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#1
第049回国会 本会議 第2号
昭和四十年七月三十日(金曜日)
   午前十時十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第四号
  昭和四十年七月三十日
   午前十時開議
 第一 議長辞任の件
 第二 副議長の選挙
 第三 正副議長の党籍離脱に関する決議案(佐
  多忠隆君外四名発議)(委員会審査省略要求
  事件)
 第四 常任委員の選任
 第五 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 議長辞任の件
 一、日程第二 副議長の選挙
 一、日程第三 正副議長の党籍離脱に関する決
  議案(佐多忠隆君外四名発議)(委員会審査
  省略要求事件)
 一、日程第四 常任委員の選任
 一、常任委員長の選挙
 一、特別委員会を設置するの件
 一、首都圏整備委員会委員の任命に関する件
 一、中央社会保険医療協議会委員の任命に関す
  る件
 一、労働保険審査会委員の任命に関する件
 一、行政監理委員会委員の任命に関する件
 一、日程第五 国務大臣の演説に関する件
 一、請暇の件
    ―――――――――――――
   〔事務総長宮坂完孝君議長席に着く〕
#3
○事務総長(宮坂完孝君) 国会法第七条の規定により、暫時、私が議長の職務を行ないます。
 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ─────・─────
#4
○事務総長(宮坂完孝君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議長辞任の件、
 去る二十一日、議長重宗雄三君から辞任願が提出されました。
 辞表を参事に朗読させます。
   〔参事朗読〕
   辞 任 願
 先般の通常選挙により参議院は議員の半数が改選された。よって改選後初の国会が召集されたこの機会に参議院議長を辞任いたしたい。
 右御願いする。
   昭和四十年七月二十一日
          参議院議長 重宗 雄三
  参議院事務総長 宮坂 完孝殿
     ─────・─────
#5
○事務総長(宮坂完孝君) 議長の辞任を許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○事務総長(宮坂完孝君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#7
○事務総長(宮坂完孝君) この際、直ちに議長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○事務総長(宮坂完孝君) 御異議ないと認めます。
 投票は無名投票でございます。議席に配付してございます白色の無名投票用紙に被選挙人の氏名を記入して、白色の木札の名刺とともに、御登壇の上、御投票を願います。
 氏名点呼を行ないます。
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#9
○事務総長(宮坂完孝君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#10
○事務総長(宮坂完孝君) これより開票いたします。投票を参事に点検させます。
   〔参事投票及び名刺を計算、投票を点検〕
#11
○事務総長(宮坂完孝君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百十五票
 名刺の数もこれと符合いたしております。
 本投票の過半数は百八票でございます。
  重宗雄三君         百五十票
   〔拍手〕
  椿繁夫君            一票
   〔拍手〕
  白票            六十四票
   〔拍手〕
 よって重宗雄三君が議長に当選せられました。(拍手)
   〔事務総長宮坂完孝君、議長重宗雄三君も演壇に導く〕
#12
○事務総長(宮坂完孝君) ただいま議長に当選されました重宗雄主君を御紹介申し上げます。
   〔拍手〕
#13
○重宗雄三君 議員諸君の御推挙により、不肖私が再び議長に当選いたしましたことは、私の最も光栄に存ずるところでありまして、感激にたえません。議長の職責の重大なることを一そう肝に銘じ、その職務を行なうにあたりましては、常に公正無私、最善の努力を尽くし、議院の正常にして円滑なる運営をはかり、もって国民の信託にこたえたいと念願いたしております。
 どうか議員各位におかれましては、旧に倍する御支援と御協力を賜わりますよう、心からお願い申し上げまして、就任のごあいさつといたします。(拍手)
   〔議長重宗雄三君議長席に着く〕
     ―――――・―――――
#14
○議長(重宗雄三君) 日程第二、副議長の選挙を行ないます。投票は無名投票でございます。議席に配付してございます白色の無名投票用紙に被選挙人の氏名を記入して、白色の木札の名刺とともに、御登壇の上、御投票を願います。
 氏名点呼を行ないます。
  〔参事氏名を点呼〕
  〔投票執行〕
#15
○議長(重宗雄三君) 投票漏れはございませんが。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
  〔投票箱閉鎖〕
#16
○議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に点検させます。
  〔参事投票及び名刺を計算、投票を点検〕
#17
○議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数         二百十五票
名刺の数もこれと符合いたしております。本投票の過半数は百八票でございます。
 河野謙三君        百二十九票
  〔拍手〕
 椿繁夫君          八十六票
  〔拍手〕
 よって河野謙三君が副議長に当選せられました。(拍手)
  〔参事 副議長河野謙三君を演壇に導く〕
#18
○議長(重宗雄三君) ただいま副議長に当選されました河野謙三君を御紹介いたします。(拍手)
#19
○河野謙三君 ただいま、皆さまの特別の御支援により、不肖私が副議長に当選いたしましたことは、まことに光栄でありまして、感激の至りでございます。
 私は至らぬところ多くして、皆さまの御期待に沿うだけの力を発揮し得るやいなや危惧の念にたえない次第でございますが、その職務を行なうにあたりましては、日々反省の上に立って、中立公正を旨とし、誠心誠意議長を補佐し、諸君の御厚情にこたえる覚悟でございます。
 ここに、各位の絶大なる御支援、御指導を切にお願い申し上げる次第でございます。
 はなはだ簡単でありますが、ごあいさつといたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#20
○議長(重宗雄三君) 小柳牧衞君から発言を求められました。この際、発言を許します。小柳牧衞君。
   〔小柳牧衞君登壇、拍手〕
#21
○小柳牧衞君 私は、議員一同を代表しまして、新議長及び新副議長に対し、お祝いのことばを申し上げます。
 重宗雄三君は再度議長に選任され、また河野謙三君は新たに副議長に選任せられました。われわれ一同ここに衷心より祝意を表する次第であります。
 重宗議長は、第一回国会以来、本院議員として、常に民主議会政治確立のため尽瘁され、去る昭和三十七年には議長に当選されました。その高邁なる御識見と濶達なるお人柄により、参議院の自主性の確保と議院の正常な運営に多大の成果をあげられたのであります。
 河野副議長は、昭和二十八年に本院議員に御当選以来、永年にわたり国政のため尽力され、豊富な御経験を有せられますとともに、そのすぐれた御識見は、われわれ一同崇敬してやまないところであります。
 かかる両君を、本院を代表する議長及び副議長に推戴いたしましたことは、わが参議院のため、まことに御同慶にたえない次第であります。
 現下わが国の内外の情勢は多事多端であり、本院に対する国民の期待もますます高まってまいりました現在、われわれは、本院に課せられた使命を一そう自覚し、国民の信託にこたえなければならないと存じます。かかる際において、両君の御手腕に期待するところ多大であります。
 どうか御両君におかれましては、健康に御留意の上、公正かつ民主的な議会運営に当たられ、もって、本院の権威高揚のため御尽力くださるようお願い申し上げます。
 はなはだ簡単でありますが、お祝いのことばを申し上げます。(拍手)
     ―――――・―――――
#22
○議長(重宗雄三君) 日程第三、正副議長の党籍離脱に関する決議案(佐多忠隆君外四名発議)(委員会審査省略要求事件)、
 本案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、これを議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって本案を議題といたします。
 まず、発議者の趣旨説明を求めます。佐多忠隆君。
   〔佐多忠隆君登壇、拍手〕
#24
○佐多忠隆君 私は、日本社会党、公明党、民主社会党、共産党、第二院クラブを代表して、正副議長の党籍離脱に関する決議案の趣旨を説明いたします。
 まず最初に、決議案を朗読します。
   正副議長の党籍離脱に関する決議案
 議長及び副議長は、院の公正な運営を期するため、党籍を離脱すべきである。
 右決議する。
     理 由
  参議院議長及び副議長は、院の最高の責任者として、その言動は公平無私、いやしくも一党一派の制約を受けてはならない。ここに党籍を離脱して、院の運営についての絶対中正を期すべきである。
    ―――――――――――――
 以上が決議案とその提出の理由であります。
 第四十九回臨時国会は、参議院通常選挙を終わり、新しく当選された議員諸君を迎えて開かれた最初の議会であります。新議員並びに改選された議員は、輝かしい希望と抱負を持って出席されたことでありましょう。また、国民はひとしく、みずからが選んだ議員の政治活動に大きく注目し、多大の期待を持ってこれを見詰めております。
 しかるに、臨時国会は召集されて以来九日に及び、院の構成が紛糾し、貴重な日時を空費しました。その最大の理由は、まず、本月二十二日に臨時国会が召集されて以来二十六日までは、自民党の党内事情によって正副議長がきまらず、その後は、院の公平無私な民主的運営のために野党各派が一致して要求する、議長の第一党、副議長の第二党への配分、正副議長の党籍離脱に対し、与党自民党がかたくなに反対し続けていたからであります。選挙を通じて国民の手によって選ばれ、刷新をされた議会が、このように空費され、空転し、日時の浪費のみを重ねてきた原因は、すべて自民党にあり、その責任はあげて自民党に帰します。(拍手)まことに遺憾と言わねばなりません。
 思い起こしますに、私は、六年前の昭和三十四年、第三十二回国会の冒頭において、本日と全く同じ正副議長の党籍離脱の決議案を上程し、その趣旨説明を行ないました。再び同じことを、全く同様の時期に提出しなければならないことに関し、過去六年間何の進展もなく、改革もなく、進歩もなく、ただ沈滞と旧態依然たる姿に終始したことを、われわれはまことに遺憾に存じ、憤激を感ぜざるを得ません。(拍手)
 正副議長は、院の最高責任者として、その言動は公平にして無私、いやしくも一党一派の制約を受けてはなりません。そのためには、正副議長は党籍を離脱し、院の運営について絶対公正を期することが当然であります。これは自明の理であると同時に、いまや常識であります。理論的にそうであるのみならず、歴史的にもまたそうであると言えます。
 御承知のごとく、戦前の帝国議会においてすら、衆議院では、大正十四年、第五十回議会において、粕谷義三議長小泉又次郎副議長が最初に党籍を離脱して、名議長の名を歴史に残しています。自来、党籍離脱が普通のこととなっていました。当時の記録によりますと、「議長、副議長は、憲政治下における最も名誉ある、かつ権威ある地位である。同時に公平無私の態度でその職に当たらなければならない。もとより、議長たる者は誰しも公正たらんと努めてはいるが、党籍を持って、党の本部に出入りし、また、党の役員として大小の党務に参加すれば、公正たらんと欲しても、知らず知らずの間に公正を欠く恐れがある。よって、議長、副議長たる以上は、よろしく党籍を離脱すべし。このような理由から党籍離脱が行なわれた。」と、記録にしるされております。
 戦後の民主主義、主権在民をうたう新憲法のもとにおいて議会をつかさどる議長重宗雄一君、副議長河野謙二君、心を静め、この歴史を回顧して、思いを新たにすべきではないでしょうか。(拍手)
 自民党の諸君、諸君は保守党たることをもってみずから任じております。しかるに、諸君の政治に対する心がまえの中には、この古きよきものを学ぼうとする謙虚さもないのでありましょうか。
 さらに、戦後の議会においても党籍離脱が行なわれております。昭和二十一年召集された第九十帝国議会の衆議院山崎猛議長、木村小左衛門副議長、新憲法下の第十六特別国会における衆議院堤議長、原副議長、第三十一回の加藤議長、正木副議長、第三十四回の清瀬議長、中村副議長、十七回の清瀬議長、久保田副議長がそれであります。これらは常に、議会の運営に対し一党独占の形を避け、その民主化と円滑化のために、与野党が正副議長を配分し、その公正を期そうとする努力の中から生まれております。
 しかし、この好ましい慣例は、常に自民党の党利党略の中で破られ、くずされています。そして一党独占、自民党独占の議会運営の中では、絶えず混乱を生じ、多数党の、数を頼みとする強引な議会運営がなされ、国民の批判を受けてきております。わが参議院においては、これまで、議長、副議長の党籍離脱は行なわれていません。しかし、正副議長の配属、常任委員長の配分については、一党独占の弊害を避けるため、与野党がこれを分かち合う努力がなされ、それが続けられてまいりました。これは、良識の府としての参議院のあり方、そして衆議院と異なる参議院の自主性に基づき、その公正なる運営について与野党ひとしく努力を重ねてきた結果であり、成果であります。
 正副議長の党籍離脱を行なう必要のない理由として、多数党に所属することにより、党内部の立場からその横暴を抑え、院の運営の公正をよりよくはかることができると重宗議長は言われます。
 しかし、参議院の議院運営の過去の例からして、はたしてそのようなことが十分になされたでありましょうか。むしろ、党籍のあるために、党議に縛られ、党利党略の道具と化して、無理無謀な中間報告が求められ、多数による強引な採決が、国会慣例を無視し、国会法を無視して、なされた事実があるではありませんか。第四十三回国会では、失対二法が、何らの審議を見ないまま、中間報告の動議により可決成立させられ、前国会の農地報償法案もまたしかりでありました。
 自民党の言う重要法案のいずれもが、多数暴力という常套手段により、国会を通過させられております。そこには民主主義のルールもなく、少数意見の尊重など、全く顧みられない一党独裁の政治が、新憲法のもとに公然と行なわれ、それが既成事実としてまかり通っているではありませんか。
 現在、自民党が正副議長の党籍離脱に対し、かたくなにまで反対し、それを押し通そうとする態度の中には、今後の議会運営に対し、野党の正論を封ずる手段として、与党自民党の支配のうちに正副議長をとめ置こうとする意図から出ているものとしか考えられません。
 国会の正常化という問題は、議院運営の混乱と国民の批判の中から出てくるものではなく、国会の冒頭において、選挙後の初めての国会において、各党、各派、各議員、えりを正して、政治に対する新しい意欲と、新しい姿勢の中から、もって期すべき問題であります。
 われわれが、いまなすべき最小限度のことは、参議院の正副議長の党籍離脱であります。
 参議院の政党化と超党派的良識の府とは、一つの矛盾であります。参議院の議員を直接に公選し、民主政治が政党政治であり、選挙が政党や組織を土台として行なわれる以上、参議院もまた政党化することは、現実の不可避な傾向と言えましょう。同時に、他方、参議院は、良識の府として、衆議院の党利党略による行き過ぎや、あやまちを公正に抑制をし、是正することを、その本来の使命としております。参議院のこの現実と本来のあり方との閥のジレンマを克服するには、少なくとも、議長、副議長は党籍を離脱して、院の運営を真に公正で無私にする以外に道はありません。参議院の良識と自主性を守り、もって参議院議員として国民の負託にこたえんとするものは、すべからく正副議長の党籍離脱に対し賛成をすべきであり、参議院のこれまでの長い慣行と、よりよき慣例から見ても、現行の一党独占、多数党従属の議長、副議長の存在は、むしろ不合理であり変則であると言わねばなりません。ここにおいて、これが改められず、現状のまま過ごすことは許さるべきではありません。参議院が、その良識の府としての権威を高める当面の課題は、まず、正副議長の党籍離脱以外にありません。
 私はここに、繰り返し、しかも執拗に、正副議長の党籍離脱を要求するものであります。自民党諸君も、本来の良識に立ち返り、これを含む全会派の諸君が、きん然として、全会一致、この決議案に御賛成あらんことを切望いたします。(拍手)
#25
○議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。白木義一郎君
   〔白木義一郎君登壇、拍手〕
#26
○白木義一郎君 私は、ただいま上程になりました、議長、副議長の党籍離脱に関する決議案につきまして、日本社会党、公明党、民主社会党、日本共産党、第二院クラブを代表いたしまして、賛成の討論をいたしたいと思います。(拍手)
 賛成の理由につきましては、申し上げるまでもないことでありますが、簡単明瞭に申し上げたいと思います。
 議長は、国会運営を公正にするという立場から、不偏不党の立場を堅持しなければならないことは当然のことであります。こういう議長の中立性を十分に確保するためには、議長は進んで党籍を離脱すべきであると考えるものであります。わが国会の正副議長は、院の最高の責任者であり、外部に対しては議院を代表し、また、内部にあっては院内の審議を円滑に進行させ、各党派の主張を公平にさばく強い権限を持った権威ある地位であります。政府の代弁者であったり、一党一派の代表であってはなりません。絶対中立を期すべきであり、これは国民の常識であります。
 世界各国の議事規則を見ましても、議長の中立性確保につきましては、非常に厳格な議事規則がきめられているところがたくさんございます。また、イギリスのように、党籍離脱の慣行が古くから確立している国もあります。わが国においても、すでに戦前の帝国議会においてすら、衆議院では大正十四年、第五十回議会を最初の例として、以後、正剛議長が党籍を離脱することが当然となったと、当時の記録に残っております。戦後の新憲法下における国会では、衆議院において、第十六特別国会以来。堤−原、加藤−正木の正副議長が党籍を離脱しております。しかし、国会の運営を民主化し、円滑にするために、少なくとも一党独占を避けて、与野党に正副議長配分の努力が続けられてまいりました、そのよき慣例を自民党が強引に破って、昭和三十三年、第二十九国会において、星島、椎熊正副議長がでてきましたとき、一党独占の弊害がその極に達しました。国民の記憶にもあざやかな警職法改正案をめぐる大混乱が起こり、衆議院はその機能が完全に失われ、それに対する深い反省から、尊び正副議長の党籍離脱が復活した歴史がございます。
 わが参議院では、なるほど、議長、副議長の党籍離脱こそ行なわれていませんが、第一回以来、昭和三十一年の第二十四国会まで、一党独占は避けられてまいりました。しかるに、その後は、松野議長、寺尾副議長によって、この良識の府としての好ましき慣例が破られて、一党独占が強行されました。その直後、松野議長は、自民党の指令に基づいて、議場に警察官を導入し、神聖なるべきこの演壇をふみにじらせるという、わが国の議会政治史上に大きな汚点を残すという大事件を惹起してしまいました。その後は、引き続き、その党籍離脱が強く要求され、三十四年、第三十二国会には、参議院において、党籍を離脱すべきだとの決議案が上程されました。すでに衆議院では、加藤、清瀬両議長、中村、久保田両副議長が党籍を離脱されましたが、参議院では、この決議案が否決されました。そのまま、松野、寺尾正副議長が自民党よりの離脱を頑強に排し続けて、今日に至っております。
 激しい選挙戦を乗り切って当選され、輝かしき名誉をもって初めて出席される新議員諸君を迎えて開かれる今国会は、またもや、議長、副議長の選任について紛糾し、国会の空白はすでに一週間をこえるに至って、再び国民の信頼を失なう羽目に至りました。この責任は一にかかって自民党にありと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 時あたかも日韓問題、世界大戦への恐怖の深まるベトナム戦争等の重大なる段階を迎えるこのときにあたり、野党五派は、国会正常化の願望により、重宗議長に党籍離脱について申し入れをなし、その意思ありやをただす会談を持つに至りました。残念ながらわれわれの参議院の自主性を守らんとする願望は、むざんにも一蹴されました。重宗議長は、「議長の党籍離脱は良心的にはそうすべきであるが、いろいろの事情によってできない。また、自分は党籍を離脱しなくても多数党の横暴を十分押える自信がある。議長に正式に選ばれた暁には、前向きの姿勢でこの問題を検討したい」と、わかったような、わからないような答弁がなされました。議長のこの問題についての考え方に、党籍を離脱して公平無私の基本的態度を身をもって実証する意思の全くないことを知って、決議案上程の運びとなりました。第一党たる参院自民党の諸君の中にも、参議院をもって良識の府たる信頼を得る道は、まず正副議長の党籍離脱こそは最小限度の国会正常化であるとの、民主主義政治の基本的ルールを守ろうとする多数の賛成者がおられることを確信し、全議員諸君の賛成を期待いたしまして、私の賛成討論とするものであります。(拍手)
#27
○議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本案の採決をいたします。
 表決は記名投票をもって行ないます。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#28
○議長(重宗雄三君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#29
○議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#30
○議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数          二百十票
  白色票           八十四票
   〔拍手〕
  青色票          百二十六票
   〔拍手〕
 よって本案は否決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名      八十四名
      鬼木 勝利君    原田  立君
      林   塩君    山高しげり君
      中沢伊登子君    片山 武夫君
      石本  茂君    市川 房枝君
      中尾 辰義君    浅井  亨君
      高山 恒雄君    田代富士男君
      二宮 文造君    北條 雋八君
      向井 長年君    宮崎 正義君
      渋谷 邦彦君    鈴木 一弘君
      曾禰  益君    和泉  覚君
      白木義一郎君    鈴木 市藏君
      前川  旦君    戸田 菊雄君
      竹田 現照君    山崎  昇君
      木村美智男君    村田 秀三君
      小野  明君    瀬谷 英行君
      杉山善太郎君    林  虎雄君
      大森 創造君    鶴園 哲夫君
      小柳  勇君    横川 正市君
      藤田藤太郎君    相澤 重明君
      岡  三郎君    永岡 光治君
      柳岡 秋夫君    佐多 忠隆君
      北村  暢君    鈴木  強君
      阿部 竹松君    岩間 正男君
      須藤 五郎君    野坂 參三君
      春日 正一君    森  勝治君
      鈴木  力君    中村 波男君
      川村 清一君    大橋 和孝君
      田中寿美子君    稲葉 誠一君
      吉田忠三郎君    渡辺 勘吉君
      小林  武君    松本 賢一君
      佐野 芳雄君    千葉千代世君
      武内 五郎君    松永 忠二君
      占部 秀男君    森 元治郎君
      光村 甚助君    伊藤 顕道君
      久保  等君    秋山 長造君
      大矢  正君    亀田 得治君
      加瀬  完君    大和 与一君
      近藤 信一君    松澤 兼人君
      小酒井義男君    椿  繁夫君
      鈴木  壽君    木村禧八郎君
      岡田 宗司君    加藤シヅエ君
      羽生 三七君    松本治一郎君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      百二十六名
      二木 謙吾君    沢田 一精君
      日高 広為君    長谷川 仁君
      野知 浩之君    前田佳都男君
      伊藤 五郎君    林田 正治君
      吉江 勝保君    白井  勇君
      剱木 亨弘君    梶原 茂嘉君
      木暮武太夫君    寺尾  豊君
      大野木秀次郎君    草葉 隆圓君
      西川甚五郎君    宮崎 正雄君
      柳田桃太郎君    山内 一郎君
      山本茂一郎君    園田 清充君
      船田  譲君    藤田 正明君
      平泉  渉君    八田 一朗君
      西村 尚治君    森田 タマ君
      植木 光教君    和田 鶴一君
      木村 睦男君    高橋文五郎君
      内田 俊朗君    源田  実君
      熊谷太三郎君    小林 篤一君
      久保 勘一君    川野 三暁君
      温水 三郎君    山崎  斉君
      亀井  光君    石井  桂君
      豊田 雅孝君    稲浦 鹿藏君
      大竹平八郎君    柴田  栄君
      鍋島 直紹君    横山 フク君
      大谷 贇雄君    青柳 秀夫君
      佐藤 芳男君    平島 敏夫君
      植竹 春彦君    田中 茂穂君
      近藤 鶴代君    石原幹市郎君
      古池 信三君    杉原 荒太君
      平井 太郎君    笹森 順造君
      重政 庸徳君    中野 文門君
      竹中 恒夫君    後藤 義隆君
      堀本 宜実君    山本 利壽君
      中村喜四郎君    内藤誉三郎君
      任田 新治君    土屋 義彦君
      玉置 和郎君    高橋雄之助君
      大森 久司君    岡本  悟君
      奥村 悦造君    楠  正俊君
      黒木 利克君    栗原 祐幸君
      木島 義夫君    岸田 幸雄君
      米田 正文君    谷村 貞治君
      村上 春藏君    大谷藤之助君
      天坊 裕彦君    西田 信一君
      仲原 善一君    松野 孝一君
      森部 隆輔君    津島 文治君
      斎藤  昇君    塩見 俊二君
      河野 謙三君    迫水 久常君
      山下 春江君    松平 勇雄君
      八木 一郎君    森 八三一君
      青木 一男君    郡  祐一君
      安井  謙君    小沢久太郎君
      鹿島守之助君    小林 武治君
      小山邦太郎君    高橋  衛君
      吉武 恵市君    廣瀬 久忠君
      近藤英一郎君    田村 賢作君
      谷口 慶吉君    櫻井 志郎君
      北畠 教真君    金丸 冨夫君
      青田源太郎君    赤間 文三君
      井川 伊平君    鹿島 俊雄君
      三木與吉郎君    新谷寅三郎君
      木内 四郎君    紅露 みつ君
      上原 正吉君    増原 恵吉君
      中山 福藏君    小柳 牧衞君
     ─────・─────
#31
○議長(重宗雄三君) 日程第四、常任委員の選任。
 本日、議長は常任委員全員の辞任を許可いたしました。
 これより常任委員の選任を行ないます。
 常任委員の選任は、本院規則第三十条により、すべて議長の指名によることとなっております。
 議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり常任委員を指名いたします。
   〔常任委員の氏名は末尾に掲載〕
#32
○議長(重宗雄三君) 本日、常任委員全員の辞任を許可いたしましたため、常任委員長が全員欠員となりました。
 つきましては、この際、日程に追加して、
 全常任委員長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
#34
○亀井光君 常任委員長の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#35
○柳岡秋夫君 私は、ただいまの亀井君の動議に賛成をいたします。
#36
○議長(重宗雄三君) 亀井君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 よって議長は、内閣委員長に柴田栄君を指名いたします。
   〔拍手〕
 地方行政委員長に天坊裕彦君を指名いたします。
   〔拍手〕
 法務委員長に和泉覚君を指名いたします。
   〔拍手〕
 外務委員長に寺尾豊君を指名いたします。
   〔拍手〕
 大蔵委員長に西田信一君を指名いたします。
 文教委員長に山下春江君を指名いたします。
   〔拍手〕
 社会労働委員長に小柳勇君を指名いたします。
   〔拍手〕
 農林水産委員長に仲原善一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 商工委員長に豊田雅孝君を指名いたします。
   〔拍手〕
 運輸委員長に松平勇雄君を指名いたします。
   〔拍手〕
 逓信委員長に田中一君を指名いたします。
   〔拍手〕
 建設委員長に中村順造君を指名いたします。
   〔拍手〕
 予算委員長に平島敏夫君を指名いたします。
   〔拍手〕
 決算委員長に藤原道子君を指名いたします。
   〔拍手〕
 議院運営委員長に田中茂穂君を指名いたします。
   〔拍手〕
 懲罰委員長に岡田宗司君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#38
○議長(重宗雄三君) この際、お諮りいたします
 災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る特別委員会を、
 当面の石炭に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十五名から成る特別委員会を、
 科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る特別委員会を、
 産業公害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る特別委員会を、
 当面の物価等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名からなる特別委員会を、
 また、公職選挙法改正に関する調査のため、委員二十名からなる特別委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じます。
 御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#39
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、災害対策特別委員会、石炭対策特別委員会、科学技術振興対策特別委員会、産業公害対策特別委員会、物価等対策特別委員会及び公職選挙法改正に関する特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
   〔特別委員の氏名は末尾に掲載〕
 これにて休憩いたします。
   午前十一時三十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時四十四分開議
#40
○議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 首都圏整備委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、首都圏整備法第八条第三項の規定により、大來佐武郎君、大沢雄一君、友末洋治君、西畑正倫君を首都圏整備委員会委員に任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#42
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#43
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 中央社会保険医療協議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、社会保険審議会及び社会保険医療協議会法第十五条第五項の規定により、圓城寺次郎君、鈴木武雄君、東畑精一君、美濃部亮吉君を中央社会保険医療協議会委員に任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#45
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#46
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 労働保険審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、労働保険審査官及び労働保険審査会法第二十七条第一項の規定により、伊藤京逸君を労働保険審査会委員に任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#48
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#49
○議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、
 行政監理委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、行政監理委員会設置法第七条第一項の規定により、安西正夫君、江口俊男君、太田薫君、佐藤功君、橘善守君、寺尾一郎君を行政監理委員会委員に任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#51
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#52
○議長(重宗雄三君) 日程第五、国務大臣の演説に関する件。
 内閣総理大臣から所信に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。佐藤内閣総理大臣。
   〔国務大臣佐藤榮作君党壇、拍手〕
#53
○国務大臣(佐藤榮作君) このたびの参議院議員通常選挙によって、新たに選ばれた議員諸君を迎え、臨時国会が召集された機会に、所信の一端を表明いたします。
 今回の選挙において、政府並びに自由民主党の政策は、国民大多数の深い理解と根強い支持を得ることができました。(拍手)このことは、平和に徹し、自由を守り、人間尊重を政策の基本とする政治が国民諸君の共鳴と信頼を得たことにほかなりません。今回の選挙にあたって、私は、広く全国各地を訪問し、国民諸君の強い願望を直接はだに感ずることができました。それは清潔な責任政治の確立であり、経済不況の克服であり、アジアの平和の回復であります。私は、政府の行動をもってこの国民の願望にこたえてまいりたいと存じます。
 政治の要諦は、国民の信頼を得ることにあります。政治に携わる者が政治の使命と責任を自覚し、みずからの姿勢を正すことなくして、国政に対する国民の理解と協力を得ることはできません。国民の信をつなぐに足る清く正しい議会政治を行なうことこそ、国の発展の基盤であると信じます。近時、ややもすれば、物の偏重に傾いて心のほうが軽視され、安易で無責任な傾向があって、これがどれほど世を悪くしてきたかは、識者のひとしく痛感するところであります。これを正すためには、私をはじめ政治家の一人一人が、きびしい道義観をもって、国民の前にその使命と責任を果たしていかねばなりません。私は、国民諸君の負託にこたえ、清潔な責任ある政治を実行してまいる決意であります。(拍手)
 過去十四年の長きにわたって行なわれてきた日韓両国国交正常化のための交渉は、先般、最終的な妥結に達し、関係諸条約の調印を行ない、ここに両国の関係は、新たな段階を迎えることになりました。一衣帯水の近きにあるのみならず、歴史的、文化的に深いつながりにある両国の関係が、長期にわたり、不自然な状態のまま推移したことは、まことに不幸なことでありました。歴代の内閣は、この姿を一日も早く解消すべく鋭意努力しましたが、このたびようやくその努力が結実いたしました。いずれ関係諸条約を提出し、御審議を願う所存でありますが、世界の平和とすべての国々との友好を念願するわが国にとって、日韓国交正常化はいかに重要であるかを十分に理解せられ、正しい判断を下されることを希望いたします。今後、両国民がよき隣人となるためには、さらに一段の努力が必要であります。条約の調印はその第一歩にすぎません。政府は、国民各位とともに、深くこの点に思いをいたし、互恵平等の立場に立って、両国の善隣友好関係の確立をはかるため努力したいと存じます。
 わが国の平和と繁栄は、国情のいかんを問わず、アジア諸国のそれと密接に結びついております。アジアの繁栄なくして、わが国の繁栄はありません。アジアの情勢は、いまなお、きわめて流動的であり、この地域に政治的安定をもたらすことの必要性が、今日ほど痛感されるときはありません。そのためには、まず、アジア諸国が自ら平和に徹するという強い決意が必要であり、相互間の信頼関係の醸成が大切であります。ベトナムにおいては、いまなお、戦火が交えられております。私は、長年にわたって戦禍に苦しんでいるべトナム国民の窮状に対し、深甚なる同情を禁じ得ません。私は、ベトナム紛争が一日も早く解決されることを強く念願するものであります。この際、紛争当事者が無条件で話し合いに入ることによって問題の解決をはかることを強く要請いたします。私は、何よりもまず、当事者が話し合いによって紛争を解決する態度に踏み切ることが緊要であり、関係者がこの要請に対し、真剣に耳を傾けることを期待するものであります。どのような困難があろうとも必ず平和的に解決すべきであり、政府は、このため全面的な努力と協力を惜しまない決意であります。(拍手)
 私は、この機会に、平和について一言申し述べたいと存じます。私は、平和に徹するということを機会あるごとに国民諸君に訴えてまいりました。わが国の国是は、真の平和を基礎としております。外交はもちろん、内政、経済、すべてがこの平和を前提としているのであります。わが国の憲法は、この精神に基づいて制定されました。国際紛争に対しては、絶対に戦争に訴えないというこの崇高な考え方こそ、わが国づくりの大方針であります。(拍手)真の平和こそ世界人類の理想であり、わが国こそその輝かしい旗手であると確信いたします。
 アジア経済の停滞を克服し、開発を促進することは、アジアの安定と平和の達成のため、不可欠の要件であります。アジアの先進工業国たるわが国は、この地域の経済開発を支援する道義的責務をになっております。最近、アジア開発銀行設立の構想がアジア諸国の自発的意志に基づき漸次具体化されつつあり、また、メコン河流域の開発に対する国際的協力の必要性も強く要請されております。わが国としては、アジア諸国の開発意欲と地域協力の精神を尊重しつつ、わが国独自の立場から、資金面、技術面での協力を一そう拡大強化してゆきたいと考えます。なお、アジアにおける経済開発の問題は、先般開催された日米貿易経済委員会においても、主要な討議事項の一つとして取り上げられ、両国がそれぞれの立場において、積極的な協力を惜しまないことに意見の一致を見ました。
 私は、来たる八月の十九日から三日間沖繩を訪問する予定であります。私は、現地の事情をつぶざに視察し、去る一月行なったジョンソン大統領との会談の成果に基づく沖繩住民の民主の安定及び向上に資したい所存であります。
 今日の経済情勢は、輸出が著しい拡大を、示している反面、景気回復の足どりは予想外に緩慢で、経済の各分野に深刻な様相が続いております。このような情勢に対処し、景気の早期回復をはかるため、政府は、先般来、公共事業費等財政支出の繰り上げ、財政投融資の早期実施、輸出振興策の充実等、各般の施策を総合的に講じてまいりました。また、このたび、新しい需要を喚起するため、住宅、運輸、通信、輸出、上下水道等、財政投融資の対象事業を大幅に拡充する措置を講ずるとともに、特に中小企業に対しては、政府関係金融三機関の金利の引き下げを行なうことといたしました。これらの施策は、公定歩合の引き下げをはじめとする金融緩和の諸措置、及び、すでに見られつつある生産調整や経営合理化等の産業界の自お的な立ち上がりの努力と相まって、景気の順調な回復に大きく寄与するものと信ずるのであります。もとより、今後とも、情勢の推移に応じ、財政、金融、産業、貿易の各方一面にわたり、適切な措置を講じてまいる決意であります。私は、政府民間相協力してこの局面に当たるならば、わが国経済はやがて現在の不況を乗り越え、堅実な発展をたどるものと確信いたします。
 経済政策の目標は、限られた資源を最も効率的に活用し、経済各部門の均衡を保ちながら、経済社会の調和ある発展をはかることにあります。経済の成長を適度に保ちつつ、現在見られる不均衡を是正することによって、経済の質的改善を行ない、社会資本の充実、企業経営基盤の強化等を通じて、すぐれた体質を有する日本経済をつくり上げることこそ、わが国経済の長期にわたる発展への道であると信ずるものであります。政府は、この観点に立って、長期減税構想を策定するとともに、公債の発行を準備するなど、長期的な財政経済政策を推進する所存であります。
 消費者物価の安定は、国民生活における重要な問題であり、このため、政府は、消費者物価の安定を最も重要な政策の柱としてあらゆる努力を払ってきております。政府は、今後も引き続き、農業、中小企業の近代化に努力を重ね、その生産性を引き上げる一方、物資が出席者から消費者へ円滑に流通するよう努力いたします。さらに労働力が必要な産業や地域に容易に移り得るような態勢や、価格が不当につり上げられることのないよらな条件を整え、あわせて生鮮食料品などの日常化活に必要な物資の供給の確保につとめてまいります。公共料金については、経営の合理化を強力に進め、これを極力低位にとどめるよう措置いたします。
 人間尊重は、私の政治の信念であります。人間尊重の社会をつくり上げることは、私の一貫した政治の目標であり、就任以来、これを具体的な政策として裏づけすることにつとめてまいりました。近年、国民所得は増加し、生活水準は著しく向上いたしました。しかし、その反面、たとえば、僻地には、日々の弁当にもこと欠く学童があり、都市には、劣悪な居住条件のもと、公害に悩む住民が少なくありません。私は総理として、国民の福祉に責任を負うものであり、このような再実は断じて放置できません。人間尊重の精神に基づく社会開発の強力な推進こそ、これらの課題の解決への道を開くものであると確信いたします。
 社会開発の目標は、健康で文化的な生活を国民のすべてに及ぼし、人間性豊かな社会をつくり上げることであります。それは、日本民族のすぐれた潜在的エネルギーを引き出し、これを高度に発揚させ、国民みずからの生活の場、生産の場を、安定した快適なものにつくり直すことであります。社会開発のための施策は、経済開発と調和と均衡をとりつつ、総合的に樹立する必要がありますが、実行し得るものはすみやかにこれを実施に移すことといたします。特に、当面問題となるのは、住宅をふやし、生活環境施設を改善することをはじめまして、社会保障の拡充、人間資質の向上、特に、青少年の健全な育成、教育文化の振興、消費者保護の推進などの施策であります。政府は、これらの施策を総合的な考え方のもとに強力に実施してまいりますが、国民各位においても、みずからの幸福と繁栄のため積極的に協力されんことを望むものであります。
 戦後二十年の夏を迎え、私は、わが国の国力の充実と国際的地位の向上に深い感慨を覚えるとともに、祖国を今日の繁栄に導いた日本民族のすぐれた資質と能力に、あらためて強い自信と誇りを持つものであります。わが国の未来への飛躍と発展は、平和に徹し自由を守る気概に満ち、よき伝統の上に創造を、正しい秩序の上に進歩を達成することによって果たされると信じます。内外の難局に処して、国民諸君とともに、わが国の安定と繁栄を確保し、世界の平和と進歩のため貢献することを誓うものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#54
○議長(重宗雄三君) 椎名外務大臣。
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#55
○国務大臣(椎名悦三郎君) 最近の国際情勢を概観しつつ、わが国が当面している主要な外交問題について、所信を申し述べたいと存じます。
 今日、世界の情勢は、全体としては概して安定していると申せますが、この中にあって、ベトナム紛争をかかえるアジアのみが、遺憾ながらきわめて不安定な状態にあります。今日のアジアは、いわば東西両勢力の接点に当たっているばかりでなく、地域内には開発途上にある多数の国を擁しているので、東西関係といわゆる南北問題とが相錯綜して、きわめて複雑かつ流動的な様相を呈しております。
 世界の平和と繁栄の中にわが国の安全と繁栄を求めんとするわが国外交の第一歩は、アジアの平和と繁栄を追求することでなければなりません。アジアの緊張緩和と平和的建設のために、わが国の増大した国力と向上した国際的地位にふさわしい寄与を行なうことは、アジアに国をなすわれわれの使命であり、責任であります。
 ベトナムの紛争が今日のように深刻化したのは、東西対立を背景とする国際政治上の複雑な原因があり、また、南ベトナムにおける社会的事情にもよるところがあることは否定し得ませんが、直接的には、南ベトナムに対する北からの浸透とこれに伴う南ベトナム内での組織的破壊活動が行なわれていること、及び、一九五四年のジュネーブ協定が不完全であり、特に休戦保障制度が不備であったことが原因であると考えられます。
 今日、米国のとっている行動は、インドシナの再植民地化を企図するような意図にいずるものでないことは明らかであります。したがって、米国の軍事行動の現在の局面のみに目を奪われ、これのみを問題にすることは、公正な態度ではないというべきであります。
 問題の平和的解決をはかるには、関係者が話し合いによって紛争を解決する態度に踏み切ることが不可欠であり、しかも国際的約束を守るという保障を得ることが必要であります。これまで、何らの前提条件なしの交渉開始を求めた非同盟諸国の呼びかけも、また、米国による無条件討議の提案も、共産側の応ずるところとならず、さらに、話し合いの端緒をつかむことを目的とした英連邦使節団の派遣毛、同様、共産側の拒否にあっております。話し合いによる問題解決のためのこれらの試みがいずれも実を結ぶに至っていないことを、政府は深く遺憾とするものであります。関係者による話し合い開始を可能にする環境が早急に醸成され、ベトナムの平和回復への道が開かれることを望んでやみません。政府としても、そのためにできるだけの努力をいたす覚悟であります。共産側も、ただいま佐藤総理大臣が所信表明演説の中で行われた呼びかけに対し、虚心たんかいに耳を傾けることを希望せざるを得ません。
 このように不安なアジアの中にあって 今回日韓間の国交正常化を望む両国民多数の希望が結実して、十数年の長きにわたった日韓交渉がついに妥結するに至ったことは、まことに喜ばしい次第であります。(拍手)地理的に最も近接し、歴史的、文化的にもきわめて密接な関係にある日韓両国が国交を正常化することはまことに当然のことでありますが、両国の歴史的関係にかんがみ、今般の調印は実に画期的な意義を有するものと確信する次第であります。
 過去の日韓関係には遺憾ながら不幸な時代があり、この時代について韓国民が心に深い傷あとを持っていますことは、日韓間の新しい関係を展開していくにあたってわれわれが銘記しておかなければならないことであります。われわれといたしましては、今般調印された諸条約が相互に尊重、順守され、これを基盤として、韓国民と誠意をもって協力し、その繁栄のために応分の寄与をすることによって、このような韓国民の心の傷あとが次第にいやされていくことを祈念し、また、かかる目標に向かって、真摯な、かつ、たゆみなき努力を積み重ねていくよう心がけなければなりません。
 わが国のアジア外交推進にあたって重要なことは、アジア諸国の経済開発に対し、わが国が積極的に協力しなければならないということであります。アジアに安定した平和と繁栄をもたらすためには、まずアジア諸国自身が国内の政治的反目や思想上の対立闘争を踏み越えて、貧困、疾病、文盲等を追放し、国民の福祉の向上につとめるというかたい決意をもって、真剣に経済開発に取り組むことが必要であります。さらに、このようだ各国の開発努力は、各国が相互に協力し補完し合う方向で行なわれて、初めて総体的な開発の効果が高められるのであります。
 この意味において、わが国としては、経済開発に責任を有する、東南アジア諸国の閣僚が一堂に会し、将来の経済的建設のため、それぞれの政治的立場や社会的思想を離れて腹蔵のない意見を交換する場ができれば、この地域諸国の連帯関係を強化し、先進諸国の善意の協力のもとに経済開発の着実な促進をはかる上に大きく貢献し得るものと考えております。関係諸国の賛同が得られるならば、かかる会議を適当な時期に東京において開催いたしたいと考えております。
 わが国としては、国内に農業、中小企業等の問題をかかえ、また、社会開発のために多額の資本投下を必要としているので、援助の強化拡大を一挙にはかることは困難でありますが、政府としては、国連貿易開発会議や経済協力開発機構の開発援助委員会等における援助強化の国際的要請をも十分勘案いたし、国民所得の一%を援助目標としつつ、国力の許す限り、アジアを中心とした開発途上にある諸国に対する資金協力及び技術協力の一そうの拡充をはかり、南北問題の解決のために建設的な役割を果たしたい考えであります。
 先般六月末よりアルジェリアにおいて開催を予定されていた第二回アジア・アフリカ会議は、会議開催直前に現地において政変が勃発したこともありまして、結局本年秋まで延期されることとなりました。私は、来たるべき会議は、アジア・アフリカの大多数の諸国の参加を得て、名実ともにアジア・アフリカ会議たるにふさわしい穏健かつ建設的な会議にならなければならないと思っております。
 以上、私は、今後ますます積極化すべきアジア外交を中心に申し述べましたが、アジア以外におきましても、増大した国力と向上した国際的地位にふさわしい強力な外交を推進してまいる覚悟でございます。
 わが国外交の基調の一つは、国際連合の強化でありますが、今日ほど国連の強化が必要とされるときはないのであります。これが実現は、一に、国連憲章の目的と原則を順守せんとする加盟国の熱意いかんにかかっておると思います。わが国は、あくまでも国連をもり立て、これが有力なる世界平和機構となるようあらゆる努力を惜しまない所存であります。わが国が今秋の国連総会における安保理事会理事国選挙に立候補いたしましたのは、わが国のかかる積極的熱意のあらわれでございます。
 ILO結社の自由及び団結権保護条約、いわゆる第八十七号条約につきましては、政府は、去る六月十四日批准書の寄託を完了し、多年の懸案を解決いたしましたが、今後とも、ILOの諸活動に対しましては、わが国の実情を考慮しつつ、できる限り協力してまいる所存であります。
 戦後一貫してわが国経済外交の重要な柱の一つであった「先進国としての国際的地位の確立」、これは昨年四月のIMF八条国への移行、OECDへの正式加盟により、名実ともに実現いたし、わが国は世界における有数の先進工業国として、低開発国問題等、世界経済が直面している諸問題に関し、一そう重い責務をになうことになったのであります。特に、わが国は、先進工業国の中で、低開発国に対する貿易依存度の最も高い国でありますが、これら諸国は、わが国に片貿易の是正を強く要求する一方、最近わが国に対し輸入制限を強化する動きを顕著に示しております。わが国としては、今後とも、低開発国問題に関する種々の国際会議に積極的に参加し、低開発国貿易の拡大のための国際的協調を行なうとともに、二国間におきましても、問題解決のため種々対策を講じてゆく所存であります。
 ひるがえって、先進国との経済関係を見ますに、わが国は自由無差別の原則に基づく世界経済の発展をはからんとするケネディ・ラウンドの意義を高く評価しつつ、これに積極的に参加貢献しております。わが国としては、今後とも、二国間定期協議、ガット、OECD等の多数国間会議の場を積極的に活用し、対日差別の撤廃など、わが国輸出環境の改善をはかりつつ、国際協調の中にわが国経済の繁栄を求める所存であります。
 共産圏諸国との貿易につきましては、もとよりわが国は自由陣営の一員としての責任を十分認識し、共産圏貿易は、自由諸国との協調をくずさない範囲において、わが国の資金力や国際情勢等を十分勘案しつつ拡大してゆく所存であります。中共貿易につきましても、この点、例外ではございません。
 わが国の国力が増大し、国際的地位が向上するに伴い、アジアの安定、ひいては世界の、平和に貢献するためのわが国の役割りに対する期待はますます強まっております。私は、国民各位が政府の外交方針及び施策に対し、十分の理解と協力を示されるよう切に期待するものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#56
○議長(重宗雄三君) 福田大蔵大臣。
   〔国務大臣稲田赳夫君登壇、拍手〕
#57
○国務大臣(福田赳夫君) ここに昭和四十年度の補正予算の御審議をお願いするにあたりまして、その大綱を御説明申し上げますとともに、わが南現下の経済情勢並びに今後の財政金融政策について、所信の一端を申し述べたいと存ずるのであります。
 まず、今回提出いたしました補正予算について、その概要を御説明申し上げます。
 昭和四十年度一般会計補正予算(第一号)は、歳入歳出とも約二百十五億円であります。昨年秋、東京で開催されました国際通貨基金第十九回総会において採択された決議に基づき、今春、国際通貨基金の増資が決定され、あわせて国際復興開発銀行も増資する運びになったのであります。わが国といたしましては、最近における世界貿易の発展に伴う国際流動性増強の必要性と、世界経済におけるわが国の地位の向上にもかえりみまして、これに積極的に協力することとして、これら両機関に対する追加出資に要する経費を計上いたした次第であります。これが財源につきましては、本件の特殊な性格にかんがみまして、日本銀行特別納付金及び外国為替資金からの受け入れ金をもってこれに充てることといたしております。
 何とぞ、本補正予算並びに関係法律案につきまして、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
 最近におけるわが国経済の状況を見ますと、輸出は引き続き堅実な伸びを示しておりますが、国内の経済活動は、ここ数カ月の間、おおむね停滞的であります。特に、産業界におきましては、収益の低下、企業の倒産、株価の低迷など、種々の困難が見られ、経済の沈滞感は容易に払拭し切れない状況にあります。このような状態をもたらしましたおもな原因は、数年来の急テンポの設備投資などによる経済の量的拡大の反面、資本構成が悪化し、収益率が低下するなど、質的内容の充実がこれに伴わなかったところにあると思うのであります。したがいまして、不振の現状を打開するには、安易な気持ちでこれに臨むわけにはまいらないのであります。今日の事態のよって来たるところを十分認識し、需給バランスの改善、企業体百の強化など、正しい方向に即し、着実かつ真剣な努力を傾注しなければならないと思うのであります。
 幸い、今日、過去に対する反省から、経済界にも慎重かつ合理的な経営態度を確立しようとする気運が高まりつつあるように見受けられるのであります。現に、一部には、生産や設備の調整など、自主的な立ち上がりの努力も進められており、すでにその成果を見ておるものもあるのであります。こうした自主的な立ち上がりの意識や努力が、ひとり不況下においてだけでなく、一般的な心がまえとして、今後の経済界の正しい秩序を打ち立てていくことにつながるものでありますならば、まことに心強く存ずるのでありまして、政府といたしましても、諸般の施策を通じて、これを助長してまいりたい所存であります。
 六月以来、政府は、経済界が立ち上がりの意欲を持って不況と沈滞の意識から脱却し、一日も早く経済が正常な軌道に乗ることができすまよう、金融・財政各般の施策を推し進めてまいりました。
 まず、金融面におきましては、六月末、公定歩合の再引き下げに踏み切ったのでありますが、このたび、特に中小企業の金利負担の軽減に資するため、政府関係中小金融三機関の金利の引き下げを行なうことといたしております。これらの措置は、日本銀行の窓口規制の廃止、預金準備率の引き下げなどの量的規制の緩和と相まちまして、企業の収益性に明るい期待を与えるものと考えます。政府といたしましては、今後とも、資金の需給関係を緩和気味に保ちながら、市中貸し出し金利の一そうの引き下げにつとめてまいりたい所存であります。
 さらに、財政面では、さきに公共事業費及び財政投融資の繰り上げ支出を決定いたしました。この措置は、目下萎縮気味の需要に、はずみをつけることを目的としたものでありますが、このたびは、これに加えて、二千億円をこえる住宅、運輸、通信、輸出、上下水道等の財政投融資対象機関の事業の拡充を決定いたしました。これは、当面緊急度が高く、かつ、関連事業に与える効果の特に大きい事業を選んだものでありまして、面接の政府需要のみならず、関連する民間部門の需要にも刺激を与え、ひいては国内需要全体にまで、その拡大効果の及ぶことが期待されるものであります。
 なお、輸出の振興と対外経済協力の推進は、長期的に、わが国経済にとってきわめて重要な課題でありますが、特に当面、輸出の好調が経済活動をささえる重要な柱となっていることに顧みまして、この際、延べ払い輸出や経済協力の促進等の諸施策を、積極的に推し進めてまいる考えであります。
 私は、日本国民のすぐれた能力と勤勉さ、近代化された設備と高度の技術水準等に顧みますときに、わが国経済の本来持っている活力は、他の先進諸国に比べ、はるかに若々しく、かつ力強いものであると考えるのであります。今日われわれの当面している諸困難も、この活力に加えて、克服しようとする意志と努力さえ十分でありますならば、やがてこれを打開し得て、行く手には、繁栄への大道がたんたんと開かれるであろうことを信じて疑わないのであります。
 このたび、私は、日米貿易経済合同委員会に出席し、日米間の懸案について、米国朝野の指導的人物と胸襟を開いて話し合ったのでありますが、米国側は、一様に最近の日本経済の動向に深い関心を示してはいるものの、いずれも、わが国の生産設備が著しく近代化され、また輸出が堅調を続けている事実等から、今回の不況も、過去何回かにわたって示された日本国民の英知によって必ずや克服されるであろうと、深い信頼の念を表明していたのであります。私は、今回の訪米によって、一そう日本経済の将来に対する自信と決意を深めた次第であります。
 政府は、当面の景気対策のみならず、国民が前途に明るい希望と自信を持って経済活動を行ない得るよう、その指針となるべき長期的な財政経済政策について、目下鋭意検討を進めております。
 申すまでもなく、今後の日本経済の課題は、均衡のとれた経済の拡大を通じて、国民福祉の高い水準を実現していくことにあると思うのであります。すなわち、国際収支の均衡と物価の安定を確保することはもちろんでありますが、経済各部門の近代化、合理化を促進する一方、経済発展と調和のとれた社会開発を実現することであります。ゆとりのある家庭と蓄積のある企業を柱といたしまして、その上に豊かな福祉社会を築き上げることが、政治の究極の目標であると申さねばなりません。私は、この政治目標に奉仕することこそが、財政金融政策の任務であるとかたく信ずるものであります。
 国の財政の運営にあたりましては、国の費用は一銭一厘といえども、これをむなしくしてはならないと存ずるのであります。冗費を節し、限られた資金を最も効率的かつ重点的に使用するということが私の信条であります。しかしながら、明るい豊かな社会を建設するためには、社会資本の充実、生活環境の整備、あるいは文教、社会保障、農村、漁村、中小企業への諸施策等、財政の果たすべき役割は、ますます重要になるものと思うのであります。これがため増大する財政需要を積極的に充足してまいることも、また私の重要な任務であります。
 このように、増大する財政需要の財源をいずこに求めることとすべきであるか。財政の健全性を保持し、通貨価値の安定を確保することは、もとより財政運営のかなめであり、私は、この根本原則をいささかも、ゆるがせにしてはならないと、かたい決意を持つものであります。しかしながら、これまでのように、国家財政の財源のほとんど全部を租税に求めることが、はたして今日適切であるかどうか、再検討の時期に来ていると考えるのであります。
 わが国の税負担は、国民所得との対比におきまして、あるいは税率の点におきまして、先進諸国に比べ必ずしも高いようには見えませんが、所得が低くかつ蓄積の乏しいわが国の場合、個人にとりましても、また企業にとりましても、その負担は相当な重荷となっているものと考えるのであります。画期的な大減税こそ、第一に取り上げるべき緊要な課題であると考えるのであります。この意味において、私は、目下、個人と企業の負担を軽減するため、数年間を通ずる計画的かつ大幅な減税の構想を練っているのであります。
 画期的な減税を行ならためには、まず、何よりも物価の安定を実現しなければならないと思います。物価の安定が確保されるならば、国民には旺盛な貯蓄心が再建されます。私は、そこに生まれた蓄積を政府の施策に適切に活用すべきものと考えるのであります。この活用、すなわち健全な公債政策の導入は、国の財政に、大幅な減税を行なら余裕を与えるものであります。減税が行なわれますならば、企業にも家庭にも余力が生じ、貯蓄はさらに進みます。貯蓄が進めば、さらに減税を行ない得ることとなります。かくして、家庭はゆとりを取り戻し、企業は蓄積を持ち、底の浅い日本経済は、逐次質的に改善強化されてまいると確信をいたします。
 このような観点から、政府としては、当面、経済の不況克服に全力を尽くすことはもちろん、物価問題についても今後真剣に取り組む決意であります。
 次に、金融の問題について申し述べます。
 今後の安定的な成長路線において、金融に期待されることは、さきに申し述べました新しい財政の進め方に即応し、これと一そう有機的な関係を保ちながら、十分にその機能を発揮することであります。このためには、金融政策が有効かつ適切に作用する環境と条件を整えていくことが重要であると考えるのであります。
 政府といたしましても、このような観点から、わが国経済全体の姿を考えながら、金融環境の改善に一段と努力してまいる所存でありまして、今後、貯蓄の増強はもとより、笠利機能の活用、長期短期金融市場の整備、特に公社債市場の育成等の諸施策を、総合的かつ現実的に進めてまりたい所存であります。また、わが国経済の諸分野において重要な役割りを果たしている中小企業及び農林漁業の経営基盤を強化し、近代化を進めていくため、その金融の円滑化に今後一そう配慮を加えてまいる所存であります。
 次に、企業の長期資金調達の場である資本市場の育成もまた懸案の問題であります。最近の資本市場は、遺憾ながら、その機能を十分果たしているとはいいがたい状況にあります。株式市場の改善につきましては、昨年来、民間各界の協力のもとに、各般の施策が講じられてまいったのでありますが、政府としても、今後、資本市場の環境整備のため、証券業界の自主的な体質改善の指導促進を含め、各般の施策を積極的に推進していく所存であります。
 なお、先般来、政府は、証券市場の混乱を未然に防止し、信用制度を保持する必要から、日本銀行と協議の上、諸般の措置を講じてまいりましたが、今後とも必要に応じ、万全の措置をとっていく決意であります。
 次に、国際経済政策について申し述べます。
 まず、国際収支につきましては、経済収支の黒字を中心に好調な推移を示しておりますが、最近の国際金融市場の逼迫、既存債務の返済の増加などの要因を考えますときには、資本取引について安易な見通しを持つことは困難となりつつあります。したがいまして、今後は、引き続き健全な長期安定外資の導入を促進する一方、輸出の一そうの増進をはかり、経常収支の黒字を中心とした国際収支の均衡確保につとめることが必要であると考えるのであります。
 わが国の輸出を伸ばすためには、世界貿易が着実に拡大し、世界経済が繁栄を続けていくことが何よりも重要であります。とのような見地から、政府といたしましては、今後とも、国際流動性の強化や国際通貨の安定性の確保について、関係各国と緊密に協力してまいる所存であります。また、ガットにおける関税一括引き下げ交渉につきましても、国内産業に対する影響に十分配慮しつつ、積極的にこれに参加してまいる所存でございます。
 さらに、開発途上にある国々に対しましても、その経済の発展なくしては世界の真の繁栄はあり得ないという認識のもとに、貿易と経済協力の両面を通じて、国力の許す範囲内で、できる限り協力の手を差し伸べたい所存でございます。特に、わが国とは地理的にも経済的にも最も密接な関係にあるアジア諸国に重点を置き、現在その設立の準備が進められておりますアジア開発銀行にも、積極的に参加してまいる所存でございます。
 世界の中の日本、特にアジアの中の日本という心がまえこそが、国際経済社会に臨むわが国の基本的方針でなければならないと存ずるのであります。
 以上、わが国経済の現状と今後の財政金融政策について、私の所信の一端を申し述べた次第であります。
 われわれはいま、二つの問題に直面しておるのであります。第一は、今日の不況を一日も早く乗り切ることであります。第二は、これまで築き上げてきた経済発展の成果を基礎として、さらに、つり合いのとれた福祉社会建設への歩みを進めることであります。もちろん、これら二つの課題は、切り離すことのできない問題でありますが、今日の不況を正しい方向に沿って克服してこそ、今後の繁栄への道も開かれてくるものと信ずるのであります。
 この意味におきまして、政府は、当面不況打開のために全力を尽くします。国民諸君が勇気と自信をもって協力せられんことを期待してやまないのであります。(拍手)
#58
○議長(重宗雄三君) ただいまの演説に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#59
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#60
○議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。館哲二君から病気のため会期中請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#61
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
  午後四時四十三分散会
     ―――――・―――――
昭和四十年七月三十日(金曜日)
   〇開 会 式
 午後零時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長及び議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午後一時 天皇陛下は衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午後一時一分 衆議院議長船田中君は式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  天皇陛下の御臨席をいただき、第四十九回国 会の開会式をあげるにあたり、衆議院及び参議 院を代表して、式辞を申し述べます。
  去る七月四日参議院議員の通常選挙が行なわれ、七月二十一日をもって臨時国会が召集され たのでありますが、われわれは、新たなる構成のもとに、当面する諸問題に対処して、適切な施策を講じなければなりません。
  ここに開会式を行なうにあたり、われわれに負荷された使命達成のために最善をつくし、も つて国民の委託にこたえようとするものであります。
 次いで、天皇陛下から次のおことばを賜わった。
   おことば
  本日、第四十九回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの喜びとするところであります。
  国会が、参議院議員通常選挙による新議員を迎え、内外の諸情勢に対処して、わが国の国際的地位の向上を期し、経済の発展と民生の安定とを図るため、当面する諸問題の審議に努めることは、わたくしの深く多とするところであります。
  ここに、国会が、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
   〔一同敬礼〕
 衆議院議長はおことば書をお受けした。
 天皇陛下は参議院議長の前行で式場を出られた。
 次いで一同は式場を出た。
   午後一時六分式終わる
ソース: 国立国会図書館
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