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1962/01/25 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第3号
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1962/01/25 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第3号

#1
第043回国会 本会議 第3号
昭和三十八年一月二十五日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和三十八年一月二十五日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる特
  別委員会、公職選挙法改正に関する調査をな
  すため委員二十五人よりなる特別委員会、科
  学技術振興の対策を樹立するため委員二十五
  人よりなる特別委員会、石炭に関する対策を
  樹立するため委員二十五人よりなる特別委員
  会、オリンピック東京大会の準備促進のため
  委員二十五人よりなる特別委員会を設置する
  の件(議長発議)
 鉄道建設審議会委員の選挙
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後一時九分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる特別委員会、公職選挙法改正に関する調査をなすため委員二十五人よりなる特別委員会、科学技術振興の対策を樹立するため委員二十五人よりなる特別委員会、石炭に関する対策を樹立するため委員二十五人よりなる特別委員会、オリンピック東京大会の準備促進のため委員二十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
#3
○議長(清瀬一郎君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
 災害対策を樹立するため委員四十名よりなる特別委員会、公職選挙法改正に関する調査をなすため委員二十五名よりなる特別委員会、科学技術振興の対策を樹立するため委員二十五名よりなる特別委員会、石炭に関する対策を樹立するため委員二十五名よりなる特別委員会及びオリンピック東京大会の準備促進のため委員二十五名よりなる特別委員会を設置いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
 ただいま議決せられました五特別委員会の委員は追って指名いたします。
     ――――◇―――――
 鉄道建設審議会委員の選挙
#5
○議長(清瀬一郎君) 鉄道建設審議会委員が二名欠員になっておりますので、この際、同委員の選挙を行ないます。
#6
○草野一郎平君 鉄道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#7
○議長(清瀬一郎君) 草野一郎平君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、鉄道建設審議会委員に
   矢尾喜三郎君  田中織之進君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#9
○議長(清瀬一郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。まず、成田知巳君。
  〔成田知巳君登壇〕
#10
○成田知巳君 私は、日本社会党を代表して、総理大臣の施政方針演説に対し、質問を申し上げ、政府の所信をただしたいと思うのでありますが、この機会に未曾有の豪雪禍を受けておられる北陸、東北地方の方々に心からお見舞の言葉を申し上げるとともに、政府がこの対策に緊急の処置をとられんことを強く要望するものでございます。(拍手)
 質問に入る前に、総理の施政演説に対する率直な感想を述べてみたいと思います。
 総理が今回の施政方針演説で、新味を出そうとして努力をなされたことは認めるにやぶさかではございませんが、歴代の保守首相がおしなべてそうであったように、一体、総理は、日本の将来をどう考え、国民をどのような方向へ進ませようとしているのか、高い見識が少しも感ぜられないことをまことに遺憾とするものであります。(拍手)これは内容以前の問題であって、政治指導、思想性の問題でございます。
 今、世界ではフルシチョフ首相とケネディ大統領との間に核停協定についての歴史的歩み寄りが見られ、かつてなかった画期的なできごとが進行しているというときに、一体、アジアの大国を自称している総理は、世界の平和にどういう役割なり寄与をしようとしておられるのか。日韓問題の処理、地主補償などのいわゆる戦後処理の問題について見ても、それが将来の日本の展望にどうつながっているのか、不明確のままに、そのときそのときの利害関係だけで片づけておられるように思われてなりません。この意味で、私は、まず総理に対して、海外諸国のリーダーに見られるごとく、保守党政治家は保守党政治家として、それなりの深い思想性と高い指導性を身につけ、人に人づくりを言う前に、みずからの人づくりに心を砕くことを望んでやみません。(拍手)
 以下、まず外交政策についてお尋ねいたしたいと思います。
 総理は、昨年の秋、西欧諸国を訪問され、日本はアメリカ、西欧とともに自由陣営における三本の柱になるということを各地で主張されてこられました。それは一言にして言いますならば、きびしい東西の対立緊張の中で、日本はアメリカとの軍事同盟体制を維持強化して、これを通じて、アメリカを中心とする西欧同盟の中に、一人前のメンバーとして参加しようというものであります。総理は、このような外交政策によって、あたかも何か甘い期待が可能であるかのような幻想をしばしば国民の前に振りまいてこられました。
 しかし、われわれは、総理の大国気取りを手放しで喜ぶわけには参りません。なぜならば、国民は、危険な現実をあまりにも多く毎日見せつけられているからであります。総理が、国民に甘い幻想を振りまき、大国気取りで自己満足にふけっているとき、その外交政策の代償として日本に押しつけられている国際的な義務の履行がいかにきびしく、危険なものであるか、そしてそれによって国民の利益がどれほど侵され、また侵されようとしているかということを、私は国民とともに具体的に指摘して、これに対する総理の率直な所見を伺いたいと存じます。(拍手)
 その第一は、言うまでもなく日韓会談の問題であります。現在進められている日韓会談の背後にアメリカの異常に強い圧力のあることは、交渉の重要な段階にはいつもアメリカの要人が介入しておるという経過から見ても、国民の間ではもはや常識となっております。(拍手)池田内閣と自民党は、アメリカの意を迎えて、国民を全くつんぼさじきに置き、五億ドル、千八百億円という膨大な金を、共産主義の脅威に対する保険料だと思えば安いものだとか、兄貴分の日本が弟分の韓国のめんどうを見てやるのは当然のことだとかいう口実によりまして、内容の不明のままつかみ金的に支払おうとしておるのであります。
 総理は、従来、請求権に対する支払いは法的根拠のあるものに限る旨を国会において何回も繰り返し言明しておられます。法的根拠に基づく支払い額が現実にどのくらいになるかは、ここでは議論の限りではないと思いますが、当初七千万ドル程度といわれていたことから考えても、今日無償供与としてきめられました三億ドルという膨大な金額でないことだけは明らかであります。(拍手)
 また総理は、一昨年一月三十一日、参議院本会議において、江田三郎議員の質問に対しまして、借款すなわち有償供与はいたしませんと答弁しているにもかかわらず、二億ドルの有償供与を行なわんとしておるのであります。一国の総理が、国会で答弁された事実を次々と取り消すようでは、議会政治の権威は根底からくつがえされるでありましょう。(拍手)総理自身無責任時代の先端をいくものといわれてもいたし方がないと思います。(拍手)総理は、この際国民の血税で支払おうという五億ドルはいかなる根拠によるものであるか、高い次元とかお祝い金などと国民を愚弄する非論理的な説明でなく、明確な根拠を示していただきたいと考えます。特に妥結の契機をなしたといわれる、問題の黒い霧に包まれた大平・金会談の経過、その大平・金メモの内容を詳細にこの際国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 今進められている日韓会談は、朝鮮民族の悲願である南北朝鮮の統一を妨げ、アジアの緊張を強めるだけでありまして、韓国国民の幸福や、日本国民と韓国国民の将来における真の友好をもたらすものではありません。なぜならば、現在の日韓会談は朝鮮の半数を占める北朝鮮を全く除外しており、しかも、韓国国民の意思をほんとうに代表しているかどうか疑わしい軍事政権の一部幹部だけを相手にしているからであります。(拍手)現に、宋前内閣首班及び柳前最高会議委員は、朴議長及び金鍾泌前中央情報部長を激しく非難し、さらに金東河最高会議委員も、朴軍事政権は民意を代表するものではないと強く批判して辞任しておるではありませんか。(拍手)さらに、昨日の報道によりますと、日韓交渉の韓国側最高責任者であった金鍾泌氏がついに失脚するという事態が起こっておるのであります。これらのことは、朴軍事政権が韓国国民から全く信頼されていないだけでなく、同政権自体が重大な危機に直面しており、崩壊の危険さえあることを物語っているのであります。(拍手)このような事態になることは、われわれがつとに警告し続けてきたところであります。(拍手)
 大平外相は、一昨日の演説で、請求権問題については、大平・金会談ですでに両国が合意に達していると述べておられるのでありますが、政界から失脚するような人物との間で行なわれたやみ取引的な合意を、正式な国家間の合意とすることが、はたして許されるでありましょうか。(拍手)もし総理がこれをあえて正式な合意と認めるというならば、金鍾泌氏を相手に交渉した大平外相の責任はもちろんのこと、総理の責任はまことに重大だといわなければなりません。(拍手)総理の見解は一体いかがでございましょうか。総理の答弁いかんによっては、情においては忍びがたいものがありますが、大平外相の責任を問うとともに、池田総理に対しても、その政治責任を国民の名において問わざるを得ないのであります。(拍手)政府は直ちに五億ドル供与の合意を白紙に返すことはもちろんのこと、日韓会談そのものを即時中止することを強く要求するものであります。(拍手)真に全朝鮮との友好をこいねがうわれわれは、現在の日韓会談にかえて、民意を代表する南朝鮮及び北朝鮮政府との会談を行なうことなど、将来に悔いを残さないように、請求権の問題その他につき、とことんまで話し合うことを強く主張するものであります。
 池田内閣の外交政策が、いかに日本国民の利益に反するものであるかを示す第二の問題は、ソ連向けの石油輸送管の禁輸要求、中国貿易に対する不当な干渉、及びアメリカのドル防衛に対する日本へのきびしい協力要請等の外圧に屈していることに端的に現われております。(拍手)昨年、河合訪ソ経済使節団、高碕訪中使節団によってソ連及び中国との貿易拡大についての明るい見通しが開かれようとしたやさき、ケネディ大統領の中国封じ込め政策の発言や、NATOの油送管禁輸要求によって、この展望はもろくもくずれ去らんとしているのであります。このNATOの日本への要求の背後には、もちろんアメリカが存在し、さらに安いソ連の石油に脅威を感じた国際石油資本の圧力があることは言うまでもありません。(拍手)さらに、最近政府は、共産向け船舶輸出の決済条件を一段と引き締めて、事実上輸出不能の状態に陥れており、また化繊プラントの輸出についても、政府の延べ払い引き締めの要求によって、業界は商談成立を見合わせなければならないという羽目に追い込まれておるのであります。これらの事実は、総理の言う共産圏貿易に対する政経分離の原則を総理みずから破るものといわなければなりません。(拍手)大国を自認する総理は、一体どこまで外圧に屈し、日本の国民的利益をそこなわんとしておるのか、総理の確固たる見解を承りたいと考えます。
 池田総理は、常日ごろ、日本はアジアにおける反共の防壁になるのだ、こう主張されております。私は、池田さん個人が資本主義の信奉者であり、共産主義を蛇蝎のごとく忌みきらう反共主義者であっても、それは池田さん個人の世界観であって、それをここでとやかく言うつもりはございません。しかし総理が、日本の外交政策を自分一個の世界観で塗りつぶそうとすることは、絶対に許すわけには参りません。(拍手)世界を自己の信奉するイデオロギーによって、それに合致する国と合致しない国とにまっ二つに色分けして、日本の外交を一方の陣営に従属させ、他方に敵対させるという態度は、まさしくイデオロギー外交以外の何ものでもございません。イデオロギー外交によってもたらされる悲劇がどのようなものであるかは、まだ二十年もたっていない戦時中の日本の外交を振り返ってみればきわめて明らかであります。
 今日、日本の外交で真に貫かねばならないことは、第一に力の論理や冷戦思想から脱却することであります。第二は、国際関係をイデオロギーの立場からではなく、すべての国との平和共存という積極的な立場から対処することであります。総理は、しばしば、中共政策は幻想だと言っておられますが、キューバ事件解決の契機をなしたのは、世界の世論を代表した中立諸国四十五カ国の、ウ・タント国連事務総長への積極的な働きかけの結果であります。(拍手)また、中印国境紛争の問題解決への道を開きつつあるのも、コロンボを初めとした中立諸国であることを総理は御存じないのでありましょうか。(拍手)キューバ事件で、アメリカの立場を理解するなどというあいまいな態度をとり、中印紛争問題でも、何ら積極的行動をとり得なかった池田内閣と、これらの中立諸国と、いずれが世界平和に貢献しているとお考えになっておるのでしょうか。(拍手)
 この観点に立つとき、まず第一に手をつけなければならないのは、言うまでもなく、日中関係の正常化の問題であります。総理は、日韓会談のために十年の歳月を費やしたと言われますが、それならば、それよりもはるかに重大な日中国交回復のためにはたして何日の労を費やしたでありましょうか。この日中関係の正常化こそが最大の戦後処理の課題であり、このことは同時に朝鮮を含めた日本とアジア諸国との結びつきを正しい軌道に乗せる道でもあります。総理は、一体中国を除外したアジアの平和、アジアの繁栄があり得るとでもお考えになっておるのでしょうか。一体総理には、対共産圏外交に対するアメリカの不当な干渉をはね返す決意がおありなのかどうか。もしその決意なしとするならば、総理の言う三本の柱とは、実はアメリカというテントをささえる柱の一本にすぎないと言われてもいたし方がないと思いますが、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 外交政策についてもう一点お尋ねいたします。カリブ海をめぐるキューバ事件は、戦後最大の危機となりましたが、この世界をゆり動かした一週間の間に、一体日本政府は何をしたでありましょうか。政府は、米国を理解し、支持し、事態悪化の原因はソ連のキューバへの核兵器持ち込みであるとして、ソ連を非難する声明を出しただけであります。一方防衛庁は、在日米軍から緊急連絡を受け、わずか一時間の首脳会談の後、全面戦争に備える警戒体制の示達を発しております。われわれは、この事実の中に、日本を他国の戦争に巻き込む危険な安保体制の実体をまのあたり見せつけられたのであります。(拍手)
 政府は、ソ連のキューバへの核兵器持ち込みを非難して、アメリカの行動を是認しておりますが、それでは、中国を初めアジアを脅かす沖繩の基地とその核武装を一体どのようにお考えになっておるのでありましょうか。(拍手)キューバ事件で世界の壊滅的な戦争の危機を体験した米ソ両国の首脳は、最近それぞれ今後の国際問題に対する所信を表明いたしました。その一つはケネディ大統領の年頭教書であり、他の一つはフルシチョフ首相の東独共産党大会における演説であります。もちろん、両首脳の所信の内容は、今後の国際問題の解決が決して平坦な道でないことをわれわれにあらためて想起させるものがあります。しかしながら、両首脳がともに、もはや国際問題の解決は軍事力によっては期し得られないことを説いて、人類共滅の熱核戦争を避けることが現在至上の要請だと指摘しておることは、平和を願う諸国民は希望の灯をともし、平和を擁護するための努力に確信を与えるものであります。
 さらに、世界の目を開くような事件が起きました。パグウォッシュ会談の黒い箱を基礎に、ソ連が査察を認め、核停協定の実現に大きな前進が見られようとしておるのであります。今こそ、唯一の原爆被災国民であるわれわれ日本国民、平和憲法を持つわれわれが、率先して、日本の非核武装を内外に宣言すべきときであります。(拍手)さらにこれを足場として、アジア太平洋地域に非核武装地帯をつくることに全幅の努力をいたすべきときであります。核実験を近く行なうだろうと伝えられておる中国も、わが党の第三次訪中使節団との共同声明で非核武装地帯の設定に積極的な賛意を表しておることを思えば、総理は、今こそソ中米に働きかけて、非核武装地帯の設定に全力を尽くすべきだと考えますが、総理の見解はいかがか、承りたいと存じます。(拍手)
 次に、経済財政政策について、政府の見解をただしたいと思います。
 今日、日本経済の直面しておる課題は、不況をどう克服するかという問題であります。今日の不況は、もともと外貨危機克服のための金融引き締めに端を発したものでありますが、昨年半ばごろから、不況の自律的進行が始まっております。すなわち、日本経済の胎内に深刻な過剰生産要因が累積され、それが金融引き締め政策により触発されて一挙に顕在化したところに、今日の不況の特徴があります。この原因が所得倍増政策に刺激された狂熱的、無政府的な民間設備投資競争にあったことは言うまでもございません。申すまでもなく、この設備投資中心の経済成長政策は、日本経済の変動の振幅をきわめて大きなものといたしております。神武景気、岩戸景気のあとの深刻な不況を取り上げるまでもなく、昭和三十六年度の経済成長率一四%に対し、三十七年度のそれは四・三%で、一挙に三分の一以下に落ちておるという事実を見れば明らかであります。あたかも酔っぱらい運転のようなこの景気の大きな振幅は、世界のどこの国にも全く例を見ないところであります。(拍手)こうした経済の激しい変動は、労働者、農民、中小企業をいわゆる経済のアク抜きの形でまっ先に犠牲とし、その結果として、経済白書の指摘するように、資本の高蓄積と個人消費水準の大幅な低下といういびつな日本経済をつくり上げておるのであります。所得倍増政策の失敗は、今や議論の余地のないほど明白となりました。(拍手)現に自由民主党の藤山愛一郎氏は、所得倍増計画には根本的誤算があると言ったと伝えられております。総理は一体この事実をいかに考え、どのような反省をされておるか、承りたいと思います。(拍手)
 日本経済のいびつな側面を是正して現在の不況から脱出する道は、かねがねわが党の主張してきた勤労大衆の生活水準の引き上げによる消費市場の拡大を軸として、東西貿易の制限撤廃による貿易の飛躍的拡大、投資の規制、物価の引き下げ等、独占資本の大衆的規制の道以外にはないと考えるが、総理の見解はいかがでございましょうか。(拍手)
 来年度予算は多くの問題点を含んでおります。まず指摘しておきたいことは、予算編成のずさんさであります。予算編成の幕切れで計上された一億八千万円の旧地主調査費は、地主補償を前提としたものかどうか、その目的、性格が、まだ政府・与党内で意見の一致を見ていない状態であります。一体、政府は、国民の税金による予算支出をどのようにお考えになっておるのでありましょうか。一昨日大蔵大臣は、「財は国の命なり」と言われましたが、このような予算編成こそ、この大切な財を政府みずからもてあそぶものと言っても過言ではございません。(拍手)農地解放はすでに最高裁で合憲との判決が下されており、政府も補償の意思のないことを、繰り返し明らかにしておるのであります。総理は、この機会に右調査費の性格と、地主補償を行なうのかどうか、端的に国民に明らかにしていただきたいと考えます。(拍手)
 来年度予算案の第一の問題は、その基本的性格がインフレ予算だということであります。予算案に公共投資中心の刺激的な性格を盛り込んだそのねらいは、さしあたり現在の過剰生産不況からの脱出をはかるところにあると思います。しかし、今後の日本経済に、設備投資中心の投資先導型の高度成長が期待できないことは、経済白書にも指摘してある通りであります。もし、今回の予算案の成立を許すならば、今後螺旋状的にインフレ予算が編成されることは必至であります。
 一般会計予算規模は、租税の自然増収を目一ぱい見積もって二兆八千五百億、財政投融資は一挙に一兆一千九十七億にふくれ上がっております。これに呼応して、外債の発行と、実費上、財政法第五条の違反である赤字公債発行と何ら異ならない府政保証債を対象とした日銀の買いオペを積極的に進めようとしております。これは明らかにインフレ予算であります。しかも、政府は、昭和三十七年度第二次補正において、本年度の税の自然増収を使い切って、三百五十億を産投会計に入れようとしております。三十八年以降の景気動向から見て、三十九年度において租税の大幅な自然増収を期待することは不可能であり、また三十七年度剰余金の繰り越しもゼロであるとするならば、増加の一途をたどる三十九年度所要経費をまかなうためには、公債発行は必至だと考えますが、総理は、はたして公債発行の必要なしと考えておられるのかどうか、これまた明らかにしていただきたいと考えます。(拍手)
 このようなインフレ予算の編成は勢い減税を犠牲に供し、高い税金に悩む大衆をますます税負担に苦しめる結果となります。税制調査会は、物価値上がりに引きずられた名目所得増からくる実質的増税を防ぐために、勤労所得税の減税に重点を渇くべきことを答申しましたが、これは減税というよりも、増税にならないための消極的な意味しか持っておりません。ところが政府・自民党は、このような控え目な答申さえも無視して、利子所得、配当所得等いわゆる不労所得に対する税率を一挙に半分に引き下げるという、あまりにも資本家的な政策減税を行なったのであります。さすがの総理もいささか気がさしたのか、先日の記者会見で、ことしはがまんしてもらうが、来年に期待してくれと弁解しておられます。総理は、がまんしてくれという言葉を、多くの配当所得、利子所得のある金持ちの方に向けて言うべきではなかったでしょうか。(拍手)来年を期待してくれと言うが、財源難を予想される三十九年度において、どのようにして減税し、国民の期待にこたえようとされるのでしょうか、国民の知りたいところでございます。
 総理は、国づくりの骨格として、社会資本の充実を強調されております。社会資本の立ちおくれを是正すること、もちろんけっこうであります。しかし、それにも増して必要な施策は、高度経済成長政策によってゆがめられ、犠牲にされてきた国民生活環境の整備充実に重点を置くべきだと考えます。拡大する二重構造を是正し、所得格差の縮小をはかる具体的な施策を進めるべきだと考えます。総理の言う国づくりは、住宅、環境衛生、社会保障施策を積極的に行なうことによって初めて真の国づくりになると考えるが、総理は、いかがお考えでございましょうか。(拍手)
 以上、私は、勤労者の所得税の大幅減税、生活環境の整備充実の必要を強調いたしましたが、このことは、物価高の重圧に苦しむ大衆の生活を守るために絶対不可欠の条件だと考えます。昭和三十七年度経済見通しによりますと、消費者物価の値上がりを二・八%と見込んでおられましたが、実質見込みは五・九%となっております。このような物価値上がりが不景気のもとで起きているということは、所得倍増政策のもたらした異常な現象であります。物価値上がりに対する国民の不満が高まってくると、総理は数字をもてあそび、所得の増加は何%、物価値上がりは何%にすぎぬと数字の魔術を使っておられますが、国民は、総理の使っておられるようなパーセントで生活しているのでは絶対にございません。(拍手)
 政府は、物価対策として、中小企業の近代化、流通機構の徹底的整備、公共料金引き上げの抑制、特に生産性の大幅に上昇している大企業製品の価格を規制するという思い切った措置をとるべきだと思うが、総理は、一体いかなる具体策をお持ちになっているのか。物価高で苦しむ国民大衆に総理の確固たる方針を明らかにしていただきたいと考えます。(拍手)
 なお、大企業製品の価格引き下げに関連して特に指摘しておきたいことは新産業秩序形成の問題であります。国際競争にたえ得る体質をつくるという名のもとに、独禁法を骨抜きにし、企業の合併、カルテル形成を推し進めんとする新産業秩序の形成は、合理化の強行と独占価格の形成をもたらすこと必至であります。政府は、このような方法で形成される独占価格を、物価対策上どのように処置されんとしておるのか、総理の見解を承りたいと考えます。
 次に、関心の的である貿易の自由化についてお伺いいたします。
 第二の黒船といわれる自由化の促進は、輸入についてだけの自由化であって、政府は、輸出については、自由化と全く逆行した現象をそのまま放置しておられるのであって、このことは国民の全く理解できないところであります。たとえば、わが国の自由化を強く要求しているアメリカは、わが国の対米輸出についてはバイ・アメリカン、シップ・アメリカン政策をとり、わが国の輸出製品の自主制限を強く要求しております。わが国のソ連、中国貿易にさえ不当な干渉を加えております。政府は、西欧諸国が近くガット三十五条の援用を撤回することを大いに宣伝しておられますが、そのかわりとしてセーフガード、センシティブ・アイテムにより実質的な差別制限の継続を認め、自主制限の義務を負うなど、二重、三重の制限を受けておるではありませんか。もし自由化が世界の大勢というならば、まずかかる不当な対日輸出制限を撤廃さすことこそ日本政府のとるべき態度でなければなりません。(拍手)
 この自由化と関連してお尋ねしたいことは、最近増加の一途をたどっておる外資導入の問題であります。すでに石油産業に見られるごとく、米英の石油国際カルテルは日本の石油産業を完全に支配しております。今後外資導入を手放しにしておくならば、石油産業と同じような結果が他産業の中に生ずる危険はきわめて大きいのであります。日本国民の利益に反するような外資導入をきびしく規制する具体的な方策を講ずるとともに、特に日米通商航海条約はこの観点に立ってその改定交渉を進めるべきだと思うが、総理の見解はいかがか伺いたいのであります。(拍手)
 国際石油カルテルは、国産エネルギー産業であるわが国の石炭産業に壊滅的な打撃を与え、石炭対策は今や大きな政治問題、社会問題となっております。政府は、昨年四月六日の閣議で石炭対策に関連して、雇用の安定、エネルギーの安全保障、国際収支の見地から根本的施策を講ずることを決定されました。この閣議決定を生かすために、石炭対策として次の三点につき、政府はいかなる方針をお持ちか、明らかにしていただきたいと思います。この問題は臨時国会以来の懸案でありますので、特に総理の明快な答弁をお願いいたす次第であります。(拍手)
 その第一点は、わが国エネルギーの需要は年々飛躍的増加の傾向を見せておりますが、政府は、石炭を含めた国産エネルギーを重視するという基調に立った総合エネルギー政策を確立することが必要だと考えます。炭鉱労働者が政府に要望している最大のものは、能率を上げれば上げるほど仲間が山から去らなければならないという矛盾した政策を改めてもらいたいということであります。この要請にこたえるためにも、昭和四十二年、六千万トンの需要を確保する必要があると考えるのでありますが、政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 第二点として、現在炭鉱は市中銀行から融資を求めることがきわめて困難であります。労使はもちろんのこと、政府もその炭鉱の継続を希望しておっても、資金の枯渇により廃山せざるを得ない炭鉱も予想されている今日、政府は現行の近代化資金、整備資金貸付のほか特別の融資制度を新設する必要があると思うが、政府の見解はいかがでございましょうか。(拍手)
 第三点として、炭鉱スクラップ化は町ぐるみスクラップ化という状態を現出し、労働者のみでなく中小商工業者、農民にも重大な影響を与えております。今後のスクラップ計画の策定については、当該炭鉱の閉山が地域経済に及ぼす影響が大きい場合、これを再検討し、再建の方途を講ずる必要があると思うのですが、政府の見解はいかがでございましょうか。
 以上三点のほか、石炭政策並びに離職者対策については、委員会において答弁を求めることといたし、この際、特に言及しておきたいことは、石炭不況に関連しての中小企業の売掛代金の返済、鉱害の完全復旧、市町村財政の確立、さらに産炭地振興問題等苦境にあえぐ産炭地住民にこたえる政策がきわめて乏しいということであります。終閉山する炭鉱への売掛代金をいかにして確保しようとするのか、産炭地振興について、政府みずからいかなる産業を振興し、新しい町づくりをしようとしておるのか、明確な御答弁をお願いいたします。(拍手)さらに、政府は、かねてより、終閉山については今後石炭鉱業審議会において再雇用計画を提出し、その計画に相応した合理化を行なうと言明しておられるにもかかわらず、三井三山の閉山、北炭の六千人の首切りが、勝手に発表されておることは、まことに遺憾であります。法改正による新しいルールの確立を見るまで、かかることは絶対に行なうべきでないと思うが、政府の見解はいかがでございますか。(拍手)
 最後に、政治の姿勢についてお尋ねいたしたいと思います。総理が好んで使う国づくり政策がいかにうしろ向きのものであるか、また国民の幸福といかにかけ離れたものであるかは、すでに指摘した通りであります。総理の言う人づくりは、まさにこのうしろ向きの国づくり政策の下請の役目を果たさんとするものであります。それは、政府や独占の過酷な政策に対しても羊のような従順な人間をつくらんとするものであります。このような型の人間こそ、政府や経営者が、今一番ほしがっておる人間でありましょう。このことは、人づくり政策が、もともと高度成長政策に伴う人的資源の開発という発想から生まれながら、最近、道徳教育的色彩が著しく濃くなっておる点にはっきりと現われております。もともと資本主義の社会は、人間を疎外し、人間の価値を倒錯させるものであって、人づくりの土台としては全く不向きなものであります。(拍手)しかし、そのことは今問わないとしても、今日人づくりのために何にも増して必要なことは、いたずらに上から型にはまった人間像を押しつけるのではなくして、経済の二重構造を打破し、低い生活水準を引き上げて、人間の能力を最大限に花開かせるような条件や環境をつくることにあるのではないでしょうか。(拍手)さらには、学問と思想の自由を侵害する大学自治に対する制限や、言論や人権を圧迫する取り締まり立法をやめ、平和を脅かす核戦争政策を捨てて、憲法の民主主義、平和主義、人権主義の原則を完全に実施することに基本が置かるべきであると考えます。(拍手)
 私は、冒頭、総理に対して保守党政治家としての指導性を希望いたしました。真に保守とは、かつてディスレリーが言ったごとく、善については保守、悪に対しては革新であるべきでありましょう。しかし、現在の自民党は、真の保守とはおよそ無縁の保守以前の姿ではないでしょうか。(拍手)自民党は、人類の理想である平和憲法を事実上否定して、再軍備を急ぎ、議会政治の基本である選挙法の改正を骨抜きにし、地主補償を初め、圧力団体に屈したうしろ向き予算の横行を許しております。(拍手)人づくり、道徳教育の名のもとに、せっかく民主憲法のもとで定着しつつある平和と民主主義の精神、抵抗の精神を、青年男女から抜き取らんといたしております。これが保守以前のものでなくて一体何でありましょう。(拍手)
 私がこれまで質問した内政、外交、経済、すべての政策は、日本国憲法を尊重し、これを完全に実施するかいなかにかかっておるのであります。ところが、池田総理の政治のやり方は、外交を初め、国づくり、人づくり、すべて憲法の精神と条章を無視し、これを空洞化しようとする方向を目ざしておるのであります。しかも憲法調査会は、近く、国民の強い反対の意思に抗しまして、改憲の結論を出そうとしております。憲法調査会内の自民党の代表委員は、天皇元首制の復活や、自衛隊の公然たる軍隊への衣がえさえ主張しておるのであります。しかしながら、改憲に反対する世論がいかに大きいかは、政府の憲法調査会の公聴会においてすら、憲法改正に反対する声の方がはるかに大きかった事実に如実に現われております。(拍手)総理は、この事実を一体何とお考えになりますか。調査会の結論が出てからなどとあいまいな態度をとらずに、自民党委員の主張のように、はたして憲法第九条の改正に賛成なさるのか、天皇元首制に賛成なのか、一国の総理として、公党の総裁として、国民の前にその所信を明らかにされることを強く要望して、質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#11
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問が非常に多岐にわたっておりますので、あるいは答弁漏れがあるかもわかりませんし、また、専門的なことにつきましては、関係各大臣よりお答えさすことにいたします。
 御質問の第一点の、私の施政演説に対して、指導性がないというお話でございます。御批判におまかせいたします。私があると言ったってこれは水掛け論です。しかし、私は内閣組織以来、国民の世論の指導につきましては、十分やっておるつもりでございます。
 また、先ほど問題になっておりまする所得倍増、あるいは国づくり、人づくりの問題は、国内ばかりでなしに、世界的にも私は共鳴を受けておると確信いたしております。(拍手)
 なお、私が大国気取りだと言われまするが、何も私が大国気取りであるのではないのでございます。日本の今の国際的地位、日本の実力から申しまして、ソ連の機関紙プラウダも、また本年に参りましてアイゼンハワーはニューズ・ウイークに、日本と北米とヨーロッパ、ともに世界の自由国家群の大きい柱である、その三つの柱が協力していってこそ初めて共産主義の浸透を抑え得ると言っております。何も自分一人で過信しておるのではないことをはっきり申し上げておきます。(拍手)
 なお、日韓会談につきましての経過につきましては、所管の外務大臣より申し上げることにいたしまするが、わが国と韓国との国交正常化は、国民大多数がもうずっと以前から非常に望んでおるところであります。しかもまた、今のような状態に置くことは、不自然かつ両国において不幸なことであるのであります。この不自然、不幸をやめて、韓国と日本とが仲よくし、ともに繁栄することは、共産主義の国はいざ知らず、大多数の国々はみな望んでおることをはっきり申し上げます。(拍手)
 なお、日本と南北朝鮮三者会談と言われまするが、国際的に、ことに国連から正統な政府と認められたものは今の韓国政府でございます。しかもまたわれわれは、国連におきまして、またサンフランシスコ講和条約によって、今の韓国を正統政府と見て、国交を結ぼうとしておるのであります。
 なお、この機会に申し上げますが、金鍾泌情報部長が、さきに情報部長をやめられ、そうして今度、新たに政党づくりに努められておることは知っております。しこうしてまた、金情報部長が朴議長のもとに代表として来られて、外務大臣あるいはさきに私と日韓会談につきまして、いろいろ話をしたことも事実でございます。しかし、われわれは、韓国政府を相手にし、韓国の国民と国交を正常化しようとしておるのであります。しこうして、この正常化は、わが国代表の杉さんと、そうして向こうの代表の「君とで正式にやっておることでございます。そうでございまして、金鍾泌氏が内閣をすでに去り、そうして政党づくりの者が政党づくりから去ったからといって、日韓両国民、両国政府には何らの関係のないものであることをはっきり申し上げます。(拍手)
 次に、日中貿易あるいは日ソ貿易につきましての御質問でございまするが、私は、政経分離の建前のもとに、日ソにおきましては、御承知の通りだんだん貿易額がふえていっております。ただ、もっとふやしたいのですが、向こうから買うものは少ないし、向こうは日本から買いたいものが多いのですが、お金の支払いが、他の自由国のようにいかないので、非常に延べ払いになりますので、日本の経済からいって、あまり多くを期待できません。
 中共との関係におきましては、ソ連よりももっとひどいのでございます、金がないことが。われわれは売りたいのでございますけれども、そう無理やりに延べ払い、しかも普通の国との延べ払いとは違ってあと払いであまり売るわけにもいきませんので、徐々に向こうの経済力がふえてくれば、貿易拡大にやぶさかではございません。(拍手)これは従来から申し上げておる通りでございます。
 なお、先ほど触れました、あるいは油、あるいはガスの輸送管につきましての問題は、今NATOの間で問題になっております。その問題が、日本にも通知してこられまして、われわれは自由主義陣営の立場としていろいろな話し合いをして善処いたしたいと思います。既契約のものはすでに履行いたしておりまするが、今度の問題につきましては、これがココムの制限品目になれば別でございますが、今のところそこまでいっておりませんので、各国の考え方を参考にして自主的にきめたいと考えております。(拍手)
 なお、キューバ問題について日本は何もしなかったじゃないか。しかし、ケネディ大統領が新聞発表の以前に、日本あるいはイギリス、フランス等同時に通告がありまして、アメリカの措置を世界の平和のために適当であるということを、中南米諸国並びに自由国家群ひとしくこれを認めたのでございます。従いまして、施政演説で申し上げましたごとく、われわれの確固たる団結力がこの問題を戦争に至らず未然に防いだと思います。もちろん、ケネディ大統領とフルシチョフ首相との良識ある態度もわれわれは高く評価しなければなりません。しこうして、キューバにソ連が核兵器を持ち込むことは、これは世界の力の均衡による平和を阻害いたしますから、われわれは反対したのであります。しこうして、沖繩におきまするアメリカの核兵器の装置は、アメリカが国際条約、サンフランシスコ条約に基づいて自分が施政権を持ち、すでに前からやっておることでございますから、世界の平和を害することがないのみならず、これによって世界の平和、アジアの安全が保たれるとわれわれは確信いたしておるのであります。(拍手)
 なお、私の日本の中立主義に対しての批判、すなわち、日本が中立主義をとることは非現実的であるという私の考え方に何ら変わりはございません。昨年も、東南アジアのある有力な、有名な政治家が来て、われわれは中立主義をとるが、日本のような国は中立主義はとれないことはよくわかっていると言っております。しこうして、この中立主義論が日本に合わないことは、世界の認めておるところである。また、最近におきまして、中立主義が、ある特定の国につきましては非現実的であるということが証明せられた事実もあることは御承知の通りであります。(拍手)
 私は、日本の外交を私のドグマでやっておるのではございません。国民大多数の意見を尊重し、わが自由民主党の決意に基づいて、その決意に対し、信念を持ってやっておるのでございます。(拍手)決して誤りのないように努力いたしておるのであります。
 しこうして、また、日本の非核武装宣言について云々されておりますが、さきの国会で申し上げましたごとく、日本が今核兵器を持たない、これをひとりで宣言しても国際的効果はない。従って、われわれはあらゆる機会におきまして核実験の停止を主張し続けたのであります。日本のこの主張、この悲願は、今お話のようにだんだん実現を見つつあることは、われわれは意を強うするのでございます。
 なお、中共が非核武装宣言をするようにお考えになっておりますが、事実はよほど違うのではないかということを御参考に申し上げておきます。(拍手)
 次に、経済問題につきましての御質問にお答えいたします。
 あなたは今、日本が不況だとおっしゃいました。これは昭和三十四年、三十五年、三十六年と平均一五%の実質成長を遂げ、国民所得は一三%の増加を来たし、雇用は三年間毎年平均一一%の正常雇用が増加したのであります。しこうして、こんな状態は世界各国に例のないことは御承知の通りでございます。しこうして、お話のごとく、昨年は調整期に入りまして、日本の経済は四%余りの実質超過でございまするが、四%余りの実質超過は、アメリカ、イギリスに対して、よほど好況の数字でございます。(拍手)皆さん、私が考えますのに、調整期におきましての経済の四・数%は、これは日本としてはあまり景気のいい方ではございません。しかし、日本の経済の実態は、消費者の実質消費というものは非常な増加でございます。労働者の賃金は一昨年に比べて、昨年は十数%の賃金増加ではございませんか。困っているのは大企業であって、労働者や農民は去年は困っていなかったのではないかと思います。(拍手)それはもちろん消費者物価の値上がりということは、その生活水準の向上を相当減殺したことは確かでございまするが、農村の消費あるいは労働者の消費部面を見ますると、例年になく伸びておるということをはっきり申し上げておきます。(拍手)しかし、先ほど申し上げましたごとく、卸売物価が弱含みであるということは、あなたがその後に質問なさいました独占価格であるからと言われますが、もしそれ独占価格であったならば卸売物価というものは下がらない。ほかの国に比べて独占価格が割に少ないから卸売物価が下がるのであります。(拍手)しこうして、小売が上がっていき、消費者物価が上がっていくのは、いわゆる所得がふえて購買力が非常に増加したにかかわらず、供給が足りないからでございます。従って、これを増加させます、そうして所得格差がなくなって、初任給の賃金が上がり、下の方が上がり、自由職業者の賃金が上がり、中小企業者の所得が上がって、所得格差が縮まってきますから、消費者物価が上がるということは、だれが考えてもわかることではございませんか。(拍手)ただ、われわれはこういう現象を徐々に起こらせ、できるだけ消費者物価の引き上げを押えるように昨年から努力して参りましたから、昨年の八月ごろから、だんだん消費者物価の上がり工合はおさまりつつあるのであります。今後におきましても、この努力を続けまして、そして予定しておりまする二・八%の上昇にとどめるべく、流通機構、生産体制、各方面に万全の施策を講ずるつもりでございます。(拍手)
 なお、次に、日本は今度の予算でインフレになるとおっしゃる、インフレになるとおっしゃいまするが、成田さんのお話し通りには私はいかないと思います。日本の心配は、今はデフレになることが心配、不景気になることが心配で、インフレになる心配は、あなたのおっしゃるように、生産設備が相当ふえておりまするから、生産制限をしているようなときに、インフレということはあり得ない。しかも一般会計では、租税収入によってまかなうという健全財政を計画しておるのであります。今世界でインフレになるという議論をしておるのは、ある特殊の学者と成田君ぐらいでございましょう。(拍手)世界各国は、デフレにならないように、アメリカを初めとして積極政策をやっているじゃございませんか。日本のように、社会資本が非常に少なくて、民間の設備の増強、経済の発展に伴わない社会資本の国でこの程度やることは、まだまだ少ないと言っても多いと言う人はないと私は考えております。(拍手)かるがゆえに、三、四年前は予算を組むとすぐインフレ論が雑誌に見つかっておりましたが、今回のこの予算に対しましてインフレ論はあまりないようで、大蔵大臣の言うように、デフレにもならず、インフレにもならずというのがほんとうの見方であろうかと思います。(拍手)
 なお、日本銀行が買いオペをやるからインフレになる、日本の金融の正常化しないのは、単に日本銀行が今まで銀行からきた手形の割引だけに閉じこもっているから、社会資本の不足や金融の正常化ができないのであります。これを改めて金融の正常化をし、お金を有効に使い、金融制度、経済組織を一段と高めるためには、日本銀行が買いオペをやることが当然なんです。おそきに過ぎたのでございます。従いまして、あなた方の心配するように、政府保証債を出したからといって、今出した政府保証債を日銀がすぐ買いオペするわけではございません。一年以上たったものしかやらないのでございまして、しかも政府保証債じゃない電力債とか、あるいは金融債、各方面に買いオペを合理的にやって、日本の経済を正常化し、豊かにすることが今度の施策でございまして、インフレには関係がない。経済、金融の進歩とお考え願いたいと考えます。(拍手)
 なお、国債発行につきましてどうこう言っておられます。もちろん外国はみなやっております。アメリカなんかにおきましては、一九五九年に初めて黒字が出たのですが、過去六、七年間、常に、国債を何十億と発行しておりましても、アメリカはインフレにならずにデフレになろうと言っておる。今ごろ国債の発行について議論をなさることは四、五年おくれておるのではないかと思います。(拍手)私は三十九年度から国債を発行しようという結論を出しておりません。一般会計での国債発行は、結論を出しておりません。今回、こういう積極的な健全予算をつくったゆえんのものは、経済を拡大して、国債を一般会計で発行しなくてもいいように、日本の経済を強くしようとしておるのでございますから、ただいまのところは、強くなってくれば一般会計での国債の発行は考えておりません。今後の経済の状況を見たいと思います。
 なお、国づくりにつきまして、生活環境、社会資本の増加は必要だというお話は、私が施政演説で申し上げた通りで、この点はあなたと同感でございます。施政演説に申し上げております。
 また、景気が悪いのに消費者物価が上がるという質問は、それは原因をおきわめになったら、設備投資は一応おさまって、新規の設備投資はなかったのですが、賃金の上昇は生産性よりもおくれてきます。しかも、非常な賃金の上昇があったのであります。従って、消費需要がありますから、不景気とは申しませんが、調整過程におきましても、賃金の上昇、所得の上昇によります需要の増大によって消費者物価が上がり得ることは、経済の原則であるということをお考え願いたいと思います。(拍手)景気がもとで消費者物価が上がるということは、そういう状態のときをいうのであります。
 また、自由化の問題につきまして、池田内閣は自由化のためにガット三十五条の援用の撤回を求めているが、センシティブ・リストは残っているじゃないかというお話、これはお考え方が違っております。ガット三十五条の援用というのは関税の均一化あるいは数量制限をしないという建前、そういう数量の制限をしない、関税は同様に下げるというガットの原則、まずこの原則で日本が対等の地位に立つのであります。われわれはその対等の地位に立ちたいというのがそれでございます。しこうして、センシティブ・クローズにつきましても、御承知の通り、フランスは一昨年までは二百六十六品目のセンシティブ品目があった。それが、去年は二百六十六が百五十三に減っております。ことしはもっと減るでしょう。また、イタリアにつきましては、二百八が百五に減っている。今度もまた減っている。こういう事実をごらんになりまして、そうして、ガット三十五条援用の撤回が、日本が対等の地位に立つ上にどれだけ効果があるかということを、よくお考え下さればおわかりになると思います。(拍手)
 また、外資導入につきましては、日本産業に好ましからざる影響を与える外資導入は今後ともしない考えで進んでおります。
 なお、予算の関係で農地問題につきましての御質問でございますが、お答え申し上げます。
 農地被買収者に対する報償については、何らかの措置をとる必要がありますが、なお具体的調査を必要とするので、その調査のため予算を計上いたしたのであります。(拍手)その通りであります。
 なお、石炭問題についての御質問でございまするが、私は、大体有澤調査団の報告を検討し、原則として、あの調査団によって閣議決定をいたしたのであります。しこうして、前の国会で話題になったとか申しまするが、衆議院でもし予算総会が開かれた場合におきましては、こういう答弁をしてくれという党からの報告があった。予算総会が開かれた場合におきましては、私が答えることになっておった問題を、結局は予算総会を開きませんでしたが、あのときに答えますことをここで繰り返します。
 政府のただいまの考えは、六千万トンの需要確保は現状より見て非常に困難であるが、政府としては雇用の安定、国際収支、エネルギーの安全保障を考慮し、需要拡大につき極力努力するという考え方は、初めから私は持っておるのでございます。ここにはっきり申し上げておきます。(拍手)
 なお、その他の問題につきましては関係大臣よりお答えさせます。
 なお、人づくりの問題につきまして言っておりますが、私の施政演説をお読み下さればよくわかります。人づくりは一人々々がみずからこれをつくり上げるのでございます。政府はそういう環境をつくることでございます。私は、国民一人々々が反省し、みずからをりっぱにせられるよう強く要望してこの施政演説をいたしておるのであります。もう一回施政演説をお読み下さればよくおわかりと思います。
 なお、民主主義、平和主義あるいは基本的人権について云々でございますが、われわれは、民主主義、平和主義、基本的人権の問題につきましては、あなた方よりまさるとも劣らなく憲法を守っておるつもりでございます。しこうして、憲法の改正問題につきましては、もうずっと以前から申し上げましたごとく、憲法調査会で数年にわたって研究をなさっておられます。この研究の結果が、答申が出ると思います。私はその答申を受けまして、そうしてそれに対します国民の批判、盛り上がる気持を考えて結論を出したい。それまでは、何と質問がありましても、これ以上のお答えはできない、それがほんとうだと思います。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#12
○国務大臣(大平正芳君) 外交上の質問につきましては、あらかた総理からお答えがございました。一、二の点を補足させていただきます。
 日韓交渉につきまして、私と金鍾泌氏が昨秋二回会いましたことは事実でございます。これは現在日韓間にございまする予備交渉の側面的な協力をいたしたわけでございまして、そこで到達した理解というものは、予備交渉にあげまして討議し処理するという手順にいたしております。金氏と私の間に合意文書はございません。もとより書簡の交換はございましたが、これは相手方の同意を得ずに公表するということは、外交上の慣例に反しますので、御遠慮させていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
#13
○国務大臣(福田一君) 所管の問題につきまして、総理の答弁を補足させていただきます。
 自由化に関連をいたしまして独禁法を改正して、新産業秩序を形成しようとしておる考えがあるようだが、どういう工夫をしておるのかという御質問でございますが、この問題につきましては、御承知のように、日本の産業のうちには今直ちに自由化をいたしますというと、非常な影響をこうむるものがございます。そういうようなものをその体質を強化するということは、これはもう大きな意味において、非常にわれわれとしては要請されておる事態だと考えておるのでございまして、そういうものにつきまして、いわゆる特定産業に対しまして国際競争力をつけようという意味における方途を講じなければなりません。そこで、こういう意味合いにおいて、ただいま法案の作成をいたしておりますが、私たちは、決してこれは官僚統制とか統制思想でやろうというのでもなければ、また消費者の利益を無視してやろうというのでもございませんので、この点は御了承を願いたいと思います。
 石炭の問題につきましては、スクラップ計画の問題で御質問がございましたが、これについては、かねがねいろいろ伝えられておるところでございますけれども、炭鉱の経済性と、またそれが地域にどういう影響を及ぼすかということをよく考えまして、措置をいたしたいと考えておるわけでございます。
 売掛代金の問題につきましては、お説の通りこれはなかなか重要な問題でございます。各党からこれについては御要望もございますので、ただいま研究をいたしまして、早急に解決をいたしたい、かように考えております。
 産炭地の振興につきましては、これはお説の通り重要な問題でもございますので、われわれとしてはこれに対する予算その他をつけておりまするし、また工場を誘致するとか、その他いろいろの具体策を今研究をし、実施に移そうとしておるところでございます。
 次に、三井や北炭がいろいろの声明を出したがどういうことかということでございますが、これは経営者として将来の計画について意見を発表されたのだと解釈いたしておるのでございまして、私たちとしましてはこれを実施に移す問題については、今後慎重に検討をさせる考えでございます。(拍手)
#14
○議長(清瀬一郎君) 賀屋興宣君。
  〔発言する者多し〕
#15
○議長(清瀬一郎君) ただいま賀屋君を呼びましたが、前の質問に対し、大蔵大臣より答弁がありまするから、しばらくお待ち願います。大蔵大臣田中角榮君。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#16
○国務大臣(田中角榮君) 経済及び予算の問題については総理大臣からお答えがありましたので、残余の問題については予算委員会でお答えをすることにし、特に御要求がありました石炭問題のうち、融資困難な事情にある炭鉱に対する御質問に対してお答えをいたします。
 政府といたしましては、将来有望ではありますが、当面市中その他からの設備資金等の調達に困難を来たしておる炭鉱につきましては、実情に応じまして開銀等より融資を行なうことにいたしたいと考えております。
  〔「前の話と違う」と呼び、その他発言する者多し〕
#17
○議長(清瀬一郎君) 大蔵大臣田中角榮君。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#18
○国務大臣(田中角榮君) 先ほどの御質問のうち、炭鉱の融資困難な事情にあるものに対する特別融資制度の問題についてお答えをいたしましたが、もう一言つけ加えて申し上げます。
 増強、維持、並びにボーダー・ラインにある炭鉱を強化育成するため、特別の融資制度を設けることにいたしております。(拍手)
#19
○議長(清瀬一郎君) 賀屋興宣君、御登壇を願います。
  〔賀屋興宣君登壇〕
#20
○賀屋興宣君 私は、自由民主党を代表いたしまして、政府の施政方針につき若干の質問を行なわんとするものであります。
 まず、国際外交の問題についてお尋ね申し上げます。
 総理の言われるように、米国並びに欧州の自由主義諸国とともに、東アにおける日本が、世界の繁栄と平和とをささえる自由主義体制の三大支柱となっておることは、まことにその通りでございます。(拍手)また、日本の経済成長が特にすみやかでありまして、その国民総生産額は、英仏独諸国の列に迫らんとしておることも、従って、世界の大国の一つになりましたことも、全く御同感であります。しからば、その日本は、その地位、国力にふさわしい十分なる努力を世界の繁栄と平和のために、また、世界の自由民主主義の推進のために払っておるかどうか、この際静かに考えてみる必要があると思うのであります。
 わが国の経済成長が特にすみやかでありますおもなる原因は、日本民族の能力と勤勉に現われておる優秀性に基づくものでありまするが、それとともに非生産的な防衛費の負担がきわめて少ないことが一大要素となっておるのであります。(拍手)日本の防衛費は、三十八年度予算におきましては予算総額のわずかに八・五%、国民総所得に比較しまして一・四%にすぎません。これを世界各国の多くが国土防衛費のために平均予算の三〇%または四〇%前後を充当しておることに比較すれば、まことに恵まれたる環境にあるといわなくてはならないのであります。(拍手)これ一に日米安保条約及び隣邦自由主義諸国の防衛に対する努力の好ましい影響というべきであります。わが国は、この恵まれたる環境を善用して、ますますすみやかなる経済成長を遂げ、国民生活の向上をはかるべきでありまするが、同時に、伸びる国、恵まれた国、有力な国といたしまして、国際間における協力と責任とを考える必要をこの際痛感するものであります。
 われわれの欲するものは、日本にとっても、各国にとっても、独立と平和と自由と繁栄であります。しかるに、われわれに近いアジアの諸国の現状はどうでございましょうか。経済はいまだ開発されず、民度は低く、生活は不安に、治安の乱れておるものも数多いのであります。ことに侵略的帝国主義を基調とするスターリン主義の拡大は、ラオス、南ベトナムの危機を招きまして、特に昨年の中印国境の紛争は、まことに目に余るものがあるのでございます。(拍手)世界の平和を維持いたしまする根源は、人類の平和愛好、侵略排除の悲願にあります。しかしながら、この正義の声は、いまだ遺憾ながら現実の問題として有力ではないのであります。ベルリンの危機を延ばし得ましたのも、キューバの危険を払いのけたのも、一に自由主義諸国の防衛力の充実にあるのであります。また、欧米自由主義諸国の経済が繁栄をいたしまして、国民の生活が向上して、共産主義排除の精神の牢固たるものがあるのがその根源でございます。米ソの間において、核禁止協定の成立につきまして若干の曙光が見えて参りましたことは喜ぶべきことではございますが、これがために安易に無邪気な平和ムードを謳歌するわけには絶対にいかないのでございます。(拍手)
 われわれが世界の繁栄と平和のために貢献するには二つの方法があると思うのであります。その一つは、自由主義諸国の防衛力を強化しまして、スターリン主義の侵略の蠢動の余地をなからしむることであります。その二つは、自由主義諸国、真の平和愛好国家の経済の繁栄、成長を助け、その国民生活の安定、向上に協力することにあるのであります。わが国自身は、断じて核武装をするものではありません。海外派兵を行なうものでもありません。徴兵制度をしくものでもないのであります。たとい自由主義諸国といえども、外国の軍事的防衛については、直接力をかす立場には絶対にないのであります。わが国にとって唯一の方途は、アジア自由主義諸国に対してその経済の開発に協力し、その民生の安定向上に資し、ひいては諸国家の自由、民主主義尊重の国民意識を培養することにありと信ずるのであります。(拍手)
 インドは、昨年の中共の国境侵略によりまして、初めて非武装、中立の夢が破られたのであります。インドは今や、その軍隊の員数を数倍に増強し、装備を近代化して、アジアにおけるスターリン侵略主義の脅威から何とかして身を免れんと苦慮しているのであります。そのために国防費の負担は一挙に数倍して、予算総額の半ばにも達せんとしております。従って、経済五カ年計画の改定は必至でありまして、インドが中共侵略の悪影響に基づく窮乏より免れ、国民生活の向上のためといわんよりも、ただその最小限度の安定のためにも、外国に対して経済的援助の要求は必至であります。インド四億の民衆がスターリン侵略主義の災厄に苦しむのを自由主義諸国はただ放置しておくわけには参らないと思うのであります。(拍手)
 その他のアジア一般の形勢にかんがみましても、われわれはアジアにおける真の平和愛好国民である自由主義諸国のために、経済援助に乗り出すべき時期来たれりと信ずるものであります。国際的エゴイズムは近視眼であります。日本は大国になったのであります。その立場を反省して、国際的エゴイズム――日本が今それであるとは申しませんが、今後長く自国の繁栄にのみ専念することは、そのそしりを免れない。池田総理の言葉のごとく、他国に対する協力の効果は、やがて自国にはね返って参るのでありまして、国際的経済的援助こそ日本の永久繁栄、また平和の道であると信ずるのであります。(拍手)政府は、近き将来において政府資金によって、また民間資本をも動員して、画期的な対外経済協力計画を打ち出す考えがおありになるかどうか、総理大臣の所信を伺いたいのであります。
 申すまでもありませんが、多額の対外援助と申しましても、国際収支上の影響はその何分の一、十分の一にとどまるものではないかと思うのであります。わが国の対外援助は、船舶、機械、プラント、肥料及び消費物資の輸出となりますので、これらのための若干の原料輸入が国際収支上のマイナスとなるだけであります。わが国の経済援助は、国内の財政金融の調節によりまして、わが輸出産業のいんしんをも招来する効果はなはだ大きいものがあるのであります。この辺につきましても政府の所見をただしたいと思うのであります。
 次に、日韓交渉についてお尋ねいたします。
 歴史的にも、地理的にも、また民族的にも最も関係の深い、そうして現下国際的対立関係において、ともに自由主義諸国に属する日韓両国が、二十年に近い歳月の間国交が回復されていないことそれ自身がおかしいのであります。遠隔の地域にある自由主義国の大多数もすでに韓国を承認しておるのであります。もはや、われわれは日韓国交回復の急務である理由を述べる必要はさらさらないのでございます。韓国側に正しい認識と熱意を持った政府ができました今こそ好機であります。早く国交を回復し、十数年前共産侵略によって苦しめられた、その韓国の経済、民生の安定向上に協力し、ともに手を携えて、平和と自由と繁栄とを楽しみたいというのがわが国民の念願であるのでございます。(拍手)
 わが政府は、両国交渉のうち最も困難と思われます請求権、経済援助の問題に関して、事実上の了解点に達せられたのでありまするが、さらに李ライン問題、漁業問題、竹島問題等、従来の主要なる懸案を一括同時に解決し、過去のいざこざを一掃して、さっぱりした気持で両国の国交正常化の一日もすみやかなるよう努力せられんことを希望いたします。また、韓国政府においても、互譲協調の精神によって、譲歩すべきものは譲歩し、すみやかに両国協力の実をあげられんことを切望いたすものであります。
 なお、日韓会談について一言つけ加えておきたいとこは、いわゆる反対論に対する対策であります。いかなる動機によるのか、実に理解に苦しむような反対論が往々にして聞かれるのであります。先ほどこの壇上においても若干その声があったのでございますが、たとえば軍事政権と交渉するのはけしからぬとか、また日韓会談が南北朝鮮の統一を妨げるとか、日韓交渉はアジアNATOの素地であるとか、実に荒唐無稽なことが流布されておるのであります。(拍手)軍事独裁政権では交渉の相手方にすべきではない、それが正論ならば、共産主義国は全部軍事独裁政権でありますから、そういう国とは一切国交を中止すべきだということになるのではないでしょうか。(拍手)民主主義諸国といいましても、その発達過程においては常に完全なる民主主義体制をとり得ない場合が往々あるのでありまして、われわれはこういう政府に、過渡的政権に協力しまして、自由完全なる民主主義体制に移行する目的を達成せしめることこそ必要適切な方途ではないかと思うのであります。(拍手)朝鮮の南北統一を阻害するといいますが、その最大の原因は十余年前の共産主義侵略であります。かくのごとき暴力侵略行為を加えておいて南北両鮮の統一をはかるというがごときは、全く論外のことでございます。(拍手)南北統一を阻害するものは、一に北鮮が南鮮を共産化せんとする野望にほかならないのであります。(拍手)
 わが国が軍事同盟、NEATOなどを形成する意思のないことは今さら申すまでもありません。これらの謬説は、ちょうど安保改定の際、安保が通れば徴兵になるとか、直ちに戦争に巻き込まれるとか、荒唐無稽なことを流布いたしまして心なき国民を惑わした、これに類するようなやり方と考えられるのであります。(拍手)政府は、よろしくその誤れるゆえん、正しい認識が何であるかということについて、国民に対して説得力を発揮されたいのであります。(拍手)安保騒動のごとき苦々しきことが起こることは、絶対に国家の恥と考えるのであります。この点につきまして政府の所信をただしたいのであります。(拍手)
 天然資源の少ないわが国としまして、貿易が日本経済成長の限界を制するものであることは、今さら申すまでもないところでございます。若干この点についてお尋ねいたしたいと存じます。
 貿易・為替の自由化は、基本的には経済成長を促進し、拡大するものでございます。政府は、昨年十月一日をもってすでに八八%の自由化を実現したのであります。しかし、国際競争力が不十分である現状をこのままにしまして、さらに自由化を促進しますることは、一部産業の破壊を意味する場合なしといたさないのでございます。政府はいかなる用意と準備とのもとに、いかなるプログラムによって今後の自由化を推進されんとするのか、その具体案を伺いたいのでございます。
 次に、欧州経済共同体が、第二次大戦前のアウタルキー的、排他的経済ブロックでないことは、われわれのつとに承認するところでございますが、英国の加盟に反対の機運のあることなどから考えまして、この際、EECが内向的でなく外向きで国際協調的であることが願わしいのでありまして、この点につきまして、政府の所見と、また対策をお伺いいたしたいのでございます。
 次に、経済外交におきましてガット三十五条の適用排除その他、いかにわが国の輸出増進につきまして障害をすでに排除し、また排除せんとしつつあるか、さらに詳細に具体的に御答弁を願いたいのであります。
 また、輸出秩序、いわゆる輸出の過当競争の調整であります。総理大臣も貿易秩序に言及されているのでございますが、法外に安価なわが輸出品が、外国の一地方に一時に婿集いたしまして、非常なコムプレインを招くことがしばしばであります。安く売ってしかられて、ために輸出を阻害し、低賃金などと悪口を言われておるのでありますが、これが是正につきましていかなる対策をとられんとするのでございますか。
 次に、わが輸出は延べ払い条件、すなわち金利、年限等において、常に外国との競争に立ちおくれをとっておるのであります。輸出品は、その原材料等の輸入代金に相当する現金が回収されるならば、たとい延べ払いの取り立てが長期にわたりましても、国際収支上国家の損失とはならないのであります。もっともっと延べ払い条件を寛大にしまして、輸出増加について国際競争に負けないようにいたしたいと思いますが、府政の所見はいかがでございましょうか。
 次に、貿易の拡大はわが国是でありますから、共産圏との貿易といえども、正常なる限りその例外ではないのであります。しかしながら、クレジットとか延べ払いとか、特殊の便宜をはかる場合においては、自由主義諸国、中立諸国に対するそれとの均衡、振り合いが大切であります。特に延べ払い資金源にはおよそその限度があるのでありまして、共産圏に便宜を与うるの余り、自由主義諸国との貿易を圧迫、阻害するがごときことがあってはならないと存ずるのでございますが、政府の所見いかがでございましょうか。
 さらに、外資の導入について伺います。日本の過去の発達が外資に負うところは非常に多いのでありまして、現在におきましても、一億の外資導入は十億の経済成長をも可能ならしむるものであります。戦後日本の外資の導入が復活いたしまして、三十八年度予算編成に際しましても、東京湾、大阪湾の築港、開銀、電電の資金源及び道路の改良建設のために、政府みずから外債を発行し、また政府保証債の発行を認めましたことは、その英断を歓迎するにやぶさかではないのであります。しかし、従来、財政当局はとかく外資導入の問題に対しまして小やかましいことを言い、いろいろ条件をつけ、認可、許可が長引くのでございまするが、その使途が正当で、条件も適正なものでありまするならば、早くその認可をして、国力の発展をはかるべきものと存ずるのでございます。何とぞ政府はすみやかに外資導入につきまして標準を明らかにして、速急に事が運んで、経済の運行をなめらかにするよう努力せられたいのでございます。
 石炭、海運、肥料等に対し、抜本的方策が講ぜられましたことは、まことに当を得たことと考えるのでありますが、なお解決を要する問題が残っておると思うのでありまして、その一つは国際航空であります。日本の国際航空の現状は、一流国はもとより、いわゆる二流国に比較してもはなはだ劣った状態にあります。主要国際路線においていまだ日本機の運航を見ないものもあり、運航を見ましても、その使用機やまたは運航回数がはなはだ遺憾な状態にあるのであります。また、国際空港については、日本の東西に二大空港を建設しなければ、とうてい将来の進運に応ずることができないのであります。これには巨額の経費を要するのでございますが、政府の決心と方策はいかがでありましょう。(拍手)
 石油資源の重要なことは今さら申すまでもありません。日本の産業経済の支配的王座は石油が占めておると申しても過言ではないのであります。しかし、日本といたしまして、国産石油及び天然ガス、アラビヤ石油またスマトラ石油のごとき準国産石油、英米系石油、ソ連系石油、輸入液化ガスというような、いろんな供給資源に関しまして錯綜した問題がいまだ解決いたしておりません。しかし、この重要な石油の供給源について、日本の経済、産業の観点から、また国際収支との関連から、特に日本の総合的重要資源依存体制の観点から、すべての問題をあいまいにすることは、これははなはだ不得策であります。近き将来において抜本的の対策を講ぜられたいと思うのでありますが、政府の所見はいかがでございましょう。
 観光収入は、わが国の自然、天然の状況から見まして、最も期待し得るところの外貨獲得の源泉でございます。しかるに、現状は、イタリア、フランス、スイス等の観光国に比較いたしましてはなはだおくれていることは申すまでもございません。政府はいかなる方策を持っておられるのでございましょうか。ことに、明年は国際オリンピック大会が開催せられまして、多数の外国人が来るのでございますが、これらの外人がいかに日本を理解し、気持よく帰るかということが、将来観光収入の面ばかりでなく、日本の国際的立場に関する重要な問題であるのでございます。政府は、今道路であるとか、競技場の設営などに非常に努力を払っておられるのでございますが、いかなる方途で外国人を遇するか、交通機関や宿泊、観光等の設備はどうであるか、はなはだ問題が多いと思うのでございますが、政府の方策をこの際明らかにされたいと思うのでございます。
 次に、減税問題につきまして政府の所見を伺いたいのであります。国民負担の公平及び軽減を目ざしますところの一般的減税の重要であることはもちろんでございますが、いわゆる政策減税、つまり、国家の緊要とする政策の実現のための減税、これについて伺いたいのでございます。
 政府は、三十八年度において貿易の振興、資本蓄積の促進、産業設備の近代化、科学技術の向上、都市の環境衛生の改善、中小企業の近代化と農林事業の構造改善等を目途といたしまして、いわゆる政策減税を行なう計画でありますことは、まさに当を得ておると思うのでございまするが、その施策の内容を見ますると、徹底を欠いておるうらみがあるのでございます。それと申すのも、いわゆる政策減税について認識、理解が十分でない点があるのではないでございましょうか。たとえば、資本蓄積のために預貯金の利子の課税特例等を推進しようといたしますれば、これは大所得者に対する不公平なる負担の軽減であるというような反対の声が多いのでありますが、しかし、ここで深く考えなければならないことは、一番大事なことは、経済の成長、国民所得の増大という点にあると思うのであります。わが国は、過去十三年の間に、所得税を主といたしまして、大減税を十二回行なったのであります。その減税総額は一兆円にも近いというのでございます。五人家族で年所得五十万円の者は、昭和二十六年には十二万円の所得税を納めておりましたが、昭和三十八年度では、わずかに四千二百円に軽減されておるのでございます。こういう減税が行なわれましたる理由は、一体どこにあるのでございましょうか。これは全くわが国の経済が成長いたしまして、国民の所得の総額が増加して、政府の自然増収が大いに得られた、これがすなわち根本の原因でございます。経済の成長、所得の増大をはからなければ、国民負担の軽減も何もできないのであります。従って、経済の成長を目ざすために必要な、いわゆる政策減税が、やがては負担の公平と軽減を可能ならしめる基本をつちかうものであるといわなければなりません。(拍手)目前多少負担の不均衡の点がありましても、これを実行するということは必要であると考えるのであります。(拍手)
 資本の蓄積推進に関する租税の軽減において特に必要と感ぜられるものは、わが国経済成長の速度にあるのでございます。わが国の貯蓄性向は、世界の諸国に比しまして数割高いといわれておりまするが、しかし、決してこれでは十分ではない。何ゆえならば、日本においてオーバー・ローンであるとか、自己資本の過小であるとか、高金利、低金利の進行が阻害される、こういう原因はいずこにあるのでございましょうか。これは常に健全なる資金の供給不足にあるのであります。これはわが国の経済成長が飛び抜けて早いというところからくるので、わが国の経済成長の速度は、世界の平均よりも二倍半あるいは三倍に達するといってもよろしいのであります。しかるに、貯蓄性向は各国に比してわずかに数割の増加にすぎない。これではとうていこの早い経済の進歩に必要な資金の需要には追っつけないのであります。それでありますから、日本経済の安定成長のために必要な施策として最もおくれたものは、資金の蓄積にあるといっても過言ではないのであります。(拍手)そういう意味におきまして、全力をあげてこれを推進し、日本の経済構造のアンバランスを是正することが経済成長の、要諦でございます。
 政府は、はたして、かかる経済成長を推進するために、今後政策減税を一段と推し進めるの決心があるやいなや、この点を伺いたいのであります。(拍手)
 世間には負担の公平のみを考えまして、政策減税を否定するものがございますが、これは結局、経済の成長を妨害しまして、負担の軽減、公平を害する自殺的の行為であるということを知らないものであると考えるのであります。(拍手)たとえば、社会保障の必要を唱えましても、社会保障を行ない得るような財政状況をつくり上げなければ何もできないのであります。わが党が常に経済繁栄を唱えるのも、国民生活の向上、安定、従って、社会保障の実行などが大幅に実現できるためでありまして、現に社会保障費は池田内閣三年の間に九〇%、二倍に近い増加を見ておるところからもこれが証明せられるところであります。いたずらに負担の公平のみを唱えまして、政策減税を否定する行き方は、経済の繁栄を阻害して、負担の公平をいかに努力しましても、それはいわゆる貧乏の分け合いにほかならないのでございます。(拍手)
 次に、社会保障、福祉国家の建設について伺います。
 生活保護は社会保障政策の中核でございますが、従来とかく閑却されておりました。しかるところ、池田内閣成立以来、自後三年間に、保護基準が六〇%の増加を見るに至りましたことは、まことに画期的でありまして、賛辞を呈するにやぶさかならぬところでございます。(拍手)
 しかしながら、その間、消費者物価の騰貴があり、また、一般の経済成長がすみやかでありますために、これを長期間において見るならば、国民一般の生活水準の向上に比較しまして、格差が縮小するどころか、増大をいたしておるのでございます。そのほか、老人、母子家庭、精薄者、身体障害者等に対する各種の施策につきまして努力の跡は見えるのでありますが、いまだわが国の社会保障は十分ではないのであります。予算総額における社会保障経費の割合を見まするに、先進諸国はおおむね三〇%、少なくとも二〇%は確保いたしておるのでございますが、わが国は非常な躍進を見ましても、なお本年度において一三%にしかすぎないのであります。福祉国家の建設をめざす政府として、将来いかなる抱負と計画を有せられるのでありましょうか。
 社会保障の要諦は、救済を要せざる人、自立のできる人をつくり上げることであります。経済の繁栄により完全雇用の状態を実現いたしましても、健康でなければ就職の機会をつかむことはできないのであります。その意味において、国民健康保険等、療養施設の内容の改善を見ましたが、しかしながら、いまだ非常に不十分であります。結核は医学的には治療可能でありますが、社会的には、いまだ多数国民の貧乏の大きな原因であります。結核や、また社会及び家庭にとって最も悲惨なる精神病対策についていかなる方策があるのでございましょうか。また、疾病の治療はもちろん必要でございまするが、同時に、平素の健康の維持増進が最も重要でございます。この疾病の予防、平素の健康増進につきまして、厚生当局はいかなる腹案を持っておられるのでございましょうか。
 次に、国民各自が健康ならば完全雇用のチャンスをつかむことはできるのでございますが、しかし、その人々が技術能力において低水準であるならば、収入、地位において最低線しかつかむことができないのであります、従って、国民各自の素質を生かしまして、どこまでもその能力を伸ばす必要があるのでありまして、教育は、その意味において特に重要視しなければならないところであります。(拍手)人格において、健康において、能力、特に科学技術の進歩を目ざし、人づくり政策が進められることははなはだ大切でありまするが、その際に、有能な青年が、所得に恵まれない状態にあるために、教育の機会を得られない、そういう者に対する配慮が特に必要であると考えられるのであります。(拍手)育英教育につきましては、若干改善の跡が見られるのでありまするが、特に全額学資補給を目ざす特別奨学の制度は、恵まれざる階層の青年に対して、人生の前途に対して、いわゆる夢を持たすものであります。いな、夢以上に現実に明るい光明を与えるものであります。(拍手)かかる施策は、有能にして恵まれざる国民が真に社会生活の、国家生活の恩恵を感じて、社会人あるいは国民として真に尽くすべき責任と愛情とを培養する根源となるものと考えるのであります。(拍手)政府は、貧しき階層に対し、その青少年の天賦の素質を生かすために、いかなる抱負と対策を有せられるのでありましょうか。
 福祉国家建設に関する第三点といたしまして私の伺いたいところは、国民の半数にも及ぶ低所得階層、所得税を納めるにも至らない人々に対する問題であります。これらのうちの最低所得層、いわゆる生活保護階層に対する対策は不十分とはいえども、相当社会の関心を引いておるところでございますが、それよりややまさる、しかも、大都会において、五人家族の、月収二万円またはこれにも満たざるような、しかも、わが国人口の大きな部分、数千万人を占める階層に対する関心が薄いのではないでありましょうか。これらの階層は、減税によっても従来ほとんど恩恵を受けることがないのであります。わが国において過去十数年の間に、七、八千億円にも上る所得税の減税が行なわれましたことは、類例まれなる善政であると私は考えるのであります。しかし、前にも中しました数千万の低所得層に対しては、これは何らの恩恵を及ぼすものではない。一方、消費者物価騰貴の影響は最も深刻にこうむる階層であります。こういう階層に対していかなる対策に出んとするものでございましょうか。いわゆる減税につきましても、国税においては所得税のほか、間接税その他について十分なる配慮をすべきであり、さらに、住民税、国民健康保険税等、地方税におきまして適切な方策がとらるべきでございます。三十八年度において、電気ガス税や、国民健康保険税において若干の措置がとられましたが、かかる低所得層に対する対策として、今後税制全般において、また、税制以外の方面において、すなわち、歳出による所得の再分配その他について深甚なる考慮を払う必要があると思うのであります。(拍手)今後いわゆる所得倍増計画の内容及びその運営、その他税制、財政の総合的施策によりまして、かかる低所得階層を漸次引き上げまして、いわゆる中産階級に引き上げる国民全部の中産階級化につきまして、政府は深甚なる考慮と対策を立てられんことを切望するものでございます。(拍手)
 母子、児童、心身障害者に対する福祉法は、すでに制定されておるのでありまするが、いまだ老人福祉法の制定がないことは、わが国社会保障立法の一大欠陥であると考えておるのであります。今議会にはたして政府は提案されるのでありましょうか。
 なお、この際老人対策について一言したいのは、いわゆる健康なる老人であります。老人対策といえば、みなすでに老齢になって、健康や能力を失ったような、いわば養老院送りの老人を対象にするかの感があるのでございまするが、今、日本においては、健康なる有閑老人が数百万にも上るのであります。これらの人々は、時間をもてあまし、職と収入を失い、従って、健康をも失わんとしておるのであります。かかる老人の能力を生かして、適切にその労働力を利用するということは、国家経済におきまして最も必要、有効なことと考えなければなりません。一方において、若年労働者の不足を訴えて労働不足の声が高い際に、他方において、多数の、完全に一人前である、あるいは一人前に近い状態における、いわゆる健康なる老齢者を遊ばしておくということは、大きな矛盾とむだではないでありましょうか。かかる労働能力を有する老人に対する新たな画期的施策が必要と考えるのでございますが、政府の所見ははたしていかがでございましょうか、お伺いいたしたいものでございます。(拍手)
 消費者物価の抑制、安定をはかることは現下の急務であります。いわゆる所得水準の上昇が消費者物価の上昇を上回っておることは、まさに政府の所見の通りであります。しかしながら、物価の上昇は何人に対しても一律に影響するところでありまして、低所得層ほどその圧迫が大きいのであります。また、所得の増加は個人差が多いのでありまして、増加率の少なき者、定額所得者のごとく全く増加せぬ者、はなはだしきは、所得の減少する人も少なくないのでありまして、これらの事情を考えます場合においては、一そう親切、周到なる措置が必要であると考えるのでございます。昨年暮れの消費者米価引き上げに際し、その値上げ幅を適当な線にとどめ、また、これに伴い低所得者対策の実行に配慮いたしましたのもこの理由でございます。
 物価抑制措置は、複雑多岐にわたるのでありますが、この際、私は簡単に二、三の点を伺いたいと思うのでございます。
 それは、生鮮食料品の価格調節についていかなる措置をとられんとするのでありましょうか。生鮮食料品は最も価格の騰貴、動揺の激しいものでございます。また、最も日常生活に関係が深いからでございます。
 第二に、公共料金につきましては、昨年、一連の引き上げを見たのでございまするが、今後は、物価安定のムードがはっきりとしますまでは、一切値上げを認めない方針が適切ではないかと思うのでございますが、政府の所見はいかがでございましょう。
 なお、この際、賃金政策についてお尋ねをいたしたいのでございます。
 わが国の人口中の多数を占める勤労者階層の所得を増加しまして、その生活を向上し、福祉を進めることは、わが党の念願とするところでございます。しかしながら、コスト・インフレを起こして産業の国際競争力を阻害するに至りますれば、その不利益は労働者自身にもはね返って、はなはだ不幸を見るに至ること、これまた明らかなるととろでございます。また、急激なる賃金の上昇が消費者物価の高騰に影響することも事実でございます。政府は、経済の成長と国民的利害との調和点に立って賃金政策を考慮すべきではないでありましょうか。この観点よりいたしまして、生産性の向上と能率増進、能率給に対していかなる考えを持っておられるか。また、最低賃金制、労働秩序の確立につきましていかなる考えを持っておられるか、忌憚なき御所見を伺いたいと思うのでございます。(拍手)
 次に、人づくりでございまするが、人づくりは国づくりの根幹なりとの池田総理大臣の信念は、まことに御同感でございます。人づくりの根本を構成するものは教育でありますが、わが国教育上の最大の問題は、教育の衝に当たる教員諸君が、はたして人づくりの資格が十分ありやいなやという点でございます。(拍手)社会人として、国民として、また、個人として必要な能力と人格を備え、道義と責任とをわきまえる人間をつくり得るだけの資格ありやいなやという点であるのでございます。(拍手)
 私は、この際、教育者養成の一方途として考えたいのでございますが、ただいまは一般大学の課程の中で教育した者に教員資格を与えているのでございまするが、教員養成の専門教育機関を設立し、知徳兼ね備えた有為の人材を集めまして、教員の養成に画期的な改革を加える必要はないでありましょうか。また、教育は、学校教育、家庭教育、社会教育をもってはいまだ足れりとしないのでございまして、これに加うるに、よき社会環境をつくり上げる、これが最も肝要な要素であると考えるのであります。そのためには、特に反省すべきは議会政治のあり方、国会運営のやり方であると思うのでございます。(拍手)暴力や非合法や、審議の義務の放棄等の目に余る行為が国民の眼前にさらされるようなことがあってはどうでございましょうか。国会の場が少数のために悪用され、国民多数の意思が通らないというようなことでは、範を天下に示すべき立場にある国会のあり方として、深き反省を要するものがないでありましょうか。(拍手)
 また、暴力の根絶、非行少年の防止、麻薬対策の徹底等は、よき社会環境をつくり出すため絶対必要な要素でありまして、政府は万全の対策を急ぐべきであると信ずるのでございます。
 さらに、テレビ、ラジオ、映画、新聞、雑誌等の、いわゆるマスコミの力は絶大でございます。従って、そこにマスコミ倫理確立の問題があると思うのでございます。世の暴力、少年の非行、麻薬禍のごときは、マスコミの影響力の絶大なるに顧みまして、ここに高きマスコミ倫理の自主的確立を要望するの声、今日ほど切実なるものはないのでございます。(拍手)政府は、これに対し適切な行政指導を行ない、マスコミ倫理の自主的確立を促すべきであると確信するものでございますが、御所見いかがでございまするか。(拍手)
 なお、このほか、憲法改正あるいは経済運営の方針と民間の自主調整、産業の新秩序、さらに農業の近代化、中小企業対策、社会資本の充実、地域格差の是正、環境衛生施設、沖繩援助、その他につきましても質問いたしたい事項が多々あるのでございますが、所定の時間もよほど超過いたしましたので、これらは他の機会に譲りたいと存じ、これをもって私の質問を終了いたすものでございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#21
○国務大臣(池田勇人君) 御質問は多岐にわたっておりまするが、時間の関係上、各省大臣の答弁もかわって私から答えさせていただくことにいたします。(拍手)
 第一、わが国は、お話しのように恵まれた地位にあります。それは世界が平和であるということでございます。しかもまた、日米安保条約によって、各国が非常に負担をし、苦しんでおる軍事費が非常に少ない、これがお話しの通り経済発展の一つの原因であると考える、これはまことに御同感でございます。従いまして、われわれは、こういう点から申しまして、できるだけ低開発国の開発に努力したい。そうして、それが日本の繁栄にもつながるのだということは、施政演説で申し上げた通りでございます。従って、海外経済協力につきましても、自由国家群のうちで五番目でございます。米英仏独に次いで、日本は海外経済援助をいたしております。イタリアよりも上であることを、この際申し上げておきます。(拍手)今後もますます努力いたしたいと考えております。
 なお、日韓交渉につきましてのお考えは、まことに同感でございます。ことに、反対論に対しまする反駁は、一々私は賛意を表する次第でございます。(拍手)なお、お話しのように、この議論を国民に十分徹底をさすよう、今後も政府として努力いたします。
 なお、EECの問題、あるいはガット三十五条援用の撤回の問題でございまするが、私は、先般EECのハルシュタイン委員長とお会いしたときに、EECは六カ国が共同体をつくっておるが、アメリカに対しては日本と同様パートナーシップでいくんだ、とにかくEECは日本に対し、あの特別の関係のあるアメリカに対すると同様な関係であるということを言っておりますから、これは前向きの、外向きの証拠であると私はお考え願いたいと思います。(拍手)
 なお、ガット三十五条援用の撤回は、先ほど申し上げましたように、日本の地位が高まると同時に、日本は世界における有力な、いわゆる貿易市場、輸出市場と考えてくれまして、進んでと申しますか、われわれの要求に対しまして、進んでこれに協力しようという機運が盛り上がっております。これはお互いのためになることでございます。そうして、それが世界のためになることでございまして、御承知の通り、イギリスが三十五条の援用を撤回いたしました。非常にむずかしかったフランスも撤回に踏み切っております。ベネルックス三国もその通りでございます。南アにおきましてもいろいろやっておりますし、ノルウェー、スエーデン、オーストラリア等も、最近対日無差別待遇の意向を表明しました。(「それは無条件か」と呼ぶ者あり)これはいろいろ条件があるといいますが、入ることによって今までの制限、条件が緩和される。入ることによって条件がふえるように言うのは、知らざる者の言でございまして、入ることによって条件が非常に緩和されるというのが事実でございます。
 なお、輸出秩序の確立は、先ほど申し上げた通り、日本の輸出発展のため、これが一番大事なことでございまするから、適正な法的措置を講ずるとか、あるいは民間の協力を得まして、輸出秩序の確立をはかりたいと考えております。
 外資導入につきましては、お話しの通り、今まで、よほどある役所によりましては制限する気分がございました。しかし、最近はそれがだんだんなくなって参りました。延べ払い条件の緩和、外資導入、これはうらはらでございますが、どんどん今後進めていきたいと考えております。また、お話しの通り、共産主義の国に対して延べ払いをあまりし過ぎて、たくさん物を買ってくれる自由国家群、低開発国の方に延べ払いが少なくなってはいかぬので、先ほど来申し上げますように、共産圏の国がえてして延べ払い、延べ払いと言っておるのであります。だから共産主義国との貿易が思ったほど伸びないのは、延べ払いがあるのでございます。従いまして、お話しのような方法で自由国家群にも、共産圏と負けないように、あるいはそれ以上に延べ払いを認めるようにしていきたいと考えております。
 次に、政策減税でございまするが、租税のつくり方につきましては、いろいろ負担の公平とか、あるいは徴収の確保とか、徴税費の軽減とか、経済政策、いろいろな原則がございますが、負担の公平ということと、日本のような地位に置かれた国におきましては経済政策、いわゆる政策減税――だれがつけた名前か知りませんが、政策減税というのはあまり感心しませんが、経済政策に沿った減税ということは両々同じように考えるべきであります。お話しの通りに、減税ということが経済の発展を促す材料になることは、ずっと昔から私言っておりまして、アメリカも今度やりました。しかし、軽減ばかりでなしに、軽減のもとをつくる経済政策を税制に入れていかなければならぬということは、これは昔から言われておるし、特に日本では必要でございます。賀屋さんのお話、全く同感でございまして、貧乏の分け合いは、われわれは絶対反対であります。(拍手)今までは、戦争中は、乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂う、こういうふうな言葉がはやっておりました。しかもまた、生産性の向上は反対だ、賃金さえたくさん取ればいいということを、二、三年前、去年ぐらいまで言っておりましたが、だいぶ直って参りました。(拍手)だから、私は貧乏の分け合いはきらいで、とにかく乏しきも憂えるし、ひとしからざるも憂うる、両方憂えて経済発展をしなければならない、まことに同感でございます。(拍手)
 なお、所得税を納めない人に対しての対策、これがまた一番大事なことで一番むずかしいことでございます。そこで、所得税を納めない人の対策としては、まず第一、私は、そういう人の所得をふやして、所得税を納めるようにすることであります。(拍手)また、そこまでいかない人は、今の所得税でなしに、地方税の減税をすることでございます。そうしてまた間接税の減税をすることでございます。こういうことをいろいろやらなければなりませんが、その次には物価の値上がり抑制でございます。そうしてそういうことをやりながら、なおかつ苦しい人には社会保障制度の拡充でございます。医療の問題、厚生年金の問題等々、そうしてこういうものを全体として考えることは、住みよい日本をつくる、環境をつくるということでございます。(拍手)それが今度の予算の基本をなしておるのでございます。全くお話の通りでございまして、今後もいろいろそういう点を拡充強化していきたいと思います。
 次に、当面の問題として、物価で生鮮食料品の対策、これは昨年の三月からいろいろ講じまして、去年も予備費でやっておりましたが、今年も当初予算におきまして、まず選択的拡大によって生鮮食料品の増産をやります。増産につきまして、地理的にこういうものがこの土地に合うというように増産対策を講じます。そうしてまた、保存の設備、流通の設備、あるいは流通の設備におきましても、市場を確保するとか、あるいは卸売の制度をどうするとか、生産と流通と保存の施設に対しまして、いろいろ措置をすることにいたしております。
 なお、公共料金につきましては、私は先のことは言いませんが、今のところは物価が安定するまで公共料金は上げません。はっきり申し上げます。(拍手)これは電気につきましては、先般東北電力を上げまして、大体九電力会社は上げずにいけると思います。一、二、三年くらいのうちに何とかいうことがあるかもわかりませんが、しかし何とか方法をして電気料金は上げません。ガスは今のところ東京なんかは非常にいいようでございます。全般的に大阪も名古屋も上げる必要はないと思います。ただ、ガス会社にはいろいろな関係がございまして、地方の小都市のガス会社の分は、ここは何とも今言われませんが、東京、大阪、名古屋におきましては、上げなくても済むと考えます。そうして鉄道の点でございますが、これは私鉄は大体いいと思います。ただ問題は、次に申し上げますが、賃金が上昇して、そうして上げなければならぬというようなことはあるかもわかりません。賃金が上昇せざる限りにおいては、資本費その他の関係からいって、上がることは絶対にないと私は今のところ考えております。そこで、次の賃金政策でございまするが、私は前にも申し上げましたごとく、今の状態でインフレになるということは、各国ともあまりありません。四、五年前からインフレになるというのは、コスト・インフレです。生産性の上昇よりも賃金がどんどん上がるために、コスト・インフレが起こってくる。このコスト・インフレは、私はおととしの十月ごろから心配している。おととしの十月ごろから、日本にもコスト・インフレなきにしもあらずという心配が起こっておりますから、生産性の上昇以上に賃金の上がらないようにしてもらわなければいけない。これが一番大事でございます。私は、その点を春闘その他でやっておられますが、相当賃金も上がってきておるのですから、この近くで足踏みしてもらわないと、それが政府職員にまたひっくり返りまして、鉄道運賃なんかというものも保証できないようになる。要は、安定した賃金、生産性に沿った賃金になっていけば、私は、日本の経済の発展は大丈夫だと考えるのであります。(拍手)
 しこうしてまた、今のお年寄りの方々の働く場所、こういう点、まことにお話しの通りでございまして、私は施政演説でも申し上げましたごとく、やはり日本の年功序列制の賃金、また労働の流動性等々、労働問題についてはたくさん重要な課題がございます。今お話しのような点を十分頭に入れまして今後施政の方針とし、実行に移したいと考えております。
 なお、最後に人づくりの問題で、まことに同感でございます。非行少年、麻薬、あるいはマス・コミュニケーションに対しまする協力をいただくこと等につきましては、施政演説で申し上げた通りでございまして、なおわれわれ政治家としても、ほんとうに人づくりの先達になり、国民の代表として、自分自身でりっぱな人づくりをやっていきましょうということは、施政演説ではっきり申し上げておるのであります。私は、諸君とともに国民のよりよき代表として、民主主義国家、人づくりに邁進いたしたいということを重ねて申し上げまして、御答弁といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#22
○草野一郎平君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日午後一時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#23
○議長(清瀬一郎君) 草野一郎平君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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