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1962/04/26 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第20号
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1962/04/26 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第20号

#1
第043回国会 本会議 第20号
昭和三十八年四月二十六日(金曜日)
    ―――――――――――――
  昭和三十八年四月二十六日
   午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意を求め
  るの件
 米原子力潜水艦の日本寄港問題に関する緊急質
  問(帆足計君提出)
   午後二時十五分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(清瀬一郎君) 御報告いたすことがございます。
 元本院副議長岩本信行君は、去る五日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、先例により、議長において去る十二日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
  〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のため尽力し再度本院副議長の要職につきまたさきに国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等岩本信行君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#4
○議長(清瀬一郎君) お諮りいたします。
 議員小林進君から、海外旅行のため、五月十一日から本会期中請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意を求めるの件
#6
○議長(清瀬一郎君) なお、お諮りいたします。
 内閣から、日本銀行政策委員会委員に大久保太三郎君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 米原子力潜水艦の日本寄港問題に関する緊急質問(帆足計君提出)
#8
○草野一郎平君 緊急質問許可に関する動議を提出いたします。
 すなわち、帆足計君提出、米原子力潜水艦の日本寄港問題に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
#9
○議長(清瀬一郎君) 草野一郎平君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 米原子力潜水艦の日本寄港問題に関する緊急質問を許可いたします。帆足計君。
  〔帆足計君登壇〕
#11
○帆足計君 私は、ここに米国原子力潜水艦の日本寄港問題に対し、単に日本社会党の立場のみならず、広くこの問題を憂慮する日本国民の立場から、政府に質問をなさんとするものでございます。(拍手)
 御承知のごとく、日本は島国、海の国でございます。海の国とは、すなわち貿易と船の国でございます。日本は、かつてアジアの一員たるみずからの立地的宿命について深く思うこともなく、軍国主義と他国への侵略という古い方式を踏襲し、無謀なる力の政策に身をゆだね、敗戦の悲運を招来いたしたのでございます。今や歴史の舞台は一転し、平和憲法のもとに、合理的進路を求めようとする新しい日本は、世界の平和と貿易の道に、島国としての自己の宿命を生かさねばならぬ条件のもとにあること、御承知のごとくでございます。すなわち、日本国民といたしましては、常に世界の国々との平和共存を前提とし、いやしくもみずから求めて、国際緊張激化の一環に足を踏み入れ、またはみずから緊張の原因となるがごときことは、常に細心の配慮と注意をもって避けることが必要と思われるのでございます。(拍手)
 さて、このたびアメリカ政府から原子力潜水艦の日本寄港を求められましたことにつきましては、日本国民は非常なるショックを感じておるのでございます。この問題につきまして、すみやかに問題の所在を明らかにし、アメリカの意向を確かめるとともに、また日本政府の態度を明確にいたすことは、ひとしく国民の要望しておるところでございます。御承知のごとく、広島、長崎の世界最初の原爆の体験とビキニの死の灰の犠牲を受け、今日まで次々と跡を断たぬ放射能障害と、原水爆実験のたびごとに雨と野菜と魚介の汚染に心を痛めて参った日本国民といたしましては、一そうこの問題について敏感ならざるを得ないのでございます。(拍手)従いまして、私は、ここに日本政府が原子力潜水艦の日本寄港に対し、この際は即刻これをお断わりすることを要望いたしますとともに、首相、外相並びに関係大臣に対し、アメリカ当局との交渉の経過並びに最近の日本政府の見解について、正確にこれをただしておきたいと思うものでございます。(拍手)
 新聞の伝うるところによりますと、日本政府は、独断的に、原子力潜水艦の日本寄港は当然これを許容するがごとき前提のもとに、ただ原子力潜水艦に万一事故を生じ、放射能の害を受けましたときの損害の補償につきまして、もっぱら重点的かつ結論的に交渉しているかのような印象を受けるのでありますが、万一そのようなことであるならば、このような政府の態度は、日本国民としてまことに遺憾しごくといわねばならぬのでございます。(拍手)
 原子力装置の故障による放射能の人的被害は、しばしば、十年、二十年後に直接間接に当人あるいはまたその子孫に悲惨きわまりない形で影響を及ぼすものでありまして、これが損害の金銭的評定等は、言うべくしてほとんど不可能なことと思うのでございます。日本政府は、まず原子力潜水艦の日本寄港の諾否についての基本的諸問題を検討すべきであり、まず放射能被害の賠償を云々するがごときは、本末転倒のことといわねばなりません。(拍手)すなわち、あたかも原子力潜水艦の入港の無条件受け入れを前提といたすがごとき態度を示し、早くも損害賠償のことに論点を移すかの感あることは、国民の一員としてまことに不満かつ不愉快にたえぬ思いがいたすのでありますが、池田首相はこの件に関してどのようにお考えであるか、伺いたいのであります。
 同時に私は、ここにまず第一に本問題の前提として、寄港を予想される原子力潜水艦の安全性についてアメリカ当局はどのような保証を、また見解を持っているかということをお尋ねいたしたいのでございます。特に放射能物質の処理がアメリカ側で現在どのような形で行なわれておるか、正確にアメリカ政府に問いただしていただきたいのでございます。
 御承知のごとく、アメリカ最大の原子力潜水艦スレッシャー号がボストン沖三百五十キロの海底で沈没したという事件は、さらにこの問題についての警鐘を乱打したものであると思います。確かにこの事件は、形の上では一応の偶発事件というべく、アメリカ政府当局も弁解するように、例外中の例外の事件でありましょうけれども、たといこれまで百回無事故の寄港の実績あろうとも、事故は全くあり得ないことではないのでございます。現に去る一カ月前、横須賀港外におきまして、自衛艦と商船との衝突事故も起こりました。起こり得べき偶発事件に備えて万全の措置を講じておくことは政府の任務であり、ましてや事がおそるべき原子炉と放射能に関連いたしておりますから、このことは一そう切実な問題だと思うのでございます。
 御承知のごとく、海中を走る原子力潜水艦は、原子科学の見地から申しますならば、いわば「動く原子炉」ともいうべきものでございます。しからば、その原子炉が海中で故障を起こしました場合、周辺の海域や漁業にどのような影響を及ぼすでありましょうか。現に一九六一年一月米大陸アイダホ州に起こりました原子炉暴走事件の装置は、原子力潜水艦用のものと非常に似通ったSL1型の装置であったといわれております。これが暴走いたしまして、係員三名は放射能のために死亡し、その救出に百三十時間を要したといわれておるのでございます。今次のスレッシャ一号の沈没に伴う放射能の脅威につきましては、米国権威筋でも議論は二つに分かれておりまして、たとえばハーバード大学生物学ケッチャム教授のごときは、今次の事件で高度の放射能が放出されるであろうことは必然で、それは時の問題にすぎぬ、真の脅威はおそらく数年、十数年後に起こるであろうと言明いたしておるのでございます。
 重ねてお尋ねいたしますが、原子力潜水艦の安全性に対し、今日までのところ、アメリカ政府はいかなる回答を寄せておられるのでありましょうか。さらにまた、原子力潜水艦のこれまでの故障の実例につきましては、その原因、故障の範囲、影響等は米国緊急報道センターに集計されているということでありますが、政府は当然その詳細な資料を米当局より入手なされておることとは思いますが、いかがでありましょうか、さらに、それに対し、日本政府としてはどのような方面の専門家に検討を依頼しているのでありましょうか、お尋ねいたしたきところでございます。
 聞くところによりますると、米海軍艦政本部の訓令によりますと、放射能を含む冷却水残滓はこれを海岸より二十キロ離れたところならば無制限に廃棄することが許されておるとのことでありますが、その濃度は、日本国内の原子炉が海へ流しておる濃度の数千、数万倍にも達するといわれておるのでございます。しかも、これらの放射能が、魚介、コンブ、ワカメ、ノリ等の海藻に吸収されました場合には、その数百倍ないし一万倍に濃縮されるといわれておるのでございます。わが国のごとく、魚介、海藻に食糧依存度の高い国柄におきましては、一そう慎重なる警戒を払うことが当然の努めであろうと思うのでございます。(拍手)私たちは、いまだにビキニの死の灰を浴びた直後の雨とマグロに対する恐怖を忘れることができないのでございます。科学技術庁におきましては、この点をどのように検討され、研究されておるでございましょうか。
 さらにまた、日本学術会議は、去る三月十日の声明書におきまして、原子力潜水艦の寄港は国内に一時的に原子炉を移したと同じことであるから、その安全性の検討につきましては、権威ある原子力委員会におきましてさらに十分に検討するようにとの申し入れを政府に行ない、さらに二十五日、湯川秀樹博士を含む千名をこえる科学者たちは、この際原子力潜水艦の寄港を断わることが賢明であるという声明を発し、さらに本日は、学術会議総会におきまして本問題についての慎重なる審議が行なわれる予定になっておるのでございます。これら科学者たちの根拠ある声明に対しまして、政府はどのような見解をお持ちでございましょうか、首相の御見解のほどを伺いたいのでございます。(拍手)あるいは首相は、当面の政治的必要に迫られて、原子科学者の要望などは無視または軽視しても一向差しつかえないとでもお考えになっておられるのか、率直な御意見をこの際伺っておきたいと思うのでございます。
 さらに、終戦後日本の学術界が原子力の開発と取り組むにあたりまして決定いたしました、そしてその後法制化されましたところの原子力基本法のいわゆる四原則もまたこの際忘るべからざる基本原則であると思うのでございます。すなわち、それは平和、民主、自主、公開の四原則でありまして、原子力潜水艦の寄港の諾否に対処すべき日本国民の良識はこの四原則に背馳すべきでないと思うのでございますが、総理はこの四原則に対してどのようなお考えでございましょうか。明確なる御所見のほどをこの際承りたいと思うのでございます。(拍手)
 さらに注目すべきことは、最近の原子力潜水艦並びにポラリス潜水艦の極東戦略上の役割でございます。原子力潜水艦にポラリス型としかざるものとの二種類がありますことは、周知のことでございます。ポラリス型潜水艦の核装備は、射程距離二千キロ、最近は四千キロにも及び、十六発は搭載可能といわれ、その破壊力の合計は、わずか一隻で優に過ぐる世界大戦中使用の火薬総量の破壊力をこえるとさえいわれておるのでございます。しかしながら、ポラリス型以外のものといえども、それは平和の旅客船ではなく、やはり軍艦であり、サブロックといわれる核弾頭魚雷を搭載しているのでありまして、それは魚雷と申しましても、一たび発射されますと、トビウオのごとく一たん空中に飛躍し、やがて敵艦に落下し、その核弾頭の破壊力は、広島、長崎に投下せられたる原爆に匹敵するといわれておるのでございます。
 政府は、このたび寄港を求めておる原子力潜水艦はポラリス型でなく、ノーチラス型であるから、核兵器備付の心配はないと弁解しておるようでございますけれども、そもそも、いうところの核兵器装備とは何を意味するものでございましょうか。たまたま入港の際に、単に核弾頭を一時的に載せていない、はずしたというだけの理由で、核兵器装備ではないとはたして強弁できるでしょうか。ここに例を引きますと、たとえばデパートでファッション・ショーが開かれたといたします。そのファッション・ショーにマネキンの人形が準備され、その人形の五体に衣装をまとい、かりに一時的にその首の部分だけをはずしたといたしましても、首はいつでもはめ込むことができるのでございまして、やはりマネキンたることには変わりはないのでございます。しかも、核弾頭それ自体はどこにでも隠せるほどの小さなものであります。また、日本政府には検査権すら与えられていないのでありまして、政府はいかなる実際的根拠をもちまして原子力潜水艦に核装備なしと断定し得るでしょうか。そもそも、艦内でも艦外でもほとんど完全に隠せるほどのサブロック魚雷の核弾頭だけを核兵器と呼び、サブロック装備自体の国内への搬入を自由に許すことは、明らかに不当であり、憲法違反であると思うのでございます。また、皆様に百歩譲りまして、かりに若干論議の余地があるといたしましても、少なくとも事前協議の対象として、条約上正式に事前審議をなし、災いを未然に防ぐことが政府のとるべき態度であると思うのでございます。ここに核兵器装備の定義に関し、総理大臣の御所見を伺いたいと思うのでございます。
 しかも、アメリカ軍当局の報道によりますと、危険なる核魚雷サブロックを装備いたしておりますのがこのたびのノーチラス型潜水艦であることは明らかな事実でありまして、同時にまた、原子炉装置に万一の事故があります場合には、東京湾一帯が半永久的に使用できなくなるおそれのあることは、ひとしく科学者が指摘しておりますところの、予想をされ得る冷厳なる科学的事実でございます。(拍手)
 しかも、さらに慎重な考慮を要すべきものは、最近のポラリス潜水艦並びに各種の原子力潜水艦の戦略的意義についてでございます。特に原子力潜水艦の速度は驚異的なスピードでありまして、さらに、海中深く数カ月も潜航することができるのでございます。今日陸上の基地が一瞬の攻撃によりまして犠牲基地たる危険性をはらんでおりますときに、核装備せる潜水艦は、集結、分散、秘匿、移動、いずれもきわめて敏速でありまして、今やアメリカ軍の極東戦略も、B29からジェット機に移り、ジェット機から基地ミサイルに移り、さらに基地ミサイルから今や移動するミサイルといわれる核装備潜水艦戦術に移行しつつあるのでございます。まことに目まぐるしくも危険きわまりない核戦略の変遷の現状でございます。
 しかして、わが平和日本がその戦略の一環にみずから身をゆだね、原子力潜水艦の寄港を軽々しくこの際許容いたし、しかしてアメリカの一方的な核戦略に身をゆだねることになりますことは、国際緊張の激化に一役を演ずる結果となるばかりでなく、わが国土を原爆の基地に移し、おそるべき死の歯車に身をゆだねる端緒ともなりかねないのであります。
 今地図を開いて太平洋の戦略図をながめますと、日本はボストンでしょうか、またはバンクーバーでしょうか。日本がアメリカのうしろ側に、すなわちボストンやバンクーバーの地位にあるならばそれも悪くはないでしょうけれども、日本はサンフランシスコを隔たること五千キロ、アジアの断崖の下の四つの島、いわば王の前に置かれた歩のような地位にあるのでございまして、アメリカにとっての前線基地、犠牲基地たるの地理的宿命を背負っておるのであります。首相並びに外相は、この日本の戦略的かつ宿命的な立地条件について、もっと慎重な配慮を払ってしかるべきと思うのでありますが、いかがお考えでしょうか。祖国日本の国土を、一歩誤れば他国防衛のための原爆犠牲基地に供し平然たるとは、首相及び外相は、そもそも孫子の兵法の一ページでもひもとかれたことがあるのかどうか、まことに疑わしいのでございます。(拍手)
 最後にお尋ねいたしたきことは、アメリカ原子力潜水艦の寄航目的についてでございます。アメリカ当局はこれについて何と説明しておるか、お伺いいたしたいのでございます。このたびのアメリカ原子力潜水艦の日本寄港への希望が、米軍極東戦略の一環であることは疑うべくもない事実であると思うのでありますけれども、表面上は兵士の休養及び資材補給のための寄港と説明されておるようにも聞いておるのでございます。しかりとするならば、日本は交通事故も多く、また売春禁止令もあることですから、アメリカの兵士たちのための休養にはならぬのでありまして、それにまた、原子力潜水艦は必要に応じて数カ月も海中深く潜航できるのでありますから、何もわざわざ佐世保、横須賀にお立ち寄りにならなくとも、風光明媚なるハワイあたりに御寄港になればよいのではないかと思われるのでございます。(拍手)それとも、世上伝うるがごとく、ノーチラス型を突破口として核兵器導入の糸口を、やがてはポラリス潜水艦導入の糸口を開かんとするものでありましょうか。私は、それはそれとして、当然警戒すべき点であると思うのでございますけれども、外務大臣の御感想を伺いたいのでございます。
 しょせん、日本の国土はわれわれ日本国民のものでございます。たとい日本国民の全部でなくても、その五割なり六割の人々が深く憂慮し、激しくこれに反対する以上は、アメリカ政府といたしましても、原子力潜水艦の他国領土への出入は慎むことが、他国民に対する礼節といえないでしょうか。(拍手)日本政府は、よろしく以上の趣旨に基づきまして、アメリカ政府にただすべきは慎重にただし、戦略的にも技術的にも日本国民にいささかも益するところなく、かつ、おそるべき危険を内蔵するところの原子力潜水艦の寄港並びに日本出入は、この際アメリカ当局に思いとどまりますように、きぜんたる態度をもって、アメリカ政府の良識に訴えられんことを切望いたしますとともに、逐次御質問いたしました各項目に対して、首相、外相並びに関係大臣の御所見をお伺いしたいと思うものでございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#12
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 米国原子力潜水艦の寄港は、お話にもありましたごとく、乗組員の休養と補給のためでございます。しこうして、この潜水艦は、わが国を防衛し、極東の安全と平和を維持するための米国艦隊の一部であるのであります。従いまして、私は、安保条約の規定に基づきまして、これに対し便宜を与えることは、条約の建前上当然のことと考えております。(拍手)また、これに与えないということは、私は条約の義務違反であるそしりを免れないと考えております。
 しからば、今までなぜ寄港しなかったかということは、やはりわが国民は核兵器の被害を受けた特別な立場でありますので、アメリカはこの国民感情を考慮して、今日まで遠慮しておったのでございます。しかし、最近におきましては、原子力を船の推進力とすることは常識的になっております。しかもまた、十数カ国に百回も寄港いたしまして、そうしていろいろな弊害、損害は起こっていない。こういう事実から、今回は私は寄港を認めても支障はないのではないかと今検討しておるのであります。
 なお、学術会議の決議につきましては聞いておりません。
 また、原子力基本法第二条は、原子力の研究、開発及び利用につきまして規制をいたしております。しかし、これはわが国についての規定でございまして、外国の潜水艦にこれを適用するということは、私は考えられないと思っております。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#13
○国務大臣(大平正芳君) お尋ねの潜水艦の寄港問題につきまして、アメリカ側との折衝でございますが、前後四回にわたりまして情報の交換をいたしておるわけでございます。ただいままでのところ判明いたしましたことは、一つは、英、独、仏、フィリピン、豪州、台湾等の各港に百回以上寄港をいたしておりますが、安全性についての問題が起こったこともないし、海水汚染の事実も認められないということが第一点。第二点としては、アメリカ側は、原子力委員会、さらには専門技術機関によりまして厳重な審査を経たものでなければ運航を認めないということをやっておるということ。第三点といたしまして、ただいままで十回程度原子力潜水艦に事故が起こっておりますが、そのいずれもが船舶事故、通常の事故でございまして、原子炉の事故ではないということでございます。
 さらに、国内におきまして各専門家の御意見を聞きまして、逐次照会をいたしておるところでございまして、ただいま四回の照会につきましてはまだお返事をちょうだいいたしておりません。
 それから、科学者の御意見につきましては、原子力委員会を初めといたしまして、政府部内の科学者にいろいろ御意見を聞いて、その御意見に基づきまして照会をいたしておるわけでございます。もとより、科学者がその科学的良心から、自主的にその安全性を検証いたしたいというお気持はよくわかるわけでございますが、ただ、相手方は軍艦でございまして、国際慣例上軍機というものは尊重しなければなりません。従って、その軍事機密の限界の中に入るものにつきましては、私どもといたしましては、米国の原子力科学技術の水準というもの、並びに米国政府が安全性の建前からいろいろ工夫、努力をいたしておること、それから今までの運航の実験の結果等を尊重し、かつ、これを信頼するよりほかに道はないのではないかと考えておりますが、それに触れない範囲内におきましては、できるだけ詳細に、お求めに応じまして照会をいたしておるところでございます。
 それから、核兵器と申しますのは、たびたび本院におきましても、歴代の政府が答えておるところでございますが、核の分裂、核の融合反応による力を破壊力または殺傷力として使う場合、これを核兵器と私どもは申し上げておるわけでございまして、今問題になっておる原子力潜水艦というのは、推進力として原子力を利用するにとどまるものでございまして、私どもは、これを核兵器とは考えておりません。従いまして、戦略的な見地から、帆足さんがおっしゃったように、これはゆゆしい問題であるとか、あるいは国際緊張を媒介、激化するに役立つというようには、私どもは毛頭考えていないのでございます。
 それから、これが寄港する目的でございますが、これは総理が今お答えいたしました通り、休養と補給ということになっておるわけでございまして、日本で何も休養、補給しなくても、よそでやっていいじゃないかという御意見でございますが、逆に、日本でやって悪いというわけのものではないと考えております。(拍手)
  〔国務大臣近藤鶴代君登壇〕
#14
○国務大臣(近藤鶴代君) ただいま帆足委員のお尋ねの中で、私に関しましてのことの一点についてお答えをいたします。
 海水中にある魚介類に放射能が濃縮されることは、魚介類を食物としておる日本人にとって非常に不都合ではないか、科学技術庁はこれについてどう考えておるかということでございましたので、お答えいたします。なるほど、ただいまのような御意見を発表しておられます学者の方もあるようでございます。しかしながら、この件に関しましては、目下のところ、現在の段階では検討中でございますので、それを結論かのような考え方において議論をなさることについては、賛成をいたしかねるものでございます。(拍手)
  〔国務大臣志賀健次郎君登壇〕
#15
○国務大臣(志賀健次郎君) 私に対してあらたまっての質問がなかったようでございますが、ただいま御指摘になりましたサブロックについて、防衛庁の立場を申し上げたいと思います。
 サブロックという新兵器につきましては、帆足先生、えらい勉強なさっておられまして、いろいろお話がございましたが、このサブロックは現在開発研究中のものでございまして、アメリカ国防総省が二月十八日に全世界に、目下開発研究の段階であると発表いたしておるのであります。従って、アメリカの原子力潜水艦にこれを搭載したり、積載するということはあり得ないのでございます。われわれの得た情報によれば、サブロックはまだまだ研究の段階でございまして、原子力潜水艦に搭載する時期に立ち至っておらないことを御了承願いたいのであります。(拍手)
#16
○議長(清瀬一郎君) 緊急質問並びにこれに対する答弁は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#17
○議長(清瀬一郎君) 本日は、もって散会いたします。
   午後二時五十一分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        国 務 大 臣 近藤 鶴代君
        国 務 大 臣 志賀健太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長  林  修三君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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