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1964/11/25 第47回国会 参議院 参議院会議録情報 第047回国会 本会議 第4号
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1964/11/25 第47回国会 参議院

参議院会議録情報 第047回国会 本会議 第4号

#1
第047回国会 本会議 第4号
昭和三十九年十一月二十五日(水曜日)
   午前十時二十五分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和三十九年十一月二十五日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第
  二日)
    ―――――――――――――
#3
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。上林忠次君、田中清一君から、それぞれ病気のため会期中請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#6
○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)、
 去る二十一日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。藤田進君。
   〔藤田進君登壇、拍手〕
#7
○藤田進君 私は、日本社会党を代表いたしまして、新しく発足いたしました佐藤内閣総理大臣に対しまして、以下、若干の質疑をいたすものであります。
 昨日、衆議院における質疑の模様を承っておりましたが、佐藤総理の答弁が、どうも、いままでの佐藤さんの切れ味とは相当違ったものを受け取ったのであります。要するに、非常に自信のない答弁であります。私は、本日ここにおいて、親切に、しかも、信念のある御答弁をお願いいたしたいと思います。
 その第一は、今後佐藤内閣としてとり行なわんとする政策についてであります。高度経済成長、所得倍増政策、これに対する痛烈な批判をされて、人心を一新して政局に当たる必要を唱えられて、池田政策の批判をされたことは、まだ四カ月前のことであります。この批判された所得倍増政策を含む一連の池田内閣の政策というものを、聞くところによると、そのまま踏襲して内閣を担当されるというふうに聞くのであります。私は、その七月の佐藤さんの所信なるものを一とおり目を通してみましたが、なるほど、内政、外交、経済、それに憲法改正といったような、当面する日本の重大な問題について、それぞれ所信が述べられ、池田内閣の方針と運営と相当なかけ離れがあることは、これを見ても明らかなのであります。そこで、佐藤総理としては、あれは総裁選挙用に国民に発表したのであって、現実の今日における方針はこれは違うのだ、という意味になるのかどうか、はっきりとお伺いをいたしたいと思うのであります。また、もし佐藤内閣としての新味、その路線を打ち出すとするならば、一体それは、いつ、たとえば通常国会を控える今日、昭和四十年度予算とともにこれを打ち出そうとせられるのかどうか、お伺いをいたします。
 次に、佐藤総理の基本的政治姿勢についてであります。今度は寛容と調和に置く、こう言われております。忍耐を忘れている、いや、それは寛容の中に入るということが、昨日明らかになりました。そこで、調和ということについてであります。今日きわめて重大な意義を持つであろう一国の総理が唱えるこの「調和」は、昨日の御答弁では、たとえば議会において、与野党対立の中においてはその前進進歩はないんだ、これをお互いに調和を求めていくんだという引例をされております。しかりとすれば、調和にはお互いに話し合いもあり、歩み寄りもあり得ると思うのであります。やがて十二月一日、自民党の総裁にも指名せられるのであろうかと思うのでありますが、この国会における運営の場において、従来問題になった、一方的に中央突破、強行採決あるいは単独審議というようなことは、よもや、この調和を基本とする佐藤内閣の態度の中からは出てこないと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
 また、御承知のとおり、池田総理はまことにお気の毒な引退でございました。日本の政策その他については別といたしましても、このような唐突の間に受け継がれた関係もあろうけれども、新内閣が、近い将来に国民の信を問う、国民の洗礼を受けるということは、議会政治においては最も大切であろうかと思うのであります。解散のことは考えていないということであるが、しかし、それでは、今後衆議院およそ三年間という、この期間をぶつ通しでおやりになろうとするのか、およそ長期的見通しというものがなくてはならないと思います。解散に関する、さらに総理のもっと具体的な御答弁をいただきたいと思います。
 次に、基本的政治路線並びに主要閣僚全員、池田内閣の引き継ぎでございましょう。しかし、池田内閣の引退直前にわれわれが経験いたしましたことは、いわゆる副総理の問題であります。過去の歴史を調べてみても、新憲法下、片山内閣以来、あらかじめ指定をするところのいわば臨時代理、世にいう副総理を置いております。芦田内閣ではそれぞれ、あるいは吉田内閣でもしかり、そして鳩山内閣になり、石橋内閣になる。最近、池田内閣になって、このあらかじめ指定するいわゆる副総理がいない。きめられないのではないだろうか、党内事情その他で。しかし、今回は、佐藤総理として、国政の渋滞を防ぐため、一刻もゆるがせにできないという見地からも、ここに、あらかじめ指定する副総理を置くべきではないだろうか。総理の御所信をお伺いいたしたいと思います。
 以下、外交問題等についてただすわけでございますが、以上、基本的問題についてまずお答えをいただきまして、次の質問に入りたいと思います。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 七月の総裁公選に際して、池田内閣をたいへん批判した佐藤が、今回その路線を継ぐ、こういうことを御指摘になりましたが、御承知のように、池田前総理にしても、私にしても、自由民主党の党員であります。また、その中においてお互いに批判し合うことは、これまた自由な政党のあり方としては当然のことでありまして、民主主義的なものでございます。したがいまして、池田総理も、私の所信にしてとるべきものは採用されております。経済のひずみを是正するとか、あるいはまた人間尊重の政治だとか、あるいは社会開発の問題だとか、こういうことは取り上げておりますので、この点は御心配は要りません。昨日も衆議院におきまして、十二分に成田君の質問にお答えをいたしましたとおりでございます。
 寛容、これこそは民主主義の当然の姿勢だと思います。もちろん、寛容と忍耐と、かようなことを申しますが、その忍耐は、寛容のうちに忍耐が入っておると思います。私は、さらにこれにつけ加えて、「調和」が必要ではないか。民主政治実現、その目標に向かいましてこの調和をしていく。これは個々の対立、あるいは個と総体との対立、これをなくしていくところに真の自由があり、お互いが民主的に運営し、生活を向上さすゆえんだと思います。したがいまして、この調和これは、明るく、楽しい国民生活を実現していく上に、最も大事なことだと思います。私は、特に、調和と申しますか、あるいは積極的に調和をはかる、こう申しますよりも、不調和をなくしていくということに特に力を入れてまいりたいと思います。
 この意味で、まず国会の正常運営、これは当然なことであります。在来からしばしば、話し合いの場ではお互いに話し合って、そうして結論を出していく。話し合っても結論が出ないと、こういうことでは、民主主義が育たないのであります。私の申し上げたいのは、論議はどこまでも尽くしていく。論議を尽くしてもどうしても結論が出ない場合においては、最後に民主主義のルールによる、これは原則ではないかと思います。また、過去におきまして、あるいは単独審議だとか、あるいは強行採決だとか、かようなことがしばしば行なわれましたが、私は、民主政治のもとにおいて、かようなことはまことに忌まわしいことだと思います。私のとるところではございません。どうか皆さまにおかれましても、ただいま申し上げるように、調和こそ大事なんだ、対立抗争は避ける、しかし論議は尽くす、論議は尽くして、最終的には民主主義のルールにのっとるんだ、この点を御協力願いたいと思います。
 また、解散問題についてお尋ねがございましたが、解散問題は議員の身分に関する問題でございます。まことに重大な問題でありますので、これは、ただいま私が池田内閣にかわったばかりでありますので、これは慎重に考えてまいりたいと思います。
 また、副総理をどうして置かないのか、こういうことでございますが、前池田総理も、置かれないでただいままで経過してまいっております。私もその方針は変わりはございません。(拍手)
#9
○議長(重宗雄三君) 藤田君、登壇願います。
   〔藤田進君登壇、拍手〕
#10
○藤田進君 どうも自民党の党員であるから批判は自由――言うこととやることは別だというふうに響くのであります。しからば具体的に、以下、内容、各論についてお伺いをいたします。
 佐藤内閣の外交政策の基本についてであります。所信表明によりますと、自主外交への転換、従来の追随外交から自主外交への転換をまず第一とせられているのであります。この自主外交の内容についていささか心配がある。伝えられるように、アジアにおける外交は、自主的に、中共の封じ込め政策にそれぞれかわって強力に行なうというニュアンスが、かなり伝えられているのであります。AA会議に代表を送るその目的もしかり。はたしてそうであるのか。一体、池田外交政策のアジア外交より、いわば前向きなのかどうか、心配であります。特に中共外交に対する態度については、きわめてあいまいであります。流動しつつある世界の情勢の中において、慎重にとり行なうということであります。ことに、アジア外交の所信表明におけるそのニュアンスというものは、きわめて懇切であるし、善隣友好をいかにも今後強く推進するように言われております。しかし、アジアにおける中国外交については、まことにこの点、片手落ちな状態であると、この所信表明演説を受け取っているのであります。今回の彭真代表団訪日等に関連してこれを考えてみても、はたして人事の交流、文化の交流と言われる線から見て、いかがなものであろうか。そして、昨日来、伝えられているところによると、佐藤総理は、日中交流を活発にするために、首相の意向として、人事、文化の両面について、国会議員あるいはその他の民間人で政府が保証する人を代表として、接触を保ちたいということが報じられております。これらの具体的内容を含めて、いかに自主外交、アジア外交を展開せんとするか、お伺いをいたします。ことに、中共に対する経済外交につきましては、政経分離、従来の積み重ね方式、かように言われ、LT方式等を含む貿易が進められてまいりました。漸次その貿易高も、往復三億ドル付近にまで参りました。こういうことを考えてまいりますと、日本における、あるいは世界の設備増大、過剰生産といったようなことを考え合わせてみると、市場としての中国をどう見ているのか、経済外交としての見地からお伺いをいたします。
 次に、中共の国連加盟についてであります。重要方式といったような三分の二方式を、これを支持すると椎名外務大臣は言う。ところが、官房長官の話を聞きますと、佐藤総理は、中共がやがて国連に加盟するというこの厳然たる事実は、もはや時間の問題である、外務省はどうも停滞しているといったような真意であるように、漏れ承ります。はたして、そのような認識で総理は外交を進めようとしているのかどうか。だとすれば、所信表明とはかなり食い違っているように思うのであります。いずれにいたしましても、中共がすでにかなり高度の科学技術を持ち、核実験をした今日におきましては、これを国連の外に置いて、あるいは世界の完全な軍縮、平和というものが、はたして効果があるかどうか。これについては、国連の中における話し合いでその場をつくれという、このことが今日国内においても強く要請されているところであります。これらの事情と加えて、総理の御所信を承りたいと思います。ことに、核武装あるいは核兵器を日本に持ち込まないという、この外交方針についてであります。しかりとするならば、あるいは国会両院において、あるいは政府単独に、そのような核兵器の持ち込みをしない、あるいは核武装をしないという宣言決議、ないし、アメリカと日本の間に共同声明あるいは協定を結ぶということを、一歩進めてしかるべきにもかかわらず、この点については、これを否定する立場をとる理由がわかりません。明らかにしていただきたいと思います。
 日韓問題についてであります。将来しこりを残さないような方向において、と言うのであります。昨日の報道によりますれば、金大使ないしソウルの政府系新聞は、新しく対馬あるいは竹島を含む共同漁場を設けて、これに対して年間それぞれの協定を結び、さらに更改をしていく、年間協定にする、これには日本が援助をする、といったようなことが言われているのであります。この点は、従来、池田内閣以来、竹島問題、対馬問題、あるいは国内の法的地位等々を含めて、李ラインはもとより、き然たるわがほうの方針を堅持して、何ら変更なく交渉を進めていくというのか、承りたいのであります。
 また、近く、年明ければ、椎名外相が韓国に派遣せられるというのであります。伝えられるところによると、これは謝罪特使として迎えるという趣旨がかなり強いように思う。はたして謝罪使節というものなのか、その任務を承りたいのであります。
 ことに、今日、南北朝鮮は、韓国においてさえも、与野党一致して南北統一の問題が具体的に論議がなされている。かなり進展を見ていると思われます。このような時期に、佐藤総理が志向する日韓交渉早期妥結というものが、はたして適切であるかどうか。私は、この点は、統一を阻害するから、ここで、かように急ぐことなく、むしろ打ち切るべきであると思うが、いかがか、お伺いいたしたいと思います。
 さらに、外交問題では、沖繩についてであります。沖繩の返還につきましては、北方領土とともに、佐藤総理は強力にこれを返還すべく交渉するという七月所信表明であります。しかりとするならば、外相も近く国連総会出席を兼ねて出向く、アメリカの要人とも会見する日程であるようであります。また、総理もやがてアメリカを訪問するということも伝えられております。で、このような機会に、その所信を貫くのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
 また、当面、松岡主席等が参りまして、主席公選のことについて、日本政府の協力を求めてまいっております。これに対する御所見を伺いたい。
 次に、国内経済政策についてであります。
 その第一は、国民所得倍増計画、昭和三十五年十二月二十七日の閣議決定、これについては、佐藤総理みずから、農家ないし非農家との関係、すなわち、いまいわれる社会開発の必要性は、倍増計画と相並行して行なわれるべきであった、これがなかった、おれはやる、ということでございまして、しかし、この二者並行して行なうというそのことが、日本の財政上あるいは物価その他の現象的所産等から見て、はたして可能であるかどうかは別として、私は無理だと思う。それにしても、所得倍増政策は、答申されるところの中期経済計画、これを基本にして進めようとされるならば、いわゆる社会開発なるものは、これはおそらく財政上思うように前進をしないと思われる。にもかかわらず、所得倍増政策、高度経済成長政策というものは、依然として、少なくとも中期経済計画答申の内容を土台にして進め、かつ、いわゆる社会開発を並行して進めようというふうにとるべきかどうか、お伺いをいたします。
 さらに、高度経済政策についての問題意識について、私は現内閣においても誤りがあるのではないだろうか。およそいまの物価が、あるいはその他のひずみが、どうしてここに出てきたかという、この問題に対する意識であります。なるほど、昭和三十年以来、ことに倍増計画が進められました三十五年以降、高度のいわゆる重化学工業の設備投資が、これが投資景気を呼んだのであります。ですから、これは三十年ないし三十七年に、約五倍に伸びてきた。これは要するに、大企業を中心とする生産財であります。ところが、一方、消費財あるいはサービスについてはどうでしょう。わずかに一・七程度の伸びであります。農業生産においてはもっと低いのであります。こういういわば経済の高度成長政策というものが、これがひずみを当然に起こし、格差を招来したのであって、この基本的認識がないならば、私は、根本的には、対症療法をしてもどうにもならない問題であると確信をするのであります。はたしてその問題意識についていかがお考えであるかをお伺いいたしたい。
 中小企業、農林漁業関係、いわゆるおくれた産業についての問題であります。この格差をいかんともしがたい、中期経済計画でも、どうにもならないと言っている。昭和三十年と三十七年との農業と非農業との関係を見ても、非農業に対してわずか二九%程度、農業がだんだんとその生産指数においてもおくれてきている。所得においてもおくれてきている。これは明らかに、高度経済成長、所得倍増計画の、その政策の転換を見なければならないところであります。対症療法のみならず、この基本的問題と取り組んでいただきたいと思うのであるが、財源、財政その他、租税等々の措置を含めて、お答えをいただきたい。
 次に、金融問題であります。今日のこのインフレ傾向、物価高というものは、昨日は大蔵大臣は否定していた、財政金融に何らの手落ちはなかったと言うが、ここに私は認識の間違いがあると思う。通貨の膨張というものは、一挙にして三倍になる。今日、米英加はすでに公定歩合を引き上げて、いよいよ日本は苦しくなってくる。株価についても、いわば管理株価です。反発も出なければ、意欲も出てこない。体質の悪い産業において、いかんともしがたいのが現実じゃありませんか。この通貨なり金融の政策というものが、大きく日本の物価をこのようにいかんともしがたい上昇に導いてきた、ということを認識しながら、今後どのようにこれを持っていくのか。聞くところによると、預金準備率の二分の一の切り下げ、来年の一月になれば公定歩合を下げるのだといったようなことも伝えられております。このようなことを含めてお伺いをいたしたい。
 次に、社会開発のための最高会議を提唱されていたのであります。この点については、法制上これを設ける考えがあるのかどうか、設けるならば、いつなのか。
 次に、物価対策についてであります。物価対策は、以上申し上げた基本的問題の把握がない限り、物価の安定というものは期待しがたい。引き続き公共料金の据え置きをやるかどうか、これも大きな問題である。きのうは衆議院において否定していたが、物の値段が上がれば得をする層もかなりある。物価が上がって、これで非常に喜ぶ者と悲しむ者とがある、喜ぶのは、物をたくさん持っている人が喜ぶ、どんどん人に売る人は喜ぶ。持たない国民大衆は困るのであります。かつて、すでに年間六%、七%上がってきた。一年間の預金金利よりも高く上がってきた。高橋企画庁長官は、ことしは四・二%の当初の計画どおりいくと言うが、十四項目きめた物価対策は何の作用もしなかった。ただ一つ、公共料金を一年間ストップしたということだけが作用したけれども、安定ムードが出てこなかった。ここにおいて、一月から切れるこの公共料金をどうするのか、あるいはケース・バイ・ケースで当たりましょうという。企業の内容自体を中心にこれを論じていくならば、上げざるを得ないと私は思う。公共料金その他を上げるかわりの政府の施策、財政、税制の考えがあって、その基本的な立場からケース・バイ・ケースを考える、というものがなくちゃならぬと思うのであります。これらについて、私はもっと具体的にお伺いをいたしたい。
 次に、貿易関係についてであります。世界の産業の動向をどう見ているか。私は、かつて、予算委員会で佐藤さんにもお伺いしたことがある。日本の産業構造の問題、世界の戦後における特徴、経済の伸び、この中におけるブロック経済の形成、そしてさらに、世界は漸次専業化しつつある。この経済の中において、日本のような自由主義だ、資本主義だといった手放しの状態で、計画があるものやら、ないものやらわからない、こういう形では、いかんともしがたい。せめて基幹産業だけは国有化されているとか――ただ金融で経済の政策というものを支配しようという実態なのであります。そこに無理がある。こういう状態におきましては、貿易について先行きは長い目で見てそう明るくはない。当面、外貨は黒字に転換したというが、これは無理な輸出がかなりあると思う。輸入在庫を食いつぶしていると思う。来年の一――三月の季節的なものを考えてみると、私は非常に悲観的なのであります。これらの状態の中において、わが国は、資源の乏しい、資本の非常に乏しい、金利の商い、ただ労働賃金が安いというだけ、こういういわば立地条件にあるわが国の国際貿易については、特段の努力を必要といたします。特にアメリカあるいは欧州における差別的条件、差別的なこの貿易待遇に対して、なぜもっと積極的に働きかけをしないのか。対米貿易はずっと引き続き大きな片貿易になっている。そうして差別はだんだん強化されてくる。こういうことに対する制限緩和の政策というものを具体的にどうやっていこうとするのか、特に経済に詳しいであろう佐藤総理大臣にお伺いをいたしたいのであります。
 次に、四十年度予算編成方針について、その基本方針はどうか。減税は三千億やると、佐藤さんは、かつて七月に言った。あるいは、ひずみ是正、社会開発等を含めて、予算について基本的なものだけはぜひここで承っておきたいと思います。
 最後に憲法改正です。佐藤さんは総理就任直前に、ル・モンド紙、これはフランスですが、そのロベール・ギランという人に会われております。この会見におきまして、どういうことを言っておるか、これはル・モンド紙に出ておりまして、さきに佐藤新首相と会見した際ですから、総理になられてからの話です。「彼は、総理になったら、自民党の宣伝活動再編成と選挙制度改正により、議会の三分の二を制する意向を表明した。これに成功すれば、彼は警察力の強化と韓国との国交、自衛隊の増強など、これまで左翼にはばまれていた措置を断行し、憲法を改正する」と、こう書いてある。これは報道であります。このような意図を持ち、憲法調査会の報告を受けた後における新内閣は、憲法についていかなる態度をとるのか、お伺いをいたしたい。これには選挙法改正を含めてお伺いをしたい。そうして今日、行政機構改革の抜本的なものが臨時行政調査会において答申されているのに、増原国務大臣の談話を見ていると、どうにもならない縄張り根性、権限の非常な争い、国民にとっては無縁な――このことによって行政機構の改革ができないというふうに聞いております。これに対して佐藤総理大臣の御所見を具体的にお伺いいたしまして、私の質問をひとまず終わり、時間があれば再質問を保留いたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(佐藤榮作君) 外交政策と中国問題につきましてお答えしたいと思います。
 中共の核実験、フルシチョフ政権の交代、あるいは英国労働党の勝利、また最近のドゴール発言、こういうように、国際情勢は、御承知のとおり、いろいろと流動はしております。しかし、国際政局の基調は、基本は、平和共存に変わりはないと思います。多角化しながらも、この目標の達成に努力を続けているのが現状でございます。ただ、世界の緊張で今日アジアに集約されている、こういう現状にかんがみまして、アジアの安定と繁栄、そのために、国連の場を通じ、また、あらゆる場合に、われわれが積極的に発言をしてまいりたい、かような考え方を持っております。
 中共問題につきましては、今日、池田内閣当時と同様、政経分離の原則に立ちまして、貿易その他、事実上の接触を続けてまいる考えであります。LT方式も従前同様でございます。本年と昨年を比べてみますると、中共に対する貿易は二倍以上になっております。ただいまの御指摘のとおりでございます。この関係は従前同様続けてまいる考えでございまして、今日も変わりはございません。
 中共の国連加盟問題につきましては、来たるべき国連総会においてどのような成り行きになるか、ただいまのところでは推測しがたい状態にあると考えます。その点で、官房長官の談話などをお引き合いに出されましたが、これが佐藤内閣の基本的態度でありますから、その点誤解のないように願っておきたいと思います。したがいまして、従来のわが国の態度を今日変えるような考えはございません。はっきり申しておきます。
 彭直代表団の入国を拒否した問題でございますが、これは昨日も衆議院で御答弁申しましたとおり、政経分離、このたてまえから行なったものでございます。
 米ソ日中間の不可侵条約の締結云々という御提案につきましては、関係諸国間の相互信頼と理解が、藤田議員もごらんのとおり、ただいまのところでは不十分であると思いますので、したがいまして、わが国の安全保障の体制は、真に東西間の緊張が解け、相互信頼が達成されるまでは、日米安保体制を堅持することが当然の道であると確信いたす次第でございます。
 次の核兵器については、安保条約の交換公文で、これは事前協議の対象になっております。しかし、日本政府は、御承知のように、前々代から、この核兵器を持ち込むことについては、かたくこれを拒む方針を堅持しておりますので、あらためてこの点は協定の必要はないと、かように考えております。
 次に、日韓関係について申し上げます。日韓関係――隣りの国、韓国であります。その意味で、両国国民大多数の方々が日韓関係を早期に妥結しろという、これは願望でございます。もちろん、御指摘になりましたような漁業問題であるとか、あるいは竹島問題であるとか、なかなか困難な問題もあるようでございますが、これはどこまでも相互の信頼に基づきまして、そうして国民の納得いくような線でこれを妥結したいと、かように考えております。椎名外相が韓国を訪問すると、こういうことがいわれておりますが、まだはっきりはいたしておりません。もちろん、そういう場合は、椎名外務大臣は親善使節で参るのでございまして、いわゆる謝罪特使、かようなものではございません。また、日韓両国の正常化は、南北問題についてその統一が問題になっておる際に、それを阻害するものだ、かような見方もあるようでありますが、政府は、かような見方はとっておりません。したがいまして、日韓妥結は、統一の問題に悪影響を与えるものだとは思っておりません。
 沖繩問題につきまして、るるお尋ねがございましたが、沖繩問題は、御承知のようにアメリカは潜在主権を認めております。ただいまこの施政権の返還の問題で、あらゆる機会に政府はこれを要望しております。早期実現を期したい気持ちでございますが、しかし、この問題よりも、現状におきましては、その沖繩の経済力、社会的水準の向上、あるいは御指摘になりました自治権の拡大など、住民の要望実現に、積極的に取り組んでいくほうが、今日の実情に合うものだ、かように考えて、過日も松岡主席ともさような意味の話し合いをいたしました。
 次に、経済政策につきましてお尋ねがございましたのでお答えいたしますが、前内閣の高度経済成長は、その意味におきましては確かに成功した部面もございます。御承知のように、雇用は増大して生活水準も上がった、また、国際的地位も改善された、多大の成果を見たものだと思います。しかし、その反面、消費者物価の上昇であるとか、あるいは農業、中小企業など、低い生産性部門の近代化の立ちおくれや、過密都市の問題、公害問題、住宅問題などの不均衡が生じてまいったことは、否定できません。したがいまして、今後国際収支の均衡と消費者物価の安定を中心に、経済開発と社会開発を適切かつ強力に推進して、調和のとれた安定体制の実現に特に力を入れてまいりたいと思います。
 問題は、今日必要なことは、安定成長だと、かように考えております。中小企業、農林漁業などの格差是正につきましても、自立経営の育成強化、中小企業の資本装備の向上を一段とはかるとともに、生活環境の整備、社会保障費の拡充、教育、職業訓練の充実、公害防止対策、社会開発のための施設を進めてまいる所存であります。
 この場合に一番問題になりますのは、経済自身は動いておるものでございます。したがいまして、これに急激な変更を加えることは、経済自身にとりまして悪影響を及ぼすもので、私どもはそれはとらない。長い目で経済を安定成長の方向へ導いていく、そのための社会開発の諸施策をこれと並行してやっていく、これが最も大事なことだと思います。財政上の理由でそれがはたしてできるか、あるいは中期経済政策に対してはどういうように考えているか、こういう具体的なお尋ねがございましたが、これなどは、ただいま申し上げておる経済自身がそう短い期間に変わるものでないということ、これを御承知願って、そうして私どもの経済成長の方向、これは安定経済への道をたどっていくのだ、そうして、そのために必要な社会開発も、財政面の許す範囲においてこれを続けてまいりたい、かように考えておりますので、御了承いただきたい。
 金融政策につきましては、詳細は大蔵大臣から答弁させますが、基本的な考え方を申せば、国際収支について、世界景気の動向や、先般の英国の緊急措置、英米の公定歩合の引き上げなど、なお不確定な要素もあり、また、生産投資の増高によって再び輸入増加のおそれもありますので、したがって、開放体制下にふさわしい安定的な基調を固めていくためには、経済全般がさらに落ちつきを見せる合理的な経営態度が浸透していくように指導してまいりたいと思います。今日、政府は、この暮れの金融に対しては、特段の処置を講ずる決意でございますが、さらに長期の問題になりましては、来年度予算編成の場合にも十分これを考慮いたしまして、そうして今後の経済の進め方、これは慎重に取り組んでまいる考え方でございます。
 物価対策は、今日当面する最も重大な問題でございます。これにつきましても関係閣僚から詳細に御説明いたします。
 また、社会開発審議会を法制化するかどうか、こういうことでございましたが、ただいまは法制化するつもりはございません。各界各層の意見を十分聞き取り得るような、もっと肩のこらないものにしてまいりたいと思っております。
 貿易振興対策につきましては、これは通産大臣から御説明申し上げることにいたしますが、問題は、わが国の貿易振興対策は同時に各国の繁栄に通じるものである、特に東南アジアや後進地域の発展に寄与するものでなくてはならないものと信じます。こういう観点に立ちまして、今日なおわが国に対し差別待遇を行なっておられる西欧諸国に対しましては、強力にこれが撤廃を交渉してまいりたいと思います。これがいわゆる自主外交の一つのたてまえでもあります。貿易は、私が申すまでもなく、相互平等の原則に立つものでありますので、よく話し合えば、このことは実現するのではないかと期待いたしております。
 次は、憲法の改正問題でございます。憲法の改正問題については、ただいまル・モンドの記者の報道を引用なさいまして、たいへん誤解があるようでございますので、はっきり申し上げてみたいと思います。この憲法問題は、これこそ私が申し上げるまでもなく、直接国政の基本にかかる問題でございます。まことに重大な問題でございます。改正の要ありや、あるいは不要なりや、こういうことは、十二分に国民多数の動向を見きわめることが必要である、これは申すまでもありません。政府といたしましても、憲法調査会の報告書や、その他関係資料を整理させて、国民各位が広く関心を持たれるように努力したいと考えます。したがいまして、現段階で憲法改正というような決意はいたしておりませんから、ただいま論議されております選挙法改正なども、かような意味で、目的的な改正などする考えは毛頭ございません。御了承いただいておきます。
 行政機構改革につきましては、いずれにいたしましても、これはたいへん広範であり、こうかんであり、なかなか困難な問題でございます。しかし、政府といたしましては、臨時行政調査会から提出されました行政改革に関する意見を尊重するたてまえで、目下行政改革本部においてその審議を進めております。結論を得次第、これが実現をはかっていくつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(田中角榮君) 財政金融政策と物価の問題に対しての御質問がございました。財政金融政策と物価との関連が密接であることは御指摘のとおりでございます。また、自由民主党内閣といたしましては、池田内閣に引き続きまして、佐藤内閣においても、財政金融の健全化をはかりながら物価の抑制をはかっていくという基本的な方針をとっておることは、御理解いただきたいと思うわけでございます。
 なお、財政政策が景気を刺激してはならないという基本については、御指摘のとおり私たちも考え、それを守って今日まで参ったわけでございます。財政が少し積極過ぎたために高度成長が起こり、物価が上がったという御議論につきましては、御承知のとおり、昭和三十六年度は、対前年度比一般会計の伸びは二二・六%であります。また、三七年は二二・四%増しであります。三十八年は一七・四%に削減せられ、御承知の今年度は一四・二%に削減をしておるのであります。三十六年度と三十九年度を比較をしてみますと、少なくとも二二%台から一四%台までに削減をせられておる事実を御承知いただきたいと思います。同時に、国民側から見ますと、財政支出の需要は非常に激しいということも御承知いただけると思います。こういう中において健全均衡の基本的な態度を貫いてまいっておるわけでございますので、財政政策が健全性を欠くために物価に対して悪い影響をなしたという御指摘は当たらないわけであります。
 なお、金融の手直し論についての御質問がございました。御承知のとおり、昨年の十二月より一年間にわたって金融調整を行なっております。この金融調整は三つの目標をもって行なっておるものでございます。開放経済に向かいまして国際収支の長期安定、もう一つは物価の安定、もう一つは正常な経済成長の確保――いわゆる安定成長の確保の三点を目標として、今日まで調整を続けてまいったわけでございます。御承知のとおり、一部においては金融緩和の考え方もございます。国際収支は、七月――八月には経常収支も均衡し、また、十二月までの輸出期を見ますと、国際収支も安定的な方向にあることも御承知のとおりでございますが、総理大臣から申し上げたとおり、輸入も高水準にございますし、原材料在庫率が非常に低水準にある。また、成長率も七%――実質成長率が御承知のとおり現在でも一〇%をこしておる状態でございます。加えて、昨日の報道のとおり、米英の公定歩合の引き上げ等不確定要素もございますので、現在直ちに引き締めを全面的に解除するという基本的な条件がそろっておらないということも、御承知いただけると思うわけでございます。しかし、先ほど総理が申されたとおり、年末金融その他ひずみの解消の分については、遺憾なき処置をとってまいるつもりでございます。公定歩合の引き下げ等を行なわれる場合は、資金需要が平常化し、金利引き下げを行なっても経済の行き過ぎが生ぜず、国際収支が再び逆調に転じないというめどをつけたときに行なう、という考え方をとっておるわけでございます。
 第二点の国際収支の長期安定策につきましては、御指摘のとおり、健全均衡財政、また財政、金融の一体化、輸出の振興等、万全の処置をとり、長期安定的な施策を講じてまいるつもりでございます。
 第三点の減税でございますが、この減税に対しては、御承知のとおり、いま税制調査会で答申を急いでおりますので、この答申を待ち、政府としましては答申尊重の基本的姿勢でまいりたいと存じます。経済が安定成長に入りましたので、財源確保もいままでのように大幅な自然増収を見込むことはできないことでございますが、減税政策は引き続いて行なってまいりたい考えでございます。減税を含め、ひずみの是正、社会開発等、限られた財源の中にも重点的に配慮をし、施策の徹底を期してまいりたいと考えます。
 最後に、中小企業、農業等、高度成長の過程において、より積極的に施策を行なわなければならない部面に対しては、重点的施策を行なってまいるつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣高橋衛君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(高橋衛君) お答えいたします。
 今年の一月に十四項目の物価対策をきめまして、それを各省庁において着実に実施してまいりました結果、藤田さんも御承知のとおり、今年度の上半期、すなわち四月から九月に至る期間においては、三・二%の上昇にとどまった次第でございます。これは、昨年同期の八・一%に比べますれば、非常に安定的な傾向に向かったということは御了承願えると存じます。しかしながら、これから後の物価については、なお相当懸念すべき点がございます。したがって、先般消費者米価の引き上げを決定いたしました際におきましても、ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げましたとおり、財政、金融一体化のもとに、健全均衡の線を堅持するという考え方のもとに、国民の一般的な需要の増大をできるだけ抑制し、また同時に、先般、年末年始に対するところの生鮮食料品の物価対策もきめまして、当初の目標であるところの四・二%の線に何とか落ちつけたいという考え方のもとに鋭意努力をしておるところでございます。もちろん、物価は、経済各活動の結果でございまして、見通しはその方向に向かってあらゆる政策的な努力をするという目標でございます。しかしながら、とにかくその目標に向かってあらゆる努力を集中していきたい、かように考えておることをお答え申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(赤城宗徳君) 日韓の漁業交渉を前にやったときに、専管水域十二海里、これをきめて、その外へ共同規制区域を設けようという話し合いをいたしました。しかし、十二海里の専管水域の基線の引き方等がまとまりませんでしたので、その外に規制区域を設けるという話し合いは、深入りをしないで、そのままになっているわけでございます。規制区域につきましては、ほかの国等の例もありますので、共同規制区域を設けるということの話し合いはしましたけれども、これは専管水域の基線の引き方が、まず、きまりませんで、共同規制区域のほうの話は深入りしませんで、話がまとまっておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(重宗雄三君) 山本伊三郎君。
   〔山本伊三郎君登壇、拍手〕
#16
○山本伊三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、去る二十一日、本院において行なわれました佐藤総理大臣の演説に対しまして、若干の質問を申し上げたいと存じます。
 この二十一日の佐藤総理の演説につきましては、私も当初非常に期待をしておりました。池田さんのあとを追うたということはわかりますけれども、日本のいまの政治、内政、外交の実情から申しましても、特に経済的問題では、もう十カ月も金融引き締めによりまして、各方面に大きな打撃を与えております。これをどう転換する施策を具体的に演説されるかと期待しておりましたが、その内容はきわめて抽象的であります。具体性がちっともございません。時間が制約されておりますから、きわめて具体的にお尋ねいたしますので、総理も具体的にお答えを願いたいと存じます。
 まず第一に、国際収支の問題であります。いうまでもなく、国際収支は、わが国のごとく資源に乏しい国の経済の運営には最も基本的な問題であります。この問題に対して、総理の演説の中に言われたことは、きわめて抽象的で、われわれとしてきわめて悲観をする内容であります。ちょっとそれを読んでみますと、総理はこういう演説をされております。「最近の経済動向を見ますと、景気調整策の効果がようやく経済の各分野に浸透し、国内経済が落ちつきを取り戻し、国際収支も次第に改善の方向に向かっております。私は、政府が国民各位の協力を得つつ、今後も適切な調整措置を忍耐強く続けてゆく」云々であります。これだけであります。なお、大蔵大臣はこれに補足して若干深く演説をしておりますけれども、これでは一体どういう施策をするのか。調整政策を忍耐強くやる――国民は一体これからとうなるのか。決してこれは理解できません。しかも、その文言からあらわれてくるものは、きわめて楽観的な観察であります。しかし、われわれはこのような楽観的な考え方を持っておりません。なるほど政府の指摘したように、国際収支の帳じりだけを見ると、本年七月、初めて数カ年ぶりに、貿易収支は、わずかであるけれども黒字になったことは事実であります。こえて八月には経常収支も黒字になったことは認めます。しかし、国際収支の帳じりはそうでありますけれども、わが国の経済の実態の動きはそのようになっておりません。たとえば、鉱工業の生産指数を見ましても、前年度同月比で、五月では一三七・五に対し、本年は一六五とのぼっております。六月においても一三八・三に対して一六八・四であります。その後八月まで同様に二〇%も上昇しているのであります。池田内閣が三十九年度当初見込みました経済成長実質七%、名目で九・七%を、はるかに上回ることは事実であります。先ほど大蔵大臣もちょっとお答えになっておったようでありますが、高度経済成長、安定成長にすると、先ほど総理大臣が言われましたけれども、実態はそうではない。この数字は一体どう考えて答弁されたか、私は理解に苦しむのであります。
 一方、輸出が輸入を上回って、貿易収支に黒字を生じたというけれども、しからば、原材料の輸入分の在庫率を見ますと、きわめて低水準であります。これも大蔵大臣は答弁に述べておりますけれども、言いかえれば、輸入がある程度押えられているということは、高度経済成長が抑えているのではなくして、輸入分を食いつぶして、日本の経済を支えて、高度成長を続けているということに数字の上ではなっているが、この点について政府はどう考えておられるか、この点をはっきりと答弁をしていただきたいのであります。先ほど同僚藤田議員に対する答弁を聞いておりますと、きわめて納得のできない抽象的な答弁でありますから、今後、日本の経済が国際収支を通じてどう動いていくのか、この点をはっきり見解を申し述べていただきたいのであります。
 そこで、具体的に一つお聞きいたします。このような政府と私の見解が違いますが、総理の演説からすると、国際収支は楽観的であるので、適当な時期、一般財界が見通している来年二月ごろまでに公定歩合の引き下げを断行するのかどうか。
 二といたしまして、もし公定歩合の引き下げまでできないとすると、本日の新聞に載っておりましたけれども、その他の方法によって金融引き締めの緩和を考えているのかどうか、これが第二であります。
 三といたしまして、このいずれの方法でも金融引き締めの緩和をしないとするならば、この金融引き締めによって、そのしわ寄せで倒産が続いている中小企業に対しては、どう対処するか。政府はこれに対して年末に融資をしてこれを切り抜けようと言っているけれども、そういうことでは根本的にこの金融引き締め下において中小企業の倒産を防ぐことはできないので、この点についてどういう基本的な態度を持っているか、この点をお聞きいたしたいのであります。
 四として、政府の金融政策の不手ぎわから、株価が長期に低迷をしております。政府、自民党の好む自由主義経済の舵手としての役目を果たしている証券市場に対する対策を、どう考えているか、この点もひとつ具体的に御答弁をお願いしたいのであります。
 第二に、物価の問題で若干お尋ねいたします。
 先ほどこの問題についてもお答えがあったようでございますが、私にはどうも納得できません。総理の演説の中にも、物価対策について相当強調されております。それはただ、流通機構の改善とか、中小企業の生産性の近代化とか、公正な価格形成の条件整備とか、きわめて抽象的な文言でありますが、今日の生鮮食料品にいたしましても、農家は安い値段で出荷をしております。消費者は高い値段で買っております。こういう現状をどうして改めるか。河野さんが農林大臣のときだと私は思いますが、築地の魚河岸市場を長靴で視察されました。まことに殊勝な姿であると私は思っておりました。それからもうすでに三年になります。政府がいつも流通機構の改善といいながら、その実効は一つもあがっておらない。今回も、総理は流通機構の改善というが、それは政治家の一つの国民に対するゼスチュアであっては、国民は迷惑であります。(拍手)そこで、次の具体的な質問にお答えをお願いしたいと思います。消費者物価指数を見ると、本年八月現在では、先ほど経企長官が言われましたように、なるほど、本年四月と比較すると、三・一%の上昇であります。しかし、今後の第三・四半期以降の物価の動き、また政府が決定した消費者米価の大幅引き上げ、また引き続いて行なわれるであろう公共料金の一斉引き上げによって、三十九年度の消費者物価は、私が試算いたしますると、一昨年を上回って一〇%に近づくのではないかという憂いを持っております。これは私だけではございません。国民全部が不安に襲われておりますので、消費者米価が引き上げられても、公共料金が引き上げられても、四・二%の最初の計画でおさまるのだという具体的な数字をもって、本会議場で説明をしていただきたい。そうでなければ、国民は決して納得はいたしません。
 次に、第三といたしまして、医療費問題でお尋ねいたしたいと思います。
 これは物価問題とも関係いたしますが、医療費の問題は、今日、経済的な問題と同時に社会的な問題になりつつございます。現在、国民の総医療費は九千三百億円といわれております。すでに一兆円に達せんとしております。国民所得と比較いたしますると、すでに五%に近づいております。このことは、単に医療関係者と支払い団体との論議では済みません。国民全体の問題であり、国家財政にも大きく響くものであります。したがって、政府に対し、次の点を具体的にお尋ねいたします。
 一、今年四月十八日、中央医療協が緊急是正として八%の診療費の値上げを答申いたしました。政府はこれを無視して、みずから九・五%の引き上げを認めたのであります。これは政府みずから医療費決定のルールを破っておるのではないかと思います。政府は、常に、労働問題については、第三者機関の調停、裁定を守ることがルールであると言っておる。今回は政府みずからそのルールを破ったことは、佐藤内閣の今後の施策上に重大な前例を残したことであるから、佐藤総理の責任ある答弁を求めます。
 第二といたしまして、この医療費の問題は、過去数年間、医師会側と支払い団体の間で紛争を重ねていることは御存じのとおりであります。われわれも両者の主張をよく聞いております。医師会側は、今日の診療費ではとても経営ができないと主張し、支払い側は、必要な診療費は当然支払わなければならないが、今日の診療は適正な診療でなく、過剰診療もあり、また、不正とは言わないが、間違った請求もあると思われると主張しております。そこで、政府は、特に厚生省は、両者の立場に立って、必要な医師の診療調査または監査がなされるべきであると思うが、今日まで実施されたかどうか、この点をひとつ具体的に御答弁を願いたいと存じます。しかも、今回政府みずから八%を上回って九・五%の引き上げを認めた以上、必ずそれらの調査をやった後で態度をきめられたと思いますが、この点の答弁を、その調査の実態と、どういう実態であったか、いつどこで実施したか、これは厚生大臣から聞きたいのであります。
 第四点として、公務員の給与の問題で質問いたします。まず、人事院総裁に聞きます。人事院の今回の勧告は、民間給与との格差は八・五%と勧告されているが、実際には、本年の民間のいわゆる春闘がおくれて妥結したところが多いので、人事院の四月現在の調査では、民間春闘の結果の数字はこの格差の中に入っておらない。したがって、もしこれらを含めるとするならば、当然民間との格差は八・五%をはるかに上回るものとわれわれは思うが、この点、人事院総裁はどういう考えでおられるか、その点をお聞きいたします。
 次に、人事院総裁は、八月十四日の内閣委員会で、人事院勧告は公労委の仲裁裁定にも相当するものであるから、人事院勧告どおり五月から実施すべきであると答えられたが、この点、もう一度人事院当局の見解をお聞かせ願いたいと存じます。
 次に、政府にお聞きいたします。政府は、過去四回とも人事院勧告の五月実施を十月に延ばしております。本年は九月から実施すると言っているが、公務員の現状は、労働三権も奪われ、手かせ足かせをされた公務員労働者に対し、なぜせめて人事院の勧告すら完全実施をできないのかどうか、この点は佐藤総理にお聞きしたいのであります。
 次に、地方公務員に対する財源措置についてただしたいと思います。今日、地方自治体の現状は、なべて財政が困窮しております。佐藤総理は、その演説の中で、はしなくも社会開発を取り上げて、これを政治の基調にしたいと言われました。その社会開発の内容のすべての事業は、ほとんど地方自治体の行政分野であります。たとえば文教、文化しかり、都市清掃をはじめ、生活環境の問題しかり、その他、福利厚生に関するほとんどを、政府は地方自治体になさしめているのであります。しかるに、政府は、一般これらの事業に対しての財源措置は、従来とも、きわめて冷淡であったのであります。今回それらの事業を遂行する地方公務員に対して財源措置をしないというに至っては、もう言語道断であります。佐藤総理の社会開発のうたい文句も宙に浮いてしまうと思うが、総理の見解をお聞きしたいのであります。しかも、この財源措置については、今回は大蔵大臣と自治大臣の話し合いで、百五十億を資金運用部資金から交付税特別会計に貸し入れをしようと、こういうことでありますが、これはもってのほかであります。地方交付税法の違反でありまして、違法であります。そういうひきょうな手をもって地方公務員の財源措置をしなければならぬという政府の態度、責任を、追及したいのであります。
 最後に、ILO八十七号条約についてちょっと触れておきたいと思います。ILO八十七号条約は、過去六回流産をしております。この原因は、国会審議の過程で流産をしたのではなく、与党内部、すなわち、自民党内部の調整が難航したためであります。さきの国会で問題になった倉石修正案なるものも、われわれは決して満足をして話し合ったものではない。譲歩に譲歩を重ねてきめたものであります。しかるに、それすらも与党内部がまとまらないということは、われわれにはただ闘う以外に残されておらないのであります。この点、佐藤内閣の運命をかけて答弁をしていただきたいのであります。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 国際収支について詳しい資料を持ってお話がございました。今日まで、池田前内閣のもとにおきましても、輸出振興に特に力を入れてまいりました。幸いにして輸出は予期以上に伸びたと申しますか、計画どおり伸展をみまして、国際収支に非常な寄与をいたしたことは、御存じのとおりであります。これが経済見通しにつきまして、私自身が非常に楽観に過ぎているんじゃないか、こういう御指摘でございますが、もちろん私は楽観はしておりませんで、むしろ国民の意欲を高める意味からも、かようないい点は取り上げて、そうして申し上げることがいいのじゃないだろうか。最近の輸入の傾向にいたしましても、大体政府の考えたように進んでおります。しかし、御指摘のごとく、国際貿易の場は各国ともそれぞれの政策をとっております。また今後の輸出競争は相互に非常に激しいものがございますし、あるいは米国あるいは英国等が今回とりました公定歩合の引き上げなどは、これは必ずわが国の輸出につきましてもいろいろな影響を及ぼしてくるだろう、かように考えますので、私ども楽観をしないで、今後の推移を十分見て、そうして適時適切な対策をとる必要があるのではないかと、かように考えます。今日までのところ、貿易外の収支、これは依然として赤字であります。また資本収支におきましても、これまた私どもの想像以上に困難な事態があるようであります。したがいまして、これらのことを全部考えて、そうして国際収支の動向を見、わが国の経済のあるべき姿、いわゆる安定経済への方向で基礎を強固にすることに、一段と努力していかなければならないと思います。この間におきまして、公定歩合、あるいは金融緩和をするかどうか、最近の倒産などはまことに悲惨な状態でございます。また不渡り手形の発行なども多いのでございますので、これがただ経済理論だけで解決のできない、とにかくわれわれが政治家としてこういう事態に真剣に取り組んでこそ、初めて国民の生活も安定するのだ、かように思いますので、私も最近の状況には非常に憂慮しております。今日、年末金融について特段の措置を講ずるように事務当局にも命じ、また金融機関の協力を得るように指示をいたしました。これは必ずいわゆる経済に役立つような見通しになるような方向で、この金は使っていただきたいと思います。わずかな金ではございますが、例年に見ない金額が出てまいった、出すつもりでございますので、これは十分役立つように、経済の健全化に役立つような方向で使いたいものだと思います。
 株価対策などもお尋ねございましたが、証券市場、これこそは経済の基本的な大事なマーケットでございますから、そういう意味で大蔵大臣をはじめ特に力を入れておると思います。その詳細は大蔵大臣から聞いていただきたいと思います。
 また、物価問題について、今日当面しておる消費者物価、それこそは私どもがほんとうに真剣に取り組まなきゃならない問題だと思っております。いままでの作文が作文だけに終わっておる、実行あるのみだ、こういう強い御要望はそのとおりだと思います。私はその十二分の効果が出てこないにいたしましても、一つ一つ真剣にこの物価問題と取り組んでこそ初めて国民の苦労にこたえるものだと、かように思いますので、一そう力をいたすつもりでございます。
 公共料金の引き上げ等につきましても、一年の据え置き期間はこれで経過する、その後に一体どうするのかということでございます。物価の問題を引き下げることは非常に困難であります。私は今後、物価を上げないようにあらゆる努力をしたい。したがって、これがいままでのような高い物価引き上げの率でなくて、その率を引き下げて、できるだけ歩み方をゆるめるとか、あるいはまた今日の状況のもとにおいてもやむを得ないものについてはこれは考慮していく、そうして安定した正常な経済へこれを引き戻す努力をいたします。好ましくないことは、どこまでも生活を守る、健全な生活を守ると、こういう立場で、この物価問題と取り組んでいきたいと思います。
 医療費の問題につきましても、これは御承知のようにたいへん困難な問題であります。今日、結論の出ましたことは、これは勇断を持ってよくやったと、かように私はほめたいのであります。しかしながら、この内容につきましてはいろいの御議論があるだろうと思います。中央医療協議会の審議の経過を見て、その基本的な線を維持して、そうしてこの結論を見たこと、財政的な事情等をもこれに加えて、そうして今回結論が出たこと、これはひとつ各界の方も了承していただきたいと思います。
 人事院勧告について政府の考え方はどうだ。――今回、政府が一カ月繰り上げたことも、これは政府が国民の皆さまに対しても申し上げ得る、忠実に人事院勧告を守る、そのたてまえだということを御理解いただきたいと思います。
 また、地方公務員の給与等につきましても、るるお話がございましたが、これについては、大蔵大臣、地方自治大臣など、たいへん苦労をした問題でございます。その財政的な事情などお聞き取りをいただきたいと思います。
 ILO八十七号の批准の問題は、政府の早期批准という態度に変わりはございません。もちろん野党の諸君の御協力も得たいと思いますが、政府自身が与党と十分意見を調整いたしまして、もうこの調査団も来ることでございますので、ぜひ早期批准、こういう手続の方向へ進めたいものだと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(田中角榮君) 山本さんにお答えいたします。
 国際収支の問題につきましては、総理大臣から基本的にお答えがございましたので、端的に二、三御答弁を申し上げます。
 国際収支に対して基本的に考え方が楽観的であるという御認定でございますが、先ほどから申し上げておりますように、楽観的に考えておるわけでは決してないのでございます。先ほども申し上げましたとおり、不確定要素もたくさんありますので、これらを十分見きわめる必要があるという姿勢をとっておるわけでございます。
 なお、本年七、八月ごろの国際収支の好転について、一体どういう事情で国際収支が好転したのか、また、これが永続性があるのかという御質問でございます。御承知のとおり、昨年の十二月から調整過程を続けております。これがために輸出が刺激をせられておるということが一つ、海外経済環境の好転によって高い輸出率が維持されておるということが二つ目であります。なお、日本の企業が国際競争力がついておるということも第三点に指摘せられるわけでございます。が、しかし、このような状態に加えて、輸入も高水準ながら落ちついておるということも、七、八月の貿易収支及び経常収支のバランスがとれた原因であると思うわけでございます。しかし、いずれにしましても、これを永続的にしなければならない、国際収支を拡大しながら長期安定路線にのせなければならないということで、長い間の調整過程を続け、健全均衡財政の基調を続けておるのでございますから、政府はこの問題に真正面から取り組んでおるという姿勢に対しては、御理解をいただきたいと思います。
 公定歩合の引き下げ、金融緩和という問題に対してどう考えるか。これはいま総理大臣の申し述べたとおりでございます。しかし、もし緩和ができない場合、その過程において、泣いている中小企業等のひずみ部門に対してどうするかということでございます。中小企業につきましては、先ほどから十分発表もいたしておりますとおり、引き締め政策の浸透状態を見守るという基本的姿勢ではございますが、倒産等の摩擦というものに対しては、これは万遺憾なき措置をとらなければならないことは当然であります。私は、その意味において、これらのきめのこまかい措置を積極的にとることは、引き締め政策に逆行したり、また、しり抜けになることではない、新しい引き締め施策というものはこうあるべきだという考え方を明らかにさえいたしておるわけでございます。そういう立場におきまして、中小企業につきましては、まず第一に、中小三機関の下半期の貸し出し計画を大幅に増加改定を行なっております。資金運用部資金等で御承知の市中金融債を買い上げるものが五百億、なお貸し出し規模を八百億に増加をしておることがございます。第二には、日本銀行が十二月に買いオペレーションを二千二百億実施するということにいたしております。それから日本銀行の都市銀行に対する年末の貸し出し限度額は、昨年度は二〇%増しでございましたが、今年度は三〇%増し、これは基礎金額が約九千億といいますから、大体増加額は三千億に近い大幅な貸し出しワクの増加となっているわけでございます。なお、そのほかに、民間金融機関につきましても、多過ぎるのではないかとさえ一部に言われておりますが、十二月末までの融資ワクを拡大するように考えておるわけであります。このような措置をとってひずみの部門に対しては遺憾なき措置をとりたい、こう考えておるわけであります。
 株価対策についてでございますが、株価対策については、もう申し上げるまでもなく、開放経済に向かっての重要な問題でございます。産業資金はいかにしてどこから調達するか、言うまでもなく、金融という間接調達の方法、もう一つ残るのは、直接調達の道であります公社債市場による長期安定的な資金を得る方法、もう一つは、証券の発行によって得るしかないのであります。高度成長を続けている日本の現状、また、高度成長を続ける過程において、ひずみを解消しなければならないという実情、このような事実を前提にして考えますときに、産業資金を確保しなければならないということは、もう喫緊の問題であります。その証券市場が不振である、非正常であるということも事実でございますので、過般からとられておりますとおり、共同証券を使ったり、また日銀が今度日証金を通じて直接の融資をするとか、種々な施策をとっているわけでありまして、政府は引き続いて証券市場の拡大強化のために諸般の施策を行なってまいるつもりでございます。
 最後に、地方公務員の給与改定の問題でございますが、これはいま非常に私たちは、特に私は、よくやったと思っておるのですが、山本さんはどうもあまりうまくないというお話でございます。これはしかし、今度の成長が、いま山本さん御指摘になられたとおり、調整政策を続けている過程において、政府が安定成長として考えましたものは、実質七%成長であります。それでも山本さんは高いと言われているのであります。国際収支の長期安定のためには、もっと健全財政をやらなければいかぬ、こう言われているのでありますが、一部にひずみが出ている、金融緩和論が出ているにもかかわらず、御承知の、現在の成長率は実質一〇%をこしているのであります。そういう段階においてさえも、税収は下降ぎみになっているではありませんか。ですから、税収のないのは、あに地方財政のみならんや、国も地方も非常に困難な財政事情の中に、十月一日実施を一カ月繰り上げようという姿勢も、十分御理解賜わりたい。そういう立場の中で、交付団体が所要する資金の総額は四百五十億であります。このうち国の節約による地方負担減五十億、地方税の増収六十一億、経費節減可能額三十億、国税三税の補正に伴う地方交付税の増百五十九億、計三百億、残りの百五十億を全部財政資金をもってまかなうというのでありますから、これ以上の誠意は、とてもなかなか、どなたがおやりになってもないわけでありまして、これはひとつぜひ御賛成賜わりたいと考えます。(拍手)
   〔国務大臣高橋衛君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(高橋衛君) 物価に関する基本的な方針につきましては、総理からお答えがございましたので省略いたします。
 御質問の要旨は、本年度見通しのとおり四・二%にとどめ得るかどうかという点にあったように思いますので、その点についてお答え申し上げます。先ほどもお答え申しましたとおり、上半期四月から九月までの分については、三・二%であったということは申し上げたとおりでございます。そこで下半期の問題でございますが、先般、消費者米価の引き上げを一四・八%と決定をいたしました。これが物価に及ぼす影響は、ウエートが七・二五%でございますので、大体一%程度に当たる次第でございます。来年の一月からの実施でございますから、三ヵ月分といたしまして〇・二五%に相当するのでございます。なお、診療報酬の改定も行なわれることに相なっておりますので、これも内容のいかんによって、影響はまだ確定はいたしませんが、多少の影響があることは、これは申し上げるまでもございません。ところで、問題は、十一月から十二月にかけましては、季節的に大体野菜の値段が下がる時期に当たっておるのでございます。これが今後どういうふうな傾向をたどるかということは、私どもも懸念しておるところでございます。
 ところで、一方、公共料金につきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、一年間の据え置き措置を今後引き続き強行するということはなすべきでないと考えておりますけれども、しかし、期限経過後におきましても、ケース・バイ・ケースに、一々経済閣僚懇談会にかけて、これを決定していこうというふうな、非常な慎重な態度をとりまして、全体の物価ともにらみ合わせ、また各企業の経営内容を十分に調査した上で、時期、幅等を決定していくと、かような慎重な態度をもって臨んでいきたいと、かように考えておる次第でございます。
 したがって、ただいまのところ、先ほども申しましたとおり、物価は、民間の個人消費も含めまして、各種経済活動の総合的な結果として出てくる問題でございますから、これはなかなかむずかしい問題ではございますが、ただいまの段階においては当初見通しを確保できると、かように考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣神田博君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(神田博君) 山本さんにお答えいたします。
 お尋ねが二つあったように思っておりますが、第一の点は、総理からお答えのとおりでございますので、省略いたします。
 第二の、保険医療担当者に対する監査の状況についてどうなっているか、こういうお尋ねでございました。昭和三十八年度におきまして、医療機関に対するものが六十八件、保険医に対するものが八十二件になっております。監査の結果、不正または不当が確認されたものにつきましては、その事実の軽重に従いまして、指定の取り消し、戒告または注意の行政措置をいたしております。この状況については、おおむね次のとおりでございます。
 保険医療機関については、取り消しが四十三件、戒告が九件、注意が七件でございます。保険医については、取り消しが三十九件、戒告が二件、注意が六件になっております。また、保険医療機関における間違いを防ぐために、集団指導及び個別指導を行なっております。その状況につきましては、保険医療機関に対する個別指導は七千八十三件、集団指導が四万三千七百三十四件、それから保険医に対する個別指導が九千七百二十一件、集団指導が四万九千五百八十件ということになっております。
 なお、将来とも十分この監督指導をいたしまして、保険診療の適正化を期していきたい、こういう考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣増原恵吉君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(増原恵吉君) 給与改定につきましては、人事院の勧告どおり、内容のみならず、実施時期についても、なぜ五月一日から実施ができなかったかという問題でございます。この点は、総理及び大蔵大臣からお答えをいたしたとおりでございます。政府といたしましては、公務員の労働三権が制限規制をされておることに対応する措置としての人事院勧告でございまするから、これを尊重をするたてまえをあくまで貫きたかったのでございますが、大蔵大臣よりも申し上げましたとおり、財政上の理由によりまして、全面的な実施をすることはできなかったのでございます。しかし、十月実施を例としましたものを九月に引き上げましたことによって、百億足らず、さらに困難な財政事情の中でこれを敢行したわけでございます。これについて、政府の人事院勧告を尊重する趣旨は、十分に御理解を賜わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣吉武恵市君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(吉武恵市君) 山本さんの御質問にお答えを申し上げます。
 今回の地方公務員の給与改定に伴いまする所要経費は、先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたように四百五十億――これは給与、諸手当を含めてでございます。その財源措置といたしましては、地方交付税の自然増収分が百五十九億で、地方税の自然増収分が六十億でございまして、なお、節約といたしまして、国の公共事業費の節約に伴う地方公共団体分が五十億と、旅費その他の節約分三十億で、差し引きますと百五十億ほど不足をいたしましたので、今回、地方交付税の特別会計に政府資金を一時借り入れまして、それを充当したわけでございます。で、その返済は五年間にわたり、利子は国が持つと、こういうふうにしたわけでございます。したがいまして、これで地方公共団体の給与財源の措置としては一応できるかと思います。将来、地方財政の苦しい現状をもかんがみまして、できるだけの努力は払っていくつもりでございます。(拍手)
   〔政府委員佐藤達夫君登壇、拍手〕
#23
○政府委員(佐藤達夫君) 人事院に対しましての御質問の第一点は、ことしの春闘と本年の給与勧告との関係についてでございます。御承知のとおりに、人事院の民間給与調査は一年に一回やっておりまして、これがきわめて長期間の準備を要しまする大規模な調査であります関係上、この調査をその年その年の春闘の時期にうまく合わせていくということは、実はこれは不可能なことでございます。したがいまして、このたてまえから申しますというと、率直に申しまして、その間に若干のズレを生ずるということは、これは否定できないと存じます。しかしながら、本年の場合におきましては、春闘が例年に比べまして相当におくれましたことは顕著な事実でございます。したがいまして、本年の私どもの報告の中にも、特にそのことをうたいましたわけでありますが、同時に、私どもといたしましては、関連調査におきまして極力そのおくれ分をとらえることにいたしまして、そうして、これを十分考慮に入れて勧告を策定したつもりでおる次第でございます。
 次に、仲裁裁定との関連において勧告の効力というようなことにつきましてお尋ねがございました。この公務員関係の人事院勧告と公労委の仲裁裁定との面におきましては、それぞれ法律が違います関係上、手続もまた相当に違っており、条文の表現も相違のあることは申すまでもございませんが、しかしながら、この人事院勧告の本質をとらえてみますというと、これはもう申し上げるまでもなく、公務員の労働基本権に対する代償の機能だということで定められております。したがいまして、これが十分に尊重せらるべきことは、その性格、本質及び制度の趣旨から言って、これは当然のことであると考えておるわけであります。なおまた、公労委の関係と対比いたしまして、国家公務員法におきましては、人事院の勧告につきましては、内閣に対しまするほかに、国権の最高機関として最大の権能をお持ちになっておりますこの国会に対しまして、人事院が直接御勧告申し上げるということになっておるわけであります。そういう点から見ましても、法律がこの勧告権を特に重要視しておるということは、明らかであろうと私は考えます。したがいまして、人事院の勧告の効果あるいはその実施につきまして、制度のねらいといたしますところは、仲裁裁定の場合とこれはいささかも径庭はない、また、そのことは当然の条理であろうと、私は考えておる次第であります。(拍手)
#24
○議長(重宗雄三君) 山本君。
   〔山本伊三郎君登壇、拍手〕
#25
○山本伊三郎君 ただいま総理をはじめ各大臣の答弁を聞いておりますと、きわめて矛盾をしております。時間がないので、すべてを申し上げられませんけれども、総理大臣は、いろいろ物価の問題では、これはとにかく上げるのを押える、上げることを避けるということを言っておられます。しかるに、厚生大臣あるいは総理の言われたいろいろの問題にいたしましても、第三者機関の中央医療協が八%で押えなさいと言っているのに九・五%引き上げている。しかるに公務員の給与については、五月から実施しなさいと言うのを、財政の関係でこれは九月からである。きわめて矛盾している政府の答弁が露骨に現われております。私は、いまの政府、総理大臣はじめ各閣僚の答弁に対しましては納得がいきません。いずれまた、予算委員会で追及いたしますが、その点をもう一度総理大臣からお答え願いたい。
 それから吉武自治大臣に申し上げますが、内容がちょっと漏れております。いわゆる資金運用部資金から地方交付税の特別会計に借り入れることは、地方交付税法上、違法であるということを尋ねているのでありますが、その点はどうか。これは漏れておりますので、お願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(佐藤榮作君) いろいろ答弁に矛盾があるということの御指摘ですが、すべてにいろいろの事情がございますし、ことに財政上の問題もございますから、理論どおりにはなかなかまいりません。そこがいわゆる調和でございまして、よろしくお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣吉武恵市君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(吉武恵市君) お答えをいたします。
 地方交付税の特別会計に借り入れるということにつきましては、別途特別の立法をお願いするつもりで準備をしておりますから、御了承いただきたいと思います。(拍手)
#28
○議長(重宗雄三君) 質疑は、なおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 次会は明日午前十時より開会いたします。
 議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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