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1964/12/03 第47回国会 参議院 参議院会議録情報 第047回国会 社会労働委員会 第2号
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1964/12/03 第47回国会 参議院

参議院会議録情報 第047回国会 社会労働委員会 第2号

#1
第047回国会 社会労働委員会 第2号
昭和三十九年十二月三日(木曜日)
  午前十一時十三分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         藤田藤太郎君
    理 事
                鹿島 俊雄君
                丸茂 重貞君
                柳岡 秋夫君
    委 員
                亀井  光君
                紅露 みつ君
                佐藤 芳男君
                竹中 恒夫君
                山下 春江君
                杉山善太郎君
                鈴木  強君
                小平 芳平君
                村尾 重雄君
                林   塩君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  神田  博君
       労 働 大 臣  石田 博英君
   政府委員
       厚生政務次官   徳永 正利君
       厚生大臣官房長  梅本 純正君
       労働政務次官   始関 伊平君
       労働大臣官房長  和田 勝美君
       労働省職業安定
       局長       有馬 元治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        増本 甲吉君
   説明員
       労働省職業安定
       局失業保険課長  道正 邦彦君
       労働省職業安定
       局失業対策部長  住  栄作君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○社会保障制度に関する調査
 (厚生行政の基本方針に関する件)
○労働問題に関する調査
 (労働行政の基本方針に関する件)
 (失業保険に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(藤田藤太郎君) ただいまから開会いたします。
 まず、社会保障制度に関する調査を議題といたします。
 厚生大臣より、厚生行政の基本方針についての所信を聴取いたします。神田厚生大臣。
#3
○国務大臣(神田博君) 第四十七国会における社会労働委員会の御審議に先立ち、この機会に厚生行政の当面する問題につきまして、所信の一端を申し述べたいと存じます。
 まず、医療費の繁急是正については、私は、就任以来、できるだけ円満に解決したいと考え、鋭意努力してきたつもりでありますが、答申以来すでに半年余りを経過しており、もはや実施時期の遷延は許さるべきではないとの判断に基づき、所要経費を補正予算に計上し、すみやかに実施に移す方針といたしました。
 医療費の引上げ幅につきましては、中央社会保険医療協議会の答申及びその基本的考え方を尊重するという態度をとってきたつもりでありますが、いわゆる八%といわれる算定の基礎をしさいに検討いたしますときには、なお多少の修正を加えても差しつかえないと思われる点もあり、これらの点をなるべく現実に即して考えることを基本として、また、一方、各種保険財政もかなり悪化した状態に置かれている実情等から、種々検討した結果、政府としては、九・五%の引き上げを行なうことに決定し、今国会において御審議を願っている補正予算に所要経費四十五億円を計上した次第であります。
 緊急是正として改正を行なう項目については、中央社会保険医療協議会の答申に沿って、原案を同協議会に諮問し、明年一月一日より緊急是正が実施できるよう取り計らう所存であります。
 次に、医療保険の財政状況について申し上げます。最近医療保険は、各制度とも、収支状況が悪化しており、ことに政府管掌健康保険、日雇労働者健康保険は大幅に収支の均衡を失し、また、石炭山健康保険組合等の弱体な健康保険組合の財政も窮状に追い込まれております。このまま推移すれば各制度とも赤字が大幅に増加し、財政上きわめて憂慮すべき状態になるので、今後国庫補助の大幅な増加、その他収支両面にわたって各般の強力な施策を実施し、すみやかに財政の健全化をはかりたいと考えている次第であります。
 国民健康保険については、世帯員の七割給付の実施計画の推進につとめるとともに、最近の医療費支出の増加等に伴って保険財政が窮迫している現状にかんがみ、財政健全化に努力する所存であります。特に近く行なう予定の医療費の緊急是正に伴う被保険者の保険料負担へのはね返り分については、全額国で補助するたてまえでその所要額を今回の補正予算に計上いたしております。
 また、いわゆる一万円年金を主眼とする厚生年金制度の改善につきましては、できるだけ早い機会にその実現を期したいと存じます。
 厚生行政につきましては、以上の問題のほか、国民の保健と福祉の向上をはかるため、当面解決を迫られている問題が少なくありません。御承知のように、いまやわが国の経済的諸水準は急速に西欧先進諸国の域に迫るに至っているのでありますが、このような経済発展は、反面において広範かつ急激な社会変動と、国民生活における変化をもたらしつつあり、経済開発に対し、社会開発の立ちおくれが指摘されております。したがって、今後社会開発を推進し、経済成長に伴うひずみを是正するようつとめるとともに、予防的な社会開発施策を強力に展開することにその重点を置く必要があると考えるのであります。このような意味におきまして、国民生活の基盤である生活環境の整備、国民の保健衛生、児童の健全育成等の諸対策を充実し、また、心身に障害を持つ人々、母子家庭、老人、その他低所得世帯に愛情のこもった政治を強力に行なっていくことが、今後の厚生行政の大きな課題となっているのであります。
 私は、今後とも、誠意を持ちましてこれらの問題の解決に努力する所存でありますが、ここにあらためて各位の一そうの御支援、御協力を切にお願いする次第であります。
#4
○委員長(藤田藤太郎君) 本件に関し、質疑のある方は、順次御発言を願います。
#5
○鈴木強君 ただいまの大臣の所信表明の中の一万円年金の実現のための厚生年金法の改正でございますね。これはできるだけ早い機会にその実現を期したいという御所存のようでございますが、聞くところによりますと、この改正につきましてはいろいろ御意見があるようでございますね。したがって、そう無理をなさって、ただ法案だけを国会へ出しましても、所期の目的を達成することは非常に困難だと思いますので、私は、希望意見ではございますが、願わくは、もう少し時間をかして、掛け金をやる労働者側ですね、こういう皆さんの御意見ももう少し慎重にお聞きになって、いわゆる佐藤内閣の調和の精神をもう少し出していただいてからのほうがよろしいのではないかと、こう判断をしておるのでございますが、この機会に、臨時国会に無理やりに出そうという御所存かどうか、この点だけひとつ大臣に承っておきたいと思います。
#6
○国務大臣(神田博君) ただいまお述べになりましたような御意見の強くありますことを、私よく、実は昨晩でございますが、承知いたしておりまして、まあいろいろ考え方がございますが、そういうところまで申し述べるのはいかがかと思いますが、ちょうどこういう機会でございますので、ざっくばらんに申し上げたほうがよろしいのじゃないかと思います。ということは、決して私ども手続がどうこうという意味ではございませんが、一万円年金をどうしたら一番早く実現できるか、こういうずばりとしたことを考えた場合ですね、いまお述べになりましたように、もう一度振り返って調和の点に立って考え直すのも、これは私は一つの考え方、やり方だと思っておりますが、しかし、ここまでまいりますと、むしろ国会の場で御相談願って、そうして適当な案が見つかりますればそういうことでお願いできたらどうだろうか、こういうような考えも実はあるのであります。と申しますことは、私もゆうべおそくそういう強い要望を承知いたしまして、ところが、一方、本案がきのうの閣議を実は通ってしまったあとでございまして、まあ正直に申し上げますが、それらの問題もございますし、そこで、私のごあいさつも、一万円年金のほうも実は出すということになったのを書きかえまして、こういうような文句にしたわけでございます。よく御意見のあることはわかっておりまして、なおひとつ検討いたしたいと思っておりますが、実情をざっくばらんに申し上げますとそんなところへ来ておりますので、私のいまの考えておりますことを率直に申し上げまして御参考にしていただきたいと思います。
#7
○鈴木強君 ここで大臣に論議をしようというのではありません。所信表明に対しての御質問ですから、きのうの閣議できまったというお話ですが、私どもはもっと早く、十二月の二日の日に官房長官にも、わが党の立場からして、こうしたほうがよりベターではないでしょうかという意見を申し上げておいたのです。ですから、大臣のお耳に入ったのはきのうだというお話でございますから、そこに相当のズレがございますね。これは閣内のそういった閣議のあれはどこにあるか知りませんが、少なくとも、われわれの意見は二日の日に正式に国対委員長会談なり、官房長官に対して申し入れてあるわけですね。決してわれわれも絶対いかぬといっているのではありません。要するに、より円満な審議をし、よりいい結論を生み出すためには、私は、最初あせるということは失敗につながることですから、意見があるなら、もう一度社会保険審議会なり、そういった機関もあることでありますから、そういったところで大臣の御意見をよくお述べになって、労働者側の協力も得るようにしたほうがいいのではないかと、こう私は思っておりまして、閣議の決定のあったことは知りませんでした。でありますれば、これは当然たてまえ上お出しになるということになるのかもしれません。しかし、もう一度考えてみるということですから、御検討がいただけるものであれば、きょうもまた政府のほうと党のほうにお願いをすることになっておりますから、この点を十分御理解くださいまして善処していただきたい、これだけ希望しておきます。
#8
○村尾重雄君 ただいま鈴木委員から御意見のございましたこと、もとより私も同意見の立場に立っております。ただ、私は、ここでできるだけ早い機会に実現を期したいという大臣のおことばがございましたが、一万円年金の問題です。それから保険料率の上がることも問題です。しかし、来年の四月一日からの受給者のこと等も考えて、こうしたこともありますから、通常国会に出されるという御意見かどうかということ、これを聞きたいのです。われわれは党とかということは離れまして、これは実現をぜひとも早くしたいという考えを持っておりますから、何か実現がおくれてもいいという考え方を持たれては困りますので、いつ出されるということをちょっとお聞きしたいのです。
#9
○国務大臣(神田博君) 鈴木さんのお述べになったことにも触れると思いますが、御了承願います。いまお尋ねがございまして、おっしゃっている点はよく私どもも聞いておりまして、わかっているつもりでございます。年金については、もう早期実現するという皆さんの御要望はよく承知いたしております。ただ、その内容の点につきまして、いろいろお考え方があるということも十分承知いたしておりまして、そのお考え方を、たとえばいまのような審議会にもう一度御相談をしてみるというようなことにして出直すか、あるいはこのままこれはわがままを申し上げるようで恐縮ですが、いろいろ手続もございまして、お願いするか、それにいたしましても、審議会のほうにやはり何らかのごあいさつをしなければならぬじゃないか、こう考えております。それらのことはひとつ国会対策その他でよく御相談願う、こういうような心がまえでおりますので、その点もあわせて御了承願いまして、先になりますが、この国会には、いま申し上げたような、ちょっと進退きわまったようなことがございまして、閣議の決定もございますので、審議会のほうはいきさつを申し述べまして、国会の場でひとつ御相談しようかというのが率直な考え方でございます。内閣もかわっておりますし、なお、また、総理のお考え方もあるようでございますから、よく審議会のほうと御相談いたしたい、腹を割るとそういうことになります。皆さん賛成で早くやれ、内容についてはいろいろ意見があるぞということは私も十分承知しておるつもりであります。そういうことで御了解願いたいと思います。
#10
○委員長(藤田藤太郎君) 本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめたいと思います。よろしゅうございますか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(藤田藤太郎君) この際、厚生政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。徳永厚生政務次官。
#12
○政府委員(徳永正利君) このたび神田厚生大臣のもとで再び厚生政務次官を仰せつかりましたが、今後ともいろいろ重要な問題があるようでございますので、どうぞ一そうの御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○委員長(藤田藤太郎君) 次に、労働問題に関する調査を議題といたします。
 まず、労働大臣より、労働行政の基本方針についての所信を聴取いたします。石田労働大臣。
#14
○国務大臣(石田博英君) 第四十七回臨時国会の開会にあたり、一言ごあいさつ申し上げます。
 新内閣におきまして引き続き労働省を担当することになりました。前内閣で労働大臣に就任した際申し上げましたように、労働問題はますます重要性を加えつつあり、今後とも誠意と熱意をもって取り組んでまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 私は、かねてから、労働行政は人についての行政であり、人間としての労働者を尊重するという基本原則に基づいて、すべての労働者がその意思と能力とに応じ、経済発展への自由な創意と努力を発揮する機会と条件を整え、これによって労働者が人間として充実した生活を享受できるようにすることがその目的であると考えております。私は、このような基本的考え方に立って労働行政を進めてまいりたいと考えておりますが、この際、労働行政の当面する諸問題について所信を申し述べ、各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
 まず、雇用対策について申し上げます。
 最近の経済成長に伴い、雇用失業情勢は引き続き好調に推移しておりますが、反面、若年労働者、技能労働者を中心とする労働力不足は、中小企業、農業等の経営に深刻な影響を与えるなどの問題を提起いたしております。同時に、大都市への労働力の過度集中は社会的弊害をも生みつつあります。さらに、今後数年後には、新規労働力の減少により、本格的な労働力不足の情勢に推移するものと思われます。このような情勢の中で、今後均衡ある経済発展を維持するためには、労働力の流動化を促進し、その有効活用と質的向上をはかることが肝要であると存じます。
 このため地域別産業別雇用計画を樹立し、これを指針とする労働力需給の計画的調整、労働市場センターを軸とする職業安定機構の整備充実等、今日の実態に即した雇用対策を推進してまいる所存であります。また、この際、中高年齢層労働者の雇用促進を積極的に推進すべきものと思い、このため、中高年齢層の適職の開発、従来の賃金体系や定年制の改定の検討等にも真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、わが国産業が開放体制下のきびしい国際経済競争に伍していくために必要な技能労働者を質量の両面で確保することの緊急性にかんがみ、公共職業訓練の拡充整備、事業内職業訓練の実施促進、技能検定の拡大実施につとめるとともに、民間の行なう技能向上施策を積極的に助成してまいる所存であります。特に公共職業訓練につきましては、就職が困難な中高年齢失業者に対する転職訓練を強化充実し、また、事業内職業訓練については、中小企業の事業主の行なう職業訓練に対する助成を強化してまいりたいと考えております。
 次に、労働災害防止対策について申し上げます。
 昭和三十八年の労働災害は、死傷件数七十五万件、災害によってなくなった人が六千五百人、これによる経済的損失は二千三百億円という状態になっております。人間尊重をたてまえとする労働行政が人の命を大切にするということから出発しなければならないことは当然のことであります。このような観点から、私は、労働災害の防止のため、できる限りの努力をいたしたいと考えております。具体的施策といたしましては、労働災害防止計画を樹立の上、これを軸として人命尊重観念の高揚、科学技術の進歩及び国際的水準に即応する安全衛生基準の確立、行政体制の整備等をはかってまいりたいと考えております。また、先国会で成立した「労働災害防止団体等に関する法律」に基づく労働災害防止団体の充実強化につとめ、実効ある災害防止活動の推進をはかるとともに、関係労使が自覚と責任により、自主的災害防止活動の積極的展開をはかるような気運の醸成にもつとめてまいりたいと考えております。
 労使関係につきましては、近時労使の間で徐々に話し合いの空気が生じつつあることは、まことに喜ばしいことであります。労働組合運動の歴史的発展にはいろいろな段階がありましょうが、わが国の労働組合もいまや九百万をこえる大きな社会的存在となったのであります。私は、今後わが国が欧米先進国に伍して発展を続けていくためには、使用者と労働組合の双方に経済のにない手、社会の構成員としての責任をになっていただくことが必要であると考えます。そのため、労使が相互信頼を基調とし、人間尊重、国民経済という共通の基盤に立ちつつ、話し合いによって問題を合理的に解決するという気運の醸成に今後とも地道な努力を重ねていきたいと考えております。
 次に、労働者財産形成制度でありますが、これは西ドイツの例等を参考として、労働者の生活の長期的な安定をはかるという見地から、労働者に住宅、貯蓄等の財産を形成せしめようとするものであります。さらに根本的には、国民の大多数を占める労働者に、みずからの努力によって自己の生活の安定をはかることを期待しようとするものでありますが、当面は、まず、労働者に自己の住宅を建設する意欲を促進し、住宅事情の緩和にも資するなど、わが国の実情に適し、実現可能なものから実施してまいりたいと考えております。しかしながら、何と申しましても、この制度は、その意義と必要性について幅広い各層の理解と支持が必要でありますので、よろしく御支援、御協力くださるようお願いいたします。
 ILO八十七号条約批准問題につきましては、これをできる限り早期に批准するという政府の基本方針には変わりなく、できる限りすみやかに関係案件の成立を期するために、引き続き一そうの努力をいたす所存であります。
 なお、賃金問題につきましては、最低賃金制につきまして、昨年八月の中央最低賃金審議会の「最低賃金制の今後のすすめ方に関する答申」に基づき、本年十月には同審議会からさらに「最低賃金の対象業種および最低賃金額の目安について」の答申をいただいておりますので、これらの答申の趣旨を十分尊重して、最低賃金制の実効ある拡充につとめてまいる所存であります。
 さらに、労災保険制度につきましては、五人未満の零細企業を含め、全業種全労働者に労災保険を強制適用すること、遺族補償及び障害補償の年金化をはかること等をはじめとして、労災保険制度全般の近代化をはかるため法律の改正を準備中であり、関係審議会の答申を得た上、成案を得て次期通常国会に御審議をお願いする考えであります。
 また、失業保険制度につきましては、制度の拡充と給付の適正化をはかる観点から検討いたしており、港湾労働者の確保と港湾労働秩序の近代化のための制度の確立につきましても、目下鋭意検討を進めております。
 以上、当面の問題についての所信の一端を申し上げました。
 労働行政の推進につきましては、各位の御意見を十分拝聴しながら、一そう力を尽くしてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
#15
○委員長(藤田藤太郎君) この際、労働政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。始関労働政務次官。
#16
○政府委員(始関伊平君) 先般、新内閣の成立にあたりまして、引き続いて労働政務次官を拝命いたしました。微力ではございますが、石田大臣のもとに全力を尽くしまして任務の達成につとめてまいる所存であります。委員各位の一そうの御協力と御鞭撻をお願い申し上げる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○委員長(藤田藤太郎君) 次に、失業保険に関する件について調査を進めます。
 本件に関し、質疑のある方は、順次御発言を願います。
#18
○柳岡秋夫君 失業保険制度の問題につきまして、八月十八日の閣議であのような方針が決定されましてから、非常に労働者に大きな不安と申しますか、混乱を与えていると思います。また、関係各地方自治体におきましてもこの問題を重視をいたしまして、おそらく大臣等のところにも相当強い陳情がきておるかと思います。
 そこで、先般の本会議におきまして、社会党の鶴園議員のこの問題についての質問の答弁で、大臣は、現在、失業保険法を改正をして、受給資格取得期間を延長する等の処置をする意思はございませんと、こういう答弁があり、また、そういう法律の改正もする意思がないということでございます。しかし、いまの大臣の所信表明を伺いますと、失業保険制度については、制度の拡充と給付の適正化をはかる観点から検討いたしておりますと、こういうことでございます。いま大きなこういう問題になっておる際でございますので、やはり労働者の不安をなくし、また、地方自治体の心配を除去するためにも、私は、この所信表明の中で、本会議で明らかにされたような意思を当然述べられてしかるべきじゃなかったかと、こういうふうに考えるのでございますが、この点についての大臣の所信を伺いたいと思います。
#19
○国務大臣(石田博英君) 八月何日だか忘れましたが、閣議で、当時の池田総理大臣から、失業保険制度の受給資格期間というものの延長について考えてみたらどうかという発言があったことは事実でございます。したがって、労働省としましては、その発言に基づいての検討をいたしたこともこれは事実であります。しかし、それだけじゃなくして、たとえば失業保険の五人未満事業所に対する拡充そのほかの問題もあわせて検討中でございます。で、ただいま失業保険の特別会計の中で大きな問題点が幾つか出てまいっております。その一つは、一方で人不足だといわれておりまする今日、失業保険会計が非常に悪化をしておるという事実であります。それから、もう一つは、これは失業保険法でも明確にうたわれておりまするように、偶発的に発生をいたしました事故に対する補償であります。あらかじめ予期せられたものに対して補償するということがたてまえではないはずのものであります。それから、もう一つは、この受給資格は、就業の意思と能力を持っておって職業がない者に給付される性質のものであることも、これは御承知のとおりであります。そういうたてまえから申しまして、保険制度の運営について姿勢を正す必要を認めまして、したがって、この失業保険制度の運用について姿勢を正すように命じ、職業安定局長の通達をもって、いまその姿勢を正す作業を実施中でございます。
 で、元来ただいま申しましたようなたてまえであるにかかわりませず、現在いわゆる季節労働者というものに対して支給されておりまする金額は二百数十億円に達しております。対象人員は五十二万人近くに相なっております。これを昭和二十八年と比較いたしますと、昭和二十八年ごろは、たしか十一、二万人であったように覚えておるのでありますが、急速な増加でございます。しかし、この失業保険の支給ということによって、北海道、東北の積雪寒冷地のおくれた地域の人々が、これによって生活の基礎を得ておることも、これもまた事実でございます。で、私は、失業保険法のたてまえから申しまして、雇用制度というものは、これは元来通年雇用をたてまえとするものに切りかえていくのが正しい道だと信じておりますので、これを通年雇用に切りかえていくように行政指導をさせております。その場合、積雪寒冷地等において仕事がなくなった、休業のやむなきに至った場合には、これは業者の休業補償をもって行なうのが正しい方法だと思っております。つまり当然経営者側が休業補償をなすべき性質のものを失業保険で支払うというあり方は、これは誤ったことだと考えております。それから、現在農業の生産性の低さ、積雪寒冷地のおくれというものを失業保険制度がこれをささえておることは事実でありますが、農業生産性の低さは、これは他の政策をもって補って改善すべきものであって、それを失業保険会計で改善するというのは、失業保険会計そのもののたてまえに反するものと思っておるのであります。しかしながら、先ほどから申しますように、現状は、北海道におきましては、保険金の納付額は約三十七億円であるに対して、保険金の受給額は百四十三億円に上っております。青森県では、それが四億円に対して、これも三十九億に上っております。私の郷里で恐縮でありますが、秋田県は、五億円程度の納付額に対して、受給額は二十二億円ぐらいになっているのであります。かくのごとく累算いたしますと、二百三十九億五十二万余、こういう状態になっている。これは失業保険法のたてまえから言えば、誤った、間違ったことであると私は思います。おかしいことだと思うのでありますが、これもまた現実に生活水準の低い農村の生活をささえる基本となっていることも、これまた事実であります。そこで、誤ったことではありますけれども、現実に農業の生産性を高める施策が進み、あるいは中小企業その他が、こういう種類のものを休業補償で十分やれるような別の施策のささえが行なわれないのに、急速にこの有効期間の半年を一年に延ばすというような措置をとることは、これは多年持っておりますこの制度の社会保障的な意味からいっても不適当であると考えますので、現在通常国会にこの給付期間を延長する等の法律改正案を出す意思はないのであります。ただ、これは失業保険というものの本来のたてまえから言うて誤っている状態である、改善すべき状態であるということだけは広く認識をしていただきまして、その上に立ってこの保険制度の適正な運用を求めてまいりたい、行政指導でやり得る面は行政指導でやっていきたいと、こう考えているのであります。
#20
○柳岡秋夫君 この失業保険制度の二つの柱と申しますか、一般の社会保険等と違った面は、いま大臣もちょっと触れられましたけれども、一つは、やはり失業の労働者の生活保障、そうして労働力を維持補てんしていくということがあると思いますし、二つ目には、これはいわゆる国の一方的な救済制度ではなくて、いわゆる保険形式をとっている。したがって、国と、それから労働者、使用者、三者負担になっている、しかも強制保険だと、こういう面から言いまして、この問題については、その相互に非常に大きな関連があると思います。しかし、いま大臣の説明を聞いておりますと、どちらかと申しますと、第一の生活保障という面、これが若干従的立場に置かれて、いわゆる労働力の不足という観点から、いかにして労働力をそれぞれの産業に吸収していくかという、いわゆる失業保険の給付の打ち切りを目的とするような方向にあるのではないか、こういうことが考えられるわけです。で、通常国会に改正案を出す意思はないと、こう言われますけれども、その前提として、いますでに労働省が行なっているこの給付の適正化等の通達等を見ましても、いま私が申しましたような、この失業労働者の生活保障というよりは、労働力の通年雇用というような形で、そうして給付の打ち切りをはかっていこう、それがいま言われた保険財政の赤字の解消につながる、こういうふうに私たちとしては感ぜざるを得ないわけです。このことは、私は、やはり根本は失業労働者の生活保障というところに置かなければならない、こういうふうに考えておりますので、この点のひとつ明確な答弁を願いたいと思います。
#21
○国務大臣(石田博英君) 失業労働者の生活保障ということは、労働経済の面から見て、労働力の不足を充足するという目的以上のものであることは、これは私も同感であります。しかしながら、失業労働者の最大の保障は、失業保険をとることではなくして、とらなくても済むような職業につくことだと私は考えております。したがって、まず職業につくようにごあっせんをするということをたてまえにして、単純に機械的に失業保険を支払えば事が済むという性質のものではない、こう考えておるわけであります。むろん労働者、使用者、それに政府も支出いたしました保険制度であります。一方においてただいま申しましたような非常に膨大な不均衡な支出が行なわれておれば、他方において、他方の地域における勤労者がその負担をしているわけであります。やはり全体の均衡を保ち、保険会計を健全にさしていくということは、保険会計をあずかるものとして、当然行なわれなければならないことでございますし、それから、安定局長の通達もそういう精神で行なっておりまして、しかも、むろんその人個人々々の事情によりましてその地域に就職したり、あるいは安定所で世話をするところへは行き得ない事情がいろいろあると思うのであります。そういう場合には、むろんそれを強制するなどという意思は毛頭ございません。失業者の生活保障ということは、まず、定職をお世話するということが第一だという観点で運用いたしております。
#22
○柳岡秋夫君 そうしますと、通常国会には改正案を出さない、そうして当面姿勢を正すという意味で、法律の趣旨に従って適正化をしていく、こういうことでございますが、この法律は、すでに前々からある法律であって当然法律が施行されたときからそういう正しい姿勢をもってこの失業保険制度の運営をはかってこなければならなかったはずでございます。いまになって急にこういうようなことをやらざるを得ないという理由は一体どこにあるのですか。
#23
○国務大臣(石田博英君) むろんたてまえはそうであります。ただ、雇用情勢が悪かった時代から出発をいたしております。その場合は、給付ということが、機械的に給付というところに重点が非常に置かれた。いまは、御承知のように、雇用情勢が変わってまいりました。そういう状態に応ずる必要があります。
 それから、法律はそのとおりなんでありますけれども、やはりときどき活を入れて注意を喚起しないとやはりたるむのであります。そうしてたるんできた結果が保険会計の悪化ということにもなっておりますので、法律に基づいた注意を喚起いたした次第であります。
#24
○柳岡秋夫君 雇用情勢の変化ということもあろうかと思いますが、失業という事態そのものは私は変わらないと思うんですよ。失業というのは、これは個々の使用者、あるいは個々の労働者の責任の範囲をこえた政治的な、あるいは経済的、社会的な諸要因によって生ずる現象ですからね。したがって、それに対する不可避的な要因によって発生するということ、失業に対してこうした制度をもって労働者の生活を保障していこうということなんですから、したがって、当然いまなお雇用情勢が変化をしたといっても、この基本的な考え方は変わってはならない、こういうふうに思います。
 そこで、先ほど通常国会には改正案を出さないというのですが、所信表明では、労災保険については五人未満についてやりたいということを言って、失業保険制度については何らその点具体的に触れておらない。したがって、通常国会においてこの失業保険制度の五人未満の適用については一体どういうふうにお考えになっておりますか。
#25
○国務大臣(石田博英君) これはやはり御想像がつくと思うのですが、事務的に非常に繁雑なことであります。保険事務取扱組合なんというものを結成して、それを通じなければなりませんし、料金の徴収、支払いその他の事務上の処理に困難がございます。そういうこともございまして、通常国会に間に合うことができれば非常にいいと思っておりますけれども、一般に両方とも発足するということは、事務処理能力上困難な問題がありまして、そういうようなことで、できるだけ早く五人未満の強制適用に持っていきたいと思っておりますけれども、この通常国会とはいまの時期では申し上げかねる状態でございます。
#26
○柳岡秋夫君 私は、やはり現在の経済情勢等を考えてみますと、特に中小企業の倒産が史上最大だといわれるような現在、したがって、零細企業は非常にしわ寄せを受けておるわけですが、したがって、一日も早くこういう零細企業に働く労働者の保険、こういう制度をやはりもっと早急にやらなければ、それこそ私はそのほうにこそ義務づけるのが失業保険制度のほんとうのあり方ではないか、こういうようにも考えております。先般来、厚生省あるいは労働省等において、この厚生年金なり、あるいは失業保険制度なり、一連の社会保険制度を五人未満の事業所にも適用すべく検討し、そうして四十一年度ですか、これから実施をしたい、こういうことでございます。そうすれば、当然この次の通常国会等にはこの法案を出していただかなければ、準備等もいろいろあるでしょうから、これは間に合わぬのじゃないか、こういうふうに思うのですが、もう一度ひとつ。
#27
○国務大臣(石田博英君) 現在でも、御承知のとおり、任意加入はできるわけであります。それから、現在の労働力の需給状況から見れば、そういう労働保険の整っていないところには人はいかないのでありまして、任意加入というものはどんどんふえてまいっておるのであります。しかし、やはり強制適用に持っていくのは、それは理想でございます。そこで、できるだけ四十一年度ぐらいからはやれるように実施したいと思うのでありますが、他にもまだ関連することも多いのでございますから、他に関連するものと一緒にできるだけ早く提出をしたい、こう思っております。
#28
○柳岡秋夫君 この失業保険制度の運営について、いろいろ大臣の説明を聞いておりますと、何か労働者に責任があるような口ぶりを強く受けるわけです。私は、雇用がうまくいかないというようなことは、労働者よりも、職業安定機構と申しますか、この機構、機能に大きな欠陥があったのではないか、こういうふうに思うのです。したがって、いまいかに姿勢を正すという形で厳密な通達を出しても、それに対応できるところの職業安定所の機能なり機構、特に定員の問題、こういうものが備わらなければ決して円滑にいかない。しかも、そのことが、かえって労働者に対して非常に不満を呼び起しておる要因になっておるのじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、その点はいかがですか。
#29
○国務大臣(石田博英君) 私は、この失業保険会計が悪化した責任が労働者にあると一度も申しておりません。これはむろんいままでの安定所の機構、あるいは運営その他が保険の機械的支払いに終始して、かわりに適当な職業をお世話をするということに対して不十分であったということの責任もむろんあります。それから、元来が通年雇用にしていくべき性質のものを、この保険を利用して企業側としての負担を軽減していく。つまり当然企業が負担すべきものを失業保険に乗りかえてやっていくということも大きな原因の一つであろうと思います。したがって、職業安定所の機構の整備、能力の強化等については、いま機構の改編を行なうと同時に、労働市場センター等の拡充整備を通じまして、それを補なっていく処置を着々進めておるのであります。また、一方、しかしながら、この制度を悪用とでも申しますか、している事例も非常に多いのであります。たとえて一、二の例を申しますと、積雪寒冷地で、冬になると社長と専務ぐらい残って、あとはみな失業してしまって保険をとる、取締役も失業してしまう。そうかと思うと、最近兵庫県で起こった事件でございますけれども、例年は半年しか仕事がなく、ところが、これは水産加工業でありますが、今年は幸いにして漁が多くて通年仕事があった。ところが、通年仕事があってしておるのに、例年どおり半年失業して保険を取っておる、そういうような事例が非常に多いのであります。したがって、そういう意味の姿勢もこの際正していかなければならない、こういうことを申し上げております。むしろほんとうの意味の偶発的な事故によって生じた労働者の人たちの生活の保障の内容を向上させていくという余力をつくるためにも、姿勢を正していく必要があると、こう考えておるのであります。
