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1962/05/22 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 本会議 第21号
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1962/05/22 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 本会議 第21号

#1
第043回国会 本会議 第21号
昭和三十八年五月二十二日(水曜日)
   午前十時二十九分開議
  ―――――――――――――
 議事日程第二十一号
  昭和三十八年五月二十二日
   午前十時開議
 第一 特定産業振興臨時措置法案
  及び市場支配的事業者の経済力
  濫用の防止に関する法律案(趣
  旨説明)
 第二 地方自治法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、日程第一 特定産業振興臨時
  措置法案及び市場支配的事業者
  の経済力濫用の防止に関する法
  律案(趣旨説明)
 一、日程第二 地方自治法の一部
  を改正する法律案
  ―――――――――――――
#2
○副議長(重政庸徳君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○副議長(重政庸徳君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。前田佳都男君から病気のため会期中、村上義一君から病気のため十日間、西田信一君から海外旅行のため来たる二十八日から十八日間、それぞれ請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
   ――――・――――
#5
○副議長(重政庸徳君) 日程第一、特定産業振興臨時措置法案及び市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案(趣旨説明)、
 両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から、順次趣旨説明を求めます。福田通商産業大臣。
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(福田一君) ただいま上程されました特定産業振興臨時措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 御承知のように、わが国は、国際経済の一翼をになうものといたしまして、貿易、為替の自由化を順調に推進し、さらに関税の一括引き下げの動きに対しても、原則としてこれを受け入れていく方針を固めております。このような国際経済環境の変化に対処しつつ、国民経済の健全な発展を確保していくためには、申すまでもなく、かかる情勢に敏速に適応し得るよう国内体制を十分整備しておくことが必要であります。翻って、わが国産業の実情を眺めますと、過小な規模の企業が多数乱立し、そのため規模の利益の追求が徹底せず、それと裏腹をなして、とかく過当競争の弊に陥りやすいという事情があり、国内の産業体制は遺憾ながらいまだ十分整備されているとは申しがたいのであります。したがいまして、政府といたしましては、自由化までに残された短い期間中に、時期を失しないよう、早急に企業の規模の適正化を通じ、産業活動の効率化をはかってゆくことが必要であると考えます。
 わが国産業の包蔵するこのような欠陥を是正し、産業活動を効率化するための努力は、まず産業界において行なわれるべきことは当然でありますが、わが国産業の資金調達の方式をも考えますと、その努力を実効あらしめるためには、産業界と密接な関係を持つ金融界からも協力を得る必要があり、さらに、国民経済の健全な発展を確保し、国民の福祉の向上に努めるといろ見地から、政府も、民間における努力を助長する必要があると考えられます。
 そこで、政府といたしましては、企業の自主性をあくまでも尊重しつつ、企業規模の適正化を通じ、産業活動を効率化するための助成を行なうことにより、特定産業の振興をはかることとし、その法的裏づけといたしまして、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要点について御説明申し上げます。
 第一は、この法律の適用を受ける特定産業の選定に関することであります。特定産業の指定は、あくまでも産業界の自主性を尊重して・その業界の申し出を受け、審議会の意見を聞いて行なうことといたしております。
 第二は、政府、産業界及び金融界は、企業規模の適正化を通じ、産業活動を効率化して、特定産業の振興をはかるための基準について討議し、政府及び産業界の合意に基づいて基準を決定することであります。この振興基準では、規格の整備、生産の専門化、設備の適正化、事業の共同化、合併等に関する特定産業ごとの一般的な方針が定められ、企業が自己責任に基づいて行動するときの好ましい判断材料を提供しようとするものであります。
 第三は、特定産業を営む者、政府関係金融機関及び銀行が産業活動を効率化するために、努力ないし留意すべきことを明らかにしていることであります。
 第四は、政府の助成に関することであります。振興基準は、政府も参加して作成ざれたものである以上、その円滑な実施をはかることは、国策にも適合することでありますから、振興基準で定められた方針に従って、産業活動を効率化するため、必要と認められるときは、政府は、資金の確保に努めるとともに、法人税または登録税の軽減措置を講ずることといたしております。
 第五は、合理化のための共同行為の特例に関することであります。合理化のためにする一定の共同行為が、あくまでも振興基準で定められた方針に従って、産業活動の効率化のために行なわれる限り、これを許容してゆくことが必要と考えられますので、公正取引委員会の認可を要件として、ここに独占禁止法との調整をはかることとした次第であります。
 第六は、合併に関する判断の基準を公表することであります。これは、企業が合併しようとするときに、独占禁止法に抵触するかどうかを自主的に判断することを可能ならしめることによって、企業の合併を円滑ならしめようとする趣旨に基づくものであります。
 その他、振興基準の内容を常に公正かつ適切たらしめるために、その作成にあたっては、十分、労働者や消費者等、関係者の意見を聞くこととしたほか、政府、産業界及び金融界から振興基準を変更すべきことを請求し得る規定を設けるなど、所要の規定を整備いたしております。
 なお、本法案は五年間の限時法といたしております。これは、貿易の自由化等により経済事情が著しく変動しつつある期間について、産業活動の効率化を有効に促進するため、本法案に規定するような措置を講ずることが適当であるという趣旨に出るものであります。
 以上、本法案の趣旨の概略を御説明申し上げましたが、要は、自由化後のわが国経済の成長のにない手たるべき重化学工業等の産業の確立発展をはかるため、競争力培養に向かって、みずから努力する産業界に対し、政府はもとより・金融界からもまた応分の協力を期待し、激動しつつある国際経済環境の中で、日本経済の占めるべき名誉ある地位をすみやかに築いて参ろうとするものであります。
 以上が、特定産業振興臨時措置法案の趣旨であります。(拍手)
  ―――――――――――――
#7
○副議長(重政庸徳君) 衆議院議員田中武夫君。
  〔衆議院議員田中武夫君登壇、拍手〕
#8
○衆議院議員(田中武夫君) 日本社会党提出の市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案につきまして、提案者を代表し、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 御承知のように、日本経済の最も特徴的な現象は、池田内閣の一枚看板である高度経済成長政策によって、産業構造の重化学工業化が進み、大資本を中心として、資本と生産の集中、系列化がきわめて強化されてきた。言葉をかえて申しますと、今日の日本経済は、すでに独占資本の支配体制が確立されているということであります。もちろん、過小な規模の企業が多数乱立し、過当競争の弊害も一部に見られるところでありますが、これらの現象は、主として中小企業の側面についていえることであって、資本面でも、生産面でも、独占的な大資本の成長は著しく、中小企業との格差をますます拡大しているのが、今日の日本経済の情勢であります。しかしながら、このように独占資本が支配するわが国経済は、高度成長政策を破綻させたばかりではなく、物価問題、労働問題、中小企業問題、農業問題等々に多くの矛盾を露呈いたしているのでありますが、その矛盾の根源が実に独占問題にあることは、今さら申し上げるまでもないことでございます。
 第二次大戦後、世界各国は、との独占の弊害を解決するための有効な方策として独占禁止法を制定し、そして、この独占禁止法の精神は、さらに強く現在の経済諸活動の上に反映されているのが世界的趨勢であります。しかるにわが国は、戦後とられて参りました一連の経済民主化政策も、次々と剥奪せられ、独占禁止政策は一貫して大幅に緩和もしくは廃止せられるという逆の努力が続けられて参ったのであります。このことはきわめて遺憾といわざるを得ないのであります。
 ただいま政府から提案されました特定産業振興臨時措置法案も、こうした逆コースに拍車をかけ、巧みに独占禁止法の骨抜きをはかって、さらに、独占、寡占体制を確立し、独占資本の利益を一そう高めることをねらったもので、この法案は政府と独占的大企業との結合を明文をもって宣言し、政府は、税制、金融その他あらゆる面で援助を公約し、カルテルを認め、合併を奨励し、独占禁止法の適用を除外することにしておるのであります。この結果、中小企業者には企業整理を、農民には高い農業資材を、一般消費者には物価値上がりを、そうして労働者には首切り合理化をもたらそうとしているのであります。
 現在、従業員一千人以上の大規模事業所は、事業所数で全製造業事業所の中のわずか〇・三%にすぎないのに、収益では全体の三二%を占めているのであります。また、最大五社で市場の五〇%以上を占めている業種は、バター、チーズ、ビール等の食品、ナイロン、テトロン、ビニロン等の合成繊維、硫安、尿素等の肥料、銑鉄、粗銅、各種鉄鋼製品、アルミ、セメントをはじめ軽三輪、乗用車、トラック、造船、重電機等々、わが国の重要産業のほとんどにわたっているのであります。現行独占禁止法のもとにおいてさえ、このように大資本を中心とした寡占状態が確立せられ、中小企業者、農林漁業者、労働者、一般消費者に重大な影響を与えているのであります。特にこれらの大資本の行動は、物価高騰の大きな要因となっているのであります。
 今日、政治の立場にある者といたしまして、最も大切なことは、さらに独占、寡占体制を強めることに努力することではなくて、独占、寡占のもたらす弊害を除去することに意を注ぐべきであると思うのであります。本法案を提出いたしました理由も実はここにあるのでありまして、独占、寡占の弊害、危険に対して、公正取引委員会の機能を強化し、独占禁止法の運用を適正にすることを念願としたものであります。
 市場支配的事業者の経済力の乱用の防止に関しては、すでにイギリス、西ドイツ、ノルウェー、オランダ、ベルギー等においても存在しているところであります。わが国の独占禁止法も、その一部について規制いたしておりますが、きわめて不十分でありますので、少なくともこの程度の規制は必要であると考え、独占禁止法を補完する意味で提案いたしたのであります。
 次に、この法律案の内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法案では、公正取引委員会が商品または役務の供給量、設備の規模、資本の額等がその取引分野における支配的事業能力を有する事業者を市場支配的事業者として指定し、これらの支配的事業者が、取引上優越した地位を不当に利用して行なう行為につき、現行独占禁止法の違反行為とみなして規制するほか、積極的に価格引き下げ等の措置をもとらせるようにいたしたのであります。
 第二に、国内の会社であって、その総資産が百億をこえるもの、または、外国会社であって、公正取引委員会が指定する基準に該当するものは、毎事業年度の業務の状況その他必要な事項に関し報告書を提出させ、公正取引委員会は、市場支配的大企業の活動状況を調査し、それを一般に公表することといたしました。市場支配的大企業が、そのいうごとく公益に合致した活動をいたしているならば、これは何ら拒否する理由はないと思うのであります。
 第三に、公正取引委員会に、市場支配審議会を置き、この法律の施行に関する重要事項について調査審議し、公正取引委員会に建議することができるようにいたしました。
 最後に、公正取引委員会は、この法律の運用状況及びこの法律の目的達成上必要な意見を国会に報告することとし、これによって、市場支配的事業者の規制について万全の対策を期することとしたのであります。
 以上で本法案の要旨を簡単に御説明申し上げましたが、要は、すでに今日、独占、寡占体制を確立している市場支配的事業者に対し、その経済力の乱用を防止することにより、常にその犠牲となっている中小企業や一般消費者の利益を保護し、もって国民経済の健全な発展をはかりたいと念願しているのであります。
 スポンサーなき法案といわれ、通産省の一部関係者以外には、たれ一人としてその成立を望んではいない政府提出の特定産業振興臨時措置法案にかわり、中小企業者や農民、一般消費者が強く成立を期待している本法案を、慎重に御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げまして、提案説明を終わります。(拍手)
#9
○副議長(重政庸徳君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。阿部竹松君。
  〔阿部竹松君登壇、拍手〕
#10
○阿部竹松君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました特定産業振興臨時措置法案に対し、質問をいたすものでございます。
 本法は、条文にしてわずか十三カ条、期間五カ年の短い臨時措置法でございまするが、私どもは、この法案そのものよりも、日本国経済憲法と言われました独禁法をないがしろにして立法化し、法案を作成した点を、きわめて重大視しいるものであります。立案当初は、通産当局を初め、関係各省におきまして、国際競争力の強化法案という名称で案を練っておったはずでございます。ところが、諸外国から横やりが入ったのでございましょうか、あるいは刺激を避けてのことであるかわかりませんが、あわてて名称を変更し、適用業種は産業合理化審議会の議を経るとか、企業の共同行為に対する認可権を公取委に置いたりするとか、御苦労のほどは十分察知するといたしましても、かかる紆余曲折の法案は、いまだかつて見ざるところでございます。しかも、官民協調方式の中心となっておりました産業界、金融界、通産者の三者合意による振興基準の作成は、金融界の反対から骨抜きとなりまして、フランスやイタリアにおける物まねも再検討すべきかと存ずる次第でございます。
 したがいまして、私が総理の池田さんにお尋ねする第一点といたしまして、本法案の説明を受けてみますると、業界が足並みをそろえて申請するかいなやということがきわめて疑問であります。同時に、気骨のある経営者が一人でもおりますれば、この法案の適用は不可能となるという、きわめてずさんな法律でございまして、ことに国民各層の反対が強い本法を、貿易の自由化対策ということで国会提案がなされておるということでございますが、再検討の余地が十分あると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
 次にお尋ねする点でございますが、通産省と公取委の間に大きな意見の食い違いと、認可合併の諸問題とを加えまして、金融財政についても、大蔵省も加わりまして政府部内の調整のできなかったことであります。ようやく二月の二十六日に至りまして、経済閣僚懇談会で案がまとまりまして、妥協が成立したものの、金融界の横やりが入りまして立ち往生し、調停役に入りました宮澤経企長官の仲介が三月中旬までも手間取りまして、与党の内部からすら異論が続出して流産しかけて、国会提出までずいぶん醜態をさらけ出し、現内閣の経済政策のいかに一貫性がないかということを示しているわけでありまして、通産官僚に引きずり回されたこの点の根拠をお尋ねする次第でございます。
 総理の池田さんが、四月の二十五日、日経連の総会におきまして独禁法の改正をほのめかすと同時に、また官房長官の黒金さんは、三月二十六日の記者会見におきまして、特振法が通過いたしましても、独禁法の改正の要ありと言明しているわけであります。保守政権と独占資本は共同体でございまするから、大企業が目の上のこぶと見ている独禁法改正云々は当然かもしれませんが、しかし、その根拠、理由を承っておきたいのであります。
 次にお尋ねすることは、本法案の名称は変わったのでありまするが、国際競争力強化の美名に隠れて、独占資本をして、中小企業、農林水産業者、あるいはまた労働者、一般消費者に対する影響はきわめて甚大でございます。よって、この犠牲はいかように処理する所存でございましょうか、御明示いただきたいのであります。
 次にお伺いする点は、二月の二十七日の閣僚懇談会におきまして、この法の管理運用は、通産、大蔵、公取の三者が共同して行なうという黒金官房長官の私案に基づきまして行なわれたそうでございまするが、通産省は産業界、大蔵省は金融界、公取は独禁法、経済憲法の番人という立場をとりますると、立法当時の精神分裂的現象が想像されるわけであります。総理は運用の面をいかにするか、伺っておきたいわけであります。
 総理にお尋ねする最後の点は、貿易の自由化ということで、それに備えてと説明されておるわけですが、自動車産業の一つを例にとってみましても、乗用車の例でございまするが、年間の出産台数は、ゼネラル・モータースが一社で二百八十万台、西独のフォルクス・ワーゲン社が一社で九十万台であります。日本は八社合計いたしましてわずか三十万台でございまするから、かかる例が示すごとく、単なる、このざる法によって、貿易の自由化推進にあたって保護するというようなことは、とうてい不可能であり、特に三転四転をきわめたこの法案では、自由化対策にならないと思いまするが、その点はいかがでございましょうか。
 次に、公取委員長にお尋ねいたしますが、本法案は前委員長時代に審議されたわけでございまするから、十分御承知置きないかもしれませんので、きわめて常識的な部分だけお尋ねするわけであります
 まず、この法案が作られた当時に、独禁法に風穴をあけたと通産官僚が言明しているわけであります。この点を公取委員長はどうお考えになっているか、お尋ねいたします。また、大幅な独禁法緩和を持ち出した産業資本家の意を受けた通産省に対して、前の委員長は反対の態度をきわめて強くとられたわけですから、敬意を表するわけですが、結局最後に、現委員長の代になりまして、七つのカルテル行為を認めると同時に、合併の判断基準を公表することになったのは、どういうことでございましょう。
 その次にお尋ねするのは、かねてから公取は強硬論を常にその主張としておったわけであります。従来からの主張によりますると、カルテル行為は現行の独禁法及び機械工業振興法で認可できるから、特別の除外例は必要なしとの平素の言明であったはずであります。合併についての独禁法の運用基準で、三〇%以上の市場占拠率があるときには慎重に云々とございますが、過去におきまして、雪印とクロバー、両乳業の場合の例もございまするから、この点は明確にしてほしいものであります。独禁法があらゆる産業振興の面で、じゃましていないと、常に公取は言明しておったはずであります。公取は、本法案とあわせ考えて、現在の立場を伺っておきたいのであります。
 次に、通産大臣にお尋ねいたしますが、まず、この法案は産業構造調査会の結論に基づいて立案した、こういうように説明されておるわけですが、ただいまの説明内容では、最初の構想と全く異なりまして、違った内容でございます。したがって、その点を特にお尋ねするわけですが、今日のごとく、立案の修正に次ぐ修正を加えた最大の理由としては、通産官僚に対する不信もあったと言えましょう。しかしながら、たとえ五年といろ短い暫定措置にいたしましても、産業資本の独禁法存在価値を否定しようとする業界の気持が、最終的には消極的賛成という結果になって現われたのではないかと考えますが、その点はいかがでしょうか。
 次に、この法案では、特殊鋼、自動車、有機化学製品の一部を対象として明示されておりますが、ほかに該当候補として考えられる業種をお尋ねしておきたいのであります。
 また、通産省が対象と考えても、業界の拒否によるか、申し出がなければ、指定することができない建前になっておりまするので、法は無意味になるおそれもあるわけですが、この運用についての心がまえを承っておきたいと思うわけであります。
 次に、合併についてお尋ねするわけですが、合併についての見解として、阻害しておるものは独禁法でなくて、人事問題とか、賃金ベースの企業の差、さらには融資系列や外資系列の強化が原因と、公正取引委員会では明確に言明しているわけです。通商産業大臣の福田さんは、公取委のこの見解をどう見ておられるか、通産大臣に最後にお尋ねするわけであります。
 次に、大蔵大臣の田中さんにお尋ねいたしますが、振興基準の作成協調方式に、金融界が、一種の金融統制であるとの観点から、きわめてこれに強く反対いたしまして、大蔵大臣を加えるか、さもなくば協調方式に参加せずとまで強く言明したわけであります。聞くところによりますると、その裏に、大蔵大臣田中さんの謀略説まで飛んでいるわけですが、事実かどうか、お尋ねするわけであります。また、経済企画庁長官の宮澤さんのあっせんもございまして、資金供給の努力をするとの言明があったようでございまするが、当初の方針と異っておるようでございまするが、との理由をお尋ねいたします。
 次に、金融界は、最初から最後まで、だだをこねておったようでございます。それは、特定産業への融資義務づけはごめんという心境かもしれませんし、反面、銀行の自主判断でやらしてほしいということであったと思いますが、このようなことでは、法の活用が望むべくもないと思うわけでございまして、その点はいかがでございますか。
 最後に、大蔵大臣にお尋ねいたしますことは、本法の第六条及び七条等の資金の確保の項でございますが、との項はどうお考えになっておられるか。さらに、政府の融資は当然開銀からだと思うわけですが、貸出金利、償還期限の融資方法をお尋ねする次第でございます。
 質問の最後は、社会党案を提案された田中提案者にお尋ねするわけですが、その第一点は、社会党は国際競争力についてどうお考えになっておられるか、これが第一点のお尋ねであります。
 第二点は、この社会党案は政府案の対抗案だということがしばしば聞かれるわけでございますが、社会党のただいま提案になった案は、政府案の対抗案であるかどうかといろ点をお尋ねいたします。
 最後に、日本社会党案の中で市場支配の業種事業とは何を指しておるか、こういう点を社会党の田中提案者にお尋ねいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 敗戦後のわが国は統制経済でございましたが、われわれ保守党内閣になりまして、統制を国内的には撤廃し、自由主義経済のもとに今日の発展を見たのでございます。しかるところ、最近の世界情勢の変化によりまして、また、わが国の持てる力を世界各国に表わすため、貿易、為替の自由化、しかもまた、最近におきましては関税の五〇%一律引き下げという、非常な経済環境の変化が現われたのであります。われわれは、日本の経済をもっと力強く、そして世界の繁栄に協力するためには、この際、為替、貿易の自由化をし、わが国の産業の基盤を強化しなきゃならぬことは当然考えなければならぬことでございます。したがいまして、今回の特定産業振興臨時措置法案は、私は、財界、金融界、一般国民が大多数賛成しておると考えております。したがいまして、今お話のような、日本の経済、世界の経済の実情を知らずに・とらわれたいわゆる反対議論とか、あるいは再検討議論には、くみするわけにはいきません。
 なお、今回の法案成立にあたりまして、いろいろ議論があったことは事実でございます。しかし、お話のように、経済閣僚懇談会に私は出席いたしまして、あらゆる議論を統一さして本法案になったのであります。もちろん、重要な法案でございまするから、ことに、独禁法と、うらはらをなす関係もありますし、また金融界におきましては、協力の程度、範囲をどうするか、あるいはまた、わが党におきましても、特定業種をどの程度にするか、いろいろな点から検討を加えるので、議論があることは当然でございます。しかし、議論の末、最もいい案が今提案している法案でございます。
 なお、独禁法との関係でございまするが、独占の弊害を排除いたしまして、公正かつ自由な競争による経済を打ち立てることは、自由主義経済を建前としているわれわれとしては、当然の考え方でございます。独占禁止法は十分尊重して参りまするが、しかし、その運用にあたっては、鎖国経済、占領治下に作られた独占禁止法は、この発展した世界経済に踏み出す日本の立場として、あれを金科玉条として守るかどうかということは考えなければなりません。あの独占禁止法は、わが国の占領下、鎖国時代の独占禁止法でございます。したがいまして、その精神はあくまでも尊重いたしまするが、世界に乗り出すわが国の経済をどうするかということにつきましては、独占禁止法の運用につきまして十分考えなければならないと思うのであります。だから私は、独占禁止法の精神はあくまでも尊重いたしますが、これが運用にあたっては、国民全体の利益と世界経済の繁栄に協力するよう考えていかなければならないと思います。
 次に、この法案が、中小企業あるいは労務者、農林水産関係者あるいは一般消費者にどういう影響があるかということでございますが、益はあっても害はございません。益はあっても害はない。これは、販売カルテルとか、あるいは独占禁止法の精神を踏みにじるものではございませんで、いわゆる合理化カルテルで、りっぱないい品物を安くしようとする措置でございまするので、中小企業、労働者に何ら悪影響はございません。ことに、わが国産業の基盤を強化しようとするのでございますから、この法案がなくて世界の競争に負けて、有力工場がぶっ倒れたならば、労働者はどうやって生きましょう。また、その関係中小企業はどうやって生きましょう。そうして良品を、いい品物を安くしょうという考え方でございますから、一般消費者にもみんな喜ばれることでございましょう。百利あって一害なしというのは、この法案のことだと私は思うのであります。
 次に、運営の機関につきましては、法案で示しておりまするごとく、主務大臣がこれを取り扱いますし、その間におきまして、産業合理化審議会の議を経る場合もございましょう。あるいは合理化カルテルにつきましては、公取委員会の審査を経ることになっております。機関は、はっきりきまっております。
 なお最後に、自動車の例をとってお話がございましたが、今の日本の自動車工業、乗用車でも八社ばかりございまして、これをこのままにしておいて、フォードとかシボレーその他の外国の自動車会社と競争できましょうか。私は、との自動車を見ても、この際、この特定産業振興臨時措置法を出しまして、二つか三つかでも、ほんとうに競争のできる、りっぱな会社に育てていくということが、わが国経済の発展、国民生活の向上に益することではございますまいか。これは、一経済を少しお考え下さいましたならば、たれでもわかることであるのであります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(福田一君) お答えいたします。
 御質問の第一点は、産業構造調査会で最初計画したものと全然変わってしまっておるではないか、こういうことでございますが、産業構造調査会でこの種の法律を必要といたしましたのは、規模の利益、いわゆる大量生産あるいは大きな資本等によって生産をして、そうしてよい品物を安く作るべきである、こういうことを産業構造調査会で言っているわけでございます。そうして、これによって、日本の消費者に対しても安い品物を渡すと同時に、海外に対してどんどん輸出を盛んにしょう、そうして日本の産業をりっぱに育てていこう、こういうことが産業構造調査会で主張された点でございまして、この点は十分に法案の中に取り入れてございますので、何らわれわれは、これが変化があったと考えておるわけではございません。
 それから、これによって官僚統制をやるのではないかというようなお話であるやに承ったのでございますけれども、御承知のように、統制というのは、他人の意思を無視して、そうしてこれを実現していくということが基本の考え方になるわけであります。ところが、今度の法律によりますと、業界の大部分のものが申し出をしなければこの法律は発動をしないのであります。しかもまた、これが発動をいたしまして、どういうふうにやって生産をし、どういうふうなものを作っていくことにしたほうがいいかという基準を作ったからといって、業界の人が、それはいやだと言えば、これは実現しないのです。そういうことを考えてみます、いわゆる自由意思というものを十分に尊重しておるのでありますから、これを官僚統制と言われることはおかしいと思います。また、これ自体が、先ほど申し上げたような意味で、いわゆる合理化をしていこうというのでございまして、いわゆる独占禁止法が最もきらっておりますところの価格協定とか数量協定というようなものをするものでないことを、御理解賜わりたいと思うのであります。
 その次に、この法定する業種はどういうふうにするのかというようなことでございますが、法案の中に、特殊鋼、自動車、石油化学というのは例示としてあげておりますが、その他の業種も特定産業に指定することはできるのでありますが、これは方針としてできるだけ少なくするようにいたしたいと考えておるものであります。
 それから、業界の代弁者みたいなものになってしまいはしないかというようなお話もございましたが、われわれ通産省というのは産業界を育成するという大きな仕事をかかえておるのでありますから、そういうような業界の意見も聞かなければいけません。しかしながら、私たちは産業界の言うことを何でもそのまま、うのみにするということがいわゆる産業行政であるとは考えておらないのでございまして、これに対して適正な判断をいたしておることは、私が今まで具体的にやったことでも御理解をしていただけると思うのでございます。
 以上、私たちは、先ほど総理からもお話がございましたけれども、自由化をしていって、そうして日本の産業をりっぱに育てていこうという段階におきまして、そのときに、日本の産業では、先ほど自動車の例をとられましたけれども、あれと同じでございまして、おっしゃるとおりでございまして、とても外国と太刀打ちができないというような状況になっております。そのときに自由化をしますというと、その産業がつぶれ、そうしてそのために労働者あるいはそれに関係しておる人が非常な損害を受けるのであります。そういうことのないようにいたすということが一つ、そうしてこれによって日本の産業をどんどん育てていこうという目的が一つございます。もう一つは、そういう場合、自由化をいたしますというと、よくて安い品物を消費者に使わすことができるようになるのでありますが、そうなりますと、外国のものがどっと入ってきて産業がつぶれてしまいますから、よくて安い品物を国内で作ることにして、そうしてその品物を消費者に使ってもらう。同時に、海外へも輸出しようということでありまして、独占禁止法が目的としておるところのこの精神を十分に尊重いたしまして、同時に、この新しい事態に対処して、これを補完し、補強していく目的があるのでございますから、ほかの一般消費者とか、あるいは農民とか、その他労働者に対して、決して不利益をもたらすものでないということを御承知願いたいと思うのであります。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 私に対する第一問は、本法の原案作成の過程において金融界が反対をしたというようなことは、大蔵大臣が謀略で反対をさせたのではないかというようなニュアンスの紀考えで御発言がございましたが、私の職務は、がたがたしないようにするのが職務でございまして、私が謀略を行なって本法の成立に反対させたというような事実は全くございませんし、そういう精神の持ち主ではございません。
 それから第二の問題につきましては、経済企画庁長官があっせんをいたしました過程において資金の供給の努力をすると言っておったのが、本法の条文で見ると、当初の方針と異っておるのではないかということでございますが、当初私たちが考えておりましたとおり、資金の供給に対しても十分の配意をしていくという基本線は何ら変わっておりません。
 それから第三点目は、銀行界が反対をしておった、いわゆるごたごたしておったということについての御質問でございましたが、これは政府の原案そのものでも、融資統制を行なうように、また融資命令を出すように法文が作られるというような考えは、初めから持っておらなかったのであります。御存じのとおり、振興基準の策定にあたりまして、あらかじめその業種に融資をしなければならない、また、現在融資をしているような金融機関も立案に参加をしていただいて、これらの産業を振興せしめるために十分金融的な措置が必要であるといろ旨を理解してもらうという考えでございましたが、条文の制定、また条文の表現の仕方によって、融資統制というような面が現われるということに対して、金融界では顧慮いたしておりましたので、十分意思の疎通をはかりながら現在御審議を願っておるような条文に整理をいたしただけでございます。
 それから第四点は、財政資金の活用及び開発銀行等の問題についての御質問でございましたが、財政資金が必要である場合、この法律が特定産業の振興を意図しておるのでございますから、これが活用も当然はからなければならないわけでございます。これをはかるとすれば開発銀行で行ないたいと思います。これが融資条件、また返済の期間、その他金利の問題等にお触れになりましたが・現在の段階においては、開発銀行に扱っております事案のとおりの条件で融資等を考えておるわけでございますが、との法律制定後、なお現在の条件以上に優遇をしなければならないというような状態があれば、その時点において考慮して参りたい、このように考えておる次第でございます。(拍手)
  〔政府委員渡邉喜久造君登壇、拍手〕
#14
○政府委員(渡邉喜久造君) お答えいたします。
 この法案の立案の過程におきまして、当初幾つかの点で通産省と公取委員会との間で意見の相違がありましたことは事実でありますが、その後の話し合いにおきまして、公正取引委員会の意見も入れられ、本法案の内容も相当修正されましたので、公正取引委員会としては本法案の提案を了承した次第であります。独占禁止法に風穴をあけるとか、あけないとかいうお話がよくありますが、そういう言葉の末は別としまして、公正取引委員会としましては、新しい事態に対処して必要最小限度の共同行為を認めるといろわけでありますから、これによって独占禁止法の基本的精神が害されるというようなことは考えておりません。また合併基準につきまして、なぜこれを公表する必要があるかといったような御質問がございましたが、自由化に伴いまして、取引分野に新しい変化が起こるということも考えられますので、そり辺も考慮いたしまして、振興基準ができました場合、その業態、業種について合併基準を公表するということが適当であると考えておるわけであります。(拍手)
  〔衆議院議員田中武夫君登壇、拍手〕
#15
○衆議院議員(田中武夫君) 阿部さんの質問は三点であったと思います。逐次御答弁申し上げます。
 その第一点は、国際競争力の培養についてどう考えておるか、こういう御質問でありますが、私は国際競争力の培養強化は、何も独占、寡占状態を作っていって、独禁法に穴をあけていくことではないと思っております。たとえば技術開発の面において、政府の援助または協力、系列融資強化を排除いたしまして、金融の円滑化あるいは金利の引き下げ、社会資本の投下等等、幾らでも方法はほかにあろうと考えております。今ここに一例として、金利負担に対する企業の重みがどういうことになっておるか、負担率がどうなっておるか友、ちょっと御参考に申しますと、一九六一年の製造業の総売上高に対しまして、金利の負担率は、アメリカが〇・五%、西独が一.二九%、日本は三・九四%であります。こり一事をもってしても、国際競争力培養には、他に幾らでも方法があるということがおわかり願えると思います。
 次に、社会党案は政府案の対案であるかどうか、こういったお尋ねでございますが、まず政府案は、先ほど来話題が出ておりますように、最初は新産業秩序確立とか、協議方式とか、大きなことを言って大上段に振りかぶりましたが、あるいは金融界、財界の抵抗にあいまして、二転三転いたしまして、今ここに提案をせられておりますが、先ほど来政府側の答弁はごまかしておまます、そのねらいは、独禁法に風穴をあけるということだけがねらいの法案になり下がったのであります。そこで、わが党提出の法案は、独禁法の補完法として考えておりますので、まさにこの点、対案であろうと考えております。ざらに政府提出の法案は、最初は指定産業を条文に明確に書くということになっておりましたが、これまた第二条で政令事項になっております。したがいまして、特定産業ではなくて不特定産業になるおそれがありますので、独禁法全体の立場からの規制が必要であろうと考えております。
 第三点でございますが、この社会党案は一体どのようなものを対象としておるのか、こういうことでございますが、一口で申し上げますならば、私的独占禁止法でいう独占、寡占、これの弊害を除去しようということでございますが、もう少し具体的に申し上げますならば、一つの産業において、いわゆる大手の数社あるいは二社、三社で市場支配をしておる現状を申しますと、これは昭和三十七年の生産高についてでございますが、ビールは三社で九八・八%であります。ナイロンは二社で一〇〇%、テトロンは二社で一〇〇%、フィルムは、映画、エキス線は二社で一〇〇%、ロール・フィルムは二社で九六%、ガラスは二社で九六・六%であります。しかも、こういう産業が生産面においてはどうなっておるか、三十年度の生産量と三十七年度の生産最を比べてみますと、次のようになります。なお経済白書にも、三十七年度の経済白書に、生産は上がっているが物価は一向に下がっていないと、寡占、独占の状態についてはそういうことが指摘せられておるのであります。そこで、ナイロンについて申し上げますと、数字は昭和三十年度、三十七年度の例でございます。ナイロンは、年産八千七十六トンであったのが五万七千七百十九トンと、ぐんと生産力が伸びております。ビールは、四十一万一千四百十九キロリットル、それに対して百四十八万三千百三十キロリットルであります。その値段はといいますと、ナイロンで、昭和三十年には五千三百八十円、三十六年では四千六百三十円。ビールにおきましては百二十五円、それが現在百十五円しておる、この十円の差は税金が下がっただけであります。中身は下がっておりません。ガラスにいたしましては、板ガラス二メートル平方一箱といたしまして五百八十二万五千箱、それが一千二百二十八万三千箱となっております。値段は二千八百五十円が二千七百三十円になったにすぎないのであります。このように、寡占状態あるいは独占状態のもたらしております結果は、生産が幾ら伸びても価格を下げない、こういうところに弊害が出て参り、一般消費者等々に対して圧迫を加えるので、こういうものを対象にしていきたいと考えております。
 以上、答弁を終わります。(拍手)
  ―――――――――――――
#16
○副議長(重政庸徳君) 二宮文造君。
  〔二宮文造君登壇、拍手〕
#17
○二宮文造君 私は公明会を代表いたしまして町ただいま提案されました特定産業振興臨時措置法案について、若干の質問をいたしたいと思うものであります。
 今日恥日本の産業は、貿易自由化あるいは関税の引き下げという国際的なあらしの中に、その生産規模、経営規模の過小性、過当な企業競争について、きびしい反省期に立ち至っております。この法案も、そうした前提のもとに、将来の日本経済の発展において中核的な役割りを果たすべき重化学工業、いわゆる戦略産業部門に対して、その業種を指定し、国際競争力を培養するための措置を講ずるものと承知いたしております。
 まず、総理にお尋ねいたしますが、率直に申しまして、これらの産業は、少なくとも工場誘致の段階におきまして、あるいは証券投資の段階において、国民に対し成長部門であると宣伝されて参りました。また対自由化政策の必要性も、今日急激に始まったものでもありません。にもかかわらず、同じ業種の中で、ある企業は前向きとなり、また、ある企業にとっては、うしろ向きを余儀なくされますこの法案を提出されるに至りましたことは、総理の言われる経済の高度成長政策が企業の経営者を刺激し、バスに乗りおくれるなと、いたずらに過当設備競争を引き起こしたところに重大な原因があり、しかも育成指導していくべき政府に適切な行政指導がなされなかったという反省があってしかるべきではないか。言いかえるならば、政府の経済長期計画の見通しに誤りがあったのではないかと思うのですが、御所見を承りたいのであります。
 次に、政府が今後の施策としてとられようとする官民協調方式でありますが、産業界では、官僚統制のおそれはないかと非常に危惧いたしておる反面、あるものは、このような方式で、はたして言うところの効果が上がるかと見ております。すなわちこの法案では、第二条第一項で業種を指定し、同じく第二項で主務大臣が政令の制定または改廃の立案にあたる点、及びその振興基準をきめる際の合意は、主務大臣と産業界でなされると規定し、常に政府がイニシアチブをとっている点は、官僚統制をにおわせるものがあり、さりとて、法の適用は業界の要請を受けてからと規定して、これを協調方式と名づけているようでありますが、業界内の意見調整は、過去の石油業界の混乱は石油業法で、また硫安業界の混乱もその業法の規定で、ようやく調整を得ております経験から見ましても、また、この法案の性質上からも、どうしても政府の意向が強く反映する点は否定できないのであります。したがって、これらの産業を含め、産業全般に対する今後の政府の指導方針を承りたいと思うので彫ります。
 また、これに関連して通産大臣にお尋ねいたしますが、すでに通産省内では、石油化学、自動車産業における自由化体制強化のため、より強い内容を盛り込んだ業種別の単独立法に取りかかっているとのことでありますが、この点について御説明をいただきたいのであります。
 ざらに、いうところの国際競争力についてでありますが、生産規模の拡大をはかることによって培養せんとする努力は一応わかるとしましても、たとえば、エチレンの国際競争のための生産水準は、年産十万トンと考慮されているようであります。外国でも、同じように、より規模を拡大してコストの低下に努力するであろうことは当然であり、現にアメリカでは、モンサント・ケミカル、フィリップスの両社が、年産二十三万トンのマンモス工場を建設しているそうであります。したがって、政府がこれからとろうとする特定産業の振興基準における生産の目安をどこに置こうとするものであるか。お尋ねいたしたいのであります。
 また、法案には直接表現されておりませんが、特定産業に重要な関連のある中小企業との問題であります。たとえば、自動車製造工業は、シャシー・メーカーだけで約八万人、部品工業及び関連部門を入れますと実に二十万名という膨大な数に上り、また、その大部分が中小業者であります。従来、価格競争の場合には、ともすると、大企業のしわ寄せが中小企業の負担となって参りましたことから考えて、本法案の運用にあたって、中小企業の利益擁護をどのように考慮されているのか、お尋ねいたしたいのであります。
 同じく利益擁護の点でありますが、昨年、政府は、石油価格の値下げ競争の際に、標準価格を指定しましたが、消費者から鋭い反撃を受けたことを御承知のはずであります。との法案は、当面、輸入防衛的な性格から見て、そのような消費者への不利益はないと言われるでありましょうが、とかく、合理化カルテル、合併などには、市場支配が強まるにつれて、このような弊害が伴いがちであります。ゆえに、政府は、この消費者の利益擁護の面に強く意を用いるべきであると思いますが、御説明をいただきたいのであります。
 さらに、企業経営を論議しますとき、当然、労働者をあわせ、その位置を考慮しなければならないのでありますが、この法案によって直ちに製造品種の変更に伴う人員整理あるいは配置転換の問題が生ずると見なければならないのであります。この場合、労働者の利益を守るためには、単に利害関係者として振興基準の討議に参加する道を開いているだけでは、はたしてその地位が確保されるかどうか、はなはだ疑問に思うものであります。この点について、通産大臣の御見解を承りたいのであります。
 次に、資金確保についてお尋ねいたしますが、この法案の提出に先だって、政府は、金融界の協力を要請し、民間金融機関に、資金供給についてその役割を期待していたかのごとくでありますが、結果的に見て、特定産業振興基準は、いわゆる四者協議、二者合意という変則的な規定となっております。この点は、民間金融機関の自主性を重んじているとはいうものの、当初の案から見れば、明らかに一歩後退であります。したがって、今後集中あるいは整備に関して膨大な資金需要を予定されておりますが、この法案の運営にあたりまして、政府はどのような具体策をお考えになっておりますか。大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。
 また、日本の企業の規模の利益を考えますときに、常に問題になるのが資本構成の内容であり、特に最近では、他人資本の割合が七五%を占め、そのために金利負担が企業にかなりの重圧になっているようでございます。先ほども話がありましたが、昭和三十七年七−九月期の法人企業統計によれば、製造業を平均して、売り上げ高に対し金利負担は三四%になっており、パルプ、合繊、石油化学において影響は強いといわれております。また、付加価値の中で占める金利負担の割合は、同じ期間に二〇%を占め、人件費に次いで第二位となっているようでありますが、国際競争力培養の過程において、この金利負担の面をどのように考えておられるか、承りたいのであります。
 また、最近外国において外貨債が募集され、これが産業資金の運用に相当の効果を見せているようでありますが、国内においても、産業資金の円滑化、ひいては金利体系の正常化のためにも、社債市場の育成という問題が出てきておりますが、大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
 なお、外資に関連して承っておきたいのは、特定産業の中で、合併あるいは共同化によって生産品種の変更を受けるよりも、むしろ外資を導入して、販売分野にまで外国との提携をはかるほうが、将来の企業の経営において得策であるとする向きもあると聞いておりますが、もしもそのようなことになれば、本案の趣旨がかなり変更されると思うのでありますが、外資法等の関連について御説明をいただきたいのであります。
 最後に、公正取引委員長にお尋ねいたします。
 独占禁止法の精神は、少数企業の市場支配による不利益を除き、ひいては消費者の利益を守る点にあります。この法案は、自由化対策として、端的に言って、独占禁止法に風穴をあけようとするものであると言われております。もちろん、国際競争力の培養という大義名分のもとに試みようとしておるのでありますが、結論は、やはり企業の利益の追求にあります。したがって、名目はいずれにせよ、企業利益の拡大をはかる目的をもって独占禁止法の適用除外に対して先例となるおそれはないか。この際、公正取引委員会として、中小企業あるいは消費者の利益擁護という点についてどのような御見解をお持ちであるかお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回提案いたしました特定産業振興臨時措置法は、われわれのいわゆる高度経済成長の失敗あるいは見通しの誤りを是正するために提案したのではないかという御質問でございます。私はここではっきり申し上げます。敗戦後のあのインフレ経済を、昭和二十四年に、非常にドラスティックな、占領下でなかったらできないと思いますが、非常に抜本的な措置をやりまして、統制経済から自由経済に日本が移り、ほんとうに国内は自由経済のよさを、うんと出して、非常な経済の成長をしたのであります。しかも、過去十四、五年間の間におきましては、私の言う所得倍増以上の効果を現わしておるのであります。しこうして、私は、日本の経済がもっと、より強く、日本の経済の繁栄のみならず、世界の平和と繁栄に貢献するためには、国内が自由であっても、外国の貿易が不自由であったならいけない。日本で作ったものを外国は買ってくれない。日本は鎖国経済だから、自由な貿易をしていないから、日本の品物をシャット・アウトする状態では、日本は伸びない。私はそう考えまして、国内経済の発展と同時に、どうしても外国とのいわゆる貿易管理をやめてしまわなけりゃならないという決心のもとに、昭和三十四年六月、通産大臣を拝命いたしまして直ちに貿易自由化を打ちあげたのであります。当時たいへんな反対がありましたが、どうしても日本の経済をより強くし、より広くするためには、外国との貿易を自由に広げていかなきゃならんというので、自由化を始めまして、ようやく昨年の十月に、三十年当時には三〇%ぐらいの自由化であったのを九〇%近くやったのであります。そして、これを自由化するためには、徐々に国内の産業の基盤強化をはかって参りました。で、外国からも、日本の経済成長あるいは日本の自由化につきましては相当高く評価してくれておるのであります。しかしまだ、いずれにいたしましても、特定産業、ことに軍化学工業につきましてはいろんな点で自由化していない分が相当あります。しかし、これを自由化していって、ほんとうに外国と対等な条件のもとに競争し、そして日本の経済を拡大し、世界貿易を発展さすために、私は最後の仕上げとしてこれをやろうとしているのであります。経済の見通しは、私の予想どおり、あるいはそれ以上によくいっております。これをもっとよくするための法案が今回のこれでございまして、私は、あくまでいわゆる企業の自主性と責任態勢を守りながら、経済の健全な発達のためにあらゆる措置をとっていき、そしてあらゆる見通しを立てまして、国民の協力を得ましてここまで来ておるのであります。今度の特定産業完全自由化が最後の仕上げと思って、努力いたしておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 通産省内で石油化学と自動車について特別の個々の立法を今準備しておるのではないか、こういう御質問でございますが、私たちは、この法案の運用を見た上で、必要があれば、石油化学についても、自動車産業についても、特別の立法をしなければならないかどうかというようなことを、今後研究をしていきたいと考えておる次第でございます。したがって、ただいまはそういうことをいたしておりません。
 次に、規模を拡大すれば――まあいわゆる大量生産をやるというようなやり方をすれば出産コストは下がるというけれども、外国ではどんどんもっと大きく大きく規模を拡大していくから、それに日本は追いついていけないじゃないか、こういう御質問ではないかと思いますが、しかし、規模の拡大というのは、やはり限度がございまして、適正な規模というものがあるのであります。たとえば石油精製などの問題について見ますと、一応今一万バーレルというのが基準になっておるのでありまして、これ以上に規模を大きくいたしましても、はたして規模の拡大によるいわゆる利益が出てくるかというと、なかなかそういうわけにはいかないのであります。こういうようなことは、いわゆる基準を作成するときにあたりまして、その業種片々に通じてそういうような規模というものをきめていけばいいのでありまして、本法案で規模のいわゆる拡大による利益をはかるということは、適正規模という考え方によって運用すれば、十分に日本産業においても効果をあげ得ると考えておる次第でございます。
 次に、中小企業との関係でございますが、特定産業というのは、決してその業種に属する中小企業を除外いたしておるのではないのでございます。産業を見る場合に、縦割りで見る場合と横割りで見る場合と、両方の見方がございまして、縦割りにした場合に特定産業というものが見られるのでありまして、その中にはもちろん中小企業が含まれているのであります。横割りにした場合には、大企業と、そして下のほうの中小企業と、ころ二つに分かれるのでありますが、この特定産業に属しておりまするところの中小企業は、この特定産業振興法によって保護されるばかりではなくて、私たちが、ただいま提案をいたしておりますところの中小企業基本法によっても、横のほうからも援助を受けて、七重の保護を受けるという形になりますからして、決して中小企業に悪影響はございません。また、この特定産業というものは、今の世界経済におきまして、総理も仰せになりましたとおり、日本の経済においてもそうでございますが、いわゆる根幹産業となるものでございまして、これが発展し、あるいはまた、世界に伍して堂々と太刀打ちができるようにならない限りは、日本の産業は伸びない。したがって、国民生活を向上させるということはできないのでございますから、こういうふうにして、この特定産業が振興されるということ自体が、ひいては中小企業にも好影響をもたらすと言わなければならないわけでございます。
 次に、石油の標準価格をきめて、消費者にたいへん迷惑をかけたではないかと、こういうお話でございましたが、これは石油業法によりまして、政府は必要があれば標準価格をきめることができるといろ法律を皆様に制定をしていただいておるのでございます。ところが、昨年の石油業界を見てみますと、過当競争をいたしまして、すべての石油業界で年間四百億から五百億というような赤字を出して、そして株価は全部ほとんど、もう五十円の額面を割るところまでいってしまっておるのであります。こういうことでは、石油業法が考えておりました、石油をいわゆる安定して――低廉であり、しかも安定して供給するという目的にかなわないと考えたのでございます。安価であるだけではいけない。安定しておらなければいけない、エネルギーというものは。そういう意味からいって、標準価格を定めることがいいと考えて、標準価格を定めましたけれども、しかしながら、自動車業界その他の関連業界について、特に影響があるものについては適当な行政指導をして、あまり影響のないようにいたしたことは、御承知のとおりでございます。
 次に、労働者に対するいわゆる利害をあまり考えておらないではないかと、こういうお話でございますが、この法案は、特定産業に属するところの労働者が、将来、自由化によって失業したり、あるいはまた、職をなくして非常な困離に陥るような場合を考慮いたしまして、立案をいたしておるのでございますからして、根本的には労働者に対する対策として立案したといってもよい大きな面を持っておるわけであります。そこで、そういうようなこの法案でございますが、しかしながら、この労働者が失業をした場合には――そういうことを言っても、いわゆる合理化をやった結果、失業した場合にはどうなるのかと、こういう御疑問をお出しになったと思うのでございます。そういうことにつきましては、もちろん、われわれとしては、そういうことのないように指導をいたしていきたいと思います。もともとこの特定産業というものは、これから伸びる産業であり、伸ばさなければならない産業であります。したがって、配置転換等は割合に順調にでき得る産業であると考えておるのでございまして、いわゆる石炭産業のような形における労働問題というものは起こり得ないと考えておりますが、しかしながら、いささかでも犠牲が出た場合にどうするかということにつきましては、今の労働法規を運用するばかりではなくて、そういうような会社とよく連絡をとりまして、労働者の、失業された人たちの利益を十分に考慮していくように、指導をいたして参りたいと考えておるわけでございます。
 以上のようなわけでございまして、先ほども申し上げましたが、この法案は、労働者のためにも、消費者のためにも、よい品物を安く作って、これを供給するといろ目的を持っておりますから、決してそういう人たちの利益を害するものではないと、私たちは確信をいたしまして、この法案を提出いたしておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 私に対する第一問は、振興基準の作成にあたりまして、四者協議をするけれども、二者合意であるから、民間金融機関の協力は一歩後退したのであって、一体どういうふうな状態で資金協力を得るのか、こういうことでございます。どうして資金の確保をはかるのか、こういう点でございます。産業の育成強化、振興対策に民間資金の活用がはかられ、また、これの協力なくしてはできないのでありまして、非常に大きなウエートがかかっておることは御承知のとおりでございますが、政府の資金を使うのでもなく、民間資金の活用というのでございますから、法律に明定をして、大蔵大臣が民間金融に対して資金統制を行なったり、融資命令を出すようにすることは、現在の法制上は好ましいことではないことは御承知のとおりでございます。同時に、全銀協の会長その他が四者協議の構成メンバーとして入りましても、御承知のとおり、全銀協は法律に基づくものではないのでありまして、全銀協そのものを拘束できる力を持っておらないわけでございます。そういう意味で、民間資金の活用をはかるということを実際に考えるには、法律でこれを強制せず、しかも民間金融機関の中立性を十分確保しながら、資金確保に努め、協力を得なければならないのでございます。本法はその意味において非常に合理的に作られておると考えております。四者協議の過程において、十分に協調融資が必要である、協力が必要であるということを、あらかじめ理解をしていただいておりますので、私も中に入って金融機関の方々と一緒に検討するのでございますから、これが振興基準がきまれば、当然、拘束はいたしませんが、また、合意の参加をやったことによって直ちに融資義務は生じないという法制上の建前になっておりますが、本法そのものの使命を考えますときに、当然協力が得られると、このように考えておるわけでございます。
 それから第二の問題は、企業の資金構成を見ますと、七五%は他人資本であって金利負担が非常に大きい、これが軽減に対する具体策、こういうことでございますが、おっしゃるとおりでございます。政府はその意味において、貿易自由化に対処する策といたしまして、国際金利にさや寄せをするという基本的な方針を総理の施政方針演説で明らかにいたしておるわけでございます。なお、その後、金融環境の正常化、公定歩合の累次にわたる引き下げ、市中銀行の貸出金利の引き下げ、また、歩積み、両建て等の整理によりまして、実質金利の低下等、具体的な措置をとっておるわけでありまして、金融の正常化と相待って金利負担は徐々に軽減をせられておるわけでございます。しかし、根本的に企業の金利負担の軽減というのは、外部負債にたよっておる企業の資金構成をできるだけ早い機会に、また、お互いが協力をし合いながら自己資金比率を上げていくということを進めていく以外にないのでありまして、政府も格段の努力をいたしておるわけでございます。
 第三点は、外債の募集も相当効果があって、国内金利体系の正常化のためにも、金融市場の正常化、育成をはかったらどうか、公社債市場の育成をはかったらどうかということでございましたが、全くお説のとおりでございまして、政府も、私もあなたの言われるとおりの方向で日夜努力をいたしておるわけでございます。公社債市場の育成が非常に急務でありまして、政府も努力をいたしておりますが、長短金利体系の不均衡・特にコール・レートというものが公社債の金利よりも上回っておる、こういうような状態では公社債の流通市場の育成強化はせられないのでございます。御承知のとおり、昨年十一月から、日銀における新たなる通貨供給方式として、買いオペレーション制度等がとられておるわけでございますが、そのためもありまして、順次金融は正常化しつつあるのでございます。コール・レートも、きょう現在等では、おおむね公社債の金利よりも低くなり、翌日物だけが公社債の金利を上回っておるというのでございまして、公社債の市場の育成は徐々にではございますが強化をせられているのでございます。なお、日銀がとりました買いオペレーションの制度も、オーバー・ローン解消というのが第一の目的でございましたが、順次公社債の市場の育成強化という面に働いていくと考えておりまして、お説のように、市場の強化をはかって参りたいと、こう考えておるわけでございます。
 第四点は、国内的に資金調達をするだけでなく、外債によって資金調達をしてはどうかということでございますが、このことに対しても、政府は、いつも申し上げておりますように、優良安定的なものに対しては、外資導入については促進をいたしているわけでございますし、本法による特定産業の振興のためにも、外資が入るというようなものに対しては促進をいたして参るつもりでございますが、しかし、無制限に外資を充てようというのではありません。あくまでも、先ほど申し上げましたように、自己資本の育成と、国内で資金調達ができるものにつきましては調達をしながら、特に外資によりましては、国内において悪影響を起こさないということに十分の配慮をしながら、外資の導入を行なっていきたいと考えております。具体的な事例につきましては、所管大臣とも十分意見調整の上、適切な処置をとって参りたいと、このように考えます。(拍手)
  〔政府委員渡邉喜久造君登壇、拍手〕
#21
○政府委員(渡邉喜久造君) お答えいたします。
 この法案は、自由化に伴う新事態に対処して、どうしても必要な共同行為だけを認めようとするものでありますから、これをもって独禁法適用除外のいわゆる先例とするといろ考えは持っておりませんし、また、そうなる心配もないと思います。
 次に、本法案による共同行為につきましては、一般消費者や関係中小企業者の利益等を不当に害するものでないということが認可の重要な要件になっております。したがいまして、公正取引委員会としましては、当該共同行為の認可申請がありました場合において、一般消費者や関係中小企業者の利益を不当に害することがあるかないかということにつきましては、特に慎重に審査して、そうした弊害のないことを期したいと思います。(拍手)
  ―――――――――――――
#22
○副議長(重政庸徳君) 奥むめお君。
  〔奥むめお君登壇、拍手〕
#23
○奥むめお君 私は、上程されました特定産業振興臨時指貫法案に対して、消費者の立場から、総理、通産大臣、公取委員長に質問をするものでございます。
 安くてよい製品がどんどん外国から入って参ります。また、外国の資本が金利の高い日本目がけてどんどん入って参ります。舶来品に弱い日本の国民目当てに、目新しい品が優秀なデザインと巨大な宣伝広告を伴ってどんどん入ってくるのですから、ひとたまりもなく撹乱せられるおそれがあると思うのであります。事業欲と営利を事としている企業家に愛国を説くことは、太によって魚を求めるようなものであるとしても、世界経済に伍する日本の経済基盤をこの際固めるために、国民全体が現在置かれている日本経済のむずかしさを思わなければならないと思いますし、官民ともに根本的に改めなければならぬことが多々あると思うのでありますが、これこそ本法案の前提とするべきものではなかいと思います。総理はこの点で何を訴えようとしていらっしゃいましょう。一例を申しますと、外車が安くて格好のいいのがどんどん入ってくる。セールスマンとしては、もうけが多ければそれでよろしいのです。どうして高くて好まれない日本車を売りに回らなきゃならぬか。こういう場合を考えますだけでも、なかなか問題は困難だと思うので、総理のお考えを、第一にこの点から伺いたいのでございます。
 また、この法案で特定産業に指定されたものには、自動車、特殊鋼、石油化学等がございますが、これらは大衆の生活に非常に関係の深いもので、新産業として出てきたものでございますから、この法案がどう運用されるか、この法案がうまくいくかいかないかということに多大の関心を寄せざるを得ないのでございます。長い封鎖経済と官庁権力に依存して温室にあった日本の産業が、この種蒔別措置を約束せられるからといって、やすやすと同調してくれるものでしょうか。合併によって、社長、重役などという、うれしい地位を失うのもいやでしょうし、もうけを、あるいは損失を明るみに出すのもいやでしょうし、出資や融資をしている金融機関の系統産業に対する思惑もまちまちでしょうし、それらの会社の従業員の労働条件もいろいろでしょうから、問題はここからも起こると思われます。これらのことは、交渉過程で有利な交換条件を求められることが明らかでありますまいか。よけいな金も要るでしょう。しかし、一向に考えられてない消費者側からいっても、この法案が生活にどうはね返ってくるか、最も不安を感ずるところでございます。所得倍増計画のアフターケア作業、つまり手直し作業が学者や行政庁の間で進められていますが、この人たちは紙の土だけで手直しをしていてそれで済むんですが、国民大衆は、国の政策のよし悪しを日々の生活の中で受け取らなきゃなりません。また、そのしわ寄せを受けて苦しんできたのでございます。今度の法案もまた画期的な法案で、その結果が国民生活に及ぼす点、きわめて広いから、しわ寄せをまたまた受けるのでないかという不安を国民は抱かざるを得ないのでございます。で、長い間の苦労で、国民は新しく法律ができるたびに、これがわれわれの生活にどうはね返ってくるか、またいじめられるのじゃないかという不安を持つ習慣をつけました。そして自分で暮らしを守らなきゃならぬという、そういう考えを持たざるを得ないようにしてきているのでございます。ですから、今度の法案に対してもたいへんな不安を持っている国民が少なくないのですから、総理から、法案の進め方や、または行政指導のやり方などを、不安解消のためにぜひ示していただきたい。これが第二の質問でございます。
 たとえばこの法律が成功いたしまして、日本の産業が国際競争力を身につけて、品質向上、価格の低下が行わなれるものであろうか、行わなれたときに、また私らがあべこべに苦労させられるのじゃないかという、この不安を考えるときに、現実、国際競争力に耐えることを急ぐあまり、輸出貿易の振興をはかるために、出血輸出の穴埋めが国内にはね返って、国民に犠牲と負担をかけていることも、これは何としても避けてもらわなければならないわけですが、現状は必ずしもそうでありません。総理は、こういう問題をどうお考えになっていらっしゃいますか。消費者行政が世界じゅうで最もおくれている日本では、新しい法律ができるたびに、政府としては、これを消費者を守る法律にしたい、守る法律をこの道から切り開きたいと考えるべきであると思いますけれども、今はそういうことは望んでも無理らしい。で、世界に誇る生産力の高度化、経済の成長も、物価高でかえって国民を苦しめていることがわかったからこそ、総理大臣が最も熱心に値下げの音頭をとられるようになったのだろうと思います。また、事実そうだと思います。たとえば牛乳、これはでき過ぎるから政府が買い上げております。ところが、それほどでき過ぎて政府が買い上げてお蔵へしまうくらいだったなら、なぜ国民に安い牛乳を飲ませないのか。市場の牛乳価格を引き下げる努力は政府はいたしません。先ほど石油の問題のお話が出ましたから省きますが、ステンレス等の特殊鋼の場合にも、台所用品、また石油化学ではプラスチック製品、洗剤、合成繊維、また自動車など、直接消費者に関係のある商品が管理価格などの影響を受けることになった場合に、現在でも物価対策で困っている政府が、消費者対策をどのようにしていくつもりであるか伺いたい。予想されるように、独占を許し、市場支配的な体制を認める限り、物価対策、消費者政策は成り立たぬと思うのですが、総理のお考えを聞きたい。
 また、貿易自由化に備えて国際競争力を強めるためには、この法案だけをたよりにしていては甘いのではないか。日本の金利が非常に高くて、しかも、借入金が多い。金利を払うのに追われているようなものである。これは税制の改正その他によりまして、社内留保を認めて自己資本の蓄積には税金の対象にしないという取り扱い方もあると思います。公定歩合を上げたり下げたり、下げたり上げたりのこの変動、これなども、いかにもぶざまで、日本の産業活動をじゃましていると思います。政府は近く外資法を改正して、ほとんど無制限に外資を入れたり、外国のスーパーまで自由に入れるようにすると言われておりますが、基本的には外資には何らかの手を打つ必要があるのでありませんか。
 次に通産大臣にお伺いいたします。三十三年に独禁法改正をもくろまれたときに、関連するところの大きい中小企業者や消費者、農民、労働者、各般の者を集めて意見を法案作成過程でお聞きになりましたが、今度は全然意見を聞いていない。公聴会を開く御意思がおありかどうか。また、官僚統制と言われることをおそれてフランスやイタリアの協調方式をとったと聞くのでありますが、あちらのほうでは、協調方式というのは、千人余りもの各界の代表者を、農民も、労働者も、商業者も、消費者も、いろいろな方面の代表者を入れて民主的に協議しながら意見をまとめては、法案作成の仕事を進めていると聞いておりますが、日本はここまでなぜ取り入れなかったか伺いたいのであります。この法案によれば、特定業種のトップ企業の優遇が行なわれることになりますが、意欲的な企業でも、二流や小規模なものは、差別を受けて、やがて整理される運命にあると思わねばならないのでしょうか。最近の輸出増加は、中小企業や中小企業から発展した企業の涙ぐましい努力に負うところが大きいのです。今後の成長業種において、既存の大企業を保護することで、新進企業の進出を実質的に押えるのでは、結局国策上にもマイナスになりはしませんか。これはまた、自由経済に反し、消費者の選択の自由権利を局限する結果にもなると思うのですが、通産大臣はいかがお考えですか。
 通産省はいろいろな消費者行政の法律を持っております。たとえば、品質表示法またはメートル法、そのほかいろいろ日常生活に関係深い一連の法律初め、これらがメーカーや流通部門の業者優先に行なわれていることを思いますと、この特定産業の臨時措置法も消費者の利益などは考慮されていないのではないか、こう考えられます。
 本法案は、企業の数を減らして寡占体制を作ろうとしているのですが、寡占の望ましい規模はどれくらいと通産大臣ほお考えになるか。また、寡占の結果、独占価格ができるおそれが多いと思うのですが、いかがでしょう。
 この法案そのものが自由化時代に逆行するものであるのですから、いたずらに特定業種の保護政策にならないように、ワクをはずれた企業にも、うき目を見せないように、あくまで国際競争力の培養の見地に立って本案の運用に当たられたいと要望するものであります。
 また、かかる法案が政府の基本方策であるとしましたならば、今政府が提案している中小企業基本法案は、実質的には企業整理された中小企業の社会的救済を考えているにすぎないのではないか、あるいは、その結果は、最後のしわ寄せが消費者にまた転嫁されるのではないかという不安が感じられます。そうだとしたならば、自由経済の原則にも反するし、消費者の権利である選択の自由を局限することになるかと思いますが、御見解はいかがでございましょうか。
 なお、公正取引委員長にお伺いいたしますのは、公取は通産省に実をとられた形で、風穴どころか、なきにひとしいものになりはせぬかと心配いたします。しかし、貿易、為替はもとより、資本取引の自由化さえ近いと言われるときに、独禁法は、日本の国のために外国の不当な進出を断固阻止する役目を果たさねばなりません。その反面、国内の各種の独占的また不当行為を取り締まることが公取にまかせられている独占禁止法の中心題目でありますが、一般消費者の利益を守ることに結局このことはなるのですから、公取の使命はますます重大と言わなければなりません。また、本案の運用面では、通産省や産業界の出過ぎを押えることも必要です。消費生活を守る唯一の法律としての独占禁止法がいよいよ真剣勝負で立ち上がらねばならぬときは今だと思いますが、公取委員長から、この法案に対する心がまえと独禁法の今後の運用面について具体的に承りたいと思うものでございます。
 以上です。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 奥先生の御質問の点は、私も全く同感の意を表します。日本の経済は、伸びたと申しましても、急速な伸び方で、各家庭、各個人の蓄積は、外国のそれに比べて非常に少のうございます。また、産業は、相当伸びたと申しましても、今の特定産業につきましてはまだ非常に弱体面がございます。たとえば、日本のこれだけの人口をもって、そうして安いもので国内消費が非常に盛んなものにつきましては、外国との競争力は非常にあるのであります。たとえば、八、九年前のテレビは三十万円くらいしておりましたが、今はその十分の一近く、四万円前後、しかも外国との競争力は非常にあるのであります。そうして、今競争力のないという自動車につきましても、戦争中、トラックとかバス、こういうものに対しては制限を加えませんでした。したがいまして、トラック、バスの競争力は、世界の各国に負けません。ただ、乗用自動車については、戦争中ずっと押えておりました関係上、やはり新興産業と言われて、まだまだ競争力は少ないのでございます。お話の特殊鋼につきましても、前は軍備拡張によりまして相当の需要がございましたが、今は少なくなって参りました。弱体になっております。また、新興の石油化学におきましても、こういうものは非常に弱体、したがって、産業の全体をよくし、しかも、これからの産業の基幹をなす重化学工業につきましてのレベル・アップ政策の必要であるということは、奥さんも同感のように聞いておったのでございます。私は、そういう気持でやっていきたい。
 しこうして、この法案を実施するにあたりましての行政指導、これは、お話のように、なかなかむずかしゅうございます。したがいまして、私は、産業界の申し出によって、そうして金融界あるいは政府等が協力して、ほんとうに基準を作り、みんなの合意の上に進めていきたいと考えているのであります。
 また、出血輸出とか二重価格制度とか、こういう御心配があるようでございますが、今は国際的に非常に話し合いが行なわれまして、ダンピングなんかはとてももう早く防止するということで、出血輸出あるいは二重価格、ダンピングというものは、長続きしない。やはり健全な産業策、輸出政策をやっていかなければならぬと思います。
 また、いつもながらの消費者の利益確保のお説、全く同感でございまして、私は消費者の利益が経済政策の根本であると考えております。したがいまして、その市場対策等につきましても、流通機構並びに生産の合理化等々につきましては、今後もできるだけの努力を払っていきたいと考えております。
 なお、金利の問題につきましては、いろいろ議論があります。私は、日本の産業を拡大し、ほんとうに輸出力をつけようというので、金利を一昨年引き下げましたが、これが産業の過当競争あるいは高度成長のもとをなしたいろいろな議論をしております。私はその議論を聞きますが、ことに、今ここで議論になりましたように、輸出競争力を強化するためには、産業の規模の利益を追求すると同時に、金利負担を安くしなければならぬ。金利を下げるということが非常に必要であるのであります。したがいまして、その方策でやっております。
 なお、税制の問題につきましても、私は全く同感でございます。したがいまして、今、内閣に税制調査会があります。私は、この税制調査会におきまして税制と産業というものについて根本的な検討を前から願っているのでありまするが、昨年の答申につきましても、基礎控除をどうする、税率をどうするという答申だけで、ほんとうに日本の産業と税制を、今お話のように、配当を損金に見るか見ないか、あるいは、ドイツ、イギリスの税制を見て、日本の産業をどうやって国際競争力をつけるかという根本的な議論が、税制調査会でもなかなか行なわれない。基礎控除あるいは税率というだけの問題では私はいかないので、お話のような点は十分考えて税制調査会においても御検討願いたいと思っているのであります。(拍手)
  〔政府委員渡邉喜久造君登壇、拍手〕
#25
○政府委員(渡邉喜久造君) お答えいたします。
 本法案による共同行為につきましては、それが一般消費者の利益等を不当に害するものでないということが認可の重要な要件になっております。したがって、公正取引委員会といたしましては、当該共同行為の認可にあたりましては、それが一般消費者の利益等を不当に害することがないかどうかということにつきましては特に慎重に検討して参りたいと思っております。
 なお、今後の独禁法の適正な運用につきましては最善を尽くしまして、独禁法のねらっております消費者の利益の擁護、経済の民主化という方向に最善を尽くして参りたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 今度の法案作成にあたって、中小企業や消費者や農民の意見を聞かなかったではないか、したがって、今度の法案の審議にあたって公聴会を開く意思があるかどうか、こういうことでございますが、中小企業、消費者、農民、個々の方について御意見は承っておりませんが、団体については、多くの団体について御意見を相当聞いたつもりでございます。ただし、この法案審議の過程において、公聴会を開くこと云々については、国会においてその御意思で御決定をいただければ、もちろんわれわれはそれに賛意を表するものでございます。なお、いわゆる協調方式というやり方について、フランスやイタリアのやり方はもっと積極的に進んでいるではないかという御質問でございますが、われわれといたしましては、やはりその国にはその国の特殊事情もございますので、現段階の日本の姿においては、この法律のようなやり方が一番いいのではないかと、かように考えておるわけでございます。
 次に、特定産業というものができるというと、それに関連する中小企業が整理を受けたりするようなことはないかと、こういうような御質問かと思うのでございますが、先ほど来申し上げておりましたとおり、特定産業というのは産業の姿を縦割りに見た姿でございまして、その中には中小企業も包含されております。そうしてその産業を育成していく場合の振興基準をきめます場合には、決して大きいものだけを対象にきめるのではなくて、その産業全体が、たとえば下請の企業はどういうふうにしたらいいかというふうなことも、ものによっては、その業種によっては当然取り上げて振興基準の中に入れられるべきものであると考えておるのでありまして、特に中小企業を疎外するとか、あるいはじゃまをするというような考え方はないのでございます。なお、そういうわけでございますと同時に、中小企業基本法というものは横割りにした場合の中小企業全体を育成しようというわけでございますから、前にも御質問にお答えをしたところではございますが、両々相待って中小企業を育成していくということに相なるとわれわれは考えておる次第でございます。
 次に、消費者の行政についての御質問でございましたが、これは、総理もお答えがありましたとおり、全くわれわれも先先の御意見には常に同感の意を表しておるところでございまして、品質表示法とかメートル法の運用等にあたりましても、できるだけ消費者行政ということを十分取り入れると同時に、その他一般の問題についても、大いにひとつこれを御説のように処置していかなければならないと考えておるわけでございますが、この法律は、いわゆる振興基準を作って何かをやろうとするいわゆるカルテルをやる場合におきましても、合理化カルテルといって、よい品物を安く作る基準の場合だけしか適用されないのでありまして、もし独占価格を作ろうとか、いわゆる価格カルテルをやろうというような場合には、ここに公取委員長もおいでになりますが、直ちにこれを禁止することになっておるのでありますから、そういう、いわゆる消費者にこのカルテルができたからといって御迷惑をかけるということは、決してあり得ないことと私たちは考えておる次第であります。(拍手)
#27
○副議長(重政庸徳君) 向井長年君。
  〔向井長年君登壇、拍手〕
#28
○向井長年君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提案の特定産業振興臨時措置法案について、端的に若干の質問をいたしたいと存じます。
 第一に、総理にお伺いいたしたい点は、総理は、本案が経済民主化の大原則を少しも侵害するものでないと言いたいでありましょうが、本案の第三条に明記するとおり、競争を制限することによって利益を受ける産業団体が、振興基準設定の決定についての最大の発言権を持っているのであります。当該産業界で支配的な大企業が優位に立ち、この経済影響と支配を受けざるを得ない大企業以外の利害関係者及び一般消費者は、何ら決定に参加いたしておらないのであります。しかも、第六、第七、第八条に規定するとおり、税制金融上これら特定産業には特段の優遇措置が与えられます。したがって、本案によれば、すでに池田内閣の所得倍増政策によってレールを敷かれた大企業向けの優先融資がさらに決定的な方向として確保されることになります。私は、本案がこのように、独禁法の規定する秩序ある公正にして責任ある競争原理のワクの外に、新たな産業秩序を作ろうとしている考え方そのものが、本案についての最大の問題点であると存じます。あなたは中小企業者に対しては、大企業との経済格差是正のための中小企業基本法案を提案いたしました。ところが、それに次いで、大企業に対してはさらに一そうの経済支配力を保障する本案を提出いたしております。この矛盾は、今や国民の前に明らかにされておるのであります。私は、本案提出によって、政府が経済民主化の経済原理をみずから否定し去ったものと断定せざるを得ないのであります。本案のように、特定産業に対して暫定的に共同行為の範囲を拡大するならば、あくまで独占法のワク内で行ない、独禁法原理をいきさかなりとも侵害すべきではないと考えます。総理は、独禁法と中小企業基本法案を経済民主化の基本方針として確認するかどうか、お伺いいたしたいのであります。むしろ公正取引委員会の権限を拡大して、その機能を最大限に発揮せしめるべきであろうと考えますが、総理の所見をお伺いいたしたいのであります。私は、あなたの所得倍増政策の失敗の経験にかんがみて、大企業の産業活動をより効率化する政策は、必ずその活動が、社会的、経済的悪影響をもたらさないようにする根本原理が設定されなければならないと考えます。独禁法にはこれがあるが、本案にはこれが欠けていると考えられるのであるが、この点についての総理の所信をお伺いいたしたいと存じます。
 第二に、通産大臣にお尋ねいたしたい点は、あなたが特に三つの産業、すなわち特殊鋼、自動車、石油化学を設定した理由を伺いたいのであります。同じ第二条に、追加指定をなし得る規定があるからには、この三つ以外にも特定すべき必要のある産業が考えられるということになるのであります。本案の実施期間を五年以内と限定しながら、しかも五年以内にいかなる産業がこのような措置が必要であるかいなかの認定がつかない点は、私の常識をもっては了解しかねるのであります。これは、不況になった場合、世界商品市場で進出できなくなった場合など、大企業のささえとして大幅に適用産業を拡大されるおそれなしとは言い切れません。この点についてのあなたの明快なる説明を求めるものであります。
 さらに、本案は、第九条第一項第二号において、品種別または生産方式別の生産数量の制限についての共同行為を容認しております。これらの共同行為は、別に不公正な取引方法によらずとも、生産活動の主要部分、基幹部分について、圧倒的な経済支配力を生むものであって、ここまでは独禁法も合理化カルテルとして容認しておりません。これは直接に価格統制をしないだけで、間接的に価格決定に支配力を持ち、産業活動全体にわたって統制を行なうものであります。これが戦前、戦時の官僚統制ではなく、大企業の産業活動助成のための政府と産業実力者との協力方式という名の強力支配、すなわち統制を行なわんとする点に、政府案の特徴があります。通産大臣は、私の質問をはね返す理論的根拠がありますかどうか、あったら、ぜひお伺いいたしたいのであります。
 第三に、大蔵大臣にお伺いいたします。最近の二回にわたる景気変動がいずれも、大企業の設備投資の行き過ぎ、これに伴う大企業の輸入資材需要の行き過ぎに最大の原因があり、この原因を作ったのは、旧財閥銀行ごとに系列産業体制を競争的に作り、ここに二重投資、過剰投資を生んだからなのであります。したがって、わが国の大企業間の過当競争を排除するためには、現在の系列金融のあり方を根本的に改正する必要があります。これが金融正常化のための金融構造改造対策なのであります。しかるに、政府案におきましては、当初は銀行代表も振興基準の決定に参加する案であったのが、銀行協会側の意見によって、「協議すれども決定せず」という本案どおりの形となったのであります。これでは大銀行の系列融資は全くコントロールするところがなく、系列融資は続行され、特定産業は、系列ごとの大企業間の競争と、系列を越えた共同行為が有利な場合はそれを活用するという、きわめて大企業本位、大銀行本位の産業活動が野放しになります。あなたは、金融の正常化の見地から、大銀行の系列融資の現状をどうするのか、所信をお伺いいたしたいのであります。また、今回のような虫のよい自己本位の銀行協会の申し出を、うのみにした、監督官庁としての方針はどこにあったのか、この点についても明らかにされたいのであります。
 第四に、労働大臣にお伺いいたしますが、第九条の共同行為として、生産の設備の制限または処理、事業の廃止に伴う調整金の授受が掲げられておりますが、これは石炭鉱業の場合と同じく、生産設備のスクラップ化と、それに対する業界内の自主的補償及び政府のそれに対する助成でありますが、これは明らかに離職者の発生を予想しております。労働大臣は、国民の雇用と労働条件を守る責任者として、このような大企業の共同行為の犠牲となる離職者一般に対してどのような方針をもって臨まんとするのか。離職者は今や、石炭だけではなく、貿易自由化に伴う必然の帰着として公認されようとしているのであります。私は、この一点をもってしても、本案は産業構造高度化のためには雇用を犠牲にして顧みない悪法と言わざるを得ないのであります。労働大臣の所見をお伺いいたします。
 最後に、公正取引委員会委員長にお伺いをいたしますが、なるほど本案におきまして公正取引委員会の立場は形式的に認められておりますが、しかしながら、本案は、不公正な取引行為ではなく、合法なる産業活動として、経済的弱者を圧迫する行為を適法なりとする、独禁法の骨抜き法であります。私は、すでに述べたとおり、本法の成立は必要でない。特定の産業に対する特定の期間だけの独禁法適用除外措置は、すべて独禁法のワク内で規定すべきであると確信するものでありますが、何ゆえあなたは本案の国会提出を容認したのか、その独禁法上の根拠を明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、繰り返し総理に申し上げたい点は、本案のごとき重要産業政策は、複数の産業に対する一般法律として立法するのではなく、産業ごとの特殊事情を具体的にくみ入れた単独事業法として立法すべきではありませんか。このような乱暴な立法はすみやかに撤回すべきことを政府に強く要望して、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたしますが、本法案は特定産業振興臨時措置法でございます。御質問の点をずっと聞いておりますと、特定産業振興臨時措置法を大企業振興措置法と、こうお考えになっておるのじゃないかというような御質問でございます。そうじゃございません。これは大企業ばかりではなしに、先ほど通産大臣もお答えしたように、特定の産業でございますから、縦割りで、大企業も中小企業もみんな入っておるのであります。たとえば自動車工業にいたしましても、自動車の大企業に対しましては、相当数多い中小企業、下請が入っておるということは御存じでございましょう。そういうことを言うのでございますから、大企業振興ではなしに、特定産業振興臨晴措置法でございます。
 しこうしてまた、中小企業の問題につきましても、中小企業基本法は、御承知のごとく、中小企業の地産性を拡大向上いたしまして、そうして規模別格差その他の中小企業の持つ宿命的な不利な点を直そうとしたものでありますから、先ほど通産大臣が言っておりますように、特定産業の中小企業、そうしてまた中小企業基本法によりまして、両方からの措置を受ける建前になっておるのであります。特定産業は縦割りのものであるということを御承知願いたいと思います。
 なお、独占禁止法についての考え方でございますが、先ほど申し上げましたごとく、独占の弊害を排除して公正かつ自由な競争の促進によって健全な経済の発展をはかるということは、自由主義を建前としておるわれわれとしては、もうこれに変わりはないのであります。ただ、国民経済全体、国民全体がいかにしたならば公正かつ自由な生活水準の向上ができるかということが目的でございますから、独占禁止法におきましても、こういろ考えのもとに、それを尊重しながら、公取委員会を強化していきたいという考えであるのであります。
 なお、こういう法案を業種ごとに単独立法したらどうかというお考えでございますが、同じ法案を三つ四つ出すよりも、二条に規定いたしまして、しかし、経済の変化によって−原則は三つくらいでございますが、経済の変化によりまして、また国際経済の環境の変化によって、もし必要ありとすればというので、政令にゆだねておるのであります。これは私は、単独立法と言って差しつかえない立法だと考えております。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 この法案で三業種を指定したのはどういう意味か、こういうことでございますが、御承知のように、法案の第一条によりまして、日本の自由化によって影響を受ける、しかも中核的産業であって、国際競争力を強化する必要があるのだということから選定をいたしまして、三業種といたしたわけでございます。
 それから、品種別または生産方式別の出産数量の制限を許すということになると、いわゆる価格独占に通じていきはしないか、こういうことでございますが、振興基準を作りまして、新しい出産方式をとるようになった場合に、古い生産方式は、だんだんこれはやめていかなければなりません。その場合に、この今の規定で順次これをゆるめていく、やめていくということを規定するために、この条文があるのでありまして、決して独占価格を作ろうというよう、な意図はないし、またそのようなことはできるものではございません。
 それから大企業のこれは育成になりはしないか。いわゆる産業実力者だけのものになりはしないか、こういうことでございますが、しかし、振興基準というものをきめましても、これはその振興基準に従うかどうかということは、その産業それぞれの企業の自由意思が働いてくるわけでありまして、振興基準に従わなければ、私たちとしては、いわゆる特典は与えませんけれども、その産業をつぶしてしまうというのではございません。また、新しい産業を興してはいけないというのでもないのでございますから、あなたの御質問のような、いわゆる産業実力者を養成するような法案では絶対にないことを御了承願いたいと思うのであります。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(田中角榮君) 私に対する質問は二つでありまして、その一つは、銀行代表は、振興基準の決定には参加するが、協議はすれど決定はせず、こういうことでは、大銀行の系列融資等は全く規制できなくなるのではないかというお話でございますが、こういう規定によりまして、系列化が今よりも激しくなるというととはないわけでございます。しかも、大口融資が集中して系列化が促進をせられるというようなことがないように、御承知のとおり、金融制度調査会からも答申が出ておりますので、金融機関に対しては、集中的な大口融資を行なわないようにということについては、大蔵省の考え方も通達済みでございますし、全銀協の皆さんもこれに対しては協力的な態勢でございますから、本法のこの制度ができたことによって、集中的に大口融資が行なわれたり、また系列化が促進をするというようなことはございません。
 それから金融の正常化に逆行したり、また系列化をはかっていくというために、金融機関同士が無理な貸し出しをやったりして、国際収支が非常に悪くなった昨年や一昨年の例に徴しましても、このような規定では万全ではないということでございますが、第二の質問でお答えをいたしますと、おわかりだと思いますが、銀行に対して、先ほども二宮議員の御質問にお答えをいたしましたが、民間資金の活用ということに対して、法制上きちっときめますことは、申すまでもなく、資金統制、融資命令というようなことになるのでありまして、この振興基準の決定の過程において十分に理解をしてもらうということによって、銀行からの協力を仰ごうということでありますので、このような規定にいたしたわけでございます。
 第二点は、どうも、協議には入るけれども、拘束は受けたくないという、虫のよい銀行側の申し出を、どうして一体受けたか、こういうことでございますが、先ほど申し上げましたように、民間資金の活用ということに対しては協力を求めるということでございまして、法制上、これらを統制的にまた命令融資的な条文とすることの不適な理由をもって、このような条文になったわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(大橋武夫君) この法案の振興措置は、特定産業及び関連産業の労働者の雇用を全体として安定させるものと考えておりますが、特に共同行為につきましては、認可に際して、労働者の地位を不当に害するおそれがないことを十分確かめることにいたしており、労働者の地位の確保には、留意をいたしております。
 なお、経済情勢の著しい悪化などによりまして、万一にも一部に離職者が発生するような場合におきましては・もとより職業訓練、職業紹介等の集中的な実施にあわせまして、雇用促進事業団の就職援助業務の強力な推進により、これらの離職者に対する転換職場の確保には万全を期する所存でございます。(拍手)
  〔政府委員渡邉喜久造君登壇、拍手〕
#33
○政府委員(渡邉喜久造君) お答えいたします。
 この法案は、貿易自由化による新事態に対処しまして、特定産業について必要最小限度の共同行為だけを臨時的に認めようとするものでありますし、かつ、当該共同行為は、一般消費者や関係中小企業者の利益を不当に害するものではないということを、認可の重要な要件としておりますので、本法案は、独占禁止法の基本的精神と矛盾するものではないと考えております。(拍手)
#34
○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
   ――――・――――
#35
○副議長(重政庸徳君) 日程第二、地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長石谷憲男君。
  ―――――――――――――
  〔石谷憲男君登壇、拍手〕
#36
○石谷憲男君 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、地方財務制度を改正するとともに、地方開発事業団を創設することを中心とするものでありまして、次にその内容の概要について申し上げます。
 第一は、地方財務に関する規定の改正であります。
 その一は、財務制度の改正に伴い、議会の議決事項につき所要の改正を加え出納長及び収入役の職務権限の範囲を拡充するとともに、監査委員制度の強化をはかるため、監査委員は市町村においても必置制とするほか、定数、選任方法を合理化し、さらにその職務権限を明確化する等、規定を整備することとしたのであります。
 その二は、財務制度につきまして、国の制度にならい、予算、決算、収入、支出、契約等に関する手続規定、並びに財産、物品、債権、基金等の管理及び処分に関する規定を改善し、また、住民による監査請求及び訴訟の制度に関する規定を明確化し、あわせて職員の賠償責任制度等について合理化をはかったものであります。
 第二は、営造物の名称を公の施設に改め、その設置、管理及び廃止に関する必要な措置を定めたことであります。
 第三は、特別地方公共団体の一つとして、地方開発事業団を新設するものであります。
 その一は、地方開発事業団は、二以上の地方公共団体から委託を受けて、総合的な地域開発計画に基づく道路、港湾、水道、住宅等の建設、工場用地等の取得造成、土地区画整理事業を行なうものとし、その設置は、関係地方公共団体が規約を定めて認可を受けるものとしたことであります。
 その二は、事業団は、委託を受けた事業が完了したときは、その建設にかかる施設を設置団体に移管し、住宅または土地については、これを処分し、または移管することとしたことであります。
 その三は、事業団には、理事長、理事、監事を置き、重要事項は理事会の議を経なければならないこととするほか、財務に関する事項等に関し、所要の規定を設けたものであります。
 第四は、地方公共団体の長及び議会の議長の全国的連合組織に関する規定を設けたほか、昭和四十一年までの間に限り、指定統計調査による人口をもって町村を市とすることができる特例を定めたこと等であります。
 委員会におきましては、篠田自治大臣より提案理由の説明を聞いた後、地方開発事業団の運営、監査委員制度等について、政府当局との間に終始熱心なる質疑が行わなれ、慎重審査を行ないましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 かくて五月二十一日、質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定した次第であります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#37
○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#38
○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十二分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
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