くにさくロゴ
1964/11/24 第47回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第047回国会 本会議 第4号
姉妹サイト
 
1964/11/24 第47回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第047回国会 本会議 第4号

#1
第047回国会 本会議 第4号
昭和三十九年十一月二十四日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和三十九年十一月二十四日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後二時七分開議
#2
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。
  〔成田知巳君登壇〕
#4
○成田知巳君 池田内閣退陣のあとを受けて発足した佐藤新内閣が、激しく流動する内外情勢の中でどのような政治路線をとらえんとするかは、国民のひとしく重大関心を寄せているところであります。
 私は、日本社会党を代表し、佐藤内閣の政治姿勢と内外政策の基本について、率直かつ具体的な質問をいたしますから、総理におかれても明快な御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 質問に入る前に、まことに遺憾なことではありますが、歴代内閣のうちで、佐藤内閣ほど、その施政の方向に国民からある種の不安とぬぐい切れない疑惑を抱かれた内閣はないと指摘せざるを得ないのであります。(拍手)私は組閣直後の政府声明を拝見いたしました。また、初の記者会見の様子もテレビを通して承知いたしております。そのいずれも、内容まことに空疎、国民の期待に反したと印象づけられたのは、あえて私一人ではないと思います。(拍手)二十一日の所信表明演説も、形容詞と抽象的ことばの羅列で、一体総理は、新内閣首班として何を考え、何をなさんとしているのか、国民に何を訴え、何を求めんとしているのか、一向明らかではありません。(拍手)美しい形容詞を並べ立てるのは、背伸びして心にもない絵そらごとを言うときか、心にあるほんとうのものを隠すときか、いずれかであるとさえいわれております。(拍手)総理は、この国民の不信と疑惑を一掃するため、以下、私の質問に対し、率直かつ明快な答弁をお願いしたいと存じます。
 質問の第一は、佐藤総理の政治姿勢についてであります。
 総理は、七月の総裁選挙の際、次のような意思表示をなされたことを御記憶だと思います。「池田君は、安保騒動のあとに、寛容と忍耐の低姿勢をとり、その所得倍増政策は、それなりの意味があった、しかし、その結果、消費者物価の上昇、中小企業の倒産、農山漁村、市民生活の不安等、大きなひずみが起こった、また、わが国の国際的地位は上がったが、真に自主性ある外交は展開されなかった、この意味から、池田君の時代は終わった」と述べておられるのであります。この意思表示に対し、国民の中には、それなりに共感を覚え、拍手を送った人もいたと思います。しかるに、今回の首班候補選定にあたり、卒然と、まことに卒然として、池田路線を踏襲すると表明され、組閣後の記者会見でも、その旨を確認しておられるのであります。池田時代は終わった、池田路線は失敗だったと断言したその人が、日ならずして、その路線を引き継ぐと言い放って、平然としておられるのであります。(拍手)国民は自分の目と耳を疑い、全くキツネにつままれた感じであります。池田時代は終わったと言ったのも、池田路線を踏襲すると言ったのも、要は、首班となるための戦術、方便にすぎなかったとすれば、権謀術策、マキアベリズム、これに過ぎるものはないといわなければなりません。(拍手)国民が佐藤内閣の政治に深い憂慮と疑問を抱くのも、理由なしといたしません。
 そこで、総理にお尋ねいたします。
 あなたが終わったとも言い、また、踏襲するとも言っている池田路線の特徴の第一は、寛容と忍耐の政治だったといわれてきました。もともとこの寛容と忍耐は、三池闘争、安保闘争を通じて平和と民主主義を守り抜こうとする力、権力に対する抵抗の精神が、新憲法のもと、国民の間に幅広く定着しつつあることを感じ取った保守勢力が、民主勢力の抵抗と攻撃を回避し、安定ムードをつくり上げるためにとった巧みな戦術にしかすぎません。この戦術としての寛容と忍耐さえ、総理を取り巻く政治グループは、池田総理はこれを目的視したとか、池田式寛容と忍耐は行き過ぎであると、公然と言い放っておるのでおります。また、総理自身が、さきに触れましたように、安保闘争後に寛容と忍耐の低姿勢をとったことはそれなりに意味があったと言っていることは、間接に寛容と忍耐の政治に批判的であることを物語っております。しかるに、記者会見においても、また、所信表明においても、寛容をうたっておられますが、いずれが総理の本心なのか。また、ことさらに「忍耐」の二字を消し去り、新たに「調和」なるきわめてあいまいなることばを持ち出しておられますが、これには何か特別の意味があるのでしょうか。個人と全体、個人と社会の調和なる美名のもとに、社会の厳存する矛盾をおおい隠し、弱肉強食の支配体制を恒久化しようとするやり方は、かつての日本やドイツ、イタリア等の全体主義の国に例外なく見られたところであります。(拍手)総理は、調和ということばで、具体的には一体何を言わんとしておられるのか、その真意を国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 池田路線の特徴の第二は、その高度経済成長政策にあるといわれております。総理自身、総裁選挙で明言されたように、高度経済成長政策が失敗に終わったことは、いまや明らかであります。また、失敗の原因が、その無計画性と設備投資中心の大資本擁護政策にあったことも、識者の常識となっております。(拍手)高度経済成長政策の失敗は、とめどもない物価上昇に端的に示されているのでありますが、これに拍車をかけるように、政府は、突如として消費者米価の一四・八%の値上げを決定しました。過去の経験が示しますように、消費者米価の引き上げが一般物価引き上げの牽引車となることは明らかであります。現に総理は、総裁選挙の際、次のように言っておられます。「消費者物価の引き上げは社会的影響が大きい、したがって、生産者米価が上がれば消費者米価も上げるという安易な考え方はとらない」と。しかるに、今回の消費者米価の引き上げは、総理が反対した、まさにその理由によって、すなわち、生産者米価が上がり、食管会計が赤字になるということを根拠にして、まことに安易に決定されたのであります。しかも、その値上げたるや、池田内閣が総辞職を決定した直後に、持ち回り閣議で行なわれておるのであります。米価引き上げに引き続き、政府はさらに医療費の九・五%値上げを決定しました。この値上げは、中央医療協議会の答申、八%値上げ案を全く無視したものであります。米価引き上げといい、医療費の値上げといい、その内容において、その手続において、全く政治の常識を逸脱した、歴代保守党内閣でもその例を見ない乱暴きわまるものであります。(拍手)一体総理は、これらの値上げをもっともな処置とお考えになっているのでしょうか。物価上昇の根本原因は、中小企業と農村の近代化を放置したままで大企業の設備投資を中心に経済成長を強引にはかってきたこと、また、それをささえてきた日銀券の増発や多くの独占価格、管理価格が設けられたことにあるのであって、この意味において、物価上昇は構造的な矛盾のあらわれといっても過言ではありません。(拍手)ここにメスを入れずして、ひずみ是正などということばで表現されるような安易なやり方、小手先細工では物価問題の解決はとうてい不可能であります。一体総理は、いかなる抜本的対策をもって物価問題に対処されんとしているか、その具体策と決意のほどを示していただきたいと存じます。(拍手)高度経済成長政策の行き詰まりは、来年度の予算編成にも多くの困難な問題を投げかけています。総理は、来年度の経済成長率を一体何%に置かれようとしているのか、物価上昇は何%以下に押えんとしておられるのか、まず承りたいと存じます。
 次に、総理は、総裁選挙のときに、金融政策上、オペレーション機能を増大させ得る点からしても、ある程度の公債発行に踏み切ることが適当であると言われておりますが、御承知のように、中期経済計画は公債発行を否定しております。総理は、それでも公債発行をあえて断行される御意思なのかどうか、承りたいと存じます。また、税制については、当面、重点を所得税の減税に置き、少なくとも課税最低限度と標準生計費の間に若干のマージンを置き、中産階級の税負担を軽減すべきであると言っておられます。まさにそのとおりだと思いますが、この方針は、企業課税減税を中心とする田中蔵相の方針と相いれないものであります。限られた財源で所得税も企業課税もというようにまいらぬことは明らかであります。総理は、あくまで所得税重点を減税政策として断行する御意思ありやいなや、国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 次に、激動する世界情勢の中で、日本外交の進路をいかなる方向に設定しようとしておられるか、総理にお尋ねしたいと存じます。
 最近の世界情勢は、ソ連の政変、中国の核実験、米英両国の選挙等、多くの劇的変化を示しております。しかし、このような情勢の激動にもかかわらず、平和共存の方向は、基本的には何ら変化するものではないと考えます。なぜならば、第二次世界大戦後の著しい特徴として、資本主義諸国は、その不均等発展のため、内部矛盾と対立を日増しに深めつつあります。他方、全世界の社会主義と民族独立、平和と民主主義の力は増大し、いまや世界を動かす力は、平和と社会進歩の側に移りつつあるからであります。(拍手)この大きな流れに、非同盟中立主義の力、世界各国の平和運動の高まりが加わって、いまや戦争は不可避ではなくなり、平和維持と平和共存は現実的可能性となりつつあるのであります。しかるに、このような歴史の流れに逆行し、破綻しつつある冷戦政策に利益を見出さんとして、それにしがみつこうとする勢力が、いまなお絶望的な努力を試みつつあります。言うまでもなく、インドシナにおけるアメリカの危険な戦争政策、冒険政策がそれであります。しかしながら、南ベトナムを中心としたインドシナの情勢は、日一日とアメリカ側に不利となり、アメリカはいま進むにも進めず、退くにも退けぬという進退両難におちいっています。仏領インドシナ時代の苦もい経験を持つフランスのドゴール大統領が、問題解決のためにはアメリカが軍隊を撤退し、インドシナ諸国を中立化すべきだと提唱していることは、まことに示唆に富むものであります。(拍手)アジア外交で自主性を発揮すると意欲を燃やしておられる総理は、一体インドシナ問題をどのようにして解決すべきだとお考えになっているのでしょうか。(拍手)
 言うまでもなく、アメリカ軍の介入は、ジュネーブ協定に明らかに違反するものであります。したがって、日本はインドシナにおけるアメリカの軍事冒険に対し、いかなる形においても絶対に協力しないことはもちろんのこと、政府は、問題の平和的解決のため、アメリカ軍の撤退とジュネーブ協定に基づく関係諸国会議の開催を提唱すべきだと考えますが、総理の所見はいかがでしょうか。(拍手)
 このようなアメリカの危険な極東戦略の片棒をかつぎ、これに協力してきたのが安保体制下の自民党政府の外交政策であります。(拍手)かつての南ベトナム賠償がそれであり、日韓交渉の促進、F105D機の配備、原子力潜水艦寄港承認がその具体的なあらわれであります。(拍手)昨年一月、原子力潜水艦寄港が問題となってから、思想、信条、政治的立場の相違を乗り越えて広範な抗議運動が展開されてきたことは、総理のよく御承知のことと存じます。しかるに、政府は、八月二十八日、国会閉会中に、突如として寄港を承認し、去る十二日にはついに佐世保に寄港を許したのであります。十日あとには佐藤内閣の最初の所信表明と野党の質問が行なわれることが予定されているにもかかわらず、なぜそれを待たずして、原子力潜水艦の寄港をあえて許したのでしょうか、それほど差し迫った理由があったとせば、その理由を明らかにしていだきたいと存じます。(拍手)佐藤内閣のとった態度こそは、学問の権威も科学者の良心も国民の声も、アメリカの要請の前にはこれを無視じゅうりんしてはばからぬという自民党政府の本質を、余すところなく暴露したものであります。(拍手)
 われわれが原子力潜水艦寄港に反対する理由の第一は、その安全性の保障がないということであります。その第二は、寄港を許すことは日本を核兵器の基地とし、日本人の知らない間に、日本人の意思とは無関係に他国の紛争に巻き込まれるおそれがあるからであります。安全性の問題については、政府は原子力委員会の専門部会である原子炉安全審査会にもはかっていないではありませんか。現に日本の権威ある自然科学者、原子物理学者の多くが、学者としての良心に従い、その社会的責任において強く寄港に反対し、抗議しておるではありませんか。政府が安全性を主張する根拠はただ一つ、アメリカが安全だと言うから、これを信用し安全だと考えるというにすぎません。言うまでもなく、安全性の問題は、すぐれて学問の問題であり、科学の問題であります。相手の言うことを信用するということは、信仰の問題であっても科学の問題ではございません。(拍手)相手の言うことを信用するということは、お互い個人の間では美徳かもしれませんが、いやしくも、国と国との間で相手の言うことを無批判に信用し、アメリカの言うとおりになるということは、総理の言う自主外交とはおよそ無縁であり、植民地従属国の態度だといわなければなりません。(拍手)アメリカにおいてさえ、衝突その他の事故を予想して、人口の多い港へ入ることは、軍事上の必要性を勘案し、慎重に決定されることになっています。九十九回安全であっても、百回目に起こるのが事故の事故たるゆえんであります。陸上の原子炉でも、事故発生の場合の対策が立てられているのでありますから、ましてや、動く原子炉である原子力潜水艦が事故を起こした場合の緊急避難その他万全の障害対策を当然政府は用意しているはずだと思いますが、その詳細を国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 申すまでもなく、安全性の問題は、原子力潜水艦の設計、構造上の問題に尽きるのではなくして、いな、むしろ真の安全性の問題は、いかにして日本の国土と日本人の生命、財産を熱核戦争の脅威から守るかにあると思います。(拍手)政府は、原子力潜水艦が搭載するサブロックは、原爆魚雷と普通の魚雷、両者に併用できるのであり、日本に来るときは原爆魚雷を持ってこないと、繰り返し国民に説明していました。しかるに、わが党石橋委員の追究にあって、サブロックは原爆専用であることをついに白状したのであります。(拍手)もし、政府が、この重大な事実を知らずして寄港承認に踏み切ったとすれば、はなはだしい怠慢であり、知っていて、あえてほおかぶりしていたとすれば、国民の存在を無視した秘密政治であり、その責任まことに重大だといわなければなりません。(拍手)アメリカの新聞論調によれば、アメリカ当局は、今回の原子力潜水艦寄港の成否は、核兵器の本格的持ち込みのテストケースだと考えていると伝えられています。原子力潜水艦の寄港を許し、日本を核兵器の基地にすることがいかに危険であるかは、インドシナの戦火が一たび拡大した場合、日本が直ちにその渦中に巻き込まれる結果になる事実を考えれば、あまりにも明らかだと思います。いまでもおそくはありません。政府は寄港承認を取り消し、寄港を一切拒否すべきであり、これこそ総理の言う、国民とともに進む政治のあり方だと思うが、総理の所見はいかがでしょうか。(拍手)
 なお、この問題に関連して、総理に特にただしておきたいことがございます。
 それは佐藤内閣になってから特徴的なこととして、大衆運動に対する警察官の態度が異常ともいうベき傾向を強めてきておるということであります。このことは、佐藤内閣のかもし出した政治的雰囲気のせいでないと、だれが言い切れるでしょうか。(拍手)特に、われわれは佐世保における楢崎代議士の逮捕事件を重大視するものであります。現地で楢崎君と行動をともにし、当時の状況を目撃した人々の話によれば、楢崎君はデモ隊と警察官の衝突を防がんとしてその中に割って入ったのであります。この混乱を防止せんとした楢崎君を、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕した警察官の行動がいかに不当かつ不法であるか、真実は事実関係を徹底的に究明することによって必ずや明らかにされると考えます。(拍手)この事実関係を明らかにするため、関係者を国会に参考人として呼ぼうというわれわれのごくあたりまえの要求に対し、政府・自民党は猛烈な抵抗を示しております。なぜ事実関係を明らかにすることをそれほどまでに反対なさるのでしょうか、常識ではとうてい理解できないところでございます。(拍手)
 さらに申し上げたいことは、私たちは単に事実関係だけを問題にしているのではありません。かつて日本、ドイツ、イタリアにおいてファシズムが暴威をふるったのも、初めはささいな議会政治破壊の行動を不問に付したことから起きております。(拍手)ましてや、今回の事件は決してささいな問題ではなく、原子力潜水艦寄港という現在の最も重要な政治問題に関連して反対党の議員の逮捕が行なわれたというところに問題の深刻性があるのであります。(拍手)憲法五十条の精神が、議員の活動を保障するとともに、政府が反対党の議員を政略的に逮捕し、不当に議会を支配することを防止することにあることは言うまでもありません。したがって、議員の逮捕は、買収、供応、涜職罪とかいう破廉恥罪ならいざしらず、政治活動に関するものについては、慎重の上にも慎重を期することが憲法の精神だと考えますが、総理は一体どのような憲法解釈をとられようとするか承りたいのであります。(拍手)
 今回の原子力潜水艦の寄港が、日本の核基地化につながるものであることは言うまでもありませんが、問題はそれだけにとどまりません。総理も御承知のように、いま右翼勢力は、憲法調査会の答申を契機に本格的再軍備を公然と主張しておりますが、特に中国の核実験が行なわれるや、これを口実として日本自身の核武装化を説き、憲法改正の動きをとみに活発化しつつあります。総理がもし日本への核兵器の持ち込みは絶対許さない、日本自身の核武装は絶対行なわないと考えておられるならば、いまこそ日本の非核武装を世界に向かって宣言すべきときであり、これこそ日本国憲法の精神の具体化といわなければなりません。憲法改正問題に対する総理の所見とともに、非核武装宣言の意思ありやいなや、総理の見解を明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、今回行なわれました中国の核実験問題に関連し、政府の今後の外交のあり方について質問いたしたいと存じます。
 申すまでもなく、われわれ日本人は三たび原水爆の洗礼を受けた国民であり、われわれがいかなる国の核実験にも反対することは国民的権利であり、義務であります。日本の原水禁運動を中心とする平和運動は、この「原爆許すまじ」の国民感情に大きくささえられて発展してきたのであります。われわれは、この立場に立って中国の核実験に対し、遺憾と反対の意を表明してきたのであります。しかしながら、われわれが中国の核実験に反対し、抗議するにあたり、見のがしてならないことは、中国の核実験の背景、すなわち、アメリカの核戦略を中心とした中国封じ込めの対策が中国とアジアの諸国に核脅威を与え、核恐喝を行なっているという厳然たる事実であります。(拍手)
 日本列島自体がアメリカの極東戦略の一大拠点となり、沖縄に置かれた核ミサイルが中国大陸に向けられているという事実を看過してはならないと思います。沖縄の核基地化を許し、原子力潜水艦の寄港を承認した自民党政府に中国の核実験を非難する道義的資格も政治的権利もありません。(拍手)むしろかかる事態に中国を追いやったアメリカ追随の愚かにして危険な政策をこそ自民党の諸君は真剣に反省すべきであります。(拍手)
 同じ日本人でありながら、アメリカの軍政のもと、植民地の奴隷同様な状態に置かれている沖縄の人々が、祖国復帰を強く要求することは当然であります。しかも、この要求、この運動は、同時に危険な中国封じ込めの政策に反対し、日本とアジアの平和にかたく結びついた運動として発展いたしておるのであります。総理は一昨昨日の所信表明で沖縄問題についてはただの一言も触れておられませんが、沖縄の人々のこの祖国復帰の運動にどのように力を尽くそうとしておられるのか、特に総理みずから現地視察におもむくくらいの決意があってしかるべきだと思いますが、総理はいかがお考えでしょうか。(拍手)
 サンフランシスコ平和条約第三条には、アメリカ合衆国を施政権者とする信託統治制度のもとに置く提案が可決されるまでアメリカ合衆国は沖縄の立法、司法、行政の三権を行使することができると規定しております。一方国連憲章七十八条は、信託統治制度は国連加盟国となった地域には適用しないことを明らかにしております。(拍手)日本はすでに国連に参加しております。この日本の地域である沖縄を信託統治下に置くことは国連憲章の禁止するところであります。したがって、いまなおアメリカが沖縄に三権を行使しておることは国連憲章とサンフランシスコ条約に明らかに違反するものであり、日本は直ちに沖縄の返還を求める当然の権利を有すると思いますが、総理の明確な答弁をお願いしたいと存じます。(拍手)
 申すまでもなく、中国の核実験は、核拡散の要因を生み出しましたが、同時に、いかにして核拡散を食いとめ、全面的な核実験禁止と核兵器の廃棄を実現していくかという緊急の課題を世界の人々の前に提起いたしております。すでに中国の首脳会議の提唱をはじめ軍縮委員会の改組、関係国会議の開催等、多くの提案がなされております。現代における平和と戦争の問題の中心課題であるこの核問題に関連して、私は、次の諸点について総理の見解をただしたいと存じます。
 世界で唯一の被爆国民として、また平和憲法を国是とする日本国民として、核実験の完全禁止、核兵器の全面廃棄の協定を結ぶため、日本を含めた関係国会議の開催を政府は率先提唱するとともに、その国際会議において指導的役割りを果たすべきであります。そのために核兵器保有五カ国に対し、すみやかに政府は公式特使を派遣し、会議開催のために最大の努力を払うべきであります。これこそわれわれに与えられた厳粛にして崇高な権利であり、使命だと考えますが、総理は一体どのようにお考えになっておるか承りたいのであります。(拍手)
 第二にお尋ねしたいことは、非核武装地帯設定の問題であります。
 ソ連はもちろん、中国も、米ソ、日中を含めたアジア太平洋地域の非核武装地帯の設置には積極的に賛成いたしております。日本自身がこの構想に反対する理由はどこにもないと思います。問題はアメリカの態度いかんにかかっております。総理は、アジアと日本の平和を保障する上に重大な意義を持つこの構想にアメリカも賛成するよう積極的に働きかけるべきだと考えますが、その御意思ありやいなや承りたいのであります。(拍手)
 第三に、不可侵条約締結の問題につきお尋ねいたします。
 ソ連、中国は、しばしば日本と不可侵条約締結の意思あることを明らかにしております。われわれが中国訪問の際作成した共同声明の中で、日中両国政府は平等の基礎の上に立ち、お互いがそれぞれ各自の国の唯一の合法政府であることを承認し、日中平和条約を締結した状況のもとで日本政府にその意思さえあれば、平和共存五原則を基礎として相互不可侵条約を締結することができることを明らかにしております。これは中国が従来の態度をさらに一歩進めたものであり、中国の対日政策の具体的あらわれであります。
 この中国側の積極的態度をどのように総理は理解され、これにこたえんとされるのか、総理の前向きの御答弁を期待するとともに、この際、この不可侵条約締結と不可分の関係にある日中国交回復と中国の国連加盟問題について総理の見解をただしておきたいと存じます。
 日本外交の最も重要な課題は、日中両国の国交正常化をすみやかに実現することにあることは言うまでもありません。総理は、初の記者会見で、外国が「二つの中国」を言うことは内政干渉になるという趣旨の発言をしておられます。私も総理の考え方に全く賛成であります。二つの中国論の中には一つの中国、一つの台湾を含んでいることは世間の常識であります。したがって、総理は、台湾独立論を含めて一切の二つの中国論に言及したり、あるいはそれに手をかすことは内政干渉として厳に慎むべきだとお考えになっておると理解すべきだと思うが、総理の見解を承りたいと思います。(拍手)
 総理は、所信表明で、池田内閣時代の政経分離の原則を変える考えはないと言われましたが、そのような消極的かつあいまいな態度はもう許されない段階に立ち至っております。総理がもしほんとうに日中関係の前進を望むならば、国交正常化のため、中国政府との何らかの接触を始めるべきときであります。そのための一つの機会でもあった彭真氏一行の来日を拒否されたことはまことに遺憾にたえません。彭真氏の来日をなぜそんなにおそれるのでしょうか。自民党政府はみずからの政治にそれほど自信を持っておられないのでしょうか。(拍手)総理は、急ぎつつもあせらず、勇断をもって国政を進めると言われましたが、これでは急ぎつつもあせらず、何もしないどころか、日中関係を大きく後退さす以外の何ものでもございません。(拍手)私は総理の善処を強く求めるとともに、アメリカでさえ中国とワルシャワにおいて百回以上大使級会談を行なっておるという事実を念頭に置かれた上で、日中関係前進のための総理の明確な方針を承りたいと存じます。(拍手)
 政府は、これまで、中国問題は国連などの場における世界的問題であるとして、日本が中国との国交正常化に踏み切る前には、国際的な場での解決が必要であるという口実のもとに、アメリカの現実無視の政策のお先棒をつとめてきたのであります。しかし、いまや中国を度外視した軍縮は軍縮の名に値せず、中国の加盟しない国連は普遍的な平和機構としての機能を発揮することは不可能な情勢となりました。もし政府がこの世界情勢を正しく理解するならば、来たるべき国連総会において、従来とは異なった積極的態度をとらねばならぬはずだと考えます。政府は、これまでどおり中国の国連における正当な地位の回復に反対し続けるのか、それとも今回は賛成に転ずるのか、あるいは第三の道として政府が現実的と信ずる方策をお持ちなのか、首相の構想をお示し願いたいと存じます。(拍手)
 次に、アジアの平和とわが国のアジア政策を考えるにあたっての重要な課題である朝鮮問題についてお尋ねいたします。
 朝鮮に対し、長年にわたる植民地支配の恥ずべき歴史を持つわれわれ日本人として、朝鮮の人々との友好と協力の新たな関係をいかにして実現するかは、中国問題と並んでアジア政策のかなめをなすものであります。(拍手)
 最近の国際情勢の推移は、韓国の世論にも大きな影響を与え、世論の動向は、韓国の将来につき深刻な再検討を要求し始めております。議論の焦点は、言うまでもなく南北統一の問題であります。朴政権の過酷な弾圧のもとで、統一を論議することはタブーとされていた韓国において、いまやせきを切ったように民族統一の悲願が語られ、そのための具体的方策が論ぜられております。国際政治の新しい潮流の中で、いつまでもアメリカの軍事戦略に朝鮮をまかしておいていいのだろうかという率直かつ真剣な問いが、韓国の政治の前面に登場してきておるのであります。(拍手)このような、北朝鮮はもちろん、南朝鮮の人々の願いにも背を向けて、続けられてきたのが日韓会談そのものであります。
 アメリカが日韓会談早期妥結のため、いかに立ち入った工作を行なったかは、最近のバンディ国務次官補の行動を見れば明らかであります。このアメリカの工作にこたえるかのように、政府は外務大臣を近くソウルへ派遣しようといたしております。しかし、そのような冷戦のワク組みに規定された日韓正常化は、日本と朝鮮の間に新しい歴史の一ページを開くものでないことはもちろんのこと、日本と朝鮮の人々をアメリカの冷戦政策の道具とし、南北分裂の状態を固定化し、朝鮮民族の悲願をじゅうりんする以外の何ものでもありません。(拍手)
 日韓交渉を進める自民党政府の論理は、南ベトナム賠償を強行した論理であり、その背後にあるものはアメリカの冷戦政策、中国封じ込めの政策であります。われわれは、南朝鮮を第二の南ベトナムとすることに絶対反対の意を表明し、日韓交渉の即時打ち切りを強く要求するものであります。(拍手)
 隣国日本としてわれわれのなすべきことは、まず第一に、北朝鮮とも経済、貿易、文化、人事往来等の分野で実務的関係を樹立することだと思います。そして、これと並行して、朝鮮の人々の自主的話し合いによる解決を促進するために、関係国会議を開催して統一問題に新しい局面を切り開くべきであり、そのために日本政府は最大の努力を払う責務があると考えるが、総理のお考えはいかがでしょうか。(拍手)
 なお、この機会に、アジア外交の推進を力説される総理は、来年行なわれる第二回AA会議に当然正式代表を派遣するものと考えて差しつかえないと思いますが、総理の明快なる答弁を承りたいと思います。(拍手)
 以上、私は、新内閣の施政の基本につき、国民の知らんとするところを率直にお尋ねしたのでありますが、最後に、今後の政局、特に国会解散の問題につき、総理の見解をただしたいと存じます。
 総理は、記者会見で、解散の問題は軽々しく口にすべきではない、党内事情や個人の信任を問うために解散することは邪道であり、野党との対決の結果でなければならぬと言っておられます。総理の言われるところは、一般論としてはそのとおりだと思います。しかし、総理の発言は、佐藤内閣成立の過程と具体的政治環境を無視した抽象論であり、あえてこのような発言をされる総理の胸中には、解散をことさらに回避せんとする意図があるものとしか考えられません。伝えられるところでは、総理は、首班候補選定のとき、与党の諸君の議員心理を巧みに利用し、一年間は解散しないということを約束されたともいわれておりますが、もし事実とすれば、これこそ、総理のいう党内事情や個人の信任のために解散権をもてあそぶものといわなければなりません。(拍手)
 佐藤内閣は総選挙の洗礼を受けてできた内閣ではありません。名実ともに民意を反映していない内閣であります。口を開けば国民とともに進む政治を主張する総理には、すみやかに国会を解散し、国民の信任を問うべき政治的義務があると思いますが、総理はいかなる見解をお持ちなのか、国民の前に明らかにされんことを要求いたしまして、質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#5
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 ただいまるる一時間に近くお尋ねがございましたので、あるいは答弁がその要点に触れないかもわからない、そういう点はあらかじめ断わっておきます。私はできるだけ親切にお答えするつもりでございますが、ただいま申し上げるような次第でございます。
 まず第一のお尋ねは、佐藤は七月公選の際に池田路線なるものに反対してきたじゃないか、それが今回は池田路線を踏襲すると言っている、一体どういうことだ。また、寛容、調和、こういうことばを使っておる、これは忍耐を削ったことに特別な意義があるかどうか、こういうようなお尋ねであったと聞きます。
 私は、皆さまにお答えするそのまず第一に、池田前総理も私も、同じ自由民主党の党員である。したがいまして、その党議において縛られておるものがある。表現その他におきまして、あるいは他からごらんになりますと、これは食い違いじゃないか、これははなはだしいことじゃないか、こうお考えになるものもあろうかと思いますが、ただいま申し上げるように、同一政党の人間である、これだけははっきりお答えができるのであります。したがいまして、七月の公選の際に私がいろいろ批判もいたしました。わが自由民主党は民主的な政党でありますから、これは党員の意見を述べることは自由であります。したがいまして、この述べた意見のうち、よろしいと考えたことは池田総理もこれを採用するにやぶさかでございませんでした。経済のひずみを是正するとか、あるいは人間尊重の政治をするとか、あるいは社会開発を取り上げるとか、もうすでに取り上げて、その方向で検討を続けてまいっております。したがいまして、成田さんからいろいろ御心配のようなお話を伺いましたが、決して御心配は要りません。(拍手)私が申し上げたいのは、もともと民主主義、その民主主義から申せば、寛容であることはこれは当然であります。同時にまた、寛容と申し上げる以上、忍耐もその中に入っていることもおわかりだと思います。私は、寛容であり、話し合いを続けていく、もちろんでございますが、同時に、対立抗争をなくしていく。民主主義のもとにおきましては、個々の対立あるいは個と全体との対立、成田さんが御指摘になりましたようなものがしばしばございます。この対立抗争がある限りにおいては、前進がない、進歩がない、国民に対しまして、繁栄をもたらすわけにいかない、生活の向上を来たすわけにいかない。できるだけ調和を念願としてその方向で出かけていく。これは長く説明するまでもなく、りっぱな名画はそれぞれの色が調和をとって初めて名画になります。私どもの社会も、また国会運営も、社会党もあり、共産党もあり、自由民主党もあるが、この国会が、調和がとれて初めてりっぱな国会運営もできるのであります。(拍手)同時にまた、国際社会においても、対立抗争なくしてそれぞれがその所を得る、かくして調和ができ上がる、これが最も望ましいのであります。私は、政治そのものは、かような意味でどうも調和をつけ加えることが必要じゃないか、どこまでも民主主義に徹する、これを社会党の方々にもぜひ理解していただきたい、そのことを強くお願いをいたします。(拍手)
 第二の物価問題でございます。物価問題につきまして、まず米の値段を上げたこと、けしからぬじゃないか、また医療費も上がるそうだということで、この物価問題と政府が取り組んでおるその真剣さについて疑いを差しはさんでいらっしゃるようでございますが、私どもが物価問題に取り組んでおるのは、まことに真剣そのものであります。これは、あらゆるものを上げないという、かような状態ではございません。どこまでも自由経済のもとにおいて価格が形成される、その自由の原則においてそれぞれをきめていかなければならない。問題は、社会開発その他によって、経済開発、それを総合的な観点から経済を安定成長へ持っていくことによって、物価の基本的な対策とするのであります。この点はもちろん成田さんもよくおわかりのことだと思います。(発言する者あり)よくおわかりにならないようですが、これはできるだけただいま申すような総合的な対策を立てなければいけない、物価対策を一つだけ、そういうわけにはいかないということを申し上げておるのであります。
 また、来年度の経済の成長率はどうするのか、物価の上昇率は何%かと、ただいまさような作業をいたしておるようであります。したがって、まだ私が十分その数字をつかんでおりません。
 また、公債発行をするかどうか、こういうお尋ねがございましたが、この公債発行の理論は、発行しても差しつかえないような条件を整えることがまず大事でございます。私が公債発行論者である、かように申しましても、ただいまの条件で十分だとは私は考えておりません。したがって、いま直ちに公債発行、そういうことに踏み切る考えはございません。
 また、税制、減税等につきましては、ただいま税制調査会におきましてちょうどその答申を得つつある段階でございます。いずれ来年度の予算編成とともに、この税制なり、あるいは減税という問題が明確になってくるかと思います。ことに勤労者の方々の所得税はいかにも重いということが、いままでいわれておりますので、おそらくその答申におきましても、こういう点について答申を受けることだと思います。私は、答申がありましたら、十分その答申の線を尊重して、そうしてりっぱな税制をするつもりでございます。
 次に、国際問題につきまして、激動する国際情勢ということを言われました。私どもの見るところでは、流動する状態ではあるが、激動しているとは思いません。これは所信表明におきまして明確に私が申し上げたところでありまして、したがって今日、在来の外交方針を変える必要は認めておりません。ただ私が申し上げたいのは、どこまでも平和を守り自由を守る、そうして自主外交を展開する、これが私の外交の基本的態度であります。社会党の方々も、激動する国際情勢というようなことばはなるべくお避けになったほうがいいかと思います。(拍手、発言する者あり)
 次に、原子力潜水艦寄港につきましていろいろこまかな御議論がございました。しかし、この原子力潜水艦は、その安全性におきましてはもう科学的に証明されております。その科学的な知識を否認されるとか、あるいはこれを信じられないなら別でございますが、国民の大多数の方々が、この原子力潜水艦の入港につきまして非常に冷静であったことは、近代科学を十分信頼している、ここに科学性があるがゆえにこれを心配されなかったのだと思います。(拍手)しかして、この原子力潜水艦、これが直ちに核武装への道だ、サブロックが問題だ、こういうことを言われますが、これは岸内閣以来、池田内閣におきましてもしばしばでございますが、核武装はしない、核兵器の持ち込みは一切許さない、これははっきり国民に申しておりますので、ただいま原子力潜水艦の入港によって、武器のサブロック問題にこれを切りかえられたことは、まことに社会党のために私は惜しみます。どこまでも近代科学を信頼されて、そうしてただいま調査いたしておりますその方向により、はたして放射能がどれだけ出ておるかどうか、また、これが危険なものか、あるいは魚族等にどういう影響を与えておるか、これは科学的に数字が出てまいるのですから、そういう方向で納得をしていただきたいと思います。ただ問題の、御指摘になりましたように、原子力潜水艦が日本に入る、あるいはこれが核武装につながるのではないか、あるいは国際緊張をいやが上に強めるのではないか、こういう御心配がおありのようでございますが、私どもが締結しております日米安全保障条約というものは、これは攻撃的なものではございません。どこまでも防御的なものである。しかもただいま申し上げるように、核兵器の持ち込みは一切許さない、こういう考え方でございますから、その点で誤解のないように願います。(拍手)
 また、佐藤内閣ができて大衆運動の取り締まりが非常にきつくなった、いかにも保守反動だというような御批判がございました。しかし、私は民主主義を守るというそのたてまえをとっておりますが、民主主義で最も大事なことは、寛容と調和もさることながら、ルールを守ることが一番大事でございます。(拍手)ルールを守らなくして民主主義の達成はございません。この点を私は強く皆さま方に要望する。
 ただ、楢崎事件につきましては、まことに私は遺憾の事態だと思います。これは政府だけの問題でもございませんが、皆さま方ともどもに、こういう事態が二度と起こらないように、十分注意してまいりたいものだと、かように考えます。(拍手)
 次に、沖縄の問題につきましてるるお話がございました。大体所信表明にこの大事な沖縄を一言も触れないのはけしからぬというようなお話がございましたが、沖縄の松岡主席に私も会いまして、よく事情も伺い、また、基本的方針に何ら変わりのないことをるる説明しておきました。皆さま方も御承知のように、沖縄の潜在主権はすでにアメリカの認めておるところであります。できるだけ早期にこれが実現を期すべくわれわれが努力しておるのでございますが、今日、これを直ちに要求することが効果を生ずるやいなや、ここはとくと考えさしていただきたいと思います。
 なお、不可侵条約あるいは非核武装地域等についての御発言がございましたが、わが国は、ただいままでとっておりますわが国の安全保障の機構として、保障の制度として一番考えておりますものは、とりもなおさず日米安全保障条約によってわが国の安全を確保しておるのでございます。私はこれより以上これを突き進めていく考えはございません。
 最後に、解散についてお尋ねがございました。一般論として――まだだいぶん大事なことが抜けていたようです。
 中共問題について、二つの中国の問題はどう考えるのかということでございますが、これは私が所信表明で明確にいたしておりますから重ねて申し上げません。
 そうして彭真――御承知のように、わが国は中国大陸に対しましてはどこまでも政経分離の方針で臨んでおりますので、これは明確だと思います。彭真氏の来日を拒否したことにつきましていろいろ誤解を持っていらっしゃるようでございますが、ただいま申し上げる政経分離の原則、このたてまえから出てまいります彭真氏の来日拒否だ、かように御理解をいただきたいと思います。
 次は、北朝鮮の問題であります。北朝鮮の問題は、韓国問題とあわせて、日韓交渉とあわせて、所信表明で私が明確にいたしております。
 開催されるAA会議にはいかにするかということでございましたが、もちろん、わが国はこのAA会議に出席するつもりでございます。
 最後に申し上げたいのは解散の問題でありますが、この解散の問題につきましては、記者会見で申しておるとおりでございまして、成田さんも、一般論としては理解できる、かように仰せられておりますので、一般論として御理解をいただけば、それより以上何にも申し上げることはございません。(拍手)
#6
○議長(船田中君) 成田君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。成田知巳君。
  〔成田知巳君登壇〕
#7
○成田知巳君 お許しをいただきまして再質問をいたしたいと思います。私が総理に質問申し上げましたのは、約十五点の問題でございます。この十五点のうち、いま総理から御答弁いただいたのは約五分の一にすぎません。しかも、その五分の一も全く答弁にはなっておりません。(拍手)すべての問題について答弁を願うことは、時間の関係で私は遠慮いたします。そこで、問題点三、四点について総理の明確な御答弁を願います。
 まず、沖縄返還の問題について、私は、いまなおアメリカが沖縄に三権を行使しているのは、サンフランシスコ平和条約第三条、国連憲章七十八条違反ではないかということを質問申し上げたのでありますが、これについて何らの御回答がございません。この点をあらためて明確にしていただきたいと存じます。(拍手)
 次は、インドシナ問題の解決について、アジアの一国として、このインドシナ問題がどのような発展をとるかは重大問題であります。そこで、ジュネーブ協定に基づき、アメリカ軍の撤退と関係国会議を開くことがただ一つの平和的解決の道である、もしそれ以外に総理が構想をお持ちならば、それを明らかにしていただきたいことを申し上げたわけであります。これについての御回答をいただきたいと思います。
 次に、原子力潜水艦の問題でありますが、私が特に申し上げたのは、放射能が多いとか少いとかいう問題ではなくして、陸上の原子炉さえも、設置のときには、万一事故が起きた場合の詳細な障害対策をつくっておるはずであります。ましてや、動く原子炉である原子力潜水艦の寄港を認められる以上、事故発生の場合の緊急避難対策、障害対策を当然政府はお持ちだと思うが、これを国民の前に明らかにしていただくことを要求したわけであります。
 次に、中国の国連加盟の態度でございます。この問題については、従来どおりアメリカの重要事項指定方式を踏襲されるのか、それとも賛成されるのか、それとも第三の道をお考えになっておるのか、この点をただしたわけでありまして、具体的な御回答をいただきたいと思います。
 最後に、非核武装宣言と憲法改正に対する考え方をお尋ねしたのでありますが、これに対しても回答はございません。
 以下申し上げたいことはたくさんございますが、予算委員会の同志諸君の質問に譲りまして、私は大綱だけ再質問いたした次第であります。総理の明快な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#8
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 平和条約三条は、琉球諸島等について、合衆国が信託統治制度のもとに置くことに関する規定を置いてはいるが、国連憲章七十八条に定める場合とは違うものであって、平和条約三条が国連憲章に違反するということはございません。
 インドシナの場合につきまして御提案がございましたが、私はそこまで研究しておりません。
 次に、原子力潜水艦について、これが科学技術的にあらゆる対策を講じておるかと、こういうことでございますが、今日まで、原子力潜水艦の入港の場所が佐世保でありましたから、比較的にこの処置も楽であったと思いますが、今後、原子力潜水艦の寄港する場所が、あるいは都市附近である、あるいは人口過密のところだ、あるいは長期に滞在するとか、こういうような場合におきましては、特別に考えることもあろうかと思います。
 それから最後に、中共の国連加盟にいかなる方法をとるかということでございます。これについてのお尋ねでございますが、ただいまさようなことを議論する段階でございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(船田中君) 松平忠久君。
  〔松平忠久君登壇〕
#10
○松平忠久君 私は、日本社会党を代表し、主として経済問題を中心として、総理並びに関係各大臣に質問を行なわんとするのでありますが、ただいまの成田議員に対する総理の答弁は、まことにお粗末でありまして、記者会見とこの国会とを混同しておるのではないかと思うのであります。(拍手)したがって、私の質問に対しましては、まじめに、真剣にお答えを願いたいと存ずるのであります。(拍手)
 総理は、去る七月の総裁選挙において高度成長政策を批判し、独自の政策を掲げて総裁に立候補いたしました。すなわち、所得倍増政策は生産第一主義であって、人間性の尊重が忘れられている、経済のひずみは倍増計画のアフターケアなどというなまぬるい手段で解決できるものではなく、このひずみのよって来たるところは、経済開発計画そのものに欠陥があるとしかいえないと断言し、経済至上主義に対決して、人間尊重あるいは愛情のある政治の確立を提唱したのであります。したがってその政策も、生産第一主義からの転換、社会開発計画の立場からの総合的なひずみの是正、総合的物価対策、所得税中心の大幅な減税と公債の発行、それらの施策を通じての貧困の追放を強調し、池田政策に対決したのであります。このような池田政策の強烈な批判者が後継者になって池田路線を引き継ぐことは、重大な矛盾といわなければなりません。世間では、佐藤は政策の理由をもって首班候補に指名されたのではなく、大きな派閥の頭目であったために指名されたのであるといわれております。ただいまの御答弁を聞いておると、この世間の批評が当たっておるようにも思うのであります。(拍手)また、財界から支持されたことも指名を受けた大きな理由で、たがをはめられておるのではないかと受け取っておる人も多いようであります。総理の所信表明を聞きましたが、池田対策の批判者が池田路線を引き継いだ、このジレンマの姿がそのままこの中にあらわれておるように思うのであります。
 そこでお伺いしたいことは、総理のほんとうの心境はどうであるのか。七月の総裁選挙の際に、天下に公約したあの考えをいまでも持っておるのかどうか。ひずみの是正は、アフターケアのごときなまぬるい手段ではなく、総合的施策をもって、勇断をもって臨む考えであるのかどうか、まずその点を明らかにしていただきたいと存じます。
 さて、このような矛盾の中で政治の責任を負うこととなった総理は、所信表明で、国内も変動と転換の時期にあるとの認識を明らかにし、さきに総裁争いの際に公約した経済のひずみ是正は、社会開発計画に基づく総合的な方法によらなければならないという思想を少しずつ出しております。総理は、本年七月からすでに社会開発という耳新しいことばを用いて、物価問題も二重構造も社会開発の立場から取り組むべきであるということを言明しましたが、一体これはどういうことを意味しておるのか。
 そもそも社会開発計画には、狭い意味に使われる場合と広い意味に使われる場合とがあります。故ケネディ大統領が、不況対策として、一連の社会政策を加味して地域再開発計画を立てたときに、反対党は、この社会開発の思想は社会主義の思想を導入しており、資本主義に対する重大な挑戦であるとして攻撃をしたのであります。また、国連においても、ユネスコやエカフェでこのような意見が出され、南北問題がクローズアップされるにつれて社会主義思想を取り入れ、総合的見地に立つ社会開発の計画が議題にのぼっていることも見のがすことはできません。
 われわれ社会党がかねてから提案しておる所得倍増政策の転換、さらには国土の総合的かつ根本的開発計画、及びこれを推進するための政治、経済の最適の体制確立に関するわが党の方針に、佐藤政策の発想が幾ぶんでも近づいてきておるとするならば、若干の意義があります。総理の構想が、はたして世界の進歩的学者や政治家が描いておるところと同じようなものであるのかどうか。総理の言う社会開発の当初の構想は、金融や税制をも含めた広義の、広い意味のような印象を与えたこともあります。ところが所信表明では、社会開発と経済開発との調和をはかると述べて、狭い用語として取り扱っておるようにも受け取れるのであります。したがって、その具体的内容がはっきりいたしませんので、ここにほんとうのところ、どういう内容の社会開発であるのか、またこれを実行するためには財界からの反撃も覚悟をしなければなりませんので、その覚悟のほどをもここであわせて披瀝していただきたいと存じます。
 次に、このような見地に立って質問の各論に移りたいと存じます。
 第一は、二重構造の問題についてであります。
 わが国の経済の構造は、大企業と中小企業との間に大きなみぞがあり、中小企業の不振、停滞は、この構造的欠陥によるものであります。二重構造が問題となりました当時の経済白書、すなわち、三十二年の経済白書には、今後十年くらいは零細規模の経営までを対象として二重構造を積極的に解消することはむずかしい、したがって、この間の非近代化部門の近代化方策としては、特に中規模の経営を採算のとれるようにし、育成強化に重点を置くべきであろう、こう述べております。すなわち、経済白書は、二重構造の存在を認め、これを解消することはむずかしいから、中小企業の上のほうのものを近代化しようというのであります。ところが、その後の高度成長政策の結果は、大企業と中小企業との間のあらゆる格差を広め、二重構造のみぞはますます深く大きくなっているのであります。総理は所信表明で、最近国内経済が落ちつきを取り戻してきたと言っておりますが、国内でも、中小企業の倒産は、本年に入ってから十月までに三千件以上に及んでおります。オリンピック開催の最中から今日におきましても、毎日二十件内外の中小企業が倒産し、落ちつきを取り戻すどころの騒ぎではございません。(拍手)その上、この直接の原因は、高度成長政策の失敗からきているのであるが、根本的原因は、実にこの構造的欠陥にあるのであります。総理が、社会開発の見地から、ひずみの是正を主張している以上、当然この二重構造を解消するための努力をしなければなりませんが、この点に関する所信を承りたいと存じます。(拍手)
 次に、倍増計画の第二ラウンドとして、低生産性部門の近代化、中小企業と農業の近代化に重点を置くべきであるとの見解が、いまから一年数九月ほど前に、当時の宮澤経済企画庁長官等から大々的に述ベられたことがあります。そうして池田総理は、本年度の予算編成にあたって、中小企業に革命的施策を行なうと言明したものであるが、事実はどうであるか。中小企業の予算は全体の千分の四であり、中小企業の倒産は史上未曾有の激増を、示しておるのであります。池田政策はまさに羊頭狗肉であったことを証明しておるのであります。(拍手)ところが、さらに驚くべきことは、三十九年度の経済白書に示された中小企業に対する注目すべき冷酷な見解であります。白書には、開放体制下では、生産性の低い産業をそのままの形で残すことはできない、体質を変えていかなければならないと述べて、さらに、日本では中小企業が他に転換していく能力は、世界的にも非常に高いと述べております。これだけではその真意が必ずしもはっきりいたしませんが、この白書をめぐって座談会において、まずこの白書の起案者は、東大の大内教授との質疑応答の中で、中小企業も賃金を上げないと人が集まらないという形で、二重構造は解消に向かっている、それに耐えられず整理淘汰されていくことはやむを得ないではないか、こう発言をしております。その他多くの経済学者の意見では、現在の財界と、その上に乗った政治勢力は、古い地盤に立つ中小企業は没落するが、これは没落しても差しつかえないという考え方だと見ており、いまや中小企業は整理と淘汰と転換が中小企業政策の重要な課題となってきたと結論を下しているのであります。
 さらに、世間をいたく刺激しておるのは、経団連発行の雑誌九月号に掲載されている、お歴々の無遠慮な座談会における大胆不敵な発言であります。彼らは異口同音に、経済のひずみなんてたいした問題じゃないじゃないか、日本はやはり重化学工業中心の施策を進めるべきであるとの趣旨を述べて、中小企業の問題などは歯牙にもかけておりません。最近発表された中期経済計画は、この経団連のお歴々の考えと全く同じであり、ただこれをお役所風に書き直したものとしか思えません。ここに今日までの池田政策は、ついに中小企業切り捨て政策であったことを暴露するに至ったのであります。(拍手)
 すなわち、経済企画庁の見解では、二重構造の上のほうの構造一本とし、下のほうの構造はそのままに放任するというのであります。ところが、放任されていくこの構造のもとに、勤勉な経営者、労働者及び家族を含めて約二千万人をこえる同胞が没落の運命を背負わされているのであります。整理淘汰されていくのであります。このような血も涙もない政策が一体どこにありますか。人間尊重の政治を主張し、きめのこまかい配慮を主張するあなたは、まさかこの冷酷無比な中小企業の切り捨て政策には賛成なさるまいと思いますが、中期経済計画を再検討すると言い出したあなたには、いささか別の考えがあるようにも受け取れますけれども、真意のほどをお聞きしたいと思います。(拍手)
 なお、これに関連して、金融の二重構造についてもお伺いいたします。
 大企業の設備過剰投資は日銀のオーバーローンによりましたが、中小企業の設備投資にはオーバ一ローンはございません。相銀、信金、信組等はかたく預貸率の厳守を命ぜられております。しかも、これらの金融機関は、一、二の例外を除きほとんど全部が日銀との取引を認められておりません。親銀行はないのであります。ここに明らかに二重構造が見られます。しかも、大銀行向けに盛んにコールが行なわれ、これらの中小企業向けの金融機関を含めて都市銀行に回されているコールは、東京、大阪を合わせて一兆円をこしております。本来中小企業に向けらるべき金が、預貸率の名のもとに中小企業に貸し出すことは禁ぜられ、これがコールによって大企業に回されている金が一兆円もあるという奇現象を呈しておるのであります。これをいままで政府は袖手傍観しておられるが、これでいいのかどうか、これらの金融機関と日銀との取引の問題をも含めて総理並びに大蔵大臣より考えをお聞かせ願いたいと思います。(拍手)
 なお、これに関連して、中小企業倒産に対する緊急措置と年末融資についてであります。
 政府は二千五百億円の買いオペを行ない、資金量を増すという計画であり、これはもとより賛成でありますが、実際には銀行に金があっても選別融資を強化しているために、かゆいところに手が届かないのであります。この問題を解決するには、保証協会の保証率と信用保険公庫のてん補率の画期的引き上げを断行し、他方、政府系三銀行の貸し出し基準を大幅に緩和することが当面緊急に行なわるべき措置であります。あわせて、かねてから問題となっている手形決済の長期化の傾向は、常識の範囲をはるかに逸脱しており、中小企業の金融を著しく困難にしているのみならず、不渡り手形も、その枚数も金額も毎月レコードをあらためております。真剣に手形法の改正を考えなければなりません。また、下請企業の下請代金も、六十日を過ぎればその手形の利息は親企業が支払うように法改正ができておりますが、実際何らの効果もあがっておりません。以上の問題について、所管大臣や公取委員長は何をしているのか、何を考えているのか、ここで明らかにしていただきたいと思います。
 二重構造の中で苦しんでおる中小企業を救うためには、これらの利益を擁護する強力な行政機関が必要であることは言うまでもありません。わが党が去る四十六国会において、中小企業省設置法案を提出した理由もここにあるのであります。またこの考えは、全国の中小企業関係の諸団体が一致して要望しているところであるのみならず、実は与党議員の中にも賛成者があるのであります。自民党の中小企業関係の責任者は、去る十一月十一日の中小企業団体全国大会において、自民党を代表して発言をし、中小企業省設置について賛成している自民党の衆参両院議員は三百名をこすという発表をいたしました。三百名もの賛成者がおるならば、当然中小企業省ができていなければならないはずであります。(拍手)これはどういうわけでできないのか。なぜわが党の中小企業省設置法案を審議未了にしたのか。この際総理の考えを明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 質問の第二は、物価についてであります。
 池田内閣の政治の最大の罪悪は、物価対策を放棄したことであります。所得倍増政策の数々の欠陥の中で、国民大衆に最も不安を与えているのは物価の値上がりであります。池田内閣の施政四年間に、物価は三割上がりました。この根本的原因は、言うまでもなく、池田内閣の財政金融政策にあったのであります。すなわち、大型予算によって経済の高度成長を促し、それによって租税の大幅な自然増収が生み出され、その上に立ってさらに積極政策を打ち出して、高度成長政策を刺激するという財政運営の方式にあったのであります。また金融政策がさらにこれに拍車をかけました。すなわち本年十月の鉱工業生産指数は三十五年に比べて一・七倍であるにもかかわらず、日銀の貸し出し残高はこの期間において二・九倍にふくれ上がっております。すなわち物のほうは丁七倍であり、金のほうは二・九倍になっておるのであります。この数字を一べつするとインフレであり、貨幣価値の下落であり、物価騰貴の根本的原因がそこにあることが判明いたします。総理は勇断をもって事に当たると表明しましたが、いままでの財政金融政策そのものに根本的原因があるという認識に立って、物価の抑制に当たるつもりであるのかどうか、基本的な考え方を伺いたいと思います。(拍手)
 今日の物価騰貴は、すでにあらゆる消費の分野に波及し、さらに重大なことは階層別消費の格差が格大していることであります。これに追い打ちをかけるように消費者米価、医療費を上げ、さらに公共料金、運賃等の値上げを強行するならば、それはたちまちふろ代、理髪代等のサービス料金に波及し、他の一般物価にはね返り、加速度的に家計に圧迫を加え、収拾ができなくなるでありましょう。(拍手)総理が七月総裁選挙の際の公約や所信表明を真剣に実行する考えであるならば、ただいま総理は真剣そのものであるというような答弁をなさいましたが、少なくともさきに池田内閣が決定した公共料金一年間据え置きのこの方針、これを延長しなければなりません。その覚悟があるのかどうか、本院を通じて国民の前に明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 次に、物価政策のあり方についてであります。
 国鉄基本問題調査会では来年四月から国鉄運賃を三二%上げる案をまとめました。自民党の担当部会においても三二%の値上げを是認したようであります。これは第三次六カ年計画のためとありますけれども、いままでの第二次計画があの新幹線のたび重なる予算増額に見られるようにずさんをきわめて、そのしりぬぐい的計画が実はこの第三次計画の中に穴埋め的に押し込められている印象が強く、国鉄の無責任さを暴露しておるのであります。真に必要な計画であるとするならば、国家資金や財投に求むべきであります。なお、国鉄は貨物輸送の赤字を旅客運賃によってカバーしていますが、大口独占物資の赤字輸送が八〇%も占めておるのであります。大衆の生活を向上しようという政治の姿勢とは逆な現象ではありませんか。
 次に、公営企業たる電車、バス、水道等の料金でありますが、政府はさきの公共料金一年間据え置きを決定したときに収支の悪化が予想されていたのであるから、当然地方公共団体に対して財政措置を行なうベきであったけれども、それを怠り、融資の措置すら私鉄に遠慮して行ないませんでした。そもそも公営企業は営利の追求を目的とせず、国民の生活に利便と福祉を提供することを目的としている事業であって、これに対して強く独立採算制をしいることはこの事業の性格に相反する態度といわなければなりません。(拍手)
 私鉄、私バスの場合においても、その公営的性格は同一であって、企業の社会性をさらに強めるような措置を講ずるとともに、その反面、財政、金融、税制について特別の措置を行ない、公私営を問わず一貫した政策を保持していかなければなりません。私鉄大手十四社の料金値上げの動きも出ており、公私営を問わずこれらの料金は国民生活に重大な関係がありますので、据え置きの延長を申し上げておるのであります。
 以上の問題に関し、総理、経企庁長官、運輸大臣、自治大臣の答弁を求める次第であります。
 物価問題の最後として、管理価格について公取委員長に一お伺いします。
 今日、不況を背景として、たとえばセメント、鉄鋼等の業界が、通産省の行政指導という隠れみののもとに価格操作を行なっている様子が見えます。これは、これらの大企業が不況の肩がわりを消費者に転嫁させておるものであって、明らかに独禁法の精神に違反する行為といわなければなりません。公取は昨年末、板ガラス等三品目に対して、わずかではあるが管理価格を下げさせ、消費者からは多少見直されたのであります。今日においても独占、寡占物資の中には、値下げ可能のものが皆無とは言えないと思います。そういうことはなさらずに、逆に不況の肩がわりを消費者にさせて黙っているのはどういうわけであるのか、この際、物価に対して一体公取は何をしてきたのか、ここで明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 質問の第三点は、過密都市の対策についてであります。
 今日まで首都圏、近畿圏及び新産都市等の政策がありましたが、何らのきめ手となっておりません。加うるに、無軌道な高度成長政策のために、住宅難、交通地獄、水飢謹、工場災害、汚水、ばい煙、悪臭の公害等々、われわれの生活と生命を脅かす環境ができ上がり、もはやこそくな手段をもってしては解決できないまでに悪化したことは、自民党政府の無策として強く糾弾されなければならないところであります。(拍手)この解決こそ全国的規模における総合的な社会開発計画を立て、強力にこれを実施しなければなりません。これを解決する前提として、まず土地政策を確立することが急務であります。
 政府は、今日まで、地価の暴騰に対して何らの抑制策をとらず、政府みずからが地価の安いところをさがして、だんだんと遠いところに公営住宅などを建設し、東京の周辺に衛星都市をつくる等の安易な方法を続けて、地価の騰貴をますます周辺に広げてまいったのであります。このやり方は交通、教育、し尿処理等あらゆる面ですでに行き詰まっております。また、新産都市についても、自民党の選挙対策に利用されたことと、地価の急騰をもたらしたという結果に終わらんとしております。
 総理の言うような社会開発の計画を立てるにしても、住宅問題の解決をはかるにしても、まず地価の騰貴を押え、地主の不労所得を規制するのはもちろん、国有地の拡大と開発をはかる等、画期的かつ強力な施策を進めなければなりません。イギリスのランド・コミッティのような強力な土地管理機関の設置が必要と思うが、このような構想を研究したことがあるのかどうか。総理が建設大臣に指示したような中途はんぱな対策ではとうてい解決することは不可能と思いますので、この際画期的な構想をお出しになることを期待しつつ、総理並びに建設大臣の所感を承りたいと存じます。(拍手)
 新産都市については、地方公共団体が自腹を切って受け入れ態勢を整備したところもありますが、工場は一つも出来なくて、ペンペン草がはえているようなところもあります。そもそも新産都市のような構想は、経済の計画化を前提とすべきものであって、イギリスの工場配置法のような構想を伴わなければなりません。過密都市対策の一環としても、工場の再配置と新設工場の指定の制度を設け、かつ、その企業がその地点で成り立つように、金融、税制その他の優遇措置をあわせ講ずる立法措置が必要でありますが、この点について通産大臣、経済企画庁長官の見解を承りたいと存じます。
 高度成長政策の落とし子として、緊急対策を要するものの一つに、工場災害と公害の問題があります。この根本原因もまた生産第一主義にあることは否定できません。国鉄の鶴見事故のごとく、スピードアップと過密ダイヤのために事故防止の措置をとっても間に合わず、人間の能力を越えた運行が行なわれておること、昭電川崎工場の事故のごとく、低圧ガスはそれ自体危険であるにもかかわらず、取り締まり法規の対象になっていないこと、品川宝組倉庫に野積みにされた硝化綿の爆発は法律違反であるが、従来、火薬の原料として使われた硝化綿が、近来塗装の原料としても大量に使われることとなり、年々需要が増大しておるにもかかわらず、これを保管する危険物保管の指定倉庫の拡張は不急なものとしてあと回しにされておること等、いずれも高度成長政策の行き過ぎとアンバランスがこれらの災害の最大の原因となって、働く人たちの生命を脅かしておるのであります。(拍手)ことに遺憾なことは、取り締まりの責任の主体が労働省、通産省、運輸省、消防庁等ばらばらであり、また、これらと警察との関係も不明確であります。至急強力な行政委員会等を設置して、抜本的対策を講ずる必要がありますが、まず、総理の人間尊重の立場からの見解を承り、次いで労働、通産、自治各大臣の具体的な考え方について伺いたいと思います。(拍手)
 次に、汚水、ばい煙、排気ガス、悪臭等の公害は、工場地帯を中心としてますます住みにくい環境をつくり、いまや重大な社会問題となりつつあります。過般通産大臣は、雑誌「エコノミスト」に掲載された対談の中でこの問題を取り上げ、新産業道徳論なる意見を発表し、道徳によって公害問題を解決しようと言っております。企業に社会連帯意識を持たせることはもとより必要でありますが、しかし、道徳でこの問題が解決できるものかどうか、道徳による具体的な解決方法を、ここに明らかにしてもらいたいと思います。(拍手)
 なお、通産省の事務当局は、企業の国際競争力を重視する立場から、公害を大部分社会資本によって解決しようとする意図があるようにも受け取れます。もしそうだとすれば、企業はますます社会道徳の観念を持たなくなり、大臣の意図とは反する結果になります。企業から出てくる公害は企業の責任で解決させるというたてまえであるのかどうか、政府としての根本的姿勢とその具体策について明確な見解を承りたいと思います。
 時間の関係がありますので、国際収支や経済協力についての質問を割愛いたしますが、最後に一言申し上げたいことがございます。
 総理は所信表明の中で、世界が流動し、変転しつつあることを認めました。しかし、問題は、先進国の社会、経済の流れの方向がいかなる方向にあるかということを把握することであります。アメリカにおいてさえ、古い勢力は、新しいレジームの行き方を、社会主義の導入であり、資本主義に対する挑戦であると言って攻撃したけれども、流れはまさに新しい方向に向かっております。イタリヤやフランスでは、社会主義政策を多く取り入れた混合経済が現に行なわれております。イギリスでは、技術革新からくるマイナス面の解決のために、企業の社会性の強調と社会化の方向に向かい、すでに鉄鋼の国有化を断行しました。これはいずれも国内における貧富の差を縮小せんとする政策であります。しかるに、日本の財界には、これらの流れに目をつぶり、古い思想で古い方法に固執しておる者があり、これに頭の上がらない保守党政治家も圧倒的に多いということであります。(拍手)はなはだしいのは、このような十九世紀的思想の持ち主に共鳴し、外国に出かけてまでも選挙の応援をするという風変わりな政治家もあなたの党にはおるのであります。(拍手)
 IMF総会やオリンピックの開催を自画自賛するのもけっこうでありますが、その前に、このような世界の流れを十分に把握し、国際的貧富の差の縮小に寄与したいと言っておる総理の決意を、まず国内における貧富の差の縮小に向けなければなりません。かくすることによって、初めて共通の広場も生まれ、国会の正常化もできるでありましょう。
 以上のことを特に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○国務大臣(佐藤榮作君) 松平さんにお答えをいたします。
 先ほど成田さんにお答えしたように、自由民主党内のことはしばらくお預けを願いたいと思いますが、私が当時主張いたしました事柄は池田前総理によりましてもすでに取り上げられております。したがいまして、私が今日勇断をもってこれらのものを具体的に推進する立場になっておりますので、私は真剣に物価問題等と取り組んで、そして、むずかしい事態ではございますが、これの解決に努力したいと思っております。(拍手)
 第二の社会開発の問題でございますが、社会開発につきましては種々御意見を拝聴いたしました。私も松平さん御意見に賛成の部分もありますが、これは狭いとか広いとかいう問題ではございません。これをそういう方向で、そういう一つの目標を立てて、そして経済活動と調和をとっていく、このことが大事なことではないかと思います。ことに、御指摘になりましたような今日の社会不安をかもしたり、また産業自体の破壊等をかもしておりますものが、ただいま言われる社会開発、この思想ならば前向きによって解決されるのではないか、かように思いますので、私はこの点を取り上げておるわけであります。二重構造といい、あるいは中小企業といい、また農業等といい、零細企業、これにつきましても、この社会開発の思想で進んでいきたいと思います。
 中小企業の中小企業省をつくるかどうかというお話でございますが、これにつきましては、私、かつてお話し申し上げたとおりですが、今日もなおその思想には変わりございませんので、ただいま設置する考えはございません。
 公共料金あるいは国鉄運賃等の据え置きの問題でありますが、今日、一年間の期限が切れた、これで直ちにそれでは上げるのかということですが、私は上げる考えはございませんが、できるだけ実情に即したように、ケース・バイ・ケースで処理していく考えでおります。なお詳しくは担当大臣からお話をいたします。
 過密都市、この問題は今日一番の悩みであります。しかも大都市を中心に、産業、人口といわず、文化まで都市に集中されておる、この現状でありますので、政府は産業、文化、人口の地方分散への努力もいたしまして、過密都市の問題と真剣に取り組んでおります。
 工場災害、公害あるいは汚水の処理等、これも人間尊重の立場から当然考えていかなければならない。ただいまの社会開発の一番大きな問題でもあります。手近な問題でもございます。
 最後にお話がありました御要望の点につきましては、十分その御意見を伺っておくことにいたします。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#12
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 第一点は、金融機関の状態及び金融の正常化についてでございます。金融の正常化について進めなければならぬことは御指摘のとおりでございます。
 なお、大きな銀行、すなわち都市銀行に対しては、預貸率等の問題はあるけれども、大きくこれが影響を受けるのは、相互銀行、地方銀行、信用金庫等、中小企業向け機関が、この制度のために、金がありながらコール等に回さなければならないような御説でございます。御承知のとおり、健全経営化のために預貸率の制度をとっておることは、これはもう金融機関すべてにとっておるわけでございます。しかし、中小企業専門機関の資金が、中小企業により的確に回るようにしなければならないことは御指摘のとおりでございまして、金融機関の経営の健全化、すなわち、その過程における預貸率その他の制度と、なお、ある金が中小企業に回らなければならない問題は、別な問題として十分検討してまいりたいと考えるわけであります。
 第二の問題は、日銀とのつながりについてどうするかということでございます。これは松平さん御承知のとおり、長いこと検討されておる問題でございますが、将来中小企業専門機関といえども日銀との窓口開設を必要とするという方向に対しては同感であります。
 次に、中小企業の年末金融の問題でございます。御指摘のとおり、政府は、日銀を通じましての買いオペレーションの制度においても、また財政資金による市中金融債の買い上げ等におきましても、年末中小企業金融を考えながら配慮をいたしております。のみならず、政府三機関の資金量の確保及び融資ワクの拡大をはかっておることも御承知のとおりでございます。なお、都市銀行はじめ地方銀行その他金融機関は、年末に対して約三千億にものぼる中小企業金融のワクを決定しておることも御承知のとおりでございます。しかし、私はこれをもって足れりとしておるのではないのでありまして、これから日銀及び地方の金融機関につきましても、年末の中小企業の状態を十分把握しながら適切なる処置をとるように要請をいたしておりますし、政府自体も事態の推移を十分見ながら適切なる施策を行なって、遺憾なきを期したい考えであります。
 第三点は、手形法の問題でありますが、御承知のとおり、企業間信用が非常に膨張しております。同時に、融通手形の問題、また不渡りの激増等に対処して、手形法の改正を急がなければならぬということは御指摘のとおりでございまして、もう一年くらい前から法務省と検討に移っておりますが、私は、できるだけ近い機会に成案を得て国会の御審議をわずらわしたい、こう考えております。
 それから、年末金融ばかりではなく、下請企業に金がそのまま渡るように処置をせよ、これはそのとおりでございます。これはただ中小企業に金が必要であるからといってその面にだけ金をつぎ込むことが合理的ではなく、いわゆる金融梗塞が解けるように中小企業に直接金が渡るようにしなければならぬことは御指摘のとおりでございまして、金融梗塞を解きながら適切に下請代金が確保せられるような処置を考えております。
 第四点は、信用保険の問題でございます。御承知のとおり、中小企業信用保険公庫より新たに二十億円を信用保証協会に貸し付けまして、これが一そうの拡充に努力をいたしておるわけであります。
 それから、物価問題につきまして御指摘がございました。何か池田内閣を通じまして、自由民主党内閣の財政金融政策が物価高騰を招いておるような御認定でございますが、御承知のとおり、三十六年度は、対前年度比二二・四%増しの一般財政規模でございます。三十七年度は二二・六%であります。それが三十八年度は一七・四%、三十九年度は御承知のとおり一四・二%と、相当なスピードで引き下げをはかっておるわけでございます。しかし、実際の財政需要というものがこの程度で済む状態にあるかどうかということは、皆さん御承知のとおりであります。財政需要が非常に大きいにもかかわらず、このように健全財政を貫いておるわけであります。ですから、財政が景気を刺激することのないように、しかも財政金融一体化の原則をとりながら今日のような状態を築いておるのでありますから、私は財政金融政策が誤りであるとは絶対に考えておりません。(拍手)明らかにいたしておきます。
 なお、金融調整の過程において申し上げたとおり、国際収支の長期安定及び安定成長の確保、物価の抑制の三点を目標にしながら、日々努力をしておることも御承知のとおりでございます。
 最後に、公共料金と財政資金の問題でございますが、これもひとつ十分お考えいただきたいのは、公共料金の抑制を直ちにダムを切るような状態で行なうことが決して適切でないことは、いま総理が申されたとおりでございます。しかし、財政資金も国民の税金でございます。公営企業の料金がストップせられておるからといって、これをすべて税金をもってまかなうということもできないわけでございます。でありますので、物価に十分注意をしながら、公共料金制度の合理化を各位においてはかっていくということも当然だと考えるわけであります。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
#13
○国務大臣(櫻内義雄君) 私に対する中小企業の金融の実態についてのお尋ねでございましたが、これは松平議員よく御承知のように、下請企業に対する支払い遅延防止法がございます。この法律に基づきまして実はどんどんその調査の結果を発表すればいいのでありますが、各企業の信用にもかかわりますので、それはなるべく控えておりますが、一・四半期ごとに大体二千工場当たりの立ち入り検査をしておりまして、そうして手形が長期になっておるとか、あるいは納品をいたしましても、その時期をずらしてさらに手形のサイドが長くなるとかいうような、もしそういう不当な行為をしておるものがございますれば、出先の通産局長から警告を与えまして、改善をするようにつとめております。しかし、それでも十分でありませんので、この点は公取委員長からお答えを願うのが適当でございますが、私のほうから公正取引委員会のほうにこれを持ち込みまして、警告を正式にする、また、今後それでも十分でなければこれを公表していきたい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
 過密都市に関連する御質問でございました。産業及び人口の適正配置については、すでに京浜間の過密地域における工場等の制限をいたしております。また、新産業都市、工業整備特別地域、低開発地域工業開発地区等の拠点の育成や産炭地域の振興等を通じて促進をしている方策をとっておる次第でございますが、これらのことを遂行する上におきましては、国と地方自治体が十分協力をしていかなければならないと存じますので、たとえば、土地造成について先行投資のための起債や、工業用水の確保についての国庫補助、起債等を認めておるような次第でございます。
 また、私に対して、雑誌の記事をお取り上げになりまして、新産業道徳ということを言っておるが、それで公害や災害対策が事足りるか。もちろん、それでは十分でございません。しかし、現在の産業界の状態を見ておりますときに、何としての企業経営者の責任の自覚というものが大切でございます。もし災害が起きる、公害が起きる、こういうことになりますれば、経営者が影響を受けるとともに、また、遺憾ながら人命の損傷等の問題も起こす、また、付近の住民に対する大きな影響がございますので、まず、いろいろ施設をするにいたしましても、新しい産業経営者の自覚、その新産業道徳ともいうべき心がまえを私はまず訴えておるのであります。(拍手)しこうして、もとより私どもはただそういうことで十分だとは思っておりません。現在におきましても、開発銀行から、あるいは近代化資金を通じましてそうして助成措置をいたしておるのでございますが、さらに明年度以降におきましては、これらの公害や災害に対する施設費というものはなかなかそろばんに乗ってきませんから、できにくい面もあろうかと思います。そういうことがあってはいけないということから、低利の資金が十分行き届きますようにいま配慮しておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣高橋衛君登壇〕
#14
○国務大臣(高橋衛君) お答え申し上げます。
 御承知のとおり、本年の一月に政府は物価対策要綱を決定いたしまして、それに基づきまして、各省庁で鋭意これが実施につとめてまいっておるのでございます。その結果として、本年度上半期、すなわち四月から九月までの実績を見てみますると、本年度は三・二%の上昇にとどまっておるのでございます。昨年度が八・一%でございますので、昨年度比較において相当な改善を見ておる次第でございます。下半期におきましても、政府は物価に対して慎重な態度をもって対処していく考えでございます。もちろん、消費者米価等どうしても調整を要する問題はございますが、全体として引き締めてまいりまして、今後漸次消費者物価を安定さしていくという方向に向かって努力していく考えでございます。
 公共料金の一年間据え置きの問題、これはどちらかと申しますると異例な措置でございまして、これをずっと永続すべき性格のものではないと存じます。しかしながら、これを解除いたしました後におきましても、ケース・バイ・ケースに慎重にその企業内容を審査し、また物価に与える影響等も十分に考えた上で処置していきたい、そうして物価の安定に対してできるだけ弊害のないように処置していきたい、かように考えておる次第でございます。
 国鉄運賃につきましては、ただいま国鉄基本問題調査会がございまして、その答申がいずれ出ることだろうと存じますが、その答申を見ました上で、政府として慎重に検討していきたいと存じますが、国鉄運賃は物価に対する影響が非常に重大でございますので、この点については慎重の上にも慎重な態度をもって臨みたいと考えております。
 なお、公営企業の料金等につきましてお尋ねがございました。これにつきましては、公営企業と私企業とを比較してみますると、私企業においては、たとえば東京都の場合等におきまして、キロ当たりの収入は、公営企業のほうがずっと多いにもかかわらず、人件費が非常に多いというようなことのために赤字が出ている部分が相当ございます。そういうふうな観点から、公営企業も一つの企業でございますので、企業という観点から能率的な運営をいたした場合にどの程度の欠損を生ずるか、どの程度の赤字を生ずるかというような点を十分に検討いたしました上で、その問題を処置いたしたいと考えます。
 なお、過密都市対策については、総理大臣、通産大臣から詳しく御答弁がございましたので、省略いたします。(拍手)
  〔国務大臣松浦周太郎君登壇〕
#15
○国務大臣(松浦周太郎君) 国鉄の運賃については、ただいま企画庁長官が答弁いたしましたとおりであります。
 松平さんに一言申し上げたいのでありますが、先ほど、東海道新幹線の不手ぎわから経営上の穴埋めの不手ぎわを運賃に求めるのではないかというおしかりがあったのですが、これはあまり酷ではないかと思うのであります。皆さまの御存じのような状況でありまして、この国鉄運賃の問題については、収入の物価指数と支出の物価指数はまるでアンバランスなんです。昭和十一年を一として、運賃指数は一一六です。ところが、物価は五百倍です。人件費は六百倍です。そういう経営の中に、どれだけじょうずにやろうとしても、これは赤字が出ることは当然であります。しかし、それだからといって赤字を出すつもりはありません。したがって、現在の国鉄の状況は、八千億にことしは借金がなる。五百二十億の利子を払うのです。こういう場合に、過密ダイヤを直していこう、あるいは近代的な改良工事をしようとするときに考えられるのは、自己資金、借り入れ金、あるいは政府投資、この三点以外にないのです。そうすれば、どれを選ぶかということはおのずときまっていることでございますが、これについては、ただいまお話しになりましたように、基本問題調査会においてこれを検討中でございますから、この検討によって処理したい、かように思っております。
 私鉄及びバスの問題に対しましては、中小企業において非常に困難をきわめて極端な経営の悪化しておるものに対しましては、経済閣僚懇談会の議を経まして、それぞれ直しておるものが百三十五ぐらいございます。(拍手)
  〔国務大臣吉武恵市君登壇〕
#16
○国務大臣(吉武恵市君) 松平さんの質問にお答えをいたします。
 第一は、交通事業、水道事業等地方公営企業は、政府の物価対策として一年間料金が据え置かれたが、今後どうするつもりかというお尋ねでございます。地方公営企業の料金改定は、その物価に及ぼす影響がきわめて大でございまするので、慎重に検討しなければならないと存じますが、ただ、六大都市のバス料金等のごときは長期にわたって据え置かれておりまするために、相当の赤字を出しておるのでございます。地方公営企業の健全な経営をはかるために、企業の合理化を強力に推し進めるとともに、適当な時期に適当な水準の改定が必要ではないかと、目下慎重に検討を推し進めておるところでございます。
 なお、地方公営企業は独立採算制のたてまえをとっておるけれども、特に公共性が強い公営企業については、一般財政より繰り入れる方法を考えてはどうかというお尋ねでございます。地方公営企業は利用者負担の原則に立っておりまして、独立採算制をたてまえとしておるのであります。したがいまして、赤字が出たからといって直ちに一般財政から繰り入れるということは、利用者以外の者に税金の負担をかけることになりますので、にわかに賛成しがたいと存じております。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇〕
#17
○国務大臣(石田博英君) 労働行政の目的は人でありますから、したがって、その基調は人命尊重になければならぬことは言うまでもございません。したがって労働行政は、生産第一主義より安全第一主義で行なうように指導いたしておるつもりでございます。ただ、科学技術の進歩発展に法律が追いついていかない問題につきましては、法令の改正あるいは行政の運営等の改善をはかって、この技術の進歩に追いついてまいるようにいたしたいと思っております。
 次に、監督行政の一元化でございますが、これは御説のとおりでありまして、これが機構としてすみやかに実現されることを熱望するものでありますけれども、それまでの間は、御指示のように、行政委員会等の方法を考究して、関係官庁間の連絡を強化いたして対処いたしたいと思っております。
 また、監督行政の整備強化、あるいはまた、機動化、能率化が必要でございますが、しかし、それと同時に、労使双方とも人命の尊重という気風を醸成いたしまして、安全管理についての関心を高めていくことが必要であると存じておりますので、前国会で成立を見ました労働災害防止団体等に関する法律に基づいて関係団体が設立を見ております。この活動を助成いたしまして、その効果を期待いたしてまいりたいと存じております。(拍手)
  〔国務大臣小山長規君登壇〕
#18
○国務大臣(小山長規君) 私に対するお尋ねは、過密都市の問題に関連しまして、人口や産業の地方分散化をほからなければならぬけれども、地価を放任しておったのでは何にもならぬじゃないか、したがって地価対策を何か根本的なものを考えておるか、あわせて、英国の土地委員会の構想を知っておるか、こういうことでございます。
 英国の土地委員会の構想は、御承知のように、建築用地を公有化して、国がこれを買い取りまして利用者に賃貸しをするという構想であります。これをわが国の法制に導入するためには、私権との調整をどうするか、こういう問題を解決してまいらなければならぬのでありまして、したがって、根本的には土地の所有権に対する考え方の改革ということがまず前提であり、現時点ではわが国の制度とすることは困難であると考えます。
 そこで、土地の価格を根本的に抑えるためには、たとえば地価を凍結したり、あるいは公定価格を設定するということも一つの方法でございましょうけれども、私権との調整ということがなかなか問題でございます。地価高騰の原因は、土地の需給がバランスを失しているというところにあるのでありますから、その問題については、産業、人口の分散を計画しておりますことは、総理大臣が申し上げたとおりであります。しからばといって、土地の暴騰を許すわけにまいりませんので、急激な高騰を押えるということが主眼となってまいります。したがって、住宅公団や金融公庫で土地の大量供給を行なったり、あるいは鑑定評価制度を確立したり、地価の公示のための調査を明年から実施するような方策を考えておるわけであります。また、地主と宅地造成施行者が開発利益を分け合う制度、こういうことを考えまして、近く国会にお願いをする予定でございます。(拍手)
  〔政府委員渡邊喜久造君登壇〕
#19
○政府委員(渡邊喜久造君) お答えいたします。
 第一の御質問の点、下請代金の支払い遅延でございますが、この点につきましては、法律の一そう強力な施行につとめておりまして、従来に比較しまして違反事件の処理数も増加しております。しかし、最近の金融情勢等を反映しまして、手形支払いの増加、手形サイトの長期化など、下請代金の支払い状況は遺憾ながら悪化の傾向にあります。したがいまして、公正取引委員会としましては、これらの情勢に対処しまして、現行法の一そうの運用強化をはかりますとともに、法改正の問題につきましても、目下各方面の意見を徴しながら公正取引委員会としての意見を取りまとめるべく検討を進めております。
 第二の管理価格の問題でございますが、昨年来引き続いて調査をしておりますが、その後経済情勢の変化もありまして、従来価格の硬直性を示していた商品のうちにも、価格競争が活発化して値下がりを示し始めているものも若干見受けられます。こうしたような新しい情勢の変化をも考慮しながら調査を続けておりますが、一番われわれの関心の的となりますのは、いわゆる違法な手段による価格維持管理でありまして、こうしたものが発見される場合におきましては、独禁法上すみやかに必要な措置をとる所存であります。
 寡占状態にある大企業の商品について、通産省の行政指導のもとに、生産あるいは価格等についての統制が行なわれているのではないかというお話でございますが、われわれとしましては、通産省から何ら連絡を受けておりませんし、また、そうした事実があるという証拠は、現在のところ出ておりません。そうした事実があることがはっきりしますれば、公取としては、当然独禁法により違反事件として処理いたすつもりでございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#20
○小沢辰男君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十五日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#21
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十一分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 高橋  等君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 神田  博君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  櫻内 義雄君
        運 輸 大 臣 松浦周太郎君
        郵 政 大 臣 徳安 實藏君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 小山 長規君
        自 治 大 臣 吉武 恵市君
        国 務 大 臣 小泉 純也君
        国 務 大 臣 河野 一郎君
        国 務 大 臣 高橋  衛君
        国 務 大 臣 増原 恵吉君
 出席政府委員
        内閣官房長官 橋本登美三郎君
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        総理府総務長官 臼井 莊一君
        公正取引委員会
        委員長     渡邊喜久造君
        建設省計画局長 志村 清一君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト