くにさくロゴ
1962/07/01 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 本会議 第31号
姉妹サイト
 
1962/07/01 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 本会議 第31号

#1
第043回国会 本会議 第31号
昭和三十八年七月一日(月曜日)
   午前十時十九分開議
  ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第三十一号
  昭和三十八年七月一日
   午前零時十分開議
 第一 職業安定法及び緊急失業対
  策法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)(前会
  の続)
 第二 千九百六十二年の国際小麦
  協定の締結について承認を求め
  るの件
 第三 日本国とアメリカ合衆国と
  の間の領事条約の締結について
  承認を求めるの件
 第四 海外移住事業団法案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第五 近畿圏整備法案(内閣提出、
  衆議院送付)
 第六 金融緊急措置令を廃止する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 公衆電気通信法及び有線電
  気通信法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
 第八 法務省設置法等の一部を改
  正する法律案(内閣提出、衆議
  院送付)
 第九 中小企業基本法案(内閣提
  出、衆議院送付)
 第一〇 中小企業指導法案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一一 中小企業信用保険法の一
  部を改正する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)
 第一二 中小企業等協同組合法等
  の一部を改正する法律案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一三 下請代金支払遅延等防止
  法の一部を改正する法律案(内
  閣提出、衆議院送付)
 第一四 港則法の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第一五 刑事事件における第三者
  所有物の没収手続に関する応急
  措置法案(内閣提出、衆議院送
  付)
  ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、職業安定法及び緊急失業対策法
  の一部を改正する法律案(前会の
  続)
  ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を、前会に引き続き議題といたします。
 本案に対する質疑を続けます。小柳勇君。
  〔小柳勇君登壇、拍手〕
#4
○小柳勇君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となっております失対二法の改正案に対して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 まず、総理に質問いたしますが、この法律改正案が衆議院に提出されて以来、数万の月雇い労働者、全日自労の諸君が、この法律改正阻止のために請願陳情に押しかけております。また先日は、ここに請願に参りました労働者の一人が、池田総理に遺書を書いて自殺をいたしているのでありますが、このような実態をいかに見ておられるか。あなたは、この法改正によって、職業訓練を施し、就職促進措置を講じ、中高年令層には失業対策事業を特別に作ってやるから、これはよいことだと考えておられるようであるが、よいことであるなら、なぜ労働者が命がけでこれに反対しているのであるか。きのう阿具根議員の質問に対して、世論もこれを待望していると二度も答えられたが、あなたの言う世論とは一体何であるか、お伺いしたいのであります。県議会、市町村議会あるいは市町村長なども、この失対打ち切りに反対をいたして決議をいたしているところがあります。その一例を私はここに読み上げます。
  これが改正にあたっては慎重な態度を望むものであります。特にわが県としては、さきに申し上げた特殊な事情を考慮し、
  一、就職あっせんにあたっては、各種社会保険、退職金など整理された安定した企業の常用的な雇用にあっせんすること。
  二、前項によりあっせんした者が再びやむを得ざる事情によって離職した場合には、優先的に失対事業に入れること。
  三、最低賃金制の実施を促進すること。本人の職業選択の自由を尊重すること。これらのことがやられないならば、わが県においては非常事態が発生する、こういう不安な情勢にあることをお訴えする。
 こういうことが決議されているのであります。こういうように、労働者自体が反対しているし、市町村あるいはそういう当事者も反対しているこの法律を強行通過させ、これを成立させようとされている総理大臣のお考えをお聞きしておきたいと思うのであります。
 また、この法律改正とILO八十七号条約批准の問題についてお尋ねいたします。ILO八十七号条約の批准については、総理みずから熱意を持っておられることに対しては敬意を表します。この八十七号条約は、労働者の団結権、団体行動権を保証する法律であります。現在全日自労の諸君が言っているように、失対二法の改正のねらいは、現在失対事業に従事している若い層と老年層と一般失対就労者の三部分に分けることである、いわゆる組織を三つに分裂せしめることである、労働者の団結している組織を法的に政府の圧力で分裂せしめる行為ではないか、こう言っているのであるが、そうすれば、八十七号条約とその精神に違反すると思うが、総理の見解をお聞きいたします。
 次に、この法律案の基本的な考え方がはたして正しいかどうかという点であります。今政府統計によりますと、完全失業者は三、四十万人を前後し、就業者の一%にも満たない状況で、この数字からだけでは、ほぼ完全雇用に近い状態にあると言えるわけであります。しかし、わが国の失業問題がほとんど問題にするに足らない状態だと考える方は、おそらくありません。現に、この法律案をめぐって、今このように大きな問題となっていることの中に、わが国の失業問題の深刻さが示されていると考えるのであります。
 それはどのようなことかというと、わが国の失業問題の特徴は、失業者が十分生活を保障する手段を持たないため、はっきり失業者の形をとらないで、生きるために、きわめて劣悪な条件のもとにでも就業せざるを得ないということであります。いわゆる不完全就業者、あるいは潜在失業者として存在するわけであります。一万円以下の賃金で働いている労働者は、現在なお六百万人おります。自営業者や家族従業者をも加えますと、潜在失業者の数は一千万人をこえるといわれております。この膨大な不完全就業者の問題を抜きにして、わが国の失業問題について語ることはできません。この不完全就業の解消を中心に据えた失業対策でないと、決して前進的なものでないと考えるところであります。いかに職業訓練や職業指導を強めて失業者を再就職させようとしても、それは現実には、膨大な不完全就業の中に失業者を再び送り込むことにすぎないという悪循環が繰り返されるのであります。また、そのことで労働者同士の競争を強め、全体の労働条件を引き下げる結果となり、すなわち、低賃金を体制的に強化することになるからであります。
 雇用審議会が昭和三十四年に行なった答申第二号、いわゆる「完全雇用に関する答申」は、この立場を明確にして、当面の失業対策の中心問題は、就業の質を改善すること、すなわち不完全就業の状態を縮小し解消していくことにあるとしております。そして、との膨大な不完全就業の存在が、失対事業の滞留などの原因となっている、そのことを明確にさせているのであります。ところが、この法律案は、不完全就業の問題を無視し、これを解消するどころか、むしろ拡大する条件を強めていると言えます。そこで総理大臣、雇用審議会の答申第二号が答申しているように、わが国の失業問題の中心は、就業の質を改善すること、すなわち不完全就業を解消していくことにあるとお考えになりますか。この点をお伺いいたします。
 また、不完全就業の強化をもたらすようなこの法律案は、ここで廃案にいたしまして、根本的にわが国の失業問題を検討して、対策を立て直す気がないか、総理にお伺いするところであります。
 次に、未解放部落における深刻な失業問題についてお伺いいたします。未解放部落の人たちにとって、その因習による身分差別のために、若年の人でさえまだ安定雇用につくことが妨げられていることは、ここで指摘するまでもありません。さらに、部落の主要な産業の破綻、零細農業の解体、手工業の衰退などによりまして、未解放部落における中高年令層の失業がますます深刻になりつつあります。これらの理由から、未解放部落の人たちにとって、失対事業が欠くことのできない生活手段になっていることは、信じて疑いないところであります。たとえば、三重県の例をとってみますと、全県下の失対就労者三千二百名のうち、その七割強は未解放部落の出身者で占められている現状であります。しかも、この中には働き盛りの三十代の人たちの比重が高いのですが、この地域での求人が、民間雇用がきわめて低いために、いやおうなしに失対事業への固定化が起こらざるを得ないのであります。このような例は、西日本のたくさんの県において大なり小なり共通の傾向であります。これらの傾向は、はたして「職業訓練や職業指導を強化する」という政府の方針で解決し得るような簡単な問題ではありません。失対問題は未解放部落において死活の問題であると言わなければならぬのであります。部落民であるために就職や結婚に不当な差別が今なお行なわれている事実、総理大臣はこの深刻な問題をいかにお考えでございましょうか。また、いわれのない差別に苦しめられてきた未解放部落の人たちにとって、失対事業が最後の生活をささえる手段になっている現状を認め、この人たちから失対事業への就労の機会を今後とも保障していくことを明言していただきたい。この点は特に重要でありますから、総理大臣に誠意ある御答弁をお願いいたす次第であります。
 また、大橋労働大臣にお尋ねいたしますが、未解放部落においてもその他の地域においても、民間雇用への再就職がきわめて困難であることが明白である場合でも、職業訓練などのいわゆる就職促進の措置を無理やりに指示することになるのかどうか、お尋ねいたします。この場合、失業多発地帯以外でも、地域の事情によって民間の安定雇用の需要がきわめて少ない場合には、失業者就労事業への就労をストレートで認めるべきであると思うが、大臣の見解をお尋ねいたします。この問題は、政府提出の法案が失対事業のなしくずし的打ち切りをねらうものであると批判された中心点であるだけに、もし政府が打ち切りでないというならば、ぜひ明確にしていただきたい。きのうの柳岡議員の質問に対して、大橋労働大臣は、この肝心な点の答弁を全く行なっておらないが、柳岡議員の質問と十分あわせて御答弁願いたいのであります。もし労働大臣からお答えがないならば、再質問の権利を保留せざるを得ないことを明らかにしておきます。
 次に、世上、スラムといわれる貧民街対策についてお尋ねいたします。
 この問題は、山谷事件とか釜ケ崎事件にも示されているように、歴代自民党内閣の大きな責任であります。これらの地域では、ほとんどの住民が不安定な仕事に従事する日雇い労働者であります。しかも、仕事が不安定な上に、住宅もないために、いわゆるドヤと呼ばれる旅館に住まっているわけであります。そのために、仕事では手配師にピンをはねられ、住宅ではドヤの親分に畳一畳一カ月三千円も取られるということが平然と行なわれております。しかも、相次ぐ物価高で、その日暮らしの生活は一そう絶望的となり、ルンペン的とならざるを得ません。この人たちは、組織を作り、団結して自分たちの生活を守り、将来に希望を持つことができませんから、どうしても一揆的に行動することによって不満を爆発させがちであります。しかも、この人たちの相当の部分は、ビル建築、道路工事などのいわゆる産業基盤を建設する重要な仕事に従事しているのであります。しかも、これらのスラム街の問題は、山谷、釜ケ崎にしぼられるものではなくて、横浜、神戸、名古屋をはじめ、日本の大・中・小都市に共通する問題でありまして、重要な社会問題であります。政府がもし失対事業のなしくずし的打ち切りを強行するならば、このスラム問題は一そう重大化し、きわめて憂うべき事態を招来する可能性があることを私は指摘せざるを得ません。政府は全日自労などの日雇い労働者の運動を敵視し、今回の法改正案も全日自労対策であるといわれているほどでありますが、そのような考え方は大きな誤りを犯すでございましょう。なぜなら、しいたげられた労働者に生活の希望を与えているのは、その労働組合そのものであります。もし政府がこの労働組合を破壊することを考えて、失対事業の打ち切り縮小を強化するならば、他方では、たくさんの山谷、釜ケ崎事件を増大させることになることは明らかであります。犯罪や不道徳が一そうはびこることも明らかであります。今回の国会内外における全日自労の運動を見ても、その秩序ある行動は数年前とは一変していることを見ていただきたいのであります。角をためて牛を殺すということのないように、慎重なる配慮が必要であると思います。(拍手)
 以上の見地に立って総理大臣にお尋ねしますが、いわゆるスラム街対策について、あなたはどのような方針を持っておられるか、具体的にお聞かせ願いたいのであります。
 労働大臣に対しましては、今回の法律改正案の準備過程において、日雇い労働者の労働組合を不当に圧迫する意図があったかに漏れ承りまするが、その点を御存じであると思いますので、答えていただきたい。特に、自民党、労働省内部にこのような意見があったと聞くが、これはほんとうなのかどうか、この問題に対する大臣の将来の方針をもあわせてお聞かせ願いたいのであります。
 また、自治大臣にお尋ねいたしますが、いわゆるスラム街対策について、自治省は地方自治体をどのように指導しておられるか、今後の方針をお聞かせ願いたいのであります。
 また、次の質問は、失対事業就労者の四割を占める婦人の問題であります。失対事業就労者に婦人が多いことが問題点の一つとされておりますが、労働省の行なった実態調査によりましても、この婦人たちが失対事業に就労するに至った理由はほとんど夫との死別または離別であり、しかもその半数以上は職業経験を持っておりません。また彼女たちの半分近くが、いわゆる母子世帯に属するものであります。これまで家計の柱であった夫を急に失った家庭の主婦が子供をかかえて生活していかなければならないことを思うとき、しかも、身につけた技術もないという中で、彼女たちの唯一の生活の場が失対事業であったのであります。母子福祉年金はわずか月千三百円にすぎませんし、子供をかかえた中年過ぎの、技能のない婦人に与えられる職場は、ほとんどないと言っても言い過ぎではございません。ここで、もし失対事業への就労を閉ざされますならば、あとは一日百円、二百円という内職をやるか、あとは生活保護しか残されておらないのであります。政府の失対制度改革案は、このような不幸な婦人たちに今大きな不安を与えているのでありますが、労働大臣に次の点について明確な答弁をいただきたいのであります。
 昭和三十七年度の公共職業訓練実施結果について、訓練を終了した者のうち婦人は一体どれだけいるか、もしわかれば、そのうち三十代以上の中高年令の婦人がどのくらいおられるか、お聞かせ願いたいのであります。これまで失対に就労した婦人のほとんどは、訓練を受けてもほとんど効果は期待できず、一律に職業訓練を行なうのは不合理だと思うが、このような人々については、直接、失業者就労事業へ就労を認めるべきではないか、あるいは一週間程度の職業指導の期間を経て、すぐ事業への就労を認めるなどの便宜的な行政措置をとる用意があるかどうか、お伺いしたいのであります。婦人を対象に家事サービスの補導を強化し、公営の家政婦会を設けて就職促進を行なうということを聞きましたが、これは今年度はどのようになっているか、お伺いをいたします。この婦人の問題はきわめて問題が深刻でありますし、この法律案が失対打ち切りであるといわれる一つの根拠でもありますから、具体的に誠意のある答弁をお願いしたいのであります。
 また、関連して厚生大臣にお伺いをいたします。母子世帯に対する社会保障の現状と、今後の改善計画についてお尋ねをいたします。
 さらに、労働大臣に質問をいたします。
#5
○議長(重宗雄三君) 時間が超過して参りました。
#6
○小柳勇君(続) 第一は、職業訓練を施して就職せしめるのだから、喜ぶべきだという思想があるようであるが、就職時あるいは就職後の賃金については何の決定もこの法律にはございません。現在は年功序列賃金でありますから、先に入社している労働者の賃金とどう調和せしめていくかということが問題でありますが、職業訓練をやってあと就職する者の賃金を一体どうしたらいいか、この点をお聞かせ願いたい。
 次は、現行失対法は、就職までの暫定措置という思想が貫かれております。ところが、今度の改正案によりますと、失対就労事業あるいは中高年令失対事業というのは、それ自体が永久的な就職のような思想に変化しております。そうするならば、この事業に従事する労働者に対しては、一般労働者と、労働法、労働基準法の適用が同じでなければならぬと考えるが、その点はいかがですか。
 次の点は、職業訓練は数カ月によって簡単に習熟せしめるいわゆる単純能力工の養成であるが、これをもって永久的就職、いわゆる安定した職業というならば、この人たちが低い賃金で就職したとき、現在、各職場で働いている単純工程の労働者の賃金を引き下げるか、あるいは、くぎづけにする不安があると思うがどうか。
 次の点は、現行失対事業において、機械がない、資材が少ないために仕事ができない。だから、失対事業はなまけているといわれている。だから、失対労務者がなまけているといわれる前に、失対事業にもっと機械を使い、あるいは仕事がしやすいようにすることがその対策ではないかと考え、今度の法改正によりまして二十数億円の金をこれに使おうとしているが、もしその金を現在の失対事業について機械や資材のほうに回せば、もっとなまけないで仕事がはかどって、この事業主体においても歓迎すると思うが、その点はいかがであるか。
#7
○議長(重宗雄三君) 小柳君、時間です。
#8
○小柳勇君(続) 次の質問は、職業訓練手当が月に一万九百五十円であります。就職指導手当が月に九千百五十円であります。失対賃金は一万七十六円であるが、平均一家族の人員構成を三・二人として、一人当たりは月に三千四百円が生計費となっております。人事院の男子一人の生計費が二万九百六十円であるといわれているが、ちゃんと政府の人事院でさえ一万九百六十円と言っているが、こういうようなことで、これで訓練が大丈夫だと、失対賃金が大丈夫だと、こういうふうに労働大臣は一体考えているのかどうか。
 次の点は、もしこの賃金をもって最低のものと考えるならば、この底辺の労働者の賃金より低い賃金というものは日本の労働者にはないはずだ。それならば、全国一律一万円の最低賃金制というのは当然もうここで実施さるべきであると思うが、労働大臣、いかがでございますか。
 次の点は、失対労務者の子供は就職しにくいといわれている。学校を出ましても、失対労務者の子弟であるがために就職できないという訴えがあるが、この点について一体どういうふうに処理しようとされるか、お聞かせ願いたいのであります。
 以上が労働大臣に対する質問でありますが、さらに厚生大臣に対して質問いたします。
#9
○議長(重宗雄三君) 時間が超過しております。
#10
○小柳勇君(続) さっき申し上げました雇用審議会の答申で、社会保障の充実という点で、すべての雇用者に平等に社会保険の適用がなされねばならないと書いてあります。五人未満の零細企業から離職した失業者は失業保険の適用がない、また年金制度もありませんから、非常に不幸でありますが、このような零細企業の各種社会保険の適用状況と今後の対策についてお伺いいたします。
 自治大臣と大蔵大臣に質問いたします。失業多発地帯の地方自治体は、失対事業のために財政が逼迫いたしておりまして、運営ができなくなっておりますが、この失対事業のために地方自治体の財政が困窮しているところに対しましては、特別に地方交付金その他を考えるべきであると思うが、いかがであるか、お伺いいたします。
 いま一点、大蔵大臣に御質問いたします。失業者が訓練を受ける、職業訓練を受ける、あるいは企業組合や会社を作りまして仕事をやろうとする、そういう場合に、この法律の精神に従って特別に金を融資するとか、あるいは仕事を助けてやるとか、あるいは指導をしてやるとか、そのような特別の何らかの対策を考えるべきであると思うが、大蔵大臣の見解をお伺いいたすところであります。
 以上で質問は終わりでありますが、池田総理並びに各大臣に最後に申し上げ、質問を終わります。現在の失対法並びに失対の事業について、私は完全なものとは思っていない。これはあくまで過渡的なものでなければならないが、しかし、だからといって、なぜ、当事者である日雇い労働者の諸君が必死で抵抗して反対しているこの法律を、このような混乱の中で強行突破しようとするか。失対二法のこの改正によって、失業対策が少しも前進しない。むしろきょうからさらに混乱を紛糾を巻き起こし、社会不安を助長し、社会問題を惹起することをおそれるのであります。政府の責任においてすみやかに今後の善処方を要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 失業対策事業につきましては、従来いろいろ問題がございまして、すみやかにこれを改善すべきであるという議論は相当強いのでございます。私はこういう世論にかんがみまして、失業対策問題調査研究会に答申を求めまして、今回の案を作成したのであります。
 大体私は、今までの失業者に対しまして、ほんとうにお話のように、失業の質を改善すると同時に、また失業者のうちに入らない――入った人には従来どおりの施策はいたしますが、これがまたりっぱな職業につかれるように訓練していこう、いわゆる前向きの方法であると考えまして立案いたしたのであります。世論が支持しているのは、新聞の社説その他によって私はかく言い得ると考えております。
 なお第二の、ILO第八十七号条約との関係は、これは失業者の団体結成権とは関係がないのでございまして、私はILO八十七号条約の批准は、この国会でいたしたいと熱願しております。しこうして、この問題と今回の法案とは関係はございません。
 なお全体から申しまして、いわゆる失業者に対しましてりっぱな就業の機会を与える、これはまことに同感でございまして、また失業者でない方におきましても、私は職業の質の改善には今後努力していきたい。私のいわゆる経済成長は、こういう意味からも出てきておるのであります。
 次に、未解放部落における就職の問題でございますが、これは政府といたしましても、従来努力いたしております。
 新規学卒者に対しましては、在学中より指導訓練をいたしておりますし、また中高年令層につきましては、今回の職業安定法によりまして指導訓練をしていき、お話のような点を是正していきたいと考えておるのであります。
 なお、スラム街対策でございますが、これは問題は住宅問題等々ございますので、そういう点から施策を進めていくよう今着々手をつけております。
 また、同和問題につきましては、御承知のとおり同和対策審議会に諮問いたしまして、これが改善に努力を続けている次第でございます。
 他の点は関係大臣にお答えいたさせます。
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(大橋武夫君) お答えを申し上げます。
 第一の問題は、中高年令の失業者の就職が困難であり、再就職の当てがなく、しかも就職促進の措置を義務づけるのは不合理ではないか、これに対してどうするかという御質問でございまして、この点は昨日柳岡さんからもあった点でございます。この法案におきまする就職促進の措置のねらいとするところは、中高年令失業者等に対しまして、できるだけ早い機会に、職業訓練、職業指導等の就職促進の措置を積極的に実施することによりまして、安定した雇用の場につき得るようにするところにあるのでありまして、したがって、失業者本人も就職のための最善の努力を払うべきものであると思います。もちろん、この措置の運営にあたりましては、対象となる失業者の特性を十分に考慮して決定することとし、長期の公共職業の訓練ばかりでなく、短期速成の訓練、あるいは職場適応訓練等、いろいろな訓練方法、また雇用予約制度などを採用するとともに、訓練が不向きな失業者に対しましては、訓練ではなく、就職促進指導耳が相談に乗る、いわゆる就職指導を中心とするような措置を講じて参る等、行政運営上実情に即した配慮を行ないまして、無益な訓練を強制するようなことは極力避けるべきものであるというふうに考えておる次第でございます。
 次に、労働組合を敵視するという立場からこの法案を進めておったのではないかという御質問がございましたが、私どもは、失対労務者の労働組合が、今日まで十数年間失対事業に協力してこられました組合の実績を十分に認めておるのでございます。もとより、従来の組合の行動につきましては、いろいろ批判すべき点はございまするが、しかし、現実に多数の失業者に援助を与えてきた事実は、これは十分に認めなければなりません。そこで、今回の改正法案の立案にあたりましても、昨日も申し述べましたるごとく、数次にわたって数時間の会談を組合代表者といたしまして、労働省の担当官も全部そろえ、また、組合の幹部も全員そろわれまして、数回にわたって相談をいたしたのであります。この相談の結果、法案の一部を修正した点もあるような次第でございます。また、今後の実施のことにつきましても、いろいろ協力をお願いをいたしておるような状況なのでございます。ただ、私どもは、従来とかく組合が、職安あるいは市役所から迷惑なような存在に見られがちでありました。この点は改善されまして、関係機関と協力して、相ともに不幸な方々を助けていただくというような精神並びに行動に徹底されることを、心から念願をいたしておる次第であります。
 第三点で、三十七年度の訓練中の女子のことはどうなっておるかということでございますが、大体、訓練には女子が三割程度入っております。三十代以上のものはどのくらいか、この点は数は不明でございます。なお、家事サービスにつきましては、本年度九千八百万円をもちまして、千六百人の訓練をいたすことに相なっております。
 次に、就職のときの賃金をどうするかという点でございまするが、就職の際の賃金は労働条件でございます。労働条件の改善につきましては、労働省といたしましては、すでにこれを労働行政の目標として考えておる次第でございます。したがいまして、就職の際におきましても、求人の条件を十分に精査いたしまして、その不適当なものはこれを改善せしめる、どうしても改善のできない場合には紹介を断わるというような方法をもって、賃金は改善をはかっておるような状況でございます。
 次に、失対事業は、今日一時的な腰かけ仕事ではなく、継続的な職業のようになっておるので、したがって、労働条件については、一般の職業と同じような考えで定めるべきではないかという点でございまして、この点は全く同感でございまして、今回の失対法の改正におきましては、就労者の能力等に見合って、土木事業以外の事業種目をできるだけとり入れますとともに、賃金につきましても、現在の低率賃金の原則を廃止して、通常の賃金を支給できるように改める。また、行政運営といたしましても、現在の失対事業の日々紹介の制度を改めまして、計画紹介をとり入れる等、安定した雇用の場を作り出し、またこれにお世話するように推進をいたすつもりでございます。
 それから、職業訓練でわずかな期間に単純技能工を養成する、これで安定した職業につけたのだというようなことをしておれば、労働者の各職場の賃金を引き下げ、あるいはくぎづけにするような心配はないかという御質問でございますが、最近における産業構造の高度化、技術革新の進展に伴う技能労働力の需要に対処いたしますために、職業訓練の重要性はきわめて増大をいたしております。そうして訓練の種目は、技能労働力の需要にこたえて、きわめて多彩なものを用意いたしておりまして、単純技能工の養成に尽きるものではなく、また公共職業訓練を受けました者の就職状況、就職先の労働条件等は、現在のところきわめて良好でございます。
 次に、能率を上げるためには、資材、機械等を失対事業に十分に供給するほうがよろしいではないかという点でございますが、私どもは昨年この点に着目いたしまして、機械費、資材費等を大幅に増額いたしたのでございますが、しかし何分にも五十才以上の人たちが半数おり、また婦人が四割を占めるというような状況でございますから、現在のような屋外作業だけを考えるというやり方は適当ではない。したがって、この際、仕事の種類をいろいろな人々に適合するように多くいたすということが、より一そう適切であると考えた次第でございます。
 それから手当の額についての点でございまするが、訓練手当は失対賃金より二五%増し、指導手当も大体月額にいたしますと現在の失対の収入とほぼ見合うものでございまして、一応この程度でやむを得ないのではないかと思いますが、なお、今後処遇の改善につきましては、大蔵当局の協力を得まして努力いたしたいと存じます。
 次に、最低賃金の問題でございまするが、失対事業の賃金は、同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金の額にならって定めるものでありまして、最低賃金としての性格を持っているものではございません。したがって、この額を全国最低賃金額とする考えはございませんが、しかし、現在最低賃金につきましては、最低賃金法の運用によってこれが普及徹底をはかっております。業者間協定を建前といたしておりまするが、業者間協定で期待できない場合の最低賃金の決定をいかにするか等、いろいろ最低賃金法の実施につきましては検討すべき点がございます。これらをただいま中央最低貸金審議会に相談をいたしておるところでございます。
 次に、職業訓練終了後就職いたしました場合、現在の年功序列賃金の企業の年功者の賃金とどう調和ができるかという問題でございまするが、中高年令者の再就職については年功序列賃金が一つの阻害原因になっておることは否定できません。政府といたしましては、賃金制度の問題の円滑な処理に役立たせますために、関係資料を整備し、関係労使に提供する等の援助を行なっておりますが、職務に対応する賃金制度への移行を促進し、労働力流動の円滑化に資して参ることが必要であると思っております。ただ現在のところといたしましては、先ほど申し上げましたるごとく、職業安定所が求人条件を十分に審査するという場合に、いろいろ配慮せしめて、できるだけ適当な賃金を保障できるように努めておる次第でございます。
 次に、婦人について就職促進対策を実施しても効果があがらないので、直ちに失対事業に入れるようにしてはどうかという点でございます。婦人の場合でも、できるだけ一般の失業者と同様に就職促進措置をとりたい。その内容は、しかし家事サービス、各種の事務補助というような婦人向きの訓練をやって参りたいと思っておるのでございます。しかしながら、これも先ほど申しましたごとく、地方の実情、本人の適性等を十分に検討いたしまして、無益な訓練に強制的に押し込むというようなことは、行政運営として避けて参ることは当然であると思います。
 次に、失業者の子弟の問題でございまするが、最近の経済成長に伴い若年労働力の需要の増大は著しく、新規学校卒業者の求人は就職希望者の二倍ないし三倍程度となっており、いわゆる求人難の状態でございます。したがって、その就職状況もきわめてよく、全体としては一〇〇%に近い実績をあげており、御質問の失業者あるいは炭鉱離職者の子弟でありましても一般と全く同様でございます。(拍手)
  〔国務大臣篠田弘作君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(篠田弘作君) 小柳さんにお答えをいたします。
 スラム街の対策について、地方自治体をいかに指導しておるかという御質問でございますが、私は、就任をいたしましてすぐ、東・東京都知事を呼びまして、スラム街の解消は目下重大な社会政策の一つであると思うが、あなたの在任中に、スラム街の解消をひとつしてみないかという話をいたしまして、昭和二十八年に私がニューヨークに参りましたときは、スラム街が非常な汚ない状態でありましたが、三十五年に参りましたときは、きれいなアパートに建てかえられておりました。私はその例を引きまして、東知事に、もしあなたがスラム街解消の意思があり、また、そういう政策を取り上げるならば、政府としてもそれに対して十分なる助成をしたいということを申しましたところ、東知事は非常に賛成されまして、自分の在任中に、ぜひスラム街の解消をしたいという、そういう約束をしておるわけであります。
 また、大阪につきましては、先般、釜ケ崎を視察いたしました際に、大阪市庁に寄りまして、大阪市長さんとの話し合いをし、東さんと同様に意見を述べましたところが、大阪市長もたいへん共鳴されまして、釜ケ崎の中に鉄筋アパートで現在のスラム街というものを解消したいということを申されました。大阪のほうは、その後、市長の改選がありまして、私のお話を申し上げました市長さんが引退されましたので、多分失業されていると思うのであります。
 それから産炭地における失業多発地帯の地方財政は、失対事業によって大幅な赤字が出ているが、地方交付税の増額等によって解消する考えはないか、こういうお話でございます。この産炭地地域の地方団体の行なう失業対策事業の財源措置といたしましては、国庫補助に伴う地方負担額と普通交付税の算定における基準財政需要額との差につきましては、特別交付税を交付いたしております。なお、石炭産業の合理化の進行に伴う炭鉱離職者緊急就労対策事業費、生活保護費、その他財政需要の増高に対しましても、それぞれ普通交付税の措置によるほか、地方債及び特別交付税によって考慮をしております。
 なお、参考のために申し上げますと、この産炭地のために交付いたしました特別交付税は、三十六年度二百七十八億円、三十七年度三百十五億円、三十八年度三百三十五億円でございます。(拍手)
  〔国務大臣西村英一君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(西村英一君) お答えいたします。
 私に対する質問の第一点は、五人未満の零細企業に対する御質問でございますが、仰せのごとく、昨年の八月に社会保障制度審議会から、五人未満の零細事業におきましても、一般被用者と同様な保険をすべきだという勧告を受けております。御案内のとおり、現在の法規では五人未満の事業所は健康保険及び厚生年金は強制適用になっておりませんが、しかし、現在の法規でも任意包括加入の制度がございまして、行政指導によって加入させておるのでございます。御案内のように、従事員五入未満の事業所といえば、非常な零細企業であるので、非常に事業所の数も多いのでございます。しかも、経営が不安定でございまして、従事員の移動が多い。なかなか捕捉しがたいところがあるのでございまして、この制度を強制適用をするにいたしましても、慎重に検討をいたしたいと思っております。しかし、現在でも、比較的雇用状態がいい、あるいは安定しているというような事業所につきましては、任意包括加入制度を積極的に活用いたしまして、ただいまも相当数の事業所が加入をいたしているのが現状でございます。
 適用状況を申し上げますると、健康保険につきましては、政府管掌及び組合管掌を合わせまして、事業所にいたしましては六万、被保険者の数にいたしましては十七万でございます。また、厚生年金につきましても、それと同じくらいですが、昨年十月現在で、事業所は約五万、それから被保険者の数は十五万程度になっております。なお、三十八年度は、さらに行政指導でいろいろお勧めをいたしまして、従事員も含めまして、約四十万くらいな人を、この健康保険及び厚生年金に適用いたしたいと考えておる次第でございます。
 第二番の御質問は、母子世帯のことでございます。母子世帯は、その置かれている立場はまことに気の毒な方々でございまして、私たちといたしましては、十分社会保障制度を充実しなければならぬと考えております。現在でも、母子福祉資金の貸付によりまして、生業資金及び教育資金等に対して便宜をはかっておりまするが、本年はこの原資も多少増加をいたしておるのでございます。さらに、母子福祉年金あるいは児童扶養手当につきましては、ただいまこの増額の法律案を提案をいたしておるような次第でございます。施設の面につきましても、母子寮でありますとか、母子健康センターというようなものを、今年度も若干計上いたしておりますが、さらに母子世帯のこの問題につきましては、今後十分な力を入れたい、かように考えている次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(田中角榮君) 私に対する御質問は二点でありまして、
 一点は、先ほど自治大臣がお答えをいたしました、産炭地等の失業者多発地帯の地方公共団体に対する起債、特別交付税と財政措置についてでございます。失業対策事業費が基準財政需要額の一定基準をこえる場合には、特別交付税におきまして処置するほか、通常の補助率、登録費、事務費は三分の三、資材費は二分の一を上回わる五分の四の高率補助を行なうことといたしております。それに必要な経費といたしまして、本年度は四億円を計上いたしておるわけでございます。
 第二点は、本法によって職業訓練を受けた者が、個人で、あるいは企業組合、会社などの結成によりまして事業を始める場合、これらに対して特別融資の道を開いてはどうかということでございますが、御質問のような場合、広く国民大衆に対しまして生業資金を融通することを目的といたしておりまする国民金融公庫等の政府関係金融機関の一般貸付の仕組みの中で、十分配慮して参りたいと考えます。(拍手)
  ―――――――――――――
#16
○議長(重宗雄三君) 小平芳平君。
  〔小平芳平君登壇、拍手〕
#17
○小平芳平君 私は、公明会を代表して、ただいま議題となっております失対二法案について、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたしたいのであります。
 昭和二十四年以来続けられてきている現行の失対事業については、いろいろ問題点の多いことは私たちも同感なのでありますが、今回政府が提案しているところの改革案は、それ以上に多くの問題や不安を惹起しているのであります。特に、衆議院においても、問題点は一向に明らかになされないまま、混乱のうちに採決されてしまった。参議院においては、徹底的な審議を尽くすかと思われたのに、社労委においては提案理由を聞いたのみで、中間報告という混乱の本会議場に持ち込まれていることは、最も残念とするところであります。
 政治を行なう者は、大衆の福祉を増進し、大衆の福祉を擁護していくことが根本であります。政治を行なう者は、最低生活の人を対象にすべてを考えなさいともいわれているのであります。池田首相は、経済については池田にまかせろと言われたそうでありますが、労働政策こそ池田にまかせろと言う御所信はないか、お尋ねしたいのであります。
 なぜなら、三十五万人の失対労務者は、自分から好きで失業したのではないのであります。一方では経済の高度成長をうたわれながら、一方では、競争力の弱い企業や産業が合理化や人員整理に脅かされてきたのであります。ゆえに、失対事業の改革を政府が打ち出すくらいなら、まっ先にこれら労働者に説明を尽くし、心から納得してもらえるような改革案でなければならないはずであります。高度成長の陰に押しつぶされたこれらの人々に対してこそ、最も重点的な施策が必要なのであります。しかるに、国会においてすら、長々と時間をかけただけで、質疑も討論もほとんどかわされていない。われわれは、こうしたかけ引きや裏取引の運営を最も不満に思うわけであります。
 そこで、総理にお尋ねしたいのは、こんな状態のまま失対事業の改革ができるものとお考えかどうか、より一そうの慎重審議を尽くすべきではないか、御所信を承りたいのであります。
 また、歴代の労働大臣は、経営者団体の総会などへよく出て、あいさつなどをなさっておられるようでありますが、労働組合の大会へ出たような話はあまり聞いたことがありません。身分といい、賃金といい、非常に不安定な失対事業の改革をしようとするのでありますから、大臣がみずから大衆の声を聞き、代表者にも会い、説明も尽くそうというのが当然の務めではないでしょうか。しかるに、現状は、三十五万人の労働者を、ただ不安へ、不安へとかり立てているような結果になっているのであります。労働大臣は、こういう点について、どのような責任を感じられるか、お尋ねしたい。
 与党たる自民党は、ずいぶん進歩的な政策を掲げ、実現に努力されたといわれますが、労働政策はまことに貧困そのものではありませんか。ILO八十七号条約の批准すら、いまだに実現していないことも、その一つの証拠であります。総理並びに関係大臣としての労働大臣の御所信を承りたい。
 次に、具体的な改正の内容について、先日来の御答弁と少々ダブる点もありますが、若干の質問をいたします。
 第一に、政府は失対の打ち切りではないと言われますが、実際には、現行の三十五万人を現在の姿のまま残しておくのではないでしょう。新しい失対事業に就労しようとする者には、就職促進の措置を終了し、誠実かつ熱心に求職活動を続け、現に失業者であり、雇用労働による以外生活の道のない者等々と規定されております。また、高齢者等の場合は、著しく高齢で一般の雇用につくことが困難であり、失対事業で働く以外に生活の道のない者等々と規定されております。一体こうした資格のある者が何人残るのでしょうか。運用のいかんでは、あるところでは一人も適格者がないようなことになりはしませんか。そうした不安が一向に解消していないのであります。政府が打ち切るおつもりなら、打ち切りとはっきりいって、しかる後にどう生活を安定できるようにしていくのかという具体的なものを示すべきではないか、お尋ねしたい。
 第二に、失業者が職業訓練その他いろいろのコースを選ぶのを、本人の自由にさせてあげなければならない。安定所の窓口へ行って、係官に、あっちへ行け、こっちへ行けと言われ、どうしても言われたとおりにするのがきらいな人は、一体どうなるのでしょうか。職業訓練が義務化されることになる。自分は二カ月の訓練か、三カ月か、それとも一年か、そのような点について労働者の自由意思が無視され、予算などで機械的に定員が定められ、その命令に従わなければならなくなってしまうのではありませんか。失業者に対し、絶えずその希望する訓練を受けるだけの用意をしておかれるのかどうか、お尋ねをいたしたい。
 第三に、訓練を受けた人は、問題なく民間企業その他へ雇われていけるかどうか。この場合に、身分の保障もなく、賃金の保障もなく、民間企業に入っていく人に、何をもって不安はないとか、よりよくなるなどと言えるでありましょうか。労働市場によほどの画期的な大変化でも起きない限り、低賃金と身分の不安定がつきものであります。
 さらに、一たん民間企業へ就職した者が、本人の都合でそこをやめた場合、再びもとの失対事業へ戻れるかどうか、このような不安に対するはっきりした御説明をいただきたいわけであります。
 第四に、今後の失対事業に働く人たちの身分はどうなるか。新しく設けられる民間請負などによって、新しい不安が生じてくるわけであります。
 第五に、失対労務者の生活がどれだけ楽になるか、それとも苦しくなるかについてであります。政府案によれば、さしあたり職業訓練手当や就職指導手当を受けながら、すなわち生活を保障されながら、次の就職の機会を待つようになるといいます。しかしながら、月に一万円とか一万二、三千円の手当で、消費者物価値上がりの激しいこの時期に生活できる家庭がどれだけありましょうか。制度として前進した制度であったとしても、生活不安の解消にはほど遠いのであります。
 さらに、就労者の賃金については、従来から同一地域における同一職種に支払われる労働者の賃金より低く定めることになっていて、いわゆる低率賃金の方式がとられていましたが、今回の改正では、同一地域における類似の作業の賃金を考慮し、実際の作業内容に応じて定めるとなっております。しかし、これとても、土工とか人夫などという特殊の職業は、もともと低賃金であって、はたしてこの改正で低率賃金が改まるかどうか。もう一つ、最低生活保障の条件が強く期待されるわけであります。
 以上、若干の問題点をあげましたが、ただ一つ、現実の三十五万人の労務者の不安や不満を解消していくために、さらに今後予想される新しい失業者が、明るく楽しい職場へ転職していかれるために、誠意のある御答弁を期待してやまないのであります。
 次に、失対事業の不合理性をめぐる問題の解決は、単に目の前に現われた三十五万人の人たちだけをどうこうしようとしても、抜本的な解決にならないのは言うまでもないところであります。
 そこで、池田総理に最後にお尋ねいたしたいのは、すでに労働者からも強く要求されているところの最低賃金制の確立、社会保障の充実、完全雇用などに、どれだけの熱意と対策をお持ちか、お尋ねしたい。一方に経済の高度成長がありながら、他方に大量の失業者を出すような政策を改め、経済の高度成長とともに、国民の一人々々の家庭が繁栄を満喫できるような、政府の具体的な施策を期待してやまないのであります。われわれの念願するところはただ一つ。不幸の人が幸福になることを念願して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。国民の努力によりまして、わが国の政治経済は順調な発展を遂げております。私は日本の状況を見まして、いわゆる所得倍増政策によりまして、各間における格差解消に努力して参ったのであります。農業基本法を設けて今後の農業の進むべき道を明らかにし、また、中小企業基本法を設けまして中小企業の基盤強化に努力し、また、あらゆる労働政策をもちまして労働者ができるだけ幸福な生活水準を上げ得るように努力して参りました。ごらんのとおり労働債金の非常な上昇を見まして、労働者の生活は、農民あるいは中小企業以上によくなっていると私は断言し得るのであります。しこうして、労働者の中におきましても、三十数万の失業対策事業に携わっている方々の実情を見まして、私は、何とかこれを改善しなければならぬと昨年来決意したのであります。昨日も申し上げましたが、昭和二十四年、大蔵大臣を初めて拝命したときに、失業対策卒業をやりました。あれから十四年間、漫然と同じ政策だけで、しかも、日本の変革期における他の階級の人が非常によくなっているのに、この能率の上がらない固定化した失業対策事業に改善の措置をとるということは、政府として当然のことであると私は考えたのであります。したがいまして、あらゆる知能を集めまして、また、調査会の答申を得まして今回の案を出し、これが早期の実現を見て、三十数万の方々に明るい希望を持っていただくために、法案を提出いたしたのであります。私は、先ほどのお話の完全雇用の問題、実現はしておりませんが、今は労働条件は非常によくなったのです。人不足といってもいいくらいになったのではございますまいか。私は、完全雇用に向かいまして、雇用の拡大とその質の改善に努力し、だんだん実現していきつつあると思います。
 また、お話の最低賃金制の問題にいたしましても、三、四年前は、ある労働団体は、最低賃金八千円といっておりましたが、もう二、三年のうちに八千円という人は一人もいなくなった。もう一万円あるいは一万二千円といわれるように相なったのであります。しかも、最低賃金制の適用を受ける者は二、三十万でありましたのが、今や二百万になんなんといたしているのであります。非常に拡大しております。しかし、政府はこれに満足せず、なお最低賃金制につきましては十分その普及と拡大に努力していきたいと考えているのであります。
 また、社会保障制度につきましても、私は、文教と、社会保障、あるいは社会資本は、三大施策といたしまして、従来にもない力を入れて社会保障制度の拡充をはかっていることは、国民ひとしく認めているところと確信いたしているのであります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(大橋武夫君) 労働大臣といたしましては、労使双方とよく接する必要がございまするので、労働組合の会合でも経営者団体の会合でも、招かれれば必ず出席することにいたしております。また、申し入れがあれば常に会見をいたしております。今後とも、労使の会合には、必要に応じ出席して、相互の意思の疎通をはかりたいと思っております。ことに、このたびの失対法の改正案の立案にあたりましては、全日自労、全民労との代表とは、数時間にわたる会合を数回にわたって重ねました。いろいろ意見の交換をいたしまするとともに、案の内容につきましても、失対関係者の実情に適合するよう、これを事実に適合するように規定したいと存じまして、努力をいたして参ったのでございます。今後実施にあたりましても、同様の態度で参りたいと思っております。
 次に、ILOの八十七号条約でございまするが、御承知のごとく、池田内閣といたしましては、この批准につきましては、ぜひとも今国会で成立を見るよう、従来も努力をいたして参っておりまするし、今後も努力いたす次第でございます。
 第三に、今回の改正によって、三十五万人の失対就労者がどうなるかという点でございまするが、現在失対事業に就労している人々は、改正法案附則第二条第三項にはっきり規定してありますように、引き続き失対事業に従事することが保障されております。これを無理やりに民間職場に押し出す考えはなく、したがって、何ら失対の打ち切りをねらったものではございません。しかし、現在の就労者でありましても、民間に就職することを希望いたします者につきましては、従来同様、転職促進訓練、雇用奨励制度等によりまして、でき得る限り安定的な職場につき得るようにはかることはもちろんでございます。
 次に、就職指導、職業訓練についての個人の自由意思の問題でございますが、就職促進の措置は、公共職業安定所と失業者との相互密接な協力のもとに措置が行なわれる必要があるのであります。したがって、職業訓練、職業指導等の措置を講ずるにあたりましては、公共職業安定所は、十分本人の希望を尊重して参るべきことは申すまでもございません。ことに、職業というものは、本人の自由意思によって、心から希望する仕事をお世話するのでなければ、意味がないのでございます。自由意思を圧迫するようなことは決してあってはならない次第でございます。
 また、雇用の場合の安定職場の保障の問題でございまするが、就職のあっせんにあたりましては、先ほど申し上げましたるごとく、従来から、求人申し込みの内容が法令に違反している等、労働条件の著しく不適当なもの、また、現状から見て、特に労働者にとって不利益であるというようなものにつきましては、これを受理しないということにいたして、あるいは必要に応じて指導を加える等を行ないまして、求職者ができるだけ安定した職場につけるよう、極力努めて参ったところであります。今後も、もちろん同様に取り扱うのでありますが、特に、紹介の基準をきめたいと思いまして、この基準につきましては、中央職業安定審議会の意見を聞いて適切な取りきめを行ない、また、妥当な運営をはかって参りたいと思います。
 それから、就職をした者が再び離職して戻って参りました場合には、これを失業対策事業に戻すことは当然のことでございます。
 今回の改正案によるところの賃金また身分等の改善の状況という点でございますが、失対事業の賃金は、従来の低率賃金原則を廃して、同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金を考慮して、実際の作業に応じて定めることになっております。
 また、高齢失業者等就労事業就労者の賃金の決定にあたっても、原則として同様民間賃金にならって定めることとするほか、その額の下ささえをいたしまする意味で、高年齢勤労者の生活費等、社会保障制度による給付の水準をも十分に考慮したいと思っております。
 さらに、夏季及び年末における手当の支給の根拠を今回は明らかにし、また賃金の決定にあたっては、学識経験者で構成する失対事業賃金審議会の意見を聞く等の十分の改善がはかられているところでありますが、その運営にあたりましても、現状より不利となることは絶対にない、大いに改善されるものと考えておるのでございます。(拍手)
  ―――――――――――――
#20
○議長(重宗雄三君) 村尾重雄君。
  〔村尾重雄君登壇、拍手〕
#21
○村尾重雄君 私は、民主社会党を代表いたしまして、今回まことに好ましくない方法によって、ただいまようやく議題となりました職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案に対し、大橋労働大臣に質疑し、質疑を通じ失業対策事業に対する政府の所信のほどをただしたいと思うのであります。
 まず最初に、この改正法律案は、失業対策事業の円滑かつ適切な実施及び関係労働者の生活の安定について、適切な措置が必ずしもとられていないことにかんがみ、法の不備欠陥――これを是正のため、わが党は、衆議院段階に六点からなる修正案を提出いたしております。私はこの機会に、わが党修正案の要点をごく簡単に、切り詰めて申し述べ、労働大臣にこれに対する所見をまずお聞きいたしたいのであります。
 第一に、法第一条を改正し、失対労務者の雇用の最終責任を事業主体である国及び地方公共団体が負う旨を、法文上はっきり明定すべきである。失対事業の円滑かつ適切な実施は国及び地方公共団体の責任であること、及び失対労務の性格からして、その雇用の最終責任を事業主体が負うべきことは当然のことである。
 第二に、失対事業の賃金決定にあたっては、その最低生活の保障と生活の安定という見地に立って、賃金決定基準の一つに「生活賃金の原則」を法文上明定すべきである。このため法第十条の二において所要の修正を行なうよう要求する。
 第三に、職安法第十八条によれば、使用者はその求人にあたって、賃金、労働条件を明示することになっているが、明示だけでは不十分であり、労務者の雇用にあたっては、失対事業の賃金及び就労条件を下回ってはならない旨を法文上明示すべきである。同時に、これが違反については罰則規定を設けるべきである。
 第四に、改正案の中の「失業対策事業賃金審議会」については、これを「失業対策事業審議会」に改め、単に失対事業の賃金のみならず、失業対策事業の全般に関する事様について答申建議できるように措置すべきである。失対事業(高齢失対を含む)の管理運営方針並びに高齢失業者等就労事業就労者基準の決定にあたっては、右審議会の意見を聞かなければならない旨を法文上明定すべきである。
 第五、事業主体、施行主体と労務者との間の各種の紛争を平和的に処理するため、政府代表及び労働者代表をもって構成する失対事業苦情処理機関を法律上の制度として設置すべきである。
 第六、附則第二条の2に規定する賃金決定に関する経過措置については、新事業の実施と並行して新賃金の決定をなし得るよう必要な修正を行なうべきである。
 以上、六点にわたるわが党の修正点について、大橋労働大臣の御所見をまず最初にお聞きいたしたいのであります。
 次に、以下数項目にわたって改正二法案の疑点を同じく労働大臣にただしたいのであります。
 まず最初に、三十八年度失対事業計画においては、臨時就労対策事業を廃止し、特別失対事業で吸収人員を減らす結果、一万七千人のワクの減少を生ずるが、この吸収人員減をどこでカバーされるつもりであるか。労働省は、これらの事業に就労する特別適格者が、一、その常用化によって相当数減少していること。一、予算増額を見込まれる公共事業への吸収強化をはかり得ること。一、一般失対事業の中で高度工事を実施すること等によって、一万七千人は十分吸収することができると述べておられるが、どのようにしてこれを実現するのか、具体的、詳細にその見通しについて伺いたいのであります。
 この改正案が実施されると、先ほども述べられておったごとく、現在の失対制度に依存する百十万人をこえる家族の生活をささえている三十四万人弱に及ぶ失対労務者の首切りが促進されるのでないかという当事者の懸念について、すなわち、失対打ち切りについて、それは、単に心配にすぎないのか、実際なのか、この際、明らかにされたいと思うのであります。なお、この改正案が成立した場合においても、来年度の失対事業は、今年度と変化なきものと考えていいのか、もし、変化されるものとすれば、その見通し等についてお伺いいたしたいのであります。
 第二に、失対労務者の団体交渉権が、今日、各地で事実上否認されておりますのは、労働組合法及び憲法上、私は違反するものと思いますが、どうお考えになっているか、見解を伺いたいのであります。失対労務者の身分は、特別職地方公務員であって、地方公務員法の適用はなく、労働組合法の適用がある。したがって、失対労働者の組合は、当然団体交渉権を持つのであります。しかし、労働省は、「失対法の規定によって、失対事業の規模、賃金等は、労働大臣が決定することとなっており、事業主体には、自由な決定処分の権限がないのであるから、これらの条件について、失対就労者が団体交渉を要求しても、事業主体はこれを拒否することができる」という見解をとっております。つまり、理論上は、団体交渉権はあるが、団体交渉をやる実益がないから、事実上団体交渉権がないにひとしいという考え方であり、この考え方に基づいて失対行政をば運営しているのであります。しかしながら、団体交渉権の前提として、雇用契約がなくてはならないということにはならない。直接間接に労働条件を決定する権限を持っている国、地方公共団体及び職業安定所長に対しては団体交渉を行なうことができるとするのが、道理に合った運用であると思うが、労働大臣の見解を伺いたいのであります。
 なお、この点について、去る十日、衆議院社会労働委員会において、近藤文二参考人が、改正案に賛成の立場から、次のように述べております。
 「たとえ国が直営事業でやらなくとも、事業主として団体交渉に当たるのはむしろ国であるべきだという意味において、団体交渉権を認めればいいというふうに私は考えますので、従来のような」「団体交渉権を認めないという論理は成り立たない」「だから国が最終責任を持ってこの失対車業をやる限りは、国が当事者となって団体交渉に応じて、そしてある地域のある職種についての賃金はこういうふうにきめる、そのときの参考にする材料を賃金審議会が出す、こういう形のものでないかと思いまして、私は賛成いたしておるわけです。その点が法律の中でぼやけておるならば、これは法律をまたそういうふうに変えていただく必要が起こるかしれませんが、大体この法律を読みますればそういう精神である、少なくとも私たち研究員の場合には、そういうような考え方で団体交渉権を否認するというようなことは毛頭考えておりません。」、すなわち、この改正案を作るため労働大臣が委嘱した失業対策問題調査研究会の一員である近藤氏が、この改正案の仕組みをそのように理解した上で、賛成意見を述べているのであります。したがって、団体交渉権について政府の考え方と取り扱い方とは、近藤氏の考え方と全く食い違っておるのであります。政府は、近藤氏の、すなわち参考人近藤氏の考え方をどうとっておられるか。団体交渉権についてのこれまでの考え方と取り扱い方を、この機会に改めるつもりがあるかどうか、明確な見解を承りたいのであります。
 第三に、事業主体と運営管理規程について伺いたいのであります。これは少しこまかくなりますが、この改正案今後の運営については、重要なことでありますので、明快な御答弁をいただきたいのであります。
 一、改正案によって、事業主体は運営管理規程の作成を義務づけられるわけであるが、労働省は、この規程作成は事業主体の自主性による失対卒業運営のためであると言いながら、規程については、労働省令で統一した基準で縛ろうとするのは、私は矛盾ではないかと思いますが、この見解をまず承りたい。
 二、また、この規程は、企業の就業規則に相当するものであるから、労働基準法が就業規則に記載すべき事項を列挙しているのと同様に、規程に盛るべき事項を法律に明記し、さらに、これを労働基準監督署に届け出ることを義務づけ、監督に服さすべきであると思う。
 三、また、この労働基準法が、事業主は、就業規則の作成にあたって労働者の意見を聞くべしとしているのと同様に、この運営管理規程の作成にあたっても、事業主体に対して、労働者の意見を聞くことを義務づけるべきでないか。
 四、また、失対労務者の団体交渉権に関連するのであるが、事業主体と失対労働者の組合との間に労働協約が成立し得ると思うが、その点はどう考えられるか。労働協約が成立すれば、協約のほうが当然運営管理規程に優先すると考えるが、この点はどう考えられるか。
 五、事業主体にも就業規則の作成義務があるのでないか。その場合、運営管理規程と就業規則との関係はどうなるか。
 六、施行主体となる請負業者には、運営管理規程作成義務はなく、就業規則作成の義務があるということになると思うが、その場合、事業主体の作る運営管理規程と、施行主体の作る就業規則との関係はどうなるか。
 以上六点にわたって、事業主体の運営管理規程について、改正後これが実施に重要な問題であると考えるので、この際、明らかにお答えいただきたいと思うのであります。
 第四に、職業安定機関の業務活動について、二点にわたって伺いたいのであります。
 一、改正案にある就職促進措置の業務は、複雑で量の多い業務であるが、配置される指導官のみで十分に消化し得るものかどうか。他の職安職員の援助を仰ぐことはないか。援助を仰ぐとすれば、その場合、職安の他の業務、たとえば一般職業紹介業務などが、なおざりになるおそれがあるのではないかということ。
 二、失対労務者を民間雇用に定着させるためには、一般紹介業務の窓口と失対紹介業務の窓口とが、うまくパイプでつながっていることが必要であるが、このパイプが引かれていなかったり、詰まったりしていることは、今日行政管理庁もしばしば指摘しているところであり、この改正要望に非常に積極的な全国市長会も、その点の指摘を行なっております。この点は大いに現状を打開し、改善の必要があると思うが、労働大臣の現状並びに今後のこれが解決についての所信を伺いたいのであります。
 第五に、最後に、私はごく簡単に、失対事業そのものを今後どうしようとしているのか、政府の根本的な方針及び今後の見通し等について、労働大臣を通じて、池田政府のこれに対する考え方をはっきりお伺いしたいと思うのであります。
 法の規定にもあるように、国が名実ともに責任者としてすべての失対事業を国営事業としてやるならば、問題の多くは簡単に片づくと思うのであります。その意思が政府におありになるのか、また、現在まで直営事業を実施してこなかった理由は一体那辺にあるのか、この点をお聞きいたします。
 以上、わが党修正案並びに五点にわたって、大橋労働大臣に対する質疑を通じて、政府の失対事業に対する所信のほどをお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(大橋武夫君) まず、最初の問題は、失対労務者の雇用の最終責任を国及び地方団体とし、これを法文上はっきりすべきではないかという点でございます。失対事業は、他に就職の道のない失業者に対して、公共の負担により就業の場を提供し、その結果として生活の安定をはかる制度でありまして、その実施には、労働大臣の定める計画手続のもとに、事業主体たる地方公共団体が当たることになっているのであります。したがって、この制度の推進については、国及び地方公共団体の双方が責任を負う筋のものでありますことは、従来から制度上きわめて明瞭になっている次第でございます。
 次に、失対事業の賃金について、生活貸金の原則を法文上明定してはどうかという点でございます。失対事業は、他に就職の機会のない失業者に対して雇用の場を提供するための事業であり、あくまでも雇用対策の一環として実施をしております。したがって、改正案では、失業対策問題調査研究報告で指摘しておりまするように、できるだけ賃金としての通常の性格を貫くよう配慮するため、現行の低率賃金の原則を改めまして、今後はできるだけ就労者の能力にふさわしい事業運営を行なうとともに、賃金は、失対事業において実際に実施している作業ごとに、その作業内容にふさわしい通常の賃金を支給できるように規定しております。
 申すまでもなく、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでありまして、そのような原則の上に立って定められておりまする民間の類似の賃金を考慮して決定される失対事業の賃金につきましても、その点が十分に反映されることとなるものと思いますが、なお、失対事業の賃金の決定にあたりましては、就労者の生計費をも十分考慮して参ることにいたします。
 その次は、職業安定法十八条で、使用者は、その求人にあたっては賃金、労働条件を明示することになっている。しかし、「明示」だけでは不十分であって、失対事業の賃金及び就労条件を下回ってはならない旨を法文上明らかにしてはどうかという点でございます。民間事業または公共事業の求人で、賃金、労働時間その他労働条件が通常の労働条件に比べて劣るような場合には、公共職業安定所においてその改善について必要な指導を行なうとともに、不適当なものについては求人の受理をしないということにいたしておるのであります。求人者に対してこれ以上特別に法律上の規制を加えるということは、職業紹介業務としては必ずしも適当とは考えません。むしろ最低の労働条件を確保するという点において、それは労働保護行政の面で研究すべき問題ではなかろうか、かように存ずるのでございます。
 それから失業対策事業賃金審議会を失業対策事業審議会として扱ったらどうかという点でございますが、失業対策事業の賃金につきましては、公正慎重な態度でもって臨むことが望ましく、かつ民間賃金の動向等に応じて改訂の必要がある等、きわめて技術的、専門的な事項について諮問すべき機関を常設しておく要がありますので、失業対策問題調査研究報告も指摘しておりますとおり、学識経験者によって構成される失業対策事業賃金審議会を設けることにいたしたのであります。そうして、この審議会の運営にあたりましては、事業主体、関係就労者等の意見を聞く等、十分な配慮をいたしたいと思います。失対事業の運営全般について審議会を設けるということも考えられることではございますが、しかし、こうした事柄につきましては、現在、失業対策に関する事項というのが、雇用審議会の権限になっており、失業対策事業の運営に関する答申や建議をたびたびいたしておるのであります。また、職業安定法の施行と関連する部分については、職業安定審議会が設けられておるのであります。したがって、これらの審議会等の関係もございまするので、将来の問題として十分に研究をさしていただきたいと存じます。
 それから失対事業の管理運営方針並びに高齢失業者等就労事業就労者基準の決定にあたっては、失業対策事業審議会の意見を聞くことを法律できめてはいかがかという点もございまするが、この失業対策事業審議会のことは、先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、これらの問題につきましては、各種の審議会を通じまして十分に検討をしてもらいたいと思っております。
 それから失対労働者の団体交渉権の問題でございまするが、失対就労者の組織いたしまする労働組合は、原則として使用者である事業主体と団体交渉を行なうことが否認されているものではございません。ただ、失対事業は、賃金その他労働大臣が決定する労働条件が多いのでございまして、したがって、事業主体で決定権のない事項については団体交渉を行なう意味がないというので、実際上団体交渉でこれらの点が解決できないわけでございます。しかし、このことは労働組合法及び憲法に違反するものではないわけでございますが、しかし、これらの組合にも全国的な組織もあるわけでございまするので、将来は、労働省の当局におきましても、これらの中央機関と十分に連絡をとり、失対事業の運営上遺憾なきを期して参りたいと存じます。
 次に、三十八年度の失対就業人員の一万七千人減員の問題でございまするが、一般失対事業の規模は前年どおり二十万三千人でございます。臨時就労対策事業が廃されておるのでございますが、臨時就労対策事業に就労する失対適格者は、民間就職また公共事業等の吸収によりまして十分吸収される見込みが立っておるから、したがってこれを廃止をいたした次第でございます。
 それから、失対の打ち切りは絶対にしないのかという点でございまするが、先ほど申し述べましたるごとく、改正法案の附則第二条第三項に、はっきり規定してありまするように、引き続き失対事業による就労の機会が存置されておりまするので、現在の人たちを無理やりに民間職場に押し出すような考えはない、失対の打ち切りをやるという意図は毛頭持っていないということを、この機会に重ねて申し上げておきます。
 次に、事業主体の運営規程についての御質問でございましたが、従来失対事業の実施にあたりまして、事業主体の自主性が十分に認められず、その運営管理が消極的となり、ために運営の秩序が害されておりまする例もあるのでございます。したがって、この法案におきましては、事業種目、規模の決定等につきまして、広く地方の自主的意思が反映されるようにいたしますと同時に、各事業主体が、この規程を事業運営の管理の基準として当該地域の実情に応じて自主的にきめるものとし、失対事業の運営が行なわれるように期待をいたしておるところであります。この運営管理の規程の中には、就業規則としての事項が当然含まれるのでございまして、この部分につきましては、労働基準法の定めておりますように、労働者側の意見の聴取、監督署への届出等の手続を踏む必要があることは当然でございます。また、労働協約に定められる労働条件、その他の労働者の待遇に関する基準と運営規程のそごをいたしまする場合は、その抵触する部分は運営規程のほうがこれは無効でございまして、協約のほうが優先的に考えられるものでございます。また、事業主体が、組合に対しましては、協約に従って協約の条項を履行しなければならない義務を持っております。ただ、協約の定めが法令に違反する場合には無効になるという程度の制限があるわけでございます。以上お答え申し上げます。(拍手)
  ―――――――――――――
#23
○議長(重宗雄三君) 鈴木市藏君。
  〔鈴木市藏君登壇、拍手〕
#24
○鈴木市藏君 私は、日本共産党を代表して、本法案について池田総理並びに関係大臣に質問をします。
 本法案の本質とそのねらいは、大橋労働大臣のごまかしの答弁などによって断じておおいかくすことができるものではありません。本法案の本質は、池田内閣のいわゆる新産業秩序の名のもとにおける産業予備軍の再編成を強行しようとするものであります。そのねらいは、失対事業の打ち切りを目ざすものであり、全日本自由労働組合の組織破壊をたくらんだものであります。そして、ますます増大し激化する失業と貧困、及び労働運動に対する無慈悲な攻撃の現われであり、本法案の成り行きは、すべての労働者と勤労者の生活と権利に関して、きわめて重大な影響を持つ性格とその内容を持つ法案だという点にあります。現に起きている事実と、本法案の内容は、そのことを示しているのであります。以下、私は、具体的に政府の方針をただしたいと思います。
 質問の第一、労働省は昨年の十月、失対事業に関し、労働省構想なるものを発表いたしました。それによれば、現在三十五万の就労者を、就職促進または自然減耗などを見込んで、五カ年計画で六万人に減小させようとしております。この構想は、今日まで取り消していないのであります。労働大臣が失対の打ち切りではないというならば、この壇上から正式に労働省構想を取り消すべきであると思いますが、その決意があるかどうか、お伺いをいたします。
 質問の第二、職安の窓口には、今失業者が失対事業への就労を求めてひしめいております。にもかかわらず、新しい就労は完全にストップされ、すでに過去一年間に一万五千人の就労者の減少となっているのであります。昨日も、本会議で河野建設大臣は、特別失対事業の就労率を一〇%引き下げたことについて、失対を減らす意図はないと答弁しましたが、現に本年度の予算では三千人も減らしているではありませんか。また、ガソリン消費税を充当した建設省関係の臨時就労事業を撤廃し、ここに働く一万四千人の就労打ち切りを行なっているではありませんか。これらの事実は、明らかな失対打ち切りであります。この点について労働大臣の明確なる答弁を求めます。
 さらに、政府は炭鉱離職者の緊急就労事業を、時限立法を理由に来年十二月で打ち切り、ここに働く五千五百人の就労者を再び路頭に投げ出そうとしておりまするが、もし政府が失対打ち切りをしないというならば、この法律を打ち切らないと約束できるかどうか、労働大臣からとれまた明確な答弁をお願いします。
 質問の第三、法案は、失対事業の民間土建業者による請負化を認め、私企業に失対労働者を売り渡そうとはかっております。そして高令失業者等就労事業と失業者就労事業と二つに分割して、この民間請負化の傾向を一そう助長しているのであります。そして失業者就労事業は、特にこの傾向を強化するものとなり、こうして政府が行なう失対事業の公共的性格は次第になくなり、ここに失対打ち切りの本質的な政策的な現われがあると言わざるを得ません。
 また、法案は、職業訓練、就職促進の美名のもとに、民間雇用を強制し、訓練課程を経なければ、失業者としてさえ認めないという、無慈悲残酷な内容さえ持っているのであります。これこそ明らかに憲法の規定した職業選択の自由を侵し、一種の法の名による強制労働ともいうべきものであります。これこそ本法案の性格を示す具体的な内容ではありませんか。労働大臣の明確なる答弁を求めます。
 政府の法案発表以来、労働者の不安は増大し、現にこの問題を苦にして九人の自殺者まで出しております。昨日は、またこの国会の傍聴をしてきた東京王子の失対一労働者が、不安にかられて投身自殺さえしているのであります。(笑声)何を笑う。しかも、毎日、国会に向けての必死の請願と、連日連夜にわたるこの傍聴者の真剣な姿を見てごらんなさい。しかも、総理は、失対労働者の全国組織である全日本自由労働組合代表との面会を拒否し続けて今日に至っているのであります。まさに一片の誠意さえ認めることができません。政府が、失業者、貧乏人の身の上を思ってその利益を守るなどということは、全く白々しい、うそであるということを、この事実は物語っているではありませんか。
 質問の第四、昨日、総理は、本院において、この法案が、あたかも世論に支持されているがごとき強弁をしましたが、一体その根拠は何に基づくものでありましょうか。新聞の論調ですか。――事実は、首相の言明とは反対に、国民の大多数はこの法案に反対し、廃案を望んでいると言わなければなりません。私は事実をもってそれを示したいと思います。
 その一、何よりも、本院において、自民党を除く各党各派がほとんど一致して反対しているということであります。この事実は重大な政治的意義を持っております。なぜなら、昨年の参議院選挙において、これら各党各派の総得票数とその率は、自民党を上回っているのです。このことは、国民の多数が本法案に反対しているという生きた証明ではありませんか。
 事実の二、福岡県会、京都府会を初め、岡山、大分、高知、釜石など、数十の市議会が、この法案に反対の決議、もしくは慎重審議の特別決議を行なっており、それは日を追って拡大しております。過日開かれた全国市長会でも、慎重審議の要望が自民党市長からも出ているような状態であります。
 事実の三、総評初め七百万組織労働者が大会その他によって反対決議を行ない、失対労働者とともに、本法案反対のために立ち上がっており、部落解放同盟、婦人団体連合会もまた、共同の反対行動に参加しております。
 第四に、全日本自由労働組合は、すでに三百五十万をこえる請願書をもって国会に請願をしております。毎日のはがき、電報も、本法案の反対を切実に訴えながら殺倒しているのであります。この国民的総反対ともいうべき事実に目をおおって、世論が支持しているかのごとく言うのは、全く根拠のない詭弁でしかありません。総理のこれに対する答弁をお願いをします。
 質問の第五、この世論の動向に背を向けて、あえてこの法案の成立を強行しようとする意図は一体何でありましょうか。それはまさしく政治的な意図であると断ぜざるを得ません。自民党の草葉議員は、中間報告を求める動議に関する答弁の中で、本法案を強行成立させようとする理由について、いみじくも、政治的必要に基づく判断であると強調しているではありませんか。まさにしかりです。これこそ自民党とその政府の本音である。その政治的な意図とは、
 第一に、全日自労という労働組合、一千万人をこすといわれる失業、半失業のこの貧しい仲間たちのとりでの一つとなっており、平和と独立、民主主義のために、常に統一行動を求めて戦ってきたこの組合の存続と発展をおそれて、この組合を破壊するために、その組織の分断をねらったものであると言わなければなりません。
 第二は、ますます増大する失業者の職と生活の安定を要求する組織的な結集とその行動をおそれて、それをはばもうとするものにほかならないのであります。これはまた低賃金政策を進める一環でもあり、したがって、明らかに反動的な労働政策と治安対策的なねらいを持った立法であると言わざるを得ないのであります。もしそうでないとするならば、総理は労働政策に関する今日までの見解とその施策の誤りを直ちに正すべきであると考えるが、その用意があるかどうか、お伺いをします。
 最後に質問をいたしますが、六月十八日以来の国会におけるこの事態は、まさに議会政治の破壊ともいうべきものであり、それは自民党の多数横暴によって引き起こされてきたのであります。特に、本院における議長職権に基づく中間報告の強行は、ファッショ的な暴挙とさえ言わなければなりません。この暴挙は、昭和二十八年、電気事業と石炭鉱業における争議行為の規制、いわゆるスト規制法のときにその端緒が開かれ、次いで昭和二十九年警察法改正、昭和三十一年教育二法案、昭和三十四年防衛二法案の強行通過をはかったときの汚辱が引き継がれたのでありますが、この事実が示すものは、中間報告の強行は、まさに憲法に違反した、日本反動化への里程標であったのであります。しかも今回の暴挙が六月二十一日、二十六日と、再三にわたる池田首相の直接的指示によって行なわれたといわれていることは、きわめて重大であります。もはや事実はきわめて明白であります。この法案には、一片の政治的、社会的、道義的効力もないと言わざるを得ません。総理はこの事態に責任をとって、この法案を撤回すべきであり、もしそれができないとすれば、最少限、本法案を再び社会労働委員会に差し戻すべきであると考えるが、これに対する総理の明確な答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(池田勇人君) 本法案に対しまする世論は、有力新聞の論調その他をごらん下さればわかると思います。
 また、私の労働政策は適当でございましたから、各労働者の生活水準は、とみに向上して参りました。しこうして、私は本法案を差し戻すということにつきましては、全然関係はございません。一に法案の早期可決を念願している次第であります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(大橋武夫君) 失対事業につきまして、労働省構想を取り消してはどうかということでございますが、失対問題に関する労働省の構想というものは、今回提出した法案そのものでございます。
 この法案におきましては、先ほど来たびたび申し上げますとおり、現在失対事業にいる者は、引き続き失対にとどまることを保障されているのでございます。
 次に、公共事業の臨就の打ち切りの問題でございます。臨時就労対策事業は、揮発油税を財源とする道路事業及び街路事業の一部を選定し、これに特別に失業者吸収措置を講じ、事業の建設効果とあわせて、失業者の吸収を目的といたしております。しかし、最近におきましては、公共的な建設事業について、事業内容が高度化しており、施工方法の改善が進みまして、特に都市地域における道路事業が集中いたしておりますので、無技能の失業者を本事業に吸収する余地は次第に少なくなっております。そこで、労働省といたしましては、現在の就業者を職業訓練によりその方面に向けることが適当である、かように考えておる次第でございます。
 それから最後に、職業訓練は強制労働ではないかという点でございますが、私どもは、本人の意思に従って職業上の訓練をすることは、いかなる意味においても強制労働とは考えておりません。ことに、今までは屋外作業一本で、きわめて限られた作業しかなかった失対事業の種類をふやしまして、いろいろな失業者、個人の事情に即応し、適性に応じた仕事をふやしていくということが、なぜ強制労働と関係があるのか、この点は理解するに苦しむところでございます。(拍手)
#27
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
 午後一時まで休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
   ――――・――――
   午後一時二十七分開議
#28
○副議長(重政庸徳君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 討論の通告がございます。順序発言を許します。藤田藤太郎君。
  〔藤田藤太郎君登壇、拍手〕
#29
○藤田藤太郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になりました職業安定法及び緊急失対法の一部を改正する法律案に対しまして、反対の討論を行なわんとするものであります。
 この法律案が提案されましてから、日本社会党が終始一貫して反対の意思を表明して参りましたことは、御案内のとおりでございます。本法案改正は、いわゆる失対打ち切りと同じ結果になるということであります。また、これは、低賃金労働者の一そうの増加と、安価な労働力の維持という大きな目的を持っているからであります。
 参議院におきましては、本法案審議にあたり、国会法に違反して中間報告が行なわれ、議題になっているのであります。昨日の総理の発言においても、社会労働委員会で審議が行なわれていないのに、総理は参議院で十分な審議が行なわれたような認識に立っておられる。このような中間報告は理解できないものであり、政府、自民党に対し強く反省を促したいと思います。(拍手)
 私は、まず、失業対策の根本問題に触れてみたいと思います。
 科学や人間能力の進歩に伴って、生産が機械化生産に移りつつあります現在において、国内の生産能力をフルに回転し、この生産増強に応じて国民生活を引き上げることであると思います。生産と消費のバランスがとられる、これなくして経済の繁栄はありません。しかし、政府はこれをやっていない。生産設備拡大はいたしますが、国民生活の向上には処置をしない。それが、今日の生産過剰、操業短縮、生産設備を遊ばす宝の持ちぐされ経済を繰り返し、国民を犠牲にしていると言わざるを得ないのであります。
 私は、その具体策として第一に申し上げたいことは、働く能力のあるすべての国民が、働く権利として職場を持つことであり、それは労働時間短縮による完全雇用の確立であります。労働者は生産を通じて社会に貢献をする生活が保障される最低賃金の実現をもたらすことであります。
 第二は、労働能力のない老齢者、身体障害者、母子家族を、社会保障制度によってその生活や健康が保障される、これが日本憲法に明示されている住民主権の政治の根本理念であります。今日、世界各国が競ってこのことを行なっているのであります。自民党政府は、この基本理念の実現をサボっているではありませんか。
 わが国においては、今日一千万人に及ぶ潜在失業者がおります。これらの潜在失業者は、きわめて悪い労働条件と、きわめて低い賃金で働かされているのであります。今日、月収一万円以下の雇用労働者が五百九十九万人、自営業主が三百五十万人いるということが現状であります。月収三千円――四千円の低所得しか得られず、最低極貧生活にあえいでいる人のいることを忘れてはなりません。特に、零細企業や失対事業の労働者には、水準の低い保険制度しかありません。仕事を追われても、退職金もありませんし、年金制度で老後の保障もされておりません。失職すれば路頭に迷うほかないのであります。ところが、政府は、いまだかつて、これらの労働者のために有効な対策を講じていないというのが実情でございます。右のように、わが国には膨大な半失業者が存在しているのであります。その対策も講じないで失対事業を打ち切ろうということについて、私は重大な心配をするものであります。
 この点を法律案の内容について申し上げてみますと、
 第一に問題になりますのが、就職促進の措置の項でございます。ごく要点だけを申し上げますと、この措置が高年齢失業者だけを対象といたしまして、青年失業者はこの措置の対象とされていないことが大きな欠陥であると私は考えます。現在、青年失業者数も相当数存在しているのでございます。この法案の趣旨から申しますと、青年失業者は勝手に自分で職を見つけろということになるのでございます。これを満たす条件が今日あるでございましょうか。さらに、高齢失業者には職業訓練を施すことがこの法案できめられておりますが、このことにも大きな欠陥が見出されるのであります。それは、現在でも職業訓練機構が手薄であり、その過程を見ても、単純技術労務者としてしか採用されておりません。若い人でもそうでありますから、もし高齢者が職業訓練を受けて企業に入るとしても、おそらく条件の悪い低賃金の職場しかないということであります。このことは、アメリカでもすでに実験済みのことでありまして、アメリカの議会で、高年齢労働者の職業訓練の効果はきわめて悲観的であり、またその就職もきわめて困難であることが重大事実として指摘されております。したがって、高年齢労働者に対しましては、もっと社会保障制度の拡充こそが必要だと強調されているのでございます。
 次に問題になりますのが、職安所長の指示権の規定であります。簡単に申しますと、この指示権の規定は労働者に対する官僚統制への道を開くものでありまして、労働者の意思はほとんど無視されるという結果を招くでありましよう。
 これらの諸点を総合しまして、私は、この法案は、新しい低賃金労働者を再生産し、膨大な半失業者群の中に放り込み、わが国の低賃金構造をますます固めるものと考えざるを得ないのであります。
 第二は、緊急失対法の一部を改正する法律案につきまして申しますれば、これも重大な問題を持っております。
 その第一は、この法案は失対事業を失業者就労事業と老齢者就労事業に分割して、老齢者就労事業に働く者には生活保護費並みの賃金で働かせ、または失業者就労事業へは職安所長の指示権によって新規就労を権力阻止するということを目的としていることでございます。また失業者就労事業につきましては、これを過剰な雇用の場と規定しながら、しかも一方で労働基本権を認めず、また労働賃金も労働大臣が決定するという考え方に立っております。これは、憲法や労働基準法に、賃金、労働条件は、労使対等の立場できめることが明示されております。この原則に違反するものであり、改めるべきであると思います。ILO八十七号――結社の自由と団結権の擁護条約の精神からいっても、失対労働者の代表と政府当事者が団体交渉によって賃金決定をすべきであることを強く主張するものであります。
 職業安定法の一部を改正する法律案及び失業対策法の一部を改正する法律案のごく基本的な問題を申し上げましたが、この法律案は、要するに、職安所長の指示権によって失業者を失対事業から締め出し、これらの失業者を零細企業に移しかえることを目的としております。しかも、零細企業に採用される場合も、ほとんどが臨時工的な待遇しか与えられないであろうことは火を見るよりも明らかであります。さらに、もし企業がつぶれましても、今後は再び失対事業に帰ることは困難となるのでございます。ここに私は、これらの法案を、失業者を首切り、零細企業の低賃金労働者を大量生産するものとして、強く反対するものであります。
 さらに農民について一言触れたいと思います。政府は、五反百姓といういわゆる零細農家の生活状態を考えたことがあるのかと言いたいのであります。農民の所得は低い。他に働いて収入を求める機会はない。自由主義、自由経済を主張する自由民主党の政治では、生産設備は太平洋ベルト地帯に限られている。政府の地域開発、地方への工場誘致は、かけ声ばかりで、実現の可能性はありません。今日の日本で、生産機関をフルに操業して国民購買力を高めるならば、国民所得は一人平均二十万円をこえるでありましょう。五人世帯では百万円をこすでありましょう。五反百姓の年間収入は二十万円にも達しません。これで一家が暮らしにたえているのであります。町村に職安の窓口はありません。市部まで出ようとしても住宅はなく、あっても手が出ないのであります。通勤しようといたしましても、通勤費に安い失対賃金の大半は消えてしまうのであります。この農民の生活をどうするのか。職安の窓口に意思を明らかにできない農民貧困地域に、失業多発地帯の指定ができますか。各町村に職安の窓口を開かない限り、農民は泣き寝入りではありませんか。今後、生活にあえいでいる農民の生活は、工業化の進むに応じて取り残される以外にないではありませんか。このことから先に手をつけて、国民のすべてが、生計を社会の進歩に伴って立てていく、この受け入れ態勢を作ることこそ先にやるべきことではないかと言わざるを得ません。今必要なことは、各町村ごとに職業安定所を設けて、すべての失業者が、だれでも職安の窓口を通じて失対事業に働けるようにしなければならないと思うのでございます。
 最後に私は申し上げたいのであります。昨日の総理の答弁を聞いておりますと、失業者が失対事業に停滞をしている、こういうことが言われたのでございます。私は、そこで働いている労働者は、好んで停滞をしているのではないのであります。働く場所がない、自分の生計を立てるところがないから、この失対車業に残念ながらしがみついているというのが現状ではないかと思うのでありまして、ほんとうに今の総理の認識については改めてもらわなければならぬということを、私はここで強く主張したいのでございます。(拍手)
 失業対策の前提になる基本は、私が先ほど少し触れましたけれども、まず第一に、労働時間の短縮による完全雇用の道でございます。皆さん、一週間四十九時間以上働いている労働者が今日二千五百万人いるということ、六十時間以上働いている労働者が千三百万人いるという、この現状でございます。そうして片方には一千万近い潜在失業者がいる。こういうことが外国のどの国において行なわれていることでございましょう。
 一番前段に私が述べましたように、機械生産の発達に応じて、人生を楽しみ、そして能力がある者はすべて職場につくという前提が確立されなければならないと思うのでございます。土曜、日曜を休んで、一週間四十時間制を確立していく、これがまず完全雇用の第一の前提であると思います。
 第二は、今の政府のやっておるような、業者間の申し合わせによって働いている労働者の賃金を押える、こんなことではどうにもならないのであります。これもまた、世界に例を見ないのでありまして、われわれが今日まで主張して参りました全国一律の最低賃金制の確立は、今、日本の経済にとっても、日本の繁栄のためにも、やらなくてはならない絶対条件であると思うのでございます。
 第三番目は、この責任を政府が今日果たさないという、そこによって失業者が出るというなら、この失業者の生活を保障する、その就職するまでの生活を保障するという前提がなくてはならないと思います。
 次には、社会保障の問題でございます。
#30
○副議長(重政庸徳君) 藤田君、時間が参りました。
#31
○藤田藤太郎君(続) 働く能力のない老人や身体障害者、母子家族の所得保障の問題でございます。今日、私が見ますところによると、日本の国民所得平均のちょうど倍くらいがフランスでございます。このフランスは、六十五才以上の人に、月二万八千円の所得保障としての年金を支給しているのでございます。日本はどうでございますか。老齢福祉年金は、七十才以上月千円しか出していないのであります。今この国会にかかっている法案を見ますと、それに百円足しましょうという、こういうものの考え方で所得保障ができるというのでありましょうか。この根本的な問題に触れなければなりません。
 次は、医療制度の問題でございます。病気になっても、患者が負担せずに、健康が守られ、そうして病気をなおす、ここに医療制度を確立しなければなりません。
 もう一つございます。それは、同じ所得の人でも、子供の多い人と少ない人には、非常に負担が多く子供の多い人にはかかってくるのであります。子供は社会が育成をする。
 この社会保障の三つの柱を立てて貧乏をなくする、貧困をなくするという、この前提が確立いたしますならば、私は、失業者というものは世の中から消えていく、貧困生活者は世の中から消えていくということになると思います。これが、今の憲法で認められております、宣言しております大精神であろうと思うのであります。今日の失対労務者には、少なくともこれだけのことは、今日の状態でも、満たしてもらわなければならぬと思います。
 安定常用雇用の保障の問題でございます。二番目は、賃金が家族を含めて一万五千円、この賃金の保障の問題でございます。社会保険、退職金、年金という老後の生活、日々の生活が守られるということでございます。団交権、先ほど申し上げましたけれども、団体交渉によって、賃金、労働条件がきめられるという、このことでございます。
#32
○副議長(重政庸徳君) 藤田君、時間が参りました。
#33
○藤田藤太郎君(続) 第五番目の問題は、失対は自由にどこへでも失業した者が就職できるという、このことでなかろうかと思います。この前提なしに本法案のような改正には、無理があると言わざるを得ないのでございます。この状態において本法案のごとき改正を行なわんとすることは、失業者をまた首切りするという答えしか出てこないのでございます。私たち国政に参加する者といたしまして、これでよいのかと言いたいのであります。強い憤りを感ずるものでございます。与党である自由民主党は、このように国民全体にとって重要な内容を持っている本案を、衆議院においても十分に審議せず、参議院に送って参りました。参議院においても、社会労働委員長の報告のごとく、社会労働委員会では一回の審査もせずに、国会法を無視して、本会議で中間報告を強引にやってきたのであります。このことは、国会の歴史に汚点をつける以外にありません。多数の暴力と言わざるを得ません。私たちは、これを認めることはできません。特に、社会労働委員会に参加している者といたしまして、今後の国事に対して国民の期待にはずれて行なわれたこの事態に対して、心から憂えるものであります。
 私たち日本社会党は、政府、自民党のこの暴挙を、徹底的に、主権者国民とともに、改めさすために戦うでありましょう。口に近代国家を唱え、実体は主権者国民を犠牲にして政治を続ける自由民主党、政府に、強く警告して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  ―――――――――――――
#34
○副議長(重政庸徳君) 鹿島俊雄君。
  〔鹿島俊雄君登壇、拍手〕
#35
○鹿島俊雄君 ただいま職業安定法及び緊急失業対策法の一部改正案が議題となっておりまするが、私は、自由民主党を代表いたし、これに対し賛成の意を表するものであります。(拍手)
 私はまず、この改正案があまりにも誤って理解され、また、その改正法の精神がことさらにゆがめられた議論の上で反対が行なわれていることを、まことに遺憾に思うのであります。少なくとも、この改正案の一体どこに失対打ち切りのことが言われているのか。――どこにもさようなことは言われておりません。失対事業に出て働いている人々は、ニコヨンというような、いやな呼び方をされているが、なぜ一日も早く、さような境遇から脱して、まともな雇用労働者としての仕事につくことを好まないのでありましょう。失対事業の制度が始まって以来、今日まで十四、五年たちまするが、経済の高度成長に伴い、労働人口の就労状況、労働力吸収の実態は、はなはだしく好転しているにもかかわらず、五年、十年と固定して、平均約六カ年間失対事業に従事する現況は、あたかも失対事業に出ることが、一種の定職であるかのごとき錯覚を持っているのではないかと考えざるを得ないのであります。なお、失対事業では、その地域で同種の仕事に働いている人々よりも賃金を安くせねばならないことになっております。したがって、仕事に対する意欲も出ない、当然能率は上がらないのであります。かようなことから、地方公共団体では、失対事業をやめてもらいたいというところも出て参るわけであります。こういう状態をこのままにしておけと言われるのでありましょうか。政府とわが自由民主党は、時代の推移に即応するよう、失業者の立場を改善する目的で、この改正案を提出したのでありまして、自由民主党といたしましては、それら不しあわせな国民のためにまともな労働を準備し、できるだけ賃金を引き上げ、ニコヨンだとかあるいはニコヨン仕事だとかいわれるような、いやなものの言い方のなくなるようにし、心楽しく働いていける世の中に仕上げていきたいのであります。
 そこで、現在の失対から抜け出て、まともな仕事に雇われたいという人々には、その人の年令、男女の別、それぞれの才能、好き好きに応じ、職業の訓練を与え、自動車の運転手さんにもなってもらおう、また、保育所の保母さんにもなってもらおう、その他安定した職業につけるようにして、その仕事に応じた手当を取ってもらおう。しかも、その職業訓練を受ける間は、月謝を払うのではなく、逆に訓練手当をもらいながら教えてもらおう、家族と離れて訓練を受けなければならぬ人々には、寄宿手当までも出そうというのであります。そしてまた、現在失対に出ておって、訓練を受けたくない人、そのまま失対に出ていたいという人々に対しましては、そのまま失対に残っていてごうも差しつかえないのであります。是が非でもやめなさいということは、この改正案のどこにも言っておりません。(拍手)その上、そのまま失対に残る人々に対しましては、これまでのような一般よりも安い賃金ではなく、世間並みの賃金に引き上げ、盆暮れの手当もこれまでは賃金の増額という形で出しておりましたが、これとは別にはっきりと区別して、臨時の賃金として渡そうというのであります。また、年寄りや婦人で失対に出る人は、これまでのように炎天下の道路工事だけに当たるのではなく、年寄りには年寄り向き、婦人には婦人向きの失対事業を別に設けております。たとえば、ビルや病院その他の清掃等、学校給食の手伝い、学校生徒の交通整理、公園や競技場、展覧会場の整理など、年寄りや御婦人に向く仕事を用意して、こういう仕事にも失対の人が働けるようになれるのであります。この法律の中で、高齢失業者等就労事業というのもこれにほかなりません。また、何としても失業者の出ることを防ぐことが基本でなければならないのでありまするが、経済の成長に伴って漸次失業者は減少して参りますが、しかし、全然失業者が出ないというわけにも参りません。やむなく出た失業者は、その人に応じての職業訓練などによって、極力民間会社やその他適当な働き場所の理解ある協力を得て採用してもらうようにいたしまして、失業者という名の人々を一人でもなくするという正常な姿に改善したい考えであります。この新しい失業者は、それでもなおかつ訓練を受けられなかった場合には、失対事業に出てもらうのであります。決して失業者に対して、失対事業から締め出すというようなことにはならないはずであります。また、職業の転換を指導する場合、職安等で高圧的にどこに行け、かしこに行けと高飛車にやるようなことは、かりそめにもあってはなりません。ことに失業した弱い立場にある人々には、心からの親切をもって応待しなければならないのであります。政府は、これらの点については、十分考慮の上指導に当たる必要があります。なおまた、関連する社会保障的諸施設の拡充にも政府の一段の努力を切望いたします。
 以上、概略申し述べましたが、私は、この改正案の成立によって、日本の暗い失対事業の世界が明るく立ち直ることに大いに役立つものであることを信じて疑いません。(拍手)
 世論も、その多くがこの改正案を支持しており、地方公共団体のほとんどは、この改正案のすみやかなる成立を待望しております。私は本案のすみやかなる成立を期待いたしまして、ここに賛成の意を表明する次第であります。(拍手)
  ―――――――――――――
#36
○副議長(重政庸徳君) 杉山善太郎君。
  〔杉山善太郎君登壇、拍手〕
#37
○杉山善太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、今日的な時点において、非常に国民的に注視の的となっておりまするところの、いわゆる失業の問題、雇用の問題に不可分な関係を持つでありましょうところの、当面議題となっておりましたところの、いわゆる雇用の問題あるいは失対法の問題にからんで、今一部改正がなされようとしておるのでありまするが、私はこれに反対する立場に立って、断固これをはね返そうという立場から、討論を展開しようとするものであります。
 まず初めに、私は、この法案が、最初から最後まで全く不法な手続によって行なわれたものであることを指摘しなければなりません。すでに御承知のように、この改正案は、憲法で保障された、いうならば生存権や労働権ないしは団結権に照らしてみて、改善ではなく、本質的には全く改悪であると、かように断ぜざるを得ないのであります。(拍手)これらのもろもろの点につきましては、すでに、また今後、同僚議員から説明もありましょう。特に池田総理あるいは大橋労働大臣を初め、自民党の議員の皆さんも、十分、胸のどこかにおいては、いいものと悪いものとを区別して、そう思っておいでになると考えております。本来、失業対策問題研究会のいきさつ、社会保障制度審議会に諮問を行なわなかったこと、さらに、衆議院における去る六月十八日のあの暴挙及び今日のこの事態を招いたことは、すべて政府が正当な手続を無視し、いわばファッショ的に、この法案の成立をはかろうとする悪意に満ちた魂胆にほかならないのであります。
 これに対して、もう一方の当事者であり、失対労働者の組織である全日本自由労働組合の代表者である中西委員長は、去る六月十日、衆議院の公聴会において、次のように訴えているのであります。「私たちは、生活の不安を抱きながらも、なお、われわれ全日自労は、この問題について真剣に政府や労働省と話し合おうと思っております」と述べているのであります。まことに本質的にりっぱであります。また、このことと対照的な、ファッショ的な政府と比較対照して、是は是、非は非として大いに考えてみて下さい。
 それでは、政府はなぜ審議を行なわなかったのでありましょうか。また、この法案をなぜ強行しようとしているのでありましょうか。政府、自民党は、この法案が審議されること自体をおそれたからにほかならないのであります。なぜおそれたのでありましょうか。それは、この問題が、単に三十五万人の失対労働者とその家族の問題のみならず、日本の一千万人といわれる半失業者、低所得者階層の運命にかかわる重大な問題であり、これらの人人に対する政府、資本家、自民党の無為無策というよりは、むしろ反動的な諸政策が、白日のもとにさらされ、国民の前に暴露されることをおそれたのであります。(拍手)政府自民党の政策は、一言にして言えば、一方でこの改正案で低所得者階層を押えつけ、他方で原子力潜水艦の寄港を認めて海外進出をあえて行なおうという政策であります。すなわち、職安法あるいは緊急失対法は、まごうかたなくその一環であります。それはやがて歴史が事実をもって解決するでありましょう。
 なぜならば、第一に、失業者の意思が全く無視され、強力な職安所長の権限のもとに、低い賃金と、安定しない職場に動員されるのであります。これはますますわが国の不完全失業あるいは潜在失業を拡大する政策でありまして、これが明治以来の日本型合理化の特徴でもあります。しかも、職安の指導を拒否すれば、失対事業にもはいれない。それでは一体どうしたらいいのでありましょうか。
 第二に、今回の法律改正によって、すべての労働条件に関する団体交渉権が否定されるのであります。これは明らかにILO八十七号条約及び九十八号条約に違反する、最も悪意に満ちた悪質な法律であります。
 第三に、今回の改正により、失対事業が二分化されるのでありますが、高齢失業者等の就労事業は、失対聖業の賃金を生活保護並みに押し下げあるいは引き下げようとしているのであります。他方において、失対事業の民間委託を中心に再編成しようとしているのでありますが、このことは、合法的に社外工を政府が供給することの役割を果たすこと以外の何ものでもありません。
 要するに、今回の法律改正の基本的なねらいは、日本における不完全雇用、半失業を拡大再生産し、労働者を無権利な状態に陥れ、低賃金構造を維持拡大することにあるのであります。これは、日本の独占資本の基本的な要求でもあります。この要求を受けて、政府が失対聖業を突破口として全労働者階級に拡大しようとする意図にほかならないのであります。
 このように、失対法改正法案は、徹頭徹尾、反労働者的であり、反動的であります。政府、自民党が一切の審議を放棄して強行採択したのは、こうした点が全労働者、全国民に暴露されることをおそれたからにほかならないのであります。全勤労階級の代表政党であるわが日本社会党が全力をあげて反対するのは、以上の理由と根拠に基づくものであります。政府は、すみやかに本法案を撤回すべきであります。
 最後に私は、政府の失業に対する基本的認識にきびしい批判を加えたいと思うのであります。
 そもそも、今回の法案改正にあたって、政府が失業対策の中心を失業手当と職業訓練に置いているのでありますが、これは失業をきわめて短期的な摩擦的失業として見ているからにほかならないのであります。はたしてそうでありましょうか。現在の失業者、特に失対卒業にとって中心的な問題となる中高年齢層の失業は、石炭産業のごとき急激な産業構造改善の結果として出てくる失業者、さらに、農村失業者であろうと、あるいは未解放部落の在来産業が独占資本に取ってかわられた結果の失業であろうと、いずれも構造的な失業であり、きわめて深刻な失業なのであります。政府の今回の改善案の前提となっている失業の認識は、全く誤っていると言わざるを得ないのであります。
 それでは、日本の失業といわゆる貧乏の根本問題を解決する基本的な道は何でありましょうか。第一に、近代的な失業対策の前提条件は、だれが何と言っても失業者を顕在化することであります。すなわち、失対事業を拡大し、ここで生活できるだけの賃金を保証しなければなりません。かつ、自由に失対事業への流入を認めるとするならば、日本の半失業者は残らずこの中に明るみに出て参るのであります。政府は、ここにいわゆる完全雇用の出発点を求めるべきであることを、私は強く訴えるのであります。さらに、真に政府が労働者の立場に立ち、労働者や失業者と十分な話し合いを深めるならば、すべからく失対事業改善の前提は、全国一律の最低賃金制度を確立することであるのであります。さらに、社外工制度の撤廃と完全雇用制度の確立、さらに、生活できるだけの社会保障の確立にあることは明らかであります。政府は、本法案を直ちに撤回し、この前提を確立した上で、再度、国会の審議を求めることを強く要求いたします。
 私は職安法及び失対法の一部改正に対する反対討論を以上をもって終わります。(拍手)
  ―――――――――――――
#38
○副議長(重政庸徳君) 加瀬完君。
  〔加瀬完君登壇、拍手〕
#39
○加瀬完君 私はただいま議題となりました両案について、前者に続きまして反対の討論をいたすものでございます。
 政府の説明によりますと、わが国の雇用失業情勢は、経済の高度成長のもとにおいて、全般的には著しい改善を遂げ、雇用の大幅な増加、失業の減少のほか、労働市場の需給関係にも改善が見られた。このような情勢にもかかわらず、就労者の固定化、老齢化の傾向が著しいので、民間雇用への復帰を著しく困難にする条件を改善をするために、失業対策制度の改変を今回提案した、こう申されているのでございます。
 私の反対の第一点は、この情勢のつかみ方に問題があることでございます。雇用の大幅な増加と申しますが、一九六二年、同じ本計画をいたしました労働省の労働白書によりますと、大企業の雇用の増加は大きいが、小企業の雇用は鈍化している。小企業から大企業への労働移動が激しいので、任意退職者は上昇しつつある、こう述べております。そういたしますと、政府の説明はこの労働白書と矛盾をするわけでございます。具体的にあげますと、政府は雇用の情勢は著しく高度成長のため改善された、そして労働市場の改善あるいは失業の減少を見た、こう言っておりますけれども、藤田議員も指摘いたしましたように、賃金対策はどうなっているかということには一向触れておらないのでございます。賃金の上昇を上回る、あるいは実質賃金の引き下げをもたらしております消費者物価の上昇と、その影響には、目をおおうているのでございます。例をあげてみます。一応、昭和三十一年を押えてみますと、昭和三十一年、実質賃金上昇率は七.一に対し、消費水準上昇率は五・一でございます。それが昭和三十二年、三年となりますと、実質賃金の一・五、三・五に対しまして、消費水準は五.一、六・七と、はるかに差が大きくなっております。昭和三十五年におきましても、三・一に対して五・六と、その差は開いております。長期間のこの実質賃金の不足分、赤字分の累積を解消する方策を立てませんで、賃金の安定をはかりませんで雇用の安定をはかろうとしても、無理でございます。
 その二に、地域別賃金格差をどう計算をしているかを申し上げてみたいと思います。小規模(三十人から九十九人)の地域別賃金格差の労働白書による表を見ますと、最高に対する最低の格差は、製造業、繊維業、木材業、化学、鉄鋼、機械、電気、この七事業のうち、製造業、繊維業、化学、鉄鋼、機械、五つの事業は格差が拡大をいたしております。繊維におきましては一五・四、化学においては八・九、このように格差が大きくなっているのであります。これをこのままにいたしまして労働移動を考えましても、労働移動は不可能でございます。
 その三は、政府は雇用は拡大したと言いますけれども、最近の雇用における産業別動向はそうなってはおりません。確かに建設業では二三・一、続いて卸売小売商一〇・八、製造業八・九、このような種目は増加をしておりますけれども、鉱業では一〇・三%の大幅な減退を示しております。しかも、この傾向は引き続いて拡大をされております。無計画な生産設備の拡張あるいは生産変更、こういうものに伴う労働者の移動というものには対策を持っておりません。とのような政策の中で需給関係がバランスをとっているといっても、私どもはそのまま受け取るわけには参らないのであります。もう一つの例をあげますならば、臨時工の伸びが本工の伸びを上回る状態はそのまま放置してあります。こういう状態では需給のバランスとはいえないのでございます。
 その一つといたしましては、政府は「失対に対する世論の動向」という説明の中で、次のようにみずからの立場を述べております。政府の考え方は、現在の失業対策事業を本来の雇用政策に切りかえるのが目的なんだ。しかし、そのためには失対周辺の対策というものを立てなければならない。たとえば、政府として最低賃金法を確立しなければならない、あるいは不当に低い職場への就職というものをどうして食いとめるか、あるいは就職させないようにするのかという対策を立てなければならない、こう述べておりますけれども、前提としてのこの条件は何ら対策として立っておらないのであります。
 結論として申し上げるならば、失対者が受け入れられるような雇用の拡大も需給のバランスも全然考慮されてはおらないのであります。また、賃金の安定策を考えませんで無理に転職就業をさせようとしても、これは生活を破壊する以外の何ものでもございません。失業対策の変更を考えるならば、物価対策、経済対策というものをまず考えなければなりませんが、この対策は前提としての条件を満たしておりません。政府のいう周辺対策の欠除している中に失対問題だけを取り上げることに、無理を私どもは感ずるのでございます。これが反対の第一点でございます。
 反対の第二点は、失対就労者の固定化、老齢化のための対策として適当かいなかの問題であります。まず、なぜ固定化し老齢化しているかの分析が、もっとなされなければならないと思います。日雇い労働者の雇用増減率を見ますと、三十五年、三十六年では、鉱業では八・九から二一・二の減、雇用増減率が減っているのであります。製造業では一四・二の減、金融保険業では三六・四の減、電気、ガス、水道事業では一六・五の減、このように日雇い労働者の雇用増減率が、はなはだしく減退を来たしております中に雇用対策を進めましても、無理がございます。しかも、日雇い労働者の需給状況は、三十六年は前年に比して、求人延べ数も就職延べ数もはるかに減退し、あぶれ率だけがふえております。さらに、三十六年の臨時工就職が減退をしている現実も見落とすわけに参りません。これは雇用身分も不安定でございます、労働条件も苛酷でございますので、生活の安定が得られないところに、減退の原因がございます。さらに、県外就職状況を調べてみますと、三十四年は五十三万人、三十五年は八十八万人、三十六年は百三十万人、増加率にいたしまして四八・六%をあげることができます。就職状況が県外希望者がふえたということは、就職しなければならない地域の生活が困窮しているということであります。しかしながら、県外就職状況をこのような大人数に増大させておりましても、県外に直ちに就職するという条件は満たされておりません。この対策というものがございませんでただ雇用の拡大だけを叫びましても、拡大された雇用に行ける条件のないところは、藤田議員御指摘のとおりであります。こう見て参りますと、民間雇用への復帰を著しく困難にしている責任は、政府の経済政策の貧困にあるわけでございまして、失対にやむなく従事している人たちの側にあるわけではございません。しかるにかかわらず、失対だけを取り上げましていろいろと施策を講じますことは、池田成長政策のために、失対者の社会保障の面を純然たる雇用政策に切りかえて、経済効果のみをねらう失対者の首切り、こういう結論にならざるを得ないのであります。このままでは弁解の余地のないところでございます。
 反対の第三点は、失対事業の再編であります。政府の説明を承りましても、失業者の技能、体力等を考慮いたしまして、ふさわしい事業種目を選ぶ、事業の種目、規模の決定は、地方公共団体の長の意見を聞いて、地方の自主性を尊重する、こう言っております。これは裏を返せば、地方の自主性尊重という、みのに隠れて、政府が責任を将来回避できるということになるのであります。地方公共団体の長の意見が重視をされるといたしますならば、市町村長は、事業の規模、種目等の決定におきまして、在住業者との競合や圧力というものに屈しないわけには参りません。さらに、地域別に作業内容を定め、その作業に従事する労働者の賃金を考慮するということでございますが、賃金を上昇させるためには、作業を苛酷にする以外にありません。そうなりますと、技能、体力の伴わない新就職者は、また失業者の群に転落をせざるを得ないのであります。
 さらに問題にすべきは、地方自治体の負担能力の問題であります。先ほど自治大臣は、産炭地の田川、大牟田等の失対費が国の交付金等で完全にまかないがついた、こう言われておりますが、私は、はなはだ無責任な答弁だと伺いました。現行法のワクの中では、失対事業に対し、市町村の要求するように特別交付税あるいは地方債がつくものではありません。大牟田、田川の両市にいたしましても、国の算定ではどうにもならないで、多額の地方持ち出し分を出しているのであります。具体的に申し上げます。大牟田の三十五年の失業登録者は五千五十五名、国庫負担の失業対策費は二億四百十八万五千円、一般財源の持ち出し分は一億八千四百十五万円、一般持ち出し分は実に予算の一〇%に近いのであります。田川におきましては、三十七年一月の支出計は三千四百六万円、このうち、生活保護費が千六百万円、職員の俸給が千四百万円、こういう状態の中で、社会事業を、あるいは失対の特別事業を進めようとしても、これはできる相談ではございません。また、これに対しまして、政府の先ほど述べたような対策が講じられておらないのでございます。地方交付税には、御存じのように、普通交付税の計算基礎があります。きまった単位費用を積み上げて総額を出すのでありますから、普通交付税の計算で不足をするからといって、直ちに地方団体に特別交付税が交付されるものではございません。この点は、同僚の阿具根議員が、第四十回国会の予算委員会でこの問題をついております。産炭地対策のときでさえ、大牟田の累年度赤字は、予算二十五億余に対して一億二千六百六十一万円、田川は一億の赤字を出している。市役所は紙くずまでも売って歳入の補てんをしている状況であるが、自治大臣はどうするのか、こういう質問に対しまして、特別交付税や起債でカバーしていきたいと答えております。しかし、その後、特別交付税や起債でカバーができておりません。本日も大臣は同様の答えをいたしておりますが、はなはだ私は無責任をとがめざるを得ないのであります。地方債に至りましては、産炭地または失対事業をはなはだしく必要とする市町村では、現在相当の地方債をかかえております。大蔵省は、今まで、このような地方団体に対しまして、償還率、すなわち、国庫への起債返還額の歳入に対する割合が一四%をこえる場合は、起債を押えているのであります。したがいまして、産炭地を初め、失対事業の必要経費をよけい要するような団体に対しましては、今もって相当の償還率を示しているわけでありますから、地方財政は、このままの対策では失業対策に事業費を盛ることは不可能でございます。たとえば最近の地方財政計画の傾向も、政府の失対対策にはブレーキをかけております。新産業都市の計画が新聞で伝えられております。広域行政のための地方連絡会議が、今、国会で議題となっております。産業都市計画ということになりますと、政府が大企業に対する擁護施策をやりきれないので、地方に押しかぶせる、負担をさせる以外の何ものでもございません。地方連絡会議に至りましては、一県では問題になりません。水や道路、交通という問題を、一つの紐帯を作って解決をしようとする、大資本援護の政策以外の何ものでもないのでございます。しかも、財政投資を見ましても、民間の設備投資を追っかけて、公共投資も一九%の多きを示しております。先進国の三、四倍であります。したがいまして、福祉行政に対する投資は、先進国の三分の一、四分の一に減っているのであります。こうなって参りますと、公共投資にかけるだけで地方財政は手一ぱいで、新しい福祉行政のための対策費というものを出すことは不可能でございます。したがいまして、この事業をこのまま進めて参りまするならば、現失対のワクを押えていくのか、あるいはまた、市町村の失業者、あるいは準失業者の競合によりまして、相互に自決の道を歩まざるを得ないという結果になります。非情な処置と言わざるを得ないのであります。
 第四に、本案の取り扱いであります。本案の取り扱いが、内容以上に、院の権威を失墜させている点であります。特に、このような中間報告の手続が、国会法五十六条の三の記載のとおり、委員会の「審査中の案件」であること、「審査中」とは、参議院規則三十九条の示すように、「委員会は、議案が付託されたときは、先ず議案の趣旨について説明を聴いた後、審査に入る。」という明文のとおり、質疑に入らなければ審査に入ったということにはならないのでございます。この国会法、参議院規則無視のもとに審議が進められますことは、立法府みずからが率先して違法行為を行なっていることであります。断じてわれわれは許すわけには参りません。反対の最大の理由も、ここにあります。
 以上、反対の意思を表示いたします。(拍手)
  ―――――――――――――
#40
○副議長(重政庸徳君) 鈴木一弘君。
  〔鈴木一弘君登壇、拍手〕
#41
○鈴木一弘君 私は、公明会を代表いたしまして、ただいま議題となっております職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。(拍手)
 現在行なわれております失業対策事業を中心とする失対制度は、昭和二十四年のドッジ・ラインの実施により、大量の失業者の発生を予想して、緊急失対として始まったものであります。しかるに、現在においては、先ほどの、公明会小平議員の質疑のうちにも申しましたように、改革すべき問題点のあることは重々感ぜられるのであります。しかしながら、現在においての失対事業の実情は、緊急失対より転じて、常用的事業と変化してきております。そうして社会保障的性格を持った雇用対策となってきております。その現われとして、現在は三十五万人の就労者がいて、家族を考え合わせますと百万人に及ぶ規模となってきているわけであります。失対事業へ吸収されているもののうちには、六年ないし十年の長期常用就労者が多数あり、その上、いわゆる高年令者、婦人労働者が多いという状況であります。したがって、この失対事業制度の改革は、あくまでも社会保障的性格を失わないようにするべきが当然であります。しかも、今述べましたような、生活に不安定な高年令者、婦人労働者をかかえているのであれば、なおのこと、かかる観点より考えねばならないはずであります。ゆえに、百万人の人々の生活を左右する失対法等の改正には、慎重な審議が十分なされなければならないはずであります。ところがどうかといえば、政府の改革案自体、失対打ち切りの不安を惹起している上に、衆議院の審議も強行採決となって、一向問題点の解明もなされず、本院においても、委員会審議も、提案理由の説明を聞いただけで、いきなり本会議の段階に持ち込まれたことは、当然ながら反対の第一の理由としてあげられるものであります。(拍手)
 二十八日の夜より続く混乱した本会議の状況は、良識の府としての参議院の姿いずこにありやと、憤りを禁じ得ないものであります。この良識の府を汚せしものは何か。国民の期待にそむく事態となったことは、会議員の責任なりといえども、その責任のほとんどは自社両党にありと言わざるを得ないのであります。(「おかしいぞ」「精神分裂症だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手、笑声)特に、委員会の審議も行なわれず、本会議においても危うく質疑打ち切りの暴挙にあって、公明会初め各会派の発言は封ぜられんとしたのであり、われわれの本意ではなかったが、議長に抗議を申し込み、幸い質疑打ち切り動議の撤回をみて、かく発言の機会を得たのであります。しかし、十分な審議は尽くされないと思わざるを得ないのであります。これが反対の第一の理由となっております。
 反対の第二は、政府は労働行政に万全を期せず、親身になっていないにひとしいという点からであります。失業対策制度も政府の労働行政の一環であります。そこで一番大事なことは、政府の労働行政に対する政策であり、姿勢であります。現在ILO八十七号条約について、ILOより十四回という未曾有の批准促進の勧告を受けております。政府は絶えず批准促進と言っているが、実際に条約発効にこぎつける熱意があるのかということになると、はなはだ疑問であります。労働組合の近代化、労使関係の近代化をはかるには、この条約が最低の基準となり得るものであるが、現状では批准承認は困難な様相であります。また、現在の中小企業労働者を初めとして、その給与は低く、生活を脅かしているものが多い実情である。政府は、失対法等の改革を考えるならば、当然のことであるが、生活保障給である最低賃金を、現行の業者間協定のごときものでなく、法律で最低賃金を定めるよう改定することが伴わねばならないはずであります。そうでなければ安心して働けるという状況にならないからであるが、との点は、はなはだ不満足というよりほかにないのである。政府の労働行政の方向は、労使関係の近代化、大衆福祉の向上、賃金の安定に向かっていないと言わざるを得ません。このような政府の労働政策に対する姿勢のもとの失対制度の改革案であるというのであるから、根底において反対せざるを得ないのであります。われわれの主張するところは、職場も安全に確保され、生活の安定の得られる、安心して働けるというりっぱな改革であることを願うのであります。
 次に、具体的な法案の内容から見れば、政府は、失対打ち切りでないと言うが、現在の失対従事者をそのままにして、就職促進措置の制度の創設により、新規に失対へ入るのを職業訓練等でストップするということになると、事実上は年ごとに老齢その他で減少して、最後には失対打ち切りとなるのではないか。また、高齢失業者等の就労事業を分離するのは、賃金の低下を招くものになるおそれがあるのではないか。特に民間請負事業が新しく設けられることになるので、地方団体の責任で行なうべき事業の民間移管が必要以上に便乗して行なわれ、労働条件の低下、賃金の低下などの事態を発生するなどのおそれがあります。不安を国民に与える労働行政は避けるべきが当然で、この点、はなはだ不満を禁じ得ません。
 次に、新規に失対事業に就労しようというときに、職業訓練などのコースを義務として行なわねばならなくなるが、自分に不適な、希望をしない職業への配属や訓練を受けることになれば、これは憲法第二十二条にいう職業選択の自由の条項に抵触してくるのではないかという疑点があるので、原案を改めて、自由な道を選べるようにしておかなければ、かえって円滑な労働対策とはならないのであります。
 そのほかに、身分保障の問題、先ほど申し述べたように、地方公共団体が責任をもって失対の事業主体として貫き通すかどうかの問題等、はなはだ不安、不満足な点がたくさんあります。
 以上のように見て参りますと、今回の政府改正案は、相変わらず身分が不安定であったり、賃金の保障もないし、職業選択の自由が阻害されるおそれが十分ある。これでは現在の三十五万人の失対就労者を根本的に救済できないといえます。これが反対の第三の理由であります。
 最低賃金制の確立、完全雇用、社会保障の充実、二重構造のない高度経済成長によってのみ解決ができるわけであります。政府は、失対の事実上の打ち切りであるという点と、安心した完全雇用対策、賃金対策のない政策的改革では、とうてい安心して楽しく労働できる労働情勢は作り得ないと知って、労働問題にもっと前向きの楽しい状態を作れるよう努めることを最後に要望いたしまして、反対の討論を終わります。(拍手)
#42
○副議長(重政庸徳君) 高山恒雄君。
  〔高山恒雄君登壇、拍手〕
#43
○高山恒雄君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案に対し、反対の趣旨を明らかにしたいと思います。(拍手)
 われわれが本案に反対する第一の理由は、この法案の上程の経緯が、あまりにも国会の正常な審議を行なわず、特に社労においては四日間にわたる空白をあえて作り、民主政治の破壊とも行うべき自民党の横暴ぶりに対し、われわれは、委員会で法律審議が全く無視され、ここに中間報告という形で本法案の議決が強行されることは、国政審議上の重要な手続を軽視するもはなはだしい暴挙だと言わざるを得ません。この悪例に服することは、断じて私たちはできないのであります。もちろん、中間報告は、国会法上認められた一手続であり、これ自体を否定する考えは毛頭ありません。しかし、審議が全く行なわれてない議題について、中間報告によってその議決を強行するがごときは、中間報告の乱用もはなはだしきものと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 特に、与党たる自民党は、先般、衆議院内閣委員会の五法案の強行採決に対して衆議院議長がとった、国民の祝日法案等三法案の審議の差し戻しの裁定を、一体何と心得ているのでありましょうか。あの議長の裁定は、委員会審議を無視した議決が不当なものであることをはっきり指摘したものであると思います。衆議院議長は、あの裁定を通じて、衆議院自民党の無謀な措置をたしなめたのであります。それからまだ数日を経ない今日において、良識の府といわれます参議院において再び同種の暴挙が繰り返されることは、無反省この上もない態度だと思うのであります。われわれは断じて容認せざるところであります。
  〔副議長退席、議長着席〕
 私は、自民党が全くこの党利党略の立場から、このような議会政治そのものをゆがめる挙に出ていることに対しては、重大な反省を求める一人であります。これが反対の第一の理由であります。
 その第二の理由は、この改正案そのものに多くの欠陥があることです。われわれは、現在の失対法に多くの矛盾があり、これを早急に改正すべき必要性を率直に認めるものであります。しかし、政府が提出した改正案を慎重に吟味すると、この際、基本的に解決さるべき問題が何ら是正されていないことを、はなはだしく遺憾に思うものであります。たとえば、失対法上の最も基本的な問題であります失対労働者の最終雇用の責任について、一体だれがこの責任を持つかといった点について、改正案が何ら回答も与えてないのであります。そのほか、改正案が、失対事業として新たに高齢失業者等就労事業の新設を提唱しながら、肝心の、そこに吸収されるものの基準がどんなものなのか、全く明らかにされてないのであります。さらにまた、失対労働者に直接重大なる関係を持つ管理運営等々の規定にあたっては、当事者である労働者の意向をこれに反映させる措置すら全く講じていないのであります。その欠陥を拾い上ぐれば、全く枚挙にいとまがないところであります。これらの諸点は、いずれも当該関係労働者がひとしく不安を感じている点であります。その是正を強く熱望しているところであります。
 われわれは、その意味から、衆議院段階でこれらの欠陥を是正するための修正案を六項目にわたって具体的に要求したのでありますが、自民党は、これに全く耳を傾けることなく、そればかりでなく、委員会におけるわれわれの修正案提出の機会すらも封鎖して、原案を一方的に押し切ろうとする暴挙をあえてしたのであります。わが党は、少なくとも本院においてこれらをただし、修正すべきであると考えていたが、参議院段階において、委員会審議をさらに無謀に省略し、われわれの修正案提出はおろか、法案の審議すらも行なわせず、本日、多数を背景に、その採決を強行するがごときは、多数横暴でなくて一体何でありましょうか。われわれは、失対労働者の立場を真剣に考えるとき、このような多くの欠陥を持つ政府の失業対策法改正案を、そのままの形で認めることは、何としてもできないのであります。また、一部の失対労働者のまじめな人々は、その改正を熱望しつつも、政府の改正案では、自分たちの生活が正しく保障されないことを真剣に訴えるとともに、これの是正を強く求めております。われわれが要求した修正六項目は、まさにこれらの人々の最低の要求にほかならないのであります。これすらも無視しようとする政府また自民党の態度は、失対労働者の立場を真剣に考えていない、改悪であると断ぜざるを得ないのであります。われわれは、失対法改正という重要な問題が、関係労働者の意思に反し、かつ、かくも軽々しく議決されんとしていることに対して、強い憤りを感ぜざるを得ないのであります。
 私はこの際、自民党が真に失対労働者の立場を考えようとするならば、かかる無謀な議決の強行はいさぎよく撤回し、その内容について再検討をする寛容性を示すべきだと思うのであります。同時に、本院議長においても、衆議院議長がとった態度を範とされまして、かかる不当なる採決の強行に対して、独自の公正的な機能を発揮すべきであると思うのであります。
 私はそのことを特に要望して、本件に対する私の反対討論にかえる次第であります。(拍手)
  ―――――――――――――
#44
○議長(重宗雄三君) 岩間正男君。
  〔岩間正男君登壇、拍手〕
#45
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案に反対するものであります。今日、池田内閣がアメリカ帝国主義者に屈伏し、悪逆無道の内閣であることは、日一日と明らかになりつつありますが、その中でも失対打ち切り法案ほど悪質なものはありません。この法案は、今日の失対労働者、ことに中高年齢の失対労働者の生活を破壊し、死に追いやるものであります。この失対打ち切り法案が計画されてから今日まで、すでに前途に希望を失って自殺した人が九名も出ております。昨日は、さらに東京王子で投身自殺した労働者が出ました。この人は、この参議院本会議の傍聴席から政府・自民党の悪らつな暴挙を自分の目で見、独占資本の走狗・池田内閣と自民党の横暴の前に、万感の恨みをこめて死んでいったに相違ないのであります。私は、人間の生命を脅かす死の法案、この失対打ち切り法案に対し、今この瞬間でも、池田総理、自民党の諸君が、少しでも人間としての良心を持っているならば、それを呼びさまし、この法案を廃案にする決意をされることを、まず要求するものであります。
 政府・自民党は、今日の失業者、半失業者の生活の実態を直視しようとはせず、失対労働者の実情を無視し、全国二十二万の全日自労の労働者諸君の心の底からの要求を聞こうともせず、その上、あつかましくも、この法案は失対打ち切りを考えていないなどと、うそぶいているのでありますが、これは全くのごまかしであります。
 政府・自民党は、昨年五月十八日、福永構想という形で初めて失対打ち切り計画を発表しました。それは三十五万人の失対適格者を、若壮年層と老婦人層に分類し、若壮年層は政府命令による強制就労に追いやり、老婦へ層は生活保護へ回すという、文字どおり首のない失業者を再び首切る残酷むざんなものであります。だからこそ、この発表に激怒した組織労働者と、一千万人をこす失業者、半失業者は、全国各地で失対打ち切り反対の共同闘争を組んだのであります。この闘いの広がりをおそれ、政府は、表面では打ち切りにあらずと言いながら、政府の御用機関である失対問題調査研究会の報告や雇用審議会の答申を口実にして、着々と打ち切りの既成事実を作ってきたのであります。本年一月には労働省通達で、まだ法案も予算も通過しないうちから、行政措置で本年度の事業策定計画を指示し、特殊作業と軽作業、一般作業に三分割しようとしました。これは明らかに違法行為であります。それは全日自労の抗議で一応撤回しましたが、明らかに本法案に引き継がれているのであります。
 本法案は、新規就労者はすべて職業訓練を形式的に行なって、民間の社外工や臨時工に突き落とし、目くされ金の雇用促進手当や訓練手当と引きかえに、独占資本の低賃金労働力を確保し、広域職業紹介、労働力の流動化政策の名のもとに、県外に流浪させようとしております。さらに二分割される失業者就労事業は、通常雇用に近づけるという名目で、タコ部屋的な重労働を押しつけようとするものであります。高齢者就労事業は明らかにうば捨て山をねらったものであります。これが失対の打ち切りであることは、全く明らかな事実であります。政府がもし真に失業対策の抜本的改善を願うのであれば、少なくとも次の条件を満たさねばなりません。
 それは、まず第一に、現行失対事業の適格基準や予算のワクをはずし、自衛隊や警察予算等を大幅に削減して、失対予算をふやし、国庫負担分を増額して、地方自治体へのしわ寄せを軽減すべきである。
 第二に、失対賃金を最低一万五千円、一日六百円に引き上げ、就労日数を月二十五日間保障し、社会保障制度の拡充とあわせて、希望するすべての失業者は無条件に即時就労せしむることが必要であります。
 第三に、雇用促進については、安定した民間企業の本工や公務員や公共企業体労働者など、国営施設企業に吸収し、全国一律最低賃金制度の確立とあわせて、その身分と生活を保障すべきであります。
 第四に、失業者を産業別に分断して差別する現行の失業対策を改め、すべての失業者に生活と職を保障すること、失業全期間中に、生活保障のため、失業手当法、家族手当法を制定すること、これこそが必要なことであります。ところが、これらの条件は何ら満たされないどころか、政府は、ますますそれを劣悪にし、口先だけのごまかしに終始しているのであります。本法案は、池田内閣のいわゆる高度成長政策に基づく合理化政策の重要な一環であります。今日、世界資本主義経済のブロック化が進み、わが国に対するアメリカの自由化要求が急テンポに、また一そう苛酷になっている状態の中で、政府は、独占資本に膨大な利潤を保障するため、すべての犠牲を労働者に転嫁しようとしております。合理化、近代化の名のもとに、大量の労働者が首切られ、多くの失業者が新たに生み出されております。それは、ひとり炭鉱、金属鉱山等、いわゆる斜陽産業にとどまりません。自動車、石油化学、重電機、その他いわゆる日の当たる産業、戦略産業にまで及ぼうとしているのであります。今国会に上程されている特定産業振興臨時措置法案は、国家権力が直接それに介入する道を切り開くものであります。また、今国会で審議されている法案によって、教員や電話交換手数万人の大量首切りが行なわれようとしており、来年度には、臨時行政制度調査会の答申に基づく官公庁の行政整理、つまり大規模の公務員
 の首切りが行なわれることは必至でありましょう。また、政府のいわゆる農業構造改善事業によって農村から締め出された農民が、すでに続々として失業者の群に加わってきているのであります。現在、一千万人に及ぶ失業者、半失業者がちまたに溢れ、今後合理化が進むにつれて、ますますそれが増大することは明らかであります。この失業者の大群を再編成し、一そう低賃金で押えて、独占資本の利益のために、思いのままに運用しようというのが、本法案のねらいの一つであることは、まぎれもない事実であります。
 しかし、それだけではありません。本法案の最大のねらいは、全国の失業者、半失業者の生活と権利を守る闘いの中核となって、過去十三年間闘い続け、一歩々々この権利を獲得してきた全日本自由労働組合員二十二万を分断し、組合を破壊することであります。全失業者の大きな結集をおそれ、その中核を破壊しようとするいわゆる治安対策であります。これは、政府、自民党が今国会でILO八十七号条約批准に便乗して、国会法、公労法、その他の国内法を改悪しようとしていることと全く軌を一にするものであります。
 そもそも、わが国の失対事業は、大正十四年、大量失業が発生した際に、治安維持法と同時に作られたものであります。失業反対闘争の激化を防ぐ治安対策として実施されたものであります。また戦後は、アメリカ占領軍の指令に基づく経済九原則、ドッジ・プランを強行し、徹底的な合理化によって百万をこえる首切りを断行するために、その貯水池として緊急失業対策法が制定された。それは、まさに朝鮮戦争の前の年のことであったのであります。これは歴史的な事実であります。今日、再び失対事業が再編成されようとしている。これこそは、まさにわが国の軍国主義の復活強化を目ざす池田内閣、自民党の陰険なたくらみにほかならないのであります。それゆえにこそ、六月十八日の衆議院社労委員会における、あの暴力的強行採決以来、政府、与党は民主主義の一かけらもない、暴挙に次ぐ暴挙の連続をあえて行なってきたのであります。本院における議長職権による本会議の開会、ただの一度も委員会審議がなかった本法案の中間報告など、四日三晩にわたる政府、与党の数々の専断は、天人ともに許さざるところであります。(発言する者多し)うるさい。議長、注意して下さい。
 本院の先例の示すところ、この議長職権、中間報告という暴挙は、昭和二十八年、第十六国会の電気、石炭事業の争議行為禁止法以来、二十九年の警察法、三十一年教育二法、三十三年最賃法、三十四年防衛二法など、過去八回ことごとく、憲法に保障された人民の生活と権利を奪い抑圧する法案の国会通過のために使用されたものであり、今日もまた、このファッショ的な手段がさらに輪をかけて使われようとしているのであります。だからこそ、自民党を除く全野党が一致して反対しているのであります。連日連夜、国会に、私たちに死ねと言うのかと、血の出るような訴え、叫びを続けています。あの傍聴席から、この本会議の一部始終を見守っている失対労働者の諸君は、何が真実であり、だれが民主主義を守り、だれが人民の生活と権利を守るものであるかということを、事実をもって判断するでありましょう。さらに福岡県、京都府はもちろんのこと、大分、高知、岡山、秋田、釜石、夕張など、数限りない地方自治体が、政府案に反対する決議、あるいは慎重審議の特別決議を行なっているのであります。ちょうど自民党の諸君が中間報告強行をきめた、まさにそのとき開かれていた全国市長会でも、自民党の市長も含めて、慎重審議の意見が高まってきたのであります。政府案審議促進決議なるものが、いかにでたらめきわまるものであるか、事実の上で明らかになったのであります。
 政府がこの法案の唯一のよりどころにした世論の支持は、明らかに作り上げられた砂上の楼閣であります。世論の支持は、失対労働者の叫びをこそ支持しているのであります。つまり本法案は、池田内閣の反動的かつ残酷な反人民的性格を現わしたものであり、その国会審議は、いかなる意味でも正常とは言えないものであります。したがって、この法案は、たとえ自民党の多数の横暴によって強行採決されたとしても、人民にとっては、政治的にも、社会的にも、さらに道義的にも、一かけらの効力も持つことはできません。逆に失対労働者にとっては、この法案の政府による実施を許さない十分なる権利を持っているということができます。政府、自民党が、この法律によって、三十五万失対労働者、二十二万全日本自由労働組合を抑圧できることと考えるならば、それは事実によって否定されるでありましょう。今日、闘う労働組合に組織されている……。
#46
○議長(重宗雄三君) 岩間君、簡単に願います。
#47
○岩間正男君(続) 失対労働者は、もはや奴隷状態に甘んじていることはありません。もし政府が、これを強行しようとするならば、失対をやめないで池田内閣をやめさせろという行動が発展するでありましょう。労働者と全人民はますますこれを支持し、池田内閣の打倒に向かってこの闘いを発展させるでありましょう。このことを結びの言葉として、私は、本法案に絶対反対を表明し、討論を終わるものであります。(拍手)
#48
○議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終回したものと認めます。
 これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。
 表決は記名投票をもって行ないます。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
  〔議場閉鎖〕
  〔参事氏名を点呼〕
  〔投票執行〕
#49
○議長(重宗雄三君) すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。まだ投票なさらない諸君は、すみやかに御投票下さい。――すみやかに御投票願います。(発言する者多し)――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。
 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
  〔投票箱閉鎖〕
#50
○議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
  〔議場開鎖〕
  〔参事投票を計算〕
#51
○議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数 二百二十五票
 白色票 百三十五票
 青色票 九十票
 よって、職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案は可決せられました。
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名      百三十五名
      森 八三一君    坪山 徳弥君
      沢田 一精君    林   塩君
      野知 浩之君    二木 謙吾君
      鳥畠徳次郎君    赤間 文三君
      加賀山之雄君    増原 恵吉君
      鈴木 恭一君    森部 隆輔君
      堀本 宜実君    高瀬荘太郎君
      上原 正吉君    古池 信三君
      松平 勇雄君    最上 英子君
      小林 篤一君    岩沢 忠恭君
      岡崎 真一君    河野 謙三君
      三木與吉郎君    村上 義一君
      佐藤 尚武君    野田 俊作君
      太田 正孝君    笹森 順造君
      中上川アキ君    北口 龍徳君
      山崎  斉君    丸茂 重貞君
      源田  実君    栗原 祐幸君
      熊谷太三郎君    久保 勘一君
      川野 三暁君    亀井  光君
      天埜 良吉君    石谷 憲男君
      植垣弥一郎君    徳永 正利君
      井川 伊平君    鹿島 俊雄君
      仲原 善一君    中野 文門君
      豊田 雅孝君    天坊 裕彦君
      竹中 恒夫君    鈴木 万平君
      西田 信一君    村上 春藏君
      山下 春江君    山本 利壽君
      館  哲二君    佐藤 芳男君
      青柳 秀夫君    平島 敏夫君
      鍋島 直紹君    堀  末治君
      藤野 繁雄君    新谷寅三郎君
      西郷吉之助君    紅露 みつ君
      木内 四郎君    杉原 荒太君
      田中 茂穂君    小林 英三君
      大野木秀次郎君    寺尾  豊君
      植竹 春彦君    平井 太郎君
      黒川 武雄君    西川甚五郎君
      井野 碩哉君    重政 庸徳君
      日高 広為君    小西 英雄君
      上林 忠次君    田中 啓一君
      野上  進君    温水 三郎君
      木島 義夫君    岸田 幸雄君
      山本  杉君    川上 為治君
      米田 正文君    谷口 慶吉君
      北畠 教真君    金丸 冨夫君
      櫻井 志郎君    松野 孝一君
      柴田  栄君    大谷藤之助君
      江藤  智君    稲浦 鹿藏君
      石井  桂君    吉江 勝保君
      塩見 俊二君    井上 清一君
      岡村文四郎君    加藤 武徳君
      剱木 亨弘君    梶原 茂嘉君
      小林 武治君    高野 一夫君
      吉武 恵市君    高橋  衛君
      草葉 隆圓君    石原幹市郎君
      小柳 牧衞君    中山 福藏君
      杉浦 武雄君    小山邦太郎君
      林屋亀次郎君    郡  祐一君
      安井  謙君    高橋進太郎君
      青木 一男君    木村篤太郎君
      津島 壽一君    迫水 久常君
      斎藤  昇君    野本 品吉君
      長谷川 仁君    村山 道雄君
      佐野  廣君    後藤 義隆君
      林田 正治君    横山 フク君
      前田 久吉君    白井  勇君
      村松 久義君    宮澤 喜一君
      下村  定君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      九十名
      渋谷 邦彦君    牛田  寛君
      鬼木 勝利君    石田 次男君
      鈴木 一弘君    中尾 辰義君
      浅井  亨君    北條 雋八君
      和泉  覚君    市川 房枝君
      二宮 文造君    小平 芳平君
      白木義一郎君    辻  武寿君
      原島 宏治君    小宮市太郎君
      矢山 有作君    野々山一三君
      柳岡 秋夫君    瀬谷 英行君
      稲葉 誠一君    吉田忠三郎君
      渡辺 勘吉君    林  虎雄君
      大森 創造君    豊瀬 禎一君
      鶴園 哲夫君    武内 五郎君
      柴谷  要君    小柳  勇君
      大矢  正君    北村  暢君
      伊藤 顕道君    光村 甚助君
      大河原一次君    岡  三郎君
      大倉 精一君    松澤 兼人君
      藤田藤太郎君    中村 順造君
      加藤シヅエ君    木村禧八郎君
      阿部 竹松君    戸叶  武君
      久保  等君    岩間 正男君
      須藤 五郎君    野坂 參三君
      鈴木 市藏君    小林  武君
      松本 賢一君    佐野 芳雄君
      杉山善太郎君    高山 恒雄君
      野上  元君    安田 敏雄君
      千葉千代世君    山本伊三郎君
      基  政七君    横川 正市君
      鈴木  強君    相澤 重明君
      鈴木  壽君    森 元治郎君
      田上 松衞君    向井 長年君
      永岡 光治君    藤田  進君
      亀田 得治君    加瀬  完君
      阿具根 登君    近藤 信一君
      田畑 金光君    天田 勝正君
      米田  勲君    成瀬 幡治君
      中田 吉雄君    小酒井義男君
      佐多 忠隆君    藤原 道子君
      中村 正雄君    村尾 重雄君
      椿  繁夫君    大和 与一君
      岡田 宗司君    松本治一郎君
      千葉  信君    羽生 三七君
      赤松 常子君    曾禰  益君
   ─────・─────
#52
○議長(重宗雄三君) 本日はこれにて延会いたします。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十三分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト