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#1
第049回国会 科学技術振興対策特別委員会 第2号
昭和四十年八月四日(水曜日)委員会において、
次の通り小委員及び小委員長を選任した。
 科学技術の基本問題に関する小委員会
      愛知 揆一君    菅野和太郎君
     小宮山重四郎君    纐纈 彌三君
      中曽根康弘君    前田 正男君
      岡  良一君    田中 武夫君
      原   茂君    三木 喜夫君
      内海  清君
 科学技術の基本問題に関する小委員長
                前田 正男君
 動力炉開発に関する小委員会
      愛知 揆一君    菅野和太郎君
     小宮山重四郎君    纐纈 彌三君
      中曽根康弘君    前田 正男君
      渡辺美智雄君    石野 久男君
      岡  良一君    田中 武夫君
      原   茂君    三木 喜夫君
      内海  清君
 動力炉開発に関する小委員長
                菅野和太郎君
―――――――――――――――――――――
昭和四十年八月四日(水曜日)
   午前十一時九分開議
 出席委員
   委員長 岡  良一君
   理事 愛知 揆一君 理事 菅野和太郎君
   理事 田中 武夫君 理事 原   茂君
      秋田 大助君    大泉 寛三君
      木村 剛輔君   小宮山重四郎君
      野呂 恭一君    藤尾 正行君
      渡辺美智雄君    日野 吉夫君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 上原 正吉君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       田川 誠一君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   小林 貞雄君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局長)   村田  浩君
 委員外の出席者
        科学技術会議議
        員       茅  誠司君
        科学技術会議議
        員       篠原  登君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局長)    梅沢 邦臣君
        総理府技官
        (科学技術庁研
        究調整局長)  高橋 正春君
        総理府事務官
        (科学技術庁振
        興局長)    谷敷  寛君
        総理府技官
        (科学技術庁資
        源局長)    橘  恭一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の
 件
 科学技術振興対策に関する件(科学技術の基本
 に関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○岡委員長 これより会議を開きます。
 まず最初に、小委員会設置の件についておはかりいたします。
 科学技術の基本問題について調査を行なうため、小委員十一名よりなる科学技術の基本に関する小委員会、及び動力炉開発に関する問題について調査を行なうため、小委員十三名よりなる動力炉開発に関する小委員会、以上二つの小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、小委員及び小委員長の選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○岡委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、科学技術の基本問題に関する小委員に
      愛知 揆一君    菅野和太郎君
      小宮山重四郎君    纐纈 彌三君
      中曽根康弘君    前田 正男君
      岡  良一君    田中 武夫君
      原   茂君    三木 喜夫君
      内海  清君
以上十一名を指名し、また、小委員長には前田正男君を指名いたします。
 次に、動力炉開発に関する小委員に
      愛知 揆一君    菅野和太郎君
      小宮山重四郎君    纐纈 彌三君
      中曽根康弘君    前田 正男君
      渡辺美智雄君    石野 久男君
      岡  良一君    田中 武夫君
      原   茂君    三木 喜夫君
      内海  清君
以上十三名を指名し、また、小委員長には菅野和太郎君を指名いたします。
 なお、小委員、小委員長の辞任及びその補欠選任、並びに小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合には、その期日、人選その他所要の手続につきましては、あらかじめ委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
#6
○岡委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。最初に、このたび新たに科学技術庁長官に御就任になられました上原国務大臣より科学技術行政に関する所信を承ることといたします。上原国務大臣。
#7
○上原国務大臣 第四十九回国会における科学技術庁長官の所信表明をいたします。
 私は、このたびはからずも科学技術庁長官の重任をになうこととなり、その責任の重大さを痛感いたしますとともに、微力ながら科学技術振興のためあらゆる努力を払ってその責めを果たしたいと念願いたしております。委員各位の御支援、御協力を切にお願いする次第でございます。
 さて、御承知のとおり、現代は科学技術の時代と呼ばれておりますように、一国の産業経済の発展、国民福祉の向上は、科学技術の進歩発展にささえられているといっても過言ではないのであります。
 わが国の現状を見ましても、最近までのわが国経済の輝かしい発展が科学技術の進歩と技術革新の進展に負うところきわめて大きかったことは申すまでもありません。しかしながら、これは主として、欧米先進諸国のすぐれた技術を導入し、よくこれを消化し得たことによるものであろうと思います。私は、本格的な開放経済体制のもと、わが国が他の先進諸国に伍してさらに一そうの経済発展と国民生活の向上をはかっていくためには、何よりもまず、このような外国依存の現状を脱却し、科学技術振興の基盤を強化して独創的な国産技術の開発につとめなければならないと思うものでありまして、しかも、近年における科学技術研究の総合化、大型化に伴い、政府の果たすべき役割りが従来にも増して大きくなってきていることに留意しなければならないと考えるものであります。
 このような観点に立ち、私は、今日までに積み上げられてまいりました科学技術振興諸施策を引き続き強力に推進するとともに、さらにこれを画期的に充実、飛躍させることを念願といたし、当面、次のような点に重点を置いて努力してまいりたいと考えている次第であります。
 まず、第一に、科学技術基本法及び科学技術長期計画の策定であります。
 科学技術基本法につきましては、目下、科学技術会議におきまして鋭意検討が行なわれ、関係の向きとの調整も逐次進んでおりますが、私といたしましても、わが国科学技術の本格的な振興のためには、その統一的指針となる基本法がぜひ必要であろうと考えており、科学技術会議の検討結果をまって、来たる通常国会を目標に基本法の制定に臨みたいと思っております。
 また、科学技術長期計画につきましても、目下、科学技術会議において、本年末を目途に、今後五カ年間の科学技術全般に関する基本的方策を策定すべく作業が進められているところでありますが、科学技術庁におきましても、これと並行して、関係各省庁と密接な連絡をとりつつ作業を進めており、一日も早く長期計画の成案を得るよう努力する所存であります。
 第二は、原子力平和利用の推進であります。
 最近における海外諸国の原子力開発利用に対する意欲には、まことに驚嘆すべきものがあり、その技術は一段と進歩している状況であります。わが国におきましても、原子力の研究、開発、利用に着手して以来、本年でちょうど十年を迎えることとなり、本年末には、東海村において、いよいよ発電用原子炉の営業運転が開始される予定となっております。このように原子力開発利用は新しい発展段階を迎えようとしているのでありますが、私は、さらに原子力の開発利用を積極的に推進するため、さきの動力炉開発懇談会の検討結果に基づき、動力炉開発体制の整備、核燃料サイクルの確立等、総合的なエネルギー政策上の観点から必要とされる基本方針の確立につとめる所存であります。なお、日本原子力船開発事業団の手によつて進められている原子力第一船の建造計画につきましては、事業団から提示された船価の見積もり額、その内容等に問題があるため、建造着手を若干延期して問題点を慎重に検討の上、できるだけ早く軌道に乗せる所存であります。
 第三は、宇宙開発の推進であります。
 最近の世界における宇宙開発の進展は、マリナー四号に見られますようにまことに目ざましく、誘導技術、超遠距離電送技術の飛躍的向上により、火星の画期的観測成果が得られるに至っております。また、実用面におきましては、現在までにアメリカ及びソビエト両国によって、すでに多数の人工衛星が打ち上げられており、気象予報、テレビ中継などに利用され、また、最近大西洋上に打ち上げられたアーリーバード衛星のように、欧米間の商用国際通信にも使われようとする段階に達しております。
 私は、このような世界における宇宙開発の現状に対し、わが国の国際的地歩を確保し、さらには、わが国の技術及び経済の発展を促進するため、一段とこれが推進をはかることが肝要であると信じております。
 当面の目標といたしましては、昭和四十五年度に実用衛星を打ち上げることを目標に、これに必要な人工衛星、ロケット等の開発を宇宙開発推進本部が中核となり、航空宇宙技術研究所と一体となって推進してまいりたいと考えております。その際、これを効率的に行なうため、大学、関係各省庁との協調体制の維持強化にはさらに一段と努力する所存でありまして、そのため、宇宙開発審議会や、宇宙開発推進本部に設けられた技術委員会の場を積極的に活用してまいりたいと考えております。
 第四は、重要総合研究の推進であります。
 科学技術庁におきましては、従来から自然災害や公害から国民の生活を守るために必要な防災科学技術や公害防止技術などのように、特に重要な試験研究であって、しかも、多数の省庁にまたがって行なわれるものを、重要総合研究として取り上げ、関係経費の見積もり、方針の調整、特別研究促進調整費の配分などにより、その推進をはかっております。私は、これらの重要総合研究につきましては、本年度から新たに消費者物価の安定に資する食品保管輸送技術なども取り上げ、一段と強力にその推進をはかってまいりたいと考える次第であります。
 最後に、科学技術の国際交流についてでありますが、近年、科学技術の研究は、原子力利用や、宇宙開発の分野にその典型が見られますように、国際的規模における共同研究や情報交換が必須の要件となっているのであります。このような現状に対処するため、私は、OECDや国際原子力機関など国際的協力活動を一段と強化するとともに、科学技術者の国際交流をさらに活発化してまいる所存であります。
 特に来たる九月には、国際原子力機関の第九回総会が東京で開催されることになっておりますが、この会議がウイーン以外の地で初めて開催されることになった意義はきわめて大きいものがあると信じ、この機会にわが国の原子力利用をさらに一歩前進させ、また、この分野におけるわが国の国際的地位を一段と高めたいと念願しており、目下、関係各方面と緊密な連絡をとりつつ、準備を進めているところであります。
 また来年一月にはOECD科学閣僚会議が開催され、続いて五月には、OECD科学研究委員会において、わが国の科学技術政策に関する検討が行なわれることとなっており、現在その準備を進めているところでありますが、これがわが国の科学技術に対する海外諸国の認識を深めさせ、今後の国際協力の基盤をつちかう契機になるものと、大いに期待しているのであります。
 以上、当面考えておりますおもな施策につきまして、その大要を申し述べましたが、わが国の科学技術行政の現状は、将来に無限の可能性を秘めつつも、当面山積する問題をかかえている実情であります。ちょうど来年は、わが国科学技術振興の中核体として科学技術庁が発足して十周年を抑えることになりますが、このときにあたり科学技術庁長官の重責をになうことになった私といたしましては、これら当面の諸問題に対しまして、微力ながら全力を尽くして立ち向かい、今後のわが国科学技術振興の基盤を固めてまいる所存でありますので、委員各位におかれましても、一そう御支援御協力を賜わりますよう、重ねてお願いする次第であります。
#8
○岡委員長 次に、田川科学技術政務次官より発言を求めておられますので、これを許します。田川科学技術政務次官。
#9
○田川政府委員 先般、科学技術庁政務次官を命ぜられました。私は若輩であり、浅学非才でございますが、科学技術の振興のために全力を尽くして努力をするつもりでございます。委員諸君におかれましても、どうか御指導、御協力賜わりますようお願い申し上げまして、簡単でございますが、ごあいさつにかえる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○岡委員長 次に、科学技術基本法案及び科学技術振興の長期計画の作成検討状況等について、茅科学技術会議議員より説明を聴取いたします。茅科学技術会議議員。
  〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕
#11
○茅説明員 科学技術基本法を制定するという問題の審議は、科学技術会議の中に四つの部会がございまして、その第一の部会の任務となっておりますが、この問題につきましては第一部会の中に科学技術基本法分科会というものを設けまして、私がその主査をいたして今日に至っております。そういう関係から、私から説明をさせていただきたいと存じます。
 五月の十二日にこの特別委員会におきまして五月十二日までの審議状況について御報告を申し上げました。そのことにつきましては、重複いたしますので、私から申し上げませんが、お手元に資料が配付してございますので、それをごらんになっていただきたいと存じます。
 五月十三日、その翌日に、基本法に盛り込むべき事項につきまして、分科会として第一部会におきましてこれを検討いたしました。それから五月の二十八日に科学技術本会議がございましたので、その席で基本法の審議の進捗状況について御報告を申しました。さらに六月の一日から二十九日までの三回にわたりまして分科会の会合を持ちまして、その基本法の中に盛り込むべき基本計画とはどういうものであるか、それから行政機構としての科学技術会議というものはどういう構成、権限等を持っておるか、どういう位置にあるかというような問題につきまして審議を重ねました。それで一応、決定したわけではございませんが、ある程度の了解に達しましたので、基本法分科会で基本法の要綱案を目下試作中でございます。おそらく八月一ぱいにそれができまして、九月になりますれば、その要綱案につきまして逐条に審議していく段階になると私は了解しております。
 それで、私いま申しましたその内容について申し上げたいと存じますが、この基本法に盛り込むべき事項、どういう事項を基本法の中に盛り込んだらよいかという点につきましては、第一、科学技術振興の基本的な方針、それから基本的な計画及び実施計画、それから行政組織の整備、それから科学技術会議、これは仮称でございますが、科学技術会議、現在の科学技術会議とは性格の違ったものになると思いますが、それをどのように設置するか。財政上の措置、それから研究の推進、これは研究施設設備の整備とか、研究の効率的な推進とか、研究予算の弾力性の確保といったような、そういう問題でございますが、研究の推進、研究成果の利用の促進、科学技術者等の確保、これは技能者も含めてでございますが、科学技術者等の確保及び処遇の改善、情報活動、国際交流及び国際協力、科学技術知識の普及及び啓発、地方公共団体の施策、民間の努力の助長といったような問題をこの基本法の中に盛り込むということに大体の意見の一致を見たのでございます。
 特に問題になりますのは基本計画で、科学技術の基本計画というのは大体どういうものであるかという点につきましては、相当長い時間をかけて審議いたしました。
 この基本法の一番主要な問題点は、この基本計画を立てまして、その基本計画に沿って行政機関が効率的な推進をはかっていくということにあるわけでございますから、科学技術基本計画とは何であるか、その内容とはどんなものかという点につきまして審議したのでございます。
 その基本計画を立てる目的といたしましては、向こう十カ年程度のビジョンに立ちまして、五カ年程度の科学技術の研究、開発及びこれらの成果の応用、利用に関する国の施策の大綱を明らかにし、そうして各省庁等の実施計画策定の指針とするというのが、これが目的でございます。
 その内容は、大学とか国立研究機関等におきまして、現在その研究基盤が非常に貧弱で、とうてい近代的な科学技術を推進するということにはまいりませんので、第一の問題としては、大学や国立研究機関等における研究基盤の確立という問題であります。第三番目は、大規模な科学研究の計画的実施、これはたとえば大規模な加速器をつくる。現在問題になっております三百五十億電子ボルトの加速器といったような問題がございますが、そういう大規模な科学研究の計画的な実施。第三としましては、国としての重点的な研究、主としてこれは技術研究でございますが、国としての重点的技術研究を選定いたしまして、それを推進していくという問題であります。第四番目は、大規模な研究施設、設備の拡充整備、これはたとえばコンピュテーション・センター、大型の電子計算機を置くセンター、分析のセンターをつくる、あるいは科学博物館を整備する、図書館の整備といったような問題を含めますが、そういう問題等を中心として計画をつくる、こういうことであります。
 どのようにしてそれを策定するかという策定の手順でありますが、この基本計画の策定ないし修正は、科学技術会議、これは仮称でございますが、科学技術会議の議を経るものとし、その際、日本学術会議を十分密接な連係をとるものとするという考え方でございます。日本学術会議は、科学者の代表機関でございますので、その科学者の代表機関と密接な連係をとりまして、その基本計画についての十分な認識を得た上で、これを実施に移すということになると存じます。
 次に、どのような行政機関を置くかという問題でございますが、これは、科学技術会議、仮称でございますが、その科学技術会議というものを置こう。基本法に盛り込むべき科学技術に関する審議機関といたしましては、国の科学技術に関する総合的かつ計画的な施策の策定、及びその実施の推進に資するために、総理府に科学技術会議(仮称)を置くことが一応了解されておりまして、これは現在のものと違いまして、人文社会科学のみに関するものも所掌範囲とすることが考えられております。
 そして、その科学技術会議(仮称)の基本的な考え方といたしましては、長い時間をかけて討論いたしましたが、大体了解点に達しましたところは、その所掌事務としましては、主として科学技術基本計画の策定、科学技術に関する重要な政策、日本学術会議の答申等に関し、内閣総理大臣の諮問に応じ答申するとともに、意見具申を行なうといったような所掌事務を持ったものである。その構成は、現在と大体同じでありますが、内閣総理大臣をはじめ関係大臣とともに学識経験者をもって構成いたします。もちろん人文社会科学のみにかかわるものも所掌するわけでございますので、そういう専門家も新たにこの学識経験者の中に選ばれることと存じます。
 大体そういうところまでの了解をつけまして、そしてこれ以上こまかいことにつきましては、今度は逐条審議の場合において議論しようということになりまして、目下その科学技術基本法の要綱を作成しておる段階でございます。先ほど申しましたように、おそらく八月一ぱいかかりまして、その原案ができまして、これをもととして分科会において討論し、また第一部会においても討論して、逐次それをまとめ上げていくということになると存じます。
#12
○原(茂)委員長代理 以上で説明聴取は終わりました。
 質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
#13
○岡委員 ただいま茅科学技術会議議員から経過等についての御報告を承りました。また資料等も関係の方面からいただきました。私はこの際機構、予算、運営等の技術的な具体的な問題は、これは小委員会に移すことといたしまして、ごく基本的に科学技術基本法のあり方はどういうものでなければならぬかという原則的な問題についての第一部会での御討議があったかどうか、またどういう御方針であるかという点について、若干お尋ねしたいと思います。
 まず第一の問題は、御存じのように、現在は技術革新の名のもとに、科学技術がどんどん進んでおる。ところが、これはかねてから皆さまが言っておられるように、研究の成果が技術として開発される。それは、真理の探究とこれに基づく成果の技術的な開発というものは、全人類の財産であるという考え方であります。ところが、この開発された技術が、現在では人類の文化を破壊し生命を大量に殺傷するというふうな方向に利用されておるということはまぎれもない事実でございます。そうすると、私どもが科学技術の問題と取り組み、特に基本法を制定するとするならば、この現在の、おそらく人類史においても初めてとも言うべき、人類が自己の英知で自己の文化と生命を殺傷するという逆説をいかに克服するかということに、私は科学技術基本法の基本的な原則が打ち立てらるべきことは当然ではないかと思うのであります。この点について、まず科学技術会議においては、いかなる御方針を持っておられるのか、またいかなる御検討がなされておるか、この点をまずお伺いいたしたい。
#14
○茅説明員 ただいま岡先生から御質問がございまして、非常に重要な問題で、これは私個人の考えといたしまして、科学技術者のみならず、世界人類の共通の問題であろうと思います。この問題を基本法の中にどう織り込むかという問題といたしましては、私どもはその考え方を、できれば前文の中に織り込もうという考えでいままで討論してまいりまして、まだ要綱ができませんので、その前文のまとまった形というのはできておりません。しかしながら、私どもは最初にこの分科会におきまして、いまのような問題について相当討論いたしましたが、まだ全体の考えがまとまった段階ではございませんが、その中にございました、まとまった意見ではございませんけれども、有力な意見として提示をされた考え方を申し上げますと、この科学と技術とを、極端なことになりますが、分けて考えてみますと、たとえば、原子爆弾の問題にいたしましても、原子核の性質はどういうものであるか、それに中性子を当てた場合にどういうふうな変化が起こるかというような問題は、これは純然たる科学の問題でありまして、一九三八年にオットー・ハーンがウラン二三五の核分裂ということを見つけたということ、そのことは、私は科学的な事実として科学者の英知の結果として得られたものであると思います。しかしそれを原子爆弾として使うという考え方、私はそれを技術と申しますが、つまり軍事的にこの核分裂というものを使おうということ、そこに問題がある。私どもは科学者として、事実を事実とし、真実でないものを真実でないとして明らかにしていくことが科学者の責任でございますので、私はオットー・ハーンには、何ら原子爆弾についての責任はないと考えておるのであります。しかしながら、それを戦争のために使おうという努力がされまして、御承知のとおりに、一九四五年七月の十六日に、初めて原子爆弾というものが炸裂し、八月の六日に広島にそれが落とされたということになりまするが、その開発に対しては、いわゆる科学者というものがたくさん関与しておりましたけれども、それは目的を持った一つの研究でありまして、私個人の考えでは、それは技術的な研究である。つまりそのときの社会情勢、政治情勢、そういう問題に応じまして、その科学的研究の結果を応用するという問題でありまして、その応用にあたって、人類の幸福のためにのみそれを応用すべきであるにもかかわらず、ああいう人を大量殺りくするといろ方向に使った点は、私は科学者の責任ではなくて技術者の責任であると考えておるのでありまして、そういう問題について討論いたしました。ですから、科学者としての責任といたしましては、それが場合によっては軍事的に使われるかもしれないということが考えられたとしても、正しいことを正しいとして、正しくないことを正しくないとして発表するということは当然であると私は思います。それを利用する場合に、時の政治情勢、経済情勢、軍事情勢、そういうものを考慮して、それが人類の不幸のために使われないようにすることが技術研究の非常に重要な点であると存じます。そういったような考え方、平和的目的にのみ技術研究というものを限定しなくちゃならないということは前文においてぜひ書きたい。
 科学研究のほうは、これは幾ぶん私個人の個人的な考えになりますが、科学というものは、それがどのように使われようとも、ほんとうのことをほんととして発表する、それだけの責任である。ほんとうでないものをほんとうのように発表するというようなことをいたしますと、科学者としての責任が果たせないというように考えておりまして、はたしてそれがどういう形でとの基本法の中に、前文の中に織り込めますか、まだここではっきりと申し上げる段階には至っておりませんが、そういうような考え方につきましては、この基本法をつくる一番最初におきまして徹底的に討論いたしました。それだけ申し上げておきます。
#15
○岡委員 前文というのは、まあ言ってみれば形容詞のようなもので、これは動詞でも主格でもなく、これはいわば法的な拘束力というようなものは期待できないという弱みを持っているのじゃないかと思うのです。いま先生のお話しになったオットー・ハーン自身が、やはり西独における原子力の軍事利用の反対の急先峰で、署名運動をされたことは御承知のとおりですが、まあ最近におけるいわゆる平和運動というものが、ラッセル・アインシュタイン共同声明から始まり、国際科学者会議、パグウォッシュ会議となり、日本でもあるいは先生の所属しておられる七人の委員会、科学者が平和運動の先頭に立って、しかも科学者は先頭に立ち得るという質的な理由というものを持って、しっかり認識を持って立っておられるというところに現在の科学のあり方というものの方向が明らかにされて私は非常に有意義なことであると思っております。これは私希望といたしておきますが、ぜひひとつこの問題についても十分な御検討をお願いしたい。せっかくわれわれが科学技術の振興を急ぎ、またその育成に努力を傾けて、その結果が、人類の英知がわれとわが手をもって自分の歴史や文化や生命を抹殺するような結果になるようなことでは、科学技術の振興というものは全く無意味なことになりますし、歴史はもうそれを許さない段階にきておると思いますので、どうか十分御検討をわずらわしたいと思います。
 第二点の問題ですが、御存じのように、いわゆる高度経済成長政策というものが四、五年前からとなえられております。ところが、最近はいわゆる均衡のとれた安定成長政策であるというふうに、政策の転換が行われようとしておる。なぜこういう転換が起きるか。その点は、言うまでもなく日本の産業構造の内部における大きな所得なり生産の格差、ひずみであって、農業対工業、大企業と中小企業等においてこのような生産や所得の格差が何で起こってきたか。私はその重大な側面は技術の格差だと思う。いわば科学技術というものが人類共通の財産ではありながら一部の利益に奉仕する、こういう政策がとられる限りにおいては、科学技術というものが真に日本の全国民の共有の財産として育っていくということはあり得ないと思います。こういう点について、一体科学技術会議等で御検討になっておるか、また、こういう問題についてはどういう御見解を持っておられるか、この点についてお考えを承りたいと思います。
#16
○藤尾委員 議事進行。ただいま岡委員からの問題は非常に重要な問題であります。これについて現在この科学技術委員会の委員の過半数が出ておりません。こういう時点においてこういう問題を論議するということは、私は非常に不見識だと思う。特に茅先生のようなお忙しい方に来ていただいて非常に御無礼だと思う。こういう際に、そういうゆゆしい、非常に重大な問題を論議されることは、私は非常に不適当だと思います。この点は委員長におかれまして十二分に御検討いただきまして、そうして全員出席のもとに議論を展開すべきだ、私はかように考えますから、議事進行に関する私の意見を申し上げておきますが、委員長においていかがお取り計らいになりますか。
#17
○原(茂)委員長代理 ちょっと速記をとめていただきます。
  〔速記中止〕
#18
○原(茂)委員長代理 速記を始めて。
#19
○岡委員 そこで、第二点の問題はさておきまして、ただ、私どもはそういう見方をしておりまして、そういう観点から、私どもはせっかく科学技術振興対策特別委員会を与野党一致でここまで運営してきておりますので、特に科学技術基本法について社会党が対案をもって戦うなどということはなるべくいたしたくないという老婆心から私は申し上げておる。こういう点を御了解いただきたい。
 そういうわけで、長官の所信表明にもございましたが、外来技術の消化につとめたが、今後は日本の科学技術者の創意を尊重して、わが国における科学者のオリジナルなアイデアを中心として科学技術の振興をはかるということ、このことは私もしごく同感である。昭和二十五年外資法が実施されてから、日本から輸出した日本の技術と、日本が外国のプラントを買うために支払った金のバランスというものは、他のいかなるもののバランスとも比較にならない。実際問題として日本の現実が工業的な先進国と言えるかどうかという疑義さえも出ておることはいまさら申し上げるまでもないことでございます。そこで、問題はやはり科学技術会議としても、特にここ四、五年来外国技術の導入については非常な強行が行なわれておる。非常に件数も多くなっておることも御承知のとおりです。こういう外来技術の導入についてのある程度の保護政策的な性格を持った外資法をこのままに存置し、改正することなく、日本の国産技術の推進とかあるいは科学者のオリジナルなアイデアを育て、これをもって科学技術研究を深めようということは無理ではないかという懸念もあるわけです。こういう点について私は希望として申し上げておきますが、外資法というものをもう一度御検討いただき、また外資法によってどういう結果が日本において生ずるかという状態も十分御検討いただき、場合によれば、科学技術基本法が日本の科学者のオリジナルなアイデアというものを生かし、日本人の手によって科学あるいは技術の振興をはかろうという方向に技術庁が方針をとられて、外資法の運営について、これについて修正すべきであるかどうかという点についても、これはまた科学技術会議の第一部会で御検討いただければ幸いだと思います。これも要望として申し上げておきます。
 それから先ほどの問題でございますが、これは長官の所信表明に毛ありましたが、長期基本計画の問題でございます。これは私どもといたしましては、この基本法ができて、さて長期にわたる基本計画ができ、そのために必要な予算要求ということになると、予算の実現は来年度になるか再来年度になるかというようなことで、のんびりとしてくるわけでございます。私どもはこの点実は少しでも急いで予算をつけるような方向へ持っていきたい、こういう考え方を持っておるのです。これは決して私個人の意見ではなく、与党の方々も同様な御意見を持っておられることは茅さんも御存じだと思います。こういうことから、基本法の成立を待って長期計画にとりかかるのではなくて、もう科学技術会議は進んで意見具申ができるなら、この際、学術会議等と協調をとられて、そして重要な大きな問題点の幾つかが取り上げられ、たとえばいま御説明があった大規模な電子加速器の問題、あるいは科学衛生を五年後に打ち上げるなどと言っております。こういうような問題、いずれにいたしましても大きな問題を取り上げられて、科学技術会議としてやはり五カ年間にわたる年次的な計画というものをつくり上げられ、いわば予算の要求も目前に迫っておるわけです。あまりのんびりしないで、ぜひこれは科学技術会議として、専門委員には学術会議の方もたくさんおられるわけですから、問題は茅さんなり篠原さんの指導性にあると私は思うのです。これをまた学者の皆さんの甲論乙駁にまかせておくと夜が明けてまた日が暮れるというようなことになりますが、十分指導性を発揮されて、当面重要な大きな科学的な問題についてはぜひ科学技術会議の権限において意見を具申されて、これが来年度においては予算化され得るというような、そういう手順をひとつぜひお進めをいただいたほうがいいのではないかと思います。これも私の要望として申し上げておきます。
 以上であります。
#20
○茅説明員 ただいま岡先生から御意見がございましたが、第一の問題につきまして私少し申し上げ方が足りなかった点を補足させていただきたいと存じます。この科学技術の悪用によって人類みずからが滅びる危険があるというような問題につきましては、前文でもちろんある程度のことは申しますが、技術研究の重要研究を指定するという段階等におきまして、どのような問題を取り上げるか、どういう時期にどういう問題を取り上げるかという場合に、必ず平和的利用にのみ目標を置かなければならないということは入れることになっておるのでございまして、それだけでどうかということになりますと非常に足りない点もあるかと思いますが、現在の段階ではその条項の中にはそこに入ることになると存じますので、それを追加して申し上げたいと思います。
 それから先ほど御意見がございました問題でございますが、私どもといたしましては、やはり日本の現状といたしまして、中小企業の技術を向上させなければならないという点は非常に大きく考えておりまして、そういう方面の技術は、大企業のみならず中小企業におきましても、これが近代的なものを取り入れられるようにするにはどうしたらいいのかという問題も討論しておりますが、これは基本法の中ではたしてその詳しい点まで述べられるかどうか、私個人の考えでございますが、やはり技術研究の振興法的なものを新たにつくる必要があるのではないかというように、私はその点は考えております。そういう考えはこの基本法をつくります際に十分討論の中には入れますけれども、しかしはたして形としてどの程度出るかということについては、まだはっきりと申し上げられる段階ではございません。
 それから外国の技術導入の問題でございますが、これは私どもといたしましてはもちろん独創――日本の科学研究の応用できるものを取り上げて日本独自の技術というものをつくらなければ、これからの将来の産業の振興というものはあり得ないという立場に立って考えておるのでありますが、いままで不幸にして日本では日本の研究の成果をあまり重く見ないで、外国の技術のほうへ先に目を向けるという習慣がございましたが、これは私の考えですけれども逐次改めてきつつある、しかし外国のりっぱな技術を導入するということは、これは依然としてやらなければならないことでありますが、それに負けないような技術を日本もつくるということで対抗する以外に、私は手はないと思います。それはどういう方面の技術研究に重点をしぼるかというしぼり方と力の入れ方にあるのだと思います。いかなる技術研究でも全部を日本の力でやるということはできませんので、やはり国際分業的な立場に立ちまして日本で推進すべき技術研究、それをよく選びまして、その面では世界に負けない独自の技術をつくるという、そういう考えに立って基本計画というものが練られるということが私は大事だと思います。しかし、同時に、外国のりっぱな技術というものも導入し、そしゃくして、それがさらに根をはやして実を結ぶということも、やはりいままでどおりに考えていかなければならないと存じます。しかし、この外資法その他のことにつきましては、いま御指摘がございましたので、そういう御意見のあったことを伝えまして論議してまいりたいと存じます。
 それから予算の問題でございますが、四十一年度の予算をどうするかという問題は、第一号答申として出しました十年後を目途とした科学技術の推進、その案を審議中でございまして、その中で予算化し得るものは予算化していきたいというので、急いで審議を進めておりまして、この基本法の中にあります基本計画の問題とは全く別個にその問題は進めておる状態でございまして、できるものから予算要求に入れたいというのが現状でございます。
#21
○岡委員 最後に一言、繰り返しになりますけれども、ただ私どもはこうして十年ばかり科学技術の主みたいなことをやっておりますと、どう考えても、国の最も重要な政策は科学技術政策にあるという気持ちがますます強くなっているというのが正直な心境なんです。そこで、いよいよ基本法をおつくりになるという場合に、単に立ちおくれを克服するためにということでいろいろな措置を講ぜられるということでなく、やはり国際情勢なり国の内政、また国内の経済情勢その他そういう現状認識を的確に把握されて、また将来の展望等もある程度まで把握された上で、りっぱな基本法をつくる。同時にまた、重ねて申し上げますが、学者の方にお集まり願って相談をしますと、茅さんも御苦労だと思いますけれども、私なども大学の生活などを通じて見て、学者の人たちにはまたいろいろ御意見が出てくるというようなことがあるので、そういうことがかえってこの問題の進め方をチェックするようなことになってもいかぬと思いますので、こういう問題はやはり次元の高い立場で、煩瑣なスコラ哲学やあるいは縄張り主義的な考え方は克服をされて、十分強力な指導性を持って、りっぱな計画をつくられ、また基本法をつくられるよう心からお願いいたしまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。
#22
○原(茂)委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明五日木曜日午後一時理事会、同一時三十分委員会を開会することとし、散会いたします。
   午後零時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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