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1965/11/19 第50回国会 参議院 参議院会議録情報 第050回国会 本会議 第8号
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1965/11/19 第50回国会 参議院

参議院会議録情報 第050回国会 本会議 第8号

#1
第050回国会 本会議 第8号
昭和四十年十一月十九日(金曜日)
   午前十時五十六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第八号
  昭和四十年十一月十九日
   午前十時開議
 第一 日本国と大韓民国との間の基本関係に関
  する条約等の締結について承認を求めるの
  件、日本国と大韓民国との間の漁業に関する
  協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関
  する水域の設定に関する法律案、財産及び請
  求権に関する問題の解決並びに経済協力に関
  する日本国と大韓民国との間の協定第二条の
  実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置
  に関する法律案及び日本国に居住する大韓民
  国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と
  大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管
  理特別法案(趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、この際法務大臣石井光次郎君問責決議案
  (稲葉誠一君外一名発議)(委員会審査省略要
  求事件)を議題とすることの動議(大矢正君外
  一名提出)
 一、日程第一 日本国と大韓民国との間の基本
  関係に関する条約等の締結について承認を求
  めるの件、日本国と大韓民国との間の漁業に
  関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁
  業に関する水域の設定に関する法律案、財産
  及び請求権に関する問題の解決並びに経済協
  力に関する日本国と大韓民国との間の協定第
  二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対す
  る措置に関する法律案及び日本国に居住する
  大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日
  本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出
  入国管理特別法案(趣旨説明)
 一、請暇の件
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) ……(発言する者多く、議 場騒然、聴取不能)
     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。(「議長、おかしいぞ」「やれ、やれ」「衛視何をするか」「衛視がんばれ」「休憩々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然、聴取不能)御静粛に願います。――御静粛に願います。(議場騒然、聴取不能)
 稲葉誠一君外一名から、委員会審査省略要求書を付して、
 法務大臣石井光次郎君問責決議案が提出されました。
 また、大矢正君外一名から、賛成者を得て、
 この際、法務大臣石井光次郎君問責決議案(委員会審査省略要求事件)を議題とすることの動議が提出されました。
 これより本動議の採決をいたします。
 表決は記名投票をもって行ないます。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
   〔「ノノミヤ一三君なんというのはいないぞ、もう一ぺんやり直せ」「訂正しろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
#5
○議長(重宗雄三君) 野々山一三君、御投票願います。(発言する者多し)――すみやかに御投票願います。――御投票願います。(「訂正をしろ」と呼ぶ者あり)――すみやかに御投票願います。(「訂正しなさい、投票するから」と呼ぶ者あり)――野々山一三君、御投票願います。――御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。(「誤りはすみやかに正せ」と呼ぶ者あり)――すみやかに御投票願います。――投票を願います。(「暫時休憩したらどうですか」と呼ぶ者あり)――すみやかに御投票を願います。――すみやかに御投票願います。
 ただいま行なわれております投票につきましては、自後五分間に制限いたします。時間がまいりますれば投票箱を閉鎖いたします。すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない諸君は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。
 制限時間に達しました。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#6
○議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#7
○議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          百三十八票
  白色票             十九票
  青色票            百十九票
 よって、本動議は否決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名      十九名
      鬼木 勝利君    原田  立君
      黒柳  明君    矢追 秀彦君
      中尾 辰義君    二宮 文造君
      北條 雋八君    多田 省吾君
      宮崎 正義君    小平 芳平君
      渋谷 邦彦君    辻  武寿君
      白木義一郎君    鈴木 市藏君
      達田 龍彦君    前川  旦君
      戸田 菊雄君    竹田 現照君
      柳岡 秋夫君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      百十九名
      森田 タマ君    植木 光教君
      和田 鶴一君    沢田 一精君
      二木 謙吾君    野知 浩之君
      前田佳都男君    伊藤 五郎君
      林田 正治君    吉江 勝保君
      白井  勇君    梶原 茂嘉君
      木暮武太夫君    寺尾  豊君
      大野木秀次郎君    草葉 隆圓君
      宮崎 正雄君    柳田桃太郎君
      山内 一郎君    山本茂一郎君
      園田 清充君    船田  譲君
      藤田 正明君    平泉  渉君
      八田 一朗君    土屋 義彦君
      木村 睦男君    高橋文五郎君
      内田 俊朗君    大森 久司君
      丸茂 重貞君    熊谷太三郎君
      山崎  斉君    川野 三暁君
      温水 三郎君    日高 広為君
      亀井  光君    石井  桂君
      豊田 雅孝君    稲浦 鹿藏君
      大竹平八郎君    柴田  栄君
      鹿島 俊雄君    鍋島 直紹君
      横山 フク君    大谷 贇雄君
      青柳 秀夫君    平島 敏夫君
      剱木 亨弘君    古池 信三君
      田中 茂穂君    近藤 鶴代君
      石原幹市郎君    重政 庸徳君
      笹森 順造君    平井 太郎君
      林屋亀次郎君    河野 謙三君
      中野 文門君    竹中 恒夫君
      堀本 宜実君    山本 利壽君
      玉置 和郎君    内藤誉三郎君
      任田 新治君    西村 尚治君
      中村喜四郎君    長谷川 仁君
      岡本  悟君    奥村 悦造君
      楠  正俊君    黒木 利克君
      栗原 祐幸君    久保 勘一君
      岸田 幸雄君    谷村 貞治君
      村上 春藏君    木島 義夫君
      山本  杉君    徳永 正利君
      大谷藤之助君    天坊 裕彦君
      西田 信一君    仲原 善一君
      松野 孝一君    森部 隆輔君
      津島 文治君    斎藤  昇君
      塩見 俊二君    植竹 春彦君
      新谷寅三郎君    松平 勇雄君
      八木 一郎君    山下 春江君
      青木 一男君    郡  祐一君
      安井  謙君    小沢久太郎君
      小林 武治君    小山邦太郎君
      高橋  衛君    吉武 恵市君
      廣瀬 久忠君    近藤英一郎君
      田村 賢作君    谷口 慶吉君
      北畠 教真君    金丸 冨夫君
      青田源太郎君    赤間 文三君
      井川 伊平君    江藤  智君
      森 八三一君    西郷吉之助君
      木内 四郎君    紅露 みつ君
      増原 恵吉君    中山 福藏君
      小柳 牧衞君
     ―――――・―――――
#8
○議長(重宗雄三君) 日程第一、日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約等の締結について承認を求めるの件、
 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律案、
 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律案
 及び
 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法案(趣旨説明)、
 四件について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。椎名外務大臣。
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(椎名悦三郎君) 去る六月二十二日に東京において署名いたしました「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約等の締結について承認を求めるの件」並びに「財産権及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律案」に関し、趣旨の御説明をいたします。
 わが国と近隣関係にある韓国との諸問題を解決して、両国及び両国民間に安定した友好関係を樹立することは、平和条約によってわが国が国際社会に復帰して以来のわが国の重要な外交上の課題でありまして、政府は、韓国との国交を正常化するにあたり、諸懸案を一括して解決するとの基本方針に従って、十四年の長きにわたり困難な交渉を重ねてまいりました。その結果、先般ようやく、基本関係、漁業、請求権及び経済協力、在日韓国人の法的地位及び待遇、文化財及び文化協力、並びに紛争解決のおのおのについての条約と、それに関連する諸文書について、韓国政府との間で完全な合意に達し、去る六月二十二日に東京において署名の運びとなった次第であります。
 いま、これらの諸条約について、そのおもな点を御説明申し上げれば、次のとおりであります。
 第一に、基本関係に関する条約は、善隣関係及び主権平等の原則に基づいて、両国間に正常な国交関係を樹立することを目的とするものであります。したがいまして、この条約は、両国間に外交関係及び領事関係が開設されることを定め、併合条約及びそれ以前のすべての条約はもはや無効であること、及び、韓国政府が国際連合第三総会の決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることを確認し、両国間の関係において国際連合憲章の原則を指針とすること等、両国間の国交を正常化するにあたっての基本的な事項について規定しております。
 第二に、漁業に関する協定は、漁業資源の最大の持続的生産性の維持及び保存並びに合理的発展をはかり、両国間の漁業紛争の原因を除去して相互に協力することを目的とするものであります。この協定は、公海自由の原則を確認するとともに、それぞれの国が漁業水域を設定する権利を有することを認め、その外側における取り締まり及び裁判管轄権は漁船の属する国のみが行なうこと、共同規制水域を設定して暫定的共同規制措置をとることを定める等、両国間の漁業関係について規定しております。
 第三に、財産及び請求権の解決並びに経済協力に関する協定は、両国間の財産、請求権問題を解決し、並びに両国間の経済協力を増進することを目的とするものであります。この協定は、両国及びその国民の財産、権利及び利益並びにその国民の間の請求権に関する問題を完全かつ最終的に解決することを定めるとともに、韓国に対する三億ドル相当の生産物及び役務の無償供与並びに二億ドルまでの海外経済協力基金による円借款の供与による経済協力について規定しております。
 第四に、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する協定は、わが国の社会と特別な関係を持つ大韓民国国民に対して、日本国の社会秩序のもとで安定した生活を営むことができるようにすることによって、両国間及び両国民間の友好関係の増進に寄与することを目的とするものであります。この協定は、これらの韓国人及びその一定の直系卑属に対し、申請に基づく永住許可を付与すること、並びにそれらの者に対する退去強制事由及び教育、生活保護、国民健康保険等の待遇について規定しております。
 第五に、文化財及び文化協力に関する協定は、文化面における両国の学術及び文化の発展並びに研究に寄与することを目的とするものでありまして、また、一定の文化財を韓国政府に引き渡すこと等を規定しております。
 第六に、紛争の解決に関する交換公文は、両国間のすべての紛争を、別段の合意がある場合を除くほか、外交上の経路を通じて解決すること、及びそれができなかった場合には、調停によって解決をはかるものとすることを定めております。
 以上を通観いたしますに、すでに累次の国会の本会議及び委員会における質疑等を通じて説明申し上げてまいりましたとおり、これらの諸条約によって、長年にわたって両国間の国交正常化の妨げとなっておりましたこれらの諸問題が一括解決されることとなり、こうして、両国間に久しく待望されていた隣国同士の善隣関係が主権平等の原則に基づいて樹立されることとなるわけであります。これらの諸条約の基礎の上に立って両国間の友好関係が増進されますことは、単に両国及び両国民の利益となるのみならず、さらに、アジアにおける平和と繁栄とに寄与するところ少なからざるものがあると信ずる次第であります。
    ―――――――――――――
 次に、大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律案について、趣旨の御説明をいたします。
 さきに御説明いたしました財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する協定は、その第二条において、日韓両国間の財産及び請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決されることになったことを確認し、日本国にある韓国及び韓国民の財産権に対しとられる措置に関しては、韓国はいかなる主張もできないものとする旨を規定しております。この規定上、これらの財産権について具体的にいかなる国内的措置をとるかは、わが国の決定するところにゆだねられており、したがいまして、この協定が発効することに伴ってこれらの財産権に対してとるべき措置を定めることが必要となりまするので、この法律案を作成した次第であります。
 この法律案は、三項及び附則からなっており、その内容は、協定第二条3に該当する財産、権利及び利益について規定するものであります。
 まず、第一項においては、韓国及び韓国民の日本国及び日本国民に対する債権及び日本国または日本国民の有する物または債権を目的とする担保権を消滅ぜしめることについて規定しております。第二項においては、日本国または日本国民が保管する韓国及び韓国民の物についてその帰属を定め、第三項においては、証券に化体された権利であって第一項及び第二項の適用を受けないものについて、韓国及び韓国民はその権利に基づく主張をすることができない旨を規定しております。なお、附則におきまして、この法律案の施行の日を協定発効の口としております。
 以上が、日本国と大韓民国との間の請求関係に関する条約等の締結について承認を求めるの件、並びに大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(重宗雄三君) 坂田農林大臣。
   〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(坂田英一君) 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律案について、その趣旨を御説明申します。
 まず、提案理由について申し上げます。
 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定第一条におきまして、日韓両国は自国の沿岸から十二海里以内の水域を、自国が漁業に関し排他的管轄権を行使する水域、すなわち漁業に関する水域として設定する権利を相互に認めております。このことに伴い、わが国においても沿岸漁業の保護をはかるため、必要に応じ、かかる漁業に関する水域を設定し、当該水域においてわが国が行使する排他的管轄権に関し、大韓民国及びその国民に対する法令の適用を明らかにする必要があるのであります。これが、この法律案を提案いたしました理由であります。
 次に、この法律案の内容を御説明申し上げます。
 第一は、協定第一条1の漁業に関する水域を政令で定めることとする規定であります。なお、この漁業に関する水域は、その設定の目的及び趣旨等からして、最小必要限度にとどめるべきものでありますが、大韓民国漁船の装備の向上等に伴って、今後わが国沿岸における大韓民国漁業とわが国沿岸漁業との交錯を生ずることが多くなることも考えられ、これら情勢の変化に応じて漁業に関する水域を設定するため政令で定めることといたした次第であります。
 第二は、漁業に関する水域において大韓民国及びその国民が行なう漁業に関しては、わが国の法令を適用することとする規定であります。これにより、具体的に適用される主要な法律は漁業法でありますが、同法及びその委任命令により大韓民国及びその国民の行なう漁業が規制されるほか、これらの規定に違反した大韓民国国民については、罰則が課せられることとなるのであります。
 以上が日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(重宗雄三君) 石井法務大臣。
   〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(石井光次郎君) 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法案について、その趣旨を説明いたします。
 日韓両国の友好関係を増進するためには、永年にわたりわが国に居住しております大韓民国国民にわが社会秩序のもとで安定した生活を営むことができるようにする必要があるのでございます。このような観点から、日韓協定の一つといたしまして「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定」が締結されたのでございます。
 この法律案は、右の協定を誠実に履行するために必要となる永住許可、退去強制等について、出入国管理令の特別規定を設けようとするものでありまして、本文九カ条及び附則からなっているのでございます。
 以下この法律案の内容の概要を申し述べます。
 第一点は、大韓民国国民であって終戦前から引き続き日本に居住している者、及び、その直系卑属として一定期間内に日本で出生し、引き続き日本に居住している者のほか、永住を許可されているこれらの者の子として日本で生まれた者は、その申請によりまして、法務大臣の許可を受けて本邦で永住することができるものとしたことであります。法務大臣は、一般外国人の在留管理に当たっておりますので、これを主管大臣としたのでございます。
 第二点は、永住許可の申請、その審査及び許可について手続規定を設けたことであります。すなわち、申請者の便宜をはかりまして、申請手続の窓口事務は居住地の市町村の事務所において行なうべきものとしたのでありまするが、法務大臣が審査を行なうについて必要な事実調査は入国審査官または入国警備官をして行なわせるものとしたことであります。
 第三点は、永住許可を受けている者に対する国外退去強制事由について、一般外国人に対するよりも著しく制限を加えたことであります、すなわち、永住許可を受けている者に対しましては、内乱、外患、国交に関する罪や麻薬関係犯罪等の特定の罪によって課せられた場合のほか、七年をこえる重い刑に処せられた場合等に限って、退去強制の手続をとり得るものとされているのであります。
 第四点は、虚偽の申請をいたしまして永住許可を受けた者や、威力を用いて永住許可の申請を妨げた者に対する罰則を設けたことでございます。適正迅速かつ自由な申請手続を保障しようとする趣旨にほかならないのでございます。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
#14
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。草葉隆圓君。
   〔草葉隆圓君登壇、拍手〕
#15
○草葉隆圓君 私は、自由民主党を代表しまして、ただいま上程されました日韓関係諸案件につきまして、政府の所信をただそうとするものであります。
 その前に、一言伺いたいと存じますることは、戦後のわが国の国会におきまして、ことに外交案件に関しまして、激しい意見の対立があり、そのため国会の運営がややともいたしますると混乱してまいりましたことは、はなはだ不幸なことであると存じます。ことに、平和条約、安保条約など、わが国の独立と安全にとりまして最も重要な条約、しかも、国民の多数の賛成と支持とがありまするにもかかわらず、一部に暴力的手段をもってしてもこれに反対せんとする勢力がありますることは、まことに遺憾にたえないところであります。今回の日韓関係諸案件の審議にあたりましても、一部少数勢力の計画的妨害のため若干の混乱を見ましたことは、まことに残念であり、一部少数勢力が大多数の意見を制するために手段を選ばざる挙に出るということは、議会民主主義の根本をくつがえすものでありまして、断じて許すことのできないところであると存じます。(拍手、発言する者あり)これまで、わが国が自由陣営の諸国と条約を結ぼうとするたびごとに、共産陣営からの干渉が加えられ、これに呼応するかのごとく、一部勢力による国会の混乱が企てられてまいっておりますことは、遺憾ながら認めざるを得ないところであると存じます。この点は、わが国の政治の基本にかかわる重要な問題でありまするが、これに対し、総理大臣はいかように考えられるか、率直な所信を承りたいのであります。
 次に、日韓関係諸案件につきまして、以下具体的に若干の問題点についてお尋ねいたしたいと存じます。
 第一には、基本条約についてでございます。その第三条において、大韓民国政府の法的性格を規定しておりまするが、政府がしばしば説明されておりまするとおり、大韓民国政府は南朝鮮地域に管轄権を有する政府であると解されます。ところが、韓国側におきましては、いささかこれと異なった解釈を下しておるようでございまするが、これに関して政府はどのように考えられておるか。日本政府の考えと相当に相違しておる場合、今後本条約の適用上にも支障を生ずるおそれがあると思われまするが、もし、そうだといたしますると、どのようにこれを調整されんとするかという点を伺いたいのでございます。
 第二は、北鮮との関係についてであります。今回の諸条約等におきましては、北鮮に関しましては、どこにも、一言半句も触れておりません。この意味から、「北鮮に関しては白紙である」という従来の政府の見解はそのとおりであると存じます。したがって、北鮮に関する諸案件は、全く将来に残されておると思われるのであります。ここで問題となりまする点を考えますると、おのずから二つに分かれると存じます。その一つは、北鮮政権に対する取り扱いの問題であり、その二は請求権の問題、在日朝鮮人の問題、あるいはまた漁業等に関する問題であると存じます。第一は大きな政治問題であり、第二は行政的、実務的問題であると存じまするが、私はこの際、北鮮につきましては、今日、日韓友好条約等の問題を審議をしておりまする際でございまするから、これを論ずることは、あるいは当を得ないのではないかと存じまするから、これ以上これを深く検討することは、この際は割愛いたします。この問題については、二、三の以下触れまする問題を除き、あまり触れませんが、政府は今後十分これらの北鮮の問題に留意をして、将来禍根を残さないようにいたされんことをこの際特に希望し、これに対する政府の御所見を伺いたいと存じます。
 第三は、国連憲章の原則尊重の点でございます。これは従来、御案内のように、各国とこの種の条約を結ぶ際に明示されておる点でありまするが、ただ、今回、従来と異なりました点が二、三あります。今回の条約で従来と異なっておりまする点は、前文の中に「緊密」という二字を加えておる点でございます。また、第四条に、国連憲章の原則を指針とする旨を述べるにあたって、特に憲章の第二条の原則と、「第二条」という表現を用いなかったことであります。また、日華平和条約以外は、「相互の福祉及び共通の利益の増進」という文言を用いておりませんのに、ここに特にこれを入れた、こうした点を含みといたしまして、一部の論者の中には、これは軍事的色彩を有する条項であるかのごとき流説をなし、したがって、今後これを基本にして、軍事同盟が意図されるような流説をなし、国民を迷わす論をなすものがありまするが、これに対する政府の確固たる所見を伺いたいのでございます。
 なお、第二条に、「もはや無効」ということばがありまするが、併合条約等の無効の時期を明示されておりませんので、これに対する問題が生ずると思いまするが、これは決して併合条約が最初から無効であったというのではないと存ずるのでございまするが、この点、政府の見解を明らかにしていただきたいのであります。
 次に、請求権及び経済協力に関する問題でございます。本協定によりまして、わが国は将来十年にわたって、無償三億ドル、有償二億ドルに相当する生産物及び役務を提供することになっておりまするが、これは賠償の性質を有するものであるかどうか。また、請求権問題の処理と全く無関係であると言い切り得るものであるかどうか。この点、外務大臣の御答弁を伺いたいのであります。
 また、本協定第二条によりまして、在韓日本財産の喪失はおおよそいかほどであるか。そのうち、日本人の私有財産に対して、幾らかの補償なり見舞いをなすことが適当であると考えられまするが、これは財政の許す範囲内において、政府は今後これを考える意思があるかどうか。この点は慎重に御検討をいただいて、御答弁を願いたいと存じます。
 漁業協定についてお尋ねいたしたい第一点は、李ラインが撤廃さるるかいなかの点であります。一九五二年一月、いわゆる李承晩ライン設定以来、わが多くの漁民が、あるいは拿捕され、その他甚大な損害をこうむりました関係上、今次の日韓会談妥結の最も喜ばしい点の一つは、この漁業協定の成立によって、関係漁民の操業の安全が得られる点にあると存じます。しかしながら、一部の者の間には、現在、李ライン内の取り締まりの根拠法規であります漁業資源保護法が廃止されるような様子が現在見られませんところから、わが政府の再三の言明にもかかわらず、一部の論者は、李ラインの存続を説き、このために関係者に一まつの不安を与えておる事実に対しまして、この際、政府の明確なる御所見を伺いたいのでございます。
 なお、今次の漁業協定によりまして、沿岸基線から十二海里に漁業専管水域を設け得ることとなり、わが国は、関係国内法におきまして、これを政令で定めることといたしておりまするが、政府は具体的にどの地域に設定する方針であるか。また、わが国自身が、十二海里の専管水域を設けることによって、将来、第三国との漁業交渉に際しまして、一般的にこの方式を認めざるを得なくなるのではないかとの観測も行なわれておりまするが、この点、農林大臣の御所見を伺いたいのであります。
 次に、在日韓国人の法的地位及び待遇に関する問題についてお尋ねいたしたいと存じます。
 在日韓国人に永住権を与え、ただいまの説明のように、強制退去条件の緩和等の優遇措置を与えられました結果、今後百数十年にわたりまして相当数の韓国人が永住することとなり、いわゆる少数民族問題を生ずるおそれがはなはだ大なるものがあると存じまするが、これに対する問題点、及び同じ韓国人でありながら本協定に基づく特権を認められない人たちも生ずると思われますが、そういう関係の取り扱いは、一般外国人に対する処遇と全く同一の方針を貫かれる御方針であるか、また、これらの人たちには義務教育の均てん条項等は考えておいでになるかどうか、法務大臣並びに文部大臣の所見を伺いたいと存じます。
 また、最も困難な問題は、在日北鮮系の朝鮮人の取り扱いの問題であろうと存じます。そして、その子弟の教育につきましては、北鮮当局から多額の財政支援を受けて、いわゆる民族主義教育が行なわれているかのように言われておりまするが、文部大臣にお尋ねいたしたいと存じまする点は、どのような学校が経営され、どのような教育が行なわれておるか。そうして、日本政府は、これに対してどのような規制を行なっておるか、また将来これをいかように取り扱う方針であるか、伺いたいのでございます。
 次に、文化協力協定についてであります。この協定によりますると、文化財の引き渡しや文化施設利用の便宜供与を述べられておりまするが、日仏文化協定、日英文化協定等に見られまするような学者や技術者の人的交流に関する条項は全然見当たりません。なお、考えますると、両国の今後の友好の増進は、両国民の相互理解にあると存じます。その相互理解は、人的交流にまつべきところがはなはだ大と存じまするが、これに対する総理大臣の御見解を伺いたいのであります。
 次に、竹島問題についてであります。竹島が日本領土でありますることについては、政府の再三にわたる言明で明瞭であると存じまするが、この問題について、わがほうよりは三十二回の口上書を送り、先方よりは二十四回反論してまいっておりますが、不幸、この島は現在韓国の武装部隊によって占拠されたままになっております。政府は、今後、この竹島に関する日韓間の紛争をどのようにして解決するお考えであるか。わが国の一部には、今回の日韓交渉の妥結によりまして竹島問題の解決がそのめどを失ったのではないかと心配しておる向きもあるようでございます。竹島の領土権問題につきましては、その経済的価値の大小の問題よりも、本件が領土問題であるという性質から、これを等閑に付することは、わが国民感情が許さないところであろうと思われます。この問題は、あたかも北方領土の問題と同様に、相手国が武力占領をしておるからといって、その既成事実を是認すべきものではないと存じます。政府といたしましては、今後ともあらゆる平和的手段によりまして、すみやかに本件の解決をいたすべきものと存じまするが、外務大臣の御所見を伺いたいのでございます。
 最後に私は、佐藤総理大臣に対しまして、政府の対アジア外交の基本的態度について、その御所信を伺いたいと存じます。総理は、これまで、アジア諸国との間に善隣友好関係を樹立することを念願とされ、今回の日韓国交正常化はそのスタートラインに立つものであると述べてこられたのであります。確かに近隣の諸国と平和で安定した友好関係が設定されてまいりますることは、国民のひとしく念願とするところであり、その第一歩として、このたび韓国との間の国交が正常化されますことは、まことに慶賀にたえないところであり、その御努力に対しましては深く敬意と感謝の意を表するところでございます。しかしながら、ひるがえって考えますると、現在のアジア諸国の情勢を思いまするとき、不幸にして十分にそこには安定した状態があるとは申し得ないのでございます。とりわけ、共産主義者によりまして引き起こされておる動乱と戦禍によって、アジア各地の平和が著しく脅かされておるということは、まぎれもない事実でございます。わけても、中共の昨年十月の第一回核爆発実験以来、アジアにおきますこの種の不安は日ごとに増大の一途にあると申しましても過言ではないと存じます。共産陣営は、これまでに、わが国を含むアジア諸国に対して、あるときは利をもっていざない、あるときは核兵器をもってどうかつし、また、あるときは、国内の治安撹乱を扇動してきたのでございます。戦後、わが国は、自由陣営の有力な一員として、今日の国際的地位を築いてまいったのでございまするが、共産主義者による平和撹乱に対しましては、確固たる態度をもって臨むことこそ、アジアにおける真の平和外交を推進する道であると確信いたすのでございます。この意味から、このたび自由陣営の一翼をになって、アジアの平和と安定に寄与しようといたしておりまする韓国と、国交を正常化し、緊密な協力を達成しようといたしますることは、わが国の平和善隣外交推進の上から、まことに意義深いものであると存じます。佐藤総理は、こうした意味におきまして、アジア外交の基本的態度を今後とも十分堅持して、外交施策を推し進められるものと存じまするが、これに対する総理の率直なる御所信を承り、もって国民に強くこの点を理解を願いたいと存じます。
 以上をもって私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。関係大臣に、私が触れなかった点は後に説明させたいと思います。
 まず第一に、最近起こりました衆議院の特別委員会の審議なり、あるいは本会議等についての感じいかんというお尋ねでございますが、私はあの事態を見まして、まことに不幸なことだ、かように思います。私どもが今日最も力を入れなきゃならないことは、いかにして民主主義、民主政治を守り抜くかというところにあると言えます。この観点に立ちまして、私どもはどこまでも、正常なる議会主義、議会制度を守っていかなければならない、このことが最も大事であります。しかし、ただいままでの状態は、わが国において民主政治あるいは議会政治がやや未熟である、かような非難を国際的にも受けるようでございますが、さらに私どもは、との議会主義、これに徹するという考え方で努力しなければならないと思います。そのまず第一は、お互いにルールを守るということ、ルールを守らなければ正常な議会政治は絶対にございません。(拍手、発言する者あり)また、この民主政治のもとにおきましては、どうしても多数決原理は尊重しなければなりません。(拍手、発言する者あり)御指摘になりましたように、少数党の意見を――もちろん審議を尽くすことは望ましいことでございますが、院内外の勢力を動員して、そうして、この審議をはばむ、かようなことは私どもは避けなければならない、厳に戒めなければならないことなのであります。国民大多数の諸君は、これらの事柄につきまして正しい批判を下しておると私は思います。さような意味におきまして、われわれ政治家に課せられた責任はまことに重いのであります。今日の会議等におきましても、どうしても国会におきましては話し合いの場である、この原則に立ちまして、十分審議も尽くさなければなりませんが、運営等につきましても、各党が忌憚ない意見で話し合うことが最も望ましいことではないか、かように私は思うのであります。
 次に、管轄権の問題につきましてお話がございましたが、これは後ほど外務大臣からお答えをいたすと思います。私は、一民族が一国家を形成する、これはほんとうに望ましいことでございます。しかしながら、必ずしもすべての民族が一国家を形成するということにはなかなかならないのでありまして、ただいまこういう事態が起こることについては、ほんとうに民族の不幸だ、かように私は思います。ただいま韓国あるいは北鮮、こういう二つの政権があるという、こういうことを御指摘でございますが、ほんとうに残念なことだと思います。しかしながら、今回私どもが条約を締結いたしますのは韓国でありまして、北鮮には何ら触れておらない、これはいわゆる白紙の状態であるということでございます。しかし、今日までわが国は、サンフランシスコ平和条約締結以来、一貫して、韓国と関係、交渉を持ってまいっております。北鮮とは関係を持たない、かような方針をとってきたことも、これも皆さま方御承知のとおりだと思います。今日まで韓国を承認しておる七十二の各国も、北鮮とは関係を持っておりません。この点が一民族一国家と、こういう観点に立つと、まことに不幸な事態だと私どもは思います。国連におきましては、こういう事態に対して、いわゆる国連方式による民族統一国家をつくるようにというような勧告もされておるのでありますが、韓国はこれを承認した、しかし北鮮はこれを拒んでおる、こういう事態でございますので、一民族が一国家を形成するということは、まだまだたいへんむずかしい状態ではないかと、かように私は思います。今日の韓国との関係は、別に北鮮との問題については触れておるわけではございませんし、在来からの方針を変えるというような事態ではございません。したがいまして、在来から北鮮とはケース・バイ・ケースで人的交流なりあるいは経済的交流をするという考え方でおります。その考え方を今後も続けてまいるつもりでございます。
 次に、今回の条約が軍事的な色彩を持つものではないか、こういうような意見を一部で述べておるということでございますが、御承知のように、今回の書き方自身では、ちょうど日ソ共同宣言第三項に書いたような書き方をいたしております。いわゆる国連の尊重をしていく、国連の平和的条項、これを守っていく、お互いに協力をしていくということでございます。日ソ共同宣言で言われておることと、今回の日韓条約で私どもがとりました表現と、お比べになれば、別にこれは軍事的なものでないということが、はっきりわかると思います。日ソとの間におきまして軍事的な同盟を結ぶような考え方のないことも、皆さま方御承知のことだと思います。私は、何よりも申し上げたいのは、新憲法のもと、また自衛隊法のもとで、いわゆる外国と軍事的な同盟を結ぶような考え方は全然ないのだ、この点を申し上げたいのでございます。したがいまして、私は、いわゆる共産主義はきらいだ、かような意味から、しばしば私の考え方を申し上げ、また、日本の国が共産化されることは絶対に防ぐということを申しております。そういう意味から、一部では、反共同盟あるいは防共同盟を結ぶのではないかというような懸念をされますが、私が最も問題としておりますのは、この防共同盟あるいは反共同盟ということが、いわゆる軍事的な色彩を持つものだ、いわゆる反共軍事同盟、防共軍事同盟、こういうような考え方で国民に印象づけようとしておる、このことは、私は絶対に、ただいまも申すように、憲法や自衛隊法から、さような事態はつくらない、さようなことはいたさないということを申しておりますので、国民の皆さま方も、私の、共産主義はきらいだということ、共産主義を排撃するということと、ただいま社会党の一部から言われておるような軍事同盟というものとは、全然別なことだ、また、政府は軍事同盟には絶対賛成しないのだということを十分御理解いただけると、かように私は思います。(拍手)
 最後に、アジアにおけるわが国の外交の基本的姿勢、これについてのお尋ねがございました。私は、あらゆる機会に申し上げてまいりましたが、どこまでもわが国の安全を確保し、そうして繁栄をもたらす、同時に、この立場に立って、いわゆる平和に徹する外交をしていくのだ。したがいまして、善隣友好の関係はもちろんでございますが、いずれの国とも仲よくしていくのだということをしばしば申し上げました。いずれの国とも仲よくしていくが、そのためには、わが国の独立を尊重し、内政に一切干渉しない、内政不干渉の原則に立って、お互いに友好関係を樹立していく、こういうことでなければならないということもたびたび申してまいりました。この点では、国民の皆さま方も十分理解しておられることだと思います。しかしながら、御指摘にもありましたように、アジアの状態は、まことに不幸な状態をただいま現出しております。こういう際に、わが国の安全を守り、また平和に徹する、こういう場合に、わが国が確固たる態度で諸問題に取り組むこと、これは、もちろんその基本であるのでございます。私は、憲法のもとにおきまして、軍事的な力を持たず、また、一切の国際紛争は武力解決はしないのだ、いわゆる戦争は放棄した、このもとにおいて私どもが繁栄の道をたどる、また、国際的にお互いの生活が安定をし、繁栄であるならば、いくさなど考えられない、こういう意味から、私は、経済的に十分協力をし、また援助する、こういう態度をとっておるのでありまして、東南アジア諸地域に対しまして、経済的な交流なり、また援助計画なり、低開発国に対する積極的な支援をしておるのは、ただいま申し上げたように、平和に徹するわが国の考え方からでございます。お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(椎名悦三郎君) 基本条約第三条に関して、韓国の主張と日本の主張とが食い違っておると、これはどうかという御質問でございますが、基本条約第三条はいわゆる国連の決議を引用しておりまして、そして国連決議が規定しておるとおりの性格のこれは国である、政権である、政府であるということを言っておるのでございまして、引用されておる百九十五号の決議というものは、朝鮮人民の大部分が居住する半島の部分、それに対して有効な支配と管轄権を及ぼし得る政府ができた、その政府は国連の観察のもとに行なわれた自由選挙に基づくものである、で、この政府が、したがって朝鮮における唯一のこの種の政府であるということをうたっておるのでありますが、そのまま第三条において確認をしておる、こういうのでございます。それで、いま申し上げた国連の決議は、すなわち全半島に及ぶというのではなくて、現実に支配と管轄権が及んでおる、有効に及んでおる部分と、こういうことを言うわけでございますから、今日の状況から言うと、休戦ライン以南である。この管轄権の及ぶ範囲は、休戦ラインの以南であるということを言っておりまして、その以北に及ばないということを条約において確認しておるわけであります。ただ、韓国の当局者が、場合によっては、全半島が領域である、ただ、現実に不逞分子が北のほうを占拠しておって、その部分には及ばないというような考え方を述べており、そういう基本的な考え方を今回の基本条約で日本が承認したかのごとき誤解を生じせしめるような言い方をしているようでございますけれども、たとえ、いかなる言い方をしておっても、とにかく基本条約の正文からいいまして、休戦ライン以南であるということは、もう明瞭なことでございますので、われわれは、どこまでも、書きおろされた条約の正文をもととしてこれを解釈する、こういう態度をとって今後もいく所存でございます。
 それから「もはや無効」というのは、一体、当初から無効であったのか、それとも、かつては有効であったか、いつから無効であるかというような点が御質問の点だと思いますが、これは韓国が独立したときに併合条約は効力を失った。それから併合条約以外の条約は、それぞれその条約の内容に従って効力を失う。こういうことに解釈し、また、しからざるものは、併合条約の発効によって効力を失う、こういうふうに三段に解釈しております。これも聞くところによると、韓国の言い方とわれわれの主張と食い違うようでありますが、これらの点について、もし実際問題として、両国の利害が、今後条約発効後に衝突するというような場合には、十分にこれを解決する自信を持っておるわけであります。
 それから、請求権の問題と経済協力、これは、日本の対朝鮮請求権は、軍令及び平和条約等のいきさつを経て、もはや日本としては主張し得ないことになっておりますが、反対に、韓国側の対日請求権、この問題について、この日韓会談の当初において、いろいろ両国の間に意見の開陳が行なわれたのでありますけれども、何せ非常に時間がたっておるし、その間に朝鮮動乱というものがある。で、法的根拠についての議論がなかなか一致しない。それから、これを立証する事実関係というものがほとんど追及ができないという状況になりまして、これを一切もうあきらめる。そうして、それと並行して、無償三億、有償二億、この経済協力という問題が出てまいりました。何か、請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らとの間に関係はございません。あくまで有償・無償五億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、これに対して日本も、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、この経済協力を認めたのでございます。合意したのでございます。その間に何ら関係ございません。英国であるとかフランスなんか、旧領地を解放して、そうして新しい独立国が生まれた際にも、やはり、この経済的な前途を支持する、あるいは新しい国家の誕生を祝う、こういう意味において相当な経済協力をしておる。その例と全然同じであります。
 それから、在外財産、この問題についてのお話がございましたが、終戦当時、朝鮮にあった在外財産につきましては、日本政府としては、確実な資料は所持しておらなかった。また、韓国政府も北鮮当局も、戦後、一切これらの問題に対しては公表しておらない。遺憾ながら、これらに関しましては、権威のある評価等は、われわれはできない状況にあります。で、いずれにいたしましても、その終局の処理は別問題にして、とにかく、その状況がどうなっておるかということをまず調べるために、過般、予算をもって、在外財産の調査をするということになっておるのでございまして、その問題につきましては、ただいまさような状況にあることを御了解願いたいと思うのであります。
 それから、竹島の問題でありますが、交換公文で、残された日韓間の紛争事項については条約発効後に普通の外交ルートによって折衝して問題の解決を見出すように努力する。しかし、外交ルートによって、この方法によって解決することができない場合には、両国の合意による調停の方法によって解決をするということが書かれてございまして、竹島問題は、日韓間の紛争問題として残された最大のものであり、この交換公文に書かれてある、いわゆる紛争問題に該当するわけであります。これは、御指摘のとおり、領土問題でございまして、なかなか両国が相譲らないというような状況にございますので、条約発効後、両国の間に友好的な雰囲気が出てまいるわけでございますから、その雰囲気のうちに穏やかに折衝を開始して、何らかの解決の方法を見出すべく今後とも努力したい、かように考えておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(坂田英一君) 李ラインに関しましては、韓国側の漁業に関する一方的管轄権の及び得る範囲を、漁業水域に関する国際的趨勢をしんしゃくいたしまして、沿岸十二海里の漁業水域に限定することとする。その外側に帯状に設定されたる共同規制水域を含む公海における漁業取り締まりの権利及び裁判管轄権は、漁船の属する国のみが行使する、いわゆる旗国主義でありまするが、そういうことに協定で規定するほか、協定の前文においても、公海自由の原則が尊重さるべき旨規定されたことによりまして、実質的に撤廃され、その結果、従来、李ラインにおいて発生した不法不当な臨検、拿捕等の不幸な事件は、今後わが国の漁業及び漁船に対してはあり得ないことと相なりまして、日本漁民も安心して漁業に従事し得ることとなったのであります。李ラインは実質的に解消いたしておる次第でございます。
 第二番目の、この十二海里の沿岸までの漁業水域は、このほかの国にも影響しないかというお問いでございまするが、沿岸から十二海里までの漁業水域は、最近の国際趨勢をしんしゃくし、かつ、韓国の漁業の実情を勘案いたしまして、両国間において特別の合意をもって設定することといたしたものでございます。しかし、これは、いずれの国ともかような同様の協定をいたすということには限っておるわけではありませんのでありまして、これは、日本漁業の実益等を勘案いたしまして、ケース・バイ・ケースによって決定してまいるということにいたしておるわけでございます。
 それから、この漁業協定によって国内法が設定されて、政令によって日本の漁業水域をどこに設定するかという御質問でございまするが、これは、現在の韓国の漁業の実態等も考えますと、日本本土の沿岸どこにも設定する必要はいまのところないのでありまして、そこで、現在のところは、対馬沿岸に設定いたしたいということで検討中でございます。なお、将来において、韓国の漁業の発展その他によりまして必要がありまする場合においては、その際において設定することにいたし、その都合上、「政令で定める」ということにいたしたのは、そのわけでございまするので、御了承を願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(石井光次郎君) 韓国人のうち永住権を持った者が、だんだん時がたつにつれて少数民族的な存在になりはしないかという御心配の御質問でございました。私ども、そういう問題は非常に注意しなくてはならぬと思うのでございます。この問題につきましては、先ほど法案の趣旨を申し上げたときに申し上げましたように、この永住権を持ってもらうには、どうしても日本の社会秩序のもとに安定した生活が韓国の人たちにできまするようにすることが、一番大事なことであるということを考えておるのでございまして、そういう方向に向かって行きまして、だんだんと、日本人そのものの生活と同じような生活をし、同じような状態に、その人その人の生活がなってまいりますれば、いつの間にか日本人と同じような状態になってくる。その中には、日本人になってしまう人もだんだんできてくるということを考えておるわけでございます。
 また、第二の御質問でありました、そういうことになりますと、永住権をもらえない人、同じように長い間日本人であって、また自分の意思でもなくして日本人となり、また自分の意思でなくして日本人から離されたという人が、たくさんあるわけでございます。こういう人たちとの差が、また、うんと出てくるのではないかということを御心配になる方がたくさんあるのでございます。私ども、その点は考えなくちゃならぬと思っております。これは、いままでも、こういう人たちの非常な特殊な立場を考えておりまして、あるいは生活保護の問題でありますとか、教育の問題とかいうことにつきましては、できるだけ、いままでもやってきたわけでありましょうが、これから先も、こういうものをいいかげんにするという考えはないはずでございます。
 それから、昭和二十七年の法律第百二十六号でございますか、それは、そのままにしてまいりまして、そして、いままでどおりに日本にずっとおれるということにいたしまして、そうしてその人たちの生活が、さっき申しましたように、永住権の人たちと同じような安定した生活がやっぱりできていくのでないと、やはり日本の社会の秩序の上にも悪影響を及ぼすわけでございます。そういうことにつきまして、できるだけの保護を――これは法律だけでできないのでございます。各方面の力によりまして、われわれの生活に溶け込んでいくような施策をだんだんとやっていくようにしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣中村梅吉君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(中村梅吉君) 教育に関係した御質問がございましたので、お答えをいたします。
 御承知のとおり、従来から、在日韓国人あるいは朝鮮人の子弟につきましては、義務教育に関して、公立の小学校、中学校等に、本人の希望があれば入学を許可して、日本人と同様に扱っております。その内容等につきましては、御承知のとおり、授業料を徴収しない、あるいは教科書の無償配付をするというようなことまでいたしまして、日本人と差別をいたしておりません。また、進学につきましても、進学の資格を認めておるわけでございます。今回の法的地位に関する協定第四条及びその合意議事録によりまして、そのことが、いわゆる協定上の日本の国の義務と確認をされたということでございまして、内容的には、この点については変化がないわけでございます。そのほかに、いわゆる民族教育のようなことをやっておる学校に対しては今後どうする考えかという御質問がございました。いわゆる朝鮮大学といわれておるように、完全な民族教育をやっておるものもございますが、これは、現在のところ、全然認可もされておりませんし、法的の資格を与えられたものでございません。今後これらをどう処置してまいるかにつきましては、文部当局といたしましては慎重に検討をいたしまして善処してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)
#21
○議長(重宗雄三君) これにて三十分間休憩いたします。
   午後一時十分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十九分開議
#22
○副議長(河野謙三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 質疑を続けます。森元治郎君。
   〔森元治郎君登壇、拍手〕
#23
○森元治郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました日韓基本条約その他の案件について、政府の考えをただします。
 まず私は、これら案件がどろだらけになって本院に送られてきたことに痛憤するものであります。(拍手)衆議院において、慎重御審議を願いますという口の下から、委員会、本会議と、抜き打ちに万歳で強行可決したことは、わが議会民主政治破壊の暴挙であります。しかも、相手韓国の国会も力で突破いたしております。こんな国民を無視した条約の前途は、まことに暗いものがあると一、言わなければなりません。(拍手)また、衆議院段階にありながら、参議院の自由な審議権を拘束するような計画を練って、二院制の憲法のたてまえをじゅうりんした責任は重大であります。まだ本院が条約案件を手にしないうちから、批准書交換の口取り、全権の人選を新聞などに流していることは、本院への侮辱であり、総理は参議院の存在をいかに認識されておるかを伺います。私は、総理の口からは、好ましくないが合法だという御答弁は期待しておりません。われわれは、あすの議会政治、憲法擁護の立場から、総理の真実の御答弁を求めるものであります。
 次に、本論に入ります。
 今度の条約くらい、わけのわからない条約は見たことがありません。簡単にいえば、韓国は八億ドルあるいは十億ドルの金がほしい。日本は李ラインで魚がとりたい、安全に。――この辺から火がついたかと思うのであります。国交を正常化する相手の韓国というのは、一体どこをさすのか。休戦ライン以南であるとは聞いております。しかし、いやしくも国家という以上、そこに領土があり人民がある、それが存立の絶対条件であります。片方がないなんという国はないのであります。しかるに、政府は、この条約は、領土領域はきめておりません。必要はありませんと逃げております。なぜ逃げるのか。その理由、及び領域、領土というものはどこなのか。朝鮮は日本から離れた国でありまするから、鴨緑江から済州島の島までであることは、われわれは、かつて領有していた関係からよくわかるので、その辺の国境をはっきりと示していただきたいと思います。外務大臣、なぜ国連決議百九十五号を引用しなければその独立を裏書きできないのでしょうか。国家の承認の要件を満たすかどうかは、承認国が認定すれば足りるのであります。あの国と仲よくしよう、あれはいい国だ、これでたくさんなんであります。何で、よその古くさい十数年前の決議などを持ってきて、これを正当だと言わなければならないのか。この国連決議なるものも、今度の総会における、この二十回総会における中国代表権の投票の例に見られるように、いつひっくり返るかわからないのであります。そのときは一体どうするのか。合法じゃない政府だといったらどうなるのか。政府は、そのときには調整すると言っております。一体、領土、人民をどういうふうに調整するのか、伺います。
 また、朝鮮には二つの国家があるのか、一つの国家があるのか。政府は、北には一つの権威がある――それは朝鮮民主主義人民共和国をさすのでありますが、どういうものか、日本の政府は、何かあるとか、権威があるとか、念頭に置いてとか言って、名前も言わない。この名前は私が教えますが、朝鮮民主主義人民共和国であります。その権威があることは認め、一方、韓国の管轄権は休戦ライン以南で北に及ばないと言う。どうも、一般国民の方々は、二つの国家があるように考えられるのではないか。そうすると、おもしろいことになります。大韓民国政府というのは、休戦ライン以南にある韓国の中の唯一合法政府ではないか。韓国の中のですよ。そういうふうに考えるが、政府はどうでありますか。韓国は、その領土は韓半島全域と付属の島々であると憲法に規定している自分を日本は認めたのであるから、自分以外に国家はないと言う。ところが、椎名外務大臣は、衆議院の特別委員会で、「伝え聞くところによれば、あの国の憲法にはそう書いてあるようであります」――一体、他国と条約を結ぶときに、条約締結権の問題をはじめとして、相手国の憲法を知らずに条約を結べるのですか。条約第三条にある、大韓民国政府は、朝鮮における唯一の合法政府であるというのは、国連決議の都合のよい部分をつなぎ合わしたものであります。すなわち、日本は、台湾のように、南だけを認めたい、限定承認をしたい。韓国は、それでは困る。そこで、苦心の結果、第三条の文言が出てくるわけであります。国連決議には「唯一合法」とはないんですよ。「唯一」というのは前にあり、あとには「合法」とあるのですね。役人の法律屋の頭のいいのが、前と、うしろを取ってきて、「唯一合法」と、こうくっつけたのです。こういうごまかしであります。これは、何としても北の人民共和国を狭いところに押しつけて無視していきたい、これが、韓国へのサービスであり、アメリカへのサービスだ、などと思っているのでしょう。まことに残念であります。こんなあやふやなものを結んで、北とはケース・バイ・ケース――総理は、国会においては外国語らしいものは使わないでもらいたい、日本語でやっていただきたいが、北とはケース・バイ・ケースで、貿易も、人間の往来も、在日北鮮系の住民の処遇も、やると、先ほどの御答弁にありました。こんな、のんきなことを言ってたら、韓国は直ちに条約をぶち壊してくる、善隣友好などとたわけているうちに、この辺は戦雲に包まれるような騒ぎになると私は思います。総理、外務大臣、どういうふうにお考えになりますか。
 われわれの義務は、たとえ時間をかけても、南北統一にあらゆる援助をして、統一朝鮮と党々の国交を設定したほうがよいのであります。日本の平和と安全の道は、日本が一番よく知っておるのであります。これは、自主的にきめる国家の義務と権利であります。統一を阻止しているのは、佐藤総理はよく、国連方式による選挙を、北鮮が言うことを聞かないからだと言っております。私は、そんな簡単なものではないと思う。この統一をするには、まず、南北の対立を刺激するようなことをやらない、慎み、そして、おりあらば両者の話し合い、平和ムードをつくることを助けていくことだろうと思います。幾ら時間がかかってもかまいません。十四年もたっておるのだと総理は言うが、佐藤内閣はなくなり、お互いが死んでも、韓国もあれば北朝鮮もある。日本もあります。ここを戦争の場にしてはいけないのであります。それから、休戦協定の精神を生かすことであります。また、南北の対峙する兵力の削減、軍縮、国連軍の縮小から撤退への努力などをあげることができると思います。国連軍の駐兵は国連の決議によると言うかもしれません。政府はそう言って逃げております。しかし、派兵十六カ国は、これは、遠い国からアジアの国まで応援に来たのであります。もうとっくの昔に帰りましたが、この遠い国々は自分のことで手が一ぱいなのであります。ややこしい極東の端っこのことに巻き込まれたくないために、駐兵の決議が国連総会の決議として繰り返されておるにすぎないのであります。それが証拠に、この駐兵国十六カ国のうちで、国連が侵略者だときめつけた中華人民共和国を承認をしている国が五、六カ国あるのであります。あざやかな外交をやっております。五、六カ国ある。この事実を一体、政府はどうごらんになるのか。日本政府のやることとしては、国連の注意を喚起する、このことであろうと思います。政府の口にする国連尊重は、ときに無為無策の隠れみのにすぎません。同時に、およそ国際紛争や対立というものは、大きく外から客観情勢の展開に待たなければなりません。スケールの大きな外交であります。これは、佐藤さんのように、一体、将来の外交をどうするのだといえば、朝鮮とはこうする、あるいは中国とはどうする、ソビエトとはどうする、そういうような、個別的な、外務事務官みたいなことを言っているんじゃないんです。大きな外交であります。朝鮮休戦がまとまったのは、何でまとまったか。北と南がくたびれたことも原因でありますが、スターリンが死んだ後にマレンコフの時代になり、ソ連の平和的なゼスチュアが非常にあずかって力があったのであります。また、つい先ごろの核実験停止条約の成立というものが、どれほど米ソの対立と世界の緊張緩和に役立ったかを思い知るべきであります。佐藤総理大臣は、平和に徹し、南北の統一にもあらゆる努力をすると言っておられまするが、その外交展開の構想、具体策はどんなものでありますか。スケールの大きいところを伺います。
 また、けさの新聞を見ますと、外務大臣椎名さんはモスコーに行かれて、日ソ間の国交調整、できれば平和条約の下交渉に入ると書いてありますが、ここで一体、領土問題について目鼻がついて行くのか、においをかぎに行くのか、あるいは相互不可侵条約でもやろうという大きな手をぶちかけると同時に、アメリカ軍の沖繩徹退、択捉、国後を返せというぐらいのことを言うつもりなのかどうか。航空協定ができたから、お祝いのカクテールを飲むようでは困るのであります。また、対中共政策も、世界の大きな流れに沿って、いまや大きく転換すべきときであろうと思いますが、あわせて所信を承りたいと思います。
 なお、韓国は、この条約の意義について、日本と違いまして、共産主義侵略を防ぎ、極東の安全と平和維持について日本に期待していると言っております。総理は、いかなる形でも、軍事的に結果する協力はしないと断言できるかどうか、伺います。
 次に、具体的問題に入ります。それは竹島の問題であります。政府は、ほかの懸案と一括して解決すると断言されましたが、後には、せめて解決のめどだけはつけておきたいと、国会で割り引いて泣き言を言いましたが、これもだめ。竹島を一体放棄するのかどうか、総理に伺います。政府は、いや、そのために交換公文をつくってあるんだ、それには紛争はまず外交経路を通じて解決するものとする、できなかったら調停にかけるんだ、その紛争の中には竹島が入っているんだと、こういうふうな御答弁があります。一方、椎名外相は、条約の解釈について、社会党の皆さんは、うるさく言うけれども、それは条約の文に書いてあるとおりに御解釈下さい。――解釈します。交換公文に竹島という字が一体どこに入っている。(竹島を含む)とも含まないとも、何とも書いてないのであります。この答弁の矛盾を外務大臣から伺います。
 また、韓国は、もし日本があくまでその主張を曲げないならば交渉を打ち切ります、すぐ帰りますと言っておるようであります。いつでもこの態度。去る六月だと思う、調印のために季外務部長官が佐藤さんにお会いになったときに、これは向こうの議事録でありますからはっきりわかりませんが、議事録によれば、佐藤さんは何とか顔を立ててくれないかと言ったと――下品なことばであります。しかし、いまさらわが韓国としては、こんなことをやったらダイナマイトに火をつけるようなものだから、この交渉ができなくて条約をつぶしても、私は席をけって帰ると言ったと。そうしたら佐藤さんは音が出なくなった。何にも反響がなかったわけですね。それから調印に臨んだのでしょう。その間の事情をひとつ総理から明らかにしてもらいたい。どうも態度において、韓国と日本はどうも違うのであります。向こうが必死で、しつこいのであります。こっちは、ふわふわとしておる。一体、領土問題、これを総理は大きな問題と考えるのか、あるいは、たかが小さい岩礁だ、こう思われるのか、その認識のほどを伺いたいのであります。先ほど草葉隆圓君は、竹島に警備兵がおって、鉄砲を持って武装し、かまえている、こういうお話がありましたが、今日でもなおいるようであります。昔は巡視船に鉄砲を撃ちかけてきたことがあります。本条約には「国連憲章の原則を指針とする」と、うたっております。草葉さんも尋ねられ、総理もそのとおりだとおっしゃった。ところが、第二条にどう書いてあるか。領土保全その他について武力をもって威嚇し、これを行使してはならないと書いてあるのであります。条約関係に入るというのに、憲章違反を一体、政府はどう見ておるか。なぜかかる行動を黙認しておられるのか。私はこの事実を見て、まだ韓国、朝鮮の方々の中には、わがほうに対する警戒心が根強く残っていて、条約締結の情勢にはほど遠いという証拠のように考えられます。
 もう一つ大きな問題が竹島にあります。それは昭和二十七年、講和条約の年の六月でありますが、アメリカは竹島を爆撃場として日米合同委員会を通じて提起をしておる。日本は承知いたしましたので向こうへ出した。しかし、翌年の二十八年三月に、もう使用しないからといって日本に返された。これは皆さんも知っておられます。私も外務委員会でやりました。竹島は、平和条約で日本が放棄する地域のうちに入るのか入らないのかという決定というものは、条約起草者のアメリカがよく知っているはずであります。わがほうの個人の財産請求権を放棄せざるを得なくなった、例の在韓財産請求権問題で、韓国と日本の意見が対立した。日本はある、向こうはない。そのとき、条約起草者の行司に見解を求めたのであります。なぜ、この際に見解を求めないのか。アメリカは、また、なぜ長い間、これだけの紛争をやっているのに沈黙をしているのかも、まことに不可解であります。日米行政協定は、韓国領土の貸し借りをやったのか、外務大臣にお伺いをします。なお、この条約が実施され、円満なムードが出れば解決するときが来ると、外務大臣はおっしゃっておりますが、そんな約束がいつ、だれとの間にあるのか、単なる希望であるのか。これもお伺いをいたします。
 次に、文化財、文化協力協定について伺います。
 文化といいますと、「かおり高い」という、まくらことばがつくのが、普通であります。かおり高い文化。この協定を見ると、お互いに文化協力を緊密にしましょう、あんたのところから持ってきた文化財を返しましょう、この二つしかないのですね。ひどい、冷たい条約であります。冷たい協定であります。文化協定といえば、まあ文化人もたくさんおられるが、もうたくさんの条項でいろいろなことを取りきめて、大いにそれをやろうという意欲を燃やしているのですが、日本が、過去についての深い反省とあたたかい気持ちを持って、本来あるべきところへ戻してやるというところが見えないのは、どうしたことか。この点は、文部大臣、及び、気持ちでありまするから、佐藤総理大臣に伺います。
 文化協定といえば、どこでも、大体、判を押したようでありまするが、日本とフランスやイギリスやその他の国々と結んだ中には、両締約国は、相手国の広範な知的、芸術的及び科学的活動に緊密に協力するのがねらいであって――こんなふうに書いてあるのであります。文化協力こそ、民族の真の理解を深める最も大事なものと思うが、それがないのであります。政府・自民党は、文化、芸術のセンスがあるのかどうか、疑わざるを得ません。文部大臣は、いかに考えられまするか。
 文化財は、一体、向こうに引き渡すのか、返還するのか、要らないものだから持って行けというのか。どういうのか。この協定文には、「引き渡す」とありますが、気持ちを伺います。引き渡される品物、美術品、図書類の選定の基準は、一体何か。韓国の要求によるものであるのか、日本が選んでやったものか。この間を明らかにしてもらいたい。重要文化財に指定されたものがないのはどうしたわけか。国宝に指定されたものも入っていないようてありまするが、日本には韓国から――朝鮮から持ってまいったもので、このような重要文化財に指定されるものは一点もないのか、あっても引き渡さないのか、具体的に御答弁を願います。
 次に、去る三十三年に、百六点の文化財を韓国に親善のムードづくりの名目で送っております。これらの品は、一体いまどこに保存されておるか、これをお伺いします。やったのだから、どこへ行ったって、海の中に落ちても知らないでは、済まされないのであります。聞くところによると、その品々はあまりいいものがないらしい。首飾りの玉が欠けておったり、本といえば、筆で写し直した複製品が少なからずあって、貴重な品とは言いがたいものがあるといわれております。そこで、向こうは本国にこれを送ることができないで、何か日本の大使館の倉庫かどこかにぶち込んであるとかという話を聞くのであります。はなはだ大事な問題でありますから、この真偽のほどを明らかにしてもらいたいと思います。
 ただ、最も重大なことは、今回引き渡される文化財は、すべて韓国に由来するものであって、北鮮系のものは除かれているといいます。文化財は民族伝統の宝であります。政治権力の所在によって区別さるべきものではないと思います。文化財まで二つの朝鮮の考えを露骨にあらわすに至っては、これは気違いのさたであります。その理由をここに明らかにしてもらいたい。同時に、北鮮のものは一体何点ぐらいあるのか。今後いかにこれを処置するつもりか。向こうから要求があれば引き渡すのかどうか。
 終わりに、総理大臣に伺います。
 植民地の支配や侵略の過程で、西側の大国は、いろいろなものを本国に持ち込んで、博物館、美術館に飾っておりますが、これらは、それぞれ自分のあるべき国に返してやるのが筋だと思いまするが、政府の文化政策を伺いたいと思います。
 漁業関係に移ります。
 漁業関係といえば、何といっても李ラインの問題に帰着いたします。政府は、一貫して李ラインが不法不当だから撤廃させると公言してきましたが、結果を見ると、この協定によって実質的に撤廃されたとしております。しかるに韓国は、この協定は、李承晩大統領宣言の趣旨にかなうものであるから、いよいよもってその存在が明らかになったとしております。撤廃というのと実質的に撤廃というのとは、これは公約の大きな違反でありますが、何と説明されまするか。政府は、関係水域で安全操業ができればいいので、向こうが李承晩宣言のことばを、いつどこで使おうと、わが国は無関係だと言いまするが、このラインは、はなはだかってきわまる話でありますが、韓国の主権線と言っておりまするから、向こうの都合で、いつでも動き出すものであります。なるほど、漁業協定があっても、国防というような、国家非常の場合には、また別な観点から、どんな措置をとってくるかもわかりません。これは、こちらの知ったことじゃないでは済まないのであります。明快な措置をなぜとっておかなかったか、外務大臣、農林大臣に伺います。
 漁業の点からしても、韓国には漁業資源保護法という、李ラインを裏づける国内法があり、これを改廃する様子は全然ありません。政府によれば、どんなものがあったって、国際法は国内法に優先するから、韓国は協定の相手国である日本に対して、何らの拘束力を主張し得ないのだ、こう言っております。ところが、ちょっと理屈ぽくておもしろくありませんが、国際法と国内法との関係は、法理論として、昔から、国内法が上位であるとか、法域を異にするという二元論もあれば、政府の言う国際法上位論をとる国もあります。新興国、こういうのはナショナリズムが強いから、国内法が上になるのだという見解をとっているところも多いのであります。国家はそれぞれの立場をとれるので、他国の制肘は受けないものであります。こんな法理論を振り回して政治問題を解決しようというのは、これはわれわれは全然説得力はないと思いまするが、外務大臣の御所見を伺います。
 外務大臣は、また衆議院において、韓国の資源保護法は、この安全操業を取りきめた協定ができた以上、適当なときに廃止するのが条約に基づく義務であり、それを期待すると発言しております。かかる条約上の義務ならば、なぜ大好きな条約文に書き入れていないのか。国内法の改廃は韓国の国内問題だから、わが国は関知しませんという従来の政府の説明とも矛盾するのでありまするが、外務大臣の御答弁を伺いたい。
 政府は口を開けば、国際法や国際慣行は尊重しなければならないと言う。しかるに韓国の漁業水域の外側六海里の入り会い権の放棄をいたしております。韓国はその気前のよさにあきれておるようでありまするが、なぜ政府は、世界が長い年月かかってやっとでき上がってきた、この入り会い権というような国際慣行をあっさりと捨ててしまったのか。将来に大きな影響があると思いますので、農林大臣に伺います。
 韓国の管轄権の及ばない休戦ラインの北の朝鮮民主主義人民共和国のほうまで韓国の漁業水域を設定したり、共同規制水域まで合意をしてやっておられまするが、これは韓国が朝鮮の唯一の合法政府であることのかっこうをつけてやるためにやったことかどうか。また、日本漁船がこの方面の専管水域あたりに出漁して事故があった場合、それは韓国政府が責任をとってくれるのか、韓国と話し合えば片がつくのか、その辺のことも伺いたいのであります。
 次に、実質的な点をお伺いいたします。この協定によって日本は大きな漁獲高の影響を受けると思いまするが、その予想をひとつ数字で伺いたいことが一つ。もう一つは済州島付近の漁場であります。ここは黄金の漁場といいまして、済州局のこの左右――東西、ここにはたくさんの魚が集まってまいりまするが、何ぶんにもここには大きな潮流があり、左右に分かれて北進をいたします。ところが、この潮の速さは一時間五ノットもある。まき網で、これは共同規制水域の境目で一番魚がいるというところで網をおろせば、一時間で五海里は向こうの専管水域に入ってしまうのであります。だから、たくられてしまいます。そうすると、たくられないためには、少なくも十海里なり十五海里、あるいは二十海里、相当の距離まで下がって網をおろして、協定線のところで揚げる。風に押し流される、潮に流されるで、しかもこの辺はたくさんの船が込み合いまするから、たいへんな事故が起こってくる。しかも韓国にはみんなつかまってしまう。いい「えさ」になると思うのでありまするが、この辺について十分の対策と配慮を持っておられるのかどうか。また、韓国には魚の冷凍や保存施設も十分でないので、とった魚をそのまま日本の港に持ち込んでくることもあるでしょう。そうなれば市場は撹乱されると思うが、これにどういう手だてがありまするか。
 次に、請求権、経済協力について伺います。
 平和条約四条にちなんだ請求権の解決は、結局どんぶり勘定八億ドルという経済協力に変わってしまったことは事実であります。条約に規定したこの請求権解決の方法というのは一体どこへ飛んでいってしまったのか。また、この八億ドルの積算の根拠は何か。韓国が日本に出してきた対日請求八項目は、政府の計算でもせいぜい五千万ドルとはじいております。それが八億ドルにふくれ上がったのは驚きます。大蔵省、外務省が試算するという五千ドルの根拠と八項目の内容を説明してもらいたい。李承晩大統領が出した七十億ドルの対日請求権の要求は別としても、韓国は大体これ一まで六−八億ドルの線で日本に要求をしております。妥結したところを見ると、ちょうど向こうの数字にぴったり合うのであります。ですから、これはほんとうのつかみ金、どんぶり勘定と見なければなりません。日本側も、個人の請求権はだんだん額を上げて、五千万ドルぐらいあると、当時小坂外相が主張したことがあるらしい。ここに双方の要求額を、日韓交渉以来のものを順序をつけて明らかにしてもらいたいのであります。何年度はこっちは何千万ドル、向こうが幾ら。ことに、韓国が二十八年ごろ、終戦時の評価で九十億円から百二十億円の対日請求権があると言っていたのに対し、三十六年から八年の間に八億ドルにはね上がってきたのは、どういうところをなめられたのか、これらを明らかにするのが国民に対する政府の義務であります。
 アメリカは、三十億ドル以上の経済協力を韓国につぎ込んでいます。たいていの国は、援助というものがありますると、みな立ち直っています。それがなぜできないのかというと、韓国がいたずらに反共を唱えて軍事に狂奔し、アメリカの援助政策もまた軍事中心であったために、経済の基盤が今日までとうとう固まっていないのであります。この誤った考え方の根本を是正して平和共存の方針に切りかえなければ、このわれわれの経済協力は、いっときのささえにしかなりません。日本の財界、産業界は、不況打開のため韓国進出にしのぎを削っております。そして安い労働力に目をつけております。韓国ではこの動きを日本の経済侵略と見ている者が多く、一歩間違えば国交開始前よりももっとひどい状況になります。この面からも条約締結はやめるべしと思うが、外務大臣の見解を伺います。
 政府は、北朝鮮に対する請求権が残ると言っております。残るのはあたりまえであります。日本は平和条約上、全朝鮮と請求権を処理すべき義務があるからであります。北鮮政府とは、いつ交渉をやるのか。双方の請求権はどのくらい残っているか、試算をしたものが当然あるはずでありますから、明らかにしてもらいたい。
 なお、個人の財産請求権の保障については、再再政府から、審議会の答申を尊重するというお話がありますが、この尊重するということは、必ず実行する――お金が大きくちゃ、たまげちまう。そうでなくて、実行してやるのだという御決心があるかどうか、承りたい。
 これで終わりますが、これを要するに、この条約は、いろいろな面で、将棋でいう詰めがなされていない。食い違いが多い。条約交渉の中間報告といったような内容のものであります。基本条約と称せるものではありません。妥協の産物たる条約でありまするから、これが実施された暁には、条約締結の心組みの違いというものが、在日朝鮮人の法的地位や待遇の問題に加えて、ことごとく日本にはね返ってまいることは必至であります。もし、この条約がほんとうによいものであるならば、日本におる朝鮮人がみな韓国籍になだれ込んで入っていくだろうと思います。しかし、約六十万の在日朝鮮人のうち、韓国籍が依然二十万、あとの北鮮系、中立系その他の朝鮮の人々は四十万――動かないのであります。このことが、どういう条約であるかをりっぱに証拠立てているものと思います。
 私は、最後に、この条約はせっかく椎名さんが御苦心しておつけになったが、もはや無効である、こう信じて私は終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(佐藤榮作君) 冒頭に、衆議院における本案件の審議についての御批判がございました。私は草葉君の御意見に対しましてもお答えしたばかりでございますが、今日最も大事なことは、私どもが民主政治に徹するということである、議会政治を守るということである、かように思います。そういう意味におきまして、お互いに十分反省もし、そうして、今日の事態に対しまして、よりよき慣例をつくる、こういう方向で努力いたしたいものである、かように私は思います。
 今日、まだ条約の批准もできていないのに、だんだん大使を交換するとか、あるいは批准日程等について出ることは、不謹慎ではないかと、こういうおしかりを受けました。確かにそのとおりだと思います。しかしながら、事務当局がこれらの点について準備をすることは、これはお認めを願わなければならないと思います。また、それが、最近の新聞関係の連中はたいへん有能でございますから、こういうものをなかなか機密が保てない、そういうところで、ときに先ばしった記事等が出るのでございます。政府自身が国会を無視すると、かようなことはもちろんいたさないつもりでございますし、また、二院制度であります今日におきまして、参議院の良識はこれを十分私どもも尊重してまいるつもりでございますから、こういう点について誤解のないようにお願いをしておきます。
 次の問題は、国家の承認の問題でありますが、申し上げるまでもなく、サンフランシスコ平和条約が発効したとき承認したということになっております。
 なぜ国連総会決議百九十五号を引用したかというのでございますが、これは、韓国の性格をこの引用によって明らかにしておる、かように御了承いただきたいと思います。
 また、国際情勢の変化に伴って、この決議が変わることがある、そういう際はどうするのかということでございますが、まあ、今日の状態でなかなか想定のできかねる問題をお尋ねになりましても、お答えするわけには私はまいりません。
 また、領土、国境は一体どうなっているのか、こういうお尋ねでございますが、この点につきましては、先ほどの草葉君のお尋ねにもあったと思います。一民族が一つの国家を、統一国家を形成するということ、これは、心からその民族の願うところであり、私どももこの民族の悲願を達成さしたい、かように考えておるのでございますが、ただいま朝鮮におきましては、不幸にして二つの権威があるということ、これは百九十五号でもそういうことを認めておるわけでございますが、そういう事態に対しまして善処していくというのが今日の私どものあり方でございます。この点については、草葉君にもお答えしたように、平和条約以来、一貫して韓国と私どもは交渉を持ってきておりますので、この際に、一民族一国家とは申せ、そのたてまえから、ただいまも北との交渉を持つわけにはまいりません。
 また、北との各種の請求権なり、あるいは文化財等の問題、あるいは漁業等の問題につきましてもお尋ねがございましたが、今回、皆さま方の批准承認を求めるというところのものは、北鮮については全然いわゆる白紙でありまして、全然取りきめはしてございません。そして、それぞれの具体的案件につきまして、その具体的事情を勘案して、それに対する対策を立てていく、これも先ほど来申したとおりでございますので、省略さしていただきます。
 次に、もっとスケールを大きくして条約を締結すべきじゃないか、こういうことがございましたが、これは御意見として私も拝聴しておきますが、先ほど来、わが国のアジア外交、また、わが国の国際社会に処して進む方向、これは華葉君にお答えいたしましたので、それに譲らしていただきたいと思います。
 また、椎名君の訪ソの問題についてのお尋ねがございましたが、椎名君と私と、まだ十分それらの点について話し合っておりませんから、新聞記事になりましたところは、政府首脳部が相談をして、そうしてそれが記事になったものだ、かようには御理解いただかないで、ただいま、まだ十分相談をしておらない、かように御了承いただきたいと思います。
 次に、今回の条約が軍事的な協力関係を持つのではないかというお尋ねでございますが、先ほども申したように、軍事的な何らの考え方も持っておらないと、重ねて申し上げます。私ども、憲法からも、また自衛隊法からも、また韓国自身も、今回、日本に対して軍事的協力ということは、国会において説明しておる限りでは、さようなことはございません。これもはっきりいたしておりますので、もしその点に誤解があれば、韓国も同様な考え方をしておる、したがって、これは両国が一致して、軍事的な問題には触れておらないと御了承いただきたいと思います。
 次に、竹島の問題でございますが、竹島の問題については、これが岩礁であろうが、どうであろうが、小さな場所であろうが、私どもは、領土であるという、その立場に立ちまして、国民の非常な関心の深い問題である、かように思っておりますので、私どものかねて主張しておるように、これは在来からの固有の領土である――これは、あらゆる機会に私どもは主張してまいっております。また、この私どもの主張は、ぜひとも相手方も納得していただきたいものだと思います。ただいま、これが紛争であることは、かような意味におきまして、はっきりしておる。日本も固有の領土を主張しておるし、韓国も固有の領土ということを主張しておる。したがって、両国の意見が対立しておるのでありますから、これこそ紛争そのものである、かように私は思いますが、この問題について、将来これをいかなる方向で解決するかということは、外務大臣から説明しましたように、はっきりいたしましたので、今回は、ただいまこれをきめることはできない。私は、しばしば皆さま方に申し上げて、一括解決ということを公約してまいり度した。この意味におきまして、竹島が最終的な解決を見なかったということは、まことに遺憾、残念に思います。しかしながら、竹島を解決する方向、平和のうちに解決する方向、これがきまりましたことは、この意味におきまして、せめて国民に対して御理解を求めることができるように思うのであります。ただいま警察官等が竹島を占領しておるということでございます。これは、国際法上違法なものであることは申すまでもございません。したがいまして、わが国は厳重に重ねてこの抗議を繰り返しておるというのが今日の実情でございます。また、この竹島の帰属につきまして、交渉の途中において、日本政府が放棄したとか、あるいは竹島が韓国であるということを了承したとか、いろいろ言われておるようでございますが、交渉の際にはさようなことは全然ございません。この機会に、はっきり申し上げておきます。日本政府が韓国の領土であることを了承したとか、あるいは日本政府がこれを放棄した、かようなことは全然ございませんから、誤解のないようにお願いいたします。
 次に、文化交流についてのお尋ねでございますが、日韓両国は、御承知のように、歴史的にも、文化的にも、お互いに長い交流を重ねてまいりました。したがいまして、今回の親善友好関係を樹立するに際しまして、この文化交流、これに大いに力を入れ、大事に取り扱っていく考えでございます。森君から、どうもあまりに事務的であり、理想がないじゃないか、こういうような御批判、おしかりを受けたのでありますが、私どもの考え方は、どこまでも両国の文化を大事にしていく、また、その文化の交流を通じて、一そう親善関係を深めていく、かような考え方でございますので、これまた誤解のないように願っておきます。
 先ほど来、北鮮について申しましたように、北鮮については全然触れておりませんから、この点は御了承いただきたいと思います。
 それから、この条約はもはや無効であるというお話をなさいましたが、私は、この条約がいわゆるスタートラインに立っておるのだということをしばしば申し上げておると存じます。なぜ、かような考え方でやっておるかという、これはもう重ねて申さなくても御承知のごとく、終戦後二十年たった、そうして両国に親善関係を樹立することができない、しかも、両国の間においては、漁業上において、しばしば紛争をもたらしておるとか、あるいは多数の韓国人がわが国に在留していて、その法的地位もきまらなく、あるいはまた、これらの生活についての詳細なる話し合いもできておらない、まことに残念でございます。そういう意味から、どうしても親善友好関係を早く樹立したい、こういうことで今回の問題と取り組んだのであります。しかして、大多数の国民、これは、日本におきましても、韓国におきましても、この条約の成立を心から願っておるようでございますが、一部におきましては、これにやはり反対しておられる。その反対の理由が、韓国におきましては、大体韓国が非常に譲歩し過ぎたのではないか、こういう非難から、この条約に反対をしておられる。わが国におきましては、ずいぶん変わった考え方もあるようですが、一部の反対の方々は、やはり日本が少し譲り過ぎたのではないか、こういうことでございます。これは、両国国民において同じような考え方、わが国の立場により有利な、また韓国の止揚に、韓国民としては、より有利な条約を締結してほしい、それは、それぞれの国民の当然のことだろうと思います。ここに私は、十四年の間、長きにわたって妥結を見なかったものが、今日初めて妥協の所産としてこれができたのだ、こういうことが言えると思います。お互いがしんぼうして、そうして譲り得るものは譲り合って、そうしてこの条約が初めてできたと、私は確信をしております。それならば、これよりいいものが、まだできるかということでございますが、私は、今日つくったものが最善のものである、かような確信を持っておりますので、どうか皆さま方の御協力、御賛同を得たいと思います。
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(椎名悦三郎君) 大体総理の御答弁で大要は尽きておりますが、若干補足する意味で、また、私の名前をさしての御質問がございましたので、その点について申し上げたいと思います。
 韓国の憲法には、全半島に及ぶというように書いておるようでございますが、条約を結ぶ場合には、相手方の憲法まで承認するという趣旨ではないのであります。それで、基本条約では、韓国の憲法にどう書いてあろうと、とにかく百九十五号の決議を引用して、その引用された決議の中に、半島の一部、朝鮮民族の大部分、それに有効な管轄権、支配というものが及んだ政府が成立した。それが自由な選挙に基づくものでありまして、さらに、この半島においては、こういったような政府は、これが唯一のものである。こういうふうに書いてありますが、これをそのまま韓国政府の性格として、これを引用して、さらに、その内容については、いろいろな関係協定において、その解明の基礎をなしておる。こういうわけでございまして、韓国と条約を結ぶにあたって、お前の領土はここからここまでであるというようなことを言う必要はないのであります。そういう意味において、これは領域を規定する条文ではなくて、韓国の政府というものの性格を、概括的にこれを引用したというものにすぎないのであります。なお、ただいま申し上げたように、相手国の憲法まで承認するというような義務は、もともとないのであります。さよう御了承願います。
 それから第三条は、これは韓国政府を承認したものではない。韓国の承認は、すでに平和条約発効の際に承認をしております。でありますから、いま申し上げたような韓国の性格を述べておる、こういうのであります。
 「唯一合法」とは何か。これは非常にまぎらわしいじゃないかというような御質問でございましたが、いま申し上げるように、「朝鮮における唯一合法の政権」、こう言うと、非常に内容がばく然としてまいります。しかし、つぶさにこの引用した決議を見ますというと、半島の一部に朝鮮人民の大部分が住んでおって、それに対して有効な支配と管轄権を及ぼし得る政府ができたのだ、こういうことを言っていますから、そういう意味の「唯一合法」、こういうことでございますから、おのずから内容はしぼられておる。この点をひとつ御了承願います。
 それから、条約が発効して、両国の間に友好的な雰囲気が醸成されたという時を待って、この紛争の処理、すなわち竹島の紛争について解決をはかる。これは一体、向こうと取りきめたことであるか、それとも希望であるかということでありますが、ここらは、なかなかむずかしいところでありまして、この点を十分に心得ておいて、そうして、かような取りきめができたものであるというふうに御了承を願いたいと思うのであります。その問題について、それじゃ明確な取りきめがあるかと言いますと、刑にそれについて、「とこにそうろうをつけべくそうろう」といったような、そういうことは番いてありません。書いてありませんけれども、その点は十分に審議を重ね、十分な了解のもとにこういう文言ができておるのでありますから、われわれは、希望といえば希望、期待といえば期待かもしらぬが、確信をもって期待する、こういうふうに考えております。
 それから漁業の保護法が向こうに残った場合に一体どうかということでございますが。御指摘のとおり、韓国の国内法について、とやかく言う権利はございませんが、条約を円滑に施行し、これを守る意味においては、さような措置をとることをわれわれは強く期待しておる、そういう意味で申し上げた次第であります。
 それから経済協力が逆に経済侵略になるおそれが十分にあるということをお説きになりまして、そういうものはやめたらどうかというような、御意見か御質問かよくわかりませんが、これは、向こうは、りっぱな主権国でありまして、もしさようなことがあれば、向こうは、いかなる強制権も行ない得るのであります。少なくとも、韓国内において行なわれることにつきましては、十分な主権を行使することができるものでありまして、さような心配は全然無用であると私は考えております。
 それから請求権の問題に関して、請求権の行くえはどうなったか――八項目の提示がありましたけれども、それを追及するということは、ほとんどもう不可能である。ということは、法的根拠なり、あるいは事実関係というものがはっきりしなければならぬ。ところが、もう朝鮮事変がその間に起こっているし、年月もたっている。それから、両者の法的根拠に対する見解の相違というものは非常に著しいものがあり、これを追及するということは、ほとんどもう百年河清を待つようなことになりますので、これをやめて、そうして経済協力一本でいくということになったのでございますが、これは、請求権のかわりに経済協力をやるというのではない。これはあくまで、新しい国をつくったから、そのお祝い、それから、韓国が今後経済発展の上において少なくとも絶対に必要であろうという点を十分に勘案し、わが国の財政事情も十分に考えた上で、有償二億、無償三億ドルというものが決定したのであります。これは、イギリスあるいはフランスが、旧属領が独立して国をつくる場合に、よくこういう手をやったのであります。これは私は、旧宗主国の当然の義務、責任であろう、かようにまあ考えておる次第でございます。
 以上が私の申し上げる点でございます。(拍手)
   〔国務大臣中村梅吉君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。文化協定の前段のほうにつきましては、総理からお答えがございましたので、私は文化財について申し上げたいと思います。
 まず、今度の文化財引き渡しは、引き渡しか返還かと、こういうお話でございましたが、協定に明記されておりますとおり、引き渡しでございます。ただ、ここに至りますまでに、韓国側では返還ということばを要求し、こちら側は、返還の義務は筋合いではないから贈与しようというようなことで、しばらく折り合いがつきませんでしたが、相互に、そういうことにとらわれないで、引き渡しということで妥結をしようというので合意をいたしまして、明らかに協定にございまするように、引き渡しでございます。
 それから、文化財引き渡しについて何か基準があったのかというお説でございましたが、これは格別、基準があったわけではありませんので、相互の話し合いの結果、この引き渡し点数及び品目が決定いたした次第でございます。しいて腹づもり的のことがあるとすれば、日本側としまして、こちら側の腹づもりといたしましては、韓国に同種類のものがもあるものは、しいてそう返さなくてもよろしいじゃないかということで、日本にあるもの、あるいは韓国側で引き渡しを求めておるもので、同じ種類のものが韓国に現に存するものは、そちらはそちらで文化財の研究ができるのだから、よろしいじゃないかということで、こういうものを避けましたわけでございます。その結果がああいう品目になった次第でございます。
 なお、この中に、国宝及び重要文化財がないではないかということでしたが、これは故意にこうしたわけではありませんで、いま申し上げたような腹づもりで折衝しました結果妥結に達した品目のものにつきましては、国宝あるいは重要文化財に指定されているものは一点もございません。
 なお、今度の引き渡し品目について、韓国に由来するものであるということであるから、今後北鮮の要求があったらどうするかというお尋ねでございましたが、これは、いま北鮮とは、そういう問題が起こっておるわけでございませんので、目下のところ、われわれとしては全くの白紙でございます。
 なお、さかのぼりまして、昭和三十三年に百六点ほどの無償引き渡しをしておるという問題について言及がございましたが、この当時は、御承知のとおり、抑留日本人漁夫を何とか送還をしてもらいたい、日本にも非常に切実な問題をかかえておったわけです。かたがた、日韓交渉のまことに難航をしておった最中でございますので、両国間の友好関係に若干でも寄与するようにということで、当時百六点ほどを選びまして無償引き渡しをいたしましたような次第で、その後、これらの品物が韓国側でどういうように保管され、どう処置されておるかということにつきましては、実は、いままで国交も正常化されていない段階でございますから、私どもは、つまびらかでない次第で、今後国交が友好化されるならば、こういう点についても、せっかく引き渡した文化財でございますから、これらがどうなっておるかは、われわれのほうでも検討いたしたいと思いますが、現在では、つまびらかになっておらないというのが現状でございます。
 以上、お答えを大体終わったと思います。(拍手)
   〔国務大臣坂田英一君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(坂田英一君) 漁業問題について四点ばかりお答え申します。
 アウター・シックスの出漁権を放棄した理由いかん、こういうのが一つ。漁業協定において、日韓両国とも十二海里までの漁業水域を設定することができる旨を合意したんでございまするが、その際に、わが国といたしましては、この漁業水域のアウター・シックスの出漁をいたさないことにいたしたわけでございます。それは、漁業協定の交渉にあたりまして、李ラインの実直的撤廃、それから操業実態の尊重、それに、まあいわば漁業の資源の保護的処置といったような問題に主眼を置いておったわけでありますが、大体においてその目的を達成できた考えでありまするので、大局的見地から、これらの問題は、韓国の特殊事情を見まして、出漁しないということにいたしたような次第でございます。
 それから第二番目の点でございまするが、済州島東西の水域は非常にいい漁場であるが、この水の流れが非常に速い。そこで、操業上非常に因る問題であり、何らかの処置ができなければならぬじゃないかという、そういう問題でございまするが、ごもっともなことでございます。元来、この済州島と韓国の本土との間の関係を、低潮線のいわゆる十二海里によってその線を引くことにきまったわけでありまするけれども、それをやりますというと、その外郭線の間に非常に深い切り込みができる、それらを残しておいては、かえって初めの閥紛争の種になるのじゃないかという問題と、また、韓国のいろいろの事情等をも勘案いたしまして、暫定的にそれらを韓国の漁業水域にその一部を入れることにいたしたわけでございます。そういう関係でありまするが、いまお説のとおり、非常に速いのでございまして、その地帯における操業関係は、十分これはひとつ考えなければならぬのでございます。元来、民間漁業協定の話し合いというものを準備中でございまするが、そういう問題を主として調整をとっていく考え方をもって進んでおるわけでございます。
 それから、共同規制水域における漁獲高は具体的にはどういうふうになっておるかという意味の御質問であったように思うのでございます。これは、共同規制の対象となっておりまする漁業の年間総漁獲量は十五万トンでございます。それに大体一〇%の許容量、したがって、最高限度は十六が五千トン、まあ内訳を申しますと、(「内訳はよろしい」と呼ぶ者あり)よろしゅうございますか。(笑声、拍手)そういうわけでございまするので、この合意されました漁獲量は、必ずしも協定上の規制となっておるものではないのでございまして、協定上は、最高出漁隻数をもって規制をいたしておるのでございまするが、この漁獲量は、その場合の指標となる数字というふうにいたしておるわけでございます。この漁獲量を取りきめるにあたりましては、わが国漁業の実態を考慮いたしまして交渉を行ない、おおむね国内としては実績に近いものでありますることを申し上げておきます。
 それから第四番目には、冷凍施設に乏しい韓国でありますから、生鮮魚そのものがわが国の市場に入ってくるということはお説のとおりでございまするが、今後これらの量が多く入ってくることは、これは将来ますます多くなると思うのであります。今後、これらの問題に対する対策といたしましては、輸入割り当て制度の適宜の運用、それからして、やはり韓国の冷凍、冷蔵施設等の充実を通じまして悪影響の防止をはかってまいる、そうして、ともどもに発展するように進めてまいりたいというふうに考えておる次第であります。(拍手)
   〔森元治郎君発言の許可を求む〕
#28
○副議長(河野謙三君) 森君、何ですか。――答弁漏れがありますれば、自席において御質疑願います。
   〔「登壇々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
   〔森元治郎君登壇、拍手〕
#29
○森元治郎君 総理大臣に、けさの新聞に出ているソビエトとの外交調整についての私の質問があったわけですが、あれについて、もう一回答えていただきたい。
 それから、朝鮮が二つの国家であるのか一つの国家であるのか、あるいは台湾のように、台湾だけを限定承認するという方式もあるが、一体どっちの考えと見たらいいのか、非常に政府の説明がわからないから伺っているのが一つ。
 もう一つは、文化財というものを、昔の植民帝国の国が略奪して、ロンドンとかどっかへ持っていったものを、これはやはり現地のほうに返してやるのが順序じゃなかろうかということであります。
 それから、外務大臣に、相互の請求権の金額を、過去から今日まで、順番に出してもらえないか、知らしてもらえないか、こういうことを伺ったのであります
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(佐藤榮作君) 重ねてお尋ねがありましたので、お答えいたします。
 まず第一は、二つの国家か一つかというお尋ねでございますが、これは、お答えいたしましたように、私どもは、サンフランシスコ平和条約以来一貫して韓国と交渉を持ってきた、北とは全然交渉を持っておらない、この事実を申し上げておきます。もう一つは、同一民族は単一国家でありたいという、これは民族の悲願であります。また、それを実現すべくわれわれも協力しておるのだということを申しました。ただいま、そういう関係にございますので、二つの権威があるかないか、こういう問題は、この条約の内容からも、二つの権威のあることは一応考えておるのだということは、おわかりになるだろうと思います。また、北のほうに関しては、一切、今回は交渉したわけではないのだということも、はっきり申し上げましたので、誤解はないように願いたいと思います。こういう、分裂国家とでも申しますか、単一民族が二つの権威をつくった、こういう国は朝鮮ばかりじゃございませんが、そういうところにおきましては、南を承認した国は北を承認しておらない、北を承認した国は南を承認しておらないというのが、これが今日の国際慣行になっております。したがいまして、七十二カ国が韓国を承認いたしておりますが、この七十二カ国は北を承認いたしておりません。二十三カ国は北を承認しておりますが、この二十三カ国は南を承認しておりません。したがいまして、ただいまのような形式的な、二つの国か、あるいは一つかということは、実際問題として処理する場合には、あまりに観念的な議論である、かように私は思います。
 次に、第二の問題で、ソ連についてのお尋ねでございます。私は、外務大臣がモスコーに行くという記事を見ました。今日、日ソ間の関係は、領事条約を結ぶとか、あるいは日ソ航空協定を結ぶとか、よほど親善関係が深まりつつありますが、しかし、この際に外務大臣がソ連に出かけるという記事を見まして、このことのお尋ねではなかったかと、かように思いましたから、まだ、私と外務大臣とでは、これを話し合っておりません。したがいまして、ただいま申し上げるような事態でないということをお答えしたつもりでございます。ただいま申し上げるように、両国の関係におきましては、いろいろ密接に親交が深まりつつある。まだ領土問題――国後、択捉、あるいは歯舞、色丹、あるいは安全操業等々の点につきましては全然交渉はございません。このことは、はっきり申し上げにおきます。
 その次には、植民地と旧宗主国との関係において、宗主国は文化財等を、植民地が独立した場合に戻すべきではないかというお尋ねでございます。私は、いわゆる法律的な義務、こういうようなものはないと思います。しかしながら、韓国と日本の場合におきまして文化財を返すこと、これは申すまでもなく、両国間のこれまでの文化交流、これを二つ考える。またもう一つは、韓国が南北問題――朝鮮事変等で文化財等も烏有に帰している、荒廃したと、こういうような意味で、わが国にある国有のもので、これは韓国の歴史を語るとか、あるいは過去の文化、これを国民に、示すと、こういうような意味におきまして意義のあることだと、かように思いますので、日本は今回の交渉におきましても、日本の文化財、それが国有であれば、その一部を返すことにきめたわけであります。また、民間におきましても、こういう事柄につきまして積極的に協力したいという、これは民間団体からもそういうような申し出があります。私は、両国の親善友好のためにたいへんいいことだと、かように思っております。ただ、この問題は、一般的には、法律的な責任があるとか、こういうものでないことを重ねて申し上げておきます。
 それから、請求権の金額の全額、これを明確にしろということでございますが、今日までこの請求権の金額等を明確にする実は資料等が十分ございません。また、在外資産――私ども日本人の持っていた私有財産等の金額がどうなっているか、こういうようなお尋ねもしばしば聞くのでありますが、これまた、そういうものを説明するはっきりした証拠書類といいますか、そういうものはない。非常に材料が不十分でございます。したがいまして、これもお答えすることができません。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○副議長(河野謙三君) 黒柳明君。
   〔黒柳明君登壇、拍手〕
#32
○黒柳明君 私は、公明党を代表いたしまして、議題になっております日韓条約及び関係案件について、若干質問したいと思います。
 まず第一に、これは特に大切な問題でありますので、重ねてお尋ねいたしますが、衆議院日韓特別委員会及び本会議における自民党の強行採決について、政府の見解をお伺いしたいと思います。
 新聞報道によりますと、田中自民党幹事長はこう言っております。「二院制を、憲法、国会法のたてまえからすなおに理解してもらいたい。極端にいえば、参議院は一日でも二日でも議了できるのだ」、これは驚くべき暴言であります。(拍手)いやしくも、国会議員は、憲法の基礎である国民の主権により、国民の信任を受けて国会に集まっているものであります。その討論が一日で済むか、一カ月で済むか、あるいはそれ以上かかるかは、政府・与党の独断できめることではなく、十分な討議の結果として、きまるべきものであります。さもなくして、どうして国民の信頼にこたえることができましょう。ところが、政府のとった態度は、単に参議院全体を無視するものであるばかりでなく、法を悪用して議会政治を踏みにじるものであり、憲法の基礎である国民の主権を踏みにじり、国民の信頼を裏切るものであります。また、国会法の諸条項に照らしてみて、この強行採決は、明らかに無効であると言えます。佐藤総理も、一日や二日で、はたして本条約が議了できると思いますか。参議院というものを、そのように、どうでもよいものだとお考えになっているのか、お答え願いたい。
 次に、特別委員会強行採決に至るまでの衆議院の審議を見ますと、あまりにも期間が短か過ぎます。たとえば、一九六〇年の安保改定を審議した国会議事録をごらんなさい。安保条約と地位協定が国会に提出されてから足かけ四カ月、三十七回の委員会が開かれて、審議を尽くしております。ところが、日韓条約の場合はどうでありましょうか。政府は、数多くの討議に必要な資料さえも提出せず、質問に対しては、はぐらかすことばかり熱心で、まともに答えようとせず、実際に審議が行なわれた期間も、わずかに八日間にすぎないのであります。しかも、ようやく審議が軌道に乗り出し、きめこまかな、国民生活に触れるような質問がこれから出るであろう、そういうときになって、前回の各党間の約束を無視して、いきなり二分間で強行採決が行なわれたのであります。しかも、衆院での審議は尽くされたと思う、参院ではさらに慎重審議したい、こう言うに至っては、全く国民をばかにしたものであります。(拍手) 佐藤総理みずからが謙虚なる態度を示さぬ限り、国会の審議は不可能になるものと思うのであります。この点について、はっきりした答えをお願いいたしたい。
 次に、本条約の根本的問題について質疑したいと思います。
 佐藤総理のスローガンである日韓友好の基本姿勢についてであります。それを最も端的にあらわしているのは、日韓基本条約第二条の、旧条約問題についての佐藤総理や椎名外相の考え方であります。そもそも、この旧条約問題とは、明治九年の日韓修好条規から明治四十三年の日韓併合条約に至るまでの数十件の条約、協定、議定書などを、どのように評価するかという問題であります。つまりこれは、日本が朝鮮を植民地化したという歴史的事実を、今日現代の世界の良識から見て、いかに評価すべきかという問題であります。この評価の態度においてこそ将来の友好の基礎となる問題であります。この過去の歴史をいかに考えるかという思想が、たとえば請求権の扱い方、経済協力の方法、在日韓国人の処遇など、これからのさまざまな具体的な問題の根本的な性格をきめるのであります。
 そこで、政府の思想を検討してみたいと思います。まず、外交責任者である椎名外相は、その著書の中で、朝鮮、台湾、満州の植民地化を「榮光の帝国主義」とたたえているほどでありますから、これは論外で、いまさら検討の要もないと思います。最も肝心なのは、最高責任者である佐藤総理の考えであります。総理は、さきに衆院の日韓特別委員会で、旧条約は「対等の立場で、自由な意思で結ばれたと思う」と答えております。現在でもその考えに変わりはないか、お答え願いたい。つまり、旧条約調印にあたっては、わが国の武力、威圧により、朝鮮が屈した実例が幾多あるのでございます。これは、将来の友好の基礎となるべき思想の問題であり、世界観の問題でありますから、まじめにお答え願いたい。
 次に、文部大臣にお願いいたします。大臣は、朝鮮の植民地化というものが、日本側の軍隊による圧力もなしに、これに対する朝鮮民族の抵抗もなく、あくまでもお互いに対等に自由な意思で行なわれたとお考えになりますか。歴史的な事実を根拠にしてお答え願いたい。また、文部大臣は、一九六〇年十二月十四日の国連総会で、すでに日本政府も賛成している「植民地諸国、諸人民に対する独立付与に関する宣言」という現代の世界の良識に照らして、朝鮮民族の過去の独立運動は正当なものであったか、それとも不当なものであったかを、はっきりお答え願いたい。これは、日韓両国の次の時代を背負う子供たちの教育にも関係のある、きわめて重大な問題でございます。
 次に、同じ問題について法務大臣の見解をお伺いします。その根本的な思想こそは、直接に日本民族と朝鮮民族が触れ合う問題、たとえば在日韓国人の国籍問題の扱い方、あるいは強制退去の方法などにも、本質的関係を持っているのであります。
 次に、同じ問題についての見解を通産大臣にお伺いします。大臣は、今日の対韓経済協力が、再び過去のような経済侵略にならないと保証できますか。この問題は、今日、日韓両国の一般国民のみならず、両国財界にも強い心配の声があるのであります。通産大臣は、過去の日本が朝鮮経済を植民地化した歴史についてどうお考えですか。また、これからの対韓経済協力が経済侵略にならないように、どんな対策を具体的に考えておられますか。それは経済協力協定の中に十分に明文化されてありますか、お答え願いたい。
 われわれは、これまでの政府答弁から判断して、佐藤内閣が真に日韓友好を考えているのかどうかに深い疑いを持っております。その意味で、佐藤内閣の唱える日韓友好の基本姿勢を確立していただくために、日韓基本条約第二条にいうところの旧条約を、全部討議資料として検討することを確約していただきたい。それは、昭和九年三月、外務省条約局で出した「旧条約彙纂」第三巻「朝鮮及び琉球之部」に全部含まれているはずでございます。そうして、その各条約について、その締結状況を外務省や総督府の資料によって調査し、歴史専門家たちの見解も聞いた上で、はたしてそれが、これまでの政府答弁のように、対等自由な意思で結ばれたものであるかどうか、佐藤総理並びに各大臣に確かめていただきたいのであります。われわれは、真実の意味の、日本民族と朝鮮民族の将来の友好のために、現代に語りかけている歴史の声を、すなおに再検討してみる必要があると思うのでございます。そういう誠実な道徳的な作業なしには、日韓基本条約第二条についての政府見解がはたして正しいかどうか、審議することはできないのであります。
 次に検討しなければならないのは、政府の唱えている国連中心主義のほんとうの意味は何であるかという問題であります。この問題は、今後の日韓関係を考える場合に、ぜひとも明らかにしておかねばなりません。なぜならば、日韓基本条約の前文と第四条では、日韓両国が国連憲章の原則によって協力することを繰り返して誓約しているからであります、その約束によって、今後日韓両国民が縛られていくのであります。韓国は国連加盟国ではありませんけれども、韓国政府は国連の朝鮮問題決議に忠実に従うことを義務づけられているのであります。日韓基本条約は、一九四八年十二月十二日の国連決議をよりどころにしておりますが、国連加盟国もまだ少なかった。こういう昔の決議には、今日いろいろ問題があります。したがって、十分な検討が必要となっています。具体的には、一九六三年十二月十三日、第十八回国連総会の決議十八号、さらに、そこにおいて再確認されている諸決議などを全文検討した上での条約であるか、お伺いしたい。なぜならば、政府は、それらの決議に、国連方式尊重の立場から賛成しておられるからであります。また、その内容を政府は出然国民に報告する義務があります。そういう当然の義務を果たさないでおいて、ただ頭から、政府のいう国連方式による協力を国民に押しつけるようなやり方は、民主主義の国においては許されません。それでは国民は、国連憲章の原則による協力をしろといわれても、何のことか、さっぱりわからないのであります。そういう資料をしっかりと検討した上で、初めて国民は、政府のいう国連方式が、はたして真の国連憲章の原則にかなっているかどうか、判定を下すことができるのであります。
 また、衆議院における外務省の答弁によりますと、日韓基本条約にいう国連憲章の原則とは、憲章第七章にいう強制措置、すなわち軍事問題ではなく憲章第一章第二条の原則のことだとのことでありますが、この原則は七項目ほどあるはずでありますから、それを、一つ一つの項目について国民の前にはっきり説明していただきたい。そうしてこそ初めて、政府は国民に対して国連憲章の原則による協力をお願いすることができるのであります。それが民主主義というものであります。憲章第一章第二条の第五号では、国連軍への援助を要請し、第七号には第七章の国連の強制措置が規定されております。しかも、日本は「日本国における国連軍の地位に関する協定」や、「吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文」によって、在日米軍が朝鮮に対して行なう戦争の場合に、基地、資材、労力などによる協力を約束しており、しかも、韓国軍は在韓国連軍の指揮下にあります。すなわち、憲章第三十九条に基づく在韓国連軍の軍事行動との関係が出てまいります。このような米・日・韓三国の関係について、特に外務大臣の十分な説明をお願いいたしたいのであります。
 政府は、これまで国連中心主義を日本の国是としてきたわけであります。そのくせ、政府代表が国連総会でどのような活動を行なっているかについては、国会に満足な報告をしたこともありません。今度の第二十回総会からは、ぜひとも国会に詳しい報告を行なっていただきたいと思います。中国代表権問題、朝鮮問題、核拡散防止問題など、日本の対アジア外交と国民生活にも深いかかわりを持つ重大問題が国連では扱われており、それについての政府の活動報告さえも、ろくに行なわれないということでは、国民は、政府のいう国連中心主義の内容がわからないのであります。実のところ、これまでの政府の国連中心主義は、実は、アメリカ追従主義の別名にすぎないのであります。政府は、今後、この国連における活動を常に国民の前に報告して、検討を仰ぐという姿勢が必要であります。そういう国民に対する謙虚な姿勢もなしに、ただ政府の判断した国連中心主義を国民に押しつけることは、国連憲章の大目的である「人民の同権及び自決の原則」にも反すると思うがどうか。総理のお考えを承りたい。
 以上、参議院での慎重審議を約束した政府の立場として明快なる答弁をお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 第一の、衆議院の審議の問題につきましては、もうすでに前二人の質問を受けまして、私お答えいたしましたので、重ねてお尋ねがございましたが、重ねてお答えすることだけは省略させていただきたいと思います。ただ、私は、この問題で重ねて申し上げますが、ただいま最も大事なことは、私どもが民主主義を守り抜くこと、同時にまた、議会制度、議会主義制度に徹することだ、かように思いますので、この点を重ねて申し上げます。このことは、法規、先例等を尊重することはもちろんでありますが、同時にまた、多数決の原理を尊重しない限り議会制度は守れない。この点をはっきり申し上げておきます。
 次に、衆議院における審議がたいへん短かったと、こういうお話でございます。確かに、会議を開きましたのは八日間であった、かように思いますが、しかしながら、特別委員会を設置して以来二十日間を空費いたしました。二十日も空費しておいて八日であった。何のためにこれは審議期間が短いか、(拍手)かようなことは私はたいへん問題だと思います。皆さま方にも、やはり同じように有効にこの審議期間を使うという態度であってほしいと思います。私は、今回のこの特別委員会の設置等につきましても、各党で非常に慎重に考えられ、また、相互に忌憚のない意見を述べられたのだと思いますが、今日までこの審議が始まらなかったということは、私は、参議院でありますだけに、非常に惜しまれてならないのであります。(拍手)どうか、この上とも審議を尽くす――政府の考え方を了とせられて、各議員の方々が審議を十分尽くすと、こういうことで御協力を願いたいと思います。
 また、田中幹事長の話を引き合いに出されまして、この種の暴言、これをおしかりを受けました。私は総裁といたしまして、幹事長につきましても、ただいまの御叱正を十分伝え、今後の反省のかてにいたしたい、かように思います。
 その次に、旧条約の問題に触れられましたが、これは私が申し上げるまでもなく、当時、大日本帝国と大韓帝国との間に条約が結ばれたのであります。これがいろいろな誤解を受けておるようでありますが、条約であります限りにおいて、これは両者の完全な意思、平等の立場において締結されたことは、私が申し上げるまでもございません。したがいまして、これらの条約はそれぞれ効力を発生してまいったのであります。これらの問題が、この基本条約第二条によりまして、もはや効力を失ったと、こういうことが規定されておるのであります。それらの点については、詳しくは外務大臣からお答えをいたさせたいと思います。
 最後に、自民党がいつも国連中心主義と、かように唱えておるが、国連中心主義とは一体何かと、こういうお尋ねであります。このこともしばしば申し上げたところでありますが、今日国際の平和機構としては、たよりになるものは国連でございます。現在の機構あるいは機能、それぞれが万全だとは私は絶対に申しません。しかしながら、国際的な平和機構として国連を尊重していく。また、その足らないところは、お互いの力によりまして改善もしていく、そうしてりっぱな国際的な平和機構として重きをなすように国連を取り上げていきたいと、かように思うのであります。ことに、私どもは、憲法のもとにおきまして、国際紛争は一切武力を用いない、こういうことを国民とともに誓った国でございます。世界に誇るべき憲法の精神、その精神から見ましても、ただいま申し上げるこの国連を、国際平和機構として、唯一の平和機構として、これを権威あらしめるということに最善を尽くしてまいりたいと思います。
 また、国連憲章の第二条の規定については、これは詳細に外務大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(椎名悦三郎君) 基本条約第二条についてやや補足いたします。
 これは、従来の日韓間に締結された旧条約、それに対して、客観的にもはや無効であるという事実を宣言したものでございまして、これらの条約がしからばいつ無効になったのかという問題が残るのでございますが、日韓間の併合条約は、一九四八年八月十五日、すなわち朝鮮が日本の支配から離れたとき、すなわち韓国が独立を宣言したその口から失効したという解釈をとっております。それから併合前の諸条約は、それぞれ条約の所定の条件が成就した際に失効し、あるいはまた、併合条約の発効に際して失効するという解釈をとっております。
 それから、国連憲章第二条の各項目についての御質問でございましたので、それを逐一御説明申し上げます。御指摘のとおり、一般に国連憲章の原則とは、憲章第一章の第二条に規定された七項目を意味しておるのでありまして、国連自身及び国連加盟国の国際問題処理の基本を規定したものであるのであります。
 第一項目は、加盟国の主権平等をうたっております。いかなる国も、国連加盟国は主権平等であるという原則を打ち出しております。第二項は、国連憲章に基づく各加盟国の義務が規定されておるのでございますが、これは義務を忠実に実行すべきこと、これが第二項であります。
 それから国際間の紛争、これはあくまで平和的に処理すべきことである。これが第三項であります。第四項は、兵力の使用の制限でございまして、加盟国は、他の国の領土保全と独立に対して、兵力による威嚇とか兵力の現実の使用、そういうものは絶対に避くべきである、こういう事柄が規定してあります。すなわち、実力をもって威嚇する、あるいは実力を行使して領土を侵害し、独立を侵害するということは絶対にいけない、これが第四項であります。
 第五項は、国連が憲章に基づいてとる行動に対しては、各加盟国は援助を与えるべきである、こういうことが規定してあります。
 第六項は、平和と安全を維持するために非加盟国との協力を確保するように努力すべきである。加盟しない国とも、平和と安全の維持のために協力を惜しまない、そういう点を強調しておるのであります。
 最後に、第七項目といたしまして、国連は、加盟国の国内問題に互いに干渉してはいかぬ、国内干渉は禁止する、こういう点を強調しておるのであります。これが国連憲章の原則である。
 なお、ついでをもって申し上げますが、現実問題として、これだけでなかなか済まぬ場合がある。外部から思いがけない侵略をこうむる場合もある。そういう場合には、相手方が全然国連憲章の原則を無視して行動するのでございますから、これに対してはやはり有効な措置を講じなければならぬ。これがすなわち、個別的あるいは集団安全保障の行動をとって、そうして自衛権を行使することができるという国連憲章第五十一条の規定に該当するようなわけでございまして、原則は原則であるが、特殊の場合に対する適当なる行動というものは、また別に定めてあるのでありますが、これは普通に言う国連憲章の原則というものではないと、こういうことを御了解願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣中村梅吉君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(中村梅吉君) 私の見解を求められた点は二つあったかと思いますが、その一つのほうは、すでに総理、外務大臣からお答えがございました。すなわち、日韓の併合条約、これらは対等の立場で、自由の意思で結ばれたものと思うかどうかということでございましたが、総理、外務大臣からお答えがありましたとおり、私も同様に考えておりますので、省略をさしていただきます。
 次に、韓国における独立運動というものが正当と思うか不当と思うかと、こういう趣旨のお尋ねでございます。これは、見方によっては非常にいろんな問題があると思いますが、合併をされたり植民地化されたりしたところの地域の民族が、一つの民族意識として独立運動を起こす、あるいは独立運動をやるというようなことは、これは正当とか不当とかの問題ではなくして、常にあり得る、これは同然発生的なものであると思います。そこで、昔日の――その当時ならばいろんな考え方があったと思いますが、すでに今日では、一九六〇年の国連総会におきまして、「植民地諸国あるいは諸人民に対する独立賦与に関する宣言」というものが行なわれている。わが日本国もこれに対しては賛同をいたしておりますから、この国連の宣言の趣旨から見れば、韓国における独立運動というものは妥当なものであったと、こうわれわれは見るのが正しかろうと、かように私は考えております。(拍手)
   〔副議長退席、議長着席〕
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(三木武夫君) 黒柳君は、経済協力が経済侵略の事態を生じないかという御心配からの質問が私にございましたが、御承知のように、経済協力の協定の第一条に、供与とか貸し付けは韓国の経済の発展に寄与するものでなければならぬということが、基本的な理念として規定をされておるのでございます。したがって、そういう基本的な理念に従って、韓国から実施計画が出るわけでございます。この韓国の意向は尊重をいたしたいと考えております。そこで、韓国から実施計画が出れば、日本の政府と協議をして、そうして政府の認証という段階を経て具体化されるのでありますから、経済侵略というものが生じる事態はないのでございます。ただ、日韓の両国の間には、いわゆる併合時代のこともございますから、できる限り細心の注意を払って、経済協力が経済侵略の誤解を生じないようにわれわれは努力をいたしたい所存でございます。
 また、併合をどう考えるかということは、総理大臣のお答えのとおりに考えております。(拍手)
  〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(石井光次郎君) 朝鮮の民族独立運動についてどう考えるかという問題――ただいま中村文部大臣からお答え申し上げました一九六〇年の国連の宣言にもありまするとおり、また、国連に日本も加盟をいたしておりますので、私どもも同様な考えを持っておるわけでございます。過去におきまして、日本と朝鮮との間には不幸な関係があったことは、いなめないことでございましたが、いまや、日韓協定が結ばれまして、韓国の独立を祝福しながら、日韓双方が善隣関係に入ろうとしておることは、まことに喜ばしいことでございまして、どうか、これからこれを出発点といたしまして両国関係がうまく進んでいくことを、私どもは期待しておるわけでございます。(拍手)
   〔「答弁がある」「議事進行」「通告順だ」「議長何してるんだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
    ―――――――――――――
#38
○議長(重宗雄三君) 向井長年君。
   〔「議事規則でやってください」「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
#39
○議長(重宗雄三君) 演壇におられる議員は各自の議席にお着きください。――降壇を命じます。命令します。――衛視の執行を命じます。
 向井長年君。
   〔向井長年君登壇、拍手〕
#40
○向井長年君 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました日韓条約並びに関係法案等につきまして、基本的な問題に対して若干の質問をいたすものであります。
 質疑に入る前に、本案は、わが国にとってまことに重要な問題であり、国民の前に利害を明らかにし、慎重に審議しなければならないのにもかかわらず、さきに衆議院での自民党のとった暴挙は、いかなる理由があろうとも、われわれは断じて許すべからざるものであります。なお、本院においても、本日まで長期間空費し、審議を遅延したこと、並びにただいまも議長が衛視に執行を命じたような、こういう事態をたびたび生じたことは、まことに残念であり、遺憾としなければならぬと思います。常に良識の府といわれておる本院においては、国民の負託にこたえるためにも、また、本院の権威を保つためにも、今後審議半ばにおいて、質疑打ち切り、強行採決のごときは、断じてやるべきでないことを強く付言するとともに、かりそめにも、自然成立に追い込むがごときは、本院の威信をみずから失墜さすものといわざるを得ません。したがって、審議を十分尽くし、問題点を明らかにし、国民の納得のいく正常な運営をされるよう、本案に対する取り扱い上の問題として議長に強く要望するとともに、特に自民党佐藤総裁に対しましても、総裁の決意もあわせてお伺いいたしたいと存ずる次第でございます。
 われわれ民社党は、これまで日韓両国間に横たわる幾多の懸案事項を解決し、その友好関係を増進するために、国交の正常化をはかることに賛成の態度をとってまいったのであります。(拍手)
 その理由の第一は、すなわち、隣国との友好関係の樹立こそ、わが国の自主的かつ平和的外交の基本であると確信するからであります。隣国との国交は常にこれを閉ざされてはならないというところの外交の鉄則は、日韓関係についても当然であり、不動の真理でなければならぬのであります。われわれが真の平和を求め、他の国との友好を求めるならば、まず隣国に対しては、その政治体制が自由主義あるいは共産主義のいずれの国であろうとも、進んで国交を開き、善隣友好の関係を実現することが、わが国外交の第一歩でなければなりません。われわれの基本的態度は、隣国でありながら共産国家であるという理由をもってこれを敵視し、これらの諸国との国交をかたくなに閉ざさんとしているところの政府自民党の外交路線とは、根本的に相違するものであります。
 第二は、日韓の正常化がわが国の安全保障に重大な意義と価値を持つものと判断するからであります。わが国の平和的存在を保障する基礎条件は、まず、わが国を取り巻く隣国が、その信条や政治形態のいかんを乗り越えて、お互いの国が信頼し、自由と平和に徹した国家として発展する状態が確立されることであります。次には、現実に当面する国家的、民族的利益をいかに守るかということでなければならぬのであります。一九五一年、韓国において李承晩ラインが一方的に設定されて以来、韓国側によるわが国の漁船の拿捕は実に三百数十隻に及び、約四千名の漁民が不当に抑留され、しかも二十数名のわが国同胞が命を失っているのであります。抑留漁民の家族の悲惨さは多言するまでもありません。また、わが国には、一般概念の外国人でもない、日本人でもない在日朝鮮人が、約五十八万人在留いたしております。それらの人々は年々増加し、わが国にとっては最も憂うべき少数民族の禍根をつくり出しつつあるのであります。これらの問題を一刻も早く解決し、わが国の民族的利益を確保することこそ、わが国外交の重大な使命でなくて、一体何がわが国の外交でありましょう。われわれが日韓正常化に基本的に賛成してまいりました立場は以上の理由に基づくものでありますが、日韓交渉はまれに見る曲折と波乱の外交交渉であり、十四年の折衝が必要であったことが、交渉のあとを検討してみますと、双方それぞれ明快に説明をすることが容易でないような多くの譲歩と妥協、その結果として生じた条文の解釈上のあいまいさを残しておるのであります。
 そこで、私は、次の諸点について、総理並びに関係大臣に質問をいたしますが、明快なる答弁をお願いいたします。
 第一に総理にお伺いしたいことは、わが国がこのたび懸案の日韓問題を解決するにあたり、直接関係ある問題として、政府の北鮮に対する外交姿勢の問題であります。先般、総理の所信表明に対するわが党の曽祢議員の質問に答えて、総理は、「北鮮問題については在来の扱いを変える考えはない。今後ともケース・バイ・ケースで処理していく」と答えられております。これでは国民は納得しないのです。国連においても、また、わが国においても、現存する北鮮の政権は認めている以上、無関係の状態を続けるわけにはいきません。従来のかたくなな考え方を捨て、積極的に、 経済、文化並びに人事の交流と、貿易の推進をはかって、友好を深めていくことこそが、平和外交の基本方向でなければならないと思うが、総理はこの外交姿勢を、日韓条約批准にあたって、今後どう具体的に対処する考えがあるか、お聞きいたしたいのであります。
 次に、管轄権の範囲でありますが、今回の基本条約第三条において、国連決議第百九十五号を基礎として、三十八度線−政府の説明では休戦ライン以南としていることは、われわれも理解しているが、将来において、国連総会で重大な修正あるいは撤回等の決議が採択された場合、基本条約はどうなるか。条三条の更改、修正を必要とすることが予想されるが、韓国がこれに応じない場合には、事実上それは不可能となるが、政府のこれに対する対策はあるか。私がこういう質問をいたしますと、総理は、仮定の問題として、政府は軽く考えているように思うのでありますけれども、激流する国際情勢の中では、慎重に対処しなければ、悔いを千載に残す結果になると思うが、総理並びに外務大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。
 次に、在日朝鮮人の法的地位に関する問題ですが、この問題も先ほどの質問者が触れておりますけれども、再度私は総理にお伺いをいたしたいと存じます。永住権の問題でありますが、永住権はその範囲があまりにも大幅であって、譲歩をし過ぎたとの不満の国民の声もあり、また、これがわが国の将来にとって解決しにくい少数民族の問題を形成する素地になるのではないかという危惧をする向きも、これまた多いのであります。しかし、過去の経緯から考えて、一応やむを得ないとも考えられるのでございますけれども、この協定の対象となり得る者は、在日朝鮮人五十八万人のうちわずかに二十二万人にすげないのであります。北鮮素等、約三十六万人は、この協定のらち外に置かれております。政府は、これに対していままでどおり取り扱っていくと言っているが、結局野放しのまま放置され、今後これらの韓国籍を持つ人々と、しからざる人々の相克摩擦が、日本国内において繰り広げられることは明らかであります。政府は、韓国籍を持たない者をどう処理しようとするのか、将来特別立法をつくる意思があるのか、あるいは法律百二十六号・出入国管理令を改正する意思があるのか。次に、子孫まで永住権を認めた韓国籍の人々の将来はどのようにしていく構想を持っているのか。法務大臣に答弁を願いたい。
 次に、竹島の帰属問題についてでありますが、日韓批准に関する韓国国会の議事録によれば、李外相は、独島は過去から現在に至るまでわが国の厳然たる領土であり、領有権の是非の余地は全くないと、明確に明言をいたしておるのであります。竹島そのものは日比谷公園程度の広さで、経済的価値はきはめて少なく、無人島であっても、その帰属は、領土主権の管轄範囲の決定であり、領海の範囲をきめる重要なことであり、わが国固有の領土として、寸土も侵されてはならない、いわば国の威信にかかわる重大な問題であります。これについて佐藤総理は、今回の竹島帰属の紛争解決に関する交換公文によって、竹島問題は平和的解決の道が開かれたと述べているが、何を根拠にしてこれを言われておるのか、国民はどう受け取っていいのか、迷っているのが現在の状態であります。明確な答弁をお願いいたします。
 なお、政府は、交換公文に竹島という名が示されていない問題に対して、竹島を除くと書いてないから、当然包含されると解釈しているようであるが、この点についても、今後具体的な解決方策をいかに進めていくのか、これまた、総理並びに外務大臣にお伺いをいたしたいと存じます。
 次に、漁業問題についてでありますが、時間があまりございませんので、ごく簡単に要点のみをお尋ねいたします。政府は、漁業協定が失効した場合、再び李ラインのごときは復活することはないと説明されておりますが、韓国政府当局は、李ラインの目的は三つある。第一は国防上の必要性、第二は水産資源の保護、第三は大陸だな資源保護、その一つである水産資源の目的は、今回の漁業協定で効果的に規制されたが、それ以外の目的を内包する平和線は、現在事実上、国内法的に認定された内容として健在していると言っておるのであります。これに対して、漁業協定が失効した場合、李ラインはどうなるのか、これまでの政府の説明だけでは実に不十分と言わなければなりません。政府の、国民が納得できる見解を示していただきたいと存じます。
 なお、漁業協定の漁獲に対する今後の実施について、必ず紛争が起こるおそれがございます。政府はこれに対する具体的監督指導等をいかにしようとしているのか、これまた外務大臣にお聞きをいたしたいのであります。
 次に、経済協力の問題についてでございますが、無償、有償、局間協力等について、総理はたびたび軍事同盟はあり得ない、こういう答弁をされております。私たちも当然のことと思います。しからばこの条約の意義は、経済提携でなければ意味はなくなるのではないかと思います。政府はこれに対して本気に取り組む姿勢があるのか、もしこれがあるとするならば、韓国あるいは日本間に、いま問題になっておるところのノリの問題なんか、たいした問題ではないではないか。これに対して具体的に、日本が本気で取り組もうとするならば、こういう問題を早急に片づけるべきではないかと思うのですが、総理大臣の所信を承りたいと存じます。
 経済協力のあり方では、今後の日韓関係並びに日韓条約の価値を失墜することはないとは言えないのでありまして、少なくとも韓国の経済の発展と国民生活の安定に寄与するものでなければならないのであって、いやしくも疑獄と汚職に結びつくようなことや、今後日本商社の見苦しい過当競争が、韓国の国内において惹起するようなことは、絶対あってはなりません。政府として確固たる保障と見通しをいかに考えておられるか、具体的に説明を願いたいのであります。
 なお、在外財産補償並びに漁民に対する補償等の質問は、時間がございませんから、私はきょうは省略をいたしまして、いずれ特別委員会において明らかにいたしたいと存じますが、最後に、われわれは冒頭に申し上げましたように、本条約の意義がわが国にとってプラスの面はどこにあるのか、マイナスの面はどれであるか、十分審議を尽くし、疑問点を国民の前に明らかにして、国民とともに理解していきたいと、われわれは考えております。政府の懇切丁寧な責任ある答弁を特に私は期待してやまないものであります。
 以上、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 参議院は良識の府である、これはかねてから、皆さま方もあらゆる機会に言われているところでございます。ぜひともこの大事な条約の審議にあたりましては、十分慎重に、また詳細に、審議を尽くしていただきたいと思います。政府もまたそういう立場で、一時間をも、あるいは分秒をも惜しむような気持ちで、ぜひとも皆さま方が審議に万全を尽くされることを期待いたしておるのでありまして、政府もそういう立場で御協力するつもりでございます。よく説明するつもりでございます。
 また、衆議院の審議等につきまして、前質問者にも私お答えいたしましたとおり、この審議期間がずいぶん短いといわれながらも、二十日間も空費した、これは衆議院の経験でございますが、参議院におきましては、そういうことのないように、私どもも一そう勉強してまいるつもりでございます。そうして、今日最も憂慮されておる、いわゆる民主政治をほんとうに守ることができるだろうか、また、議会制度そのものは、日本民族にはたしてほんとうに理解され、受け入れられるような制度であろうか、かような疑問を持つ方ができておるようでございますが、私は最近の審議に際しまして、特にこれらの点を心配しておるものでございます。どうかこういう点について、私の考えについても御批判をいただきたいと思いますが、いわゆる良識の府である皆さま方にも、こういう意味の御協力を願いたい、心からお願いする次第でございます。これは政府と申すよりも、私、自民党の総裁として、特に皆さま方とともどもに、かような立場で審議を尽くしたいということをお誓いする次第でございます。
 次に、今回の日韓条約の性格、意義等につきまして、いろいろ御質疑がございました。このことは、両国国民にとりましてたいへん重大な意義を持つものであります。今日までこの種の善隣友好の関係を樹立することができなかったために、あるいは漁業の問題で幾多の紛争を引き起こしたり、また、在日朝鮮人の法的地位もきまらなかったり、あるいはまた、いろいろの問題が各方面にわたって起きていた。しかし、今回のこの条約締結によりまして、善隣友好を樹立することができ、いままでのこういうようなむずかしい、いわゆる非難を受けるような事態を改善することができる。かように私は思っておるのであります。私どもは、いわゆる善隣友好、同時に、平和に徹する考え方で外交を進めると、かように申しておりますが、その考え方の中には、いずれの国とも仲よくしていくということはしばしば申し上げたとおりであります。したがいまして、いわゆる共産主義の国であるからといって、かたくなに門戸を閉ざすと、こういうような考え方ではもちろんございません。しかしながら、私どもの安全を守る、また、国益と、国民の利益に合致する、こういう観点に立って、共産主義の国とつき合っていくのでありますから、共産主義の国におきましても、これらの日本の内政には干渉しない、あるいは独立は十分尊重する、本来のつき合いを仲よくやっていくのだと、こういうような気持ちが、一方的でなく、相手の国においても十分理解されて、それで初めて交渉が持てるのであります。私どもは、何事によらず、かたくなに国を閉じる、こういうこともいたしませんが、また、同時に、何らの主張なしにいずれの国とも仲よくする、こういうものでもないのでありますから、この点、誤解のないように願いたいと思います。私は、特に共産主義の国の方方が、わが国が平和を愛し、平和に徹しておる、この観点に立って、わが国の独立を尊重する、また、わが国も内政に干渉しない、お互いにその立場を尊重し合う。こういう気持ちになっていただくならば、共産主義の国だからといっても仲よくできるものだと、私はかように思います。ただ、ただいままでのところ、朝鮮におきましていわゆる共産主義の立場の政権も――権威もある。今日、韓国自身、これが朝鮮半島にありまして、国連におきましても、国連決議の百九十五号で申すような意味の独立国家としての韓国があるのでありますし、これと私どもは、平和条約以来、交渉を持っております。分立――同一民族が二つの権威に分かれておる、こういうような場合に、片一方と交渉を持った場合には、他のほうを相手にしないというのがそれぞれの国際的慣例であります。この点につきましてはすでに申し上げたとおりであります。したがいまして、わが国におきましては韓国と交渉を持つ、しかし、北鮮とはいわゆる事実問題として処理していくのだ、したがって、その具体的事実にいかに処していくかということは、いわゆるケース・バイ・ケースで、ものごとをきめてまいるのであります。ただ、今日問題になりますのは、この種の状態が一体いつまで続くだろうか。私は、たびたび申し上げますように、同一民族は、同一国家、単一国家をつくるということを心から願っております。それは国連でも指摘しておるとおりでありますので、国連の勧告もあるわけであります。しかしながら、ただいまの北鮮と韓国との関係は、朝鮮におきましても、国際的な、いわゆる東西冷戦を背景にして今日の状態ができておるのでありまするし、また、過去におきましても、朝鮮事変、この苦い経験がございます。したがいまして、容易に単一国家が実現するとは思わない次第でございます。だが、これをいつまでもかような状態で置いていい、かように私どもは思わないのでありますので、民主社全党の諸君が、同時に二つを承認しろというようなお考えでありますならば、私は、それには賛成いたしません。ただいま申し上げるように、国連方式による統一単一国家の実現に協力するわけであります。
 また、今回の問題は、漁業問題等、また経済協力等におきましても、軍事同盟的なものでないことは、これはもうすでに御承知のとおりでございます。たびたび説明いたしたとおりであります。
 そこで、具体的の事例として、ノリの問題などは、ぜひとも早く解決しろ、こういう御注意でございますが、私もさように考えますので、事務当局に、この点を急いで解決するように、すでに督促をしているような次第であります。
 問題は、重ねて申し上げますが、今回の日韓条約が持つ意義、まことに両国国民にとりまして重大な問題でありますので、この上とも慎重審議を尽くしてまいりたいと思いますし、また、国民の理解を十分得て、しかる上でりっぱに批准を得たいと、かように私は思う次第であります。(拍手)
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(椎名悦三郎君) 管轄権の問題について、私の名前をおさしになりましての御質問でありましたが、総理の御答弁によって、ほとんどつけ加えるところがないと思います。この引用された百九十五号の国連決議が、その後年々の総会においてこれを確認しておるのでありまして、相当な時間がたっておりますけれども、現在の客観情勢に適合したものでございますので、今回の条約でこれを引用したような次第であります。で、朝鮮の客観状態が全く一変するというような場合は容易に想定することができないのでありまして、そういう場合はいざ知らず、われわれは、この決議に基づく第三条の変更を近く予想するというようなことは、全然考えておらないということを申し添えておきます。
 それから、竹島と書いてない、これは御指摘のとおりでございますが、日韓間における紛争問題で、これほど長く、そうしてしかも深刻に取り扱われた紛争案件はないのであります。でありますから、紛争に関する交換公文において竹島を除くということが書いてない限りにおいては、これは竹島問題をまつ先に取り扱っておるということは、すでにこの交換公文の立案に協力した両方の当局がよく知っておるところでございます。ただ、独島なり竹島という名前を使わなかった。しかし、これはもう一番最大の紛争問題であるということを十分に念頭に置いて、かような交換公文ができたのでございますから、これは問題がございません。それの解決の方法は、申すまでもなく、通常の外交ルートによって解決できない場合には、双方の合意する方法によって調停にかける、こういうことになっておりますので、両国の友好的な雰囲気が十分に熟したのを見計らって、この問題の解決のために努力したい、かような考えでおるのでございます。
 なお、李ラインの問題について、漁業問題のほかに、大陸だなの問題と国防ラインの問題が残っておるというようなふうに拝聴したのでありますが、この大陸だなの問題については、これは国際法に認められておらない。他の国にこれを押しつけるということは、これは認められておりませんし、日本といたしましても、これは認める考えはない。それから、国防ラインというものは一体どういうものであるか、よくわかりませんが、日本も、かつては満蒙はわが国防のラインであるというようなことを言ったことがありますが、これは、ただ一つの想定にすぎない。でありますから、そこに何らの強制力も用いたわけじゃありませんので、どこからも文句が来なかったのでありますが、まあ、そういったような構想であるならば、これは無害であると私は考えるのであります。
 以上、御質問に対しましての私の答弁を終わります。(拍手)
   〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(石井光次郎君) 永住許可を受けておる者と、そうでなくしておる朝鮮人と、その間に待遇の差が出てくるので、相克摩擦が起こるようなことはないか、それに対する対策はないかというお尋ねでございました。永住許可を受けまする者に対する待遇が、いろいろ今度の協定で数えられていることは、御承知のとおりでございますが、永住許可を申請しない者につきましても、いままでどおりの待遇を変えるわけはないのでございまして、昭和二十七年の法律百二十六号は、そのまま生かしておきますので、日本にそのままおることができまするし、そうして、いままで待遇を受けておりました生活保護であるとか、あるいは小学校、中学校に入る、あるいはまた、そこを出まして上級学校に入れば、その道も開いてある、というようなこと等の待遇は、依然として受けるのでございまするし、別に、今度法的地位の協定ができまして、韓国人だけが永住権許可を得て、特別な待遇を得て、そうして、そうでない人たちの待遇がぐっと落とされるというようなことでもあれば問題だと思いますが、そういうことにならないのでございまするから、私は、問題は起こらないだろうと信じておるのでございます。そういたしまして、法律の百二十六号は、そのまま残していくつもりでございまして、この際これにかわる何か特別な立法を考えてないかということでございまするが、ただいまのところは、そういうことは考えていないのでございます。
 それからもう一つ、子孫まで安住権を認められた人々が将来一体どうなっていくのだというお尋ねでございました。だんだん長くなっていきますと、子や孫ができてまいります。これから五年たちまして、それから先の子供たちはどうなるかといいますると、その人たちは、効力発生後二十五年たったときにおいて振り返ってみて、一体どう扱うかということを、そのとき相談することに今度の協定はなっておるわけでございますから、そのときのぐあいで、続いてそういう人たちにも永住権で認められるかどうかというようなこと等がきまるわけでございますが、そうなるまでは、どうなるかわからないのでございます。しかし、長い間のことを考えますると、だんだんあとほど日本に同化していくのだろうと思います。ことばも日本語になり、生活状態もだんだん日本式になってくる。そうしていきますると、自然、さっき申しましたように、帰化する人も多くなってくるというようなことを考えますると、しまいには、だんだんと永住権者というものがなくなっていくのじゃないかとも想像し得るくらいでございますから、あまりこの問題は、いまのところは心配せずに、私どもは、ずっともう少し様子を見てみたいと考えておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(三木武夫君) 向井君の御質問にお答えをいたします。
 経済協力をめぐって、汚職、腐敗、これを防止しなければならぬ――全くわれわれもさように考えておるわけでございます。そういうことが防止できなければ、両国の尊敬、信頼、そういうものは生まれてこない。将来にわたって友好関係を樹立できないわけであります。そのためには、両国において気をつけなければならない。韓国政府においても、経済協力というものを全国民的なものにする。清潔なものにする、これは再々韓国政府も声明をいたしております。また、声明するばかりでなしに、受け入れ体制も、韓国はいま検討をしておる。たとえば、野党の諸君も入れた、与野党から入った資金管理委員会というものをつくって、そしてこれを経済協力に対する受け入れ体制の中心にしようとしておる。また資材、役務などに対しても、調達庁で一本に調達する、そうしてこれを入札制度にする、こういう制度を韓国で検討しているようである。わが国の側においても、韓国を舞台にして過当競争が繰り広げられては、これは非常な弊害が起きる。そういうことで、民間の協調体制をつくるために、われわれもできるだけ努力をいたしまして、韓国に対して、いやしくも、経済協力が、ほんとうに韓国の民生の安定、経済の発展を考えておるんだという、わが国の真意を誤解されることのないように、十分な注意をいたす所存であります。(拍手)
#45
○議長(重宗雄三君) 藤田進君から質疑の通告に接しておりまするが、在席しておりませんので、棄権したものと認めます。
 これにて質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#46
○議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。
 小林章君から、病気のため十五日間、請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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