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1962/06/27 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第23号
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1962/06/27 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第23号

#1
第043回国会 法務委員会 第23号
昭和三十八年六月二十七日(木曜日)
   午後零時六分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
 六月二十六日
  辞任      補欠選任
   大和 与一君  加藤シヅエ君
   山口 重彦君  亀田 得治君
 六月二十七日
  辞任      補欠選任
   近藤 鶴代君  温水 三郎君
   加藤シヅエ君  大和 与一君
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     鳥畠徳次郎君
   理事
           後藤 義隆君
           松野 孝一君
           稲葉 誠一君
           和泉  覚君
   委員
           大谷 贇雄君
           杉浦 武雄君
           鈴木 万平君
           田中 啓一君
           坪山 徳弥君
           温水 三郎君
           加瀬  完君
           亀田 得治君
           岩間 正男君
  国務大臣
   法 務 大 臣 中垣 國男君
  政府委員
   警察庁刑事局長 宮地 直邦君
   法務政務次官  野本 品吉君
   法務省刑事局長 竹内 壽平君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   法務省刑事局参
   事官      臼井 滋夫君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○刑事事件における第三者所有物の没
 収手続に関する応急措置法案(内閣
 提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (吹田事件に関する件)
 (地方選挙違反事件に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(鳥畠徳次郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を議題といたします。
 質疑を行ないます。
#3
○稲葉誠一君 この前三回ほど聞いていますから、残ったところだけお聞きをいたしますが、無差別没収という概念ですね、ちょっともう少し正確に言っていただきたいと思うんです。これは善意、悪意の問題とは私は別個の概念だと思うんですが、何かそれがこんがらがっちゃっているような印象を受けるものですから……。
#4
○政府委員(竹内壽平君) 善意、悪意の問題とは私ども別個に理解しております。無差別没収という用語は、学説などにもありますが、判例にもそういう用語を使っておりますけれども、その意味するものは、いわゆる第三者没収のことでございまして、別の言葉で申しますと、対象となります物の所有者いかんにかかわらず没収する、これを無差別没収という角度からとらえて無差別という言葉を使っているように思うわけでございます。
#5
○稲葉誠一君 そうすると、無差別没収の中で第三者が悪意の場合だけが第三者没収として許されるということになるわけですか、あるいは、無差別没収というのは、必要的没収だけに限定して言うわけですか、そこはどうなんですか。
#6
○政府委員(竹内壽平君) 必要没収に限りませんで、物の所有者がだれであってもという言い方で考えた場合に無差別という言葉を使っておるようでございます。したがいまして、その中で許される無差別没収は何かということになりますと、実体は第三者の没収でございますから、その中で悪意の第三者の所有物が没収することが可能であるという意味でございます。
#7
○稲葉誠一君 だんだん整理されてきたわけですが、そうすると、悪意の条件といいますか、どういう場合の悪意の場合に第三者没収が許されるというのか。これは最高裁の判例をそのまま受け継いで立法しているわけですか。
#8
○政府委員(竹内壽平君) これは将来ははっきり体系的にしなければならぬ問題点でございますが、現行の実体法を見ますると、善意、悪意を問わないとも読めるような法文形式の実体規定もございますけれども、最高裁判所は、関税法の違反に関連しまして、それはあらかじめ悪意であったというそういう第三者の物を没収するという場合には憲法二十九条に違背するものでないという趣旨を明らかにいたしておりますので、その判例が改められません限りは、その限度で現行法を理解していくということにするのが運用上正当であろうと思います。しかし、立法論としましては、先般来申し上げておりますように、ややその解釈は狭きに失するのではないかという考え方もございますので、検討します際にはさらにその点を詰めて参りたいというふうに考えておるわけでございます。
#9
○稲葉誠一君 それは関税法の場合に限定をするのであって、ほかの特別法のことを最高裁の判決は言っているわけでないのですから、それが直ちにほかの特別法なりあるいは刑法総則の十九条の問題もそういうふうな解釈であらなければならないという原則というか、拘束力というか、それはどこに出てくるのでしょうか。
#10
○政府委員(竹内壽平君) それは、仰せのとおり、最高裁の判例は当該事件について効力を持つという個別的な効力と見る考え方と、最高裁の判決でございますので、下級審を拘束するという意味において、それは単にその当該事件だけではなくて、その趣旨というものは法解釈の中心になっていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、その趣旨としますところをよくみますると、憲法二十九条に違背しないためにはと、こういう趣旨になっておるわけであります。そこで、今のような解釈は、その他の第三者没収の場合にも、その第三者没収の要件としまして善意、悪意を問わぬ、善意の第三者の物をも没収するというような、かりにそういう趣旨にも読める特別法がございますが、それをそのとおりにもしかりに起訴してやったならば、それが最高裁まで違憲であるという趣旨で上告されていった場合に、最高裁がそれに対してどういう態度をとるかということを考えてみますと、おそらくは前の判例をひるがえさない限りは、それは違憲だという判決をするであろうと思うのであります。そういう意味での覊束力を私どもは考えていかなければならぬ。こういう意味において、運用面では、その判決以後、その限度で運用するというふうに運用を改めておる次第でございます。
#11
○稲葉誠一君 そうすると、法務省としては、違憲判決の効力を考える場合に、個別的効力説ではなくて、一般的効力説をとるのが建前だ、こういうことになるわけですか。それとも、いわゆる学者が言っている一般的効力説というものと個別的効力説というものの理解の仕方はどういうふうにやるのでしょうか。
#12
○説明員(臼井滋夫君) お答え申し上げます。
 違憲判決の効果につきましては、仰せのとおり、一般的効力説と個別的効力説の争いがございまして、一般的効力説は、一定の処分あるいは法令というものを違憲と判断いたしました場合に、当該処分あるいは当該法令一般について違憲であると宣言されたと、したがって、同種の事件について異なった判断はなし得ない、また、無効と宣言された法令は適用できないという考え方になるわけでございます。もっとも一般的効力説につきましても、それがさかのぼって効力を有するか、当該最高裁判所の判決があってのちに将来に向かってのみ効力を有するかという点については、また学説が分かれるところでございますが、これに対しまして、個別的効力説は、ただいま刑事局長から申し上げましたとおり、申すまでもなく、当該事案についてのみの判断であって、同種の事件についても何ら効力を持たない、さかのぼって効力を持たないことは、将来に向かっても効力を持たない、こういう考え方でございまして、この点についてまだ判例として確立された判例は何らないわけでございまして、また、学説も相半ばしている状態でございます。もっとも、学説といたしましては、違憲審査権の性格からいって、個別的効力説のほうがいいんではないかという説がやや優勢という程度でございます。しかし、それも通説とはなっておりません。
 そういう状態でございますが、ただいま刑事局長から申し上げました点を若干補足して申し上げますと、一般的効力説の立場をとるために、他の法令の解釈についても、第三者没収につきまして関税法違反について最高裁判例の趣旨が及ぼされるだろう、こういう意味で申し上げたわけではございませんで、個別的効力説をとりましても、下級審の裁判といたしましては、個別的効力説の立場をとりますれば、最高裁判決に何ら覊束されないわけでございますから、理論的にこれと異なった判断をなし得るわけでございます。しかしながら、これが控訴、上告されまして最高裁まで参りました場合には、結局、最高裁大法廷が見解を改めません限りは、下級審の判例というものが終局的に最高裁によって破棄されるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、個別的効力説の考え方をとりましても、下級審といたしましては、最高裁の判例を尊重いたしまして、その趣旨にのっとって裁判をする。そういう意味で、裁判実務の運用としては、下級審――地方裁判所なり高等裁判所の裁判例というものは、ごく例外的な場合を除いては、一般的に最高裁判例を尊重してその趣旨にのっとって運用されている、こういう実情でございますし、この問題についてもさような運用がなされるであろう、こういう趣旨でございます。
#13
○稲葉誠一君 学説的に言った場合には、それに対する学者の理解の仕方によっていろいろあると思いますが、法務省としての統一見解はできていないと承っていいわけですか。
#14
○政府委員(竹内壽平君) 私どもの統一見解というものはまだ持っておりません。それからまた、持たないほうが弾力のある運用をしていきます上においてはいいんじゃないかという考え方もありまして、また、出せないような面もありまして、現実には持っておりません。
#15
○稲葉誠一君 それから、今の悪意の問題で、あらかじめ悪意が存在すればいいということのようですが、その悪意は、こうずっと継続していることが要件になるわけなんですか、あるいは、あらかじめというのは、いつのことを、どういう状態のことを言っているのか、ちょっとはっきりしないんですが、悪意の存在はどの程度あればいいことになるんでしょうか。
#16
○説明員(臼井滋夫君) お答えいたします。
 昭和三十二年十一月二十七日の最高裁大法廷において、旧関税法第八十三条について、仰せのような趣旨の判断をした裁判例でございますが、この判決の趣旨は、「所有者たる第三者が貨物について同条所定の犯罪行為が行われることまたは船舶が同条所定の犯罪行為の用に供せられることをあらかじめ知っており、その犯罪が行われた時から引きつづき右貨物または船舶を所有していた場合にその貨物または船舶を没収できる趣旨に解すべきであって憲法第二十九条に違反しない。」、こういうふうに判断をしておりますところから見まして、その所有関係が犯行時から裁判時まで引き続いておると同時に、悪意の点も犯行時から裁判時まで続いているということが必要とされているように読まれるのでございます。
#17
○稲葉誠一君 あとのほうは所有権の関係を言っているので、それが引き続いて裁判のときまで同一人の所有権でなければいけないのだということを言っているようにとれて、悪意の関係までそういうふうに引き続いてずっとなければいけないということを最高裁の判例は言っており、そういう立場に立ってこの法案は立法されているのですか。そういうふうなことを書いてありますか、そこに最高裁の判例で。おかしいな。
#18
○説明員(臼井滋夫君) お答え申し上げます。
 この判決の趣旨は、仰せのとおり、「引きつづき」という点は、所有関係の点を言っておると解せられまするけれども、犯行時事前に悪意でございますれば、通常の場合は、記憶の喪失とかそういうような特殊な事情がない限りは、悪意であったものが善意に変わるということは考えられないわけでございますので、そういう意味合いにおいて、引き続いて裁判時までの悪意が予定されていると、かように理解したわけでございます。
#19
○稲葉誠一君 じゃ、その悪意というのは、その裁判のときまで通常の状態では継続していると認められるというだけの話であって、悪意があらかじめあったものが、裁判のときまでずっと継続していなければならないという理論的な根拠というか、そういうことでこの法案が立案されたのとは違うのじゃないですか。現実にはそういうふうな場合が多いだろうということは言えますけれども、そこはやはり分けないといけないのじゃないですか。
#20
○政府委員(竹内壽平君) この法案は、その点には触れないで、二十九条違反かどうかということは昨年の十一月の判決は触れてないという考え方に立って、実体法のほうは合憲であるという建前に立って、手続がないから違憲だということでありますので、手続の補正をするということに限定してこの法案はできておるわけでございます。したがいまして、二十九条との関係で悪意、善意の問題を解決することは、根本的には解決をしていかなければならぬ問題点でございます。しかし、当面は、今の三十二年の判決の趣旨にのっとって運用するということを前提としながら、手続の欠缺しておる部分を補正することによって昨年十一月の違憲判決の指摘しております点を直していこう、こういう趣旨でございまして、この法案それ自体は、実体法の問題には一応関係なく、切り離して考えておるわけでございます。
#21
○稲葉誠一君 現実の問題として、悪意の立証というのは、検察官としてどこまでやればいいということになるのですか。あらかじめ悪意があったということだけ立証すればいいわけでしょう。その後の状態というものは、一般的に継続したと考えられるのですから、特に反証がない限りは、悪意が継続したと認められる、こう考えれば、あらかじめあったということだけ立証すればいいということになるのですか。
#22
○政府委員(竹内壽平君) 私どもはさように考えております。
#23
○稲葉誠一君 そこで、きのうの最高裁で、何か奈良県の、内容はよくわかりませんが、条例できめたものが、憲法二十九条との関係で、法律でなくてもいい、条例でもいい、それから補償は払わなくてもいいというような判例が出たようですが、これは内容をよく検討しないと、ただそれだけのことで云々することはできないわけですが、この第三者没収をきめておるので条例できめておる場合もありますかo
#24
○説明員(臼井滋夫君) お答え申し上げます。
 第三者没収規定は、通常の場合は、法律で明確に規定をしておりますけれども、法律が政令あるいは省令あるいは条例に没収規定を設けることができるという趣旨の委任規定を設けております場合には、条例におきましても没収規定を設けることができるわけでございます。ただ、その委任は、白紙委任的な委任では罪刑法定主義の要請を満たさないわけでございますから、その委任できる範囲を明確にいたしました上で条例に委任する、こういう形になっておりまして、具体的な例といたしましては、漁業法の六十五条におきまして、漁業関係の細則的な取締規定につきましては、農林省令あるいは政令、さらには都道府県の規則にゆだねることができるように委任規定がございますが、これもしかし、その要件につきましては六十五条四項に明確に要件を限定してございますので、この委任の範囲をこえて省令や規則におきまして没収規定を設ければ、この委任の範囲をこえた部分は当然無効、こういう筋合いになるわけでございます。
#25
○稲葉誠一君 政令できめる場合もあるのですか。
#26
○説明員(臼井滋夫君) 理論的には政令に委任することも可能でございますけれども、調査いたしました限りでは、法律が没収規定を委任しておりますのは、ただいま申し上げました漁業法関係だけでございますので、これには政令が含まれておりません。したがって、省令または規則のみということになるわけでございます。
#27
○稲葉誠一君 出入国管理令は、どういうことになるのですか。
#28
○説明員(臼井滋夫君) ただいま申し上げましたのは、法律が政令または省令に委任する場合を申し上げたのでございますが、出入国管理令は、政令自体で規定されておるわけでございます。
#29
○稲葉誠一君 政令自体で規定していても、憲法二十九条との関係で憲法違反の問題は起きないのですか。
#30
○政府委員(竹内壽平君) それは起きないと思います。問題は、その中身でございまして、中身いかんによっては憲法違反の問題も起こり得ると思いますが、政令で定めることそれ自体が憲法違反だということはないと思います。やはり罰則を定め得る政令、条例等につきましては、それに必要なる限度においての没収規定を設けることは、主刑も定め得るのでありますから、附加刑たるものについて定めてもそれは差しつかえないと私は考えます。
#31
○稲葉誠一君 出入国管理令は、ポツダム政令かなんかで法律と同じ効力を持つというような単行法があるのじゃないですか。これはいいですがね。
 それで、もう一つ考えられて疑問になりますのは、犯罪と没収する物との均衡の問題ですが、たとえば、軽微な密輸とか密航があった、その場合に、たとえば非常に高額な船だとか、飛行機もあるかもわかりませんが、そういうふうな第三者の物を没収するというふうになってくると、非常に均衡がとれないというか、失するというような感じがするわけです。そういう場合の没収は、そういうことができないということは何か規定があるのですか。
#32
○政府委員(竹内壽平君) 現行法では、二十条に、没収を科しえない罪としまして「拘留又ハ科料ノミニ該ル罪ニ付テハ特別ノ規定アルニ非サレハ没収ヲ科スルコトヲ得ス」という規定がございまして、今の御質問の趣旨がある程度出ておるわけでございますが、稲葉先生のおっしゃる意味は、それよりも、事柄自体として拘留、科料ではない、罪としては重い罪であっても、価額として五千円未満のようなわずかな貨物の密輸をした、それに対して何億もするような船舶が没収されるというようなことは、極端な例を申し上げますれば、そういうことはおかしくはないか、そういう点のバランスというようなことも法律を作る場合に検討する余地はないかという御質問だと思うのでありますが、それは確かに一つの法体系として考えます場合に、問題点の一つだと私は考えております。しかし、現行法を見ますると、その点についての制限はあまり考慮されておらぬというのか、考えられていない。むしろ没収は可能だという立場をとって、運用の面で実際においてはそこのバランス、均衡が保たれておると思います。たとえば自動車の交通違反のようなものでありましても、犯罪を組成する物件でありますから、当然没収が刑法の総則の規定からいって可能でありましても、実際問題としてはそういうことで没収することはないというようなことも運用としては実際に行なわれております。運用で考えるべきことと法律制度として規定すべきこととをどの程度にバランスをとるといいますか、どの分野まで立法でもって規制していくのがいいかということも立法政策の問題として重要な問題でございますが、従来の考え方からしますと、運用にはかなり弾力性を持たせて、立法のほうとしては幅の広いものを認める考え方でございましたが、最近の政策は、やはり運用についてもある程度の規制をしていくという考え方が強く出ておるように思うのでございまして、将来の没収制度、特に対物没収の手続を定めようとする場合には、そういう点も十分検討に値するというふうに考えます。
#33
○稲葉誠一君 今刑事局長の言われたのは、裁量没収の場合になれば、運用でまかなえると思うのですが、必要的没収になってしまったら、判決で没収の処分を言い渡してしまうと、検察官としては執行せざるを得ないような形になってしまう。しかも、その没収される物が不可分であるという場合には、これは違反はある程度軽微でも、没収する物がそれとの均衡のとれない莫大な価額のものが没収されるという結果が生まれてくるのじゃないですか。
#34
○政府委員(竹内壽平君) 仰せのとおりでございまして、そういう点がございますので、新しい刑法の考え方としましては、どうしても保安処分的に見まして、刑事政策的に見まして没収するのが公共の福祉に合致するのだというような強い要請がありますものについては、没収はするかわりに補償をするとか、そういう考え方、それからまた、先ほどお話のありました没収があまり不当に厳格過ぎるということは条理にまた、反する結果にもなりますので、そういったような規定を置こうとするとか、ドイツの一九六二年の草案などにもそういう考え方が条文の上にも出ているようでありまして、やはり検討すべき点だと考えております。
#35
○稲葉誠一君 保安処分的という話がまた出てきますと、それじゃ第三者の悪意があらかじめあり、それが継続しておるということを条件とするとなってきたのでは、またそこに問題が起きてくる。こうなってくると、第三者の悪意というより、むしろ被告人にそういう物件を使用せしめたということに過失があった場合だとかいうようなところにまで何か立法としては、ことにアメリカなどではそういう点で発展していっているようですね。これはそういうようなのがいいかどうかということは私はまた疑問と思うのですが、あまり広げ過ぎちゃってあぶなっかしくなりますけれども、法務省としては、悪意というふうなものに限定をしないで、この点をもう少しはずしてほしいというような気持が相当強いのじゃないですか。
#36
○政府委員(竹内壽平君) まだ法務省の統一見解が固まっておるわけではございませんが、私どもこの没収制度についての研究をしております過程において考えられますことは、先ほどお話し申し上げました最高裁の三十二年の判決が、あらかじめ知っていたというふうな点は悪意でございますから、それではやや狭過ぎるのじゃないか。それから諸外国の傾向がやはりだんだんと広がっておることは事実でございまして、過失もないものについてそれでもまた没収を必要とする場合もあって、それは補償でまかなうのだというような考え方も極端な場合はあると思うのでございますが、まあ最小限度、過失というところは、これはもう動かしがたい責任主義を貫いて参ります限りは、過失のない無過失のような場合にも補償さえすれば没収が可能だというような議論は、刑法論としてはなかなか成り立ちにくい。そこで、過失を、軽過失でもいいか重過失に限定するかという問題もございますが、そういう意味において、いろいろ諸外国の立法例なども研究しながら、どこへ落ちつけるべきかというようなことを法制審議会の段階で十分私ども資料を出して検討していただこうというふうな考え方をいたしております。
#37
○稲葉誠一君 私の質問は大体終わるのですが、一つ、禁制品とよく言うわけですね、これはどういう法律的な概念なんです。
#38
○政府委員(竹内壽平君) 私どもも禁制品、法禁物といったような名前でよくそういう言葉を使っておるわけでございますが、法律的には禁制品とかいうようなことはございませんので、必要没収としておるものを法で禁じておるという意味で法禁物というような言葉も使っておるわけでございますが、まあ偽造通貨でございますとか文書の偽造部分といったようなものは、これは何人も所有しても意味のない、所有してもらっては因る、また、一般の人が非常に迷惑する、そういったようなものは、これはまあそれがわかった以上は抹殺してしまわなければならぬ、こういうようなものを禁制品というような言葉、法禁物とかあるいはまた極端な禁制品というような意味において法学上そういう用語を使っておるんじゃないかと思います。
#39
○稲葉誠一君 そうすると、禁制品というのは、刑法の各則に書いてあるわけですか。それとまあ特別法にもあるかもしれませんが、それは、第三者が没収に該当した場合は、善意、悪意の問題は当然起きてこないわけですか。善意、悪意に関係なくても没収できるわけでしょう。そうすると、これはどこかに明文がなくちゃいけないわけですね。
#40
○政府委員(竹内壽平君) 今の法禁物、禁制品というものは法律上書いてないわけでございますので、ひとしく第三者のものであります場合には、この手続に乗せて処置をしなければならぬわけでございますが、非常に善意の第三者が偽造の通貨を持っておると、これは善意であったから没収できないんだということになるわけでございますね。ほかに方法が今のところございませんが、そういう場合には極端な場合でございますけれども、没収をしていける道が何らかの方法で保障されないとちょっと工合が悪いと思いますが、現行法のもとでは偽造通貨でありましても所有権の対象になっておりまして、これを当然のこととして没収するということは許されないように思うわけでございます。
#41
○説明員(臼井滋夫君) ちょっと補足して申し上げたいと存じますが、法禁物という概念、あるいは禁制品という概念は、法学上説かれておる概念でございまして、実定法がそういう概念を認めておるわけではございませんが、通常は、法学上、ただいま刑事局長が申されました偽造の文書とか偽造通貨等が法禁物と、かように言われておりますが、そもそも法禁物という概念を認めるかどうかという点についてわが国等ではあまり問題とされておりませんけれども、ドイツの学界等では非常に没収に関連して問題にされまして、今度の新しい六二年草案等では、こういう法禁物という概念を否定する考え方に立っております。その理由といたしましては、いわゆる法禁物と称せられるものであっても、絶対的に何人の所有・所持も許されないというのはあり得ないのではないか。たとえば、偽造の通貨とか偽造の文書等にいたしましても、これを正当な目的、たとえば、標本とかあるいは研究用とか、さらにまた、偽造文書等の場合には、権利行使のための証拠というような目的でもって所有あるいは所持することが許されるのではないかという考え方をとっておるようでございます。まあそういう考え方もございますのみならず、法禁物という概念を認めるにいたしましても、一体どういう範囲のものが法禁物であるか。たとえば、密造酒はどうか、麻薬はどうかという限界はきわめて不明確でございます。のみならず、具体的な事案におきましては、法禁物であるかどうかということが争われる場合もあり得るわけでございまして、たとえば、検察官が、これは偽造通貨である、偽造文書であると、そういう認定をしておりましても、裁判所もまたそういう認定をしておりましても、真の所有者が、それは偽造ではないのだ、真正の通貨である、真正の文書であるということを主張し得なければ、第三者の権利が不当に侵害されるおそれも出て参るわけでございまして、したがいまして、法禁物という概念を認めましても、なおかつ法禁物についても本法による手続をとる必要があるわけでございます。
#42
○稲葉誠一君 それと関連するのですが、じゃ、第三者没収で没収しますね、裁判所が没収した場合、それから裁判所が没収するのじゃなくても、任意提出なんかで検察庁が領置しておる場合もありますね。こうしたものの処分というか、処理ですね、これは具体的にはどういうふうにやっておるわけですか。たとえば、換価の場合もあるし、廃棄の場合もあるでしょう。いろいろあると思うのですが、そういうところがどういう根拠でどういうふうに現実にやっておるのか、よくはっきりしないのですが……。
#43
○政府委員(竹内壽平君) 刑事訴訟法を基礎といたしまして合理的に統一的に処理させますために、大臣訓令によりまして証拠品事務規程というのを制定して、これを各検察庁の守るべき準則とさしております。これによりまして、どういう場合に換価する、どういう場合に廃棄する、廃棄の方法としてはどういうふうにするといったようなことがこまかく規定してございまして、現在におきましてはそれにのっとって処理をしておれば合理的に処理されているということになるように私どもは考えております。
#44
○稲葉誠一君 それは一種の国有財産になるわけじゃないですか。それは価額の小さいものもあるし、高いものもあるし、いろいろなものがあるとしても、国有財産になるのだから、その払い下げというのは法律に基づいてやらなくてもいいわけですか。
#45
○政府委員(竹内壽平君) この証拠品事務規程の第二十八条に、「検察官は、没収物が有価物であるときは、売却の処分をする。ただし、没収物が危険物その他破壊し、又は廃棄すべき物であるときは、この限りでない」、こういうような規定がございます。「有価物であるときは、売却の処分をする。」この売却の処分はどうしてするかというと、会計事務章程というのがございまして、それによりまして会計法にのっとって公売処分にするわけでございます。
#46
○稲葉誠一君 理論的にいうと、没収したものですね、これはやはり国有財産という概念に入るのですか。
#47
○政府委員(竹内壽平君) 国有財産という概念に入るわけでございます。国有財産に入るものをむやみやたらに処分していいかという点につきましては、刑訴法の四百九十六条によりまして検察官がその処分を法律で命ぜられておる、こういう形、その法律の規定を受けまして、今申したような証拠品事務規程の訓令の条文になって細則的に定められておるわけでございます。
#48
○稲葉誠一君 そうすると、国有財産だから、刑訴法の四百九十六条ですかで検察官にその処分がまかされているのですか。
#49
○政府委員(竹内壽平君) 刑訴法の四百九十六条によりますと、「没収物は、検察官がこれを処分しなければならない。」と、まかされているのじゃなくて、そういうふうに職務として命ぜられているのであります。
#50
○稲葉誠一君 その処分する場合に、公売する場合もあるし、それから廃棄する場合がありますね。廃棄するのはどういうふうなものを廃棄するわけですか。
#51
○政府委員(竹内壽平君) 無価値なものとか、これは中身を読んでいくとわかりますが、たとえばわいせつの図画とか、こういうものは廃棄をいたしております。
#52
○稲葉誠一君 じゃ、ちょっと速記をとめて下さい。
#53
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#54
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
#55
○稲葉誠一君 そうすると、その廃棄の場合は、まあそのものによっていろいろやり方があるというわけですね。麻薬類は厚生省へ全部渡すのですか、そういう形をとっているわけですか。
#56
○政府委員(竹内壽平君) ええ。
#57
○稲葉誠一君 その換価が、換価というか公売ですか、これがきわめて安く行なわれるということが、特に検察庁の処分が安く行なわれるということがよく言われるのですが、これはやはり検察庁の前なんかに掲示を出してやるのですか。
#58
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございまして、公売の手続によりまして、大部分は指名入札だと思いますが、業者を指名しまして、会計法にのっとって一般の指名入札と同じように入札価格を入れさせまして、その中の最高額で落とした者に売るということになるわけでございますが、まあ往々にして一般の市販価格よりも非常に安い値段で落としていくというようなこともわれわれよく聞くのでございますが、その間に不正があっては困るわけでございますけれども、まあ実際問題として品物自体が商品として見ました場合に良好な状態で保存していなかったり、毀損しているものがあったり、端物であったりというようなことからして、やはり安くなるような事情でございます。
#59
○稲葉誠一君 このことで会計検査院から何か忠告を受けたようなことはありませんか。
#60
○政府委員(竹内壽平君) この点につきましては、従来、刑事訴訟法による没収物の証拠品処分でございますが、これは一応国の国有財産でありますけれども、会計検査院の検査の対象外に置かれておったものでございますけれども、先般、数年前にできました物品管理法という法律ができましてから、原則的にはやはり国有財産でありますので、物品管理法の適用を受けるという建前に切りかえました。しかしながら、実情は依然として、刑事処分によるものでございますので、今の物品管理法のカバーする範囲ではありますけれども、かなり大きな自主性が検察庁に認められておりまして、実際問題としては会計検査院が物品倉庫などをもちろん検査をされますけれども、その処理につきまして会計検査の対象とするということは実際問題としては行なっていないようでございます。
#61
○委員長(鳥畠徳次郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#62
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
#63
○亀田得治君 法案についての審議は相当なされておるわけでして、なるべく重複しないようにお聞きしたいと思うんですが、今出ておるような法案の中身並びにこういう法案が作られた背景は、これは私は当然なことだと思うんですね。で、なぜこういうことを今まできちんと整理しないでほうっておいたのか。最高裁判所の判決が出なければ気のつかない問題では私はなかろうと思うんですね、法律の専門家から見れば。だから、そういう点について実は非常な疑問を持つわけなんですが、疑問はあるけれどもこれでやっとけということでやってこられたものか、全然そういう疑問もなかったものなのか、そこら辺のところをまずお開きしたいわけです。
#64
○政府委員(竹内壽平君) 没収制度につきましては、実体法、手続法両面から再検討を加えまして完全なものにしなければならぬという関心は、これは古くから――古くからと申しますか、少なくとも私がただいまの職につきましたころから刑法改正準備会で取り上げまして、各国の立法例等も調査して研究をしてきた事項でございます。
 ただ、今回のような立法をしなければ違憲判決になるかどうかということについての心配の点につきましては、それほど古くからそういう心配をしていたわけではなくて、昨年の十一月の判決が青天のへきれきのごとく現われたのではございませんけれども、その前の昭和三十五年の判決のときは、ここでも御説明申し上げましたことでございますが、八対七で多数意見は同じ問題を合憲と判断をいたしておりますし、それより前に、憲法二十九条との関係におきましては、昭和三十二年の最高裁の判決で合憲であるということを、制限的ではありますけれども、合憲であるという判決をしておりまして、要するに、合憲という考え方の中に、そういう状態のもとで法が運用されてきたわけであります。
 それから諸外国の例を見ましても、西ドイツには完璧な法律が現在施行されておりますが、フランスその他の国におきましても、日本の現行法と同じような手続規定を欠いておる状態で現に運用されておるのでございまして、常にその当時からもうこれは違憲になるという非常な疑いを持ちながら運用してきたわけではございません。
 ただ、昭和三十五年の判決の際に、八対七で合憲にはなりましたけれども、その中の七人の少数意見をつけられました方の中で、五名は頭から違憲だと言っているのではなくて、手続の過程において第三者を証人なり何なりで意見、弁解の機会を与えれば違憲ではないが、与えないという案件であるがゆえに、多数意見のように合憲だという意見には賛成しかねるという意見でございます。あとの二人は、意見、弁解を与えてもいけないので、やはり防御の手段を尽くさせるような手続が要るのだ、その手続を法律で定めるというのが憲法三十一条の要請しておるところであるから、その要請を満たしていない現行法制のもとにおいてはやはり違憲であるということはおおいがたいのだという意見を言っておるわけであります。つまり、十五人の裁判官の中で二人だけが違憲だということを言っておるので、多数意見はもちろん、少数意見の五人の方も現行法の手続そのものを頭から違憲だと申しておるわけではなかった。それは昭和三十五年のことでございます。
 しかしながら、私どもはそれとは別に、冒頭申しましたように、没収制度がいろいろな点で不備でありますので、それを完璧なものにしたいという考えで研究をしておりました。そこで、この三十五年の判決以後においても、裁判官が更迭したり、あるいは裁判官の考えが変わったということになれば、これまた違憲という線が出ないとも限らない、こういうことで、実は三十五年ころからは、公にはいたしませんでしたが、私ども事務当局としましては、真剣に立法作業を現実の問題として、法制審議会とは別個に、特にこの問題を早く取り上げても解決をしていかなければならぬという気持に変わってきております。折から昨年の十一月にあの判決が出たわけでございまして、何としても来たるべき今国会に法案を出してその穴を埋めていかなければならぬという行政責任を強く感じてこの応急措置法を出したわけでございます。
#65
○亀田得治君 合憲でありさえすればいいというような考え方がずっと支配してきたのじゃないかと思うのですがね。私の申し上げるのは、もちろんその点もありますが、いやしくも第三者の物を没収するわけですから、その点について合憲であるかどうかということを離れて、やはりきちんとした手続を作るべきじゃないか。そういう点については非常に消極的であったのじゃないかと思うのですね。それはどうなんですか。
#66
○政府委員(竹内壽平君) その点は、今申し上げましたように、決して私どもは消極じゃなくて、準備草案においてもすでに案が示されておりますように、没収制度全般につきましてすっきりした、憲法に沿って疑いのない、また、現代の要請に沿うような、そういう没収制度というものを打ち立てていかなければならぬという熱意には燃えておったわけで、現にその証拠とも言うべき準備草案を、あれが最良のものだとは思いませんが、一応の案を作り出しているわけであります。この作業は数年前からもうすでにかかっている。その前提として準備段階におきましても外国の立法例など調査してきているわけでありまして、十年以上も前からこの問題に取り組んでおりまして、決してないがしろにしておったわけではございません。
#67
○亀田得治君 しかし、没収制度全般についての新しい体系というものは、そう簡単に提案されるような運びにはなっておらぬと思うわけなんです。したがって、その中で特にとりあえず第三者の権利保護ということについては抜き出して制度を明確にしようということは当然あるべきことなんですね。だから、それを最高裁の今度の判決が出るまで踏み切れなかったのはどういうことなのかということなんです。
#68
○政府委員(竹内壽平君) 没収制度を勉強してみますと、非常にむずかしい問題がたくさんあることがわかるわけでございまして、実体法をまず直さなければなりませんし、それに伴って手続法を作っていかなければなりません。その両面の作業というものはこれはなかなか容易なものではございません。準備草案の一応の結論というものにつきましても、現に私どもとしましてはいろいろな立場からなお不満な点が少なからずあるわけでございまして、これを体系的に直すということになりますと、一つの大きな作業でございますが、刑法改正は過去において何回か改正は経ておりますけれども、部分改正というものはもういろいろな点でこれもあれもという案件が少なからずあるわけでございます。私どもとしましては、どれを先にし、どれをあとにするというようなこともなかなかきめかねるのでございまして、まあ最高裁が合憲だと言っているから安座しているというつもりは毛頭ございませんが、われわれのわずかな者が相集まりまして、どれを先にやるべきかというようなことを議論してみますと、なかなか結論が得られませんのでございまして、没収制度も私どもとしては非常な関心を持っておったのでありますけれども、今日まで成案を得るに至りませんで、とりあえずの応急措置法案で御審議をわずらわすようになったわけでございます。
#69
○亀田得治君 まあ全般の問題を一時に片づけようとすると、いろいろなむずかしい問題がたくさんあることはよくわかるわけですが、なかんずくその中の特に大事な点の一つとして今法案が出ているわけでして、はなはだおそいけれども、それはけっこうなことだと思うのです。ただ、以下若干中身についてお聞きするわけですが、やはり第三者のそういう立場というものについての配慮が足らぬのではないかというふうに思われるような点がやっぱり相当目につくわけです。そういう点について特にお聞きしてみたいと思うのです。
 この第二条ですね、告知の制度が書いてあるわけですが、その中の第二項ですね、これは第三者の所在が不明だという場合の規定ですが、この場合には、官報及び新聞紙に掲載して、そして検察庁の掲示場に十四日間掲示して公告する。この新聞の掲載なり検察庁の掲示場十四日間の公告ですね、これが所在すらわからない第三者に対してどれだけ通知力を持っておるのか。これはたいした効果はないのじゃないか。所在のはっきりしている人なら割合まだ効果も考えられるわけですが、所在すら明確でないという人にこういう方法で公告すればそれで足るんだということになるのかどうか。もっといい方法はないかという点に非常な疑問を持つわけです。どうなんですか。
#70
○政府委員(竹内壽平君) 仰せのように、検察庁の掲示場に十四日間の掲示をしましたことが実質的に利害関係者に通知の意味を持つであろうかどうかということにつきましては、率直に申しまして一つの手続のフィクション、擬制だと思います。従来は、公示、催告とかいうようなことで、裁判所の掲示場や検察庁の掲示場によれよれになった書類をぶら下げて、それでお知らせしたという扱いもございましたが、今回は、それではやはり実質的に足りないのであって、そこで官報と新聞紙に掲載し、あわせて検察庁の掲示場にも掲載する、こういうふうにしてその点の単なる擬制ではなくて実質的に知らせる措置を講じたわけでございますが、これ以上のことは実際に現在の状態におきましてはいい方法がないじゃないかということで、この点は私どもも苦心をいたしたところでありますし、官報、新聞紙に掲載するということになると相当予算を伴う問題でございますが、ここを踏み切ってここまでやりましたので、官報と新聞紙に掲載する、その上さらに掲示場に掲載するといったような手厚い公告の方法というのは、検察庁のその他の手続におきましてはあまり見受けないところでございまして、いわば画期的な手厚い保護の方法だというふうに私どもは考えております。
#71
○亀田得治君 せっかくこういう制度を作るわけですから、第三者の立場を最大限やはり考えたことをしてほしいと思うわけなんです。なるほど官報、新聞紙に掲載し、なおかつ掲示場に出すということは、今までに比較すれば全く相当な費用もかけてやるわけでして、刑事局長がおっしゃったように、ある意味では自慢していいことかもしれぬ。しかし、たいして効果がない。これははっきりしています。で、これは私、たとえばですが、第三者の親戚――親戚の中でも親とかきょうだいとか子供とか、こういうものがちゃんと明確になっている場合には、その人に知らす。第三者がわからぬからもし知っておったらやってくれ。まあそういう場合も、実際の運用としては考えられるかもしれぬが、しかし、そんなことはこの条文からいけばせぬでもいい。しかし、案外そういうことが費用もたいしてかからぬわけでして、効果としては私はもっともっと多いのじゃないかというふうに思うわけでして、何かそういうようなことは考えられませんか。
#72
○政府委員(竹内壽平君) 私どもも、立案の過程におきまして、いろいろ知らせる方法につきまして頭をひねってみたわけでございますが、あまりいい知恵も結局は出なかったのでございますけれども、なお、制度といたしましてせっかく第三者の保護に乗り出しているのに、保護が徹底しないということはまずい。そこで、実は十三条の規定でございますが、本来ここまで事後救済の規定を手厚くする必要はないではないかという意見も現に日弁連からも出ているのでございますが、そういう意見も実は立案の過程においてあったわけでございます。しかし、これを思い切って、十三条がかなり手厚いものになって煩瑣になっておりますが、それは今言ったような公告の手続とうらはらの関係で、これが徹底しないのを十三条のような規定で救済の道を最終的に開いておきませんと、ほんとうに権利者の権利の保護に欠けるという場合がどうしても起こり得るので、最後には十三条で救済の道を開こう、こういうことで、両々相まって公告の方法を理解していただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
#73
○亀田得治君 十三条を別個に置かれたことはこれは非常な意味があると私も思いますが、しかし、たとえば十三条をとってみますと、「自己の責めに帰することのできない理由により」云々、こういうふうに書いてあるわけですね。これは一体どういう解釈になるのか。おそらくこの解釈が問題になる場合には、国のほうとしては、官報にも出し、新聞紙にも出し、検察庁の掲示場にも出してある、法律の手続はちゃんととっているのだ、だからそれを見ないほうのやつが悪いのだというふうな解釈になりますと、この十三条が生きてこぬことになるわけなんです。そういうおそれがこれは十分あるわけですよ。で、私は、十三条の「自己の責めに帰することのできない理由」というのをそういうふうに厳格な解釈をしないのだという局長の説明であれば、これは納得しますがね。初めからこういう掲載だとかというようなことはたいして通知力というものはないと先ほども提案者みずからがお認めになっているでしょう。であれば、十三条の「自己の責め」ということが問題になった場合に、おれのほうはちゃんと公告をしているというふうなことはおっしゃらないと思うのですが、その点はどうでしょう。
#74
○政府委員(竹内壽平君) 公告してあるのだから見ないのが悪いという一応の推定を受けるかもしれませんけれども、しかし、それは公告による告知の方法ですから、しょせんすべての場合に推定してフィクションで知っておるものときめてしまうわけにはいかない。そこに自分が了知しなかったことについて相当な理由があれば、これは責めに帰すべからざる理由として当然考えてやらなければならぬ事柄でございます。
 そこで、どういう場合にそういうことになるであろうかということでございますけれども、告知の場合は、これは直接本人に言うわけでございますから、これは問題ない。公告でございますと、限度があるわけで、その限度を越えて、特に所有者が外国にたまたま行っておった、公告期間は知らなかった、新聞も見なかった、官報も見なかった――それは官報も新聞も見ないのが常識でございましょうし、あるいは、検察庁の掲示場で掲示を見る機会を与えられなかった、そういう場合は、やはり責めに帰すべからざる理由で知らなかったというふうに言って差しつかえないというふうに思うわけでございます。そのほか、外国に滞在しておるだけではなくて、その間非常に心身の故障で、家族の者は知っておったといたしましても、本人は心身喪失とはいわぬが、そういう状態になっておった、あるいは重病でほとんどものを連絡する方法もなかったというような事情が証明されれば、これまたやむを得ない、責めに帰すべからざる理由で知らなかったというふうに言い得るであろうと思います。その辺は、結局は社会常識によって良識によって判断をされるべきことであるし、検察官もそういう態度で臨むと思いますし、裁判官もおそらくはその責めに帰すべからざる理由というのをそういうふうに御解釈になるのじゃないかというふうに法案の趣旨から言いまして私は考えます。要するに、二条のうらはらの足らぬところをさらに補っていくという趣旨の十三条の規定でございますので、当然そういうふうに解釈をしていくべきであるし、されるというふうに思っておるわけでございます。
#75
○亀田得治君 外国に行っておって新聞を見ない、これは当然です。そんなことまで法律が要求するわけはない。しかし、だたいまの説明ですと、やはり日本における以上は、検察庁の掲示場なりあるいは新聞には相当目を通さなければならぬと、何かそんなような義務があるような感じを受けるわけですがね。そういう義務を自己の所有権というような重大な問題に関連して要求するような考え方は非常に間違いじゃないかと思う。そういう義務を要求しておるものではないということをはっきりしておいてもらいませんと、この公告制度があるために、かえって今度はそれが十三条の解釈に拡張解釈といいますか、悪用されて、ほんとうの権利者の主張を困難にする。私は、そういう解釈上のおそれがあるなら、これは法務省としては親切なつもりでこの第二項というものはお作りになっておるのでしょうが、むしろ削除したほうが実際にはいいんじゃないかという感じを持っておるのですがね。
#76
○政府委員(竹内壽平君) お考えもよくわかるわけでございますが、やはり公告という制度の持っておる本質的な告知方法としての不備を何とかして補っていくということが十三条の立案趣旨でございますので、所有者として十三条の規定を考える場合に、事後救済を受ける道が今お話しのような事情で閉ざされてしまうというような結果が生じますことは、これは正義公平の精神に反するわけでございますから、これに反しないということがやはりこの十三条を解釈する一つの基準であろうと思います。でありますから、私は外国におる例を一つ申し上げましたが、同じ日本におりましても、非常に遠方であるとか、その距離関係が、押収されておる検察庁が長崎であるのに、本人は東北の仙台に住んでおるというような人で、いくらラジオ、テレビの自由な時代になりましても、なおかつ条理上知り得ないということも当然考えられますし、また、所有者の職業によりましては、通信網をもってすぐわかる人もありますし、また、わからぬこともあり得ると思いますし、それからまた、平素その物を保管しておる保管の状態などによっては、いつの間にか気がつかなかった、知らないこともその保管の状態からすれば当然推測できるというような場合もありましょうし、そういったようなことがすべて考慮の対象になると思うのであります。それがならぬということでありますと、事後救済の制度を認めた正義公平の原理に反するわけでございますから、そういったようなものもすべて考慮して、なおかつ公告で知っておるはずだということが判定されるべきでありまして、もし知らなかったというなら、十三条で今のような点が考慮されて救済の道を開いてやるということになるのじゃないかという意味におきまして、逆説的におっしゃれば亀田先生のおっしゃるような削除論も出るかもしれませんが、やはりこれを合理的に解釈することによってこの規定の趣旨を生かしていくという意味におきましては、やはり存置したほうが私はいいと思います。
#77
○亀田得治君 そうすると、こういうふうに理解しておいていいですね。新聞や官報の掲載、検察庁の掲示、こういうものがあったからといって、それに気がつかなければならないというふうなことは考えておらぬのだ、これは親切の立場で出しておるわけだ、気がつかなければならないとか、気がつくはずだとか、そういうふうな考え方はとらないのだと。そうぜんと、十三条の解釈に非常にやはり響いてくるわけです。そういう解釈をしておいていいですね。気がつく人もあるだろう、しかし、ねばならないというふうには考えておらないと……。
#78
○政府委員(竹内壽平君) よく御趣旨はわかりますが、やはりそれも社会通念によって結局はきまることじゃございませんでしょうか。積極的に絶えず新聞を見ておるのは、何かそういう公告があるかもしらぬからというような意味で新聞を見なければならぬというような社会通念は私はないと思うのでございます。そこで、新聞に出ることがどの程度に人に知らせるものであるか、また、人はどの程度にそういうものによって事柄を知るものであるか。たとえば死亡通知のようなものを見てもわかるわけでございますが、そういうことはすべて社会通念によって新聞とその読む人との関係を考えて、社会通念上それは知ったと見るほうが妥当だという場合は、もちろん妥当として処理されなければなりませんし、それを新聞で見なかったことがいかにもそれはそれで知ったというふうにみなすことが妥当でないというふうに社会通念上考えられます場合には、十三条のやむを得ざる理由で救済をしていくというふうに私は考えるわけでございます。
#79
○亀田得治君 この程度質疑しておけば、問題になった場合に大体適当な解釈ができると思って確かめたわけです。
 もう一つは、第三条の第一項のただし書のところですね、つまり参加の申し立てについての点ですが、告知または公告があったときにはそれから十四日以内に限る、こういう制限が付されているのですね。これも告知の場合はまだいいでしょう。ところが、公告の場合に十四日以内に参加の申し立ての手続を打ち切ってしまうというのは、はなはだ私はこれは実際に合わないと思うのです。これは特に七条の条項とも関連してくるわけですね。結局、そういう告知なり公告があった場合には、参加がなくても没収の裁判ができるわけでしょう。ところが、その公告――告知じゃない、私は公告のほうを言うわけです。公告自体は、たいして公告性を持っておらない、実際問題として。にもかかわらず、十四日でこれを打ち切ってしまう。これは私はもっとゆとりを与えてやるべきものじゃないかと思う。手紙を受け取ってから二週間というならこれはわかる。それを同じようにここで扱うこと自身に私はだいぶ無理があるのじゃないかというふうに感じておるわけですが、どうでしょうか。
#80
○政府委員(竹内壽平君) 御意見ごもっともでございますが、私どもはこれを両者同じに扱うことの適否につきましてもいろいろ検討してみたわけでございますが、何と申しましても裁判は迅速に進めていただかなければなりませんし、そのこと自体は被告人にとりましても国にとりましても重要なことでございますので、時には被告人が身柄を拘束されているという場合もあるので、そういう場合に公告の手続が十四日からさらに延ばされることによって裁判が長引いていく――この手続は非常に煩瑣でございますので、どうも長引くということをよほど考慮してかかりませんといけないわけだと思いますが、そういう点がここへも出てくるので、先ほど申しましたように、十三条の保護もあわせて規定することによって、ここは告知と公告とを同じように扱っていっていいのではないかというようなことでだんだん固まって参りまして、こういう規定におさまったのでございます。御意見を尊重することは私ども立案の過程において議論をしたところでございますが、迅速なる裁判、勾留が長引かないようにといったような要請と第三者保護とのつり合いをどこでとるかという問題点として私ども研究、理解をしてきたつもりでございます。いかがでございましょうか。十三条の規定も、先ほど申したような公告自体に内在する不徹底さということをカバーするための十三条の規定でありますが、またこういうところで告知と公告をすることの同じ扱いをしていることの不合理さを救済するということも十三条であろうと思いますし、また、裁判所は、十三条までいかないうちでも、あとで十四日が期限切れになって知ったということを疎明してきた場合に、裁判所は良識によって参加を許すこともできる道を同時に開いておりまして、原則としましてはやはりこれを同じに扱っていったほうがいいのではないだろうかというふうに思うわけでございます。
#81
○亀田得治君 いろんな理由を申されましたが、たとえば迅速な裁判ということもおっしゃったわけですが、これは本体の被告人のことをおっしゃったのだと思いますが、そういう意味ですか、没収の対象のことを申されたんですか、どっちなんですか。
#82
○政府委員(竹内壽平君) 本案の裁判のほうの迅速な裁判、こういう意味でございます。
#83
○亀田得治君 それはちょっと物事が混同されたような感じがするのですね。この没収は第三者自身が一種の被告人の立場に立たされるわけなんですから、だから、本体の迅速性と第三者の没収の迅速性というものは、私はこれは違うことがあり得ると思う。おのおのが迅速でかつ正確ということでなければ私はいかんのだと思う。何も本体のほうがおくれていいということを私は申し上げるわけじゃないので、第三者の没収自身はやはりこれも迅速でかつ正確――正確さにおいて非常に欠けるのではないか。公告という制度自体がきわめてたよりないものであるから、それを根拠にしておやりになるのなら、やはり第三条では区別をしてもう少し期間を長くとっておくということのほうが合理的だと思うんですよ。そうしませんと、本法においては告知も公告も同じように法の精神としては考えていいんだといったような形式的な解釈が出て参りますと、十三条の解釈なりあるいは三条の三項ですかの「申立人の責めに帰することのできない理由」というような解釈にやっぱり悪い影響が出てくると思うのですね。区別のできるのはやはりこういうところですよ。ただし書きですよ。一方は十四日だけれども一方は一月にしておくと、やっぱりそこの価値判断が違ってくる。
 それから十四日なんというのは、これはちょっと無理ですね。できないことですよ。初めから通知を受けた場合でも、そういう手続などをやろうというようなことになれば、十四日なんというのは私はぎりぎりだと思うんです。だから、いわんや公告の場合に十四日なんというのは、初めからこれは形だけを作っておくのだという印象を与えて、はなはだ立法のお気持からいっていかんと思うのですね、そういう印象を与えるような中身は。
#84
○政府委員(竹内壽平君) なかなかごもっともな御意見で、私も御説明を十分しかねるわけでございますが、この関係におきましては、参加の十四日がおくれたからといって不許可にするというのじゃなくて、やはり裁判所の健全な裁量によって、おくれておりましてもなお参加を許すことができるということにしておるのと、十三条の規定の活用と両方でその不都合をカバーしようという考えでございますが、今亀田先生のおっしゃる両当事者とも――片一方は当事者じゃないのでございますが、両当事者とも権利を円満に保護していこうというそのことは私ども全く同感でございますが、それをやりますためには、没収の訴訟を特別な、たとえばアメリカなどで現在広く行なわれておりますような対物訴訟として被告人の本案の訴訟とは切り離して手続を進めるというような手続にいたしますと、全く切り離して本案のほうは迅速に裁判する、また一方の没収の手続もそれはそれなりに迅速に進めることができる、こういうふうにできるわけで、そういうような制度にするかどうかということは根本的な解決の問題になるわけでございます。ところが、この応急措置法におきましては、没収とは主刑に附加して科する刑であるという刑法の建前をくずさないで、したがいまして、第三者は訴訟の当事者ではないわけで、参加人という地位を新たに作ったわけでございますが、そういう立場で、非常に無理に訴訟の中にはめ込んでいかにして権利を保護するかという手続でございまして、若干亀田先生の御指摘のように無理があるかもしれません。その無理を、今言ったような公告手続の特別な今までやったことのないような手続までやろうという気になり、さらにまた、十三条の規定を拡充していくというような考慮をいたしたわけでございます。なお、本問題だけにつきまして見ても、裁判所の良識ある裁量によりまして期限後といえども参加を許すことができる道もある。三者相まって、今不都合として御指摘されているような点をカバーできるのではないかというふうに思っておるわけでございます。これはもう附加刑であるという建前をくずさないためのやむを得ない措置であると考えるわけでございます。
#85
○亀田得治君 しかし、関連はしておりましても別個な対象であるということはこれはもうはっきりしているわけでして、現に本法の第八条の第二項等を見ましても、ある場合にはこの二つのものが離れることを認めておるわけですね。だから、きちんと本案の事件の中のワク内という考え方はもう大体清算されてきているような感じを私は持っているわけなんですが、そうでもないわけなんですか。
#86
○政府委員(竹内壽平君) 没収制度そのものにつきましては、今おっしゃるような考え方にだんだん私どもの考えも進化してきておるというふうに思うのでございますが、この法案につきましては、そうじゃなくて、あくまでこれは訴訟の当事者は被告人であって第三者ではない。しかし、第三者を参加人として認める以上は、被告人ではないけれども被告人に近い、被告人とほとんど権利としては同等の権利を認めていかなければならぬ。それから、今第八条でありますように、非常に異例なことではありますけれども、被告人のほうはこの判決に不服はないといって主刑に服しておるわけでございますが、第三者がどうしても不服だという場合には、例外的に上訴の権利をも認めて条理を尽くさせるというようなことになっておる。そこら辺に観念的に明確を欠くということはもう私ども百も承知でございますが、これは現行制度の上で応急の措置ということを考えました場合にまことにやむを得ない処置であるというふうな、これはあくまで暫定、応急的なものでありますから、今亀田先生のおっしゃるようなすっきりした没収に関する手続の実体法を整備しました上は当然この法律が廃止さるべきものだという、そういう前提に立ちましての立案でございますから、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
#87
○亀田得治君 まあ没収に関する検討が今後ともされるわけでしょうが、ぜひ先ほどから二条、三条につきまして指摘したような点を今後やはり一つの課題として十分検討してほしいと思います。
 それで、ちょうど今第八条のことが話に出たので、ちょっと確かめておきたいわけですが、第八条の第二項によって二つの――本案と没収関係というものが分離したというような場合に、没収関係の第三者が犯罪の成否そのものを争えるのかどうか、これはどういう考え方なんですか。
#88
○政府委員(竹内壽平君) これは没収さるべきでないということを主張いたします事柄の性質上、犯罪事実につきましてもその限りにおいては争い得るというふうに解釈いたしております。
#89
○亀田得治君 そういたしますと、本案の刑事事件の確定した裁判と矛盾した結果というものが出てきても、その没収に関する判断が客観的に正しい、そっちのほうが証拠もそろっているという事態になった場合には、差しつかえないという考え方ですね。
#90
○政府委員(竹内壽平君) 違った結論が出る場合があり得るわけでございまして、現行法のもとにおきましても、よく贈収賄で、必要的共犯でございますか、贈賄が認められて収賄が認められなかったというような事例がありますように、そういう場合が起こり得るかもしれません。やむを得ないのじゃないかと考えます。
#91
○亀田得治君 それから、十三条は、先ほどから二条、三条に関連して若干議論がされたわけですが、第三者の所有権を主張する道は、いろいろな手続等をとらなかった場合には、十三条で終わりなんだ、こういう考え方なんでしょうか。第十三条によらなくとも、本人の所有権自体というものはこれは憲法上保護もされておるし、これは少しも変わらないわけです、実体は。所有権そのものに基づくというような訴え方ですね、こういうことはもちろん許されておるという立場なんでしょうね。こういう道もありますよということを十三条が示しておるにすぎないというふうになるのか。一体これはどっちなんです。
#92
○政府委員(竹内壽平君) 民事訴訟、行政訴訟がこれとは別にできるということを前提としての十三条ではないかという御質問かと思うのでございますが、この立案の趣旨としましては、没収に関する救済方法は、民事訴訟によるのではなくて、十三条の規定によって最終的に結末をつけるという考えのもとに立案をいたしておるわけであります。
#93
○亀田得治君 しかし、今御説明になったことは、多少乱暴じゃないかと思うんですがね。こんな専門的な法律などは、たとえ公布されたって、そんなにわかるものじゃない。法律を知らないからといって自分の所有権そのものに基づく主張ができないのだ――主張の仕方はむずかしくなることはあっても、主張それ自身ができないというふうに一体断定できるのかどうか、国というものはそこまで行き過ぎたことをきめていいのかどうか、ちょっと私自身も疑問があるわけです。たとえば、なにがありましたね。これは非常に古いことですが、明治時代に、官有地か民有地か明確でない山林がたくさんあったわけですね。あれは明治の中ごろに下げ戻し法というような法律を作って、そうして、もし不当に官有地に編入された場合には、この下げ戻し法によって取り返しなさい、こういう行政的な手続がきめられておるわけです。しかし、それを怠ったからといって所有権そのものがそれでなくなってしまうのだ、こういうふうに多数説は考えていないようですね。それはそういうときもある。その法律を伝ってくれば行政官庁としては扱ってあげますよということを言うとるだけであって、その法律を使わなかったからといって所有権そのものがいつの間にかなくなってしまう、そんなことはないというのが多数の意見、私は今とっさに申し上げたものですから、多少不正確かもしれませんが、それと同じことになるのじゃないですか。法律でこんなことをきめたからもうこれだけなんだという言い方は、多少乱暴じゃないかと思います。だから、刑事局長は、問題点として残されるならいいのですが、学説なり判例の確定にまつというふうなくらいの少なくとも柔軟性のある態度じゃないと、私はこれこそ憲法上の問題にぶつかるのじゃないかと思うわけです。
#94
○政府委員(竹内壽平君) 私の説明がやや生硬過ぎたかと思うのでございますが、もちろんこれは理論的には民事訴訟がやれるという考え方も成り立ち得ると思うのでございますが、ただ、立案者としましては、そういうものをやる道をふさぐという考え方ではなくて、これで民事訴訟による保護よりももう少し筋の通った形においてなし得るのだ、この十三条は十分それに応ずるだけの救済方法として考えられておるという趣旨で設けたというふうに申し上げまして御了解を願いたいと思うわけでございます。
#95
○亀田得治君 そうすると、まあ所有者のために親切にこういう道も開いてあげた、「こういう道も」ですね、これはそういうふうにしていただきませんと、たとえば「自己の責めに帰することのできない理由により」というような条件がついているわけですからね、この道を通るためには。ところが、その所有権の場合には全く無条件にやはり主張できるという議論というものは一方にどうしたって出てくるわけですから、今お答えになった程度のところでひとつとめておいてもらいたいと私は思うのです。
 それから、この十三条ですね、これは附則によりますと以前のものにも適用する、こういうふうになっておるわけですね。今までこういう法律のなかった時代のものについてこの十三条をこのままの形で適用するというのは、これはちょっとひどいじゃないかという感じを受けているわけですが、若干変わるわけですね。ここに「この法律の施行前に確定裁判を知ったものであるときは、第十三条第一項本文に規定する期間は、この法律の施行の日から起算する。」と、こう書かれておるわけですから、この法律が八月一日から施行されれば、八月十四日までに知った、こういうことですね。古いことにつきましてそういう規定の仕方をしてしまうのは、これもちょっと強過ぎるように思うのです。現に問題になっていて、いや告知だ、いや公告だ、いろいろなことが続いておる、場合によってはそういう刑事事件が新聞等にも出るといったようなものについては、ある程度日を限ってもその意味はわかりますけれども、古いものについて――古いものは一般にこれはもうほとんど関心が離れておると見なければならぬですね。そういうものに対して、しかもこういう専門的な法律が施行されてから二週間、こういうところで十三条の方法をとることを切ってしまうというのはどうもふに落ちないわけです。古いものについては、私はこれは十三条よりももっとゆるくしてやるべきじゃないかと思うのですがね。古い時代には全然こういう制度がないわけなんですから。どうでしょうかね。古いものについては、こういう附則の規定なんというものは、有効、無効が争われるのじゃないかと思うくらいなんですがね。古いやつは、十分これは行政訴訟を起こし得るわけでしょう、民事訴訟を。現在では所有権に基づく裁判でも起こし得る可能性があるわけなんですから。さっきの御答弁によると、判例、学説の発達のいかんによって。いわんや、こういう制度もないときのやつを、これからよりももっと縛り方をきつくしてしまう、ちょっと要らぬことだと思うのですがね。こんなことはむしろ書かぬほうがいい。書かなければ、しからばそういうものについてはどうなるかということについては、これこそ学説、判例によってやっぱり処理されていく問題です。こんなことを書いたら、竹内名刑事局長ともあろう者が変なことを書いたものだということで、はなはだ汚点を残すのじゃないかと私は思うのですが、どうでしょう。
#96
○政府委員(竹内壽平君) まあ最高裁の違憲判決が個々の事件を拘束するので、その他の事件を拘束するものでないという個別効力説をとられる方は別といたしまして、最高裁の多数意見が前提としております対世的な効力を持つということになりましても、その判決の効力というものは将来に向かって拘束するのでありまして、過去の確定した事件についてまでも効力を及ぼしていくかどうかということは考えられないわけでございます。そこで、あの判決を見たればこそ、過去の確定した事件というものは不都合な結果だということがあとから言、えるわけでございますが、
  〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕
それに対しましては、仰せのように、行政訴訟なり民事訴訟なりの方法で、はたして認められるかどうかは別として、そういう救済方法があろうかと思いますが、そういうのに対して、民事訴訟なり行政訴訟なりでやるならおやりなさいということで亀田先生のおっしゃるように放任しておくのがいいか、せっかくこういう十三条の事後救済というかなり手厚い規定を設けましたので、その恩典に浴せしめていく、そうしてその問題を過去の不合理をこの際解決していくという考え方をとるのがいいかという問題で、あとのほうの考え方がよかろうというのがこの案でございまして、私はずいぶんこれは親切に取り扱った規定であると、別に自慢するわけでも何でもございませんが、そうすることによって――これはまあ民事訴訟でもできます。刑事訴訟の結論を民事訴訟へかけるというようなことは、これはもう亀田先生も十分御承知のように、違った法体系に属しますので、ときには結論が違って確定するということもあり得るわけで、なるべくそういうことは手続の面において生じた事故でございますので、刑事手続の範囲内で解決をしていくというのが望ましい姿だと思います。そういう意味から、附則第二項を設けまして、過去の確定した人たち、それは最高裁の違憲判決の及ぶ範囲ではございませんけれども、これもほんとうの意味における事後救済でございまして、そういう道を開いておくのが妥当であるという考え方でございまして、私はその点に関する限りは亀田先生の民事訴訟でまかしておくほうがいいんだという考えとは違った立場に立っておるわけでございます。
#97
○亀田得治君 しかし、過去のものについては、最高裁の判決の趣旨からいったって、当然民事訴訟が第三者から起こし得るわけなんです。その点はお認めでしょう、当然。
#98
○政府委員(竹内壽平君) この点は、起こし得ることが前提になっているというふうに理論としてはそういう議論も成り立ち得ると思うのでございます。しかし、まあわれわれ立案作業に従事しました者としては、いろいろな場合を考えたわけでございますが、昭和三十五年十一月の最高裁の判決の中に、少数意見でございますけれども、過去のものについては救済の方法がないのだ、また、救済をそういう形ですべきでないのだという意見があるわけでございまして、これが多数意見に判例として出たわけではございませんが、そういう裁判官の意見もあるということもふんまえて考えますと、やはり附則第二項のような規定を置いて、もし救済の道がないのだとするならばまことにかわいそうなことであって、ここで救済をしてやるのも一つの解決方法ではないか、そういう点も考慮いたしまして、かたがた刑事訴訟の問題は刑事訴訟で解決をしていくという基本的なわれわれの要請と、今言ったような最高裁の少数意見ではありますがそういう意見もあるということを考えまして、そうして附則二項というような考えに固まってきたわけでございます。
#99
○亀田得治君 過去の問題について民事訴訟で争い得るということは否定はされないのですね。
#100
○政府委員(竹内壽平君) これは私どもとしては否定をするせぬの問題じゃないので、結局は裁判所の解決する問題でございますから、私は理論的には両方成り立ち得ると思うのであります。ただ、最高裁の判決の少数意見の中にそういうちょっと気になる少数意見が出ておるということを申し上げただけでございます。希望としましては、刑事訴訟でできた問題は刑事訴訟で解決をしていく。そのほうが足りぬということで民事訴訟でいくということであるならば、刑事訴訟のほうの規定を十分尽くしてそのワク内で解決をしていのが法律的に解決される道でございまして、別々に解決すれることは好ましくないという考え方はもちろん私どもは堅持しておりますけれども、理論でございますから、こうだというふうにきめつけて申し上げるわけにはいかないと思います。
#101
○亀田得治君 この十三条の規定が附則によって過去のものに適用されたわけですが、十三条の第一項のただし書きもこれは適用になるわけですか。
  〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕
#102
○政府委員(竹内壽平君) それは当然適用があるという考えでございますから、過去のもので施行後十四日以内に権利の保護を求めてくる場合でありましても、すでに五年前に確定してしまったものにつきましては、これは権利関係の安定という観点から、そんなに長期にわたってなお浮動の状態に変更する道を開くということは適当でございません。これは五年ということで限りまして、五年以内に確定したものについて救済の道を開くと、こういうことにいたしたわけでございます。
#103
○亀田得治君 そういたしますと、どうせこの法律は近く公布されるわけでしょうが、現在から去年以前のやつはもう抜かれてしまっておるわけですな、初めから。そう端的に理解できるわけですね。だから、過去のものについては、これから過去五年さかのぼって、それ以後の問題になったやつで、そうしてこの法律施行の日から十四日間内に持ち出したやつを扱うのだと、十三条は簡単に言えばそういうことになりますな。
#104
○政府委員(竹内壽平君) もうそのとおりでございます。それで、それより古いものにつきましては、われわれは望ましい姿ではないけれども、現実の問題としては刑事訴訟なり民事訴訟なりでなお救済の道は閉されているわけではないと私は思います。それは、先ほど申したような理論から出てくるのであります。
#105
○亀田得治君 法務大臣に、長い間お待たせしましたので、最後に一点だけお聞きするのですが、まあ刑事局長にいろいろ問題点についてお尋ねをしたわけですが、それから見ても、この法律の趣旨ですね、これを専門家だけが知っているのじゃなしに、一般の人に知ってもらうということがきわめて必要なんです。ことに、過去のものについては、今もお話がありましたように、法律が施行されて十四日内に手続をとらなければ、この法律による救済は得られない。普通のやり方で法律を公布してなにしておったら、これはいつの間にか過ぎてしまいますよ。だから、したがって、こういう特殊な法律でありますから、特別な扱いが必要なんじゃないか。ただ形式的に公布して足れりというものじゃ私はなかろうと思う。これは大臣のほうでどういうふうにそこら辺のところをおやりになるのかをお聞きしておきたい。
#106
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 先ほど来亀田さんの御意見のように、この法律を施行いたしまして国民にこの趣旨を徹底して周知せしめるということが非常に大事である、重要であるということは、私もよくわかります。そこで、先ほど刑事局長のお答えの中にもあったようでありますが、今その趣旨の徹底について研究をしておるということでございますので、十分徹底して周知せしめることができるように私ども努力をいたしたいと思います。具体的にどういう方法で周知せしめるかということになりますと、ただいまのところ、先ほど局長がお答えした程度のととしか私も答えることができませんから、検討いたしまして、できるだけ御趣旨に沿うように努力したいと思っております。
#107
○亀田得治君 たとえば、私聞きますのは、新聞等ではなかなかやっぱりわかりにくいわけで、ラジオなりテレビ等で法務大臣のほうから適当な内容でお知らせをするとか、端的に言うてそういうことはいろいろの研究の中には入っているわけでしょうか。
#108
○国務大臣(中垣國男君) そういうものを利用するということも対象として検討しておるようでございます。
#109
○亀田得治君 やっぱり従来のいろいろのケースなどから考えますと、なるべくこういうのはこっそり置いておこう、あまり大臣が先頭に立って宣伝すると、われもわれもと押しかけて来られても困るというような感じもあるわけですね。そういうふうなことをみじんも考えてもらっては困るわけでして、そこらを、刑事局長より、これは大臣の心がまえを私は聞くわけです。
#110
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 亀田さん御指摘のとおりでございまして、私も全く同感であります。せっかくこの法律を作りまして、それを大事にしまっておくようなことは、そんなことは考えておりませんから、できるだけこの趣旨が徹底しますようにあらゆる方法をよく検討いたしまして、御要望のとおりに行ないたいと思います。
#111
○亀田得治君 もう一点。こまかいことはまだたくさんあるわけですが、この程度にしておくわけですが、ただ大臣にあまりこまかいことを聞くつもりはなかったのですが、この質疑の過程で一点だけ聞きたいという点ができましたのは、附則の第二項ですね、先ほどから刑事局長と議論をしておる過去のやつです。過去の分について、この法律施行後二週間で手続をとり得る期間を打ち切ってしまうというのは、ちょっと私は親切心が足らぬように思うのですがね。これはどうでしょうかな。せめて一カ月とかぐらいはおいてやるべきじゃないかと常識的に思うのですが、どうでしょうか。これはやっぱりえらい人が高度な判断をしてもらわないと……。
#112
○政府委員(竹内壽平君) 大臣からは何ぶんの御答弁があると思いますが、事務当局の者としてこの立案に当たりました者は、とかくものをかたく考え過ぎるきらいがあるかもしれませんが、参加人の参加の機会を与えられておる期間でございますね、そういうものとの権衡も考えまして十四日という線を出しておりますので、それとの関係で私どもは十四日ということを言ったのでございますが、そういう点を考慮外に置いて差しつかえないということになりますれば別でございますが、そういう点も十分御審議、御検討をむしろ私のほうから賜わりたいと思う次第であります。
#113
○亀田得治君 刑事局長、さすがにやっぱり良識のある御答弁をいただいたわけでして、二条とか三条とか十三条あたりで十四日々々々とこうきておるものだから、まあここも十四日というようなことで、たいした意味を込めているわけではないのだと。そういう軽いものであれば、ともかく過去の人を救ってやろうというのだから、救う期間はちっとぐらい長くしておく。たいした根拠がないわけですから、十四日というのは。だから、少なくともやっぱり一カ月ですね、そういうふうに修正していただきますと、私もこれはもろ手をあげて賛成したいところなんだが、そういうふうにやってもらえないですかね、大臣。
#114
○政府委員(竹内壽平君) 大臣の御意見を申し上げる前に、もう一つ亀田先生の御校勘に浴したいわけですが、この第二項でございますが、おわかりのことでございますけれども、「施行前に確定裁判を知ったものであるときは、」という解釈でございますが、これは、知らなければ「知ったもの」ではないわけであります。その解釈としまして、二週間というものが確定的な期間でなくて、ほんとうに知っておるならば、二週間のうちにおやりを願っていいのじゃないかというように思いますし、もしその二週間を知らなかった、知らなかったことが相当であるということでございますれば、「第三者がこの法律の施行前に確定裁判を知ったものであるときは、」という解釈から、当然その二週間は延びて運用されるものでございますから、実際には一カ月として――こういうことを書かないで一カ月というふうにきめてしまうと、形式的にむしろなってしまうので、こういうことでこの解釈をうまくやりますれば、一カ月が二カ月になってもなお救済の道ができる場合があると思うのでございます。ここは運用の妙だろうと思うのでございますが、いかがでございましょうか。別に固執するというわけでございませんが。
#115
○亀田得治君 「施行前に確定裁判を知ったものであるときは、」それがえらい意味があるようにおっしゃったわけだが、だからといって、二週間を一カ月にできない、してはいかぬという理由にならぬでしょう。ともかく過去のことだから。今現に起きているやつをいろいろな手続を二週間内にとれというやつでなしに、一たん切れているやつなんです。それで、今度おそらく法務大臣はテレビかラジオでおやりになるでしょうが、そうしてそれで初めて知って、それからあらためて手をつけるわけだから、だから、そういう場合にその人がどこにおるかわからぬわけです。やはり書類を出そうと思えば、当時の事件も若干は調べてみなければならぬだろうし、二週間というのは何としても短いですよ。一カ月にひとつ修正して下さい。そのほうがあなたのほうの真心が生きると思う。
#116
○政府委員(竹内壽平君) 重ねて申し上げて恐縮千万でございますが、御承知のように、手続は施行後のできごとにすべて適用するというのが原則でございまして、過去に済んでしまった事柄、法律上確定してしまった事柄に何らかの手を加えるということは、再審とか上告とかこれまたきまった手続による以外には法的安全のために許せないというのが建前かと思うわけであります。この建前をくずすわけにはいかないのでございますが、民事訴訟の方法があるといたしましても、はたして民事訴訟でうまくいくのかどうなのかも私どもははっきりした見通しを持っているわけでございませんので、何としてもアンバランスが現実に起こってくる問題を、多少法律としては異例なことでありますけれども、との附則によって解決をはかっていこうという、まことに私どもの親心というのですか、そういう気持でございます。そこで、今のような二週間というと、いかにも短いようでございますが、これは知らなければ二週間の勘定もできないわけで、ちょうど告訴権者の告訴期間と同じような場合でございますので、そういう程度でよろしいのじゃないかという、やはりそういう気持を私は今も持っておりますが、大局的に見ましたら、また私と違う考え方があるかもしれませんが、立案者といたしますと、その辺が限度ではなかろうかと考える次第でございます。
#117
○亀田得治君 これはこうして法文になってしまったから、えらいこだわられるわけでしょうが、立案の過程でしたら、そんなに私はこだわらぬ問題だろうと思うのです。委員会へ出てしまうと、直すということになると、これまた衆議院に戻したり、めんどうくさいというふうな、かたがた国会も多少荒れぎみだからというような考慮でそういうことをおっしゃっているようにしか感じないわけです。最初の立法の親切な趣旨がどうも消されるような感じがする。だから、もし二週間がどうしても動かせないなら、やむを得ず二週間を経過した場合には、その事情によってそれを取り上げることもあるというような、たとえば本法でも三条の三項あたりでは、参加の申し立てについてそういう規定を置いているわけですね。そういうただし書きでもつけてもらうなら、それはまたそれで二週間の一日おくれた、これは気の毒や、そういうのがまた救っていけるわけなんです。そういうただし書きでもつけてもらうてもいいわけです。
#118
○政府委員(竹内壽平君) ただいまのような場合は、私は解釈で十分まかなえるのじゃないかと思います。先ほど申しました「確定裁判を知ったもの」という解釈ですね、それでいくと思いますし、そこで受け付けてもらえれば、今度は十三条のやむを得ざる事由に当るかどうかというようなことなども判断の材料になりますし、私はこの「確定裁判を知ったものであるとき」の解釈で、今のような一日、二日おくれたからアウトになるというようなことはないと思います。そもそも救ってやろうという趣旨から出た法律でございますから、そういう点は弾力のある解釈が当然行なわれる道があると思います。
#119
○亀田得治君 そういうものは救ってやると言われましても、ちゃんと法律の施行日がきまり、そうして二週間ということの期間がきちっときまっておりますと、いざ事件が提起されますと、提起するほうが歩が悪くなる、どうしても。だから、そういう救ってやる道もあるというくらいにまでおっしゃるなら、簡単に書いておいていいわけですね。たいていどういう法律でもそうなっているんじゃないんでしょうかね。権利関係について一つの期日上の制限をするような場合、重要な場合には、ほとんどそういうふうなことになっているわけでしょう、訴訟法等でも。この場合だけ「ただし、」云々というやつを書かぬというのは、私はちょっとふに落ちぬわけであります。過去のやつにはこの法律は酷です。
#120
○政府委員(竹内壽平君) 何度もお言葉を返してほんとうに恐縮するわけでございますが、過去のものについて新らしい法律で規定するということは異例なことでございますので、そういう扱いをこの附則の中で書くことがいいかどうかということをむしろ心配したわけなんでございまして、過去のものを救済するというのは別の法律で書いたほうがいいという考え方もあり得ると思うのでございますが、附則でやりましたのは、実態として私どもが調査したところでは、第三者没収の事件というものは違憲判決が出たものですから大げさになりましたけれども、事実は非常に少ない案件でございまして、しかも、所在不明、外国に居住するというような理由で訴追ができなかったのでございますけれども、実態といたしましては、共犯関係のあるようなもので、全く善意のものが漏れてそれが不当に権利を侵害されているというような状況は、現実の事件のあれからみると少ないんじゃないかということもありまして、そのようなわずかなもののことでありますならば、附則で過去のものにさかのぼった規定を置くことも、これをもってすぐ違憲呼ばわりもできぬだろう、こういうことで附則を設けることにしたわけでございますが、そういうふうに附則を設けること自体に一応議論すれば問題があろうかと思いますが、これはすべて国民の権利を保護するための規定でございますし、そういう性質の規定でございますので、無制限に広めていくというようなことも、またこれは立法的に見て適当でございません。決して現在の国会の情勢などを考慮した上で私が詭弁を弄するのじゃございませんで、全くの法律論といたしましてさように信じておりますので、そのことを申し上げたいと思います。
#121
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#122
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記を始めて下さい。
 これにて暫時休憩いたします。
   午後二時四十二分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時四十分開会
#123
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告を申し上げます。
 本日、加藤シヅエ君、近藤鶴代君が辞任されまして、その補欠として、大和与一君、温水三郎君がそれぞれ選任されました。
  ―――――――――――――
#124
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、休憩前に引き続きまして、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案に関する質疑を続行いたします。
#125
○岩間正男君 私は、今までとの重複を避けまして、なお、聞きたいことはたくさんあったわけですけれども、時間の関係もありますから、要点だけお聞きしたいと思います。
 第一に、これは法制審議会の議を経なかったわけですね。本法は昨年の最高裁判決の結果立案されたものと思うのでありますが、相当人権に関する重要な法案なんです。なぜこれを法制審議会にかけなかったのか、その理由を伺いたい。
#126
○政府委員(竹内壽平君) この法案は暫定的なものでありますし、非常に急いでおりまして、この国会に間に合わせなければならぬというような関係で非常に急いでおりましたし、本来から申すならば、もちろん法制審議会に付議して、その答申を得てやるべきでございますが、この法案自体の事柄が国民の権利を制限するものではなくて、権利を擁護、伸長する内容の積極的な内容を持ったものでありますし、これは事柄自身手続の問題でありますし、もう一つは、刑法、刑事訴訟法の現行法には一切手をつけないで、刑事訴訟法の特別法のような形で規定されております。そういったような実体、形式等からいたしまして、真にやむを得ませんでしたので、法制審議会に正式には付議をいたしませんでしたが、関係の法制審議会のメンバーの方々にも御内意を伺ったし、また、弁護士会、最高裁判所事務当局、法律学者等の意見をも立案の過程におきまして徴して、過誤なきを期してこの法案を作成したわけでございます。
#127
○岩間正男君 ここに現われた面だけを見ますと、手続規定というようなことになるかと思うんですけれども、しかし、暫定的なものといいながら、刑法改正との関係で今後これはどうなるのか、いろいろそういう点では問題点は、あとでお聞きしますけれども、そういうものを持っているんじゃないか。そういう点からいいますというと、単にこの法案に現われた法文の上だけの表面的な問題だけではやはりこの法案の性格というものは明らかにならぬ点がある。そういう点からいえば、法制審議会にかけなくてもよいというような簡単なものじゃなかったというふうに思うんですけれども、この点はいかがですか。
#128
○政府委員(竹内壽平君) 法制審議会にかけて立案をするのが正しい手続でございまして、私もそれを信じておりますが、真に緊急、必要やむを得なかったものですから、以上のような内部的な慎重な態度はとりましたけれども、やむを得ない処置として法制審議会に付議をいたさなかったわけでございます。
#129
○岩間正男君 まあその急いでいる気持はわからないわけではないのですけれども、やはりこれは違憲判決があって、その判決の趣旨に沿うような面での改正なわけですから、相当慎重でよかったんじゃないか。どうしてこれをこんなに急いで、法制審議会にもかけないで――今国会に間に合わせるといえばそれまでのことですけれども、ここで急速にこの法案を出さなければならないというそういう根拠ですね、これがどうもちょっと不明瞭みたいな感じがするのですが、いかがですか。
#130
○政府委員(竹内壽平君) 昨年の十一月の最高裁判決がありますから、その判決の性格をどう理解するかということでいろいろ意見はございますけれども、一応その判決の性格としましては、一般に第三者没収についての取り扱いとして没収手続が規定していない以上は憲法違反であるという線を打ち出しましたので、今後、関税法だけでなくて、第三者没収の規定してありますもろもろの特別法――刑法の規定をはじめとして特別法の第三者没収については、実体法は違憲ではないけれども、手続がないという理由だけで動かない状態に、凍結されたといいますか、休眠といいますか、そういう状態になってしまったわけでございます。そこで、そういう状態を放置しておきますことは、第三者没収という制度が必要だということで実体法上ありますのに、それが動かない状態になるということでありますので、何としてもできるだけ最小限度の手当をしても動く状態にしておくということは、私ども政府当局の者としましては当然なすべき責務であろうというふうに感ずるわけでございます。
 そこで、それじゃこれの手続をするということになりますと、お聞き及びのとおり、非常に問題点がたくさんございまして、制度を完璧なものにするということになりますと、実体法まで手をつける、さらに特別法の第三者没収に関する規定の整備改善ということもやるということになりますと、これは容易ならざる作業でございまして、とうてい国会会期中に仕事を完了することはわれわれの事務の段階で不可能でございますので、最高裁の違憲判決をよく見ましてどの程度の手当をすれば最小限度違憲のそしりを免れ得るであろうかという点を探究いたしまして、この程度ならばということでこの法案を作った次第でございまして、もし放任状態にしておきますと、現に一方においては麻薬取締法の罰則強化ということが今国会に提案されておるにかかわらず、その法禁物に近い麻薬さえも没収手続がないために没収ができないということになりましては、刑事政策の目的を果たさないわけでございまして、何としても没収しなければならぬものは没収できるような状態にしておく必要があったわけでございます。
#131
○岩間正男君 法制審議会にかけるかどうかということは、だれが決定することになりますか。
#132
○政府委員(竹内壽平君) これは法務大臣が諮問を発するわけでございます。
#133
○岩間正男君 今の非常に急いだという理由もわからないわけじゃないのですけれども、なにせ暫定ということで、刑法改正の問題なんかともからみ、また、実体法、特別法との関連で、今後いろいろな問題が起こっちゃまずいというように思うのです。われわれとしては、やはりもっと慎重を期すべきじゃなかったかというふうに考えるわけです。
 次に伺いますが、改正刑法準備草案七十三条に、(没収の要件、二)として、その一項で「その他公益上没収を相当とするときは、これを没収することができる。」というふうにきめています。「公益上没収を相当とする」というこの条項をどういうふうに理解すべきなのか。これは刑法改正の問題とも関連する問題でありますけれども、この点の解釈について意見を伺っておきたいと思います。
#134
○政府委員(竹内壽平君) 準備草案は、私が会長ということで準備会を設けまして、関係の学者、実務家の方々にお願いをしてこの案を作り出したわけでございます。もとより、政府としての統一見解とかあるいは正式行政解釈とかいうものを出すべき筋合いでございませんので、これはまあ立案者としての立場で準備会が理由を付してこの点についての考え方を準備草案の中で発表しておりますので、その理由書からその意味を御説明申し上げたいと思います。
#135
○説明員(臼井滋夫君) お手元に御提出いたしました「刑法の没収、追徴規定の沿革」という資料がございますけれども、ただいま御指摘の準備草案の七十三条につきましては、この資料の二十三ページから二十五ページまでに理由書の抜粋をつけてございますけれども、公益の必要上という点につきましては、一定の物件が私人の手に保持されている限りは、それが再び犯罪行為に使われる危険性があるためであって、公共の安全の見地からこれを防止する必要があるからであるというふうに説明されております。公益の必要というのは、この理由書にございますように、将来の犯罪を防止するといういわゆる保安処分的な保安的な見地から没収を必要とする場合、こういう趣旨に理解されるわけでございます。
#136
○岩間正男君 これと似たような問題で、「公共の福祉」というようなことがいろいろな取り締まりに当たって使われているのですが、「公益上没収」というのが今の保安という立場から拡張解釈されてどんどん使われるという事態が起こるというと、非常に重大な人権の問題に発展すると思うのですが、こういう点についてどういうふうに考えますか。
#137
○政府委員(竹内壽平君) 没収という制度の中身をよく検討してみますと、なぜ犯罪の用に供したり犯罪を組成したという物件を、犯人の所有・占有しているものを、その状態から国庫に取り上げてしまわなければならんかというこの中身に入ってよく検討してみますと、その必要性なりは二つ考え方があるとされているわけで、その一つが、今の保安上の問題、もう一つは、その犯人に対する刑罰的な意味、罰という意味、こういうふうに理解されているわけでございまして、今お話のございました公益上の没収というのは、保安上の性格を持った没収のことでございまして、これは端的に申しますと、いわゆる第三者没収という形のものがそれに相当するというふうに思うわけでございます。
 そこで、その二つの性格がありますことは、学問上もこれは否定できない事実でございますが、それじゃそれを没収する要件なり効果なりというものにつきましては、準備草案の七十三条以下に規定しております実体規定の定め方、これが最も適切であるかどうかということにつきましては、多少問題がないわけではございませんで、現に私どもの手元においてさらに検討を加えている段階でございまして、御趣旨の点は、将来の法制審議会の審議に際しまして十分慎重に検討していただくように私どもとしても手を尽くして参りたいというふうに考えます。
#138
○岩間正男君 これは、拡張解釈そして乱用のそういうおそれが相当起こる事態もあると思うのですね。それを起こさないという保証はあるのですか。これは何かそういう立法上の措置というのは考えているんですか。
#139
○政府委員(竹内壽平君) 保障と申しましても、この法案の十三条のようなものも事後救済の手続でございますが、もちろん準備草案で没収制度が本格的に定められます場合には、実体法の点においても概念をはっきりさせる必要がございますし、その実体法に基づいて没収が現実に行なわれようとしますときは、その手続において明確な手続によってやるべきでございますし、さらにまたそれに対しましては事後救済の道を開かなければなりませんし、それでも没収はしなければならん、本人には損害をかけるという場合は、国家補償というような線、このようなことが没収に伴う保障的なもろもろの規定であろうと思いますが、そういうものは当然立法過程において用意されなければならんことだと思います。
#140
○岩間正男君 この問題と関連するんですが、本法の立案にあたって、あなたは、西ドイツ秩序維持法が権利保護に欠くるところがない法律と考えて参考にして作ったということを言われておりますね。一体、西ドイツ秩序維持法というのは、どんな目的をもってこれは作られた法律なんですか。
#141
○説明員(臼井滋夫君) 西ドイツの秩序違反法、これは、正確には、一九五二年三月二十五日に制定されました秩序違反に関する法律という名称でございますが、この法律は、日本で申しますところのいわゆる行政罰則、各種の行政取締法規におきまして定めております各種の犯罪につきまして、これについての総則的な規定、すなわち行政罰則全般に通じます実体法規における総則的な規定と、それから一方でこの行政罰則に該当する行為につきましての違反行為につきましての一般的な手続規定と、この両者を数十カ条にわたって規定したものでございまして、没収につきましては、この法律の中で、実体法、手続法の両面にわたりまして行政罰則で規定しております没収規定全般についての実体的要件、手続的要件を総合的に規定しておりますが、具体的に申し上げますとこの法律の第三章の十七条から以下二十六条までに規定されておるわけでございます。ちょうど西ドイツにおきましても、わが国におきますと同様の没収に関して議論があるわけでございまして、実体規定の面では日本の憲法の二十九条に相当いたします西ドイツの基本法――いわゆるボン憲法でございますけれども、その十四条との関係で第三者没収についていろいろ議論がございます。また、手続規定の関係では、わが憲法の三十一条に相当いたします基本法百三条との関係−百三条は、何人に対しても法律上の審問を受ける権利を奪われないという趣旨の明文がございますが、実質的な点では告知、聴聞の機会を保障した日本の憲法三十一条と同趣旨、類似の規定でございますが、それとの関係におきましてこの秩序違反法はドイツ連邦共和国基本法すなわちボン憲法の成立後にその趣旨に即応するように実体規定の面でも手続規定の面でも整備された法律として非常に賞揚されておるわけでございます。ドイツ刑事訴訟法でも第三者没収について一定の権利者の参加の機会を与える趣旨の規定がございますけれども、刑事訴訟法の規定はなお必ずしも完璧なものでございませんけれども、刑事訴訟法の規定をさらに発展させまして、広く第三者に権利保護の機会を与えて、しかも事前事後にわたって十分な告知と聴聞の機会を保障しておるものでございまして、こういう規定は他の諸外国の立法例でもこれほど整備された規定は少なくとも私どものほうで調査いたしました限りではございませんで、そういう意味合いにおいて第三者没収についての手続規定を作る上において参考にし得る最も有力な立法例というわけでございます。
 そういう意味合いにおいて、一つの考え方としてそれに範をとった部分もある、こういうことでございます。
#142
○岩間正男君 全般的に見て参りますと、刑法改正について法務省は西ドイツの法令を非常に重要視しているようですが、そう考えていいわけですか。どうですか。
#143
○政府委員(竹内壽平君) 西ドイツの法律を特に重視しているというのではありませんで、私どもは、私どもの手で調査できる限り、英米法系統の法制、それから大陸法系統の法制、ドイツ、フランス、イタリー等の法制、それから新しい刑法といたしましてユーゴスラビアの刑法なども私どもの目に触れるところでございまして、あらゆる国の法制につきまして調査をいたしておりますが、特に日本の刑法はドイツ刑法を母法としております関係上、解釈運用につきましてもドイツ法の解釈運用がかなりわが判例の中にも取り入れられておるようないきさつがございまするので、刑法改正の際にこれが参考資料になりますことは申すまでもございません。特にドイツ法は最近一つの結論を得まして、一九六二年の草案が現にドイツの連邦議会に提案されてただいま審議中でございまして、それらの資料なども、われわれの立法作業にいろんな学問的な意味において貴重な文献でございます。そういう意味で高く評価はいたしております。
#144
○岩間正男君 西ドイツでは法律が第三者没収を認めているわけですが、ただその中で真の例外として、内乱罪、国家に対する危害罪、背反罪、外国に敵対する行為というような国家的重大犯罪、こういうものなどにも適用されることになっているわけですね。そうして、一九五六年に西ドイツ共産党が不合理にも解散させられたとき、第三者没収としてこの規定が大衆団体その他にまで適用の範囲が広げられた。こういう例について、これは御存じだと思うのですが、こういう点はどうお考えになっておりますか。
#145
○説明員(臼井滋夫君) ただいま仰せの問題は、ドイツ刑法の各則の中で個別に没収規定が規定されております。ドイツ刑法の総則規定では、四十条におきまして原則的な没収規定がございます。これはわが刑法の十九条に相当すべき規定でございますけれども、この四十条の規定は、犯人の所有物または共犯者の所有物に限定いたしておりますが、各則の規定の中に第三者没収を広く認めた規定があるわけでございまして、たとえば、内乱罪につきましては刑法の八十六条、それから国家に対する危害行為につきましては同じく九十八条、それから背反罪につきましては百一条、外国に敵対する行為につきましては百四条のbと、まあこういうふうに個別に規定されております。もちろん、こういった国家的な犯罪に限りませず、たとえば、通貨偽造罪についての百五十二条とか、あるいは窃盗罪についての二百四十五条のaとか、その他もろもろの個人的法益、社会的法益に対する罪につきまして個別に第三者没収を認めた規定があるわけでございます。
 今仰せの事案そのものは詳しくは承知しておりませんが、たぶんこの刑法各則に規定されております個別的な第三者没収の規定の適用があった事案ではないかと、かように推察されるわけでございます。
#146
○岩間正男君 この点、刑法の改正の場合、第三者没収の問題がこの暫定法でなくもっと本格的に立法されるとき、どういう措置をとるのですか、こういう問題は。ドイツの法律を手本としているわけなんですけれども、これは真の例外というようなことで規定されていて、普通一般の場合じゃないのだということなんですけれども、実際は西ドイツ共産党の解散の場合にはこれが適用されたわけです。そうして大衆団体が非常に打撃を受けたわけなんです。こういう問題について、どういうふうな見解を持っておられるのですか。この点をやはり本法案の審議と関連して明らかにしておくことは非常に私は重大な問題だというように考えているのですが、これはいかがですか。
#147
○政府委員(竹内壽平君) これは今後法制審議会において慎重に検討すべき問題でございますが、わが国の刑法は、伝統的に刑法自体各則の中にたくさんの没収規定を設けるというようなことの立法形式をとっておりませんで、現行刑法で申しますならば十九条でございますが、これにかえて準備草案のような、没収というものを附加刑というような考え方でなく、没収制度というものを独立の一つの制度として認めるような方向にいくのじゃないかと思います。
 問題は、ドイツでは刑法の各則の中の今臼井参事官から申し上げましたような各罪について、かなり国家的犯罪について厳重に没収規定を設けておりますが、日本では、そういうようなことはなくて、賄路罪の中に没収にかえて追徴というような特別の規定を置いているほかは、あとは総則の規定でまかなうというような態度を大体とってきております。この考え方は伝統的なものでございますので、将来の刑法におきましてもあまり根本的な改革はないんじゃないかと思います。
 ただ、特別法の分野におきましては、これは行政目的を達成するために、刑罰だけでなく、犯罪の用に供せられました物件を没収するという、行政目的を達成する上でやむを得ないことであろうと思いますが、こういう没収の制度というものは、日本としてはむしろごく最近のことでございますけれども、諸外国におきましてはかなり古くからそういう制度が設けられておりまして、これは逐次拡張されていくような傾向にあると私は見ておりますが、日本におきまして、刑法の改正とは別個に、そういう行政罰則における第三者没収の実体法を法目的に合わせて、あまり過不足のない、オーバーな没収規定になっておったり非常に足らない状態になっておったり、まあ足らないのがあるかどうかわかりませんが、そういう意味においての検討を将来加えて、刑法の総則における没収の規定の精神に沿った特別法の没収というものを整理していく必要があると思います。
 方向としましては大陸法の系統でありながら、ある意味では日本の法律は非常に弾力性のある法律になっておりますが、外国の、ドイツ、フランス等の刑法を見てみますと、非常に細分化されておりまして、そのために総則にも没収の規定の総則があるかと思えば、各則の中に実体規定が幾つもあるということで、そういう点ではむしろわが国の刑法は整理統合されておるような状態であります。新しい刑法もそういう状態のもとに進行すると思いますので、ドイツ法のような形が日本の中に取り込まれてくるというようなことは、今の段階で推則を申し上ければ、ないというふうに申し上げるほかないと思います。
#148
○岩間正男君 「今の段階で」という御答弁があったわけですけれども、今私たちが問題にしているのは、「法曹時報」を読んだのですが、その中で、最高裁の亀岡調査官が西ドイツに派遣されて、その報告を寄せているわけです。その中でこういうことを言っている。「元来、没収・追徴は、犯罪に関係があり、且つ犯人の所有する物に限って、これをなすべきものではあるが、或る法目的を達成するためには、敢えて第三者の物に対する没収・追徴をも辞すべきでない場合もあり得る。」、「或る法目的を達成するためには、」、ここのところは非常にやはり問題点じゃないかと思うのです。結局、「或る法目的を達成する」というのは、いろいろの場合があると思いますけれども、突き詰めていったら、さっきあげた内乱罪、国家に対する危害罪、背反罪、外国に敵対する行為というような国家的重大犯罪、こういうものをさしているように思うのですが、いかがですか。
#149
○政府委員(竹内壽平君) その「法目的を達成するため」という意味は、抽象的に言えばそのとおりであまりしょうが、もう少し具体的に申しますと、先ほど私が申し上げましたように、行政法の分野におきまして、行政目的を達成するために、関税法、酒税法等の税法関係の税目的を達成するために、その範囲内において第三者没収にいくととがあるということを意味しているのだと思います。岩間先生は最もよく御存じだと思いますが、この没収制度は、全面的に洗いざらい没収するというようなことは、これは日本の法制にはないわけでございますが、このような法制は外国には沿革的に見ますとあるわけでございまして、アメリカなどでは、このような全面的没収というようなものはもちろん憲法違反になるというような判決もあるようでございます。これに反しまして、ロシア刑法あるいは東欧諸国の国々におきましては、国家的犯罪につきましては全財産の没収を認めておる法制もあるようでありますが、これは、われわれの理解いたしますところでは、わが国の憲法に照らして考えますと、やはり問題であろうと思いますが、これは、それぞれの国の国柄、法制、その国の憲法等との関係において理解しなければなりませんので、一がいに申せないわけでございますが、今お示しの法目的というのは、主として行政法の分野において、行政目的を果たすため、その行政法の法目的を果たすために必要な限度においてという意味だと私は理解いたします。
#150
○岩間正男君 今の御答弁ですけれども、これはむろんそういう面があると思うのですが、真の例外としてという規定で設けられておる。真の例外というから、法律の条文の上では非常に事例が少ないような印象を受ける。ところが、西ドイツの例を見ますと、最近国家危殆罪条項が非常に猛威をふるっている。西ドイツの弁護士らが一九六一年に述べているところによると、起訴件数が数千件に及んでいる。調査が行なわれた件数は十万件に及んでいる。このように乱用が盛んなんです。これは今の西欧間におけるところの姿ですよ。NATOの側に属して、そしてこれに対して再軍備に反対するドイツ国民の運動が盛んになっておるのですが、それを押え、そして西ドイツ基本法、ボンの憲法、これがとうとう改悪された、こういう事実を考えますと、この例外規定というやつは、いつでも実は法の中で非常に大きな問題を起こす。例外とかそれからほんとうに特殊だというような形で立法措置としてされるけれども、その適用、運用の面でこれの拡大解釈が行なわれ、そうして今のような目的を達成するという事態が非常に起こる。この問題は、今法務省が考えている刑法改正の問題と関連して、どうしても私はこの法案の審議の中で明らかにしておくということは重要じゃないかというふうに考えるのです。これは日本の現実がどうもそういうことを要求しているのじゃないか、そういうふうに考えますが、この点はいかがですか。ただいまのような御答弁では非常に不十分だ。はっきりそれならそういうふうに、西ドイツの法律を参考にするにしても、日本ではすぐそれを適用しないのだ、こういうようなことがここではっきり言明できるのかどうか、その点をお伺いしたい。
#151
○政府委員(竹内壽平君) 西ドイツの法律を参考にいたしましたのは、繰り返して申し上げますが、秩序違反に関する法律の中で、第三者没収をする場合の手続を定めた規定が、訴訟参加のような、つまり事前の手続において訴訟参加の形をとっておるということ、それからそれだけではなくて、事後救済の規定を設けている、そうしてそれらが、学者の批判によりますると、第三者没収の手続としては最も進歩的な形態を整えた法律であるというようなこと、そういうことを私どもがこの法案を作成するにあたりまして参考にいたしたのでございまして、ドイツ刑法の中にあります国家に関する安全を保護するための規定その他が日本の刑法を今後作る場合にどの程度に参考になるかどうかということは全く別途でございます。私が参考として価値があると申しますのは、そういう規定があるから、そういうところが大いに参考になるという意味で申し上げているのではなくして、日本の刑法が、大体ドイツ法を母法として作られておる現行刑法、そしてまた、どこの国でもそうでございますが、刑法は逐次改正、進化しておりますけれども、一挙にその法制の建前が変わるということはあり得ないことでございまして、イエーリングが申しておりますように、ローマ法を通してローマ法の上に出るのであって、決してローマ法を飛び越えてローマ法の上に出るのじゃないのでありますから、そういう意味においてドイツ法が私どもとして参考になるということを申しておるわけでございます。もちろん刑法の改正は将来の問題でございますし、法制審議会の審議期間もいくら早く考えましても三年はかかるであろうという見込みでございますので、この法制審議会の審議の過程において論議されますことも、あるいは国会で御審議の過程において御質問等もあるかと思いますので、そういう機会にはできるだけ私どもは御説明申し上げまして御理解を深めつつ今後作業を続けて参りたいと考えております。
#152
○岩間正男君 今一応の御答弁を聞いたんですが、どうも最近の日本の政治情勢、さらに最近のアメリカの核戦略体制の中に日本の国土と国民をあげて編入する、そういう中で、軍国主義の復活、一方では不敬罪のようなものまで刑法改正の中で論議されている。そういう事態を考えるというと、今の御説明をこの法案が通るために一応そういうような答弁をされておるというようなことでは、これはまずいと思うのですね。はっきりほんとうにそういう態度をとるのなら、ここで表明されるのかどうか、そういう点を私はお聞きしたいと思うのですね。これはまあ法務大臣にそういう点では出席を願ってそして明確にしなければならないと思いますけれども、どうお考えですか。
#153
○政府委員(竹内壽平君) いろいろ深い御疑念があるようでございますが、準備草案は、政府の案ではもちろんございませんが、私も会長という建前で参画しております。この案でございますが、この準備草案をごらんいただきましてもわかりますように、国家的犯罪につきまして没収規定は一条もございません。日本と西ドイツとは国情も違いますし、私どもの考え方も違うわけでございます。
#154
○岩間正男君 まあ一応御答弁はお聞きしておきまして、最後に結論的にお聞きしたいんですが、政府の本法改正の基本的態度についてはどうなんですか。本法律は、最高裁判決があったので、ただ憲法違反と批判されないように穴埋めをするために、また、行政府の当面の責任と実務を糊塗してやりやすくするための便宜的な立場でなされたのか、それとも、憲法のもとで当然保障されている国民の権利と利益をまじめに、まあ少部分といえどもあくまで守っていくんだ、こういう立場からこの法律を改められようとしているのか。こういうような問題を提起してお聞きするのは失礼に当たるかもしれぬわけですけれども、これはどういうことなんです、一体。
#155
○政府委員(竹内壽平君) これは、繰り返し申し上げておりますように、最高裁判所の違憲判決に対応いたしまして、このままの状態で置きますと、没収することとされておる実体法が動かなくなる状態でございますので、これが動くことが最小限度できますように、違憲の判定を受けることなくして動くことができますように最小限度の手当をいたしまして、将来において全般の刑法の実体規定それからそれに伴った手続規定の改正をしたい。それまでの間の暫定的な措置といたしましてこの法案を立案し、また御審議をわずらわしておる次第でございまして、他意あるものではございません。
#156
○岩間正男君 ここでだいぶこの法律は同僚議員からも詳細に審議されたんですが、その審議の過程にあたっても、最高裁の違憲判決、これを技術面、手続上の問題で一応解決するために作られたんだ、しかしまあ非常にいろいろな点で不十分なところがあるということは承知して出された。拙速といいますか、便宜的といいますか、そういう面が相当あると思うんですね。で、この点は、やはり非常に問題もあるところだというふうに考えられます。
 あくまで憲法を守って、わずかでも国民の権利を守るというんであったら、国民に広く影響を及ぼして、そうしてしかも関係の深い没取あるいは国犯法の通告処分など、事実上の第三者没収となるそれぞれの規定は、当然のことながら防御、弁解の機会を与えることはもちろん、積極的に国民の権利を保障するようにしなければならないはずだ、そういうふうに思うんですが、ところがそういう点が非常に不十分だ。そうして非常に先を急いでおられて、決して十分だとは思えないという形で提案されている法律というのは、その意味では珍しいと思いますが、そういうやり方の背後に、私が今指摘したような問題について、これは今後この法案と関係して刑法改正の問題の中で、やはりわれわれが注意深く見守っていかなければならない、こういうふうな問題だと思います。
 それで、法務大臣はまだお見えにならぬですか。
#157
○委員長(鳥畠徳次郎君) 今すぐ来ます。
 ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#158
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
 どうぞ質疑を続けて下さい。
#159
○岩間正男君 それでは、法務当局から今までお聞きしたのですが、最後に大臣に二点についてお聞きしたいと思います。
 一つは、この法律は、最高裁の違憲判決の結果、その違憲判決の精神を貫くために作られたと。ところが、相当人権に関する問題ですから、急がなくちゃいけないという理由もわからないわけじゃありませんけれども、当然法制審議会にかけなくちゃならなかった。しかし、法制審議会にかけるとどうも意見が出て時間がかかる、とても間に合わない、こういうようなことで、拙速で十分に完全な法律でないという形で提案されたわけですけれども、法制審議会にかけるかどうかということをおきめになるのは法務大臣の権限であると思いますのですが、法務大臣としてこの点はどういうふうにお考えになりますか。
#160
○国務大臣(中垣國男君) この法律案を提案いたします前に、いろいろ省議を開きまして検討したのでございますが、違憲判決がありましてから、第三者没収の手続の規定等を何らかの形でここに法律として制度化しない限り、支障をいろいろ来たすという問題がありましてこの提案をしたわけでございますが、法制審議会にかけなかった理由といたしましては、実はかける時間的な余裕もございませんでしたし、先ほど来局長からも答弁があったかと思うのでありますが、必ずしも関係の全部を審議し尽くした法案ではないのでございまして、さしずめ、まずこれだけの規制をすれば違憲にならない手続その他のあれがあるということを考えましてやったわけでございまして、決して法制審議会にかけたらこれが今国会に間に合わなかったであろうとかなんとか、そういうことでやったわけでは実はございません。
#161
○岩間正男君 時間の関係がありますから、第二の要点をお聞きしますけれども、この法律を作るにあたって西ドイツの法律が非常に参考になっているわけですね。ところが、西ドイツでは第三者没収を認めているわけですけれども、その中で、真の例外という形で、内乱罪、あるいは国家に対する危害罪、背反罪、外国に敵対する行為というような国家的重大犯罪に適用されるんだと。そうして、これは先ほども詳細申し上げたのですが、このような条項が、実は今の反動的な軍国主義復活体制の中にある西ドイツの中では非常に猛威をふるっている、こういう事実がございます。で、これは本格的な刑法改正との関連でお聞きしたいのでありますけれども、こういうような面について、これはどういうふうに取り扱い、どういう態度をとるのか。局長の先ほどの答弁では、まあ西ドイツの法律は参考にするんだと、しかし、そういうものを入れるかどうかということについてはこれは今のところはっきりしない、こういうふうに大体聞いたわけですけれども、一方では、刑法改正に伴って不敬罪のようなものまで復活するような動きもあるやに聞いているんです。そうすると、日本の今の状態では、西ドイツに非常に似ているような面がある。そういう中で西ドイツの法律を非常に参考にしている。参考にしているどころじゃない、西ドイツの法律を母法としている日本の法体系の中では、当然そういう問題が復活の可能性が考えられる。この点は法務大臣として一体どういうふうにお考えになっていますか、この点をお伺いしたいと思います。
#162
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 まあ岩間さん御承知のとおりに、このたびの第三者没収の手続に関する法律案につきましては、御指摘のような何らの意図もない、単に手続を明確化したにすぎない、これだけのことでございますが、刑法改正の問題につきましては、五月二十日に、法制審議会に法務大臣は、刑法を全面的に改正する必要があるかないか、もしあるとすればいかなる点があるかということを諮問したわけでございまして、別に、法務省が原案を作りまして、こういう改正をしたいから御審議をいただきたいという建前には実はなっていないわけでございます。まあ西ドイツのことは私はよく存じませんけれども、そういう西ドイツの刑法がどうなっておるか、全然私はしろうとで存じませんが、そのようなものが内容的にそれを応用するとか、それが日本に取り入れられるとか、そういうことは私はないと思います。やはり現在行なわれておる刑法の欠陥をどういうふうにして是正するかという問題が中心ではないかと思います。そこで、法務省といたしましては、昭和三十一年以来これにつきまして刑事局で検討をいたしておりますので、いわゆる原案とかなんとかいうものじゃございませんけれども、一つの草案というようなものは持っておるのでありますが、もし法制審議会が必要であるからそういうものを出してくれということでありますならば、いつでも提案をする用意がございますけれども、私の考え方によりまして、まず原案等は出さないほうがいい、しかも自由な立場で十分御審議をいただくというそういう建前を堅持したい、こういうことで諮問を発したわけでございまして、あらかじめ、たとえば御指摘のような不敬罪等につきましてこうするとかああするとか、こうしてほしいとかいうような意図等は全然持っておりません。全く古い、五十年も使って参りました刑法が、もうすでに今日の日本に合わないところもありますし、何と申しますか、つぎはぎだらけになっているという感じがするのでありますから、こういうものをすっきりすることは前々からの主張でもあるし、ちょうど今時がきたと、そういう感じがして出したのでありまして、刑法改正と同時に御指摘のような御心配のようなそういう方向へ持っていこうなどという考え方は持っておりませんから、御承知おきいただきたいと思います。
#163
○委員長(鳥畠徳次郎君) 他に御発言もないようでございますから、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#164
○委員長(鳥畠徳次郎君) 御異議なしと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。――別に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#165
○委員長(鳥畠徳次郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#166
○委員長(鳥畠徳次郎君) 多数でございます。よって、本案は、多数をもって原案どおり可決することに決定いたしました。
 なお、議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#167
○委員長(鳥畠徳次郎君) 御異議ないと認めます。よって、さように決定いたします。
  ―――――――――――――
#168
○委員長(鳥畠徳次郎君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 亀田君から発言を求められておりますので、これを許します。
 速記をとめて。
  〔午後四時四十分速記中止〕
  〔午後五時三十七分速記開始〕
#169
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記を始めて。
#170
○亀田得治君 簡単に吹田事件の善後措置について、大所高所からのひとつ考え方をお聞きしたいわけです。
 すでによく御存じのことと思いますが、本件が発生しましたのは昭和二十七年の六月で、当初は百十一名が起訴されたわけですが、その後死亡したりいろいろなことで現在は百二名、こういうことになっておるわけです。
 せんだって第一審の判決が十一年目におりたわけですが、結局起訴の中心でありました騒乱罪、威力業務妨害といったような点が裁判所において認められなかったわけです。つまり、もう少し実質的に申し上げますれば、約八百名の諸君がずっとこうデモ行進をやった、このこと自体を騒乱罪といったようなとらえ方はできない。ただし、そのデモ行進の途中で個々の人がいろいろ暴力をふるったり火炎びんを投げたりしたことは、全体のこととは切り離して、それはやはり責任を追及するというふうな立場から、約十五名の方が有罪、こういうふうに認定をされているわけなんです。
 当初非常に大がかりな起訴であり、それに比較いたしますると、結果としてははなはだ検察当局の立場というものが採用されなかった、こういうわけで、検察当局がこの判決に対してどう出るだろうかということで、特に大阪では非常なやっぱり話題になっておるわけなんです。注目しておるわけなんです。で、私の感じとしても、従来の検察当局のやり方から見ると、自分の立場が相当大幅に却下された、採用されない、これは意地でもここでひとつもう一。へんやり変えてみなきゃいかん、押し返して見なきゃいかんというふうな感じが強く出るのではないかということを実は心配しているわけなんです。もちろん、立場が認められなけりば、法律に基づいて控訴するということ自体は少しも違法でも何でもないわけなんですが、十一年間もかかった裁判であり、その間には被告人の一人一人をとってみますると、いろいろの人権上の問題もたくさん起きておるわけなんです。政治的な立場が必ずしも被告人の人たちと同じでない人でも、法律論は別として、そういう時の経過の中における諸般の事情というものをやはり十分くんで対処すべきじゃないか。これはもう決していわゆる左の人だけじゃなしに、いろんな人がそういう発言を実はしておるわけなんです。この判決を下した今中裁判長自身がそういう感想を述べておるくらいなんです。そういう意味で、私としても検察当局の扱い方というものを実は関心を持っておるわけです。当然大阪地検だけできまるわけじゃない、東京のほうに持ち込んで相談をしてきめる、こういう段取りになっておるようでありまして、当然これは法務大臣としてもタッチしてもらいたいと思うし、公正な立場で処理をしてほしいと思っているわけなんでして、まだ結論はあるいは出ておらぬ段階かとも思いますが、一応この機会に大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
#171
○国務大臣(中垣國男君) 吹田事件につきましての判決は、私も新聞を見て知っておる程度でございまして、本件につきましてどういうふうにするかということになりますと、私といたしましてはかねて検察行政は検事総長を信頼いたしまして一任をしておるわけでございますが、おそらく検察側におきましては判決理由などを詳細に慎重に検討した上でいろいろあとの措置を考えるだろうと思いますけれども、法務大臣としまして、こういうことに意見を述べる立場にある検察官といたしましては、従来の感情等にとらわれることなく、真に公正な立場に立ちまして妥当な結論を出していただくことを希望しておる次第でございます。
#172
○亀田得治君 たとえば昨日の臨時司法制度調査会で検察官の方々との懇談会を持つ機会があったわけですが、そういう場合にもたまたま私もこの問題に触れたわけですが、といいますのは、検察官に若い人がなかなかならない、こういうことがまあよしあしは別として、現実に起きているわけですね。やはり若い人は公安事件というようなものには関心が深いわけです。そういう問題についてどんな処置を検察当局がするだろうか、こういうことがきわめて敏感に響くわけなんです。司法修習生の時代にいろいろ検察庁で説明をしたり、あるいは誤解を解いたりといったようなことも、ある程度役立つかもしれませんが、やはり何といっても注目されている問題について、検察庁というものが、形式的な正義じゃなしに、ほんとうに人の心に触れた正義というものをしっかりつかんでいるんだというふうな感じを与えるか与えないか、こういうことが非常に大きく響くのではないか。これは単に吹田事件だけじゃありません。ほかのことでもいろいろあるわけです。たまたま吹田事件が今こういう段階にあるものですから、その例を引いただけですが、そういう面からも慎重にこれはやってほしいと思うのです。下手をすればよけい志望者が少なくなるし――志望者を多くするためにことさらに曲げてやってくれということじゃない。ほんとうに正義感に合致するような措置をとるということが、そういう検察官の数の問題等にも非常に響いているのだということをまあ申し上げるわけです。
 そこで、まあ大臣は、検察当局が判決をよく検討して、そうして措置をきめるだろうというふうに言われましたけれども、この判決の検討をすれば、これは必ずどうも裁判長は検察の言い分を過度に採用しておらないというふうな感じを検察当局はおそらく持つだろうと私は思う。そうすれば、それだけでいけば控訴だということに当然これは論理的に発展するわけです。私はその点をよく慎重に検討してほしいと言っているわけです。一般の人がこの問題について指摘しておりますのは、ともかく十一年間もこういう事件でたくさんの人をくぎづけにしているという事実について指摘しているわけで、いやそれは何か法に触れることをやったのだから仕方がないのだというふうな簡単な論理では済まされぬ感情というものを一般の人が持っているわけなんです。それは事犯にもよるわけですよ。これが強盗したとか、いや窃盗だとかというようなことであれば、これはまた別です。根本は、当時は朝鮮戦争勃発二年目で、やはり戦争はほんとうにいやだ、単純にそういう気持の人がこれは大部分です。ことに女の方も六名ほどおられます。当時はみんな二十才前後。ほとんど単純なそういう気持なんです。初めてそういうものに行ったという人もおるわけです。それはただ戦争反対というデモがあるからということで、集まって行っているわけです。
 ところが、そういう人が付和随行ということで起訴される。これは罰金だけですね。罰金幾らになりますか。二千五百円くらいでしょう、最高が。そういう人が十一年間裁判にかかり、結婚でもみんな苦労した。しかし、ほとんどいろいろな道をたどって結婚しておる。ところが、しょっちゅう裁判にひっかかっているものですから、一人一人のことを聞きますと、流産があったり、それから夫が会社を休んで公判の日には子供の守をしたり、初めは子供を連れて行った人も相当おるようです。しかし、あとの子供に対する影響が非常にやはり悪い。それで、夫はその日は休む、休みの日を振りかえて。いろいろなことをわずか罰金二千五百円程度の付和随行者がやってきているわけですね。それが三十人おるわけですよ。女性は六人ですが。
 そういう点を、これはもう立場が右だとか左だとかでなしに、ほんとうに人道的な立場で、一体これをどう処理するのが正しいのかということで、大阪で現在はもうあらゆる階層の人が心配している。これを判決に書いてある理屈がどうも気にくわぬからということで控訴する、また上告、また、裁判の進展いかんによってはそれだけで終わらないで、また差し戻しといったようなことに理屈だけをたどってやっておればなる可能性もある。全くそれはばかげたことでして、そういう角度からのひとつ御検討を検察当局に十分やってもらいたいと思っておるわけでして、大臣にぜひそういう人道的な立場からの検討をひとつ最高検の当局に御指示を願いたいというのがきょうの私の質問の結論なんです。検察当局の御検討を待つというのじゃなしに、その点どう裁断が下されるかということで非常に注目しておるわけでして、それを大臣に要請をしたいわけです。どうでしょうか。
#173
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 お尋ねの前段のほうで、裁判がいわゆる十年裁判と申しますか、十年以上もかかっておる、それがためにあらゆる意味で人権が侵害されておるのではないかということでございますが、私も全く同感でありまして、裁判ができるだけ短期間に行なわれることを希望しておる一人であります。刑事被告人という立場に立たされた者が、自分の立場につきまして真実を認定されるということ、それに対して時間が十年も十一年もかかるということ、こういうことにつきましては、いまいろ御論議もあろうかと思うのでありますが、法務大臣といたしましては、できるだけ短期間に裁判されることが望ましいと申し上げる以上いろいろなことを申し上げますと、裁判に干渉するようにとられても困りますので、その程度にしておきたいと思います。
 それから吹田事件につきまして控訴に対しまして法務大臣として検察当局に対して意見を述べたらどうかという御意見でありますが、これにつきましては、従来の例といたしまして法務大臣が積極的に指示するというようなことは、今までは例がないようであります。もし相談でもあれば私は私なりの考えを述べたいと考えているのでありまするが、ここで必ずそういう指図をいたしますという約束をするということはどうかと思います。ですから、法務大臣としましては良心的にこの問題については対処するというところで御了解をいただきたいと思います。
#174
○亀田得治君 ある程度了解できるわけですが、もうちょっと詰めて申し上げますと、三十名付和随行者といったような方がおられるわけですね。少なくともこういうものはこの際人道的な立場からやはりはずしていく、最小限度これくらいのことはもうちょっとはっきりおっしゃってもらっても、ちっとも差しつかえないように思うんですが、どうですか。
#175
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 判決の内容をよく精査いたしまして一応の検察当局は結論を出すでありましょうけれども、ただいま御指摘のとおりに、単なる罰金刑であるといったようなそういうものを十一年もかかってようやく判決が出た、それをまたなお控訴をするというようなことは、私個人といたしましてはそういうことは好ましくないと思いますけれども、しかし、この事件は、個人が中心になって問題になっているのか、いわゆる吹田事件と称するものがもう少し広い意味におきまして問題になっているのか、そういうこともしろうとの私にはよくわかりませんけれども、御意見のほどはよくわかりますので、私としましては良心的にいろいろ考えてみたいと考えております。
#176
○亀田得治君 じゃ、もう一度だけ。もちろん三十名の付和随行者といいましても、検察の起訴の仕方自体は、騒擾のほかに威力業務妨害というものをつけておりますから、求刑は体刑になっているわけなんです。しかし、騒擾と威力業務妨害というのを二つこうくっつけているのが、これは裁判でも争点になっておったんですが、騒擾罪がこれは主体なんです。威力業務妨害的なものは騒擾に含ませて処理しているわけなんですが、付和随行だけだと三十人ほどは罰金だけの対象であるから、それに対して勾留をしたりといったようなこともひど過ぎる印象を与えるので、威力業務妨害にくっつけている。だから、形の上では求刑は皆体刑などをされているわけですが、実質的には今申し上げたようなわけです。だから、そういう点をぜひこの際よく御研究を願いたい。おそらくメーデー事件、大須事件などもこれはまだだいぶ先になるようですが、三つの大きな事件として言われているわけでして、今度の扱いというものが相当やはり一つの前例等にもなると思いますし、慎重にひとつ先ほど大臣が言われたような気持で御検討あらんことをお願いしたい。
 もう一つは、まあこういう長期裁判が起きまして、裁判の途中でもだいぶ批判が出たわけですね。こういう事件について、わずかの関係しかない人まで洗いざらい起訴していくということがはたしてどうだろうかというふうな批判等もあって、たとえばその後に起きた釜ケ崎の事件ですね、ああいう場合には、個々の人の責任を追及するという格好で処理していったわけですね。だから、人数は少ないし、事件としては個々に扱っていくんですから、早く処理もできていっているわけです。で、こういう点等もこれは起訴のやり方の問題でありますが、今後十分気をつけてやってもらいたい。あわせてこれを要望して、時間もありませんから、この程度にいたします。
  ―――――――――――――
#177
○委員長(鳥畠徳次郎君) 加瀬君。
#178
○加瀬完君 私は、捜査が進められております東京、千葉等の選挙違反関係について伺います。
 まず、千葉県知事選挙における松崎と川島国務大臣の根本秘書との関係について調査された点を御説明を承ります。
#179
○政府委員(竹内壽平君) 川島国務大臣の元秘書官でありました根本氏が、過般、東京地検において逮捕せられ、引き続き取り調べ中でございます。勾留延期の措置もとられまして、今月の二十九日が満期になりましょうか、そういう状況で取り調べ中でございます。
 この事件につきましては、実は私どもも、特に大臣からのお話もございまして、干渉がましい措置にならないようにということでございましたので、逐一報告をとるというようなことは特に差し控えて鋭意捜査をしてもらっておるわけでございまして、詳しい内容につきましては今のところわかっておらないのでございますが、逮捕の容疑事実等から推測いたしまするのに、さきに行なわれました千葉県知事選挙に関連しての選挙買収事犯に関した容疑によって捜査を進められている、かように承知いたしております。
#180
○加瀬完君 松崎は根本氏から相当の現金を受け取っているということでございますが、この点はどうですか。
#181
○政府委員(竹内壽平君) 根本の容疑は、千葉知事選挙に関しまして加納候補の当選を得しむる目的で肥後亨氏に百万円でございましたか金を供与したと、こういう容疑でございます。松崎との関係もあるかと思いますが、その点につきましては今のところ報告を受けておりません。
#182
○加瀬完君 根本秘書が、肥後でもけっこうです、肥後に金を渡したのは、これは根本個人の考えで渡したのか、それとも、川島国務大臣その他川島国務大臣にかわる人との関係は全然ないのかどうか。
#183
○政府委員(竹内壽平君) その点は、おそらく捜査の重要な問題であろうかと思いますが、関係があるかないか、個人の金を渡したのであるか、そういう点は、今申しましたように捜査中でございまして、事実私どももわかっておりませんが、捜査の結果によって明らかになることと思います。
#184
○加瀬完君 六月十日の参議院の予算委員会で、川島長官は、千葉県の選挙に関しては、幾人もの秘書がおって、それに全部まかせてある、私としては千葉県選挙には全然関係がないと答弁をされておりますが、検察当局も川島国務大臣の答弁のように御確認をいたしておるのですか。
#185
○政府委員(竹内壽平君) 川島大臣がそのような答弁をなさっておるととは速記録で承知いたしておりますが、検察当局がそのように確認しているかどうかは、私は今までのところ報告を受けておりません。おそらくはそういうふうには確認をしていないのじゃないかと思います。
#186
○加瀬完君 これは川島国務大臣に来ていただいて質問をする予定であったわけでございますが、来られないので、検察当局の調査の内容についてかわって御答弁をいただいておるわけでございますが、幾人かの秘書にまかせたと言っておられますが、幾人かの秘書というのはだれだれですか。
#187
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど来申しておりますように、捜査は相当進展していると思いますが、その具体的な内容についてはあえて報告を受けておらない現段階でございますので、ただいま御質問の点については十分お答えいたしかねるわけでございます。
#188
○加瀬完君 千葉県知事選挙の候補選定の経緯をお調べになっておりますか。
#189
○政府委員(竹内壽平君) 今の買収に関連のあります限り、捜査官としましては調べると思いますが、調べたかどうかという御質問に対しましては、報告を受けておりませんので、お答えいたしかねます。
#190
○加瀬完君 初め川島氏は柴田氏を支持しておったわけでありますが、小川栄一氏が東京湾の埋立権を申請いたしたのに対しまして川島氏が仲介をいたしまして、当時の柴田知事にこの埋立権の許可を要請したわけであります。ところが、三十七年の四月ごろだと思いますが、川島氏が主宰をいたしまして、私は千葉の出身でございますが、与野党の国会議員を集めて、小川栄一氏が埋立権の許可を運動しているようだが、こういう千葉県の県民の利益に非常に大きなつながりのあるものを個人に許可をすべきではない、そこで、千葉県民の利益を守るということで与野党一致して柴田さんをバック・アップしてもらいたい、こういう御発言がありまして、私たちは賛成をしたわけであります。ところが、その後、川島氏は、柴田氏に、先ほど申したとおり、小川栄一氏の埋立権を許可をしろという要請をいたしまして、それは与野党の国会議員の申し合わせとも違うといって、知事、副知事はこれを断わりました。そうしますと、自民党の大臣であって自民党の領袖である自分の言い分を聞けないのかと言って柴田の反対に回ったわけであります。そこで、当時県会議長でありました菅野という人と柴田さんの両方の自民党候補の決選のときに、川島氏は京成ホテルに川島派を集めまして、菅野氏のほうに投票をしろということで、結局菅野氏が決定をいたしました。その次に、菅野、柴田両氏が、こんなにもめておっては仕方がないから、両方でやめて、当時副知事でありました宮沢弘を推そうではないかということにきめて、両氏が辞退をいたしました。ところが、六者会談、五者会談、三者会談という経緯を川島氏が大体主導権をとりまして開きまして、結論は、千葉県人であること、官僚の出身でないことということで、菅野、柴田両氏の間に話し合いがありました宮沢氏をおろしまして、加納久朗氏を決定したわけであります。しかも、加納候補が当選をいたしましたあとで、グランドホテルの川島氏の事務所に知事以下を集めまして、副知事問題で強く知事に川島氏は自分の推す副知事を採れといって要請いたしておりまして、そのとき知事が川島氏の言い分を聞かなかったということで、激怒をして席を立っておる、こういう事実がございます。
 もう一つ落としましたが、その前に、東京会館で三十七年の十月一日、川島氏が音頭をとって、政財界人の、主として財界人でございますが、加納久朗氏の激励会を開いております。そのときに、中央に直結する政治のために加納知事の実現を期すべきだと川島氏は演説をいたしております。
 こういう前後の関係からして、知事選挙に関係がないと言い切れますか。
#191
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど申しました根本前秘書官の関係において捜査をしておるわけでございますので、ただいまお話をいただきましたような推薦の経緯や当選後のいきさつ等についてまで捜査が及んでいるかどうか、これは私は確認をいたしておりませんけれども、捜査をしているかどうかも実は確認がいたしかねるわけでございますが、ただいまお話しの点は、速記録もできることでございますので、地検当局のほうに回しまして御参考に資したいと思います。
#192
○加瀬完君 しかも、実際の選挙運動について、千葉市の教育会館で加納久朗演説会に川島氏は出席をいたしております。船橋市では、加納久朗の宣伝車に同乗いたしまして応援演説をいたしております。それから三十七年の九月十日でございますが、船橋市のヘルスセンターの長安殿というところに千葉県一区の市町村長全部を集めまして、柴田当選阻止を演説をいたしております。それから同年の十月四日、千葉の京成ホテルで、千葉県の市長――野田市を除いて、全部を招集いたしまして、柴田を十日以内に片づけろ、こう厳命をいたしておりますし、さらにここで供応をいたしております。
 こういう事実を――根本氏の背後に川島氏があるかどうかという点での稲葉委員の質問に対しまして、川島氏は、千葉県の選挙に全然関係ないと答えておられるわけでございますが、こういう実際の選挙運動をやったという事実を御確認をされておりますか。
#193
○政府委員(竹内壽平君) 確認をいたしておりません。おりませんが、今お話のような事項につきましては、おそらく捜査の非常に参考になることと思いますので、地検当局のほうにお伝えをいたして参考に資していただくようにいたしたいと思います。
#194
○加瀬完君 川島氏と肥後との関係は、明らかになっておりますか。
#195
○政府委員(竹内壽平君) 選挙関係につきましてどういう関連があるかということになりますと、捜査の内容を私存じておりませんので、はっきりしませんが、今私の承知しておる限りでは、川島国務大臣の前秘書官が取り調べられておるという関係、しかもそれは容疑内容が肥後亨にあてられた供与の事実でございますので、そういう間接的な面においての関係は推知できるわけでございます。ただし、川島長官と肥後との関係につきましては、この選挙だけではなくして、千葉工業大学の関係におきましてすでにこれは刑事事件になって現に東京地裁の公判に係属している関係がございますので、この関係におきましては、特殊な関係と申しますか、そういう関係が記録上推認できるわけでございまして、そういう点につきましては、ある程度の関係を持っておることを承知いたしております。
#196
○加瀬完君 今までのこの問題の質疑の途中で、川島国務大臣は、政治的には肥後との関係はないと答弁をされておるわけですが、そのとおりと検察当局はお認めになっていらっしゃいますか。
#197
○政府委員(竹内壽平君) 政治的関係であるか、一般の社会人としての関係であるかは存じませんが、そこのところは判断がむずかしいのでございますけれども、千葉工業大学の紛争に関連いたしまして、前の理事長にかわって川島さんが理事長になられまして、その前に、川島さんが入られます前に肥後亨氏が中へ介入しておりまして、当時すでに理事になっておられたと思うのですが、そういうことで川島さんが理事長になられ、その後肥後氏に理事から辞任してもらうといったようないきさつがあるわけでございます。そのような行為を政治的な行為であるというふうに見ますと、政治的なつながりがあったと言わざるを得ませんが、それは単なる社会人としての一つの行為である、こういうふうに見ますと、政治的つながりはない、こういうふうに申してもいいかと思います。
#198
○加瀬完君 千葉県知事選挙に、肥後派が三人立候補しておるわけです。この背景に川島さんがいるかいないかということがやはり捜査の一つの問題になっておるのではないかと思います。そこで、重ねて伺いますが、千葉県の知事選挙の第一回立会演説会の市原市八幡公民館で、肥後派の小山壽男は、次のように述べておるわけです。自分らは、近年、川島正次郎先生にたいへん御厄介になっている、その川島先生に御恩返しするため、川島氏の子分として柴田四選阻止に働くのだ、こう言っております。これは三十七年の十月十一日の東京タイムズその他にも載っております。この点を検察当局は御存じですか。
#199
○政府委員(竹内壽平君) 検察当局が知っておるかどうかはもちろん確認をいたしておりませんが、捜査当局としましては、そういう公にされておる資料につきましては、可能な限り収集しておると思いますので、確認しているかどうかはわかりませんが、おそらくは、そういう報道があることは承知しておるのではないかと思います。
#200
○加瀬完君 本年一月の千葉県習志野市長選が施行されましたおり、肥後に、ある新聞社の支店が、習志野市長選に立候補するのかと電話で聞いたことがございます。そのとき、肥後は、自分は自民党の別派である、しかも川島派であり、しかも今度の習志野市長候補の白鳥儀三郎氏は私と同じ川島派である、しかも落選らしい、そういう状況の中で私のほうから候補を立てるほうがよいかどうかは問題があるので、きょう川島さんと相談をしてきめる、こう回答をいたしております。それからさらに、前知事の柴田等氏に対して、わしが県庁で柴田を押えて、立候補すべきでない、それが川島先生の意思だといってこづいてやったと当時吹聴しておったのでございますが、こういうことは、肥後と川島さんの関係について、検察当局としては何か参考になりますか。
#201
○政府委員(竹内壽平君) 大いに参考になると思います。しかしながら、事件の証拠は、やはりそれが証拠能力のある証拠として証拠化されなければ、それをもって確認の資料とするわけには参りませんので、それは今後の捜査にかかると思いますけれども、確かに参考になるに違いないと思います。
#202
○加瀬完君 加納派のポスターと肥後派のポスターは、各地でほとんど同一人によって同一個所に貼られておるという事実は御存じですか。
#203
○政府委員(竹内壽平君) その点は、私はよく存じておりません。検察当局は存じておるかどうか、それは私は確認はいたしかねます。
#204
○加瀬完君 千葉県のにせ検印機が四月の県議選挙にも某県議によって使われたといわれておりますが、某県議とは大野弘忠氏でありますか。
#205
○政府委員(竹内壽平君) その点も、私ども報告を受けておりませんので、内容はわかりません。
#206
○加瀬完君 あわせて警察庁にも伺いますが、船橋、市川、野田等で大野、大川、染谷各氏の県議候補のポスターが特に多かったと話題になっておりましたが、調査をなさいましたか。いずれもこれは川島派でございます。
#207
○政府委員(宮地直邦君) お尋ねのことにつきましては存じません。
#208
○加瀬完君 検察当局のほうでは、この点は御調査がございますか。大野弘忠氏については調査済みといううわさでございますが、いかがですか。
#209
○政府委員(竹内壽平君) 私はその報告を見ておりませんのでございますが、今回捜査しておるということでありますと、私のほうは今回の事件につきましてはまだまとまった報告は受けておりません。
#210
○加瀬完君 肥後の事務所は東京グランドホテルの五百九号ということでございますね。その東京グランドホテルの五百九号を借りるまでの経緯はお調べでございますか。
#211
○政府委員(竹内壽平君) 調べておるかどうか、確認をする方法がないのでございますが、おそらく捜査に関連して必要のある限り調べておるに違いないと思います。
#212
○加瀬完君 それでは伺いますが、千葉県の知事選挙の候補者が、選挙事務所を東京のグランドホテルに置くことは、常識的に見てどうお考えになりますか。これはお調べがなくてもお答えいただけると思います。
#213
○政府委員(竹内壽平君) 私は選挙をやったことがございませんので、その辺の感覚がよくわかりませんが、千葉県で選挙をやる以上は、東京に事務所を設けるということは、私どもの常識をもってすれば普通はあり得ないことじゃないだろうかという感じを持ちます。
#214
○加瀬完君 なぜ常識に反するようなことが行なわれたのか、この点について御調査がございますか。
#215
○政府委員(竹内壽平君) 捜査をしておるかどうか、そこのところは私は承知いたしておりません。
#216
○加瀬完君 一般に、一流ホテルの事務所などを借りる場合は、紹介者とか保証人といったようなものが当然必要だと思いますが、肥後がグランドホテルを借りるについで、こういった点、保証人あるいは紹介者等の点については、当然調査の必要があろうかと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
#217
○政府委員(竹内壽平君) 肥後の選挙違反がその事務所を設けた場所と関連を持って、意味を持つようになりますれば、それは当然調べなければならないと思うのでございますが、現に捜査中の事件について、そういう捜査までやっておるかどうか、あるいはやるべきというように判断しているかどうか、その点も私は確認いたしておりません。
#218
○加瀬完君 肥後派の事務所は、十月三日に東京グランドホテル、十月十四日までここにおりまして、十月十五日、千葉市松波町篠原荘、ここには一日しかおりませんで、あとは千葉市本千葉町の篠原旅館に移ったといわれます。ここにはたえず五人か六人かおったといわれますが、この点の御調査はお済みですか。なお、松崎、三沢等のアジトも篠原旅館というふうに御確認がございますか。
#219
○政府委員(竹内壽平君) そういう調べがついているかどうかという点は、私はわかりませんし、また、アジトの点につきましても、捜査の経過を聞いておりませんので、今お答え申し上げかねます。
#220
○加瀬完君 警察庁はどうですか、お調べになっておりますか。
#221
○政府委員(宮地直邦君) 本事件の端緒は、にせ証紙から出ましたので、警察庁におきましてもある程度本犯については捜査をいたしているのでございますが、その後の捜査過程におきまして検察庁が中心になられておりますので、そういう事実につきましては、私ども承知をいたしておりません。
#222
○加瀬完君 篠原旅館に依頼に来た人はだれだかおわかりですか。
#223
○政府委員(竹内壽平君) 私は承知いたしておりません。
#224
○加瀬完君 千葉県農業会議、この議長は自民党の木島義夫参議院議員であります。この事務局次長の鶴岡氏が篠原旅館に依頼に来ております。この鶴岡氏は、なくなりました加納久朗氏の秘書格の方であります。ここで鶴岡氏は文書の発送や印刷物の指揮をしたといわれておりますが、事実ですか。
#225
○政府委員(竹内壽平君) それが事実であるかどうかはわかりません。
#226
○加瀬完君 これは検察当局ではすでにお調べ済みのはずでございますが、お調べ済みでなければ、調査の対象に値することだとお考えになりますか。
#227
○政府委員(竹内壽平君) 調べておりますかどうか、調べ済みであるかどうか、それも私はわかりません。そういうものは調べるべきであるかどうかという点は、これは捜査の計画等も関係があるわけでありまして、私自身の意見を述べろと申しましても、私はその捜査の計画に参画しておりませんし、どういう状態に進行しておるのかもわかりませんので、しいて答えるならば必要があるかもしれないとも思いますし、また、そこまでいく必要がないとも言えないこともない。結局、私としましては的確な意見を申し上げかねるわけであります。
#228
○加瀬完君 篠原旅館が肥後、松崎等のアジトであるといわれておるのです。特捜は調べておりますよ。女中頭の松子さん、肥後たちの部屋の当番であったといわれておる久子さん、この二人の女中を調べておるはずです。そこで、女中さんたちの関係でこの肥後あるいは松崎という違反グループは篠原旅館に泊まっているわけではございません。篠原旅館の主人の新城洋治さん、この方の交際範囲は川島国務大臣のグループと非常に近しいのです。こういう点は御調査する必要はございませんか。
#229
○国務大臣(中垣國男君) ちょっと、お答えいたします。川島国務大臣の元秘書の根本君は、ただいま勾留されまして、にせ証紙事件を中心に選挙違反者といたしまして捜査を受けておるわけであります。したがいまして、ただいままでに御指摘なされました、あなたの資料がもし正確なものでありましたならば、おそらくそういうことにつきましては捜査当局は十分調査をしておるのではないかと判断をされます。私もまだ実は詳細な報告を聞いておりませんが、これは根本の調査が済みましたならばそういう報告を受ける機会もあろうかと思いますけれども、ただいままでお尋ねになりましたことについて、法務大臣といたしましても一言もお答えができない状態でございますから、資料はないということを御承知をいただきたいと思います。
#230
○加瀬完君 ここには県庁の職員も多数出入しておるという事実がございます。それから根本米太郎氏も出入をしておると言われております。こういう点は当然お調べになるのでしょうね。
#231
○政府委員(竹内壽平君) 必要があればむろん調べると思うのでございます。それ以上どうもお答えのいたし方がございません。
#232
○加瀬完君 千葉県知事の選挙の肥後派のはがきは、大千葉印刷、多田印刷、この二社で印刷されたと言われておりますが、この大千葉印刷と多田印刷と自民党千葉県連あるいは自民党所属の国会議員との関係はおわかりですか。
#233
○政府委員(竹内壽平君) 大臣も先ほど申されましたように、私自身全然報告を受けておりませんので、的確にお答えできないことは残念でございますが、調べる必要があればむろん遠慮なく調べることと思います。現在、調べたかどうかということのお尋ねにつきましては、わかりません。
#234
○加瀬完君 それでは、調べる必要があるかどうかという点で御回答をいただきましょう。千葉県の知事選挙で加納事務所が集めた金は、約一億弱だと言われております。集める方法は、加納さんが立候補するのでよろしく頼むということを名刺に書いてこれを国会議員が三、四十枚ずつ持参をして関係会社を回ったと言われておりますが、当然根本を調べて参りますれば背後の資金関係が出てくるので、調べなければならない必要が出てくると思いますが、こういう点は事実お調べをいただけますか。
#235
○政府委員(竹内壽平君) 捜査計画によりましてそういうことが当然必要になってくれば調べるはずでありますが、そういう必要がなければしないかもしれない。私自身その捜査計画に参画しておるわけではございませんので、先ほど来申しますように、必要性があるかどうかということにつきましても意見を申し上げることはできないのであります。
#236
○加瀬完君 資金提供者として小川栄一氏との関係について御調査はなさっておりますか。といいますのは、小川栄一氏は、知事選挙前、セメント業者を集めて、加納知事が実現すれば埋立権が私に下るので、仕事はいくらでもある、ついては選挙資金を三百万円ずつ出してもらいたいと依頼をいたしております。証人を出せというならば、あとで証人を連れて来ましょう。こういう点は、資金関係として調べられる必要はございませんか。
#237
○政府委員(竹内壽平君) 私としましては、必要があるかないかも実はお答えできないのでございますが、今お話のございました点は速記録にも載ることでございますし、なお、ここで控えさしていただいておりますので、東京地検に、参考になりますかどうか、お伝えをいたしたいと思います。
#238
○加瀬完君 根本米太郎君の容疑は、肥後らに百万円ないし三百万円はがきの横流し代として支払ったものでございます。この肥後ら関係以外に金が流されているという容疑はないんですか。
#239
○政府委員(竹内壽平君) 私の承知しておりますのは、逮捕のときの逮捕令状に掲げてあります容疑事実だけでございまして、その逮捕容疑からどのように新しい容疑が発生しているかどうかということにつきましては、全く私は存じておりません。
#240
○加瀬完君 革新系の千葉県会議員のところに知事選に立候補してくれといって自民党側が金を持って行って断わられたという事実がございますが、お聞きになっておりますか。
#241
○政府委員(竹内壽平君) 全く承っておりません。
#242
○加瀬完君 「週刊千葉」という雑誌が千葉県にございますが、それに載っておるのでございますが、肥後派以外の某氏に金を渡して立候補させたと伝えられておりますが、この点はお調べになりましたか。しかも仲介をした者は川島国務大臣と親交のある某氏であるといわれておりますが、お調べになっておりますか。
#243
○政府委員(竹内壽平君) 承知いたしておりません。
#244
○加瀬完君 六月七日、あるいは八日の間違いかもしれませんが、箱根湯本一の湯で、千葉県出身の自民党国会議員の秘書団会議が行なわれ、ここで鈴木、根本――これはいずれも川島氏の秘書であります。石渡氏等が違反事件の打ち合わせをして、そのあとで根本が出頭したといわれておりますが、この事実を御存じですか。
#245
○政府委員(竹内壽平君) 存じません。
#246
○加瀬完君 三沢らの公印偽造容疑で押収捜索したメモのうち、稲葉委員の御質問にお答えになっておりますように、検討を加えて一部を仮還付したとありますが、そのとおりですか。
#247
○政府委員(宮地直邦君) そのとおりでございます。
#248
○加瀬完君 検討を加えたといいますが、どういう点を検討して返還しても差しつかえないと御判断をなさいましたか。
#249
○政府委員(宮地直邦君) 三沢の事務所を捜索いたしましたときには、われわれのほうの捜索の目的は公印偽造でございました。その疑いをもって捜索をいたしましたので、そのときの状況から見て直ちに証拠とならないんではないかと判断したものを返したという報告を受けております。
#250
○加瀬完君 公印偽造容疑であっても、大ががりな選挙違反の中の一こまとしての公印偽造容疑でしょう。当然押収した書類の中に選挙違反容疑の資料と目すべきものがあれば、内容は十二分に検討されてしかるべきでしょう。仮還付したということでございますから、仮還付ということであれば、内容は当然明瞭になっておるはずでございますが、この中に千葉県知事選挙に関する金銭の授受その他の内容はメモされておらないかどうか。
#251
○政府委員(宮地直邦君) 私は、その還付いたしましたものの内容については承知いたしておりません。
#252
○加瀬完君 おかしいでしょう。仮還付ということであれば、内容は当然検討されているでしょう。内容を検討されて、必要がないと認めたから返したんでしょう。ところが、この中に重要な資料となるべき肥後の金銭授受関係がみんな書かれておった、こういううわさがございます。そうなってくれば、これは内容を存じておりませんでは済まされないでしょう。この点はどうです。
#253
○政府委員(宮地直邦君) 押収捜索の場合におきましては、その押収捜索令状に記載してある内容に限定さるべきものだと思っておるのでございます。その場合に、肥後が参りまして、自分の署名のものについては、三沢の事務所から出てきたものであっても、直接関係がない、署名と申しますか、自分に直接あてたものは関係がない、こういう主張をしましたので、そういうものを一部返した。しかし、捜査の必要が絶対にないという判断をしたわけではございませんので、仮還付という措置をとった、こういう報告でございます。
#254
○加瀬完君 捜査の必要が絶対にないかあるかということは、内容を検討したからわかったのでしょう。しかし、仮還付したものは、もう一回出せと言ったって、それで根本その他を家宅捜索なんかしたっても、出てこないでしょう。それほどあとで捜査しなければならないようなものならば、仮還付して内容がわかっているというなら、これを内容のメモもとらないで仮還付してよろしいということになりますか。
#255
○政府委員(宮地直邦君) 結果的に今の御指摘のようないろいろ状況が出てきておることは事実でございます。しかしながら、その当時の逮捕令状記載の事実と直接関係がないかどうかという点で判断をし、しかし、全然ないかどうかということを直ちに最終的に決定することについては不適当な面もあろうかと存じて仮還付という措置をとったのであります。そういう判断の基準が、現在の時点における容疑ということではなくて、当時の容疑をもって判断をしたと、こういうことなんであります。御了承いただきたいと思います。
#256
○加瀬完君 にせ検印機による検印作業はどこで行なわれましたか。それからにせ検印機を押収した場所はどこですか。これが使われたところはどこということになっていますか。千葉県のにせ検印機です。
#257
○政府委員(竹内壽平君) ただいままでに起訴されておりますものにつきましては、起訴状の写しを私どものほうに報告を受けておりますが、その限りにおいては、検印機を使ったというのはないように係の者が申しております。
#258
○加瀬完君 起訴の事実は私も確認をいたしておりませんが、押収をしておりますね、にせ検印機を。
#259
○政府委員(竹内壽平君) 捜査の内容につきましては、先ほど冒頭に申しましたように、あまり干渉がましいことになってはいけないので、こらえておるので、報告を受けておらないのでありますが、ただ、起訴をしたとか、こういう事実で逮捕したとかということは、これは公にされるべき筋合いのことでもありますので報告を受けております。その限りで私がお答えを申し上げているのでありますが、押収されておってそれがどういうふうに使われたかというのは、まだ捜査中の案件かと思いますけれども、今までのところ私は承知いたしておりません。
#260
○加瀬完君 それでは、あらためて伺いますが、候補者が選挙違反で逃亡等の場合、選挙責任者についてはどういう場合に事情聴取などをいたしますか。これは、一般論ですから、お答えいただけると思う。
#261
○政府委員(竹内壽平君) 御質問の趣旨を私取り違えているかもしれませんが、もし間違っておりましたら御訂正を願いたいと思います。
 候補者が逃亡しておって選挙責任者がいるという場合に、候補者の状況をどうして調べるかということでございますれば、これは関係人につきまして調べるほかないわけでございますが……
#262
○加瀬完君 ちょっと御答弁中恐縮ですが、候補者が逃亡しておるような場合に、選挙責任者はどういう場合に調べられるということになりますか、あるいは、事情を聞かれるということになりますか。
#263
○政府委員(竹内壽平君) その選挙責任者が調べられます場合は二つあると思います。一つは、その選挙責任者自身が買収その他選挙違反の容疑がございまして、それは下のほうの関係になります。その下のほうの供与を受けた者、あるいはその他違反の相手方となった者、その者の証拠がはっきりして参りました場合には、供与者である選挙責任者の取り調べが開始される。それからまた、それらの供述から候補者自身の買収容疑が出てきた場合には、候補者みずからに聞くことができないといたしましても、受供与者という立場その他の違反の容疑で選挙責任者を調べることができるわけであります。また、現実にそうやって調べております。
#264
○加瀬完君 それでは、三十七年の参議院選挙で、いずれも川島氏が責任者でございます全国区候補の河野義一、千葉県地方区の鈴木績両氏は、違反容疑で逃亡をいたしておりまして、留置または逮捕をされております。この点について川島国務大臣に事情聴取あるいは取り調べをなさっておられますか。
#265
○政府委員(竹内壽平君) 鈴木、河野両氏の逃亡の事実につきましては、千葉地方検察庁から報告も受けておりますが、その事件に関連して川島氏が取り調べを受けたかどうかということについては、報告書の中には載っておりませんので、おそらくは調べていないのじゃないかと思います。
#266
○加瀬完君 河野氏の場合は、七月十三日に逮捕状が出されてから、十一月十三日には杉並区の河北病院に入院、同十四日に逮捕に警察が出向いておりますね。七月十三日から十一月十三日まで百二十日以上たっていますね。この間不明の者が入院すると直ちに逮捕できる状況になったのはどういうことですか。
#267
○政府委員(宮地直邦君) 河野義一につきましては、警察のほうにおきまして買収の容疑をもちまして三十七年の七月十九日に指名手配を全国にいたしております。それで、関係者をもちろん捜査をいたしたのでございますが、十一月に至りますまで状況がわかりませんでしたところ、杉並区内のある病院に入院中であるということを発見し、もちろんそのときの状況等は警察は承知いたしております。で、十二月十九日に至りまして警察医の診断のもとに逮捕いたして、なお、病後のことでもありますので、直ちにこれは拘置所に移しておる、こういう状況であります。
#268
○加瀬完君 それはわかっておりますよ。七月十三日から十一月十三日まで百二十日以上不明のままであった者が入院をするとすぐ翌日逮捕に出向けるまでに状況変化をしたというのはどういう理由か。しかも、この百二十日間の足取りはどういうことになっておりますか。
#269
○政府委員(宮地直邦君) 十一月に至りまして発見しまして、警察が逮捕いたしましたのは十二月の十九日でございます。そうして拘置所の病監に――これは検察庁の問題でございますが、入れましたが、二月の二十三日に勾留の執行の停止になっておりますので、したがって、われわれのほうではそれらの状況につきまして詳しく調べる余裕がなかったのであります。
#270
○加瀬完君 それじゃ検察当局に伺いますが、百二十何日間も行くえがわからなかった者が、突如入院をいたしました翌日に逮捕に出向きますという状況変化になりましたのは、どういう理由でございますか。
 それから、この間の、逮捕しているわけですから、足取りはどういうことですか。幇助者などはないのですか。
#271
○政府委員(竹内壽平君) その点は御疑問はごもっともで、私も伺っておりましてその点疑問に思っておったわけでありますが、私どもの御質疑があるということで調査いたしました限りでは、そこの部分に触れておりませんので、これはもう少し調査をさせていただきましてお答えをさせていただきたいと思います。
#272
○加瀬完君 それでは、鈴木績氏の逃亡の足取りはおわかりですか。
#273
○政府委員(竹内壽平君) これは鈴木氏本人の供述がおもな資料になっておるようでございますが、それによりますと、最初東北、北海道方面を転々として逃げ回っておりまして、次いで新潟から広島のほうに回り、さらにまた関東に戻って来たのでございますが、今逮捕しております根本米太郎と電話連絡したところ、自首を勧められたので、弁護士を同道して地検に出頭した、かように本人は述べております。
#274
○加瀬完君 この逃亡期間中の河野、鈴木両氏に対する幇助関係あるいは連絡関係というのはお取り調べでございますか。
#275
○政府委員(竹内壽平君) 逃亡を幇助した者の責任につきまして捜査をもちろん行なっておりますが、結局だれが幇助をしたかということは証拠によって明確にすることができなかったようでございまして、その点は結局はっきりしていないという結論になっております。
#276
○加瀬完君 こういう選挙違反になって逃亡、しかも河野氏は百何十日という逃亡という事実があるのに、単独で百何十日も逃げ回るということは常識で考えられない。この背後関係というものを徹底的に調べて参りませんければ、逃げておればそれでよいというので、相変わらず選挙違反に対する逃亡というのは跡を断たないことになるのではないかと思う。こういう点、一体、調べたけれどもあまりはっきりわからないで済まされる問題でございますか。
#277
○政府委員(竹内壽平君) 逃亡犯人を防ぐためには、逃亡得になったのでは再び犯罪も起こるのでございまして、検察当局といたしましては、この種の逃亡犯人に対しましては徹底的な追及を従来も行なってきておりまして、すでに御承知かと思いますが、一の関の弁護士松川氏の事件のごときは、最後には身柄を拘束してまでも取り調べをいたしまして責任を明らかにいたしておるわけであります。しかし、捜査は、何と申しましても、証拠を積み上げていくわけでございますので、われわれが気持の上では思い半ばに過ぎるというふうに思われる案件でございましても、的確な証拠がなければ逮捕することもできないし、証拠を固めて裁判にかけるわけにもいかないのでございまして、その辺が捜査の苦心の存するところでございますが、鈴木の関係におきましての逃亡、河野の逃亡に関しましては、幇助犯についても捜査をしており、鈴木についてははっきりしているということが書いてございますが、明確にし得なかった模様でございます。
#278
○加瀬完君 東京グランドホテルで鈴木派の違反事案について千葉地検は事情聴取をしたはずでありますが、この事情聴取の対象はどなたですか、案件は何ですか。
#279
○委員長(鳥畠徳次郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#280
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
#281
○政府委員(竹内壽平君) 鈴木派の違反につきまして、運動員が東京のグランドホテルにおいて数名の者に対して百万円余の金員を供与したという疑いがありまして、当時その場にいたといわれる根本米太郎氏ですね、それを調べた模様でございます。
#282
○加瀬完君 うわさによると、川島国務大臣が鈴木氏から相当多額の金額を受けた点について事情が聴取されて、川島氏は、これは党に献金したのだと答えたということがうわさされておりますが、そういう点についてのお取り調べあるいは事情聴取はなかったのですか。
#283
○政府委員(竹内壽平君) 私のほうには報告がございませんので、そういう調べがあったかどうかはわかりません。
#284
○加瀬完君 私の質問は、時間もありませんので、一応これでやめますが、私として伺いました点で刑事局長としてはお答えになれない点、あるいはまた、捜査の関係上明らかにされない点が多々ありましたけれども、一応私の出しました点で問題になりますものについては、十二分に今後の御調査をしていただけるものと了解してよろしゅうございますか。
#285
○政府委員(竹内壽平君) まことにお答えができない点ばかりでございまして、申しわけないのでございますが、御提示になりました事実関係は、捜査に非常に参考になることが多かったと私も考えます。つきましては、先ほど申しましたように、捜査当局に連絡いたしまして参考に資していただくように取り計らいたいと思います。
#286
○委員長(鳥畠徳次郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#287
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
  〔委員長退席、理事後藤義隆君着
  席〕
#288
○稲葉誠一君 大臣にお伺いしたいのですが、国務大臣が国会で議員の質問に答弁するわけですが、そのときの心がまえというと語弊がありますけれども、どういう心がまえが一番正しいのでしょうか。よく――よくというと語弊がありますけれども、積極的な虚偽の陳述をする場合、積極的でなくて消極的と見てもいいけれども、うそを言う場合、当然言うべきなところを隠して言わない場合、いろいろな場合があると思うのですね、そういうことでよろしいのでしょうか。
#289
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 国務大臣の答弁というものは、法務大臣でございましたならば、法務大臣として法務行政に関する質問がありましたならば、知る限り誠意をもってお答えすることではなかろうかと思います。また、法務大臣は、あわせて国務大臣といたしまして内閣全般に対しても責任があるわけでございますから、国務大臣としても誠意をもった答弁をなすべきであろうと思います。まあ、故意に虚偽の答弁をするというようなことは慎むべきだと思います。
#290
○稲葉誠一君 これは法務大臣、あなたのことを言っているわけじゃないんですから、そうお気になさらなくてもいいと思うんですけれども、もし他の国務大臣が、今言ったような形で、積極的にしろ消極的にしろ虚偽の答弁をしているということになった場合、それが明らかになった場合、その国務大臣は政治的な責任というものを当然議会に対して負うべきだと私は考えるんですが、それはどうでしょうか。
#291
○国務大臣(中垣國男君) 国務大臣が国会におきまして答弁をします以上は、その大臣自身の責任におきまして答弁をなすわけでございますから、その答弁が無責任なものでありましたならば、やはり自分の良心の判断に従いまして責任を負うべきものだろうと考えます。
#292
○稲葉誠一君 無責任ということになると、これは判断のいろいろな問題が出てくると、こう思うんですね。私の言うのは、虚偽の答弁をした場合、虚偽の内容は、消極的な虚偽もあり、積極的な虚偽もあるだろう、そういう答弁をした場合、当然その大臣は政治的な責任を負うべきである。場合によっては内閣が責任を負うべき場合も生じてくる。これはイギリスなどではもうはっきりそういう例がとられているわけですね。イギリスなどでは、あいつはうそつきだと言われるのが一番の大きな侮辱になるわけですから、そういう点は当然すぎるくらい当然だと、こう思いますので、ちょっと念を押して、最終的に法務大臣にお伺いするわけです。
 そこで、ことしの六月十日、参議院の予算委員会で私がいろいろ質問をしました。その中で、国務大臣川島正次郎氏の答弁が速記録に出ておるわけです。その二、三の問題について私はお尋ねをするわけです。これは法務省に関係をすることが非常に多く出ておるわけですから、法務省の責任においてもこれは事実を明らかにしないと疑惑を招くことだと、こう考えるわけです。ところが、きょうはもう七時で、ちょっと時間がおそくなっておりますから、私は要点だけをお聞きして、そしてきょう答えられないことがあるかとも思いますが、それは次の七月二日に必ず答えていただきたい。このときは大体三時間から四時間の範囲で大臣を中心としてお答え願いたい、こう思うわけです。川島さんが出席せられれば一番いいんですが、川島さんは何か出て来られないようですから、そのときはそのときの話で、出て来るようにまた私のほうでも努力いたしますが。
 そこで、この中で、これは法務大臣もお聞きになっておられたと思うんですが、刑事局長も聞いておられたという話ですが、肥後亨に川島正次郎氏が金を渡したことがある。で、「肥後君が理事をやめるときは、全然条件はありません。けれども、その後数カ月たちまして、理事会の席で幾らか肥後君に渡しております。これは当時検察庁でも問題になった事件でありまして、千葉の検察庁の了解も得て渡しております。」、こう川島大臣が答えておるのをお聞きになったと思うんですが、川島さんが肥後亨に金を渡すのに一体千葉の検察庁の了解を得たということはどういうことなんでしょうか。これはもう検察庁の名誉にかけても明らかにしなくちゃいかんことだと思うので、私は再三千葉地検のほうにも連絡をとって、調べていただきたいということを申し上げました。その当時の係の検事の名前も私はお教えしたわけです。今東京地検に来ている佐藤道夫検事、あるいは五味検事、あるいは、この関係で調べているのは東京高検の築という検事。名前まで私はお知らせしておるわけなんですが、これはどういう事情なんでしょうか。これは大臣のほうでわかりませんか。聞いておりませんか。
#293
○政府委員(竹内壽平君) これは、結局結論から申しますと、はっきりいたしません。ということは、結局了解をしたなんてことは当の検事は考えてもいないので、自分が関係者と話している言葉を了解というふうに受け取られたようなことがあるのであろうかというようなことをむしろいろいろと苦慮しておるような様子でして、結局私ども第三者の立場で判断をした場合に、わからないと申し上げるほかないのでございますが、事柄の性質からいきますと、「了解」の意味でございますけれども、どういうことをさして了解というふうに川島国務大臣が予算委員会で――私も聞いておりましたが、おっしゃったのか、言きわめて簡単でございますのでわかりませんけれども、地検の告訴事件の取り調べにあたりまして当事者間に示談を勧告するというようなこともありますけれども、金額を幾らにするとかなんとかというような意味での了解だということになると、あり得べからざることでございます。それからまた、こういうことで円満に話がつきましたということについて、それはよかったという意味で、それを理由にして不起訴処分にするというようなこともこれはしばしばあることでございまして、その事実関係を、どういう事実を了解というふうに言うのであるか、その辺が川島大臣が予算委員会で述べられましたのはどういう趣旨であったのかということが実はよくわからないわけでございます。といいますのは、その事件はまだ捜査中でございまして、その事件が、三百何十万ですか、金を渡したということが了解されたというふうにもとれますし、前の事件について示談ができて話がついた、そう言われれば、それは話のついた事件もあるわけでございますから、そこら辺が川島大臣が述べられた片言隻句をとらえて真相はこうだというふうに申し上げることは、これは私の性質としましてやや慎重を欠くのじゃないかというふうに思いますので、結論的に申しますと、私は申し上げかねるわけでございますが、建前としては、金額まで指定して検事が和解の勧告をするなんてことはしてはいかんことになっておりますし、また、そういうことはしないのが普通でございます。
#294
○稲葉誠一君 すると、「千葉の検察庁の了解も得て渡しております。」ということは、一体真実であるか真実でないか、さっぱりわからないじゃないですか。だから、私がこういう話を言っておる。検察庁の了解を得て、しかも今問題になっている刑事被告人の肥後亨――あの当時もこれは被告人ではないですけれども、これは有印文書偽造かなんかで二十日間以上逮捕されておったわけですね。そこへ川島氏が金を渡したというのですから、具体的にどういうふうなことで渡したのかということを明らかにしなければ、この川島氏の言ったことが真実か真実でないか、さっぱりわからないわけですよ。これは刑事局長にそのことを真実を明らかにしろと言うのは、これは無理だと思うのです。あなたにそう言っても無理です。これは法務大臣が当然川島氏に会ってこの間の事実関係を明らかにする義務があるし、これは検察庁の名誉の問題ですよ。それができないということなら、これは当然川島氏に私はここに出て来てほしいと言っているのですから、出て来てそこで明らかにすべきです。私は川島さんのためにも自民党のためにもいいことだと思うわけです。川島さんが来たときには、私は礼を失するようなことは言わないで、丁寧に聞きますからね。これはもう明らかにしなくちゃ困りますよ。いいですか、その問題は。
#295
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 ただいまの問題につきましては、稲葉さんの御指摘どおりに、法務大臣といたしまして、川島大臣がどういう意図でかような発言をなさったか、調べまして――調べるということはおかしいのでありますが、よく聞きまして、次の委員会におきましてお答えをさしていただきます。
#296
○稲葉誠一君 それでは、御参考までに申し上げますが、川島正次郎氏、小沢久太郎氏等が背任罪で今千葉地検へ告発されておるわけです。この告発が三十七年七月二十日、千葉地検の清野検事の係で取り調べられておるわけです。
  〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕
この告発状によりますと、金を渡したのが昭和三十七年六月二十七日、三百数十万円を事件処理費と称し実費弁済の名目で渡しておると、こうなっております。三十七年六月二十七日であります。川島さんの供述は、肥後がやめて数カ月たって渡しておると、こうなっております。供述というと悪いけれども、予算委員会での答弁ですね。ついついくせが出るものですから……。(笑声)ところが、千葉工業大学の登記簿謄本、これによりますと、肥後亨が理事になったのが昭和三十四年十一月十六日、その間すぐ千葉地方裁判所で職務執行停止の仮処分を受けております。これが昭和三十四年の十一月二十五日であります。ここにありますが、これについて、川島正次郎氏が理事になったのが昭和三十四年十二月七日、理事長になったのが昭和三十四年十二月八日であります。肥後亨が理事をやめたのは、昭和三十五年十月十二日であります。肥後亨が理事をやめたのは昭和三十五年十月十二日、この前後に肥後亨が千葉の地検によって逮捕されて約二十日間勾留されておるわけです。勾留されておるときに、検察官のほうで理事をやめろということの話があったかどうかでやめたようであります。この間の事情はお調べ願いたいと思います。逮捕され勾留された日、釈放になった日、それから辞任をした日と。そうなって参りますと、肥後がやめたのは三十五年十月、金を渡したのが三十七年六月二十七日といたしますと、川島氏の言うところの、やめてから数カ月後に金を渡したというのは、これは違うことになるわけです。
 ここにもう一つ問題があります。この渡した金、三百五十万といわれています。実際に手に入ったのは三百三十五万、十五万はほかの人の手に渡ったと、こういわれておるのですが、この金の性質は、一体どういう性質の金なのか、これが問題になってくるわけです。そして、その前に、肥後亨その他の者が川島正次郎氏とグランドホテルで面会をいたしております。三十七年の五月十七日といわれております。これは今東京地方裁判所で民事の裁判が行なわれておりますが、この証拠書類として提出された、元千葉工業大学理事監事の長幡保良、これの書いた「事件のあらすじ」と題する証拠書類があります。その中に出ておりますが、そのとき会ったのは、長幡、粕谷敬造、島崎、この粕谷と島崎というのが肥後の何か関係者らしいですが、これが会ったときに、肥後は、川島氏に対して、自分の立てかえ分の千二百万円をもらいたい、あるいはそれを払ってもらわなければ、理事長の登記は錯誤によったのだから、抹消してくれと、こういうことを言ったと証拠書類の中に出ておるわけです。この間の事実関係を調べていただきたい、こういうように考えます。こうなって参りますと、この金の性質が問題なわけです。なぜ川島正次郎氏が、これは千葉工業大学の理事長としてでしょうけれども、肥後亨に金を払わなければならなかったか、この金は一体どういう性質なのか、これが大きな問題になってくると思います。
 そこで、その前提となってくるのは、千葉地検に対して工業大学の争いから肥後亨を有印私文書偽造等で告訴した事件があります。有印私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使、業務上横領ですか、これで肥後を告訴した。取り調べた検察官は佐藤道夫。このほか二つの事件があるわけですが、この全部の不起訴裁定書はここに来ておりますか。来ていなければ、東京高検の検事の築検事のところにあるわけです。この不起訴裁定書をぜひ今度持って来てもらいたいと思う。今ありませんか。
#297
○政府委員(竹内壽平君) 私の手元には参っておりませんので、御趣旨の点、御希望に沿いますよう、今度の委員会のときには調査をして参りたいと思います。
#298
○稲葉誠一君 速記録によると、川島さんは、国会での供述に、肥後君とは深い関係があることはない、千葉の工業大学の理事になるのには肥後君から頼まれたのじゃないと、こういうことをはっきり言っているわけです。ところがこの不起訴の裁定書を見ますと、「肥後亨が自分から同校の理事となって、あわせて川島正次郎を同校理事長に就任させて」云々と、こういうふうにあるようです。しかも、肥後亨が自分で理事となり、これは当時禁錮の刑を受けておったので、私立学校法によって理事になれないのですけれども、宣誓書偽造かなんかして理事になり、同時に川島氏を理事長にするためにも、肥後が走り回ってほかの人の判こを冒用してそうして川島氏を理事長にした、こういうことで告訴されたわけです。この点はお調べですか。
#299
○政府委員(竹内壽平君) その間の事件は全部取り調べ済みでございまして、この間申し上げましたように、最後の三百数十万円の分だけが未済になっております。
#300
○稲葉誠一君 そうすると、川島さんを理事長にすることと肥後自身を理事にすること、とのことに関連しての告訴の要旨と裁定の要旨ですね。裁定書で被疑事実としてこういう事実を認めたのか。これは起訴猶予でしょう。起訴猶予というのは、事実を認めて、そうして事件が起訴するに値しないというので不起訴にしたわけです。そうでしょう。じゃ、どういう事実を認めたわけですか。
#301
○政府委員(竹内壽平君) これは起訴猶予になっているようでございます。それはどういう事実を認めたかということにつきまして、不起訴になっておりますので、取り扱いをよく検討いたしまして、できるだけお答え申し上げるようにしたいと思いますので、ちょっと検討の猶予をお与えいただきたいと思います。
#302
○稲葉誠一君 あなた方の言うのは、おそらく不起訴書類だ、これは見せられない書類だ、出さぬというふうなことでそこへ持っていくのだと、こう思いますが、しかし、そうすると、これは問題は解決しないのですよ、これだけの大きな問題は。これはもっと事実関係を調べて下さい。私のほうには不起訴の裁定書が手に入ってるんですからね。全部あるのですから。あなたのほうでどういう答えをするかによって、不起訴の裁定書をどうするか検討しますから、調べて下さい。いずれにしましても、そういう点が問題になっているわけです。その他いろいろな問題があるのですが、きょうは時間の関係等があるので、あまり問題を発展させないでやります。
 それから肥後亨は、今贈賄で東京地方裁判所刑事第三部安村和雄さんの係で審理を受けていますね。これは六月二十五日に第何回かの公判がある予定であったわけで、川島正次郎氏が証人として呼ばれていたのです。もう一人千葉地方検察庁の検事正が呼ばれている。川島さんは国会の用務が多忙だということで欠席したわけです。
 その公判で、ことしの昭和三十八年三月二十日に肥後亨は公判廷でいろいろ供述をしているのです。私も肥後の言うことをそのまま信用するのでは決してございません。ことに速記録は、肥後の答弁というものは回りくどいような、一つのことを二回も三回も言って、非常にわかりにくい答弁です。ですけれども、記録は、これは法務省で見れば見られることです。昭和三十八年三月二十日の公判の肥後亨の速記録です。この中で、検事のほうで、金の授受――これは川島さんが理事長になったわけなので、前の理事長その他に渡す金のことらしいのですが、「それは金額はいくらですか。」というのに対して、「二千六百万円でございます。」、「二千五百万円じゃないの。」ということで、肥後は、「議事録の記載によれば、二千五百万円以内となっております。」、「それは川島個人から川崎個人にやるという問題ですか。」、「違います。」、「どういうことですか。」、「議事録の作成者が私でしたから、記録によりますと、結局千葉工大でいろいろな問題が発生して、理事長になろうとして理事長を目論んでいた理事であった青木運之助さんという人が、私たちにもいろいろ苦労をかけたから、千八百万円金をくれると申しまして、そのかわり、理事長を自分にしろと、こういうふうに言っておりました。しかし学校の当時の事情としては、青木運之助さんでは、学内がまとまらないために川島正次郎さんを理事長にすることについて私がいろいろと骨を折りまして、川島理事長にしたために、そういうふうなお金がもらえなくなったら困るから、」――この意味は、青木が理事長になれば自分はもらえるだろう。自分なり川崎さんがもらえるだろうけれども、川島さんが理事長になったのではもらえなくなるという意味らしいのですが、ちょっとここのところごたごたしておりますが――「青木さんだってそんなお金をくれると言っていたんだから、この際、皆にそういうふうにしてくれと、私が言いましたら、それじゃ、千八百万かと言いましたので、はいと言いましたら、川島さんが理事長になると言ったら、青木さんが、坂本君にもやらないと、おさまらないだろうから、そっちに七百万やりたいと思うと、こう言って、それじゃ、二千五百万としようじゃないかという話を青木さんと私と、それから川島先生でしました。議事録に将来のため書いておいてくれと、そう言って川島先生が理事長になった時の同じ議事録に」――これは三十四年十二月七日か八日の議事録だと思いますが、その議事録に――「そういうふうな二千五百万以内と事件の処理費として出すということを決めまして、」云々と、こういうふうなことになって供述は出ているわけです。速記録がちょっとごたごたしておりますが、こうなってくると、肥後と川島さんとが会って、それで金をだれにどういうふうにやるかというようなことの詳細な相談までしているのです。しかも、その議事録が証拠品として検察庁にあがっているらしいのです。こうなって参りますと、川島さんの今まで言っていることは全然違ってくるわけです。まるで肥後と関係ないようなことを言っているが、とんでもない話で、肥後のほうにはいろいろ深い関係があって、自分がまず理事になり、そうして川島さんを理事長にしたんだ。しかも、検察庁に対する告訴、それに対する裁定によれば、肥後は文書を偽造して川島さんを理事長にしたということは認定されないわけじゃない。そのためのいろいろな費用としてお礼として何がしか肥後に川島氏は金を払ったんじゃないかということも考えられてくるわけです。非常に疑問が多い。しかも、問題点として予算委員会で言っていることはほとんど私から言わせればどうもおかしい。これはもう国会の権威にかけても徹底的に追及して事実を明らかにしなくちゃいけない、こういうふうに考えますので、今私が言ったような各般の点についてよく調べていただきたいと、こう思うわけです。
 法務大臣も、あなたとしてはいやな役目かもしれませんが、明らかにしてもらわないと、これは私としても今後徹底的な形でこの問題を取り上げていって、争うといいますか、になりますから、ひとつしっかり法務大臣も川島氏に会うなり何なりして確かめて、この次の委員会で御報告願いたい、こういうふうに考えます。いかがですか、法務大臣。
#303
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 きょうお尋ねになりました速記録をよく見まして、できるだけ川島氏の意見を聞きまして御報告申し上げます。
#304
○稲葉誠一君 速記録を見てというのでは、速記録ができるのはおそいものですから、事実関係で聞けばわかりますから、それで聞いて下さい。七月二日火曜日の委員会には必ずその答えをもって御答弁願いたい、こう思います。
 もう一点は、これはきょうの読売新聞に出ているんですが、これは川島さんに関係するとかなんとかいう意味じゃないんですよ。そういうことはどうだかわかりませんよ。そういう意味で聞くんじゃないんですが、東京港の埋め立て漁業補償が総額三百三十億円という日本一の高額で話題となった。ところが、これが最近違法政治献金の疑いで沿岸漁業組合――この沿岸漁業組合というのは一つあるわけじゃなくて、たくさんいろいろあるんだと思いますが、それが一斉に東京地検の家宅捜索を受けた。こうけさの読売新聞に出ているんです。これは今ここで答弁しろといっても無理ですが、こういう事実関係があったかなかったか、どういう理由で家宅捜索を受けたのか、これはこの次の委員会で明らかにして御答弁願いたい、こういうふうに考えます。
#305
○政府委員(竹内壽平君) 今御要求の点につきましては、できるだけのことをいたしますが、ちょっと申し上げておかなければなりませんのは、肥後の今公判中の事件でございますが、それや、不起訴記録になっておるものなどは、ただいま東京地検の特捜部が詳細に検討しておるようでございまして、私どもがそれをちょっと見せろということになりますと、やはり捜査の妨害にもなってくるものですから、私は控えておるわけでございますけれども、そういう意味で、膨大なものでございますので、七月二日ということでございますから、できるだけのことはいたしますが、御満足のいくような調査ができないこともあり得るということをお含みおき願いたいと思います。
#306
○稲葉誠一君 今の肥後の公判記録というのは、これは実際は派生的な事件ですよ、千葉工大に関連しての。告訴、告発がいっぱい出た中で、千葉の検察審査会のやり方がどうもおかしいというので、千葉の地方裁判所の検察審査会の事務局長に肥後が三十万円を渡したということでして、その関係は何もこここで必要じゃないんですから、その中で肥後が今言った三十八年の三月二十日の第十回の公判調書でいっておることだけでいいんです。そこだけでいいんですから、何もそんなたくさんじゃないんですから、どうということはありません。一ページ足らずですから。
#307
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、本件に関する調査は一応この程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
  午後七時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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