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1963/12/11 第45回国会 参議院 参議院会議録情報 第045回国会 本会議 第4号
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1963/12/11 第45回国会 参議院

参議院会議録情報 第045回国会 本会議 第4号

#1
第045回国会 本会議 第4号
昭和三十八年十二月十一日(水曜日)
   午前十時十六分開議
  ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第六号
  昭和三十八年十二月十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第二日)
  ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第二日)
 一、三池炭鉱災害についての福田国
  務大臣の報告及び鶴見事故の報告
  についての綾部国務大臣の報告
  ━━━━━━━━━━━━━
#2
○副議長(重政庸徳君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○副議長(重政庸徳君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。大和与一君。
  〔大和与一君登壇、拍手〕
#4
○大和与一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日、本院において行なわれました池田総理の所信表明に対し、若干の質問をいたします。
 二人のK、すなわち、故ケネディとフルシチョフは、世界じゅうの人民の協力を得て、平和への努力を続けてまいりました。一人のKがこつ然と一青年の凶弾に倒れて、一瞬、世界を恐怖と不安のどん底に投げ込みました。民主主義の先輩アメリカに夢中になっていた人も、どこの国でも、よいこともあり、悪いことあり、同じだと達観していた人も、マッカーサーから十四才の小僧と言われて、なにをこのやろうと怒った人も、故ケネディ大統領の不慮の死に際しては、ひとしく哀悼の誠をささげました。その後、世界の国の指導者の良識と人民の協力によって、再び平和への歯車は静かに回り出したと信ずるものであります。
 アメリカ的民主主義と豊かな生活の限りない物量に目をみはっていた人たちは、この繁栄の中に、物質文明の不均衡と矛盾と毒素が、なお幾らでも含まれていることに幻滅の悲哀を感じました。うっかり裸で飛びつくと、やけどをすることも教えられました。信じられないほどけしからぬ人間差別が、白昼公然と法律によって実施されていたり、貧乏人なんていないのかと思うと、繁栄の陰に、多くの貧民が不平等に泣き、悪の温床が生まれ、凶器携行の暗黒街が現存する事実、病根の深さに触れて、アメリカ国民必ずしも幸福にあらずと感ずるのであります。フロンティア精神に焼きを入れてたたき直すのだと叫んだ故ケネディのニュー・フロンティア・スピリットの旗じるしの意味と真意がわかりました。われわれは、無条件にアメリカ民主主義と繁栄の道に追随する必要は毫厘もないのであります。日米間の一切の交渉、折衝は、友好関係を限度として、自主的に、き然として、今後も続けられるものと信じます。
 この際、池田総理にお伺いしますが、日米外交路線の基調、特に、日本の自主的立場に立って御答弁をいただきたいのであります。わが国においても、一部の国民は豊かな生活をいたしておりますが、政府の責任ある発表によっても、なおボーダーラインの収入で生活をしている国民が一千万人近くいるのであります。貧富の格差が大きく、政治的の貧困が目立ち、民主主義の大黒柱である憲法は、不都合にも政府自身によって完全に実施されていないのであります。この国民の生活苦と真実の声を取り上げて、政府に強く要望し、すみやかに善処きせるために、本日は特に、物価値上げをめぐる問題と、ILO条約の問題と、人づくり政策の問題にしぼって、質問をいたすものであります。
 第一に、総理は、大衆生活の中で、物価値上がりによる生活困窮の真相は御存じないと思いますので、若干触れてみます。国民生活の実態は、中小の市町村だけでなく、大都市でも、案外、食事は目刺しにみそ汁でも、ステレオ、ピアノを月賦で買っております。ステレオは買ったが、レコードまで手が回らないので、王将と軍艦マーチの二枚を、毎日片々、何が何でも勝たねばならぬと、近所迷惑も忘れてかけています。冷蔵庫も月賦で買ったが、中を一ぱい詰めるほどお金がない。冬は品物の保管の代用品に使っています。隣の家は月賦でテレビを買ったのに、支払いがまだ済まぬはずだが、また月賦で別の店から一台買ったらしい。つまらぬやつだという、うわさが飛んで、完全にコマーシャルにかき回されて、月賦々々と、債鬼に身も細る思いのサラリーマン階級が多いのであります。決してつくり話でも笑い話でもありません。これだけ物価値上がりが日常生活にしわ寄せになっているのであります。
 十月に、東京で全国台所会議が開かれました。主催者は栄養改善普及会の東京家計薄研究班でしたが、食事の質を落さぬようにしているだけなのに、一人当たり一ヵ月の食費は、三十六年の三千六百円、三十七年の四千百円に比べて、ことしは五千百円と、二年間で四二%も上がりました。昭和三十七年度の東京都の標準世帯家計調査報告によれば、今年五月の実収が三万円から三万五千円の家庭では、一ヵ月に四千九百六十四円の赤字であり、三万五千円から四万円の家庭は、一ヵ月に二千三百九十円の赤字であります。夏冬のボーナスはその穴埋めに全部使われてしまっています。このように庶民大衆の生活は、物価値上がりによってほんとうに困っております。この実態を総理は、まことに政治力が足らず申しわけないとお認めになりますかどうか、御答弁をいただきたいのであります。
 第二に、政府部内の物価抑制に対する意見の不統一についてお伺いします。新聞の報ずるところによれば、副総理格の佐藤科学技術庁長官は、物価値上がりを押えるのに二年も国民を待たせるのはよくないと言明して、自民党内に波乱を起こしました。宮澤企画庁長官は、常日ごろ総理の放言を苦々しく思いながら、いつもブレーキをかけて談話を発表していました。先日も、中小企業、農業へのアフターケア対策を早急に打ち立てると進言したことは、まさに語るに落ちて、所得倍増は、いまや名実ともに失敗であった何よりの証拠と、国民は身につまされて感じております。賀屋元大蔵・現法務大臣は、閣議で、物価値上がりは日陰の国民の人たちに深い影響を与えるから、慎重に対策を立てるべきだと発言しました。企画庁長官の諮問機関である物価問題懇談会は、去る二十五日、率直に言って、政府の物価対策は十分有効でない。あわせて、公共料金は一年間据え置くべきだとの決定を答申しました。総理、あなただけです、手ばなし楽観論を言うのは。去る九日、組閣の記者会見で、まだ総理は、公共料金の一部値上げはいいじゃないかと、全く国民生活の実情を無視した発言をしておられましたが、いまもなお、これくらいの物価値上がりは心配ないとの信念を堅持して、国民にこたえられるのでありますか、御答弁をいただきたいのであります。
 第三に、労働者が物価が上がるから賃金を上げてもらいたいと要求をするのは当然であると思うのであります。選挙が済むと、すぐ二十六日の閣議で、タクシー代の値上げの方針をきめました。国民の血の叫びをじゅうりんしていますよ。バス、水道料金の値上げ申請は、全国各地から殺到しております。それでは、政府は公共料金の引き上げを認めながら、同時に手品師のように物価の引き下げもできるとお考えなんですか。具体的に明確に総理から御答弁いただきたいのであります。
 第四に、政府は、社会党からの公開質問状の論戦の中で、物価値上がりは大策の生活を圧迫していないと言われました。またへ臨時国会の所信表明で、総理は、一両年のうちに物価値上がりは安定させると、国民に対する公約を言明されました。その舌の根もかわかぬ下から、選挙のまつ最中に、自慢をしていた十月の卸売り物価指数は前年同月比七%の増加でありました。たった一つの頼みの綱も切れたのです。政府自民党はほんとうに物価を下げる政策をお持ちにならないのですか。それとも、がんこに下げようとなさらないのですか。これまた総理から明快率直な御答弁をいただきたいのであります。
 第五に、この現実に立って、選挙後のころから所得倍増計画の失敗の波が全国からほうはいと起こって参りました。俊敏な宮澤長官が、中小企業と農業のアフターケアを第二ラウンドとして進言しました。きのうの新聞によりますと、リングの王者力道山でも刺される世の中です。国民の意見にたてをついてはいけません。政府自民党がいままで大企業のみに偏向奉仕したために起こった、いわばシシを食った報いです。当然の結果であります。それならば、そのひずみを明三十九年度の予算の中で国民に対して、具体的にどの項に、金額にして幾ら織り込んであるのか、明確に、得意の数字をもって総理からお答えをいただきたいのであります。
 第六として、明年度予算の重要な公約の一つである二千億減税についてであります。株式配当分離課税について、池田総理と田中大蔵大臣と意見が対立しております。また、企業減税でいくか所得減税でいくか、田中大蔵大臣と税制調査会とも意見が違っております。この二つの内容の相違は何なのか、国民によくわかるように解明していただきたいのであります。政府の言う程度の減税では、物価値上がりによる名目所得の引き上げと、その結果起こる実質的な増税分を減らしているにとどまるのであります。ましてや、二千億の大部分を大資本の利益を代表して企業減税に充てるというならば、勤労所得者にとっては実質上は増税であると言わなければならないのですが、前大蔵大臣であった総理の御親切なる答弁をいただきたいのであります。(拍手)
 第七として、総理は、物価が上がったのは、賃上げが生産性を上回って、それが物価をつり上げていると申されますが、最近の労働省の発表は、上昇の速度がにぶっております。実質賃金は三十七年が四%近く上がり、三十八年は一・二%しか上がっていません。しかも生産費の中に占める人件費の割合は、三十二、三年ごろが六〇%だったのですが、いまは五八%に落ちております。総理も経済企画庁長官も、コスト・インフレであると言いながら、統計的な数字を一度も公表しておりません。正確な数字をお示しいただいてお答えをいただきたいのであります。
 第八として、総理は、物価指数は上がっているが、卸売り物価指数は安定しているから、少々ゆれてもだいじょうぶだと申しましたが、卸売り物価も、原糖、船賃などの値上がりで、九月から四%も上がってきました。これは当然消費者物価にはね返ります。これは総理や企画庁長官の言うコスト・インフレだけでは説明できないし・当然一般の物価に影響するのでありますが、総理並びに企画庁長官の御所見を承りたいのであります。
 第九として、全国の勤労者の預金総額は五兆円ですが、物価がかりに九%上がると、四千五百億円だけ損をしたことになります。日本の全勤労者の受け取る給料の総額は七兆円ですが、これも六千三百億円損をする勘定になります。言いかえると、今までよりも値打ちの低いお金をもらうことになります。しかし、得をする人もあります。借金する側の人であります。企業はお金を借りていますが、返済するときには安いお金で返すから、それだけ得になります。だから政府は、高度成長のひずみを表面化しないように、勤労者を犠牲にすることでごまかしていると、私は思うのであります。総理はこの事実をお認めになりますか。お答えをいただきたいのであります。(拍手)
 第十として、総理は、物価値上がりは「産業近代化のためにやむを得ないもので、一時的現象だ」と申しておられますが、近代化とは大企業と中小企業の格差を解消することだと思うのであります。大企業と中小企業との賃金格差は、初任給を中心として部分的に縮まっていますが、貧富の差は縮小するどころか拡大しております。大企業と中小企業の生産性にしても、開きが大きくなって、中小企業は経営が苦しくなっております。総理並びに企画庁長官は、この事実の急速な進展に周章ろうばいして、特に中小企業に力点を置いて、池田内閣の退勢挽回にやっきとなっているのは間違いないと思いますが、総理及び宮澤長官の率直にしで謙虚な御答弁をいただきたいのであります。
 次にILO条約についてお尋ねいたします。
 結社の自由委員会で、いわゆる百七十九号に関する件として取り扱われて参りました。ことしの六月には、それこそ寛容と忍耐の権化のようなILO理事会も、さすがにかんにん袋の緒を切って、日本政府の怠慢に挑戦してまいりました。幾ら強い勧告を、日本の自主性を信頼するのあまり繰り返しても、全く馬の耳に念仏では、しびれを切らすのがあたりまえであります。具体的処置、行動として、理事会は調停委員会を設け、これに付託し、事実を調査するために、日本政府の同意を得て派遣することを決定いたしました。政府がILO当局と確約してからすでに五年たっています。しかもこの確約は、十二回も鉄面皮に成果なく行なわれてまいりました。条約批准の提案も、政府の責任において五回もされているのに、満足な結果が一つも得られていない事実を顧みると、日本政府のだらしなさ、無責任さに、心からの憤りを感じます。(拍手)まじめに批准する気でやっているのかどうか。演説はうまいことを言うが、全くやる気がないのではないか。国際信義にもとり、ILO理事会を悔辱し、それよりも、適用を受けるために鶴首して待っている日本の勤勉な労働者を、政府が公然とだまし続けている暴挙は、わが党だけでなく、何人といえども承服いたしかねるのであります。
 そこでお尋ねいたします。
 第一に、六月十四日の衆議院本会議において、すでに両党幹事長、書記長間で到達した了解事項、いわゆる倉石修正案に従って、特別委員会が持たれましたが、この内容は責任を持って必ず実行されるのかどうか、これ以上修正はしないと断言いたされますか。総理の明快な御答弁を承りたいのであります。
 第二に、調停委員会に付託してほしいという要請があったとき、政府はきん然と同意をされると思いますが、ノーとは言えないはずですが、間違いありませんか。総理のお答えをいただきたいのであります。
 第三に、ジュネーブに駐在している青木大使は、日本派遣前に実質的予備審査をしたい、提訴人と説明側も含めて実情を聞くことにしたいと、ILO当局のゼックス責任者と打ち合わせ済みでありますが、御存じでありますか。労働大臣からお答えを願います。
 第四に、国会開会の冒頭演説において、総理が何とかしますと答えると、国際慣例として、総理大臣が言明すれば間違いないと思って勧告追及を手控えるのであります。今度こそは、うそを申しませんか。お答えを願います。
 第五に、自民党の中には、うわさによれば、池田いじめの武器になるから残しておけという師団長もおられるそうですが、事実かどうか、総裁である総理からお答えを願います。
 第六に、ILOのヨーロッパ地域組織委員会のスケベーネル書記長は、OECDアダイ事務局長にいわく、「われわれの理解では、OECDの評議会か事務総長から強く勧告してほしい。八十七号条約を批准していないのは一人前ではないと思う。加入すれば、労使が諮問機関になり得るし、労働組合も参加して発言することができるから、資格要件に欠くるという疑義がある。日本政府に、すみやかに批准するよう勧告せよ」との声明が出されているが、その事実を知っておられるか。また、内容についてどう考えるか。労働大臣から詳細にお答えを願います。
 第七に、来年の二月十二日から十九日まで、ジュネーブでILO理事会が開かれて、違約追及のための調査委員会の設置と派遣が決定されますが、それまでにはどんなことがあっても必ず批准すると言明してくださいますか。総理の明快な御答弁をいただきたいのであります。
 これを要するに、結社の自由の保障がない、最低賃金制の確立していない労働力は、国際貿易の水準ではないのであります。そこに、低賃金、長時間労働の温床があり一先進諸国からソシアル・ダンピングをやるのではないかと常に疑われ、指摘されて、貿易伸張の激流にさおさすの愚かさをいたしておるのであります。「世にもふしぎな物語」ではありませんが、この条約の批准は、だれ一人として反対をいたしてはいないのであります。なぜ促進されないか。自民党と財界の一部に根強くかたまっている一団、「労働組合はないほうがよい。あっても弱いほうがよい。抵抗運動をできるだけさせないほうがよい」という力があるのであります。それがもし誤解だというなら、政府、自民党は、正々堂々と――憲法第二十八条に明記してある団結権、団体交渉権、団体行動権は、労働基本権として、イギリスにおけるごとく、公務員を含めてその国の全労働者が公正均等に持たさるべきものであって、憲法完全実施こそ、政府、自民党のなさねばならぬ責任であり義務であると思うのであります。八十七号条約批准がすべてではありません。まだこれは序の口です。しからば反問いたしますが、百五号条約D項によるストライキ権完全獲得のための批准は、いつ提案されるのか、具体的日程を総理から御答弁いただきたいのであります。
 次に、池田総理の人づくり政策についてお尋ねいたします。
 人づくりは、総理の得意な数字では解決できません。また、経済が成長して所得が倍増しても、自然に解消する問題でもありません。総理の今までの御意見を承っておりますと、衣食足って礼節を知るはずだと申しますが、何でもかんでも、まず、おなかをいっぱいにしてやれば、国民は政府に感謝し、政府の言う道徳は高揚し、よいことずくめになるに違いないという印象を受けるのであります。ところが、冷静にして賢明であり、愚かならざる国民大衆の目は、らんらんと輝いて、総理の身辺にも、光の届かぬ谷間の一軒家にも、透徹した批判力を持っているのであります。総理が福島県の郡山市で暴漢に襲われました。翌朝の新聞は、一斉に、「もし、やつが来たら、け飛ばしてやろうと思っていた」との総理談話が出ました。一国の総理大臣ともあろう人が、言うにこと欠いて、子供みたいに、何をおっしゃるのかと、国民はがっかりいたしたのであります。故ケネディ大統領事故死のときには、決断が鈍くて、外相だけをやろうとしたり、ワシントンからの官房長官への第一声では、兜町はどうだと聞いたり、満面笑みをたたえた電送写真に、国民は、怒ったり戸惑ったりいたしたのであります。東南アジア、ヨーロッパを回られて、欧米に加えて、アジアの柱は日本の私だと自負しておられるのですが、どうも先方には通じておらぬようであります。たとえば、口の悪いフランスのドゴール大統領は、日本がEECにおせっかいをしないようにという意味を含めての発言だとしても、一国の宰相と相語るつもりでいたが、会ってみたら、聞くと見るとは大違い、トランジスター・マーチャントであったと、失礼千万な放言をしておるのであります。人づくりのためにこそ、荒木前文部大臣を最重要視されて、再三閣僚のいすを与えたのでありましたが、当の荒木君は、労使中立三者構成のILOの組織も知らずに、ILOは赤の手先だと軽率にやらかして、世界有識者の嘲笑とひんしゅくを買ったのであります。国内では、善良な国民である教育労働者に対して、非人間的なばり雑言を大衆の前で惜しげもなく発言をいたしておったのであって、総理の言う寛容と忍耐の精神は、つめのあかほどもなかったのであります。人づくり本山にその人を得なかった、魂はなかったのでありますから、国民から見ると、ろくな教育や人づくり政策があろうはずはないのであります。民主主義に立つ日本のあり方の中で一番大切なのは、主権在民による人間平等の社会通念であります。
 そこで、お尋ねしますが、青少年の問題ですが、人づくりに欠くことのできない、未来を背負う青少年の指導対策はいかがでありますか。わが国の二十歳から二十四歳までの青少年男女の死因のうち、自殺がずば抜けて第一の地位を占め、結核で死ぬ四倍の人間が自殺をいたしているのであります。さらに、青少年の犯罪が非常に多くなっております。窃盗犯の年齢別、性別検挙人員数は、警察庁の調査によりますと、十四歳以上二十歳未満の者は、昭和三十五年六万八千七百七十九名で、全体の三八%であり、三十七年には八万三千百五人で、全体の四五・二%であります。最近「天国と地獄」という映画が上映されましたが、なぜ自分だけが苦しい生活をしなければならないのか、垣根越しに隣人の家を見、一家団らんのむつまじさが、むしょうにねたましくなり、誘拐を考えたり、人の物がほしくなったり、動機はきわめて単刀直入、単純直情であります。総理は、口を開けば、青少年に対し祖国愛を説かれますが、具体的に、どうすればよいとお考えになっていられるのか。施策を明示して御答弁をいただきたいのであります。
 さらに、最近の事故死の驚異的増加であります。本人の不注意もありますが、根本的には、政治の貧困に帰すべきものと思います。他人の死んだことまで責任が負えるかと、おっしゃりたいのでしょうが、政府の最高責任者である総理は、逃げることはできません。十二月六日の朝日新聞によりますと、第二次大戦中、原子爆弾や空襲で死亡したのは、一般国民の中では六十七万人でした。それが、戦後十八年間の平和時代に入って、これを上回って、七十万人が事故で死亡しているのであります。東京工大の崎川教授によりますと、日本の技術進歩の特色は、ブレーキを確かめずにスピードを上げてきたためだと申しております。世界爆発史ベストテンの過半数を占める日本の爆発事故、化学工場事故も、これまた世界一であります。安全対策、技能者養成、技術の基礎的知識をおいてけぼりにして、かけ足で追いついた世界水準は、また大事故の世界的水準にもなったのであります。お粗末と言わなければなりません。日本の社会構造全体が、あらゆる面での過密ダイヤにささえられている状態であります。生産、流通、消費、都市集中などが、合理的、科学的、系統的、組織的にあんばいされていないのであります。その上に、政治は貧困であり、施策は火事どろ式であり、官僚のなわ張り争いに終始するならば、国民の要求の内容実現の日は、まさに百年河清を待つにひとしいのであります。当面焦眉の急としての打開策は、所得倍増政策と実情に合わない急激なる合理化政策の欠陥がおくめんもなく暴露されてきたのであります。この際、適切な総理の御答弁をいただきたいのであります。
 日本の社会状態を示す指標は、経済成長率、国民総生産がすべてではありません。犯罪、事故、自殺などの数字も、また重要な指標であります。わが国の人口当たりの殺人件数は、世界第二であり、イギリスの十三倍に当たるので、所得倍増が犯罪倍増と並行しているのであります。拝金思想による金銭万能の所得倍増政策は、人づくりどころか、人こわしになっているのであります。それでありますから、第三次池田内閣が国民から課せられた任務は、わが党の河上委員長が今回の総選挙でいみじくも指摘したごとく、三悪、すなわち、物価値上がり、格差の広がり、犯罪の激増を追放することであると思うのであります。
 以上をもって私の質問を終わるわけでありますが、最後に、禅宗の言葉に、「勢いは使い尽くすべからず、使い尽くせば禍必ず至る」という言葉がありますが、あまり万事調子に乗らないで、謙虚に国民の声を聞いてください。総理の不退転の決意を御答弁にいただくこととして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 御質問の第一点は、ケネディ故大統領の逝去によりまして、今後の日米外交に変化があるか。これは、本会議で申し上げましたごとく、何ら変更はございません。われわれは、ますます緊密の度を加え、世界の平和と繁栄に貢献することをジョンソン新大統領と話し合っているのであります。
 第二の、家計の問題でございますが、内閣で発表しておりまする家計調査の数字は、一番下のほうほど、その生活水準あるいは実収入が上がっていることを示しております。ごらんいただいたらわかります。また、家計の問題につきまして、物価は上がりましたけれども、いわゆるエンゲル係数は、昭和三十四年の四二・四に対しまして三九となっておりまして、世界一流の国のエンゲル係数にだんだん近づきつつあることは、全体的に家計がよくなってきていることを示しております。
 なお、公共料金につきましては、物価懇談会の答申を受け取っております。原則としては、あの物価懇談会の答申に沿っていきたいと思います。ただ、公共料金につきましても、全般的には、もちろん私は、上げないということは、はっきり申し上げますが、特殊な例といたしまして、全国的にすでに相当上がっているのが、東京都だけ認めていない、いままで延ばしておった分につきましては、これはいま上げないと約束はできません。考慮いたしているのであります。その他の公共料金につきましては、これは答申どおりやっていきたいと思います。
 また、卸売り物価の上昇につきましてのお話でございましたが、昭和三十七年から八年にかけまして、財政金融政策上、卸売り物価は相当下がっておったのであります。それが世界的の影響をもちまして、特に砂糖あるいは鉄の材料等が上がってきているので、全体として上がってきておりますが、大勢としては横ばいの傾向をたどってきております。ただ卸売り物価は世界の経済情勢の影響を受けることが多いのでございまして、世界の経済の動きを見、そして措置をとらなければなりません。なお、卸売り物価の消費者物価へのはね返りの問題は、今のところはございません。今のところはございませんが、将来の経済の状況によっては、あるいは賃金その他によりまして、はね返りが小売りに影響することも、これは経済上あり得ることでございます。われわれは、こういう点につきまして十分注意をいたしておるのであります。
 なお、減税の問題につきまして、所得中心か事業中心か、いろいろ議論がございますが、私は、これは経済あるいは国民生活の実態に沿って考えるべきものである。そして、どこに原則があるべきだというふうな筋合いのものではないと思います。
 次に、コスト・インフレを私が言っていると言っておられますが、これは誤解でございます。私はコスト・インフレであるとは言っておりません。二年ぐらい前から、もし賃金が生産性の上昇よりも上回ることがあるならば、これはコスト・インフレの危険があるということは申しております。だが、今コスト・インフレであるということは決して言っていないのであります。誤解のないようにお願いいたします。
 なお、所得倍増計画のアフター・ケアとして、中小企業、農業、こういうふうにお考えになっておりますが、私は、所得倍増計画を立てるときに、中小企業、農業につきましては、格段の措置をしなければならないということを、はっきり言っておるのであります。したがって、農業基本法あるいは中小企業基本法を制定いたしまして、これが対策を講じていることは、これは過去の事実が示しているところであります。どうぞごらんいただきたいと思います。
 次に、ILOの問題でございますが、たびたび申し上げておりますが、この前の通常国会で通したかったのでございますが、なかなかそうはいきませんでした。しかし、次の通常国会にはぜひ提案いたしまして、御審議を願い、これが通過を極力はかるという考えでいるのでございます。また、倉石委員会等の問題につきましては、ただいま党として内容を十分検討中でございます。あれに沿っていくかいかないかは、まだ結論は出しておりません。また、ジュネーブのILO委員会が日本を調査するということにつきましての日本の返事はどうか、というお話でございますが、これはまだ、その返事をここで言う段階ではございません。十分検討していきたいと思います。また、ILO一〇五号条約についての問題でございますが、一〇五号条約の内容その他につきましてはいろいろの解釈がございますので、これまた検討中であるのであります。
 なお、青少年の非行問題につきましては、お話のとおり、これは私が非常に心配をしている問題であります。これは日本ばかりではございません。社会保障制度の非常に発達している、また国民所得の多いスウェーデン、ノルウェー等におきましても、自殺その他、非常な社会悪がびまんしていることは、各国の憂いでございます。私は、今後、いわゆる人つくりを中心とし、家庭教育、学校教育、社会教育等を十分発達させまして、そうして、そういう非行少年が少なくなるような環境をつくっていきたいと思っております。
 なお、私は、ここで誤解があってはいけませんので、釈明的に申し上げておきますが、昨日も衆議院の本会議でドゴール大統領が云々と言われましたが、これはよくないことで、ドゴール大統領はそういうことは言っておりませんし、フランスの外務省がはっきりこれを取り消しているのでございますから、単にゴシップがある新聞に載ったからというので、それをつかまえて国交上とかあるいは内閣を非難してかかることは、少し軽率ではないかと私は考えます。十分御研究を願いたい。フランス政府が、そういうことは絶対ないからと言っているのでございますから。ここで、あえて申しておきます。
 なお、私がケネディ大統領の葬式の時に血迷ったというお話でございますが、誤解があってはいけませんので、はっきり申しておきます。私はまずケネディ大統領がなくなられたときに、驚いて、外務大臣はもちろん、高貴の方においでを願いたいというので、努力をしておりましたところ、アメリカ政府より、今回の葬儀については非常に手狭にやる、だから、そういうことはできるだけやめていただきたいという内意が日本に伝えられて参りました。そこで、私は各国の様子を見てきめようとしたのであります。これは外交政策ではございません。儀礼の問題でございますから、日本だけ非常にたくさんの人が行くということになると、またアメリカ一辺倒とかいろいろな非難が起こりますので、私は世界の情勢を見ながら、そうして、アメリカの意向を参酌しながら考えておったのでございます。したがいまして、私は箱根におりましたところが、どうも様子が変だと思いまして、夜おそく帰ってきて、世界の情勢を見て自分が決意したのでございます。決して迷っておりません。できるだけのことをしたいと考えておったのが、向こうの考えでやめてもらいたいということであったので、これを中止したので、決して迷っておりません。
 なお、私がワシントンから株のことを聞いたといって、いかにもこれはお笑いになるかもわかりませんが、そこにも大蔵大臣、また当時の総理大臣代理がおられますが、私が立つときに、アメリカは、ケネディ大統領の死によってウォール街を閉鎖しているのでございます。日本でどうしようかというので、大蔵大臣あるいは総理大臣代理の河野君も心配されて、そこで、できるだけストップしないようにしてくれ、ストップしないようにしてくれ、情勢によっては電話をかけると、こういう約束で行きましたので、日本の経済動向を心配している私が、ワシントンから、ストップしたか、ずっとそれ以後の立ち会いはどうかということを聞くことは、総理大臣の責任として当然のことだと考えているのでございまして、何も誤解があってはいけませんので、ここで国民にはっきり私の考え方を申し上げておきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(宮澤喜一君) ここ数年、毎年一〇%程度の名目賃金の上がりがあるわけでございます。そこで、経済活動の活発なる年、たとえば昭和三十六年などには、大体同じくらいの生産性の向上が見られております。その後、三十七年及び今年はそれほどの生産性の向上はなかろうと考えているわけであります。ただ、事実の問題といたしまして、労務需給関係から、中小企業などで、相当苦しい思いをしながら、高い賃金を払わなければならないということになってきておりますし、また、大企業においても、利子負担をして設備の更新をいたしましても、その結果、労務をすぐに解雇するというようなことは、事実上できないことになっているわけでありますから、そういう問題はございますけれども、それからすぐにコスト・インフレがあるというふうには考えておりません。そういう見解をとったことはございません。
 それから、中小企業の設備の近代化をなぜ言うかというお尋ねにつきましては、そのような状況でありますから、設備の近代化をいたすことが、格差是正のためにも、物価問題の解決のためにも、きわめて緊要である、こういう意味で申しているわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(大橋武夫君) ILO条約の実情調査調停委員会付託に関しまして、青木大使から予備調査について提案したというような御趣旨の御質問でございましたが、同大使からの報告によりますと、そのような提案を行なった事実はございません。実情調査調停委員会に関する詳細かつ具体的な提案は、あげて明年二、三月の理事会において明らかにされる予定だと承知をいたしております。
 次に、OECD加盟に関連いたしまして、ILO条約を日本が批准するということを希望する旨の発言が国際労働界の代表者からなされていることは事実でございます。しかし、その趣旨といたしましては、今年の九月、国際自由労連のヨーロッパ地域組織の書記長からOECDの事務局長に対しまして、OECD加盟に際して、日本が八十七号条約を批准するように希望するという趣旨の書簡を提出いたしておるのが、私の承知しておる一つでございます。もう一つは、本年の十月十八日に、国際自由労連のイエイヤー会長及びベク書記長が日本に来られました当時、私は会見をいたしたのでございますが、その当時のお話は、OECDのメンバーでもない自由労連として八十七号条約の批准を日本のOECD加盟の条件とするというようなことを言えるわけはないけれども、OECDに加盟するくらいの工業先進国である日本としては、当然八十七号条約の批准を急いでもらいたい、こういう趣旨を発言されておるわけでございます。政府といたしましては、元来、八十七号条約はOECDの加盟の条件ではないのでありますが、政府としての既定方針どおり八十七号条約は一日もすみやかに批准をいたしたい、かような考えで進んでおる次第でございます。(拍手)
  ―――――――――――――
#8
○副議長(重政庸徳君) 牛田寛君。
  〔牛田寛君登壇・拍手〕
#9
○牛田寛君 私は公明会を代表して、総理大臣の所信表明に対し若干の質問を行なうものであります。
 昭和三十五年第一次池田内閣成立より今次の第三次池田内閣成立までの三年間に、総理が国民に約束された数々の施策がどのように実行され、どのようにその実を結んだか、これをこの際、国民の前に明らかにしておきたいと思うのでございます。
 三十五年十月、所得倍増計画の初年度において、総理は、「経済成長の過程において、物価の騰貴、インフレ等の懸念や国際収支の悪化の心配はない」、また、「地域間あるいは産業間の所得格差は、経済成長の過程で縮小することができる、」また、「農業、中小企業の近代化をはかり、他産業とつり合いがとれるよう成長発展をはかる」、「道路港湾等の画期的な整備をはかる」、「輸送力を増強する」等々の言明をされました。三年後の今日の現状から、これらの言明を見直すならば、総理が国民に約束し、しかも三年間言い続けてこられた事柄が、ほとんど実現されていないことが明らかになるのであります。物価の上昇と国際収支悪化の事実は、所得倍増計画を根本的に手直しをしなければならない結果になっております。このため、迷惑をこうむっているのはだれか、言うまでもなく国民大衆であります。物価の上昇と投資過剰、金融引き締めのため、国民大衆の生活も、中小企業者の経営も、ともに苦しくなっていることを見のがすわけにはいかないのであります。国民大衆は、今や政府の施策と約束に対して疑惑を抱かざるを得ないまでに追い込まれているのであります。池田総理が、国民に対する約束を確実に果たすことのできる最後の機会ともいうべき第三次内閣の出発にあたって、総理の責任ある明確なお答をお願いしたいのであります。
 昭和三十五年池田内閣発足以来、国際収支は、三十六年を除いては、すべて赤字基調を続けております。今年、三十八年度においても、経常収支は六億ドルの赤字、総合収支で二億ドルの赤字となることが予想されております。現在、わが国の景気が不安定であるのは、国際収支に対する不安がその原因となっております。国際収支が悪化すれば、政府は景気調整を行なって、行き過ぎを是正すればいいでありましょうが、その被害をまっ先に受けるのが中小企業であり、また、これに従事する国民大衆であります。現在の国際収支への不安は、経常収支の赤字を資本収支でようやくカバーし、収支じりのつじつまを合わせているというところにあります。総理は、国際収支の維持に最善の努力をすると言われているわけでありますが、貿易収支、貿易外収支の黒字を実現するために、どのような具体策をとられるのか、どのような見通しをもって対処されるのか、承りたい。また、大蔵、通産大臣のお考えも同時に伺いたいのであります。
 次に、輸出の拡大についてでありますが、輸出を積極的に推し進めていく上に大きな障壁となっているのが、わが国に対する差別待遇の問題でございます。特に米国において対日差別待遇がはなはだしいのであります。綿製品の対日輸入制限、洋食器等に対する関税割り当て制、セメントに対するダンピング法の適用などが行なわれているのであります。さらにEECの鉄鋼に関する関税引き上げ引措置など、米国をはじめとする保護貿易主義の傾向が強くあらわれていることは、わが国が自由化をほとんど完了し、完全な自由貿易体制に移りつつある現在、まことにおかしな話と言わなければなりません。総理は、このような事態を一体とう考えておられるのか。特に米国に対して、米国のよき得意先である日本に対する差別待遇の撤回について反省を求めるべきであると思いますが、総理並びに外務大臣の所信を伺いたいのであります。相手国の出方をうかがってからこちらの態度をきめるという、これまでの自主性を欠いた外交のやり方を捨てて、自主的な態度をもって強力な経済外交を推進すべきであると考えるのであります。このような見地から、当然、利子平衡税の問題についても、カナダと同様の立場で、対日適用除外の特例を米国に対して強く要求すべきであると思うが、日ごろわが国は大国であると主張されている総理のお考えを承りたいのであります。また、外務大臣の所信はいかがでありますか。
 さらに対共産圏の貿易についても、このような自主的立場から強力に推進すべきであると思いますが、いかがお考えでありましょうか。
 次に、日韓会談についてであります。総理は、韓国新政権の成立によって、新たに交渉促進の決意を述べておられますが、早期妥結に対してどのような決意と見通しを立てているか。現在、多くの漁業者が、身の危険をおかして、日夜生活と戦いながら、早期妥結を待ち望んでいるのであります。総理の所信を伺いたいのであります。
 次に、農業と中小企業の振興についてであります。すでに三年前に、ただいま総理が答弁でお述べになりましたように、所得倍増計画の初年度において、総理がその近代化と所得格差の解消を言明されたにもかかわらず、農業、中小企業は、経済成長の中で、他産業から置き去りを食った結果になっております。このため、大多数の農民と中小企業に従事する国民大衆は、はなやかな高度成長の陰に取り残されて苦しんでいるのであります。しかも、現在に至るまで何ら根本的な解決策が実施されていないのであります。
 農業について申しますならば、確かに農業基本法ができました。農業構造改善事業等が実施されておりますが、その効果はあらわれていないと言って過言ではありません。全国農業会議所が最近調査いたしました結果によりますと、農業近代化のために農家が望んでいる資金需要のうちで、借り入れ資金需要が二兆円と推算されております。それにもかかわらず、現実に農家への資金供給の総額はどうか。その一割にも満たない千七百億程度と推定されているのであります。このような資金需給の極端な不均衡のもとで、はたして資金貸付の効果があらわれているだろうか。はなはだ薄いと言わなければなりません。
 中小企業についても全く同様であります。大企業への投資が一通り終わったから、これからは市銀等、金融機関が中小向け金融に力を入れるようになり、融資構造が変化してくる、これが所得倍増計画の第二ラウンドであるというような、無責任な説が流れておりますが、事実は全く反対であります。国民の福祉を実現するのが所得倍増計画の目的であるならば、総理はこのような公約違反の責任をどうされるのか伺いたいのであります。近代化について「革新的な方策を講ずるため財政金融の総力をあげて」と総理は述べておられるが、一体どれだけの資金量を農業、中小企業のために投入されるおつもりか、資金供給の総額を数字の上ではっきり示していただきたいのであります。このような具体的な計画がもし示されないならば、総理の言明は再び三年前と同じから手形であると断定せざるを得ないのであります。総理及び蔵相の責任ある答弁を期待するものであります。
 次に、明年度に予定されている減税の方針について、総理並びに大蔵大臣にお伺いいたします。
 減税は選挙公約であるから、当然実現されることと考えられますが、税制調査会の答申原案にあるとおり、中小所得者、給与所得者及び中小企業の減税を一切に優先させるべきであると考える。特に明年度予算が窮屈になるところから、減税額の削減が行なわれるおそれがあるといわれておりますが、このようなことが絶対あってはならないと考えるのでありますが、この点についてのお考えをお伺いしたいのであります。また今回の減税によっても、なおかつ給与所得者層の税負担は軽くありません。さらに今後、給与所得者層の減税を行なうべきであると考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。
 次に、三池の炭鉱災害と鶴見における国鉄事故について、総理、通産、運輸の各大臣にお伺いいたします。
 総理は、「この原因を徹底的に探求して」と、こう言われておりますが、すでにこの二つの災害は政治の怠慢から起こった人災であることは明らかであります。すなわち、三池の災害においては、生産高の向上に力を入れてはいるが、保安についてはかなり手が抜かれていた事実がすでに指摘されております。また国鉄事故は、もしいまほど余裕のないダイヤが組まれていなかったならば、単なる貨車の脱線事故で終わったとさえ考えられる性質のものであります。政府は炭鉱の保安に完全を期すべきであり、また輸送力の増強についても、線路の増設によって過密ダイヤを防止すべきであります。人命を度外視して生産高の向上をはかったり、あるいは輸送力の増強をはかることのないよう、法制上の整備と社会資本の充実に完ぺきを期すべきである、これによって再びこのような惨事を起こさぬように努力すべきであると思いますが、確信のある御答弁をお願いしたいのであります。
 最後に、総理は、国会内における憎悪確執や分裂闘争を排除するという意味のことを述べられておりますが、当然かくあるべきものとは考えますが、政治家が派閥と金力と権力の世界から解放されず、政治の浄化が実現されなければ、これは単なることばの遊戯に終わると私は考えますが、いかがでございましょうか、総理の所信を重ねてお伺いいたしまして、私の質疑を終わるものであります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 所得倍増計画を根本的に手直しするというお話のようでございますが、私はそう考えておりません。所得倍増計画は、私の予定以上に進んでおります。ただ、計画より違うことは、あまり大企業のほうが早過ぎた。それで農業自体もよくなっておるんです。おるんですが、ほかがあまり早過ぎたので、農業の進み方との差ができた。農業自体も非常によくなっておるのであります。その点は誤解のないようにお願いいたします。
 なお、国際収支の問題でございます。大体国際収支はいまのところ私の考えておるとおりに進んでおります。決して、一億、一億の赤字だから日本がどうこういうことはございません。それは外国の日本に対する信用でもおわかりいただけるでしょう。もし日本の国際収支が赤字で日本がだめなら、外国から金を貸さないわけです。どんどん貸しておることを見れば、日本の経済は安泰だという証拠じゃございませんか。来年、一億、二億の赤字が出るというので非常に心配しておられるようでございますが、私はいまの日本の経済の伸展から申しまして、ときに一億、二億、あるいは三億程度の赤字が出ましても、非常に悲観する必要はない。やはり商売がどんどんふえていくときには銀行の借り入れ金もふえるということは経済の当然のこと。ただ、むちゃにふえて、あと立っていかないようなことになってはいかぬ。したがって、われわれといたしましては、輸出の振興に極力財政金融の措置を講じてやっていく。また、長い目で貿易外の赤字をできるだけ早く解消するようにやっていこう、こういうことでいっておるのであります。
 なお、対米貿易について不平等だとおっしゃいましたが、向こうから言わせてみれば、アメリカが完全自由化しているのに日本はまだ九二%じゃないか、アメリカの自動車は買わぬじゃないか、アメリカの重機械も買わぬじゃないか、全面的に拒否しているじゃないか、こういうことをお考えになると、やはりお互いの立場を理解しながら、そうして話をして、合理的な結着をつけることが必要でございます。したがいまして、私は、来年一月二十七日、八日に開かれる日米閣僚経済会議におきましていろいろな問題を出して、そうしてお互いの立場をはっきり申し出て、お互いに検討して、妥結に入りたいと考えておるのであります。
 日韓会談は、ただいませっかく早く妥結しようと誠意を持って努力を続けておる次第でございます。
 なお、農業、中小企業にどれだけ金を出すかということにつきましては、三十九年度予算でいま検討中でございます。大蔵大臣ならお答えできるかもわかりませんが、いまの状況では、大蔵大臣でもまだちょっとむずかしいのじゃないかと思います。一月をお待ち下されば、できると思います。
 なお、次の減税額でございますが、これは、この前の国会におきまして、平年度二千億に近いと申しております。平年度二千億に近い減税。しかし、私は、その後の経済の状況を見まして、選挙中には平年度二千億と、こう言って、おります。しかし、最近では、大蔵大臣の報告では、それ以上にいけるようでございます。これは大蔵大臣からお答えになるでしょう。たぶん二千二、三百億円の平年度の減税、もし大蔵省の考えるがごとく住民税の減税が行なわれるならば、二千二、三百億いけるのではないかという方向で、大蔵大臣が努力しておられるようでございます。
 なお、三池あるいは東海道線の事故は、先ほど申し上げましたように、まことに遺憾なことでございます。私は、その原因を究明し、将来再びかかる事故の起こらないよう、極力あらゆる措置を講じたいと考えております。
 なお、政治の浄化につきましては、私は、まずわが自由民主党から近代化いたしまして、そうして国民の負託に沿うよう、努力を続けておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 第一点は、国際収支の問題でございますが、国際収支につきましては、いかなる国におきましても多少の波動のあることは、御承知のとおりでございます。現在までの例を御参考までに申し上げますと、三十五年は総合で六億三千六百万ドルの黒字でありましたが、三十六年になりますと、経常収支で十億ドルという赤字が出ましたので、総合で四億三千六百万ドルの赤字になったわけでありますが、三十七年度は、総合において三億ドルの黒字であり、今年の上期は、経常において二億八千百万ドルの赤字でありますが、総合においては千三百万ドルの赤字であります。こういう問題に対して政府はどのような基本的な考えを持っておるかと申しますと、御承知のとおり、来年の四月一日を目途にいたしまして、IMF八条国に移行を予定いたしておりますので、開放経済に対処いたしまして、国際収支の長期安定策に対しては格段の配意を常に行なうべきだという基本的な態度をとっておるわけであります。具体的な問題としましては、財政、金融政策に健全性を貫きながら、輸出振興、貿易外収支の改善等に対しては、長期的な見通しを立てながら、積極的な財政措置その他を行なってまいりたいと、このように考えるわけであります。まとめて申し上げますと、いままで戦後三回の国際収支の危機がございましたが、開放体制に移ってからの国際収支の危機というものを絶対に避けなければならないという基本的な考えで諸般の施策を行なっておるわけであります。
 第二点は、中小企業及び農業の問題でありますが、総理大臣がお答えになられましたとおり、税制、金融、財政の三点につきまして画期的な処置を行なうべく、いま鋭意作業を進めておるわけであります。この内容につきましては、予算編成の過程にありますので、数字を申し上げることはできませんが、最重点施策として処置いたしたいと、このように考えております。
 第三点は、二千億減税でございますが、総理大臣がお答えになられましたとおり、平年度二千億円以上という基本的な考え方に立って作業を進めております。また、先ほど大和さんの御質問にもありましたが、総理大臣、それから政府の税調、私の間に意見の相違があるというようなお話もございましたけれども、おおむね一致をいたしておるわけであります。最終的には税調の答申を待ちまして、また、議院内閣制でもありますので、党の税制調査会の意見も十分聞きながら、遺憾なき結論を出したいという段階でございます。基本的な方向といたしましては、所得税の負担の状況、また地域負担の状況等を十分考えまして、所得税、住民税の減税に主点を置いておることは、御承知のとおりであります。なお、開放体制に向かいますので、国際競争力をつけるためには企業減税もあわせて行なわなければならぬことは言うをまたないわけでありまして、これらの問題に対しても鋭意作業を進めておるわけであります。
 第三の問題といたしましては、資本構成の是正を当然考えなければなりませんので、資本市場の育成、それから資本蓄積、貯蓄増強というような面についても減税政策をあわせて行ないたいという考えであります。
 所得税及び企業減税につきましては、ある意味においてバランスをとりたいという考えを持っておりますけれども、結論的には税制調査会の答申を待って、これを尊重しながら大幅な減税を行なうというのが現在の大蔵省の考え方であります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 国際収支の問題につきましては、総理、大蔵大臣からもお答えがございました。私の所管からいたしますと、輸出に特に重点を置いてまいりたいと考えておるのでございまして、特にそういう点から見ますというと、いわゆる個々の産業が充実してくるといいますか、合理化、近代化によって、十分に海外のそういう同種のものに対抗できるような措置をしていかなければならない。そうなると、またそれに関連した中小企業の問題も考えていかなければなりません。また、お話のように、差別待遇問題については、経済外交の推進も必要でございますが、同時にまた、私たちとしては、輸出秩序をやはり確立してまいるということに重点を置いてまいる必要があろうかと存じておるところでございます。
 三池の問題でございますが、これは後刻報告をさしていただくところでございますが、人命を尊重して保安を強化していくということは、これはもう当然のことでございまして、私たちといたしましては、法案の整備をすると同時に、法自体の運用面においてもっと十分に考慮を払うと同時に、保安施設その他についていろいろの整備等をやっていかなければならないと考えておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(大平正芳君) 日米貿易に伴う差別待遇についての御指摘でございますが、日米貿易は、御承知のように、三十七年度十一億ドル、三十八年度十四億ドルと漸増いたしておりますことは、御承知のとおりでございます。たくさん貿易ができて参りますと、個々の品目にとりましては御指摘のような問題が生起して参ることも不可避のことであると思いまするが、私どもは業界の実情をよく聴取しながら善処をしてまいっておるわけでございまして、私どもは綿製品その他にとりました措置は必ずしも不満足なものであるとは思っておりません。ただ、貿易、為替の自由化、資本の自由化の段階におきまして、アメリカ政府がとられる措置につきまして、その公準に照らして問題がございますれば、それは鋭意その撤回に努力することは当然でございますが、先ほど総理も御指摘のとおり、日本側の姿勢もまた先方を攻撃する以上は正さなければならぬと考えております。
 それから利子平衡税の問題でございますが、これはまだ法案として国会にかかっておるわけでございまして、アメリカがドル防衛の見地からこういう施策を考えられたことに反対する趣旨ではございませんが、もしこの法案が国会を通過いたし成立いたしまして実行された段階におきまして、日本の国際収支上憂慮すべき事態が生ずるというような場合には、この法案の撤回をも含めて善処する、こういう約束に、日米両国の政府はかたく約束をいたしておるわけでございます。その事態の推移に応じまして善処いたしてまいりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(綾部健太郎君) 鶴見事故は、世界的水準をいくと自他ともに許しております国鉄といたしまして、それを監督する私といたしまして、非常に遺憾しごくでございます。いまその原因を、科学的に、あるいはその他徹底的に究明中でございますから、その結果の判明次第、財政の限度におきまして、再びかような事故の起こらないように鋭意努力いたす所存であります。(拍手)
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#15
○副議長(重政庸徳君) 山本伊三郎君。
  〔山本伊三郎君登壇、拍手〕
#16
○山本伊三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日提案されました三十八年度補正予算案に対しまして、池田総理並びに関係大臣に若干の質問をしたいと存じます。
 実は、先ほどの牛田君の質問に対しまして、国際収支につきましての問題で、池田総理並びに大蔵大臣の答弁は、私は、あれは、うそとは申しませんが、若干問題がございますので、順序を変えて、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
 本年春の三十八年度の予算審議に際しまして、私が予算委員会において、政府の国際収支に対する問題について質問をいたしました。これに対しまして、政府は、数字を示しまして具体的に答弁をされたのであります。それはすなわち、貿易収支では、輸出は五十二億ドル、輸入は五十億ドル、差し引き二億ドルの黒字である。しかし一方、貿易外収支では三億八千万ドルほどの赤字であるが、資本収支においては堅調である。したがって、総合収支においては一億ドル程度の黒字であるという答弁をされたのであります。なおかつ、また、本年度、三十八年度末における国際収支の帳じりは、二十億ドルの外貨保有が可能であるという主張をされたのであります。しかるに、最近のわが国の国際収支の状態を見ますと、必ずしもそうは、いっておられないのじゃないですか。先ほどの答弁では、若干これに対する対策を説明されましたけれども、輸出輸入とも若干伸びていることは事実であります。しかし、依然として輸入超過で、貿易収支の赤字は相当増加しているようであります。また、貿易外収支の赤字は、わが国の構造的な海運界の不況で、好転の見込みは私はないと思う。これがため、経常収支においては危険信号の限界まで来ていると思うのでありますが、この点はどうでございますか。ただ、資本収支においては、先ほど申されましたけれども、若干の好条件がありまして、ようやく経常収支の赤字を補う限界点に達している現状であると思うのであります。一体、総理は、本年度当初における政府の見通しは誤りでなかったのかどうかということを私はお聞きしたいのであります。そして、本年度末において外貨保有高の最低限度ともいわれる十八億ドルを確保できるのかどうか、この点をひとつお答えを願いたいのであります。
 なお、これは先ほど御答弁になりましたけれども、これに加えて、アメリカでは金利平衡税法がすでに下院を通っております。これを実施された場合に、わが資本収支におきましてどの程度の打撃があるのか、影響がないのか、この点をひとつ大蔵大臣にお尋ねしたいのであります。
 次に、経済企画庁長官に質問をしようと思っておったんですが、本日は……出席されておりますか。このような国際収支の悪化についてどこに原因があるかということについて、経済企画庁長官にひとつお聞きをしたいと思います。もちろん、経済現象でありますから、単一な原因とはいえないが、最も根本的な原因としては、われわれが常に主張しておりまするが、池田内閣のとりつつある跛行的な経済成長政策と貿易の自由化の強行であるとわれわれは断じているのであります。もちろん、われわれといたしましても、生産費の学説をかりるまでもなく、貿易の自由化については、理念としては必ずしも反対はしておりません。しかし、現在の日本の産業構造は、けだしこの貿易自由化についていけるかどうか、この実態の認識であります。御存じのように、わが国の産業の実態は、生産設備において、流動資本力において、労働条件において、また輸入の代替力においても、直ちに貿易の自由化によって開放経済体制に移行することはきわめて冒険であると考えているのであります。それがために輸入は超過いたしまして、今日のこの国際収支の現状を迎えたのではないかと思うのでございまするが、この点につきまして、池田総理はじめ関係閣僚から、具体的に次の四つについて御答弁を願いたいのであります。
 第一に、先ほどちょっと大蔵大臣が触れられたと思いますが、再び金融の引き締め政策をとるのかどうか、これが第一です。第二は、それに応じて公定歩合の引き上げをやるのかどうか、これが第二です。第三といたしまして、輸入抑制の技術的な手段としてでありますけれども、輸入担保率の引き上げをやるのかどうか。けさの新聞を見ますると、日銀の政策委員会では要求払いの預金の準備率を引き上げるということで、若干この輸入制限の方法をとりたいといっておりまするが、いま申しました三つのものをとらないとするなら、一体、どういう方法でこの国際収支の悪化を阻止する手段をとられるのか、この点をひとつ具体的にお答えを願いたいのであります。
 第二の問題は、本補正予算に盛っております問題の公務員の給与についてであります。一体、政府は、この公務員の生活をどう把握しているかということであります。去る八月十日の人事院勧告による資料によりますると、公務員の給与の立て方の基礎になっております食料費の境目を検討いたしますと、その食料費は、一食分、独身者の場合はわずか六十一円三十銭であります。これは四人世帯になりますると、はるかに下って、一食四十六円五十六銭で生活をせよという資料になっているのであります。これで一体公務員といえどもどうして生活ができるか。政府はこの人事院の勧告の資料を見られたと思うのでありますが、担当大臣である大橋労働大臣から、これについてどう反駁されるか、それをお聞きしたいのであります。
 また、今度の人事院勧告によりますると、六・七%のベースアップであります。政府はこれで給与を引き上げたとおっしゃるかもしれませんが、それは名目だけであって、物価はすでに本年七%から八%に上昇せんとする傾向であります。しかも、その消費者物価の種類別上昇率を見ますると、生鮮食料品または加工食料品が六〇%、六割のウエートを占めているということであります。私は、簡単に、給与の引き上げは六・七%である、物価が七%上がったから、それを算術計算して言うのではありません。今申しましたように、物価圧力の指数から考えますると、生鮮食料品または加工食料品のような必需品にウエートがかかっておりますので、これを計算いたしますると、公務員の実質賃金は下がったということになるのであります。この点につきまして労働大臣の御所見を承りたいのであります。
 この問題につきまして、次の二点を具体的に質問いたします。その第一点、労働者の基本的権利すら剥奪されている公務員の給与を、特に低給与の階層に思い切った初任給引き上げの措置をとるかどうか。
 第二は、人事院の勧告を尊重すると言っているが、実施時期を十月というのを五月から実施する考えはないか。この点をひとつ具体的にお伺いしたいのであります。これは総理からお伺いできればけっこうだと思います。
 次に、自治大臣にお伺いいたします。このような公務員の給与の一応の引き上げ措置がとられた場合に、地方公務員について、その財政的の措置をどういうぐあいにやられますか。また、もう一つ、地方公務員の中には、国家公務員と比較いたしましてきわめて低い地方自治体の職員がおりますが、しかも、その平均は二万円を割っているというような市町村の職員がおりまするが、これに対する自治省の指導の考え方を、ひとつ具体的に御答弁を願いたいのであります。
 最後に、減税の問題について、大蔵大臣並びに自治大臣にお伺いしたいのでありますが、国税について、所得税その他については先ほどすでに質問がありましたので、特に地方税に関して両大臣にお伺いしたいと存ずるのであります。
 政府は、特にこれは自治省でございますが、住民税については本文方式に統一するということが言明されているのであります。次の予算にそれが出てくると思いますが、本文方式に移行した市町村のかわり財源をどうするかということ、これをひとつ具体的に御答弁を願いたいのであります。さなきだに、ただし書き方式をとっている市町村は、きわめて財政的にその状態が悪いのであります。そのかわり財源を十分見ないとするならば、その市町村の住民にとっては、住民税という税金は若干軽くなりましたけれども、今度は税外負担ということで、結局は見せかけの減税になり、かえって個人の負担が重くなるのではないかと思うのでございまするが、この点についてお答えを願いたいのであります。
 次に、固定資産の評価がえについてであります。政府は、すでに固定資産の評価がえの作業を始めております。おそらくできたかもしれません。政府は、この固定資産の評価がえについては、固定資産税の総額においては決して増額をいたしませんということを、たびたび前の篠田自治大臣も言明されたと思うのでありまするが、このことについてはいまなお変わりはないかということを、ひとつここではっきりと御答弁を願いたいのであります。
 それを前提といたしまして、次の四点についてお伺いしたいと存じます。その第一点は、農地については、なぜ収益還元方式から売買実例の方式に変えられたか、その理由。第二に、宅地については、地区別に相当アンバランスがありますが、その地価の上昇格差をとう調整するかという問題であります。第三に、家屋については、現在より平均して減税になると思うが、それはどうか。第四は、償却資産については減税の意図を持っておるのかどうか。この四点についてお伺いしたいと存じます。
 時間が参りましたので、以上私の質問をいたしまして、政府の誠意ある御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(池田勇人君) 私に対する御質問は、国際収支と公務員給与引き上げの実施時期でございます。企画庁長官の分も、かわって答えることになっておりますから、わかって答えます。
 国際収支は、お話のとおり、当初輸出は五十二億、輸入は五十億、また貿易外収支は三億八千万の赤字、資本収支がこれを補って一億の黒字という見通しでございましたが、これは誤りであったかと申しますと、これは答えようがない。これは一応の見通しでございますから、そのとおりいかなかったから、誤りであるというなら誤りでございます。しかし、この点は、誤りとかなんとかという問題じゃなしに、私は実態を申し上げたいと思います。
 五十二億の輸出は、相当ふえて参りました。しかもまた、五十億の輸入が、非常にふえてきた。なぜふえたかと申しますと、御承知のとおり、昭和三十八年度の経済の成長率は名目で大体一〇%程度じゃなかったかと思います。しかるところ、いまその成長率は鉱工業では相当伸びまして、この分で参ります&、三十八年度は大体一六、七%の成長率になるのじゃないかということでございます。これは自由経済でございますから、GNPが一〇%程度というときに、一六、七%にいったときにどうするかという問題がございます。そこで、昨日もいわゆる預金準備率を引き上げて、あまりに成長を伸ばすな、あるいは輸入をどんどんやってはいかぬという措置を日銀と大蔵省は講じたようであります。しかし、それがそうなっていったのは誤りかと申しますと、経済成長が予定よりも五、六割ふえたということが誤りであるかどうかということは、誤りとしてやめるということよりも、善後措置を講ずるというのが政治として必要なのであります。したがいまして、私は、誤りであったかどうか、予定以上に生産が伸びてきておる、この事実は事実として申し上げます。これをある程度押えるかどうかという問題は、今後の推移の問題でございます。また、十八億ドルの外貨準備はぜひ確保しなきゃならぬか、こういうお話でございますが、私は必ずしも、いまのいわゆるIMF、世界銀行等々、世界の金融状況から申しますと、十八億ドルを固執する必要はないと考えております。やはり、国際的に協調のときでございますので、経済の実態に沿うことを考えるのであって、何も十八億ドルにくぎづけというような考え方は、私は持っておりません。
 なお、公務員給与の引き上げを五月からというお話でございますが、財政、金融その他全般の事情を考えまして、昨年どおり十月からの実施にいたした次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(田中角榮君) 国際収支の見通しにつきましては、いま総理大臣から申し上げましたとおりでありますが、現在まだ改訂を決定をいたしておりませんので、昭和三十八年度の下期の見通しにつきましては、慎重に配慮をいたしておるわけであります。いま山本さんが申されたとおり、少し国際収支が悪くなるというようなお話でございまするので、このような問題に対処しましては、現在から下期全般にわたっての適切な施策を行なうということによって、できるだけ安定的な状態を続けたいというふうに考えておるわけであります。
 それから、利子平衡税の行くえによって、日本の資本収支に対して、どのぐらいの影響があるかという問題でありますが、この問題につきましては、外務大臣がお答えのとおり、外務大臣とラスク長官との共同声明もありますとおり、友好関係にある日本の国際収支に重大な影響のある場合には、との利子平衡税に対しては、十分の配慮を行なうという前提でありますので、現在、利子平衡税がいまだ下院を通過をしておらない現段階において、利子平衡税によってどの程度の資本収支上の影響があるかということは、お答えできないと思います。しかし、利子平衡税の問題については、日米間で十分な話し合いができるという考えを持っております。
 第三点は、預金準備率の引き上げに伴いまして、金利の引き上げ、公定歩合の引き上げとか、輸入抑制のための担保率の引き上げ等をやるかという具体的なお話でございますが、御承知のとおり、これらの問題は、日銀その他の金融機関がやっておる問題でありますし、いまの段階において、公定歩合を引き上げるとか、金利を引き上げるとかというような問題を申し上げられるような問題、事態ではないのであります。これらの問題は、そのときの状況に対処して弾力的に運用せらるべきでありまして、現段階においてこれを引き上げるというようなことは考えておりません。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(大橋武夫君) 人事院勧告の基礎となっておる生計費調査の中で、食料費の調査結果は低過ぎるのではないかという御質問でございまするが、この調査は、毎年一定の基準、一定の方式によって行なわれているものでございまして、見方はいろいろございましょうが、調査としては、一つの事実を示していると考えておるのでございます。
 それから、今回の人事院勧告を実施いたしましても、公務員の実質賃金はかえって下がってくるのではないかという御趣旨の御質問でございましたが、公務員の給与につきましては、人事院が専門的に調査研究し、公正かつ妥当な給与の勧告を行ない、国会及び政府は、その勧告を尊重して公務員の給与の改定を行なうというのが、現在のたてまえとなっているのでありまして、かような手続に従います限り、やはり時期的のズレがあるということは、どうもやむを得ないのではなかろうか。民間の賃金や物価の変動等の関係におきまして、ある程度時期的ズレが生ずるのは、これは給与を上げる場合におきましても、また下げる場合におきましても、手続上やむを得ないものではないか、かように存ずる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣早川崇君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(早川崇君) お答え申し上げます。
 地方公務員の給与改定につきましては、その財源として四百七十億円が一応でございまするが、義務教育費の国庫負担金を除けば、三百八十八億円でございます。このうち、今次の補正予算による地方交付税の増加額が三百九億円でございます。これによりまして、十分財源措置ができると考えております。また、国家公務員より低い地方公務員がございます。また、国家公務員より高い地方公務員の給与もあるわけでございます。いろいろ自治体により違いまするが、低い面につきましては、自治体を指導いたしまして、財源と見合いながら逐次引き上げてまいりたい、指導いたしたいと考えております。
 市町村民税の減税によりまして、ただし書き方式の町村が非常に迷惑するのではないか、こういう御質問でございますが、これによって貧弱なただし書き方式をとっておりまする市町村に対しましては、目下行政水準が低下しないように、この財源措置につきましては、大蔵当局と検討中でございまして、支障のないようにいたしたいと考えております。
 固定資産税の評価がえの問題でございまするが、前にも当院で申し上げましたように、評価することと、いかにどれだけ税金をかけるかということは、別個に考えております。したがって、御指摘のように固定資産税全体としては、自然増収分を含めまして増額しないような考えでおります。特に農地につきましては、原則として固定資産税を引き上げる考えはございません。なお、家屋につきましては、方向としては若干減税されることになろうかと思いまするし、償却資産またしかりでございまするが、これをいかに具体的にどれだけの税額にするかということは、目下税制調査会で具体策を審議中でございます。ただいま申し上げました大きい方針に従いまして、答申を待ちまして措置いたしたいと、かように考えております。(拍手)
  ―――――――――――――
#21
○副議長(重政庸徳君) 林塩君。
  〔林塩君登壇、拍手〕
#22
○林塩君 私は、社会保障、特に医療保障に関する問題と、住宅対策について、政府の御見解を伺いたいと存じます。
 池田総理は、さきの国会においても、また昨日の所信表明の中でも、社会保障の強化施策を、公約に従って強力に実行する所存であると言われております。まことに総理のおっしゃるように、社会保障制度の確立こそは、近代福祉国家を実現するための最も基本的な要件であり、また、日本国憲法第二十五条の規定に基づく、国に課せられた重要な任務であると申さねばなりません。しかしながら、今日の日本の現状は、生活保護を要する人々と、その周辺に広がる低所得者の数は、いまなお一千万にのぼっております。こういう事実は、総理の言われる、かつてなき福祉国家への道なおほど遠きを端的に物語っているといってよいと思います。
 さて、社会保障は、所得保障と医療保障とを二本の柱といたしておりますが、この両者は密接なつながりを持っております。いま、かりに低所得者が所得保障によりまして最低生活が可能となった場合でも、一たび病気、傷害事故、出産などによりまして、不時の支出が重なった場合には、たちまち生活困窮におちいることは、要生活保護者の被保護原因を調べてみますと、疾病または負傷によるものが六七%の高率を占めている事実を見ても明らかでございます。ところで、わが国の医療保障制度も、ようやく国民皆保険の体制を整えるに至ったわけでございますが、現行の医療保障の方向は、疾病の治療にのみ重点が置かれておりまして、病気以前の段階、すなわち、疾病の予防方面の対策、配慮に乏しいことは、まことに遺憾でございます。総理は、昨日の御所信の中で、疾病や貧困に対しても仮借なき戦いを進めなければならないと表明されております。
 そこで、私は、まず第一に総理大臣にお伺いいたしたいと存じます。政府は今後の医療保障の重点を予防方面に向けようとしておられるかどうか、もしそうでございますれば、その構想を明らかにしていただきたいと存じます。
 第二に、現行の各種医療保険制度は、その属する制度に従いまして、保険料の支給条件、給付内容に著しい格差がございます。このような不均衝の是正をいたしますについては、被用者保険の一本化とか、あるいはまたプール制による財政調整などの構想がございますが、政府におきましては、これについていかなる具体案をお持ちでございますか、厚生大臣の御答弁をお願いいたします。
 次に、形だけは国民皆保険になりましたが、各種医療機関が今日のように都市に偏在しておりましては、すべての国民が医療の恩恵に浴することは全く不可能でございます。僻地に対する公的医療機関の設置、無医地区の解消などとともに、医療機関の適正配置、それに伴う財政措置について、政府はいかなる対策をお持ちになっているか、厚生大臣から責任ある御答弁をお願いいたします。
 次に、住宅問題についてお伺いいたします。さきに総理は、住宅は一世帯一住宅を目標として強力な対策を講じ、すみやかに住宅難を解消するといわれ、また、今回の総選挙に際しましても、一世帯一住宅は自由民主党の最も大きな公約の一つであったのでございます。今日、一般国民の住宅問題は深刻で、国民生活の内部に大きな暗い陰を投げかけております。総理は、つとに人づくりを提唱されまして、人づくりは国家百年の計である、健全なる青少年は、何よりもまず愛情深い家庭のしつけや人間としての徳性の涵養によって育成され、青少年の非行化防止には家庭の愛情をと力説されておりますことは、まことに御同感でございますが、その愛情深い家庭を築く基礎となるべき住宅のない問題はどうなるのでございましょうか。現在の状態では、昭和四十五年までに七、八百万戸の住宅が不足するといわれております。住宅以外の建物に住んだり、心ならずも同居生活を余儀なくされている家庭が百万世帯もございます。老朽化して危険な家屋は二百五十万戸に達しております。このほか、住宅がないために心ならずも結婚ができない多くの若者たちの悩みも深刻であり、いまや、住宅問題こそは、青少年の未来への夢をはばむ最も大きな障害であるといって過言でないと存じます。今日、公団住宅への入居希望者の競争率は、最高五百倍、平均で八十倍に達しております。また、幸福にも公団住宅に当選しましても、その家賃は一万円、住宅金融公庫の融資を受けるにいたしましても、頭金と土地がなくては問題になりませず、宅地債券も、低収入階層には手の届かぬ高嶺の花にすぎません。したがって、これらの政策、施策による住宅も、低収入階層には、住宅難解消には焼石に水ほどの効果もないといわねばなりません。
 そこで、私は、総理大臣にお伺いいたしたいと存じます。総理は、今後の住宅政策の基本理念をどのようにお考えになっていらっしゃいますか。また、一世帯一住宅の公約を実現するために、どのような具体的な方策をお持ちになっておられますかを、まずお示し願いたいと存じます。
 次に、住宅問題の解決には、どうしましても、宅地の取得を容易にするために、地価の異常な値上がりを押えることが先決問題と存じますが、それについてどのような具体案をお持ちになっておられますか、お答えをいただきたいと存じます。あわせて、土地を国民全体の利益のためにもつと合理的に利用するという基本思想を確立するために、土地基本法のようなものを制定する必要があると思うのでございますが、これについて総理の御見解をこの際承っておきたいと存じます。
 最後に、従来住宅の建設計画が持たれましても、その実績はいつも計画を下回っておりますが、今後は絶対にそのようなことがないように、住宅建設につきましては、予算の確保並びに施策の実行には、総理大臣並びに関係大臣の格段の御努力をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 社会保障のうち、いわゆる所得保障と医療保障が二大根幹であることはお話のとおりであります。しかも、また、所得保障をしなければならぬもとは、やはり医療、あるいは病気からくる所得保障がお話のとおり一番多い。したがいまして、私は、社会保障のうちでも、医療保障、ことにその予防が一番大切で、これがよくならないと、医療保障やあるいは所得保障が非常に多くなるということは、お考えのとおりでございます。従来もそういう考えでおり、また、今後もそれを強力に進めていきたい、予防対策を考えていきたいと思っております。
 なお、住宅の問題につきましては、大体衣食のほうは、足ったとは申しませんが、先ほど申し上げましたように、エンゲル係数が四〇を割ったということは非常にいいことで、ただ、住宅問題は、お話のとおり、これは非常に不十分です。したがいまして、四十五年までに七百八十万戸つくりまして、そして一世帯一住宅を実現すべく、私はここに、はっきりお約束申し上げます。お話のとおり、人づくりのもと、家庭ということが大切、家庭にはやはり住宅が必要であることは申すまでもございません。しからば、今後はどうやっていくかということでございます。
 まず、宅地につきましては、地方公共団体、あるいは日本住宅公団の業務を積極的に拡充させまして、宅地を獲得すると同時に、私は、住宅建設も主として七百八十万戸のうち公営住宅を早くやりたい、いわゆる低所得者に対する住宅をやる。また、家を持ちたい――いわゆる高嶺の花ということでなくて、家を持ちたいという人には、私は住宅金融公庫を活用しまして、そうして計画的に自分の家を持とうという人には、やはり貯蓄をしながら家を持てるような制度を確立していきたいと思います。したがいまして、やはり資金の問題でございますから、住宅金融公庫の資金を拡充いたしまして、産業労働者への住宅建設、また厚生年金の還元融資をやりますと同時に、民間の建てられる住宅が七百八十万戸のうちでも過半でございますから、民間の方々が住宅が建ていいように、私は資金の融通と、いわゆる減税――租税の減免措置を強力に進めていって、住宅問題の解決をいたしたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(小林武治君) 医療保険の問題でありますが、国民皆保険というものが制度的には一応達成されたのでございまするから、これらの各種の医療保険の調整をはかりながら、これからは給付の内容を充実する、こういうことをはかってまいりたいと思っております。当面の具体的な方策といたしましては、御承知のように、ことしの十月から国民健康保険の世帯主の七割給付というととが実行されることになっておるのでございますが、なお、全世帯員も同様にひとつ七割給付まで持っていきたい、こういうことで、その実現に努力し、できますならば、来年度から三ヵ年計画でこれの実現をはかりたいと、いま検討いたしておるのでございます。なお、被用者保険の間におきましては、いろいろ格差の問題が出ておるのでございますが、これらの格差を直す、こういうことと同時に、医療給付の内容充実を積極的に進めたい。そのためには、これらの保険間のプール制等も実現をせしめたいと、こういうことで検討をいたしておるところでございます。
 なお、お話のような予防対策といたしましては、医療保険と並行して、別途に、国民の健康増進、あるいは病気の予防、防疫という、こういうことにつきましては、いままでも努力をいたしておりますが、十分の施策を続けて進めたいと、かように考えております。
 次の、僻地における医療問題につきましては、私ども政府としても前々から非常に心配をいたしておるのでありまして、すでに三十七年度までに全国二百三十七ヵ所の無医村には、政府の援助のもとに診療所を設置し、親病院から大体一、二ヵ月間の交代で医員を派遣して診療に当たらせる、こういうことにいたしておりますが、なお、三十八年度からは、さしむき百九十四ヵ所を目標にいたしまして同様に診療所を作りたい、かように考えておるのでございまして、そのほか手の及ばない地域に対しましては、地方団体等に巡回診療車あるいは巡回診療船等を整備せしめまして、これらが政府の補助のもとにその施策をさせたいと、かように考えております。なお、僻地の国民健康保険につきましても、従来から直営診療所というものを整備させ運用をさせておりますが、これらにつきましても、政府といたしましては助成の措置を講じておる。いずれにいたしましても、全国民が医療の恩恵を平等に受けられるように、十分な配慮を続けていたしたいと、かように考えておるものでございます。(拍手)
  ―――――――――――――
#25
○副議長(重政庸徳君) 基政七君。
  〔基政七君登壇、拍手〕
#26
○基政七君 私は民主社会党を代表しまして、総理の所信表明に対して、若干の質問を行なうものであります。
 質問の第一点は経済問題であります。総選挙中、私どもは、物価高の是正のために、総理の一枚看板である所得倍増政策の根本的な改定を要求し続けてまいりました。あなたはこれに対しまして、高度成長政策によって農業と工業との間の所得格差は是正され、国民生活も相当に向上していると、自画自賛されたのでありますが、政府の諮問機関である経済審議会が選挙後に提出した所得倍増計画の中間検討、いわゆるアフター・ケア報告書によれば、所得格差は拡大している。産業の発展と国民の生活環境の周にはアンバランスがひどい。名目賃金は上昇しているが、実質賃金の増加は計画を下回ったことなど、重要な指摘が行なわれております。そして、報告書の最後に、新しい計画が必要であることを説いております。すなわち、所得倍増計画を改定すべしと答申をしているのであります。これに対し、池田総理は昨日の所信表明におきまして、経済審議会の報告書の趣旨については、国民の期待に反して三百も触れられておりません。しかも、一昨日の池田総理の記者会見における談話は、特に国民が注目しているところであります。そこであなたは、日銀公定歩合の引き上げをやりますと言わんばかりの発言をして、明年の経済政策は本年に比べて引き締めの方向に進める旨を明らかにしております。私はここで率直に伺いたい。あなたはこれをなぜに選挙前の八−九月ごろに言われなかったのか。わが国の国際収支は、本年一月以来、経常収支の赤字続きであります。輸出は伸びたが、それ以上に輸入が伸びて、七月以降の輸出シーズンになっても赤字が続いております。これは工業生産の上昇テンポが早過ぎたからであります。この動向に警告を発し、事前に生産の行き過ぎを予防するのが、あなたの責任であるにもかかわらず、ついにこれを選挙後まで見送ってしまったのは、政府の怠慢と言わざるを得ない。この点についての総理の所信をまずお伺いいたしたいと思います。
 次に、総理は、物価高抑制のための基本策として、低生産性部門の近代化促進、すなわち、中小企業と農林漁業の近代化を述べられておりますが、肝心の具体策は何ら提示しておりません。また、公共料金の抑制をはかると言いながら、一昨日の記者会見では、値上げする必要のあるものはやむを得ないと述べております。しかも、総理が臨時国会中、また総選挙中に主張された管理価格の引き下げについては全く言及されておりません。選挙中の最大の公約であった物価政策についての総理の説明がきわめて不十分なことは、何としても納得できません。あなたが向こう二年間に物価高是正をするという決意なら、ここで将来の経済の安定の土台石となるために、自分のメンツを捨てて、所得倍増政策を改定すべきであります。まず公定料金の二年間据え置きを断行すべきです。消費者米価の値上げを行なってはなりませんし、また、大企業が大量生産をする耐久性消費財の価格を大幅に引き下げることは、物価の抑制にきわめて大きな効果を示すものでありますから、行政指導によって早期実現をはかるべきであります。
 また、税制改正について自民党は、五人世帯年収四十八万円を所得税の免税点にすると発表されておりましたが、CPSを見ましても、標準世帯の家計支出は月平均四万円をはるかにこえております。自民党案は、明らかに赤字家計にも課税することを意味し、生活費に税金をかけるな、月平均五万円までは免税という、当面の国民の要求を無視しているものであります。これらの諸点について、総理の見解をお伺いいたします。
 また、私は、中小企業政策について、あなたが誠意があるならば、まず現在市中銀行で一般化されている歩積み、両建て制度を、直ちに解消する方策を実施すべきであると提言します。これを前提として、民間金融における中小企業向け融資の資金ワクを拡大すべきであります。近代化とか、経営指導とか、お題目だけの政策宣伝につとめる前に、まず事業資金の供給を保障すべきであると考えるものであります。すでに、わが党が提案している中小企業租税特例法、中小企業資金確保、官公需の確保等の関連法の立法が必要であると考えますが、これらの諸点について、総理並びに関係大臣の御答弁を求めます。
 次に、外交方針について、総理は、アジア外交を申されましたが、これも全く内容がありません。それどころか、総理は、アジアにおける経済協力の対象を韓国、台湾、インドネシア、フィリピンの四ヵ国に限定するような方針を明らかにされましたが、何を根拠にしてこのような選定をしたのか伺いたいのであります。
 私ども民主社会党は、政府と自民党に対し、外交問題は超党派的に処理すべきであり、そのために外交問題に関しての話し合いの場をつくれと提唱しております。わが国としては、アジア外交に関して、米国のジョンソン外交路線の出方を待つのではなく、独自の立場で、同じアジア民族としての親近感をもって、アジア友邦の国民生活を向上させるために、積極的に協力すべきであります。単にプラント輸出をするだけでなく、これを有効に使用するための技術援助、土木建築等の技術指導協力、さらには教育、医療等の援助等、広くアジア諸国との経済技術協力の構想を持つべきではありませんか。米ソ両国がインドの製鉄所建設を援助するために、それぞれの国に数十名のインド人留学生を招聘し、徹底的な教育を行なっていることは、われわれとして十分注意を払わなければならないと考えます。日中関係も、このような広い民族的提携の一環として打開していくべきではありませんか。この点についての総理並びに関係大臣の見解を伺いたいと思います。
 最後に、三池三川鉱の爆発事件、鶴見の列車二重衝突事故、さらに、最近頻発する海難事件など、人命にかかわる大事故が続出していることであります。近代産業が発達し始めた初期に見られたような事故が、現在のわが国に依然としてあとを断たず、また、世界最高のスピードを誇る新幹線建設に血道をあげている国鉄に、一瞬にして百数十名の命を奪う大事故が起こるのは、わが国の産業社会の中に何らかの病根がひそんでいることを意味するのではないでしょうか。総理の言われる人づくりもけっこうですが、町には近代的大ビルディングが林立し、世をあげてレジャーに明け暮れる昨今のわが国に、最も欠けているのは、縁の下の力持ちとして、持ち腸持ち場において、自分の責任を果たす忠実なワーク・マンを尊敬する風潮であります。私は、一国の指導政党が、内には派閥抗争に醜聞をさらし、国民に対しては、所得倍増、生活水準引き上げという、物質的感覚的満足感を刺激して、社会人心を軽薄にし、口に人づくりのから念仏を唱えていることが、かかる大事故を連続的に引き起こす原因の一つであると言わざるを得ません。私は国民の一人として、生命の安全、家族の平安のために、最近の人命事故について、総理並びに関係大臣がいかなる反省をし、いかなる対策を立てておられるか、また、私が申し述べた社会的病根に対する人間池田勇人氏の率直なことばを聞きたいと思うものであります。
 もう一つは、本国会成立に際して、自民党は衆議院正副議長も常任委員長もすべて独占しましたが、とのことは、党派対立をベースとしつつも、共通の広場としての国会正常化を軌道に乗せようとする誠意がいささかも見られないと言わざるを得ないのであります。与党が寛容な態度をとらずして何で政治の民主化、国会の正常化が実現しましょうか。私ども民主社会党は、この点に関し、あくまでも自民党総裁としての総理の反省を求めてやみません。この点についての総理の所信を明らかにしていただきたいことを要望して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたしますが、基さんのお話のうちに、経済審議会の答申は、所得倍増計画をやめろとか、格差が非常に広がっておるとか、こういうお話でございましたが、私のやっておりまする経済審議会の答申はまだ来ておりませんし、総合部会での一応の決定は、あなたのお話とは違っておると思っております。したがいまして、私は、もう一度お読みいただきたいと思いますが、私の考えでは、あなたのお話と違っておると思います。
 なお、引き締めをやる、やらぬの問題、これを選挙中にどうこうという問題、それは引き締めということはどういうことでございましょうか。いま日本銀行が、ずっと前から貸し出しにつきまして相当の制約を加えておったと聞いております。それからまた、昨日の預金準備金の問題や、あるいは、ここで問題になります公定歩合の問題等は、日銀でやることなんです。大蔵大臣が相談を受けることでございます。内閣の政策ではございません。ただ、私としては経済全体をあずかっておりますから、大蔵大臣を通じまして、いろいろな考えを日本銀行に言うことはございますけれども、まだ私からは言っておりません。したがいまして、引き締めの問題等は、来年度の予算あるいは財政投融資をどういうふうにするかという問題でございます。しこうして、日本のいまの状態は、先ほど申し上げましたごとく、私が今年当初あるいは夏ごろ予定しておりましたよりも急激に生産の上昇が見られるのであります。これは一ヵ月一ヵ月ずっと見ておりますが、九、十月ごろ、それから十一月にかけて非常に伸びてきた、こういう状態でございますので日銀がやったのでございましょうが、選挙中に引き締めをやるとかやらぬとか、こういう問題じゃ私はないと思います、経済の実体というものは。
 次に、物価の安定につきましては、昨年来、消費者物価の安定につきまして、政府はいろいろ努力しております。また、今後も努力いたします。また、生産性のおくれておる農業あるいは中小企業あるいはサービス業につきましても、革新的な措置をとる、いわゆる財政金融の総力をあげてやっていくと、きのう申し上げておるのであります。ひとつ来年度のわれわれの施策を見ていただいたらおわかりいただけると思います。
 また、減税につきまして、月四万円、年四十八万円では低過ぎるというお話でございますが、大蔵省その他で調べました基準生計費は、大体四十八万円程度と私は報告を受けておりますので、減税もそういうように四十八万円までにいたしたのであります。
 また、中小企業に対しましての金融問題で、歩積み、両建て、これは年来の私の主張で、強く大蔵大臣に指示しておる次第でございます。
 なお、アジアに対する外交で、プラント輸出とおっしゃっておるが、プラント輸出ばかりではございません。あるいは農業センターとか中小企業センターを各地に設ける、あるいは医療関係につきましても、インドにおきまして、救ライ事業を始めました等々、留学生につきましても、相当いわゆるコロンボ会議による計画、あるいは賠償による計画、あるいは賠償による計画が来年度終わる国もございますが、賠償がなくても、私は留学生等につきましては、わが国に来てもらうよう、あらゆ看措置を講じて、いわゆる経済と文化、教育各方面についての協力をはかりつつあることを、御了承願いたいと思います。
 また、議会運営についての御意見がございましたが、私は、まだ国会正常化につきまして、口では各党みんな言っておりますが、なかなかその実があがりにくい。それまでにおいてはやはり与党が運営の責任を持つべきだという考え方で行っておるのでございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(田中角榮君) 中小企業対策として、歩積み、両建てを厳重に取り締まれというお話でございますが、御承知のとおり、歩積み、両建てにつきましては、大蔵省も、随時検査を行なうとともに、歩積み、両建てを可及的すみやかに解消するために、具体的な方針をきめて、金融界と、いまこの方向で努力をいたしておるのであります。
 第二点といたしましては、民間金融機関等を含めた中小企業の金融の問題についての御質問でございますが、御承知のとおり、中小企業金融公庫等につきましては、資金運用部の資金を流す等、これが資金量の拡大に対しては、十分な配慮を続けてまいりたいと考えております。なお、民間金融機関における中小企業に対する融資比率を現在よりももっと増大せしめていくように、行政指導を強くやっておるわけであります。なお、緊急の場合等におきましては、資金運用部資金によりまして、市中金融機関が手持ちをしております有価証券等を買い上げて、一時的に資金原資をつくってやるというようなことも、十分配慮をいたしてやっておるわけであります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。先ほど、三池の問題につきましては、牛田議員にもお答えをいたしたところでございます。ただいまは原因を究明いたしておるところでありますが、保安と生産というものはこれは表裏一体のものでありますが、人命尊重ということを特に考えて、諸種の方策を実現いたしまして、この種のことのないように極力努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(綾部健太郎君) 鶴見事故につきまして、当局といたしましては、しばしば申し上げましたるとおり、まことに残念しごくでございます。今後、精神的、また予算措置等についても最善を尽くしまして、今後かようなことのないように努力をいたしたいと考えております。(拍手)
#31
○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
   ――――・――――
#32
○副議長(重政庸徳君) 福田国務大臣から三池炭鉱災害について、綾部国務大臣から鶴見事故の報告について、それぞれ発言を求められております。この際、順次発言を許します。福田国務大臣。
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(福田一君) 今回、三井鉱山三池炭鉱における爆発事故によりまして、多数の死傷者を出すに至りましたことは、鉱山保安行政をつかさどる者といたしましてまことに遺憾にたえないところでございまして、罹災者及びその遺家族の方々に対しまして、心から哀悼の意を表する次第であります。
 この際、今回の災害の状況、政府として講じてまいりました措置等につきまして御報告させていただきたいと存じます。
 十一月九日午後三時十分ごろ、三井鉱山株式会社三池炭鉱三川坑において爆発事故が発生し、四百五十有余名の死亡者を出すに至りました。今回の災害の規模がこのように大きくなりましたのは、事故発生時がたまたま、一番方、二番方の交代時期に当たっており、しかも爆発個所がたまたま入気坑道であったことによって、多数の一酸化炭素中毒による死亡者を出したためと考えられます。災害発生の当日、私は午後九時過ぎに出張先から帰京いたしましたが、この情報に接しまして急拠登庁いたしまして、鉱山保安局長以下担当官より事情を聴取し、深更に至るまで、罹災者の救援救護を中心とする当面の緊急措置を協議し、その結果、さしあたりの措置といたしまして、まず詳細な実情を明らかにすると同時に、罹災者の救出救護等に万全の措置を講ずるため、担当課長を現場に急派することを決定いたしました。
 翌十日及び十一日には、災害に関するその後の情報が相次いでもたらされ、その結果、予想以上に災害の規模が大きく、したがってとるべき対策も広範囲にわたるものとなりましたため、十二日の閣議で次のような緊急対策が決定された次第であります。
 すなわち、まず臨時三池災害対策本部を設置し、被災者、遺家族等に対する援護措置等、現地において緊急に処理すべき問題を強力かつ迅速に行なわせる体制を整えますとともに、災害原因の究明のため、九州大学名誉教授山田団長以下九名の専門家による技術調査団を現地に派遣し、技術的見地から徹底的な調査を行なわせることといたしました。さらに、三井鉱山株式会社に対して、弔慰金、見舞金の早急な支給を指導いたしますとともに、石炭鉱業合理化事業団から整備資金十億円を繰り上げ融資することによって資金繰りの円滑化をはかるほか、労災保険金の早期給付を行なうことといたしました。なお、これと並行して、石炭鉱業各社に対し、「石炭業界は石炭鉱業安定のため合理化計画の推進という多難な事態に直面しているが、労働者の生命の尊重は至上の要請であり、合理化の進捗に伴う保安対策の強化はかねて要望されていたところである。石炭鉱業各社においては、今回の災害を契機として、今後一そうの保安の強化をはかり、災害の未然の防止のため全力を傾注するよう強く要請する」旨の厳重な警告を発するとともに、鉱山保安監督局部に対し監督の一そうの強化を指示した次第であります。
 以上、一応当面打つべき手を打ちましたので、十四日早朝現地へおもむき、つぶさに視察の結果、さらにとるべき措置として、安心して就業することができるように、事故当時の入坑者全員の健康診断を実施し、三池炭鉱の生産再開にあたっては、徹底した保安検査を行ない、坑内の安全を確認した上でなければこれを行なわせないこと、一酸化炭素中毒による被害を防止するため、石炭各社に、今年度中に自己救命器の完全備えつけを実施させること、炭じんに関する技術基準を早急に制定すること、及び今後監督検査を強化徹底することの四項目を指示いたしました。
 その後、災害対策本部の活動も軌道に乗り、一酸化炭素中毒による患者の救護のため、国立病院、労災病院等から医師等を派遣し、また、これらの病院に患者を収容して治療に当たらせるとともに、専門の医師からなる医療調査団を派遣する等、医療対策に遺憾なきを期し、また、遺家族の援護策といたしましては、労災保険のほか、厚生年金、簡易保険の早期支払い、職業あっせん、職業訓練の体制の確立等の措置を講じてまいっております。
 災害の原因につきましては、現在までのところ、三川坑第一ベルト斜坑において炭車が逸走し、同坑道中の炭じんを浮遊させ、この炭じんが何らかの着火原因によって引火爆発したものと思われますが、その詳細は目下検討中であります。
 三川坑以外の宮の浦坑、四山坑につきましては、現在現地の鉱務監督官をして厳重な保安検査に当たらせておりますが、さらに保安の万全を期するため、このたび北海道大学名誉教授佐山団長以下十名の技術権威者からなる調査団を派遣し、保安状況の調査を行なわせることといたしました。
 なお、今回の災害に伴う減産に対しましては、当面、山元貯炭の払い出しによるほか、石炭各社及び大口需要業界の協力を得て、対処することとしております。
 以上、災害の状況、災害後政府が講じてまいりました応急措置について御報告申し上げましたが、政府といたしましては、今後とも、罹災者及びその遺家族に対する援護措置に万全を期するとともに、将来二度とこのような悲惨な災害の発生をみることのないよう、人命尊重の基本理念に徹して、鉱山保安の確保に万遺憾のないよう努力を傾注してまいる所存であります。
 これがための具体的な方策といたしましては、巡回監督を中心とする監督の密度の増大、抜き打ち検査の弾力的実施、保安法規の厳正な運用の徹底化等、保安監督の強化をはかるほか、鉱山における保安管理組織の改善、監督強化のための技術基準を中心とする鉱山保安法令の整備、保安施設の整備を促進するための融資の拡充、炭じん災害防止をはじめとする保安技術の開発の促進等の措置を講じますとともに、石炭鉱業各社に対しましても、いやしくも石炭鉱業の近代化合理化のために保安がおろそかにされることのないよう、保安意識の徹底を強力に指導していく所存であります。
 以上をもちまして、三池炭鉱災害に関する御報告を終わらせていただきます。(拍手)
#34
○副議長(重政庸徳君) 綾部国務大臣。
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(綾部健太郎君) 東海道本線鶴見列車事故について御報告を申し上げます。
 昭和三十八年十一月九日、二十一時五十一分、東海道本線鶴見――横浜間におきまして、下り貨物列車の後部三両が脱線し、これに、おりから進行してきた上り横須賀線電車が衝突脱線し、さらに、この電車が下り横須賀線電車に衝突する事故が発生し、百六十一名の死亡者と百十九名の負傷者を出すに至りました。かかる重大な列車事故が発生いたしましたことは、運輸大臣としてまことに遺憾にたえません。この事故による犠牲者の方々、並びに御遺族の方々には、心から哀悼の意を表しますとともに、負傷者の方々の御快癒を祈り、あわせて、広く国民の皆さまに対し深くおわびを申し上げる次第でございます。
 さきの常磐線三河島駅構内における事故にかんがみ、運輸省並びに国鉄当局といたしましては、保安対策の強化をはかり、安全確保対策に最も力を注いでいましたにもかかわらず、このたびかような事故を発生させましたことは、まことに残念しごくに存じます。
 国鉄におきましては、直ちに国鉄本社内に設けました事故対策本部におきまして、事故の善後措置に当たるとともに、鶴見事故技術調査委員会を設け、目下鋭意事故原因の究明に当たっております。
 運輸省といたしましては、今回の事故に関し、十一月十一日、国鉄監査委員会に対して特別監査命令を発し、事故原因の究明に当たらせることといたしましたが、さらに二十二日、交通機関の事故防止に関し、大臣告示するとともに、国鉄総裁あてに事故防止についての警告を通達いたしました。また、私鉄に対しましても、事故防止についてさらに一段の努力をするよう要望書を交付いたしました。御遺族の方方及び負傷された方々に対しましては、早急にできる限りの償いをいたすよう、国鉄に対し指示いたしたところであり、現在、国鉄は、これが実施に万全を期している次第であります。また、救護措置にあたり、警察、消防、自衛隊その他地元各位の絶大なる御協力をいただきましたことを、深く感謝いたしております。私どもといたしましては、今後この種事故の絶無を期するため、安全確保に万全の措置を講じていく決意であります。
 以上、簡単でありますが、事故と対策措置の概要を御報告申し上げ、国会を通じて、重ねて国民の皆さまにおわびを申し上げる次第でございます。(拍手)
#36
○副議長(重政庸徳君) ただいまの発言に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。阿具根登君。
  〔阿具根登君登壇、拍手〕
#37
○阿具根登君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま報告のありました三池炭鉱災害に対する質問を行ないます。
 まず、四百五十八名のなくなられた方の御冥福と、二百八十四名に上る、自分の妻の顔もわからぬ患者の方々の回復を祈念しながら、質問に入りたいと思います。
 まず、総理大臣にお尋ねいたしますが、質問に入る前に、きのうの総理の演説の中で非常に精神面を強調されておられた。さらに、選挙を通じて人つくりを強調されておられた。その意味において、西ドイツで起こった炭鉱災害と日本で起こった炭鉱災害についての、両国の総理大臣のとられた態度について、お考えを伺っておきます。
 去年の二月十七日に、約三百人の人が炭鉱爆発によってなくなりました場合に、アデナウアー総理は、テレビ、ラジオのはなばなしいのを中止し、さらには、国民に半旗をもって、産業の発展の途中に人柱となった方々の冥福を祈られたと、新聞は報じております。さらに、三池のこの事故の起こるわずか前に、数十名の人が生き埋めになって、しかも十数名の人が生きていることがわかり、電話連絡がとれた場合に、エアハルト首相は、みずからその電話で生き埋めになっている人を激励したと報じられております。この三池災害で四百五十名の人が一瞬にして命をなくしましたが、総理が現地に視察に行かれたのは二十三日だったと記憶いたしております。しかも、つえとも柱とも頼む主人なり子供をなくして悲歎の極にある遺族の方々が、遺影を胸に抱き締めて総理に陳情申し上げた場合、総理は時間のないことを理由にして、一言の激励も慰めの言葉も与えずに、六十数キロのスピードを出して次の選挙区へ走り去られた。いかがなものでございましょう。私は、人に道を説くならば、まず、おのれが道を正しくしなければならないと思うのでございます。(拍手)私は、人つくりを言われるならば、わずか三分、五分の選挙の演説がおくれたとしても、なぜ未亡人の方々にあたたかい慰めと力強い激励を与えられなかったか、きわめて私は残念に思うのでございますが、いかがでございますか。
 質問の第一点は、炭鉱の合理化でございます。最近、新聞にもごらんのように、この半年前までは多額の金融をして、そうして炭鉱から職を奪って他の産業に移したのが、最近は逆に金をもって募集を続けている。こういう状態でございます。その現われが、いわゆる直接夫を非常に多くし、間接夫を減らし、出炭を極端に伸ばしてきた。三池炭鉱においても出炭は三倍の率を示しております。そういう結果がこの大きな災害を起こしたことになったのではないか。とすれば、合理化政策なるものは完全に失敗している。こう言わざるを得ないのでございます。その点いかがでしょうか。さらに私が危惧いたしますのは、現在専門家でその原因を追究されておりますが、ある専門家や会社の方々が言っておられるのは、三池でこんな大事故が起こるとは思ってもいなかったし、三池は他の山よりも保安は完備されておった、こういうことを言われておりますが、もしもそうであるとするならば、他の日本の炭鉱は全部この種爆発の危険にさらされていると言わなければならないわけでございます。さらにその原因が、先ほどの通産大臣の報告にもありましたように、炭車逸走で炭じんをまき散らし、それに何かの原因で火がついたのであろう、こういうことを言われております。これは一応常識であろうかと思いますが、何かの火で直接爆発があったにしろ、その問題は直接の原因であるというだけであって、要因ではございません。要は爆発するだけの炭じんがなぜ積もっておったかということでございます。保安法はこれを厳重に禁止しておるはずでございます。坑内において炭車の逸走することは間々あることであって、そういうことも十分考えての保安法が作られているものと思います。そうすれば、おのずからこの爆発の責任者は何であるか、だれなのかということは、明らかになるはずでございます。その点についてどういうお考えをお持ちであるか。さらには鉱山保安法について一、二質問いたしておきます。
 御承知のように、炭鉱には甲種炭鉱、乙種炭鉱、指定乙、あるいは甲種炭鉱の中で特免区域というのがございます。ところが、今日までの六年間の例をとってみますと、甲種炭鉱で十一回爆発をやって四十人の人が死んでおります。六十一名の人が軍傷者でございます。乙種炭鉱は五十五回爆発しております。そうして死者が七十六名、重傷者百三十二名。特免区域において主十四年から六回の爆発があって百七名の人が罹災している。こういうことを考えてみますと、政府が業者の要請によって甲種炭鉱であるべきものを乙種にするか、あるいは指定乙にするか、特免すべきでないものを特免したか、そういう理由によって、爆発が比較的少ないといわれて乙種に指定した炭鉱が逆にたくさんの爆発を起こしてたくさんの死者を出している。そういうことは、この鉱山保安法に甲種、乙種の差別をつけることが間違っていることを、はっきりこの数字が示していると思う。そうすれば、乙種炭鉱あるいは指定乙、特免区域というものを全廃して、全炭鉱が甲種炭鉱でなければならない、こういうことになるのでございますが、これについてどうお考えになるか、総理並びに通産大臣にお尋ねいたします。
 さらに私は、この種炭鉱の災害につきまして、池田総理に御質問を申し上げるのは、これで三回目でございます。御承知のように、一回目は通産大臣のとき、二回目は総理大臣になられてから。さらにこれで三回目、こういう悲しい、苦しい憤りを持って御質問をしなければならない。だから、前二回にされたような答弁を私は望んでおりません。四百五十八名も死んでいる、この現実に立って私は総理にお尋ねを申し上げているわけです。それは、労災は労働省が管理しているにかかわらず何ゆえに保安を通産省が管理しなければならないか、通産省は生産を担当している、保安は生産よりも優先するということを、この前はっきりこの壇上から言われた総理大臣が、何ゆえに労働省に保安の責任官庁を移すことができないのか。あるいは労働省に移せば、この種災害がなくなるかと反問されかもしれません。しかし、この種災害がなくなるためには、どの省が積極的にやれる、どの省がそれに近いのだということを考えるならば、当然労働省にさせるべきであると思いますが、その点いかがお考えでございますか。
#38
○副議長(重政庸徳君) 阿具根君、時間です。
#39
○阿具根登君(続) 時間が来たそうでございますから、まだ質問がたくさん残っているのですが、もう一問だけ通産大臣にいたしますが、現行法では、鉱業権者が自分の部下に対して保安管理者というものを任命することができる、鉱業権者が自分の部下に対して保安管理者を命じたならば、この部下は保安よりも生産のほうに重きを置くことは、私は人情としてそうなるのではないか。しかも、もし生産以上に保安の必要を感じて通告するとするならば、いつでもその管理者は、鉱業権者によってかえることができるわけでございます。こういう生産本位の業者まかせの保安法の現行法でいいかどうか、抜本的に改正すべき時期が来ていると思うが、この点についてお尋ねいたします。
 時間がございませんので、個条書で簡単に申し上げますが、労働大臣に一、二質問いたします。今度の罹災によって労災保険金をもらった最低の方は四十六万円、日給にして四百三十四円、地下数千尺のところに下がって、命を的にして働いている人が、日給にして四百三十四円、これでいいのかどうか、依然として千日分というこの労災法を今のままで置いていいのかどうか、上げるべきではないかという点について、御質問を申し上げます。その他、入院患者について、あるいは後遺症が残った場合に、けい肺患者に準ずると言っておられますが、第一種症の二百四十日、第二種症の二百日で、この種患者の生活ができるかどうか、そういう点について十分なる御説明を願いたい。
 時間がございませんので、私の質問が途中になりましたけれども、あとは予算委員会でお尋ねいたします。私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(池田勇人君) 三川坑の事故は、たびたび申し上げましたごとく、まことに遺憾で、遺族並びに罹災者に対しましては衷心より私は御同情申し上げます。
 三川坑に私がまいりましたのは十七日でございます。大牟田の演説をやめまして、そこにまいったのであります。しばらく黙祷をいたしました。阿具根君、御存じでございますか。あのときに、ほんとうに遺族の方にお見舞いを直接申し上げたい気持はやまやまでございますが、そういう情勢でないのであります。たいへんなことで、私は三川坑の坑口に行くのも相当困難な状態でありました。したがいまして、心ならずも、社長並びに工場長の善後策等を聞き、また飛行場から大牟田まで古屋対策委員長からいろいろ事情を聞いてまいったのであります。あの情勢からいって、心ならずも遺族に直接に言えなかったということは遺憾でございます。私は黙祷をささげ、そうして犠牲者の冥福はお祈りしてまいったのでございます。
 なお、石炭事業に対する合理化の失敗であったかどうかということは、いましばらく私は検討してみたいと思います。これは、御承知のとおり、画期的な学識経験者等を入れまして十分調査した後の結論でございまして、あの当時におきましては、阿具根君も大体いいんじゃないかというお考えではなかったかと想像いたします。私も合理化審議会のあの方法が適当であるというので、措置したのであります。今回石炭事情その他によりまして非常に変化が起こりました。そこで、すぐあれが失敗だということは、いかがなものかと思います。いましばらく様子を見たいと思います。
 また、この事故の原因がどこにあるか、責任はどうかということにつきましては、原因をせっかくいま検討中でございますので、私から責任の所在をここで申し上げることは差し控えたいと思います。
 また、炭鉱の甲種、乙種の問題につきましては、通産大臣よりお答えさすことにいたします。
 なお、保安の問題につきましては、従来から、お話のとおり非常に問題でございます。われわれは生産と保安は一体という考え方で進んでいっております。生産は保安を離れてない。また保安というものは生産ということに関係があるという、一体の考え方でいっておる。しかるところ、こういう事故が起こりますと、常にいまの保安と生産とを分けるという議論が強くなってくるのであります。せっかくいま原因を調べ中でございますので、原因の所在がわかりましたら、私はこの問題につきまして検討してみたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 生産と保安の問題につきましては、これはもう人命尊重を特に重視すべきことは、前々から申し上げておるところでございます。この点は、まずもって御了承を賜わった上でお聞き取りを願いたいと思うのでございますが、炭鉱のいわゆる合理化をやって今日人手不足が生じておるではないか、合理化は失敗したのではないかということについては、総理からお答えがございましたので、そのとおりに了承いたしておる次第であります。
 そこで、今度の災害が三池のような優良炭鉱で起きたということでは、ほかの炭鉱でも非常な不安が起きるのではないかというお説でありました。まことに私ごもっとものお説と考えるのでありまして、したがいまして、私は、災害が起きて、これが対策を十二日に閣議で決定したその日に、各大手、中小の業者に、通産省に集まってもらいまして、そうして、三池のようなところでさえこういうようなことが起きたのだから非常に心配だ、十分注意してもらいたいということを要請をしたのでありますが、しかし、その要請をしたというだけで私は足りるとは思っておりません。今後も十分に注意をいたしてまいりたいと考えておるのでございます。
 また、会社の今度の問題についての責任問題でございますが、これについては、私たち、この監督局の係官等が、四月に実は十分調査をした上で、炭じんが多いということを警告をしまして、六月には会社から、実を言いますと、こういうふうにやりますという整備計画を出してまいった。その後、それを十分に調査――実際に炭じんがなければ爆発しないじゃないかというお話でございますが、これはまあ、その後、七月、八月、九月等には落盤事故等がございましたので、末端といいますか、一番先のほうの部面における炭じんの調査には十分努力をいたしておったのでありますが、たまたま十一月の十一日にこの斜坑の調査をすることにいたしておりました。その準備をいたしておった最中にこういうことが起きたわけであります。が、いずれにしても、そういうような炭じんを除去しなければならないということを言っておって、それが実際に行なわれておったかどうかということを、もっと見きわめなかったということについては、私は、これはわれわれとしても十分責任を感じなければならないと思っております。ただしかし、会社の責任につきましては、これはまだ事故原因もはっきりいたしておりませんので、これは明らかになった上で十分にこれを徹底させてまいりたい、かように考えております。
 それから、甲種、乙種の問題特免区域の問題でございますが、こういう区分を設けた趣旨はどこにあったかといえば、できるだけ炭鉱に、いわゆる保安の施設をよくし、あるいはまた保安に対する諸般の注意を喚起するというために、まあこれは、あなたのところは非常に保安をよくやっているから甲種にするとか、あるいは乙種にするとか、特免区域にしてあげましょうとか、こういうふうに保安能率を上げるためにつくった制度でございます。しかし、お説のように、こういうものをつくったために、かえって優良であるところで事故が起きるのはどういうことか、これはわれわれとしても十分今後検討をいたしてまいるべきであると思うのでありまして、今後、法改正の問題についても考慮はいたしてまいりたいと思いますが、しかしまた、今言ったように、監督だけで保安が実現するのではなくて、山の人たちがほんとうに保安を考えて、そうして一生懸命やってくださることで保安が充実してまいると思うのであります。しからばそういうふうに一生懸命やることを奨励するやり方がいいか悪いかということについては、もう少し検討させていただきたいと考えておるところでございます。
 次に、労災の管理者の問題でございますが、これは総理からお答えがございました。現行法のこの鉱業権者が保安管理者を任免するということにしておるというと、すぐ生産が重点になりやしないか、こういうおことばであります。私はこの問題については、今後十分に検討いたしまして、法改正も辞さない考えでおりますけれども、しかし鉱業権者が保安管理者を任免するというけれども、もし事故が起きた場合には、鉱業権者自身非常な損をいたすわけでありまして、そういうことから考えてみると、生産と保安ということについては、善良な鉱業権者であり、優良な鉱業権者であるためには、両面にわたって十分な注意をいたすべきものであると、われわれは考えておるのであります。しかしながら、ただいまのような事情もございますので、十分研究をさせていただきたいと考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(大橋武夫君) 労災保険法の遺族補償費は、所得の千日分ということに現在なっておりますが、これは安過ぎはしないかという御質問でございました。労災保険の遺族補償費及び労働基準法によりまする災害の場合の遺族補償費等は、いろいろな事情を考慮して決定されたものでございまして、今日の社会保障制度全般の建前から見まして、特にこれだけが安きに失するとは申せないと考えるのであります。しかしながら、今回の遺族の援護につきましては、政府といたしましては、特に万全を期する考えをもちまして、遺族補償費以外に、特に就職指導、就職相談等、労働省としても極力努力をいたす所存であり、遺族に対しましては、一人残らず将来の生計の道を全うするようにいたしたい覚悟でございます。
 次に、じん肺患者等の長期給付の日数を増すべきではないか。これも、安過ぎはしないかという御質問でございます。長期給付でありまする傷病給付の日数は、年金額に換算いたしまして、平均賃金の五五%ないし六五%となっており、ほぼ休業補償費に相当するものでございますから、ただいまのところ、特にこれを増額するという考えはまだ持つに至っておりません。しかし、元来生計を維持する趣旨の給付でございまするから、この目的にその額が常に適合しておるかどうかということにつきましては、今後とも検討を怠らないつもりでございます。(拍手)
#43
○副議長(重政庸徳君) 岡三郎君。
  〔岡三郎君登壇、拍手〕
#44
○岡三郎君 ただいま運輸大臣より報告せられました東海道本線鶴見事故に対し、私は、日本社会党を代表して、総理並びに運輸大臣に若干の質問をいたします。
 国鉄は、昨年五月三日の三河島事故にまさる重大事故を起こしたわけですが、百六十一名の死亡者と多数の負傷者を出したこの事実は、全く遺憾のきわみでありまして、われわれとして、つつしんで、なくなられた方々の御冥福を祈るとともに、遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。なお、負傷されました方々に対しましては、一日もすみやかに快癒せられ、再びもとの社会に復帰せられますよう、心から念願してやみません。
 さて、今回の事故については、ただいま運輸大臣の報告にもあったように、その原因について目下調査中でありますが、今回の事故をかくまで重大なものとしたその原因が過密ダイヤにあること、言いかえれば、輸送需要と輸送設備のアンバランスにあることは、はっきりしております。東京駅における一日の発着する電車、列車の数が二千五百本であるということ、外国において四百本でも多いと言われているこの事実、政府は、海運に対しては種々助成策を講じてきましたが、国鉄に対しては、公共性あるいは独立採算制の名のもとに、何らめんどうを見てきておりません。これが今日の国鉄の設備不足、輸送需要に対する輸送設備の不足となって現われ、今回の事故の遠因となっているのであります。これが解決策としては、輸送設備を増強し、余裕のある輸送力を持ち、列車回数の緩和をはかる以外に方法はないのであります。しかるに、池田総理は、昨年五月の三河島事故の際、本院において、「今後再びかかることの起こらぬよう、関係当局を督励いたしまして、今後あらゆる措置を講じたいと思います。」と言明されておるのであります。今回のこの鶴見事故についても、昨日の所信表明の中で、同じことを再び繰り返されておられるこの事実ですが、国民は、いまや言葉ではなくて、政府の責任ある処置を求めてやまないのであります。いままでに、一体いかなる措置をおとりになられたのか。われわれが知っている程度の問題では、この事故は再び繰り返されるというふうに考えます。今後どう措置をとられようとしておられるのか、具体的にその解決策を総理からお伺いいたしたいのであります。すなわち、政府は、国の輸送の根幹としての国鉄の輸送力増強と人命尊重のために必要な資金の投入に取り組む意思がほんとうにあるのかどうかということであります。
 次に、今回の鶴見事故の第一原因、これは貨車の脱線でありますが、主たる原因の第二は、人口並びに産業機構等の過度の都市集中にあるのではないか。交通政策の貧困にあるのではないか。国鉄に対する、先ほど申し上げた、資金の投入不足にあるのではないか。これを指摘したいのであります。政府は、早くから、地域格差の是正、都市集中の排除等を政策として掲げていますが、新産業都市の育成、産業機構の地方分散あるいは学園都市の建設、官庁都市の推進等々、いろいろ言われておりまするけれども、この仕事はなかなか緒についておりません。いわゆる過大都市の再配分等について、いかなる具体策を推進しようとしておられるのか。また、交通政策、ことに鉄道と道路交通、海上輸送との調整について、確立された方針があるのかどうか。決定した方策があるならば、その点もお聞かせ願いたいのであります。これらの根本的問題の解決なくしては、今日のごとき過密ダイヤによる運転区間においての事故の解消は、望むべくもないことであると考えるのであります。
 質問の第三は、開放経済の時代に入った日本の立場は、一にも二にも高度経済成長政策が優先で、国民の犠牲はやむを得ぬと考えておられるのではないかということであります。鶴見事故が起きてより、山陽本線の衝突事故、北陸本線の貨車の脱線転覆、あるいは高崎線、鹿児島本線の事故、さらには、昨日の総武線の衝突事故等、頻発する事故に対して、総理がいかに人命尊重を強調せられても、国民の不安はぬぐえないのであります。鶴見の事故が起きたとき、この次は中央線かという、いやなうわさが流れたことを、われわれは知っております。常時生命の危険にさらされている国民に対して、人命尊重がスローガンではなくて、人権尊重の具体的方策をぜひ立ててもらいたい。国全体として、政治の中においてこの問題を解決すべく、池田さんの考え方をここにはっきりとお伺いいたしたいのであります。
 次に、運輸大臣に質問いたします。
 まず、国鉄の運営の問題でありますが、政府は、国鉄に対して強く企業性を強調しているのではないか。それがひいては営業優先となり、安全を犠牲にして輸送量の増加をはかる結果、事故の原因となっているのではないかということであります。先に申し上げましたすし詰めダイヤの問題とあわせて、国鉄が四十年以降毎年一万五千人の首切り案を用意しているということ、さらに、車両検修委員会は、昭和五十年までに二百六十の機関区を九十八に縮小するという計画を進めておられるようですが、このようなことは、まことに重大であります。経営合理化、能率第一主義によっての極端な要員削減は、事故を未然に防止することにならぬと思うが、安全輸送第一主義の立場から、合理化計画を再検討する意思がないかどうか。
 第二に、国鉄は、第一次五ヵ年計画に基づいて、さらに第二次五ヵ年計画を設定し、現在までに、その三年を進めてまいりました。先般の委員会において、国鉄石田総裁は、輸送力の増強と、その安全確保のために、せめて、国鉄は、第二次五ヵ年計画を完遂したいと申しておられました。しかし残された期間は二ヵ年で、残余の六割の資金量の確保について非常に苦慮せられておるということを申しておったのでありまするが、この点について、この場所において、池田総理並びに運輸大臣から、せめて、この国鉄総裁が申している第二次五ヵ年計画の完遂について、確たる御返答をぜひお願いしたいのであります。
 時間がありませんので急ぎまするが、私は、鉄道事業者が守るべき保安基準を明確にした鉄道保安法を制定してもらいたいというふうに考えるわけです。この点については詳しく触れませんが、さらに、踏切道改良促進法を全面的に改正して、根本的な対策を立てるよう要望したいのであります。
 次に、先ほどの報告にありましたが、遺家族、負傷者の方々に対しての処置でございます。三河島事故の処置については、非常に時間がかかり、問題が多くあったと思います。特に、今回の事故に対しては、遺家族の方々、負傷者の方々に対して、丁重に、迅速に、しかも、幾ら丁重になっても丁重の度が過ぎるということはありません。この点についてどうせられるのか。もう少し具体的に今後の進め方について御説明を願いたいのであります。
 私は最後に、現在の国鉄の状況では、全国のどこでも、いつでも、鶴見事故と同様な惨事が発生する要素があるということを考えます。この際、鶴見事故の原因を根本的に究明して、安心して乗れる国鉄に、ぜひしなくてはならないと思います。営利主義に走らざるを得ない国鉄の現状、はなやかな新幹線工事に多額の金を使い、その陰の、じみな、重要な通勤通学の大衆輸送の置き去り等、大産業の伸展のみあって人間を粗末にする現在の世相、輸送の増強のみあって人命の尊さが忘れられてきている現状、これこそ、隠された事故の原因ではないかというふうに考えます。私は、これらの問題について、どうか、政府自体が全力を尽くして、国民に安心を与えるよう、最後に、心から期待をいたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(池田勇人君) 東海道線鶴見区における事故は、まことに残念でございまして、罹災者その他の方々に衷心より御同情申し上げる次第でございます。なお、今後の措置につきましては、この鶴見事故の原因を究明してから措置を講じなければなりませんが、しかし、その原因のいかんにかかわらず、やはり国鉄といたしまして、人命尊重あるいは事故防止のために、いろいろ方法があると思います。たとえば車両警報装置だとか、あるいは信号保安設備あるいは踏切整備、いろいろな点があると思いますが、これは今お話のように、第二次五ヵ年計画のうちに、たぶん載っておると思います。この五ヵ年計画につきましては、最近、石田総裁と私が直接にお会いすることになっておりまするが、国鉄運営、特に私は問題の事故防止につきましては全力をあげていきたいと考えております。また、事故防止につきましては、これは今回の鶴見事故の問題も、原因はわかりませんが、やはり注意不足による事故毛あると思うのであります。私はこの点におきまして、昔からの国鉄職員の真価を十分発揮せられて、事故防止に国鉄職員が万全を期せられるようお願いいたしたいと考えておるのであります。また、交通その他の問題で、いわゆる都市への集中、これを緩和しようとすることは、前々からわれわれ努力をいたしておるのであります。何分にも非常にむずかしい問題でございまして、時間がかかるのでございます。いずれにいたしましても、今お話のように、国鉄にこういう事故がありますと、国民の不安がつのるばかりでございます。われわれといたしましては、できるだけ国民に安心して国鉄を御利用いただくように努力を続けていきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣綾部健太郎君登壇、拍手〕
#46
○国務大臣(綾部健太郎君) 大部分は総理がお答えになりましたが、私は総理のお答えと重複しない点について申し上げます。
 まず遺家族、それから負傷者に対する弔慰につきましては、三河島事件には非常に長くかかったから今度は早くやれということは、私は、事故が起こって、直ちにそのことをまずやれということを命じてございまして、非常に早くできつつあると私は考えております。なお、さらに督励をいたしまして、御趣旨に沿うようにいたします。
 それから、踏切保安法であるとか、あるいは列車保安法という法的な措置を講ずる意思があるかということでございますが、諸般の調査が済み次第に、さようなことも考えていきたいと思っております。
 それから、国鉄の合理化につきまして、人員をいじるというような考えは今持っておりません。すべて保安ということ、安全運転ということを中心にいたしまして、企業性と公共性をそこなわないようにやっていきたいと、かように考えております。(拍手)
#47
○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
  午後一時二十九分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
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