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#1
第049回国会 本会議 第3号
昭和四十年八月二日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和四十年八月二日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後二時七分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。佐々木更三君。
  〔佐々木更三君登壇〕
#4
○佐々木更三君 私は、日本社会党を代表して、ただいまより総理の所信表明に対して、若干の基本的問題に関する質疑をいたしたいと思います。(拍手)
 日本国民は、今日の重大なる内外情勢の中で、日本の進むべき道をいかなる方向に求むべきか、ここに真剣なる関心を寄せておるのであります。したがって、私の質問に対する総理の答弁も、口先だけの言いのがれでなく、特に、佐々木君のことばはわかりにくかったなどということのないように、誠意ある答弁をされるよう、強く要望しておくものであります。(拍手)
 まず冒頭にお尋ねしたいことは、総理は、国民の審判を政治の上にいかに反映されるかという問題であります。
 過般行なわれた参議院選挙は、総理が佐藤色を明らかにするために内閣改造が行なわれてから、初めての全国選挙でありました。また、東京都議会選挙は、汚職、腐敗に端を発した、自民党都政に対する東京都民の信を問うための特別の選挙であったのであります。この二つの選挙はともに事実上佐藤内閣への国民の審判を求めた選挙であったといわなければなりません。その結果は、参議院選挙ではわが党及び革新勢力が大きく前進したが、自民党は金力と国の行政機関を総動員しながら、しかも得票も議席もともに後退いたしました。ことに東京地方区においては、自民党公認候補は二人とも落選の大惨敗をしたのであります。続く東京都議会選挙では、いままで絶対多数を誇っていた自民党の議席は三分の一以下に激減しました。それに対しわが社会党は十三議席を増して第一党となり、その他各党ともそれぞれ多数の当選者を出しました。つまり、厳粛なる都民の批判の前に、総理の率いる自民党は大惨敗をしたのであります。(拍手)
 総理は、先日の所信表明において、国民の支持は自民党に集まったといたけだかになって強弁されたが、以上の選挙の結果は、衆目の一致するところ佐藤内閣に対する国民の明らかなる不信任の意思表明であります。(拍手)もし、総理にして政治家としての一片の良心があるならば、この国民の不信任の審判に従い、出処進退を明らかにされるのが当然であろうと思います。(拍手)
 さらにまた、総理が常に口にする政治の姿勢を正すという公約について、責任ある答弁をお願いいたします。すなわち、去る参院選において自民党の大多数の候補が、それぞれ命力と権力をほしいままにして選挙を行なったことは、天下周知の事実であります。(拍手)中でも全国区から当選した者の中には、その買収と利益誘導の規模があまりにも大きく、また、国家や公共機関たる公社や農協を傍若無人に利用したことなど、政治道義上特に許しがたいものがあるのであります。(拍手)世論もまたこの無軌道な選挙違反に対して激しい憤激を示しております。かつて東京地方区で当選した鮎川金次郎君がその大規模な買収選挙違反に対するきびしい世論の批判に従いみずから当選を辞退された前例があります。ところが、今回これらの人々は離党し、自民党も承認して世論をごまかそうとしているが、これは明らかに擬装離党であって、むしろ悪質の度合いをますます深めたものといわなければなりません。(拍手)この際、総理は自民党総裁として政治道義確立のための責任ある措置を講ぜらるべきであります。総理が公言した政治の姿勢を正すということの実行を強くここに要求するものであります。総理の所見はいかがでございましょうか。
 また、総理は有言実行を看板としておられます。ところが、いままでの総理の施策は、物価を押えると言いながら公共料金を平気で引き上げ、三千億の大幅減税を約束しながら、これをわずか八百億の小幅減税に縮め、対中国政策は前向き姿勢と言いながら、いわゆる吉田書簡なるものに縛られて後退し、すべてこれことばと行動が著しく相反しておるのであります。(拍手)これでは有言実行にあらずして、多言不実行と看板を塗りかえるべきであります。私は、ことばと行動が一致することこそ責任政治の第一の要諦であることを特に強調いたしまして、総理が従来の公約をいかに実行されるかを具体的に本院と国民に明らかにされたいのであります。(拍手)
 次に、私は内政の問題についてお尋ねいたします。
 今日の経済危機は自民党政府の高度成長政策によって大資本優先の無計画かつ放漫な設備投資が進められ、その結果資本主義本来の過剰生産の矛盾が深まり、それがいまや信用恐慌の形をとって爆発しようとしているものであります。その恐慌の爆発をインフレ政策によってかろうじて食いとめておるのが現状であります。したがって、現在の経済危機は、かりに信用恐慌の爆発を食いとめ得たといたしましても、かなり長期のなべ底型の停滞となって尾を引くでありましょう。そうして国民は一方では経済不況の長期停滞に苦しめられ、他方ではインフレ、高物価に苦しまなければなりません。こうした経済危機を招いた責任は自民党政府にあります。池田内閣から佐藤内閣に交代したからといって、この責任は断じて免れることはできないのであります。(拍手)
 ところが佐藤内閣は、この責任を全く痛感しないばかりか、この経済危機の本質そのものの認識がきわめて不十分であります。去る二十七日発表された経済政策では、これまでの誤った成長政策の反省もなく、将来の経済の見通しや計画を明らかにせず、インフレと物価上昇に歯どめのない景気刺激策は、国民生活の負担を一そう拡大させるものであります。特に、物価に対する何らの対策のないことはまことに遺憾であります。
 さらにまた、政府の財政措置は、たとえば本年度の財政支出を一割削減すると言ったかと思えば、繰り上げると言ってみたり、公債を出さぬと言ったかと思えば、今度は出すと言い、まさに無定見な動揺と不統一を暴露しておるのであります。(拍手)また、佐藤内閣は、口では高度成長を安定成長に改めると言っておりますが、一体安定成長のめどがどこにあるのか、少しも具体的に示されておりません。まことにたよりない無責任そのものであります。
 しかも、政府、日銀の行なった公定歩合の引き下げなどは、単なる大企業の救済策にすぎません。昨年から今年にかけて、すでに株価の維持と証券業界の救済のために四千億の日銀融資を行ない、さらにそれに加えて放漫経営と投機に失敗した山一証券に対しては、日銀が無担保、無制限、無期限の救済融資を行なったことは、佐藤政府の資本家性を遺憾なく暴露したものであります。もしも山一証券の立ち直りができず、日銀の二百数十億にのぼる貸し付け金の償還が確保されなくなった場合、国会の議決を得ない日銀の損失を、一体だれがどのように補償するのでありますか。このような救済融資を行ないながら、反対に、まじめに働いて百万か二百万の金繰りがつかずに倒産しておる無数の中小企業者を見殺しにしておるのであります。ここにこそ、佐藤内閣の独占資本的本質が最も典型的に示されております。(拍手)この本質を指摘しながら、私は佐藤総理に次の点をお尋ねいたしたいのであります。
 まず第一に、総理は、さきの国会で、昭和四十三年までは公債を出さぬと確約されましたが、一体、明四十一年度に公債を発行されるのかどうか。また、政府が公債を発行しようとするのは、財政支出の膨張に対して税収が伴わないという財政危機に原因があります。しかし、こうした財政危機に対しては、たとえば旧地主への農地報償や防衛費などの不要経費を大幅に削り、他方、大企業や高額所得者への租税特別措置法を廃止して、十分に税収を確保するなど、とるべき措置は幾らでもあるにもかかわらず、それらの措置を怠りながら、公債発行へ安易にたよることは、きわめて不見識であり、しかも、その結果は全国民におそるべきインフレの被害を与えることは必至であります。この点を総理はいかに考えられるか、その所信を承りたいのであります。(拍手)
 第二には、物価の問題であります。総理は、物価問題は短期決戦では片づかないので、長い目で見てもらいたいと言いながら、次々と公共料金の引き上げを行なっております。これこそ国民を欺くものであります。公共料金をどうするかは、物価に対する政府の姿勢を示すものであります。すなわち、現在問題となっておる国鉄運賃、消費者米価及び健康保険料引き上げなど、これらの国民生活を脅かす公共料金の引き上げは断じて行なわないと明確にお約束いただきたいのであります。(拍手)
 第三は、現在の経済危機の根本が、過剰設備と過剰生産であり、生産と需要のアンバランスである以上は、この経済危機を打開するには、大胆に有効需要を拡大する政策をとらなければなりません。それは、国内においては、圧倒的多数の勤労国民の所得と生活水準を高めることであります。これにより国内有効需要を下から拡大することがまず必要であります。このためにいかなる政策をとられるのか、総理の基本的かつ具体的構想をお尋ねをいたす次第であります。(拍手)
 次に、需要拡大の重要な政策は、日中を中心とする東西貿易の拡大であります。現在、中国は、着々として経済建設を進め、その市場は日本の製品を待ち受けております。ことに建設途上の中国は、各種の大規模なプラント類を要望しておるのであります。ところが、昨年来、吉田書簡なるものに拘束され、いわゆるLT貿易は崩壊の危機に瀕し、わが国から中国へ輸出するはずであったプラント類の契約が、次々と西欧諸国に奪われております。率直に申して、かかる佐藤内閣の態度こそ、日本の利益を害しておるといっても過言ではありません。(拍手)
 そこで、私は総理に要求いたします。政府は直ちに吉田書簡を破棄して、日中間の政治的障害を取り除き、日中貿易を急速に発展させると同時に、AA諸国の信用を回復し、貿易を飛躍的に拡大することによって、わが国の経済不況を一挙に吹き払うべきであります。はたして総理が日中問題を行動において前向きに打開されるお考えがあるかどうか、その具体的な所信を明確に開陳されることを要求いたす次第であります。(拍手)
 次にお尋ねしたいのは、わが国の外交路線の問題であります。この問題は、端的に申して、日本民族の生死にかかわる問題であります。
 現在、アジアと日本の平和を脅かしているものは、ベトナム戦争の拡大であります。すなわち、ベトナムの独立の承認とフランスの撤退は、一九五四年のジューネーブ協定で国際的に取りきめられたのであります。ところが、ジュネーブ協定成立の直後から、フランスにかわってアメリカが南ベトナムに軍事的に介入し、ベトナム民衆がみずからベトナム問題を解決することを妨害してきたのであります。アメリカのやり方は、ベトナムの民族自決の権利を毒ガスやナパーム弾で弾圧するものであり、最も野蛮なる侵略行動であります。(拍手)したがって、かつてベトナムを植民地として支配していたフランスでさえも、現在は公然とアメリカの行動を批判しているのであります。アメリカは、大量の陸海空軍をつぎ込みながら、南ベトナム民族解放戦線に打ち負かされて、窮鼠ネコをかむような自暴自棄の状態で北ベトナムへの爆撃を継続し、最近では、中国をことさらに挑発し、いよいよ戦火は中国にまで拡大される様相を呈してまいりました。もしもアメリカが中国を攻撃した場合、そこに起こる戦争の規模がどの程度まで拡大されるか、そして世界全人類にどれほどの被害を与えるか、われわれの予測を許さぬものがありましょう。
 しかも、心配されることは、アメリカに基地を提供しておる日本は、必ず戦争に巻き込まれることになります。もしアメリカが中国に対して核兵器を使えば、中国とその同盟軍もまた核兵器を使うでありましょう。その際の被害者は、アメリカではなく日本国民であります。かくて、日本民族の滅亡かいなかの運命は、アメリカがアジアの戦争をこれ以上拡大させるかどうかにかかっておるのであります。
 しかるに佐藤内閣は、アメリカの北ベトナム爆撃を当然であるとしてこれを支持し、アメリカ軍が日本の基地から出動しているのを承認しておることであります。最近政府は、ベトナムの平和解決のために役割りを果たすと称しておりますが、アメリカの北爆は当然だとする日本政府の平和解決策を、一体だれが信用いたしましょう。(拍手)もし政府が真に平和解決の道を求めようとするならば、まずアメリカに対する追随をやめ、日本の自主性を確保して次のことをなすべきであります。すなわち、佐藤内閣は、アメリカに対し、ジュネーブ協定に基づいてベトナムに対する一切の軍事行動をやめさせ、南ベトナムから米軍を撤退させ、ベトナム問題の解決をベトナム民族みずからにまかせるように勧告すべきであります。(拍手)また、アメリカ軍が日本の基地をベトナム侵略戦争に使うことを断じて拒絶すべきであります。(拍手)また、かつてマッカーサー元帥が鴨緑江を越えて中国を攻撃しようとしたとき、イギリスのアトリー首相がアメリカへ飛んで、マッカーサーを罷免させ、アメリカの中国攻撃をやめさせた前例があるが、総理にその勇気と国を思う情熱の持ち合わせがありますか、総理の決意をお伺いする次第であります。(拍手)
 次に、ベトナム戦争によって、われわれ日本民族全体が戦争の危険に脅かされておる中で、特に沖繩の同胞は、アメリカの原水爆基地として現実に戦争の脅威のもとに暮らしております。佐藤総理は近く沖繩を訪問されるが、一体いかなる具体策を持って臨まれるのか、その決意のほどを承りたいのであります。(拍手)
 アメリカの沖繩占領はサンフランシスコ平和条約第三条に基づいており、しかも、この第三条は、日本が国際連合に加盟した今日では、すでに国連憲章第七十八条との関連で全く不法、不当なものとなっておるのであります。(拍手)したがって、いまやアメリカは、沖繩に対する施政権を行使する何らの根拠も有しないのであります。総理は、沖繩訪問を前にして、かねて国会の決議どおり、アメリカに対して沖繩の即時返還と基地撤去を公然と要求される意思があるかどうか。(拍手)
 特に、先般沖繩にある米軍機B52がベトナムに渡洋爆撃をしたが、沖繩は言うまでもなく日本領土の一部であります。したがって、相手方から、沖繩県はもとより、主権国であるわが本土攻撃をもされる口実を与えたことは、重大な危険であるが、総理はいかにこれに対処する考えであるか。(拍手)また、本年秋の国連総会で、沖繩の即時返還を議題として国際世論に訴える考えがあるかどうか、ここに総理の見解を明白にしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、日韓条約の問題についてであります。
 さきの参議院選挙に国民の目が注がれておるすきに乗じて、佐藤内閣は、国民を無視して日韓条約を調印いたしました。いわゆる日韓会談には、請求権問題、漁業権問題、竹島問題など、多くの複雑な問題が含まれておりますが、その本質は、端的に申しまして、アメリカの極東戦略と切り離すことができません。すなわち、日韓会談の開始されたのは、アメリカが朝鮮戦争を遂行しておるさなかでありました。そしていま、アメリカがベトナム戦争を中国にまで拡大しようとしつつあるときに、日韓会談を妥結調印し、批准しようとすることは、不当かつ危険のきわみであります。しかも、現在、韓国の国会では、条約批准と、韓国軍隊の南ベトナム派遣案件が上程されております。これこそ、日韓会談妥結が事実上の日、韓、台の東北アジア軍事同盟結成を意味することを雄弁に証明いたしております。(拍手)したがって、日本国民が韓国へ支払う八億ドルは、実質においては、韓国軍隊の南ベトナム派遣費をまかなう結果になることは明らかではありませんか。(拍手)
 しかもまた、現在朝鮮民族は北緯三十八度線で南北に分断されております。この分断は、朝鮮民族の責任にあらずして、世界の大国のわがままであり、そして、分断されておる事実そのものがまた日本の平和の脅威となっておるのであります。(拍手)現在、圧倒的多数の朝鮮民族が南北統一を希望いたしております。してみれば、われわれは、できるだけ朝鮮民族統一の障害を取り除き、南北の当事者が話し合って自主的に統一できるように促進協力すべきが当然であり、それがいわゆる隣人のよしみというものであります。しかるに、このたびの日韓条約は、朴政権だけを全朝鮮の代表政府と認めて、北朝鮮と対立させるように、経済、軍事のてこ入れを与えて、けんかをけしかけるにひとしいものであります。これでは朝鮮民族の分裂を固定化し、統一の悲願を踏みにじることになります。
 さらに私は、総理の明快なる見解を聞きたいのは、日韓条約の北朝鮮政府に対する権威と効力の問題についてであります。さきにも指摘したとおり、日韓条約は三十八度線における南北朝鮮分割国家の固定化であります。かつて、池田前総理は、北朝鮮政府の独立せる権威を認めました。総理もまた当然この事実を認めておられると思うが、いかがでありますか。しからば、いつの日か北朝鮮との国交が必至となるが、その場合、あらためて賠償を請求されることが予想されるが、総理はこれに対していかに対処するつもりか、その見解を本院と国民に対して明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)
 およそ、国交の回復は両国民に喜ばれるものでなければなりません。しかるに、韓国側には、屈辱条約、日本の帝国主義的な経済侵略として、きびしい弾圧にもかかわらず、批准反対の一大国民運動が果敢に続けられていることは御承知のことであります。日本固有の権利を放棄してまで八億ドル以上を韓国に支払う日韓条約が、韓国民に喜ばれないどころか、非難、反対されてまで、経済危機にあえぐ日本国民の血税から支払わなければならない道理は一体どこにありますか。このような日韓条約をどうしてわれわれは認めることができましょう。
 私はここに総理に要求いたします。佐藤内閣は日韓条約を直ちに白紙に戻すべきであります。そうして漁業や経済交流その他の緊急を要する問題は、日本と南北朝鮮の三者の協議で処理し、日朝両民族の基本的問題は、統一された朝鮮政府との間で処理すべきであります。そうしてそのためにも、日本は南北朝鮮の自主的統一を促進するよう直接間接に協力すべきことを主張するものであります。
 最後に、私は総理に特に重ねて申し上げたいのであります。今日、わが国の深刻なる経済危機の打開は、アジア・アフリカの社会主義諸国をも含む大規模な貿易を行なわなければなりませんが、ベトナム侵略に協力したり、中国や北朝鮮や北ベトナムを敵視する立場で日韓条約を締結したのでは、これらの社会主義国または進歩的諸国との貿易の窓口をみずから閉ざすのと同じであり、あまりにも愚かなる自殺行為であります。(拍手)
 ところが、佐藤内閣は、逆にいよいよアメリカ一辺倒を強め、やれ韓国へ八億ドルの請求権を支払うとか、やれ台湾へ一億五千万ドルの借款を与えるとか、中小企業倒産や農村の災害など国内問題の処理も十分にできないくせに、アメリカのアジア戦略体制の下請になって、その援助の肩がわりを引き受けておる愚をおかしておるのであります。(拍手)これが一体だれの負担において、だれの利益になっているのかについて、総理は深く思いをいたすべきであります。
 私は、このことを強く強調し、総理が深く日本の進むべき道について反省されることを求めて、私の代表質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 前回の参議院選挙につきまして、国民大多数の支持を得たと言うけれども、そうじゃないじゃないか、われわれのほうがよほど伸展した、かようなお話でございますが、私は、自由民主党が前回の選挙におきまして獲得いたしました議席より以上のものを、今回獲得いたしたのであります。(「東京都はどうした」と呼ぶ者あり)かような点から、国民多数の私どもに対する支持あり、この意味におきまして、その責任の重いことを考え、従前に引き続いて政局を担当するものであります。(拍手)私は、かような立場におきまして、十分その負託にこたえ、また、国民の期待に沿いたいと思います。
 ただ、ただいま東京都はどうしたかというお話が出ておりますが、東京都その他、一、二の県におきまして、私どもが敗れたところがございます。これらの地域につきましては、十分私は反省をいたしておるつもりであります。ことに、東京都の都議選におきまして、在来からいつも第一党であり、多数を占めておりましたわが党が、社会党の諸君にその第一党の席を譲ったということは、まことに厳粛なる国民の批判を受けたということでありまして、この点につきましては、ほんとうに、えりを正して、そうして、国民に対しましても、十分反省をし、われわれがなすべき国政はもちろんのこと、都政につきましても最善を尽くしてまいるつもりであります。十分この点について、今後とも御叱正を受け、そうして、私どもは、最善を尽くしてまいることをお約束する次第であります。(拍手)
 同時にまた、前回の選挙におきまして、公の機関を使った不都合な者があるではないか、こういう御指摘であります。この点は、新聞等ですでに伝えておりますごとく、みずからの意思決定によりまして離党いたしました。ただいまその司直の判定を待っておる状況でございます。私は、この点は、より以上に深くお話しをしないことがいいんじゃないか。社会党の方におきましても、かつて刑事責任者を出して、その方が離籍したということもあるように私は伺っております。この点は、十分私どもは、みずからを正しくする、こういう観点に立ちまして、反省すべきだ、かように私は思います。(拍手)
 ことに、私が大事に思いますことは、今日、国民と直結するこの政治――民主政治、議会政治が強く要望されておる、この際におきまして、選挙こそは最も大事なものだと思います。この選挙が清く正しく行なわれて、初めて議会政治、政党政治が行なわれるのであります。かような意味合いにおきまして、この選挙が、あるいは金権で、あるいは組織等でこれが乱用されるということは、厳に戒めなければならないと思います。私は、同時に、皆さま方にも十分反省していただきたいと思いますことは、いわゆる文書・図画等の宣伝におきましても、どこまでも法律を守るという、それが最も大事なことだ、かように私は考えるのであります。(拍手)したがいまして、私は、政治道義の確立ということを特に強く要望いたしました。また、私自身の政治の責任と態度といたしまして、もちろん、清潔な政治、これに徹することをお約束いたしたわけであります。もちろん、施政演説の冒頭におきまして、特にこの点は強く主張いたしたわけであります。どこまでもこの選挙を通じて私が国民諸君からその要望するところをはだに感じました点、まず第一は、清潔なる政治であり、第二は、今日の不況の克服であり、第三は、アジアの平和の回復であります。この三つにつきましては、私は信念を持っておりますので、皆さま方の御協力を心から願っておる次第であります。(拍手)
 ただいま佐々木委員長の特に主張いたしましたものが、戦争についての危機、これを非常に強く叫ばれたように私は感じたのであります。一体、佐々木委員長は、アジアにおいての戦争を、どういう戦争を考えられるだろうか。しばしば、米国が中国を侵略するならばと、こういうお話が出ておりました。いわゆる米中戦争を予想しておられるのではないか、あるいは想定しておられるのではないか、私は非常にその点を危惧いたしたのであります。私自身は、いわゆるアジアにおきましては、米中戦争あるいは拡大される世界戦争などは起こり得ないのだ、かような私は考え方を持っております。(拍手)なぜこの考え方を持っておるのか。中共におきましても、アメリカにおきましても、いずれもが平和を愛好する国であります。したがいまして、アメリカ自身も、この戦争を拡大しないと言っておる。そういう意味においてのあらゆる努力を続けております。また、中共自身も、中共自身が攻撃されない限り――攻撃されれば徹底的に戦う、こういうことは申しておりますが、この徹底して戦うということはない、いわゆる中共が攻撃されない、こういう事態があるのではないか。したがって、平和への道をちゃんと残しておるのではないか、私どもは、かような方向に、そこにまだ平和への道が残っておる、これを強く見つけて、それへ協力することが私どもの当然のつとめだ、かように私は思うのであります。(拍手)
 次に、経済の危機について訴えられました。経済危機につきましては、これはもちろん私の施政演説でも最も力を入れておるところでありますので、これは御了承いただきたいと思いますが、ただ、今日の経済の不況の状態が予想外に長引いてまいりました。その点は、佐々木委員長の御指摘のように、あるいは過剰設備、こういうものがその原因であるとか、あるいは回復をおくらしておるのではないか、そうして景気の浮揚力を鈍らしておるのではないか、こういう点は、御指摘の点も考えられるのであります。しかし、今回の不況も、過去と同様に、金融引き締めがもたらしたものであります。私どもは、その原因を十分探査いたしまして、そうして、これに対しての正当なる認識をすることが大事だと思います。ともすると、今日の不況に対しまして、過度の悲観した考え方もあるようであります。私は、これは必ずしも正当な評価だとは考えません。そこで、今日、この経済の不況に対しては、どこまでも景気浮揚の力を与える、浮揚力を与える、こういう意味で今日対策をとっておるのであります。あるいは金利の引き下げを三回にもわたって行なった、あるいは中小企業に対しましては政府金融三機関の金利の引き下げをするとか、あるいは財政投融資をこの際に拡大していくとか、こういう点は、いずれもが現在の経済の不況に対する応急、緊急の処置であります。問題は、ただいま申し上げるように、経済自身が過度の萎縮状態にある。この萎縮状態を解除しようというのが私どもが今日とった特別措置であります。しかし、本来の経済そのものは、どこまでもこれを安定基調に乗せるんだ、こういう態度でこれと取り組んでまいりたいと思います。いわゆる安定成長と申しますことは、いわゆる低成長、高度、低度という意味ではございません。したがって、バランスのとれた状況のもとにおいて、できるだけの経済成長をするつもりであります。したがって、安定成長、これは適当なる成長政策であるということを御了承いただきたいと思います。したがって、佐々木君の言うように、私どもは朝令暮改の政策はとっておりません。長期安定政策を立てると同時に、今日の経済に対しての応急処置は、適時な処置がとられておると御了承いただきたいと思います。
 その次に、証券市場に対して無担保で日銀が融資する、中小企業に対しては全然さようなことがない、これは独占資本の擁護だ、こう断定されたのでありますが、御承知のように、この経済不況から証券市場が一時不安になり、そうして動揺を来たしたことは御承知のとおりであります。それが四大証券の一である山一証券だったというようなことも、これは御指摘ができると思います。政府は、経済の安定、不安を除去する、あるいは動揺を拡大しないような措置をとるのは当然の責務であります。こういう意味におきまして、日銀が無担保融資をいたしたわけであります。これはしかし、特定の企業に対する対策ではありません。これによりまして、証券市場そのものが、その不安が解消され、動揺が拡大されなくて済んだわけであります。私は、適切なる措置だと、かように思います。(拍手)
 また、中小企業対策、これにつきましては、いろいろの対策が講ぜられております。すでに御承知のとおり、あるいは下請代金支払遅延等防止法の手もとりました。同時に、私どもは、何と申しましても、中小企業に対しては資金量をふやさなければいかない、同時にまた、その資金が金利が安くなければならない、こういうわけでありますので、時期的に見まして、あるいは夏、あるいは暮れ等につきましては、十分この資金の量等についてめんどうを見ていく考えでございます。
 次に、公債発行についてであります。公債発行につきましては、これはよほど誤解しておられるようであります。あるいはまた、私のことばが足らなくて誤解を招くような点があったとすれば、この点は明らかにしておきたいと思います。四十三年までは公債は発行しないと言ったじゃないか、かようなお話がございましたが、もしもさようにお受け取りになるようなことであったとしたら、これは私のことば足らずであります。御承知のように、中期経済計画では、四十三年までは公債を発行しないように書いてある、きめてある、かようなことを実は申し上げたかったのであります。したがいまして、この機会に、万一その点に誤解があるならば、これをはっきりさせておきたいと思います。
 そこで、公債発行と申しますが、この公債発行は、いわゆるそれぞれ政府の借り入れというような場合にはすべてこれは公債に通ずるものだ、こういう議論も成り立つだろうと思います。本年は、相当多額の歳入欠陥も考えられるし、また、歳出のほうでは、これがふえていく見込みであります。当然、ただいま、歳入欠陥に対しての対策も講じなければならなくなっております。それで、経済界の推移等も見た上で、借り入れ金をするなど、適当な措置をとることになるだろうと思いますが、この借り入れ金も、やはり、いわゆる公債ということが言えるのではないかと思います。しかし、私が過日施政演説で申しました公債は、この意味の本年度の問題ではございません。この借り入れ金とは違いまして、これは本格的な公債を考えておるわけであります。そういう意味で、いろいろ大蔵当局におきましてただいま検討さしております。いずれその結論が出てまいりますとはっきりするのでありますが、あるいは四十一年度、来年度です。または四十二年度等からもこれを出すようになるんではないか、かように思います。そういう際は、ただいま御指摘になりました、インフレになるようなことではだめだ、これは十分私どもは注意してまいるつもりであります。もちろん、公債を発行するにつきましては、その条件なり、あるいはまた、公債発行するその環境、その状況等も十分検討いたしまして、しかる上で、いわゆるインフレや物価上昇等にならないように、そういうような考え方でこれを進めていきたい、かように思います。
 次に、減税をやれ、減税をやるについては、いい財源を教えてやる、特別措置を減税の財源にしろ、こういうことであります。たいへんわかったようなわからないような話でありますが、御承知のように、今日いわゆる特別措置をとっておりますものは、それが貯蓄奨励であったり、あるいは中小企業の育成強化であったり、あるいはまた、設備の近代化等のための特別な措置でございます。したがって、これを全面的にやめて、そうして減税に回せということは、なかなか勇ましい御議論でありまして、いわゆる中小企業の味方であるという佐々木君にしては珍しく、中小企業の対策に考えられたものまでもこれを減税に向けるということで、私は賛成いたしかねるのであります。もちろん、貿易等におきまして、関税等の特別措置につきましては、在来からも整理にそれぞれ努力をしてまいっております。したがいまして、在来の方針はもちろん持続してまいるつもりであります。お説のように、この機会に思い切ってこれを減税に回せということは、不幸にいたしまして、賛成するわけにまいりません。
 その次に、公共料金の問題であります。もちろん、物価の問題につきましては、政府が最も意をいたしておるところでありまして、十分尽くしてまいりたいと思います。しかし、これで、問題になります国鉄、米価あるいは医療費等につきまして、いろいろ考えていかなければならないのでありますが、私は皆さまに申し上げたい。公共料金が非常に密接に国民生活につながっていて、及ぼす影響が非常に大きい、そういう意味から、公共料金のストップをしろということも、これは理由なきにはあらず、これはわかりますが、しかし、過去におきまして、池田内閣時代に公共料金の全面的ストップをいたしました。それは、非常にそれで成績が上がったかというと、必ずしもそのとおりではなかった。私は、企業の場合には、公共企業であろうが、私企業であろうが、もちろん、そのコストを全く無視して、そうして料金を決定するというようなことはできない、どこまでも、コストというものも、これは必要なる条件でありますから、よく考えていかなければならない。ただ、これをいかにすれば経営の合理化をし、値上げをする要因をどうしたら小さくこれが防げるか、こういうことを十分検討していかないと、料金を上げただけで、これで企業収支が償ったというのでは、利用者が納得されないのであります。どうしてもここに企業経営の合理化を積極的にはかっていかなければならないと思います。この点で、企業家並びに企業に関係のある方々の御協力を特に強くお願いしておきます。
 次に、労働者、農漁民、中小企業等の需要拡大の方法は一体どうか、こういう御意見でありますが、もちろん、これは、基本的には、経済そのものがよくならなければ、労働者だけの所得を拡大するということもできないのであります。ただいままで経済に対しましてはそれぞれの措置をとっております。経済の回復とともに勤労階級の所得も着実に伸びていく傾向を見せておる、かように思います。また、農業、漁業、中小企業等の低生産性部門の近代化等につきまして、特に意を用いて、これが生産の増強をはかって、そして所得の増強を考え、いわゆる需要の拡大をはかっていくということにいたしたいと思います。
 次は、吉田書簡でありますが、吉田書簡は、申すまでもなく、これは個人の私信であります。輸出入銀行を使うか使わないかということは、これまたわが国内問題であります。私どもは、その国がいかなる国情にあろうとも、仲よくしていくということには変わりはありません。ことに、国情のいかんを問わず、いずれの国とも仲よくしていく、そうして、これに対していわゆる敵対しない、こういう処置をとっておりますので、中共に対しましても、政経分離で、その貿易は拡大していくつもりでおります。最近はだんだんふえておりますので、私は、もっとふやしたいというお気持ちもわかりますが、ただいまの状況で減ってはいないということを御了承いただきたいと思います。
 次は、ベトナム問題でありますが、ベトナム問題につきましては、私の施政演説におきましても非常な時間をこれにかけたつもりであります。私は、アジアの平和なくして日本の平和なし、また、アジアの繁栄なくして日本の繁栄なし、かような考え方を持っておるものであります。しかしながら、その立場に立ちまして、一日も早く戦火がおさまるように、それは結局話し合いでこれを片づけろ、こういう主張を私はいたしております。しかし、佐々木君のように、アメリカがまずこれは引っ込むことだ、アメリカが爆撃をやめることだ、こういう御意見もないではありません。しかしながら、今日は不幸にしてそれが多数の意見でないことだけは、社会党の諸君も御承知ではないかと思います。ことに、私がたいへんなことだと思いますのは、米国の軍事行動だけを非難する、あるいは批判する、こういうことは必ずしも実情に合っていないんじゃないだろうか、これは公正な判断だとは言えないんじゃないか、かように私は考えるのでありまして、こういう点はもっと深く考えていただきたい。佐藤政権はアメリカのベトナム爆撃を支援しているじゃないか、同調しているじゃないか、そういうお話が出ておりますが、私どもがアメリカに対して同調し共鳴しておりますのは、アメリカが共産主義の浸透と戦っておる、これに対して私どもは心から共鳴をしておるものであります。(拍手)しかしながら、爆撃そのものを、私どもは、これはりっぱなことをやっている、かようには申しません。だからこそ、一日も早く戦火がおさまるように、そしてこれが拡大しないようにということを言い、そして、そういう意味合いにおいて、ぜひとも話し合いの機会をつくってほしい、こういうことを実は申しておるのであります。(拍手)この点は誤解のないように願いたいと思います。
 先ほど、戦火が拡大したアジアの戦争ということにつきまして、あるいは米中戦争を想定していらっしゃるのではないかというお話をいたしましたが、今回も、アメリカ自身が、兵力を増強いたしましたけれど、米大統領が国連のゴールドバーグ大使に対しまして申しておりますように、ウ・タント事務総長に、どうか国連もその機能とエネルギーを平和への解決にひとつ働かしてほしい、こういうことを実は申しております。私は、あるいは甘いと言われるかもわかりませんが、今回の増強した事柄は、いわゆる平和解決への一つの布石ではないか、かように思っておるような次第であります。
 それから、B52の問題につきましては、実は私も非常にこれは当惑をいたしております。もちろん、沖繩自身は、サンフランシスコ条約、お互いにその条約を忠実に守るというその立場に立てば、これは私どもが施政権を米国に与えておるのでありますから、とやかくは言えないはずでありますけれども、ただいまの国民感情から申しまして、B52、しかもそれが台風の退避に来たと、かように言われて、しかもそれがベトナムに出かけたということについては、どうしても割り切れないものがあるのであります。しかしながら、これは、日米両国の友好関係等から見まして、十二分にこの間の国民感情も伝えることにより、私は、りっぱに解決ができ、また、今後は重ねてこういう事態を引き起こさないで済むのではないか、かような期待を持っておる次第であります。
 アトリー首相の故知にならえというお話がございましたが、私は、すでに施政演説で、話し合いということを提案いたしております。この方法で、あるチャンスがつかめるならば、私もあらゆる努力を払うことはもちろんであります。アメリカだろうが、あるいは欧州だろうが、どこにでも出かけていくくらいな元気は、勇気は持ちたいものだ、かように思っております。(拍手)
 沖繩の問題につきまして次にお答えいたしますが、近く沖繩に参りますので、沖繩の実情は十分つまびらかにしたいと思います。申すまでもなく、沖繩住民が祖国復帰の悲願を持ち、また、九千万われわれ同胞も、これを一緒にするということについて、これが心からの念願でもあります。私、もちろん、日本の総理といたしまして、この国民の悲願、念願にこたえたい、かように思う次第であります。しかしながら、ただいまも申しましたように、サンフランシスコ平和条約によりまして、これは施政権を与えたものであります。今日、佐々木君は、これはもう不法不当だ、かように断ぜられますが、私は、サンフランシスコ平和条約というものは、これは厳としてありますし、また、これを守ること、この趣旨を貫くことが、これが憲法九十八条第二項の規定するところでもあるのではないか。皆さん方は、平和憲法を守れということをしばしば口にされるのであります。しかしながら、この憲法の九十八条第二項では、お互いに日本国民は十分国際条約を守る必要があるのだということを規定しておるはずであります。私は、このサンフランシスコ条約につきましても、この考え方で進んでいきたいし、また、日米両国間におきまして、二国間において十分話し合って、そうして解決していくべき問題だ、かように思っております。(拍手)もちろん、それによって解決されるものだと思います。したがいまして、国連におきまして、いわゆる国際的世論の喚起だとか、これに訴える、かようなことをいたす考えはございません。
 まだ、大事な韓国問題についてのお尋ねがありました。これはお答えしなければならないと思います。
 いずれ、韓国の問題につきましては、批准国会等で御審議をいただきますので、その際に詳しくはお話を伺いたいと思いますが、まず、韓国の問題については、国連方式による南北の統一問題というのがございます。また、南朝鮮に対しては、これを国連自身が承認したという、また、国連加盟の多数の国が承認をしておるという、そういう事実があるのであります。この韓国と日本が、話し合いにより、そうして国交を正常化するということは、まことに自然な状態であります。したがいまして、この自然な状態が今日ようやく結ばれたものであります。これがあるいはベトナム問題にからんで、そうしてその時期がまことに当を得なかったという御批判をいただいておりますが、今回のこの問題は、ベトナムの問題とは全然関係のないことであります。あるいはNEATOの問題とも関係のないことでありますし、私どもは、大韓民国と仲よくしよう、国交の正常化をはかろう、ただそのことに尽きるのであります。北朝鮮につきましては、ただいま北に政権のあることは御指摘のとおりであります。しかし、私どもは、これと具体的な交渉を持つような考え方にまで、ただいまはなっておりません。したがいまして、今日の請求権その他の問題にいたしましても、これらのことは白紙の状態であることは、前内閣時代から変わりはございません。
 また、いま調印の済んだものを一応白紙に返して、そうして南北朝鮮と日本と三国で話をしろという御提案でございますが、かつてこの話がございました。しかし、そのときは、いわゆる北朝鮮が、日韓交渉をさせないという、こういう意味で、三国間の会議を提案したことがある。したがって、すでにこれは経験済みのことであります。もちろん南におきましてこれに賛成するはずはございませんので、ただいま言われることは、三国で話をしろということは、これはできない相談を私にやれとおっしゃるので、この点は、社会党の御意見ではございますが、賛成はできません。
 また、日韓交渉については大多数が反対ではないかというお話でございますが、これは見方の相違でございまして、私どもは、韓国の大多数の国民はこれに賛成をしておる、また、日本国民の大多数もこれに賛成しておる、かような確信を持っておるので、十分御了承いただきたいと思います。(拍手)
 最後にお話のございました、経済も不況な状況だ、そういう際に、韓国や台湾に対して十分救済の手を伸べるだけの力はないはずだ、こういうおしかりでございます。国内の問題をまず片づけろ、こういうお話でございます。なるほど、日本の国力というものが、絶対に立つことができない、こういう場合だと、御議論のようなこともあろうかと思います。しかし、日本が今日不況だとは申しましても、これはほんとうに一時的なものであります。私どもが日本の経済力を考えた際に、必ずこれはりっぱに拡大し、そうして、いわゆる先進工業国の仲間入りのできる国でございます。私がしばしば申しましたように、日本だけがいいというようなことは、いかにも偏狭ではないか。そうして、こういう考え方で、はたしてアジアの平和ということが願えるのか。私が皆さま方に申し上げましたように、私は、アジアの諸国のいずれとも仲よくして、そうしてアジアの繁栄なくして日本の繁栄もないということをはっきり申したのであります。(拍手)日本の国が繁栄いたしましても、隣に貧乏な国、非常に生活の低い国があったといたしますならば、これで日本が安全であり、そうして日本の繁栄が持続できるとは、私は絶対に思わないのであります。そういう意味におきまして、ただいまのような偏狭な考え方には、私は賛成をいたしません。(拍手)
 以上をもちまして私のお答えといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#6
○海部俊樹君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#7
○議長(船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十四分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 石井光次郎君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 中村 梅吉君
        厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
        農 林 大 臣 坂田 英一君
        通商産業大臣  三木 武夫君
        運 輸 大 臣 中村 寅太君
        郵 政 大 臣 郡  祐一君
        労 働 大 臣 小平 久雄君
        建 設 大 臣 瀬戸山三男君
        自 治 大 臣 永山 忠則君
        国 務 大 臣 上原 正吉君
        国 務 大 臣 福田 篤泰君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
        国 務 大 臣 松野 頼三君
        国 務 大 臣 安井  謙君 出席政府委員
        内閣官房長官 橋本登美三郎君
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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