府の關係諸機關が後援いたしまして、協力一致して増産の實をあげるようにいたしたいと考えておる次第でございます。以上簡單に御答辯申し上げる次第でございます。
#20
○伊藤委員長 本件に關しまして、何か御質疑はございませんか。
#21
○今澄委員 當硫化鑛特別増産期間設定の問題については、委員長より述べられた説明要旨のごとく、肥料増産の最大隘路が硫化鑛であるという關係上、業者ひとしくこれを待望いておるところのものであります。特に自主的な勞資協調による増産は、すでに松尾、柵原においてもそのスタートを切り、業者においては、勞資双方ともに熱意ある増産に入つておるような次第であります。過般來當鑛工業委員會において、商工省鑛山局長は、常にこの増産期間を實施しても、物資の裏づけがなければだめだということを申されておるのであります。もちろん物資の裏づけがなければこの運動の推進に圓滑を缺くことは申すまでもないのでありますが、物質の裏づけが容易でないからというので、みすみす減産を拱手傍觀するということは、まことに時節柄最も残念な次第であると思うものであります。そこでこの硫化鑛は、日本に許された化學工業であるところの酸とアルカリの中で、しかもその酸の中で硫酸のみが敗戰後の今、既存的な酸性である關係上、われわれは肥料の問題とともに、この日本化學工業の既存的な酸の原料である硫化鑛に對する商工省當局の根本的なる認識をお願いしたいと思うものであります。なお本硫化鑛増産に關して、物資の裏づけが十分でないとしても、この硫化鑛の増産に對する問題は、政治的な一つの大きな本増産期間の設定によつて、これにより十分でない物質の裏づけをもつてなお硫化鑛の増産ができるような體制を期待したいということが、本増産期間設定の趣旨であります。
 なお次に松尾、柵原がそれぞれ自主的増産期間を實施して、現在この準備に忙殺されておるのでありますが、今のところ、政府のこれに對する協力は水あめの配給竝びにアルコールを配給しておるような實情でありまして、松尾、柵原といえども、水あめに満足して増産の實が決してあがるものとは考えておらないのであります。かの四月十一日の閣議決定において、硫化鑛を肥料と同等の扱いとすることをこの前の内閣において決定しておる。關係方向においても硫化鑛は肥料と同等の待遇になるべきことを決定されておるのでありまして、そうした閣議決定があるにもかかわらず、今日なお肥料がいわゆる陸上勞働であつて、加配米は政府の直轄加配米を受けておるにもかかわらず、硫化鑛についてはさらに閣議にもう一度かけ、この加配米の直轄配給においてなお相當の紆余曲折を豫想しなければならぬということは、硫化鑛に對する政府の關心が從來非常に薄かつたことを物語るものでありまして、硫化鑛山に對する加配米の政府直轄配給ということは、當然その閣議決定に基いてもすでになされておらなければならない問題であると申し上げたいのであります。
 最後に本硫化鑛の増産に對しては、商工省の鑛山局長が呼號してこれを推進せしむるのみでなく、眞に日本の食糧を日本國民がみずからの力で増産すべき意欲に燃えておるということを内外に發表するためには、肥料の増産に實に總力をあげて、日本の政府が推進しておるということを見せなければならない。そのまた根本的原因であるところのこの硫化鑛の増産に對いては、物的の指導面は必要であろうけれども、精神的に政府は全力をあげてこの硫化鑛増産に奔走し、懸命の努力を拂つておるということを、硫化鑛山に働く勞働者、從業員竝びに資本家、全員に徹底させるためにも、商工大臣みずからこれを大きく呼びかけてもらいたいということがわれわれの希望であります。なお本流化鑛特別増産期間の主催については、私は業者のそういつた自主的總意を認める業者團體が主催することも結構であると思うのでありますが、政府當局がこれをみずから商工省の主催として行つて、いかなる不利益竝びにぐあいが惡いというところがあるか。これを聽かせていただきまして、私の質問にしたいと思うものであります。
#22
○水谷國務大臣 ただいまの今澄委員の御發言は、一々ごもつともでございまして、われわれといたしましても、硫化鑛がいかに必要であるかということは、十分に知り盡しているような次第でございます。先日も日本鋼管へ参りまして、鐡の非常に重大なるを説かれまして、しかも石炭と比ベて非常に政府の力の入れ方の足らないことをば、るる責められたのでございますが、御案内の通り政府といたしましては、日本經濟再建の一番根本の基礎産業の中のまた基礎産業であります石炭に對しまして、努力を集中しているような次第でありまして、そのためそれと劣らない程度の多くの産業に對しまして、いろいろと御迷惑をかけておりますことは、衷心まことに濟まないと思う次第でございます。しかしながら、今の日本の經濟事情のもとにおきましては、必要な産業のすベてをいろいろと同じように扱いますことは、結局二兎を追う者一兎を得ずという結果になるのでございます。今しばらくの問石炭産業に對してと同様の施設をば、あるいは鐡鑛、硫化鑛なんかになすことができないことはきわめて遺憾でございますが、それは現在の日本の經濟情勢の上から申しまして、やむを得ない點と御了察願いまして、いましばらく政府の施策に對しまして、心から御協力を願いたいと思います。しかしながら、それかと申しまして、いわゆるその時間のずれの間を、たとえば硫化鑛に對しまして何ら政府が手を打たなくてもよいということには、絶對ならないのでありまして、その時間のずれの間におきましても、政府といたしましては、できるだけの最大限の努力をしなければならないことは、ただいまの今澄委員の御發言の通りでございます。從つて商工省といたしましては、最近省議におきまして、この硫化鑛に對する特別の機關を設けまして、現在の經濟事情のもとにおいて許される範圍の最大限の努力をしたいと思つているような次第でございます。さいわい食糧事情もやや緩和いたしまして、これまでそういうような主食においても御迷惑をかれた點も、大體において何とかなる目鼻がつきました。その他の物質上の裏づけにおきましても、先ほどから繰返し申しまするように、現在の情勢のもとにおいて許される範圍の努力をしたい、このように考えている次第でございます。商工大臣みずからといたしましても、できるだけ今後はこの硫化鑛に對しまして力を注ぎまして、いやしくも片手落ちのないように、少くとも硫化鑛に從事しておられる經營者竝びに勞務者に對しまして、勤勞意欲、事業意欲を沮喪することのよいような萬般の手段を講じたいと思う次第でございます。以上のような事情でございますので、惡しからず御了承願いたい。かように考えます。
#23
○伊藤委員長 ほかに他に御質疑はありませんか。
#24
○西田委員 さいわいに商工大臣がお見えになつておりますので、石炭の生産について一言お伺いしておきたいと思います。
 七月以來石炭復興會議の自主的な活動によつて、七、八、九月の割當出炭を確保するとともに、四、五、六月の出炭減を囘復するという意氣込みで、一生懸命増産に邁進している次第でありますが、七月上旬以來北海道は九六・七%程度の出炭を確保しておりましたのに、八月中旬に至りましては、八五・九%という非常に低下した出炭しかあげていないのであります。そのために全國の出炭は、九州のごとき一一〇%を上まわつておるにもかかわらず、北海道の出炭が少いために、全國ではかろうじて一〇一%となるという程度に詰まつたのでありますが、今さつき今澄委員の質問に對して商工大臣は、石炭増産を最優先として他産業は犠牲にしても、當分の間硫化鑛の生産を持つてくれというような御意見の開陳がありましたが、この北海道の八五・九%というきわめて貧弱な出炭に對して、その隘路はどこにあつたのか、あるいはこれから先これに對して政府當局はどういう手を打つて、全國の出炭減の囘復をはかろうとされるのか。この二點について商工大臣の御答辯を願いたいのであります。
#25
○水谷國務大臣 北海道の出炭量は、ただいま西田委員の御指摘の通り、ほかの地方に比ベまして非常に見劣りがしておるのでありまして、この點われわれといたしましても、まことに焦慮にたえない次第でございます。なかんずくただいま御指摘のように、八月の上旬には九七%まで出ていきました北海道の出炭率が、このたびの中旬におきましては八五・九%まで落ちまして、九州なんかにおきまして一一〇%を上まわつておるにかかわらず、こういうような結果になつてしまつたことは、非常に殘念に思つております。この原因はどこにあつたのかということは、これは見る人によつて違うのでございますが、大體盆休みの問題に關しましても、ほかの地方と同じような了解が得られないので、日曜以外にこの休みをとられるというようなことになり、從つてそれが出炭量に大きく響いたというようなことにもなつておる次第でございます。われわれといたしましては、北海道が目下暖房炭の要求と絡み合いまして生産をもつと上げなくてはならないというぐあいに、格段の努力をいたしまして、最近におきましても、田中知事が石炭の復興會議に對する片山總理のメツセージを携さえて歸つていただいたのでありますが、さらにまた九月には機會を見て、片山總理みずからが北海道に行つていただきまして、何とか北海道の諸君の勤勞意欲をほかの地方における炭鑛勞務者と同じ程度まで引上げまして、九州その他の各地に御迷惑をかけないように、格段の努力をしてみたいと考えておる次第であります。
#26
○伊藤委員長 他に御質疑はありませんか。
#27
○今澄委員 今の商工大臣の御答辯の中で、鑛山局主催のほかの理由については御説明がなかつたのでありますが、本件は留保いたしておきまして、後刻質問申し上げることにしたいと思います。
#28
○伊藤委員長 本案に對する御質疑ございませんか。――別にございませんようですから、本件の取扱いにつきましては御相談いたしたいと思います。
 本件は化學工業小委員會の報告に基き、これを議題として取上げ、すでに再三政府當局の所見を質し、本日は最後的に商工大臣より答辯を聽取したので、本件に關しましては、この程度で打切ることといたしまして、これに對する委員會の態度を明確にし、これを強く政府に要望することとし、本件は緊急を要しますので、化學肥料工業全般の調査が終了しておりませんが、特に本件に關しては、中間報告の意味において、議長に報告書を提出してはいかがかと思うのでありますが、以上のような取計らいに御異議はございませんか。――御異議ないようでありますので、御異議なしと認めます。それではそのように取計らうことに決しました。なお報告書について委員會を開くのは、いささか煩瑣でありますので、先刻委員長より申し述ベました本件の具體的内容と實施條件等を盛つたものを、委員長及び理事各位におあて取りまとめて、報告することといたしてはいかがかと思いますが、これにつきましては御異議はございませんか。
#29
○伊藤委員長 御異議ないようでありますから、御異議なきものといたしまして、そのように取計らいをいたすことにいたします。
 それでは次會開會の時日は公報でお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散會をいたします。
 午後零時一分散會
ソース: 国立国会図書館
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