くにさくロゴ
1962/06/11 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第32号
姉妹サイト
 
1962/06/11 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 本会議 第32号

#1
第043回国会 本会議 第32号
昭和三十八年六月十一日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十九号
  昭和三十八年六月十一日
    午後二時開議
 第一 港則法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 第二 刑事事件における第三者所有物の没収手
 続に関する応急措置法案(内閣提出)
 第三 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置
  に関する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員河野一郎君に対し、院議をもつ
  て功労を表彰することとし、表彰文は議長に
  一任するの件(議長発議)
 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの
  件
 日程第一 港則法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第二 刑事事件における第三者所有物の没
  収手続に関する応急措置法案(内閣提出)
 日程第三 義務教育諸学校の教科用図書の無償
  措置に関する法律案(内閣提出)
 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 外国保険事業者に関する法律の一部を改正する
  法律案(内閣提出、参議院送付)
   午後二時九分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 永年在職の議員河野一郎君に対し、院議をもつて功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)
#3
○議長(清瀬一郎君) おはかりいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました河野一郎君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。
 議員河野一郎君は衆議院議員に当選すること十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
  〔拍手〕
 この贈呈方は議長においてお取り計らいいたします。
 この際、河野一郎君から発言を求められております。すなわちこれを許します。河野一郎君。
   〔河野一郎君登壇〕
#5
○河野一郎君 ただいまは、私が満二十五年間本院に在職いたしましたことに対し、院議をもって御丁重な表彰の御決議をいただきましたこと、まことに感謝にたえません。ここに厚くお礼を申し上げます。(拍手)
 顧みますると、私が初めて本院に議席を得ましたのは昭和七年二月でありますが、その三カ月後には五・一五事件が起こり、政党内閣はようやく終焉を告げて、官僚軍閥による政権が台頭しようとする、内外の情勢はまさに重大な段階にさしかかった年でありました。
 以来三十年間、わが国はかつて見ない変転と多くの困難にあい、議会政治もまたきびしい試練を経てまいりましたが、同時に、私にとりましてもまた多難な歳月でありました。
 昭和十一年の二・二六事件、続いて不幸な戦争への突入、そして翼賛政治などと、その間を通じ、私はできる限り官僚軍閥と戦い、民衆のための政治実現に微力を尽くしたつもりでありますが、力足らず、敗戦を迎えましたことは、まことに痛恨のきわみでありました。
 戦後も、故鳩山一郎先先らと民主勢力を結集して、健全な政党政治を確立し、日本の自主独立の回復と国際平和の確保に微力をささげた所存でありますが、労のみ多く、国家社会に寄与するところきわめて少なく、在職二十有五年を経て、内心まことにじくじたるものがあります。しかし、この政治生活を通じ、国民大衆とともに歩む議会政治こそ、国家国民にとって何ものにもかえがたきものであるとの信念のもとに、政党人としてこの上ともひたすら民主政治の確立を目ざして微力を尽くしたいと念願するものであります。
 今日、この光栄ある日を迎え、私は、はるかにわが国立憲政治の発展、民意の伸長のために尽くされた先輩各位の御功績に対し、心から敬意を表するとともに、私の短い政治生活において、私の修養の至らざるがゆえに御迷惑をおかけいたしました先輩同僚の各位に対し、切に御宥恕を請う次第であります。しかるに、はからずも本日この光栄に接しますことは、ひとえに先輩同僚各位の御厚情と御鞭撻のたまものと深く感謝いたすものであります。
 私は、今後もわが国家の発展と議会政治の健全な発達のため、全力を尽くして国民の期待にこたえたいと念願するものであります。何とぞ相変わらない御支援を心からお願い申し上げる次第でございます。
 以上、簡単にごあいさつ申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの件
#6
○議長(清瀬一郎君) おはかりいたします。
 内閣から、公安審査委員会委員に岡村二一君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#7
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 港則法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
#8
○議長(清瀬一郎君) 日程第一、港則法の一部を改正する法律案を議題といたします。
#9
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。運輸委員会理事高橋清一郎君。
  〔議長退席、副議長着席〕
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔高橋清一郎君登壇〕
#10
○高橋清一郎君 ただいま議題となりました港則法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における港内航行のふくそう並びに油流失による危険の増加に対応して、船舶航行の安全を確保するための規制を強化するとともに、港湾事情の変化に伴い、特定港の一部を改めようとするものであります。
 改正の第一点は、港内に停泊中の油送船の付近の水域等における喫煙または火気の取り扱いを制限するとともに、一定の水路の航行に関して港長が行なう信号について所要の規定を設けようとするものであります。
 第二点は、避航すべき船舶の範囲を拡大するとともに、港内の地形等、自然的条件により特別の航法を定めることができることとし、また港長は、船舶航行の危険を防止する等のため、航行の制限あるいは禁止をすることができるようにしようとするものであります。
 第三点は、姫路港及び松山港を特定港とし、住ノ江港及び口之津港について特定港の指定を廃止しようとするものであります。
 本法案は、四月四日当委員会に付託、五月十七日政府より提案理由の説明を聴取し、六月七日質疑が行なわれましたが、内容は会議録により御承知願います。
 かくて、同日、討論を省略し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対して、船舶航行の安全を確保するため、関係者の意見を尊重して、港湾、特に工業港の水域の整備、港湾における信号所、通信設備、標識、巡視艇、消防艇の整備を促進するとともに、これが要員の確保をはかるよう政府に要望する旨の附帯決議を付することに決しました。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#12
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 刑事事件における第三
  者所有物の没収手続に関する応
  急措置法案(内閣提出)
#13
○副議長(原健三郎君) 日程第二、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#14
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。法務委員会理事上村千一郎君。
    ―――――――――――――
   〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
   〔上村千一郎君登壇〕
#15
○上村千一郎君 ただいま議題となりました刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 刑事事件における被告人以外の者の所有物の没収に関しましては、昨年十一月二十八日、最高裁判所大法廷は、告知、弁解、防御の機会を与える手続規定のない現行法制のもとで第三者の所有物を没収することは、憲法第三十一条、第二十九条に違反する旨の判決を言い渡しましたことは御承知のとおりであります。よって、現行の没収制度は根本的にこれを改正する必要がありますが、それにはかなりの日時を要しますので、本案は、とりあえず右の違憲判決によって生じた障害を除去するための応急措置として、第三者保護の手続規定を設けようとするものであります。
 すなわち、刑事事件に関し、没収されるおそれのある物を所有する第三者に対し、事前にその被告事件に参加する機会を与え、意見陳述、立証、上訴等につき一定の権利を与え、このような手続がとられない限りは没収の裁判ができないこととし、また、万一、法律上没収できない物について没収の裁判が確定した場合には、一定の要件、手続のもとに、その裁判の没収部分の取り消しを請求する権利を認めようとするものであります。
 さて、法務委員会におきましては、去る四月一日本案が付託せられて以来、慎重審議を重ねてまいりました。その質疑の詳細については会議録に譲りたいと存じますが、おもなものを申し上げますと、今回の最高裁の違憲判決及び憲法第三十一条、第二十九条の意味、解釈問題、実体法である刑法、特別法並びに手続法の両面にわたり、没収制度のあり方について熱心な質疑がなされましたが、政府から、本案は右違憲判決の要請に応ずる最小限の応急措置法であって、没収に関する制度は、近い将来諸外国の立法例をも参酌し、根本的に整備したいとの答弁がありました。
 かくて、六月七日、質疑を終了し、討論なく、採決に付しましたところ、本案は全会一致をもって政府原案どおり可決せられた次第であります。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○副議長(原健三郎君) 採決いたしま
 す。
  本案は委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 義務教育諸学校の教科
  用図書の無償措置に関する法律
  案(内閣提出)
#18
○副議長(原健三郎君) 日程第三、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#19
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。文教委員長床次徳二君。
    ―――――――――――――
   〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
   〔床次徳二君登壇〕
#20
○床次徳二君 ただいま議題となりました内閣の提出にかかる義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律案につきまして、文教委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置について規定するとともに、その円滑な実施に資するため、採択及び発行の制度を整備し、もって義務教育の充実をはかることを目的とするものであり、その要旨は次のとおりであります。
 一、国は、毎年度採択された義務教育諸学校の教科用図書を発行者から購入し、これを学校の設置者に無償で給付し、設置者は校長を通じて児童、生徒に給与すること、及び国立の義務教育諸学校の児童、生徒に対しては、国が当該学校の校長を通じて給与するものとすること、
 二、都道府県の教育委員会は、当該都道府県に設置される教科用図書選定審議会の意見を聞き、種目ごとに数種の教科用図書を選定し、また市町村の教育委員会の意見を聞き、市もしくは郡の区域またはこれらの区域を合わせた地域(県の区域となる場合を含む)に採択地区を設定しなければならないこと、
 三、都道府県内の義務教育諸学校で使用する教科用図書は、当該都道府県教育委員会で選定したもののうちから、種目ごとに一種を採択すること、及び採択地区が二以上の市町村の区域を合わせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村の教育委員会は協議して同一のものを採択すること、
 四、義務教育諸学校の教科用図書は、政令で定める期間、毎年度同一のものを採択すること、
 五、文部大臣は、教科用図書発行者で、一定基準に該当するものを教科用図書発行者として指定し、これに該当しなくなった場合は指定を取り消すこと、
 六、文部大臣は教科用図書発行者に対して、基準に適合しているかどうか調査するため、必要に応じ立ち入り検査させ、また必要な報告、資料提出を求めることができ、検査等を拒んだ場合等について所要の罰則を設けたこと、
 七、この法律は、公布の日から施行すること、ただし、昭和三十八年度に使用する教科用図書については無償給付及び給与の規定を適用しないこととし、採択の規定については、小学校は昭和三十九年度から、中学校は昭和四十年度から施行すること、
 八、当分の間、教科用図書の給与を受ける児童、生徒の範囲は政令で定めること、及びその他関係法律を整備すること等であります。
 本案は、去る三月八日衆議院本会議において荒木文部大臣より趣旨説明を聴取し、同日当委員会に付託となり、次いで、三月十三日には提案理由及び補足説明を聴取いたしました。自来、当委員会は本案に対し、きわめて慎重に審議したのでありますが、その審議過程において、特に問題として検討された点の第一は、
 教科用図書無償給与完全実施についての法的保障がないという意見に対し、完全実施の大原則は前国会で成立した義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律によってすでに確立されており、また五年以内に実施を完了するということは政府の確約によって明らかであるとする意見があります。
 第二は、教科用図書の採択について学校の発言権を尊重すべしという意見であります。これに対し、採択は従来のたてまえをそのまま踏襲するものであって、学校の発言権を奪ったというのは当たらないし、運用上においても、校長、教員の意見は十分に反映するよう措置する旨しばしば政府から答弁がありました。
 第三は、市町村教育委員会の自主性を尊重することの必要性から、都道府県教育委員会が選定することの可否について論じられたのでありますが、これについて、都道府県内の教育水準の維持及び教科書の発行供給の合理化等の見地から選定するものであり、特に市町村側の意見が反映できるよう選定審議会の運営を適切に行なうので、地方の自主性は阻害されない旨の意見が表明されました。
 第四は、すべての都道府県教育委員会に教科用図書選定権及び採択地区設定権を与えたことは、指定都市の特殊性を無視するものであるという点があります。これに対して、一応もっともな意見であって、今後の研究課題であると思われるが、これも指定都市の教育委員会の意見を尊重するよう措置することによって解決できる問題であるという見解が披瀝されました。
 第五は、現行行政区域、すなわち市郡単位による教科用図書採択地区の設定は適当でない、よろしく教育的配慮の上に立ってきめるべきであるという意見に対し、採択地区は行政区画によるのが実態であって、適当な考え方であるとする反論があります。
 第六は、教科用図書発行者に対する指定制度及び立ち入り検査権は、個性のある自由な教科書編さんに有害であって、よい教科書は生まれないとする点であります。これに対し、発行者の指定基準はゆるやかなもので、特に問題とするに足りないし、業者の保護育成に必要な措置である。また立ち入り検査は、指定基準に適合しているかどうかを調査するために必要があると認められる場合に限るという答弁がありました。
 第七は、経過措置に関する問題であります。すなわち、完全実施に至るまでの間、有償教科用図書についても本法の採択に関する規定及び新しい発行制度が適用されるのは不当であるというのでありますが、これに対し、無償教科用図書の完全実施は、五年以内の目途をもって進められており、かくすることが、かえって無償措置を進めるために実情に適合するとの反論がありました。
 また、去る六月三日には、前田隆一君外八名の参考人を招致して、その貴重な意見を聴取するなど、本案審議の一助としたのでありますが、それらの詳細については会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 かくて、六月十日に至り、本案に対する質疑を終了、引き続いて山中吾郎君外一名から、本案に規定する採択、発行、罰則等に関する条項を削除し、教科用図書の採択は、義務教育諸学校が行なうこととし、無償給付及び給与は昭和四十一年度までに完全実施すること等を骨子とする修正案が提出されました。次いで、本修正案に対する質疑を終了して討論に入り、自由民主党を代表して八木徹雄君から、本案に賛成、修正案に反対の討論があり、日本社会党を代表して、村山喜一君、民主社会党を代表して門司亮君、日本共産党を代表して谷口善太郎君から、それぞれ本案に反対、修正案に賛成の討論がありました。
 かくて、本案及び修正案について採決の結果、修正案は起立少数をもって否決され、本案は起立多数をもって原案のとおり可決されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○副議長(原健三郎君) 討論の通告があります。これを許します。山中吾郎君。
   〔山中吾郎君登壇〕
#22
○山中吾郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律案に対して、反対討論を行なうものであります。(拍手)
 近ごろ、文教関係の政府提出法律案は、複雑怪奇なる法案が多いのでありますが、このことは、教育が政治権力によって支配され、教育的であるべき法案が、政治的法案に曲げられつつある証左であると思うのであり、この法案もその例外ではないのであります。(拍手)
 この法案は、極言をいたしますと、たとえばエジプトのスフィンクスのような法案であります。首から上に教科書無償法案であり、胴体以下は教科書国家統制法案であり、いわば人面獣身型のえたいの知れない法案であると思うのであります。(拍手)文教常任委員会における審議の過程において、われわれは、その反教育的性格と官僚統制的性格を明らかにして、政府の反省を促し、改むべきを改め、憲法の保障する義務教育無償の原則を正しく発展せしめようと最善の努力を払ったのであります。ところが、政府及び与党は修正についに応じなかったことは、まことに遺憾でございます。われわれ社会党文教常任委員は、模範的審議を決意して、あらゆる角度からこの法案の吟味を行なったのであります。しかし、終戦後十数年のかたくなな法案審議の惰性は牢固として存在し、審議の過程において法案の致命的欠陥が明らかになっても、政府及び与党は、原案押し通しの筋書きを無反省に進めるにすぎなかったのであり、かくて悪法がまた一つ文教常任委員会において可決されたことは、まことに遺憾でございます。(拍手)強行採決か審議拒否か、物理的圧力か、いずれかの方法によるほか、原案阻止または修正の道なき法案審議の慣行からは、議会主義の正しい発展は望むべくもないことを残念に思った次第でございます。(拍手)
 これより、この法案の審議の過程から明らかになった致命的欠陥を、次の三点にしぼって解明し、政府及び与党の猛省を促したいと存じます。
 まず第一の致命的欠陥は、この法案は、義務教育九カ年を通じての教科書無償給与の完全実施の法的保障がないということであります。
 この法案によれば、第三条及び第五条により、国が義務教育諸学校の児童及び生徒に教科用図書を無償で給与することは規定されておるのでございますが、附則の第四項において、当分の間政令の定めるところにより完全実施を保留いたしておるのであります。御承知のように、戦後設けられました法律には、当分の間の文句を付することによって、一定期間法律の内容を実施しないままに、十数年を経た今日そのままに残されている法律は少なくございません。すなわち、当分の間の規定は事実上確実な実施の保障にはならないのであり、ことにこの法案の成立までの経緯をあわせ考えるとき、まことに不安なものがございます。ことにこの法案の実施については、他の施策と違いまして、一つの学校の中において、また一つの世帯の中において、兄弟姉妹の間にあって、ある者は教科書を無償で給与をされる、他の者は有償で教科書を買わなければならない、こういう差別的な状態に置かれるのであって、家庭教育の立場からしても、数年以上有償無償の教科書給与が混在する好ましくない状態が残るのであるならば、むしろ教科書無償制度は撤回したほうがよろしいと思うのであります。(拍手)このように考えますと、この法案を成立せしめるための前提条件として、少なくとも政府は明確に無償制度の完全実施の年次計画を明示し、たとえばわが修正案の明示するごとく、昭和四十一年度において完全実施するとの規定がなければならないと思うのであります。(拍手)
 欠陥の第二点は、この法案は教科書無償の名をかりて、教師よりみずから使用する教科書を選択する立場を完全に奪っておることであります。
 御承知のように、現行教科書制度は検定教科書制度を採用いたしております。すなわち、文部大臣が教科書を検定し、適当と認めた教科書の範囲内において選定することを本旨といたしておるのでございますが、この検定に合格した教科書の中から教師がみずから使用する教科書を選定する立場を奪うということは、まさしく教師をして教育奴隷としての取り扱いをするといっても過言ではございません。(拍手)一歩を譲って、市町村教育委員会に採択の責任があるといたしましても、事実上の採択はあくまでも教師にあることを認めるべきであると思うのであります。すなわち、教師がいずれの教科書を使うかは行政事務ではありません。教育活動の着手であると考えます。
 さらに、この法案は、市町村立学校を所管する市町村教育委員会の本質的な権限である教科書採択事務に関する権限を無視して、府県教育委員会に教科書選定権を新たに設けたことは、現行教育行政組織上まことに無原則なる便宜的規定であり、これもきわめて不当でございます。この便宜的規定は、五大都市の場合に最も著しい矛盾を生んでおります。すなわち、五大都市はいずれも、他の府県の児童、生徒数よりも多い十数万の義務教育就学児童、生徒を保有いたしておるのでありますが、この五大都市の教育委員会から、教科書採択に関する権限を府県教育委員会の権限に吸い上げて、その自主的運営を剥奪しようとしておるのでございます。
 第三のこの法案の致命的欠点は、出版業者に対して、政令で定める要件を備えることを条件として指定制度をとり、さらに立ち入り検査権を設け、営業の自由に重大な制限を加えておることでございますが、この規定は、提案説明によりましても、またすべての政府委員の答弁にいたしましても、また文部省の公の出版物に掲載されておる論文によっても、教科書無償制度を実施することを前提として、出版会社は国民の税金によって支払う相手方であるがゆえに、検定制度及び立ち入り検査権の設定は当然である、こういう思想に立っております。
 ところが、現存する教科書出版会社は八十六社ございますが、そのうち文部省の答弁によりましても、中学校用の教科書だけを発行しておる会社は六社、中学、高等学校の教科書を発行しておる出版会社は十五社、合わせて二十一社の多きに及んでおるのでございます。これらの会社は、小学校の無償給与の教科書を発行していないのである。しかるに、この法案の施行によって、教科書無償給与によって恩恵を受けていないままにこの法律の適用を受けることになることは、立法常識からいっても、憲法の法のもとに平等という点からいっても、これもはなはだしく不当であると思うのであります。(拍手)
 もし、この法案をそのまま直ちに施行するというならば、第四章の発行及び第五章の罰則を執行停止をして、有償の教科書を発行する出版会社を適用外にしなければ、あとへあとへこの法案執行について重要なる疑義が残ることを私は確信をいたすものであります。この点については、文教委員会における審議の過程において、法制局の責任者を呼び答弁を求めました。その答弁は、この法案の作成過程において、出版会社に対する指定制度、立ち入り検査については、われわれ法制局の立場において是認したゆえんは、すべて教科書無償制度を前提としての論でありましたと明確に答えております。しかるに、教科書無償制度を、この出版をしていない二十一社に対して適用するということは、法制局の立場からいっても疑義が残ることは、皆さん十分の御理解ができるはずであります。
 以上、この法案についてのわれわれの真=な審議の過程の中から明らかになったおもなる欠陥を解明申し上げたのでございますが、政府並びに与党の委員は、修正の色は見せても、修正の実を示すことができなかったことは、まことに遺憾でございます。(拍手)正当な模範審議の中で発見された本案の致命的欠陥に対しても、修正の余地を残すことのできない法案審議の慣行は、私は今後の正しい議会主義発展のためにまことに遺憾に思うのであります。
 最後に申し上げたいことは、この法案の目ざす教科書無償制度の正しい発展のために、衆参両院の審議を通じて相互に歩み寄り、修正すべきものは修正し、わが国の文教政策の画期的な制度である教科書無償制度が、悔いのない輝かしい出発をすることを切望して、私の反対討論を終わるものでございます。(拍手)
#23
○副議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#24
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 恩給法等の一部老改正する法律案
  (内閣提出)
#25
○草野一郎平君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 この際、内閣提出、恩給法等の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#26
○副議長(原健三郎君) 草野一郎平君の動議に御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#28
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長永山忠則君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔永山忠則君登壇〕
#29
○永山忠則君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 詳細は会議録によって御承知を願うことといたしまして、本法案の要旨について申し上げます。
 第一は、かつて恩給、扶助料の年額を増額いたしました際、傷病者、妻、子を除く六十歳未満の者に対しましては、その増額分を停止しておったのでございますが、この制限を一万五千円ベースまでは解除することであります。
 第二は、増加恩給受給者の退職後出生した子女に対する加給年額二千四百円を四千八百円にすることでございます。
 第三は、特例扶助料及び特例遺族年金につきまして、在職期間経過後一年以内に、厚生大臣の定める結核等については三年以内に死亡した場合となっている支給要件を緩和いたしまして、それぞれ二年以内、六年以内とすることでございます。
 第四は、加算年を算入して初めて普通恩給を受ける者の年額算定の場合の減算率を、百五十分の四・五から百五十分の三・五に緩和し、その最低保障率を百五十分の二十二から百五十分の二十五とすることでございます。
 第五は、三公社と同種の業務を行なっておりました在外特殊機関の職員の在職期間を、外国政府職員期間の場合に準じ恩給公務員期間に通算することでございます。
 なお、以上の措置に基づく恩給につきまして、昭和三十八年十月からその給与を始め、または年額を改定することでございます。
 本案は、去る二月二十三日本委員会に付託されまして、十八日政府の説明を聞き、六月十一日、質疑を終了いたしましたところ、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決いたしました。
 なお、本案に対しまして、自民、社会、民社三党共同提案にかかる、残された未処遇問題の解決並びに共済組合年金及び恩給受給者間の不均衡是正、現職公務員の給与ベースに対する恩給のスライド制確立の問題等について、政府は、すみやかに検討の上、適切な措置を講ずべきである旨の附帯決議案が提出され、全会一致をもって議決いたした次第でございます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#31
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 外国保険事業者に関する法律の一
  部を改正する法律案(内閣提出、
  参議院送付)
#32
○草野一郎平君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 この際、内閣提出、参議院送付、外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#33
○副議長(原健三郎君) 草野一郎平君の動議に御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。法律に基づき免許を受けたに改める。
 第三十四条の次に次の二条を加える。
 第三十四条の二 第三条第三項の規定に違反した者は、二年以下の懲役若しくは二十万円 以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十四条の三 第三条第四項の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。
 第三十五条第一項中「前条」を「前三条」に改める。
    附則
 1 この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する。
 2 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。   ―――――――――――――
#35
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長臼井莊一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔臼井莊一君登壇〕
#36
○臼井莊一君 ただいま議題となりました外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案の内容について簡単に申し上げますと、まず第一に、外国保険事業者が免許を受けて日本で保険事業を営むのは、日本に支店等を設けて行なう場合に限ることとし、第二に、日本に支店等を設けない外国保険事業者は、日本にある人または財産について保険契約を締結してはならないこととしております。第三に、日本に支店等を設けない外国保険事業者に対して、日本にある人または財産等について保険契約の申し込みをしようとする者は、再保険契約その他特別の場合以外は大蔵大臣の許可を要することとし、第四に、免許を受けた外国保険事業者は、日本にある人もしくは財産等にかかる保険契約については、日本においてこれを締結しなければならないものとしております。
 この法律案は、参議院先議により、去る三月十一日参議院を通過して当委員会に付託されたのでありますが、慎重に審議の後、本日、質疑を終了し、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#38
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
#39
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時五十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中垣 國男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
 出席政府委員
        総理府総務長官 徳安 實藏君
        大蔵政務次官  原田  憲君
        運輸政務次官  大石 武一君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト