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1965/10/13 第50回国会 参議院 参議院会議録情報 第050回国会 本会議 第4号
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1965/10/13 第50回国会 参議院

参議院会議録情報 第050回国会 本会議 第4号

#1
第050回国会 本会議 第4号
昭和四十年十月十三日(水曜日)
   午後二時八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和四十年十月十三日
   午後二時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、故議員田浦直蔵君に対し弔詞贈呈の件
 一、故議員田浦直蔵君に対する追悼の辞
 一、公正取引委員会委員長の任命に関する件
 一、国家公安委員会委員の任命に関する件
 一、運輸審議会委員の任命に関する件
 一、労働保険審査会委員の任命に関する件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
 私の心からなる敬意をお受け下さいませ。
     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 議員田浦直蔵君は、去る八月十七日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 同君に対しましては、すでに弔詞を贈呈いたしました。
 ここに、その弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院は議員従五位勲四等田浦直蔵君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
     ―――――・―――――
#5
○議長(重宗雄三君) 天坊裕彦君から発言を求められております。この際、発言を許します。天坊裕彦君。
   〔天坊裕彦君登壇、拍手〕
#6
○天坊裕彦君 本院議員田浦直蔵君は、去る八月十七日、病気のため急逝せられました。同僚議員として、まことに痛惜にたえません。ここに、つつしんで各位の御了承を得て、議員一同にかわり、哀悼のことばをささげたいと思います。
 故田浦直蔵君は、明治三十一年、長崎県北松浦郡小値賀町に生まれ、大正五年、長崎県立水産講習所を卒業し、長崎県に奉職、大正十三年、長崎県漁業組合連合会設立にあたり、同連合会の業務に従事し、ついで昭和七年、長崎水産商事株式会社を設立し、その後、上海支店を開設、また遠洋底びき網漁業を自営するかたわら、長崎魚市場の経営にも参画せられる等、水産業界において活躍せられました。
 昭和二十二年、戦後第一回の統一地方選挙において長崎県議会議員に当選せられるや、その後はよく県民の負託にこたえ、四期にわたり県政振興に尽瘁せられました。この間、昭和三十六年から昭和三十八年にわたり県議会議長の要職にあって、真に党派を超越し、その重責を全うせられ、議長として名声さくさくたるものがありました。すなわち、議長在職中、南米移住状況についてつぶさに南米諸国を視察され、当時全国有数の移民県として、県移住政策の充実発展のため多大の貢献をなされました。
 また、同君は、水産業界の第一人者として、その豊かな経験を生かされて水産振興対策に最大の努力を傾けられ、長崎県をわが国第二位の水揚げ高を誇るにいたるまで発展させられたほか、政策にも力を注ぎ、離島振興法の制定と相まって、常に離島行政の発展向上に寄与されました。
 かくのごとく、同君は、その旺盛な実行力とすぐれた手腕とをもって、県政各般にわたり多大な業績を残されたのであります。
 本年七月の参議院通常選挙において、長崎県地方区から推されて当選の栄を得られ、今後の御活躍が大きく期待せられておるとともに、同君もまた、中央政界での飛躍にひそかに期するところがあったと思うのでありますが、選挙後、病を得て、こつ然として幽冥境を異にするに至り、私どももそのけいがいに接するに十分のいとまもなかったことは、惜しみてもあまりある痛恨事であります。
 今日、国家ようやく多難のとき、本院は、同君のごとき豊富な経験と識見とを兼ねた人材の活躍に待つところきわめて大であることを思い、ここに同君の御逝去を深くいたみ、つつしんで哀悼の誠をささげ、衷心より御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆さま方の御多幸をお祈り申し上げて、追悼のことばといたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#7
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 公正取引委員会委員長の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第三十条第四項の規定により、北島武雄君を公正取引委員会委員長に任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#9
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本件は、承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#10
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 国家公安委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、警察法第七条第三項の規定により、藤井丙午君を国家公安委員会委員に任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#12
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本件は、承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#13
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 運輸審議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、運輸省設置法第九条第三項の規定により、佐野廣君、長井實行君を運輸審議会委員に任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#15
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本件は、承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#16
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 労働保険審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、労働保険審査官及び労働保険審査会法第二十七条第三項の規定により、谷野せつ君を労働保険審査会委員に任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#18
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本件は、承認することに決しました。
 これにて休憩いたします。
   午後二時十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時三分開議
#19
○議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件。
 内閣総理大臣から所信に関し、外務大臣から外交に関し、藤山国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。佐藤内閣総理大臣。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(佐藤榮作君) 第五十回国会に臨み、日韓国交正常化のための諸条約の締結及び関係案件等の審議を求めるにあたり、当面する外交と経済の諸問題について、政府の所信を明らかにしたいと存じます。
 わが国は、戦後、真の平和の実現を国是として今日の繁栄を築いてまいりました。さきの大戦において戦争の惨禍を身をもって経験したわが国民は、世界のいずれの国民にもまして強く自由と平和を希求しております。平和の維持こそ人類の理想であり、わが国が国家の名誉にかけて努力すべき課題であります。今日の世界において、アジアが最も不安定かつ流動的な情勢にあることは、まことに憂慮にたえません。私は、政権担当以来、国民諸君の強い願望を背景として、わが国の安全を確保し、アジアの平和を守るため、あらゆる努力を傾注してまいりました。このような努力こそ、長い将来にわたって日本民族の繁栄を築くいしずえとなるものと確信いたします。(拍手)
 先般、調印された日韓国交正常化のための諸条約は、戦後十四年の長きにわたり、両国政府が努力を重ねて到達した成果であり、日韓両国間に新しい正常な関係をもたらし、平和と友好を実現するためのものであります。両国は、千数百年来、歴史的、文化的に最も密接な関係にある隣国であり、ひとしく民主主義をその国是とし、自由世界に属しております。この両国が国交を正常化することは、本然の姿に返ることであり、まことに当然のことと言わねばなりません。(拍手)私は、日韓間の不自然な状態が戦後二十年間に及び、さらに今後も続くことを放置できないのであります。最も近い隣国たる韓国との間でさえ、平和を達成できなくて、世界の平和を語る資格はありません。
 これら諸条約によって、両国間に国交が回復し、外交使節が交換され、請求権問題も最終的に解決されることはもちろん、今次漁業協定によって、関係漁民諸君が長らく苦しんできた漁業問題も解決されるのであります。この結果、わが国の漁船がだ捕されたり、船員が抑留されることもなく、漁民は安心して操業できることになりました。また、紛争の解決に関する交換公文によって、竹島問題について平和的解決の道が開かれました。竹島がわが国古来の領土であることは言うまでもありません。政府は、今後とも強くその領土権を主張してまいります。
 これら諸条約は、過去の日韓関係を清算し、両国国民が互恵平等の精神に基づいて恒久的な善隣友好関係を樹立し、相提携して繁栄する新時代を築くためのものであります。私は、このことを国民諸君に強く訴えるとともに、韓国国民に対しても、今や日本国民は、真に平和を愛する国民であり、過去の不幸な日韓関係を清算し、善意と理解に基づく新たな親善関係を樹立する熱意を有していることを、率直にお伝えしたいと思います。政府は、条約の調印を第一歩として、日韓両国が今後よき隣人となり得るよう、さらに一段の努力をいたす所存であります。(拍手)
 日韓諸条約について、南北の統一が実現していない現在、韓国と一方的に条約を結ぶことは適当でないとの議論が一部にありますが、国連総会は一九四八年に、韓国が合法的な政府であることを宣言し、その後引き続きこれを確認しております。また、すでに韓国を承認している国が七十カ国以上に及んでいる現状において、わが国が韓国と相携えて繁栄の道を求めることは当然であります。さらに、本条約が軍事同盟に発展するおそれがあるとの一部の議論のごときは、何らの根拠なくして故意に国民の不安をかり立てる、常識では理解できない説であり、わが国の憲法の精神から考えて、断じてあり得ないことであります。(拍手)
 韓国政府は、すでにこれら諸条約の批准について韓国国会の同意を得ております。本国会においても、これら諸条約の締結について慎重に審議せられた上、すみやかに承認されることこそ、国際信義に沿うゆえんであると信ずる次第であります。
 ベトナム紛争の解決は、今日、アジアのみならず、世界の当面する最も緊要な国際問題であります。私は、一日も早くこの地域に自由と平和を回復する必要を切実に感ずるのであります。すでに米国側は、無条件討議の開始を提案し、北ベトナム側の提案をも討議するとの柔軟な態度を明らかにしております。この際、私は、紛争当事者すべてがジュネーブ協定の原則に立って問題の解決に当たるよう要請いたします。
 私は、カシミール問題をめぐり、インドとパキスタンとの間に発生した武力衝突の成り行きに重大な関心を払い、両国首脳に対し平和的解決を強く要請しました。幸いにして、去る九月二十三日、ウ・タン国連事務総長の努力により当事国が停戦を受諾したことは、国連の権威のためにも、まことに喜ばしいことと存じます。私は、恒久的かつ公正な平和が一日も早くもたらされるよう、国連及び両国において、さらに精力的な努力が続けられることを切に期待いたします。
 私は、先般沖繩を訪問し、現地の実情をつぶさに視察いたしました。戦後二十年、廃墟の中から立ち上がって、復興と発展のため、ひたむきな努力を続けている沖繩の同胞の姿に接し、心から敬意を払うとともに、その本土復帰への願望のいかに強いかを、あらためて痛感したのであります。沖繩の本土復帰は、沖繩を含むわが国の安全保障の問題を念頭に置きつつ、日米両国の相互の信頼の上に立って解決することが必要であります。私は、今回の訪問の経験を生かし、今後も、あらゆる機会をとらえて本土復帰の促進につとめる決意であります。当面の問題として、教育、社会福祉、経済等の各分野に見られる本土との格差を解消し、本土の住民と同様な福祉を享受できるよう、沖繩に対する援助を大幅に拡充してまいる所存であります。
 最近の経済情勢をみますと、依然、国内需要は伸び悩み、産業活動も横ばい気味に推移しているなど、景気はなお停滞の様相を続けておりますが、他方、輸出は引き続き好調を持続し、一部商品市況の立ち直り、株式市場の反発など、明るいきざしもあらわれてきました。政府は、不況の早期克服のため、先般来、積極的に景気対策を講じておりますが、同時に、産業界においても、生産調整の強化、経営合理化等の真剣な努力が続けられております。これらの効果が逐次浸透するに伴って、景気は次第に回復に向かうものと期待されますが、私は、さらに情勢の推移に応じ、必要な措置は機を失せず実施いたします。また、景気を回復する過程においても、消費者物価の安定、社会資本の充実、農業、中小企業等の近代化、企業経営基盤の強化等をはかり、経済を安定成長の路線にのせるよう措置してまいります。
 経済政策の基本は、国民一人一人の生活をより豊かなものにするため、たえざる前進をはかることにあります。国民生活の向上と企業の繁栄なくして、社会、経済の発展は望み得ません。私は、豊かで健全な国民生活を築くため、あらゆる施策を推進してまいります。
 政府は、このような考え方のもとに家計にゆとりを与え、企業の体質を強化するため、長期的な視野に立った減税の構想を検討中でありますが、さしあたり、昭和四十一年度においては、所得課税及び企業課税に重点をおいた大幅な減税を積極的に実施する所存であります。(拍手)
 私は、国民の最も切実な願いが物価の安定にあることをよく承知しております。政府は、国民の生活を守るため、かたい決意をもって根気強くこの問題と取り組んでまいります。このため、基本的には、経済の成長を安定基調にのせる必要がありますが、同時に、台所に直接つながる日常生活物資については、生産体制の近代化、流通の改善等の対策を総合的かつ着実に実施してまいります。公共料金等については、経営の合理化を強力に進め、その上昇要因をできるだけ吸収するよう措置するとともに、値上げが真にやむを得ないものについては、極力その幅を少なくするよう努力いたします。当面、問題とされている消費者米価、国鉄運賃についても、この方針のもとに慎重に検討いたしております。
 今後の財政運営にあたっては、社会資本の充実、社会保障の拡充等、増大する財政需要の要請に応じる一方、租税負担の軽減も必要と考えます。さらにまた、財政と金融が一体となり、その弾力的な運営を通じて、有効適切な景気調整の機能を発揮いたさねばなりません。これらの要請にこたえ、経済の新しい局面に即応した財政機能を十分に発揮させるため、政府は、この際、健全な公債政策を取り入れ、その適切な運用により、均衡のとれた経済の成長を実現してまいる所存であります。もとより、財政運営の基本は、通貨価値の安定と財政の健全性の確保にあり、公債政策もこの原則に従うべきであります。このためには、財政規模が国民経済と適正な均衡のとれた水準に維持されることが肝要であり、政府は、公債の発行によって財政の放漫化を招くことのないよう、絶えず財政支出の内容を検討し、不要不急の経費の徹底的節減をはかり、経費の効率的・重点的配分につとめる決意であります。
 先般の台風は、全国にわたり、農作物をはじめとして、各方面に甚大な被害をもたらしました。政府は、すみやかに非常災害対策本部を設けるとともに、中央から調査団を派遣し、現地における被災者の援護等、応急適宜の対策を強力に推進してまいりましたが、今後の復旧措置についても万全の配慮を払ってまいりたいと考えます。私は、不幸にして被災された方々に対し、心から同情の意を表しますとともに、力強く復旧に立ち上がられるようお祈りいたします。
 また、台風第二十九号により、マリアナ水域において漁船が遭難し、多数の行くえ不明者を出しましたことは、まことに憂慮にたえません。政府は、マリアナ水域遭難漁船対策連絡協議会を設置するとともに、現地の米軍に救援を依頼し、自衛艦及び自衛隊機を出動させ、遭難者の救助と捜索に全力を尽くしております。ここにその御家族の御心痛に対して深く御同情申し上げます。
 公務員の給与の改定につきましては、さきに行なわれた人事院の勧告の趣旨を尊重する方針のもとに、最善の努力をいたしたいと存じます。
 本年度の予算については、これら災害対策、公務員給与の改定等、歳出の追加が予想される反面、歳入面においては、租税収入の不足が見込まれます。政府は、所要の補正予算及び法律案を今国会に提出すべく、目下準備を進めております。
 国会は言論の府であり、主義主張の展開は、民主主義の歴史と理性が築き上げた規約、慣例に従い、真剣にして公正な討議に終始しなければなりません。このような討議を重ね、多数決原理に基づいて決定されたことについては、賛否を越えた協力が望まれます。(拍手)議会政治の真髄もここに存すると信ずるものであります。また、国民は、政党に期待をかけ、その政治的要望を、政党を通じて、国権の最高機関たる国会の場で実現すべく願望しております。政党の使命は、まことに重大であり、国民の要請にこたえてその近代化をはかることは、目下の急務であると申さねばなりません。もとより、政治は、その形態のいかんを問わず、不断に明日への前進を繰り返します。今日の政治が未来において豊かに結実する創造力に満ちたものであるよう、私は、全力を傾けて清潔にして責任ある政治を推進してまいります。
 日韓諸条約の締結について承認を求めるにあたり、私は、特に青少年諸君に訴えたいと存じます。国際社会におけるわが国の立場と責任に対する強い国民的自覚を持ち、祖国を愛し、旺盛な活力と豊かな情操を身につけた青少年諸君こそ、わが国の光輝ある伝統と文化を次代に伝え、民族の命運をになう使命を有するものであります。諸君が、激動する時代を越えて、さらにそのかなたへと新たなる歴史を切り開く決意に燃えるとき、私は、国の未来に限りない希望と確信を抱くものであります。
 以上、所信の一端を述べ、国民諸君の理解と協力を切望する次第であります。(拍手)
#21
○議長(重宗雄三君) 椎名外務大臣。
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(椎名悦三郎君) 最近の国際情勢特にアジアを中心とした情勢と、これに対処すべきわが国の外交のあり方について、所信を申し述べ、あわせて日韓諸条約の大綱について御説明いたしたいと存じます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 私は、このたび、国際連合の第二十回総会に出席してわが国の基本的外交政策を表明してまいりました。その機会に、私は、あらゆる機会をとらえて各国代表と親しく懇談いたしました。私は、各国特に先進諸国が世界の平和を確保するためにそれぞれ相応の犠牲を払いつつ努力していることに、深い感銘を受けたのであります。
 今日わが国力の増大と国際的地位の向上は、国連の内外を問わず、世界に喧伝されております。それだけに、わが国に対する世界各国の期待は、きわめて大きいのでありまして、いまや国際社会の有力なる一員となったわが国は、進んで期待にこたえなければならないのであります。もちろん、わが国は、憲法のたてまえから国際社会において貢献すべき手段に制約がある次第でありますが、それだけに、人一倍、あるいは経済的に、あるいは文化的に、国際社会の発展に貢献すべき責務を有しているのであり、また、いまや十分に貢献し得るのであります。
 今日、世界は、幸いにして、米ソ二大陣営の間に相互理解の機運が醸成され、概して緊張緩和の方向をたどっております。しかし、大規模な世界戦争の脅威が薄らぐにつれ、かえって局地的な紛争が続発する傾向にあります。ことに、開発途上の国々が多数存在し、しかもこれら諸国をめぐって諸勢力が拮抗しているアジアにおきまして、この傾向が最も顕著であります。今日のベトナム情勢及びカシミールをめぐるインド・パキスタン間の紛争をはじめ、シンガポールの分離独立及びインドネシアの国内情勢等、いずれもきわめて流動的な様相を呈しております。ひとしくアジアに国をなすわれわれは、このようなアジアの情勢が一日も早く安定することを強く希望するものでありますが、同時に、われわれは、わが国がアジアにおける不安の解消とアジアの人々の福祉の向上につとめることが、とりもなおさずわが国の安全と繁栄に寄与し、ひいては世界の平和につながっていることを悟らねばなりません。われわれは、単に平和を唱え安全を希望するにとどまらず、広く国際社会の安全と繁栄をかちとるために、わが国力にふさわしい寄与をなすべき使命と責任を有しているのであります。
 このような見地から、私は、今回わが国が韓国と国交を正常化することとなりましたことに、きわめて大きな意義を認めるものであります。わが国が最も近い隣人たる韓国と国交正常化を行なうことは、アジアの平和と繁栄を求めるための第一歩にほかならないからであります。韓国は、わが国と地理的に最も近く、歴史的、文化的にもきわめて密接な関係にあるのみならず、わが国と同じく自由民主主義をその国是といたし、すでに世界の大多数の国々と外交関係を結んでおるのであります。わが国がこの韓国と国交を正常化することは、全く当然のことであります。日韓国交の正常化がこれまでできなかったことこそ、むしろ実に異常なことであると言わなければならぬのであります。
 去る六月二十二日に日韓両国間に調印されました基本関係に関する条約及び関係諸協定は、この異常な事態ないし関係を正常に戻すことを目的とするものであり、このため日韓間に存在している諸懸案を解決するとともに、将来に向かって日韓両国民の間の幅広い協力関係を定めたものであります。その使命は、自由と互恵平等の原則のもとに日韓両国民の間に恒久的な善隣友好関係を樹立することにあります。
 しかるに、世上、日韓諸条約が朝鮮統一を害するとか、あるいは、北東アジア軍事同盟の結成に連なるものであるとかの説をなすものがあります。私は、朝鮮が南北に分裂して相抗争している現実は、朝鮮民族の悲劇であるばかりでなく、アジアの平和への脅威でもあると存じます。しかし、朝鮮の統一ができない原因は、広く世界情勢全般の動きにもよることながら、直接的には統一方式につきまして北鮮側が国連監視下の自由選挙といういわば国連方式に同意しないということに由来しているのであります。したがって、日韓条約の締結が南北統一を害するとの議論は、全く客観的事実に合致しないものであると思うのであります。われわれは、朝鮮の統一を願うことにおいて人後に落ちないものでありますけれども、このような現実を直視せざるを得ないのであります。また、言うまでもなく、われわれは、日韓国交正常化後といえども、両国間の軍事的な協力を行なうようなことは、一切考えておりません。十四年にわたった日韓会談において軍事協力の問題が取り上げられたことは、かつて一度もありませんし、韓国側も軍事的な同盟を結ぶ考えがないことを繰り返し言明しておるのであります。(拍手)
 顧みまするに、この十数年の間、両国の交渉当事者は、両国間の困難な懸案と取り組んで、一歩一歩解決の歩みを進める地道な努力を重ね、盤根錯節を切り開いてついに今般の条約の調印にまでこぎつけたのであります。もとより相手方のある条約交渉である以上、互譲妥協は必要であり、一方の主張が百パーセントの貫徹を得ることは望み得ませんが、今般の条約は、日韓両国関係の現実において両国が持ち得る最善のものであると確信しております。これら条約等の締結について国会の御承認を求めておる次第でありますが、この際これに関して趣旨を御説明いたしたいと存じます。
 第一に、基本関係に関する条約は、善隣関係及び主権平等の原則に基づいて両国間に正常な国交関係を樹立することを目的とするものであり、両国間に外交関係及び領事関係が開設されることを定め、併合以前のすべての条約はもはや無効であること、及び韓国政府が国際連合第三総会の決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることを確認し、両国間の関係において国際連合憲章の原則を指針とすること等、両国間の国交を正常化するにあたっての基本的な事項について規定しております。
 第二に、漁業に関する協定は、漁業資源の最大の持続的生産性の維持、同資源の保存及びその合理的開発と発展をはかり、両国間の漁業紛争の原因を除去して両国の漁業の発展のため相互に協力することを目的とするものであり、公海自由の原則を確認し、それぞれの国の漁業水域を設定し、その外側における取り締まり及び裁判管轄権は漁船の属する国のみが行なうこと、共同規制水域を設定して暫定的共同規制措置をとること等、両国間の漁業関係について規定しております。
 第三に、財産及び請求権の解決並びに経済協力に関する協定は、両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決し、並びに、両国間の経済協力を増進することを目的とするものでありまして、両国及びその国民の財産、権利及び利益並びにその国民の間の請求権に関する問題を完全かつ最終的に解決することを定めることといたしますとともに、韓国に対する三億ドル相当の生産物及び役務の無償供与並びに二億ドルまでの海外経済協力基金による円借款の供与による経済協力について規定しております。
 第四に、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する協定は、戦前からわが国に居住し、わが国の社会と特別な関係を有するに至っている大韓民国国民に対して、日本国の社会秩序のもとで安定した生活を営むことができるようにすることによって、両国間及び両国民間の友好関係の増進に寄与することを目的とするものであり、これらの韓国人及びその一定の直系卑属に対し、申請に基づく永住許可を付与すること、並びに、それらの者に対する退去強制事由及び教育、生活保護、国民健康保険等の待遇について想定しておるのであります。
 第五に、文化財及び文化協力に関する協定は、文化面における両国の歴史的な関係にかんがみて、両国の学術及び文化の発展並びに研究に寄与することを目的とするものであり、文化協力の一環として一定の文化財を韓国政府に対して引き渡すこと等を規定しております。
 第六に、紛争の解決に関する交換公文は、両国間のすべての紛争を、別段の合意がある場合を除くほか、外交上の経路を通じて解決すること、及び、それができなかった場合には、調停によって解決をはかるものとすることを定めておるのであります。
 これら諸条約の上に立って両国間の友好関係が増進されますことは、単に日韓両国及び両国民の利益となるのみならず、さらに、アジアにおける平和と繁栄とに寄与するところ少なからざるものがあると信ずる次第であります。
 しかし、一たび目を南方に転じますと、いまなお、そこでは激しい政治的、社会的緊張が渦巻き、地域によっては戦闘という最悪の事態のもとにあり、まことに不安定かつ暗たんたる状況であります。本来アジアの建設のために向けられるべきとうとい資源の尽力が、かかる戦闘のために浪費されつつあることは、真に遺憾なことと申さねばなりません。
 なかんずく、ベトナムにおいては、いまだに戦火が終息するきざしも見えません。米国は、紛争の平和的解決のため無条件討議を提案し、英国あるいは非同盟諸国を初めとする諸国が交渉による解決の実現を目的として国際的努力を行ない、わが国もまた累次にわたって話し合いの開始を呼びかけているのでありますが、北ベトナム側は、これに応ずることなく、自己の条件をあくまで主張して完全勝利まで戦うと宣言しておるのであります。ベトナム国民の安全と福祉が達成される日の到来は、近い将来には容易に望めない状況であります。
 アジアの平和をこいねがうわが国は、かかる事態を深く憂うものであります。南ベトナムの独立を確保し、平和裏にベトナム民族が繁栄の道を見出し得ることとなるよう、わが国は、すべての紛争当事者が早急に話し合いに入り、ジュネーブ協定の原則に立って問題解決をはかることを、ここに重ねて要請いたします。
 カシミール問題をめぐりインドとパキスタンとの間に勃発した武力衝突は、流動的なアジアの情勢にさらに脅威と緊張を与えるものとして、わが国はじめ世界の主要諸国の深く憂慮するところでありました。幸いにして、国連事務総長及び安全保障理事会のゆるみなき、かつ真摯な努力の結果、両国首脳が九月二十三日をもって停戦を受諾するに至りましたことは、紛争の平和的解決を希求するわが国の最も歓迎するところであります。やがて印パ両国間に紛争が公正に解決せられて恒久的な平和がもたらされるよう、国連においてさらに努力が続けられることを希望する次第であります。アジアの平和と安定を確保する責務を有するわが国としては、この印パ紛争が国際社会の正義と衡平の原則に基づいた解決を見るよう協力する用意があることを、ここに表明すると同時に、また、他のすべての国がいやしくも事態の悪化をもたらすような行動を厳に慎しむべきであると考える次第であります。
 わが国は、国際連合に加盟して以来、一貫して国際連合への協力と支持を誓い、国際連合を強化することをわが外交の基本方針としてまいりました。わが国は、国際連合が世界の平和維持機構として健全な発展を遂げることを衷心より期待するものであります。したがって、国際連合の強化、特にその平和維持機能の強化のためできる限りの努力をすることは、わが国の負うべき国際的責務の一つであります。国際連合が直面していた財政的困難を解決するため、わが国も、他の加盟諸国とともに、応分の自発的拠出を行なう用意があり、このことは、私の総会における演説において表明してまいりました。
 低開発国の経済開発の問題は、今日の世界が直面している最大の問題の一つであります。わが国としても、単にわが国自身の利益の見地からのみならず、先進諸国の一員としてその対策を真剣に検討すべき時期に来ているのであります。こうした見地から、わが国としては、援助拡大の国際的要請を勘案しつつ、低開発諸国に対する援助は今後一そう強化拡充していく必要があると存じます。また、低開発諸国との間の貿易増進の見地からも、これら諸国の開発を支援し、わが国の輸入拡大に資するような、資金的、技術的協力をできる限り行なうことも必要となってきております。
 最近、アジアにおいても、低開発地域の経済開発のための国際協力が顕著な進展を見せております。アジアの平和と繁栄に深い関心と大きな責任を有するわが国としては、これらの動きを大いに歓迎するものであります。わが国も、アジア開発銀行に対する二億ドルの出資、あるいはナムグム・ダム建設計画に対する寄与等、積極的な協力を行なう方針であります。不幸にして戦火の絶えないこの地域にもこのような平和的建設を目ざす計画が関係諸国の協力のもとに進められつつあることは、まことに喜ばしいことであると存じます。
 東南アジア諸国の経済開発につきましては、まずこれら諸国が真に経済開発の重要性を認識し、その自発的意志に基づき、かつ、相互の連帯関係を強化しつつ、進めるべきものであると考えております。このため、わが国といたしましては、経済開発に責任を有するこれら諸国の閣僚と腹蔵なく意見を交換するための会議を開催する考えであります。このような考え方に対し関係各国とも基本的に賛意を表示しておりますので、今後とも関係各国の意見を十分に尊重しながら、なるべく早い適当な機会に会議を開催したいと考えております。
 以上、私は、わが国外交の当面の課題たるアジアの諸問題を中心として、わが国の基本的立場を申し述べましたが、アジア以外におきましても、米国との提携、西欧諸国との協調、さらにソ連、東欧諸国との関係の増進等、わが国の増大した国力を背景として自主的立場から強力な外交を推進し、もってわが国の安全と繁栄を追求していく覚悟でございます。しかし、そのためには、われわれは今日の日本に寄せられている各国からの期待を裏切ることなく、国際社会の安定と繁栄に貢献すべきわが国の責務を十分に果たす覚悟と用意がなければならないと思うのでございまして、これを繰り返し強調いたしたいと思います。何とぞ国民各位の御理解と御支援を心から期待するものであります。(拍手)
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#23
○副議長(河野謙三君) 藤山国務大臣。
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私は、当面する内外の経済情勢とこれに対処する所信を明らかにして、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
 最近のわが国経済を見ますと、輸出は引き続き好調を持続しており、また、株式や商品の一部には、このところ一高一低ながらも市況立ち直りの気配がうかがわれますが、他方、個人消費の伸びの鈍化、設備投資の沈滞などから、依然、国内需要は伸び悩み、産業活動も横ばいぎみに推移しております。したがって、一時のような深刻な不安感は薄らいできているものの、景気は、なお停滞の域を脱したとは言いがたい状況にあると思われます。
 政府は、先般来、不況の早期回復をはかるため、財政及び金融面の諸措置、中小企業対策の強化、輸出振興策の充実など、一連の景気対策を講じてまいりましたが、その施策は、逐次進捗しております。
 これを財政関係について見ても、本年度当初計画の財政投融資の繰り上げは、すでに目標を若干上回る実績をおさめており、また、やや出おくれていた公共事業費等の繰り上げ支出も、目下次第に活発化しつつあります。さらに二千百億円の財政投融資対象事業の拡充も、着々と実施に移されつつあり、年度中にその計画を達成することはもとより、年内においても半ばに及ぶ進捗を示す見込みであります。また、金融面につきましても、これら財政支出の促進に加えて、本年度産米代金の支払いをはじめとし、今後例年以上の政府資金の散布が見込まれますので、市中資金の需給関係は一段と緩和され、金利水準もさらに低下すると考えられます。
 このように、政府としては、諸般の景気対策がすみやかに浸透し、機を失することなく所期の効果をおさめるよう、万全の努力を払っております。
 しかし、不況を克服するためには、民間経済界におきましても、みずから積極的にこれと取り組む心がまえが必要であります。現在、経済界においては、生産調整の強化、冗費の節減、不採算部門の整理など、不況対応策が講ぜられておりますが、今後とも、経営の合理化に徹し、企業体質の強化につとめるとともに、企業間信用の改善についても、より一そうの努力が払われるよう期待するものであります。
 私は、以上のような政府の景気対策並びに民間の対応策が逐次進展するに伴いまして、景気は、次第に本格的な回復過程をたどっていくものと期待しており、また、その条件は、すでに整いつつあると考えるものであります。
 しかし、今回の不況は、従来になくその根ざすところが深く、過去の高度成長において生じた、いわゆる構造上の不均衡に起因する面が大きいと考えられます。したがいまして、景気を回復する過程におきましても、単に国内需要を喚起して需給の均衡をはかるだけでは、その根本的解決にはなり得ず、企業経営基盤の強化、低生産性部門の近代化など、経済のひずみの是正につとめ、その質的強化をはかっていくことが肝要であります。
 もとより、経済政策の基本は、景気の変動を最少限にとどめ、経済の均衡ある成長をはかるとともに、その成果が真に国民の福祉に結びつくよう社会開発を推進し、もって豊かな福祉社会をつくりあげていくことにあります。
 政府は、このような観点に立って、今後の経済運営をはかってまいりますが、特に、財政面においては、長期的視点からの減税構想や健全な公債政策の導入について、その準備を進めております。
 ひるがえって、最近における国際経済の動向を見ますと、米国の景気は引き続き上昇を続け、西欧諸国の経済もおおむね順調な発展を続けております。このような情勢を背景に、わが国の輸出は引き続き好調を持続しており、特に本年に入ってからは、昨年に比べ三〇%をこえる飛躍的な拡大を示していることは、まことに心強い限りであります。
 しかしながら、他面、英国におけるポンド防衛措置、米国における国際収支改善対策の強化、さらには低開発国における外貨不足など、幾多の問題があり、必ずしも明るい局面ばかりではありません。
 開放体制下、今後ますます激化が予想される国際経済の中で、その波動を乗り越えて進むためには、わが国としては、科学技術の振興、産業体制の整備など、経済の質的強化を通じて、輸出振興の基盤を確立することが必要であります。また、世界経済の発展なくしては真のわが国の繁栄があり得ないという認識のもとに、わが国の経済力に相応して、国際経済協力を推進してまいりたいと考えております。
 次に、消費者物価の安定について申し上げます。
 消費者物価が大幅な上昇を続けていることは、国民生活にとって重大な問題であるとともに、経済の健全な発展を阻害する要因ともなります。政府は、一そう強い決意をもって、物価の安定をはかってまいる覚悟であります。今日、不況下にあっても、消費者物価は依然根強い上昇を続けておりますが、この事実に見られるように、その上昇は、経済の高度成長に伴う急激な構造変化に基因するところが大きいと考えられます。したがって、消費者物価を長期にわたって安定させるためには、基本的には、経済の安定した成長が必須の条件であります。同時に、農業、中小企業等における生産性の向上、流通機構の合理化、労働力の流動化、並びに公正な価格形成のための条件の整備など、総合的な対策を着実に積み重ねていくことが重要であります。
 特に、家計に直接つながる生鮮食品につきましては、野菜の集団産地の育成による生産体制の近代化と供給の安定、冷凍形態の普及による鮮魚の流通改善など、各種の対策を積極的に推進してまいります。また、肉類などの食料品について、国内の供給が不足する場合は、機を失することなく、緊急輸入の手段も講じたいと思います。
 公共料金等につきましては、その値上がりが、特に国民生活に影響するところが大きいので、政府としては、一そう経営の合理化につとめるなど、値上がり要因をできる限り吸収するよう措置してまいります。また、値上げが真にやむを得ないものにつきましても、極力、これを低位にとどめるとともに、その時期についても十分配慮したいと考えます。消費者米価、国鉄運賃については、このような方針に従って慎重に検討し、いずれ今国会中にはその取り扱いを明らかにいたしたいと考えております。
 なお、高騰を続けている地価の問題につきましても、その重要性にかんがみ、地価対策閣僚協議会を中心に、適切な対策を確立すべく、鋭意検討を進めております。
 以上のように、政府は、物価を安定させるため真剣な努力を払ってまいりますが、真に消費者物価が落ちつくまでには、ある程度の期間を要すると思われます。したがって、物価上昇による家計への影響を考慮し、所得税の減税や社会保障の充実など、低所得者層に対し、十分に配慮していく所存でございます。
 ここで、国民各位に御理解願いたいことは、国民各層の協力がなければ、消費者物価を安定させることができないということであります。経営者といい、勤労者といい、また農業者といっても、立場を変えれば、すべてこれ消費者であります。私は、国民各位が、消費者の立場に立って、できるだけ物価の値上がりを防ぐよう、各面から配慮されることを期待するものであります。
 近年、国民生活は、経済の発展に伴い顕著に向上してまいりました。しかし、住宅、上下水道、交通施設等の立ちおくれが口立ち、ばい煙、汚水等の公害が発生するなど、国民福祉の向上を阻害するような問題が生じてきております。このため、今後は、経済の成長と国民福祉の向上とが調和するよう、経済の発展と社会開発を均衡的に進め、国民生活における各種の阻害要因を除去していくことが、緊急の課題となっております。
 政府は、このような要請にこたえ、国民のより豊かな生活を築き上げるため、経済の発展段階に応じた国民生活の望ましい姿を究明するとともに、目まぐるしい経済変動の中で、ともすれば忘れられがちな個人生活を守る立場から、消費者保護と日常生活の改善に資する施策を、積極的に推進してまいる所存であります。
 さらに、国民生活の向上と経済社会の均衡ある発展をはかるためには、地域開発を促進して地域格差を是正し、過密都市の弊害を除去することが緊要な課題であります。このため、政府は、長期的な視点に立って、地域の特殊性に応じた開発方式に立脚し、これを計画的かつ強力に推進していく考えであります。
 以上、わが国経済が直面する諸問題と、これに対する所信を述べてまいりましたが、私は、今後とも、経済の動向を的確に把握し、機に応じ、適切なる経済運営を進めてまいる所存でございます。
 幸いにして、わが国経済は、基本的には、若い体質に恵まれ、強い底力を蔵しております。この若さと底力に加うるに、政府の適切なる施策と国民の創意努力とをもってすれば、今日の事態を早期に克服し得るばかりでなく、近い将来に、必ずや、調和と安定のとれた豊かな成長の道が約束されるであろうことを、私はかたく信ずるものであります。(拍手)
#25
○副議長(河野謙三君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時六分散会
ソース: 国立国会図書館
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