くにさくロゴ
1962/05/30 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第20号
姉妹サイト
 
1962/05/30 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第20号

#1
第043回国会 社会労働委員会 第20号
昭和三十八年五月三十日(木曜日)
   午前十時三十九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   理事
           高野 一夫君
           徳永 正利君
           阿具根 登君
           藤田藤太郎君
   委員
           加藤 武徳君
           鹿島 俊雄君
           亀井  光君
           紅露 みつ君
           竹中 恒夫君
           山本  杉君
           横山 フク君
           杉山善太郎君
           柳岡 秋夫君
   発  議  者 阿具根 登君
  国務大臣
   労 働 大 臣 大橋 武夫君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
  説明員
   労働省労働基準
   局労災補償部長 大野雄二郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○じん肺法の一部を改正する法律案
 (阿部竹松君外八名発議)
○労働基準法の一部を改正する法律案
 (阿部竹松君外八名発議)
○炭鉱労働者遺族補償特例法案(阿具
 根登君外八名発議)
○労働災害の防止に関する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
  〔理事藤田藤太郎君委員長席に着
  く〕
#2
○理事(藤田藤太郎君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。
 じん肺法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案及び炭鉱労働者遺族補償特例法案を一括して議題といたします。
 まず、発議者から提案理由の説明を求めます。阿具根登君。
#3
○阿具根登君 ただいま議題となりましたじん肺法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び概要を説明申し上げます。
 金属鉱山、炭鉱及び窯業等、粉じんを発散する事業所に働く労働者は、現在の医学をもってしても治癒の方法のないじん肺という職業病におかされることは御承知のとおりであります。このじん肺の大部分であるけい肺並びにこれと同じように治癒の方法のない業務上の外傷性脊髄障害については、第二十二回特別国会において特別保護法が制定され、次いで第二十八回国会において臨時措置法を制定してその保護期間が延長され、さらに、第三十四回国会においてこれらの法律を根本的に改正して、新たにじん肺法が制定され、保護の対象範囲をけい肺以外の粉じんによる患者にも拡張され、粉じん作業に従事する労働者に対しては、じん肺の予防及び健康管理に関して必要な規定を設けるとともに、労働者災害補償保険法の一部を改正して、じん肺等、長期にわたって療養を必要とする業務上の疾病に対しては、従来の打ち切り補償制度を長期傷病者補償制度に改めて、療養を必要とする期間これを保護することとし、重度の障害が残るときは、その障害の存する期間、障害補償を行なうこととしたのであります。しかしながら、この制度が実施されて三カ年あまりを経過した今日、じん肺等職業病の健康管理について、さらにその強化の必要が痛感せられるとともに、諸物価の騰貴に伴い、療養中の労働者及びその家族の生活が困難に陥るなど、保護の実態についても改善すべき点が多々あることが明らかとなったのであります。
 また、最近における化学工業の著しい進歩に伴い、化学薬品による中毒等、新しい職業病も発生を見るに至りましたので、これらの対策も早急に確立の必要があります。以上のほか、けい肺等特別保護法の制定以前に労働基準法による打ち切り補償の支給を受けた者等は、新しい制度による保護を全く受けられないので、貧窮のうちに病床に苦しんでいる気の毒な状況でありますので、これらの人々の救済も緊要であります。よって、関係諸法律に所要の改正を行ない、じん肺等業務上の疾病に対して、さらに適切な保護を加えようとするものであります。
 次に、本法律案についてその概要を説明申し上げます。
 その要旨は、第一に、粉じん作業に従事する労働者の健康管理の徹底をはかるため、使用者は、新たに、労働者を常時粉じん作業に従事させることになったときは、都道府県労働基準局長に届け出ること及び労働者がその作業から転退職するときには、じん肺健康診断を行なわなければならないこと、また、労働基準局長は、常時粉じん作業に従事する労働者にじん肺労働者手帳を交付し、労働者はその手帳に必要な事項の記載を受けなければならないこととすること。
 第二に、使用者に労働者の粉じん作業からの転換について努力すべき義務を課し、また、都道府県労働基準局長に、必要とあれば作業転換命令を発する権限を与えるとともに、作業転換を円滑に行なうため、使用者が作業の転換をさせた労働者を引さ続き使用する場合には少なくとも従前の賃金を維持しなければならないこととすること。また、じん肺の療養のため休業していた労働者が復職したときも同様とすること。
 第三に、業務上のじん肺に関しては、労働基準法による休業補償、障害補償または遺族補償を行なわず、これらにかえて、この法律により、療養補償を受ける間は、平均賃金の三百六十五日分の生活費補償を行ない、なおって障害が残るときは、第一級から第三級までの障害に対しては、一年につき平均賃金の三百六十五日分の、第四級から第十四級までの障害に対しては、それぞれ所定の金額の一時金である障害補償を行ない、また、じん肺により死亡したときは、その遺族に、毎年平均賃金の二百十九日分の遺族年金補償を行なわなければならないこととし、これらについては、最低補償額を政令で定めることとすること。このほか、じん肺が管理二又は管理三となったときは、その区分に応じて、それぞれ百分の十又は百分の二十のじん肺準障害補償を行なわなければならないものとすること。
 第四に、この法律による生活費補償等の補償は、いずれも労働者災害補償保険法において、保険給付として支給できるものとするとともに、じん肺については、療養開始後三年以上経過してなおらない場合であっても、長期傷病者補償を行なわずに、そのまま療養補償と生活費補償を行なうこととすること。
 第五に、じん肺に関する保険給付に要する費用のうち、労働基準法上の補償をこえる部分は、療養補償及び生活費補償についてはその四分の三を、その他の保険給付についてはその一部を国庫負担とすること。
 第六に、外傷性脊髄障害または政令で定める職業病にかかった労働者については、じん肺準障害補償を除き、じん肺と同様の災害補償を行なうべきものとすること。
 以上のほかに、補償額のスライド制を一〇%きざみにすること、労働福祉事業団によるじん肺労働者作業所の設置及びじん肺の予防及び健康管理に関し使用者に対する財政的援助、厚生年金保険法による障害年金の支給を受ける場合の減額措置の廃止及びこの法律施行前に、業務上じん肺等にかかった労働者または労働者であった者で、現在療養補償等を全く受けてない者に対する補償等について所要の改正を行なうこと、等であります。
 以上が本法律案の提案理由及びその概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  ―――――――――――――
 次に、労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び概要を説明申し上げます。
 じん肺その他の職業病等にかかって、療養のため休業する場合において、療養開始の前には、身体の衰弱等により、稼働日数が一般の労働者より少なく、作業量もまた少ないのが通常でありますから、現行法に基づいて算出される平均賃金は、したがって、相当低額となりますので、これを是正する必要があります。すなわち、賃金が日給制、時間給制または出来高払い制その他の請負制によって定められている労働者についての平均賃金の最低保障額は、算定期間中の賃金総額を当該期間中の実労働日数で除した金額の百分の六十とされているのを、その百分の八十に改めようとするものであります。
 以上が本法律案の提案理由及びその概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
 次に、炭鉱労働者遺族補償特例法案について、その提出理由及び概要を説明申し上げます。
 石炭鉱業は、最近におけるエネルギー資源需要の世界的変革に伴い、企業の急速な合理化を迫られているところであります。企業においては合理化促進のためとして、大量の人員整理を行ない、労働を強化し、また、保安要員の削減など、坑内保安軽視の傾向にあることが憂慮されるのであります。中小炭鉱、特に租鉱権炭鉱にあってはこの傾向が著しく、また、合理化事業団に買い上げ申請中、あるいは近く閉山予定の鉱業所における坑内保安はきわめて憂慮すべき状態にあります。
 このような情勢を反映して、各地の炭鉱においては、重大災害か頻発し、多数の犠牲者を出しているのでありますが、その遺族は、現行法によれば、平均賃金の千日分という僅少な遺族補償を支給されるにとどまり、にわかに一家の中心を失った遺族は、就労の特に困難な産炭地帯において、直ちに明日からの生活に苦しむという悲惨な実情であります。よって、労働者の業務上の災害に対する十分な補償が将来確立するまでの特例として、これらの遺族を救済して、その生活の安定をはかるため、本法律案により、炭鉱労働者が業務上死亡した場合には、労働基準法及び労働者災害補償保険法の規定による遺族補償の額を三百四十日分増額して千三百四十日分とするとともに、その最低額を百万円とするために、平均賃金の最低保障額を七百四十七万円としようとするものであります。また、長期傷病者補償に移った場合の遺族給付も、同様の比率で引き上げることといたしました。
 以上が本法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
#4
○理事(藤田藤太郎君) 本日は、本案の提案理由の聴取のみにとどめます。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
  〔理事藤田藤太郎君退席、理事阿具
  根登君着席〕
#5
○理事(阿具根登君) 速記を始めて。
 次に、労働災害の防止に関する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#6
○藤田藤太郎君 私は、労働大臣に御質問をいたしたいと思うわけであります。この本法案によって事業団ができるわけでありますけれども、この目的の項を見ますと、「労働災害防止対策の推進を図り、もって労働災害を防止することを目的とする。」ということが書いてあるわけでございます。そういうことになりますと、今、労働基準法があり、そして安全衛生の問題については、私は、労働省自身がおやりになるということが本筋ではないか。だから、その労働省自身がおやりになることをこの業者の団体にまかせられる、この業者の具体的な工場、作業場で機械を通じて働いている人は労働者なんであります。ですから、安全衛生というような問題については、業者と、それから、そこで働いている労働者が相協力していくという、人間には体力の限界があるわけでありますから、これに応じて、その働いている人の意見を聞いて、働いている人のこのような団体に参加をするということが私は前提条件ではないか。政府がおやりになるときには、監督官庁の立場から、業者と、そこで働いている人の意見を聞いて、よりよいものを進めていくというところに筋があるわけで、むしろ政府の監督行政、安全衛生行政というものは政府が中心になって進めていくというところに私は意義がある。それにかかわらず、今度の法案を見ますと、業者や、業者の関係する国体だけが参加をしてこういうものをお作りになり、それで災害の防止に今より、より役立つのだという理屈がどうも私としては出てこないと思うのです。これでほんとうにやれるという実証がどこにあるのか。むしろ私たちは、こういうことをやって責任転嫁と申しましょうか、何かそこに与えるものがあってこういうものになってきたのではないか、こういう気がするわけであります。そこらあたりのこの法案をお作りになった根本的な問題を私はお聞かせを願いたい、こう思うのです。
#7
○国務大臣(大橋武夫君) 労働災害の防止ということは労働行政の重要なる部分でございまするので、労働省が責任を持って行なうべきことが根本であることはお説のとおりでございます。ただ、御承知のとおり、災害の防止につきましては、労働省といたしまして、労働基準監督機関を通じまして今日まで努力をいたして参っておりますが、何分にも、年々生産設備の拡張に応じまして、未熟練労働者がたくさんに労働要員として入って参りまするし、さらに設備あるいは作業方法等も、技術革新に伴いまして、種々斬新なるものに切りかえられつつあるような実情でございます。かような状況のもとに、労働基準法によりまする安全衛生についての基準監督というものは、申すまでもなく、従来の経験に即した最低限度の措置というものを法によって強制をするという建前に相なっておるのでございまして、これだけで災害の防止が十分であるかと申しますると、これは少なくとも現状においては、さらに法律の要求する以上のものが必要ではないかと、こういうふうに思われるのであります。したがいまして、法の改正という処置をとりますことも将来考えなければなりませんし、また、現実にも新しい事態に即応するよう、常に安全衛生規則等の改正には留意し、努力いたしておりますが、法による強制以外に、やはり関係者の自主的措置というものに待たなければならぬものが安全衛生の問題には多々ございまするので、これらにつきまして業者の自主的措置を促進したいというのがこの新しい法案の中心目標に相なっておるような次第でございます。したがいまして、関係者と申しますると、経営者及びそれを補助する人々、概括して経営者側の創意工夫、努力ということはもちろん必要でございまするが、しかし、災害の性質上、実際働く労働者側の協力というものもそれ以上に期待しなければならない次第でございます。したがいまして、私どもは、この協会の行ないまする民間の自主的災害防止の活動につきましては、言うまでもなく、労働者の全面的な協力を期待いたすのでございまするが、それはこの協会の事業の運用の面において十分研究、工夫をいたしまして、そしてさような趣旨を達成するようにいたしたいと思っておるわけでございます。一部には、この会員に労働者側の代表が加わることは協会の目的の達成からいって当然ではないかという御意見もございまして、私どもも、災害の防止という見地から申しまするならば、確かにそのとおりであると考えるのでありますが、しかし、法案でごらんになりまするごとく、この協会の事業活動には資金を必要といたすのでございます。この資金を会員の拠出による会費制度に求めておりまする関係上、労働者側からこれらの費用を負担してもらうということは、災害防止の性質上、はたしていかがなものであろうか、かような考えのもとに、会員に労働者側の代表者を加えるということはいたさなかった次第でございます。したがいまして、法律の要求しておりまする会員のうちには入っておりませんが、しかし、何と申しましても、この協会の活動に労働者側の協力が必要で、したがって、その活動の企画、実施面においては、全面的に労働者側の意見が反映することは当然なくてはならぬ、かように考えまするので、今後協会の構成上、あるいはまた事業の運営上の面におきまして労働者の意向が実質的に反映し、労働者が真に喜んで自主的に協力する態勢を作り上げるよういたしたい、かように存じておる次第でございます。
#8
○藤田藤太郎君 大臣は、今労働者の協力を得るんだと、こういうことをおっしゃいました。今の労働基準法は、これを監督するために基準審議会という三者構成の審議会がございます。たとえば労災の中には労災審議会という三者構成の審議会があるわけです。この相待った意見によって災害の防止が行なわれようとしているんですね。そして労働省に監督官がおって、それの実務をとっておられるわけです。今のたくさんできた工場の中で、工場監督は五年に一度しかできないといわれているほど監督官がだんだん少なくなってきている。そして、この面からくる基準法の違反というものが非常にたくさんある。私は、安全衛生を守るというのは、生産をになう生産機関の経営の任に当たる人は、当然今法律にきめられた最大級の安全設備をするというのは、私は業を行なう最大の義務だと思う。最大の義務は持つべきものであって、それをより有効に生産の面からも安全の面からもしていくというのは、設備資本だけじゃなしに、そこで働いている人とが一体となって安全衛生の道を開いていく、この問題が欠ければ安全衛生というものは成り立たないと私はそう思う。だから、労働基準法があり、労災法があって、安全衛生は、三者構成によってあらゆる角度からの意見が反映されて、実務は労働省の監督官がやる、監督官をふやして、それで実際にてきぱきと法に基づいてその業務を行なわしめるというところに本来の中心がある。なぜこういうものをこしらえなければならぬか。これが単なる自主的に生まれた協力団体として、その安全衛生を業者間同士協力してやろうというなら、これはまた別だ。しかし、こういうものをもって安全管理士、衛生管理士をここへ置いて、その人たちがいいといえば、労働省のこの点の監督行政は、全然関係なしにここの団体で動いていくということに結果的になる。それでいいのかどうか、その動いていく団体の、労働者の意見を聞かなければならぬということが書いてありますけれども、意見を聞かなければならぬだけではどうにもならぬと私は思っている。そこらの根本がどうしても理解できないわけです。私は、もっとざっくばらんにお答え願いたい。こういう団体をお作りになろうとした意図はどこにあるのか、この意図を聞きたい。業者だけの団体、監督行政をここに転嫁をさしてやろうというようなこういう団体を作ろうとした意図はどこにあるのか。私はそれをまず第一に聞きたいのです。どうしてもわからない。法律に基づいて安全衛生の業務を労働省の監督によってやっていく、これはもう業者としては最低の条件なんです、完備するということは。それがなぜこんなところに転嫁しなければならないか、どういう意図があるのかということが僕にはよくわからない。炭鉱なんかがはずされている。これはどうなるのかということも言わざるを得ないということになってくるわけです。一番災害の多い炭鉱が残されているということをあわせて、もっとざっくばらんにこの意図をお話し願いたい。
#9
○国務大臣(大橋武夫君) この法案の根本的な考え方といたしましては、労働基準法による基準監督というものを団体に肩がわりさせる、ないしは、それを手伝わせるというような考えは全くないのでございます。監督行政につきましては、仰せのごとく、最近工場、事業場等の激増に伴いまして、関係労働者も非常に増加いたしております。したがいまして、従来からの基準監督官では明らかに手不足である面も認めております。したがいまして、これにつきましては、労働省といたしましては、どこまでも監督行政は、行政機関の手を通じて、法律に基づいて行なうべきものであるという考えのもとに、監督官の増員、あるいは機動力の強化等、監督行政それ自体の能率化、強力化ということによってその方面の足らざるを補おうという考えでおるわけでございます。今回の法案で考えておりますのは、災害の防止ないし産業の衛生というものにおいては、労働基準法による監督行政だけでは届かない面がある。どうしても労使の協力によって法律の要求する以上の自主的な措置をお願いしなければならない、それがほんとうに災害をなくす根本の力になる、こういろ考えのもとに労使関係者の自主的な措置をお願いしようというのでございまして、これは監督行政とは関係のない、あくまでも労使の自主的な措置でございます。こういうことでございまして、これに要する支出については、その負担は労働者にお願いすべきものではなく、あくまでも事業主にお願いすべきものではなかろうか、こういう考えでこの協会を作ったわけでございます。しかし、私どもも、経費の負担がいかがでありましょうとも、安全ないし衛生ということは、労働者の全面的な自主的協力、また、労働者の創意工夫に待つところがなければならぬのでございまするから、その意向を十分に反映し、また、その協力を得られるような措置をどこまでも考えなければならない。また、そういう形で進まなければならないということは、これはさように考えておる次第でございます。
#10
○藤田藤太郎君 どうも大臣の言われることはおかしいじゃないですか。安全衛生設備をすること、災害を防止するということは業者の固有義務ですよ、これは。だから、会費が要るとか費用が要るが、労働者に負担がかけられないから入れられないというのは、むしろ逆じゃないですか。これは本来転倒じゃございませんか。生産を上げるというのは設備と資金と労働力ですよ。これが三者一体となって災害防止を行なう設備をし、それで安全を規制するということは、労働者の志向もございますけれども、何といっても業者の固有の義務ですよ。労働基準法はそうなっていませんか。安全衛生のために労働者の賃金から幾らか出してやりなさいとなっておりますか。そんなことはないでしょう。業者が、労働力を提供した労働者に対して、より安全に働かせるようにする、そして生産を上げていく。そのための安全設備をかくかくやりなさいというのが法の建前じゃないですか。業者の固有義務ですよ。固有義務をどうしたらいいかというところには、単に労働者の意見を聞くというだけじゃなしに、三者が一体となって、労使が一体となって、より安全な方向を作っていくというところに問題の主点がある。そこできまったものは、固有義務として業者がその設備の安全性を保っていく。本来、安全衛生というようなものはそういうものでなければならん。何のために法律に基づいて業者だけが団体を作って――これはどうしても労働省の監督義務というものが、相当な部分この協会に移行されるような姿になりますよ。そうしたら、国民が期待しているような公平な監督行政というものが、その団体に移行されていくわけでありますから、私は全部とはいいませんけれども、移行されていくわけでありますから、そこに働いている人のその関係において、全体の安全衛生という問題がどういう格好になっていくか。私は、外国のように、人を雇うときには、この人が、社会的に安全で、社会的に十分な生活ができるという、それだけの給与や労働条件をもって安全性を保たなければ人を雇う資格がないと思う。今日の近代国家の常識と違って、安かろうよかろうという労使関係であるのが、私が言わなくても、大臣よく御存じだと思う。そのために違反行為がたくさん出ている。その違反行為を労働省みずから規制しようというのでなしに、業者に、この問題をゆだねるというところに私は根本的な問題があるのではないか、こう思うのです。そこはどういう工合に説明をされますか。
#11
○国務大臣(大橋武夫君) 安全、あるいは衛生上の各事業場における設備の費用は、その事業主の負担であることは、これはもう経営設備の一部でございますから、申すまでもない事柄でございまして、私が費用と申しましたのは、そういう個々の事業場において施設をする費用ではございません。この団体が安全衛生のために自主的な活動をする、その活動にはやはり経費がかかります。これらの経費は、法案にございますとおり、会費という制度によって調達されるのでございます。この会費は、どこまでも事業主が負担すべきものである、こういう考えで作り上げたものなんでございます。そうしてこの団体というのは、監督行政の一部を請負うものでは決してございませんので、監督行政は、あくまでも基準監督機関が責任を持って行なって参るのでございまして、基準監督に関係のない範囲において、安全衛生に関する問題について、自主的な活動について協力する体制を作るというのがこの団体の固有の仕事に相なっているわけでございます。このことについて、労働大臣は、監督官庁といたしまして、事業活動について監督を当然することになるのでありますが、その監督に際しましては、その事業の内容において、実質的にも形式的にも、労働者の意見が十分に反映するように監督をいたして参りたいと思います。
#12
○藤田藤太郎君 どうもだんだん聞いていると、僕もよく理解ができないわけですが、そんななら、まず第一に私はお尋ねしますが、今の基準監督官というのは何人おいでになるか。今日、どれだけ今度の予算でふやされたか。次の機会にどういう工合にして、それじゃ五年に一ぺんしかできんという監督行政を解消する計画またはそういうことをおやりになっているのかどうか。私はそれがまず第一に聞きたいわけです。
 その次は、それじゃ安全衛生の問題は労働省がやるんだと、こうおっしゃるのなら、このクラブは、クラブと言っては言い過ぎかもしれないけれども、人の集まる一般にいわれるクラブのような機関になるわけですか、これはそうじゃないでしょう。安全衛生を、安全管理士、衛生管理士を置いてやろう、この一部の業務を労働省の下請的な移管を受けてやろうというのがこの趣旨じゃないんですか。どうなんです、そこのところ。
#13
○説明員(大野雄二郎君) もし今度の団体を作ることによりまして、かたわらにおいて監督官の定員を減ずる、あるいは安全衛生に対する予算が削減されるということになりますれば先生のような御疑問も当然かと存じますが、私どもの今年度の予算は、安全衛生に関しましては、前年よりはるかに増しておるのでございます。また、監督官の数字も減っておりません。安全衛生に関する職員の数は、微々たるものでございますが、ここ数年伸び悩んでおりましたのが、若干増員になっております。
 それから、工場、事業場がふえまして、監督官の手が足りないという問題につきましては、機動力その他の機材の活用によりまして、手薄になることのないように措置いたしておる次第でございます。もちろん現在の人員、予算が十分であるとは考えておりませんが、決してこの法案との関係におきまして手抜きが生じた、あるいはその負担を向こうへ転嫁したというようなことはございません。
#14
○藤田藤太郎君 予算が削減されたとか何とかという問題じゃないじゃないか。今やられていないという問題を言っているのだよ。今、日本の事業場は幾らあって、監督官は何人いるか、この問題をどんどん充実していってあなたが今言うようなことを言われるなら幾らかわかるんだ。減ってないから、これを削減してやるというような気持はありません、減っておりませんというような、そんなものの考え方がありますか。事業場が全国で幾らあるんですか、監督官が何人おるのですか、一人でなんぼ監督ができるのですか、そこのところを言って下さい。
#15
○説明員(大野雄二郎君) 昭和三十六年の数字でございますが、適用事業場数が百七十二万三千六百七十八、適用労働者数が二千八十二万、監督の実施件数は二十九万四千、監督官の定数は二千三百九十八、こういう工合になっております。監督官の定数は、三十一年の二千三百八十五と比べますと、それほど伸びてはおりません。監督実施件数は、三十一年の二十六万五千が二十九万四千と、こういうふうに増加いたしております。したがいまして、監督官の伸びの少ないのに比較いたしまして実施件数の多いのは、先ほど申し上げましたような機動力等の活用によるわけであります。
#16
○藤田藤太郎君 監督した事業場が百七十二万で、監督員が二千三百九十八人ですね。それで昨年監督をやったのが二十九万ということになりますと、全体の何分の一になるわけですか。これだけしか監督をやっていないんじゃないですか。そうすると五年に一ぺんか六年に一ぺんになるんじゃないですか。六年に一ぺんしか行けぬことになるんじゃないですか、これを算術計算いたしましても。そういうところに問題があると私は言っている。これは基準法にきめられ、労災法にきめられた基準によってこの監督官をふやして、そしてきちっとやっていくというところに基準法の本旨があるんじゃないですか。まあきょうは私あまり長くやりません。問題点だけを提起しておるわけですけれども、どうも尋ねれば、予算削減にはなりませんというようなピントはずれの返事をしてもらっては、われわれはなおさらわからぬことになっていく。大臣は、その監督行政は隆々としてやっていくのだ、こうおっしゃるのだけれども、去年からことしにかけて幾らふえた、去年が二千三百八十五人で、ことしは二千三百九十八人、十三人ふえている、そうでしょう、今のお話ですと。そして二十六万台であったのを二十九万台の事業場の監督行政をやったとおっしゃるのだけれども、全体は百七十二万である。少し話が合わぬのじゃないですか、ここらあたりは少し。だから、それじゃ監督行政は一切労働省でやると――私が言っているのは、今監督行政が足りないから、何とか監督官をふやして安全衛生の監督行政をしっかりやりなさいということを絶えずわれわれは主張して言っている。ところが、微々たるものであります。微々たるものしかふやさないで、そこのところがもうあいまいとは私はいいませんけれども、五年に一ぺんぐらいしか監督行政ができないような格好にしておいて、監督行政はやりますでは、それじゃこれは関係がないのだとおっしゃるけれども、なに、関係がないどころか、この機関そのものは労働省の下請とまでは言うかどうか知らないけれども、そういう仕事をされるわけです。そのされるときに、肝心の働いている労働者の意見が入らないということでは、意見を聞くと言ったって聞くだけで、そのとおりしなければそれでおしまいのものです。そういうことがこの法律の本旨をなしていると私は思いますから、これは単なるクラブ式のものなのかという感じを持って見ていると、そうではない。やっぱり安全衛生を、安全管理士、衛生管理士を置いてやっていくのだ、こうおっしゃると、なおそこのところがあいまいになっていく。そこらの根本的な問題が僕はまあようわからぬ。私は、きょうはその基本的な問題だけをちょっと聞いておいて、もっと詳しい説明資料があったら、ぜひそのいろいろの図面に書いたような資料でひとつわれわれにお示しを願いたい。よく理解ができるようにしていただきたい。この法文だけ見ていたって、何か知らぬけれども、どうも言葉のやり取りをやっていると、食い違いが何ぼでも出てくるような気がする、そうでしょう。監督行政は労働省がやるのだ、経費がかかるからと。労働省は経費が出せぬかというと、そういうものは固有義務なんですから、そうすると、会費や何やかやでそれじゃ何をやるのですかという疑問がここに出てくるから、私は、ぜひ図解的に、どういう格好でどういう工合に具体的になっていくのだという解説を出して下さいよ。それでなければ、これはどうしてやっていったってよくわからぬと思うのです。基準法や労災法が三者構成で審査をしているわけですよ。だから、そういうところからいっても、私は、やっぱり何も労働者が入れとか、資本家だけでやるなというのではない。そこのところを私はあまり強調するのではないのですよ。労働省という政府の機関が、必要なものには業者に義務を負わせ、労働者も啓蒙するという建前のものなのです。それに対して労使が協力、補助するということで安全衛生というものが成熟していくという姿のものだと私は思うのです。だから、そういう点からいって、どうもこの業者だけの団体をお作りになって、そこらあたりがわれわれはようわからぬ。だから、それをひとつ図解を出していただきたい。
 それから、ここでいつも監督行政、基準監督を私も一、二回問題にしましたけれども、炭鉱が、あるいは通産省の保安局の監督下にあるわけですから、ああいうものがここへ入らないという理由は何ですか。これをひとつ聞かしておいてもらいたい。
#17
○国務大臣(大橋武夫君) 第一点について申し上げますが、安全衛生の問題について労働者の意思が参加するはっきりした点を明らかにせよ、こういう御趣旨であると思うのです。私どもも、この法文には表われておりませんし、また、法文にありますことだけで十分であるとは思っておりませんので、今後この団体の組織が実際行なわれるに際しましては、特に安全衛生に関する措置を決定し、この措置を決定するにつきましては、労働大臣が基準審議会に諮問をした上で決定することに相なっておりますが、問題は、協会でその原案を作るにあたって、確実に労働者の意思が参加するような措置を明確にするという点にあるのではないかと存じます。私どもは、これにつきましては、実施の際の問題といたしまして、そのときのことにつきましていろいろ考えておる点もございまするので、これらの点につきまして、なお十分に案を練った上で適当な機会に申し上げるようにいたしたいと存じます。
 それから、炭鉱及び金属鉱山、これは監督行政といたしましては、安全衛生については労働省の所管事務ではなく、通産省の所管事務に相なっておりまするが、しかし、本法案におきましては、これらの鉱業を除外するということは考えていないのでございまして、通産当局とも進めまして、これらの面の協会設置については、その方向に進めて参りたいと思うのでございます。特に御指摘のごとく、石炭山及び金属山におきましては、特に従来の数字から見ましても災害が多く、また、職業病の発生の機会も多いのでございますから、むしろわれわれといたしましては重点的に取り上げていくべきものだというふうに考えております。ただ、他省の所管でございますので、いろいろ打ち合わせ等をいたしておる状況でございます。
#18
○藤田藤太郎君 そこで、私はさっき前段に注文したのですから、具体的にひとつ図面でも書いてそこらのあたりのものを解説していただきたい。石炭、金属鉱山の関係もそうでございます。それから「労働大臣は、毎年、中央労働基準審議会の意見を聞いて、基本計画の実施を図るため、」云々と、こういうふうに要綱の第三の基本計画、実施計画というのがあるわけですから、これにゆだねるわけですね。基本計画を業務としてやるわけですから、だから、あなたのほうの監督規制、そういうものが全然いかないなんというようなことを言ってみたって、それはお話にならないのであって、そこらあたりも、もうちょっときちっと、法律に基づいたらどうなるのだということをきちっと言うてもらわないと、これで質疑してみると、それは関係ないのだ、それでは何をやるのだということになると、何もやることがなくなる。それではお茶飲みのクラブ活動ぐらいになってしまうのかというと、そうではない。ちゃんと衛生管理士とか安全管理士を置いてやる。それで大臣が計画を立ててやる。そこらになってくると、どうも話の食い違いが大き過ぎると私は思う。だから、そういうことをもっと詳しく図面に書いて、きちっと炭鉱の問題はどうする、そこで働く労働者との関係はどうなるのだ、それを一ぺん見せてもらってから議論をしようじゃありませんか。そうでないと私はようわからぬと思います。きょうはそれだけの具体的なものを出してもらう注文だけをしておきます。
#19
○理事(阿具根登君) よろしゅうございますね。資料提出を願います。
 本法案に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと思います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト