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1962/05/16 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第23号
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1962/05/16 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第23号

#1
第043回国会 本会議 第23号
昭和三十八年五月十六日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十一号
  昭和三十八年五月十六日
   午後二時開議
 一 特定産業振興臨時措置法案(内閣提出)及
  び市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関
  する法律案(田中武夫君外十名提出)の趣旨
  説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件
 特定産業振興臨時措置法案(内閣提出)及び市
  場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する
  法律案(田中武夫君外十名提出)の趣旨説明
  及び質疑
   午後二時二十四分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(清瀬一郎君) おはかりいたします。
 内閣から、電波監理審議会委員に秋山龍君及び古賀逸策君を任命いたしたいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 特定産業振興臨時措置法案(内閣提出)及び市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案(田中武夫君外十名提出)の趣旨説明
#5
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、特定産業振興臨時措置法案、及び田中武夫君外十名提出、市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案の趣旨の説明を順次求めます。通商産業大臣編田一君。
  〔国務大臣福田一君登壇〕
#6
○国務大臣(福田一君) 特定産業振興臨時措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 御承知のように、わが国は、国際経済の一翼をになうものといたしまして、貿易・為替の自由化を順調に推進し、さらに関税の一括引き下げの動きに対しても、原則としてこれを受け入れていく方針を固めております。
 このような国際経済環境の変化に対処しつつ、国民経済の健全な発展を確保していくためには、申すまでもなく、かかる情勢に敏速に適応し得るよう国内体制を十分整備しておくことが必要であります。ひるがえってわが国産業の実情をながめますと、過小な規模の企業が多数乱立し、そのため規模の利益の追求が徹底せず、それとうらはらをなしてとかく過当競争の弊におちいりやすいという事情があり、国内の産業体制は遺憾ながらまだ十分整備されているとは申しがたいのであります。したがいまして、政府といたしましては、自由化までに残された短い期間中に、時期を失しないよう早急に企業の規模の適正化を通じ産業活動の効率化をはかっていくことが必要であると考えます。
 わが国産業の包蔵するこのような欠陥を是正し、産業活動を効率化するための努力は、まず産業界において行なわれるべきことは当然でありますが、わが国産業の資金調達の方式をも考えますと、その努力を実効あらしめるためには、産業界と密接な関係を持つ金融界からも協力を得る必要があり、さらに国民経済の健全な発展を確保し、国民の福祉の向上につとめるという見地から、政府も民間における努力を助長する必要があると考えられます。
 そこで、政府といたしましては、企業の自主性をあくまでも尊重しつつ、企業規模の適正化を通じ産業活動を効率化するための助成を行なうことにより、特定産業の振興をはかることとし、その法的裏づけといたしまして、との法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要点について御説明申し上げます。
 第一は、この法律の適用を受ける特定産業の選定に関することであります。この特定産業というのは主として重化学工業でありますが、特定産業の指定は、あくまでも産業界の自主性を尊重いたしまして、その業界の申し出を受け、審議会の意見を聞いて行なうことといたしております。
 第二は、政府、産業界及び金融界は、企業規模の適正化を通じ産業活動を効率化して特定産業の振興をはかるための基準について討議をし、政府及び産業界の合意に基づいて基準を決定することであります。この振興基準では、規格の整備、生産の専門化、設備の適正化、事業の共同化、合併等に関する特定産業ごとの一般的な方針が定められ、企業が自己責任に基づいて行動するときの好ましい判断材料を提供しようとするものであります。
 第三は、特定産業を営む者、政府関係金融機関及び銀行が産業活動を効率化するために努力ないし留意すべきことを明らかにいたしておるところであります。
 第四は、政府の助成に関することであります。振興基準は、政府も参加して作成されたものである以上、その円滑な実施をはかることは、国策にも適合することでありますから、振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化するため必要と認められますときは、政府は、資金の確保につとめるとともに、法人税または登録税の軽減措置を講ずることといたしております。
 第五は、合理化のための共同行為の特例に関することであります。合理化のためにする一定の共同行為が、あくまでも振興基準で定められた方針に従って産業活動の効率化のために行なわれる限り、これを許容していくことが必要と考えられますので、公正取引委員会の認可を要件といたしまして、ここに独占禁止法との調整をはかることとした次第であります。
 第六は、合併に関する判断の基準を公表することであります。これは、企業が合併しようとするときに、独占禁止法に抵触するかどうかを自主的に判断することを可能ならしめることによって、企業の合併を円滑ならしめようとする趣旨に基づくものであります。
 その他、振興基準の内容を常に公正かつ適切たらしめるために、その作成にあたっては十分労働者や消費者等関係者の意見を聞くこととしたほか、政府、産業界及び金融界から振興基準を変更すべきことを請求し得る規定を設けるなど所要の規定を整備いたしております。
 なお、本法案は五年間の時限立法といたしております。これは、貿易の自由化等により経済事情が著しく変動しつつある期間について、産業活動の効率化を有効に促進するため、本法案に規定するような措置を講ずることが適当であるという趣旨に出るものであります。
 以上、本法案の趣旨の概略を御説明申し上げましたが、要は自由化後のわが国経済の成長のにない手たるべき重化学工業等の産業の確立発展をはかるために、これら産業の中で競争力培養に向かってみずから努力する産業界に対して、政府はもとより、金融界からもまた応分の協力を期待し、激動しつつある国際経済環境の中で日本経済の占めるべき名誉ある地歩をすみやかに築いてまいろうとするものであります。
 以上が、特定産業振興臨時措置法案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(清瀬一郎君) 提出者田中武夫君。
  〔田中武夫君登壇〕
#8
○田中武夫君 日本社会党提出、市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案につきまして、提案者を代表し、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 御承知のように、日本経済の最も特徴的な現象は、池田内閣の一枚看板である高度経済成長政策によって、産業構造の重化学工業化が進み、大資本を中心として、資本と生産の集中、系列化がきわめて強化されてまいりました。ことばをかえて申しますと、今日の日本経済は、すでに独占資本の支配体制が確立せられておるのであります。もちろん、過小な規模の企業が多数乱立いたしまして、過当競争の弊害も一部には見られるところでありますが、これらの現象は、主として中小企業の側面においていえることであって、資本面でも、生産面でも、独占的な大資本の成長は著しく、中小企業との格差をますます拡大しているのが、今日の日本経済の情勢であります。(拍手)
 しかしながら、このように独占資本が支配するわが国経済は、高度成長政策を破綻させ、そればかりではなく、物価問題、労働問題、中小企業問題、農業問題等々に、多くの矛盾を露呈いたしているのであります。その矛盾の根源が実に独占問題にあることは、いまさら申し上げるまでもありません。
 第二次大戦後、世界の各国は、この独占の弊害を解決するために有効な方策といたしまして、独占禁止法を制定してまいりました。そして、この独占禁止法の精神は、さらに強く現在の経済諸活動の上に反映されているのが世界的趨勢であります。しかるに、わが国におきましては、戦後とられた一連の経済民主化政策も、次々と剥奪され、独占禁止政策は一貫して大幅に緩和もしくは廃止されるという逆の努力が続けられていることは、きわめて遺憾であるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 政府から提案されました特定産業振興臨時措置法案も、こうした逆コースに拍車をかけ、巧みに独禁法の骨抜きをはかって、さらに、独占、寡占体制を確立し、独占資本の利益を一そう高めることをねらったもので、この法案は政府と独占的大企業との結合を明文をもって宣言し、政府は税制、金融その他あらゆる面での援助を公約いたしております。カルテルを認め、合併を奨励し、独占禁止法の適用を除外することといたしており、この結果、中小企業者には企業整理を、農民には高い農業資材を、一般消費者には物価値上げを、そうして労働者には首切り合理化をもたらそうとしているのであります。
 現在、従業員千人以上の大規模事業所は、事業所数で全製造業の事業所数のわずか〇・三%となっているにすぎないのに、収益では全体の三二%を占めているのであります。また、最大五社で市場の五〇%以上を占めている業種は、バター、チーズ、ビール等の食品、ナイロン、テトロン、ビニロン等の合成繊維、硫安、尿素等の肥料、銑鉄、粗銅、各種鉄鋼製品、アルミ、セメントをはじめ軽三輪、乗用車、トラック、造船、重電機等々、わが国の主要産業のほとんどにわたっているのであります。現行独占禁止法のもとにおいてさえ、このように大資本を中心とした独占、寡占体制が確立せられ、中小企業者、農林漁業者、労働者、一般消費者に重大な影響を与えているのであります。特にこれら大資本の行動は、物価高騰の大きな要因となっているのであります。
 今日、政治の立場にある者として、最も大切なことは、さらに独占、寡占体制を強めることに努力することではなく、独占、寡占のもたらす弊害を除去することに意を注ぐべきであります。(拍手)本法案を提出いたしました理由も実はここにあるのでありまして、独占、寡占の弊害、危険に対して、公正取引委員会の機能を強化し、独占禁止法の運用を適正にすることを念願としたものであります。
 市場支配的事業者の経済力の濫用の防止については、すでにイギリス、西ドイツ、ノルウェー、オランダ、ベルギー等においても存在しているのであります。わが国の独占禁止法もその一部については規制しておりますが、きわめて不十分でありますので、少なくともこの程度の規制は必要であると考え、独占禁止法を補完する意味で提案いたしたのであります。
 次に、この法律案の内容について御説明を申し上げます。
 第一に、この法案では、公正取引委員会が商品または役務の供給量、設備の規模、資本の額等がその取引分野における支配的事業能力を有する事業者を市場支配的事業者として指定し、これらの支配的事業者が、取引上優越した地位を不当に利用して行なう行為につき、現行独占禁止法の違反行為とみなして規制するほか、積極的に価格引き下げ等の措置をもとらせるようにいたしたのであります。
 第二に、国内の会社であって、その総資産額が百億をこえるもの、または、外国会社であって、公正取引委員会が指定する基準に該当するものは、毎事業年度の業務の状況その他必要な事項に関し報告書を提出させ、公正取引委員会は、市場支配的大企業の活動状況を調査し、これを一般に公表することといたしました。市場支配的大企業が、そのいうごとく公益に合致した活動をしているならば、これは何ら拒否する理由はないと思うのであります。
 第三に、公正取引委員会に市場支配審議会を置き、この法律の施行に関する重要事項について調査審議し、公正取引委員会に建議することができるようにいたしました。
 最後に、公正取引委員会は、この法律の運用状況及びこの法律の目的達成上必要な意見を国会に報告することとし、これによって、市場支配的事業者の規制について万全の対策を期することといたしたのであります。
 以上、本法案の要旨を簡単に御説明申し上げましたが、要は、すでに、今日、独占、寡占体制を確立している市場支配的事業者に対して、その経済力の濫用を防止することにより、常にその犠牲となっておる中小企業者や一般消費者の利益を保護し、もって国民経済の健全な発展をはかりたいと念願しているのであります。
 スポンサーなき法案といわれ、通産省の一部関係者以外はだれ一人としてその成立を望んでいない政府提出の特定産業振興臨時措置法案にかわり、中小企業者や農民、一般消費者が強く成立を期待している本法案を慎重に御審議の上、御賛同下さいますようお願いを申し上げまして、提案説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 特定産業振興臨時措置法案(内閣提出)及び市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案(田中武夫君外十名提出)の趣旨説明に対する質疑
#9
○議長(清瀬一郎君) ただいまの法案趣旨の説明に対しまして、質疑の通告がありまするから、順次これを許します。浦野幸男君。
  〔浦野幸男君登壇〕
#10
○浦野幸男君 私は、ただいま趣旨説明のありました特定産業振興臨時措置法案につき、自由民主党を代表して質疑を試みんと存じます。
 わが国をめぐる内外経済環境は目まぐるしく変転いたしております。貿易自由化の進展、関税一括引き下げの動き、EECの発展、国内労働事情の変化等がこれであります。しかるに、わが国産業の実情をながめますと、小さな規模の企業が乱立し、そのため、規模の利益の追求、すなわち、集中生産、大量生産を進めることによってコストを下げることができず、競争の行き過ぎの弊におちいりやすいという事情があり、産業体制は十分に整備されていることは申しがたい実情にあるのであります。このような現実に対処して、企業の規模の適正化を通じて、産業活動の効率化をはかり、国際競争力を培養していくために、特定産業振興臨時措置法案が提出されましたことはまことに時宜を得たものと存ずるものでございます。(拍手)この法案につきましては、立案過程におきましてはきわめて活発な議論を呼び、それらの意見を取り入れて各般の修正も行なわれたようであります。また、政府の考え方、運用方針等について各方面から強い関心が寄せられていることはすでに御承知のとおりであります。
 かかる見地から、私は、法案制定の趣旨に賛意を表しつつ、以下、この法律案の最も問題の多いと思われる諸点につきまして、政府の所信をただしたいと存じます。
 初めに総理の所見を伺いたいのであります。
 本法案は主として重化学工業に属する特定産業部門の国際競争力の培養を促進し助長せんとするものである以上、自由化により影響を受ける産業部門についてある程度幅広く適用対象にすべしとの考え方もあるわけであります。しかし、政府が特に助長を必要とするためには、当該産業部門が、単に自由化の影響を受けるのみならず、将来のわが国経済の発展において中核的な役割を果たすところの産業部門を主として取り上ぐべきものと考えるのであります。この点は本法の対象業種の範囲とも関連いたしますが、本法案をいかなる性質の業種に適用せんとする方針であるか、総理の明確なる所見を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、本法案と中小企業者、消費者、労働者等のいわゆる経済上弱い者の利益等との関係についてお尋ねいたしたいのでございます。
 第一に、本法案が大企業のみの利益に奉仕する大企業育成の立法であるとする批判もあるようであります。しかし、本法案は、特定の産業部門において、大企業たると中小企業たるとを問わず、その産業全体の水準向上をはかることをねらいとしているものでございますから、中小企業基本法案その他中小企業関連法規の適正な運用と相まって、中小企業の振興にも寄与するものであると考えるのでありまするが、これに対する政府の考え方、及び本法案において中小企業者の利益擁護のためにどのような対策が用意されておるかを伺いたい。
 第二に、本法案に規定する共同行為等により不当な製品価格の維持あるいは値上がり等が行なわれ、消費者に不利益を与えることになりはしないかとのおそれも一部にあるようであります。この点に関しては、産業活動の効率化と輸入自由化とが相まって、良質、廉価な商品の供給が保証されることとなるのでありますから、消費者の利益の立場から考えれば、現状よりもさらに改善されるものと思われるが、これに関し政府の所信を伺いたい。
 第三に、本法案による産業活動の効率化により、労働者の地位が不当に害されるのではないかという点であります。これについては、本法案のような措置がとられなければ、逆に輸入の自由化、関税の引き下げを通ずる国際競争の結果、産業やそれに従事する労働者の多数が大きな被害を受けることも考えられます。他方、本法案によって産業の振興が行なわれれば、当該部門の労働者の地位は安定し、雇用の機会は増加し、賃金水準もまた上昇することが期待できると思われまするが、この点に関し政府はどのような考えをお持ちであるか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、通産大臣にお尋ねいたします。
 第一に、本法案の立案過程において、産業界、金融界等から、本法案は官僚統制に通ずるのではないかとの批判が行なわれたと承知いたしております。しかし、本法案の内容から率直に判断する限りそのような懸念はないと思われますが、なお念のため、この種の批判にこたえて、本法案では具体的にどのような措置が講じられているか、伺いたい。
 第二に、世間の一部には、問題の産業について早急に国際競争力をつけるためには、政府の強力な規制ないし行政力が必要ではないか、また、他方では、全く自由に放任すべしとか、産業界の自主的な調整に全面的にゆだねるべしとする意見もあるようでありまするが、これに関しては、政府は新たに協調方式なるものを提唱され、本法案にもその考え方が取り入れられているようであります。この点に関する政府の考え方を説明していただきたい。
 次に、大蔵大臣に伺いたいのであります。
 本法案では、政府の助成措置として、資金の確保と課税の軽減を規定するほか、市中金融機関の配慮を期待し、政府金融機関の協力を明らかにいたしておりまするが、特定産業に属する企業の効率向上の努力について、この種の規定をもって金融上はたして十分な協力効果が期待できるかいなか、大蔵大臣の所信を承りたいのであります。特に市中金融機関については、その融資にあたって自主性を尊重すべきことは当然でありまするが、そのような自主的協力についての見通しも承っておきたいのであります。
 以上、私は、本法案に関し重要と思われる諸点につきまして御質問を申し上げたのでありまするが、この法案の目的は、一言にして申し上げるならば、貿易自由化に対処して、国際競争力のない産業について、集中生産、大量生産等によりコストを引き下げ、産業活動の効率化をはかることにあるわけで、その必要性については申し述べるまでもないことであります。ただ、この法案に関して十分な理解を持ってない人たちが、産業全体に対し何らかの規制を行なうのではないかというばく然たる不安と危惧の念を抱いていることもいなみがたい事実かと考えられるのでございます。政府の説明によれば、本法案の対象は重化学工業に属する特定の産業分野であり、このような不安や危惧は当たらないと考えられまするが、この際中小企業者、消費者、労働者等の不安を除去し、金融界等の危惧を一掃するためにも、明快なる御答弁をわずらわしたいと存ずるものであります。
  〔発言する者あり〕
#11
○議長(清瀬一郎君) 静粛に……。
#12
○浦野幸男君(続) 次に、日本社会党、田中武夫君外十名によって提案されました、市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案について、若干の質疑を行ないたいと思います。
 第一にお伺いしたいのは、この変な名前の法案は一体何をねらっているのかということであります。(発言する者あり)
 本法案は特定産業振興臨時措置法案に関連して提案されたものでありまするが、その適用範囲は特定産業に限らず、全産業に及び得ることになっております。言いかえれば、本法案は一般的に独占の弊害を防止することをねらっていると考えるわけでありまして、現行独占禁止法と同じねらいを持っていることになります。すなわち、現行独占禁止法の規制の足りないところを補うということが本法案のねらいではないかと思われます。してみると、本法案は実質的には現行独占禁止法の改正案と見ることもできるのであります。独占禁止法がわが国産業のあり方をきめた基本的な法規であることは申すまでもありませんが、これを改めるということになりますると、その現状を総合的、多角的に吟味し、利害得失を慎重に判断して決すべきであります。また、本法案のような方向で事後の取り締まりを強化していくとすれば、それとの関係で、現行独占禁止法で採用しているような事前の厳格な認可や届け出の制度をそのままにしておいてよいかどうかも問題になるのではないか。このように本法案は現行独占禁止法との関係をめぐる重大な論議をはらんでいるのではないかと思われるのでありまするが、提案者としては本法案によって何をねらっておられるのか、明確にしていただきたい。
 第二にお伺いしたいことは、本法案の内容についてであります。
 本法案の中心規定と見られる第三条の、不当な対価による取引等の規制は、現行独占禁止法の不公正な取引方法の禁止と重複すると思われるが、この点について明快な説明をされたい。
 また、第四条で、不当な対価による取引等については、差しとめのほかに、必要があればいかなる措置でもできるような、たとえば会社の解散でも命じ得るとされているのは行き過ぎではないか。提案者としてはどのようなお考えであるのか、明らかにしていただきたい。
 さらに、第五条をもって、一定規模以上の会社から広い範囲で報告を徴収し、第七条をもってこれを一般に公表し得ることとされておりまするが、この場合、現行独占禁止法においても保証されている事業者の秘密保持についていかなるお考えであるか、お伺いいたしたい。
 第三に、わが国の産業の国際競争力の培養に対する考え方についてであります。
 特定産業振興臨時措置法案は、自由化等にさらされた特定の産業について、いわゆる集中生産、大量生産等によりコストを引き下げ、国際競争力を培養することをねらいとしているわけでありまするが、本法案の内容は、このようなねらいと全く無関係のものであることは明らかであります。提案者としては、わが国産業の国際競争力を培養する必要性、あるいはその手段としての集中生産や大量生産等によるコスト引き下げの必要性については、どのような判断を持っているのか、それともこのような必要性はないと考えておられるのか、明確にされたい。この点は、本法案に関しまして、特定産業振興臨時措置法案の成立を前提とするのか、あるいは特定産業振興臨時措置法案と無関係に本法案を成立させようとするのか、明らかでないのでありまするから、ぜひ提案者の判断を明示されたい。
 以上、きわめて簡単でありまするが、明確な御答弁を要望いたしたい。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#13
○国務大臣(池田勇人君) 浦野君の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。
 まず第一の御質問は、本法案の予定しておる業種はどういうものかという御質問でございます。御承知のとおり、戦後貿易・為替の管理下におきまして、いろいろの産業が発達してまいったのでございまするが、最近の世界の情勢から申しまして、いわゆる貿易の自由化、また関税の一律引き下げという、この新情勢に対しまして、わが国の産業をいかに確保していくかという問題が起こっておるのであります。したがいまして、業種の指定につきましては、自由化の影響を特に受けて、しかも、わが国経済発展の中核的産業である重化学工業を育成し、そうして国際競争力を強める、これが指定の基本に相なるのであります。したがいまして、この趣旨は法案に一応定めました。そうして法案に明記しておるものに準じまして、また産業界の、あるいは金融界の意向を聞いて、それに準じて必要な最小限度の業種を指定する考えでおるのであります。
 第二の御質問の、本法案は大企業の利益に奉仕するものではないかという疑問を起こす者がある。それは起こす者もございましょう。しかし、それは誤った考え方でございまして、本法案は、その企業の規模が大であろうが中小であろうが、それは問いません。いわゆる産業全体のレベルアップをはかる法案であるのであります。(拍手)したがいまして、この特定産業振興法によりまして、今後いわゆる特定産業の発展によりまして、関連中小企業の振興も期待できますし、また、国際競争力強化を通じまして、日本経済の成長、ひいては中小企業の振興に大いに役立つと確信いたしておるのであります。(拍手)
 なお、消費者への影響についての御心配でございまするが、これは販売カルテル、あるいは価格カルテルとは全然違っておりまして、合理化カルテルでございますから、しかも、外国との競争力を強める法案でありますので、いわゆる良質の廉価な商品が供給されることによりまして、このことは消費者につきましても非常に好影響があると、私は確信いたしておるのであります。
 また、労働者の地位につきましても、これは日本の産業の中核体である重化学工業の育成をして、国際競争力を強めるのでございますから、産業の規模が確立いたします。したがいまして、労働者あるいは関連産業にも好影響を与えることは明らかであるのであります。
 私は、日本の経済を強めて国民生活の安定と向上のために、この際ぜひ必要な法案である、しかも、早く実行に移したいと念願いたしておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#14
○国務大臣(田中角榮君) 浦野さんにお答えいたします。
 本法律案の措置としては、資金の確保、課税の軽減ということだけでありますが、そのほかの財政金融等の措置を必要としないかということでございますが、もちろんお説のとおりでありまして、各般の問題に対して推進をいたす予定でございます。
 第二の問題は、この程度の法文規定で、市中金融機関やその他の政府金融機関等の協力が得られるのかということでございますが、御承知のとおり、金融機関の資金運用は、国の経済発展ということに対して十分寄与しなければならないことは当然でございますし、また資金運用は、そのような趣旨に沿って運用せられておるのでございますが、法律によって資金統制を行なうというようなことは、このような法律によって産業基盤の強化をはからなければならないという命題を遂行する上においても、好ましいことではないということで、慎重に考えたわけでございます。しかし、御承知のとおり、この振興基準の策定等につきましては、金融代表がまいりまして、いろいろ参画をし、意見を述べ決定をするのでございますから、事実の上においては、十分これが協力は期待できると考えておるのでございます。また、金融機関の中には資金調整審議会というものをつくっておりまして、緊急の融資等についてはこれを促進し、また、不要不急のものに対してこれを抑制するように、現在においても十分その責めを果たしておりますので、この法律案通過後は、政府も金融界との連絡を十分密にしながら、遺憾なきを期してまいるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
#15
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 ただいま総理から、本法案の目的とするところについては十分御説明がございまして、これは中小企業者にも、あるいはまた労働者にも、消費者にも好影響はあっても、悪影響がないということは明らかにされておりますが、私は、官僚統制になるかどうかという点についてお答えをいたしたいと存じます。
 統制というのは、皆さん方もすでにおわかりでございまするが、相手の意思を無視して、そうしてこれを押しつけていくというのが統制でございます。ところが、この法律によりますと、その特定産業に属する人たちが三分の二以上、また、事業量においても三分の二以上の人が、どうかこれを特定産業にしてくださいといって、まず申し入れをしない限り、この法律は適用にならない。発動しないのであります。それでありますから、完全に事業界のいわゆる自由意思というものを十分に尊重いたしておるのでございますから、これは統制ということには相ならない。しかも、その申し入れがございましてから、産業合理化審議会にはかった上で特定産業を指定し、その産業について政府、産業界、金融界の代表が集まって、この産業はどういうふうな規模で、どういうようなやり方でやっていくと外国の産業に対抗できるかという基準をつくるのでありますが、その基準ができて、公表されても、その産業界がそれをやる意思がなければ、これまた強制するわけではありません。しからば、こういう意味で、産業界の意思というものが取り入れてあるのでございますからして、これを官僚統制とお考えにならないでも――私たちは、そういう誤解があることを遺憾といたしますが、立法の過程において十分これらの点を考慮いたしたということを御理解賜わりたいと思うのでございます。
 次に、そういうようなやり方で協調方式というのをやるのだが、一体その協調方式は何かという御質問でございます。そういうように産業を育てていくことが自由化のもとで要請されておりますときにあたって、どういうようにこの産業を育てたらよいかという基準を、政府、産業界、金融界の代表が集まり、また必要に応じていわゆる学者とか、あるいはまたその他の中立の方たちからの公正な御意見を承った上でその基準をきめられる。その基準がきめられたならば、これに対して政府としても応分の協力をする。しかも、その場合においては、そういうことをしてもらいたくないといえば、何も政府はしないのでありまして、してもらいたいという場合にこれをする、こういうことであります。
 また、金融界との関係を重視いたしましたのは、現在の日本の産業のあり方を考えてみますと、金融界と無関係で存在しておるものはほとんどございません。特に、私たちがいまここに取り上げました重化学工業というものは、これは非常に金融界との関係があるのでありまして、その業界の人たちだけでものを考えても、また、これがいいのだと思っても、なかなかこれは実行に移しがたい。そこで、どういうふうに育てていくといいかということをきめるにあたって、まず金融界の人にも十分討論をしてもらう。そうしてそれをきめるにあたって相談をして、その相談した上できまった基準でありますからして、そういう基準に基づいて事業をやろうとする場合には、いわゆる金融界の人はこれに十分注意をして、協力ができるようにしてもらいたい。また、官としては、金融の面においては十分に今度は協力する。一方、民間の金融についてと、政府の金融機関についてとは、いささか隔たりを設けたのは、あくまでも民間の金融機関については、その自主性を尊重するという理由に出るものでございます。このようにして、事業界と政府と金融界とが一緒になって、そうして自由化によってどっと外国のものが押し寄せてきて、そのためにその産業がつぶれて、ために労働者や、あるいはその他の人に大きな影響を与えたり、または日本の経済に大きな影響を与えることを防ぐということを目標にしておるのがこの協調方式の考え方でございますので、ひとつ御理解を賜わりたいと存ずるのでございます。(拍手)
  〔田中武夫君登壇〕
#16
○田中武夫君 浦野君の御質問にゆっくりと御答弁を申し上げます。
 そのの前に一言浦野君に申し上げておきたいのですが、あなたは先ほどわが党案に、変な名前の法案と言われましたが、それは市場支配的事業ということがおわかりにならないためだと思います。(拍手)市場支配的事業とは、俗に独占、寡占、こういわれておる。市場を独占し、あるいは異常の少数の企業において支配しておる、そういう状態を言っているのであって、もう少し独禁法の意味を考えていただきましたならば、変なというようなことはなかろうと思うのであります。
 質問の第一点は、本法案は何をねらっているのか、政府提出の特定産業振興臨時措置法案の代案ではなく、現行独禁法の改正案ではないか、こういうことでありますが、先ほど提案説明で申し上げましたように、本法案は独禁法の補完法として独占、寡占の弊害を除却しようといたしておるのであります。政府提出法案は、最初は新産業秩序確立といったような大上段に振りかぶってまいりましたが、その途中におきまして、浦野さんも御承知のように、財界や金融資本の圧力に屈し、二転、三転いたしてまいりまして、今日では独禁法に穴をあける、それだけがねらいとなっているではありませんか。政府の提出法案は独禁法に穴をあける。これに対してわれわれは、独禁法を補強する、補完する。まさにこの点においては適切なる代案であると考えております。(拍手)
 また・政府案の特定産業についてでありますが、御承知のように政府案は特定産業という名前であります。しかし、第二条では、その指定を、あげて政令指定にまかしておるのであります。したがって、名前は特定であっても、内容は不特定です。わが党案が産業全般に適用すると何らあまり食い違いがないと思います。次に、独占価格の規制は現行独禁法でできないのか、こういうことです。これは少しく詳細に申し上げますと、独禁法第二条七項五号、十九条、並びに公正取引委員会の一般指定第十一号にそれぞれ不公正取引について定められておりますが、独禁法での取り締まりは、御承知のように公正な競争を阻害するおそれある場合ということに限られておるのであります。したがって、いわゆる独占価格、管理価格等の取り締まりは十分ではなく、本法案の対象のほうが幅広いものであります。
 次に、独禁法による措置は、同法すなわち独禁法第二十条による差しとめ命令に限られておりますが、これだけでは、先ほど来申し上げておりますように、独占価格、管理価格をささえている要因の除去、あるいはなお進んで値下げ命令が出せないので、それを出すようにいたしました。
 さらに、市場支配的事業者に定期的な報告義務を課し、調査結果の公表、国会への報告等々、多角的な方法によってこの運営を万遺憾なからしめるように考えておるのであります。
 さらに申し上げたいことは、昨年、第四十回国会におきまして、浦野さんも私も同じ商工委員として、直接審議をいたしまして成立を見ました政府提出の不当景品類及び不当表示防止法、この法律と、いまわれわれが提出をいたしております法案とは同じ性格であります。不幸にして、あのときあなたから、これよりか独禁法改正がいいんじゃないかという御意見を聞かなかったわけでございます。
 次に、本法案の内容でございます。まず三条についてでありますが、これは先ほど独禁法との関係を申し上げましたので、御了解をいただいておると思います。
 次に、第四条についてでありますが、独禁法第七条及び第十七条の二で、独禁法違反の合併、営業の譲渡等を行ないました場合、公正取引委員会は、原状回復のために、株式の全部または一部の処分、営業の一部の譲渡、その他必要な排除命令を出すことになっておりますが、この独禁法の解釈では、そのもととなった会社の解散命令、こういうことはできないと解釈しておりますので、本法案もまた母法に従いましてそのように解釈いたしております。
 なお、会社の解散に関しましては、商法第五十八条で、この企業が公益維持のために存続を許さないような場合には、裁判所の命令によって解散せしめるような規定もございますので、その点に譲りたいと思っております。
 さらに、五条並びに七条に関連いたしまして、これは秘密保持ということに反するのではないか、こういうことでありますが、今日、大企業の、いや、各企業の経済活動あるいは経理の資産内容、そういうことははたして秘密でありましょうか。私はそういうことではないと考えております。
 最後に、浦野さんは、国際競争力培養についてどういうように考えておるのか、こういうことでございますが、私は、わが国産業の国際競争力培養は、何も独禁法に穴をあけて、独占、寡占状態をつくっていくことではなく、ほかに幾らでも方法があると思います。たとえば、技術開発に関しての国の協力ないし援助、系列融資の強化を排除いたしまして、円滑なる金融状態に改善していく。金利の引き下げ、社会資本の投下等、あげれば幾らでもございます。たとえば一九六一年の製造業の総売り上げ高に対する金利負担の割合を申し上げますと、アメリカが〇・五%、・西ドイツは一・二九%であるのに対しまして、わが国は三・九四%であります。この数字を示しましただけでも、金利引き下げによって相当な効果があげられることは、頭のいい浦野君ですからよくわかっていただけると思いますが、いかがでしょう。
 以上をもって答弁を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(清瀬一郎君) 質疑を続行いたします。板川正吾君。
  〔板川正吾君登壇〕
#18
○板川正吾君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま趣旨説明のありました特定産業振興臨時措置法案、並びに市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案について、政府及び提案者に対し、若干の質疑をいたしたいと存じます。
 まず、私は、内閣提出の特定産業振興臨時措置法案について質疑に入る前に、その成案の過程を振り返ってみたいと存じます。
 昨年、通産省が、貿易自由化後におけるわが国産業体制のあり方として官民協調方式を提唱して以来、新産業秩序論として内外の関心を集め、最近これほど世論をにぎわしてまいった法案はなかったと思うのであります。当初、通産省の構想には、独占強化の危険を含みつつも、他面、生産計画、投資調整等による計画経済への接近が企図されており、多少は見るべきものがあったのであります。しかるに、その後、産業界や金融界の要求に屈し、妥協に妥協を重ね、法案の名称を変えること三たび、ようやくにして独禁法の改悪を目的とする特定産業振興臨時措置法として成案を得たのであります。
 本法案の内容は、指定産業の中で、大企業を中心とする合理化基準を定め、カルテルを拡大し、企業の合併を促進して中小企業を吸収し、その上、大企業には資金の確保、課税の軽減等をはかるというもので、いわば大企業育成法であり、反面、中小企業やその労働者にとっては、きびしい合理化法、首切り法ともいうべきものであります。
 以下、私は、本法案に関し、幾つかの疑問点について、その基本的な考え方を質疑いたしたいと存じます。
 まず、池田総理に伺います。
 第一は、独禁法は改正せずという総理の言明についてであります。総理は、本院において、しばしば、独禁法は改正せずと言明してまいりました。しかるに、この法案は、名称こそ特定産業振興臨時措置法となっておりますが、その内容は、政令指定を拡大すれば、すべての業種にカルテルと独占を奨励できるものであって、まさに独禁法改正そのものであります。本法の成案過程で、立案者は、独禁法にバイパス道路をつくり、独禁法を有名無実にするための法案だと強調しており、また、財界では、独占禁止法改正への足がかりとして、不満であるが賛成だと言い、通産大臣は、本法案は独禁法に穴をあけるだけでも意義があると言明しておったのであります。したがって、本法の提案は、総理の、独禁法は改正せずという言明と矛盾すると思うのでありますが、総理はいかなる見解を持っておらるるのか、所信を伺いたいのであります。(拍手)
 第二は、目下わが国の産業界では、企業の合併集中が行なわれ、急速に資本の独占体制が強化されつつありますが、総理は、独占の弊害をいかに防止しようとするのか、伺いたいのであります。
 御承知のように、EEC諸国では、従来各国ばらばらな独占禁止行政を統一し、その強化をはかりつつあるのであります。また、イギリスでは、最近、保守党が、企業集中の弊害を調査し、資産百万ポンドをこえる会社、すなわち、円貨にしまして十億円をこえる会社の合併は、独占の弊害を助長し、消費者の利益を阻害するおそれがあるのに、現行の独禁法では、企業の集中によって実際に弊害が生じたときのみ取り締まるというので、法制上不十分である、したがって、政府は法改正を行なう必要があると結論を出し、世論もまた、これに賛同しておると伝えられておるのであります。また、フランス政府は、年間四・三%にのぼる消費者物価の値上がりを防止するため真剣な対策を講じ、最近は、小売マージンの規制等、非常措置をとりつつあると報道されているのであります。
 このように、外国では、政府みずから物価対策に懸命な努力を払いつつあるというのに、わが国では、毎年六%をこえる大幅な物価値上がりが続いていても、何ら政治的責任を感じようとせず、逆に、国際競争力に名をかりて独占体制の強化をはかろうとしているのであります。まさに独占資本の代弁者たる池田内閣の本質を暴露したものというべきでありましょう。(拍手)
 この際総理に伺いたいことは、企業の集中の弊害から消費者の利益をどのようにして守るかということであります。池田内閣最大の悪政は、消費者政策が全くないということであります。総理は、この際、消費者物価を安定させるために一体いかなる対策をとらるるのか、総理の責任ある答弁を承りたいのであります。(拍手)
 次に、通産大臣に中小企業基本法と本法案との関係について伺います。
 通産大臣は、さきに本院において中小企業基本法を提案し、その際、提案の理由として、中小企業基本法は中小企業の経済的、社会的諸制約を補正し、大企業との格差を是正するのが目的であると説明しております。しかるに、本法案は、いわば大企業中心の合併促進法であります。もし本法案が成立をし、政府の希望どおり運用されるならば、おそらく、特定産業の中では二、三の大手企業を中心に中小企業が吸収合併されていくでありましょう。したがって、本法案は、中小企業の立場からいえば、まさに中小企業の切り捨て法であり、また、合併がいやだとして自立経営を続けようとする中小企業には、格差拡大となる法案であります。一体通産大臣は、同一の国会で、さきに中小企業の育成を強調し、本日は中小企業の切り捨て法を提案するというのは、提案者としてその間の矛盾を感じないのかどうか、通産大臣の所見を承りたいのであります。(拍手)
 次に、通産大臣及び科学技術庁長官に、産業の質的国際競争力の点から質問いたします。
 本法案に一貫して流れている思想は、規模の利益を強調し、企業規模さえ拡大すれば、国際競争力はおのずからつくとの前提に立っているものであります。しかし、国際市場における日本産業の弱点は、単に企業の規模が過小だということではありません。無計画なる設備投資による資本費の高騰、高金利政策、道路、港湾等の社会資本の立ちおくれ、国産技術の未開発による品質の低さ等に原因があるのであります。
 申すまでもなく、国際市場においては、質の競争力が重要であります。戦後わが国産業界は、戦時中の立ちおくれを挽回するために、外国の技術導入にたより過ぎ、国産技術の開発を怠ってまいりました。これでは質の面で国際競争力が生まれるはずはないのであります。
 この際指摘したいことは、池田内閣の特許行政に対する怠慢であります。さきに、政府は、特許料を大幅に値上げをして、特許会計では毎年ばく大な黒字を計上しておきながら、特許を申請してから三年もたたないと審結が出ないという現状を長年放置してまいっておるのでありまして、まことに言語道断というべきであります。政府は、この際、国産新技術開発のため、特許行政の抜本的な改善をはかり、発明奨励の国家制度を拡充し、さらに、技術研究の国家補助等を強化して、もって産業の質的国際競争力を強化すべきだと思うが、通産大臣及び科学技術庁長官の考えはどうか、お伺いいたします。
 次に、外務、大蔵両大臣に、本法の運用と外資規制の問題について伺います。
 私は、本法案の運用には多大の疑問を持つものであります。本法案は斜陽産業の救済法となっても、前向きの産業振興法にはならないと思うからであります。おそらく、これから躍進しようとする中小企業は、国内大企業に吸収合併されるよりも、資本の自由化を見込み、外国資本と提携し、企業の生存と拡大をはかろうとするに違いありません。また、八条国移行後の自由化政策によって外資規制が緩和されれば、金利の高い国、賃金の安い国として定評あるわが国に、外国資本が殺到することは火を見るよりも明らかであります。したがって、このような情勢下では、本法案は真に日本産業の振興法とはなるまいと思うのであります。政府は八条国移行後の外資規制をどう改正しようとするのか、また、逆に、本法案は日米通商航海条約に違反するものとして、米国側より問題とされるおそれはないか、大蔵、外務両大臣の見解をお伺いをいたします。
 次に、経済企画庁長官に伺いたいのでありますが、長官が不在でありますから、国務大臣の事務代理者に伺います。
 わが国製鉄産業の生産単位当たり設備投資金額を見ますと、西ドイツ、イタリアの実に三・六倍であり、英仏の約二倍となっておるのであります。これは一例でありますが、このような過剰投資が金利高と相まって資本費を高騰させ、コスト高をもたらし、わが国産業の国際競争力を弱化させているのであります。政府はこうした自由放任の経済のあり方を反省し、国家経済にもっと大担に計画性を加えるべきだと思うのであります。そのために、政府は、金融機関や基幹産業、公益事業に国家の指導権を強化し、それを軸として財政、経済の総合的な計画化をはかり、他方、一般産業には公正なる競争秩序を基調とする産業体制を確立すべきではないか、また、それが国際競争力を強化する新しい産業体制ではないかと思うが、経済企画庁長官としての見解を伺いたいのであります。
 次に、労働大臣に伺います。
 本法案の重大な欠陥は、企業合併によって生ずる特定産業の合理化が、労働者の意思を実質的には全く無視して行なわれる点であります。本法の振興基準の中には「事業の転換に関する事項」という一項目がありまして、すでに合併される非能率的な中小企業の事業場の転業、廃業を予想しておるのであります。しかるに、本法案は、大企業には手厚い保護を加えながらも、合理化の犠牲となる労働者には何らの考慮が払われていないのであります。まことに不当なる措置といわざるを得ません。政府は、特定産業の労働者が合併や合理化によってこうむる雇用上、賃金上その他の待遇上の不利益を、一体いかなる方法で防止しようとするのか、労働大臣の見解を伺いたいのであります。
 次に、公正取引委員長に質問いたします。
 私は、自由化政策の進展と相まって、公正取引委員会の任務はいよいよ重大だと思うのであります。すなわち、企業の集中合併が産業界を支配する結果、独占の弊害が国民生活を脅かし、他面、自由化により外国資本や大企業が不公正な取引方法によって中小企業を圧迫するおそれが予想されるからであります。貿易自由化となり、開放経済となってきたのだから、独禁法は緩和すべきだという議論がありますが、それは逆であって、開放経済下では、なおさら公正な競争を確保して国民生活や中小企業を守る必要があるのであります。公正取引委員長は、独禁法の適正な運用を期するため、この際機構の整備充実をはかるべきだと思うが、いかなる見解を持っているか伺いたいのであります。
 最後に、社会党提出の市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案について提案者にお伺いをいたします。時間の都合もありますから、簡単に二、三お尋ねいたします。
 第一点は、本法案のねらいは、独占物価に規制を加えようとするにあると思うのでありますが、なぜ現行独禁法でそれを取り締まることができないのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。
 第二点は、本法案の対象となる「不当な対価をもつて取引すること。」とはいかなることか、事例をあげて御説明を願いたい。
 第三点として、この程度の法律では、独占の弊害にメスを加え、物価の安定をもたらそうとするのには、なお不十分ではないかと思うがどうか。以上三点についてお伺いをいたします。
 以上をもって、二法案に対する私の質疑を終了いたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#19
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 御質問の第一点は、これは独占禁止法の改正になるのではないかということでございますが、法案の内容をしさいにごらんくださいまするならば、独占禁止法の基本的観念でありまする一般消費者あるいは利害関係者の利益を十分尊重し、しかも、わが国経済の将来の発展を確立するための、いわゆる合理化カルテルでございます。しこうして、これにつきましては、公取の認可によって行なうことにいたしております。独占禁止法の精神を十分尊重いたしておるつもりでございます。
 なお、独占禁止法につきまして外国との関係の御質問でございまするが、およそ経済法規というものは、経済の実態に適合するようにやっていかなければなりません。EEC諸国におきまする独占禁止法とわが国の独占禁止法とは、その規制の範囲、整備等、非常に違っておるのであります。私は、実態に沿ってこれを整備していくことが適当であると考えるのであります。
 なお、消費者物価の安定につきましては、たびたび申し上げておりますがごとく、生産面あるいは流通面、あるいは価格協定による便乗的値上げ等を抑制する等、あらゆる措置を講じていきたいと考えております。
 ここで申し上げておきますが、やはり経済の高度成長によりまして、国民の生活向上がまんべんなく各階級にある場合におきましては、人の労働力の価値の上昇に伴う分も考えなければなりません。したがいまして、私は、万般の事象を検討しながら、できるだけ安定の方向に持っていくよう努力いたしております。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
#20
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 私に対する御質問は、中小企業基本法を本国会に提出しておきながら、これと相矛盾する特定産業振興法をこの国会で出すのは、はなはだしい矛盾ではないかという御質問でございます。そこで、これはひとつゆっくりお考えを願いたいのでありますが、産業というものは縦、横から考える考え方がございます。縦割りの産業と横割りに見る場合であります。横割りでやりますというと、上のほうが大企業でございまして、下のほうが中小企業になるわけであります。縦割りにいたしますと、これにいろいろの産業がありますが、特定産業というものもある種の縦割りの産業として出てくるわけであります。したがって、その特定産業には、上の大企業もあれば、中小企業もちゃんとそこに含まれておるわけです。そこで、今度の法案といいますのは、縦割りの特定の産業についてこれをうまくやろう、合理化をしていこう、こういうことを考えておるのでございます。一方、中小企業というのは、横割りに見まして下のほうの部分でございますから、その場合においては、特定産業に関係のある中小企業は、特定産業振興法によって援護を受けると同時に、中小企業基本法によっても援護を受ける二重の効果があるということを御理解いただきたいと思うのであります。(拍手)
 一方、企業の規模の利益だけを追求して、技術の開発を考えておらないのはおかしいではないか、こういうことでございます。私は技術の開発をしなければならないという板川さんの御意見には賛成でございます。御趣旨に従って努力をいたしたいと思う。また、特許行政の改善もしなければならないという御意見もごもっともでございます。われわれ大いに御意見に従いたいと存ずるのでありますが、しかし、ここに忘れてはならないことは、企業の規模ということも、商品を海外に輸出するような場合に非常に大きな利益であるということであります。小さな規模でございますというと、延べ払いの条件をよくすることはできません。あるいはまた、宣伝も十分にはできません。あるいはまた、販売網も十分には持てません。そういうことにいたしますと、どんなによい品物をつくりましても、これをよけい売るということはできないでありましょう。こういうことを考えてみますというと、企業を大きな規模にいたしまして、大量生産をして、そうして価格を下げて、しかも、いま言ったような、宣伝においても、販売網においてもこれを充実していくということ、これが非常に産業を発展させ、育成させる意味において効果があると私は確信をいたしておるのでございまして、この点はひとつ御理解を賜わりたいと存ずるのであります。
 一方、先ほど板川さんから、この法案をつくる過程において通産省がいろいろ変わってきたではないかというお話でありますが、私は、今日の日本の経済をりっぱに育てていくためには、みんなが虚心たんかいにものを考えて、そうして、みんなが協力するという気持ちでなければならないと思うのであります。したがって、そういうようなことを考えるならば、法律を立案するにあたっては、できるだけ多くの人の御意見を虚心たんかいに聞いて、そうして、その御意見を取り入れてその法律をつくることにし、その法律が国会において通過いたしましたならば、そういう形でやった法律ならば皆さんが協力をしていただけると思う。いわゆる法律が効果をあげる。死んだ法律にならないわけであります。こういう意味で、私たちは、実は非常に念には念を入れてこの法案を作成した次第でございまして、との点もひとつ御了解を賜わりたいと考える次第であります。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
#21
○国務大臣(田中角榮君) 本法の運用と外資の導入につきまして、特に八条国移行後の問題についての御質問でございましたが、御承知のとおり、八条国に移行後におきましても、為替制限をなし得なくなりますものは経常取引に関してのみでございまして、資本取引につきましては、国内事情等の問題も勘案しながら管理も規制も可能であることは御承知のとおりでございます。しかし、資本の蓄積が不足をいたしておりますし、科学技術の面でもおくれておる日本の産業の基盤を強化いたしますためには、良質な、長期安定的なものにつきましては、これを導入いたしてまいるという基本的な考えでございます。
 なお、第三点としましては、八条国移行後の外資の流入につきましては、具体的にどうするかという問題でございますが、国内に及ぼす影響も十分考えながら、また、国内の市場を混乱するようなものにつきましては、このようなことがないように、スクリーン制度を確立してまいるつもりでございます。
 日米通商航海条約との関係の問題に対しては、外務大臣からお答えを申し上げます。
 それから、わが国の産業につきまして、規模の小さいものがあったり、また、これから国際競争力を強化していくためには相当強く計画性を持たしたり、政府がこれに対して規制をしたりするほうがいいのではないかという、俗に計画経済的なお話がございました。確かに御説のような、実際の面においてまだまだ強化をしなければならない問題はたくさんございますが、先ほどの御質問にもありましたとおり、このような考え方を進めていくことは、すなわち、官僚統制式な色彩が濃くなるといって批判のあるところでございますし、この政府は自由経済を基本にいたしておりまして、まず民間人の、国民自体の創意くふうを基礎にいたしまして、政府はその環境づくりを行ないつつ、必要なものに対して強力な助成措置をとっていくという基本的な方策でありますので、この基本線を守りながら濶達な産業の育成強化に資してまいりたい、こう考えるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#22
○国務大臣(大平正芳君) この法案におきましては、外国系企業に対しまして何ら差別的な取り扱いをいたしておりませんので、日米通商航海条約に違反しておるものと思いません。ただ、この運用にあたりましては、国際義務に違反しないよう戒心してまいるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
#23
○国務大臣(大橋武夫君) 貿易自由化と経済情勢の変化に対して特定産業の安定振興をはかることは、関係労働者を失業及び労働条件の悪化から守り、労働者の地位を全般的に安定改善するゆえんであることは言をまちませんが、特に、本法案においては、振興措置の基本となる振興基準の討議にあたっては、関係の労働者側を代表する人が利害関係人として十分意見を述べることになっておりますばかりでなく、労働者の労働条件や雇用に関係する事項については、通産大臣から労働大臣に対しあらかじめ十分な協議を行なう方針であり、また、事業主が振興基準で定められた目標を達成するため、共同行為を行なうにあたって、公正取引委員会の認可を必要といたしますが、この認可に際しましても、当該特定産業を営むものの従業員の地位を不当に害するおそれがない場合に限ることになっており、これらの事項を通じまして関係労働者の地位と利益は十分に守られるのでございます。
 なお、本法の運用上、産業合理化審議会の役割りはきわめて重要でありまするが、その構成においては、労働者側の意向をも十分反映することのできまするよう配意されるはずでございます。(拍手)
  〔政府委員内田常雄君登壇〕
#24
○政府委員(内田常雄君) 国産新技術開発の必要性につきましては、科学技術庁といたしましても、もちろんこれを重視するものでありまして、国立の試験研究機関あるいは理化学研究所など、特殊法人による試験研究の拡充につとめておりますとともに、国内の優秀な発明や新技術を実用化、工業化いたしますために、政府資金による新技術開発事業団の設立、その事業の強化、さらにはまた、発明実施化資金補助金制度の採用などの方途を講じてまいっておりますことは、板川君も御承知のとおりでございます。一方におきまして、政府と民間企業を合わせたわが国の試験研究費の投下額は、近年その増加の趨勢は著しいものがございまして、昭和三十六年度には昭和三十年度の投下額に比べまして六倍余りになっております。しかしながら、これを先進諸国に比べてみますといまだ十分とは言いがたいものがございますので、国と民間企業を通じまして、新技術の開発培養のために引き続いて充実した施策を進めてまいる所存でございます。(拍手)
  〔政府委員渡邊喜久造君登壇〕
#25
○政府委員(渡邊喜久造君) お答えいたします。
 公正取引委員会としましては、自由化の進展に伴う新たな事態に対処しまして、その職責のいよいよ重大であるのに顧み、独禁法の精神にのっとりまして、その適正な運用について最善を尽くしてまいりたいと思います。したがいまして、機構の整備充実につきましても、職責の遂行に遺憾ないよう、今後十分検討してまいりたいと考えております。(拍手)
     ――――◇―――――
#26
○議長(清瀬一郎君) この際、暫時休憩いたします。
   午後四時二分休憩
     ――――◇―――――
  〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        通商産業大臣  福田  一君
        郵 政 大 臣 小沢久太郎君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        自 治 大 臣 篠田 弘作君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 林  修三君
        内閣法制局第三
        部長      吉國 一郎君
        公正取引委員会
        委員長     渡邊喜久造君
        科学技術政務次
        官       内田 常雄君
        通商産業省企業
        局庁      佐橋  滋君
        自治大臣官房長 大村 襄治君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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