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1947/10/18 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 商業委員会 第14号
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1947/10/18 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 商業委員会 第14号

#1
第001回国会 商業委員会 第14号
昭和二十二年十月十八日(土曜日)
   午後一時四十分開議
 出席委員
  委員長 喜多楢治郎君
   理事 石神 啓吾君 理事 笹口  晃君
   理事 片岡伊三郎君 理事 福永 一臣君
      赤松 明勅君    林  大作君
      師岡 榮一君    山口 靜江君
      井村 徳二君    坪川 信三君
      松井 豊吉君    山本 猛夫君
      鈴木 仙八君    前田  郁君
      松崎 朝治君    小枝 一雄君
 出席政府委員
          公正取引委
          員會委員長 中山喜久松君
          商工事務官 松田 太郎君
          商工事務官 和田 太郎君
 委員外の出席者
             議員 海野 三朗君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 百貨店法を廢止する法律案(内閣提出)(第六二號)
 財團法人理化學研究所に關する措置に關する法律案(内閣提出、參議院送付)(第七四號)
    ―――――――――――――
#2
○喜多委員長 會議を開きます。
 百貨店法を廢止する法律案及び財團法人理化學研究所に關する措置に關する法律案を議題といたします。なお、財團法人理化學研究所に關する措置に關する法律案は、去る十六日に正式に本委員會に付託になりました。本日はこれらの兩案の重大性に鑑みまして、斯界の權威者の意見を聽くために、これより特に懇談會を開きたいと存じますが、御異議ありませんが。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○喜多委員長 それではこれより懇談會を開きます。
     ――――◇―――――
  〔午後一時四十二分懇談會に入る〕
  〔午後四時四分懇談會を終る〕
     ――――◇―――――
#4
○喜多委員長 本日はこの程度で打切り散會したいと思います。次會は公報をもつてお知らせいたします。
   午後四時五分散會
     ――――◇―――――
   〔參 照〕
#5
○喜多委員長 本日御出席を願いました各位は、前日本商工會議所會頭渡邊銕藏君、商工協同組合中央會專務理事稻川宮雄君、理化學研究所所長仁科芳雄君、理化學研究所主任研究員尾形輝太郎君、以上の諸君であります。各位におかれましては忌憚なき十分なる御意見の御發表をお願いいたしたいと思います。ます理化學研究所長仁科芳雄君より御發言をお願いいたします。
#6
○仁科芳雄君 理化學研究所を株式會社にするという法律案でございますが、これは從來の理化學研究所が財團法人でございまして、それと株式會社との目的が違うわけでございます。にもかかわらず財團法人より株式會社に移るためこの法律が必要となつたわけでございますが、われわれといたしましては、株式會社ということに對して非常な期待をもち、またこれが正しい道であるというふうに考えておるのであります。その理由を申し上げますと、これは從來の財團法人理化學研究所と最も少い變化をもつて移り變るものである、こう考えておるからであります。從來の財團法人理化學研究所は、非常に學理的な研究から出發いたしまして、實地に應用する研究に至るまでこれを包含してやつておつたわけであります。そうしてその研究成果を實際の産業に應用いたしまして、いろいろの株式會社に特許權を出資いたしまして、いろいろの株式會社が設立せられまして、その株式を理化學研究所が所有いたしておつたわけでございますが、これが持株會社の性格をもつているということから解散せられることになつたのであります。今度株式會社になりますと、やることは大體從來やつておつたことと、少くも原則においては大差はないのであります。先ほど申しましたように、非常に純學理的の研究と、その結果を應用した應用研究、さらに進んでその結果を産業に使うという産業化研究、そういうものを一貫して行い、そうしてその結果をすぐ産業に應用するわけでありまして、その際には、ある場合には理化學研究所外の會社においてそれを實施することもあります。それから理化學研究所内で生産にこれを應用する場合もあります。そういうふうにしてやつてまいるつもりでございます。そういたしますと、實質におきましては從來の財團法人と大差はないのであります。この株式會社にするということに對して、從來いろいろの異論があつたのであります。理化學研究所内部においても異論がありまして、まず第一に財團法人として殘すべきであるという議論がありました。實を申しますと、われわれも初めそういう議論をしておつたのでありますが、それは實際において行い得ないのであります。と申しますのは、基本金がありましたが、貨幣價値の下落によつて、これは意味をなさないものになつたわけであります。それから、先ほど申しましたようなわけで、いろいろの會社の株式をもつておりましたが、これは當然手放すことになります。それから從來のような――これは從來もあまりなかつたのでありますが、ともかく寄附金によつて理化學研究所の財政をどうこうするというような、寄附金は今後とうてい期待することはできない。實際現在においても、そういうことは事實としてございません。そうしますと、經濟的に考えまして、財團法人というものは今日では少くともなり立たないのでありまして、これは實際多くの財團法人の研究所が、皆今日窮状に立至つておることから明らかなことであります。それから、これを官立とする。つまり國營とする。こういう議論もずいぶんございましたが、國營といたしますと、具體的に見まして、從來の關係では、國營の研究所というものは實際たくさんございます。たとえば、官立の各大學の研究所それから各官廳に直屬の研究所、たとえば遞信省の電氣試驗所、あるいは農林省の農事試驗場、そういうものがあるわけであります。これに一つの理化學研究所を加えましても、國家としてのプラスは割合に少い。おそらく國家として同じような研究所が一つ殖えるというに過ぎない。それよりか、從來の日本では、研究と産業を直結すべき研究が缺けておつたわけであります。それを理化學研究所は、先ほど申し上げましたような方法によりまして埋めていくならば、日本の産業は從來よりもずつと發達する。これは實際アメリカあたりでやつておるところから見まして、明らかなことであります。日本の科學研究というものは、研究そのものはアメリカと比べまして、それほど劣つておるとは思わないということをアメリカ人も言つておりますが、それを實際の産業に結びつけるということにおいて非常に缺けておる。こう一般に言われております。それをどうかして埋めていく方が實際日本のためになる。こういうことが一番大きな理由であります。それからもう一つは、實際問題としてこれを國家のものといたしますには、相當の時日を必要とするわけであります。實際にこれを運營していくようになるまでには、相當な時日を要します。ところが理化學研究所の現在は、そういうように一年とかいうような相當に長い期間待つておるわけにはいかないわけでありまして、ただちにこれをどうかしなくてはつぶれてしまう、こういう現状にあるわけであります。でありますから、そういう國家のものにするという過程に時間を費してまいるわけにはいかないのであります。この點からいきましても、株式會社にしていく方が早くその成績をあげ得る、こういう點でございます。大體におきましてそういうわけで株式會社にするということが妥當と考えまして、われわれ理學研究所におきましても大多數の意見でございます意見を、皆樣の前に御報告いたす次第であります。
#7
○喜多委員長 續いて尾形輝太郎君から御發言を願いたいと思います。
#8
○尾形輝太郎君 私は皇室、政府、その他有志の方々から御援助を受けてできた、先ほど仁科所長から申されたような公共團體である理化學研究所に二十五年七箇月勤めておる一人の學徒として、立法府の諸賢にお願いを申し上げたいと思います。はなはだ我田引水のようなことを申し上げて相濟みませんが、その相濟まんという心よりもなお私は思うことがあるのです。それを聽いていただきたいと思います。私の知つている範圍では、理化學研究所の研究所としての活躍をずつと見ておりますと、非常に理想にかなつた研究所だとうぬぼれております。わが國にああいうような種類の研究所を、一つくらい何とかして――その方法は私存じませんが、政府の援助によつて今まで通りに保護していただきたいと思います。國立というような理想案がございます。もちろんただいま申し上げましたような公益のため、人類の文化の向上のため、小さくいえば國家のため研究を續けておりますその證明は、いろいろの發表その他でG・H・Qでさえも認めておるところであります。ところがその國立ということをやめて株式會社となるにあたりまして、そこにお願いがあるのですが、名前は實に當つておりません。まつたく先ほども申しました通りこれは國立研究所です。昔は公立とするという案もあつたように聞いております。しかるに純研究竝びに應用の研究という第一條の趣旨に從つて活躍しておるのでありますが、それを實際に行うには、官立といいますか、國立としますといろいろな法規による缺點が出てまいります。非常にいい點はここで申し上げません。國立としていい點は申し上げませんが。ただ例として申し上げます。あるすばらしいいい考えが出てきたという際に、あしたにもやつてみたいという心があつても、判を十數箇貰わなければ資材がはいらぬとか、それはほんの一例ですが、そういうことがありますと、熱がさめますのでできません。そういうことをするに理研は實によくできております。これは感情で言うようで困りますが、それでもしもそういうこまいことを申し上げるならば、改めて別書をもつて申し上げるよりほかありませんが、確かに何といつていいかわからぬほどいいところがあります。そういう現状を法規云々と言わずに、何とかして續けることにしていただきたいと思います。たとえば研究費がまず眼目になりますが、株式會社になりますと、研究費補助というのができないと聞いております。それでは今までの研究は何もできないことになります。その上に税金がかかるそうでありますが、そういうことではまた同じになります。そういういろいろの難點があるそうですが、研究者自身もいろいろうわさしておりまして、非常な不安を感じております。そういう點を眞正面からできないならば何かの方法でこれをやらしていただきたい。こう言うと蟲のいいことを言うとおつしやるかもしれませんが、そういうことにどうかさせていただきたいと思います。
 あと私はほかに氣がついたことはありません。何遍でもこれを繰返すよりほかはないんです。どうか今までの理研の研究のやり方が續けられるようにしていただきたいということをお願いする次第です。終り。
#9
○喜多委員長 仁科君と尾形君の御發言に對して、委員各位から御質問がありましたならば御發言を願います。
#10
○海野三朗君 ただいま仁科博士からいろいろお話がございました。續いて尾形博士からもお話がございましたが、理化學研究所は過去におきまして他の研究所と異つた性格をもつておりましたことはよく存じております。それが今度株式會社となりますと、株式會社というものの性質上營利が第一になる。それについて參議院の商業委員會の結果を見ますと研究部門の自主獨立性を認め云々とあります。他院の意見にはみだりに容喙すべきではないと思いますが、これはとうていなし得ざるところであります。株式會社の本來の使命というものは營利が主體である。研究というものは近視眼的な營利を見てはならないのである。研究にまつしぐらに眞理を探求すべきものでありまして、眞理を探求する途中において應用すべきことが、副産物となつて出てくるのであります。それで營利を主體とする株式會社になることそれ自體がすでに間違つていると私は考えるのであります。八幡の製鐵所におきましては、私はあそこの研究所に滿二十五年奉職をいたしましたが、大體八幡製鐵所は營利會社でありますがゆえに、研究の自主性獨立性を認めるということは、法文の上に出ておりましても、これはとうていなし得ざるところであります。そこでこの理化學研究所をしからばいかにするかという段になつてまいりますが、ほんとうに日本の科學者を活かし、研究の權威を傷つけないようにするためには、ここにどうしても國家がある金を割いて、そして内閣によつて變らない、内閣の閣員の一頻卑一笑が研究者の頭にひびかないような機關にして、そして科學者に研究をさせていくべきものであると私は考えるのであります。ここに營利會社となつて持株をもつ云々と言いますけれども、それは根本において違う考えであると思うのであります。どうしても研究する人と、企業化する人と、これを商品化する人とはみな專門が違つております。しからば先に仁科所長から言われましたように、官立の研究所云云ということがありましたが、官立の研究所の缺點のみを考えましたならば、それは確かにお説の通りであります。しかしながら理化學研究所の過去の歴史を考えますときに、官立といたしましても、あるいは國家がやるといたしましても、そこに十分の彈力性をもたせ、研究者の矜恃を損ねないようにしていつてこそ、初めて官立の缺點を補い、理化學研究所の本來の性質をますます生かしていくゆえんではないかと考えるのであります。尾形博士も言われましたように、この資材の入手難、そういう場合に、判をたくさん捺さなければ、關門をいくつもくぐらなければいけないというようなのが在來の官廳のやり方でありました。研究に對しましてはそういうふうなやり方では絶對にだめであります。官吏服務紀律によつて研究を束縛するというようなのは、まことに研究の本來の使命を忘れたるものでありますがゆえに、この理化學研究所を官立に移して國家がこれをやるという段になりましたときには、そこに十分な彈力性をもたせなければいけないと考えております。今日科學研究の必要を何人も認めておりますけれども、いかにすればその研究が完成するものやら、いかにすればこれが民間によく滲透するものやら、そういうことにかけてはまつたく無知であるように考えるのであります。官立の研究所におきましては、研究の結果がよく世の中に滲透しないということを仁科博士は言われましたけれども、それは研究所の所長たる人その人の運營いかんにあるのではありませんでしようか。私はここにおきまして、些細なようでありますが、文化日本、科學日本を建設せんとする今日にあたりまして、この理化學研究所、世界に誇るところの科學者が綺羅星のごとく集まつているところの理化學研究所、この運營ひとつが間違つたならば、科學者を曲學阿世の徒とならしめるのではないか、これを私は憂えますがゆえに、理化學研究所を株式會社組織にするということは、私は根本より納得し得ないのであります。これはなにも私自身の利害に關係した問題ではございません。過去三十年にわたる間、日本製鐵に職を奉じて研究に一身を捧げてきました私が、過去の血なまぐさいところの經驗の上からしてこれを申し上げるのであります。世界各國の豫算を見ますと、科學研究費に費しているところの金は、國の總豫算の三%ないし五%に及んでいるのが現在の状態であります。しかるにわが日本におきましては科學研究費なるものがいくら出ておりましようか。前議會におきましては、たつた五千九百萬圓ではありませんか。二千億になんなんとする豫算におきまして一億だにも足りないところの研究費、それでもつて政府御當局が恬然としておられるということは私ははなはだ解せないのでありまして、どうしてもこの財團法人理化學研究所というものを解體するなら、これを政府におやりなさい。そうして政府がこれをしてやりなさい。そうして今までのごとく學者本來の使命に向つて渾身の努力を拂つてもらいたい。そうして時の政府の御機嫌をうかがうような研究ではなしに、科學者本來の使命に向つてまつしぐらに進むことこそ科學者に與えられた本來の道であると私は考えるのであります。このことにつきましては一個人の海野代議士の喋々申し上げるまでもなく、すでに各學界におきましては學界體制刷新委員會なるものがありまして、各學界においてはその代表者がすでに選ばれているはずでありますから、この學界の代表者、えらい人たちをここに呼んでそうして大多數の意見をお聽きなさつて、その上でこの法案を御決定あらんことを私はお願いいたすのでございます。各學界にすでにこの委員がございます。過日選擧をしたはずでございますから、その人たちによつてこの法案を御審議あらんことをお願いいたしたいと思います。
#11
○笹口委員 仁科先生に一つお伺いいたします。先ごろ理研を拜見させていただきました。理研は戰災を受けられましてずいぶん慘澹たる状態であります。また設備そのものも、私ども門外漢にはよくわかりかねますが、私ども拜見したところによりますと、必ずしも理想的の設備であると私どもは考えられない。さらに實際に研究の面にあたられる先生方としては、もつと理想的な設備をなさりたいという御希望があるに相違ないと考えているのであります。われわれの希いますことは、日本としまして、殊に科學振興の要に非常に迫られているわが日本としましては、理想的な設備をもつた研究所がありまして、そこで有爲な先生方に十分の研究をしていただくことが非常に大事なことと思われますが、先生のお考えとして、株式會社といえば、ただいま海野さんが言われたように、やはりどうしても經理の面が第一になつてまいりまして、會社として大きな赤字を生んでまでも特殊の研究はできない、あるいは莫大な經費を要するような研究事項には著手できない、いろいろ制約を受ける面がはなはだ多いのであろうと豫想いたすのでございますが、さしあたりあの研究所の戰災を復興いたしましたり、または比較的遲れていると拜見いたしております各種の施設というものをでき得る限り近代化し、各先生の研究に御不便のないようにするためには、相當莫大な經費が必要であると考えるのであります。この經費をどういうふうに御調達に相なるか。政府から出されております案その他の參考資料を見ましても、その點についてはあまり觸れておらないのでございますが、先生のお見透しはいかがであるか、この點をひとつお答え願いたいと思います。
#12
○仁科芳雄君 現在の理化學研究所の經理状態でありますが、私が所長になりましたのが昨年の十一月十一日でございました。そのときにもうすでに金は一文もなかつた。そのときにわれわれはもう株式會社にするという考えをもつておつたのです。それは司令部の話もありましてそういう考えをもつておつたのでありますが、それではあすからの所員の俸給をどうするか、そういう問題でございます。これは大藏省、商工省のお方とも御相談申し上げまして、一應これは復興金融金庫からの借入れをやつていつたらいいだろう、こういうわれわれの考えになりまして、復興金融金庫に頼みまして、この復興費と、それから運轉費――運轉費と申しますと人件費と研究費でありますが、それを借りることにいたしまして、運轉費はその時からすぐ月々大體百萬圓を借入れております。それから復舊費でありますが、理化學研究所が大體六割燒けまして、研究者を入れるのに非常に困りまして、どうしても部屋を修理しなくてはいけないという考えで、これも復興金融金庫から借入れるということにいたしました。その額はその當時大體一千五百三十五萬圓借入れる、こういうことになつておりましたが、これは實はその當時の計畫でありまして、その後の物價の値上りによりまして、これは大體二千二百萬圓になるものと考えております。この復興費は理化學研究所が準制限會社の取扱いにせられております關係上、どうしても司令部の許可を必要とするわけであります。その許可を今年の五月ごろに得まして、そして借入金によつて現在復興しておるわけであります。現在の状態はそういうわけになつておりますが、それでは今後これをどうしてやつていくかと、こういう問題であります。これは理化學研究所が、先ほど申しましたように特許を實施させたその特許の報酬と、それからいろいろの隘路を打開して産業の再建をはかる、その隘路を打開するのに、やはり最も基礎的の學理に基いた方法によつてこれを打開するわけであります。その技術の指導料と、そのほかに先ほど申し上げました實際のいろいろの物を生産いたします、それの賣上金、こういうものでやつていく考えでございます。現在日本の産業は萎縮しておりますから、先ほど申し上げました特許の報酬、それから技術の指導料、これは大してわれわれは期待できない現状にございます。でございますから、いきおい第三のアイデアである理化學研究所において生産を行う、こういうことになつてくるわけであります。現在たとえばペニシリンの製造であるとか、あるいはワクチンの製造であるとか、そういうものを實際企畫いたしておりまして、もうすでに著手いたしております。これによつてわれわれは相當の收益を見こんでおるのであります。でありますから、われわれはそういう純學術的の研究をもととして理化學研究所の經濟をやつていくということは可能であろうと考えておりますが、ここで一つ申し上げたいことは、今まで理化學研究所は財團法人としてやつておつたわけであります。從つて補助もありましたし、それから先ほど尾形博士からも話がありましたように、税金が免除されておつたのでありますが、株式會社になりますと、どうしてもそれがなかなか困難な事態に立至るのであります。これが何とかして、少くともここ二、三年間理化學研究所の經濟が自立していくまでは、その方の御配慮を政府の方でいただければ、われわれは二、三年の後には必ず自立し得る、こういうふうに私は考えております。大體私の意見を申し上げます。
#13
○海野三朗君 今日までの理化學研究所の財政は、收支償つてあまりありましたでしようか、いかがでございますか。
#14
○仁科芳雄君 過去においては、終戰前後は非常に赤字になつております。それから戰爭前は黒字になつております。いろいろ時代によつて起伏があるのであります。私が所長になる前のことは詳細に調べておりませんから、大體のことよりか申し上げられないのでありますが、時によつて黒字になり、時によつて赤字になる、そういうふうになつておるように考えております。
#15
○松井委員 研究所の賄いにおいては、たとえば借入等によつて行つておるというようなお話がございましたが、返還の方法はどういう方法でございますか、その點をちよつと伺いたい。
#16
○仁科芳雄君 返還の方法は、どうしても相當長期にわたらなければなかなか返還ができない。そういうことで、復金の借入も七年間くらいにこれを返濟する、そういう計畫を立てております。大體において先ほど申し上げましたいろいろの生産とか、あるいは特許料、その他によりまして收益をあげて、これを返還していく、こういう計畫を立てております。
#17
○林(大)委員 株式にするという話は進駐軍から出て、そうして政府が、こういう意向であるからひとつ株式會社にしてもらいたいという一聲でもつて、やむを得ぬからやろうというのみにしてできたものであるか、それとも私ども門外漢からは常識的な判斷しかできませんが、當事者の方たち、ことに立派な研究者の方たちが、國家的の問題であり、またひいては自分たちの問題であるという意味から、研究所の全部の研究者の方たちが隔意なき意見を交されて、そうしてなるほど政府の言うようにこうすることが一番よろしいという考え方で、こういう結論を出されたものであるかどうかという點を、一つ伺いたいのであります。それからもしもそこにうのみにするのでなくて、いろいろな意見がもしあつたといたしましたならば、たとえばどういうような意見があつたのか、私ども素人から觀察いたしますと、あの莫大な研究の中には、なるほどこの際戰爭に寄與するという意味から捨てるべきものもございましようし、それから大學の研究室に移すべきものももちろんございましようし、また株式會社に移行してやつていくことが適當である面もありましようし、また財團それ自體として平和的な文化的貢獻をするという意味から、こういう生れかわつた形なら、この財團を認めてもらい得るという面も、十分私はあるであろうと思うのであります。そういう内容について私どもさつぱり知らされておらず、頭からこれを一つ株式會社にしてもらいたいというような御注文を受けておるわけでありますが、それでははなはだ納得のいかない點が多いのでありまして、これは全部の意見をまとめられる所長仁科博士からの御發言と同時に、尾形博士からも忌憚のない御意見をこの際承りたい。そうして參考にいたしたいと思います。
#18
○松田政府委員 その點につきまして率直に申し上げますと、御承知のように理化學研究所は現在財團法人でございます。そうして財團法人理化學研究所として今日まで三十年の歴史をもつて非常に成果をあげておられるわけでありますから、これをいわゆる企業再建整備法に基きます第二の財團法人理化學研究所、いわゆる第二會社と同じような意味で第二財團法人理化學研究所というような形にしていくのがいいんじやないかというような意味で、いろいろ仁科所長ともお打合せをいたしたのでありまするが、一方財團法人に今の企業再建整備法の適用と申しますか、準用するためには、別に企業再建整備法に基く政令等の手續も要るのでありますが、それはそれといたしまして、いろいろその研究をいたしました結果、どうも今日のような經濟情勢、社會情勢等から考えまして、財團法人にこれをいたしましても、結局補助金の問題でありますとか、あるいは從來の寄附金の問題でありますとか、そういうような經理面において非常にむつかしい結果に立至ることがわかつてまいりました。しからば財團法人にしないためにはどういう方法でやつたらいいだろうかという意味で、いろいろまた所長とも御相談しまして、そうするにはやはり今までの理化學研究所のあり方について、その眞髓を十分發揮するためには、やはり會社組織でいく方がいいだろう、こういう意味で今の會社組織を考え出したのでありますが、これにつきましては、政府の方でそういう腹をあらかじめきめて、そうして理化學研究所の方にこういう形でやつてくださいというような、いわゆる不當な抑壓というような意味で申したのでは絶對にないのでありまして、これは十分理化學研究所の方とも御相談しまして、むしろ理化學研究所の方の、實際財團法人としてやつていけないとなれば今後こういう行き方の方が理化學研究所としてもよろしいという御意向を、われわれは尊重してやつておるのであります。なお進駐軍關係のお話が出來ましたが、連合軍の方も大體そういう御意見のように私は承知しておるのであります。
#19
○仁科芳雄君 私は率直に從來の事實そのものを申し上げます。昨年の七月ごろであります。司令部の經濟科學局、あそこは財閥解體の部門と科學技術の部門とがありますが、そこに私が呼ばれまして、理化學研究所は財閥解體の線に沿つて解體しなくてはいかん。しかし理化學研究所が今日までやつてきた科學上の業績は各國に知れ渡つておるところである。これを解體によつてなくしてしまうというのは困る。日本の再建の途は一つに科學技術によつてなし遂げられるべきである。そのためにはどうしても理化學研究所は殘しておく必要がある。どういう形において殘すかということが問題だ、現在財閥解體の方の取扱つておる方法としては、各會社に同じような場合がある。日本の産業再建に必要なものは殘す考えであるが、それは第二會社として殘す。であるから理化學研究所も同じような形において第二會社として殘したいつもりである。こういう話でありました。それから私はいろいろ考えたのであります、會社ということはわれわれにはぴんと來なかつたのであります。それから理化學研究所は莫大な債務を帶びておりますので、その債權者と、それからわれわれと呼ばれまして、同じような話を聞いたのであります。つまり債權者にそうした第二會社としてやつていつて異論はないか、こういうことであります。債權者の方としては別段異論はない。こういうことであつたのであります。そこでわれわれとしてはその席で、どうも會社というものは困る、財團法人として殘してもらいたいということを力説したのでありますが、財團法人というのはどうもよろしくない、だから會社にしたがよろしい、こういう話だつたのであります。その當時われわれが財團法人の方がいいと言つたことは、今日から考えますと、先ほど申し上げました經濟上の理由によりまして、これは行い得ない議論でありました。今日、またその當時も、われわれは間もなく財團法人はいけないということを悟つたのであります。そのときにわれわれは官立ということは全然頭になかつたのであります。理化學研究所の誰も官立にしたいという考えを出した者は、その當時一人もなかつた。何ゆえにそういうふうな考えを起さなかつたかということはわかりませんが、察するところ從來理化學研究所は官立でないという考えが非常にみんなの頭にあつたためだろうと思います。ところがそれじや會社でやるというので、いろいろわれわれは今後の方策をどうするかということについて議論をし、またいろいろの方策をとつてきたのでありますが、その後、――これは多分文部省の方からも司令部に話をせられたと思います――國立にしないかという話があつたのでありますが、司令部といたしましては國立はとらない、こういう意見をもつておつたのであります。その理由としては先ほど私が申し上げました通り、國立としたところで日本にはたくさん國立の研究所がある、それの數を一つ殖やすにすぎない。ところが日本の必要とするところはそういう官立の研究所を一つ殖やすということでなく、現在日本に缺けているところを滿たさなくてはならぬ。それはつまり官立ではどうしても實際の生産と研究とを結びつけることはむつかしいと見なくちやいかぬ。つまり現在までの日本の歴史でそうであつたんだ。急にそれを改めることはなかなかむつかしい。それよりか理化學研究所が從來とつておつたその方法をとつて、産業と研究との間を結びつけることをもつともつと從來よりも強力に行うべきだ。こういう議論であります。われわれはそれについて理化學研究所内でもいろいろ議論したのであります。國立の方がよろしいという事もありましたので、それらの人の議論を聽きますと、われわれは一つの疑をもつたのであります。つまり國立であればわれわれは研究を安樂にやつていける、そういう考えをもつている人があるのであります。われわれはこの戰災をこうむつて燒野原になつている日本をどうしても科學技術によつて救つていかなければいけない。こういう司令部の意見は私は正論であると今日でも思つております。その方針に從つてやつていくべきだと考えております。それには非常に深淵な學術だけをやつておつたのでは到底これを實現することはできないのでありまして、深淵な學理の研究、これは必要でありますが、それを實際の産業に應用する、こういうことが今日缺けておるのであります。ややもすると從來の方法は、産業のいろいろな缺點を直していくのに、お醫者の方の對症療法的に行われたにすぎない。根本的に新しい方法を編み出して、それによつて産業を進めていくということは實に非常に稀であつたのであります。なぜであるかと申しますと、これは産業と研究との結びつきが緊密でなかつた、そういうことに起因すると考えております。そういうことをいろいろ考えますと、ただ安易に純學術だけ、研究だけをやつていつて、それでわれわれの義務が果せるかということを、いろいろみんなで議論したのであります。われわれはともかく戰災によつて萎縮した日本の産業を起すためには背水の陣を張つてやらなければいかぬ、こういう議論が多くなつたのであります。でありますからそれには實際自分たちがたとえば生産をやつてみる、そうするとそれをどうして改善したらいいか、しかもわれわれは純學術的な深い研究した結果をもつておるのであります。そういうものがそういう産業をどう改良したらいいかということは、その産業をやつて最も痛切にわれわれは感ずることであります。そういう立場におかれまして、ほんとうにわれわれはこの産業の改善ということを深い學術的基礎の上におくことができる、こう考えております。こういう議論はずいぶん長い間理化學研究所の内部で行われた。行われた結果として大體において司令部の言うことは正論である、こういう結論に大多數の人が到達したのであります。そういうことは理化學研究所が從來やつておつたことと非常にかけ離れたことではない。從來の理化學研究所のやり方に最も近い方法である。もしこれが官立になつたならば、從來の理化學研究所のやり方とはずいぶん變つたやり方になつてくる、そういうことがわれわれはわかつてきたのであります。そういうわけでわれわれは官立にしないで會社にしたがいい、會社ということはつまり名を去つて實につく、こういう氣持でわれわれはやつておるのであります。しかし會社であるから必ず利益追求だけをやつていく、こういうふうにはわれわれは考えていないのであります。つまり學術の研究というものがあつて初めてこの理化學研究所は存立し得るのでありまして、學術の研究なしに、ただ生産その他の營利をやつていくのならば、何も理化學研究所がやらなくて、普通の會社がやつたらいいのでありまして、われわれは深い學術の基礎に基いて、從來日本でやつている産業のやり方を技術上に一歩を進める、そういうことを考えております。それにはどうしても純學術的研究の基礎がなくてはそういうことはできない、こう考えておるのでありまして、從つてわれわれは今後會社になりましても純學術的な研究は決して捨てません。同じ人が、つまり應用研究をやる人と、それから純學術的研究をやる人とが、同じ人がやるのではないのでありまして、人が違つております。われわれは研究費の上で大體十パーセントないし二十パーセントを純學術的研究、何らの營利を目的としない、何らの應用をも目的としない、純學術的な研究に十パーセントないし二十パーセントの經費をつぎ込む。それによつて得た結果を應用して産業に新しい道を開く、こういう態度をとつていくつもりでございます。ただここ一兩年もしくは二、三年は相當な經濟上の困難に遭遇する、そういうふうに私は考えております。現在遭遇しております。こな困難な事態がどうしても何らかの方法によつて政府の援助を得なければ非常な困難に陷る、そういうことは考えております。しかしそれを乘り切れば現在アメリカなんかにやつておることを考えましても、必ずやり通せる、そういうふうに考えております。大體理化學研究所内部の意見はそういうふうな徑路を辿つてきたのであります。それに對して商工省當局のお方ともずいぶんいろいろ御相談も申し上げ、また御教示も賜わつたのであります。われわれの考えはこれで正しいといふ確信のもとに今日進んでおるわけであります。先ほど申しました理化學研究所が産業の再建にはどうしても必要だというこの原則は、司令部の方でも今日に至るまで堅持しておりまして、理化學研究所に對して多大の援助を與えておるわけであります。これから理化學研究所がどういうふうにしてやつていくかということに對して、われわれはあらゆる努力を拂いますが、今日までのやつてまいつたあとを顧みますと、政府竝びに國民一般の援助なくしては、われわれはやつていけるものではない、今日理化學研究所がなお存在しているということは、一に政府竝びに國民の絶大なる援助のおかげであるということを、最も痛切に感じておるわけでありますから、今後ともそういう援助なくしては、われわれはやつていけない、こういうことを考えておるわけであります。
#20
○喜多委員長 どうです、財團法人理化學研究所に關する措置に關する法律案審議の上についての御兩君の御意見を聽取したわけであります。參考といたしましてこの程度で本問題は…。
#21
○林(大)委員 今の件に關して尾形先生なにか御意見ありませんか。
#22
○尾形輝太郎君 今の質問は……。
#23
○喜多委員長 仁科博士と尾形博士の御見解は、同じですか。
#24
○尾形輝太郎君 同じです。
#25
○赤松(明)委員 ただいま林さんの御質問の中にもありましたように、實のところ内容的に十分に知らされていなかつた憾みがあります。そこで一つ政府委員側に伺つておきたいのは、御承知の通りきようこの同じ時間に經濟力集中排除法が財政金融とわれわれの商業委員會と鑛工業委員會において審議されつつある、諸般の情勢よりして幾多の修正は見越されるかも知れないが、おそらく通さなければならない、それはこの理化學研究所に對してG・H・Qよりの要望があつた、その要望の線を考えてみても、およそ經濟力集中排除法というものが通過するだろうことはわかる。ところで今日の財團法人理化學研究所が現在法制化されているところの獨占禁止法に牴觸しているかいないか、これを株式會社に組織替えをするとして、その株式會社の構想が、經濟力集中排除法が制定せられていこうとしているが、これは臨時立法であるけれども、次に永續的に公正取引委員會の方へ移されて、恆久的な措置として形が變るわけなのでありますが、理化學研究所が株式會社になつた途端に經濟力集中排除法の適用を受けなければならない、その根柢を細分化しなければならないというおそれはないだろうか、これに對してなんらかの措置を講じようとしておるかどうか。これは理化學研究所が株式會社になろうとするのを援助しつつある、いわば當面の監督廳とでもいいますか、政府側の意見を質しておきたいと思います。
#26
○松田政府委員 ただいまの點につきましては、われわれもその點について考えてみたのでありますが、その點については心配ないと思うのであります。理化學研究所はただいま所長からも縷々御説明のように、いわゆる理化學の基礎的な研究を土臺にいたしまして、そうしてこれをだんだんと事業化してまいることにする、言いかえれば基礎的な研究というものを一方において基礎ずけて、これが日本の産業の進展に有益な影響を及ぼすように考えて生れる組織なのであります。それでこの研究の成果につきましては、もちろん一部研究の過程というものを常に改良、改善しなければならぬというような建前からいたしまして、先ほどの所長の御説明にもありましたように、あるいはペニシユリンとも、ワクチンでありますとかいつたようなものを事業化する、また事業化しつつあるのと竝行して、さらに研究しなければならぬような、要するに理化學研究所でこれを事業化することが最も適切なものは、理化學研究所においてやりますが、そうでないものにつきましては、できるだけこれを他の一般の企業に實施をしてもらう、特許權を讓ることもありましようし、また實施權を設定することもあると思います。そういうぐあいに、理化學研究所がはじめからしまいまで自分のところで研究したものは全部自分のところで事業化してまいるということになれば、自然お話のように獨占禁止法でありましたか、あるいは今囘の經濟力集中排除法というよなものとの牴觸が起つてまいりますが、今申しましたような意味で、どこまでも基礎的な研究をする、基礎的な研究をいたしますためには物理、化學あるいは電力その他あらゆる綜合的な知識をもたれた方が一堂に會しているところでいろいろな研究ができるのでありまして、そういう意味での綜合的研究を主體とした眞の基礎的な研究をやられるのが、こういうときになつてもあくまでも理化學研究所の重要な使命であります。從つてその使命を達成する意味での組織であり、それからこれを實際に事業化してまいりますのは、建前としては一つの應用のところまでいけば、あとはそれぞれの最も適當した企業に移していかれるというのがどこまでもこの理化學研究所の考え方でございますので、その點は私は御心配ない、かように考えている次第であります。
#27
○赤松(明)委員 ただいまの松田局長と仁科博士との御意見の間にはいささか食い違いがあるが、しかしこれを敢て追求しない、ただ一つ申し上げておきたいことは、たとえば仁科博士の言われるのは、純學術の研究をもつてしては成立たなかつた今日の財團法人であつたがために、第二會社式な意味において解散する、しかもそれが國立を意味しないのは、安易な研究を避けようとすることで、背水の陣を布くのだ、すなわち純研究費としては一〇%ないし二〇%までの經費を注ぎ込むのだ、あとは即産業なんだ、研究と産業との要するに一致面を見出して、その面において今日成立たない財團法人の理化學研究所を株式會社にしようとするのだ、この御意見と、ただいまの松田局長の言われた會社の組織、構造というものとにたしかに食い違いがあるらしい。しかしこの點についてはなおわれわれは今後審議しなければならぬので、本委員會の委員として敢つて追求しないが、ただ一つ申し上げておきたいことは、これは私なら私が申し上げてみても、仁科博士なり尾形博士に封してはあまりそう痛烈な質問を放つても、いわゆる經濟上、技術上の問題について深く御存じになつておろうとは思わない、また今日の理化學研究所が、要するに戰爭中にはこれにばかり頼つておつた、一種の國策會社とでもいうか、半官半民とでもいうか、こういつた形であつたものが、敗戰後において科學日本をつくらなければならない折において、こういつた大學者が會社の經理面において苦心慘憺をなめているということは、われわれ國民の一人としてはずかしいしまた氣の毒だ、こういうことを考える。この仁科博士あるいは尾形博士が、少くとも商業委員會を構成しているところの、會社經理あるいはその他の面について十分なる知識をもつている者との太刀打ができそうに思わない、この心配がそのまま士族の商法と常に言われてきたところで、株式會社をつくつてその會社に資本を投下をした一部の資本主に、こういつた純然たる大學者が食われないようにしてもらいたいということです。これだけは十分仁科博士にしてもあるいは尾形博士にしても考えてもらいたい。今後この審議がどういうことになるかわかりませんが、今日やれないからこれを株式會社にするのだと言われる、株式會社にすることは背水の陣を布くことでしようけれども、その背水の陣がすでに今日財團法人において敗れておるということは、一體どこに原因があるのかということも考えた上で、今後の株式會社をもつてするところの理化學研究所のいわゆる將來に對して十分なる御檢討を願いつつやつてもらわなければ、率直に申しますが、士族の商法として、そうして皆さんのその苦しい今日のお立場がなおかつ惡くなつた場合どうするか、この點は今日日本がほんとうに化學技術の推進の上において、唯一の頼みとするこの理化學研究所であるということを十分にお考えを願つておきたい。これは御囘は求めません、要望しておきますが、今後要するに皆さんがお話になりました點をわれわれの參考として審議するわけでありますから、われわれの意見の一端として、今後審議がどうなるかわかりませんが、希望意見として申し上げておきます。
#28
○海野三朗君 先ほど仁科所長からのお話がありました。それは産業と學問とが結びつけられていない。その點については官立の研究所ははなはだ遺憾であつたというお話でありますが、研究をする人と研究ブローカーとはおのずから違うことはすでに御承知であると思います。しからば理研が株式會社になつて、そうすれば産業とうまく結びつけられるか。産業と結びつけるのは研究ブローカーがここに必要なのであります。日本の化學が世界の水準に達しておるのにもかかわらず、一般に化學水準が低いのは何ゆえかと申しますと、研究ブローカー面がいないのである。學者の研究を實際に利用するところの中間の人が缺けておるから今日の有樣を呈しておるのであります。これは私一箇の意見ではございません。學界あまたの人たちの意見であります。學者は研究する方が一方、それからこれを企業化する人は企業化する專門がある。またこれを企業化せしむるために、學者の研究をよく理解せしむるためには、ここに研究のブローカーが要るのであります。そういうふうなものがみなそろつてこそ、初めて産業の再開、力強い化學日本の建設ができるのであると思うのであります。ここに學者だけおつたつて、何にもならない。この學者の研究をほんとうに應用するところの研究ブローカーが要るのである。研究ブローカーと企業家、それと商品化する人、そういうものがみな專門が違つておるのでありますから、理化學研究所が株式會社になるということは根本の考えが違つておると私は思います。それで今るる述べられましたけれども、これを要するに、化學は學問ばかりやつていてはだめだというふうのお考えでありますが、學問をやる人はまつしぐらに研究をやり、何ものをも考えずにまつしぐらに研究をやる。研究ブローカーはその間に立つて、これが必要だと思うものはその研究した學者の成果をもつてきて、そうして企業家と結びつけてやつていけばいいのである。今日までのあまたの研究所が戰爭のために使われました。それは何ゆえに使われたかと申しますと、政府からお金をもらつて、政府の役人の一しん一笑がその研究所の經營にすぐ響いたからである。これをやらなければ研究費をもらえない。そういうふうなことでは研究というものはいけないのである。研究というものはときの政府の使う便宜的なこと、いわゆる曲學阿世の學問をするのではいけないのである。まつしぐらに研究の大道を進まなければいけない。この參議院の結果を見ますと、大體においては不賛成なのであるけれども、ここに條件をつけて賛成をするということなのであります。そういうふうなことでは、われわれ日本人として考えますときに、堂々と進むべきところの道、いかなる道が正しいのであるか、これを考えて進まなければいけないと思いまするがゆえに、私はこの點につきましては各學界の權威者、この學界刷新體制の委員の人たちの意見を一應徴されまして、そうしてこの法案の御決定あらんことを切に私はお願いする次第であります。
#29
○喜多委員長 海野君の御意見は委員會に諮りまして適當に處置いたしたいと思いますから、本理化學研究所に關する措置に關する法律案については、この程度にいたしまして引續きまして百貨店法を廢止する法律案につきましての參考といたしまして商工協同組合中央會専務理事稻川宮雄君の御發言を願います。
#30
○稻川宮雄君 百貨店法が制定されました當時においては、いわゆる全國の小賣商が血みどろの爭闘をして獲得したという法律でありますけれども、しかしその當時と今日とは社會的にも經濟的にも非常に異なつておりますし、また獨占禁止法竝びにこれに關連いたします一連の法律が制定されました今日においては、百貨店法はその必要を認めないということが、一般的にあるいは經濟的に、理論的に言い得ると思うのであります。しかしながらこれを全國の中小商業者あるいは小賣商という立場から考えると、この小賣商は全國で百數十萬ございます。その家族從業員を合わせますと、おそらく國民の一割には達するであろうと思いますが、この中小商業者、特に小賣商の意見を總合いたしますと、百貨店法の廢止ということに對しましては大體において不賛成者でありまして、これを存續してもらいたいという意見が壓倒的になるであろうと思います。なぜかと申しますと、これははなはだ理論的ではないかも知れません。あるいは感情論であるかもしれませんが、百貨店法が廢止されますと、どういたしましても百貨店が自由なる營業によりまして、一般中小商業者の分野に食いこんでくる。現在においては百貨店法制定當時とは非常に事情が異なつておりますけれども、しかしながら出張販賣あるいは支店の増設擴張ということは、現在においても各百貨店が計畫しておるところでありますから、出張販賣あるいは支店の増設等の計畫によりまして、一般の中小商業者の分野に食いこんでくるということは當然豫想されるのであります。そのために一般中小商業者は非常なる影響をこうむりまして、場合によつてはこのために失業者を發生するということも考えられるのであります。經濟的に言いました場合には、失業者を生じましても、これは別に失業對策として考うべきことでありまして、經濟理論から申しますならば、經濟發展の法則としてやむを得ないということになるかと思いますが、しかしながらこの失業者をどうするかという點につきましては、今日政府においても的確なる具體策がないようであります。むしろ厚生省にまいりますと、一般の失業者を中小商業部門において吸收したいという逆の意見さえもあるようなわけでありまして、こういう意味において一般中小商業者から失業者を生ずるおそれある百貨店法を廢止するということに對しては、小賣商としては反對いたすわけであります。また獨占禁止法その他の法律があるとは申しますが、これは理論の問題ではなく、實際問題といたしまして、はたして公正取引委員會に提訴して、同委員會が的確に時機を失せず措置してもらえるかどうかということについては、多大の不安をもつておるわけであります。あるいは百貨店の政治的なる工作ということも考えられましようし、また小賣業者自體が公正取引委員會に提訴するという進んだ考えをもつておるかどうかということについても、非常な疑問があるわけであります。むしろ獨占禁止法というものと百貨店法というものとが、非常に矛盾するならば別といたしまして、獨占禁止法の足りないところを百貨店法が補つておる。これを補完しておるという作用をもつておるならば、獨占禁止法の一種の特別法として存續してもらいたい。こういう意見が生じてくるわけであります。あるいは資金、建築等につきましては臨時資金調整法なり、臨時建築制限規則等がございますが、これらはいずれも臨時でありまして、この法令はいずれ廢止されるというような場合におきましては、獨占禁止法では十分その目的を達し得ないというような事態も起るのではないか、そういうような關係からいたしまして、一般の中小商業者、あるいは小賣商といたしましては、百貨店法が制定された當時ほどの打撃はもちろんございませんし、今日の場合、もし百貨店法がないのに、これを制定して欲しいというような意見はおそらくないと思いますが、一旦できております、この百貨店法というものを、獨占禁止法の趣旨に反しないならば特別法として存置してもらいたい、つまり百貨店と一般の中小商業者とは初めから事業能力の上におきましてはなはだしい隔差があるのでありますから、初めから隔差があるものならば、その事業能力の隔差を是正する意味におきまして、獨古禁止法の發動をまつまでもなく、一應百貨店法というものを存置いたしまして、そうして小賣商の保護にあたつていただきたい、こういう希望を一般にもつておるわけであります。しかしながらこれは小賣商の一つの感情的な實際問題でありまして、今日の場合、獨古禁止法その他の法律が制定され、これによつて十分百貨店と一般小賣商との公正なる競爭というものが是正されるということでありますならば、あえて百貨店法に反對するものではありませんが、以上申し上げました點を御勘案願いまして獨占禁止法の適正なる運營を切に希望する次第でございます。
 以上簡單でございますが百貨店法廢止につきまして意見を申し上げます。
#31
○喜多委員長 なお本問題では渡邊銕藏君も實は申し上げたのですが、あいにく旅行中で連絡がとれないので、百貨店法を廢止する法律案につきましては稻川君一人を參考人としてお願いしたのであります。どうぞ本問題につきまして委員各位の御意見を御開陳願いたいと思います。
#32
○笹口委員 ただいま稻川氏からのお話、どうも承つておりますと私どもはよく了解できない點があるのでありますが、私どもは、百貨店法が廢止になりました後の小賣商に對する影響、これを非常に重要に考えておるわけであります。先ほど伺つておりますと、理論的には正しい、またその當時の情勢から見てたいして影響ないだろうというような稻川さんの御所論に附加えて、感情的な小賣商の見方からすればということで、いろいろ影響のあるようなお話を承つたのであります。小賣商の感情的な意見であるかどうかは別といたしまして、やはり百貨店法というものがなくなつた場合に小賣商に相當の影響を與えるであろうということはお認めになるかどうか、この點をまず承つておきたいと思います。
#33
○稻川宮雄君 私は、百貨店法が廢止されましても、百貨店法を制定いたしました當時ほどの影響はないと信じますが、しかしながら、今日におきましても、百貨店法を廢止いたしますと相當の影響を一般小賣商に與えるというふうに考えております。その影響のおもなるものといたしましては、主として出張販賣竝びに支店の擴張であろう、こういうふうに考えております。
#34
○笹口委員 大體私どももその點同感でありますが、しからば稻川さんなどのお考えとして、稻川さんの所屬されておる協同組合中央會あたりが、こういうような問題が起つてきた場合、小賣商の方々をどういうふうに御指導になるか、ただそういう影響があるが、これもやむを得ないものだといつて御納得になるのであるか、あるいは何らかそれに對して方法を講ぜられるお考えがあるか。私どもの考えとしましては、これは百貨店が一つのわくがはずれて相當のびのびとした活動ができるようになつてくる、そうして小賣商とこれと自由な競爭ということになるのですが、どだい基礎が違つており、一方は資本主義的に高度に發達しておる組織をもち、一方はきわめて資本主義的には初歩の段階にある小賣業者がスタートにおいてすでに非常なハンデイキヤツプがついているのぢやないかと思うのです。それで、これらのものをやはり同じようなスタートに立つて自由な競爭をさせるという意味においては、百貨店の方を抑えることができなければ、小賣商の方を何とかしなければならないと思うのですが、その點について中央會あたりで何らか積極的な對策をおもちになつていらつしやるかどうか、お伺いしたいと思います。
#35
○稻川宮雄君 小賣商の今後の積極的な振興策といたしましては、中小業者の弱い力を集合いたしまして、個々の經營は小規模でありましても、對外的なる經營においてはこれを大規模にいたしますために、あるいは商業協同組合の結成を慫慂するとか、あるいはヴオランタリー・チエーン式によりまして、ほんとうに氣心の合つた者同志でお互いの改善をはかつていくとか、あるいは專門店街式に、何もかも萬屋式にやるという行きあたりばつたりの方式ではなくて、これは主として大都市に限るのでありますが、專門店街式な經營に改めるというようなことが商業者自體の問題として必要になつてくるのではないかというふうに考えております。なお、最初の御意見の、中央會として全國の商業者の意見をどう考えるかという點につきましては、私どもの方へ百貨店法廢止に對して猛烈なる運動なり陳情をしてくるということはただいまのところあまりございません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、實際問題といたしましてこれが廢止されるということになりますと相當影響がありますので、全國の商業者の意見というものを綜合いたしますれば先ほど申し上げたような結果になるだろう、かように考えております。
#36
○笹口委員 今の大體對策としておもちになつておりまするような方法は、これは一應私どもも贊成でき得る對策だと思いますが、ただそう口にだけおつしやつてもなかなかむずかしいことでありまして、實際に小賣商をここまでもつていくのには相當關係各方面の御努力が必要ではないか、かように考ゑるのでありますが、まして協同組合あたりの現在の活動というものは、過去における商業組合當時よりも退化をしておる。協同組合という名前はつきましても、實際に協同組合の實のあがらないような組織である。戰爭中の統制組合の看板を塗り變えたもののようにしか見受けられない。ここにまあわれわれの大きな不滿があるのであります。御案内のように、同じ協同組合でも、本日議會を通過いたします農業協同組合その他にいたしましても、協同組合の本質の上に立つての協同事業というものに非常に力を入れておりますが、商工協同組合はなぜかこの協同事業というものに對して大した力がはいつておらない。またこれに對して政府もはなはだ冷淡な態度でありまして、これに對しては格別の補助金もただいままでは出しておらなかつた。最近出すという話を聞いておるのですが、それといえどもごくきわめて微々たる金額である。こういうふうな實情にありまするときに、あなた方中央にあつて御指導なさる立場といたしまして、この協同事業というものをもつと發達をさせてまいりまするためには、何らか具體的なお考えをおもちであるかどうか。ひとつ承りたいと思います。
#37
○稻川宮雄君 現在の商業協同組合は從來の統制組合の燒き直しみたいなものでありまして、ほんとうの協同組合としての協同事業が、十分に發展していないのじやないかという御意見に對しましては、遺憾ながら私も同感に存じます。この點につきましては從來の頭を百八十度に切り替えまして、眞に從來の統制組合とは協同組合は違つたものであるという觀念を關係者に植えつけ、今までのような行き方でなしに、眞に協同の力によつてお互いに立て直すという、そういう式の協同組合にもつていかなければならないというふうに考えております。なおこの協同組合の發達につきましては、政府當局に對しましても、いろいろ補助金その他の面において、お願いしたい點もございまするが、まず何と申しましても業者の自覺を喚び起すということが、第一であろうと存じますが、あるいは復興公團等も積極的に、この協同組合の行います協同施設に對しまして援助をする。もし政府の補助金が直接出ないという場合におきましても、復興公團等がこれに對して手を差伸べる。肥料であるとか、石炭であるとかいうようなものだけでなしに、こういう抽象的な點に對しても、援助の手を差伸べていただきたい。援助の手を貸していただきたいというふうに考えております。
#38
○赤松(明)委員 稻川さんに一つ二つ聽きたいのは、やはり笹口さんのただいまの意見と關連するわけですが、小賣業者のしかも國民の一割を占めるその業者の代表的立場に立つて、端的に言つて本百貨店法廢止を反對なさるのか。それとも今日の段階において、もしこれが通らない場合に、しからばこのままの法律でいいというのか。もしこのままの法律でいけないということであるならば、小賣業者の建前に立つて、いかにこれを要するに廢止というのではなくて、改正あるいは修正ということで殘せばいいか。こういう具體的な問題について御研究になつておるか。所信があれば一應承つておきたい。すなわち繰返して言えば、まつこうから反對するか。それとも反對しないけれどもというふうに、最初の御證明のうちにあつた。以前百貨店法ができたほどの影響はないかもしれないということであつた。ところが影響はあるのだ。しからばその影響はあるけれども、やむを得ないから、泣寢入りするのか。それとも小賣業者の手紙や何か來てないというけれども、小賣業者というものはおそらくどういうふうにすればどうなるのだ。今日百貨店法があることも知らない。放つておけば失業者になつてしまう今日、こいうう指導的立場にあるあなた方の御見解、もし廢止すればこれに代る適當な方策を講じなければならないが、それは直接協同組合を強化するとか、何とかいうかつこうにおいて、小賣業者を保護する特別の法律をつくるか。それとも百貨店を變つた形において、その大資本を抑壓するこの百貨店法に代る形のものをつくろうとするのか。それに對する具體的な意見をもつておると思うのですが、それを承つておきたいと思います。
#39
○稻川宮雄君 最初も申し上げましたように、百貨店法の廢止につきましては、今日の小賣商といたしましては廢止に反對であります。しかしながらその反對と言いますのは、自分たちの利害の面から見て反對なのでありまして、今日の一般情勢から申しまして、殊に獨占禁止法その他の法律もありまする今日の情勢におきまして、あくまで自分たちの立場からのみ反對するということが正しいかどうかということにつきましては、消費者の面から申しましても、あるいは他の産業部面との均衡の面から申しましても、一概に言えないと考えますので、證人として出ました私としては、小賣商としては反對でありますけれども、あくまでこれに絶對反對でつつぱつていくということが、指導者の面において正しいかどうかということに對しましては、相當の疑問をもつておるという次第であります。なお希望といたしましては廢止反對であります。しかしながら先ほど申しましたような諸般の情勢から、これをつつぱることはどうかと思います。ところが一部の修正ではどうかということもございますが、それに對しましては百貨店組合のごとき、ああいう統制的な組合の廢止ということは當然なことでありますが、その他の面については存置していきたい。殊に出張販賣なり支店の擴張というようなことは、もつと直接な影響が生ずるのでありますから、存置してもらいたいということになろうと思います。しかしながらこれらは獨占禁止法その他の法律の運用が、最も適正に行われますならば救われる點でありますから、その方面におきまして十分なる運用をしていただくということを希望し、かつ一般の小賣商に對しましては、中小企業振興の建前から、また弱いものを保護するという建前から、これに對しまして何らかの特別の方法と言わないまでも、中小企業法といつたようなものの制定が願えれば、非常に結構であると考えております。
#40
○赤松(明)委員 稻川君の御答辯に對しましては、大體われわれも一應そういつた建前を、とらざるを得ないのではないかと思います。しからばこの百貨店の具體的な一例を申しますと、三越百貨店なるものが、四國の愛媛の松山市が全體に燒けてしまつたあとで、最も早くあのどさくさにまぎれてあの大きな家を建ててしまつた。しかもこれは小賣を目的とするものであろうか。それともその附近の物資を買い集めるやみの出先機關であるかということが、今日まで地方において相當大きな話題を投げかけておる。このたつた一例を言つても、松山市において引揚者が更生金というようなものをつくつて、商賣をしようとしても成り立たない。お隣りの香川縣の高松においては、こういつた大資本に小賣商をかねて買い集める機關というものがないために、高松の驛頭においてはやみ屋で足の踏み場もないというような状態である。これが正しいかどうかということは別問題として、かりにこれが正しい形態のものとしても、松山と高松の場合に大きな影響をもつということは、これは一應稻川君も調べてみればわかりますが、稻川君の言うようにこれを廢止に決定しても、獨占禁止法に則つて公正取引員という方が完全なる運營をやつてくれて、この百貨店に對する取締り、いわゆる獨占的な行き方を是正するということに對しての取締りが徹底するならばと、こういうことでしたが、はたしてそれを徹底し得る自信をもつておるかどうか。その具體的な方策として、百貨店に對する獨占禁止法によつて取締ろうという個々の條項は、どれとどれを取上げて、どういうふうになさろうとしておられるか。これをひとつ公正取引員の方から御囘答願いたい。
#41
○中山政府委員 ただいま百貨店の活動に對して、公正取引委員會は私的獨占禁止法をいかに運用するか。その條文はどれとどれに相當するのであるかという御質問のように承つたのでありますが、百貨店と小賣店との關係につきましては、なお私どもといたしましては十分に研究しなければならぬ問題が、たくさんあると思うのであります。大體においてその問題になり得る條文は何であるかと申しますと、この法案の第二條にございますやはり事業能力の較差ということ、それから第十九條の不公正な競爭方法による、そういう競爭手段をとるということ、この二箇條が著しいことではないかと考えております。これはもとより不公正な競爭方法ということは事業の大小にかかわらない問題でございまして、百貨店にのみあるとは考えられませんことは申し上げるまでもないのでありますが、そのほかあるいは不當な取引制限とか私的獨占というようなことに關する場面もあるかもしれませんが、まず一等目につくのがこの二箇條であろうと考えております。
#42
○林(大)委員 百貨店法を廢止いたしますと、相當百貨店が暴れて中小商業者が非常な苦境に陷るであらうことは、これは私は普通の現在の經濟的常識をもつている方なら大體了解できることであると思うのであります。それで百貨店法をずつと讀んでまいりますと、第三條から六條に至るまでのこの四條ははつきりと百貨店に對する重大なる制限を加えております。それから次に第十四條から十八條までは百貨店組合を通じまして相當な制限を加えております。なお各條に對する罰則規定というものは相當はつきりしております。これだけの制限を加えましてちようど今日まで中小商業者と百貨店とようやく均衡を得てきたというわけでございまして、それでも百貨店の方がむしろ伸びて、戰爭の影響などによりまして中小商業者の方がより以上に困つておるという状態でございますから、この百貨店法を廢止しようというならば、今私が述べましたような各條についてこの條項はこれでもつてこういうふうにしていこうという比較したところのはつきりした御意見と、大體この邊でやつていくというおつもりとをもつとはつきりと承つておきたいと思うのであります。これは政府委員竝びに公正取引委員長にお願いをいたします。
#43
○和田政府委員 ただいま百貨店法の三條ないし六條の規定しておりまする具體的な問題につきまして、これに代るものとしてどういう方法をとるかというお話でございますが、大體この百貨店法を廢止いたしますからには、必ずしもこれらの各條項がぴつたりそのまま何かほかの方法によつて取締られるからこれを廢止するのだという意味合いではないのでございまして、大體今日のところでは非常に經營能力等に差がございますものをどういう方法でその差をなくすようにするかということは、各産業全般に通じまして獨占禁止法の規定の運用でやつていく、それ以外の場面におきましては、できるだけ各企業の自由競爭を認めていこうという建前になつております關係上、この各條項はそれぞれ他の方法で制限あるいは禁止をしなければならないというぐあいにも考えておらないのでございます。ただ先般も申し上げました通り百貨店を營みます場合には、現在のところではあるいは資金調整法あるいは臨時建築等取締規則というようなものの制限がございまして、新しくこの法律に收まります百貨店を營むということは、それらの側面的な面からいたしまして相當困難なものがございますし、なおかつ出張所等の新設につきましても、同樣の實際上の制限が行われるだろうと思うのでございます。また第六條のいわゆる營業方法の制限につきましては、これは今勞働基準法等もございますので、そういう面からいたしましてほかの産業と同樣に營業方法等についての制限が行われる、大體におきましてそういう方法で制限が行われますことで、今日の状況はその目的を達し得るのでございまして、獨占禁止法ができました以上、ほかの産業に新設擴張等の企業許可令のようなものが全部廢止されました今日におきまして、特に百貨店に對してのみそのような制限を設けることは適當でない、かように考えておる次第であります。
#44
○笹口委員 公正取引委員長にお伺いしたいのは、先ほど赤松氏の御質問に御答辯ありました第八條と第十九條、これが百貨店の場合にいわゆる不當な事業能力の較差、これは私ども素人考えですが、當然これに該當するものと思われますが、取引委員會の方においてはどうお考えになつておるか。それから第十九條の不公正な競爭方法というのは具體的にどういうことになるか。これも委員會のいろいろな御解釋があることと存ずるのでありますが、たとえば卑近の例といたしまして先般纖維製品の登録を行つた。百貨店の方は相當豊富な資力をもつておりますために、長期間にわたつて新聞廣告あるいは有效な宣傳方法をなさつた。あるいは出張所というようなものをこまかく各所へつくりまして、そうして登録を獲得しようとはかつたというようなことができた、普通の纖維業者といたしましては、せいぜい近所まわりをするか、ポスターをはるか、その程度のことぐらいしかでき得ない。その結果どうなつて現われてきたか、私はまだ全般のことは調べておりませんけれども、私が承知いたしておりまする東京周邊各府縣におきましては、全部百貨店が壓倒的な得票をとつておるのであります。これはわれわれが素人考えにいたしますと、きわめて不公正な競爭方法であるというふうに考えるわけでありますが、これは登録の場合にかような方法が用いられましたが、その他營業を繼續していきますのにもこれに近いような方法がとられるのではないかと思いますが、この不公正な競爭方法を具體的にどういう程度のことまでこの條文を御適用になるつもりであるか、伺いたいのであります。
#45
○中山政府委員 その條文をどういうふうに適用するかというはつきりしたところをというお話であると思いますが、われわれ委員會がこの條文を適用するについて、具體的事實につきまして十分研究をいたしまして、相當幅のある運用をやつておるのであります。また今後そういうつもりなのでありますが、ここでこういうことにはこうと、はつきりした、むしろ非常に典型的なことは申し上げかねるのであります。やはり先ほど申し上げましたように、大體において不公正な競爭方法というこの條項に基いて判斷されていくのではないかと思います。
 なお先ほど事業能力の格差についても申し上げましたが、これは一應は考え得るのでありますが、これは非常に愼重に、また問題が多い點であると思います。たとえばむしろ不公正な競爭方法という點において考えるものが多いのではないかと考えております。しからば不公正な競爭方法ということにつきましては、どういうふうに見ていくかというただいまの御質問のようでありますが、これは實は何を不公正な競爭というのかということは、私的獨占禁止法の第二條の中に詳細に定めてあるのであります。これに該當するかどうかということを、具體的事實について十分研究していかなければならぬのであります。たとえば今のお話のような點につきましては、ちよつとこの條文に眞正面からあてはまるというものがなさそうに思えるのであります。ただこの解釋の、つまり定義の第七番に、前に六番まて明らかに掲げておりますもののほか、公共の利益に反する競爭手段でありまして、ある既定の手續によつて公正取引委員會が指定したものの公正な競爭方法ということができることになつておりますので、この運用によりましては、相當幅のある判斷を下していくことができるのではないかと思つております。
#46
○林(大)委員 押問答しても始まりませんが、たとえば今の百貨店と小賣業者との間の現實の段階を不公正な、不當な格差とお認めになるかどうかという點はいかがでしようか。
#47
○中山政府委員 これは私もつと調査、研究いたした上でありませんと、ここで確かにお答え申し上げかねる次第であります。
#48
○林(大)委員 お尋ねいたしますが、公正取引委員會ができましたのは、多分六月の終りだつたと思いますが、あれから一體そういう判定をどのくらいおやりになつたのか。私は新聞で一つか二つしか見ませんでしたが、愼重におやりになつておる間に、事實の方はどんどん進んでいつておる。百貨店と小賣業者の間でも、政府も愼重に公正取引委員も愼重にやつておられる間に、事實の格差はどんどんできていつてしまう。そうしてどうも私どもの感じでは、それはやむを得ないのだというような態度に終局的になつてしまつて、泣き寢入りさせられてしまうという結論になるように思います。それははなはだ遺憾でありますし、それでは戰爭の打撃を大いにこうむつた中小商工業者をいじめて、そうして百貨店を生かしていくことになりますから、そこは一つやり方全般についてもお考え直しを願わなければ、どうも納得がいかないと思いますが、その點について一つ伺います。
#49
○中山政府委員 七月の十四日にわれわれが任命されまして、實際において役所の場所を得ましたのが八月一日、それから大體二箇月半になつたのでございますが、その間何をくずくずしていたかというおしかり、まことにごもつともでございますが、何しろわが國において初めての考え方の官壓でございます。すべてを新しく始めていきますのに、法律の解釋一つからして研究していかなければならぬような状態でございますので、また事務局の人間を集めますについても、なかなか思うように早急に集めることもできず、最近に至つてようやくその根幹をなすような人間を集め得たような状態でございます。それにもかかわらず、ここに列席しております尾形總務部長以下非常に勉強してくれまして、今日に至つておるのでございます。その點は御了承おき願いたいと思いますが、今の百貨店と小賣商の事業能力の格差という問題につきましては、先ほども申し上げましたように、われわれの研究をもつと進めなければ確たることは申し上げかねますが、先ほども申し上げたように、事業能力の格差の條文をこれにあてはめますことは、なかなか容易でない問題があるように考えておりますので、この條文でもつていくことは、なかなか困難ではないかということだけは、ここで申し上げておきます。なおこれはひとつ十分調査をいたしたいと思います。
#50
○笹口委員 どうもはなはだ頼りのないことになつてしまつたのでありますが、百貨店法の御説明を聽けば、獨占禁止法があるから十分だと言われるし、獨占禁止法の御説明を伺うと、あまり的確につかめないような結論になつてまいりますので、このまま問答を續けておつてもしかたがございませんが、ただ一つ公正取引委員長にお願い申し上げておきますことは、いろいろ學問的に御研究くださいましても、議論は相當あるだろうと思いますけれども、しかしながらこれは相當大きな問題であります。百貨店對小賣店というものは大きな問題であり、しかもこれが今日まで百貨店法という法律がありましたために、ある程度制約を受けておりましたものが、今日以後そのわくがはずれて、百貨店が相當自由に活動ができるという状態になつて、すでにその鋭鋒は、先ほどお示ししましたような事例にでも現われてまいてきておるのであります。これが小賣商に與えます影響はまことに容易ならぬものがあるとわれわれは推測いたしておるので、小賣商の方々は近頃何といいますか、生活協同組合法の反對なんかに氣をとられてしまつておりまして、この方は一向忘れておるようでございますけれども、現實の問題といたしましては、すでに巨額の資本を集中しておりまするところの百貨店の小賣商に與える影響の方が私どもは遙かに甚大である、かような解釋をし、重要に考えておりますので、速やかにひとつ御研究を願いまして、そして今申しましたような實情もよく御勘案の上この法律案を公平に適用相なるように要望をいたしておく次第であります。
#51
○片岡委員 これを裏から見ますと、百貨店のごときは自由におつ放す。實際の進出の實情は、小賣屋は統制組合が解除になつて、そうして協同組合ができる。しかしながら先ほど來申されるように、協同組合なるものの運營はきわめて微弱なものでありまして、先ほど稻川君から説明がありましたが、これはよほど前でありましたが、百貨店の進出を防止するために全國に專門店會というものができました。われわれは率先してこれを全國の都市につくつた一人でありますが、たまたま戰爭が勃發して統制經濟になつて廢棄のやむなきに至つたのでありますが、しかし專門店會の運營も實際は百貨店の進出を防遏するだけの力はできませんでした。一方では力のあるものを自由に放し、實際問題として今日の小賣商というものは、いわゆる登録制をしかれてなかなか組合の運營とかいうようなところまではいつておりません。そうしますとここに非常に不公平が起る。さもなくとも大きな資本が進出してくるのに對する對策は立たない上に、なおこれに大きな隔たりが出てくる。今わが國の實情は中小工業によらなければならぬという場合において、これを野放しにしていつたならば、先ほど來お話があつた、あるいは大きな思わざる失業が出てくるのじやないかということも考えられるのでありますが、その邊をどういうように緩和されるかということを先ほどもお話がありましたが、あの説明では私不十分だと思います。政府委員及び組合關係の方に御意見をあらためてお伺いしたいと思います。
#52
○和田政府委員 百貨店は相當資本が大きく、中小商業者は、非常にそれが小さい。從つてその間力の強いものがぐんぐん進出して、小さいものが壓迫されるであろうというお話でございますが、そういう事業能力に不當に差がございまして、そのためにお互の間に公正なる自由競爭ができないというものを取締り、制限をいたしますために、獨占禁止法の事業能力の格差に關する規定があるのであると私は信ずるのでございます。從いましてそういう意味からいたしまして、公正な競爭をさせますために百貨店を資本的事業能力の面から抑えるという意味合でございますれば、一般の各工業につきましても、それぞれ大きな工場も、ごく小さな工場もあるのでございますが、そういうものを通じまして、獨占禁止法の適正なる運營によつてそれらの點は是正すべきものであろう。かように考えるのでございます。百貨店を廢止いたしまして、ただ獨占禁止法の適用だけで事をすますという氣持はもちろんないのでございましてその自由競爭をいたします中におきましても、中小商業者の經營の改善という面については努力をしなければならないと考えまして、先般來お話申し上げました通り、その經營の面におきましては零細な力を集めまして、比較的大きな力として仕事をやつていくというために、先ほど稻川君からもお話がありましたような、協同組合でございますとか、あるいはプランター・チエーンというようなもので、みんなの力を合せる。その力を合せましたものに從來統制組合時代には上つておりませんでしたが、今般追加豫算にお願いをいたしまして、できるだけそういう協同組合の經濟的な共同設備、共同事業に對しまして援助をしたい。なおその補助金のようなものは、大體今までの慣例でいきますと、半額補助というようなことになりまして、後の半額はそれぞれ自分の資金をもつて賄わねばならないようなことに相なると思いまするので、この際全然考えを別にいたしました方法といたしまして、産業復興公團がいろいろな設備をいたしまして、これを協同組合に貸與し、賃貸しをするという方法も今後やつていきたいと考えておりますし、なお今日一番問題になつておりますこの中小企業の金融の面におきましても、今の中央金庫とは別途にさらに強力なものをつくりたいと考えまして、關係各方面と折衝をしておるような次第でございまして、一面百貨店の方は獨占禁止法の適切なる適用をする。一面中小商業者に對しましては、できるだけの助成の方法をとつていきたい。かように考えておる次第でございます。
#53
○稻川宮雄君 ただいまの御意見につきましては、私ども實は同感でございまして、最初に申し上げましたように、今日の社會情勢から申しまして、單に小賣商のみの利益のためにあくまで法律を存續しろということは主張しにくいのでありましようが、しかし小賣商の立場から申しますると、百貨店とは本來事業に格差があるものでありまして、その格差につきましても實際問題として調べた上でなければきまらないということでありましようし、また格差があるということがはつきりいたしましても、公正取引委員會に提訴する手續とか、時間とかいうような點から申しましても、小賣商にはそういつた能力も氣魂もないという場合が多いのでありますから、小賣商の立場といたしましては、でき得べくんば、この法律はそのまま存續していきたい。こういう意見でございますから、御發言と内容におきましては同一である。かように考えております。
#54
○片岡委員 獨占禁止法によつてある程度の制約はできるという御説明ごもつともと存じますが、現在の百貨店の販賣網に對してどういう御見解をもつておられますか、一例を申し上げれば、三越とか松坂屋とかいうものが全國的に網を張つております支店出張所等を出しております。それらに對してどのくらいの範圍をお認めになるという御見解でありますか、お伺いしたい。
#55
○和田政府委員 百貨店法がございます現在におきましては、戰前におきましては、大體百貨店の新しい許可あるいは擴張というものはこの法律をたまたま施行いたしました當時、すでに相當な手續と申しますか、建設等が進んでおりましたものを除きましては、これが許可をいたさない方針でまいつたのでございますが、終戰後におきましては、既存の百貨店におきまして、あるいは戰災にかかりましたり、あるいは賣場の相當なものを他の方面に供出いたしたりしたような關係もございますので、新しく支店をつくるというような場合には、それぞれ關係の府縣知事の意向を聽きまして、この程度のものならばその地方における中小商業者との間に別段摩擦もなかろうというような意見のものにつきましては、ある程度の許可をしてまいつているのでございます。今後もしこの法律が廢止されるようなことに相なりますれば、自然その百貨店全體の問題といたしまして、獨占禁止法による取締をやつてまいる。あるいは建築等の場合でございますれば、先ほど申しましたような、いろいろ他の規定によりまして、新しく百貨店をつくるというような場合の建築、あるいは資金の面でこれは今日の順位から申しましても、商業というものは順位が非常に劣つておりますので、そういう面からこれが實際上相當抑えられていくことに相なろうかと思います。
#56
○林(大)委員 中小商業者を援助して百貨店に對抗するだけの力を與える政策であるというお話が先ほどございましたが、それは事實ではないと思うのであります。商工省の省議によりましても、商業者の方はやむを得ぬ、捨てても中小工業者を援助していくというように私は聞いております。また日本の經濟界を實際に見る場合に、その御所論はそれは詭辯であると私は思うのであります。ひとつこういう點について何とかしてこれを言い逃れて通そうというお氣持でなく、裸でひとつやつていただきたい。これは私の希望であります。
 次にこの百貨店法が廢止になりますと、結局獨禁法でやるよりしかたがない。これでやるとおつしやいました委員長のお話の通りでございますが、ではこれをあてはめていく場合にどうなるかというと、不公正なる競爭方法、これの適用は事實を摘發しなければなかなかあてはめ得ないと思うのであります。そうすると結局不當なる事業能力の較差、これでいくよりほかに途がないと思うのであります。それのつまり判定と申しますか認定と申しますかこつちの判斷できめていく。つまり第八條をあてはめられる。こういうことに相なると私は思うのであります。そうするとその點については、これから十分研究してやられる。こういうことでございますから、そうすると結局これをずつと考えてみますと、これはいくらうまいことを言つても百貨店をしばり得ないと結論を私は出さざるを得ないのであります。事實ごらんになりまして、上野の松坂屋の附近の家はほとんど三分の一も立つておりません。しかしながら上野の松坂屋はりつぱに營業をしております。名古屋の松坂屋本店の周圍はいつぱい草がはえております。しかるに松坂屋は立派に營業をいたしております。これを不當なる事業能力の較差と言わずして何ぞやであります。こういう點をよくお考えになつたならば、ここでうまく言い拔けてこの法律を通しさえすればいいんだというお氣持が私どもには讀めてくるのでありますが、一つ裸でぶつかつて、お互いにこれを公正な國民が納得するようなものにつくり出すことがあなた方竝びに私どもの國民に對する義務であると思うのであります。そういう點について率直な御意見を承りたいのであります。
#57
○和田政府委員 先ほど少し言葉が足りなかつたかと存じますが、私どもといたしまして中小工業の方は助成をするけれども、中小商業の方はどうなつてもいいんだというような考えを懷いたことは今日まで一度もございません。從いまして商工省としてさような決定をみたこともないのでございます。ただ中小企業の問題を取扱います際に、今日のいろいろな客觀情勢からいたしますれば、ただ社會政策的な意味におきまして、中小企業なるがゆえにどのような中小企業でもこれを保護助長していくのだというようなことはとうてい實行できないのでございます。何と申しましても、中小工業者に對しましては、大工業も同じでございますが、資金資材が非常に窮屈な場合に、既存業者に一律に割當てるということになりますと、それぞれの工場の經營の時間というようなものは非常な僅かになつて、經營が困難になるというようなこともございましようし、商業の面におきましても今日の既存の中小商業者がそれによつて經營を續けられていくというように十分な商品がないことは申すまでもないのでございます。こういう意味合いからいたしまして、ものによりましてはもう少し集約的な操業をやる。あるいは流れるべき商品の數量を見透しまして、それによつてある程度中小商業者がチエツクされるというようなこともあるいはあり得ると思うのでございます。今日重要な物資はいわゆる指定配給物資となりまして、今後も次々に纖維あるいは食糧でとられましたと同樣な登録制が行われることに相なろうと考えられますが、その際考え方といたしましては、今後の流れる品物の量によりまして、それを專業としております場合にどの程度の賣上があるかというようなところから、自然登録を受け得る商業者の數というものは、ものによりましては現存業者が全部登録を受け得るものもございましようし、ものによりましては相當の落伍者が出るというようなこともあり得ると思うのでございます。そういう意味合いにおきまして、あらゆる中小商業者を保護助長するということは不可能でございますけれども、その程度のものは必要であると考えられました限りにおいて眞面目に商業をやつていこうというものにつきましては、今後いろいろな方法をできるだけ講じまして健全に發達させていくという工合に努力をしたいと考えておるのでございます。
#58
○山口(靜)委員 ただいま政府側の方方からいろいろと御意見を伺いましてやや納得をいたしたいのでございますが、私は過般の衣料登録が行われました際にまことに不公正なる競爭が行われている事實を聞いておるのでございます。これは衣料登録に對しまして、ある百貨店におきましては登録一名に對して一箇の齒みがき、またある百貨店におきましては一箇のせつけんを景品として出しておるような實例を聞いておるのでございます。これはまさしく不公正なる競爭だと存じますので、公正取引委員會におきます役割がはたして確實に果されているか否かということに對して御質問申し上げたいと存じます。
#59
○中山政府委員 先ほど林さんからの御質問もありましたので、併せてお答えいたしたいと思います。百貨店の存在というものはもう既成の事實でありまして、今問題になりますものは、小賣店に對する壓迫をいかにして防止するかという問題であろうと思うのであります。それにつきましてはやはり不公正な競爭方法という點にわれわれは著目をして壓迫的にならないように――もし獨占禁止法の發動の場所がありますならば、この公正な競爭方法という條項に從つて臨んでいくのが最も適當であろうと考えます。ただいまの事實問題につきましては、われわれ少數の事務局をもつてはなかなか容易に知り得ないことが世間には非常に多いのでございまして、そういう點につきましては方々から種々御注意をお願い申したいと思います。またそれらの不公正な競爭方法が行われておるということがあります場合には、この法律の條文にもございますように、たれでもその事實を公正委員會に申出でられることができるようになつておりまして、その場合にはわれわれはそれについて調査をいたし、適當なる措置をとるようになつております。
 なお先ほどの公正競爭方法につきましては、あるいは外部から提訴をしなければわれわれが動かないかのようなお話がちよつと出ておりましたが、そうではございませんので、そういう事實があり、いやしくも公正自由な經濟の維持に反するようなことがありますれば、公正取引委員會自身が發動いたしまして、そして適當な措置にまで至ることができるようになつておりますので、大いにアンテナを張つておるわけでありますが、なかなか全體に及ぶというわけにはまいりませんので、時時御注意をお願いしたいと考えております。
#60
○喜多委員長 これにて懇談會を終ります。
ソース: 国立国会図書館
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