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1962/03/01 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第11号
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1962/03/01 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第11号

#1
第043回国会 本会議 第11号
昭和三十八年三月一日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十一号
  昭和三十八年三月一日
   午後二時開議
 第一 外務大臣大平正芳君不信任決議案(島上
  善五郎君外四名提出)
         (委員会審査省略要求案件)
 第二 昭和三十七年度分として交付すべき地方
  交付税の総額の特例に関する法律案(内閣提
  出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 外務大臣大平正芳君不信任決議案(
  島上善五郎君外四名提出)
    ―――――――――――――
 日程第二 昭和三十七年度分として交付すべき
  地方交付税の総額の特例に関する法律案(内
  閣提出)
   午後三時十六分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 外務大臣大平正芳君不信任決議案(島上善五郎君外四名提出)
     (委員会審査省略要求案件)
#3
○議長(清瀬一郎君) 本日の日程第一は、提出者より委員会の審査省略の申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、外務大臣大平正芳君不信任決議案を議題といたします。
#5
○議長(清瀬一郎君) 提出者の趣旨弁明を求めます。赤松勇君
  〔赤松勇君登壇〕
#6
○赤松勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました大平外務大臣不信任案について、その趣旨を説明せんとするものであります。(拍手)
 まず、案文を朗読いたします。
    主 文
 衆議院は、外務大臣大平正芳君を信任せず。
 右決議する。
  〔拍手〕
 以下、その理由について説明を申し上げたいと思います。
 大平君は、自民党にあって将来を嘱望されておる政治家でありますが、今日ここに不信任案を提出せざるを得ないことは、私としてまことに遺憾にたえないところであります。(拍手)
 大平外務大臣不信任の理由として、まず第一にあげなければならないのは、外交方針の基本にかかわる問題であります。
 大平外務大臣は、常に池田総理の主張に従い、日本がアメリカ並びにヨーロッパ諸国に比肩する大国であることを強調し、日本がその成長した経済力を背景にして、自由陣営にとどまりながらも、自主的な外交を展開すべき必要を説いてきたのであります。しかしながら、外務大臣就任以来、一体いついかなる自主外交が行なわれたのでありましょうか、その一つの例証すら見出すことができないのであります。そこには旧態依然たる対米追従外交があるだけであります。加うるに、最近においては、わが国外交の将来にとってきわめて憂慮すべき事態が起こりつつあるのであります。すなわち、最近のわが国外交は、外交の基礎となるべき正確な情勢の把握を怠り、ために的確なる見通しに欠け、しばしば重大な情勢判断の誤りを繰り返しておるのであります。日本に最も近接している隣国、韓国の情勢すら、その一日先も予見し得ない現在の外交は、まさにめくら外交そのものでありまして、政府にはもはやいうところの外交方針なるものはなく、ただ無方針あるのみと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 かかる大平外交が現実にもたらしたものは一体何であるか。自由陣営にくみし、アメリカの中共封じ込め政策に協力して得た成果は、一体何であったか。それは、アメリカによる対日綿製品の輸入制限の強化であり、対策不十分なままの貿易自由化であり、八条国移行への勧告であったのであります。また、油送管の禁輸等に見られる対ソ、対中国貿易の新たな制限ではなかったか。さらにまた、イギリスのEEC加盟を前提とした対ヨーロッパ経済外交も再検討しなければならなくなっている。頼みの綱の朴政権も瓦解してしまった。加うるに、アメリカから核ミサイル潜水艦の日本寄港まで強要されているのが今日の現状であるのであります。まさに八方ふさがりの外交といわなければなりません。(拍手)これでどうして日本の平和と安全を保障し、かつ、将来への発展を約束することができ得ましょうか。いやしくも外務大臣の要職にあるもの、その責任たるや、まことに重大といわなければなりません。
 次に、大平外務大臣不信任の具体的な理由に触れてみたいと存じます。
 その第一は、日韓会談に関するものであります。
 現在、朝鮮は三十八度線を境として南北に分割され、かつてはこの南北両朝鮮の間に戦火さえ交えたととがあるのであります。今後といえども、その危険が完全に解消したとする保障はどこにもないのであります。これは南北の統一を熱望する朝鮮民族にとって悲劇であります。過去四十年の長きにわたる植民地支配によって、朝鮮民族に多大の被害を加えた日本としては、この統一の悲願を尊重し、その実現に向かって最大の協力を惜しんではならないとわれわれは考えるのであります。
 しかるに、自民党政府は、この朝鮮民族の悲願を無視して、かえって分裂を固定化し、統一を妨害する日韓会談を推し進めてきたのであります。大平外務大臣は、この歴代自民党政府の方針をさらに一歩進めて、大衆の支持のない朴軍事政権との間に日韓会談を促進し、その早期妥結を急いだのであります。その間にあって、わが日本社会党は、繰り返し朴軍事政権の非合法性、不安定性を指摘し、これとの交渉に反対して、大平外務大臣の猛省を促し来たったのであります。この再三再四にわたる日本社会党の警告にも耳をかすことなく、大平外務大臣は朴政権の安定性を強調して譲らなかったのであります。今や、日本社会党が指摘した通り、朴政権は大衆の支持を失って、事実上瓦解し去ったではありませんか。社会党の主張通りになったではありませんか。(拍手)今に至って、一体大平外務大臣はだれを相手に日韓交渉をやろうとしておるのか、その責任はきわめて重大だ。大平外務大臣、今あなたは一寸先の見通しも持っていない。ただこれぼう然自失の心境にあるのが正直なあなたの心境ではないか。(拍手)日韓会談はすでにその交渉相手を見失い、事実上は中止されている。それにもかかわらず、われわれの正当なる主張をいれ、日韓会談の打ち切りを宣言し得ない大平外務大臣に対し、その無責任を糾弾し、憤りをもって国民とともにここに不信任を日本社会党は表明するものであります。(拍手)
 さらにまた、大平外務大臣が朴政権の的確な評価を怠り、朴政権との間に日韓交渉を具体的に前進せしめたことはきわめて軽卒であり、かつまた、国民に多大の負担をしいるところの取りきめを、たとい個人的な立場であろうと詭弁を弄しようと、一国の外務大臣たるものが相手国と合意文書まで取りかわす秘密外交のやり方は、きわめて遺憾しごくといわなければなりません。(拍手)また一説には、七千万ドル程度といわれる積算根拠の不明確な対日請求権の行使に対し、五億ドルに上る供与を約束するがごときは、国民の血のにじむ税金をむだづかいするものであって、断じて日本社会党はこれを容認することはできないのであります。
 しかも相手側の金鍾泌は、すでに一切の公職から離脱することを声明し、今は国民の怨嗟と憤激をのがれて、事実上、国外亡命の悲運をかこっていることは、あなたの御承知の通り。いかに公式の協定ではないとはいえ、外務大臣たるものが取りかわした合意文書の相手方が、すでに母国に安住の寸土をすら見出すことができないという事態は、わが国の外交史上かつてない事柄であることは、単に外務大臣の不手ぎわだとして看過し得ない重大な問題であると、われわれは考えておるのであります。(拍手)しかも、この合意文書なるものが一片のほごと化した事実をすら確認することのできない無定見きわまる大平外務大臣に対し、今後どうして日本の外交をまかしておくことができましょう。(拍手)合意文書の相手は、すでに責任を感じて、一切の公職から引退し、韓国からも姿を消してしまっている。大平外務大臣もまたその責任を痛感し、少なくとも外務大臣の要職から、みずから進んで退くべきではないかとわれわれは考えるのであります。国民もまたこれを切実に要求しておるのであります。(拍手)
 さらに外務大臣は、昨二月二十八日、参議院外務委員会で、わが党の岡田宗司議員の質問に対し、韓国の政治危機を救うため、消費財を含む延べ払い輸出の実施を考慮しておると答弁しておる。外務省は、昨年五月ソウル市上水道改修工事用プラント約五十万ドルを延べ払い開始の第一号にしたいと提案し、大蔵省から強く反対された当時の事情は現在でも変わっていないのに、このような答弁をするのは、まさに政府の不統一を暴露するものであり、かつ、外務大臣の独走を物語るものであるといわなければなりません。(拍手)しかも、政府の基本方針は、原則として国交の回復していない国や、オープン・アカウントの焦げつきのある国には実施していない。このことは、ブラジルに対する貿易を一つ取り上げても明らかであります。韓国には、オープン・アカウント未処理債権四千五百七十三万ドルも残っているではないか。また、韓国は、外貨法によって、支払い期間が三カ年以上にわたるものを延べ払いと規定し、この分は国交未回復の国からの輸入を認めないときめているのであります。さきに外務省は、韓国政府に対して延べ払い実施の条件として韓国銀行の債務保証を求めたが、同意を得ることができなかった。現在でもこの情勢は変わっていないし、また、大蔵省は韓国の国際収支事情から見て二重保証を得る必要があるとして、外務省の独走外交に強く反対しておることはあなた自身御承知の通りであります。
 思うに、大平外務大臣は、政府部内の反対を押し切ってまで、韓国に媚態を示すその心情の根底に何かがひそんでおるようであります。日韓会談が黒い霧に包まれ、多くの疑惑を国民に与えている事実と関連して、外務大臣のあせりと独走は、これだけでも外務大臣として信任することは断じて許されないといわなければなりません。(拍手)
 不信任理由の第二は、アメリカの中共封じ込め政策に関するものであります。
 大平外務大臣は、かねて日本の自主外交を強調し、アメリカの不当な要求に屈せず、日本の利益とする道を力強く歩むと主張してきたのであります。われわれはその言をよしとして、大平外務大臣の将来を嘱望するところきわめて大きかったのであります。しかるところ、アメリカから中共封じ込め政策を強要されるや、君子たちまち豹変し、朴軍事政権との間に不当な日韓会談を促進するのほか、対ソ連、中国との間のせっかくの貿易拡大機運にも横やりを入れ、これに不当な規制を加え、さらには、原水爆禁止を全国民の悲願としているこの日本に、アメリカの核ミサイル潜水艦の寄港をすら容認しようとする暴挙に出んとしているのであります。日本と中国との関係を正常化することは、日本並びにアジアの平和にとって不可欠な要素であります。大平外務大臣は、かねて中国に対する前向きの姿勢なるものを提言し、かつ、政治と経済は当分の間分離はやむなきも、経済交流は積極的に拡大し、両国間の友好親善関係を盛り上げたいと主張されていたのであります。しかるに、現実にとられた大平外務大臣の外交政策はどうであるか。中国に対する前向き姿勢は消えうせ、中ソに対する不当な貿易制限に終始しているのであります。政治と経済を分離するといいながら、みずから政治的な圧力を加えて、経済を圧迫、拘束しておるのが現状の姿であるのであります。(拍手)
 国民はもはや大平外務大臣の言を信用することはできないのであります。大平外務大臣は、もはや今日の重大な国際情勢を的確に見きわめ、日本の外交の進路を樹立する能力を喪失しておるのであります。さらに、言行不一致、その表明するところに信を置けない現状に立ち至っては、国民が安心して日本の平和と利益のために大平外務大臣に日本の外交をまかせることは、とうていできないとわれわれは信ずるのであります。
 以上が、外務大臣大平正芳君不信任案を提出したゆえんであります。
 昨日、名古屋高等裁判所におきまして、小林裁判長は、吉田石松老に対し無罪の判決をするにあたって、先輩の犯した誤りを深くおわびすると謙虚に裁判の誤りを謝罪いたしました。大平外務大臣も、後輩をしておわびをさせるような誤りを繰り返すことなく、みずからの不明と責任を深く感じ、国民の前にこれを明らかにし、日韓会談の即時打ち切りと外相の職を即時退任されるよう勧告するとともに、本不信任案に対しては、諸君の満場一致の賛同をお願いし、大平外務大臣不信任決議案の提案理由の説明を終わるものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(清瀬一郎君) 本案に対し、討論の通告がございまするから、順次これを許します。田中伊三次君。
  〔田中伊三次君登壇〕
#8
○田中伊三次君 日韓両国は申すまでもなく指呼の間に隣接いたしておりまして、両国の国民の交通、文化の交流、物資の交易は、古く有史以前にさかのぼり、わが国の鎖国時代においてさえなお親密な民族的関係が保たれたのであります。このような地理的、歴史的、経済的、文化的かつ民族的な関係は、悠久の未来にわたって断つことのできない宿命的関係であります。(拍手)こういう関係にある両国の間に、今なお正常な国交を結ぶに至らないことは、まことに遺憾であり、これは両国の不幸であります。政府・与党は、平和条約成立以来、誠心誠意この国交関係の樹立に努めてきたことは当然でありまして、これはいかなる政府が出現いたしましても、この努力は払わなければならないものでありまして、あたかもこわれた橋をかけ直すにひとしいことでありまして、当然の努力をいたしておるのであります。(拍手)ことに昨年以来、韓国側において国交正常化を待望するの機運が濃厚となって参りましたのでありますから、すみやかにこの機運をとらえ、これを背景として日韓交渉を推し進め、両国の親善友好のため政府・与党は苦心に苦心を重ねて今日に至っております。
 そもそもこの交渉は、一九五二年松本俊一君を首席全権として第一回会談をいたしましたのが始まりでありまして、自来今日に至るまで十一年の長きにわたって信義と誠実の限りを尽くして現在に及んでおります。しかるに、まことに残念なことには、韓国側は、わが方の誠意を率直に受け取らず、かえって激しい反発を繰り返し、事もあろうに世界の公海に李ラインを設定するがごとき、二百六隻に及ぶ漁船を拿捕するがごとき、二千五百名をこえる漁民を抑留するがごとき、北鮮帰還問題にあっては理不尽きわまる反撃を繰り返すがごとき、すでにおのれは韓国代表部を置きながら、日本代表部をいまだに認めざるがごとき、日本の領土なりと主張をしておる竹島に対し、一方的に韓国国旗を掲げるがごとき、ことにこの重大な日韓交渉進行中に、わが漁船を拿捕し、わが漁民を抑留して顧みざるがごとき、実にけしからぬ行動枚挙にいとまがない。(拍手)
 これがために、わが国民はあげて憤激の極に達し、日韓両国の関係まさに重大危機にさらされんとしたこと一再にとどまらなかったのであります。しかしながら、わが政府・与党におきましては、新興国たる韓国の複雑なる国民感情を深く理解し、反日感情いまだ消えざる韓国政府の立場にも深く思いをいたし、隠忍自重、国をあげての怒りを押え、かかる一時的な動きに動ずることなく、延々十一年を経てきておるのであります。その間、いやしくもわが方からは、みずから進んで交渉打ち切りを申し出たることいまだかつて一度もないのであります。今後といえども隠忍自重、信義と誠実の態度を失わず、これを基本的態度として、あくまで交渉を継続し、かりに韓国の政情不安に陥らばその安定を待ち、難局至らばあらゆる苦心を払ってこれを乗り越え、あくまで会談を進めていく決意でありまして、この政府・与党の不動の方針に変更を加える必要は断じて認めないのであります。(拍手)
 この際、私は一言いたしたいのであります。朝鮮半島は日本国の領土の一部でありましたために、ついに戦争の影響をこうむり、はからずも南北分断の不幸に見舞われ、領土分断の結果として起こった大動乱によって韓国の国土は文字通り灰じんに帰したのであります。このことに深く思いをいたしますならば、平和条約などと称して、戦勝国に対しては巨額の賠償を払いながら、同僚としてともに協力してくれた韓国に対し冷たい態度をとるがごときは、信義、誠実の原則に反するのみならず、道義の上よりして、著しく均衡を失する態度といわざるを得ないのであります。(拍手)それゆえに、日韓交渉には信義と誠実の誠を傾け、理屈を越えて大局に立ち、百尺竿頭一歩を進め、もって問題の解決をはかるべきであります。すなわち、韓国の独立を祝福し、前途の多幸を祈る意味において、経済協力という建前をとりまして問題の解決をいたしたいのであります。かくして、韓国の経済的復興を援助し、善隣友好の基礎を打ち立てることは、道義日本のとるべき当然の態度であると存じます。
 なるほど、韓国の政情は、野党お説のごとく、すこぶる不安の様相を呈しておることは事実であります。政府・与党はこれに対して重大関心を払うものであります。しかしながら、静かに情勢を観測するに、民政移管の直前にあって、政治行動が自由となり、政党活動が活発となった結果の一時的現われだと見るべき気配まことに濃厚であります。政府・与党は、この現象をとらえて、民政移管への生みの悩みと観測し、心からなる理解を禁じ得ないのであります。こういう動揺は、新興国家にはえてして避けがたい共通の悩みであります。わが日本国においても、明治維新以後西南戦争に至るまでの間においては、数々の武力的政治闘争さえ繰り返さざるを得なかった事実を顧みるならば、思い半ばに過ぐるものがあります。(拍手)
 政府・与党は、韓国政情を重視せよとの国民の声にえりを正し、日韓交渉は慎重にやれとの国民の声に耳を傾け、韓国政情の動きに対しては言うまでもなく重大関心を払いながら、せかず、急がず、無理をせず、信義と誠実の態度をもって、あくまで交渉を継続するのでありますが、この交渉はきわめて慎重な注意をもって事を運び、いやしくもわが国の面目を失し、不利益を来たすがごときことは断じていたさないのでありまして、韓国政局の安定を見ざるうちは、条約の締妥結、調印を行なうがごとき軽挙盲動は断じていたさない決意であります。慎重に事を運び、韓国政局の見通しつくまでは妥結、調印をいたさないというのでありますから、危険はないのであります。野党御心配のごとき余地は断じてないのであります。何とぞこの点は御安心を願いたいのであります。(拍手)
 次に、日韓交渉反対論を一べついたします。
 まず、北鮮を無視することがけしからぬとの説であります。朝鮮半島には、御承知の通り、大韓民国政府と朝鮮民主主義人民共和国とが存在いたしておりますが、韓国政府の方は、一九四八年独立直後、国連総会で、圧倒的多数によって朝鮮半島における唯一合法の政府であることが認められ、この決議の趣旨にのっとって韓国との間に国交関係を締結するに至りました世界の自由諸国は、わが国を除き実に五十九カ国に達しております。ことに注目すべきは、一昨年五月、朴政権出現以後においても、韓国政体の一貫性が認められ、同国を承認したる国は、メキシコ、アルゼンチン、スペイン、スイスなど二十四カ国に及んでおります。従って、わが国の交渉相手は、国際の現状のもとにおいては、韓国政府以外に断じてないことは、申すまでもないのであります。(拍手)しかるに、これに反して北鮮の政権は、ソ連、中共と公然軍事同盟を結び、国際連合の権威を認めず、国際連合の監視下で自由選挙をやり、南北の統一をはかろうではないかという提案に、北鮮が反対をいたしておるから、統一ができないのであります。(拍手)さらに申せば、北鮮がソ連、中共と軍事同盟などを結んでおるから、南北統一を阻害しておるのであります。(拍手)これが真相である。日韓交渉が南北の統一を妨げておるというがごときは、顧みて他を言うものでありまして、責任転嫁のはなはだしきものであるといわなければなりません。(拍手)いわんや、日韓会談の妥結が軍事同盟に連なるものであるというがごとき所論は、北鮮とソ連、北鮮と中共間の軍事同盟の存在を忘れたる暴論でありまして、世論を惑わすことはなはだしきものであると存じます。
 また、韓国の主張する請求権問題は、法律的解釈からも、事実立証の上からも、両国の立場は氷炭相いれざるものでありまして、二国間の交渉をもってしては何としても打開することができない性質のものであります。しかしながら、両国の前面に横たわるこの一大難関を突破することができない場合は、本来の大目的である国交正常化、善隣友好は実現することができないことになるのであります。この意味において、請求権問題の取り扱いいかんということは、日韓交渉の最難関とも見るべきものであります。従って、この難関の打開は、両国がすべて過去に拘泥せず、大局に立って未来への展望を行ない、問題の円満解決に導く以外、他に道は断じてないのであります。いわゆる経済協力方式ということにより彼らの請求権の主張を消滅させるやり方は、こうした観点から生み出された苦心の方式でありまして、何人が考えてみても、このやり方以外に、この難関突破の分別は出てこないのであります。
 さて、この経済協力方式として無償三億ドル、有償二億ドルの金額は、懸案一括解決を条件として、原則的には合意を見ているのでありますが、わが国の経済の現状よりすれば、韓国に対しこの程度の経済協力を与えることは、決して過大にあらずと確信をいたします。(拍手)
 また、大平外務大臣と金鍾泌氏との請求権解決方式についての会談を論難する向きがあります。しかし、この会談は、同君が携えて参りました十月十九日付の朴議長の公の親書に基づき、正規の予備交渉を側面より援助するために行なわれたものでありまして、この話し合いの内容は、後に行なわれた日韓予備交渉において正式に吸収せられ、もって日韓会談全般の促進に多大の貢献をしたものであります。(拍手)
 以上述べ来たったところは、わが政府・与党の基本的態度と不動の方針であります。大平外務大臣は、かつて池田内閣の官房長官を勤められ、内閣の柱石として誠実と手腕をうたわれ、昨年七月、池田内閣の改造に際し、外務大臣として入閣以来、日韓交渉に寝食を忘れ、この政府・与党の不動の方針にのっとり最善を尽くしてきた人であります。(拍手)大平大臣のこの苦心と業績は大いに評価されてこそしかるべきであるにかかわらず、これを信任せず、ことに日韓会談を即時中止せよというがごときは、わが国民大多数のとうてい理解し得ざるところであります。(拍手)
 以上、大平外務大臣不信任に対する反対の所見を申し上げ、諸君の御賛同をいただきたいのであります。(拍手)
#9
○議長(清瀬一郎君) 帆足計君。
  〔帆足計君登壇〕
#10
○帆足計君 私は、日本社会党を代表いたしまして、大平外務大臣不信任案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
 大平外務大臣が、その人となり慎重にして、一種の安全感覚を有され、その国会における御答弁ぶりを承りますと、常に低声にして、不得要領、巧みに質問の論点をはずらかし、常に日本資本主義の保守的要望を代表して、その均衡を失わざるようひたすら努めておらるることは周知のことでありますが、今般の日韓交渉の経過を見ますると、世界の情勢、韓国の現実に対する認識を誤り、日韓交渉は慎重なれという国民の世論に思いをいたさず、野党の警告に耳をかさず、アメリカ極東政策の圧力に追随して、日本民族の進路を危うくし、国政の前途を誤らんとしつつあることは、まことに遺憾しごくのことであります。(拍手)
 今日、韓国の政情は、かつての李承晩ファッショ政権没落の前夜をほうふつたらしむるがごとき深刻なる様相でありまして、朴・金コンビの崩壊はもはや必至の勢いであり、韓国政局の前述は暗たんとして、その先行きは逆睹を許さぬ形勢であります。
 しからば、そもそも朴政権とは何ものでありましょうか。過ぐる一九六一年の五月十六日朝明け、突如として京城に銃声とどろき、かの二・二六事件を思わせる風景のもとに、民主主義の殿堂たる国会は一挙に否定せられ、戒厳令下に軍事ファッショ独裁政権の支配が行なわれたのでございます。(拍手)かくして、民主主義の初歩的条件たる言論、集会、出版の自由は一挙に抹殺され、二十三の政党、二百三十八の社会団体、二十の大学、二千三百の新聞雑誌並びに出版機関は、あるいは禁止され、あるいは解散されるに至ったのでございます。また、野党に対する弾圧はことさら激しく、多くの政治指導者、社会運動家、著名なるジャーナリストたちは続々と投獄または処刑され、たとえば社会党組織部長崔百根氏、穏健なる自由主義者趙緕ッ族日報社長らも、単に南北の平和統一に賛成せるゆえんをもって死刑に処せられたることは諸兄の熟知せられる通りでございます。さらに悪名高き金鍾泌氏を長とする軍の特務機関は、各種布告違反の口実のもとに、劇場、映画館、食堂、旅館、理髪店等至るところで民衆の生活を束縛し、さまつなる理由をもって逮捕、処罰至らざるなしという状況を現出いたしたのでございます。まさに、大平外務大臣が交渉の任に当たり、大野伴睦氏が親善使節としてよしみをあたためんと試みたる朴政権とは、このような歴史的性格のものであったのでございます。(拍手)すなわち、朴正煕なる人物は、かつて日本の陸軍士官学校に在籍し、ゆがめられたる運命のもとに身を立てたる一職業軍人でありまして、この教養低き職業軍人の訓示に誓いを強要されつつ生まれ出んとする韓国民政の前途の多難なることは、ひとしお察せらるるのでございます。
 さて、このような政治的混乱の背景をなす韓国、すなわち南朝鮮の経済と社会の実情はどのようでありましょうか。
 南朝鮮の人口は二千三百万、そのうちの大部分は農民でありまして、製造工業に従事する者わずかに四十万。製造工業四十万に対してサービス業は六十万、これはアメリカ進駐軍にサービスする娘たちも含むのでありますが、小売商同じく六十万、失業者は、大平外務大臣の発表によりますと、実に百四十万をこえる。このような病的社会構成をなして苦しんでおるのが南朝鮮の今日でございます。米を初め農産物の収穫も、李承晩の悪政以来著しく減産いたしまして、毎年春になりますと、春窮、すなわち春きわまると称しまして、毎年四、五月のころは、食糧飢饉、社会政治不安が激化いたすことも、諸兄の御承知の通りでございます。さらに、南北戦争の惨禍は言語に絶するありさまでありまして、なお、多年にわたる季承晩政権の悪政と、さらに六十万という分不相応な軍備を強要されておる重荷のゆえに、社会保障を顧みるいとまもなく、結核患者の数は、人口の七〇%にも蔓延し、九〇%の回虫、四一%のジストマ、さらに、戦争と生活苦のため、精神病患者三十万、犯罪検挙数は、今日外務省の発表によれば、四十五万をこえるような惨状を呈しておるのでございます。このような生活の貧窮と社会不安が今日不幸なる韓国の政局不安の根源であることは、おおうことのできない事実でございます。
 しからば、そもそも外務大臣が今次見通しを誤りしゆえんのものは何であったでしょうか。もとより変転きわまりない今日の国際情勢の中にありまして、私は、単に今次の一政変をとらえて、わが党の先見の正しさを誇り、小じゅうとのごとく外相を追及しようとするものではありません。にもかかわらず、私どもがどうしてもここに、今国会において明らかにいたしておかねばならぬと痛感いたしますことは、いやしくも外交の衝に当たる以上は、敵を知り、おのれを知る、百戦危うからず、相手方の社会、経済、政治情勢の大局だけは正確に把握しておかねばならぬという一つのことでございます。(拍手)そのためには、少なくとも大平外務大臣は、交渉の前提として、まず第一に京城に外務省の在外事務所の設置を要求すべきではなかったでしょうか。このことは、東京に韓国の在外公館が置かれている以上、これまた当然のことでありまして、これすら実現せずして交渉を開始したのでは、あまりにも軽卒、めくら外交と評せざるを得ないのでございます。(拍手)
 第二には、平素から必要なる統計資料を整備して、これを念頭に入れて事に処すれば、およその見当はついたはずであろうものを、私が先ほど申し述べましたような韓国の不幸な経済構造の数字だけでも外務大臣が心にとめておかれたならば、もう少し見通しを正確にし、緩急よろしく事に処することができたはずだと思うのでございます。(拍手)
 韓国の経済構造が、不自然かつ著しくかたわでありますことは前に述べた通りでありまして、たとえば朝鮮の北半分におきましては、諸兄の熟知せられるように、鴨緑江の水力電源に恵まれ、平壌の石炭、茂山の鉄鉱石、咸興の化学肥料、その他金鉱、螢石、タングステン等に恵まれておりますけれども、南半分におきましては、石炭と鉄鉱石と水力電気にも乏しく、ただ南北統一し、互いに相交流するならばアジアのスエーデンたり得る素質を持っているのに、南北に分断されているばかりに、今日の韓国は実に貧困と絶望のどん底にあえいでいるのが現状でございます。(拍手)これを国民経済の帳じりたる貿易統計に例をとってみますと、韓国の輸出総額わずかに四千万ドル、これに対して輸入総額は三億一千万ドル、差引赤字二億数千万ドルは主としてアメリカの軍事援助によるものでありまして、韓国経済は、いわばアメリカの尾てい骨ほどのものである現状でございます。大平外務大臣は、韓国への経済援助を考慮されるにあたりまして、真に朝鮮民族の経済自立に協力するものにあらずして、単に左顧右眄してアメリカの尾てい骨をなでてみずからを慰めていたというのが、韓国援助計画の実態でなかったでしょうか。(拍手)
 かつて朝鮮の愛国者であり、かつ、すぐれた哲学者であった朴燕巌という学者は、「熱河日記」という古い記録に封建割拠の弊を嘆いて、次のようにしるしております。「六ジの麻布と関西の絹。三南の紙と海西の鉄。内浦の鮮魚と青山のナツメ、広州の梨と関東の蜂蜜。すべてこれ朝鮮人民の宝である。これらの物資を互いに有無通じ合おうというのにたれが妨げることができるであろうか。」周知のように、朝鮮の歴史は、若いアメリカの歴史に比べて何十倍も古く、大百科事典によりますと、人類史上最初の金属活字が発明されたのは隣邦朝鮮であり、世界最初の天文台といわれる膽星台を建設したのもまた隣邦朝鮮人であったといわれておるのでございます。(拍手)かつて古代日本の陶工、織姫、楽士がいかに朝鮮の文化の影響を受けたかは諸君の熟知せられる通りであって、柳宗悦氏の朝鮮民芸史、さらには、かしこきあたりの宮中、雅楽史の一こまをひもとけば説き尽くして余るところがないのでございます。(拍手)
 さて、このような世界文化史の一こまに大きく寄与して参った隣邦朝鮮民族の生活と文化が、歴史の悲劇によりまして不自然に分断され、人為的障壁に苦しんでいるときに、南北を問わず、その国民が平和統一を念願することは、天の理、自然の情ともいうべきものでないでしょうか。
 日韓交渉にあたりまして、私たちが池田総理並びに大平外務大臣に対して声を大にして警告するゆえんのものは、この天の理に反して、民族分断を固定化せんとする方向に力をかしてはならぬということでありまして、今日三十八度線の傷の痛みは、朝鮮民族全身の痛みであることを深く諸兄とともに理解せねばならぬと思うのでございます。(拍手)
 さらに、奇異の感じに打たれますことは、朴議長が、しばしば李承晩政権を打倒したる四月革命の精神について言及しているということであります。そもそも四月精神とは何でありましょう。それは、第一には外来勢力の干渉を排除し、第二には民族の平和統一を願い、第三には軍事ファッショ支配を打倒して国民の自由と民主政治と国会の権威を守らんとする意欲でありました。しかしながら、今日朴ファッショ政権によって現実に弾圧され、獄中に呻吟しているものは、実にこの四月精神そのものでありまして、しかりとするならば、不当なる李承晩反動政権を退場せしめた韓国の四月精神は、民衆の力は、やがて朴ファッショ政権そのものをも早晩退場せしめるであろうことは、だれしも予見し得たところでございます。(拍手)
 このような実情が、今日置かれているありのままの韓国の過渡期の政情でありまして、政府は当然慎重に事に処し、傷あと深い韓国の病状に対しては、しばらく事態の推移を静観すべきものであったのでありまして、何を好んで事を急がねばならぬ理由があったでありましょうか。(拍手)もしそれ、国交の調整が当面必要であるとするならば、いたずらにあわてることなく、南北それぞれ平等に必要なる事務的関係を持てば、当面事足りるのであります。
 しかも、日韓交渉の内容をしさいに検討してみますると、韓国への有償、無償の供与実に五億ドルに及び、そのすべては何ら法的並びに現実的根拠がなく、かつ、具体的資料の提出すらなさず、国民の監視の目を盗んで、悪名高き金鍾泌輩との秘密外交に終始し、竹島の返還、李ライン撤去への確たる保証さえなく、ただ手づかみに国民の血税二千億円を軍事ファッショ政権に提供せんとしているのであります。しかも、このような筋違いの非生産的贈与でありますがために、当然財界、政界の汚臭ふんぷんとして蝟集し、早くも内外に広範なる汚職事件が報ぜられつつあることは、まことに遺憾のきわみであると思うのでございます。(拍手)当初、大平外務大臣が多少なりとも慎重なる態度をとりましたことは、私どももよく承知いたしているのでございますが、やがて急テンポに緊迫せるアメリカの極東戦略に押され、さらにまた、世上いわゆるコリアン・ロビーと称せられる一部の無知なる勢力に押しまくられて、ただうかうかと流れに身をゆだねているうち、気がついてみれば、すでにとうとうたる濁流に洗われて今日の悲運に至ったというのが、偽らざる事態の真相であると察するのであります。(拍手)
 しかしながら、事すでにここに至る、見通しを誤りたる大平外務大臣の責任は、まことに重かつ大であります。外相は、よろしくその情勢認識の甘さを国民に謝し、この際、日韓交渉を打ち切ることが当然の務めであると考えられるのであります。
 私は、外相とは外務委員として席を同じくし、まことに忍びがたき思いをいたすのでありますが、ここに国政の大道、平和を守る日本民族の大義を明らかにいたしますために、情理を尽くし、あえて馬謖を切るの思いをもちまして、大平外務大臣の退陣を要求し、外相不信任の決議案に賛成の意を表する次第でございます。(拍手)
#11
○議長(清瀬一郎君) 稲富稜人君。
  〔稲富稜人君登壇〕
#12
○稲富稜人君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま日本社会党より提案されました大平外務大臣不信任決議案に対し、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 すなわち、われわれが本案に反対する基本的な理由は、現時点において、日韓交渉に対処するわが国の態度として、ここに本院において外務大臣の不信任案を可決することにより、日韓会談を全面的に打ち切る態度を表明することではなく、さきの池田・西尾会談において、わが党から提案いたしましたごとく、この際、韓国の政情安定の見通しがつくまで、一切の政治会談はこれを一時停止して、事態の推移を慎重に見きわめることが、現在のわれわれのとるべき基本的態度でなければならないと確信するからであります。(拍手)
 もとより、われわれは日韓交渉をめぐる政府の数々の不手ぎわを不問に付する考えは毛頭ないのであります。むしろ、われわれは、これらの不手ぎわを国会論議の爼上において、今後とも徹底的に追及していく所存であるのであります。
 私たちは、これまで日韓会談について一貫した態度を堅持して、幾つかの具体的提案を政府に対して行なって参ったのであります。その一つは、懸案の解決はこれを一括して同時に行なうべきであること、第二には、交渉にあたっては、韓国の政情の安定を見きわめつつ、常に慎重な態度をもって事に当たるべきであること等がそれであります。
 しかるに、日韓交渉の推移を見るとき、このわれわれのまじめな提案が、ともすれば軽視され、われわれが当初心配しておりました事態が不幸にも事実となって生じつつあることでありまして、これはまことに遺憾にたえないところであります。特に漁業交渉の難航をめぐって、懸案の一括解決が非常な困難に当面しつつある事実は、われわれの当初の方針に照らしても、実に遺憾事と申さねばならないのであります。しかし、それにもまして重大な問題は、韓国の政情の見通しについて、政府がその見通しを完全に誤ったことであります。この点に関する実証は、すでに世論の帰一するところでありまして、今さらここにその経緯について多くの説明を行なうまでもないと信ずるのであります。
 およそ外交交渉を行なうにあたって、その見通しを誤ることほど拙劣な外交はないのであります。その意味において、本問題の当の責任者である大平外務大臣の政治責任はきわめて重大でありまして、今後の事態の推移いかんによりましては、当然その責任を問わなければならないと考えるのであります。
 しかしながら、翻って事態を冷静に吟味いたしますとき、この際、大平外務大臣を不信任することが適当であるかいなかについては、多くの疑問を感ぜざるを得ないのであります。何となれば、いやしくも他国と外交交渉を行なっている最中に、当の国務大臣を不信任することは、きわめて慎重な考慮を必要とする問題であり、安易な党略の上の問題としてこれが取り扱われるようなことがあっては絶対にならないと信ずるからであります。(拍手)不信任という重大行為を行なう以上、現在行なわれている日韓交渉が将来明らかに失敗するという確たる見通しと、これを裏づける明白なる証拠なしに軽々しく論じらるべき性格のものであってはならないと存ずるからであります。(拍手)
 この見地に立って現状を冷静に判断するとき、今日の日韓交渉を完全に望みなきものときめてかかることは、あまりにも拙速な考えであり、軽率のそしりを免れないばかりか、わが国の国民的利益を粘り強く守らなければならないわれわれの使命を、仕事半ばにして放棄するものといわなければならないと存ずるのであります。(拍手)この意味から、この際大平外務大臣を不信任することは、わが国にとって決して得策ではないのみならず、時期的にもまた当を得たものではないと存ずるのであります。
 特に、社会党が本決議案の提案理由の説明において述べられておる、大平外務大臣が朝鮮の南北統一を阻害し、アジアの緊張激化と反共軍事体制の強化を目途に日韓交渉を進めているとの不信任理由は、その論拠があまりにも主観的であり、客観的な実証を伴わないものであって、わが党としては、その真意を理解することに多くの困難を感ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 よって、この問題に対してわれわれがとるべき最善の方法は、冒頭に申し述べましたごとく、政治会談をこの際一時停止して、韓国の政情安定を冷静に、かつ、注意深く見きわめることこそが先決であって、それこそが現時点においてはわれわれのとるべきすべてであるということであります。われわれは、いかなる場合においても国家と国民の利益を守ることに全力を尽くす態度を堅持しなければならないと確信いたすものであります。その意味において、本決議案は多分に拙速であり、慎重を欠いている感を禁じ得ないのであります。(拍手)
 しかし、われわれはこの際、特に池田総理並びに大平外務大臣に警告をしたいと思うのであります。
 これまで政府が行なってきた日韓交渉は、かつて政府が国民に確約された方向とは全く異なった方向に推移しつつあり、この間に政府としての数々の誤算と誤謬があった冷厳なる事実については、この際率直に猛反省して、もって事態の正しい解決のためにその姿勢を正し、われわれの率直な意見に誠意をもって耳を傾ける勇気を持つべきであるということであります。
 私は、この際、政府がわが党の提案する政治会談の一時停止について真剣なる考慮を払われんことを特に要望いたしまして、私の反対討論を終わる次第でございます。(拍手)
#13
○議長(清瀬一郎君) 以上にて討論は全部終局いたしました。
 よって、これより採決に移ります。
 この採決は記名投票をもって行ないます。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。――閉鎖。
  〔議場閉鎖〕
#14
○議長(清瀬一郎君) 氏名点呼を命じます。
  〔参事氏名を点呼〕
  〔各員投票〕
#15
○議長(清瀬一郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――開鎖。
  〔議場開鎖〕
#16
○議長(清瀬一郎君) 投票を計算いたさせます。
  〔参事投票を計算〕
#17
○議長(清瀬一郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
  〔事務総長報告〕
 投票総数 三百八十一
  可とする者(白票)  百二十二
  〔拍手〕
  否とする者(青票)  二百五十九
  〔拍手〕
#18
○議長(清瀬一郎君) 右の結果、外務大臣大平正芳君不信任決議案は否決せられました。(拍手)
    ―――――――――――――
 島上善五郎君外四名提出外務大臣大平正芳君不信任決議案を可とする議員の氏名
      安宅 常彦君    赤松  勇君
      淺沼 享子君    足鹿  覺君
      有馬 輝武君    淡谷 悠藏君
      井伊 誠一君    井手 以誠君
      猪俣 浩三君    石川 次夫君
      石田 宥全君    石橋 政嗣君
      石山 權作君    板川 正吾君
      稻村 隆一君    大柴 滋夫君
      大原  亨君    太田 一夫君
      岡  良一君    岡田 利春君
      岡田 春夫君    岡本 隆一君
      加藤 勘十君    加藤 清二君
      片島  港君    勝澤 芳雄君
      勝間田清一君    角屋堅次郎君
      川俣 清音君    川村 継義君
      河上丈太郎君    河野  正君
      木原津與志君    北山 愛郎君
      久保 三郎君    久保田鶴松君
      栗原 俊夫君    栗林 三郎君
      黒田 寿男君    小林  進君
      小林 ちづ君    小松  幹君
      兒玉 末男君    五島 虎雄君
      河野  密君    佐々木更三君
      佐藤觀次郎君    佐野 憲治君
      坂本 泰良君    阪上安太郎君
      島上善五郎君    島本 虎三君
      下平 正一君    東海林 稔君
      杉山元治郎君    鈴木茂三郎君
      田口 誠治君    田中 武夫君
      田邊  誠君    田原 春次君
      多賀谷真稔君    高田 富之君
      高津 正道君    滝井 義高君
      楯 兼次郎君    辻原 弘市君
      坪野 米男君    戸叶 里子君
      堂森 芳夫君    中島  巖君
      中村 重光君    中村 高一君
      中村 英男君    永井勝次郎君
      楢崎弥之助君    成田 知巳君
      二宮 武夫君    西村 力弥君
      野口 忠夫君    野原  覺君
      長谷川 保君    畑   和君
      原   彪君    日野 吉夫君
      肥田 次郎君    平岡忠次郎君
      広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君
      帆足  計君    穗積 七郎君
      細迫 兼光君    前田榮之助君
      松井 政吉君    松井  誠君
      松原喜之次君    松前 重義君
      三木 喜夫君    三宅 正一君
      武藤 山治君    村山 喜一君
      森島 守人君    森本  靖君
      八百板 正君    矢尾喜三郎君
      安平 鹿一君    柳田 秀一君
      山内  広君    山口シヅエ君
      山口丈太郎君    山口 鶴男君
      山崎 始男君    山田 長司君
      山中 吾郎君    山中日露史君
      山花 秀雄君    湯山  勇君
      横路 節雄君    横山 利秋君
      吉村 吉雄君    和田 博雄君
      志賀 義雄君    谷口善太郎君
 否とする議員の氏名
      安倍晋太郎君    安藤  覺君
      相川 勝六君    逢澤  寛君
      愛知 揆一君    青木  正君
      赤城 宗徳君    赤澤 正道君
      秋田 大助君    秋山 利恭君
      足立 篤郎君    天野 公義君
      綾部健太郎君    荒木萬壽夫君
      荒舩清十郎君    有田 喜一君
      有馬 英治君    井出一太郎君
      井原 岸高君    伊藤 五郎君
      伊藤 郷一君    伊藤宗一郎君
      伊藤  幟君    伊能繁次郎君
      飯塚 定輔君    生田 宏一君
      池田 清志君    池田 勇人君
      石井光次郎君    石田 博英君
      一萬田尚登君    稻葉  修君
      宇田 國榮君    宇野 宗佑君
      植木庚子郎君    臼井 莊一君
      内田 常雄君    内海 安吉君
      浦野 幸男君    江崎 真澄君
      遠藤 三郎君    小笠 公韶君
      小川 半次君    小川 平二君
      小沢 辰男君    小澤佐重喜君
      小澤 太郎君    尾関 義一君
      大石 武一君    大上  司君
      大倉 三郎君    大沢 雄一君
      大高  康君    大竹 作摩君
      大野 市郎君    大野 伴睦君
      大橋 武夫君    大森 玉木君
      岡崎 英城君    岡田 修一君
      岡本  茂君    加藤 高藏君
      加藤常太郎君    加藤鐐五郎君
      賀屋 興宣君    金子 一平君
      金子 岩三君    上林山榮吉君
      神田  博君    鴨田 宗一君
      唐澤 俊樹君    仮谷 忠男君
      川野 芳滿君    川村善八郎君
      菅  太郎君    菅野和太郎君
      木村 公平君    木村 俊夫君
      木村 守江君    岸  信介君
      北澤 直吉君    久保田円次君
      草野一郎平君    倉成  正君
      藏内 修治君    黒金 泰美君
      小泉 純也君    小枝 一雄君
      小金 義照君    小坂善太郎君
      小島 徹三君    小平 久雄君
      河野 一郎君    河本 敏夫君
      纐纈 彌三君    佐々木秀世君
      佐々木義武君    佐藤 榮作君
      佐藤洋之助君    佐伯 宗義君
      齋藤 邦吉君    齋藤 憲三君
      坂田 英一君    坂田 道太君
      櫻内 義雄君    笹本 一雄君
      薩摩 雄次君    志賀健次郎君
      始関 伊平君    椎名悦三郎君
      重政 誠之君    篠田 弘作君
      澁谷 直藏君    島村 一郎君
      首藤 新八君    正示啓次郎君
      白浜 仁吉君    周東 英雄君
      壽原 正一君    鈴木 正吾君
      鈴木 仙八君    鈴木 善幸君
      砂原  格君    瀬戸山三男君
      關谷 勝利君    園田  直君
      田川 誠一君    田口長治郎君
      田澤 吉郎君    田中伊三次君
      田中 角榮君    田中 彰治君
      田中 龍夫君    田中 正巳君
      田邉 國男君    田村  元君
      高田 富與君    高橋 英吉君
      高橋清一郎君    高橋  等君
      高見 三郎君    竹下  登君
      竹山祐太郎君    舘林三喜男君
      谷垣 專一君    千葉 三郎君
      中馬 辰猪君    津雲 國利君
      津島 文治君    塚原 俊郎君
      辻  寛一君    綱島 正興君
      寺島隆太郎君    渡海元三郎君
      徳安 實藏君    床次 徳二君
      富田 健治君    内藤  隆君
      中垣 國男君    中曽根康弘君
      中野 四郎君    中村 幸八君
      中村三之丞君    中村 寅太君
      中村庸一郎君    中山 マサ君
      永田 亮一君    永山 忠則君
      灘尾 弘吉君    二階堂 進君
      丹羽喬四郎君    西村 英一君
      西村 直己君    野田 卯一君
      野田 武夫君    野原 正勝君
      羽田武嗣郎君    馬場 元治君
      橋本登美三郎君    長谷川 峻君
      濱田 幸雄君    濱田 正信君
      濱地 文平君    濱野 清吾君
      早川  崇君    林   博君
      原 健三郎君    原田  憲君
      廣瀬 正雄君    福家 俊一君
      福田 赳夫君    福田 篤泰君
      福田  一君    福永 一臣君
      藤井 勝志君    藤原 節夫君
      藤本 捨助君    藤山愛一郎君
      船田  中君    古井 喜實君
      古川 丈吉君    保科善四郎君
      保利  茂君    坊  秀男君
      星島 二郎君    細田 吉藏君
      堀内 一雄君    本名  武君
      前田 正男君    前田 義雄君
      牧野 寛索君    益谷 秀次君
      増田甲子七君    松浦周太郎君
      松浦 東介君    松澤 雄藏君
      松田 鐵藏君    松永  東君
      松野 頼三君    松村 謙三君
      松本 一郎君    松本 俊一君
      松山千惠子君    三池  信君
      三木 武夫君    水田三喜男君
      南好  雄君    村上  勇君
      毛利 松平君    森下 國雄君
      森田重次郎君    八木 徹雄君
      保岡 武久君    柳谷清三郎君
      山口喜久一郎君    山口 好一君
      山崎  巖君    山田 彌一君
      山手 滿男君    山中 貞則君
      山村新治郎君    山本 猛夫君
      吉田 重延君    米田 吉盛君
      米山 恒治君    早稻田柳右エ門君
      井堀 繁男君    伊藤卯四郎君
      稲富 稜人君    受田 新吉君
      内海  清君    春日 一幸君
      佐々木良作君    田中幾三郎君
      玉置 一徳君    西尾 末廣君
      西村 榮一君    門司  亮君
      本島百合子君
     ――――◇―――――
 日程第二 昭和三十七年度分として交付すべき地方交付税の総額の特例に関する法律案(内閣提出)
#19
○議長(清瀬一郎君) 日程第二、昭和三十七年度分として交付すべき地方交付税の総領の特例に関する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#20
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長永田亮一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔永田亮一君登壇〕
#21
○永田亮一君 ただいま議題となりました昭和三十七年度分として交付すべき地方交付税の総額の特例に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
 御承知のように、昭和三十七年度第二次補正に伴って、本年度分として交付すべき地方交付税の総額が増額されることとなったのでありますが、政府は、この増額された財源の一部を来年度に繰り越して使用することを適当と認め、本特例法案を提出したのであります。
 その内容を申し上げますと、昭和三十七年度分として交付する地方交付税額は、さきに給与ベース改定のため再算定をした普通交付税の額、及びこれに対応する特別交付税の額、並びに最近の異常豪雪政策として、地方団体が必要とする財政需要を特に考慮して特別交付税を増額した額との合算額とし、その残余の額百億円以内を昭和三十八年度に繰り越すことができることとするものであります。
 本案は、二月十四日本委員会に付託され、同十五日篠田自治大臣より提案理由の説明を聴取し、慎重に審議を行なったのでありますが、その詳細は会議録により御承知をいただきたいと存じます。
 二月二十六日質疑を終了し、同二十八日、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対しては、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の共同による附帯決議案が提出され、これまた全会一致をもって可決いたしました。
 決議文を朗読いたします。
    附帯決議
 地方交付税制度の運営の情況をみるに、ここ三年間、毎年度百億円程度を翌年度に繰越す措置を講じているが、現下の地方財政の動向と地方行政水準の現況にかんがみ、政府は、今後次の点について検討すべきである。
 一、本制度が、地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することにあるのにかんがみ、基準財政需要額の算定にあたつては、進展する地方行財政の実態に即した合理的かつ妥当な単位費用の積算等を行ない、交付税の全額をその年度内に交付できるようにして、地方財源の確保に万全を期すること。右決議する。以上、御報告申し上げます。(拍手)
#22
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#23
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
#24
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これをもって散会いたします。
   午後四時三十九分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        自 治 大 臣 篠田 弘作君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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