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1965/10/26 第50回国会 参議院 参議院会議録情報 第050回国会 社会労働委員会 第3号
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1965/10/26 第50回国会 参議院

参議院会議録情報 第050回国会 社会労働委員会 第3号

#1
第050回国会 社会労働委員会 第3号
昭和四十年十月二十六日(火曜日)
   午前十時三十二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         小柳  勇君
    理 事
                鹿島 俊雄君
                川野 三暁君
                佐野 芳雄君
                藤田藤太郎君
    委 員
                黒木 利克君
                紅露 みつ君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                山本  杉君
                横山 フク君
                大橋 和孝君
                森  勝治君
                高山 恒雄君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  鈴木 善幸君
   政府委員
       厚生大臣官房長  梅本 純正君
       厚生省医務局長  若松 栄一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   参考人
       日本対ガン協会
       専務理事     笠 信太郎君
       癌研究所附属病
       院長       黒川 利雄君
       日本癌学会会長
       九州大学教授   今井  環君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○社会保障制度に関する調査
 (厚生行政の基本方針に関する件)
 (ガン対策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(小柳勇君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。
 社会保障制度に関する調査を議題といたします。
 まず、厚生行政の基本方針に関する件について調査を行ないます。政府より、本件に対し、所信を聴取いたします。鈴木厚生大臣。
#3
○国務大臣(鈴木善幸君) 第五十回国会における社会労働委員会の御審議に先き立ち、この機会に厚生省所管行政に関し、所信の一端を申し述べたいと存じます。
 近年におけるわが国民一般の生活水準の向上は著しいものがあり、これはわが国経済の目ざましい成長発展によるものであることは申すまでもないことでありますが、にもかかわらず、低生活水準を余儀なくされている人々がなお少なくないことは否定できない事実であります。
 経済成長の成果を真に国民全体の福祉向上に結びつけ、すべての国民が、より豊かな生活を営むことができるようにするためには、経済の発展と均衡のとれた社会開発を強力に展開していく必要があります。この意味で、社会保障の拡充と生活環境の整備を中軸とする厚生行政の果たすべき役割りは、きわめて大きなものがあります。私は、社会経済の進展に即応しつつ、国民のすべての福祉を一そう高めていくため、医療及び所得保障の充実、国民保健の強化、心身障害者、老人等に対する福祉施策の推進、生活環境の整備等厚生行政の進展のため、なお一そうの努力を払っていく所存であります。
 以下、主要な事項について個別に述べてまいりたいと存じます。
 まず、医療費問題につきましては、私は、大臣就任以来、各界の協力を得てその円満な解決につとめてきたところであります。すなわち、去る八月に中央社会保険医療協議会の再開をみることができ、同協議会においてかねてからの懸案となっておりました社会保険診療報酬点数表の改正について十月二日に答申を得ましたので、薬価基準の引き下げに伴って生ずる余裕分のうち、約三%を医師の技術料に振りかえ、約一・五%を患者負担の軽減と保険財政の改善に資することとし、これを十一月一日から実施することといたしました。このように、医療費問題につきましては、当面の懸案事項を解決することができたのでありますが、今後は、診療報酬体系の適正化等について根本的に検討を要すると考えられますので、今後同協議会にこれらの問題につき審議をお願いする所存であります。
 また、現在、健康保険、日雇労働者健康保険及び船員保険各制度が財政的に重大な危機に直面しておりますので、政府は、この財政再建のため、さきに保険三法の改正案要綱について社会保険審議会及び社会保障制度審議会に諮問したところであります。社会保障制度審議会においては、去る九月十五日答申が行なわれ、また、十月二十日には社会保険審議会から答申をいただいたのでありますが、私は、これらの答申を総合的に検討し、その趣旨を体し、すみやかに保険三法の改正案を作成して、御審議をわずらわしたいと考えております。なお、これら両審議会の答申は、いずれも当面の財政対策に重点を置いているのでありますが、両審議会の意見として指摘されておりますように、医療保険制度の抜本的対策については、今後引き続き検討を行なうことといたしたいと考えております。
 また、国民健康保険につきましては、その給付内容の改善をはかるため、世帯員に対する七割給付を昭和三十九年度から四カ年計画により実施中でありますが、今後とも強力にこの計画を推進してまいる所存であります。また、その財政対策としては、先般予備費から臨時財政調整補助金四十億円を支出する等の措置を講じたところでありますが、このような当面の措置のほか、将来にわたる財政基盤を強化するための方策について、今後とも十分検討してまいりたいと考えております。
 第二に、年金制度の充実につきましては、すでに第四十八回国会において実現をみました勤労者に対するいわゆる一万円年金の支給を内容とする厚生年金保険の改正に引き続きまして、農民、自営業者等を対象とする国民年金につきましても、その充実改善をはかりたいと存じます。すなわち、来年度は、国民年金の第一回目の財政再計算期に当たりますので、主として拠出年金を中心に、給付水準の向上、支給条件の緩和等をはかる所存であります。
 なお、巨額にのぼる厚生年金保険及び国民年金の積み立て金の運用につきましては、還元融資制度を強化するほか、社会開発をはじめとする国民生活の安定向上のため、その積極的な活用をはかる所存であります。
 次に、国民保健の面におきましては、最近ガンの問題が大きな社会問題となっており、ガン対策の推進が各界から強く要望されているところでありますが、従来の施策を飛躍的に充実強化することとし、国立がんセンター等、ガン診療施設を整備するとともに、ガン研究の助成の強化、ガン予防思想の普及等を推進してまいりたいと存じます。このほか、最近ことに若年層の間に蔓延の兆候をみせている性病の予防治療対策についてその強化をはかるとともに、交通事故等、不慮の事故が激増している現状にかんがみ、救急医療施設の整備を進めるほか、公私立病院の協力促進のための措置を講ずる等、救急医療体制を早急に整備したいと考えております。
 第四に、生活保護及び社会福祉の分野につきましては、生活保護基準の引き上げ等生活困窮者に対する保護の内容を改善するとともに、身体障害者、老人、要保護児童など、とかく経済社会の変動にとり残されがちな人々に対しまして、あたたかい配慮の手が伸びるよう、その福祉をはかるための施策を一そう充実してまいりたいと考えております。とりわけ、心身に重度の障害をあわせ持つ、いわゆる重症心身障害児及び障害者につきましては、その収容力が僅少な現状にかんがみ、従来の社会福祉施設設置に対する助成を強化するほか、特に国立療養所収容施設を整備するとともに、在宅の障害児に対する訪問指導を強化する等、総合的な施策を講ずることにより、その福祉の向上をはかりたい所存であります。
 このほか、さきの国会で成立いたしました母子保護法に基づき母子保健対策の強化をはかるとともに、社会福祉施設勤務職員の処遇改善等、その運営について一そうの円滑化をはかる所存であります。
 第五に、生活環境の改善につきましては、まず、大気汚染、水質汚濁等公署対策は、最近特に重点を置いてその充実をはかってきているところでありますが、さらに積極的にその対策に取り組む所存であります。去る九月発足しました公害審議会において当面緊急の事項について御審議願っているところでありますが、共同公害防除施設設備の整備等については十月初めに設置された公害防止事業団を通じ大いに助成してまいりたいと存じております。明年度におきましては、この公害防止事業団の業務内容を飛躍的に強化させるとともに、公害問題解消措置を強力に押し進める所存であります。
 また、これと並んで、地域的な問題として、山間へき地における住民の福祉向上対策を積極的に推進する所存であります。へき地においては従来から医療を中心としてその対策を進めてまいっているところでありますが、今後さらにへき地における住民の環境整備と福祉の向上を強力にはかる所存であります。
 第六に、これまで中小企業対策の中でも、とりわけ立ちおくれている環境衛生営業対策を強力に押し進めてまいる所存であります。これら環境衛生営業料金は国民一般の家計に直接影響するところきわめて大きく、その適正化を期するため、経営の近代化、協業化の促進、衛生措置の改善と経営の安定を目途として、金融措置その他助成に積極的な施策を講ずる考えであります。
 厚生行政につきましては、以上の問題のほかにも、国民生活の安定と向上をはかるため当面解決を迫られている問題が少なくありません。
 私は、今後とも誠意をもってこれらの問題の解決に努力する所存でありますが、ここにあらためて各位の一そうの御支援と御協力を切にお願いする次第であります。
#4
○委員長(小柳勇君) 本件に関する質疑は後日に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(小柳勇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
#6
○委員長(小柳勇君) 次に、ガン対策に関する件について調査を行ないます。
 本日は、本件調査のため、お手元に配付いたしてあります参考人の方々から御意見を拝聴してまいりたいと存じます。
 参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会に御出帯くださいまして、まことにありがとうございます。
 御承知のとおり、最近ガンによる死亡者が累増し、ガン対策の強力な推進が望まれておりますが、関係各界の方々の御努力にもかかわらず、なかなか効果が上がらないのが実情であります。本委員会といたしましては、ガンを制圧し、ガンに対する国民の恐怖を取り除くための諸方策について、本日皆様から忌憚のない御意見を拝聴いたしたく存じておるわけであります。申すまでもなく、本日御出席になられておられる笠参考人は、多年にわたって民間の自主的な発意によるガン対策運動に御挺身なされている方でありますし、黒川参考人は臨床治療の、面を通じ、また、今井参考人は学会の会長として、それぞれのお立場からガン制圧のために顕著な御功績を残されておられることは周知の事実でありまして、私どもは深く敬意を表しているものであります。
 これから皆様の御意見を伺うのでありますが、議事の進め方といたしましては、まことに恐縮でございますが、まず、笠参考人、黒川参考人、今井参考人の順序で、お一人二十分程度御意見を開陳していただき、御陳述が全部終わりましたあとで各委員より御意見に対し御質疑をいたし、お答えいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これから順次参考人の方々から御意見を拝聴いたします。
 まず、笠参考人よりお願いいたします。
#7
○参考人(笠信太郎君) 私、笠でございます。
 最初に、一言参議院の皆さんがここにガン対策の問題に取り組まれましたことを、国民の一人として、心から敬意を表する次第であります。あらかじめ御礼を申し上げたい気持ちであります。
 私は、国民の側から、今日までやってきたガン対策の現状と、また、同じ立場からの将来に対する要望とを申し述べてみたいと思います。
 さて、ガンというやつは案外に公平なところがありまして、貧乏人も金持ちも、地位の低い人も高い人も、また、しろうともお医者さんも、より好みをいたしません。その治療も、金持ちだからなおるというしろものでもありません。それが意外に公平無私であるということは、これを言いかえますと、個人々々が持っておる条件を離れて、ガン治療の社会的水準といったものを高めないことには、終局だれもなおらない、助からないということを語っているのであります。
 それから、ガンは決して珍らしい病気ではない。昨年の日本におけるガンによる死亡率は一五・五%で、死亡する者六人のうち、一人はガンで死ぬのであります。で、これは少し、ばくとした言い方になりますが、大体において一家族のうち、一人はいつかガンで死ぬ運命といいますか、蓋然性を持っているということになります。しかも、その死ぬのは、多くは一家の柱になるような働き盛りの人でありますから、そのために家族のすべてが困るということになってまいります。したがって、ガンの問題は、実は他人のことでもなければ、よその家のことでもない、たいていの家庭に思いも寄らぬときに悲劇をもたらすものだと言ってよろしいのであります。したがって、ガンはすべての者に対する脅威であると言ってよろしいし、大衆的な脅威だ、こう申していいように思います。こう見ますと、ガンはその与える惨害からいいましても、また、治療の面からいいましても、すこぶる社会的な性質を持っていると、こう見なければならぬと思います。私たちがこの問題について医学的な関心ばかりでなく、社会的な関心、国民的な関心を呼び起こしたいと考えますのはこのためであります。時間の制約もありますから、私は話はできるだけ簡単にいたしますが、いわゆる民間側におけるガン対策はこれまでどんなふうにやってこられたかと、これが最初の主題になります。
 日本における民間のガンに対する運動といたしましては、癌研究会がおよそ四、五十年も前にいち早く設立されました。これはこの方面の先達でありまして、ガン研究に非常に大きな貢献をなしてまいりました。そして、それはお隣に院長さんがいらっしゃる現在の癌研病院というものに結実しているわけであります。したがって、その功績はまことに絶大と申さなければならないと思います。しかし、これはいわゆる現在求められているムーブメントの団体ではない、こう申してよろしいと思います。しかし、こういったこと以外にはガン対策をやる民間団体というものはいままではなかったので、政府もまた特別の動きをやってこなかったのであります。国がこの対策について動き出しましたのは最近のことでありまして、むしろこの数年来の民間運動に刺激されたと見られる節があるくらいであります。
 そこで、最近の民間運動であるところの日本対ガン協会の話に移りたいと思います。昭和三十三年八月一日、ですから、いまからちょうど七年前になりますが、初めて日本対ガン協会が財団法人として発足いたしました。これはアメリカにおくれること五十年であります。で、会長に日本医学界の最長老である故塩田広重博士、理事長に故渋沢敬三氏がなられまして、常任理事並びに理事には吉田富三博士、武見太郎博士及びここに御出席の黒川利雄博士外、日本のガン専門学者を網羅しておりまして、これに植村甲午郎氏らの財界人をまじえております。で、日本対ガン協会は東京に本部を置きまして、全国都道府県に現在三十の支部を持っております。ほとんど全国的な形をとっております。
 この協会の設立の趣旨は、広くガン征服の国民運動を展開し、全国的な募金によって集まった資金をもってガンの制圧の仕事をやるということであります。そのために次の事業をやるというたてまえであります。
 その第一は、ガンの予防、治療に関する学者の研究助成であります。
 第二は、ガンの診断や治療の施設を設置したり、あるいはこれを助成する、施設の設置並びに助成という問題。
 第三には、ガン専門家の育成と研修、専門家をつくり、または専門的な技術を研修してもらうということであります。
 第四番目には、ガンに関する国民一般の知識を普及し、かつ、これを高めるということ。
 第五には、海外にもこういった諸団体があり、盛んでありますので、世界的の組織もありますので、それと協力をしていくということであります。
 さて、こういうことを定めて出発いたしたのですが、実際にはどういう調子でやってきたかということを述べてみます。
 で、まず第一には、何はともあれ、重要なことは募金でありますが、その募金は、いわば三つの種類からできております。一つは維持委員会というものによるもの、それから、一時の寄付による、それから、別口の、まあ大口寄付と申しますか、そういったものによる、この三つであります。で、維持委員会は、これはほんとうに個人的にこの運動を援助しようとする人たちで、年五百円以上を寄付する人たちでできております。現在この会員は全国に二万人を少しこえております。大口の寄付というのは、たとえば郵政省のお年玉つき年賀はがきの寄付金の配分を毎年一千万円、時には二千万円を受けたこともありますが、そういったものがあります。それから、また、生命保険協会から三千万円の大口寄付を受けたこともあります。一時の寄付にはこれはいろいろありますが、篤志家が百万円にのぼる個人寄付をなさったことも幾口かあります。普通はいわゆる香典返し的なものをいただいておるわけであります。そこで、設立以来本年の三月一日までの七年間のこういった寄付の総合計は幾らになるかと申しますと、約二億一千五百万円であります。その一年の平均は三千万ないし四千万というようなところであります。しかし、この金額はアメリカの対ガン協会などに比べますと、実に問題にならぬほどの少額であります。試みにアメリカの数字を掲げますと、一九六三年、すなわち一昨年のアメリカン・カンサ・ソサエティの収入でありますが、それは四千万ドルをこえております。邦貨に換算しますと百四十六億七千三百六十二万円という額になります。その大部分はむろん民間の個人や企業、諸団体といったところからきておりますし、政府もまたこれに幾らか金を寄贈いたしております。これを日本対ガン協会の年平均に比べますと、約四百倍に当たります。アメリカの人口は日本の約二倍でありますから、換算しますと一人当たり七十四円ぐらいの拠金になります。
 もう一つ、カナダの状況を簡単に申し述べます。カナディアン・カンサ・ソサエティの場合は、一九六二年、一昨々年の統計でありますが、これは邦貨で約十四億円を集めております。人口はカナダは日本の五分の一でありますから、一人当たり七十円に当たります。ほとんどアメリカに劣っておりません。この年の日本の対ガン協会は比較的にたくさん金が入りました年で、四千五百万円を受け入れておりますが、これを一人当たりにしてみますと、日本の場合は五十銭ということになります。カナダの七十円に対して日本は五十銭に一人当たりがなります。カナダの対ガン運動は非常に活発で、九万人の篤志家が対ガン活動の募金運動をやっておるそうであります。寄付者の数は九十万人にのぼっております。この状況は、まず、私ども協会関係者の努力が足りないということが大いにあろうかと思いますが、その点はまことにお恥ずかしい次第であります。しかし、どこか日本とアメリカ、カナダというような国との違いがあるということはお気づきになるのじゃないかと思います。それは個人の貧富の問題ばかりではなくて、個人の社会に対する態度の違いではあるまいかと、こう私は考えます。そのことについては、またあとで少し申し述べたいと思います。たとえば日本は神社、仏閣には金がよく集まりますが、こういった社会的な必要、社会的な問題ということになるとなかなか集まらないという問題であります。
 で、再び日本対ガン協会の問題に返りまして、以上のわずかの収入で何をやってきたか、仕事の方面を申し述べてみます。
 第一には、ガン研究助成の制度をつくりまして、いままでに十四人の研究者に五百二万円を分かっております。この中には、本年学士院賞を受けられました福岡文子博士の「制ガン物質作用機序の解析」、これには五十万円の研究助成をやったわけでありますが、などの重要研究があったことをつけ加えておきます。
 第二には、ガン研究奨励制度というものをつくりまして、若い熱心なガン研究者を養成するために、毎月一人につき一万五千円ないし二万円のガン研究奨励金を二年間にわたって贈ったのでありますが、それは昭和三十四年、昭和三十五年、昭和三十六年の三回にわたってそれを始めております。その計は五十八人に分けたことになります。そのあとは資金が足りなくて力尽きたという状況でございます。
 第三にガンの診療治療施設の助成でありますが、これについてはわずかに日赤の中央病院のがんセンターができますときに、その建設費の助成に五百万円を支出いたしております。
 第四番目に、ガン専門家の研修、ガン専門家を育成したり、研修したりする仕事でありますが、これは本部及び支部でお医君さんや保健所の人生これもお医者さんでありましょうが、専門家の指導、講演、懇談会というようなものをやります。これまでに五十八回これを開催いたしております。参加した医師の数が、いまここにはっきりわかりませんが、数千人にのぼるはずであります。
 第五番目に、ガンに関する一般知識の普及という問題でありますが、協会はこの仕事を比較的に重視してまいりました。というのは、ガン患者の生命を救うことは、将来は違いますが、現在のところでは、メスよりも、放射線よりも、むしろガンに関する知識が実際に役立つからであります。ガンの正しい知識があれば手おくれが防がれます。手おくれが防がれれば、ガンで死ぬことは非常に少なくなるということであります。そこで、このためにありとあらゆることを取り上げておるわけでありますが、パンフレットとかリーフレットとか、ポスター、パネル、図書等をつくりましたり、これを配布いたしたり、それからスライドや映画を作製いたしております。そして本部、支部で、全国にわたってガンの講演会であるとか、映画の会などを随時に開いてきております。
 第六番目には、ガンの無料健康相談というものをやってまいりまして、これは日本医師会との共同主催で本部及び支部でやってきております。むろん早期発見のためのものであります。
 第七番目に、ガンの集団検診であります。これは非常に重要な問題であります。集団検診ということばは、私は、少し日本語として本体を誤解する傾向がありはしないかと思うのでありますが、いわゆるマス・スクリーニング、ふるい分けをやるわけです。これは当面の生きたガン対策として最も重要であります。前に述べましたが、この郵政省から受けております寄付金の配分といったようなものをもとにしまして、胃の集団検診車、「ひまわり号」と名をつけておりますが、それを七台いままでに製作しております。これはいわば走るガン病院でありまして、目下は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡、近く高松に配車いたします。この検診車のやり方というものは、ここにお見えになっております黒川博士の創意によるものであります。御質問がありましたらあとでお尋ねを願いたいと思います。その成績でありますが、一例として、この一年間の状況を見ますと、胃の集団検診では、五万五百七十五人を見ましたうち、発見した胃ガンは二十八人、胃ガンの疑いのある者が三百二十四人、それから胃炎であるとか、その他何らかの軽い病気を持っている者が一万六千八百二十六人と、これを見出しております。疑いのある人は、むろん設備の整った病院に送り込んで精密検査を願うわけでありますが、この集団検診で発見した者は、多くは早期ガンでありますから、直ちに適正治療を受けることによって多くはなおっておるという報告を受けております。いわゆる早期発見というものは、ガンには一般的に予防ということができないことになっておりますが、この早期発見が、ガンに対するいわば毛色の変わった予防だと申すことができるのであります。こういった早期発見が非常に重要であるということは、いろいろ資料もございますが、おそらく黒川博士から、あとでお話があろうかと思いますので、省略いたします。
 第八番目の仕事といたしまして、ガン制圧月間というものをつくりまして、毎年これを催してきております。これは九月一ぱいを期した集中的な運動でありますが、日本医師会との共同主催で、厚生省、文部省、関係府県当局、朝日新聞等の援助を得まして、ガンの早期発見、適正治療の考えを普及啓発することを目的として、胃と子宮の集団検診を実施しております。本年は第六回目でありますが、協力を得ました病院は、胃ガンの場合は二十六の病院、子宮ガンの場合は九十二の病院、これが協力された病院であります。だんだん制圧月間の効果が上がってまいりまして、当初といまとは非常な違いがあるように私は見受けております。
 その次に、海外との協力という問題がありますが、これは省略いたします。
 そこで、以上は今日までやってまいりましたところの簡単な御報告でありますが、今後やりたいこと、やらねばならぬこと、われわれの要望でありますが、それはおよそ次の三つに集約されます。
 第一は、やはり何といってもガンをめぐる基礎研究、これを助成するということであります。
 それから、第二は、集団検診の国民的な拡充といいますか、国民全般に及ぼすような拡充が必要であるということであります。
 第三は、やはり依然としてガン知識の普及が必要である、この三つに集約することができるように思います。
 この三つのうち、第一の基礎研究の必要は申すまでもないことでありますが、病理、薬物、治療方法等、これは不断に強力に推進されなきゃならぬわけでありますが、私どもとしてこれに寄与し得るには、どうしてもいまとはけた違いのお金が必要であります。いまの状況ではなかなかできないということを申し上げざるを得ないのであります。しかしながら、金さえあれば、これを有効に進めるだけの方法手段については、権威ある専門家による用意があることであります。しかし、基礎研究は不断に進めるといたしまして、このいまのガンの問題につきまして当面の急は、何といっても現在の医学が到達しておりますところの水準でフルの効果を発揮させるというところにあります。それは第二の集団検診  マス・スクリーニングであります。ガンのふるい分けをやるということであります。これをさっきも申しますように、国民的規模において行なうことが必要であります。先刻も申しますとおりですが、いま年々十万人の国民同胞がガンで死んでいきますが、もし全国的なマス・スクリーニングが行なわれましたならば、大ざっぱな言い方でありますが、その半分の五万人は間違いなく助かるだろう、こう推定しております。あるいはそれ以上ではないかということも考えられます。そういった点については、専門家がきょうおそろいでありますから、お尋ねを願いたいと思います。これはたいへん大きなことだと私は考えます。しかしながら、このマス・スクリーニングをやりますには、これは検診車ばかりによることはありませんが、いまのところ検診車が必要だと思われるのでありますが、その検診車はまるで不足しております。検診車が不足しているばかりでなく、検診車に乗って仕事をする医師も要員も全く足りません。少なくともこの医師の研修と養成が急務中の急務になります。それは検診車の問題を別にしまして、普通に患者が診断を請いに参りますところの町のお医者さんについてもこのガンの診断の専門技術の研修を行なう必要がありまして、医師のガン診断、写真の読影等の技術を急速に進める必要があります。それをやることなくしては、早期発見ということを申しましても、実際には口頭禅に終わることになります。そこで、研修と養成のための費用が検診車をつくる費用以外にも必要になってまいります。どのくらいの費用が要るかということを大ざっぱに考えますと、千台の検診車をつくりますには百億円をこえる金が要るだろうと思います。それから、医師の研修その他そういうものを含めますと、二百五十億なり三百億円といったようなものが要る。しかしながら、それがもしできるならば、ここ数年ならずしてその状況は非常に明るいものになるだろうと考えられます。
 それから、第三の、ガン知識の普及でありますが、これは対ガン協会が発足しました七年前と現在とを比べますとかなりの違いがありますが、まだまだその必要は非常に大きいと思います。ガンノイローゼに困るというお話を伺うのでございますが、それはガン知識がだいぶ普及し出したということでもあると思います。ガンノイローゼを歓迎するわけではありませんが、それによって助かる人がだんだん多くなるということだろうと思います。そこで、そういったガンノイローゼも、ガン知識がもっと普及するということと、検診を行なうということによってこれだけは何でもなく吹き飛ばすことができると、こういうふうに私は考えております。
 で、私どもは、以上のことを今日まで各方面に訴えてきたのでありますが、資金がなかなか集まらぬという苦衷は前段に申し述べたとおりであります。ところで、私たちは、本来言いますと、国民の自覚に基づくその独自の自発的な力を集中してこの種のことを進めたいのであります。それが当然であろうと思うわけです。というのは、政府が何でもかんでもやらねばならぬというふうに考えるのは、実は自覚の足りない国民の病癖であります。それは過去において自主的な政治を持たなかった国民であるとか、あるいは民主的な政治を持たなかった国民に通有でありまして、いつも自分たちが何も参加させられずに押えられてきたというような感じを持っている国民が、その裏返しとして、いつも政府依存的であって、政府に注文はつけるけれども、自分たちとしては何もやらないといった傾向を持つものであります。わが国には、その点で部分的には非常にすぐれた自覚を持った人が多数あるわけでありますが、その数は全体からすると至って少ない、こう申さなければならないと思います。その上に、日本人はその特有の性質といたしまして、個人的な不幸や、あるいは直接悲惨な状況を目の前に感覚的に見ますと、それに対して大いに惻隠の心を働かせるわけでありますが、直接目に訴えてこない社会的な不幸、これは非常に大きいわけでありますが、そういった社会的な不幸といったようなものに対してはだれかが何とかするだろう、どこかの病院がいい薬を発明するであろう、国が何とかするだろうと
 いったようなことで、自分たちとしては無関心の気持ちが一般的であります。この点がさっき述べました海外の進んだ諸国とだいぶ違うように思われます。この状況はおいおい改められなければならぬわけでありますが、当面の事実は事実でありまして、これはいかんともしがたい。で、やがてはこういった自主的なコントリビューション、自分でドネーションをやるという気持ちをつくり出さなければならぬのでありますが、いまはそこまでいっていないというのが日本の社会の現実であります。そこで、私は、いままであまり動かなかった政府に、ここで大いに動いてもらうよりほかはない。そうでないと間に合わないというふうに思うのであります。で、政府は政府として大きな動きをやっていただきたいのですが、私どもとしては、とりあえず、ごく卑近な仕事にひっかけて申しますと、明年度において寄付金つきの切手の発行を政府に申請いたしております。この詳細についてはここで申し述べませんが、すでに郵政大臣はこれが実現をはかりたいということを私にも表明されております。これはまあ当面の何よりのことだと考えております。それで、諸外国では
 こういったやり方をほうぼうの国でやっていることでありまして、中には切手の上に早期発見をすすめるという文字も見えております。これによってガンへの関心を引き出すと同時に、その制圧の費用々調達するということができると思います。
 これもやり方によって大きな金もできれば小さな金もできる、こう思うのでありますが、私は、この際、直接政府の財政負担にも何にもならない方法を思い切って採用されて、できるだけ大きな金額を調達されることを希望してやまないのであります。それは同時に、いまのところの日本国民の弱点でありますところの社会的な連帯の気持ちを喚起し、それを高め、社会への寄与に向かって心情を高めるという一役を買うことにもなろうかと思います。この点につきましては、どうかひとつ参議院におかれましても、格段のお力添えを願います。
 話がたいへんこまかくなりましたが、最後に一言申し上げたい、私は、このガンという人類の悩みからの解放に、日本国民が各国に率先して寄与することを考えるべきではないか、こう考えます。また、それはこの方面の研究水準も実際に非常に高い日本として最もふさわしいことではないかと考えます。で、いま軍事的に強い国々が核兵器や弾道弾や、月旅行や戦争にうき身をやつしておる間に、そういったことには縁の遠い、また、それをやらない日本としては、この人類最後の敵といわれるガン退治にその力の大きな部分を投入すべきではないか、こう考えるのであります。それにはガンの問題の人類的な大きさ、重さ、比重といったようなものを正当につかんで、これに対応し得るだけの物的並びに精神的なエネルギーをこの仕事に投入するほかはないのであります。おざなりではこれはできません。しかし、もしガンの根本的治療法が日本において発見されますならば、それは月世界に行くよりは、はるかに大きなヒューマニズムの完成である、こう言ってよろしいと思います。さっきから国民の社会的な関心が非常に弱いということを申したのでありますが、ここで政府が動いてまいりますならば、それをきっかけに、国民の動きも非常に活発になるのではないか、私はこの気分を盛り上げるのにいまは最も好機であろう、こういうふうに考えております。
 粗雑でありますが、以上で一応終わります。
#8
○委員長(小柳勇君) ありがとうございました。
 次は、黒川参考人にお願いいたします。
#9
○参考人(黒川利雄君) 黒川でございます。ただいま笠参考人からいろいろガンについてのお話がございましたのですが、私は治療面からこの問題を考えるようにというお話でありますので、臨床的にガンの問題を若干申し上げたいと思います。
 私はガンを二つの方面から考えてみたいと思います。一つは、ガンの対策の問題でありますが、わが国に多いガンと少ないガン、そういうものを考える。もう一つは、発見しやすいガン、あるいはどうすれば発見できるか、発見の困難なガン、こういう二つの面から考えてみたいと思います。
 一九六〇年−六一年の一カ年間に全世界のガンの統計をとったものがございますが、その死亡率を見てみますと、男ではオーストリアが一番ガンの死亡率が多いのでありまして、人口十万について百九十三人の死亡でございます。女子で最も多い国はチリ国でありまして、人口十万について百四十五人であります。で、わが国のガンの死亡率は、男子は人口十万について百三十五名、世界の第十九位でございます。女子のそれは人口十万について九六・三人でありますから、第二十四位でありまして、すなわち、日本は世界各国に比べてガンの死亡率が特い多いという国ではございません。しかしながら、いろいろな臓器のガンのことを比較いたしてみますと、非常に日本に多く発生しておるガン、あるいは日本にはきわめて少ないガンというようなことがあるのであります。たとえば胃ガンは世界で日本は第二位であります。先年までは第一位でございましたが、一九六〇年−六一年の統計では第二位となっております。第一位はチリ国でありまして、人口十万について七十一名が胃ガンで死亡しておりますが、第二位の日本は六九・三と申しますから、まあ大体同じでございます。また、女子も世界第二位でございまして、三六・八名の死亡でございます。しかも、日本の全体のガンのうちで、胃ガンは男子では約半分、四九・五%でありますが、女子では三八%、つまりガンで死んだという人があれど、そのうちの男では約半分が胃ガンでありますし、女子では三八%が胃ガンで死んでいるということになっておるのであります。したがって、わが国の対策を考える場合には、胃ガンであるとか子宮ガンであるとか、その他日本に多発しているガンについての対策を考えることが最も肝要ではないかと思うのであります。胃ガンに次いで多いガンは肝臓、胆道のガンであります。日本では人口十万について十五人、胃ガンに比べて非常に少ないのでありますが、世界第一位であります。また、男子は世界第一位でありますが、女子は世界の第五位に肝臓、胆道のガンが多いのであります。また、子宮ガンは世界の第五位でありまして、人口十万について一五・五人が死亡しております。次が食道ガン、男子は人口十万について七人、世界の第五位、女子は二・三人で第七位であります。直腸ガンは、男子が第二十二位、女子が第十七位というふうな統計でございますし、喉頭ガンは、男子が世界の第十五位、女子は第七位になっております。
 これに反しまして、日本に少ないガンは、すい臓ガン、肺ガン、乳ガン、前立腺ガン、それから膀胱、じん臓のガン、あるいは血液のガンと称せられる白血病等でございます。したがって、日本で最も注目してその対策を講じなければならないものは、胃ガン、肝臓、胆道ガン、子宮ガン、食道ガン、直腸ガンなどあろうかと思います。もちろんほかのガンを軽視するというのではありませんが、多発するものに重点を置くということは当然であるという意味で申し上げたわけであります。
 次に、ガンは発生の初期には自覚症状がほとんどない、あるいはあったとしてもきわめて軽微で、これをほかの病気と鑑別することができないということが多いのであります。しかし、その場合にもいろいろの難易があるのでありまして、発見しやすいガンと発見がきわめて困難なガンとがあるのであります。たとえば乳ガンのごときものはさわってみればすぐわかる、あるいは皮膚に発生いたしました皮膚ガン、あるいは舌に発生します舌ガン、あるいは、のどのところにあります甲状腺のガンというものは外からさわったり見たりすることができる、あるいは喉頭ガンなども声がかれるというようなことで、症状がごく初期にもあるのでありますから、これは発見しやすいガンと言っていいと思います。これに反して内臓のガン、たとえばすい臓であるとか、肝臓、胆道のガンであるとか、胃ガンあるいは肺ガン、腸のガンなどは発見に非常に困難を感ずるガンであります。このちょうど中間と申しますか、ちょっとした処置を加えれば発見しやすいガンというものもあるのでありまして、たとえばそれは子宮ガンあるいは直腸――肛門に近いガンなどは比較的早く症状があらわれる中間のガンと言っていいかと思います。先ほどから笠参考人からお話がございましたように、日本でガンで死亡しております者は、日本の人口で十万四千人ということでありますから、五分間に一人の割合でガンで死亡しておるということであります。
 このガンの治療対策といたしましては、早期発見、早期手術というのが現段階におきまする最善の方法であります。それに加うるに放射線療法、あるいは化学療法等がありますが、早期発見が最も望ましいのであります。前述のように、外部から見えるガンは痛くもありませんが、形の変化等でだれでも早く気がつきますから早期発見はきわめて簡単であります。しかしながら、内臓に発しましたものはきわめて困難でありまして、早期にはこういうガンがほとんど自覚症状を持たないのであります。私は、常々胃ガンは無症状であるということを申しておるのでありまして、症状が出てからではいわゆる手おくれのことが非常に多いということを申すのでありまして、無症状であるから、したがって医師を訪問することがない。また、医師といたしましても、軽微な内臓の変化を的確に把握することがきわめて困難である。優秀な専門家の手にまたなければならないという実情であります。たとえば胃ガンについて申しますと、その早期発見は、ただいま申しましたように、無症状と考えていいと思うのでありますが、この場合にレントゲン診断、あるいは胃の中を近ごろ鏡を入れて見ることができるようになりましたいわゆる内視鏡診断、それから、胃の中から細胞を取り出して、それを顕微鏡的に検査いたします細胞組織診断、こういう三つの柱をいろいろな程度に組み合わせて、そしてきわめて早期のガンを発見することができるようになったのでありまして、こういう方法で早期の胃ガンがきわめて多く最近は続々と発見せられて、そういう方々は、早期ガンと申しますのは転移がなくて、粘膜あるいは粘膜下層に限られておるガンでありますが、そういうものは手術をいたしましてほとんど一〇〇%になおっておるのであります。いままで私ども統計をとって調べてみますと、大きな病院、あるいは大学病院等で早期の胃ガンとして手術をされて早期の胃ガンであったものが大体三、四%−五%程度でありますが、昨年あたりは私の病院の癌研では一五%くらいが早期胃ガンになってきておるのでありまして、早期胃ガンが年々発見せられてくるのでありまして、この早期ガンの診断の技術は世界の水準を抜いているものでありまして、非常にわが国のためには喜ばしい現象でありますが、そういう専門家がそんなに多くないので、そういう専門家を早く養成しなければならないということも、また同時に考えなければならない問題であると思うのであります。
 そのほか、肺ガン、直腸、ガン、子宮ガン、乳ガン等に対しましても早期発見の技術がだんだん進歩いたしまして、早期の子宮ガンなぞは非常に多く見つけられるようになっております。たとえば私のおります癌研究会の病院では、子宮ガンはゼロ期、一期、二期、三期、四期とありまして、ゼロ期、一期、二期のものはほとんど一〇〇%なおり得るのでありますが、そういう方で五年間再発のないものを学問上完全治癒と、こういうふうに一般にきめておるのでありますが、いまからさかのぼって、五年前に手術をして今年まで全く再発のない人が千二百名に達しております。毎年こういうご婦人が集まって、「治ったよろこびの会」というのをやっておりますが、ことしも九月の末にそういう「治ったよろこびの会」を開いておるのでありますが、きわめて朗報だと思うのであります。また、最近、ガンに関する啓蒙宣伝が非常に行き渡りますと同時に、われわれの病院、いろいろな病院を訪問する患者が非常にふえてまいりまして、これを処置いたしますのに非常な困難を感じているのは、おそらくどこの病院でも同様であろうと思います。私の癌研究会の病院におきましても、いままで外来は、大体五百人ないし六百人の外来を受け入れるだけの施設を備えておったのでありますが、ことしの八、九、十月に至りましては、一日に千二百人をこえる日があるのでありまして、倍以上の患者を処置をするために、われわれ従業員は、おそらくいつでも三時、四時ころまで食事もしないで働かなければならないというような、非常な状態に立ち至っておりまして、これをどう処置するかということも目下の急務であろうかと思うのであります。
 ガンの診断と治療の専門家は、全国の各大学病院や国立のがんセンターを初めとして、府県立のがんセンター、また、私立の専門病院等がありますけれども、検診すべき人の増加には追いつかないというのが現状であろうと思います。また、したがって、急速にガンの専門施設の増加と、これに対する専門家の養成の必要を痛感するのでありますが、幸いにも、来年度は厚生省の予算が大幅の増額が計画されておりまして、国民の福祉に非常な貢献をいたすと思うのでありますが、国が各都道府県等にがんセンターを設立なさいますことは最も賛成の意を表するものでありますけれども、施設の建設や専門家の養成には相当の時日を要すると思われるのでありまして、いわゆる急場の間に合うかどうかということが心配されるのであります。その緩和の一端といたしましては、現在存在して活動しつつある民間の専門病院の助成を千分にお考えいただいて、在来施設やベットの増加等によって最も経済的に、かつ、効果的に早く成績をあげ得ると信ずるのでありまして、その点についても御考慮をわずらわしたいと思うのであります。
 手術のほかに放射線療法がありまして、ヨーロッパ等におきましては、できるだけ手術をしないで放射線でなおそうという運動が盛んになっております。特に子宮ガン、乳ガン等については放射線療法が非常に効果があるのでありまして、これに関しましてはリュアックであるとか、ベ−タトロンであるとか、コバルト60、セシウムというようなものが進歩をいたしておりますけれども、こういう設備もまた十分に御考慮願いたいと思うのであります。とにかくガンの基礎的な研究は日本は全世界に先んじていると思いますが、専門病院の設備、施設等はきわめておくれているのではないかと思うのでありまして、この対策を至急に講ぜられたいと思うのであります。
 さらに、私は、ただいま笠参考人からお話がありましたように、七年前から宮城県におきまして、対ガン運動の一助といたしまして、胃の集団検診を行なっております。現在まで七年間に二十四万余の胃の検診をいたしまして、四百三十三人の胃ガンを発見しております。五百十六人の胃のポリープ、前ガン状態と称せられる胃のポリープ、三千四百七十一名の胃かいよう、三千五百一名の十二指腸かいよう等を発見して、これを治療しておるのであります。全国の胃の集団検診では、一九六三年度には六十七万四千八百七十七人の集団検診をいたしておりまして、その中で六百十九名の胃ガン、すなわち、〇・〇九%の胃ガンが発見されております。昨年度、すなわち、一九六四年には八十八万四千五百九十四人の集団検診をいたしまして、胃ガンは千四十八名、〇・一二%の割合で発見してこれを処置されております。しかも、この胃の集団検診で発見されました胃ガンには、先ほど笠参考人からもお話がありましたような、早期胃ガンが二〇%以上含まれておるのであります。大学のクリニクその他で発見、手術をされましたものは、早期胃ガンが、たかだか六、七%、最近に至って一〇%という状態でありまして、つまり大学等に参ります患者は、何か胃に故障がある人が多いのであります。そういう人の中からは早期胃ガンは少ない。毎日何でもなくて働いておるというような人の中に、宮城県におきましては〇・二%、すなわち、五百人に一人の割合で常に胃ガンが発見されておるのであります。私は、主としてその集団検診のうちで非常に早期胃ガンが多いということを特に強調いたしたいと思うのであります。
 また、昨年から宮城県にございます対ガン協会では、乳ガンと子宮ガンの検診をいたすことになりまして、宮城県の農協婦人会の寄付金の五百五十万円で「第一みずほ号」という大型のバスをつくってもらいまして、それには子宮ガンの検診の道具一切を積み込んで宮城県内どこへでも移動いたしまして、そうして子宮ガンの検診をいたしております。過去二カ年で三万四百八十一名の検診をいたしまして、八十人の子宮頸部ガンを発見しておる状況であります。
 これを要しますのに、国は、国立のがんセンターと同様に現在活動しておる民間の専門病院等にも援助の手を伸ばしていただき、その施設等を拡充強化することによって、早急に患者の治療と、それから、専門家の養成等に協力、努力をしていただきたいと思いますが、胃並びに子宮ガンの集団検診をさらに広く深く育成せられんことを希望いたすのであります。
 最後に、私のただいまおります癌研の病院でありますが、癌研究会と申しますのは明治四十一年、つまり五十七年前に設立されたものでありまして、長年、病院と研究所の建物の設立を希望しておりましたが、なかなかできません。記録によりますと、前後三回にわたって政府に三万円の援助を申し込んで、その三回とも却下されておるのであります。そういう状態でありましたが、御内帯金一万円の御下賜がありまして、また、伏見宮総裁殿下並びに高松宮妃殿下から五千円の御寄付がありまして、ただいまの巣鴨の地に病院を建てたのでありますが、これは戦災で焼けまして築地のほうに移っておりましたのが、最近二年半前にただいまのところに建築をしておるのであります。この病院ができました披露式のときに、時の癌研究会の会頭でありました長与又郎先生が、このガンの研究と患者の対策がいかに大切であるかということを説明をいたしましたのでありますが、そのあとで三井報公会から百万円に相当するラジウムの寄付がございまして、世界で第三位のラジウム保有量を持っておるのでありますが、これはその披露式にまいりました日本帝国学士院の院長の櫻井錠二博士が三井報公会に働きかけたという結果であると伺っております。その日の長与先生の日記に「至誠通天」ということが書いてあったということであります。
 たいへん長くなりましたが、これで終わります。ありがとうございました。
#10
○委員長(小柳勇君) ありがとうございました。
 次は、今井参考人にお願いいたします。
#11
○参考人(今井環君) 今井でございます。私は、もともとガンの病理学を専攻します研究者でありますので、研究のことを主として述べさしていただきたいと思います。
 ガンは、私どもが現在直面していますきわめて現実的な重大な問題だと私は考えております。それで、この問題は、日本のガン研究の水準をどうして上げるかというような程度のものではなくて、現在日本人が当面しておる問題としてのガンをどのように早く解決するかということではないかと思います。
 総括的に申しますと、ガンの対策としましては二つが問題になると思います。その一つは、現にわずらっている患者をどうするかという施策の問題と、もう一つは、ガンの原因とか本態とか、そのほか診療の原理などを対象とする研究、この二つだろうと思います。このうち、施策の中には、病院の拡充とか集団検診とか、あるいは専門医の養成など、多くのことが含まれておると思いますが、考えなければならないのは、ガンというものは現在なおきめ手というものがつかまれていない病気なのでありまして、ただ現在の診断や治療の水準のままで施策を広げるだけでは解決にはならないのでありまして、どうしても新しい知見の研究ということによってみずから開発しながら診療をやっていく必要がある状態だと思うのであります。
 そこで、研究でありますが、研究の推進のためには、まあ大学の講座などの自由研究の奨励はもちろん必要でありますが、しかし、研究だけを使命としてつくられた研究所をまず充実されなければならないのではないかと思います。現在日本には、ガンの研究所の規格に合うものが三つばかりしかありませんが、このほかに、いま申したような意味で国内に、たとえばがんセンターのような、ガンの病室と直結した研究所をさらに少なくとも二、三カ所つくることが必要ではないかと思います。研究の成果は工場の製品の製造等と違いまして、一カ所だけを拡大すればそれだけ製造能率が上がるというように算術的にはいかない点があるのでありまして、どこで有効な業績があげられて、どこで誤った研究の結果が出てくるかわからないという事情にあります。そこで、たとえば東京とかそういう一カ所に片寄るのでなくて、日本を若干のブロックに分けまして、それぞれその土地の研究者のすぐれたところを生かして、特色のある研究所を幾つか持つことが必要であり、欧米でも大体そういうふうになっておると思います。
 ガンの研究には、少なくとも三つのおもな分野があるのでありまして、それは基礎的研究、臨床的研究、疫学的研究がそれであります。このほかにもあるかもわかりません。
 基礎的研究と申しますのは、御存じのように、ガンの原因とか本態とか、あるいは診断、治療、予防などに関する原理的のことをじっくり研究するものでありまして、常にこれは深遠な未知の世界にいどむ研究であります。浪費が多く、成果が少ないといわれるのが実はこれであります。しかし、この十年間でも、たとえばガン細胞の正体というものが相当程度わかってきておりますし、もう一歩何とかすれば飛躍的に発展するのではないかという予感も学者の間に持たれているような状態であります。また、過去の伝染病の治療や予防の解決の糸口はこの基礎的研究から生まれたものが大部分でありまして、ガンを解決しようとするつもりであるならば、基礎的研究というものの強力な推進を奨励するという手をゆるめてはいけないと思います。
 ガンの臨床的研究では、ガンの診断と治療の研究に主力が注がれるわけでありまして、これはいま黒川参考人がお述べになったところでありますが、近年一部のガンでは早期診断の研究が急速に進みまして、その結果、いま黒川参考人のお話にありましたように、一〇〇%治療の線が打ち出されるようになったものもあります。日本では特に胃ガンの研究が進んでいることはいまのお話のとおりでありまして、私、この夏、パリで開かれました国際対ガン連合、UICCと言っておりますが、これの委員会に出たのでありますが、「胃ガンの分類」というところで非常に早期ガンというものを取り入れたいという提案をしましたけれども、アメリカをはじめ、ドイツ、それからソ連、その他いろいろな国々では、どうしても日本の進んだこの水準というものはわれわれの国にはまだ早いんだ、われわれの国はアンダー・ディベロップの国、カントリーである、それは胃ガンに関する限りというふうなことを言っておりまして、結局これは日本が胃ガンが多いということにも関連いたしますけれども、研究をすれば世界の水準を抜くということを意味するのではないかと思います。
 それから、疫学的研究というものは、人間の実生活の環境の中に発ガン因子を究明しようとする研究であります。これも重要なものであります。現在のガン研究、特に基礎的研究は、正直に申しまして、どの点を掘り下げれば解決するといった具体的の方策の段階ではありません。どうすれば糸口が見つかるかということを探っている段階にありますので、対策としましては、ともかくあらゆる専門分野を動員して総攻撃体制をつくるということが必要なわけであります。もちろんこれは日本だけでなく、外国についても言えることであります。
 ここで日本だけ特別に考えなければならないことがありますが、それはいま黒川参考人がお話しになったと大体似たことでありまして、日本に特に多く、したがって、日本人にとっては痛切な問題でありますけれども、外国に少ないために、欧米では研究の重点からはずされようとしているガンのことであります。日本としては、少なくもこのようなガンは当然重点として取り上げるべきではないかと思います。たとえばいま黒川参考人のお話の胃ガンでありますが、日本はチリと並んで世界一の胃ガン国でありまして、最近まで世界のおもな国のうちで、ただひとり死亡率が上昇の一途をたどっておりました。ほかの国では少しずつ減っているのにかかわらず、そういう状態であったわけです。これを非常に対照的なのがアメリカの白人でありまして、昔は日本と大差はなかったのでありますが、原因がわからないままに年ごとに死亡率が減っていきまして、いまでは日本の七分の一、非常に少ない数になった。そのうちに消え去るのではないかとまで考えられております。ところが、胃ガン自体の一般研究は日本では進んでおりますけれども、何ゆえに日本とアメリカにこのような差が生じたかという点の研究対策にはいままであまり力が入れられなかったように思われるのであります。
 そのほかにも、いま黒川参考人が申しましたような子宮ガンその他のガンがありますが、私は、このような日本人に特に身近かで、しかも、痛切なガンは、国として特定課題研究というような形にでもして、ただ胃ガンの早期発見、早期治療の研究というのにとどまることなく、さらに一歩予防という方向にも進みまして、何ゆえにそのようなガンが日本に特に多いかという点にしぼって、特別な研究組織をつくる価値と必要性が国としてあるのではないかと思います。日本のガン研究者の頭脳と技術がすぐれていますことは、たとえば五十年前初めて人工的にガンをつくった山極博士の業績でも明らかでありますが、最近では日本からの海外留学者のみごとな業績がこれを立証しております。これは外国人のほうがむしろよく知っておるのであります。ことに若い層の基礎的研究者の業績には、世界の最高水準を抜くものが少なくないのであります。たとえば最近人間のビールスであるアデノビールスで世界で初めてガンをつくったのは岡山大学の矢部博士でありまして、また、ビールスの中の化学成分の核酸だけを抽出してガンを同じく世界で初めてつくったのは奈良大学、現在は愛知がんセンターでありますが、そこの伊藤博士であります。ところが、これらの人が日本に帰ると、打って変わって思うように研究が進まない。というのは、一つには雑務が多いということもありますが、根本的には研究費とか研究制度に一番大きな問題があるのではないかと思います。不平不満という形で申し上げるのは好ましくないのでありますが、日本の場合には、国からにせよ民間からにせよ、研究を仕上げるに必要なだけの研究費の額をくれるというのではなくて、研究費の一部を補助、つまり足しにするという出し方が原則となっているようでありますが、たとえばアメリカでは三千ドルで肺ガンの原因の研究をするというふうに申請しますと、そんな小さい額で研究が完成するはずがないといって却下されることがあるわけであります。ところが、日本では、たとえば肺ガンの研究をするために一人で百万円の請求をいたしたとしましても、二十万円、三十万円に削られてしかもらえないということがまれでないのであります。
 もう一つ、ガンの研究はすぐれた一人の人だけでできるという時代はもう過ぎております。いまはチームをつくって共同研究の時代にいっておりますが、日本の制度や研究費の額では、有能な専門研究者とか、あるいは有能な技術者、テクニシャンを、別ワクはともかく、研究費の中からよい条件で雇い入れるようなことができないような制度になっていると私は理解しております。研究の第一の要素は人にあるのであります。有能な研究者と技術者を主任研究者の思うように集ることができないのが欧米との間の大きなハンディキャップになっているのではないかと思っております。これが、かりにこういうことが解決するとすれば、日本人によってガン解決の先べんがつけられるのではないかということも決して夢ではないと私はひそかに信じております。ガン対策をほんとうに進めるつもりならば、ぜひこの点も検討の必要があるのではないかと思います。
 それから、なお、研究費と申しましても、諸外国では必ずしも研究費だけとは限っておりません。民間からの寄付が相当の比重を占めていることが多いようでありますので、日本にも、笠参考人が申してくださいましたように、対ガン協会などがあって相当の活動をしておるのでありますが、率直に申して、笠参考人御自身もお述べになったように、それだけで十分だったとは言えないと思います。まあ日本の国情といたしましては、対ガン運動、民間からの研究援助の面でも、やはり国としてもっともっと積極的に音頭とり、その音頭とりに力を入れる必要があるのではないかと思います。
 以上であります。
#12
○委員長(小柳勇君) ありがとうございました。
 以上で参考人の皆さまの御意見の御開陳は終わります。
 これより質疑に入ります。参考人及び政府に御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#13
○森勝治君 笠さんにちょっとお伺いしたいのですが、笠さんの後段ですね、一番最後に述べられた点、たとえばこの種の運動というものは国民の自覚にまつのが最善だ、こうおっしゃっておるわけですね。そこで、政府に何もあまり金の負担かけないでやりたいというような御意見を承ったわけです。ところが、先般のこの席でわれわれが政府にも質問したのは、もっと国が率先して力を尽くすべきではないかということを終始一貫われわれが主張したわけですが、何かあなたのお話ですと、対ガン協会が独自で国民運動を起こされるような、政府があまり頼りにならぬ、こういうような後段の御説明のように承ったのですが、その点をちょっと。
#14
○参考人(笠信太郎君) そうじゃありません。本来言うと、何もかも政府政府というべきではないはずのものだということを言っているだけであって、現実に民間的な資金というものが集まらない。その上は、どうしてもいまの場合には政府に大いに奮発してもらわなけれげならぬということを申し上げているわけで、結論はあなたと同じなんです。ただ、よくわかり切ったことなんですが、政府は無限の財源を持っているわけじゃないでしょう。で、あらゆる面から政府に金を出せということはあり得るわけなんだから、だからそのことを考えると、民間というものが――民間というものがというのはおかしいですが、国民に自覚が多くなれば、そこからもずいぶん金が出るはずだという考え方なんです。いまは政府が多額の金を出すよりしかたがない。もしアメリカのような社会状況であればそこまでの必要はないし、また、それが国民の自覚というものでありますが、日本はそこまでいっていないことを考えて政府は対処さるべきだという意見であります。誤解のないようにお願いいたします。
#15
○森勝治君 わかりました。笠さんのお話だと、一千台の検診車ですね、その他合わせると約三百億の金が必要だ、こういう御説明がありました。そうなりますと、結核でいま政府が出しているのは三百二十八億ですから、この結核対策費にほぼ見合うだけの額があれば、あなたの言った見るべき金さえあれば研究推進ができる用意がある、こうおっしゃられるわけですね。ところが、ほかの先生や政府のこの前のお話ですと、この種のセンターの、医師の数が少ないので、急にはそういうことはやりたくてもできない、こうおっしゃっておられるので、あなたの将来に向けこの希望的な御意見なのか、その辺のところを……。
#16
○参考人(笠信太郎君) それはいまの検診車というようなものをつくるばかりでなしに、それには医師の要員が要りますね。これはやはり研修しなければできない、また、養成しなければできない、そういう費用を含めて申し上げているので、二人の参考人からおっしゃったことを少しも矛盾しないと思います。
#17
○森勝治君 それから、もう一点お伺いしたいのですが、この種の病気は金持ちにも貧乏人にも公平に罹患率が多い、こういうお話です。なるほどそのとおりだと思うのですが、ただ私どもが心配するのは、いまのように四十万も手術料がかかるということであるならば、金持ちはいざ知らず、貧乏人は四十万の四の字もなかなか捻出することが非常に困難なわけです。したがって、こういう問題に対する措置といいますか、たとえば国家的措置とかいろいろありますが、対ガン協会としてはそういう貧乏人対策をどうお考えになっているか。いまの段階だと金持ちでなければ医者にかかれない。たとえば最近の週刊誌に載っておりますが、埼玉大学の金子教授が医師に宣告されて、先月の九月二日に、九月三日はおれの命日ということを考えてくれということで失踪されて、いまだにその行くえがわからない、こういうことがありますね。この金子さんのようなことは一つの端的な例になりますが、金をかけられる人でも、宣告されるとそういうことになるでしょう。いわんや、金さえあればこの病気がなおる、かりに早期発見の場合にも、金がなくてどうにもならぬ、こういう場合がたくさんあるわけですね、そういう問題に対する御見解をひとつ伺いたいのです。
#18
○参考人(笠信太郎君) それはまあ多少そういうことはあると思うのです。しかし、発生するという点からいくとこれは無差別ですね、その点は。それから、早期に発見されればそんな大金が要らないでなおるということがあり得るわけです。それから、同時に、なかなかそこまでは容易にはいきませんけれども、基本的な治療方法というものができれば、これはいまの貧乏な人も地位の低い人も助かるということをお考え願いたいと思います。特別に金をかけたからといってもいまのところなおらない。発見が早期でなければほとんど死んでしまう。多少早いおそいの差はあっても死ぬ。その意味では貧富の差を越えたものであります。たくさん金をかければ必ずなおるというようなものではない。また、そういうわけであるから、金持ちはこうした問題に対して社会的に金をドネーションをされたい、そういう意味に解していただきたいと思います。
#19
○森勝治君 それでは黒川先生にお伺いしたいのですが、先生のお話の中で、検診の合計の数が六三年では六十七万四千人、六四年では八十八万四千人という数字が出されておるわけです。ところが、先般、厚生大臣が四十一年度の対ガンの対策要綱の説明をされたときには、来年度はせめて六十四万人程度を対象としてやりたい、こういう説明がなされているわけです。そうすると、その数字がだいぶ隔たりがあるのですが、先生方の研究や対策が進んで、政府のやり方がおくれておるのか、その辺のことをちょっとお聞かせ願いたい。
#20
○参考人(黒川利雄君) お答えいたします。
 これは、私が持ってまいりました資料は、胃の集団検診学会というのがありまして、そこで発表された数を集計いたしたものでありますから、あるいはそういう点でどこにも申告しないというようなものが含まれていたかもしれません。私のはその学会の発表の集計でございますので、あるいはもっと漏れているものもあるかもわかりません。
#21
○森勝治君 それでは厚生省に聞きたいのですが、いま私が申し上げましたように、黒川参考人のお話だと、八十八万四千人すでに検診されている。ところが、いま申し上げたように、大臣は来年度、四十一年度に六十四万人せめてやりたいとおっしゃるとするならば、これは政府の対策がはるかに劣っておる、こういうことになりますね。したがって、六十四万などと言わずに、この前の話だと、何か人的措置が講ぜられないからなどというお話もありましたけれども、すでにもう八十八万四千人と、約九十万になんなんとする検診がもうすでに実施されているのだから、来年度、四十一年度六十四万なんとけちなことを言わずに、百万とか百二十万、これはもう政府の施策として当然やらなければならぬことだろうと思うのですが、その辺はどうなんですか。
#22
○政府委員(若松栄一君) ただいま検診の数のことが問題になりましたが、私どもが予算立案等の当初にあたりまして得られた資料は、従来発表されておりました集団検診学会等の雑誌からとってまいりました。ただいま黒川先生のお話は、この十月に北海道で開催されました集団検診学会のいろいろの資料をおまとめいただいたということで、若干資料それ自体に食い違いがございます。また、一方、私どもはある程度理想的な形を追求してまいりたいということで、単に数だけをあげるというだけでなしに、あせることはいろいろな意味で弊害もあるということから、着実な、最も理想的な形のものを推進してまいりたい。そのほかに、当然民間等の要望によりまして、いろいろな医療機関でいろいろな形で行なわれる検診があろうということは当然だろうと思います。これを無理やりに制限したり云々ということは考えられません。私どもが助成してまいりたいのは、できるだけしっかりした技術で、しっかりしたやり方を統一的にやって間違いのない検診を推進していきたい。そういう意味で私どもが助成してまいりたいのは、現在の予想では六十四万程度というふうに申し上げておるわけであります。
#23
○森勝治君 いまそういうおことばをいただいたのですが、現に九十万近くも検診をしておるわけですから、来年度六十四万などという数字を出すのは、いかにも政府が無為無策、怠慢のそしりを免れないのじゃないか。その点、もう少し前向きのおことばがいただきたいのですが。
#24
○政府委員(若松栄一君) 集団検診という形のものと、いわゆる集団検診と言わなくても、医療機関で予防的な検診を受ける者も多々あると思います。こういうものを何もかも国費でもって助成するというようなことは必ずしも適当ではないのではないか。むしろ私どもが国として助成すべきものは集団検診、あるいは胃のスクリーニングというようなものを最もいい形に、最も精度が高く、効率が高く、しかも間違いの少ない形のものをむしろ開発していくというところに重点を置いておるわけでございまして、単にいま数だけをあげるという、また、すべての検診に国が助成するというような考え方ではございません。
#25
○森勝治君 今井先生にお伺いしたいのですが、いまのお話にもありましたように、なかなかガンの発生する原因ですね、よって来たる原因というのはつまびらかにできない、こういうお話なのでありますが、これは愚問で恐縮でございますが、何とかして一日も早く発見できる方法というものはないのでしょうか。
#26
○参考人(今井環君) これは直接お答えになるかどうかわかりませんが、たとえば御存じのぺニシリンとかストレプトマイシンというものは、前に長い研究期間があったかもしれませんが、突然として現われ、急速に伝染病が滅ってきたということであります。ガンは、いま申しましたとおり、ここをこうやれば、ここのところだけを突っつけば解決するということは、これは正直に申して、言える学者は一人もないと思います。しかし、これが進歩しておるということは、いつかはそういう日が必ずくるという確信、これが私はこれ以上は言えないのじゃないかと思います。もちろんこれは基礎的研究、ガンの本体に関することだけであります。治療診療のほうは別で、これはかなり具体的の方策があると思います。
#27
○森勝治君 それでは、もう一つお伺いしたいのですが、田中博士が発明されたとか研究されたとかいわれるミセルローズBというのはどういうものですか。何かこれは非常に効果があって副作用も何もなくて、大いに期待されるというお話でありますが、その点について承りたい。
#28
○参考人(今井環君) 残念ですが、私は全然存じません。
#29
○森勝治君 それでは、学会で発表されたらしいから、厚生省のほうからひとつお伺いしたいと思います。
#30
○政府委員(若松栄一君) まことに不勉強で、私も存じておりません。
#31
○藤田藤太郎君 私、今井先生にお伺いをしたいのでありまするが、ここに朝日新聞の発行した「ガンのすべて」というのが詳しくいろいろの面で解説しておられるわけであります。そこで、ガンとはいかなるものかということが、先生のお話を聞いておりましても、根本原因がまだつかめないというお話でございます。おいおい研究をしていただいているわけでありまするが、たとえばこの朝日新聞社の「ガンは遺伝するか」、「ガンのできる原因」と、こう二つに分けて解説がしてあるわけであります。そうして、その「ガンは遺伝するか」という項の中で、ガンは遺伝をせない、しかし、ガンを受け入れる体質の問題は遺伝するかもわからない、こういう書き方がしてあるわけであります。それから、「ガンのできる原因」というところを読んでみますと、熱いお茶を飲むとか、熱いおかゆをすするということによって、それで食道から炎症を起こしてガンになる、または打撲したところが原因でガンになる、こういうぐあいに、ちょっと見ますと大筋そういうことが書いてあると思うのです。そこでお尋ねしたいことなんですが、ガンというものは、一つの衝撃を受けたとか特別な刺激を受けたとか、そういう形の炎症によって起きるものなのかどうか、ここらがいま研究されている問題の焦点だと私は思うのでありまするが、ここに「ガン細胞」ということばが出てくるわけであります、学問的に。そういたしますと、このキノコ状の細胞の中から抵抗力のなくなったところに、炎症といいましょうか、そういう形でなしに、凹凸みたいなものができてきて、そしてそれがその区域の生命に対する障害を与えるというぐあいに私は聞いておったのでありまするが、全くしろうとでありますからよくわかりませんが、ガンというものが根本的にどういうものなのかということをひとつお聞かせを願いたいわけであります。いまの研究の進んでいるところまででけっこうでございますが、どうも単に刺激を受けたとか打撲を受けたとか、平生以外のものが通ったために炎症を起こして、それがガンの原因になるということなら、はれものかできものとか、その治療をすれば何か対策が立つような気がするんですが、そうでなしに、ガン細胞という形で、むろん抵抗力がなくなるからそれが出てくるわけでありまするが、そういう性質のものなのかどうかということをひとつお聞かせをいただきたい。
#32
○参考人(今井環君) ちょっとお答えが講義めいたことになって恐縮ですが、もちろんガンというのは、われわれの普通からだの中に持っています細胞のあるものが原因不明でガン細胞になるということがそもそもの初めであります。それがなぜなるか、これがわかっていないのですね。ところが、これはもうすべてのガンに共通の原因ということになっておりますが、それがわからない。それが細胞の生命の神秘に通ずるのでわかりにくいのですが、ところが、いまお話しのように、たとえば打僕とか、あるいは食べものとか、こういうふうなものは、いわゆる私どもは細胞のガン化と言っていますが、それを誘発する、いざなうもの、誘因と言っていますが、その誘因については、これは非常にたくさん調べられておりまして、非常によく――非常にと言っては言い過ぎかもしれませんが、かなりよくわかっております。具体的に申しますと、たとえば動物に何かのある薬品を与えるとか、あるいはいろいろなそういう刺激を与えてガンができるものが――物質だけとは限りません、光線とか、そういうものもありますが、これが約六百ばかりあります。六百ありますと、結局はっきりしたことはわからないと言わなければならない。まあそれがこのよくわからないという原因なんです。非常に発達してきたためにわからなくなった。ですから、これを整理すれば後にはわかってくるのだろうと思います。私どもが身近な問題として一番大事なのは、そういうふうな六百とか幾つかの――六百といういわゆる物質、これは原因とは言いません。たとえば、いま御質問にはございませんでしたけれども、たばこと肺ガンの関係なんか、たばこをのむ人に肺ガンが多いとか、それから、のまない人に少ないというのは、私どもは相関関係と言っております。数の上で関係しているだけで、因果関係ということは想像にすぎない。因果関係と言わない人もおります。私どもは相関関係と因果関係というものを別に考えているわけであります。その相関関係という点でいまの六百というものがはっきりわかっているわけですが、私どもは、やはりこれは日本人でも、胃ガンの問題でも子宮ガンの問題でも考えなければならないのは、そういうふうな六百というものの中に、あるいはそれ以外あるかもしれませんが、日本人としての生活の中、環境の中、そういうものの中に何かそれがあるのではないか、ガン細胞ができるほんとうの原因はいつになったらわかるか知れませんけれども、身近な問題はそういうことを調査すればわかるのではないか、こういうことでございます。
#33
○山本杉君 関連。今井先生にちょっと伺いたいと思いますが、いまの問題に関連いたしますが、さっきのお話の中で、新しい若い学者が海外で研究をしている。岡山医大の矢部博士や、愛知がんセンターの伊藤博士などの名前が出たのでございますが、アデノビールスとおっしゃったように伺いました。ビールス説というものが出てきた以上、やはりこれは伝染するという考えなんでございましょうか、そこをお聞かせ願いたいと思います。
#34
○参考人(今井環君) 伝染ということは打ち出されておりません。もちろん動物ではビールスそのものが伝染することはありますが、ビールス説ということと伝染ということとは全然別問題であります。現在ではどちらの証拠も出ておりません。普通の一般の学者は、ガンは伝染しないと考える人が多いと思います。
#35
○藤田藤太郎君 いま今井先生のお話を承ったのですが、それで、私たちが日常ガン手術を受け、早期発見というお話が出て、それの治療のウエートが早期発見だと、早くやればなおるウエートが高い、こういうお話を聞くわけであります。そこで、胃の一カ所に炎症が出るといいますか、ガン体、ガンというものが出てきて、早期のときにはその一部分広くとれば、それであとは誘発しないが、少しおくれると、その細胞がずっと横に走って、また違うところから出てくるというお話を聞くわけでありますが、ですから、そこら辺の問題が、ガンそのものをつかむのに、ガンとはいかなるものかということになってくると、いまお話がありましたように、炎症を起こすということが、そのガン細胞の中の一つを誘発をするというぐあいに、遺伝の問題と同じぐあいにお話がありましたのでわかりましたけれども、その細胞の研究をひとつこれからしていただいて、つかんでいただくということになると思うんです。ところが、たとえばそれを発見をするときに、レントゲンで写して発見するとか、いろいろの方法があると思うのですが、たとえばレントゲンで写せば完全にガン細胞とガンをとらえることができるのか、そのレントゲンの技術というものは、日本のレントゲン技術というものはそういう水準にあるのか。そういうことであればいまの早期発見というものは非常にうまくいくと思うのですが、そのレントゲンでとらえられるか、そういうレントゲンの技術というものがそのときにあるかどうか、その辺のところのとらえ方の問題について、これは臨床にすぐ関係してくる問題でありますが、これは黒川先生、今井先生、御意見があったらお聞かせいただきたい。
#36
○参考人(今井環君) これは大体において黒川参考人の御専門の領域と思いますが、ただ私は基礎的の研究者でございますので、その点でいまお答え申しますと、病人に対する対策というのは、なおり得る病人の対策、つまり非常に早期のガンの対策、それとなおり得るが少し治療がおくれる対策、この二つに分かれると思います。一〇〇%なおり得るという早期のガン、胃ガンとか子宮ガンその他のガンですが、これはおそらくレントゲンはあまり――レントゲンもちろん関係ありますが、レントゲンばかりでなくて、直接見る直視法――専門語はちょっと違いますが、直視法というのが非常に発達しておるわけであります。その程度のものが一〇〇%なおると思いますが、レントゲンのことはもちろんたとえば胃ガンなんか非常に関係があると思いますが、これは黒川先生のほうがほんとうの御専門ですから、そちらのほうにお願いしたいと思います。
#37
○参考人(黒川利雄君) お答えいたします。
 胃ガンに関しましては、従来から、十九世紀の末にレントゲンがレントゲン線を発見いたしまして五年ぐらいたってから、すでに胃腸管をレントゲンで診断するという方法ができたわけでありまして、それからもう六十年、六十五年ぐらいたっておると思いますが、その間粘膜を写し出すという方法がドイツで発見されまして、私ども三十五年ぐらい前からそういう方法を用いて、そしてガンの、つまり胃ガンは昔から、形容枯稿し腋窩に硬結を触れる、これがガンだと、こういうふうに漢方の本に書いてあるわけですが、非常にやせて、色が青くなって、そしてみぞおちのところにかたいものが触れればガンだと。これは昔風のガンでございます。私どもはそれを触れない前に発見しようということで長年研究を続けておったわけでありますが、そういうことがやや完成したと思っておりましたが、それはその当時見つけたものをいま考えると、ほんとうの早期胃ガンではない。つまり粘膜にだけあって深く及んでいない、そういうガンを見つけるのにはもっとファインな方法が必要だ、そういうことで新しい粘膜造影法というものが開発されてまいった。それで、それはバリウムを飲ませまして、そしてそのあとで空気を入れて粘膜面を膨張させ、伸展させて、そしていままではひだとひだとを見ておった。胃の中にはひだがございますが、その断絶というものを見ておったのですが、そのひだそのものに何か変化があってもわかるであろうということが開発されました。そういう方法で、もういままではガンだとおそらくだれも思わなかったような早期のものが胃ガンだということがわかるようになりました。
 それはただレントゲン線だけの功績ではないと思うのです。というのは、近ごろ内視鏡が発達しまして、昔は非常にかたい金属の棒を胃の中に入れて、そしてのぞいておったのでありますが、一九五九年からハーショウィツのファイバ一スコープというものができました。それはきわめて細いガラスの糸――ガラスのファイバーを、アメリカのものは十五万本くらい束にいたしまして、そうして見ますと、どんなに曲がっていても光を伝達いたしまして、胃の中に入れてある管がどんなに曲がっていても先のほうでとらえた像を外で見ることができるようになりました。そういうふうな方法を日本で非常に開発、改善が試みられまして、アメリカのものよりも非常に便利で、そうして非常によい方法が開発されたわけであります。そういうことによって、われわれがいままでレントゲンで見て、こんなものは偶然の産物だと思ったものが、中を直視することによって、ああこういうものがガンなんだということがだんだんわかるようになってまいりました。したがって、レントゲンと内視鏡というものは同時に併用してやるということによって、早期胃ガンが非常に見つかようになりました。
 もう一つ、病理学者がなくなった人を解剖いたしまして、胃を取り出して見ても、ガンかガンでないかということは、見ただけではよくわからない場合もあるわけです。そういう場合に胃の中の細胞を取ってきて――いまの直視法、内視鏡というものが発達いたしましたから、そこのところを見ながら、はさみを外から操作いたしまして、リモート・コントロールで小さなピンセットを出して、そこからものをつまんでまいります。そして外に出して、それを顕微鏡的に調べてみて、ガン細胞があれば、間違いなくガンだ。
 そのほかそれに対していろいろな改善法はありますけれども、そういうふうな三本の柱――レントゲン、内視鏡、直視法、この三本の柱で胃ガンのきわめて早期のものが続々として日本で発見されておるのであります。
 そういうことで、ドイツやアメリカに参りまして、私もこの七月にトロントでUICC――国際対ガン連盟のガンのコントロール・コミッションというものの中のキャンサー・ディテクション・コミッティーというものがありまして、私もそのメンバーでありますが、そこで胃ガンの早期診断の話をいたしますと、向こうではそういうことは考えられないというほど日本では相当早期胃ガンが見つかっておるという状態であります。
 それは非常に功績だろうと思うのでありますが、ただ、先ほどお話がありましたように、ちょっとガンの本体に触れるかもわかりませんけれども、本体と申しますか、つまりわれわれが理解するところは、ガン細胞になれば――正常の細胞はある程度復旧すれば、それでもう終わりなんです。たとえば腸の粘膜、胃の粘膜をちょっと削り取りましても、翌日はもうほとんどもとのとおりに返ります。御承知のとおり、ほっぺたをちょっと痛めたとか舌をかんだとかというのでも、翌日はもうなおってしまいます。そういうふうに非常に再生力が強いですね。それで再生してしまえば、正常の粘膜はそれきりでもうそれ以上ふえない。ところが、ガン細胞になりますと、中で無限に増殖してふえていく。これがガン細胞の一つの特徴でございます。
 もう一つは、ガン細胞、はどこへでも出かけていく。そこからリンパ管あるいは血管を通じてどこへでも飛んでいく。つまり一所不住でありまして、同じところにとどまっていてくれればいいのですが。それは同じところに限局されていれば、かなり大きなものでも手術して一〇〇%なおるのであります。それがほかへ散っておる。つまり、私どもはよくたとえて申すのでありますが、ガン細胞というものは非行少年みたいなもので、親の言うことを聞かないで親の財産を無限に使う。親が倒れるまで使う。これが一つと、それから、うちの中にいてくれれば何とか始末がいいのですが、どこへでも行って社会に害毒をまき散らす、これがガンの性質のように思うのであります。
 ただ、なぜ日本に胃ガンが多いかということでありますが、これは厚生省の統計にも出ておりますが、一番多いのは奈良県でありますが、少し奈良県も減ってまいりました。多い県は山形、新潟、富山というような日本海に面した米の産地ということが一つ、それから一番少ないのが鹿児島県、その次に少ないのが岩手県。こういうような地域的の差がどうしてできるであろうか、こういうこともいまの疫学的の研究という方面でだんだん解明されていくのではないかと思うのであります。
 それから、もう一つの、アメリカと日本との違いでありますが、私どもの統計では、アメリカの男女は日本の男女の胃ガンの五分の一ないし六分の一でありますが、しかもそれがだんだん減りつつある。日本では最近ちょっとふえないのでありますが、世界で一番胃ガンがふえているのは日本だけであります。それはどういう関係でありますか。たとえば、日本人の一世がカリフォルニアあるいはハワイ等におります。そういう人たちの死因は非常に骨ガンが多いのであります。二世、三世になりますと、アメリカ人並みの心臓――血管の病気で死ぬ人がふえてきておる。胃ガンは減りつつあります。私はカリフォルニア大学のアルトハウゼンという専門家に会ってそのことを質問したことがあります。自分は、理由はわからないが、日本人が胃が悪いと言ってくると非常に危険だということを常に頭に置いておくということを言っておりました。それでもアメリカの白人に比べて日本人はまだ胃ガンが多いのであります。ですから、環境によって、あるいは食物によって、アメリカにおる二世、三世で胃ガンが減っているといを事実はあると思いますが、これがどういう原因であるかということをすぐに申し上げることはできません。まだ研究の段階であろうと思います。
#38
○山本杉君 黒川先生に、ただいまの問題に関連してちょっと伺いたいのでございますが、私ども考えますのに、早期宵ガンの発見というのはなかなか困難だと思われるのでございますが、その集団検診をなさいますときに、検診者でいまのお話のような内視鏡をお使いになったり、そういうことはなさらないんでございましょうね。
#39
○参考人(黒川利雄君) 集団検診は、御承知のとおり数をたくさんやらなきゃならない、それから廉価に、費用があまりかからないということでないと行ないがたいという関係がありまして、私ども最初はレントゲンだけでやっておりました。しかし、最近に至りまして、それだけではどうも見のがしがあるのではないか。というのは、私ども毎年同じ人をやりたいわけです。それで、前の年に何でもなかったのが、次の年に発見される、その可能性を信じて毎年やっておるわけでありますが、そうすると、前年になかったと思われる人に、やはり次の次の年というふうに出てくる場合がありますので、やはりこれは見のがしがあるのか、あるいは翌年になって出てきたのかわかりませんから、ある人を限って、ある区域を限って、何千人というだけガストロカメラ――胃カメラだけで検診をして、そしてレントゲンと比較してみたことがあります。そうしますと、ガストロカメラでやるほうがよけい発見されておるというわけです。したがって、私どもはレントゲンで見て、そしてそのうちガンではないかという疑いを持つ者が大体二〇%あります。その二〇%については、直接レントゲンと、それからカメラ、それから細胞診というふうにいたしておりますので、大体初めからカメラだけでやると、御承知のとおりカメラには死角がありまして、写らない場所がある。そういう不利な点もありますので、われわれは近ごろは、できるだけレントゲンで集団検診で疑わしい者をよけいつかまえる、それをすぐカメラで見ます、こういう方法をとっております。
#40
○山本杉君 そうすると、レントゲンとおっしゃいますのは、視診だけでございますね。最初はごらんになるだけ。
#41
○参考人(黒川利雄君) 写真をとります。四枚ないし六枚、いろんな位置で。
#42
○山本杉君 その写真を読む能力を持った人を養成しないといけないということでございますね。
#43
○参考人(黒川利雄君) さようでございます。
#44
○山本杉君 もう一つ伺わせていただきたいのですが、この前に中山先生をこちらで、この委員会ではございませんけれども、国会でお呼びして、映画を見せていただいたりいろいろ話を聞かせていただいて、私もそこへ出て聞いたり見たりしたのでございますが、そのときに、アイソトープの注射をしておいて、ガイガーを当てると、ガン細胞があるところはそれが動くのでわかる、そういうようなお話があったのですが、そういうことははたして行なえるものでございましょうか。
#45
○参考人(黒川利雄君) お答えいたします。
 P32というアイソトープでございます。アイソトープP32という放射能を持ったアイソトープはガン細胞に親和性が強いので、そういうところに注射したりいたしますと、そこにくっつきやすい。きわめて精細なガイガーカウンターを入れてやりますと、そこのところで数がよけいカウントいたします。それでガンがあるかないかということをきめるわけでありますが、そういう方法も行なわれますが、これはごく初期のガンにははたしてどうか。それから、非常に費用がかかるという点で、それからいまのP32というような放射能を持ったものを使わなければならないという点で、その放射能がまたガン原性でもあり得るということで、なかなか、すぐに集団検診に利用するということは困難じゃないかと思います。
#46
○高山恒雄君 黒川先生、ちょっと御質問申し上げますが、先生のお話によりますと、早期発見ができないから集団検診とかいろんな方法をやる以外にないのでしょうが、いまの場合は結局早期発見ならば何とか防ぐことができる、こういう御報告を承ったのですが、そうしますと、もしそれを、たとえば工場病院とかございますね、そういうところにそういう集団検診というものをかりにやるとすれば、先生のおっしゃったように専門家の養成をしなくちゃいかぬのだろうと私は思うのです。先生はそうおっしゃっていますから。それをやるためにはどのくらいの専門家が要るのか、そういう統計的なものでもあれば、ひとつ御発表願いたいと思います。
#47
○参考人(黒川利雄君) お答えいたします。
 実は私ども対ガン協会とタイアップいたしまして、癌研の職員がいろんな工場であるとか事業所であるとか、そういうところに車を持って参りまして、それで集団検診をして、私どもはそれを読影をいたしまして、そして処置をするということにしておりますから、そういう点では私どもはまあ専門家を持っているわけでありますが、それからまた、各地の大学病院あるいは対ガン協会のあるところには専門家がいるわけであります。まあ四十五歳以上の日本の人口は二千万あるそうでありますが、これを一年に一回ないし二回やるということになりますと、とても何人専門家があればいいかということは、ちょっと想像がつかないのでありますが、つまり六万人の開業医がすべてそういう知識を備えておれば、一日一人やれば三百六十日くらいでできるかと思いますが、そういうことはなかなかむずかしい問題だと思います。
 それから、経済問題が非常にありまして、市町村が負担をする、全額負担をする町村では、その該当者の九五%くらいが受診いたします。ところが、これは宮城県でありますが、一人百円ないし百五十円の負担、あとは市町村が負担すると、そういうことをやりましても、五〇%に受診率が減るのであります。ですから、これはやはり国の、あるいは公共の手がもっと伸びないと、われわれが行っても該当者の全部をやっておらないというようなことであります。また、宮城県では大体四十万人が該当者なわけでありますが、ガン年齢以上の人でありますが、そういう人をわれわれが、ことしの予算は七万人やれるかどうかということで、まあ七万人を達成いたしたいと思っておるのでありまして、こういう点もやはり、その宮城県だけでも、もし全部四十万人をやろうとすると、いまの三倍くらいの単とかスタッフとかいうものが必要だと思います。
#48
○高山恒雄君 それで、お話承って、国がやらなくちゃいかぬことばっかりだろうと私たちも思うのです。それで、今井先生は、つまり基礎的なものをもっと研究しなくちゃいかぬと、こうおっしゃっておるわけですね。それから、黒川先生は、さしあたり原因はわからないんだが、早期発見の集団検診をやるということが、いまの場合では適切だと、こうおっしゃっておると思うのですよ。それで、まあ集団検診ということになりますと、そういう専門家の方が足らないということになれば、現在の三十カ所にあります、各府県ですか、これは付属病院でやっておられるような施策を立てておられるのかどうかですね。これは笠先生のほうにお聞きしたいと思うのです。三十カ所のそういう研究所がございましょうが、それはやっぱり黒川先生のところの地方検診をしていくような体制ができておるのかどうか、お聞きしたいと思います。
#49
○参考人(笠信太郎君) それは支部によって非常に違うと思います、財力があまりありませんから。それから、支部に対して本部から多少応援するようなこともありますけれども、非常にまちまちだと思います。それから、本部自身が持っておる検診車を回しておるのが、いまのところやっと七台。それから、日本中でこういうことを始めまして、交互にそれが影響しまして検診車が方々にできたわけですが、全体で七十台くらいしかないわけなんです。ですから、いずれにしても満足なことにはいまいっていない。したがって、いまのところそういった検診車もできるだけふやしたいということであって、およそ完全にいっているという話の反対なんです、実際は。それをひとつ御理解願って御助力を願いたいと、こういうことであります。
#50
○高山恒雄君 これは大臣いなけりゃだめでしょうけれども、私は先ほどちょっとお聞きして非常に、政府のほうですがね、不可解に思いますのは、大臣もきょうの所信表明の中で、かなり力を入れてやりたい、熱意をもってやりたいと、こういう表明をしておられるわけですね。ところが、先ほどの発表を聞きますと、まあ六十万という集団検診をやろうという計画ですがね。統計的なものをもって、いままでの過去にやられたその発表を中心にしてそれだけ組んだと、こうおっしゃるのですね。せっかく日本の対ガン協会というものがあるのですからね。いま日本では地域的に最もガンの発生する地域が、もう協会ではわかっておるはずですね。そういう問題のところをやっぱり重点主義にやるというふうな対策を立てるべきじゃないかというような、私は直感するわけですよ。あるいはまた、対ガン協会のほうにそういう御相談もして、政府としてはそういう立案を考えておられるのか、それとも、政府、厚生省においてみずから勉強されたことだけであらゆる施策をやろうとお考えになっておるのか。これは大事なところだと思うのですよ。これだけ社会的に、ガンの対策をしなくちゃいかぬという国民の気持ちもそこにある、国会でも取り上げておるという場合に、せっかく日本対ガン協会というものが長い歴史を持ってあるのに、そこにも十分な相談をしないで国原予算を組んで、そして撲滅に努力しようということは、私はこれはあまりにも軽率じゃないかという気がするのです。そういう点はどういう考えを持っておられるのかという点をひとつお聞かせ願いたい。
#51
○政府委員(若松栄一君) 最初の点で、ガン対策をやるのに発生率の高い地域を重点的にやったらどうかという御意見がございましたが、その点につきましては、たとえば胃ガンにつきましては、確かに北陸の日本海岸、新潟、富山あるいは島根というような地域は日本全体の水準より非常に高い発生率を示しておる。また、逆に少ない地域もございます。しかし、それにいたしましても、日本のどの県にもどの地域にもガンが相当多いのは事実でございますので、現在の段階で特に多いところだけをやって一般の地域を除外するというようなことは、これは適当じゃないと思います。当然多い地域にはそれぞれより大きな努力をするということが必要であろうと思います。
 それから、政府がガン対策を実施するにあたって、対ガン協会との連絡協調を行なえという御意見でございますが、まさにそのとおりだと思います。せっかく対ガン協会という民間の強力な団体がございますので、さらに一そう対ガン協会の成長もはかりまして、同時に、中央あるいは各県の段階で、それぞれ政府あるいは地方団体と対ガン協会本部、支部というのと協力いたしまして、特に専門医療機関というものが組織をつくって、その組織の上でこの対策を有効に実施していくというふうに考えております。
#52
○大橋和孝君 だいぶいろいろお話を承りましてありがとうございますが、私ちょっと笠先生のほうに。日本対ガン協会でいろいろ御研究あるいはまた御事業をなさった非常な成果をいま聞かせていただいたわけですが、いまのお話の中で、やはり基礎的な研究と予防検診、それからまた啓蒙宣伝だということでありますが、基礎的な研究の方面にはどれくらいのいままでの経済の中で御支援をなさったか、あるいはまたどういうところに重点を置かれていま対ガン協会としてはそういう方面に御活躍をなさっていらっしゃるかということを、総括的にちょっとお伺いしたい。
 第二番目には、集団検診をなさっておられまして、七台でずいぶん効果をあげていらっしゃいますが、それで、その検診車が行ないまして、一人当たりに対しましてどれくらいの費用がかかっているのか、それからまたその内容ではどういうふうにしたらどれくらいかかる、将来はこういうふうに発展したらこれくらいの費用がかかるというようなことを、ひとつ見通しをお聞かせ願いたいと思います。それからまた同時に、検診車が一日どれくらいの人員をいままではできて、将来どういうふうにすればどれくらいできるか。それからまた、検診車に対しては技術者をどれくらいいつも用意なさっておられるかということを、そういうようなことに対してちょっと具体的なお話を承りたいと思います。
 また、啓蒙宣伝については、いろいろいまお話を承って、宣伝と同時に、実効のあがる募金の方法もお考えのようですが、啓蒙宣伝が、いま私どもの考えますのは、非常にまだ死亡率が高いために、むしろ非常にノイローゼのような、非常に不安だけを与えるというかっこう。まあそれは一面考えれば、それほど国民が不安を持ってくれることは、一つはそれが早期発見につながることはよくわかりますけれども、そうした意味ではどういう配慮がなされているかというような点も、少し伺いたいと思います。
#53
○参考人(笠信太郎君) 基礎研究のほうは、さっきも少し申しましたが、これという目ぼしい研究をされておるものに対して、十四の研究にいままで出したということをさっき申しましたが、それはそんなことでは足りないので、もっと継続すべきだと思うんです。その額も五百万円そこらのものですから、ほとんど問題にならないと私は思うんですが、それがなかなかできないといういまの現状、それは全体としての金が足りないということですね。それから、基礎研究のほかには、若い大学を出たばかりのインターンぐらいの状態にある人、こういった人たちはガンの研究をやっているというのではなかなかめしが食えないということですね。すぐに収入のあるほうに行きたがるというふうに聞くわけですが、そこで、さっきも言いましたように、二カ年継続で一万五千ないし二万ぐらいの金を相当数に出したわけです。これもやはり続けなければならないわけですが、それに対しては三千万ぐらいの金を出しました。それ以上のことがいまのところできないでおるという現状なんです。それがまあ基礎研究なんで、私が基礎研究が必要ということは、さっき今井さんからも申されましたが、これはもう言うまでもないことなんで、これは不断に継続されなければならぬ、そうしてまた非常に強い力で継続されなければならない。したがって、いま申し上げたような金を継続すればそれでできるというようなものではないと思うんです。もっとけたの違ったものを用意しなければならない、これはわかり切っていることであります。
 それから、検診車では、普通に検診をしますと千五百円くらいかかるそうです。検診車でやっております場合には全くの実費よりも少しマイナスといいますか、足を出すという程度でやるわけですが、一人七百円ぐらいの費用でやっております。これもできるだけ低くしたいのですが、まあお医者さんに払う費用もありますし、そうしてただで働いてもらうわけにもいきませんから、看護婦も要るわけですから、五百円くらいでできないかということをしきりにやっているわけなんですが、まだ現状ではそこまでいっておりません。それから、これは本部だけではいま七台ぐらいのものですから、これに検診車を使って仕事をしていただくお医者さんはいろいろかわって、医師会のほうとの連絡によって、何といいますか、繰り合わせをやっておるという状況で、しかしながら、それをやるお医者さんは、さっきからいろいろ話がありましたように、あやふやなことでは困る、それに対して責任が持てるということでなければいかぬということを基礎に置いて、いまの七百円ぐらいというのはぎりぎりの、まあ補助しなければならぬわけですが、そういう金額を出してやっている。そこで、少し危険に思われますのは、これはどうもはっきりしたことは、責任のあることは言えないわけですが、わりあいに楽にそういうことをやっている向きがあるということを聞いておりますが、それ以下ではなかなかできないのです。楽に、いまの状況で安い費用でやるのはけっこうですが、はたして責任のある検診ができておるのかどうかということに疑問を持つので、いまの状況ではそれだけのことが必要だ。もしかなりゆとりができれば、その費用ももう少し安くできる。
 それから、検診車ももっとつくらなければいかぬ。それから、さっきも言いましたように、これに要する技術家というものを研修その他によって大量つくっていかなければならぬということですがね、そういうことを志しているというわけです。
 志しているけれども、なかなかそうはいかぬので、少なくとも今度は、目の前の問題ですが、寄付金つき切手で少なくとも三億ぐらいの金は出していただきたい、こう考えておるわけです。
#54
○大橋和孝君 もっといろいろ伺いたいことがございますが、だいぶあれでございますので、きょう先生方にお伺いするのはやめて、ちょっと厚生省の低うにお尋ねしたい。
 実は、三十九年の十二月十一日の朝日新聞で、米国の大統領が心臓、ガン、卒中で五カ年計画で予算二十九億ドルで始めた、こういうようなことが新聞で報道されております。これなんか日本にとってみますと天文学的な数字のように感ずるわけですが、しかし、こうしたかまえが私は民間からいろいろな問題に対して協力される一つの動機になるわけです。国が大きくそうした呼びかけをすることが必要でありますが、実は日本の現状を考えてみますと、私はここに一つ老人の福祉法による検診を問題にしたいと思うわけです。
 これを比較にとってみたいと思いますが、これで、いま笠先生からお話しになりましたように、七百八十円が最低ぎりぎりの線だということですが、もっとも検診の内容は非常に簡単なものでありますから、老人福祉法による検診ですけれども、これは実はちょっと調べてみたところが、一般の検査料は二百円しか厚生省は国庫負担をみていない。この二百円というのは初診料に似たようなもので、それからいまいろいろな精密検査をいたしまして、これが千四百四十円ということになっておりますが、これを運営する面から見てみますと、国が三分の一、それから都道府県が三分の一、市町村が三分の一の補助になっているようでございますが、そういうところでは比較的まだいけますが、ところが、六大市のようなところは三分の二は市が負担している、こういうことになっているわけでありまして、最近私ちょっと調べてみますと、この検診をやるのに、冬の二月ごろに朝の九時から十一時まで指定して、この寒いときに老人の検診をするというやり方で行なわれている。しかも、その費用がいま申したように初診料に満たないような費用で行なわれている。こういうふうな形で福祉法が制定されて運用されているようですが、私はいまここで先生方からお話を聞きながら、ガンの早期診断を進める意味においては、私はもう一つ大きく国から、この間聞きましたようなわずかな三十億円程度じゃなくて、もっと積極的な大幅なあれをしなければならないだろうし、特にいま問題になっております現在の医学でいかにノイローゼをなおし、あるいはまたガンというものに対していわゆる治癒率を国民に知らしめるためには、もっと綿密な集団検診を行なって、非常に症状をまだ自覚していないような状態で早く患者を発見する、これをがんセンターでもっておやりになって、二〇%ですか、それ以上の成果を出しておられるというふうな状態にあるわけでありまして、一般病院へ自覚症状を持ってきたときにはわずか五%しか治癒率が出ていないという差があらわれておる。こういう関係から取り組んで、厚生省の非常にさみしい予算が私は大きに影響しているのじゃなかろうかと思うわけなんですが、こういう点でお話を聞いた中で、厚生省としてはもっとガン対策については根本的な考え方を持って、同時に、基礎研究に対しても、早期発見にしても一、PRにしても、も一つと積極的な姿勢を示してもらうべきじゃないか。非常に姿勢は出ておりますけれども、過去の例、ほかの法律の例を考えてみましても、そういう点でマイナスになっていると思いますが、その点をひとつ医務局長から……。
#55
○政府委員(若松栄一君) 老人福祉法の検診が非常に不十分であるということでございますが、老人福祉法の検診はもともと老人の一般的な健康診断をするということでございまして、ガンその他を特に目当てにしているものではございませんで、この中にガンの検診まで含めるということは現在のところ適当ではございませんし、また現実には不可能だと存じております。
 なお、ガン対策全般的な姿勢といいますか、そういう問題につきましては、大臣の所信表明にもありますように、この問題を特に一つの重点施策としてやっていくということでございまして、その中に最も大きな比重を占めておりますのは、現在のところ医療機関の整備あるいは技術者の養成というようなことでございまして、対策の中の最も基礎的な部面をまず整備していくということでございます。それができなければ多数の検診というものは望むべくして行ないがたい実情にございますので、現在のところは金を投入すればそれですべてができるという段階にはございません。そういう意味で、一番基礎的な医療機関の整備、技術者の養成ということをはかりまして、能力それ自体を拡大していくという段階にございます。そういう意味で、急激に検診数をふやすということは困難である状態でございます。
 なお、ついででございますが、先ほど森先生からのお話でありましたミセルローズBというものについて、ただいまがんセンターのほうに照会いたしました。御承知のように、ササの葉からとりましたバンフォリンというような薬が非常にガンにきくとかきかないとかいうことで問題がありました。諸外国でもこれを問題にしましていろいろ追試をされましたが、依然として、きくという例もあり、きかぬという例もあるという状態でございます。しかし、何かききそうなものがあるということから、その成分が何であるかということから、多糖類であろうという推定をいたしまして、その多糖類ならばどういうものが効果があるのかということを追及いたしますために、多糖類をたくさんつくって実験しております米国のインディアナ大学のホイスラー教授から構造式のわかった多糖類を送っていただきまして、それをがんセンターで実験をいたしておるわけでございます。そのうちで、現在のところミセルローズBというものが実験ガン――動物に移植できる実験ガンの発育をある程度抑制するという効果があったということが学会に中間報告されたのでございまして、これがはたしてどの程度の実用性があるかどうかということは、まだ全く見当のつかない段階でございます。
#56
○参考人(笠信太郎君) ちょっと訂正いたしたいと思います。
 さっき、ぎりぎり七百円と申しましたが、正確には七百八十円だそうです。それがぎりぎりのものです。
 それから、もう一つ、私どもがやっていること、具体的にはもう実に小さいことと自覚しておるわけなんですが、小さく始めるより始め方がない。そうしてその中で私どもの気持ちとして、一面にはわれわれがこういった運動を進めていくことによって国の対策もひとつ同時に進められるようにということを含んでやっておるわけです。また、事実上少しずつ始められたということは認めなければならぬと思います。しかし、今後は大いにやっていただきたい、こういうわけであります。
#57
○委員長(小柳勇君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。
 参考人の皆さまに申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見の御開陳を賜わり、ありがとうございました。本委員会といたしましては、皆さまの御意見を参考とし、国会の立場からガン対策の確立と推進に努力を傾注してまいりたいと存じます。なお、本件に関する資料の収集などに御協力をお願いするとともに、御要望の点などがございましたならば、本委員会に御連結くださいますようお願い申し上げます。本日はありがとうございました。
 他に御発言もなければ、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十五分散会
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ソース: 国立国会図書館
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