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1965/10/15 第50回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第050回国会 本会議 第4号
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1965/10/15 第50回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第050回国会 本会議 第4号

#1
第050回国会 本会議 第4号
昭和四十年十月十五日(金曜日)
    ―――――――――――――
議事日程 第四号
 昭和四十年十月十五日
   午後二時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 飼料需給安定審議会委員の選挙
 海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員の選挙
 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選
  挙
 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後二時十一分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 飼料需給安定審議会委員の選挙
 海津砂地地帯農業振興対策審議会委員の選挙
 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙
 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙
#3
○議長(船田中君) 飼料需給安定審議会委員、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員、畑地農業改良促進対策審議会委員及び積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の任期がそれぞれ満了いたしますので、この際、その後任者の選挙を行ないます。
#4
○海部俊樹君 飼料需給安定審議会委員外四委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#5
○議長(船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
 議長は、飼料需給安定審議会委員に
      田口長治郎君    本名  武君
      金子 岩三君    角屋堅次郎君
      森  義視君
を指名いたします。
 次に、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員に
      古井 喜實君    小沢 辰男君
      稻村左近四郎君   卜部 政巳君
      川崎 寛治君
を指名いたします。
 次に、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員に
      佐藤洋之助君    亘  四郎君
      臼井 莊一君    栗林 三郎君
      小川 三男君
を指名いたします。
 次に、畑地農業改良促進対策審議会委員に
      川野 芳滿君    笹山茂太郎君
      八田 貞義君    實川 清之君
      松浦 定義君
を指名いたします。
 次に、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員に
      稻葉  修君    南  好雄君
      田澤 吉郎君    稻村 隆一君
      千葉 七郎君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#7
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。山本幸一君。
  〔山本幸一君登壇〕
#8
○山本幸一君 私は、第五十臨時国会の冒頭にあたりまして、日本社会党を代表して、政府の決意をただしたいと思います。(拍手)
 佐藤総理にはたいへん耳ざわりのことかとも思いますが、先般、ある言論界の古参の人が私に対して、「自分は戦後歴代総理の公約を多く知っているが、これらの歴代総理が公約の実現に成功しなかったとしても、何ぶんの努力と誠意のあとを認めることができた。しかし、佐藤総理の公約に至っては、何となく真実性がないような気がする。たとえば、寛容と調和のことばに示すそらぞらしさをはじめ、三千億円減税、人命尊重、冬来たりなば春遠からじ、日中関係は前向きになど、どれをとってみてもその場限りの思いつきで、これでは国民が佐藤内閣に対する不信を高めるのは当然ですよ。」と言ったことを思い出しました。(拍手)佐藤総理、この話にぜひ耳を傾けて、これから私がお尋ねする諸問題について、この議場を通し、国民各位へお答えする決意を持って、ぜひひとつ口先の答弁でなく、明快な、しかも誠意のある御答弁をいただきたいと思うのであります。(拍手)
 まず、私は、佐藤総理が現在政府の最大かつ緊急な任務がどこにあると考えておられるのか、その根本的認識をお尋ねいたしたいのであります。
 佐藤総理の所信表明によれば、今国会を日韓国会とひとりぎめにしておりますが、実はそれよりももっと重大で緊急な国民化活に関する懸案が山積いたしておるのであります。
 現在、国民の生活は、いろいろな危機に瀕しております。昨年以来の経済不況は、去る七月に政府の発表した景気刺激策にもかかわらず、依然として深刻ななべ底状況を呈しております。先般の東京商工興信所の発表によれば、九月中の負債一千万円以上の中小企業倒産件数が五百七件、その負債額は実に五百十五億円で、本年二番目の大記録となっているのであります。また、大企業においても、帰休制や一時解雇制が広がり、これが次第に本格的な首切り整理に発展する徴候を示しております。
 他方、本年の物価上昇はきわめて大幅であり、政府の立てた物価上昇見通しをはるかに越えております。そして、物価上昇を差し引いた勤労者世帯の実質収入は、本年に入って一貫して低下の傾向を見せております。こうした物価上昇の中で、生活保護世帯や日雇い労務者の生活がいかに窮迫しているか、まさか、一国の政治経済をあずかる佐藤総理が、よもや御存じないとは言わせません。(拍手)
 それに加えて、国鉄、私鉄運賃、電信電話、郵便料金、消費者米価、地方公営企業料金など、各種公共料金の一斉引き上げの計画が進められておるのであります。公共料金を引き上げるという政府の態度に対し、他方、絶対に引き上げられては困るという国民の要求がございます。それでは、公共料金を上げない方策はどうすればよいのか、これは、政府及び国会が真剣に取り組むべき国民生活上の重大なる課題であると存じます。(拍手)
 また、健康保険、国民健康保険等、各種保険財政の赤字問題がございます。これも、被保険者の掛け金の引き上げで乗り切ろうとする政府と、国の負担の増額で処置すべきだとする国民の要求が対立しており、これをどう解決するか、わが国の社会保障制度の基本にかかわる重大な問題でございます。これは、もはや一刻も猶予できない緊急性をもって、政府、国会の対策を国民は待っているのであります。
 さらには、災害対策の問題があります。本年は、十五号台風以来、二十三、二十四、二十五号台風と、引き続いて襲来し、加えて集中豪雨もあり、全国におそるべき風水害、農業災害を残し、家や家財を流され、田畑を失った人々は、冬に向かって、まさにとほうにくれているのであります。これが緊急対策には、もとより政府と国会が直ちに取り組まなければなりませんし、災害の被害者は、それを一日千秋の思いで待ち受けておると信じます。(拍手)
 また、地方財政赤字問題がありますが、最近の憂慮すべき傾向として、都道府県、市町村で赤字団体に転落するものが続出いたしております。それは、地方公共団体のやらねばならぬ事業や事務と、その財政的基礎の間に根本的なギャップがあり、しかも、そのギャップが最近拡大の一途をたどっているからでございます。それに加えて、本年度は、不況の反映として法人税、酒税などの税収入が当初見積もりより大幅減収となり、そのはね返りとして、地方税収入や地方交付税交付金の減少という問題も発生いたしておるのであります。
 さらに去る八月の人事院勧告により、国家、地方公務員の給与の改定を実施するという課題がございます。政府も御承知のとおり、公務員から争議権を奪った代償として始められたのが人事院勧告の制度であるにもかかわらず、すでに十数年にわたり、この人事院勧告が勧告どおりに完全実施されたためしはございません。(拍手)まさに公務員労働者の忍耐はすでに限度にきております。この完全実施は、最低限度政府の道義的責任であると存ずるのであります。(拍手)
 以上のような諸課題は、いずれも寸刻を待たず処理するには、政府は当然即刻これらに必要な補正予算をこの国会へ提出すべきであると思います。
 さらにまた政府・与党は、本年度の財源不足対策として公債発行を行なおうといたしておるのでございますが、それに対し、われわれは、公債発行の方法は、わが国の戦後の財政政策の公債不発行主義の大原則を破るものであり、しかも、インフレと物価上昇をいよいよ悪性化するものであるから、反対でございます。そうした方法によらずとも、十分に財源措置をとることができると主張いたしておるのであります。(拍手)この政府・与党とわれわれの意見の対立は、単なる四十年度予算の補正の問題でなく、今後の日本の財政経済政策の基本にかかわる重大問題であり、今国会において十分に論議を戦わせるべき課題ではないでしょうか。
 もう一つ重要な政治課題がございます。それはすなわち政治道義の確立の問題でございます。
 さきの参議院選挙で前代未聞の買収、利益誘導、公金流用、公務員の地位利用を行なって、参議院議員の地位をかすめとった不心得者が、いまだに厚顔無恥にも神聖なる国会の議席を汚し、居すわっておることは、諸君の御承知のところであります(拍手)
 あるいはまた、国民共通の財産である国有財産が、ごく一部の高級官僚や利権屋に払い下げられている実態が、次々に国会の調査によって明らかにされております。こうした政治道義の退廃、綱紀の紊乱、これこそ議会政治に対する国民の不信感を培養するものであり、これが粛正は一刻を争う緊急の政治課題でございます。
 そこで私は、全国民を代表して佐藤総理にお尋ねしたい。いや、むしろ要求したいと思います。
 以上私が申し述べたような国民生活に関連する財政経済問題の処理こそ、現在政府と国会が全力をあげて取り組むべき最も緊急な課題であります。したがって、政府は、この関係の補正予算案及び関係法案をすべての他の案件に先がけて今国会に提出すべきであるにもかかわらず、理由にならない理由をつけて意識的におくらせていますが、これで一体国民に申しわけが立つと総理はお思いでしょうか。(拍手)また、政府は政治道義や綱紀の紊乱に対し、断固粛正の措置を講じてこれを国会に報告すべきであります。こうした国民の要求に対し総理は誠意をもってこたえる意思をお持ちかどうか。また、ただいま私が申し述べた国民の生活の諸問題及び当面の政治道義問題に対して、総理はいかなる措置を講ぜられるお考えか、ここに明確なるお答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、政府は、今国会においては日韓条約の批准を強行するため、国民が切実に、要求する災害対策や、不況に泣く国民生活問題等を日韓条約批准後にするという態度は、全く冷酷そのものであり、国民の名において断じて許せません。特に、調印された、日韓条約なるものは、およそ条約などといえるものではございません。したがって、国民の多数はもちろんのこと、われわれは、かくのごとき条約にあらざる条約を国会に上程すること自体に強く反対いたしております。
 その理由は、第一に、韓国政府の管轄権の及ぶ範囲はどうかといえば、日本政府は、韓国の管轄権は三十八度線の南に限られ、三十八度線の北には別の権威が存在するという事実を認めております。ところが韓国政府は、韓国国会の公式発言で、みずからの管轄権は三十八度線の北も含む全朝鮮に及ぶものであると主張いたしております。この韓国政府の主張によれば、北朝鮮政府の存在を認めること自体が不当であり、日本が北朝鮮政府といかなる交渉を持つことも許されないことになりましょう。現に、皆さん、具体的事実として、今回のIEC、すなわち国際電気標準会議第三十回総会が東京で開かれた際、この会議の正式加盟国である北朝鮮代表の入国を政府は拒否いたしました。しかもその理由は、韓国の抗議によるものであることが明らかにされたのであります、日韓条約発効前ですらこのていたらくでは、今後ますます韓国が自己主張の管轄権をたてにとって、韓国の了解なくして北朝鮮人の入国を認めることすらできなくなるではありませんか。(拍手)一体、日本政府と韓国政府の主張のいずれがこの条約の基礎となっておるのでございますか。名前は日韓条約ということでありますが、日韓の韓がそもそもどの範囲の国であるのか、それすら不明確でございます。これでは条約と呼ぶことすらできません。
 第二は、李ライン問題であります。ここで私はふと気がついたのでございますが、後ほど赤城政調会長が、自民党を代表して質問に立たれます。その際おそらく李ライン、漁業問題にお触れになると存じますが、赤城さんは、御承知のとおり、交渉当時のわが国代表であります。農林大臣であります。欠陥を一番よく知っておられるのであります。この一番よく知っておられる赤城さんが、あまり御存じない総理に質問をされるということは、まさに八百長ではありませんか。(拍手)
 さて、李ライン問題でございますが、日韓漁業協定の成立により、李ラインは撤廃されると日本政府は説明いたしております。ところが韓国政府は、李ラインは厳として存続するものであると言明し、李ラインを越えるものを拿捕し、逮捕するという、韓国国内法を引き続き堅持する態度をいささかも変えておりません。したがって、いかに政府が弁解しようとも、韓国にこの国内法を廃止させない限り、国民は政府を信用しないのは当然であります。(拍手)
 第三は、竹島の領土でございます。日本政府は、竹島問題は今後日韓の外交ルートで話し合い、話し合いのつかぬ場合は調停にかけることになっていると説明いたしておるのであります。ところが韓国政府は、竹島すなわち独島が韓国領土であることは既定の事実であり、現に日韓交渉の際議題とならず、よってこの竹島問題は、今後日韓の交渉の対象にすらなり得ないものであると言明いたしおります。
 このように見ると、政府がいかに日韓交渉が妥結したと言おうとも、実はその最も重要なポイントが全く妥結いたしておりません。およそ条約とは、国と国との交渉が一つの合意に到達して、これを文章に表現したものでなければなりません。しかるに、契約当事者の双方が全く正反対のことを主張していて、これでどうして条約と呼ぶことができましょう。私は、長い国会議員生活の今日までに幾百の条約を経験いたしましたが、条約発効前に、かかる重要にして基本的な諸点で両国政府が食い違いを生じたことは初めての経験で、政府が何と弁解しようとも断じて納得することはできません。(拍手)
 このようなものをいやしくも国会に上程しようとすることは、これほど国民と国会を侮辱し冒涜ずるものはございません。(拍手)総理は、この条約の名に値しないものをこの国会に上程するのをいさぎよく取りやめ、この際これを白紙に返すべきであります。それともあえて条約批准案を提案しようとされるならば、両国政府の全く正反対の食い違いを国会と国民の前に解明するため、日韓条約に関する韓国国会の本会議、委員会の議事録を一括資料として提出なすってはいかがです。(拍手)あるいは両国政府の統一見解を明らかにすべきが政府の当然の義務であり、それを実行せずして条約審議などおよそ考えられません。反面、これほど基本点で食い違いを生じておるものを承知の上で、無理やり批准を押し切ろうとする魂胆は、日韓両国政府の間に国民に隠された何か重大な一致点が約束されているに間違いありません。(拍手)それはすなわちアメリカを頂点とする両国政府の軍事的協定にほかならないと考えます。これらの諸点について、総理の所信をお尋ねする次第であります。
 質問の第三点は、この日韓条約の背後にひそむものの正体でございます。すでに申し述べましたように、いまだ条約の体をなしていないものを、韓国政府はかってなことを言って韓国民をだまし、日本政府また都合のいいことを言って日本国民をごまかし、お互いに二枚の舌を使い分けて両国民を欺いて条約批准を強行しようといたしております。そのねらいは何かと申しますならば、そのねらいは東北アジア軍事同盟の仕上げでございましょう。(拍手)
 そもそもこの日韓条約は、徹頭徹尾戦争と結びついております。いまから十四年前、ちょうどアメリカが朝鮮戦争を戦ってついに目的を果たし得なかったのでありますが、このアメリカのあっせんによって開始されたのが日韓会談であります。それ以来十四年たったいま、アメリカがベトナムでの侵略戦争を全面戦争にまで拡大させようとする動きを免れば、危険なアジア情勢の背景のもとで、日韓条約がしゃにむに政府・自民党の手で批准されようといたしておるのであります。
 かくて、日韓条約は、アメリカの極東戦略計画の網の中の重要な一環に位置しておるのであります。かつてアメリカは、昭和二十八年に、朝鮮休戦協定が締結されて二ヵ月後、韓国との間に米韓相互防衛条約を結びました。それから一年たった昭和二十九年には、アメリカは台湾の蒋政権との間に、米台相互防衛条約を結びました。アメリカと日本との間には、申すまでもなく日米安保条約がございます。この三つの軍事条約によって、アメリカと日本と韓国と台湾の四つの国が結びつき、形式はともあれ、実質的に東北アジア軍事同盟という反共軍事同盟を形成しておるのであります。ただし、日本と韓国との閥に国交がないことが、この四つの国の反共軍事同盟にとって、画竜点睛を欠く弱点となっていたのでありますが、この弱点を埋めて、東北アジア軍事同盟の総仕上げをしようとするのが、すなわち今度の日韓条約の本質ではないでしょうか。(拍手)さきに明らかにされたアメリカの米陸軍地域別ハンドブック日本の部の中にも、日韓交渉はアメリカの強い圧力で推進されたと率直に告白されております。こうした日韓条約の軍事的本質を国民は最も憂慮し、またおそれているのであります。
 私がこのように指摘いたしますと、政府・自民党の諸君は、社会党は日韓条約をさして軍事同盟だというが、中、ソ、北鮮の三国間においても相互友好援助条約、すなわち軍事同盟を結んでいるではないかと、さながら鬼の首でも取ったような喜びをいたしておるのであります。(拍手)この主張は一見もっともらしく聞こえますが、中、ソ、北鮮三国の相互友好援助条約が軍事同盟ならば、日韓条約もまた軍事同盟であることをみずから裏書きいたしているのであります。(拍手)諸君、語るに落ちるとはこのことでありましょう。(拍手)
 しかも、ソ連・北鮮、中国・北鮮間の相互友好援助条約は、日米安保条約締結のあとに結ばれたものでございます。日米安保条約から受ける脅威に対抗して生まれたものであります。加えて、さきにわが党と中ソ両国との間の共同コミュニケで明らかなとおり、日米安保条約が廃棄されるならば、中、ソ、北朝鮮間の友好援助条約は直ちに廃止すると明記されていることを、よもや諸君は御存じないとは言えません。(拍手)
 過ぐる国会で明らかにされた三矢計画によれば、朝鮮本島の三十八度線で紛争が勃発した場合、日本の自衛隊は北朝鮮へまで進攻してこれを占領する計画となっているのであります。これは八月十日の韓国の国会で、丁一権総理が「日本は国連に加入しており、したがって、北朝鮮が南を侵略し、国連が報復措置をとる場合、日本も国連軍に加担し、同一の措置をとるものと思う。」と言明し、また、国連総会に渡米なすった椎名外務大臣は、去る九月二十三日の記者会見において、「平和維持のための国連活動に自衛隊を海外に出すことをただいま検討中である。」と言いました。(拍手)これを受けた政府部内においては、「国連軍の統制下にあるならば、自衛隊の海外派遣は憲法違反でない。」との見解を発表いたしました。この三つの事実は、まさにその内容がぴたりと一致いたしておるのであります。
 先般防衛庁の三矢計画関係者を処分いたしましたが、この処分はまことに本末転倒でございます。元来憲法違反の不法計画を作成した者に対して処分すべきを放置して、三矢計画の秘密が部外へ漏れたことに対する処分をしたのでありますが、こうした処分の態度を見れば、政府が一朝有事の場合に三矢計画の内容を実行する考えではないかと、国民が重大な疑惑と不安を抱くのは当然でございます。(拍手)佐藤総理は、こうした戦争に対する国民の不安をどのように取り除くお考えであるのか、この際しっかりしたお答えをいただきたいと思います。
 質問の第四点は、さきの参議院選挙の際、また第四十九臨時国会に際し、あるいはその後新聞、テレビ等を通じて、総理はたびたび「絶対に日本を戦争に巻き込むことはしない。」と公言されております。だが諸君、政府が現実に行なっている一つ一つの措置が、たとえばアメリカの原子力潜水艦やB52、C130などの受け入れであったり、自衛隊増強の第三次計画の採用であったり、日韓会談の無理やりの妥結など、これらはすべて一つ一つ戦争につながる措置であります。(拍手)加えて事実を申しましょう。去る八月三十日参議院決算委員会におけるわが党議員の質問に答えて、「日本の基地から出撃して北ベトナムを爆撃した米軍爆撃機を相手側の戦闘機が追跡してきて日本の領空に入った場合、自衛隊機はこれを迎え撃つ。」と言明いたしております。佐藤総理、この迎え撃った瞬間、日本は戦闘に突入するのです。アメリカの思うつぼにはまって戦争の渦中に飛び込むのです。してみれば、総理がいかに日本を戦争に巻き込まないと大言壮語をしても、それは全く人を欺く口先の三味線にすぎません。(拍手)国民はこの点に根本的な不信の念を抱いております。「巧言令色すくなきかな仁」という孔子のことばがございますが、佐藤総理、あなたの所信表明を伺うと、まさに巧言令色で飾られております。どうか巧言令色でなく、誠心誠意をもってここに国民の戦争への不安を解きほぐす方策をお示しいただきたい。またその方策を行動で実行すべきだと信じますが、総理の所信をお尋ねいたしたいと思います。(拍手)
 質問の第五点は、総理は民族自決の原則をいかに考えていらっしゃるのかという問題であります。かつて十九世紀に東ヨーロッパからバルカン半島にかけての多くの少数民族が、ロシア、トルコ、オーストリア等の大国の支配を打ち破って、民族独立をかちとる運動を進めました。そのとき以来、民族自決は国際政治の基本を貫く大原則であります。したがって、すべての民族がみずからの問題をみずから解決する固有の権利があり、他の民族がこれに干渉することが許されないという民族自決の、原則は、あまりにも当然な自明の原理でございます。
 ところがこの原則はしばしばじゅうりんされております。その例はベトナムであります。ベトナムの民族がフランスの支配から脱却して独立しようとする戦いの結果かち得たものが一九五四年のジュネーブ協定でありましょう。ところがジュネーブ協定の成立後、フランスにかわってアメリカがベトナムへ侵入し、協定にきめられた南北ベトナムの統一選挙をぶちこわし、さらに北ベトナムヘまで爆撃をしかけている、このアメリカの行動こそ、まさに民族自決のじゅうりんでありましょう。これに佐藤内閣が協力しているのは、つまり佐藤内閣が民族自決のじゅうりんの共犯者になっている姿にほかなりません。(拍手)これに対して、日本国民は心からなる憤りを感じております。
 中国の七億の民族は、中国を代表する唯一の合法政府こそ中華人民共和国政府であると決定いたしておるのであります。これに対して、世界の各国は、かりに共産主義が好きであろうといなとを問わず、中華人民共和国政府を中国代表政府と認めなければなりません。ところが、アメリカは共産主義をきらいであるという理由により、北京政府を否謝し、台湾の一握りの亡命集団である国民政府を、かってに全中国を代表する政府であると認めておるのであります。一体皆さん、中国を代表する政府をきめる権利は、中国民族にあるのか、それともアメリカにありましょうか。これはまさに子供にでもわかる理屈であります。その理屈を踏みにじっているアメリカの態度こそ、民族自決のじゅうりんでございましょう。
 ところが、悲しむべきことに、日本の歴代自民党政府は、アメリカの横車に追随して、台湾政府を中国代表と認め、中華人民共和国が国連の正当な代表権を得るのを妨害してまいりました。これも民族自決をじゅうりんする共犯者となっている悲しむべき姿であるといわなければなりません。(拍手)
 今年の第二十回国連総会においては、中華人民共和国に中国の正当な代表権を与えるという表決が多数を占めるであろうといわれておりますが、日本は、依然としてアメリカとともに重要事項指定方式を提案し、中国代表権をはばむものと見受けられております。隣国中国との友好を望む日本国民は、このような日本政府の態度に対して断固として反対をいたしております。
 また、お隣の朝鮮の問題でございます。朝鮮こそ日本にとって最も近い隣国であります。しかも、かつて日本は三十六年間朝鮮を植民地として統治し、朝鮮民族に言い知れぬ被害と苦痛を与えてまいりました。これに対して正当な償いをしなければならぬわれわれ日本民族の責任は重大であります。ところが現在、朝鮮は南北に分断されております。この分断は全く朝鮮民族の責任ではございません。米ソを中心とする大国の世界政策の結果であります。しかも、朝鮮民族みずからは、あたかも子供が親を恋い慕うような熱情で南北の統一を求めているのであります。これに対し、朝鮮民族の南北統一を妨害しているものは一体だれなんでしょうか。
 それは第一にアメリカであります。私は一昨年、北朝鮮を訪れ、この目で見ましたが、北朝鮮にはソ連や中国の軍隊は一兵もおりません。しかし、南朝鮮には、依然として国連軍の名のもとに軍隊を駐とんさせ、しかも核武装までしているものは、まさにアメリカであります。(拍手)このアメリカ軍が南朝鮮から撤退すれば、朝鮮民族自身の創意くふうで南北統一が自主的に達成されることはもはや疑問の余地がございません。
 第二に、朝鮮の南北統一を妨害しているのは日本の自民党政府でございます。(拍手)すなわち、自民党政府は、――南朝鮮でクーデターによって権力を盗み取った朴軍事政権、この朴政権は民政移管にあたっても、当時伝え聞くところによれば、不正、不法選挙の数々を重ね、その上驚くべきことには、南朝鮮民衆の投票のわずか三分の一しか得られなかった、まさに文字どおり非合法政権であります。(拍手)この韓国民衆の支持すら得られていない朴政権を、おこがましくも朝鮮におけるだだ一つの合法政権と認め、これと国交を結ぼうとするのでありますが、このことは、政府が進んで朴政権の武力北進の野望に油を注ぎ、南北朝鮮の軍事衝突をけしかける結果になり、朝鮮民族の統一の願望をたたきつぶしたことになりましょう。(拍手)このようなやり方は、明らかに朝鮮民族の民族自決の権利をじゅうりんするものにほかなりません。
 以上、私の指摘いたしましたところを要約すれば、民族自決をじゅうりんする常習犯はアメリカであり、しかも自民党政府は、そのアメリカに追随して、ベトナム、中国、朝鮮の民族自決の権利を著しく侵しているのであります。これは、アジア人でありながらアジア人の道義に反するものでございます。
 しかも、私はここで特に強調したいのは、ベトナム、中国、朝鮮の民族自決をじゅうりんしているアメリカは、同時に日本の領土沖繩を占領いたしております。八十万の同胞を軍事支配のもとに置き、祖国復帰の熱望を弾圧し、われわれ日本民族の自決権をじゅうりんいたしておるのであります。(拍手)しかも皆さん、断じて許されないことは、自民党政府がアメリカの不法、不当な沖繩占領を承認しも民族自決の権利をみずからアメリカに売り渡したとうわさされておることであります。(拍手)佐藤総理は、去る八月の沖繩訪問にあたり、八十万の沖繩県民の祖国復帰の叫びを、日本人として、日本の総理大臣として何と聞かれたでしょうか。
 そこで私は、佐藤総理に向かってお尋ねいたします。総理は、一体民族自決の国際原則をどのように認識していらっしゃるのか、この原則の上に立つならば、ベトナム、中国、朝鮮の問題に対して、日本としてどのように対処するのが正しい方策であるとお考えになるのか、また、沖繩の八十万同胞を日本民族の一つの屋根のもとに迎えて、日本民族みずからの民族自決の状態を実現するために、アメリカに向かって何をどのように要求されるお考えであるのか、われわれの民族の魂に触れる誠意あるお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 最後に、自民党諸君にはまことにお聞きづらいことではございましょうが、私は一点だけお尋ねいたしたいと思います。
 新聞、テレビなどの報ずるところによれば、自民党の責任ある地位の役員が、右翼暴力団の会合に出席して、日韓条約批准を支持するように要請いたしたと聞いております。その結果と思われますが、すでに日韓批准促進を掲げた右翼暴力団の不法な行動が目立っております。そして、この自民党と右翼暴力団の結合について、警視庁当局ですら強い遺憾の意を表明いたしております。政府の最高責任者として、同時に自民党の総裁として、総理は、この自民党と右翼暴力団の結びつきを放任されるお考えであるのか、それとも厳正な措置をおとりになるお考えであるのか、全国民に向かって総理の政治の姿勢をお示しいただきたい。
 以上お尋ねいたしまして、私の代表質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 今次臨時国会は内政問題こそ審議すべきに、日韓条約をまず中心にしていることは不都合ではないか、かようなお話でございます。ただいまお述べになりましたような国内事情を私も率直に認めております。ただいま、国内において、ことしの歳入状況はずいぶん予想を裏切って落ち込んでおりますし、また、他の面におきまして経済の回復対策等をいろいろ講じておりますが、それもいままでのところでは十分の成果があがっておりません。しかし、私は、今日までとりましたそれぞれの政策が順次これから効果があがってくるように思います。財政投融資にいたしましても、二千百億の増加分も、この十、十一月、この交になればその半ばを支出するようになってまいります。また、予算の繰り上げ使用等につきましても、十、十一月、十二月までには昨年より以上の実行率をあげるのであります。したがいまして、必ずこれらの効果があがってくる、かように私は期待いたしております。しかしながら、ただいま御指摘になりましたように、災害対策の補正あるいは公務員給与の問題等々がございますので、いずれ財政の総体的な規模を把握した後に補正予算をこの国会に必ず提案し、御審議をいただくつもりでおります。必ず皆さま方に十分御審議の期間があるその時期に提出するつもりでございますので、その際に十分御審議をいただきたい。心からお願いをいたします。
 私どもは、今日日韓条約等を提出いたしておりますが、これは、御承知のように、すでに六月二十日に正式に調印を終えました。韓国国会におきましてはすでにその批准手続を終えた、かような状況にありますので、国際信義から申しましても、わが国もこの問題をできるだけ早い機会に取り上げるのは、これは当然といわなければなりません。(拍手)ことに、日韓間の問題は、長い両国の関係がございます。しかも、それが隣国であるという関係がありますので、一日も早くこれを正常化する、このことは、自然の状態に返すことであります。この点は私が所信表明で詳しく申し上げましたから、重ねては申し上げません。しかし、この隣国韓国と平和状態を招来することによりまして、アジアにおける日本のこれからの第一歩というものが始まるのであります。私は、この条約批准、これで日韓交渉が終わりを告げる、かような考え方は持ってはおらないのであります。これがわが国のまず第一歩だ、そうしてアジアにおける日本の立場というものをはっきりさすのだ、このことを御理解いただきたいのであります。(拍手)
 私は、かような考え方から、ただいまの日韓問題について提案をいたしておりますが、これはできるだけ早い機会に御承認を得たいと思います。そうして、ただいまいろいろ御議論なさいましたような点が、必ず国会を通じ、委員会の質疑等を通じて国民の前に明確になるものだと、かように私は考えておりまするし、また、そうあってほしいと心から望んでおります。
 ことに、この日韓条約の基本的諸点につきまして、まず第一にお尋ねのありましたことは、所轄権の問題であります。管轄権の問題は、国連の決議百九十五号(III)によりまして明らかになっておるのであります。私は、今日この点について重ねて質問を受けることは、これは意外に思うのであります。ことに、北朝鮮の問題を引き合いに出されますが、今回批准の手続きを経ようとするものは、北朝鮮の問題については全然触れておらないのであります。この点は皆さま方にはっきりさしていただきたいのであります。
 第二の問題といたしまして、竹島の問題が議にのぼっておりますが、これまた、両国の主張は、この場合にははっきりと違っております。私どもは、竹島は日本固有の領土である、かように今日も主張しておりますし、韓国は韓国で、いわゆる独昂は韓国の領有するものだと、かように申しております。これが両国の意見が対立しておる。両国の意見がはっきり違っておる。今後いかにしてこれを解決するか、その方法が今回の協定で取りまとめられておるのであります。交換公文にそれが出ておるわけであります。私は、今日この問題が平和的方法で処理されること、これが何よりもありがたいことであり、その前進であることを喜ぶものであります。(拍手)
 また、李ラインの問題につきましていろいろお尋ねがございましたが、これは申すまでもなく、李ラインは国際法上不法不当なものであるというわが国の主張、これは今日も変わりはございませんが、私どもは不法不当だと言いながらも、そのもとにおいて拿捕されたり監禁されたりしているという、そういう事実があったわけであります。これをいかにするかということが今回の漁業交渉の主眼点だ。そうして、これによりまして安全操業ができることになった。もうこの李ラインの存続云々の議論よりも、われわれは安心して操業ができるんだ、拿捕されないんだ、このことが何よりも実際問題としてありがたいことであり、このことを強く皆さん方も認識してほしいと思うのであります。私は、この李ラインの問題につきましても、国内法と条約との関係は、国際法上、国内法は条約に譲るという、これはもうはっきりしておることでございます。したがいまして、韓国におきましてもこの国際原則は尊重されるのでありますので、皆さま方が御心配のように、六年たったらまた李ラインが復活するとか、かような御心配は毛頭要らないのであります。(拍手)私どもが、不法不当だと、かように主張しておることには変わりはありませんし、また、日韓間の友好親善関係がここに樹立された、そうして五年間の実績を見た上で、さらにその親善関係を深めようとする際に、ただいま言われるように、李ラインが復活するなど、かようなことを考えるのはどうかしているんではないかと私は考えます。(拍手)
 次に、今回の条約は、これが軍事性を持つものだ、かようなお尋ねでございます。これは私が所信表明でもはっきり申し上げたのでございますので、これはよくわかっていると思いますが、今回の交渉に際しましても、軍事的な関係で意見が交換されたことは一度もございません。このことははっきり申し上げます。したがいまして、わが国の憲法を忠実に守っておる私どもが、ただいま言われるような東北アジア軍事同盟など、これを奪えるというのは、よほど先走った意見ではないかと私は思います。こういう考えがもし社会党の一部にあるならば、このことはもう絶対にお忘れを願いたい。(拍手)われわれはどこまでも憲法を守るんだ、これに徹底していただきたいと思います。
 私は、この問題で非常に遺憾に思いますことは、平和を愛好する日本国民に対しまして、何らか戦争にかり立てられる、戦争不安、こういうことを故意に国民の間に流布しておる者があるように思うのであります。(拍手)私は、このことはまことに残念に思います。政治家はひとしく平和を愛好しておる、かように思いますが、同時に、国民の理解ある支援のもとにこの政策を遂行しておるのでありますので、国民の支持を受ける、その立場からも、国民にことさらに不安を与えるような言動は慎んでいただきたい、私はかように思います。(拍手)
 また、民族自決の問題についてお触れになりました。私は、民族自決の原則、これは国連も了承しておることだと思います。そういう止揚でそれぞれの国が自立し、独立してまいっておると思います。しかして、同時に、この民族自決の原則と、一方で、私どもは条約も守っていくという、こういう義務がございます。御承知のように、わが国の憲法の九十八条では、条約にはやはり忠実でなければならないという、それをきめております。先ほど沖繩の問題を取り上げられまして、アメリカが占領している、かような御非難がございましたが、これは、サンフランシスコ条約、それに基づくただいまの施政権をアメリカが持っておるのでございます。こういう状況のもとにおいて、この点を非難することは当たらないと思う。皆さん方は、たいへん憲法は忠実に守るべきだと私どもに要求される。九十八条もやはり守らなければならないものだ、かように思います。(拍手)
 また、ベトナム問題についていろいろの御意見がございます。ベトナムの問題については、最近、所信表明で申しましたように、ジュネーブの原則がそれぞれの関係のところで了承されるというか、それに返ろうという、その努力が続けられておる今日であります。私は、ジュネーブの原則、山本さんの主張されたような、その原則のもとで関係者がこの話し合いに入ることを心から望んでおります。
 また、アメリカの政策そのものについていろいろの御批判がございましたが、私は、遺憾ながら山本さんの説に賛成はいたしません。アメリカの政策そのものについての批判は私はしばらく預かりますが、日米安保条約を締結しておるそのゆえんは、私どもは攻撃的な条約を結んでおるわけではありません。どこまでも防衛的なものであり、このことは国民がよく承知しておるのでございます。(拍手)この点をもう一度山本さんにお話しなければならないということは、私まことに残念に思います。沖繩問題は、日米間の友好協力関係を背景として、そして相互信頼のもとでこの問題を解決することが最も望ましい方法だし、また、それが最も早道だ、かように私は考えております。問題は、この日韓交渉にいたしましても、今日まで十四年間も長い交渉を続けてまいったのでありますが、同時に、この交渉はほんとのガラス張りであったと思います。すべての事柄が明白にやられていた、そうして、ただいま御心配になっておるような、米国がこれに関与している、そういうようなことも絶対にございません。また、軍事的に両国が話し合ったというようなこともございません、(発言する者あり)これがうそだというようなお話をされますが、絶対にうそではございません。はっきり申し上げます。(拍手)ただいま申し上げるような点は、国民に十分御理解をいただきたいと私は思います。
 次に、最後の問題といたしまして、国民に対しまして、私どもは、まことに重大なる条約案件でありますだけに、理解とその協力のもとに批准手続を終えたい、かように考えております。あらゆる機会に、真実を国民に訴え、十分の御理解をいただくように、あらゆる努力をいたしておるのであります。そして、このことはどこまでも院外活動ではなくて、この国会を通じて事態を明快にいたしたい、かように考えておりますが、ただいま申し上げるように、外部団体に対しましても、あらゆる機会にこの事実を説明しておる、このことを御了承いただきたいと思います。ことに、私どものもともとの基本的態度は、暴力は左右いずれを問わずこれを排撃するというはっきりした態度でこれに立ち向かっておるのでございますので、ただいまのような御心配のないようにお願いいたします。(拍手)
  〔「答弁漏れがある」と呼び、その他発言する者多し〕
#10
○議長(船田中君) 先刻の山本君の質問に対し、答弁漏れがあるとのことであります。内閣総理大臣佐藤榮作君。
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 答弁漏れがあったということでございますので、お答えいたします。
 一つは綱紀粛正の問題であります。綱紀粛正につきましては、わが内閣の基本的態度でありますので、これは真剣に取り組んでまいります。
 私は、参議院選挙につきましても、あとの処理等について遺憾なきを期しておるつもりでございますが、ただいま、御承知のように、党籍を離脱しておる議員さんのことでございますので、これは参議院でその処置がきめられることだろうと思います。
 また、国有財産等の交換あるいは払い下げ等につきましても、これが問題になっておるようでございますが、最近、専売公社におきましても、これに対する適切なる処置をとったばかりでありますので、これまた御了承をいただきたいと思います。私自身もかような経験がある。私もかつて官界にいた者でございますが、ただいま申し上げるような、やめたときにたいへん住宅のむずかしいときでありましたが、私は、はっきり、さような問題を引き起こさないように、やめた後はさっさとそれをもとへ返した、こういうことをいまなお記憶しておるのであります。こういう点は厳正にいたして、そうして誤解のないようにいたしたいと思います。
 次に、条約の解釈について意見が相違しておる、その統一をすべきだ、また、そのために議事録をとるべきだ、こういうこまかなお話が出ておりますが、私は、外国の議事録を日本で政府が取りまとめるということは、これはいまだかつてないことだ、かように思いますので、その点は皆さま方のほうが御無理なお願いではないかと思います。
 ただ、私は、この機会に明確にしておきたいことは、両国の解釈あるいは意見が違っておる、こういう問題は、どこまでも条文自身、その条文によりましてはっきりさすべきだ。書いてないことまで頭を回していくことは、これは必要ないこと。これは御無用だ。そういう御心配のないように願いたい。(拍手)
 また、もう一つつけ加えて申し上げたいことは、いろいろ説明のしかたもあるようでありますので、その技術上の相違もあると思います。しかしながら、幾ら技術上の相違がありましても、もしもその発言内容が国民の利益に影響を及ぼすとか、わが国の利害に影響を与えるような問題は、私どももこれをそのまま看過するようなことはございません。必ず、国民の利益あるいは国家の利害に関係がある、こういう点は、どこまでも究明をいたしまして、これを明確にしていく。ただ、問題は、申し上げたいのでありますが、こういう実質的な意義、価値を十分認識されて、そうしてその相違点を明確にしていく、こういうひとつ努力をしていただきたいと思います。
 また、沖繩問題についても答弁漏れがあるということでありますが、沖繩問題については、私ども、今後施政権の返還あるいは復帰等につきまして努力する、このことをしばしば申し上げておりますから、この点は明確でありますので、つけ加えては申し上げません。今後あらゆる機会を通じて、この沖繩同胞九十万の熱願、また九千万国民の熱願を実現すべく最善の努力をいたしてまいりたい、かように思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(船田中君) 赤城宗徳君
  〔赤城宗徳君登壇〕
#13
○赤城宗徳君 私は、自由民主党を代表して、内閣総理大臣及び関係大臣に対し、主として日韓条約及び経済、財政問題につき、若干の質問を行なうものであります。(拍手)
 戦後十四年にわたって難航を就けた日韓国交正常化の交渉が妥結し、去る六月に、正式調印を見ましたことは、日韓両国相互の繁栄はもとより、流動を続けるアジアの安定、ひいては世界平和の確保のため、きわめて重要な意義を持つものであります。(拍手)それを佐藤内閣の大きな成果として国内の世論が支持しているだけでなく、世界の自由諸国も高く評価しているのであります。(拍手)
 正式調印の際の国内有力新聞の社説等を見ましても、たとえば毎日新聞は、「戦後日本外交の重要懸案の一つがここに解決を見たことは佐藤内閣の功績でもあるが、歴代内閣のなみなみならぬ努力のあったことを忘れてはならない。」と述べ、また朝日新聞は、「一衣帯水の関係にある日韓両国間に国交が開かれていないことは、何としても不自然なことであり、両国間に正常な国交関係をもたらすのは、両国にとってきわめて自然な姿であるといってよかろう。」と、さらには「一たん妥結した以上は、国際信義を重んずるたてまえから、両国間の協定を尊重し、日韓両国の親善と提携に役立てるべきである。」と論評しているのであります。(拍手)
 このように健全な国民の常識と、世界の大多数の国々が、きわめて自然なこととして日韓国交正常化を評価しているにかかわらず、社会党、共産党その他の左翼勢力が、あらゆる手段を弄して、日韓国交正常化に反対しているのは、まことに不可解というほかはありません。(拍手)しかも、安保闘争の例にならって、国会外の組織を動員して、国会の正常な審議に圧力を加え、条約の批准阻止をはからんとするならば、それは、わが国議会政治の破壊にも通ずるものであります。(拍手)私は、このような行動によって、わが国の安全にかかわる外交政策につき国論の分裂を来たすことを最も憂え、かつ悲しく考えるものであります。私は、このような左翼勢力の反対によって重大な外交政策の推進が断じて阻害されてはならないと信ずるものであります。(拍手)
 今回の日韓条約の批准については、尽くすべき審議は十分に尽くし、また、国民に対する広報活動にも最善を尽くして、その利害の理解を深めるとともに、いわれのない反対や反議会的行動は断固として排撃し、できるだけすみやかに批准を完了すべきであると思うのであります。(拍手)この間に処して、総理大臣の決意のほどを伺いたいのであります。(拍手)
 次に、私は、日韓諸条約について論点となっているおもなる事項につき、国民の正しい理解に資するため、若干の質問をしたいと存じます。
 第一に伺いたいことは、日韓国交正常化が、南北朝鮮の統一を阻害するとか、東北アジアの軍事同盟の結成を目的としているとか、あるいは経済協力が韓国の経済的支配をねらうものであるなどとの無責任なデマ宣伝についてであります。(拍手)
 南北統一ができないのは、先ほど山本君が指摘しましたように、東西間の冷戦の強い影響であり、それはそのとおりであります。しかし、現実的には、北鮮が国連方式による全朝鮮の自由選挙に反対し、韓国等を仮想敵国とする中ソとの軍事同盟を結んでいることにあるのであります。(拍手)常北の統一は理想ではありますが、当分その実現の可能性はありません。その現実の上に立って、北朝鮮及び韓国はそれぞれ国際的に国交を結んでおるのであります。すでに七十ヵ国と国交を結んでおる韓国が、さらに日本と国交を結ぶことが、どうして南北の分断となり、その固定化となるのでしょうか。(拍手)われわれはその理解に苦しむのであります。したがって、日韓正常化を南北統一まで延期せよとの反対論は、日韓正常化をすべからずということにほかならないのであります。あえて反対論者に反問したいと思うのでありますが、もしも日韓条約を締結しなければ、南北統一が達成されるとでも考えておられるのでしょうか。(拍手)
 また、日本の平和と安全は、外交的には、日米安全保障条約によって確保されております。あえて韓国と軍事同盟を結ぶ必要は毛頭ないのみならず、わが国の憲法の規定からもできるはずのものではありません。韓国の首脳者も、軍事同盟の意図のないことを表明いたしております。日韓条約は東北アジア軍事同盟だといい、あるいはまたべトナム戦争に対する極東軍事同盟だということは、全くわれわれの夢想だにしないことであって、これらは常に国民をかって不安と思想の分裂を誘致せんとする共産党、社会党の常套的戦術であります。(拍手)
 反対論者はまた、日本の経済協力が日本の韓国への経済侵略だと批判しておりますが、どこにその実態がありましょうか。野党の諸君も知ってのとおり、日本は東南アジア諸国に対して賠償及び経済協力を行なってきましたが、世界じゅう、これを日本の経済侵略だといっておるものは一国もありません。(拍手)しかるに、韓国に対する経済協力のみがどうして経済侵略であるというのか、不見識な批判であり、全く価値なき議論であります。(拍手)
 私は、素朴な国民の一部がこのようなイデオロギーからの謀略的宣伝に惑わされることのないよう、政府においても十分な広報活動を行なうべきであると思うのであります。
 総理も言われるように、日韓条約の調印は両国の親善友好関係の第一歩であります。その実効をあげるには、国民の深い理解の上に今後善意と努力を積み重ねていくことが肝要であります。この意味におきましても、今回の日韓諸条約の意義をさらに一そう積極的に国民に理解させる献身の努力が必要と思うのであります。総理大臣の所信を承りたいのであります。(拍手)
 第二は、日韓国交正常化がわが国にどのような国益をもたらし、また、世界の平和にどのように貢献するかということを具体的に明らかにされたいのであります。
 日韓国交正常化が自然のことであり、望ましいことであるとしても、わが国が交渉妥結を急ぐのあまり、譲歩し過ぎたのではないかという批判も一部にはあります。たとえば、韓国に対する無償供与三億ドル、長期低利貸し付け二億ドル、民間信用供与三億ドル以上という経済協力は多きに過ぎるのではないかという疑問を持つ向きもあるようであります。そもそも、アジア諸国に対する経済協力は、わが国の国際的使命であり、これによってアジアの繁栄と安定、ひいては将来のわが国の発展に貢献することは、わが党及び政府の重要政策であります。(拍手)日韓国交正常化に際し、最も近い隣国の繁栄のため、このような経済協力を約束したのであって、決して譲り過ぎではありません。いわんや、同時に、日韓間の請求権に閲する問題までも一切解決したこととなり、日韓新関係のスタートにおける最大のしこりを除去することとなるのであります。しかし、このようなわが国の協力と、日韓国交正常化によって、具体的にはどのような利益がわが国にもたらされるであろうかということを知りたいのは多くの国民の気持ちであろうと察するのであります。この機会に、できるだけ具体的な説明を総理よりお聞きしたいのであります。(拍手)
 第三は、条約の解釈に関する問題であります。
 反対論者は、日韓条約や協定について、日韓両国の解釈に大きな食い違いがあるから、条約としての調印の効力がないではないかと主張するのであります。その例として、韓国の領土管轄権、李ラインの存廃、竹島の帰属の問題等をあげているのであります。これは韓国における国会論議の中のごく一部の片言隻句の発言を引用して、全体を律するがごとき独断を下したものでありまして、また条約の効力に関する国際法上の常識を理解し得ない議論であります。(拍手)
 そもそも、条約締結の交渉においては、政治的、技術的な折衝を重ね、用語や表現のしかたについて最終的に意見が一致した上で、初めて条約案文が確定するわけでありまして、それに双方の当事国の全権委員が署名調印されると、それで当然調印の効力を生じ、その解釈は主観を離れて客観的になるのであります。(拍手)かりにその解釈についての意見の食い違いがあっても、それは条約の効力には影響がなく、条約の解釈の食い違いから当事国間に現実に利害の衝突が起こった場合には、条約の解釈及び実施から生ずる紛争として解決していくのが国際的な通例であります。(拍手)反対論者の条約無効論は、このように何らの根拠のないものでありますが、国民の一部にはこれに惑わされている者がないとは限りません。外務大臣の責任ある見解を明らかにされたいのであります。(拍手)
 第四は、韓国政府の領土管轄権の問題であります。
 この点については総理からも答弁がありましたが、基本条約第三条において「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」と述べられており、その国際連合総会の決議は、大韓民国政府の有効な支配と管轄権を及ぼす地域として「国際連合臨時朝鮮委員会が観察し、且つ、協議することができたところの、全朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分」と規定しています。したがって、今回の日韓条約や諸協定が北鮮については白紙であることは明らかであります。しかるに、反対論者は、この点につきましての、韓国政府とわが国政府との解釈が完全に対立し、この条約のため、今後わが国が北鮮と外交関係を持つ場合の障害になると主張しておるのであります。このような主張の理由のないことは言うまでもありませんが、国民にいささかの疑惑をも持たせてはなりませんので、外務大臣の責任ある見解を明らかにされたいのであります。(拍手)
 第五は、李ラインの存廃についてであります。
 日韓漁業協定において従来紛争の、種となっていた李ラインが実質的に撤廃され、公海自由の原則が確立されたことは、わが国漁業の安全操業確保という意味から非常に大きな成果というべきであります。(拍手)しかるに、反対論者は、李ライン撤廃の保証がどこにもないとか、韓国側が撤廃の約束をしなければ協定にはならないなどと主張して国民を惑わしているのであります。また、本協定は日韓いずれかの国が終了通告をしない限り何年も続くわけでありますが、一応発効後五年後には一年間の予告をもって終了せしめ得ることになっているので、六年後には再び李ラインが復活するというような説をなす者もおります。このような解釈は誤りでありまして、本協定が終了した場合は相互の共同規制等がなくなって、一般の国際法に基づく公海自由の原則に戻る、ものであります。(拍手)李ラインの問題は、わが国の利害と最も深い関係を持つものでありますから、漁業協定の意義や解釈を外務大臣から重ねて明確にされたいのであります。(拍手)
 なお、漁業協定に関連して伺いたいことは、拿捕漁船や船員に対する国内的処理の問題であります。
  従来、拿捕漁船につきましては、韓国側に賠償を請求する立場をとってきたのでありますが、今回の協定によって賠償請求をしないこととなったのであります。したがって、これに対してはわが国政府において適切な措置を講ずべきことは当然のことと信ずるのであります。この問題の処理については、いろいろ議論はあると思いますが、日韓国交正常化という大国策に付随する問題であり、政治的に考慮して、すみやかにできるだけ手厚い措置を講ずる必要があると思うのでありますが、総理より具体的な方針を承りたいと思うのであります。(拍手)
 日韓国交正常化について最後にお尋ねしたいと思ったのは竹島問題であります。
 この問題につきましては、紛争の解決に関する交換公文によって、今後外交上のルートを通じて平和的に解決する道を開いておるのでありますが、反対論者はいろいろと言いがかりをつけておりますので、この機会にあらためて外務大臣の見解を明らかにされたいのであります。
 次にお尋ねしたい問題は、当面の財政経済に関する諸問題であります。
 政府が、当面の不況克服のため、六月以来とってこられました景気対策は、輸出の好調をはじめ、一部の商品市況や株式市場の立ち直りを見せ、深刻な不況ムードが著しく緩和されたことは喜びにたえないのであります。しかしながら、本格的な景気の回復にはなお強い対策の推進を要するものと思われます。特に中小企業の不況克服には、徹底した、しかも行き届いた、きめのこまかい施策が必要と信ずるのであります。景気の本格的な回復は、輸出の増進と国内有効構、要の喚起によらなければならないことは、論ずるまでもないところであります。生産調整による価格の維持等は、あくまでも一時的な応急手段でありまして、このような措置はできるだけすみやかにやめることが望ましいのであります。現在のような不況下において有効需要を喚起するには、まず財政がその役割りをになうべきことも当然のことであります。
 この意味において、私は、本年度の財政運営はもとより、四十一年度以降の財政運営についても、画期的な転換が必要と思うのであります。すなわち、財政の健全性をそこなわない限度において、公債政策をできるだけ積極的に取り入れ、社会資本の充実等を促進するとともに、有効需要を喚起し、他面、大幅減税を計画的に断行して、民間資本の蓄積と民力の涵養をはかるべきであると思うのであります。一部の論者は、公債政策が直ちに不健全財政とインフレにつながるかのような議論をしておりますが、国力に応じた適度の公債発行が、決して財政の健全性をそこなうものではなく、またインフレを誘発するものでもないことは、世界各国の実例が証明しているところであります。
 政府においても、公債発行と大幅減税の準備を着々進めているようでありますが、具体的にはどのような構想を持たれているのか、特に公債発行に必要な諸条件の整備と、減税の基本的考え方等につき、総理及び大蔵大臣の所信をお伺いしたいのであります。(拍手)
 さらに、国の財政政策と不可分に取り上げなければならない課題は、地方財政の問題及び国、地方を通ずる行政費の徹底した節減であります。
 地方財政は、国の財政よりもはるかに深刻であり、もし財源措置を講ずることなく公務員の給与を引き上げますならば、本年度の地方財政も行き詰まることが明らかであります。四十一年度以降においては、国税の減税による地方交付税の減少と、公共事業の増加等による地方財政の負担増によって、困窮は一そう加重されるのであります。いまや、地方財政は根本的な再建を要する段階にきていると考えるのであります。
 さらにまた、国が公債政策に踏み切る場合、その前提として、行政事務の合理化並びに効率化により、行政費等の徹底的な節減をはかり、また、年々大幅に膨脹する人件費等については、勇断を持ってこれを抑制することが必要と信ずるのであります。
 これらの問題につき、総理大臣の所信を伺いたいと思うのであります。
 いまや、内外の諸情勢ははなはだ重大であり、政府及び与党の責任もきわめて重いのであります。私は、政府が従来の情勢にとらわれることなく、強い勇気を持って庶政を刷新し、万難を排して当面緊急な政策を遂行することが、この重大時局を乗り切る絶対の条件であると信ずるのであります。総理及び閣僚諸君の一そうの御決意と御努力を切に期待して、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 日韓条約につきまして、各方面に理解と支援をお願いしておりますが、ただいままでのところ、国内におきましても大多数の支援を得ておるように私は考えております。この理解ある御支援に対しまして、政府はぜひともこの条約批准の手続を完了して、そうしてアジアにおける日本、その第
 一歩をこれによって踏み出したい、かように考えておりますので、ぜひともこの上とも御支援のほどをお願いいたします。(拍手)
 ただいままでのところ、一部、韓国側に反対がある、かような点を野党側で大きく取り上げておりますが、私どもの得た世論調査の結果の数字は、反対としていわれておりますものがわずかに九・八%、そうして賛成するもの、これが七〇%にはわずかに足りませんが、六九%、かような状況でございます。しかも、反対するという方々は、韓国政府に対しまして、今回の条約はこれは屈辱外交ではないか、韓国民に非常に不利な条約だ、かような意味の批判でありまして、もともと、日韓間の国交正常化については、基本的には考え方が同じなのであります。私は、わが国の国内における反対論を見ましても、なお政府が譲り過ぎたのではないか、ただいまの御意見のうちにもありましたが、そういう批判がある。あるいは漁業問題、あるいはその他の経済協力等についても、わが国が少し譲り過ぎたのではないか、かような批判があるようでありまして、これが反対として出ておる向きもあるようであります。しかし、このことは、日韓間の交渉は十四年の長きにわたり、ほんとうに忍耐強くわが自由民主党政府が今日まで取り組んでまいりました。しかも、その脚に互譲妥協の精神によりましてようやくこの案ができたのでありまして、今日、外務大臣自身は、これが最上のものだ、かように申しておりますが、私自身も、この日韓交渉は韓国にとっても日本にとっても最上の条約である、かように信じておるのであります。(拍手)どうか国民の皆さまにおきましても、この事実、これを曲げることなく御理解をいただいて、そうして隣国同士が仲よく提携してそうして繁栄への道をたどる、こういう平和に徹した行き方に協力願いたいと思うのであります。(拍手)
 南北朝鮮の統一を阻害するという社会党の御意見もありますが、これは、ただいまもお話がありましたように、七十一ヵ国が承認し、北朝鮮は二十三ヵ国がこれを承認しておる、これらの承認の状況が南北朝鮮の統一をはばんでおるとは言わないで、今回日韓交渉を妥結すると、日本がはばむのだ、これはいかにも実際の事実に合わない議論のように私は思います。(拍手)この問題ができ上がらないのは、これは今日の国際情勢、東西の冷戦がかような事態を招集しておるのだと私は思いますし、また、ただいまお話がありましたように、直接には国連方式による統一を韓国自身は賛成しておるが、北鮮がこれを拒んでおるというところにあるのだ、かように思います。(拍手)
 また、先ほども軍事同盟についてお語いたしましたが、ほんとにお説のように東北アジアの軍事同職、これを云々するごときは、国民に対しまして故意に不安を与えようとする、これはこじつけの議論であるというよりほかには私は感じないのであります。ほんとに困った考え方だと思います。(拍手)
 また、経済協力が韓国の経済を侵略するとかいうようなお話でございますが、これも問題が違うのでありまして、両国間においては真の提携、互恵平等の原則に立って提携協力する、これが今日の経済協力の考え方であります。私どもは一日も早く過去の不幸な思い出をもうなくしていく、払拭するということに一そうの努力をしなければならないと思います。これは私の所信表明にも明らかにしたとおりであります。
 そこで、今回の日韓国交の正常化ができたらどういうような効果があるか、この点につきましては、申すまでもなく、隣同士が仲よくする、これは自然の姿である。このことで日本がほんとに世界の平和についてもはっきり発言することができる。いままでのように、隣同士でも仲よくできないものが、世界の平和について発言するというのは、ずいぶんおこがましいことだと思いますが、これができれば、ようやくその基礎ができた、その地歩ができた、かように私は思いますが、今回これによりまして、両国間で長い問題でありました、漁業の安全操業もできることになりますし、また韓国人の法的地位もはっきりきまってまいります。文化交流の問題もこれではっきりしますし、また経済協力により、まして、過去の請求権等のやかましい議論も、これもなくなるのでありまして、私は、ほんとに仲よく提携していくその地歩ができる、かように思っております。
 竹島問題自身は、なかなか両国の間に意見が相違しておりますが、これまた平和的に話し合っていく、そうして解決するという、この方法ができております。
 次に、この条約の解釈に関する問題につきましては、先ほどもお答えしたとおりでありますから省略さしていただきますが、この条約が、とにかく忍耐強く、互譲の精神によって締結された、ようやく調印後、今日批准国会を迎えたのでありますので、皆さま方の御協力をこの上ともお願いしたいと思います。
 また、今日までの拿捕漁船にかかる損害の補償の問題でございますが、私は、日本の零細漁民が拿捕されたり、あるいは李ラインのために非常な不幸な状態にあっておる船主あるいは乗り組み員等、これは零細な漁民であるだけに、特にこれらについてはあたたかい、手厚い措置をとるべきだと、かように考えます。かような意味で、ぜひとも政府がこれらに対しまして見舞い金を出すように、早急にその措置をとるようにただいま関係省に命じておるような次第でございますから、ただいまお尋ねがありましたので、近くこの問題も具体的にはっきりすることを御了承いただきたいと思います。(拍手)
 次に、今日の経済の問題でありますが、先ほど経済の概況についてはお答えいたしましたから、ダブる点を略しまして、公債発行並びに大幅減税という大きな問題と取り組んでおる政府、かような状態でございますから、これは新たなる局面に当面しておる。そこで、政府も、また党におきましても、新しいこの制度、公債の発行だとか、あるいは大幅減税というようなことについて、正しい方向、健全なる方向をいかにすればいいか、十分検討願いたいと思います。在来のような考え方では、これは新しいこの事態に対応しておるとは言えないと思いますので、ここに画期的な新たなる構想を練りたいものだと思います。詳細は大蔵大臣にお答えをさしていただきます。
 地方財政につきましても、ただいま地方の歳入減、さらに交付税による交付金の減少等によりまして、地方財政は非常な困難に当面しておると思います。片一方で災害復旧や公共投資等の要望が大きいだけに、たいへんな困り方だろうと思います。これらにつきましても、自治体自身につきましても、その自治体自身が適正なる措置をとる限りにおきまして、中央におきましてもこれに十分協力するということを御了承いただきたいと思います。
 次に、政府が公債政策に踏み切る、こういうことは、私が申し上げるまでもなく、いわゆる借金を政府がするのであります。借金するような事態におきまして、放漫な財政は許されない、思います。また、国民に対しましても、十分国民の負担を軽くするのだ、こういう意味で、長期にわたり大幅減税を計画するのでありますから、その支出の面におきましても、冗費を節約する、これは当然なことであります。そういう意味で、経費の膨張を来たさないように、また効率的な運用の実をあげるようにあらゆる努力をいたしてまいるつもりであります。
 いずれにいたしましても、たいへん重大な時局でございますので、ただいまの日韓条約の批准をはじめ、その他の問題につきましても、真剣に、また全力をあげて取り組んでまいるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
#15
○国務大臣(椎名悦三郎君) お答え申し上げます。
 まず、条約の解釈について両国に大きな食い違いがあるから条約としての効力がないという主張についてどう考えるか、同じ問題が先ほどから出ておりますけれども、一応私のお答えを申し上げます。
 わが国と韓国との間で署名されました条約及び諸協定は、長年にわたって慎重な交渉の結果、両国政府の間に最終的な合意を見たものでございまして、できた以上は、その解釈は条文に書かれておるところに従ってなされるのであります。したがって、韓国側が国内的にいろいろな場合にいろいろな説明をしておられることを一々問題として取り上げる必要はない、そのようなことは、条約の効力に何らの影響を及ぼすものではないという見解をとっておりますので、この点をお答え申し上げます。(拍手)
 韓国政府の領土管轄権の問題について次に御質問がございました。基本関係条約第三条によりまして、韓国政府は、国連総会決議百九十五号に明らかに示されたとおりの、朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認されておる。その決議と申しますのは、朝鮮人民の大部分が居住しておる朝鮮の部分とありまして、これに対する有効な支配と管轄権を及ぼしておるその政府、すなわち大韓民国政府のことでありますが、それが樹立されたとしておるのでございますから、これの正当な解釈によって、韓国政府の管轄権が及んでいるのは南鮮の部分のみである、すなわち、休戦ライン以南であるということが明らかになるのであります。
 その次に、李ラインの撤廃について韓国政府の保証がないがとの反論に対してはどう考えるか、こういう御質問であります。韓国としては、今度の日韓漁業協定と矛盾することは主張できないわけでございまして、日本国民が韓国漁業水域の外側において行なう漁業について、いわゆる李ラインというものを主張して漁業の取り締まりを実施するというようなことは今後一切なくなる、この点は協定上きわめて明白であります。また、韓国が日本に対して李ラインを主張し得ないということにこのことはつながるのでございまして、これは韓国政府自身も十分に認めておる。かりに廃止されたときはどうなるかというようなことも先ほどから出ておりますが、国際法上違法のことが除かれるのでありますから、まあ悔い改めて国際法上の原則に従うということが今日この条約に明記されておるのでありますから、かりに条約が廃止されたとしても、国際法上の当然のこれは原則として残るわけでございます。
 竹島問題について見解を明らかにせよというお話でございます。
 政府は、竹島が歴史的事実に照らしまして、かつ、領土帰属に関する近代国際法上の見地よりいたしましても、明らかに日本国の固有の領土であると確信しております。しかし、一方、韓国も竹島に対して領有権を主張しておる。過去十数年にわたって日韓間の紛争となっているものでございます。この紛争につきましては、今回の紛争解決に関する交換公文によって、政府がかねて明らかにしてきた方針のとおり、その平和的解決の道を開いたものでございます。すなわち、竹島問題その他の両国間の紛争は、別段の合意なき限り、まず外交上の経路を通じて解決をはかる、これで解決ができなかった場合には、調停によって解決をはかる、こういうことの合意を見たのであります。政府としては、日韓諸協定が発効し、日韓関係が新時代に入れば、日韓関係も好転をいたしまして、日韓双方にとって竹島問題を取り上げやすい友好的な雰囲気が生まれてくるものと確信しております。このような時期を見計らって本問題につきまして交渉を再開するように韓国に申し入れたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#16
○国務大臣(福田赳夫君) 不況対策につきまして、財政の役割りが重大である、こういう考えにつきましては、私、全く同感であります。そうでありまするがゆえに、私は、先般決定いたしました総合政策におきましても、財政の繰り上げ支出あるいは財政投融資の支出の拡大でありますとか、そういうことを大幅に取り上げたわけでございますが、しかし、その実効があがらなければいかぬ、そういうふうに特に留意をいたしまして、私といたしましては最善の努力、陣頭指揮をいたしてきたつもりでございます。その結果、ただいま公共事業におきましては、一割留保などの関係がありまして、ちょっと手戻りがありました。これは事実であります。しかし、財政投融資の面におきましては、繰り上げ支出は予定よりも順調に進んでおります。また、支出拡大の面におきましては、これは準備が若干要るのでございますが、いよいよ九月から実施過程に入りまして、半分以上を年内にこなし得る見通しでございます。そういうようなことを考えますと、この第三・四半期、つまり十、十一、十二の経済の動きというものが相当重大である、私は、財政の効果がこの時期に浸透してくるということを確信いたしておりますが、しかし、この動きにつきましては、慎重にこれを見守っていきたい、そうして、機に応じ、変に臨みまして臨機即応の措置をとっていく、かような方針でございます。(拍手)
 第二に、新しい経済情勢に臨みまして、公債政策を財政上取り入れるべしという赤城議員の所見につきまして、私は全く同感の意を表します。国家の財政支出の財源を大体租税収入でまかなってまいれ、こういう均衡方針、これは戦後大体ずうっととられてきておりまするが、私は、この財政方針の尽くした意味はきわめて重大であったと思うのであります。戦後廃墟の中から立ち上がるのでございますから、やっぱり政府に信用がなければならぬ。その重大な立場にある政府が、借金でよたよたしておるというのでは、私は戦後の復興はなし遂げられなかったと思うのです。均衡財政を中心にいたしまして、経済は今日のような隆盛な状態になってきておる。しかし、この時点に立って考えまするときに、私は、この方針につきまして転換を要する時期にきておるのではないか、そういうふうに考えるのであります。つまり、国家は財政上つじつまを合わしておる。しかしながら、企業はどうだというと、自己資本比率などは非常に悪い。あるいは個人家庭はどうかといえば、最も大事な資産である住宅も、まだ十分整っておらぬという状態であります。この際、政府が借金をいたしましても、企業と家庭の蓄積に貢献するという態度、私はこれが重大な時期になってきたと思うのであります。(拍手)
 同時に、もう一つの問題は、戦後の経済を見ておりますと、どうしても景気の変動、波動というものの高低、開差が多いのであります。それは経済界が好況である、そういう際にはしたがって租税収入もふえる。租税収入がふえるものですから、財政は拡大される。民間もまた政府も一緒になって過熱の経済をつくるという傾向になるのは当然であります。また、経済が今日のように落ち込むと、租税収入は減ってまいります。そうすると、財政としては、尽くさなければならない財政支出ができない。政府と民間が一緒になって不況感を激成するという結果になる。私は、この際、むしろ適度の公債政策を導入いたしまして、そうして好況のときには政府は引っ込む、また不況のときには積極的に政府は進出をする。こういう考え方こそが、今後の安定経済成長政策を推進していく機軸になっていくのだ、かように確信をいたしております。(拍手)かような意味におきまして、ただいま赤城議員の言われるような公債政策への転換を準備しつつある次第でございます。
 さような考え方によりまして、租税上は減税を行ないたいと思います。これは長期的な観点に立って行ないたいと思うのであります。しかし、初年度は、長期的観点といいますと、ややもすれば頭を出すだけだというようになりがちでございまするが、今回はそうはいたしません。初年度、つまり四十一年度におきましても大幅な減税をいたしてまいりたい、かように考えております。
 公債を発行いたしまして財政を運営するという立場をとりまする以上、財政の健全化につきましてことさらに気をつけてまいらなければならぬことは当然でございます。そういう意味におきまして、支出の効率化、冗費の節約、これは勇気をふるってやっていきたいと思います。これは国会がどうしても御協力をしてくれなければできないことであります。どうか満幅の御協力あらんことをお願い申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#17
○海部俊樹君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十六日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#18
○議長(船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
       内閣総理大臣   佐藤 榮作君
       法 務 大 臣  石井光次郎君
       外 務 大 臣  椎名悦三郎君
       大 蔵 大 臣  福田 赳夫君
       文 部 大 臣  中村 梅吉君
       厚 生 大 臣  鈴木 善幸君
       農 林 大 臣  坂田 英一君
       通商産業大臣   三木 武夫君
       運 輸 大 臣  中村 寅太君
       郵 政 大 臣  郡  祐一君
       労 働 大 臣  小平 久雄君
       建 設 大 臣  瀬戸山三男君
       自 治 大 臣  永山 忠則君
       国 務 大 臣  上原 正吉君
       国 務 大 臣  福田 篤泰君
       国 務 大 臣  藤山愛一郎君
       国 務 大 臣  松野 頼三君
       国 務 大 臣  安井  謙君
 出席政府委員
        内閣官房長官 橋本登美三郎君
       内閣法制局長官  高辻 正巳君
     内閣法制局第一部長  関  道雄君
ソース: 国立国会図書館
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