#30
○柳岡秋夫君 姿勢を正すということの影響を一番だれが受けるかということを考えてみますと、やはり一番いま問題になっておる季節労働者、あるいは先ほど大臣も言われましたけれども、農業政策の貧困によって、農業だけでは食っていけない、したがって、出かせぎをしなくちゃならない、そういうほんとうに低い収入の労働者、そういう非常に恵まれない方々が一番この影響を受けるわけですね。現実にこの九月の通達によって各地においてそういう現象が起きております。したがって、そういう恵まれない労働者を、一部の不正受給があるからといって同じようにこれを適用して、そして厳格な締めつけをしていくということは、あまりにも私は先ほどいった安定所の機構なり機能の整備との関連において問題があるのではないか。ですから、いままでも当然やるべきことをやらないで、いまここで急にやるわけですから、したがって、もっとあたたかみのある制度の運営というものをはかるべきじゃないのか、こういうふうに思うのですが、その点いかがですか。
#31
○国務大臣(石田博英君) 具体的な運営にあたりましては、むろんその対象になる人々の実際の実情に即した運営をいたすように指示をいたしております。したがって、職業につくこと、ついてもらうことが一番安定であり、一番職業の保障であります。したがって、そういうふうにはいたしますけれども、それだからといって、その事のどうにもならない個人的な特殊事情、そういうものまで無視をしてやっていこうとは思っておりません。
 それから、もう一つ考えなければならぬことは、同じ地域において、片一方に人手不足だというのに、片一方でパチコンコ屋が繁昌するという事態は、これはやはりどう考えても不公正でありますから、仕事をできるだけお世話をするという方向に進んでいくということがやはり根本的なたたてまえでなければならない、こう思っておるのであります。
#32
○鈴木強君 大臣のさっきからおっしゃっていることは、理論的には、私よくわかるのですよ。ただ、柳岡委員も指摘しているように、政府の完全雇用を中心とした一貫した政策というものが非常におくれているところに大臣も認めているような矛盾が現実にあるわけだと思うのです。したがって、私は、いま労働省の職業安定局長の有馬さんから都道府県知事にあてた通達ですね、これを拝見しました。要綱の全部についていまここでちょっと勉強できないのですけれども、問題は、いままで指摘されておるような、柳岡委員の言われておるような給付に対する何かここでがっと締めつけをしていこうという思想がたいへんアピールされて、大臣の認めておられるようないろいろ矛盾がある。農業の面において、あるいは中小企業の面においてもあると思う。あるけれども、それは現実にそれにかわるべき施策というものがない限りはやむを得ないのだ、したがって、その姿勢を正すということには、そういうこともあるということを前提にしていい方向に持っていこうということで考えておるということでございますから、いずれ農業政策や中小企業政策または労働政策全体の失業保険給付をもらわないで済むような完全雇用、通年雇用、そういう方向におそらく努力をしていただく、だから、そういうものとのからみ合わせですから、大臣の言うことはわかる。しかし、大臣の言われておる思想というものは、通達を受け取った知事、あるいは全国の職業安定所の所長さんたちがほんとうに理解しておるかどうかということについてぼくは疑義を持つのです。行政指導はおそらく非常にむずかしいのです。通達だけを見ますと、精神というものは十分把握できない面があるのですから、役所の通例として。だから、私の伺いたいのは、行政指導の面における労働省のやり方が間違っておるとはいいません。しかし、ほんとうの精神が下に伝わっておるかということについて、大臣も満幅の信頼をおけるかどうかということについては、ぼくはちょっと疑義があるのです。だから、たとえば通達を出すについては、全国の職業安定所長を一堂に集めて、さらにその口頭によって大臣のようなお考えを十分に理解して、その上に立って適正な給付をやりなさいと言っておるかということも心配があるわけですから、行政指導の面において、大臣の親心というか、考え方が浸透できるような方向がとられておるかどうか、そういう会議を持ったかどうか、そこらについてのひとつ大臣のお考えを開きたい。
#33
○国務大臣(石田博英君) これは鈴木さんは私の考えを理解していただいておると思いますから、私の考えを根本的に……。これは同じことを繰り返すようでありますけれども、失業保険というものは、偶発的な失業という事故に対する補償であるから、したがって、あらかじめ当然予想されるというものに対して補償するという制度のものでは元来ないわけですね。ところが、事実はいま申しましたとおり、季節労働者五十何万、そのための保険給付が二百三十九億、それが日本中で特定の地域だけに片寄っておるわけですね。大体大手と申しますと恐縮ですが、大手を並べますと北海道、青森、それから秋田、山形、岩手、これだけなんです。そうすると、そのほかの地域でそこをまかなっておるわけですね。こういう状態は、これは失業保険のほんとうの姿ではない。これは失業保険会計をあずかっておるものとして、そのほんとうの姿でないということを私は強く認識するのです。それから、もう一つは、雇用制度というものは、元来が通年雇用に持っていくのが理想なんです。それを先ほど申し上げましたような例で、逆に、この保険制度があるために通年雇用に持っていくことが妨げられておるという事情も実際あるわけなんです。そういうような誤られた運営をされておることは私どもみんな認めた上で、しかし、先ほど来言うとおり、通年雇用に持っていって、休業補償を失業保険に転嫁する、農業の生産性の低さを失業保険でまかないをつける、もし農業の生産性の低さを失業保険でまかないをつけるとするならば、これは全部の農家に普及しなければならぬ性質のものになります。それを一定の地域、特定の地域だけ、特定の人だけが受けるということは、これはぼくは不公平だと思う。しかし、一ぺんにそんなことをやったのでは、いままでそれでささえておるところに激変を与えます。そこで間違いであることを私も主張し、同時に、人々にも認めてもらった上で、現実の事態が改善されるのと並行してこれは処理されるべきものだ。こういう方針と、もう一つは、先ほど申しました不正受給その他が非常にふえてまいりました。その不正受給というものは、やはり厳重に、これは一種の詐欺なのですが、そういう詐欺的事態が非常にふえてまいりました。
 それから、もう一つは、その失業保険の中で、これは強制適用なわけですから、強制適用ですけれども、ただ、結婚という問題があります。結婚のために退職する、強制適用させておいて、結婚をしたからといってこれはそれきりだ、結婚するのだから、就職の仕事をする能力は別として、意思はないのだ、これも何か考えなきゃならぬ問題もございます。そういうふうないろいろな問題を考えつつ、それをたてまえとすると同時に、やはり雇用情勢がこう好転したときにはできるだけ仕事を世話して、それによって補いをつけていく、それが一番生活の安定になるのだというたてまえのもとに仕事を世話する、問題点をさがすということをたてまえのもとに出された通牒でありまして、これはブロック会議を各地で開きまして、その趣旨の説明、徹底にはできるだけつとめております。ただ、個々の事例で、もし具体的に誤ったようなことがあれば、それは訂正をいたさせますし、直すつもりでございますが、そういう趣旨の徹底には努力しておるつもりでございます。
#34
○鈴木強君 よくわかりました。大臣の言うことをよく聞いてみると、やはり精神は、あくまでもあなたの大前提として述べておられる失業保険の性格ですね、給付すべきものはこれなんだという考え方についての所信と、それから、もう一つ、それは現状であるのだ、いろいろな問題が。しかしながら、一面、欠けている政策があるので、それと並行しなければならぬと、こう言えば私はわかった。ところが、よく聞いてみると、やはりそうじゃないのですね。やはりその矛盾を認めながら、給付についてはかなり締めつけていこうという考え方がいまの御発言でぼくは受け取れたのですよ。ただ、そういうふうの行政指導の精神が中に入っていないとすると、せっかくあなたが前段述べられた論理的に整然としている考え方というものがくずれてくると思うのです。しかも、改善しなければならぬということは私たちもあると思います。不正なんかすることについては、これは私たちだっていかぬと思います、不正することは。ですから、そういう不正でなくて、現実に特にお述べになった北海道とか東北関係ですね、俗に言う後進地域といわれているような地域における特殊な問題としてのこの発生事実のように思いますから、そうであるならば、全国に手を打つよりも、重点施策としてやればいいわけです。一部の地域ですから、東北開発のためにもう少し何か考えてやるということも一つの方法でしょう。そういうふうなものが並行して初めて正しい給付のあり方が出てくるのです。それがまだはっきりせぬのに、何か給付の締めつけだけやるようになりますからね。ですからその問題が私はあると思うのです。ですから、幸い各ブロック別にそういう趣旨の徹底なり何なりやっていただいておるようですから、ですから、そういう中でもう一度私は、現場までの通達を出しているのが八月でございますから、まだ日もたっておりませんけれども、その後に具体的に発生している問題でもあると思いますから、そういう点を主として取り上げていただいて、はたしてそれがよかったか悪かったかという成果の測定もやる必要があると思います。特に問題があるときでございますから、そういうふうにしていただかないと、大臣のせっかくの整然たる論理というものが、何かあとのことばで消されてしまうような気がしてならない。そこいらを十分配意していただけば、通常国会には出さぬが、しかし、いずれいい方向にいくように検討中ということですから、検討中ということは、従来のやり方をもちろん完全に踏襲していくということではなくて、不正については把握するように、また、いい方向にやるということはわかりますけれども、しかし、根本政策ということは将来検討する段階ですから、あまり検討する段階に入ったことをやりますと、これは、何だ口には通常国会に出さぬ、やらぬということを言っておきながら、具体的に行政指導の面でどんどんやっているじゃないかという疑惑を生む。これはあなたのお考え方からいくと、とるということではないと言われますから、その辺の呼吸が少し合っていないように私は思いますから、大臣のせっかくの御所見の中の最後に述べられた点だけは、もう少し私は考えてもらいたいと思いますね。それでないと論理一貫しないのですよ。
#35
○国務大臣(石田博英君) むろん姿勢を正すということには、不正受給はこれは断固取り締まっていく、そして、同時に、失業保険会計の悪化を避けていこうということが一つの目標ですが、その失業保険会計の悪化を防ぐのには、ただ給付を締めつけるという方法で防ごうとしているのではなくして、保険金をもらわなくてもそれ以上の生活ができるような職業のあっせんを通じて特別会計の改善をしていこう、そこに重点がある。それをしないでただ締めつけるという意思はむろんありません。ただ、その場合でも残る問題がございます。ただ、さっき申しましたように、結婚というようなそういう問題は別に考えたい。そういう場合はどうも世話されたって困るわけですから。というて、強制適用で払っておるわけですから、そこのところの処理は、これは別に考える。ただし、これはちょっと法律改正その他の問題もありますから、他の法律改正の機会に同時に行なうということになると思いますけれども、目的は、むろん失業保険会計をよくしようということですよ。しかし、それを締めてやるというのではありません。これは保険をもらうよりもっと高い収入を得られる就職のあっせんを通じてやろうということでございますから、御了解をいただきたいと存じます。
#36
○柳岡秋夫君 いまも言われておりますように、私どもの感じとしては、大臣は法の改正はしないと言いながらも、実際のこの運営の面で実質的に法の改正以上の締めつけが現在行なわれているというふうに私どもは受けるわけです。したがって、まあ若干具体的な問題に入っていきたいと思うのですが、まず一つとして、大臣は通年雇用ということを盛んに言われます。しかし、通年雇用ということをやるには、やはりいろんな条件がそこに備わらなければ通年雇用できないと思います。特に一つの問題としては、特殊な地域、あるいは特殊な産業においては、幾ら通年雇用をやろうとしてもこれはできないじゃないかと思いますし、そういうものを一緒くたにやるというところに労働者に対する犠牲が出てくるではないかということが一つあると思います。
 それから、さらに通年雇用ということでやりますと、いま失業保険の受給者の相当多くの方が、たとえば農業に従事している方ですと、その中堅になっておる方とか、それから若い人が多いというデータも出ているわけですね。したがって、そういう方を通年雇用ということで他産業にこれを全部持っていくということになりますると、それはいわゆる日本農業の今度は破壊になってくるじゃないかという面もあると思うのです。したがって、そういう面も十分考えないで、ただ単に通年雇用政策だけ労働省が突っ走ったのでは、国全体の政治としては私はなっていかないじゃないか、こういうふうに思うのです。したがって、さらに、また通年雇用の問題については、これは言いふるされたことばでございますけれども、最低賃金制の問題もありましょうし、あるいはその他の労働条件の問題、あるいは、また、住宅の問題、いろいろそれぞれの条件が一緒に並行されて行なわれない限り、通年雇用というものは、私は言うべくしてできない問題じゃないか、こういうふうに思うのですが、その点について。
#37
○国務大臣(石田博英君) そこで、明確にしておきたいと思うのでありますが、保険でございますから、これは偶発的に生じた事態に対する補償であります。元来、その仕事の業種によって、通年雇用ができない業種、つまり当然もう一定の時期になればその仕事がなくなるという業種、これは保険の対象になるべき性質のものでは元来はないと私は思います。これは他の方法で補償すべきものは補償せられるべきだ。たとえば半年しか働けない仕事は日割り賃金を高くして雇うとかなんとか、そういう方法で補償されるべきものであって、これは私は一応通年雇用がたてまえであるけれども、偶発的に失業したのだという解釈のもとに、たとい季節労働でも支払われておる、法の解釈、運用は。ただし、それを一貫してその法律のとおりいまやったら非常に大きな摩擦を生ずるということは私はよく知っております。だから、いま急にやるとは言っていないのです。それから、雇用政策というものは通年雇用に持っていくのが理想であるけれども、それにはいま指摘のように、いろいろな条件を必要とする。そのいろいろな条件を必要とするのが整わないうちに、通年雇用がたてまえだからそんないまのようなものには払わぬというようなことを私はするとは一言も言っておりません。そのつもりはありません。だから、そういう条件が整っていくのと並行しながらやってまいりたい、こう考えております。
#38
○柳岡秋夫君 そこで、通年雇用との関連で、当然そういうあらかじめ予定されないものについては、経営者が責任を持って休業補償すべきでないか、こういうことを言われた。これはいわゆる労働基準法第二十六条の休業手当との関連はどうなんでしょうか。いま法律的に私は休業補償をするような法律は、法的根拠はない、こういうふうに思いますし、したがって、政府がはたして経営者にそれだけの強制をできるのかどうか、その辺をひとつ。
#39
○国務大臣(石田博英君) 私は、元来のたてまえとしては、基準法に示す休業手当ということで処理すべき性格のものであると、思っております。しかし、それを強制すべき背後の条件がないことは承知しているから急にやらないと、こういうのであります。
#40
○柳岡秋夫君 そうすると、休業補償ということを考えておるからには、基準法の二十六条の改正を考えようとするわけですか。
#41
○国務大臣(石田博英君) それはもっと法律を初めから読んでいただきますと、ちゃんと休業補償すべきもう一つ前提が書いてございます。
#42
○柳岡秋夫君 基準法の二十六条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」こうなっておる。
#43
○国務大臣(石田博英君) ところが、その場合は、使用者の責任に帰する場合ですね。そこで、季節労働の場合は、これはお天気が冬になったり夏になったりすることは、使用者の責任に帰するわけにはこれはまいりません。しかし、雇用のたてまえがそういうたてまえであるならば、いま使用者が必要労働力を確保するという必要がありますね。その必要の上からいっても、夏に働けるときの労働者を確保しようと思ったら、冬の間、経営者がその間の賃金を支払って確保すべきものなのです。それをいまは休んでいるときは保険金をもらえるようにしてやるからこいと、こういう状態で人を確保しようとしておる、これはたてまえとしておかしいのではないか、こう思うのであります。しかし、何度も申しますが、おかしいからといって一ぺんに直ることだとは思っておりませんので、それが直るような条件がつくまでには急に激変を与えようとは思っていない、こういうことなんです。
#44
○柳岡秋夫君 そうしますと、いま林業に従事する、特に政府が雇用してやっておる国有林等に従事をする労働者、これは非常にいま身分的にも、あるいは雇用の条件にしても非常に不安定、また、低い条件で働いておるわけですね。で、こういう方は、まあ半年あるいは九カ月働いて、あるいは一年働く人もありますが、その一年ごとに切られて雇用され、失業保険ももらっておると、こういう形なんですが、これはいまの大臣のお話によりますと、こういう形態は好ましくない。したがって、当然これは経営者の責任において休業補償によってやっていくべきだと、こういうのであれば、私は当然国有林労働者、これは政府が雇っておるのですから、政府みずからが先に立って模範を示すということが私は必要ではないか、こういうふうに思うのですが、この点はどうですか。
#45
○務国大臣(石田博英君) 私も、ただいま御指摘のような林野関係の雇用条件というもの、状態というものは好ましいものとは思っておりません。機会あるごとに林野局に対して改善を求め、林野局でもその安定について努力をしておると承っております。
#46
○柳岡秋夫君 この点については、私どものほうもすでに法案を出しておりますので、これは労働大臣もひとつ賛成をいただいて、この法案の成立に御協力をお願いしたいと思います。
 それと、もう一つ具体的な問題で、いまこの給付の適正化の通達によって起きている二、三の問題について若干お伺いしていきたいのですが、まず、安定所が資格をいわゆる認める場合ですね、非常にいままでは、とにかく安定所へ行って失業しましたといえば離職表を交付されたと思うのです。ところが、現在は、失業しましたといっても、それはその場ですぐ認めない。そうして二段階も三段階も重ねて初めてその資格を認めると、まあこういうことが行なわれております。で、法律には、六カ月以上働いておれば、保険料を納めておれば被保険者としての資格、いわゆる給付をされる資格はあるのだと、こういうふうになっておるのですから、当然資格はその段階で認めなければ、私は、その法律にのっとった趣旨ではない。いまの適正化のこの通達は、法律の規定からすると行き過ぎているのではないか、こういうふうに思うのですが、この点、まあ大臣でわからなければ課長でもいいですけれども。
#47
○国務大臣(石田博英君) 詳しくは課長から申しますが、私の考えでは、資格はいまそれが一つの条件ですけれども、もう一つは、就業の意思、能力があって適職がないということももう一つ受給資格になるだろうと私は考えておりますが、なお部長から。
#48
○説明員(住栄作君) この通達に書いてありますことは、従来の方針を特に変更したものではないのでございまして、御承知のように、結婚とか妊娠とか、あるいは家事、家業の手伝いのために退職した者は普通労働の意思及び能力がないと推定される場合が多いので、よくその休職者と相談してやってほしいと、従来の方針をそのまま引用をいたして指導をいたしているわけでございます。
#49
○柳岡秋夫君 この一つの例として、木曽福島公共職業安定所から営林署長あてに一つの調査票を配られておりまして、これを出さないと離職証明書を交付しない、こういうことをいっているのですね。一体これはどういう法的根拠でこういうことができるのですか。
#50
○説明員(住栄作君) そういう調査につきましては、安定所のほうで、あらかじめいつごろどの地域でどれぐらいの離職者が出てくるかと、それから、さらに季節労働者につきましても、他に就職の道があれば就職をしたい、こういうような観点から事業主と連絡をいたしまして、一つは事務の便宜のために、一つは就職のことも考えて事前調査をお願いしておるのでございますが、その調査票の提出の有無にかかわらず、ほんとうに失業であれば、もちろん失業保険法の規定によって給付が行なわれるわけでございまして、かりにそういう事実があったかどうか、私ども承知していないのでございますが、その調査票を出さないと給付をしないということにつきましては、これは問題かと思います。
#51
○柳岡秋夫君 現実に私は写しを持っているのですが、この中にはっきりと、離職証明書を交付しない場合もある、こういうふうに書いてあるのですね。私は、これは法律の給付要件の項からすると問題があるというふうに思いますし、また、調査票の内容自体が、非常に私は行き過ぎた調査をしているのではないか、こういうように思うのです。たとえば作業員の世帯の保有財産、こういうものを調べたり、個人的な私生活ですね、そういう面にわたるような感じを受ける調査もしているわけです。したがいまして、こういうことはちょっと行き過ぎた調査であるし、また、そのことによってこの離職証明書を交付しないというようなことは、これは非常に先ほど言った資格を認定する場合に、いままでと違った行き過ぎた行為であると言わざるを得ないわけでございまして、この点はひとつはっきりとこの際取り消すなり、あるいは明確にしていただきたいと思うのです。
#52
○説明員(住栄作君) 趣旨は、先ほど申し上げますとおり、あらかじめ調査をお願いしましたのは、いろいろ失業保険の支給の関係とか、あるいはその段取り、さらには本人の今後の就職の指導のため等に必要な調査をとるのがねらいでございます。それを給付の要件にするかということにつきましては、これは法に違反すると思いますので、本省のほうではそういう指導をいたしておるのでございますが、はたしてそれが木曽福島の安定所だけのことであるかどうか、あるいは長野県なり岐阜県の県の指導によるのか、その点につきましては十分調査をいたしたいと思います。
#53
○柳岡秋夫君 ひとつ十分調査をして、その結果をお知らせ願いたいと思います。
 それから、労働者に紹介される仕事、それはその労働者に適合したものでなければならないというふうに思うのですけれども、その適職という定義ですね、一体これはどういうところに基準を置いておるのか、お伺いしたいと思います。時間がございませんので、具体例を一つ申し上げておきたいのですが、たとえば同一地域において、その失業保険の給付額よりもあっせんする職業の賃金が低ければ、これは拒否をしてもいい、こういうようになっておりますですね。
 それから、もう一つは、地域格差があると思うのです。いままで東京なり横浜で働いておれば、当然失業保険金というのは相当の額である。ところが、東北等にまいりまして、青森なりその他で働けば非常に賃金が低いという場合があるわけですね。そういう場合には、その八割ですね、そこの地域の同種産業の労働者の八割以下の場合は拒否してもいいけれども、八割以上の場合は、これは拒否すれば保険給付の制限を受けると、こういうふうになっておるのですが、これは非常に矛盾をしておるし、また、あまり大きな問題になりますけれども、これは国民のいわゆる労働権と申しますか、職業選択の自由、こういうところまで問題がくるのではないか、こういうふうに思うのですけれども、この点についてひとつまずお伺いしておきたいと思います。
#54
○説明員(道正邦彦君) 給付制限に関しましては、法の第二十一条がございますことは御承知のとおりでございまして、そこに制限が可能な場合の規定が列挙してございます。ただいま御質問の点は、第二十一条の第一項第二号、第三号に関係するものだろうと思います。この点につきましては、特に第三号につきましては、就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び技能について行なわれる一般の賃金水準に比べて不当に低い、これは断わってよろしい、要するに給付制限が行なわれないということでございます。この点につきましては、行政運用の指針といたしまして、安定審議会の御意見も承りまして基準を設けております。その基準の一つに、額の問題といたしましては、その賃金がおおむね百分の八十を下回る――要するに百分の八十ということでその基準を一応引いておるわけでございます。
#55
○柳岡秋夫君 その基準ですね、一応いま百分の八十とかいいますけれども、同一地域においては、保険給付よりも低い場合には拒否できる、この地域が違った場合は、保険給付より低くても、その地域の百分の八十以上であれば拒否ができないと、こういうことなんですがね。これはいままでの生活設計なり、あるいはいろいろな面からいって私は非常に不当ではないかと、しかも、先ほど言った憲法二十七条ですか、あるいは二十五条の生存権なりの面からいっても、当然労働者にその自由はあるべきではないか、こういうふうに思うのですが、この点についてお伺いします。
#56
○説明員(道正邦彦君) 御趣旨はよくわかるのでございますが、現実の問題といたしまして、地域間にかなりの賃金水準等につきまして差がございます。したがいまして、たとえば高い地域から低い地域に戻って、そこで就職を申し出る、その場合に、高いところの賃金でなければどうしてもだめだということになりますと、事実上非常に就職の機会も狭められますし、また、その当該地域におきまするほかの就職希望者等との間の均衡の問題も生じますので、私どもといたしましては、審議会等の御意見も十分拝聴いたしまして、一応百分の八十ということにいたしておるわけであります。
#57
○柳岡秋夫君 この保険給付は、強制的に労働者が支払わせられ、しかも、ずっとつとめている間払っておるわけですよね。その給付として支払われるわけですから、当然それを不当な条件のために拒否をしたということで打ち切られ、あるいは制限を受けるということは、私はおかしいと思うんですよ。しかも、労働力の流動化、あるいは通年雇用とか盛んに大臣は言いますが、私は、賃金の地域格差、これが解消されない限り、流動化なり通年雇用というものはできないと思うんですよ。したがって、当然いままでの低い賃金を引き上げるような労働行政というものが必要であって、あなたのほうは失業保険の面からのみ考え、一方では違った考え方でやっている。こういう同じ労働省の中でばらばらの労働行政が行なわれているところに問題があると思うんですが、そういうその地域が賃金が低いからおまえらがまんしろ、これはほんとうの労働行政ではない、こう思うんですが、したがって、当然いままでの賃金よりも低ければ全部拒否できるのだ、こういうのが私はあたりまえなことではないか、こういうように思うんですがね。
#58
○説明員(道正邦彦君) 失業保険の趣旨につきましては先生も御承知のとおりでございますが、たてまえといたしまして失業者が安定所に見える、その場合には、まず就職をあっせんする、そうして、どうしても就職のあっせんができない場合に保険金を支給する、こういう仕組みになっておりまして、保険金を支給するということの前段階といたしましてより一そう重要なことは、当該失業者に就職をあっせんするということであるわけでございます。そういう趣旨から、居所を変えて、かりに賃金の低いところに移った場合、やはり当該地域において可能な限り就職をあっせんする。で、その場合に、どうしても適職がないという場合に初めて保険金を支給するというのが法のたてまえになっておることは御承知のとおりでございまして、基本的にいろいろ賃金問題等に関連することはお説のとおりだと思いますけれども、失業保険の立場から申し上げますと、就職のあっせんを最優先に考えまして、何とか就職をさせたい。その場合に、一応の基準といたしまして百分の八十程度であれば一応就職をしてもらう、そういうことで一応基準を引いている次第でございます。
#59
○柳岡秋夫君 いま言われたように、就職のあっせんを何とかさせたい、これはそのとおりでいいと思うんですが、そこで、私は、やっぱり今度の姿勢を正すという大きな目的といいますか、ねらいがあるような気がするんですがね。したがって、もう一つの労働者の生活保障、こういう問題については非常に軽んじられてきている、軽視をされてきている、こういうふうに思いますので、この点についてはまたあとで論議をしたいと思いますが、次の問題として、婦人労働者に対する締めつけですね、先ほど結婚、育児、家庭の看護、こういうことで給付を打ち切る、こういうことが適正化の中でいわれているわけでございますけれども、私は、これは根本的に言って婦人の人権を無視した行為じゃないか、こういうように思うんです。それはもう任意で子供をつくったんだからしようがない、こう言われれば別かもしれませんけれども、しかし、婦人は当然子供をつくり、子供を育成する、これは男性と違った特殊な任務といいますか、そういうものなんですから、そういう婦人の特性というものを考えずに、ただ単に、おまえはお産をしたら、労働基準法でも六カ月なりの働かしてはならないという規定があるのだから、これは働かしてはならないんだというふうに締めつけることは、私は問題があるんじゃないかというふうに思うんです。しかも、婦人労働者といえども、これは男性と同じように、同じ率で保険金をかけているわけでございまして、男性と婦人との不公平というものがそこに出てくるのではないか、こういうふうに思うんですが、その点について伺いたい。
#60
○説明員(道正邦彦君) 現在女子受給者の、特に結婚退職者等に対する保険金支給の問題が現実に問題になっていることはお説のとおりでございます。われわれといたしましても、いわば社会的に見まして弱い立場にありまする女子受給者の問題でございまするので、窓口での取り扱い等につきましては、特に慎重に説明、その他について親切な説明をするというふうに指導いたしておりますが、たてまえ論といたしましては、先生御指摘のとおり、やはり保険のたてまえ論からいきますと、就職の意思能力の問題になるわけでございまして、結婚をして家庭に入る、つまり労働戦線から離脱するということが明らかな場合に保険を出すということは、たてまえ論からいって問題があるわけでございます。掛け捨てになるということ、確かに実際問題としてそういう意識を受給者あるいは離職者が持つということはやむを得ない点があると思いますけれども、たとえば、かりに一番短い給付日数であります九十日というものをとってみましても、九十日分を保険料に換算いたしますと、本人分だけでいきますと二十二年分の保険料に当たるわけでございまして、保険料掛け捨てということからいきましても、ちょっと九十日分が二十二年分に相当するという計算からいきましても問題があるようにわれわれとしては考えておるわけでございます。
#61
○柳岡秋夫君 保険料と、それから給付の額がこうなるからということは、私は、少なくとも失業保険制度の上からそういう議論がくるのはおかしいと思うのです。これは一般の私的の保険制度であればそういうことも言えるかもしれませんけれども、しかし、少なくとも国全体の経済の面、あるいは労働者の完全雇用を目ざして、そして失業者に対してはこうした制度をもって国がやっていこうというたてまえ論からいけば、保険財政の面からこれを締めつけるということは、私は納得できない。たとえば女性が結婚したときには、おまえやめなさい、こういう会社も中にあるわけです。そういう場合には、これは任意の退職じゃない、やめなさいということでやめる。それに対して職安のほうでは、おまえは結婚してやめたのだから給付制限をする、こういことでは、これは女性の特権といいますが、権利を無視したものではないが、こういうふうに思いますが、その点は。
#62
○説明員(道正邦彦君) ただいま保険料と保険金との関係について申し上げましたけれども、これはそれだからどうだということを申し上げておるわけじゃございませんので、問題は、おっしゃるとおりに、法の趣旨に沿って運用、支給いたしました場合に、それがかりに保険料、保険金と見合わなくても、これは保険である以上、また、社会保険である以上当然のことでございまして、そのことを申し上げているわけじゃございません。ただ、掛け捨てだというお話がございましたので、掛け捨てという見地からみましても、掛け捨てという問題に限定して申し上げましてもそういうことになるとういことを申し上げたのであります。
 それから、現実にいろいろ事業所によりましては、結婚に伴いましてやめてもらうというふうなことを現実に行なっているところもあるように聞いております。しかし、その場合に、当該離職者がその当該事業所はやめましても、さらにほかで働きたいという場合には、これは就職のあっせんも申し上げる、それができない場合には保険金を支給するたてまえに保険としてはなっておるわけでございます。
#63
○柳岡秋夫君 それぞれのケースによって指導されていると思うのですけれども、しかし、先ほども鈴木委員がいわれましたように、通達をほんとにしゃくし定木に解釈をして運用する傾向が、私は下部にはあるのではないか、しかも、それは、一番最初に申し上げたように、職業安定所の機構、あるいはその要員、労働者の数ですね、そういうものがそれのように、職安法では、性別その他信条を問わず、あらゆることに平等にしなけりゃいけないということも書いてありますし、したがって、当然親切に、また、ほんとうに一人の労働者も不利にならないように、不公平にならないような指導、あるいは就職のあっせん、いろいろやらなくちゃいけないと思うのですよ。それがあまりにも職安の労働者の数が少ない。しかも、今度はこういう形でやれという通達がどんどん出される。そうすると、これはもう一人一人の労働者に、ほんとに懇切丁寧に当たっていることができないんじゃないか。そうすると、流されてきた通達はしゃくし定木に受けてぱっぱと仕事を処理していく、そういうことが現実に起きていて、それがまた一般の労働者に対して非常にきびしくなったと、こういう印象なりを受けているんじゃないかと、こういうふうに思うのです。したがって、ひとつきょう時間がないので、またあとでいろいろと論議していきたいと思いますけれども、大臣はいませんけれども、これはまずもって職業安定所の機構を、もっと失業労働者に対しての措置を十分把握できる、あるいは適正に適職につかせるような機構にしていくということ、それから、それにマッチをした労働者の数、職安の労働者の数をもっとふやしていくということをぜひ、これは失業保険課だけの問題ではないですけれども、労働者全体として考えていただきたいということを最後に申し述べて、きょうはこの程度で終わりたいと思います。
#64
○委員長(藤田藤太郎君) ちょっと私自身から申し上げておきますが、失業保険の概念は非常にりっぱなんです。りっぱという言い方は悪いかもしれませんが、失業者の生活をになうということになっておるのですけれども、だんだんと政府の方向は、三分の一ずつのものが四分の一になってきたり、全くもって相互保険のようなかっこうに実際の問題は進めておいて、言い分だけはいいかっこうに見ていくという議論が少し出てくるような気がします。
 それから、さっき聞いておりまして、失業の場合に休業保償だと言われるけれども、これは政府の都合のいいときだけ言われているので、たとえば三十二年の帰休制度で、六カ月も籍を置きながら保険料をやっておったということもあるので、そこらあたりのことも十分に、時代は進んでいるのですから、しっかり取り組んでもらわないとなんぼでも議論が出てくるような感じを持つわけですから、ぜひ御努力を願いたいと思うわけです。
 本件に対する質疑は、本日のところ、この程度にとどめたいと思いますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 他に御発言がなければ、本日はこれにて散会をいたします。
   午後零時五十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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