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1962/06/13 第43回国会 参議院 参議院会議録情報 第043回国会 建設委員会 第22号
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1962/06/13 第43回国会 参議院

参議院会議録情報 第043回国会 建設委員会 第22号

#1
第043回国会 建設委員会 第22号
昭和三十八年六月十三日(木曜日)
   午前十時二十分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     木村禧八郎君
   理事
           石井  桂君
           稲浦 鹿藏君
           増原 恵吉君
   委員
           岩沢 忠恭君
           熊谷太三郎君
           小山邦太郎君
           田中 清一君
           三木與吉郎君
           米田 正文君
           田中  一君
           藤田  進君
           中尾 辰義君
           田上 松衞君
  国務大臣
   建 設 大 臣 河野 一郎君
  政府委員
   建設省河川局長 山内 一郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       武井  篤君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○河川法案(内閣送付、予備審査)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(木村禧八郎君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
 去る七日予備付託になりました河川法案を議題といたします。
 まず、提案理由の説明をお願いいたします。河野建設大臣。
#3
○国務大臣(河野一郎君) ただいま議題となりました河川法案の提案の理由及びその要旨を御説明申し上げます。
 現行河川法は、明治二十九年に制定され、その後部分的改正は数回行なわれましたが、根本的な改正はなく今日に至っているのであります。
 しかるに、現行河川法制定後約七十年の歳月が経過し、当時の社会、経済情勢並びに国情を背景として制定された現行河川法については、今日においては、種々の面において検討を加え、整備、改善をはからなければならない点が少なくないのであります。
 まず第一に、現行憲法の制定に伴い、国の行政及び地方制度に大幅な変革が加えられましたが、このために従来の制度を前提とした河川の管理制度について、また、国民の権利義務に関連する河川管理方式の近代化について法制上検討を加え、整備をはかる必要が生じて参りました。
 第二に、各水系における沿岸流域の開発に伴い、かつ、最近の災害発生の状況にかんがみ、水系を一貫した全体計画に基づいて、財政負担の面も十分考慮しつつ、治水事業を計画的に実施する緊要性が一段と強くなって参りました。
 また、近時における産業の発展と人口の増加に伴い、各種用水の需要が著しく増大しておりますが、これらの需要を満たすためには、各水系について広域的な見地に立ち、合理的な水の利用を確保する制度を確立し、水資源の総合的な利用と開発をはかることが現下の急務として要請されているのであります。
 そこで、国土の保全と開発に寄与するため、河川を水系ごとに一貫して総合的に管理する制度を樹立することが必要となって参ったのであります。
 第三に、各河川には、治水利水の両面の要請から、また近時における科学技術の発達に伴い、大規模なダムその他の施設が数多く建設されてきておりますが、現行法においてはこれらの施設の設置または管理に関する規定が必ずしも十分ではなく、その設置または管理の万全を期するため、所要の規定を整備する必要があるのであります。
 以上の諸要請にこたえ、現在の国情に最もよく適合した新しい河川管理制度を樹立することは、現下の急務でありますので、ここに現行河川法を全面的に改正することといたしたのであります。
 以上がこの法律案の提案の理由でありますが、次に、その要旨について御説明申し上げます。
 第一に、河川管理の適正を期するため、河川管理制度について現行制度を次のように改めることといたしました。
 まず、従来の適用河川、準用河川の制度を廃止して、河川を水系別に一級河川及び二級河川に区分し、一級河川は、国土保全上または国民経済上特に重要な水系について、河川審議会及び関係都道府県知事の意見を聞いた上、政令で指定し、二級河川は、一級河川以外の水系にかかる河川で公共の利害に重要な関係があるものについて、関係市町村長の意見を聞いた上、都道府県知事が指定することといたしております。
 河川の管理につきましては、一級河川は建設大臣、二級河川は都道府県知事がそれぞれ管理することとし、河川管理の責任を明確にすることといたしました。
 なお、一級河川の管理につきましては、建設大臣は、一定の区間を定め、都道府県知事にその管理の一部を行なわせることとしております。
 次に、河川の管理に要する費用につきましては、原則として一級河川は国、二級河川は都道府県が負担することとしております。
 このうち一級河川の改良工事に要する費用につきましては、建設大臣が施行する場合はもちろん、都道府県知事が委任を受けて施行する場合もすべて国がその三分の二、都道府県がその三分の一を負担することといたしました。これにより従来同一の水系における工事であっても、建設大臣と都道府県知事が施行する場合には国と都道府県の負担の割合が異なっていたため、必ずしもその治水効果が十分でなかった一級河川の工事が、一貫した計画のもとに施行することができることとなります。
 また、二級河川の改良工事につきましては、国がその二分の一以内を負担することといたしました。
 なお、治水事業十カ年計画の最終年度である昭和四十四年度までは、国は、一級河川の改良工事につきましては四分の三を、二級河川の改良工事につきましては、この法律施行時において現行河川法に基づいて直轄で施行中の工事につきまして従前どおり三分の二を負担して行なうことといたし、治水事業の円滑な施行をはかることといたしました。
 流水占用料その他河川から生ずる収入につきましては、すべて従来どおり都道府県の収入としております。
 次に、都道府県知事が行なう河川管理行政に対する監督につきましては、一級河川においては都道府県知事に委任した事項のうち重要なものについて、また、二級河川においてはその管理に関する重要事項について建設大臣の認可を要することといたしました。
 以上のほか、一級河川または二級河川以外の河川につきましては、市町村長が指定したものについて、この法律を準用して、市町村長が必要な管理を行なうことができることとしております。
 第二に、河川区域につきましては、現行法においては地方行政庁が認定することとなっておりますが、この法案におきましては、河川の現状に即して、一定の要件に該当する区域は法律上当然に河川区域となり、その他の区域は河川管理者の指定によって、これを定めることとし、河川管理の適正を期することといたしました。
 第三に、流水の占用、工作物の設置等につきましては、地元の意見を十分尊重して、河川が適正に、かつ、合理的に使用されるよう規定を整備し、水利使用の許可に際しては、既得の水利権を保護するとともに、新規利水事業が円滑に施行されるよう水利使用関係の調整をはかる規定を設けました。
 第四に、河川管理者の許可を受けて設置する一定規模以上のダムにつきましては、防災上の見地から、その設置及び操作について必要な規定を設けました。
 第五に、建設大臣の諮問に応じ一級河川の指定、水利調整その他河川に関する重要事項を調査審議するため、建設省に河川審議会を設置するとともに、都道府県知事の諮問に応じ二級河川に関する重要事項を調査審議するため、都道府県に都道府県河川審議会を設置することができることといたしました。
 第六に、河川の現況、水利の状況を把握して、河川管理の適正を期するため、河川現況台帳及び水利台帳を整備することとし、慣行水利権者等の権原に基づいて河川を使用する者は、必要な事項を河川管理者に届け出なければならないものといたしました。
 その他、河川に関する調査、工事等のための土地への立ち入りの手続、河川予定地における規制等に伴う損失の補償等につきまして一所要の規定を整備いたしました。
 以上がこの法律案の提案の理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
#4
○委員長(木村禧八郎君) 次に、補足説明をお願いいたします。山内河川局長。
#5
○政府委員(山内一郎君) ただいま提案理由の説明がありました河川法案につきまして逐条的に御説明申し上げます。第一章 総則。
 第一条は、この法案の目的に関する規定でありまして、洪水その他の原因による災害の発生を防止し、河川を適正に利用し、かつ、流水の正常な機能が維持されるよう、河川を総合的に管理することによって、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することにあることを明らかにしました。
 第二条は、河川の管理は、その公共的性格に即して行なわれるべきことを規定したものであります。すなわち、河川は、公共用物であって、河川の保全、利用その他の管理は、第一条の目的が達成されるように適正に行なわれなければならないことを明らかにしました。
 なお、現行河川法におきましては、河川の以上のような性格から河川についてはすべての私権が排除されることとなっておりますが、この法案におきましては、あとでも述べますように河川区域内の土地の一部には私権が存在することを認めております。しかし、これらの私権については、河川の適正な管理に必要な範囲においては、制限を受けることになるのであります。
 第三条は、この法律における河川及び河川管理施設の定義に関する規定であります。すなわち、河川とは第四条の政令で指定された一級河川と、第五条の都道府県知事が指定した二級河川をいい、河川管理施設を含むものといたしております。
 第四条は、一級河川の指定に関する規定であります。
 一級河川とは、国土保全上または国民経済上特に重要な政令で指定される水系にかかる公共の水流及び水面である河川のうち政令で指定したものをいうこととしております。この指定にあたりましては、水系ごとに、河川の名称、その管理する区間を明らかにすることにいたしております。
 なお、一級河川の政令案を作成するにあたっては、建設大臣は、あらかじめ河川審議会及び関係都道府県知事の意見を聞くことにいたしております。
 第五条は、二級河川の指定に関する規定であります。
 二級河川とは、一級河川以外の水系で公共の利害に重要な関係がある水系にかかる河川で都道府県知事が指定したものをいうこととしております。以上のほか、二級河川の指定をしようとする場合において、当該河川が他の都府県の境界にかかるものであるときの関係都府県知事への協議及び一級河川と同様に公示の手続その他必要な事項を規定しております。
 第六条は、河川区域について定めた規定でありまして、河川の流水が継続して存する土地、このような土地に類似しているような土地は、法律上河川区域とし、堤防と堤防との間の土地について右の区域と一体として管理する必要があるものとして河川管理者が指定した土地及び堤防等の敷地も河川区域とすることといたしました。
 第七条は、河川管理者について定めた規定で、河川管理者とは、一級河川または二級河川を管理する建設大臣または都道府県知事をいうこととしております。
 第八条は、河川工事について定義を定めたものであります。第二章 河川の管理。
 第一節 通則。
 本節は、一級河川及び二級河川の管理者その他河川の管理について通則的事項を規定したものであります。
 第九条は、一級河川の管理者を定めた規定であり、建設大臣が、河川の管理を行なうことといたしております。しかし、建設大臣が特に指定する区間につきましてその区間の存する都道府県を統轄する都道府県知事にその管理を行なわせることが適切なものにつきましては、当該都道府県知事にその管理の一部を行なわせることとしております。都道府県知事に行なわせる管理の一部の内容につきましては、政令で明確に規定することとしております。
 なお、建設大臣が、指定区間を指定するにあたりましては、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聞くことといたしております。
 第十条は、二級河川の管理は、都道府県知事が行なうことといたしました。
 第十一条は、境界にかかる二級河川の管理の特例を定めた規定でありまして、二級河川の二以上の都府県の境界にかかる部分については、協議して別に管理の方法を定めることができることといたしました。
 第十二条は、河川の管理の適正を期するため河川現況台帳及び水利台帳の整備及び保管に関する規定であります。
 第十三条は、河川管理施設及び許可を受けて設置される工作物の構造は安全なものとしなければならないこと、また、この安全性を確保するため特に重要なダム、堤防等の構造についての技術基準を政令で規定することといたしております。
 第十四条は、河川管理者は、特にその操作が、関係の地域に重要な影響を及ぼすダム、せき、水門等の河川管理施設については、関係都道府県知事または関係市町村長の意見を聞いて操作規則を定めなければならないものといたしました。
 第十五条は、二級河川について、河川管理者が、河川工事を施行し、河川管理施設の操作規則を定めまたは河川の使用に関する処分等によって他の河川管理者の管理する河川に著しい影響を及ぼすおそれがあると認められるときは、河川管理者は、あらかじめ、当該他の河川管理者に協議しなければならない旨の規定であります。
 第二節 河川工事等。
 本節は、河川工事等について、工事実施基本事項及び従来に準じて兼用工作物、原因者工事、付帯工事、洪水時における緊急措置等について必要な規定を整備いたしたものであります。
 第十六条は、工事実施基本事項に関する規定でありまして、河川工事が水系を一貫した合理的な計画に従って行なわれることを確保するため、河川管理者は、計画高水流量その他河川工事実施の基本となるべき事項をあらかじめ政令で定める準則に従って定めておかなければならないことといたしました。
 第十七条は、河川管理施設と他の工作物が相互に効用を兼ねる、いわゆる兼用工作物について、その工事、維持または操作について河川管理者及び他の工作物の管理者は、協議によって行なうことができることとした規定であります。
 第十八条及び第十九条は、それぞれ、河川工事に関連する原因者工事及び付帯工事に関する規定でありまして、これらは現行法の例に準じております。
 第二十条は、河川工事または維持は、本来河川管理者が行なうのが建前でありますが、河川管理者以外の者でも河川管理者の承認を得て、河川工事または維持を行なうことができる旨を規定したものであります。
 第二十一条は、河川工事の施行により河川に面する土地について生じた損失についての補償に関し、必要な事項を定めた規定であります。
 第二十二条は、洪水時等における応急公用負担に関する規定でありまして、緊急時における水災の防止または軽減について河川管理上の責務の遂行に必要な権限について定めたものでありします。
 なお、権限の行使によって、物的損失を受けたり、業務に従事して負傷等をしたりした者があった場合については、第三項以下に損失補償等に関する必要な事項を定め、補償関係規定の整備をはかっております。
 第三節 河川の使用及び河川に関する規制。
  第一款 通則。
 本款は、河川の使用及び規制について原則的な事項を規定したもので、第二十三条より第二十九条までは、従来においてもほぼ同様の規制を行なっております。
 第二十三条は、河川の流水を占用する場合には、河川管理者の許可を要するものとした規定であります。
 第二十四条は、河川区域内の土地の占用に関する規定で、従来は河川の敷地が私権の対象とならないため、その占用についてはすべて河川管理者の許可を必要としたのでありますが、この法案では、河川区域内の私有地等を除き、河川管理者が管理する土地について許可を要することとしております。
 第二十五条は、前条と同様に、河川管理者の管理する土地において、土石及び政令で指定する産出物の採取について河川管理者の許可を要するものとした規定であります。
 第二十六条は、現行河川法と同様、河川区域内の土地において工作物を設置する場合には河川管理者の許可を必要とする旨の規定でありますが、最近、河川の河口付近の海面に水門その他の工作物が建設されるようになり、これが河口部における河川管理に大きな影響を与えることにかんがみ、このような工作物の設置についても本条の許可を要する旨を明示したのであります。
 第二十七条は、河川区域区の土地における土地の掘さく等を規制する規定でありまして、これらの行為は河川管理に重大な影響を及ぼすため政令で定める軽易な行為を除き、河川管理者の許可を要することとしたのであります。
 第二項は、土地の掘さく等が河川管理上著しい影響を与えております実情にかんがみ、河川区域内の一定の土地の区域については、河川管理者は掘さく等の許可をしてはならない旨の規定であります。
 第二十八条は、竹木の流送、舟またはいかだの通航につきましては政令また都道府県の規則で、実情に即して規制を行なうことといたしました。
 第二十九条は、第二十三条から前条までに規制いたしました行為以外の行為につきましても、河川の状況等に応じて河川管理上規制する必要がある場合には、このような行為について、政令または都道府県の規則で規制できることとした規定であります。
 第三十条は、不完全な工作物を使用して河川管理に支障を及ぼすことを防止するため、許可を受けて設置されたダム等の工作物については、原則として、完成検査に合格しなければ使用できない旨の規定であります。
 第三十一条は、不要となった工作物がそのまま放置されて河川管理上支障を及ぼすようになることを防止するため、河川管理者がそのような工作物の除却、河川の原状回復等を命ずることができることとした規定であります。
 第三十二条は、流水占用料、土地占用料等につきまして、従来と同様、二級河川はもちろん、一級河川についても、都道府県知事がこれを徴収し、当該都道府県の収入とするとともに、その流水占用料等の額の基準等に関して規定したものであります。
 第三十三条は、第二十三条から第二十七条までの許可を受けた者の一般承継人等の許可に基づく地位の承継に関する規定であり、第三十四条は、権利の譲渡等に関する規定であります。
 第三十五条は、農政、電力行政等他の行政と調整をはかって、より適正な河川管理を行なうため、建設大臣は、一定の水利使用に関する処分を行なう場合には従来どおり関係行政機関の長と協議しなければならないものとしたほか、土地の掘さく等の許可を行なう場合にそれによって著しい影響を受ける事業のあるときも、同様に協議しなければならない旨を定めたものであります。
 第三十六条は、河川管理者は、水利使用に関する許可等を行なう場合には、地元の利害との調整をはかり、適切な河川管理を行なうため、関係地方公共団体の長の意見を聞かなければならないこととした規定であります。
 第三十七条は、河川管理者は、委託を受けて、許可を受けて設置される工作物に関する工事を行なうことができることとした規定であります。
  第二款 水利調整。
 本款は、最近における水利用の緊要性にかんがみ、河川管理者が水利使用の許可に関し、既得権者と新規の水利権申請者との調整を行なわんとするものであります。
 第三十八条は、河川管理者は、水利使用の許可の申請があったときは申請が却下すべき場合を除き、申請の概要を関係河川使用者に通知しなければならない旨を定めたものであり、第三十九条とあわせて関係河川使用者に当該水利使用について意見申し出の機会を与えるための規定であります。
 第四十条は、河川管理者は、新たな水利使用の許可により関係河川使用者が損失を受ける場合には、その同意があるときを除くほか、新規水利にかかる事業が既得水利にかかる事業に比し、公益上の必要が著しく大である場合または損失防止施設を設置すれば関係河川使用者の事業の遂行に支障がないと認められる場合でなければ、その許可をしてはならないものとした規定であります。なお、この場合において、建設大臣が公益上の理由により新たな水利使用の許可をしようとするときは、河川審議会の意見を聞かなければならないものといたしました。
 第四十一条は、水利使用の許可により損失を受ける者があるときは、許可を受けた者がその損失を補償すべきものとした規定であります。
 第四十二条は、水利使用の許可に伴う損失の補償について、許可を受けた者と関係河川使用者との協議が成立しないときは、当事者の申請に基づき河川管理者が裁定することができる旨の規定であります。この場合における裁定については、その公正を期するため、あらかじめ、収用委員会の意見を聞かなければならないものとし、また、その裁定に不服がある者は当事者の他の一方を相手方として訴訟を起こすことができるものといたしました。
 第四十三条は、水利使用の許可を受けた者は、原則として、協議または裁定により関係河川使用者の損失を補償した後でなければ、流水を貯留し、または取水してはならないものとした規定であり、これにより補償の支払いが、事前に、かつ、確実に行なわれることを確保しようとするものであります。
  第三款 ダムに関する特則。
 本款は、水利使用に関する許可を受けて設置するダムで一定規模以上のダムを設置することによって従前の河川の機能に影響を及ぼすものについて、河川管理上必要な限度において、必要な施設等の負担義務を課したものであります。
 第四十四条は、ダムの設置により河川の状態が変化し、従前の河川が有していた機能が減殺される場合には、ダムの設置者は、河川管理者の指示に従い、当該河川の従前の機能を維持するために必要な施設を設け、またはこれにかわるべき措置をとるべき義務を規定したものであります。
 第四十五条は、ダムを設置する者は、政令で定める基準に従い、観測施設を設けて、水位、流量及び雨雪量を観測しなければならないこととしたものでありまして、これによりダム設置後の河川の実態を常に把握しておき、ダムの操作の適正を確保する趣旨であります。
 第四十六条は、ダムの設置者に対し、洪水が発生し、または発生するおそれがある場合において、観測の結果及びダムの操作の状況について、必要な通報施設を設けて、河川管理者及び関係都道府県知事に通報しなければならない旨を義務づけたものであります。
 第四十七条第一項は、ダムを設置する者は、あらかじめ、そのダムの操作の方法について操作規程を定めまたは変更しようとする場合、従前は河川管理者に届け出ることとしていたものを河川管理者の承認を受けさせることとしたものであります。
 また、第二項以下は、河川管理上特に影響があるダムの操作規程につきましては、河川管理者が承認する際に、関係都道府県知事の意見を聞くこととするとともに、操作規程に従ってダムを操作する義務及び河川管理上支障のある特別の場合の操作規程の変更命令について規定したものであります。
 第四十八条は、予備放流その他ダムの操作によって、下流の水位等が著しく変動を生ずると認められる場合においては、危害の発生を防止する見地から、ダムの設置者は、関係都道府県知事等関係機関への通知及び一般住民への周知徹底をはかるための警報等の措置について規定したものであります。
 第四十九条は、ダムの設置者に洪水時におけるダムの操作に関する記録の作成、保管及び河川管理者への提出等を義務づけた規定であります。
 第五十条は、ダムの設置者に、ダムの維持、操作その他の管理を適正に行なうため、洪水時における適切なゲート操作等を行ない得るに足る知識と経験を有する管理主任技術者を置かさせることとした規定であります。
 第五十一条は、兼用工作物で、河川管理者が管理することとなったダムにつきましては、第三款の規定をそのまま適用する必要はない場合もありますので、政令で特別の定めをすることができることとしたものであります。
  第四款 緊急時の措置。
 本款は、洪水時または渇水時における緊急措置に関する規定であります。
 第五十二条は、河川管理者は、ダムを設置する者に対して、洪水による災害の発生の防止または軽減のため緊急の必要がある場合には、災害の発生の防止または軽減のため予備放流等の必要な措置をとるよう勧告することができる旨の規定であります。
 第五十三条は、異常な渇水時におきまして、許可を受けた内容どおりの水利使用が困難となるような事態が発生いたしました場合の水利使用相互間の調整をはかる規定であります。第一項は、このような場合におきましては、水利使用の許可を受けた者は、相互に必要な協議を行なうよう努め、第二項は、第一項の協議を行なうにあたりまして、当事者は、みずからの権利のみを主張することなく、相互に他の水利使用を尊重すべき旨の規定であります。
 第三項は、当事者間の協議が不調の場合におきまして、当事者の申請があったとき、または緊急に水利使用の調整を行なわなければ公共の利益に重大な支障を及ぼすおそれがあると認められるときには、河川管理者は、必要なあっせんまたは調停を行ない得ることといたしました。
 第四節 河川保全区域。
 本節は、河川保全区域に関する規定であります。河川保全区域は従来の河川付近地に相当し、河岸及び河川管理施設の保全をその目的としております。
 第五十四条は、河川管理者は、河岸または河川管理施設の保全のため必要な一定の区域を河川保全区域として指定することができるものとし、その指定は国民の権利に不当な制限を課することがないよう必要最小限、かつ、一定の範囲内のものに限る旨規定しております。
 第五十五条は、河川保全区域内においては、河岸または河川管理施設の保全に支障を及ぼすおそれのある土地の掘さくその他土地の形状の変更及び工作物の新改築は、政令で定めるものを除き、河川管理者の許可を要するものとした規定であります。
 第五節 河川予定地。
 本節は、河川予定地に関する規定であります。
 第五十六条は、河川管理者が河川工事を施行するため必要があると認めるときは、将来河川区域となるべき土地を河川予定地として指定できることとし、かつ、国民の権利に不当な制限を課することがないよう、指定の時期を工事の施行が確実となった日以後でなければならない旨規定しております。
 第五十七条は、河川予定地内において、河川工事を施行するため支障となるおそれのある土地の掘さくその他土地の形状の変更及び工作物の新改築は、政令で定めるものを除き、河川管理者の許可を要するものとした規定であります。なお、これらの行為の制限が工事施行のためのものでありますので、制限による通常生ずべき損失を補償することといたしております。
 第五十八条は、河川予定地内の土地のうち、河川管理者が買収等により権原を取得したものについては河川区域と同様に取り扱うこととする旨の規定であります。第三章 河川に関する費用。
 本章は、河川に関する費用について規定しております。
 第五十九条は、河川の管理に要する費用の負担原則を明らかにしたものでありまして、河川の管理に要する費用につきましては、原則として、一級河川については国が、二級河川については都道府県が負担することといたしました。
 第六十条は、一級河川の管理に要する費用についての都道府県の分担に関する規定であります。まず、第一項は、指定区間内で都道府県知事に委任された事項にかかるものを除き、一級河川の管理に要する費用のうち改良工事に要する費用については、その三分の一を、改良工事以外の管理に要する費用については、その二分の一をそれぞれ地元都道府県が負担することといたしております。
 第二項は、一級河川の指定区間内の管理を都道府県知事に委任した場合の規定でありまして、この場合の河川管理費用は、当該都道府県が負担するのを建前といたしまして、改良工事費については、国がその三分の二を負担することにいたしております。従来知事施行の河川改良工事に対する国の負担割合は、ごく一部の例外を除いて最高二分の一であったのでありますが、それを一級河川におけるものについては前項の建設大臣施行の場合と同率に引き上げたわけであります。
 第六十一条は、指定区間内の一級河川の修繕に要する費用の補助に関する規定であります。すなわち、一級河川の指定区間内で都道府県知事が行なう修繕に要する費用については、国がその三分の一以内を補助することができる旨を新たに規定したものであります。
 第六十二条は、二級河川の改良工事費については、国が二分の一をこえない範囲内でその一部を負担することを規定したものであります。なお、一級河川及び二級河川の改良工事の費用負担につきましては、昭和四十四年度までは、以上述べましたところの特例を経過措置として、附則の第四条及び第五条にその規定を設けておりますので、このことにつきましては後ほど御説明申し上げます。
 第六十三条は、河川工事その他の河川の管理によって地元都府県以外の都府県が著しく利益を受ける場合には、従来と同様に、その地元都府県が負担する費用の一部を利益を受ける他の都府県に受益の限度において負担させることができる旨規定したものであります。
 第六十四条は、建設大臣が行なう河川の管理に要する費用に対する都道府県の負担金または都道府県知事が行なう河川の管理に要する費用に対する国等の負担金の納付または支出に関する規定であります。
 第六十五条は、二級河川の二以上の都府県の境界部分について、第十一条の規定により関係都府県知事が協議して別に管理の方法を定めたときは、その費用についても、同様に、関係都府県知事が協議してその分担すべき金額等を定めることができる旨規定したものであります。
 第六十六条から第七十一条までは、他の工作物の効用を兼ねる河川管理施設、いわゆる兼用工作物の費用、原因者負担金、付帯工事に要する費用、河川管理者以外の者が行なう工事等に要する費用、受益者負担金等に関する規定でありまして、従来に準じた同趣旨のものであります。
 第七十二条は、原因者負担金、受益者負担金等の帰属に関する規定でありまして、これらは、建設大臣が負担させるときは国、都道府県知事が負担させるときはその都道府県の収入とすることにいたしました。
 第七十三条は、この法律、この法律に基づく政令または都道府県規則等による義務の履行に要する費用は、その義務者の負担とする旨の規定であります。
 第七十四条は、この法律、この法律に基づく政令または都道府県規則等による各種負担金または流水占用料等につき納付の義務を怠る者がある場合における強制徴収に関する規定であります。第四章 監督。
 第七十五条は、河川の管理の適正を期するための河川管理者の監督処分に関する規定でありまして、第一項は、河川管理者は、法令等に違反しまたは不正な手段によって許可または承認を受けた者に対し、許可の取り消し、その効力の停止、行為の中止等の処分をなし得ることを規定し、第二項は、本法による適法の許可を受けた者に対し一定の理由がある場合には同様の処分をなし得ることを規定したものであります。
 第七十六条は、前条第二項の監督処分に伴う損失の補償についての規定でありまして、第一項は、河川工事のためやむを得ない必要またはその他の公益上やむを得ない必要により監督処分をした場合における損失補償の規定等を定めたものであります。
 第七十七条は、河川管理者は、その職員のうちから河川監理員を命じ、この法律等による処分の違反者に対して、その違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を指示する権限を行なわせるための規定であります。
 第七十八条は、建設大臣または河川管理者は、許可等を受けた者から河川管理上必要な報告を求め、または事務所等に立ち入って必要な検査を行ない得る旨の規定であります。第七十九条は、河川を管理する都道府県知事に対する建設大臣の監督に関する規定でありまして、第一項は一級河川の指定区間について、第二項は二級河川について、それぞれ河川の管理上重要な一定の事項については、建設大臣の認可を要することといたしております。第五章 河川審議会及び都道府県河川
 審議会。
 第八十条は、河川審議会の設置に関する規定でありまして、河川審議会を建設省に設置することとし、河川審議会は建設大臣の諮問に応じ、一級河川の指定、水利調整を要する場合の水利使用の許可その他河川に関する重要事項について調査審議するとともに、これらの事項について関係行政機関に意見を述べることができるものといたしました。
 第八十一条及び第八十二条は、河川審議会の委員及び会長に関する規定であります。
 河川審議会の委員は三十人以内で、学識経験者、関係行政機関の職員及び地方公共団体の長のうちから建設大臣が任命し、会長は、委員の互選によって定めるものといたしました。
 第八十三条は、特定の河川に関する事項を調査審議するため必要があるときは、河川審議会に特別委員を置くことができる旨の規定であり、特別委員は、当該事項に関する学識経験者及び当該河川に関係のある地方公共団体の長のうちから建設大臣が任命することといたしました。
 第八十四条は、河川審議会の部会に関する規定であり、水利調整部会その他必要な部会を置くことができることとしました。なお、第四項で審議会はその定めるところにより部会の決議をもって審議会の決議とすることができる旨を規定しました。
 第八十五条は、以上のほか、河川審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定めることといたしました。
 第八十六条は、都道府県も、条例で定めるところにより、都道府県河川審議会を置くことができることとしております。第六章 雑則。
 第八十七条は、一級河川、二級河川等の指定及び許可事項に関する政令の改廃の際、現に権原に基づき、この法律の規定により許可を要する行為を行ないまたはその設置について許可を要する工作物を設置している者につきましては、その既存の権利を尊重いたしまして、この法律により許可を受けたものとみなして取り扱うこととした規定であります。
 第八十八条は、水利台帳の整備等のため前条の規定により許可を受けたものとみなされる者で政令で定めるものに対し必要な事項の届け出義務を課したものであります。
 第八十九条は、建設大臣または都道府県知事が一級河川、二級河川の指定等のための調査及び河川工事その他の河川管理を行なう必要がある場合における土地への立ち入り、土地の一時使用に際しての権限、手続及び補償について定めたものであります。
 第九十条は、この法律の規定に基づく許可または承認には、必要な条件を付することができることとし、かつ、その条件は河川管理上必要最小限度のものに限ることといたしました。
 第九十一条から第九十四条までは、廃川敷地等に関する規定であります。
 第九十一条は、河川区域の変更または廃止があった場合の従前の河川区域内の国有地及び堤防等の河川管理施設は、政令で定める一定の期間、従来その河川を管理していた者に管理させることといたしました。
 第九十二条は、必要に応じて、廃川敷地等と新たに河川区域となる土地を交換できることといたしました。
 第九十三条は、建設大臣は、二級河川の廃川敷地等で交換されなかったものは、大蔵大臣と協議の上、国有財産として存置する必要があるとされたものを除いて、管理期間満了後に、廃川敷地等の存する都道府県に譲与できることといたしたものであります。
 第九十四条は、廃川敷地等の管理費用の負担と収入の帰属を定めたもので、指定区間を除く一級河川にかかるものは国、指定区間内の一級河川及び二級河川にかかるものは都道府県といたしたものであります。
 第九十五条は、国が行なう事業に関するこの法律の許可または承認に関する規定の適用については、その地位の特殊性にかんがみ、国と河川管理者の協議の成立をもって許可または承認があったものとする趣旨であります。
 第九十六条は、道の特例に関する規定でありまして、現行法の第六十七条とほぼ同じ趣旨のものであります。特例についての具体的措置は、政令で、費用の負担、河川管理者の権限等について特別の定めをすることといたしております。
 第九十七条は、不服申し立て等に関する規定であります。
 第一項は、洪水時における緊急措置としての河川管理者の土地の使用や現場にある者の使役等は、その緊急時の処分としての性質上不服申し立ての制度に即しないものでありますので、その旨を明らかにしたものであります。
 第二項は、兼用工作物につきまして不服申し立ての審査庁及び異議申し立てのできる場合を規定したものであります。
 第三項は、土地の占用の許可等この法律の規定に基づく処分に関する不服のうち鉱業または採石業との調整に関するものについては、土地調整委員会に裁定を申請することができることとしたものであります。
 第九十八条は、この法律による建設大臣の権限の一部は、地方支分部局の長に委任することができる旨を定め、行政の便宜をはかったものであります。
 第九十九条は、河川管理者は、水門等河川管理施設の維持、操作等を地元の公共団体に委託できることとして河川管理上の便宜をはかったものであります。
 第百条は、一級河川及び二級河川の水系以外の水系にかかる河川についても河川の使用等についての規制等河川の管理を行なう必要がある場合がありますので、市町村長が指定した河川について、政令で定める規定を除いて二級河川に関する規定を準用し、市町村長が管理を行なうことができることとした規定であります。
 第百一条は、特にこの法律で定めたもののほか、この法律の実施に必要な事項は、政令で定めることができることとしました。第七章 罰則。
 第百二条から第百八条までは、本法の規定に違反した場合における罰則の規定でありまして、第百九条は、第二十八条または第二十九条第一項もしくは第二項の規定に基づく政令または都道府県の規則についての罰則に関する規定であります。
 次に附則でありますが、この法律の施行及び現行河川法の廃止に伴い必要な措置につきましては、別途河川法施行法を制定いたしまして、これによることといたしたいと考えておりますが、この附則におきましては本則と関連して重要なものを規定いたしております。
 第一条は、この法律の施行期日につきましては法律で定めることとし、第二条は、現行河川法を廃止する規定であります。
 第三条は、現行河川法が廃止された際に、現行河川法による適用河川、準用河川は、新法の規定により、一級河川に指定されたものを除いて、すべて二級河川となるものといたしまして、河川管理上支障のないような措置を講じたものであります。
 第四条は、一級河川の改良工事の費用負担について、昭和四十四年度までの特例を規定したものでありまして、その費用についての国の負担割合を本則による場合の三分の二から四分の三に引き上げることにいたしております。昭和四十四年度と申しますと、治山治水緊急措置法に基づく現行治水事業十カ年計画の最終年度にあたるわけでございまして、この計画完遂に対する国の積極的な意図を明らかにした次第であります。
 第五条は、この法律施行の際、建設大臣が工事施行中の河川が二級河川になった場合のその直轄工事に関する経過規定であります。二級河川の河川工事を施行するのは都道府県知事でありますので、この法律施行の際、建設大臣が旧法に基づいて工事施行中の河川が二級河川になった場合新法施行と同時に全面的にその体制に切りかえることは種々の面において不都合を生ずるおそれがありますので、現に直轄施行中の河川に関する工事につきましては、昭和四十四年度までは従来どおり建設大臣がみずから施行することができるものとし、また、その直轄工事の費用負担につきましても、本則によれば国の負担割合は二分の一でありますが、従前の例によって三分の二といたしております。
 第六条第一項は、この法律の施行前に現行河川法に基づいて行なった処分や手続その他の行為は特別の場合を除き、そのまま尊重して、従前どおりその効力を認める規定であります。
 第二項は、本則第八十八条と同様な趣旨で、河川管理上必要な事項について届け出義務を課したものであります。
 第七条は、この法律の施行前に、現行河川法またはこれに基づく命令の規定に違反した行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によることといたしました。
 第八条は、先ほど御説明いたしましたように、この附則で定めるものを除きこの法律の施行に関し必要事項は、別途、河川法施行法によって定めることとしたものであります。
 以上が河川法の逐条説明でありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
#6
○田中一君 この法の審議に入る前に、ここに書かれている政令、それから都道府県が持つところの規則の案があるならば、それも提出していただきたい。
#7
○委員長(木村禧八郎君) ただいま田中君から、政令その他の案についての資料の要求がございました。その他、重要法案ですから、委員各位におかれましても、資料の要求がございましたらお出し願いたいと思います。
 本案に対する質疑は、後日に譲ります。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午前十一時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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