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1962/01/25 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 本会議 第4号
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1962/01/25 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 本会議 第4号

#1
第043回国会 本会議 第4号
昭和三十八年一月二十五日(金曜日)
   午後四時四分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四号
  昭和三十八年一月二十五日
   午後三時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)、
 一昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。松澤兼人君。
  〔松澤兼人君登壇、拍手〕
#4
○松澤兼人君 私は日本社会党を代表して、他の同志の諸君とともに政府演説に対して質問をいたします。主として、私は、政治運用の点、外交方針、日韓会談、経済見通し及び三十八年度予算、さらに憲法の問題に限定して、政府の所信を伺いたいと存じます。
 質問の第一点は、政治運用の点であります。長い間空白となっておりました衆議院におきまして、国会の審議が正常化の軌道に乗り、聞くべきものを聞き、ただすべきものをただすという常道に戻りましたことは、まことに御同慶にたえないところであります。しかし、従来も、混乱のあと正常化され、一時は軌道に乗って審議に入るのでありますが、会期が切迫して参りますと、いつの間にか、審議の促進を中心といたしまして、強行採決、会期延長、単独審議、単独採決ということが行なわれ、その結果、野党の審議拒否となって、混乱がさらに激化するのであります。その第一の理由は、自民党政府が多数意識の過剰から、多数決によって問題を処理しようという権力意識からきているのであります。国会が、いかに多数党でありましても、与党単独で構成、運営されているわけではないのであります。そこで、総理にお伺いいたしたいのであります。
 第一に、今回の正常化の重要案件の一つは、石炭政策に対する両党間の話し合いの確認であり、他は国会構成並びに運営に関することであります。第一点は、衆議院におけるわが党の成田書記長の質問に対する政府の答弁によりまして、やや明らかとなりましたが、第二点の、国会運営が与野党の共同責任であること、そのため、副議長は野党第一党に、常任委員長は各派勢力に按分して割り当てることについて、与野党の努力によってこれを通常国会中に何らかの結論を出すこととなっているのでありますが、総理として、また自民党の総裁として、御意見を伺いたいのであります。
 第二の質問は、政府の国会尊重の心がまえについてであります。国会を尊重するということは、常識として何人もこれを否定するものではありません。しかし、現実には、総理初め各大臣が国会内部において、きわめてその発言が消極的であり、われわれが聞かんとしても、政府はこれに対して国民の聞くべきものを表明しておらないのであります。憲法は国会が国権の最高機関であると規定しているのでありますが、国会対政府の関係の現状から見れば全くの有名無実であって、国会は単なる法律の条文の審議に限られて、大所高所からの政治論争が聞かされず、重要な問題はほとんど国会の中においてこれを聞くことができないのであります。国民に非常な不満と不信を抱かれていることは事実であります。政府が、もし重要問題について国会を中心として発言するようになれば、国会の権威を高める上に大きな貢献をするであろうことは当然であります。総理は、御自身はもとより、他の閣僚に対しても、上述の点について、何よりも国会を第一義として、これを通じて重要案件について所信を率直に表明するように、今後の努力をなさるお考えがありますかどうか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、外交の問題についてお尋ねいたします。
 昨年一年を通じて世界の歴史に最大の外交問題は、言うまでもなくカリブ海域における危機であったのであります。このことについては、総理も指摘されております。今日平和を念願する人類は、この危機が良識と理性によって脱却されたことに、最大の敬意と安心を感じているのであります。現在の世界人類の幸福が、かりに外交という路線を通じて達成されると考えるならば、こり危機が、力による解決ではなく、善意に基づく外交による解決であると、深く確信をしているものであります。総理は、施政方針演説の中で、「西欧陣営に政治的、軍事的、経済的並びにこれらの総合的な力に対する確固たる自信を与えた」と言っておりますが、これは明らかに西側の勝利をうたい、実力の勝利をたたえているとも受け取られるのであります。総理は、この危機がどちらの勝利に終わったとお考えになりますか。どちらの側が勝利したか。だれが勝ったか。これについては、理性が勝った、平和と諸国民の安全の事業が勝った、というべきではないでしょうか。フルシチョフは演説して、「双方まじめな態度をとり、もしも事態の危険な発展を克服できるような措置がとられなければ、第三次大戦が起こり得ると考えた。相互の譲歩と妥協の結果、危険な緊張を取り除き、情勢を正常化することの合意が達成された」と述べているのであります。ケネディも、国内の強硬分子を抑えて妥協し、フルシチョフも、キューバに置かれていた弾道ロケットを引き揚げ、IL28型機を運び出して妥協をしたのであります。戦争を未然に防ぎ、戦争の拡大を抑制し、核兵器を含む戦争の勃発を全力をあげて阻止しようということは、外交の最大の任務でなければならないと思うのであります。総理はしばしば、中立は幻想であると述べているのでありますが、たとえば国連の舞台において考えてみても、中立諸国の貢献は、最近特に顕著なものがあることは言うまでもありません。外交における最大の理念について、演説の中に言われております「世界の平和と繁栄のため」の独特な貢献とは、いかなるものであり、いかにしてこれを具現するか、心境を伺いたいと思います。
 最近における国際外交における明るい話題の一つは、米ソ間に核実験停止の動きが進行しつつあることであります。池田総理も、その施政方針演説の中で、この点について、核実験停止協定締結交渉がさらに進展を見ることを強く期待し、地下実験の査察方式について米ソ両国間の話し合いに打開の糸口が出てきたことを喜ぶと述べております。米ソの当事者の間では、その交換文書の中で、いわゆる「黒い箱」を北海道に置くことも考慮されていると新聞は伝えているのでありますが、はたしてそのような話が、両国のいずれかからあったのでありますか。政府は、特に米国に対して、そのような話がソ連と行なわれているかどうか問い合わせたことがあるかどうか、事実はどのようになっているか知りたいのであります。なお、話し合いが進展ずることに期待し、要請するのみでなく、総理自身もこれに対して協力する必要があると思いますが、心境はいかがでございますか、承りたい。
 第二点は、ケネディ大統領のいわゆる中国封じ込め発言については、ここで触れませんが、最近の米国の一連の動きを、新聞によると、何か共産圏と日本との関係について共通した政策を持っているのではないかと心配きせるものがあるのであります。すなわち、その一つは、日中貿易の発展促進に対して、米国は好ましからざる気持を持っているのではないか。対ソ貿易の促進についても、わが国の財界代表が油輸送管輸出の取りつけをやっている最中に、NATO及び米国は、これを中止するようにと水をさしたりすることは、日本をあくまで米国側に従属せしめ、共産圏貿易に日本が深入りすることに反対する態度であって、われわれは、まことに理解に苦しむところであります。日ソ貿易交渉は、幸いに今回妥結をみたようでありますが、総理は、これらの共産圏貿易について、自主的な立場において促進される意思があるかどうか、見解を承りたいのであります。
 次に、日韓会談の問題についてお伺いいたします。日韓会談の真のねらいは、アメリカのアジアにおける露骨な反共政策に対する日本の協力であって、極度に不安定な状態に置かれている朴軍事政権に対して、池田内閣が国民の血税によって、てこ入れをし、その崩壊をささえようとするものにほかなりません。申すまでもなく、朴軍事政権はクーデターによって出現したものであって、戒厳令によって南北朝鮮の平和と統一を目ざす南朝鮮の人民を弾圧してきました。憲法を停止し、言論、結社の自由を奪い、議会、政党など、あらゆる民主的な団体を解散させ、政府を批判する新聞人を死刑にするなど、その性格はきわめて反動的なファッショ的政権であるといわなければなりません。この性格は、憲法制定、民政移管によっても変わるものでないのであります。この政権を必死になってささえている勢力は、言うまでもなくアメリカであって、アメリカの真意は、反共軍事基地としての南朝鮮を確保することにあり、これによって、米、日、韓、台の軍事話し合いを強め、東北アジア軍事同盟を目ざして、アジアにおける反共軍事体制を強化することが目的と考えられるのであります。池田内閣の言う朝鮮との諸懸案の解決は、その対象が南朝鮮だけの問題ではなく、南北朝鮮全体にわたる問題でなければならず、これを南朝鮮の軍事政権を相手として妥結をはかることは、南北朝鮮の統一を阻害し、日本国民と朝鮮人民との友好を妨げ、新たなる敵対関係を作るものであります。さらにまた、日韓会談によって日本独占資本が南朝鮮に進出し、帝国主義、軍国主義の復活を一そう露骨に押し進め、アジアの反共体制の中心としての日本の役割を確立しようとしているのであります。かくして日韓会談は、日本とアジアにおける戦争準備の中心拠点として固め、極東に新たなる緊張を呼び起こし、日本の平和と安全独立を脅かすものであります。明らかに日韓会談は、日米安保条約の具体化であり、きわめて危険な内容を持っており、われわれは強く反対しているのであります。もとよりわれわれも、隣国朝鮮民族全体との友好関係を復活し、四十年の長きにわたる植民地支配と、戦争中に与えた多大の犠牲を償い、共存共栄の道を共に進むことは、当然でありますが、それは、まず朝鮮全体の統一と団結をはかることを第一とし、いささかも南北の間に水をさすような措置はとるべきでないと考えるのであります。現在のまま韓国と交渉の妥結を急ぐとしたならば、三十八度線以北の人民に対しては、将来いついかなる償いをなすのでありますか。おそらく日韓会談の妥結は、北朝鮮を一そう遠いところに追いやる結果となるであろうことは明らかであります。そこで日韓会談の問題について、池田総理に次の諸点をお尋ねいたします。
 第一点は、現在行なわれている日韓会談妥結の見通しについてであります。われわれは、韓国のみを相手とする現在の交渉に反対し、その即時中止を要求しているのでありますが、政府はこの国民の声を無視して、一方的に会談の妥結を急ぎ、交渉の内容を国民に知らしめず、これを強行しようとしているのであります。それが朝鮮民族全体に与える影響を考えて、慎重を期することは当然であります。また、国民が交渉の内容を知悉して、それに対する厳正なる批判を下し得る状態に置くことが必要であります。昨日及び本日の各新聞は、従来日韓会談の韓国側の当事者であった前情報部長金鍾泌氏が、ききに軍事政権の要職を退き、今また一切の党職を辞任したと伝えております。内部の事情が明らかでありませんので、論評は避けたいと思いますが、少なくとも朴軍事政権がはなはだしく不安定であること、これを相手としてどのような交渉をしても、韓国人民の利益と幸福は守られないということは事実であります。今は交渉中止の時期であります。軍事政権の安定性について、率直な総理の見解を表明していただきたいのであります。
 なお、金氏と請求権問題に対して合意文書を交換した大平外務大臣は、金氏の政治的失脚についてどのように考えておられるか、金氏の今後の動きいかんによっては、金・大平合意文書は、金氏が相手方政府を代表するものでなく、したがって外交上この文書は無効であり、交渉は一切振り出しに戻ったと考えられるのでありますが、外相の御意見を伺いたいのであります。
 第二点は、請求権の問題であります。政府は国会における答弁において、法律的根拠のあるものに限ることをしばしば答弁しているのでありますが、最近の新聞報道によりますと、全くどんぶり勘定でありまして、政府のこのようなあいまいな措置は、かつてのタイ特別円の場合にもとられ、高度の政治的判断という、まことによりどころのない妥結の方法をとっているのであります。最近の報道によると、政府は日韓交渉の経過の中で、昨年十二月、無償供与三億ドル、政府借款二億ドルをもって、この請求権問題の現実的な解決を見たということでありますが、その真相を伺いたい。また、金・大平合憲文書の内容をここに示していただきたいのであります。政府はいつ法律的証拠のある請求権の考えを放棄したのでありますか、明らかにしていただきたい。
 第三点は、李ライン及び竹島の問題についてであります。李ラインは国際法上不当不法のものであることは、池田総理も明確に認めているところであります。すなわち、昨年八月二十八日の衆議院本会議におけるわが党河上委員長の質問に対し、池田総理は、李ラインの問題はお話のとおり国際法上不法不当なものであります、と述べているのでありまして、総理の心境は今日においてもそれに相違がありませんか。竹島の問題についても、これを含めて、総理は、日韓の正常化の際には全部を解決する方針であると述べているのでありますが、李ライン及び竹島の問題については、まだ何らの解決のきざしが見えていないようであります。李ラインの問題については、韓国側から李ラインにかわる暫定漁業協定案を示してきたということであります。その内容は、季ラインをそのまま日本漁船に対する操業禁止水域としようとするものであるといわれているのであります。それが真実であるとすれば、日本の立場から、とうてい容認することのできないものであり、池田総理のいわゆる不法不当な点は、どうも是正されておらないのであります。李ライン問題に対する交渉の現状について伺い、また解決の信念について、総理に伺いたいのであります。
 竹島の問題についても、この李ラインの中にあるという単なる事実から韓国側はその領有を主張しているのでありまして、歴史的に見て日本固有の領土であることには何らの疑いのないととろであります。これを、最近、自民党の大野副総裁の発言のように、共同領有などということは、全く日本の国民感情を無視したものと言わなければなりません。拙速な方法でわれわれの正当な権利を放棄し、これをあいまいなものとすることは、断じて許せないことであります。竹島の問題については、従来、国際司法裁判所に提訴することを繰り返し政府は述べているのでありますが、現在もその信念に変わりはないのか、今後その解決のためにはどのような交渉をされるのか、明確にしていただきたいのであります。
 次に、わが国の経済見通し及び三十八年度予算についてお尋ねをいたします。基本的な問題については総理から、他の問題については大蔵大臣より御答弁を願いたいと思います。
 第一は、三十八年度の経済成長率についてでありますが、経済企画庁の最初の案では、当面滞貨金融をささえとして生活水準はあまり落ちない、しかし、製品在庫がふえ続け、市況への圧迫となるほか、賃金上昇などの影響を受けて、企業の伸びはあまり期待できない、国際収支の面でも景気上昇はあまり大きくならない、などの理由から、成長率を名目で七・五、実質で五・五程度と見込んでいたのであります。しかるに明年度予算では、自然増収分を二千六百三十八億円と計上しているのであります。これは、経済企画庁の成長率よりは、はるかに甘い水増しの成長率であって、このような甘い水増しによって積極的な膨張予算の編成がなされたのであります。もし経済企画庁の見通しのとおりであるといたしますと、自然増収は二千億から二千五百億円程度にすぎず、したがって、減税も不可能となり、来年度予算は、その性格は変わり、著しい困難を生じたことは必至であります。この点について経済企画庁長官並びに大蔵大臣の明確な御答弁を伺いたいのであります。
 第二点は、減税の問題であります。政府は毎年、総理の諮問機関である税制調査会の答申を尊重して、その方針を採用して減税額を決定することを例としているのであります。しかるに、来年度減税について、政府は、この答申を無視して、答申の初年度三百九十三億を初年度二百七十五億と抑えてしまったのであります。答申は、成長経済のもとにおいて実質増税を防ぐために、税負担の調整のため、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、専従者控除を各二万円引き上げるべきだというのであります。しかるに政府は、このうち基礎控除のみを一万円引き上げ、配偶者、扶養、専従者の控除を五千円に抑えたのであります。その結果、一般所得税減税は二百七十五億にとどまったのであります。しかもその反面、答申の中で、配当課税、利子課税を当然本年三月限りで廃止すべきであるとの意見が多かった租税特別措置法を、さらに二年間延長するとともに、その税率をさらに引き下げることによって、大企業に対しては新たに二百二億の減税の恩恵を与えているのであります。総理はこの答申に対してどのように考え、政府の減税方針を決定したのであるか、一般減税と政策減税についての御所見を伺いたいのであります。このような政府の誤った方針によっては、減税は一般俸給生活者にとってはほとんど何らの恩恵を与えないだけでなく、当然予想される物価値上がり等によって、この程度の減税はかえって増税となるおそれがあるのであります。
 第三点は、上にも述べたように、むしろ良心的とも考えられる経済企画庁の経済成長率を、大蔵大臣は、名目八・一、実質六・一と水増しした上に、税の自然増収額を三千百八十億円と見込み、減税抜きで二千六百三十八億円を計上しているのであります。経済企画庁の成長見込みですら問題があるのに、この水増し成長率で、はたして二千六百三十八億の自然増収額を確保できるのでありましょうか。もしこれが困難であれば、勢い、これを確保するために、税の捕捉率を引き上げ、滞納処理を厳格にするなど、徴税強化が起こるのではないかと心配するのであります。国民は、一方で、あめをしゃぶらされ、一方では徴税強化によって頭をなぐられるという状態に追い込まれているのであります。大蔵大臣にお伺いしたいのは、このような徴税強化の心配がないか、特に中小企業に対する減税の効果についてお答えを願いたい。
 次に、三十八年度予算の性格についてお伺いいたします。
 三十八年度予算は、めでたく、最初の方針どおり、昨年末、十二月三十一日午前の閣議で決定されました。この予算の中には、従来自民党の内部にくすぶっておりましたもろもろの懸案も、ことごとく、予算に織り込むか、あるいは調査費の名目で将来にその実現が約束されるという、全くの無責任、無性格な、義理人情的な膨張予算となったのであります。その予算編成の過程をはたから見ておりますと、予算編成権が実際に政府にあるのか、自民党にあるのか、あるいは圧力団体にあるのか、了解に苦しむところであります。総理としては、この来年度予算に対して、どういう信念をもって向かわれたか、お尋ねいたしたいのであります。
 さらに、このような膨張積極予算のために、三十八年度財源を食いつぶし、特に、第二次補正により、本年度一般会計から産投特別会計への繰り入れ三百五十億円等を考えると、三十九年度予算編成は、きわめて困難となるように思われるのであります。すなわち、三十八年度の経済成長率はかなり低目となり、したがって、自然増収は大きく期待できず、三十八年度予算で調査費を計上した各種の政治的要求も、三十九年度では数十億円の予算額となり、日韓会談の無償供与、万一の災害の発生対策等を考慮すれば、本年ありとあらゆる財源を使い尽くした後の三十九年度予算は、はたしてどのようになるか、われわれとしては今から危惧の念を抱かざるを得ないのであります。総理並びに大蔵大臣からお答えを願います。
 さらに、その内容について、ただ一点大蔵大臣に対してお伺いいたしたいのは、結局この予算が最も忠実に大企業への奉仕を眼目としているのではないかという点であります。いずれも、政府の予算が、結局は経済基盤の強化という名の大産業擁護であります。その上、新産業都市建設、あるいは地方開発計画等、一連の国づくりは、ただ、いちずに独占資本に奉仕することを念願としたものであると言わなければなりません。はたして、この予算の中で、憲法の中でいわれております、国民の健康にして文化的な最低限度の生活を保障するための予算というものが、どの程度、どの割合を占めているか、明らかにされたいのであります。
 さらに問題は、三十八年度予算から実質的な赤字公債が始まり、三十九年度では、形式、実質ともに赤字公債が発行されるのではないかという点であります。
 三十八年度の財政投融資計画というものを見ましても、政府関係機関に膨大な投資が増加されているほか、新規の公団が設置され、それらは、それぞれに、公募債借入金を資金として持っているのであります。原資見込みによれば、その金額は千八百八十二億円でありまして、そのうち政府保証債は千三百三十二億円となっております。また、外貨債等五百六十八億円の中には、産投外債二百三億円、政府保証外貨債が二百三十四億円、世銀借款百三十一億円が含まれているのであります。すなわち、事実は、一般会計の歳出入不足分は政府保証の債券発行という形式をとっているのであります。これは明らかに、実質的には赤字公債の発行であり、はたして三十九年には赤字公債を発行しないで済むかどうか、この問題についてお伺いいたしたいのであります。
 最後に、憲法の問題でございますけれども、時間が参りましたので、ごく簡単に申し上げたいと思います。
 私たちが総理の施政方針演説を聞いておりましてまことに不思議と思いますことは、あれだけの大演説の中におきまして、憲法という言葉が一言も使われておらないという点であります。人づくり、国づくりということがいわれますけれども、何よりも大切なことは、結局、国民に対し、また青少年に対して、わが国の憲法を守るということ、その精神を旺盛ならしめるということが、最も大切な人づくりであると考えるのでありますが、この点につきまして、総理はどのように考えられますか。憲法の完全実施ということを私たちは強く要望しております。行政の面を見ますと、必ずしも政府は憲法を守っておらず、幾多の憲法違反と考えられるような行為をしておられるのであります。完全実施の面について政府はどのように考えられるか、その所信を承りまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 民主政治、また議会政治のあり方につきましては、たびたび申し上げましたごとく、私が政府を組織いたしまして、みずから姿勢を正し、少数党の意見も十分聞いて、そうして最後には多数決の原則でいくということに、変わりはございません。そうして議会政治を守るということは与野党共同の責任でございます。したがって、この意味において話し合いを進めていきたいと考えております。
 なお、議長、副議長の問題、議会の構成の問題につきましては、内閣総理大臣として答えるよりも、自民党の総裁としてお答え申し上げます。私は、今のような現状では、議長、副議長はわが党でとるよりほかに仕方がない、こういう考え方を持っております。今後、この議会政治の進展に伴いまして、議長の権限が非常に強くなり、ああいういやな問題が起こらないようになったら考えてもよろしゅうございますが、ただいまのところは考えておりません。
 外交問題につきましての御質問でございますが、キューバの問題は、施政方針演説で申し上げましたごとく、米ソ両国首脳の戦争を回避しようとする非常な御努力によってできたのだ、その背後には自由国家群の団結があった、こういうことを言っておるのでございます。両国首脳の御努力に対しまして、良識ある忍耐強い努力に対しまして、私は敬意を払うのでございます。どちら側が勝ったかというふうなことは、これは共産圏ではいっておりますが、自由国家群の間では、どっちが勝ったとは言っておりません。われわれは、どっちも勝ったのだ、こう考えておるのであります。
 それから、日本の中立主義が幻想だという、日本が中立主義をとることは現実に反する、こういうことでございます。ほかの国が中立主義をとろうがとるまいが、これは私らの関係することじゃございません。日本は、その置かれた立場からいって、中立主義というものをとらないのでございます。これは私は、東南アジアの相当の人も認めておると思います。また、相当大きい国が中立主義でいいか悪いかという問題は、やっぱりいろいろ事実が証明してくると思うのであります。
 それから、核実験停止に関しましては、お話のとおり、米ソ両方で話し合いが進んできたということは、施政演説で申し上げましたように、非常に喜ぶべきことで、われわれ日ごろからの悲願でございます。これに対しましては極力協力いたしたいと思います。ただ、問題の「黒い箱」が北海道に置かれるかどうかということは、まだわれわれのほうに話がございません。
 次に、中共貿易、それからまた日ソ貿易の問題、私は常々申し上げておりますごとく、政府の態度としては政経分離で貿易の拡大の方向をとっております。中共に対しましても、私らは延べ払いにつきまして、他国とは違った、非常に中共に条件のいいような、すなわち、延べ払いというものは初めから分割して払うんですが、中共のは日本の延べ払いと違って、延べ払いというのは一番あとに一ぺんに払うんだそうですが、そういうこともある程度やむを得ず認めておるので、相当私は、立場としては、態度としては前向きに積極的にいっておる。ただ問題は、日本が買うものは少ない、向こうは買いたがる、そうして金がない、こういうことが多くを期待し得られない状況であるのであります。で、台湾とかあるいは韓国とか、あるいはタイのような国でも、一億数千万ドルを売って、しかも延べ払いはあまりしない。しかし、中共はなかなかそうはいきません。日本から五千万ドルぐらいがせいぜいでございます。そうして、そのうち半分以上は延べ払いと、こういうのですから、他の自由国家群よりなかなか条件がよくない。そういうところであまり多く期待できないと言っておるのであります。
 それから日韓問題につきましては外務大臣からお答えさせますが、御質問の金鍾泌の問題でございます。これは、日韓交渉は、あくまで両方の代表、すなわち日本の杉代表と向こうの哀代表でやっておるのであります。しこうして、その下話として向こうの政府職員であった金情報部長が大平大臣と会うこともありましょう。また金鍾泌は朴議長の親書を持って参る、こういうような下話でございます。あくまでわれわれは、韓国政府、韓国民を相手として、そうして両方の代表でやっておる。今は金鍾泌が政府から離れたとか、あるいは党の組織委員から離れたからといって、日韓会談をどうこう言うのは、根本の趣旨が私はわかっていない。われわれは韓国政府を相手にしてやっているのであります。
 また李ライン問題、竹島問題、あるいは韓国人の日本における法的他位の問題、これは請求権の問題と一体として解決することはたびたび申し上げたとおりでございます。
 なお経済問題につきまして、水増しとか何とかのお話でございます。また企画庁の調査と大蔵省の調査と違うとか、企画庁に大蔵省の言うことを聞かした、こんなことは絶対にございませんで、これは経済の動きというのは随時ずっと見ていくので、閣議決定がそのもとをなすものでございます。企画庁も、大蔵省も、私も、他の閣僚も、全然異論はないのでございます。その点を十分お考え願いたいと思います。
 また、減税方針につきまして税制調査会の意見は聞きました。しかし、その意見も相当取り入れましたが、日本の財政、経済、減税は内閣の根本方針でございますので、その意見は一応尊重いたしますが、われわれの所信に向かってやっていくことは当然でございます。私は減税につきまして、日本の状態からいえば、個人の所得税の減税もありますが、やはり今のように経済が発展して、株を持っているのは、何も資本家ばかりじゃございません。農村に至りましても、貯蓄や、あるいは株式投資がはやっているとき、この資本の蓄積ということが日本の将来の経済発展に絶対必要でございます。絶対必要でございます。だから、私は資本の蓄積ということで、政策減税――政策減税というのは言葉が悪い、財政法上どうかと思いますが、私は個人所得税の、いわゆる勤労所得その他の事業所得を減税すると同時に、その勤労から出てきた貯蓄、いわゆる預金、あるいは勤労から出てきた株式投資につきましても、これを優遇することは、経済の発展上ぜひ必要なことだと考えているのであります。
 なお、予算編成権につきましてはいろいろ議論がありますが、われわれ内閣は、憲法に示しているとおり、編成権を持っております。ただ政党内閣でございますから、、政党の意見を聞くことは、民主主義の上から言って当然のことでございます。
 なお、三十九年度予算につきましていろいろ御心配のようでございますが、経済の発展や繁栄を誇っているアメリカは、過去六、七年の間に公債を発行しなかったのは一年だけ、あとは全部公債を発行しておりますが、ああいう繁栄をしておる。われわれは公債を一般会計で発行せずに、減税をし、国債を償還しても、なおかつこういう発展をしておる。われわれはこれを続けていくならば――一般会計では、ただいまのところ公債を発行する考えはございません。ただ、経済をもっとよりよくして、社会資本をふやしていけば、ある程度国債を発行するということも考えられるかもわかりませんが、今までみんなが心配していたように、国債を一般会計で出したらインフレになるとかなんとかいう議論は、このごろあまり通らぬようになりまして、相当やっておる。私は、あえて一般会計で赤字公債を出すとは言いませんけれども、やはりその時代、その国の状況によって、弾力的財政政策を講ずることが国民のためになることと、私は確信しておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(大平正芳君) 外交問題に対する御質問のあらましは総理大臣からお答えいたしましたが、若干補足させていただきます。
 北海道にブラック・ボックスを置いたらという話が米ソ両国首脳の書簡交換にあったということを聞きましたので、在外公館を通じまして照会いたしましたところ、ただいまのところ例示的な考え方であって、その場所に置くことで日本政府と交渉することに決意したという段階ではないようでございます。
 日韓交渉につきまして妥結の見通しのお話がございましたが、私どもは、いついつまでに妥結しようという特定の目標は持っておりません。特に急ぐわけでもございませんが、特に怠けるわけでもございません。それから金鍾泌氏の辞任問題と朴政権の安定に対しましては、政府として注目はいたしておりますけれども、論評すべき性質のものではないと思います。それから金鍾泌氏と私の会談は昨秋二回にわたってございましたが、それは総理から御答弁ございましたように、予備交渉の促進的な役割を果たすためにやったものでございまして、そこで到達した理解は予備交渉にあげて正式に討議され、処理されつつございます。
 それから請求権の問題につきましては、本国会の外交演説で述べておるわけでございまして、そこから御理解いただきたいと思います。問題は、法律上の根拠があるものだけを認めるということは私どもも賛成でございまして、その精神は生きておるわけでございます。そういうことによってただいままでやって参りましたが、依然として法律的な見解、その根拠、基礎になります事実関係の立証におきまして、非常な懸隔があるという状況でございますので、今回の私どもの構想は、経済協力というものを将来に向かってやるということの随伴的な結果として、そういう厄介な問題はこれで片づいたということを確認するという構想でございます。そういうことで目下折衝をいたしておるわけでございます。
 李ラインの不法不当でございますことは、従来から日本側の見解としていつも申し上げておるとおりでございまして、そういうものの撤回を求める意図に変わりはございません。竹島につきましても、日本政府といたしましては国際司法裁判所の裁決に待つという提案をいたして、せっかく交渉中でございます。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和三十七年度の租税、印紙収入を、当初二兆四百億円と見積もっておったと存じます。そこで、税法の改正がございませんでした場合に、そのベースで三十八年度を考えますと、二兆三千五百億円くらいに、私どものほうで計算をいたして、なりましたので、そのいわゆる松澤さんのおっしゃいました自然増収分というものは、したがって三千百億円くらいになるわけでございます。そこで、五百億円余り減税がございましたから、二千六百億という数字をおっしゃったんだろうと思います。この積算の基礎、さらに、大蔵省では、各税ごとに税収見積もりをいたすわけでございますが、基礎なり考え方なりには私ども無理はないように考えます。問題は、実質六%という成長が可能であるかどうかということにやはり帰着するのではなかろうか。その点は、一般会計もそうでございましたが、財政投融資でかなり新規の構想を立てましたし、また、日本銀行のオペレーション等の問題も、新しい制度が動き出すに至りましたので、運営さえ誤りなければ、六%程度の実質の成長が可能であろうと考えます。したがって、その前提がくずれない限りは、税収の見積もりに無理があるというふうには考えておりません。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 経済見通しと予算案につきましては、総理大臣からほとんどお答えになられましたが、二、三の点について補足して御説明を申し上げたいと存じます。
 第一点の、三十八年度の経済見通し及び成長率が少し甘く見ているのじゃないか、もちろん自然増収分に対しても水増しがあるのではないかという問題につきましては、宮澤経企長官からただいま申されたとおり、名目八・一%、実質六・一%で計算をいたしておりまして、水増しはいたしておりません。これが税の各税別の問題につきましては、時間もかかりますので、予算委員会等で詳しく申し上げたいと存じます。
 第二点の、税制調査会の答申を政府は無視しているというようなお話でございましたが、これは、総理がその精神及び基本的な態度に対して申されたとおりでありまして、政府は税制調査会の答申を十分尊重の建前をとっておることは、御承知のとおりでございます。なお、今度の答申は、三十八年度の予算編成に際してぜひやらなければならないという建前に立った面に対しての御答申がございましたが、この税制調査会の発足に際して、日本の経済、自由化その他に対する産業施策等に対しての減税の方向に対しても、適時適切なる答申を求めたい、という諮問案が提出をせられておりまして、党の税制調査会、また政府の税制調査会の答申等を十分勘案調整をして減税を行なったのでありまして、現在も、将来とも、政府は調査会の答申を尊重するという建前でございます。
 それから、今度の減税で、あまり低所得者に対しての影響がないようなお話がありましたが、例をあげて申しますと、独身者で現在十四万二千円の方が、昭和三十八年度には十五万一千円まで、平年度には十五万五千円まで、夫婦子供三人の方は、四十一万六千円の現行のものが四十三万八千円に、平年度は四十四万五千円にというふうに、基礎控除が引き上げられておるわけであります。
 なお、来年度における物価等の問題でありますが、御承知のとおり、物価の上昇を二・八%程度に見込んでおりますので、三十七年の税負担を基礎として、名目的な所得の上昇に伴う負担を検討してみますと、中小所得者についてその負担の増加は十分調整をされ、実質的には増税にはならないという建前をとっておるわけであります。
 第三点につきましては――税の自然増収が過大に見積もってある。過大に見積もっておるだけではなくて、徴税強化の心配はないかということでございますが、税の自然増収は、先ほどもお答えをいたしましたように、適正な見積もりに基づいておりますので、徴税強化の心配はないと考えております。
 第四点は、予算編成に対して、自民党、それから圧力団体というような表現で、予算編成権はいずれにあるかというお話でございましたが、総理の御答弁のとおり、財政法に基づいて政府が最終的な決定をいたし、その責任は政府の責任でやっておるわけであります。しかも、との予算が大企業への奉仕でないかというお話がございました。しかも、大企業に対する奉仕というのは、減税面において俗に言われる政策減税を行なっておることが大企業に対する奉仕というふうにお考えになっておるかもわかりませんが、予算編成大綱に明らかにいたしておりますように、世界情勢を見るまでもなく、自由化は避けられない状態でありますし、日本が新しい国際社会の一員として立ち上がっていくために、置場自由化に対する国際競争力を培養していくという考え方で減税をいたしたわけでありますので、輸出の振興並びに虚業基盤の強化を重点的に考えておるだけでありまして、これが俗に言われる大企業偏重というような考えは誤りだと考えておるわけであります。
 なお、国民生活に対する、特に生活保障等のための経費として、三十八年度の予算にどのくらい計上せられておるのか、減税等をやったために、また産業政策等に重点を置いたために、社会保障の経費等が例年よりも減額せられておるのではないかという御懸念だと思いますから、ここで数字をあげて申し上げておきます。三十八年度予算における一般会計予算総額に対する生活保障関係の経費は一一・九%であります。これが、三十三年度は九・六%、三十四年度は一〇・四%、三十五年度は二・六%、三十六年度は、一二・七%、今年度が一二・四%であり、なお、三十八年度は一二・九%を計上いたしておるわけであります。でありますから、いろいろな施策を重点的にやりましたが、生活保障費等に食い込んでおるというより、むしろ重点的に社会保障施策を行なっておるという事実を申し上げたわけであります。
 それから、三十八年度の予算が膨張して、編成困難になるのではないかというお話でございましたが、これは、毎年度の予算編成にあたりましては、経費、資金の効率的重点的配分に極力努力をいたしておるところでありまして、三十九年度になって経費が急に膨張して、予算編成が困難だという事実は全く考えられないのであります。
 最後に、赤字公債の問題でございましたが、赤字公債は、先ほど総理がお答えになりましたとおり、赤字公債を発行するようなことは考えておりません。おりませんのみではなく、三十八年度の一般会計、財政投融資及び民間資金の活用よろしきを得れば、三十九年度も経済は正常に成長をし、税収も確実に見積もられ、赤字公債等発行したくない、また、そのような事態を築いて参りたい、こう考えておるわけであります。(拍手)
#9
○議長(重宗雄三君) 総理大臣から答弁の補足を求められましたので、これを許します。池田内閣総理大臣。
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) 御質問に対しまして答弁漏れがございました。それはソ連に対する油送管の問題でございます。これはNATO諸国におきまして、ソ連への油送管を輸出禁止したらどうかという話があることは事実でございます。しかし、まだ結論は出ておりません。われわれは、既契約の分は輸出いたしております。今後の問題といたしましては、各国の状況を見ながら自主的に考えたい。ただ、これがココムの品目になるということになれば、これは従わなければなりません。しかし、今のところ、なかなかNATOの各国もまだ意見が一致していないようでございます。
 なお、憲法問題につきましては、これはもう私は当然のことで、われわれはだれよりも憲法を守っておると心得ておるのでございます。(拍手)
#11
○議長(重宗雄三君) 安井謙君。
  〔安井謙君登壇、拍手〕
#12
○安井謙君 私は、自由民主党を代表いたしまして、昭和三十八年度予算に関連しまして、総理並びに関係閣僚に対し若干の質問を行なわんとするものであります。
 まず第一に、私は、総理の国政に対する心がまえをお伺いいたしたいのであります。総理はかねてより、施政の中心課題として、いわゆる人つくり、国づくりを標傍され、鋭意その施策を進められておられるやであります。一国の宰相として、国民の福利を願い、りっぱな国民の育成を念願とされるその御心境に対しては、われわれは大きな共鳴を覚えるものであります。しかしながら、人つくり、国づくりの根本は、国民の政治に対する信頼感にあると思うのであります。背骨のある施策が行なわれ、国民が今日に生きがいを感じ、明日への希望を燃やすことでなければならないと思うのであります。池田総理は御就任以来、施政に対する根本態度をみずから正姿勢と表現せられております。思うに正姿勢とは、国民の世論には慎重に耳をかし、世論の納得と了解のもとに施策を進める、ということであろうと思うのであります。民主主義政治のもとにおいて、政局の最高責任者が一方的に国民に指揮命令するがごとき印象を与えることは、政治のあり方として好ましくないという総理の御持論は、まことにごもっともだと思うのであります。また、国会の審議についても同様でありまして、あくまで寛容と忍耐の精神をもって、与野党が相寄り、条理を尽くして議論し、その結果、多数決の原理に従って決定すべきだという御主張でありましたが、最近に至り、寛容と忍耐にもおのずから限度があるという意味の御発言も見受けるのであります。おそらく、前国会の経緯等にかんがみ、多数横暴はとるべきでないが、同時に、審議権放棄というような少数横暴もまた断固として排すべしという御心境であろうと思うのであります。第四十三国会再開にあたりまして、あらためて総理の御決意を承りたいと存ずるのであります。
 たいへん口幅ったいようなことを申すようでありますが、ことしは池田内閣の施政にとり、課題集約の年であると言われております。一方、世論の一部では「泰平ムード」などと言う向きもあるようでございます。世の中が泰平である、もとよりけっこうなことであります。私は、あえて事をかまえ、相手方を挑発刺激するがごとき政治が賢明なものでないことは、当然であると思います。むしろ、国民の各層が調和を保ち泰平を謳歌することこそ、政治の妙諦だと思うのであります。しかしながら、今日わが国の置かれている現状をつぶさに観察いたしますと、国際的にも、国内的にも、必ずしも安堵ばかりはしておられないことは、聡明なる総理みずから御承知のとおりであります。緊張する国際情勢、アジア外交の具体的展開、国民所得の格差解消、貿易自由化の対策、当面する石炭問題、文教刷新、選挙制度の根本的改正、いずれを取り上げてみましても、問題は相当深刻であります。山積する今日の課題に、総理は明敏なる頭脳と果断な決断力をもって対決されると思いますが、あらためてその決意のほどを伺いたいと思うのであります。
 次に、私は外交問題について所信をお伺いいたします。
 まず第一点は、アジアに位置する日本といたしまして、政府はいかなる態度を堅持されるかということであります。池田総理は一昨年来、米国初め東南アジア各国、ヨーロッパ各国を歴訪されまして、日本外交の進路を探られたのであります。ことしこそは、この答案を国民の前に打ち出さるべき年と思います。すでに総理の胸中にはその輪郭が整い、外務大臣の手元には青写真が用意されつつあると思うのであります。現在、国際情勢は、キューバ問題以来、今もなお微妙な雲行きを見せております。その間にあって、自由主義陣営ではEECの問題、共産圏では中ソの深刻な対立など、それぞれ緊急に調整を要すべき課題を包含しております。総理は、昨年の訪欧にあたって、米国、西欧、日本による「自由主義陣営の三本の柱」というスローガンを掲げられたのであります。私は、これは単なるスローガンではなく、わが国の国際的地位の変化に伴う外交方針の必然の推移と解釈をいたします。その理由は、一つは、わが国の国際的地位が向上したこと、二つは、国際情勢の複雑化に伴い外交が多角化したこと・三つには、自由主義国家間の相互連携強化の必要性がさらに高まってきたことでありましょう。池田総理は、この三木の柱を背景とし、調整段階にある国際情勢に伍し、わが国の当面する課題解決に向かわれるわけでありますが、基本的な課題といたしまして、日本は三本の柱の一つとして、アジアに対しいかなる態度をもって臨まれるかということであります。具体的には、第一には、政府は中ソの対立に関しいかなる見通しをもって臨まれるか。第二には、インドを初め東南アジアに向け進展する中共の膨張政策に対し、いかに対処されるか。第三には、アジアの安定勢力としていかなる具体的方策をお持ちになるかということであります。
 第二点といたしましては、私は、目下進行中の日韓交渉につきお伺いしたいと思いましたが、韓国政情に対する問題は、先ほどの御答弁で了承いたしましたから省きます。また、日韓交渉は現に進行中でありますので、その逐一についてお伺いすることは差し控えます。一言、私が強調いたしたいことは、漁業問題、竹島問題等は、あわせて国民が納得する線で解決されねばならないということ、また、これらの問題は、いわゆる請求権問題と同時解決されるべき性質のものであるということであります。政府の確たる決意のほどをお伺いいたしたいのであります。
 なお、付言いたしますなら、国民のごく一部ではございますが、日韓交渉の進展が国際平和の障害になるかのごとき、ためにする言論も、ないではございません。この際、政府は、日韓問題の解決が必要であるゆえんにつき十分に国民の理解と納得を求められるべく、一段の御努力を期待してやみません。
 第三点といたしましてお伺いしたいのは、三本の柱の一つであるわが国が、他の二木の柱といかなる方法で協力体制を保っていくかという点であります。わが国は、安保条約によりまして、日本が侵略の危機に瀕した場合には、米軍の援助により防衛される保障を得ております。しかしながら、日本自体が他国との関係において、積極的に、たとえばNATO諸国のように、軍事的共同戦線を拡大するということは、安保条約上義務づけられてはおりませんし、また、憲法上も許されないことであろうと考えます。ワシントンにおける日米合同会議の席上、ケネディ大統領は、日米協力による共産主義のアジア進出に対する防止を強調されたようであります。これは考え方としては当然のことでありますが、自由主義陣営の一つの柱をもって任ずる日本として、いかなる具体的対策をもって今後に対処されるかをお伺いしたいと思うのであります。
 次に、私は、三十八年度予算の内容に関し、二、三の質問をいたします。
 明年度予算案は、第一に、当面する貿易の自由化に備え、日本の産業基盤の強化をはかる。第二に、公共投資の拡充による社会資本の充実をはかり、地域の格差を解消させる。第三には、社会保障制度の充実及び文教の刷新。これらを柱として組み立てられていると思われますが、その配慮はいずれも時宜を得たものというべきでありましょう。本論において多岐にわたる問題を網羅し質疑をすべき時間的余裕がございませんので一、二の点について伺います。
 当面する産業基盤の強化に関しましては、税制、金融、中小企業対策、労働問題等、各般の問題が山積しておりますが、このうち、政府は、国から直接の保護助成を必要とする業種として、石炭、非鉄金属、海運、硫安、さらに自動車、石油化学等があげられております。これらに対しては、相当巨額の財政支出、融資を必要とし、あるいは税制上必要な措置を講ぜねばなりません。政府は、その投下資本がむだなく運用されるべく、十分な計画と準備をもって事に当たられることは申すまでもありますまい。対象業種の保護助成にあたっては、合理化、集約化が必要条件となっております。特に問題なのは、自動車、石油化学でありまして、これらはいわゆる新興産業でありますだけに、扱い方いかんでは過当競争を激化させる危惧もないではないのであります。この点につきまして、産業界の自主調整論、政府・民間協調による新産業秩序論などが云々されておりますが、政府はいかなる態度をもってお臨みになるつもりか、中小企業対策とも関連してその御見解を承りたいと思うのであります。
 さらに、公共投融資すなわち社会資本の拡充の問題であります。過去におけるわが国の国民経済の急速な発展ぶりに比し、公共施設の充実が立ちおくれ、ために大都市においては交通の混乱等を惹起し、地方においては産業の開発に支障を来たしていることは、御承知のとおりであります。池田総理が内閣を率いられまして以来、この点に着目され、ここ一両年、公共施設の急速な整備に意を用いられ、特に三十八年度予算に十分の配慮が行なわれていることは、まことに適切だと申すべきであります。道路費を例にあげましても、地方費を含めて四千数百億円に上る総合的な実施計画を進めておられる等、まさに画期的と申しても差しつかえないと思うのでありますが、これらの予算実施にあたりましても、問題は必ずしも皆無とはいえないのであります。従来、ともすれば、予算の執行にあたり配分が総花的になる傾向があり、一方、政府、地方団体関係諸機関の相互連絡も乏しく、その効率がはなはだしく阻害されている弊なしとしなかったのであります。幸い、政府におかれては、これらの問題の隘路打開につき積極的な対策を示しておられるので、意を強くしているのであります。同時に、あわせて、これらの事業執行にあたって地方団体の財政上の配慮を十分にいたされているかどうか。国の補助事業が膨大になるため、地方の財政負担が増大し、固有の単独事業費等がはなはだしく窮屈になるのではないかとの意見もあるようでございますが、その御見解を伺いたいと思います。
 社会保障問題に関し一言いたします。社会保障費は前年度に比し六百六十一億円を増し、その増加率は一一・四%と相なり、前年度の増加率二〇・一%をさらに上回ることになります。今回の社会福祉予算は、単に金額的に増加をしたというだけではなく、内容的に見ましても、生活保護基準の引き上げ、年金制度の改正、未亡人対策費の新規計上等のほかに、国民健康保険についても、療養給付費の思い切った引き上げ、地域格差の撤廃、国保税の軽減等、新政策を取り入れていることは、まことに刮目すべきものであります。それは、さきに社会保障制度審議会が行なった勧告、すなわち「十年後には西欧のレベル」、この実現に巨歩を踏み出したものと言い得るでありましょう。しかし、一歩掘り下げて考えまするならば、なお多くの課題が残されております。たとえば、社会保障を最も必要とする階層は、言うまでもなく低所得階層であります。消費物価の値上がりの影響を排除して、さらに将来の生活向上をはかれるよう格別の御配慮が必要であろうかと思います。また、国民健康保険につきましても、国民皆保険実施三年にして前述のごとき諸改善が実現いたしましたことは、一大進歩と言うべきでありますが、これらの措置をもってしても、なおかつ、今日の国民健康保険の実態は、民間労組あるいは官公労組等の持つ健康保険組合と比較するならば、いまだはなはだしく低位にあるのであります。将来この間のギャップをいかにして埋めていくか、同じ国民である以上、健康保険の恩恵を平等に亨受せしむべき配慮があってしかるべきものと存じますが、政府は、将来この両者の統合調節といった点について御検討になっておるかどうか、お伺いしたいと思うのであります。また、国民年金とも関連し、社会保障制度の総合的体系化について、いかなる具体案を持っておられるか、お伺いいたします。
 教育問題に関しましては、総理の念願としておられる人つくりと最も関連が深いと思うのであります。三十八年度予算におきましても、教育予算総額は、前年度に比し約二〇%の増を見、国民所得に占める教育費の比重は五%となり、米国、ソ連、あるいは西独を凌駕し、英、ノルウェー等に比肩し得るように相なったのであります。内容的に見ましても、高等学校の急増対策、高等工業専門学校の増設、義務教育教科書の無償配布、学校給食の拡充と、これまた見るべきもの少なしとしないのでありますが、私は、広い意味の青少年教育という観点から一、二お伺いをいたします。
 第一は、国民の道徳意識の向上についてであります。私は、人つくりの問題はいろいろの角度から論議もありましょうが、要諦は、社会人としてのりっぱなマナーを持った人間を作り上げるということに尽きると思うのであります。日本の義務教育制度は世界にまれに見る水準の高いもので、日本人の頭脳は世界に誇るに足るということは定説のようであります。しかしながら、一歩踏み出して、それらの人々が社会人としてのマナーを十分に心得ているかどうかという点になると、いささか心細いのであります。この事情に対処し、政府はかねがね道徳教育の必要性を強調しておられます。私もその趣旨にはしごく賛成でございますが、世間では、ややもすると、道徳という言葉の古い概念にとらわれ、復古主義であるとか逆コースであるとかの邪推あるいは曲解をする向きがないでもありません。この際、国民のすべてが十分に納得いくよう、道徳教育のあり方について具体的方策を承りたいと存じます。
 いま一つは、青少年教育の総合的対策の推進ということであります。総理はかねがね、青少年の教育は、学校、家庭、社会が三位一体となって当たらねばならないという御主張でございます。しごくごもっともの御所見でありますが、具体的にこの三者が提携して実効をあげるには、私は強力な推進力が必要であるのじゃないかと思うのであります。青少年育成に関連した政府機関は多岐にわたっております。文部省、厚生省、労働省、警察の防犯補導部門、また総理府に中央青少年問題協議会があり、また最近に人つくりのための審議会が設置され、それらはそれぞれの部門で効果をあげていることは事実でありますが、ともすると、おのおのが横の連絡に欠け、総合的効果を発揮し得ないうらみがあるのであります。政府はこの際、これらの諸機関に十分な総合力を与えるよう、さらに地方団体、民間有識者を網羅して、強力な推進機関をお作りになる意図はないか、お伺いいたします。
 最後に、私は地方行財政の問題に関して若干の質問をいたします。私はかねがね、新憲法下における地方自治体の存在は民主政治の母体ともいうべきものであり、いわゆる国づくり人つくりの実体も、自治体の完全な発達を待って初めて実現し得るものと確信をいたしております。四月に行なわれます地方統一選挙を前にいたしまして、この際、地方自治体の今後のあり方につき、政府の明快なる御見解を承りたいと存じます。
 第一点は、地方財政に関するものであります。幸いにいたしまして、最近の地方自治体は、行政的にも財政的にも、逐年向上の道をたどりつつあります。特に三十八年度予算において、国の施策の推進によってこうむる自治体の財政負担を顧慮して、国民健康保険制度の改善、あるいは電気ガス税の軽減等の実施にあたり、適切な国の財政補てん措置がとられました。また、道路その他公共事業費でも画期的な拡充が行なわれ、従来とかく批判のあった住宅施設、学校建築費等の単価の是正もはかられているのであります。しかしながら、これらの措置をもってしても、なお地方財政の現状は必ずしも手放しで楽観し得るものではないと思うのであります。今日、地方財政は、地方交付税制度の採用によって、国の財政的規模の拡大に比例し、ある程度増収が保証されております。しかし、これは地方財政の財源の一部であって、全体を支配するほどのものではありません。地方自治体の固有財源である各種の地方税も、地方住民の経済力の上昇に併い逐次上昇して参っておりますが、税の性格上、国税の伸び率に比べればはるかに低位にあるのであります。そのため、三十七年度の税制改正に際しましても、地方の固有財源を補てんするために、国税である所得税の一部を住民税に組みかえる必要さえ起こったのであります。一方、国の施策に伴う地方の義務的経費は、逐年著しく膨張をきたしております。一例をあげれば、三十八年度の予算において、前国会で提案された国家公務員のベース・アップが実現し、地方公務員関係に準用された場合、年間千二百億の給与費が増加するのであります。また、国の補助による公共事業費、社会保障費の増大は、それ自体は、地方住民の福祉のため大いに歓迎されるところでありますが、それを消化するための地方自治体の自己負担も、また比例して増大することは当然であります。かかる状況から、地方自治体は、その収支の不足分を起債に求め、その総額は逐年増加して参り、三十八年度は三千百五十億という巨額に上っております。これは国の予算にあっては例を見ないところであります。しかし、地方自治体が必要な活動をなすためにはやむを得ざる措置と考えます。
 一面、地方自治体は、今日いわゆる地域開発の必要に迫られております。この地域開発は、一つは、大都市を中心にした都市改造であり、他の面は後進地域の開発であります。東京、大阪を初め大都市は、今日根本的な体質改善を要求されております。この大事業を完遂するために、相当弾力のある起債措置が必要であることは言うまでもありません。政府は、さきに大阪府市に対し、西ドイツよりの資金導入を指導し、元利支払保証を与えました。近く東京都に対しても、アメリカ資金の導入を意図されている由伺っております。その実現の時期方法等についてお伺いしたいと思います。一方、後進地域の開発についても、これまた相当弾力のある起債措置が必要であります。この見地から、政府は三十八年度より、新たに開発起債のワクを設けられたことは、まさに時宜に適したものと思います。しかしながら、財政規模の弱い自治体にとって、起債の累積が将来の負担となることは事実でございます。むろんこれらの問題は、交付税源の傾斜配分、自治体自体の行政の能率化、財政の節減等をもって、自主的に解決すべき部分も多々あります。政府におかれましても、これらの実情に照らし、さらに、国、地方の財政配分の合理化、起債償還の方法等に対し、今後とも格段の御配慮があるべきであると思うが、御所見を伺いたいのであります。
 第二点は、広域行政に関する問題であります。今日地方自治体は、四十六の都道府県のもとに、さらに基礎となる自治体として三千五百有余の市町村を包括しております。都道府県及び市町村という自治体の二重構造は、ともすれば両者の運営摩擦を起こす原因ともなっていると思うのであります。一方、現在の自治体の規模は、交通、通信の極度に発達し、実質的経済圏の著しく拡大された今日、あまりにも狭隘に過ぎ、行政財政の効率に障害を来たしていると思うのでありますが、政府はこの際、地方開発の促進、地方行財政の能率化という見地から、自治体の行政エリアの広域化について、何らかの具体的方針を持っておられるか伺いたいのであります。
 第三点は、地域格差の是正問題に関してであります。地方経済の発展度合が、産業立地の適性の可否に左右されることは、自然の成り行きであります。これによって起こってきた地域の経済格差をいかにして解消させるかということは、当面の大きな課題であります。政府は従来とも、僻地離島の振興策、低開発地域への工場誘致、公共事業に対する補助率のかさ上げ等、必要な手段を講じておりますが、今後に大きく期待されますのは、新産業都市の設定であります。新年度早々、最初の指定も行なわれるようでありますが、私が特に申し上げたいことは、産業開発を目途とする以上、その効率性を無視することができないのは当然であります。しかしながら、効率を顧慮するのあまり、地域格差の是正という本来の基本目的が忘却されるとすれば、新産業都市指定の目的の半ばは失われるということであります。政府は、将来の地域指定にあたっては、積極的、人為的に、道路交通その他立地条件の向上をはかり、全国にできるだけ普遍的な指定措置をとられる用意があるかどうかを伺いたいのであります。
 以上をもって私の質問を終わります。政府の明快な御答弁を求めます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 国政のあるべき姿と、その方向についての心がまえという御質問でございまするが、私は、先般の施政演説のとき、人つくりは、それにふさわしい社会的、政治的環境が不可欠の要件であります。しかも、その環境は、われわれ社会人が近代市民としての自覚を持ち、そのルールを守ることによって確立されるのであります。この意味において、私は、深い反省と自戒のもとに、政治に携わる諸君とともに、国民のよりよき代表となり、わが国民主化の確立に懸命の努力をしたいと申し上げております。こういう意味におきまして、われわれ国会人が、国会の運営の正常化、国民の負託に沿うべく、ほんとうによりよき代表として自戒自粛しなければならぬ。こういう意味におきまして、さきの国会におきまして、審議権の放棄があったり、あるいは審議について非常に遅滞妨害があったということは、まことに遺憾でございます。私は、こういう意味において、深い反省と自戒のもとに、十分話し合って、国民の負託に沿うよう、今後とも努めていきたいと思うのであります。これが政治の姿、そして人つくりの根本になければならぬ問題と思います。
 なお、ただいま泰平ムードということでございますが、これは安保条約前後のようなことはございません。私は、その意味におきまして、国民の協力を得ていることをあらためて感謝し、今後ますます努力を続けていく決心でございまするが、内政外交の現状、現実の問題、また、将来の問題につきましては、やはり今から十分準備していかなければなりません。ことに内政問題につきましての人つくり国づくり等につきましては、施政演説に申し上げたとおりであります。
 また、外交問題につきましても、申し上げたごとく、今一国だけが繁栄するというわけにはいきません。どうしても他国の繁栄があって自国の繁栄がある。こういう意味におきまして、私は、いわゆる三木の柱、この三本の柱というのは、去年プラウダが言ったり、また、最近では前アメリカ大統領アイゼンハワーが、アメリカと西ヨーロッパと日本、この三つが手をつないで発展してこそ、初めて共産主義の浸透が押えられ、そうして世界が繁栄するということを、今月の十四日にUSニューズ・アンド・ワールド・リポートで言っておられる。これは私が言うだけでなしに、もう世界の人が認めておる。私は、こういう意味におきまして、三本の柱が相助け合うはもちろん、この間における自由国家群の繁栄、低開発国の繁栄をはかっていくことが、お互いの三本の柱を強くするゆえんであるのであります。もちろん私は、共産主義とは考え方が違いますが、ソ連や中共の民生の安定、国民の幸福を願うにやぶさかではございません。
 なお、中共とインドとの問題等、私は今これを批判はいたしませんが、今中立国六カ国のあっせんによって、大体解決の曙光が見えつつあることは、喜びにたえない。あくまで平和的に、話し合いによって円満解決を望んでやみません。
 また、中共とソ連とのいろんな、何と申しますか、議論は、やはり同じ共産主義でも、その置かれた現状に対する心がまえが違う。マルクス・レーニン主義を昔のまま教条的に守っていくか、あるいは現実の事態に即した政治をするか、これはいろいろ批判はございましょうが、私としてはこの際批判は差し控えたいと思っております。しかし、少なくとも、ソ連は、相当現実的な政治をとるようになったことは確かです。これは国内的にも国際的にも、そういうことで、共産主義の一つの進歩と変化という意味で、喜ぶべきことではないかと自分は考えておるのであります。
 なお、日韓問題につきましては、先ほど来申し上げましたとおりに、日本のために、韓国のために、またアジアのために、世界の平和と繁栄のために、私はどうしても踏み切らなきゃならぬ問題と心得て努力していくつもりでございます。
 なお、予算につきましても、石炭とか、あるいは海運、肥料、非鉄金属等に対する、今までの不況産業に対する対策は、相当思い切った措置をとります。しかし、自動車工業、石油化学等の問題につきましては、今後の世界の貿易における競争力の問題、そうしてまた日本の経済の発展等の問題がございますので、過去の不況産業に対する対策と同時に、将来の問題、自動車あるいは石油化学その他日本経済の発展、世界貿易に参加するためのいろんな準備は、今後思い切って進めていきたいと考えております。
 なお、道徳教育の問題がございましたが、私はこの人つくりの問題で、どうもここでいかがと思いますが、ヨーロッパ等におきましては、イギリスにしてもドイツにおきましても、法律によって道徳教育を義務教育の中に入れております。一週間に何回、そうして道徳教育を法律で義務教育に入れることを強制をしておると同時に、学校における道徳教育以外に家庭における宗教教育――社会的にこの宗教教育というものは非常にできておるのであります。私は、学校における道徳教育と家庭における宗教教育が相待って、ヨーロッパあるいはアメリカの民主主義政治の発展に寄与していることをつくづく見てきたのであります。私は今、宗教教育をどうこうするのではございませんが、外国ではそうです。少なくともわれわれは、公徳心、道徳心、そうしてお互いに愛し合い、社会を守るというこの気持を、道徳心というかもしれませんが、私はこの気持を育成することが民主国家のもとであることを確信しておるのであります。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(大平正芳君) 日韓交渉は、全懸案を一括して、同時に国民に納得いく線で解決する方針に変わりはないかという御質問でございますが、そういう考え方で進んでおります。
 アジアの安定勢力としてアジアにおける役割についての御関心を示された御質問でございましたが、私どもは、日本の経済技術協力ばかりでなく、教育、衛生、文化、その他の分野における協力を通じまして、アジアの民生の安定向上、経済の開発、さらには、その政治的な安定をもたらすことに寄与いたしたいという方針で、鋭意、経済外交を進めておる次第でございます。
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(田中角榮君) 自由化に対応した産業政策につきましては、総理大臣からお答えがございましたので、地域格差の解消問題、地方行政の問題、外債の問題、この三点にしぼって御答弁申し上げたいと存じます。
 地域格差の解消の問題については、政府はつとにこの問題を重視をいたしておりまして、公共事業の長期計画につきましても、地域格差解消に対してできるだけ重点投資を行なうようにいたしておるわけでございます。なお、北海道、東北、離島その他に対しましても、一般会計及び財政投融資等につきましても重点的な配分を考えておるわけであります。一例を申し上げますと、北海道は、昭和三十七年度五百三十四億円のものが六百四十億円に、離島は五十一億円が六十三億円に、特定地域開発のための予算は、五百三十億円が六百三十九億円に、というように大幅にこれが配分を考えておるわけであります。なお、地域開発事業に対する起債につきましても、三十七年度に対しまして百四十二億円を増額いたしまして、四百二十九億円という大幅な増加をはかっておるわけであります。しかし、これらの対策だけで、都市、地方の地域格差が解消すると考えておるわけではないのでありまして、二十五年に立法せられた国土総合開発法、地方の地域開発促進法等、その後立法せられた水資源開発促進法、新産業都市建設促進法、各地域開発特別措置法というような法律――特に産炭地域振興臨時措置法、低開発地域工業開発促進法というようなものを積み重ね、これらを合理的に運営し、重点的に財政投資を行なうことによって、地域格差の解消をはかって参りたいと考えておるわけであります。でありますので、このたびの予算に鉄道網整備公団を設けたのも、大きな目的はこの地域格差解消にあるわけであります。
 第二の地方行政問題でありますが、国、地方を通ずる財源配分の合理化、これは長いこと検討せられておる問題でありますし、特に重要な問題であります税源の配分並びに国と地方に対する補助金等の財源問題の措置の合理化は、税制調査会及び補助金等合理化審議会等において検討せられておるわけでありますが、引き続き検討しながら、より合理的な結論を得たいと考えておるわけであります。
 第三点目の東京都債及び大阪府市債の問題でありますが、御承知のとおり、大阪府市債はマルク債四億マルクを目標にして、本年度及び来年度に各一億マルク、すなわち二千五百万ドルずつの発行を予定いたしております。東京都債につきましては、別に法律を提出して審議をお願いいたす予定でございますが、東京都のために二千万ドルのアメリカ市中からの外債募集を予算で予定いたしておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣西村英一君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(西村英一君) 社会保障は池田内閣の重要政策の一つでございまして、お話のありましたように、来年度の予算につきましても、相当に予算上の伸びをいたしたことは、まことにうれしい次第でございます。今後も社会保障の進展につきましては、十分意を用いてやるつもりでございます。
 国民健康保険が他の保険に比べて非常に内容が悪いというようなお話でございましたが、これも本年十月から、世帯主の全疾病に対しまして七割給付をすることになりました。これも、他の健保等と比較いたしまして、その内容の改善の第一歩でございます。引き続きまして、これらのバランスを今後もとっていきたいと思っております。なお、年金制度のあり方につきましてもお話がございましたが、国民年金にしましても、健康保険にいたしましても、その歴史がそれぞれありますので、非常なアンバランスを来たしております。これらのアンバランスを取り除くよう、今後努力をいたして参りたいと思うのでございます。(拍手)
  〔国務大臣篠田弘作君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(篠田弘作君) 選挙の公明化は民主主義確立の基盤であるというお説、そのとおりでございます。そこで、何といたしましても、日本の政治というものをよくしていくためには、公明なる選挙を行なわなければならないのでございます。ところが、従来、衆議院、参議院といった国会議員の選挙につきましては、政府も、また世論も、一般国民も、相当重視をしたのでありますけれども、地方選挙につきましては、そういう国会議員の選挙ほど重要視されておらなかったのであります。しかしながら、国会議員の選挙が重要であると同じく、地方選挙がまた非常に重要であるということにかんがみまして、今回政府から、いわゆる予備金支出による予算を組みまして、来たる四月の統一選挙並びに現在行なわれております選挙等につきましても、その公明化を進めておるわけでございます。
 また、選挙制度審議会も昨年発足いたしまして、目下選挙制度の諸問題につきまして討議をされておりますので、その結論が出ますれば、これを尊重していきたいと考えております。
 次に、広域行政の問題でございますが、経済の発展、交通通信機関の進歩等によりまして、広域行政が非常にその必要性を高めてきたということは、お説のとおりでありまして、昭和二十八年以来、市町村合併も好成績をあげ、また、最近におきましては、北九州市の誕生も見たわけでございます。こういう次第でございまして、自治省といたしましては、地方制度調査会の答申にのっとりまして、そうして地方の開発に伴う広域行政に対して遺憾のないように措置をするつもりでございまして、新産業部市のためには開発事業団、あるいはまた、これからだんだん大きくなっていく地方と国との連絡機関、あるいは地方相互の連絡機関のためには地方行政連絡会議等を設けることにいたしまして、今国会にその法案を提出する予定でございます。
 地方財源の確保につきましては、先般の電気ガス税において見られるように、一方的な措置をせず、国におきましてそれを補てんし、地方の財源の確保に向かって精進をしている次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(重宗雄三君) 辻武寿君。
  〔辻武寿君登壇、拍手〕
#19
○辻武寿君 私は、一昨日行なわれた池田総理の施政方針並びに外務、大蔵両大臣の演説に対し、公明会を代表して質問をいたすものであります。
 まず、国会の正常化について総理にただしたいのでありますが、昨年十二月に行なわれた第四十二臨時国会は、国民に密接な関係を持った石炭四法案及び公務員給与法等の重要法案を流産させ、二度も会期延長をしたのにもかかわらず、やっと補正予算一つを成立さしただけに終わったのであります。この間、衆議院においては自民党の単独審議が行なわれ、本院においては牛歩戦術という社会党の異例な審議引き延ばしによって、二日間にわたる徹夜国会が行なわれる等、国民の前にその醜態をさらけ出したことは、自民、社会の二大政党が党利党略と舞台裏の取引にうき身をやつし、議会政治のルールをじゅうりんしたととろに原因するのであって、その責任は、全部、自社両党が負うべきものであります。また、参議院が事ごとに衆議院のあおりを食って、衆議院の摩擦がそのつど参議院の機能を麻痺させる現状では、第二院としての自主性も、良識の府としての存在価値もないではありませんか。池田さんは、総理として、また、一国の政権を担当する多数党の党首として、この事実に現在どのような責任を感じておられるのでありますか。一なお、今後、再び国会を混乱させぬという決意と自信をお持ちですか。国会正常化に対する総理の覚悟のほどを明らかにしていただきたいと思います。
 質問の第二点は、外交問題であります。
 最初に、日韓交渉についてお尋ねいたしますが、昨日のソウル放送によれば、韓国の朴政権に内紛が起きて、金鍾泌氏は一切の公職から離脱したとのことであるが、政府は依然として朴政権を信頼し、日韓会談をこのまま続けるつもりでありますか。これは、もう一度、総理にお答え願います。
 現在政府は、第六次日韓会談を進めておりますが、歴代の内閣は、日韓交渉の内容、特に請求権については、「知らしむべからず、由らしむべし」の秘密外交の方針をとってきているのであります。韓国側の日本に対する請求金額の交渉内容については、総理も大平外相も確答を避けております。日韓交渉において、日本側にとり、まっ先に解決すべきことは、李ライン海域における安全操業の確保であります。昭和二十七年一月、韓国側によって一方的に作られた、いわゆる李承晩ラインは、済州島付近で七、八十海里、最大は二百海里の幅を持ち、深度二百メートルに及ぶ大陸だなと、さらに海上までも韓国の主権が及ぶという、前代未聞の主張であり、国際法の常識をも逸脱した全くの横車であります。このように身勝手な宣言をしながら、韓国側は終始一貫、季ラインにおける漁船の拿捕と漁夫抑留という手段で、日本の譲歩を求めてきたのであります。今、最終的な交渉段階に来た現在でも、韓国側は、請求権問題で日本が譲歩し、誠意を示すならば、李ライン問題では伸縮性のある態度をとり得るとしているのであるが、日本にとって、李ラインの解決なくして日韓交渉の解決は断じてあり得ないのであります。総理並びに大平外相は、今までの日韓交渉における秘密外交をやめて、現在までの交渉経過を明らかにしていただきたいと思います。
 日韓会談は、第一に、不当な李ライン撤廃を先決とすべきであり、それに基づいて、漁業交渉、請求権問題を処理すべきであるのに、政府は請求権問題で日時を費やし、韓国のペースに乗せられた感が強いのであるが、それで国民が納得する交渉ができると考えるのか。今後の交渉に対する態度を明確に示していただきたいと思います。また、対韓焦げつき債権四千五百七十三万ドルの処理についても、どのようにお考えなのか。この際、一緒に明らかにしていただきたいと思います。
 次に、竹島問題についてお聞きしますが、大平外相は、竹島は日韓交渉と同時解決をすると言明しておりますが、日韓共有論なども飛び出してきた現在、いかなる方法でどんな同時解決をする方針なのか。日本のものにするのか、韓国に差し上げてしまうのか、それとも共有するのか。同時解決にもいろいろな解決の仕方がある。総理や外相の言われる同時解決とは何をきして言われるのか。明確なる御答弁をお願いいたします。
 次に、油送笹の対ソ禁輸について総理にお尋ねします。NATOはこのほど政府に対し、NATO常設委員会の決定に同調して、ソ連に対し石油輸送に使うパイプを輸出しないよう協力を申し入れてきたことは周知の事実であるが、福田通産大臣は「協力の形で努力する」と答えた。この答えは、政府の圧力となって、業界はソ連に対する油送管の輸出を変更せざるを得なくなったのであります。しかるに、この油送管はココムの禁輸品目ではないのであります。たとえ軍事上政治上の立場からアメリカが要請したとしても、日本はアメリカでもなければNATOの一員でもないのであります。しかも、現にNATOの一員である英国は、同じ要請に対して、「ココムの禁輸リストに載っていないからその輸出は自由であり、英国の自主性において行なう」と、断固として、はねつけているのである。いかに共産圏とはいえ、対ソ油送管の貿易をNATOの一言で簡単に変更することは、第一に国際信義にもとるのであります。なお、池田総理は昨年十月、「対中共貿易では前向きの姿勢で対処していく」と言明された。同じ共産圏であるソ連に対する今回の態度は、池田総理の政経分離、貿易拡大の方針と、はなはだしく矛盾するのであります。日本は、アジアの一員であると同時に、地球上のあらゆる国と友好貿易を進めてこそ、世界平和に貢献できるのに、ことさらに欧米追従外交の姿勢をまる出しにすることは、町本民族の将来を誤らせるものと言わざるを得ないのであります。政府がこのような方針だから、日中貿易もさっぱり進展しないのであります。アメリカと仲よくすることは大いにけっこうである。しかし、向こう三軒両隣りということもあります。政府は、日ソ貿易の基本路線をどのように進めてゆくのであるか。また対ソ油送パイプに対する総理と通産省の食い違いについてはどのように調整してゆくのであるか。なお、日中貿易の推進に対する基本方針はどういうお考えですか。もう一度池田総理の明確なる御答弁を要求いたします。
 質問の第三点は、予算についてであります。池田内剛発足以来すでに足かけ四年、総理の言も得度経済成長等の推進によって、日本の大産業は飛躍的な発展を遂げた。しかし、この反動で物価の値上がりも飛躍的であり、国際収支は常に赤字の悩みにつきまとわれ、国民総所得も十四兆数千億円と膨張はしているものの、現実の国民生活はむしろ逼迫しているのであります。来年度はこの実情にかんがみ、この成長策のひずみを是二正すべき施策を講じなければならないのにもかかわらず、財政投融資の未曾有の増大を初めとし、何らその具体策がなく、ますます高度経済成長政策の矛盾が拡大されるという危険性をはらむ放漫予算であります。財政投融資の国民生活へのはね・返りは、特に本予算がインフレを助長する結果となり、著しく国民生活を圧迫するおそれも考えられるし、また貿易自由化進捗に伴う各産業への影響、なかんずく中小企業への具体的な援助策、また物価安定対策等が明らかにされていない、行き当たりばったりの予算であります。総理と大蔵大臣にお伺いしますが、貿易、為替の自由化、関税の一括引き下げ交渉等の動きに対応して、産業体制の整備を急ぎ、背伸びし過ぎた財政が景気を刺激して、国際収支の悪化を招き、インフレを高進させるおそれは全くないのか、これが一つ。次に、来年度におけるわが国の大きな課題であり試練であるところの貿易自由化について、最も懸念されるのは、わが国資本の具体的な防衛対策であります。やがて八条国に移行し、国際競争力に弱い日本産業の死命を制する問題にもなりかねないこの資本防衛対策を、政府はどのように準備し、推進し、かつ解決せんとするのでありますか。総理の見解をお伺いします。
 次に指摘されることは、圧力団体に左右された無責任な選挙予算のにおいが、はなはだ強いことであります。旧地主の補償問題や戦争未亡人給付金等、人気取りのうしろ向き選挙予算のそしりは免れないのであります。
 次は、第二次補正予算についてであります。御存じのごとく、八百二十一、億円の財源措置の問題ですが、現在のままでいくと、昭和三十九年度分の財源の先食いになり、それでなくても足りない収入見込みに逼迫感を与え、ひいては国民に対する苛斂誅求となり、三十九年度予算編成に重大な影響を与えるおそれがあるが、大蔵大臣の見解はどうか。お伺いいたします。
 次に、減税政策に対して質問いたしますが、御承知のごとく、池田内閣が発足した当時、減税は、公共投資、社会保障、文教政策とともに、四木の柱といわれたのであります。しかるに昭和三十八年度の予算編成み見ると、このうち、所得税に対する減税がほとんど切り捨てられて、三本の柱となってしまっております。しかも、減税という国民大衆に最も深い関係を持つ柱が倒れたということは、国民にとってこれほどさびしく悲しいことはないのであります。所得税に対する減税をなぜもっと行なわないのかという、国民の三十八年度予算案に対する非難は、新聞のアンケートの上にもはっきりと出ていることは、賢明なる池田総理や田中大蔵大臣は、よく御承知のはずであります。池田内閣は、かつて一千億減税を公約しておきながら、いつの間にか姿を消し、大資本家擁護の方向に減税を曲げてしまったのであります。しかし、世論のきびしさに減税せざるを得なくなり、今度は政策減税という、およそ国民大衆の実質的減税とはほど遠い予算を組んだことは、まことに国民の切なる期待を裏切った非民主的な減税政策といわなければなりません。池田さんの好きなアメリカのケネディ大統領は、年頭の予算教書の中で、赤字百十九億ドルを見込みながら、なおかつ五十数億ドルの減税を断行しているではありませんか。さらに国民が憤激していることは、池田内閣が税制調査会の答申を無視して、低所得者に対する減税を怠ったことであります。すなわち、基礎控除の引き上げ一万円を除いて、配偶者控除、扶養控除、専従者控除は半額の五千円に値切ってしまいました。したがって、夫婦と子供三人の標準家庭では、年収四十五万一千六百九十五円以下が免税になるはずであったのが、四十三万八千六百三十二円以下にとどまった。また五十万円の年収では月にわずか百二十五円の減税にすぎないのであります。これでは、たばこ三つ分にすぎないばかりでなく、物価の値上がりを考えるならば、むしろ増税と同じではありませんか。なお独身者では、年収がたった十五万一千円からすでに税金がかかってくるということになるのであります。したがって、今回の所得税の減税は、数字の上では二百七十七億円の減税であるが、低所得者にとっては二二・二%以上の重い税負担率であり、物価上昇等を見込むと、実質的には増税を行なったのと同様であります。これに引きかえ、一般家庭には関係のない租税特別措置という政策減税が大幅に行なわれて、一部の大資本家を喜ばせているのであります。一例をあげれば、一億円預金した利子に対する税金は、本来なら二百九十万円払わなければならないところを、政策減税のおかげで、たった四十万円で済むのであります。わが国の納税人員は千八百五十万人であるが、その中の九五%は百万円以下の中低所得者であることを考えるときに、今回の減税政策は、どうひいき目に見ても、民意を重んじた減税とは言えないと思うのでありますが、総理並びに田中大蔵大臣のこれに対する見解を明確に示していただきたいと思います。
 次に、現在直面している、国民に最も身近な問題である水資源開発について、総理並びに経企庁長官にお尋ねします。
 現在、東京、大阪を初めとして、都市の水飢饉は全国的な問題になっていることは、御承知のとおりであります。最近では、日本経済の急激な成長、産業構造の高度化に対応するための工業用水の確保、増大する人口の都市集中に伴い増加の一途をたどる上水の確保、さらに、地下水の過度くみ上げによる地盤沈下を防止するための代替水源の確保など、都市用水の急激な需要増大に対処するため、水資源開発の促進が重大な課題となっているのであります。特に、東京や神戸のごとき大都市の水飢饉は非常に深刻であり、断水のために不便をかこつ主婦の嘆きは筆舌に尽くせない現状であります。東京の場合、川に水があっても、都市水道、工業用水として取れる水がないという事態が起き、そのため、膨張しつつある住宅地帯や工業地帯では、渇水、豊水のいかんにかかわらず、水不足が日常化し、都民も工場も多大の不便を受けているのであります。政府は、遅まきながら昨年五月、水資源開発公団を設定して、その対策に当たってはおりますが、何ら根本的解決に移行しているとは思いません。現在の水資源開発公団は、独自の財源を持たず、補助金や地方公共団体の利益分担金等により工事をやるにすぎないのであります。これでは不開発公団である。せっかく強力な水資源開発を目ざして設立されたにもかかわらず、きわめて中途半端な存在になり下がっているのであります。道路公団や住宅公団は、政府からの融資や公債などによって自己資金を持つことができるのでありますが、水資源公団は、わずか二十九億円の財政投融資からの融資があるだけであります。これでは、他人のふんどしで相撲をとるのと同じで、権威もなければ熱意もわかないのは当然であります。水資源開発公団は現状のままでよいのか。私はすみやかに改善すべきであると思いますが、総理並びに経企庁長官の見解をお伺いします。古来、水を制するものは国を制すといわれてきた。水の問題が、都会地のみにとどまらず、農村にとっても生活に直結し、その利害関係より生ずる水利権の問題をめぐって、各地で紛争が惹起しているのであります。たとえば、琵琶湖の水利をめぐる大阪府と滋賀県の争いや、利根川の水をめぐって東京と埼玉県の紛争等、水資源開発を大きくはばむこの水利権の争いは毎年平均五百件前後に及び、昔から水のために血で血を洗う紛争も決して珍しいことではないのであります。政府は、これら水利権の問題をどう対処していかれるのか。また、水資源の開発が順調に運ばない最大なる原因は、何といっても水資源開発行政が多元化し、強力な機関になっていないところにその根本原因があるのであります。ダムを作るときは建設省、飲料水にするときは厚生省、灌漑に引くときは農林省、電力発電所で使用するときは通産省、都合のよいときはお互いに奪い合いをする。都合の悪いときは押しつけて責任のなすり合いをする。こういうところに水資源開発がスムーズにいかない原因があるのです。政府は、この際、水資源に対する多元的な行政を一元化し、地方公共団体の負担にまかせることなく、深刻なる全国的な水不足を一掃すべく、アメリカのビッグトムソン計画や豪州におけるスノーウィー・マウンテン計画等に見られるごとく、積極的、抜本的な国策として取り上げるべきではないか。社会保障、社会資本の充実を強調される政府の具体的な国策を、総理並びに経済企画庁長官より明確にお答えしていただきたいと思います。さらに、社会保障、社会資本の充実を強調しておきながら、政府の資源開発に対する態度はあまりにもなまぬるく、これではとうていりっぱな国づくりはできないと思うが、総理、企画庁長官はどんな構想を持っておられるか、明確にお答え願いたいと思います。
 質問の第五点は交通行政についてであります。交通戦争とか交通地獄とかいう言葉が象徴するように、大都市の交通事情はきわめて深刻であります。特に東京都においては、朝夕の満員電車は人を荷物と化し、車はつかえて進むことができない。歩道の人々は走る凶器に絶えずおびえている。去年一年間に交通事故で死亡した者は一万一千四百四十一名、事故件数は実に四十七万五千件に達しており、国民は、いつ起こるかもしれぬ交通事故におそれおののいている実情であります。このような交通事故の激増と、だんだん悪化する交通事情に対して、政府はほとんど拱手傍観であり、ただ成り行きと地方団体にまかせっきりでいることは、無責任きわまるものと言わざるを得ないのであります。東京都や各地方公共団体は、おくればせながら・歩行者用のブリッジ、夜間照明灯、ガード・レール等、応急措置を講じてはいるものの、きわめて局部的な手当にすぎないのであり、道路建設も遅々として進まず、東京都のごときは、手のつけようもない交通麻痺状態に陥っているのであります。政府は、交通対策を地方公共団体にまかせっぱなしにせずに、もっと真剣にこの深刻なる交通対策に取り組むべきであります。イギリスにおいては一九五二年に、横断歩道にしま模様を付しただけでも、歩行者の事故が一〇%も減少した事実がある。また、道路照明の改善により、ロンドン近郊の八幹線道路では、一五%も事故が減ったということであります。また、安全ベルトの使用により、事故負傷の六〇%が防止できたアメリカ・コーネル大学の報告もあります。やろうと思えば知恵はわくのである。要は、政府みずから人命軽視を改めて、もっともっと積極的に交通対策に万全を期すべきでありますが、政府の交通対策に対する具体的構想を総理よりお伺いしたいと思います。
 さらに、この問題の解決に関連して、新しい都市づくり、すなわち、新官庁都市の建設ということがクローズ・アップされております。かのブラジルがブラジリアを建設し、首都リオデジャネイロの諸問題を一挙に解決したことは、記憶に新しいところであります。日本政府も新官庁都市の建設を企図し、その調査を進めているようでありますが、いかなる構想で実現されるのか、総理よりできる限り具体的に説明していただきたいと思います。
 質問の第六点は文教政策であります。政府は、文教政策を三本の柱の一本だと、いかにも文教重視の姿勢を見せてはいるが、その政策は実は穴だらけであります。その一つは、高校急増に対する補助制度にはっきりしております。すなわち、昭和三十七年度の予算は、政府が三十四年当時の実績をもって高校急増のための要求額の三割を天引きし、たとえば一千万円の建物を建てるにも、政府と公共団体で七百万円を出し、三百万円は寄付によっていたのでありますが、今回、政府は、これと同様の方式をもって、昭和三十八年度の高校急増に対処しようとしているのであります。すなわち、三割はいやでもおうでも父兄の寄付でやれというのが政府の方針であります。しかるに、政府は、昭和三十二年に、文部事務次官通知として、「官庁における寄付金等の抑制について」の通知を出し、寄付行為を禁止しているはずであります。自分で通知を出しておきながら、みずからその通知を破棄して、いたずらに父兄の負担を重くするのは、国民として、とうてい納得することはできません。これに対する荒木文相の明快なる答弁を要求するものであります。
 次に、高校の定時制と全日制の問題でありますが、定時制高校の卒業生に対する世間の風はまことに冷たく、就職等において非常な差別待遇が生じている現状であります。高校全員入学を期する上からも、また、差別待遇を撤廃する上からも、平等に昼夜二部制にして、交互に一定期間交代制にしたならば、このような弊害はなくなり、なおかつ教育の機会均等が実現でき得るのでありますが、総理並びに文部大臣のお考えはどうですか、御所見のほどお伺いいたします。
 次に、教科書無償配付の問題でありますが、政府は昭和三十八年度予算においてようやく小学校三年までを無償にしようとしております。しかしながら、本来「義務教育は、これを無償とする。」という憲法第二十六条の規定に照らしても、むしろおそきに失しているのであり、義務教育の中学三年までは当然無償にすべきであります。わずか百四十億の予算でしかありません。防衛費の来年度における予算の増額分の四分の一をこれに回せば実現できるのであります。また、膨大な財政投融資の約一%強を文教費に回せば済むのであります。しかし、これすらなし得ない状況で、どうして文教を重視したと言えましょうか。義務教育の教科書無償は直ちに実現すべきであると思いますが、文部大臣の見解はどうか、お伺いいたします。教科書無償問題でもう一つただしておきたいことは、三十八年度の教科書無償は沖縄を含めたものとして計算されているはずでありますが、一月十九日のニュースによりますと、アメリカ政府はこの問題に対し、外務省と総理府の特別地域連絡局に対し難色を示したと伝えられておりますが、実情はどうなのか。また、事実であるならば、どのように対処されるつもりでありますか、総理並びに文部大臣の考えを明確に示していただきたいと思います。
 最後に、総理が強調される人つくり、国づくりについてであります。総理は、口を開けば人つくり、国づくりと言われますが、しかし、具体的には何らの実証も示されないではありませんか。言葉だけの人つくり論としか思われないのであります。真実の人つくり、国づくりは、信頼と、喜びと、強固な団結が伴ってこそ、実現できるのであります。しかるに、そういう池田内閣自身はどうか、例の対ソ油送パイプ問題に関しては、外交方針を豹変したり、大学管理の法制化については、荒木文相と総理の見解に相違があったり、移住事業団設置に関しては、その監督権をめぐって農林省と外務省が醜い闘争をしている現状ではありませんか。閣内さえも団結できず、党内が派閥抗争の激化等、醜い闘争を続けており、さらに各官庁間のセクショナリズムにはきびしい国民の不信が寄せられているのが現状であります。総理の人つくり論が真に実践力を伴うものであるならば、まず閣内の不統一や派閥解消の事実をもって国民に示してこそ、国民は納得するのであります。この実証が明らかに示されない以上は、池田総理の人つくり論は、遠視眼的理想論であり、単なる言葉の遊戯にすぎないと断ぜざるを得ないのでありますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 以上をもって私の質問を終わりますが、現在、北陸、上信越を中心とする裏日本一帯は未曾有の雪害を受けて、事態は楽観を許さない状態であります。政府はすみやかにこの救済に万全の手を差し伸べられるよう強く要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点の国会正常化でございますが、これはお話のとおり、まことに遺憾なことでございます。国会こそ率先して正常の範を示すべきだと思います。したがって、施政演説においても、深い反省と自戒のもとに、われわれ政治に携わる者は、よりよき代表として民主政治の確立に努力しましょうということを言うゆえんも、このことからであります。
 なお、最後に御質問になりました人つくりは団結でつくらなきゃならぬ、今のようなことでは遠視眼的だと、こうおっしゃいますが、私の施政演説をお読み下さればわかると思います。人つくりはみずから一人々々が反省し、つくり上げるものであります。団体でどうこういう筋のものではございません。ただわれわれは、一人々々で反省し、つくろうとするために、それに環境、ムードを与える、そしていろんな援護をするということが政府のやることでございます。人つくりはみずからすべきものであることを、私は重ねて申し上げておきます。
 なお、日韓会談につきましては、お話のとおり同時解決、これはたびたび申し上げておるとおりでございます。
 なお、日中貿易その他につきまして政府が非常に不熱心であるようにおっしゃいますが、貿易というものはお互いに相手のあることでございます。しこうして、今通産大臣と私とが油送管について考えが違っているようなお話でございますが、全然違ったところはない。私は相談してやっておる。この大型油送管のソ連への輸出禁止につきましては、まだ確定的のものじゃない。NATOで相談し、またココムに入る、入らぬにつきましても、あなたのお話のように議論があるところで、われわれは自由主義国家の一つでございますが、やっぱり日本は日本の自主性によってこれを考えるという原則に変わりはございません。内閣に不統一はないのであります。
 それから、日中貿易につきましても、先ほど申し上げましたとおりに、中共が日本のものを買いたくてもお金がない。そこでわれわれは、よそには許していない塩安の延べ払いも認めたのであります。しかも、先ほどここで申しましたが、中共は、延べ払いということは一番あとの期限で払うことになっておる。日本が他国とやるときには、やっぱり途中からだんだん分割して払うことを延べ払いと言うのですが、中共の延べ払いというのは一番しまいに一ぺんに払うことだそうです。しかし、しょうがないから、約束したと言うから私は認めておる。よその国には認めておりません。これを中共に認めたのであります。そうして最近では、鉄鋼、農機具も延べ払いで要求しております。今まで鉄鋼や農機具を延べ払いにしたことはない。どうしようかと思って今考えておる。よその国なら全然ない。中共をどうしようか。しかも五五千万ドルのうち二千万ドルかそこらしか現金で払えないというときに、なんぼやろうといってもどうでしょう。何もアメリカに遠慮しておりません。私は、政経分離で中共との関係も進めていきたいという基本に変わりない。しかし、そういう事情があることをお考え願いたいと思うのであります。
 また、自由化によってインフレが起こるというようなことはございません。自由化対策は万全の措置をとって、昭和三十四年のときには三三%、私が通産大臣のとき三三%、現在あらゆる施策を講じまして八八%に行っておるのであります。いろいろな点においてある程度の支障はありましょうが、全体として、自由化によってどれだけわが国の産業がつぶれたということはございましたでしょうか。ほんとうに基盤がだんだん強化していっておるのであります。競争力がついておる。競争力をつけながら自由化をやっていこうとしておるのであります。決してインフレなんかの心配はございません。
 また、八条国に移行した場合に驚いてどうこうというお話がございますが、八条国の移行は勧告があるかもわかりませんが、これはB・Pリーズン、いわゆる国際収支の理由で貿易為替を不慮由にしてはいかぬ。その国の産業からくる問題はB・Pリーズンじゃございません。八条国の移行と関係ないのでございます。誤解のないようにお願いいたします。なお、八条国移行ということは、勧告が来ましても、今までの例を見ると、一年、二年、あるいは長きは二年半くらいたってからやるということになっておるのであります。私は、もうずっと前から、こういうことがあることを頭に置いていろいろな準備はいたしておるのでございます。どうぞ御安心願います。
 なお、減税につきましては、大蔵大臣からお答えすると思いますが、私は、過去十数年来この減税が政治の根本だと考えてやっております。ことに所得税につきましては、十二、三年の問に、まあ、たいがい減税に携わって吾ましたが、八千億円近く所得税を減税しております。また、間接税を合わせますと一兆円以上の減税をしております。どこの国よりも一番減税を日本はしておるのであります。あえて今回去年のごとき四本の柱で、社会資本は七百億円余り、文教と社会保障は六百数十億円、それに五百四十億円の減税は少し足りませんから、四本の柱とほ申しませんが、減税も相当やっておることはやっておるのであります。どうぞその点御了承願います。そうして預金や株式の配当に対しての減税を大資本に対するものと言われるのは、これはいかがなものかと思います。国民はみんな世界で一番貯蓄しております。農村に行きましても、今ごろは株を相当持っておられます。こういう時世から申しまして、私は、日本の将来のこの上とも伸びるために、資本に対しての減税も当然のことだと考えるのであります。ただ、問題は、どこに重点を置くかと申しますと、社会保障や文教や、ことに社会資本がおくれておりますから、今、それらに匹敵する、それら以上の減税はしばらく待ってもらって、おくれているものを取り戻そうというのが私どもの政策でございます。
 なお、交通対策につきましては、いろいろな点がございましょう。道路整備が必要でございます。これには力を入れております。しかし、交通関係者、ことに輸送に当たっている方が法規を守り、ほんとうに交通の災害を防止するという心がまえの育成が大切なのであります。われわれは、あらゆる方面からこういう点につきまして検討を加えて、この交通対策に万全を期するつもりでございます。
 なお、新官庁都市の問題は、ただいまどういう官庁をどこへということは検討いたしておるのであります。
 文教の問題につきましては、文部大臣よりお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(大平正芳君) 日韓問題につきまして、韓国の政情、李ライン、請求権、竹島等の懸案につきましての考え方は、松灘議員にお答え申し上げたとおりでございます。今後の交流でございますが、来週から重要問題に取り組む予定にいたしております。
 それから対韓債権の四千五百七十三万ドルの処置は、一定期間中に御返済をいただくことで先方と合意を見ております。
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 四点についてでありますが、第一点の、予算が景気刺激となり、インフレにならぬかという問題に対しては、総理がお答えになりましたが、私に対しての御質問の焦点は、総理がお答えになったものよりも多少角度を変えての御質問のようでありますから、私からもう一度お答えいたします。
 自由化を前提として景気刺激を必要とする予算を組んだけれども、景気刺激になり過ぎてインフレにならないかというふうに私は聞いたわけでありますが、租税収入等、経常的収入の範囲内で支出をまかなうという原則を貫いておるのでありまして、三十八年度の予算は、一般会計及び財政投融資計画を通じて刺激的な予算ではないということは、この演壇でも申し上げたとおりでありまして、こまかい数字的な比較に対しては予算委員会でまた御説明申し上げることにいたしたいと存じます。しかし、好意的に景気刺激ということも、ある意味では必要であるが、八条国移行勧告等も前提にしておるが、国際収支がそれを契機にしてまた悪化するようにはならないかという御心配もあったようでありますが、御承知のとおり、国際収支は確かに非常によくなりまして、現在外貨の手持ち十九億ドルというような状態であり、もうすでに三月末までのアメリカ市中三行からの借り入れ二億ドル及び今年三月までの返済分三千三百万ドルのうち一億五千万ドル返済したわけでありますが、IMFからの三億五百万ドルに及ぶスタンド・バイ取りきめをくずさず、自力で返済をしておるのでありますから、国際収支は非常によくなったというふうに考えてはおりますが、何分にも自由化を前にしての国際競争力をつけなければならない日本の状態でありますので、国際収支を再び悪化せしめないような十分な配慮をしていかなければならないという基本的な考えは、お説のとおり、まじめに考えております。その意味で、予算編成に対しては、インフレ的な要素もなく、またデフレになるような状態では自由化もできないということでありますので、十分それら両面の問題を調和をするような三十八年度予算編成を行なったわけであります。
 第二点は、選挙政策的なにおいがするというお考えをお述べになりましたが、未亡人陶係の問題、海運の問題、学校給食の問題、その他、最終的に与党との調整において予算計上いたしましたものは、御承知のとおり、昨年の参議院選挙に公約として明らかにしたものでありますし、しかも議院内閣制であり、政党政治でありますので、党と政府が一体になってこれが公約の実現をするということを一歩進めただけでありまして、新しく予想せられるというような選挙的なものでは全然ないことを明らかにしておきます。
 第三点は、八百二十一億円の第二次補正予算を組んだので、三十九年の先食いで、三十九年の予算編成を圧迫するおそれがないかという御議論であります。御承知のとおり、三百五十億円は三十八年度及び九年度にまたがる産業投資特別会計への繰入金も予定いたしておりますし、これが財源に対しても増収の中でまかなっておりますし、このような予算を執行していく場合、三十八年度の景気は、あなたが先ほど言われたとおり、刺激を受けるというほどにはなりませんが、健全に成長の過程をたどる、また、たどらなければならないという目標を置いておりますので、三十九年度の予算も正常な状態において組めるという考え方でございます。
 第四点は、減税の問題でございますが、減税につきましては、総理も何回もお述べになり、また、私も予算委員会で、詳しく申し上げたいと思いますが、この減税がただ大資本向けのものであるというようなことではないのであります。先ほどあなたが申されたとおり、自由化に対応して政策減税も絶対必要であるということは、この中で、俗に政策減税と言われておるものの中に、中小企業の育成強化策として、同族会社の留保所得の問題とか、中小企業の設備の三分の一割り増し償却の問題とか、中小企業近代化促進法による合併の際の清第所得課税及び登記の登録税の問題とか、住宅、工場等を買いかえて設備の近代化を行なおうとする場合でも、税がかかるために行なえなかったものが、そのような買いかえに対しては税をかけないというような問題、あわせて資本蓄積や貯蓄増強というようなものは、自由化に対して当然産業基盤の確保をはからなければならないのでありますので、これらの減税施策が大企業向けのものであるというようなことではなく、これこそ自由化に対応し、八条国に移行――いつの日にか移行しなければならないわが国といたしましては、当然第一に取り上げなければならない問題として取り上げたわけであります。一般的減税に対しても、将来もあわせて行なう基本政策に変わりのないことを明らかにいたしておきます。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(宮澤喜一君) 水資源を一元的にかつ総合的に開発をするということが問題の根本であると考えておるわけであります。仰せのように、まことにおそまきでありましたが、昨年から水資源開発公団がそういう方向で仕事を始めましたわけで、上流のダムから下流の最終消費者に達する導水路までを一貫して受け持つことになりました。方向としてはそれでよろしいと考えておるのでございます。ただいま利根川と淀川、利根川につきましては下久保と矢木沢ダム、淀川につきましては高山ダムと長柄可動堰をやっていることは御承知のとおりであります。この方式をだんだん広げていくということがよろしいのではないかと考えておるわけでございます。
 それから、財源につきましては、明年度の事業を大体百十億と考えておりますが、そのうち、ほぼ半分が借入金を含めました自己財源でございます。受益者から負担を取るということは、私は考え方として間違っていないと思いますが、その取り方、方法、時期などについては、なお実情に照らして工夫を要する点があるということは、御指摘のように考えます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍
  手〕
#24
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 第一点は、高校急増対策が不十分なようだから、それが結果としては住民に転嫁されるおそれなきやというお尋ねであったと思います。高校は、もちろん、御存じのとおり、都道府県が責任者でございます。転嫁するがごときことがあってはならぬことは御指摘のとおりであると思います。それでも幾らかの転嫁の事実がないとはいえませんことは、今後に対して十分考慮したいと存ずるのであります。ただ、申し上げたいのは、高校急増の問題が一昨年来問題になっておりますけれども、昨年の一月二十六日に急増対策の総合計画を定めましたことは、本会議場でも御説明を申し上げましたから、省きますが、実情は、私どもが当初、昨年推定しましたときの進学率よりも幾分上回るという事実がだんだんとわかって参りましたので、あらためて六一・八%の進学率ということを都道府県知事会議とも相談をしながら見きわめまして、それに基づいて計画の改定をいたしまして、金額的に申し上げますと、総事業量では当初五百五十億円と推定しましたものを、六百八十二億円と計画を変えまして、三十八年度に、初め予定しておりました仕事量を、年度別に申し上げれば、当初の計画は百七十四億円であったものを二百十二億円ということに計画変えをいたしまして、国の補助金、交付税及び起債財源でもって措置をすることにいたしました。その結果、都道府県会館のあの推進本部の看板はおろしてもらうように相なった次第であります。そういうことにいたしますると、三十七年度の実績等とにらみ合わせましても、おおよそ入学率は九六%を確保できるものと存じております。
 第二点は、高校急増との関連におきまして、高等学校の教育のやり方を晝夜二部制にしたらどうだという御意見だったと思います。それは今申し上げましたような対策が実現します限りにおいては、必要がなかりそうに思います。同時にまた、晝夜二部制にしますことは、教員の勤務条件がたいへんなことになりまして、実行的には非常に困難があるであろう。同時に、二部制にすることによって、勤労者はやむを得ず働きながら学ぶがゆえに、夜間高校に行くという必要上からはやむを得ないとしましても、そうでない生徒を夜間の学校に入れねばならぬという事態も生じましょうから、望ましい姿ではないと思います。それよりも、晝間に九六%を収容するということに全力を尽くすということが適切ではなかろうかと思います。
 第三は、教科書無償をすぐ全部なぜやらないかというお尋ねであったと思います。そのお考えには賛成でございます。ですけれども、現実問題としますと、文部省に配当さるべき予算規模も、おのずから限度がございまして、教科書だけに集中するわけにいきませんために、最小限度、私は五年以内で実施したいという考え方に立ちまして、三十八年度の予算では、小学校一年、二年、三年の三学年分を御審議願うことにいたしているような次第でございます。沖縄の学童に対する教科書の無償に要する経費も含んでおりますが、この実施につきましては、遺憾ながら形式的に、半ば外国的な手続を経なければ実現できませんので、それぞれ関係の筋を通じまして、十分に理解をしてもらって実施する予定でございます。(拍手)
#25
○議長(重宗雄三君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 次会は、明日午前十時より開会いたします。
 議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
  午後六時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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