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1962/05/07 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 地方行政委員会 第17号
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1962/05/07 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 地方行政委員会 第17号

#1
第043回国会 地方行政委員会 第17号
昭和三十八年五月七日(火曜日)
   午前十時二十七分開会
    ―――――――――――――
委員の異動
 三月二十八日
  辞任      補欠選任
   北口 龍徳君  川野 三暁君
   西田 信一君  日高 広為君
 三月二十九日
  辞任      補欠選任
   川野 三暁君  森部 隆輔君
   後藤 義隆君  安井  謙君
   松野 孝一君  上林 忠次君
 三月三十日
  辞任      補欠選任
   日高 広為君  青木 一男君
   沢田 一精君  西田 信一君
 四月八日
  辞任      補欠選任
   森部 隆輔君  北口 龍徳君
   青木 一男君  沢田 一精君
 四月十日
  辞任      補欠選任
   大谷 贇雄君  小沢久太郎君
 四月二十五日
  辞任      補欠選任
   鍋島 直紹君  前田佳都男君
 四月二十六日
  辞任      補欠選任
   前田佳都男君  鍋島 直紹君
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     石谷 憲男君
   理事
           小林 武治君
           西郷吉之助君
           林  虎雄君
           市川 房枝君
   委員
           上林 忠次君
           沢田 一精君
           館  哲二君
           西田 信一君
           秋山 長造君
           小柳  勇君
           鈴木  壽君
           松本 賢一君
  国務大臣
   自 治 大 臣 篠田 弘作君
  政府委員
   警察庁刑事局長 宮地 直邦君
   自治大臣官房長 大村 襄治君
   自治省行政局長 佐久間 彊君
   自治省財政局長 奧野 誠亮君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       鈴木  武君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○地方自治法の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
○地方公営企業法の一部を改正する法
 律案(内閣送付、予備審査)
○地方財政法の一部を改正する法律案
 (内閣送付、予備審査)
○地方行政の改革に関する調査(誘拐
 事件等に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(石谷憲男君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
 本日は、初めに先議案件等三法律案の説明を聴取することにいたします。地方自治法の一部を改正する法律案、地方公営企業法の一部を改正する法律案、地方財政法の一部を改正する法律案、三案を議題といたします。
 提案理由の説明を願います。篠田自治大臣。
#3
○国務大臣(篠田弘作君) ただいま議題になりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、地方公共団体の組織及び運営の合理化及び能率化に資する見地から、地方財務制度の改正と地方開発事業団の創設を行なうことを中心として、地方自治法の一部を改正しようとするものであります。
 地方自治法は、昭和二十二年に制定され、その後しばしば改正されているのでありますが、地方財務制度に関する基本規定は、府県制、市制、町村制当時のものを踏襲しておりますので、今日の実情に照らし、改善を要する点が少なくないのであります。政府は、その改正について地方財務会計制度調査会に諮問し、昨年三月答申を得ましたので、その趣旨に従いまして、地方財務制度の全般について改正を行なうこととしたのであります。
 次に、最近における地域開発の進展に伴い、新産業都市に指定される区域を初め、一定の地域の総合的な開発計画に基づく諸事業を数地方公共団体が総合的かつ能率的に実施するため、これに適応した新しい地方公共団体の共同処理方式が要請され、昨年十月、地方制度調査会において地方開発事業団の制度を設けることを考慮すべき旨の答申がありましたので、これを立法化することとしたのであります。
 以上がこの法律案を提案するに至った理由であります。以下法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
 第一は、地方財務に関する規定の改正であります。
 まず、財務に関する地方公共団体の組織につきまして議会と執行機関及び執行機関内部における権限分配の合理化をはかる見地から、若干の規定の改正を行なうこととしたのであります。
 その一は、財務に関する規定の整備に伴い、契約の締結並びに財産の取得及び処分についての議会の議決事項を条例で定める場合には政令で定める基準に従うべきものとするとともに、財産の出資等にかかわる事項を新たに議会の議決事項に加えることといたしたのであります。
 その二は、地方公共団体の長の担任する事務について規定を整備するとともに、出納長及び収入役の職務権限に財産に属する現金及び有価証券の出納及び保管の事務を加える等、その範囲を広げ、さらに、出納長及び収入役の補助職員及び事務補助組織を整備し、会計機関の責任体制を明確にすることとしたのであります。
 その三は、監査委員制度の強化をはかるため、現在市町村においては任意設置制とされておりますのを必置制に改めるとともに、監査委員の定数及び選任方法について合理化をはかることとし、さらに、監査委員の職務権限を明確化し、代表監査委員制度を設け、監査委員の事務補助組織を整備することとしたのであります。
 次に、財務制度の改正について申し上げます。
 その一は、予算に関して、国の制度にならい、歳入歳出予算のほか、継続費、繰り越し明許費、債務負担行為、地方債、一時借入金及び経費の流用に関する定めをあわせて予算の内容とすることとするとともに、いわゆる弾力条項や事故繰り越しの制度を設ける等、規定を整備したのであります。なお、決算に関しても、若干の手続規定の整備をすることとしたのであります。
 その二は、収入及び支出に関する事項について、主として内部管理の諸手続を合理化、能率化することとし、特に、住民の利便を考慮して、証券による納付の方法、口座振替による収入及び支出の方法、小切手の振り出しによる支出の方法等につき規定を設けることとしたのであります。なお、最近における運用の実情にかんがみ、大役現品制度は廃止することといたしました。
 その三は、契約に関して、現在、規定が不備でありますので、指名競争入札または随意契約によることができる場合を政令で定めることとする等、契約締結の方法の合理化をはかるとともに、契約の履行を確保する方途を講じ、いわゆる長期継続契約の制度を設ける等、全面的に規定を整備することとしたのであります。
 その四は、現金及び有価証券に関して、現在、規定が不備でありますので、適正な管理運用ができるよう規定を整備したのであります。
 その五は、財産に関し、現行制度のもとにおいて、現金の取扱いに比べて、財産の取り扱いが軽視されておりましたのを改善するため、規定を整備することとしたのであります。すなわち、公有財産については、その範囲を法定するとともに、これを行政財産と普通財産とに分類し、それぞれの管理及び処分に関し所要の規定を設けることとし、また、物品及び債権の管理保全に関しましては、国の制度を参考として所要の規定を設けることとしたのであります。なお、基本財産及び積立金の制度を基金制度に改め、その設置、管理及び処分に関する規定を整備することといたしました。
 その六は、住民による監査請求及び訴訟の制度に関して、現行の規定が必ずしも明確でなく解釈上疑問の点も少なくないために、住民の正当な請求がいれられないおそれがある実情にかんがみ、規定の明確化をはかるとともに、所要の手続規定を整備したのであります。
 その七は、職員の賠償責任に関し、その対象となる職員の範囲を予算執行職員及び物品を使用している職員にまで広げ、当該行為について実質的責任を有する者が責任を負う制度に改めるとともに、手続規定を整備したのであります。
 第二は、営造物に関する事項を改正しようとするものであります。
 営造物については、現行法では財産と一括して規定されているのでありますが、これについては、財産的管理面からではなく、行政的管理面から規定することが適当と考えられますので、財産と切り離して別に規定することとするとともに、「営造物」の名称を「公の施設」に改め、その設置、管理及び廃止に関する規定を整備することとしたのであります。
 第三は、特別地方公共団体の一つとして、地方開発事業団制度を新設するものであります。
 その一は、地方開発事業団は、一部事務組合の場合と同様に、関係地方公共団体が議会の議決を経て協議をして、規約を定め、自治大臣又は都道府県知事の認可を受けて設置するものとしたのであります。
 その二は、地方開発事業団は、一定の地域の総合的な開発計画に基づく道路、港湾、水道、工業用水道、住宅等の建設、工場用地その他の用地の取得造成、土地区画整理事業等地域開発のための事業を、設置団体が協議して決定した事業計画により委託を受けて行なうものとし、事業が完了したときは、その事業にかかる施設についてはこれをそれぞれの設置団体に移管し、また、当該事業にかかる住宅または土地についてはこれを処分し、または設置団体に移管することといたしております。
 その三は、地方開発事業団には、理事長、理事及び監事を置き、重要事項は、理事長及び理事をもって組織する理事会の議を経なければならないこととしたことであります。
 その四は、地方開発事業団の財務については、おおむね普通地方公共団体の財務に関する規定を準用しているのでありますが、地方開発事業団が事業を能率的、かつ、弾力的に執行できるようにするため、予算の繰り越しのほか、特定の事業については地方公営企業法の財務の規定を準用する等、若干の特例を設けております。
 その他、地方開発事業団と国及び都道府県との関係、地方開発事業団の設置及び解散の手続、規約及び事業計画の内容等に関して所要の規定を設けております。
 第四は、その他規定の整備を図ろうとするものであります。
 その一は、地方公共団体の事務の中に、交通安全の保持を行なうことを明記することにしたことであります。
 その二は、地方公共団体の長及び議会の議長がそれぞれその相互間の連絡を緊密にし、並びに共通の問題を協議し、及び処理するための全国的連合組織に関する規定を設けたことであります。
 その三は、大都市周辺町村における人口の急激な増加状況にかんがみ、昭和四十一年十二月三十一日までの間に限り、国勢調査の人口によらないで最近の指定統計調査による人口をもって町村を市とすることができる特例を認めることとしたのであります。
 その四は、法令の制定及び改廃に伴い、地方公共団体の処理しなければならない事務等を掲げた別表に所要の改正を加えることとしたものであります。
 以上が、この法律案を提案する理由及び法律案の内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
    ―――――――――――――
 次に、地方公営企業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 地方公共団体が経営する企業は、最近著しく増加し、現在その総数は五千余に達している状況であります。このうち、地方公営企業法の規定の全部または財務に関する規定が適用されている事業は昭和三十六年度末で六百四十二となっております。しかしながら、地方住民の福祉を増進するために、今後ますます各種の地方公営企業の健全な発展を期する必要があるのであります。これがためには、企業の経営成績及び財政状態を明確にし、もって企業の能率的な運営を確保することが肝要でありまして、地方公営企業には原則として企業会計方式による財務運営を行なわせることが適当であると考えられます。この趣旨から、地方公営企業法の財務に関する規定の適用範囲をさらに拡大するものとするほか、地方公営企業運営の実情にかんがみ、若干の関係規定を整備する必要が認められますので、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一は、いわゆる準公営企業についても常時雇用する職員の数が百人以上のものに、地方公営企業法の規定のうち独立採算にかかる規定を除く財務に関する規定を適用しようとするものであります。事業の範囲は、政令で定めることとし、病院、市場等、主としてその経費を当該事業の経営に伴う収入をもって充てるものを予定いたしております。従来、これらの事業については、当該事業を経営する地方公共団体の条例で定めるところにより任意に地方公営企業法の規定の全部または財務に関する規定を適用することができるとされていたのでありますが、これら事業のうち、事業量が大きく、かつ事務処理能力も十分であると認められる規模のものに、地方公営企業法の財務に関する規定を適用して、複式簿記による会計処理を行なわせることとし、もって企業の経営成績及び財政状態を明確にさせようとするものであります。
 第二は、同一地方公共団体内における地方公営企業の管理者間に事務委任の道を開こうとするものであります。現行規定では、管理者はその権限に属する事務をすべて自己またはその補助職員で処理しなければならないとされておりますが、二以上の管理者が設置されているときは、事務の種類と性質によっては、いずれか一方の管理者にあわせて処理させることが適当であると認められる事務のある場合がありますので、管理者は相互にその事務を委任することができるものとすることにより、合理的、能率的な事務処理をはかろうするものであります。
 第三は、繰入金に関する規定を整備して地方公営企業の特別会計と一般会計または他の特別会計との関係を明確にしようとするものであります。現行制度では、地方公営企業の特別会計に対する出資金を除いて同一地方公共団体内の各会計間の資金の授受は、予算上すべて一時的な繰り入れ、繰り出しという考え方で行なわれており、この結果、地方公営企業の特別会計に繰り入れが行なわれる場合、当該繰入金がいかなる目的を持つものであるかは明らかでありませんので、これらをその目的別に区分し、会計間の経理の明確化をはかろうとするものであります。
 以上のほか、決算に関する規定を整備する等、若干の規定について必要な整備を行なおうとするものであります。
 なお、この法律の施行期日については、従来の官公庁会計方式による財務制度を企業会計方式による財務制度に移行させる事項等の改正部分は、準備期間を必要としますので、昭和三十九年四月一日とした次第であります。
 以上が地方公営企業法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
 次に、地方財政法の一部を改正する法律案の提案理由とその要旨を御説明いたします。
 ここ数年来、地方財政健全化の諸施策の進展に伴い、地方財政の実態は相当改善されてきておりますが、さらに都道府県と市町村間または都道府県と住民間の財政秩序の適正化を前進させ、地方財政のより健全な運営を確保して参る必要があるのであります。また、最近の石炭鉱害復旧事業の実施に伴う地方公共団体の経費負担の状況にかんがみ、関係地方公共団体に対しその所要財源の充実をはかる必要があります。これが本法律案の提案の理由であります。
 次に、本法律案の内容の要旨につきまして御説明申し上げます。
 第一は、さきに都道府県またはその機関が行なう道路、河川、砂防または海岸にかかわる大規模かつ広域にわたる土木事業の経費を市町村に負担させることを禁止し、都道府県及び市町村間の財政秩序の適正化をはかることとしたのでありますが、さらに昨年十月になされた地方制度調査会の答申の趣旨に沿い、昭和三十九年四月一日から、都道府県が行なう高等学校の施設の建設に要する経費についても、これを市町村に負担させてはならないことといたしたのであります。また、これとあわせて、都道府県は、その都道府県立高等学校の施設の建設費について、住民に直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならないこととして、税外負担金の解消をさらに前進させることといたしたのであります。
 第二は、従来から、地方公共団体の実施する鉱害復旧事業に要する経費については地方債の発行が認められておりますが、今回あらたに鉱害復旧事業団など地方公共団体以外のものが実施する鉱害復旧事業について、臨時石炭鉱害復旧法の規定により地方公共団体が負担し、支弁しまたは補助するために要する経費についても、当分の間、地方債を発行することができることとするとともに、鉱害復旧事業に要する経費に充てるため起こした地方債の元利償還費については、昭和三十八年度から地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額の基礎に算入することといたしたのであります。
 以上が、地方財政法の一部を改正する法律案の提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(石谷憲男君) 三案についての質疑は、後日に譲ることにいたします。
#5
○委員長(石谷憲男君) 次に、最近の誘拐事件等に対処して篠田国家公安委員長から事件の概況、対策等について発言を求められておりますので、この際これをお伺いすることにいたします。篠田国家公安委員長。
#6
○国務大臣(篠田弘作君) 最近、相次いで発生し世間の注目を浴びております二つの事件につきまして、特にこの機会に事案の内容と捜査の概要について御報告いたします。
 まず第一は、都内台東区において発生いたしました幼児営利誘拐事件であります。これは去る三月三十一日午後六時ごろ台東区立入谷南公園内で遊んでおりました四才になる村越吉展ちゃんが行方不明になった事件であります。
 同日午後八時十分ごろ、家人から下谷警察署に対し迷子としての届出がありましたので、同署におきましては直ちに都内各警察署に手配し、同人の発見に努めましたが、発見することができなかったのであります。
 翌四月一日に至りまして、四囲の状況を判断いたし誘拐の疑いがあると認め、警視庁本庁から捜査員を応援派遣し、幼児誘拐事件として捜査を開始したのであります。
 その後、四月二日から被害者宅に恐喝的内容を含む電話が連日十数回かかってきたのでありますが、同月七日に至る間、同一人と思われる男が九回にわたり身のしろ金五十万円を要求して参りましたので、この電話の男を容疑者と判断し、これに捜査を集中したのであります。その間犯人は三回にわたり現金引き渡し場所を指定してきたのでありますが、これらの場合にはいずれも犯人を特定し得るような状況にはなかったのであります。
 その後、四月七日午前一時二十五分ごろ九回目の電話で「被害者宅から約三百メートル離れた昭和通りの品川自動車株式会社の横に駐車している小型貨物自動車の荷台に子供のくつを置くから、母親が一人で来て、そこに金を置いて帰れ。子供は金を受け取ってから一時間以内に返す場所を指定する。これが最後だ。」という旨を述べたのであります。
 当時、被害者宅には捜査員六名が待機しておりましたので、母親が自動車で出発すると同時に裏手から現場に急行したのでありますが、母親の到着がわずかに早く、捜査員の到着する直前に、置いていった現金五十万円を犯人に持ち去られてしまったのであります。その後、犯人から被害者方に対する電話はありません。
 そこで、去る四月十九日、それまでの捜査経過とともに吉展ちゃんの特徴等を詳細に発表し、さらに同月二十五日犯人の恐喝電話の録音を報道機関の協力を得て放送いたしまして、広く一般の御協力を期待いたしたのであります。これに対しましては、特に全国的に多大の御支援をいただいているところでありまして、この機会に国民の皆様方に心から感謝の意を表する次第であります。
 今後、警視庁を初め関係警察が一体となりまして、本事件の解決に努力いたす所存でございます。
 次は狭山市における女子高校生殺害事件についてでありますが、これは本年五月一日午後八時ごろ、埼玉県狭山市大字赤坂、中田栄作氏から、四女の川越女子高校入間川分校一年生中田善枝さんが、夕方になっても学校から帰らない上、自宅に恐喝内容の手紙が届けられた旨、狭山警察署に届出があったのであります。その状況から悪質な営利誘拐の疑いが認められましたので、直ちに極秘裏に捜査を開始したのであります。
 文面には二十万円を五月二日夜十二時に指定場所に持参すれば子供を返すと記載されていましたので、その時間に被害者の姉登美恵さんが指定場所である同市堀兼、雑貨商佐野屋前に行くとともに、捜査員四十名を予ての付近に張り込ませ、犯人の逮捕をはかったのであります。同夜午前零時十五分ごろ登美恵さんの立っている場所より三十メートルくらい離れた茶畑の中から犯人が声をかけ、その後十分くらいにわたって姿を見せないまま「こっちへ持って来い」と再三再四要求したのでありますが、これに応じなかったところ、「もう帰るぞ」と言って犯人の声が絶えたので、現場に張り込み中の捜査員は警笛を鳴らして追跡したのでありますが、ついに犯人を逮捕できなかったのであります。
 その後、狭山市内一帯を広範囲に捜索中、五月四日午前十時三十分ごろ、同市入間川の麦畑農道に埋められていた被害者の死体を発見したのでありますが、死体を解剖した結果、死因は扼殺であり、さらに暴行されている事実及び死亡時刻は食後三時間くらいであることが判明したのであります。したがって犯行時刻は五月一日午後四時前後と推定されるに至ったのであります。
 以上のような状況から、犯人は学校から帰宅途中の被害者を暴行扼殺したものと認められるのでありまして、埼玉県警察といたしましては、目下全力をあげて捜査中であります。
 以上二つの事件を通じまして、犯人逮捕の絶好の機会に捜査の不手ぎわから犯人を逃走させましたことは、まことに遺憾に存じておる次第であります。第一の事件の発生後、警察庁におきましては、この種事犯の防止と早期事件の解決のため、全国警察に対し所要の指示をいたしたところでありますが、さらに今回の事件の発生を見ましたので、事態の重要性にかんがみ、五月六日緊急国家公安委員会を開催いたしまして両事犯を具体的に検討し、捜査の不手ぎわについて反省を行なったのであります。
 国家公安委員会といたしましては、さしあたり両事件について関係警察を督励いたしまして、事件の早期解決に全力をあげる所存であります。また、今後は今回の事件を教訓といたしまして、あらゆる事態に対処する捜査能力の向上をはかり、もって国民の各位の御期待におこたえいたしたいと考えておる次第であります。
#7
○小林武治君 ただいま二件につきまして、公安委員長の説明があったのでありまして、公安委員長は率直に、警察当局の不手ぎわだと、こういうことを言われておるのでありますが、私どもはこの事件ばかりでなく、どうも最近における警察当局に対して強い不満を持っておるものであります。それは、先般も私は、公安委員長が出席されない際に、大分県の警察官殺害事件、あるいは帝国ホテルにおける外人殺害事件、あるいはにせ札事件等の捜査状況、あるいは見通し等についてお尋ねをしたのでありまするが、これらについても、まだ何らの手がかりも出ておりません。そこへまた、このたびかような事件が二つも起きまして、しかもこれについては、率直に、警察が悪かったということを言われておるのでありますが、国民はいかにももう、警察当局に対して、たよりない、こういう気持を持っております。ことに誘拐事件等は、全国の家庭に与える影響がきわめて甚大であるのでございまして、何か私は、警察がゆるんでおる、あるいは警察がたるんでいるのじゃないか、こういうふうな感じを持たざるを得ないのであります。これは公安委員長も御承知のように、この地方行政委員会としましては、超党派的に、警察当局に対しては常に協調的、好意的態度をとっておりまして、人員の増加にいたしましても、予算の増額につきましても、われわれ委員会からむしろ積極的にこれを勧奨しておる。こういうふうな状態で、われわれが警察当局に非常な協力態勢をとっておるということは御承知のとおりであります。それでもなお、今日のような状態だ、こういうことにつきましては、もっと私は、この当面の問題でなくて、根本的にひとつ警察制度そのものにまでさかのぼって考えなければならぬ、こういうふうな考え方を持っております。ことに公安委員会という、こういう制度が、民主警察としてあるのでありますが、これがはたして何らかの、警察活動について影響があるのじゃないか、こういうふうな考え方も持たざるを得ません。これにつきまして、私は、先般の三つの事件につきましても、その後の捜査状況を知らせてもらいたい、こういうことを言っておきましたが、にせ札事件なども、最近また出た、こういうことで、いかにも警察はほんろうされている。公安委員長なんか気性の激しいほうだから、こういうことについては、あなたも非常な不満を持っておられると思いまするが、何か警察の訓練とか、紀律とか、あるいは装備とか、そういう問題について委員長として感じていることがあったら、ひとつお話し願いたいと思います。
#8
○国務大臣(篠田弘作君) 御指摘のとおり、最近非常にたくさんの事件が起こりまして、にせ札あるいは帝国ホテルの殺人事件等、まだ犯人検挙に至っておりません。非常に遺憾でございますが、これらの事件は、みな犯人が逃げておる、あるいはまた隠れておるわけでありまして、結局だれが犯人であるかというところが、今まだわかっておらないのです。
 ところが、この吉展ちゃんの事件並びに善枝さんの殺害事件につきましては、犯人みずから金を請求して出てきているわけでございます。そういう点について、私、昨日、記者会見あるいはテレビ等においても申しましたように、もう少し頭を働かせることができる、あるいはまた、吉展ちゃんの事件では、母親が夢中になりまして、とにかくお金を持って現場に行く、そういうような場合に、もしその母親というものに対して、相当説得力を持ち得る指揮官が、かりにそこにいて、あなた今そうすることが、かえって子供のために危険だから、私らの言うことを聞きなさいというふうにして、あるいは母親のかわりに婦人警官でもやるというような配慮があれば、逮捕されたのじゃないか。
 それから、善枝さんのときにでもそのとおりでありまして、犯人のほうは、三十メートルほど離れたところから、こっちへ来い、こっちへ来いと言っているわけであります。ところが姉さんだから、こわくて行けない。それがもし婦人警官であるならば、こっちへ来いと言ったら、今行きますからと言って、ピストルを突きつけるなり、あるいはまた、なんなら笛を吹くなりの方法は、私はあったと思います。
 そこで、科学的ないろいろな装備であるとか、犯罪によりましては、もちろんそういうものが必要でございますが、この二つの事件については、それほどの科学的な装備というようなものを必要としなかったのじゃないか、強いて言うならば、犯人が自動車でもって通路のほうからやってくる、そうすると、捜査陣は、全部犯人の言うとおりを聞きまして、道路のほうに全部を集中して、その裏の茶畑には一人の配置もしていなかった。犯人が十二時に来ると言えば、またそのとおり信用しておる。犯人に持って歩かれたというような感じが非常に深い。もしそれが、佐野屋を中心といたしまして、たとえば直径百メートルというところに警官を配置すれば、周囲が三百メートルでありますから、三十人の警官ならば、十メートル置きに十分配置される。茶畑でありますから、中へ十分身を伏せるところもあると私は考えます。あるいはまた警察犬も、三十時間もあるのでありますから、もし現場にいなければ、警視庁から借りるとか、あるいは民間から借りるとかして、すぐそんな者の追跡はできた、こういうふうに私は考えておりまして、委員長としては、少し批判がきびし過ぎるかもしれませんが、私自身としてはそういうふうに考えておるのでありまして、この二つの事件につきましては、ただいまおっしゃいましたような科学的な装備というよりも、科学的な――むしろ頭脳を働かせたほうがよかったのではないかと、こう考えている次第であります。
#9
○小林武治君 こういうふうな事件に照らして、私はここであまりきびしいことを申したくないのですが、警察の責任体制と申しますか、指揮監督というものが、私はどうもすっきりしないような気がいたしますが、今のような集団的な公安委員会で、そういうふうな面に多少でも欠けるようなことがないか。こういうことについて検討されたらどうか、これはいかがですか。
#10
○国務大臣(篠田弘作君) 昨日の公安委員会におきまして、そういうことが検討されまして、少なくとも捜査陣というものを手に握り得る指揮者を今後つけるということ。あるいはまた、吉展ちゃん誘拐事件のような場合には、ただ若い警察官であるとか、そういうことばかりでなく、先ほど申しましたように、母親を説得し得るだけの、言いかえれば何と申しますか、相当、貫禄といいますか、説得力のあるような指揮官をつけなければいけない。
 それから、捜査の仕方も、ただ旧式な、経験だけで捜査をするというようなことではなくて、もっと科学的な現場の分析その他をやりまして、科学的に捜査の指揮に当たれる人でなければいけない。こういうような面につきまして非常にいろいろな意見が出まして、それに対する今後の対策をどうするかということは、最近に開かれます全国管区警備課長会議におきまして、十分検討させるという結論になっております。
#11
○小林武治君 警察の責任体制と申しますか、責任制度と申しますか、こういうことがどうもしっかり行なわれておらぬような気もいたしますが、その点はどうですか。今のたとえば府県警察、国家警察、警察庁等の関係において。
#12
○国務大臣(篠田弘作君) 国家公安委員会が直接地方の警察を指揮する権限もございませんし、警察庁がまた直接捜査等について地方の各府県の県警本部というものを指揮する権限というものも今与えられておりません。そういう点につきましては非常に不十分でございまして、各県がそれぞれ独自の判断で各県警本部において最高指揮をとるというような段階で、われわれ国家公安委員会あるいは警察庁は、それに対して気づいたことをアドバイスするというような現在形でございます。そういう点におきまして、何と申しますか、非常に捜査上あるいは警察運営上非常に不都合が起きているということは私は言えると思います。
#13
○小林武治君 今の点は、ひとつぜひ検討を……。犯罪は単なる地方的なものじゃありません。どうしても今のような連鎖反応的に全国的な規模でもって起きてくる。こういうことでありますので、今の責任体制と申しますか、指揮系統と申しますか、こういうことについて再検討してもらわなければいけないときに来ているのじゃないかと思いますが、その点どうですか。
#14
○国務大臣(篠田弘作君) ただいま臨時行政調査会におきましてそういう点も検討されておりますので、その結果を参考として善処したい、こういうふうに考えます。
#15
○小林武治君 もう一つ。よく世間では近ごろ、公安警察も大事だが、刑事警察も国民の日常生活にとってさらに大事だ。刑事警察のほうが軽視されておるのじゃないかというような批判もあります。私はその当否はどうかと思いますが、その点はどうですか。
#16
○国務大臣(篠田弘作君) 公安警察を重視して、刑事警察を軽視しておるというようなことはございませんが、公安警察の場合は大体集団あるいはまた事前に予知できる場合が非常に多いのでございますけれども、刑事警察の場合は、犯罪が孤立しておりまして、また、いつどこで起こるかということもまた予知できないために、防犯という面あるいは対策という面に非常にやりにくい面があるし、また刑事警察の場合は、犯人が犯罪を犯しまして、その場から逃げまして、できるだけ警察の目から隠れるということでありますので、そういう面について結果的には犯人の検挙というものが非常にむずかしくなる、こういうことであろうと考えます。特に公安警察を重視して刑事警察を軽視するということはございません。
#17
○小林武治君 いずれにしろ公安委員長のお考えのように、警察に対する市民の信頼性というものが相当あぶなくなっているということは御承知のとおりでありまして、ぜひひとつあなたの責任で、警察の規律なり訓練なり心がまえですね、こういうものについてもっとしっかりひとつやってほしいと思いますが、そういう御決意はいかがですか。
#18
○国務大臣(篠田弘作君) そういうことを非常に痛感いたしまして、現在のいろいろな問題によって国民の間に起こった警察に対する不信感というもの、これをなくするために、さらに一そう信頼を高めるためにはどうしたらいいかということでございますが、これには何と申しましても犯人を検挙するということが最大の急務でございます。それからまた、いろいろな世間には健全なる精神状態の者ばかりもおりませんので、いろいろ模倣の問題等も起こって参りますので、これを予防する。そのためにはいろいろ社会的な面からも応援を受けることも必要でありますが、そういうことをしましても、悪いことをすればすぐ検挙されるのだ、非常に重い罪になるということがわかれば、幼児誘拐というような問題は少なくもなくなるのじゃないか、こういうふうに考えまして、目下のところ、関係警察を督励いたしまして、とにかく犯人を検挙しろという指令を今出しておるのであります。
#19
○小林武治君 もう一つ、最後に伺っておきたいのでありますが、どうも営利誘拐に対する刑罰が軽過ぎる、外国に比べてもさような実情でありますので、これをもっと重くしろと、こういう意見が強く行なわれておりますので、政府部内においても、この問題を早急に何か結論を出すと、また結論を出さにゃなるまいと思いますが、それについてどうお考えですか。
#20
○国務大臣(篠田弘作君) これは幼児誘拐だけを重くするというわけにはちょっと参らないので、刑法が非常に古いままの刑法でございまして、罰金なんかも新しい、たとえば交通法規によって交通違反を犯した者は、即座に五千円ぐらいの罰金を食っておりますけれども、人をひいたような場合でも、古い法律によりますと、罰金が三十円とか、四十円とかいうことで、まあ法律全体に不つり合いな面があるので、これはひとつ刑法の改正までに国会でもって持っていくようにぜひしなければ、いわゆる時代に即応しない、ふさわしくない法律が、古いものが、依然としてそこにあるということだと思いますので、皆さんの御協力を得まして、できるだけそういうアンバランスを直したい、こういうように考えます。
#21
○小林武治君 これはもうどうも最近の流行で、差し迫った問題のように思うのですが、今の営利誘拐というようなことは、場合によったら臨時立法的なものを考えてもいいのじゃないかと思いますが、たとえば、ことしも暴力行為を取り締まる法律なんというものも出ておりますので、何か政府としてそういうことを早急に考えるつもりがあるかどうか。
#22
○国務大臣(篠田弘作君) この法律の改正の問題は、国家公安委員会の問題というよりは、むしろ犯罪……。
#23
○小林武治君 いや、あなたの意見を聞きたい。
#24
○国務大臣(篠田弘作君) 私は大賛成でございます。
#25
○小柳勇君 わが党は、きのう中央執行委員会で、あした以降この問題を徹底的に究明し、国民の不安を一掃することを決定したのであります。本格的な質問は、明日以降に譲りますが、今の小林委員の質問に関連して四点、公安委員長に質問をいたしたいと思う。なお、補足的に刑事局長も見えておりますから、刑事局長からも答弁を求めたいと思います。
 一つは、この責任の問題ですが、事件のさなかに柏村長官がかわった。したがって、柏村さんは、あの事件の責任をとったのじゃないかという世間のうわさもある。まあ今公安委員長のお話を聞きますと、責任は警察庁長官にはない、各現場の県警本部長など、現場の機関が権限を持って捜査しておるからというような話でありますが、一体警察庁長官は、そういうふうな刑事責任についてはないのですか、その点を明らかにして、柏村長官の更迭のいきさつについて説明を願います。
#26
○国務大臣(篠田弘作君) もちろん柏村国警長官は日本の警察の行政上の最高責任者でございますから、そういう意味におきまして責任はあります。ただ、こういう地方で起こりました一つの刑事事件などの法律上の責任というものは、地方の国警本部長が持つということを申し上げたのです。柏村君のこの更迭の問題につきましては、柏村君自身も就任以来五年になりますので、将来と申しますか、この統一地方選挙が終われば自分は勇退したいという希望を本人は持っておったそうであります。たまたままあ、この問題を表面に出したということは、あるいは私の責任かもしれませんが、従来大蔵省であるとか農林省であるとか建設省であるとかというところの役人が、やめるとすぐ公団の総裁であるとか副総裁であるとか、あるいは金融公庫の総裁であるとかいう横すべりを非常にいたしているわけでございまして、これは適当なことであるかどうかということは十分検討されなければならない問題であると私は考えております。それに反しまして警察であるとか自治省であるとかいったところの人々は、御承知のとおり、非常に退官後の待遇と申しますか、社会的な扱い方というものは他の官庁に比べてほとんど、何と申しますか、食うくらいがぎりぎりのような待遇しか受けておらない。そこで私が国家公安委員長に就任をいたしまして、いろいろやりましたが、そのうちの一つは、この長い間のいわゆる刑事なら刑事というものばかりをやっておった、試験を受けることのできない人の特別の任用の問題、あるいはまた警察官の退官後における、何と申しますか、地位の安定と申しますか、できるだけ生活に困らないような、そういう処遇を与えることが、それに続く警察官の意気を、士気を高揚するのではないか。一生懸命に働いておれば将来はある程度めんどうがみてもらえるという、そういうふうにしたほうがいいんじゃないかということを私考えておりました。たまたま住宅公団の副総裁が公取の委員長に就任されるということになりまして、そのあとがあいたわけでございます。そこで私が年来そういうふうに考えておりましたものですから、柏村長官を異動するという目的よりも、むしろそういう場所をひとつ警察で押えることがいいんじゃないかということで、実は建設大臣の河野君に対して、今度あいた住宅公団副総裁の地位をひとつ警察によこせという交渉を私がいたしました。河野君は、やってもいいけれども、一体だれをもってくるのだということで、そのとき私の頭に浮かんだのは、もう五年もやっている警察庁長官も近くはやめなければならぬだろうということを考えまして、いや、実は柏村君だという話をしました。そこで柏村君という名前が出ました。ところが、それはちょうど参議院の予算委員会での話でございまして、その周囲にはたくさんの人も見えておりましたし、あるいはまた新聞記者もたくさんおりましたので、予算委員会が終わったあとすぐ柏村君を呼びまして、実は自分はこういうふうに考えて、今、河野君と折衝しているのだが、それは君を別にやめさせるという意味じゃなくて、そういういいポストがあるから交渉しているのだが、承知していてもらいたいということを私は柏村君に話した。柏村君もそのときは、それでは私は知らないことにしておきますということで終わった。それが新聞に出まして、非常にこじれてきまして、まあ、いいポストがあるから出るということは、従来の警察の精神に反するとか、あるいは政党大臣――新聞によりますと、政党大臣から世話を受けるということはよくない。いろいろ雑音と申しますか批判と申しますか、いろいろ入りました。そこで、私自身の黒星ということで実は一応事件がおさまっております。私自身は何も黒星でも白星でも、私自身やり方に多少の批判されるべきところがあったかもしれませんが、もともと善意に出発したことでありますから、私はそれで問題は一応おさまったものというふうに考えておりましたが、柏村君自身は、選挙が終わったら引退したいという意思を持っておられまして、今、ここに辞表を持っておりますが、この辞表を四日の日に預けられたというのが真相です。
#27
○小柳勇君 公安委員長はさっきから、今度の事件について非常に遺憾の意を表明しておられるこの重要な時期に長官の異動などということを考えられることが、さっきの発言のように、これは現場の警察の責任であって、長官や刑事局長はもう指揮についてアドバイスするだけ、こういうような思想に立っておるのではないかと心配するから質問するわけです。今までのいきさつは私は大して問題じゃございません。そういうことであるならば、現場の第一線の県警本部長ですね、県の本部長に一切の責任を負わせて、もう警察庁長官や刑事局長は見ているだけ、そういうことを心配するあまり質問しておるわけです。その点どうですか。
#28
○国務大臣(篠田弘作君) これは先ほど申しましたように、責任がないということではございません。ただ、現場の指揮をするという法律上の何といいますか、権限がない、むしろそういうふうに解釈したほうがいいと思います。そこで、こういういろいろな問題が起こっておるときに長官の辞表を認めることがいいか悪いかという問題につきまして、私は考え方が二つあると思います。一つは、こういう場合、やめたいという人間を残して、はたしてこの現場の士気というものが高揚されるかどうか。あるいはその意思をいれまして、陣容を一新して、そうして新しい意気をもって捜査に当たらせるということが、これがまた非常に必要なんじゃないだろうか。もうやめたいという人が、たとえ一カ月延ばしてみましても、また来月、再来月は――やめたい気持でございますから、そういう、もうすでに一歩下がっておる人に責任を持たせるよりも、新しい気魄をもって指揮をさせるほうがいいと、私はそう考えておりますが、物の考え方でございますから、二色も三色もあるだろうと私は考えております。
#29
○小柳勇君 刑事局長、どうですかね。今責任の問題を小林委員も盛んに言われました。役人は辞表をふところにしてということを申しますが、最後の責任は私がとりますという腹を据えて仕事をするわけですが、柏村さんも誘拐事件の責任ではなさそうです、今の話では。次の生活の問題を中心にやめるような話です。ほんとうに一体だれが責任をとるのかということを、今もう平次とりもの帳以前の話だといって笑っておる。そういう警察を建て直すには、一体だれが責任をとるのか、はっきり示してもらいたい。
#30
○国務大臣(篠田弘作君) それは全国的には私が責任をとります。
#31
○小柳勇君 第二の問題は、小林委員の発言にありました、公安、交通などに重点を置いて、治安を軽視しておるのではないか。今警察官に会って話を聞きますと、率直に言います、公安や交通のほうが第一線で、治安のほうは忘れられつつある。そういうことで、先般の警官の増員もほとんどこれは交通に回っておる。公安のほうは、すぐもう労働運動などについては一から十まで大したことでないことでも調べておる。県警本部に参りましても、たとえば労働組合の第一線の組合の役員の行動なんというものは毎日調査して報告がいっておる。ところが選挙違反の問題でも、あるいは今度の事件の問題でも、こういうふうな刑事事件についてはほとんど手が出ないという情勢。警官でも第二線級、第三線級を刑事警官として投入しておるのではないか、そういう点について具体的に刑事局長から説明を求めます。
#32
○政府委員(宮地直邦君) 小柳委員にお答えいたします。結果といたしまして刑事警察が、特に部内において、現在の段階において軽視されておるということはないと存じております。警備警察の問題と、あるいは公安、刑事の問題というのは、これはやや性格が違う問題でございます。重要性というものを同一基準において判断できないと思っております。ある時期におきまして、あるいは警備が正面に出てくる、また現在のように刑事の問題が表面に重点となりましたときには、これまた刑事の問題が非常に当面警察力を投入していくという形をとっておるのでありまして、全体的な警察といたしまして、これは異質のものであって、この両者というものをいずれを重視し、いずれを軽視するということはわれわれも考えておりませんし、そういう感情を持っていないのでございます。
#33
○小柳勇君 では、あらかじめ質問要旨を出してないから正確な数字は要りませんが、予算、それから人員の概数を言って下さい。
#34
○政府委員(宮地直邦君) 現在刑事警察に従事しておる者は約二万二、三千人の人員で、刑事警察の予算は、これは国費事件、県費事件等がございまして、直接活動に要する経費が大体補助金を二倍にいたしますというと、二十数億円になるものと考えております。
#35
○秋山長造君 ちょっと関連。その点ですが、まあ委員長も局長も頭から否定されるわけですけれども、従来この委員会でも警察行政の問題が論議されるたびに、われわれはいつも同じような質問を繰り返しているわけです。それに対していつも同じような御答弁があるわけですが、しかしまあかりに吉展ちゃん事件にしても、中田善枝さんの事件にしても、これだけ天下の関心をそばだてるような事件が、かりに警備警察の面で起こったとした場合、一体どれだけの人員を警察当局はそれにつぎ込むかということを考えてみますと、おそらく機動部隊や何かといってトラック何台とつぎ込むと思う。ところが先ほどの御報告によりますと、吉展ちゃんのときには六人の刑事が金の受け渡しのときに張り込んだ、あるいは善枝さんの事件にしてもその程度の者が張り込んだにすぎない。それは技術的にその程度の者で必要にして十分だという御判断でそうされたのか、あるいはそれしか間に合わなかったのか。その程度の人員しか、というようなことを比較対照してみますと、やはり当局は別に刑事警察を軽視しておるとか、あるいは警備警察偏重だということはないとおっしゃるけれども、われわれ部外者からすなおな目で見ますと、やはり今の警察の、どう言いますか、重点というものは警備警察にかかっておるのではないか。で、刑事警察というものはおろそかにはされておらぬだろう、されておらぬだろうけれども、相対的に見ればやはり軽視されておるのではないか、おろそかにされておるのではないか。まあ人材、能力、訓練、そういう角度から見ても、刑事警察にたずさわる警察官の訓練なり素養なりというようなものが、警備警察面に比べて劣っているのではないか、あるいはぬかっておるのではないかというような判断を下さざるを得ないのですが、その点はもう篠田委員長も、われわれがそう言うからこう答えるのだということでなしに――私はやはりそういう感じを非常に与えていると思うのですよ、多数の人に。警備警察偏重になって、本来の刑事警察という面がどうもぬかっているのではないか、それは一々具体的な事実があるわけですから――にせ札の問題だとか何とか、次々あるのが全部わからぬままに済んでしまっている。そういう事実があるわけですから、だからなおさら、われわれが懸念するようなことになっているのではないか、実情が。こういうふうに判断せざるを得ないのです。だからその点はひとつ率直に、私はやはり警察のあり方というものを再検討していただきたいと思うのですがね。
#36
○国務大臣(篠田弘作君) 率直に申し上げまして、警備警察の場合は人数が多いということは、これはもう事実でありますし、当然だと思います。何万という群衆のデモ、あるいはそれを放置しておいた場合には治安にも関係するという場合に、その安全を期するためにそれ相応の人数を出すということは当然でありまして、人数の面からいえばそうであります。ところが御承知のとおり、吉展ちゃん事件の、たとえば犯人が金を取りにくるというときに、もし何万でなくても何百人でも張り込ませたとしたら、これはそこに犯人は来ません。やはり事件の性質から見ましてできるだけ犯人が母親が一人で来いといったような場合には――もう逃がしてしまったから、精鋭主義ということは、これは言えませんけれども、少数精鋭主義で効果をあげるということからいえば、犯人は一人である、しかも、いついつかここに現われるという具体的な事実がわかっておるということになると、やはり一人に対して六人ということが適当であるか十人が適当であるか、十五人が適当であるかわかりませんが、警備警察に使うような、何百人何千人の警官を使う必要はないということは、これは明らかであります。でありますから、その何万人というものを対象として治安を一時的に守る場合と、個人的な犯人を逮捕する場合というものは、私は人数が違っていいし、また違わなければいけないんじゃないか。人数だけでこっちを重視しているか、軽視しているかということは、これは率直に言って言えないんじゃないか。これは要するにその問題によってきまる問題じゃないか、私はそう感ずるのです。
#37
○秋山長造君 もちろん、吉展ちゃん事件に機動部隊をなぜ繰り出さないかということを言っておるのではない。
#38
○国務大臣(篠田弘作君) もちろんそうです。
#39
○秋山長造君 量よりも、やはりそれはおっしゃるとおりケース・バイ・ケースで質の問題だと思う。だからこれは、これだけの視聴を集めた問題に六人の刑事を張り込ませたということは、六人ということで必要かつ十分だと判断されたのかどうか、あるいはもっと張り込ますべきだったけれども、人が間に合わなかったというのか、そこらに質的な問題があるんじゃないかということを私は言っているのです。
#40
○国務大臣(篠田弘作君) その六人が非常にタイミングよく動けば、もちろん六人で十分だと私は考えます。ただそこに、そのお母さんのほうは自動車で飛び出していってしまう、警官のほうは三百メートルだから裏口から走っていくというような、そういう何といいますか、手違いというものが起こったところに、むしろ人数の問題というよりは作戦の問題に手違いがあった、こういうふうに私は判断するわけであります。
#41
○秋山長造君 作戦というものはないですよ、僕らでもやります、この程度のことは。
#42
○国務大臣(篠田弘作君) そこは先ほど申し上げましたように、母親にいかに説得をタイミングよくやるかということが吉展ちゃん事件の場合に一番必要でありましたが、その説得ができなかったというところにさっき私が申し上げましたように、あれがあったと考えます。
#43
○小柳勇君 私の言わんとするところは、過去のことを責めるだけではなく、前向きに考えまして、公安と警備と刑事と三つに分けて、大体人員配置、予算等をこの次に詳しく聞きますから、まとめておいて下さい。刑事局長、委員長に言っているのは、たとえば機動隊員に今優秀な人を抜擢されて、非常に誇りを持って機動隊の仕事に精励されている、それはいいことである。ところが刑事なんかに残された人は希望を持たないで仕事をしているんじゃないか、そのことを言いたいわけです。そういう声も聞くわけです。僕らが警察官にいろいろ話を聞く場合に、警備や公安のほうが第一線で、刑事のほうはどうも第二線に扱われつつある、こういうことを聞きますから、そういうことのないようにということで、前向きに御検討を願いたい。このことを今言っておるわけであります。
 それから第三の質問は、小林君も言われましたように、それに類似した事件がまた起こりつつある。したがってこのあとの、同じようなまねして出てくるような事件について、早急に防止対策を講じなければ、また出ないとも限らぬ。そういうふうな治安の強化策と、今後の防止策については、一体どんな母体策を検討されたか、御質問をいたします。
#44
○国務大臣(篠田弘作君) この類似事件が今後も相当起こるおそれがありますし、現在すでに九件ぐらい起こっております。そこでこの問題につきましては、いろいろの方法もあるわけでありますが、たとえば自分のところの子供に、知らないおじさんが来てどっかへ行こうとか、キャラメルをくれるとか言っても、ついていっちゃいけないというやり方もありますし、また警察が非常にパトロールを厳重にいたしまして、そういうようなことをめつける、あるいは予防する、あるいは危険なところにひとりぼっちでいるような子供は保護するとか、いろいろな方法があると思いますが、結局個人的にこれを防止するということは容易じゃないと私考えます。実は、私のところに孫が三人おりまして、この問題が起こって以来相当心配しております。一人は幼稚舎の二年生、一人は白金小学校の一年生、一人は愛育幼稚園の二年生、三人が別々の学校に行っておる。そうしますと、それじゃ三人について三人の女中さんを雇ってつけてやれるかというてもなかなかできません。また実際上それは子供の問題ですから、やれるとしましても、そのこと自体が子供の将来に教育上いかなる影響を及ぼすかという問題もございます。それからもう一つは、それでは子供に、おとなを見たらどろぼうと思え、おとなが来たと言ったら、みんな逃げちまえというような教育をすることもなかなかむずかしい。警察はもちろんやらなければなりませんが、警察だけでは何千万という子供がおるわけでありますから、それを全部保護するということも現在のところでは、なかなかこれは警察だけの力ではむずかしい。そこでやはり私は、小暴力に対すると同じような社会的な一つの監視体制というものを作りまして、あるいは婦人団体なり、その他におきましてそういう危険な場面――迷い子、あるいはまた、たとえば泣いている子供を引っ張っていこうとするとか、あるいはまた何かくれると言ってつれていこうとする場面が見つかったら、それは親であるとか兄弟であるとかは別としまして、一応は注意する、監視するという形のものを作っていかなければ――大体模倣する人間は常識を持った人間でなくて、多少精神的な欠陥を持った人間が模倣すると思いますので、そういう意味でそういう者をまた一方において監視するというようなことも必要じゃないか。今のところ具体的にごうごうということは、きのうの国家公安委員会におきましても結論は出ておりませんが、近く刑事課長の会議を開きまして、そこでひとつ率直にどういう方法を具体的にとったらいいかという検討をさせたい、こういうふうに考えております。
#45
○小柳勇君 私は、これは課長会議の問題じゃないと思うのです。たとえば吉展ちゃんのお母さんを脅迫したあの声が、テレビ、ラジオで流れています。これが効果があるかないかは、僕ら将来の問題として検討しなければなりませんが、実際あの声を聞いても、これが犯人だといって逮捕できる人間がいるかどうか問題だと思う。ところが、もしこれを逆に、こういうふうなことで再度誘拐事件があっては困りますから、お母さん注意しなさいということを公安委員会はラジオで流しましたか、テレビで流しましたか。そういうことを言っているわけです。具体的に何をやっておるのか。ただ犯人逮捕にきゅうきゅうとしておって、まだどんどんどんどん毎日新聞に出ている、そういうものに対してはお手上げではないか。警察は一体何をしたか。これは刑事課長会議の話じゃない、これは公安委員長、自分の話ですよ、それを聞いているのです。
#46
○国務大臣(篠田弘作君) そう一がいにも私は言えないと思う。と言うことはどういうことかといいますと、たとえば善枝さんの場合に、四十名の警官が現場に張り込んだ。その場合に、もし会議を開いておったとするならば、ベテランの刑事の中から、主任さん、裏の茶畑には一人も配備をしなくてもいいのですかと、質問が出たろうと思います。ただ会議をしないで、お前はどこへつけ、どこへつけと言うだけだから、皆がそこの持ち場へ行ってしまいますから、もしそういう会議をしたとするならば、ベテランの刑事もおりますから、それはやはりまんべんなく配置をする。重点はここに置くとして、茶畑のほうも全部がらあきにしては危険だということは当然わかりますから、茶畑のほろへも警官を配置すれば犯人はつかまった。だから会議をする問題じゃないというけれども、全国的に専門家を集めて会議をするということは、これは非常に重要なことでございます。それのみによってどうするということではありません。しかし、御承知のとおり、きのう私はラジオに一回、それからテレビに二回出ました。そのほかに新聞記者との共同会見をした。私が特に母親に向かって注意しろと言わなくても、母親はこれだけでもって、十分この事件をもって注意するのでありますから、今日は民主主義の時代ですから、国家公安委員長が母親に注意しろと言わなければ母親は注意しないという時代ではない、こう私は考えます。
#47
○小柳勇君 その会議の無用を言っているのじゃないのです。たとえばさっきも小林委員が言われた、営利誘拐について緊急に罪を重くしたらどうか、これも類似犯を防止する一つの方法でありましょう。それは母親は自発的に注意しますよ。しかし公安委員長は法務省にいったり、あるいは各省の会議にかけて防止策をやりましょうということをやりましたか。その具体的なことを聞いているわけですよ。
#48
○国務大臣(篠田弘作君) そういうことはまだいたしておりません。これは私の手落ちでございますから、至急にやります。
#49
○委員長(石谷憲男君) 本件につきましては、本日はこの程度にいたしたいと存じます。
 次会は、五月九日(木曜日)午前十時より地方自治法の一部を改正する法律案について審査を行なう予定でございます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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