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1962/06/06 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第21号
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1962/06/06 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第21号

#1
第043回国会 社会労働委員会 第21号
昭和三十八年六月六日(木曜日)
   午前十時二十九分開会
  ―――――――――――――
   委員の異動
五月三十一日
  辞任      補欠選任
   竹中 恒夫君  井川 伊平君
六月一日
  辞任      補欠選任
   井川 伊平君  竹中 恒夫君
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     加瀬  完君
   理事
           高野 一夫君
           徳永 正利君
           阿具根 登君
           藤田藤太郎君
   委員
           鹿島 俊雄君
           竹中 恒夫君
           丸茂 重貞君
           横山 フク君
           杉山善太郎君
           柳岡 秋夫君
           小平 芳平君
           林   塩君
           村尾 重雄君
  政府委員
   労働省労働基準
   局長事務代理  大野雄二郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
  説明員
   労働省労働基準
   局監督課長   小鴨 光男君
   労働省労働基準
   局安全課長   山口 武雄君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働災害の防止に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(加瀬完君) ただいまより開会いたします。
 労働災害の防止に関する法律案を議題といたします。前回に引き続き、質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#3
○柳岡秋夫君 基本的な問題につきましては、また労働大臣の出席のあったときに質問をして参りたいと考えておりますきょうは、今後の論議の一つの資料にしたいと思いますのでお伺いしたいのですが、労働省は、昭和三十三年に、産業災害防止五カ年計画というものを作って、三十七年まで推進をして参ったようでございますが、この産業災害防止五カ年計画の重点施策は一体何かということをまずお伺いしたいと思います。
#4
○説明員(山口武雄君) 三十三年から五年間に災害を半分に減らそうという運動を展開いたしまして、その結果、一日以上の休業にいたしますと、年千人率が三十年の五〇・六から三十七年の三六・一というふうに、おおよそ大体二九%ぐらいの低下をして参っております。それで、その間いろいろの対策をとって参りましたが、特に重点を中小企業の災害防止、あるいは重大災害の防止というところに重点を置いて参りましていろいろやって参ったわけでございます。それから、全体的な対策といたしましては、総理府に産業災害防止懇談会の設置をみましたし、また、その後、これが産業災害防止対策審議会というふうに置きかえられたわけでございます。そのほか、法令の整備も、重大災害防止という点に重点を置きまして、およそ十回にわたりまして整備拡大をして参ったわけでございます。それから、一般的に安全に対する認識を深めていただきますために、七月一日を「国民安全の日」というふうに定めていただきまして、特に安全に対する一般国民の認識を高めるような対策もとってきたわけでございます。
#5
○柳岡秋夫君 今の御説明は非常に抽象的なんです。たとえば中小企業に重点を置いたとか。重大災害防止に重点を置いたとか、こういうふうにいわれるのですが、そういう中小企業の労働災害をなくすために、具体的にどういう施策を重点的にやったのか、今後やるということをこの五カ年計画で定めたのか、あるいは重大災害の防止を行なうためにはどういう施策が必要と認めて計画をしたのか、そういう点をお伺いをしておるわけです。
#6
○説明員(山口武雄君) 中小企業の災害防止対策といたしましては、まず第一点といたしまして、安全指導員制度の実施をいたしました。これは民間の方々の中で、安全に非常に認識の深い方々にお願いをいたしまして、約千名の方にお願いをいたしまして、中小企業のために指導をしていただくというようなことにいたしました。
 それから、第二点といたしまして、安全に関します推進員の選任をお願いいたしました。これは安全管理者という制度がございますが、それに入ってこない規模程度の事業場におきまして安全推進員という制度を設けまして、そうして事業主に安全推進員をきめていただくというようなことにいたしまして、現在までに約二十万人の安全推進員を選任していただきまして、そのうち、約十五万人の一般的な安全の講習を終わっております。
 それから、安全管理者の範囲の拡大でございますが、これまでに百五十人以上の事業場におきまして安全管理者を置くような規定になっておりましたけれども、それを下げて参りまして、五十人以上の事業場に安全管理者を置くというようなことにいたしたわけでございます。
 それから、災害防止協議会の設置でございますが、地域別とか、あるいは業種系別の災害防止協議会を作っていただきまして、大いに災害防止の検討の場を作ると同時に、具体的な問題についていろいろ対策を練っていただくというようなことにいたしまして、現在こういうような協議会が全国で約三千ぐらいございます。
 それから、第五点といたしましては特別安全管理指導事業場というものを設けておりますが、これをふやして参りまして、現在約三千五百ぐらいの事業場を指定いたしまして、毎月われわれの方から行きまして、いろいろ御相談にのっておるということでございます。
 それから、中小企業の安全施設整備のために特別融資制度というものをやっていただきまして、一昨年の九月一日から約十億の資金を準備いたしまして、そして安全施設のために融資するということをいたしております。現在約七億ぐらいの貸し出しがございます。そういうようなことを一連の中小企業災害防止対策といたしましてやってきたところでございます。
 それから、重大災害の防止の点でございますが、主としてこれは規則の改正をいたしたわけでございます。特にボイラーとか、圧力容器関係の規則の拡大整備をやって参りました。それから、足場とか、くい打ち機、くい抜き機に関します規定を新たに設けました。それから、危険物とか、ハッパ作業におきます免許制度その他の整備をいたしました。それから、電気、酸素に基づきます爆発引火災害の防止に関する改正もいたしました。また、林業関係とか、あるいは港湾荷役関係の規則も整備して参りました。それから、クレーン、建築現場におきます型ワク支保工に関する規制もいたして参ったわけでございます。
 そのほか、行政機関の連絡をとりまして、特に警察とか消防、あるいは建設関係と連絡いたしまして、爆発引火性事業場に対します特別監督、あるいは落盤の起こるような事業場に対します特別監督指導というような一連の対策をとってきたわけでございます。
#7
○柳岡秋夫君 この五カ年計画が、五年後には災害発生件数を半減せしめることを目標に置く、こういうことで始められて、先ほど死傷年千人率が三十二年度には五〇・六%であったけれども、三十七年には三六・一%である、約一四%ですか、このくらい減じたと、こういうことで多分に成果を評価しているようでございますけれども、しかし、今その重点施策として、中小企業における労働災害をなくすということに重点施策を置いたといいながらも、労働省の統計を調べてみますと、特に百人未満の事業所における災害というものが非常に多いわけです。全体的に見ましても、確かに死傷年千人率ではパーセントは減っておりますけれども、しかし、この災害件数から見ますと、決して減っておらないと思うのです。やはり高度成長政策のしわ寄せと申しますか、そういうところから災害件数は漸増して参りまして、特に三十六年度におきましては、非常に大きく伸びておる。まあ三十七年度は少なくなったといっておりますけれども、まだこれは暫定でございまして、三十六年度は非常に多い。たとえばアメリカの約三倍もの件数がまだある。しかし、その中におけるこの百人未満の事業所の件数は、依然として百人以上の事業所の災害件数のやはり二倍以上になっておるということを見ますと、私は、この五カ年計画の今まで実施してきた推進の仕方、あるいは重点施策の立て方、そういうところに何らかの欠陥があるのではなかろうか、こういうふうにも考えます。そこで、この計画を遂行してきた中で、一体どういう問題を労働省として把握をしてきたか、そういう点をひとつお伺いしたいわけです。
#8
○説明員(山口武雄君) 御指摘のとおり、中小企業におきます災害は非常に高うございまして、たとえば千人率の状況を申し上げますと、八日以上の休業におきましては四六・〇という千人率でございますが、それが漸次下がって参りまして、三三・八になっております。ところが、百人以上の事業所におきましては、三十二年が二三・一でございますが、これが漸次下がって参りまして、三十七年では一六・五というふうに、両方とも下がって参っておりますけれども、大企業と中小企業というのを比べてみますと、やはり倍ほどの差がございます。これにつきましては、さらにその原因を検討いたしまして、その対策を立てたいというふうに考えておりますが、去年の十月に閣議了解によりまして、新五カ年計画というもの、が樹立計画されまして、今年度から新しい五カ年計画が始まっておるわけでございます。その中におきまして、旧五カ年計画の経過を検討いたしまして、足らないところを補い、さらにいいところを拡大してやっていこうというわけでございまして、新五カ年計画におきましては、安全管理体制の確立というのを特に取り上げて考えておるわけでございます。それから、施設の整備をやっていこうということ。それから、もう一つ大きい柱になっておりますのは、安全教育をもっと徹底してやっていこうということになっております。そのほかに、さらにそれをこまかく分けていきますといろいろな点がございますが、そういうふうな施策をやって参りまして、そして三十六年におきます八日以上の休業の千人率二一・〇五を、最後年でございます昭和四十二年におきましては一二・三〇というふうなところまで持っていきたいというわけでございます。このためには年率八・八%づつ下げていきたいというわけでございまして、特に中小企業におきましては、作業基準の整備とか、あるいは新入職者の安全教育というような点について特に力を入れたいというふうに存じております。
#9
○柳岡秋夫君 新しい五カ年計画の問題につきましては、この法律の中にあります基本計画との関連もございますので、あとでまた質問したいと思いますけれども、この三十七年まで行なわれました五カ年計画の中での問題点というものが、今新しい五カ年計画の中で立てた重点施策そのものであるというふうにも理解できますけれども、私は、問題は中小企業、特に百人未満の事業所に非常に多いというこの原因はどこにあるのかということをまず究明をしなければほんとうの災害防止の対策というものは立てられないのじゃないかと、こういうふうに思うのです。しかも、何か今までの五カ年計画の重点施策等を聞いてみますと、その発生の原因について、どれだけ労働省として把握をして立てられたのかという点が私は非常に疑問に思うのです。この労働災害が発生をするというのは、一体どういうところにおもな原因があるのか、要因があるのか、こういう点をお聞きしたいと思うのです。
#10
○説明員(山口武雄君) 大体、中小企業におきまして災害率が高いということは、一般に経営者の方が災害防止に関しましてあまりに関心がないということが第一点だろうと思います。それから、第二点といたしましては、比較的にその災害防止に対する技術的な知識が少ないのじゃないかというふうなことでございます。それから、また、大工場に比較いたしまして、施設その他があまりよくないのじゃないかというようなことも考えられます。それから、第四点といたしまして、作業基準的な確立した基準ができておらないのじゃないかというようなこと。第五点といたしましては、安全教育がよく徹底しておらないというようなことでございます。
 さらに、こういうような災害の原因を考えて見ますときに、まず第一に考えられることは、施設の点からくる災害でございます。それから、作業の行動に起因する災害でございます。さらに、そのほかの特殊な原因によって起こる災害というふうに大別できるのじゃないかというふうに思っております。ただ、施設によります災害と申しますのは、非常にその判定がむずかしゅうございまして、学者によりましていろいろ。パーセンテージが違って参りますけれども、およそ全体の災害を判断いたしまして、作業的な上から、行動の上から起こる災害が約八〇%であるというようなこともいわれております。それから、逆に、今度設備を主にして考えますと、設備からくる災害がまた八〇%であるというようなこともいわれております。もちろんこの二つはだぶってくることもございますが、そういうふうにいわれております。労働省といたしましては、原動機による災害と、作業行動による災害と、特殊作業による災害というふうに分けて災害の原因を追及しておりまして、大体、動力運転による災害が一五%から二〇%でございます。それから、作業行動上に起こる災害が七〇%から七五%、特殊災害がそれ以外というようなことになっております。これらにつきまして原因を究明いたしましてその対策をいろいろ立てておるわけでございます。
#11
○柳岡秋夫君 そうしますと、災害の発生のやはり大きな要因は、使用者、いわゆる経営者のそういう施設に対する万全な措置をしておらない、あるいは労働者に対する安全教育その他の施策をしておらない、こういうところにあるというふうに理解してよろしゅうございますか。
#12
○説明員(山口武雄君) 一般にその原因の分け方にもいろいろあると思います。私の方で厚因をいろいろ分けておりますけれども、それは最後の直接的な原因によって先ほど申し上げたのは分けておるわけでございます。たとえばやけどをするというような場合に、疲れて不注意のためにやけどをする場合もありましょうし、あるいは作業の手順を誤ったためにやけどをするというようなこともございますけれども、それを一つにひっくるめまして、やけどというようなことで分類しておるわけでございます。したがって、ほんとうの原因がどこにあるかということは、これだけではわからないと思います。ただ、そのやけどをするにいたしましても、疲れてやるか、不注意でやるかという判定が非常にむずかしいわけでございまして、それを究明して参りますと、相当問題があるわけでございます。そういうような点から、直接の原因というような分け方をやっておるわけでございます。それで、先の御意見でございますが、その本人の不注意とか、あるいは設備の不完全かということになって参ると思います。それで、一般に、経営者の話では、大体七〇%から七五%までを本人の不注意による災害だ、こういうようなことをいわれておりますけれども、これをさらに検討いたしますと、設備の不完全であったり、あるいは作業の手順が悪かったりする場合が多いわけでございます。なかなか一がいにそれはいえないと思います。ただ、われわれといたしましては、直接の原因をなくするということに主眼を置きまして災害防止対策を立てて参りたいと思います。なお、そのほんとうの原因というものをつかんで対策を立てていくべきことはもちろん必要でありますし、局部的にはそういうようなこともやって参りたいと思います。
#13
○柳岡秋夫君 私は、災害発生の原因は、労働者の不注意によるということを、今言われましたように、特に使用者なり政府からときどきそういう声が聞かれるわけですが、これは特に中小企業に多いということを考えてみましても、中小企業の賃金その他の労働条件が、非常に大企業と比較をして格差が大きい。労働時間にしても、あるいは賃金の面にしても、非常に格差が大きく、生活をするために、どうしても所定外の労働をしなければならぬ、こういうところにも大きな原因があるように思うのですが、そこで、労働省で出した労働白書によりますと、今言った中小企業関係の労働災害発生率が依然として二倍以上であるということは、やはり問題が幾つか内包しておるのだ、こういうふうにいわれております。その問題の内包しておるという問題、それは具体的にどういうものをさしておりますか。
#14
○説明員(小鴨光男君) 先ほど山口課長から、災害の原因についていろいろお話し申し上げましたけれども、災害発生の原因の中身については、いろいろな因果関係があろうと存じます。したがいまして、その災害直接の原因といたしまして、物的な施設の欠陥その他があるわけですけれども、さらには、今、先生御指摘のような、中小企業におきますところの労働条件の低さというものが、間接的な形においても、やはり大きな災害が多発するという一つの原因になっておろうかと存じます。御指摘のとおり、非常に時間外労働が大企業に比較しまして長い、あるいは賃金が大企業との比較において相当な格差がある、こういうこともやはり間接的な形で災害の多発ということと結びつこうかと思うわけでございます。したがいまして、これらの点については、単に災害はこういう科学技術的な面から除去するということばかりではなくて、労働条件を高めていくという全般的な過程において災害を減少させるということが必要になって参ろうかと思います。実は、私どものほうでは、そういうような観点からいたしまして、昨年から、中小企業の集団に対しまして、特に工業的な企業というものをつかまえまして、全国二千の中小企業の集団の中で、とりあえず六百六十六集団を昨年とことし指定いたしまして、労務管理全般にわたりますところの近代化の施策を講じ、これは災害というものに焦点を当てて見た場合においては、その災害の発生する原因としての直接的な物的な設備はさることながら、疲労、あるいは残業の規制というような形で、これらの問題を近代化することによってこの災害をできるだけ少なくしようという総合的な対策というものを、現在、監督と並行して、指導的な形でやっておるわけでございます。
#15
○柳岡秋夫君 この災害の中で、年令別の災害の発生状況を見ますと、二十才未満の低年令層、あるいは五十才以上の労働者、そういう方に非常に多い。こういうことも労災保険の統計から出ているわけですが、このことは、私は、やはり誤った所得倍増政策と申しますか、そういうような政策による過度の設備投資によってきておるしわ寄せがこういうところにも現われていると、こういうふうに私は思うのですが、したがって、そういうような根本的な政策を変えない限り、この労働力不足からくる問題、あるいは労働強化あるいは労働者に対する訓練なり教育、こういうものもなかなか思うようにはいかないのじゃないか、こういうふうに思います。しかし、これは労働大臣が来ましたらまた論議をしてみたいと思いますが、そこで、次に、労働基準の監督行政につきまして若干質問してみたいと思います。
 先般の委員会で、現在この監督行政の対象事業所数、これが百七十二万三千六百七十八、適用労働者が二百八十二万、監督官は二千三百九十八人そうして監督件数は二十九万四千件、こういう回答がございました。これで見ますと、約五年に一事業所の割合でしか監督行政がやられておらない、こういう算術計算になるわけでございますが、この二十九万四千件のこれは延べ件数だと思いますけれども、この中の中小企業の割合は一体どの程度か、おわかりになりましたらお尋ねをいたします。
#16
○説明員(小鴨光男君) ただいま御指摘の点につきましては、総計といたしまして二十九万四千について監督を実施しておるわけでございます。そのおよそ九〇・三%というものは、主として中小企業に対して向けられておりますところの監督でございます。この中小企業と申しますのは、私どもの便宜な統計からいたしまして、百人未満の事業所というものをとらえて中小企業というふうな形で監督するわけでございます。
#17
○柳岡秋夫君 そこで、中小企業の労働災害防止のために力を入れておるということは理解できるわけですが、一体、この監督を実施している中で、労働基準法の安全衛生に関する規定に違反をする件数なり、あるいは実態というものがどういうものであるかどいうことを把握しておりますか。
#18
○説明員(小鴨光男君) 実は、この監督実施状況の内容を見て参りますと、労働時間の違反も相当多いわけでありますが、ほとんどその半分以上というものが、実は安全衛生関係の規定の違反になっておるわけでございます。安全関係、衛生関係につきましての、この二十九万のうちの違反の事業場と申し上げますと、三十六年におきましては二万六十七件でございます。
#19
○柳岡秋夫君 おそらく、そういう違反を摘発するというとちょっと語弊がありますけれども、見つけて指導をしていく、監督をしていくということになっておると思いますけれども、そういう摘発をして指導監督をしたその結果のいわゆる実施状況ですね、そういうものの把握はしておるのですか。
#20
○説明員(小鴨光男君) 私どもの監督のやり方になるわけですけれども、中小企業に対しまして、先ほど申し上げましたように、九〇%重点的に監督を実施しておるわけでございます。この中身といたしましては、私どもが計画に基づきまして定期的に監督を実施する定期監督というものがございます。先ほどちょっと数字が違いました。衛生関係が二万件で、安全関係が四万二千件でございます。計六万二千件になりますが、この定期監督によって把握した結果につきまして、一定の日時を経た後において、是正しておるかどうかという再監督を実施いたします。それによって直っておるものについてはそれで終わりになるわけですが、直らない部分については、重大な違反については、これは司法事件にする、そうでないものについては、若干の時間をかけて最終的に是正をさせる、こういう方法で監督を実施しておるわけでございます。
#21
○柳岡秋夫君 再監督をしまして、重大な違反については司法問題にすると、こう言われますが、その労働省の指示なり、あるいはそういう監督に従わない職場、事業所が、今言われるように、あるわけですね。そういう事業所は、一体どうしてそういうふうな違反をあえてなさざるを得ないのだろうか、そういう原因をどういうふうに把握しておりますか。
#22
○説明員(小鴨光男君) ただいま御指摘の点については、実は、労働基準監督の行政として非常に重要な点でございます。私どもは、法律にこう書いてあるからということで、直ちに違反だということで責めましても、中小企業における違反の原因というものが繰り返し行なわれておるという、この実態をいろいろ検討したわけでございます。その違反の中に、いわゆる是正できないという原因の中には、外部的な要因と内部的な要因と二つあろうかと思います。外部的な要因は、やはりそれが元請と下請との関係というような形で、元請からのいろいろな納期の切迫というような形で違反が起こってくる。内部的な原因としては、使用者側の法に対する不知と申しますか、あるいは労務管理の拙劣さというような原因があるわけでございます。で、一回行きまして違反を指摘しましても直らないという中には、その事業主自身において努力しなかったという部分もございますけれども、こういう問題につきましては、監督官の監督ないし指導によって早急に是正される場合が大部分でございます。外部的な要因につきましては、これはあえてその事業だけ責めましても、そのあとにおいて恒常的に違反が直るというような保証はございません。これは一監督のみでなく監督署、あるいは地方の基準局というものをあげましてそういう外部的な要因の除去ということについて、元請の事業場、あるいはその周辺の問題について関係各省と折衝する、こういう形で実は是正の効果を上げさせていくということになっているわけでございます。
#23
○柳岡秋夫君 今その外部的要因、あるいは内部的要因ということを言われましたけれども、私どもが過去で経験したところによりますと、たとえば職場に安全衛生委員会、こういうものを作って、職場の安全衛生についてのいろいろな施策を検討して、そして実施をするようにということで使用者に対して要求している。ところが、使用者は、そういう委員会の取りきめにもかかわらず、その施策をしないということの多くの原因は、やはりそれだけの裏づけがない、特に中小企業においては、百人未満の事業所においては資金がない、こういうところにやはり問題もあろうかと思うのです。先ほど五カ年計画の中で十億の特別融資制度を作った、それで約七億の貸し出しを現在行なっておる、こういうことを言っておりますが、十億ぐらいの金では、私は、先ほどの百七十二万三千六百七十八職場、しかも、その九〇%近くは中小企業であるということを見ますと、わずか十億ぐらいの融資で完全な職場の安全設備をしていくということには問題があろうかと思うのです。そういう点について、いわゆるこの特別融資の三十八年度における対策といいますか、金融等はどういうふうになっていますか。
#24
○説明員(山口武雄君) この融資制度はおととしの九月一日から始まっておりまして、二年間に暫定的に十億というようなことになったわけでございます。その後、もし足らない場合には大蔵大臣と労働大臣と協議をいたしまして、そしてワクをさらに広げるというようなことで発足いたしたのでございますが、現在、先ほど申しましたように、七億というところでございまして、今後さらにその対策を考えて参りたいと思っております。
#25
○柳岡秋夫君 そうすると、三十八年度は別に増額もしない、現在のままである、こういうことですね。
#26
○説明員(山口武雄君) 今の制度がこの八月末までになっておりますので、それにつきまして、今後その期間までに大蔵省と交渉いたしましてやっていきたいと思っております。
#27
○柳岡秋夫君 そうすると、今までの経過からいって、八月で切れると申しますと、今六月ですから、あと二カ月ですね。ですから、次の八月以降の問題について、当局としてどういうふうにお考えになっていますか。
#28
○説明員(山口武雄君) 現在の融資制度が、一般資金の中から、仮ワクといたしまして十億ということになっております。それから、利率が六・五%でございます。そういうようなところでございまして、二年間様子を見て、さらに次の対策を考えようということになっておりまして、現在のところは七億でございますが、その七億の融資がさらに伸びるようにするためにはどういうふうな手を打っていくべきかというようなことも検討いたしておりまして、さらに一般に資金がもっと借りられるようにいたしたいと思っております。
#29
○柳岡秋夫君 先ほど言いましたように、いずれにしても資金的裏づけがやはり非常に重要だと思いますので、この点につきましては、おそらく私は、この法律案に示されておる基本計画なり、あるいは実施計画の中で当然考慮されなければならない問題だと思うのです。それがまだ検討中であるということでは、私どもとしてはちょっと納得がいかないのですが、もう一つだけ次の委員会の質問のためにお聞きしておきたいのですが、中央労働基準審議会というのがございますが、この中央労働基準審議会の、現在までと申しますか、特に三十七年度中でけっこうだと思いますけれども、最近における運営状況と申しますか、特に私は、この中央労働基準審議会という審議会の任務というものは、労働基準法の適正な運営なり、あるいは労働条件についての基準についての政府に対する建議を行なう、こういうような任務を持っておるわけでございますが、今までどのようなこの労働災害防止についての建議を行なってきたか、こういう点。さらに、また、労働条件全般について、最近における国際的な労働条件の向上の趨勢、あるいは産業の近代化に伴うところの雇用の近代化、そういうものに適応したやはり労働基準というものが考えられていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに私は思うのですが、そういう面についての基準審議会の中における論議なり、あるいは労働省に対する建議が行なわれてきたかどうか、こういう点をひとつお伺いしたいと思います。
#30
○説明員(小鴨光男君) 中央労働基準審議会は、御承知のように、基準法の中で、基準法の施行と改正に関する事項につきまして審議することになっております。それから、建議権もございまして、活発な御意見を拝聴しておるわけでございますが、現在、労使、公益二十一名の委員で、毎月一回原則として開催しておるわけでございます。ただ、最近は、先生御指摘のように、産業の近代化に伴いまして、現在、基準法に基づいて作られております労働安全衛生規則、これの基準というものが非常に実情に合わないという御意見がございまして、特に一昨年以来からは、この点について重点的に労働大臣から諮問いたしまして、いろいろの点についての御検討を願い、また、御答申をいただいておるわけでございます。最近一年間におきましては、約七回ほど総会を開いております。そのほかに、安全部会、衛生部会が十数回にわたって開かれておるわけでございますけれども、特に衛生関係につきましては、産業疲労、キー・パンチャー、あるいはその他の新しい原材料が入ってくることによるところの職業病の予防というようなことで、いろいろ御審議をいただいております。具体的には電離放射線関係の問題それからニトログリコールの中毒対策の問題、それから高気圧――例の潜函作業でございますが、これの対策、それから有機溶剤の中毒の対策という点に重点を置いて衛生規則の御審議をいただいております。また、安全関係の問題につきましては、先ほど五カ年計画の問題で山口課長からも御説明がありましたが、主として規則の改正を重点といたしまして、ボイラー、圧力容器の進歩に伴います規則の改正、クレーンとかデリック等の規格の進歩というものに伴います規則の改正をやり、それから林業労働におきまとすころの運材――伐木その他の機械化に伴いまして災害が非常に多くなっておりますので、この林業労働関係についての安全衛生規則の改正をやり、それから建設機材というものが最近非常に進歩いたしまして、足場とか、くい打ち、あるいは明利掘さくの作業規制という問題について現在規則の改正についての御審議を願っておるという段階でございます。
#31
○柳岡秋夫君 この中央労働基準審議会というものは、今その任務について申されましたが、労働条件の問題、いわゆる基準法に定められた最低の労働条件、こういうものに対してどのように各職場において労働が行なわれておるか、どういう形で労働が行なわれておるか、こういう点についての調査なり、あるいは労働基準法の適正な運用についての労働省に対する建議と申しますか、そういう点の任務はないのですか。
#32
○説明員(小鴨光男君) 先ほど申し上げましたように、そのような労働大臣の諮問のほかに、労働条件の全般についての建議権があるわけでございます。これに基づきまして、過去におきましても、監督官の資質の向上、あるいは賃金、あるいは労働時間についてのいろいろの建議をいただいておるわけでございます。で、最近におきましては、この二月に各委員さん方を班に分けまして、問題業種についていろいろ実地調査をお願いいたしまして、それについての報告なり御建議をいただいておるわけでございますが、特に最近、賃金の不払いというものが、石炭産業を中心として、いろいろ出ておるわけでございます。で、単なる監督だけでは、なかなか不払い解消というものの解決がつかないではないかという御意見をいただきまして、今月から、実は賃金不払いを中心とします特別な部会を設けまして、これらについての有効な対策についての御検討を願うということになっておるわけでございます。そのほか、産業災害ばかりじゃなく、およそ労働条件全般についてのいろいろな御審議は毎回いただいておるわけでございます。
#33
○柳岡秋夫君 あと一つだけお伺いして、あとは次に譲りたいと思いますが、基準審議会の中で、特に労働災害は、先ほども言っておりましたように労働条件の非常に劣悪な面が多分にその要因となっておるということもこれは明らかだと思います。したがって、いろいろな労働災害の問題をこの基準審議会でやっておるようでございますが、そういう建議をする場合に、労働条件の問題、いわゆる賃金なり労働時関の問題について考慮をしながら、あるいはこれを一つの大きな要因として是正するというような考え方、こういうものは基準審議会として論議をされ、また、労働省に建議をされる、こういうことがあったのでしょうか。
#34
○説明員(小鴨光男君) もちろんこの労災防止法案につきましても、そういうような観点からいろいろ御審議をいただいておるわけでございますけれども、最近の事例といたしましては、港湾労働というものについても、これは非常に災害が多いわけでございます。これはやはり物的施設の問題、あるいは作業構造の問題それ自身も直接的な原因になっておりますが、その背景といたしましては、やはり労働力需給の問題、それに伴うところの日雇い労働者が多いということ、それに、そこの労働時間なり、あるいは賃金というものが非常に不安定だということも、やはりそういう災害を発生させる大きな源になっておるのじゃないかというような御意見もいただきまして、総理府にありますところの港湾労働者対策審議会というものと関係をつけながらいろいろと御審議をいただいておる、こういう状況でございます。
#35
○政府委員(大野雄二郎君) 率直に申し上げまして、労働災害その他と労働条件との関連ということにつきまして、先生の御満足のいくような総合的な検討を中央労働基準審議会でいたし、それについて何らかの結論を出したということは、今までの事例にはございません。個別的な問題につきまして、安全は安全で議論し、あるいは賃金不払いは賃金不払いの問題で議論をするというのが、これが実情でございます。たとえば港湾みたいな問題につきましてはそういう問題はございますが、率直に申しまして、総合的には今までやっておりません。今度の法案におきまして、災害防止計画、基本計画並びに実施計画を立てるということになりますと、ここに諮問をされますので、そういった問題が総合的に検討されることに相なろうかと存じます。
#36
○杉山善太郎君 関連。これは、基準局長代理からお伺いするわけでありますが、たとえばこの労災防止団体が発足したという仮定を前提として考えてみた場合に、その協会なり防止団体でできるところの防止規程と、それから労使対等の原則の上で成り立っておるところの従来の、たとえば就業規則であるとか、あるいは労働協約、こういったようなものと対比して、どうもこの労災防止協会、防止団体の作るところの防止規程というものが、何か上位権があるようなふうな感じを私は実はこの法律案を通読して受けておるわけでありますが、そこで、具体的にひとつその労使対等の原則に立つ就業規則や、それから労働協約と、この予想されるところの防止規程といいますか、その相互関係というものをどういうふうに受けとめて、また、これはどうせできるでしょうから、そういう点について、ひとつ理解のいくように解明を願いたいと思うのですが。
#37
○政府委員(大野雄二郎君) 労働災害の防止に関しましては、御指摘のとおり、労働基準法の規定、これに基づきます安全衛生規則、それから、安全衛生に関連いたします労働協約、就業規則、労働契約、こういう幾つかの規範がございます。で、労働基準法及びこれに基づきます安全衛生規則というものが強行法でございまして、労働災害防止規程というものに優先いたし、あるいは労働協約に優先いたしますことは特に申し上げるまでもないと存じます。それから、労働協約、これはこういう強行法を除きまして、最も強い効力を有すべき規範でございますので、労働災害防止規程は「労働協約に抵触するときは、その限度においては、適用しない。」ということになっております。これは第四十条第三項でございます。それから、就業規則は、労使対等の基準法下の制度ではございますが、規定にございますとおり、労働者側の意見は聞かねばなりませんが、決定権は使用者側が持っております。したがいまして、労働就業規則にある規定があり、それと労働災害防止規程の明文と抵触します場合には、労働災害防止規程に優先効を認めております。
#38
○委員長(加瀬完君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午前十一時二十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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