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1962/02/07 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第3号
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1962/02/07 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第3号

#1
第043回国会 社会労働委員会 第3号
昭和三十八年二月七日(木曜日)
   午前十時二十分開会
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     加瀬  完君
   理事
           高野 一夫君
           阿具根 登君
   委員
           紅露 みつ君
           佐藤 芳男君
           竹中 恒夫君
           丸茂 重貞君
           山下 春江君
           横山 フク君
           杉山善太郎君
           藤原 道子君
           柳岡 秋夫君
           村尾 重雄君
  国務大臣
   労 働 大 臣 大橋 武夫君
   自 治 大 臣 篠田 弘作君
  政府委員
   労働大臣官房長 松永 正男君
   労働大臣官房会
   計課長     住  栄作君
   労働省労政局長 堀  秀夫君
   労働省労働基準
   局長      大島  靖君
   労働省婦人少年
   局長      谷野 せつ君
   労働省職業訓練
   局長      村上 茂利君
   自治省行政局長 佐久間 彊君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働情勢に関する調査
 (労働行政の基本方針に関する件)
 (昭和三十八年度労働省関係予算に
 関する件)
 (当面の賃金問題とこれが行政指導
 に関する件)
 (千葉県庁における土曜半数休暇制
 問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(加瀬完君) ただいまより開会いたします。
 労働情勢に関する調査を議題といたします。
 労働大臣より労働行政の基本方針についての所信を聴取いたします。大橋労働大臣。
#3
○国務大臣(大橋武夫君) 第四十三回通常国会の開会にあたりまして、一言所信を申し述べ、各位の御理解と御協力を仰ぎたいと存じます。
 私は、さきの第四十一回臨時国会におきまして労働行政に関する所信を申し述べました際、経済諸施策全体との調和を保ちながら現実に起こってくる問題とまじめに取り組んで労働政策の目標である完全雇用の達成と労働条件の向上に向かって、一歩一歩着実に前進したい旨申し述べたのであります。
 その後明年度予算の編成を初じめ機会あるごとに、その趣旨に沿って微力を尽くして参りました。特に、本年は、わが国経済が長期にわたる安定成長を目ざして大きく前進するための基礎固めの年でありますので、今後とも国民全体の福祉との均衡をはかりつつ、この目標の実現のため、真剣に努力して参る所存であります。よろしく御叱声、御鞭撻をお願いする次第であります。
 最近の雇用失業情勢をみますと、景気調整の影響等も生じておりますが、ここ数年間における経済の高度成長に伴う雇用情勢の改善には著しいものがありましたため、全体としての改善基調には大きな変化は見られず、今後におきましても、景気の回復等によりまして、相当数の雇用の増加が見込まれております。しかしながら、その反面、国民経済の急速な拡大の結果、若年労働力や技能労働力の不足が深刻化し、しかも他方、エネルギー消費構造の変革、貿易自由化の進展に伴う摩擦現象などにより、石炭鉱業、金属鉱業等一部には相当数の離職者の発生がみられ、また、一般に中高年令失業者の再就職は、なお相当困難な状況であります。
 このような情勢に対処するため、労働省といたしましては、この際、雇用に関する施策のあり方に再検討を加え、経済発展に対応する積極的な雇用対策を確立することとし、失業対策にりきましても、失業者の再就職を積極的に援助して、その能力を通常の産業活動の場で建設的に発揮していただくことによって、これらの人々の生活向上と産業界の必要とする労働力の充足をはかることを基本的方向とすべきであると存じます。
 このため、まず新たに中高年令失業者につきまして、手当を支給しつつ職業指導、職業訓練、職業紹介を計画的に実施する制度を創設し、格別の措置を講じてその再就職の促進に努めることといたしております。これに伴って訓練施設等の大幅な拡充、公共職業安定所を中心とする職業安定機能の刷新強化をはかることとしているのであります。
 また、失業保険制度につきましても、昨年八月に行なわれました社会保障制度審議会の答申及び勧告を尊重しつつ、雇用失業情勢及び保険収支の状況を考慮の上、給付内容の改善と受給者の再就職促進のための援護措置の充実などを内容とする改正を行なうことといたしております。
 特に、石炭鉱業から離職を余儀なくされる方々に対しましては、合理化に見合う雇用計画を策定し、政府関係機関等への積極的吸収をはかるほか、従来から実施している援護措置の充実に加えて、新たに求職手帳制度を創設し、手当を支給しつつ職業指導、職業訓練、職業紹介を集中的に、かつ親身になって実施することにより、転換職場の確保をはかる所存であります。また、金属鉱業からの離職者につきましても、その再就職を促進するため所要の措置を講ずることとしております。
 なお、石炭鉱業の最低賃金につきましては、さきの中央最低賃金審議会の答申に基づき、昨年十二月決定公示を行ないましたが、合後その円滑な施行に努め、同産業の雇用の安定をはかって参りたいと存じます。
 これらの雇用対策を実施するために必要な法律の改正につきましては、本国会に提案し、御審議を煩わす所存であります。
 さらに、職業訓練につきましては、さきに申し述べましたように、公共職業訓練の整備充実、特に転職訓練の大幅な拡充強化をはかるほか、事業内職業訓練につきましても、その助成を充実するとともに、技能検定を拡大実施して、技術革新の時代にふさわしい技能労働者の養成確保と技能水準の一そうの向上をはかりたいと存じます。また、国際技能オリンピックへの参加、発展途上にある諸国に対する技術援助などの国際技術協力につきましても、画期的な強化充実をはかる所存であります。
 次に労働条件につきましては、国民経済の成長と見合いつつその改善・向上をはかるための諸施策を強力に推進して参りたいと存じます。
 特に、最近における産業災害の増加傾向にかんがみまして、その防止には今後とも格段の努力を傾注して参いる所存でありますが、なかんずく目下推進中の新産業災害防止五カ年計画の目標を達成するため、これに即して監督指導の強化をはかるとともに、産業界の自主的な労働災害防止活動を積極的に助成するなど所要の立法措置を講じ、労働者が安心して働ける環境の形成に努めたいと存じます。
 賃金問題につきましては、今後の国民経済の成長過程におけるこの問題に重要性にかんがみまして、最低賃金制の一そうの充実拡大をはかると岳ともに、適切公正な賃金関係資料の整備充実、賃金体系改善に関する啓蒙その他賃金問題を国民経済的視野に立って合理的に解決する気運を醸成するよう努めて参る所存であります。
 最近における経済の成長過程で、中小企業の労働条件も逐次向上し、大企業との格差が次第に縮小しつつありますことは、真に御同慶に存ずるところであります。
 このような労働条件格差の縮小傾向を一そう促進し、労働者の福祉の向上と経済の二重構造の解消に資するため、中小企業に対しましては、その経営基盤の強化のための諸施策と相まって、最低賃金制度の充実拡大、一せい週休制、一せい閉店制などの普及、その他労務管理の近代化など労働諸事情改善のための総合的対策を強力に推進いたしたいと存じます。また、退職金共済制度の拡大、福祉施設のための融資の大幅な増額をはかる等、中小企業労働者のための福祉施策を積極的に実施するとともに、働く婦人の家、勤労青少年ホームの増設、未亡人その他中高年令婦人の職業対策の強化等、恵まれない立場にある人々の福祉の増進にも十分配慮して参る所存であります。
 さきに申し上げました雇用の改善、労働条件の向上などは、すべて国民経済の安定成長によって可能となるものであることは申すまでもありませんが、国民経済の成長発展は、健全な労働運動の発展とよき労働慣行の確立に負うところが、きわめて大きいと存じます。
 わが国の労働運動、労使関係は、近年相当の進歩改善の方向をたどっているのでありますか、今なお、未熟な面もあり、政府としても、従来から労働教育その他諸般の施策を通じ、自由にして民主的な労働運動の発展と正常な労使関係の形成に努力してきたところでありまして、今後もかかる施策をさらに推進して参る所存であります。労使関係者におかれましても、民主主義社会の秩序に則った健全な労働組合運動の発展と労使間におけるよきルールの確立のために一層努力されんことを切望するものであります。特に技術革新、貿易自由化の進展など昨今の経済情勢から労使関係におきましても、種々の問題が発生しつつある現在、労使が平素より相互信頼を基調とした話し合いを通じて、問題を合理的に解決していく慣行を確立することが是非とも必要であると考え、かねてから中央に労働問題懇話会を設け、その推進をはかっているところでありますが、今後は、地方にも同様の組織の設置を助成し、労使関係者に自由な話し合いの場を設けることによって、かかる気運を全国的に醸成して参りたいと考えております。
 また、中小企業の労使関係の近代化につきましては、大企業に比べてかなり立り遅れた状態にあり、これが改善は現下の急務でありますので、労働教育、労働相談等を通じ不断に啓蒙指導を行なうとともに、紛争の自主的解決が困難な場合には、労働委員会などの公正な第三者の援助によって早期解決をはかるようにして参りたい上存じます。
 なお、ILO八十七号条約につきましては、これを早期に批准するという政府の基本方針にはわりないのでありまして、関係国内法の整備に関する法案とともに、これが成立を期するために、引き続き一層の努力を傾注して参る所存であります。
 以上、申し上げました諸施策の円滑な運営をはかるためには、労働経済の現状についての的確な把握と将来の動向についての総合的見通しが必要であります。このため、労働経済に関する一連の統計をさらに整備拡充するとともに、調査分析機能の強化に一層意を用いて参る所存であります。
 以上、労働行政の当面の諸問題につきまして所信の一端を申し上げましたが、今後各位の御意見を十分拝聴しながら労働行政の推進に一層力をつくして参りたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
#4
○委員長(加瀬完君) 次に労働省関係の昭和三十八年度予算について説明を聴取いたします。
#5
○政府委員(住栄作君) 昭和三十八年度予算案中、労働省所管分について概要の御説明を申し上げたいと思います。
 お手元に労働省所管昭和三十八年度予算の概要という資料を配付してございますが、まず表紙を開いていただきますと、会計別総表が載っております。
 まず、一般会計につきましては歳入が三億六千九十万円、歳出が七百二十九億二千七百五十二万五千円となっておりまして、本年度当初予算額に比較いたしまして百四十七億三千六十三万円の増、伸び率といたしまして二五・三%になっております。
 次に、特別会計のうち、労働者災害補償保険特別会計につきましては、三十八年度要求額が八百二十三億三千七百二十八万二千円でございまして、増加額が百四十八億八百二十一万一千円、率にいたしまして二一・九%になっております。
 失業保険特別会計につきましては、千四十二億九千三百二十四万四千円でございまして、本年度当初予算額に比較いたしますと二百五十九億三千九百二十万三千円、率にいたしまして三三・一%、補正後に比較いたしますと二五・五%の増になっております。
 次に、一般会計の概要について御説明申し上げます。一ページから三ページにわたりまして、明年度の主要政策事項ごとに関係予算を表にしてまとめております。項目としては十三項目ほどに分類して掲げておりますが、これは予算の項目とは必ずしも一致いたしておりません。それから便宜関係する特別会計の分も計上いたしております。ごらんいただきたいと思います。早速その事項ごとの内容について、御説明申し上げたいと思います。四ページから御説明いたします。
 第一が雇用及び失業対策の推進に必要な経費といたしまして五百五十二億千三百八十一万七千円を計上いたしております。内容の第一は、失業対策の刷新改善に必要な経費といたしまして、三百三十一億九千百六十九万四千円となっておりまして、本年度に比較いたしますと、五十二億二千九十九万七千円の増になっております。
 カッコの(1)は、失業対策事業就労者の民間雇用への復帰を促進するための経費で、総額が六億六千九百八十六万五千円となっております。これは内容といたしまして、昨年度から実施いたしております日雇い労働者の転職促進訓練を拡充強化するという趣旨のものでございまして、イが、日雇い労働者の転職促進訓練でございまして訓練人員を二千九百四十人に拡大しております。次にロでございますが、明年度は新たに女子就労者に対しまして、家事サービスの訓練を専門的に行なう施設といたしまして、八カ所の新設拡充を考えております。人員は千五百六十人ということになっております。これに付随いたしまして、家事福祉施設十カ所の三カ月分の運営費を計上し、家事サービス訓練所の修了生の雇用の安定をはかることといたしております。ハが、日雇い労働者転職訓練、家事サービス訓練の訓練生に対する訓練手当の支給に要する経費でございまして、一億八千四十二万円となっております。次に、本年度から実施しております雇用奨励金、就職支度金等の月雇い労働者に対します雇用奨励制度につきましては、本年度同様拡充実施することといたし、経費といたしまして二億六千六百十万円を計上いたしております。
 (2)が、失業対策事業の刷新改善でございまして、三百四億五千四百万円となっております。本年度に比較しますと、約二十七億七千万円の増でございます、まず、一般失業対策事業につきましては、一日平均吸収人員が、本年度同様二十万三千人、事業費単価につきまして、まず労力費については、本年度より三十三円増の四百五十八円、それから資材費につきましては七円四十銭増の七十六円四十銭、また新たに従来の事務費から管理監督費を別に計上しておりますが、これを含めました単価では、本年度より十六円三銭を増額いたしております。次に事業費負担のかさむ事業主体に対する高率補助制度につきましては、本年度より一億ふやしまして四億円を計上いたしております。
 次に、特別失業対策事業につきましては、金額は本年度同様四十一億円でございますが、吸収率を七〇%から六〇%に引き下げました関係上、吸収人員が一万人となっております。
 (3)が、新規失業者の就職促進のための経費といたしまして二十億六千七百八十二万九千円を計上いたしております。これは新規に発生します中高年令の失業者に対しまして、安定所の専門担当官によりまして、特別の職業指導職業訓練等を計画的に実施し、その就職を促進するために、新たに就職指導訓練課程の制度を新設することとしております。そうしてその課程に基づいて職業指導を受けている期間中は就職指導手当を出す、訓練を受けている期間中は訓練手当を出す、こういうことにいたしております。まず訓練でございますが、訓練は一般訓練の三千四百五十人のほか、七ページにありますように、短期速成訓練五千二百八十人、職場適応訓練五千四百人、合わせまして新たに一万四千百三十人の訓練人員を予定して、これに要する経費といたしまして十六億七千百三十万七千円を計上いたしております。七ページの下から四行目は、先ほど申し上げました就職指導手当、訓練手当の支給に要する経費でございます。
 それから八ページに参りまして、雇用及び失業対策の推進に必要な経費のが失業保険制度の充実でご、ざいます。ここに掲げてございます百九十八億六千六百万円は、保険給付等に要する経費のうち一般会計の負担分を計上いたしております。本年度より六十三億強の増になっております。まず失業保険制度の改正につきましては、一般失業保険につきましては、最低、最高日額、現行の百二十円、七百円をそれぞれ百八十円、八百六十円に引き上げることとしております。(ロ)が、扶養加算金制度の新設でございまして、配偶者及び第一子につきましては日額二十円、その他の子につきましては日額十円を支給することといたしております。(ハ)が、職業訓練――失業保険受給者で職業訓練を受ける者には、引き続き失業保険が給付されるのでございますが、新たにそのほかに技能習得手当を支給するということにいたしております。(ニ)は、現在十五日未満の傷病に対しましては、医師の証明を得まして保険給付を行なっておりますけれども、明年度からは保険給付期間中の傷病に対しましては、引き続き納付を行なうこととしております。日雇失業保険につきましては、まず現行の継続三日、断続五日の待機制度を改めまして、最初の不就労日のみに失業保険金を支給しない、こういうことが第一点、第二点といたしまして、九ページにもございますように、前六カ月間に八十四日分以上の日雇保険料を納入した者に対しましては、四カ月間に六十日分までの保険金を支給する特例措置を講ずることといたしております。
 以上、失業保険につきましては、こういった改正を、含めまして、一般において受給実人員を五十万三千人、給付月額を一万十一円、したがいまして保険金総額は七百四十三億六千八百万円、これの四分の一が国庫負担額になります。それから日雇失業保険につきましては、保険金総額が三十六億二千万円、明年度は、これに対する国庫負担額を三分の一計上いたしまして十二億六百万円を予定いたしております。
 次に、十ページに参りまして、3の労働力の確保と広域職業紹介体制の強化でございますが、(1)は、広域職業紹介体制の強化等に要する経費五千七百二万八千円を計上いたしておりますが、その内容といたしまして、まず地域別産業別雇用計画を樹立する。そうしてそういった計画に基づいて広域職業紹介を積極的に推進していくための費用といたしまして、連絡通信網の整備強化とか、安定所業務の機械化能率化に必要な事務費を計上いたしております。
 (2)が広域職業紹介に伴う労働者援護対策の推進に要する経費でございまして、これは雇用促進事業団に対する交付金、出資金になっております、内容といたしましては、十一ページにございますように、まず移転就職者用の宿舎千七百戸を建設しますほか、就職資金の貸付、身元保証、移転資金の支給につきましてはおおむね本年度同様の線で実施する予定にいたしております。
 (3)が港湾労働に対する経費でございまして、本年度同様、簡易宿泊所の四棟設置、それから明年度の新規といたしまして港湾労働者福祉センター一カ所を設置する、こういうことが内容になっております。
 (4)が、雇用促進融資でございますが、本年度の二十億円に対して、二十億をふやしまして四十億を予定いたしております。融資対象は住宅、福祉施設のほか、明年度は新たに訓練施設の設置に対しましても融資対象といたしております。
 次に十二ページに参りまして、炭鉱離職者対策の拡充強化に必要な経費の御説明を申し上げます。1が石炭鉱業合理化特別対策に必要な経費でございまして、内容といたしましては、就職促進手当の支給に要する経費が八億六千九百六万一千円、それから炭鉱離職者に対する特別の職業指導をすることになっておりますが、そういう指導に要する事務体制の強化に必要な経費として九千九百五十五万三千円を計上いたしております。
 次が、炭鉱離職者の職業訓練でございますけれども、これは十二ページから十三ページにわたって書いてございますように、一般訓練の拡充のほか、離職者の実態に即応いたしまして移動訓練、離職前訓練、短期速成訓練あるいは民間の協力機関等に委託して行なう委託訓練というように弾力的な訓練が実施できるように配慮いたしております。訓練人員も九千五百三十人と、本年度の六千四百六十人に比較いたしまして、相当数の増加になっております。
 十三ページの広域職業紹介等の推進は、広域職業紹介対象人員一万四千人と計画いたしまして、これに必要な事務費を計上いたしております。
 十四ページに参りまして、移転就職者の住宅確保につきましては、補正予算で五千戸の建設を予定しておりますが、明年度予算においても新たに三千三百戸の建設を予定いたし、これに要する経費といたしまして三十一億四千五十一万を計上いたしております。そのほか住宅確保の奨励制度につきましては、従来実施しております第一種、第二種、第三種のほか、新規に第三種、これは民間住宅の賃貸の補助でございまして、月平均四千円、三千五百戸分を予定いたしております。
 それから援護業務の充実に必要な経費でございますが、まず就職あっせん協力費につきましては協力員の増員、手当額の増加をはかっております。十五ページに参りまして、住宅対策は、先ほど申し上げました住宅確保奨励金の金額でございます。雇用奨励金、移住資金につきましては、実績にかんがみまして、本年度に引き続いて実施してゆくための経費でございます。職業訓練の協力費につきましては、先ほどございました短期速成訓練、委託訓練、訓練手当の支給等に要する経費でございます。
 それから炭鉱離職者のための緊急就労対策事業につきましては、対象人員は本年度同様七千人でございますが、単価は百円の増になっております。7以下は、事務的な経費でございます。
 次に、十七ページに参りまして、金属鉱業等の離職者の援護対策に必要な経費として一億五百五十万円を計上いたしております。金属鉱業の離職者に対しましては、炭鉱離職者に準じた措置を講ずることといたして、広域職業紹介の推進のほか、職業訓練手当とか、技能習得手当、別居手当を支給する、あるいは移転資金の増額を行なう。これの必要な措置は、昨年十二月雇用促進事業団の業務方法書を改正いたしまして必要な措置を講じておりますが、明年度は雇用奨励金、住宅確保奨励金の支給ができますように、必要な経費一億円を計上いたしております。
 訓練につきましては六百人を予定いたしております。
 次に、十八ページの職業訓練の拡充強化に必要な経費でございますが、まず、公共職業訓練の拡充につきましては、一般訓練所の新設については十カ所を予定し、訓練人員を三万三千四百五十五人としまして、必要な運営費、施設費を計上いたしております。
 総合職業訓練所につきましても、大体本年度同様でございます。
 十九ページに参りまして、中央職業訓練所の経費は減少しておりますが、これは施設費の欄をごらんいただけばわかりますように、建物、機械が整備されたために、その関係の経費が減少いたしております。
 身体障害者の職業訓練所につきましては、おおむね本年度同様でございます。
 それから二十ページの2の転職訓練の拡充強化でございますが、炭鉱離職者の転職訓練日雇い労働者の転職訓練、新規中高年金失業者の転職訓練、金属鉱業等離職者の転職訓練これは御説明申し上げました。駐留軍離職者の転職訓練につきましては減額になっておりますが、これは駐留軍関係労務者の減少に伴いまして、訓練対象人員の減少に伴うものでございます。
 二十二ページに参りまして、が、事業内職業訓練に対する助成援助でございまして、中身の運営費補助は、対象人員の増に伴うものでございます。施設費補助でございますが、これは御承知のように中小企業が共同して事業内訓練を行なう場合に、教室とか実習所を建てると、そういう場合に対する補助でございまして、今年度の五カ所に対しまして、明年度は十五カ所を予定いたしておりす。
 4が、技能水準向上対策の推進でございまして、技能検定は一職種増の十六職種、それから次の国際技能競技大会、これは国際技能促進オリンピックへの参加のための助成でございまして、約千五百万円の経費を計上いたしております。
 二十三ページに参りまして、労働災害防止対策の推進に必要な経費の御説明を申し上げます。先ほど所信表明にもございましたように、明年度は新たに労働災害防止のための事業主団体を結成させて、産業界の自主的な労働災害防止活動に対しまして助成措置を講ずる、こういうことで、まず、中央労働災害防止協会の創設のほか、さしあたり災害の多い四業種につきまして、業種別労働災害防止協会を創設することといたしまして、助成に必要な経費として一億五千万円を計上いたしております。
 次に、災害防止のための国の措置につきましては、従来の措置を一そう充実強化することといたしておりますが、明年度は、1に書いてございますように、特に災害の多発しておる事業場に対します指導監督を強化していくということを特に考えております。そのほか二十四ページにございますように、産業安全行政の推進とか、労働衛生行政の推進につきましては、本年度に引き続きまして拡充実施していく、こういうことにいたしております。
 二十五ページの科学技術の振興でございますが、これは産業安全研究所、労働衛生研究所に対する経費でございます。
 4が、じん肺等長期傷病者の国庫負担金でございます。このじん肺につきましては、対象人員を三千五百八十二人、補助率四分の三、せき損その他につきましては、対象人員千六百五十一人、負担率二分の一ということで八億七千七百十九万九千円を計上いたしております。
 二十七ページに参りまして、第六が、賃金政策の推進に必要な経費となっております。1が、賃金問題の調査検討及び賃金体系等の改善援助に要する経費でございまして、賃金問題関係調査の実施、基本資料の作成等々事務的な経費でございます。
 2が最低賃金制の普及促進に必要な経費でございまして、二十八ページに書いてございますようなことにつきまして、本年度に引き続きまして実施していく、こういうことにしております。
 第七が、労使関係の安定及び近代化に必要な経費でございます。まず、労使関係の安及び近代化の推進につきましては、明年度の新規事項といたしまして、地方労働問題懇和会を設置する、それに対する助成費を計上いたしております。
 それから三十ページに参りまして、日本労働協会の強化等といたしまして必要な経費を計上いたしておりますが、日本労働協会につきましては、御承知のように資金十五億円からの収入で業務を実施しておりますが、明年度は、ここに書いておりますイ、ロ、ハの項目について、さらに事業を拡大して実施していく、そのための費用といたしまして四千五百万円を新規に計上いたしております。
 それから第八が、中小企業の労働対策の推進に必要な経費でございまして、まず、中小企業労働者の労働福祉対策の推進につきましては二億八千七百八十五万九千円を計上いたしております。
 その(1)が退職金共済制度の普及促進でございまして、まず、補助金につきましては、退職金共済事業団の事業規模を毎度当初の加入者が六十九万人、年度末が八十三万八千人と予定いたしまして、これが業務を行なうための補助金を計上いたしておりす。口が、退職給付費に対する補助金でございまして、国庫補助の対象者二万一千二百人を予定いたしております。
 中小企業の労使関係の安定促進のための経費、中小企業労務管理近代化に関する指導の推進に必要な経費につきましては、いずれも本年度同様の措置を明年度引き続き実施していくこととしまして、必要な経費を計上いたしております。
 それから三十四ページに参りまして、事業内職業訓練に対する助成援助、これは、先ほど御説明申し上げました。
 それから五人未満の事業所に対する失業保険の適用促進についても、引き続き実施していくこととしております。
 三十五ページに参りまして、第九が、婦人、年少労働者及び身体障害者等の福祉増進に必要な経費でございまして、まず、婦人の職業対策の推進につきましては、内職相談所は四カ所の増設、それから明年度は、新規に婦人労働力の問題が非常に重要になっておりますので、必要な基本調査を実施することとしまして経費を計上いたしております。
 三十六ページに参りまして、婦人及び勤労者家庭の福祉対策の推進につきましては、「働く婦人の家につきましては二カ所、ホームヘルプ制度の推進については、本年度とおおむね同様であります。ハの、勤労者家庭生活向上推進対策は新規でございまして、勤労者家庭生活向上会議の開催とか生活水準の基本調査等を実施する予定にいたしております。
 それから三十七ページの年少労働者の保護及び福祉の増進につきましては、青少年ホームの増設は本年同様四カ所、それから福祉員制度の充実等につきましても、おおむね本年度と同様の計画をいたしております。
 三十八ページにつきまして、ごらんのとおりのことでございます。
 それから三十九ページに参りまして、労働関係の国際協力に必要な経費を計上しておりますが、説明は省略したいと思います。
 第十一が、四十ページでございますが、労働統計調査の整備拡充に必要な経費で、各種統計の整備、それから統計機械の整備等をはかっております。
 四十一ページの一般行政事務費等に必要な経費は、これは人件費、事務費等でございます。
 それから特別会計のほうに参りまして、労災保険につきましては、まず歳入は「労」の一ページに書いてございますとおりでございます。歳出につきましては、保険費が一般災害補償保険で三百八十五億二千五百三十二万七千円、じん肺、せき損等につきましては、先ほど申し上げたとおりの状況になっております。
 それから「労」の四ページに参りまして、業務取扱費、これは事務費、人件費でございます。
 それから庁舎新営費にいきまして、明年度新規に労働保険研修所の建設を予定いたしております。これは失業保険と折半でございますが、保険業務が複雑多岐にわたっておりますので、研修をするための施設を作る、こういう経費でございます。
 「労」の四ページの5の保険施設費につきましては、五億六千五百六十九万円、おおむね今年度同様のことを行なうこととしております。
 「労」の五ページに参りまして、福祉事業団の出資金二十億六千九百七万三千円、これは病院の施設の設置、機械の整備、休養施設の建設費等でございます。
 次に、失業保険に参りまして、歳入は失業保険の一ページでございますが、歳入のところで特に運用収入につきましては4でございますが、運用原資を三十八年度末で千二百五十七億六千五百五十二万五千円とし、運用収入を七十三億七百万円計上いたしております。
 歳出につきましては、保険給付については先ほど申し上げたとおりでございます。保険施設費、二十一億八千五百八十六万六千円を計上いたしておりますが、これは雇用促進事業団の総合訓練所等に対する交付金になっております。
 それから失業保険の三ページに参りまして、出資金といたしまして六十二億五千二百二十四万円を計上いたしております。内容は、概要欄に掲げているとおりでございます。
 業務取扱費は、事務費、人件費でございます。
 それから庁舎等新営費に参りまして、特に失業保険計算施設といたしまして二億六千三百五十三万九千円の経費を計上いたしております。これは昭和四十年度から失業保険制度の通算制度を実施するという予定で、その制度を実施するためには電子計算機による処理が必要になって参りますので、明年度は、その電子計算機を入れる施設を作ると同時に、電子計算機の借り入れのための国庫債務負担行為といたしまして六千五百三万二千円を計上いたしております。
 以上、非常に簡単でございましたが、説明を終わりたいと思います。
#6
○委員長(加瀬完君) 杉山委員並びに柳岡委員より質疑の通告がございますので、順次これを許します。杉山委員。
#7
○杉山善太郎君 ただいま労働大臣から、新らしい労働施策に対する所信表明を承りまして、そういう関連の中で、三十八年度の予算の概要を拝聴いたしたわけでありますが、要約いたしまして、雇用に関する対策の問題、中小企業に関する問題、公正な労使関係確立の問題について、大体それなりの所信の表明を承ったわけでありますが、その中で、私は大臣から特にお伺いしておきたい点があるのでありますが、たとえば今日的な情勢の中で、この所信表明の底を流れる一つの、もののとらえ方として、経済行政と労働行政の不可分というような立場の中で、具体的な問題として経済の安定成長という問題と、これに対する完全雇用の達成の問題、さらに労働条件の向上という問題は、要するに車の両輪のような関係で、互いに支え合っているのだ。そういう関係の中で、国民経済的な視野の上に立って、賃金問題や公正な労使関係を確立していくのだというような、そういう思想が根幹になっているかと思いますので、そういう点に関する限り、私どもも別に異論はありません。問題は、これからの予算とそれから今の所信に表明された、それぞれの雇用対策の問題、中小企業の問題、公正な労使関係を確立するという問題について、今後の実行を、どのような形でこれを実践していくか。
 聞くところによりますれば、労働省はことしに入りまして、先月の十六、七日だと聞いておりますが、たとえば、全国の労働基準局長であるとか、労働主管部長会議の合同会議をお開きになって、それなりに、やはりこの施策なり三十八年度の予算の概要につれて、それぞれ行政担当者に浸透をおはかりになっておるのだろう、そういうふうに考えておりまするが、要約いたしまして賃金問題に私は焦点をしぼってお伺いをいたしまするが、たとえば最低賃金制の充実、拡大をはかる、そういった具体的な問題、それから適正な賃金関係の資料を整備充実するという問題、特にこれは池田首相の所信表明でありますか、あるいは本国会における一つの施政方針の中にもあったように、うかがい知っておるわけでありまするが、たとえば従来、日本に在来しておるところの年功序列型の、いわゆる生活給の賃金体系を、やはり能率と職能に応じた職務給体系に切りかえていこう、そういう方向に転換していく、そういうことを労働担当当局にひとつ検討してみるようにと、また、そういう方向に示唆されておるようにうかがい知っておるわけでありまするが、そういう関係の中で、私どもは特に申し上げたいのは、要するに公正な労使関係は、煮つめていうならば、賃金問題というものの内容となる比重が非常に大きいと思います。したがって、充実した社会保障や本格的な最低賃金制の確立や完全雇用という問題が達成される方向がやはり基底となってなされなければ、なかなかこの使用者と被使用者というものは、そう簡単にいうべくして、公正な労使関係、合理円満な賃金問題の解決といっても非常に困難どというふうに考えまするので、前段申し上げましたように、おおむねただいまの大臣の所信表明については、そう私どもは、これに対して抵抗を感じたり異論を申しません。大体、おおむねこれを了承することはできまするけれども、要は、問題は社会保障の充実の問題や本格的な最低賃金制を確立する方向へ行政指導を十分意識されていかれるという問題、それから完全雇用の達成という問題を意識して、指導性のあるやはり労働対策を根幹として考えていかれる必要があるのじゃないか、こういうふうに考えますので、その間の経緯について、一応簡単にもう一度見解を表明いただきたい、こういうふうに考えます。
#8
○国務大臣(大橋武夫君) 先般の池田総理大臣の施政方針演説におきましても、ただいま御指摘のとおり、現在の年功序列型の賃金を経済の伸展に即応いたしまして、逐次職務あるいは能率に応じた制度は切りかえていくということを考慮する必要があるということも述べられておるわけでございます。申すまでもなく、従来わが国の大企業におきましては、年功序列型の賃金体系をとって参ったのでございますが、近年、技術革新の進展あるいは労働力需給の変化等に伴いまして、労使間におきましても職務、能率を加味した賃金制度に改善すべきではないかということが問題として取り上げられているような状況でございます。また、現実の日本の賃金の状況を見ましても、最近の賃金を初任給から、それから年令階層別の賃金を比較いたしてみますると、四十才ぐらいが一番高い賃金を示しておりますが、それは大体初任給程度に比べまして二倍ぐらいになっているようであります。ところが戦前におきましての統計を今引っ張り出してみますると、初任給に比べて四十才台ぐらいの非常に高い賃金の水準が大体四倍ぐらいになっていたようでございます。この点だけをとらえて考えまするというと、年功序列の幅が四倍から今日は二倍にまで狭められてきている。したがって年功序列による賃金の格差というものが、逐次幅が縮小しつつある傾向にあるように思われるのであります。しかし、これは傾向であり、また、その傾向が相当に進みつつあるということを物語ってはおりますが、しかし年功序列型賃金がなお労働界あるいは産業界においては支配的であるということを否定するわけのものではありません。
 そこで今日、特に若年労働者の不足あるいは技能労働者の不足、こういった面を動機といたしまして、年功序列型の賃金を、逐次職務あるいは能率に応じた賃金に変えていきたいという空気が出てきていると思うのでございます。労働行政といたしましても、産業の成長段階におけるかような要望に応じまするために、できるだけ役立っていくということが、やはり行政としての建前であることは申すまでもないと存ずるのでございますが、何と申しましても賃金というものは、それによって、各企業の能率なり、あるいはコストを決定するというような純経営的な、あるいは純経理的な立場からだけ考えるべきものではなく、それが同時に労働者の人生の最も重要な問題でありまする生活の安定ということにつながっているわけでございまして、労働者の生活の向上安定という立場からも、労働省としては、この問題に対しては十分な考慮を払わなければならぬ点があると思うわけでございます。
 かような点を考えて参りまするというと、先ほど仰せられましたごとく、経済成長の段階に応じた社会保障あるいは本格的な最低賃金あるいは完全雇用、こういう前提条件を頭に入れない限り、なかなかこの賃金体系の改善を実施するということはむずかしい問題であろう、こういうふうに思うのでございます。
 そこで政府といたしましては、この経済界の要望でありまする職務あるいは能率に応じた賃金というものが、一体いかにあるべきものであるか、また、現在いかになっているかというような事柄につきまして、今後十分調査をし、そうしてこれに関する資料を充実整備いたしまして、これを労使の方々が基礎にして、今後の賃金問題の検討を進めていただくことのできるような、そういった資料をさしあたり準備するようにいたして参りたい、特に、さしあたりの労働行政で、この問題について実行できる面、また実行しなければならない差し迫った問題は、今申し上げました資料の充実整備である、かように考えまして、明年度の予算に、その経費を要求いたしてあるような次第なのでございます。むろんかような資料は、これを完成いたしました上は、一般にも公開し、労使双方、また専門家の方々に十分検討していただくべきものであり、そしてその後において世論の盛り上がりに応じまして、労働省としてこれらの資料を基礎にして、今後の賃金政策をいかに具体的に進めていくべきかということを十分慎重に検討し前進して参りたい、かように考えておるわけでございます。
#9
○杉山善太郎君 ただいまの大臣の見解にいって、私の尋ねたことに対して、大体誠意ある御回答をいただいたと思うわけでありますが、たとえば先月の二十九日に総評の太田議長が、池田首相に対して当面の諸要求を申し入れしておるわけでありまして、その際おそらく労働大臣も官房長官もお立ち会いになっておられると思いますが、その中で、今申し上げた年功序列型の賃金体系、いわゆるこれは現行の生活賃金体系でありますが、これに対して首相は、やはりこれは職務能率給にこの辺で転換すべきである、その限りにおいて、やはり意見の食い違いがあったと思うし、その後においても、池田首相が何と言われても、やはり賃金行政に対する主管庁は労働省でありますので、大体において、池田首相がそう言われるから、そのままにおいて、何でも急転回して職務給に切りかえちまうのだということになると、今お説の中にありましたように、現在の産業構造の中には、四十才から五十才の中高年令層の産業労働者が、序列型、生活型の中で、やはり子弟を教育したりなんかしておるわけでありまして、漸次、やはりそういう方向に技術革新や生産性の問題と賃金の関係、コストの関係などで、これはそれなりに情勢の推移の中で、漸進的に段階的に考えていかなければならぬ点は、労使ともに、そういう点はあり得ると思うのです。
 しかし筋としては、やはり充実した社会保障の問題や、本格的なという言葉を私は使いますけれども、これはILOの二十六号の賃金条項に根を下ろした、そういう国際的な、やはり脚光を浴びたこの最低賃金制を指して言っておるのでありまして、完全雇用の問題という問題が、やはり基調となって、現行の賃金体系から一つの賃金体系へ緩慢に切りかえて、その間において労使が十分納得のできるような態勢を、やはり行政面で配慮されていくことが必要であるというふうに、特にこの点を御要望し、また意見として申し添えておきたいと思うのであります。次は、これは基準局長でけっこうだと思いまするが、お尋ねいたしますが、たとえば三十六年の秋、ただいまの時点からいくというと、一昨年来、中央賃金審議会の場で、たとえば最低賃金制度の運営に関する小委員会を中心として、現行のやはり業者間協定による最低賃金の問題について、これは曲りかどに来ておる、したがってやはり最低賃金制度の確立をはかるべき業種の選定の問題最低賃金の金額の水準の問題、それから最低賃金の決定方式などについて検討を進めていこうといったようなことを、これは大臣が諮問されたのか、あるいはこの運営小委員会のほうから、あるいは賃金の進め方の小委員会のほうから、そういうことを要望具申するのかは別といたしまして、その辺の事情について、今申し上げた三点について、現在の進行状況は、どうなっておるか。特に私がこのことをお尋ねしたいのは、今や現行の業者間協定による賃金水準というものは、あってなきがごとしで、むしろあることが非常にじゃまになるというような賃金水準でありますので、これをやはり現行に即した賃金水準に、もちろん賃金は中央、地方ともに、賃金審議会の議を経ることは当然だと思いますけれども、ひとつ行政指導という面で、やはり諸物価の高騰やその他に対応した賃金水準に、最低賃金――業者間協定といえども最低賃金と名がつく限り、公的な根拠を持っている限りは、そういう権威ある方向へ進めていく必要があるので、その限りにおいて中央賃金審議会はどの程度の速度で、これを作業して大臣に答申したのか、また、答申は今後の問題か、そういう点についてお伺いしたい。
#10
○政府委員(大島靖君) ただいまお尋ねの最低賃金制の今後の運用についての中央賃金審議会における審議の進行状況でございますが、御承知のとおり昨年末で現在の最低賃金制によってカバーされる労働者が約百九十万人に達しております。ただ、この内容をしさいに検討いたしてみますと、産業的に見ましても、たとえば繊維産業とか食料品あるいは木材、木製品、土石、窯業、機械産業、こういったところに非常にたくさん集中しており、その他の産業について比較的できているものが少ないというような産業間のアンバランスもございます。それから地域的に見ましても、東京、静岡、愛知、京都、広島、こういった県に、かなり集中的に出ております、その他の地方では比較的少ない、こういった地域的なアンバランスもございます。金額につきましても、これは最近におきましては、大体三百円ないし三百二十円程度の最低賃金が中心になってできておりますが、従来、古くできました最賃については、その後改定作業を進めておりまして、現在までのところ、二百数十件の改定をすでに行なっておりますが、金額にいたしましても三百円――三百二十円くらいが中心にはなっておりますが、地方によりまして、いろいろ金額は差がある、こういった点で、今後最低賃金制を内容的に見まして、全般としてバランスのとれた最低賃金制、これにはどういうふうにしたらよかろうかということが中央賃金審議会で現在御検討を願っている、このために最低賃金制の今後の運営の基本方針のための小委員会を設置しまして、これは所澤公益委員が小委員長で、三者構成の小委員会であります。この小委員会において御審議を願っております。現在まで各種の資料を、この小委員会に提供いたしまして、ただいま先生から御指摘になりました業種の選定の問題あるいは金額の問題、あるいは決定の方式でありますとか、今後における中央、地方賃金審議会の機能のあり方とか、こういった各種の問題点について現在御審議を願っております。だんだん作業が進んで参りまして、今月のおそらく下旬にも、さらにその小委員会が開催されますが、いま数回の御審議を経まして、おそらく答申が出て参ると思うのでございます。現在のところ審議の状況は、そういうふうになっておりますので、御報告申し上げます。
#11
○杉山善太郎君 大体この前の四十二国会のときでも実は速度がおそいので、もちろん急がば回れということもありますけれども、じっくりしたいい答申があって、早くこれが実践されないというと、零細中小企業のもとで働いておる労働者も、使用者もともに、この賃金問題が非常にぎこちなく受けとめられて、この最低賃金、あるいは業者間協定というものに、そっぽを向いておるといったような関係がありますので、早くこの問題を取りきめていただきたいと思うのです。
 現在の情勢の中でも、御承知のように、最低賃金額の問題といたしましては、総評は全国一律一万円と、しかも一万二千円以上の産業別的な最低賃金の保障を要求しておると、全労は日額四百円を基準として、しかもこれを職業別な、やはり全国一律の賃金体系を要求しておると、しかも三百五十円未満の最賃額は認めないといったような方針をとって、この問題を重視しつつ、底上げの諸要求を政治的にも、また経済的にも、表面に出して戦っておると、こういう現状でありますので、十分ひとつ重視をして、この問題を積極的に行政面においても意識して配慮を願いたいということを御要望申し上げておきます。
 次に、もう一、二点お伺いいたしますが、これは大臣から御答弁をいただけばけっこうだと思いますが、たとえば日米間の賃金の共同調査の問題につきまして、民間ベースでは、御承知になっておると思いますけれども、日米間の賃金共同調査センターの設置に関する準備委員会を、総評、全労、新産別、中立労連から、それぞれ準備委員をきめて、来たるべき十三日に第一回の準備会を開いて、相当に作業は進んでおるわけです。これと対照的に、やはり政府間ベースによる日米の貿易の障害になるというような、そういう点を排除するという方向の中で、両国間の賃金諸事情を調査するという方向についてのその作業が、今日どの程度進んでおるかと、そういった点についてお聞かせいただきたいと思います。
#12
○国務大臣(大橋武夫君) ちょうど基準局長が私と一緒にアメリカに参りまして、その問題について向こうの事務当局と具体的に協議いたしまして、帰って準備をいたしておりますので、基準局長から御説明をさせます。
#13
○政府委員(大島靖君) まず、日米の両国における賃金調査の問題につきましては、一昨年の秋、第一回の日米合同会議の議題として最初にかかったのであります。一昨年の第一回の会議のときには、具体的な論議は特に行なわれないまま会議の最終におきまして共同コミュニケで賃金等につきまして、両国政府が情報を相互に交換し、相互にこれを検討していくということは非常に好ましいことであると、こういう旨の共同コミュニケが発表されたわけです。その後、昨年になりまして、日米両国間におきまして、この賃金の調査の問題について、いろいろ事務的な折衝が行なわれておりましたですが、昨年の暮れに大橋大臣が、第二回の日米合同会議に出席いたしまして、その際、合同会議の議題として賃金問題はございませんでしたが、大橋大臣とアメリカの労働長官のワースさんとの個別会談の席上で、この話が出まして、今後、両国の賃金調査の問題についての具体的な打ち合わせのために、近い将来に賃金の専門家をワシントンへ派遣いたしまして、アメリカの労働省の専門家と具体的な問題点について詳細打ち合わせをしようと、こういうことが大橋労働大臣とワース労働長官の間で決定になりました。これが昨年の十二月の話であります。近い将来というのは、具体的にまだ日時も取りきめはいたしませんでしたが、大体の了解といたしましては、本年の三月ないし四月、このくらいの時期になろうかと……で、現在まだ賃金の専門家として、だれが参りますかは、まだ決定いたしておりませんですが、労働省内部におきまして、現在そのための各種の調査の準備をいたしておる段階であります。
 以上、昨年の暮れの第二回の合同会議の本問題についての経緯を御報告申し上げます。
#14
○杉山善太郎君 先ほど私がお尋ね申し上げましたように、やはり労使関係の問題である、あるいは本格的に最低賃金の賃金水準を設定する問題といたしましても、特に当面の春の賃金要求の季節の中で、これは御承知のように、たとえば総評にいたしましても、全労にいたしましても、中立労連にいたしましても、新産別にいたしましても、同盟会議にいたしましても、例外なくやはり日本の工業水準が欧州の工業水準に到達してきた、その限りにおいて、やはり目標として生活をささえる賃金の一つの水準は、西欧並みの賃金水準という国際的な側面を持っている。そういう中で、やはりそれなりに賃金の国際比価というものが問題になっております。これは大きく言って、被使用者団体である労働組合側においても、使用者の総括的な団体である日経連を中核とした諸団体においても、これは好むと好まざるとによらず、時勢の趨勢として問題となってきておる問題であります。そのデータとしては、やはり適正と申しますか、公正と申しますか、広範な賃金資料を収集するということについては、たとえばその意図する目標や、その根底を流れる思想はどうあろうとも、客観的には、政府間ベースの日米間の賃金共同調査の問題が脚光を浴びてきておる。ひとり民間ベースにおいては、具体的に各団体がそれぞれの委員を出して、やはり十三日に第一回の結成準備会をやる。しかもこのルーサー氏の提案に基づくこれらの問題は、アメリカの労働者も、これを支持しておるという。日本の労働者もやはり組合運動の路線においては、それぞれの毛並みはありますけれども、それを乗り越えて権威ある四団体が、大体において一緒になってやっていこうという機運が表われておる。いわんや欧州において、イタリアにおいてもフランスにおいても、これは主として自由労連系の組合でありますけれども、この調査機関を権威あらしめて、そうしてやはり日本の賃金事情の実態を十分知っておきたい、これは西欧の労働者だけではなくて、やはり経営者の人たちも、これを知りたいと思っていると思うのです。そういうような点において、やはり現在の――まあ春闘といっておきますが――中で、要するに一〇%から一五%のはやり賃上げ要求を、具体的には五千円ないしは六千円の目標額で賃金額の要求が、言葉のあやで大幅と世間は言っておりますけれども、生活の実態に食い入ってその程度の賃上げを要求するという運動が現実の問題として行なわれておるわけであります。これに対して、貿易の自由化と関連をいたしまして、やはりコスト・インフレとかあるいは自由化の中で貿易競争に打ち勝つための体質を改善するために賃金の上昇を抑制をするというようなムードを起こそうとする一つの経営者側の考え方もあるようであります。そういう中であればこそ、やはり適正な賃金関係の資料を整備充実をして、そのデータの上に立って公正な労使関係というものが確立され、その中で、やはり国民的な視野の中から賃金問題が十分解決される道を求めていく必要があるのだ、そういうふうに理解をいたしております。
 もう一点質問を申し上げるわけでありますが、御承知のように、北陸地方一帯にかかる、ほとんど日本全土を通じて豪雪に見舞われておるわけでありますが、ことに北陸地帯におきましては、新潟にいたしましても、富山、石川、あるいは福井にいたしましても、工場が倒壊したとか、あるいは通勤が不能であるとか、原材料の不足であるとか、あるいは製品の滞貨とか、あるいはこういう中から賃金カットの問題であるとか、賃金の遅払いの問題というようなものが、やはり今後有形な一つの被害状況として、相当にこれは上ってくると思うのでありますが、現に私は富山に行って、富山県に関する一つのデータを持っておりますけれども、これは総合的な、一県ということでなく、そういう問題について何か、たとえば労働省の中で賃金カットの問題とか、賃金不払いの問題ということについて何か配慮されておられるかどうか。もし配慮しておられなければ十分その問題についても、これは通産省だ、これは対策本部だということなしに、十分公正な労使関係を親切に配慮するという面から考えてもらいたいと思うのですが、今、大体どういうふうに配慮しておりますか、その点だけお伺いしたいと思います。
#15
○政府委員(大島靖君) 今回の雪害に関連いたしまして、労働省として一番心配になりました点は、ただいま先生から御指摘になった北陸地方における中小企業の資金難、事業の不振から参ります賃金遅払いが生じはしないかという点であります。現在のところ私からも、先般関係の基準局並びに直接監督署に対しましても、電話その他で連絡をいたしまして、現状の把握に努めるように申しております。現在のところ、まだ顕著な賃金遅払いは出ていないようであります。ただ、今後これがかなり長く続きますと、そういう事態の発生も予想せられますので、各関係におきまして、中小企業の雪害による賃金遅払いの発生に対しては厳重に注視していくように、私から申し渡しております。
 私どもといたしましては、この事態の発生に応じまして、通産省、大蔵省とも相談いたしまして、できるだけの措置を講じたい、かように考えております。
#16
○委員長(加瀬完君) 柳岡委員。
#17
○柳岡秋夫君 まず、労働大臣にお伺いしたいのですが、所信表明にもありましたように、労働大臣の今後の労働行政のあり方というものにつきましては、今までのうしろ向きの傾向ではなくして、経済というものは労働がなくては成り立たない。したがって、労働行政も経済政策の一環として考えていく、こういうお話がありましたし、またその具体的な第一の柱として雇用の拡大、雇用対策というものをやっていきたい、こういうこともいわれておりますが、この点について私は賛意を表するものでございますけれども、その具体的な内容をお聞きしますと、職業訓練の拡充、強化ということが中心のようでございます。私は完全雇用の達成を目ざしていくというからには、もう一つ大きな柱が抜けているのではないか、こういうふうに思います。
 それは何かと申しますと、労働時間の短縮、このことが、完全雇用の政策の大きな柱でなくてはならない、このように考えます。
 企業が近代化され、また合理化されていくとともに、そこに働く労働者も、近代的な雇用形態がとられていくということが必要ではないかと思うのでございます。したがいまして、世界の産業国におきましても、この労働時間短縮の制度化の方向に進められているわけでございまして、ILOにおきましても、一九六二年の六月には総会において一週四十時間制の勧告案というものがきめられたことは御承知のとおりであります。ところが日本の現状を見まするときに、昨年五月の調査でございますが、一週四十八時間をこえて労働している、こういう就業者が二千五百二十七万人、また一週六十時間以上の労働時間で働いている労働者が千二百四十五万人、こういうような状態でございます。したがいまして、そこに言われておりますように、一千万人に近い潜在失業者が出ているのじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。
 そこで、私も先ほど申し上げましたように、労働時間短縮こそ雇用の拡大あるいは完全雇用政策にとって最大の意義を持つと思うのでありますが、日本政府はILOの常任理事国であるという立場からいって、この労働時間のILO勧告に対して、労働大臣としてはどういうお考えを持っておられるか、まずお伺いしたいと思うのであります。
#18
○委員長(加瀬完君) ちょっと速記をやめて。
  〔速記中止〕
#19
○委員長(加瀬完君) 速記を起こして。
#20
○国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、労働時間短縮勧告につきましては、その趣旨は各国における経済的、社会的条件の相違を考慮に入れつつ漸進的、段階的に労働時間を短縮するのでございまして、従来からの政府の態度に照らしまして、その趣旨とするところは、きわめて望ましいものであると考えております。したがって、この勧告は週四十時間労働の基準を掲げるという点などは、直ちにわが国の当面の実情に即しない点もありますが、その趣旨とするところをできるだけ尊重いたしまして、わが国の経済、社会の実情に即した労働時間短縮の進め方をさらに検討を重ねて参りたいと考えているのであります。
 特に政府が、さしあたって関心を持っております問題は、中小企業の長過ぎる労働時間でございまして、これにつきましては一斉週休制、一斉閉店制等の普及をはかりますほか、労務管理の近代化対策を推進いたしまして、不当な長時間労働を解消するような措置を一そう強力に推進したいと思います。
#21
○柳岡秋夫君 この問題につきましては、私どもも労働時間短縮のための労働基準法の一部改正案というものを用意しておりますが、時間もありませんので、後日また論議をしたいと思うのであります。
 最近、千葉県におきまして隔週五日制が実施されたということは御承知のことと思いますが、これは当然ILOの常任理事国の一員である政府といたしましては、総会で議決されたことに対して、積極的にその実施のために努力する、そういう義務があろうかと思います。むしろこれを率先して勧奨していくという立場をとるべきだと思うのでありますが、この問題について、労働大臣の所見を伺いたいと思います。
#22
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど申し述べましたごとく、労働時間の短縮というものが、産業の進歩の段階に応じて適切に行なわれて参りますならば、これは労働者の福祉の向上の見地から申しまして、まことに望ましいものと考えております。しかしながら、生産性等に較差がありまする企業につきまして、直ちに一律に労働時間の短縮を行なうというのは、現在におきましては、まだその段階ではない、こう思っておるわけでございます。
#23
○柳岡秋夫君 千葉県におけるこの隔週五日制の実施は、千葉県当局としてサービスを徹底してやっていく、あるいは県行政の事務の能率向上をはかる、そういう前提に立ちまして、昼食時においても執務の態勢をとっていくのだ、あるいは勤務時間と執務時間とは明らかに区別していく、こういうことで土曜日の半数の職員に特別休暇を与えるということが、千葉県における隔週五日制の内容になっているわけです。これは千葉県の職員に対する問題でございます。
 そこで、十四日の新聞によりますと黒金官房長官は、記者会見におきまして、そんなに人員が余っておるならば、五日制を採用する前に、人員整理をするのが本筋ではないかと言っておる。これは明らかに、先ほど労働大臣が所信表明の中で言われたように、これからの雇用対策として前向きの雇用対策をやっていくんだという方針と私は逆行するのではないか、こういうように思うわけでございます。少なくとも政府としては、あるいは政府機関なり、あるいは地方公共団体というものが、率先して実施をして、民間企業に範をたれていく、こういうことが労働行政としては必要ではないか、このように思うわけでございますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
#24
○国務大臣(大橋武夫君) 労働省といたしましては、労働条件の問題につきましては、おのずから労働基準法がございまして、これによって労働基準の監督をいたしておるわけでございます。この基準の線をこえた条件の改善の問題につきましては、これは建前としては、労使の自主的な相談によってきまっていくべきものという建前を考えておるのであります。したがって、そうした前提のもとに決定された勤務条件が、逐次改善されていくということは、これは労働省としては、むろん望ましいと思っておりますことは、先ほど申し上げたとおりであります。ただ、今回の千葉県の問題につきましては、これは地方公務員法に基づき、県の条例において決定されるべき事柄でございまして、労働省において、あの問題について、労働基準の監督、あるいは労働基準の所管の官庁という立場から、それ以上かれこれ意見を申し上げるべき事柄ではないように思うのでございまして、私どもは、この問題の決定は、地方公務員法によるところの地方行政として行なわれておる、また、そういう面で処理されたものと考えております。
#25
○柳岡秋夫君 それじゃ、労働大臣のほうはこれで……、ありがとうございました。
 基準局長にちょっとお伺いしますが、労働関係あるいは労働慣行から照らして、労使の間で話し合いがついた問題について、第三者機関、あるいは特に権力機関が、これに干渉する、介入をしていくということは、私は労働法の不当労働行為に当たるのではないか、このように思うわけでございますが、これについての見解を伺いたい。
#26
○政府委員(大島靖君) 労働条件の決定は、一般的には、仰せのとおり労働基準法に最低の定めがございまして、それ以上のものにつきましては、労使の間できめていくということでございまして、これがもしもめますれば、地方労働委員会とか中央労働委員会で、あっせんなり調停なり仲裁という方法がある、こういうことでございますが、ただ、今御提示の千葉県の問題に関連して申しますれば、これは地方公務員法の問題ないしは地方自治法の問題として処理さるべき問題だと思います。直ちに今、先生御指摘の一般労働問題としてのあり方から律するのは、ちょっと部面が違うような感じがいたします。
#27
○柳岡秋夫君 その点について意見の相違が、私もあると思いますので、時間の関係で、労働省のほうは一応また後日に質問を保留したいと思います。
 で、自治省のほうにお伺いをしたいわけでございますが、千葉県の県庁の隔週五日制の問題について、自治省は、これを中止をするようにという勧告といいますか、命令を出した、こういうふうに聞いておりますが、その命令を出した法的根拠をまずお伺いしたい。
#28
○国務大臣(篠田弘作君) 地方公務員法の二十四条第五項に、「職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当たっては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならないこういうふうに書いてあります。そこで、人事院規則の一五−〇というところに、職員の勤務時間というのがございまして、「政府職員の勤務時間は、一週間について四十四時間とする。」こういうことになるわけです。そうしますと、土曜を各一週間置きに半休にすることによりまして、千葉県の職員の勤務時間は、一週間四十二時間、毎週二時間ずつ短縮していくわけになります。
 そこで、この二十四条第五項の趣旨に抵触すると考えましたとともに、地方自治法施行規程の第二十九条「都道府県庁の執務時間及び都道府県の職員の休暇及び休日等については、官庁の執務時間及び官吏の休暇及び休日等に関する規定を準用する。」こうなっております。「但し、都道府県知事は、特に必要と認めるときは、これを変更することができる。」ところが、この「特に」ということは、特別に水害があるとか災害があったとか、あるいはまた、特にその地帯が非常な寒冷の地方であって、冬の勤務ができないとか、そういうような場合をさしているのであって、普通の千葉県のような場合をさしておるのではない。そこで、こういうふうに地方公務員法の二十四条第五項に抵触し、また、地方自治法施行規程の第二十九条に抵触するというふうに考えました。しかしいきなり、何と申しますか、地方自治法第二百四十六条の二の規定を発動することなく、これを強行されれば、この二百四十六条の二の規定で、総理大臣から中止を命じなければならぬような結果になるので事前にやめてもらいたいということを事務当局から申し入れをいたしましてやめることになったのでございます。
#29
○柳岡秋夫君 先ほど大臣は地公法第二十四条第五項で均衡を失しないと、こういわれたのですが、均衡ではない権衡ではないかと思うのですが、権衡を失しないということは、私は少なくとも労働慣行からいって、その水準以下にあるものに対する規制の法律と申しますか、法の精神からいって、そういうものではないかと私は思うのです。したがって、それ以上の水準のものに対しては、これは当然使用者として労働者に対する対策としてやるべきものであって、法律でこれを規制していくということは、私は法の精神からいって間違いではないかと、このように思うわけでございますが、この権衡を失しないということは量的な問題か、それとも制度的な改革の問題なのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
#30
○国務大臣(篠田弘作君) 人事院規則が勤務時間をきめておりまして、その勤務時間に対して他の公共団体の職員との間の権衡を失しないようにやるということは、言いかえれば、先ほどおっしゃいましたような能率の問題といったようなものが、能率を上げたらいいじゃないかとか、あるいはまた昼休みにもやっているじゃないか、あるいは廊下のほうへ机を出したじゃないかという、いろいろ問題があると思うのですが、能率ということは、ものさしでちょっとはかれない。おれは非常に能率をあげているから午前中に帰るよといっても、なかなか世間は納得しません。そこで公務員というか、公僕として国民にサービスをするということのためには、単に、目に見えない能率を上げるということは当為でありますけれども、この間には、やはり時間というものさしではかれるものが、一定の尺度になって存在するということの観念から、公務員のいわゆる勤務時間というものがきめられておるわけです。だから、そのきめられている時間というものを、ただおれは能率を上げるから、自分のところの職員は能率を上げるのだから、一週間おきに一回ずつ休ませるのだということは、やはり権衡を失することになると私は考えます。
#31
○柳岡秋夫君 地公法第二十四条の第六項には、地方公共団体の職員の給与あるいは勤務時間その他の勤務条件は条例で定める、こういうことになっておるわけです。したがって、千葉県が条例で自主的に勤務時間を決定するということは、私は何ら二十四条五項にあるいはその他の法律に違反をしない、このように思うわけでございますが、この点についてどう考えますか。
#32
○国務大臣(篠田弘作君) 法律にもちろん違反しない問題につきましては、条例で定められることはけっこうでありますけれども、明らかに地方公務員法に違反するということは、条例で定められましても、条例は決して法律に優先するものではありませんから無効であります。
#33
○柳岡秋夫君 そうすると、大臣は千葉県庁がとった処置は違法であったという、こういう前提に立っておるわけですね。
#34
○国務大臣(篠田弘作君) もちろん、そうでございます。
#35
○柳岡秋夫君 一月十八日に総評並びに自治労の幹部が黒金官房長官に会いましたとき、黒金官房長官は千葉県庁のとった措置は違法とは言い切れない、こういうふうに言っておるわけですが、この点、政府として意見の不統一があると思うのですが、この点はどうですか。
#36
○国務大臣(篠田弘作君) それは時間的な差があったと思うのです。そういうことがあると思えば、研究はもちろんしておったでありましようけれども、突如として自治省にも政府にも何の連絡もなしに、突如として発表されましたから、おそらくその問題について法律的に研究する時間がないときに、ぽっこりだれか行って聞かれればどうも、違法か違法でないかということは疑問があったと思いますが、官房長官が、どういうふうにおっしゃったか私は聞いておりませんが、自治省といたしましては、とにかくこれは違法であるという解釈を下したわけでございます。
#37
○柳岡秋夫君 自治省として、この問題が起きてから、千葉県庁のほうに実情の調査に行かれましたですか。
#38
○政府委員(佐久間彊君) こちらから出向きまして調査には参りませんが、向こうの責任者を呼んで実情を聴取いたしました。
#39
○柳岡秋夫君 そういう重要な問題を実情も調査せずに、責任者を呼びつけたり、あるいは電話で中止を要望する。千葉県庁が、それでも言うことを聞かないというような態度を見ますと、特別交付税のワクを減らすとか、あるいは起債のワクを縮小するとか、そういうようなニュアンスを持った態度をもって、これを抑圧するということは、私は地方自治行政として不適当だ、このように思うわけでございますが、その点いかがでございましょう。
#40
○国務大臣(篠田弘作君) そういうおどかしや脅迫のようなことを言ったりしたことは一つもございません。ただ便宜上、非常に距離も近いし、それからこちらから出かける、あるいはできるだけこういうふうに考えました、できるだけこの問題を穏やかに話し合いたい。それには、こっちから調査ということにして出かけてしまえば、これは正式なものになってしまうし、それよりも向こうから事情を、呼んで聞きたいところを聞いたほうが非常に穏やかになるのじゃないか、こういうように考えました。
 したがいまして、その間におけるラジオとか新聞とかその他のテレビ等の放送とか対談会とかいうものは一切私は断わった。出て堂々と話したらいいじゃないかと言う人もありましたが、その間全部私は断わった。ということは、今申しましたように穏やかにやりたい、こういう考えで、実は調査にやるよりも、どうせしょっちゅう行ったり来たりしているのですから、聞こうじゃないか、わかっていますから、呼んで話したほうがいいだろう、こういうことです。
#41
○委員長(加瀬完君) ちょっと私のほうからもこれは専門的なことになりますから行政局長に質問しますが、今大臣は、結局勤務時間が権衡を失するから違法だということでありましたが、権衡を失すると見られる不足の時間を研修の時間と認めることは違法なのかどうか。たとえば、大学などは勤務時間、大学の教授は人事院規則できめられたとおりには出ておりませんよ。研修の時間、自宅の研修であっても、それを勤務時間と認めていますね。したがって、県庁の職員が市町村に出向いて二時間なり三時間なり、市町村と県の円滑なる行政の運営をするということで研修をするという名目であれば、これは違法だといわれるかどうか。
 それからもう一つ、不足の時間を隔週土曜に、不足の時間数だけを延長して勤務をした場合、隔週勤務をした上で隔週休んで、これは違法かどうか。
#42
○政府委員(佐久間彊君) これは第一の点でございますが、二十四条の第五項の規定は先ほど大臣のおっしゃいましたとおりでございますが、権衡を失しないようにという表現そのものには若干幅があろうかと思います。しかし、事柄の性質によりまして、これの解釈については非常に厳格に解釈する場合と、若干幅を認めなければならぬ場合とあろうかと思います。同じ勤務時間にいたしましても、土地の状況によりまして少し早く始めて早く終わる、おそく始めておそく終わるというようなことは差しつかえなかろうかと思いますが、今の週四十二間時という時間そのものにつきましては、一方官庁の執務時間の規定を準用するという規定もございまするし、勤務時間と執務時間と裏腹の関係もございますので、これは私どもといたしましては、非常に厳格に解すべきだ、かように考えておるわけでございます。
 それから、ただいまお尋ねの、その不足した時間を職員の研修という名目にして休ませたらどうか、こういうお尋ねでございますが、現在、特別休暇の運用といたしまして、研修所へ派遣をして研修を受けさせるというようなものにつきましては、そういう扱いをいたしておりまするけれども、土曜日に職員の半数を一斉に研修に出すということは、これは特別休暇で認められておる研修とは、とうてい認めがたいと、かようなふうに考えております。
 それから休ませた者について、勤務しておるときには時間を延長したらどうかという点でございますが、職員の勤務時間という側からいたしますれば、それでもあながち違法とは申されないかと思いますが、一方県庁の執務時間が、官庁の執務時間の規定を準用しておるという趣旨からいたしますと、県庁という組織体といたしまして、執務をいたしております、執務体制をとっておる時間というものが半数、それもたまたま一回か二回ならよろしゅうございますが、持続的に反復継続いたしまして、半数は執務をしていないという体制が、はたしてこれは執務時間――規程のいうておるような執務体制だというふうに考えることができるかどうかという点について、非常な疑問を持つわけでございます。委員長(加瀬完君) 私の質問は、妥当を欠くかどうかということは見解の相違で、妥当だとか妥当でないということはあり得るでしょうが、違法かどうか。私の指摘したような方法をとれば違法だということは言い切れますか。明らかに違法だと言い切れますか。
#43
○政府委員(佐久間彊君) これは地方自治法施行規程の官庁の執務時間を準用しておるという趣旨の解釈になろうかと思いますが、半数の職員が恒常的に欠けておるということは、これは執務時間ということが言い得ないんじゃないか。執務時間といいますのは、原則としてすべての職員が執務の体制にあるということを予想しておると考えますので、お話しのようなことは、違法ではなかろうかと思います。
#44
○委員長(加瀬完君) 私は違法ではないと思いますので、いずれこれはあとでやりましょう。
#45
○柳岡秋夫君 時間がありませんから、もう一つだけ私の思うこちらの見解を申し述べまして、いずれ後の機会に、さらに論議をしたいと考えております。
 で、先ほど大臣は違法である、黒金官房長官は、違法とは断じがたい、こう言ったことについて、それは時間がなかったから、十分調査をしてなかったので、そういうことを言ったのだろう、こう言っておりますが、少なくとも、政府のまあ担当者あるいは重要な地位を占める方が、そういう問題について勉強しておらない、こういうことは非常に私は遺憾だと思います。
 そこで地公法第十四条の情勢適応の原則を見ますと、この勤務条件等の認定の主体は、あくまでも地方公共団体の機関――換言をすれは、地方公共団体の議会あるいは人事委員会、また、長を含む任命権者である、まあこういうことが自治省の元の公務員課長であった今枝さんが出した本の中にも、そういう解釈で書かれておるわけでございます。したがいまして、先ほどから論議しておりますように、今や世界の情勢、あるいは日本の情勢からいたしましても、労働時間の短縮ということは一般的な情勢になっていると思うのでございます。そういうことを考えますときに、私は今回とった政府の措置というものは、明らかに自治権に対する侵害であり、国と自治体との間を非常にゆがめていくものだ、こういうふうに考えます。さらにまた、労働者に対する不当な行為だ、こういうふうにも私は考えますので、今後いずれ機会を見まして、十分また論議をして参りたいと思うわけでございます。以上で、私の質問を終わります。
#46
○委員長(加瀬完君) 他に御発言もなければ、本日は、これにて散会いたします。
   午後零時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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